JP2006032844A - 有機発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の有機LED素子の構造においては、発光層におけるドーパント材料は、濃度消光による発光効率の低下を起こさない1〜2%程度の低濃度とされていが、低ドープ濃度におけるドーパント濃度の制御は困難であり、ドーパント濃度のばらつきが素子特性のばらつきに反映されるものとなっていた。
【解決手段】有機LED素子の発光層を下記式(5)
【化55】
で表されるZn(SAPH)または下記式(8)
【化56】
で表されるZn(SATP)或いはZn(SAPH)またはZn(SATP)のどちらか1つをドーパント材料として、ホスト材料に該ホスト材料のα重量%(但し、0<α≦10)のドーパント材料を添加した混合物で形成した。
【選択図】 なし
【解決手段】有機LED素子の発光層を下記式(5)
【化55】
で表されるZn(SAPH)または下記式(8)
【化56】
で表されるZn(SATP)或いはZn(SAPH)またはZn(SATP)のどちらか1つをドーパント材料として、ホスト材料に該ホスト材料のα重量%(但し、0<α≦10)のドーパント材料を添加した混合物で形成した。
【選択図】 なし
Description
本発明は、注入型エレクトロルミネセンス(EL)とも称され、有機薄膜状としたEL物質に電子、正孔を注入し、再結合させることで発光を行なう有機発光素子に関する。
有機発光素子はディスプレイの基礎能力としては自発光型で視野角が広く応答速度が速いなどの特徴を持ち、モジュールにおける特徴としては、大型化および小型化並びに薄型化などが可能であり、消費電力および製造コストにおいても液晶ディスプレイに比べて優位性があるということが挙げられる。このように多くの特徴を有する有機発光素子は次世代フラットパネルディスプレイの本命技術として脚光を浴びており、現在多くの製造メーカが開発競争に鎬を削っている。
有機発光素子によるディスプレイに仮された目標の1つはフルカラー表示を実現することであり、そのためには表示器を光の三原色である赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の夫々の光を発する有機材料で構成することが必要である。
ところで、有機発光素子において、所望する発光色を得るために一般的に行なわれている手法は、有機発光素子を構成する発光層を、それ自身は発光能力は低いが、成膜性が高く、発光能力の高い他のものを混合して用いる材料(ホスト材料)と、それ自身は発光能力が高いが、単独では成膜できない発光材料(ゲスト材料)とを組み合わせて形成するものである。
このとき、ゲスト材料はホスト材料に極微量(1〜2%程度)混合して使用されるためにドーパント色素と呼ばれ、ドーパント色素は分子構造によって青色から赤色までの可視光領域全域に亘って発光が可能である。従って、任意にドーパント色素の材料選択を行なうことによって所望する発光色の有機発光素子を実現することができる。
このような有機発光素子の一例として、発光波長440nm〜480nmのピレン誘導体からなる青色発光材料をホスト材料とし、前記青色と補色関係にある発光の中心波長560nm〜600nmのカルコン型化合物(色素)からなる橙色発光材料をゲスト材料(ドーパント材料)として、前記ホスト材料(ピレン誘導体)中にゲスト材料(カルコン型色素)を1.5%添加して発光層を構成し、青色光と橙色光との加法混色によって白色有機発光素子を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2002−237386号公報
しかしながら、従来の有機発光素子の構造においては、発光層におけるドーパント材料は、濃度消光による発光効率の低下を起こさない1〜2%程度の低濃度とされていた。ところが、有機発光素子作製上、特にホスト材料とゲスト材料(ドーパント材料)を同時に蒸着して発光層を形成する場合において、低ドープ濃度におけるドーパント濃度の制御は困難であった。また、有機発光素子の電気的特性および光学的特性は、ドープ濃度に大きく依存するものが多く、ドーパント濃度のばらつきが素子特性のばらつきに反映されるものとなっていた。
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、素子特性の再現性に優れ、歩留まりの良好な有機発光素子を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、陽極および陰極の間に発光層を含む有機薄膜層の多層構造を有する有機発光素子であって、前記発光層は、下記式(3)
で表されるサリチリデンアミノフェノール(SAPH)の下記式(4)
で表される金属錯体で形成されていることを特徴とするものである。
(但し、上記式(4)において、MはZn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選ばれた1つである)
(但し、上記式(4)において、MはZn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選ばれた1つである)
また、本発明の請求項3に記載された発明は、陽極および陰極の間に発光層を含む有機薄膜層の多層構造を有する有機発光素子であって、前記発光層は、下記式(6)
で表されるサリチリデンアミノ−2−チオフェノール(SATP)の下記式(7)
で表される金属錯体で形成されていることを特徴とするものである。
(但し、上記式(7)において、MはZn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選ばれた1つである)
(但し、上記式(7)において、MはZn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選ばれた1つである)
また、本発明の請求項5に記載された発明は、陽極および陰極の間に発光層を含む有機薄膜層の多層構造を有する有機発光素子であって、前記発光層は、ホスト材料と下記式(3)
で表されるサリチリデンアミノフェノール(SAPH)の下記式(4)
で表される金属錯体からなるドーパント材料とによって形成され、前記ホスト材料に該ホスト材料のα重量%(但し、0<α≦10)のドーパント材料を添加したことを特徴とするものである。
(但し、上記式(4)において、MはZn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選ばれた1つである)
(但し、上記式(4)において、MはZn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選ばれた1つである)
また、本発明の請求項7に記載された発明は、陽極および陰極の間に発光層を含む有機薄膜層の多層構造を有する有機発光素子であって、前記発光層は、ホスト材料と下記式(6)
で表されるサリチリデンアミノフェノール(SATP)の下記式(7)
で表される金属錯体からなるドーパント材料とによって形成され、前記ホスト材料に該ホスト材料のα重量%(但し、0<α≦10)のドーパント材料を添加したことを特徴とするものである。
(但し、上記式(7)において、MはZn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選ばれた1つである)
(但し、上記式(7)において、MはZn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選ばれた1つである)
素子特性の再現性に優れ、歩留まりの良好な有機発光素子(有機LED素子)を作製するという目的を、有機LED素子を構成する発光層を、1種類の材料で形成するか或いはホスト材料に該ホスト材料のα重量%(但し、0<α≦10)のドーパント材料を添加したもので形成することで実現した。
以下、本発明の実施例を図1〜図7を参照しながら、詳細に説明する。尚、以下に述べる実施例は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施例に限られるものではない。
図1は本発明の有機LED素子に係わる実施例1の断面図である。その構造は、ガラス基板の表面に陽極として機能するITO膜がスパッタ法によって形成されている。尚、陽極の材料には仕事関数の大きい金属や合金が使用され、ITOの他には例えば、Au、SnO2、およびZnOなどが可能である。
そして、ITO膜の上には正孔輸送層として機能する下記式(1)
で表されるN,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(以下「NPB」と略称する)の薄膜が蒸着法によって形成されている。
更に、正孔輸送層の上には発光層として機能する薄膜が形成されている。前記発光層の薄膜は下記式(3)
で表されるサリチリデンアミノフェノール(以下「SAPH」と略称する)の下記式(4)
で表される金属錯体が蒸着法によって形成されたものである。
なお、式(4)の金属錯体における中心金属Mは、Zn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選択した1つを用いることができる。
更に、電子注入層の上には陰極として機能するMgAg膜が蒸着法によって形成されている。尚、陰極の材料には仕事関数の小さい金属や合金が使用され、MgAgの他には例えば、Ca、Al、LiF/Al、Al−Li合金、およびMg−In合金などが可能である。
上記構造の有機LED素子における各層の厚みは、正孔輸送層が約50nm、発光層が約20nm、電子注入層が約30nm、陰極が約350nmである。そして、ITOを正極、MgAgを負極として両電極間に直流電圧を印加することによって黄色光の発光を得ることができた。尚、本実施例の有機LED素子ではZn(SAPH)で形成された発光層の膜厚を制御することによって発光ピークをシフトさせることができた。つまり、素子作製工程において発光色の制御が容易に可能であるということがいえる。
図2は本発明の有機LED素子に係わる実施例2の断面図である。その構造は、陰極の構成がガラス基板の表面に陽極として機能するITO膜がスパッタ法によって形成されている。尚、陽極の材料には仕事関数の大きい金属や合金が使用され、ITOの他には例えば、Au、SnO2、およびZnOなどが可能である。
なお、式(4)の金属錯体における中心金属Mは、Zn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選択した1つを用いることができる。
更に、電子注入層の上には共に陰極として機能するLiFとAlの各膜が順次蒸着法によって形成されている。但し、LiFの膜はAlの膜に比べて極めて薄く形成されている。
上記構造の有機LED素子における各層の厚みは、正孔輸送層が約50nm、発光層が約20nm、電子注入層が約30nm、陰極が約350nmである。そして、ITOを正極、Alを負極として両電極間に直流電圧を印加することによって黄色光の発光を得ることができた。尚、本実施例の有機LED素子ではZn(SAPH)で形成された発光層の膜厚を制御することによって発光ピークをシフトさせることができた。つまり、素子作製工程において発光色の制御が容易に可能であるということがいえる。
図3は本発明の有機LED素子に係わる実施例3の断面図である。その構造は、ガラス基板の表面に陽極として機能するITO膜がスパッタ法によって形成されている。尚、陽極の材料には仕事関数の大きい金属や合金が使用され、ITOの他には例えば、Au、SnO2、およびZnOなどが可能である。
更に、正孔輸送層の上には発光層として機能する薄膜が形成されている。前記発光層の薄膜は下記式(6)
で表されるサリチリデンアミノ−2−チオフェノール(以下「SATP」と略称する)の下記式(7)
で表される金属錯体が蒸着法によって形成されたものである。
なお、式(7)の金属錯体における中心金属Mは、Zn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選択した1つを用いることができる。
更に、電子注入層の上には共に陰極として機能するLiFとAlの各膜が順次蒸着法によって形成されている。但し、LiFの膜はAlの膜に比べて極めて薄く形成されている。
上記構造の有機LED素子における各層の厚みは、正孔輸送層が約50nm、発光層が約50nm、電子注入層が約30nm、陰極が約350nmである。そして、ITOを正極、Alを負極として両電極間に直流電圧を印加することによって黄色光の発光を得ることができた。尚、本実施例の有機LED素子ではZn(SATP)で形成された発光層の膜厚を制御することによって発光ピークをシフトさせることができた。つまり、素子作製工程において発光色の制御が容易に可能であるということがいえる。
図4は本発明の有機LED素子に係わる実施例4の断面図である。その構造は、ガラス基板の表面に陽極として機能するITO膜がスパッタ法によって形成されている。尚、陽極の材料には仕事関数の大きい金属や合金が使用され、ITOの他には例えば、Au、SnO2、およびZnOなどが可能である。
更に、正孔輸送層の上には発光層として機能する薄膜が形成されている。前記発光層の薄膜は、ホスト材料が下記式(2)
で表されるAlq3、ドーパント材料が下記式(3)
で表されるSAPHの下記式(4)
で表される金属錯体であり、ホスト材料に該ホスト材料のα重量%(但し、0<α≦10)のドーパント材料を添加した混合物で形成されている。その場合、薄膜はホスト材料とドーパント材料を同時に蒸着することによって形成される。
なお、式(4)の金属錯体における中心金属Mは、Zn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選択した1つを用いることができる。
更に、電子注入層の上には共に陰極として機能するLiFとAlの各膜が順次蒸着法によって形成されている。但し、LiFの膜はAlの膜に比べて極めて薄く形成されている。
上記構造の有機LED素子における各層の厚みは、正孔輸送層が約50nm、発光層が約20nm、電子注入層が約30nm、陰極が約350nmである。そして、ITOを正極、Alを負極として両電極間に直流電圧を印加することによって緑色光の発光を得ることができた。
図5は本発明の有機LED素子に係わる実施例5の断面図である。その構造は、ガラス基板の表面に陽極として機能するITO膜がスパッタ法によって形成されている。尚、陽極の材料には仕事関数の大きい金属や合金が使用され、ITOの他には例えば、Au、SnO2、およびZnOなどが可能である。
更に、正孔輸送層の上には発光層として機能する薄膜が形成されている。前記発光層の薄膜は、ホスト材料が下記式(2)
で表されるAlq3、ドーパント材料が下記式(6)
で表されるSATPの下記式(7)
で表される金属錯体であり、ホスト材料に該ホスト材料のα重量%(但し、0<α≦10)のドーパント材料を添加した混合物で形成されている。その場合、薄膜はホスト材料とドーパント材料を同時に蒸着することによって形成される。
なお、式(7)の金属錯体における中心金属Mは、Zn、Eu、Al、Os、Ir、Pt、Au、Re、Rh、Ru、Ba、Sm、Mg、Pdからなる群の中から選択した1つを用いることができる。
更に、電子注入層の上には共に陰極として機能するLiFとAlの各膜が順次蒸着法によって形成されている。但し、LiFの膜はAlの膜に比べて極めて薄く形成されている。
上記構造の有機LED素子における各層の厚みは、正孔輸送層が約50nm、発光層が約20nm、電子注入層が約30nm、陰極が約350nmである。そして、ITOを正極、Alを負極として両電極間に直流電圧を印加することによって黄色光の発光を得ることができた。
なお、上記「実施例4」および「実施例5」において、発光層を形成するホスト材料にAlq3を採用しているが、ホスト材料はこれに限定されるものではなく、下記式(9)
で表される4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、下記式(10)
で表されるペリノン誘導体、下記式(11)
で表されるジスチリルベンゼン誘導体など、種々の材料を用いることができる。
ここで、本発明の有機LED素子に係わる光学特性について説明する。まず、図6では上記「実施例2」の構造において、発光層を形成するZn(SAPH)の膜厚とスペクトル分布との関係を示している。そして、横軸で波長、縦軸で規格化した発光強度を表したグラフの上方に試料1〜4の膜厚条件および結果の一部を表にして記載している(なお、試料No.1は400nmの波長の光で励起したときの蛍光スペクトル分布であり、試料No.2〜4は発光スペクトル分布である)。
各試料のスペクトル分布から、発光層の薄膜を形成するZn(SAPH)の膜厚が20nm〜35nm〜40nmと厚くなるに伴なって、スペクトル分布のピーク波長が長波長方向にシフトしていることがわかる。このことは、発光層の膜厚を制御することによって所望する発光色が得られることを示すものである。
また、各試料のスペクトル分布のピーク波長が異なっても半値幅は殆んど同じこともわかる。このことは、スペクトル分布のピーク波長がシフトしても色純度の変化が少ないことを表しており、よって、発光色の色合いが変わっても鮮やかさは殆んど変わらないことを示すものである。
なお、発光層の膜厚が40nm〜45nmと厚くなってもピーク波長のシフトは認められない。従って、発光層を形成する材料がZn(SAPH)の場合、発光色が変えられる膜厚制御範囲は少なくとも上限に限っていえば約40nmであることがわかる。
また、図7では発光層をホスト材料のAlq3に該ホスト材料の1重量%のドーパント材料のZn(SAPH)を添加した混合物で形成した上記「実施例4」の構造と、発光層をAlq3の1つの材料で形成した構造の場合のスペクトル分布を示している。そして、上記同様、横軸で波長、縦軸で規格化した発光強度を表したグラフの上方に試料1および2の各層を形成する材料を表にして記載している。
図7では、2つの試料の輝度は記載されていないが、実際の夫々の輝度は、ホスト材料のAlq3にドーパント材料のZn(SAPH)を添加したものは18000cd/m2であり、Alq3のみのものは6000cd/m2であった。つまり、Zn(SAPH)をドーパント材料として添加することにより有機LED素子を3倍明るくすることができた。それほどAn(SAPH)は有機LED素子の高輝度化に有効な材料であるということがいえる。
また同様に、図7では、上記のような大幅に明るさの異なる2つの試料の発光強度を規格化すると、夫々のスペクトル分布は殆んど同じになることが示されている。つまり、ホスト材料にドーパント材料としてZn(SAPH)を添加して有機LED素子の発光層を形成すると、発光色の色合いおよび鮮やかさを変えることなく明るさだけを向上させることができる。
このような光学的特性を有する利点は、赤(R)、緑(G)、および青(B)に発光する有機LED素子を組み合わせたフルカラー表示器において、良質なフルカラー表示を実現するために夫々の有機LED素子の発光強度のバランスを取る手法として、ドーパント材料の添加量を調整したとしても発光色の色合いおよび鮮やかさが変わることがないので表示品位を損なうことがない。
なお、以上はドーパント材料としてZn(SAPH)を使用した場合の説明を行なってきたが、上記実施例の中でドーパント材料として使用したZn(SATP)においても具体的な数値は異なるにしても、同様な作用、効果を生じるものである。
ここで、本発明の効果について説明する。まず、多層構造からなる有機LED素子の発光層をZn(SAPH)またはZn(SATP)の一種類の材料で形成した。そして両材料は、夫々の材料で形成する膜厚を制御することによってスペクトル分布の半値角を変えることなくピーク波長をシフトさせることができるため、発光色の鮮やかさを変えることなく色合いのみを変えることができるものである。
また、所望する発光色を得るためには膜厚のみを制御すればよく、制御項目が少ないために制御管理が容易であり、よって再現性が良好な有機LED素子を実現することができる。
また、発光層を形成するドーパント材料としてZn(SAPH)またはZn(SATP)を使用することによって、ホスト材料のみで発光層を形成した場合よりも遥に明るい有機LED素子を、色合いおよび鮮やかさを損なうことなく実現することができる。
更に、有機LED素子作製上、特に蒸着により作製する場合において、低ドーパント濃度におけるドーパント濃度の制御は困難であった。また、有機LED素子の電気的特性および光学的特性は、ドープ濃度に大きく依存するものが多く、ドーパント濃度のばらつきが素子特性のばらつきに反映されるものとなっていた。本発明の構成において、ドーパント濃度を10%まで高めることができるため、ドーパント濃度の制御が容易となると共に、ドーパント濃度の多少のばらつきも、素子特性へ大きく反映されずに、特性のばらつきの少ない有機LED素子を得ることができる。などの優れた効果を奏するものである。
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