JP2006042811A - 細胞培養用材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞機能を効果的に再現性よく制御することができるリガンド構築物、及び該構築物を固定化してなる細胞培養用基材を提供すること。
【解決手段】細胞表面受容体に結合し得る、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子を、核酸スペーサーを介して連結してなるリガンド構築物、並びに前記リガンド構築物を固定化してなる細胞培養用基材。
【選択図】なし
【解決手段】細胞表面受容体に結合し得る、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子を、核酸スペーサーを介して連結してなるリガンド構築物、並びに前記リガンド構築物を固定化してなる細胞培養用基材。
【選択図】なし
Description
本発明は、接着、増殖、分化、未分化、生存及び/又は細胞死といった細胞機能を制御し得る細胞培養用材料、詳しくは、細胞受容体に結合し得るリガンド分子のナノメートルオーダーでの精緻な配列を可能にしたリガンド構築物、及び該構築物を固定化した細胞培養用基材に関する。
近年、細胞を用いて様々な物質を評価する試みや細胞を医療に応用する試みが盛んに行われている。細胞を用いて様々な物質を評価する試みとしては、例えば、薬物の薬効・薬理・毒性に関する試験を効率的に行うシステム、動物実験を代替する細胞を利用した評価システム、細胞を用いた各種センサー、細胞の増幅方法や分化の仕組みを探索するシステム等の開発が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
また、細胞を医療に応用する試みとして、例えば、体外で培養した細胞を移植して治療すること、スキャホールド(細胞の足場となる生分解性の材料)を細胞と共に体内に埋め込み欠損部を再生させること等の細胞(再生)医療、バイオ人工臓器、患者個人の細胞を体外で評価することにより個々に最適な医療を提供するための診断方法等の開発が挙げられる(例えば、非特許文献2参照)。
物質の評価、医療等の用途に細胞を利用する場合、細胞本来の性質を再現させるために、生体外、すなわち、人工的な基材の上で、細胞の機能、例えば、接着、増殖、分化、未分化、細胞死等を精緻に制御する技術が必要となる。本来の性質を失った細胞の使用は、例えば、薬物の作用の誤った解釈、移植した細胞の生体に対する不適合等を招く場合があるという欠点がある。そのため、人工基材を種々改変する試みが活発になされている。その際に、細胞、特に、細胞表面受容体が認識できる細胞接着性の機能性分子が重要な機能を担うことになる。
リガンド分子として生体内から抽出した細胞外マトリクスであるコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン等を用いて人工基材を被覆し、生体内と同等の環境を再現することで細胞機能を制御する研究が古くから行われている(例えば、非特許文献2、3参照)。また、リガンド分子として、ホルモンや増殖因子を用いて人工基材を被覆する方法を利用することによっても、生体内と同等の環境を再現することで細胞機能を制御する研究がなされている(例えば、非特許文献4参照)。
しかし、抽出した細胞外マトリクスによって細胞の機能を制御する方法では、生体内から精製できる細胞外マトリクスの種類が実質的に限られること、微量で、抽出が困難な細胞外マトリクスを用いることが実質的にできないこと、純度、不純物等の影響により再現性の高い結果を得ることが困難であること等の欠点がある。そのため、それぞれの細胞の、それぞれの機能に見合った環境を、人工基材上に設計して再構成することは困難であるのが現状である。
そこで、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等細胞外マトリクスに含有され、かつ細胞表面受容体が認識できる合成ペプチド分子(例えば、RGD、REDV、IKVAV、YIGSR等のアミノ酸配列)をリガンド分子として用い、密度及び種類を種々変更して人工基材上に被覆して細胞機能を制御する試みもなされている(例えば、非特許文献5、6)。しかし、単純な合成ペプチド分子でただ単に人工基材を被覆するだけでは、十分な細胞機能の制御は困難であった。
上述したような方法と組み合わされる形で、微細加工された基材表面に細胞を相互作用させて細胞の機能を制御する試みもなされている。例えば、インクジェットリソグラフィー法(例えば、特許文献1,2参照)、光リソグラフィー法(例えば、特許文献3,4及び非特許文献7参照)、マイクロコンタクトプリンティング法(例えば、特許文献5,6、非特許文献8参照)等の手法を用い、リガンド分子を配列させて細胞機能を制御する試みがなされている。これらの微細加工による方法では細胞自体の配置等を制御することが主たる目的である。従って、人工基材を被覆しているリガンド分子は抽出された細胞外マトリクスや合成ペプチド分子であって、当然ながら細胞の機能を十分に制御できているとは言えなかった。
その一方で、例えば、ディルーロ(DA.Di Lullo)らは、約300nmの長さを有するI型コラーゲン分子鎖上に、種々の細胞表面受容体に結合するリガンド部位がナノメートルオーダーで配列して存在することを報告している(非特許文献9)。この概念に従えば、上述したようなリガンド分子の結合密度や種類を単純に変化させて人工基材上に固定化する方法や、マイクロメートルオーダーの微細加工をそれに組み合わせる方法等のような従来の細胞機能の制御方法では、十分な細胞機能を導き出すことは困難であると考えられる。
近年、ナノ構造を制御した表面によって細胞機能を制御する試みも実施され始めている。カーチス(ASG.Curtis)らのグループは高分子間の相分離による表面ナノトポグラフィーの制御に成功し、ナノ構造と細胞機能の相関性について検討を進めている(例えば、特許文献7、非特許文献10参照)。しかし、この技術では、単に基材表面の凹凸構造をナノスケールで制御しているに過ぎず、種々のリガンド類をナノスケールで配列させることは困難である。
エレクトロスピニング法等により調製したナノファイバーに細胞を接触させ、機能制御する試みも最近報告されている(例えば、非特許文献11参照)。しかし、前記非特許文献11に記載の方法においても、単に基材表面の凹凸構造をナノスケールで制御しているに過ぎず、任意のリガンド分子をナノスケールで配列させることは実質的には困難であるのが現状である。
ナノメートルスケールで任意の物質を任意の位置に付与する方法として、原子間力顕微鏡の探針にタンパク質等の溶液を付け基板にナノメータースケールの描画をする技術、ディップペンナノリソグラフィーが提案されている(例えば、非特許文献12及び13参照)。しかし、前記技術でもライン幅及びドット径は30から50nmであり、コラーゲン分子に観察されるようなナノスケールでのリガンド分子の配列を再現して調製することは微細性の観点から困難である。さらに言えば、このディップペンナノリソグラフィーでは細胞の培養に適した広い範囲への描画は困難であり、今のところ実用は困難である。
以上の微細加工技術では限界のあるリガンド分子のナノスケールでの配列を実現できる方法として、ナノメーターの長さを有する高分子スペーサーによりリガンド分子を連結する技術(スペーサー法)が報告されている。ダイ(W.Dai)らは、フィブロネクチン中に含まれる細胞表面受容体のリガンド分子であるRGD分子又はラミニン中のリガンド分子であるYIGSR分子どうしを平均分子量約3500のポリエチレングリコール鎖を介して2分子結合させた細胞凝集剤を報告している(例えば、非特許文献14参照)。
また、川崎らは、フィブロネクチン中に含まれる細胞表面受容体のリガンド分子であるRGDと、そのシナジー配列であるPHSRNを、平均分子量約2500〜約3400のポリエチレングリコール鎖を介して結合させたヘテロリガンド分子を合成している。この分子をディッシュ上に固定し、細胞の伸展具合を観察している(非特許文献15及び16参照)。同様にフィブロネクチン中のリガンド分子であるRGDとEILDVやラミニン中のリガンド分子であるPDSGRとYIGSRを結合させた分子を合成し、ガン転移抑制試験に用いている(例えば、非特許文献17及び18参照)。
スペーサー法は、確かにこれまでのナノ相分離、ナノファイバー、ディップペンナノリソグラフィー等の微細加工法によるリガンド分子のナノ配列と比較すると、様々なリガンド分子を任意にナノ配列化できる、細胞の培養に適した広い範囲への描画が可能等の利点がある。しかし、川崎らのように分子量分布のあるポリエチレングリコール等をスペーサーとして利用した場合には、スペーサーが複数成分(混合物)となって、実質的にリガンド間の距離にも分布ができ、ナノ配列が曖昧となる。また、ポリエチレングリコール鎖は水溶液中でランダムコイル状態となってリガンド分子の間隔を設計して制御することは困難である。従って、単一成分であるコラーゲン等を模倣したリガンド分子のナノ配列を調製することが困難となる。これは細胞に対して特異的なシグナルを与えることが実質的にできないことを意味する。
特開2002−355025号公報
特開2002−355026号公報
特開平7−308186号公報
特開平11−151086号公報
特表2002−355031号公報
特表2002−509001号公報
特表2002−505907号公報
石川智久、堀江透 編集、創薬サイエンスのすすめ−ポストゲノム時代のパラダイムシフト、共立出版(2002)
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小出輝、林利彦 編、細胞外マトリクス−基礎と臨床−、愛智出版(2000)
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本発明は、1つの側面では、種々の人工マトリクスを容易に調製できること、細胞機能を人工的に制御すること、ナノ構造を持つ人工的な環境と細胞とを相互作用させること、リガンド分子間の距離が実質的に均一であること、細胞機能を効果的に再現性よく制御すること、細胞に対して生体内の細胞外マトリクスと同等の特異的なシグナルを再現性よく与えること等の少なくとも1つを達成する、リガンド構築物を提供することに関する。また、本発明は、他の側面では、細胞機能を人工的に制御すること、細胞機能を効果的に再現性よく制御すること、細胞に対して生体内の細胞外マトリクスと同等の特異的なシグナルを再現性よく与えること等の少なくとも1つを達成する、細胞培養用基材を提供することに関する。さらに、本発明は、別の側面では、細胞機能が効果的に再現性よく制御された細胞を容易に、高い再現性で、かつ安定的に調製すること、生体内の細胞外マトリクスと同等の特異的なシグナルが再現性よく与えられた細胞を容易に、高い再現性で、かつ安定的に調製すること等の少なくとも1つを達成する、細胞の調製方法を提供することに関する。
すなわち、本発明は、
〔1〕 細胞表面受容体に結合し得る、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子を、核酸スペーサーを介して連結してなるリガンド構築物、
〔2〕 細胞表面受容体に結合し得る、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子を、核酸スペーサーを介して連結してなるリガンド構築物であって、核酸スペーサーが複数の核酸からなる場合、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子がそれぞれ同一又は異なる核酸に結合してなるものである、リガンド構築物、
〔3〕 核酸スペーサーの長さが1〜300nmである前記〔1〕又は〔2〕記載のリガンド構築物、
〔4〕 核酸スペーサーがデオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド核酸又はそれらの誘導体である前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載のリガンド構築物、
〔5〕 核酸スペーサーがデオキシリボ核酸又はその誘導体である前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載のリガンド構築物、
〔6〕 リガンド分子を、デオキシリボ核酸又はその誘導体の5´末端及び/又は3´末端に結合してなる前記〔5〕記載のリガンド構築物、
〔7〕 前記〔1〕〜〔6〕いずれかに記載のリガンド構築物を固定化してなる細胞培養用基材、
〔8〕 リガンド構築物を基材1cm2当り0.1〜166×103fmol固定化してなる前記〔7〕記載の細胞培養用基材、
〔9〕 前記〔1〕〜〔6〕いずれかに記載のリガンド構築物の存在下に培養して得られた細胞、並びに
〔10〕 前記〔1〕〜〔6〕いずれかに記載のリガンド構築物の存在下に細胞を培養する工程を有する細胞の調製方法、
に関する。
〔1〕 細胞表面受容体に結合し得る、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子を、核酸スペーサーを介して連結してなるリガンド構築物、
〔2〕 細胞表面受容体に結合し得る、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子を、核酸スペーサーを介して連結してなるリガンド構築物であって、核酸スペーサーが複数の核酸からなる場合、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子がそれぞれ同一又は異なる核酸に結合してなるものである、リガンド構築物、
〔3〕 核酸スペーサーの長さが1〜300nmである前記〔1〕又は〔2〕記載のリガンド構築物、
〔4〕 核酸スペーサーがデオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド核酸又はそれらの誘導体である前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載のリガンド構築物、
〔5〕 核酸スペーサーがデオキシリボ核酸又はその誘導体である前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載のリガンド構築物、
〔6〕 リガンド分子を、デオキシリボ核酸又はその誘導体の5´末端及び/又は3´末端に結合してなる前記〔5〕記載のリガンド構築物、
〔7〕 前記〔1〕〜〔6〕いずれかに記載のリガンド構築物を固定化してなる細胞培養用基材、
〔8〕 リガンド構築物を基材1cm2当り0.1〜166×103fmol固定化してなる前記〔7〕記載の細胞培養用基材、
〔9〕 前記〔1〕〜〔6〕いずれかに記載のリガンド構築物の存在下に培養して得られた細胞、並びに
〔10〕 前記〔1〕〜〔6〕いずれかに記載のリガンド構築物の存在下に細胞を培養する工程を有する細胞の調製方法、
に関する。
本発明のリガンド構築物によれば、リガンド分子間の距離が実質的に均一に設定され得、また、従来技術と比較して、リガンド分子の種類と配列を変更することでこれまでには得られなかった種々の人工マトリクスを容易に調製できるという優れた効果を奏する。さらに、本発明のリガンド構築物によれば、細胞機能を効果的に再現性よく人工的に制御することができ、ナノ構造を持つ人工的な環境と細胞とを相互作用させることができ、細胞に対して生体内の細胞外マトリクスと同等の特異的なシグナルを再現性よく与えることができるという優れた効果を奏する。従って、本発明のリガンド構築物を用いれば、それぞれの細胞の、それぞれの機能に見合った環境を、人工基材上に設計して再現性よく調製することができる。本発明の細胞培養用基材によれば、細胞機能を効果的に再現性よく人工的に制御することができ、細胞に対して生体内の細胞外マトリクスと同等の特異的なシグナルを再現性よく与えることができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の細胞の調製方法によれば、細胞機能が効果的に再現性よく制御され、生体内の細胞外マトリクスと同等の特異的なシグナルが再現性よく与えられた細胞を容易に、高い再現性で、かつ安定的に調製することができるという優れた効果を奏する。
本発明は、リガンド分子を、核酸スペーサーで連結させることにより、リガンド分子の間隔をナノメートルオーダーで任意の距離に実質的に均一に規定することができるという本発明者らの驚くべき知見に基づく。
本明細書において、ペプチドのアミノ酸配列は、慣用の生化学命名法に準拠したアミノ酸の1文字表記又は3文字表記により表される場合がある。かかる表記とアミノ酸との対応関係を以下に示す。A又はAla:アラニン残基;D又はAsp:アスパラギン酸残基;E又はGlu:グルタミン酸残基;F又はPhe:フェニルアラニン残基;G又はGly:グリシン残基;H又はHis:ヒスチジン残基;I又はIle:イソロイシン残基;K又はLys:リジン残基;L又はLeu:ロイシン残基;M又はMet:メチオニン残基;N又はAsn:アスパラギン残基;P又はPro:プロリン残基;Q又はGln:グルタミン残基;R又はArg:アルギニン残基;S又はSer:セリン残基;T又はThr:スレオニン残基;V又はVal:バリン残基;W又はTrp:トリプトファン残基;Y又はTyr:チロシン残基;C又はCys:システイン残基。
接着、増殖等の細胞機能の制御には、細胞表面の受容体が認識するリガンド分子が重要な機能を担う。かかる機能を発揮するためには、好ましくは、リガンド分子は、制御する細胞機能に応じて、ナノメートルオーダーで少なくとも2つの分子を正確に配列させることが望ましい。
本発明においては、核酸(その誘導体も含む)が用いられているため、従来、制御する細胞機能に応じて、ナノメートルオーダーで少なくとも2つの分子を正確に配列させることが困難であったにもかかわらず、核酸を利用した全く新しい方法で目的に応じてリガンド分子を適正に配列させることができるという優れた効果を発揮する。従って、本発明のリガンド構築物の存在下に細胞を培養することで、細胞機能を効果的に再現性よく制御することができる。
本発明のリガンド構築物は、細胞表面受容体に結合し得る、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子を、核酸スペーサーを介して連結したものである。
本発明のリガンド構築物において、リガンド分子の種類、数、リガンド分子間の距離等は、所望の細胞制御に関わる細胞表面受容体に応じて選択される。
なお、前記核酸スペーサーが複数の核酸からなる場合、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子はそれぞれ、同一又は異なる核酸に結合されていればよい。例えば、核酸スペーサーが2本鎖を形成する核酸からなるものであり、2つのリガンド分子が核酸の5’末端又は3’末端にそれぞれ結合する場合、該核酸スペーサーには、2つの5’末端及び3’末端が存在する。この場合、同一核酸の当該両末端にリガンド分子が結合するとリガンド分子は、同一の核酸に結合することになり、いずれか一方の核酸の5’末端にいずれか一方のリガンド分子が結合し、他方の核酸の5’末端に他方のリガンド分子が結合すると、リガンド分子は異なる核酸に結合することになる(例えば、図1参照)。
細胞表面受容体とリガンド分子との組み合わせ等については、例えば、小出輝ら編、細胞外マトリクス−基礎と臨床−、愛智出版(2000);林正男著、実験医学バイオサイエンス 新細胞接着分子の世界、羊土社(2001);関口清俊、鈴木信太郎、日本化学会編、多細胞体の構築と細胞接着システム、シリーズ・バイオサイエンス新世紀第8巻、共立出版(2001);左邉壽孝、月田承一朗編、実験医学増刊、細胞接着研究の最前線−シグナル伝達から癌転移への関与まで−、羊土社(1996)等を参照すればよい。
なお、本発明のリガンド構築物は、リガンド分子がナノメートルオーダーで配列するものであることから、その構造を「ナノ構造」という場合がある。
細胞表面受容体は、細胞の形質膜上に存在する受容体であって、リガンド分子との結合により細胞の機能に影響を与える受容体であれば特に限定はない。当該受容体としては、例えば、細胞外マトリクスの受容体、細胞間接着の受容体(「細胞間接着分子」ともいう)、ホルモン受容体、サイトカイン(増殖因子)受容体等が挙げられる。前記細胞間接着の受容体としては、例えば、NCAM、カドヘリン、セレクチン等が挙げられる。前記細胞表面受容体は、制御対象となる細胞機能に応じて最適なものを選択すればよい。
本発明において、「細胞表面受容体に結合するリガンド分子」とは、細胞表面受容体に対して結合活性を有する合成又は天然の分子であって、細胞の機能、例えば接着、増殖、分化、未分化、生存及び/又は細胞死に対して影響を与える分子のことを指す。本発明の本質は、細胞表面受容体に結合するリガンド分子の種類やナノ配列を種々に変化させ、対象とするそれぞれの細胞に対して最も適した外的な環境を与える方法を提供するものであり、リガンド分子そのものについて特に限定はない。
リガンド分子は、前記リガンド分子としては、例えば、本発明の目的を妨げないものであれば、細胞表面受容体と共に、特に限定されるものではないが、例えば、細胞外マトリクス、細胞間接着の受容体に結合する分子、サイトカイン(増殖因子)、ホルモン、抗体、糖類等が挙げられる。
細胞外マトリクスとしては、例えば、小出輝、林利彦 編、細胞外マトリクス−基礎と臨床−、愛智出版(2000)等に記載されているものが挙げられる。前記細胞外マトリクスとしては、例えば、コラーゲン(プロコラーゲンも含む)、エラスチン、フィブロイン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エンタクチン、テネイシン、アグリン、アンカリン、トロンボスポンジン、エンタクチン、オステオポンチン、オステオカルシン、フィブリノーゲン、プロテオグリカン等が挙げられる。プロテオグリカンとして、例えばアグリカン、アグリン、パールカン、デュリン、フィブロモジュリン、ブレビカン等が挙げられる。以上のような細胞外マトリクスに由来する一部分の構造、すなわち生体内の細胞マトリクスのフラグメントや合成ペプチドを前記リガンド分子として用いてもよい。また、本発明においては、前記リガンド分子として、細胞外マトリクスに由来するもの以外の物質を用いてもよい。かかる物質としては、単純に細胞表面受容体に結合するアゴニストとして人工的に設計して合成された物質等が挙げられる。前記細胞外マトリクスは、何れもが以下に述べるように化学的に誘導体化されていてもよい。
「細胞外マトリクスタンパク質の一部分の構造であるフラグメント」とは、細胞外マトリクスの一部分を化学的又は酵素的に切断し精製後に得られるフラグメントであり、かつある特定の細胞表面受容体が結合可能な精製フラグメントのことを指す。前記フラグメントとしては、例えば、CNBr処理されて得られるI型コラーゲンの精製フラグメント(例えば、WD. Staatz, JJ. Walsh, T. Pexton, SA. Santoro, J. Biol. Chem., 265(9), 4778-4781(1990)に記載されているようなフラグメント)や、CNBrやさらに必要に応じてトリプシン、サーモライシン、コラゲナーゼ等のプロテアーゼで処理をしたIV型コラーゲンの精製フラグメント(例えば、JA. Eble, R. Golbik, K. Mann, K. Kuhn, EMBO J., 12(12), 4795-4802(1993)に記載されている方法により得られる三重らせん構造を有するフラグメント、さらにはEC. Tsilibary, AS. Charonis, J. Cell. Biol., 103(6), 2467-2473(1986)に記載されているような方法により得られるNC1ドメイン等が含まれる)、フィブロネクチンをトリプシン又はペプシン等のプロテアーゼで処理することにより得られる細胞接着性のフラグメント(例えば、SK. Akiyama, E. Hasegawa, T. Hasegawa, KM. Yamada, J. Biol. Chem., 260(24), 13256-13260(1985)参照)等が挙げられる。その他の細胞外マトリクスにも同様のことが言え、当然ながら以上に例示したフラグメントのみに限定されるわけではない。
「細胞外マトリクスに由来する一部分の構造である合成ペプチド」とは、細胞外マトリクスに含まれ、ある特定の細胞表面受容体が結合できる最小のアミノ酸配列を含有する化学的に合成されたオリゴペプチド全般のことを指す。特にフィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン及びトロンボスポンジン等に共通して含まれ、細胞表面受容体が結合する最小のアミノ酸配列として、アミノ酸が3個結合したArg−Gly−Asp(RGD)配列がよく知られている。このRGDを含む合成ペプチド全般について、本発明におけるナノ構造を有するリガンド構築物に含まれるリガンド分子として用いることができ、特に限定されるものではない。
以上のようなRGD配列を含む直鎖状の合成ペプチドであって、本発明のリガンド分子として用いることのできるさらに具体的なペプチド配列としては、特に限定されないが、例えば、RGD、RGDS、RGDV、RGDT、RGDF、GRGD、GRGDG、GRGDS、GRGDF、GRGDY、GRGDVY、GRGDYPC、GRGDSP、GRGDSG、GRGDNP、GRGDSY、GRGDSPK、YRGDS、YRGDG、YGRGD、CGRGDSY、CGRGDSPK、YAVTGRGDS、RGDSPASSKP(配列番号:1)、GRGDSPASSKG(配列番号:2)、GCGYGRGDSPG(配列番号:3)、GGGPHSRNGGGGGGRGDG(配列番号:4)等が挙げられる。
また、RGD配列を含むペプチドを環状にすることで、細胞表面受容体への結合活性を制御することもできる。環状ペプチドとしては、特に限定されないが、例えば、GPen*GRGDSPC*A、GAC*RGDC*LGA、AC*RGDGWC*G、シクロ(RGDf(NMe)V)、シクロ(RGDfV)、シクロ(RGDfK)、シクロ(RGDEv)、シクロ(GRGDfL)、シクロ(ARGDfV)、シクロ(GRGDfV)等が挙げられる。なお、前記「Pen」は、ペニシラミンを示し、「*」は、分子内でジスルフィド結合をしたシステイン残基を示す。また、ペプチド配列を示すアミノ酸一文字表記に含まれる小文字は、D−アミノ酸を示す。
以上のペプチドは、生体内の細胞外マトリクスの多くに共通して含まれる機能モチーフであるRGD配列を中心に種々改変し、探索されたものである。RGD配列以外にも種々の細胞外マトリクスに由来する最小のアミノ酸配列が利用でき、リガンド分子として用いる合成ペプチドに含有させることができる。前記リガンド分子としては、必要に応じて最適な合成ペプチドが選ばれ、特に限定されないが、フィブロネクチン由来の最小アミノ酸配列として、例えば、NGR、LDV、REDV、EILDV、KQAGDV等の配列を含む合成ペプチド等が挙げられる。
また、細胞外マトリクスの1つであるラミニン由来のアミノ酸配列として、例えば、LRGDN、IKVAV、YIGSR、CDPGYIGSR、PDSGR、YFQRYLI、RNIAEIIKDA(配列番号:5)等の配列を含む合成ペプチドが挙げられる。また、前記リガンド分子としては、特に限定されないが、ラミニンに関して、例えば、野水基義、蛋白質 核酸 酵素、第45巻、15号、2475−2482(2000)等に記載されているような細胞接着活性のあるペプチド配列、例えば、α1鎖に由来するRQVFQVAYIIIKA(配列番号:6)やα1鎖Gドメインに由来するRKRLQVQLSIRT(配列番号:7)等を含む合成ペプチド等が挙げられる。
同様に、前記リガンド分子としては、特に限定されないが、細胞外マトリクスの1つであるI型コラーゲン由来のアミノ酸配列においては、例えば、DGEA、KDGEA及びGPAGGKDGEAGAQG(配列番号:8)、GER、GFOGER等を含む合成ペプチドが挙げられる。また、本発明においては、CD. Reyes, AJ. Garcia, J. Biomed. Mater. Res., 65A, 511-523(2003)に記載されているように、これらのアミノ酸配列を含むペプチドが幾つか会合したような構造体をリガンド分子として用いてもよい。さらに、前記リガンド分子としては、特に限定されないが、エラスチン由来のペプチド配列においては、例えば、VAPG、VGVAPG及びVAVAPG等が挙げられ、トロンボスポンジン由来のペプチド配列においては、例えば、VTXGを含む合成ペプチドが挙げられる。本発明においては、前記リガンド分子は、これらに限定されるものではない。
細胞外マトリクスに由来するものでなくとも、単純に細胞表面受容体に結合するアゴニストとして人工的に設計して合成された物質も本発明におけるリガンド分子として用いることができる。なお、かかるリガンド分子は、結果的に、細胞外マトリクスに由来する一部分の構造モチーフを含む場合と、含まない場合がある。かかるリガンド分子としては、例えば、α5β1インテグリンに対するリガンド分子として、C*RRETAWAC*(*はジスルフィド結合したシステイン残基を表す)等が挙げられ、α6β1インテグリンに対しては、VSWFSRHRYSPFAVS(配列番号:9)等が挙げられ、αMβ2インテグリンに対してはGYRDGYAGPILYN(配列番号:10)等が挙げられる。さらに、GA. Sulyok, C. Gibson, SL. Goodman, G. Holzemann, M. Wiesner, H. Kessler, J. Med. Chem., 44(12), 1938-1950(2001)等に記載されているようなペプチドではない細胞表面受容体に結合する物質(アゴニスト)も本発明のリガンド分子として利用可能である。
また、細胞表面受容体のうち、例えば、シンデカン、NG2、CD44等は、プロテオグリカンを含有することから、本発明においては、該プロテオグリカンに対して結合するペプチド配列をリガンド分子として用いることもできる。
プロテオグリカンに対して結合するアミノ酸配列としては、例えば、BBXB、XBBXBXさらにはXBBBXXBX(Xは疎水性アミノ酸、Bは塩基性アミノ酸)等のコンセンサス配列が挙げられる。かかるアミノ酸配列としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、KRSR、FHRRIKA(骨シアロタンパク質に由来)、PRRARV(フィブロネクチンに由来)、WQPPRARI等や、より長いペプチド配列として、YEKPGSPPREVVPRPRPGV(配列番号:11)(フィブロネクチンに由来)、RPSLAKKQRFRHRNRKGYRSQR(配列番号:12)(ビトロネクチンに由来)、RIQNLLKITNLRIKFVK(配列番号:13)(ラミニンに由来)、等が挙げられる。
以上の例示以外にも、例えば、U. Hersel, C. Dahmen, H. Kessler, Biomaterials, 24, 4385-4415(2003)、JA. Hubbell, Bio/Technology, 13, 565-576(1995)、H. Shin, S. Jo, AG. Mikos, Biomaterials, 24, 4353-4364(2003)及びE. Koivunen, W. Arap, D. Rajotte, J. Lahdenranta, R. Pasqualini, J. Nuclear Med., 40(5), 883-888(1999)等やそれらの引用文献に記載されているような直鎖状又は環状の合成ペプチドを本発明におけるリガンド分子として利用することができる。また、本発明においてリガンド分子として利用されえる全てのペプチド配列には、目的に応じて付加的なペプチド配列がそのN末端側及び/又はC末端側に結合していてもよい。合成ペプチドには、目的に応じて非天然型アミノ酸、化学的な修飾基、L体及びD体のアミノ酸のどちらか一方又はその両方等が含まれていてもよい。
ホルモンとしては、特に限定されないが、例えば、インスリンやアドレナリン等が挙げられる。サイトカインとしては、特に限定されないが、例えば、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF)、リンホトキシン、コロニー刺激因子(CSF)、骨形成因子(BMP)、上皮成長因子(EGF)、神経成長因子(NGF)、インシュリン様成長因子(IGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等が挙げられる。以上のホルモンやサイトカインについても本発明におけるリガンド分子として利用できるが、もちろんこれら例示に限定されるわけではない。
ホルモンやサイトカインについても、それらの分子中に含まれ、活性が期待できる一部の構造又は人工的に合成されたアゴニストを用いてもよい。その例として、例えば骨形成因子(BMP)においては、NSVNSKIPKACCVPTELSAI(配列番号:14)を用いると、BMP−2と同様の性質を持たせることが可能である(例えば、Y. Suzuki, M. Tanihara, K. Suzuki, A. Saitou, W. Sufan, Y. Nishimura, J. Biomed. Mater. Res., 50, 405−409(2000)参照)。また、同様にエリスロポエチンにおいてはYXCXXGPXTWXCXP(Xは数種のアミノ酸で置換可能な位置を示している(NC.Wrington,FX.Farrell,R.Chang,AK.Kashyap,FP.Barbone,LS.Mulcahy,DL.Johnson,RW.Barrett,LK.Jolliffe,WJ.Dower,Science,273,458−463(1996)参照)が挙げられる。但し、これに限ったものではなく、本発明のリガンド分子としては何れもが使用できる。
抗体としては、細胞表面受容体に対する抗体、特に好ましくはモノクローナル抗体を本発明のナノ構造を有するリガンド構築物におけるリガンド分子として用いることができる。様々な受容体に結合する抗体が利用でき限定されるわけではないが、例えば各種の抗インテグリン抗体、シンデカン、NG2、CD44/CSPG等の細胞表面プロテオグリカンに対する抗体、抗カドヘリン抗体、抗セレクチン抗体等が挙げられる。抗体をリガンド分子として用いる場合には、抗体そのものを用いてもよいし、ペプシンやパパイン等のプロテアーゼ処理によって得られるフラグメント等を利用してもよい。
細胞間接着分子のうち、NCAM、カドヘリン等は、細胞外でホモフィリック結合することが多く、それぞれの細胞膜外成分は細胞間接着の受容体に結合する分子である。したがって、前記細胞間接着の受容体に結合する分子は、前記リガンド分子として用いることができる。また、前記リガンド分子としては、セレクチンに対するリガンド分子のうち、合成ペプチドとしてDITWDQLWDLMK(配列番号:15)等が例示される。これも当然ながら以上の例示に限定されるわけではない。これらの細胞表面受容体に対するリガンド分子を用いる意義は、細胞−細胞間相互作用を本発明のリガンド構築物によって模倣する際に有効であることである。
前記リガンド分子として、糖鎖も利用することができる。前記糖鎖としては、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸等のプロテオグリカンに含まれるグリコサミノグリカン類等が挙げられる。さらに、本発明においては、例えば、ガラクトース、ラクトース又は重合して接着性基質を形成することができる重合性ラクトースモノマー等、肝細胞上のアシアロ糖タンパク質受容体に結合する糖類を、リガンド分子として利用することができる。また、例えば、セレクチンに対しては、シアル酸とフコースを含むオリゴ糖であるシアリルルイスエックス(例えば、A. Varki, Proc. Natl. Acad.Sci. USA., 91, 7390−7397(1994)参照)をリガンドとして用いることができる。
前記したように、前記リガンド分子は、天然のリガンド分子に由来するもの以外の物質であっても、単純に細胞表面受容体に結合するアゴニストとして人工的に設計して合成された物質であれば、本発明における「リガンド分子」として用いることができる。
本発明のナノ構造を有するリガンド構築物に含まれるリガンド分子としては、例えば、細胞外マトリクス、細胞間接着の受容体に結合する分子、増殖因子(成長因子)、ホルモン、抗体、糖類等から、それぞれの細胞毎に最適なものが二つ以上選ばれる。なお、本発明の1つの目的、すなわち、リガンド分子の配列をナノメートルオーダーで制御し、それぞれの細胞に最適な環境を再現性よく提供する観点から、リガンド分子として天然由来のリガンド分子そのものを利用するよりは、それらのフラグメント、合成ペプチド分子、糖類及び人工的に合成されたアゴニスト等やこれらの複合体を利用すること好ましい。なお、特に限定するものではないが、利用性及び細胞機能制御への有効性が高いことから、リガンド分子がペプチドからなる場合、その鎖長としては、通常、アミノ酸3〜150残基程度であるのが好ましく、一方、糖鎖からなる場合、単糖1〜100残基程度であるのが好ましい。
本発明のリガンド構築物において、前記リガンド分子は、後述の核酸スペーサーに共有結合又は非共有結合によって連結される。前記連結は、リガンド分子及び核酸スペーサーに互いに官能基を導入し、それを利用して行うのが好適である。以下、リガンド分子に導入する官能基を「核酸スペーサー結合用官能基」といい、核酸スペーサーに導入する官能基を「リガンド分子結合用官能基」という。核酸スペーサーとリガンド分子とを連結するための反応は、以下で説明するように種々のものが選択可能である。また、核酸スペーサー結合用官能基は、特に限定されるものではない。さらに、リガンド分子結合用官能基も特に限定されるものではなく、使用する核酸スペーサー結合用官能基に応じて適切なものを選択すればよい。
本発明の要素は、以上のように説明されるリガンド分子を二つ以上用いて、これらの分子が核酸スペーサーを介して連結されている構造のリガンド構築物を調製し、細胞と接触させることによって細胞の機能制御を行うことにある。スペーサーは、隣り合うリガンド分子どうしの中間部分に配置され、隣り合うリガンド分子の間隔をあけて一つの分子として結合できるものを指し、核酸を基本とする材料で構成されるのが本発明の一つの構成要件である。
本発明のリガンド構築物は、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子と核酸スペーサーとが連結され、細胞の機能制御に対し適正なリガンド分子の配列を有するものであるが、1つのリガンド構築物におけるリガンド分子間の間隔(連結位置)や、リガンド分子の数等は、制御対象である細胞、細胞機能に応じて決定すればよい。
リガンド分子間の間隔はスペーサー長、すなわちスペーサー分子が伸長した状態での長さで規定される。スペーサー長、すなわち隣り合うリガンド分子間の距離は、それぞれのリガンド分子やそれぞれの細胞によって最適な距離を選択すればよいが、好ましくは1〜300nmの範囲であり、より好ましくは5〜100nmの範囲である。
本発明において核酸スペーサーとしては、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド核酸又はそれらの誘導体が使用できる。なお、以下、それらの核酸等をまとめて核酸という場合がある。
デオキシリボ核酸(以下、DNAと略称することがある)及びリボ核酸(以下、RNAと略称することがある)は、それぞれデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドがモノマー単位となって、3´→5´ホスホジエステル結合したポリマーである。「ペプチド核酸(以下、PNAともいう)」とは、例えば、PE. Nielsen, M. Egholm, RH. Berg, O. Buchardt, Science, 254, 1497-1500(1991)に記載されているようにDNAやRNA類似の構造をもつ非天然の化合物をいう。前記PNAは、より具体的には、ヌクレオチドがリン酸ジエステルで結合した構造ではなく2−アミノエチル−グリシンをモノマー単位として含むペプチド結合により骨格を形成しているものを指す。本発明のスペーサーとして、以上のような基本骨格を有するポリマーを用いることで、リガンド分子の間隔を任意の距離に規定し、かつスペーサー部分の分子量が単一である細胞機能制御に適したナノ構造を有するリガンド構築物が提供できる。核酸スペーサーは先行技術のスペーサーと比較して、段階的・選択的にヌクレオチド等のモノマー単位を縮合させることができるため、長さの揃ったスペーサーが合成できる、分岐構造等複雑な高次構造を調製することができる、生化学的な伸長反応を応用することができるため長さが揃っていながらも100nmを超えるようなスペーサーを合成できる等の利点がある。核酸スペーサーはDNA、RNA、PNAの混合物からなるものでもよい。
本発明において核酸スペーサーとして使用する、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド核酸の誘導体としては、以下のようなものを挙げることができる。
細胞との接触条件において本発明の分子自体の安定性を増加させること、本発明の分子をエンザイムイムノアッセイ又は蛍光ラベル等によって定量分析すること、微粒子によりラベル化して電子顕微鏡等により観察すること等を可能とするため、以上の核酸スペーサーは化学的修飾を施されていてもよい。「化学的修飾」とは、リン酸部位、リボース部位又は2−アミノエチル−グリシン部位(PNAの場合)等の核酸の主鎖を化学的に改変したり、又は核酸塩基部位等に化学修飾を施すことをいう。核酸の主鎖を化学的に改変する例としては、構造的に不安定なデオキシリボ核酸やリボ核酸のリン酸部分をチオール化する等してヌクレアーゼに対する耐性を向上させたホスホロチオエート等の化学的修飾体(PNAに関してはこの誘導体は含まれないが、PNA自体の分解耐性はもともと高いことが知られている)、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体及びアレクサ等の発色団(以上に加えて、例えば、栗原靖之、武内恒成、松田洋一編「non−RI実験の最新プロトコール−蛍光の原理と実際:遺伝子解析からバイオイメージングまで」別冊実験医学、羊土社(1999)等に記載されている発色団が例示できる)、ビオチン、ブロモデオキシウリジンやジゴキシゲニン等の抗原部位等を導入した化学的修飾体が含まれる(導入法等は、例えば、高橋豊三著「DNAプローブ−技術と応用―」シーエムシー(1988)や高橋豊三著「DNAプローブII−新技術と新展開−」シーエムシー(1990)等に記載されているものを例示できる)。また、以下に述べるように核酸スペーサーの原料となる1本鎖の核酸を合成する段階で以上の化学的修飾が施されてもよい。前記化学的修飾は、それぞれ最適な製法で調製され、上述した目的に応じて選択できるため、以上の例示に限定されるものではない。
核酸スペーサーは、以上のようにDNA、RNA、PNA又はそれらの誘導体からなるものであって、一旦、リガンド構築物が形成された際には、その構造として1本鎖の状態でもよいし、少なくとも一部分が二重らせん、三重らせんとなった状態やそれらの組み合わせ、さらに、K. Matsuura, T. Yamashita, Y. Igami, N. Kimizuka, Chem. Commun., 376(2003)、NC. Seeman, Trends in Biotechnology, 17, 437-443(1999)、CM. Niemeyer, Current Opinion in Chemical Biology, 4, 609-618(2000)、JH. Gu, LT. Cai, S. Tanaka, Y. Otsuka, H. Tabata, T. Kawai, J. Appl. Phys., 92, 2816(2002)等に記載されているような3本以上に分岐したものでもよい。さらにこれらの構造単位が組み合わさって、さらに大きな一次元的、二次元的又は三次元的な構造体を形成してもよい。
以上に例示したように、リガンド構築物における核酸スペーサーがどのように複雑なスペーサー構造を有するにしても、スペーサー原料としては、1本鎖の核酸を用いることが好ましい。1本鎖の核酸は鎖長150塩基、より実用的には鎖長100塩基程度まで化学的に合成することが可能(ほとんどがホスホアミダイト法による固相合成法を採用している)である。例えば、この化学合成の段階で位置特異的にリガンド分子を導入するためのリガンド分子結合用官能基を導入しておけば、後は当該官能基に対し核酸スペーサー結合用官能基を結合してリガンド分子を連結すれば、容易にリガンド分子を所定の間隔をもってナノメートルオーダーで適正に配列させることができる。リガンド分子結合用官能基と、リガンド分子の核酸スペーサー結合用官能基とは、互いに共有結合又は非共有結合を形成させて結合させればよい。
核酸スペーサーへのリガンド分子の導入反応(すなわち核酸スペーサーに含まれるリガンド分子結合用官能基とリガンド分子に含まれる核酸スペーサー結合用官能基の組み合わせ)としては、反応中において、核酸スペーサーや機能性分子が安定に維持され、意図された部位同士で特異的に導入反応を行なえるものであれば、共有結合であってもよく、非共有結合であってもよい。
共有結合による導入反応としては、アミド結合形成反応、マイケル付加反応、チオエーテル形成反応、ディールスアルダー環化付加反応、シッフベース形成反応、チアゾリジン環形成反応等が挙げられる。
前記アミド結合形成反応としては、例えば、カルボジイミド等の縮合剤を用いてアミノ基とカルボキシル基とを縮合させる方法、アミノ基と予めN−ヒドロキシスクシンイミド等により活性化されたカルボキシル基活性エステルとを反応させる方法;チオエステル基とアミノ基とチオール基が残留したシステインとを反応させてアミド結合を形成させる方法等が挙げられる。
前記マイケル付加反応としては、例えば、マレイミド基、アクリルエステル基、アクリルアミド基、ビニルスルホン基等のα,β−不飽和カルボニル基とチオール基とを反応させる方法等が挙げられる。
前記チオエーテル形成反応としては、例えば、ハロアセチル基等のハロゲン化アルキル基やエポキシ基、アジリジン基等とチオールとの反応等が挙げられる。
前記ディールスアルダー環化付加反応としては、例えば、シクロペンタジエン等の共役ジエン類とキノン等のオレフィン類とを反応させる方法等が挙げられる。
前記ディールスアルダー環化付加反応としては、例えば、シクロペンタジエン等の共役ジエン類とキノン等のオレフィン類とを反応させる方法等が挙げられる。
前記シッフベース形成反応としては、例えば、グリオキシル酸等のアルデヒド基とオキシアミノ基等のアミノ基を反応させる方法等が挙げられる。なお、前記シッフベース形成反応において、形成されるシッフベース基は、適切な還元剤で還元されていてもよい。
前記チアゾリジン環形成反応としては、例えば、アミノ基及びチオール基が残留したシステインとアルデヒド基を反応させる方法等が挙げられる。
非共有結合による導入反応としては、錯体形成反応(例えば、トリニトリロ酢酸−ニッケル錯体とオリゴヒスチジンの三元錯体形成を利用したHis−Tag形成反応、金−チオール結合反応等)、生物学的な認識反応(例えば、糖鎖−レクチン反応、アビジン−ビオチン反応、抗原−抗体反応等)等が挙げられる。
導入反応は、リガンド分子結合用官能基と核酸スペーサー結合用官能基との組み合わせを上記の反応様式で互いに結合し得るものとしておくことで行うことができる。そのような組み合わせは、上記を参照すれば適宜選択することができる。なお、以上の導入反応は、光、熱、振動、時間、脱保護等別の因子によって開始されるものであってもよい。
核酸スペーサー結合用官能基として、リガンド分子にもともと含有される反応性のアミノ酸残基等や糖に含まれる反応性部位等を用いてもよく、リガンド分子に核酸スペーサー結合用官能基を意図的に導入して用いてもよい。リガンド分子に核酸スペーサー結合用官能基を導入する方法としては、核酸スペーサー用官能基を含有し、かつリガンド分子に結合する官能基を同一分子中に含有する二官能性試薬を使って、リガンド分子を化学修飾する方法が挙げられる。ペプチドを含むリガンド分子を化学修飾する一つの方法は、リガンド分子を合成した後にアミノ酸残基の反応性等を利用して二官能性試薬を結合させるものであり、例えば駒野徹、志村憲助、中村研三、中村道徳、山崎信行編、大野素徳、金岡祐一、崎山文夫、前田浩著、「蛋白質の化学修飾<上>」生物化学実験法12、学会出版センター(1981)等に記載されている公知の方法が用いられる。また、リガンド分子を化学的に合成する段階で、N末端やアミノ酸残基等に対して、例えば、MW.Pennington,BM.Dunn Ed.,“Peptide Synthesis Protocols”,Methods in Molecular Biology,Vol.35,Humana Press(1994)等に記載されている公知の方法を用いることで自由に導入することが可能である。糖類を含むリガンド分子に関しても同様のことがいえ、例えば糖鎖工学編集員会編「糖鎖工学」、産業調査会、バイオテクノロジー情報センター(1992)等に記載されている公知の方法を用いることができる。
1本鎖の核酸、すなわち、DNA、RNA、PNA又はそれらの誘導体の位置特異的にリガンド分子結合用官能基を導入する方法として、例えば、高分子学会/バイオ・高分子研究会編「高分子化学と核酸の機能デザイン」、バイオ・高分子研究法6、学会出版センター(1996)やY.Ito,E.Fukusaki,J.Mol.Catal.B:Enzymatic,28,155−166(2004)及び該文献に記載された参考文献等に記載された方法等が利用できる。例示すると、リン酸部位やリボース又はデオキシリボース等を含む主鎖(ペプチド核酸においては2−アミノエチル−グリシン主鎖)や核酸塩基等の部分にリガンド分子結合用官能基を導入した化学的修飾体、5´末端や3´末端へリガンド分子結合用官能基を導入した化学的修飾体(ペプチド核酸においてはN末端及び/又はC末端に官能基を導入した化学的修飾体)が含まれる。以上のようにリガンド分子結合用官能基の核酸スペーサーにおける位置が特定できれば、以上の例示に限定されるものではない。
核酸スペーサーとリガンド分子結合用官能基及び/又はリガンド分子と核酸スペーサー結合用官能基との間にはリンカーが含有されていてもよい。リンカーの目的は、核酸スペーサーとリガンド分子の間の距離を僅かに隔離しておくことであって、核酸スペーサーとリガンド分子間の反応において立体障害等を低減させて導入反応を迅速に進行させる機能や、本発明のナノ構造を有するリガンド構築物を細胞と接触させた場合に細胞表面受容体とリガンド分子との結合反応を阻害しない機能等を発揮させるためである。通常、0.1〜5nm程度までの長さであれば、特に素材等は制限されるものではなく、例えば、アルキル鎖、ペプチド鎖、オキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖等やそれらが混合された構造であってもよい。但し、リンカーとしては以上の構造に限定されるわけではなく、目的により最適なものが選ばれる。リンカーは、例えば、リガンド分子結合用官能基、核酸スペーサー結合用官能基の一部として核酸スペーサー及び/又はリガンド分子に導入しておけばよい。
核酸スペーサーを2本以上の核酸鎖で構成する場合、リガンド分子を核酸スペーサーに結合する工程として二つの方法が例示できる。すなわち、リガンド分子結合用官能基を有する1本鎖の核酸の段階でリガンド分子を、官能基を介して予め結合させる方法(以下、前変性法と呼ぶことがある)、リガンド分子結合用官能基が導入されて完成された核酸スペーサーに対してリガンド分子を後付する方法(以下、後変性法と呼ぶことがある)、がある。
リガンド分子の前変性法をより詳細に説明するならば、リガンド分子結合用官能基を含む1本鎖の核酸の段階でリガンド分子を予め結合させ、次いで、さらに1本鎖の核酸(この核酸はリガンド分子結合用官能基を含んでも含まなくてもよい)を1種類以上組み合わせてリガンド分子が位置特異的に導入された核酸スペーサーを完成させる方法である。
リガンド分子の後変性法はより詳細に説明するならば、リガンド分子結合用官能基を含む1本鎖の核酸に、さらに1本鎖の核酸(この核酸はリガンド結合用官能基を含んでも含まなくてもよい)を1種類以上組み合わせて核酸スペーサーを完成させる(この時点ではリガンド分子は導入されていない)。その後に、核酸スペーサー結合用官能基を有するリガンド分子を導入する方法である。以上の前変性法、後変性法は必要に応じてどちらも選択できるが、調製の容易さを考慮すると前変性法がより好適に用いられる。
以上のような構造的特長によって定義される本発明のナノ構造を有するリガンド構築物であるが、ヌクレオチド30量体を超える長鎖スペーサーの合成し易さ等を考慮するとデオキシリボ核酸を核酸スペーサーとして利用するのが好ましい。特に、二重らせんのDNA鎖は、10ヌクレオチドで3.4nmの長さを有し、構造的にも明確であるため、特に、好ましくは、核酸スペーサーとして二重らせんのDNA鎖(以下、dsDNAともいう)を使用することが望ましい。
より具体的に本発明のナノ構造を有するリガンド構築物の構造について以下に説明する。dsDNAからなる核酸スペーサーの中でリガンド分子を導入する好ましい位置としては、5´末端(途中分岐等が無い場合に限れば、計2箇所存在する)、及び3’末端(途中分岐等が無い場合に限れば、計2箇所存在する)等dsDNAスペーサーの末端部位や核酸塩基部位等dsDNAスペーサーの途中の任意の位置が挙げられる。二つのリガンド分子を含有する場合を記載すると、dsDNA鎖の二つの5’末端にそれぞれリガンド分子が結合した分子、又は二つの3’末端にそれぞれリガンド分子が結合した分子、又はそれらの組み合わされた分子(例えば、5’末端と3’末端のそれぞれにリガンド分子が結合した分子等)が挙げられる。3つ以上のリガンド分子を導入する場合には空いている末端を利用することもできる。以上はあくまでも例示であってリガンドの導入位置としては特に限定されず、目的に応じて変更し得る。
前変性法によりリガンド分子を導入するため、核酸スペーサーの原料となる1本鎖DNA(以下、ssDNAともいう)にリガンド分子結合用官能基をDNAの化学合成の段階で導入する。リガンド分子結合用官能基としては、上述したように種々のものが選択でき限定されるものではないが、高い反応選択性を発揮させる観点から、例示されたもののうちチオール基またはアミノ基を導入するのが好ましい。
リガンド分子には、チオール基またはアミノ基と結合活性を有する核酸スペーサー結合用官能基を導入しておくことが好ましい。前記核酸スペーサー結合用官能基としては、特に限定されないが、例えば、チオール基とマイケル付加反応させるためのマレイミド基、アクリルエステル基、アクリルアミド基、ビニルスルホン基等、チオール基とチオエーテル形成反応をさせるためのハロアセチル基、エポキシ基、アジリジン基等が挙げられる。この中でもリガンド分子への導入のし易さ、安定性の点からマレイミド基やハロアセチル基が好適な核酸スペーサー結合用官能基として例示できる。
リガンド分子として、合成ペプチド分子を使用する場合についてさらに詳細に記す。合成ペプチド分子を合成する際に、リジン残基等のアミノ基側鎖やN末端のアミノ基等に対して、カルボン酸や、酸クロライド、活性エステル基等を有する二官能性試薬であるマレイミド誘導体(例えば、マレイミド酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、4−マレイミドブタン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル等)又はハロアセチル誘導体(例えば、ブロモ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、6−(ヨードアセトアミド)カプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヨード酢酸無水物等)を作用させることで、容易にリガンド分子に対して核酸スペーサー結合用官能基を導入することができる。
以上のような、ssDNA及びリガンド分子を用いることで、前変性法によりリガンド分子が導入されたssDNA(以下、このようにリガンド分子が導入されたssDNAを単にコンジュゲートと略称する場合がある)を調製することができる。この反応条件や精製方法等については特に限定されるものはなく、公知の方法が利用できる。以上のようにして得られたリガンド分子が導入された1本鎖のDNAを原料として、その他のssDNA(このssDNAはリガンド分子を結合していなくてもよい)とのハイブリダイゼーションや必要に応じてdsDNA(このdsDNAはリガンド分子を結合していなくてもよい)とのライゲーション等を行うことにより本発明のリガンド構築物が得られる。また、コンジュゲートをプライマーとして、ポリメラーゼ連鎖反応を用いることで本発明のリガンド構築物を調製することもできる。
以上に説明されたリガンド構築物は本発明の実施の一態様であり、以上に限定されるというわけではない。ssDNAにおけるリガンド分子結合用官能基の導入方法、部位及び官能基の種類、リガンド分子における核酸スペーサー結合用官能基の導入方法、部位及び種類は既に述べたように目的により選ばれることは明白である。また、以上の概念を用いれば既に述べたように核酸スペーサー構造は単純な二重らせんだけではなく、種々の複雑な構造、例えば分岐構造や三次元構造、二次元的、三次元的に多重に核酸スペーサーが連結した構造等を持たせた本発明のリガンド構築物を作製できることも明白であろう。
以上のように調製される本発明のナノ構造を有するリガンド構築物は単独で用いてもよいし、二種類以上のものを混合して用いてもよい。それぞれの細胞によって最適なものが選択される。
本発明のナノ構造を有するリガンド構築物は、機能を制御しようとする細胞の培養時に培地に含有させておけばよく、当該構築物は、特段、細胞培養用基材に固定化されている必要はないが、生分解性又は生分解性でない材料からなる基材に固定化されて使用されることもある。特に接着依存性の細胞の機能を制御する用途に使用する場合には基材に固定化された状態であることが好ましい。かかる細胞培養用基材もまた、本発明の一態様として提供される。ナノ構造を有するリガンド構築物が生分解性材料に固定化される場合は、例えば、生体内への移植に用いた後、移植された材料が残ることを考慮している。それ以外の場合には、特に、生分解性材料である必要はなく、目的に応じて選択できる。
ナノ構造を有するリガンド構築物が固定化される材料のうち、生分解性の材料としては、ポリエステル類(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、乳酸・グリコール酸及びポリエチレングリコールとの共重合体、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリプロピレンフマレート等)、ポリオルトエステル類(例えば、ポリオール/ジケテンアセタール類付加物ポリマー類等)、ポリ無水物類(例えば、ポリ(無水セバシン酸)、ポリ(カルボキシビスカルボキシフェノキシフェノキシヘキサン)、ポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン]及び以上のポリマーに含まれるモノマーどうしの共重合体等)、ポリアミノ酸類、ポリホスファゼン類、蛋白質(例えば、血清アルブミン、コラーゲン、絹フィブロイン、フィブロイン、アビジン、ストレプトアビジン等)、多糖類(例えば、アルギン酸、スターチ、ヒアルロン酸、デキストラン、セルロース等やこれらの誘導体)等が挙げられる。
ナノ構造を有するリガンド構築物が固定化される材料のうち、生分解性でない材料としては高分子材料や無機材料が用いられる。付加重合系高分子として、例えば、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール誘導体、エチレン・ビニルアルコール共重合体及びその誘導体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。重縮合系高分子として、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ナイロン−6,6等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類等がある。無機系材料としては、チタン/酸化チタン、金等の金属類、ヒロキシアパタイト、ガラス、シリコン等が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料が選ばれる。また、以上の材料は、種々の改質処理、例えば、プラズマ処理、イオン注入処理、ラビング処理、化学的な酸化処理、加水分解処理等が施されていてもよい。
以上の材料は表面にコーティングが施されていてもよい。コーティング層として、例えば、グラフト化高分子層、単分子膜層(例えば、ケーネ(RS.Kane)ら、Biomaterials,20,2363−2376(1999)等に記載されている自己組織化単分子膜等が利用できる)、ハイドロゲル層(例えば、長田及び梶原編、「ゲルハンドブック」エヌ・ティー・エヌ、1997年)等に記載されているようなハイドロゲルがコーティングされた層)、タンパク質層(例えば、ポリアミノ酸類やタンパク質等がコーティングされた層)、吸着ポリマー層(例えば、ポリリジン、プルロニック(ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロックポリマー)、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)、多糖類等の親水性ポリマーがコーティングされた層)等が挙げられる。
ナノ構造を有するリガンド構築物が固定化される材料は、例えば、編織布、不織布、綿状体、糸状体、中空糸、多孔体、球体、円筒体、フィルム、プレート及びこれらの複合構造(例えばマルチウェルプレート等が例示できる)になっていてもよく、それぞれの形状に含まれる糸、球、孔、円筒等の大きさはナノメートルサイズであってもよい。また、それぞれの材料に関して、公知の方法によってナノメートルサイズ以上の微細加工が施されていてもよく、例えば、K.Sato,A.Hibara,M.Tokeshi,H.Hisamoto,T.Kitamori,Analytical Sciences,19,15−22(2003)にあるようなマイクロ流路が形成された回路や、非特許文献8等に記載されているようなマイクロメートルサイズの細胞接着領域と非接着領域が形成されたプレート等が挙げられる。本発明のリガンド構築物を先に例示した微細加工法、例えばインクジェットリソグラフィー法、光リソグラフィー法、マイクロコンタクトプリンティング法、ディップペンナノリソグラフィー法等の方法により、材料に対してマイクロメートルからナノメートルの大きさのドット状やライン状やこれらが組み合わされたパターンを描いて固定化してもよい。これらは必要に応じて選ばれる。
本発明のナノ構造を有するリガンド構築物は以上のような材料若しくは該材料からなる基材に固定化されて使用されてもよい。固定化のための方法としては、共有結合又は非共有結合によるものが必要に応じて選択でき公知の方法が利用できるが、固定化の容易さから判断すると非共有結合による固定化が好適に用いられる。非共有結合による固定化には、例えば、材料表面へ単に物理吸着させる方法や、ポリリジン等のポリカチオン分子で表面を被覆した材料に対して、DNA及びRNAからなる核酸スペーサーのリン酸部位の負電荷によって静電的相互作用により結合させる方法等が利用できる。
材料若しくは該材料からなる基材に固定化される際、本発明のリガンド構築物の表面密度は対象とする細胞に応じて自由に選択でき、特に限定されるわけではない。ただし、リガンド構築物の表面密度は、本発明のリガンド構築物に含まれる核酸スペーサーの長さよりも、以下の式によって規定されるリガンド構築物間の平均距離が短くならない範囲であることが好ましい。
平均距離=1000/(6.02×表面密度)1/2
リガンド構築物間の平均距離の単位は、ナノメートル(nm)であり、リガンド分子の表面密度の単位は、1平方センチメートル当たりのフェムトモル(fmol/cm2)である。以上の計算式によって、様々な核酸スペーサーの長さに応じて最大の表面密度はその都度選択できるが、既に記載した好ましい核酸スペーサーの長さの範囲から考えると、好ましいリガンド構築物の表面密度としては166pmol/cm2(166×103fmol/cm2)以下であり、より好ましくは6.6pmol/cm2(6.6×103fmol/cm2)以下である。表面密度の下限値は特に限定されないが、例えばSP.Massia,JA.Hubbell,J.Cell Biol.,114(5),1089−1100(1991)等に記載されているように、細胞が接着できる最小の密度である0.1fmol/cm2程度以上であることが好ましい。
平均距離=1000/(6.02×表面密度)1/2
リガンド構築物間の平均距離の単位は、ナノメートル(nm)であり、リガンド分子の表面密度の単位は、1平方センチメートル当たりのフェムトモル(fmol/cm2)である。以上の計算式によって、様々な核酸スペーサーの長さに応じて最大の表面密度はその都度選択できるが、既に記載した好ましい核酸スペーサーの長さの範囲から考えると、好ましいリガンド構築物の表面密度としては166pmol/cm2(166×103fmol/cm2)以下であり、より好ましくは6.6pmol/cm2(6.6×103fmol/cm2)以下である。表面密度の下限値は特に限定されないが、例えばSP.Massia,JA.Hubbell,J.Cell Biol.,114(5),1089−1100(1991)等に記載されているように、細胞が接着できる最小の密度である0.1fmol/cm2程度以上であることが好ましい。
本発明のリガンド構築物及びそれらを固定化した材料、基材は必要に応じて滅菌することができる。滅菌方法も特に限定されず用途に応じていずれも採用でき、例えばオートクレーブ滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、γ線滅菌、電子線滅菌、濾過滅菌等が挙げられる。以上を組み合わせた方法、例えば予め滅菌された材料、基材に対して濾過滅菌したリガンド構築物を無菌条件下で固定化し、本発明のリガンド構築物及びそれらを固定化した材料を調製すること等も可能であり、必要に応じて最適な滅菌方法が選択できる。
本発明のナノ構造を有するリガンド構築物は溶液状態で、又は材料、基材に固定化された状態で細胞と相互作用させて培養することで目的を達成することができる。細胞の機能を発現させるためには、本発明のリガンド構築物に加えて培地が必要である。培地としては、用いる細胞の種類等に応じて変化するが、MEM培地、BME培地、DME培地、α−MEM培地、IMEM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地、RPMI培地及びこれらの混合物(例えば、朝倉書店発行、日本組織培養学会編「組織培養の技術」第三版581頁)、並びにこれらの培地に血清成分(例えば、ウシ血清等)等を添加したものが挙げられる。細胞の培養は、少なくとも本発明のリガンド構築物の存在下に行えばよいが(例えば、これらの培地に本発明のリガンド構築物を溶液状態のまま添加したものを用いてもよい)、細胞機能の制御をより効果的に達成する観点からは、本発明の細胞培養用基材を用いて細胞を培養するのが好適である。従って、本発明は、別の一態様として、本発明のリガンド構築物の存在下に培養して得られた細胞、並びに本発明のリガンド構築物の存在下に細胞を培養する工程を有する細胞の調製方法を提供する。なお、細胞培養の具体的方法については、前記成書等を参照すればよい。
本明細書における「細胞機能」とは、例えば、接着、増殖、分化、未分化、生存及び/又は細胞死等目的に見合った細胞の状態を奏する細胞の能力をいう。本発明のナノ構造を有するリガンド構築物は、細胞を用いて様々な物質を評価する機器において、その心臓部となる細胞の機能を制御する材料として利用することができる。また、細胞(再生)医療におけるスキャホールド部品等として利用できる。従って、以上のような多岐に渡る用途に依存して使用される細胞及び要求される機能も変わるため、特に細胞、制御対象の機能は目的に応じて決定すればよく特に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はそれらにより何ら限定されない。以下の実施例等において使用した測定方法又は評価方法をまとめて示す。
(逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるペプチドの分析)
逆相HPLCによるペプチドの分析は、以下のような条件で行なった。カラムとして、商品名:TSKgel ODS−80TM(東ソー株式会社製)を用いた。溶出の際の溶離液の流速は、1.0mL/分、検出波長は、210nmに設定した。ペプチドは、5重量%〜10重量%のアセトニトリルによる20分のリニアグラジエントで溶出させた。前記リニアグラジェントには、0.05重量% トリフルオロ酢酸(以下、「TFA」ともいう)を含有した5重量% アセトニトリル水溶液と、0.05重量% TFAを含有した30重量% アセトニトリル水溶液とを用いた。
逆相HPLCによるペプチドの分析は、以下のような条件で行なった。カラムとして、商品名:TSKgel ODS−80TM(東ソー株式会社製)を用いた。溶出の際の溶離液の流速は、1.0mL/分、検出波長は、210nmに設定した。ペプチドは、5重量%〜10重量%のアセトニトリルによる20分のリニアグラジエントで溶出させた。前記リニアグラジェントには、0.05重量% トリフルオロ酢酸(以下、「TFA」ともいう)を含有した5重量% アセトニトリル水溶液と、0.05重量% TFAを含有した30重量% アセトニトリル水溶液とを用いた。
(逆相HPLCによるペプチドの精製)
逆相HPLCによるペプチドの精製は、以下のような条件で行なった。カラムとして、商品名:PREP−ODS(株式会社島津製作所製)を用いた。溶出の際の溶離液の流速10mL/分、検出波長は、210nmに設定した。ペプチドは、10重量%〜20重量%のアセトニトリルによる8分のリニアグラジエントで溶出させた。前記リニアグラジェントには、0.05重量% トリフルオロ酢酸を含有した10重量% アセトニトリル水溶液と、0.05重量% TFAを含有した20重量% アセトニトリル水溶液とを用いた。
逆相HPLCによるペプチドの精製は、以下のような条件で行なった。カラムとして、商品名:PREP−ODS(株式会社島津製作所製)を用いた。溶出の際の溶離液の流速10mL/分、検出波長は、210nmに設定した。ペプチドは、10重量%〜20重量%のアセトニトリルによる8分のリニアグラジエントで溶出させた。前記リニアグラジェントには、0.05重量% トリフルオロ酢酸を含有した10重量% アセトニトリル水溶液と、0.05重量% TFAを含有した20重量% アセトニトリル水溶液とを用いた。
(マススペクトルの測定)
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計〔商品名:Voyager−DE STR(アプライドバイオシステムズ社製)〕により、マトリクスとして、α−cyano−4−hydroxycinnamic acid(CHCA)を用いて、マススペクトルを測定した。
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計〔商品名:Voyager−DE STR(アプライドバイオシステムズ社製)〕により、マトリクスとして、α−cyano−4−hydroxycinnamic acid(CHCA)を用いて、マススペクトルを測定した。
(逆相HPLCによる機能性分子が導入されたssDNA(コンジュゲート)の分析)
逆相HPLCによるコンジュゲートの分析は、以下のような条件で行なった。カラムとして、商品名:OligoDNA RP(東ソー株式会社製)を用いた。流速は、1.0mL/分、検出波長は、260nmに設定した。コンジュゲートは、5%のアセトニトリルを含む0.1M酢酸アンモニウム水溶液で5分間溶出し、その後、5重量%〜30重量%のアセトニトリルによる50分のリニアグラジエントで溶出させた。前記リニアグラジェントには、5重量%のアセトニトリルを含有した0.1M 酢酸アンモニウム水溶液と、30重量%のアセトニトリルを含有した0.1M 酢酸アンモニウム水溶液とを用いた。
逆相HPLCによるコンジュゲートの分析は、以下のような条件で行なった。カラムとして、商品名:OligoDNA RP(東ソー株式会社製)を用いた。流速は、1.0mL/分、検出波長は、260nmに設定した。コンジュゲートは、5%のアセトニトリルを含む0.1M酢酸アンモニウム水溶液で5分間溶出し、その後、5重量%〜30重量%のアセトニトリルによる50分のリニアグラジエントで溶出させた。前記リニアグラジェントには、5重量%のアセトニトリルを含有した0.1M 酢酸アンモニウム水溶液と、30重量%のアセトニトリルを含有した0.1M 酢酸アンモニウム水溶液とを用いた。
(ssDNAの濃度測定)
ssDNA溶液 25μLを、10mM トリス塩酸緩衝液(pH=7.0) 975μLに添加して希釈した。得られた希釈物について、10mM トリス塩酸緩衝液のみでベース補正した分光光度計で、260nmの吸光度を測定した。このとき測定される吸光度に40を乗じた値をssDNA溶液のOD値とした。本実施例で用いられるssDNAのODあたりの重量(μg)は、それぞれ計算されたOD値から算出できる。ssDNAの分子量を用いることで、前記OD値を、モル濃度に換算できる。
ssDNA溶液 25μLを、10mM トリス塩酸緩衝液(pH=7.0) 975μLに添加して希釈した。得られた希釈物について、10mM トリス塩酸緩衝液のみでベース補正した分光光度計で、260nmの吸光度を測定した。このとき測定される吸光度に40を乗じた値をssDNA溶液のOD値とした。本実施例で用いられるssDNAのODあたりの重量(μg)は、それぞれ計算されたOD値から算出できる。ssDNAの分子量を用いることで、前記OD値を、モル濃度に換算できる。
(DNAスペーサーを有する機能性高分子複合体の濃度測定)
以下の実施例で示されるリガンド構築物の濃度は、商品名:PicoGreen DNA Quantification Kit(ピアース社製)を用いて決定した。濃度既知のλDNA標準液を用いて検量線を作成した。記載した測定値は、全て3回測定の平均値である。
以下の実施例で示されるリガンド構築物の濃度は、商品名:PicoGreen DNA Quantification Kit(ピアース社製)を用いて決定した。濃度既知のλDNA標準液を用いて検量線を作成した。記載した測定値は、全て3回測定の平均値である。
(リガンド構築物が持つ細胞の機能を制御する性能の評価)
細胞の機能を制御する性能は、マウス由来の未成熟骨芽細胞(MC3T3−E1細胞)を成熟した骨芽細胞に分化させる能力を比較することにより評価した。MC3T3−E1細胞を、10重量% ウシ胎仔由来血清(FBS)を添加したα−MEM(ギブコ社製、α−MEMは、Alpha−Minimum Essential Mediumの略称である)培地で培養した。その後、MC3T3−E1細胞を90%コンフルエント状態時にトリプシン処理により回収した。10mM β−グリセロリン酸(シグマ社製)と50μg/mL アスコルビン酸(シグマ社製)と10重量% FBS(シグマ社製)とを添加したα−MEMに、19000個/mLとなるように、前記MC3T3−E1細胞を再分散させた。その後、リガンド構築物を以下に示す方法により固定化した12ウェルプレートに1ウェルあたり2mLとなるように前記MC3T3−E1細胞を播種した。この時の細胞密度は、5000個/cm2であった。37℃、5容積% CO2を含む湿潤空気中で前記MC3T3−E1細胞を培養した。3日毎に培地の交換を行なった。11日後にMC3T3−E1細胞のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を測定した。前記ALP活性をMC3T3−E1細胞の分化度合の指標として、リガンド構築物が持つ細胞の機能を制御する性能を評価した。
細胞の機能を制御する性能は、マウス由来の未成熟骨芽細胞(MC3T3−E1細胞)を成熟した骨芽細胞に分化させる能力を比較することにより評価した。MC3T3−E1細胞を、10重量% ウシ胎仔由来血清(FBS)を添加したα−MEM(ギブコ社製、α−MEMは、Alpha−Minimum Essential Mediumの略称である)培地で培養した。その後、MC3T3−E1細胞を90%コンフルエント状態時にトリプシン処理により回収した。10mM β−グリセロリン酸(シグマ社製)と50μg/mL アスコルビン酸(シグマ社製)と10重量% FBS(シグマ社製)とを添加したα−MEMに、19000個/mLとなるように、前記MC3T3−E1細胞を再分散させた。その後、リガンド構築物を以下に示す方法により固定化した12ウェルプレートに1ウェルあたり2mLとなるように前記MC3T3−E1細胞を播種した。この時の細胞密度は、5000個/cm2であった。37℃、5容積% CO2を含む湿潤空気中で前記MC3T3−E1細胞を培養した。3日毎に培地の交換を行なった。11日後にMC3T3−E1細胞のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を測定した。前記ALP活性をMC3T3−E1細胞の分化度合の指標として、リガンド構築物が持つ細胞の機能を制御する性能を評価した。
培養後の細胞をトリプシン処理により回収し、PBS 0.5mLに再分散した。得られた分散液を用い、細胞数を、ビルケルチルク氏血球計算盤で計数した。その後、分化の指標として、細胞のALP活性の測定を行なった。ALP活性測定は、基質溶液〔商品名:FAST p−NITROPHENYL PHOSPHATE TABLET SETS(シグマ社製)を溶解して使用した〕を用いて、p−ニトロフェニルリン酸(pNPP)法により行なった。ここで、基質であるpNPPが、ALPによりp−ニトロフェノールとなり黄色を呈することを利用し、一定時間に生じるp−ニトロフェノール量で酵素活性値を示した。p−ニトロフェノールの生成量は、p−ニトロフェノールをPBSに溶解させたものを検量線の作成に使用した。また、細胞膜の溶解には、界面活性剤であるTritonTM X−100(シグマ社製)を用いた。96ウェルプレートに、細胞液又は検量線溶液 100μLと、0.3%TritonTM X−100 50μLと、基質溶液 100μLとを入れ、得られた混合物を37℃で1時間インキュベーションして反応を行なった。得られた反応産物に、3N 水酸化ナトリウム水溶液 50μLを添加し、酵素反応を停止させた。その後、得られた産物について、マイクロプレートリーダー(デカン社製ジェニオス)で450nmの吸光度を測定した。1個の細胞あたりのALP活性(細胞1個あたりのp−ニトロフェノールの生成速度(fmol/分/細胞))を算出した。
以下の実施例では本発明における最も単純な実施態様の1つを例示する。すなわちリガンド分子としては二つ(KDGEAペプチド(I型コラーゲンに由来するリガンド分子)とGRGDSペプチド(フィブロネクチンに由来するリガンド分子))、その二つのリガンド分子間を繋ぐ核酸スペーサーの構造としては相補的な塩基対を形成した二重らせん構造を有するdsDNA、二つのリガンド分子の導入位置としてはdsDNAに二箇所存在する5´末端とした。本発明において好適な長さとして記載した範囲の核酸スペーサーが調製できることを示すため、DNAスペーサーの長さは10,20,40,80,160nm(DNAとしてはそれぞれ30,60,120,240,480量体)とした。以上の概念に従って設計されたリガンド構築物の構造(模式図)を以下に示す。DNAスペーサーの長さが10,20,40,80,160nmのリガンド構築物を、それぞれKDGEA−SP10−GRGDS,KDGEA−SP20−GRGDS,KDGEA−SP40−GRGDS,KDGEA−SP80−GRGDS,KDGEA−SP160−GRGDSと呼ぶ。
以下の実施例で示される全てのリガンド構築物は、前変性法を使用して調製されるため、まず、ssDNAにリガンド分子を結合したコンジュゲートが合成される。以下の実施例では、リガンド分子に含有される核酸スペーサー結合用官能基としてマレイミド基を選び、KDGEA及びGRGDSペプチド分子のN末端にマレイミド基が導入されたもの(それぞれマレイミド化KDGEA、マレイミド化GRGDSと呼ぶ)を使用した。また、ssDNAにはリガンド分子結合用官能基としてチオール基が5’末端に導入されているものを用いた。より具体的に構造を説明すると、5’末端のリン酸基に対して6−メルカプト−1−ヘキサノールのOH部位が結合した状態となっている合成ssDNAである。合成された直後では5´末端のチオール部位は、チオール基を有する保護基とジスルフィド結合により保護されている。前記保護基を脱保護してチオール基を形成させ、マレイミド化KDGEA又はマレイミド化GRGDSを導入してssDNAとのコンジュゲートを形成する。
実施例1
スペーサーとして10nm(30量体)のdsDNAを有するKDGEA−SP10−GRGDSの調製法について説明する。合成プロセスの概略は図1の通りである。
スペーサーとして10nm(30量体)のdsDNAを有するKDGEA−SP10−GRGDSの調製法について説明する。合成プロセスの概略は図1の通りである。
(マレイミド化KDGEAの合成)
Fmoc−Ala(なお、前記「Fmoc」は、9−fluorenylmethoxycarbonylの略称である)が予め導入された樹脂(株式会社島津製作所製、商品名:PreloadedHMPレジン)から、マレイミド化KDGEAの合成を開始した。Fmoc基の脱保護は、20重量% ピペリジン(アプライドバイオシステムズ社製)/ジメチルホルムアミド(以下、DMFともいう)溶液を用いて行なった。また、ペプチド鎖の伸長のための縮合反応は、前記レジン中のアミノ酸量に対して10当量のFmoc−aa(aaは、適切に保護されたアミノ酸を示す)と、縮合試薬として10当量のHBTU〔株式会社島津製作所製;HBTUは、2−(1−H−benzotriazol−1−yl−1,1,3,3−tetramethyluronium hexafluorophosphateの略称である)、10当量のHOBt〔株式会社ペプチド研究所製,HOBtは1−Hydroxybenzotriazoleの略称である〕及び20当量のDIEA(アプライドバイオシステムズ社製;DIEAは、Diisopropylethylamineの略称である)をDMFに溶解して得られた溶液を、アミノ酸配列に対応して逐次的に前記レジンに添加することにより樹脂上で行なった。N末端のFmoc基を20重量% ピペリジン/DMFにより脱保護した。得られた産物に、生成した遊離のN末端アミノ基に対して5当量のGMBS〔同仁化学株式会社製、GMBSは、N−(4−maleimidobutyryloxy)succinimideの略称である〕と、10当量のDIEAとをDMFに溶解して加えた。4時間室温で反応させ、その後、得られた産物に、さらに1当量のGMBSを追加し、1時間室温で反応させた。得られた産物を保持した樹脂をDMFで洗浄し、その後、該樹脂を、メタノール及びジエチルエーテルで洗浄した。洗浄後の樹脂を減圧乾燥した。樹脂からのマレイミド基含有ペプチドの切断には、90容積% TFA(株式会社ペプチド研究所製)/5容積% チオアニソール(アルドリッチ社製)/3容積% H2O/2容積% アニソール(V/V/V/V)溶液を用いた。前記溶液を、樹脂に添加し、得られた混合物を、2時間室温で攪拌した。その後、樹脂を濾別し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣に冷却したジエチルエーテルを加えてペプチドを沈澱させ、固体を濾別して減圧乾燥した。得られたペプチドを、上述の条件下、精製用HPLCにより精製した。単離されたペプチドは、分析用HPLCでシングルピーク(保持時間10.4分)であることを確認した。また、マススペクトルによって前記ペプチドの分子量を測定するとm/z=684.60[M+H]+であり、計算値とよく一致した。凍結乾燥して固体のマレイミド化KDGEAを得た。
Fmoc−Ala(なお、前記「Fmoc」は、9−fluorenylmethoxycarbonylの略称である)が予め導入された樹脂(株式会社島津製作所製、商品名:PreloadedHMPレジン)から、マレイミド化KDGEAの合成を開始した。Fmoc基の脱保護は、20重量% ピペリジン(アプライドバイオシステムズ社製)/ジメチルホルムアミド(以下、DMFともいう)溶液を用いて行なった。また、ペプチド鎖の伸長のための縮合反応は、前記レジン中のアミノ酸量に対して10当量のFmoc−aa(aaは、適切に保護されたアミノ酸を示す)と、縮合試薬として10当量のHBTU〔株式会社島津製作所製;HBTUは、2−(1−H−benzotriazol−1−yl−1,1,3,3−tetramethyluronium hexafluorophosphateの略称である)、10当量のHOBt〔株式会社ペプチド研究所製,HOBtは1−Hydroxybenzotriazoleの略称である〕及び20当量のDIEA(アプライドバイオシステムズ社製;DIEAは、Diisopropylethylamineの略称である)をDMFに溶解して得られた溶液を、アミノ酸配列に対応して逐次的に前記レジンに添加することにより樹脂上で行なった。N末端のFmoc基を20重量% ピペリジン/DMFにより脱保護した。得られた産物に、生成した遊離のN末端アミノ基に対して5当量のGMBS〔同仁化学株式会社製、GMBSは、N−(4−maleimidobutyryloxy)succinimideの略称である〕と、10当量のDIEAとをDMFに溶解して加えた。4時間室温で反応させ、その後、得られた産物に、さらに1当量のGMBSを追加し、1時間室温で反応させた。得られた産物を保持した樹脂をDMFで洗浄し、その後、該樹脂を、メタノール及びジエチルエーテルで洗浄した。洗浄後の樹脂を減圧乾燥した。樹脂からのマレイミド基含有ペプチドの切断には、90容積% TFA(株式会社ペプチド研究所製)/5容積% チオアニソール(アルドリッチ社製)/3容積% H2O/2容積% アニソール(V/V/V/V)溶液を用いた。前記溶液を、樹脂に添加し、得られた混合物を、2時間室温で攪拌した。その後、樹脂を濾別し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣に冷却したジエチルエーテルを加えてペプチドを沈澱させ、固体を濾別して減圧乾燥した。得られたペプチドを、上述の条件下、精製用HPLCにより精製した。単離されたペプチドは、分析用HPLCでシングルピーク(保持時間10.4分)であることを確認した。また、マススペクトルによって前記ペプチドの分子量を測定するとm/z=684.60[M+H]+であり、計算値とよく一致した。凍結乾燥して固体のマレイミド化KDGEAを得た。
(マレイミド化GRGDSの合成)
Fmoc−Serが予め導入されたレジン(株式会社島津製作所製;商品名:PreloadedHMPレジン)を用いて、前記マレイミド化KDGEAの場合と同様の方法で合成した。得られた粗ペプチドを、上述の条件下、精製用HPLCにより精製した。単離されたペプチドは分析用HPLCでシングルピーク(保持時間8.6分)であることを確認した。また、マススペクトルによって前記ペプチドの分子量を測定するとm/z=656.61[M+H]+であり、計算値とよく一致した。凍結乾燥して固体のマレイミド化GRGDSを得た。
Fmoc−Serが予め導入されたレジン(株式会社島津製作所製;商品名:PreloadedHMPレジン)を用いて、前記マレイミド化KDGEAの場合と同様の方法で合成した。得られた粗ペプチドを、上述の条件下、精製用HPLCにより精製した。単離されたペプチドは分析用HPLCでシングルピーク(保持時間8.6分)であることを確認した。また、マススペクトルによって前記ペプチドの分子量を測定するとm/z=656.61[M+H]+であり、計算値とよく一致した。凍結乾燥して固体のマレイミド化GRGDSを得た。
(チオール基を含有するssDNAの脱保護)
KDGEA−SP10−GRGDSの原料となるチオール基が保護されたssDNAは、PS−S−SP10A及びPS−S−SP10Bの2種類である(図1参照)。PS−S−SP10A(シグマジェノシス社製)を100nmol/mLとなるように、TEバッファー(1mM EDTAを含む10mMトリス塩酸緩衝液、pH8.0)に溶解させた。得られた溶液 0.2mLに対して、0.08M ジチオスレイトール溶液(0.25Mリン酸緩衝液(pH8.0)に溶解して作製) 0.2mLを混合し、その後、得られた混合物を室温で16時間攪拌した。溶離液〔0.1Mリン酸バッファー(pH6.0)〕で平衡化した商品名:NAP−5カラム(ファルマシアバイオテク社製)により精製して、チオール基が脱保護されたHS−SP10Aを得た。得られた産物について、260nmの吸光度を測定することによりHS−SP10Aの濃度を決定した。同様にPS−S−SP10Bも脱保護してHS−SP10Bを得た。得られたHS−SP10Bの濃度を、同様に決定した。
KDGEA−SP10−GRGDSの原料となるチオール基が保護されたssDNAは、PS−S−SP10A及びPS−S−SP10Bの2種類である(図1参照)。PS−S−SP10A(シグマジェノシス社製)を100nmol/mLとなるように、TEバッファー(1mM EDTAを含む10mMトリス塩酸緩衝液、pH8.0)に溶解させた。得られた溶液 0.2mLに対して、0.08M ジチオスレイトール溶液(0.25Mリン酸緩衝液(pH8.0)に溶解して作製) 0.2mLを混合し、その後、得られた混合物を室温で16時間攪拌した。溶離液〔0.1Mリン酸バッファー(pH6.0)〕で平衡化した商品名:NAP−5カラム(ファルマシアバイオテク社製)により精製して、チオール基が脱保護されたHS−SP10Aを得た。得られた産物について、260nmの吸光度を測定することによりHS−SP10Aの濃度を決定した。同様にPS−S−SP10Bも脱保護してHS−SP10Bを得た。得られたHS−SP10Bの濃度を、同様に決定した。
(KDGEA−S−SP10A及びGRGDS−S−SP10Bの調製)
上述のように脱保護して得られたHS−SP10Aへのマレイミド化KDGEAの結合形成により、以下のように、KDGEA−S−SP10A(図1を参照)を調製した。
上述のように脱保護して得られたHS−SP10Aへのマレイミド化KDGEAの結合形成により、以下のように、KDGEA−S−SP10A(図1を参照)を調製した。
HS−SP10A溶液(濃度17.0nmol/mL) 0.8mLと、HS−SP10Aに対して25当量のマレイミド化KDGEAを0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)に溶解させた溶液 0.8mLとを混合し、4℃で24時間反応させた。得られた反応溶液を凍結乾燥させた。得られた産物を、1mM EDTAを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0) 0.5mLに溶解させた。得られた溶液を、溶離液で平衡化したNAP−5(商品名)を用いたゲル濾過に供して、KDGEA−S−SP10Aを精製した。なお、前記溶離液として、1mM EDTAを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を用いた。得られた産物について、260nmにおける吸光度を測定し、HS−SP10A(表1)のデータを利用して、KDGEA−S−SP10Aの濃度を決定した。同様に、マレイミド化GRGDSとHS−SP10BのコンジュゲートであるGRGDS−S−SP10Bを得た。得られたGRGDS−S−SP10Bの濃度を同様に決定した。
また、全てのコンジュゲートが、HPLCによりシングルピークであることが確認できた。
(KDGEA−SP10−GRGDSの調製)
KDGEA−S−SP10AとGRGDS−S−SP10Bを等量混合した。得られた混合物を、94℃で30秒間、次いで、55℃で30秒間インキュベーションして、KDGEA−S−SP10AとGRGDS−S−SP10Bとをアニーリングさせ、二重らせん化(ハイブリダイゼーション)した30量体のDNAをスペーサーとして有するKDGEA−SP10−GRGDSを得た。また、前記KDGEA−SP10−GRGDSを、定法に従ったポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、核酸スペーサー部分の検出を行なった。その結果、得られたKDGEA−SP10−GRGDSのdsDNAが30量体であることが確認できた。
KDGEA−S−SP10AとGRGDS−S−SP10Bを等量混合した。得られた混合物を、94℃で30秒間、次いで、55℃で30秒間インキュベーションして、KDGEA−S−SP10AとGRGDS−S−SP10Bとをアニーリングさせ、二重らせん化(ハイブリダイゼーション)した30量体のDNAをスペーサーとして有するKDGEA−SP10−GRGDSを得た。また、前記KDGEA−SP10−GRGDSを、定法に従ったポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、核酸スペーサー部分の検出を行なった。その結果、得られたKDGEA−SP10−GRGDSのdsDNAが30量体であることが確認できた。
実施例2
スペーサーとして20nm(60量体)のdsDNAを有するKDGEA−SP20−GRGDSを、以下のように調製した。合成プロセスの概略は、図2の通りである。
スペーサーとして20nm(60量体)のdsDNAを有するKDGEA−SP20−GRGDSを、以下のように調製した。合成プロセスの概略は、図2の通りである。
(チオール基を含有するssDNAの脱保護)
KDGEA−SP20−GRGDSの原料となるチオール基が保護されたssDNAはPS−S−SP20A及びPS−S−SP20Bの2種類である(図2参照)。PS−S−SP20A及びPS−S−SP20B(シグマジェノシス社製)を実施例1と同様にジチオスレイトールにより脱保護した。得られたHS−SP20A及びHS−SP20Bの濃度を表3に示す。
KDGEA−SP20−GRGDSの原料となるチオール基が保護されたssDNAはPS−S−SP20A及びPS−S−SP20Bの2種類である(図2参照)。PS−S−SP20A及びPS−S−SP20B(シグマジェノシス社製)を実施例1と同様にジチオスレイトールにより脱保護した。得られたHS−SP20A及びHS−SP20Bの濃度を表3に示す。
(KDGEA−S−SP20A及びGRGDS−S−SP20Bの調製)
上述のように脱保護して得られたHS−SP20A及びHS−SP20Bに対して、それぞれマレイミド化KDGEA及びマレイミド化GRGDSを、実施例1と同様の方法により導入した。ゲル濾過によりKDGEA−S−SP20A及びGRGDS−S−SP20Bを精製した。260nmにおける吸光度を測定し、表3のデータを利用して濃度を計算した。結果を表4に示す。
上述のように脱保護して得られたHS−SP20A及びHS−SP20Bに対して、それぞれマレイミド化KDGEA及びマレイミド化GRGDSを、実施例1と同様の方法により導入した。ゲル濾過によりKDGEA−S−SP20A及びGRGDS−S−SP20Bを精製した。260nmにおける吸光度を測定し、表3のデータを利用して濃度を計算した。結果を表4に示す。
また、全てのコンジュゲートはHPLCによりシングルピークであることが確認できた。
(KDGEA−SP20−GRGDSの調製)
KDGEA−S−SP20A、GRGDS−S−SP20B及びSP20C(KDGEA−S−SP20A及びGRGDS−S−SP20Bの各32量体のDNA部位にそれぞれ相補的に結合する28量体の5’末端がリン酸化されたssDNA)等を表5のように混合した。得られた混合物を、94℃で30秒間、次いで、55℃で30秒間インキュベーションして、アニーリングさせた。得られた溶液 90μLと、DNAライゲーションキット(商品名:DNA Ligation Kit(Ver.1)、タカラバイオ株式会社製)の酵素溶液 90μLとを混合した。得られた混合物を用い、16℃で60分間ライゲーション反応を行なった。得られた産物を、スピンカラム(商品名:QIA PCR Purification Kit、キアゲン社製)により精製して、KDGEA−SP20−GRGDSを得た。
KDGEA−S−SP20A、GRGDS−S−SP20B及びSP20C(KDGEA−S−SP20A及びGRGDS−S−SP20Bの各32量体のDNA部位にそれぞれ相補的に結合する28量体の5’末端がリン酸化されたssDNA)等を表5のように混合した。得られた混合物を、94℃で30秒間、次いで、55℃で30秒間インキュベーションして、アニーリングさせた。得られた溶液 90μLと、DNAライゲーションキット(商品名:DNA Ligation Kit(Ver.1)、タカラバイオ株式会社製)の酵素溶液 90μLとを混合した。得られた混合物を用い、16℃で60分間ライゲーション反応を行なった。得られた産物を、スピンカラム(商品名:QIA PCR Purification Kit、キアゲン社製)により精製して、KDGEA−SP20−GRGDSを得た。
得られた産物を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。その結果、得られたKDGEA−SP20−GRGDSのdsDNAが60量体であることが確認できた。これにより、dsDNAからなるスペーサー部位が設計どおりの長さで合成できたことが分かった。また、商品名:PicoGreenによって、前記産物の濃度を定量した。その結果、48.0μg/mLであった。KDGEA−SP20−GRGDSのdsDNA部分の分子量を約36800とすると1.3nmol/mLと計算される。
実施例3〜5
スペーサーとして40nm(120量体)、80nm(240量体)及び160nm(480量体)のdsDNAを有するそれぞれKDGEA−SP40−GRGDS、KDGEA−SP80−GRGDS及びKDGEA−SP160−GRGDSの調製法について説明する。ここでも実施例1及び2と同様にコンジュゲートをまず調製するが、図3にはそれぞれのリガンド構築物の作製に用いられるコンジュゲートの構造を示した。
スペーサーとして40nm(120量体)、80nm(240量体)及び160nm(480量体)のdsDNAを有するそれぞれKDGEA−SP40−GRGDS、KDGEA−SP80−GRGDS及びKDGEA−SP160−GRGDSの調製法について説明する。ここでも実施例1及び2と同様にコンジュゲートをまず調製するが、図3にはそれぞれのリガンド構築物の作製に用いられるコンジュゲートの構造を示した。
(チオール基を含有するssDNAの脱保護)
KDGEA−SP40−GRGDSの原料となるチオール基が保護されたssDNAはPS−S−SP40A及びPS−S−SP40Bの二種類である(図3の塩基配列で表記した部分参照。左がPS−S−SP40A、右がPS−S−SP40Bである。他の原料も同様に示す。)。PS−S−SP40A及びPS−S−SP40Bを実施例1と同様にジチオスレイトールにより脱保護した。得られたHS−SP40A及びHS−SP40Bの濃度を表6に示す。同様にKDGEA−SP80−GRGDS及びKDGEA−SP160−GRGDSの場合についても表6に示す。
KDGEA−SP40−GRGDSの原料となるチオール基が保護されたssDNAはPS−S−SP40A及びPS−S−SP40Bの二種類である(図3の塩基配列で表記した部分参照。左がPS−S−SP40A、右がPS−S−SP40Bである。他の原料も同様に示す。)。PS−S−SP40A及びPS−S−SP40Bを実施例1と同様にジチオスレイトールにより脱保護した。得られたHS−SP40A及びHS−SP40Bの濃度を表6に示す。同様にKDGEA−SP80−GRGDS及びKDGEA−SP160−GRGDSの場合についても表6に示す。
(コンジュゲートの調製)
上述の脱保護ssDNAに対してそれぞれマレイミド化KDGEA及びマレイミド化GRGDSを実施例1と同様の方法により導入、精製した。260nmにおける吸光度を測定し、表6のデータを利用して濃度を計算した(表7を参照)。全てのコンジュゲートはHPLCによりシングルピークであることを確認した。
上述の脱保護ssDNAに対してそれぞれマレイミド化KDGEA及びマレイミド化GRGDSを実施例1と同様の方法により導入、精製した。260nmにおける吸光度を測定し、表6のデータを利用して濃度を計算した(表7を参照)。全てのコンジュゲートはHPLCによりシングルピークであることを確認した。
(KDGEA−SP40−GRGDSの調製)
KDGEA−SP40−GRGDSについても実施例1及び2と同様に、KDGEA−S−SP40AとGRGDS−S−SP40Bとを調製した。得られた産物を、PCR用プライマー対として用い、大腸菌16s rRNAを鋳型核酸として用い、以下のように、120量体のDNAスペーサーを調製した。
KDGEA−SP40−GRGDSについても実施例1及び2と同様に、KDGEA−S−SP40AとGRGDS−S−SP40Bとを調製した。得られた産物を、PCR用プライマー対として用い、大腸菌16s rRNAを鋳型核酸として用い、以下のように、120量体のDNAスペーサーを調製した。
前記プライマー対(各50pmol)と、商品名:Premix Ex Taq(タカラバイオ株式会社製) 25μL、大腸菌懸濁液 5μLに蒸留水を添加して、全量50μLの反応溶液を得た。なお、前記大腸菌懸濁液は、寒天培地上に生育させた大腸菌(Escherichia coli IFO3972)の1コロニーを、蒸留水 100μLに溶解させることにより調製した懸濁液である。得られた反応溶液を用い、94℃で0.5分と、55℃で0.5分と、72℃で1分とを1サイクルとする24サイクルの反応を行なった。得られた反応産物を、スピンカラム(商品名:QIA PCR Purification Kit、キアゲン社製)に供して、精製して、KDGEA−SP40−GRGDSを得た。得られたKDGEA−SP40−GRGDSを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、ついで、可視化させ、検出した。その結果、得られたKDGEA−SP40−GRGDSは、120量体のdsDNAを含むことが確認できた。これによりdsDNAからなるスペーサー部位が設計どおりの長さで合成できたことが分かった。商品名:PicoGreenによって濃度を定量した結果を表8に示す。
以上の方法と同様にして、KDGEA−SP80−GRGDSについて、KDGEA−S−SP80A及びGRGDS−S−SP80BをPCR用プライマー対として用い、リガンド構築物を調製した。また、KDGEA−SP160−GRGDSについて、KDGEA−S−SP160A及びGRGDS−S−SP160Bをプライマー対として用い、リガンド構築物を調製した。KDGEA−SP80−GRGDS及びKDGEA−SP160−GRGDSの分子量を、前記と同様に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって確認した。その結果、分子量マーカーとの相対移動度の比較により、KDGEA−SP80−GRGDS及びKDGEA−SP160−GRGDSは、それぞれのdsDNA部が、240量体及び480量体であることが確認できた。これにより、それぞれのdsDNAからなるスペーサー部位が設計どおりの長さで合成できたことが分かった。商品名:PicoGreenによって濃度を定量した結果を表8に示す。
実施例6
(ポリ−L−リジン表面の調製)
ポリ−L−リジン(PLL)塩酸塩(ペプチド研究所製、平均分子量8000以上)を10mg/mLとなるようにリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に溶解させた。なお、これ以降の操作は、安全キャビネット内で全て滅菌した器具や緩衝液を使用して行なった。得られた溶液を0.2μm内径のフィルターを通して濾過滅菌し、PBSでさらに10倍に希釈して、1mg/mLのPLL溶液を得た。得られたPLL溶液を、ヌンク社製のデルタ処理12ウェルプレートに対して1ウェルあたり0.5mL添加し、ついで、プレートを密封した。前記プレートを37℃で2時間インキュベーションすることにより、該プレートにPLLを吸着させた。その後、前記プレートからPLL溶液を吸引してウェル内から除去した。さらに、前記プレートに、1ウェルあたり1mLのPBSを添加して3分間放置し、アスピレーションする洗浄操作を3回行ない、PLL表面を調製した。
(ポリ−L−リジン表面の調製)
ポリ−L−リジン(PLL)塩酸塩(ペプチド研究所製、平均分子量8000以上)を10mg/mLとなるようにリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に溶解させた。なお、これ以降の操作は、安全キャビネット内で全て滅菌した器具や緩衝液を使用して行なった。得られた溶液を0.2μm内径のフィルターを通して濾過滅菌し、PBSでさらに10倍に希釈して、1mg/mLのPLL溶液を得た。得られたPLL溶液を、ヌンク社製のデルタ処理12ウェルプレートに対して1ウェルあたり0.5mL添加し、ついで、プレートを密封した。前記プレートを37℃で2時間インキュベーションすることにより、該プレートにPLLを吸着させた。その後、前記プレートからPLL溶液を吸引してウェル内から除去した。さらに、前記プレートに、1ウェルあたり1mLのPBSを添加して3分間放置し、アスピレーションする洗浄操作を3回行ない、PLL表面を調製した。
(ポリイオンコンプレックス形成によるポリ−L−リジン表面へのナノ構造を有するリガンド分子の固定化)
以下、全ての操作は、安全キャビネット内で全て滅菌した器具や緩衝液を使用して行った。実施例1〜5で得られたリガンド構築物、すなわち、KDGEA−SP10−GRGDS、KDGEA−SP20−GRGDS、KDGEA−SP40−GRGDS、KDGEA−SP80−GRGDS及びKDGEA−SP160−GRGDSを目標密度となるように、2mM EDTAを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)で希釈した。得られた希釈物を、0.2μm内径のフィルターで濾過滅菌した。滅菌後の産物を、PLL表面を形成させた12ウェルプレートに対して1ウェルあたり0.5mLとなるように添加した。ここで、前記産物 0.5mL中にリガンド構築物をそれぞれ0.45pmol含むように調整した。12ウェルプレートの場合、1ウェルに液体 0.5mLを添加すると、液体が覆う面積は、約4.5cm2となる。したがって、この場合のリガンド構築物が全てPLL表面に結合したときの密度は、100fmol/cm2と判断される。その後、4℃において12時間以上吸着させた。吸着後のリガンド構築物溶液を回収した。ついで、得られた機能性高分子複合体溶液について、商品名:PicoGreenによりdsDNA濃度を測定し、添加した機能性高分子複合体がどの程度PLL表面に固定化されているかを確認した。その結果を表9に示す。
以下、全ての操作は、安全キャビネット内で全て滅菌した器具や緩衝液を使用して行った。実施例1〜5で得られたリガンド構築物、すなわち、KDGEA−SP10−GRGDS、KDGEA−SP20−GRGDS、KDGEA−SP40−GRGDS、KDGEA−SP80−GRGDS及びKDGEA−SP160−GRGDSを目標密度となるように、2mM EDTAを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)で希釈した。得られた希釈物を、0.2μm内径のフィルターで濾過滅菌した。滅菌後の産物を、PLL表面を形成させた12ウェルプレートに対して1ウェルあたり0.5mLとなるように添加した。ここで、前記産物 0.5mL中にリガンド構築物をそれぞれ0.45pmol含むように調整した。12ウェルプレートの場合、1ウェルに液体 0.5mLを添加すると、液体が覆う面積は、約4.5cm2となる。したがって、この場合のリガンド構築物が全てPLL表面に結合したときの密度は、100fmol/cm2と判断される。その後、4℃において12時間以上吸着させた。吸着後のリガンド構築物溶液を回収した。ついで、得られた機能性高分子複合体溶液について、商品名:PicoGreenによりdsDNA濃度を測定し、添加した機能性高分子複合体がどの程度PLL表面に固定化されているかを確認した。その結果を表9に示す。
これによりリガンド構築物がPLL表面に固定化されたことが分かった。
実施例7
(リガンド構築物が持つ細胞の機能を制御する性能の評価)
実施例6で作製したリガンド構築物を固定化したPLL表面が持つ、細胞の機能を制御する性能を評価した。前記と同様に、リガンド構築物がマウス由来の未成熟骨芽細胞(MC3T3−E1細胞)を成熟した骨芽細胞に分化させる能力(ALP活性)を比較することにより行った。
(リガンド構築物が持つ細胞の機能を制御する性能の評価)
実施例6で作製したリガンド構築物を固定化したPLL表面が持つ、細胞の機能を制御する性能を評価した。前記と同様に、リガンド構築物がマウス由来の未成熟骨芽細胞(MC3T3−E1細胞)を成熟した骨芽細胞に分化させる能力(ALP活性)を比較することにより行った。
MC3T3−E1細胞を培養して11日目の1細胞あたりのALP活性を測定した結果を表10に示す。
その結果、今回の細胞、リガンド分子及びスペーサー長の組み合わせにおいて、実施例1〜5のリガンド構築物は、いずれもMC3T3−E1細胞のALP活性を増幅させ得たが、中でもスペーサーの長さが20nmのKDGEA−SP20−GRGDSによってより特異的に増幅されることが分かった。
比較例1
(リガンド分子を1つ有するリガンド構築物の調製)
実施例2においてKDGEA−SP20−GRGDSを調製する際、KDGEA−S−SP20Aの代わりに脱保護されていないPS−S−SP20Aを用いることにより、GRGDSのみが20nmのDNAスペーサーに結合したPS−S−SP20−GRGDSを調製した。
(リガンド分子を1つ有するリガンド構築物の調製)
実施例2においてKDGEA−SP20−GRGDSを調製する際、KDGEA−S−SP20Aの代わりに脱保護されていないPS−S−SP20Aを用いることにより、GRGDSのみが20nmのDNAスペーサーに結合したPS−S−SP20−GRGDSを調製した。
また、GRGDS−S−SP20Bの代わりに脱保護されていないPS−S−SP20Bを用いてKDGEAのみが20nmのDNAスペーサーに結合したPS−S−SP20−KDGEAを調製した。実施例6と同様にPLL表面に、PS−S−SP20−GRGDSのみ(表面密度は約100fmol/cm2)、PS−S−SP20−KDGEAのみ(表面密度は約100fmol/cm2)を固定化した表面を調製して、実施例7と同様に細胞の機能評価を行った。その結果を表11に示す。
その結果、リガンド分子を1つ有するリガンド構築物では特異的なALP活性の上昇は実質的に観測されず、比較例1のリガンド構築物による細胞機能の制御は不充分であると思われる。
比較例2
(ポリエチレングリコールスペーサーを有するリガンド構築物の調製)
リガンド分子としてKDGEA分子とGRGDS分子とを含有し、かつ平均分子量が3000のポリエチレングリコール(以下、PEGと略称することがある)をスペーサーとするリガンド構築物を合成した。Fmoc基により保護されたアミノ基及びN−ヒドロキシスクシンイミドにより活性化されたカルボキシル基をもう1つの末端に持つFmoc−NH−PEG−NHS(NEKTAR社製,分子量3400)をPEGスペーサー結合部位として用いた以外は、ヤマモト(S.Yamamoto)ら、Anti−Cancer Drugs,5,424−428(1994)及びスズキ(Y.Suzuki)らChem.Pharm.Bull.50(9),1229−1232(2002)に記載された方法を適用し、KDGEA−PEG−GRGDSを合成した。
(ポリエチレングリコールスペーサーを有するリガンド構築物の調製)
リガンド分子としてKDGEA分子とGRGDS分子とを含有し、かつ平均分子量が3000のポリエチレングリコール(以下、PEGと略称することがある)をスペーサーとするリガンド構築物を合成した。Fmoc基により保護されたアミノ基及びN−ヒドロキシスクシンイミドにより活性化されたカルボキシル基をもう1つの末端に持つFmoc−NH−PEG−NHS(NEKTAR社製,分子量3400)をPEGスペーサー結合部位として用いた以外は、ヤマモト(S.Yamamoto)ら、Anti−Cancer Drugs,5,424−428(1994)及びスズキ(Y.Suzuki)らChem.Pharm.Bull.50(9),1229−1232(2002)に記載された方法を適用し、KDGEA−PEG−GRGDSを合成した。
(ポリエチレングリコールスペーサーを有するリガンド構築物のディッシュ表面への固定化)
9nmol/mLとなるようにKDGEA−PEG−GRGDSを純水に溶解させた。得られた溶液を、12ウェルプレート(Nunc社製、デルタ処理)のウェルに、1ウェルあたり0.5mL添加した。前記プレートを、そのままクリーンベンチ内で放置し、溶液を風乾した。前記プレートのウェルに、3重量% ウシ血清アルブミン/DMEM(ギブコ社製、DMEMはDulbecco‘s Modified Eagle’s Mediumの略称である)を1ウェルあたり2mL添加して室温1時間静置した。その後、溶液を吸引した。0.1重量% ウシ血清アルブミン(BSA)/DMEM溶液を、前記プレートの1ウェルあたり2mL入れてアスピレーションする一連の洗浄操作を3回行なって、リガンド構築物を固定化した表面を調製した。
9nmol/mLとなるようにKDGEA−PEG−GRGDSを純水に溶解させた。得られた溶液を、12ウェルプレート(Nunc社製、デルタ処理)のウェルに、1ウェルあたり0.5mL添加した。前記プレートを、そのままクリーンベンチ内で放置し、溶液を風乾した。前記プレートのウェルに、3重量% ウシ血清アルブミン/DMEM(ギブコ社製、DMEMはDulbecco‘s Modified Eagle’s Mediumの略称である)を1ウェルあたり2mL添加して室温1時間静置した。その後、溶液を吸引した。0.1重量% ウシ血清アルブミン(BSA)/DMEM溶液を、前記プレートの1ウェルあたり2mL入れてアスピレーションする一連の洗浄操作を3回行なって、リガンド構築物を固定化した表面を調製した。
(ポリエチレングリコールスペーサーを有するリガンド構築物を固定化した表面による細胞機能制御)
以上のように調製した12ウェルプレートを用いて実施例7と全く同じ条件で、かつ同時に細胞機能の評価を行った。その結果、11日間培養を続けるとMC3T3−E1細胞がプレート底面から剥がれてしまった。また、1細胞あたりのALP活性は、28fmol/min/cellであり、きわめて低かった。かかる結果は、比較例2で得られたプレートの表面では細胞機能の制御ができなかったことを意味する。
以上のように調製した12ウェルプレートを用いて実施例7と全く同じ条件で、かつ同時に細胞機能の評価を行った。その結果、11日間培養を続けるとMC3T3−E1細胞がプレート底面から剥がれてしまった。また、1細胞あたりのALP活性は、28fmol/min/cellであり、きわめて低かった。かかる結果は、比較例2で得られたプレートの表面では細胞機能の制御ができなかったことを意味する。
本発明により、細胞機能を効果的に再現性よく制御することができるリガンド構築物、及び該構築物を固定化した細胞培養用基材が提供される。本発明は、例えば、薬物の薬効、薬理、毒性に関する試験の効率化による医薬品の開発支援、動物試験代替法、細胞を用いたバイオセンサー、研究用又は移植用の機能細胞の供給、細胞の機能発現の仕組みを探索する研究、細胞(再生)医療、患者の細胞を用いた診断、医薬品等有用物質の製造等の分野に大きく寄与するものである。
配列番号:1は、リガンドの配列を示す。
配列番号:2は、リガンドの配列を示す。
配列番号:3は、リガンドの配列を示す。
配列番号:4は、リガンドの配列を示す。
配列番号:5は、リガンドの配列を示す。
配列番号:6は、リガンドの配列を示す。
配列番号:7は、リガンドの配列を示す。
配列番号:8は、リガンドの配列を示す。
配列番号:9は、リガンドの配列を示す。
配列番号:10は、リガンドの配列を示す。
配列番号:11は、リガンドの配列を示す。
配列番号:12は、リガンドの配列を示す。
配列番号:13は、リガンドの配列を示す。
配列番号:14は、リガンドの配列を示す。
配列番号:15は、リガンドの配列を示す。
Claims (10)
- 細胞表面受容体に結合し得る、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子を、核酸スペーサーを介して連結してなるリガンド構築物。
- 細胞表面受容体に結合し得る、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子を、核酸スペーサーを介して連結してなるリガンド構築物であって、核酸スペーサーが複数の核酸からなる場合、少なくとも2つの同一又は異なるリガンド分子がそれぞれ同一又は異なる核酸鎖に結合してなるものである、リガンド構築物。
- 核酸スペーサーの長さが1〜300nmである請求項1又は2記載のリガンド構築物。
- 核酸スペーサーがデオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド核酸又はそれらの誘導体である請求項1〜3いずれか記載のリガンド構築物。
- 核酸スペーサーがデオキシリボ核酸又はその誘導体である請求項1〜3いずれか記載のリガンド構築物。
- リガンド分子を、デオキシリボ核酸又はその誘導体の5’末端及び/又は3’末端に結合してなる請求項5記載のリガンド構築物
- 請求項1〜6いずれかに記載のリガンド構築物を固定化してなる細胞培養用基材。
- リガンド構築物を基材1cm2当り0.1〜166×103fmol固定化してなる請求項7記載の細胞培養用基材。
- 請求項1〜6いずれかに記載のリガンド構築物の存在下に培養して得られた細胞。
- 請求項1〜6いずれかに記載のリガンド構築物の存在下に細胞を培養する工程を含む、細胞の調製方法。
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WO2007074747A1 (ja) * | 2005-12-26 | 2007-07-05 | Kuraray Co., Ltd. | 細胞培養用材料 |
JP2010511375A (ja) * | 2005-12-01 | 2010-04-15 | エイジェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ | 組織工学の足場としての三次元再構成細胞外マトリクス |
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2005
- 2005-06-30 JP JP2005193183A patent/JP2006042811A/ja not_active Withdrawn
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