JP2006045206A - 機能性高分子複合体の製造方法 - Google Patents

機能性高分子複合体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2006045206A
JP2006045206A JP2005193186A JP2005193186A JP2006045206A JP 2006045206 A JP2006045206 A JP 2006045206A JP 2005193186 A JP2005193186 A JP 2005193186A JP 2005193186 A JP2005193186 A JP 2005193186A JP 2006045206 A JP2006045206 A JP 2006045206A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
functional
nucleic acid
spacer
molecule
binding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2005193186A
Other languages
English (en)
Inventor
Keiko Oka
桂子 岡
Akeshi Fujita
明士 藤田
Michiyo Takagi
理代 高木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2005193186A priority Critical patent/JP2006045206A/ja
Publication of JP2006045206A publication Critical patent/JP2006045206A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

【課題】様々な機能性分子を任意にナノメートルオーダーの距離で配列させ、溶液中での機能性分子間の距離を一定に設定して制御し、機能性高分子の種類の組み合わせを容易に変えることができ、任意の溶液中で機能性分子の機能を損なうことなく簡便にスペーサー分子に結合させることができる、機能性高分子複合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】生体高分子に対する結合活性を有する少なくとも2つの機能性分子を、該機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなる二本鎖のスペーサーを介して配置するように該スペーサーに結合させて、少なくとも2つの機能性分子が該スペーサーを介して連結した構造を有する機能性高分子複合体を得ることを特徴とする、少なくとも2つの機能性分子を有する機能性高分子複合体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、同一種の機能性分子又は異なる種の少なくとも2つの機能性分子が核酸スペーサーを介して連結した機能性高分子複合体の製造方法に関する。
物質の評価、医療等の用途に細胞を利用する場合、細胞本来の性質を再現させるために、生体外、すなわち、人工的な基材の上で、細胞の機能、例えば、接着、増殖、分化、未分化、細胞死等を精緻に制御する技術が必要となる。本来の性質を失った細胞の使用は、例えば、薬物の作用の誤った解釈、移植した細胞の生体に対する不適合等を招く場合があるという欠点がある。そのため、人工基材を種々改変する試みが活発になされている。その際に、細胞、特に、細胞表面受容体が認識できる細胞接着性の機能性分子が重要な機能を担うことになる。
機能性分子として、生体内から抽出した細胞外マトリクスであるコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン等を用いて、人工基材を被覆し、生体内と同等の環境を再現することで細胞機能を制御する研究が古くから行なわれている(例えば、非特許文献1、2参照)。また、機能性分子として、ホルモンやサイトカインを用いて、人工基材を被覆する方法を利用することによっても、生体内と同等の環境を再現することで細胞機能を制御する研究がなされている(例えば、非特許文献3参照)。
しかし、抽出した細胞外マトリクスによって細胞の機能を制御する方法では、生体内から精製できる細胞外マトリクスの種類が実質的に限られること、微量の抽出困難な細胞外マトリクスを用いることが実質的にできないこと、純度や不純物等の影響により再現性の高い結果を得ることが困難であること等の欠点がある。そのため、それぞれの細胞の、それぞれの機能に見合った環境を、人工基材上に設計して再構成することは困難であるのが現状である。
そこで、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等の細胞外マトリクスに含まれたアミノ酸配列を有し、かつ細胞表面受容体が認識できる合成ペプチド分子を機能性分子として用い、密度及び種類を種々変更して人工基材上に被覆して細胞機能を制御する試みもなされている(例えば、非特許文献4、5)。
前記機能性分子を配列させる方法の1つとして、ナノメーターの長さを有する高分子スペーサーにより機能性分子同士を連結する技術(スペーサー法)が報告されている。
例えば、ダイ(W.Dai)らは、フィブロネクチン中に含まれる配列であって、細胞表面受容体との相互作用に関与するアミノ酸配列から構成される機能性分子であるRGD分子同士又はラミニン中のアミノ酸配列から構成される機能性分子であるYIGSR分子同士を、平均分子量約3500のポリエチレングリコール鎖を介して、結合させ、細胞凝集剤を製造することを報告している(例えば、非特許文献6参照)。
また、川崎らは、フィブロネクチン中に含まれるアミノ酸配列から構成される機能性分子であるRGD分子と、そのシナジー配列であるPHSRN分子とを、平均分子量約2500〜約3400のポリエチレングリコール鎖を介して結合させ、ヘテロリガンド分子を製造することを報告している(非特許文献7及び8参照)。同様に、フィブロネクチン中のアミノ酸配列から構成される機能性分子であるRGDとEILDVとを結合させ、あるいはラミニン中の機能性分子であるPDSGRとYIGSRとを結合させ、分子を製造することが報告されている(例えば、非特許文献9及び10参照)。
PP.Lanza,R.Langer,J.Vacanti,Principles of Tissue Engineering,2nd Ed.,Academic Press(2000) 小出輝、林利彦 編、細胞外マトリクス−基礎と臨床−、愛智出版(2000) Y.Ito,Biomaterials,20,2333(1999) U.Hersel,C.Dahmen,H.Kessler,Biomaterials,24,4385(2003) H.Shin,S.Jo,AG.Mikos,Biomaterials,24,4353(2003) W.Dai,J.Belt,WM.Saltzman,Bio/Technology,12,797−801(1994) S.Yamamoto,Y.Kaneda,N.Okada,S.Nakagawa,K.Kubo,S.Inoue,M.Maeda,Y.Yamashiro,K.Kawasaki,T.Mayumi,Anti−Cancer Drugs,5,424−428(1994) Y.Suzuki,K.Hojo,I.Okazaki,H.Kamata,M.Sasaki,M.Maeda,M.Nomizu,Y.Yamamoto,S.Nakagawa,T.Mayumi,K.Kawasaki,Chem.Pharm.Bull.50(9),1229−1232(2002) M.Maeda,Y.Izuno,K.Kawasaki,y.Kaneda,y.Mu,y.Tsutsumi,KW.Lem,T.Mayumi,Biochem.Biophys.Res.Commun.,241,595−598(1997) M.Maeda,K.Kawasaki,Y.Mu,H.Kamada,Y.Tsutsumi,TJ.Smith,T.Mayumi,Biochem.Biophys.Res.Commun.,248,485−489(1998)
本発明は、1つの側面では、様々な機能性分子を任意にナノメートルオーダーの距離で配列させること、溶液中での機能性分子間の距離を一定に設定して制御すること、機能性高分子の種類の組み合わせを容易に変えることができること、任意の溶液中で機能性分子の機能を損なうことなく簡便にスペーサー分子に結合させることができる等の少なくとも1つを可能にする、機能性高分子複合体の製造方法を提供することにある。なお、本発明の他の課題は、本明細書の記載等から明らかである。
すなわち、本発明の1つの側面は、
〔1〕 生体高分子に対する結合活性を有する機能性分子と、機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなるスペーサーとが結合したものである少なくとも2種の機能性部位含有高分子(A)を対合させる、少なくとも2つの機能性分子を有する機能性高分子複合体の製造方法、
〔2〕 少なくとも2種の機能性部位含有高分子(A)に含まれるスペーサーが、それぞれ、互いに相補的に対合する配列を有する核酸又はその誘導体からなるスペーサーである、前記〔1〕記載の製造方法、
〔3〕 1) 生体高分子に対する結合活性を有する少なくとも1つの機能性分子と、該機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなるスペーサーとを結合させて、機能性部位含有高分子(A)を得る工程、及び
2) 前記工程1)で得られた少なくとも2種の機能性部位含有高分子(A)を対合させる工程、
を含む、前記〔1〕又は〔2〕記載の製造方法、
〔4〕 生体高分子に対する結合活性を有する少なくとも2つの機能性分子と該機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなるスペーサーとが結合したものである少なくとも1種の機能性部位含有高分子(A’)と、該核酸又はその誘導体と相補的に対合する相補鎖核酸又はその誘導体とを対合させる、少なくとも2つの機能性分子を有する機能性高分子複合体の製造方法、
〔5〕 生体高分子に対する結合活性を有する機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなる少なくとも2種のスペーサーが対合した高分子複合体(B)と、該機能性分子とを結合させる、少なくとも2つの機能性分子を有する機能性高分子複合体の製造方法、並びに
〔6〕 a) 生体高分子に対する結合活性を有する機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなる少なくとも2種のスペーサーを対合させて、高分子複合体(B)を得る工程、及び
b) 前記工程a)で得られた高分子複合体(B)と、機能性分子とを結合させる工程、
を含む、前記〔5〕記載の製造方法、
に関する。
本発明の機能性高分子複合体の製造方法によれば、様々な機能性分子を任意にナノメートルオーダーの距離で配列させることができるという優れた効果を奏するまた、本発明の機能性高分子複合体の製造方法によれば、機能性分子の位置関係をナノメートルオーダーで一定に制御された機能性高分子複合体を得ることができるという優れた効果を奏する。したがって、本発明の製造方法により得られた機能性高分子複合体によれば、機能性分子の位置関係がナノメートルオーダーで規定可能であり、本発明の製造方法により得られた機能性高分子複合体は、生体分子内あるいは生体分子間の距離を正確に推定する際に有用である。
本明細書において、ペプチドのアミノ酸配列は、慣用の生化学命名法に準拠したアミノ酸の1文字表記又は3文字表記により表される場合がある。かかる表記とアミノ酸との対応関係を以下に示す。A又はAla:アラニン残基;D又はAsp:アスパラギン酸残基;E又はGlu:グルタミン酸残基;F又はPhe:フェニルアラニン残基;G又はGly:グリシン残基;H又はHis:ヒスチジン残基;I又はIle:イソロイシン残基;K又はLys:リジン残基;L又はLeu:ロイシン残基;M又はMet:メチオニン残基;N又はAsn:アスパラギン残基;P又はPro:プロリン残基;Q又はGln:グルタミン残基;R又はArg:アルギニン残基;S又はSer:セリン残基;T又はThr:スレオニン残基;V又はVal:バリン残基;W又はTrp:トリプトファン残基;Y又はTyr:チロシン残基;C又はCys:システイン残基。
本発明は、1つの側面では、生体高分子に対する結合活性を有する少なくとも2つの機能性分子を、該機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなる二本鎖のスペーサーを介して配置するように該スペーサーに結合させて、少なくとも2つの機能性分子が該スペーサーを介して連結した構造を有する機能性高分子複合体を得ることを特徴とする方法である。
本発明の製造方法は、機能性高分子複合体の製造に際して、核酸又はその誘導体からなるスペーサーが用いられていることに1つの大きな特徴がある。
したがって、本発明の製造方法によれば、様々な機能性分子を配列させることができという優れた効果を発揮する。また、本発明の製造方法によれば、前記機能性分子間の位置関係をナノメートルオーダーで一定に制御された機能性高分子複合体を得ることができるという優れた効果を発揮する。
本明細書において、「スペーサー」とは、2つ以上の機能性分子間に配置され、かつ隣接する該機能性分子を1つの分子上または対合した状態の複数の分子からなる複合体上においてシス配置又はトランス配置で結合できるものをいう。本発明の製造方法で用いられるスペーサーは、核酸又はその誘導体の基本骨格を有する材料で構成されるスペーサーである。
なお、本明細書において、核酸又はその誘導体からなるスペーサーを、「核酸スペーサー」ともいう。
本発明の製造方法によれば、同一種又は異なる種の少なくとも2つの機能性分子が二本鎖の核酸スペーサーを介して連結した構造を有する機能性高分子複合体を得ることができる。
前記機能性高分子複合体は、互いに異なる核酸鎖に少なくとも1つの機能性分子が配置された構造を有するもの〔「機能性高分子複合体1」ともいう;例えば、図1の(A)等参照〕であってもよく、一方の一本鎖の核酸鎖上に少なくとも2つの機能性分子が配置され、かつ他方の一本鎖の核酸鎖上には存在しない構造を有するもの〔「機能性高分子複合体2」ともいう;例えば、図1の(B)等参照〕であってもよい。
したがって、本明細書において、「スペーサーを介して配置する」とは、少なくとも2つの隣接する機能性分子が、二本鎖のスペーサー上、シス配置であること及び少なくとも2つの隣接する機能性分子が、二本鎖のスペーサー上、トランス配置であることを包含する概念を意味する。
本発明の機能性高分子複合体の製造方法において、機能性分子の種類、数、機能性分子間の距離等は、目的に応じて選択されうる。
本明細書において、前記「機能性分子」とは、生体高分子との間で結合活性を有する、合成又は天然の分子をいう。ここで、前記生体高分子としては、例えば、細胞、細胞外マトリクス、細胞間接着の受容体、その他各種生体組織表面におけるタンパク質、ホルモン、サイトカイン(増殖因子)、抗体、糖質等が挙げられる。
前記機能性分子の結合活性は、例えば、表面プラズモン解析、ゲルシフトアッセイ、ファージディスプレイ法等により、評価されうる。例えば、表面プラズモン解析による結合活性の評価は、生体高分子を固定化したチップに、評価対象の機能性分子を含有した溶液を、一定の流速で、送液し、適切な検出手段により相互作用を検出することにより行なわれうる。前記検出手段としては、例えば、蛍光強度、蛍光偏向度等による光学的検出手段;マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF MS)、エレクトロスプレー・イオン化質量分析計(ESI−MS)等の質量分析計;これらの組み合わせ等が挙げられる。ここで、機能性分子と生体高分子とからなる複合体の形成を示すセンサーグラムが呈示された場合、該機能性分子が結合活性を有することの指標となる。
本発明の製造方法においては、前記「少なくとも2つの機能性分子」は、互いに同一又は異なる機能性分子であってもよい。
本発明の製造方法に用いられる機能性分子は、化学的に誘導体化されたものであってもよい。
また、本明細書において、前記「受容体」とは、細胞に存在し、各種の生理活性物質を特異的に認識し、該生理活性物質の作用を伝達し発現する生体高分子をいう。前記受容体としては、例えば、細胞内に存在する受容体(以下、細胞内受容体ともいう)、形質膜上に存在する受容体(以下、細胞表面受容体ともいう)等が挙げられる。
細胞外マトリクスとしては、例えば、コラーゲン(例えば、プロコラーゲン等)、エラスチン、フィブロイン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エンタクチン、テネイシン、アグリン、アンカリン、トロンボスポンジン、エンタクチン、オステオポンチン、オステオカルシン、フィブリノーゲン、プロテオグリカン等が挙げられる。また、前記プロテオグリカンとしては、例えば、アグリカン、アグリン、パールカン、デュリン、フィブロモジュリン、ブレビカン等が挙げられる。
なお、本発明の製造方法においては、前記細胞外マトリクスに由来する一部分の構造、すなわち、生体内の細胞マトリクスの断片又は該断片に対応する合成ペプチドを、機能性分子として用いてもよい。
前記「生体内の細胞マトリクスの断片」とは、細胞外マトリクスの一部分を化学的又は酵素的に切断し精製後に得られる、ある特定の細胞表面受容体が結合可能な精製断片をいう。前記生体内の細胞マトリクスの断片としては、特に限定されないが、例えば、CNBr処理されて得られるI型コラーゲンの精製断片(例えば、WD. Staatz, JJ. Walsh, T. Pexton, SA. Santoro, J. Biol. Chem., 265(9), 4778-4781(1990)に記載の断片等);CNBrやさらに必要に応じてトリプシン、サーモライシン、コラゲナーゼ等のプロテアーゼで処理をしたIV型コラーゲンの精製断片(例えば、JA. Eble, R. Golbik, K. Mann, K. Kuhn, EMBO J., 12(12), 4795-4802(1993) に記載の方法により得られる三重らせん構造を有する断片;EC. Tsilibary, AS. Charonis, J. Cell. Biol., 103(6), 2467-2473(1986)に記載の方法により得られるNC1ドメイン等)、フィブロネクチンをトリプシン又はペプシン等のプロテアーゼで処理することにより得られる細胞接着性の断片(例えば、SK. Akiyama, E. Hasegawa, T. Hasegawa, KM. Yamada, J. Biol. Chem., 260(24), 13256-13260(1985)参照)等が挙げられる。
また、前記「生体内の細胞マトリクスの断片に対応する合成ペプチド」とは、細胞外マトリクスに含まれるアミノ酸配列を含有し、かつある特定の細胞表面受容体が結合できる最小のアミノ酸配列の単位を有する化学的に合成されたオリゴペプチドをいう。
本発明において機能性分子として利用されうる全てのペプチドには、目的に応じて、付加的なアミノ酸残基がそのN末端側及び/又はC末端側に結合していてもよい。
また、本発明において機能性分子として利用されうる合成ペプチドには、目的に応じて、非天然型アミノ酸、化学的な修飾基、L体及びD体のアミノ酸のどちらか一方又はその両方等が含まれていてもよい。
前記合成ペプチドとしては、特に限定されないが、例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、トロンボスポンジン等に共通して含まれ、受容体が結合する最小のアミノ酸配列の単位として、アミノ酸残基が3個結合したArg−Gly−Asp(RGD)配列等が挙げられる。
前記RGD配列を含む直鎖状の合成ペプチドであって、本発明において、機能性分子として用いうるペプチドのアミノ酸配列としては、具体的には、特に限定されないが、例えば、RGD、RGDS、RGDV、RGDT、RGDF、GRGD、GRGDG、GRGDS、GRGDF、GRGDY、GRGDVY、GRGDYPC、GRGDSP、GRGDSG、GRGDNP、GRGDSY、GRGDSPK、YRGDS、YRGDG、YGRGD、CGRGDSY、CGRGDSPK、YAVTGRGDS、RGDSPASSKP(配列番号:1)、GRGDSPASSKG(配列番号:2)、GCGYGRGDSPG(配列番号:3)、及びGGGPHSRNGGGGGGRGDG(配列番号:4)等が挙げられる。
また、RGD配列を含むペプチドを環状にすることで、受容体への結合活性を制御した機能性分子も本発明に利用することができる。
前記環状ペプチドとしては、特に限定されないが、例えば、GPen*GRGDSPC*A、GAC*RGDC*LGA、AC*RGDGWC*G、シクロ(RGDf(NMe)V)、シクロ(RGDfV)、シクロ(RGDfK)、シクロ(RGDEv)、シクロ(GRGDfL)、シクロ(ARGDfV)、シクロ(GRGDfV)等が挙げられる。なお、ペプチド配列を示すアミノ酸一文字表記に含まれる小文字は、D−アミノ酸を示す。また、前記「Pen」は、ペニシラミンを示し、「*」は、分子内でジスルフィド結合をしたシステイン残基を示す。以下も同様である。
本発明の製造方法では、前記RGD配列以外にも種々の細胞外マトリクスに由来する最小のアミノ酸配列の単位を利用することができる。
細胞外マトリクスの1つであるフィブロネクチン由来の最小アミノ酸配列としては、特に限定されないが、例えば、NGR、LDV、REDV、EILDV、KQAGDV等の配列が挙げられる。
また、細胞外マトリクスの1つであるラミニン由来の最小アミノ酸配列としては、特に限定されないが、例えば、LRGDN、IKVAV、YIGSR、CDPGYIGSR、PDSGR、YFQRYLI、RNIAEIIKDA(配列番号:5)等の配列が挙げられる。また、ラミニン由来の最小アミノ酸配列には、例えば、野水基義、蛋白質 核酸 酵素、第45巻、15号、2475−2482(2000)等に記載の細胞接着活性のあるペプチドの配列等も包含される。前記細胞接着活性のあるペプチドの配列としては、例えば、ラミニンのα1鎖に由来するRQVFQVAYIIIKA(配列番号:6)、α1鎖Gドメインに由来するRKRLQVQLSIRT(配列番号:7)等が挙げられる。
同様に、細胞外マトリクスの1つであるI型コラーゲン由来の最小アミノ酸配列としては、特に限定されないが、例えば、DGEA、KDGEA及びGPAGGKDGEAGAQG(配列番号:8)、GER、GFOGER等の配列が挙げられる。
さらに、細胞外マトリクスの1つであるエラスチン由来の最小アミノ酸配列としては、特に限定されないが、例えば、VAPG、VGVAPG、VAVAPG等の配列が挙げられる。
さらに、細胞外マトリクスの1つであるトロンボスポンジン由来の最小アミノ酸配列としては、VTXG等の配列が挙げられる。
前記最小のアミノ酸配列の単位は、機能性分子として用いられる合成ペプチドに含有させることができる。
また、本発明の製造方法においては、細胞外マトリクスに由来するもの以外の物質であってもよい。具体的には、例えば、単純に受容体に結合する物質、例えば、低分子物質として人工的に設計して合成された物質を、機能性分子として用いてもよい。
前記受容体に結合する物質は、細胞外マトリクスに由来する一部分の構造モチーフを含むものであってもよく、該構造モチーフを含まないものであってもよい。前記物質としては、例えば、α5β1インテグリンに対するリガンド分子として、C*RRETAWAC*のペプチド等、α6β1インテグリンに対するリガンド分子として、VSWFSRHRYSPFAVS(配列番号:9)のペプチド等、αMβ2インテグリンに対するリガンド分子として、GYRDGYAGPILYN(配列番号:10)のペプチド等が挙げられる。
さらに、本発明の製造方法においては、GA. Sulyok, C. Gibson, SL. Goodman, G. Holzemann, M. Wiesner, H. Kessler, J. Med. Chem., 44(12), 1938-1950(2001)等に記載されているような非ペプチドであって、受容体に結合する低分子物質も機能性分子として利用可能である。
また、受容体のうち、例えば、シンデカン、NG2、CD44等の受容体は、プロテオグリカンを含有することから、前記受容体中のアミノ酸配列を含有し、プロテオグリカンに対して結合するペプチドを機能性分子として用いることもできる。
プロテオグリカンに対して結合するペプチドのアミノ酸配列としては、特に限定されないが、例えば、BBXB、XBBXBX、XBBBXXBX等のコンセンサス配列が挙げられる。なお、前記「X」は、疎水性アミノ酸、「B」は塩基性アミノ酸を示す。前記コンセンサス配列としては、具体的には、例えば、KRSR、FHRRIKA(骨シアロタンパク質に由来)、PRRARV(フィブロネクチンに由来)、WQPPRARI等や、より長いペプチド配列として、YEKPGSPPREVVPRPRPGV(配列番号:11)(フィブロネクチンに由来)、RPSLAKKQRFRHRNRKGYRSQR(配列番号:12)(ビトロネクチンに由来)、RIQNLLKITNLRIKFVK(配列番号:13)(ラミニンに由来)等が挙げられる。
本発明の製造方法では、例えば、U. Hersel, C. Dahmen, H. Kessler, Biomaterials, 24, 4385-4415(2003)、JA. Hubbell, Bio/Technology, 13, 565-576(1995)、H. Shin, S. Jo, AG. Mikos, Biomaterials, 24, 4353-4364(2003)及びE. Koivunen, W. Arap, D. Rajotte, J. Lahdenranta, R. Pasqualini, J. Nuclear Med., 40(5), 883-888(1999)等やそれらの引用文献に記載されているような直鎖状又は環状の合成ペプチドを機能性分子として利用することができる。
前記「ホルモン」とは、動物組織の内分泌細胞によって生産・分泌され、血流によって標的細胞へ輸送され、外来性のシグナルとして標的細胞の活性を調節する物質をいう。前記ホルモンとしては、特に限定されないが、例えば、膵臓で生産されるインスリンやグルカゴン、副腎髄質で生産されるアドレナリンやノルアドレナリン、性腺で生産されるアンドロゲン、エストロゲン及びゲスターゲン等が挙げられる。また、前記細胞外マトリクスの場合と同様に、ホルモンの分子中に含まれるアミノ酸配列を有し、活性が期待できる一部の構造又は人工的に合成された物質を用いてもよい。
前記「サイトカイン」とは、細胞から放出され、免疫、炎症反応の制御作用、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、細胞増殖・分化の調節作用等細胞間相互作用を媒介するタンパク質性因子をいう。前記サイトカインとしては、特に限定されるものではないが、例えば、インターロイキン類、インターフェロン類、腫瘍壊死因子(TNF)、リンホトキシン、コロニー刺激因子(CSF)、骨形成因子(BMP)、上皮成長因子(EGF)、神経成長因子(NGF)、インシュリン様成長因子(IGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等が挙げられる。
サイトカインについても、前記細胞外マトリクスの場合と同様に、それらの分子中に含まれ、活性が期待できる一部の構造又は人工的に合成された物質を用いてもよい。かかる物質としては、例えば、骨形成因子(BMP)について、BMP−2と同様の性質を示すNSVNSKIPKACCVPTELSAI(配列番号:14)のペプチド等が挙げられる(例えば、Y.Suzuki,M.Tanihara,K.Suzuki,A.Saitou,W.Sufan,Y.Nishimura,J.Biomed.Mater.Res.,50,405−409(2000)参照)。また、前記物質としては、エリスロポエチンについて、YXCXXGPXTWXCXP(Xは数種のアミノ酸で置換可能な位置を示す(NC.Wrington,FX.Farrell,R.Chang,AK.Kashyap,FP.Barbone,LS.Mulcahy,DL.Johnson,RW.Barrett,LK.Jolliffe,WJ.Dower,Science,273,458−463(1996)参照)のペプチド等が挙げられる。
なお、本発明の製造方法においては、CD.Reyes,AJ.Garcia,J.Biomed.Mater.Res.,65A,511−523(2003)に記載のように、例示されたアミノ酸配列等を含むペプチドが幾つか会合したような構造体を機能性分子として用いてもよい。
本発明の製造方法では、抗体を機能性分子として用いることもできる。前記抗体は、目的に応じて自由に選択でき、特に限定されないが、例えば、種々の細胞、細胞外マトリクス、その他各種生体組織表面におけるタンパク質、脂質その他の生体高分子に対する抗体等が挙げられる。具体的には、前記抗体としては、モノクローナル抗体、各種の抗インテグリン抗体、シンデカン、NG2、CD44/CSPG等の細胞表面プロテオグリカンに対する抗体、抗カドヘリン抗体、抗セレクチン抗体等が挙げられる。前記抗体を機能性分子として用いる場合には、抗体そのものを用いてもよく、ペプシンやパパイン等のプロテアーゼ処理によって得られる断片等を用いてもよい。
本発明の製造方法では、糖質を機能性分子として用いることもできる。本発明の製造方法では、機能性分子として、単糖、数個(2〜10個)の単糖からなる縮合体であるオリゴ糖、さらに多数の単糖からなる多糖等のいずれを用いてもよい。また、オリゴ糖や多糖には構成糖の種類の違い、構成糖間の結合様式の違い、重合度の違い等によりきわめて多種類のものがあるが、本発明の製造方法では、受容体や生体高分子等に結合する能力を有する糖質であれば、機能性分子として用いることができる。
前記糖質としては、例えば、β−ガラクトース、ラクトース又は重合して接着性基質を形成することができる重合性ラクトースモノマー等肝細胞上のアシアロ糖タンパク質受容体に結合する単糖類等;セレクチンに結合するものとして、シアル酸とフコースを含むオリゴ糖であるシアリルルイスエックス(例えば、A.Varki,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,7390−7397(1994)参照)等;ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸等のグリコサミノグリカン類等が挙げられる。
また、本発明の製造方法において機能性分子として使用できる細胞間接着の受容体に結合する分子とは、それぞれの細胞膜外成分に存在する細胞間接着の受容体に結合する分子をいう。前記細胞間接着の受容体に結合する分子としては、特に限定されないが、例えば、NCAM、カドヘリン等が挙げられる。さらに、前記細胞間接着の受容体に結合する分子としては、例えば、セレクチンに対する受容体のうち、合成ペプチドとして、DITWDQLWDLMK(配列番号:15)等が挙げられる。本発明の製造方法では、前記細胞間接着の受容体に結合する分子を機能性分子として用いることにより、細胞−細胞間相互作用を模倣することができるという優れた効果を発揮する。
本発明の製造方法では、前記機能性分子として、細胞外マトリクス、ホルモン、サイトカイン(増殖因子)、抗体、糖質、細胞間接着の受容体に結合する分子等から、それぞれの細胞毎に最適なものを2つ以上選択することができる。機能性分子の配列をナノメートルオーダーで制御した機能性高分子複合体を実用的に製造する観点から、天然由来の機能性分子の断片、合成ペプチド分子、糖類及び人工的に合成された物質(低分子物質を含む)等やこれらの複合体を利用することが好ましい。なお、機能性分子が、ペプチドからなる場合、該ペプチドの鎖長は、アミノ酸3〜150残基程度であることが好ましい。また、機能性分子が、糖鎖からなる場合、該糖鎖の鎖長は、単糖1〜100残基程度であることが好ましい。
本発明の機能性高分子複合体の製造方法において、機能性分子は、後述の核酸スペーサーに共有結合又は非共有結合によって結合される。
前記機能性分子と核酸スペーサーとの結合は、機能性分子及び核酸スペーサーそれぞれに適切な官能基を導入し、該官能基を利用して行なうことが好ましい。以下、機能性分子に導入する官能基を、「核酸スペーサー結合用官能基」といい、核酸スペーサーに導入する官能基を、「機能性分子結合用官能基」という。核酸スペーサーと機能性分子とを結合するための反応は、以下で説明するように種々のものが選択可能である。また、核酸スペーサー結合用官能基及び機能性分子結合用官能基は、特に限定されるものではなく、互いに対応して、該核酸スペーサー結合用官能基と機能性分子結合用官能基とが結合するように、適宜選択されうる。
本発明の製造方法は、1つの側面では、少なくとも2つの同一又は異なる機能性分子とスペーサー、具体的には、核酸スペーサーとを結合し、該機能性分子をナノメートルオーダーで配列させる方法である。
機能性分子間の間隔は、スペーサー長、すなわちスペーサー分子が伸長した状態での長さで規定される。スペーサー長、すなわち、シス配置で隣接する機能性分子間又はトランス配置で隣接する機能性分子間の距離は、それぞれの機能性分子の大きさや利用する目的によって最適な距離を選択すればよく、溶液中での剛直性の観点から、好ましくは、1〜300nmの範囲であり、より好ましくは、5〜100nmの範囲である。
核酸スペーサーとしては、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド核酸又はそれらの誘導体等の基本骨格を有するものが挙げられる。なお、前記核酸等をまとめて、「核酸」ともいう。
前記デオキシリボ核酸(以下、「DNA」ともいう)及びリボ核酸(以下、「RNA」ともいう)は、それぞれデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドがモノマー単位となって、3’→5’ホスホジエステル結合したポリマーである。前記ペプチド核酸(以下、「PNA」ともいう)とは、例えば、PE. Nielsen, M. Egholm, RH. Berg, O. Buchardt, Science, 254, 1497-1500(1991)に記載されているように、DNAに類似の構造又はRNAに類似の構造をもつ非天然の化合物をいう。前記PNAとは、より具体的には、ヌクレオチドがリン酸ジエステルで結合した構造ではなく2−アミノエチル−グリシンをモノマー単位として含むペプチド結合により骨格を形成しているものをいう。なお、PNA自体は、分解耐性を有するという優れた性質を有する。
本発明の製造方法では、スペーサーとして、核酸スペーサー、例えば、前述の基本骨格を有するポリマーを用いることで、機能性分子の間隔を任意の距離に規定し、かつスペーサー部分の分子量が実質的に単一であるナノ構造を有する機能性高分子複合体が提供できるという優れた効果を発揮する。前記核酸スペーサーは、例えば、ポリエチレングリコール等の従来用いられているスペーサーと比較して、段階的・選択的にヌクレオチド等のモノマー単位を縮合させることができるため、長さの揃ったスペーサーが合成でき、分岐構造等複雑な高次構造を調製することができるという優れた効果を発揮する。
本発明の製造方法では、前記核酸スペーサーは、DNA、RNA及びPNAからなる群より選択された少なくとも2種を含む混合物からなるものでもよい。
本発明の製造方法においては、例えば、生体成分との接触条件において、機能性高分子複合体自体の安定性を増加させること、該機能性高分子複合体をエンザイムイムノアッセイ又は蛍光ラベル等によって定量分析すること、微粒子によりラベル化して電子顕微鏡等により観察すること等を可能とする観点から、核酸スペーサーは、化学的に修飾されていてもよい。
ここで、「化学的な修飾」とは、リン酸部位、リボース部位、2−アミノエチル−グリシン部位(PNAの場合)等の核酸の主鎖を化学的に改変すること、又は核酸塩基部位等に化学修飾を施すことをいう。
核酸の主鎖を化学的に改変する例としては、構造的に不安定なデオキシリボ核酸やリボ核酸のリン酸部分のチオール化等によりヌクレアーゼに対する耐性を向上させたホスホロチオエート等の化学的修飾体;フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体及びアレクサ等の発色団及び例えば、栗原靖之、武内恒成、松田洋一編「non−RI実験の最新プロトコール−蛍光の原理と実際:遺伝子解析からバイオイメージングまで」別冊実験医学、羊土社(1999)等に記載されている発色団;ビオチン、ブロモデオキシウリジンやジゴキシゲニン等の抗原部位等を導入した化学的修飾体等が挙げられる。前記発色団あるいは、ビオチン、ブロモデオキシウリジン、ジゴキシゲニン等の抗原部位等の導入法等は、例えば、高橋豊三著「DNAプローブ−技術と応用―」シーエムシー(1988)や高橋豊三著「DNAプローブII−新技術と新展開―」シーエムシー(1990)等に記載されている方法が例示される。
また、核酸スペーサーの原料となる1本鎖の核酸を合成する段階で前記化学的修飾が施されてもよい。化学的修飾は、それぞれ最適な製法で調製され、上述した目的に応じて選択でき、特に限定されるものではない。
前記核酸スペーサーは、DNA、RNA、PNA又はそれらの誘導体からなるものであって、一旦、機能性高分子複合体が形成された際には、その構造として少なくとも一部分が二重らせん、さらに、前記核酸スペーサーは、これらの構造単位が組み合わさって、さらに大きな一次元的、二次元的又は三次元的な構造体を形成してもよい。
本発明の製造方法においては、所望のスペーサー構造の形状を問わず、スペーサー原料は、一本鎖核酸であることが好ましい。前記一本鎖核酸は、鎖長150塩基、より実用的には、鎖長100塩基程度まで化学的に合成されうる。前記一本鎖核酸は、ホスホアミダイト法による固相合成法等により化学的に合成されうる。例えば、前記化学合成の段階で位置特異的に機能性分子を導入するための機能性分子結合用官能基を導入しておけば、その後、当該官能基に対し核酸スペーサー結合用官能基を結合して機能性分子同士を結合させ、容易に機能性分子を所定の間隔をもってナノメートルオーダーで適正に配列させることができる。
また、前記核酸スペーサーに関して、ヌクレオチド30量体を超える長鎖スペーサーの合成し易さの観点から、デオキシリボ核酸を核酸スペーサーとして利用するのが好ましい。特に、二重らせんのDNA鎖は、10ヌクレオチドで3.4nmの長さを有し、構造的にも明確であるため、本発明の製造方法においては、特に、好ましくは、核酸スペーサーとして二重らせんのDNA鎖(以下、dsDNAと略称することがある)を使用することが望ましい。
機能性分子結合用官能基と、機能性分子の核酸スペーサー結合用官能基とは、互いに共有結合又は非共有結合を形成させて結合させればよい。
なお、スペーサーが複数の核酸からなる場合、機能性分子は、それぞれ、同一又は異なる核酸に結合されていればよい。例えば、核酸スペーサーが2本鎖を形成する核酸からなるものであり、また、2つの機能性分子が核酸の5’末端又は3’末端にそれぞれ結合する場合を例にとると、該核酸スペーサーには2つの5’末端及び3’末端が存在するが、同一核酸の当該両末端に機能性分子が結合すると機能性分子は同一の核酸に結合することになり、一方、いずれか一方の核酸の5’末端にいずれか一方の機能性分子が結合し、他方の核酸の5’末端に他方の機能性分子が結合すると、機能性分子は異なる核酸に結合することになる(例えば、図2参照)。
本発明の製造方法は、1つの実施態様では、生体高分子に対する結合活性を有する機能性分子と、機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなるスペーサーとが結合したものである少なくとも2種の機能性部位含有高分子(A)を対合させる、製造方法(「製造方法A1」ともいう)である。かかる製造方法A1によれば、前記機能性高分子複合体1が得られる。
なお、本明細書において、前記「対合」とは、水素結合を介して、2種の核酸が会合することを意図する。前記「対合」には、具体的には、「核酸のハイブリッド形成」及び「核酸のアニーリング」の概念をも包含する。なお、前記「対合」は、本発明の目的を妨げないものであれば、不完全相補の対合であってもよく、完全相補の対合であってもよい。
本発明の製造方法(製造方法A1)は、機能性分子を結合させた少なくとも2種の機能性部位含有高分子(A)を対合させる製造方法であるため、かかる製造方法A1によれば、機能性部位含有高分子(A)の組み合わせを変えることで、容易に核酸スペーサーを介して配列する機能性分子の種類とその距離を任意の組み合わせで変えることができるという優れた効果を発揮する。
少なくとも2種の機能性部位含有高分子(A)に含まれるスペーサーは、好ましくは、それぞれ、互いに相補的に対合する配列を有する核酸又はその誘導体からなるスペーサーである。
本発明の製造方法(製造方法A1)は、具体的には、1) 生体高分子に対する結合活性を有する少なくとも1つの機能性分子と、該機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなるスペーサーとを結合させて、機能性部位含有高分子(A)を得る工程、及び
2) 前記工程1)で得られた少なくとも2種の機能性部位含有高分子(A)を対合させる工程、
を含む方法である。
前記工程1)では、核酸スペーサーに含まれる機能性分子結合用官能基と、機能性分子に含まれる核酸スペーサー結合用官能基とを反応させ、共有結合又は非共有結合を形成させる。なお、「機能性部位含有高分子(A)」とは、核酸スペーサーに含まれる機能性分子結合用官能基と、機能性分子に含まれる核酸スペーサー結合用官能基とを反応させて得られた化合物をいう。
核酸スペーサーに含まれる機能性分子結合用官能基と、機能性分子に含まれる核酸スペーサー結合用官能基との結合様式は、反応中において、核酸スペーサーや機能性分子が安定に維持され、意図された部位同士で特異的に導入反応を行なえるものであれば、共有結合であってもよく、非共有結合であってもよい。
共有結合による導入反応としては、アミド結合形成反応、マイケル付加反応、チオエーテル形成反応、ディールスアルダー環化付加反応、シッフベース形成反応、チアゾリジン環形成反応等が挙げられる。
前記アミド結合形成反応としては、例えば、カルボジイミド等の縮合剤を用いてアミノ基とカルボキシル基とを縮合させる方法、アミノ基と予めN−ヒドロキシスクシンイミド等により活性化されたカルボキシル基活性エステルとを反応させる方法;チオエステル基とアミノ基とチオール基が残留したシステインとを反応させてアミド結合を形成させる方法等が挙げられる。
前記マイケル付加反応としては、例えば、マレイミド基、アクリルエステル基、アクリルアミド基、ビニルスルホン基等のα,β−不飽和カルボニル基とチオール基とを反応させる方法等が挙げられる。
前記チオエーテル形成反応としては、例えば、ハロアセチル基等のハロゲン化アルキル基やエポキシ基、アジリジン基等とチオールとの反応等が挙げられる。
前記ディールスアルダー環化付加反応としては、例えば、シクロペンタジエン等の共役ジエン類とキノン等のオレフィン類とを反応させる方法等が挙げられる。
前記シッフベース形成反応としては、例えば、グリオキシル酸等のアルデヒド基とオキシアミノ基等のアミノ基を反応させる方法等が挙げられる。なお、前記シッフベース形成反応において、形成されるシッフベース基は、適切な還元剤で還元されていてもよい。
前記チアゾリジン環形成反応としては、例えば、アミノ基及びチオール基が残留したシステインとアルデヒド基を反応させる方法等が挙げられる。
非共有結合による導入反応としては、例えば、錯体形成反応(例えば、トリニトリロ酢酸−ニッケル錯体とオリゴヒスチジンの三元錯体形成を利用したHis−Tag形成反応、金−チオール結合反応等)、生物学的な認識反応(例えば、糖鎖−レクチン反応、アビジン−ビオチン反応、抗原−抗体反応等)等が挙げられる。
導入反応は、機能性分子結合用官能基と核酸スペーサー結合用官能基との組み合わせを上記の反応様式で互いに結合し得るものとしておくことで行なうことができる。そのような組み合わせは、上記を参照すれば適宜選択することができる。なお、以上の導入反応は光、熱、振動、時間、脱保護等別の因子によって開始されるものであってもよい。
核酸スペーサー結合用官能基として、機能性分子にもともと含有される反応性のアミノ酸残基等や糖に含まれる反応性部位等を用いてもよいし、機能性分子に核酸スペーサー結合用官能基を意図的に導入して用いてもよい。機能性分子に核酸スペーサー結合用官能基を導入する方法としては、核酸スペーサー用官能基を含有し、かつ機能性分子に結合する官能基を同一分子中に含有する二官能性試薬を使って、機能性分子を化学修飾する方法が挙げられる。ペプチドを含む機能性分子を化学修飾する1つの方法は、機能性分子を合成した後にアミノ酸残基の反応性等を利用して二官能性試薬を結合させるものであり、例えば駒野徹、志村憲助、中村研三、中村道徳、山崎信行編、大野素徳、金岡祐一、崎山文夫、前田浩著、「蛋白質の化学修飾<上>」生物化学実験法12、学会出版センター(1981)等に記載されている公知の方法が用いられる。また、機能性分子を化学的に合成する段階で、N末端やアミノ酸残基等に対して、例えばMW.Pennington,BM.Dunn Ed.,“Peptide Synthesis Protocols”,Methods in Molecular Biology,Vol.35,Humana Press(1994)等に記載されている公知の方法を用いることで自由に導入することが可能である。糖類を含む機能性分子に関しても同様のことがいえ、例えば糖鎖工学編集員会編「糖鎖工学」、産業調査会、バイオテクノロジー情報センター(1992)等に記載されている公知の方法を用いることができる。
一本鎖核酸、すなわち、DNA、RNA、PNA又はそれらの誘導体の位置特異的に機能性分子結合用官能基を導入する方法として、例えば、高分子学会/バイオ・高分子研究会編「高分子化学と核酸の機能デザイン」、バイオ・高分子研究法6、学会出版センター(1996)やY.Ito,E.Fukusaki,J.Mol.Catal.B:Enzymatic,28,155−166(2004)及び該文献に記載された参考文献等に記載された方法等が利用できる。
機能性分子結合用官能基を導入した一本鎖核酸としては、機能性分子結合用官能基の核酸スペーサーにおける位置が特定できればよく、特に限定されないが、例えば、リン酸部位やリボース又はデオキシリボース等を含む主鎖(ペプチド核酸においては2−アミノエチル−グリシン主鎖)や核酸塩基等の部分に機能性分子結合用官能基を導入した化学的修飾体、5´末端や3´末端へ機能性分子結合用官能基を導入した化学的修飾体(ペプチド核酸においてはN末端及び/又はC末端に官能基を導入した化学的修飾体)等が挙げられる。
核酸スペーサーと機能性分子結合用官能基との間及び/又は機能性分子と核酸スペーサー結合用官能基との間にはリンカーを含んでいてもよい。前記リンカーによれば、核酸スペーサーと機能性分子との間の距離を僅かに隔離しておくことができ、核酸スペーサーと機能性分子との間の反応において立体障害等を低減させて導入反応を迅速に進行させる機能や、本発明のナノ構造を有する機能性高分子複合体を細胞と接触させた場合に細胞表面受容体と機能性分子との結合反応を阻害しない機能等を発揮させることができるという優れた効果を発揮する。前記リンカーは、0.1〜5nm程度までの長さであれば、特に素材等に制限されるものではなく、例えば、アルキル鎖、ペプチド鎖、オキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖等やそれらが混合された構造であってもよい。なお、リンカーは、前記構造に限定されるものではなく、目的により最適なものが選ばれる。リンカーは、例えば、機能性分子結合用官能基、核酸スペーサー結合用官能基の一部として核酸スペーサー及び/又は機能性分子に導入しておけばよい。
前記工程2)は、前記工程1)で得られた機能性部位含有高分子(A)を、少なくとも2種組み合わせて、対合させることにより、機能性高分子複合体を得る工程である。
前記工程2)において、前記対合は、例えば、一方の機能性部位含有高分子(A)中の核酸部分と、他方の機能性部位含有高分子(A)中の核酸部分との間に適切な水素結合が生じる条件下で行なわれうる。具体的には、前記対合は、特に限定されないが、例えば、慣用のアニーリング、ハイブリダイゼーションに準じて行なわれうる。ここで、機能性部位含有高分子(A)が2種である場合、それらが有する核酸スペーサーをそれぞれ(A)および(A)で表すならば、(A)の核酸(ペプチド核酸を含む)配列と(A)の核酸(ペプチド核酸を含む)配列とが全領域または1部の領域において相補対を形成するような(A)と(A)との組み合わせを採用すればよい。機能性部位含有高分子(A)が3種である場合、それらが有する核酸スペーサーをそれぞれ(A)、(A)および(A)で表すならば、たとえば、(A)の核酸(ペプチド核酸を含む)配列と(A)の核酸(ペプチド核酸を含む)配列とが1部の領域において相補対を形成し、かつ、(A)の核酸(ペプチド核酸を含む)配列と(A)の核酸(ペプチド核酸を含む)配列とが他の1部の領域において相補対を形成するような(A)、(A)および(A)の組み合わせを採用すればよい。同様に、機能性部位含有高分子(A)が4種以上である場合でも、それらが有する核酸(ペプチド核酸を含む)配列中に相補対を形成しうる領域を適宜導入しておくことによって、それらを対合させることができる。
また、本発明の製造方法は、他の実施態様では、生体高分子に対する結合活性を有する少なくとも2つの機能性分子と該機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなるスペーサーとが結合したものである少なくとも1種の機能性部位含有高分子(A’)と、該核酸又はその誘導体と相補的に対合する相補鎖核酸又はその誘導体とを対合させる、製造方法(「製造方法A2」ともいう)である。かかる製造方法A2によれば、前記機能性高分子複合体2を得ることが可能となる。
本発明の製造方法(製造方法A2)は、少なくとも2つの機能性分子と核酸スペーサー又はその誘導体からなるスペーサーとが結合した機能性部位含有高分子(A’)と、相補鎖核酸又はその誘導体とを対合させる製造方法であるため、かかる製造方法A2によれば、機能性部位含有高分子(A’)に導入された機能性分子の種類、導入位置に関係なく、対合を妨げない範囲で任意に相補鎖核酸の化学的な誘導体化が可能であるとともに、機能性部位含有高分子(A’)に導入された機能性分子との組み合わせを任意に選択できるという優れた効果を発揮する。
前記製造方法A1及びA2は、いずれも、スペーサーと、機能性分子との結合を行ない、その後、得られた機能性部位含有高分子を相互に、または他のスペーサーとの間で対合させることに1つの大きな特徴がある。なお、本明細書においては、前記製造方法A1及びA2を、「前変性法」ともいう。
かかる前変性法は、核酸スペーサーにあらかじめ機能性分子を導入し(場合により、さらにはその他の化学的な修飾を導入し)、しかる後にスペーサー核酸を対合させる製造方法であるため、機能性高分子複合体に導入する機能性分子あるいは、その他の化学的な修飾の組み合わせを容易に変えることができるという優れた効果を発揮する。
本発明の製造方法は、さらに他の実施態様では、生体高分子に対する結合活性を有する機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなる少なくとも2種のスペーサーが対合した高分子複合体(B)と、該機能性分子とを結合させる、製造方法(「製造方法B1」ともいう)である。かかる製造方法B1によれば、前記機能性高分子複合体1が得られる。
本発明の製造方法(製造方法B1)は、機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなる少なくとも2種のスペーサーが対合した高分子複合体(B)と、該機能性分子とを結合させるため、かかる製造方法B1によれば、前記高分子複合体(B)をあらかじめ製造しておくことによって、必要に応じて、任意の機能性分子を導入することで多様な機能性高分子複合体を作り分けることができるという優れた効果を発揮する。また、かかる製造方法B1によれば、前記高分子複合体(B)をあらかじめ製造しておくことによって、その導入量を任意に変えた機能性高分子複合体を作り分けることができるという優れた効果を発揮する。
本発明の製造方法(製造方法B1)は、具体的には、a) 生体高分子に対する結合活性を有する機能性分子の結合部位を有する核酸またはその誘導体からなる少なくとも2種のスペーサーを対合させて、高分子複合体(B)を得る工程、及び
b) 前記工程a)で得られた高分子複合体(B)と、機能性分子とを結合させる工程、
を含む方法である。なお、前記「高分子複合体(B)」とは、少なくとも2種類の機能性分子結合用官能基を導入した核酸スペーサーを対合させた複合体をいう。
前記工程a)における対合及び前記工程b)における結合は、前記製造方法A1における場合と同様に行なわれる。
ここで、スペーサーが2種の核酸(B)および(B)である場合、(B)の核酸(ペプチド核酸を含む)配列と(B)の核酸(ペプチド核酸を含む)配列とが全領域または1部の領域において相補対を形成するような(B)と(B)の組み合わせを採用すればよい。前記スペーサーが、3種の核酸(B)、(B)および(B)である場合、たとえば、(B)の核酸(ペプチド核酸を含む)配列と(B)の核酸(ペプチド核酸を含む)配列とが1部の領域において相補対を形成し、かつ、(B)の核酸(ペプチド核酸を含む)配列と(B)の核酸(ペプチド核酸を含む)配列とが他の1部の領域において相補対を形成するような(B)、(B)および(B)の組み合わせを採用すればよい。同様に、前記スペーサーが、4種以上の核酸である場合でも、これらの核酸(ペプチド核酸を含む)配列中に相補対を形成しうる領域を適宜導入しておくことによって、これらを対合させることができる。
前記製造方法B1は、スペーサーを対合し、その後、得られた高分子複合体(B)に、機能性分子を結合させることを1つの大きな特徴とする。なお、本明細書においては、前記製造方法B1を、「後変性法」ともいう。
かかる後変性法は、あらかじめ対合させた核酸スペーサーに対して機能性分子(および、さらには、化学的修飾)を導入する製造方法であるため、先に対合させた核酸スペーサーを作製しておくことで、その中から、任意の種類若しくは量の機能性分子又は化学的修飾を導入することができるという優れた効果を発揮する。
本発明の製造方法は、前記前変性法及び前記後変性法のいずれであってもよい。核酸スペーサーに対する機能性分子の導入の簡便さ、及び機能性高分子複合体の製造効率の観点から、前変性法のほうが好ましい。
本発明の製造方法において、機能性高分子複合体中のdsDNAからなる核酸スペーサーに機能性分子を導入する好ましい位置は、特に限定されるものではなく、目的に応じて選択できる。前記機能性分子の導入位置としては、5’末端(途中分岐等が無い場合、計2箇所存在する)、3’末端(途中分岐等が無い場合、計2箇所存在する)等のdsDNAスペーサーの末端部位;核酸塩基部位等のdsDNAスペーサーの途中の任意の位置等が挙げられる。2つの機能性分子を導入する場合、dsDNA鎖の2つの5’末端にそれぞれ機能性分子が結合させること、dsDNA鎖の2つの3’末端にそれぞれ機能性分子を結合させること、又はそれらが組み合わせて機能性分子を導入すること(例えば、5’末端及び3’末端のそれぞれに機能性分子を結合させること等)により、機能性高分子複合体を得ることができる。3つ以上の機能性分子を導入する場合、前記機能性分子は、空いている末端に導入されうる。
前変性法により機能性分子を導入するため、核酸スペーサーの原料となる1本鎖DNA(以下、「ssDNA」ともいう)に機能性分子結合用官能基をDNAの化学合成の段階で導入する。機能性分子結合用官能基としては、上述したように種々のものが選択でき、特に限定されるものではなく、反応選択性を発揮する観点から、チオール基またはアミノ基が好ましい。
機能性分子には、チオール基またはアミノ基と結合活性を有する核酸スペーサー結合用官能基を導入しておくことが好ましい。前記チオール基と結合活性を有する核酸スペーサー結合用官能基としては、例えば、チオール基とマイケル付加反応させるためのマレイミド基、アクリルエステル基、アクリルアミド基、ビニルスルホン基等、チオール基とチオエーテル形成反応をさせるためのハロアセチル基、エポキシ基、アジリジン基等が挙げられる。この中でも機能性分子への導入のし易さ、安定性の点からマレイミド基やハロアセチル基が好適な核酸スペーサー結合用官能基として例示できる。
機能性分子として、合成ペプチド分子を使用する場合、合成ペプチド分子を合成する際に、リジン残基等のアミノ基側鎖やN末端のアミノ基等に対して、カルボン酸や、酸クロライド、活性エステル基等を有する二官能性試薬であるマレイミド誘導体(例えば、マレイミド酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、4−マレイミドブタン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル等)又はハロアセチル誘導体(例えば、ブロモ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、6−(ヨードアセトアミド)カプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヨード酢酸無水物等)を作用させることで、容易に機能性分子に対して核酸スペーサー結合用官能基を導入することができる。
本発明の製造方法においては、前記ssDNA及び機能性分子を用いることで、前変性法により機能性分子が導入されたssDNAを調製することができる。なお、このように機能性分子が導入されたssDNAを単に「コンジュゲート」ともいう。前記導入の際の反応条件や精製方法等は、特に限定されるものはなく、公知の方法が利用できる。
本発明の製造方法においては、ssDNAにおける機能性分子結合用官能基の導入方法、部位及び官能基の種類、機能性分子における核酸スペーサー結合用官能基の導入方法、部位及び種類は、目的により適宜選択されうる。また、本発明の製造方法においては、核酸スペーサー構造は単純な二重らせんだけではなく、種々の複雑な構造、例えば分岐構造や三次元構造、二次元的、三次元的に多重に核酸スペーサーが連結した構造等を持たせた機能性高分子複合体を作製できる。
本発明の製造方法で得られた機能性高分子複合体は、単独で用いてもよく、2種以上の機能性高分子複合体を混合して用いてもよい。それぞれの細胞によって最適な使用形態が選択される。
本発明の製造方法で得られた機能性高分子複合体は、必要に応じて、滅菌してもよい。滅菌方法は、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択されうる。前記滅菌方法としては、例えば、オートクレーブ滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、γ線滅菌、電子線滅菌、濾過滅菌等が挙げられる。
以下、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はそれらにより何ら限定さ
れない。以下の実施例等において使用した測定方法又は評価方法をまとめて示す。
(逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるペプチドの分析)
逆相HPLCによるペプチドの分析は、以下のような条件で行なった。カラムとして、商品名:TSKgel ODS−80TM(東ソー株式会社製)を用いた。溶出の際の溶離液の流速は、1.0mL/分、検出波長は、210nmに設定した。ペプチドは、5重量%〜10重量%のアセトニトリルによる20分のリニアグラジエントで溶出させた。前記リニアグラジェントには、0.05重量% トリフルオロ酢酸(以下、「TFA」ともいう)を含有した5重量% アセトニトリル水溶液と、0.05重量% TFAを含有した30重量% アセトニトリル水溶液とを用いた。
(逆相HPLCによるペプチドの精製)
逆相HPLCによるペプチドの精製は、以下のような条件で行なった。カラムとして、商品名:PREP−ODS(株式会社島津製作所製)を用いた。溶出の際の溶離液の流速10mL/分、検出波長は、210nmに設定した。ペプチドは、10重量%〜20重量%のアセトニトリルによる8分のリニアグラジエントで溶出させた。前記リニアグラジェントには、0.05重量% トリフルオロ酢酸を含有した10重量% アセトニトリル水溶液と、0.05重量% TFAを含有した20重量% アセトニトリル水溶液とを用いた。
(マススペクトルの測定)
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計〔商品名:Voyager−DE STR(アプライドバイオシステムズ社製)〕により、マトリクスとして、α−cyano−4−hydroxycinnamic acid(CHCA)を用いて、マススペクトルを測定した。
(逆相HPLCによる機能性分子が導入されたssDNA(コンジュゲート)の分析)
逆相HPLCによるコンジュゲートの分析は、以下のような条件で行なった。カラムとして、商品名:OligoDNA RP(東ソー株式会社製)を用いた。流速は、1.0mL/分、検出波長は、260nmに設定した。コンジュゲートは、5%のアセトニトリルを含む0.1M酢酸アンモニウム水溶液で5分間溶出し、その後、5重量%〜30重量%のアセトニトリルによる50分のリニアグラジエントで溶出させた。前記リニアグラジェントには、5重量%のアセトニトリルを含有した0.1M 酢酸アンモニウム水溶液と、30重量%のアセトニトリルを含有した0.1M 酢酸アンモニウム水溶液とを用いた。
(ssDNAの濃度測定)
ssDNA溶液 25μLを、10mM トリス塩酸緩衝液(pH=7.0) 975μLに添加して希釈した。得られた希釈物について、10mM トリス塩酸緩衝液のみでベース補正した分光光度計で、260nmの吸光度を測定した。このとき測定される吸光度に40を乗じた値をssDNA溶液のOD値とした。本実施例で用いられるssDNAのODあたりの重量(μg)は、それぞれ計算されたOD値から算出できる。ssDNAの分子量を用いることで、前記OD値を、モル濃度に換算できる。
(DNAスペーサーを有する機能性高分子複合体の濃度測定)
以下の実施例で示されるリガンド構築物の濃度は、商品名:PicoGreen DNA Quantification Kit(ピアース社製)を用いて決定した。濃度既知のλDNA標準液を用いて検量線を作成した。記載した測定値は、全て3回測定の平均値である。
以下の実施例では、本発明における最も単純な実施態様の1つを例示する。すなわち、機能性分子として、KDGEAペプチド(I型コラーゲンに由来する機能性分子)とGRGDSペプチド(フィブロネクチンに由来する機能性分子)との2つの機能性分子、その2つの機能性分子間を連結させる核酸スペーサーの構造として、相補的な塩基対を形成した二重らせん構造を有するdsDNA、2つの機能性分子の導入位置として、dsDNAに二箇所存在する5’末端とした。
また、本発明において好適な長さとして記載した範囲の核酸スペーサーが調製できることを示すため、DNAスペーサーの長さは、10nm(DNAとしては30量体)とした。以上の概念に従って設計された機能性高分子複合体の構造(模式図)を以下に示す。DNAスペーサーの長さが10nmの機能性高分子複合体を、KDGEA−SP10−GRGDSと呼ぶ。
Figure 2006045206
以下の実施例で示される全ての機能性高分子複合体は前変性法を使用して調製されるため、まず、ssDNAに機能性分子を結合させたコンジュゲートが合成される。以下の実施例では、機能性分子に含まれる核酸スペーサー結合用官能基としてマレイミド基を選び、KDGEAペプチド分子及びGRGDSペプチド分子それぞれのN末端に該マレイミド基が導入されたもの(それぞれマレイミド化KDGEA、マレイミド化GRGDSと呼ぶ)を使用した。また、ssDNAには、機能性分子結合用官能基としてチオール基が5’末端に導入されているものを用いた。より具体的に構造を説明すると、5’末端のリン酸基に対して6−メルカプト−1−ヘキサノールのOH部位が結合した状態となっている合成ssDNAである。合成された直後では、5’末端のチオール部位は、チオール基を有する保護基とジスルフィド結合とにより保護されている。前記保護基を脱保護してチオール基を有するssDNAを生成させ、マレイミド化KDGEA又はマレイミド化GRGDSを導入してssDNAとのコンジュゲートを形成する。
実施例1
スペーサーとして10nm(30量体)のdsDNAを有するKDGEA−SP10−GRGDSの調製法について説明する。合成プロセスの概略は図2の通りである。
(マレイミド化KDGEAの合成)
Fmoc−Ala(なお、前記「Fmoc」は、9−fluorenylmethoxycarbonylの略称である)が予め導入された樹脂(株式会社島津製作所製、商品名:PreloadedHMPレジン)から、マレイミド化KDGEAの合成を開始した。Fmoc基の脱保護は、20重量% ピペリジン(アプライドバイオシステムズ社製)/ジメチルホルムアミド(以下、DMFともいう)溶液を用いて行なった。また、ペプチド鎖の伸長のための縮合反応は、前記レジン中のアミノ酸量に対して10当量のFmoc−aa(aaは、適切に保護されたアミノ酸を示す)と、縮合試薬として10当量のHBTU〔株式会社島津製作所製;HBTUは、2−(1−H−benzotriazol−1−yl−1,1,3,3−tetramethyluronium hexafluorophosphateの略称である)、10当量のHOBt〔株式会社ペプチド研究所製,HOBtは1−Hydroxybenzotriazoleの略称である〕及び20当量のDIEA(アプライドバイオシステムズ社製;DIEAは、Diisopropylethylamineの略称である)をDMFに溶解して得られた溶液を、アミノ酸配列に対応して逐次的に前記レジンに添加することにより樹脂上で行なった。N末端のFmoc基を20重量% ピペリジン/DMFにより脱保護した。得られた産物に、生成した遊離のN末端アミノ基に対して5当量のGMBS〔同仁化学株式会社製、GMBSは、N−(4−maleimidobutyryloxy)succinimideの略称である〕と、10当量のDIEAとをDMFに溶解して加えた。4時間室温で反応させ、その後、得られた産物に、さらに1当量のGMBSを追加し、1時間室温で反応させた。得られた産物を保持した樹脂をDMFで洗浄し、その後、該樹脂を、メタノール及びジエチルエーテルで洗浄した。洗浄後の樹脂を減圧乾燥した。樹脂からのマレイミド基含有ペプチドの切断には、90容積% TFA(株式会社ペプチド研究所製)/5容積% チオアニソール(アルドリッチ社製)/3容積% H2O/2容積% アニソール(V/V/V/V)溶液を用いた。前記溶液を、樹脂に添加し、得られた混合物を、2時間室温で攪拌した。その後、樹脂を濾別し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣に冷却したジエチルエーテルを加えてペプチドを沈澱させ、固体を濾別して減圧乾燥した。得られたペプチドを、上述の条件下、精製用HPLCにより精製した。単離されたペプチドは、分析用HPLCでシングルピーク(保持時間10.4分)であることを確認した。また、マススペクトルによって前記ペプチドの分子量を測定するとm/z=684.60[M+H]+であり、計算値とよく一致した。凍結乾燥して固体のマレイミド化KDGEAを得た。
(マレイミド化GRGDSの合成)
Fmoc−Serが予め導入されたレジン(株式会社島津製作所製;商品名:PreloadedHMPレジン)を用いて、前記マレイミド化KDGEAの場合と同様の方法で合成した。得られた粗ペプチドを、上述の条件下、精製用HPLCにより精製した。単離されたペプチドは分析用HPLCでシングルピーク(保持時間8.6分)であることを確認した。また、マススペクトルによって前記ペプチドの分子量を測定するとm/z=656.61[M+H]+であり、計算値とよく一致した。凍結乾燥して固体のマレイミド化GRGDSを得た。
(チオール基を含有するssDNAの脱保護)
KDGEA−SP10−GRGDSの原料となるチオール基が保護されたssDNAは、PS−S−SP10A及びPS−S−SP10Bの2種類である(図2参照)。PS−S−SP10A(シグマジェノシス社製)を100nmol/mLとなるように、TEバッファー(1mM EDTAを含む10mMトリス塩酸緩衝液、pH8.0)に溶解させた。得られた溶液 0.2mLに対して、0.08M ジチオスレイトール溶液(0.25Mリン酸緩衝液(pH8.0)に溶解して作製) 0.2mLを混合し、その後、得られた混合物を室温で16時間攪拌した。溶離液〔0.1Mリン酸バッファー(pH6.0)〕で平衡化した商品名:NAP−5カラム(ファルマシアバイオテク社製)により精製して、チオール基が脱保護されたHS−SP10Aを得た。得られた産物について、260nmの吸光度を測定することによりHS−SP10Aの濃度を決定した。同様にPS−S−SP10Bも脱保護してHS−SP10Bを得た。得られたHS−SP10Bの濃度を、同様に決定した。結果を表1に示す。
Figure 2006045206
(KDGEA−S−SP10A及びGRGDS−S−SP10Bの調製)
上述のように脱保護して得られたHS−SP10Aへのマレイミド化KDGEAの結合形成により、以下のように、KDGEA−S−SP10A(図2を参照)を調製した。
HS−SP10A溶液(濃度17.0nmol/mL) 0.8mLと、HS−SP10Aに対して25当量のマレイミド化KDGEAを0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)に溶解させた溶液 0.8mLとを混合し、4℃で24時間反応させた。得られた反応溶液を凍結乾燥させた。得られた産物を、1mM EDTAを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH=7.0) 0.5mLに溶解させた。得られた溶液を、溶離液で平衡化したNAP−5(商品名)を用いたゲル濾過に供して、KDGEA−S−SP10Aを精製した。なお、前記溶離液として、1mM EDTAを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を用いた。得られた産物について、260nmにおける吸光度を測定し、HS−SP10A(表1)のデータを利用して、KDGEA−S−SP10Aの濃度を決定した。同様に、マレイミド化GRGDSとHS−SP10BのコンジュゲートであるGRGDS−S−SP10Bを得た。得られたGRGDS−S−SP10Bの濃度を同様に決定した。結果を表2に示す。
Figure 2006045206
また、全てのコンジュゲートが、HPLCによりシングルピークであることが確認できた。
(KDGEA−SP10−GRGDSの調製)
KDGEA−S−SP10AとGRGDS−S−SP10Bを等量混合した。得られた混合物を、94℃で30秒間、次いで、55℃で30秒間インキュベーションして、KDGEA−S−SP10AとGRGDS−S−SP10Bとをアニーリングさせ、二重らせん化(ハイブリダイゼーション)した30量体のDNAをスペーサーとして有するKDGEA−SP10−GRGDSを得た。また、前記KDGEA−SP10−GRGDSを、定法に従ったポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、核酸スペーサー部分の検出を行なった。その結果、得られたKDGEA−SP10−GRGDSのdsDNAが30量体であることが確認できた。
(機能性高分子複合体が持つ細胞の機能を制御する性能の評価)
細胞の機能を制御する性能は、マウス由来の未成熟骨芽細胞(MC3T3−E1細胞)を成熟した骨芽細胞に分化させる能力を比較することにより評価した。MC3T3−E1細胞を、10重量% ウシ胎仔由来血清(FBS)を添加したα−MEM(ギブコ社製、α−MEMは、Alpha−Minimum Essential Mediumの略称である)培地で培養した。その後、MC3T3−E1細胞を90%コンフルエント状態時にトリプシン処理により回収した。10mM β−グリセロリン酸(シグマ社製)と50μg/mL アスコルビン酸(シグマ社製)と10重量% FBS(シグマ社製)とを添加したα−MEMに、19000個/mLとなるように、前記MC3T3−E1細胞を再分散させた。その後、KDGEA−SP10−GRGDSを以下に示す方法により固定化した12ウェルプレートに1ウェルあたり2mLとなるように前記MC3T3−E1細胞を播種した。この時の細胞密度は、5000個/cm2であった。37℃、5容積% CO2を含む湿潤空気中で前記MC3T3−E1細胞を培養した。3日毎に培地の交換を行なった。11日後にMC3T3−E1細胞のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を測定した。前記ALP活性をMC3T3−E1細胞の分化度合の指標として、機能性高分子複合体が持つ細胞の機能を制御する性能を評価した。
培養後の細胞をトリプシン処理により回収し、PBS 0.5mLに再分散した。得られた分散液を用い、細胞数を、ビルケルチルク氏血球計算盤で計数した。その後、分化の指標として、細胞のALP活性の測定を行なった。ALP活性測定は、基質溶液〔商品名:FAST p−NITROPHENYL PHOSPHATE TABLET SETS(シグマ社製)を溶解して使用した〕を用いて、p−ニトロフェニルリン酸(pNPP)法により行なった。ここで、基質であるpNPPが、ALPによりp−ニトロフェノールとなり黄色を呈することを利用し、一定時間に生じるp−ニトロフェノール量で酵素活性値を示した。p−ニトロフェノールの生成量は、p−ニトロフェノールをPBSに溶解させたものを検量線の作成に使用した。また、細胞膜の溶解には、界面活性剤であるTritonTM X−100(シグマ社製)を用いた。96ウェルプレートに、細胞液又は検量線溶液 100μLと、0.3%TritonTM X−100 50μLと、基質溶液 100μLとを入れ、得られた混合物を37℃で1時間インキュベーションして反応を行なった。得られた反応産物に、3N 水酸化ナトリウム水溶液 50μLを添加し、酵素反応を停止させた。その後、得られた産物について、マイクロプレートリーダー(デカン社製ジェニオス)で450nmの吸光度を測定した。1個の細胞あたりのALP活性(細胞1個あたりのp−ニトロフェノールの生成速度(fmol/分/細胞))を算出した。
試験例1
(ポリ−L−リジン表面の調製)
ポリ−L−リジン(PLL)塩酸塩(ペプチド研究所製、平均分子量約8000以上)を10mg/mLとなるようにリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に溶解させた。なお、これ以降の操作は、安全キャビネット内で全て滅菌した器具や緩衝液を使用して行なった。得られた溶液を0.2μm内径のフィルターを通して濾過滅菌し、PBSでさらに10倍に希釈して、1mg/mLのPLL溶液を得た。得られたPLL溶液を、ヌンク社製のデルタ処理12ウェルプレートに対して1ウェルあたり0.5mL添加し、ついで、プレートを密封した。前記プレートを37℃で2時間インキュベーションすることにより、該プレートにPLLを吸着させた。その後、前記プレートからPLL溶液を吸引してウェル内から除去した。さらに、前記プレートに、1ウェルあたり1mLのPBSを添加して3分間放置し、アスピレーションする洗浄操作を3回行ない、PLL表面を調製した。
(ポリイオンコンプレックス形成によるポリ−L−リジン表面への機能性高分子複合体の固定化)
全ての操作は安全キャビネット内で全て滅菌した器具や緩衝液を使用して行なった。実施例1で調製した機能性高分子複合体、すなわち、KDGEA−SP10−GRGDSを目標密度となるように、2mM EDTAを含む10mM トリス塩酸緩衝液(pH7.4)で希釈した。得られた希釈物を、0.2μm内径のフィルターで濾過滅菌した。滅菌後の産物を、PLL表面を形成させた12ウェルプレートに対して1ウェルあたり0.5mLとなるように添加した。ここで、前記産物 0.5mL中に0.45pmolのKDGEA−SP10−GRGDSを含むようにした。12ウェルプレートの場合、1ウェルに液体を0.5mL入れると液体が覆う面積は、約4.5cm2となる。したがって、この場合のリガンド構築物が全てPLL表面に結合したときの密度は、100fmol/cm2と判断される。その後、4℃において12時間以上吸着させた。吸着後の機能性高分子複合体溶液を回収した。ついで、得られた機能性高分子複合体溶液について、商品名:PicoGreenによりdsDNA濃度を測定し、添加した機能性高分子複合体がどの程度PLL表面に固定化されているかを確認した。その結果を表3に示す。
Figure 2006045206
その結果、機能性高分子複合体がPLL表面に固定化されたことが分かった。
試験例2
(機能性高分子複合体が持つ細胞の機能を制御する性能の評価)
実施例1で作製したKDGEA−SP10−GRGDSを固定化したPLL表面が持つ、細胞の機能を制御する性能を評価した。既に説明したようにKDGEA−SP10−GRGDSがマウス由来の未成熟骨芽細胞(MC3T3−E1細胞)を成熟した骨芽細胞に分化させる能力(ALP活性)を比較することにより行なった。MC3T3−E1細胞を培養して11日目の1細胞あたりのALP活性を測定した結果を表4に示す。
Figure 2006045206
比較例1
(ポリエチレングリコールスペーサーを有する機能性高分子の調製)
リガンド分子としてKDGEA分子とGRGDS分子とを含有し、かつ平均分子量約3000のポリエチレングリコール(以下、PEGと略称することがある)をスペーサーとする機能性高分子を合成した。Fmoc基により保護されたアミノ基及びN−ヒドロキシスクシンイミドにより活性化されたカルボキシル基をもう1つの末端に持つFmoc−NH−PEG−NHS(NEKTAR社製,分子量3400)をPEGスペーサー結合部位として用いた以外は、S.Yamamoto,Y.Kaneda,N.Okada,S.Nakagawa,K.Kubo,S.Inoue,M.Maeda,Y.Yamashiro,K.Kawasaki,T.Mayumi,Anti−Cancer Drugs,5,424−428(1994)〔前記非特許文献7〕およびY.Suzuki,K.Hojo,I.Okazaki,H.Kamata,M.Sasaki,M.Maeda,M.Nomizu,Y.Yamamoto,S.Nakagawa,T.Mayumi,K.Kawasaki,Chem.Pharm.Bull.50(9),1229−1232(2002)〔前記非特許文献8〕に記載された方法を適用し、KDGEA−PEG−GRGDSを合成した。
(ポリエチレングリコールスペーサーを有する機能性高分子のディッシュ表面への固定化)
9nmol/mLとなるようにKDGEA−PEG−GRGDSを純水に溶解させた。得られた溶液を、12ウェルプレート(Nunc社製、デルタ処理)のウェルに、1ウェルあたり0.5mL添加した。前記プレートを、そのままクリーンベンチ内で放置し、溶液を風乾した。前記プレートのウェルに、3容積% ウシ血清アルブミン/DMEM(ギブコ社製、DMEMはDulbecco’s Modified Eagle’s Mediumの略称である)を1ウェルあたり2mL添加して室温1時間静置した。その後、溶液を吸引した。0.1容積% ウシ血清アルブミン(BSA)/DMEM溶液を、前記プレートの1ウェルあたり2mL入れてアスピレーションする一連の洗浄操作を3回行なって、機能性高分子を固定化した表面を調製した。
(ポリエチレングリコールスペーサーを有する機能性高分子を固定化した表面による細胞機能制御)
以上のように調製した12ウェルプレートを用いて、実施例1の機能性高分子複合体を用いた場合と全く同じ条件で、かつ同時に細胞機能の評価を行なった。その結果、11日間培養を続けるとMC3T3−E1細胞がプレート底面から剥がれてしまった。また、1細胞あたりのALP活性は、28fmol/min/cellであり、きわめて低かった。かかる結果は、比較例1で得られたプレートの表面では細胞機能の制御ができなかったことを意味する。
本発明の製造方法により得られる機能性高分子複合体を用いて、細胞表面、細胞外マトリクス、その他の生体組織表面におけるタンパク質、糖質等の生体高分子内の特定の部位間の距離を推定すること、あるいは複数の同一若しくは異なるタンパク質、糖質その他の生体分子間の距離を推定することは、細胞、細胞外マトリクス、その他の生体組織の構造を知る上で、また、それらの生体分子間の相互作用の有無を推定する上で有用である。また、細胞表面上の複数の特定の部位に同時に結合することによって、細胞に対して同時に信号を与え、その細胞の反応を観察することは、それらの生体分子の機能を調べることは細胞生理学上非常に有用である。本発明の製造方法により得られる機能性高分子複合体は、例えば、前記学問の発展により、医療、診断、医薬品等有用物質の製造等の分野に大きく寄与するものである。
図1は、機能性高分子複合体の一例を示す。
図2は、スペーサーとして10nm(30量体)のdsDNAを有するKDGEA−SP10−GRGDSの調製法に関する合成プロセスの一例を示す概略図である。図中、DMTは、ジメトキシトリチル基を示す。
符号の説明
1 一本鎖DNA
2 機能性分子

Claims (6)

  1. 生体高分子に対する結合活性を有する機能性分子と機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなるスペーサーとが結合したものである少なくとも2種の機能性部位含有高分子(A)を対合させる、少なくとも2つの機能性分子を有する機能性高分子複合体の製造方法。
  2. 少なくとも2種の機能性部位含有高分子(A)に含まれるスペーサーが、それぞれ、互いに相補的に対合する配列を有する核酸又はその誘導体からなるスペーサーである、請求項1記載の製造方法。
  3. 1) 生体高分子に対する結合活性を有する少なくとも1つの機能性分子と、該機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなるスペーサーとを結合させて、機能性部位含有高分子(A)を得る工程、及び
    2) 前記工程1)で得られた少なくとも2種の機能性部位含有高分子(A)を対合させる工程、
    を含む、請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 生体高分子に対する結合活性を有する少なくとも2つの機能性分子と該機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなるスペーサーとが結合したものである少なくとも1種の機能性部位含有高分子(A’)と、該核酸又はその誘導体と相補的に対合する相補鎖核酸又はその誘導体とを対合させる、少なくとも2つの機能性分子を有する機能性高分子複合体の製造方法。
  5. 生体高分子に対する結合活性を有する機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなる少なくとも2種のスペーサーが対合した高分子複合体(B)と、該機能性分子とを結合させる、少なくとも2つの機能性分子を有する機能性高分子複合体の製造方法。
  6. a) 生体高分子に対する結合活性を有する機能性分子の結合部位を有する核酸又はその誘導体からなる少なくとも2種のスペーサーを対合させて、高分子複合体(B)を得る工程、及び
    b) 前記工程a)で得られた高分子複合体(B)と、機能性分子とを結合させる工程、
    を含む、請求項5記載の製造方法。
JP2005193186A 2004-06-30 2005-06-30 機能性高分子複合体の製造方法 Withdrawn JP2006045206A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005193186A JP2006045206A (ja) 2004-06-30 2005-06-30 機能性高分子複合体の製造方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004194878 2004-06-30
JP2005193186A JP2006045206A (ja) 2004-06-30 2005-06-30 機能性高分子複合体の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2006045206A true JP2006045206A (ja) 2006-02-16

Family

ID=36024197

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005193186A Withdrawn JP2006045206A (ja) 2004-06-30 2005-06-30 機能性高分子複合体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2006045206A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010511375A (ja) * 2005-12-01 2010-04-15 エイジェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ 組織工学の足場としての三次元再構成細胞外マトリクス

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010511375A (ja) * 2005-12-01 2010-04-15 エイジェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ 組織工学の足場としての三次元再構成細胞外マトリクス

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20110027890A1 (en) Material for cell culture
Park et al. Fabrication of carbohydrate chips for studying protein-carbohydrate interactions
Gravert et al. Organic synthesis on soluble polymer supports: liquid-phase methodologies
US7125669B2 (en) Solid-phase immobilization of proteins and peptides
JPWO2010002042A1 (ja) タンパク質ラベル化用酵素基質
KR20010074672A (ko) 디엔에이 서열 하이브리드화를 최적화하기 위한 개선된펩티드 핵산 유니버셜 라이브러리의 사용방법
WO2011100493A1 (en) Preparation and/or purification of oligonucleotide conjugates
JP2011231085A (ja) 環状ペプチド
Li-Ping et al. Development of aptamer screening against proteins and its applications
EP4071178A1 (en) Method for producing peptide having physiological activity, and peptide comprising short linker
CN101848939A (zh) G蛋白-寡核苷酸偶联物
Carter et al. Coupling strategies for the synthesis of peptide-oligonucleotide conjugates for patterned synthetic biomineralization
Blank et al. Site‐Specific Immobilization of Genetically Engineered Variants of Candida antarctica Lipase B
JP2006042812A (ja) 機能性高分子複合体の製造方法
Geiger et al. Convenient site-selective protein coupling from bacterial raw lysates to coenzyme A-modified tobacco mosaic virus (TMV) by Bacillus subtilis Sfp phosphopantetheinyl transferase
JP2006045206A (ja) 機能性高分子複合体の製造方法
JP2006045207A (ja) 機能性高分子複合体の製造方法
JP2006042811A (ja) 細胞培養用材料
JP2007176871A (ja) 機能性高分子複合体の製造方法
Liu et al. Challenges of SELEX and demerits of aptamer-based methods
KR20150118252A (ko) 환형의 β-헤어핀 기반 펩타이드 바인더 및 이의 제조방법
KR20120093151A (ko) 개선된 바이오폴리머의 스크리닝
US20220073908A1 (en) Methods of producing high diversity peptide libraries and promoting protein folding
CN104178515B (zh) 一种化合物的细胞透膜的方法
WO2023100976A1 (ja) ペプチドを固定化したビーズライブラリー

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080407

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20101228