JP2006021257A - 潤滑被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】WC基超硬合金またはTiCN基サーメットからなる基体の表面に蒸着形成される潤滑被覆層を、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分及び集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、3〜15度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記3〜15度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45〜65%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ1〜15μmの平均層厚を有する窒化クロム層、で構成する。
【選択図】図1
Description
装置内雰囲気:0.1Pa以下の真空、
装置内加熱温度:300〜500℃、
超硬基体に印加する直流バイアス電圧:−600〜−1000V、
上記カソード電極である金属Crとアノード電極間のアーク放電電流:60〜100A、
処理時間:1〜10分、
の条件で、アノード電極と上記金属Crのカソード電極との間にアーク放電を発生させて、上記超硬基体の表面をCrボンバード洗浄処理した状態で、
ヒータで装置内を、例えば500℃の温度に加熱保持しながら、アノード電極と前記金属Crのカソード電極(蒸発源)との間に、例えば電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、一方上記超硬基体には、例えば−100Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記超硬基体の表面に、上記CrN層からなる潤滑被覆層を蒸着することにより製造されることも知られている。
(a)例えば図4に概略説明図で示される通り、カソード電極として、金属クロム(Cr)の外に、金属タングステン(W)を装着したアークイオンプレーティング装置を用い、上記の従来の超硬基体表面に対するCrボンバード洗浄処理に代って、
装置内雰囲気:0.1Pa以下の真空
装置内加熱温度:550〜700℃、
超硬基体に印加する直流バイアス電圧:−600〜−1000V、
上記カソード電極である金属Wとアノード電極間のアーク放電電流:60〜100A、
処理時間:1〜10分、
の条件で、上記の超硬基体表面をWボンバード処理する基体表面改質処理を施した状態で、通常の条件で、潤滑被覆層としてCrN層を形成すると、この結果形成されたCrN層は、組成的に均質となり、摩耗進行が均一化することから、高速切削で長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するようになること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、3〜15度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記3〜15度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45〜65%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ1〜15μmの平均層厚を有するCrN層、
で構成された潤滑被覆層を形成してなる、潤滑被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具に特徴を有するものである。
装置内雰囲気:0.1Pa以下の真空、
装置内加熱温度:600℃、
超硬基体に印加する直流バイアス電圧:−800V、
上記カソード電極である金属Wとアノード電極間のアーク放電電流:60〜100Aの範囲内の所定の電流、
処理時間:5分、
の条件で、上記のカソード電極の前記金属Wとアノード電極との間にアーク放電を発生させて、超硬基体表面をWボンバード処理する基体表面改質処理を施し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して2Paの反応雰囲気とすると共に、前記超硬基体には−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記カソード電極である金属Crとアノード電極との間には100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体の表面に、表3に示される目標層厚のCrN層を蒸着することにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆超硬チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
装置内雰囲気:0.1Pa以下の真空、
装置内加熱温度:500℃、
超硬基体に印加する直流バイアス電圧:−800V、
上記カソード電極である金属Crとアノード電極間のアーク放電電流:60〜100Aの範囲内の所定の電流、
処理時間:5分、
の条件で、超硬基体の表面をCrボンバード洗浄処理する以外は同一の条件でCrN層を蒸着することにより、表4に示される通りの従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ(以下、従来被覆超硬チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
被削材:JIS・AC3Aの丸棒、
切削速度:350m/min.、
切り込み:2mm、
送り:0.3mm/rev.、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Aという)でのアルミニウム合金の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は200m/min.)、
被削材:JIS・C1020の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:300m/min.、
切り込み:1.8mm、
送り:0.25mm/rev.、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Bという)での無酸素銅の乾式断続高速切削加工試験(通常の切削速度は150m/min.)、さらに、
被削材:JIS・C1100の丸棒、
切削速度:380m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.3mm/rev.、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Cという)での りん脱酸銅の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は200m/min.)を行い、いずれの高速切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表4に示した。
また、別途、上記超硬基体(エンドミル)C−1〜C−8とそれぞれ同じ組成をもち、かついずれも平面:12mm×12mm、厚さ:6mmの寸法をもった電界放出型走査電子顕微鏡による傾斜角度数分布グラフ作成用試験片を用意した。
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・C1020の板材、
切削速度:280m/min.、
溝深さ(切り込み):0.8mm、
テーブル送り:2500mm/分、
の条件での無酸素銅の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は150m/min.)、本発明被覆超硬エンドミル4〜6および従来被覆超硬エンドミル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・AC3Aの板材、
切削速度:350m/min.、
溝深さ(切り込み):3mm、
テーブル送り:1600mm/分、
の条件でのアルミニウム合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は200m/min.)、本発明被覆超硬エンドミル7,8および従来被覆超硬エンドミル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・C1100の板材、
切削速度:300m/min.、
溝深さ(切り込み):3mm、
テーブル送り:1200mm/分、
の条件でのりん脱酸銅の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は150m/min.)をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表6にそれぞれ示した。
また、同じく上記超硬基体(ドリル)D−1〜D−8とそれぞれ同じ組成を有し、かついずれも平面:12mm×12mm、厚さ:6mmの寸法をもった電界放出型走査電子顕微鏡による傾斜角度数分布グラフ作成用試験片も用意した。
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・C1020の板材、
切削速度:160m/min.、
送り:0.18mm/rev、
穴深さ:8mm
の条件での無酸素銅の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は80m/min.)、本発明被覆超硬ドリル4〜6および従来被覆超硬ドリル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・AC3Aの板材、
切削速度:180m/min.、
送り:0.22mm/rev、
穴深さ:16mm
の条件でのアルミニウム合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は90m/min.)、本発明被覆超硬ドリル7,8および従来被覆超硬ドリル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・C1100の板材、
切削速度:220m/min.、
送り:0.33mm/rev、
穴深さ:32mm
の条件でのりん脱酸銅の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は110m/min.)、をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表7に示した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記のCrN層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射し、電子後方散乱回折像装置を用いて、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
また表3、表4、表6、および表7には、上記の本発明被覆超硬工具および従来被覆超硬工具のCrN層の傾斜角度数分布グラフにおいて、3〜15度の範囲内の傾斜角区分に存在する傾斜角度数のグラフ全体の傾斜角度数に占める割合を示した。
なお、図2は、本発明被覆超硬チップ1のCrN層の傾斜角度数分布グラフ、図3は、従来被覆超硬チップ1のCrN層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された基体の表面に、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、3〜15度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記3〜15度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45〜65%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ1〜15μmの平均層厚を有する窒化クロム層、
で構成された潤滑被覆層を形成してなる、潤滑被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬超硬合金製切削工具。
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