JP2006045131A - 新規化合物及び遺伝子発現制御剤並びに遺伝子発現制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 下記一般式(I)で示される化合物を、前記特定遺伝子に関連する核酸配列に結合させる。
【化1】
[式(I)中、A1及びA2は、それぞれ独立に、少なくとも1個の窒素原子を含む5又は6員環であり、各環中の1個の窒素原子は共に白金原子に結合している;X1及びX2は、それぞれ独立に、ハロゲン、窒素、硫黄、酸素、カルボン酸、アミン、水酸基からなる群より選択された原子である;m及びnは、それぞれ独立に1〜2の整数を示す;Y-は、ハロゲンアニオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸イオン又はカルボン酸イオンを表す。]
【選択図】 なし
Description
特にシスプラチン(cisplatin, cis-DDP:cis-diaminedichloroplatinum(II))は、二本鎖DNAやタンパク質と架橋を形成することによって、二本鎖DNAやタンパク質の高次構造を変化させて、抗腫瘍作用を発揮し、精巣腫瘍、卵巣癌、頭頚部癌、食道癌、小細胞肺癌等のいくつかの固形癌で優れた効果が認められている。
従って、本発明の目的は、特定配列に基づく遺伝子発現を制御することができる新規な化合物及び遺伝子発現制御方法を提供することである。
この化合物として特に好ましいものは、下記一般式(II)で表される化合物である。
また本発明の遺伝子発現制御方法は、特定遺伝子の発現を制御する方法であって、上記一般式(I)で示される化合物を、前記特定遺伝子に関連する特定のDNA配列に結合させること、を含むことを特徴としている。
この結果、それぞれの錯体が、Gとその周囲のTで構成される特定の配列を認識することによって、化合物全体として4個以上の核酸配列、例えば、TGGTやTCGAのような配列に結合することができる。このような配列は、遺伝子発現において重要な配列に多く存在しているので、本発明の化合物を結合させることによって、これらの配列に基づいた遺伝子発現を阻害することができる。
上記式(I)中、A1及びA2は、それぞれ独立に、少なくとも1個の窒素原子を含む5又は6員環であり、環におけるそれぞれ1個の窒素原子は共に白金原子に結合している。A1及びA2は、ヘテロ原子を含んでもよく、ヘテロ原子としては例えば硫黄を挙げることができる。少なくとも1個の窒素原子を含む5又は6員環としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、チアゾール、トリアゾールを挙げることができるが、合成効率及び生理活性の観点からピリジンであることが好ましい。また、A1とA2はそれぞれ、隣接する連結部又は環とパラ−、メタ−、オルト−の各位置で結合することができるが、生理活性、特に、塩基配列の認識しやすさの観点から、パラ位であることが好ましい。
A1及びA2は同じであっても異なってもよいが、合成効率の観点から同じであることが好ましい。
また上記式(I)中、X1及びX2は、それぞれ独立に、ハロゲン、窒素、硫黄、酸素、カルボン酸、アミン、水酸基からなる群より選択されたものである。このうち、安定性及び合成効率の観点から、Cl、S、N、Oであることが好ましい。
上記式(I)中のm及びnは、本発明の化合物における連結部の長さを決定する繰り返し単位の数であり、それぞれ独立に、合成効率及び生理活性の観点から1〜2の整数を示し、合成効率の観点から1であることが特に好ましい。
上記式(I)中のY-は、ハロゲンアニオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸イオン及びカルボン酸イオンからなる群より選択されたものを表す。
2,2’−ビピリジル誘導体と、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)で保護されたサイクレン誘導体とを反応させ、次いで、得られた化合物に白金化合物を加えて、白金イオンを配位させ、単核白金錯体化合物(PtL)を得る。この単核白金錯体化合物に亜鉛化合物を添加して、亜鉛イオンを配位させ、本発明の化合物(PtZn2L)を得ることができる。
この結果、本化合物をDNA及びRNAなどの核酸配列に添加すると、シスプラチンによる架橋構造(B)とは異なり、T及びGを含む4つの塩基配列を認識して不可逆的に結合する。さらにDNAの二本鎖の場合には、塩基が相補的に結合しているため、いずれかの鎖がチミジン又はグアニンであれば、本発明の化合物が結合することができる。
これにより、TGGTのみならず、TCGA、TGAC、GACT、TCGT、TGGA、ACCTなどの配列を認識して、これに結合することができる。その結果、これらの塩基配列に結合すべき他の塩基配列やタンパク質などとの結合を阻害することができる。
更に、これらの配列は遺伝子制御領域に多く存在することがわかっており、本発明の化合物によって、DNA発現制御因子、例えば、CREB/ATFやエストロゲンレセプターのような転写因子の結合を阻害することができる。
また、本発明の遺伝子発現制御方法は、上記本発明の化合物を、特定遺伝子に関連する特定の核酸配列に結合させることを特徴とするものである。
上述の通り、本発明の式(I)で表される化合物、好ましくは式(II)で表される化合物は特定塩基配列に不可逆的に結合するので、特定塩基配列と他の因子との結合を阻害することによって特定遺伝子の発現を制御することができる。
また、本発明の遺伝子発現制御剤における上記式(I)又は(II)の化合物の使用量は、化合物の最終濃度として、1nM〜10μM、生理活性の観点から好ましくは10nM〜1μMである。
DNAには、二本鎖DNA、一本鎖DNAのほか、cDNAも含まれる。DNAを対象とする場合には、特定遺伝子の構造遺伝子であってもよく、プロモータ、エンハンサーなどの調節領域のものであってもよい。標的核酸配列がプロモータ配列の場合には、遺伝子の発現を効果的に阻害することができるため、好ましい。
プロモータ配列としては、種々の真核生物の転写制御因子の標的となっているDNA配列であることが好ましく、例えば下記表1に示されるものが挙げられる。
[実施例1]
化合物の合成例
5,5’−ジメチル−2,2’−ビピリジル(Aldrich社製)(1.0g,5,4mmol)を、四塩化炭素に溶解し、N−ブロモスクシンイミド(2.2g,11mmol)、ベンソイルペルオキシド(20mg,0.38mmol)を加え、窒素雰囲気下、5時間加熱還流した。反応液を減圧留去した後、残査をジクロロメタンに溶解させ、Na2S2O3溶液で洗浄した。Na2SO4で乾燥後、減圧留去し、残差をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:AcOEt:ヘキサン=1:5)で精製した。さらにこれを酢酸エチルで再結晶し、無色の針状結晶として得た(0.60g,32%yield)。
1,4,7−トリス(tert−ブチルオキシカルボニル)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン[2](1.0g,2.1mmol)を、アセトニトリル(20ml)に溶解させた後、5,5’−ビス(ブロモメチル)−2,2’−ビピリジル[1](0.40g,1.1mmol)とNa2CO3(0.65g,6.1mmol)を加え、窒素雰囲気下、60℃で12時間攪拌した。不溶性の無機物を濾去した後、濾液を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:AcOEt:ヘキサン=1:6)で分離精製し、無色のアモルファスとして得た(1.1g,96%yield)。
IR(KBr pellet): 3005,2967,2931,2931,1685,1458,1414,1365,1250,1171,1153,978,754 cm-1
1H NMR(CDCl3): δ=1.42(18H,s,−CH3),1.45(18H,s,−CH3),1.48(18H,s,−CH3),3.35−3.60(32H,s,−CH2−),3.83(4H,s,−CH2−),7.76(2H,d,J=8.0Hz,ArH),8.33(2H,d,J=8.0Hz,ArH),8.53(2H,s,ArH)),
13C NMR(CDCl3): δ=14.2,21.1,47.8,50.2,53.8,54.8,55.4,60.4,120.6,132.4,138.9,150.3,155.1
化合物[3](100mg,0.09mmol)をDMSO(0.5ml)に溶解させた後、水(0.05ml)に溶解させたK2PtCl4(37mg,0.09mmol)を加え、10秒間、マイクロウェイブ700Wをかけた。この操作を20回繰り返した。次に、この溶液に1N HCl水溶液(5ml)を加え、室温で3時間撹拌し、脱保護を行った。反応液を減圧留去し、残渣を1N HCl水溶液中で結晶化し、黄色の粉体として12を得た(141mg,90%yield)。
融点: >250℃
IR(KBr pellet): 3416,2965,2755,1609,1422,1068,1004,942,833,724cm-1
1H NMR(DMSO−d6): δ=3.35〜3.87(32H,br−CH2−),4.53(4H,s,−CH2−),9.18(4H,s,ArH),9.90(2H,s,ArH)
13C NMR(DMSO−d6): δ=42.0,42.4,46.9,124.1,142.2,148.4,155.5,156.0
元素分析: Anal.Calcd for C28H74N10O10Cl2Pt:C,28.3:H,6.3;N,11.8.Found:C,28.4;H,6.2;N,11,7.
化合物[4](100mg,0.09mmol)を0.1M NaCl(1ml)に溶解させた後、ZnCl2(37mg,0.09mmol)を加え、pH6に調整し、これを室温で1時間撹拌した。再びpH6に調整し、溶液を濾去した後、減圧留去した。水とメタノール混合溶媒にて再結晶を行い、黄色の針状結晶として6を得た(36mg,35%yield)。
融点: >250℃
IR(KBr pellet): 3422,2927,1613,1492,1388,1092,991,835,516cm-1
1H NMR(DMSO−d6): δ=3.35〜3.66(32H,br−CH2−),4.45(4H,S,−CH2−),9.02(2H,d,J=8Hz,ArH),9,09(2H,d,J=8Hz,ArH),9.87(4H,s,ArH)
13C NMR(DMSO−d6): δ=42.1,44.7,47.5,50.2,55.9,124.7,135.9,142.8,153.0
元素分析: Anal.Calcd for C28H64N10O25Cl8NaPtZn2:C,28.5;H,5.4;N,11.8.Found:C,28.7;H,5.6;N,11.3.
化合物[3](650mg,0.58mmol)を、メタノール(20ml)に溶解させた後、氷冷下で47%HBr水溶液(8ml)を少しずつ加え、室温で2時間反応させた。この溶液を減圧留去し、残渣を1N HBr水溶液とメタノール混合溶媒で再結晶し、無色の針状結晶として得た(615 mg,90%yield)。
融点: 221℃
IR(KBr pellet): 3431,3184,1640,1453,1355,1284,1250,1143,1122,1033,984,621cm-1
1H NMR(D2O): δ=2.93〜3.32(32H,br,−CH2−),4.03(4H,s,−CH2−),8.13(2H,d,J=8Hz,ArH),8.23(2H,d,J=8Hz,ArH),8,70(4H,s,ArH)
13C NMR(D2O): δ=44.6,44.9,47.5,50.2,55.9,137.7,147.4,149.8,150.0
元素分析: Anal.Calcd For C28H65N10O5Br7:C,28.5;H,5.4;N,11.8.Found:C,28.7;H,5.6:N,11.3.
化合物[6](50mg,0.04mmol)に5MのNaOH水(30ml)に加え、クロロホルム(200ml)で抽出し、合わせた有機層を減圧留去する。残渣にエタノール(5ml)と水(2ml)を加えて無色溶液とした後、Zn(NO3)2(13mg,0.08mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。溶液を減圧留去して得られた残渣をエタノールと水の混合溶媒から再結晶し、無色の粒状結晶として11を得た(12mg,26%yield)。
融点: >250℃
IR(KBr pellet): 3040,3228,2923,2875,1595,1553,1417,1383,1241,1130,1091,1054,1028,991,755,673,650cm-1
1H NMR(D2O): δ=2.96〜3.15(32H,br−CH2−),4.34(4H,s,−CH2−),8.20(2H,s,ArH),8.30(2H,s,ArH),8.80(2H,s,ArH)
13C NMR(D2O): δ=44.5,46.4,47.3,50.3,51.8,125.0,144.3,153.8
元素分析: Anal.Calcd for C30H64N14O25Zn2:C,34.6;H,6.2;N,18.9.Found:C,34.1;H,5.7;N,18.9.
ヘテロ複核錯体によるDNA溶解温度の変化
二本鎖DNAに温度勾配をかけていくと、二本鎖が解離し一本鎖になり、その吸光度が増大する。このとき、50%のDNAが解離する温度が融解温度(Tm)である。Tm値は、DNAの二本鎖が安定化すると上昇し、二本鎖がほどかれて不安定化すると低下する。二本鎖を安定化する物質としては、カチオン(Na+、Mg2+、Zn2+等)やDNAグループ結合剤(スペルミジン、ジスタマイシン等)、インターカレート剤(エチジウムブロマイド等が挙げられる。本発明の化合物[5]が与えるDNA二本鎖への影響を調べた。
ポリ(dT)・ポリ(dA)及びポリ(dG−dC)(アマシャム・ファルマシア社製)は、H2Oに溶解させて調整し、DNA中のリン酸濃度をそれぞれε260=6000M-1cm-1、ε254=8400M-1cm-1として計算した。ただし、ポリ(dG−dC)2については、50%(v/v)ホルムアルデヒド/H2O溶液中で測定した。
測定には、UVスペクトルの測定には、JASCO社製、spectorophotometer V500を用い、ふた付きの1cm角の石英セルを使用した。得られた吸光度変化曲線より、プログラムを用いて融解温度を計算した(JASCO spectra manager for windows 98, DNA melting program)。
結果を表2に示す。
亜鉛のみを含む化合物Zn2Lでは、r値の増加と共にTmが低下し、r値が0.1の時のTmは消失したが、r値の上昇と共にTmが上昇した。
これに対して、白金のみを含む化合物PtLでは、ポリ(dA)・ポリ(dC)に対してr値の増加と共にTmが上昇し、ポリ(dG−dC)2に対しては(r=0.01、0.05)ではTmが上昇し、高濃度(r=0.1)ではTmが消失した。
一方、亜鉛も白金も含まない化合物Lでは、いずれの場合も、r値の上昇に伴ってTm値が上昇した。
また、化合物Lは、配列に関係なく二本鎖を安定化させるのに対し、化合物Zn2Lは、dTを含まないDNAでは化合物Lと同様に二本鎖を安定化させたが、dTを含むDNAでは不安定化させた。従って、化合物Lのビピリジル基部分は、二本鎖を安定化するのに寄与し、化合物Zn2L4のZn2+−サイクレン部分は、チミン塩基を認識し、二本鎖を不安定化するのに寄与しているといえる。ピリジル基の結合様式としては、他の芳香環と同様に塩基間のインターカレートであると考えられる。
一方、本発明の化合物PtZn2Lや化合物PtLは、Gを含む配列において、低濃度では二本鎖を安定化させ、高濃度では二本鎖を不安定化させた。また、本発明の化合物PtZn2Lと化合物PtLを比較すると、ポリ(dG−dC)2の場合ではその挙動は同じであるが、GとTが共存するウシ胎児胸腺DNAの場合では挙動に変化がみられ(データ示さず)、本発明の化合物PtZn2LのZn2+−サイクレン部分のチミン塩基認識能により、優位となる結合様式に違いがあることが示唆された。
本発明の化合物PtZn2Lや化合物PtLは、低濃度(r値0.01、0.05)において、二本鎖が安定化されたことから二本鎖間架橋が優位になっていることが示唆される。
化合物PtZn2Lや化合物PtLがグアニン塩基のN7位を架橋修飾しているかを確認するため、Farrellらによって報告されたクロスリンクアッセイ法(Biochem. Vol.29, pp.9522-9531 (1990))による解析を行った。
pUC18を鋳型とし、5’−GCGTCAGACCCCGTAGAAAA−3’(配列番号1)及び、5’−AGTTACCTTCGGAAAAAGAG−3’(配列番号2)(SIGMA製)の二種類のオリゴヌクレオチドをプライマーとして、A−Trich領域を含む150bp断片(1881から2030)をPCR増幅した。これをT4ポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒造社製)と[γ−32]ATP(アマシャム・ファルマシア・バイオテック社製)により5’−32P標識した。
この5’−32Pフラグメント(10,000cpm)をウシ胎児胸腺DNA(100μM リン酸塩)存在下、10mMのEPPSバッファー(pH8.0、25℃、10mM NaNO3)溶液中(全量10μl)で、各々の濃度の化合物PtZn2L、化合物L、化合物Zn2L、化合物PtL及びシスプラチンと、37℃で3時間インキュベートした。この反応液に5MのNaC1を5μl、加えて反応を停止させた後、ゲルローディングバッファー(0.05%(w/v)ブロモフェノールブルー、0.05%(w/v)キシレンシアノール、20mMのEDTA、95%(v/v)ホルムアミド/H2O溶液)を10μl加えた。95℃で5分間加温し、すぐに氷冷し、DNAを変性させた。この反応液10μlを6%変性ゲルにローディングし、電気泳動した(500V、TBEバッファー)。ゲルを乾燥させた後、イメージングプレート(Fuji BAS−IIIs)に、室温で一晩露光させ、Fuji BAS−1500で読取りを行った。結果を図1に示す。
この解析より、本発明の化合物PtZn2Lや化合物PtLが、シスプラチンよりも低濃度で架橋修飾していることを確認された。そしてその傾向は、前項で述べた、Tmの結果と一致する。
次に、塩基配列に対する化合物PtZn2L、化合物L、化合物Zn2L、化合物PtL及びシスプラチンの選択性について検討した。
化合物PtZn2L、化合物L、化合物Zn2L、化合物PtL又はシスプラチン存在下、2.0μMのpUC18、10mMのEPPSバッファー(全量50μl)を、37℃で3時間反応させた。この反応液に5MのNaClを5μl加え、反応を停止させた後、エタノール沈澱をし、未反応の化合物を取り除いた。このpUC18を鋳型として、TaKaRa Taq Cycle Sequencing Kitのプロトコールに従い、PCR増幅反応を行った(図2)。
個々で用いたプライマーには、キットに含まれるBcaBEST(商品名)Sequencing Primer M13−47(5’−CGACGTTGTAAAACGACGGCCAGT−3’:配列番号3)及びBcaBEST(商品名)Sequencing Primer RV−M(5’−GAGCGGATAACAATTTCACACAGG−3’:配列番号4)を用いた。また、SIGMA製の2種類のオリゴヌクレオチド(5’−GCGTCAGACCCCGTAGAAAA−3’:配列番号5)及び、(5’−AGTTACCTTCGGAAAAAGAG−3’:配列番号6)を用いた。
この反応液にゲルローディングバッファー(0.05%(w/v)ブロモフェノールブルー、0.05%(w/v)キシレンシアノール、20mMのEDTA、95%(v/v)フォルムアミド/H2O溶液)を加え、95℃で5分間加温し、すぐに氷冷し、6%変性ゲルで電気泳動した(3,000V、TBEバッファ)。ゲルを乾燥させた後、イメージングプレート(Fuji BAS−IIIs)に、室温で一晩露光させ、Fuji BAS−1500で読取りを行った。
結果を図3及び図4に示す。
プライマーAを用いた場合、シスプラチンは、Gが片鎖に2つ以上並ぶ配列(GGGG、GGG、AGGA、CGGA)において伸長反応の阻害が見られたが、本発明の化合物PtZn2Lについても、多GC領域に存在するGが4つ並ぶGGGGという配列において、強い伸長阻害が見られた。
プライマーBを用いた場合、プライマーAを用いた場合と同様にシスプラチンは、Gが片鎖にふたつ以上並ぶ配列において伸長反応を阻害した。また、本発明の化合物PtZn2Lは、Gが3つ並ぶGGGという配列では伸長反応の阻害が見られなかったが、5つ並ぶGGGGGという配列では伸長反応の阻害が見られた。
プライマーCを用いた場合、本発明の化合物PtZn2Lは、ATrich領域付近の、TGCAやTGGTなどの配列で伸長反応が阻害された。プライマーDを用いた場合、本発明の化合物PtZn2Lは、ATrich領域付近に存在する、TGCT、TGCGCGT、TGAGATの配列で、さらにその上流に含まれる、TGGT、TGACで伸長反応が阻害された。
本発明の化合物PtZn2Lは、上述のように、TとGを含む配列を認識結合するものであるので、TGGTのようなDNA配列に特異的に結合する。その上、二本鎖間架橋を形成することにより、結合可能なDNA配列の種類が広がり、前掲の表1に挙げられた各種の遺伝子制御にかかる転写因子の認識部位に結合可能となる。
図5は、その一例を示したものである。これによれば、例えばCREB/bZIPの認識部位中のTGACの配列に対して、本発明の化合物が不可逆的に結合することにより、CREB/bZIPが結合できなくなる。これにより、CREB/bZIPによる遺伝子発現を阻害することができる。
Claims (7)
- 下記一般式(I)で表される化合物。
- 前記式中A1及びA2が、それぞれ、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、チアゾール及びイミダゾールからなる群より選択されたものであることを特徴とする請求項1記載の化合物。
- 下記一般式(II)で表される化合物。
- 請求項1又は請求項3記載の一般式(I)又は(II)で表される化合物を有効成分とする遺伝子発現制御剤。
- 特定遺伝子の発現を制御する遺伝子発現制御方法であって、
下記一般式(I)で示される化合物を、前記特定遺伝子に関連する核酸配列に結合させること、
を含む当該方法。
- 前記核酸配列が、前記特定遺伝子の発現を制御するプロモータ配列であることを特徴とする請求項5記載の遺伝子発現制御方法。
- 前記核酸配列が、前記特定遺伝子をコードするRNAであることを特徴とする請求項5記載の遺伝子発現制御方法。
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