JP2005533503A - 新規なsiRNA遺伝子ライブラリー、その製造方法及び使用 - Google Patents

新規なsiRNA遺伝子ライブラリー、その製造方法及び使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、遺伝子機能の解明と新規遺伝子の同定のための方法及び組成物に関する。詳細には、本発明は、改良された機能性ゲノムスクリーニング、特異的な必須又は非必須遺伝子の機能的不活性化、及び特異的刺激に応じて調節され、又は認識可能な表現型形質をコードする遺伝子の同定に関する。特に、本発明の組成物は、限定するものではないが、好ましくは相補性終止配列を含有し、相互にコード配列の向こう側かつ反対方向に位置する修飾したプロモーターを利用する新規な二重プロモーター転写系を含む発現カセットを包含する。さらに、本発明は、複製-欠損レトロウイルスベクターのような形質転換細胞用ベクターを含む、本発明の発現カセットを含んでなるライブラリーを包含する。本発明は、dsRNA/siRNAライブラリーの製造及びスクリーニング方法、並びに本発明によって発現したsiRNAsの治療的使用をも包含する。

Description

発明の詳細な説明
(発明の分野)
一般的に、本発明は機能性ゲノムの分野に関する。詳細には、本発明は、ランダム化siRNA遺伝子ライブラリーの新規な製造方法及び該ライブラリーの病気プロセスに関連する細胞遺伝子の発見のための使用に関する。
(発明の背景)
ヒトゲノムプロジェクト及び同類の関心は、まもなく完全なヒトゲノムの配列を解明するだろう[Coxら, Science, 265:2031-2031 (1994); Guyerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:10841-10848 (1995)]。この予想される進歩は刺激的であるが、推定上の遺伝子のこの莫大な配列の遺伝子産物の機能の知識なしで、オープンリーディングフレーム及び遺伝子コード領域の配列を知ることはヒトゲノム中に非常に限定された見識を与えるだけなので誤解を招きやすくもある。ゲノムの完全な知識は、推定上の遺伝子コード配列の各遺伝子産物の機能の知識を必要とする。遺伝子機能決定は、分子遺伝学の分野で進行中であるが、遺伝子の機能を決定できる速度は、遺伝子を配列決定できる速度よりずっと遅い。従って、機能の調査には遺伝子配列の大量の残務が差し迫っている。
小さい干渉性(small interfering)RNAs(siRNA)は、RNA干渉(RNAi)として知られるプロセスを誘発する短い二本鎖RNA断片であり、配列特異的遺伝子サイレンシングの形態である。Zamore, Phillipら, Cell, 101:25-33 (2000); Elbashir, Sayda M.ら, Nature 411:494-497 (2001)。siRNAsは、RNA-誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られる多成分複合体に構築される。siRNAsはRISCを相同体mRNAsに導き、それらを破壊の標的にする。Hammondら, Nature Genetics Reviews 2:110-119 (2000)。RNAiは、植物、昆虫及び哺乳類を含む種々の生物内で観察され、これら生物由来の細胞を培養してきた。有効なsiRNAsをスクリーニングする効率的な方法の開発は、Inverse Genomics(登録商標)として知られるこの出願の譲受人によって開発された技術である減法表現型分析の方法によって、該siRNAsによってサイレントにさせられている遺伝子の機能的特徴を同定する手段を提供する。効率的なスクリーニング法の発見は、siRNA分子を含む治療の可能性のある化合物をスクリーニングし、ひいては遺伝子治療の分野を進歩させる方法をも提供するだろう。RNAiとsiRNA発現のレビューには、Hammond, Scott Mら, Nature Genetics Reviews, 2:110-119; Fire, Andrew, TIG, 15(9):358-363 (1999); Bass, Brenda L., Cell, 101:235-238 (2000)を参照せよ。
(発明の概要)
本発明は、既知のランダム配列、特にsiRNAsのdsRNA分子の生成と発現のためのDNA発現カセット、トランスジェニックレトロウイルス構成物及びそのライブラリーを提供する。本発明は、本発明のDNA発現カセット、トランスジェニックレトロウイルス構成物及びライブラリーの構築方法と使用法をも提供する。
一実施形態では、本発明は、16〜25塩基長、さらに好ましくは17〜23塩基長、最も好ましくは18〜21塩基長の二本鎖DNA配列を含むDNA発現カセットを提供する。このDNAは、既知又はランダム化のどちらかのヌクレオチド配列を含みうる。二本鎖DNA配列は、第1及び第2末端を有し、各末端は作動可能にpol IIIプロモーターに連結している。各pol IIIプロモーターは、TATAボックスを有し、置換によって修飾されている。1つの置換は、少なくとも4個の連続したアデニリル残基を3'〜TATAボックスに置く。1〜20個の塩基の第2の任意の置換は、5'〜少なくとも4個の連続したアデニリル残基置換及び3'〜TATAボックスに行われる。この様式で発現カセットを構築すると、両方のpol IIIプロモーターから二本鎖DNA配列が転写されると、2個以上のヌクレオチドの3'オーバーハングを有するdsRNAの生成となる。
本発明の2つのプロモーターは同じプロモーターであっても異なってもよい。例えば、プロモーターは両方ともH1 RNAプロモーター又はU6 SnRNAプロモーターであり、或いは一方がH1 RNAプロモーターで、他方がU6 snRNAプロモーターでよい。代わりに、一方のプロモーターがヒトU6 snRNAプロモーターで、他方がU6 snRNAプロモーターでもよい。別の実施形態では、一方又は両方のプロモーターがtRNAプロモーターである(例えば、tRNAValプロモーター)。
本発明のプロモーターは、誘発性オペレーター配列5'〜TATAボックスを組み込むことによって誘発性にすることもできる。オペレーターが誘発されると、pol IIIプロモーターからdsRNAが転写される。本発明の数局面では、この誘発性オペレーター配列がtet-oオペレーターである。
本発明の好ましい局面では、DNA配列をランダム化する。他の局面は、G又はAで各鎖の転写を開始し、次いで残りのDNA配列の転写を行う。本発明のDNA発現カセットは、ウイルス粒子内に包まれた核酸の一部でもよく、或いは自己複製性DNAの一部でもよい。
本発明は、本発明のDNA発現カセットのライブラリーをも包含する。該発現カセットライブラリーのプロモーターは、上述したように、適切なオペレーター配列をプロモーター中に含めることで誘発性にすることができる。特定の実施形態では、該ライブラリーの各DNA発現カセットはウイルス粒子内に包まれる。他の実施形態では、各DNA発現カセットは、細胞ゲノム内、又は自己複製性構成物中に包含される。
本発明は、逆転写酵素の作用によってプロウイルス型に変換されると、16〜25塩基長、さらに好ましくは17〜23塩基長、最も好ましくは18〜21塩基長の二本鎖DNA配列を含むゲノムを含んでなる組換えレトロウイルスをも包含する。この二本鎖DNAは、既知又はランダム化のどちらかのヌクレオチド配列を有しうる。該二本鎖DNA配列は、第1及び第2末端を有し、各末端は作動可能にpol IIIプロモーターに連結している。各pol IIIプロモーターはTATAボックスを有し、かつ置換によって修飾されている。1つの置換は、少なくとも4個の連続したアデニリル残基を3'〜TATAボックスに置く。1〜20個の塩基の第2の任意の置換は、5'〜少なくとも4個の連続したアデニリル残基置換及び3'〜TATAボックスに行われる。この様式で発現カセットを構築すると、両方のpol IIIプロモーターから二本鎖DNA配列が転写されると、2個以上のヌクレオチドの3'オーバーハングを有するdsRNAの生成となる。
本発明は、本発明の発現カセットの製造方法及び使用方法をも包含する。このような一方法は、一本鎖コード配列を合成する工程、2つの対向するプロモーターを含むベクターを構築する工程、このベクターの2つのプロモーター間にコード配列を挿入する工程、及び一本鎖コード配列に相補的な鎖を生成することによって、本発明の発現カセットを形成する工程を含む。上述したように、これら発現カセットは、任意に誘発性でよく、かつそのプロモーター領域内に任意の置換を含んでよい。
この方法の一局面では、一本鎖DNA配列を含む発現ベクターによる形質転換後コンピテント細菌によって、一本鎖DNA配列に相補的な鎖を生成する。代わりに、クレノウポリメラーゼとDNAリガーゼを用いて相補鎖をインビトロ合成することができる。
本方法の特定の局面では、プロモーター内の任意の1〜20個の塩基置換は、少なくとも1つの制限部位を含む。別の局面では、一本鎖DNA配列の5'末端でグアニリル残基を挿入し、かつ3'末端でシトシル残基を挿入する。代わりに、アデニリル残基を一本鎖DNA配列の5'末端で挿入してもよく、この場合、チミジル残基を3'末端で挿入する。これら追加塩基をいくつかの構成物に含めていくつかのポリメラーゼの認識要求を満たす。
本発明の別の実施形態は本発明のDNA発現カセットのライブラリーの製造方法である。この方法は、まず16〜25塩基長、好ましくは17〜23塩基長、最も好ましくは18〜21塩基長の複数の一本鎖DNA配列を合成する工程を含む。DNA配列は既知又はランダム化のどちらでもよい。一旦、これらDNA配列を合成すると、上述したように発現カセットを構築でき、各カセットは該複数の一本鎖配列の1つを含む。
構築方法に加え、本発明は使用方法をも包含する。例えば、本発明の一方法は、siRNA転写配列の発現を、siRNAによる細胞遺伝子のサイレンシングに起因する細胞の表現型の変化と相関させる方法をも包含する。ここで、該細胞遺伝子は、これまでに該表現型の変化に寄与すると特徴づけされていない。この方法は、細胞集団に(例えば、ウイルス形質導入によって)、それぞれ本発明の発現カセット内に組み込まれた外因性ランダム化siRNAs遺伝子のライブラリーを導入する工程を含む。そして、形質転換した細胞集団をスクリーニングして、siRNA遺伝子のライブラリーに導入された集団の細胞と、該ライブラリーに導入されない当該細胞との差異を検出する。一旦、表現型の差異を検出すると、表現型の変化の原因であるライブラリーのsiRNA遺伝子が同定される。本発明のいくつかの局面では、表現型の変化の原因であるライブラリーの同定したsiRNAs遺伝子を単離する。
この方法のいくつかの局面では、表現型の差異を検出する工程は、dsRNA遺伝子のライブラリーに導入された集団の細胞と、該ライブラリーに導入されない当該細胞との間の細胞成長の差異の観察を含む。他の局面では、検出工程は、dsRNA遺伝子のライブラリーに導入された集団の細胞による検出可能マーカーの共-発現を含む。特定局面では、検出可能マーカーは蛍光タンパク質若しくは細胞表面タンパク質、又は抗生物質抵抗性でよい。
細胞集団は真核生物細胞集団でよい。同定及び/又は単離したsiRNAは、細胞分割を阻害するsiRNAでありうる。他の同定及び/又は単離したsiRNAsは、ウイルス遺伝子発現を阻害しうる。他のsiRNAsは、アポトーシス/壊死の誘発因子によって惹起される細胞死を阻害しうる。さらに他のsiRNAsは、細胞外タンパク質の排出、細胞表現マーカーの発現、又は遺伝子サプレッサーを阻害しうる。
本発明の別の実施形態は、細胞内のsiRNAの転写を調節する方法である。本方法は、細胞中に、誘導的に調節されるプロモーターを含む本発明の発現カセットを含むベクターを導入する工程を含む。これら系では、誘発性オペレーターを誘発することによってsiRNAを生じさせるための二本鎖DNAの転写を開始する。この誘発性オペレーター法を用いて生成されるsiRNAの転写の細胞に及ぼす効果は、細胞分割、細胞死、ウイルス遺伝子発現、細胞外タンパク質の排出、細胞表面マーカーの発現、遺伝子サプレッサー若しくはシグナル伝達経路の阻害を含む複数の因子のいずれかに基づいて決定することができる。
本発明のさらに別の実施形態は、細胞に形質導入する方法である。本方法は、本発明の発現カセットを含むゲノムを有するトランスジェニックレトロウイルスを得る工程を含む。そして、細胞にトランスジェニックレトロウイルスで形質導入する。形質導入が起こったかどうかは、siRNAと関連する検出可能な細胞形質、例えば、細胞分割、細胞死、ウイルス遺伝子発現、細胞外タンパク質の排出、細胞表面マーカー、遺伝子サプレッサー若しくはシグナル伝達経路の阻害の存否の観察によって決定する。
(定義)
用語“細胞遺伝子”又は“遺伝子”は、特異的転写産物をコードし、かつ転写性発現を制御するコード領域に先行する制御配列(5'非-コーディング)と追従する制御配列(3'非-コーディング)を含む核酸断片を意味する。
用語“細胞分割”は、生化学事象に先行し、2つの自律性単位に分裂するという細胞内で完結する物理的な細胞事象を意味する。
用語“細胞成長”は、細胞の質量、体積又は数の増加につながる当該細胞プロセスを意味する。
用語“細胞集団”は、一般的に、典型的には普通の前駆体を有する普通の型の細胞のグルーピングを意味するが、この句は異種細胞集団にも適用できる。
用語“細胞表面タンパク質”は、少なくともその一部が細胞膜の外側の表面と関連し、かつタンパク性物質を含むいずれの生物学的分子をも意味する。
用語“コンピテント細菌”は、外因性核酸で形質転換でき、或いはウイルス系を用いて形質導入できる原核生物細胞を意味する。
用語“検出可能マーカー”、“検出可能形質”、又は“検出可能細胞形質”は、観察又は試験によって同定できる、細胞によって発現されるいずれの物理的又は化学的特徴をも意味する。
用語“表現型の変化”は、観察又は試験によって同定できる、細胞の物理的、形態学的、生化学的又は挙動の特徴のいずれの変化をも意味する。
用語“外因性”は、現在の環境以外の起源から発生し、誘導され、又は発達することにおけるように、その現在の環境にとって外来性である、いずれの分子又は物質をも指す。
用語“細胞外タンパク質”は、細胞の外側にあり、少なくとも部分的にタンパク性のいずれの物質をも意味する。
用語“蛍光タンパク質”は、電磁波(例えば、UVなど)への暴露から生じる刺激に応じて蛍光エネルギーを発することができ、少なくとも部分的にタンパク性のいずれの物質をも意味する。
用語“遺伝子発現”は、生物学的に活性な物質をコードする核酸から、核酸であれ又はタンパク質であれ、生物学的に活性な物質を生成することに関与するすべてのプロセスを意味する。遺伝子発現は、成熟物質を生成するのに必要なすべての転写後及び/又は翻訳後プロセシングを包含する。
用語“遺伝子サプレッサー”は、遺伝子発現を阻害又は妨げる遺伝的に活性な物質を意味する。
用語“誘発性”は、プロモーター配列、ひいてはその発現が制御する核酸配列が、“誘発物質”として作用する因子に応じて制御を受けやすいことを意味する。これら因子は、タンパク質、核酸、小分子又は物理的刺激、例えばUV照射でよい。制御された核酸配列の誘発は、直接活性を刺激する因子の結合を含み、或いは代わりに核酸配列の発現を抑制するように因子の除去を必要としうる。例えば細胞を潜在的な誘発物質で処理し、該誘発物質で処理しない対照試料内の同一の核酸配列の活性に対する誘発細胞内の核酸配列の発現を比較することによって誘発を測定できる。対照試料(誘発物質で未処理)を100%の相対活性値に割り当てる。対照(誘発物質で未処理)に対する活性値が110%、さらに好ましくは150%、さらに好ましくは200〜500%(すなわち、対照に対して2〜5倍高い)、さらに好ましくは1000〜3000%高い場合に、核酸配列の誘発が達成される。
用語“クレノウポリメラーゼ”は、プロテアーゼサブチリシンでDNAポリメラーゼIを処理してホロ酵素の5'→3'エキソヌクレアーゼ活性を除去後に残存しているポリメラーゼ活性である。
用語“反対の核酸鎖”は、参照核酸鎖に相補的かつ平行に位置する核酸鎖を意味する。“反対の核酸鎖”は、別に言及しない限り、反対の核酸鎖と参照核酸鎖は、主としてワトソン-クリック塩基対合によって二重鎖にアニールされることをもほのめかす。
用語“核酸”は、一本鎖又は二本鎖のどちらかの形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを指し、別に限定していない限り、天然に存在するヌクレオチドに対するのと同様に核酸にハイブリダイズする天然のヌクレオチドの既知類似体を包含する。別に指示しない限り、特定の核酸配列は、その相補配列を包含する。
“dsRNA”は、塩基対合相互作用によって一緒にハイブリダイズした2本の相補的RNA鎖を含むRNA分子を指す。“siRNA”は、好ましくは16〜25、さらに好ましくは17〜23、最も好ましくは18〜20個の塩基対長さであるdsRNAを指し、その各鎖は2個以上のヌクレオチドの3'オーバーハングを有する。機能的に、他形態のdsRNAとsiRNAを区別する特徴はsiRNAが“RNA干渉”と呼ばれるプロセスによって遺伝子の発現を特異的に阻害できることである。
“ライブラリー”は、定義した生物学的単位の代表である核酸配列の集合を指す。例えば、核酸のライブラリーは、定義した長さにわたって可能性のある核酸配列のすべての構成の代表でありうる。代わりに、核酸ライブラリーは、定義した長さの核酸の可能性のある配列構成の特定サブセットを代表する配列の集合でよい。ライブラリーは、特定生物の遺伝情報のすべて又は一部をも表す。典型的に、核酸“ライブラリー”は、ベクター中にクローン化されるが、これが必要なわけではない。
本発明の核酸“ライブラリー”は、完全にランダム化することができ、該集団のメンバーは、どの位置にも配列優先性又は定常性を示さない。代わりに、核酸ライブラリーが偏ってもよい。すなわち、配列内のいくつかの位置が一定に保たれ、或いは限定数の確率から選択される。例えば、好ましい実施形態では、所定生物内の塩基の比率を好むバイアスでヌクレオチドをランダム化する。ランダム化した核酸混合物の起源は、天然に存在する核酸若しくはその断片、化学合成した核酸、酵素的に合成した核酸、又は前述の方法を併用して調製した核酸由来でよい。
“シグナル伝達経路”は、それによって細胞に影響を及ぼす化学的又は物理的事象が、元の化学的又は物理的事象に応じて細胞の物理的状態又は代謝状態に変化をもたらす細胞プロセスに伝達される、当該生化学的事象を指す。
“TATAボックス”又は“TATA要素”は、一般的な転写因子と結合して、転写が開始する位置を特定する、多くのプロモーターで共通のヌクレオチド配列要素を指す。TATAボックスは、その発現がIII型RNAポリメラーゼIIIプロモーターに依存する配列の転写に重要な要素である。DNA構成物内で、その名称が示すように、TATAボックスは、典型的に核酸配列5'-TATA-3'、又は技術的に知られるようなその変異形を含む。
“プロモーター”は、核酸の転写を指揮する配列を制御する核酸の配列を指す。本明細書で使用する場合、プロモーターは、III型RNAポリメラーゼIIIプロモーターの場合TATA要素のような転写の開始部位近傍に必要な核酸配列を含む。プロモーターは、任意に近位、及び転写の開始部位から数百もの塩基対離れた位置でもよい遠位の配列要素をも含む。“構成的”プロモーターは、多くの環境及び発生条件下で活性なプロモーターである。“誘発性”プロモーターは、環境又は発生制御下で活性なプロモーターである。従って、用語“プロモーター”は、問題のDNA配列に作動可能に連結している場合、当該DNA配列の転写を促進するヌクレオチド配列を意味する。
用語“プロモーター領域”は、DNA制御配列を含むヌクレオチド領域を指し、制御配列は、RNAポリメラーゼと結合して所定の核酸配列の転写を開始できる遺伝子から誘導される。所定の遺伝子又は遺伝子セットの“プロモーター領域”は、3種の真核生物RNAポリメラーゼのどれが当該遺伝子又は核酸配列を転写するという仕事に恵まれるか決定する。本発明は、主に真核生物RNAポリメラーゼIIIによって転写される遺伝子及び核酸配列に関連する。
真核生物RNAポリメラーゼIIIは、5SRNA、tRNA、7SL RNA、U6 snRNA及びいくつかの他の小さい安定なRNAsを含む限定セットの遺伝子を転写する。効率的に機能するため、ほとんどのRNAポリメラーゼIIIプロモーターは、転写領域内に+1転写開始部位の下流に配列要素を必要とする。しかし、III型RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、機能するためにいずれの遺伝子内配列要素をも必要としない。代表的なU6 snRNA III型RNAポリメラーゼIIIプロモーターの場合、効率的な発現は、以下の上流配列要素の存在に依存する:ヌクレオチド位置-30〜-24のTATAボックス、ヌクレオチド位置-66〜-47の近位配列要素(PSE)、及びヌクレオチド位置-265〜-149の遠位配列要素(DSE)。最もよく特徴づけられているIII型RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、ヒトH1 RNA遺伝子及びU6 snRNA遺伝子と関連するプロモーターである。
用語“オペレーター配列”は、特異的タンパク質又は核酸によって認識され、結合すると隣接オペレーター配列からの転写を阻害又は妨げるDNA配列を指す。例えば、細菌tet-oオペレーター/リプレッサー系。
本明細書で使用する場合、用語“パッケージング”は、核酸をウイルス粒子内に包み込むプロセスを意味する。
いずれかの核酸配列を参照するとき、用語“ランダム化”又は“ランダム化配列”は、ランダム化していると言及される配列内のいずれかの所定の位置に出現するヌクレオチド塩基が、所定長さでランダム化した核酸の完全セットが該所定長さにわたってあらゆる塩基配列順序を有するメンバーから成るように、RNA又はDNAのどちらかに天然に存在する4個のヌクレオチドのいずれか1つであり、又はそのいずれかの相同体であることを示す。ランダム化配列は、全体的にランダム化することができ(すなわち、4つのうち1つであるいずれかの位置に塩基を見つける確率)、又は部分的にだけランダム化することができる(例えば、いずれかの位置で塩基を見つける確率を0〜100パーセントのいずれかのレベルに選択できる)。
核酸配列変異体は、ランダム化核酸配列の化学合成及びランダムに切断した細胞性核酸からの大きさの選択を含む多くの方法で生成することができる。通常、ランダム核酸を、該配列がいずれの位置にもいずれのヌクレオチドも組み込めるように化学的に合成する。しかし、そうすることが望ましい場合、ランダム化配列中に故意にバイアスを導入してもよい。例えば、合成反応の前駆体ヌクレオチド(又はデオキシヌクレオシド)三リン酸のモル比を変えることによって。例えば、所定生物内の個々の塩基の比率に近づけるため、又は二次構造に影響を及ぼすためには故意のバイアスが望ましいかもしれない。従って、ランダム化核酸配列は、完全又は部分的なランダム配列を含んでよく;或いはランダム化配列と共に組み込まれた保存配列の亜部を含みうる。従って、合成プロセスを設計して、配列の長さにわたって可能ないずれの組合せの編成も可能にし、それによってランダム化した候補核酸のライブラリーを形成することができる。
用語“制限部位”は、特異的な制限酵素によって認識かつ切断されうるDNA配列を意味する。
“ターミネーター”又は“終止配列”は、核酸配列の転写を終わらせる当該DNA配列を指す。終止配列は、本質的にポリメラーゼによって認識され、或いは終止は効果のあるさらなる終止因子を必要とすることがある。3種の各真核生物ポリメラーゼは、異なる終止配列に応じてRNAの合成を停止する。真核生物RNAポリメラーゼI及びIIは、通常転写の終止を果たすため、核酸配列要素に加えて因子を必要とする。しかし、真核生物RNAポリメラーゼIIIは、他の因子の明白な非存在下で正確かつ効率的に終止配列を認識する。RNAポリメラーゼIII型の場合、4個以上のチミジン残基の単純なクラスターがターミネーターとして有効に働く。
用語“相補的”又は“相補性”は、塩基対合規則によって関係づけれるポリヌクレオチド(すなわちヌクレオチドの配列)を指す。例えば、配列“5'-AGT-3'”は、配列“5'-ACT-3'”に相補的である。相補性は、核酸の塩基のいくつかだけが塩基対合規則に従って調和している“部分的”でよい。或いは、核酸間に“完全”又は“全体的”相補性があってよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率と長さに有意な影響を及ぼす。このことは、核酸間の結合に依存する方法で特に重要である。
“相補的終止配列”は、所定プロモーターの転写終止配列に相補的なヌクレオチド配列を有する核酸配列を指す。
用語“作動可能に連結”は、機能的関係のポリヌクレオチド要素の連結を指す。本発明については、用語“作動可能に連結”は、核酸発現制御配列(プロモーター、又は転写因子結合部位の配列のような)と、第2の核酸配列との間の機能的連結を意味する。ここで、発現制御配列は第2配列に対応する核酸の転写を指揮する。従って、核酸が別の核酸配列と機能的関係に置かれているとき、核酸は“作動可能に連結”している。
問題の核酸配列に“作動可能に連結”しているプロモーター、ターミネーター及び制御要素は、問題の核酸配列の発現に影響を及ぼしうる。制御要素が作用してコード配列の発現を指揮する限り、制御要素はコード配列に相接している必要はない。従って、例えば、プロモーター又はターミネーターがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、それはコード配列に“作動可能に連結”している。
句“各末端が作動可能に連結”は、核酸の各一本鎖の5'及び3'の両末端が該核酸のそれぞれの鎖の転写を可能にするプロモーター、ターミネーター及び/又は制御要素に作動可能に連結するような、核酸の1対のプロモーター、ターミネーター及び制御要素の関係配向を指す。このような構成物の転写は、2つの相補的なRNA転写物を生成する。生成される相補的なRNA分子は、相互に塩基対となり、dsRNA分子を形成しうる。
句“開始するように配向”は、問題の核酸配列に関するプロモーター配列の関係を指す。プロモーターを含む系に適切な誘発シグナルが伝達されたとき、該プロモーターが問題の核酸配列の転写を開始させることができるように問題の核酸配列に作動可能にプロモーターが連結しているとき、該プロモーターは転写を“開始するように配向”している。
用語“ベクター”は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオン等のような、正確な制御要素と関わると複製でき、かつ細胞間の遺伝子配列を伝達できるいずれの遺伝要素をも指す。従って、この用語はクローニング及び発現ベクター、並びにウイルスベクターを包含する。
“発現ベクター”は、宿主細胞内で特定の核酸の転写を可能にする一連の特定核酸要素を有する、組換え的又は合成的に生成された核酸構成物である。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、又は核酸断片の一部でよい。典型的に、発現ベクターの組換え発現カセット部は、転写すべき核酸とプロモーターを含む。
“DNA発現カセット”は、細胞内の核酸の発現を指揮できるDNA配列を意味する。“DNA発現カセット”は、問題の核酸に作動可能に連結しているプロモーターを含み、さらに終止配列に作動可能に連結している。“siRNA遺伝子”は、siRNAを発現可能なDNA発現カセットである。
用語“宿主細胞”は、発現ベクターを含み、かつ該発現ベクターの複製又は発現を補助する細胞を指す。宿主細胞は、大腸菌のような原核生物細胞、又は酵母菌、昆虫、若しくは哺乳類細胞のような真核生物細胞でよい。
“ウイルス粒子”は、核酸コア、タンパク質性キャプシド、及び時には外側エンベロープを含む完全なウイルスを指す。
用語“ウイルス伝達系”は、細胞内に外因性核酸を導入するためのウイルスベクターの使用を指す。ウイルス伝達系は、DNA又はRNA-ベースでよいが、一般的に細胞ゲノムの組込み部として又はエピソーム遺伝要素として感染細胞中にDNA形態で組み込まれる。
(好ましい実施形態の詳細な説明)
I.発現カセット
本発明は、siRNAsを発現するような新規の発現カセット構成物及びその製造方法に関する。本発明の発現カセットは、転写されると、16〜25塩基長、さらに好ましくは17〜23塩基長、最も好ましくは18〜21塩基長のsiRNAを生成する二本鎖核酸を含む。この長さのsiRNAsは、本質的に配列特異的でないインターフェロン反応を引き起こさずに、内因性及び異種の両遺伝子をサイレントにすると報告されている。Elbashir, Sayda M.ら, Nature, 411:494-498 (2001); Tuschl, Thomas, Nature Biotechnology, 20:446-448 (2002); Paul, Cynthia P.ら, Nature Biotechnology, 20:505-508 (2002)。
本発明の発現カセットの核酸は、図1及び2に概略的に示されるように、二重プロモーター発現系の1対の修飾したプロモーター間に位置する。さらに詳細に後述するように、二重プロモーター発現系は、2つのプロモーターの一方から開始するためのコード配列の一方の鎖の転写と、他方のプロモーターから開始するためのコード配列の反対の鎖の転写を可能にする。図1及び2は、Not IとSph I制限部位によって促進される、対向するプロモーター間へのコード配列の挿入を示すが、当業者には、他の制限部位と方法を使用して該系のプロモーター間へのdsRNAコード配列の挿入を達成できることが分かるだろう。
核酸が既知配列の核酸の場合、RNA、cDNA、ゲノムDNA、又はこれらのハイブリッドのような生物学的起源から単離しうる。さらに典型的には、核酸の1本の鎖は、技術的に周知な方法で化学的合成される。このことは、コード配列を含む核酸がランダム配列を含む場合、特に真実である。このような場合、ランダム化配列は好ましくは4〜24塩基長、さらに好ましくは5〜20塩基長の既知配列のヌクレオチドと隣接している。核酸の相補鎖は、dsRNA用のコード配列を持っている一本鎖が逆に配向されたプロモーター間に連結された後、好ましくは酵素的に合成される。
図2は、コード配列がランダム化されている本発明の一実施形態を示す。説明目的のため、このランダム化配列は、その5'末端がG、その3'末端がCで示されている。5'Gは、図中に示される鎖から生じるRNA転写物の第1転写ヌクレオチドである。3'Cは、対向するプロモーターによって転写される相補的鎖(図示せず)の第1塩基に対する補体である。図2は、好ましいレトロウイルスベクター、pLTR中に組み込まれる発現カセットも示す。組込みは、発現カセットプロモーターに隣接する領域内に対応部位を有する、ベクター中のHind IIIとMlu I部位で促進される。2つのLTRs間の位置でベクター中に挿入された発現カセットは、選択可能マーカーピューロrと、或いは3'LTR(図示せず)内の位置で領域を共有する。
図3に示されるように、二重プロモーター発現系のプロモーターを修飾して転写制御配列を含むことができる。このような配列は、細胞環境又は細胞型によって制御される発現カセットからの差次的な発現を可能にする。図3は、典型的な制御配列であるTet-oオペレーターを示す。図に示されるように、このオペレーター配列は5'〜TATAボックスに位置するが、他の位置も可能である。当業者は制御配列を操作して、本明細書で述べる方法を用いる二重プロモーター発現系と適合性のいずれのプロモーターとも協働させうる。本発明のプロモーターからの発現に影響を及ぼす制御配列はプロモーター配列自体内に位置する必要がないことにも留意すべきである。
図4は、本発明の別の独特な局面、すなわち二重プロモーター発現系の相手プロモーターの終止配列に相補的な配列をプロモーター中に直接組み込む能力を示す。例として、図4は、プロモーター配列の3'末端の元の4個のヌクレオチドを4個のアデニリル残基と置換することによって修飾したヒトU6プロモーターを示す。4個のチミジル残基は相手U6プロモーターの有効な終止配列なので、この例では4個のアデニリル残基が示されている。しかし、プロモーター配列の3'末端に位置する少なくとも25個の塩基のいずれかを相手プロモーターの終止配列に相補性になるように置換できることに留意すべきである。この性質のプロモーター-インターナライズド終止配列の必要条件は、該配列が25塩基長を超えず、かつそ該配列がプロモーターからの転写開始を妨げないことである。
従って、本発明の発現カセットは、構造的に反対方向の2つのプロモーターに隣接したコード配列と記述でき、一方のプロモーターが該コード配列の“センス”鎖の転写を開始し、他方のプロモーターが“アンチセンス”鎖の転写を開始するようになっている。各プロモーターは、対向するプロモーターの終止配列に相補的な配列をその3'末端に含む。
機能的に、本発現カセットは、dsRNAを生成する、両鎖の共通DNA分子の転写を可能にする。典型的に、各終止配列の少なくとも最初の2個の塩基も、これらdsRNAsが、いずれの配列でもよいが、好ましくは2個のチミジル残基から成る3'オーバーハングを有するように転写される。
II.一般的な組換え方法
本発明の発現カセット及びベクターは、本技術の当業者に周知な標準的技術を利用して構築しうる(Sambrook, J., Fritsch, E. F.,及びManiatus, T., Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed. (1989); Gelvin, S. B., Schilperoort, R. A., Varma, D. P. S., eds. Plant Molecular Biology Manual (1990))。
本発明の発現カセットの調製では、種々のDNA配列を細菌プラスミド中に普通に挿入又は置換することができる。細菌複製系、すなわち形質転換した細菌の選択と通常1個以上のユニークな好都合に配置された制限部位を斟酌するマーカーを有することを特徴とするいずれの便利なプラスミドも利用できる。ベクターと呼ばれるこれらプラスミドとしてはpACYC184、pACYC177、pBR322、pUC9、又はpBluescript II(KS又はSK)のようなベクター、特にマーカーの性質、好都合な制限部位の利用能、コピー数などに基づいて選択されるプラスミドが挙げられる。こうして、該配列を適切な制限部位でベクター中に挿入し、その結果のプラスミドを用いて大腸菌宿主を形質転換し、この大腸菌を適切な栄養培地内で育て、細胞を収集し、溶解させてプラスミドを回収することができる。このように、異なる断片の段階的な組合せを斟酌する戦略を定義する。
本発明の実施が部位特異的突然変異、縮重オリゴヌクレオチドを用いるPCR増幅、該核酸を含有する細胞の突然変異因子又は放射線への暴露、所望のオリゴヌクレオチドの化学合成(例えば、大きい核酸を生成するための連結及び/又はクローニングと共に)及び他の周知技術を含む当業者に知られるいずれの方法を利用しても達成しうる核酸配列の変化を生じさせる工程を含むことは明白である。例えば、Berger及びKimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, Volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, Calif. (Berger); Sambrookら, Molecular Cloning--A Laboratory Manual (2nd ed.) Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, N.Y., (Sambrook) (1989);及びCurrent Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubelら, eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc.及びJohn Wiley & Sons, Inc., (1994 Supplement) (Ausubel); Pirrungら,米国特許第5,143,854号;及びFodorら, Science, 251:767-77 (1991)を参照せよ。これら技術を用いると、本発明の発現カセット中にいずれの長さのポリヌクレオチドも随意に挿入又は欠失させることができる。
本発明の実施は、技術的に周知の方法を利用して遂行しうる線状オリゴヌクレオチドの化学合成をも含む。選択される合成法は、所望のオリゴヌクレオチドの長さを含む種々の因子によって決まり、該選択は当業者のスキルの範囲内である。オリゴヌクレオチドは、典型的に、Beaucage及びCaruthers, Tetrahedron Letts., 22(20):1859-1862 (1981)に記載されている固相ホスホラミダイトトリエステル法によって、例えば、Needham-VanDevanterら, Nucleic Acids Res., 12:6159-6168 (1984)に記載されているような自動合成機を用いて化学合成する。オリゴヌクレオチドは、当業者に知られる種々の市販供給元に外注製造及び注文することもできる。
合成線状オリゴヌクレオチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、又はゲルクロマトグラフィー及び高圧液体クロマトグラフィーを含む多くのクロマトグラフ法のいずれかで精製することができる。合成オリゴヌクレオチドの配列は、Maxam and Gilbert in Grossman and Moldave (eds.) Academic Press, New York, Methods in Enzymology, 65:499-560(1980)の化学分解法を用いて検証することができる。修飾した塩基をオリゴヌクレオチド中に組み込む場合、特に修飾したホスホジエステル結合を用いる場合、合成手順は、既知手順に従い、必要に応じて変える。この関連では、Uhlmannら, Chemical Reviews, 90:543-584 (1990)が、参考文献及び修飾した塩基と修飾したホスホジエステル結合でオリゴヌクレオチドを作る手順の概要を提供する。短いオリゴヌクレオチドの配列は、レーザー脱着質量スペクトル法又は高速原子衝撃法によっても分析することができる(McNealら, J. Am. Chem. Soc., 104:976 (1982); Viariら, Biomed. Enciron. Mass Spectrom., 14:83 (1987); Grotjahnら, Nuc. Acid Res., 10:4671 (1982))。
示されるように、本発明のコード核酸の第2鎖は典型的には酵素的に合成される。DNAオリゴヌクレオチド合成の酵素的方法は、Sambrookら, in Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に記載されているように、クレノウ、T7、T4、Taq又は大腸菌DNAポリメラーゼを利用することが多い。RNAオリゴヌクレオチド合成の酵素的方法は、Sambrookら(1989)に記載されているように、SP6、T3又はT7 RNAポリメラーゼを利用することが多い。逆転写を用いてRNA又はDNA鋳型からDNAを合成することもできる(Sambrookら, 1989)。
線状オリゴヌクレオチドは、例えば、Saikiら, Science, 239:487 (1988)によって記載されているようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によっても調製できる。ヌクレオチド配列の増幅に好適なインビトロ増幅法は技術的に周知である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβ-レプリカーゼ増幅法及び他のRNAポリメラーゼ媒介法(例えば、NASBA)を含むこのような方法の例は、Berger, Sambrook, 及びAusubel, 並びにMullisら, (1987)米国特許第4,683,202号; PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innisら, eds) Academic Press Inc., San Diego, Calif. (1990) (Innis); Arnheim & Levinson (1990年10月1日) C&EN 36-47; The Journal Of NIH Research, 3:81-94 (1991); (Kwohら, (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:1173; Guatelliら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:1874 (1990); Lomellら, J. Clin. Chem, 35:1826(1989); Landegrenら, Science, 241:1077-1080 (1988); Van Brunt, Biotechnology, 8:291-294 (1990); Wu and Wallace, Gene, 4:560 (1989); Barringerら, Gene, 89:117 (1990),及びSooknanan and Malek, Biotechnology, 13:563-564 (1995)に記載されている。インビトロ増幅した核酸をクローニングする改良方法は、Wallaceらの米国特許第5,426,039号に記載されている。
III.コード配列
本発明の発現カセットのコード領域はdsRNAsを生成するために転写される配列である。これらdsRNAコード配列は、技術的に標準的な方法でゲノム又はcDNAライブラリーから単離することができる。(Gubler & Hoffman, Gene, 25:263-269 (1983); Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989); Ausubelら)。
代わりに、dsRNAコード配列を化学的に合成することができる。ランダム化dsRNAコード配列では、すべての4個の塩基をランダム化配列が望ましい当該合成サイクルに含める。好ましくは、ランダム化dsRNAコード配列は、既知配列のヌクレオチドに隣接する。これらは、該ランダム化dsRNAコード配列が発現カセット中に連結されると、二重プロモーター系のプロモーター用の3'末端配列になる。ランダム化dsRNAコード配列に隣接している配列は、多くの有用な目的を与える:第1に、これら配列はランダム化dsRNAコード配列を正しい方向で発現カセット中に連結するための便利な手段を提供する。ランダム化dsRNAコード配列の適切な末端に、二重プロモーターのそれぞれで異なるハイブリダイゼーション配列(通常制限部位配列)と、これらハイブリダイゼーション配列に相補的な配列を有することによって、後者の配列をカセット内に方向性に配向させることができる。第2に、ランダム化sRNAコード配列に隣接する既知配列は、本発明の二重プロモーター中への遺伝要素とクローニング要素を操作する手段を提供する。これら要素としては、限定するものではないが、転写終止配列、オペレーター配列及び制限部位が挙げられる。しかし、これら隣接配列が望ましくない場合、エキソヌクレアーゼIII-媒介欠失のような技術的に公知の方法でそれらを除去することができる。
既知配列のdsRNAのため、適切なオーバーハング末端と共に“センス”及び“アンチセンス”の両鎖を化学的に合成し、相互にハイブリダイズし、かつ対向するプロモーター間のベクター中に直接連結することができる。
IV.プロモーター
既に説明したように、本発明は、dsRNAをコードする配列の“センス”及び“アンチセンス”の両鎖の同時転写を可能にする新規な二重プロモーター系を含む。本発明の発現カセットで使うために選択する特定のプロモーターは、該発現カセット内に含まれるdsRNAによって標的される生物又は細胞型によって決まる。例えば、植物細胞がdsRNAの標的の場合、植物プロモーターを使用すべきである。哺乳類細胞がdsRNAの標的の場合、哺乳類プロモーターを使用すべきである。プロモーターは構成性、誘発性、又は細胞依存性でよく、望まれる用途と結果によって決まる。プロモーターは同一でなくてよいが、同一でもよい。プロモーターは、異なる遺伝子から単離さた異なるタイプでよく、差次的に調節され、或いは1塩基程度異なってよい。
本発明の発現カセットにはpol IIIプロモーターが好ましい。I型及びII型のpol IIIプロモーター(例えば、tRNA遺伝子及びアデノウイルスVA遺伝子用プロモーター)は、転写開始部位(すなわち、関連構造遺伝子内)の下流に位置する要素を必要とする。対照的に、III型pol IIIプロモーター(例えば、U6小核(sn)RNA及びH1 RNAプロモーター)は遺伝子内プロモーター要素の必要条件を欠く。それらは伝統的なTATAボックス(Mattajら, Cell, 55:435-442 (1988))、近位配列要素(PSE)及び状況によっては遠位配列要素(DSE;Gupta and Reddy, Nucleic Acids Res., 19:2073-2075 (1991))を含む、転写開始部位の上流にすべてのシス-作用プロモーター要素を含む。特定の用途では、カセットのコード領域を設計するとき、遺伝子内プロモーター要素の非存在は、より大きいフレキシビリティーを許すので、III型プロモーターが好ましい。追加の考慮すべき事項が最優先される他の用途では(例えば、siRNAsの細胞質局在化)、他のpol IIIプロモーターが好ましいかもしれない。II型とIII型の両pol IIIプロモーターを用いてsiRNAsを発現させている(Brummelkampら (2002) Science 296: 550-553; Paddisonら (2002), Genes and Development 16: 948-958; Miyagishi and Taira (2002), Nature Biotechnology, 20:497-500; Leeら,同書:500-505; Paulら,同書: 505-508; Kawasaki and Taira (2003), Nucleic Acids Res. 31:700-707)。
本発明のプロモーターは、好ましくは転写開始点で特定のヌクレオチドを必要とせず、それによってdsRNAコード配列の設計でのフレキシビリティーを最適化するが、いくつかのポリメラーゼによる最初の位置におけるG又はAの特異的要求を含め、いくつかの特異性は許容される(例えば、図2参照)。
異種プロモーター/リーディングフレーム組合せの構築では、プロモーターは、その自然設定内の転写開始部位からの距離と異種転写開始部位からの距離が同じ当たりに位置することが好ましいが、この距離のいくらかの変更は特定条件下でプロモーター機能を失わずに果たすことができる。
プロモーターの単離のいくつかの方法が知られている。例えば、該プロモーターの一部又は対応する遺伝子配列が分かっている場合、全長プロモーター配列を単離することができる。当業者は、種々の大小の挿入ゲノムDNAライブラリーをハイブリダイゼーション又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術でスクリーニングし、所望の配列を含有するライブラリークローンを同定しうることを認識している。典型的に、ハイブリダイゼーションプローブとして所望の配列を用いて既知配列を含有する個々のライブラリークローンを同定することができる。代わりに、既知配列を基礎とするPCRプライマーを設計し、かつ他のプライマーと併用して既知DNAポリヌクレオチド配列に隣接した配列を増幅することができる。その結果、隣接DNA配列を含有するライブラリークローンを同定することができる。結果のライブラリークローンのDNA挿入断片の制限地図作成及びハイブリダイゼーション分析は、既知DNAポリヌクレオチド配列に隣接したDNA配列の同定を可能にする。従って、プロモーター配列の一部だけが分かればプロモーターを単離することができる。
本発明のプロモーター領域は、典型的に、内部及び隣接する両制限配列を含めてクローニングプロセスで補助するように操作する。
転写ターミネーター
一旦発現カセットのコード配列が転写されると、転写ターミネーターは転写の効率的な停止を斟酌する。本発明の転写ターミネーターは、好ましくは最小の構造複雑性を有し、ポリアデニル化のような転写後プロセシング事象に信号を送らない。転写ターミネーターは、理想的にはdsRNA用のコード配列と、対向するヌクレオチド鎖を転写するためのプロモーター配列との間に位置するように最小構造が好ましく、最も好ましくは対向するヌクレオチド鎖を転写するためのプロモーター配列の3'末端の一部を形成するする。本発明の新規プロモーター系によって生じる所望産物は少なくとも2ヌクレオチドの3'オーバーハングを有するdsRNAなので、転写後プロセシングは好ましくない。Tuschl, Thomas, Nature Biotechnology, 20:446-448 (2002); Miyagishi and Taira, Nature Biotechnology, 20:497-500 (2002)。従って、好ましい転写ターミネーターは、4〜25個の核酸を含み、その少なくとも4個の連続した核酸はチミジル残基である(Miyagishi及びTaira,上記参照)。好ましいターミネーターとしては、pol III用最小終止配列、III型ポリメラーゼ、4個の連続したチミジル残基の配列が挙げられる。図4に、このような終止配列の相補性配列が示され、この例では、好ましい位置内で本発明のプロモーターの3'遠位末端で操作した。図4を参照すると、本明細書で述べるようにプロモーター中に操作した場合でさえ、相補性ターミネーター配列は4個のアデニリル残基に限定されない。5'〜4個のアデニリル領域のすぐ隣の領域の20個の塩基のいずれかを置換してより大きい終止配列を収容することができる。技術的に周知の方法で制限部位をこの領域に含めてもこのような置換の取込みを楽にすることができる(Sambrookら, 前出; Ausubelら,前出)。
一般的に、発現カセットの相手プロモーターで開始されるポリメラーゼ反応の転写を終止できるいずれの終止配列も使用できる。好適な3'終止配列は、オリゴヌクレオチドプライマーを用いる増幅法によってゲノムライブラリーから単離することができ、或いは上述したように化学的に構築することができる。
プロモーター/ターミネーター組合せの操作
本発明の特徴は、一方の鎖の転写を開始しながら、同時に相補鎖の転写を終止できるプロモーター/ターミネーター配列の機能的組合せである。本発明のプロモーター/ターミネーター配列は、転写終止配列を機能的プロモーターの3'遠位末端中に組み込む。ターミネーターの組込みは、プロモーター用の転写開始部位を妨害しないように、通常ターミネーター配列を収容するため、未変性プロモーターから配列の欠失が必要な方法で行う。
プロモーター配列中にターミネーターを操作することは、技術的に周知のいずれの方法でも達成することができる。例えば、部位特異的突然変異法を行って該プロモーターの3'領域内の所望の位置で切断すると一本鎖末端を有する制限部位が生じる(例えば、Adelmanら, DNA, 2:183, (1983)参照)。
代わりに、本明細書で述べるdsRNAコード配列用の既知の隣接配列のように、操作したプロモーターの制限部位によって生成した一本鎖に相補性の一本鎖末端を有し、かつ所望のターミネーター用配列を含む合成ヌクレオチドを合成することができる。この代替案では、相補性末端をハイブリダイズかつ連結することもdsRNAコード配列をプロモーター間に位置づける。次いで、該コード配列用の相補鎖を好ましくは上述したように酵素的に合成する。
終止配列をプロモーターに3'平滑末端を生じさせる様式でプロモーター中に操作することもでき、それによって転写が、好ましくは該平滑末端に連結したヌクレオチドの最初の核酸のところで開始する。この場合、dsRNA用コード配列は、簡単に本発明の2つのプロモーター間の位置に連結して平滑末端化することができる(例えば、Sambrookら,前出; Ausubelら,前出)。
1つ以上の制限部位をプロモーターの3'末端中、好ましくはターミネーター配列とTATAボックスとの間に操作することもできる。操作した制限部位はクローニング操作を楽にし、かつdsRNA用コード配列の単離を容易にしうる。終止配列と制限部位配列を合わせた長さは、4〜25塩基の大きさ、好ましくは4〜20塩基、最も好ましくは5〜16塩基長であるべきだ。当然、指定したヌクレオチド配列長を満たすという条件で、他の遺伝要素を操作した制限部位と交換し、或いは一緒に含めることができる。
発現制御要素
本発明のいくつかの実施形態は、転写の開始のみならず転写が進行する速度を調節するために機能する発現制御要素を含む。これら配列は、プラスミドコピー数、組換え特性(例えば、細胞ゲノムへの部位特異的又は無差別組込み)及びプロモーター活性のような発現の状況を制御する。発現制御配列は、本発明の発現カセットが安定的又は過渡的に細胞中に組み込まれるかを決定し、かつ一旦発現カセットが組み込まれたら、発現カセット内にコードされているdsRNAがどのレベルで発現されるかを決定するので重要である。
このような制御要素の1つは、トランス-作用因子によって認識されるシス-作用オペレーター配列である。このオペレーター配列は、プロモーター自体の中に、又はオペレーター配列を認識するトランス-作用因子が存在するとき、プロモーター由来のポリメラーゼ活性の調節を斟酌する適切な位置に該プロモーターを含有するベクター中に、操作しうる1個以上のヌクレオチド配列を含む。トランス-作用因子は、本発明の発現カセットと同じベクター又は染色体中にコードされ、或いは他のベクター又は染色体内にコードされうる。
トランス-作用因子によって認識されるオペレーター配列は、本明細書で述べる二重プロモーター系のプロモーターからの発現に誘発性の特徴を与える。発現の誘発は、利用する特定のオペレーター系によって決まる種々の手段で達成できる。例えば、いくつかのオペレーター系は組織特異的発現特性をプロモーターに与える。他のオペレーターは、小分子及びホルモンで活性化される。典型的なオペレーター系としては、エクジソン/グルココルチコイド応答要素(GRE)(Invitrogen, Carlsbad, CA);Tetオペロン(Clontech, Palo Alto, CA; Invitrogen, Carlsbad, CA);及びLacオペロン(Hu and Davidson (1987) Cell, 48:555-556)が挙げられる。さらなる制御配列は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。他の例示哺乳類発現制御配列は、SV-40プロモーター(Science, 222:524-527 (1983))、CMV I.E.プロモーター(Proc. Natl. Acad. Sci., 81:659-663 (1984))又はメタロチオネインプロモーターから得られる(Nature, 296:39-42 (1982))。
本発明の発現カセットで使う好ましい発現制御要素(オペレーター配列)はテトラサイクリン(tet)オペレーター配列(tet O)である。図3に示されるように、本発明で使うために修飾したU6 snRNAプロモーター中にtet Oを操作することができる。tet Oがテトラサイクリン-感受性トランス-作用タンパク質(テトラサイクリンリプレッサー、Tet R)によってつながれると、プロモーターの転写開始が妨害される。tet OがTet Rにつながれない場合、プロモーターからの転写が進行し、プロモーターに作動可能に連結しているコード配列を発現させる(Ohkawa and Taira, Human Gene therapy, 11:577-585 (2000); van de Wetering, EMBO Reports, 4:609-615 (2003)参照)。
V.組換えベクター
本発明の別の局面は、本発明の発現カセットを含有するベクターに関係する。特定タイプのベクターは、本発明の発現カセットを増幅させることができる。他のタイプのベクターは、発現カセットの細胞への効率的な導入のため、及び一旦導入したらその安定した発現のために必要である。本発明のDNA発現カセットを受容できるいずれのベクターも本発明の目的で好適な組換えベクターとして考慮される。ベクターは宿主ゲノム中に組み込まれ或いはエピソーム形態で操作されるいずれの環状又は線状長さのDNAでもよい。ベクターは、宿主細胞中に効率的に組み込むためのさらなる操作又は特定の条件を必要とし(例えば、多くの発現プラスミド)、或いは自己組み込みする細胞特異系(例えば、組換えウイルス)の一部でよい。
各ベクター系は、とりわけ、宿主細胞範囲、細胞内位置の選定、dsRNA発現のレベルと持続時間、及びスケールアップ/精製の容易さに対して利点と欠点を有する。最適な送達系は以下の特徴がある:1)広範な宿主範囲;2)高い力価/μg DNA;3)安定した発現;4)宿主細胞に無毒;5)宿主細胞内で複製なし;6)理想的にはウイルス遺伝子発現なし;7)娘細胞への安定した伝達;8)高い救出(rescure)収率;9)その後の分析と干渉しうる、続いて起こる複製-コンピテントウイルスの欠如。ベクターの選択は、意図した用途にも依存しうる。
エピソームベクターは、一般に、その元の機能に加え、細胞分割で娘細胞間の複製分子の均等な分布を保証する機能をコードする染色体外レプリケーターを有する。高等生物では、染色体外レプリケーターの分割の異なるメカニズムが存在する。例えば、酵母菌の人工(ARS-含有)プラスミドは、染色体外レプリケーターとして染色体セントロメアを利用する(Struhlら, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 76:1035-1039 (1979))。後生動物細胞では、よく研究された安定的な染色体外レプリケーターの一例は、Epstein-Barrウイルス(EBV)由来の潜在性起源oriPである(Yatesら, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 81:3806-3810 (1984); Yatesら, Nature, 313:812-815 (1985), 及びKrysanら, MoL Cell. Biol., 9:1026-1033 (1989)参照)。
特定のベクターは、導入された宿主細胞(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳類ベクター)内で自律性複製が可能である。他のベクター(例えば、非-エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞中に導入されるとすぐ宿主細胞のゲノムに組み込まれ、その結果、宿主ゲノムと共に複製される。
特定のベクター、“発現ベクター”は、遺伝子の発現を指揮することができる。本発明の発現カセットを含むいずれの発現ベクターも本発明の発現カセットとみなす。一般に、組換えDNA法用途の発現ベクターはプラスミドの形態である。しかし、本発明の好ましいベクター系は、ウイルスベクター、例えば、複製欠損レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス、バキュロウィルス、CaMVなどであり、さらに詳細に後述する。
例として、本発明の哺乳類標的細胞で使う発現ベクター構成物は以下のものが挙げられる。
1.上述したように、哺乳類細胞内で転写を指揮する哺乳類U6遺伝子由来のもの(RNAポリメラーゼIIIプロモーター)のような、選択した標的細胞内で機能する二重プロモーター系DNA発現カセット。
2.Epstein-Barrウイルス由来の複製起点のような、エピソーム(非-組込み)複製を可能にする哺乳類複製起点(任意)。
3.pBR322プラスミド由来の複製起点のような、必要量の本発明のDNA発現カセットを生成するために細菌細胞内で機能性の複製起点。
4.ネオマイシン又はハイグロマイシン抵抗性のような、該構成物で形質移入/形質導入される哺乳類細胞の選択を可能にする哺乳類選択マーカー(任意)。
5.カナマイシン又はアンピシリン抵抗性のような、プラスミドベクターで形質転換される細菌細胞の選択を可能にする細菌抗生物質抵抗性マーカー。
本発明のDNA発現カセットを受容するように操作できる好適な大腸菌発現ベクターの例としては、pTrc(Amannら, Gene, 69:301-315 (1988))及びpBluescript(Stratagene, San Diego, CA)が挙げられる。酵母菌S. cerevisiae内での発現用ベクターの例としては、pYepSec1(Baldariら, EMBO J., 6:229-234 (1987))、pMFa(Kurjan及びHerskowitz, Cell, 30:933-943 (1982))、pJRY88(Schultzら, Gene, 54:113-123 (1987))、pYES2(Invitrogen, Carlsbad, CA)、及びpPicZ (Invitrogen, Carlsbad, CA)が挙げられる。バキュロウィルスベクターは、昆虫細胞内で培養したdsRNAsの発現に好ましい系であり(例えば、Sf9細胞,米国特許第4,745,051号参照)、pAcシリーズ(Smithら, Mol. Cell Biol., 3:2156-2165 (1983))、pVLシリーズ(Lucklow及びSummers, Virology, 170:31-39 (1989))及びpBlueBac (Invitrogen, San Diegoから入手可能)が挙げられる。原核生物及び真核生物の両細胞に好適な他の発現系については、上記Sambrookらの16及び17章を参照せよ。好ましい哺乳類ベクターは、一般にウイルス起源のベクターであり、詳細に後述する。
哺乳類ウイルスベクター
ウイルスベクターによる細胞の感染は細胞中に本発明の発現カセットを導入する好ましい方法である。ウイルスベクターアプローチは、高割合の細胞が発現カセットを受け入れ、形質移入に成功した細胞の選択の必要を排除できるという利点を有する。典型的な哺乳類ウイルスベクター系としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連型1(“AAV-1”)又はアデノ関連型2(“AAV-2”)ベクター、肝炎デルタベクター、生きた弱毒化デルタウイルス及びヘルペスウイルスベクターが挙げられる。
(a)レトロウイルス
レトロウイルスは、安定的に宿主細胞ゲノム中に遺伝情報を組み込むために有用なRNAウイルスである。レトロウイルスが細胞を感染すると、そのRNAゲノムがdsRNA型に変換される(ウイルス酵素逆転写酵素によって)。ウイルスDNAは効率的に宿主細胞ゲノム中に組み込まれ、それが永続的に存在し、各細胞分割で宿主DNAと共に複製する。組み込まれたプロウイルスが、ゲノムの末端に位置する強力なプロモーターからウイルスRNAを定常的に産生する(ロングターミナルリピート又はLTRと呼ばれる配列内)。このウイルスRNAが、ウイルスタンパク質の生産用mRNA及び新しいウイルス用ゲノムRNAとして働く。細胞質内でウイルスが集合し、通常ほとんど細胞の健康に影響を及ぼさずに細胞膜から発芽する。そして、レトロウイルスゲノムが宿主細胞ゲノムの永続部分になり、レトロウイルス内に置かれるいずれの外来遺伝子も細胞内で無期限に発現されるはずである。その結果、レトロウイルスは細胞内で外来遺伝子を永続的に発現できるので魅力的ベクターである。宿主ゲノムのほとんどすべて或いは可能な限りすべての領域がレトロウイルス組込みに近づきうる(Withers-Wardら, Genes Dev., 8:1473-1487 (1994))。さらに、レトロウイルスは事実上あらゆる種類の哺乳類細胞を感染し、例外的に可変性にすることができる。
レトロウイルスベクター粒子は、本発明の発現カセットをレトロウイルスベクター中に組換え的に挿入し、かつパッケージング細胞系を用いて或いはレトロウイルスタンパク質を発現するレトロウイルスベクターと追加ベクターと共に非-パッケージング細胞系を共-形質移入してレトロウイルスタンパク質でベクターを包むことによって調製される。結果のレトロウイルルベクター粒子は、一般的に宿主細胞内で複製できず、dsRNAをコードする核酸を含有する発現カセットを含むプロウイルス配列として宿主細胞ゲノム中に組み込むことができる。結果として、発現カセットの核酸によってコードされるdsRNAを宿主細胞が産生する。図2に、本発明の発現カセットを導入するために有用なレトロウイルス構成物を示す。図2は、発現カセットの位置決め(対のロングターミナルリピート間)と、この場合ピューロr内の選択可能マーカーの存在を示す。発現カセットは、3'LTR内に配置してもよい(Barton及びMedzhitov (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 14943-14945;Gervaixら (1997) J. Virol. 71: 3048-3053)。
一般的にパッケージング細胞系を用いてレトロウイルスベクター粒子を調製する。パッケージング細胞系は、パッケージングに要求される必要なウイルス構造タンパク質を産生するが、感染性ビリオンを産生できない、遺伝的に構築された哺乳類組織培養細胞系である。他方、レトロウイルスベクターは、該構造遺伝子を欠いているが、パッケージングに必要な核酸配列を有する。パッケージング細胞系を調製するため、パッケージング部位が欠失している、所望レトロウイルスの感染性クローンを構築する。この構成物を含む細胞は、すべての構造タンパク質を発現するが、導入されたDNAを包み込めないだろう。代わりに、適切な核とエンベロープタンパク質をコードする1個以上の発現プラスミドを細胞系中に導入することによって、パッケージング細胞系を生成することができる。これら細胞内では、gag、pol、及びenv遺伝子が同一又は異なるレトロウイルスから誘導しうる。
本発明に好適な多くのパッケージング細胞系は先行技術から入手可能である。これら細胞系の例としては、Crip、GPE86、PA317及びPG13が挙げられる。Millerら, J. Virol., 65:2220-2224 (1991)(参照によって本明細書に取り込まれる)を参照せよ。他のパッケージング細胞系の例は、Cone and Mulligan, Proceedings of the National Academy of Sciences, U.S.A., 81:63496353 (1984)及びDanos and Mulligan, Proceedings of the National Academy of Sciences, U.S.A., 85:6460-6464 (1988); Eglitisら, Biotechniques, 6:608614 (1988); Millerら, Biotechniques, 7:981-990 (1989)(これらも参照によって本明細書に取り込まれる)に記載されている。PA317及びGPXパッケージング細胞系によって産生されるタンパク質のような両栄養性又は異種栄養性エンベロープタンパク質を使用してもレトロウイルスベクターを包むことができる。
欠損レトロウイルスは、哺乳類細胞への遺伝子伝達用によく特徴づけられている(レビューのため、Miller, A.D., Blood, 76:271(1990)参照)。レトロウイルスゲノム中に挿入した本発明の発現カセットをコードする核酸を有する組換えレトロウイルスを構築することができる。さらに、レトロウイルスゲノムの一部を除去してレトロウイルスを複製欠損にすることができる。この複製欠損レトロウイルスをビリオン中に包み、これを用いて標準的方法でヘルパーウイルスの使用によって標的細胞を感染させることができる。組換えレトロウイルスの生成手順及び該ウイルスで細胞をインビトロ又はインビボ感染させる手順はCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F.M.ら(eds.) Greene Publishing Associates, (1989), Sections 9.10-9.14及び他の実験室マニュアルに記載されている。
本発明に包含されるレトロウイルスの例としては、技術的に周知なpLJ、pZIP、pWE及びpEMが挙げられる。好適なパッケージング細胞系の例としては、Ψ Crip、Ψ Cre、Ψ 2、及びΨ Amが挙げられる。レトロウイルスを用いて種々の遺伝子が、上皮細胞、内皮細胞、リンパ球、筋芽細胞、肝細胞、骨髄細胞を含む多くの異なった細胞型中にインビトロ及び/又はインビボ導入されている(例えば、Eglitisら, Science, 230:1395-1398 (1985); Danos and Mulligan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:6460-6464 (1988); Wilsonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:3014-3018 (1988); Armentanoら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6141-6145 (1990); Huberら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8039-8043 (1991); Ferryら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8377-8381 (1991); Chowdhuryら, Science, 254:1802-1805 (1991); van Beusechemら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:7640-7644 (1992); Kayら, Human Gene Therapy, 3:641-647 (1992); Daiら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:10892-10895 (1992); Hwuら, J. Immunol., 150:4:104-115 (1993); 米国特許第4,868,116号; 米国特許第4,980,286号; PCT出願WO 89/07136; PCT出願WO 89/02468; PCT出願WO 89/05345;及びPCT出願WO 92/07573; EPA 0 178 220;米国特許第4,405,712; Gilboa, Biotechniques, 4:504512 (1986); Mannら, Cell, 33:153159 (1983); Cone and Mulligan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:63496353 (1984); Eglitisら, Biotechniques 6:608614 (1988); Millerら, Biotechniques, 7:981-990 (1989); Miller, Nature (1992), 前出; Mulligan, Science, 260:926-932 (1993); 及びGouldら, 及び表題“遺伝子治療で有用なレトロウイルスベクター”の国際特許出願番号WO 92/07943参照)。これら特許文献及び出版物の教示は、参照によって本明細書に取り込まれる。
(b)アデノウイルス
アデノウイルスのゲノムを操作して、それが本発明の発現カセットをコードするが、普通の溶菌性ウイルスライフサイクルで複製するその能力という点で不活性化することができる。例えば、Berknerら, BioTechniques, 6:616 (1988); Rosenfeldら, Science, 252:431-434 (1991); 及びRosenfeldら., Cell, 68:143-155 (1992)を参照せよ。アデノウイルス株Ad型5 d1324又はアデノウイルスの他の株(例えば、Adz、Ad3、Ad7など)から誘導される好適なアデノウイルスベクターは技術的に周知である。組換えアデノウイルスは、細胞を分割して効率的な遺伝子送達媒体にする必要がなく、かつ気道上皮(既に引用したRosenfeldら (1992))、内皮細胞(Lemarchandら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89):6482-6486 (1992))、肝細胞(Herz and Gerard, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2812-2816 (1993))及び筋細胞(Quantinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:2581-2584 (1992))を含む種々多様な細胞型を感染させるために使用できるという点で有利である。
(c)アデノ関連ウイルス
アデノ関連ウイルス(AAV)は、効率的な複製と生産ライフサイクルのためのヘルパーウイルスとしてアデノウイルス又はヘルパーウイルスのような別のウイルスを必要とする天然に存在する欠損ウイルスである。(レビューのため、Muzyczkaら, Curr. Topics in Micro. and Immunol., 158:97-129 (1992)参照)。アデノ関連ウイルスは、高頻度の安定した組込みを示す(例えば、Flotteら, Am. J Respir. Cell. Mol. Biol., 7:349-356 (1992); Samulskiら, J. Virol., 63:3822-3828 (1989);及びMcLaughlinら, J. Virol, 62:1963-1973 (1989); Flotteら, Gene Ther., 2:29-37 (1995); Zeitlinら, Gene Ther., 2:623-31 (1995); Baudardら, Hum. Gene Ther., 7:1309-22 (1996)参照;これらは参照によって本明細書に取り込まれる)。300塩基対程度のAAVを含有するベクターを包んで組み込むことができる。外因性核酸用の空間は、本発明の発現カセットの全体的な大きさを優に超える約4.5kbに制限される。Tratschinら, Mol. Cell. Biol.,5:3251-3260 (1985)に記載されているようなAAVベクターを用いて細胞中に発現ベクターを導入できる。AAVベクターを用いて種々の核酸が異なる細胞型中に導入されている(例えば、Hermonatら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6466-6470 (1984); Tratschinら, Mol. Cell. Biol., 4:2072-2081 (1985); Wondisfordら, Mol. Endocrinol., 2:32-39 (1988); Tratschinら, J. Virol., 51:611-619 (1984);及びFlotteら, J. Biol. Chem., 268:3781-3790 (1993)参照)。
一旦細胞を選択し、問題のdsRNAコード配列を含むことが分かれば、宿主細胞ゲノムから完全なdsRNA発現カセットを容易に“救出(rescued)”して、AAVウイルスタンパク質と野生型アデノウイルスを導入して増幅することができる(Hermonat. and Muzyczka, PNAS. USA, 81:64666470 (1984); Tratschinら, Mol. Cell. Biol., 5:32513260 (1985); Samulskiら, PNAS USA, 79:20772081 (1982); Tratschinら, Mol. Cell. Biol., 5:32513260 (1985))。これは、選択したdsRNA'sの単離、精製及び同定を他の分子生物学法よりもかなり容易にする。
(d)レンチウイルス
本発明の発現カセットをレンチウイルスベクター中に組み込んでもよい。この関係では、Qinら(2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 183-188; Miyoshiら(1998) J. Virol. 72: 8150-8157; Tisconiaら(2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 1844-1848;及び Pfeiferら(2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 2140-2145を参照せよ。レンチウイルスベクターキットは、Cell Genesys, Inc.の特許ライセンスに基づいてIncInvitrogen(Carlsbad, CA)から入手可能である。
VI.選択可能マーカー遺伝子
本発明の核酸構成物をうまく組み込んだ細胞を同定する方法を有することは、繁く望ましい。これは、好ましくは形質転換プロセスで用いるベクター中に選択可能マーカー遺伝子を含めることで達成する。このような選択可能マーカーの例は、図2に示されるようなピューロr遺伝子である。選択可能マーカーは、形質転換するDNA上に存在するマーカー遺伝子によってコードされる形質について、操作した物質を選択又はスクリーニングすることによって、形質転換した細胞、組織又は動物を同定かつ単離することを可能にする。例えば、操作した細胞を、形質転換マーカー遺伝子構成物が抵抗性を与える抗生物質を阻害量含有する培地上で増殖することによって選択を果たすことができる。さらに、本発明の組換え核酸構成物上に存在しうるいずれかの可視マーカー遺伝子(例えば、β-グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、B又はC1遺伝子)の活性についてスクリーニングすることによって、形質転換した細胞を同定することもできる。このような選択及びスクリーニング方法論は技術的に周知である。
物理的及び生化学的方法を用いても本発明の遺伝子構成物を含有する細胞形質転換体を同定することができる。この方法としては、限定するものではないが、以下の方法が挙げられる:1)組換えDNA挿入断片の構造を検出かつ決定するためのサザン分析又はPCR増幅;2)遺伝子構成物のRNA転写物を検出かつ調査するためのノーザンブロット、S-1 RNアーゼタンパク質、プライマー-伸長又は逆転写酵素-PCR増幅;3)該遺伝子産物が遺伝子構成物によってコードされている酵素活性を検出するための酵素検定法;4)遺伝子構成産物がタンパク質である場合、タンパク質ゲル電気泳動法、ウエスタンブロット法、免役沈降法、又はエンザイム-リンクドイムノアッセイ;5)導入した遺伝子構成物の発現の結果として産生される化合物の生化学的測定。インサイツハイブリダイゼーション、蛍光活性化細胞選別(FACS)、酵素染色、及び免疫染色のようなさらなる方法を使用しても特異的な細胞、生物及び組織内の組換え構成物の存在又は発現を検出することができる。すべてのこれら検定を行う方法は技術的に周知である。
限定するものではないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら, Cell, 11:223 (1977))、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 48:2026 (1962))、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら, Cell, 22:817 (1980))遺伝子を含む多くのさらなる選択系をそれぞれtk-、hgprt-又はaprt-細胞内で使用することもできる。また、メトトレキセートに対する抵抗性を与えるdhfr(Wiglerら, Natl. Acad. Sci. USA, 77:3567 (1980); O'Hareら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:1527 (1981));ミコフェノール酸に対する抵抗性を与えるgpt(Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:2072 (1981));アミノグルコシドG-418に対する抵抗性を与えるneo(Colberre-Garapinら, J. Mol. Biol., 150:1 (1981));及びハイグロマイシンに対する抵抗性を与えるhygro(Santerreら, Gene, 30:147 (1984))の選択の基礎として代謝拮抗物質抵抗性を使用することができる。最近、さらなる選択可能遺伝子について、すなわち細胞にトリプトファンの代わりにインドールを利用させるtrpB;細胞にヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用させるhisD(Hartman & Mulligan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:8047 (1988));及びオルニチンデカルボキシラーゼインヒビター、2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン、DFMO(McConlogue L., 1987, In: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed.)に対する抵抗性を与えるODC (オルニチンデカルボキシラーゼ)について記述されている。
VII.宿主細胞
本発明の発現カセットを用い、限定するものではないが、発現カセット配列の増幅、逆ゲノム研究及び遺伝子治療を含む種々の目的のため、いずれの真核生物又は原核生物細胞も形質転換させることができる。好ましい細胞型としては、骨髄幹細胞及び造血細胞が挙げられる。これら細胞型は、比較的容易にヒトから除去かつ置換され、伝達された発現カセット増殖用の細胞の自己再生集団と、コードされたdsRNAの、細胞代謝に及ぼす効果に関する研究を提供する。このような細胞は、発現カセットをコードするレトロウイルスベースベクターによってインビトロ又はインビボ形質移入/形質導入することができる。本発明の発現カセットを含有するベクター用標的として役立ちうる真核生物細胞型としては、器官及び生物全体の一次細胞培養、細胞系、酵母菌、及び細胞集団が挙げられる。
本発明は、dsRNAが発現される生物のタイプ又は細胞型に限定されない。DNA配列の機能を決定することが求められているいずれの生物も本発明の範囲内であると考えられる。このような生物としては、限定するものではないが、動物(例えば、脊椎動物、無脊椎動物毒)、植物(例えば、単子葉植物、双子葉植物、維管束、無維管束、種子のない、種子植物)、原生生物(例えば、藻類、シトリエート(citliates)、珪藻類)、及び真菌(多細胞型及び単細胞型酵母菌を含む)が挙げられる。
さらに、発現ベクターを導入しうるいずれの細胞型もこの発明の範囲内に明白に包含される。このような細胞は、胚細胞(例えば、卵母細胞、精細胞、胚幹細胞、2-細胞胚嚢、プロトコルム(protocorm)様体細胞、脳梁細胞)、成人細胞(例えば、脳細胞、果実細胞)、未分化細胞(例えば、胎児細胞、腫瘍細胞)、分化細胞(例えば、皮膚細胞、肝細胞)、分割細胞、老化細胞、培養細胞などによって例示される。
いずれかの適切な手段を用いて宿主細胞を本開示ベクターによって形質転換させ、かつプロモーターを誘発し、形質転換体を選択し、又は発現を検出するのに適するように変性した通常の栄養培地内で培養することができる。温度やpHのような宿主細胞に好適な培養条件は周知である。好ましくは、細胞の形質移入に用いるプラスミドの濃度を滴定して、個々の細胞中に導入される異なる影響因子siRNA分子をコードするベクターの数を限定する。
本開示方法で使う好ましい真核生物宿主細胞としては、限定するものではないが、SV40で形質転換されたサル腎臓CVI系(COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎細胞(293, Grahamら, J. Gen Virol., 36:59 (1977)); 新生児ハムスター腎細胞(BHK, ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣-細胞-DHFR (CHO, Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サル腎細胞(CVI ATCC CCL 70);アフリカングリーンサル腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頚癌細胞(HeLa, ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK, ATCC CCL 34);バファローラット肝細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(hep G2, HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら, Annals N. Y. Acad. Sci, 383:44-68 (1982));ヒトB細胞(Daudi, ATCC CCL 213);ヒトT細胞(MOLT-4, ATCC CRL 1582);及びヒトマクロファージ細胞(U-937, ATCC CRL 1593)が挙げられる。これら細胞は、技術的に周知の標準的な方法で維持することができる(例えば、Freshney, Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique, (3d ed.) WileyLiss, New York (1994); Kuchlerら, Biochemical Methods in Cell Culture and Virology (1977), Kuchler, R.J., Dowden, Hutchinson and Ross, Inc.及びその中で引用される参考文献を参照せよ)。培養した細胞系は、細胞の単層形態であることが多いが、細胞懸濁液も使用される。
好ましい実施形態では、1個以上のリポーター遺伝子を用い、形質移入又は形質導入が成功している当該細胞を同定する。dsRNAを発現させる発現カセットによって、同一又は異なるリポーター遺伝子を発現させて、実際のdsRNA発現の同定を与えることができる。
VIII.形質移入法
本発明の特定の局面内では、媒体を利用し、或いは種々の物理的方法によって細胞中に発現カセットを導入することができる。該方法の代表例としては、リン酸カルシウム沈降(Dubenskyら, PNAS, 81:7529-7533 (1984))、無傷標的細胞中への該核酸の直接微量注入 (Acsadiら, Nature, 352:815-818 (1991))、及び導電性溶液内に懸濁している細胞を強電磁場にさらして一時的に膜に極性を与えて核酸分子の流入を可能にするエレクトロポレーションを用いる形質転換が挙げられる。他の手順としては、不活性アデノウイルスに連結した核酸分子(Cottonら, PNAS, 89:6094 (1990))、リポフェクション(Felgnerら., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:7413-7417 (1989))、微粒子銃(Williamsら, PNAS, 88:2726-2730 (1991))、ポリリジンのようなポリカチオン化合物、受容体特異性リガンド、該核酸分子を取り込むリポソーム、及び該核酸分子を含有する大腸菌を外側の細胞壁から外し、ポリエチレングリコールを用いて動物細胞に融合させるスフェロプラスト融合の使用が挙げられる。
オリゴヌクレオチドの直接細胞摂取(それがDNA又はRNAで構成され、或いはその両者で構成されるかいずれにしても)自体は、現在のところあまり好ましくない方法とみなされている。siRNA及びアンチセンス分子の場合、オリゴヌクレオチドの直接投与はRNアーゼのような細胞ヌクレアーゼによる攻撃と消化という問題を随伴するからである。本発明の発現カセットの投与の好ましい態様は、既知ベクター(上述したような)を利用して発現カセットが所望の標的細胞によって発現されるように発現カセットの送達を促す。
宿主細胞が植物細胞の場合、発現ベクターは、粒子媒介遺伝子伝達によって導入することができる(米国特許第5,584,807号)。代わりに、本発明の発現カセットを含有する発現ベクターで予め形質転換した、限定するものではないが、アグロバクテリウム株を含む細菌で植物細胞を感染させることによって、植物細胞のゲノム中に発現カセットを挿入することができる(米国特許第4,940,838号)。
IX.siRNA遺伝子ライブラリー
本発明の主な用途の1つは、Inverse Genomics(登録商標)分析の目的でランダム化dsRNAs及び/又はsiRNAsを発現させるために使用しうる発現カセットのライブラリーの構築である。このようなライブラリーは、そのsiRNAによるサイレンシングが、siRNA遺伝子ライブラリーが発現される細胞系の表現型の特徴の検出できる変化を生じさせる未知の細胞遺伝子を同定する高効率的な方法を提供する。
概括的に述べると、この方法はランダム化siRNAs発現ライブラリーによって細胞の集団を形質移入又は形質導入する工程を含む。次いで、細胞集団の1つ以上の生物学的活性をモニターする。モニターした活性の変化を示す細胞を単離し、かつ問題の作動可能なsiRNAを含有する発現カセットを選択する。これらカセットのsiRNAは、その後のスクリーニングラウンドのため拡大することができる。最初のラウンド及び/又は次のスクリーニングラウンドから選択したsiRNAsの配列を決定し、このデータを、モニターした特徴の変化と関連する標的核酸を探査するために核酸データベースを検索し、及び/又はプローブを製造するために使用し、或いは他の用途で使う。
本発明のsiRNA遺伝子ライブラリーの構築は、上述したようなsiRNAs用コード配列の合成を必要とする。核酸配列は既知又はランダムでよい。配列がランダムの場合、単一のバッチ合成から、(理論的に)ランダム化配列長で可能なすべての塩基順序を含むランダム化配列のファミリーが得られる。一般に、これは4Nの異なるライブラリーメンバーが生成されることを意味し、ここで、N=各ランダム化配列内のヌクレオチド数である。ライブラリーのメンバーを増幅用の細菌ベクター中にクローン化し、又は技術的に周知の方法でPCR増幅することができる。Sambrookら, Molecular Cloning A Laboratory Manual (2nd ed.) Vols. 13, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, N.Y., (Sambrook) (1989); 及びF.M. Ausubelら, (eds.) Current Protocols in Molecular Biology, Current Protocols, Greene Publishing Associates, Inc. (1994)とJohn Wiley & Sons, Inc.の間のジョイントベンチャー(1994 Supplement) (Ausubel)。
そして、上述したように、相補鎖が合成された後、一方のプロモーターがランダム化核酸配列の一方の鎖を転写し、他方のプロモーターが相補鎖を転写するように、各ランダム化配列を本発明の発現カセット中に連結する。プロモーターは、好ましくは、本明細書で述べるように、アデニリル残基で置換された3'〜TATAボックスに位置する該プロモーターの少なくとも4個の塩基と、1〜20塩基の5'〜アデニリル残基及び3'〜TATAボックスの第2の任意置換とを有する、修飾したpol III型IIIプロモーターである。任意の1〜20塩基の置換は、制限部位又はオペレーター配列を含むことができる。
核酸配列を発現カセット又は発現ベクター内に位置づけたら、その相補鎖を合成する。これは、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片を用いて酵素的に行い、或いは代わりに、発現カセットをコンピテント細胞系を形質転換させるために用いるベクター中に組み込んで、その欠けている相補配列を細胞の修復酵素によって発現カセット中に組み込むことができる。
本発明のdsRNA発現ライブラリーを製造する代替方法は、発現カセット中への核酸配列の連結前に核酸配列に相補的な鎖を合成する工程を含む。結果の二本鎖分子を例えば平滑末端連結によって発現カセットのプロモーター間に連結することができる。
本発明のいくつかの実施形態では、それぞれ、配列の5'末端はグアニリル残基又はアデニリル残基でキャップされ、3'末端はシトシル又はチミジル残基でキャップされ。結果の各鎖のグアニリル又はアデニリル残基は、二重プロモーター配列のそれぞれのプロモーター用の第1転写塩基である。
本発明の他の実施形態では、既知配列のsiRNA遺伝子ライブラリーを生成する。このようなsiRNAライブラリーを生成するため、上記方法と同様の方法を利用し、既知siRNAsをコードする核酸配列が該カセット内のdsRNAコード配列を置換する。
核酸配列の挿入前又は挿入後、ライブラリーの発現カセットを適切なベクター中に組み込むことができる。ライブラリーに好適なベクターについては上述した。
siRNAライブラリーの検証
本発明のsiRNA遺伝子ライブラリーは、定性的及び定量的の両方で検証することができる。定性的検証は、ある反応で完全発現ライブラリーをインビトロ転写してからその細胞及びウイルスの両起源の種々の異なる既知遺伝子の発現を阻害する能力を評価することを含む。さらに、発現ライブラリーをDNAシークエンシングに供すると、正確に調製されたライブラリーは、各ランダム化位置のすべての4つのシークエンシングレーンにわたって均等なバンド強度をもたらす。
定量分析は、各分子内の各塩基位置の信頼区間を構築するための個々dsRNAs(拡張ライブラリーから選んで配列した)の統計分析を含み、そして各個のdsRNAコード配列を手動で配列決定することなく、ライブラリーの複雑性を評価することができる。両側の近接した2項信頼区間の式は、E=1.96*平方根(P*(1−P)/N)であり、式中、Pは所定位置の各ヌクレオチドの予測比率であり(DNA塩基では25%に等しい、つまりP=0.25)、EはP付近の所望信頼区間であり(すなわちP±E)、かつNは必要な試料サイズである(Callahan Associates Inc., La Jolla, CA)。例えば、5%(E=0.05)以内の各塩基の比率を知りたい場合、必要な試料サイズは289である。
1つ以上の表現型の特徴の変化の検出
説明したように、siRNA遺伝子ライブラリーを挿入断片の細胞系中に導入し、この細胞系をモニターして1つ以上の検出可能な表現型の特徴の差異又は変化を検出することができる。それを測定する特定の性質(活性)及び方法は、調査中の遺伝子の種類で変わる。例えば、本発明の方法を用いて、選択した定義済み化学物質に対する感受性と抵抗性を媒介する遺伝子(例として、薬物毒性遺伝子;発癌性化学薬品に対する抵抗性又は感受性をコードする遺伝子;及び特異的なウイルスや細菌病原による感染に対する抵抗性又は感受性をコードする遺伝子が挙げられる)を検出することができる。本発明の方法を用いて、ホルモン受容体、ウイルス受容体、及び細胞表面マーカーのようなリガンドへの結合を媒介する未知遺伝子を検出することもできる。本発明の方法を用いて未知の腫瘍サプレッサー、形質転換体、及び分化遺伝子を検出することもできる。
表現型の変化は形態学的、生化学的、又は挙動性でよい。形態学的変化は、典型的に、形質移入した生物の肉眼解剖学の変化で明らかになる。生化学的変化は、例えば、既知酵素の活性、特定物質の蓄積又は利用の割合、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動でのタンパク質パターン等によって決定することができる。siRNA発現に応じたこのような変化は、その転写物がsiRNAの標的である遺伝子は、その活性が変わっている酵素と同一経路内、或いはこれら経路に基質を供給し、又はそれによって生成した産物を利用する関連経路内で作用することを示唆する。
分子生物学的変化は、例えば、ディファレンシャルディスプレイ逆転写-PCR(DDRT-PCR)によって決定することができる。該変化は、その発現がsiRNAによって阻害される遺伝子は、転写因子のような転写調節分子をコードすることを示唆する。
DDRT-PCR法は、Mullisら, 米国特許第4,683,195号、第4,683,202号及び第4,965,188号に記載されているポリメラーゼ連鎖反応に基づく。簡単には、PCRプロセスは、所望の標的配列を含有するDNA混合物にモル過剰の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを導入することから成る。この2つのプライマーは二本鎖配列のそれぞれの鎖に相補性である。混合物を変性させてハイブリダイズを可能にする。ハイブリダイゼーション後、プライマーを熱安定性DNAポリメラーゼで伸長して相補鎖を形成する。相対的に高濃度の所望標的配列のセグメントを得るのに必要なだけ、変性、ハイブリダイゼーション、及びポリメラーゼ伸長の工程を繰り返すことができる。
DDRT-PCRを使用する場合、標的はmRNAであるが、PCRプロセス前にオリゴ(dT)プライマーの存在下でmRNAを逆転写酵素で処理してcDNAを生じさせる。PCRはcDNA合成で用いるオリゴ(dT)プライマーとランダムプライマーを併用して行う。理論では、mRNAだけが(間接的に)増幅されるので、発現した遺伝子だけが増幅される。2つの試料を比較する場合、増幅産物をゲルの並列レーン内に置き;電気泳動後、産物を比較し、或いは“差次的に表示”することができる。
改良されたDDRT-PCR法は技術的に記載されており、例えば、E. Haagら, "Effects of Primer Choice and Source of Taq DNA Polymerase on the Banding Patterns of Differential Display RT-PCR," Biotechniques, 17:226-228 (1994)に記載されている改良が挙げられる。別の例は、O.C. Ikonomovら, "Differential Display Protocol With Selected Primers That Preferentially Isolate mRNAs of Moderate to Low Abundance in a Microscopic System," Biotechniques, 20:1030-1042 (1996)に記載されている改良が挙げられる。
さらに別の代替法は、生物内の挙動変化の決定である。生物が単細胞、例えば、酵母菌の場合、このような変化としては光向性、化学薬品向性などが挙げられ、その発現がsiRNAの存在によって減少する遺伝子はこれら事象を調節することを示唆する。多細胞生物内で挙動変化、例えば、空間メモリの損失、攻撃性等を観察する場合、このような変化は、神経経路内でその転写物がsiRNA機能によって標的される遺伝子が該挙動の制御に関与したことを示す。
上述したように、調査中の特定の表現型の特徴は、利用する検定法のタイプを決める。例えば、受容体(例えば、血小板誘導成長因子受容体のようなホルモン又は薬物受容体)をコードする核酸に及ぼすsiRNAsの効果は結合特性、分化、又は成長の差異について測定する。転写調節因子に及ぼす効果は、影響された遺伝子の転写レベルに関するsiRNAsの効果について測定する。キナーゼに及ぼす効果は、リン酸化のレベルとパターンの変化として測定する。腫瘍サプレッサー及び発癌遺伝子に及ぼす効果は、形質転換、腫瘍化、形態学、侵襲性、接着性及び/又は成長パターンの変化として測定する。変化を受けやすい遺伝子機能のタイプと表現型のリストは、ウイルス感受性−HIV感染;自己免疫性−リンパ球の不活性化;薬物感受性−薬物の毒性と効力;移植片拒絶−MHC抗原提示などに基づく。実施例4では本発明の方法を用いる遺伝子機能の研究における生物学的特徴のモニタリングについて説明する。
細胞分化に及ぼすsiRNAsの効果は、細胞成長/増殖の変化、表面タンパク質(FACSで選別)の変化、付着/差次的トリプシン化の損失又は増加、細胞サイズの変化(FACSで選別)等によって検定することができる。従って、例えば、その分化がsiRNAsによって阻害されるPC12細胞は分裂終了細胞にならず、分割を停止する。
細胞死も有用な指標である。例えば、薬物抵抗性(例えば、多薬物抵抗性癌細胞)である細胞をsiRNA発現ライブラリーで形質移入又は形質導入し、細胞毒性薬物(例えば、シスプラチン、ビンクリスチン、メトトレキセート、ドキソルビシン等のような癌治療薬)の存在下で細胞死について検定する。
標的収集研究でスクリーニングできる種々の特徴は事実上無限にあるので、モニターしうる特徴の前記リストは説明用であり、かつ排他的であることを意図しない。
遺伝子同定分析における対照の使用
siRNA発現ライブラリーのメンバーによる形質移入又は形質導入が特定の性質/生物学的活性の変化をもたらす場合、該変化は、通常“無変化”の負の対照と、任意に、故意に変化させた“正の”対照と比較して測定する。このような対照の使用は、当業者に周知である。典型的には、負の対照は、siRNA発現ライブラリーで形質移入又は形質導入していない本質的に同一の細胞、組織、器官、又は動物モデルによって与えられる。対照と分析系との間の測定可能な差異、好ましくは統計的に有意な差異は、siRNAが効果を有することを示す。
しかし、選択系内では、選択が選択自体の対照であることは明白である。従って、例えば腫瘍化細胞が生存し、かつ正常細胞が死ぬか(例えば、軟寒天上で)、又は薬物抵抗性細胞が生存しながら薬物感受性細胞が死ぬ場合、生存という単純な事実が表現型の特徴の有意な変化を示しうる。
表現型の変化を示す細胞の単離とsiRNA遺伝子の回収
siRNAによる形質移入/形質導入に起因する、モニターした活性の変化を示す細胞は、当業者に周知の標準的方法で単離することができる。インビトロ培養内の細胞は、例えば、形質転換した適切な細胞を新しい培養基中に単に斑点をつけることによって、簡単に物理的に単離かつ増幅することができ、或いは可視的に検出できるマーカーがある場合、それらを可視的に単離でき、或いは例えば細胞選別(FACS)によって機械的に単離することができる。細胞が組織、器官、又は生物内に存在する場合、該細胞を犠牲にした後、必要ならば、懸濁液内のフリーな細胞を得るために組織又は器官の均質化後、これら手段のいずれかで細胞を単離することができる。
当業者に周知な標準的方法によってsiRNA遺伝子ライブラリーを回収できる。細菌宿主からのプラスミド(又は他の構成物)の回収方法は、上記Sambrookら(1989)及び上記Ausubel ら,(ed.)(1987)に記載されている。
所望の表現型を表示する細胞の単離と選択後、応答性siRNA発現カセット(又はその一部)を選択細胞から“救出”することができる。救出したsiRNA発現カセットを、siRNA-依存性表現型を検証するめの新鮮な細胞への再適用と、標的遺伝子を同定するためのsiRNA発現カセットの直接シークエンシングの両方で使用する。
1つのアプローチでは、ゲノムDNAのPCR又はウイルスゲノム(例えば、AAV又はレトロウイルス)の救出のどちらかでsiRNA遺伝子を組織培養細胞から救出できる。PCRで救出するため、プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)を含有する溶解緩衝液内に細胞を溶かす。プロテアーゼを不活性化する(例えば、95℃で5分間のインキュベーションによって)。次いで、siRNA遺伝子をPCRで単離できる。PCRプライマーの選択は開始ライブラリーベクターによって決まり、siRNA配列を含有する1000bpまでに増幅するように設計することができる。増幅したsiRNA遺伝子断片をゲル精製する(アガロース又はPAGE)。
このPCR産物は直接シークエンシング(fmole Sequencing Kit, Promega)で使用でき、或いは適切な制限酵素で消化し、クローニング又は本発明の発現ベクターに再クローン化することができる。このPCR救出操作を用いてクロナール細胞集団から単siRNA遺伝子を単離できるのみならず、この操作を用いて表現型的に選択した細胞集団内に存在するsiRNA遺伝子のプールを救出できる。siRNA遺伝子を再クローン化した後、結果のプラスミドは、標的細胞形質移入及びウイルスベクターの生産に直接使用できる。
siRNA遺伝子救出の代替法は、必要なすべてのウイルスヘルパー機能を与えることによる、選択した細胞からのウイルスゲノムの“救出”を含む。レトロウイルスベクターの場合、選択した細胞を、レトロウイルスgag、pol及び両栄養性(又はVSV-G)エンベロープタンパク質を発現するプラスミドで一時的に形質移入する。数日の期間にわたり、siRNA遺伝子を含有する安定して発現されるLTR転写物を新しいレトロウイルス粒子中に包み込んでから培養上清中に放出する。この形質導入された細胞を野生型の複製-コンピテントレトロウイルスで形質移入することによって、ウイルスゲノムを“救出”することもできる。AAVの場合、選択した細胞を、AAV rep及びcapタンパク質を発現するプラスミドで形質移入し、かつ野生型アデノウイルスで共-感染させる。ここで、安定的に組み込んだAAVゲノムを切除し、新しいAAV粒子中に再び包む。収集の時、凍結/解凍サイクルを3回行って細胞を溶解させ、粗製ライセート中の野生型アデノウイルスを55℃で2時間加熱不活性化する。結果のウイルス含有媒体(レトロウイルス又はAAV救出のどちらか由来)を用いて直接、表現型の伝達を検証するため、及びそれらを表現型の選択の追加ラウンドに供するため、必要ならばさらに表現型のsiRNA遺伝子をリッチにするための両方のために新鮮な標的細胞を形質導入する。上述したPCR法と同様に、siRNA遺伝子のウイルス救出は、非-クロナール集団からの単一のsiRNA遺伝子又はsiRNA遺伝子の“プール”の救出を斟酌する。
上述したように、救出したsiRNA遺伝子は、siRNA-依存性表現型の検証のための新鮮な細胞への再適用と、表現型の変化と関連する標的遺伝子の同定を可能にするためのsiRNA遺伝子の直接シークエンシングの両方で使用する。さらに、非-クロナール集団からのsiRNA遺伝子の“プール”の救出は、その後の選択ラウンドで使用できる濃厚(enriced)siRNA発現ライブラリーを与える。
siRNAでサイレンス化された遺伝子の同定
一旦siRNA遺伝子を単離すると、それを配列決定し、その配列を用いてsiRNAで標的される核酸の配列データベースを検索することができる。ヌクレオチド配列同一性を比較するのに好適な多くのアルゴリズムを当業者は利用できる。例えば、好ましいアルゴリズムとしては、それぞれAltschulら, Nuc. Acids Res., 25:3389-3402 (1977)及びAltschulら, J. Mol. Biol., 215:403-410 (1990)に記載されているBLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムが挙げられる。BLAST分析を行うソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(そのウェブサイトncbi.nlm.nih.govで)を通じて公に入手可能である。BLASTプログラムの代替は、GCG(Genetics Computer Group, Program Manual for the GCG Package, Version 7, Madison, Wis.)PILEUPプログラムである。PILEUPは、関係と配列同一性の割合を示すための漸進的なペアワイズアラインメントを用いて1群の関連配列から複数の配列アラインメントを生成する。また、アラインメントを生成するために使用するクラスター化関係を示す系図又は樹状図にプロットする。PILEUPは、Feng及びDoolittle, J. Mol. Evol., 35:351-360(1987)の漸進的アラインメント法の簡単にしたものを利用する。
データベース検索がsiRNA標的の同定に失敗しないように、siRNA配列を用いて標的mRNAs及び遺伝子を同定かつ単離するためのプローブ及びプライマーを構築することができる。例えば、siRNA配列を用いて、標的分子のmRNAs、cDNAs及びゲノム配列を検出するための放射標識化プローブを構築することができる。内因性核酸の試料は、例えば、技術的に公知の種々の方法で部分的に精製することができ、かつsiRNA配列を有するプローブにハイブリダイズできる当該フラクションとして同定された標的核酸を含有するフラクションでよい。
siRNAヌクレオチド配列を用いてsiRNAsの標的核酸を単離する典型的な方法を実施してプライマーを構築し、それをポリメラーゼ連鎖反応、又は他のインビトロ増幅法で使用する(米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号;PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis et al., eds, 1990)参照)。PCR反応で増幅したヌクレオチドは、アガロースゲルから精製し、適切なベクター中にクローン化することができる。
特に有用なPCR法としては、5'及び/又は3'PAGE法が挙げられ、両方法とも適切なcDNAライブラリーから全長cDNA配列を生成できる(Frohmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:8998-9002 (1988))。この戦略は、標的ヌクレオチドのPCR増幅のため、siRNA配列に基づいた特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用することを含む。配列特異的プライマーを用いる3'及び5'RACE法を含むPCR増幅を行うためのキットは、商業的に入手可能である(PanVera, Discovery Center, Madison, WI, 3'及び 5'Full RACE Core Sets, Prod #s TAK 6121及び6122; Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA, CAT. NO. 18373019, CAT. NO. 10630010)。
X.本発明の治療用途
上記用途に加え、本発明の発現カセット及びベクター構成物を治療薬、研究試薬として、また遺伝子治療用途で使用することができる。
治療用途では、この発明のsiRNAを生成する発現ベクターを投与することによって、遺伝子に基づく病気を有する疑いのある動物を治療する。当業者は容易に最適な投与量、投与方法及び繰返し数を決定することができる。このような治療は、一般的に病状の治癒又は減少が果たされるまで続ける。病気によっては長期治療もありうる。HIVを含むウイルス疾患の治療は、本発明の発現カセットの特に好ましい治療用途である。
生体細胞形質導入は、HIV感染によって引き起こされるAIDSのような慢性感染症、及び癌のような非-感染疾患と戦う方法を提供する。Yuら,Gene Therapy, 1:13-26 (1994)及びその中の参考文献は、HIV感染症の遺伝子治療戦略に対する一般的な指標を提供する。また、Sodroskiら, PCT/US91/04335も参照せよ。Wong-Staalら, WO/94/26877は、レトロウイルス遺伝子治療ベクターについて述べている。
本発明のsiRNAを生成する発現カセットを含有する好適なベクター、及びいくつかの用途では、本発明に従って生成された裸のsiRNAsを、直接薬学的に許容しうる担体と併用して患者を治療するのに適した医薬組成物を製造することができる。
直接送達は、通常、細胞膜と抗体又は他の小リガンドのような他の分子の交差を容易にしてターゲティングを最大にするため脂質複合体(リボソーム)の助けを借りて発現カセット又は裸のsiRNAsを標的細胞中に挿入することを含む。多くの場合、分解に対するRNAの感受性のため、上述したように、直接送達されるsiRNA分子を化学的に修飾して、それらをヌクレアーゼ-抵抗性にすることができる。この送達方法論は、治療投与量のより正確なモニタリングを可能にする。
ベクター媒介送達は、本明細書で述べるようなベクターの発現カセット内で運ばれる配列中にコードされている大量のsiRNAを生成する、修飾ウイルスベクター又はプラスミドのような自己-複製又は非-複製系による標的細胞の感染を含む。細胞のターゲティング及び侵入のメカニズムは該ウイルスによって与えられ、或いはプラスミドを用いる場合は、siRNA分子の直接送達について述べた方法と同様の方法を使用できる。ベクター媒介送達は、持続的量のsiRNAを生成する。それは、実質的に安価であり、かつsiRNA分子の静脈内注射のような直接送達より少ない頻度の投与しか必要でない。
感染の急性の臨界的状態の間、直接送達法を使用することができる。好ましくは、静脈内又は皮下注射でsiRNA分子を直接送達する。オリゴヌクレオチドが意図した標的部位に達する前にオリゴヌクレオチドが分解するのを最小にする形態で有効量のオリゴヌクレオチドを送達することが必須である。
最も好ましくは、医薬担体は、特異的にsiRNAを患部細胞に送達する。例えば、B型肝炎ウイルスは肝細胞に作用するので、好ましい医薬担体は抗-肝炎siRNA分子を肝細胞に送達する。
本発明のsiRNAsを生成する発現カセットは、遺伝子治療ベクターの成分として有用である。例えば、HIVエンベロープ中に包まれたレトロウイルスベクターは、主に、マクロファージのような非-分割DC4+細胞を含むDC4+細胞を感染させる(すなわち、HIVエンベロープ糖タンパク質とCD4“受容体”との間の相互作用によって)。
XI.キット
さらに別の実施形態では、この発明はこの発明の方法の実施用キットを提供する。キットは、好ましくは、この発明のsiRNA遺伝子ライブラリー及び/又はsiRNA遺伝子ベクターライブラリーを含有する1個以上の容器を含む。キットは、任意に、緩衝液、培養基、ベクター、ベクター、シークエンシング試薬、標識、マーカー選択用抗体などを含みうる。
キットは、さらにこの発明の検定法の実施のための指導(すなわち、手順)を含む使用説明書を含みうる。使用説明書は、限定するものではないが、通常書かれた又は印刷された資料を含む。このような使用説明書を記憶かつそれらを末端使用者に伝達可能ないずれの媒体もこの発明で考慮される。このような媒体としては、限定するものではないが、電子的記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)等が挙げられる。このような媒体は、このような使用説明書を提供するインターネットサイトへのアドレスを包含しうる。
この明細書で引用したすべての出版物及び特許出願は、各個々の出版物又は特許出願が具体的かつ個々に参照によって取り込まれると指示されたように、参照によって本明細書に取り込まれる。
前記発明について説明のため及び明白性と理解のための例としていくつか詳細に述べたが、この発明の教示に照らし、本技術の当業者は添付の請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、さらに特定の変化及び変更を為しうることが容易に分かるだろう。
上で提供した開示から明らかなように、本発明は種々多様な用途を有する。従って、以下の実施例は、説明目的のためであり、いかなる場合にも本発明の限定と解釈することを意図しない。本技術の当業者には、変更又は修正して本質的に同一の結果をもたらしうる種々の非-臨界的パラメーターが容易に分かるだろう。
(実施例)
実施例1:ランダム化siRNA遺伝子ベクターライブラリーの構築
この実施例は、ランダム化siRNA遺伝子ベクターライブラリーの構築方法を示す。ここで、該ライブラリーの発現は2つの対向するU6 snRNAプロモーターの制御下である。
ランダム化siRNA遺伝子ベクターライブラリー構築の第1工程は、PCR増幅用鋳型としてヒトゲノムDNA又はクローン化野生型U6プロモーターDNAのどちらかを用いて2つの突然変異したU6 snRNAプロモーター断片を創造することである。第1の突然変異したU6プロモーターを創造するため、U6プロモーターの5'末端の外側にHind III部位(上流の-265)を含むように修飾した上流プライマーと、U6プロモーターの3'末端にNot I及びXho I制限部位を含むように修飾した下流プライマーを用いてPCR断片を生成する。これら修飾が“TATAボックス”の下流でプロモーター内の突然変異を引き起こす。
Hind III U6-265: 5'-TGCTAAGCTTAAGGTCGGGCAGGAAGAG-3'(配列番号:1)
NX U6-20: 5'-ATGCTCGAGCGGCCGCAGATATATAAAGCCAA-3'(配列番号:2)
第2の突然変異したU6プロモーターPCR断片は、プロモーターの5'末端の外側(上流の-265)にMlu I部位を含むように修飾した上流プライマーと、U6プロモーターの3'末端(TATAボックスの下流)にSph I及びXho I制限部位を含むように修飾した下流プライマーを用いて生成する。
Mlu I U6-265: 5'-TGCTACGCGTAAGGTCGGGCAGGAAGAG-3' (配列番号:3)
SX-U6-20: 5'-ATGCTCGAGCATGCAGATATATAAAGCCAA-3' (配列番号:4)
増幅と精製後、第1の突然変異したU6 snRNAプロモーターを含む第1PCR断片をXho IとHind IIIで消化させる。第2の突然変異したプロモーター断片をMlu IとXho Iで消化させる。この2つの消化断片をT4 DNAリガーゼで連結する。結果の相互に向き合う2つの突然変異したプロモーターを含む連結産物をベクター、pLPR-1kb中に挿入し(図2)、Hind III及びMlu I消化とゲル単離によって、Hind III-Mlu I断片を除去する。最終産物はNot I、Xho I及びSph I部位を含む発現ベクター、pLPR-2U6であり、後述するようにこれを用いてsiRNA遺伝子ライブラリーを発現させる。
任意に、第2発現ベクター、pLPR-2U6-スタッファー(stuffer)をpLRP-2U6から創造してその後のクローニング工程の便宜を良くする。pLPR-2U6-スタッファーを創造するため、無関係な2kbのスタッファー配列をpLPR-2U6のXho I部位内に挿入する。この挿入は、制限消化が2つの別個のよく分離したバンドをアガロースゲル上に生成するので、消化ベクターの即座の検出と単離を可能にする。pLPR-2U6とpLPR-2U6-スタッファープラスミドは両方ともランダム化siRNA遺伝子のクローニング用発現ベクターとして使用しうる。
ベクターの創造後、技術的に公知の方法でsiRNA遺伝子ライブラリー(siRNA-LIB)を合成する。化学的に合成した各オリゴDNAは以下の塩基構造を有する。
5'-pGGCCGCGGACGAAAAAAAGnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnC
TTTTTGACGACGGCGCATG-3' (配列番号:5)
各オリゴは以下の特徴を有する。
1)リン酸化した5'-末端;
2)カットpLRP-2U6又はpLRP-2U6-スタッファーベクターのNot I生成3'スタッファーにアニールすることで、引き続くクローニング工程で機能する5'末端の配列GGCC;
3)野生型ヒトU6プロモーターに対応する7個のヌクレオチドの配列;
4)siRNAのすぐ上流に位置し、天然プロモーターの最後の5個のヌクレオチドを置換している、pol IIIプロモーターIII型終止シグナル(例えば、TTTTT)の逆補体である5個のAの配列(AAAAA);
5)配列GnnnnnnnnnnnnnnnnnCに一致する塩基構造を有するsiRNA遺伝子配列(ここで、nはランダム化、すなわち、いずれの位置に4個のヌクレオチド(dT、dA、dG、dC)のいずれがあってもよい);
6)siRNA遺伝子配列のすぐ下流に位置し、第2U6プロモーターの最後の数個のヌクレオチド(-1〜-5)を置換している、pol IIIプロモーターIII型終止シグナルを含む5個のTの配列(TTTTT);
7)反対のプロモーターの対応領域に相補性でない9個のヌクレオチドの任意配列;
8)引き続くクローニング工程で機能して、カットpLPR-2U6ベクター又はpLPR-2U6-スタッファーベクターのSphI生成3'オーバーハングを有するオリゴのアニーリングを可能にする、3'末端の配列CATG。
2つの追加のユニバーサルオリゴも以下のように化学的に合成される。
Univ-1(Not I): 5'-CTTTTTTTCGTCCGC-3' (配列番号:6);及び
Univ-2 (Sph I): 5'-pCGCCGTCGTCAAAAAG-3' (配列番号:7)(5'末端はリン酸化されている)。
そして、Univ-1とUniv-2をアニールし、アニールしたオリゴを、Not I/Sph Iスタッファー断片を除去したベクターに連結することによって、ランダムsiRNA遺伝子ライブラリー(siRNAs-LIB)をクローニングベクター(pLPR-2U6-スタッファー)中に挿入する。オリゴとベクターDNAsのモル比は、Univ-1:Univ-2:siRNA-LIB:pLPR=100:100:5:1である。連結産物を電子-コンピテント細菌(DH12S Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)中に形質転換する。技術的に知られるように形質転換条件を最適化してライブラリーの複雑性を最大にする。連結産物中の一本鎖ギャップを細菌でインビボ充填する。代わりに、クレノウDNAポリメラーゼ(Promega, Madison, WI, USA)と4個のdNTPsを用いて連結産物中の一本鎖ギャップをインビトロ充填してもよい。形質転換した細菌を150mmプレート当たり1×105未満の密度でLBアガープレート上に置き、終夜培養する。終夜培養した細胞を収集し、ライブラリー細菌原料として用いる。最適には、5×107を超える全クローンが生成される。
実施例2:遺伝子発現の下方制御に特異的なsiRNAの発現
この実施例は、siRNAで標的される遺伝子の下方制御をもたらすように特異的siRNAを発現させるための実施例1のベクターの使用を示す。具体的には、この実施例は、乳癌細胞系内におけるホタルルシフェラーゼの下方制御を実証する。
ベクターを実施例1で述べたように構築する。ベクター構築後、実施例1のsiRNA遺伝子ライブラリーを含むオリゴと同じ塩基構造を有する以下のオリゴヌクレオチドを化学合成する。
siRNA-lucB: 5'-pGGCCGCGGACGAAAAAAAGTGCGCTGCTGGTGCCAA
CCCTTTTTGACGACGGCGCATG - 3' (配列番号:8)
siRNA-Scramble: 5'-pGGCCGCGGACGAAAAAAAGCGCGCTTTGTAGGAT
TCGCCTTTTTGACGACGGCGCATG - 3' (配列番号:9)
第1のオリゴはルシフェラーゼ特異的siRNA遺伝子の創造用鋳型として働き、第2のオリゴは対照siRNA遺伝子を与える。実施例1で述べたように、これら各オリゴを2つのユニバーサルオリゴ:Univ-1及びUniv-2とアニールし、かつNot I/Sph Iスタッファー断片を除去したpLPR-2U6-スタッファーベクターに連結する。結果の一本鎖ギャップは、形質転換後細菌で充填する。
結果のプラスミド、pLPR-2U6-lucB-siRNA及びpLPR-2U6-スクランブル-siRNAを形質移入によってそれぞれ別々にMCF7-Luc細胞系中に導入する。この細胞系は、ホタルルシフェラーゼを発現する乳癌細胞系である。形質移入2日後、各形質移入した細胞系から細胞ライセートと全RNAをともに調製する。ルシフェラーゼ検定キット(Promega, Madison, WI, USA)でルシフェラーゼ活性のレベルを測定し、Taqman(登録商標)(Li, Q.ら, Nucleic Acids Research, 28:2605 (2000))で全RNAを分析する。代替的に、形質移入10日後、安定的な形質移入体をピューロマイシン選択法(1ug/ul)で選択し、前述したようにルシフェラーゼ活性と全mRNAレベルを測定する。ルシフェラーゼ検定は、対照と比較したpLPR-2U6-lucB-siRNAで形質移入した細胞系内におけるルシフェラーゼ活性の下方制御を示し、かつこれは、Taqman(登録商標)検定で示されるように、mRNAレベルの減少によって確証される。
実施例3:ランダム化siRNAライブラリー又は特異的siRNA遺伝子の発現用誘発系の生成
この実施例は、ランダム化siRNA遺伝子ライブラリー又は特異的siRNA遺伝子のどちらかの発現用誘発性siRNA系の生成を実証する。この実施例では、大腸菌Tn10のテトラサイクリンオペロン由来の制御配列を用いてヒトU6 snRNAプロモーター被動siRNA遺伝子又はsiRNA遺伝子ライブラリーの発現を制御する。
誘発性プロモーターを生成するため、テトラサイクリンが培地中に存在するときだけsiRNA遺伝子を発現するように、実施例1及び2の構成物をさらに修飾する。このテトラサイクリン制御発現ベクターの構築に関与する工程は、以下の2つの追加必要条件を除き、実施例1及び2の工程とほぼ同一である。第1に、テトラサイクリンオペレーター配列を用い、U6プロモーター領域のTATAボックスと近位配列要素(PSE)との間の野生型プロモーター配列を置換する。これは、U6プロモーター配列をPCR増幅に使用するプライマー中にテトラサイクリンオペレーター配列を組み込むことによって達成される(以下参照)。第2に、siRNA遺伝子に加え、テトラサイクリンリプレッサー遺伝子を宿主細胞内にシス又はトランスで供給する。
従って、これら実験用発現ベクターは、相互に対向する2つの突然変異したU6プロモーターを利用し、実施例1におけるようにプライマーNX U6-20及びSX-U6-20を使用する代わりに、このクローニングベクターを以下のプライマーで創造するこを除き、実施例1で述べたとおりに構築する。
NX-U6-Tet-o: 5'-TGCTCGAGCGGCCGCAGATATATAACTCTATCAATGATA
GAGTACTTTCAAGTTACGGT-3' (配列番号:10)
SX-U6-Tet-o: 5'-ATGCTCGAGCATGCAGATATATAACTCTATCAATGATAGAGTA
CTTTCAAGTTACGGT-3' (配列番号:11)
テトラサイクリンオペレーター配列(イタリック体で示される)を、PCRから生じるプロモーターがTATAボックスと近位配列要素(PSE)との間に挿入されたテトラサイクリンオペレーターを有するようにプライマー中に組み込む(図3参照)。次いで、実施例1及び2で述べたように、特異的siRNA遺伝子又はランダム化遺伝子ライブラリーをテトラサイクリン誘発性発現ベクター中にクローン化する。
テトラサイクリンリプレッサー遺伝子をトランスで供給する場合、siRNA遺伝子又は遺伝子ライブラリーベクター(例えば、pLPR-siRNA(luc)-tet)に加え、pTET-O(Clontech, CA, USA)のようなリプレッサーを発現する別個のベクターを宿主中に同時導入する。テトラサイクリンリプレッサー遺伝子をシスで供給する場合、LTR中のpol IIIプロモーターの制御下、リプレッサー遺伝子をpLPRベクター中にクローン化し、最終構成物はpLPR-siRNA(luc)-tet-repである。
上述したように、誘発性プロモーター(例えば、pLPR-siRNA(luc)-tet-rep)を含有するベクターの構築後、細胞系(例えば、MCF7-luc)を安定に形質移入し、この安定した形質移入体を48時間テトラサイクリンで処理する。並行してテトラサイクリンで処理しない対照を用意する。実施例2で述べたようにルシフェラーゼ活性とルシフェラーゼmRNAを測定する。
テトラサイクリンによる誘発が存在しない場合、リプレッサーによるテトラサイクリンオペレーター配列の結合のためsiRNA発現が抑制されることは明かである。従って、ルシフェラーゼ活性の増加が簡単に検出される。しかし、細胞を48時間テトラサイクリンで処理すると、siRNA遺伝子発現が誘発され、未処理の対照細胞に比し、ルシフェラーゼ活性が減少する。
実施例4:特異的表現型に関連する遺伝子を同定するためのsiRNA遺伝子ライブラリーの使用
この実施例は、siRNA遺伝子ライブラリーを用いて問題の細胞系内の特異的表現型に関与する遺伝子を同定する方法を示す。具体的には、この実施例では、siRNA遺伝子ライブラリーで形質移入した細胞の蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて、CD4表面分子遺伝子発現の下方制御に関与する遺伝子を検出する。
ヒトT細胞系、Molts-4は、その表面上でCD4分子を発現する。CD4は容易に検出され、蛍光標識化抗-CD4抗体とFACS分析を用いてその量を測定する。また、表面CD4発現のレベルが異なる細胞は相互にFACS選別によって容易に分離される。
表面CD4発現を下方制御するsiRNAを同定するため、形質移入又はレトロウイルス形質導入によって、実施例1又は実施例3のsiRNA遺伝子ライブラリーをMolts-4細胞中に導入する。表面CD4発現の反映である蛍光強度により、形質移入/形質導入された細胞をFACS選別する。形質移入/形質導入された集団内の低CD4-発現体を選択する。siRNA遺伝子をPCRで救出し、再クローン化し、Molts-4細胞中に再導入する。数ラウンドの同一選択スキームを行って、CD4発現を下方制御するsiRNAsに富ませる。
単離されるsiRNAsは、直接CD4 mRNAを標的するものであり、或いは二者択一的に別のやり方でCD4発現を制御するタンパク質をコードするmRNAsである。siRNAsの配列情報に基づき、公共若しくは私有データベースのBLAST検索又は同定したsiRNA配列をプローブとして用いる直接遺伝子クローニングによって標的遺伝子情報を決定する。
実施例5:ヒトU6/マウスU6二重プロモーター発現カセットを用いるp53遺伝子発現の下方制御
この実施例は、p53遺伝子発現をサイレントにするsiRNAの発現用ヒトU6/マウスU6二重プロモーターレトロウイルス発現ベクターの使用を示す。以下で述べる修正を加え、それぞれヒト及びマウスU6プロモーターの起源としてpTZ U6+1(Leeら (2002) Nat. Biotechnol. 20: 500-505)及びpSilencer 1.0-U6(Ambion, Austin, TX)を用いて実施例1のとおりにベクターを構築した。
PCR増幅で用いたプライマーは以下のとおりだった。
5' hU6+BamHI: 5'-tgctggatccAAGCTTAAGGTCGGGCAGGAAGAG-3'(配列番号:12)
3' hU6+FseI/XhoI: 5'-gcatgctcgaggccggccGATATATAAAGCCAAGAAATCG-3'(配列番号:13)
5' mU6+BamHI/XbaI: 5'-tctagaGAACTAGTGGATCCGACGCC-3'(配列番号:14)
3' mU6+AscI/XhoI: 5'-gccgctcgaggcgcgccATATTTATAGTCTCAAAACACAC-3'(配列番号:15)
両PCR産物をpCR-Blunt II-TOPOベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)中に連結してpSD53(ヒトU6)とpSD96(マウスU6)を生成した。1つのpSD96クローン由来の〜110bpのXhoI/XbaI断片を、BamHI部位が47bp離れているpSD53クローンの〜3.7kbのXhoI/XbaI断片中に連結した。結果のベクターの〜560bpのBamHI/BamHI断片は、ヒトU6/マウスU6対向プロモーターカセットを含んでいた。
このヒトU6/マウスU6対向プロモーターカセットを、3'LTRのU3領域内にユニークなBamHI部位を含むように修飾した自己失活性レトロウイルスベクター、pQCXIP(Clontech, Palo Alto, CA)中に挿入した。このベクターのMCS及びIRES領域も除去した;しかし、まだCMVプロモーターによってピューロマイシン抵抗性遺伝子の発現が作動された。同様のレトロウイルスベクターを用いて単一pol IIIプロモーターからヘアピンsiRNAsを発現させている(Barton and Medzhitov (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 14943-14945)。
p53及びルシフェラーゼ(対照)に対してsiRNAsをコードするオリゴを以下のように合成した。
p53 siRNAオリゴ
5'-pCCAGGACGACAAAAAgactccagtggtaatctacTTTTTAGGCTTTTCGG-3'(配列番号:16)
対照(ルシフェラーゼ)siRNAオリゴ
5'-pCCAGGACGACAAAAAgtgcgctgctggtgccaacccTTTTTAGGCTTTTCGG-3'(配列番号:17)
これらオリゴは、NotI/SphIクローニング部位からFseI/AscIへの変化を反映する、5'末端のGGCC配列及び3'末端のCATG配列がそれぞれCC及びGGで置換されていること以外、実施例1のsiRNA遺伝子ライブラリーを含むオリゴと同一の塩基構造を有する。このユニバーサルオリゴの配列も以下のように修飾した。
Univ-1(FseI): 5'-CTTTTTGTCGTCCTGGCCGG-3'(配列番号:18)
Univ-2(AscI): 5'-pCGCGCCGAAAAGCCTAAAAAG-3'(配列番号:19)
実施例1で述べたように、各siRNA-コード化オリゴをユニバーサルオリゴにアニールし、かつレトロウイルスベクター内でFseI/AscI-消化した対向するプロモーターカセット中に連結した。
商業的に入手可能なパッケージング細胞系(Clontech, Palo Alto, CA)を、対向するプロモーターカセット及びVSV-Gタンパク質用発現ベクターを保有する組換えベクターと共-形質移入することによってVSV-G偽型レトロウイルスを包んだ。次いで、MCF-7細胞をレトロウイルスベクターで形質導入した。ピューロマイシンによる選択の7日後、ライセートを調製し、ウエスタンブロットでp53タンパク質レベルを分析した。図5から分かるように、p53遺伝子発現の有意なノックアウトが得られた。
実施例6:ヒトU6/マウスU6二重プロモーター発現カセットと単一U6マウスプロモーター発現カセットを用いるp53遺伝子発現の下方制御の比較
この実施例は、p53 siRNAを発現させるための2つの異なるタイプの発現カセット、すなわち本発明のヒトU6/マウスU6二重プロモーター発現カセットとヘアピンsiRNAの発現用の単一マウスU6プロモーターカセットを用いてp53遺伝子発現の下方制御の効率を比較する。A431(MCF-7ではなく)細胞を形質導入し、かつレトロウイルスベクターに加え、各発現ベクターも自己失活性レトロウイルスベクター中HIV-1 DNA Flap要素とSV40プロモーター-ピューロマイシンrカセットの間の位置に挿入すること以外、実施例5について上述したとのと同じ実験手順に従った。同様のレンチウイルスベクターを用いて単一のpol IIIプロモーターからヘアピンsiRNAsを発現させている(Qinら (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 183-188)。
単一プロモーターカセットでは、例えば、Brummelkampら (2002) Science 296: 550-553; Paulら (2002) Nat. Biotechnol. 20: 505-508; Paddisonら (2002) Genes and Development 16: 948-958; Yuら (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 6047-6052)に記載されているように、単一pol IIIプロモーターベクターからp53 siRNAが発現した。
これら実験の結果を図6A及び6Bに示す。図から分かるように、両方のp53 siRNA発現カセットは、レトロウイルス又はレンチウイルスベクターのどちらかで送達されると、p53の実質的な特異的サイレンシングを引き起こした。
2つの対向するU6プロモーターを含む、本発明によって構築される典型的なDNA発現カセットの概略図である。 DNA配列がランダム化され、かつカセットがレトロウイルスベクター、pLPR中に組み込まれている、本発明の典型的なDNA発現カセットの構成の概略図である。 プロモーターのPSE及びTATAボックス要素間にTet-oオペレーターを含むように修飾したヒトU6 snRNAプロモーターを示す。 プロモーターの一番端の3'末端に、反対の鎖を転写するポリメラーゼ用終止配列に相補性である4個のアデニリル残基を有するU6 snRNAプロモーターを示し、領域5'〜この配列の4個のアデニリル残基及び3'〜TATAボックスには、制限部位、オペレーター要素又はクローニングを促進し、若しくは発現を制御するために望ましい他の配列用の核酸配列を組み込むように置換しうる20個までの塩基がある。 p53 siRNAを発現するように操作した本発明の二重プロモーター発現カセットを運ぶレトロウイルスベクターで形質導入後、MCF-7細胞内におけるp53タンパク質発現を示すウエスタンブロットである。 (i)p53 siRNAを発現するように操作した単一マウスU6プロモーターヘアピンsiRNA発現カセットを運ぶレンチウイルベクター;及び(ii)p53 siRNAを発現するように操作した本発明の二重プロモーター発現カセットを運ぶレンチウイルベクターで形質導入後、A431細胞内におけるp53タンパク質発現を示すウエスタンブロットである。 (i)p53 siRNAを発現するように操作した単一マウスU6プロモーターヘアピンsiRNA発現カセットを保有するレトロウイルスベクター;及び(ii)p53 siRNAを発現するように操作した本発明の二重プロモーター発現カセットを運ぶレトロウイルスベクターで形質導入後、A431細胞内におけるp53タンパク質発現を示すウエスタンブロットである。

Claims (30)

  1. 第1及び第2末端を有し、各末端が、TATAボックスを有するpol IIIプロモーターに作動可能に連結している16〜25塩基長の二本鎖ランダム化DNA配列を含むDNA発現カセットであって、前記各プロモーターが、以下の置換:
    a.3'〜前記TATAボックスに位置する少なくとも4個の連続したアデニリル残基;及び
    b.5'〜前記少なくとも4個の連続したアデニリル残基及び3'〜前記TATAボックスの0〜20個の塩基;
    によって修飾されており、
    それによって、前記プロモーターからの前記二本鎖ランダム化DNA配列の転写がdsRNAを生成する、DNA発現カセット。
  2. 前記0〜20個の塩基が少なくとも1個の塩基であり、かつ制限部位を含む、請求項1のDNA発現カセット。
  3. 前記プロモーターが同一である、請求項1のDNA発現カセット。
  4. 前記プロモーターが異なる、請求項1のDNA発現カセット。
  5. 前記プロモーターが、H1 RNAプロモーター、U6 snRNAプロモーター、tRNA遺伝子用プロモーター、及びアデノウイルスVA遺伝子用プロモーターから成る群より選択される、請求項1のDNA発現カセット。
  6. 前記ランダム化DNA配列が17〜23塩基長である、請求項1のDNA発現カセット。
  7. 前記ランダム化DNA配列の各鎖内で転写される第1塩基がG又はAである、請求項1のDNA発現カセット。
  8. さらに誘導性オペレーター配列5'〜前記TATAボックスを含む、請求項1のDNA発現カセット。
  9. 前記誘導性オペレーター配列が、tet Oオペレーターである、請求項8のDNA発現カセット。
  10. さらに前記発現カセットを含む核酸を包むためのウイルス粒子を含む、請求項1のDNA発現カセット。
  11. 請求項1のDNA発現カセットを含んでなる自己複製性DNA。
  12. DNA発現カセットのライブラリーであって、各発現カセットが、第1及び第2末端を有し、各末端が、TATAボックスを有するpol IIIプロモーターに作動可能に連結している16〜25塩基長の二本鎖ランダム化DNA配列を含み、前記各プロモーターが、以下の置換:
    a.3'〜前記TATAボックスに位置する少なくとも4個の連続したアデニリル残基;及び
    b.5'〜前記少なくとも4個の連続したアデニリル残基及び3'〜前記TATAボックスの0〜20個の塩基;
    によって修飾されており、
    それによって、前記各DNA発現カセットの前記プロモーターからの前記二本鎖ランダム化DNA配列の転写が異なるdsRNAを生成する、ライブラリー。
  13. 前記各ランダム化DNA配列が17〜23塩基長である、請求項12のライブラリー。
  14. 前記プロモーターが誘発性である、請求項12のライブラリー。
  15. 前記各DNA発現カセットがウイルス粒子に包まれている、請求項12のライブラリー。
  16. 前記各DNA発現カセットが細胞ゲノム内に含まれている、請求項12のライブラリー。
  17. 前記各DNA発現カセットが自己複製性である、請求項12のライブラリー。
  18. ランダム化配列を有するdsRNAを発現させるためのDNA発現カセットのライブラリーを製造する方法であって、以下の工程:
    a.5'及び3'末端を有する16〜25塩基長の複数の一本鎖ランダム化DNA配列を合成する工程;
    b.それぞれTATAボックスを有する第1及び第2pol IIIプロモーターを有する複数の発現ベクターを構築する工程、ここで、前記第1プロモーターは前記第2プロモーターの方向に転写を開始するように配向し、かつ前記第2プロモーターは前記第1プロモーターの方向に転写を開始するように配向しており、各プロモーターは以下の置換:
    i.3'〜前記TATAボックスに位置する少なくとも4個の連続したアデニリル残基;及び
    ii.5'〜前記少なくとも4個の連続したアデニリル残基及び3'〜前記TATAボックスの0〜20個の塩基;
    によって修飾されている;
    c.前記複数の一本鎖ランダム化DNA配列の1つを前記各発現ベクターの前記第1及び第2プロモーター間に挿入する工程、ここで、該一本鎖ランダム化DNA配列は作動可能に前記第1プロモーターに連結している;
    d.前記各一本鎖ランダム化DNA配列に相補的なDNA配列を生成する工程、ここで、該相補的なDNA配列は作動可能に前記第2プロモーターに連結している;
    を含む方法。
  19. 前記構築工程の0〜20個の塩基が少なくとも1個の塩基であり、かつ少なくとも1個の制限部位を含む、請求項18の方法。
  20. 前記生成工程が、さらに、前記一本鎖ランダム化DNA配列を含む前記複数の発現ベクターでコンピテント細菌を形質転換する工程を含む、請求項18の方法。
  21. 前記生成工程が、前記複数の一本鎖ランダム化核酸配列のそれぞれに相補的なDNA配列の、クレノウポリメラーゼを用いるインビトロ合成を含む、請求項18の方法。
  22. 前記構築工程が、さらに、各一本鎖ランダム化DNA配列の5'末端のグアニリル残基の挿入及び3'末端のシトシル残基の挿入、又は各一本鎖ランダム化DNA配列の5'末端のアデニリル残基の挿入及び3'末端のチミジル残基の挿入を含む、請求項18の方法。
  23. siRNA用の転写配列の発現を、該siRNAによって細胞遺伝子の発現を阻害することに起因する表現型の変化と相関させる方法であって、前記細胞遺伝子の発現が、これまでに前記表現型の変化に寄与すると特徴づけされておらず、該方法が以下の工程:
    a.細胞集団に、外因性ランダム化siRNAsのライブラリーを導入する工程、ここで、各siRNAは、第1及び第2末端を有し、各末端が、TATAボックスを有するpol IIIプロモーターに作動可能に連結している16〜25塩基長の二本鎖ランダム化DNA配列を含む発現カセットであって、前記各プロモーターが、以下の置換:
    i.3'〜前記TATAボックスに位置する少なくとも4個の連続したアデニリル残基;及び
    ii.5'〜前記少なくとも4個の連続したアデニリル残基及び3'〜前記TATAボックスの0〜20個の塩基;
    によって修飾されている発現カセットから生成される;
    b.前記siRNAsのライブラリーに導入された前記集団の細胞と、前記ライブラリーに導入されない当該細胞との間の表現型の差異を検出する工程;及び
    c.前記表現型の変化の原因である前記ライブラリーのsiRNAを同定する工程;
    を含む方法。
  24. さらに、前記表現型の変化の原因である前記ライブラリーの前記siRNAを単離する工程を含む、請求項23の方法。
  25. 前記導入工程が、ウイルス形質導入系を用いて前記細胞集団を形質導入する工程を含む、請求項23の方法。
  26. 前記検出工程が、前記siRNAsのライブラリーに導入された前記集団の細胞と、前記ライブラリーに導入されない当該細胞との間の細胞成長の差異の観察を含む、請求項23の方法。
  27. 前記検出工程が、前記siRNAsのライブラリーに導入された前記集団の細胞による検出可能マーカーの共-発現を含む、請求項23の方法。
  28. 前記検出可能マーカーが、蛍光タンパク質、細胞表面タンパク質、及び薬物抵抗性遺伝子を含む群より選択される、請求項27の方法。
  29. 前記導入工程の前記細胞集団が、真核生物細胞集団である、請求項23の方法。
  30. 前記検出工程の前記表現型の差異が、細胞分割、又はウイルス遺伝子発現、又は細胞外タンパク質の排出、又は細胞表面マーカーの発現、又は遺伝子リプレッサー、又はシグナル伝達経路、又は細胞死の阻害を含む、請求項23の方法。
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