JP2006084248A - はんだ挿入接合部の疲労挙動の信頼性評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
スルーホールタイプのはんだ接合構造体のはんだ接合部の基板面と同一方向等の疲労試験方法を得ること、それを用いるスルーホールタイプのはんだ接合構造体の熱疲労特性と振動疲労特性の評価方法を得ること、さらに、前記熱疲労特性評価方法により求めたはんだ接合構造体のはんだ疲労曲線から前記構造体の疲労寿命を予測する方法を得る。
【解決手段】
スルーホールタイプの挿入接合部を有するはんだ接合構造体の実体基板に近いはんだ接合部の疲労試験方法を提供する。さらに、この試験方法を用いて、所定温度範囲での熱サイクルを受けた時に前記はんだ接合構造体の最大歪部に生じる非弾性歪を計算により求めて、これと同じ非弾性ひずみを試験片に付与することで、冷熱環境試験に代替するはんだ接合構造体の熱疲労評価方法を得る。この熱疲労評価方法を用いて、はんだ接合構造体の疲労寿命を予測することができる。
【選択図】なし
スルーホールタイプのはんだ接合構造体のはんだ接合部の基板面と同一方向等の疲労試験方法を得ること、それを用いるスルーホールタイプのはんだ接合構造体の熱疲労特性と振動疲労特性の評価方法を得ること、さらに、前記熱疲労特性評価方法により求めたはんだ接合構造体のはんだ疲労曲線から前記構造体の疲労寿命を予測する方法を得る。
【解決手段】
スルーホールタイプの挿入接合部を有するはんだ接合構造体の実体基板に近いはんだ接合部の疲労試験方法を提供する。さらに、この試験方法を用いて、所定温度範囲での熱サイクルを受けた時に前記はんだ接合構造体の最大歪部に生じる非弾性歪を計算により求めて、これと同じ非弾性ひずみを試験片に付与することで、冷熱環境試験に代替するはんだ接合構造体の熱疲労評価方法を得る。この熱疲労評価方法を用いて、はんだ接合構造体の疲労寿命を予測することができる。
【選択図】なし
Description
電子・電気機器、自動車などの産業における、スルーホールタイプの実装基板のはんだ付け技術の、具体的には、部品の端子部等を挿入しはんだ接合しているはんだ接合構造体のスルーホール部位のはんだの疲労試験方法とこれを用いた熱疲労または機械的疲労評価方法に関する。すなわち、スルーホールを有するはんだ接合体が冷熱環境試験において所定温度範囲での熱サイクルを受けた時の熱疲労特性を、前記環境試験時にはんだ接合構造体の最大歪を受ける部位に生じる非弾性ひずみを計算により求めて、はんだ接合構造体の熱疲労寿命を予測するための熱疲労特性の評価方法に関するものである。主として、本発明は、自動車電装部品におけるスルーホール接合部を対象とし、はんだ接合の冷熱環境試験での熱疲労および自動車の電装基板の基板面と平行な方向に対する振動疲労の信頼性評価手法に関するものである。ここで、スルーホールタイプの実装基板とは、実装基板が貫通孔を有し、その貫通孔に電子部品の端子部等を挿入し、端子部をはんだ付けにより、実装基板に固定するタイプのものである。
はんだ接合部は、その使用環境によって、さまざまな負荷を受け、疲労現象を呈する。各種疲労現象の中で、熱疲労と振動疲労に対しては、その負荷に対する寿命を予測し、高寿命となるように設計する必要があるが、その寿命は使用部位により異なるため、実体製品を直接冷熱環境試験や実体振動疲労試験をする以外に有効な方法はなく、このことがこれまで新しいはんだ材料の開発や製品設計の阻害となっていた。
熱疲労は、温度の上昇および下降に伴ってはんだ部の周辺材料が熱膨張・熱収縮し、はんだ部が変形する現象に起因する。この昇温と降温の繰り返しによってはんだ部が引張りと圧縮のひずみを交互に受けることから、機械的に疲労し寿命に至るのが熱疲労である。通常は、環境から受ける温度上昇・下降の推移をモデル化した温度サイクル試験を施して、この際に破壊するまでのサイクル数を調べるというような冷熱環境試験により熱疲労を評価している。
この冷熱環境試験による熱サイクルにより、基板面に平行な方向に、熱膨張、熱収縮を繰り返すスルーホールを有するはんだ接合構造体は、一軸引張圧縮の疲労試験を受けていると同様な状態になるが、スルーホール内ははんだ継ぎ手構造体の形状が複雑なことから、そこでの応力ひずみ状態は複雑なものとなる。
振動疲労は基板実装されている部品が高周波の振動を受け、部品支持しているはんだ接合部に繰返し荷重が印加されて強度が低下し、寿命に至る現象である。通常は、この振動疲労の評価には、実際に受けるであろう振動環境を模擬した振動試験を実施し、振動サイクル数、あるいは振動を印加した時間にてはんだ部が破壊するまでの寿命を調べる試験を実施する。
工業的には、製品の機能を保証するために、温度サイクル試験や振動疲労試験をはんだ接合部を有する全ての製品に対して抜き取りで実施することになり、多大な時間を要してしまうという欠点があると共に、実際の実装部品の場合には、他部品も実装されているために、試験を実施するのが困難であり、特に冷熱環境試験の場合には、試験時間が長い等の問題がある。
そこで、はんだ材料自体の疲労寿命を調べて、ひずみ-寿命曲線(Coffin−Mannson則)を得て、実製品のはんだ接合部のひずみを有限要素法にて解析し、前記ひずみ-寿命曲線より寿命を見積もる方法が非特許文献1に開示されている。ここで、試験で付与するひずみには、弾性ひずみと非弾性ひずみの両成分があるが、非弾性ひずみとしては、塑性ひずみとクリープひずみを併せたものを用いる必要がある。はんだ材料の場合、他社の金属材料と比べて使用環境温度とはんだ材料の融点が近いために、非弾性ひずみとしては、塑性ひずみにクリープひずみを合わせたものを使用するのが合理的である。
日本機械学会論文集(A編)63巻611号(1997年)1594頁 著者:向井稔、川上崇、高橋邦明、岸本喜久雄、渋谷寿一 表題:はんだ接合部の熱疲労寿命に及ぼす保持時間の影響
ところが、従来は、はんだ材料自体の疲労評価は、図1に示す丸棒試験片、及び図2に示すはんだ継ぎ手試験片によるせん断疲労試験のように単純形状の試験片を用い、これらに引張および圧縮の荷重(変位)を繰り返して印加し、上記試験片が破壊するまでの繰り返し回数を読み取って寿命としていた。これらの図1及び図2に示す試験片による寿命評価は、はんだ接合部の形状が複雑なスルーホールタイプのはんだ接合構造体のはんだ接合部の疲労寿命とは一致しなかった。
上記のような単純化した試験においては、実際の工業製品におけるスルーホールを有するはんだ接合構造体のはんだ接合部の疲労特性を評価できないという問題が生じているため、スルーホールタイプの挿入接合部を有するはんだ接合構造体のはんだ接合部の疲労試験方法を得ることが必要となった。また、それを用いるスルーホールタイプのはんだ接合構造体の熱疲労特性と振動疲労特性の評価方法を得ることが必要とされ、特に、スルーホール接合部(挿入接合部)については、その複雑な接合形態から、寿命予測が困難であるため、正確な寿命の予測の方法を得ることが望まれている。
そこで、本発明は、二枚の基板それぞれに一個あるいは複数個の貫通孔を設け、一個あるいは複数個の模擬部品の足を、二枚の基板の貫通孔にそれぞれ挿入したスルーホールを有するはんだ接合構造体において、二枚の基板同士を近づける向き、および遠ざける向きに、繰り返し変位を与え、スルーホールのはんだ挿入接合部のはんだの疲労試験を行う疲労試験方法を提案するものである。さらに、この疲労試験方法を利用して、冷熱環境試験を代替するはんだの熱疲労評価方法及び機械的な振動疲労評価方法を得るものである。また、前記熱疲労評価方法を用い疲労曲線を求めて、スルーホールタイプ挿入接合部の疲労寿命を求める方法である。
具体的には、所定温度範囲で熱サイクルを受けた時にスルーホールを有するはんだ接合体の最大歪部に生じる非弾性歪を計算により求めて、はんだ接合構造体のはんだ接合部に付与する非弾性ひずみ振幅を決定し、その結果に基づいて前記はんだ接合体の疲労試験を行うものである。スルーホールを有するはんだ接合体の冷熱環境試験における熱疲労特性評価を所定非弾性ひずみ振幅での疲労試験に置き換えることによる冷熱環境試験の代替評価方法を得ることである。また、この熱疲労評価方法を用いてスルーホールを有するはんだ接合体の疲労曲線(試験の繰り返し数と非弾性ひずみ振幅の関係)を求めて、スルーホールタイプのはんだ接合構造体の疲労寿命を得ることができる。
上記構造体に変位を与える装置には、所望の変位を与えるために自動制御型作動機構および変位センサを設けることが望ましく、さらに、荷重計測のためにロ−ドセルを設けることが望ましい。構造体に変位を与えていない状態を原点とし、二枚の基板を近づける向きをプラス、遠ざける向きをマイナスとし、繰り返しの変位振幅としては、通常は原点を基準としてプラス・マイナス方向に対称な波形で一定振幅とする。しかし、環境試験の室温からの低温・高温などの温度サイクルの設定に一致させるように、変位振幅を変化させることや波形を非対象に設定することもできる。
上記構造体の構成材料としては、実際に実装する部品に合わせて同一材質とすることが望ましいが、はんだ部のみに負荷が印加されるように、実装部品やはんだ材料よりも、著しく剛性の高い材料として評価することもできる。また、自動車電装基板の振動疲労を本発明の方法を使用して評価する場合等においては、試験での振動波形として、プログラム振動負荷装置を取り付けることにより、複雑な振幅や周期を組み合わせたプログラム振動を付与することもある。
請求項1に記載の発明は、基板に設けられた貫通孔に端子を挿入し、前記端子が該貫通孔で固定されるように半田接合部を形成し、前記半田接合部に所定の振幅で繰り返し変位を与えることを特徴とするスルーホールタイプの半田接合構造体の疲労試験方法である。
請求項2に記載の発明は、2枚の基板にそれぞれ少なくとも一個の貫通孔を形成し、該貫通孔のそれぞれに実装部品の端子を各1本ずつ挿入するとともに、前記実装部品の端子を各貫通孔の一つにおいて半田接合し、前記2枚の基板同士を近づける向きおよび遠ざける向きに繰り返し変位を与えることを特徴とするスルーホールタイプの半田接合構造体の疲労試験方法である。
請求項3に記載の発明は、前記周波数が200Hz以下の所定の振動を与えることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載のスルーホールタイプの半田接合構造体の疲労試験方法である。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載のスルーホールタイプの半田接合構造体の疲労試験方法を環境温度変化によって起こる膨張収縮による疲労寿命の評価のために使用される冷熱環境試験の代替手段として用いることを特徴とするスルーホールタイプの半田接合構造体の熱疲労評価方法である。
請求項5記載の発明は、請求項4に記載のスルーホールタイプの半田接合構造体の熱疲労評価方法において、所定の温度範囲で半田接合構造体の最大ひずみ部に生じる非弾性ひずみに相当する非弾性ひずみ振幅を繰り返し変位として負荷することを特徴とするスルーホールタイプの半田接合構造体の熱疲労評価方法である。
請求項6記載の発明は、請求項4に記載のスルーホールタイプの半田接合構造体の熱疲労評価方法において、所定の温度範囲で半田最大ひずみ部に生じる応力に相当する応力の振幅を負荷することを特徴とするスルーホールタイプの半田接合構造体の熱疲労評価方法である。
請求項7に記載の発明は、環境温度範囲として、−70℃から160℃の任意の範囲に相当する非弾性ひずみ振幅をスルーホールのはんだ接合部に付与することを特徴とする請求項5に記載のスルーホールタイプのはんだ接合構造体の熱疲労評価方法である。
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項3に記載のスルーホールタイプのはんだ接合構造体の挿入接合部の疲労試験方法において、疲労試験の進行に伴って荷重値が初期の安定荷重から所定量低減した時点を、そのはんだ接合部の疲労寿命と定義し、試験の繰り返し数と非弾性ひずみ振幅の関係を求め、これらからスルーホールタイプの挿入接合部の疲労寿命を求める方法である。
本発明により、形状が複雑なために、機械的疲労による寿命の見極めが困難とされていた挿入接合部(スルーホール)を有するはんだ接合構造体の疲労試験方法が確立した。その結果、冷熱環境試験における実機でのはんだの寿命を、代替試験を用いて、代替試験で印加する荷重振幅あるいは変位振幅に対し、系統的に求めることを可能とした。さらに、実製品のはんだ接合部に発生する荷重あるいはひずみを計算により求め、かつその実製品が受ける荷重あるいはひずみ負荷に対する寿命を本発明の手法にて計測することにより、実製品のはんだ接合部寿命を正確に求めることを可能とした。また、本発明の疲労試験方法を用いることにより、電装部品の基板面に平行な方向に対する振動疲労を評価することができる。
さらに、はんだの熱・機械的疲労の信頼性を評価する手法として、本発明の疲労試験方法を用いて、スルーホールを有するはんだ接合構造体の最大歪を受ける部位が所定の非弾性歪を受けた場合の疲労寿命を求めることができる。この方法により、所定の疲労寿命を有するはんだ接合構造体を得ることができる。
以下に本発明を実施例に基づいて説明する。
まず、本発明の試験片の詳細とその取り付け方法について説明する。図4および図5に示すような純銅製の基板ならびに模擬部品を作製し、スルーホール部をはんだ接合し、試験片とした。模擬部品は、基板とはんだ接合させる足二本を、ブリッジ部でつないだ形状とした。ここで、模擬部品の足は実製品における電子部品の端子に相当する。また、基板は模擬部品の足を挿入接合する貫通孔1個と試験機との連結で使用するボルト穴4個を有しており、同形状の基板2枚を、一個の模擬部品ではんだ接合した。はんだ材料は、Sn−3.5%Ag−0.5%Cu(重量%)としフローはんだ付け法にて接合し、合計4個の試験片を作製した。ここでは、模擬部品の足は、各基板について1本ずつとしたが、部品の用途その他の理由によって、2本以上の複数本とすることもできる。
次に、本発明に用いた疲労試験機について説明する。図8、図9は、リニアサーボ、ロードセル、変位センサから構成される疲労試験機である。この試験機の機能として、低周波から高周波までの繰返しの変位振幅を試験片に付与できるようにした。また、その際に、変位振幅量を精密に制御することかつ荷重を検出することを可能とした。
さらに、本発明の疲労試験方法と疲労寿命の定義について説明する。疲労試験方法としては、試験片を疲労試験機に取り付け(図9)、全変位振幅を15μm、すなわち取り付け時の変位を0とした場合に、二枚の基板が近づく向きに15μm、二枚の基板が離れる向きに15μmの変位を8Hzの周波数で繰り返し与えた。このとき、時間―変位の振幅波形は正弦波とした。ここで、全変位振幅とは全変位の1/2の値を言う。図10に試験中常に荷重を検出し続け、荷重振幅の繰り返し回数に伴う変化を示した。疲労劣化に伴ってはんだ接合部には亀裂が発生・伝播するため、荷重振幅は減少した。本試験では、荷重振幅が初期の安定荷重の20%低減した時点を、そのはんだ接合部の疲労寿命と定義した。全変位振幅を15μmとした場合、定常的な荷重振幅は15Nを示すことが判る。また、繰り返し数が約2×105回付近で、荷重の20%低減が認められ、上記定義より、その回数を寿命とした。
上記のように、全変位振幅と疲労寿命の関係を異なる全変位振幅に関して求めることにより、変位振幅―寿命曲線を求め、それから荷重振幅−寿命曲線を得る目的で、全変位振幅を15μmとした場合の他、残りの3個の試験片を用い、全変位振幅をそれぞれ、20、30、35μmとして、同様の試験を実施した。このときの荷重振幅は7.5N〜18Nであった。それぞれの全変位振幅に関して取得した寿命を整理し、図11を作成した。さらに、試験中に実測した荷重振幅を用い、荷重振幅−寿命曲線を求めた(図12)。
上記、本発明の疲労試験結果と実機の振動試験の結果を対比するために、実機の接合部に印加される荷重を計算により見積もった。図3の接合体における振動試験では、はんだ接合部に振動を受けた部品の負荷がそのまま印加される構造である。したがって、はんだ接合部に発生する荷重振幅を概算すると、0.05kg×100m/s2=5Nと見積もることができた。図12より、荷重振幅5N時の寿命は約1×106回と読むことができ、下記の実験結果9.8×105回と良い一致を示し、本発明の振動疲労試験は、実機の振動試験を十分に代替するものであることが分かった。
なお、実機の振動試験の試料としては、図3に示すような接合体である重量50gのリレーボックス部品の端子二本を、FR4基板に形成したスルーホールに挿入し、Sn−3%Ag−0.5%Cuはんだにて接合したものを用いた。
この接合体5個に対し、8Hzの周波数、および100m/s2の加速度にて振動試験を施し、はんだ表面に亀裂が発生するまでの振動回数を求めた結果、平均して9.8×105回であった。なお、自動車用等の用途を考えた場合、冷熱環境試験の周波数は、非常に低い周波数となるが、逆に、自動車のエンジンや構造部材の振動を考慮すると、振動の周波数としては、百数十Hz以上が妥当であり、上限値としては、200Hz以下であることが望ましい。
冷熱環境試験を代替できることを確認する目的で、実機での冷熱試験と本代替試験を比較する試験を行った。実施例1と同様の5個の試験片を用い、実施例1と同一の試験機にて、周波数0.1Hz、および全変位振幅を200μm、150μm、115μm、100μm、60μmとして試験した。実施例2の疲労試験においては、冷熱環境を代替するため、実施例1と比べて疲労試験の周波数は低周波で、全変位振幅は大きく設定した。また、寿命の定義は実施例1と同様とした。ここで、実際の冷熱環境試験では、冷熱サイクルは2時間に1回という極端に遅いものである。なお、冷熱環境試験の代替としては、前記の数値にあわせると、その周波数は10−3〜10−4Hzのオーダーであるが加速試験としての目的を考慮すると、少なくとも10−1〜1Hzが望ましいので、本試験では、0.1Hzを採用した。その結果、図13に示すような疲労試験における変位振幅と寿命の関係が得られた。
実機の冷熱環境試験と本発明の疲労試験の結果を比較するために、はんだの非弾性ひずみ振幅を試験時の変位から有限要素法解析にて求めた。次に前記試験条件にて、この試験を1サイクル回した際のはんだ部の非弾性ひずみ量を上記5つの60μm〜200μmの全変位振幅の場合それぞれについて、有限要素法解析にて算出した。解析の結果から、非弾性ひずみ量が最大となっている部位の非弾性ひずみ振幅を読み取って、寿命との関係を図14に示した。
一方、日本国内での寒冷地の最低気温と車室内の最高温度の温度範囲を考慮して、図3に示す接合体5個に対し−40℃と120℃(または80℃)の間を往復させる冷熱環境試験を施した結果、はんだに亀裂が発生するまでの寿命は、平均して2560回であった。この熱疲労試験時の非弾性ひずみを有限要素法解析にて求めた。その結果、実機の冷熱環境試験における最大の非弾性ひずみ振幅は、2.7×10−2であった。図14を用いて、本発明の非弾性ひずみ振幅2.7×10−2に対応する疲労寿命を読み取ると、冷熱環境試験を代替する熱疲労試験の結果は、2.6×103回となり、実機の冷熱環境試験の結果である2560回とほぼ一致することが判明し、本発明の疲労試験は、実機の冷熱環境試験を十分に代替できるものであることが分かった。ここで、冷熱環境試験を世界的に見た場合の最低気温とエンジルーム内のエンジン近傍の最高温度を考慮すると、冷熱環境試験の代替の熱疲労評価方法としては、−70℃から160℃をカバーする必要がある。この場合にも、熱疲労試験時の非弾性ひずみを計算により求めれ、この温度範囲と一致するひずみを付与すれば、これと代替試験により求めた疲労寿命曲線から疲労寿命を求めることができる。
[比較例]
本発明の試験結果と比較する目的で、従来の試験方法として丸棒試験片を用いて疲労寿命を求めた結果を示す。図1に示す丸棒試験片5本をSn−3%Ag−0.5%Cuはんだにて試作し、引張圧縮の疲労試験を実施し、疲労寿命曲線を取得した。詳細は、引張りならびに圧縮のひずみ量を試験片の平行部に直接取り付けた伸び計にて計測し、かつ応力量を試験機のロードセルにて計測し応力−ひずみのヒステリシスループから、1サイクル当たりの非弾性ひずみを読み取った。なお、試験時のクロスヘッド移動速度は、0.5mm/分とした。非弾性ひずみ振幅を5本の試験片に対し、それぞれ0.020、0.011、0.008、0.007、0.004として疲労試験を実施した。その結果、図15に示す非弾性ひずみ振幅−寿命曲線を取得した。
本発明の試験結果と比較する目的で、従来の試験方法として丸棒試験片を用いて疲労寿命を求めた結果を示す。図1に示す丸棒試験片5本をSn−3%Ag−0.5%Cuはんだにて試作し、引張圧縮の疲労試験を実施し、疲労寿命曲線を取得した。詳細は、引張りならびに圧縮のひずみ量を試験片の平行部に直接取り付けた伸び計にて計測し、かつ応力量を試験機のロードセルにて計測し応力−ひずみのヒステリシスループから、1サイクル当たりの非弾性ひずみを読み取った。なお、試験時のクロスヘッド移動速度は、0.5mm/分とした。非弾性ひずみ振幅を5本の試験片に対し、それぞれ0.020、0.011、0.008、0.007、0.004として疲労試験を実施した。その結果、図15に示す非弾性ひずみ振幅−寿命曲線を取得した。
図15より、先に実施した図3に示す接合体の熱疲労寿命を予測すると、6.4×102回であった。これは、実測値の2560回と比較し大きく乖離した値であり、丸棒試験片の寿命曲線よりスルーホール接合部の熱疲労寿命を見積もることが不可能であることを示す結果となった。
尚、本発明の実施例で示したような基板の他、図6および図7に示すように、実装部品の形状や用途に合わせて、1枚の基板に複数のはんだ接合部を設けた試験片や1枚の基板に1個のはんだ接合部を設けた試験片を用いることができ、その場合でも、上記と同様の試験が可能である。
また、本発明では、基板面に平行な方向の振動疲労を取り扱ったが、本発明のスルーホール接合体の基板面両端をそれぞれ別々にチャッキングして、一端固定し、片端を基板面に垂直方向に上下に全変位振幅を与えるか、又は基板面の片端と模擬部品の上端をそれぞれ別々にチャッキングして、基板面の片端またははんだ部を除く基板面全体を固定し、模擬部品の上端を基板面に垂直方向に上下に全変位振幅を与えることも本発明の利用法として可能であり、その他は本発明で開示した方法に従って発明を容易に実施できるため詳細な説明は省くが、請求項1の振動疲労試験方法には、これらの基板面に垂直な方向に上下に全変位振幅を与える試験も含むものとする。
以上、本発明の疲労試験方法は、これまで、試験が困難で実際と一致する代替試験がなかったスルーホールタイプの挿入接合部を有するはんだ接合構造体の疲労試験を可能とした。それにより、スルーホールタイプの挿入接合部を有するはんだ接合構造体の冷熱環境試験や振動疲労試験による寿命と荷重の関係等が明確になり、疲労寿命が簡単に予測できるようになった。
1 ロッド
2 チャック
3 はんだ材料による丸棒試験片
4 せん断試験片
5 はんだ接合部
6 部品
7 端子
8 基板
9 スルーホールはんだ接合部
10 模擬部品
11 ボルト孔
12 模擬部品の足
13 リニアサ−ボモ−タ−
14 ロ−ドセル
15 試験片
16 非接触変位センサ
17 ボルト
2 チャック
3 はんだ材料による丸棒試験片
4 せん断試験片
5 はんだ接合部
6 部品
7 端子
8 基板
9 スルーホールはんだ接合部
10 模擬部品
11 ボルト孔
12 模擬部品の足
13 リニアサ−ボモ−タ−
14 ロ−ドセル
15 試験片
16 非接触変位センサ
17 ボルト
Claims (8)
- 基板に設けられた貫通孔に端子を挿入し、前記端子が該貫通孔で固定されるように半田接合部を形成し、前記半田接合部に繰り返し変位を与えることを特徴とするスルーホールタイプの半田接合構造体の疲労試験方法。(請求項1のみ、所定の振幅を取りました。)
- 2枚の基板にそれぞれ少なくとも一個の貫通孔を形成し、前記貫通孔のそれぞれに実装部品の端子を各1本ずつ挿入するとともに、装部品の端子を各貫通孔の一つにおいて半田接合し、前記2枚の基板同士を近づける向きおよび遠ざける向きに繰り返し変位を与えることを特徴とするスルーホールタイプの半田接合構造体の疲労試験方法。
- 前記周波数が200Hz以下の所定の振幅を与えることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載のスルーホールタイプの半田接合構造体の疲労試験方法。
- 請求項1乃至3のいずれか1項記載の半田接合構造体の疲労試験方法を環境温度変化によって起こる膨張収縮による疲労寿命の評価のために使用される冷熱環境試験の代替手段として用いることを特徴とするスルーホールタイプの半田接合構造体の熱疲労評価方法。
- 請求項4に記載の半田接合構造体の熱疲労評価方法において、所定の温度範囲で半田接合構造体の最大ひずみ部に生じる非弾性ひずみに相当する非弾性ひずみ振幅を繰り返し変位として負荷することを特徴とするスルーホールタイプの半田接合構造体の熱疲労評価方法。
- 請求項4に記載の半田接合構造体の熱疲労評価方法において、所定の温度範囲で半田最大ひずみ部に生じる応力に相当する応力の振幅を負荷することを特徴とするスルーホールタイプの半田接合構造体の熱疲労評価方法。
- 所定の温度範囲が−70〜160℃の任意の範囲の非弾性ひずみ振幅に相当する非弾性ひずみ振幅を繰り返し変位として付与することを特徴とする請求項5記載のスルーホールタイプの半田接合構造体の熱疲労評価方法。
- 請求項1から請求項3に記載の半田接合構造体の疲労試験方法において、前記疲労試験方法の進行に伴って所定の振幅での繰り返し変位に対する応答荷重値が初期の安定荷重から所定量低減した時点を、前記所定の振幅での半田接合部の疲労寿命と定義し、試験の繰り返し数と非弾性ひずみ振幅の関係を求め、これらからスルーホールタイプの挿入接合部の疲労寿命を求める方法。
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