JP2006044595A - タイヤ剛性可変装置およびタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】 路面状況や走行状況に応じてタイヤの剛性を変化させることができるタイヤ剛性可変装置およびこの装置に用いられるタイヤを提供する。
【解決手段】 タイヤTのサイドウォール部Swに磁性流体10,10を充填し、この磁性流体10,10に磁界を与えるための電磁石11a,11bをホイール20に設ける。磁性流体10は、磁界の作用により粘性が変化する流体である。電磁石11a,11bへの電流の供給は、スリップリング40を介して行われる。電磁石11a,11bに通電すると、磁性流体10,10を電磁石11a,11bに引き寄せる方向に磁界が作用する結果、磁性流体10の粘性が高くなって、タイヤTのサイドウォール部Swの剛性が高くなる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、路面状況や走行状況に応じてタイヤの剛性を変化させることができるタイヤ剛性可変装置およびタイヤに関する。
車両の走行時における快適性能や運動性能を変化させる場合、所望の性能に適したタイヤに交換することが一般的に行われている。あるいは、オフロード走行時にはタイヤの空気圧が低くなるように、また、ハイウエイ走行時にはタイヤの空気圧が高くなるように、空気圧を調製することが一般的に行われている。タイヤは、その構造上、タイヤ側面のサイドウォール部が最も屈曲する部分であるため、タイヤの性能を変える手段として、サイドウォール部のゴム材の組成や配合を変えて剛性を変化させることが提案されている(特許文献1参照)。
特許第3227297号明細書(段落0022〜0024)
しかし、従来のタイヤでは、路面状況や走行状況に応じてタイヤの剛性を変えることができなかった。このため、タイヤの剛性について車両の快適性能を重視する設定にすると、高速旋回時に車両の挙動が不安定になるなど車両の運動性能が損なわれ、逆に、タイヤの剛性について車両の運動性能を重視する設定にすると、凹凸のある路面上を走行したときに衝撃が大きくなるなど、搭乗者の快適性能が損なわれることになる。
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、路面状況や走行状況に応じてタイヤの剛性を変化させることができるタイヤ剛性可変装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記タイヤ剛性可変装置に用いられるタイヤを提供することを目的とする。
本発明のタイヤ剛性可変装置は、タイヤに設けられる剛性可変部材と、前記剛性可変部材に外部から所定のエネルギーを与えて前記タイヤの剛性を変化させる制御手段を有することを特徴とするものである。
前記本発明では、剛性可変部材に対して制御手段から所定のエネルギーを与えることによって剛性可変部材の剛性を変化させることができる。例えば、制御手段を作動させて剛性可変部材に所定のエネルギーを与えることで、剛性可変部材の剛性が高くなることによってタイヤの剛性を高く設定でき、制御手段を作動させず剛性可変部材に所定のエネルギーを与えなくすることで、剛性可変部材の剛性が低くなることによってタイヤの剛性を低く設定できるようになる。よって、走行中であってもタイヤの剛性を変化させることが可能になり、路面状況や走行状況に応じてタイヤの剛性を変えることができるようになる。
例えば、前記剛性可変部材は、前記タイヤのサイドウォール部に設けられている。タイヤのサイドウォール部は、最も屈曲が激しい部分であるため、この部分に剛性可変部材を設けることにより、快適性能と運動性能の両立をより効果的に発揮できるようになる。
また、前記剛性可変部材は、前記タイヤの周方向に沿って連続的に設けられている構成にできる。このように剛性可変部材をタイヤの周方向に沿って設けることにより、サイドウォール部を均一に変形させることができ、タイヤの回転時にタイヤに無理な力が作用するのを防止できる。
なお、前記剛性可変部材は、前記タイヤの周方向に沿って部分的に設けられていてもよい。
例えば、前記剛性可変部材は、磁性流体である。前記磁性流体を用いることにより、タイヤの剛性を容易に変化させることができる。
この場合、前記磁性流体の制御手段は、電磁石であり、前記電磁石が前記タイヤを支持するホイールに設けられている構成にできる。この構成により、タイヤから離れた位置に電磁石を設置できるので、電磁石に通電するための配線を磁性流体まで延ばす必要がなくなり、配線の構成を簡略化できる。
また、本発明のタイヤは、前記タイヤ剛性可変装置を用いたことを特徴とする。
本発明によれば、路面状況や走行状況に応じてタイヤの剛性を変化させることができるので、車両の快適性能と運動性能とが両立できるようになる。
図1は、本実施形態のタイヤ剛性可変装置の全体構成を示す断面図、図2は、図1の部分拡大断面図、図3は、磁性流体と電磁石の配置を示す斜視図、図4は、タイヤ剛性可変装置において電磁石に通電したときの状態を示す説明図、図5は、タイヤ剛性可変装置において電磁石に通電していないときの状態を示す説明図である。
図1に示すように、このタイヤ剛性可変装置1は、磁性流体10,10を含むタイヤTと、ホイール20に設けられた電磁石(制御手段)11a,11bとを備えている。ホイール20は、スチールやアルミニウム合金などの金属材料で形成されたディスク21とリム22とで構成され、リム22の外周面22aがタイヤTの内周縁部と密着するようになっている。
図2に示すように、タイヤTは、トレッド部Tr、サイドウォール部Sw、ショルダ部Shおよびビード部Bdで構成されるタイヤケースTcと、インナライナIとを備え、インナライナIがタイヤケースTcの内壁の一面に積層されている。なお、この実施形態でのタイヤTは、その一例であり、その他、各種類のタイヤにも適用することができる。
磁性流体10,10は、電磁石11a,11bからの磁界によるエネルギーを受けると電磁石11a,11bに吸引される流体であり、タイヤTの両側の各サイドウォール部Swにおける、タイヤケースTcとインナライナIとの間に区画された空間15に充填されている。この空間15は、図3に示すように、タイヤTの周方向(タイヤTの回転方向)に沿って所定の幅で連続して形成されている。ここで、磁性流体10は、極めて微細な強磁性体が油等に均一に分散している液体であり、強磁場下でも粒子の凝集や分離が起こらない性質を有するものである。
なお、図6に示すように、前記空間15がタイヤTの周方向(タイヤTの回転方向)に沿って複数の空間15s,15s,・・・に独立して形成されて、各空間15s内に磁性流体10が充填される構成であってもよい。また、磁性流体10は、空間15,15sに直接に充填してもよく、あるいは磁性流体10が充填されて密封された柔軟性の部材をタイヤケースTcとインナライナIとの間に介装する構成であってもよい。また、磁性流体10,10を充填する位置は、タイヤケースTcとインナライナIとの間に限定されるものではなく、例えばタイヤケースTcの内部であってもよい。
図1および図2に示すように、電磁石11a,11bは、それぞれ銅などの金属線を巻回して形成したものであり、リム22の内周面22bの両側に周方向に沿って環状(図3参照)に形成されている。本実施形態では、電磁石11a,11bをリム22の内周面22bに設けることができるので、電磁石11a,11bをリム22の外周面22aに設けるよりも機構を簡単にできる。
なお、電磁石11a,11bは、本実施形態に限定されるものではなく、鉄芯などに金属線を巻回したものをホイール20の周方向に沿って並列に設けたものでもよい。また、電磁石11a,11bの着磁の向きは、図4に示すように、外側がN極で内側がS極に設定されているが、これに限定されるものではなく、前記とは逆で外側がS極で内側がN極に設定されてもよく、あるいは互いに逆向きであってもよい。あるいは、電磁石11a,11bの上下にN極とS極が着磁されるようにしてもよい。
図1に示すように、電磁石11a,11bが装着されたホイール20は、図示しない車両本体から延びる車軸100の先端に固定されたアクスルハブ30に複数本のボルト24を介して固定されている。アクスルハブ30は、車軸100の先端にナット23を介して固定されている。また、アクスルハブ30にはブレーキディスク35が設けられて、ブレーキディスク35がホイール20と一緒に回転するようになっている。また、アクスルハブ30は、ベアリング32を介してナックル31に支持されている。ベアリング32は、リング状のインナーレース32aと、リング状のアウターレース32bと、車軸100の回転方向に沿って2列に配列される複数の球形のボール32c,32c,・・・とを有して構成され、インナーレース32aがアクスルハブ30側に固定され、アウターレース32bがナックル31側に固定されている。これにより、インナーレース32aを含むアクスルハブ30が、アウターレース32bを含むナックル31に対して回転自在に支持されている。
図1に示すように、タイヤ剛性可変装置1には、スリップリング40が設けられている。スリップリング40は、例えば、図7に示すように中空軸型であり、リング状の回転部材41と、回転部材41の外側に設けられるリング状の固定部材42とで構成され、回転部材41がアクスルハブ30に固定され、固定部材42がナックル31に固定されている。回転部材41の外周面には、複数の接触子41aが固定部材42の内周面と摺動するように突出して設けられ、回転部材41と固定部材42とが電気的に接続されるようになっている。
回転部材41は、導電性のケーブル12a,12bを介して、電磁石11a,11bと接続されている(図1参照)。固定部材42は、車両本体側に搭載された電源(バッテリ)50(図4、図5参照)と所定のケーブル12cを介して接続されている。これにより、固定側となる車両本体側の電源50から、回転側となるホイール20側の電磁石11a,11bに電流を供給できるようになっている。
次に、本実施形態のタイヤ剛性可変装置の動作について説明する。
図4に示すように、電磁石11a,11bにケーブル12a,12bを介して電源50から所定の電流iが供給されると、電磁石11a側では、ホイール20の外側がN極に、内側がS極に着磁され、電磁石11b側では、ホイール20の外側がN極に、内側がS極に着磁されるようになっている。このように、電磁石11a,11bが着磁されることによる磁界が磁性流体10,10に作用することにより、図4の吹き出し拡大図に示すように、磁性流体10,10が電磁石11a,11bに引き寄せられる結果、磁性流体10,10は、その見かけ上の粘性が急激に高まって硬くなる方向へ変化する。このため、今までは自由に流動できていた磁性流体10,10が自由に流動できなくなり、タイヤTのサイドウォール部Sw(図2参照)の上下方向の剛性と横方向の剛性がそれぞれ高まって、サイドウォール部Swが上下方向にも横方向にも撓み変形し難くなる。したがって、このときタイヤTに重力Gが作用したとしても、タイヤTのサイドウォール部Swが大きく撓み変形することがない。
また、図5に示すように、電磁石11a,11bに電源50からの電流の供給が遮断されると、電磁石11a,11bの周囲の磁界が消滅して、磁性流体10,10が磁界のエネルギーを受けることができなくなる。その結果、磁性流体10,10が自由に流動できるようになることで粘性が低下して、タイヤTのサイドウォール部Swの上下方向の剛性と横方向の剛性とがそれぞれ小さくなって、サイドウォール部Swが上下方向と横方向にそれぞれ撓み変形し易くなる。したがって、このときタイヤTに重力Gが作用した場合に、タイヤTが2点鎖線で示す状態(図4に示す状態)から実線で示す状態へと撓み量が大きくなる。
例えば、凹凸がある路面上を走行する場合には、図5に示すように、電磁石11a,11bへの通電を遮断してタイヤTを撓み変形し易くさせることで、路面から受ける衝撃を大きく吸収して乗心地に優れた設定にできる。また、高速でコーナーを車両が旋回する場合または大きな操舵角で旋回する場合には、図4に示すように、電磁石11a,11bに通電してタイヤTを撓み変形し難くすることで、車両の挙動(傾き)を安定させて操縦安定性に優れた設定にできる。
なお、前記したタイヤ剛性可変装置1では、通常の走行時に電磁石11a,11bに通電しないで乗心地に優れた快適性重視の設定にしておき、必要に応じて電磁石11a,11bに通電して操縦安定性を重視した設定にしてもよい。または、その逆で、通常走行時に操縦安定性重視の設定にしておき、必要に応じて快適性重視の設定にしてもよい。あるいは、電流の強さを調整可能に制御できるようにして磁界の強度を段階的に切り替えることができるようにし、通常の走行時に電磁石11a,11bを通電して快適性重視の設定と操縦安定性重視の設定との中間の設定にしておき、必要に応じて、快適性重視の設定や操縦安定性重視の設定に切り替えるようにしてもよい。
なお、本実施形態において、磁界の強度や流体の特性などによって、電磁石11a,11bに通電したときに、磁性流体10,10が電磁石11a,11b側へ強く引き寄せられ過ぎて、磁性流体10,10が空間15,15s内で偏るおそれがある。そこで、このような事態が生じる場合には、図8または図9に示すように、磁性流体10,10の偏りを防止する手段を設けるのが好ましい。
図8に示すように、この実施形態では、磁性流体10が充填される空間15,15sに対して、タイヤTの径方向(図8の上下方向)に沿って複数のオリフィス15aが等間隔で形成されている。これにより、電磁石11a,11bが通電されたときに、オリフィス15aによって磁性流体10,10の流動が制限されるので、磁性流体10が電磁石11a,11bに過度に吸引されることによる磁性流体10の偏りを防止できるようになる。
また、図9に示すように、タイヤTの径方向(図9の上下方向)に沿って空間16,16,・・・が独立して形成された構成であってもよい。この構成であっても、電磁石11a,11bに通電したときの磁性流体10の偏りを防止できるようになる。
なお、図8および図9に示す実施形態において、オリフィス15aの数や空間16の分割数は適宜変更することができる。また、オリフィス15aや空間16を径方向に沿ってサイドウォール部Swの全体に一定の間隔で設けずに、電磁石11a,11bに近い位置にのみオリフィス15aや空間16を形成するようにしてもよい。これは、電磁石11a,11bに近い位置の方が磁性流体10に対して磁界の影響が強く作用するためである。
このように、本実施形態のタイヤ剛性可変装置1では、車両が走行中であってもタイヤTの剛性を変えることができる。したがって、タイヤTを交換したり、空気圧を調整することなく、タイヤTの剛性を路面状況や走行状況に応じた状態に変化させることが可能になる。
なお、前記した実施形態では、剛性可変部材として磁性流体10を用いた場合について説明したが、磁性流体10に限定されるものではなく、電界によるエネルギーを受けて粘性が変化するER(電気粘性)流体としてもよい。ただし、この場合には制御手段としてER流体に電場を与えるための電極を設ける必要がある。あるいは、流体に限らず、外部から所定のエネルギーを与えることによって剛性が変化する板状の剛性可変部材であってもよい。
また、このタイヤ剛性可変装置1は、4輪自動車に搭載する場合であれば4つのタイヤTのすべてに搭載して、車室内に設けられた所定の切替スイッチによって切替可能に制御することができる。あるいは、車両に設けられた車速センサ、操舵角センサ、横加速度センサ、前後加速度センサ、ヨーレートセンサ(いずれも図示せず)などからの検出信号に基づいて、各タイヤTに設けられた磁性流体10の粘性を自動的に制御するようにしてもよい。また、4輪すべてのタイヤTの剛性を独立して制御できるようにして、例えば右方向への高速旋回時に右前輪および右後輪の剛性がそれぞれ小さくなるように制御し、左前輪および左後輪の剛性がそれぞれ高くなるように制御して、車両の傾きを抑えて挙動を安定化するように制御してもよい。
また、タイヤTのグリップ力が低下した場合等に剛性を低下させてグリップ力を回復させたりすることもできる。これは、例えば、アンダーステアの解消等に用いることができる。また、同様に、雪道を走行する場合などに剛性を低下させて、雪道とタイヤとのグリップ力を向上させることもできる。
本実施形態のタイヤ剛性可変装置の全体構成を示す断面図である。 図1の部分拡大断面図である。 磁性流体と電磁石の配置を示す斜視図である。 タイヤ剛性可変装置において電磁石に通電したときの状態を示す説明図である。 タイヤ剛性可変装置において電磁石に通電していないときの状態を示す説明図である。 磁性流体の他の配置例を示す斜視図である。 図1のA−A線での切断断面図である。 磁性流体の偏りを防止する手段を示す断面図である。 磁性流体の偏りを防止する他の手段を示す断面図である。
符号の説明
1 タイヤ剛性可変装置
10 磁性流体(剛性可変部材)
11a,11b 電磁石(制御手段)
12a,12b,12c ケーブル
15,15s 空間
20 ホイール
21 ディスク
22 リム
30 アクスルハブ
31 ナックル
32 ベアリング
40 スリップリング
50 電源
100 車軸
Sw サイドウォール
T タイヤ

Claims (7)

  1. タイヤに設けられる剛性可変部材と、前記剛性可変部材に外部から所定のエネルギーを与えて前記タイヤの剛性を変化させる制御手段を有することを特徴とするタイヤ剛性可変装置。
  2. 前記剛性可変部材は、前記タイヤのサイドウォール部に設けられることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ剛性可変装置。
  3. 前記剛性可変部材は、前記タイヤの周方向に沿って連続的に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ剛性可変装置。
  4. 前記剛性可変部材は、前記タイヤの周方向に沿って部分的に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ剛性可変装置。
  5. 前記剛性可変部材は、磁性流体であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ剛性可変装置。
  6. 前記磁性流体の制御手段は、電磁石であり、前記電磁石が前記タイヤを支持するホイールに設けられていることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ剛性可変装置。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のタイヤ剛性可変装置を用いたことを特徴とするタイヤ。
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