JP2006023730A - 液晶表示素子 - Google Patents

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将人 岡部
Naoko Saruwatari
直子 猿渡
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Abstract

【課題】 本発明は、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子において、ラビング処理や光配向処理などの配向処理を要することなく、簡便な方法により強誘電性液晶の配向を制御することができ、また、強誘電性液晶の配向を制御する配向機能と無偏光光を直線偏光に変える偏光機能とを有する配向層を用いることにより、偏光板を別に設けた場合と比較して、偏光板と他の機能層との界面で生じる光の散乱を解消することができ、これにより光透過率の低下を抑制し、さらには液晶表示素子の薄型化および軽量化を図ることを主目的とする。
【解決手段】 本発明は、強誘電性液晶の配向を制御する配向層の一方に可視光領域に光二色性を有する板状分子が配列したカラム構造を有するカラムナー配向層を用い、このカラムナー配向層上の強誘電性液晶と接する側に重合性液晶材料を含む反応性液晶であって、かつ、ネマチック相を示す反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層を形成することにより、上記目的を達成するものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子に関するものである。
液晶表示素子は薄型で低消費電力などといった特徴から、大型ディスプレイから携帯情報端末までその用途を広げており、その開発が活発に行われている。これまで液晶表示素子は、TN方式、STNのマルチプレックス駆動、TNに薄膜トランジスタ(以下、これを「TFT素子」とする場合がある。)を用いたアクティブマトリックス駆動等が開発され実用化されているが、これらはネマチック液晶を用いているために、液晶材料の応答速度が数ms〜数十msと遅く動画表示に充分対応しているとはいえない。
一方、応答速度がμsオーダーと極めて短く、高速デバイスに適した材料として、強誘電性液晶がある。この強誘電性液晶としては、クラークおよびラガーウォルにより提唱された電圧非印加時に安定状態を二つ有する双安定性のものが広く知られているが、明、暗の2状態でのスイッチングに限られ、メモリー性を有するものの、階調表示ができないという問題を抱えている。
近年、電圧非印加時の液晶層の状態がひとつの状態で安定化している(以下、これを「単安定」と称する。)強誘電性液晶が、電圧変化により液晶のダイレクタ(分子軸の傾き)を連続的に変化させ透過光度をアナログ変調することで階調表示を可能とするものとして注目されている(非特許文献1)。
一般に強誘電性液晶を単安定化する方法としては、液晶材料中に紫外線硬化型モノマーを添加し、セルに注入後、硬化させて液晶の配向を安定化させる高分子安定化法、または強誘電性液晶を相転移点より高温に昇温した後、徐冷する方法がある。
しかしながら、上記高分子安定化法ではプロセスが煩雑になり、駆動電圧が高くなる等の問題がある。また、高分子安定化法を用いない後者の方法では、層法線方向の異なる二つのドメイン(以下、「ダブルドメイン」と称する場合がある。)が形成されやすく、駆動時に白黒反転した表示になり大きな問題となる。このダブルドメインは、電圧を印加しながら徐冷する電界印加徐冷法によりモノドメイン化する方法が知られているが(非特許文献2)、強誘電性液晶が再び相転移点より高温になると、配向が乱れてしまうという問題があり、実用性が低い。
また、液晶を配向させる技術としては、ラビング法、光配向法等もある。ラビング法はコーティングしたポリイミド表面を擦ることにより配向能を付与するものであるが、大面積処理時の均一性が難しく、また、静電気や塵埃を発生する等の問題がある。一方、光配向法は、光配向性を有する化合物に紫外線等を照射して分子を特定方向に配列させ、配向能を付与するものであり、静電気や塵の発生がなく、定量的な配向処理の制御ができる点で有用であるが、露光プロセスが必要なことから装置コストがかかるという問題がある。
一方、このような液晶表示素子は、基材上に電極層および配向層を有してなる2枚の配向基板を、上記配向層が対向するように配置し、上記配向基板間に液晶を充填して構成され、さらに上記基材の外側には、入射する無偏光光を直線偏光に変える偏光板を貼り付けて用いるのが一般的である。
このように、液晶表示素子は複屈折効果を利用するものであるため、視覚化するためには偏光板を必要とするが、基材の外側に偏光板を貼りつけることにより、基材と偏光板との界面で光の散乱が生じ、光透過率が低下しやすいという問題がある。
また近年、特に携帯端末などの用途において小型化の要請があり、液晶表示素子としては薄型かつ軽量であることが要求される。この要求に対し、従来のガラス基板をプラスチック基板に変更することで薄型および軽量化しようとすると、プラスチック基板の複屈折により偏光が乱れてしまうため、使用できる基板が極限られたものとなり高価なものになってしまう。また、偏光板を基板の内側に配置することで基板の複屈折による表示品位の低下を防ぐことは可能であるが、従来の偏光板は延伸配向したフィルムにヨウ素を含有させて製造されるのが一般的であり、このような偏光板は基板の内側に形成することができないという問題がある。
NONAKA, T., LI, J., OGAWA, A., HORNUNG, B., SCHMIDT, W., WINGEN, R., and DUBAL, H., 1999, Liq. Cryst., 26, 1599. PATEL, J., and GOODBY, J. W., 1986, J. Appl. Phys., 59, 2355.
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子において、ラビング処理や光配向処理などの配向処理を要することなく、簡便な方法により強誘電性液晶の配向を制御することができ、また、強誘電性液晶の配向を制御する配向機能と無偏光光を直線偏光に変える偏光機能とを有する配向層を用いることにより、偏光板を別に設けた場合と比較して、偏光板と他の機能層との界面で生じる光の散乱を解消することができ、これにより光透過率の低下を抑制し、さらには液晶表示素子の薄型化および軽量化を図ることを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、第1基材と、上記第1基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された第1配向層とを有する第1配向基板、および、第2基材と、上記第2基材上に形成された第2電極層と、上記第2電極層上に形成された第2配向層と、上記第2配向層上に形成され、重合性液晶材料を含む反応性液晶であって、かつ、ネマチック相を示す反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層とを有する第2配向基板を、上記第1配向層と上記反応性液晶層とが対向するように配置し、上記第1配向基板と上記第2配向基板との間に強誘電性液晶を挟持してなる液晶表示素子であって、
上記第2配向層は、可視光領域に光二色性を有する板状分子を有し、かつ上記板状分子の法線方向が一定方向を向いて積み重なったカラム構造を有し、さらに配向機能および偏光機能を有するカラムナー配向層であることを特徴とする液晶表示素子を提供する。
本発明においては、このように第2配向層として配向機能と偏光機能とを有するカラムナー配向層を用いるものであるので、偏光板を別に設けた場合と比較して、偏光板と他の機能層との界面で生じる光の散乱を解消することができ、これにより光透過率の低下を抑制することができる。また、偏光機能を有するカラムナー配向層(第2配向層)が第2基材の内側に形成されていることから、第2基材の複屈折による影響を受けないので、第2基材として複屈折を有するプラスチック基板を使用することもでき、液晶表示素子の薄型化および軽量化を図ることが可能であり、さらには製造コストの削減にもつながるものである。さらに、本発明に用いられるカラムナー配向層は、上記板状分子の自己組織化を利用して形成されるものであるので、ラビング処理や光配向処理などの配向処理を要することなく簡便な方法で形成することができるといった利点を有するものとなる。さらにまた、本発明においては、強誘電性液晶が第1配向層と反応性液晶層との間に充填されることにより、ダブルドメイン等の配向欠陥の発生を防止し、強誘電性液晶のモノドメイン配向を得ることができる。
上記発明においては、上記第1配向層は上記カラムナー配向層であり、上記第1配向層の板状分子の法線方向と、上記第2配向層の板状分子の法線方向とが、略垂直に配置されていることが好ましい。第1配向層として配向機能および偏光機能を有するカラムナー配向層を用いることにより、上述したように光透過率の低下を抑制することができるからである。また、偏光機能を有するカラムナー配向層(第1配向層)が第1基材の内側に形成されているので、第1基材に用いる材料の選択肢が広がり、液晶表示素子の薄型・軽量化および製造コストの削減を図ることができるからである。さらに、カラムナー配向層は、上記板状分子の自己組織化を利用して形成されるものであるので、ラビング処理や光配向処理などの配向処理を要することなく簡便な方法で形成することができるからである。
また、本発明においては、上記カラムナー配向層は、表面に所定の幅を有する凹部または凸部がパターン状に形成された樹脂層と、上記樹脂層の凹部に沿って形成された上記カラム構造とを有するものであることが好ましい。上記カラム構造が上記樹脂層の凹部に沿って形成されていることにより、カラム構造を一定方向に揃って容易に配列させることができるからである。
さらに本発明においては、上記板状分子は、水溶液中でリオトロピック液晶相を示すものであることが好ましい。上記板状分子は、水溶液中で自己組織化によりカラム構造を形成し、リオトロピック液晶相を示すので、このような板状分子を含有するカラムナー配向層形成用塗工液を塗布することにより、カラム構造を容易に配向させることができるからである。また、上記板状分子が水溶性であることにより、上記カラム構造を固定化するための固定化処理が容易となるからである。
また本発明においては、上記強誘電性液晶は、単安定性の駆動特性を示すものであることが好ましい。強誘電性液晶が単安定性の駆動特性を示すものであることにより、階調表示が可能となり、高精細なカラー表示の液晶表示素子を得ることができるからである。
さらに本発明においては、上記強誘電性液晶は、降温過程においてスメクチックA相を経由しない相転移系列を示すものであることが好ましい。このような相転移系列を示す強誘電性液晶は、単安定性の駆動特性を示す傾向にあり、このような強誘電性液晶を用いることにより高精細なカラー表示の液晶表示素子を得ることが容易となるからである。
また本発明は、上記第1電極層または上記第2電極層に薄膜トランジスタ(TFT素子)を有し、アクティブマトリックス駆動するものであることが好ましい。TFT素子を用いたアクティブマトリックス方式を採用することにより、目的の画素を確実に点灯、消灯できるため、高品質なディスプレイが可能となるからである。
さらに本発明は、フィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させるものであることが好ましい。本発明の液晶表示素子は、応答速度が速く、配向欠陥を生じることなく強誘電性液晶を配向させることができるので、フィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させることにより、低消費電力かつ低コストで、視野角が広く、明るく高精細なカラー動画表示を得ることができるからである。
本発明によれば、強誘電性液晶の配向を制御するためにカラムナー配向層を用いるので、ラビング処理や光配向処理などの配向処理を要することなく、簡便な方法で強誘電性液晶を配向させることができる。また、偏光板を別に設けた場合と比較して、偏光板と他の機能層との界面で生じる光の散乱を解消することができ、これにより光透過率の低下を抑制することができる。さらに、偏光機能を有するカラムナー配向層を基材の内側に形成するので、基材に用いる材料の選択肢が広がり、これにより液晶表示素子の薄型化および軽量化、さらには製造コストの削減を図ることができる。さらにまた、ダブルドメイン等の配向欠陥の発生を防止し、強誘電性液晶のモノドメイン配向を得ることができる。
本発明者等は、可視光領域に光二色性を有する板状分子の自己組織化を利用することにより、簡便な方法で、強誘電性液晶の配向を制御する配向機能と無偏光光を直線偏光に変化させる偏光機能とを有するカラムナー配向層が得られることを見いだした。
しかしながら、強誘電性液晶がカラムナー配向層と直接接触する場合は、強誘電性液晶は板状分子の形成するカラム構造の軸方向に配向するため、2枚のカラムナー配向層を、カラムナー配向層の板状分子の法線方向が強誘電性液晶を挟んで略平行になるように配置することが好ましい。
一方、カラムナー配向層は、無偏光光をカラム構造の軸方向の直線偏光に変えるものであるので、液晶表示素子を視覚化するためには、2枚のカラムナー配向層を、カラムナー配向層の板状分子の法線方向が強誘電性液晶を挟んで略垂直になるように配置することが好ましい。
そこで、本発明者等はさらに鋭意検討した結果、一方のカラムナー配向層上に、重合性液晶材料を含む反応性液晶であって、かつ、ネマチック相を示す反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層を形成することにより、カラムナー配向層の異方性がその方向を変化させて反応性液晶層に付与され、この反応性液晶層を介することにより、カラムナー配向層の配向機能と偏光機能とがより効果的に発揮されることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の液晶表示素子は、第1基材と、上記第1基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された第1配向層とを有する第1配向基板、および、第2基材と、上記第2基材上に形成された第2電極層と、上記第2電極層上に形成された第2配向層と、上記第2配向層上に形成され、重合性液晶材料を含む反応性液晶であって、かつ、ネマチック相を示す反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層とを有する第2配向基板を、上記第1配向層と上記反応性液晶層とが対向するように配置し、上記第1配向基板と上記第2配向基板との間に強誘電性液晶を挟持してなる液晶表示素子であって、
上記第2配向層は、可視光領域に光二色性を有する板状分子を有し、かつ上記板状分子の法線方向が一定方向を向いて積み重なったカラム構造を有し、さらに配向機能および偏光機能を有するカラムナー配向層であることを特徴としている。
このように本発明の液晶表示素子に用いられる第2配向層は、可視光領域に光二色性を有する板状分子を有し、かつ上記板状分子の法線方向が一定方向を向いて積み重なったカラム構造を有するカラムナー配向層である。
このカラムナー配向層において、上記板状分子により形成されたカラム構造の軸方向は一定方向を向いているので、カラムナー配向層はこのカラム構造の軸方向に異方性を有する。一方、板状分子は、可視光領域に光二色性を有しているので、カラムナー配向層は、上記異方性と板状分子の有する可視光領域の光二色性により無偏光光を直線偏光に変える偏光機能を有するものとなる。
また、このカラム構造と強誘電性液晶とが反応性液晶層を介して相互作用することにより、このカラムナー配向層は、強誘電性液晶を配向させる配向機能を有するものとなる。
このように本発明の液晶表示素子は、第2配向層を配向機能と偏光機能とを有するカラムナー配向層とするものであるので、偏光板を別に設けた場合と比較して、偏光板と他の機能層との界面で生じる光の散乱を解消することができ、これにより光透過率の低下を抑制するものである。
また、本発明の液晶表示素子は、偏光機能を有するカラムナー配向層(第2配向層)が第2基材の内側に形成されているため、第2基材の複屈折による影響を受けないので、第2基材に用いる材料の選択肢が広がり、複屈折を有するプラスチック基板を用いることもできることから、液晶表示素子の薄型化および軽量化を図ることができる。さらに、カラムナー配向層が配向機能と偏光機能とを有するので、偏光板と配向層とを別々に形成する必要もなく、液晶表示素子の製造工程が簡略化される。これらのことは液晶表示素子の製造コストの削減にもつながる。
また、本発明に用いられるカラムナー配向層は、板状分子の自己組織化を利用して形成されるものであるので、ラビング処理や光配向処理などの配向処理を要することなく簡便な方法で形成することができ、実用性が高い。
さらに、本発明の液晶表示素子において、強誘電性液晶は第1配向層と反応性液晶層との間に充填されており、強誘電性液晶とこれらの機能層との相互作用により、ダブルドメイン等の配向欠陥の発生を防止し、強誘電性液晶のモノドメイン配向を容易に得ることができるといった利点を有する。
このような本発明の液晶表示素子について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、第1基材1aと、第1基材1a上に形成された第1電極層2aと、上記第1電極層2a上に形成された第1配向層3aとを有する第1配向基板11が形成されており、また、第2基材1bと、第2基材1b上に形成された第2電極層2bと、上記第2電極層2b上に形成された第2配向層3bと、上記第2配向層3b上に形成された反応性液晶層4bとを有する第2配向基板12が形成されており、この第1配向基板11と第2配向基板12は、第1配向層3aと反応性液晶層4bとが向かい合うように配置されている。また、第1配向層3a、反応性液晶層4b間には強誘電性液晶が挟持され、液晶層5が構成されている。
このような構造を有する本発明の液晶表示素子において、第2配向層3bは、可視光領域に光二色性を有する板状分子を有し、かつ上記板状分子の法線方向が一定方向を向いて積み重なったカラム構造を有し、さらに配向機能と偏光機能とを有するカラムナー配向層である。以下、このカラムナー配向層について説明する。
図2(a)は、本発明に用いられる可視光領域に光二色性を有する板状分子のモデル構造と法線方向を示した図であり、図2(b)は、上記カラムナー配向層の概略斜視図である。図2(b)に示すように、このカラムナー配向層において、板状分子aは、板状分子aの法線方向nが一定方向を向いて積層してカラム構造bを形成し、このようなカラム構造bが複数配列してカラムナー配向層を構成している。
このため、カラム構造bの軸方向は図中矢印で示すように一定方向に揃っており、このカラム構造bと強誘電性液晶とが、反応性液晶層を介して相互作用することにより、カラムナー配向層は、強誘電性液晶の配向を制御する配向機能を有するものとなる。
本発明におけるカラムナー配向層は、上述したようにカラム構造bの軸方向が一定方向に揃うことにより異方性を有している。一方、板状分子aは可視光領域に光二色性を有しているため、カラムナー配向層は、上記異方性と板状分子の有する可視光領域の光二色性により無偏光光を直線偏光に変化させる偏光機能を有するものとなる。
このように第2配向層は、偏光機能を有するカラムナー配向層であるので、第2配向基板側には偏光板を設ける必要はないが、第1配向基板が偏光機能を有する層を有さない場合、第1配向基板側には偏光層が設けられていてもよい。この際、上記第2配向層の板状分子の法線方向と、第1配向基板側に設けられる偏光層の光軸とは、略垂直になるように配置される。
本発明の液晶表示素子は、このように配向機能と偏光機能とを有するカラムナー配向層を用いることにより、偏光板を別に設けた場合と比較して、偏光板と他の機能層との界面で生じる光の散乱を解消し、これにより光透過率の低下を抑制することができる。また、カラムナー配向層(第2配向層)が第2基材の内側に形成されることにより、第2基材に用いる材料の選択肢が広がるので、複屈折を有するプラスチック基板を使用することができ、液晶表示素子の薄型化および軽量化を図ることができる。
また、従来のように、配向層と偏光板とを別々に形成する必要がなく、液晶表示素子の製造工程が簡略化される。これらのことは製造コストの削減にもつながる。
さらに、本発明に用いられるカラムナー配向層は、板状分子の有する自己組織化を利用することにより形成されるものであるため、配向処理を要することなく簡便な方法により形成することができ、実用性が高い。
このような本発明の液晶表示素子は、例えば図3および図4に示すように、一方の基板をTFT素子がマトリックス状に配置されたTFT基板とし、他方の基板を共通電極が全域に形成された共通電極基板として、これらを組み合わせ、アクティブマトリックス駆動するものであることが好ましい。このように本発明の液層表示素子がアクティブマトリックス駆動するものであることにより、目的の画素を確実に点灯、消灯できるため、高品質なディスプレイを得ることができるからである。このようなTFT素子を用いたアクティブマトリックス駆動の液晶表示素子について以下に説明する。
図3は本発明の液晶表示素子の一例を示す概略斜視図であり、図4はその概略断面図である。図3においては、第1配向基板は第1電極層2aが共通電極であり、共通電極基板となっており、一方、第2配向基板は第2電極層がx電極2c、y電極2dおよび画素電極2eから構成され、TFT基板となっている。このような液晶表示素子において、x電極2cおよびy電極2dはそれぞれ縦横に配列しているものであり、これらの電極に信号を加えることによりTFT素子7を作動させ、強誘電性液晶を駆動させることができる。x電極2cおよびy電極2dが交差した部分は、図示しないが絶縁層で絶縁されており、x電極2cの信号とy電極2dの信号は独立に動作することができる。x電極2cおよびy電極2dにより囲まれた部分は、本発明の液晶表示素子を駆動する最小単位である画素であり、各画素には少なくとも1つのTFT素子7および画素電極2eが形成されている。本発明の液晶表示素子では、x電極2cおよびy電極2dに順次信号電圧を加えることにより、各画素のTFT素子7を動作させることができる。なお、図3においては液晶層、第1配向層、第2配向層、および反応性液晶層を省略している。
このような本発明の液晶表示素子は、カラーフィルター方式またはフィールドシーケンシャルカラー方式を採用することによりカラー液晶表示素子として用いることができるが、中でもフィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させるものであることが好ましい。フィールドシーケンシャルカラー方式は、赤緑青の三色のLEDの点滅に同期させて液晶をオン・オフさせることで、カラーフィルターを用いないでカラー表示を可能とするものであり、低消費電力かつ低コストで、視野角が広く、明るく高精細なカラー動画表示を実現することができるからである。
この場合に、強誘電性液晶としては、単安定性の駆動特性を示すものであることが好ましいが、特に、正負いずれかの電圧を印加したときにのみ液晶分子が動作するハーフV字駆動するものであることがより好ましい。強誘電性液晶としてこのような材料を用いることにより、暗部動作時(白黒シャッター閉口時)の光漏れを少なくすることができ、白黒シャッターとしての開口時間を十分に長くとることができ、それにより時間的に切り替えられる各色をより明るく表示することができ、明るいカラー液晶表示素子が得られるからである。
一方、カラーフィルター方式を採用することにより、カラー液晶表示素子とする場合には、上記共通電極である第1電極層2aと基板1aとの間にTFT素子7のマトリックス状に配置させたマイクロカラーフィルターを形成すればよい。
このように本発明の液晶表示素子は、上述したように第1配向基板と第2配向基板とを対向するように配置し、これらの配向基板間に強誘電性液晶を挟持してなるものである。このような構造を有する本発明の液晶表示素子の各構成部材および製造方法について以下に説明する。
(1)第2配向基板
まず、本発明に用いられる第2配向基板について説明する。本発明において、第2配向基板は、第2基材と、上記第2基材上に形成された第2電極層と、上記第2電極層上に形成された第2配向層と、上記第2配向層上に形成された反応性液晶層とを有するものである。
a.第2配向層
本発明に用いられる第2配向層は、可視光領域に光二色性を有する板状分子を有し、かつ上記板状分子の法線方向が一定方向を向いて積み重なったカラム構造を有し、さらに配向機能および偏光機能を有するカラムナー配向層である。
このように本発明に用いられるカラムナー配向層はカラム構造を有するものであり、このカラム構造と強誘電性液晶とが、後述する反応性液晶層を介して相互作用することにより、強誘電性液晶の配向を制御する配向機能を有している。
また、カラム構造を構成する板状分子は、上述したように可視光領域に光二色性を有し、カラムナー配向層はカラム構造の軸方向に異方性を有するものであるので、上記異方性と板状分子の有する可視光領域の光二色性により偏光機能を有している。
このようなカラムナー配向層は、上記板状分子の自己組織化を利用して形成されるものであるので、ラビング処理や光配向処理などの配向処理を要することなく、製造プロセスが簡便であり、装置コストがかからないという利点を有するものとなる。例えば、カラムナー配向層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させて、カラム構造を固定化することにより、上記カラム構造を有するカラムナー配向層を形成することができる。
本発明に用いられるカラムナー配向層は、上述したようなカラム構造を有しており、配向機能および偏光機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、表面に所定の幅を有する凹部または凸部がパターン状に形成された樹脂層と、上記樹脂層の凹部に沿って形成された上記カラム構造とを有するものであることが好ましい。このようにカラム構造が上記樹脂層の凹部に沿って形成されていることにより、カラム構造を容易に一定方向に揃って配列させることができるからである。以下、このようなカラム構造および樹脂層について説明する。
(カラム構造)
まず、カラムナー配向層を構成するカラム構造について説明する。本発明に用いられるカラム構造は、可視光領域に光二色性を有する板状分子を有し、この板状分子の法線方向が一定方向を向いて積層することにより構成されるものである。
ここでいう板状分子とは、少なくとも複数の芳香環構造を有し、分子のコア部分が平面状に配置されているものをいう。
板状分子としては、柱状に積層することによりカラム構造を形成することができるものであれば特に限定されない。
このような板状分子としては、例えばスルホン酸基等の親水性基を有する板状分子、または長鎖のアルキル基等の疎水性基を有する板状分子が挙げられるが、中でも、親水性基を有する板状分子であることが好ましい。親水性基を有する板状分子は、この親水性基が小さく、隣接するカラム構造同士の距離が近いため、容易にカラム構造を配列させることができるからである。また、塗布、乾燥後にスルホン酸基等の親水部を中和して水に難溶もしくは不溶とすることで固定化処理が容易となるからである。
上記親水性基としては、スルホン酸基、スルホン酸ナトリウム基、スルホン酸アンモニウム基、スルホン酸リチウム基、スルホン酸カリウム基等のスルホン酸系の親水性基、カルボキシル基、カルボン酸ナトリウム基、カルボン酸アンモニウム基、カルボン酸リチウム基、カルボン酸カリウム基等のカルボン酸系の親水性基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。これらの中でも、スルホン酸系の親水性基であることが好ましい。
ここで、板状分子がカラム構造を形成していることは、カラムナー配向層をX線回折装置を用いて測定することにより確認することができる。
本発明に用いられる板状分子としては、上記の中でも、溶液中で上記カラム構造を形成し、リオトロピック液晶相を示すものであることが好ましい。このように溶液中でリオトロピック液晶相を示す板状分子は自己組織化力が高いからである。例えば溶液中でリオトロピック液晶相を示す板状分子を含有するカラムナー配向層形成用塗工液を塗布することにより、板状分子の自己組織化を利用してカラム構造を容易に配向させることができる。
このような溶液中でリオトロピック液晶相を示す板状分子としては、水溶液中でリオトロピック液晶相を示す板状分子、または有機溶媒中でリオトロピック液晶相を示す板状分子が挙げられる。上記の溶液の種類は、上記板状分子の置換基によって異なるものであり、板状分子がスルホン酸基等の親水性基を有する場合は水溶液が用いられ、長鎖のアルキル基等の疎水性基を有する場合は有機溶媒が用いられる。
本発明においては、中でも、水溶液中でカラム構造を形成し、リオトロピック液晶相を示す板状分子を用いることが好ましい。このような板状分子は、水溶液中で自己組織化によりカラム構造を形成し、リオトロピック液晶相を示すので、この板状分子を含有するカラムナー配向層形成用塗工液を塗布することにより、カラム構造を容易に配向させることができるからである。さらに、上記板状分子が水溶性であることにより、上記カラム構造を固定化するための固定化処理が容易となるからである。
このような可視光領域に光二色性を有し、水溶液中でリオトロピック液晶相を示す板状分子としては、具体的には下記に示す化学式で表されるような物質が挙げられる。
Figure 2006023730
Figure 2006023730
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上記各化学式中のアルキル基は、炭素原子1〜4個を有するものであることが好ましい。また、上記各化学式中のハロゲンとしては、Cl、Brであることが好ましい。さらに、上記各化学式中のカチオンとしては、H、Li、Na、K、CsまたはNH が挙げられる。
本発明においては、上記の物質の中でも上記化学式I〜Vで表される物質が好適に用いられる。また、上記物質は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
さらに、可視光領域に光二色性を有し、水溶液中でリオトロピック液晶相を示す板状分子を含有する材料としては、例えばOptiva社製の「N015」などを挙げることができる。
また、上記板状分子としては、上述したようなリオトロピック液晶相を示すものに限定されるものではなく、サーモトロピック液晶相を示すものであってもよい。
(樹脂層)
上記カラム構造は、表面に所定の幅を有する凹部または凸部がパターン状に形成された樹脂層の凹部に沿って形成されることにより、カラム構造を一定方向に揃って配列させることができる。このような凹部または凸部のパターンの形状は、板状分子が上記カラム構造を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、中でもストライプ状に一定の間隔で凹部または凸部が規則的に形成されているパターンであることが好ましい。
上記凹部の幅としては、使用される板状分子の種類等により異なるものではあるが、通常0.1μm〜10μmの範囲内、好ましくは0.2μm〜1μmの範囲内、特に0.2μm〜0.4μmの範囲内とすることが好ましい。凹部の幅を上記範囲よりも狭く形成するのは製造法的に困難であり、逆に凹部の幅を広くし過ぎるとカラム構造を配列させることが困難となる場合があるからである。
また、凹部の深さは、0.05μm〜1μmの範囲内、中でも0.1μm〜0.2μmの範囲内であることがより好ましい。凹部の深さが浅すぎるとカラム構造を構成する板状分子を配向させる機能が低くなり、凹部が深すぎると強誘電性液晶の配向に悪影響を及ぼす可能性がある。
ここで上記凹部がストライプ状に形成される際の間隔は、使用される板状分子の種類等により異なるものではあるが、通常、隣接する凹部の端と凹部の端との間隔、すなわち凸部の幅が可視光の波長の半分以下とされ、好ましくは0.05μm〜2μmの範囲内、より好ましくは0.1μm〜1μmの範囲内、特に0.1μm〜0.2μmの範囲内であることが好ましい。隣接する凹部の間隔を狭く形成するのは製造法的に難しく、広くし過ぎるとカラム構造を配列させることが難しくなるからである。また、隣接する凹部の間隔が光の波長に近い値であると、光の回折により、光学的に色付き等の問題がある。
また、上記凹部のピッチとしては、後述する板状分子の種類等により適宜選択されるものであるが、通常0.1μm〜10μmの範囲内、好ましくは0.2μm〜1μmの範囲内、特に0.2μm〜0.4μmの範囲内とすることが好ましい。凹部のピッチを上記範囲よりも狭く形成するのは製造法的に困難であり、逆に凹部のピッチを広くし過ぎるとカラム構造を配列させることが困難となる場合があるからである。ここで、凹部のピッチとは、隣接する凹部の中心から凹部の中心までの距離をいうこととする。
上記樹脂層の凹部の断面形状としては特に限定されるものではなく、矩形であってもよく、台形等、その他の形状であってもよい。本発明においては、中でも凹部の断面形状が矩形であることが、カラム構造を容易に一定方向に整列して配向させることが可能となる面から好ましい。
このような凹部または凸部を有する樹脂層は、例えば目的とする凹部の形状と対称である凸部を表面に有する凹部形成用基板、およびこの凹部形成用基板と硬化性樹脂組成物を挟んで硬化させることにより上記樹脂層を形成する凹部形成用基材を準備し、上記凹部形成用基板と、硬化性樹脂組成物が塗布された上記凹部形成用基材とを、上記硬化性樹脂組成物を挟んで重ね合わせ、上記硬化性樹脂組成物を硬化させた後、上記凹部形成用基板を剥離することにより形成することができる。
このような硬化性樹脂組成物に用いられる硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、もしくはトリアジン系アクリレート等の硬化性樹脂を単独または混合して用いることができる。また、上記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂であってもよく、またこれらを組み合わせたものであってもよい。
また、上記樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤や、光重合開始剤等、各種添加剤を加えたものであってもよく、また上記凹部形成用基材に塗布するために、溶剤やモノマー等を用いて粘度を調整したものとしてもよい。
上記樹脂層の膜厚としては、通常、凹部が形成されている部分の厚みが1μm以下とされ、好ましくは0.2μm以下とされる。凹部が形成されている部分の厚みが厚すぎると、本発明の液晶表示素子が重厚となる可能性があるからである。また、液晶表示素子の薄型化を考慮すると凹部が形成されている部分の厚みは薄い方が好ましいが、薄すぎるものを形成するのは困難であることから、凹部が形成されている部分の厚みは通常0.1μm以上とされる。
ここで、本発明においては、通常、このような凹凸構造を複製する場合、形成された樹脂層表面は撥水性が高くなる可能性があるが、上記樹脂層上にカラムナー配向層形成用塗工液が塗布されることから、上記樹脂層は親水性であることが好ましい。したがって、上記樹脂層上に親水性層が設けられていてもよく、また上記樹脂層表面が親水化処理されたものであってもよい。上記樹脂層の表面を親液性となるように表面処理する方法としては、アルゴンや水などを利用したプラズマ処理による親液性表面処理等が挙げられ、また樹脂層上に形成する親液性層としては、例えばテトラエトキシシランのゾルゲル法によるシリカ膜等を挙げることができる。
(カラムナー配向層)
本発明に用いられる上記カラムナー配向層の厚みは、液晶表示素子の要求特性に応じて異なるものであり、また、カラムナー配向層がカラム構造を有する単層である場合と、カラム構造および樹脂層を有する場合とによっても異なるものである。例えば、カラムナー配向層がカラム構造を有する単層である場合、このカラムナー配向層の厚みとしては、通常50nm〜2000nmの範囲内が好ましく、100nm〜1000nmの範囲内がより好ましく、200nm〜500nmの範囲内がさらに好ましい。カラムナー配向層の厚みが小さすぎると、強誘電性液晶の配向を十分に制御できない場合がある。一方、厚すぎると、表面近傍で配向乱れを生じる場合があり、コスト的にも好ましくないからである。
また、上記カラムナー配向層の透過率は、全域にわたって、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。なお、上記透過率は、紫外可視分光光度計によって測定することができる。
このようなカラムナー配向層は、上記板状分子を溶媒中に添加してなるカラムナー配向層形成用塗工液中で、上記板状分子からなるカラム構造を形成させ、この塗工液を塗布することで、カラム構造を維持した状態で基板上に形成することができる。
上記カラムナー配向層形成用塗工液は、上記板状分子の他に、液晶材料を含有していてもよい。例えば上記板状分子がカラム構造を形成しにくいものであっても、液晶材料を配向させることにより、この液晶材料の配向方向に沿って上記板状分子を配向させることが可能となるからである。このような液晶材料としては、一般に偏光層を形成するために用いられる液晶材料を使用することができる。また、上記液晶材料と上記板状分子とを含む液晶組成物は、リオトロピック液晶相を示すものであっても、サーモトロピック液晶相を示すものであってもよいが、通常はサーモトロピック液晶のものが用いられる。
上記カラムナー配向層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記板状分子に導入された置換基によって適宜選択される。例えばスルホン酸基等の親水性基が導入されている場合は、溶媒としては水が用いられる。一方、長鎖のアルキル基等の疎水性基が導入されている場合は、有機溶媒が用いられる。このような有機溶媒としては、必要に応じて例えばポリエチレングリコール等の界面活性剤等の各種添加剤を含有していてもよい。上記の中でも、本発明においては、カラムナー配向層形成用塗工液が水系であることが好ましい。後述する固定化する際の処理が容易となるからである。
上記カラムナー配向層形成用塗工液の塗布方法としては、上記板状分子の法線方向が一定方向に揃うように配列させることができるものであれば特に限定されるものではない。例えば、マイヤーバーコート、グラビアコート、ダイコート、ディップコート、スプレーコート等の各種塗装方法や、スクリーン印刷法やインクジェット法等を用いることが可能である。この塗布方法は、カラム構造を平面上に形成するか、上記樹脂層のような凹凸面上に形成するかによって適宜決定することができる。
例えば、カラム構造を平面上に形成する場合は、上記の中でもせん断応力がかかる塗布方法を用いることが好ましい。このようにせん断応力がかかる塗布方法を用いることによりカラム構造の形成が容易となるからである。せん断応力がかかる塗布方法としては、例えば、マイヤーバーコート、スロットダイコート、スライドコート等が挙げられ、中でも、スロットダイコートを用いることが好ましい。
一方、カラム構造を上記樹脂層のような凹凸面上に形成する場合は、せん断応力のかからない塗布方法を用い、樹脂層上の凹凸形状に沿ってカラム構造が形成されることが好ましい。この場合、塗布方法としては、インクジェット法、スプレーコート、ディップコート、フレキソ印刷法を好ましく用いることができ、中でも、インクジェット法がより好ましい。
上記カラムナー配向層形成用塗工液を塗布した後は、塗膜中に含有される溶媒を蒸発させて塗膜を乾燥させる。乾燥方法としては、一般的に溶媒の乾燥に用いられている方法、例えば加熱乾燥、常温乾燥、凍結乾燥、遠赤外乾燥等を用いることができる。
乾燥後は、上記板状分子の配向状態を固定化する固定化処理を行うことが好ましい。例えば、用いられる板状分子が親水性基を有するものである場合は、疎水化処理を行うことによりカラム構造を安定化し、カラムナー配向層に耐水性を付与することができる。この疎水化処理に用いられる疎水化処理液としては、上記親水性基を例えば架橋させることにより水に不溶もしくは難溶とするものであれば特に限定されるものではなく、用いられる板状分子の親水性基により異なるものである。具体的には、バリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩の水溶液を用いることができ、中でも塩化バリウム水溶液が好ましい。例えば板状分子がSONH基を有する場合、このSONH基のスルホン酸イオンと、バリウムイオンとが結合することにより、隣接する板状分子が架橋され、カラム構造が固定化される。
疎水化処理方法としては、上記親水性基を疎水化できる方法であれば特に限定されるものではなく、上記カラムナー配向層形成用塗工液を塗布し、乾燥させた後、上記疎水化処理液を塗布する方法、上記疎水化処理液に浸漬する方法などが挙げられる。この疎水化処理液の塗布後または浸漬後は、洗浄および乾燥することにより、カラムナー配向層を得ることができる。
一方、板状分子が長鎖のアルキル基等の疎水性基を有する場合は、板状分子のコア部分あるいはアルキル側鎖の一部に重合性基を導入し、この重合性基を重合させることにより、板状分子を線状または網目状に架橋させ、カラム構造を固定化することができる。
さらに、上記カラムナー配向層形成用塗工液が液晶材料を含有する場合、この液晶材料を重合させることによっても板状分子の配向状態を固定化することができる。この場合、上記液晶材料は重合性基を有している必要がある。
このように本発明においてはカラムナー配向層形成用塗工液を塗布し、簡単な後処理を行うだけでカラムナー配向層を形成することができるので、製造コストがかからず、実用性が高いといえる。
b.反応性液晶層
本発明に用いられる反応性液晶層は、重合性液晶材料を含む反応性液晶であって、かつ、ネマチック相を示す反応性液晶を固定化してなるものである。この反応性液晶は上記第2配向層により配向しており、例えば紫外線を照射して反応性液晶を重合させ、その配向状態を固定化することにより形成される。
このように本発明においては、反応性液晶の配向状態が固定化されていることにより、反応性液晶層は強誘電性液晶を配向させるための配向膜として機能し、上記カラムナー配向層の配向機能と偏光機能とを両立させることが可能となる。
本発明に用いられる反応性液晶層は、このように第2配向層上に固定化されているので、強誘電性液晶を相転移点より高温に昇温しても配向乱れが生じにくく、配向安定性に優れている。また、反応性液晶は、強誘電性液晶と構造が比較的類似しており、強誘電性液晶との相互作用が強いため、この反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層は、強誘電性液晶の配向を効果的に制御するものとなる。
(反応性液晶)
以下、このような反応性液晶層に用いられる反応性液晶について説明する。本発明に用いられる反応性液晶は、第2配向層上に固定化されることにより反応性液晶層を構成するものであり、重合性液晶材料を含み、かつ、ネマチック相を示すものである。このネマチック相は、液晶相の中でも配向制御が比較的容易であり、反応性液晶としてネマチック相を示すものを用いることにより、第2配向層によって反応性液晶層に容易に異方性を付与することができる。また、反応性液晶が重合性液晶材料を含むことにより、反応性液晶の配向状態を容易に固定化することができる。
重合性液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマーおよび重合性液晶ポリマーのいずれかを用いることができるが、本発明においては、重合性液晶モノマーが好適に用いられる。重合性液晶モノマーは、他の重合性液晶材料、すなわち重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーと比較して、より低温で配向が可能であり、かつ配向に際しての感度も高く、容易に配向させることができるからである。
上記重合性液晶モノマーとしては、重合性官能基を有する液晶モノマーであれば特に限定はされなく、例えばモノアクリレートモノマー、ジアクリレートモノマー等が挙げられる。また、これらの重合性液晶モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
モノアクリレートモノマーとしては、例えば下記式で表される化合物を例示することができる。
Figure 2006023730
上記式において、A、B、D、EおよびFはベンゼン、シクロヘキサンまたはピリミジンを表し、これらはハロゲン等の置換基を有していてもよい。また、AおよびB、あるいはDおよびEは、アセチレン基、メチレン基、エステル基等の結合基を介して結合していてもよい。MおよびMは、水素原子、炭素数3〜9のアルキル基、炭素数3〜9のアルコキシカルボニル基、またはシアノ基のいずれであってもよい。さらに、分子鎖末端のアクリロイルオキシ基とAまたはDとは、炭素数3〜6のアルキレン基等のスペーサーを介して結合していてもよい。
また、ジアクリレートモノマーとしては、例えば下記式に示すような化合物を挙げることができる。
Figure 2006023730
Figure 2006023730
上記式において、XおよびYは、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルキルオキシ、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、ホルミル、炭素数1〜20のアルキルカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ハロゲン、シアノまたはニトロを表す。また、mは2〜20の範囲内の整数を表す。Xとしては、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、メチルまたは塩素であることが好ましく、中でも、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、特にCH(CHOCOであることが好ましい。
さらに、ジアクリレートモノマーとしては、例えば下記式に示すような化合物を挙げることができる。
Figure 2006023730
上記式において、Z31およびZ32は、各々独立して直接結合している−COO−、−OCO−、−O−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCH−、−CHO−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−を表し、R31は水素または炭素数1〜5のアルキルを表す。また、kおよびmは0または1を表し、nは2〜8の範囲内の整数を表す。
また、上記式(3)で表される化合物の具体例としては、下記式に示す化合物を挙げることができる。
Figure 2006023730
上記式において、Z21およびZ22は、各々独立して直接結合している−COO−、−OCO−、−O−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−OCH−、−CHO−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−を表す。また、mは0または1を表し、nは2〜8の範囲内の整数を表す。
本発明においては、中でも、上記式(1)または(3)で表される化合物が好適に用いられる。上記式(3)で表される化合物を含有する反応性液晶としては、例えば旭電化工業株式会社製の「アデカキラコール PLC-7183」、「アデカキラコール PLC-7209」などを挙げることができる。また、アクリレートモノマーを含有する反応性液晶としては、例えばRolic technologies 社製の「ROF-5101」、「ROF-5102」などが挙げられる。
本発明に用いられる第2配向層は上述したようにカラムナー配向層であるが、後述する第1配向層もカラムナー配向層である場合、このカラムナー配向層は偏光機能を有するので、第1配向層および第2配向層は、第1配向層の板状分子の法線方向と、第2配向層の板状分子の法線方向とが略垂直になるように配置されることとなる。一方、カラムナー配向層は配向機能を有するものでもあるので、上記の場合、強誘電性液晶を挟んで上下のカラムナー配向層の配向方向は略垂直となり、強誘電性液晶の配向制御には好ましくない配置となってしまう。本発明においては、このような配置であっても、反応性液晶層を第2配向層上に設けることにより、強誘電性液晶の配向を制御することができるのである。
本発明においては、反応性液晶として上述した化合物を用いることにより、第1配向層および第2配向層がカラムナー配向層であり、上記のように配置された場合であっても、強誘電性液晶の配向を効果的に制御することができる。これは、上述の化合物が、第2配向層のカラム構造と相互作用することにより、第2配向層の異方性がその方向を変化させて、反応性液晶層に付与されるためであると考えられる。
本発明に用いられる重合性液晶モノマーは、上記の中でもジアクリレートモノマーであることが好ましい。ジアクリレートモノマーは、配向状態を良好に維持したまま容易に重合させることができるからである。
上述した重合性液晶モノマーはそれ自体がネマチック相を発現するものでなくてもよい。本発明において、これらの重合性液晶モノマーは上述したように2種以上を混合して用いてもよいものであり、これらを混合した組成物すなわち反応性液晶が、ネマチック相を発現するものであればよい。
さらに本発明においては、必要に応じて上記反応性液晶に光重合開始剤や重合禁止剤を添加してもよい。例えば、電子線照射により重合性液晶材料を重合させる際には、光重合開始剤が不要な場合はあるが、一般的に用いられている例えば紫外線照射による重合の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられるからである。
本発明に用いることができる光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルともいう)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することも可能である。
このような光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲で上記反応性液晶に添加することができる。
(反応性液晶層)
このような反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層の厚みは、1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは3nm〜100nmの範囲内である。反応性液晶層が上記範囲を超えて厚くなると必要以上の異方性が生じてしまい、また上記範囲より薄いと所定の異方性が得られない場合があるからである。したがって、反応性液晶層の厚みは、必要な異方性に準じて決定すればよい。
次に、反応性液晶層の形成方法について説明する。本発明に用いられる反応性液晶層は、第2配向層上に上記反応性液晶を含む反応性液晶層形成用塗工液を塗布し、配向処理を行い、上記反応性液晶の配向状態を固定化することにより形成することができる。
また、反応性液晶層形成用塗工液を塗布するのではなく、ドライフィルム等をあらかじめ形成し、これを第2配向層上に積層する方法も用いることができるが、本発明においては、反応性液晶を溶媒に溶解させて反応性液晶層形成用塗工液を調製し、これを第2配向層上に塗布し、溶媒を除去する方法を用いることが好ましい。この方法は、工程上比較的簡便であるからである。
上記反応性液晶層形成用塗工液に用いる溶媒としては、上記反応性液晶等を溶解することができ、かつ上記カラムナー配向層の配向能を阻害しないものであれば特に限定はされない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ類等の1種または2種以上が使用可能である。
また、単一種の溶媒を使用しただけでは、上記反応性液晶等の溶解性が不十分であったり、カラムナー配向層が侵食されたりする場合があるが、2種以上の溶媒を混合使用することにより、この不都合を回避することができる。上記の溶媒の中にあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素類とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいものは、エーテル類またはケトン類と、グリコール系溶媒との混合系である。反応性液晶層形成用塗工液の濃度は、反応性液晶の溶解性や、形成しようとする反応性液晶層の厚みに依存するため一概には規定できないが、通常は1〜60重量%、好ましくは3〜40重量%の範囲で調整される。
さらに、上記反応性液晶層形成用塗工液には、本発明の目的を損なわない範囲内で、下記に示すような化合物を添加することができる。添加できる化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物;アクリル基やメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。上記反応性液晶に対するこれら化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択される。これらの化合物の添加により、反応性液晶の硬化性が向上し、得られる反応性液晶層の機械強度が増大し、またその安定性が改善される。
このような反応性液晶層形成用塗工液を塗布する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、ディップコート法、カーテンコート法(ダイコート法)、キャスティング法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、押し出しコート法等が挙げられる。
また、上記反応性液晶層形成用塗工液を塗布した後は、溶媒を除去するのであるが、この溶媒の除去は、例えば、減圧除去もしくは加熱除去、さらにはこれらを組み合わせる方法等により行われる。
本発明においては、上記のように塗布された反応性液晶を、カラムナー配向層により配向させて液晶規則性を有する状態とする。すなわち、反応性液晶にネマチック相を発現させる。これは、通常はN−I転移点以下で熱処理する方法等の方法により行われる。ここで、N−I転移点とは、液晶相から等方相へ転移する温度を示すものである。
本発明に用いられる反応性液晶は、重合性液晶材料を含むものであるので、このような重合性液晶材料の配向状態を固定化するには、重合を活性化する活性放射線を照射する方法が用いられる。ここでいう活性放射線とは、重合性液晶材料に対して重合を起こさせる能力がある放射線をいい、必要であれば重合性液晶材料内に光重合開始剤が含まれていてもよい。
このような活性放射線としては、重合性液晶材料を重合させることが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光線が使用され、波長が150〜500nm、好ましくは250〜450nm、さらに好ましくは300〜400nmの照射光が用いられる。
本発明においては、光重合開始剤が紫外線でラジカルを発生し、重合性液晶材料がラジカル重合するような重合性液晶材料に対して、紫外線を活性放射線として照射する方法が好ましい方法であるといえる。活性放射線として紫外線を用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる光重合開始剤を含めて、本発明への応用が容易であるからである。
この照射光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ等の使用が推奨される。また、照射強度は、反応性液晶の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜調整されて照射される。
このような活性照射線の照射は、上記重合性液晶材料が液晶相となる温度条件で行ってもよく、また液晶相となる温度より低い温度で行ってもよい。一旦液晶相となった重合性液晶材料は、その後温度を低下させても、配向状態が急に乱れることはないからである。
なお、重合性液晶材料の配向状態を固定化する方法としては、上記の活性放射線を照射する方法以外にも、加熱して重合性液晶材料を重合させる方法も用いることができる。
c.第2基材
本発明に用いられる第2基材としては、一般に液晶表示素子の基材として用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えばガラス板、プラスチック板などが好ましく挙げられる。本発明に用いられる基材の表面粗さ(RSM値)は、10nm以下であることが好ましく、より好ましくは3nm以下、さらに好ましくは1nm以下の範囲内である。なお、上記表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した値とする。
d.第2電極層
本発明に用いられる第2電極層は、強誘電性液晶に信号電圧を加えることにより、強誘電性液晶を駆動させるものである。
このような第2電極層としては、一般に液晶表示素子の電極層として用いられているものであれば特に限定されるものではないが、第1電極層および第2電極層のうち少なくとも一方が透明導電体で形成されることが好ましい。透明導電体材料としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)等が好ましく挙げられる。
例えば、本発明の液晶表示素子をTFT素子を用いてアクティブマトリックス駆動するものとする場合には、第1電極層および第2電極層のうち一方を上記透明導電体で形成される全面共通電極とし、他方をx電極とy電極をマトリックス状に配列し、x電極とy電極で囲まれた部分にTFT素子および画素電極を配置することが好ましい。
これらの電極のうち全面共通電極とされる透明導電膜は、上記基板上にCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の蒸着方法により形成することができる。また、x電極およびy電極は、クロム、アルミニウム等の金属の導電膜を上記の蒸着方法により形成し、これをマトリックス状にパターニングすることにより形成することができる。パターニング方法としては、フォトリソグラフィ法等の一般的な方法を用いることができる。
(2)第1配向基板
次に、本発明に用いられる第1配向基板について説明する。本発明において、第1配向基板は、第1基材と、上記第1基材上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上に形成された第1配向層とを有するものである。この第1配向基板に用いられる第1基材および第1電極層については、上記第2配向基板の第2基材および第2電極層の項において説明したものと同様であるのでここでの説明は省略する。以下、第1配向層およびその他の構成について説明する。
a.第1配向層
本発明に用いられる第1配向層は、強誘電性液晶を配向させることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般に液晶表示素子の配向膜として用いられているものを使用することができ、例えばラビング配向膜、光配向膜、あるいは板状分子を用いた配向膜などが挙げられる。本発明における第1配向層は、これらの中でも、板状分子を用いた配向膜であることが好ましく、上記板状分子の法線方向が一定方向を向いて積み重なったカラム構造を有する配向膜であることがより好ましい。このような第1配向層は、上記板状分子の自己組織化を利用して形成されるものであるので、製造プロセスが簡便であり、装置コストがかからないという利点を有するからである。また、本発明の液晶表示素子において、カラム構造を有する配向膜である第1配向層と上記反応性液晶層との間に強誘電性液晶が充填されることになるので、強誘電性液晶とこれらの機能層との相互作用により、ダブルドメイン等の配向欠陥の発生を防止し、強誘電性液晶のモノドメイン配向を容易に得ることができるからである。
本発明に用いられる第1配向層が、板状分子の法線方向が一定方向を向いて積み重なったカラム構造を有する配向膜である場合、この第1配向層の板状分子の法線方向と、上記反応性液晶層の反応性液晶の配向方向とは、略平行になるように配置される。このように配置することにより、強誘電性液晶を第1配向層の板状分子の法線方向および反応性液晶層の反応性液晶の配向方向に沿って配向させることができる。
上記第1配向層に用いられる板状分子としては、可視光領域に光二色性を有するものであっても、光二色性を有さないものであってもよいが、光二色性を有するものであることが好ましい。またこの際、上記第1配向層が、上述したカラムナー配向層であることが好ましい。これにより、第1配向層が、配向機能および偏光機能を有するカラムナー配向層となるので、偏光板を別に設けた場合と比較して、偏光板と他の機能層との界面で生じる光の散乱を解消することができ、光透過率の低下を抑制することができるからである。さらに、偏光機能を有するカラムナー配向層(第1配向層)が第1基材の内側に形成されることになるので、第1基材の複屈折による影響を受けなく、第1基材に用いる材料の選択肢が広がり、複屈折を有するプラスチック基板を用いることもできることから、液晶表示素子の薄型化および軽量化を図ることができるからである。さらにまた、カラムナー配向層が配向機能と偏光機能とを有するので、偏光板と配向層とを別々に形成する必要もなく、液晶表示素子の製造工程が簡略化されるからである。これらのことは液晶表示素子の製造コストの削減にもつながる。
本発明に用いられる第1配向層が上述したカラムナー配向層である場合、本発明の液晶表示素子は、カラムナー配向層の偏光機能を用いて視覚化するものであるため、上記第1配向層(カラムナー配向層)の板状分子の法線方向と、上述した第2配向層(カラムナー配向層)の板状分子の法線方向とは、略垂直に配置される。
ここで「略垂直」とは、第1配向層(カラムナー配向層)の板状分子の法線方向と、第2配向層(カラムナー配向層)の板状分子の法線方向とのなす角度θが90°±5°の範囲であることをいい、この角度θは90°±1°の範囲であることが好ましい。
このようにカラムナー配向層が配置されると、第1配向層のカラム構造の軸方向と、第2配向層のカラム構造の軸方向とは略垂直の関係になる。一方、強誘電性液晶は、カラム構造の軸方向に配向する傾向にあるので、本発明においては、上記第2配向層上に反応性液晶層を形成し、第2配向層の異方性を方向を変化させて反応性液晶層に付与し、この反応性液晶層を介することにより、上記の配置のままで、カラムナー配向層の配向機能をより効果的に発揮できるようにするものである。
なお、カラムナー配向層については、上記第2配向基板の第2配向層の項において説明したものと同様であるのでここでの説明は省略する。
b.偏光層
本発明において、第1配向基板に偏光機能を有する層が設けられていない場合、第1配向基板に偏光層を設けることができる。本発明に用いられる偏光層としては、光の波動のうち特定方向のみを透過させるものであれば特に限定されるものではなく、一般に液晶表示素子の偏光層として用いられるものを使用することができる。このような偏光層を設ける際には、偏光層の光軸と、上述した第2配向層(カラムナー配向層)の板状分子の法線方向とが略垂直に配置される。
一方、上記第1配向層が偏光機能を有するカラムナー配向層である場合は、このような偏光層を設ける必要はない。
(3)液晶層
次に、本発明に用いられる液晶層について説明する。本発明に用いられる液晶層は、第1配向基板および第2配向基板間に強誘電性液晶を充填させることにより構成されるものである。
(強誘電性液晶)
上記液晶層に用いられる強誘電性液晶としては、カイラルスメクチックC(SmC)相を発現するものであれば特に限定されるものではなく、降温過程において、コレステリック(Ch)相−スメクチックA(SmA)相−カイラルスメクチックC(SmC)相と相変化する材料を用いることもでき、Ch相−SmC相と相変化し、SmA相を経由しない材料を用いることもできる。中でも本発明に用いられる強誘電性液晶としては、後者のSmA相を経由しない相転移系列を示すものであることが好ましい。このような相転移系列を示す強誘電性液晶は、単安定性の駆動特性を示す傾向にあり、このように単安定性の駆動特性を示す材料を用いることにより、階調表示が可能となり、高精細なカラー表示の液晶表示素子を得ることが容易となるからである。
本発明の液晶表示素子を、フィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させる場合には、強誘電性液晶としては、上記のような単安定性の駆動特性を示す強誘電性液晶の中でも、正負いずれかの電圧を印加したときにのみ液晶分子が動作するハーフV字駆動する強誘電性液晶を用いることが好ましい。このような特性を有する強誘電性液晶を用いることにより、白黒シャッターの開口時間を長くとることができ、明るいカラー表示の液晶表示素子を得ることができるからである。
さらに、本発明に用いられる強誘電性液晶としては、単一相を構成するものであることが好ましい。ここでいう単一相とは、高分子安定化法などのように、ポリマーネットワークが形成されていないことをいうものである。このように、単一相の強誘電性液晶を用いることにより、製造プロセスが容易となり、駆動電圧を低くすることができる。
なお、後述するように、本発明に用いられる液晶層においては、ポリマーネットワークが形成されていてもよい。
このような強誘電性液晶の具体例としては、AZエレクトロニックマテリアルズ社より販売されている「R2301」、「FELIX−3206」が挙げられる。
(液晶層)
本発明に用いられる液晶層の厚みは、1.2μm〜3.0μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.3μm〜2.5μm、さらに好ましくは1.4μm〜2.0μmの範囲内である。液晶層の厚みが薄すぎるとコントラストが低下するおそれがあり、逆に液晶層の厚みが厚すぎると強誘電性液晶が配向しにくくなる可能性があるからである。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができる。例えば、あらかじめ基板上に電極を形成し、上記カラムナー配向層および反応性液晶層を形成して作製した液晶セルに、上記強誘電性液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して注入し、封鎖することにより液晶層を形成することができる。上記液晶層の厚みは、ビーズなどのスペーサーにより調整することができる。
本発明に用いられる液晶層においては、ポリマーネットワークが形成されていてもよい。すなわち、液晶層には、重合性モノマーの重合物が含有されていてもよい。これにより、強誘電性液晶の配列をより安定化することができるからである。
上記重合性モノマーの重合物に用いられる重合性モノマーとしては、重合反応により重合物を生じる化合物であれば特に限定されない。このような重合性モノマーとしては、加熱処理により重合反応を生じる熱硬化性樹脂モノマー、および活性放射線の照射により重合反応を生じる活性放射線硬化性樹脂モノマーを挙げることができる。なかでも本発明においては活性放射線硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。熱硬化性樹脂モノマーは重合反応を生じさせるために加温処理をすることが必要であるため、このような加温処理により上記強誘電性液晶の規則的な配列が損なわれたり、相転移が誘起されてしまう恐れがある。一方、活性放射線硬化性樹脂モノマーではこのような恐れが無く、重合反応が生じることによって強誘電性液晶の配列が害されることが少ないからである。
上記活性放射線硬化性樹脂モノマーとしては、電子線の照射により重合反応を生じる電子線硬化性樹脂モノマー、および光照射により光硬化性樹脂モノマーを挙げることができる。なかでも本発明においては、光硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。光硬化性樹脂モノマーを用いることにより、本発明の液晶表示素子の製造方法を簡略化することができるからである。
上記光硬化性樹脂モノマーとしては、波長が150nm〜500nmの範囲内の光を照射することにより、重合反応を生じるものであれば特に限定されない。なかでも本発明おいては、波長が250nm〜450nmの範囲内、特に300nm〜400nmの範囲内の光を照射することにより重合反応を生じる紫外線硬化性樹脂モノマーを用いることが好ましい。照射装置の容易性等の面において利点を有するからである。
上記紫外線硬化性樹脂モノマーが有する重合性官能基は、上記波長領域の紫外線照射により、重合反応を生じるものであれば特に限定されない。本発明においては、アクリレート基を有する紫外線硬化型樹脂モノマーを用いることが好ましい。
上記紫外線硬化性樹脂モノマーは、一分子中に一つの重合性官能基を有する単官能性モノマーであってもよく、また、一分子中に二以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーであってもよい。なかでも本発明においては、多官能性モノマーを用いることが好ましい。多官能性モノマーを用いることにより、上記液晶層においてより強いポリマーネットワークを形成することが可能になるため、分子間力および第1配向層界面におけるポリマーネットワークを強化することができる。したがって、多官能性モノマーを用いることにより、液晶層の温度変化によって上記強誘電性液晶の配列が乱れることを抑制することができるからである。
本発明においては、上記多官能性モノマーの中でも分子の両末端に重合性官能基を有する2官能性モノマーであることが好ましい。分子の両端に上記官能基を有することにより、ポリマー同士の間隔が広いポリマーネットワークを形成することができるため、液晶層に重合性モノマーの重合物を含むことによる強誘電性液晶の駆動電圧の低下を防止できるからである。
本発明においては、上記紫外線硬化性樹脂モノマーのなかでも、液晶性を発現する紫外線硬化性液晶モノマーを用いることが好ましい。このような紫外線硬化性液晶モノマーが好ましい理由は次の通りである。すなわち、紫外線硬化性液晶モノマーは液晶性を示すことから、上記第1配向層または第2配向層の配向規制力により規則的に配列することができる。したがって、紫外線硬化性液晶モノマーを規則的に配列した後に、重合反応を生じさせることにより、上記液晶層中に、規則的な配列状態を維持したまま固定化することが可能になる。このような規則的な配列状態を有する重合物が液晶層中に存在することにより、上記強誘電性液晶の配列安定性を向上することができるため、本発明の液晶表示素子を耐熱性や耐衝撃性に優れたものにできるからである。
上記紫外線硬化性液晶モノマーが示す液晶相としては、特に限定されず、例えばネマチック相、SmA相、SmC相を挙げることができる。
本発明に用いられる上記紫外線硬化性液晶モノマーとしては、例えば、下記式に示す化合物を挙げることができる。
Figure 2006023730
上記式において、A、B、D、EおよびFはベンゼン、シクロヘキサンまたはピリミジンを表し、これらはハロゲン等の置換基を有していてもよい。また、AおよびB、あるいはDおよびEは、アセチレン基、メチレン基、エステル基等の結合基を介して結合していてもよい。MおよびMは、水素原子、炭素数3〜9のアルキル基、炭素数3〜9のアルコキシカルボニル基、またはシアノ基のいずれであってもよい。さらに、分子鎖末端のアクリロイルオキシ基とAまたはDとは、炭素数3〜6のアルキレン基等のスペーサーを介して結合していてもよい。
Figure 2006023730
上記式において、Yは、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルキルオキシ、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、ホルミル、炭素数1〜20のアルキルカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ハロゲン、シアノまたはニトロを表す。
上記式で示される化合物のなかでも、本発明において好適に用いられる具体的な化合物としては、下記式の化合物を例示することができる。
Figure 2006023730
Figure 2006023730
Figure 2006023730
本発明に用いられる重合性モノマーの重合物は、単一の重合性モノマーの重合物であっても良く、また2以上の異なる重合性モノマーの重合物であっても良い。2以上の異なる重合性モノマーの重合物とする場合は、例えば、上記紫外線硬化性液晶モノマーと他の紫外線硬化性樹脂モノマーとの重合物を例示することができる。
重合性モノマーとして上記紫外線硬化性液晶モノマーを用いた場合、本発明に用いられる重合性モノマーの重合物としては、主鎖に液晶性を示す原子団を有することにより主鎖が液晶性を示す主鎖液晶型重合物であっても良く、また側鎖に液晶性を示す原子団を有することにより側鎖が液晶性を示す側鎖液晶型重合物であっても良い。なかでも本発明においては、側鎖液晶型重合物であることが好ましい。液晶性を示す原子団が側鎖に存在することにより当該原子団の自由度が高くなるため、液晶層において液晶性を示す原子団が配向しやすくなるからである。また、その結果として液晶層中の強誘電性液晶の配向安定性を向上することができるからである。
上記液晶層中における重合性モノマーの重合物の存在量は、上記強誘電性液晶の配列安定性を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されないが、通常、液晶層中に0.5質量%〜30質量%の範囲内が好ましく、特に1質量%〜20質量%の範囲内が好ましく、中でも1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも多いと、上記強誘電性液晶の駆動電圧の増加や、応答速度の低下を生じる場合があるからである。また、上記範囲よりも少ないと上記強誘電性液晶の配列安定性が不十分となり、本発明の液晶表示素子の耐熱性や耐衝撃性を損なってしまう可能性があるからである。
ここで、液晶層中における重合性モノマーの重合物の存在量は、液晶層中の単分子液晶を溶剤で洗い流した後、残存する重合性モノマーの重合物の重量を電子天秤で測量することによって求めた残存量と、上記液晶層の総質量とから算出することができる。
本発明に用いられる液晶層には、本発明の目的を損なわない範囲で他の化合物を含んでもよい。このような他の化合物としては、未反応の重合性モノマー、光重合開始剤、反応開始剤、および反応禁止剤等を挙げることができる。
(4)液晶表示素子の製造方法
次に、本発明の液晶表示素子の製造方法について説明する。本発明の液晶表示素子の製造方法としては、一般に液晶表示素子の製造方法として公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではない。
本発明の液晶表示素子の製造方法の一例として、TFT素子を用いたアクティブマトリックス方式の液晶表示素子とする場合を例に挙げて説明する。
まず、第1基材上に上述した蒸着方法により透明導電膜を形成し、全面共通電極とする。一方、第2基材上には、導電膜をマトリックス状にパターニングすることによりx電極、y電極を形成し、スイッチング素子および画素電極を設置する。
第1基材上に形成された電極層上には、上述した方法によりカラムナー配向層を形成し、第1配向基板とする。一方、第2基材上に形成された電極層上には、同様にカラムナー配向層を形成し、さらにそのカラムナー配向層上に反応性液晶層を形成し、第2配向基板とする。
このように形成された第1配向基板および第2配向基板のうち、一方にはスペーサーとしてビーズを分散し、他方には周囲にシール材を塗布し、第1配向基板と第2配向基板とを、第1配向基板のカラムナー配向層と第2配向基板の反応性液晶層とが向かい合うように貼り合わせ、熱圧着させる。熱圧着後は、注入口からキャピラリー効果を利用して強誘電性液晶を加熱して等方相またはネマチック相の状態で注入し、注入口を封鎖する。その後、強誘電性液晶を徐冷することにより配向させる。本発明の液晶表示素子はこのようにして製造することができる。
また本発明においては、高分子安定化法を用いて液晶表示素子を作製することができる。この場合、第1配向基板および第2配向基板間に強誘電性液晶と重合性モノマーとを含む液晶層形成用組成物を封入する液晶封入工程と、強誘電性液晶をカイラルスメクチックC相の状態とする液晶配向工程と、強誘電性液晶がカイラルスメクチックC相の状態で重合性モノマーを重合する重合工程とにより、液晶層を形成することができる。
上記液晶封入工程において、強誘電性液晶と重合性モノマーとを含む液晶層形成用組成物を封入する方法としては、特に限定されるものではない。例えば、あらかじめ第1配向基板および第2配向基板を用いて作製した液晶セルに、液晶層形成用組成物を加温することによって液晶層形成用組成物中の強誘電性液晶を等方性液体とし、注入口からキャピラリー効果を利用して注入することにより封入することができる。この場合、注入口は接着剤で封鎖される。
この際、液晶層形成用組成物中に含まれる重合性モノマーの量は、液晶層を形成した後に、強誘電性液晶の配列安定化するのに必要な量に応じて任意に決定すればよい。なかでも本発明においては、液晶層形成用組成物中0.5質量%〜30質量%の範囲内が好ましく、特に1質量%〜20質量%の範囲内が好ましく、なかでも1質量%〜10質量%の範囲内が好ましい。重合性モノマーの含有量が上記範囲よりも多いと、液晶層を形成した後に強誘電性液晶の駆動電圧が高くなってしまい、液晶表示素子の性能を害する可能性があるからである。また、上記範囲よりも低いと、強誘電性液晶の配列安定化が不十分となる結果、液晶表示素子の耐熱性、耐衝撃性等が低下してしまう可能性があるからである。
また、液晶層形成用組成物を封入する際には、強誘電性液晶をカイラルスメクチックC相からネマチック相への転移温度以上に加温する。温度は、カイラルスメクチックC相からネマチック相への転移温度以上であればよいが、通常、強誘電性液晶は等方相またはネマチック相の状態となるように加温される。具体的な温度としては、強誘電性液晶の種類によって異なり、適宜選択される。
次に、液晶配向工程においては、封入された強誘電性液晶を冷却する。この際、強誘電性液晶は、通常、室温(25℃程度)になるまで徐冷される。
また、重合工程において、上記重合性モノマーを重合する方法としては、重合性モノマーの種類に応じて任意に決定すればよく、例えば、重合性モノマーとして紫外線硬化性樹脂モノマーを用いた場合は、紫外線照射により重合させることができる。
このような重合性モノマーの重合は、液晶層に電圧を印加した状態で行ってもよく、電圧を印加しない状態で行ってもよいが、本発明においては液晶層に電圧を印加しない状態で行うことが好ましい。電圧を印加しない状態で重合することにより、製造プロセスがより簡略になるからである。
(5)液晶表示素子
本発明の液晶表示素子は、第2配向層として、好ましくは第1配向層としても、配向機能および偏光機能を有するカラムナー配向層を用いるものであるので、偏光板を別に設けた場合と比較して、偏光板と他の機能層との界面で生じる光の散乱を解消することができ、これにより光透過率の低下を抑制することができる。
また、偏光機能を有するカラムナー配向層が第2基材の内側に形成されていることから、第2基材の複屈折による影響を受けないので、第2基材として複屈折を有するプラスチック基板も用いることができ、液晶表示素子の薄型化および軽量化を図ることができ、さらには製造コストの削減にもつながる。
本発明の液晶表示素子に用いられる上記カラムナー配向層は、上記板状分子の自己組織化を利用して形成されるものであるので、ラビング処理や光配向処理などの配向処理を要することなく簡便な方法で形成することができるため、本発明の液晶表示素子の実用性は高いといえる。
また、このような本発明の液晶表示素子は、強誘電性液晶が第1配向層と反応性液晶層との間に挟持されることにより、ダブルドメイン等の配向欠陥の発生を抑制し、強誘電性液晶のモノドメイン配向を容易に得ることができ、階調表示を可能とし、高精細なカラー液晶表示素子として用いることができる。
特に本発明の液晶表示素子は、カラーフィルター方式またはフィールドシーケンシャルカラー方式を採用することによりカラー液晶表示素子として好適である。中でも、本発明の液晶表示素子は、フィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させるものであることが好ましい。このフィールドシーケンシャルカラー方式は、赤緑青の三色のLEDの点滅に同期させて液晶をオン・オフさせることで、カラーフィルターを用いないでカラー表示を可能とするものであり、低消費電力かつ低コストで、視野角が広く、明るく高精細なカラー動画表示を実現することができるからである。また、強誘電性液晶として、正負いずれかの電圧を印加したときにのみ液晶分子が動作するハーフV字駆動する材料を用いることにより、暗部動作時(白黒シャッター閉口時)の光漏れを少なくすることができ、白黒シャッターとしての開口時間を十分に長くとることができ、それにより時間的に切り替えられる各色をより明るく表示することができ、明るいカラー液晶表示素子を得ることができるからである。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
反応性液晶としては下記の化合物(A)を用いた。
Figure 2006023730
(第1配向基板の作製)
よく洗浄したITO電極付きガラス基板のITO膜上に、可視光領域に光二色性を有する板状分子を含有するインキ(Optiva社製、N015)をスロットダイコーターを用いて塗布し、乾燥後、15%の塩化バリウム水溶液に約1秒間浸漬させた。さらに洗浄して、再度乾燥し、0.3μm厚のカラムナー配向層を有する第1配向基板を得た。
(第2配向基板の作製)
よく洗浄したITO電極付きガラス基板のITO膜上に、上述した方法により0.3μm厚のカラムナー配向層を形成し、このカラムナー配向層上に、上記化合物(A)の濃度が2重量%となるようにシクロペンタノンに溶解させた溶液を、4000rpmで30秒間スピンコーティングした。55℃で3分間乾燥させた後、無偏光紫外線を55℃で1000mJ/cm照射し、反応性液晶層を形成して、第2配向基板を得た。
(液晶層の形成)
上記第1配向基板のカラムナー配向層上に1.5μm径のビーズスペーサーを散布し、上記第2配向基板の反応性液晶層上にシールディスペンサーを用いてシール材を塗布し、第1配向基板のカラムナー配向層の偏光方向および第2配向基板のカラムナー配向層の偏光方向が互いに直交するように、かつカラムナー配向層および反応性液晶層が向かい合うように、第1配向基板および第2配向基板を配置して貼り合わせた。150℃で約1時間熱圧着を行い、試験用セルを作製した。この試験用セルに、強誘電性液晶(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、R2301)を約100℃の温度条件で注入し徐冷したところ、モノドメインの均一な配向が得られた。
[実施例2]
(凹部パターンの形成)
よく洗浄したITO電極付きガラス基板上に、下記組成の紫外線硬化性アクリレート樹脂組成物をスピンコートし、これに電子ビーム描画法により凹凸を形成した凹部形成用基板をのせ、100kg/cmの加重を1分間かけた。この状態で、紫外光を100mJ/cm照射し、さらに凹部形成用基板を剥離した後、紫外光を3000mJ/cm照射し、幅0.2μm、ピッチ0.4μm、深さ0.2μmのストライプ状の凹部パターンを形成した。これにプラズマ処理を加えることで、表面の親水化処理を行った。
(紫外線硬化性アクリレート樹脂組成物)
・ゴーセラックUV−7500B(日本合成化薬社製) 40重量部
・1,6−ヘキサンジオールアクリレート(日本化薬社製) 35重量部
・ペンタエリスリトールアクリレート(東亜合成化学社製) 21重量部
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
(チバスペシャルティケミカルズ社製) 2重量部
・ベンゾフェノン(日本化薬社製) 2重量部
(第1配向基板の作製)
上記方法で作製した凹部パターン上に、可視光領域に光二色性を有する板状分子を含有するインキ(Optiva社製、N015)をインクジェットを用いて塗布し、乾燥後、15%の塩化バリウム水溶液に約1秒間浸漬させた。さらに洗浄して、再度乾燥し、カラム構造が形成されている部分の厚みが0.3μmとなるカラムナー配向層を形成して、第1配向基板を得た。
(第2配向基板の作製)
上記方法で作製した凹部パターンを用いて、上述した方法によりカラム構造が形成されている部分の厚みが0.3μmとなるカラムナー配向層を形成し、このカラムナー配向層上に、実施例1と同様の方法により反応性液晶層を形成して、第2配向基板を得た。
(液晶層の形成)
上記第1配向基板のカラムナー配向層上に1.5μm径のビーズスペーサーを散布し、上記第2配向基板の反応性液晶層上にシールディスペンサーを用いてシール材を塗布し、第1配向基板のカラムナー配向層の偏光方向および第2配向基板のカラムナー配向層の偏光方向が互いに直交するように、かつカラムナー配向層および反応性液晶層が向かい合うように、第1配向基板および第2配向基板を配置して貼り合わせた。150℃で約1時間熱圧着を行い、試験用セルを作製した。この試験用セルに、強誘電性液晶(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、R2301)を約100℃の温度条件で注入し徐冷したところ、モノドメインの均一な配向が得られた。
[実施例3]
実施例1と同様の条件にて、試験用セルを作製した。この試験用セルに、強誘電性液晶(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、R2301)に重合性モノマー(大日本インキ化学工業株式会社製、UCL−001)を5質量%混合した液晶を、約100℃の温度条件で注入し徐冷した。その後、無偏光紫外線を約1000mJ/cm露光して上記重合性モノマーを重合させた。このようにして得られた液晶表示素子では、モノドメインの均一な配向が得られた。
本発明の液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。 本発明に用いられる板状分子およびカラムナー配向層のカラム構造を説明する図である。 本発明の液晶表示素子の一例を示す概略斜視図である。 本発明の液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1a … 第1基材
1b … 第2基材
2a … 第1電極層
2b … 第2電極層
2c … x電極
2d … y電極
2e … 画素電極
3a … 第1配向層
3b … 第2配向層
4b … 反応性液晶層
5 … 液晶層
7 … TFT素子
11 … 第1配向基板
12 … 第2配向基板
a … 板状分子
b … カラム構造
n … 法線方向

Claims (8)

  1. 第1基材と、前記第1基材上に形成された第1電極層と、前記第1電極層上に形成された第1配向層とを有する第1配向基板、および、第2基材と、前記第2基材上に形成された第2電極層と、前記第2電極層上に形成された第2配向層と、前記第2配向層上に形成され、重合性液晶材料を含む反応性液晶であって、かつ、ネマチック相を示す反応性液晶を固定化してなる反応性液晶層とを有する第2配向基板を、前記第1配向層と前記反応性液晶層とが対向するように配置し、前記第1配向基板と前記第2配向基板との間に強誘電性液晶を挟持してなる液晶表示素子であって、
    前記第2配向層は、可視光領域に光二色性を有する板状分子を有し、かつ前記板状分子の法線方向が一定方向を向いて積み重なったカラム構造を有し、さらに配向機能および偏光機能を有するカラムナー配向層であることを特徴とする液晶表示素子。
  2. 前記第1配向層は前記カラムナー配向層であり、前記第1配向層の板状分子の法線方向と、前記第2配向層の板状分子の法線方向とが、略垂直に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
  3. 前記カラムナー配向層は、表面に所定の幅を有する凹部または凸部がパターン状に形成された樹脂層と、前記樹脂層の凹部に沿って形成された前記カラム構造とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液晶表示素子。
  4. 前記板状分子は、水溶液中でリオトロピック液晶相を示すものであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の液晶表示素子。
  5. 前記強誘電性液晶は、単安定性の駆動特性を示すものであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の液晶表示素子。
  6. 前記強誘電性液晶は、降温過程においてスメクチックA相を経由しない相転移系列を示すものであることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の液晶表示素子。
  7. 前記第1電極層または前記第2電極層に薄膜トランジスタを有し、アクティブマトリックス駆動するものであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の液晶表示素子。
  8. フィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させるものであることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の液晶表示素子。
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