JP2006075836A - 土壌や地下水における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法 - Google Patents

土壌や地下水における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、原位置処理が可能で、高い生物学的脱窒能力や揮発性有機化合物低減能力を有し、有機物や窒素を環境中へ放出することによる2次汚染が極めて少ない土壌や地下水の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、炭素数が10以上の脂肪酸(炭素数が10以上のパルミチン酸を除く)や、炭素数が12以上の脂肪アミンを土壌中または地下水中に混入して土壌や地下水の硝酸態窒素および揮発性有機化合物を低減させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、土壌中や地下水中に存在する硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法に関する。
近年、主に農業の高密度化や茶栽培業に代表される高い窒素肥料を要求する作物栽培のための過剰施肥化により、土壌や地下水の硝酸態窒素による汚染が顕在化している。
このような地下水の汚染の対策としては、地下水を地上に汲み上げ、イオン交換樹脂を用いて硝酸態窒素を濃縮して除去する技術がすでに知られている。このような技術の例としては、例えば、産業用水調査会発行の「用水と廃水」、Vol.34 、No.7(1992)、三宅酉作著「イオン交換樹脂による地下水中の硝酸性窒素除去」に記載されたものがある。
また、土壌中の硝酸態窒素を除去する方法としては生物学的脱窒法がある。この生物学的脱窒法を用いた例としては、大豆油を脱窒菌の炭素源とした例(産業用水調査会発行の「用水と廃水」、Vol.41 、No.10(1999)、圓岡大治他著「硝酸性・亜硝酸性窒素汚染地下水のバイオレメディエーション」)、土壌にハイテスト糖蜜及び/又は異性化糖を添加する例(特開平6−169641号公報)、土壌に脱窒菌の担体を添加する例(特開平11−128902号公報)、土壌に海草と珪藻土を用いた発酵材を添加する例(特開2001−8550号公報)などが知られている。
さらに、土壌中や地下水中のジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2ジクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ベンゼン、および1,3−ジクロロプロペンなどの揮発性有機化合物に関しては、これらの揮発性有機化合物が環境中に放出されることによる2次汚染が問題となっている。このような2次汚染を防止するための揮発性有機化合物の低減方法としては、土壌中に存在する微生物を用いる方法がある。このような微生物は水素供与体とリン、窒素などの栄養塩の存在下で効果的に分解することが知られている。このような揮発性有機化合物の低減方法としては、例えば、ディー.イー.エリス他(D.E.Ellis, et al.), Environmental Science and Technology, 34(11), P2254(2000))に記載されている。また、特開平9−276894号公報や特開平11−90484号公報には、水素供与体としてクエン酸やエタノールなどの常温で液体である有機物を用いた揮発性有機化合物の低減方法が開示されている。
特開平6−169641号公報 特開平11−128902号公報 特開2001−8550号公報 特開平9−276894号公報 特開平11−90484号公報 三宅酉作著,「イオン交換樹脂による地下水中の硝酸性窒素除去」,産業用水調査会発行,「用水と廃水」,Vol.34,No.7(1992) 圓岡大治他著,「硝酸性・亜硝酸性窒素汚染地下水のバイオレメディエーション」,産業用水調査会発行,「用水と廃水」,Vol.41,No.10(1999) ディー.イー.エリス他(D.E.Ellis, et al.),「環境科学と技術(Environmental Science and Technology)」, 34(11), P2254(2000))
従来の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法においては、以下のような問題を有していた。
地下水中の硝酸態窒素を除去する従来技術においては、地下水を地上に一度汲み上げてイオン交換により硝酸態窒素を濃縮しており、濃縮された硝酸態窒素の再処理が必要であった。このように地下水を地上に一度汲み上げてイオン交換処理を行っているため、厳密な意味での原位置処理とは言い難い方法であり、構造が複雑で大型になるという問題があった。
従来の生物学的脱窒法においては、糖類などの水溶性有機物や水溶でなくとも常温で液体の有機物を土壌や地下水へ添加しているため、有機物が土壌中を容易に移動し、拡散して、有機物による2次汚染が生じる可能性が高いという問題があった。
また、従来の生物学的脱窒法において、土壌中に脱窒菌の担体を添加する特開平11−128902号公報に開示された方法では、脱窒菌が効率よく利用できる有機物が共存しないとき、効率高く生物学的脱窒を行うことができず、脱窒菌のセルロース等の物質が必ずしも有効な水素供与体には成り得ないという問題があった。
また、例えば特開2001−8550号公報に開示された、ある種の天然資源の廃棄物を炭素源とする方法は、廃棄物の有効活用という点では好ましいが、天然の廃棄物には本来窒素が必ず含まれるために、このような廃棄物を窒素の除去を目的として用いる場合でも、逆に窒素の供給源となるおそれがあった。
一方、揮発性有機化合物を除去する場合において、微生物を用いた場合には、水素供与体と窒素、リンなどの栄養塩が水溶性であるために、これらが土壌中や地下水中へ容易に拡散して2次汚染の可能性があった。
本発明は、これら従来技術における問題を解決するものであり、原位置処理が可能であり、高い生物学的脱窒能力や揮発性有機化合物の低減能力を有し、有機物や窒素を土壌等から環境中へ放出することが防止された、2次汚染の極めて少ない、土壌や地下水における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法を提供することを目的とする。
発明者らは、従来技術における問題を解決するために鋭意研究の結果、特定の炭素数と特定の化学構造を有する特定の化学物質群を用い、さらにそれら化学物質群を特定の形態で環境中に設置することにより、前記問題が解決されることを見いだし本発明を完結するに至った。
すなわち、本発明に係る土壌や地下水における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法は、以下の方法により実施される。
1. 炭素数が10以上の脂肪酸、例えばその構造が直鎖状飽和型である脂肪酸を土壌中または地下水中に混入する。
2. 炭素数が12以上の脂肪アミンを土壌中または地下水中に混入する。
本発明に係る土壌や地下水の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法は、地下水を汲み上げて他の位置へ移動させる必要の無い原位置処理が可能であり、高い生物学的脱窒能力や揮発性有機化合物の低減能力を有しており、有機物や窒素を環境中へ放出することによる2次汚染が極めて小さい優れた効果を奏する。
発明をある程度の詳細さをもって好適な形態について説明したが、この好適形態の現開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものであり、各要素の組合せや順序の変化は請求された発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
本発明に係る土壌や地下水における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪酸とは、アルキル基をRで表した時、下記一般式(1)で示される構造を有する化学物質である。この場合、炭素数が10以上であることが必須である。
Figure 2006075836
本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪酸として、より好ましくは、一般式(1)におけるアルキル基が直鎖状で一重結合のみから成る(以下飽和型と称する)脂肪酸である。
脂肪酸は本質的に水に不溶であるが、炭素数が10未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌中や地下水中へ容易に拡散して、有機物による2次汚染のおそれが高いため好ましくない。また、炭素数が10以上であっても、二重結合の存在は一般的に融点の低下を招くため好ましくない。さらに、側鎖やベンゼン環などの存在は生分解性そのものを低下させるため、微生物を使った処理方法においては好ましくない。
従って、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪酸としては、炭素数が10以上であり、直鎖状で飽和型である。以上の要件を満たす脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸、ベヘニン酸、およびこれら脂肪酸の混合物、塩、水素添加品などが例示される。
また、混合物としては、単体脂肪酸を人為的に混合してもよく、また牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸などの天然脂肪酸の混合物でもよい。
本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いるアルコールとは、アルキル基をRで表した時、下記一般式(2)で示される構造を有する化学物質である。この場合、炭素数が12以上であることが必須である。
Figure 2006075836
本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いるアルコールとして、より好ましくは、一般式(2)におけるアルキル基が直鎖状で飽和型のアルコールである。
アルコールは本質的に水に不溶であるが、炭素数が12未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌中や地下水中へ容易に拡散して、有機物による2次汚染のおそれが高いため好ましくない。また、炭素数が12以上であっても、二重結合の存在は一般的に融点の低下を招くため好ましくない。
従って、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いるアルコールとしては炭素数が12以上であり、直鎖状で飽和型である。以上の要件を満たすアルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、およびこれらアルコールの混合物、塩などが例示される。
また、混合物としては、単体アルコールを人為的に混合してもよく、また天然アルコールの混合物でもよい。
本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪酸と1価アルコールのエステルとは、アルキル基をR、Rで表した時、下記一般式(3)で示される構造を有する化学物質である。この場合、脂肪酸の炭素数が14以上かつ直鎖状で飽和型であることが必須である。
Figure 2006075836
脂肪酸の炭素数が14未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌中や地下水中へ容易に拡散して、有機物による2次汚染のおそれが高いため好ましくない。また、炭素数が14以上であっても、二重結合の存在は一般的に脂肪酸の融点の低下を招くため好ましくない。さらに、側鎖やベンゼン環などの存在は生分解性そのものを低下させるため、微生物を使った処理方法においては好ましくない。
従って、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪酸と1価アルコールのエステルとは、脂肪酸の炭素数が14以上かつ直鎖状で飽和型である。以上の要件を満たす脂肪酸としては、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸コレステリル、ステアリン酸バチル、ベヘニン酸オクチルドデシル、ベヘニン酸ベヘニル、およびこれらエステルの混合物や脂肪酸が2塩基酸であるフタル酸ジステアリルなどが例示される。
本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪酸と多価アルコールのエステルまたはその誘導体は、脂肪酸の炭素数が14以上かつ直鎖状で飽和型であることが必須である。
脂肪酸の炭素数が14未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌や地下水中へ容易に拡散し有機物の2次汚染のおそれが高いため好ましくない。また、脂肪酸の炭素数が14以上であっても、二重結合の存在は一般的に融点の低下を招くため通常は好ましくない。さらに、側鎖やベンゼン環などの存在は生分解性そのものを低下させるため、微生物を使った処理方法においては好ましくない。
従って、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪酸と多価アルコールのエステルまたはその誘導体は、脂肪酸の炭素数が14以上かつ直鎖状で飽和型である。以上の要件を満たす脂肪酸としては、ソルビタンモノミリスチレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソリビタンモノベヘネート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ヘキサステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、およびこれらエステルの混合物や、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、グリセリンセチルエーテル、グリセリンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのエーテル類が例示される。
本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪酸とグリセリンのエステルとは、アルキル基をR、R、Rで表した時、下記一般式(4)及び一般式(5)で示される構造を有する化学物質である。この場合、脂肪酸の炭素数が16以上であることが必須である。
Figure 2006075836
Figure 2006075836
脂肪酸の炭素数が16未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌中や地下水中へ容易に拡散して、有機物による2次汚染のおそれが高いため好ましくない。
従って、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪酸とグリセリンのエステルとは、脂肪酸の炭素数が16以上である。この要件を満たす脂肪酸としては、ステアリン酸モノグリセライド、パルミチン酸ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノジグリセライド、オレイン酸ステアリン酸モノジグリセライド、オレイン酸ステアリン酸モノグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライド、モノステアリン酸テトラグリセル、トリステアリン酸テトラグリセル、ペンタステアリン酸テトラグリセル、モノステアリン酸ヘキサグリセル、ペンタステアリン酸ヘキサグリセル、モノステアリン酸デカグリセル、ジステアリン酸デカグリセル、トリステアリン酸デカグリセル、ペンタステアリン酸デカグリセル、ヘプタステアリン酸デカグリセル、デカステアリン酸デカグリセル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノステアリン酸ポロピレングリコール、およびこれらエステルの混合物などが例示される。
本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪アミンとは、アルキル基をRで表した時、下記一般式(6)で表される1級アミン、下記一般式(7)で表される2級アミン、下記一般式(8)で表される3級アミン、下記一般式(9)で表されるジアミン、及び下記一般式(10)で表されるアルキルアミン酢酸塩であり、これらの脂肪アミンは炭素数が12以上であることが必須である。
Figure 2006075836
Figure 2006075836
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本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪アミンとして、より好ましくは上記一般式(6)から一般式(10)におけるアルキル基が直鎖状で飽和型である脂肪アミンである。
さらに、脂肪アミンとしてより好ましくは、2級アミンの場合は炭素数が16以上、3級アミンの場合は炭素数が22以上、ジアミンの場合は炭素数が16以上、アルキルアミン酢酸塩の場合は炭素数が14以上である脂肪アミンである。
前記の通り限定した炭素数未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌や地下水中へ容易に拡散して、有機物による2次汚染のおそれが高いため好ましくない。たとえ炭素数が前記限定数以上であっても二重結合の存在は、一般的に融点の低下を招くため通常は好ましくない。さらに、側鎖やベンゼン環などの存在は生分解そのものを低下させるため、微生物を使った処理方法においては好ましくない。
従って、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪アミンとして、2級アミンの場合は炭素数が16以上、3級アミンの場合は炭素数が22以上、ジアミンの場合は炭素数が16以上、アルキルアミン酢酸塩の場合は炭素数が14以上である。以上の要件を満たす脂肪アミンとしては、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、ジパルミチルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、パルミチルプロピレンジアミン、ステアリルプロピレンジアミン、ミリスチルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミドおよびこれら脂肪アミンの混合物、塩などが例示される。
本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる脂肪酸アマイドとは、炭素数が12以上であることが必須である。
炭素数が12未満では融点が低く、常温で液体状態となり、土壌や地下水中へ容易に拡散し有機物の2次汚染のおそれが高いため好ましくない。
以上の要件を満たす脂肪酸アマイドとしては、ラウリン酸アマイド、ミリスチン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ジパルミチルケトン、ジステアリルケトン、およびこれら脂肪酸アマイドの混合物などが例示される。
本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる鉄、アルミニウムは、いずれも金属単体が主成分であれば純度、大きさ、形状などは特に限定しないが、表面積を大きくするために直径1cm以下の粒状が好ましい。
本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる微生物は、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いる条件下であらかじめ培養されたものであればよく、細菌、真菌などの種類や自然界由来か否かの起源を問うものではない。
本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法の実施には、地下水の場合にはボーリングなどの工事により形成された穴や、対象となる場所の既設井戸を通じて地下水中へ、本発明に係る脂肪酸、アルコールなどを直接添加すればよい。また、本発明は、ポンプなどで地下水を汲み上げて、本発明に係る脂肪酸、アルコールなどに汲み上げた地下水を通過させるよう構成することも可能である。
このような処理方法により、土着の脱窒菌が本発明の脂肪酸、アルコールやそれらの生分解生成物などを水素供与体として利用し、効率的に脱窒反応が生じるため、地下水中の硝酸態窒素を除去することができる。
本発明の特徴は、本発明に係る脂肪酸やアルコールなどの水素供与体は、土壌中や地下水中で固体として存在するため、脂肪酸やアルコールの移動は極めて短く限定的であり、有機物による2次汚染は最小限に抑えられる。
事前の現場診断による水質測定結果により、地下水中のリンが不足すると判断される場合には、水溶性リン酸塩などを本発明に係る水素供与体と同時に土壌や地下水に添加することが好ましい。このように、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において、脱窒菌を同時に添加する場合には、本発明の効果をさらに促進させることが可能となる。
また、畑などの土の下部土壌に本発明に係る脂肪酸、アルコールなどを直接埋設することにより、窒素肥料の硝化が進み硝酸態窒素になった後、土着の脱窒素菌が本発明において用いた脂肪酸、アルコールなどを水素供与体として利用して、効率的に脱窒反応が生じる。これにより、本発明によれば、地下水への硝酸態窒素の流出を回避することができる。また、本発明において用いた脂肪酸、アルコールなどの低減剤は、土壌中で固体として存在するため、その移動は極めて短く限定的であり、有機物の環境への放出による2次汚染は最小限に抑えられる。
本発明で用いる脂肪酸、アルコールなどは、土壌中で固体であり、それ自身が担体となり得るために別途担体を設ける必要がなく、本発明で用いる脂肪酸、アルコールなどを水素供与体とする脱窒菌が近傍の土壌を担体として脱窒反応を行うことも可能である。
また、本発明に係る揮発性有機化合物を低減する方法としては、以下の3つの方法がある。
1 本発明で用いる脂肪酸、アルコール、硫黄、硫黄化合物、生分解性樹脂などの水素供与体を汚染土壌に直接埋設する方法
2 汚染土壌を掘り返し、その土壌で形成された小山(パイル)中に本発明で用いる脂肪酸、アルコール、硫黄、硫黄化合物、生分解性樹脂などの水素供与体を埋設する方法
3 本発明で用いる脂肪酸、アルコール、硫黄、硫黄化合物、生分解性樹脂などの水素供与体と必要な栄養塩類を地下水中へ直接添加する方法
本発明で用いる脂肪酸、アルコール、硫黄、硫黄化合物、生分解性樹脂などの水素供与体は、土着の揮発性有機化合物分解菌の水素供与体となり、効果的に揮発性有機化合物を分解することができる。
本発明においては、脂肪酸、アルコール、硫黄、硫黄化合物、生分解性樹脂などの水素供与体が、土壌中で固体として存在するため、その移動が極めて短く限定的であり、揮発性有機化合物の環境への放出による2次汚染は最小限に抑えられる。
窒素原子を含まない本発明で用いる脂肪酸、アルコールなどの水素供与体の場合で、栄養塩として窒素が必要な場合には、別途窒素成分を加えればよい。
また、本発明で用いる脂肪アミン、脂肪酸アマイドのような窒素原子を含む場合は、水素供与体のみならず窒素供給源としての機能も同時に有することとなり、別途窒素成分を供給する必要はない。すなわち、このような構成では窒素も固体として供給され、その移動が極めて制限されるので、余剰窒素が環境へ放出されることがなく2次汚染を低減でき、より好ましいものとなる。
本発明において用いる硫黄は、硫黄細菌と呼ばれる微生物に対して水素供与を行い、脱窒反応を起こさせる。好ましくは、硫黄とともにアルカリ供給剤を共存させる。硫黄の水素供与の際に生じる硫酸によるPH低下をアルカリ供給剤で中和することにより、土壌のPHを著しく変化させることなく脱窒反応を起こすことができる。
アルカリ供給剤としては、脱窒菌の菌体合成に必須な炭素源の供給も兼ねることができる炭酸カルシウムを主成分としたものが好ましい。炭酸カルシウムを主成分としたものの代表例としては、炭酸カルシウム原石、貝殻類、サンゴ類、石灰岩類などがある。
本発明に用いる生分解性樹脂とは、微生物により分解可能な樹脂の総称であり、より好ましくは生分解性の優れたエステル結合を有する生分解性樹脂である。具体的な例としては、乳酸重合体、ヒドロキシ酪酸とヒドロキシ吉草酸の共重合体、ポリオール類と脂肪族ジカルボン酸との縮合重合物、ポリ(ε−カプロラクトン)などがある。
揮発性有機化合物を分解する菌は、生分解性樹脂またはその分解生成物を基質として増殖し、揮発性有機化合物を効果的に分解するものである。
鉄やアルミニウムなどの金属を上記水素供与体と同時に添加することは、対象とする地下水や土壌中の還元雰囲気を高めるため好ましい。これは、それぞれ下記式(11)及び(12)に従って発生する水素の作用によるものである。従って、このように水素供与体と金属とを同時に添加することにより、脱窒速度、揮発性有機化合物の分解速度の向上を図ることが可能となる。
Figure 2006075836
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また、本発明で用いる脂肪酸やアルコールなどの水素供与体と、対象とする揮発性有機化合物を必須とする培地中においてあらかじめ培養された微生物とを同時に添加することは、揮発性有機化合物の分解速度をさらに向上させることが可能であり、より好ましいものとなる。
本発明で用いる脂肪酸、アルコールなどの水素供与体を土壌に埋設する、または井戸水などに添加するには、本発明に係る水素供与体を顆粒状に成形して流動性を向上させて添加するか、融点以上に過熱溶融させたものを流動状態を保ったままで土壌中へ注入することも可能である。
次に、実施例によって本発明をさらに詳しく具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
図1は実施例1の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法の土壌実験を実施するために用いた人工土壌実験施設を示す断面図である。
図1に示すように、実施例1において用いた人工土壌実験施設は、コンクリート枠1により互いに分離された14区画の実験槽7を有し、これらの実験槽7の底部には測定水採取口4が形成されている。各実験槽7の上部には、硝酸態窒素溶液を添加するためのノズルが配置されており、これらのノズルは硝酸態窒素溶液が流れるパイプ6に連通している。
上記のように構成された人工土壌実験施設を用いて下記の実験を行った。
実験槽7の内部には砂利層3と実験土壌2が配設されている。各実験土壌2にはニンジン苗5が植えられている。
実験槽7の地表面積は11mであり、実験土壌2の土壌深さは1.4mである。実験土壌2として黒ボク土を用いた。この実験土壌2の下には、底部から20cm厚みで砂利を敷いた砂利層3が形成されている。
14区画の実験槽7には、葉長約14cmのニンジン苗を5株づつを植え、あらかじめ硝酸態窒素濃度90mg/Lに調整した硝酸態窒素液を、定量ポンプを用いて100mL/日の割合で添加し続けた。14区画の実験槽7のうち、区画番号1〜9が本発明に係る実験材料を土壌中に混合し、区画番号10〜14が比較材料を土壌中に混合して実験を行った。
各試験区及び各比較区における実験土壌2は、土壌乾燥重量比で1重量%の実験材料(脂肪酸、アルコールなど)、及び比較材料(従来技術で用いた材料)をあらかじめ均一に混合して作成した。
上記のように構成された人工土壌実験施設において、砂利層3を通過した水を集めて、JIS法に従い65日後の硝酸態窒素濃度、アンモニア態窒素濃度、および全炭素濃度の分析を行った。
その実験結果を表1に示す。
Figure 2006075836
表1に示すように、試験区の区画番号1から区画番号5においては、実験材料としてステアリン酸、ラウリルアルコール、パルミチン酸セチル、ソルビタンジステアレート、パルミチン酸ステアリン酸モノジグリセライドをそれぞれ用いた。試験区の区画番号6ではステアリン酸65重量%、パルミチン酸30重量%、ミリスチン酸5重量%を混合して実験材料として用いた。試験区の区画番号7では硫黄(粒径約2cm)を実験材料として用いた。試験区の区画番号8では硫黄と炭酸カルシウムの混合物(重量比3:8)を実験材料として用いた。また、試験区の区画番号9ではステアリン酸と平均粒径約15μmの鉄粉を土壌に対して1重量%混合して用いた。
比較区の区画番号10から区画番号13の比較材料としては、セルロース粉末、ラクトース、大豆油、天然バーク発酵資材のそれぞれを土壌中に混合して用いた。また、比較区の区画番号14は、何も混合せず土壌のみとした。
表1において、試験区に用いた実験材料が本発明に係る土壌や地下水の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法において用いられる材料であり、比較区の区画番号10から区画番号13において用いた比較材料が従来技術において用いられていた材料である。なお、比較区の区画番号14は土壌のみである。
表1から明らかなように、本発明に係る土壌や地下水の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法による土壌(試験区)からの水は、比較区として示した従来技術および土壌のみの区画からの水にくらべて大幅に硝酸態窒素濃度が低下しており、土壌通過時に脱窒反応が効果的に起っていることが理解できる。
また、鉄粉を共存させる(区画番号9)ことにより、土壌における還元性が向上し、脱窒反応をさらに促進させている。
さらに、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法は、比較区として示した従来技術にくらべて、全炭素濃度が極めて小さく、有機物による2次汚染を効果的に防止することができる。
また、アンモニア態窒素濃度の結果から明らかなように、本発明による実験土壌においては従来技術の天然バーク発酵資材(区画番号13)に見られるような窒素放出源にはなっていない。
実施例1における各実験を通じて、ニンジンの生育に対する有意差は認められなかった。
以上の実験結果から、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法は、土壌そのものはもちろん、その土壌を通過する地下水への硝酸態窒素の漏出および有機化合物による2次汚染を低減することができるという優れた効果を有する。
《実施例2》
図2は実施例2の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法の地下水実験を実施するために用いた人工地下水実験施設を示す断面図である。
図2に示すように、実施例2において用いた人工地下水実験施設は、コンクリートブロック枠11により形成された実験槽17の中に実験材料を混合した実験土壌12と砂利槽13とを入れて実験を行った。人工地下水実験施設のコンクリートブロック枠11により囲われた実験槽17において、実験土壌12は地表面積が18m、土壌深さが6.0mである。この実験土壌12の下に50cmの深さで砂利層13が設けられている。実験土壌12としては黒ボク土と真土とを6:4程度の割合で混合した土を用いた。
実験槽17には、直径20cmの塩化ビニール管により構成された人工井戸14が設けられている。この人工井戸14は、実験槽17の一端の内壁面(この内壁面を基準位置とする)から0.5mの位置に設けられており、深さを約6m有して砂利層13に通じている。また、人工地下水実験施設の実験槽17の内壁面(基準位置)から2mで、深さが地表面から4mの位置に硝酸態窒素液を添加する硝酸態窒素液添加パイプ16が埋設されている。基準面である一方の内壁面と対向する他の内壁面には外部に通じる測定水採取口15が設けられている。この測定水採取口15は、底面から50cm(砂利層13の最上部に相当)の位置に形成されており、地下水である測定水をサンプリングするために設けられている。
上記のように構成された人工土壌実験施設をそれぞれ用いて下記の実験を12区画において行った。
各実験槽17において、硝酸態窒素液添加パイプ16の先端(地表面から4mの位置)から、あらかじめ硝酸態窒素濃度40mg/Lに調整した硝酸態窒素液を、定量ポンプを用いて12mL/日の割合で実験土壌12に添加し続けた。
上記の条件下において、人工地下水の移動は約6.5m/年と見積もられる。発明者らは、人工地下水実験施設を用いて、各試験区及び各比較区において人工井戸14から各水素供与体を800g添加した。そして、試験開始後30日後において、底面から50cm(砂利層の最上部に相当)の位置に形成された測定水採取口15から水をサンプリングして、その採取した水をJIS法に従い硝酸態窒素濃度、アンモニア態窒素濃度、および全炭素濃度の分析を行った。
この結果を各試験区及び各比較区毎に下記表2に示す。
Figure 2006075836
表2に示すように、試験区の区画番号1から区画番号6においては、実験材料としてミリスチン酸、ステアリルアルコール、ミリスチン酸ミリスチル、ソルビタンモノパルミテート、ペンタステアリン酸テトラグリセル、ヤシ油脂肪酸をそれぞれ用いた。試験区の区画番号7ではペンタステアリン酸テトラグリセルと平均粒径約65μmの鉄粉を土壌に対して1重量%混合して用いた。
比較区の区画番号8から区画番号11の比較材料としては、セルロース粉末、糖みつ、大豆油、天然バーク発酵資材のそれぞれを土壌中に混合して用いた。また、比較区の区画番号12は、何も混合せず土壌のみとした。
表2から明らかなように、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法による土壌(試験区)からの水は、比較区として示した従来技術および土壌のみの区画(表2の区画番号12)からの水にくらべて大幅に硝酸態窒素濃度が低下しており、地下水中で脱窒反応が効果的に起っていることが理解できる。
また、鉄粉を共存させた場合(区画番号7)には、還元性が向上するため脱窒反応をさらに促進させている。
さらに、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法により得られた水は、比較区として示した従来技術により得られた水にくらべて、地下水中の全炭素濃度が極めて小さい。このため、有機物による2次汚染を効果的に防止することができ、アンモニア態窒素濃度の結果から従来技術の天然バーク発酵資材に見られる様な窒素放出源にはならない。
以上の実験の結果から、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法は、土壌そのものはもちろん、その土壌を通った地下水への硝酸態窒素の漏出の低減および有機化合物による2次汚染の防止をできるという優れた効果を有する。
《実施例3》
図3は実施例3の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法を実施するために用いたカラム実験装置の構成を示す図である。ここでカラムとは硝酸態窒素および揮発性有機化合物を低減する機能を有する容器のことであり、井戸水などの地下水を通過させて硝酸態窒素および揮発性有機化合物を低減すものである。実施例3においては、直径28cm、高さ2mの樹脂製カラムを用いた。
図3に示すように、カラム21の内部には実験材料22が充填されている。このカラム21には、井戸23からポンプ24により汲み上げられた井戸水がカラム21の導入口25を通して流入している。カラム21の内部を上昇しつつ実験材料22に接触した井戸水は、カラム21の上部に形成された流出口26から排出するよう構成されている。
上記のように構成されたカラム実験装置を用いて下記通りのカラム実験を行った。
硝酸態窒素により汚染された既設の井戸(硝酸態窒素濃度14mg/L)から、ポンプ24により井戸水を地上に汲み上げて、カラム21へ流入させた。実施例3においては、直径28cm、高さ2mの樹脂製カラムを6本使用して、それぞれを2回用いて12種類の実験材料の実験を行った。
各実験において、カラム内部には脂肪酸やアルコールなどの本発明に係る実験材料(カラム番号1〜8)、および比較として従来技術の比較材料(カラム番号9〜12)をそれぞれ充填して、汲み上げた地下水を通過させた。これらの実験において、カラム内の実験材料の実質充填高さはそれぞれ1.8mである。カラム内の地下水の通過時間は5.5時間であり、実験期間中の平均環境温度は21℃であった。
実験開始である井戸水通過開始から30日間経過時点でのカラム通過後の井戸水の硝酸態窒素濃度、アンモニア態窒素濃度、および全炭素濃度を測定した。その測定結果を表3にまとめて示す。
Figure 2006075836
表3に示すように、試験区のカラム番号1からカラム番号6においては、実験材料としてベヘン酸、ミリスチルアルコール、ステアリン酸メチル、ソルビタンモノミリスチレート、オレイン酸ステアリン酸モノジグリセライド、牛脂脂肪酸をそれぞれ用いた。試験区のカラム番号7ではミリスチルアルコールと平均粒径10μmのアルミ粉末を土壌に対して1重量%混合して用いた。また、試験区のカラム番号8では牛脂脂肪酸と平均粒径約15μmの鉄粉を土壌に対して1重量%混合して用いた。
比較区の比較材料としては、セルロース粉末(カラム番号9)、ショ糖(カラム番号10)、コーン油を含浸させたセルロース粉末(コーン油正味1.2kg相当)(カラム番号11)、天然バーク発酵資材(カラム番号12)を土壌中に混合して用いた。
表3から明らかなように、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法による試験区における結果は、比較区として示した従来技術による結果に比べて大幅に硝酸態窒素濃度が低下しており、試験区のカラム通過時に脱窒反応が効果的に生じていることが理解できる。
また、本発明の土壌や地下水の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法は、比較区として示した従来技術にくらべて全炭素濃度が極めて小さく、処理水への有機物による2次汚染を効果的に防止することができる
《実施例4》
図4は実施例4の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法を実施するために用いた実験施設を示す図である。図4の(a)は実験施設の平面図であり、(b)はその側面図である。
図4に示すように、枡状のコンクリート枠31により形成された実験槽34の内部には、汚染土壌32と実験土壌33が収納されている。図4の(a)に示すように、汚染土壌32は実験土壌33に取り囲まれるように実験槽34の略中央部分に設けられている。
実施例4において、枡状のコンクリート枠31は上方が開放した1m四方の立方体形状であり、このコンクリート枠31で形成された実験槽34の内部には黒ボク土とロームとを等量づつ混合した人工土壌を入れて、屋外(平均気温21℃)に約2ヶ月間放置した。
その後、上記のように形成された人口土壌に対して、その表面で直径30cm、深さが50cmに掘土して円筒状の穴を形成し、その穴を汚染土壌32により埋め戻した。
汚染土壌は、1,1,1−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエチレンにより汚染された土壌(環告46号による溶出試験により、1,1,1−トリクロロエタンで約
1400μg/L、1,1−ジクロロエチレンで約50μg/L含有)1.2tonに対し、本発明に係る脂肪酸やアルコールなどの実験材料(窒素原子を含まないもの)、および比較として用いる従来技術における比較材料を1重量%添加し、黒ボク土とロームとを等量づつ均一に混合して形成した。
上記のように形成された汚染土壌には、栄養塩(窒素源)として濃度100mg/Lのリン酸水素二アンモニウムを140L/日の割合で供給した。
上記状態において、実験開始から20日経過後の汚染土壌32における1,1,1−トリクロロエタンおよび1,1−ジクロロエチレン濃度をガスクロマトグラフ質量分析法により測定した。また、埋め戻した汚染土壌32の周囲の土(図4においてAからDで示した4隅における深さ50cmの地点の土)をサンプリングし、土壌乾燥重量当たりの全炭素濃度と全窒素濃度の4点平均値を求めた。これらの実験結果をまとめて表4に示す。
Figure 2006075836
表4に示すように、試験区の区画番号1から区画番号7においては、実験材料としてステアリン酸、ベヘニアルアルコール、ステアリン酸コレステロール、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテ、オレイン酸モノグリセライド、牛脂脂肪酸、芳香族ポリエステル樹脂(ε−カプロラクトンポリマー)をそれぞれ用いた。
比較区の区画番号8から区画番号12の比較材料としては、セルロース粉末、カプリル酸、オレイン酸、乳酸、エタノールのそれぞれを土壌中に混合して用いた。また、比較区の区画番号13は、何も混合せず土壌のみとした。
表4に示すように、本発明に係る低減剤を用いた試験区の結果は、比較区として示した従来技術の比較材料を用いた土壌および有機物を添加しない土壌(区画番号13)とを比較すると、1,1,1−トリクロロエタンおよび1,1−ジクロロエチレンの減少が見られた。なお、比較区の区画番号10のオレイン酸は、不飽和脂肪酸であり、1,1,1−トリクロロエタンおよび1,1−ジクロロエチレンの濃度は低いが、高い水溶性を有しているため、土壌中で容易に拡散して2次汚染が生じるという問題がある。
また、汚染土壌32の周囲の土中の全炭素濃度は、本発明で用いる脂肪酸またはアルコールなどの低減剤を用いた土壌の場合は、従来技術の有機物を用いた場合に比べて低い値となった。
なお、実施例4においては窒素原子を含まない実験材料を用いているため、リン酸水素二アンモニウムを土壌に供給している。このため、すべての試験区において、汚染土壌32の周囲の土中から窒素が検出された。
この結果から、本発明に係る硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法によれば、周辺土壌への有機物の拡散、漏出が最小限に止まり、高い揮発性有機化合物除去性能を有しながら、有機物による2次汚染を効果的に防止することが可能である。
《実施例5》
実施例5の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法では、前述の実施例4と同じ実験施設(図4)を用いた。そして、本発明で用いる脂肪酸、アルコールなどの低減剤としてステアリン酸を用い、このステアリン酸と同時に平均粒径約15μmの鉄粉を添加して、これを区画番号1の汚染土壌とした。また、区画番号2の汚染土壌には、区画番号1の汚染土壌と同濃度のステアリン酸と平均粒径約180μmのアルミ粉を添加した。これらの汚染土壌(区画番号1,2)に対して、実施例4と同様の実験を行った。
これらの実験結果を表5に示す。
Figure 2006075836
表5に示すように、区画番号1,2のいずれの試験区においても鉄粉およびアルミ粉による還元作用により、前述の実施例4と比較して揮発性有機化合物の除去率の向上が認められた。
《実施例6》
実施例6の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法では、前述の実施例4と同じ実験施設(図4)を用いた。そして、本発明で用いる脂肪酸、アルコールなどの低減剤として牛脂脂肪酸を用い、予め培養した微生物を土壌に接種して実施例4と同様の実験を行った。
実施例6において用いた微生物は、農地(茶畑)の地表から30cmの深さの地点から採取された土壌に対して、1,1,1−トリクロロエタンを5000μg/L、1,1−ジクロロエチレンを5000μg/L、リン酸水素二アンモニウムを800mg/L、唯一炭素源として牛脂脂肪酸0.5重量%となるように調整して、その培地を温度16℃にて12日間培養したものである。
実施例6の実験結果を表6に示す。
Figure 2006075836
表6に示すように、実施例6においては微生物の添加が有効に作用して、前述の実施例4と比較して揮発性有機化合物の除去率の向上が認められた。
《実施例7》
実施例7の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法では、前述の実施例4と同じ実験施設(図4)を用いた。そして、本発明で用いる脂肪酸、アルコールなどの低減剤として窒素原子を含んだ下記物質群を用いて実施例4と同様の実験を行った。
試験区の区画番号1から区画番号5においては、窒素原子を含んだ実験材料としてミリスチルアミン、ジステアリルアミン、ステアリルアミンアセテート、ステアリン酸アマイド、ジステアリルケトンをそれぞれ用いた。また、比較区としての区画番号6と区画番号7においては、実験材料としてメタノールと酢酸をそれぞれ用い、区画番号8においては、有機物の添加を行わなかった。実施例7においては、比較区の土壌に対して栄養塩(窒素源)の添加は行わなかった。実施例7の実験結果をまとめて表7に示す。
Figure 2006075836
表7に示すように、比較区のいずれの汚染土壌においても栄養塩の欠乏から1,1,1−トリクロロエタンおよび1,1−ジクロロエチレンの減少は見られなかった。しかし、実施例7の試験区の汚染土壌においては窒素原子を含んだ物質群により効果的な減少を示した。
また、汚染土壌周囲の土中の有機物濃度(全炭素濃度)および全窒素濃度に関して、実施例7の窒素原子を含んだ物質群を用いた試験区は、従来技術の有機物を用いた比較区にくらべて低い値となった。また、窒素を含む栄養塩を添加していないため、全窒素濃度は全ての区画で微少な値となった。また、本実施例ではリンの添加は特に行わなかったが、土壌中に存在するリン成分を使用して、目的を達成することができた。
表7に示した実験結果から明らかなように、実施例7の窒素原子を含んだ物質群を用いることにより、水素供与体および窒素源を固体として同時に添加できるため、水溶性の物質を添加する必要がなく、有機物のみならず窒素による2次汚染も効果的に低減させることができる。
《実施例8》
実施例8の硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法においては、主にテトラクロロエチレンにより汚染された土壌に設けられた井戸を用いて実験を行った。
事前の調査により、土壌の表面は約125mが汚染されており、この地表から6m以下にある帯水層が汚染されていることが判明していた。この帯水層では、テトラクロロエチレン濃度が約0.25mg/Lであった。
汚染土壌にある井戸を通じて、ステアリルアミン30kgを6日間かけて徐々に添加し、90日後のテトラクロロエチレン濃度、全炭素濃度、および全窒素濃度を井戸から採取した水により分析した。
その結果、90日後のテトラクロロエチレン濃度は0.08mg/Lに低下し、全炭素濃度の初期値に対する上昇が0.2mg/Lに止まり、全窒素濃度は検出限界以下であった。
なお、実施例8において用いたステアリルアミンは、本発明に係る低減剤の一例であり、前述の各実施例において試験区で用いた低減剤を使用することができることは云うまでもない。その場合、低減剤の選択や添加量については、対象とする土壌の環境やコストなどの諸条件を考慮して決定され、本発明の主眼を損なわない範囲で変更できる。
また、実施例8においては、本発明に係る低減剤の土壌への添加方法として、該当土壌に均一に混合することを例示したが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、たとえば、本発明に係る低減剤の物質群を高密度に集合させた壁状帯を地下水の流れに対し直角方向に配置する方法や、雨水などの浸透方向に直角に配置する方法を用いることもできる。本発明は特定の低減剤の物質群に硝酸態窒素を含んだ水に接触させることであるため、このような接触をもたらす各種の配置が本発明に含まれることは云うまでもない。
本発明に係る実施例1において用いた人工土壌実験施設の構成を示す断面図である。 本発明に係る実施例2において用いた人工地下水実験施設の構成を示す断面図である。 本発明に係る実施例3において用いたカラム実験装置の構成を示す図である。 本発明に係る実施例4から実施例7において用いた実験施設の構成を示す図である。
符号の説明
1 コンクリート枠
2 実験土壌
3 砂利層
4 測定水採取口
5 ニンジン苗
6 硝酸態窒素溶液添加用パイプ

Claims (12)

  1. 炭素数が10以上の脂肪酸(炭素数が10以上のパルミチン酸を除く)を土壌中に埋設することを特徴とする土壌における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法。
  2. 脂肪酸が直鎖状飽和脂肪酸である請求項1記載の土壌における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法。
  3. 炭素数が10以上の脂肪酸(炭素数が10以上のパルミチン酸を除く)を地下水中に添加するかまたは地下水を炭素数が10以上の脂肪酸に通過させることを特徴とする地下水における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法。
  4. 脂肪酸が直鎖状飽和脂肪酸である請求項3記載の地下水における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法。
  5. 炭素数が12以上の脂肪アミンを土壌に埋設することを特徴とする土壌における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法。
  6. 炭素数が12以上の脂肪アミンを地下水中に添加することを特徴とする地下水における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法。
  7. 炭素数が18以上の脂肪酸を土壌中に埋設することを特徴とする土壌における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法。
  8. 脂肪酸が直鎖状飽和脂肪酸である請求項7記載の土壌における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法。
  9. 炭素数が18以上の脂肪酸を地下水中に添加するかまたは地下水を炭素数が18以上の脂肪酸に通過させることを特徴とする地下水における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法。
  10. 脂肪酸が直鎖状飽和脂肪酸である請求項9記載の地下水における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法。
  11. 炭素数が18以上の脂肪アミンを土壌に埋設することを特徴とする土壌における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法。
  12. 炭素数が18以上の脂肪アミンを地下水中に添加することを特徴とする地下水における硝酸態窒素および揮発性有機化合物の低減方法。
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