JP2006001912A - タンパク質製剤の安定化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 タンパク質含有組成物、特に抗体製剤を長期間安定に保存する方法、及び安定に保存するための容器を提供する。
【解決手段】 遮光下でタンパク質含有組成物を保存することにより、タンパク質含有組成物を安定化することができる。遮光下での保存には、遮光性容器を使用できる。
本発明の方法により、タンパク質含有組成物に添加する安定化剤の量を低減できる。また、安定化剤の添加と本発明の方法とを併用することにより、凝集、変性、分解、及び不溶性の異物生成を抑制することができる。

Description

本発明は、タンパク質含有組成物の安定化方法、及び、タンパク質含有組成物の保存容器に関する。さらに詳しくは、タンパク質含有組成物を遮光下で保存することにより安定化する方法、及び、タンパク質含有組成物を保存するための遮光性容器に関する。
従来技術
遺伝子組換え技術の発達によって、種々のタンパク質製剤が安定した供給量で提供されるようになった。これらのタンパク質製剤は、長期間保存すると凝集、変性、分解、不溶性の異物生成、活性の低下といった問題が生じやすいため、各種の安定化剤の添加が広く行われている。使用される安定化剤として、酸化防止のための抗酸化剤や容器への付着防止のための界面活性剤が挙げられる。
しかし、タンパク質製剤が人体に投与されることを考慮すると、製剤中に添加する安定化剤種は制限され、また添加量にも限界がある。また、製造工程の削減といった観点からも、主原体以外の成分の添加量を低減することが望ましい。そこで、安定化剤を用いないタンパク質製剤の安定化方法が求められている。
近年、抗体工学の進展によってキメラ抗体やヒト化抗体が実用化されたため(特許文献1及び2、並びに非特許文献1を参照)、タンパク質製剤の中でも抗体製剤の開発が活発に進められている。抗体製剤についても、従来のタンパク質製剤に使用されてきた安定化剤が添加されることが多い。
しかし抗体は、一般のタンパク質や生理活性物質と比較して、長期保存中に凝集や不溶性の異物生成等の問題を起こしやすい。特に、近年開発が進められているヒト型化抗体では、保存中の副反応により不活性化しやすいことが知られている。その理由は、ヒト型化抗体の高い結合活性及び低い副作用という特徴はCDR及びFRのアミノ酸配列の設計によるものであり、CDR及び/又はFRのアミノ酸残基の脱アミド化や酸化によって大きく影響されるためである。そこで、抗体製剤の安定化のための新たな方法が求められている。
これまでにも、光への露出を抑制することによりタンパク質製剤の安定性を向上できることが報告されている(例えば、特許文献3−5を参照)。しかし、抗体製剤に関する知見は得られていない。
欧州特許出願公開239400号公報 国際公開WO96/02576号パンフレット 国際公開WO03/002139号パンフレット 特開平9−276404号公報 特開平10−295777号公報 Sato, K. et al., Cancer Res., 1993年、53号、851−856頁
本発明は上記の事情に鑑みなされたものであり、安定化剤の添加に代えて、又はそれと組み合わせて用いることのできるタンパク質含有組成物の安定化方法、特に抗体製剤の安定化方法を提供することを目的とする。また、タンパク質含有組成物、特に抗体製剤を安定に保存するための容器を提供することも本発明の目的である。
本発明者らはこれらの課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、タンパク質含有組成物を遮光下で保存することにより安定化できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明により、タンパク質製剤を長期間保存する際に生じる凝集、変性、分解、及び不溶性の異物生成を抑制することができる。本発明を抗体製剤に用いる場合には、抗体のアミノ酸残基の脱アミド体や酸化体生成を抑制することもできる。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 遮光下でタンパク質含有組成物を保存することを特徴とするタンパク質含有組成物の安定化方法。
(2) 波長λμm〜λμm
(λ及びλは1×10−4μm≦λμm≦λμm≦30μmを充たす)
の入射光のエネルギーI、及び、タンパク質含有組成物に到達する波長λμm〜λμmの光のエネルギーIが
I/I ≦ 0.70
を充たす条件下でタンパク質含有組成物を保存することを特徴とする、タンパク質含有組成物の安定化方法。
(3) 波長λμm〜λμm
(λ及びλは1×10−4μm≦λμm≦λμm≦30μmを充たす)
の光の透過率が70%以下である材料で少なくとも一部が形成された容器中にタンパク質含有組成物を保存することを特徴とする、タンパク質含有組成物の安定化方法。
(4) タンパク質含有組成物がタンパク質製剤である(1)〜(3)の何れかに記載の方法。
(5) タンパク質含有組成物がタンパク質製造バルク溶液である(1)〜(3)の何れかに記載の方法。
(6) タンパク質が抗体である(1)〜(5)の何れかに記載の方法。
(7) 遮光下で保存したタンパク質製剤。
(8) 遮光が遮光性容器、遮光性包装材、又はそれらの組み合わせによって行われる、(7)のタンパク質製剤。
(9) 遮光下で保存した抗体製剤。
(10) 遮光が遮光性容器、遮光性包装材、又はそれらの組み合わせによって行われる、(9)の抗体製剤。
(11) タンパク質製剤を保存するための遮光性容器。
(12) 抗体製剤を保存するための遮光性容器。
(13) 波長λμm〜λμm
(λ及びλは1×10−4μm≦λμm≦λμm≦30μmを充たす)
の光の透過率が70%以下である材料で少なくとも一部が形成された(11)又は(12)に記載の容器。
(14) タンパク質製剤を保存するための遮光性包装材料。
(15) 抗体製剤を保存するための遮光性包装材料。
(16) 波長λμm〜λμm
(λ及びλは1×10−4μm≦λμm≦λμm≦30μmを充たす)
の光の透過率が70%以下である材料で少なくとも一部が形成された(14)又は(15)に記載の包装材料。
本発明におけるタンパク質含有組成物に特に制限はなく、タンパク質を含有し安定化が求められる医薬品、食品、及び化粧品、並びにそれらの原料などが含まれるが、タンパク質製剤及びタンパク質製造バルク溶液が好ましい。本発明の方法によりタンパク質製剤を安定化することができ、本発明の方法により安定化したタンパク質製造バルク溶液を用いてタンパク質製剤を調製することもできる。ここで「安定化」とは、タンパク質の凝集、変性、分解、不溶性の異物生成、活性の低下等を抑制することをいう。
タンパク質含有組成物中のタンパク質は、生体由来タンパク質であっても組換えタンパク質であってもよい。特に、本発明の安定化方法は生理活性タンパク質に有効である。
本発明の安定化方法における生理活性タンパク質とは、哺乳動物、特にヒトの生理活性タンパク質と実質的に同じ生物学的活性を有するものであり、天然由来のもの、及び遺伝子組換え法により得られたものを含む。本発明の安定化方法は、遺伝子組換え法により得られた生理活性タンパク質に特に有効である。遺伝子組換え法による生理活性タンパク質として、大腸菌などの細菌類、イースト菌、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、C127細胞、COS細胞などの動物由来の培養細胞などに産生せしめ、種々の方法で抽出し分離精製したものが用いられる。遺伝子組換え法によって得られるタンパク質は、天然タンパク質とアミノ酸配列が同じであるもの、あるいは該アミノ酸配列の1又は複数を欠失、置換、付加したもので前記生物学的活性を有するものを含む。さらには、PEG等により化学修飾されたものも含む。
生理活性タンパク質としては、例えば糖鎖を有するタンパク質が挙げられる。糖鎖の由来に特に制限はないが、哺乳動物細胞に付加される糖鎖が好ましい。哺乳動物細胞には、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、BHK細胞、COS細胞、ヒト由来の細胞等があるが、これらの中でも、CHO細胞が好ましい。
生理活性タンパク質は、抗体、酵素、サイトカイン、ホルモンを含むが、これらに限定されない。具体的には、モノクローナル抗体やヒト型化抗体等の抗体、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン等の造血因子、インターフェロン、IL−1やIL−6等のサイトカイン、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ウロキナーゼ、血清アルブミン、血液凝固第VIII因子、レプチン、インシュリン、幹細胞成長因子(SCF)などを含む。生理活性タンパク質の中でも、抗体が好ましい。
本発明の方法により安定化される製剤中の抗体に制限はなく、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体、キメラ抗体、ヒト型化抗体、ヒト抗体等が挙げられる。また、抗体として抗組織因子抗体、抗IL−6レセプター抗体、HM1.24抗原モノクローナル抗体、抗副甲状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP抗体)なども挙げられる。抗体の免疫グロブリンクラスに制限はなく、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのIgG、IgM、IgA、及びIgEが挙げられる。
抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、均質な抗体を安定に生産できる点でモノクローナル抗体が好ましい。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は当業者に周知の方法により作製することができる。
例えば、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、感作抗原を通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングすることによって作製できる。具体的には、例えば、ミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73: 3-46 )等に準じてハイブリドーマが作製される。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行えばよい。
本発明の安定化方法は、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込み、これを宿主に導入して産生させることにより得た遺伝子組換え型抗体にも有効である(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。
具体的な遺伝子組換え型抗体の作成方法は、以下の通りである。まず、ハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成する。目的とする抗体のV 領域をコードするDNA が得られると、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNA と連結し、発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV 領域をコードするDNA を、抗体C 領域のDNA を含む発現ベクターへ組み込んでもよい。その際、発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう、DNAを発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
本発明の安定化方法は、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト型化(Humanized )抗体などにも有効である。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域とからなる抗体であり、マウス抗体の可変領域をコードするDNA をヒト抗体の定常領域をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。
ヒト型化抗体の作成方法の具体的を以下に記載する。まず、マウス抗体のCDR とヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA 配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR 法により合成する。得られたDNA をヒト抗体定常領域をコードするDNA と連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、宿主にヒト型化抗体を産生させる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。CDR を介して連結されるヒト抗体のFRは、CDRが良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のFRのアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。
再構成ヒト型化抗体として、ヒト型化抗組織因子抗体(国際特許出願公開番号WO99−51743を参照);ヒト型化抗IL−6レセプター抗体(hPM−1)(国際特許出願公開番号WO92−19759を参照);ヒト型化抗HM1.24抗原モノクローナル抗体(国際特許出願公開番号WO98−14580を参照);ヒト型化抗副甲状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP抗体)(国際特許出願公開番号WO98−13388を参照)などが好ましく例示される。
ヒト抗体の取得方法も知られている。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878 参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を抗原で免疫することで所望のヒト抗体を取得することができる(国際特許出願公開番号WO 93/12227, WO 92/03918,WO 94/02602, WO 94/25585,WO 96/34096, WO 96/33735参照)。さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列に基づいて適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は既に周知であり、WO 92/01047, WO 92/20791, WO 93/06213, WO 93/11236, WO 93/19172, WO 95/01438, WO 95/15388を参考にすることができる。トランスジェニック動物等によって作製されたヒト抗体も使用できる。
抗体遺伝子を一旦単離し、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。
真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いることができる。動物細胞としては、哺乳類細胞(例えば、CHO, COS,ミエローマ、BHK (baby hamster kidney ),HeLa,Vero);両生類細胞(例えば、アフリカツメガエル卵母細胞);及び、 昆虫細胞(例えば、sf9, sf21, Tn5)などが知られている。植物細胞としては、ニコティアナ(Nicotiana)属(例えばニコティアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞)が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces )属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces serevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus )属、例えばアスペスギルス・ニガー(Aspergillus niger )などが知られている。
原核細胞に関しては、細菌細胞を用いる産生系が知られている。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が挙げられる。これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより、所望の抗体が得られる。
上記宿主細胞だけではなく、組換え型抗体の産生にはトランスジェニック動物を使用することもできる。例えば、まず、乳汁中に固有に産生させる蛋白質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に抗体遺伝子を挿入し、融合遺伝子として調製する。次に、該抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。そして、胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から、所望の抗体を得る。トランスジェニックヤギから産生される抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K. M. et a1., Bio/Technology (1994) 12, 699-702参照)。
本発明で安定化される抗体は、抗体の全体分子に限られず、抗原分子に結合し、当該抗原の活性を阻害する限り、抗体の断片又はその修飾物であってもよく、二価抗体も一価抗体であってもよい。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab')2、Fv、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。
抗体の断片を得るためには、抗体を酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理して抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させればよい(例えば、Co, M. S. et al., J. Imunol. (1994) 152, 2968-2976, Better, M. & Horwitz, A. H. Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496, Academic Press, Inc., Plueckthun, A. & Skerra, A. Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496, Academic Press, Inc., Lamoyi, E, Methods in Enzymology (1989) 121, 652-663, Rousseaux, J. et al, Methods in Enzymology (1989) 121, 663-669, Bird, R. E. et al., TIBTECH (1991) 9, 132-137参照)。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFv中、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12-19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体修飾物も含まれる。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野において周知である。
本発明で安定化される抗体は、二重特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。二重特異性抗体は抗原分子の異なるエピトープを認識する抗原結合部位を有する二重特異性抗体であってもよいし、一方の抗原結合部位が抗原分子を認識し、他方の抗原結合部位が化学療法剤、細胞由来トキシン等の細胞傷害性物質を認識する抗体であってもよい。後者の場合、当該抗原分子を発現している細胞に直接細胞傷害性物質を作用させて癌細胞に特異的に傷害を与え、癌細胞の増殖を抑えることが可能である。
二重特異性抗体は2種類の抗体のHL対を結合させて作製することもでき、異なるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを融合させて二重特異性抗体産生融合細胞を作製し、そのハイブリドーマから得ることもできる。さらに、遺伝子工学的手法により二重特異性抗体を作製することも可能である。
生理活性タンパク質がG−CSFである場合には、G−CSFは高純度に精製されたG−CSFであれば全て使用できる。本発明におけるG−CSFは、いかなる方法で製造されたものでもよく、ヒト腫瘍細胞の細胞株を培養し、これから種々の方法で抽出し分離精製したもの、あるいは遺伝子工学的手法により大腸菌などの細菌類、イースト菌、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、C127細胞、COS細胞などの動物由来の培養細胞などに産生せしめ、種々の方法で抽出し分離精製したものが用いられる。好ましいG−CSFは、大腸菌、イースト菌又はCHO細胞によって遺伝子組換え法を用いて生産されたものである。最も好ましくは、CHO細胞によって遺伝子組換え法を用いて生産されたG−CSFが用いられる。さらには、PEG等により化学修飾されたG−CSFも用いられる(国際特許出願公開番号WO90/12874参照)。
生理活性タンパク質がEPOである場合には、EPOはいかなる方法で製造されたものでもよく、ヒト尿より種々の方法で抽出し、分離精製したもの、遺伝子工学的手法(例えば特開昭61−12288号)によりチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、BHK細胞、COS細胞、ヒト由来の細胞などに産生せしめ、種々の方法で抽出し分離精製したものが用いられる。EPOには、PEG等により化学修飾されたEPOも含まれる(国際特許出願公開番号WO90/12874参照)。さらに、糖鎖のついていないEPOをPEG等により化学修飾したものも含まれる。また、EPOのアミノ酸配列中のN−結合炭水化物鎖結合部位もしくはO−結合炭水化物鎖結合部位において、1以上のグリコシル化部位の数を増加させるように改変したEPO類似体も含まれる(例えば、特開平8−151398号、特表平8−506023号参照)。さらには、糖鎖結合部位の数は変化させずに、シアル酸等の含量を増加させることにより糖鎖の量を増加させたものであってもよい。
本発明においてタンパク質製剤(抗体製剤が含まれる)の形態に特に制限はなく、凍結乾燥製剤、溶液製剤、懸濁剤、及び錠剤が含まれる。溶液製剤の場合、プラスチック又はガラス製のバイアル、アンプル、シリンジ、注射器等の規定容量の形状の容器;並びに、瓶等の大容量の形状の容器で供給することができる。使用の便宜性の点からはプレフィルドシリンジが好ましい。これらの容器は、通常、密封、滅菌される。
本発明のタンパク質製剤(抗体製剤が含まれる)は、通常、非経口投与経路で投与されるが、経口で投与することもできる。非経口投与としては、注射剤(皮下注、静注、筋注、腹腔内注など)による投与、経皮、経粘膜、経鼻、経肺での投与が挙げられる。
本発明の抗体製剤中に含まれる抗体の量は、治療すべき疾患の種類、疾患の重症度、患者の年齢などに応じて決定できるが、一般には0.1〜200mg/ml、好ましくは1〜120mg/mlである。
本発明のタンパク質製剤(抗体製剤が含まれる)は、所望により、さらに等張化剤、アミノ酸、界面活性剤、含硫還元剤、酸化防止剤、pH調整剤、希釈剤、溶解補助剤、賦形剤、無痛化剤、緩衝剤、又はこれらの組み合わせを含有してもよい。
本発明のタンパク質製剤(抗体製剤が含まれる)に含有される等張化剤としては、ポリエチレングリコール、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、グルコース、フラクトース、ラクトース、キシロース、マンノース、マルトース、スクロース,トレハロース、ラフィノースなどの糖類が挙げられる。これらの等張化剤は単独で使用してもよく、2以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のタンパク質製剤(抗体製剤が含まれる)に含有されるアミノ酸としては、アラニン、アルギニン、グルタミン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、ロイシン、イソロイシン、システイン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、アスパラギン酸 、グリシン、セリン、バリンが挙げられる。これらのアミノ酸は単独で使用してもよく、2以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のタンパク質製剤(抗体製剤が含まれる)に含有される界面活性剤としては、
非イオン界面活性剤、例えばソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノミリテート、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグリセリルモノリノレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビットテトラステアレート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチエレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン水素ヒマシ油)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンラノリン等のポリオキシエチレンラノリン誘導体;ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のHLB6〜18を有するもの;陰イオン界面活性剤、例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等の炭素原子数10〜18のアルキル基を有するアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等の、エチレンオキシドの平均付加モル数が2〜4でアルキル基の炭素原子数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ラウリルスルホコハク酸エステルナトリウム等の、アルキル基の炭素原子数が8〜18のアルキルスルホコハク酸エステル塩;天然系の界面活性剤、例えばレシチン、グリセロリン脂質;スフィンゴミエリン等のフィンゴリン脂質;炭素原子数12〜18の脂肪酸のショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で使用してもよく、2以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のタンパク質製剤(抗体製剤が含まれる)に含有される含硫還元剤としては、N−アセチルシステイン、N−アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、並びに炭素原子数1〜7のチオアルカン酸等のスルフヒドリル基を有するもの等が挙げられる。これらの含硫還元剤は単独で使用してもよく、2以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のタンパク質製剤(抗体製剤が含まれる)に含有される酸化防止剤としては、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、L−アスコルビン酸及びその塩、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピルあるいはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等のキレート剤が挙げられる。さらに、酸化防止剤として通常添加される、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩;クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの有機塩;も挙げられる。これらの酸化防止剤は単独で使用してもよく、2以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のタンパク質製剤(抗体製剤が含まれる)にpH調整剤を添加することにより、pHを調整することができる。本発明のタンパク質製剤(抗体製剤を含む)のpHは、好ましくは4〜8であり、さらに好ましくは5〜7.5である。しかしながら、pHは含まれる抗体により異なり、これらに限定されるものではない。
上記の成分を、溶液製剤の分野で公知の水性緩衝液又はそれらの混合物に溶解し、その水性緩衝液を用いて、溶液製剤が調製される。水性緩衝液としては、リン酸緩衝液(好ましくはリン酸一水素ナトリウム−リン酸二水素ナトリウム系);クエン酸緩衝液(好ましくはクエン酸ナトリウムの緩衝液);及び、酢酸緩衝液;などが挙げられる。緩衝液の濃度は一般には1〜500mMであり、好ましくは5〜100mMであり、さらに好ましくは10〜50mMである。
従来と同等の保存安定性が求められる場合には、本発明の安定化方法により、上記の成分の含有量を低減することができる。あるいは、上記の成分の添加と本発明の安定化方法とを併用することにより、凝集、変性、分解、及び不溶性の異物生成を抑制し、及び/又は保存期間を延長することができる。
本発明の方法では、遮光下でタンパク質含有組成物を保存する。本発明は、遮光下で保存したタンパク質含有組成物、例えば遮光下で保存したタンパク質製剤、及び、遮光下で保存した抗体製剤にも関する。
ここで「遮光」とは、タンパク質含有組成物の性状に対して影響を与える光の透過を防ぎ、タンパク質含有組成物を光の影響から保護することをいう。「遮光下」とは、任意の遮光条件をいう。例えば、波長λμm〜λμm(λ及びλは1×10−4μm≦λμm≦λμm≦30μmを充たす)の入射光のエネルギーをI、タンパク質製剤に到達する波長λμm〜λμmの光のエネルギーをIとし、(I/I)が0.70以下、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.30以下、さらに好ましくは0.10以下となる条件を含む。(I/I)の下限に特に制限はないが、0.0001以上、好ましくは0.001以上である場合には簡便な方式で実施できる。遮光性試験には、第十三改正日本薬局方解説書B−290〜B−291に記載された方法を使用できる。遮光は、後述の遮光性容器、遮光性包装材、及びそれらの組み合わせによって行うことができる。
「遮光下での保存」とは、同じ形態のまま遮光下で保存することに限られず、原料を遮光下で保存することも含む。原料としては、タンパク質製造バルク溶液が挙げられる。ここでタンパク質製造バルク溶液とは、タンパク質製造過程で得られた溶液であって、所望のタンパク質を含有し、製剤化されていない溶液をいう。
タンパク質を光に露出すると、凝集、変性、分解、不溶性の異物生成、活性の低下等の問題が生じうる。これらの問題を引き起こす波長はタンパク質に依存して変動するため、それぞれのタンパク質に応じてλ及びλが適宜選択される。1の波長範囲のみを遮光してもよく、2以上の波長範囲を遮光してもよい。例えば、真空紫外光に露出すると安定性が損なわれるタンパク質についてはλ=1×10−4μmかつλ=0.2μmとし;紫外光に露出すると安定性が損なわれるタンパク質についてはλ=0.2μmかつλ=0.36μmとし;近紫外光に露出すると安定性が損なわれるタンパク質についてはλ=0.29μmかつλ=0.45μmとし;可視光に露出すると安定性が損なわれるタンパク質についてはλ=0.36μmかつλ=0.77μmとし;近赤外光に露出すると安定性が損なわれるタンパク質についてはλ=0.77μmかつλ=2.0μmとし;赤外光に露出すると安定性が損なわれるタンパク質についてはλ=2.0μmかつλ=30μmとすることができる。ただし、内容物を確認する必要がある用途、例えばアンプル、バイヤル、プレフィルドシリンジでは、例えば590〜610nmの領域で透過率が60%以上でなければならない。
タンパク質含有組成物を遮光下で保存するためには、遮光性容器や遮光性包装材を使用することができる。ここで「遮光性容器」及び「遮光性包装材」とは、外部から入射する波長λμm〜λμm(λ及びλは0.1μm≦λμm≦λμm≦30μmを充たす)の光のエネルギーをI、内部に到達する波長λμm〜λμmの光のエネルギーをIとし、(I/I)が0.70以下、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.30以下、さらに好ましくは0.10以下とする容器及び包装材をいう。(I/I)の下限に特に制限はないが、0.0001以上、好ましくは0.001以上であれば、作成が容易である。
容器の形状に特に制限はなく、アンプル;バイアル;プレフィルドシリンジといったシリンジ;ボトル;ピローバッグやソフトバッグといったバッグ;ブリスター;バウチ;及び注射用薬剤カートリッジが含まれる。容器は、密封し滅菌してもよい。容器の内部は不活性ガスで置換してもよく、減圧又は真空にしてもよい。
包装材の形状に特に制限はなく、フィルムラベルといったフィルム;ラップ;シート;ロンドレーション;ブリスタートレーなどのトレー;及び箱が含まれる。なお本明細書では、包装材には緩衝材、固定材、及びパッキング材も含まれる。緩衝材とは、容器等の保護を必要とする物品間に挿入され、該物品間の衝突を防ぎ、負荷や衝撃荷重の分散を図る任意の材料を指し、固定材は物品を固定して移動を防止する任意の材料を指す。緩衝材及び固定材の両者の機能を有する材料も包装材に含まれる。緩衝材としては、エアマット、ミラマット、発泡フォーム、クッションペーパーなどが挙げられる。固定材としては、ロンドレーション等のアンプルベッド及びバイアルベッド、並びにブリスタートレーが挙げられる。
包装材が箱である場合、光の漏れ込みを防ぐため、箱を二重又は三重以上に用いてもよい。例えば、タンパク質含有組成物を含む容器を内箱に収納した後、該内箱を外箱に収納してもよい。また、開閉片と本体の開口部との間に空隙が生じることを防ぐため、開閉片及び/又は開口部にパッキング材を加え密着させてもよい。別の態様としては、開閉片と開口部をベローズ状の材料又は柔軟質材料で連結してもよい。さらに別の態様としては、開口部にフリップを設け、該フリップを箱の外側に開く力が掛かるようよう構成し、フリップと開閉片との間に接触を保つことにより、光の漏れ込みを防ぐこともできる。これらの箱は、二次容器として用いることもできる。
容器及び包装材は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。本発明の安定化方法はいずれの容器及び包装材を用いても行うことができる。
遮光性容器には、タンパク質含有組成物と直接接触する一次容器、及び、タンパク質含有組成物と直接接触しない二次容器が含まれる。一次容器には、アンプル;バイアル;プレフィルドシリンジといったシリンジ;ボトル;ピローバッグやソフトバッグといったバッグ;ブリスター;及びバウチが含まれる。二次容器には、これらの一次容器を収納する任意の容器を選択できる。一次容器と二次容器は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
遮光性容器及び遮光性包装材は、目的の波長範囲の光を遮光できる任意の遮光性材料で形成することができる。遮光性容器及び遮光性包装材の一部のみを遮光性材料で形成してもよい。ここで「遮光性材料」とは、容器及び包装材の厚みにおいて、波長λμm〜λμm(λ及びλは1×10−4μm≦λμm≦λμm≦30μmを充たす)の光の透過率が70%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下である材料をいう。透過率の下限に特に制限はないが、0.01%以上、好ましくは0.1%以上である。透過率は材料の厚みに依存するため、容器及び包装材の厚みを増やすことにより透過率を低減することもできる。しかし、一定の厚みで比較して透過率が低い材料を用いることが好ましい。
遮光性材料に特に制限はないが、目的とする波長範囲において高反射率の物質及び/又は高吸収率の物質を含む材料が挙げられる。遮光性材料には、高反射率の物質及び/又は高吸収率の物質を母材中に分散させた材料や、高反射率の物質及び/又は高吸収率の物質を含む層を含有する積層体が含まれる。高反射率の物質及び高吸収率の物質として単一の物質を用いてもよく、2以上の物質を組み合わせて用いてもよい。
遮光性容器及び遮光性包装材は、遮光性材料を容器及び包装材に塗布することにより作成することもでき、遮光性材料のフィルムやシートを容器及び包装材に付着することにより作成することもできる。塗布及び付着方法には特に制限がなく、浸漬、接着、蒸着、印刷、スパッタリングといった任意の公知の方法を用いることができる。例えば、アルミニウム箔を容器に接着することにより遮光性を付与することができる。
高反射率の物質としては、アルミニウム、銅、鉄、金、銀、チタンといった金属やステンレスや真鍮といった合金が挙げられる。
高吸収率の物質としては、目的とする波長の光を吸収する任意の物質を選択できる。真空紫外及び紫外領域で高吸収率の物質としては、バンドギャップが目的とする波長のエネルギーより小さい各種の化合物が挙げられる。例えば、ルチルやアナターゼといった二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、及びアルミナが挙げられる。可視領域で高吸収率の物質としては、各種の色素や着色剤といった有機化合物、及び、電解移動錯体や酸化物といった無機化合物が挙げられる。
母材に特に制限はなく、例えばガラス、ポリマー、樹脂、ゴム、セルロース及び紙を使用できる。
ポリマーとしては、HDPE、LDPE、LLDPEといったポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートといったポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、及びポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。また、シクロオレフィン開環ポリマー及びその水素添加物、並びに、シクロオレフィン開環コポリマー及びその水素添加物も挙げられる。シクロオレフィンは単環式であっても多環式であってもよく、ノルボルネン及びテトラシクロドデセン並びにそれらの誘導体を含む。シクロオレフィン開環コポリマー中の他のモノマーとしては、エチレン及びプロピレン並びにそれらの誘導体が挙げられる。シクロオレフィン開環コポリマーとしては、主鎖中にシクロペンチル残基や置換シクロペンチル残基が挿入されたものが好ましい。また、ノルボルネン系ポリマー及びテトラシクロドデセン系ポリマーが、熱可塑性を有することが好ましい。熱可塑性ノルボルネン系ポリマーとしては、ノルボルネン系モノマーの開環ポリマー、その水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加型ポリマー、及びノルボルネン系モノマーとオレフィンの付加型ポリマーなどが挙げられる。熱可塑性テトラシクロドデセン系ポリマーとしては、テトラシクロドデセン系モノマーの開環ポリマー、その水素添加物、テトラシクロドデセン系モノマーの付加型ポリマー、及びテトラシクロドデセン系モノマーとオレフィンの付加型ポリマーなどが挙げられる。熱可塑性ノルボルネン系ポリマーは、例えば特開平3−14882号、特開平3−122137号、特開平4−63807号などに記載されている。
具体的には、ノルボルネンとエチレン等のオレフィンを原料としたコポリマー、およびテトラシクロドデセンとエチレン等のオレフィンを原料としたコポリマーであるシクロオレフィンコポリマー(COC)、並びに、ノルボルネンを開環重合し水素添加したシクロオレフィンポリマー(COP)が挙げられる。このようなCOCおよびCOPは例えば特開平5−300939号あるいは特開平5−317411号に記載されている。COCおよびCOPは、耐熱性や耐光性などの化学的性質や耐薬品性はポリオレフィン樹脂としての特徴を示し、機械特性、溶融、流動特性、寸法精度などの物理的性質は非晶性樹脂としての特徴を示すという利点がある。
樹脂としては、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、AS樹脂、及びABS樹脂が挙げられる。
ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素化ゴム、及び天然ゴムが挙げられる。
遮光性材料が積層体である場合、上記の高反射率の物質及び/又は高吸収率の物質を含む層とその他の層とをラミネートすることにより、該積層体を作成できる。
具体的な遮光性材料としては、着色剤、酸化チタン、及び酸化鉄といった光吸収性の物質を配合したガラス、ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、及びポリエチレンテレフタレート)、紙、セルロース、塗料、顔料、粘着剤、及びインクが挙げられる。これらのガラス及びポリマーを、アンプル、バイアル、シリンジ、ボトル、バッグ、フィルム(例えばラミネートフィルム、ラベルフィルム、及びシュリンクラベル)、及びシートといった形状に成形できる。このようにして成形されたプラスチックフィルムやプラスチックシートを用いて、ブリスターやバウチを作成できる。上記の塗料やインクを容器に塗布することにより、遮光性を付与することもできる。上記の粘着剤をラミネートフィルムの作成に用いることができ、ラベルの付着に用いることもできる。
例示的な遮光性容器及び遮光性包装材としては、生地管に酸化チタンや酸化鉄を配合した褐色のアンプル、バイアル、及びシリンジ;着色剤、UV吸収剤、反射剤、又はそれらの組み合わせを配合した粘着剤を用いて形成されたフィルムラベル;着色剤、UV吸収剤、反射剤、又はそれらの組み合わせを配合したプラスチックフィルム、プラスチックシート、及びインク;塗布や印刷により着色層及び/又は反射層を設けたプラスチックシート及びプラスチックフィルム;着色剤及び/又はUV吸収剤を配合した層を含むラミネートフィルム;アルミニウム層といった反射層を含むラミネートフィルム;上記のシート及び/又はフィルムを用いて形成されたブリスター、バウチ、バッグ、ブリスタートレー;着色剤、UV吸収剤、反射剤、又はそれらの組み合わせを塗布したボトル;着色剤、UV吸収剤、反射剤、又はそれらの組み合わせを配合したフィルムを付着したボトル;遮光紙を付着したロンドレーション及び包装箱;遮光紙で形成したロンドレーション及び包装箱;が挙げられる。
本発明の方法及び容器等により、タンパク質製剤、特に抗体製剤を簡便な方式で長期間安定に保存することができる。さらに、安定化剤の使用量を低減することができる。本発明の方法及び容器等を抗体製剤に用いる場合、抗体のアミノ酸残基の脱アミド体や酸化体生成を抑制することができ、安定した保存を実現できる。

Claims (16)

  1. 遮光下でタンパク質含有組成物を保存することを特徴とするタンパク質含有組成物の安定化方法。
  2. 波長λμm〜λμm
    (λ及びλは1×10−4μm≦λμm≦λμm≦30μmを充たす)
    の入射光のエネルギーI、及び、タンパク質含有組成物に到達する波長λμm〜λμmの光のエネルギーIが
    I/I ≦ 0.70
    を充たす条件下でタンパク質含有組成物を保存することを特徴とする、タンパク質含有組成物の安定化方法。
  3. 波長λμm〜λμm
    (λ及びλは1×10−4μm≦λμm≦λμm≦30μmを充たす)
    の光の透過率が70%以下である材料で少なくとも一部が形成された容器中にタンパク質含有組成物を保存することを特徴とする、タンパク質含有組成物の安定化方法。
  4. タンパク質含有組成物がタンパク質製剤である請求項1〜3の何れかに記載の方法。
  5. タンパク質含有組成物がタンパク質製造バルク溶液である請求項1〜3の何れかに記載の方法。
  6. タンパク質が抗体である請求項1〜5の何れかに記載の方法。
  7. 遮光下で保存したタンパク質製剤。
  8. 遮光が遮光性容器、遮光性包装材、又はそれらの組み合わせによって行われる、請求項7のタンパク質製剤。
  9. 遮光下で保存した抗体製剤。
  10. 遮光が遮光性容器、遮光性包装材、又はそれらの組み合わせによって行われる、請求項9の抗体製剤。
  11. タンパク質製剤を保存するための遮光性容器。
  12. 抗体製剤を保存するための遮光性容器。
  13. 波長λμm〜λμm
    (λ及びλは1×10−4μm≦λμm≦λμm≦30μmを充たす)
    の光の透過率が70%以下である材料で少なくとも一部が形成された請求項11又は12に記載の容器。
  14. タンパク質製剤を保存するための遮光性包装材料。
  15. 抗体製剤を保存するための遮光性包装材料。
  16. 波長λμm〜λμm
    (λ及びλは1×10−4μm≦λμm≦λμm≦30μmを充たす)
    の光の透過率が70%以下である材料で少なくとも一部が形成された請求項14又は15に記載の包装材料。
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