2つの光源の波長が、780nmと635nmのように2つの波長が近い場合には、特許文献1のように、1/4波長板は780nmと635nmの中間波長に対応したものを使用し光学系を共通化するができる。しかしながら、2つの光源の波長が405nmと635nm、又は、405nmと780nmのように波長が比較的離れている場合には、中間波長の1/4波長板では2つの波長に十分対応することができず、光学系を共通化することは難しい。
特許文献2のように405nm光源用の別途光学系を設けた場合には、当然ながら、複数の波長の光源に対応できる。しかしながら、別途光学系を設けた場合には、光ピックアップが大きくなってしまい、光ディスク装置の小型軽量化ができないという問題がある。
波長が405nmの光源を用いた場合でも、特許文献3のように水晶の波長板で、波長504nmの光に対して1波長分(=504nm)の位相差が生じるようにすれば、波長が405nmの光に対しては位相差が波長の5/4(=506nm)となり、波長670nmの光に対しては位相差が波長の3/4(=502nm)となるため、波長405nm及び波長670nmの両方に対して1/4波長板として機能し、光学系を共通化することができる。また、波長490nmの光に対して1波長分(=490nm)の位相差が生じるようにすれば、波長が395nmの光に対しては位相差が波長の5/4となり、波長650nmの光に対しては位相差が波長の3/4となるため、波長395nm及び波長650nmの両方に対して1/4波長板として機能し、光学系を共通化することができる。しかしながら、水晶の光学特性(複屈折特性)は材料固有のもので特性を変えることは難しいため、2つの波長のうち、一方の波長を決めると、他方の波長が必然的に決まってしまい、任意の2つの波長を選択することが難しいという問題がある。
複屈折の波長分散の大きい樹脂(芳香族ポリスルファン系樹脂)を用いた波長板で同様に、波長が390nmの光に対しては位相差が波長の3/4となり、波長690nmの光に対しては位相差が波長の1/4となるように設計し、波長390nm及び波長690nmの両方に対して1/4波長板として機能し、光学系を共通化することができる。この波長板では、樹脂を用いているので、樹脂の分子構造を変えることで、ある程度は光学特性を変えることができ、任意の2つの波長に対応することができる。しかしながら、樹脂材料は、波長が短い領域では透過率の低下が生じ、405nm以下の波長では無視できない問題である。また、短い波長の光に対する劣化も生じ、経時劣化による光学特性が変化してしまうという問題がある。
さらに、特許文献3では、液晶とフィルムで位相可変型波長板を構成し、波長が405nmと650nm及び780nmの全ての光に対して位相差が波長の1/4とすることができるので、3つの異なる波長の光源を使用する場合でも、光学系を共通化することができる。しかしながら、樹脂製の波長板と同様に液晶とフィルムは波長が短い領域では透過率の低下が生じ、405nm以下の波長では無視できない問題である。また、短い波長の光に対する劣化も生じ、経時劣化による光学特性が変化してしまうという問題がある。
特許文献4の場合、微細周期構造で構成された波長板で、2つの異なる波長に対して位相差が、各々波長の1/4の奇数倍になるように構成されているが、位相差を調整する機能を備えていないため、対応できる波長は2波長固定であり、適用波長範囲が不十分である。
また、特許文献5によれば、微細周期構造で構成された波長板で、微細周期構造をオーバーラップさせ、そのオーバーラップ量を変えることで位相差を可変でき、広い波長範囲で1/4波長板として使用することができる。しかしながら、対応する波長範囲の全ての波長に対して位相差を1/4波長にするため、オーバーラップの可変量が非常に大きなものとなってしまう。
本発明の目的は、容易に構成可能な構造でオーバーラップ量の可変量を少なくして比較的波長の違いが大きい2つ以上の光に対しても共用できる波長板及び波長板ユニットを提供することである。
加えて、各々の波長領域内で反射の少ない1/4波長板を提供することを目的とする。
また、各々の波長領域内で透過率の高く、かつ、製造容易な1/4波長板を提供することを目的とする。
さらに、上記波長板を利用することで、2つ以上の光源の波長の違いが大きい場合でも、構造が簡単で互換性を持つ複数波長対応の光ピックアップ装置及び光ディスク装置を提供することを目的とする。
請求項1記載の発明の波長板は、対象となる複数の波長領域内の光の波長の1/2以下の微細周期構造が各々形成されてこれらの微細周期構造を半周期ずらし微細周期構造が互いに入り込むように対向配置させた2枚の基板と、これらの基板間の間隔を調整して前記微細周期構造のオーバーラップ量を可変させる間隔調整手段と、を備え、前記間隔調整手段は、各々の波長領域毎に位相差が1/4波長の異なる奇数倍となるように前記オーバーラップ量を可変させる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の波長板において、前記微細周期構造は、誘電体基板に当該基板表面に向かって幅が広がり当該基板内部に向かって幅が狭くなる形状の溝を微細周期で形成された構造である。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の波長板において、前記基板は、石英ガラス基板である。
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の波長板において、前記基板は、微細周期構造が形成されていない側の面に、対象となる波長領域内の光に対して反射を防止する反射防止機能部を有する。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の波長板において、前記反射防止機能部は、断面が鋸歯状の溝を対象となる波長領域内の光の波長の1/2以下の周期で形成してなる。
請求項6記載の発明は、請求項4記載の波長板において、前記反射防止機能部は、円錐状又は多角錘状の構造体を対象となる波長領域内の光の波長の1/2以下の周期で形成してなる。
請求項7記載の発明の光ピックアップ装置は、択一的に駆動されて各々波長の異なる光を出射する2つ以上の光源と、光ディスクに対向する対物レンズと、この対物レンズを変位移動させるアクチュエータと、請求項1ないし6の何れか一記載の波長板と、前記光源から発せられた光を前記波長板を経て前記対物レンズへ導く照明光学系と、前記光ディスクからの反射光に基づく信号を検出する検出器と、前記反射光を前記波長板を経て前記検出器へ導く検出光学系と、を備える。
請求項8記載の発明は、請求項7記載の光ピックアップ装置において、前記対物レンズが色消しレンズである。
請求項9記載の発明の光ディスク装置は、光ディスクを回転させる回転駆動機構と、前記光ディスクに対して前記対物レンズを介して光を照射する請求項9又は10記載の光ピックアップ装置と、装填された前記光ディスクの種類を識別するディスク識別手段と、このディスク識別手段による識別結果に基づき前記光ピックアップ装置中の光源の何れかを択一的に駆動する光源駆動手段と、前記光ピックアップ装置中の前記検出器により検出されたサーボ信号に基づき前記アクチュエータを駆動させるサーボ制御手段と、前記検出器により検出された情報信号に基づき前記光ディスクに記録されたデータを再生する信号再生手段と、前記ディスク識別手段による識別結果に基づき択一的に駆動される前記光源の波長に対して前記波長板が1/4波長板として作用するように前記間隔調整手段を制御する間隔調整制御手段と、を備える。
請求項10記載の発明は、請求項9記載の光ディスク装置において、外部から入力されたデータに基づき前記光ディスクに記録する信号に変換する書込み信号処理手段を備える。
請求項11記載の発明の波長板ユニットは、請求項1ないし6の何れか一記載の波長板と、外部信号に基づき前記波長板が1/4波長板として作用するように前記間隔調整手段を制御する間隔調整制御手段と、を備える。
請求項1記載の発明の波長板によれば、基本的には、水晶等の複屈折特性はその物質固有のものでありその特性を殆ど変えることはできないが、複屈折構造は材料や形状を変えることにより複屈折特性を容易に制御することができるので、2つの異なる波長の違いが、例えば405nmと660nmとの如く、比較的大きい場合であっても共用可能となり、当該波長板を用いる光学系の簡素化に寄与する。ここに、微細周期構造のオーバーラップ寮の可変により位相差量が可変とすることにより、単一の複屈折構造の場合と異なり、所望の波長範囲内の全ての波長の光に対してその偏光状態を変化させることが可能となり、共用範囲の広い波長板を提供することができ、この際、波長領域内の光の波長の1/2以下の微細周期構造を有する2枚の基板の組合せよりなるので、容易に構成可能な構造で実現できる。加えて、微細周期構造のオーバーラップ量を変えることで位相差を可変としているが、対応する波長領域を単一の波長領域ではなく複数の波長領域に分け、各々の波長領域毎に位相差が1/4波長の異なる奇数倍となるようにしたので、各々の波長領域毎に必要最低限のオーバーラップ量の可変で1/4波長板としての機能を持たせることができる。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様な基本的な作用・効果に加えて、構造的に、基板の微細周期構造が形成されている部分と形成されていない部分との境界、及び、微細周期構造がオーバーラップしている部分とオーバーラップしていない部分との境界での屈折率を緩やかに変化させることができ、基板の微細周期構造が形成されている部分と形成されていない部分との境界、及び、微細周期構造がオーバーラップしている部分とオーバーラップしていない部分との境界での反射を抑えることができる。
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の波長板に関して、石英ガラス基板に微細周期で溝を形成し微細周期構造を形成しているので、広い波長範囲(特に、短い波長)において透過率が高く、複数の波長範囲で波長板として使用するときにも、透過率の低下を少なくすることができ、また、他のガラスに比べてドライエッチングによる加工性が良く、作製を容易にすることができる。
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は2記載の波長板において、基板は、微細周期構造が形成されていない側の面に、対象となる波長領域内の光に対して反射を防止する反射防止機能部を有するので、微細周期構造が形成されていない側の面での反射を抑えることができる。
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の波長板において、反射防止機能部は、断面が鋸歯状の溝を対象となる波長領域内の光の波長の1/2以下の周期で形成してなるので、基板表面での急激な屈折率の変化を抑えることができ、裏面での反射を抑えることができ、簡単な構造で対象となる波長領域内の全ての波長の光に対して反射を抑えることができる。
請求項6記載の発明によれば、請求項4記載の波長板において、反射防止機能部は、円錐状又は多角錘状の構造体を対象となる波長領域内の光の波長の1/2以下の周期で形成してなるので、基板表面での急激な屈折率の変化を抑えることができ、裏面での反射を抑えることができ、簡単な構造で対象となる波長領域内の全ての波長の光に対して反射を抑えることができる。
請求項7記載の発明の光ピックアップ装置によれば、比較的波長の違いが大きい複数の光に対して1/4波長板として機能する1つの波長板を用いているので、複数波長対応の光ピックアップ装置を簡単な構成で、かつ、小型に実現することができる。
請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の光ピックアップ装置を実現する上で、複数の波長に対して収差の小さい対物レンズとすることができ、信頼性の高い複数波長対応の光ピックアップ装置を容易に実現することができる。
請求項9記載の発明の光ディスク装置によれば、請求項7又は8記載の光ピックアップ装置を備えることにより、異なる複数の波長を対象とする光ディスクに対して互換性を持ち、かつ、小型の光ディスク装置を容易に実現することができる。
請求項10記載の発明によれば、請求項9記載の光ディスク装置において、追記型光記録媒体又は書換え型光記録媒体に対して記録可能な光ディスク装置の場合にも同様に適用することができる。
請求項11記載の発明の波長板ユニットによれば、外部信号に基づき間隔調整手段を制御して基板間の間隔を調整することにより、目的とする偏光状態へ変化させるための所望の位相差量への調整を簡単かつ確実に行える位相板ユニットを提供でき、光ピックアップ装置等に好適に適用することができる。
本発明を実施するための最良の形態について図面に基づいて説明する。
[第一の実施の形態]
本発明の第一の実施の形態を図1ないし図7に基づいて説明する。本実施の形態は、例えば約380nm〜約800nmなる所望の波長領域内の全ての波長の光に対してその偏光状態を変化させる機能を持たせた波長板への適用例を示す。
図1は本実施の形態の波長板1をイメージ的に示す縦断側面図、図2はその微細周期構造部分を拡大して示す側面図である。本実施の形態の波長板1は、基本的には対象となる波長領域内の光の波長に対して1/2以下の周期なる非常に微細な凹凸の繰返しによる微細周期構造2,3が各々形成された石英ガラス基板等による2枚の基板4,5を、これらの微細周期構造2,3を半周期ずらして互いに入り込むように対向配置させて形成される組合せ複屈折構造を有する構成とされ、これらの2枚の基板4,5を間隔調整手段としてのアクチュエータ6,7を介して接続することにより、微細周期構造2,3同士の挿入量(オーバーラップ量)が調整可能な構成とされている。アクチュエータ6,7としては、ボイスコイルモータ、ピエゾアクチュエータ等を用い得る。微細周期構造2,3同士のオーバーラップ量の調整により位相差量が可変とされている。
このような微細周期構造2,3による複屈折特性の原理・作用について説明する。図3は、微細周期構造の原理を示す斜視図である。一般に、本来は複屈折特性を持たない屈折率の異なる平板を光の波長より十分小さい(<λ/2)周期で並べた図3に示すような微細周期構造Pによれば、複屈折特性が発生することが知られている(Principle of Optics, Max Born and Emil Wolf, PERGAMON PRESS LTD.)。偏光方向が溝に平行な光の屈折率n//と,垂直な光の屈折率n⊥は各々(1)(2)式で示される。
式中、n1は微細周期構造Pが形成された物質の屈折率、n2は当該微細周期構造P中の溝を埋める物質の屈折率であり、また、tは微細周期構造Pの凸部の幅w1と凹部(溝部)の幅w2とのデューティ比であり、
t=w1/(w1+w2) ……………………(3)
式で示される。
このように、水晶や方解石の複屈折特性はその物質固有のものであり、その特性を変えることが殆どできないものであるのに対して、微細周期構造Pのような複屈折構造は、材料や形状を変えることで複屈折特性を容易に制御することが可能である。
いま、偏光方向が溝に平行な光と垂直な光との遅延量(位相差量)Reは、微細周期構造Pの高さ(溝の深さ)をdとすると、
Re=(n//−n⊥)d ……………………(4)
となる。従って、微細周期構造Pの形状(デューティ比t及び溝の深さd)により、任意に遅延量(位相差量)を変化させることができる。
本実施の形態の波長板1は、基板4,5として石英ガラス基板を用い、その表面に表1に示すような形状の微細周期構造2,3を形成したものである。
このように微細周期構造2,3を構成し、アクチュエータ6,7により上下の石英ガラスによる基板4,5の間隔を変えることで、各々の微細周期構造2,3の凸部が他方の微細周期構造2,3の凹部(溝)2a,3aへ挿入されて凸部同士が重なる挿入量(オーバーラップ量)を変えることができる。各々の石英ガラスによる基板4,5に形成されている微細周期構造2,3のデューティ比は0.4であるが、凸部同士が重なるオーバーラップ部分では凸部の幅w1は変わらないものの周期が半分となるためデューティ比が0.8となる。従って、オーバーラップ量を変えることで位相差量(遅延量)を任意に調整することが可能となる。
ここに、本実施の形態では、アクチュエータ6,7により微細周期構造2,3のオーバーラップ量を可変させる上で、対象となる波長領域約380nm〜約800nmを、例えば500nmを境として、380nm〜500nmなる波長領域と500nm〜800nmなる波長領域とに分け、各々の波長領域毎に位相差が1/4波長の異なる奇数倍、例えば、380nm〜500nmなる波長領域では5/4λ、500nm〜800nmなる波長領域では3/4λとなるようにオーバーラップ量を可変させることを特徴としている。
図4は本実施の形態方式で位相差が各々の波長でその波長の1/4の奇数倍になるように調整したときの挿入量(オーバーラップ量)と遅延量(位相差量)との関係を示す特性図である。波長が380nmから500nmなる領域では位相差が各々の波長において波長の5/4となっており、1/4波長の5倍なる奇数倍になっているので1/4波長板として機能する。また、波長が500nmから800nmなる領域では位相差が各々の波長において波長の3/4となっており、1/4波長の3倍なる奇数倍になっているので、この波長範囲でも1/4波長板として機能する。この場合に要するオーバーラップ量は最大で約2600nmで済む。ちなみに、対象となる波長範囲を分割せず、380nm〜800nmなる1つの波長範囲として場合に要するオーバーラップ量は最大で約3700nmとなり、オーバーラップ量の可変量が大きいことがわかる。
なお、本実施の実施の形態のように、2つの波長領域は連続していても良いが、波長板を使用する上で問題がなければ2つの波長領域は連続していなくとも良く、また、一部オーバーラップしていても構わない。さらに、波長領域の区分けは2つに限らず3つ以上の波長領域に分けるようにしてもよい。
また、本実施の形態では、微細周期構造2,3を形成する基板4,5として石英ガラス基板を用いたが、他のガラスや他の材料でも良い。しかしながら、石英ガラスで基板構成した場合には、広い範囲の波長で高い透過率が得られ、また、光による劣化がほとんどないので、光の利用効率を高くすることができ、特に波長が短い領域では非常に有効である。
次に、このような波長板1の製造方法について、作製プロセスを示す図5を参照して説明する。まず、石英ガラス基板4,5上にEB(電子ビーム)レジスト8を塗布する(図5(a)参照)。その後、EB描画装置でパターンを描画し、現像する(図5(b)参照)。次に、このレジストパターン9に対して金属膜10を真空蒸着で成膜し(図5(c)参照)、レジスト剥離液によるリフトオフ法で金属膜パターン11を形成する(図5(d)参照)。金属膜パターン11が形成された石英ガラス基板4,5をCF4,C4F8,CHF3などのフロロカーボンガスを用いてドライエッチングを行い、微細周期構造2,3を形成する(図5(e)参照)。そして、金属膜パターン11を形成していた金属膜10を除去する(図4(f)参照)。最後にこのように形成された2枚の石英ガラス基板4,5を微細周期構造2,3側を対向させてアクチュエータ6,7を介して重ね合わせる。
なお、ドライエッチング装置はECRエッチング装置を用いているが、ICPエッチング装置など他のエッチング装置でも構わない。
また、微細周期構造2,3を形成する基板4,5の材質として石英ガラス基板を用いているが、使用する光源の波長において透明な材質であれば他の材料でも良い。溝を埋める物質も本実施の形態では空気としているが、使用する光源の波長において透明なものでれば、潤滑剤などを充填しても良い。当然ながらこれらの場合には用いた材質の屈折率で形状等を設計する必要がある。
また、上述したような作製方法などを用いて微細周期構造2(又は3)が形成された型(スタンパ)を作製し、この型の微細周期構造2(又は3)に溶融したプラスチックを流し込んで圧力をかけて整形(スタンピング)する方法で波長板1を作製するようにすれば、量産が可能で、低コストにて作製することができる。
ここに、図示例では、微細周期構造2,3を形成した2枚の石英ガラス4,5による組合せ複屈折構造と一対のアクチュエータ6,7(間隔調整手段)とよりなる1組で、1/4波長板1を構成したが、本実施の形態においては、これらを少なくとも2組備えることにより1/4波長板を構成してもよい。少なくとも2組備える構成とした場合には、これらの組全体で1/4波長板1として機能すればよいので、1組当りの遅延量は少なくてよく、このため、各々の基板4,5に形成する微細周期構造用の溝2a,3aの深さを浅くすることができ、作製が容易になる。
また、本実施の形態では、図2に示したように、基板4,5に断面が矩形状の溝を形成して、微細周期構造2,3を構成するようにしたが、溝の断面形状は必ずしも矩形形状でなくてもよい。
図6は、微細周期構造部分の変形例を拡大して示す側面図である。例えば、本変形例として、図6に示すように、溝2a,3aの端部付近の断面形状を、基板(誘電体基板)4,5表面方向に向かっては溝幅が滑らかに広くなるように形成し(部分A)、基板4,5内部方向に向かっては溝幅が滑らかに狭くなるように形成すると(部分B)、光の入射方向で屈折率の変化を見た場合に、基板4,5と微細周期構造2,3の境界部分や、微細周期構造2,3のオーバーラップしている部分とオーバーラップしていない部分での境界部分で屈折率が緩やかに変化すように構成することができるので、基板4,5と微細周期構造2,3の境界部分や、微細周期構造2,3のオーバーラップしている部分とオーバーラップしていない部分での境界部分で光が反射するのを低減させることができる。なお、この反射低減効果はどの波長の光に対しても有効である。
なお、例えば図6に示すような構成例に関して、本実施の形態においては、例えば図7に示すように、基板4,5の溝が形成してある面とは反対側の面(微細周期構造2,3が形成されていない側の面)に円錐状又は多角錐状の構造体を反射防止機能部12,13として対象となる波長範囲内の光の波長の1/2以下の周期で形成すると、この面での光の反射も低減させることができる。この反射低減効果も、どの波長の光に対しても有効である。また、反射防止機能部として形成する構造体の形状は鋸歯状でも良い。
なお、図6に示したような微細周期構造形状は、エッチング条件を変えることによって形成することができ、図7に示したような、円錐状や多角錐状或いは鋸歯形状も図5に示した方法で形成することができる。
[第二の実施の形態]
本発明の第二の実施の形態を図8及び図9に基づいて説明する。本実施の形態は、前述したような任意の複数波長に対して1/4波長板として共用可能な波長板1を備える光ピックアップ装置21への適用例を示す。
図8は、本実施の形態の光ピックアップ装置を示す光学系構成図である。本実施の形態の光ピックアップ装置21は、AlGaAsレーザを光源とし波長780nmの光を発する第1の光源ユニット22と、AlGaInPレーザを光源とし波長660nmの光を発する第2の光源ユニット23と、GaNレーザを光源とし波長405nmの光を発する第3の光源ユニット24と、光ディスク25に対向する対物レンズ26と、この対物レンズ26を変位移動させるアクチュエータ27と、波長405nm及び波長660nmの光を透過し波長780nmの光を反射するように設計された第1の誘電体多層膜ミラー28と、波長405nmの光を透過し波長660nmの光を反射するように設計された第2の誘電体多層膜ミラー29と、前述の波長板1による1/4波長板と、誘電体多層膜ミラー28,29側からの光を対物レンズ26側に向けて90°偏向させる立上げミラー30とにより構成されている。
図9は、光源ユニットの断面構造図である。ここに、第1の光源ユニット22は検出器を一体に有するもので、図9に示すように、半導体レーザ(AlGaAsレーザ)31と検出器としての分割フォトダイオード32と偏光ホログラム33とから構成されている。34はヒートシンクである。第2の光源ユニット23も検出器を一体に有するもので、図9に示すように、半導体レーザ(AlGaInPレーザ)35と検出器としての分割フォトダイオード36と偏光ホログラム37とから構成されている。38はヒートシンクである。第3の光源ユニット24も検出器を一体に有するもので、図9に示すように、半導体レーザ(GaN)39と検出器としての分割フォトダイオード40と偏光ホログラム41とから構成されている。42はヒートシンクである。
この結果、偏光ホログラム33,37,41、誘電体多層膜ミラー28,29、立上げミラー30により、半導体レーザ31,35又は39の何れかから発せられた光を波長板1を経て対物レンズ26へ導く照明光学系43が構成されている。また、立上げミラー30、誘電体多層膜ミラー29,28、偏光ホログラム33,37,41により、光ディスク25からの反射光を波長板1を経て分割フォトダイオード32,36又は40へ導く検出光学系44が構成されている。
なお、半導体レーザ31,35又は39は対象となる光ディスク25の種類に応じて択一的に駆動される。
このような構成において、半導体レーザ31,35又は39から出射したレーザ光は偏光面に対して光学軸が45°をなすように配置され1/4波長板として機能する波長板1を通過することにより直線偏光から円偏光に変換され、対物レンズ26によって光ディスク25の記録面に集光する。集光したレーザ光は記録面で反射され、この反射光は再び対物レンズ26を経て1/4波長板として機能する波長板1で円偏光から直線偏光に変換されて光源ユニット22,23又は24に戻ってくる。レーザ光が光ディスク25の記録面で反射する際に円偏光の回転方向が逆転しているので、光源ユニット22,23又は24に戻ってきたレーザ光は、偏光面が出射光とは90°変わっており、当該光源ユニット22,23又は24の偏光ホログラム33,37,41に形成された回折格子によって分割フォトダイオード32,36又は40上に回折パターンが形成されるので、光ディスク25の記録面に記録された信号を検出することができる。
従って、本実施の形態によれば、比較的波長の違いが大きい複数、ここでは3つの光に対して1/4波長板として機能する1つの波長板1を用いているので、複数、例えば3波長対応の光ピックアップ装置21を簡単な構成で、かつ、小型に実現することができる。
なお、対物レンズ26は、単レンズで複数の異なる波長に対応した設計はレンズ材の屈折率が波長に変化するため困難であり、各々の波長毎に複数備え、光ディスク25の種類によって機械的に入替えるような構成でも良い。しかし、複数の対物レンズを備えた構成は、光ピックアップ装置が大きくなってしまうので、焦点距離が正と負の材料が異なる(屈折率が異なる)2枚のレンズ26a,26bを貼り合せた色消しレンズ構成とし、複数の波長で収差が発生しないように設計し、1つの対物レンズ26で複数の波長に対応する構成にすることが望ましい。
また、光ディスク25の種類によって(光源波長によって)対物レンズ26の開口数(NA)が異なる場合には、開口径を変更することができるアパーチャ(例えば、機械的に変更するものや液晶を用いて変更するものなど)を用いて光ピックアップ装置を構成すればよい。
[第三の実施の形態]
本発明の第三の実施の形態を図10に基づいて説明する。本実施の形態は、前述したような光ピックアップ装置21を備える光ディスク装置への適用例を示す。
図10は、光ディスク装置の制御系等を示す概略ブロック図である。光ピックアップ装置21は光ディスク25の半径方向に移動するキャリッジアクチュエータ51に取り付けられている。52は光ディスク25を回転させる回転駆動機構の主要部をなすスピンドルモータであり、中央制御装置53に接続されたスピンドル制御部54により回転動作(回転速度)等が制御される。また、光ピックアップ装置21と中央制御装置53との間では、アクチュエータ27中のフォーカスアクチュエータ27Fに対してはフォーカス制御部55、トラックアクチュエータ27Tに対してはトラック制御部56が接続されている。これらのフォーカス制御部55、トラック制御部56によりサーボ制御手段が構成されている。また、これらの制御部55,56に対しては検出器32,36又は40により検出されるフォーカス信号、トラック信号も取り込まれる。検出器32,36又は40により検出される情報信号は信号再生手段としての信号復調部57により再生データに変換される。さらに、キャリッジアクチュエータ51は中央制御装置53に接続されたキャリッジ制御部58によりシーク動作が制御される。また、半導体レーザ31,35又は39は中央制御装置53に接続された光源駆動手段としてのLD制御部59によりその発光のオン・オフや発光パワーが制御される。
さらに、本実施の形態の光ディスク装置では、何れの半導体レーザ31,35又は39を駆動させるか等の制御に供するために、スピンドルモータ52のターンテーブル上に装填された光ディスク25の種類を識別するための光ディスク識別機構60が設けられており、中央制御装置53、LD制御部59及び制御部55,56等に接続されている。
光ディスク識別機構60によるディスク識別法・光源選択法について簡単に説明する。光ディスク25装着後、例えば、第1の光源ユニット22の半導体レーザ31を点灯させてフォーカス信号を検出しながら対物レンズ26をフォーカス方向に移動させて光ディスク25の記録面に焦点を合わせる。合焦点後、今度はトラック方向に対物レンズ26を移動し、トラック信号の検出を行う。この時点でトラック信号が検出された場合には、そのまま、第1の光源ユニット22の半導体レーザ31を用いて再生の動作を行う。一方、トラック信号が検出されなかった場合には、第1の光源ユニット22の半導体レーザ31を消灯し、第2の光源ユニット23の半導体レーザ35を点灯させ、フォーカス信号を検出しながら対物レンズ26をフォーカス方向に移動させて光ディスク25の記録面に焦点を合わせ、トラック方向に対物レンズ26を移動し、トラック信号の検出を行う。この時点でトラック信号が検出された場合には、そのまま、第2の光源ユニット23の半導体レーザ35を用いて再生の動作を行う。一方、トラック信号が検出されなかった場合には、第2の光源ユニット23の半導体レーザ35を消灯し、第3の光源ユニット24の半導体レーザ39を点灯させ、フォーカス信号を検出しながら対物レンズ26をフォーカス方向に移動させて光ディスク25の記録面に焦点を合わせ、トラック方向に対物レンズ26を移動し、トラック信号の検出を行い、第3の光源ユニット24の半導体レーザ39を用いて再生動作を行う。
さらに、本実施の形態においては、光ディスク識別機構60による識別結果に基づき択一的に駆動される半導体レーザ31,35又は39の各々の波長に対して波長板1が1/4波長板として作用するようにアクチュエータ6,7を制御する間隔調整制御手段としての波長板制御部61が設けられている。この場合、光ディスク識別機構60による識別結果を受けた中央制御装置53が波長板制御部61に対して外部信号として波長板1におけるオーバーラップ量の調整量を指示することになる。
従って、本実施の形態によれば、前述したような複数、例えば3波長対応の光ピックアップ装置21を備えることにより、異なる波長を対象とする種類の異なる光ディスク25に対して互換性を持ち、かつ、小型の光ディスク装置を容易に実現することができる。
なお、図10に示すブロック図において、破線で示すように、外部から入力された記録データを書込み信号に変換する書込み信号処理手段としての信号変調部62をLD制御部59に接続して設けることにより、追記又は書換え可能な光ディスク25に対して記録可能な光ディスク装置となる。
また、本実施の形態で用いた波長板1と波長板制御部61とをユニット構成とし、より一般的な波長板ユニットとしてもよい。同様に、波長板1における微細周期構造2,3のオーバーラップ量を検出する検出手段と、この検出手段による検出結果に基づき間隔調整手段としてのアクチュエータ6,7を制御する間隔調整制御手段とを備える波長板ユニットとして構成し、位相差量を規定する微細周期構造2,3のオーバーラップ量の検出結果に基づきアクチュエータ6,7を制御して基板4,5間の間隔を調整することにより、偏光状態へ変化させるための所望の位相差量への調整を簡単かつ確実に行えるようにしてもよい。
この場合の検出手段としては、波長板1に変位センサを設けることにより直接的に検出するようにしてもよく、或いは、光ピックアップ装置21中に実装される場合を想定して検出光学系44により検出される光量に基づき間接的に検出するようにしてもよく、さらには、これらを併用しても良い。変位センサとしては、容量型変位センサや、リニアスケールなどを用いることができる。挿入量を調整するアクチュエータとしては、ボイスコイルモータや、ピエゾアクチュエータなどを用いることができる。