JP2005534666A - アデノウイルス及びhivに対して選択的活性を有するアリールホスフェート誘導体 - Google Patents

アデノウイルス及びhivに対して選択的活性を有するアリールホスフェート誘導体 Download PDF

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Abstract

アリール基に電子求引基を持ちリン酸基にアミノ酸置換基を持つd4Tのアリールホスフェート誘導体を投与することによりADV感染及びHIV/ADV重感染を治療するための方法及び組成物が記述される。d4Tの好適なアリールホスフェート誘導体はd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]及びd4T-5'-[p-クロロフェニルメトキシアラニニルホスフェート]である。

Description

この出願は2002年6月12日に出願された米国出願第60/388470;2002年10月21日に出願された米国出願第60/420260;及び2002年10月25日に出願された米国出願第10/281399に対して優先権を主張し米国を除く全ての国を指定して2003年6月11日に米国に国籍と住所を有する法人であるパーカーヒュージインスティチュート名義でPCT国際特許出願として出願されたものである。
[発明の背景]
アデノウイルス(ADV)感染は免疫応答及び免疫抑制宿主の双方において著しい罹患率及び死亡率を示す。アデノウイルスはAIDS蔓延の開始以来、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陽性患者から回収されている(Khoo等 J. Infect. Dis, 1996,172:629-637)。HIV感染者のような免疫抑制患者において、アデノウイルスは、免疫抑制患者の肺炎、肝炎、脳炎、出血性膀胱炎、腎炎及び胃腸炎を含む高い死亡率を伴う広範囲の臨床疾患の原因である。(Bhanthumkosol, J. C.,J Med.Assoc.Thai., 1998, 81: 214-222; Carrigan等, Am. J. Med., 1997, 102: 71-74; De Jong等, J. Clin. Microbiol., 1999,37:3940-0945; Dombrowski等, Virchows Arch, 1997,431:469-472; Ghez 等, Am. J. Hematol., 2000,63:32-34; Green等, Clin. Infect. Dis, 1994,172:629-637; Khoo等, J. Infect. Dis. 1995,172:629-637; Maslo等, Am.J Respir. Crit. Care Med, 1997,156:1263-1264)。
アデノウイルス大腸炎はHIV感染患者における下痢の一般的な原因であり、サイトメガロウイルス(CMV)での腸内感染を容易にする可能性がある(Thomas等, HIVMed., 1999,1:19-24)。胃腸アデノウイルス分泌はHIV疾患のかなり進行した段階で生じる(Sabin等, J Med Virol., 1999,58:280-285)。アデノウイルス陽性の下痢のHIV感染患者の平均生存期間はアデノウイルスを持たない患者の2.4年と比較して1年ある(Sabin等, J Med ViroL, 1999,58:280-285)。この差はグループ間のCD4数の差を考慮後も有意なままであり、アデノウイルスがこの集団における死亡率に寄与していることを示唆している(Sabin等, J. Med.Virol, 1999, 58:280-285)。
殆どのヌクレオシド類似体は広スペクトル範囲の抗ウイルス活性を示す(Allen等, J. Med. Chem., 1978,21:742-746; De Clercq, E., Verh. K. Acad. Geneeskd. Belg, 1978,58:19-47)。2',3'-ジデオキシヌクレシオド5'-トリホスフェート及び3'-フルオロ-2'-デオキシチミジン(FTdR)を含む幾つかのヌクレオシド類似体がアデノウイルスに対して抗ウイルス活性を有していることが発見されている。これらのヌクレオシド類似体はアデノウイルス感染細胞でのアデノウイルスDNAポリメラーゼ媒介DNA複製を阻害する(Mentel等, Med. Mircobiol. Immunol., 2000,189:91-95; Mental等, Antiviral Res., 1997,34:113-119; Mul等, Nucleic Acid Res., 1989,12:8917-8929; Vand der Vliet and Kwant, Biochemistry, 1981,20:2628-2632)。
現在利用できる抗HIV剤の中では、抗ADV活性を持つものは報告されていない。更に、リバビリンのような抗ADV剤は、貧血や深刻な血液学的毒性のような付随する副作用のためにHIV感染患者に長期にわたって投与することはできない(De Clercq, E., Verh. K. Acad.Geneeskd.Belg, 1996,58:19-47; Reefschlager等, Antiviral Res, 1982, 2:41-52)。従って、利用可能なヌクレオシド類似体よりも一層好ましい安全性特性を持つ選択的抗ADV剤並びに抗ADV活性を持つ二重機能性抗HIV剤に対する緊急の必要性が存在する。
[発明の概要]
本発明は、宿主細胞において抗ADV活性を、又はADVとHIVに重感染した宿主において抗ADV及び抗HIV活性を有する2',3'-ジデヒドロ-2',3'-ジデオキシチミジン(以下、「d4T」)のアリールホスフェート誘導体に関する。
本発明の一態様は、式I:
Figure 2005534666
(上式中、Rは電子求引基で置換したアリール基であり、Rはアミノ酸残基又はアミノ酸残基エステルである)のようなアリール基に電子求引置換基を、ホスフェート基にアミノ酸置換基を有するd4Tのアリールホスフェート誘導体を投与することにより、ADV感染又はADV/HIV重感染を治療する方法を提供する。式Iの一実施態様では、Rは電子求引基で置換したフェニルであり、Rはα-アミノ酸のエステルである。好ましくは、式Iは、Rがパラ位をブロモに置換したフェニル基でRがアラニンのメチルエステルであるd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]であるか、又は式Iは、Rがパラ位をクロロに置換したフェニル基でRがアラニンのメチルエステルであるd4T-5'-[p-クロロフェニルメトキシアラニニルホスフェート]である。
d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]又はd4T-5'-[p-クロロフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の経口又は静脈投与により、二種の重要な代謝物が生成される:アラニニル-d4T-モノホスフェート(Ala-d4T-MP)及びd4Tである。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]又はd4T-5'-[p-クロロフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の投与により、等モル用量の何れかの代謝物の投与よりもAla-d4T-MP並びにd4Tへのより長期の全身性暴露が得られる。各代謝物は、直接投与される場合よりも、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]又はd4T-5'-[p-クロロフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の投与から生成される場合に有意に長い排出半減期を持っている。
本発明の他の態様は、有効量の式IV:
Figure 2005534666
(上式中、Rはアミノ酸又はアミノ酸エステル残基である)の化合物を投与することを含むADV感染又はADV/HIV重感染を治療するための方法を提供する。一実施態様では、Rはアラニンのメチルエステルである。
d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]及び12の構造的に類似するd4T誘導体はd4TよりもADVに対して実質的により強力であり、ナノモルIC50値でADV誘導プラーク生成を阻害した。フェニル環にハロ置換を持つ化合物並びに未置換化合物607は、メトキシ、メチル又はシアノ置換基を持つ化合物よりADVに対してより強力であった。
4-Br置換を有するd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の化合物113と、4-Cl置換を有するd4T-5'-[p-クロロフェニルメトキシアラニニルホスフェート]が最も強力なリードADV剤として同定された。双方の化合物が細胞毒性なしにナノモル濃度で皮膚線維芽細胞においてADV誘導プラーク生成を阻害した。リード化合物113及び609は強力なHIV活性を示したが、何れの化合物もI型又はII型単純ヘルペスウイルス(HSV-1、HSV-2)、エンテロウイルスECHO30、又は呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を含む非HIVウイルスに対して抗ウイルス活性を示さなかった。
これらの結果は、強力で選択的な抗ADV活性を持つ新しいクラスの重感染抗HIV剤として2',3'-ジデヒドロ-2',3'-ジデオキシチミジンのアリールホスフェート誘導体を確立する。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の化合物113と、d4T-5'-[p-クロロフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の化合物609の抗ADV能が、同時感染した宿主においてADVとHIVの両方を阻害可能な効果的なADV治療策の設計ベースを提供する。
[発明の詳細な記載]
ここで使用される場合、次の用語と語句は以下に示した定義を持つ。
「投与する」という用語は、一般的な非毒性の医薬的に許容可能な担体、アジュバント又はビヒクルを含む投薬単位製剤として、及び他の既知の態様の薬物送達によって、経口的、非経口的(皮下注射、静脈的、筋肉内、胸骨内又は注入技術を含む)、吸入噴霧、局所的、粘膜を通しての吸収、直腸的を含む任意の形で哺乳動物に提供することを意味する。
「アミノ酸」という用語は、天然に生じるアミノ酸の任意のもの並びにその反対のエナンチオマー又は両エナンチオマーのラセミ混合物、合成類似体及びその誘導体を意味する。その用語には、例えばα-、β-、γ-、δ-及びω-アミノ酸が含まれる。好適な天然に生じるアミノ酸には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、スレオニン、セリン、メチオニン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、及びヒスチジンが含まれる。合成又は非天然アミノ酸、例えばトリフルオロロイシン、p-フルオロフェニルアラニン及び3-トリエチルアラニンを使用することができる。アミノ酸という用語にはアミノ酸のエステルが含まれる。エステルには、アルキル基が1から7の炭素原子、好ましくは1から4の炭素原子を有するもの、例えばメチル、エチル、プロピル及びブチルである低級アルキルエステルが含まれる。アミノ酸又はそのエステルのアミノ酸群は式Iのホスフェート基に結合する。
「動物」という用語は限定されるものではないがヒトのような哺乳動物を含む。
「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル及びアントリルのような芳香族基を含む。
「電子求引基」という用語は、ハロ(-NO、-CN、-SOH、-COOH、-CHO、-COR(ここでRは(CからC)アルキルである)等々の基を含む。
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)及びヨウ素(I)の群から選択される原子を記述するのに使用される。
「保護する」又は「防止する」という用語は、可能な又は恐らくの感染に対して進んだ手段をとり、疾患を引き起こす薬剤に通常伴う罹患率及び死亡率を防止することを意味する。
本発明の意味における「宿主」という用語は、哺乳動物、つまり乳腺から分泌される乳で自身の乳児を育てる任意のクラスの高等脊椎動物を意味する。
この発明における「細胞」という用語は、一又は複数の核、細胞質、及び半透過性膜によって全てが囲まれた様々な細胞小器官からなる、独立の機能が可能な生物体の最も小さい構造単位を意味する。
この発明における「重感染」という用語はADVとHIVの双方に同時に感染した宿主を意味する。
この発明におけるADV活性の阻害とは、ADV複製の阻害、ADV誘導プラーク生成の阻害、ADV死滅又はADV DNAポリメラーゼの阻害を意味する。
この発明におけるHIV活性の阻害はHIV複製の阻害、HIV死滅又はHIV逆転写酵素の阻害を意味する。
本発明の方法に有用な化合物
細胞中でのアデノウイルス感染の作用をインビトロ又はインビボで阻害するための2',3'-ジデヒドロ-2',3'-ジデオキシチミジンのアリールホスフェート誘導体(d4Tの誘導体)を使用する方法に関する。より詳細には、本発明は、式I:
Figure 2005534666
(上式中、Rは電子求引基で置換したアリール基であり、Rはアミノ酸残基又はアミノ酸残基エステルである)のように、アリール基に電子求引置換基を、ホスフェート基にアミノ酸置換基を有するd4Tのアリールホスフェート誘導体を投与することにより、哺乳動物における細胞中のアデノウイルス感染の作用を阻害する卯を提供する。
式Iの化合物はまた医薬的に許容可能な塩の形態でありうる。医薬的に許容可能な塩は有機及び無機酸によって生成される。式Iの化合物のアミノ酸又はアミノ酸エステル残基のアミノ基との塩生成に適した酸の例には、限定するものではないが、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、リンゴ酸、グルコン酸、フマル酸、コハク酸、ソルビン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸等々が含まれる。塩は、十分な量の所望の酸に遊離塩基形態を接触させて通常の形で一又は二塩等の塩をつくることによって調製される。式Iの化合物のアミノ酸残基のカルボン酸基との塩の生成に適した塩基には、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムが含まれる。
式Iの一実施態様では、式II:
Figure 2005534666
に示されているように、Rが電子求引基で置換したアリール基であり、Rがα-アミノ酸又はそのエステルである。式IIにおいて、Xは電子求引基、例えばハロ-NO、-CN、-SOH、-COOH、-CHO、-COR(ここでRは(CからC)アルキルである)等々の基である。Rは、水素又は1から7の炭素原子のアルキル、好ましくは1から4の炭素原子のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、及びブチルである。Rは水素(例えばグリシンにおけるように)、アルキル(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンにおけるように)、置換アルキル(例えばスレオニン、セリン、メチオニン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、及びリジンにおけるように)、アリールアルキル(例えばフェニルアラニン及びトリプトファンにおけるように)、置換アリールアルキル(例えばチロシンにおけるように)、又はヘテロアルキル(例えばヒスチジンにおけるように)である。
一実施態様では、式IIの化合物は、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート](d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート])(ここでXはフェニル基のパラ位に結合したブロモであり、Rはメチルであり、Rはメチルである)である。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の構造を式IIIに示す:
Figure 2005534666
薬物動態学
過去のインビトロ研究は、フェニル基のパラ位の電子求引基が加水分解速度を増加させて、未置換アリールホスフェート誘導体に対して重要な代謝物アラニニル-d4T-モノホスフェート(Ala-d4T-MP)の産生を増大させる(Venkatachalam等, Bioorg Med. Chef. Lett., 8,3121 (1998); Vig等, Antiviral Chem. Chemnother., 9, 445 (1998);及び米国特許第6030957号(Uckun等))。
抗ウイルス剤d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート](以下のスキーム1ではHI-113と呼ぶ)はインビボで速やかに代謝されて、二種の代謝物:2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(d4T)及びアラニニル-d4T-モノホスフェート(Ala-d4T-MP)を生成する。Ala-d4T-MPはまた更に代謝されてd4Tを生じうる。代謝物d4Tは先の細胞でのインビトロ研究では見出されていなかった。
Figure 2005534666
d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート] は血漿又は全血中の何れかで直ぐに代謝してAla-d4T-MP及び少量のd4Tを生成する(図2参照)。Ala-d4T-MPは血漿中と全血中の双方で安定している。これらの結果は、Ala-d4T-MP又はd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の何れかの加水分解によってd4Tを生成するのに他の酵素(例えば肝臓酵素)が必要であることを示している。この仮説は、肝臓ホモジェネートと共にd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]をインキュベーションした後の有意な量のd4Tの生成と一致している(図4参照)。
コリンエステラーゼとカルボキシルエステラーゼ双方のインヒビターであるパラオクソン(Augustinsson, Ann. N. Y. Acad.Sci., 94,884 (1961); McCracken等, Biochem. Pharmacol., 46,1125 (1993); Madhu等, J. Pharm. Sci., 86,971 (1997))は、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]のAla-d4T-MP及びd4Tへの加水分解を有意に防止したが、コリンエステラーゼとカルボキシルエステラーゼ双方がd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の代謝に重要であることを示唆している(図3A参照)。コリンエステラーゼのインヒビターであるフィゾスチグミンはd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の加水分解を部分的に防止したが、これはd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の加水分解におけるコリンエステラーゼの重要性を更に裏付けている(図3B参照)。アリールエステラーゼのインヒビターであるEDTAはd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の加水分解に影響を及ぼさなかったが、これはアリールエステラーゼがおそらくはd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の加水分解に関与していないことを示している(図3C参照)。
排出半減期
静脈内投与d4Tの排出半減期は、以下の実施例に示されるように、Ala-d4T-MPの静脈内投与後に生成されたd4Tの排出半減期にかなり類似している(30.3分対34.0分のt1/2)。これに対して、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の静脈内投与後に生成されたd4Tの排出半減期は有意に長くなった(114.8のt1/2)。同様に、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]から生成されたAla-d4T-MPの排出半減期は、静脈内投与されたAla-d4T-MPに対するt1/2より有意に長かった(129.2分対28.5分のt1/2)。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の静脈内投与は、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]誘導代謝物の明らかに長い排出半減期のためにAla-d4T-MP又はd4Tの等モル用量の投与と比較してAla-d4T-MP及びd4Tの双方への長期の全身性暴露をもたらす。
静脈内投与後に、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の排出半減期(t1/2)は3.5分で、160.9ml/分/kgの全身クリアランス(CL)であった。全身クリアランス(CL)値の異なった推定値が、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の2種のジアステレオマー(d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]Aは208.2ml/分/kgでありd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]Bは123.9ml/分/kgである)に対して得られたが、双方とも30分以内に完全に代謝した。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]は活性代謝物Ala-d4T-MP(23%)及びd4T(24%)に転換した。静脈内投与されたd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]から生成されたAla-d4T-MP及びd4Tのtmax値はそれぞれ5.9分及び18.7分であった。
Ala-d4T-MPの静脈内投与はd4Tの生成を生じる(15%)。Ala-d4T-MPはまたd4Tプロドラッグとして使用することができる。本発明は、式IV:
Figure 2005534666
(上式中、Rはアミノ酸又はそのエステル化物である)
の有効量の化合物を投与することによってインビトロ又はインビボで細胞中のアデノウイルス感染の作用を阻害する方法を提供する。

式IからIVの化合物はまた医薬的に許容可能な塩の形態とすることもできる。医薬的に許容可能な塩は有機及び無機酸を用いて生成することができる。式IVのアミノ酸又はアミノ酸エステル残基のアミノ基との塩生成に適した酸の例には、限定されるものではないが、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、リンゴ酸、グルコン酸、フマル酸、コハク酸、ソルビン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸等々が含まれる。塩は、十分な量の所望の酸に遊離塩基形態を接触させて通常の形で一又は二塩等の塩をつくることによって調製される。式IVのアミノ酸残基のカルボン酸基との塩の生成に適した塩基には、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムが含まれる。
生物学的利用能
経口投与されたd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]はまたAla-d4T-MP及びd4Tを主要代謝物として生成した。親のd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]は経口投与後の血液中には検出できなかった。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]は胃液中で安定で、胃に吸収されうるが、血液中で速やかに加水分解しうる。他方、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]は腸液中で即座に分解してAla-d4T-MPを生成する。この代謝物は腸に吸収され得、その後更に代謝されて血液中にd4Tを生じる。マウスでのd4Tに対するtmax及びt1/2値は、経口投与されたd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]から誘導された場合、経口投与されたd4Tからのものより長かった(それぞれ5分及び18分)。静脈内投与されたd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]と比較して経口投与されたd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]に対してtmax値は高いがt1/2値は低い。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の経口投与後では、Ala-d4T-MP及びd4Tの推定生物学的利用能はそれぞれおよそ12%及び48%であった。しかしながら、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]から代謝されたd4Tの生物学的利用能(48%)は経口投与されたD4Tのもの(98%)よりも低かった。
齧歯類種におけるd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]のインビボでの薬物動態学、代謝、毒性及び抗レトロウイルス活性は研究されている(Uckun等, ArzneimittelforschuraglDrug Research, 2002,(印刷中))。マウス及びラットでは、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]は、500mg/kgと高い単一の腹腔内又は経口大量瞬時投与用量レベルで検出可能な急性又は亜急性毒性なしに非常に良好な許容性を示した(Uckun等, 2002,(上掲))。顕著なことに、連続8週間までのd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の毎日の腹腔内又は経口投与には、6.4g/kgと高い累積用量レベルでマウス又はラットにおいて如何なる検出可能な毒性も伴っていなかった(Uckun等, 2002, (上掲))。齧歯類種でのその安全性特性に従って、25mg/kg−100mg/kgのd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]を含む硬ゼラチンカプセルの毎日2回の投与を含む4週のd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]処置過程は、8.4g/kgと高い累積用量でイヌ及びネコによって非常によく許容された(Uckun等, Antimicrob. Agents Chemother. (2002年提出))。
投与方法
式IからIVの化合物は医薬組成物として製剤化でき、選択された投与経路に適合させられた様々な形態でヒト患者を含む哺乳動物宿主に投与できる。組成物は典型的には医薬的に許容可能な担体と組み合わせて投与され、ターゲティング抗体又はサイトカインを含む特定の送達剤と組み合わせることができる。
有用な用量
アデノウイルス感染の作用を阻害するためにインビボで使用される場合、投与される用量は、アデノウイルスの一又は複数の徴候を低減し又は除去するのに十分なもののような、所望の効果を持つのに効果的なものである。適切な量は、本明細書と実施例に提供したインビボでの動物モデルデータから、既知の方法及び関係を使用して推定して、当業者により決定されうる。
一般に、生存時間の増大のようなアデノウイルス感染の徴候又は作用の低減を含むアデノウイルス感染の治療的処置を達成するのに効果的なd4Tのアリールホスフェート誘導体の用量は、約1−500mg/kg体重/用量、好ましくは約10−100mg/kg体重/用量のおよその範囲、及び週当たりおよそ800−1000mg/kg体重の累積用量である。
投与される有効用量は各患者に特定の条件によって変わる。一般に、ウイルス負荷、宿主年齢、代謝、疾病、薬物への前の暴露等々のような要因は薬剤の予想された効能に寄与する。当業者であれば、実施例に提供されたデータから推定して、標準的な手順と患者の分析法を使用して適切な用量を計算できる。一般に、約1−100mg/kg体重を送達する用量が効果的であると予想されるが、より多いものも少ないものも有用であろう。
また、本発明の組成物は他の治療法と組み合わせて投与されうる。そのような併用療法では、化合物の投与用量は単一の薬剤療法に対するものよりも少なくてもよい。
化合物は、一般的な非毒性の医薬的に許容可能な担体、アジュバント又はビヒクルを含む投薬単位製剤として、経口的、非経口的(皮下注射、静脈的、筋肉内、胸骨内又は注入技術を含む)、吸入噴霧、局所的、粘膜を通しての吸収、又は直腸的に投与され得る。本発明の医薬組成物は、経口投与に好適な懸濁液又は錠剤、点鼻薬、クリーム、滅菌注射可能製剤、例えば滅菌性の注射可能な水性又は油脂性懸濁液又は座薬の形態とできる。
懸濁液としての経口投与のためには、組成物は医薬製剤化分野でよく知られた技術に従って調製することができる。組成物は、嵩を賦与するためにマイクロクリスタリンセルロース、懸濁剤としてアルギン酸又はアルギン酸ナトリウム、粘度増加剤としてメチルセルロース及び甘味料又は香味料を含みうる。速やかな放出錠剤としては、組成物は当該分野で既知のマイクロクリスタリンセルロース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム及びラクトース又は他の賦形剤、バインダー、増量剤、錠剤分解物質、希釈剤及び潤滑剤を含みうる。
吸入噴霧又はエアロゾルによる投与に対しては、組成物は医薬製剤の分野でよく知られた技術に従って調製することができる。組成物は、生理食塩水の溶液として、ベンジルアルコール又は他の好適な保存料、生物学的利用能を増大させる吸収促進剤、過フッ化炭化水素又は当該分野で一般的に知られている他の可溶化又は分散剤を使用して調製することができる。
注射可能な溶液又は懸濁液としての投与に対しては、組成物は、好適な分散又は湿潤及び懸濁剤、例えば限定するものではないが合成モノ-又はジグリセリド、オレイン酸を含む脂肪酸を含む滅菌油を使用して、当該分野においてよく知られた技術に従って製剤化できる。
座薬としての直腸投与に対しては、組成物は、室温で固体であるが直腸腔内で液化又は溶解して薬剤を放出する好適な非刺激性賦形剤、例えばココアバター、合成グリセリドエステル又はポリエチレングリコールと混合する既知の方法によって調製することができる。
組成物の溶液又は懸濁液は水、等張性生理食塩水(PBS)等中で縫製することができ、場合によっては非毒性界面活性剤と混合することができる。分散液はまた例えばグリセロール、液状ポリエチレン、グリコール、DNA、植物油、トリアセチン及びその混合物中で既知の方法によって調製することができる。通常の保存及び使用条件下で、これらの調製物は、例えば微生物の成長を防止するために保存料を含みうる。
注射又は注入に適した医薬投薬形態は、滅菌水溶液又は分散液、滅菌注射可能又は注入可能溶液又は分散液の即時調製に適した活性成分を含有する滅菌パウダー等々を含みうる。全ての場合、最終的な投薬形態は滅菌性、流体で製造及び保存条件下で安定であることが好ましい。液状担体又はビヒクルは、例えば水、エタノール、ポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコール、又は液状ポリエチレングリコール等々、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びその好適な混合物を含む溶媒又は液体分散体媒質でありうる。例えば、リポソームの生成、分散液の場合には要求された粒子サイズの維持、又は非毒性の界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等々によって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、緩衝液、又は塩化ナトリウムを含ませるのが望ましい。注射可能組成物の長期にわたる吸収は、組成物中に吸収遅延剤−例えばモノステアリン酸アルミニウムヒドロゲル及びゼラチンを含有させることによってもたらすことができる。
滅菌性注射可能溶液は、上に挙げた様々な他の成分と共に適切な溶媒中に必要な量のコンジュゲートを導入し、必要に応じて濾過殺菌することによって調製される。滅菌性注射可能溶液の調製用の滅菌パウダーの場合には、好適な調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥法であり、これは活性成分とそれまでに滅菌濾過された溶液中に存在する任意の付加的な所望成分のパウダーを生じる。
d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]、Ala-d4T-MP及びd4Tを調製するための合成手順は過去に詳細に記載されている(Venkatachalam等, Bioorg. Med. Chem. Lett., 8,3121 (1998); Vig等, Antiviral Chena. Chemother., 9,445, (1998))。式IからIIIの化合物はまた出典明示によりここに取り込まれる米国特許第6030957号(Uckun et al. )に記載されたようにして合成することができる。
実施例1
d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]とその代謝産物の検出のための定量的HPLC
これらの実験に用いたHPLCシステムは4基一組のポンプ、自動サンプラー、自動電子脱ガス装置、自動サーモスタットカラム室、ダイオードアレイディテクター、Chemstationデータ分析ソフトを備えたコンピュータを具備したヒューレットパッカード(Palo Alto, CA)シリーズ1100機器であった(Chen等, JChromatogr. B., 724,157 (1999); Chen等, J. Chromatogr. B., 727,205 (1999);及びChen等, J Liq. Chromatogr., 22,1771(1999))。使用した分析カラムはガードカラム(Hewlett Packard, Inc.)に付設したZobax SB-フェニル(5μm, Hewlett Packard, Inc.)カラムであった。カラムはデータ収集前に平衡化した。線形勾配の移動相(流量=1.0mL/分)は、0分での100%A/0%B、20分での88%A/12%B、30分での8%A/92%Bであった(A:10mMリン酸アンモニウムバッファー、pH3.7;B:アセトニトリル)。検出波長は268nm、ピーク幅は0.03分未満、応答時間は0.5秒、スリットは4nmであった。
この実験ではHPLC級試薬及び脱イオン化蒸留水を使用した。アセトニトリルはBurdick & Jackson (Allied Signal Inc., Muskegon, MI)から購入した。酢酸はFisher Chemicals (Fair Lawn, NJ)から購入した。リン酸アンモニウム及びリン酸はSigma-Aldrich(St. Louis, MO)から購入した。
血漿試料(200μL)はアセトン(800μL)と1:4で混合し、少なくとも30秒ボルテックスした。遠心分離後、上清をきれいな試験管に移し、窒素下で乾燥させた。200mMのHCl中50%のメタノールの溶液50μLを用いて抽出残渣を再構成し、40μLをHPLC中に注入した。
試薬を添加した試料中のd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]とその代謝産物に対して測定されたクロマトグラフィー滞留時間(RT)は28.7±0.02分(d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]A;n=13;図1B)、28.9±0.02分(d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]B;n=13;図1C)、15.3±0.2分(Ala-d4T-MP;n=30)及び18.5±0.1分(d4T;n=30)であった。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]A及びd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]Bはd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]のジアステレオマーである。これらの滞留時間では、ブランク血漿からは有意な干渉ピークは観察されなかった(図1A及び1B)。
再構成された溶液の塩酸成分はd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]及びその代謝産物;酸プロトン化Ala-d4T-MPのクロマトグラフィーにおいて所定の役割を果たしていた。再構成された溶液中に塩酸がないと、この代謝産物のクロマトグラムにはピークが現れなかった。酸性溶液はしかしAla-d4T-MPの安定性を減少させた。従って、抽出試料の全てを再構成の直後に分析した。
実施例2
全血及び血漿中でのd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]及びAla-d4T-MPの安定性
全血及び血漿試料にd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]及びAla-d4T-MPを添加(スパイク)してそれぞれ250μMのd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]及び100μMのAla-d4T-MPの最終濃度にした。全血試料を37℃の水浴に入れる一方、血漿試料を−20℃に保存した。予め決められた時間に、スパイクした全血又は血漿の一定分量(100μl)を、上述のように、タンパク質の沈殿を誘導するために400μlのアセトンを添加することによって抽出した。絶対ピーク面積をd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]及びAla-d4T-MPの安定性を評価するために使用した。
図2A及び2Bに示された結果は、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]が血漿中及び全血中において非常に不安定であることを示している。血漿と共にインキュベーションされた後、95%を越えるd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]が5分後に分解した。全血試料では、68%、87%及び92%のd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]がそれぞれ5分、10分及び15分に取られた試料中で分解した。血漿及び全血試料双方において、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の分解は30分以内に完了した(血漿データについては表1参照)。よって、試料は試料取得直後に抽出した。これに対して、Ala-d4T-MPは全血及び血漿中で1日間安定であった。
実施例3
選択的エステラーゼインヒビターの存在下での血漿中におけるd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の安定性
血漿試料をエステラーゼインヒビターであるパラオクソン(0.1mMの最終濃度)、フィゾスチグミン(1Mの最終濃度)及びEDTA(1Mの最終濃度)と共に37℃で30分間、プレインキュベートした。ついで、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]を添加して250μMの最終濃度にした。予め決められた時間に、スパイクした血漿の一定分量(100μl)を、上述のように、タンパク質の沈殿を誘導するために400μlのアセトンを添加することによって抽出した。血漿中のd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の分解はパラオクソンによって有意に阻害され、フィゾスチグミンによって部分的に阻害されたが、EDTAによっては影響を受けなかった(図3A、3B及び3C並びに表1参照)。表1に示されたデータは二回の実験の加水分解平均割合をとって計算した。
Figure 2005534666
実施例4
マウス肝臓ホモジェネート中でのd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の安定性
新鮮なマウスの肝臓をBalb/cマウスから取得し、ポリトロン(Polytron (RT-MR2000))ホモジェナイザー(Kinematical AG, Littau, Switzerland)を使用して1xPBS中でホモジェナイズした(1:1、W/V)。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]を肝臓ホモジェネートに添加して100μMの最終濃度にした。
予め決められた時間に、スパイクした肝臓ホモジェネートの一定分量(100μl)を、上述のように、タンパク質の沈殿を誘導するために400μlのアセトンを添加することによって抽出した。
d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]化合物は、血漿で得られたデータと同様に、肝臓ホモジェネートとのインキュベーション後に30分以内に分解した。しかし、血漿中とは異なり、肝臓ホモジェネートとのインキュベーション後に有意な量のd4Tが検出された。
実施例5
胃腸液中でのd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]及びAla-d4T-MPの安定性
シミュレートされた胃及び腸液を、合衆国薬局方の方法に従って調製し、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]及びAla-d4T-MPをスパイクして各化合物100μMの最終濃度の溶液を得た。ついでスパイクした液を37℃の水浴中に入れた。予め決められた時間に、スパイクした胃又は腸液の100μlの一定分量を、上述のように、400μlのアセトンを添加することによって抽出した。
d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]は胃液中で8時間の間、比較的安定であるが、腸液中では安定ではない(図5A及び5B)。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]は速やかに分解して腸液中にAla-d4T-MPを生じた(d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]のおよそ94%が2時間以内に分解した)。Ala-d4T-MPは腸液中で安定であった;ほんの微量のd4Tが腸液中で検出されただけであった。
実施例6
マウスでの薬物動態研究
Taconic(Germantown, NY)からの雌Balb/cマウスを、USDAによって完全に公認された制御環境中(12時間の光/12時間の暗所、22±1℃、60±10%の相対湿度)に収容した。全ての齧歯類は、オートクレーブ床を含むマイクロアイソレーター(Lab Products, Inc., NJ)に収容した。実験中マウスはオートクレーブのペレット状食物や水道水に自由に接近できるようにした。動物飼育手順は全てGuide for the Care and Use of Laboratory Animals (National Research Council, National Academy Press, Washington DC 1996)に準拠した。
DMSO中に溶解させたd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート](100mg/kg)の溶液(50μl)を尾の静脈を経て静脈内投与した。この容量のDMSOは、迅速な静脈内又は血管外注射によって投与するとマウスに良好に許容される(Rosenkrantz等, Cancer Chemother.Rep.,31,7 (1963); Wilson等, Toxicol. Appl. Pharmacol., 7,104(1965))。血液試料(〜500μL)は静脈内注射の0、2、5、10、15、30、45、60、120、240及び360分後に逆軌道静脈穿刺(retro-orbital venipuncture)によって眼の静脈叢から取得した。これらの化合物の全身性投与後のAla-d4T-MP及びd4Tの薬物動態学を研究するために、マウスに、それぞれ75mg/kgのAla-d4T-MP及び40mg/kgのd4Tを注射した(これらの用量は100mg/kgのd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]に等モルである)。
経口投与後のd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の薬物動態学を決定するために、12時間絶食させたマウスに、#21のステンレス鋼ボール付き給餌針を使用してチューブによる栄養補給によって100mg/kgのd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]を大量瞬時投与量与えた。サンプリング時点はチューブによる栄養補給後0、2、5、10、15、30、45、60、120、240及び360分の時点であった。
全ての収集した血液試料をヘパリン処理し、5分間7000xgで遠心分離して、全血から血漿画分を分離した。ついで血漿思料を、上述の抽出手順を用いて即座に処理した。
薬物動態学モデル化及びパラメータの計算はWinNonlin Professionalバージョン3.0(Pharsight,Inc., Mountain, CA)薬物動態学ソフトウェア(Chen等, Pharm.Res., 16, 1003 (1999); Chen等, Pharm.Res., 16,117 (1999); Chen等, J. Clin. Pharmacol., 39,1248 (1999); Uckun等, Clin. CancerRes., 5,2954 (1999);及びUckun等, J. PharmacoL Exp.Ther., 291,1301 (1999))を用いて実施した。適切なモデルは、加重残差最小二乗和、最小シュワルツ基準(SC)、最小赤池情報量基準(AIC)値、適合パラメータの最小標準誤差、及び残差の分散に基づいて選択した。排出半減期は血漿濃度-時間特性の終末過程の線形回帰分析によって推定した。濃度-時間曲線下の面積(AUC)は最初のサンプリング時(0時間)と最後のサンプリング時プラスC/k(ここで、Cは最後のサンプリング濃度、kは排出速度定数)の間の線形台形則に従って計算した。漸進性クリアランス(CL)は用量をAUCで割って決定した。親薬物の代謝クリアランス、代謝産物の生成クリアランス、代謝産物の分配クリアランスは、微分方程式の系として特定された薬物動態モデルに時間曲線の関数として親薬物及び代謝産物の濃度を同時に適合させることによって推定した(Gabrielsson & Weiner,Phamacokinetic/Phamacodynamic Data Analysis: Concepts and Applications, Swedish Pharmaceutical Press (1997))。代謝産物に転換したd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の割合(fm)は、等モル用量の代謝産物の投与後のAUC[(AUCm)m]に対する親薬物の投与後の代謝産物のAUC[(AUCm)p]の比として計算した(Gibaldi及びPerrier,1982):fm=[ (AUCm)p /Dp]x[Dm/(AUCm)m]=(AUCm)p・CLm/Dp
実施例7
静脈内投与後のd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の代謝及び薬物動態性状
静脈内投与後に、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート](100mg/kg)が代謝されてd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-M1(R=15.3分)及びd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-M2(R=18.5分)を生成した(図1C)。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-M1はAla-d4T-MPと同じ滞留時間を有している一方、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-M2はd4Tと同じ滞留時間を有していた(図1B及び1C)。これら二種の代謝産物のUVスペクトルはそれぞれAla-d4T-MP及びd4Tのものと同一であった。
100mg/kgのd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の静脈内投与後に、時間の関数としてのd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の血漿中濃度を一室モデルによって記述した(図6A)。薬物動態パラメータ推定値を表2に示す。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]は224.2μMのCmaxと1142.0μM・分のAUCを有していた。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の全身性クリアランスは適度に速く、160.9mL/分/kgのCLであり、これは腎臓又は肝臓への血流速のおよそ2倍である(Davies等, Pharm. Res., 10,1093 (1993))。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]は中程度の分散サイズ容積を有していて、819.9ml/kgのVssであり、これは体内の水の全容積にほぼ等しい。しかし、その速やかな代謝のため、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]は短い排出半減期を有していた(t1/2=3.5分)。
d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]のジアステレオマーを、上述のHPLC条件下で分離した(滞留時間は28.7及び28.9分であった)。ジアステレオマーの一つ(d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-A、滞留時間=28.7分)は他方(d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-B、滞留時間=28.9分;図1C)よりも速やかに代謝された。これらの2種のジアステレオマーの薬物動態特性を表2にまとめる。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-Bはd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-Aより、高いAUC(741.2対441.5μM・分)とCmax(125.7対107.9μM)を有していた。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-Bはまたd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-Aより、僅かに長い排出半減期(4.1分対2.8分)を有しており、これはd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-Aのクリアランスがd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-Bのクリアランスより速いためであろう(208.2対123.9ml/分/kg)。しかしながら、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]ジアステレオマーは双方共30分以内に完全に代謝された。
静脈内注射の後、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]は速やかに代謝されて、表2に示されるようにAla-d4T-MP(tmax=5.9分;Cmax=67.4μM;t1/2=129.2分)とd4T(tmax=18.7分;Cmax=15.7μM;t1/2=114.8分)を生じた。
Figure 2005534666
Balb/cマウスでの薬物動態パラメータ(各時点当たりN=4マウス)を、プールされたデータの複合血漿濃度-時間曲線から推定された平均値として表した。平均±S.E.M(平均値標準誤差)値は括弧中に示す。NDは値が検出されたかったことを意味する。
図7A及び7Bに示されたモデルはd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の静脈内注射後のAla-d4T-MPとd4Tの代謝産物薬物動態を記述する。このモデルによれば、d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]は生体内変換されてAla-d4T-MP(CLm1)とd4T(CLm2)をそれぞれ生成する。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]から誘導されたAla-d4T-MPは更に代謝されてd4T(CLm3)を生成し、又は血管外区画に分散される(CLmid)。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]又はAla-d4T-MPから生成されたd4Tは最終的には体から除かれる(CLme2)。これらの2種の代謝産物に対して推定された薬物動態パラメータを表3にまとめる。
Figure 2005534666
括弧内の値はモデリングのC.V.である。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の代謝クリアランスと代謝産物の生成クリアランスは、それぞれAla-d4T-MPに対して83.9ml/分/kg、d4Tに対して87.4ml/分/kgであった。Ala-d4T-MPの代謝クリアランスとその代謝産物d4Tの生成クリアランスは36.1ml/分/kgであり、Ala-d4T-MPの少しの部分が47.1ml/分/kgのCLm1dで血管外区画に分散せしめられた。最後に、d4Tは62.0ml/分/kgのCLme2で排除された。
実施例8
Ala-d4T-MPの静脈内注射(75mg/kg、上で検討したd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の100mg/kg用量と等モル用量)後、Ala-d4T-MPは速やかに代謝されて、d4T(tmax=4.4分;t1/2=34.0分)を生じた(図8A及び8B、表4)。時間の関数としてのAla-d4T-MPの濃度は二区画モデルを用いて記述することができる一方、一区画モデルが時間の関数としてその代謝産物d4Tに最も良好に適合する(図8B)。Ala-d4T-MPとd4Tに対するCmax値はそれぞれ1206.6μM、35.2μMであった。AUCはAla-d4T-MPに対して11648.7μM・分、d4Tに対して1888.0μM・分であった。Ala-d4T-MPの全身性クリアランスは僅か15.8mL/分/kg(表4)であり、これは腎臓又は肝臓に対する血流よりも更に少ない(Davies等, Pharm.Res., 10,1093 (1993))。Ala-d4T-MPはまた体内の水の全容積よりも少ない小容積の分散性(Vss=275.5ml/kg)を有していた。にもかかわらず、Ala-d4T-MPの排出半減期はその速やかな代謝のために短かった(t1/2=28.5分)。
Figure 2005534666
Balb/cマウスでの薬物動態パラメータ(各時点当たりN=5マウス)を、プールされたデータの複合血漿濃度-時間曲線から推定された平均値として表した。平均±S.E.M(平均値標準誤差)値は括弧中に示す。NDは値が検出されたかったことを意味する。
図8Aに示されたモデルはAla-d4T-MPの静脈内注射後の代謝産物薬物動態を最もよく記述している。このモデルによれば、Ala-d4T-MPは代謝されてd4T(CLm1)を生成するか、又は血管外区画に分散されうる(CLpd)。Ala-d4T-MPから誘導されたd4Tは体から除かれる(CLme)。記述されたモデルに対して時間の関数としてAla-d4T-MPとd4Tの濃度値を同時に適合させることにより、Ala-d4T-MPの代謝クリアランスとd4Tの生成クリアランス(CLm1)は表5に示されるように15.6ml/分/kgと推定された。
Figure 2005534666
括弧内の値はモデリングのC.V.である。Ala-d4T-MPの少しの部分が4.7ml/分/kgのCLpdで血管外区画に分散せしめられ、Ala-d4T-MPから誘導されたd4Tは88.4ml/分/kgの相対的に高いCLmeで最終的に排除された。15.6ml/分/kgのCLm1は全身性クリアランス(CL=15.8ml/分/kg)の99%を占め(表4参照)、Ala-d4T-MPの殆どが生体内変換されてd4Tを生成することを示している。
実施例9
静脈内投与後のd4Tの薬物動態特性
d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の100mg/kg用量と等モル用量である40mg/kgの静脈内注射後に、時間の関数としてd4Tの濃度を一区画モデルを使用して記述した(図9)。薬物動態パラメータの推定値は表6に示す。D4Tの推定Cmax及びAUC値はそれぞれ279.5μM、12227.1μM・分であった。D4Tは短い排出半減期(30.3分)を有していた。d4Tの全身性クリアランスはCLが僅かに15.0ml/分/kgと遅く、これは腎臓又は肝臓への血流よりも更に低い(Davies等, Pharm.Res., 10,1093 (1993))。D4Tは体内の水の容積にほぼ等しい中程度に大なる容積の分散性(Vss=657.8ml/kg)を有していた。
Figure 2005534666
Balb/cマウスでの薬物動態パラメータ(各時点当たりN=5マウス)を、プールされたデータの複合血漿濃度-時間曲線から推定された平均値として表した。平均±S.E.M(平均値標準誤差)値は括弧中に示す。
実施例10
経口投与後のd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の薬物動態特性
経口投与されたd4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート](100mg/kg)の薬物動態学的挙動をまた調べた。両方の代謝産物(Ala-d4T-MPとd4T)が検出されたが、親d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の濃度は検出限界(0.5μM)以下であった。tmax値はAla-d4T-MPでは10.3分、d4Tでは42.4分であった。一区画薬物動態モデルを用いて時間の関数としてAla-d4T-MP及びd4T双方の濃度変化を記述した(図10A及び10B)。薬物動態パラメータの推定値は表7に示す。Ala-d4T-MP及びD4Tの最大濃度(Cmax)はそれぞれ12.7μM、30.7μMであった。排出半減期はAla-d4T-MP及びd4Tに対してそれぞれ66.4分及び99.0分であった。
Figure 2005534666
Balb/cマウスでの薬物動態パラメータ(各時点当たりN=4マウス)を、プールされたデータの複合血漿濃度-時間曲線から推定された平均値として表した。平均±S.E.M(平均値標準誤差)値は括弧中に示す。
実施例11
スタブジン誘導体の合成と特徴付け
全ての化学薬品はAldrich(Milwaukee, WI)から購入した。全ての合成は窒素雰囲気下で行った。CDCl又はDMSO-d中で室温にてバリアンマーキュリー300機器を使用してH、13C、19F及び31P NMRを得た。化学シフトは内部基準としてテトラメチルシラン(δ=0ppm)からダウンフィールドした百万分率(ppm)でのδ値として報告した。スプリットパターンは次のように表示する:s,一重項;d,二重項;t,三重項;m,多重項;br,ブロードピーク。FT-IRスペクトルはニコレットプロテージ(Nicolet Proteege)460分光計で記録した。MALDI-TOF質量スペクトルはFinniganMAT95システムを使用して得た。UVスペクトルは、セルパス長1cmのベックマンUV-VIS分光光度計(モデル3DU74000)を使用して記録した。
HPLC精製は逆相Lichrospherカラム(250x4mm、ヒューレットパッカード、RP-18、カタログ番号79925)と水(70%)とアセトニトリル(30%)からなる定組成(isocratic)流(1ml/分)を使用して達成した。融点はメルト・ジョン装置を用いて決定し、修正していない。カラムクロマトグラフィーはベイカー(Baker)社から得たシルカゲルを使用して実施した。オクタノール/水分配係数は振盪フラスコ法によって決定した。ホスホラミダイト類似体をガラスバイアル中、2mlの水及び2mlのオクタノールに添加した。混合物を室温で4時間振盪した。二相を注意して分離しミリポアフィルターで濾過し、HPLCで分析した。分配係数は、オクタノールと水のそれぞれに対する曲線下の面積の比を用いて計算した。
抗ウイルス薬。d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]の調製のための合成手順はVig等, 1992 Antiviral Chem. andClzemother., 9: 445-447に過去に詳細に記載されている。ジドブジンはトロント・リサーチ・ケミカルズ社Missassagua, Ontario, Canadaから得た。d4TはMansuri等, 1989J. Med. Chem. 32,461の方法に従ってチミジンから調製した。適切に置換されたフェニルメトキシアラニニルホスホロクロリデートはまたMcGuigan等, 1992 AntiviralRes.,17, 311によって報告された方法に従って調製した。化合物は以下のスキーム2に概略を示したようにして合成した。
Figure 2005534666
スキーム2。フェニルメトキシアラニニルホスホロクロリデートを無水THF中のd4T及び1-メチルイミダゾール溶液に添加し、混合物を室温で5−6時間攪拌した。反応混合物をまとめると、必要な誘導体が良好な収量で得られた。カラムクロマトグラフィーにかけて化合物を精製した。
合成された化合物の物理データは、流量1ml/分で水/アセトニトリル70:30で溶出させたC18の4x250mm Lichrospherカラムを使用して実施したHPLCによって測定した。次の化合物の純度はHPLCで96%を越えていた。星印で標識した13C NMRピークはジアステレオマーのために分かれていた。
合成された化合物の物理化学的性質は次の通りであった:
2', 3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(d4T):収率:57%;融点165−166℃;UV(MeOH)λmax204,257nm;IR(KBr):3463,3159,3033,1691,1469,1116,1093Cm−1H NMR(DMSO-d)δ11.29(br s,1H),7.63(s,1H),6.80(d,1H,J=1.2Hz);6.38(d,1H,J=5.9Hz),5.90(dd,1H,J=l. l,4.7Hz),5.01(m,1H),4.76(s,1H),3.60(dd,2H,J=4.8,3.6Hz),1.71(d,3H,J=1.2Hz),13C NMR(DMSO-d)δ164.4,151.3,137.2,135.4,126.4,109.3,89.2,87.6,62.4,12.2;算定質量:224,実測値:225(M+1);HPLC滞留時間(tR):8.7分。
5'-[4-ブロモフェニルメトキシルアニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'0デオキシチミジン(化合物113):収率:83%;UV(MeOH)max:209,218及び266nm;IR(Neat):3203,3070,2954,2887,2248,1743,1693,1485,1221,1153,1038,912,835,733cm−1;1H NMR(CDCl)δ9.60−9.58(br s,1H),7.45−7.42(m, 2H),7.30−7.09(m, 4H),6.37−6.27(m, 1H),5.93−5.88(m,1H),5.04−5.01(br m,1H),4.35−4.33(m,2H),4.27−3.98(m,2H),3.71−3.70 (s,3H),1.85−1.81(s,3H),1.37−1.31(m,3H);13C NMR(CDC1)δ173.7,163.8,150.8,149.7−149.6,135.6−135.4,133.1−132.5,127.4−127.3,121.9−121.7,118.0,111.2−111.1,89.7−89.4,84.4−84.3,67.8−66.4,52.5,50.0−49.9,20.7,及び12.3;31P NMR(CDC1)δ3.41,2.78;MALDI−TOF算定質量(M+Na)567.2,実測値567.1;HPLCt:12.04及び12.72分。
5'-[4-メトキシフェニルメトキシルアニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(化合物598):収率:25%;UV(MeOH)%λmax:223,229及び270nm;IR(Neat):3223,3072,2999,2953,2837,1743,1693,1506,1443,1207,1153,1111,1034,937,837及び756cm−1H NMR(CDC1)δ9.40(br s,1H),7.30−7.00(m,5H),6.83−6.81(m,1H),6.37−6.27(m,1H),5.91−5.86(m,1H),5.00(br m,1H)、4.40−4.30(m,2H),4.20−4.10(m,2H),3.95−3.93(s,3H),3.82−3.80(s,3H),1.85−1.81(s,3H)及び1.39−1.29(m,3H);13C NMR(CDC1)δ174.0,163.9,156.6,150.8,143.5,135.8−135.5,133.3−132.9,127.4−127.2,121.2−120.9,114.5,111.2,89.7−89.4,84.5,66.9−66.3,55.5,52.5,50.6−49.9,20.9及び12.3;31P NMR(CDC1)δ3.82,3.20;MALDI-TOF算定質量(M+Na)518.2,実測値518.2;HPLCt:5.83及び6.26分。
5'-[3-ジメチルアミノフェニルメトキシルアニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(化合物599):収率:18%;融点61−62℃;UV(MeOH)%λmax:203,206,211及び258nm;IR:3448,3050,2952,1691,1506,1450,1247,1143cm−1H NMR(CDC1)δ9.93(s,1H),7.27(m,1H),7.04(m,1H),6.97(m,1H),6.44(q,3H),6.24(m,1H),5.81(t,1H)、4.94(t,1H),4.24(s,2H),4.03(m,1H),3.92(m,1H),3.64(d,3H),2.86(s,6H),1.77(d,3H),1.28(t,3H);13C NMR(CDC1)δ173.7(d),163.9(d),151.3(t),150.8(t),135.5(d),132.9(d),129.5(d),126.9(d),111.0(d),108.8(d),107.2(q),103.7(q),89.3(d),84.4(q),66.7(d),66.1(d),52.3(d),49.9(d),40.2,20.7(t),12.2;31P NMR(CDC1)δ3.32,2.70;HPLCt:3.36分。
5'-[2,6-ジメトキシフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(化合物600):収率:23%;融点51−53℃;UV(MeOH)%λmax:210及び267nm;IR:3432,3072,2950,1691,1483,1261,1112,931cm−1H NMR(CDC1)δ9.78(s,1H),6.95(m,3H),6.48(t,2H),6.29(m,1H),5.81(m,1H),4.36(m,3H),4.02(m,2H)、3.74(m,6H),3.63(t,3H),1.74(d,3H),1.29(m,3H);13C NMR(CDC1)δ173.7(d),163.9(d),151.7(t),150.8(t),135.7(d),133.1(d),128.4(d),126.8(d),125.0(d),110.9(d),104.8(t),89.2(d),84.6(d),66.8(t),55.8(d),52.2(t),49.7(d),49.4(d),21.0(d),11.8(d);31P NMR(CDC1)δ4.97,4.28;HPLCt:6.55分。
5'-[4-シアノフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(化合物601):収率:20%;融点62−63℃;UV(MeOH)%λmax:207,213,233及び267nm;IR:3214,3070,2954,2229,1691,1502,1467,1245,1035,925cm−1H NMR(CDC1)δ9.92(s,1H),7.60(m,2H),7.28(m,2H),7.16(m,1H),6.96(m,1H),6.28(m,1H),5.86(t,1H),4.99(m,1H),4.32(m,3H),3.92(m,1H),3.65(m,3H),1.75(m,3H),1.29(m,3H);13C NMR(CDC1)δ173.5(t),163.7(d),153.4(q),150.7,135.3(d),133.7(d),132.6(d),127.2(d),121.0(q),117.9,111.0(d),108.6(d),89.5(d),84.2(d),67.3(t),52.5(d),50.0(d),20.6(t),12.3(d);31P NMR(CDC1)δ4.15,3.62;HPLCt:5.02分。
5'-[3-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(化合物602):収率:15%;融点47−48℃;UV(MeOH)%λmax:208,213及び267nm;IR:3432,3070,2954,1685,1473,1247,941cm−1H NMR(CDC1)δ9.65(s,1H),7.34−7.11(m,5H),6.97(m,1H),6.26(m,1H),5.87(t,1H),4.98(m,1H),4.26(m,3H),3.93(m,1H),3.67(m,3H),1.76(m,3H),1.32(t,3H);13C NMR(CDC1)δ173.5(d),163.8(d),150.6(d),135.4(d),132.8(d),130.6(d),128.0,127.3(d),123.3(q),122.3(d),118.8(q),111.l(d),89.5(d),84.4(q),67.2(d),52.6,50.0(d),20.7(t),12.3(d);31P NMR(CDC1)δ3.36,2.74;HPLCt:10.3,10.7分。
5'-[4-ブロモ-2-クロロフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(化合物603):収率:18%;融点51−52℃;UV(MeOH)%λmax:215及び267nm;IR:3415,3222,3072,2952,1691,1475,1245,1085,1035,925cm−1H NMR(CDC1)δ9.52(s,1H),7.52(s,1H),7.32(m,2H),7.22(m,1H),6.99(m,1H),6.29(m,1H),5.90(m,1H),5.00(m,1H),4.33(m,2H),4.19(m,1H),4.01(m,1H),3.67(s,3H),1.79(m,3H),1.31(m,3H);13C NMR(CDC1)δ173.5(q),163.8(d),150.8(d),145.5(t),135.3(d),132.8(d),130.9(d),127.3(d),126.2(d),122.7(d),117.8(d),113.3(d),89.6(d),84.3(d),67.5(d),67.1(d),52.6,50.1,20.8(t),12.3(d);31P NMR(CDC1)δ3.11,2.54;HPLCt:18.6,20.6分。
5'-[4-フルオロフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(化合物604):収率:46%;融点42−44℃;UV(MeOH)%λmax:210及び266nm;IR:3423,3245,3072,2954,1691,1504,1247,1089,1037,939cm−1H NMR(CDC1)δ10.08(bs,1H),7.16(m,1H),7.08(m,2H),6.91(m,3H),6.20(m,1H),5.79(t,1H),4.92(m,1H),4.42(t,1H),4.22(m,2H),3.85(m,1H),3.58(m,3H),1.70(m,3H),1.22(m,3H);13C NMR(CDC1)δ173.5(q),163.8(d),160.7,157.5,150.7(d),145.7(q),135.3(d),132.7(d),126.9(d),121.3(t),115.8(q),110.8(d),89.2(d),84.2(d),66.8(t),52.2,49.8(d),20.4(d),12.1(d);31P NMR(CDC1)δ3.80(d),3.22(d);19F NMR(CDC1)δ−42.8(t);HPLCt:6.3,6.6分。
5'-[2-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(化合物605):収率:20%;融点45−46℃;UV(MeOH)%λmax:207及び267nm;IR:3432,3072,2954,1685,1475,1245,1089,933cm−1H NMR(CDC1)δ9.55(s,1H),7.47(m,2H),7.24(m,2H),6.99(m,2H),6.29(m,1H),5.88(t,1H),5.00(m,1H),4.35(m,2H),4.02(t,2H),3.66(s,3H),1.80(m,3H),1.30(m,3H);13C NMR(CDC1)δ173.6(t),163.8(d),150.8(d),147.3(t),135.4(d),133.0(t),128.5(d),127.2(d),126.1(d),121.3(q),114.4(d),111.3(d),89.6(d),84.3(d),67.2(q),52.5,50.1(d),29.6,20.8(t),12.4;31P NMR(CDC1)δ2.98,2.37;HPLCt:8.4,9.2分。
5'-[2-クロロフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(化合物606):収率:47%;融点43−45℃;UV(MeOH)%λmax:214,215,219及び267nm;IR:3209,3070,2952,1691,1481,1245,1035,931cm−1H NMR(CDC1)δ9.80(s,1H),7.39(t,1H),7.29(m,1H),7.20(m,1H),7.13(t,1H),7.01(t,1H),6.92(d,1H),6.24(m,1H),5.81(m,1H),4.94(m,1H),4.28(m,3H),3.96(m,1H),3.59(m,3H),1.72(m,3H),1.25(m,3H);13C NMR(CDC1)δ173.5(t),163.8(d),150.8(d),145.9(d),135.3(d),132.7(d),130.0,127.5(d),127.0(d),124.8(q),121.2(q),111.0(d),89.3(d),84.3(d),66.9(d),52.3,49.8(d),20.5(t),12.1(d);31P NMR(CDC1)δ3.23,2.67; HPLCt:7.6,8.3分。
5'-[フェニルメトキシアラニニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(化合物607):収率:46%;UV(MeOH)%λmax:211及び263nm;IR(Neat):3222,2985,2954,1743,1693,1593,1491,1456,1213,1153,1039,931,769cm−1H NMR(CDC1)δ9.30(brs,1H),7.30−7.10(m,6H),6.85−6.82(m,1H),6.36−6.26(m,1H),5.91−5.85(m,1H),5.00(brm,1H),4.19−3.68(m,4H),3.72,3.71(s,3H),1.83,1.80(d,3H),1.38−1.25(m,3H);13C NMR(CDC1)δ173.9,163.7,150.7,149.7,135.7−135.4,133.2−132.9,129.6−129.4,127.3−127.2,125.0−124.4,120.0,111.1,89.6−89.4,84.5−84.4,66.9−66.3,52.5−52.3,50.0−49.6,20.9及び12.3;31P NMR(CDC1)δ2.66,3.20;MALDI−TOF算定質量(M+Na)488.0,実測値487.9;HPLCt:5.54,5.85分。
5'-[2,5-ジクロロフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(化合物608):収率:30%;UV(MeOH)%λmax:211,216,220及び268nm;IR:3423,3205,3072,2954,1691,1475,1245,1093,946cm−1H NMR(CDC1)δ9.43(s,1H),7.45(m,1H),7.25(m,2H),7.04(m,1H),6.99(q,1H),6.32(m,1H),5.88(m,1H),4.99(m,1H),4.32(m,3H),4.00(m,1H),3.67(s,3H),1.77(m,3H),1.33(t,3H);13C NMR(CDC1)δ173.5(d),163.8(d),150.8(d),146.4(d),136.3,132.7(t),130.7(d),127.4,125.8,123.7(d),121.7(q),111.2(d),89.6(d),84.3(t),67.1(d),52.6,50.1,29.6,20.7(t),12.3(d);31P NMR(CDC1)δ3.24,2.60;HPLCt:13.2分。
5'-[4-クロロフェニルメトキシアラニニルホスフェート]-2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(化合物609):収率:40%;UV(MeOH)%λmax:202,204,212,219及び267nm;IR:3423,3214,3068,2952,1691,1488,1247,1089,929cm−1H NMR(CDC1)δ9.48(d,1H),7.25(d,3H),7.12(t,1H),7.00(m,1H),6.30(m,1H),5.89(t,1H),5.01(m,1H),4.29(m,3H),4.05(t,1H),3.90(m,1H),3.69(d,3H),1.80(d,3H),1.32(d,3H);13C NMR(CDC1)δ173.7(q),163.7(d),150.7,148.6(q),135.5(d),132.9(d),130.3(d),129.5(d),127.3(d),121.4(q),111. 2(d),89.5(d),84.4(d),67.2(d),66.5(d),52.6,50.1(d),20.9(t),12.4(d);31P NMR(CDC1)δ3.57,2.82;HPLCt:7.6,8.3分。
実施例12
スタブジン誘導体の抗ウイルス活性
ウイルスストック。 この実験に使用したHIV-1株はHTLV-IIIB(Uckun等, 1998 Antimicro. Agents and Chemother., 42: 383-388)であった。本実験に含まれる非HIVウイルスはガンシクロビル感受性サイトメガロウイルス(CMV)株AD169(ATCCVR-538);アシクロビル感受性単純ヘルペスウイルス(HSV)I型株HF(ATCC VR−260);アシクロビル感受性HSV II型株G(ATCC VR-734);アデノウイルス株5型、株アデノイド75(ATCC VR-5);エンテロウイルス株,ECHO30、株Bastianni(ATCC VR-322);及び呼吸器合胞体ウイルス(RSV),株ロング(ATCC VR-26)であった。
抗HIV-1活性のインビトロアッセイ。 HIV-陰性のドナーからの正常なヒト末梢血単核細胞(PBMNC)を、加湿された5%CO雰囲気中で37℃で1時間の吸着期間の間、0.1の感染効率(MOI)でHIV-1に曝す前に、20%(v/v)熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)、3%のインターロイキン-2、2mMのL-グルタミン、25mMのHEPES、2g/LのNaHCO、50μg/mLのゲンタマイシン、及び4μg/mLのフィトヘマグルチニンを補填したRPMI1640中で72時間培養した。続いて、細胞を、様々な濃度の化合物113又は609の存在下で96ウェルマイクロタイタープレート(100μL、2x10細胞/mL)中で培養した。培養物上清の一定分量を、過去に記載されているように、p24抗原アッセイのために感染7日後にウェルから取り除いた。適用したp24酵素イムノアッセイ(EIA)は、Coulter社/Immunotech社(Westbrooke, ME)から市販されている未修飾動態学アッセイであり、試験培養上清試料中に存在する抗原が結合するマイクロウェルストリップ上にコートされたHIVコアタンパク質に対してマウスmAbを利用する。ウイルス阻害パーセントは未処理の感染細胞(つまりウイルスコントロール)からのp24値と比較することによって計算した。
プラーク形成アッセイ。 プラークアッセイ法を用いて非HIVウイルスに対する化合物の活性を調べた。皮膚の線維芽細胞株SF(ATCC CRL-2097)をAD169、アデノウイルス5型の標的として使用した。ECHO30のVERO細胞株(ATCC CCL-81)をHSV HF及びGの標的として用いた。HEP-2細胞株(ATCC CCL-23)をRSVロング株の標的として用いた。これらの細胞株は0.9%のメチルセルロース又は0.4%のSeaPlaqueアガロース半固形支持体を持つ24ウェル(ECHO30感染SF以外全て)又は6ウェル(ECHO30感染SF)中で1x10細胞/ウェルにて培養した。アール塩(Gibco)、L-グルタミン、非必須アミノ酸、2%の熱不活化ウシ胎仔血清、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、及び0.05%のゲンタマイシンを含む最小必須培地(MEM)を培養培地とした。インキュベーション時間はHG、G、ECHO30及びロングでは3日;AD169及びアデノウイルス5型では7日とした。プラークの計数は、AD169、5型、ECHO30及びRSVロングに対しては20Xの解剖顕微鏡を、HFとGに対してはライトボックスを用いて実施した。固定剤は、メチレンブルーを使用したCMV株AD169を除き、全てのウイルスに対してクリスタルバイオレットであった。プラーク形成の阻害パーセントは、試験物質で処置した感染細胞からのプラーク数を、未処置の感染細胞(つまりウイルスコントロール)からのプラーク数と比較することによって計算した。IC50値はStatview統計プログラム(SAS Institute, Inc., Cary, NC)を使用して決定した。
統計的解析。 各薬剤を、0.0001μMから100μMの範囲の6−7の異なった濃度で試験した。各アッセイ法は3通りのウェルで設定し、1−3回繰り返した。線形化した等式の指数形態の非線形回帰モデリング(Statview, SAS Institute,Inc., Cary, NC)を使用して3通りのウェルの各セットからIC50値を計算した。加水分解速度はアルカリ条件下での化合物の消失に単一指数減衰方程式を適合させることによって決定した(全てのR値は0.85より大)。得られたIC50値を、線形モデルに適合させることにより(JMP Software, SAS Institute Inc., Cary, NC)、log変換加水分解速度定数と相関させた。0.05未満のP値は有意であると判断された。
ADVに対して強力で選択的な抗ウイルス活性を持つ二重機能性抗HIV剤としての化合物113及び化合物609の同定。 ヒトアデノウイルス(ADV株5型)に対するスタブジンと13のアリールホスホラミダイト誘導体の抗ウイルス活性を最初に調べた。スタブジンは12.3±0.3μMのIC50値でADVの細胞変性作用を阻害した。13のスタブジン誘導体は全てスタブジンよりも実質的に強力で、ナノモルのIC50値でADV誘導プラーク形成を阻害した(表8)。
フェニル環にハロ置換を有する化合物並びに未置換化合物607はメトキシ、メチル、又はシアノ置換の化合物よりも強力であった。4-Br置換の化合物113(d4T-5'-[p-ブロモフェニルメトキシアラニニルホスフェート])及び4-Cl置換の化合物609は最も強力なリード抗ADV剤として特定された。化合物113は濃度依存的な形で皮膚の線維芽細胞におけるADV誘導プラーク形成を阻害し、100μMでさえ細胞毒性の如何なる徴候も伴わないで0.022±0.009μMの平均(±SEM)IC50値を示した(表8)。同様に、化合物609はADV誘導プラーク形成を阻害し、0.0027±0.003μMのIC50値を示した(表8)。
スタブジンのアリールホスフェート誘導体の抗ADV能は各化合物の親油性、溶解度、又はアルカリ加水分解速度からは予測できなかった。スタブジンのアリールホスフェート誘導体の親油性(P=0.08)、溶解度(P=0.16)、又はアルカリ加水分解速度(P=0.42)の何れからもADVに対するその生物活性を予測できなかった。類似又は同一の分配係数、溶解度、又は加水分解速度を持つ化合物は広範囲のIC50値を示した(表8)。
リード化合物113及び609はADV及びHIVを阻害したが、幾種かの他のウイルスを阻害しなかった。双方の化合物とも強力な抗HIV活性を示したが、何れの化合物もI型又はII型単純ヘルペスウイルス(HSV-1、HSV-2)、エンテロウイルスECHO30又は呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対しては如何なる抗ウイルス活性も示さなかった(IC50>100μM)(表9)。
リバビリン又はHPMCのような抗ADV活性を持つ他のヌクレオシド類似体とは異なり、化合物113と化合物609はアデノウイルスに対してのみ選択的に活性であったが、これはこれらのヌクレオシド類似体に対するアデノウイルスDNAポリメラーゼの高い感受性を示唆している。選択的な抗ウイルス活性はヌクレオシド抗ウイルス薬では前例がないものではない。例えば、多くの新規な5-置換2'デオキシピリミジンヌクレオシドは単純ヘルペスウイルス1型及び2型株V3に対して抗ウイルス活性を示したが、アデノウイルスに対しては示さなかった(Reefschlager等, 1982 Antiviral Res.,2:41-52)。しかし、化合物113と化合物609は選択的抗ADV活性を持つ二重の機能を備えた抗HIV剤として特定された最初のヌクレオシド類似体である。
Figure 2005534666
Figure 2005534666
プラークアッセイ法を用いて非HIVウイルスに対する化合物113及び化合物609の活性を調べた。皮膚の線維芽細胞株SF(ATCC CRL−2097)をAD169、アデノウイルス5型及びECHO30の標的として使用した;VERO細胞株(ATCC CCL-81)をHF及びGの標的として使用した;HEP-2細胞株(ATCC CCL−23)をRSVロング株の標的として用いた。結果はμMで平均IC50として表す。スタブジン(STV)をコントロールとして含めた。
本発明の詳細な説明を上に記載したが、本発明はそれに限定されるものではない。ここに記載した発明は、当業者には明らかなように、他の実施態様を含むように変更することができる。そのような他の実施態様も全て添付の特許請求の範囲に記載した発明の要旨と範囲内のものであること考えられなければならない。
本明細書は多くの文献及び特許文献を引用するが、そのそれぞれが、あらゆる目的のために完全に記載されているかの如く、出典明示によりここに取り込まれるものである。

Claims (18)

  1. 細胞中でのアデノウイルス感染の作用をインビトロ又はインビボで阻害するための医薬の調製における、式I:
    Figure 2005534666
    (上式中、Rは電子求引基で置換したアリール基又はHであり、
    はアミノ酸残基又はアミノ酸残基エステルである)
    の化合物又は医薬的に許容可能な塩の使用。
  2. は電子求引基で置換したアリール基である請求項1に記載の使用。
  3. アリール基はフェニル、ナフチル又はアントリルである請求項2に記載の使用。
  4. アリール基はフェニルである請求項2に記載の使用。
  5. 電子求引基がハロである請求項2に記載の使用。
  6. がパラ-ブロモフェニルである請求項2に記載の使用。
  7. がパラ-クロロモフェニルである請求項2に記載の使用。
  8. がα-アミノ酸又はそのエステルである請求項1に記載の使用。
  9. が-NHCH(CH)COOCHである請求項1に記載の使用。
  10. がパラ-ブロモフェニルであり、Rが-NHCH(CH)COOCHである請求項2に記載の使用。
  11. がパラ-クロロフェニルであり、Rが-NHCH(CH)COOCHである請求項2に記載の使用。
  12. 化合物が式IV:
    Figure 2005534666
    (上式中、Rはアミノ酸残基又はアミノ酸残基エステルである)の化合物である請求項1に記載の使用。
  13. 上記医薬が動物に投与される請求項1に記載の使用。
  14. 上記医薬が約1mg/kg体重から約500mg/kg体重の用量で投与される請求項13に記載の使用。
  15. 上記医薬が約10mg/kg体重から約100mg/kg体重の用量で投与される請求項14に記載の使用。
  16. 上記阻害がアデノウイルス感染の一又は複数の徴候を減じることを含む請求項13に記載の使用。
  17. 上記阻害がアデノウイルス感染の一又は複数の徴候の発症を防止又は遅延させることを含む請求項13に記載の使用。
  18. 上記阻害がHIV感染とアデノウイルス感染の両方を防止又は遅延させることを含む請求項17に記載の使用。
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