本発明は、液晶表示素子およびその製造方法を提供するものである。以下、本発明の液晶表示素子およびその製造方法について、それぞれ説明する。
A.液晶表示素子
はじめに、本発明の液晶表示素子について説明する。本発明の液晶表示素子は、第1基材と、上記第1基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された第1配向層とを有する第1配向基板、および、第2基材と、上記第2基材上に形成された第2電極層と、上記第2電極層上に形成された第2配向層とを有する第2配向基板を、上記第1配向層と前記第2配向層とが対向するように配置し、上記第1配向層と上記第2配向層との間に強誘電性液晶を挟持してなる液晶表示素子であって、
上記第1配向層および上記第2配向層のうち少なくとも一方は、板状分子が、上記板状分子の法線方向が基板の一定方向を向いて積み重なったカラム構造を有するカラムナー配向層であることを特徴としている。
このような本発明の液晶表示素子について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。図1(a)に示すように、本発明の液晶表示素子においては、第1基材1aと、上記第1基材1a上に形成された第1電極層2aと、上記第1電極層2a上に形成された第1配向層3aとを有する第1配向基板11が形成されており、また、第2基材1bと、上記第2基材1b上に形成された第2電極層2bと、上記第2電極層2b上に形成された第2配向層3bとを有する第2配向基板12が形成されており、この第1配向基板11と第2配向基板12は、第1配向層3aと第2配向層3bとが向かい合うように配置されている。また、第1配向層3a、第2配向層3b間には強誘電性液晶が挟持され、液晶層5が構成されている。
このような本発明の液晶表示素子において、上記第1配向層および第2配向層のうち少なくとも一方は、カラムナー配向層である。図2(a)は、本発明に用いられる板状分子のモデル構造と法線方向を示した図であり、図2(b)は、本発明に用いられるカラムナー配向層の概略斜視図である。図2(b)に示すように、このカラムナー配向層においては、板状分子aは、表面に所定の幅を有する凹部または凸部がパターン状に形成された樹脂層cの凹部に沿って、板状分子aの法線方向nが基板の一定方向を向いて積層してカラム構造bを形成し、このようなカラム構造bが複数配列してカラムナー配向層を構成している。本発明においては、カラムナー配向層はこのように板状分子aが配列して構成されるものであるため、カラムナー配向層の有する複数のカラム構造bのカラムの軸方向は、基板の一定方向を向いており、これらのカラム構造bと強誘電性液晶との相互作用により強誘電性液晶の配向を制御するものである。
本発明の液晶表示素子は、このように第1配向層および第2配向層のうち少なくとも一方を、カラムナー配向層とすることにより、ラビング処理や光配向処理などの配向処理を要することなく、簡便な方法で強誘電性液晶を配向させることができるものである。
このような本発明の液晶表示素子においては、上記各層間に配向制御能を高める目的や接着性を高める目的で、他の層を有していてもよい。例えば、図1(b)に示すように、第2配向層3b上に、重合性液晶材料を含み、かつ、ネマチック相を示す反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層6を形成することもできる。このような反応性液晶層6は、第2配向層上に固定化されてなるものであるので、第2配向層によって反応性液晶層に異方性が付与されることとなり、それにより強誘電性液晶を配向させるための配向膜として機能するものである。
また、上記基材1a、1bの外側には偏光板4a、4bが設けられていてもよく、これにより入射光が直線偏光となり液晶分子の配向方向に偏光した光のみを透過させることができる。例えば液晶層5を構成する強誘電性液晶が単安定性の駆動特性を示すものである場合には、印加電圧により透過光量を制御することにより階調表示が可能となる。
このような本発明の液晶表示素子は、例えば図4および図5に示すように、一方の基板を薄膜トランジスタ(TFT素子)がマトリックス状に配置されたTFT基板とし、他方の基板を共通電極が全域に形成された共通電極基板として、これらを組み合わせ、アクティブマトリックス駆動するものであることが好ましい。このように本発明の液晶表示素子がアクティブマトリックス駆動するものであることにより、目的の画素を確実に点灯、消灯できるため、高品質なディスプレイを得ることができるからである。このようなTFT素子を用いたアクティブマトリックス駆動の液晶表示素子について以下に説明する。
図4は本発明の液晶表示素子の一例を示す概略斜視図であり、図5はその概略断面図である。図4においては、一方の基板は第1電極層2aが共通電極であり、共通電極基板となっており、一方、対向基板は第2電極層2bがx電極2c、y電極2dおよび画素電極2eから構成され、TFT基板となっている。このような液晶表示素子において、x電極2cおよびy電極2dはそれぞれ縦横に配列しているものであり、これらの電極に信号を加えることによりTFT素子7を作動させ、強誘電性液晶を駆動させることができる。x電極2cおよびy電極2dが交差した部分は、図示しないが絶縁層で絶縁されており、x電極2cの信号とy電極2dの信号は独立に動作することができる。x電極2cおよびy電極2dにより囲まれた部分は、本発明の液晶表示素子を駆動する最小単位である画素であり、各画素には少なくとも1つ以上のTFT素子7および画素電極2eが形成されている。本発明の液晶表示素子では、x電極2cおよびy電極2dに順次信号電圧を加えることにより、各画素のTFT素子7を動作させることができる。
このような本発明の液晶表示素子は、カラーフィルター方式またはフィールドシーケンシャルカラー方式を採用することによりカラー液晶表示素子として用いることができるが、中でも、フィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させるものであることが好ましい。フィールドシーケンシャルカラー方式は、赤緑青の三色のLEDの点滅に同期させて液晶をオン・オフさせることで、カラーフィルターを用いないでカラー表示を可能とするものであり、低消費電力かつ低コストで、視野角が広く、明るく高精細なカラー動画表示を実現することができるからである。
この場合に、強誘電性液晶としては、単安定性の駆動特性を示すものであることが好ましいが、特に、正負いずれかの電圧を印加したときにのみ液晶分子が動作するハーフV字駆動するものであることがより好ましい。強誘電性液晶としてこのような材料を用いることにより、暗部動作時(白黒シャッター閉口時)の光漏れを少なくすることができ、白黒シャッターとしての開口時間を十分に長くとることができ、それにより時間的に切り替えられる各色をより明るく表示することができ、明るいカラー液晶表示素子が得られるからである。
一方、カラーフィルター方式を採用することにより、カラー液晶表示素子とする場合には、上記共通電極である第1電極層2aと基板1aとの間にTFT素子7のマトリックス状に配置させたマイクロカラーフィルターを形成すればよい。
本発明の液晶表示素子は、上述したような構成を有するものであれば特に限定されるものではないが、好ましい態様として、上記第1配向層および上記第2配向層が上記カラムナー配向層であり、上記第1配向層の板状分子の法線方向と上記第2配向層の板状分子の法線方向とが略平行に配置され、上記第1配向層および上記第2配向層の構成材料が相互に異なる組成を有するものであることを特徴とする第1の態様と、上記第1配向層および上記第2配向層が上記カラムナー配向層であり、上記第1配向層の板状分子の法線方向と上記第2配向層の板状分子の法線方向とが略垂直に配置され、上記第1配向層または上記第2配向層の対向面上に、重合性液晶材料を含み、かつ、ネマチック相を示す反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層を有するものであることを特徴とする第2の態様と、上記第1配向層が上記カラムナー配向層であり、上記第2配向層が光配向膜であることを特徴とする第3の態様とが挙げられる。以下、各態様について詳細に説明する。
1.第1の態様
まず、本発明の液晶表示素子の第1の態様について説明する。第1の態様の液晶表示素子は、上記第1配向層および上記第2配向層が上記カラムナー配向層であり、上記第1配向層の板状分子の法線方向と上記第2配向層の板状分子の法線方向とが略平行に配置され、上記第1配向層および上記第2配向層の構成材料が相互に異なる組成を有するものであることを特徴とするものである。
このような第1の態様の液晶表示素子について以下に説明する。図1(a)は、本発明の第1の態様の液晶表示素子の一例を示すものであり、図中、第1配向層3aおよび第2配向層3bは上記カラムナー配向層である。本態様においては、このように第1配向層および第2配向層を上記カラムナー配向層とすることにより、ラビング処理や光配向処理を要することなく、簡便な方法で強誘電性液晶を配向させるものである。
これら第1配向層および第2配向層は、図3(a)に示すように、上記第1配向層3aの板状分子の法線方向と上記第2配向層3bの板状分子の法線方向とが略平行となるように配置されている。ここで「略平行」とは、上記第1配向層3aの板状分子の法線方向と上記第2配向層3bの板状分子の法線方向とがなす角度θが0°〜5°の範囲内となることをいうものである。この角度θは、0°〜1°の範囲内であることが好ましい。この角度θは小さくなるほど、カラムナー配向層の配向能が高くなり、強誘電性液晶の配向を効果的に制御することができるからである。
さらに、第1配向層および第2配向層の構成材料は、相互に同一であっても異なっていてもよいものではあるが、本態様においては第1配向層および第2配向層の構成材料は相互に異なる組成を有するものとされている。このように第1配向層および第2配向層の構成材料の組成を変えることにより、これらの配向層と強誘電性液晶との相互作用が強められ、配向欠陥を生じにくくなるためである。特にスメクチックA相(SmA)を経由しない相転移系列を示す強誘電性液晶を用いた場合は、ダブルドメインの発生を抑制することができるため、これにより強誘電性液晶のモノドメイン配向を得るようにしている。以下、本態様の各構成部材および製造方法について説明する。
(1)各構成部材
a.第1配向層および第2配向層
まず、本発明の第1の態様の液晶表示素子に用いられる第1配向層および第2配向層について説明する。
第1の態様において、第1配向層および第2配向層は、配向能を有し、かつ、板状分子が、上記板状分子の法線方向が基板の一定方向を向いて積み重なったカラム構造を有するカラムナー配向層であり、第1配向層および第2配向層に用いられるカラムナー配向層の構成材料は相互に異なる組成を有している。
本態様に用いられるカラムナー配向層は、板状分子の法線方向が基板の一定方向を向いて積み重なったカラム構造を有するものであり、この板状分子からなるカラム構造と強誘電性液晶との相互作用により、強誘電性液晶を配向させるものである。このようなカラムナー配向層は、ラビング処理や光配向処理などの配向処理を行わなくても、強誘電性液晶の配向を制御する配向能を有するものであり、製造プロセスが簡便であり、装置コストがかからないという利点を有している。
このようなカラムナー配向層は、配向能を有し、かつ、上記のようなカラム構造を有するものであれば特に限定されるものではなく、カラム構造が形成されている単層であってもよく、表面に所定の幅を有する凹部または凸部がパターン状に形成された樹脂層と、上記樹脂層の凹部に沿って形成された板状分子からなるカラム構造とを有するものであってもよい。例えばカラムナー配向層が樹脂層とカラム構造とを有する場合は、カラム構造が樹脂層の凹部に沿って形成されていることにより、カラム構造を一定方向に揃えて容易に配列させることができるという利点を有する。このように、カラムナー配向層は、凹部または凸部のパターンを有する樹脂層上に板状分子からなるカラム構造が形成されているものであってもよい。一方、カラムナー配向層がカラム構造が形成されている単層である場合は、カラムナー配向層形成用塗工液を例えばせん断応力がかかる方法で塗布することにより、カラム構造を一定方向に揃えて容易に配列させることができ、より簡便にカラムナー配向層を形成できるという利点を有する。以下、これらカラム構造および樹脂層について説明する。
(カラム構造)
まず、カラムナー配向層を構成するカラム構造について説明する。本態様に用いられるカラム構造は、上記樹脂層の凹部または凸部のパターン上に形成されるものであり、このカラム構造は、板状分子が、その法線方向が基板の一定方向を向いて積層することにより構成される。
ここで「板状分子」とは、少なくとも複数の芳香環構造を有し、分子のコア部分が平面状に配置されているものをいう。
本態様に用いられる板状分子としては、柱状に積層することによりカラム構造を形成することができるものであれば特に限定されない。
このような板状分子としては、例えばスルホン酸基等の親水性基を有する板状分子、または長鎖のアルキル基等の疎水性基を有する板状分子が挙げられるが、中でも、親水性基を有する板状分子であることが好ましい。親水性基を有する板状分子は、この親水性基が小さく、隣接するカラム構造同士の距離が近いため、容易にカラム構造を配列させることができるからである。また、塗布、乾燥後にスルホン酸基等の親水部を中和して水に難溶もしくは不溶とすることで固定化処理が容易となるからである。
上記親水性基としては、スルホン酸基、スルホン酸ナトリウム基、スルホン酸アンモニウム基、スルホン酸リチウム基、スルホン酸カリウム基等のスルホン酸系の親水性基、カルボキシル基、カルボン酸ナトリウム基、カルボン酸アンモニウム基、カルボン酸リチウム基、カルボン酸カリウム基等のカルボン酸系の親水性基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。これらの中でも、スルホン酸系の親水性基であることが好ましい。
ここで、板状分子がカラム構造を形成していることは、カラムナー配向層をX線回折装置を用いて測定することにより確認することができる。
本態様に用いられる板状分子としては、上記の中でも、溶液中でカラム構造を形成し、リオトロピック液晶相を示すものであることが好ましい。このように溶液中でリオトロピック液晶相を示す板状分子は自己組織化力が高いからである。例えば溶液中でリオトロピック液晶相を示す板状分子を含有するカラムナー配向層形成用塗工液を塗布することにより、板状分子の自己組織化を利用してカラム構造を容易に配向させることができる。
このような溶液中でリオトロピック液晶相を示す板状分子としては、水溶液中でリオトロピック液晶相を示す板状分子、または有機溶媒中でリオトロピック液晶相を示す板状分子が挙げられる。上記の溶液の種類は、上記板状分子の置換基によって異なるものであり、板状分子がスルホン酸基等の親水性基を有する場合は水溶液が用いられ、長鎖のアルキル基等の疎水性基を有する場合は有機溶媒が用いられる。
本態様においては、中でも、水溶液中でカラム構造を形成し、リオトロピック液晶相を示す板状分子を用いることが好ましい。このような板状分子は、水溶液中で自己組織化によりカラム構造を形成し、リオトロピック液晶相を示すので、この板状分子を含有するカラムナー配向層形成用塗工液を塗布することにより、カラム構造を容易に配向させることができるからである。さらに、上記板状分子が水溶性であることにより、上記カラム構造を固定化するための固定化処理が容易となるからである。
このような板状分子は、二色性を有していてもよく、有していないものでもよい。例えば、二色性を有さない板状分子を用いる場合は、得られるカラムナー配向層が偏光能を持たないため、偏光板との配置を考慮する必要がないという利点がある。一方、板状分子として、二色性を有する材料を用いる場合には、偏光板の偏光方向と板状分子の法線方向とを略平行に配置すればよい。このように配置することにより、カラムナー配向層の有する偏光能のために、偏光板の偏光機能を阻害することがないからである。
上述したような水溶液中でカラム構造を形成し、リオトロピック液晶相を示すものであり、かつ二色性を有する板状分子の具体例としては、下記化学式で示される物質が挙げられる。
上記各化学式中のアルキル基は、炭素原子1〜4個を有するものであることが好ましい。また、上記各化学式中のハロゲンとしては、Cl、Brであることが好ましい。さらに、上記各化学式中のカチオンとしては、H+、Li+、Na+、K+、Cs+またはNH4 +が挙げられる。
本態様に用いられる二色性を有する板状分子としては、上記の物質の中でも上記化学式I〜Vで表される物質が好適に用いられる。
さらに、二色性を有する板状分子を含有する材料としては、例えばOptiva社製の「N015」、「Y105」などを挙げることができる。
また、上記板状分子としては、上述したようなリオトロピック液晶相を示すものに限定されるものではなく、サーモトロピック液晶相を示すものであってもよい。
上記物質は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもでき、本態様においては、これらの物質の中から要求特性に応じて適宜選択することにより、第1配向層および第2配向層の構成材料を相互に異なる組成を有するものとすることができる。上記物質の2種以上を組み合わせて用いる場合には、組み合わせを変化させることによっても組成を変えることができるし、同じ組み合わせを用いても、各物質の添加量を変化させることによって組成を変えることができる。
(樹脂層)
次に、本態様に用いられる樹脂層について説明する。本態様に用いられる樹脂層は、上述したように、所定の幅を有する凹部または凸部がパターン状に形成されたものである。このような凹部または凸部のパターンの形状は、板状分子が上記カラム構造を形成することが可能となるものであれば特に限定されるものではないが、中でもストライプ状に一定の間隔で凹部または凸部が規則的に形成されているパターンであることが好ましい。
上記凹部の幅としては、使用される板状分子の種類等により異なるものではあるが、通常0.1μm〜10μmの範囲内、好ましくは0.2μm〜1μmの範囲内、特に0.2μm〜0.4μmの範囲内とすることが好ましい。凹部の幅を上記範囲よりも狭く形成するのは製造法的に困難であり、逆に凹部の幅を広くし過ぎるとカラム構造を配列させることが困難となる場合があるからである。
また、凹部の深さは、0.05μm〜1μmの範囲内、中でも0.1μm〜0.2μmの範囲内であることがより好ましい。凹部の深さが浅すぎるとカラム構造を構成する板状分子を配向させる機能が低くなり、凹部が深すぎると強誘電性液晶の配向に悪影響を及ぼす可能性がある。
ここで上記凹部がストライプ状に形成される際の間隔は、使用される板状分子の種類等により異なるものではあるが、通常、隣接する凹部の端と凹部の端との間隔、すなわち凸部の幅が可視光の波長の半分以下とされ、好ましくは0.05μm〜2μmの範囲内、より好ましくは0.1μm〜1μmの範囲内、特に0.1μm〜0.2μmの範囲内であることが好ましい。隣接する凹部の間隔を狭く形成するのは製造法的に難しく、広くし過ぎるとカラム構造を配列させることが難しくなるからである。また、隣接する凹部の間隔が光の波長に近い値であると、光の回折により、光学的に色付き等の問題がある。
また、上記凹部のピッチとしては、後述する板状分子の種類等により適宜選択されるものであるが、通常0.1μm〜10μmの範囲内、好ましくは0.2μm〜1μmの範囲内、特に0.2μm〜0.4μmの範囲内とすることが好ましい。凹部のピッチを上記範囲よりも狭く形成するのは製造法的に困難であり、逆に凹部のピッチを広くし過ぎるとカラム構造を配列させることが困難となる場合があるからである。ここで、凹部のピッチとは、隣接する凹部の中心から凹部の中心までの距離をいうこととする。
上記樹脂層の凹部の断面形状としては特に限定されるものではなく、矩形であってもよく、台形等、その他の形状であってもよい。本発明においては、中でも凹部の断面形状が矩形であることが、カラム構造を容易に一定方向に整列して配向させることが可能となる面から好ましい。
このような凹部または凸部を有する樹脂層は、例えば目的とする凹部の形状と対称である凸部を表面に有する凹部形成用基板と、この凹部形成用基板と硬化性樹脂組成物を挟んで硬化させることにより上記樹脂層を形成する凹部形成用基材とを準備し、上記凹部形成用基板と、硬化性樹脂組成物が塗布された上記凹部形成用基材とを、上記硬化性樹脂組成物を挟んで重ね合わせ、上記硬化性樹脂組成物を硬化させた後、上記凹部形成用基板を剥離することにより形成することができる。
このような硬化性樹脂組成物に用いられる硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、もしくはトリアジン系アクリレート等の硬化性樹脂を単独または混合して用いることができる。また、上記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂であってもよく、またこれらを組み合わせたものであってもよい。
また、上記樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤や、光重合開始剤等、各種添加剤を加えたものであってもよく、また上記凹部形成用基材に塗布するために、溶剤やモノマー等を用いて粘度を調整したものとしてもよい。
上記樹脂層の膜厚としては、通常、凹部が形成されている部分の厚みが1μm以下とされ、好ましくは0.2μm以下とされる。凹部が形成されている部分の厚みが厚すぎると、本発明の液晶表示素子が重厚となる可能性があるからである。また、液晶表示素子の薄型化を考慮すると凹部が形成されている部分の厚みは薄い方が好ましいが、薄すぎるものを形成するのは困難であることから、凹部が形成されている部分の厚みは通常0.1μm以上とされる。
ここで、本発明においては、通常、このような凹凸構造を複製する場合、形成された樹脂層表面は撥水性が高くなる可能性があるが、上記樹脂層上にカラムナー配向層形成用塗工液が塗布されることから、上記樹脂層は親水性であることが好ましい。したがって、上記樹脂層上に親水性層が設けられていてもよく、また上記樹脂層表面が親水化処理されたものであってもよい。上記樹脂層の表面を親液性となるように表面処理する方法としては、アルゴンや水などを利用したプラズマ処理による親液性表面処理等が挙げられ、また樹脂層上に形成する親液性層としては、例えばテトラエトキシシランのゾルゲル法によるシリカ膜等を挙げることができる。
(カラムナー配向層)
本態様に用いられる上記カラムナー配向層の厚みは、液晶表示素子の要求特性に応じて異なるものであり、また、カラムナー配向層がカラム構造のみを有する場合、およびカラム構造と樹脂層とを有する場合によっても異なるものである。例えば、カラムナー配向層がカラム構造のみを有する場合、このカラムナー配向層の厚みとしては、通常2nm〜1000nmの範囲内が好ましく、5nm〜500nmの範囲内がより好ましく、10nm〜300nmの範囲内がさらに好ましい。厚みが薄すぎるカラムナー配向層を形成するのは困難であり、一方、カラムナー配向層の厚みが厚すぎると、表面近傍で配向乱れを生じる場合があり、コスト的にも好ましくないからである。
また、上記カラムナー配向層の透過率は、全域にわたって、40%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。なお、上記透過率は、トプコン社製分光放射計(型式:SR−3)によって測定することができる。
このようなカラムナー配向層は、上記板状分子を溶媒中に添加してなるカラムナー配向層形成用塗工液中で、上記板状分子からなるカラム構造を形成させ、この塗工液を塗布することで、カラム構造を維持した状態で基板上に形成することができる。カラムナー配向層の製造方法については、後述する「B.液晶表示素子の製造方法」の項で詳しく説明するので、ここでの記載は省略する。
b.液晶層
次に、本発明の第1の態様に用いられる液晶層について説明する。本態様に用いられる液晶層は、上述した2つのカラムナー配向層間に強誘電性液晶を充填させることにより構成されるものである。以下、このような強誘電性液晶について説明する。
(強誘電性液晶)
本態様に用いられる強誘電性液晶としては、カイラルスメクチックC(SmC*)相を発現するものであれば特に限定されるものではなく、降温過程において、コレステリック(Ch)相−スメクチックA(SmA)相−カイラルスメクチックC(SmC*)相と相変化する材料を用いることもでき、Ch相−SmC*相と相変化し、SmA相を経由しない材料を用いることもできる。中でも本態様に用いられる強誘電性液晶としては、後者のSmA相を経由しない相転移系列を示すものであることが好ましい。このような相転移系列を示す強誘電性液晶は、単安定性の駆動特性を示す傾向にあり、このように単安定性の駆動特性を示す材料を用いることにより、階調表示が可能となり、高精細なカラー表示の液晶表示素子を得ることが容易となるからである。
なかでも、本態様の液晶表示素子を、フィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させる場合には、本態様に用いられる強誘電性液晶としては、上記のような単安定性の駆動特性を示す強誘電性液晶の中でも、正負いずれかの電圧を印加したときにのみ液晶分子が動作するハーフV字駆動する強誘電性液晶を用いることが好ましい。このような特性を有する強誘電性液晶を用いることにより、白黒シャッターの開口時間を長くとることができ、明るいカラー表示の液晶表示素子を得ることができるからである。
さらに、本態様に用いられる強誘電性液晶としては、単一相を構成するものであることが好ましい。単一相を構成するとは、高分子安定化法などのように、ポリマーネットワークが形成されていないことをいうものであり、このように、単一相の強誘電性液晶を用いることにより、製造プロセスが容易となり、駆動電圧を低くすることができるからである。
なお、後述するように、本態様に用いられる液晶層においては、ポリマーネットワークが形成されていてもよい。
このような強誘電性液晶の具体例としては、AZエレクトロニックマテリアルズ社より販売されている「R2301」、「FELIX−3206」が挙げられる。
(液晶層)
上述したような強誘電性液晶により構成される上記液晶層の厚みは、1.2μm〜3.0μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.3μm〜2.5μm、さらに好ましくは1.4μm〜2.0μmの範囲内である。液晶層の厚みが薄すぎるとコントラストが低下するおそれがあり、逆に液晶層の厚みが厚すぎると強誘電性液晶が配向しにくくなる可能性があるからである。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができる。例えば、あらかじめ基板上に電極を形成し、上記光配向膜を設けて作製した液晶セルに、上記強誘電性液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。上記液晶層の厚みは、ビーズなどのスペーサーにより調整することができる。
本態様に用いられる液晶層においては、ポリマーネットワークが形成されていてもよい。すなわち、液晶層には、重合性モノマーの重合物が含有されていてもよい。これにより、強誘電性液晶の配列をより安定化することができるからである。
上記重合性モノマーの重合物に用いられる重合性モノマーとしては、重合反応により重合物を生じる化合物であれば特に限定されない。このような重合性モノマーとしては、加熱処理により重合反応を生じる熱硬化性樹脂モノマー、および活性放射線の照射により重合反応を生じる活性放射線硬化性樹脂モノマーを挙げることができる。なかでも本発明においては活性放射線硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。熱硬化性樹脂モノマーは重合反応を生じさせるために加温処理をすることが必要であるため、このような加温処理により上記強誘電性液晶の規則的な配列が損なわれたり、相転移が誘起されてしまう恐れがある。一方、活性放射線硬化性樹脂モノマーではこのような恐れが無く、重合反応が生じることによって強誘電性液晶の配列が害されることが少ないからである。
上記活性放射線硬化性樹脂モノマーとしては、電子線の照射により重合反応を生じる電子線硬化性樹脂モノマー、および光照射により光硬化性樹脂モノマーを挙げることができる。なかでも本発明においては、光硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。光硬化性樹脂モノマーを用いることにより、本態様の液晶表示素子の製造方法を簡略化することができるからである。
上記光硬化性樹脂モノマーとしては、波長が150nm〜500nmの範囲内の光を照射することにより、重合反応を生じるものであれば特に限定されない。なかでも本発明おいては、波長が250nm〜450nmの範囲内、特に300nm〜400nmの範囲内の光を照射することにより重合反応を生じる紫外線硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。照射装置の容易性等の面において利点を有するからである。
上記紫外線硬化性樹脂モノマーが有する重合性官能基は、上記波長領域の紫外線照射により、重合反応を生じるものであれば特に限定されない。本態様においては、アクリレート基を有する紫外線硬化型樹脂モノマーを用いることが好ましい。
上記紫外線硬化性樹脂モノマーは、一分子中に一つの重合性官能基を有する単官能性モノマーであってもよく、また、一分子中に二以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーであってもよい。なかでも本態様においては、多官能性モノマーを用いることが好ましい。多官能性モノマーを用いることにより、上記液晶層においてより強いポリマーネットワークを形成することが可能になるため、分子間力および第1配向層界面におけるポリマーネットワークを強化することができる。したがって、多官能性モノマーを用いることにより、液晶層の温度変化によって上記強誘電性液晶の配列が乱れることを抑制することができるからである。
本態様においては、上記多官能性モノマーの中でも分子の両末端に重合性官能基を有する2官能性モノマーであることが好ましい。分子の両端に上記官能基を有することにより、ポリマー同士の間隔が広いポリマーネットワークを形成することができるため、液晶層に重合性モノマーの重合物を含むことによる強誘電性液晶の駆動電圧の低下を防止できるからである。
本態様においては、上記紫外線硬化性樹脂モノマーのなかでも、液晶性を発現する紫外線硬化性液晶モノマーを用いることが好ましい。このような紫外線硬化性液晶モノマーが好ましい理由は次の通りである。すなわち、紫外線硬化性液晶モノマーは液晶性を示すことから、上記第1配向層または第2配向層の配向規制力により規則的に配列することができる。したがって、紫外線硬化性液晶モノマーを規則的に配列した後に、重合反応を生じさせることにより、上記液晶層中に、規則的な配列状態を維持したまま固定化することが可能になる。このような規則的な配列状態を有する重合物が液晶層中に存在することにより、上記強誘電性液晶の配列安定性を向上することができるため、本態様の液晶表示素子を耐熱性や耐衝撃性に優れたものにできるからである。
上記紫外線硬化性液晶モノマーが示す液晶相としては、特に限定されず、例えばネマチック相、SmA相、SmC相を挙げることができる。
本発明に用いられる上記紫外線硬化性液晶モノマーとしては、例えば、下記式に示す化合物を挙げることができる。
上記式において、A、B、D、EおよびFはベンゼン、シクロヘキサンまたはピリミジンを表し、これらはハロゲン等の置換基を有していてもよい。また、AおよびB、あるいはDおよびEは、アセチレン基、メチレン基、エステル基等の結合基を介して結合していてもよい。M1およびM2は、水素原子、炭素数3〜9のアルキル基、炭素数3〜9のアルコキシカルボニル基、またはシアノ基のいずれであってもよい。さらに、分子鎖末端のアクリロイルオキシ基とAまたはDとは、炭素数3〜6のアルキレン基等のスペーサーを介して結合していてもよい。
上記式において、Yは、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルキルオキシ、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、ホルミル、炭素数1〜20のアルキルカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ハロゲン、シアノまたはニトロを表す。
上記式で示される化合物のなかでも、本発明において好適に用いられる具体的な化合物としては、下記式の化合物を例示することができる。
本態様に用いられる重合性モノマーの重合物は、単一の重合性モノマーの重合物であっても良く、また2以上の異なる重合性モノマーの重合物であっても良い。2以上の異なる重合性モノマーの重合物とする場合は、例えば、上記紫外線硬化性液晶モノマーと他の紫外線硬化性樹脂モノマーとの重合物を例示することができる。
重合性モノマーとして上記紫外線硬化性液晶モノマーを用いた場合、本発明に用いられる重合性モノマーの重合物としては、主鎖に液晶性を示す原子団を有することにより主鎖が液晶性を示す主鎖液晶型重合物であっても良く、また側鎖に液晶性を示す原子団を有することにより側鎖が液晶性を示す側鎖液晶型重合物であっても良い。なかでも本態様においては、側鎖液晶型重合物であることが好ましい。液晶性を示す原子団が側鎖に存在することにより当該原子団の自由度が高くなるため、液晶層において液晶性を示す原子団が配向しやすくなるからである。また、その結果として液晶層中の強誘電性液晶の配向安定性を向上することができるからである。
上記液晶層中における重合性モノマーの重合物の存在量は、上記強誘電性液晶の配列安定性を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されないが、通常、液晶層中に0.5質量%〜30質量%の範囲内が好ましく、特に1質量%〜20質量%の範囲内が好ましく、中でも1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも多いと、上記強誘電性液晶の駆動電圧の増加や、応答速度の低下を生じる場合があるからである。また、上記範囲よりも少ないと上記強誘電性液晶の配列安定性が不十分となり、本態様の液晶表示素子の耐熱性や耐衝撃性を損なってしまう可能性があるからである。
ここで、液晶層中における重合性モノマーの重合物の存在量は、液晶層中の単分子液晶を溶剤で洗い流した後、残存する重合性モノマーの重合物の重量を電子天秤で測量することによって求めた残存量と、上記液晶層の総質量とから算出することができる。
本態様に用いられる液晶層には、本発明の目的を損なわない範囲で他の化合物を含んでもよい。このような他の化合物としては、未反応の重合性モノマー、光重合開始剤、反応開始剤、および反応禁止剤等を挙げることができる。
c.第1基材および第2基材
本態様に用いられる第1基材および第2基材としては、一般に液晶表示素子の基材として用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えばガラス板、プラスチック板などが好ましく挙げられる。本態様に用いられる基材の表面粗さ(RSM値)は、10nm以下であることが好ましく、より好ましくは3nm以下、さらに好ましくは1nm以下の範囲内である。なお、上記表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した値とする。
d.第1電極層および第2電極層
本態様に用いられる第1電極層および第2電極層は、強誘電性液晶に信号電圧を加えることにより、強誘電性液晶を駆動させるものである。
このような第1電極層および第2電極層としては、一般に液晶表示素子の電極層として用いられているものであれば特に限定されるものではないが、少なくとも一方が透明導電体で形成されることが好ましい。透明導電体材料としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)等が好ましく挙げられる。
本発明の液晶表示素子をTFT素子を用いてアクティブマトリックス駆動するものとする場合には、第1電極層および第2電極層のうち一方を上記透明導電体で形成される全面共通電極とし、他方をx電極とy電極をマトリックス状に配列し、x電極とy電極で囲まれた部分にTFT素子および画素電極を配置することが好ましい。
これらの電極のうち全面共通電極とされる透明導電膜は、上記基板上にCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の蒸着方法により形成することができる。また、x電極およびy電極は、クロム、アルミニウム等の金属の導電膜を上記の蒸着方法により形成し、これをマトリックス状にパターニングすることにより形成することができる。パターニング方法としては、フォトリソグラフィ法等の一般的な方法を用いることができる。
e.偏光板
次に、本態様に用いられる偏光板について説明する。本態様に用いられる偏光板は、上述した第1基材および第2基材の外側に設けられるものであり、入射光を直線偏光とし、液晶分子の配向方向に偏光した光のみを透過する機能を有するものである。
本態様に用いられる偏光板としては、光の波動のうち特定方向のみを透過させるものであれば特に限定されるものではなく、一般に液晶表示素子の偏光板として公知のものを使用することができる。
(2)液晶表示素子の製造方法
このような第1の態様の液晶表示素子の製造方法について以下に説明する。本態様の液晶表示素子は、液晶表示素子の製造方法として一般に公知の方法により製造することができる。
ここでは、本態様の液晶表示素子の製造方法の一例として、TFT素子を用いたアクティブマトリックス方式の液晶表示素子の製造方法の一例について説明する。
まず、第1基材上に上述した蒸着方法により透明導電膜を形成し、全面共通電極である第1電極層を形成する。一方、第2基材上には、導電膜をマトリックス状にパターニングすることによりx電極、y電極を形成し、スイッチング素子および画素電極を設置して第2電極層とする。
次に、このようにして形成された第1電極層および第2電極層上に、後述する方法によりカラムナー配向層を形成し、形成されたカラムナー配向層のうち一方にスペーサーとしてビーズを分散させ、周囲にシール剤を塗布して2枚の基板をカラムナー配向層が対向するように貼り合わせ、熱圧着させる。こうして得られた液晶セルの注入口からキャピラリー効果を利用して強誘電性液晶を加熱して等方相またはネマチック相の状態で注入し、注入口を紫外線硬化樹脂等により封鎖する。その後、強誘電性液晶は徐冷することにより配向させ、液晶層を形成する。上記第1基材および第2基材の外側には偏光板を貼り付け、このようにして第1の態様の液晶表示素子を得ることができる。
また本態様においては、高分子安定化法を用いて液晶表示素子を作製することができる。この場合、第1配向基板および第2配向基板間に強誘電性液晶と重合性モノマーとを含む液晶層形成用組成物を封入する液晶封入工程と、強誘電性液晶をカイラルスメクチックC相の状態とする液晶配向工程と、強誘電性液晶がカイラルスメクチックC相の状態で重合性モノマーを重合する重合工程とにより、液晶層を形成することができる。
上記液晶封入工程において、強誘電性液晶と重合性モノマーとを含む液晶層形成用組成物を封入する方法としては、特に限定されるものではない。例えば、あらかじめ第1配向基板および第2配向基板を用いて作製した液晶セルに、液晶層形成用組成物を加温することによって液晶層形成用組成物中の強誘電性液晶を等方性液体とし、注入口からキャピラリー効果を利用して注入することにより封入することができる。この場合、注入口は接着剤で封鎖される。
この際、液晶層形成用組成物中に含まれる重合性モノマーの量は、液晶層を形成した後に、強誘電性液晶の配列安定化するのに必要な量に応じて任意に決定すればよい。なかでも本発明においては、液晶層形成用組成物中0.5質量%〜30質量%の範囲内が好ましく、特に1質量%〜20質量%の範囲内が好ましく、なかでも1質量%〜10質量%の範囲内が好ましい。重合性モノマーの含有量が上記範囲よりも多いと、液晶層を形成した後に強誘電性液晶の駆動電圧が高くなってしまい、液晶表示素子の性能を害する可能性があるからである。また、上記範囲よりも低いと、強誘電性液晶の配列安定化が不十分となる結果、液晶表示素子の耐熱性、耐衝撃性等が低下してしまう可能性があるからである。
また、液晶層形成用組成物を封入する際には、強誘電性液晶をカイラルスメクチックC相からネマチック相への転移温度以上に加温する。温度は、カイラルスメクチックC相からネマチック相への転移温度以上であればよいが、通常、強誘電性液晶は等方相またはネマチック相の状態となるように加温される。具体的な温度としては、強誘電性液晶の種類によって異なり、適宜選択される。
次に、液晶配向工程においては、封入された強誘電性液晶を冷却する。この際、強誘電性液晶は、通常、室温(25℃程度)になるまで徐冷される。
また、重合工程において、上記重合性モノマーを重合する方法としては、重合性モノマーの種類に応じて任意に決定すればよく、例えば、重合性モノマーとして紫外線硬化性樹脂モノマーを用いた場合は、紫外線照射により重合させることができる。
このような重合性モノマーの重合は、液晶層に電圧を印加した状態で行ってもよく、電圧を印加しない状態で行ってもよいが、本態様においては液晶層に電圧を印加しない状態で行うことが好ましい。電圧を印加しない状態で重合することにより、製造プロセスがより簡略になるからである。
2.第2の態様
次に、本発明の液晶表示素子の第2の態様について説明する。第2の態様の液晶表示素子は、上記第1配向層および上記第2配向層が上記カラムナー配向層であり、上記第1配向層の板状分子の法線方向と上記第2配向層の板状分子の法線方向とが略垂直に配置され、上記第1配向層または上記第2配向層の対向面上に、重合性液晶材料を含み、かつ、ネマチック相を示す反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層を有するものであることを特徴とするものである。
このような第2の態様の液晶表示素子について以下に説明する。図1(b)は、本発明の第2の態様の液晶表示素子の一例を示すものであり、図中、第1配向層3aおよび第2配向層3bは上記カラムナー配向層である。本態様においては、このように第1配向層および第2配向層を上記カラムナー配向層とすることにより、ラビング処理や光配向処理を要することなく、簡便な方法で強誘電性液晶を配向させるものである。
これらの配向層は、図3(b)に示すように、上記第1配向層3aの板状分子の法線方向と上記第2配向層3bの板状分子の法線方向とが略垂直に配置されている。ここで「略垂直」とは、上記第1配向層3aの板状分子の法線方向と上記第2配向層3bの板状分子の法線方向とがなす角度θが90°±5°の範囲となることをいうものである。この角度θは、90°±1°の範囲であることが好ましい。
さらに本態様においては、上記第2配向層3b上には、重合性液晶材料を含み、かつ、ネマチック相を示す反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層6が形成されている。この反応性液晶層6は、上記第2配向層3b上に固定化されてなるものであり、第2配向層3bにより反応性液晶層6に異方性が付与されるので、それにより強誘電性液晶を配向させるための配向膜として機能するものである。この場合に、第1配向層の板状分子の法線方向および第2配向層の板状分子の法線方向が略垂直に配置された第1配向層および第2配向層の配向方向は、この反応性液晶層を介することにより、略平行に変化することから、液晶層に用いられる強誘電性液晶の配向を制御することができる。さらに、上記反応性液晶は、強誘電性液晶と構造が比較的類似していることから、強誘電性液晶との相互作用が強く、効果的に強誘電性液晶の配向を制御することができる。また、第1配向層および第2配向層の構成材料が相互に等しい組成を有する場合であっても、いずれか一方の配向層上に反応性液晶層を設けることにより、強誘電性液晶を挟んで上下の層が異なるものとなり、それぞれの層と強誘電性液晶との相互作用が異なるので、配向欠陥が形成されることなく強誘電性液晶を配向させることができる。特にスメクチックA相(SmA)を経由しない相転移系列を示す強誘電性液晶を用いた場合にはダブルドメインの発生を抑制することができ、強誘電性液晶のモノドメイン配向が得られるのである。
なお、図1(b)において、上記反応性液晶層6は第2配向層3b上に形成されているが、本態様において、上記反応性液晶層6は、第1配向層3aまたは第2配向層3bのいずれか一方に形成されていればよく、第1配向層3a上に形成されていてもよい。
このような本態様の各構成部材および製造方法について以下に説明するが、本態様に用いられる液晶層、第1基材、第2基材、第1電極層、第2電極層および偏光板は、第1の態様の項で述べたものと同じである。また、本態様の製造方法については、第1配向層または第2配向層上に反応性液晶層を設けることを除いて、第1の態様の項で述べた方法と同様にして行うことができるので、これらの説明については省略する。以下、本態様に用いられる第1配向層、第2配向層および反応性液晶層について説明する。
a.第1配向層および第2配向層
本態様において、第1配向層および第2配向層はカラムナー配向層であり、カラムナー配向層については、上記第1の態様で述べたものと同じであり、ここでの説明は省略するが、本態様においては、第1配向層および第2配向層の構成材料は相互に異なるものであっても、全く同じものであっても構わない。
b.反応性液晶層
本態様に用いられる反応性液晶層は、重合性液晶材料を含み、かつ、ネマチック相を示す反応性液晶を固定化してなるものである。このような反応性液晶は、下地となる第1配向層または第2配向層により配向しており、例えば紫外線を照射して反応性液晶を重合させ、その配向状態を固定化することにより反応性液晶層が形成される。このように本態様においては、反応性液晶層が第1配向層または第2配向層上に固定化されており、第1配向層または第2配向層によって反応性液晶層に異方性が付与されるため、反応性液晶層は強誘電性液晶を配向させるための配向膜として機能することができる。
また、上記反応性液晶層は、このように第1配向層または第2配向層に固定化されているため、強誘電性液晶を相転移点より高温に昇温しても配向乱れが生じにくく、配向安定性に優れたものである。
さらに、このような反応性液晶層に用いられる反応性液晶は、強誘電性液晶と構造が比較的類似しており、強誘電性液晶との相互作用が強いため、強誘電性液晶の配向を効果的に制御することができるという利点を有する。
(反応性液晶)
以下、このような反応性液晶層に用いられる反応性液晶について説明する。本態様に用いられる反応性液晶は、第1配向層または第2配向層のいずれかに固定化されることにより反応性液晶層を構成するものであり、重合性液晶材料を含み、かつ、ネマチック相を示すものである。このネマチック相は、液晶相の中でも配向制御が比較的容易であり、このように反応性液晶としてネマチック相を示すものを用いることにより、下地となる第1配向層または第2配向層によって反応性液晶層に容易に異方性を付与することができる。また、反応性液晶が重合性液晶材料を含むことにより、反応性液晶の配向状態を固定化することができる。
重合性液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマーおよび重合性液晶ポリマーのいずれかを用いることができるが、本態様においては、重合性液晶モノマーが好適に用いられる。重合性液晶モノマーは、他の重合性液晶材料、すなわち重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーと比較して、より低温で配向が可能であり、かつ配向に際しての感度も高く、容易に配向させることができるからである。
上記重合性液晶モノマーとしては、重合性官能基を有する液晶モノマーであれば特に限定されなく、例えばモノアクリレートモノマー、ジアクリレートモノマー等が挙げられる。また、これらの重合性液晶モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
モノアクリレートモノマーとしては、例えば下記式で表される化合物を例示することができる。
上記式において、A、B、D、EおよびFはベンゼン、シクロヘキサンまたはピリミジンを表し、これらはハロゲン等の置換基を有していてもよい。また、AおよびB、あるいはDおよびEは、アセチレン基、メチレン基、エステル基等の結合基を介して結合していてもよい。M1およびM2は、水素原子、炭素数3〜9のアルキル基、炭素数3〜9のアルコキシカルボニル基、またはシアノ基のいずれであってもよい。さらに、分子鎖末端のアクリロイルオキシ基とAまたはDとは、炭素数3〜6のアルキレン基等のスペーサーを介して結合していてもよい。
また、ジアクリレートモノマーとしては、例えば下記式に示すような化合物を挙げることができる。
上記式において、XおよびYは、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルキルオキシ、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、ホルミル、炭素数1〜20のアルキルカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ハロゲン、シアノまたはニトロを表す。また、mは2〜20の範囲内の整数を表す。Xとしては、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、メチルまたは塩素であることが好ましく、中でも、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、特にCH3(CH2)4OCOであることが好ましい。
さらに、ジアクリレートモノマーとしては、例えば下記式に示すような化合物を挙げることができる。
上記式において、Z31およびZ32は、各々独立して直接結合している−COO−、−OCO−、−O−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCH2−、−CH2O−、−CH2CH2COO−、−OCOCH2CH2−を表し、R31は水素または炭素数1〜5のアルキルを表す。また、kおよびmは0または1を表し、nは2〜8の範囲内の整数を表す。
また、上記式(3)で表される化合物の具体例としては、下記式に示す化合物を挙げることができる。
上記式において、Z21およびZ22は、各々独立して直接結合している−COO−、−OCO−、−O−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCH2−、−CH2O−、−CH2CH2COO−、−OCOCH2CH2−を表す。また、mは0または1を表し、nは2〜8の範囲内の整数を表す。
本態様においては、中でも、上記式(1)または(3)で表される化合物が好適に用いられる。上記式(3)で表される化合物を含有する反応性液晶としては、例えば旭電化工業株式会社製の「アデカキラコール PLC-7183」、「アデカキラコール PLC-7209」などを挙げることができる。また、アクリレートモノマーを含有する反応性液晶としては、例えばRolic technologies 社製の「ROF-5101」、「ROF-5102」などが挙げられる。
本態様に用いられる重合性液晶モノマーは、上記の中でもジアクリレートモノマーであることが好ましい。ジアクリレートモノマーは、配向状態を良好に維持したまま容易に重合させることができるからである。
上述した重合性液晶モノマーはそれ自体がネマチック相を発現するものでなくてもよい。本態様において、これらの重合性液晶モノマーは上述したように2種以上を混合して用いてもよいものであり、これらを混合した組成物すなわち反応性液晶が、ネマチック相を発現するものであればよい。
さらに本態様においては、必要に応じて上記反応性液晶に光重合開始剤や重合禁止剤を添加してもよい。例えば、電子線照射により重合性液晶材料を重合させる際には、光重合開始剤が不要な場合はあるが、一般的に用いられている例えば紫外線照射による重合の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられるからである。
本態様に用いることができる光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルともいう)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本態様の目的が損なわれない範囲で添加することも可能である。
このような光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲で上記反応性液晶に添加することができる。
(反応性液晶層)
上記のような反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層の厚みは1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは3nm〜100nmの範囲内である。反応性液晶層が上記範囲を超えて厚くなると必要以上の異方性が生じてしまい、また上記範囲より薄いと所定の異方性が得られない場合があるからである。したがって、反応性液晶層の厚みは、必要な異方性に準じて決定すればよい。
次に、反応性液晶層の形成方法について説明する。反応性液晶層は、第1配向層または第2配向層上に上記反応性液晶を含む反応性液晶層形成用塗工液を塗布し、配向処理を行い、上記反応性液晶の配向状態を固定化することにより形成することができる。
また、反応性液晶層形成用塗工液を塗布するのではなく、ドライフィルム等をあらかじめ形成し、これを第1配向層または第2配向層上に積層する方法も用いることができるが、本態様においては、反応性液晶を溶媒に溶解させて反応性液晶層形成用塗工液を調製し、これを第1配向層または第2配向層上に塗布し、溶媒を除去する方法を用いることが好ましい。この方法は、工程上比較的簡便であるからである。
上記反応性液晶層形成用塗工液に用いる溶媒としては、上記反応性液晶等を溶解することができ、かつ上記カラムナー配向層の配向能を阻害しないものであれば特に限定されない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ類等の1種または2種以上が使用可能である。
また、単一種の溶媒を使用しただけでは、上記反応性液晶等の溶解性が不十分であったり、カラムナー配向層が侵食されたりする場合があるが、2種以上の溶媒を混合使用することにより、この不都合を回避することができる。上記の溶媒の中にあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素類とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいものは、エーテル類またはケトン類と、グリコール系溶媒との混合系である。反応性液晶層形成用塗工液の濃度は、反応性液晶の溶解性や、形成しようとする反応性液晶層の厚みに依存するため一概には規定できないが、通常は1〜60重量%、好ましくは3〜40重量%の範囲で調整される。
さらに、上記反応性液晶層形成用塗工液には、本態様の目的を損なわない範囲内で、下記に示すような化合物を添加することができる。添加できる化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物;アクリル基やメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。上記反応性液晶に対するこれら化合物の添加量は、本態様の目的が損なわれない範囲で選択される。これらの化合物の添加により、反応性液晶の硬化性が向上し、得られる反応性液晶層の機械強度が増大し、またその安定性が改善される。
このような反応性液晶層形成用塗工液を塗布する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、ディップコート法、カーテンコート法(ダイコート法)、キャスティング法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、押し出しコート法等が挙げられる。
また、上記反応性液晶層形成用塗工液を塗布した後は、溶媒を除去するのであるが、この溶媒の除去は、例えば、減圧除去もしくは加熱除去、さらにはこれらを組み合わせる方法等により行われる。
本態様においては、上述したように塗布された反応性液晶を、カラムナー配向層により配向させて液晶規則性を有する状態とする。すなわち、反応性液晶にネマチック相を発現させる。これは、通常はN−I転移点以下で熱処理する方法等の方法により行われる。ここで、N−I転移点とは、液晶相から等方相へ転移する温度を示すものである。
上述したように、反応性液晶は重合性液晶材料を含むものであり、このような重合性液晶材料の配向状態を固定化するには、重合を活性化する活性放射線を照射する方法が用いられる。ここでいう活性放射線とは、重合性液晶材料に対して重合を起こさせる能力がある放射線をいい、必要であれば重合性液晶材料内に光重合開始剤が含まれていてもよい。
このような活性放射線としては、重合性液晶材料を重合させることが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光線が使用され、波長が150〜500nm、好ましくは250〜450nm、さらに好ましくは300〜400nmの照射光が用いられる。
本態様においては、光重合開始剤が紫外線でラジカルを発生し、重合性液晶材料がラジカル重合するような重合性液晶材料に対して、紫外線を活性放射線として照射する方法が好ましい方法であるといえる。活性放射線として紫外線を用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる光重合開始剤を含めて、本態様への応用が容易であるからである。
この照射光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ等の使用が推奨される。また、照射強度は、反応性液晶の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜調整されて照射される。
このような活性照射線の照射は、上記重合性液晶材料が液晶相となる温度条件で行ってもよく、また液晶相となる温度より低い温度で行ってもよい。一旦液晶相となった重合性液晶材料は、その後温度を低下させても、配向状態が急に乱れることはないからである。
なお、重合性液晶材料の配向状態を固定化する方法としては、上記の活性放射線を照射する方法以外にも、加熱して重合性液晶材料を重合させる方法も用いることができる。
3.第3の態様
次に、本発明の液晶表示素子の第3の態様について説明する。第3の態様の液晶表示素子は、上記第1配向層が上記カラムナー配向層であり、上記第2配向層が光配向膜であることを特徴とするものである。
このような第3の態様の液晶表示素子について以下に説明する。図1(a)は、本発明の第3の態様の液晶表示素子の一例を示すものであり、図中、第1配向層3aは、上記カラムナー配向層であり、第2配向層3bが光配向膜であり、図3(a)に示すように、上記第1配向層3aの板状分子の法線方向と上記第2配向層3bの配向方向とが略平行に配置されていることにより、配向処理を簡略化して、配向欠陥を生じることなく、強誘電性液晶のモノドメイン配向を得るものである。なお「略平行」の定義は、第1の態様で説明したものと同じである。
以下、本態様の各構成部材および製造方法について説明するが、本態様に用いられる第1配向層はカラムナー配向層であり、このカラムナー配向層については、第1の態様の項で述べたものと同じであるのでここでの説明は省略する。また、本態様に用いられる液晶層、第1基材、第2基材、第1電極層、第2電極層および偏光板は第1の態様の項で説明したものと同じものを使用することができ、さらに本態様の製造方法については、第2配向層をラビング配向膜または光配向膜とすることを除いて第1の態様の項で述べた方法と同様であるので、これらの説明は省略する。以下、本態様に用いられる第2配向層について説明する。
a.第2配向層
本態様に用いられる第2配向層は、第1配向層とともに強誘電性液晶を挟持して強誘電性液晶の配向を制御する機能を有するものであり、本態様においてこの第2配向層は光配向膜である。
本態様に用いられる光配向膜としては、一般に液晶表示素子に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、後述する光配向膜の構成材料を塗布した基板に偏光を制御した光を照射し、光励起反応(分解、異性化、二量化)を生じさせて得られた膜に異方性を付与することによりその膜上の液晶分子を配向させるものである。
このような光配向膜の構成材料は、光を照射して光励起反応を生じることにより、強誘電性液晶を配向させる効果(光配列性:photoaligning)を有するものであれば特に限定されるものではなく、このような材料としては、大きく、光反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料と、光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化反応型の材料とに分けることができる。なお、上記光配向膜の構成材料が光励起反応を生じる光の波長領域は、紫外光域の範囲内、すなわち10nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、250nm〜380nmの範囲内であることがより好ましい。以下、それぞれについて説明する。
(光反応型)
まず、光反応型の構成材料について説明する。上述したように、光反応型の構成材料とは、光反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する材料である。本態様に用いられる光反応型の構成材料としては、このような特性を有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも光二量化反応または光分解反応を生じることにより上記光配向膜に異方性を付与する材料であることが好ましい。
ここで、光二量化反応とは、光照射により偏光方向に配向した反応部位がラジカル重合して分子2個が重合する反応をいい、この反応により偏光方向の配向を安定化し、光配向膜に異方性を付与することができるものである。一方、光分解反応とは、光照射により偏光方向に配向したポリイミドなどの分子鎖を分解する反応をいい、この反応により偏光方向に垂直な方向に配向した分子鎖を残し、光配向膜に異方性を付与することができるものである。本態様においては、これらの光反応型の材料の中でも、露光感度が高く、材料選択の幅が広いことから、光二量化反応により光配向膜に異方性を付与する材料を用いることがより好ましい。
このような光二量化反応を利用した光反応型の材料としては、光二量化反応により光配向膜に異方性を付与することができる材料であれば特に限定されるものではないが、ラジカル重合性の官能基を有し、かつ、偏光方向により吸収を異にする二色性を有する光二量化反応性化合物を含むことが好ましい。偏光方向に配向した反応部位をラジカル重合することにより、光二量化反応性化合物の配向が安定化し、光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
このような特性を有する光二量化反応性化合物としては、側鎖としてケイ皮酸エステル、クマリン、キノリン、およびカルコン基から選ばれる少なくとも1種の反応部位を有する二量化反応性ポリマーを挙げることができる。
これらの中でも光二量化反応性化合物としては、側鎖としてケイ皮酸エステル、クマリンまたはキノリンのいずれかを含む二量化反応性ポリマーであることが好ましい。偏光方向に配向したα、β不飽和ケトンの二重結合が反応部位となってラジカル重合することにより、光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
上記二量化反応性ポリマーの主鎖としては、ポリマー主鎖として一般に知られているものであれば特に限定されるものではないが、芳香族炭化水素基などの、上記側鎖の反応部位同士の相互作用を妨げるようなπ電子を多く含む置換基を有していないものであることが好ましい。
上記二量化反応性ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、5,000〜40,000の範囲内であることが好ましく、10,000〜20,000の範囲内であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。上記二量化反応性ポリマーの重量平均分子量が小さすぎると、光配向膜に適度な異方性を付与することができない場合がある。逆に、大きすぎると、光配向膜形成時の塗工液の粘度が高くなり、均一な塗膜を形成しにくい場合がある。
二量化反応性ポリマーとしては、下記式で表される化合物を例示することができる。
上記式において、M1およびM2は、それぞれ独立して、単重合体または共重合体の単量体単位を表す。例えば、エチレン、アクリレート、メタクリレート、2−クロロアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−クロロアクリルアミド、スチレン誘導体、マレイン酸誘導体、シロキサンなどが挙げられる。M2としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレートであってもよい。xおよびyは、共重合体とした場合の各単量体単位のモル比を表すものであり、それぞれ、0<x ≦1、0≦y<1であり、かつ、x+y=1を満たす数である。nは4〜30,000の整数を表す。D1およびD2は、スペーサー単位を表す。
R1は−A−(Z1−B)z−Z2−で表される基であり、R2は−A−(Z1−B)Z−Z3−で表される基である。ここで、AおよびBは、それぞれ独立して、共有単結合、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、または置換基を有していてもよい1,4−フェニレンを表す。また、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、共有単結合、−CH2−CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−CONR−、−RNCO−、−COO−または−OOC−を表す。Rは、水素原子または低級アルキル基であり、Z3は、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキルまたはアルコキシ、シアノ、ニトロ、ハロゲンである。zは、0〜4の整数である。E1は、光二量化反応部位を表し、例えば、ケイ皮酸エステル、クマリン、キノリン、カルコン基などが挙げられる。jおよびkは、それぞれ独立して、0または1である。
このような二量化反応性ポリマーとして、より好ましくは、下記式で表される化合物を挙げることができる。
上記二量化反応性ポリマーの中でも、下記式で表される化合物1〜4の少なくとも一つであることが特に好ましい。
本態様においては、光二量化反応性化合物として、上述した化合物の中から、要求特性に応じて光二量化反応部位や置換基を種々選択することができる。また、光二量化反応性化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、光二量化反応を利用した光反応型の材料としては、上記光二量化反応性化合物のほか、光配向膜の光配列性を妨げない範囲内で添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、重合開始剤、重合禁止剤などが挙げられる。
重合開始剤または重合禁止剤は、一般に公知の化合物の中から、光二量化反応性化合物の種類によって適宜選択して用いればよい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量は、光二量化反応性化合物に対し、0.001重量%〜20重量%の範囲内であることが好ましく、0.1重量%〜5重量%の範囲内であることがより好ましい。
なお、光分解反応を利用した光反応型の材料としては、例えば日産化学工業(株)製のポリイミド「RN1199」などを挙げることができる。また、光二量化反応を利用した光反応型の材料としては、例えばRolic technologies社製の「ROP102」や「ROP103」などを挙げることができる。
次に、上記光反応型の材料を用いた場合の光配向処理方法について説明する。本態様において、光配向処理方法は、光配向膜に異方性を付与することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば電極層が設けられた基板の液晶層と対向する面上に、上述した光配向膜の構成材料を有機溶剤で希釈した塗工液をコーティングし、乾燥させることにより行うことができる。この場合に、塗工液中の光二量化反応性化合物の含有量は、0.05重量%〜10重量%の範囲内であることが好ましく、0.2重量%〜2重量%の範囲内であることがより好ましい。光二量化反応性化合物の含有量が小さすぎると、配向膜に適度な異方性を付与することが困難となり、逆に大きすぎると、塗工液の粘度が高くなるので均一な塗膜を形成しにくくなるからである。
コーティング法としては、スピンコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法、スロットダイコーティング法、ワイヤーバーコーティング法などを用いることができる。
上記構成材料をコーティングすることにより得られる高分子膜の厚みは1nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、3nm〜100nmの範囲内であることがより好ましい。上記高分子膜の厚みが小さすぎると十分な光配列性が得られない場合があり、逆に厚みがありすぎても液晶分子が配向乱れを生じる場合があり、また、コスト的に好ましくないからである。
得られた高分子膜は、偏光を制御した光を照射することにより、光励起反応を生じさせて異方性を付与することができる。照射する光の波長領域は、用いられる光配向膜の構成材料に応じて適宜選択すればよいが、紫外光域の範囲内、すなわち100nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは250nm〜380nmの範囲内である。
偏光方向は、上記光励起反応を生じさせることができるものであれば特に限定されるものではないが、強誘電性液晶の配向状態を良好なものとすることができることから、基板面に対して略垂直であることが好ましい。
(光異性化型)
次に、光異性化型の材料について説明する。本態様において、光異性化型の材料とは、上述したように、光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する材料であり、このような特性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、光異性化反応を生じることにより上記光配向膜に異方性を付与する光異性化反応性化合物を含むものであることがより好ましい。このような光異性化反応性化合物を含むことにより、光照射により、複数の異性体のうち安定な異性体が増加し、それにより光配向膜に異方性を付与することができるからである。
このような光異性化反応性化合物としては、上記のような特性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、偏光方向により吸収を異にする二色性を有し、かつ、光照射により光異性化反応を生じるものであることが好ましい。このような特性を有する光異性化反応性化合物の偏光方向に配向した反応部位の異性化を生じさせることにより、上記光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
このような光異性化反応性化合物が生じる光異性化反応としては、シス−トランス異性化反応であることが好ましい。光照射によりシス体またはトランス体のいずれかの異性体が増加し、それにより光配向膜に異方性を付与することができるからである。
このような光異性化反応性化合物としては、単分子化合物、または、光もしくは熱により重合する重合性モノマーを挙げることができる。これらは用いられる強誘電性液晶の種類に応じて適宜選択すればよいが、光照射により光配向膜に異方性を付与した後、ポリマー化することにより、その異方性を安定化することができることから、重合性モノマーを用いることが好ましい。このような重合性モノマーの中でも、光配向膜に異方性を付与した後、その異方性を良好な状態に維持したまま容易にポリマー化できることから、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマーであることが好ましい。
上記重合性モノマーは、単官能のモノマーであっても、多官能のモノマーであってもよいが、ポリマー化による光配向膜の異方性がより安定なものとなることから、2官能のモノマーであることが好ましい。
このような光異性化反応性化合物としては、具体的には、アゾベンゼン骨格やスチルベン骨格などのシス−トランス異性化反応性骨格を有する化合物を挙げることができる。
この場合に、分子内に含まれるシス−トランス異性化反応性骨格の数は、1つであっても2つ以上であってもよいが、強誘電性液晶の配向制御が容易となることから、2つであることが好ましい。
上記シス−トランス異性化反応性骨格は、液晶分子との相互作用をより高めるために置換基を有していてもよい。置換基は、液晶分子との相互作用を高めることができ、かつ、シス−トランス異性化反応性骨格の配向を妨げないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、カルボキシル基、スルホン酸ナトリウム基、水酸基などが挙げられる。これらの構造は、用いられる強誘電性液晶の種類に応じて、適宜選択することができる。
また、光異性化反応性化合物としては、分子内にシス−トランス異性化反応性骨格以外にも、液晶分子との相互作用をより高められるように、芳香族炭化水素基などのπ電子が多く含まれる基を有していてもよく、シス−トランス異性化反応性骨格と芳香族炭化水素基は、結合基を介して結合していてもよい。結合基は、液晶分子との相互作用を高められるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、−COO−、−OCO−、−O−、−C≡C−、−CH2−CH2−、−CH2O−、−OCH2−などが挙げられる。
なお、光異性化反応性化合物として、重合性モノマーを用いる場合には、上記シス−トランス異性化反応性骨格を、側鎖として有していることが好ましい。上記シス−トランス異性化反応性骨格を側鎖として有していることにより、光配向膜に付与される異方性の効果がより大きなものとなり、強誘電性液晶の配向制御に特に適したものとなるからである。この場合に、前述した分子内に含まれる芳香族炭化水素基や結合基は、液晶分子との相互作用が高められるように、シス−トランス異性化反応性骨格と共に、側鎖に含まれていることが好ましい。
また、上記重合性モノマーの側鎖には、シス−トランス異性化反応性骨格が配向しやすくなるように、アルキレン基などの脂肪族炭化水素基をスペーサーとして有していてもよい。
上述したような単分子化合物または重合性モノマーの光異性化反応性化合物の中でも、本態様に用いられる光異性化反応性化合物としては、分子内にアゾベンゼン骨格を有する化合物であることが好ましい。アゾベンゼン骨格は、π電子を多く含むため、液晶分子との相互作用が強く、強誘電性液晶の配向制御に特に適しているからである。
以下、アゾベンゼン骨格が光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与できる理由について説明する。まず、アゾベンゼン骨格に、直線偏光紫外光を照射すると、下記式に示されるように、分子長軸が偏光方向に配向しているトランス体のアゾベンゼン骨格が、シス体に変化する。
アゾベンゼン骨格のシス体は、トランス体に比べて化学的に不安定であるため、熱的にまたは可視光を吸収してトランス体に戻るが、このとき、上記式の左のトランス体になるか右のトランス体になるかは同じ確率で起こる。そのため、紫外光を吸収し続けると、右側のトランス体の割合が増加し、アゾベンゼン骨格の平均配向方向は紫外光の偏光方向に対して垂直になる。本態様においては、この現象を利用することにより、アゾベンゼン骨格の配向方向を揃え、光配向膜に異方性を付与し、その膜上の液晶分子の配向を制御することができるのである。
このような分子内にアゾベンゼン骨格を有する化合物のうち、単分子化合物としては、例えば、下記式で表される化合物を挙げることができる。
上記式中、R21は各々独立して、ヒドロキシ基を表す。R22は−(A21−B21−A21)m−(D21)n−で表される連結基を表し、R23は(D21)n−(A21−B21−A21)m−で表される連結基を表す。ここで、A21は二価の炭化水素基を表し、B21は−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、mは0〜3の整数を表す。D21は、mが0のとき二価の炭化水素基を表し、mが1〜3の整数のとき−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、nは0または1を表す。R24は各々独立して、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基またはメトキシカルボニル基を表す。ただし、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。R25は各々独立して、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基またはヒドロキシ基を表す。ただし、カルボキシ基またはスルホ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。
上記式で表される化合物の具体例としては、下記の化合物を挙げることができる。
また、上記アゾベンゼン骨格を側鎖として有する重合性モノマーとしては、例えば、下記式で表される化合物を挙げることができる。
上記式中、R31は各々独立して、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルオキシ基、ビニルオキシカルボニル基、ビニルイミノカルボニル基、ビニルイミノカルボニルオキシ基、ビニル基、イソプロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシカルボニル基、イソプロペニルイミノカルボニル基、イソプロペニルイミノカルボニルオキシ基、イソプロペニル基またはエポキシ基を表す。R32は−(A31−B31−A31)m−(D31)n−で表される連結基を表し、R33は(D31)n−(A31−B31−A31)m−で表される連結基を表す。ここで、A31は二価の炭化水素基を表し、B31は−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、mは0〜3の整数を表す。D31は、mが0のとき二価の炭化水素基を表し、mが1〜3の整数のとき−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−または−OCONH−を表し、nは0または1を表す。R34は各々独立して、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基またはメトキシカルボニル基を表す。ただし、カルボキシ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。R35は各々独立して、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基またはヒドロキシ基を表す。ただし、カルボキシ基またはスルホ基はアルカリ金属と塩を形成していてもよい。
上記式で表される化合物の具体例としては、下記の化合物を挙げることができる。
本態様においては、上記光異性化反応性化合物の中から、要求特性に応じて、シス−トランス異性化反応性骨格や置換基を種々選択することができる。また、上記光異性化反応性化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本態様に用いられる光異性化型の材料としては、上記光異性化反応性化合物のほか、光配向膜の光配列性を妨げない範囲内で添加剤を含んでいてもよい。上記光異性化反応性化合物として重合性モノマーを用いる場合には、添加剤としては、重合開始剤、重合禁止剤などが挙げられる。
重合開始剤または重合禁止剤は、一般に公知の化合物の中から、光異性化反応性化合物の種類によって適宜選択して用いればよい。重合開始剤または重合禁止剤の添加量は、光異性化反応性化合物に対し、0.001重量%〜20重量%の範囲内であることが好ましく、0.1重量%〜5重量%の範囲内であることがより好ましい。
このような光異性化型の材料を用いた場合の光配向処理は、上記光反応型の材料を用いた場合と同様の方法で行うことができるが、この場合に、塗工液中の光異性化反応性化合物の含有量は、0.05重量%〜10重量%の範囲内であることが好ましく、0.2重量%〜5重量%の範囲内であることがより好ましい。
また、光異性化型の場合には、無偏光紫外線斜方を照射することにより光配向処理を行うこともできる。光の照射方向は、上記光励起反応を生じさせることができるものであれば特に限定されるものではないが、強誘電性液晶の配向状態を良好なものとすることができることから、基板面に対して斜め10°〜45°の範囲内とすることが好ましく、30°〜45°の範囲内とすることがより好ましく、最も好ましくは45°である。
さらに、光異性化反応性化合物として、上述したような重合性モノマーを用いる場合には、光配向処理を行った後、加熱することにより、ポリマー化し、光配向膜に付与された異方性を安定化することができる。
B.液晶表示素子の製造方法
次に、本発明の液晶表示素子の製造方法について説明する。本発明の液晶表示素子の製造方法は、上記「A.液晶表示素子」の項で説明した本発明の液晶表示素子の製造方法であって、上記カラムナー配向層の形成において、基材上に、カラムナー配向層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、上記塗膜を乾燥する乾燥工程と、上記乾燥した塗膜を疎水化処理して固定化する固定化処理工程とを有するものである。
このように本発明においては、カラムナー配向層の形成において、基材上に、板状分子を含有するカラムナー配向層形成用塗工液を塗布することにより塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させた後、この塗膜を疎水化処理して固定化することにより、ラビング配向処理や光配向処理などの配向処理を要することなく、簡便な方法で強誘電性液晶の配向を制御することのできるカラムナー配向層を形成するものである。
また本発明においては、上記のような固定化処理工程を設けることにより、上記基材上に形成された板状分子の有する親水性基を疎水化し、板状分子からなるカラム構造が固定化されるため、強誘電性液晶の配向安定性に優れた液晶表示素子を得ることができる。
本発明においては、上記「A.液晶表示素子」の項で記載したように、カラムナー配向層は、カラム構造が形成された単層であってもよく、表面に所定の幅を有する凹部または凸部がパターン状に形成された樹脂層と、この樹脂層の凹部に沿って形成されたカラム構造とを有するものであってもよい。この際、カラム構造が形成された単層であるカラムナー配向層を形成するには、基材上にカラムナー配向層形成用塗工液を塗布することになり、一方、樹脂層とカラム構造とを有するカラムナー配向層を形成するには、まず基材上に樹脂層を形成し、この樹脂層上にカラムナー配向層形成用塗工液を塗布することになる。いずれの場合においても、ラビング配向処理や光配向処理などの配向処理を要することなく、カラムナー配向層形成用塗工液を塗布することにより、板状分子の自己組織化を利用してカラム構造を配向させることができるので、ロールトゥロールプロセスによるカラムナー配向層の形成が可能であり、製造効率を向上させることができる。
このような本発明の液晶表示素子の製造方法について以下に説明するが、本発明の方法は、上述したようにカラムナー配向層の形成に特徴を有するものであり、その他の構成部材の形成方法については、上記「A.液晶表示素子」の項で説明したものと同様にして行うことができるので、ここでの記載は省略する。以下、本発明に用いられるカラムナー配向層の形成方法について説明する。
上述したように、本発明に用いられるカラムナー配向層の形成方法は、基材上に、カラムナー配向層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程と、上記塗膜を乾燥する乾燥工程と、上記乾燥した塗膜を疎水化処理して固定化する固定化処理工程とを有するものである。以下、各工程について説明する。
(1)塗膜形成工程
まず、塗膜形成工程について説明する。本工程においては、基材上にカラムナー配向層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成する。以下、本工程に用いられるカラムナー配向層形成用塗工液およびその塗布方法について説明する。
(カラムナー配向層形成用塗工液)
まず本工程に用いられるカラムナー配向層形成用塗工液について説明する。本工程に用いられるカラムナー配向層形成用塗工液は、板状分子を水等の溶媒に分散または溶解したものである。板状分子を分散または溶解する溶媒は、板状分子に対して不活性なものであれば特に限定されるものではなく、上記板状分子に導入された置換基によって適宜選択される。例えばスルホン酸基等の親水性基が導入されている場合は、溶媒としては水が用いられる。一方、長鎖のアルキル基等の疎水基が導入されている場合は、有機溶媒が用いられる。
また、上記カラムナー配向層形成用塗工液には、上記板状分子の他に、液晶材料を含有していてもよい。例えば、板状分子が配向しにくいものであったとしても、液晶材料を配向させることにより、この液晶材料の配向方向に沿って板状分子を配向させることができるからである。上記液晶材料としては、一般に配向層を形成するために用いることができる液晶材料を使用することができる。また、上記液晶材料と板状分子との液晶組成物は、リオトロピック液晶相を示すものであっても、サーモトロピック液晶相を示すものであってもよいが、通常はサーモトロピック液晶相を示すものが用いられる。
上記カラムナー配向層形成用塗工液には、さらに必要に応じて例えばポリエチレングリコール等の界面活性剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
上記の中でも、本態様においては、カラムナー配向層形成用塗工液が水系であることが好ましい。水系のカラムナー配向層形成用塗工液を用いることにより、取り扱いが容易となるからである。
なお、カラムナー配向層形成用塗工液に用いられる板状分子は、上記「A.液晶表示素子」の項で説明した通りであるので、ここでの記載は省略する。
(カラムナー配向層形成用塗工液の塗布方法)
次に、このようなカラムナー配向層形成用塗工液を上記基材上に塗布するための塗布方法について説明する。本工程において、上記カラムナー配向層形成用塗工液の塗布方法としては、上記板状分子の法線方向が一定方向に揃うように配列させることができるものであれば特に限定されるものではない。例えば、マイヤーバーコート、グラビアコート、ダイコート、ディップコート、スプレーコート等の各種塗装方法や、スクリーン印刷法やインクジェット法等を用いることが可能である。この塗布方法は、カラム構造を上記「A.液晶表示素子」の項で説明した基材のような平面上に形成するか、あるいは表面に凹部または凸部がパターン状に形成された樹脂層のような凹凸面上に形成するかによって適宜決定することができる。
例えば、カラム構造を基材上に形成する場合は、上記の中でもせん断応力がかかる塗布方法を用いることが好ましい。このようにせん断応力がかかる塗布方法を用いることによりカラム構造の形成が容易となるからである。せん断応力がかかる塗布方法としては、例えば、マイヤーバーコート、スロットダイコート、スライドコート等が挙げられ、中でも、スロットダイコートを用いることが好ましい。
一方、カラム構造を表面に凹部または凸部がパターン状に形成された樹脂層上に形成する場合は、せん断応力のかからない塗布方法を用い、樹脂層上の凹凸形状に沿ってカラム構造が形成されることが好ましい。この場合、塗布方法としては、インクジェット法、スプレーコート、ディップコート、フレキソ印刷法を好ましく用いることができ、中でも、インクジェット法がより好ましい。
(2)乾燥工程
次に、上述のようにして形成された塗膜中に含有される溶媒を蒸発させて塗膜を乾燥する乾燥工程について説明する。本発明においては、この乾燥工程を設けることにより、後述する固定化処理工程を円滑に行うようにしている。
本工程に用いられる乾燥方法としては、塗膜上に形成されたカラム構造を破壊したり、上記樹脂層の有する凹部または凸部のパターンを変形させたりするものでなければ特に限定されるものではなく、一般的に溶媒の乾燥に用いられている方法、例えば加熱乾燥、常温乾燥、凍結乾燥、遠赤外乾燥等を用いることができる。
(3)固定化処理工程
次に、本発明においては、板状分子の有する親水性基を疎水化処理し、板状分子を水に不溶もしくは難溶とし、板状分子からなるカラム構造を固定化する固定化処理工程を行う。このような固定化処理工程を設けることにより、形成されたカラムナー配向層に耐水性を付与することができ、このようにして得られる液晶表示素子は、空気中の湿気等によりカラム構造が乱れることがなく、強誘電性液晶の配向安定性に優れたものとすることができる。
本工程に用いられる疎水化処理液としては、板状分子の有する親水性基を疎水化するものであり、板状分子に対して不活性であり、板状分子からなるカラム構造を破壊するものでなければ特に限定されるものではなく、用いられる板状分子の親水性基により異なるものであるが、隣接する板状分子間で架橋を形成できるものであることが好ましい。
このような疎水化処理液としては、具体的には、バリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩の水溶液を用いることができ、塩化バリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液等が挙げられる。例えば板状分子がSO3NH4基を有する場合、このSO3NH4基のスルホン酸イオンと、バリウムイオンとが結合することにより、隣接する板状分子が架橋され、カラム構造が固定化されるのである。
また、疎水化処理方法としては、上記親水性の置換基を疎水化できる方法であれば特に限定されるものではなく、上記カラムナー配向層形成用塗工液を乾燥させた後、上記疎水化処理液を塗布する方法、上記疎水化処理液に浸漬する方法などが挙げられる。この疎水化処理液の塗布後または浸漬後は、洗浄および乾燥することにより、カラムナー配向層とすることができる。
一方、上記板状分子が長鎖のアルキル基を有する場合は、板状分子のコア部分あるいはアルキル側鎖の一部に重合性基を導入し、この重合性基を重合させることにより、板状分子を線状または網目状に架橋させ、配向状態を固定化することができる。
さらに、上記カラムナー配向層形成用塗工液が液晶材料を含有する場合は、この液晶材料を重合させることによっても板状分子の配向状態を固定化することができる。この場合、上記液晶材料は重合性基を有している必要がある。
本発明は、このようにカラムナー配向層形成用塗工液を塗布して簡単な後処理を行うだけで容易にカラムナー配向層を形成することができる。また、カラム構造が固定化されるため、強誘電性液晶の配向安定性に優れた液晶表示素子を製造することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。