JP2006006916A - 片麻痺患者用の歩行補助具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来の下腿から足先までを覆う硬くて重いAFOに替わり、下腿の近位に貼り付ける導子からの電流刺激によって足関節背屈筋を収縮させ、内反・尖足変形を筋収縮活動から矯正することで、歩行障害を軽減させる片麻痺患者用の歩行補助具を提供しようとする点である。
【解決手段】 下腿皮層上に装着するための薄さと柔軟性及び粘着性を有する2つの導子と、電源と、低周波パルス発生回路と、傾斜センサーと、振動センサーとを含み構成される本体と、前記本体と前記2つの導子を接続するリード線とから構成され、下腿皮層上からの電気刺激で足関節背屈筋を収縮させることとし、一定時間振動センサーが作動せず、または下腿軸が水平に近く傾いた時に、自動的に出力がOFFとなることとする。
【選択図】 図3

Description

本発明は、脳卒中等の後遺症として片側半身の痙性麻痺を有する患者が抱える歩行障害を改善させることを目的とし、電気刺激によって足関節背屈筋を収縮させる片麻痺患者用の歩行補助具に関する。
脳卒中により片側大脳半球が損傷されると、その反対側の手足の骨格筋は随意的運動が困難になる。この状態は医療界では片麻痺と呼ばれている。片麻痺は単純な筋力の低下ではなく、運動制御の障害とみなされており、不随意的かつ反射的に筋緊張が異常亢進する「痙性」や、異なる関節を動かす複数の筋が一定のパターンで同時に収縮活動を起こしてしまう「共同運動」と呼ばれる病理的現象がしばしばみられる。
筋肉の痙性によって、麻痺側の手足は片麻痺に特徴的な関節の変形をきたす。下肢においては足関節の内反・尖足変形が最も特徴的で、かつ歩行障害を惹起する重大な要因の一つである。片麻痺に於いて、麻痺側の足関節は患者の意思とは関わりなく、歩こうとすると足底が内側を向き、かつ、爪先立ちのような姿位となってしまうことが多い。そのために歩行時に足元が非常に不安定になり、爪先は床に引っかかるため、前進することが困難となる。
出願人が開示する特開2000−166997号公報に記載の「歩行補助装置」においては、手軽に日常の歩行動作の補助をすることができる歩行補助装置が提案されている。使用者の胴体に対する大腿部の前後方向の角度を検出し、この検出された角度を時間微分し、この微分値から前記検出された角度が足を前方に踏み出す方向に増加しているか否かを判別し、該角度が足を前方に踏み出す方向に増加している場合には、該角度が増加している足の歩行補助を行なうためにモータに所定のパルス幅のパルスを周期的に供給するものである。
また、特開2000−233001号公報に記載の「歩行補助具の駆動方法」においては、人の歩行を補助し、体重を脚に負担させない歩行補助具の駆動方法が提案されている。歩行補助具の足部裏側にスイッチを設け、足の上げ下げに連動して駆動装置が制動されて足の曲げ伸ばしが行なわれるようにしたものである。
しかしながら、これらの特許文献はいずれも片麻痺患者の内反・尖足による歩行障害に対して歩行を補助することを目的とするものではなく、本発明を構成する要素を有し、あるいは示唆するものではない。
従来、片麻痺患者の内反・尖足による歩行障害に対しては、下腿から足趾にかけて樹脂製の装具で覆い、下腿軸と足底面がほぼ直角になるように変形を矯正して、歩行障害を軽減させていた。この装具はリハビリの現場では短下肢装具またはAFO(Ankle−Foot Orthosis)と呼ばれるものである。
ところが、AFOは、重い、脱着が面倒、壊れ易い、装着した足が熱く蒸れる、白癬菌を原因とする皮膚病等の誘因となる、足底全体が覆われるため地面等の感覚が判らない、装具を履くと左右同じサイズの靴が履けない、長年AFOを装着しても内反・尖足変形の改善効果は少ない等、多くの構造的問題点を抱えている。しかしながら素材や形状の改良以外はほぼ一世紀に亘ってその基本的概念には進歩がなく、したがって上記に挙げた構造的欠点は未解決のままであった。
本発明に先立ち、片麻痺患者の下腿末梢神経を電気刺激して、足関節の内反・尖足変形を矯正しようという試みは過去30年以上前から行なわれてきたが、いずれも良好な成績を出すことは出来なかった。その主な原因として、従来の装置では、足が地面から浮いている時間(遊脚期)にのみ背屈筋に電気刺激を与え、足が地面に接地している時間(立脚期)には刺激を切る制御を行なっており、そのために立脚期に足関節が不安定になり、歩行機能の改善効果が少なかったことが考えられる。
特開2000−166997号公報 特開2000−233001号公報
本発明が解決しようとする問題点は、従来の下腿から足先までを覆う硬くて重いAFOに替わり、下腿の近位に貼り付ける導子からの電流刺激によって足関節背屈筋を収縮させ、内反・尖足変形を筋収縮活動から矯正することで、歩行障害を軽減させる歩行補助具を提供しようとする点である。
上記課題を解決するため、本発明は下腿皮層上に装着するための薄さと柔軟性及び粘着性を有する2つの導子と、電源と、低周波パルス発生回路と、傾斜センサーと、振動センサーとを含み構成される本体と、前記本体と前記2つの導子を接続するリード線とから構成され、下腿皮層上からの電気刺激で足関節背屈筋を収縮させることを特徴としている。
また、本発明は前記本体にはさらに、電源スイッチと、強弱切替スイッチとが備えられたことを特徴とし、前記電気刺激は、パルス幅7msec以上13msec以下の範囲内の2相性連続方形パルスであることを特徴とし、前記電気刺激は、周波数35Hz以上45Hz以下の範囲内の2相性連続方形パルスであることを特徴としている。
また、本発明は前記傾斜センサーは封入されたオイル内に枢支されたウエイトとし、使用者の下腿の方向を捉え、前記ウエイトがリードスイッチに作用するものとして、下腿がほぼ鉛直方向を向いた時、出力パルスがONになることを特徴とし、一定時間振動センサーが作動せず、または下腿軸が水平に近く傾いた時に、自動的に出力がOFFとなることを特徴としている。
また、本発明は前記本体には、下肢に装着するための装着具が連結されて備えられていることを特徴としている。
本発明によれば、下腿から足先までを覆う硬くて重いAFOに替わり、下腿の近位に貼り付ける導子の刺激によって足関節背屈筋を収縮させ、内反・尖足変形を筋収縮活動から矯正し、歩行障害を軽減させる歩行補助具を提供することが出来る。
本発明では立脚期と遊脚期の時間的オン・オフ制御を行なわず、歩行している間持続的に刺激を加える方法を用いる。これにより立脚期の足関節の安定性が得られ、同時に遊脚期の爪先のつまずきも防止できる。歩行周期ごとのオン・オフ制御がないので作動の信頼性も高い。
図面として示す実施例のように構成することで実現した。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明に係る歩行補助具の基本的な構成の一例を示す図、図2は同じく装着した状態の一例を示す図、図3は同じく本体の基本的な構成の一例を示す図、図4は同じくパルスの好ましい例を示す図、図5は同じく傾斜センサーを示す図である。本発明は皮層表面からの電気刺激によって、麻痺側下腿の特定の筋を収縮させることにより、片麻痺に特徴的な異常姿位である患側足関節の内反・尖足変形を修正させて歩行障害を軽減せしめる装置であり、普段の日常生活で長時間使用可能なように、全体で小型軽量な構成となっている。
図1から図3に示されるように、本発明の装置は、下腿皮層上に装着するための薄さ及び柔軟性を有するとともに粘着性を有する2つの導子と、小型電池または小型電源と、低周波パルス発生回路を含み構成される本体と、前記本体と前記2つの導子とを接続するリード線とから構成されている。なお、後述するように、傾斜センサーと、振動センサーとをさらに本体が備えていれば、スイッチのON、OFFを自動的に行なうことができるが、スイッチは手動で操作するようにしてもよく、あるいはどちらも使用できるようにしてもよい。
また、本体には、下肢装置を下肢に装着するためのベルトB等の装着具が連結されて備えられている。図面において説明すれば、装置全体の外観上は、近位導子1、遠位導子2、本体3、及びリード線4から構成される。また、本体3の中にはパルス発生回路の他、薄型電池5、傾斜センサー6、及び振動センサー7が内蔵されている。
本発明の実施使用法を図において説明すると、近位導子1を下腿近位外側の(a)の位置に、遠位導子2を下腿前方中間部(b)に、図に示すような向きで貼付する。そして、電源スイッチ8をONにし、歩行動作に入ろうとすれば、その際に僅かな振動を振動センサー7が検知し、検知信号はスイッチング回路を起動して、電気パルス発生回路から低周波電流を持続的に発生させる。
下腿には足部を動かす多くの筋が存在する。脛骨前方には足関節背屈(爪先を持ち上げる動作)を担う筋群が、下腿外側には足関節を外反(足底を外側に向ける動作)させる筋群が位置している。本発明の装置から発せられる低周波電流は、2つの導子1、2を介してこれらの筋群をバランス良く収縮せしめ、過度の底屈(爪先を押し下げる動作)及び内反(足底を内側に向ける動作)を抑制する。この時に適度な電流、電圧強度を設定するために、パルス発生器の側面には出力調整用の可変抵抗器(強弱調整)が設置されており、可変抵抗器を左右に回転させながら、足関節底屈が十分に減少し、しかも電気刺激による皮層の痛みが生じない程度の刺激強度に調整する。
上記した電気刺激は、パルス幅7msec以上13msec以下の範囲内の2相性連続方形パルスであることが好ましい。また、電気刺激は、周波数35Hz以上45Hz以下の範囲内の2相性連続方形パルスであることが好ましい。これは、繰り返しての実験より経験的に得られた数値である。
また、表1は、パルス発生の好ましい実施例の仕様を示す。
Figure 2006006916
より好ましくは、本発明が発生させる電気刺激パターンは、2相性連続方形パルスで、パルス幅10msec、周波数40Hz、電圧10〜20V(可変)、電流50〜80mA(可変)とした。これは数々の臨床実験により、十分な筋収縮力を得つつも痛みや筋疲労の少ない最適パラメータとして見出された数値である。
刺激回路には、傾斜センサー6、振動センサー7、及びスイッチング回路が組み込まれている。使用者の下腿の方向を傾斜センサー6が捉え、下腿の振動を振動センサー7が捉える。下腿がほぼ鉛直方向を向き、しかも下腿に揺れが生じた際に、出力パルス電流がONになる。また、一定時間(10秒〜30秒程度)振動のない時間が持続するか、下腿軸が水平に近く傾いた時に、自動的に出力がOFFとなるようにプログラムされている。
この機能を有することで、使用者の歩行開始の企図とともに自動的にパルス電流が流れ、歩行を止めることで自動的に電流は遮断される。また、下肢を横たえた時には、たとえ体動があってもパルス電流は出力されない。使用者は歩行の度にいちいち電源スイッチのオン・オフに煩わされることなく、歩行の意思のある時にのみ自動的にパルス電流が出力され、電気刺激される下腿筋の疲労と電池の消耗を低減することが可能である。又、急激に電気刺激が印加されることで不快な衝撃感を感じないよう、出力電圧を刺激開始瞬間は0V、以後2秒間をかけて設定電圧まで直線的に増加させる「ソフトスタート機能」を内蔵している。
そして、前記した傾斜センサー6は図5に示す構成となっており、オイルを充填した扇形のオイルパック10を有しており、そのオイルパック10の要部分に特に先端を重くしたウエイト11をピン12等で枢支している。また、13はリード線4、4に組み込まれたリードスイッチである。この傾斜センサー6が傾動、即ち、矢示方向へ回動すると、ウエイト11はオイルによってブレーキをかけられながら、鉛直方向への位置取りを行なう。この時リードスイッチ13の位置が回動してくることでウエイト11が作用し、そのリードスイッチ13がONとされる。また、この傾斜センサー6が初期位置へ復帰回動することで、リードスイッチ13はOFFとされることになる。
本発明の装置を試験的に16名の片麻痺患者に装着し、最大歩行速度を測定した。その結果、16名中9名で何も装着しない時より歩行速度は有意に増加し、AFO装着時とほぼ同等もしくはそれ以上の速度が得られた。しかも本発明の装置使用時の患者の感想は、AFOよりも装着感が軽く、足底感覚が得られ、同じサイズの普通の靴が履けるので、大変歩き易いというものであった。危惧された刺激時の痛みや筋の疲労感は気にならないとのことであった。
本発明は従来のAFOと比較して、以下のような優れた点を有している。即ち、
(1)装着感がより少なく、邪魔になりにくい。
(2)足関節の弾力性が保たれるので、より自然に近い歩行が可能である。
(3)足部を覆う部分がないので、地面の情報を足底から感知し易い。
(4)左右同じサイズの靴を履くことが出来る。
(5)装具による足底や踵、くるぶしの皮膚炎や白癬菌による疾病、擦り傷の発生の虞がない。
(6)歩行能力に重要な役割を担っている下腿前方の筋を訓練強化し、歩行機能を向上させる効果がある。つまり、歩行補助の装具でありながら訓練装置としての機能を発揮する。
(7)装置自体には荷重がかからず、損壊しにくい。
以上詳細に説明したように、本発明によれば、AFOに替わる新たな概念の電気的装具として有用であり、多くの片麻痺患者の日常生活能力を向上させ、社会復帰を促進することが出来る。それにより、医療費支出の削減に貢献可能である。
本発明に係る歩行補助具の基本的な構成の一例を示す図である。 装着した状態の一例を示す図である。 本体の基本的な構成の一例を示す図である。 パルスの好ましい例を示す図である。 傾斜センサーを示す図である。
符号の説明
1 近位導子
2 遠位導子
3 本体
4 リード線
5 薄型電池
6 傾斜センサー
7 振動センサー
8 電源スイッチ
10 オイルパック
11 ウエイト
12 ピン
13 リードスイッチ
B ベルト

Claims (7)

  1. 下腿皮層上に装着するための薄さと柔軟性及び粘着性を有する2つの導子と、電源と、低周波パルス発生回路と、傾斜センサーと、振動センサーとを含み構成される本体と、前記本体と前記2つの導子を接続するリード線とから構成され、下腿皮層上からの電気刺激で足関節背屈筋を収縮させることを特徴とする片麻痺患者用の歩行補助具。
  2. 前記本体にはさらに、電源スイッチと、強弱切替スイッチとが備えられたことを特徴とする請求項1に記載の片麻痺患者用の歩行補助具。
  3. 前記電気刺激は、パルス幅7msec以上13msec以下の範囲内の2相性連続方形パルスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の片麻痺患者用の歩行補助具。
  4. 前記電気刺激は、周波数35Hz以上45Hz以下の範囲内の2相性連続方形パルスであることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の片麻痺患者用の歩行補助具。
  5. 前記傾斜センサーは封入されたオイル内に枢支されたウエイトとし、使用者の下腿の方向を捉え、前記ウエイトがリードスイッチに作用するものとして、下腿がほぼ鉛直方向を向いた時、出力パルスがONになることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の片麻痺患者用の歩行補助具。
  6. 一定時間振動センサーが作動せず、または下腿軸が水平に近く傾いた時に、自動的に出力がOFFとなることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に記載の片麻痺患者用の歩行補助具。
  7. 前記本体には、下肢に装着するための装着具が連結されて備えられていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5または請求項6に記載の片麻痺患者用の歩行補助具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2011130202A2 (en) * 2010-04-16 2011-10-20 The Johns Hopkins University Device to monitor and treat hemiplegia and hemispatial neglect
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