JP2005533524A - Htlv−i介在性疾患を診断するための方法 - Google Patents
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Abstract
HTLV-I関連脊髄症(HAM)、成人T細胞白血病(ATL)の診断もしくは陰性診断の支援、または診断の実施に有意に使用し得るタンパク質バイオマーカーについて記載する。したがって本発明の1つの局面では、ATL、HAMの診断もしくは陰性診断を支援するための、またはさもなくば行うための方法を提供する。タンパク質バイオマーカーを検出する方法、バイオマーカーを検出するために使用し得るキット、および単離されたバイオマーカーもまた提供する。
Description
本発明は、米国立衛生研究所/米国立癌研究所による助成金番号第CA76595号のもと、政府の支援を受けてなされたものである。政府は、本発明において一部の権利を有する。
関連出願
本出願は、参照として本明細書に組み入れられる、2002年5月17日に提出した米国仮特許出願第60/380,854号の優先権を主張する。
本出願は、参照として本明細書に組み入れられる、2002年5月17日に提出した米国仮特許出願第60/380,854号の優先権を主張する。
発明の背景
ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)は、2002年現在、世界中でほぼ2千万人の人に感染していると推定される。HTLV-Iの感染により、少なくとも2つの病態が起こり得る。例えば、HTLV-Iは、成人T細胞白血病(ATL)、進行性リンパ増殖性疾患、および臨床的に多発性硬化症に類似した慢性的な進行性神経変性疾患であるHTLV-I関連脊髄症(HAM)(熱帯性痙性対麻痺としても知られる)の病因微生物である。感染率が約2%〜約30%の流行地では、これらの疾患が死亡率および罹患率の主要な原因である[Tajima, K., Int. Cancer 45:237-243 (1990)]。
ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)は、2002年現在、世界中でほぼ2千万人の人に感染していると推定される。HTLV-Iの感染により、少なくとも2つの病態が起こり得る。例えば、HTLV-Iは、成人T細胞白血病(ATL)、進行性リンパ増殖性疾患、および臨床的に多発性硬化症に類似した慢性的な進行性神経変性疾患であるHTLV-I関連脊髄症(HAM)(熱帯性痙性対麻痺としても知られる)の病因微生物である。感染率が約2%〜約30%の流行地では、これらの疾患が死亡率および罹患率の主要な原因である[Tajima, K., Int. Cancer 45:237-243 (1990)]。
ATLは、疾患の重症度および感染細胞のクローン性に基づき、臨床的に3群に分類される。第1群、くすぶり型白血病は、T細胞の少クローン性増殖/退行によって代表される自己限定性の複数年の段階として現れる。第2群、慢性リンパ種状態は、多クローン性の増殖T細胞集団を伴ったより急性の病型である。第3群、急性臨床的進行性白血病は既知の治療プロファイルに対して抵抗性であり、単クローン性の増殖T細胞集団を特徴とする。比較的長い期間を経過した慢性およびくすぶり型の症例の大多数は進行性型に移行するため、これらの段階は進行性であるという証拠がいくつか存在する[Kinoshita, K.ら、Blood 66(1):120-127 (1985);Yamano, F.ら、Cancer 55(4):851-856(1985)]。
一方、HAMはIL-2依存性非悪性T細胞に起因する。この細胞集団は、この細胞を正常T細胞と明らかに区別する方法で変化している。HAM患者のHTLV-I感染細胞集団は、循環している末梢血単核細胞(PMBC)の30%に到達し得る[Yamano,Y.ら、Blood 99(1):88-94 (2002)]。この細胞はB7/CD28の許容限界所要量を欠き[Scholz, C.ら、J. Immunol. 157(7):2932-2938 (1996)]、おそらくその血液脳関門に進入する能力を表す付着性/侵襲性の増大を示す[Romero, I.A.ら、J. Virol. 74(13):6021-6030 (2000);Trihn, D.ら、J. Biomed. Sci. 4:47-53(1996)]。この疾患は、多くの場合傍観(bystander)細胞応答と言われる、最終的に神経変性を起こす複雑な免疫病理によって起こると記載されている。[Izumo, S.ら、Neuropathology 20(8):Suppl. S65-S68 (2000)]。
人がHTLV-Iに感染しているかどうかを判定する適切な方法が存在するが、どの病態が存在するのかを評価するのに利用できる診断手段はほとんどない。例えば、HTLV-I遺伝子産物、HTLV-I特異的抗体産生、およびHTLV-I DNAの検出についてアッセイする免疫測定法が利用可能である。これらのパラメータでは、ATLとHAMとを識別できない。特定の病態を初期段階で識別する、またはさもなくば診断することにより、病態に合わせた治療または他の療法が可能になり、かつより早い段階で管理して疾患の根絶の助けとする、またはさもなくば予後を改善することが可能になる。比較的迅速にかつ安価で実施可能な、HTLV-I介在性疾患の病態を診断する方法の必要性が存在する。本発明はこの必要性に取り組むものである。
発明の概要
成人T細胞白血病(ATL)、HTLV-I関連脊髄症(HAM)の診断もしくは診断の支援、またはさもなくば陰性診断に用いることができるタンパク質バイオマーカーを見出した。したがって、ATLもしくはHAMの診断を支援する、またはさもなくばATLもしくはHAMを診断するための方法を提供する。
成人T細胞白血病(ATL)、HTLV-I関連脊髄症(HAM)の診断もしくは診断の支援、またはさもなくば陰性診断に用いることができるタンパク質バイオマーカーを見出した。したがって、ATLもしくはHAMの診断を支援する、またはさもなくばATLもしくはHAMを診断するための方法を提供する。
本発明の1つの形態では、診断を支援するまたはさもなくば診断するための方法は、患者由来の試験試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む。タンパク質バイオマーカーは、約2488±5、約2793±6、2955±6、約3965±8、約4285±9、約4425±8、約4577±9、約4913±10、約5202±11、約5343±11、約5830±12、約5874±12、約5911±12、約6116±12、約6144±12、約6366±13、約7304±15、約7444±15、約8359±17、約8609±17、約8943±18、約9094±18、約9152±18、約10113±20、約11738±23、約11948±24、約12480±25、約14706±29、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される分子量を有する。本方法は、検出を、HAM、ATLの可能性のある診断または陰性診断と関連づける段階をさらに含む。
本発明のさらに別の局面では、試験試料中のタンパク質バイオマーカーを検出するための方法を提供する。1つの形態では、方法は、免疫測定法および質量分析法からなる群より選択され得る。HAMまたはATLであると診断された患者においては、タンパク質バイオマーカーは存在する、存在しない、またはさもなくば差次的に発現される。タンパク質バイオマーカーは、約2488±5、約2793±6、2955±6、約3965±8、約4285±9、約4425±8、約4577±9、約4913±10、約5202±11、約5343±11、約5830±12、約5874±12、約5911±12、約6116±12、約6144±12、約6366±13、約7304±15、約7444±15、約8359±17、約8609±17、約8943±18、約9094±18、9152±18、約10113±20、約11738±23、約11948±24、約12480±25、約14706±29、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される分子量を有する。
本発明のさらに別の局面では、本明細書に記載するバイオマーカーを検出するために使用できる、さもなくばATLもしくはHAMを診断する、またはさもなくばATLもしくはHAMの診断を支援するために使用できるキットを提供する。本発明の1つの形態では、キットは、約2488±5、約2793±6、2955±6、約3965±8、約4285±9、約4425±8、約4577±9、約4913±10、約5202±11、約5343±11、約5830±12、約5874±12、約5911±12、約6116±12、約6144±12、約6366±13、約7304±15、約7444±15、約8359±17、約8609±17、約8943±18、約9094±18、9152±18、約10113±20、約11738±23、約11948±24、約12480±25、約14706±29、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持できる、そこに付着した吸着剤を含む基材;および試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤に保持されたバイオマーカーを検出することによってタンパク質バイオマーカーを検出するための説明書を含む。
本発明の別の局面では、HAMまたはATL等のHTLV-I介在性疾患を診断するための、単離されたタンパク質バイオマーカーを提供する。本発明の1つの形態では、タンパク質バイオマーカーは、約2488±5、約2793±6、2955±6、約3965±8、約4285±9、約4425±8、約4577±9、約4913±10、約5202±11、約5343±11、約5830±12、約5874±12、約5911±12、約6116±12、約6144±12、約6366±13、約7304±15、約7444±15、約8359±17、約8609±17、約8943±18、約9094±18、9152±18、約10113±20、約11738±23、約11948±24、約12480±25、約14706±29、および約19900±400ダルトンからなる群より選択される分子量を有する。
本発明の目的は、ATL、HAMを診断するもしくはATL、HAMの診断を支援する、またはさもなくば陰性診断をするための方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、試験試料中のタンパク質バイオマーカーを検出する方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、本明細書に記載するバイオマーカーを検出するために使用できる、さもなくばATLもしくはHAMを診断する、またはさもなくばATLもしくはHAMの診断を支援するために使用できるキットを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、HTLV-I介在性疾患状態を診断するための単離されたタンパク質バイオマーカーを提供することにある。
本発明のこれらおよび他の目的ならびに利点は、本明細書の説明から明らかになると思われる。
好ましい態様の説明
本発明の原理の理解を進める目的で、好ましい態様について参照を作成し、特定の用語を用いてこれを説明する。上記にかかわらず、これに関して本発明の特許請求の範囲に制限を受けないことを意図し、本明細書に説明するような本発明の変更およびさらなる修正、ならびに本発明の原理のさらなる適用を、本発明の関連する当業者が通常考えるように意図することは理解される。
本発明の原理の理解を進める目的で、好ましい態様について参照を作成し、特定の用語を用いてこれを説明する。上記にかかわらず、これに関して本発明の特許請求の範囲に制限を受けないことを意図し、本明細書に説明するような本発明の変更およびさらなる修正、ならびに本発明の原理のさらなる適用を、本発明の関連する当業者が通常考えるように意図することは理解される。
本発明は、HTLV-I関連脊髄症(HAM)[熱帯性痙性対麻痺(TSP)としても知られる]および成人T細胞白血病(ATL)を含むHTLV-I介在性疾患の診断を支援するための方法、およびこの疾患を診断するための方法に関する。本方法により、血液および血清を含む生体液に由来する試料等といった容易に採取可能な試験試料を用いた、疾患系統を決定するおよび疾患転帰を断定するための迅速かつ簡便なアプローチが提供される。本発明の好ましい形態においては、約50μl以下の血液を解析することにより診断を行うことができる。本方法は、前述の病態におけるその存在、非存在、および/もしくは量、またはさもなくば差次的発現が特定の病態に関連づけられ得るタンパク質バイオマーカーの発見を活用するものである。したがって、そのようなタンパク質バイオマーカーもまた本発明において提供する。バイオマーカーを検出する方法もまた本発明に記載し、ATL、HAMの診断もしくは陰性診断を支援するための、またはさもなくば実施するためのキットについても記載する。
本発明の1つの局面において、ATLまたはHAM等のHTLV-I介在性疾患を診断するための方法を提供する。1つの形態では、方法は試験試料中の少なくとも1つのバイオマーカーを検出する段階を含む。タンパク質バイオマーカーは典型的に約20,000ダルトン以下の分子量を有し、本発明の好ましい形態においては、約2488±5、約2793±6、2955±6、約3965±8、約4285±9、約4425±8、約4577±9、約4913±10、約5202±11、約5343±11、約5830±12、約5874±12、約5911±12、約6116±12、約6144±12、約6366±13、約7304±15、約7444±15、約8359±17、約8609±17、約8943±18、約9094±18、9152±18、約10113±20、約11738±23、約11948±24、約12480±25、約14706±29、および約19900±40ダルトンからなる群より選択され得る。本発明のさらなる好ましい形態において、タンパク質バイオマーカーは、約3965±8、約4425±8、約4577±9、約5345±11、約8359±17、約11738±23、および約19900±40ダルトンからの分子量を有する。次に検出を、HAM、ATL、もしくは正常(すなわち、HAMまたはATLを有すると診断されない)の診断、またはさもなくば陰性診断と関連づけることができる。本明細書で用いる「検出」という用語には、タンパク質バイオマーカーの存在、非存在、量、またはそれらの組み合わせの決定が含まれる。
本発明の1つの形態においては、本方法を用いて、例えばATL特異的バイオマーカーの存在または非存在を検出することにより、ATLを診断するまたはATLの診断を支援することができる。例えば、約2488±5、約5202±11、約7304±15、約12480±25、および約19900±40ダルトンのバイオマーカーのうちの少なくとも1つの存在を、ATLの可能性のある診断と関連づけることができる。さらに、約3965±8、約5830±12、約6366±13、約8359±17、および9152±18ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの非存在を、ATLの可能性のある診断と関連づけることができる。加えて、約5345±11ダルトンのバイオマーカーの非存在または以下に記載するような差次的発現を、ATLの可能性のある診断と関連づけることができる。
別の態様においては、本方法を用いて、例えばHAM特異的タンパク質バイオマーカーの存在を検出することにより、HAMを診断するまたはHAMの診断を支援することができる。例えば、対象由来の試験試料中の、約4913±10、約6144±12、および約7444±15ダルトンの分子量を有する少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの存在を、HAMの可能性のある診断と関連づけることができる。
本発明の別の態様においては、選択したタンパク質バイオマーカーの高発現または低発現等の差次的発現を特定の病態と関連づけることができる。差次的に発現されるとは、本明細書では、他と比較してある病態でタンパク質バイオマーカーが高レベルもしくは低レベルで見出されること、またはタンパク質バイオマーカーが1つもしくは複数の病態において高頻度で見出されることを意味する。本発明の1つの形態において、ATLを有する対象由来の試験試料中の選択したタンパク質バイオマーカーは、健常人と比較して上昇している可能性がある。例えば、ATLを有する個人由来の試験試料中には健常人と比較して、約2793±6ダルトンのバイオマーカーは約2倍存在し、約4425±8ダルトンのバイオマーカーは約7倍存在し、約4577±9ダルトンのバイオマーカーは約23倍存在し、約5874±11ダルトンのバイオマーカーは約3倍存在し、約9094±18ダルトンのバイオマーカーは約4倍存在し、約10113±20ダルトンのバイオマーカーは約3倍存在し、約11738±23ダルトンのバイオマーカーは約3倍存在し、約11948±24ダルトンのバイオマーカーは約2倍存在し、約13369±27ダルトンのバイオマーカーは約2倍存在し、約14706±29ダルトンのバイオマーカーは約2倍存在し、および約19900±40ダルトンのバイオマーカーは約4倍存在する。本発明の別の形態では、ATLを有する試験対象における選択したバイオマーカーは、健常人と比較して減少している可能性がある。例えば、ATLを有する個人由来の試験試料中では健常人と比較して、約4290±9ダルトンのバイオマーカーは約3倍低く、約5345±11ダルトンのバイオマーカーは約10倍低く、および5914±12ダルトンのバイオマーカーは約4倍低い。
選択したバイオマーカーの高発現または低発現を、HAMの診断または陰性診断と関連づけることもできる。例えば、HAMを有する個人由来の試験試料中には健常人と比較して、約4577±9ダルトンのバイオマーカーは約3倍存在し、約8613±17ダルトンおよび約19900±40ダルトンのバイオマーカーは約2倍存在する。
したがって、試験試料を少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの存在、非存在、または量について解析することが、診断に役立つ、またはATL、HAMの診断を行う支援となる、または陰性診断を行う支援となることがわかる。診断を行うために、単一のバイオマーカーを用いることもできるが、存在、非存在、または量のいくつかの組み合わせに関して2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または29個すべてといったそれ以上のバイオマーカーを解析することが好ましい。したがって、1つまたは複数のタンパク質バイオマーカーを検出することができるばかりでなく、1個〜6個、1個〜9個、1個〜29個、またはいくつかの組み合わせを検出して本明細書に記載するように解析することができる。さらに、本明細書に記載していない他のタンパク質バイオマーカーを本明細書に開示したタンパク質バイオマーカーのいずれかと組み合わせて、ATL、HAMの診断、もしくは陰性診断に役立てるまたはさもなくばその診断を行うことができる。
試験試料は、多種多様な供給源から得ることができる。試料は典型的に、ATLもしくはHAMに関して試験する、ATLもしくはHAMの危険性が考えられる、ATLもしくはHAMを有すると考えられる対象もしくは患者、またはATLもしくはHAMを診断することが望まれる任意の試験対象に由来する生体液から得る。好ましい生体液は血液または血清である。バイオマーカーが見出され得る他の生体液には、例えば、唾液、涙、リンパ液、痰、粘液、肺/気管支洗浄液、尿、または他の類似の体液が含まれる。さらに、試験試料は、例えば哺乳動物等の動物から、好ましくはヒトから得ることができる。
本明細書に記載するタンパク質バイオマーカーの検出は、様々な方法により行うことができる。したがって、試験試料中のタンパク質を検出する方法も本明細書において提供する。
本発明の1つの形態において、バイオマーカーを検出する方法は、気相イオン分光計を用いた気相イオン分光測定法によりバイオマーカーを検出する段階を含む。本方法は、本明細書に記載するタンパク質バイオマーカー等のバイオマーカーを有する試験試料を、バイオマーカーと吸着剤との結合を可能にする条件下で、その上に吸着剤を含む基材と接触させる段階、および気相イオン分光測定法により吸着剤に結合しているバイオマーカーを検出する段階を含み得る。
多種多様な吸着剤を用いることができる。吸着剤には、疎水基、親水基、陽イオン基、陰イオン基、金属イオンキレート基、もしくは抗原性バイオマーカー特異的に結合する抗体、またはそれらのいくつかの組み合わせ(「混合型」吸収剤等)が含まれる。疎水基を含む例示的な吸着剤には、C1-C18脂肪族炭化水素等の脂肪族炭化水素を有する基質、およびフェニル基を含む芳香族炭化水素機能基を有する基質が含まれる。親水基を含む例示的な吸着剤には、酸化ケイ素、またはポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、デキストラン、アガロース、もしくはセルロース等の親水性ポリマーが含まれる。陽イオン基を含む例示的な吸着剤には、二級アミン、三級アミン、または四級アミンの基質が含まれる。陰イオン基を含む例示的な吸着剤には、硫酸陰イオンの基質、およびカルボン酸陰イオンまたはリン酸陰イオンの基質が含まれる。金属イオンキレート基を含む例示的な吸着剤には、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉄、アルミニウム、およびカルシウム等の金属イオンと配位共有結合を形成し得る1つまたは複数の電子供与基を有する有機分子が含まれる。抗体を含む例示的な吸着剤には、本明細書に提供するバイオマーカーのいずれかに特異的であり、当業者に周知の方法によって容易に作製することができる抗体が含まれる。
さらなる形態では、基材は、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入できるプローブの形態であってよい。例えば、基材はその表面上に吸着剤を有するストリップの形態であってよい。本発明のさらに他の形態では、基材を第2基材の上に設置し、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入できるプローブを形成してもよい。例えば、基材はマーカーを結合するための機能基を有する重合体ビーズまたはガラスビーズ等の固相の形態であってよく、これを第2基材の上に設置してプローブを形成することができる。第2基材は、ストリップ、または所定の位置に一連のウェルを有するプレートの形態であってよい。本発明のこの形態においては、マーカーを第1基材に吸収させ第2基材に移すことができ、次にこれを気相イオン分光計による解析に供することができる。
プローブは、気相イオン分光計に取り外し可能にに挿入できる限りは、円形、楕円形、正方形、長方形、もしくは他の多角形、または他の所望の形を含む、多種多様な所望の形の形態であってよい。プローブはまた、気相イオン分光計の吸気装置および検出器との使用に適合させる、またはさもなくば設定することが好ましい。例えば、手動でプローブを再配置する必要のない、プローブを連続した位置に水平方向および/または垂直方向に動かすような、水平方向および/または垂直方向に移動可能な運搬台にはめ込むように、プローブを適合させてもよい。
プローブを形成する基材は、様々な吸着剤を支持し得る多種多様な材料から作製することができる。例示的な材料には、ガラスおよびセラミック等の絶縁材;シリコン・ウエハー等の半絶縁材;導電材(ニッケル、真ちゅう、スチール、アルミニウム、金、または導電性ポリマー等の金属を含む);有機ポリマー;バイオポリマー;またはそれらの組み合わせが含まれる。
本発明の他の態様では、基材の性質に依存して、基材表面が吸着剤を形成してもよい。他の場合には、基材表面を修飾してその上に所望の吸着剤を組み入れてもよい。プローブを形成する基材の表面は、基材がそれ自体でバイオマーカーに結合できない場合には、マーカーに結合し得る吸着剤に結合するようにプローブを処理するまたはさもなくば調節することができる。または、所望のバイオマーカーに結合する本来の能力を亢進するように、基材の表面を処理するまたはさもなくば調節することも可能である。本発明の使用に適した他のプローブは、例えば国際公開公報第01/25791号(Tai-Tungら)および国際公開公報第01/71360号(Wrightら)に見出すことができる。
吸着剤は、連続的または非連続的なパターンを含む多種多様なパターンでプローブ基材上に設置することができる。1種類の吸着剤または2種類以上の吸着剤を基材表面上に設置することができる。パターンは、線、円等の曲線、または所望されかつ当技術分野で周知の他の形もしくはパターンの形態であってよい。
プローブを作製する方法は、当技術分野で周知のように、基材材料および/または吸着剤の選択に依存することになる。例えば、基材が金属である場合、基材はその上に載せる吸着剤に依存して調製され得る。例えば、基材表面を、金属表面を誘導体化し吸着剤を形成し得る酸化ケイ素、酸化チタン、または金等の材料で被覆してもよい。次に基材表面を、一方が表面の機能基と共有結合等の結合をし、リンカーのもう一方の末端が吸着剤として機能する基によってさらに誘導体化され得る二機能性リンカーを用いて誘導体化することができる。さらなる例として、結晶シリコンから作製された多孔性シリコン表面を含む基材を、マーカーを結合するための吸着剤を含むように化学的に修飾することができる。さらに、例えば、置換アクリルアミドもしくはアクリル単量体、または吸着剤として選択した機能基を含むそれらの誘導体を含む単量体溶液を原位置で重合することにより、ヒドロゲル骨格を有する吸着剤を基材表面上で直接形成することも可能である。
本発明の好ましい形態において、プローブはサイファージェン・バイオシステムズ(Ciphergen Biosystens, Inc.)(カリフォルニア州、パロアルト)から入手可能なチップ等のチップであってよい。チップは、親水性、疎水性、陰イオン交換、陽イオン交換、固定化金属親和性、または前活性化タンパク質チップアレイであってよい。疎水性チップは、逆相相互作用によってタンパク質に結合する長鎖脂肪族表面を含むPtoteinChip H4であってよい。親水性チップは、二酸化ケイ素基材表面を含むPtoteinChip NP1およびNP2であってよい。陽イオン交換タンパク質チップアレイは、陽イオン性タンパク質に結合するカルボン酸表面を有する弱い陽イオン交換アレイであるPtoteinChip WCX2であってよい。またはチップは、二酸化ケイ素被覆アルミニウム基材から作製されたSAX1(強力な陰イオン交換)PtoteinChip、または陰イオン性タンパク質に結合する大容量四級アンモニウム表面を有するPtoteinChip SAX2等の陰イオン交換タンパク質チップアレイであってよい。さらなる有用なチップは、表面上にニトリロ三酢酸を有する固定化金属親和性捕獲チップ(IMAC3)であってよい。さらに別の場合には、アミノ基と共有結合的に反応するカルボニルジイミダゾール表面を含むPtoteinChip PS1が利用でき、またはアミン基およびチオール基と共有結合的に反応するエポキシ表面を含むPtoteinChip PS2を利用してもよい。
バイオマーカーの検出法の1つの形態において、プローブを試験試料と接触させる。試験試料は、本明細書に前記したような生体液試料であることが好ましい。本発明の好ましい形態において、試料は血清試料である。必要に応じて、プローブと接触させる前に、試料を溶離液に溶解するかまたは溶離液と混合することができる。浴浸漬、浸漬、液浸、噴霧、洗浄、分注、または他の所望の方法を含む多種多様な技法によって、プローブを試験試料と接触させることができる。プローブの吸着剤が試験試料液と好ましく接触できるように、方法を実施する。試料中の1つまたは複数のバイオマーカーの濃度は変動し得るが、吸着剤に結合させるために、約1μl〜約500μl溶液中に約1アトモル〜約100ピコモルのマーカーを含む量の試験試料を接触させることが一般に望ましい。
バイオマーカーが吸着剤に結合するのに可能な十分な時間、試料とプローブを相互に接触させる。この時間は試料の性質、バイオマーカーの性質、吸着剤の性質、およびバイオマーカーを溶解した溶液の性質に依存して変動し得るが、典型的には試料と吸着剤を約30秒間〜約12時間、好ましくは約30秒間〜約15分間接触させる。
プローブを試料に接触させる際の温度は、試料の性質、バイオマーカーの性質、吸着剤の性質、およびバイオマーカーを溶解した溶液の性質に依存することになる。一般に、外界の温度および圧力および条件下で、試料をプローブと接触させることができる。しかし、温度および圧力は必要に応じて変更してよい。例えば、温度は約4℃〜約37℃で変更できる。
マーカーが吸着剤、または吸着剤を用いない場合には基材表面に結合するのに十分な時間、試料をプローブと接触させた後、結合した物質のみがそれぞれの表面に残存するように、非結合の物質を基材または吸着剤表面から洗浄除去する。洗浄は、例えば、浴浸漬、浸漬、液浸、リンス、噴霧することにより、またはさもなくばそれぞれの表面を溶離液もしくは他の洗浄液を用いて洗浄することにより達成することができる。溶離液等の洗浄液をプローブ上の吸着剤の小さな部位に挿入する場合には、マイクロフルイディクス(microfluidics)過程を用いることが好ましい。洗浄液の温度は変動し得るが、典型的に約0℃〜約100℃、好ましくは約4℃および約37℃である。
多種多様な洗浄液を使用して、プローブ基材表面を洗浄することができる。洗浄液は、有機溶液または水溶液であってよい。例示的な水溶液は、HEPES緩衝液、Tris緩衝液、リン酸緩衝食塩水、または当業者に周知の他の類似の緩衝液を含む緩衝液であってよい。特定の洗浄液の選択は、バイオマーカーの性質および用いる吸着剤の性質に依存することになる。例えば、SCXI PtoteinChip(登録商標)アレイのように、プローブが吸着剤として疎水基およびスルホン基を含む場合には、HEPES緩衝液等の水溶液を用いることができる。さらなる例として、Ni(II) PtoteinChip(登録商標)アレイのように、プローブが吸着剤として金属結合基を含む場合には、リン酸緩衝食塩水等の水溶液が好ましい。さらなる例として、HF PtoteinChip(登録商標)アレイのように、プローブが吸着剤として疎水基を含む場合、水が好ましい洗浄液となり得る。。
溶液中に存在するようなエネルギー吸収分子を、プローブの基材表面上に結合しているバイオマーカーまたは他の物質に添加することができる。本明細書で用いる「エネルギー吸収分子」とは、気相イオン分光計のエネルギー源からのエネルギーを吸収する分子を指し、これはマーカーまたは他の物質のプローブ表面からの脱離を支援し得る。例示的なエネルギー吸収分子には、桂皮酸誘導体、シナピン酸、ジヒドロ安息香酸、および当業者に周知の他の類似の分子が含まれる。エネルギー吸収分子は、好ましくは非結合の物質をプローブ基材表面から洗浄除去した後に、例えば噴霧、分注、または液浸を含む、試料とプローブ基材との接触について本明細書で先に考察した多種多様な技法により添加することができる。
マーカーを適切にプローブに結合させた後、気相イオン分光計を用いて、マーカーを検出、定量することができる、および/またはさもなくばその特徴を決定することができる。当技術分野で周知のように、気相イオン分光計には、例えば、質量分析計、イオン移動度分光計、および全イオン電流測定装置が含まれる。
好ましい態様においては、質量分析計を用いて、プローブの基材表面に結合しているバイオマーカーを検出する。表面にマーカーの結合したプローブを、質量分析計の吸気装置に挿入することができる。次に、レーザー、高速原子衝撃、プラズマ、または当業者に周知の他の適切なイオン源等のイオン源により、マーカーをイオン化することができる。生じたイオンは典型的にイオン光学アセンブリにより収集され、次に質量分析器により通過するイオンが分散および解析される。質量分析器から抜け出たイオンは、検出器によって検出される。検出器は、検出したイオンの情報を質量電荷比に変換する。マーカーの検出および/または定量は典型的に、シグナル強度の検出を含む。
本発明のさらなる好ましい形態において、質量分析計はレーザー脱離飛行時間型質量分析計であり、さらに好ましくは表面増強レーザー脱離飛行時間型質量分析計(SELDI-TOF-MS)を使用する。SELDIでは、分析物を載せる表面が、分析物の捕獲および/または脱離において積極的な役割を果たす。
当技術分野で周知のように、レーザー脱離質量分析法では、マーカーの結合したプローブを吸気装置に挿入する。レーザーイオン源により、マーカーは脱離して気相内にイオン化される。生じたイオンはイオン光学アセンブリによって収集される。イオンは、飛行時間型質量分析器において比較的短い高電圧電場を通過し加速され、高真空チャンバー内へのドリフトが可能になる。加速されたイオンは、異なる時間で、高真空チャンバーの遠端の高感度検出器表面に衝突するが、これは所与のイオンに特有であり再現性が得られる。飛行時間はイオン質量の関数であるため、イオン化と衝突との間の経過時間を用いて、特定質量の分子の有無を同定することができる。相対量または絶対量でのバイオマーカーの定量は、バイオマーカーの示すシグナル強度を、対照量のバイオマーカーまたは当技術分野で周知の他の標準物質と比較することによって達成し得る。レーザー脱離飛行時間型質量分析計の成分を、本明細書に記載するおよび/または当業者に周知の、脱離、加速、検出、または時間測定の様々な手段を用いる他の成分と組み合わせることが可能である。
さらなる態様において、バイオマーカーの検出および/または定量は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)によって達成することができる。MALDIはまた、固体相から気相への直接的な生物試料の気化およびイオン化を提供する。当技術分野において周知のように、好ましくはこの過程において分析物の分解を防ぐため、所望の分析物を含む試料を、分析物と共に結晶化する基質に溶解するかまたはさもなくば懸濁する。
本発明の別の形態では、イオン移動度分光計を用いて、本明細書に記載するバイオマーカーを検出および特徴づけすることができる。イオン移動度分光計の原理は、イオンの異なる移動度に基づく。具体的には、イオン化によって生じた試料のイオンは、例えば質量、電荷、または形状の違いにより、電場の影響下でチューブ内を異なる速度で移動する。イオン(典型的に電流の形態で)は検出器に記録され、次にこれを用いて試料中のマーカーまたは他の物質が同定され得る。イオン移動度分光計の1つの利点は、大気圧で作動し得る点である。
別の態様では、全イオン電流測定器を用いて、本明細書に記載するバイオマーカーを検出および特徴づけることができる。例えば、プローブが単一種類のマーカーのみの結合を可能にする界面化学を有する場合に、この装置を用いることができる。単一種類のマーカーがプローブに結合する場合、イオン化したバイオマーカーから生じた全電流はマーカーの性質を反映する。次に、バイオマーカーによって生じた全イオン電流を、既知化合物の保存してある全イオン電流と比較することができる。次いで、バイオマーカーの特徴が決定され得る。
バイオマーカーの脱離および検出によって作成されたデータは、プログラム可能なデジタルコンピューターを用いて解析することができる。コンピュータープログラムは一般に、コードを保存する可読媒体を含む。プローブ上の各特徴の位置、その特徴の存在する吸着剤の同一性、および吸着剤を洗浄するために用いた溶出条件を含むある種のコードを、メモリに供することができる。次にこの情報を用いて、用いた吸着剤および溶離液の種類等の特定の選択特性を規定して、プログラムでプローブ上の一連の特徴を同定することができる。コンピューターはまた、入力として、プローブ上の特定のアドレス可能位置から受け取る様々な分子量におけるシグナル強度でデータを受け取るコードを含む。このデータは検出されたバイオマーカーの数を示し得り、状況に応じて検出された各バイオマーカーのシグナル強度および決定された分子量を含む。
データ解析には、検出されたバイオマーカーのシグナル強度(例えば、ピークの高さ、ピークの面積)を決定する段階、および「外れ値(outerliers)」(所定の統計的分布から外れたデータ)を除去する段階を含み得る。例えば、ある参照に対する各ピークの高さを算出する過程によって、観察されたピークを標準化することができる。例えば、参照は装置および化学物質(例えばエネルギー吸収分子)によって生じるバックグラウンドノイズであってよく、これを目盛りのゼロと設定する。次にシグナル強度を各バイオマーカーついて検出することができ、または他の物質を所望の目盛りの相対強度(例えば100)の形態で表すことができる。または、標準物質によるピークを参照として用いて、検出される各バイオマーカーまたは他のマーカーで観察されるシグナルの相対強度を計算できるように、試料内に標準物質を含めてもよい。
コンピューターは、結果として得られたデータを様々な表示型式に変換することができる。「スペクトル図またはリテンテートマップ(retentate map)」と称される1つの例示的な型式では、それぞれ特定の分子量において検出器に到達したバイオマーカーの量を示す、標準的なスペクトル図が示され得る。「ピークマップ」と称される別の例示的な型式では、スペクトル図からピークの高さおよび質量情報のみが抽出され、より明瞭な像が得られ、ほぼ等しい分子量を有するマーカーがより容易に見えるようになる。「ゲル図」と称されるさらに別の型式では、ピーク図の各質量が各ピークの高さに基づき濃淡の像に変換され、電気泳動ゲル上のバンドに類似した形が得られる。「3-Dオーバーレイ」と称されるさらなる例示的型式では、いくつかのスペクトルが重ねられ、相対的なピークの高さで微妙な変化を検討することができる。「相違マップ図」と称されるさらなる例示的型式では、一意的なバイオマーカーまたは試料間で上方制御されたまたは下方制御されたバイオマーカーを都合よく強調し、2つまたはそれ以上のスペクトルを比較することができる。任意の2つの試料に由来するバイオマーカープロファイル(スペクトル)を、視覚的に比較することができる。
上記の表示型式のいずれかを用いて、特定の分子量を有するバイオマーカーが試料から検出されるかどうかをシグナル表示から容易に決定することが可能である。さらに、シグナル強度から、プローブ表面に結合したマーカーの量を決定することができる。
試験試料は、気相イオン分光測定に供する前に前処理してもよい。例えば、解析のためにより単純な試料が提供されるように、試料を精製またはさもなくば前分画することができる。試験試料に存在する生体分子の任意の精製手順は、大きさ、電荷、および機能等の生体分子の特定に基づき得る。精製法には、遠心分離、電気泳動、クロマトグラフィー、透析、またはこれらの組み合わせが含まれる。当技術分野で周知のように、電気泳動を使用して、大きさおよび電荷に基づき生体分子を分離することができる。電気泳動手順は当業者に周知であり、これには等電点電気泳動、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、アガロースゲル電気泳動、および電気泳動の他の周知の方法が含まれる。
精製段階は、サイズ分画、電荷による分画、および分離する生体分子の他の特性による分画を含むクロマトグラフィー分画技法によって達成してもよい。当技術分野で周知のように、クロマトグラフィー系は固定相および移動相を含み、分離は分離する生体分子と種々の相との相互作用に基づく。本発明の好ましい形態においては、カラムクロマトグラフィー手順を用いることができる。そのような手順には、分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーが含まれる。そのような方法は当業者に周知である。サイズ排除クロマトグラフィーでは、サイズ分画カラムにより、分子量が約20,000ダルトンを超える分子を排除することが好ましい。
本発明の好ましい形態においては、気相イオン分光測定に供す前に、リテンテートクロマトグラフィーにより、バイオクロマトグラフィーチップ上で試料を精製するかまたはさもなくば分画する。好ましいチップは、サイファージェン・バイオシステムズ(カリフォルニア州、パロアルト)から入手可能なPtoteinChip(商標)である。上記のように、チップまたはプローブを質量分析計での使用に適合させる。チップは、その表面に付着した吸着剤を含む。ある適用において、この吸着剤はインサイチュークロマトグラフィー樹脂として機能し得る。操作において、試料を溶離液中で吸着剤に添加する。それに対して吸着剤が親和性を有する分子は、洗浄条件下で吸着剤に結合する。吸着剤に結合しない分子は、洗浄により除去される。解析するのに適当なレベルまで分析物が保持されるまたは溶出されるように、様々なレベルのストリンジェンシーで吸着剤をさらに洗浄することができる。次に、エネルギー吸収分子を吸着部分に添加し、さらに脱離およびイオン化を促進することができる。吸着剤からの脱離、イオン化、および検出器による直接的検出により、分析物が検出される。したがって、リテンテートクロマトグラフィーは、従来のクロマトグラフィーでは親和性物質から溶出された物質が検出されるのに対し、親和性物質によって保持された分析物が検出される点で、従来のクロマトグラフィーとは異なる。
本発明のさらに別の形態では、本発明のバイオマーカーを、免疫測定手順により定性的にまたは定量的に検出することができる。免疫測定法は典型的に、試験試料を、バイオマーカーに特異的に結合するまたはさもなくばこれを認識する抗体と接触させる段階、および試料中のバイオマーカーに結合した抗体の複合体の存在を検出する段階を含む。バイオマーカーは、HAMまたはATLから選択されるHTLV-I介在性疾患であると診断される対象に、存在する、非存在である、または差次的に発現されるバイオマーカーであることが好ましい。さらに、バイオマーカーは、約2488±5、約2793±6、2955±6、約3965±8、約4285±9、約4425±8、約4577±9、約4913±10、約5202±11、約5343±11、約5830±12、約5874±12、約5911±12、約6116±12、約6144±12、約6366±13、約7304±15、約7444±15、約8359±17、約8609±17、約8943±18、約9094±18、9152±18、約10113±20、約11738±23、約11948±24、約12480±25、約14706±29、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される分子量を有することが好ましい。本発明の好ましい形態において、タンパク質バイオマーカーは、約3965±8、約4425±8、約4577±9、約5343±11、約8359±17、約11738±23、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される分子量を有する。免疫測定手順は、競合的または非競合的酵素免疫測定法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、およびウェスタンブロット法を含む、抗体/抗原複合体の認識が関与する、当業者に周知の多種多様な免疫測定手順から選択され得る。そのようなアッセイ法は当業者に周知であり、例えば、HarlowおよびLaneによる「Antibodies: A Laboratory Manual」(1988);「Immunoassays: A Practical Approach」Oxford University Press, Gosling, J.P.(編) (2001)、および/または定期的に改正される「Current Ptorocols in Molecular Biology」(Ausbelら)に十分に記載されている。
本明細書に記載する免疫測定法で使用する抗体はポリクローナル抗体であってよく、単離されたまたはさもなくば精製されたバイオマーカーを様々な動物に注射する段階、および血清中に産生された抗体を単離する段階を含む、当業者に周知の手順によって得ることができる。抗体はモノクローナル抗体であってもよく、その作製法は当業者に周知であり、単離されたまたはさもなくば精製されたバイオマーカーを例えばマウスに注射する段階、抗血清を産生する脾臓細胞を単離する段階、この細胞を腫瘍細胞と融合してハイブリドーマを形成する段階、およびハイブリドーマをスクリーニングする段階を含む。本明細書に前記したクロマトグラフィー、電気泳動、および遠心分離手順を含む当業者に周知の技法によって、まずバイオマーカーを同様に精製することができる。そのような手順は、タンパク質バイオマーカーの大きさ、電荷、溶解度、選択した成分への結合親和性、これらの組み合わせ、またはタンパク質の他の特徴もしくは特性を活用し得る。そのような方法は当業者に周知であり、例えば、「Current Protocols in Protein Science」J. Wiley and Sons, New York, NY, Coliganら(編) (2002);Harris, E.L.V.およびS. Angal、「Protein purification applications: a practical approcach」Oxford University Press New York, MY (1990)に見出すことができる。抗体が提供されたならば、本明細書に前記した免疫測定法により、バイオマーカーを検出および/または定量することができる。
免疫測定法の特定の手順は当業者に周知であるが、まず試験対象から本明細書で前記したような試料を得ることにより免疫測定法を行うことができる。抗体/タンパク質バイオマーカー複合体の洗浄および次の単離を容易にするため、抗体を試料と接触させる前に、抗体を固相支持体に固定することができる。固相支持体の例は当業者に周知であり、これには、例えば、マイクロタイタープレートといった形態のガラスまたはプラスチックが含まれる。抗体は、本明細書に記載するProteinChip(商標)等のプローブ基材に付着させてもよい。
試験試料を抗体とインキュベートした後、混合物を洗浄し、抗体-マーカー複合体を検出することができる。検出は、洗浄した混合物を検出試薬と共にインキュベートし、例えば色または他の指標の出現を観察することによって達成され得る。検出試薬は、例えば、検出可能な標識で標識した二次抗体であってよい。例示的な検出可能な標識には、磁気ビーズ(例えばDYNABEADS(商標))、蛍光色素、放射標識、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および酵素免疫測定手順で一般に用いられる他の酵素)、およびコロイド金、色ガラス、もしくはプラスチックビーズ等の比色標識が含まれる。または、例えば二次標識抗体を用いて結合したマーカー特異的抗体を検出する間接的アッセイ法を用いて、および/またはマーカーの異なるエピトープに結合するモノクローナル抗体を混合物と同時にインキュベートする競合もしくは阻害アッセイ法により、試料中のマーカーを検出することもできる。抗体-マーカー複合体の量は、標準物質との比較により決定することができる。
アッセイの間、それぞれの試料の組み合わせの後に、インキュベーションおよび/または洗浄段階が必要とされ得る。インキュベーション段階は約5秒〜数時間、好ましく約5分〜24時間で変動し得る。しかしインキュベーション時間は、特定の免疫測定法、バイオマーカー、およびアッセイ条件に依存することになる。通常、アッセイは外気温度で行うが、約0℃〜約40℃等の範囲で行ってもよい。
本発明のさらに別の局面では、例えば本明細書に記載したバイオマーカーを検出するために使用し得るキットを提供する。例えばキットを用いて、HAM、ATLの診断、もしくは陰性診断をする、またはそれらの診断を支援するために有利に使用し得る、本明細書に記載の任意の1つまたは複数のバイオマーカーを検出することができる。1つの態様において、キットは、好ましくは本明細書に記載した1つまたは複数のタンパク質バイオマーカーへの結合に適した吸着剤をその上に含む基材、および本明細書に記載する試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによってバイオマーカーを検出するための説明書を含み得る。ある態様では、キットは、例えば気相イオン分光測定を使用して、溶離液と吸着剤の組み合わせによりタンパク質バイオマーカーの検出を可能にする溶離液、または溶離液を作製するための説明書を含み得る。そのようなキットは、本明細書に記載した物質から調製することができる。さらに別の態様において、キットは、その上に吸着剤を含む第1基材(例えば、吸着剤で機能化した粒子)、および第1基材がその上に設置されて、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入できるプローブを形成し得る第2基材を含み得る。他の態様では、キットは、基材上に吸着剤を有する、取り外し可能に挿入できるプローブの形態である単一の基材を含み得る。さらに別の態様では、キットは前分画スピンカラム(例えば、K-30サイズ排除カラム)をさらに含んでもよい。
キットは、ラベルまたは別の挿入物の形態をした、パラメータを適切に操作するための説明書をさらに含み得る。例えばキットは、消費者または他の個人に、試料をプローブと接触させた後いかにしてプローブを洗浄するかの情報を与える標準的説明書を有し得る。さらなる例として、キットは、試料中のタンパク質の複雑性を減少させるために試料を前分画するための説明書を含み得る。
さらなる態様において、キットはマーカーに特異的に結合する抗体および検出試薬を含んでよい。そのようなキットは、本明細書に記載する材料から調製することができる。キットは、上記の前分画スピンカラム、およびラベルまたは別の挿入物の形態をした、パラメータを適切に操作するための説明書をさらに含み得る。
本発明のさらに別の局面では、HTLV-I介在性疾患病態を診断するための単離されたまたはさもなくば精製されたバイオマーカーを提供する。本明細書で用いる「単離されたタンパク質バイオマーカー」という用語は、その天然環境中に存在しないタンパク質バイオマーカーを指すことを意図する。タンパク質は、例えば、脂質、核酸、炭水化物、および他のタンパク質等の、天然状態でタンパク質に付随する混入物から分離される。この用語には、天然環境から分離または精製されたタンパク質が含まれ、さらにタンパク質単離体および化学的に合成されたタンパク質も含まれる。本発明の1つの形態において、タンパク質バイオマーカーは、HAMまたはATl等のHTLV-I介在性疾患病態と診断される対象において、存在する、非存在である、および/または差次的に発現される。タンパク質は典型的に、約20,000ダルトン以下の分子量を有する。本発明の好ましい形態に、タンパク質バイオマーカーは、約2488±5、約2793±6、2955±6、約3965±8、約4285±9、約4425±8、約4577±9、約4913±10、約5202±11、約5343±11、約5830±12、約5874±12、約5911±12、約6144±12、約6116±12、約6366±13、約7304±15、約7444±15、約8359±17、約8609±17、約8943±18、約9094±18、約9152±18、約10113±20、約11738±23、約11948±24、約12480±25、約14706±29、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される分子量を有する。さらに、タンパク質は金属結合タンパク質である。本明細書に定義する「金属結合タンパク質」という用語は、例えばCu2+、Zn2+、Ni2+、およびMg2+等の金属イオンを含む金属への結合親和性を有するタンパク質である。
ここで、特定の実施例に対する参照を作成し、上記の構成および方法について説明する。実施例は好ましい態様を説明するために提供するものであり、これにより本発明の特許請求の範囲が制限されないことを意図することを理解されたい。
実施例1
HTLV-I感染患者の血清タンパク質プロファイリングへのSELDI-TOF質量分析法の適用
材料および方法
試料の取得および調製
同意を得た後に、個人から全血を採取した。血液を10 cc血清分離バキュテイナーチューブに収集し、3750 rpmで5分間遠心分離して血清画分を分離した。血清は直ちに氷中に移した。次いで試料を500μl画分ずつ分注し、6時間以内に-70℃で保存した。各画分の解析前の凍結融解は1回に限定した。
HTLV-I感染患者の血清タンパク質プロファイリングへのSELDI-TOF質量分析法の適用
材料および方法
試料の取得および調製
同意を得た後に、個人から全血を採取した。血液を10 cc血清分離バキュテイナーチューブに収集し、3750 rpmで5分間遠心分離して血清画分を分離した。血清は直ちに氷中に移した。次いで試料を500μl画分ずつ分注し、6時間以内に-70℃で保存した。各画分の解析前の凍結融解は1回に限定した。
SELDI-TOF-MC/分類アルゴリズム
分類論理に用いたアルゴリズムは累積確率に基づく。本質的に、各クラスターの全発生率(全試料集団においてどの位の頻度でピークが現れるか)、群発生率(特定の群の試料のうち何%がピークを有するか)を考慮に入れ、および発現データに関しては強度の変動係数(CV%)も考慮に入れた別々のプロファイルを、発現データおよび存在/非存在(P/A)データについて作成する。さらに、P/Aデータに関しては、ピークm/z=5000の発生率が、ATL(50%)、HAM(10%)、正常(5%)でのピークm/z=2000と比較してATLによりより比重を置いたATL(100%)、HAM(2%)、正常(0%)となるように、クラスターの変動性の程度を算出する関数を作成した。
分類論理に用いたアルゴリズムは累積確率に基づく。本質的に、各クラスターの全発生率(全試料集団においてどの位の頻度でピークが現れるか)、群発生率(特定の群の試料のうち何%がピークを有するか)を考慮に入れ、および発現データに関しては強度の変動係数(CV%)も考慮に入れた別々のプロファイルを、発現データおよび存在/非存在(P/A)データについて作成する。さらに、P/Aデータに関しては、ピークm/z=5000の発生率が、ATL(50%)、HAM(10%)、正常(5%)でのピークm/z=2000と比較してATLによりより比重を置いたATL(100%)、HAM(2%)、正常(0%)となるように、クラスターの変動性の程度を算出する関数を作成した。
結果
群1
本明細書に記載するタンパク質プロファイリングは、ATLおよびHAMに特異的な特徴的発現「フィンガープリント」を表した。本実施例では、NIH由来の血清試料の一群を用いた。この群を、ATL(n=15)、HAM(n=30)、正常(n=30)に予め分類した。臨床的重症度に関して初期段階での選択は行っておらず、対照はHTLV-Tに感染していないと考えられた。
群1
本明細書に記載するタンパク質プロファイリングは、ATLおよびHAMに特異的な特徴的発現「フィンガープリント」を表した。本実施例では、NIH由来の血清試料の一群を用いた。この群を、ATL(n=15)、HAM(n=30)、正常(n=30)に予め分類した。臨床的重症度に関して初期段階での選択は行っておらず、対照はHTLV-Tに感染していないと考えられた。
スペクトルデータの再現性
信頼できる疾患診断および初期検出に関する臨床アプローチの重要な局面は再現性である。SELDI過程において、再現性に必須のいくつかの段階を開発した。装置の実行の初期化およびモニタリングを可能にする標準的な較正段階の域を超えた最適実行パラメータを確立した。これは、プールした血清標準物質中に常に存在する3つのピーク(m/z 5914±12、7764±16、9284±19)が正確な所定の基準で示されるように、レーザー強度、検出器電位、および検出器電流を調整することによって達成した。具体的には、3つのピークの全ての分解値が400を超えることが必要であり、シグナルとノイズの比率がm/z 5914では≧40であり、m/z 7764および9284では≧80である。これらの基準を用いて、2つのそのような装置を同期化した。
信頼できる疾患診断および初期検出に関する臨床アプローチの重要な局面は再現性である。SELDI過程において、再現性に必須のいくつかの段階を開発した。装置の実行の初期化およびモニタリングを可能にする標準的な較正段階の域を超えた最適実行パラメータを確立した。これは、プールした血清標準物質中に常に存在する3つのピーク(m/z 5914±12、7764±16、9284±19)が正確な所定の基準で示されるように、レーザー強度、検出器電位、および検出器電流を調整することによって達成した。具体的には、3つのピークの全ての分解値が400を超えることが必要であり、シグナルとノイズの比率がm/z 5914では≧40であり、m/z 7764および9284では≧80である。これらの基準を用いて、2つのそのような装置を同期化した。
2つめの検討事項は、盲目的および無作為に(不偏的に)試料の解析を行うことである。これを達成するためにグリッドを引く;血清タンパク質の親和性捕獲に用いるPtoteinChip(登録商標)はそれぞれ8スポットを有し、96ウェル型式で単位当たり12チップで処理される。3つ組または臨床状態とグリッドの位置の偏りを防ぐため、グリッド内に試料を指定する自家プログラムを作成した。すべての試料の処理および配列したチップの解読は、48時間で行われる。処理段階に盲目的な個人によって試料がグリッド位置に指定され、分類段階においてコードが明かされた。各試料は3つ組で処理し、値を平均してから解析した。
スペクトルデータの再現性は、図1Aおよび1Bを参照することによって認められる。図1Aは、記載した3つの異なる装置で処理した同じ血清試料のSELDIプロファイルを示す。図1Bは、各クラスによる3つの別々の代表的な個人のスペクトルを示す。同一試料のスペクトル間のばらつきは質量指定に対して0.2パーセント未満であり、発現振幅は15〜20%CVを示した。
異なるタンパク質発現プロファイルのピーク発掘
試料ごとおよびクラスごとに異なる個々のピークを同定する課題は、任意のハイスループット質量分析法に基づくプロテオミクスアプローチの主要部分である。優先順位づけおよび順位づけは、クラスにおける存在または非存在および相対的発現レベルに基づいて達成される。バイオマーカー・ウィザード・ユーティリティ(Ciphergen Biosystems)を用いて、分類解析のためのデータを調製した。すべてのデータセットを較正および標準化した後、各群の少なくとも10%に存在する一貫したピークセットまたはクラスターを、0.2%の質量枠に基づき作成する。各ピークセットに対して強度値が報告され、群間の相違を同定することができる。したがって、上記したように、ピークは、ATL、HAM、または正常において多くまたは少なく発現されることに基づき同定される。さらに、ATL、HAM、または対照クラスに特異的に存在するとして同定される。
試料ごとおよびクラスごとに異なる個々のピークを同定する課題は、任意のハイスループット質量分析法に基づくプロテオミクスアプローチの主要部分である。優先順位づけおよび順位づけは、クラスにおける存在または非存在および相対的発現レベルに基づいて達成される。バイオマーカー・ウィザード・ユーティリティ(Ciphergen Biosystems)を用いて、分類解析のためのデータを調製した。すべてのデータセットを較正および標準化した後、各群の少なくとも10%に存在する一貫したピークセットまたはクラスターを、0.2%の質量枠に基づき作成する。各ピークセットに対して強度値が報告され、群間の相違を同定することができる。したがって、上記したように、ピークは、ATL、HAM、または正常において多くまたは少なく発現されることに基づき同定される。さらに、ATL、HAM、または対照クラスに特異的に存在するとして同定される。
この選択過程を用いて、ATLおよびHAMに関して多くの潜在的分類子ピークを見出した(全部で63ピーク)。いくつかの種類の異なるピーク事象をスコアリングした:1) ピークが特定のクラスにおいて高発現または低発現された;2)正常からHAMそしてATLへと、ピークが次第に現れた、またはその逆であった;3) 特定のクラスにおいてのみピークが存在した、または欠損していた。これらのバイオマーカーの例を図2および3に示し、本明細書で考察する。
同定されたピークの分類値に対する決定ツリーアルゴリズムの適用
分類ツリーと回帰ツリー法(CART)による解析を用いて、診断バイオマーカーとしての個々のピークの有用性の検証に取り組んだ。CART解析は当技術分野で周知であり、例えばBreiman, L、Friedman, J.、Olshen, R.、およびStone, C.J. (1984) Classification and Regression Trees, Chapman and Hall, Mew Yorkに記載されている。本明細書に記載したように決定したピーク値(全部で63ピーク)を入力し、各クラスに対してフィット値の割当を求めた。結果を表1に示す。
分類ツリーと回帰ツリー法(CART)による解析を用いて、診断バイオマーカーとしての個々のピークの有用性の検証に取り組んだ。CART解析は当技術分野で周知であり、例えばBreiman, L、Friedman, J.、Olshen, R.、およびStone, C.J. (1984) Classification and Regression Trees, Chapman and Hall, Mew Yorkに記載されている。本明細書に記載したように決定したピーク値(全部で63ピーク)を入力し、各クラスに対してフィット値の割当を求めた。結果を表1に示す。
表1を参照すると、ATLから正常を(約19900±40、約11738±23、約5202±11、約4577±9、約4425±8、および約3965±8ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの示す6つのピークを用いて、ATLの100%および正常の100%が正確に同定された)またはHAMから正常を(約11738±23、約7444±15、約6144±12、約4577±9、約5343±11、および約9152±18ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの示す6つのピークを用いて、HAMの90%および正常の80%が正確に同定された)識別する能力が非常に高かった。3方向の解析では、個々のクラスの同定は教訓的解析よりも劣るが、依然として高かった(約19900±40、約11738±23、約9094±18、約7444±15、約6144±12、約5914±12、約4577±9、約4425±8、および約3965±8ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの示す9つのピークを用いて、ATLの93.3%、HAMの80%、および正常の70%が正確に同定された)。CART解析から、最も変動する重要性を含むピーク値も示された。これらの値は、精製目的で視覚的に検証した後に標的とされる。
図2、3、および4のピークをそれぞれCARTアプローチにより使用した。興味深いことに、ウイルス添加を分類子として使用した場合、疾患特異的ピークはどれも有意に関連性がなかった。したがって、疾患特異的発現プロファイルは、宿主由来によるものであり、ウイルスに直接由来するものではないと考えられる。
累積確率分類図式の適用
ATL 100%が正確に分類された
HAM 75%が正確に分類された
正常 100%が正確に分類された
ATL 100%が正確に分類された
HAM 75%が正確に分類された
正常 100%が正確に分類された
群2
群1に対して記載した実験を、群1と同様に取得して調製したより大きな試料数で繰り返した。試験群2は、48 ATL、60 HAM、および50正常対照からなる。どのピークが潜在的に有用な分類子であるかについてユーザー定義の基準を決定する、群1について上記したバイオマーカー・ウイザード・ユーティリティを、群2においても使用した。この選択過程により、表2に見られるように、ATLおよびHAMに対して多くの潜在的分類子ピークが見出された。
群1に対して記載した実験を、群1と同様に取得して調製したより大きな試料数で繰り返した。試験群2は、48 ATL、60 HAM、および50正常対照からなる。どのピークが潜在的に有用な分類子であるかについてユーザー定義の基準を決定する、群1について上記したバイオマーカー・ウイザード・ユーティリティを、群2においても使用した。この選択過程により、表2に見られるように、ATLおよびHAMに対して多くの潜在的分類子ピークが見出された。
表2は、群間で差次的に発現される、存在する、または非存在である、群2において選択されたピークを示す。選択されたピークのそれぞれに対して認められた質量(ダルトン)を示す。それぞれに対し、高発現/低発現されるピークの全体的普及率およびクラス特異的発現倍率を示す。群間での存在または非存在を示すピークの分子量(ダルトン)を、群特異的普及率と共に記載する。
群1と全く同様に、分類ツリーと回帰ツリー法(CART)による解析を用いて、診断バイオマーカーとしての個々のピークの有用性の検証に取り組んだ。CARTソフトウェア束は、類似の順位づけ過程を用いてクラス間を識別する能力についてピークを評価し、次に各クラスに対してフィット値の割当を適用する。可能性のある多くのツリーが訓練およびクロス確認から生じ、これらを分類の成功に関して順位づけた。最も性能の優れた訓練ツリーを盲検試験セットに供し、最も高い分類比率を有する最終的なツリーを選択した。アルゴリズムは同様に、3つの図式による分離を対象とした;ATL対正常;ATL対HAM+正常;およびHAM対正常。ツリー決定は、選択したピークの発現に関する単純な数的閾値を用いて作動する。この過程を説明するため、ATL対正常ツリーにおける各分配ピークについての散布図での実際の相対値を図5Bに示す。この決定ツリーにおいて、11.7 kDのピークはATLと正常を効率的に識別することができる。しかし、この群での最も優れた分離は8つのピークを用いて達成された。
訓練セットの5倍クロス確認を用いて、正常からATLを識別する能力は、94%の感度および97%の特異性で達成された。盲検試験セットでは、ATLの90%が正確に分類され(9/10)、正常の100%が正確に分類される(10/10)という結果であった。非ATLからATLを識別することも有用であるが、最も有用な臨床的分離はATL、HAM、および正常間での分離である。この分離を達成するため、2つの教訓的ツリー、ATL対HAM+正常およびHAM対正常を使用した。回帰ツリー解析の適用により、図6に示すツリーが得られた。
図6Aを参照すると、ATL対HAM+正常のクロス確認および訓練から、91%の感度および75%の特異性という結果が得られた。盲検試験セットでは、ATLの正確な分類90% (9/10)、HAMおよび正常の正確な分類90%が達成された。同様に、HAM対正常のクロス確認および訓練では、図6Bに見られるように90%の感度および75%の特異性という結果が得られた。この群での盲検試験セットの結果は、さらに図6Bに見られるように、HAMの正確な分類90%および正常の正確な分類70%が達成された。図6Cに示す組み合わせツリーの決定構造を参照すると、2つのツリーを組み合わせて一連で実行した場合、ATLの正確な分類90% (9/10)、HAMの正確な分類70%(7/10)、および正常の正確な分類70%(7/10)が達成された。これらの結果が単純な分類ツリーと回帰ツリー法を用いて達成され得たことに留意されたい。この設計の単純性から、ATL群に重要であるタンパク質ピークプロファイルが示唆される。
群1と同様に、ウイルス添加を分類子として用いた場合、疾患特異的ピークはどれも有意に関連性がなかった。したがって、疾患特異的発現プロファイルは、宿主由来によるものであり、ウイルスに直接由来するものではないと考えられる。
実施例2
HTLVバイオマーカーピークの精製および同定
HTLVバイオマーカーピークの精製
SELDI指定ピークを同定するための精製図式を開発した。単離および精製の標的とする試料を、所望のタンパク質/ペプチドの発現について最も大きな差を有する試料を示すSELDIプロファイルによって決定する。精製/同定図式を通して比較が得られるように、精製および解析を対に対して適用する。液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析(LC/MS/MS)によりバイオマーカーを単離および精製する前に、まずバイオマーカーをドデシル硫酸ナトリウム12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により単離する。
HTLVバイオマーカーピークの精製および同定
HTLVバイオマーカーピークの精製
SELDI指定ピークを同定するための精製図式を開発した。単離および精製の標的とする試料を、所望のタンパク質/ペプチドの発現について最も大きな差を有する試料を示すSELDIプロファイルによって決定する。精製/同定図式を通して比較が得られるように、精製および解析を対に対して適用する。液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析(LC/MS/MS)によりバイオマーカーを単離および精製する前に、まずバイオマーカーをドデシル硫酸ナトリウム12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により単離する。
ゲル内トリプシン消化のため、SDS-PAGEゲルスライスを1〜2 mmの立方体に切断し、500μl超純粋H2Oで3回洗浄し、100%アセトニトリル中で45分間インキュベートした。ゲルを銀染色した場合には、製造業者の説明に従ってSilverQuest(商標)脱染溶液を使用し、まず染色を除去した。物質をスピードバック内で完全に乾燥させ、12.5 ng/μl改変シークエンシング等級トリプシン溶液(Promega)中で再水和し、氷浴中で約45分間インキュベートした。次に過剰のトリプシン溶液を除去し、十分な50 mM炭酸アンモニウム、pH 8.0で置換してゲルスライスを覆うが、典型的にこれは50μLであった。消化は37℃で一晩行うことも可能である。25μLの50%アセトニトリル、5%ギ酸でペプチドを2回抽出し、スピードバック内で乾燥させた。ペプチドを5%アセトニトリル、0.5%ギ酸、0.005% ヘプタフルオロ酪酸(緩衝液A)中に再懸濁し、3〜6μLを70μM ID、15 cmマジックC18逆相キャピラリーカラムに供した。5%〜80%アセトニトリル勾配(緩衝液A+95%アセトニトリル)でペプチドを溶出し、ThermoFinnigan LCQ DECA XP イオントラップタンデム質量分析計で陽イオンモードで解析した。各スキャンについて、最も高い強度のイオン3つをms/ms解析に供した。NCBIの非冗長タンパク質データベースのインデックス付きヒトサブセットデータベースを用いて、Sequest(商標)で配列解析を行った。
上記したように、精製/同定図式を通して比較が得られるように、精製および解析を対に対して適用する。具体的には、上記のようにバイオマーカーを単離した後、まず対の試料を、SELDIのオンチップアフィニティーカラム過程をエミュレートするオフチップCu2+アフィニティーカラムと反応させた。またこの段階によって、血清グロブリンが大幅に減少する。アフィニティー濃縮した試料をSELDIで確認し、次に一次元SDS PAGEに供して銀染色した(図8)。標的とする大きさの範囲内にある目に見えて差次的に発現されるバンドを対で切り出し、熱スプレータンデム質量分析に連結したキャピラリーLCによって解析した。
実施例1の群1で考察した図4は、ATLに特異的な19.9 kDピークのSELDI スペクトルの一致を示す。アフィニティー溶出した画分をSDS PAGEで分離し、SyproRubyで可視化した。特異的な20 kDのバンドをゲルから切り出した。試料からイミダゾールを予め除去することによって回収過程を改善し、その後SELDI IMAC3チップと相互作用させた。
同様の手順を用いて、11.9 kD断片を精製した。簡潔に説明すると、SELDIアフィニティーチップ表面について使用した条件と同じ条件下で、ATLと正常血清の対をバッチでIMAC Cu2+ビーズと反応させた。結合したタンパク質を、還元PBS(pH=5)を用いて単一バッチで溶出した。pHを7.0に調整し、試料を6%/16%勾配ゲルに供した。ゲルをファストシルバー(Fast Silver)で染色し、バンドを発色させた。推定上の11.7 kDピーク(矢印)を含む染まったゲルの領域を図7に示す。バンドを切り出し、ゲル内で消化し、LC/MC/MCに供した。
HTLVバイオマーカーピークの同定
この項で考察したこれらのペプチド同一性のそれぞれを、提唱される質量と一致する配列範囲によって支持し、差次的に発現されるバンドから切り出した。SDS-PAGEゲルスライスを1〜2 mmの立方体に切断し、500μL超純粋H2Oで3回洗浄し、100%アセトニトリル中で45分間インキュベートした。ゲルを銀染色した場合には、製造業者の説明に従ってSilverQuest(商標)脱染溶液を使用し、まず染色を除去した。物質をスピードバック内で完全に乾燥させ、12.5 ng/μL改変シークエンシング等級トリプシン溶液(Promega)中で再水和し、氷浴中で約45分間インキュベートした。次に過剰のトリプシン溶液を除去し、十分な50 mM炭酸アンモニウム、pH 8.0で置換してゲルスライスを覆うが、典型的にこれは50μLであった。消化は37℃で一晩行うことも可能である。25μLの50%アセトニトリル、5%ギ酸でペプチドを2回抽出し、スピードバック内で乾燥させた。ペプチドを5%アセトニトリル、0.5%ギ酸、0.005% ヘプタフルオロ酪酸(緩衝液A)中に再懸濁し、3〜6μLを70μM ID、15 cmマジックC18逆相キャピラリーカラムに供した。5%〜80%アセトニトリル勾配(緩衝液A+95%アセトニトリル)でペプチドを溶出し、ThermoFinnigan LCQ DECA XP イオントラップタンデム質量分析計で陽イオンモードで解析した。各スキャンについて、最も高い強度のイオン3つをms/ms解析に供した。NCBIの非冗長タンパク質データベースのインデックス付きヒトサブセットデータベースを用いて、Sequest(商標)で配列解析を行った。
この項で考察したこれらのペプチド同一性のそれぞれを、提唱される質量と一致する配列範囲によって支持し、差次的に発現されるバンドから切り出した。SDS-PAGEゲルスライスを1〜2 mmの立方体に切断し、500μL超純粋H2Oで3回洗浄し、100%アセトニトリル中で45分間インキュベートした。ゲルを銀染色した場合には、製造業者の説明に従ってSilverQuest(商標)脱染溶液を使用し、まず染色を除去した。物質をスピードバック内で完全に乾燥させ、12.5 ng/μL改変シークエンシング等級トリプシン溶液(Promega)中で再水和し、氷浴中で約45分間インキュベートした。次に過剰のトリプシン溶液を除去し、十分な50 mM炭酸アンモニウム、pH 8.0で置換してゲルスライスを覆うが、典型的にこれは50μLであった。消化は37℃で一晩行うことも可能である。25μLの50%アセトニトリル、5%ギ酸でペプチドを2回抽出し、スピードバック内で乾燥させた。ペプチドを5%アセトニトリル、0.5%ギ酸、0.005% ヘプタフルオロ酪酸(緩衝液A)中に再懸濁し、3〜6μLを70μM ID、15 cmマジックC18逆相キャピラリーカラムに供した。5%〜80%アセトニトリル勾配(緩衝液A+95%アセトニトリル)でペプチドを溶出し、ThermoFinnigan LCQ DECA XP イオントラップタンデム質量分析計で陽イオンモードで解析した。各スキャンについて、最も高い強度のイオン3つをms/ms解析に供した。NCBIの非冗長タンパク質データベースのインデックス付きヒトサブセットデータベースを用いて、Sequest(商標)で配列解析を行った。
このアプローチを用いて、19.9 kDおよび11.9 kDの断片(すなわち、長さまたはその部分)が、ハプトグロビン2の連続した半分ずつを表すことが同定された(図9)。哺乳動物ハプトグロビンの配列を配列番号:2に記載し、このタンパク質をコードするヌクレオチド配列を配列番号:1に記載する。興味深いことに、プロリンプロテアーゼに対する一意的な共通配列がハプトグロビン2に存在し、その切断によって2つの断片が生じる。
図9を参照して、哺乳動物ハプトグロビンのペプチドAおよびBは、同定過程の支援として上記したように質量分析によって同定され、19900±40中に見出される。哺乳動物ハプトグロビンのペプチドAは(配列番号:11に記載)、配列番号:2のアミノ酸60位からアミノ酸71位におよぶ。哺乳動物ハプトグロビンのペプチドBは(配列番号:5に記載)、配列番号:2のアミノ酸119位からアミノ酸131位におよぶ。哺乳動物ハプトグロビンのペプチドAのアミノ末端からペプチドBのカルボキシル末端の配列は、配列番号:2のアミノ酸60位からアミノ酸131位におよび、配列番号:1に記載したヌクレオチド配列のヌクレオチド204位〜ヌクレオチド419位によってコードされる。
さらに図9を参照して、哺乳動物ハプトグロビンペプチドCおよびDは、これもまた同定過程の支援として上記のように質量分析によって同定されたが、11948±24タンパク質バイオマーカー中に見出される。哺乳動物ハプトグロビンのペプチドCは(配列番号:6に記載)、配列番号:2のアミノ酸253位からアミノ酸263位におよぶ。哺乳動物ハプトグロビンのペプチドDは(配列番号:7に記載)、配列番号:1のアミノ酸333位からアミノ酸342位におよぶ。哺乳動物ハプトグロビンのペプチドCのアミノ末端からペプチドDのカルボキシル末端の配列は、配列番号:2のアミノ酸253位からアミノ酸342位におよび、配列番号:1に記載したヌクレオチド配列のヌクレオチド783位〜ヌクレオチド1052位によってコードされる。
11.7 kDピークは上記の手順によって、図9の図に見られるようにα1アンチトリプシンインヒビターの断片として同定された。哺乳動物α1アンチトリプシンインヒビターのアミノ酸配列を配列番号:4に記載し、このタンパク質をコードするヌクレオチド配列を配列番号:3に記載する。
さらに図9を参照して、ペプチドA、B、およびCは、同定過程の支援として上記のように質量分析によって同定されたが、11.7 kD断片中に見出される。ペプチドAは(配列番号:8に記載)、アミノ酸226位からアミノ酸241位におよぶ。ペプチドBは(配列番号:9に記載)、アミノ酸299位からアミノ酸305位におよぶ。ペプチドCは(配列番号:10に記載)、アミノ酸315位からアミノ酸324位におよぶ。したがって、ペプチドAのアミノ末端からペプチドCのカルボキシル末端の配列は、配列番号:4のアミノ酸226位からアミノ酸324位におよび、配列番号:3に記載した哺乳動物α1アンチトリプシンのヌクレオチド配列のヌクレオチド680位〜ヌクレオチド976位によってコードされる。
本発明を図および上記の記載において詳細に説明し記載したが、これは特徴を説明するものであって制限するものでないと考えるべきであり、好ましい態様のみを示し説明したのであって、本発明の趣旨の範囲内に入る全ての変更および修正の保護を要求することを理解すべきである。さらに、本明細書に引用したすべての参考文献は当技術分野における技術のレベルを示し、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
Claims (55)
- (a) 試験試料中の、約2488±5、約2793±6、2955±6、約3965±8、約4285±9、約4425±8、約4577±9、約4913±10、約5202±11、約5343±11、約5830±12、約5874±12、約5911±12、約6116±12、約6144±12、約6366±13、約7304±15、約7444±15、約8359±17、約8609±17、約8943±18、約9094±18、約9152±18、約10113±20、約11738±23、約11948±24、約12480±25、約14706±29、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される分子量を有する少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階;
(b) 検出を、HTLV-I関連脊髄症、成人T細胞白血病の可能性のある診断、または陰性診断と関連づける段階
を含む、HTLV-I関連脊髄症または成人T細胞白血病の診断を支援するための方法。 - タンパク質バイオマーカーが約3965±8、約4425±8、約4577±9、約5343±11、約8359±17、約11738±23、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
- タンパク質バイオマーカーが哺乳動物α1アンチトリプシンの11738±23ダルトン断片である、請求項1記載の方法。
- 断片が、配列番号:4に記載のアミノ酸配列のアミノ酸226位〜アミノ酸324位を含む、請求項3記載の方法。
- 断片が、配列番号:3に記載のヌクレオチド配列のヌクレオチド680位〜ヌクレオチド976位によってコードされるアミノ酸配列を含む、請求項3記載の方法。
- タンパク質バイオマーカーが哺乳動物ハプトグロビンの11948±24ダルトン断片である、請求項1記載の方法。
- 断片が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列のアミノ酸253位〜アミノ酸342位を含む、請求項6記載の方法。
- 断片が、配列番号:1に記載のヌクレオチド配列のヌクレオチド783位〜ヌクレオチド1052位によってコードされるアミノ酸配列を含む、請求項6記載の方法。
- タンパク質バイオマーカーが哺乳動物ハプトグロビンの19900±40ダルトン断片である、請求項1記載の方法。
- 断片が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列のアミノ酸60位〜アミノ酸131位を含む、請求項9記載の方法。
- 断片が、配列番号:1に記載のヌクレオチド配列のヌクレオチド204位〜ヌクレオチド419位を含む、請求項9記載の方法。
- 少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階が質量分析法によって行われる、請求項1記載の方法。
- 質量分析法がレーザー脱離質量分析法である、請求項12記載の方法。
- 質量分析法が表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析法である、請求項12記載の方法。
- レーザー脱離/イオン化質量分析法が
(a) そこに付着した吸着剤を含む基材を提供する段階;
(b) 試験試料を吸着剤と接触させる段階;
(c) 基材から少なくとも1つのバイオマーカーを脱離およびイオン化する段階;および
(d) 質量分析法により、脱離/イオン化した少なくとも1つのバイオマーカーを検出する段階
を含む、請求項14記載の方法。 - 試験試料を吸着剤と接触させる前に、試験試料を精製する段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
- 少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階が、免疫測定法によって行われる、請求項1記載の方法。
- 免疫測定法が酵素免疫測定法である、請求項17記載の方法。
- 酵素免疫測定法が酵素結合免疫吸着測定法である、請求項18記載の方法。
- 試験試料が血清である、請求項1記載の方法。
- 少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階が、該バイオマーカーの差次的発現を同定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
- 1〜29個のバイオマーカーが検出される、請求項1記載の方法。
- (a) 約2488±5、約5202±11、約7304±15、約12480±25、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される分子量を有するタンパク質バイオマーカーの存在を検出する段階、または約3965±8、5830±12、6366±13、8359±17、および約9152±18ダルトンからなる群より選択される分子量を有するタンパク質バイオマーカーの非存在を検出する段階;および
(b) 検出を、成人T細胞白血病の可能性のある診断と関連づける段階
を含む、請求項1記載の方法。 - (a) 約2793±6、約4285±9、約4425±8、約4577±9、約5343±11、約5874±12、約5911±12、約9094±18、約10113±20、約11738±23、約11948±24、約13369±27、約14706±29、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される分子量を有するタンパク質バイオマーカーの差次的発現を検出する段階;および
(b) 検出を、成人T細胞白血病の可能性のある診断と関連づける段階
を含む、請求項1記載の方法。 - (a) 約4913±10、約6144±12、および約7444±15ダルトンからなる群より選択される分子量を有するタンパク質バイオマーカーの存在または非存在を検出する段階、および
(b) 検出を、HTLV-I関連脊髄症の可能性のある診断と関連づける段階
を含む、請求項1記載の方法。 - (a) 約4577±9、約8613±17、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される分子量を有するタンパク質バイオマーカーの差次的発現を検出する段階;および
(b) 検出を、HTLV-I関連脊髄症の可能性のある診断と関連づける段階
を含む、請求項1記載の方法。 - 免疫測定法および質量分析法からなる群より選択される方法により、HTLV-I関連脊髄症および成人T細胞白血病からなる群より選択されるHTLV-I介在性疾患と診断される対象に、存在する、非存在である、または差次的に発現される、約2488±5、約2793±6、2955±6、約3965±8、約4285±9、約4425±8、約4577±9、約4913±10、約5202±11、約5343±11、約5830±12、約5874±12、約5911±12、約6116±12、約6144±12、約6366±13、約7304±15、約7444±15、約8359±17、約8609±17、約8943±18、約9094±18、約9152±18、約10113±20、約11738±23、約11948±24、約12480±25、約14706±29、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される分子量を有するタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む、試験試料中のタンパク質バイオマーカーを検出するための方法。
- タンパク質バイオマーカーが哺乳動物α1アンチトリプシンの11738±23ダルトン断片である、請求項27記載の方法。
- 断片が、配列番号:4に記載のアミノ酸配列のアミノ酸226位〜アミノ酸324位を含む、請求項28記載の方法。
- 断片が、配列番号:3に記載のヌクレオチド配列のヌクレオチド680位〜ヌクレオチド976位によってコードされるアミノ酸配列を含む、請求項28記載の方法。
- タンパク質バイオマーカーが哺乳動物ハプトグロビンの11948±24ダルトン断片である、請求項27記載の方法。
- 断片が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列のアミノ酸253位〜アミノ酸342位を含む、請求項31記載の方法。
- 断片が、配列番号:1に記載のヌクレオチド配列のヌクレオチド783位〜ヌクレオチド1052位によってコードされるアミノ酸配列を含む、請求項31記載の方法。
- タンパク質バイオマーカーが哺乳動物ハプトグロビンの19900±40ダルトン断片である、請求項27記載の方法。
- 断片が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列のアミノ酸60位〜アミノ酸131位を含む、請求項34記載の方法。
- 断片が、配列番号:1に記載のヌクレオチド配列のヌクレオチド204位〜ヌクレオチド419位を含む、請求項35記載の方法。
- 質量分析法がレーザー脱離/イオン化質量分析法である、請求項27記載の方法。
- 免疫測定法が酵素免疫測定法である、請求項27記載の方法
- 酵素免疫測定法が酵素結合免疫吸着測定法である、請求項38記載の方法。
- (a) 約2488±5、約2793±6、2955±6、約3965±8、約4285±9、約4425±8、約4577±9、約4913±10、約5202±11、約5343±11、約5830±12、約5874±12、約5911±12、約6116±12、約6144±12、約6366±13、約7304±15、約7444±15、約8359±17、約8609±17、約8943±18、約9094±18、9152±18、約10113±20、約11738±23、約11948±24、約12480±25、約14706±29、および約19900±40ダルトンからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持できる、そこに付着した吸着剤を含む基材;および
(b)試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによってタンパク質バイオマーカーを検出するための説明書
を含むキット。 - 吸着剤の結合する表面を有し、気相イオン分光計との使用に適合させたプローブを基材とする、請求項40記載のキット。
- 吸着剤が金属キレート吸着剤である、請求項40記載のキット。
- 吸着剤が陽イオン基を含む、請求項40記載のキット。
- 基材が複数の異なる種類の吸着剤を含む、請求項40記載のキット。
- 吸着剤が、バイオマーカーに特異的に結合する抗体を含む、請求項40記載のキット。
- 溶離液で洗浄した際にバイオマーカーが吸着剤上に保持される(1)吸着剤をさらに含む、請求項40記載のキット。
- タンパク質バイオマーカーが哺乳動物α1アンチトリプシンの11738±23ダルトン断片である、請求項40記載の方法。
- 断片が、配列番号:4に記載のアミノ酸配列のアミノ酸226位〜アミノ酸324位を含む、請求項47記載の方法。
- 断片が、配列番号:3に記載のヌクレオチド配列のヌクレオチド680位〜ヌクレオチド976位によってコードされるアミノ酸配列を含む、請求項47記載の方法。
- タンパク質バイオマーカーが哺乳動物ハプトグロビンの11948±24ダルトン断片である、請求項40記載の方法。
- 断片が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列のアミノ酸253位〜アミノ酸342位を含む、請求項50記載の方法。
- 断片が、配列番号:1に記載のヌクレオチド配列のヌクレオチド783位〜ヌクレオチド1052位によってコードされるアミノ酸配列を含む、請求項50記載の方法。
- タンパク質バイオマーカーが哺乳動物ハプトグロビンの19900±40ダルトン断片である、請求項40記載の方法。
- 断片が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列のアミノ酸60位〜アミノ酸131位を含む、請求項53記載の方法。
- 断片が、配列番号:1に記載のヌクレオチド配列のヌクレオチド204位〜ヌクレオチド419位を含む、請求項53記載の方法。
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