JP2006058309A - めっき層中合金相の定量方法 - Google Patents
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Abstract
【課 題】 めっき層中合金相を、直接、精度良く定量することが可能なめっき被覆金属材のめっき層中合金相(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を例にとればζ相,δ1 相,Γ相が該当する)の定量方法を提供する。
【解決手段】 合金化溶融亜鉛めっき鋼板をアノードとし、硫酸亜鉛−塩化ナトリウム水溶液中で、電位:−940 〜−920mV vs SCEの電位の範囲内で電解操作を行い、流れた電気量に基づきめっき層中ζ相を定量する。
【選択図】 図1
Description
特に、複数種類の合金相を有するめっき製品においては、製品の諸特性は合金相の組成および量に大きく影響されることが知られている。
このため、合金相の制御が、めっき特性の向上のために必要不可欠である。
また、上記した合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、めっきの諸特性に大きく影響する合金相は、ZnとFeの合金相(ζ相,δ1 相,Γ相)である。特にζ相は自動車車体防錆鋼板として好適な合金化溶融亜鉛めっき鋼板の摺動性に大きな影響を与えるのである。
このような観察によれば、各合金相の発達の程度が定性的に得られ、また各相の平均厚みのデータが定量的に得られるが、試料の調製や観察が煩雑であることが問題である。
すなわち、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合、ζ相やΓ相の生成を抑制する必要があるが、これら微少量の合金相の同定は困難である。
一方、X線回折法を利用し、各合金相の回折強度とめっきの諸特性との関係づけを行う検討が行われ、オンライン測定への応用が図られている。
すなわち、例えば合金化溶融亜鉛めっき鋼板における微少量のζ相やΓ相の定量においては、ζ相やΓ相の含有量が既知である標準試料がないと測定ができない。
しかし、上記方法の場合、ζ相やΓ相の少ない合金化溶融亜鉛めっき鋼板では電位の変曲点(各相の電解終点)が不明瞭であり、ζ相やΓ相のような微少量の相の定量は困難である。
また、上記した方法を合金化溶融亜鉛めっき鋼板に適用する場合、鉄濃度の高いΓ相が残渣として残るため、平坦部の溶解時間をそのままめっき厚に換算することに問題があることが報告されている(黒沢進:表面技術,45,234(1994))。
また試料の表面状態によって時間−電流曲線の形状が変動し、めっき最表面に微少量存在する合金相、例えば合金化溶融亜鉛めっき鋼板のζ相の定量はさらに困難であった。
鉄と鋼,8,101(1986) 材料とプロセス,3,591(1990) 川崎製鉄技報,18,129(1986) J.Inst.Metals,58,211(1936) 表面技術,45,234(1994)
第2の発明は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板をアノードとし、硫酸亜鉛−塩化ナトリウム水溶液中で、電位:−940 〜−920mV vs SCEの電位の範囲内で電解操作を行い、流れた電気量に基づきめっき層中ζ相を定量し、引き続き前記アノードである合金化溶融亜鉛めっき鋼板を電位:−900 〜−840mV の電位の範囲内で電解操作を行い、流れた電気量に基づきめっき層中δ1 相を定量することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層中ζ相およびδ1 相の定量方法である。
なお、電位の単位として記載した vs SCE とは、飽和カロメル電極に対する電位を示す。
また、本発明によれば、従来定量値が得られなかった合金相が定量化でき、製品の品質向上、安定生産に著しい効果が期待される。
本発明者らは、上記した課題を解決するため鋭意検討した結果、複数種類の合金相を有するめっき被覆金属材の各合金相のそれぞれがめっき層の厚さ方向において分離して存在する合金相の構造を利用し、各合金相のみを選択的に溶解しうる電位で電解し、その時に流れた電気量から各合金相を定量することが可能であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、めっき層中に複数種類の合金相を有するめっき被覆金属材をアノードとし、素地金属材の浸漬電位および各合金相の浸漬電位に基づいて定めた複数の電位のそれぞれにおいてめっき層中合金相を定電位電解し、各電解電位において流れた電気量に基づき、めっき層中各合金相の相別定量を行うことができる。その際には、複数種類の合金相のそれぞれが、めっき層中において混合することなく、それぞれの合金相がめっき層の厚さ方向において分離して存在する複数種類の合金相であれば、定量精度が一層向上する。これは、複数種類の合金相が上記した構造を有する場合、各合金相の溶解電位で、各合金相をめっき層の表面側から素地金属材に向けてそれぞれ別個に定電位電解でき、各合金相を相別に定量することが可能なためである。
また、上記した複数の電位として、素地金属材の浸漬電位と素地金属材の表面(:直上表面)の合金相の浸漬電位との間の電位およびそれぞれが直接接する各合金相の浸漬電位の間の電位を選択することができる。
前記した第1〜3の発明の好適態様においては、前記電解が定電位電解であることが好ましい。
これは、定電位電解を行うことによって、各合金相を選択的に電解することが可能となるためである。
また、上記した操作において、所定の合金相の電解電位の範囲内(:溶解電位の範囲内)で正の電流が流れなくなるまでの電気量を測定する。
次に、それぞれの電位(:電位範囲内)で流れた電気量および各合金相溶解に要する電気化学当量に基づき、ζ相、δ1 相およびΓ相の存在量を算出する。
また、得られた算出値およびめっき鋼板の表面積に基づき、めっき鋼板単位面積当たりの合金相の付着量を求めるか、または得られた算出値、めっき鋼板の表面積および各合金相の密度に基づき各合金相の厚みを求める。
Xi (g/m2 )=〔C/F〕×〔M/2〕×〔 10000/A〕………(1)
Yi (μm )=〔C/F〕×〔M/2〕×〔 10000/(ρ×A)〕×10-6 ……………(2)
なお、上記式(1) 、(2) 中、
C:合金相iの溶解に要した電気量(C)
F:ファラデー定数=96485 (C/mol )
M/2:合金iの平均当量(g/mol )
A:溶解した試料面積(cm2 )
ρ:合金iの密度(g/m3 )
電解は、適宜選択した電解質溶液中で行えばよく、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合は、硫酸亜鉛−塩化ナトリウム水溶液を用いるのが好適である。
さらに、本発明によれば、合金相を、直接、精度良く定量できるため、標準試料の各合金相を本発明の方法で定量し、得られた定量値とX線回折法による回折強度との検量線を作成し、該検量線およびX線回折装置を用いて、オンラインで合金相の定量を行うことができる。
(実施例1)
本実施例においては、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の各合金相(:ζ相、δ1 相、Γ相)を、定電位電解で相別定量した。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の試料としては、15mmφの円形試料を用い、該試料の片面を腐食試験用テープでシールして測定に供した。
図3に、測定に用いた電解装置を、縦断面図(a) および模式図(b) によって示す。
なお、図3において、1は電解装置、2は試料、3は白金リング(対極)、4は飽和カロメル電極、5は白金線、6は電解液、7は参照電極(RE:Reference Electrode )を示す。
また、図3に示すように、参照電極としては飽和カロメル電極、対極には白金を用いた。
ζ相の溶解は電位:−930mV vs SCE、δ1 相の溶解は電位:−860mV vs SCE、Γ相の溶解は電位:−825mV vs SCEで当該順序で行い、同一試料に対し、それぞれの電位で正の電流が流れなくなるまでの電気量を測定した。
また、表1に、各合金相の溶解に要した電気量と各合金相溶解に要する電気化学当量に基づき前記した式(2) で算出した各合金相の厚みおよび同一試料についての厚みの標準偏差:σを示す。
なお、前記した式(2) におけるM/2、A、ρは下記の通りである。
ζ相:32.2、δ1 相:32.2、Γ相:31.9(g/mol )
A;1.77(cm2 )
ρ;
ζ相:7.18×106 、δ1 相:7.25×106 、Γ相:7.36×106 (g/m3 )
表1に示されるように、本発明によればめっき層中合金相が微量な場合でも同一試料における定量値の標準偏差:σが極めて小さく、合金相を、直接、精度良く定量することが可能であることが分かった。
製造条件の異なる6種類の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の試料を用い、前記した実施例1と同様の本発明方法で合金化溶融亜鉛めっき鋼板の合金相:ζ相、Γ相を定量し、合金相の厚みを算出した。
また、上記した試料と同じロットの6種類の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用い、X線回折装置によって合金相:ζ相、Γ相のX線回折強度(ζ相:d=1.26オングストローム、Γ相:d=2.59オングストローム)を測定した。
図1および図2に、上記で得られた検量線を示す。
図1および図2に示されるように、本発明方法で得られた合金相の定量値とX線回折強度とは良好な相関を有することが分かった。
2 試料
3 白金リング(対極)
4 飽和カロメル
5 白金線
6 電解液
7 参照電極
Claims (3)
- 合金化溶融亜鉛めっき鋼板をアノードとし、硫酸亜鉛−塩化ナトリウム水溶液中で、電位:−940 〜−920mV vs SCEの電位の範囲内で電解操作を行い、流れた電気量に基づきめっき層中ζ相を定量することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層中ζ相の定量方法。
- 合金化溶融亜鉛めっき鋼板をアノードとし、硫酸亜鉛−塩化ナトリウム水溶液中で、電位:−940 〜−920mV vs SCEの電位の範囲内で電解操作を行い、流れた電気量に基づきめっき層中ζ相を定量し、引き続き前記アノードである合金化溶融亜鉛めっき鋼板を電位:−900 〜−840mV の電位の範囲内で電解操作を行い、流れた電気量に基づきめっき層中δ1 相を定量することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層中ζ相およびδ1 相の定量方法。
- 合金化溶融亜鉛めっき鋼板をアノードとし、硫酸亜鉛−塩化ナトリウム水溶液中で、電位:−940 〜−920mV vs SCEの電位の範囲内で電解操作を行い、流れた電気量に基づきめっき層中ζ相を定量し、引き続き前記アノードである合金化溶融亜鉛めっき鋼板を電位:−900 〜−840mV の電位の範囲内で電解操作を行い、流れた電気量に基づきめっき層中δ1 相を定量し、引き続き前記アノードである合金化溶融亜鉛めっき鋼板を電位:−830 〜−800mV の電位の範囲内で電解操作を行い、 流れた電気量に基づきめっき層中Γ相を定量することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層中ζ相、δ1 相およびΓ相の定量方法。
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