JP2006059277A - 量子コンピュータ - Google Patents

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Abstract

【課題】 光波長のオーダーで並んだ事実上同一と見なせる数百万個の原子を量子ビットとするスケーラブルな量子コンピュータを提供する。
【解決手段】 光定在波により周期的に捕捉された多数の原子を各々量子ビットとし、原子間隔を制御することにより前記原子の量子状態を制御し演算を行う。また、複数の原子種を、互いに独立な光定在波5で捕捉し、量子状態記憶と量子状態伝達とを異なる原子種で分担させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、量子コンピュータに関する。
従来の技術による量子コンピュータにおいては、複数のキュービットが実質的に相互に同じで、組み立てやすい構成が提案されている。こうした量子コンピュータにおいては、第1の単一電子計と第2の単一電子計、ならびに制御ゲート間に取り付けられた2個一組のキュービットを有している。
これらのキュービットは、それぞれ基板上に配置されたC60分子内に閉じ込められたアンモニア分子を有している。アンモニア含有C60分子は、走査プローブ顕微鏡を用いて配置されている(特許文献1参照)。
また、他の従来技術による量子コンピュータにおいては、単一スピンの検出も微細加工技術の大幅な進展も必要とすることなく、現在のNMR量子コンピュータよりも大きい数のキュービットを得ている(特許文献2参照)。
Figure 2006059277
しかしながら、上述した従来技術による量子コンピュータにおいては、1桁の少数量子ビット間での量子演算を実現するための技術は提示されているものの、スケーラブル(scalable)に動作可能な量子コンピュータを実現し提供するための技術は構築されていなかった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、光格子ポテンシャルの各極小点に1個づつ捕捉した事実上同一と見なせる数百万個の原子を量子状態記憶ビット2とし、それとは独立に位置を制御された量子状態伝達ビット3と原子間近接相互作用と光によるラマン遷移を用いることで、前記任意の記憶ビット間で任意の量子演算を可能とし、従来技術では1桁に止まっていた演算可能な量子ビット数をすくなくとも5桁以上に改善でき、
また、1量子ビットを任意の状態へユニタリーに変換できること、および、2量子ビット間で制御NOT演算ができること、の2点を満たすことができ、もって全ての量子演算を可能とし、
また、光によるラマン遷移を用いて1量子ビットを任意の状態へユニタリーに変換し、2量子ビット間で制御NOT演算を実行するために、原子間近接相互作用によって、2つの記憶ビットの状態を1つの伝達ビットの内部状態に読み込み、光によるラマン遷移と組み合わせることを可能とし、
また、演算に際し、各記憶ビット間の間隔は、原子間相互作用が実効的に働く距離よりも十分長いため、記憶ビットの位置が隣り合うものも、遠く離れたものも全く対等の関係となり、完全なスケーラビリティを持つことを実現し、数百万量子ビットに対して任意の量子演算を実行することを可能とし、
光波長のオーダーで並んだ事実上同一と見なせる数百万個の原子を量子ビットとするスケーラブルな量子コンピュータを提供することにある。
課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、光定在波により周期的に捕捉された多数の原子を各々量子ビットとし、原子間隔を制御することにより前記原子の量子状態を制御し演算を行う。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1において、複数の原子種を、互いに独立な光定在波で捕捉し、量子状態記憶と量子状態伝達とを異なる原子種で分担させる。
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1または2のいずれかにおいて、光格子ポテンシャルの各極小点に1個づつ捕捉した前記原子種を量子状態記憶ビット2とし、前記光格子ポテンシャルとは独立な光格子ポテンシャルの各極小点の複数個に1個の割合で捕捉した前記原子種を量子状態伝達ビット3とする。
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、光位相を制御することにより、前記光格子ポテンシャルの位置を制御する。
また、請求項5に記載の本発明は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記量子状態伝達ビット3用の前記光格子ポテンシャルの位置を変調することで、前記量子状態記憶ビット2と前記量子状態伝達ビット3との間で量子状態の交換を行う。
また、請求項6に記載の本発明は、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記量子状態伝達ビット3に対して光学的手段により量子状態の操作を行う。
また、請求項7に記載の本発明は、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記量子状態記憶ビット2用の前記光格子ポテンシャルと、前記量子状態伝達ビット3用の前記光格子ポテンシャルと、を同一空間周波数とする。
また、請求項8に記載の本発明は、請求項1〜7のいずれかにおいて、前記量子状態伝達ビット3の近傍のみ量子計算を行う。
また、請求項9に記載の本発明は、請求項1〜8のいずれかにおいて、前記量子状態伝達ビット3に対し1ないし2個の前記量子状態記憶ビット2の量子状態を転記できる。
また、請求項10に記載の本発明は、請求項1〜9のいずれかにおいて、前記光格子ポテンシャルを複数の発振周波数の光により形成する。
また、請求項11に記載の本発明は、請求項1〜10のいずれかにおいて、光共振器により前記光格子ポテンシャルを形成する。
また、請求項12に記載の本発明によれば、請求項1〜11のいずれかにおいて、量子状態制御にファンデルワールス力を用いている。
また、請求項13に記載の本発明は、請求項1〜12のいずれかにおいて、量子状態制御に磁気双極子相互作用を用いている。
また、請求項14に記載の本発明は、請求項1〜13のいずれかにおいて、量子状態制御に分子状態との共鳴によって起きる量子状態エネルギー変化を用いている。
また、請求項15に記載の本発明は、請求項1〜14のいずれかにおいて、アルカリ金属原子を用いている。
本発明によれば、光格子ポテンシャルの各極小点に1個づつ捕捉した事実上同一と見なせる数百万個の原子を量子状態記憶ビット2とし、それとは独立に位置を制御された量子状態伝達ビット3と原子間近接相互作用と光によるラマン遷移を用いることで、前記任意の記憶ビット間で任意の量子演算を可能とし、従来技術では1桁に止まっていた演算可能な量子ビット数をすくなくとも5桁以上に改善でき、
また、1量子ビットを任意の状態へユニタリーに変換できること、および、2量子ビット間で制御NOT演算ができること、の2点を満たすことができ、もって全ての量子演算を可能とし、
また、光によるラマン遷移を用いて1量子ビットを任意の状態へユニタリーに変換し、2量子ビット間で制御NOT演算を実行するために、原子間近接相互作用によって、2つの記憶ビットの状態を1つの伝達ビットの内部状態に読み込み、光によるラマン遷移と組み合わせることを可能とし、
また、演算に際し、各記憶ビット間の間隔は、原子間相互作用が実効的に働く距離よりも十分長いため、記憶ビットの位置が隣り合うものも、遠く離れたものも全く対等の関係となり、完全なスケーラビリティを持つことを実現し、数百万量子ビットに対して任意の量子演算を実行することを可能とし、
光波長のオーダーで並んだ事実上同一と見なせる数百万個の原子を量子ビットとするスケーラブルな量子コンピュータを提供することができる。
本発明は、光格子ポテンシャルの各極小点に1個づつ捕捉した事実上同一と見なせる数百万個の原子を量子状態記憶ビット2とし、それとは独立に位置を制御された量子状態伝達ビット3と原子間近接相互作用と光によるラマン遷移を用いることで、前記任意の記憶ビット間で任意の量子演算ができることを特徴としている。
量子演算は、A)1量子ビットを任意の状態へユニタリーに変換できること、および、B)2量子ビット間で制御NOT演算ができること、以上2点を満たせば、原理的に全ての量子演算が可能である。
本発明では、光によるラマン遷移を用いてA)を実行し、B)については、原子間近接相互作用によって、2つの記憶ビットの状態を1つの伝達ビットの内部状態に読み込み、光によるラマン遷移と組み合わせることで量子演算が達成される。演算に際し、各記憶ビット間の間隔は、原子間相互作用が実効的に働く距離よりも十分長いため、記憶ビットの位置が隣り合うものも、遠く離れたものも全く対等の関係となり、完全なスケーラビリティを持っていることが特徴である。
具体的な量子演算を明記するために、ルビジウム原子を量子状態記憶ビット2、ナトリウム原子を量子状態伝達ビット3として構成する実施の形態を提示する。記憶ビットと伝達ビットを別の原子種で構成することは、本発明の請求項2に記載する点であり、以下に記す効果を示す基本となっている。
ルビジウム原子およびナトリウム原子は、いずれもアルカリ金属原子であり、本発明の請求項15に記載されている。光格子は量子化軸を一定にすると同時に、原子の内部エネルギー状態の磁場依存性が小さい0.5mTの均一な磁場中に置く。ルビジウム原子は、ボーズ・アインシュタイン凝縮を初期状態として光格子ポテンシャルへ移行することにより、最密に充填することが可能であると同時に、全ての原子が基底状態に初期化されている。
このように、ボーズ・アインシュタイン凝縮状態を生成できることは、ルビジウム原子を含むほとんどのアルカリ金属原子の特徴となっており、「量子ビットを初期化できる」という量子演算に不可欠な特別な効果をもたらす重要な論理になっており、本発明の請求項15に主張する主旨もここにある。
光格子ポテンシャルにより規定される原子間隔は、光波長のオーダーであり、原子間近接相互作用の及ぶ距離よりも十分に長く、隣り合う原子も、遠く離れた原子も、全く同等のポテンシャルを感じる。これにより数百万量子ビットを事実上全く同一の状態として扱うことが出来るため、スケーラビリティという特徴は明白である。
ナトリウム原子は、レーザー冷却された原子を低密度で光格子ポテンシャルに充填する。最密充填された記憶ビット(ルビジウム原子)に比して伝達ビット(ナトリウム原子)は1/1000以下の希薄に充填することで、1つの記憶ビットが、複数の伝達ビットと相互作用する複雑な状況は回避されるという特別な効果が得られることが、本発明の請求項3に主張する主旨である。
次に、図1には、本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、光格子中の量子状態記憶ビット2と量子状態伝達ビット3を説明するための概念図を示す。この光格子の概念図は、簡単のため2次元で表示しているが、実際は3次元である。この図1には量子状態記憶ビット2と、量子状態伝達ビット3と、が示されている。また、1つの量子コンピュータとして働く計算ユニット1も示されている。極端な例として、伝達ビットの充填率が極めて低く、1個の量子状態伝達ビット3のみしか存在しない場合は、全体で1つの量子コンピュータとなる。
図1では、光格子ポテンシャルの極小点に各1個の割合で、均一に充填された量子状態記憶ビット2のルビジウム原子を白丸で、前記光格子ポテンシャルとは独立な光格子ポテンシャルに低密度で充填された量子状態伝達ビット3のナトリウム原子を黒丸で表示している。
各々の光格子ポテンシャルに用いる光の波長は、ルビジウム原子用は800nm程度、ナトリウム原子用は600nm程度とすることで、互いの光周波数が十分大きく離れているために、各光格子は特定の原子とのみ相互作用させることができる。
一方、格子点の位置を格子点間隔よりも精密に制御するために、同一空間周波数の定在波ポテンシャルを形成し、光位相を制御する方法を用いる。
次に、図2には、本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、同一空間周波数の2重光格子の場合に、格子の位置制御によりアクセスする記憶ビットを正確に特定できることを説明するための概念図を示す。なお、図2は簡単のため1次元で表示しているが、光格子は3次元的に拡がっている。
また、図3には、本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、空間周波数が異なる2重光格子の例を説明するための概念図を示す。この図3においては、図2の場合と異なり、アクセスする量子状態記憶ビット2を正確に特定することができない。
図2および図3に参照されるように、光格子を同一空間周波数とすることで、量子状態伝達ビット3と量子状態記憶ビット2の原子閉じ込めを同一スケールで制限できることの利点は、異なるスケールの場合には、特定の原子と相互作用させることが難しくなることを考えれば明白である。
また、微細な格子点間距離を、光位相の角度と言うマクロな量により制御することで、格子点間隔の1/10以下のレベルまで正確に位置を制御できるという効果が得られることも明らかである。
以上のように、複数の発振周波数の光から同一空間周波数を生成させ、特別な効果を生むために、少なくとも片方の光格子を図4に参照される特定の入射角度を持つ2本のレーザー光を交差させることで発生させる。なお、図4には、本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、斜入射光線による基本波の2倍周波数よりも低い空間周波数を持つ定在波の生成法を説明するための概念図を示している。
少なくとも片方の光格子を、複数の光学手段4を用いて特定の入射角度を持つ2本のレーザー光を交差させることで発生させるためには、紙面と垂直な方向をy軸としてこの方向に偏光し、波数ベクトルとしてk=(±km,0,kcz)をもつ光を交差させることで、
Figure 2006059277
の光定在波5を得ることができる。
次に、図5には、本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、光共振器を用いた斜入射光線構成を説明するための概念図を示している。より安定に光定在波5を発生させるためには、この図5に参照される光共振器を用いる。こうした光共振器により定在波が安定することは、レーザー共振器や共振器による2倍波発生の例から明らかである。
3次元的に光格子を形成するために、X,Y,Zの各軸方向に上記光定在波5を形成するが、各軸間での相関を避けるため、X,Y,Zの各軸方向の光の偏光はY,Z,X、あるいはZ,X,Y方向の順で電場ベクトルを持つ直線偏光を用いる。
次に、図6には、本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、量子演算に用いる量子状態記憶ビット2、および量子状態伝達ビット3のエネルギー準位図を示している。量子演算には、この図6に参照されるように、前記量子状態記憶ビット2となるルビジウム原子のM1,+1,M1,-1状態および前記量子状態伝達ビット3となるナトリウム原子のT1,+1,T1,-1,T2,+1,T2,-1状態を用いる。複数の伝達ビットが、ひとつの記憶ビットと相互作用することによる複雑化を防ぐため、量子状態伝達ビット3の近傍のみをもちいて量子計算を行うこととする。これは、量子状態伝達ビット3が希薄に充填されていることから容易に可能である。
光格子生成用の光の位相を制御し、光格子ポテンシャルの位置を精密に制御することで、量子状態記憶ビット2と量子状態伝達ビット3とを近傍させると、ファンデルワールス力、磁気双極子相互作用、および分子状態との共鳴による原子の内部状態に変化によって、量子状態記憶ビット2と量子状態伝達ビット3間で、第1式のようなエネルギー変化が生じる。
Figure 2006059277
ここで、rは原子間の相対座標、μtおよびμmはそれぞれ伝達ビット原子および記憶ビット原子の磁気双極子モーメント、C6はファンデルワールスポテンシャル常数である。原子核スピンが電子スピンよりも小さいことを考慮して、電子スピン(S±=Sx±iSy,Sz)を用いて(1)式を表すと、
Figure 2006059277
となる。
従って実効的なハミルトニアンは、
Figure 2006059277
である。
ここで、HtおよびHmはそれぞれ伝達ビット原子および記憶ビット原子の非相互作用ハミルトニアンで、αおよびβは、
Figure 2006059277
を満たす。
ここでψ(r,R)は2原子系の波動関係でRは重力座標、rは相対座標である。これを用いて伝達ビットと記憶ビット間のシュレーディンガー方程式を書き下すと、
Figure 2006059277
となる。
この解を
Figure 2006059277
を引数として図示したものが図7に参照される本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、(3)式の解である。T1,+11,-1状態、T1,-11,+1状態、T1,O1,O状態の時間変化説明するための説明図を示している。
ここからθαが適当な値となるように相互作用時間tを制御することで、実効的にT1,+11,-1状態とT1,-11,+1状態とが入れ替わり、他の状態には変化を与えない、すなわち、量子状態交換操作が可能である。これを説明したものが図8、図9、および図10であって、図8には、本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、量子状態伝達ビット3−量子状態記憶ビット2間の量子状態交換の初期状態の概念図を示している。
また、図9には、本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、量子状態伝達ビット3−量子状態記憶ビット2間の量子状態交換の中間状態の概念図を示している。また、図10には、本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、量子状態伝達ビット3−量子状態記憶ビット2間の量子状態交換の終状態の概念図を示している。
一つの量子状態伝達ビット3をM1,+1状態とM1,-1状態との任意の重ね合わせとするためには、量子状態伝達ビット3のT1,+1−T1,-1間を光学的に励起する誘導ラマン遷移により前記量子状態伝達ビット3をT1,+1状態とT1,-1状態との任意の重ね合せに整形した後に、前記量子状態伝達ビット3を動かして前記量子状態記憶ビット2に前記量子状態交換操作を行うことにより生成可能である。
制御NOT操作には、制御ビットとなる第1の量子状態記憶ビット2の2状態M1,+1,M1,-1および被制御ビットとなる第2の量子状態記憶ビット2の2状態N1,+1,N1,-1の合計4状態と、量子状態伝達ビット3のT1,+1,T1,-1,T2,+1,T2,-1の4状態を用いる。
まず、T1,+1状態にある量子状態伝達ビット3を制御ビットである第1の量子状態記憶ビット2と量子状態交換操作を行う。その後、量子状態交換操作を行った前記量子状態伝達ビット3のT1,-1−T2,-1間に誘導ラマン共鳴する光を特定の時間照射することで量子状態伝達ビット3の量子状態をT1,-1,T2,-1間で状態を反転させる。次に被制御ビットである第2の量子状態記憶ビット2と前記量子状態伝達ビット3との量子状態交換操作を行う。
この場合、T2,+1,T2,-1状態が加わるために、先の(3)式の他に、
Figure 2006059277
および
Figure 2006059277
の状態変化が伴う。
ここで、β/α=0.3として状態変化を図示したものが第11図であり、本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、(4),(5)式の解であって、T2,-11,-1状態、T2,+11,-1状態、T2,+11,+1状態、T2,O1,O状態の時間変化を説明するための説明図を示している。
この図11を参照してわかるように、これもθαが適当な値となるように相互作用時間tを制御することで、実効的にT2,-11,-1状態とT2,+11,+1状態とが入れ替えることができるので、上記の操作が可能である。
従って、量子状態伝達ビット3のT1,+1,T1,-1,T2,+1,T2,-1の4状態に、制御ビットのM1,+1,M1,-1と被制御ビットのN1,+1,N1,-1により形成される4状態を1対1にマッピングすることができる。
次にT2,+1−T2,-1間を光励起する誘導ラマン遷移により、T2,+1−T2,-1間で量子状態の反転を行った後、マッピングに要した過程を逆にたどることで、制御NOT操作が完了する。この制御NOT演算の過程を図示したものが図12である。この図12には、本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、制御NOT演算の概念図を示している。このように制御NOT演算ができるという特別な効果をもたらすことが、本発明の請求項9に記載した伝達ビットへのマッピングの効果である。
以上の方法により、量子状態の交換操作、単一量子ビットの任意状態への操作、制御NOT操作の全てを実現することが可能である。すなわち量子コンピュータとして必要な全ての計算が可能であって、本発明の請求項1に記載した光格子による量子コンピュータが実現される。これら全ての量子演算は、各量子状態記憶ビット2に対して全く対等に演算可能なため、完全なスケーラビリティを持つ。
なお、本発明における、光定在波5により周期的に捕捉された多数の原子を各々量子演算単位(量子ビット)とし、原子間隔を制御することにより前記原子の量子状態を制御し演算を行う量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
光定在波5により多数の原子を周期的に捕捉することは、光格子によりMott絶縁状態を生成したNature,vol.415,39(2002)より開示されている。この方法により得られる光格子中の1粒1粒の原子を各々量子演算単位とし、原子間の間隔の大小により異なる近接相互作用によって生ずる内部状態変化をもちいて量子計算を実現するということが本発明の請求項1の主旨である。
また、a)「光格子により原子を1粒1粒並べること」と、b)「原子の1粒1粒を量子ビットにできること」、およびc)「原子間に近接相互作用が存在すること」に基づいて、d)「a),b),c)を要素として発展させ光格子中の原子を用いた量子計算を行う」ということは本発明の請求項1に特有の技術である。
特に量子ビットの状態操作に原子間近接相互作用を用いることは、技術の単なる総和から類推できるものではなく、a),b),c)から容易に思いつく範囲ではない。d)は、e)「スケーラブル量子コンピュータの構築」という本発明に特有な効果をもたらす重要な論理になっている。
次に、本発明における、複数の原子種を、互いに独立な光定在波5で捕捉し、量子状態記憶と量子状態伝達とを異なる原子種で分担させることを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
ある波長の光により生成された光格子による原子のトラップポテンシャルの深さは、原子の内部状態に依存するため、一般的に原子種により大きく異なることはよく知られている。しかし、特定の原子種にのみ実効的な力を及ぼす波長を複数選択し、複数の原子種をそれぞれの光格子で捕捉して互いの位置を独立に操作できる状態を作り出し、各々を量子状態記憶ビット2と量子状態伝達ビット3に役割分担して量子演算を行うことは本発明の請求項2の主旨である。
また、本発明はa)「原子はそれぞれ固有の内部エネルギー状態を持つこと」に基づいて、b)「特定の原子種にのみ実効的な力を及ぼす波長が存在し、原子種によってその波長が異なること」、およびc)「複数の波長の光を用いれば、複数の原子種を捕捉できること」を前提としている。
これに基づいて、d)「複数の原子種をそれぞれの光格子で捕捉して互いの位置を独立に操作できる状態を作り出す」ことが、b)の技術を光格子という特殊な状況に応用することによりはじめて可能になることは、本発明の請求項2に特有の技術である。すなわち、a)の事実からは2段階以上発展させた技術となっている。
更にe)「各々を量子状態記憶ビット2と量子状態伝達ビット3に役割分担して量子演算を行うこと」も本発明に独自の技術であり、f)「記憶ビットと伝達ビットを明確に区別し、それぞれを独立に制御できる」という本発明に特有な効果をもたらす論理である。
次に、本発明における、光格子ポテンシャルの各極小点に1個づつ捕捉した原子種を量子状態記憶ビット2、光格子ポテンシャルとは独立な光格子ポテンシャルの各極小点の複数個に1個の割合で捕捉した原子種を量子状態伝達ビット3とすることを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
光格子中の原子充填密度に関して、量子状態記憶ビット2は最密充填状態に、量子状態伝達ビット3は希薄に充填することで、複雑な多原子相関を避けて1個の伝達ビットを特定の記憶ビットと相互作用させることができる。すなわち、複数の伝達ビットがひとつの記憶ビットと相互作用する複雑化を防ぐことができることが本発明に特有な効果をもたらす論理である。
また、a)「技術的に原子充填密度をコントロールできること」に基づいて、b)「記憶ビットと伝達ビットを異なる原子充填密度にすること」は、本発明に独自の技術である。これは、原子密度の差を利用して記憶ビットと伝達ビットの役割を分担することを考慮したものであり、a)から容易に思いつく範囲ではない。b)は、c)「複雑な多原子相関を避けて1個の伝達ビットを特定の記憶ビットと相互作用させることができる」という本発明に特有な効果をもたらす論理である。
次に、本発明における、光位相を制御することにより、光格子ポテンシャルの位置を制御することを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
光格子を生成する光の位相を変化させることにより、光定在波5ポテンシャルの極小点の位置を動かすことができ、これにより請求項1乃至3に記載の量子演算を行うことが本発明の請求項4に記載の本発明の主旨である。
また、本発明は、a)「光格子を生成する光の位相を変化させることにより、光定在波5ポテンシャルの極小点の位置を動かすことができる」ことを前提とすると、光の位相と原子の内部状態とは全く独立な概念であり、光位相の制御から、格子間隔の制御、原子間相互作用の制御、原子内部状態の制御へと、多段階の概念を組み合わせることにより至る技術である。
従って、b)「量子ビットの内部状態を光位相で制御する」ことは本発明に独自の技術である。また、b)は、c)「格子点間隔と言う微細なスケールの原子間隔を、光の位相を通して正確に制御することで、量子ビットの内部状態を正確に制御できる」という本発明に特有な効果をもたらす論理である。
次に、本発明における、量子状態伝達ビット3用の光格子ポテンシャルの位置を変調することで、量子状態記憶ビット2と量子状態伝達ビット3との間で量子状態の交換を行うことを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
量子状態伝達ビット3原子のみを動かし、量子状態伝達ビット3と量子状態伝達ビット3間の量子状態の交換(スワップ)を行うことで、記憶ビット同士の直接的な相互作用を行わないことが重要な効果をもたらす論理が、本発明の請求項5に記載の主旨である。
また、a)「伝達ビットのみを動かす」技術、b)「記憶ビットと伝達ビット間の量子状態の交換(スワップ)を行う」技術、c)記憶ビット間の直接的な相互作用を用いない」技術は、いずれも本発明に独自の技術であり、d)「多数の記憶ビットを伝達ビットを介して、全く同等に扱うことができる」と言うスケーラビリティを与える重要な効果をもたらす論理である。
次に、本発明における、量子状態伝達ビット3に対して光学的手段により量子状態の操作を行うことを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
希薄に充填された量子状態伝達ビット3原子にのみ誘導ラマン共鳴する光を照射することで、特定の原子のみに任意の量子状態操作を行うことができる。すなわち、最密充填された記憶ビットを光で操作しないことで、複数の原子が同じ光の影響を受けることを防ぎ、量子ビット間の独立性を維持していることが重要な効果をもたらす論理が、本発明の請求項6に記載の主旨である。
本発明の請求項5および6を総合すると、ある記憶ビットの任意の状態操作は、記憶ビットと伝達ビットをスワップさせ、伝達ビットに状態を読み出した後、伝達ビットを光で操作する。その後再び伝達ビットと記憶ビットをスワップさせ記憶ビットに状態を書き込むことで、記憶ビットに対する任意の状態操作が完了する。
また、a)「誘導ラマン共鳴により原子の内部状態を制御できること」を前提として、b)「希薄に充填された伝達ビットの内部状態のみを光で制御する」技術、ならびに、c)「記憶ビットは光で制御しない」技術は、いずれも本発明に独自の技術である。
なお、b),c)は、d)「量子ビット間の独立性を維持する」という本発明に特有な効果をもたらす重要な論理になっている。
次に、本発明における、量子状態記憶ビット2用光格子ポテンシャルと量子状態伝達ビット3用光格子ポテンシャルを同一空間周波数とすることを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
2重光格子を、同一の空間周波数にすることで、各原子の位置を同一間隔で並んだ格子点の位置で正確に制御できることが、本発明の請求項7に記載の主旨である。
また、本発明の請求項2に記載のa)「2重光格子量子コンピュータ」が全く本発明に独自の技術であり、b)互いの空間周波数を同一にする」技術もまた本発明に独自の技術で、c)「格子点の位置を格子点間隔よりも精密に制御する」という本発明に特有な効果をもたらす重要な論理になっている。
次に、本発明における、量子状態伝達ビット3の近傍のみ量子計算を行うことを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
複数の量子状態伝達ビット3原子が、ひとつの量子状態記憶ビット2原子と相互作用しないために、希薄に充填した量子状態伝達ビット3の近傍でのみ1つの量子コンピュータのユニットを形成することが、本発明の請求項8に記載の主旨である。
また、本発明の請求項2に記載のa)「伝達ビットと記憶ビットという役割分担」が既に新しい技術であり、b)「伝達ビットの近傍で1つの量子コンピュータのユニットを形成すること」も、同じく本発明に独自の技術である。b)は、c)「複数の伝達ビットが、ひとつの記憶ビットと相互作用することによる複雑化を防ぐ」という本発明に特有な効果をもたらす重要な論理になっている。
次に、本発明における、量子状態伝達ビット3に1ないし2個の量子状態記憶ビット2の量子状態を転記できることを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
既に示した図4にあるような量子状態伝達ビット3の4つのエネルギー状態に、2個の量子状態記憶ビット2原子の2状態(合計4状態)を格納することで、伝達ビット内での量子状態操作を介して複数の量子状態記憶ビット2間での量子演算ができることが、本発明の請求項9に記載の主旨である。
また、a)「原子の内部状態の分光学的特性」と、b)「エネルギーの近い準位間には強い相互作用が存在する」を前提として、c)「伝達ビットの4つのエネルギー状態に、2個の記憶ビットの各々2状態(合計4状態)を格納する」ことは本発明に独自の技術である。
このような本発明は、複数の原子間の複雑な量子状態の交換を考慮する必要を特徴とし、a),b)の前提条件となる技術的な範疇を超えて、c)は、d)「1つの伝達ビットを介して2つの記憶ビット間の量子演算ができる」という本発明に特有な効果をもたらす重要な論理になっている。
次に、本発明における、光格子ポテンシャルを複数の発振周波数の光により形成することを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
対向する光による定在波の空間周波数は、これを生成する光の発振周波数の2倍に固定されるが、角度を持って斜めから重ね合わせることで、光の発振周波数の2倍よりも小さな空間周波数の定在波を生成することができる。これにより本発明の請求項1乃至9を実現することが、本発明の請求項10に記載の主旨である。
また、a)「角度を持って斜めから光を重ね合せることで、光の発振周波数の2倍よりも小さな空間周波数の定在波を生成できる」という技術を前提として、この技術を2重光格子に応用し、b)「同一空間周波数を持つ2重光格子を、異なる波長の光により形成する」ことは本発明に独自の技術である。
これは、3次元光格子をXYZ3軸に対向する光で構成する場合、各軸の偏光方向を直交させなければ、ポテンシャルの位置を固定できないこと、および、角度を持った重ね合わせをXYZ各軸方向で構成できることに関する考察を必要とする。b)は、c)「2種類の原子を同じ格子点間隔で精密に制御できる」という本発明に特有な効果をもたらす重要な論理になっている。
次に、本発明における、光共振器により光格子ポテンシャルを形成することを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
光共振器はより安定に定在波を生成できる。これにより請求項1乃至10を実現することが、本発明の請求項11に記載の主旨である。
また、a)「光共振器中の定在波は、安定に制御できる」ことを前提の条件とし、定在波の安定化と量子演算とは本来独立な概念として、既に図5を参照して説明した定在波の安定化から、既に図2および図3を参照して説明した光格子の安定制御、および既に図2および図3を参照して説明した原子間距離の制御、および既に(1)式により説明した原子間相互作用の制御、また既に図7〜図10を参照して説明した量子ビットの内部状態操作、既に図12を参照して説明した量子演算へと、多段階の概念を組み合わせて本発明の技術的な特徴が構築されている。
従って、b)「光共振器を2重光格子の安定化に応用し量子演算を行う」ことは本発明の技術的な特徴となっている。b)は、c)複雑な定在波の組み合わせにより生成する2重光格子を安定化することにより、デコヒーレンス時間内で可能な量子演算の回数を増大させ、より複雑な計算を可能にする」という、本発明に特有な効果をもたらす重要な論理になっている。
次に、本発明における、量子状態制御にファンデルワールス力を用いることを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
本発明の請求項1に記載の原子間隔に依存した近接相互作用として、ファンデルワールス力を起源とする相互作用を用いることが、本発明の請求項12に記載の主旨である。
また、a)「近接相互作用の一つとしてファンデルワールス力がある」ことを技術的な前提として、ファンデルワールス力と量子計算とは本来独立な概念であるので、ファンデルワールス力から、既に(1)式により説明した原子間相互作用、既に図7〜図10を参照して説明した原子内部状態の制御、既に図2および図3を参照して説明した複数原子の位置の制御、既に図12を参照して説明した2重光格子量子コンピュータへと、多段階の概念を組み合わせて初めて結びつく、本発明に特有の技術である。
従って、b)「ファンデルワールス力を2重光格子に用いて量子計算を行う」ことは本発明の特徴的な技術であり、b)は、c)「イオンに対するクーロン相互作用に比べ、非常に小さい相互作用であるため、デコヒーレンス時間を遥かに長く保ったままで量子演算を実行できる」という、本発明に特有な効果をもたらす重要な論理になっている。
次に、本発明における、量子状態制御に磁気双極子相互作用を用いることを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
本発明の請求項1に記載の原子間隔に依存した近接相互作用として、磁気双極子相互作用を起源とする相互作用を用いることが、本発明の請求項13に記載の主旨である。
また、a)「近接相互作用の一つとして磁気双極子相互作用がある」ことを前提とし、b)「磁気双極子相互作用を2重光格子に用いて量子計算を行う」ということを本発明の技術的な特徴としている。
また、b)は、c)「イオンに対するクーロン相互作用に比べ、非常に小さい相互作用であるため、デコヒーレンス時間を遥かに長く保ったままで量子演算を実行できる」という、本発明に特有な効果をもたらす重要な論理になっている。
次に、本発明における、量子状態制御に分子状態との共鳴によって起きる量子状態エネルギー変化を利用することを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
本発明の請求項1に記載の原子間隔に依存した近接相互作用として、分子状態との共鳴によって起きる量子状態エネルギー変化を起源とする相互作用を用いることが、本発明の請求項14に記載の主旨である。
また、a)「近接相互作用の一つとして分子状態との共鳴によって起きる量子状態エネルギー変化がある」ことを前提として、b)「分子状態との共鳴によって起きる量子状態エネルギー変化を2重光格子に用いて量子計算を行う」ということは本発明の特徴的な技術である。
また、b)は、c)「イオンに対するクーロン相互作用に比べ、非常に小さい相互作用であるため、デコヒーレンス時間を遥かに長く保ったままで量子演算を実行できるという、本発明に特徴的な効果をもたらす重要な論理になっている。
また、既に(1)式に記したように、ファンデルワールス力、磁気双極子相互作用、および分子状態との共鳴によって起きる量子状態エネルギー変化は、各原子の固有なパラメータおよび、外部磁場等の環境によって大小関係が異なり、どれか1つのみが有効に働く場合もあれば、複数が同時に作用することも考えられる。
次に、本発明における、アルカリ金属原子を用いることを特徴とする量子コンピュータについて、理解をより容易にするための補足説明を以下に記載する。
ボーズ凝縮が比較的容易で最密充填が可能、および核スピンが3/2で既に図4を参照して説明したエネルギー準位を特徴とするアルカリ金属原子を用いて光格子量子計算を行うことが特別な効果をもたらす論理が、本発明の請求項15に記載の主旨である。
また、a)「アルカリ金属原子のエネルギー構造」と、b)「アルカリ金属原子を用いてボーズ凝縮および光格子ができる」ことと、c)「アルカリ金属原子は比較的容易に最密充填が可能」であること、とを前提として、d)アルカリ金属原子を用いて、量子コンピュータを構成すること」は本発明の特徴的な技術である。
また、a)、b)、c)の事実に加え、2重光格子、伝達ビットと記憶ビットの役割分担、異なる原子充填密度といった特殊な技術を複数組み合わせることで初めて可能になる技術であり、d)は、e)「ボーズ凝縮状態を経由することで、量子ビットの初期化ができる」という本発明の特徴的な効果をもたらす重要な論理になっている。
以上説明した本発明の実施の形態によれば、光格子ポテンシャルの各極小点に1個づつ捕捉した事実上同一と見なせる数百万個の原子を量子状態記憶ビット2とし、それとは独立に位置を制御された量子状態伝達ビット3と原子間近接相互作用と光によるラマン遷移を用いることで、前記任意の記憶ビット間で任意の量子演算を可能とし、従来技術では1桁に止まっていた演算可能な量子ビット数をすくなくとも5桁以上に改善できる。
また、1量子ビットを任意の状態へユニタリーに変換できること、および、2量子ビット間で制御NOT演算ができること、の2点を満たすことができ、もって全ての量子演算を可能とすることができる。
また、光によるラマン遷移を用いて1量子ビットを任意の状態へユニタリーに変換し、2量子ビット間で制御NOT演算を実行するために、原子間近接相互作用によって、2つの記憶ビットの状態を1つの伝達ビットの内部状態に読み込み、光によるラマン遷移と組み合わせることを可能とすることができる。
また、演算に際し、各記憶ビット間の間隔は、原子間相互作用が実効的に働く距離よりも十分長いため、記憶ビットの位置が隣り合うものも、遠く離れたものも全く対等の関係となり、完全なスケーラビリティを持つことを実現し、数百万量子ビットに対して任意の量子演算を実行することを可能とすることができる。
また、光波長のオーダーで並んだ事実上同一と見なせる数百万個の原子を量子ビットとするスケーラブルな量子コンピュータを提供することができる。
本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、光格子中の量子状態記憶ビット2と量子状態伝達ビット3を説明するための概念図を示す。 本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、同一空間周波数の2重光格子の場合に、格子の位置制御によりアクセスする記憶ビットを正確に特定できることを説明するための概念図を示す。 本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、空間周波数が異なる2重光格子の例を説明するための概念図を示す。 本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、斜入射光線による基本波の2倍周波数よりも低い空間周波数を持つ定在波の生成法を説明するための概念図を示す。 本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、光共振器を用いた斜入射光線構成を説明するための概念図を示す。 本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、量子演算に用いる量子状態記憶ビット2、および量子状態伝達ビット3のエネルギー準位図を示す。 本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、(3)式の解であり、T1,+11,-1状態、T1,-11,+1状態、T1,O1,O状態の時間変化説明するための説明図を示す。 本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、伝達ビット−記憶ビット間の量子状態交換の初期状態の概念図を示す。 本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、伝達ビット−記憶ビット間の量子状態交換の中間状態の概念図を示す。 本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、伝達ビット−記憶ビット間の量子状態交換の終状態の概念図を示す。 本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、(4),(5)式の解であって、T2,-11,-1状態、T2,+11,-1状態、T2,+11,+1状態、T2,O1,O状態の時間変化を説明するための説明図を示す。 本発明の量子コンピュータの実施の形態に係る、制御NOT演算の概念図を示す。
符号の説明
1 計算ユニット
2 量子状態記憶ビット
3 量子状態伝達ビット
4 光学手段
5 光定在波

Claims (15)

  1. 光定在波により周期的に捕捉された多数の原子を各々量子ビットとし、原子間隔を制御することにより前記原子の量子状態を制御し演算を行うことを特徴とする量子コンピュータ。
  2. 複数の原子種を、互いに独立な光定在波で捕捉し、量子状態記憶と量子状態伝達とを異なる原子種で分担させることを特徴とする請求項1に記載の量子コンピュータ。
  3. 光格子ポテンシャルの各極小点に1個づつ捕捉した前記原子種を量子状態記憶ビット2とし、前記光格子ポテンシャルとは独立な光格子ポテンシャルの各極小点の複数個に1個の割合で捕捉した前記原子種を量子状態伝達ビット3とすることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の量子コンピュータ。
  4. 光位相を制御することにより、前記光格子ポテンシャルの位置を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の量子コンピュータ。
  5. 前記量子状態伝達ビット3用の前記光格子ポテンシャルの位置を変調することで、前記量子状態記憶ビット2と前記量子状態伝達ビット3との間で量子状態の交換を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の量子コンピュータ。
  6. 前記量子状態伝達ビット3に対して光学的手段により量子状態の操作を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の量子コンピュータ。
  7. 前記量子状態記憶ビット2用の前記光格子ポテンシャルと、前記量子状態伝達ビット3用の前記光格子ポテンシャルと、を同一空間周波数とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の量子コンピュータ。
  8. 前記量子状態伝達ビット3の近傍のみ量子計算を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の量子コンピュータ。
  9. 前記量子状態伝達ビット3に対し1ないし2個の前記量子状態記憶ビット2の量子状態を転記できることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の量子コンピュータ。
  10. 前記光格子ポテンシャルを複数の発振周波数の光により形成することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の量子コンピュータ。
  11. 光共振器により前記光格子ポテンシャルを形成することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の量子コンピュータ。
  12. 量子状態制御にファンデルワールス力を用いることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の量子コンピュータ。
  13. 量子状態制御に磁気双極子相互作用を用いることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の量子コンピュータ。
  14. 量子状態制御に分子状態との共鳴によって起きる量子状態エネルギー変化を用いることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の量子コンピュータ。
  15. アルカリ金属原子を用いることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の量子コンピュータ。

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