JP2006083025A - ナノスケール物質およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一方向に延びた1次元構造を有するナノスケール物質10であって、ナノスケール物質10が、金属化合物を素材とするナノシート5を、その表面と平行な軸周りに丸めて形成されたものである。ナノシート5を丸めて形成しているだけから、ナノシート5の結晶構造や化学組成をそのまま維持した状態の1次元ナノスケール物質10とすることができる。しかも、ナノシート5を形成することができれば、1次元ナノスケール物質10の結晶構造等やナノシート5の素材にかかわらず同じ方法で形成することができるから、1次元ナノスケール物質10の製造が容易になる。
【選択図】図1
Description
本発明は、かかるナノメータスケールの物質のうち、1次元構造を有するナノスケール物質およびその製造方法に関する。
また、従来例2の酸化バナジウムナノチューブはゾル−ゲル法を利用して合成されているが、従来例1の場合と同様に酸化バナジウムナノチューブの合成にしか利用できないという問題が生じる。
第2発明のナノスケール物質は、第1発明において、前記金属化合物が、金属酸化物または金属水酸化物であることを特徴とする。
第3発明のナノスケール物質は、第1発明において、前記ナノシートが、その表面に該ナノシートを丸めた状態で保持する変形保持剤を備えていることを特徴とする。
第4発明のナノスケール物質は、第3発明において、前記変形保持剤が、界面活性剤であることを特徴とする。
第5発明のナノスケール物質の製造方法は、一方向に延びた1次元構造を有するナノスケール物質の製造方法であって、金属化合物を素材とするナノシートの表面に、該ナノシートがその表面と平行な軸周りに丸くなるように変形させる変形剤を付着させることを特徴とする。
第6発明のナノスケール物質の製造方法は、第5発明において、前記金属化合物が、金属酸化物または金属水酸化物であり、前記変形剤が界面活性剤であり、前記ナノシートが液体中に浸漬された状態において、該液体に、前記界面活性剤を混合することを特徴とする。
第7発明のナノスケール物質の製造方法は、第6発明において、前記液体に、前記界面活性剤を混合したのち、該液体を加熱することを特徴とする。
第8発明のナノスケール物質の製造方法は、第7発明において、前記液体材料の加熱温度が、20〜300℃であることを特徴とする。
第2発明によれば、金属化合物が、金属酸化物または金属水酸化物であるから、化学的に安定であり、ナノシートや1次元ナノスケール物質の取り扱いや製造が容易になる。
第3発明によれば、変形保持剤によりナノシートが平面状に戻ること防ぐことができ、1次元構造を保持させておくことができる。
第4発明によれば、変形保持剤が界面活性剤であるから、ナノシートが平面状に戻ろうとする力よりも界面活性剤がミセルを形成する力が大きい界面活性剤を使用すれば、ナノシートが平面状に戻ること防ぐことができ、1次元構造を保持させておくことができる。
第5発明によれば、変形剤を付着させれば、ナノシートを1次元構造に変形させることができる。また、ナノシートを丸めて形成しているだけから、ナノシートの結晶構造や化学組成をそのまま維持した状態の1次元ナノスケール物質とすることができる。しかも、ナノシートを形成することができれば、1次元ナノスケール物質の結晶構造等やナノシートの素材にかかわらず同じ方法で形成することができるから、1次元ナノスケール物質の製造が容易になる。そして、1次元ナノスケール物質の出発原料に高価な金属化合物を使用しなくても良いので、製造コストを抑えることができる。
第6発明によれば、金属酸化物の場合、陽イオン系界面活性剤を混合すれば、界面活性剤と金属酸化物とがイオン結合するので、ナノシートの表面に界面活性剤を結合させることができる。すると、界面活性剤がミセルを形成するときに、ナノシートが丸められるので、1次元ナノスケール物質を形成することができる。また、金属水酸化物の場合、陰イオン系界面活性剤を混合すれば、界面活性剤と金属水酸化物とをイオン結合させることができるので、1次元ナノスケール物質を形成することができる。
第7発明によれば、加熱によりナノシートの強度を低下させることができるから、界面活性剤がミセルを形成する力によりナノシートを容易に丸めることができる。また、界面活性剤の形成するミセルの外周に比べてナノシートの幅が広い場合には、界面活性剤が複数のミセルを形成しようとするため、界面活性剤がミセルを形成する力によりナノシートが分離し、界面活性剤がミセルを形成する力とナノシートが平面状に戻ろうとする力が釣り合う程度の直径を有する1次元ナノスケール物質を形成することができる。したがって、ナノシートの大きさにかかわらず、所定の直径を有する1次元ナノスケール物質を形成することができる。しかも、使用する界面活性剤を変えてミセルを形成する力を調整すれば、所望の直径を有する1次元ナノスケール物質を形成することができる。
第8発明によれば、ナノシートの強度を界面活性剤が変えてミセルを形成する力よりも弱くすることができ、また、ナノシートが損傷することも防ぐことができる。また、加熱条件を調整すれば、ナノシートの強度を調整できるから、所定の直径を有する1次元ナノスケール物質を形成することができる。
本発明のナノスケール物質は、一方向に延びた1次元構造を有するもの、例えば棒状のナノワイヤーや円筒状のナノチューブ等である。
本発明のナノスケール物質は、ナノチューブであれば、その外径が約20〜50nm、その内径が約4〜30nm、その軸方向の長さが約1〜10μmのものである。
また、ナノワイヤーであれば、その外形が約5〜100nm、その軸方向の長さが約1〜50μmのものである。
なお、本発明のナノスケール物質の寸法については、上記の範囲に限られないが、上記範囲のものとすれば、電気的特性や機械的性質等にとくに優れた性質を発揮するので好適である。
ナノシートの材料となる金属化合物は、層状構造を有する金属酸化物や、層状構造を有する金属水酸化物等であるが、とくに限定はない。
また、ナノスケール物質の構造を中実なナノワイヤーの形状とした場合には、カーボンや非酸化物を素材とするナノワイヤー等に比べて多様な電気特性や光学特性等を有し、化学的安定性等の点に優れたナノワイヤーとすることができる。
しかも、ナノシートの結晶構造等を調整し、そのナノシートを丸めるだけで所望の結晶構造等を有する1次元ナノスケール物質を製造することができる。言い換えれば、結晶構造等が異なる1次元ナノスケール物質であっても同じ方法で形成することができるから、1次元ナノスケール物質の製造が容易になる。
そして、ナノシートを形成することができ、かつ、変形保持剤と結合することができるという性質さえ有していれば、どんな金属化合物であっても1次元ナノスケール物質とすることができる。このため、従来の1次元ナノスケール物質の製造方法のように、出発原料に高価な金属化合物を使用する必要がないので、製造コストを抑えることができる。そして、出発原料自体の素材として、例えば、金属酸化物や金属水酸化物等の化学的に安定した素材を使用すれば、ナノシートや1次元ナノスケール物質の取り扱いや製造が容易になる。
なお、変形保持剤は界面活性剤に限られず、イオン性有機ポリマーや親水基を有する有機ポリマー等でもよく、ナノシートを丸めた状態に保つ力を生じさせる力を有しており、かつ、ナノシートが平面になろうとする力よりも大きな力を発揮できるものであれば、とくに限定はない。
図1は本実施形態のナノスケール物質10の製造工程を示した図であり、(A)はナノシート5の幅が狭い場合の説明図であり、(B)はナノシート5の幅が広い場合の説明図である。図2は層状物質から本実施形態のナノスケール物質10を製造する工程を示した図であり、(A)は各工程における物質の状態を示した図であり、(B)は製造工程のフローチャートである。
なお、図1および図2は、いずれもナノシート5および層状物質が水やアルコール、アミノ酸等の液体に浸漬された状態でナノスケール物質10が製造されるが、水等については図には記載していない。また、理解を容易にするために、ナノシート5は断面図のみを示している。
なお、ナノシート5は、金属水酸化物でもよく、この場合には、例えば、金属水酸化物原料をハイドロタルサイト類化合物(M1-xNx(OH)2Ay、x<0.5,y≦x、M:2価金属、N:3価金属、A:陰イオン)、層状金属塩基性塩(M(OH)2-xAy、x<1、y≦xM:2価金属、A:陰イオン)など2価あるいは3価金属成分からなる金属水酸化物とすればよく、とくに、層間にイオン交換できる陰イオン、または、有機イオンを有するものが好適である。また、層間膨潤作用のある有機物は、層間にイオン交換できる陰イオンが存在する場合は、カルボキシル基を持つ有機物、スルホン酸基を持つ有機物等が使用でき、層間の陰イオンが有機イオンである場合は、アルコール類、フェノール類、ハロゲン誘導体、アルデヒド類、アミノ酸類などの極性溶媒が使用できる。そして、これらの有機物や極性溶媒は1種類または数種類を混合して用いてもよい。
そして、ナノシート5の端部同士が接触または重なり合うと、接触した部分の原子同士が結合して、継ぎ目のないナノチューブが形成されるのである。
さらになお、ナノシート5が金属水酸化物によって形成されたものであれば、ナノシート5が浸漬されている液体に、カルボキシル基を持つ有機物やスルホン酸基を持つ有機物等の陰イオン性界面活性剤を混合すればよい。そして、液体に混合する物質は界面活性剤に限られず、上記のごとくナノシートと結合して、ナノシートを丸めることができる変形剤であれば、特に限定はない。
さらになお、ナノシート5が他の金属化合物によって形成されたものであれば、ナノシート5の表面に付着し、かつ、ナノシート5に対して、その表面と平行な軸まわりに丸めるように力を加えることができる界面活性剤等の変形剤をナノシート5が浸漬されている液体に混合すればよい。
なお、界面活性剤が脱離し、ナノチューブの壁が潰れる場合、例えば、150度以上で加熱した場合などには、ナノスケール物質10を中実な棒状、つまり、ナノワイヤーとすることができる。
さらになお、液体を沸点以上に加熱する場合には、高圧容器オートクレーブ内で上記工程を行えばよい。
さらになお、ナノシートの強度が弱く、水熱反応等によって強度を低下させなくても界面活性剤等の変形剤によってナノシートを丸めることができるのであれば、液体を加熱しなくてもよい。
図1(B)に示すように、陽イオン性界面活性剤6が付着したナノシート5が浸漬された液体を加熱すると、ナノシート5は、その強度低下に伴って陽イオン性界面活性剤6により丸められる。ここで、ナノシート5の幅が長いので、陽イオン性界面活性剤6はナノシート5の複数箇所で、具体的には、陽イオン性界面活性剤6がミセルを形成する力とナノシート5が平面状に戻ろうとする力が釣り合う程度の直径を有するナノスケール物質10を形成することができる距離だけ離れた位置に、異なる軸を有する棒状のミセルを形成しようとする(図1(B))。
ナノシート5と陽イオン性界面活性剤6はイオン結合によって強固に結合されており、ナノシート5はミセルを形成しようとする陽イオン性界面活性剤6とともに移動して変形するから、ナノシート5における隣接する棒状のミセルの間には大きな曲げ応力が発生する。このため、ナノシート5は隣接する棒状のミセルの間で分断され、それぞれが複数のナノスケール物質10を形成するのである。
また、使用する陽イオン性界面活性剤6を変えれば、ミセルを形成する力を変えることができ、形成される棒状のミセルの外周の長さ、つまり、棒状のミセルの直径を変えることができるから、ナノスケール物質10の直径も変化させることができる。
なおバーネサイトではNa等の原子の数や酸素原子の数に多少の変動があり、厳密な組成ではない。
図3のAに示すこの化合物のX線回折パターンおよび図4(A)の走査型電子顕微鏡写真から、バーネサイトの層間の距離は0.72nmであり、板状結晶であることが確認できる。
このバーネサイト(10g)を酸、ここでは濃度1mol/dm3の硝酸(1000ml)で処理し、Na+イオンを水素イオンでイオン交換する。酸の種類は任意で、濃度は0.01〜1mol/dm3が好ましい。図3のBに示す水素化バーネサイトのX線回折パターンから、水素化バーネサイトの層間距離は0.74nmであることが確認できる。
水素化バーネサイトを有機アミンの陽イオンと接触させ、水素イオンを有機アミンの陽イオンでイオン交換する。するとバーネサイトの層間距離が増し、層間の結合が弱まって、マンガン酸化物ナノシートへと剥離する。ここでは安価な強アルカリである水酸化テトラメチルアンモニウムのイオンを用い、前記のようにして調製した水素化バーネサイト(0.1g)を0.1mol/dm3水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液15mlを加えて、1日撹拌した後、遠心分離して、沈殿物と液相とを分離する。沈殿物を100mlの蒸留水に分散させ、マンガン酸化物ナノシートのコロイド状の懸濁液を得た。なおアルキルの炭素数はメチルに限らず、例えば1〜3が好ましい。強アルカリの有機陽イオンには、グアニジンイオン(NH2−C=N+−NH2)等も用いることができる。またテトラアルキルに限らず、ジアルキルあるいはトリアルキルのアンモニウムイオンなどでも良い。図3のCに示す水素化バーネサイトマンガン酸化物ナノシートの懸濁液を乾燥させた際のX線回折パターンから、水素化バーネサイトマンガン酸化物ナノシートの層間距離は0.96nmへと増していることが確認できる。なお乾燥させた懸濁物は、水に分散させると容易にマンガン酸化物ナノシートへ分解した。
マンガン酸化物ナノシートの懸濁液(100ml)を撹拌しながら、ゆっくり陽イオン性界面活性剤溶液(n−デシルトリメチルアンモニウムクロリド0.3 mol/dm3、10ml)を添加する。添加するn−デシルトリメチルアンモニウムクロリドの量はマンガンとのモル比が3:1となるように調整した。マンガン酸化物ナノシート表面にn−デシルトリメチルアンモニウムイオンを吸着し、マンガン酸化物ナノシートとn−デシルトリメチルアンモニウムとのナノ複合体となり、沈殿する。図5のAに示すマンガン酸化物ナノシートとn−デシルトリメチルアンモニウムとのナノ複合体のX線回折パターンおよび図4(B)のナノ複合体の走査型電子顕微鏡写真から、このナノ複合体は、マンガン酸化物ナノシートの間にn−デシルトリメチルアンモニウムイオンが入った層状構造を有し、層間距離は2.5nmである薄いシート状の粒子であることが確認できる。
ナノ複合体と溶液との混合物をオートクレーブに入れ、水熱処理する。図5のB〜Jに示す90℃〜200℃の間で水熱処理して得た生成物のX線回折パターンから、水熱処理温度の増加に伴い、層間距離2.5nmの結晶相に対応する回折ピーク強度が減少することが分かる。140℃以上では、γ―MnOOHに変化する。水熱処理温度の増加に伴い、粒子形状は、薄いシート状から徐々に繊維状に変化する(図4(B)と(C))。また、透過型電子顕微鏡で観察した結果により、90℃では、シート状粒子が割れて繊維状粒子に変化することがわかる(図6(A))。110〜140℃の温度範囲では、中空の繊維状粒子、即ち、酸化マンガンナノチューブが得られる(図5(B))。ナノチューブの平均長さは数ミクロメータで、平均太さは約30nmである。
以上の結果を説明すると、ナノ複合体の層間に存在する界面活性剤イオンは、ミセルを形成する傾向があり、ミセルを形成する力でマンガン酸化物層が曲げる応力を受ける。水熱条件では、マンガン酸化物層の強度が弱くなり、それに界面活性剤の曲げる応力を加えると、シート状粒子が割れることになる。それと同時に界面活性剤が棒状ミセルを形成し、それはナノチューブの鋳型となり、ナノチューブが形成される。すなわち、ナノチューブの形成は界面活性剤とマンガン酸化物層の自己組織化によるものと考えられる。
150℃以上の反応温度で、ナノチューブの中に界面活性剤がなくなり、マンガン酸化物の組成はγ−MnOOHに変化し、ナノチューブはナノファイバーに変わる。
図7に示すように、金属酸化物ナノチューブは、大きい比表面積(215m2/g)を有し、2.1nm、2.5nm、4.2nmの3つのピーク細孔径(図7の曲線のピーク)が認められる。これらの細孔は個々のナノチューブの中心部に存在する中空シリンダーおよびナノチューブとナノチューブとの間に形成されたナノスペース空隙に対応すると考えられる。これらの細孔は、水素ガスやメタンガスの吸着に適する。
6 界面活性剤
10 ナノスケール物質
Claims (8)
- 一方向に延びた1次元構造を有するナノスケール物質であって、
該ナノスケール物質が、
金属化合物を素材とするナノシートを、その表面と平行な軸周りに丸めて形成されたものである
ことを特徴とするナノスケール物質。 - 前記金属化合物が、金属酸化物または金属水酸化物である
ことを特徴とする請求項1記載のナノスケール物質。 - 前記ナノシートが、その表面に該ナノシートを丸めた状態で保持する変形保持剤を備えている
ことを特徴とする請求項1記載のナノスケール物質。 - 前記変形保持剤が、界面活性剤である
ことを特徴とする請求項1記載のナノスケール物質。 - 一方向に延びた1次元構造を有するナノスケール物質の製造方法であって、
金属化合物を素材とするナノシートの表面に、該ナノシートがその表面と平行な軸周りに丸くなるように変形させる変形剤を付着させる
ことを特徴とするナノスケール物質の製造方法。 - 前記金属化合物が、金属酸化物または金属水酸化物であり、
前記変形剤が界面活性剤であり、
前記ナノシートが液体中に浸漬された状態において、該液体に、前記界面活性剤を混合する
ことを特徴とする請求項5記載のナノスケール物質の製造方法。 - 前記液体に、前記界面活性剤を混合したのち、該液体を加熱する
ことを特徴とする請求項6記載のナノスケール物質の製造方法。 - 前記液体材料の加熱温度が、20〜300℃である
ことを特徴とする請求項7記載のナノスケール物質の製造方法。
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