JP2006083279A - 撥液性粒子および撥液性粒子の製造方法 - Google Patents

撥液性粒子および撥液性粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】撥液性および耐久性に優れる撥液膜を基材の表面に形成するために用いられる撥液性粒子、また、かかる撥液性粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の撥液性粒子は、撥液膜を形成するために用いられ、少なくとも表面付近がフッ素原子とシリコン原子とを含む物質を主材料として構成されるものであり、この撥液性粒子の表面を、X線光電子分光分析法で測定したとき、得られたスペクトルにおいて、92〜110eVの範囲で、かつ、87eVでの値と115eVでの値とを結ぶ第1のベースラインより上の範囲の面積をXとし、680〜695eVの範囲で、かつ、675eVでの値と700eVでの値とを結ぶ第2のベースラインより上の範囲の面積をYとしたとき、Y/Xが1/50〜1なる関係を満足する。
【選択図】なし

Description

本発明は、撥液性粒子および撥液性粒子の製造方法に関するものである。
近年、基材の表面に撥液性を付与する方法として各種の方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、基材の表面に、ポリテトラフルオロエチレンのような撥液性を示す有機物質を用いて撥液膜を成膜する方法が開示されている。
ところが、この撥液膜は、有機物質により構成されるため、十分な機械的強度が得られず、耐久性に劣るという問題がある。
特開平7−228822号公報
本発明の目的は、撥液性および耐久性に優れる撥液膜を形成するために用いられる撥液性粒子、また、かかる撥液性粒子の製造方法を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の撥液性粒子は、撥液膜を形成するために用いられ、少なくとも表面付近がフッ素原子とシリコン原子とを含む物質を主材料として構成される撥液性粒子であって、
該撥液性粒子の表面を、X線光電子分光分析法で測定したとき、得られたスペクトルにおいて、92〜110eVの範囲で、かつ、87eVでの値と115eVでの値とを結ぶ第1のベースラインより上の範囲の面積をXとし、680〜695eVの範囲で、かつ、675eVでの値と700eVでの値とを結ぶ第2のベースラインより上の範囲の面積をYとしたとき、Y/Xが1/50〜1なる関係を満足することを特徴とする。
かかる関係を満足する撥液性粒子を用いて形成された撥液膜は、優れた撥液性および耐久性の双方を発揮するものとなる。
本発明の撥液性粒子では、その表面を、フーリエ変換赤外吸収スペクトル法で測定したとき、得られたスペクトルにおいて、950〜1000cm−1の範囲に、シリコン原子とフッ素原子との結合に由来するピークが観察されることが好ましい。
このような撥液性粒子を用いて形成された撥液膜は、優れた撥液性および耐久性の双方を確実に発揮するものとなる。
本発明の撥液性粒子では、平均粒径が、0.1〜1000μmであることが好ましい。
これにより、撥液性粒子を用いて形成された撥液膜中において、緻密かつ均一に撥液性粒子を分散させることができる。
本発明の撥液性粒子では、水を主成分とする液体に対する濡れ性が低いものであることが好ましい。
これにより、撥液性粒子を用いて形成された撥液膜は、水を主成分とする液体に対して優れた撥液性を発揮するものとなる。
本発明の撥液性粒子の製造方法は、本発明の撥液性粒子の製造方法であって、
少なくとも表面付近がシリコン原子を主材料として構成された粒子の表面に、フッ化水素を含有する処理液を接触させることにより、前記粒子の表面に存在するシリコン原子にフッ素原子を結合させることを特徴とする。
これにより、優れた撥液性と高い機械的強度とを発揮する撥液性粒子を形成することができる。
本発明の撥液性粒子の製造方法では、前記粒子を前記処理液に浸漬させることにより、前記粒子の表面に前記処理液を接触させることが好ましい。
これにより、一度に大量の粒子を処理することができるとともに、粒子の表面に、均一にフッ素原子を結合させることができる。
本発明の撥液性粒子の製造方法では、前記処理液に超音波を付与した状態で、前記粒子を浸漬することが好ましい。
これにより、シリコン原子とフッ化水素との反応をより迅速かつ確実に進行させることができる。
本発明者は、上記問題点に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、撥液膜に十分な耐久性を付与するためには、撥液性を有し、かつ、有機物質よりも強度に優れる無機物質(以下、単に「撥液性無機物質」という。)を用いて撥液膜を形成するのがよいと考えた。
そして、さらに検討を重ねた結果、撥液性無機物質の中でも、フッ素原子とシリコン原子とを含有する物質を用いて撥液膜を形成することにより、撥液膜に特に高い膜強度を付与できることを見出した。
また、このような物質を用いて撥液膜を形成することにより、アルカリ性を示すインクのような溶液に対する耐性(耐薬品性)の向上を図ることができることをも見出した。
本発明は、かかる知見に基づいてなされるものである。すなわち、本発明の撥液膜は、少なくとも表面付近がフッ素原子とシリコン原子とを含む物質を主材料として構成されるものである。
そして、本発明者は、さらに検討を重ねた結果、撥液性粒子を効率良く製造することができる方法をも見出した。
以下、本発明の撥液性粒子および撥液性粒子の製造方法を、好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の撥液性粒子は、その表面を、X線光電子分光分析法(XPS法)で測定したとき、得られたスペクトルにおいて、92〜110eVの範囲で、かつ、87eVでの値と115eVでの値とを結ぶ第1のベースラインより上の範囲の面積をXとし、680〜695eVの範囲で、かつ、675eVでの値と700eVでの値とを結ぶ第2のベースラインより上の範囲の面積をYとしたとき、Y/Xが1/50〜1なる関係を満足する。
ここで、XPS法とは、固体試料の表面から数nmの深さ領域における原子または化学結合の分析に用いられるものである。
すなわち、XPS法では、高真空中で固体試料の表面に特定エネルギーのX線を照射し、光電効果により個体試料の表面から放出された電子(光電子)を、各電子が有する運動エネルギーの大きさごとに分けて検出する。
そして、固体試料の表面から放出された電子が有する運動エネルギーの値に基づいて、電子の結合エネルギーの値を求めることが可能である。一方、固体試料を構成する各種原子が有する電子(内殻電子)は、固有の値の結合エネルギーを有することから、求められた結合エネルギーの値に応じて固体試料の表面を構成する原子の種類を特定することができる。
さらに、各種原子に由来するスペクトルのピーク(山)の面積を比較することにより、固体試料の表面に存在する原子の比率を求めることができる。
ここで、本発明の撥液性粒子の表面を、XPS法で測定すると、例えば、図1および図2に示すようなスペクトルが得られる。
本発明者は、この得られたスペクトルについて、さらに検討を重ねた結果、シリコン原子およびフッ素原子に由来するピーク(山)の大きさ、すなわち、それらのピークの面積に一定の相関性があることを見出した。
ここで、シリコン原子(シリコン2p軌道)に由来するピークは、図1に示したスペクトルにおいて、概ね92〜110eVの範囲に現れる。
なお、このスペクトルにおいて、105eV付近に現れるピーク(山)は、主にシリコン原子とフッ素原子との結合に由来し、100eV付近に現れるピークは、主にシリコン原子とシリコン原子との結合に由来するが、これらのピーク(山)中には、例えば、シリコン原子と酸素原子との結合に由来するものも含まれる。これらのピークの高さは、前者が小さく、後者が大きい。
ここで、本発明者は、シリコン原子に由来する大小2つピーク(山)の大きさ、すなわち、これらの面積Xを定める方法を模索した。
そして、この面積Xを定める方法を模索した結果、面積Xを定めるには、横軸方向に対する範囲と、ベースライン(第1のベースライン)とを規定する必要があることが判った。
そこで、横軸方向に対する範囲を、シリコン原子に由来する大小2つピークが概ね包含される、前述した92〜110eVの範囲に一致させた。横軸方向に対する範囲を、かかる範囲に規定することにより、シリコン原子に由来する強度を過不足なく反映させることができる。
一方、第1のベースラインは、92〜110eVの範囲の上限および下限から、それぞれ5eVずつ外側にずらしたスペクトル上での位置(値)、すなわち、87eVおよび115eVでのスペクトル上での位置を結ぶ線分とした。これにより、オフセット値(不偏的な基準値)が設定され、大小2つの山における第1のベースラインより下の部分(領域)を取り除くことができる。これにより、測定機器や測定条件等によらず、一定の適正な面積Xを得ることができる。
さらに、第1のベースラインの両端を、92〜110eVの範囲の上限および下限から、それぞれ5eVずつ外側にずらした理由は、次の通りである。
例えば、このベースラインの両端を、92eVおよび110eVでのスペクトル上の位置(値)とした場合には、シリコン原子に由来する大小2つの山の裾に近いことから、得られるベースラインは、シリコン原子に起因するノイズの影響を受けやすい。これに対して、これらの位置から、さらに5eVずつ外側にずらすことにより得られたベースライン(第1のベースライン)では、このノイズの影響がより少なくなる。その結果、第1のベースラインを用いて得られた面積Xは、より適正なものとなる。
なお、山の裾から外側にずらす距離が大きくなり過ぎると、それぞれの位置(値)におけるオフセット値のズレにより、得られるベースラインにズレが生じるおそれがある。そのため、92〜110eVの範囲の上限および下限から、それぞれ外側にずらす大きさを、5eVとした。
以上のことより、得られたスペクトルにおいて、92〜110eVの範囲で、かつ、第1のベースラインよりも上の範囲の面積、すなわち、図1に示す斜線を施した範囲が、面積X、すなわち、シリコン原子に由来する実際の強度となる。
このように、第1のベースラインを規定して、シリコン原子に由来するピークからこのベースラインよりも下の範囲の面積を取り除くことにより、測定機器や測定条件等による、ばらつきをも取り除くことができ、シリコン原子に由来する強度を面積Xとして的確に反映させることができる。
また、フッ素原子(フッ素1s軌道)に由来するピーク(山)、すなわち、フッ素原子とシリコン原子との結合に由来するピークは、図2に示したスペクトルにおいて、概ね680〜695eVの範囲に現れる。
ここで、本発明者は、フッ素原子に由来するピークの大きさ、すなわち、この面積Yを定める方法を、前記面積Xを定める方法と同様に、模索した。
その結果、横軸方向に対する範囲と、ベースライン(第2のベースライン)とを規定する必要があることが判った。
そこで、横軸方向に対する範囲を、フッ素原子に由来するピークが概ね包含される、前述した680〜695eVの範囲に一致させた。横軸方向に対する範囲を、かかる範囲に規定することにより、フッ素原子に由来する強度を過不足なく反映させることができる。
一方、第2のベースラインは、680〜695eVの範囲の上限および下限から、それぞれ5eVずつ外側にずらしたスペクトル上での位置(値)、すなわち、675eVおよび700eVでの位置を結ぶ線分とした。これにより、第1のベースラインと同様に、オフセット値が設定され、測定機器や測定条件等によらず、一定の適正な面積Yを得ることができる。
さらに、第2のベースラインの起点を、680〜695eVの範囲の上限および下限から、それぞれ5eVずつ外側にずらすのは、第1のベースラインを設定した際と同様の理由によるものである。
以上のことより、得られたスペクトルにおいて、680〜695eVの範囲で、かつ、第2のベースラインよりも上の範囲の面積、すなわち、図2に示す斜線を施した範囲が、面積Y、すなわち、フッ素原子に由来する実際の強度となる。
このように、第2のベースラインを規定して、フッ素原子に由来するピークからこのベースラインよりも下の範囲の面積を取り除くことにより、測定機器や測定条件等による、ばらつきをも取り除くことができ、フッ素原子に由来する強度を面積Yとして的確に反映することができる。
以上のようにして、面積Xと面積Yとが得られたわけであるが、これらの面積比Y/Xは、撥液性粒子の表面における、シリコン原子とフッ素原子との量に対応する比率を表すこととなる。
ここで、前述したように面積Xおよび面積Yの値は、それぞれ、第1および第2のベースラインを設けて求めたものであることから、シリコン原子およびフッ素原子に由来する強度を的確に反映するものとなる。したがって、これらの値から求められるY/Xは、XとYと同様に的確な値となり、測定機器や測定条件等によらず、シリコン原子とフッ素原子との比率を求めるための不偏的な指標となる。
このようにして見出した面積比Y/X、すなわち、シリコン原子とフッ素原子との比率は、本発明において、1/50〜1なる関係を満足する。
かかる関係を満足する撥液性粒子は、高い強度と優れた耐薬品性とを維持しつつ、水や、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールのような単価アルコール類、エチレングリコール、グリセリンのような多価アルコール類、アセトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類等の水系溶媒と水との混合液を主成分とする液体等に対して優れた撥液性を発揮する。換言すれば、この粒子は、水及び水を含有する溶液(水溶液)に対して高い撥水性を示す撥水性粒子ということができる。
このような撥液性粒子を用いて撥液膜を形成することにより、得られた撥液膜は、水や前述したような混合液を主材料とする液体等に対して優れた撥液性、耐薬品性および耐久性を発揮するものとなる。
なお、面積比Y/Xは、1/50〜1なる関係を満足すればよいが、1/30〜1/2なる関係を満足するのが好ましく、1/7〜1/3なる関係を満足するのがより好ましい。面積比Y/Xが、前記下限値未満の撥液性粒子では、撥液膜を形成する際の成膜方法等によっては、十分な撥液性を撥液膜に付与できないおそれがある。一方、面積比Y/Xを、前記上限値を超えて大きくしても、得られる撥液性粒子における撥液性の増大が期待できない。また、面積比Y/Xが大きくなり過ぎること、すなわち、シリコン原子が存在する量に対してフッ素原子が存在する量が増加し過ぎることにより、撥液性粒子の表面におけるフッ素原子とシリコン原子との結合が不安定になるおそれがあり、好ましくない。
また、撥液性粒子の表面を、フーリエ変換赤外吸収スペクトル法で測定したとき、得られたスペクトルにおいて、950〜1000cm−1の範囲に、シリコン原子とフッ素原子との結合に由来するピークが観察されるのが好ましい。
ここで、ある波数における吸光度は、入射光強度をI、透過光強度をIとしたときに、log(I/I)で表される値である。
そのため、得られたスペクトルは、撥液性粒子中に存在する特定の構造に応じて横軸が変化し、その特定の構造の量に応じて縦軸が変化する。
そこで、粒子の表面に存在しているシリコン原子にフッ素原子が結合しているような撥液性粒子では、シリコン原子とフッ素原子との結合に由来するピークが950〜1000cm−1の範囲に観察されることとなる。
そこで、950〜1000cm−1の範囲にピークが観察できれば、十分な量のフッ素原子が撥液性粒子の表面に存在していることとなる。そのため、このような撥液性粒子は、高い強度および優れた耐薬品性を維持しつつ、より優れた撥液性を発揮するものとなる。
このような撥液性粒子を用いて撥液膜を形成することにより、得られた撥液膜は、優れた撥液性、耐薬品性および耐久性を確実に発揮するものとなる。
また、このような撥液性粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.1〜1000μmであるのが好ましく、0.1〜100μmであるのがより好ましい。これにより、得られる撥液膜中に、緻密かつ均一に撥液性粒子を分散させることができる。
また、かかる範囲内の平均粒径の撥液性粒子を用いることにより得られる撥液膜には、その表面に、撥液性粒子の形状に起因する凹凸が形成されることとなる。すなわち、撥液膜の表面に粗さが付与されることとなる。
ここで、適度な粗さが付与された表面を有する撥液膜は、表面が平坦な撥液膜と比較して、より高い撥液性を発揮することから、前述したような平均粒径の撥液性粒子を用いて撥液膜を形成することにより、得られる撥液膜は、特に高い撥液性を発揮することとなる。
なお、撥液性粒子は、中心部を除く表面付近がフッ素原子とシリコン原子とを含む物質を主材料として構成されるものであってもよく、その全体が前記物質を主材料として構成されるものであってもよい。
このような撥液性粒子は、例えば、少なくとも表面付近がシリコン原子を主材料として構成された粒子(原料粒子)の表面に、フッ化水素を含有する処理液を接触させる方法等により、製造することができる。
フッ化水素を含有する処理液としては、フッ化水素の水溶液(フッ化水素酸)の他、例えば、塩酸、硫酸、蟻酸および酢酸等のうちの少なくとも1種とフッ化水素酸との混合液を用いることができる。このような処理液を用いることにより、粒子の表面に存在するシリコン原子とフッ化水素とが反応して、確実にシリコン原子とフッ素原子との結合を形成することができる。
また、前記処理液の調製に用いる溶媒としては、粒子が実質的に変質・劣化しないものであればよく、特に限定されないが、水の他、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールのような単価アルコール類、エチレングリコール、グリセリンのような多価アルコール類、アセトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類等の水系溶媒が挙げられ、これらを単独または混合液として用いることができる。
処理液を粒子の表面に接触させる方法としては、各種の方法を用いることができるが、例えば、処理液に粒子を浸漬する方法(浸漬法)、粒子に処理液を噴霧(シャワー)する方法(噴霧法)によって行なうことができるが、これらの中でも、浸漬法を用いるのが好ましい。
浸漬法によれば、一度に大量の粒子を処理することができ、粒子の表面(シリコン原子)に均一にフッ素原子を結合させることができる。
以下では、浸漬法によって粒子の表面に存在するシリコン原子とフッ素原子とを結合(反応)させる場合について説明する。
処理液中におけるフッ化水素の含有量は、特に限定されないが、1〜50wt%程度であるのが好ましく、5〜30wt%程度であるのがより好ましい。
また、処理液に粒子を浸漬する際の処理液の温度は、5〜100℃程度であるのが好ましく、15〜35℃程度であるのがより好ましい。
処理液に粒子を浸漬する浸漬時間は、0.5〜90分程度であるのが好ましく、5〜30分程度であるのがより好ましい。
処理液中におけるフッ化水素の含有量、処理液の温度および浸漬時間をかかる範囲内とすることにより、粒子の表面に存在するシリコン原子とフッ素原子とをより確実に結合させることができる。
また、粒子の処理液への浸漬は、この処理液に超音波を付与しつつ行うのが好ましい。これにより、シリコン原子とフッ化水素との反応をより迅速かつ確実に進行させることができる。
付与する超音波の周波数は、粒子の粒径、フッ化水素の含有量等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、1〜1×10kHz程度であるのが好ましく、10〜1×10kHz程度であるのがより好ましい。これにより、シリコン原子とフッ化水素との反応を、より迅速かつ確実に進行させることができる。
なお、処理液中におけるフッ化水素の含有量、処理液の温度、浸漬時間および超音波の周波数等を適宜設定することにより、粒子の表面に存在するシリコン原子と結合するフッ素原子の量を調節することができる。
以上説明した撥液性粒子を用いて撥液膜を形成する方法としては、各種の方法を用いることができるが、例えば、溶射法、共析メッキ法スパッタリング法、撥液性粒子を樹脂バインダにより担持させる方法等を用いることができる。
さらに、これらの方法は、撥液膜を形成する基材の種類等に応じて適宜選択するようにすればよい。
以上、本発明の撥液性粒子および撥液性粒子の製造方法について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
まず、本発明の撥液性粒子を製造し、得られた撥液性粒子をXPS法とFT−IR法とで測定を行った。
1.撥液性粒子の製造および評価
1−1.撥液性粒子の製造
<1> まず、テフロン(「テフロン」は登録商標)製容器中の50wt%フッ化水素酸(ステラケミファ社製)を純水で希釈して、10wt%フッ化水素酸を調製した。
<2> 次に、この10wt%フッ化水素酸に、超音波を付与した状態で、平均粒径10μmのシリコン粒子(高純度化学研究所製、「SIE17PB」)を浸漬させた。
なお、フッ化水素酸中にシリコン粒子を浸漬した際の処理条件は、以下に示す通りである。
・シリコン粒子の浸漬時間:10分間
・フッ化水素酸の温度 :25℃
・超音波の周波数 :40kHz
<3> 次に、フッ化水素酸による処理が施されたシリコン粒子を、純水で洗浄した後、高純度窒素ガス置換グローブボックスを用いて窒素ガス存在下で乾燥させることにより撥液性粒子を得た。
2−1.撥液性粒子の評価
2−1−1.X線光電子分光分析法による測定
得られた撥液性粒子について、X線光電子分光分析法により、92〜110eV(Si2p)および680〜695eV(F1s)におけるスペクトルを測定した。
なお、X線光電子分光分析法による測定条件は、以下の通りである。
・XPS装置 :PHI社製、「Quantera SXM」
・励起X線 :monochromatic AlKα1,2線(1486.6eV)
・X線径 :200μm
・光電子脱出角度:45°
・検出深さ :数nm
その結果、撥液性粒子の異なる5つのサンプルにおけるスペクトルのY/Xの平均値は、0.21であった。
また、92〜110eV(Si2p)および680〜695eV(F1s)において得られたスペクトルの一例を、図3に示す。
2−1−2.フーリエ変換赤外吸収スペクトル法による測定
得られた撥液性粒子について、多重反射ATR法(フーリエ変換赤外吸収スペクトル法)により、500〜3500cm−1におけるスペクトルを測定した。
なお、多重反射ATR法による測定条件は、以下の通りである。
・FT−IR装置:Bio−Rad Diglab社製、「FTS−60A/896」
・光源 :特殊セラミックス
・X線径 :200μm
・検出器 :DTGS(重水素化三硫酸グリシン)
・分解能 :4cm−1
・積算回数 :512回
・付属装置 :拡散反射測定付属装置
・参照資料 :金蒸着膜、KBr粉末
・入射角 :45°
図4に示すように、得られたスペクトルにおいて、シリコン原子とフッ素原子との結合に由来するピークが、950〜1000cm−1において認められた。
2.撥液膜の形成および評価
2−1.撥液膜の形成
次に、以下に示す通りにして、各実施例および各比較例の撥液膜を基板上に形成した。
(実施例1)
Ni製の基板(基材)をメッキ液中に浸漬して、共析メッキ法により撥液膜をNi基板の表面上に形成した。
なお、メッキ液の組成および撥液膜形成時の処理条件は、以下に示す通りである。
<メッキ液組成>
・硫酸ニッケル(NiSO・6HO):240g/L
・塩化ニッケル(NiCl・6HO):45g/L
・ほう酸(HBO) :35g/L
・撥液性粒子 :50g/L
<処理条件>
・pH :4.0〜4.5
・メッキ液温度:60℃
・陰極電流密度:3A/dm
・攪拌方法 :ゆるやかな機械攪拌
これにより、Ni基板上に、膜厚100μmの撥液膜を形成した。
なお、得られた撥液膜を、XPS法により測定したところ、92〜110eVの範囲には、シリコン原子に由来するピークが、また680〜695eVの範囲には、フッ素原子に由来するピークが認められ、撥液膜中に撥液性粒子が含まれていることを確認した。
(実施例2)
まず、ステンレス鋼(SUS403)製の基板の撥液膜を形成する側の面に対して、ブラスト処理(研磨処理)を施して、その表面粗さRaを7μmとした。
次に、ブラスト処理が施されたステンレス鋼製の基板に対して、フレーム溶射法により撥液性粒子を供給することにより、撥液膜をステンレス鋼基板の表面上に形成した。
なお、フレーム溶射法による成膜条件は、以下の通りである。
・フレーム溶射装置:日本ユテク社製、「HVOF TJ−4000」
・溶射速度 :1000m/秒
・基板温度 :180℃
これにより、ステンレス鋼基板上に、膜厚40μmの撥液膜を形成した。
なお、得られた撥液膜を、XPS法により測定したところ、92〜110eVの範囲には、シリコン原子に由来するピークが、また680〜695eVの範囲には、フッ素原子に由来するピークが認められ、撥液膜中に撥液性粒子が含まれていることを確認した。
(比較例1)
撥液性粒子に代えてポリテトラフルオロエチレンからなる粒子(平均粒径10μm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にした。
これにより、ステンレス鋼基板上に、膜厚110μmの撥液膜を形成した。
(比較例2)
ポリテトラフルオロエチレンからなる粒子(平均粒径0.17μm)を含む水性分散液を、ステンレス鋼(SUS403)製の基板上に噴霧法により供給した。
次に、120℃で20分間乾燥した後、350で20分間熱処理を施すことにより、膜厚60μmの撥液膜をNi基板の表面上に形成した。
2−2.評価
各実施例および各比較例で形成した撥液膜を有する基板に対して、それぞれ、以下に示す初期試験、ワイピング試験および浸漬試験を実施した。
2−2−1.初期試験
初期試験では、基板上の撥液膜に、10mmの間隔を設けた状態で、φ2mmの水滴(液滴)を滴下し、接触角測定装置(協和界面科学社製、「CA−D」)を用いて、基板上に形成された液滴の接触角を測定した。
また、各実施例および各比較例の接触角の値は、いずれの、5つの撥液膜の平均値を求めた。
そして、得られた接触角の平均値を、それぞれ、以下の4段階の基準に従って評価した。
◎:接触角110°以上の液滴が形成された。
○:接触角100°以上、110°未満の液滴が形成された。
△:接触角90°以上、100°未満の液滴が形成された。
×:接触角90°以上の液滴が形成されない。
2−2−2.ワイピング試験
ワイピング試験では、布性ワイパーにより基板上を摩擦するワイピング操作を、10000回または30000回繰り返して行った後に、前記初期試験と同様にして、基板上に形成された液滴の接触角を測定した。
2−2−3.浸漬試験
浸漬試験では、撥液膜を有する基板をアルカリ溶液中に浸漬した後に、前記初期試験と同様にして、基板上に形成された液滴の接触角を測定した。
なお、浸漬試験における各条件は、以下に示す通りである。
・アルカリ溶液 :1NのNaOH水溶液(pH:10)
・アルカリ溶液の温度:70℃
・浸漬時間 :20日間
これらの初期試験、ワイピング試験および浸漬試験の結果を、以下の表1に示す。
Figure 2006083279
表1に示すように、各実施例で形成された撥液膜は、いずれも、初期試験、ワイピング試験および浸漬試験ともに、高い撥液性を発揮した。
これにより、本発明の撥液性粒子を用いて形成した撥液膜は、優れた撥液性、耐薬品性および耐久性を発揮することが明らかとなった。
これに対し、各比較例で形成された撥液膜は、いずれも、初期試験では、優れた撥液性を有するものの、ワイピング試験では、明らかな撥液性の低下を認め、浸漬試験でも同様の傾向を示した。
また、比較例2で形成された撥液膜は、比較例1で形成された撥液膜と比較して、ワイピング試験において撥液性の低下の程度がより顕著に認められた。これは、比較例1で形成された撥液膜は、ポリテトラフルオロエチレンからなる粒子を、ニッケル(金属)により担持することにより形成しているのに対し、比較例2で形成された撥液膜は、ポリテトラフルオロエチレン単独で形成している点に原因があると推察される。すなわち、比較例1で形成された撥液膜は、ポリテトラフルオロエチレンからなる粒子を、ニッケル(金属)により担持することにより機械的強度が増大したものと推察される。
シリコン原子とフッ素原子とを含む物質を主材料として構成される撥液性粒子の表面を、XPS法で測定した場合に得られるスペクトルの一例を示す図である。 シリコン原子とフッ素原子とを含む物質を主材料として構成される撥液性粒子の表面を、XPS法で測定した場合に得られるスペクトルの一例を示す図である。 実施例1の撥液性粒子においてXPS法を用いて測定されたスペクトルを示す図である。 実施例1の撥液性粒子において測定された赤外吸収スペクトルを示す図である。

Claims (7)

  1. 撥液膜を形成するために用いられ、少なくとも表面付近がフッ素原子とシリコン原子とを含む物質を主材料として構成される撥液性粒子であって、
    該撥液性粒子の表面を、X線光電子分光分析法で測定したとき、得られたスペクトルにおいて、92〜110eVの範囲で、かつ、87eVでの値と115eVでの値とを結ぶ第1のベースラインより上の範囲の面積をXとし、680〜695eVの範囲で、かつ、675eVでの値と700eVでの値とを結ぶ第2のベースラインより上の範囲の面積をYとしたとき、Y/Xが1/50〜1なる関係を満足することを特徴とする撥液性粒子。
  2. その表面を、フーリエ変換赤外吸収スペクトル法で測定したとき、得られたスペクトルにおいて、950〜1000cm−1の範囲に、シリコン原子とフッ素原子との結合に由来するピークが観察される請求項1に記載の撥液性粒子。
  3. 平均粒径が、0.1〜1000μmである請求項1または2に記載の撥液性粒子。
  4. 水を主成分とする液体に対する濡れ性が低いものである請求項1または3に記載の撥液性粒子。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の撥液性粒子の製造方法であって、
    少なくとも表面付近がシリコン原子を主材料として構成された粒子の表面に、フッ化水素を含有する処理液を接触させることにより、前記粒子の表面に存在するシリコン原子にフッ素原子を結合させることを特徴とする撥液性粒子の製造方法。
  6. 前記粒子を前記処理液に浸漬させることにより、前記粒子の表面に前記処理液を接触させる請求項5に記載の撥液性粒子の製造方法。
  7. 前記処理液に超音波を付与した状態で、前記粒子を浸漬する請求項6に記載の撥液性粒子の製造方法。

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