JP2005532828A - 細胞増殖インヒビターの同定方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、既知作用メカニズムを有する増殖抑制物質(すなわち、細胞の増殖または生残に必要な機能を有する酵素または他の遺伝子産物を阻害し又は妨げる物質)の選択的スクリーニングを可能にする方法である。該方法は、遺伝子産物の発現を妨げうるRNA断片(例えば、mRNAにハイブリダイズするアンチセンスRNA)をコードする核酸断片を含有する細胞(例えば、細菌細胞)を使用するものであり、該RNA断片の発現は、該遺伝子産物(例えば、タンパク質またはRNA)において作用する物質(薬物)に対して該細胞を前感作する。該細胞は、該RNA断片を発現する能力を喪失する。該方法においては、標的遺伝子産物において作用する物質に対して該細胞を前感作するレベルでRNA断片の発現が生じる条件下に、試験物質の存在下で栄養培地内で該組換え細胞を増殖させる。また、該RNA断片を発現する能力を該細胞が喪失するよう、該増殖条件を制御する。試験物質が、標的遺伝子産物に作用する増殖インヒビターである場合には、該RNA断片を欠く細胞(復帰細胞)は、該RNA断片を含有する細胞と比較して増殖上の利点を有し、復帰細胞の増殖が生じる。本発明の方法は、復帰細胞の出現に関して細胞増殖をモニターすることを含み、これは、特定の作用様式を有する選択的増殖インヒビターの同定をもたらす。
Description
本発明は、細胞増殖に必要な特定の遺伝子産物に作用することにより細胞増殖を抑制する物質の同定方法に関する。1つの実施形態においては、該方法は、脂肪酸の生合成に必要な酵素の阻害のような特定の作用メカニズムを有する抗細菌剤である物質を同定するために使用される。本発明の方法においては、標的遺伝子産物をコードする遺伝子の発現を妨げうるRNA断片(例えば、アンチセンスRNA)をコードする細胞を使用して、該RNA断片の発現により、該遺伝子産物において作用する物質に対して該細胞を予め感受性化する。また、該方法においては、標的遺伝子産物において作用する物質の存在下で増殖しうる細胞(本明細書中では「復帰(revertant)」細胞と称する)が得られるよう、該RNA断片を細胞が発現する能力を喪失する条件を用いる。所与の物質の存在下での本発明の方法による復帰細胞コロニーの検出は、標的遺伝子産物において作用する物質を増殖インヒビターとして同定する。
公衆衛生上重大な脅威となる細菌の病原株には、スタヒロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エシェリキア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、ヘモフィルス(Haemophilus)、エンテロバクター(Enterobacter)、アシネトバクター(Acinetobacter)、バシラス(Bacillus)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、サルモネラ(Salmonella)、ブルクホルデリア(Burkholderia)およびシュードモナス(Pseudomonas)、特に、株ストレプトコッカス・ニゥモニエ(Streptococcus pneumonia)、スタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)、エンテロバクター・クロアケ(Enterobacter cloacae)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター・ボゥマニイィ(Acinetobacter baumanii)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)およびブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)が含まれる。病原細菌は肺炎、チフス、下痢および結核のような疾患を引き起こす。そのような疾患に対抗するために、例えばアミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アモキシシリン、アンホテリシンB、アンピシリン、アトバクオン、アジトロマイシン、セファゾリン、セフェピム(cefepime)、セホタキシム、セホテタン、セフポドキシム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアクソン、セフロキシム、セファレキシン、クロラムフェニコール、クロトリマゾール、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、ジクロキサシリン、ドキシサイクリン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、イミペネム、イゾニアジド、カナマイシン、リネゾリド、メトロニダゾール、ナフシリン、ニトロフラントイン、ナイスタチン、ペニシリン、ペンタミジン、ピペラシリン、リファンピシン、チカルシリン、トリメトプリムおよびバンコマイシンなどの抗生物質が開発されている。
これらの物質は病原細菌に対して有効であり、したがって、細菌の存在に伴う病態の治療に有用であるが、臨床的に重要な細菌株の多くは公知抗生物質に耐性になりつつある。例えば、細胞壁活性化剤、アミノグリコシド、ペニシリン、アンピシリンおよびバンコマイシンを含む多種多様な抗微生物薬に耐性であるエンテロコッカス(Enterococci)が認められている。院内環境において最も一般的な原因感染因子であるスタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)は公知抗生物質の多くに耐性であり、そのような感染症の治療を困難にしている。抗生物質の性質および抗生物質耐性の発生の更なる説明はWalsh,Nature 2000,406:775−781に記載されている。したがって、院内環境および社会環境の両方における耐性株の出現に対抗するために、新規な作用メカニズムを有し、したがって、臨床において予め選ばれた耐性を獲得する可能性の低い新規な抗細菌剤を見出すことが依然として必要とされている。特定の作用メカニズムおよび細菌細胞壁透過性を有する新規な抗細菌剤を同定するための信頼しうるハイスループット法を開発することが同時に必要とされている。
公衆衛生上重大な脅威となる真菌の病原株には、クリプトコッカス属真菌種(Cryptococcus spp.)、カンジダ属真菌種(Candida spp.)、アスペルギルス属真菌種(Aspergillus spp.)、ヒストプラスマ属真菌種(Histoplasma spp.)、コクシディオイデス属真菌種(Coccidioides spp.)、パラコクシディオイデス属真菌種(Paracoccidioides spp.)、ブラストミセス属真菌種(Blastomyces spp.)、フザリウム属真菌種(Fusarium spp.)、スポロトリックス属真菌種(Sporothrix spp.)、トリコスポロン属真菌種(Trichosporon spp.)、セドスポリウム属真菌種(Scedosporium spp.)、リゾプス属真菌種(Rhizopus spp.)、シュードアレシェリア属真菌種(Pseudallescheria spp.)、皮膚糸状菌、ペシリオミセス属真菌種(Paeciliomyces spp.)、アルテルナリア属真菌種(Alternaria spp.)、クルブラリア属真菌種(Curvularia spp.)、エキソフィアラ属真菌種(Exophiala spp.)、シゾサッカロミセス属真菌種(Schizosaccharomyces spp.)、ワンギエラ属真菌種(Wangiella spp.)、デマチアセウス(Dematiaceous)真菌およびニューモシスティス属真菌種(Pneumocystis spp.)、特に、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、コクシディオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が含まれる。これらの真菌に対する現在の療法は、劣悪な活性スペクトルおよび毒性のために不適当である。抗真菌剤に対する耐性は、抗細菌剤で見出されるものほど一般的ではないが、院内で使用される抗真菌剤に対する耐性は増加の一途をたどっている。免疫無防備状態の患者は、既存の抗真菌療法との薬物の相互作用が問題となりうる場合には、真菌感染を特に受けやすい。改善された治療プロフィールを示し新規な作用メカニズムを有する新規な抗真菌剤が必要とされている。
抗細菌剤の発見のための標準的なアプローチは、試験化合物または化合物混合物を細菌細胞にさらし、細胞増殖抑制のレベルを測定することである。増殖抑制または細胞死は、典型的には、18時間の増殖時間の後に培養の光学密度を測定することにより液体培地内で測定する。試験化合物の増殖抑制は、典型的には、細胞増殖の99.9%を抑制するのに要した最小阻止濃度(MIC)として、あるいは可視増殖が観察されない場合に示される。そのようなアッセイは、例えばW.Hewitt,Microbiology Assay(Academic Press,New York,NY,1977),pp.1−261に記載されている。液体培養に基づくアッセイを単一濃度の化合物に関して行う場合、それは経済的であり、ハイスループットスクリーニング(HTS)になじみやすく、低レベルの溶媒(例えば、0.2% DMSO)に可溶性の化合物のスクリーニングに適している。HTS液体細胞増殖アッセイの欠点は、水不溶性化合物の測定能が制限されること、化合物の相対効力の測定が難しいこと、一般に公知の抗細菌剤が繰り返し同定される(すなわち、重複率が高い)こと、および強力ではあるが哺乳動物細胞に毒性でもある化合物を同定する傾向にあることである。
細菌増殖インヒビターを見出すための半固形培地アプローチとしては、寒天阻止域アッセイが挙げられ、この場合、ディッシュまたはプレート内の寒天に細菌を含浸させ、該化合物を該プレートに紙ディスク上で又は成型前のウェル内に又は液滴として寒天表面上に適用する。細菌増殖抑制または細胞死は、典型的には、アッセイプレート中の阻止域を測定することにより判定する。通常の寒天アッセイ(あるいは、より一般的には、半固形培地に基づくアッセイ)は、例えばJ.F.AcarおよびF.W.Goldstein,“Procedure for testing antimicrobial agents in agar media:theoretical considerations” in:Antibiotics in Laboratory Medicine,V.Lorian編(Williams & Wilkins,Baltimore MD,1996),pp 1−51に更に詳しく記載されている。半固形培地に基づくアッセイは固体サンプルおよび新鮮な天然物および天然物の抽出物に良く適している。迅速かつ正確な検出および抑止域の測定が難しいことは、ハイスループットスクリーニングのための半固形培地に基づくアッセイの使用を制限する。これらのスクリーニングのもう1つの問題は、同定される活性剤の作用様式における重複率が高いことであり、例えば、細胞壁成分において作用する化合物が高頻度で見出される。
生化学的なインビトロに基づくアッセイも抗細菌剤の発見に用いられうる。このアプローチの利点は、それが、非常に特異的な(かつ所定の)標的において作用する物質の迅速な同定を可能にすることである。このメカニズムに基づくアプローチの大きな欠点は、強力な生化学的抑制活性を示すものの有効な抗細菌剤に必要な細胞壁透過性を欠く化合物が同定されてしまうことである。
選択的標的スクリーニングのためにスクリーニングにおいて耐性細菌を使用することが可能である。薬物耐性株および薬物感受性株を液体または半固形培地内で試験し、感受性の差を測定することが可能である。このアプローチにおいては、細胞壁を透過しうる抗細菌剤を選択するために、突然変異した標的遺伝子産物を使用する。例えば、アンピシリンと同様に作用する抗生物質をスクリーニングするために、アンピシリン感受性株を耐性株と比較することが可能であり、この場合、該感受性株には影響を及ぼすが該耐性株には影響を及ぼさない任意の化合物を陽性として選び出す。薬物耐性突然変異細菌上での抗細菌剤のスクリーニングは、その遺伝的部位において作用する抗細菌剤の同定を可能にするが、該標的の他の領域において作用する抗細菌剤を見逃してしまうことも多い。一例としては、リボソームに結合してタンパク質合成を抑制することにより作用する抗生物質が挙げられ、この場合、リボソーム結合性薬物との交差耐性は観察されないことが多い。示差的(differential)耐性/感受性アッセイは標的遺伝子産物に対してはスクリーニングしないが、選択的突然変異産物に対してはスクリーニングする。液体および寒天アッセイにおいて行う耐性/感受性ペアのスクリーニングは前記と同じ欠点を伴う。
全細胞における抗細菌剤に関する標的選択的スクリーニングの一例はForsythら,Mol.Microbiol.2002,43:1387−1400に概説されており、これは、スタヒロコッカス・アウレウス(黄色ブドウ球菌)(Staphylococcus aureus)の増殖に必要な遺伝子に対するアンチセンスRNA(以下、asRNAと称する)の発現が標的抗細菌剤に対する感受性を増加させることを開示している。Forsythらに概説されているasRNAアッセイは液体培地内で行われ、二重に行う7点力価測定による非感受性化株との比較を要する。液体培地asRNAアッセイの欠点は、それがすべての試験サンプルに関して2つの株の比較を要すること、ハイスループットスクリーニングに適さないこと(力価測定およびばらつきのため)、全用量力価測定においては低い水溶性の化合物の測定が難しいこと、多量のサンプル化合物を要すること、および抽出物または精製された化合物を要することである。
細菌遺伝子の発現を改変することによる感受性化の他の例には、アンチセンスRNAにより生じた条件表現型を使用する決定的に重要なスタヒロコッカス(Staphylococcal)遺伝子の同定に関するJiら,Science 2001,293:2266−2269、および抗細菌剤の発見のための株の標的特異的スクリーニングに関するDeVitoら Nat.Biotechnol.2002,20:478−483に記載のものが含まれる。
この節における考察のほとんどは抗細菌剤の発見のための公知方法に焦点を合わせたものであるが、抗真菌剤の発見のために同一または類似の方法が用いられており、これらの方法は同一または類似の欠点を伴う。
公知アッセイに伴う欠点を最小限にしたり回避する新規な及び/又は改良された抗微生物スクリーニング法を開発することが必要とされている。特に、ハイスループットに適した、メカニズムに基づく全細胞スクリーニング法が必要とされている。
本発明は、既知作用メカニズムを有する増殖抑制物質(例えば、化合物または天然物)、すなわち、細胞の増殖または生残に必要な機能を有する標的細胞の酵素または他の遺伝子産物を抑制あるいは干渉する物質の選択的スクリーニングを可能にする方法である。細胞増殖に関して本発明で用いる「抑制」(または「阻害」)なる語は、細胞(例えば、細菌細胞)の増殖の低下または抑圧を意味する。本発明の方法は、発現されると細胞内の標的遺伝子産物の量を減少させうるRNA断片(例えば、アンチセンスRNA)をコードする核酸を含有する組換え細胞を使用する。例えば、アンチセンスRNA(asRNA)は、標的遺伝子産物(例えば、タンパク質)をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)にハイブリダイズし、それにより該遺伝子産物の発現を妨げうる。細胞内で誘導されるRNAコード化核酸の発現のレベルに応じて、標的遺伝子産物の産生は劇的に減少(すなわち、ダウンレギュレーション)して細胞の増殖停止を引き起こしたり、あるいは、細胞増殖は実質的に影響されないが遺伝子産物に作用する物質に対する細胞の感受性を増強するレベルにまで低下しうる。例えば、標的遺伝子産物が、細胞増殖に必要な酵素である場合には、asRNAの発現は、該酵素を阻害する物質に対して該細胞を予め感受性化(pre−sensitize)しうる。ある制御可能な条件下では、該細胞は、それがasRNAコード化核酸を喪失したり又はasRNAを発現する能力を喪失しうる意味で不安定になりうる。asRNAコード化核酸を喪失した又はasRNAを発現する能力を喪失した細胞は本発明においては復帰細胞と称される。復帰細胞は、標的遺伝子産物に作用する物質の存在下で増殖しうる。
本発明の方法においては、標的遺伝子産物において作用する物質に対して該組換え細胞を予め感受性化するレベルでRNA断片の発現が生じる条件下で、試験物質の存在下に栄養培地内で該組換え細胞を増殖させる。また、該RNA断片を発現する能力を該細胞の一部が喪失するよう、該増殖条件を制御する。試験物質が、標的遺伝子産物において作用しない増殖インヒビターである場合には、それは、該RNA断片を含有する細胞に対して及び該RNA断片を欠く細胞(復帰細胞)に対して同等に有効となる。復帰細胞は増殖上の利点を有さず、該細胞の実質的に全てが死滅する。すなわち、増殖は全く生じない。一方、試験物質が標的遺伝子産物に作用する場合には、該RNA断片を欠く細胞は、該RNA断片を含有する細胞と比較して増殖上の利点を有し、復帰細胞の増殖が生じる。該細胞を増殖させるために使用する栄養培地が半固形栄養培地である場合には、復帰細胞の密度が本質的に非常に低いため(非復帰細胞と比較した場合)、阻止域の選択領域におけるその優先的な増殖は、隔離された個々のコロニーとして見出されうる。これらの復帰コロニーはまた、視覚的検査により検出されるのに十分なほどに大きい。試験物質が増殖インヒビターでない場合には、増殖の抑制は生じない。復帰細胞の出現に関する細胞増殖の分析は、特定の作用様式を有する増殖インヒビターの同定につながる。
より詳しくは、本発明は、ある物質が、細胞の増殖もしくは生残に必要な遺伝子産物の機能を選択的に抑制することにより作用する細胞増殖インヒビターであるか又はそのような細胞増殖インヒビターを含有するかどうかを試験するための方法である。該方法は、
(A)該遺伝子産物の発現を妨げるRNA断片を発現しうる組換え細胞を提供し、
(B)(i)該RNA断片の発現、および該遺伝子産物の合成のダウンレギュレーション、ならびに(ii)該RNA断片を発現する能力の該細胞による喪失を引き起こす条件下で試験物質の存在下に、栄養培地内で該組換え細胞を増殖させ、
(C)生じた細胞増殖を分析することを含み、ここで、
(1)該細胞の全て又は実質的に全ての死により細胞増殖が実質的に無い場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的には抑制しない増殖インヒビターであるか又はそのような増殖インヒビターを含有し、
(2)該細胞の全て又は実質的に全ての生残および増殖により細胞増殖の抑制が実質的に無い場合には、該試験物質は増殖インヒビターではないか又は増殖インヒビターを含有せず、あるいは
(3)該RNA断片を発現する能力を有さない復帰細胞の生残および増殖と共に、細胞の相当な部分の死により増殖抑制が有る場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的に抑制する増殖インヒビターであるか又はそのような増殖インヒビターを含有する。
(A)該遺伝子産物の発現を妨げるRNA断片を発現しうる組換え細胞を提供し、
(B)(i)該RNA断片の発現、および該遺伝子産物の合成のダウンレギュレーション、ならびに(ii)該RNA断片を発現する能力の該細胞による喪失を引き起こす条件下で試験物質の存在下に、栄養培地内で該組換え細胞を増殖させ、
(C)生じた細胞増殖を分析することを含み、ここで、
(1)該細胞の全て又は実質的に全ての死により細胞増殖が実質的に無い場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的には抑制しない増殖インヒビターであるか又はそのような増殖インヒビターを含有し、
(2)該細胞の全て又は実質的に全ての生残および増殖により細胞増殖の抑制が実質的に無い場合には、該試験物質は増殖インヒビターではないか又は増殖インヒビターを含有せず、あるいは
(3)該RNA断片を発現する能力を有さない復帰細胞の生残および増殖と共に、細胞の相当な部分の死により増殖抑制が有る場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的に抑制する増殖インヒビターであるか又はそのような増殖インヒビターを含有する。
本発明の1つの実施形態は、工程Aにおいて該細胞により発現されるRNA断片がアンチセンスRNAを含む前記方法である。この実施形態の1つの態様においては、該アンチセンスRNAは、該細胞内に含有されるプラスミドにコードされる。この実施形態のもう1つの態様においては、該アンチセンスRNAは該細胞のゲノム内のDNAにコードされる。
本発明のもう1つの実施形態は、該方法において使用する細胞が、細菌株および真菌株よりなる群から選ばれる前記方法である。この実施形態の1つの態様においては、該細胞は細菌の株であり、該物質が、該細菌の増殖もしくは生残に必要な遺伝子産物の機能を選択的に抑制することにより作用する抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有するか、どうかを判定するために該物質を試験する。前記態様の特徴においては、工程Aにおいて該細菌により発現されうるRNA断片は、該細菌内に含有されるプラスミドにコードされるアンチセンスRNAを含む。
本発明の方法の好ましい実施形態においては、該組換え細胞(例えば、細菌細胞)を増殖(工程B)させる栄養培地は半固形培地(これは本明細書においては半固形増殖培地または半固形栄養培地とも称されうる)、例えば寒天プレート、アガロースプレートまたは任意の固体支持体マトリックスであり、この場合、該半固形培地に試験物質を接種し、該プレート上の細胞増殖のパターンを分析する(工程C)。該接種部位に増殖阻止域が存在し、該区域内またはその周囲に1以上の視覚的に検出可能な復帰細胞コロニーが存在することは、該試験物質が標的遺伝子産物において作用し、特定の作用様式を有することを示す。一方、該接種部位に細胞非増殖の透明域が存在する(すなわち、検出可能な復帰細胞コロニーが存在しない)ことは、該試験物質が、標的遺伝子産物においては作用しない増殖インヒビターであるか又はそのような増殖インヒビターを含有することを示す。この実施形態の好ましい態様においては、該細胞は細菌細胞である。
本発明の方法は、「背景技術」に記載した公知アッセイ方法の欠点の多くを克服するものである。より詳しくは、本発明は、メカニズムに基づく全細胞スクリーニングであり、それは単一のサンプル点(sample point)で行われ、それはサンプルの用量力価測定を必要とせず、それはハイスループットスクリーニングに適し、それは水不溶性化合物を測定することが可能であり、それは一般的に毒性な化合物の同定を排除し、それは迅速なアッセイ解読を有し、それは細胞透過性をアッセイし、それは無傷遺伝子産物に対して直接的スクリーニングを実施し、それは単一の細菌または抗真菌株で単一のアッセイプレート上で実施可能であり、それは微生物源(抽出物および生コロニー)から生じた粗化合物を測定することが可能である。
本発明の種々の他の実施形態、態様および特徴は以下の説明、実施例および添付の特許請求の範囲において更に詳しく説明されるか、あるいはそれらから明らかとなろう。
(発明の詳細な説明)
本発明は、物質が、細胞の増殖もしくは生残に必要な遺伝子産物の機能を選択的に抑制することにより作用する細胞増殖インヒビターであるか又はそのような細胞増殖インヒビターを含有するか、どうかを試験するための方法である。該方法は、該遺伝子産物の発現を妨げるRNA断片を発現しうる組換え細胞(例えば、細菌細胞または真菌細胞)を使用する。標的遺伝子は、宿主細胞の増殖または生残に必要な遺伝子である。該RNA断片は、発現されると標的遺伝子にハイブリダイズし標的遺伝子の発現を妨げて標的遺伝子産物のダウンレギュレーションを引き起こすasRNAでありうる。このダウンレギュレーションは今度は、標的遺伝子産物において作用する増殖インヒビター(例えば、抗生物質)に対するアンチセンス発現細胞(例えば、細菌)の感受性の増強を引き起こす。同時に、該細胞は、ある増殖条件下、該RNA断片を発現する能力を喪失しうるため、該細胞は該RNA断片の発現に関して不安定である。前記のとおり、本発明の方法においては、該RNA断片の発現と時間経過に伴ったこの発現能の喪失とを同時に引き起こす条件下で、試験物質の存在下にこれらの細胞を増殖させる。この場合の「喪失」なる語は、該RNA断片を発現する能力を細胞が徐々に失うことを意味する。すなわち、工程Bにおける細胞の増殖および複製は、時間経過と共に、該RNA断片を発現する能力を該細胞の一部が喪失して、これらの細胞が復帰コロニー源となるように起こる。細胞増殖は、標的遺伝子産物において試験物質が作用した場合に増殖上の利点を有する復帰細胞の検出/出現に関して、これらの条件下でモニターする。
本発明は、物質が、細胞の増殖もしくは生残に必要な遺伝子産物の機能を選択的に抑制することにより作用する細胞増殖インヒビターであるか又はそのような細胞増殖インヒビターを含有するか、どうかを試験するための方法である。該方法は、該遺伝子産物の発現を妨げるRNA断片を発現しうる組換え細胞(例えば、細菌細胞または真菌細胞)を使用する。標的遺伝子は、宿主細胞の増殖または生残に必要な遺伝子である。該RNA断片は、発現されると標的遺伝子にハイブリダイズし標的遺伝子の発現を妨げて標的遺伝子産物のダウンレギュレーションを引き起こすasRNAでありうる。このダウンレギュレーションは今度は、標的遺伝子産物において作用する増殖インヒビター(例えば、抗生物質)に対するアンチセンス発現細胞(例えば、細菌)の感受性の増強を引き起こす。同時に、該細胞は、ある増殖条件下、該RNA断片を発現する能力を喪失しうるため、該細胞は該RNA断片の発現に関して不安定である。前記のとおり、本発明の方法においては、該RNA断片の発現と時間経過に伴ったこの発現能の喪失とを同時に引き起こす条件下で、試験物質の存在下にこれらの細胞を増殖させる。この場合の「喪失」なる語は、該RNA断片を発現する能力を細胞が徐々に失うことを意味する。すなわち、工程Bにおける細胞の増殖および複製は、時間経過と共に、該RNA断片を発現する能力を該細胞の一部が喪失して、これらの細胞が復帰コロニー源となるように起こる。細胞増殖は、標的遺伝子産物において試験物質が作用した場合に増殖上の利点を有する復帰細胞の検出/出現に関して、これらの条件下でモニターする。
該組換え細胞は、適当な誘導物質との接触により、該RNA断片を発現するよう誘導されうる。また、該細胞は抗生物質耐性遺伝子を含有することが可能であり、該耐性遺伝子は、該抗生物質での連続的な選択により該細胞のRNA断片発現能を安定化(維持)する。この場合、(i)該RNA断片(例えば、asRNA)の発現、および該遺伝子産物の合成のダウンレギュレーション、ならびに(ii)該RNA断片を発現する能力の該細胞による喪失を引き起こす条件下での増殖は、有効量の該RNA断片発現誘導物質の存在下かつ該抗生物質の非存在下での該細胞の増殖を意味する。誘導物質の有効量は、標的遺伝子産物に作用する増殖インヒビターに対して該細胞を感受性化する量を意味する。誘導物質の量が少なすぎると、不十分なRNA誘導と、それに対応する、選択的インヒビターに対する細胞感受性の喪失とが生じ、この場合、復帰細胞は選択的な増殖上の利点を有さない。誘導物質の量が多すぎると、asRNAの過剰発現が生じ、これは、試験物質の性質には無関係に細胞増殖を完全に停止させる。本発明で使用する誘導物質の有効量は対照の使用により確立することができる。例えば、有効量の誘導物質が本発明の方法において使用されていることの確認として、標的遺伝子産物において選択的に作用することが知られている増殖インヒビターを試験物質の代わりに使用して、試験物質に用いたのと同じ条件下で該細胞を同時に増殖させることが可能である。また、所望により、該細胞を、標的遺伝子産物において選択的に作用しないことが知られている増殖インヒビターと共に増殖させることが可能である。誘導物質が有効量で存在する場合には、該公知の選択的増殖インヒビターでの実施は復帰細胞の増殖を引き起こすが、他方、該公知非選択的インヒビターでの実施は増殖を引き起こさないであろう。該対照が、反対の又は不確定な結果を与える場合には、該試験物質での実施は妥当でないとみなされうる。
該組換え細胞は、通常の微生物学的培地および培養条件(例えば、LB寒天)を用いて増殖させることが可能であり、そのような条件はW.Hewitt,Microbiology Assay,(Academic Press,New York,NY,1977)に記載されている。
本発明は液体培地または半固形培地内で行うことができる。復帰細胞は、液体培地内では、該RNA断片の不安定性を利用することにより検出することができる。例えば、asRNAコード化プラスミドを使用する場合には、asRNAコード化核酸によりリプレッサータンパク質が欠失するよう該プラスミドを構築することができる。該細胞は、リプレッサーの調節下にあるレポーター遺伝子をも有しうる。したがって、asRNAコード化核酸を不安定にする条件下(すなわち、該細胞がasRNA含有プラスミドを喪失し及び/又は非機能的部分プラスミドを生じうる条件下)で該細胞を増殖させる場合には、リプレッサーの欠失は該レポーター遺伝子の活性化を招く。該レポーター遺伝子はグリーン蛍光タンパク質であることが可能であり、細胞ゲノム内に組み込まれたり、あるいは細胞内で別のプラスミド(asRNAコード化核酸とは異なるもの)上に担持されうる。生じる復帰コロニーは蛍光性であり、液体培地内で(および半固形培地内でも)検出可能である。このレポーター系は、asRNAコード化核酸が細菌ゲノム内に存在し別のプラスミド内に存在するのではない場合に使用することができる。
本発明の方法は、好ましくは、半固形培地(すなわち、半固形栄養培地)内で行う。したがって、本発明の1つの実施形態は、ある物質が、細胞の増殖もしくは生残に必要な遺伝子産物の機能を選択的に抑制することにより作用する細胞増殖インヒビターであるか又はそのような細胞増殖インヒビターを含有するか、どうかを試験するための方法である。該方法は、
(A)該遺伝子産物の発現を妨げるRNA断片を発現しうる組換え細胞を提供し、
(B)(i)該RNA断片の発現、および該遺伝子産物の合成のダウンレギュレーション、ならびに(ii)該RNA断片を発現する能力の該細胞による喪失を引き起こす条件下で試験物質の存在下に、半固形培地内で該組換え細胞を増殖させ(例えば、該試験物質を接種した培地を使用して行う)、
(C)生じた細胞増殖を分析することを含み、ここで、
(1)該半固形培地が、該細胞の全て又は実質的に全ての死により、実質的に非増殖を示す透明域(例えば、該試験物質接種部位内またはその周囲の透明域)を示す場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的には抑制しない抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有し、
(2)該半固形培地が、該細胞の全て又は実質的に全ての生残および増殖により、非増殖域を示さない場合には、該試験物質は抗細菌剤ではない又は抗細菌剤を含有せず、あるいは
(3)該半固形培地が非増殖域を示すが、例外として該区域内に該RNA断片を発現する能力を有さない復帰細胞の生残および増殖による1以上の小さな細胞コロニーを示す場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的に抑制する抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有する。
(A)該遺伝子産物の発現を妨げるRNA断片を発現しうる組換え細胞を提供し、
(B)(i)該RNA断片の発現、および該遺伝子産物の合成のダウンレギュレーション、ならびに(ii)該RNA断片を発現する能力の該細胞による喪失を引き起こす条件下で試験物質の存在下に、半固形培地内で該組換え細胞を増殖させ(例えば、該試験物質を接種した培地を使用して行う)、
(C)生じた細胞増殖を分析することを含み、ここで、
(1)該半固形培地が、該細胞の全て又は実質的に全ての死により、実質的に非増殖を示す透明域(例えば、該試験物質接種部位内またはその周囲の透明域)を示す場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的には抑制しない抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有し、
(2)該半固形培地が、該細胞の全て又は実質的に全ての生残および増殖により、非増殖域を示さない場合には、該試験物質は抗細菌剤ではない又は抗細菌剤を含有せず、あるいは
(3)該半固形培地が非増殖域を示すが、例外として該区域内に該RNA断片を発現する能力を有さない復帰細胞の生残および増殖による1以上の小さな細胞コロニーを示す場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的に抑制する抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有する。
この実施形態の1つの態様においては、該半固形培地は寒天プレートまたはアガロースプレートである。この実施形態のもう1つの態様においては、工程Aにおける細胞により発現されるRNA断片はアンチセンスRNAである。この態様の1つの特徴としては、該アンチセンスRNAは該細胞のゲノム内のDNAにコードされる。この態様のもう1つの特徴としては、該アンチセンスRNAは、該細胞内に含有されるプラスミドにコードされる。該プラスミドは、適当な誘導物質、例えば糖(例えば、キシロースまたはアラビノース)またはアンヒドロテトラマイシンまたはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)との接触により、asRNAを発現するよう誘導されうる。該プラスミドは更に抗生物質耐性遺伝子を含有することが可能であり、該耐性遺伝子は、該プラスミドが耐性である抗生物質での連続的な選択により該プラスミドが該細胞内に維持されることを可能にする。この場合、(i)asRNAの発現、および該遺伝子産物の合成のダウンレギュレーション、ならびに(ii)該RNA断片を発現する能力の該細胞による喪失を引き起こす条件下での増殖は、有効量の該asRNA発現誘導物質の存在下かつ該抗生物質の非存在下での該細胞の増殖を意味する。この能力の喪失は、該細胞からの該プラスミドの喪失(すなわち、該細胞は「矯正(cured)」されている)および/または該プラスミド内での遺伝子再編成によるものでありうる。再編成に対するプラスミドの感受性および不安定性はN.C. Franklin,“Illegitimate recombination”,in The Bacterio−phage Lambda,A.D.Hershey編,(Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1971)pp.175−194およびEhrlichら,Gene 1993,135:161−166において考察されている。前記のとおり、誘導物質の有効量は、標的遺伝子産物に作用する増殖インヒビターに対して該細胞を感受性化する量を意味する。この場合、誘導物質の量が少なすぎると、不十分なasRNA誘導と、それに対応する、選択的インヒビターに対する細胞感受性の喪失とが生じ、この場合、復帰細胞は選択的な増殖上の利点を有さない。誘導物質の量が多すぎると、asRNAの過剰発現が生じ、これは、試験物質の性質には無関係に細胞増殖を完全に停止させる。試験物質に関して得られた結果の妥当性は、前記のとおりに対照を使用することにより確認することができる。
本発明の他の実施形態は、前記の態様または特徴の2以上を含む、直前に記載のとおりに半固形培地内で行う方法を含む。アンチセンスRNAをコードする核酸断片は、当業者に公知の方法を用いて該細胞のゲノム内に組み込むことが可能である。選択的インヒビターを検出する能力の喪失(前記のとおり)は、欠失によるasRNAコード化核酸の喪失またはゲノムDNAの再編成によるものでありうる。asRNAコード化核酸のゲノムコピーは、前記と同じ誘導メカニズム下にあり、この場合、誘導物質、例えばキシロース、アラビノース、アンヒドロテトラサイクリンまたはIPTGがasRNAの合成を可能にするであろう。asRNA遺伝子標的において作用する化合物に対する曝露はゲノムからのasRNAコード化核酸の選択的欠失を引き起こし、復帰コロニーが増殖する。ゲノムの不安定性のため、asRNAコード化核酸は、高い組換え頻度でDNA断片においてゲノム内に組み込まれるであろう(例えば、Hashem,VIら Mutat Res.2002,22:39−46を参照されたい)。
本発明の方法は、半固形培地を使用することにより最良に実施され、このことは液体培地アッセイより優れた点である。半固形培地アッセイは、広範なサンプル濃度にわたって又は定量不可能な粗サンプル上で行うことが可能であり、このことは、スクリーニングを行う前のサンプルの処理を最小限にし、用量力価測定、時間のかかる抽出物調製および大量の化合物産生生物の前増殖を要しない。液体培地アッセイとは異なり、半固形培地アッセイは高濃度の有機溶媒に適合可能であり、水不溶性化合物のアッセイを可能にする。半固形培地アッセイ法は新鮮な固体サンプル、例えば細菌コロニー、真菌コロニーまたは更には粗土壌サンプルのスクリーニングに適しており、あるいは、容易には複製し得ないサンプルに適している。本発明の場合、半固形培地アッセイはまた、プラスミドまたは宿主細胞ゲノム内にレポーター遺伝子を挿入する必要性を軽減する。陽性体を同定するには、阻止域内の増殖復帰コロニーの迅速な視覚的検出で十分である。
半固形培地により本発明の方法を行うための典型的な手順は以下のとおりである。ブロス(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition,J.SambrookおよびD.W.Russell編(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2000)に記載のLB培地)または溶媒に懸濁させた適当な用量の該組換え細胞を、該RNA断片の発現を誘導するための物質で及び場合によっては他の栄養素(例えば、グルコース)で補足された溶融状態の半固形培地(例えば、溶融寒天)に加える。使用する細胞の添加は、典型的には、半固形培地(例えば、寒天)1mL当たり106〜108細胞の範囲となる量で行う(該細胞は、それを液体培養に懸濁させ、該懸濁液の光学密度を例えば600nmで測定し、該培地から該細胞を分離し、ついで、該半固形培地に加えられた適当な量のブロスまたは溶媒に該細胞を再懸濁させることにより「計数」されうる)。混合後、該溶融混合物をディッシュ内に注ぎ、ついで、所望により、成型鋳型を使用してウェルを培地内に成型処理(cast)することが可能である。該ディッシュを室温に冷却した後、それぞれ適当な溶媒(例えば、DMSO)に溶解した被検物質のサンプルおよび対照のサンプル(溶液中のこれらの物質の濃度は典型的には約0.001〜約5mg/mLである)を(例えば、該溶液約1〜約200μLの量で)ウェル内に分注し、該プレートを、該細胞の増殖を可能にするのに十分な時間(例えば、約12〜約48時間)にわたり、かつ、asRNAコード化核酸が該細胞内で維持されない条件下(例えば、該細胞が含有する抗生物質耐性遺伝子の対応抗生物質の非存在下)、適当な温度(例えば、約25〜約45℃)でインキュベートする。ついで、該試験物質が、標的遺伝子産物において作用する増殖インヒビターである又はそのような増殖インヒビターを含有するかどうかを判定するために、そのインキュベートしたプレートを各試験ウェルの周辺領域内の復帰コロニーの出現に関して視覚的に検査する。
前記の手順は、特定の作用様式を有する増殖インヒビターとして作用する天然物を試験するために修飾することが可能である。該アッセイプレートは、ウェルをプレート内に成型処理しないこと以外は前段落に記載のとおりに調製することができる。液体試験サンプルをアッセイプレート上のウェル内に加える代わりに、微生物が(例えば、土壌サンプルから)増殖した寒天のストリップを寒天アッセイプレートの表面に適用する。該微生物により産生された天然物は該ストリップから該寒天試験プレート内に拡散する。ついで、該試験物質が、標的遺伝子産物において作用する増殖インヒビターである又はそのような増殖インヒビターを含有するかどうかを判定するために、そのインキュベートしたプレートを、各微生物含有試験ストリップの周辺領域内の復帰コロニーの出現に関して視覚的に検査する。
「試験物質」および「物質」なる語は互換的に用いられ、化合物、化合物混合物(すなわち、少なくとも2つの化合物の混合物)、または1以上の化合物を含有する天然物サンプルを意味する。したがって、標的遺伝子産物の選択的インヒビターおよび非選択的インヒビターの組合せが視覚的に観察されうるよう、試験物質の細胞増殖の分析は2以上の増殖インヒビターの抑制活性を利用するものでありうる。本発明の方法は、一般には、選択的増殖インヒビターを同定するために使用する。試験物質が単一の化合物であり、本発明の方法において選択的増殖インヒビターとして同定された(すなわち、本発明の方法の工程Cにおける細胞増殖の分析により、該増殖が、復帰細胞の生残および増殖に相当する範疇(3)に当てはまると判定された)場合には、該試験物質は選択的増殖インヒビター「である」。試験物質が化合物混合物(例えば、天然物サンプル)であり、本発明の方法において選択的増殖インヒビターとして同定された(すなわち、本発明の方法の工程Cにおける細胞増殖の分析により、該増殖が範疇(3)に当てはまると判定された)場合には、該試験物質は選択的増殖インヒビターを「含有する」。より詳しくは、該試験物質は、選択的増殖インヒビターと非選択的増殖インヒビターとを含む化合物の混合物である場合には、本発明の方法における細胞増殖に関する分析(工程C)は、非選択的増殖インヒビターののため実質的に細胞増殖を示さず、選択的増殖インヒビターによる標的化遺伝子産物の選択的抑制によりRNA断片発現能を有さない復帰細胞の生残および増殖を同時に示す。例えば、試験物質が、選択的増殖インヒビターと非選択的増殖インヒビターとを含む化合物混合物であり、前記の半固形栄養培地を使用して本発明の方法を行う場合には、細胞増殖に関する分析(工程C)は、非選択的増殖インヒビターにより1以上の非増殖域を示し、さらに、復帰細胞の生残および増殖による1以上の小さな細胞コロニー以外には1以上の非増殖域を示す。このタイプの増殖(これは図5に例示されている)は工程Cにおける範疇(3)に当てはまり、該試験物質は選択的増殖インヒビターを「含有する」。
本発明の方法において使用する細胞の死に関する「実質的に全て」なる語は、細胞増殖がほとんど又は全く検出され得ないことを意味する。寒天プレートのような半固形培地上の増殖の場合、「実質的に全て」は、細胞増殖が視覚的に認められ得えないこと、例えば、未処理領域と比較して、肉眼では想定増殖域に増殖が認められないことを意味する。液体培地内の増殖の場合、「実質的に全て」は、例えば該培地の光学密度の変化による測定で、少なくとも約90%、典型的には少なくとも約95%(例えば、少なくとも約99%)、好ましくは約99.9%の細胞増殖抑制が認められることを意味する。
本発明の方法において使用する細胞の死に関する「細胞が実質的に非増殖」なる語は、細胞増殖がほとんど又は全く検出され得ないことを意味する。寒天プレートのような半固形培地上の増殖の場合、「細胞が実質的に非増殖」は、細胞増殖が視覚的に認められ得ないこと、例えば、未処理領域と比較して、肉眼では想定増殖域に増殖が認められないことを意味する。液体培地内の増殖の場合、「細胞が実質的に非増殖」は、例えば該培地の光学密度の変化による測定で、少なくとも約90%、典型的には少なくとも約95%(例えば、少なくとも約99%)、好ましくは約99.9%の細胞増殖抑制が認められることを意味する。
本発明での使用に適した細菌は、細胞の増殖または生残に必要な遺伝子産物をコードする遺伝子の発現を妨げるように発現されるRNA断片をコードする遺伝的要素を含有し、それにより、その遺伝子産物に作用する薬物(抗生物質)のクラスに対して該細菌を感受性にする、当技術分野で公知の任意の組換え細菌でありうる。該細菌は病原細菌でありうる。本発明での使用に適した細菌の典型例としては、スタヒロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エシェリキア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、ヘモフィルス(Haemophilus)、エンテロバクター(Enterobacter)、アシネトバクター(Acinetobacter)、バシラス(Bacillus)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、ブルクホルデリア(Burkholderia)、サルモネラ(Salmonella)およびシュードモナス(Pseudomonas)よりなる群から選ばれる細菌株、特に、株ストレプトコッカス・ニゥモニエ(Streptococcus pneumonia)、スタヒロコッカス・アウレウス(黄色ブドウ球菌)(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エシェリキア・コリ(大腸菌)(Escherichia coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)、エンテロバクター・クロアケ(Enterobacter cloacae)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター・ボゥマニイィ(Acinetobacter baumanii)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)およびブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)が含まれる。本発明での使用に適した細菌の特定の具体例としては、スタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・ニゥモニエ(Streptococcus pneumonia)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)およびシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)が挙げられる。より特定の具体例としては、スタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)の株、例えば、スタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)の生残または増殖に必要な遺伝子に対するキシロース誘導性アンチセンスRNAを発現するプラスミドを含有するスタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)が挙げられる。スタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)の生残または増殖に必要な遺伝子には、fabF、pheT、murA、secA、dnaC、ileS、ftsZ、secI、polC、dnaE、gyrE、gyrA、murB、rpl、parEおよびparCよりなる群から選ばれる遺伝子が含まれる。スタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)の生残または増殖に必要な遺伝子のサブクラスには、脂肪酸シンターゼ、アミノアシル−tRNAシンテターゼ、タンパク質セクレターゼ、ペプチジルトランスフェラーゼ、トランスグリコシラーゼ、トランスペプチダーゼまたはリボソーム関連タンパク質を発現するようコードしているものが含まれる。
細菌株の増殖および保存のための方法はMolecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition,J.SambrookおよびD.W.Russell編(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2000)に開示されている。細菌の株はATCC(American Tissue Culture Collection,Atlanta,GA.)から入手可能である。
本発明の方法に使用する真菌株は、細胞の増殖または生残に必要な遺伝子産物をコードする遺伝子の発現を妨げるように発現されるRNA断片をコードする遺伝的要素を含有し、それにより、その遺伝子産物に作用する薬物(抗真菌物質)のクラスに対して該細菌を感受性にする、当技術分野で公知の任意の組換え真菌でありうる。使用しうる適当な真菌株には、クリプトコッカス属真菌種(Cryptococcus spp.)、カンジダ属真菌種(Candida spp.)、アスペルギルス属真菌種(Aspergillus spp.)、ヒストプラスマ属真菌種(Histoplasma spp.)、コクシディオイデス属真菌種(Coccidioides spp.)、パラコクシディオイデス属真菌種(Paracoccidioides spp.)、ブラストミセス属真菌種(Blastomyces spp.)、フザリウム属真菌種(Fusarium spp.)、シゾサッカロミセス属真菌種(Schizosaccharomyces spp.)、スポロトリックス属真菌種(Sporothrix spp.)、トリコスポロン属真菌種(Trichosporon spp.)、セドスポリウム属真菌種(Scedosporium spp.)、リゾプス属真菌種(Rhizopus spp.)、シュードアレシェリア属真菌種(Pseudallescheria spp.)、皮膚糸状菌、ペシリオミセス属真菌種(Paeciliomyces spp.)、アルテルナリア属真菌種(Alternaria spp.)、クルブラリア属真菌種(Curvularia spp.)、エキソフィアラ属真菌種(Exophiala spp.)、ワンギエラ属真菌種(Wangiella spp.)、デマチアセウス(Dematiaceous)真菌およびニューモシスティス属真菌種(Pneumocystis spp.)、特に、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、コクシディオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が含まれる。真菌株はATCCから入手可能であり、F.Sherman,G.FinkおよびJ.Hicks,J.,Methods in Yeast Genetics,(Cold Spring Harbor Laboratory Press.Cold Spring Harbor,NY,1981)に記載の方法を用いて増殖させ保存することが可能である。
標的遺伝子産物の発現を妨げるための、本発明の方法において使用するRNA断片は、アンチセンスRNAでありうる。「アンチセンスRNA」なる語は、標的一次転写産物またはメッセンジャーRNA(mRNA)の全部または一部に相補的であり標的遺伝子の発現を遮断するRNA転写産物を意味する。「相補的」および「相補性」なる語は、許容される塩および温度条件下の、塩基対形成によるポリヌクレオチドの結合を意味する。二本鎖RNAにおける塩基対形成は、水素結合の形成によるアデニン(A)とウラシル(U)との及びシトシン(C)とグアニン(G)との対合関係である。アンチセンスRNAの相補性は特定の遺伝子転写産物の任意の部分によるもの、すなわち、5’非コード配列、3’非コード配列、イントロンまたはコード配列におけるものでありうる。「RNA転写産物」なる語は、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写により生じた産物を意味する。RNA転写産物がDNA配列の相補的コピーである場合には、それは一次転写産物と称されるか、あるいはそれは、一次転写産物の転写後プロセシングに由来するRNA配列であることが可能であり、成熟RNAと称される。「メッセンジャーRNA」は、イントロンを有さず細胞によりタンパク質に翻訳されうるRNAを意味する。「センス」RNAは、mRNAを含み、従って細胞によりタンパク質に翻訳されうるRNA転写産物を意味する。
asRNAの遺伝子標的を同定するための方法は当技術分野においてよく知られている。適当な方法はForsythら,Mol.Microbiol.2002,43:1387−1400;DeVitoら,Nat.Biotechnol.2002,5:478−483;およびJiら,Science 2001,293:2266−2269に記載されているか、あるいはそれらの教示から適合化されうる。ついで標的遺伝子に対する適当なasRNAを、当技術分野においてよく知られている方法により構築することができる。例えば、F.M.Ausubelら,Short protocols in molecular biology,2nd ed.(John Wiley & Sons,1992)ならびにMolecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition,J.SambrookおよびD.W.Russell編(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2000)に記載のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のような通常の方法を用いて、asRNAコード化核酸断片を構築することができる。
ついで該asRNAコード化核酸を適当な発現ベクター内に組込み、ついで該発現ベクターを宿主細胞内に形質転換またはトランスフェクトすることができる。「宿主細胞」なる語は、外因性ポリヌクレオチド配列により形質転換もしくはトランスフェクトされた又は形質転換もしくはトランスフェクションされうる原核性または真核性細胞を意味する。本発明の実施において使用されると意図される宿主細胞には、当技術分野においてよく知られた細胞が含まれる。適当な宿主細胞には、酵母細胞(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)(米国特許第4882279号、米国特許第4837148号、米国特許第4929555号および米国特許第4855231号を参照されたい)など)、細菌細胞(例えば、エシェリキア・コリ(Escherichia coli))などが含まれる。
「ベクター」なる語は、所望のDNAセグメントが連結している運搬分子を意味する。ベクターは、外来DNAを宿主細胞内に組込む働きをする。より詳しくは、「ベクター」は、適当な宿主内でDNAの発現を引き起こしうる適当な制御配列に機能しうる形で連結されたDNA配列を含有するDNA構築物である。そのような制御配列には、転写を引き起こすプロモーター、そのような転写を制御するための所望により使用されうるオペレーター配列、適当なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終結を制御する配列が含まれる。ベクターはプラスミド、ファージ粒子または単なる潜在的ゲノムインサートでありうる。ベクターは、適当な宿主内に形質転換されたら、宿主ゲノムから独立して複製され及び機能することが可能であり、あるいは、場合によっては、ゲノム自体に組込まれうる。プラスミドは、現在最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、「プラスミド」および「ベクター」なる語は本発明においては互換的に使用されることがある。しかし、本発明は、同等に機能し当技術分野において公知である又は公知となる他の形態のベクターを含むと意図される。例えば、細菌細胞培養発現のための典型的な発現ベクターはpEPSA5に基づく。好ましいベクターのタイプの1つはエピソーム、すなわち、染色体外複製が可能な核酸である。
「発現ベクター」なる語は、特に、異種核酸の発現および/または複製のために細胞内に該異種核酸を運搬するために使用される組換え核酸分子を意味する。発現ベクターは、典型的には、適当な宿主細胞内に導入されると挿入DNAの発現を引き起こすプラスミドの形態で入手される。発現ベクターは環状または直鎖状であることが可能であり、その中に種々の核酸構築物を組込みうる。しかし、本発明は、同等の機能を果たしうる当技術分野で公知である又は公知となる他の形態の発現ベクターを含むと意図される。
本発明の実施における使用に適した発現ベクターは当業者によく知られており、真核細胞および/または原核細胞内で複製可能なもの、並びにエピソームとして維持されるもの及び宿主細胞ゲノム内に組込まれるものを包含する。発現ベクターは、典型的には、抗生物質耐性タンパク質をコードする発現カセットなどのような他の機能的に重要な核酸配列を更に含有する。大腸菌(E.coli)原核細胞の形質転換のための典型的な発現ベクターには、pET発現ベクター(Novagen,Madison,Wis.;米国特許第4952496号を参照されたい)、例えばpETlla(これはT7プロモーター、T7ターミネーター、誘導性大腸菌(E.coli)lacオペレーターおよびlacリプレッサー遺伝子を含有する)およびpET12a−c(これはT7プロモーター、T7ターミネーターおよび大腸菌(E.coli)ompT分泌シグナルを含有する)が含まれる。もう1つのそのようなベクターとしては、pIN−IIIompA2(Duffaudら,Meth.in Enzymology 1987,153:492−507)が挙げられ、これはlppプロモーター、lacUV5プロモーターオペレーター、ompA分泌シグナルおよびlacリプレッサー遺伝子を含有する。
本発明で用いる「形質転換」および「トランスフェクション」なる語は、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞内に導入するための当技術分野で認識されている種々の任意の技術を意味する。核酸構築物(例えば、asRNAコード化核酸)を含有する発現ベクターを宿主細胞内に導入(形質導入)して形質導入組換え細胞(すなわち、組換え異種核酸を含有する細胞)を得るための適当な手段は当技術分野でよく知られている。典型的な技術は、例えば、Friedmann,Science 1989,244:1275−1281およびMulligan,Science 1993,260:926−932に記載されている。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための適当な方法はMolecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition,J.SambrookおよびD.W.Russell編(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2000)ならびに他の実験マニュアルに記載されている。形質導入の典型的な方法には、例えば、ウイルスベクターを使用する感染(例えば、米国特許第4405712号および第4650764号を参照されたい)、リン酸カルシウムトランスフェクション(米国特許第4399216号および第4634665号)、硫酸デキストラントランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクション(例えば、米国特許第4394448号および第4619794号を参照されたい)、サイトフェクション、粒子ビーズ射撃などが含まれる。異種核酸は、所望により、その染色体外(すなわち、エピソーム)維持を可能にする配列を含んでいてもよく、あるいは異種核酸は、宿主のゲノム内に組込まれる供与核酸でありうる。
本発明において使用するasRNAコード化核酸は発現プラスミド内にクローニングされうる。この場合の「クローニング」なる語およびその派生語(例えば、「クローン化」)なる語は、プラスミドベクター内への核酸断片の挿入、および大腸菌(E.coli)のような実験微生物株内へのその生じたクローン化プラスミドの形質転換を意味する。asRNAコード化核酸断片は、例えば、F.M.Ausubelら,Short protocols in molecular biology,2nd ed.(John Wiley & Sons,1992)に記載の標準的な方法を用いてプラスミド内にクローニングされうる。asRNAコード化核酸を含有するプラスミドの形質転換は、例えば、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム媒介トランスフェクション、エレクトロポレーションまたはバクテリオファージ構築物による感染により達成されうる。該プラスミドは、抗生物質での連続的選択により該プラスミドが細胞内に維持されるのを可能にする抗生物質耐性遺伝子(例えば、クロラムフェニコール、アンピシリンまたはカルベニシリン耐性遺伝子)をも含有しうる。asRNAコード化核酸と抗生物質耐性遺伝子とを含む適当な発現プラスミドには、pEPSA5が含まれる。また、脂肪酸シンターゼ、アミノアシル−tRNAシンテターゼ、タンパク質セクレターゼ、ペプチジルトランスフェラーゼ、トランスグリコシラーゼ、トランスペプチダーゼまたはリボソーム関連タンパク質を発現する遺伝子の発現を妨げうるasRNAをコードするキシロース誘導性遺伝子を含有するプラスミドも適している。
本発明における使用に適した細菌には、Forsythら,Mol.Microbiol.2002,43:1387−1400に記載のアンチセンスRNAプラスミド(該ベクターは、pT5Xキシロース誘導性プロモーターを含有するpEPSA5である)を含有する細菌が含まれる。該ベクターは、pC194由来プラスミドpRN5548(Novick,Methods in Enzymology 1991,204:587−636)、ならびに低コピー数p15a起点(Diederichら,Biotechniques 1994,16:916−923)を含有するNotIカセットで置換されるColE1複製起点を除外したプラスミドpLEX5BA(Krauseら,J.Mol.Biol.1997,274:365−380)のマルチクローニング部位、rmB T1T2ターミネーターおよびアンピシリン耐性遺伝子から構築される。マルチクローニング部位およびターミネーターの上流には、スタヒロコッカス・キシロシス(Staphylococcus xylosis)XylRリプレッサータンパク質のオペレーター配列(Schnappingerら,Microbiol Lett.1995,129:121−127)(pEPS5の地図に示されているとおり、その遺伝子も含まれる)の環境下でグラム陽性最適化バクテリオファージT5PN25プロモーター(LeGrice,Methods Enzymol.1990,185:201−214)が存在する。
本発明の方法においては、Clontechのアンヒドロテトラサイクリン誘導性プラスミドまたはInvitrogenのアラビノース誘導性プラスミドのような他の誘導性プラスミドを使用することが可能である。
本発明における使用に適したアンチセンスRNAをコードする核酸断片は、当業者に公知の方法を用いて細胞のゲノム内に組込むことが可能である。例えば、asRNAコード化核酸の組込みは、Nash H.A.in Escherichia coli and Salmonella,Cellular and Molecular Biology,F.C.Neidhardt編,(1996)pp2363−2376に記載の、細菌ゲノム内への相同組換えにより達成されうる。asRNAコード化核酸は、標的選択性化合物またはキシロースによる適当な選択下でasRNAコード化核酸の効率的な切り出しを可能にする隣接する逆方向反復DNA(それぞれ〜200bp)と共にゲノム内に配置される(Craig,N.L.Nash H.A.in Escherichia coli and Salmonella,Cellular and Molecular Biology,F.C.Neidhardt編,(1996)pp2339−2362)。細菌ゲノム内でのasRNAコード化DNAの安定維持は、asRNAコード化核酸に隣接した薬物耐性遺伝子(すなわち、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)の存在により可能となる。クロラムフェニコール選択の非存在下およびasRNA遺伝子産物を抑制する化合物の存在下で、asRNAコード化核酸のゲノムコピーはゲノムから欠失して復帰コロニーの増殖を引き起こす。
以下の実施例は、本発明およびその実施を例示するためのものに過ぎない。これらの実施例は本発明の範囲または精神を限定するものと解釈されるべきではない。
スタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)におけるFabF作用性物質の同定
A部:アッセイプロトコール
キシロース誘導性fabFアンチセンスRNAを発現するプラスミドであるS1−1941(WO 00/44906およびForsythら,Mole.Microbiol.2002,43:1387−1400記載されている)を含有するスタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)を、34mg/mLのクロラムフェニコールで補足されたLBブロス培地に接種し、振とう(225rpm)しながら37℃で一晩増殖させる。ついで該培養を、最終光学密度(λ=600nm)が0.3となるようLB培地内で希釈する。ついで希釈細胞(750μL)を、キシロース(23.6mM)およびグルコース(0.19g/100mL)で補足された溶融LB寒天培地(30mL)に加え、48℃で平衡化する。該溶融混合物を手短に混合し、ついで無菌使い捨てポリスチレン86×128mmディッシュ(NUNC Cat.No.242811)上に注ぎ、ついでTSP(=転移性固相スクリーニング系(transferable solid phase screening system))成型トレイ(NUNC Cat.No.445497)を成型ウェルの上面に配置する。該ディッシュを約15分間室温に冷却し、ついで、サンプルの分注が可能となるまで4℃でせいぜい2日間保存する。ついで1以上の試験物質(500μM)のサンプル(10μL)および対照のサンプル(それぞれ100% DMSOに溶解されている)をウェルに分注し、該プレートを37℃で一晩インキュベートする。ついでそのインキュベートしたプレートを復帰コロニーの出現に関して視覚的に検査して、該試験物質がfabFタンパク質において作用するかどうかを判定する。
A部:アッセイプロトコール
キシロース誘導性fabFアンチセンスRNAを発現するプラスミドであるS1−1941(WO 00/44906およびForsythら,Mole.Microbiol.2002,43:1387−1400記載されている)を含有するスタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)を、34mg/mLのクロラムフェニコールで補足されたLBブロス培地に接種し、振とう(225rpm)しながら37℃で一晩増殖させる。ついで該培養を、最終光学密度(λ=600nm)が0.3となるようLB培地内で希釈する。ついで希釈細胞(750μL)を、キシロース(23.6mM)およびグルコース(0.19g/100mL)で補足された溶融LB寒天培地(30mL)に加え、48℃で平衡化する。該溶融混合物を手短に混合し、ついで無菌使い捨てポリスチレン86×128mmディッシュ(NUNC Cat.No.242811)上に注ぎ、ついでTSP(=転移性固相スクリーニング系(transferable solid phase screening system))成型トレイ(NUNC Cat.No.445497)を成型ウェルの上面に配置する。該ディッシュを約15分間室温に冷却し、ついで、サンプルの分注が可能となるまで4℃でせいぜい2日間保存する。ついで1以上の試験物質(500μM)のサンプル(10μL)および対照のサンプル(それぞれ100% DMSOに溶解されている)をウェルに分注し、該プレートを37℃で一晩インキュベートする。ついでそのインキュベートしたプレートを復帰コロニーの出現に関して視覚的に検査して、該試験物質がfabFタンパク質において作用するかどうかを判定する。
1つの対照は、fabF遺伝子を標的化する抗生物質であり、もう1つの対照は、fabF遺伝子を標的化しない抗生物質である。該fabF標的化対照は阻止域内またはその周囲に復帰コロニーを与え、該非fabF標的化対照は透明な阻止域(すなわち、復帰コロニーを欠いている)を与える。該試験物質の阻止域を該対照のものと比較してfabF作用性物質をスクリーニングする。該プレートが適当な対照阻止域を示さない(すなわち、キシロースの用量が高すぎるため及び/又はインキュベーション時間が長すぎるため、該プレートが該アッセイプレート全体にわたり雑多なコロニーを示す)場合には、該プレートはスクリーニングに適当ではなく、廃棄する。
B部:アッセイ結果
A部に記載のアッセイプロトコールを用いて、チオテトラマイシンがfabF作用性抗細菌剤であるかどうかを試験した。100% DMSOに溶解したチオテトラマイシン(1mg/mL)のサンプル10μLを該プレートのウェルの1つに注いだ。また、100% DMSO中のセルレニン(20μg/mL)のサンプル10μLおよび水中のカナマイシン(100μg/mL)のサンプル10μLを、それぞれ、対照として2つのウェルに注いだ。A部に記載のとおりのインキュベーションの後、該プレートを細菌増殖域に関して視覚的に検査した。図1に示すとおり、チオテトラマイシンは、増殖阻止域内およびその周囲に小さな白色の増殖フォーカスとして出現する復帰コロニーの増殖を引き起こした。図2に示すとおり、fabF遺伝子を標的化する抗生物質であるセルレニンも、増殖阻止域内およびその周辺に復帰コロニーの増殖を引き起こした。一方、図3に示すとおり、fabF遺伝子を標的化しない抗生物質であるカナマイシンは透明の非増殖域を示し、復帰コロニーの出現を示さなかった。結果は、試験物質チオテトラマイシンが、fabFタンパク質を選択的に標的化する抗細菌剤であることを示している。
A部に記載のアッセイプロトコールを用いて、チオテトラマイシンがfabF作用性抗細菌剤であるかどうかを試験した。100% DMSOに溶解したチオテトラマイシン(1mg/mL)のサンプル10μLを該プレートのウェルの1つに注いだ。また、100% DMSO中のセルレニン(20μg/mL)のサンプル10μLおよび水中のカナマイシン(100μg/mL)のサンプル10μLを、それぞれ、対照として2つのウェルに注いだ。A部に記載のとおりのインキュベーションの後、該プレートを細菌増殖域に関して視覚的に検査した。図1に示すとおり、チオテトラマイシンは、増殖阻止域内およびその周囲に小さな白色の増殖フォーカスとして出現する復帰コロニーの増殖を引き起こした。図2に示すとおり、fabF遺伝子を標的化する抗生物質であるセルレニンも、増殖阻止域内およびその周辺に復帰コロニーの増殖を引き起こした。一方、図3に示すとおり、fabF遺伝子を標的化しない抗生物質であるカナマイシンは透明の非増殖域を示し、復帰コロニーの出現を示さなかった。結果は、試験物質チオテトラマイシンが、fabFタンパク質を選択的に標的化する抗細菌剤であることを示している。
天然物からのスタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)におけるFabF作用性物質の同定
物質を産生する微生物を以下のとおりに調製した。未同定微生物を含有する土壌サンプルを無菌水に懸濁させ、該懸濁液を、ISP寒天培地(Difco/Becton Dickinson Inc.)を含有する培養ディッシュの表面に適用した。表面乾燥後、可視増殖が得られるまで該ディッシュを27℃で2〜7日間インキュベートした。微生物を含有する寒天のストリップを切断し、該ディッシュから取り出して、後記のとおりに調製したアッセイプレート上に適用した。あるいは、これらの微生物の有機溶媒(アセトン)抽出物を調製し、該溶媒を粗抽出物から蒸発させ、100% DMSOに再懸濁させた。
物質を産生する微生物を以下のとおりに調製した。未同定微生物を含有する土壌サンプルを無菌水に懸濁させ、該懸濁液を、ISP寒天培地(Difco/Becton Dickinson Inc.)を含有する培養ディッシュの表面に適用した。表面乾燥後、可視増殖が得られるまで該ディッシュを27℃で2〜7日間インキュベートした。微生物を含有する寒天のストリップを切断し、該ディッシュから取り出して、後記のとおりに調製したアッセイプレート上に適用した。あるいは、これらの微生物の有機溶媒(アセトン)抽出物を調製し、該溶媒を粗抽出物から蒸発させ、100% DMSOに再懸濁させた。
寒天内でウェルを成型処理しないこと以外は実施例1に記載のとおりに、S1−1941を含有するスタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)細胞を培養し、アッセイプレートを調製した。スタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)含有寒天プレートの固化の後、増殖微生物を含有する新鮮な寒天ストリップを該アッセイプレートの表面上にスポットし、ついで該プレートを30℃で24時間インキュベートした。粗抽出物を試験する場合には、該アッセイ法は実施例1に記載のとおりである(すなわち、サンプルを成型前ウェルに分注した)。
図4は、代表的なアッセイプレートのインキュベート後の表面を示す。図4Aは幾つかの帯状域(ストリップ)を示し、ここで、中央のストリップは、矢印で示されている透明な非増殖域を有する。これは、中央ストリップの微生物の少なくとも1つが、fabFを標的化しない抗細菌産物を産生することを示している。図4Bは、単一のストリップの拡大図であり、これは、非増殖域(矢印で示されている)内および/またはその周囲に小さな白色の増殖フォーカスとして出現している復帰コロニー以外は該非増殖域により包囲されている。したがって、4Bのストリップにおける微生物の少なくとも1つはfabF特異的抗細菌剤を産生する。
図5は、スタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)におけるfabF作用性物質を同定するための明らかでない前記粗抽出物を含有する成型前ウェルの周囲の増殖阻止域を示す。該区域は、視覚的に認められない細菌増殖の中心域の周囲に幾つかの視覚的に認められうる復帰細菌コロニーを有する。この場合、該透明域は、fabFを選択的に抑制しない増殖インヒビターを含有し、復帰コロニーを含有する周辺域は、fabFを選択的に抑制する増殖インヒビターを含有する。
グリーン蛍光タンパク質を使用する液体形式でのスタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)におけるFabF作用性物質の同定
以下の方法により液体培養内でfabFアンチセンス復帰体を同定するためにグリーン蛍光タンパク質(GFP)レポーター遺伝子を使用した。アンチセンスfabF DNAをコードするプラスミドを含有するスタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)を使用して、fabFアンチセンス含有プラスミドDNAが欠失または再編成されるまでGFP遺伝子が転写的にサイレントである誘導性GFPレポーター系を開発した。fabFアンチセンスベクター(Forsythら,2002)と、該fabFアンチセンスDNAの下流に挿入されたテトラサイクリンリプレッサー遺伝子およびそのプロモーター(Geissendorferら,Appl.Microbiol.Biotechnol 1990,33:657−663)とからなるプラスミドpM310を構築した。EcoRIおよびAatII制限部位を介してスタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)ベクターpUB110(ATCC 37015)に連結された大腸菌(E.coli)ベクターpUC19(Gibco BRL)よりなる第2のプラスミドpM302を構築した。pUC19マルチクローニング部位において、GFP遺伝子をBamHIおよびSalI制限部位内に挿入し、テトラサイクリンオペレーター含有プロモーター(Geissendorferら,1990)をEcoRIおよびBamHI部位内にクローニングした。プラスミドpM301およびpM302の両方を含有しクロラムフェニコールおよびカナマイシンに耐性であるスタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)株SafabF/GFPを構築した。SafabF/GFPは、セルレニンに対する感受性の増強をもたらすキシロース誘導に感受性であった。セルレニンの存在下では、該アンチセンスベクターを欠失しており、この欠失と共にテトラサイクリンリプレッサー遺伝子を喪失した耐性復帰体が選択されることになる。テトラサイクリンリプレッサーはGFP転写を抑制するため、テトラサイクリンリプレッサーの喪失はGFPの転写および緑色細胞の産生を引き起こす。復帰体は、細胞数に対する蛍光測定値の関数として測定されうる。
以下の方法により液体培養内でfabFアンチセンス復帰体を同定するためにグリーン蛍光タンパク質(GFP)レポーター遺伝子を使用した。アンチセンスfabF DNAをコードするプラスミドを含有するスタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)を使用して、fabFアンチセンス含有プラスミドDNAが欠失または再編成されるまでGFP遺伝子が転写的にサイレントである誘導性GFPレポーター系を開発した。fabFアンチセンスベクター(Forsythら,2002)と、該fabFアンチセンスDNAの下流に挿入されたテトラサイクリンリプレッサー遺伝子およびそのプロモーター(Geissendorferら,Appl.Microbiol.Biotechnol 1990,33:657−663)とからなるプラスミドpM310を構築した。EcoRIおよびAatII制限部位を介してスタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)ベクターpUB110(ATCC 37015)に連結された大腸菌(E.coli)ベクターpUC19(Gibco BRL)よりなる第2のプラスミドpM302を構築した。pUC19マルチクローニング部位において、GFP遺伝子をBamHIおよびSalI制限部位内に挿入し、テトラサイクリンオペレーター含有プロモーター(Geissendorferら,1990)をEcoRIおよびBamHI部位内にクローニングした。プラスミドpM301およびpM302の両方を含有しクロラムフェニコールおよびカナマイシンに耐性であるスタヒロコッカス・アウレウス(S.aureus)株SafabF/GFPを構築した。SafabF/GFPは、セルレニンに対する感受性の増強をもたらすキシロース誘導に感受性であった。セルレニンの存在下では、該アンチセンスベクターを欠失しており、この欠失と共にテトラサイクリンリプレッサー遺伝子を喪失した耐性復帰体が選択されることになる。テトラサイクリンリプレッサーはGFP転写を抑制するため、テトラサイクリンリプレッサーの喪失はGFPの転写および緑色細胞の産生を引き起こす。復帰体は、細胞数に対する蛍光測定値の関数として測定されうる。
fabF復帰体を定量的に測定するために、種々の濃度の試験化合物セルレニン、チオストレプトンおよびアンピシリンと共に種々の濃度のキシロースを試験する液体アッセイを開発した。SafabF/GFPの20時間の培養をLB(Becton Dickinson,#244620)、カナマイシン(100μg/mL)およびクロラムフェニコール(34μg/mL)中で成長させ、1cmキュベット中で0.03のOD A600に調節した。96ウェルプレートを使用して、37℃で16時間のインキュベーション後、該培養の成長および最終吸光度を測定した。100μlの2×混合物(200μg/ml カナマイシン、0.4% グルコース、0.4% DMSO、2×mM キシロースおよび2×濃度の試験化合物)を含有する各ウェル内に、100μlの該調節培養を加えて200μlの最終容量とした。最終吸光度を590nmで測定し(A590)、GFPの蛍光を、Tecan Spectrafluor Plusを使用して485nmの波長での励起および535nmの発光波長(E535)により測定した。
fabF選択的インヒビターであるセルレニン存在下での特異的GFP応答を検出するために、各薬物処理および各キシロース処理ごとに相対蛍光指数(RFI)を求めた。RFIは、各薬物試験群内のキシロース非存在下での対照細胞に関して求められた対応比に対して正規化されたE535/A590比と定義される。例えば、15μg/ml セルレニン処理では、0、7および14mM キシロースで処理された細胞に関してE535/A590比を求め、それぞれに関する比を、キシロース非存在下での処理細胞からのE535/A590比で割り算した。結果を図6Aに示す。この場合、SafabF/GFP細胞を、fabFインヒビターであるセルレニンで処理した。2つの非特異的抗生物質アンピシリンおよびチオストレプトンでの該細胞の処理に関する同様の結果を、それぞれ図6Bおよび6Cに示す。キシロース非存在下での処理細胞において16時間のインキュベーション時間中に約50%の増殖抑制をもたらす薬物濃度を選択した。明らかに、セルレニンの各濃度について、キシロース濃度の増加と共にRFIが増加し、14mM キシロースおよび15μg/ml セルレニンにおいて9倍の最大変化が認められた。非fabF抗生物質チオストレプトンおよびアンピシリンではRFIの増加は認められなかった。セルレニン処理細胞のRFIにおける選択的増加は、液体培養内で選択的fabF薬物を検出するためにGFP測定値が使用可能であることを示している。
前記の説明は本発明の原理を教示しており、実施例は例示目的で記載されており、本発明の実施は、特許請求の範囲の範囲内に含まれる通常の変更、適合化および/または修飾のすべてを含む。
本出願の全体にわたり、本発明に関連した最新技術をより完全に説明するために種々の刊行物が言及されている。これらの参考文献の開示の全体を本明細書中に参考として援用する。
Claims (31)
- ある物質が、細胞の増殖もしくは生残に必要な遺伝子産物の機能を選択的に抑制することにより作用する細胞増殖インヒビターであるか又はそのような細胞増殖インヒビターを含有するかどうかを試験するための方法であって、
(A)該遺伝子産物の発現を妨げるRNA断片を発現しうる組換え細胞を提供し、
(B)(i)該RNA断片の発現、および該遺伝子産物の合成のダウンレギュレーション、ならびに(ii)該RNA断片を発現する能力の該細胞による喪失を引き起こす条件下で試験物質の存在下に、栄養培地内で該組換え細胞を増殖させ、
(C)生じた細胞増殖を分析することを含んでなり、ここで、
(1)該細胞の全て又は実質的に全ての死により細胞増殖が実質的に無い場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的には抑制しない増殖インヒビターであるか又はそのような増殖インヒビターを含有し、
(2)該細胞の全て又は実質的に全ての生残および増殖により細胞増殖の抑制が実質的に無い場合には、該試験物質は増殖インヒビターではないか又は増殖インヒビターを含有せず、あるいは
(3)該RNA断片を発現する能力を有さない復帰細胞の生残および増殖と共に、細胞の相当な部分の死により増殖抑制が有る場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的に抑制する増殖インヒビターであるか又はそのような増殖インヒビターを含有する、方法。 - 工程Aにおいて該細胞により発現されるRNA断片がアンチセンスRNAを含む、請求項1記載の方法。
- 該アンチセンスRNAが、該組換え細胞内に含有されるプラスミドにコードされる、請求項2記載の方法。
- 該アンチセンスRNAが該組換え細胞のゲノム内のDNAにコードされる、請求項2記載の方法。
- 該組換え細胞が、細菌株および真菌株よりなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
- 該細胞が細菌の株であり、該物質が、該細菌の増殖もしくは生残に必要な遺伝子産物の機能を選択的に抑制することにより作用する抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有するかどうかを判定するために、該物質を試験する、請求項5記載の方法。
- 工程Aにおいて該細菌により発現されうるRNA断片が、該細菌内に含有されるプラスミドにコードされるアンチセンスRNAを含む、請求項6記載の方法。
- 工程Bにおいて該組換え細胞を増殖させる栄養培地が、該試験物質を接種した半固形培地であり、工程Cが、生じた細胞増殖を分析することを含み、ここで、
(1)該半固形培地が、該細胞の全て又は実質的に全ての死により、実質的に非増殖を示す透明域を示す場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的には抑制しない増殖インヒビターであるか又はそのような増殖インヒビターを含有し、
(2)該半固形培地が、該細胞の全て又は実質的に全ての生残および増殖により、非増殖域を示さない場合には、該試験物質は増殖インヒビターではないか又は増殖インヒビターを含有せず、あるいは
(3)該半固形培地が非増殖域を示すが、例外として該区域内に、該RNA断片を発現する能力を有さない復帰細胞の生残および増殖による1以上の小さな細胞コロニーを示す場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的に抑制する増殖インヒビターであるか又はそのような増殖インヒビターを含有する、請求項1記載の方法。 - 該組換え細胞が細菌の株であり、該試験物質が、該細菌の増殖もしくは生残に必要な遺伝子産物の機能を選択的に抑制することにより作用する抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有するかどうかを判定するために、該試験物質を分析する、請求項8記載の方法。
- 該半固形培地が寒天プレートまたはアガロースプレートである、請求項8記載の方法。
- 工程Aにおいて該細菌により発現されうるRNA断片が、第1プラスミドにコードされるアンチセンスRNAを含み、該第1プラスミドが、該細胞のゲノム内に組込まれた又は第2プラスミド内に含有されるレポーター遺伝子を調節するリプレッサー遺伝子をもコードし、
工程Bにおける栄養培地が液体培地であり、
工程Bにおける該RNA断片を発現する能力の該細胞による喪失が、該レポーター遺伝子を該リプレッサーが調節する能力の喪失を伴い、
工程Cにおける細胞増殖の分析において、
(1)該細胞の全て又は実質的に全ての死により細胞増殖が実質的に無い場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的には抑制しない増殖インヒビターであるか又はそのような増殖インヒビターを含有し、
(2)該細胞(該細胞は該レポーター遺伝子の発現を示さない)の全て又は実質的に全ての生残および増殖により細胞増殖の抑制が実質的に無い場合には、該試験物質は増殖インヒビターではないか又は増殖インヒビターを含有せず、あるいは
(3)該RNA断片を発現する能力を有さないが該レポーター遺伝子の発現を示す復帰細胞の生残および増殖と共に、液体培地内の細胞の相当な部分の死により増殖抑制が有る場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的に抑制する増殖インヒビターであるか又はそのような増殖インヒビターを含有する、請求項1記載の方法。 - 該レポーター遺伝子が第2プラスミドにコードされ、蛍光タンパク質をコードし、復帰細胞の生残および増殖が該蛍光タンパク質からの蛍光の検出により示される、請求項11記載の方法。
- 該細胞が細菌の株であり、該アンチセンスRNAが、第1プラスミドにコードされるキシロース誘導性アンチセンスRNAであり、fabF、pheT、murA、secA、dnaC、ileS、ftsZ、secI、polC、dnaE、gyrE、gyrA、murB、rpl、parEおよびparCよりよりなる群から選ばれる遺伝子の発現を妨げうる、請求項12記載の方法。
- 工程Cにおける細胞増殖の分析が、細胞数に対する蛍光のレベルを測定することを含み、吸光度を測定することにより細胞数を測定する、請求項12記載の方法。
- ある物質が、細菌の株の増殖もしくは生残に必要な遺伝子産物の機能を選択的に抑制することにより作用する抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有するかどうかを試験するための方法であって、
(A)該遺伝子産物の発現を妨げるRNA断片を発現しうる細菌株の組換え細胞を提供し、
(B)(i)該RNA断片の発現、および該遺伝子産物の合成のダウンレギュレーション、ならびに(ii)該RNA断片を発現する能力の該細胞による喪失を引き起こす条件下で試験物質の存在下に、栄養培地内で該組換え細胞を増殖させ、
(C)生じた細胞増殖を分析することを含んでなり、ここで、
(1)該細胞の全て又は実質的に全ての死により細胞増殖が実質的に無い場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的には抑制しない抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有し、
(2)該細胞の全て又は実質的に全ての生残および増殖により細胞増殖の抑制が実質的に無い場合には、該試験物質は抗細菌剤ではないか又は抗細菌剤を含有せず、あるいは
(3)該RNA断片を発現する能力を有さない復帰細胞の生残および増殖と共に、細胞の相当な部分の死により増殖抑制が有る場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的に抑制する抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有する、方法。 - 工程Aにおいて該細胞により発現されるRNA断片がアンチセンスRNAを含む、請求項15記載の方法。
- 該アンチセンスRNAが、該細胞内に含有されるプラスミドにコードされる、請求項16記載の方法。
- 該アンチセンスRNAが該細胞のゲノム内のDNAにコードされる、請求項16記載の方法。
- 該細菌株が、スタヒロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エシェリキア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、ヘモフィルス(Haemophilus)、エンテロバクター(Enterobacter)、アシネトバクター(Acinetobacter)、バシラス(Bacillus)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、ブルクホルデリア(Burkholderia)、サルモネラ(Salmonella)およびシュードモナス(Pseudomonas)よりなる群から選ばれる、請求項15記載の方法。
- ストレプトコッカス・ニゥモニエ(Streptococcus pneumonia)、スタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)、エンテロバクター・クロアケ(Enterobacter cloacae)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター・ボゥマニイィ(Acinetobacter baumanii)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)およびブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)よりなる群から選ばれる、請求項19記載の方法。
- 該細菌株が、スタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)の生残または増殖に必要な遺伝子に関するキシロース誘導性アンチセンスRNAを発現するプラスミドを含有するスタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)である、請求項20記載の方法。
- 該プラスミドにより発現されるキシロース誘導性アンチセンスRNAが、fabF、pheT、murA、secA、dnaC、ileS、ftsZ、secI、polC、dnaE、gyrE、gyrA、murB、rpl、parEおよびparCよりなる群から選ばれる遺伝子に関するものである、請求項21記載の方法。
- 該RNA断片の標的遺伝子が、脂肪酸シンターゼ、アミノアシル−tRNAシンテターゼ、タンパク質セクレターゼ、ペプチジルトランスフェラーゼ、トランスグリコシラーゼ、トランスペプチダーゼまたはリボソーム関連タンパク質を発現するようコードされている、請求項15記載の方法。
- 工程Bにおいて該組換え細胞を増殖させる栄養培地が、該試験物質を接種した半固形培地であり、工程Cが、生じた細胞増殖を分析することを含み、ここで、
(1)該半固形培地が、該細胞の全て又は実質的に全ての死により、実質的に非増殖を示す透明域を示す場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的には抑制しない抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有し、
(2)該半固形培地が、該細胞の全て又は実質的に全ての生残および増殖により、非増殖域を示さない場合には、該試験物質は抗細菌剤ではないか又は抗細菌剤を含有せず、あるいは
(3)該半固形培地が非増殖域を示すが、例外として該区域内に、該RNA断片を発現する能力を有さない復帰細胞の生残および増殖による1以上の小さな細胞コロニーを示す場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的に抑制する抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有する、請求項15記載の方法。 - 該半固形培地が寒天プレートまたはアガロースプレートである、請求項24記載の方法。
- ある物質が、細菌の株の増殖もしくは生残に必要な遺伝子産物の機能を選択的に抑制することにより作用する抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有するかどうかを試験するための方法であって、
(A)該遺伝子産物の発現を妨げるアンチセンスRNAを発現しうるプラスミドを含有する細菌株の組換え細胞を提供し、
(B)(i)該アンチセンスRNAの発現、および該遺伝子産物の合成のダウンレギュレーション、ならびに(ii)該アンチセンスRNAを発現する能力の該細胞による喪失を引き起こす条件下で試験物質の存在下に、寒天プレート上で該組換え細胞を増殖させ、
(C)生じた細胞増殖を分析することを含んでなり、ここで、
(1)該寒天プレートが、該細胞の全て又は実質的に全ての死により、実質的に非増殖を示す透明域を示す場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的には抑制しない抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有し、
(2)該寒天プレートが、該細胞の全て又は実質的に全ての生残および増殖により、非増殖域を示さない場合には、該試験物質は抗細菌剤ではないか又は抗細菌剤を含有せず、あるいは
(3)該寒天プレートが非増殖域を示すが、例外として該区域内に、該RNA断片を発現する能力を有さない復帰細胞の生残および増殖による1以上の小さな細胞コロニーを示す場合には、該試験物質は、該標的遺伝子産物を選択的に抑制する抗細菌剤であるか又はそのような抗細菌剤を含有する、方法。 - 該プラスミドが、アンチセンスRNAを発現するよう誘導され抗生物質に対する耐性をコードするプラスミドである、請求項26記載の方法。
- 工程Bにおいて、(i)該アンチセンスRNAの発現、および該遺伝子産物の合成のダウンレギュレーションが、有効量のアンチセンスRNA誘導物質の存在下で該細胞を増殖させることにより得られ、(ii)該アンチセンスRNAを発現する能力の該細胞による喪失が、該プラスミドが耐性である抗生物質の非存在下で該細胞を増殖させることにより得られる、請求項27記載の方法。
- 該アンチセンスRNAが、脂肪酸シンターゼ、アミノアシル−tRNAシンテターゼ、タンパク質セクレターゼ、ペプチジルトランスフェラーゼ、トランスグリコシラーゼ、トランスペプチダーゼまたはリボソーム関連タンパク質を発現する遺伝子の発現を妨げうるキシロース誘導性アンチセンスRNAである、請求項28記載の方法。
- 該アンチセンスRNAが、fabF、pheT、murA、secA、dnaC、ileS、ftsZ、secI、polC、dnaE、gyrE、gyrA、murB、rpl、parEおよびparCよりなる群から選ばれる遺伝子の発現を妨げうるキシロース誘導性アンチセンスRNAである、請求項29記載の方法。
- 該細菌がスタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)である、請求項30記載の方法。
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