本発明は、既知のデュアル・プロジェクタ字幕システムに関連するビジュアル・アーティファクトを減少させることによって、映画鑑賞の質を向上する、デュアル・プロジェクタ映画システムを提供する。字幕の投射に使われる低価格のデジタル・プロジェクタは、液晶ディスプレイ(LCD)や、テキサス・インスツルメンツのDLPなどのようなMEMSミラー・チップなどのような変調器を使って、高輝度のランプ(lamp)からの光線を変調する。こうしたデジタル・プロジェクタのオフ又は暗の状態は、フィルムと比較して不十分である。従って、字幕が「オフ」状態のとき、デジタル・プロジェクタからの光が漏れ、映像にかすかな乳白色の矩形を投射する。更に、字幕が最初に「オン」状態に遷移するときに、映像は、明るさおよびカラー・バランスの一時的な変動を示し得る。更に、字幕は通常は最大限の明るさで投射されるが、シーンの明るさは大幅に変わり得る。こうした影響は、機械式ダウザ、LCLV、E/O吸収装置、またはE/Oディフューザなどのようなシャッターを補助プロジェクタの光路に配置し、そのシャッターの動作を字幕の投射と同期させることによって、改善される。明るさのアーティファクトを補償するために、シャッターは、好ましくは、透明のオン状態と半透明のオフ状態との間での可変の透過特性を示す。
図2に示すように、従来のフィルム映写機やデジタル映写機などのような主プロジェクタ20が、従来の映画スクリーンなどの表示面22に映画21を投射する。字幕24は、デジタル・ビデオ・プロジェクタやデジタル画像プロジェクタなどのような補助プロジェクタ26から、表示面22の所望の領域28に投射される。主プロジェクタおよび補助プロジェクタは、それぞれの光線30および32を変調して、映画の画像および字幕の画像を形成する。字幕の投射に使われる低価格のデジタル・プロジェクタは、LCDやDLPチップなどのような変調器を使って、高輝度のランプからの光線を変調する。
字幕情報は、好ましくはデジタル形式で記憶媒体36に字幕を格納するコントローラ34から、補助プロジェクタへ提供される。字幕情報は、好ましくは独立の媒体に格納されるが、音声トラックを有するCDなどの媒体にも、また、おそらくフィルム自体にさえも、格納され得る。タイム・コード・リーダのヘッドまたは回転速度計60が、光信号調整装置38へSYNC(同期)信号を提供し、調整装置38は、一様な同期パルスを形成するように信号を調整し、同期パルスは線40を介してコントローラ34へ送られ、コントローラ34は、現在望まれているどのような字幕も補助プロジェクタ26へ提供して、オン状態の間にスクリーン22へ投射する。同期信号は、主プロジェクタと補助プロジェクタとの間の同期性を維持し、そうすることによって、適切な字幕が映画ディスプレイに適切なときに重ねられる。
ビジュアル・アーティファクトを除去するために、機械式ダウザ、LCLV、E/O吸収装置、またはE/Oディフューザなどのようなシャッター46が、補助プロジェクタ26とスクリーン22との間の光路に配置されて、字幕の投射と同期して、変調された光線32を、選択的に通過および減衰(遮断/吸収/散乱)させる。同期信号の有無に合わせて、コントローラはシャッター制御回路48へ制御信号を送り、回路48は、「オン」状態の間はシャッターに、映画と同期して変調光線32を通させるようにして、字幕が所望の時に映画の所望部分に重ねられるようにし、「オフ」状態の間はシャッターに光線を大幅に減衰させ、これを交替で行う。こうすることにより、乳白色の矩形アーティファクトを除去する。シャッター制御回路は、可変の透過を行えるシャッターの特定の実装形態を用いて、シャッターの「オン」状態を認知可能なほど傾斜的に変化させて(ramp)、明るさまたはカラー・バランスの変動を最小限にすることや、シャッターの透明度を制御して字幕の明るさを調節することもできる。
入力同期線40上の同期信号は、システムがどのようにセットアップされるかに応じて、異なる形式をもち得る。多くのフィルム・プリントは、フィルムの長さに沿って配されたタイム・コードを与えられ、各タイム・コード・ユニットは、フィルムでの位置を一意に識別するデジタル・データ列からなる。現時点で使用可能な幾つかのタイム・コードには、同期する一連のビットで各ワードが始まる24ビット・デジタル・ワードのDTS(Digital Theater Systems,Inc.(デジタル・シアタ・システムズ社))形式と、SMPTE(映画テレビ技術者協会)標準とを含む。投射されているフィルムがタイム・コードを有する場合、タイム・コードは、主要な投射箇所で読み取られ、調整され、入力同期信号としてコントローラ34へ提供される。記憶媒体36は、字幕が望まれるタイム・コード位置のそれぞれに対応するセクタを含み、各セクタ・フレームは、対応するタイム・コードおよび字幕(または他の視覚表示)情報を含む。或る特定のタイム・コード・ユニットが同期信号としてコントローラに入力されると、対応するメモリ記憶フレームがアクセスされ、その字幕情報が補助プロジェクタ26へ伝送され、制御信号がシャッターへ送られて、シャッターをオン状態に切り換え、その結果、字幕が映画に重ねられる。記憶媒体36は、すべてのタイム・コード・ユニットに対するフレームを含むことができるが、字幕を必要としないタイム・コード・ユニットに対して空白フレームを含むようにすることも、対応する字幕を有するタイム・コード・ユニットに対するフレームのみを含むようにすることもできる。
フィルムがタイム・コードをもたない場合、フィルムが投射されるときにフィルム・フレームをカウントするフィルム・フレーム・カウンタ(回転速度計)を使うことによって、同等のフィルム位置信号が提供され得る。しかし、配給後にフィルム・プリントを編集することがよくあるので、この信号は、タイム・コードほど望ましいものではない。例えばプリントの損傷部分を除去するためや映画の長さを短くするためなどにフィルム・プリントの幾つかの部分が編集されたり削除されている場合、残っているタイム・コード・ユニットは、なおも字幕情報との同期を維持する。一方、フィルム全体の長さに対して字幕の記憶媒体がセットアップされた後にフィルムの一部分が取り除かれると、回転速度計を用いた場合には、最初に編集されたときに同期性が失われ、その後の編集の度に同期性がますます失われる。
同期入力は、上映コントローラ構成でのように、別のコンピュータからのシリアル・データとしても提供され得る。この場合、同期信号は、投射中のフィルムから直接取得することなく、離れた場所で生成され得る。あるいは、外部ソースが、主プロジェクタおよび補助プロジェクタの両方に対して同期信号を生成することもできよう。
シャッター制御回路48は、好ましくは、字幕の投射とシャッターとの同期性を保証するために、補助プロジェクタと同じ同期信号で駆動される。あるいは、シャッターは、補助プロジェクタの出力を感知して或る事前設定レベルを超える光に応答してシャッターを開放する光センサに応答して、制御され得る。この手法は、「オフ」状態の間、補助プロジェクタが暗状態に変調されることを前提としている。別の技術は、補助プロジェクタへのビデオ・ストリームを監視し、字幕ビデオが検出されるとシャッターを開かせるものである。
コントローラ34は、通常、同期入力信号をコンピュータ認識可能形式に変換して、記憶媒体36中の対応フレームにコントローラ34がアクセスすることを可能にする同期入力カード42と、記憶媒体から読み出された字幕情報を、補助プロジェクタ26を駆動するのに適した形式に変換する出力カード44とを含む。例えば、補助プロジェクタはビデオ・プロジェクタとして実現されることができ、この場合、字幕情報はビデオ信号としてフォーマットされることになる。フィルム・プロジェクタまたはスライド・プロジェクタに関しては、補助表示情報がフィルム・フレーム形式で与えられる。LCLVに関しては、光バルブのピクセル・アレイの所望ピクセルを活動化するために、シリアル・テキストが与えられる。
コントローラ34は、一般に、タイム・コードと同期してシャッターを制御する手段45も含む。シャッターの駆動を制御すると、シャッターをすぐに開かせたり閉じさせることができ、また、オプションで、所望の制御傾斜に従って字幕のオンおよびオフを傾斜的に行う(ランプさせる)こともできる。こうした制御傾斜は、特に字幕の表示の開始時に突然の閃光が現れるのを改善するのに用いることができ、観賞状況を向上させる。
フィルム・プリント上のデジタル・タイム・コードに応じて、劇場における音声出力と、シャッターを介して映画に重ねられる字幕との両方を生じるのに用いられ得るシステムが、図3に示される。タイム・コードを含む映画フィルム56は、再生リール58から、タイム・コード読取りヘッド60および主プロジェクタ62を通り、巻取りリール64へ送られる。プロジェクタ62はタイム・コード・リーダ60から既知の距離の所に配置されるので、フィルムが通常のフィルム進行速度でタイム・コード・リーダからプロジェクタへ移動するのに必要な時間が正確にわかる。
読取りヘッド60からのタイム・コード情報は、従来のIBM(登録商標)コンパチブル・パーソナル・コンピュータなどのようなデータ転送コントローラ66へ送られ、このコントローラ66は、入力ポートを介してタイム・コード・データを受け取る。コンピュータ66は、システムの必要なデータ転送のすべてを管理する。
映画用の音および字幕は、デジタル記憶装置68に格納される。記憶装置68は、SCSIホスト・アダプタを介して東芝XM3300CD ROMドライブなどのような適切なドライブによって駆動されるCD ROMとすることができる。他のタイプのデジタル・データ・ストア、例えば、ハード・ディスク・ドライブ、光磁気ドライブ(従来のハード・ディスク・ドライブと同様の性能をもつレーザー読み書きシステム)、あるいはデジタル音声テープ(DAT)などのような比較的遅いアクセス装置も、使うことができる。本実施形態において、デジタル・データ・ストアに最も必要とされるのは、(1)アクセス時間が、タイム・コード読取りヘッド60から主プロジェクタ64までのフィルムの移動時間よりも短くなければならないこと、従って、データ記憶装置内部のシーケンスになっていないタイム・コードへ、フィルムのその対応部分がプロジェクタに届く前に、確実にジャンプすることができるようにすることと、(2)データ記憶装置の平均データ・レート性能が、FIFOメモリから情報が読み出される際の平均データ・レートを上回らなければならないこととである(後で説明される)。
データ転送コントローラ66は、データ・ストア68から読み出された音声データを音声FIFOメモリ70に書き込み、データ・ストア68から読み出された字幕を字幕FIFOメモリ72に書き込む。両方のFIFOは、好ましくは、マイクロプロセッサの従来のRAMメモリ内部に実装される。
FIFOメモリの一般的な適用形態は、入力データをバーストで受け取るが、そのデータを一定の速度で読み出すものである。データが受け取られない間、メモリに格納済みのデータは、その出力を通して徐々に読み出され、各データ・バイトが、後続メモリ・セル(バー74で表される)から徐々に落とされていく。このようにして、メモリは、下部から空になり、読出しが進むにつれ、上部のメモリ・セルが空いていく。次のデータ・バーストによってメモリが満杯になり、データは、下部から同じレートで読み出され続ける。メモリの最上部から最下部へと通る情報の流れが矢印76で示されている。
FIFOメモリ70および72に必要な最小容量サイズは、データ・ストア68に対する最大データ・アクセス時間と等しい。具体的な何れの読出しレートに対する最大有効FIFOメモリ容量も、タイム・コード読取りヘッド60から主プロジェクタ62の開口へのフィルム移動時間と等価である。何れの追加FIFOメモリ容量も使用されない。
データは、読出しコントローラ78によって音声および字幕FIFOメモリ70および72の下部から読み出され、コントローラ78は、データを一定のレートで転送する。システムを動作させるために、データ転送コントローラ66は、第1のピクチャ・フレームがプロジェクタ64の開口に届いたときに、制御線80を介してFIFOメモリ読出しコントローラ78をターンオンするだけである。劇場のプロジェクタは、ACメイン81から電力を供給され、FIFOメモリ70および72からのデータの読出しは、ACメイン信号に位相固定される。このことは、タイム・コード信号を、音声および字幕の再生をフィルムの投射と積極的に同期させるために使う必要なく、タイム・コード信号が、単に、適切な音声および字幕データがFIFOメモリ70および72の入力へ供給されることを確実にするために使われることを、可能にする。FIFOメモリからのデータの読出しをACメインと同期させることによって、プロジェクタで使われる同期モータも動作させ、デジタル音声および字幕信号の読出しとフィルムの投射との間の同期が保証される。
音声FIFOメモリ70から読み出されたデジタル音声信号は、読出しコントローラ78によって、4つのスピーカを備える劇場の場合にDAC1〜4として図示される様々な劇場スピーカ用のデジタル−アナログ・コンバータ(DAC)へ伝送される。複数の出力を有する単一のDACを使用することもできる。信号は、一般的な様式で復号され、劇場スピーカS1〜S4での再生のために増幅器A1〜A4によって増幅される。
字幕FIFOメモリ72から読み出された字幕信号は、読出しコントローラ78によって補助プロジェクタ82へ伝送される。字幕データが格納され補助プロジェクタへ読み出される具体的な形式は、使われるプロジェクタのタイプにより異なる。フィルムまたは他の何らかのソースから読み出された同期信号は、読出しコントローラ78によってシャッター制御回路48へ伝送され、この制御回路48は、シャッターを不透明な状態と透明な状態とする間にシャッターに電力を供給する変調可能なAC電源83を含む。図6および図7を参照して詳しく説明されるように、シャッターへの電力は、ランプさせること(ramped)又はパルス幅変調させることができ、(a)字幕のオン状態とオフ状態との遷移を円滑にし、(b)シーンの明るさに従って、知覚される字幕の明るさの調和を取るようにする。この構成は、字幕を呈示する際に、大幅な美術的および技術的な柔軟性を可能にする。
このシステムに関する可能な幾つかの変形形態が、破線で示されている。タイム・コード読取りヘッド60から直接に入力同期信号を供給するのではなく、同期信号を、搭載されているデジタル・データ・ストア68の代わりにフィルム投射も制御する離れた位置から、シリアル・データ84として与えることもできる。音声および字幕データは、電子配信サービス86を介して提供することができる。更に、音声情報は完全に除去されることもでき、システムを、フィルムと字幕投射とを同期させるためにのみ使うこともできる。
図4は、デジタル・シアター・システム(DTS)形式のデジタル・タイム・コードを有する35mmの公開用映画フィルム88の一片と、劇場での投射中にプリント・フィルム88が読み取られる様式とを示す。一連のスプロケット孔90は、フィルムの端部92と通常の光サウンド・トラック領域94との間にある。ピクチャ・フレームは、ピクチャ・プリント・ヘッドによって、サウンド・トラック領域94より内側にとられた領域98にプリントされる。
フィルムは、プロジェクタを通って矢印100の方向に動いていると仮定する。フィルムは、筐体102内のデジタル・タイム・コード読取りヘッドを最初に通過し、読取りヘッドは、フィルムの反対側の検出装置106に打ち当たるカラーの光線104で、タイム・コードを読み取る。フィルムは次いで、投射ランプ108に向かって進む。投射ランプ108からの光線110は、劇場スクリーン112にピクチャ・フレームを投射する。
ピクチャ・フレームは、タイム・コード・ランプ筐体102とプロジェクタ108との間の間隔ならびにフィルム速度によって決まる、それぞれのタイム・コード・ユニットが読み出された後の所定期間の後に、投射ランプ108によって照らされる。この期間は、タイム・コード信号を処理し、その妥当性を調べ、適切なデジタル音声および字幕データにアクセスするための時間を考慮している。タイム・コード信号の処理、ならびに音およびシャッターを介する字幕の生成は、ピクチャ・フレームの照射と同期されるので、フレームがスクリーンに表示されるのと同時に、それぞれのデジタル・タイム・コードから導出された字幕および音が、それぞれフィルムに重ねられ、劇場で再生される。字幕がない場合、シャッターは、映画ディスプレイ上の字幕ボックス(乳白色の矩形)というアーティファクトを除去するように、閉じられる。
図5aおよび5bは、シャッター付補助プロジェクタの組立体120の「オフ」および「オン」状態それぞれでの図である。補助プロジェクタは、高輝度ランプ122および変調器アレイ124を適切に含み、ブラケット126に取り付けられる。変調された光線32は、レンズ128を通過し、レンズ128は、画像を形成して映画スクリーンに投射する。シャッター46は、ホルダ130に固定され、適切に、光線32を捕らえるように光路に対して実質的に直角である。字幕がない場合、シャッター46は、「オフ」状態にあり、補助プロジェクタの暗またはオフの状態を効果的に向上するように、光を大幅に減衰させる。機械式ダウザなどのような特定のシャッター構成は、入射光を遮断または吸収し、そうすることによって最高の暗状態をもたらすが、加熱および他の問題を引き起こし得る。現在の好ましい実施形態は、光を減衰し拡散するE/Oディフューザである。E/Oディフューザは、ある程度の光は通らせるが、画像中の構造を破壊し、字幕の矩形の周辺の領域に光を拡げる。その結果、映画の暗状態がわずかに低下する。字幕がある場合、シャッター46は、「オン」状態に切り換えられ、映画に字幕を重ねるように実質的に全ての光を通す。マスク面132は、映画の所望部分内に適合するように字幕をマスクする。
図6は、字幕が投射されるときに明るさおよびカラー・バランスの過渡的な変動を除去するようにシャッターを駆動するためのタイミング図140である。同期信号に従って、字幕の「オフ」状態は、映画のその時点での字幕がない状態に対応し、字幕の「オン」状態は、字幕がある状態に対応する。同期信号に応答して、「オフ」状態142の間、光線は、変調されないか、または、好ましくは、暗状態に変調される。「オン」状態144の間、光線は、映画の投射と同期して、所望の字幕の画像を形成するように変調される。一般には、コントローラは、透明なオン状態146と半透明な状態148との間でシャッターを切り換え、「オン」状態の間は映画と同期して変調光線を通過させて、所望の時間に映画の所望の部分に字幕が重ねられるようにし、「オフ」状態の間は光線を大幅に減衰させる。
一実施形態では、コントローラは、シャッターを、半透明な状態から、可変透過状態を介して、透明な状態へと、感知できる程ゆっくりと傾斜的に変化させる。傾斜152を制御することによって、字幕表示の開始時に現れる突然の閃光が改善され、その結果、観賞状況を改善する。シャッターは、半透明な状態と透明な状態との間を、100〜500msで適切に傾斜的に変化させられる。約100ms未満の切換え時間は、一般には感知されない。傾斜制御は、透明度を、シャッター領域全体に渡って同時に不透明から透明に連続的に変化させることができるシャッター実施形態を必要とする。E/OディフューザおよびLCLVはこうした特性を示すが、機械式ダウザは示さない。
映画のシーンの明るさは絶えず変化するが、通常、字幕は、フィルムに字幕を刻印する従来技術によっても、また、補助プロジェクタを使うことによっても、最高の明るさレベルで重ねられる。特定の暗いシーンでは、字幕の明るさにより、気が散る場合がある。このアーティファクトは、シーンの明るさに応じて字幕の明るさレベルを調節することによって、改善される。
字幕の明るさは、幾つかの開ループ構成で調節され得、例えば、各字幕と時間的に一致する映画中のシーンの明るさに対応する明度制御データを字幕ファイルに挿入するなどして調節され得る。
どちらかといえば粗い第1の手法では、記憶媒体36に格納される字幕ファイルの作成を担当する技術者は、この情報を用いて、字幕が作成されるときに明るさレベルを変えることができる。第2の手法では、シーンの明るさが、補助コードとして、対応する各字幕とともに格納される。同期信号を受け取ると、コントローラは、字幕ファイルを読み、字幕情報および明度コードを補助プロジェクタへ送り、補助プロジェクタは、それに従って字幕の明るさを調節する。第3の手法では、コントローラは、字幕ファイルを読み、字幕情報を補助プロジェクタへ送り、明度データをシャッター制御回路へ送る。シャッター制御回路は、所望の明るさレベルを提供するようにシャッターの透過率を調節する。
図7に示すように、字幕の明るさは、1または複数の光センサ160をスクリーンに向けて、映画シーンの明るさを測定することによって、閉ループ・システムで調節できる。明度データは、コントローラ34またはシャッター制御回路48へフィードバックされ、コントローラ34またはシャッター制御回路48は、字幕用の明度調節を計算し、シャッター制御回路へ制御信号を送り、シャッター制御回路は、シャッターの透明度を制御する。明度調節は、いくつものやり方で計算され得る。例えば、字幕の平均明度は、シーンの平均明度と一致させてもよく、また、シーンの平均明度より上または下の或るオフセットされた割合としてもよい。この閉ループ処理は、シーンの明るさが字幕の投射中に変わると、それに従って字幕が調節されるように連続的に行われてもよく、また、字幕の輝度が設定されて、字幕が投射されている間中それが維持されてもよい。これは、芸術面での選択である。E/Oディフューザは、この技術をサポートするが、機械式ダウザはサポートしない。
図8a〜8cは、機械式ダウザ、LCLV、およびE/Oディフューザを含む、異なるシャッター構成のブロック図である。図8aに示すように、補助プロジェクタ26は、典型的には、電気ソレノイド171と、一片の金属などの不透明な媒体172とを含む機械式ダウザに取り付けられ、ソレノイドが、媒体172を、字幕プロジェクタからマスク面132を介してスクリーンへ達する光の通過または遮断を許可するように動かす。不透明な媒体172を動かすための信号が、コントローラ34からソレノイド171へ送られ、スクリーンへの変調光線の通過を可能にする。ダウザは、字幕プロセッサからの制御信号に応答して、開かれることも閉じられることもできる。図示しているこの機械式ダウザでは、明るさ制御は不可能である。このダウザは、完全に開くか、完全に閉じるかの何れかである。
機械式ダウザの欠点は、消耗する可動部品を有していることである。典型的な主要作品の映画は、最大2000の字幕を含む場合があり、その結果として機械式ダウザが何度も回転する、ということに留意されたい。機械式ダウザのそれ以外の欠点は、動作中に不快な機械騒音を生じないように設計することが困難なことである。この機械騒音は、時々あることだが、映画館の観客席領域に字幕プロジェクタが備えられる場合に、特に迷惑となり得る。
図8bに示すように、シャッターはLCLVを備え、LCLVは、オン状態とオフ状態との間で光に対してシャッター動作を行い、望まれる可変の透過率特性を提供することができる。LCLV198は、SまたはP偏光器202と変調器206とを備え、変調器206は、1対の透明な導電層210と212との間に挟まれ、適切にはインジウムスズ酸化物である液晶材料208の層を含む。補助プロジェクタの高輝度ランプは、ランダムに偏光された光線200を生じる。この光線が、偏光器202を通過すると、半分の光が失われ、出力光線204は、S偏光またはP偏光される。制御可能なAC電圧源214が、ITO層210と212の間に電位を印加する。印加される電位が零のとき、液晶は、光線204の偏光に対して90°のままであり、そのため、実質的に全ての光が吸収または散乱される。これは、半透明なオフ状態に対応する。十分に大きい電圧が印加されると、液晶は完全に90度回転するので、液晶が整列されて光線204が偏光され、シャッターで処理される光線204が低損失で通過して字幕が映画に重ねられる。これは、透明またはオンの状態に対応する。印加される電圧を、0Vと完全なオン電圧との間に制御することによって、可変の透過率特性が得られる。典型的には、投射ディスプレイで使われるLCLVは、個々のピクセルをアドレス指定するのに高度なアドレス指定回路を必要とする。しかし、シャッターとして使われる場合、薄板電極が、全てのピクセルを同じ様式でアドレス指定する。LCLVは、当該分野において公知であり、定評のある商品である。この応用におけるLCLVの欠点は、少なくとも50%、典型的には約75%の光の損失、および変調器の寿命を短縮し得る変調器での熱の吸収である。
図8cに示すように、シャッターは、高分子マトリクス224に分散されたPDLC滴222を含む高分子分散型液晶(PDLC)材料からなる電気光学ディフューザ220を備える。PDLCの技術は、ケント州立大学(Kent State University)のジョセフ・ドアン(Joseph Doane)およびジョン・ウエスト(John West)によって開発され、参照によって本明細書に組み込まれる一連の米国特許第4,671,618号、第4,673,255号、第4,685,771号、第4,688,900号、第4,888,126号、第4,890,902号、第4,994,204号、第5,004,323号、第5,240,636号、および第5,264,950号に詳しく記載されている。高分子マトリクス224は、適切にはITOである1対の導電層226と228との間に挟まれ、これらは、適切にはポリエステルまたはガラスである1対の透明な保護層230と232との間に挟まれる。「オフ」状態において、PDLC滴222は不規則に配列されるので、PDLC滴222の通常屈折率(no)は、PDLC滴222が分散されているポリマーの屈折率(np)と一致しない。PDLC材料は、半透明に見え、光を散乱させる。材料に電界が印加されると、PDLC滴は配向し直され、その異常(ne)屈折率がポリマーの屈折率と一致する。より詳細には、ポリマーは、直交する通常屈折率および異常屈折率no’およびne’を有する。マトリクスおよび液滴は、それぞれの直交成分が等しくなるように選択される。しかしながら、電界が印加されない場合、液滴は不規則に配列され、それにより、屈折率の不一致および半透明な状態が効果的にもたらされる。電界が印加されると、液滴、従って、それらの直交の屈折率がポリマーに整合され、その材料が透明に見える。PDLC材料は実質的に透明であり、例えば10〜25パーセントという非常に低い損失で、かつ最小限の散乱で、変調光線234を通す。PDLC材料の透過特性は、電界の変調により、液滴の屈折率とポリマーの屈折率との間の不一致を制御することによって、連続的に変わる。
字幕画像の全体をカバーするために、シャッターは、例えば101.6mm(4インチ)×101.6mm(4インチ)のように、かなり大きくなければならない。PDLC材料は、例えば会議室でのプライバシーを提供するガラスに現在使用されているが、大型サイズのものが低価格で市販されている。大型サイズは、高輝度ランプからの熱を分散し放射するのにも有用である。PDLC材料は、印加される電界を用いて光学透過特性を連続的に変化させられるという利点もある。この特性は、過渡的変動アーティファクトを除去するための図6で説明された傾斜制御、ならびに図7で説明された字幕明度制御を容易にする。
機械式ダウザ、LCLV、およびE/Oディフューザはそれぞれに利点および欠点を有する。理想的なシャッターは以下の特性を有するものであろう。即ち、完全なオン状態とオフ状態との間の素早い切換え、100%に近い透過のオン状態、100%に近い吸収または散乱のオフ状態、オン状態とオフ状態との傾斜制御、ならびに、オン状態とオフ状態との間でのデバイスの表面全体に渡っての同時の連続的な可変の透過特性である。E/Oディフューザは、オン状態での光の低損失、オフ状態での優れた光散乱特性、傾斜制御、および可変透過率を、低コストで十分に大きい形状因子で提供するので、現時点では好ましい実施形態であるが、光の散乱は依然として、ある程度の光を暗状態においてスクリーンに投射する。一部の状況では、より良いシャッターはE/O吸収装置であり得、E/O吸収装置は、E/Oディフューザの優れた特性のすべてを共有するが、光を散乱させるのではなく吸収し、それによって、理論上は、より優れたオフ状態の性能を提供する。
図9a〜9bは、PDLC層および1つのPDLC結晶をより詳しく示す。PDLC滴222は、高分子マトリクス224中に分散される。マトリクス224は、約10〜50ミクロンの厚さであり、1〜10ミクロンの液滴が配される。それぞれの液晶滴222は、高分子マトリクス224の内側にネマチックの液晶226を含む。適切には65VのAC電圧源236が、ITO層の対に電界を印加する。電界が印加されない場合、PDLC結晶は不規則に配列され、結晶の屈折率とポリマーの屈折率とが一致しないので、図9cに示すように入射光が散乱するように働く。十分に強い電界が印加されると、PDLC結晶は整列し、その結果として屈折率が一致し、図9dに示すようにPDLC材料を大幅に透明にする。PDLC材料の透過性は、デバイスの表面全体に渡って、電圧印加されない状態と完全な電圧印加の状態との間で連続的に変化して、上述のビジュアル・アーティファクトを軽減するのに必要な可変透過率をもたらす。
本発明の幾つかの例示的な実施形態が示され説明されたが、数多くの変形形態および代替実施形態を当業者は思いつくであろう。このような変形形態および代替実施形態は、特許請求の範囲で定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、企図され実施され得る。