免疫遺伝子複合体
本発明は、免疫系の機能と活性に関係する一群の遺伝子に関する。これらの遺伝子は、染色体位置1q22に離散したクラスターとして組織化されており(“免疫遺伝子複合体”)、DNA数百kb(例えばDNA約700kb)の範囲にわたって広がっている。図1と図2を参照のこと。動原体に最も近い領域には、胸腺で優先的に発現する遺伝子群が含まれているのに対し、遠位領域には、骨髄やそれ以外の造血細胞で優先的に発現する遺伝子群が含まれている。
本発明は、TMD0024(XM 060945)、TMD1779(XM 060946)、TMD0884(XM 060947)、TMD0025(XM 060948)、TMD1780(XM 089422)、TMD1781(XM 089421)、TMD0304(XM 060956)、TMD0888(XM 060957)、TMD0890(XM 060959)という遺伝子を含む1q22免疫遺伝子複合体、またはその断片でこれら遺伝子のうちの少なくとも2個を含むものを中心に構成された組成物に関する。あとで詳しく説明するが、この組成物は、染色体上でゲノムDNAを規定するSTSマーカーに挟まれた領域(例えばSHGC-81033とSHGC-145403に挟まれた領域)、または上記遺伝子が少なくとも2個含まれる染色体の断片を含むこと、あるいはそのような領域または断片を中心に構成することができる。
抗原の提示に関係するタンパク質をコードしていることが以前に明らかにされた遺伝子クラスターであるCD1ファミリー(SugitaとBrenner、Seminars in Immunology、第12巻、511-516ページ、2000年)は、免疫遺伝子複合体の近位境界部に位置している。CD1a、b、c遺伝子は、プロ抗原提示細胞(その中には、樹状細胞、B細胞のいくつかのサブセットが含まれる)に限定されている(SugitaとBrenner、上記文献)。CD1dは、造血細胞(例えば小腸細胞)に加え、他のタイプの細胞表面にも存在している(SugitaとBrenner、上記文献)。
CD1ファミリーの隣りには、嗅覚Gタンパク質結合受容体(“GPCR”)ファミリーと相同な膜貫通タンパク質をコードする遺伝子クラスターがある。この遺伝子クラスターは、XM 060945(TMD0024)、XM 060346(TMD1779)、XM 060947(TMD0884)、XM 060948(TMD0025)を含んでおり、胸腺組織(例えば胸腺細胞)において優勢に発現する。XM 089421(TMD1781)も胸腺で発現するが、リンパ球(“PBL”)のほうにはるかに多く存在している。染色体のこの領域は、STSマーカー(例えばSHGC-81033と、D1S3249、G15944、GDB:191077、GDB:196442、RH68459、RH102597、RH69635、RH65132のいずれかに挟まれた位置)、またはその断片(例えば2個以上の遺伝子を含む断片)によって規定される。
ヒト赤血球αスペクトリン(SPTA1)の遺伝子は、GPCR胸腺限定ファミリーの遠位にある。この遺伝子は骨髄細胞において発現し、赤血球膜に局在している(Wilmotte他、Blood、第90巻(10)、4188-4196ページ、1997年)。その隣りには、嗅覚GPCRファミリーに似たタンパク質をコードしている別の遺伝子クラスターがある。この遺伝子クラスターは、XM 060956(TMD0304)、XM 060957(TMD0888)、XM 060959(TMD0890)を含んでおり、骨髄において優勢に発現するが、他の部位における発現も同様に観察されている。表1を参照のこと。染色体のこの領域は、STSマーカー(例えばGDB:181583またはRH118729と、D1S2577またはSHGC-145403に挟まれた位置)によって規定される。
骨髄性細胞核分化抗原(“MNDA”)に関する遺伝子が隣りにある。MNDAも骨髄細胞において発現し、特に正常な骨髄性単球細胞と腫瘍性骨髄性単球細胞においてと、正常なBリンパ球と腫瘍性Bリンパ球のサブセットにおいて発現する(Miranda他、Hum. Pathol.、第30巻(9)、1040-1049ページ、1999年)。
“免疫系”という用語は、免疫応答を発生させて実行するのに関係するあらゆるプロセスと細胞を意味する。免疫系細胞に含まれるものとしては、幹細胞、多能性幹細胞、骨髄性前駆細胞、リンパ様前駆細胞、リンパ球、Bリンパ球、Tリンパ球(ナイーブT細胞、エフェクターT細胞、記憶T細胞、細胞傷害性T細胞など)、胸腺細胞、ナチュラルキラー細胞、赤血球、巨核球、好塩基球、好酸球、顆粒球-単球、アクセサリー細胞(例えば抗原に対するリンパ球応答の開始に関与する細胞)、抗原提示細胞(“APC”)、単核食細胞、樹状細胞、マクロファージ、肺胞マクロファージなどと、そのあらゆる前躯体、前駆細胞、成熟段階の細胞が挙げられる。
表1には、本発明による遺伝子とその発現パターンをまとめてある。遺伝子とその遺伝子がコードするポリペプチドは、その遺伝子が発現する組織や細胞に関係するあらゆる症状、疾患、異常、応用に関する診断、予後予測、治療、研究のためのツールとして用いることができる。
発現が所定の組織において“優勢である”と記述するとき、この表現は、この組織における遺伝子のmRNAのレベルが、測定を行なった他の組織と比べて最高であることを意味する。発現を観察する場所で“選択的”に発現させることもできる。“選択的に発現した”という表現は、所定のヌクレオチド配列を含む核酸分子が、転写産物になったときにその転写産物を産生した組織または細胞タイプに特徴的であることを意味する。これは、転写産物がその組織だけで発現し、他のタイプの組織では発現していないこと、あるいは転写産物が他の組織と比べてその組織で優先的に、差をもって、より豊富に(例えば少なくとも5倍、10倍、あるいはそれ以上に)発現していることを意味する。
本発明による嗅覚GPCRファミリーのメンバーは、その選択性と細胞表面への提示能力を考えると、そのメンバーが内部で発現することになる細胞に関する組織学的研究や、診断、治療といった用途における有用な標的である。抗体とそれ以外のタンパク質結合パートナー(例えばリガンド、アプタマー、小さなペプチドなど)を用い、あらゆる目的で(例えば、イメージング、治療、診断、薬剤のデリバリー、遺伝子治療などを行なうために)薬剤を選択的に組織に到達させることができる。c-erbB-2抗体を乳がんに対して用いるのと同様にして、例えば結合パートナー(例えば抗体)を用いてがんを治療することができる。結合パートナーは、骨髄や胸腺組織などを同定するための生検において転移細胞の検出に用いることもできる。遺伝子とその遺伝子によってコードされているポリペプチドを組織工学で使用し、分化プロセスに現われる組織を同定すること、組織に到達させること、(例えば出発材料となる幹細胞の集団から)組織の増殖状態を変化させることなどもできる。有用な抗体とそれ以外の結合パートナーとしては、表2に示したように、ポリペプチドの細胞外露出部分に対して特異的なものが挙げられる。この明細書に記載したどの方法も、生体内、試験管内、生体外(例えば骨髄細胞や末梢血リンパ球を生体外で処理した後、体内に戻すことができる)で実施することができる。
この明細書に記載した選択的に発現したポリヌクレオチドの発現パターンは、組織が示す独自のパターンであるという意味で“フィンガープリント”と記述することができる。フィンガープリントと同様、発現パターンを独自の識別子として用いて組織サンプルの状態を特徴づけることができる。この明細書に記載した発現配列のリストは、そのような組織発現プロファイルの一例である。このリストは、サンプルを比較したりサンプルの特徴を明らかにしたりする際の基準として用いることができる。組織のフィンガープリントにはいろいろな用途がある。例えば、未知の組織を分類したり、転移細胞の出身地を明らかにしたり、組織の生理学的状態を評価したり、組織に対する特定の治療法の効果を調べたり、興味の対象である組織に対する化合物の毒性を評価したりするのに用いることができる。
例えばこの明細書に記載した組織選択的ポリヌクレオチドは、正常組織が発現する遺伝子の配置を表わす。毒素が組織に与える影響を明らかにするには、毒素に曝露する前(“対照サンプル”)と、毒素への曝露後の1つ以上の時点(“実験サンプル”)に組織サンプルを採取するとよい。複数の組織選択的プローブからなるアレイを用いると、対照サンプルと実験サンプルの両方について発現パターンを評価することができる。あとで詳しく説明するように、適切な任意の方法を利用することができる。例えば、複数の組織選択的遺伝子が狭い面積上のアドレスがわかっている固定位置に配置されたDNAマイクロアレイを調製するとよい。サンプルから単離したRNAを逆転写酵素と放射性ヌクレオチドを用いて標識し、アレイにハイブリダイズさせた後、検出システムを用いて発現レベルを測定することができる。数種類の情報を取り出すことができる。すなわち、発現しているかいないかや、対応する発現レベルといった情報である。正常組織は、組織選択的プローブによって表わされる実質的にすべての遺伝子を発現することが予想される。ある遺伝子が発現しているかどうかと、そのレベルが正常な対照のレベルに達しているかどうかを明らかにするためには、さまざまな実験条件を正常組織と比較するとよい。
この明細書に記載した配列によって表わされる完全な遺伝子セットの発現プロファイルが最も多く情報を含んでいる可能性があるが、完全ではないコレクションからの発現情報を含むフィンガープリントも有用である。不完全な指紋が個人を特定するのに十分な渦巻、弓状紋、ループ、隆起部のパターンを含んでいる可能性があるのと同様、不完全な細胞発現フィンガープリントも、サンプルに関する有用で独自の同定情報やそれ以外の情報を提供するのに十分である可能性がある。さらに、集団が不均質であり、組織の個々の生理学的状態には差があるため、組織の“正常な”発現プロファイルは、全体の発現パターンを変化させることはなくともサンプル間で異なることが予想される。こうした個別の違いがある結果として、それぞれの遺伝子は、脾臓で選択的に発現するとはいえ、その組織を識別するのに十分なだけ常時発現しているとは限らない。したがってこの明細書に記載したどの方法においても、遺伝子群をグループとして、あるいは一度に使用するとよい。
治療薬を興味の対象である組織に特異的に到達させるのに結合パートナーも利用することができる。例えばある組織に到達させるべき遺伝子を、細胞表面を有するリポソームの中で(直接に、あるいはポリマーを通じてなどの方法により)結合パートナーと結合させた後、治療する対象に適切な方法で投与するとよい。さらに、細胞傷害剤、細胞分裂抑制剤、あるいはそれ以外の治療薬を興味の対象である組織だけに到達させてその組織に関するあらゆる疾患の治療および/または予防を行なうことができる。
本発明は、免疫系細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、表1から選択した遺伝子または哺乳動物におけるそのホモログに対して特異的なポリヌクレオチドと接触させる操作を、そのポリヌクレオチドがその遺伝子に特異的にハイブリダイズするのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。検出は、適切な任意の方法で行なうことができる。例えばすでに説明した方法やあとで説明する方法のうちの任意のもの、具体的にはノーザン・ブロット法やPCR法を利用する。特異的なポリヌクレオチドとしては、配列ID番号3、4、8、9、14、15、22、23、27、28、35、36、42、43、49、50、57、58(表5を参照のこと)と、その相補体が挙げられる。
検出は、本発明の遺伝子によってコードされているポリペプチドを特異的に認識する結合パートナー(例えばモノクローナル抗体やポリクローナル抗体)を用いて行なうこともできる。したがって本発明は、免疫系細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、表1から選択した遺伝子または哺乳動物におけるそのホモログによってコードされているポリペプチドに対して特異的な結合パートナー(例えば抗体、Fabフラグメント、一本鎖抗体、アプタマー)と接触させる操作を、その結合パートナーがそのポリペプチドに特異的にハイブリダイズするのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。タンパク質結合アッセイは、例えば免疫細胞化学、ELISA、ウエスタン・ブロットなどの方法を利用してルーチンで行なうことができる。有用なエピトープとしては、表面に露出する表2に示したようなものが挙げられる。
上に説明したように、例えば診断、治療、予後予測を目的として、結合パートナーを用いて薬剤を免疫系に特異的に到達させることができる。薬剤を免疫細胞に到達させる方法は、例えば、免疫細胞を、表1から選択した遺伝子(すなわちTMD0024(XM 060945)、TMD1779(XM 060946)、TMD0884(XM 060947)、TMD0025(XM 060948)、TMD1780(XM 089422)、TMD1781(XM 089421)、TMD0304(XM 060956)、TMD0888(XM 060957)、TMD0890(XM 060959))に対して特異的な結合パートナーと結合させるステップを含んでおり、そのことによってその薬剤をその細胞に到達させる。任意のタイプの薬剤を使用することができ、例えば、治療薬やイメージング剤が使用できる。免疫系との接触は、有効な任意の方法で実現することができる。例えば宿主に対して有効量の薬剤を経口で、非経口で、局所的に、全身に、静脈内に投与する方法などがある。“結合パートナーと結合した薬剤”という表現は、薬剤が標的部位だけに運ばれるようなやり方でその薬剤に結合パートナーが付着していることを意味する。結合としては、化学的結合、共有結合、非共有結合(そのような結合で薬剤を標的に到達させるのに十分である場合)、リポソームまたは脂質膜の中への封入、担体(例えばポリマー担体)への付着などが挙げられる。薬剤は、結合パートナーに直接連結させること、あるいは化学的なリンカーまたはスペーサを介して連結させることができる。
特定の器官のイメージングは、組織選択的抗体と、造影剤を体内の特定の部位に選択的に向かわせる他の結合パートナーを用いることによって容易に行なうことができる。この方向でさまざまなイメージング法が利用されており、例えばX線、CT、CAT、MRI、超音波、PET、SPECT、シントグラフィック法といった方法が挙げられる。一般に、レポータ剤を結合パートナーに共役または結合させることが可能である。超音波用造影剤を結合パートナー(例えば抗体)と組み合わせたものは、アメリカ合衆国特許第6,264,917号、第6,254,852号、第6,245,318号、第6,139,819号に記載されている。MRI用造影剤(例えば金属イオン封鎖剤、放射性ヌクレオチド、常磁性イオンなど)を選択的標的剤と組み合わせたものも文献に記載されている(例えばアメリカ合衆国特許第6,280,706号、第6,221,334号)。その中に記載されている方法を利用すると、一般に、あらゆる目的のためにパートナーを薬剤と結合させることができる。
免疫系の成熟も本発明によって変化させることができる。そのためには、例えば免疫系細胞の成熟を変化させる方法であって、例えば、その細胞を、表1から選択した遺伝子またはその遺伝子によってコードされているポリペプチドを変化させるのに有効な薬剤と接触させるステップを含んでおり、そのことによって免疫細胞の成熟を変化させる方法を利用する。この明細書全体を通じて使用する“変化”という用語には、刺激、増大、作動、活性化、増幅、阻止、抑制、低減、拮抗、予防、低下、減少などが含まれる。
“免疫系細胞の成熟”という表現には、免疫系細胞の成熟に対する直接的または間接的な効果が含まれる。すなわち、免疫系細胞の遺伝子を変化させることが成熟プロセスに直接影響を与える場合や、それほど直接的でなく、成熟シグナルを免疫系細胞に送るタイプの細胞内で遺伝子が発現する場合が含まれる。免疫系の成熟には、B細胞の成熟、T細胞の成熟が含まれ、具体的には、正の選択、負の選択、アポトーシス、組み換え、T細胞受容体遺伝子の発現、CD4受容体とCD8受容体、抗原の認識、MHCの認識、寛容化、RAGの発現、分化、TCRの発現、抗原の発現などが挙げられる。以下の説明と、例えばAbbas他、『細胞免疫学と分子免疫学』、第4版、W.B.ソーンダズ社、2000年の例えば149-160ページを参照のこと。プロセスにはシグナル(例えばサイトカインやそれ以外のGPCRリガンド)の受信が含まれる。適切な任意の薬剤を用いることができる(それは例えば成熟を阻止する薬剤で、具体的には、表1のGPCRに対する抗体、あるいはそれ以外のGPCRアンタゴニスト)。
リンパ様免疫系細胞と非リンパ様免疫系細胞の相互作用も変化させることができる。そのためには、例えば、その細胞を、表1から選択した遺伝子または哺乳動物におけるそのホモログと、それらによってコードされているポリペプチドを変化させるのに有効な薬剤と接触させるステップを含んでおり、そのことによって相互作用を変化させる方法を利用する。リンパ様細胞としては、例えばリンパ球(T-リンパ球、B-リンパ球)、ナチュラルキラー細胞、これ以外のリンパ様前駆細胞などが挙げられる。非リンパ様細胞としては、アクセサリー細胞(例えば抗原提示細胞)、マクロファージ、単核食細胞、樹状細胞、非リンパ様胸腺細胞のほか、リンパ様前駆細胞からは通常発生しない他のタイプの細胞が挙げられる。変化させることのできる相互作用としては、例えば、抗原提示、正の選択、負の選択、前駆細胞の分化、抗原の発現、寛容化、TCRの発現、アポトーシスなどが挙げられる。他の免疫系プロセスに関しては、この明細書の前後の記述を参照のこと。
本発明のGPCR遺伝子から得られるプロモータ配列を用い、免疫系細胞において異種遺伝子を選択的に発現させることができる。免疫系細胞において異種ポリヌクレオチドを発現させる方法は、例えば、その異種ポリヌクレオチドと機能上関連したプロモータ配列を含む核酸構造体を免疫系細胞の中で発現させるステップを含むことができ、そのプロモータ配列は表5の中から選択する。この構造体は、JHK3(CRL-10991)、KG-1(CCL-246)、KG-1a(CCL-246.1)、U-937(CRL-1593.2)、VA-ES-BJ(CRL-2138)、TUR(CRL-2367)、ELI(CRL-9854)、28SC(CRL-9855)、KMA(CRL-9856)、THP-1(TIB-2002)、WEHI-274.1(CRL-1679)、M-NFS-60(CRL-1838)、MH-S(CRL-2019)、SR-4987(CRL-2028)、NCTC3749(CRL-461)、AMJ2-C8(CRL-2455)、AMJ2-C11(CRL-2456)、PMJ2-PC(CRL-2457)、EOC2(CRL-2467)といった細胞系に加え、一次細胞(例えば胸腺細胞、骨髄細胞、幹細胞、リンパ様前駆細胞、骨髄性前駆細胞、単球、抗原提示細胞、マクロファージ、これらに由来する細胞系)や、確立された任意の一次免疫系細胞系において発現させることができる。
胸腺
胸腺は、T細胞リンパ球が成熟する部位である。未熟なリンパ球は、骨髄や、未熟なリンパ球を産生する他の器官から胸腺に入る。T細胞の抗原レパートリーを形作る選択プロセスは、胸腺で起こる。正の選択プロセスと負の選択プロセスの両方が起こる。概説としては、例えばAbbas他、『細胞免疫学と分子免疫学』、第4版、W.B.ソーンダズ社、2000年の例えば126-130ページと149-160ページを参照のこと。
胸腺組織に関係するさまざまな疾患や異常が存在している。例えば、胸腺がん、胸腺腫、オーメン症候群、自己免疫疾患、アレルギー、グレーヴズ病、重症筋無力症、胸腺過形成、ディ・ジョージ症候群、グッド症候群、骨髄移植後の免疫系再生促進、免疫応答などがある。胸腺選択的遺伝子とその遺伝子によってコードされているポリペプチドを用いてあらゆる胸腺疾患を治療または診断することができる。例えば化学療法剤と細胞傷害剤を胸腺選択抗体に結合させたものを使用し、胸腺腫または胸腺がんを消滅させることができる。この方法は、単独で、あるいは他の治療法と組み合わせて利用することができる。例えばGraeberとTamin、Semin. Thorac. Cardiovasc. Surg.、第12巻、268-277ページ、2000年;Loehrer、Ann. Med.、31補第2巻、73-79ページ、1999年を参照のこと。
骨髄
成人の体内を循環しているすべての血液細胞(すべての未熟なリンパ球を含む)は骨髄で産生される。さらに、骨髄はB細胞が成熟する部位でもある。骨髄は、長いスポンジ状の小柱の間に位置する網状間質からなる。骨髄は、脂肪細胞、間質細胞、造血前躯細胞で満たされている。前躯体は成熟し、血管洞を通って出ていく。
すべての血液細胞は、共通の幹細胞から生じると考えられている。この共通の幹細胞から増殖する系統としては、例えば骨髄性前駆細胞やリンパ様前駆細胞がある。骨髄性前駆細胞が成長すると、赤血球、血小板(巨核球)、好塩基球、好酸球、顆粒球、好中球、単球になる。リンパ様前駆細胞は、Bリンパ球、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞の前躯体である。
骨髄に関係するさまざまな疾患や異常が存在している。例えば、赤芽球病、再生不良性貧血(例えば骨髄性幹細胞に欠陥がある場合)、赤芽球ろう、白血病、白血球減少症、好中球減少症、白血球と節の反応性(炎症性)増殖(例えば白血球増加症、リンパ節炎)、白血球の腫瘍性増殖、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、急性白血病(例えば急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、骨髄異形成症候群)、慢性骨髄性白血病、慢性白血病、毛様細胞白血病、骨髄増殖障害、形質細胞障害、多発性骨髄腫、組織球増殖症などがある。
免疫系選択的遺伝子
本発明は、免疫系の機能と活性に関係する遺伝子に関する。XM 062147(TMD0088)とXM 061676(TMD0045)は、嗅覚Gタンパク質結合受容体(“GPCR”)ファミリーと相同な、膜に広がっている7つのポリペプチドをコードしている。XM 062147は骨髄組織において優勢に発現し、他の組織では発現が検出できない。XM 061676も骨髄組織において優勢に発現するが、末梢血リンパ球でも検出される。あとでより詳しく説明するように、XM 062147(TMD0088)とXM 061676(TMD0045)、ならびにこれら遺伝子によってコードされているポリペプチドは、その遺伝子が発現する免疫系や細胞に関係するあらゆる症状、疾患、異常、応用に関する診断、予後予測、治療、研究のためのツールとして用いることができる。
本発明によるGPCRファミリーのメンバーは、その選択性と細胞表面への提示能力を考えると、そのメンバーが内部で発現することになる細胞(例えばB細胞、B細胞前駆体)に関する組織学的研究や、診断、治療といった用途における有用な標的である。抗体とそれ以外のタンパク質結合パートナー(例えばリガンド、アプタマー、小さなペプチドなど)を用い、あらゆる目的で(例えば、イメージング、治療、診断、薬剤のデリバリー、遺伝子治療などを行なうために)薬剤を選択的に組織に到達させることができる。c-erbB-2抗体を乳がんに対して用いるのと同様にして、例えば結合パートナー(例えば抗体)を用いてがんを治療することができる。結合パートナーは、骨髄やリンパ球などを同定するための生検において転移細胞の検出に用いることもできる。遺伝子とその遺伝子によってコードされているポリペプチドを組織工学で使用し、分化プロセスに現われる組織を同定すること、組織に到達させること、(例えば出発材料となる幹細胞の集団から)組織の増殖状態を変化させることなどもできる。有用な抗体とそれ以外の結合パートナーとしては、表2に示したように、ポリペプチドの細胞外露出部分に対して特異的なものが挙げられる。この明細書に記載したどの方法も、生体内、試験管内、生体外(例えば骨髄細胞や末梢血リンパ球を生体外で処理した後、体内に戻すことができる)で実施することができる。生体外の方法を利用し、骨髄からがん性細胞を除去すること、骨髄細胞を変化させること、骨髄細胞の免疫応答を調べること、XM 062147(TMD0088)またはXM 061676(TMD0045)を発現する特定のクラスの細胞を増殖させること、遺伝子をその細胞に注入すること(例えばBanerjeeとBertino、Lancet Oncol.、第3巻、154-158ページ、2002年)などができる。
発現が所定の組織において“優勢である”と記述するとき、この表現は、この組織における遺伝子のmRNAのレベルが、測定を行なった他の組織と比べて最高であることを意味する。発現を観察する場所で“選択的”に発現させることもできる。“選択的に発現した”という表現は、所定のヌクレオチド配列を含む核酸分子が、転写産物になったときにその転写産物を産生した組織または細胞タイプに特徴的であることを意味する。これは、転写産物がその組織だけで発現し、他のタイプの組織では発現していないこと、あるいは転写産物が他の組織と比べてその組織で優先的に、差をもって、より豊富に(例えば少なくとも5倍、10倍、あるいはそれ以上に)発現していることを意味する。
“免疫系”という用語は、免疫応答を発生させて実行するのに関係するあらゆるプロセスと細胞を意味する。免疫系細胞に含まれるものとしては、幹細胞、多能性幹細胞、骨髄性前駆細胞、リンパ様前駆細胞、リンパ球、Bリンパ球、Tリンパ球(ナイーブT細胞、エフェクターT細胞、記憶T細胞、細胞傷害性T細胞など)、胸腺細胞、ナチュラルキラー細胞、赤血球、巨核球、好塩基球、好酸球、顆粒球-単球、アクセサリー細胞(例えば抗原に対するリンパ球応答の開始に関与する細胞)、抗原提示細胞(“APC”)、単核食細胞、樹状細胞、マクロファージなどと、そのあらゆる前躯体、前駆細胞、成熟段階の細胞が挙げられる。
XM 062147は、膜貫通セグメントを7つ含んでいる。このXM 062147は、染色体バンド11q12上で、遺伝性のアトピー性過敏症(例えば喘息、枯草熱、湿疹に関係するOMIM 147050)に関する遺伝子座に近い位置にある。この疾患は、免疫グロブリンEの調節がうまくいかない結果であることが示唆されている。XM 061676も7回膜貫通ポリペプチドである。染色体上でこのXM 061676が定位されている遺伝子座11p15には、免疫疾患(例えばファンコーニ貧血、ヌクレオポリン、骨髄性白血病、T細胞リンパ芽球性白血病)に関係する遺伝子が豊富に存在している。先天性多発性関節拘縮症(遠位タイプIIB)もこの染色体位置の近くに定位される。
本発明は、免疫系細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、表6から選択した遺伝子または哺乳動物におけるそのホモログに対して特異的なポリヌクレオチドと接触させる操作を、そのポリヌクレオチドがその遺伝子に特異的にハイブリダイズするのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。検出は、適切な任意の方法で行なうことができる。例えばすでに説明した方法やあとで説明する方法のうちの任意のもの、具体的にはノーザン・ブロット法やPCR法を利用する。特異的なポリヌクレオチドとしては、配列ID番号67、68、76、77(表6を参照のこと)と、その相補体が挙げられる。
検出は、本発明の遺伝子によってコードされているポリペプチドを特異的に認識する結合パートナー(例えばモノクローナル抗体やポリクローナル抗体)を用いて行なうこともできる。したがって本発明は、免疫系細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、表6から選択した遺伝子または哺乳動物におけるそのホモログによってコードされているポリペプチドに対して特異的な結合パートナー(例えば抗体、Fabフラグメント、一本鎖抗体、アプタマー)と接触させる操作を、その結合パートナーがそのポリペプチドに特異的にハイブリダイズするのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。タンパク質結合アッセイは、例えば免疫細胞化学、ELISA、ウエスタン・ブロットなどの方法を利用してルーチンで行なうことができる。有用なエピトープとしては、表面に露出する表7に示したようなものが挙げられる。
上に説明したように、例えば診断、治療、予後予測を目的として、結合パートナーを用いて薬剤を免疫系に特異的に到達させることができる。薬剤を免疫細胞に到達させる方法は、例えば、免疫細胞を、表6から選択した遺伝子に対して特異的な結合パートナーと結合させるステップを含んでおり、そのことによってその薬剤をその細胞に到達させる。任意のタイプの薬剤を使用することができ、例えば、治療薬やイメージング剤が使用できる。免疫系との接触は、有効な任意の方法で実現することができる。例えば宿主に対して有効量の薬剤を経口で、非経口で、局所的に、全身に、静脈内に投与する方法などがある。“結合パートナーと結合した薬剤”という表現は、薬剤が標的部位だけに運ばれるようなやり方でその薬剤に結合パートナーが付着していることを意味する。結合としては、化学的結合、共有結合、非共有結合(そのような結合で薬剤を標的に到達させるのに十分である場合)、リポソームまたは脂質膜の中への封入、担体(例えばポリマー担体)への付着などが挙げられる。薬剤は、結合パートナーに直接連結させること、あるいは化学的なリンカーまたはスペーサを介して連結させることができる。
特定の器官のイメージングは、組織選択的抗体と、造影剤を体内の特定の部位に選択的に向かわせる他の結合パートナーを用いることによって容易に行なうことができる。この方向でさまざまなイメージング法が利用されており、例えばX線、CT、CAT、MRI、超音波、PET、SPECT、シントグラフィック法といった方法が挙げられる。一般に、レポータ剤を結合パートナーに共役または結合させることが可能である。超音波用造影剤を結合パートナー(例えば抗体)と組み合わせたものは、アメリカ合衆国特許第6,264,917号、第6,254,852号、第6,245,318号、第6,139,819号に記載されている。MRI用造影剤(例えば金属イオン封鎖剤、放射性ヌクレオチド、常磁性イオンなど)を選択的標的剤と組み合わせたものも文献に記載されている(例えばアメリカ合衆国特許第6,280,706号、第6,221,334号)。その中に記載されている方法を利用すると、一般に、あらゆる目的のためにパートナーを薬剤と結合させることができる。
免疫系の成熟も本発明によって変化させることができる。そのためには、例えば免疫系細胞の成熟を変化させる方法であって、例えば、その細胞を、表6から選択した遺伝子またはその遺伝子によってコードされているポリペプチドを変化させるのに有効な薬剤と接触させるステップを含んでおり、そのことによって免疫細胞の成熟を変化させる方法を利用する。この明細書全体を通じて使用する“変化”という用語には、刺激、増大、作動、活性化、増幅、阻止、抑制、低減、拮抗、予防、低下、減少などが含まれる。
“免疫系細胞の成熟”という表現には、免疫系細胞の成熟に対する直接的または間接的な効果が含まれる。すなわち、免疫系細胞の遺伝子を変化させることが成熟プロセスに直接影響を与える場合や、それほど直接的でなく、成熟シグナルを免疫系細胞に送るタイプの細胞内で遺伝子が発現する場合が含まれる。免疫系の成熟には、B細胞の成熟、T細胞の成熟が含まれ、具体的には、正の選択、負の選択、アポトーシス、組み換え、T細胞受容体遺伝子の発現、CD4受容体とCD8受容体、抗原の認識、MHCの認識、寛容化、RAGの発現、分化、TCRの発現、抗原の発現などが挙げられる。以下の説明と、例えばAbbas他、『細胞免疫学と分子免疫学』、第4版、W.B.ソーンダズ社、2000年の例えば149-160ページを参照のこと。プロセスにはシグナル(例えばサイトカインやそれ以外のGPCRリガンド)の受信が含まれる。適切な任意の薬剤を用いることができる(それは例えば成熟を阻止する薬剤で、具体的には、表6のGPCRに対する抗体、あるいはそれ以外のGPCRアンタゴニスト)。
リンパ様免疫系細胞と非リンパ様免疫系細胞の相互作用も変化させることができる。そのためには、例えば、その細胞を、表6から選択した遺伝子または哺乳動物におけるそのホモログと、それらによってコードされているポリペプチドを変化させるのに有効な薬剤と接触させるステップを含んでおり、そのことによって相互作用を変化させる方法を利用する。リンパ様細胞としては、例えばリンパ球(T-リンパ球、B-リンパ球)、ナチュラルキラー細胞、これ以外のリンパ様前駆細胞などが挙げられる。非リンパ様細胞としては、アクセサリー細胞(例えば抗原提示細胞)、マクロファージ、単核食細胞、樹状細胞、非リンパ様胸腺細胞のほか、リンパ様前駆細胞からは通常発生しない他のタイプの細胞が挙げられる。変化させることのできる相互作用としては、例えば、抗原提示、正の選択、負の選択、前駆細胞の分化、抗原の発現、寛容化、TCRの発現、アポトーシスなどが挙げられる。他の免疫系プロセスに関しては、この明細書の前後の記述を参照のこと。
本発明のGPCR遺伝子から得られるプロモータ配列を用い、免疫系細胞において異種遺伝子を選択的に発現させることができる。免疫系細胞において異種ポリヌクレオチドを発現させる方法は、例えば、その異種ポリヌクレオチドと機能上関連したプロモータ配列を含む核酸構造体を免疫系細胞の中で発現させるステップを含むことができ、そのプロモータ配列は表6の中から選択する。この構造体は、以下に示す細胞系に加え、一次細胞(例えば胸腺細胞、骨髄細胞、幹細胞、リンパ様前駆細胞、骨髄性前駆細胞、単球、抗原提示細胞、マクロファージ、これらに由来する細胞系)において発現させることができる。
腎臓選択的遺伝子
本発明は、腎臓において選択的に発現する遺伝子とポリペプチドに関する:TMD0049(XM 057351)、TMD0190(XM 087157)、TMD0242(XM 088369)、TMD0335(XM 089960)、TMD0371、TMD0374、TMD0469(XM 038736)、TMD0719(XM 059548)、TMD0731(XM 059703)、TMD0785(XM 060310)、TMD0841(XM 060623)、TMD1114(XM 019841)、および/またはTMD1148(XM 087108)。これら遺伝子とポリペプチドは、腎臓組織において優先的に発現するため、その遺伝子とその遺伝子によってコードされているポリペプチドは、腎臓組織と腎臓機能の選択マーカーになるだけでなく、その遺伝子が発現する腎臓や細胞に関係するあらゆる症状、疾患、異常、応用に関する診断、予後予測、治療、研究のためのツールとして用いることができる。TMD0049(XM 057351)、TMD0190(XM 087157)、TMD0242(XM 088369)、TMD0335(XM 089960)、TMD0371、TMD0374、TMD0469(XM 038736)、TMD0719(XM 059548)、TMD0731(XM 059703)、TMD0785(XM 060310)、TMD0841(XM 060623)、TMD1114(XM 019841)、および/またはTMD1148(XM 087108)には、ヒトと哺乳動物の両方におけるこれらのホモログが含まれる。配列ID番号78〜103は個々の対立遺伝子を表わしているが、本発明は他の対立遺伝子(自然に発生する多型(すなわち哺乳動物の集団において同定されるヌクレオチド配列の多型)も含まれる)とそのホモログに関する。これら遺伝子に関するより詳しい情報は、表8〜11にまとめてある。
本発明によるポリペプチドとポリヌクレオチドは、その選択性と細胞表面への提示能力を考えると、そのメンバーが内部で発現することになる細胞(例えば、レニンを分泌する傍糸球体細胞、尿細管周囲細胞、内皮細胞(例えば皮質および外側髄質の内皮細胞)、炎症メディエータ(NOや、シクロオキシゲナーゼの産物など)を分泌する血管間膜細胞、内臓上皮細胞、体性上皮細胞、有足突起、例えばアンギオテンシン変換酵素や中性エンドペプチダーゼを分泌する*近位尿細管細胞、例えばプロリルエンドペプチダーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、カルボキシエンドペプチダーゼ、中性エンドペプチダーゼを産生する*遠位尿細管細胞、腎髄質間質細胞など)に関する組織学的研究や、診断、治療といった用途における有用な標的である。抗体とそれ以外のタンパク質結合パートナー(例えばリガンド、アプタマー、小さなペプチドなど)を用い、あらゆる目的で(例えば、イメージング、治療、診断、薬剤のデリバリー、遺伝子治療などを行なうために)薬剤を選択的に組織に到達させることができる。c-erbB-2抗体を乳がんに対して用いるのと同様にして、例えば結合パートナー(例えば抗体)を用いてがんを治療することができる。結合パートナーは、腎臓などを同定するための生検において転移細胞の検出に用いることもできる。遺伝子とその遺伝子によってコードされているポリペプチドを組織工学で使用し、分化プロセスに現われる組織を同定すること、組織に到達させること、(例えば出発材料となる幹細胞の集団から)組織の増殖を変化させることなどもできる。有用な抗体とそれ以外の結合パートナーとしては、表9に示したように、ポリペプチドの細胞外露出部分に対して特異的なものが挙げられる。この明細書に記載したどの方法も、生体内、試験管内、生体外で実施することができる。
発現が所定の組織において“優勢である”と記述するとき、この表現は、この組織における遺伝子のmRNAのレベルが、測定を行なった他の組織と比べて最高であることを意味する。発現を観察する場所で“選択的”に発現させることもできる。“選択的に発現した”という表現は、所定のヌクレオチド配列を含む核酸分子が、転写産物になったときにその転写産物を産生した組織または細胞タイプに特徴的であることを意味する。これは、転写産物がその組織だけで発現し、他のタイプの組織では発現していないこと、あるいは転写産物が他の組織と比べてその組織で優先的に、差をもって、より豊富に(例えば少なくとも5倍、10倍、あるいはそれ以上に)発現していることを意味する。
本発明は、腎臓細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、TMD0049(XM 057351)、TMD0190(XM 087157)、TMD0242(XM 088369)、TMD0335(XM 089960)、TMD0371、TMD0374、TMD0469(XM 038736)、TMD0719(XM 059548)、TMD0731(XM 059703)、TMD0785(XM 060310)、TMD0841(XM 060623)、TMD1114(XM 019841)、および/またはTMD1148(XM 087108)に対して特異的なポリヌクレオチドまたは哺乳動物におけるそのホモログと接触させる操作を、そのポリヌクレオチドが上記遺伝子に特異的にハイブリダイズするのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。検出は、適切な任意の方法で行なうことができる。例えばすでに説明した方法やあとで説明する方法のうちの任意のもの、具体的にはノーザン・ブロット法やPCR法を利用する。特異的なポリヌクレオチドとしては、配列ID番号104、105、107、108、111、112、115、116、119、120、122、123、126、127、131、132、135、136、138、139、142、143、145、146、149、150と、その相補体が挙げられる。
検出は、本発明の遺伝子によってコードされているポリペプチドを特異的に認識する結合パートナー(例えばモノクローナル抗体やポリクローナル抗体)を用いて行なうこともできる。したがって本発明は、腎臓細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、TMD0049(XM 057351)、TMD0190(XM 087157)、TMD0242(XM 088369)、TMD0335(XM 089960)、TMD0371、TMD0374、TMD0469(XM 038736)、TMD0719(XM 059548)、TMD0731(XM 059703)、TMD0785(XM 060310)、TMD0841(XM 060623)、TMD1114(XM 019841)、および/またはTMD1148(XM 087108)または哺乳類におけるそのホモログによってコードされているポリペプチドに対して特異的な結合パートナー(例えば抗体、Fabフラグメント、一本鎖抗体、アプタマー)と接触させる操作を、その結合パートナーがそのポリペプチドに特異的に結合するのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。タンパク質結合アッセイは、例えば免疫細胞化学、ELISA、ウエスタン・ブロットなどの方法を利用してルーチンとして実施することができる。有用なエピトープとしては、表9に示したような表面に露出するものが挙げられる。
上に説明したように、例えば診断、治療、予後予測を目的として、結合パートナーを用いて特に腎臓に薬剤を到達させることができる。薬剤を腎臓細胞に到達させる方法は、例えば、腎臓細胞を、TMD0049(XM 057351)、TMD0190(XM 087157)、TMD0242(XM 088369)、TMD0335(XM 089960)、TMD0371、TMD0374、TMD0469(XM 038736)、TMD0719(XM 059548)、TMD0731(XM 059703)、TMD0785(XM 060310)、TMD0841(XM 060623)、TMD1114(XM 019841)、および/またはTMD1148(XM 087108)に対して特異的な結合パートナーと結合した薬剤と接触させるステップを含むことができ、そのことによって薬剤をその細胞に到達させる。あらゆるタイプの薬剤(例えば治療薬やイメージング剤)を使用することができる。腎臓との接触は、有効な任意の方法で実現することができる。例えば、宿主に対して有効量の薬剤を、経口で、非経口で、局所的に、全身に、静脈内に投与するなどの方法がある。“結合パートナーと結合した薬剤”という表現は、薬剤が標的部位だけに運ばれるようなやり方で薬剤に結合パートナーが付着していることを意味する。結合としては、化学的結合、共有結合、非共有結合(そのような結合で薬剤を標的に到達させるのに十分である場合)、リポソームまたは脂質膜の中への封入、担体(例えばポリマー担体)への付着などが挙げられる。薬剤は、結合パートナーに直接連結させること、あるいは化学的なリンカーまたはスペーサを介して連結させることができる。TMD0049(XM 057351)、TMD0190(XM 087157)、TMD0242(XM 088369)、TMD0335(XM 089960)、TMD0371、TMD0374、TMD0469(XM 038736)、TMD0719(XM 059548)、TMD0731(XM 059703)、TMD0785(XM 060310)、TMD0841(XM 060623)、TMD1114(XM 019841)、および/またはTMD1148(XM 087108)によってコードされているポリペプチドを発現するあらゆる細胞を標的にすることができる。例えば、傍糸球体、尿細管周囲、内皮、糸球体間質、内臓上皮、体性上皮、有足突起、近位尿細管、遠位尿細管、腎髄質間質などが標的となる。
特定の器官のイメージングは、組織選択的抗体と、造影剤を体内の特定の部位に選択的に向かわせる他の結合パートナーを用いることによって容易に行なうことができる。この方向でさまざまなイメージング法が利用されており、例えばX線、CT、CAT、MRI、超音波、PET、SPECT、シントグラフィック法といった方法が挙げられる。一般に、レポータ剤を結合パートナーに共役または結合させることが可能である。超音波用造影剤を結合パートナー(例えば抗体)と組み合わせたものは、アメリカ合衆国特許第6,264,917号、第6,254,852号、第6,245,318号、第6,139,819号に記載されている。MRI用造影剤(例えば金属イオン封鎖剤、放射性ヌクレオチド、常磁性イオンなど)を選択的標的剤と組み合わせたものも文献に記載されている(例えばアメリカ合衆国特許第6,280,706号、第6,221,334号)。その中に記載されている方法を利用すると、一般に、あらゆる目的のためにパートナーを薬剤と結合させることができる。
腎臓細胞(腎臓細胞のタイプの具体例に関しては上を参照のこと)を本発明によって変化させることもできる。腎臓細胞を変化させる方法は、例えば、その細胞を、TMD0049(XM 057351)、TMD0190(XM 087157)、TMD0242(XM 088369)、TMD0335(XM 089960)、TMD0371、TMD0374、TMD0469(XM 038736)、TMD0719(XM 059548)、TMD0731(XM 059703)、TMD0785(XM 060310)、TMD0841(XM 060623)、TMD1114(XM 019841)、および/またはTMD1148(XM 087108)または哺乳動物におけるそのホモログを変化させる、あるいはこれらによってコードされているポリペプチドの生物学的活性を変化させるのに有効な薬剤と接触させるステップを含んでおり、そのことによって腎臓細胞を変化させる。この明細書全体を通じて使用する“変化”という用語には、刺激、増大、作動、活性化、増幅、阻止、抑制、低減、拮抗、予防、低下、減少などが含まれる。
腎臓細胞の活性または機能を変化させることができる。例えば、糸球体の濾過速度、濾過圧、腎臓の自己調節(筋原性メカニズムや尿細管糸球体フィードバック・メカニズムなど)、尿細管再吸収、尿細管分泌、腎臓クリアランスを変化させることができる。さらに、腎臓細胞によって産生されるあらゆる分泌物またはポリペプチドの転写、翻訳、合成、分解、発現なども変化させることができる。例えば、レニン-アンギオテンシン活性、プロスタグランジンの産生と分泌、一酸化窒素、カリクレイン、アデノシン、エンドセリン、レニン、エリスロポエチン、他のホルモン、酵素、他の分泌因子や細胞内因子を変化させることができる。刺激に対する腎臓細胞の応答も変化させることができる。例えば、TMD0049(XM 057351)、TMD0190(XM 087157)、TMD0242(XM 088369)、TMD0335(XM 089960)、TMD0371、TMD0374、TMD0469(XM 038736)、TMD0719(XM 059548)、TMD0731(XM 059703)、TMD0785(XM 060310)、TMD0841(XM 060623)、TMD1114(XM 019841)、および/またはTMD1148(XM 087108)に対するリガンド、酸素レベル、血圧などを変化させることができる。
本発明は、腎臓機能を評価するためのポリペプチド検出法にも関する。この方法は、TMD0049(XM 057351)、TMD0190(XM 087157)、TMD0242(XM 088369)、TMD0335(XM 089960)、TMD0371、TMD0374、TMD0469(XM 038736)、TMD0719(XM 059548)、TMD0731(XM 059703)、TMD0785(XM 060310)、TMD0841(XM 060623)、TMD1114(XM 019841)、および/またはTMD1148(XM 087108)によってコードされているポリペプチド、その断片、その多型を体液中で検出するステップを含んでおり、その体液中のそのポリペプチドのレベルが腎臓機能の指標となる。腎臓機能テストは腎臓疾患を診断するための1つの方法であり、通常は腎臓が正常に機能しているかどうかを明らかにするために実施する。さまざまなテスト法が一般に利用されている。例えば、BUN(血液尿素窒素)、血清クレアチン、推定GFR、尿濃縮能力、BUN/クレアチン比、尿ナトリウムとそれ以外の電解質、尿NAG(N-アセチル-β-グルコサミニダーゼ)、アデノシンデアミナーゼ、尿アルカリホスファターゼ、血清と尿β-2-ミクログロブリン、血清尿酸、同位体スキャン、ドップラー・ソノグラム、ポジトロン放出トモグラフィ、尿の比重、ミクロアルブミン、全タンパク質などが調べられている。TMD0049(XM 057351)、TMD0190(XM 087157)、TMD0242(XM 088369)、TMD0335(XM 089960)、TMD0371、TMD0374、TMD0469(XM 038736)、TMD0719(XM 059548)、TMD0731(XM 059703)、TMD0785(XM 060310)、TMD0841(XM 060623)、TMD1114(XM 019841)、および/またはTMD1148(XM 087108)の検出は、特に、慢性腎不全、尿路感染症、腎臓結石、ネフローゼ症候群、腎炎症候群、糖尿病や高血圧に起因する腎臓疾患などの疾患における別の評価ツールとなる。他のテストの場合と同様、血液やそれ以外の体液中で上記ポリペプチドのレベルが高いことは、腎臓機能が損なわれていることを示している可能性がある。数値は、上に示したような他の腎臓機能マーカーの場合と同様、ルーチンで測定することができる。検出は、例えばポリペプチドに対して特異的な抗体を使用してRIA、ELISA、ウエスタン・ブロットなどによってルーチンで行なうことができる(後述)。
本発明の遺伝子から得られるプロモータ配列を用い、腎臓細胞において異種遺伝子を選択的に発現させることができる。腎臓細胞において異種ポリヌクレオチドを発現させる方法は、例えば、その異種ポリヌクレオチドと機能上関連したプロモータ配列を含む核酸構造体を腎臓細胞の中で発現させるステップを含むことができ、そのプロモータ配列の選択は、配列ID番号106、109、110、113、114、117、118、121、124、125、128〜130、133、134、137、140、141、144、147、148、151の中から行なう。この構造体は、以下に示す細胞系に加え、一次細胞や、確立された細胞系において発現させることができる。
腎臓
腎臓は、生体の内部環境における体液の定常性を維持しているため、健康と活力を維持する上で非常に重要である。腎臓は、毎日、血液を濾過し、毒素、代謝廃棄物、過剰なイオンを除去、濃縮し、それらを尿として体外に排泄している。腎臓の排泄機能は、100万を超えるミニチュアの血液濾過・処理単位(ネフロンと呼ばれる)によって実現されている。ネフロンは、糸球体と、毛細管叢と、腎細管からなる。腎臓は、排泄機能に加え、多彩なホルモンや酵素と、それ以外の分泌分子を産生する(例えばレニンという酵素、エリスロポエチンというホルモン)。腎臓は、ビタミンDを代謝してその活性な形態であるカルシトリオールにする機能も持っている。腎臓の機能と構造に関する十分な説明については、例えば『ヒトの解剖学と生理学』、Marieb, E.N.、第3版、ベンジャミン/カミングズ出版社、1995年、896-923ページを参照のこと。
糸球体は高圧の毛細血管床であり、開口部のある糸球体上皮、介在する基底膜、糸球体嚢の有足突起含有内臓膜を通じ、大きな血漿タンパク質よりも小さなほとんどの物質を濾過して除去する。糸球体の外側層は壁側板と呼ばれており、主として鱗状の上皮からなる。この層は構造的である。その下には、有足突起と呼ばれる枝分かれしている修飾された上皮細胞からなる臓側板がある。有足突起は、開口部のある糸球体上皮の上に載っている。糸球体は、高度に分化していて長い管である腎臓尿細管に接続されている。腎臓尿細管は、主要な3つの要素を備えている。すなわち、近位曲尿細管、尿細管ループ、遠位曲尿細管である。尿細管の異なる領域は、吸収と分泌に関して異なる機能を持っている。
腎臓細胞は、多彩なホルモンと化学物質を産生する。例えば、プロスタグランジン、一酸化炭素、カリクレイン・ファミリー、アデノシン、エンドセリン・ファミリー、レニン、エリスロポエチン、アルドステロン、抗利尿ホルモン(バソプレッシン)、ナトリウム利尿ホルモンなどである。レニンは血圧の調節に関与している。レニンは、血漿ペプチドであるアンギオテンシノーゲンを開裂させ、アンギオテンシンIと呼ばれる10個のアミノ酸を含む断片にする。アンギオテンシンIは、血管から分泌されるアンギオテンシン変換酵素(ACE)と呼ばれるペプチダーゼによって開裂し、アンギオテンシンIIを産生させる。このアンギオテンシンIIは、8個のアミノ酸を含んでおり、血圧に対して多くの直接的な効果を有する。エリスロポエチンは、骨髄の中で赤血球細胞の産生を促進する。
TMD0049(XM 057351)、TMD0190(XM 087157)、TMD0242(XM 088369)、TMD0335(XM 089960)、TMD0371、TMD0374、TMD0469(XM 038736)、TMD0719(XM 059548)、TMD0731(XM 059703)、TMD0785(XM 060310)、TMD0841(XM 060623)、TMD1114(XM 019841)、および/またはTMD1148(XM 087108)を利用すると、腎臓の疾患や症状に関し、同定、検出、ステージ判定、存在の確認、予後予測、治療、研究などができる。疾患には、4つの基本的な形態的要素である糸球体、尿細管、間質、血管に影響を与える疾患が含まれる。疾患としては、例えば、急性のネフローゼ症候群、腎炎症候群、腎不全、尿路感染症、腎臓結石、腎臓の嚢胞病(例えば嚢胞性腎臓形成異常、多嚢胞性疾患(常染色体優性タイプと常染色体劣性タイプ)、髄質性嚢胞性疾患、後天性嚢胞性疾患、腎嚢胞、実質嚢胞、周囲門腎臓嚢胞(腎盂腎杯嚢胞、門性嚢胞)、糸球体疾患、尿細管疾患、尿細管間質疾患、腎臓の腫瘍(例えば良性腫瘍(皮質腺種、腎臓線維腫、腎髄質間質細胞腫瘍)、悪性腫瘍(腎臓細胞癌、副腎腫、腎臓の線癌、ウィルムス腫瘍、腎芽細胞腫、尿路上皮癌))、腎臓欠損症、腎芽細胞腫、腎臓の明細胞肉腫(CCSK)、腎臓の杆状腫瘍(RTK)、フォン・ヒッペル-リンダウ病、腫瘍細胞性腎臓細胞癌(RCC)、腎臓平滑筋芽腫などが挙げられる。TMD0049(XM 057351)、TMD0190(XM 087157)、TMD0242(XM 088369)、TMD0335(XM 089960)、TMD0371、TMD0374、TMD0469(XM 038736)、TMD0719(XM 059548)、TMD0731(XM 059703)、TMD0785(XM 060310)、TMD0841(XM 060623)、TMD1114(XM 019841)、および/またはTMD1148(XM 087108)を単独で、あるいは従来からあるステージ決定スキームや分類スキームと組み合わせて使用し、本発明の症状や疾患のステージを決定したり分類したりすることもできる。
膵臓遺伝子複合体
本発明は、染色体バンドの11q24に位置する嗅覚GPCR(Gタンパク質結合)受容体遺伝子のクラスターに関する。これら遺伝子は膵臓組織において優勢に発現しており、第11染色体のこの領域は、膵臓機能に関する独自の遺伝子複合体となっている。表12を参照のこと。膵臓遺伝子複合体(“PGC”)とそれを含む遺伝子群は、膵臓組織に対する強い選択性を有するため、診断、予後予測、治療、研究を目的として膵臓組織とその機能を評価するのに役立つ。
膵臓遺伝子複合体(“PGC”)の空間的構成を図7に示してある。この複合体は、第11染色体上に数百kbにわたって広がっている。例えば、ほぼLOC160205からLOC119954まで、あるいはほぼLOC119944からLOC119954まで、あるいはその任意の一部に広がっている。この領域には、嗅覚GPCRファミリーと配列が一致するポリペプチドをコードしている遺伝子のクラスターが存在している。そのような遺伝子として、TMD0986、XM 061780(TMD0987)、XM 061781(TMD0353)、XM 061784(TMD0989)、XM 061785(TMD058)などが挙げられる。図8には、いろいろなコード配列の長さの関係が示してある。この図からわかるように、XM 061784は、このファミリーの他のメンバーよりもC末端が短くなっている。
PGC遺伝子はすべて、GPCRファミリーのメンバーとして、アミノ酸配列がある程度共通している。数値に関しては表14を参照のこと(配列が一致した%の値が最初にある;類似する%の値が次に括弧に入れてある;計算は、公開されているBLASTPのペア式アラインメント・プログラムを用いて行なった)。TMD0986、XM 061780、XM 061781、XM 061785は、それぞれ配列が約40%一致している。公開されている配列をBLASTで検索すると、これらポリペプチドは、ゲノム内の別の場所に位置する他の嗅覚GPCRホモログとの一致度よりも互いのアミノ酸配列の一致度のほうが小さいことがわかる。隣接する遺伝子XM 061784とXM 061785の間で有意に大きなアミノ酸配列の一致(81%)が観察される。これら遺伝子は、ポリペプチド相互間の類似度が大きいPGC内のサブクラスターの一部であるように思われる。
この明細書全体を通じて使用する“表12の遺伝子”という表現には、リストにしたXMのメンバーに対して特異的な配列と、それ以外のヒト対立遺伝子、哺乳動物(例えばネズミ類)のホモログが含まれる。例えば表14には、本発明に含まれるマウスのホモログがいくつかリストにしてある。配列ID番号152、153、162、163、167、168、171、172、175、176は特別な対立遺伝子を表わしているが、本発明は、他の対立遺伝子(例えば自然に発生する多型(すなわち哺乳動物の集団において同定されるヌクレオチド配列の多型))にも関する。
TMD0986(配列ID番号152と153)は、以前に同定されたXM 061779の完全長配列であり、そのXM 061779には存在していない117個の余分なアミノ酸を含んでいる。本発明は、主としてこの配列全体(例えばアミノ酸1〜314)を含む核酸、あるいは主としてこの配列全体からなる核酸と;主としてアミノ酸1〜117をコードしている核酸を含む核酸、あるいは主としてアミノ酸1〜117をコードしている核酸からなる核酸と;主としてアミノ酸1〜117をコードしている核酸の断片を含む核酸、あるいは主としてアミノ酸1〜117をコードしている核酸の断片からなる核酸に関する。これらの核酸によってコードされているポリペプチドも本発明の範囲であり、その中には、アミノ酸1〜117からなるポリペプチド断片(例えばアミノ酸1〜23、79〜97、164〜198、261〜274からなるポリペプチド断片)や、それ以外の細胞外に露出したペプチドが含まれる。さらに本発明は、アミノ酸1〜117(例えば配列ID番号153)の範囲にあるエピトープと結合する結合パートナー(例えば抗体)にも関する。
膵臓
糖尿病を始めとする膵臓疾患は、健康上の大きな関心事である。世界中で、人口の5〜10%が何らかの形態の糖尿病を患っていると推定されている。膵臓がんは、がん関連の死因の第5番目である。2002年には、約30,000人のアメリカ人が膵臓がんと診断されたと推定されており、その90%が12ヶ月以内に死亡することになろう。膵臓疾患が広がっているにもかかわらず、正常な膵臓の機能や膵臓疾患の遺伝学ならびに生理学はまだほとんど解明されていない。
膵臓は、外分泌組織と内分泌組織からなる混合腺である。外分泌部分は、この器官の約80〜85%を占めている。外分泌部分は結合組織中隔によって複数の葉に分かれており、それぞれの葉はさらにいくつかの小葉に分かれている。小葉は、分泌細胞からなるブドウのようなクラスターで構成されており、腺房として知られる袋を形成している。腺房は、膵臓の外分泌腺の機能単位である。腺房はすべて小葉間導管へとつながっており、その小葉間導管が合わさって膵臓の大導管を形成している。この大導管は、肝臓からの胆管と合体して共通胆管を形成し、十二指腸に向かって開放している。膵臓の腺房細胞は、膵臓の全体積の80%を超える割合を占めており、胃腸管における消化を助けるさまざまな酵素を分泌する機能を有する。腺房細胞の間には約100万個の島(“ランゲルハンス島”)が散らばっていて膵臓内分泌ホルモンを分泌する。分散している島は、膵臓の全体積の約2%を占めている。
膵臓内分泌細胞の基本的な機能は、タンパク質、炭水化物、脂肪の代謝に関与するある種のホルモンを分泌することである。島から分泌されるそのようなホルモンとしては、例えばインスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド、アミリン、アドレノメジュリン、ガストリン、セクレチン、ペプチド-YYなどが挙げられる。Shimizu他、Endocrin、第139巻、389-396ページ、1998年も参照のこと。島は、約4種類の大細胞と、2種類の小細胞を含んでいる。主要な細胞は、アルファ細胞(グルカゴンを産生)、ベータ細胞(インスリンとアミリンを産生)、デルタ細胞(インスリンとグルカゴンの両方の放出を抑制するソマトスタチンを産生)、F細胞(膵臓ポリペプチドとアドレノメジュリンを産生)である。小細胞は、D1細胞(血管作用性腸ペプチドすなわちVIPを産生)と腸クロム親和性細胞(セロトニンを産生)である。これらの細胞は、例えば形態、ホルモン含量、ポリヌクレオチドの発現パターンによって区別することができる。
膵臓が多彩な代謝シグナルに応答する能力は、多彩な受容体タンパク質を含む発現プロファイルによって与えられる。Gタンパク質結合受容体が以前に膵臓において同定されている。例えば、グルカゴンに対する受容体、セクレチンに対する受容体、CCKに対する受容体(例えばRoettger他、J. Cell Biol.、第130巻、579-590ページ、1995年)、プリンに対する受容体(例えばP2プリノ受容体)、ガストリンに対する受容体、KiSS-1ペプチドに対する受容体(例えばKotani他、J. Biol. Chem.、第276巻、34631-34636ページ、2001年)、アドレノメジュリンに対する受容体(Martinez他、Endocrin、第141巻、406ページ、2000年)、インターロイキンに対する受容体が同定されている。Gタンパク質のサブユニットも膵臓内の場所が特定されている。その中には、以前に嗅覚上皮と関係づけられたGタンパク質が含まれる。例えばZigman他、Endocrin、第133巻、2508-2514ページ、1993年を参照のこと。さらに、膵臓細胞は、ニューロトロピン、ニューロテンシン、インターロイキンの受容体も発現する。
すでに説明したように、膵臓は、血糖値の調節や膵臓消化酵素の合成と放出の調整といったプロセスに加え、膵臓機能に関する生理学的に重要な他のプロセスに関係する多彩な可溶性の代謝ホルモン性シグナルに対する感受性を有する。嗅覚受容体が環境中のにおいとフェロモンを検出する能力とのアナロジーにより、本発明の膵臓GPCRを用い、膵臓を通過する血液中のさまざまなリガンド(例えばペプチド、代謝産物、それ以外の生物学的に活性な分子)を“嗅ぎ出し”たり、そのようなリガンドに対して応答させたりすることができる。生物学的な活性には、例えば、血糖の調節、膵臓によって産生されて分泌されたさまざまなポリペプチド(ホルモン、酵素など)のあらゆる側面の調整、リガンドとの結合、エキソサイトーシス、アミラーゼ(と、膵臓によって産生される他の20種類ほどの消化酵素のうちの任意のもの)の分泌、オートクライン応答、(例えばベータ島細胞の生存における)アポトーシス、酵素原顆粒プロセシング、Gタンパク質結合活性などが含まれる。
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、そのポリペプチドに対するリガンドを利用して、膵臓の疾患や症状に関し、同定、検出、ステージ判定、存在の確認、予後予測、治療、研究などができる。膵臓疾患としては、例えば11q24の欠失または突然変異に伴う異常として、ヤコブセン症候群(OMIM#147791)、嚢胞性線維症、急性および慢性の膵炎、膵臓膿瘍、膵臓偽嚢胞、非アルコール性膵炎、アルコール性膵炎、古典的急性出血性膵炎、慢性石灰化膵炎、家族性遺伝性膵炎、膵臓癌、原発性(特発性)糖尿病(例えばI型(インスリン依存性糖尿病、IDDM)[インスリン欠乏、ベータ細胞の消耗]、II型(インスリン非依存性糖尿病、NIDDM)[インスリン抵抗性、相対的なインスリン欠乏、ベータ細胞の穏やかな消耗])、非肥満性NIDDM、肥満性NIDDM、若年者の成人発症型糖尿病(MODY)、膵島細胞の腫瘍、ランゲルハンス島の散在性過形成、良性腺種、膵島の悪性腫瘍、ランゲルハンス島の機能亢進、高インスリン血症と低血糖症、ゾリンジャー-エリソン症候群、ベータ細胞の腫瘍(インスリノーマ)、アルファ細胞の腫瘍(グルカゴノーマ)、デルタ細胞の腫瘍(ソマトスタチノーマ)、ビポーマ(下痢原性膵島細胞腫瘍)、膵臓がん、膵臓類癌腫、多ホルモン性腫瘍、多発性内分泌腫瘍(MEN)、MEN I(ウェルマー症候群)、MEN II(シップル症候群)、MEN IIIまたはIIb、膵臓内分泌腫瘍などが挙げられる。
本発明による嗅覚GPCRファミリーのメンバーは、その選択性と細胞表面への提示能力を考えると、そのメンバーが内部で発現することになる細胞に関する組織学的研究や、診断、治療といった用途における有用な標的である。抗体とそれ以外のタンパク質結合パートナー(例えばリガンド、アプタマー、小さなペプチドなど)を用い、あらゆる目的で(例えば、イメージング、治療、診断、薬剤のデリバリー、遺伝子治療などを行なうために)薬剤を選択的に組織に到達させることができる。c-erbB-2抗体を乳がんに対して用いるのと同様にして、例えば結合パートナー(例えば抗体)を用いてがんを治療することができる。結合パートナーは、骨髄やリンパ球などを同定するための生検において転移細胞の検出に用いることもできる。遺伝子とその遺伝子によってコードされているポリペプチドを組織工学で使用し、分化プロセスに現われる組織を同定すること、組織に到達させること、(例えば出発材料となる幹細胞の集団から)組織の増殖状態を変化させることなどもできる。有用な抗体とそれ以外の結合パートナーとしては、表14に示したように、ポリペプチドの細胞外露出部分に対して特異的なものが挙げられる。この明細書に記載したどの方法も、生体内、試験管内、生体外で実施することができる。
発現が所定の組織において“優勢である”と記述するとき、この表現は、この組織における遺伝子のmRNAのレベルが、測定を行なった他の組織と比べて最高であることを意味する。発現を観察する場所で“選択的”に発現させることもできる。“選択的に発現した”という表現は、所定のヌクレオチド配列を含む核酸分子が、転写産物になったときにその転写産物を産生した組織または細胞タイプに特徴的であることを意味する。これは、転写産物がその組織だけで発現し、他のタイプの組織では発現していないこと、あるいは転写産物が他の組織と比べてその組織で優先的に、差をもって、より豊富に(例えば少なくとも5倍、10倍、あるいはそれ以上に)発現していることを意味する。
本発明は、膵臓細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、表12の遺伝子に対して特異的なポリヌクレオチドまたは哺乳動物におけるそのホモログと接触させる操作を、そのポリヌクレオチドが上記遺伝子に特異的にハイブリダイズするのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。検出は、適切な任意の方法で行なうことができる。例えばすでに説明した方法やあとで説明する方法のうちの任意のもの、具体的にはノーザン・ブロット法やPCR法を利用する。特異的なポリヌクレオチドとしては、配列ID番号154、155、164、165、169、170、173、174、177、178と、その相補体が挙げられる。
検出は、本発明の遺伝子によってコードされているポリペプチドを特異的に認識する結合パートナー(例えばモノクローナル抗体やポリクローナル抗体)を用いて行なうこともできる。したがって本発明は、膵臓細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、表12の遺伝子または哺乳動物におけるそのホモログによってコードされているポリペプチドに対して特異的な結合パートナー(例えば抗体、Fabフラグメント、一本鎖抗体、アプタマー)と接触させる操作を、その結合パートナーがそのポリペプチドに特異的に結合するのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。タンパク質結合アッセイは、例えば免疫細胞化学、ELISA、ウエスタン・ブロットなどの方法を利用してルーチンとして実施することができる。有用なエピトープとしては、表14に示したような表面に露出するものが挙げられる。
上に説明したように、例えば診断、治療、予後予測を目的として、結合パートナーを用いて膵臓に特異的に薬剤を到達させることができる。薬剤を膵臓細胞に到達させる方法は、例えば、膵臓細胞を、表12の遺伝子に対して特異的な結合パートナーと結合した薬剤と接触させるステップを含むことができ、そのことによって薬剤をその細胞に到達させる。あらゆるタイプの薬剤(例えば治療薬やイメージング剤)を使用することができる。膵臓との接触は、有効な任意の方法で実現することができる。例えば、宿主に対して有効量の薬剤を、経口で、非経口で、局所的に、全身に、静脈内に投与するなどの方法がある。“結合パートナーと結合した薬剤”という表現は、薬剤が標的部位だけに運ばれるようなやり方で薬剤に結合パートナーが付着していることを意味する。結合としては、化学的結合、共有結合、非共有結合(そのような結合で薬剤を標的に到達させるのに十分である場合)、リポソームまたは脂質膜の中への封入、担体(例えばポリマー担体)への付着などが挙げられる。薬剤は、結合パートナーに直接連結させること、あるいは化学的なリンカーまたはスペーサを介して連結させることができる。表12の遺伝子によってコードされているポリペプチドを発現するあらゆる細胞を標的にすることができる。例えば、膵臓前駆細胞、外分泌細胞、内分泌細胞、分泌細胞、腺房細胞、膵島細胞、アルファ細胞、ベータ細胞、デルタ細胞、F細胞、D1細胞、腸クロム親和性細胞などが標的となる。
特定の器官のイメージングは、組織選択的抗体と、造影剤を体内の特定の部位に選択的に向かわせる他の結合パートナーを用いることによって容易に行なうことができる。この方向でさまざまなイメージング法が利用されており、例えばX線、CT、CAT、MRI、超音波、PET、SPECT、シントグラフィック法といった方法が挙げられる。一般に、レポータ剤を結合パートナーに共役または結合させることが可能である。超音波用造影剤を結合パートナー(例えば抗体)と組み合わせたものは、アメリカ合衆国特許第6,264,917号、第6,254,852号、第6,245,318号、第6,139,819号に記載されている。MRI用造影剤(例えば金属イオン封鎖剤、放射性ヌクレオチド、常磁性イオンなど)を選択的標的剤と組み合わせたものも文献に記載されている(例えばアメリカ合衆国特許第6,280,706号、第6,221,334号)。その中に記載されている方法を利用すると、一般に、あらゆる目的のためにパートナーを薬剤と結合させることができる。標識した受容体リガンドを用いた膵臓のイメージングに関しては、Bruehlmeier他、Nucl. Med. Biol.、第29巻、321-327ページ、2002年を参照のこと。本発明の受容体に対する抗体とそれ以外のリガンドも同様に用いることができる。
膵臓細胞(膵臓細胞のタイプの具体例に関しては上を参照のこと)も本発明によって変化させることができる。膵臓細胞を変化させる方法は、例えば、その細胞を、表12の遺伝子または哺乳動物におけるそのホモログを変化させる、あるいはその遺伝子によってコードされているポリペプチド(例えば配列ID番号153、163、168、172、176)の生物学的活性を変化させるのに有効な薬剤と接触させるステップを含んでおり、そのことによって膵臓細胞を変化させる。この明細書全体を通じて使用する“変化”という用語には、刺激、増大、作動、活性化、増幅、阻止、抑制、低減、拮抗、予防、低下、減少などが含まれる。
膵臓細胞の活性または機能を変化させることができる。例えば、血糖の調節、膵臓によって産生されて分泌されたさまざまなポリペプチド(ホルモン、酵素など)のあらゆる側面の調整、リガンドとの結合、エキソサイトーシス、アミラーゼ(と、膵臓によって産生される他の20種類ほどの消化酵素のうちの任意のもの)の分泌、オートクライン応答、(例えばベータ島細胞の生存における)アポトーシスなどを変化させることができる。
本発明は、膵臓機能を評価するためのポリペプチド検出法にも関する。この方法は、表12の遺伝子によってコードされているポリペプチド、その断片、その多型を体液中で検出するステップを含んでおり、その体液中のそのポリペプチドのレベルが膵臓機能の指標となる。膵臓機能テストは膵臓疾患を診断するための1つの方法であり、通常は膵臓が正常に機能しているかどうかを明らかにするために実施する。さまざまなテスト法が一般に利用されている。例えば、体液中に膵臓の酵素(例えばアミラーゼ、血清リパーゼ、血清トリプシン様免疫反応性酵素)が存在しているかどうかを調べるアッセイ、膵臓構造の研究(例えばX線、超音波検査、CTスキャン、血管造影法、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法を利用する)、膵臓機能のテスト(例えばセクレチン-パンクレオチミン(CCK)テスト、ルンド食事テスト、Bz-Ty-PABAテスト、大便中のキモトリプシンなど)などの方法が利用される。表12の遺伝子によってコードされているポリペプチドの検出は、特に、膵臓マーカーが血液、大便、尿、あるいはそれ以外の体液に現われる可能性のある膵炎や膵臓がんなどの疾患を調べる別の評価ツールとなる。他のテストの場合と同様、血液その他の体液中で上記ポリペプチドのレベルが高いことは、膵臓機能が損なわれていることを示している可能性がある。数値は、上に示したような他の膵臓機能マーカーの場合と同様、ルーチンで測定することができる。検出は、体液に含まれる膵臓酵素のテストと同様、例えばポリペプチドに対して特異的な抗体を使用してRIA、ELISA、ウエスタン・ブロットなどによってルーチンで行なうことができる(後述)。
本発明の遺伝子から得られるGPCRプロモータ配列を用い、膵臓細胞において異種遺伝子を選択的に発現させることができる。膵臓細胞において異種ポリヌクレオチドを発現させる方法は、例えば、その異種ポリヌクレオチドと機能上関連したプロモータ配列を含む核酸構造体を膵臓細胞の中で発現させるステップを含むことができ、そのプロモータ配列の選択は、配列ID番号156-161、166、179、180の中から行なう。この構造体は、以下に示す細胞系に加え、一次細胞や、確立された細胞系において発現させることができる。
表12の遺伝子とポリペプチドを利用すると、腎臓の疾患や症状に関し、同定、検出、ステージ判定、存在の確認、予後予測、治療、研究などができる。本発明は、膵臓疾患または膵臓疾患感受性を明らかにする方法であって、例えば、膵臓疾患または膵臓疾患感受性と、膵臓遺伝子複合体の中に存在しているヌクレオチド配列との関係を明らかにするステップを含む方法に関する。膵臓疾患または膵臓疾患感受性とヌクレオチド配列の関係としては、例えば、DNAマーカー(例えば遺伝子、VNTR、多型、ESTなど)と特定の疾患状態の相関(または関係)を確立(発見)することが挙げられる。関係が明らかになると、そのDNAマーカーを診断に使用し、薬剤の標的にすることができる。
膵臓遺伝子複合体の任意の領域をDNAマーカー供給源(例えばPGCに存在しているヌクレオチド配列)として用いることができる。例えば、TMD0986、XM 061780(TMD0987)、XM 061781(TMD0353)、XM 061784(TMD0989)、XM 061785(TMD058)、その任意の部分、イントロン、遺伝子間の領域、11q24のほぼ29160〜29310kbからの任意のDNA、NT 009215などが、そのような領域である。
ヒト連鎖地図を構成することにより、11q24内の領域と膵臓疾患の関係を確立することができる。一般に、多型分子マーカー(例えばSTRP、SNP、RFLP、VNTR)がその領域内で同定された後、マーカー間の連鎖と地図上での距離が確立され、次いで表現型と個々のさまざまな分子マーカーの間の連鎖が確立される。地図は、個々のファミリー、選択した集団、患者集団などについて作ることができる。一般に、そのための方法は、疾患に関連するマーカーを同定(例えば疾患と連鎖したファミリーにおける多型を同定)した後、周囲のDNAを分析してその表現型にとって重要な遺伝子を同定する操作を含んでいる。
網膜選択遺伝子
本発明は、嗅覚Gタンパク質結合受容体(GPCR)ファミリーと一致する配列をもつ多数回膜貫通ポリペプチドであるNM 013941(GPCR181またはOR10C1)に関する。NM 013941は、他のGPCRと同様、配列ID番号182のアミノ酸がほぼ20〜42、54〜76、91〜113、134〜156、190〜212、233〜255、265〜287の位置に7つの膜貫通ドメインを持っている。このNM 013941は、染色体バンド6p21.31〜22.2にほぼ位置する。その近くに位置するGPCRが他にいくつか存在している(例えばOR2B3、AL022727;OR2J3、AL022727)。NM 013941は脳組織において多く発現し、心臓、脳下垂体、皮膚ではそれよりも低いレベルであり、大腸、小腸、腎臓、リンパ球、乳腺ではようやく検出可能なレベルである。神経組織では、NM 013941は網膜において選択的に発現したが、脳組織の他の領域では検出されなかった。NM 013941は、網膜において選択的に発現するため、例えば幹細胞培養物や生検サンプルにおいて網膜組織のマーカーとして役に立つとともに、NM 013941が発現する網膜や細胞に関係するあらゆる症状、疾患、異常、応用に関する診断、予後予測、治療、研究のためのツールとして役立つ。NM 013941には、ヒトと哺乳動物の両方におけるそのホモログが含まれる(例えば嗅覚受容体MOR263-6に似たマウスのXM 111729)。配列ID番号181と182はNM 013941の具体的な1つの対立遺伝子を表わすが、本発明は他の対立遺伝子にも関係し、その中には自然に発生する多型(すなわち哺乳動物の集団において同定されるヌクレオチド配列の多型)などが含まれる。
染色体上でNM 013941が含まれる領域には、網膜の機能に関する多数の遺伝子が含まれている。例えば、グアニル酸シクラーゼアクチベータ-1Aに突然変異が起こった結果であると思われる網膜錐体ジストロフィ(OMIM 602093)(例えばPayne他、Human Molec. Genet.、第7巻、273-277ページ、1998年)、杆体外節タンパク質-1と相同な特別な網膜タンパク質における欠陥であると思われる網膜緩慢変性(OMIM 179605)、色素性網膜炎-7、樽状タンパク質TULP1の突然変異と関係している色素性網膜炎-14(OMIM 600132)(例えばBanerjee他、Nature Genet.、第18巻、177-179ページ、1998年;Hagstrom他、Nature Genet.、第18巻、174-176ページ、1998年)などである。したがってこの領域は、目の機能にとって重要であるように思われる。
本発明による嗅覚GPCRファミリーのメンバーは、その選択性と細胞表面への提示能力を考えると、そのメンバーが内部で発現することになる細胞に関する組織学的研究や、診断、治療といった用途における有用な標的である。抗体とそれ以外のタンパク質結合パートナー(例えばリガンド、アプタマー、小さなペプチドなど)を用い、あらゆる目的で(例えば、イメージング、治療、診断、薬剤のデリバリー、遺伝子治療などを行なうために)薬剤を選択的に組織に到達させることができる。c-erbB-2抗体を乳がんに対して用いるのと同様にして、例えば結合パートナー(例えば抗体)を用いて網膜腫瘍(例えば網膜芽腫)を治療することができる。HSV-TKを用いた網膜芽腫の治療に関しては、例えばHayashi他、Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.、第40巻、265-272ページ、1999年を参照のこと。網膜細胞への遺伝子の導入は、NM 013941に対して特異的な抗体をその細胞の二重層の中に組み込むことによって実現できる。WuとWu、J. Biol. Chem.、第262巻、4429-4432ページ、1987年も参照のこと。
遺伝子とその遺伝子によってコードされているポリペプチドを組織工学で使用し、分化プロセスに現われる組織を同定すること、組織に到達させること、(例えば出発材料となる幹細胞の集団からの)組織の増殖を変化させることなどもできる。有用な抗体を始めとする結合パートナーとしては、ポリペプチドの細胞外露出部分に対して特異的なものが挙げられる。この明細書に記載したどの方法も、生体内、試験管内、生体外で実施することができる。
発現が所定の組織において“優勢である”と記述するとき、この表現は、この組織における遺伝子のmRNAのレベルが、測定を行なった他の組織と比べて最高であることを意味する。発現を観察する場所で“選択的”に発現させることもできる。“選択的に発現した”という表現は、所定のヌクレオチド配列を含む核酸分子が、転写産物になったときにその転写産物を産生した組織または細胞タイプに特徴的であることを意味する。これは、転写産物がその組織だけで発現し、他のタイプの組織では発現していないこと、あるいは転写産物が他の組織と比べてその組織で優先的に、差をもって、より豊富に(例えば少なくとも5倍、10倍、あるいはそれ以上に)発現していることを意味する。
本発明は、網膜細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、NM 013941(例えば配列ID番号181)に対して特異的なポリヌクレオチドまたは哺乳動物におけるそのホモログと接触させる操作を、そのポリヌクレオチドが上記遺伝子に特異的にハイブリダイズするのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。検出は、適切な任意の方法で行なうことができる。例えばすでに説明した方法やあとで説明する方法のうちの任意のもの、具体的にはノーザン・ブロット法やPCR法を利用する。特異的なポリヌクレオチドとしては、配列ID番号183、184と、その相補体が挙げられる。
検出は、本発明の遺伝子によってコードされているポリペプチドを特異的に認識する結合パートナー(例えばモノクローナル抗体やポリクローナル抗体)を用いて行なうこともできる。したがって本発明は、網膜細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、NM 013941(例えば配列ID番号182)または哺乳類におけるそのホモログによってコードされているポリペプチドに対して特異的な結合パートナー(例えば抗体、Fabフラグメント、一本鎖抗体、アプタマー)と接触させる操作を、その結合パートナーがそのポリペプチドに特異的に結合するのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。タンパク質結合アッセイは、例えば免疫細胞化学、ELISA、ウエスタン・ブロットなどの方法を利用してルーチンとして実施することができる。有用なエピトープとしては、表面に露出するものが挙げられる。
上に説明したように、例えば診断、治療、予後予測を目的として、結合パートナーを用いて特に網膜に薬剤を到達させることができる。薬剤を網膜細胞に到達させる方法は、例えば、網膜細胞を、NM 013941(配列ID番号182)に対して特異的な結合パートナーと結合した薬剤と接触させるステップを含むことができ、そのことによって薬剤をその細胞に到達させる。あらゆるタイプの薬剤(例えば治療薬やイメージング剤)を使用することができる。網膜細胞との接触は、有効な任意の方法で実現することができる。例えば、宿主に対して有効量の薬剤を、経口で、非経口で、局所的に、全身に、静脈内に投与するなどの方法がある。“結合パートナーと結合した薬剤”という表現は、薬剤が標的部位だけに運ばれるようなやり方で薬剤に結合パートナーが付着していることを意味する。結合としては、化学的結合、共有結合、非共有結合(そのような結合で薬剤を標的に到達させるのに十分である場合)、リポソームまたは脂質膜の中への封入、担体(例えばポリマー担体)への付着などが挙げられる。薬剤は、結合パートナーに直接連結させること、あるいは化学的なリンカーまたはスペーサを介して連結させることができる。NM 013941によってコードされているポリペプチドを発現するあらゆる細胞を標的にすることができる。例えば、色素上皮細胞、光受容体細胞、錐体、杆体、両極細胞、神経節細胞などが標的となる。
特定の器官のイメージングは、組織選択的抗体と、造影剤を体内の特定の部位に選択的に向かわせる他の結合パートナーを用いることによって容易に行なうことができる。この方向でさまざまなイメージング法が利用されており、例えばX線、CT、CAT、MRI、超音波、PET、SPECT、シントグラフィック法といった方法が挙げられる。一般に、レポータ剤を結合パートナーに共役または結合させることが可能である。超音波用造影剤を結合パートナー(例えば抗体)と組み合わせたものは、アメリカ合衆国特許第6,264,917号、第6,254,852号、第6,245,318号、第6,139,819号に記載されている。MRI用造影剤(例えば金属イオン封鎖剤、放射性ヌクレオチド、常磁性イオンなど)を選択的標的剤と組み合わせたものも文献に記載されている(例えばアメリカ合衆国特許第6,280,706号、第6,221,334号)。その中に記載されている方法を利用すると、一般に、あらゆる目的のためにパートナーを薬剤と結合させることができる。
網膜細胞(網膜細胞のタイプの具体例に関しては上を参照のこと)を本発明によって変化させることもできる。網膜細胞を変化させる方法は、例えば、その細胞を、NM 013941または哺乳動物におけるそのホモログを変化させる、あるいはこの遺伝子によってコードされているポリペプチド(例えば配列ID番号182)の生物学的活性を変化させるのに有効な薬剤と接触させるステップを含んでおり、そのことによって網膜細胞を変化させる。この明細書全体を通じて使用する“変化”という用語には、刺激、増大、作動、活性化、増幅、阻止、抑制、低減、拮抗、予防、低下、減少などが含まれる。
網膜細胞の活性または機能は変化させることができる。例えば、光受容、光変換、杆体の励起、錐体の励起、ビタミンAの代謝、レチナール、ロドプシン、他の機能性分子、cGMPの結合と加水分解、ナトリウム・チャネルにおける流れ、膜電位、ホスホジエステラーゼの活性、Gタンパク質の活性と結合、ビタミンAのプロセシング、ナトリウム・ポンプの活性、カルシウムの流れを変化させることができる。刺激に対する網膜細胞の応答も変化させることができる。例えば、NM 013941に対するリガンド、光、イオンのレベル、第2メッセンジャーのレベルなどを変化させることができる。
プロモータ配列を用い、網膜細胞において異種遺伝子を選択的に発現させることができる。網膜細胞において異種ポリヌクレオチドを発現させる方法は、例えば、その異種ポリヌクレオチドと機能上関連したプロモータ配列核酸構造体を網膜細胞において発現させるステップを含むことができ、そのプロモータ配列は、例えばゲノムNT 007592上のNM 013941から得られる。この構造体は、以下に示す細胞系に加え、一次細胞や、確立された細胞系において発現させることができる。
網膜
網膜は、目の裏側に位置する2層の構造体であり、視覚にとって重要な第1の器官である。外側色素層は色素上皮細胞からなり、光を吸収して目の中で光が散乱しないようにするとともに、光受容体細胞が必要とするビタミンAを貯蔵する。内側神経層は、主に3つのタイプの細胞からなる。すなわち光受容体細胞、両極細胞、神経節細胞である。光刺激によって発生した局所電流は、光受容体細胞から両極細胞へと広がり、次いで最も内側にある神経節細胞に到達する。視神経円板は、網膜神経節軸索の出口となる部位であり、軸索は束ねられて視神経につながっている。
光受容体は、網膜の光感受性細胞である杆体と錐体からなる。それぞれの杆体と錐体は、外節と呼ばれる特殊化した線毛を作り出し、その中に光変器を備えている。杆体は、特殊な光吸収視覚色素であるロドプシンを含んでいる。ヒトには3種類の錐体があり、そのそれぞれが異なる視覚色素を発現することを特徴とする。すなわち、青錐体色素、緑錐体色素、赤錐体色素である。それぞれのタイプの視覚色素タンパク質は、異なる波長の光を最もよく吸収するようになっている。杆体のロドプシンは、暗所視(薄暗い光)に役立つのに対し、錐体の色素は明所視(明るい光)にとって重要である。赤、青、緑の色素も色覚の基礎を形成する。
NM 013941を利用すると、網膜の疾患や症状に関し、同定、検出、ステージ判定、存在の確認、予後予測、治療、研究などができる。疾患には、上記の基本的な形態的要素(例えば外側細胞層と内側細胞層)、視神経、網膜に影響を与える疾患が含まれる。疾患としては、例えば、網膜変性、色素性網膜炎、バルデー-ビードル症候群、バッセン-コルンツヴァイク症候群(無β-リポタンパク血症)、ベスト病(卵黄様網膜変性)、コロイデミア、脳回移転状網膜脈絡膜萎縮、先天性黒内症、レフスム症候群、シュタルガルト病、アッシャー症候群、黄斑変性(乾式形態と湿式形態)、糖尿病性網膜症、末梢硝子体網膜症、光性網膜症、外科手術による網膜症、ウイルス性網膜症(例えばエイズと関係のあるHIV網膜症)、虚血性網膜症、網膜剥離、外傷網膜症、視神経障害、視神経炎、虚血性視神経障害、レーバー視神経障害、ブルーフ膜疾患、緑内障、がん、網膜芽腫、がん関連網膜症症候群(CAR症候群)、メラノーマ関連網膜症(MAR)などが挙げられる。NM 013941を単独で、あるいは従来からあるステージ決定スキームや分類スキームと組み合わせて使用し、本発明の症状や疾患のステージを決定したり分類したりすることもできる。
脾臓遺伝子クラスター
本発明は、染色体バンド11q12.2に位置する膜貫通GPCRタイプの受容体のクラスターに関する。本発明の遺伝子は、脾臓(例えば図10、レーン19)(したがって“脾臓遺伝子”クラスター)のほか、免疫系と細網内皮系(RES)の他の組織において優勢に発現するため、染色体のこの領域が、脾臓、リンパ様細胞、および/または細網内皮の機能に関する独自の遺伝子複合体となっている。TMD1030とTMD0621は、脾臓組織において多く発現するが、他の組織でのレベルは高くない。TMD1029とTMD1028は、脾臓に加えて肝臓とリンパ球においても発現が大きい。この遺伝子複合体と、染色体でこの遺伝子複合体を含む領域は、脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織に対する選択性を有するため、脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織の機能評価と、診断、予後予測、治療、研究に役立つ。遺伝子に関する情報を表15〜19にまとめてある。
この遺伝子複合体の空間的構造を図11に示してある。この複合体は、(動原体に最も近い末端部でTMD1030の位置にある)ESTマーカーであるG62658、SHGC-82134などから(動原体から最も遠い末端部でTMD0621の位置にある)SHGC-154002、SHGC-9433などまでの少なくとも約100kbにわたっている。これら遺伝子はすべて、転写の方向が同じである。上方領域に位置するTMD1799(XM 166849)(配列ID番号193〜194)は、リンパ球において非常に多く発現するが、脾臓ではほんのわずかしか発現しない。これは、リンパ球における発現が遺伝子複合体の周辺部において優勢である可能性のあることを示している。下方領域のTMD1027(XM 166856)(配列ID番号195〜196)では、脾臓の発現はほとんど消えるが、リンパ節での発現は非常に多くなる。本発明には、この領域全体とその任意の部分が含まれる。例えば本発明には、その領域に含まれていて、この明細書に記載の観察された組織特異性を与える任意のDNA断片が含まれる。
この遺伝子複合体は、脾臓機能、免疫機能、RES機能に関係する。脾臓は胴体の上方左側の領域に位置する。成人では重さが約90〜180グラムであり、サイズは約15×7.5cmである。脾臓は解剖学的、機能的に見て、赤色脾髄と白色脾髄という2つの別々の領域に分けられる。赤色脾髄は、細網内皮細胞が並んでいる結合組織に織り込まれた血管(“脾髄索”)を含んでいる。赤色脾髄は血液濾過機能を持っており、オプソニン処理された細胞を除去し、異常な赤血球細胞を捕捉する。赤色脾髄は、血小板を始めとする血液細胞のリザーバでもある。赤色脾髄は、胎児では造血機能を持っている。赤色脾髄の内部には、白色脾髄として知られるリンパ様組織がある。抗体が白色脾髄の内部で作られる。B細胞とT細胞は、他のリンパ組織と同様、白色脾髄の内部で成熟し、抗原の提示とリンパ球の成熟に関与する。白色脾髄は、動脈周囲リンパ鞘の周囲でクラスターを形成しており、小胞と辺縁帯で構成されている。ナイーブB細胞は、一次小胞の中、二次小胞内の記憶細胞、マクロファージ、樹状細胞の中、辺縁帯内のマクロファージとB細胞の中に存在している。インテグリンLFA-1とインテグリンα4-β1は、白色脾髄の辺縁帯にB細胞が局在することに関与する(LuとCyster、Science、第297巻、409ページ、2002年)。
網膜上皮系(RES)は、血液からの粒子除去に関係する多器官食細胞系である。RESは脾臓と肝臓からなり、不活性な粒子と染料を封鎖する能力を有する。RESの細胞としては、マクロファージ、肝臓クップファー細胞、肝臓、脾臓、骨髄の洞様血管細胞のライニングとなる内皮細胞、リンパ組織と骨髄組織の細網細胞などが挙げられる。
本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、そのポリペプチドに対するリガンドを利用し、脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織の疾患や症状に関し、同定、検出、ステージ判定、存在の確認、予後予測、治療、研究などができる。疾患としては、例えば巨脾腫症、脾機能亢進症、溶血性貧血、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、サラセミアメジャー、サラセミアマイナー、自己免疫性溶血性貧血、血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、慢性リンパ性白血病または全身性ループスエリテマトーデスに付随する免疫性血小板減少症、TTP、白血病、リンパ腫、原発性腫瘍と転移性腫瘍、脾臓嚢腫、感染症、炎症性疾患、貧血、血液がんなどが挙げられる。他の具体例に関しては表19を参照のこと。
本発明による嗅覚GPCRファミリーのメンバーは、その選択性と細胞表面への提示能力を考えると、そのメンバーが内部で発現することになる細胞に関する組織学的研究や、診断、治療といった用途における有用な標的である。抗体とそれ以外のタンパク質結合パートナー(例えばリガンド、アプタマー、小さなペプチドなど)を用い、あらゆる目的で(例えば、イメージング、治療、診断、薬剤のデリバリー、遺伝子治療などを行なうために)薬剤を選択的に組織に到達させることができる。c-erbB-2抗体を乳がんに対して用いるのと同様にして、例えば結合パートナー(例えば抗体)を用いてがんを治療することができる。結合パートナーは、生検において転移細胞の検出に用いることもできる。遺伝子とその遺伝子によってコードされているポリペプチドを組織工学で使用し、分化プロセスに現われる組織を同定すること、組織に到達させること、(例えば出発材料となる幹細胞の集団から)組織の増殖状態を変化させることなどもできる。有用な抗体とそれ以外の結合パートナーとしては、ポリペプチドの細胞外露出部分に対して特異的なものが挙げられる。表16を参照のこと。この明細書に記載したどの方法も、生体内、試験管内、生体外で実施することができる。
発現が所定の組織において“優勢である”と記述するとき、この表現は、この組織における遺伝子のmRNAのレベルが、測定を行なった他の組織と比べて最高であることを意味する。発現を観察する場所で“選択的”に発現させることもできる。“選択的に発現した”という表現は、所定のヌクレオチド配列を含む核酸分子が、転写産物になったときにその転写産物を産生した組織または細胞タイプに特徴的であることを意味する。これは、転写産物がその組織だけで発現し、他のタイプの組織では発現していないこと、あるいは転写産物が他の組織と比べてその組織で優先的に、差をもって、より豊富に(例えば少なくとも5倍、10倍、あるいはそれ以上に)発現していることを意味する。TMD1030とTMD0621は、脾臓組織において優勢かつ選択的に発現する。
この明細書に記載した選択的に発現したポリヌクレオチドの発現パターンは、組織が示す独自のパターンであるという意味で“フィンガープリント”と記述することができる。フィンガープリントと同様、発現パターンを独自の識別子として用いて組織サンプルの状態を特徴づけることができる。この明細書に記載した発現配列のリストは、そのような組織発現プロファイルの一例である。このリストは、サンプルを比較したりサンプルの特徴を明らかにしたりする際の基準として用いることができる。組織のフィンガープリントにはいろいろな用途がある。例えば、未知の組織を分類したり、転移細胞の出身地を明らかにしたり、組織の生理学的状態を評価したり、組織に対する特定の治療法の効果を調べたり、興味の対象である組織に対する化合物の毒性を評価したりするのに用いることができる。
例えばこの明細書に記載した組織選択的ポリヌクレオチドは、正常組織が発現する遺伝子の配置を表わす。毒素が組織に与える影響を明らかにするには、毒素に曝露する前(“対照サンプル”)と、毒素への曝露後の1つ以上の時点(“実験サンプル”)に組織サンプルを採取するとよい。複数の組織選択的プローブからなるアレイを用いると、対照サンプルと実験サンプルの両方について発現パターンを評価することができる。あとで詳しく説明するように、適切な任意の方法を利用することができる。例えば、複数の組織選択的遺伝子が狭い面積上のアドレスがわかっている固定位置に配置されたDNAマイクロアレイを調製するとよい。サンプルから単離したRNAを逆転写酵素と放射性ヌクレオチドを用いて標識し、アレイにハイブリダイズさせた後、検出システムを用いて発現レベルを測定することができる。数種類の情報を取り出すことができる。すなわち、発現しているかいないかや、対応する発現レベルといった情報である。正常組織は、組織選択的プローブによって表わされる実質的にすべての遺伝子を発現することが予想される。ある遺伝子が発現しているかどうかと、そのレベルが正常な対照のレベルに達しているかどうかを明らかにするためには、さまざまな実験条件を正常組織と比較するとよい。
この明細書に記載した配列によって表わされる完全な遺伝子セットの発現プロファイルが最も多く情報を含んでいる可能性があるが、完全ではないコレクションからの発現情報を含むフィンガープリントも有用である。不完全な指紋が個人を特定するのに十分な渦巻、弓状紋、ループ、隆起部のパターンを含んでいる可能性があるのと同様、不完全な細胞発現フィンガープリントも、サンプルに関する有用で独自の同定情報やそれ以外の情報を提供するのに十分である可能性がある。さらに、集団が不均質であり、組織の個々の生理学的状態には差があるため、組織の“正常な”発現プロファイルは、全体の発現パターンを変化させることはなくともサンプル間で異なることが予想される。こうした個別の違いがある結果として、それぞれの遺伝子は、脾臓で選択的に発現するとはいえ、その組織を識別するのに十分なだけ常時発現しているとは限らない。したがってこの明細書に記載したどの方法においても、遺伝子群をグループとして、あるいは一度に使用するとよい。
本発明は、脾臓細胞、リンパ様細胞、および/または細網内皮細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、TMD1030(XM 166853)、TMD1029(XM 166854)、TMD1028(XM 166855)、TMD0621(XM 166205)のいずれか、または哺乳動物におけるそのホモログに対して特異的なポリヌクレオチドと接触させる操作を、そのポリヌクレオチドが上記遺伝子に特異的にハイブリダイズするのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。検出は、適切な任意の方法で行なうことができる。例えばすでに説明した方法やあとで説明する方法のうちの任意のもの、具体的にはノーザン・ブロット法やPCR法を利用する。特異的なポリヌクレオチドとしては、表17に示した配列ID番号197〜204と、その相補体が挙げられる。
検出は、本発明の遺伝子によってコードされているポリペプチドを特異的に認識する結合パートナー(例えばモノクローナル抗体やポリクローナル抗体)を用いて行なうこともできる。したがって本発明は、脾臓細胞、リンパ様細胞、および/または細網内皮細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、本発明のポリヌクレオチドまたは哺乳動物におけるそのホモログによってコードされているポリペプチドに対して特異的な結合パートナー(例えば抗体、Fabフラグメント、一本鎖抗体、アプタマー)と接触させる操作を、その結合パートナーがそのポリペプチドに特異的に結合するのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。タンパク質結合アッセイは、例えば免疫細胞化学、ELISA、ウエスタン・ブロットなどの方法を利用してルーチンとして実施することができる。有用なエピトープとしては、表面に露出するものが挙げられる。検出は、例えば脾臓が損傷したり劣化しつつあることが疑われる場合に脾臓の完全性を評価するのに役立つ。本発明のポリペプチドが体液(例えば血液)に出現するというのは、脾臓の損傷(例えば腫瘍および/またはアポトーシスに関わる変化)を示している可能性がある。
上に説明したように、例えば診断、治療、予後予測を目的として、結合パートナーを用いて脾臓細胞、リンパ様細胞、および/または細網内皮細胞に特異的に薬剤を到達させることができる。薬剤を脾臓細胞、リンパ様細胞、および/または細網内皮細胞に到達させる方法は、例えば、脾臓細胞、リンパ様細胞、および/または細網内皮細胞を、TMD1030(XM 166853)、TMD1029(XM 166854)、TMD1028(XM 166855)、TMD0621(XM 166205)のいずれかによってコードされているポリペプチドに対して特異的な結合パートナーと結合した薬剤と接触させるステップを含むことができ、そのことによって薬剤をその細胞に到達させる。あらゆるタイプの薬剤(例えば治療薬やイメージング剤)を使用することができる。脾臓細胞、リンパ様細胞、および/または細網内皮細胞との接触は、有効な任意の方法で実現することができる。例えば、宿主に対して有効量の薬剤を、経口で、非経口で、局所的に、全身に、静脈内に投与するなどの方法がある。“結合パートナーと結合した薬剤”という表現は、薬剤が標的部位だけに運ばれるようなやり方で薬剤に結合パートナーが付着していることを意味する。結合としては、化学的結合、共有結合、非共有結合(そのような結合で薬剤を標的に到達させるのに十分である場合)、リポソームまたは脂質膜の中への封入、担体(例えばポリマー担体)への付着などが挙げられる。薬剤は、結合パートナーに直接連結させること、あるいは化学的リンカーまたはスペーサを介して連結させることができる。TMD1030(XM 166853)、TMD1029(XM 166854)、TMD1028(XM 166855)、TMD0621(XM 166205)のいずれかによってコードされているポリペプチドを発現するあらゆる細胞を標的にすることができる。例えば、細網内皮細胞、マクロファージ、クップファー細胞、リンパ球、Bリンパ球、Tリンパ球などが標的となる。
抗体を(単独で、あるいは活性剤と結合させて)使用することにより、脾臓その他の組織を除去することができる。例えば脾摘出が適応である疾患(例えば免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、血液細胞疾患、骨髄増殖性疾患、腫瘍、脾機能亢進症など)では、TMD1030とTMD0621に対する抗体を用いて脾臓組織を除去すること、あるいは脾臓の機能をブロックすることができる。
特定の器官のイメージングは、組織選択的抗体と、造影剤を体内の特定の部位に選択的に向かわせる他の結合パートナーを用いることによって容易に行なうことができる。この方向でさまざまなイメージング法が利用されており、例えばX線、CT、CAT、MRI、超音波、PET、SPECT、シントグラフィック法といった方法が挙げられる。一般に、レポータ剤を結合パートナーに共役または結合させることが可能である。超音波用造影剤を結合パートナー(例えば抗体)と組み合わせたものは、アメリカ合衆国特許第6,264,917号、第6,254,852号、第6,245,318号、第6,139,819号に記載されている。MRI用造影剤(例えば金属イオン封鎖剤、放射性ヌクレオチド、常磁性イオンなど)を選択的標的剤と組み合わせたものも文献に記載されている(例えばアメリカ合衆国特許第6,280,706号、第6,221,334号)。その中に記載されている方法を利用すると、一般に、あらゆる目的のためにパートナーを薬剤と結合させることができる。コピー標識した受容体リガンドを用いた膵臓のイメージングに関しては、Bruehlmeier他、Nucl. Med. Biol.、第29巻、321-327ページ、2002年を参照のこと。本発明の受容体に対する抗体とそれ以外のリガンドも同様に用いることができる。
細胞(脾臓細胞、リンパ様細胞、および/または細網内皮細胞)を本発明によって変化させることもできる。脾臓細胞、リンパ様細胞、および/または細網内皮細胞を変化させる方法は、例えば、その細胞を、TMD1030(XM 166853)、TMD1029(XM 166854)、TMD1028(XM 166855)、TMD0621(XM 166205)のいずれかまたは哺乳動物におけるそのホモログを変化させる、あるいはこれら遺伝子によってコードされているポリペプチド(例えば配列ID番号185〜192)の生物学的活性を変化させるのに有効な薬剤と接触させるステップを含んでおり、そのことによって脾臓細胞、リンパ様細胞、および/または細網内皮細胞を変化させる。この明細書全体を通じて使用する“変化”という用語には、刺激、増大、作動、活性化、増幅、阻止、抑制、低減、拮抗、予防、低下、減少などが含まれる。
脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織のあらゆる活性または機能を変化させることができる。例えば、免疫調節(例えば抗原の提示、抗体の産生と分泌、ホルモン応答と細胞応答などの調節)、赤血球細胞の封鎖と除去、微生物と粒子状抗原の血液からの清掃、辺縁帯またはそれ以外の免疫区画やRES区画への移動などを変化させることができる。本発明は、脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織の機能を評価するためのポリペプチドの検出方法であって、例えば、TMD1030(XM 166853)、TMD1029(XM 166854)、TMD1028(XM 166855)、TMD0621(XM 166205)のいずれかによってコードされているポリペプチド、その断片、その多型を体液中で検出するステップを含んでおり、その体液中のそのポリペプチドのレベルが脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織の機能の指標となる方法にも関する。脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織の機能のテストは、脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織の疾患を診断するための1つの方法であり、通常は脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織が正常に機能しているかどうかを明らかにするために実施する。さまざまなテスト法が一般に利用されている。例えば、99Tc-コロイド肝臓-脾臓スキャン、コンピュータ・トモグラフィ、左上四分円の超音波スキャン、MRI、肝臓酵素などで調べる。
TMD1030(XM 166853)、TMD1029(XM 166854)、TMD1028(XM 166855)、TMD0621(XM 166205)のいずれかによってコードされるポリペプチドの検出は、特に、そのポリペプチドが血液、大便、尿や、これら以外の体液に現われる可能性のある巨脾腫症、脾機能亢進症、壊れた脾臓などの疾患における別の評価ツールとなる。他のテストの場合と同様、血液その他の体液中で上記ポリペプチドのレベルが高いことは、脾臓細胞、リンパ様細胞、および/または細網内皮細胞の機能が損なわれていることを示している可能性がある。数値は、上に示したような他のマーカーの場合と同様、ルーチンで測定することができる。検出は、例えばポリペプチドに対して特異的な抗体を使用してRIA、ELISA、ウエスタン・ブロットなどによってルーチンで行なうことができる(後述)。
プロモータ配列を用い、細胞において異種遺伝子を選択的に発現させることができる。細胞、例えば脾臓細胞、リンパ様細胞、および/または細網内皮細胞において異種ポリヌクレオチドを発現させる方法は、例えば、その異種ポリヌクレオチドと機能上関連したプロモータ配列を含む核酸構造体を脾臓細胞、リンパ様細胞、および/または細網内皮細胞において発現させるステップを含むことができ、そのプロモータ配列は、配列ID番号205〜213の中から選択される。この構造体は、以下に示す細胞系に加え、一次細胞や、確立された細胞系において発現させることができる。
本発明の遺伝子とポリペプチドを利用し、上記の脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織の疾患や症状に関し、同定、検出、ステージ判定、存在の確認、予後予測、治療、研究などができる。本発明は、疾患または疾患感受性の遺伝子的基礎を明らかにするための方法であって、例えば、脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織の疾患、または脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織の疾患に対する感受性が本発明の遺伝子複合体(例えば11q12.2にある遺伝子複合体に存在するヌクレオチド配列)と関係していることを明らかにするステップを含む方法に関する。脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織の疾患またはその疾患に対する感受性とヌクレオチド配列の関係としては、例えば、DNAマーカー(例えば遺伝子、VNTR、多型、ESTなど)と特定の疾患状態の相関(または関係)を確立(発見)することが挙げられる。関係が明らかになると、そのDNAマーカーを診断に使用し、薬剤の標的にすることができる。
遺伝子の任意の領域(例えば、エキソン、イントロン、遺伝子間領域)、あるいは染色体領域11q12.2にある本発明の遺伝子クラスターからの任意のDNAなどをDNAマーカーの供給源として用いることができる。
ヒト連鎖地図を構成することにより、遺伝子と、脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織の疾患の関係を確立することができる。一般に、多型分子マーカー(例えばSTRP、SNP、RFLP、VNTR)がその領域内で同定された後、マーカー間の連鎖と地図上での距離が確立され、次いで表現型と個々のさまざまな分子マーカーの間の連鎖が確立される。地図は、個々のファミリー、選択した集団、患者集団などについて作ることができる。一般に、そのための方法は、疾患に関連するマーカーを同定(例えば疾患と連鎖したファミリーにおける多型を同定)した後、周囲のDNAを分析してその表現型にとって重要な遺伝子を同定する操作を含んでいる。
本発明は、脾臓組織、リンパ様組織、および/または細網内皮組織においてポリヌクレオチドを発現させる方法であって、例えば、発現制御配列と機能上関連したポリヌクレオチドを、標的細胞の染色体位置11q12.2にある脾臓、リンパ様、および/または細網内皮遺伝子複合体に挿入するステップと、その細胞を、上記ポリヌクレオチドを発現させるのに効果的な条件下で増殖させるステップを含む方法に関する。
興味の対象であるポリヌクレオチドは、適切な任意の方法で標的となる染色体領域に挿入することができる。方法としては、例えば、遺伝子ターゲティング法(相同的組み換えなど)やランダム挿入法(この方法では、形質転換された細胞を次にスクリーニングして染色体の望む部位に挿入する)がある。染色体工学による方法については、例えば後出のトランスジェニック動物のセクションでさらに詳しく説明する。“脾臓、リンパ様、および/または細網内皮遺伝子複合体”という表現は、染色体の領域のうちで本発明による遺伝子(例えばTMD1030(XM 166853)、TMD1029(XM 166854)、TMD1028(XM 166855)、TMD0621(XM 166205))のクラスターが位置する領域を意味する。発現可能なポリヌクレオチド(例えばプロモータ配列と機能上関連したポリヌクレオチド)をこの領域に挿入すると、遺伝子クラスターに特徴的な組織発現選択性が生じる。興味の対象である任意のポリヌクレオチド(例えばポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド、アンチセンス・ポリヌクレオチドなど)をこの染色体領域に挿入することができる。
染色体の標的位置に挿入されたポリヌクレオチドを含む細胞を試験管内または生体(例えばトランスジェニック動物)内で利用することができる。細胞は、ポリヌクレオチドを発現させるのに適した条件下で増殖させる。この条件は、細胞の環境(例えば組織培養細胞)やトランスジェニック動物の形態によって変化する。
膵臓膜タンパク質遺伝子
本発明は、膵臓膜タンパク質遺伝子、その遺伝子によってコードされているポリペプチド、そのポリペプチドに対する抗体と特異的結合パートナー、これらを応用した研究、診断、ドラッグ・デリバリー、治療、臨床医学、法科学と法医学などのすべての側面に関する。ポリヌクレオチドとポリペプチドには多彩な用途があり、例えば分子マーカー、薬剤の標的のほか、本発明の遺伝子に関連する疾患や症状(例えば膵臓がん、糖尿病、膵炎と、特に膵臓とその機能に関する他の疾患)の検出、診断、ステージ判定、モニター、予後判断、予防、治療、素因判定などに有効である。膵臓組織と生理学上関係する経路において発現する特定の遺伝子や遺伝子群を同定すると、それが機能する経路や疾患への過程を明らかにし、その経路において診断、治療、臨床に関して役に立つ標的を浮かび上がらせることができる。本発明は、ポリヌクレオチドとそれに関係する産物(タンパク質、抗体など)をビジネスやコンピュータ関係の方法で利用する方法(例えばそのような産物を販売したり広告したりすることを目的として宣伝、ディスプレイ、提供、販売したり、ライセンス契約したりする方法)にも関する。
膵臓の機能、構造、疾患についてはすでに説明した。本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、そのポリペプチドに対するリガンドを利用し、膵臓の疾患や症状に関し、同定、検出、ステージ判定、存在の確認、予後予測、治療、研究などができる。膵臓疾患としては、例えば急性および慢性の膵炎、膵臓膿瘍、膵臓偽嚢胞、非アルコール性膵炎、アルコール性膵炎、古典的急性出血性膵炎、慢性石灰化膵炎、家族性遺伝性膵炎、膵臓癌、原発性(特発性)糖尿病(例えばI型(インスリン依存性糖尿病、IDDM)[インスリン欠乏、ベータ細胞の消耗]、II型(インスリン非依存性糖尿病、NIDDM)[インスリン抵抗性、相対的なインスリン欠乏、ベータ細胞の穏やかな消耗])、非肥満性NIDDM、肥満性NIDDM、若年者の成人発症型糖尿病(MODY)、膵島細胞の腫瘍、ランゲルハンス島の散在性過形成、良性腺種、膵島の悪性腫瘍、ランゲルハンス島の機能亢進、高インスリン血症と低血糖症、ゾリンジャー-エリソン症候群、ベータ細胞の腫瘍(インスリノーマ)、膵臓がん、膵臓類癌腫、多ホルモン性腫瘍、多発性内分泌腫瘍(MEN)、MEN I(ウェルマー症候群)、MEN II(シップル症候群)、MEN IIIまたはIIb、膵臓内分泌腫瘍などが挙げられる。
一例として、膵臓腫瘍の5つの異なるサンプル(1番、2番、3番、4番、5番)を調べた。TMD0639は、約1/5の膵臓がん(4番)で上方調節された。TMD0645は、約3/5の膵臓がん(2番、3番、5番)で上方調節された。TMD1127は、約2/5の膵臓がん(1番、4番)で上方調節された。この結果は、異なるタイプの膵臓がんおよび膵臓腫瘍の検出確率を最大にするためには、プローブを組み合わせて使用するとよいことを示している。したがって、膵臓がんの検出確率を大きくするためには、対象からのサンプルにおいてTMD0645とTMD1127の両方の発現を評価するとよい。
本発明による膜タンパク質は、その選択性と細胞表面への提示能力を考えると、その膜タンパク質が内部で発現することになる細胞(例えば膵臓前駆細胞、外分泌細胞、内分泌細胞、分泌細胞、腺房細胞、膵島細胞、アルファ細胞、ベータ細胞、デルタ細胞、F細胞、D1細胞、腸クロム親和性細胞など)に関する組織学的研究や、診断、治療といった用途における有用な標的である。抗体とそれ以外のタンパク質結合パートナー(例えばリガンド、アプタマー、小さなペプチドなど)を用い、あらゆる目的で(例えば、イメージング、治療、診断、薬剤のデリバリー、遺伝子治療などを行なうために)薬剤を選択的に組織に到達させることができる。c-erbB-2抗体を乳がんに対して用いるのと同様にして、例えば結合パートナー(例えば抗体)を用いてがんを治療することができる。結合パートナーは、生検サンプルやそれ以外のサンプルにおいて転移細胞の検出に用いることもできる。遺伝子とその遺伝子によってコードされているポリペプチドを組織工学で使用し、分化プロセスに現われる組織を同定すること、組織に到達させること、(例えば出発材料となる幹細胞の集団から)組織の増殖状態を変化させることなどもできる。有用な抗体とそれ以外の結合パートナーとしては、表21に示したように、ポリペプチドの細胞外露出部分に対して特異的なものが挙げられる。この明細書に記載したどの方法も、生体内、試験管内、生体外で実施することができる。
発現が所定の組織において“優勢である”と記述するとき、この表現は、この組織における遺伝子のmRNAのレベルが、測定を行なった他の組織と比べて最高であることを意味する。発現を観察する場所で“選択的”に発現させることもできる。“選択的に発現した”という表現は、所定のヌクレオチド配列を含む核酸分子が、転写産物になったときにその転写産物を産生した組織または細胞タイプに特徴的であることを意味する。これは、転写産物がその組織だけで発現し、他のタイプの組織では発現していないこと、あるいは転写産物が他の組織と比べてその組織で優先的に、差をもって、より豊富に(例えば少なくとも5倍、10倍、あるいはそれ以上に)発現していることを意味する。
表20には、膵臓組織において選択的および/または優勢に発現する本発明の遺伝子をまとめてある。図12は、その発現パターンである。各遺伝子には、クローンIDと登録番号(“ACCN”)が付されている。クローンIDは、クローンに関して自由に決めた同定番号であり、登録番号は、GenBankに掲載されている番号である。この明細書には具体的な配列が開示されており、GenBankに登録番号によって掲載されているとはいえ、本発明には遺伝子のあらゆる形態(例えば、多型、対立遺伝子変異体、SNP、スプライス変異体や、GenBankに掲載されているものが部分である場合には完全長のものすべて)が含まれる。便宜上、これらの遺伝子と他の種におけるそのホモログは、この明細書全体を通じ、短縮した形で“表20の遺伝子”、“表20の1つの遺伝子”、“表20のポリヌクレオチド”、“表20のポリペプチド”などと呼ぶ。というのも表20には、登録番号とクローンIDを有する遺伝子のリストが含まれているからである。
この明細書に記載した選択的に発現したポリヌクレオチドの選択的および/または優先的な発現パターンは、膵臓組織が示す独自のパターンであるという意味で“フィンガープリント”と記述することができる。フィンガープリントと同様、発現パターンを独自の識別子として用いて組織サンプルの状態を特徴づけることができる。この明細書に記載した発現配列のリストは、そのような組織発現プロファイルの一例である。このリストは、サンプルを比較したりサンプルの特徴を明らかにしたりする際の基準として用いることができる。組織のフィンガープリントにはいろいろな用途がある。例えば、未知の組織を分類したり、転移細胞の出身地を明らかにしたり、組織の生理学的状態を評価したり、組織に対する特定の治療法の効果を調べたり、興味の対象である組織に対する化合物の毒性を評価したりするのに用いることができる。
例えばこの明細書に開示した膵臓選択的ポリヌクレオチドは、正常な膵臓組織が発現する遺伝子の配置を表わしている。毒素が組織に及ぼす効果を明らかにするため、毒素に曝露する前の組織サンプル(“対照”)と、毒素に曝露した後のいくつかの時点での組織サンプル(“実験”)を取得するとよい。複数の膵臓選択的プローブからなるアレイを用い、対照サンプルと実験サンプルの両方に関する発現パターンを評価することができる。あとでより詳しく説明するように、適切な任意の方法を利用することができる。例えば、膵臓選択的遺伝子群が、狭い面積上の固定されていてアドレスを特定できる位置に配置されたDNAマイクロアレイを調製するとよい。サンプルから単離したRNAを逆転写酵素と放射性ヌクレオチドを用いて標識し、アレイにハイブリダイズさせた後、検出システムを用いて発現レベルを測定することができる。何種類かの情報を取り出すことができる。例えば、発現の有無や、対応する発現レベルが得られる。正常な組織は、組織選択的プローブによって表わされる実質的にすべての遺伝子を発現することが予想されよう。さまざまな実験条件をそれと比較し、ある遺伝子が発現しているかどうかと、そのレベルが正常な対照と比べてどの程度であるかを明らかにすることができる。
この明細書に記載した配列によって表わされる完全な遺伝子セットの発現プロファイルが最も多く情報を含んでいる可能性があるが、完全ではないコレクションからの発現情報を含むフィンガープリントも有用である。不完全な指紋が個人を特定するのに十分な渦巻、弓状紋、ループ、隆起部のパターンを含んでいる可能性があるのと同様、不完全な細胞発現フィンガープリントも、サンプルに関する有用で独自の同定情報やそれ以外の情報を提供するのに十分である可能性がある。さらに、集団が不均質であり、組織の個々の生理学的状態には差があるため、組織の“正常な”発現プロファイルは、全体の発現パターンを変化させることはなくともサンプル間で異なることが予想される。こうした個別の違いがある結果として、それぞれの遺伝子は、脾臓で選択的に発現するとはいえ、その組織を識別するのに十分なだけ常時発現しているとは限らない。したがってこの明細書に記載したどの方法においても、遺伝子群をグループとして、あるいは一度に使用するとよい。その結果、この明細書に示したように、特定の組織発現プロファイルと完全に一致する必要はない。
本発明は、膵臓細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、表20の遺伝子または哺乳動物におけるそのホモログに対して特異的なポリヌクレオチドと接触させる操作を、そのポリヌクレオチドが上記遺伝子に特異的にハイブリダイズするのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。検出は、適切な任意の方法で行なうことができる。例えばすでに説明した方法やあとで説明する方法のうちの任意のもの、具体的にはノーザン・ブロット法やPCR法を利用する。特異的なポリヌクレオチドとしては、表23に示したプライマー配列と、その相補体が挙げられる。
検出は、本発明の遺伝子によってコードされているポリペプチドを特異的に認識する結合パートナー(例えばモノクローナル抗体やポリクローナル抗体)を用いて行なうこともできる。したがって本発明は、膵臓細胞の検出方法であって、例えば、細胞を含むサンプルを、表20のヌクレオチドまたは哺乳動物におけるそのホモログによってコードされているポリペプチドに対して特異的な結合パートナー(例えば抗体、Fabフラグメント、一本鎖抗体、アプタマー)と接触させる操作を、その結合パートナーがそのポリペプチドに特異的にハイブリダイズするのに効果的な条件下で実施するステップと、特異的ハイブリダイゼーションを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含む方法に関するものである。タンパク質結合アッセイは、例えば免疫細胞化学、ELISA、ウエスタン・ブロットなどの方法を利用してルーチンで行なうことができる。有用なエピトープとしては、表面に露出する表2に示したようなものが挙げられる。
上に説明したように、例えば診断、治療、予後予測を目的として、結合パートナーを用いて特に膵臓に薬剤を到達させることができる。薬剤を膵臓細胞に到達させる方法は、例えば、膵臓細胞を、表20の遺伝子によってコードされているポリペプチドに対して特異的な結合パートナーと結合した薬剤と接触させるステップを含むことができ、そのことによって薬剤をその細胞に到達させる。あらゆるタイプの薬剤(例えば治療薬やイメージング剤)を使用することができる。膵臓細胞との接触は、有効な任意の方法で実現することができる。例えば、宿主に対して有効量の薬剤を、経口で、非経口で、局所的に、全身に、静脈内に投与するなどの方法がある。“結合パートナーと結合した薬剤”という表現は、薬剤が標的部位だけに運ばれるようなやり方で薬剤に結合パートナーが付着していることを意味する。結合としては、化学的結合、共有結合、非共有結合(そのような結合で薬剤を標的に到達させるのに十分である場合)、リポソームまたは脂質膜の中への封入、担体(例えばポリマー担体)への付着などが挙げられる。薬剤は、結合パートナーに直接連結させること、あるいは化学的リンカーまたはスペーサを介して連結させることができる。表20の遺伝子によってコードされているポリペプチドを発現するあらゆる細胞を標的にすることができる。例えば、膵臓前駆細胞、外分泌細胞、内分泌細胞、分泌細胞、腺房細胞、膵島細胞、アルファ細胞、ベータ細胞、デルタ細胞、F細胞、D1細胞、腸クロム親和性細胞などが標的となる。
特定の器官のイメージングは、組織選択的抗体と、造影剤を体内の特定の部位に選択的に向かわせる他の結合パートナーを用いることによって容易に行なうことができる。この方向でさまざまなイメージング法が利用されており、例えばX線、CT、CAT、MRI、超音波、PET、SPECT、シントグラフィック法といった方法が挙げられる。一般に、レポータ剤を結合パートナーに共役または結合させることが可能である。超音波用造影剤を結合パートナー(例えば抗体)と組み合わせたものは、アメリカ合衆国特許第6,264,917号、第6,254,852号、第6,245,318号、第6,139,819号に記載されている。MRI用造影剤(例えば金属イオン封鎖剤、放射性ヌクレオチド、常磁性イオンなど)を選択的標的剤と組み合わせたものも文献に記載されている(例えばアメリカ合衆国特許第6,280,706号、第6,221,334号)。その中に記載されている方法を利用すると、一般に、あらゆる目的のためにパートナーを薬剤と結合させることができる。標識した受容体リガンドを用いた膵臓のイメージングに関しては、Bruehlmeier他、Nucl. Med. Biol.、第29巻、321-327ページ、2002年を参照のこと。本発明の受容体に対する抗体とそれ以外のリガンドも同様に用いることができる。
膵臓細胞(膵臓細胞のタイプの具体例に関しては上を参照のこと)も本発明によって変化させることができる。膵臓細胞を変化させる方法は、例えば、その細胞を、表20の遺伝子または哺乳動物におけるそのホモログを変化させる、あるいはその遺伝子によってコードされているポリペプチド(例えば配列ID番号215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255)の生物学的活性を変化させるのに有効な薬剤と接触させるステップを含んでおり、そのことによって膵臓細胞を変化させる。この明細書全体を通じて使用する“変化”という用語には、刺激、増大、作動、活性化、増幅、阻止、抑制、低減、拮抗、予防、低下、減少などが含まれる。
膵臓細胞の活性または機能を変化させることができる。例えば、血糖の調節、膵臓によって産生されて分泌されたさまざまなポリペプチド(ホルモン、酵素など)のあらゆる側面の調整、リガンドとの結合、エキソサイトーシス、アミラーゼ(と、膵臓によって産生される他の20種類ほどの消化酵素のうちの任意のもの)の分泌、オートクライン応答、(例えばベータ島細胞の生存における)アポトーシスなどを変化させることができる。
本発明は、膵臓機能を評価するためのポリペプチド検出法にも関する。この方法は、表20の遺伝子によってコードされているポリペプチド、その断片、その多型を体液中で検出するステップを含んでおり、その体液中のそのポリペプチドのレベルが膵臓機能の指標となる。膵臓機能テストは膵臓疾患を診断するための1つの方法であり、通常は膵臓が正常に機能しているかどうかを明らかにするために実施する。さまざまなテスト法が一般に利用されている。例えば、体液中に膵臓の酵素(例えばアミラーゼ、血清リパーゼ、血清トリプシン様免疫反応性酵素)が存在しているかどうかを調べるアッセイ、膵臓構造の研究(例えばX線、超音波検査、CTスキャン、血管造影法、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法を利用する)、膵臓機能のテスト(例えばセクレチン-パンクレオチミン(CCK)テスト、ルンド食事テスト、Bz-Ty-PABAテスト、大便中のキモトリプシンなど)などの方法が利用される。表20の遺伝子によってコードされているポリペプチドの検出は、特に、膵臓マーカーが血液、大便、尿、あるいはそれ以外の体液に現われる可能性のある膵炎や膵臓がんなどの疾患を調べる別の評価ツールとなる。他のテストの場合と同様、血液その他の体液中で上記ポリペプチドのレベルが高いことは、膵臓機能が損なわれていることを示している可能性がある。数値は、上に示したような他の膵臓機能マーカーの場合と同様、ルーチンで測定することができる。検出は、体液に含まれる膵臓酵素のテストと同様、例えばポリペプチドに対して特異的な抗体を使用してRIA、ELISA、ウエスタン・ブロットなどによってルーチンで行なうことができる(後述)。
本発明の遺伝子から得られるプロモータ配列を用い、膵臓細胞において異種遺伝子を選択的に発現させることができる。膵臓細胞において異種ポリヌクレオチドを発現させる方法は、例えば、その異種ポリヌクレオチドと機能上関連したプロモータ配列を含む核酸構造体を膵臓細胞の中で発現させるステップを含むことができ、そのプロモータ配列の選択は、表23に示した配列ID番号258、261、262、265〜267、270〜272、275、278、279、282〜284、287、290〜293、296、297、303、306、309〜314、317〜320、323〜326、329、332〜333、336〜338、341、344の中から行なう。この構造体は、以下に示す細胞系に加え、一次細胞や、確立された細胞系において発現させることができる。
表20の遺伝子とポリペプチドを利用すると、腎臓の疾患や症状に関し、同定、検出、ステージ判定、存在の確認、予後予測、治療、研究などができる。本発明は、膵臓疾患または膵臓疾患感受性を明らかにする方法であって、例えば、膵臓疾患または膵臓疾患感受性と、膵臓遺伝子複合体の中に存在しているヌクレオチド配列との関係を明らかにするステップを含む方法に関する。膵臓疾患または膵臓疾患感受性とヌクレオチド配列の関係としては、例えば、DNAマーカー(例えば遺伝子、VNTR、多型、ESTなど)と特定の疾患状態の相関(または関係)を確立(発見)することが挙げられる。関係が明らかになると、そのDNAマーカーを診断に使用し、薬剤の標的にすることができる。
ヒト連鎖地図を構成することにより、表22に示した細胞遺伝子座と膵臓疾患の関係を確立することができる。一般に、多型分子マーカー(例えばSTRP、SNP、RFLP、VNTR)がその領域内で同定された後、マーカー間の連鎖と地図上での距離が確立され、次いで表現型と個々のさまざまな分子マーカーの間の連鎖が確立される。地図は、個々のファミリー、選択した集団、患者集団などについて作ることができる。一般に、そのための方法は、疾患に関連するマーカーを同定(例えば疾患と連鎖したファミリーにおける多型を同定)した後、周囲のDNAを分析してその表現型にとって重要な遺伝子を同定する操作を含んでいる。
核酸
本発明による哺乳動物のポリヌクレオチドまたはその断片は、天然の供給源から取得可能なヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである。種の名前(例えばヒト)を用いる場合には、そのポリヌクレオチドまたはポリペプチドが天然の供給源から取得可能であることを示す。したがって、自然に発生する正常な対立遺伝子、自然に発生する突然変異対立遺伝子、自然に発生する多型対立遺伝子(例えばSNP)、スプライスの異なる転写産物、スプライス変異体などがその中に含まれる。“自然に発生する”という表現は、ポリヌクレオチドが天然の供給源(例えば動物の組織や細胞、体液、組織培養細胞、法医学用サンプル)から取得可能であることを意味する。天然の供給源には、例えば組織や1個の生体全体から得られた生きた細胞、腫瘍、培養細胞系(初代細胞系や不死化した細胞系)などが含まれる。自然に発生する突然変異には、ヌクレオチド配列の欠失(例えば切断されたアミノ末端またはカルボキシ末端)、置換、転位、付加が含まれる。これら遺伝子は、当業者であれば知っている例えば後出の方法に従ってポリヌクレオチドをハイブリダイズさせることによって検出し、単離することができる。
本発明のポリヌクレオチドは、多彩な供給源から得ることができる。例えば、組織、細胞、1個の生体全体から単離されたDNAまたはRNA(例えばポリアデニル化されたmRNAまたは全RNA)を得ることができる。ポリヌクレオチドは、例えばDNAまたはRNA、cDNAライブラリ、ゲノム・ライブラリから直接得ることができる。ポリヌクレオチドは、特定の発達段階にあって望む遺伝子型、表現型、疾患状態などを有する細胞または組織(例えば胎児または成人の組織)から得ることができる。
この明細書に記載したポリヌクレオチドは、自然に発生する完全長の転写産物に対応する部分配列でもよい。本発明には、このような部分配列(例えば開始コドンと停止コドン、開始コドンとポリA尾部、転写開始部とポリA尾部などを含むゲノムDNAやポリヌクレオチド)を含む完全長ポリヌクレオチドも含まれる。このような配列は、適切な任意の方法で得ることができる(例えばプローブとして部分配列を用いて完全長挿入体を含むライブラリから完全長cDNAを選択する)。“中断なしにコードしている”ポリヌクレオチドは、イントロンその他の非コード配列によって中断されているオープン・リーディング・フレーム(“ORF”)とは異なり、連続したORFを有するポリヌクレオチドを意味する。
ポリヌクレオチドとポリペプチドは、例えばこの出願がなされた日に公開データベースに掲載されている場合、および/またはこの出願よりも前に出願された特許出願またはこの出願に対して優先権がある特許出願に開示されている場合、および/またはこの出願に記載したポリヌクレオチドよりも前に考案および/または実施されている場合には、組成物として本発明から除去することができる。
この明細書に記載したように、“配列ID番号がAである単離されたポリヌクレオチド”または“配列ID番号Aから選択した単離されたポリヌクレオチド”という表現は、その配列の出所となる単離された核酸分子を意味する(例えばmRNAに由来するcDNA;ゲノムDNAに由来するcDNA)。シークエンシングや印刷の間違いなどのため、自然に発生する実際の配列は、この明細書に記載した配列ID番号とは異なっている可能性がある。したがってこの表現は、冷却管の中のクローニングされた特定の断片を培養物寄託番号で指定する方法と同様、記載した正確な核酸配列を有する分子ではなく、その配列が取り出される特定の分子を意味する。
あとでさらに詳しく説明することだが、本発明のポリヌクレオチド配列には、この明細書に示した完全な配列、その縮重配列、アンチセンス、そのムテイン、前記の配列を含む遺伝子、前記の配列を含む完全長cDNA、完全なゲノム配列、その断片、ホモログ、そのプライマーにハイブリダイズする核酸分子、その誘導体などが含まれる。
ゲノム
本発明は、本発明によるポリヌクレオチド出所となることのできるゲノムDNAにも関する。ヒト、マウス、またはそれ以外の哺乳動物のポリヌクレオチドをコードしているゲノムDNAは、例えばゲノム・ライブラリ(例えばYACライブラリ)を本発明のポリヌクレオチドを用いてスクリーニングすることによって、あるいはヌクレオチド・データベース(例えばGenBankやEMBL)の中で一致するものを検索することによって、ルーチンで得られる。プロモータその他の調節領域(5'領域および3'領域の両方とイントロンが含まれる)をコードRNAや発現RNAの上流または下流において同定することや、例えばレポータ遺伝子(例えばCAT、GFP、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、ガラクトシダーゼ)を結合させることによってその調節領域の活性をルーチンで調べることができる。組織選択的遺伝子から得られるプロモータを例えば遺伝子療法で使用すると、(例えば治療用産物または細胞毒素をコードしている)異種遺伝子を組織特異的に発現させることができる。5'配列と3'配列(UTRとイントロンを含む)を用いると、核酸(その中には、自然の状態でその核酸に結合している配列が含まれる)や異種核酸の安定性、転写、翻訳を変化させたり調節したりすることができる。
構造体
本発明のポリヌクレオチドには、追加のポリヌクレオチド配列(例えば発現、検出、取り込み、カタログ化、タグ化などを促進する配列)が含まれていてもよい。ポリヌクレオチドは、コード配列だけを含むこと;コード配列と、自然には発生しない追加配列または追加異種コード配列(例えばリーダー・ペプチド、シグナル・ペプチド、分泌ペプチド、標的到達用ペプチド、酵素ペプチド、蛍光ペプチド、抗生物質抵抗性ペプチドや、これら以外の機能性ペプチド、診断用ペプチド)を含むこと;コード配列と非コード配列(例えば5'末端または3'末端にある非翻訳配列、コード配列の間に分散している配列(例えばイントロン))を含むことができる。
すでに説明したように、本発明のポリヌクレオチドには、ポリヌクレオチドと機能上関連した発現制御配列も含まれていてよい。“発現制御配列”という表現は、その発現制御配列と機能(“操作”)上関連するポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチドの発現を調節するポリヌクレオチド配列を意味する。発現は、mRNAまたはポリペプチドのレベルで調節することができる。したがって発現制御配列には、mRNA関連エレメントとタンパク質関連エレメントが含まれる。そのようなエレメントとして、プロモータ、エンハンサー(ウイルスまたは細胞)、リボソーム結合配列、転写終結因子などが挙げられる。発現制御配列は、コード配列を発現させうる位置にあるとき、ヌクレオチド・コード配列と機能上関連がある。例えばプロモータの5'末端がコード配列と機能上関連しているとき、そのコード配列の発現はそのプロモータによって制御される。発現制御配列には、開始コドンと、ポリペプチドを産生させるために本発明の部分ヌクレオチド配列をイン-フレームにする追加のヌクレオチド(例えばプロメガ社のpETベクターは、1つの分子が3つのリーディング・フレームすべてに挿入されるように設計してあるため、ポリペプチドを発現するリーディング・フレームがどれであるかを特定できる)が含まれていてもよい。発現制御配列は、正常な遺伝子にとって異種のものでも内在性のものでもよい。
本発明のポリヌクレオチドには、例えばクローニング、発現、増幅、選択などを行なうための核酸ベクター配列も含まれていてよい。有効なあらゆるベクターを使用できる。ベクターは、例えば複製起点を含んでいて宿主細胞の中で自動的に複製することが可能なポリヌクレオチド分子である。ベクターは、望む宿主の中で組み換え分子を大量に伝播させるため、および/または得るための操作を実行するのに役立てることができる。当業者であれば、望む目的(例えば細菌、酵母、昆虫、哺乳類の細胞の中で組み換え分子を伝播させるため)が何であるかに応じてベクターを選択できるはずである。例えば以下のようなベクターが挙げられる。細菌:pQE70、pQE60、pQE-9(キアジェン社)、pBS、pD10、ファージスクリプト、phiX174、pBKファージミド、pNH8A、pNH16a、pNH18Z、pNH46A(ストラタジーン社);ブルースクリプトKS+II(ストラタジーン社);ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR54 0、pRIT5(ファルマシア社)。真核生物:PWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(ストラタジーン社)、pSVK3、PBPV、PMSG、pSVL(ファルマシア社)、pCR2.1/TOPO、pCRII/TOPO、pCR4/TOPO、pTrcHisB、pCMV6-XL4など。しかし他のあらゆるベクター(例えばプラスミド、ウイルス、またはその一部)も、複製可能であって望む宿主の中で生存できるのであれば、用いることができる。ベクターには、ゲノムが変化することになる宿主の中で複製できる配列も含まれていてよい。
ハイブリダイゼーション
あとでさらに詳しく説明するが、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、多くの用途において有用である。例えば、遺伝子検出法、突然変異の同定、突然変異の生成、同じ種または異なる種におけるホモログの同定、同じ遺伝子ファミリーの関連したメンバーの同定、診断アッセイや予後予測アッセイ、治療(例えばアンチセンス・ポリヌクレオチドを用いて発現を抑制する)などに役立つ。
2つの一本鎖ポリヌクレオチド調製物が互いにハイブリダイズする能力は、そのヌクレオチド配列の相補性(ヌクレオチド間の塩基対形成(A-T、G-Cなど))の指標である。したがって本発明は、この明細書に記載したヌクレオチド配列とそのゲノム配列を含むポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドとその相補体にも関する。後者の配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列は、相補的なポリヌクレオチド鎖を持つか、ポリメラーゼ(すなわち適切なポリヌクレオチド合成酵素)の存在下でポリヌクレオチドのための鋳型として機能することになろう。本発明には、ポリヌクレオチドの両方の鎖(例えばセンス鎖とアンチセンス鎖)が含まれる。
ハイブリダイゼーション条件は、この明細書に記載したヌクレオチド配列とそのゲノム配列に対して相補的なヌクレオチドが望む量になったポリヌクレオチドが選ばれるように選択する。そのような配列にハイブリダイズすることのできるポリヌクレオチドは、配列間の相補性が、例えば約70%、75%、80%、85%、87%、90%、92%、95%、97%、99%、100%のいずれかであることが好ましい。本発明は、特に、厳しさがゆるい条件または非常に厳しい条件において、添付の配列またはそのゲノム配列に示したヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列に関する。この条件を利用し、例えばヒトでない種において対応するホモログを選択することができる。
本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドは、さまざまな方法で選択することができる。興味の対象である(短い、または長い)ポリヌクレオチドを含むフィルタ・タイプのブロット(すなわちポリヌクレオチドを含むニトロセルロースなどのマトリックス)、ガラス・チップ、あるいはこれら以外のマトリックスや基板を予備ハイブリダイゼーション溶液(例えば6×SSC、0.5%SDS、100μg/mlの変性したサケ精子DNA、5×デンハルト溶液、50%ホルムアミド)の中で22〜68℃にて一晩にわたってインキュベートした後、適切な条件下で検出可能なポリヌクレオチドとハイブリダイズさせて望む厳しさを実現するとよい。一般に、配列の相同性または一致の程度が大きいことが望ましい場合には、高温(例えば65℃)を利用する。相同性が低下するにつれ、より低い洗浄温度を利用する。塩の濃度に関しては、濃度が低いほど厳しさの程度が大きくなる。プローブの長さも考慮すべき要素である。非常に短いプローブ(例えば100塩基対未満)だと、相同性が大きい場合でもより低い温度で洗浄する。短いプローブの場合には、ホルムアミドを省略することができる。例えば『分子生物学における最新のプロトコル』、第6章、「組み換えライブラリのスクリーニング」;Sambrook他、『分子クローニング』、1989年、第9章を参照のこと。
例えば非常に厳しい条件は、ハイブリダイゼーション溶液(例えば約5×SSC、0.1〜0.5%SDS、100μg/mlの変性したサケ精子DNA、50%ホルムアミドを含む)の中でブロットをポリヌクレオチド・プローブとともに42℃にて一晩にわたってインキュベートし、あるいは5×SSPE、0.1〜0.5%SDS、50%ホルムアミド、100μg/mlの変性したサケ精子DNAの中で42℃にてハイブリダイズさせ、0.1%SSCと0.1%SDSの中で65℃にて洗浄することによって実現できる。
ブロットは、非常に厳しい条件で洗浄する、例えば塩基対のミスマッチを5%未満にできる条件(例えば0.1%SSCと0.1%SDSで65℃にて30分間にわたって2回洗浄)、すなわち95%以上一致した配列を選択できる条件で洗浄するとよい。
非常に厳しい条件の別の例としては、30mMのNaClと0.5%SDSを含む水性緩衝液の中で65℃にて行なう最終洗浄が挙げられる。非常に厳しい条件のさらに別の例は、7%SDS、0.5MのNaPO4、pH7、1mMのEDTAの中で50℃にて例えば一晩にわたってハイブリダイゼーションを行なった後、42℃にて1%SDS溶液を用いて1回以上洗浄を行なうというものである。非常に厳しい洗浄によってミスマッチを例えば10%未満、5%未満にできるとはいえ、それよりは厳しくない条件でもヌクレオチドのミスマッチを20%までにすることができる。厳しくない条件でのハイブリダイゼーションは上記のようにして実施できるが、ホルムアミドがより少ない条件、および/またはより低い温度、および/またはより低い濃度の塩にすることや、インキュベーション時間をより長くすることもできる。
ハイブリダイゼーションは、Sambrookらが記載しているように、プローブと標的の間に形成されるハイブリッドの融点(Tm)の計算値に基づいて実行することもできる。一般に、短いオリゴヌクレオチド(含まれるヌクレオチドが18個以下)が標的配列から溶融する温度Tmは、以下の式で与えられる:Tm=(AとTの数)×2℃ +(CとGの数)×4℃。より長い分子では、Tm=81.5 + 16.6 log10[Na+] + 0.41(%GC)- 600/N(ただし[Na+]はナトリウム・イオンのモル濃度であり、%GCはプローブに含まれるGC塩基対の割合であり、Nは長さである)となる。ハイブリダイゼーションはこの温度よりも数℃低い温度で実施し、プローブと標的が確実にハイブリダイズできるようにするとよい。ミスマッチは、温度をさらに下げることによって減らすことができる。
厳しい条件により、プローブ(例えばこの明細書に記載した配列またはそのゲノム配列の短いポリヌクレオチド)と標的ポリヌクレオチドの間でヌクレオチドの相補性が例えば少なくとも約90%、95%、97%になった配列とその相補体を選択することができる。
本発明によるポリヌクレオチドの他のホモログは、哺乳動物および非哺乳動物からさまざまな方法で得ることができる。Sambrook他、『分子クローニング』、第11章、1989年に記載されているように、例えばポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを利用してホモログを選択することができる。そのようなホモログは、本発明によるそのようなポリヌクレオチドとの間のヌクレオチド配列やアミノ酸配列の一致および類似の程度がさまざまである可能性がある。哺乳動物としては、マウス、ラット、サル、ブタ、ウシなどが挙げられる。非哺乳動物としては、例えば脊椎動物、非脊椎動物、ミノカサゴ、ニワトリ、ショウジョウバエ、センチュウ、アフリカツメガエル、酵母(例えばS.ポンベ、S.セレビジエ)、回虫、原核生物、植物、シロイヌナズナ、アルテミア、ウイルスなどが挙げられる。ヒトとマウスの間でのヌクレオチド配列の一致度は、オープン・リーディング・フレームに関して例えば約70%以上、85%以上などになっている可能性がある。
アラインメント
アラインメントは、効果的な任意のアルゴリズムを用いて実現することができる。DNA配列のペア式アラインメントに関しては、Wilbur-Lipmanが記載している方法(例えばWilburとLipman、Proc. Natl. Acad. Sci.、第80巻、726-730ページ、1983年)またはMartinez/Needleman-Wunsch(例えばMartinez、Nucleic Acid Res.、第11巻、4629-4634ページ、1983年)を利用することができる。例えばMartinez/Needleman-WunschのDNAアラインメントを適用すると、最少の一致を9、ギャップのペナルティを1.10、ギャップ長のペナルティを0.33に設定することができる。結果は、類似指数として計算される。この類似指数は、一致した残基の合計数を、全残基数とギャップの文字数の合計で割った後、100を掛けて%で表わした値に等しい。本発明によるヌクレオチドのレベルで関係する遺伝子の類似指数は、70%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上になる可能性がある。タンパク質配列のペアに対しては、Lipman-Pearson法(例えばLipmanとPearson、Science、第227巻、1435-1441ページ、1985年)を利用し、k-tupleを2、ギャップのペナルティを4、ギャップ長のペナルティを12に設定してアラインメント操作を行なうことができる。結果は、%類似指数として表わすことができる。この場合、本発明によるアミノ酸のレベルで関係する遺伝子の類似指数は、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上になる可能性がある。市販の、あるいはフリー・ソースのさまざまなアラインメント・プログラムが利用できる。例えばDNAスター社のMegAlign、BLAST(国立バイオテクノロジー情報センター)、BCM(Bayler医科大学)ランチャーなどが利用可能である。BLASTを用いると、アミノ酸配列の一致、アミノ酸配列の相同性、ヌクレオチド配列の一致を計算することができる。こうした計算は、比較する各標的配列の全長に沿って行なうことができる。
2つの配列についてアラインメント操作を行なった後、“%配列一致”を決めることができる。そのためには、参照配列と比較される配列を用い、比較される配列を参照配列と比較する。%配列一致は、以下の式:%配列一致=100[1-(C/R)]に従って決めることができる。ただしCは、(i)アラインメントにおいて、比較される配列中に対応する塩基またはアミノ酸を持たない参照配列中の各塩基または各アミノ酸が違いを作り出している場合、(ii)参照配列中の各ギャップが違いを作り出している場合、(iii)アラインメントにおいて、比較される配列中の塩基またはアミノ酸とは異なる参照配列中の各塩基または各アミノ酸が違いを作り出している場合に、参照配列と比較される配列のアラインメントの長さ全体について、参照配列と比較される配列を比べて異なっている塩基またはアミノ酸の数であり;Rは、比較される配列とのアラインメントの全長にわたり、参照配列中の塩基またはアミノ酸を、その参照配列中に発生するあらゆるギャップも塩基またはアミノ酸として数えた場合の数である。
%配列一致は、従来から知られている別の方法によって明らかにすることもできる。例えば、Altschul他、Bull. Math. Bio.、第48巻、603-616ページ、1986年;HenikoffとHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第89巻、10915-10919ページ、1992年に記載されている方法がある。
特異的ポリヌクレオチド・プローブ
本発明のポリヌクレオチドには、この明細書に記載した任意の連続ヌクレオチド配列、そのヌクレオチド配列と配列一致を共有する配列、その相補体が含まれていてもよい。“プローブ”という用語は、別の物質の検出、同定、単離などを行なうのに使用できるあらゆる物質を意味する。ポリヌクレオチド・プローブは、別の核酸(例えばDNAやRNA)の検出、同定などを行なうのに使用できる核酸で構成されている。
これらのポリヌクレオチドは、望む特異性を実現するのに有効な望む任意のサイズにすることができる。例えばプローブは、用途と目的に応じ、ヌクレオチドが約7〜8個から数千個までが可能である。例えばプライマーPCRとして用いるプローブは、ポリヌクレオチド・プローブが秩序正しく並んだアレイで使用されるプローブよりも短くすることができる。プローブのサイズはさまざまであり、本発明がそのサイズによって制限されることはない。例えばプローブとして、ヌクレオチドが約7〜2000個、7〜1000個、8〜700個、8〜600個、8〜500個、8〜400個、8〜300個、8〜150個、8〜100個、8〜75個、7〜50個、10〜25個、14〜16個、少なくとも8個、少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26個またはそれ以上のものが可能である。ポリヌクレオチドには、自然には発生しないヌクレオチド(例えばイノシン、AZT、3TCなど)が含まれていてよい。ポリヌクレオチドは、この明細書に記載した配列との配列一致または相補性が100%でもよいし、ミスマッチまたは置換(例えば1、2、3、4、5個の置換)を含んでいてもよい。プローブは、一本鎖でも二本鎖でもよい。
本発明によれば、ポリヌクレオチドは、キットの中に存在した状態にすることができる。そのキットには、例えば1つ以上のポリヌクレオチド、望む緩衝液(例えばリン酸塩、トリスなど)、検出組成物、さまざまな組織から採取して対照として使用するRNAまたはcDNA、ライブラリなどが含まれる。ポリヌクレオチドは、従来技術で知られている放射性標識または非放射性標識で標識してもよいし、しなくてもよい。キットは、組織選択的遺伝子に対して特異的な核酸を増幅するため、例えばPCRにおいて有効な順プライマーと逆プライマーを含む1対以上のポリヌクレオチドを含むことができる。そのようなポリヌクレオチドには、センス方向とアンチセンス方向の両方のものが含まれる。例えばPCRに基づいた方法(例えばRT-PCR)では、一般に1対のプライマーが用いられる。一方はセンス配列を持ち、他方はアンチセンス配列を持つ。
本発明の別の特徴は、選択的ポリヌクレオチドにとって特異的なヌクレオチド配列、あるいは選択的ポリヌクレオチドに対して特異的なヌクレオチド配列である。ポリヌクレオチド“にとって特異的”あるいはポリヌクレオチド“に対して特異的”という表現は、ポリヌクレオチドを用いてサンプル中の1つ以上の標的遺伝子の存在を明らかにし、その標的遺伝子を非標的遺伝子から区別できるという機能的な意味を持っている。このヌクレオチド配列は、バックグラウンドのノイズ(“非特異的結合”)を超えてポリヌクレオチドを検出するのに使用できるという意味で特異的である。特異的配列は、ポリヌクレオチド(例えば本発明のヌクレオチド配列)中に発生し、標的配列に特徴的で実質的に非標的配列を含まない決まった順序のヌクレオチド(ポリペプチドの場合にはアミノ酸配列)である。1つのプローブまたはプローブ混合物は、複数の標的配列に対して特異的な1つまたは複数の配列を含むことができる。この場合の配列は、関連した一群の遺伝子を認識できるコンセンサス配列、機能ドメインなどである。このような配列は、この明細書に記載したどの方法、あるいは参考として組み込まれているどの方法においてもプローブとして使用することができる。センス・ヌクレオチドとアンチセンス・ヌクレオチドの両方が含まれる。本発明の特異的なポリヌクレオチドは、ルーチンで決定することができる。
特定の配列を含むポリヌクレオチドをハイブリダイゼーション・プローブとして使用し、ポリヌクレオチドの混合物を含むサンプル中に例えばヒトまたはマウスのポリヌクレオチドが存在しているかどうかを、例えばノーザン・ブロット上で明らかにすることができる。プローブとの一致が少なくとも90%、95%、99%などのポリヌクレオチド(と、コード配列を含んでいる可能性のあるその相補体)を選択するためには、ハイブリダイゼーションを非常に厳しい条件(上の説明を参照のこと)下で実施するとよいが、より緩やかな条件も利用することができる。特異的なポリヌクレオチド配列を、5'末端または3'末端において、この明細書全体に現われるさまざまなヌクレオチド配列(例えば酵素に対するコード配列、検出可能なマーカー、GFP、発現制御配列など)とイン-フレームの状態で融合させることもできる。
ポリヌクレオチド・プローブ(特に本発明のポリヌクレオチドに対して特異的なポリヌクレオチド・プローブ)をすでに説明した遺伝子検出法やハイブリダイゼーション法で用いることができる。一実施態様では、特異的なポリヌクレオチド・プローブを用い、標的サンプル中に特定のタイプの組織または細胞が存在しているかどうかを検出することができる。このような方法を実施するには、望む標的組織に特徴的な選択的ポリヌクレオチドを選択するとよい。そのようなポリヌクレオチドは、標的組織の中で発現または提示されるが、サンプル中に存在していない他の組織の中では発現または提示されないようなものを選択することが好ましい。例えば膵臓または腎臓を検出する場合には、選択的ポリヌクレオチドが他の組織において発現するかどうかは、血液中に通常は存在している細胞(例えば末梢血単核細胞)の中で発現しない限り問題ではなかろう。選択的ポリヌクレオチドから出発し、(アッセイがハイブリダイゼーションに基づいている場合には)ハイブリダイゼーション条件下で選択的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることによりその選択的ポリヌクレオチドの存在を明らかにすることができる特異的ポリヌクレオチド・プローブを設計することができる。
本発明のポリヌクレオチドに対して特異的なプローブは、転写をベースとした系を用いて調製することもできる。そのためには、例えばRNAポリメラーゼ・プロモータを本発明の選択的ポリヌクレオチドに組み込んだ後、そのポリヌクレオチドを鋳型として使用してアンチセンスRNAを転写する。アメリカ合衆国特許第5,545,522号を参照のこと。
ポリヌクレオチド組成物
本発明のポリヌクレオチドとしては、例えばDNA、RNA、合成ポリヌクレオチド、ペプチド・ポリヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド、dsDNA、ssDNA、ssRNA、dsRNA、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖、トライプレックス、DNA:RNA、デュープレックス、ヘアピンを含むもの、他の二次構造を持つものなどが可能である。ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、望む目的(RNアーゼなどのヌクレアーゼに対する抵抗力、生体内での安定性の改善など)が何であるかに応じ、公知のさまざまな結合(例えばエステル結合、スルファミン酸結合、スルファミド結合、ホスホロチオ酸結合、ホスホラミデート結合、メチルホスホン酸結合、カルバミン酸結合など)を通じて互いに結合させることができる。例えばアメリカ合衆国特許第5,378,825号を参照のこと。望む任意のヌクレオチドまたはヌクレオチド・アナログ(例えば6-メルカプトグアニン、8-オキソ-グアニンなど)を組み込むことができる。
ポリヌクレオチドに対し、検出可能なマーカー(アビジン、ビオチン、放射性元素、蛍光タグ、蛍光染料、エネルギー移動標識、エネルギー放出標識、結合パートナーなど)や、ハイブリダイゼーションおよび/または検出および/または安定性を改善する部分を付着させるなどのさまざまな修飾を施すことができる。ポリヌクレオチドは、望む方法に従って固体支持体に付着させることもできる。固体支持体としては、例えばニトロセルロース、磁性マイクロスフェアまたは常磁性マイクロスフェア(例えばアメリカ合衆国特許第5,411,863号、第5,543,289号に記載されているように;例えば強磁性、超磁性、常磁性、超常磁性、酸化鉄、多糖が含まれる)、ナイロン、アガロース、セルロース、ラテックス固体マイクロスフェア、ポリアクリルアミドなどがある。例えばアメリカ合衆国特許第5,470,967号、第5,476,925号、第5,478,893号を参照のこと。
本発明のポリヌクレオチドは、望む任意の方法で標識することができる。このポリヌクレオチドは、放射性トレーサを用いて標識することができる。一般に用いられるトレーサをいくつか挙げると、32P、35S、3H、14Cがある。放射性標識は、任意の方法で行なうことができる。例えば、放射性ヌクレオチド、ポリヌクレオチド・キナーゼ(ホスファターゼによる脱リン酸化を伴う場合と伴わない場合がある)、リガーゼ(標識する末端が何であるかによる)を用いた3'末端または5'末端の標識がある。非放射性標識も利用することができる。例えば本発明のポリヌクレオチドを、免疫特性を有する残基(抗原、ハプテン)、ある種の試薬に対する特異的親和性を有する残基(リガンド)、検出可能な酵素反応を起こすことのできる特性を有する残基、特徴的な物理的特性(例えば蛍光、望む波長での光の放出又は吸収)を有する残基などと組み合わせる。
核酸の検出法
本発明の別の特徴は、組織選択的遺伝子の検出方法に関する。検出法には多彩な応用分野がある。例えば診断、予後予測、法医学、研究といった応用分野である。遺伝子を検出するには、本発明のポリヌクレオチドを“プローブ”として用いるとよい。“プローブ”または“ポリヌクレオチド・プローブ”という用語は、従来技術における通常の意味を持っており、適切なプロセスで使用されたときに例えば標的ポリヌクレオチドの存在を(例えばハイブリダイゼーションによって)明らかにするのに有効なポリヌクレオチドを意味する。同定には、単に存在または不在を明らかにすることが含まれる。同定は、サンプル中に存在する遺伝子または遺伝子転写産物の量を評価する定量的なものであってもよい。プローブにはさまざまな用途がある。例えば診断したり、ホモログを同定したり、テスト・サンプル中の本発明によるポリヌクレオチドを検出、定量、単離したりするのに用いることができる。
サンプルに含まれる標的核酸の定量および/または存在および/または不在の検出が可能なアッセイを利用することができる。アッセイは、単一の細胞のレベルで実施すること、あるいは多数の細胞を含むサンプルの中で実施することができる。後者の場合、アッセイは、サンプル中に存在する細胞群と組織の全体での発現を“平均”したものになる。適切な任意のアッセイ形態を利用することができる。例えば、サザン・ブロット分析、ノーザン・ブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(“PCR”)(例えばSaiki他、Science、第241巻、53ページ、1988年;アメリカ合衆国特許第4,683,195号、第4,683,202号、第6,040,166号;『PCRプロトコル:方法および応用へのガイド』、Innis他編、アカデミック・プレス社、ニューヨーク、1990年)、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(“RT-PCR”)、アンカードPCR、cDNA末端急速増殖(“RACE”)(例えば『遺伝子のクローニングと分析:現在の革新』の中のSchaeferによる99-115ページ、1997年)、リガーゼ連鎖反応(“LCR”)(ヨーロッパ特許第320,308号)、一方的PCR(Ohara他、Proc. Natl. Acad. Sci.、第86巻、5673-5677ページ、1989年)、インデックシング法(例えばアメリカ合衆国特許第5,508,169号)、インサイチュ・ハイブリダイゼーション、ディファレンシャル提示(例えばLiang他、Nucl. Acid. Res.、第21巻、3269-3275ページ、1993年;アメリカ合衆国特許第5,262,311号、第5,599,672号、第5,965,409号;WO 97/18454;PrasharとWeissman、Proc. Natl. Acad. Sci.、第93巻、659-663ページ、1996年とアメリカ合衆国特許第6,010,850号、第5,712,126号;Welsh他、Nucleic Acid. Res.、第20巻、4965-4970ページ、1992年とアメリカ合衆国特許第5,487,985号)とそれ以外のRNAフィンガープリント法、核酸配列に基づいた増幅(“NASBA”)とそれ以外の転写に基づいた増殖系(例えばアメリカ合衆国特許第5,409,818号、第5,554,527号;WO 88/10315)、ポリヌクレオチド・アレイ(例えばアメリカ合衆国特許第5,143,854号、第5,424,186号、第5,700,637号、第5,874,219号、第6,054,270号;PCT WO 92/10092;PCT WO 90/15070)、Qβレプリカーゼ(PCT/US87/00880)、鎖変位増殖(“SDA”)、修復連鎖反応(“RCR”)、ヌクレアーゼ保護アッセイ、差し引きに基づいた方法、ラピッド-スキャン(登録商標)などがある。有効な他の方法としては、例えば鋳型に基づいた増幅法、競合PCR(例えばアメリカ合衆国特許第5,747,251号)、酸化還元に基づいたアッセイ(例えばアメリカ合衆国特許第5,871,918号)、タックマンに基づいたアッセイ(例えばHolland他、Proc. Natl. Acad. Sci.、第88巻、7276-7280ページ、1991年;アメリカ合衆国特許第5,210,015号、第5,994,063号)、蛍光に基づいたリアルタイムのモニタリング(例えばアメリカ合衆国特許第5,928,907号)、分子エネルギー移動標識(例えばアメリカ合衆国特許第5,348,853号、第5,532,129号、第5,565,322号、第6,030,787号、第6,117,635号;TyagiとKramer、Nature Biotech、第14巻、303-309ページ、1996年)などがある。単一の細胞で遺伝子またはタンパク質の発現を分析するのに適切な任意の方法を利用することができる。例えば、インサイチュ・ハイブリダイゼーション、免疫細胞化学、MACS、FACS、フローサイトメトリーなどが利用できる。単一細胞アッセイのため、抗体、PCR、あるいは他のタイプの核酸増幅(例えばBrady他、Methods Mol. & Cell. Biol.、第2巻、17-25ページ、1990年;Eberwine他、Proc. Natl. Acad. Sci.、第89巻、3010-3014ページ、1992年;アメリカ合衆国特許第5,723,290号)を利用して発現産物を測定することができる。これらの方法ならびにそれ以外の方法は、例えば引用した出版物に記載されているようにして容易に実施することができる。
そのような方法の多くでは、ポリヌクレオチドを標識すること、あるいは検出に有効な特殊なタイプのヌクレオチドを含めることが必要とされる可能性がある。本発明には、そのような方法を実施するのに必要なそのように修飾したポリヌクレオチドが含まれる。したがってポリヌクレオチドとしては、DNA、RNA、DNAとRNAのハイブリッド、PNAなどが可能であり、ポリヌクレオチドは、検出を行なうのに有効なあらゆる修飾や置換を含むことができる。
検出を行なうことは、研究、診断、予後予測、法医学など、さまざまな目的で望ましい可能性がある。診断を目的とする場合には、サンプル中にポリヌクレオチド配列が存在しているかどうか、あるいはその量がどれだけであるかを明らかにすることが望ましかろう。この場合、サンプルは、組織、細胞、体液などから採取する。あとでより詳しく説明する好ましい一実施態様によれば、本発明は、ポリヌクレオチドの検出方法であって、テスト・サンプル中の標的ポリヌクレオチドをポリヌクレオチド・プローブと接触させる操作を、その標的とプローブがハイブリダイズするのに効果的な条件下で実施するステップと、ハイブリダイゼーションを検出するステップを含む方法に関する。
含まれているポリヌクレオチドまたはそれに対応するポリペプチドを同定することを目的としたあらゆるテスト・サンプルを使用できる。例えば、血液、尿、唾液、大便(核酸を抽出するため。例えばアメリカ合衆国特許第6,177,251号を参照のこと)、組織を含有するスワブ、生検組織、組織の切片、培養した細胞などを使用できる。
検出は、他の遺伝子に関するポリヌクレオチド・プローブと組み合わせて実施することができる。この遺伝子は、例えば、他の疾患状態、組織、細胞(例えば脳、心臓、腎臓、脾臓、胸腺、肝臓、胃、小腸、大腸、筋肉、肺、精巣、胎盤、脳下垂体、甲状腺、皮膚、副腎、膵臓、唾液腺、子宮、卵巣、前立腺、末梢血細胞(T細胞、リンパ球など)、胚、乳房、脂肪、成人の幹細胞、胚性幹細胞)などにおいて発現するものである。
ポリヌクレオチドは、さまざまな方法と組成物で使用することができる。例えば、組織選択的遺伝子に関連する疾患や異常についての検出、診断、ステージ判定、類別、評価、予後予測などに、治療および/または予防措置のモニターまたは評価に、秩序化されたアレイなどに使用される。遺伝子とポリヌクレオチドを検出するためのあらゆる方法を利用することができる。本発明が、そのような方法をどのようにして実現するかの制約を受けることはない。
このような文脈において、本発明は、核酸を含むサンプル中で本発明のポリヌクレオチドを検出する方法に関する。その方法は、例えば、サンプルをポリヌクレオチド・プローブと接触させる操作を、そのプローブがサンプル中の核酸に特異的にハイブリダイズするのに効果的な条件下で実施するステップと、サンプル中の核酸にハイブリダイズしたプローブが存在しているかどうかを検出するステップのうちの1つ以上のステップを含むことができる。このときプローブは、この明細書に記載したポリヌクレオチド、そのポリヌクレオチドと例えば配列の約70%、80%、85%、90%、95%、99%、あるいはそれ以上が一致するポリヌクレオチド、その有効な断片または特異的な断片、あるいはこれらの相補体である。この検出方法は、あらゆるサンプル(例えば、初代培養細胞系、二次培養細胞系、確立された細胞系、組織生検、血液、尿、大便、脳脊髄液、他の体液)、あらゆる目的に適用することができる。
サンプルをプローブと接触させる操作は、有効な任意の環境において、有効な任意の手段で実施することができる。この操作は、固体状マトリックス、液体状マトリックス、凍結状態のマトリックス、ガス状マトリックス、アモルファス状マトリックス、固化したマトリックス、凝固したマトリックス、コロイド状マトリックス、あるいはこれらの状態が混合したマトリックスにおいて実施することができる。例えば水性媒体中のプローブを、やはり水性媒体中のサンプルと、あるいは固体マトリックスに固着させたサンプルと接触させること、あるいはその逆を実施することができる。
一般に、この明細書全体を通じて使用する“有効な条件”という表現は、例えば望む効果が実現される特別な環境を意味する。そのような環境としては、例えば、適切な緩衝液、酸化剤、還元剤、pH、共因子、温度、イオン濃度、使用している細胞の適切な年齢および/または状態(例えば細胞周期の特定の部分、または特定の遺伝子が発現している特定の段階)、培養条件(基質、酸素、二酸化炭素なども含まれる)などが挙げられる。検出手段としてハイブリダイゼーションを選択する場合には、プローブとサンプルを、そのプローブがそのサンプル中の核酸に特異的にハイブリダイズするのに有効な条件が得られるように組み合わせるとよい。
“特異的にハイブリダイズする”という表現は、一本鎖のポリヌクレオチド相互間のハイブリダイゼーションが、ヌクレオチド配列の相補性に基づいていることを意味する。有効な条件は、プローブが、サンプル中のあらかじめ選択した標的核酸および/または特定の標的核酸とハイブリダイズするように選択する。例えばこの明細書に記載したポリヌクレオチドを検出することが望ましい場合には、サンプル中の他の遺伝子と有意にハイブリダイズしない非常に厳しい条件下でそのような標的遺伝子とハイブリダイズすることのできるプローブを選択するとよい。この明細書に記載したポリヌクレオチドのホモログを検出するためには、有効なハイブリダイゼーション条件をより緩やかにすること、および/またはプローブに縮重したコドンを含めることでホモログがサンプル中で検出されるようにすることが可能である。
すでに述べたように、上記の方法は、効果的な任意の手段、例えば上記のノーザン・ブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR、RACE PCR、インサイチュ・ハイブリダイゼーションなどによって実施することができる。PCRに基づいた方法を利用する場合には、2つ以上のプローブが一般に用いられる。1つのプローブは、選択的ポリヌクレオチドに特徴的な所定の配列に対して特異的にするが、他方のプローブは、その選択的ポリヌクレオチドに対して特異的、あるいはより一般的な配列(例えばmRNAに特徴的なポリAなどの配列、プロモータ、リボソーム結合部位、あるいはそれ以外の転写因子に対して特異的な配列、コンセンサス配列(例えば機能ドメインを表わす配列))に対して特異的にするとよい。前者に関しては、転写産物の末端に特異的にハイブリダイズすることのできる5'プローブと3'プローブ(例えばポリA、コザックなど)が好ましい。PCRを利用する場合には、プローブは、DNA連鎖反応を開始させることができるという点で“プライマー”と呼ぶこともできる。
本発明は、ポリヌクレオチドの存在または不在をテストすることに加え、サンプル中で発現している本発明のポリヌクレオチドの量を測定し、異なるサンプルにおけるそのようなポリヌクレオチドの発現の違いを明らかにする方法にも関する。そのような方法は、存在/不在の検出を行なうための上記のステップと実質的に同じステップ、例えばプローブと接触させるステップと、ハイブリダイズさせるステップと、ハイブリダイズしたプローブを検出するというステップを含むことができるが、より定量的な方法を利用する、および/または基準との比較を行なう。
プローブと標的の間のハイブリダイゼーション量は、適切な任意の方法(例えばPCR、RT-PCR、RACE PCR、ノーザン・ブロット、ポリヌクレオチド・マイクロアレイ、ラピッド-スキャンなど)で測定することができる。その測定には、定量的測定と定性的測定の両方が含まれる。詳細に関しては、上に記載した、あるいは以下に記載するハイブリダイゼーション法を参照のこと。標的がサンプル中で異なった発現をしている(例えば上方調節または下方調節されている)かどうかをそのようなハイブリダイゼーションによって明らかにするには、有効な任意の方法を利用することができる。例えばサンプル中の標的発現パターンを既知の基準(例えば正常な組織)におけるパターンと比較すること、あるいは同じサンプル中の別の遺伝子と比較することができる。比較用に第2のサンプルを用いる場合には、そのサンプルは、病気になった細胞を含んでいないことがわかっている正常組織のサンプルにするとよい。比較は、同じ量のRNA(例えばポリアデニル化されたRNAまたは全RNA)を含むサンプルについて、あるいは同じ量の出発組織から抽出したRNAについて実施するとよい。このような第2のサンプルも対照または基準と呼ぶことができる。ハイブリダイゼーションは、同じ組織サンプル中の第2の標的と比較することもできる。例えば正常な組織に含まれる標的核酸と第2の核酸(基準または対照)の比を測定する実験を実施するとよい。標的と対照の比が正常組織とサンプルで実質的に同じであるならば、サンプルは細胞を含んでいないと判定または診断される。しかしこの比が正常組織とサンプルで異なっている場合には、サンプルは例えば腎臓細胞、膵臓細胞、免疫細胞のいずれかを含んでいると判定される。このような方法を組み合わせて利用すること、また、第2のサンプルまたは第2の標的を1つ以上使用することが可能である。比較用として、あらゆる第2の標的核酸を用いることができる。例えば、“ハウスキーピング”遺伝子(β-アクチンなど)、アルコール・デヒドロゲナーゼ、細胞の疾患状態によって発現が変化しない他の任意の遺伝子を使用できる。
多型、突然変異などの同定法
本発明のポリヌクレオチドは、野生型遺伝子について、突然変異対立遺伝子、SNP、遺伝子の再構成や修飾、これ以外の多型を明らかにするのにも使用することができる。突然変異対立遺伝子、多型、SNPsなどは、遺伝的素因がわかっている疾患、あるいは遺伝的素因があると思われる疾患を抱えた対象において同定し、その対象から単離することができる。そのような遺伝子の同定は、ルーチンで実施することができる(より詳しいガイドについては上の説明を参照のこと)。そのためには、例えばPCR、ハイブリダイゼーション法、直接シークエンシング、ミスマッチ反応(例えば上の説明を参照のこと)、RFLP分析、SSCP(例えばOrita他、Proc. Natl. Acad. Sci.、第86巻、2766ページ、1992年)などの方法を利用する。そのとき、本発明のポリヌクレオチドから選択した配列を有するポリヌクレオチドをプローブとして使用する。選択された突然変異対立遺伝子、SNPs、多型などを用いて診断を行ない、対象が、この明細書に記載した組織選択的遺伝子に関連する疾患を有するかどうか、あるいはそのような疾患にかかりやすいかどうかを明らかにするとともに、治療法を設計したり、その疾患の結果がどうなるかを予測したりすることができる。方法には、例えば疾患の診断、疾患感受性の判定を行なうため、この明細書に記載した配列から選択したポリヌクレオチドによって表わされる遺伝子に突然変異が存在することを検出する操作が含まれる。検出は、有効な任意の方法で実施することができる。そのためには、例えば、対象から細胞を採取したり、(例えばmRNA、cDNA、ゲノムDNAなどを用いて)標的遺伝子の配列または構造を決定したり、標的遺伝子の配列または構造を正常な遺伝子の構造と比較したりする。その結果として配列または構造に違いがあれば、対象の遺伝子に突然変異があることを意味する。ポリヌクレオチドは、突然変異、SNP、多型などを調べるのに用いることもできる。そのためには、例えばアメリカ合衆国特許第5,683,877号、第5,656,430号;Wu他、Proc. Natl. Acad. Sci.、第89巻、8779-8783ページ、1992年に記載されているミスマッチDNA修復技術を利用する。
本発明は、組織選択的遺伝子における多型の検出方法であって、例えば、組織選択的遺伝子の全体または一部を含むゲノムDNA、組織選択的遺伝子の全体または一部を含むmRNA、組織選択的遺伝子の全体または一部を含むcDNA、組織選択的遺伝子の全体または一部を含むポリペプチドのいずれかの構造を、この明細書に記載したポリヌクレオチドの構造と比較するステップを含む方法にも関する。この方法は、任意の供給源(例えば細胞、組織、体液、血液、尿、大便、毛髪、卵子、精子、脳脊髄液、生検サンプル、血清など)からのサンプルに対して実施することができる。
この方法は、多数の異なる手段で実現することができる。例えば“構造を比較するステップ”には、制限地図、ヌクレオチド配列、アミノ酸配列、RFLP、DNアーゼ部位、DNAメチル化フィンガープリント(例えばアメリカ合衆国特許第6,214,556号)、タンパク質開裂部位、分子量、電気泳動の易動度、電荷、イオンの易動度などを、基準とテスト遺伝子の間で比較するステップが含まれる。“構造”という用語は、核酸やポリペプチドを区別するのに用いることのできるあらゆる物理的特性や配置を意味する。比較ステップを実施するのに用いる方法と装置は、比較することになる物理的特性が何であるかによって異なる。したがってさまざまな方法が考えられる。例えば、シークエンシング装置(アミノ酸とポリヌクレオチドの両方)、電気泳動、質量分析器(アメリカ合衆国特許第6,093,541号、第6,002,127号)、液体クロマトグラフィ、HPLCなどの方法がある。
このような方法を実施するとき、遺伝子またはポリペプチドの“全体または一部”を比較することができる。例えばヌクレオチドのシークエンシングを利用する場合には、プロモータ、イントロン、エキソンを含む1つの遺伝子全体をシークエンシングすること、あるいはその一部だけをシークエンシングして例えばエキソン1、エキソン2などを比較することができる。
突然変異誘発
本発明による突然変異したポリヌクレオチド配列は、さまざまな目的に役立つ。例えば、そのポリヌクレオチド配列がコードしているポリペプチドに突然変異を起こさせること、ゲノムDNAの機能領域を同定すること、スクリーニング・ライブラリのためのプローブを作ることなどに役立つ。突然変異誘発は、有効な任意の方法にしたがってルーチンとして実施することができる。例えば、オリゴヌクレオチド指定突然変異誘発(Smith, M.、Ann. Rev. Genet.、第19巻、423-463ページ、1985年)、縮重オリゴヌクレオチド指定突然変異誘発(Hill他、Method Enzymology、第155巻、558-568ページ、1987年)、領域特異的突然変異誘発(Myers他、Science、第229巻、242-246ページ、1985年;Derbyshire他、Gene、第46巻、145ページ、1986年;Ner他、DNA、第7巻、127ページ、1988年)、リンカー走査突然変異誘発(McKnightとKingsbury、Science、第217巻、316-324ページ、1982年)、PCRを利用した指定突然変異誘発、回帰的アンサンブル突然変異誘発(AkinとYourvan、Proc. Natl. Acad. Sci.、第89巻、7811-7815ページ、1992年)、ランダム突然変異誘発(例えばアメリカ合衆国特許第5,096,815号、第5,198,346号、第5,223,409号)、位置指定突然変異誘発(例えばWalder他、Gene、第42巻、133ページ、1986年;Bauer他、Gene、第37巻、73ページ、1985年;Craik、Bio Techniques、1985年1月、12-19ページ;Smith他、『遺伝子工学:原理と方法』、プレナム出版、1981年)、ファージ提示突然変異誘発(例えばLowman他、Biochem.、第30巻、10832-10837ページ、1991年;Ladner他、アメリカ合衆国特許第5,223,409号;Huse、WIPO公開WO 92/06204)などの方法がある。望む配列は、互いにプライマーとなるオリゴヌクレオチドを用いて標的配列を構成することによって作り出すこともできる(Uhlmann、Gene、第71巻、29-40ページ、1988年)。指定突然変異誘発法を実施するには、ポリペプチドの三次元構造を分析し、ポリペプチドの活性に影響を与える突然変異体を容易に作るためのガイドにするとよい。基質-酵素相互作用の部位、またはそれ以外の生物学的に活性な部位も、核磁気共鳴、結晶学、ホトアフィニティラベリングなどの方法によって決まる結晶構造の分析を通じて明らかにすることができる。例えばde Vos他、Science、第255巻、306-312ページ、1992年;Smith他、J. Mol. Biol.、第224巻、899-904ページ、1992年;Wlodaver他、FEBS Lett.、第309巻、59-64ページ、1992年を参照のこと。
さらに、遺伝子とその断片のライブラリを用いて遺伝子変異体のスクリーニングと選択を行なうことができる。例えばコード配列ライブラリは、二本鎖DNAをヌクレアーゼで処理する操作を、例えば分子1個につき1回だけ切断が起こる条件下で実施し、二本鎖DNAを変性させ、それを再生して、切断されたさまざまな産物からのセンス/アンチセンス対を含むことのできる二本鎖DNAにし、再生した二本鎖から一本鎖の部分をS1ヌクレアーゼで処理して除去し、得られたDNAを発現ベクターと結合させることによって作り出すことができる。この方法により、発現ライブラリが、“突然変異した”組織選択的遺伝子を含むようにすることが可能である。コード配列の全体またはその一部を使用することができる。
ポリヌクレオチドの発現、そのポリヌクレオチドによって産生されるポリペプチド、そのポリペプチドに対する特異的結合パートナー
本発明のポリヌクレオチドは、望む目的が何であるかに応じ、試験管内と生体内の多彩な系で発現させることができる。例えばポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入し、望む宿主に導入し、そのポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチドを発現させるのに有効な条件下で培養することにより、特異的な結合パートナーを探すことができる。有効な条件には、宿主細胞にポリペプチドを産生させるのに適した任意の培養条件が含まれ、その条件としては、例えば、有効な温度、pH、培地、宿主を培養している培地に対する添加物(例えば発現を増大または誘導するブチレート、あるいはコードしているポリヌクレオチドがdhfr遺伝子に隣接している場合にはメトトレキセートなどの添加物)、シクロヘキシミド、細胞の密度、培養皿などが挙げられる。ポリヌクレオチドは、有効な任意の方法で細胞に導入することができ、方法としては、例えば、裸のDNA、リン酸カルシウム沈降、電気穿孔、注入、DEAE-デキストランを媒介としたトランスフェクション、リポソームとの融合、細胞への取り込みを増大させる薬剤との結合、ウイルスのトランスフェクションなどが挙げられる。本発明のポリヌクレオチドを導入された細胞は、形質転換された宿主細胞である。ポリヌクレオチドを宿主細胞の染色体外に位置させること、あるいは染色体と一体化させることが可能である。ポリヌクレオチドは、安定でも一時的でもよい。発現ベクターは、宿主細胞との適合性を考えて選択する。宿主細胞としては、哺乳動物の細胞(例えばCOS、CV1、BHK、CHO、HeLa、LTK、NIH 3T3)、昆虫の細胞(例えばSf9(S.フルジペダ)、ショウジョウバエ)、細菌(例えば大腸菌、連鎖球菌、バチルス菌)、酵母(例えばサッカロミセス、サッカロミセス・セレビジエ)、真菌の細胞、植物細胞、胚性幹細胞または成人の幹細胞(例えばマウスやヒトなどの哺乳動物)、
免疫系細胞系、HH(ATCC CRL-2105)、MOLT-4(ATCC CRL-1582)、MJ(ATCC CRL-8294)、SK7(ATCC HB-8584)、SK8(ATCC HB-8585)、HM1(HB-8586)、H9(ATCC HTB-176)、HuT 78(ATCC TIB-161)、HuT 102(ATCC TIB-162)、ジャーカット、
B細胞系、B細胞前躯体系、NALM-36、エプスタイン-バー・ウイルスで不死化したB細胞とその他のリンパ球系(形質転換されたBリンパ芽球様細胞)、間質細胞系、骨髄腫、HBM-Noda、WEHI231、
細網内皮細胞、内皮細胞、白血球細胞、マクロファージ、抗原提示細胞、リンパ球、GDM-1(ATCC CRL-2627)、THP-1(ATCC TIB-202)、HL-60(ATCC CCL-240)、これらの誘導体(例えばこれらの一次細胞系、確立された細胞系)、
腎臓細胞系、293、G-402(ATCC CRL-1440)、ACHN(ATCC CRL-1611)、Vero(ATCC CCL-81)、786-O(ATCC CRL-1932)、769-P(ATCC CRL-1933)、CCD 1103 KIDTr(ATCC CRL-2304)、CCD 1105 KIDTr(ATCC CRL-2305)、Hs 835.T(ATCC CRL-7569)、Hs 926.T(ATCC CRL-7678)、Caki-1(ATCC HTB-46)、Caki-2(ATCC HTB-47)、SW 839(ATCC HTB-49)、LLC-MK2(ATCC CCL-7)、BHK-21(ATCC CCL-10)、MDCK、CV-1(ATCC CRL-1573)、KNRK(ATCC CRL-1569)、NRK-49F(ATCC CRL-1570)、A-704(ATCC HTB-45)などと、確立された腎臓細胞と一次腎臓細胞、
膵臓細胞系、インスリノーマ細胞系、INS-H1、MIN6N8、RIN 1046-38、RIN-5AH、RIN-A12、RINm5F、capan-1、capan-2、MIA PaCa-2(ATCC CRL-1420)、PANC-1(ATCC CRL-1469)、AsPC-1(ATCC CRL-1682)、SU-86.86(ATCC CRL-1837)、CFPAC-1(ATCC CRL-1918)、HPAF-II(ATCC CRL-1937)、TGP61(ATCC CRL-2135)とそれ以外のTGP系、SW 1990(ATCC CRL-2172)、Mpanc-96(ATCC CRL-2380)、MS1 VEGF(ATCC CRL-2460)、β-TC-6(ATCC CRL-11506)、LTPA(ATCC CRL-2389)、266-6(ATCC CRL-2151)、MS1(ATCC CRL-2779)、SVR(ATCC CRL-2280)、NIT-2(ATCC CRL-2364)、αTC1 クローン9(ATCC CRL-2350)、ATCC CRL-1492、BxPC-3(ATCC CRL-1687)、HPAC(ATCC CRL-2119)、アメリカ合衆国特許第6,110,743号、第5,928,942号、第5,888,816号、第5,888,705号、第5,723,333号などと、確立された膵臓細胞と一次膵臓細胞(例えばHellerstrom他、Diabetes、第28巻、769-776ページ、1979年によるもの)、
網膜細胞系、RF/6A(CRL-1780)、ARPE-19(CRL-2302)、ARPE-19/HPV-16(CRL-2502)、Y79(HTB-18)、WERI-Rb-1(HTB-169)、RPE-J(CRL-2240)、SO-Rb50(網膜芽腫細胞系)、RBL、HER-Xho1-CC2、WERI-Rb24(Sery他、J. Pediatr. Ophthalmol. Strabismus、第4巻、212-217ページ、1990年)、WERI-Rb27(Sery他、J. Pediatr. Ophthalmol. Strabismus、第4巻、212-217ページ、1990年)、HXO-Rb44、胎仔網膜細胞、網膜芽腫細胞、脈絡膜内皮細胞(例えばChor 55)などと、確立された網膜細胞と一次網膜細胞(他の細胞系と方法に関しては、Griege他、Differentiation、第45巻、250-257ページ、1990年;Bernstein他、Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.、第35巻、3931-3937ページ、1994年;Howes他、Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.、第35巻、342-351ページ、1994年も参照のこと)。
発現調節配列は、宿主との適合性と、望む目的が何であるか(例えば、コピー数を多く、量を多く、誘導、増幅、制御された発現)を考慮して同様に選択する。使用可能な他の配列としては、エンハンサー(例えばSV40、CMV、RSVからのエンハンサー)、誘導プロモータ、細胞の種類に対して特異的なエレメント、選択的または特異的な細胞発現が可能な配列が挙げられる。発現を駆動するのに使用できるプロモータとしては、細菌宿主に関しては例えば内在性プロモータ、MMTV、SV40、trp、lac、tac、T7といったプロモータがあり;酵母に関してはα因子、アルコールオキシゲナーゼ、PGHといったプロモータがある。RNAプロモータを用いてRNA転写産物(例えばT7、SP6)を産生させることができる。例えばMelton他、Polynucleotide Res.、第12巻(18)、7035-7056ページ、1984年;DunnとStudier、J. Mol. Bio.、第166巻、477-535ページ、1984年;アメリカ合衆国特許第5,891,636号;Studier他、Gene Expression Technology, Methods in Enzymology、第85巻、60-89ページ、1987年を参照のこと。さらに、すでに述べたように、翻訳シグナル(イン-フレーム挿入も含む)も含めることができる。
形質転換された細胞系の中でポリヌクレオチドが異種遺伝子として発現する場合には、その遺伝子を、その遺伝子が発現するのに効果的な条件下で上記のようにして細胞に導入する。“異種”という用語は、遺伝子が“人の手”で細胞系に導入されたことを意味する。細胞系への遺伝子の導入についてはすでに説明してある。遺伝子を発現しているトランスフェクトされた(または形質転換された)細胞を溶解させること、あるいはその細胞系をそのままで使用することができる。
発現とそれ以外の目的で、ポリヌクレオチドは、例えばこの明細書に記載した自然に発生する遺伝子、転写産物、cDNAの中に見いだされるコドンを含むこと、あるいは同じアミノ酸配列に対する縮重コドンを含むことができる。例えば望む宿主中での発現にとって最適な配列になるよう、配列中のコドンを変化させることが望ましい。例えばアメリカ合衆国特許第5,567,600号、第5,567,862号を参照のこと。
本発明のポリペプチドは、天然の供給源や、通常の方法で形質転換された宿主細胞(培地または細胞)から得ることができる。例えば、洗剤抽出(例えば非イオン洗剤、トリトンX-100、CHAPS、オクチルグルコシド、Igepal CA-630)、硫酸アンモニウムまたはエタノールによる沈降、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロース・クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、ヒドロキシアパタイト・クロマトグラフィ、レクチン・クロマトグラフィ、ゲル電気泳動によって得られる。必要に応じてタンパク質が再び折り畳まれるステップを利用し、成熟タンパク質のコンフィギュレションを完成させることができる。最後に、精製ステップでは高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を利用することができる。別の方法は、ポリペプチドをアフィニティ・タグ(フラグ・エピトープ、HAエピトープ、ミック・エピトープ、6×ヒスチジン、マルトース結合タンパク質、キチナーゼなど)とともに組み換えで発現させた後、抗タグ抗体結合アフィニティ・クロマトグラフィによって精製を行なうというものである。
本発明は、特異的結合パートナーにも関する。特異的結合パートナーとしては、本発明のポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチドに対して特異的な抗体や、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドと相互作用する他の結合パートナーが挙げられる。ポリペプチドと結合パートナーの間のタンパク質-タンパク質相互作用は、適切な方法を用いて明らかにすることができる。そのためには、例えば、タンパク質結合アッセイ(例えば濾過アッセイ、クロマトグラフィなど)、酵母2-ハイブリッド系(FieldsとSong、Nature、第340巻、245-247ページ、1989年)、タンパク質アレイ、ゲル-シフト・アッセイ、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)アッセイなどの方法を用いる。核酸相互作用(例えばタンパク質-DNAまたはタンパク質-RNA)は、例えばアメリカ合衆国特許第6,333,407号と第5,789,538号で行なわれているように、ゲル-シフト・アッセイを利用して評価することができる。
抗体(例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組み換え抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖Fab、これらのフラグメント)は、望む任意の方法に従って調製することができる。裸のDNAを投与することにより、抗体と免疫応答も発生させることができる。例えばアメリカ合衆国特許第5,703,055号、第5,589,466号、第5,580,859号を参照のこと。任意の供給源(例えばヤギ、ウサギ、マウス、ニワトリ(例えばIgY;鳥類の宿主の中で抗体を作り、その抗体を卵から回収する方法に関してはDuan、WO 02/9444を参照のこと))からの抗体を使用することができる。あるポリペプチドに対して特異的な抗体とは、そのポリペプチドに含まれる所定のアミノ酸配列を認識する抗体であることを意味する。他の特異的な結合パートナーとしては、例えばアプトマーやPNAが挙げられる。抗体は、特異的なエピトープまたはドメインに対するものを調製できる。
抗体はヒト化することもでき、例えばそれを治療に使用する。ヒトの抗体を例えばトランスジェニック・マウスから得る方法は、例えばGreen他、Nature Genet.、第7巻、13ページ、1994年;Lonberg他、Nature、第368巻、856ページ、1994年;Taylor他、Int. Immunol.、第6巻、579ページ、1994年に記載されている。本発明の抗体フラグメント(Fabフラグメント、Fcフラグメント)は、適切な任意の方法で調製することができる。一本鎖抗体も使用することができる。抗体フラグメントの別の形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードしているペプチドである。CDRペプチド(“最小認識ユニット”)は、興味の対象であるCDRをコードしている遺伝子を構成することによって得られる。
この明細書で使用する“抗体”という用語には、完全な分子とその断片(例えばBin1ポリペプチドに存在しているエピトープ決定部に結合できるFab、F(ab')2、Fv)が含まれる。このような抗体フラグメントは、対応する抗原または受容体と選択的に結合する能力を幾分か保持している。“エピトープ”という用語は、抗原表面にあって抗体のパラトープが結合する抗原決定部を意味する。エピトープ決定部は、通常、分子の化学的に活性な表面基(例えばアミノ酸、糖側鎖)からなり、通常は特別な三次元構造特性と、特別な電荷特性を有する。抗体は、特異的なエピトープまたはポリペプチド・ドメインに対するものを調製するとよい。
本発明のポリペプチドと結合する抗体は、免疫抗原となる興味の対象である小さなペプチドを含む完全なポリペプチドまたはその断片を用いて調製することができる。例えば、本発明の組織選択的ポリペプチドのN末端ドメインまたはC末端ドメインに対して特異的に結合する抗体を作ることが望ましかろう。動物を免疫化するのに用いるポリペプチドまたはペプチドは、翻訳されたcDNAに由来するもの、または化学的に合成したものであり、望むのであれはそれを担体タンパク質と結合させることができる。免疫化ペプチドに化学的に結合する担体として一般に用いられるのは、スカシガイのヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)、破傷風毒素などである。
ポリペプチドの検出方法
本発明の遺伝子によってコードされているポリペプチドは、有効な任意の方法で検出すること、可視化すること、測定すること、定量することなどができる。有効な方法としては、例えばイムノアッセイ、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(固相酵素免疫検定法)、免疫蛍光、フローサイトメトリー、組織学、電子顕微鏡、光学顕微鏡、インサイチュ・アッセイ、免疫沈降、ウエスタン・ブロットなどが挙げられる。
イムノアッセイは、液体の中、または生物学的支持体の上で実施することができる。例えばサンプル(例えば血液、血清、大便、尿、細胞、組織、脳脊髄液、体液など)を固相支持体または担体(例えばニトロセルロース)に接触させること、または固定化すること、あるいは細胞、細胞粒子、可溶性タンパク質を固定化することのできる他の固相支持体に接触させること、または固定化することが可能である。次に、支持体を適切な緩衝液で洗浄し、次いで検出可能な標識の付いた特異的抗体で処理するとよい。次に、緩衝液を用いて固相支持体の2回目の洗浄を行ない、結合しなかった抗体を除去する。次に、固相支持体に結合した標識の量を通常の手段で検出するとよい。
“固相支持体または固相担体”には、抗原、抗体、あるいはそれ以外の特異的な結合パートナーを結合させることのできるあらゆる支持体が含まれる。支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロース、修飾したセルロース、ポリアクリルアミド、マグネタイトなどが挙げられる。支持体材料は、任意の構造的または物理的配置を持つことができる。したがって支持体の配置は、球(例えばビーズ)、または円筒(試験管の内面または棒の外面)が可能である。あるいは表面は、平坦でもよい(例えばシート、テスト片など)。好ましい支持体としては、ポリスチレン・ビーズなどが挙げられる。
遺伝子ペプチド特異的抗体を検出可能に標識することのできる方法は多数あるが、そのうちの1つの方法は、その抗体を酵素に結合させて酵素イムノアッセイ(EIA)で利用するというものである。例えばVoller, A.、『固相酵素免疫検定法(ELISA)』、1978年、診断の地平線、第2巻、1-7ページ、微生物学学会会友季刊出版、ウォーカーズビル、メリーランド州;Voller, A.他、1978年、J. Clin. Pathol.、第31巻、507-520ページ;Butler, J.E.、1981年、Meth. Enzymol.、第73巻、482-523ページ;Maggio, E.(編)、1980年、『酵素イムノアッセイ』、CRC出版、ボカラトン、フロリダ州を参照のこと。抗体に結合する酵素は、適切な基質(発色性基質が好ましい)と反応して、例えば分光光度計、蛍光計、視覚手段を用いて検出できる化学的部分を発生させるようにする。抗体を検出可能に標識するのに使用できる酵素としては、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイド・イソメラーゼ、酵母のアルコール・デヒドロゲナーゼ、α-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、セイヨウワサビのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼなどが挙げられる。検出は、酵素にとっての発色基質を用いた比色法によって実現することができる。検出は、基質が酵素とどの程度反応したかを、同様にして調製した基準と目視で比較することによって実現することもできる。
検出は、他のさまざまなイムノアッセイのうちの任意のものを用いて行なうこともできる。例えば抗体または抗体フラグメントを放射性標識することにより、ラジオイムノアッセイ(RIA)を利用してペプチドを検出することができる。例えばWeintraub, B.、『ラジオイムノアッセイの原理』、放射性リガンド・アッセイ技術に関する第7教程、エンドクリン学会、1986年3月を参照のこと。放射性同位体は、γカウンターやシンチレーション・カウンターなどの手段を使用して、あるいはオートラジオグラフィによって検出することができる。
抗体を蛍光化合物で標識することも可能である。蛍光標識した抗体に適切な波長の光を照射すると、蛍光のおかげでその抗体の存在を検出することができる。最も一般的に使用されている蛍光標識化合物は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド。フルオレスカミンである。抗体は、蛍光放出金属(例えばランタニド系列の金属)を用いて検出することもできる。そのような金属は、金属イオン封鎖基(例えばジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またエチレンジアミン四酢酸(EDTA))を用いて抗体に付着させることができる。
抗体は、化学発光化合物と結合させることによって検出可能に標識することができる。次に、化学発光化合物がタグとして付いた抗体の存在を、化学反応を通じて発生する蛍光の存在を検出することによって検出する。有用な化学発光標識化合物の具体例としては、ルミノール、イソルミノール、セロマティック・アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステルがある。
同様に、生物発光化合物を用いて本発明の抗体を標識することもできる。生物発光は、生物系において見いだされた化学発光の一形態であり、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を増大させている。生物発光タンパク質の存在は、ルミネセンスの存在を検出することによって明らかにすることができる。標識のための重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、エクオリンである。
診断
本発明は、組織選択的遺伝子の検出、評価、決定などを行なうための本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、特異的結合パートナーを用いて異常の診断、異常に対する感受性の判定を行なう方法と組成物に関する。このような方法では、遺伝子は異常のマーカーとして機能する。それは、例えば突然変異した遺伝子が疾患の直接的な原因である場合;遺伝子が、異常にとって直接的な影響のある別の遺伝子の影響を受けている場合(例えば遺伝子が、直接的な影響のある別の遺伝子と同じシグナル伝達経路の一部である場合);遺伝子が、異常にとって直接的な影響のある別の遺伝子と染色体上で連鎖しているが物理的に離れている場合などである。他にも多くの場合が考えられる。検出、評価、決定などを行なうには、この明細書の前後に記載してあるように、遺伝子に対して特異的なプローブを用いるとよい。遺伝子の検出および/または評価には任意の方法を用いることができる。例えばポリヌクレオチド、抗体、あるいはこれら以外の特異的結合パートナーを用いて遺伝子の発現を検出する方法を利用する。
“診断する”という用語は、サンプルが疾患を有するかどうかを明らかにすることを意味する。“異常”は、例えば疾患または病気などの異常なあらゆる状態を意味する。“疾患または異常に対する対象の感受性を明らかにする”とは、対象がそのような疾患または異常になりやすい傾向を持っているかどうかを、その傾向が遺伝子の異常な発現(例えば遺伝子が突然変異している、遺伝子の発現パターンが正常でない、など)に現われることをもとにして判定することを意味する。エピジェネティックな因子、環境因子などの影響を受けたとき、ある疾患に対する傾向または感受性が生じる可能性がある。診断には、(例えば羊水穿刺またはCVサンプリングを通じて)胎児または胚からのサンプルを分析して遺伝子の発現を分析する出生前スクリーニングが含まれる。
“遺伝子またはポリヌクレオチドの発現を評価する”という表現は、遺伝子が機能している状態を評価することを意味する。その中には、その遺伝子の発現レベルの測定、その遺伝子のゲノム構造の決定、その遺伝子からの転写産物のmRNA構造の決定、その遺伝子によってコードされているポリペプチドの発現レベルの測定などが含まれる。したがって“発現を評価する”という表現には、遺伝子の転写メカニズムと翻訳メカニズムのあらゆる側面を評価することが含まれる。例えばプロモータの欠陥が原因で異常が起こっている場合、あるいはプロモータの欠陥が異常の原因であることが疑われる場合には、遺伝子のプロモータ配列を調べること(例えばシークエンシングまたは制限地図作成)により、あるいは転写産物(例えばRNA)を検出することにより、あるいは翻訳産物(例えばポリペプチド)を検出することにより、サンプルを判定する(すなわち“評価する”)ことができる。そのためには、遺伝子が機能しているかどうかを示す任意の手段を利用できる。例えば、ポリペプチドやポリヌクレオチドのほか、遺伝子の生物学的活性を調べる機能アッセイなどが利用可能である。
評価を行なうには、正常な遺伝子(例えば異常と関連していない遺伝子)での結果と比較するのが有効である。どのような比較であるかは、評価をどのようにして行なうかに応じ、ルーチンで決定することができる。例えばサンプルのmRNAのレベルを検出する場合には、正常なサンプル、あるいは異常の影響を受けていないことがわかっている遺伝子のmRNAのレベルが比較対象となる。mRNAの検出法はよく知られており、すでに説明した。検出法としては、例えば、ノーザン・ブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR、RACE PCRなどの方法がある。同様に、ポリペプチドの産生を利用して遺伝子を評価する場合には、正常組織サンプルに含まれるポリペプチド、または発現が異常の影響を受けていないことがわかっている遺伝子からのポリペプチドを対照として用いることができる。これらは、このような方法をどのようにして実施するかのほんのわずかな例である。
本発明の遺伝子とポリペプチドを用いて上記の疾患や症状に関し、同定、検出、ステージ判定、存在の確認、予後予測、治療、研究などができる。本発明は、疾患または疾患感受性に関する遺伝子的基礎を明らかにする方法であって、例えば、本発明の遺伝子と疾患または疾患感受性の関連を明らかにするステップを含む方法に関する。疾患または疾患感受性とヌクレオチド配列の関係としては、例えば、DNAマーカー(例えば遺伝子、VNTR、多型、ESTなど)と特定の疾患状態の間の相関(または関係)を確立(または発見)することなどが挙げられる。関係が明らかになると、DNAマーカーを診断で用いることや、薬剤の標的として用いることができる。遺伝子の任意の領域(例えばエキソン、イントロン、遺伝子間領域など)をDNAマーカー供給源として用いることができる。
ヒト連鎖地図を構成することにより、遺伝子と疾患または症状の関係を確立することができる。一般に、多型分子マーカー(例えばSTRP、SNP、RFLP、VNTR)がその領域内で同定された後、マーカー間の連鎖と地図上での距離が確立され、次いで表現型と個々のさまざまな分子マーカーの間の連鎖が確立される。地図は、個々のファミリー、選択した集団、患者集団などについて作ることができる。一般に、そのための方法は、疾患に関連するマーカーを同定(例えば疾患と連鎖したファミリーにおける多型を同定)した後、周囲のDNAを分析してその表現型にとって重要な遺伝子を同定する操作を含んでいる。例えばKruglyak他、Am. J. Hum. Genet.、第58巻、1347-1363ページ、1996年;Matise他、Nat. Genet.、第6巻(4)、384-390ページ、1994年を参照のこと。
疾患に対する治療的介入または予防的介入(例えば薬剤の投与、化学療法、照射など)の効果を評価することは、ドラッグ・デリバリー、臨床医学、薬物動態学における重要な研究である。治療措置または予防措置の評価には、実験段階であれ、すでに臨床応用されている段階であれ、広い応用がある。例えば、臨床試験において対象の状態をモニターすることに、モデル動物を分析し評価することに、疾患の治療と予防が関係するあらゆるシナリオに応用できる。本発明によるポリヌクレオチドの発現プロファイルを分析した結果を、介入の効果を判定し測定するためのパラメータとして用いることができる。異常状態を治療すると何らかの形で発現プロファイルが変化する可能性があり、その変化が、その疾患に対する薬剤の効果を予測する、あるいは示すことになる。プロファイルの変化は、例えば薬剤の毒性、正常レベルへの復帰などを示している可能性がある。したがって本発明は、疾患または疾患感受性を有する対象における治療措置または予防措置(例えば化学療法、照射、抗がん剤、抗体など)をモニターまたは評価する方法であって、例えば、1つ以上の組織選択的遺伝子の発現レベルを検出するステップを含む方法にも関する。対象としては、細胞をベースとしたアッセイ系、ヒトでないモデル動物、ヒト患者などが可能である。検出はこの明細書の前後に記載したようにして行なうことができる。“治療的介入または予防的介入”とは、例えば患者に対する薬剤の投与、手術、照射、化学療法、あるいは疾患の予防、治療、診断を行なうための他の手段を意味する。
本発明は、さまざまな目的(例えば診断、治療、研究)のために結合パートナー(例えば抗体)を利用して活性剤を組織(例えば腎臓、膵臓、免疫細胞)に到達させる方法にも関する。そのための方法は、活性剤を組織に到達させる、あるいは投与するため、組織選択的ポリペプチドに対して特異的な結合パートナーに結合した活性剤を、その活性剤を必要としている対象に対して有効量投与するステップを含むことができる。この場合、結合パートナーは、その活性剤を標的組織に特異的に到達させるのに効果的なものにする。
任意のタイプの活性剤を結合パートナーと組み合わせて使用することができる。例えば、治療薬、細胞傷害剤、 細胞増殖抑制剤、化学療法剤、抗がん剤、抗増殖剤、抗生剤などを用いることができる。化学療法剤としては、例えばDNA相互作用剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、チューブリン相互作用剤、ホルモン剤、ヒドロキシウレア、シスプラチン、シクロホスファミド、アルトレタミン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、サイトキサン、2-メトキシ-カルボニル-アミノ-ベンゾイミダゾール、プリカマイシン、メトトレキセート、フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、CB3717、アザシチジン、フロクスウリジン、メルカピオプリン、6-チオグアニン、ペントスタチン、シタラビン、フルダラビンなどが可能である。薬剤は、画像技術(例えばX線、CT、CAT、MRI、超音波、PET、SPECT、シンチグラフィック法)において有用な造影剤にすることができる。
活性剤は、標的に特異的に到達させるのに有効な結合パートナーと任意の方法で結合させることができる。特異的なデリバリーまたは到達とは、薬剤が組織に供給され、他の組織には実質的に供給されないことを意味する。これは、薬剤が毒性を持っていて、組織への特異的到達によって毒性の大部分をその組織に向かわせ、体内の他の組織にはできるだけわずかな効果しか生じないようにすることが可能である場合に特に有効である。活性剤と結合パートナーは、例えば結合パートナーと薬剤の間の化学結合を通じて、あるいは結合剤を通じて直接的に結合(“カップリング”)させることができ、例えば活性剤がリポソームやそれ以外の担体の中に存在していて、結合パートナーをリポソームの表面と結合させる場合には、より直接的でない結合にすることができる。そのような場合、結合パートナーは、組織選択的ポリペプチドに結合できるような向きにする(例えば細胞表面に露出させること)ことができる。DNAを細胞表面の受容体を通じて標的に到達させる方法は、例えばアメリカ合衆国特許第6,339,139号に記載されている。
薬剤の同定法
本発明は、組織選択的遺伝子を変化させる薬剤の同定方法と、その薬剤そのものにも関する。薬剤を用いることにより、遺伝子によってコードされているポリペプチドの生物学的活性、または遺伝子そのものを変化させることができる。遺伝子またはその産物を調節する薬剤は、さまざまな環境で有効である。そのような薬剤には、遺伝子に関連する疾患を治療または予防する医薬と、組織や細胞の機能を変化させる研究用試薬が含まれる。
薬剤の同定方法は、一般に、薬剤、その転写産物、その翻訳産物、これら以外の標的のいずれかを遺伝子と接触させるステップと、次いでその薬剤が標的を“変化させる”かどうかを評価するための測定を行なうステップを含んでいる。利用するこの特別な方法は、多数の因子に依存することになろう。因子としては、例えば、標的(すなわち遺伝子であるか、その遺伝子によってコードされているポリペプチドであるか)、環境(例えば試験管内であるか生体内であるか)、薬剤の組成などが挙げられる。
組織選択的遺伝子の発現を変化させるための方法は、例えば、遺伝子(例えば細胞集団の中の遺伝子)をテストする薬剤と接触させる操作を、テストするその薬剤が組織選択的遺伝子の発現を変化させるのに有効な条件下で実施するステップと、テストするその薬剤がその遺伝子を変化させるかどうかを明らかにするステップのうちの1つ以上を有効な任意の順番で含むことができる。薬剤は、組織選択的遺伝子の発現を任意のレベルで変化させることができる。例えば、細胞内における(例えばプロモータを変化させることによる)転写のレベル、および/または翻訳のレベル、および/または核酸の持続性(例えば分解、安定性など)のレベルで変化させることが可能である。
ポリペプチドの生物学的活性を変化させるための方法は、例えば、ポリペプチド(例えば細胞内のポリペプチド、ライセート中のポリペプチド、単離されたポリペプチド)をテストする薬剤と接触させる操作を、テストするその薬剤がそのポリペプチドの生物学的活性を変化させるのに有効な条件下で実施するステップと、テストするその薬剤がその生物学的活性を変化させるかどうかを明らかにするステップのうちの1つ以上を有効な任意の順番で含むことができる。
遺伝子またはポリペプチドをテストする薬剤と接触させるには、発現または生物学的活性を機能的に制御するための位置に薬剤を置くのに適切な任意の方法および/または手段を利用することができる。機能的に制御するとは、薬剤がその生理学的効果を何らかの作用メカニズムを通じて及ぼしうることを意味する。方法および/または手段の選択は、薬剤の性質と、遺伝子またはポリペプチドが存在する環境の状態とタイプ(例えばライセート中にある、単離されている、細胞集団の中にある(試験管内、生体内、移植臓器など))によって異なる可能性がある。例えば細胞集団が試験管内の細胞培養物である場合には、薬剤を培地に直接添加することによって薬剤を細胞と接触させることができる。薬剤が水性媒体に容易に溶けない場合には、薬剤をリポソームまたは別の親脂性担体の中に組み込んだ後、細胞培養物に投与するとよい。接触を容易にするには、薬剤を担体、デリバリー分子、複合体に組み込むこと、注射すること、輸液することなどが可能である。
薬剤は、ポリペプチドの部分のうちでそのポリペプチドを変化させるのに有効な任意の部分に向けること、または到達させることが可能である。例えば薬剤(抗体や小分子など)は、ポリペプチドの細胞表面、露出した領域、細胞外領域、リガンド結合領域、機能領域などに向けることができる。薬剤は、細胞内の領域やドメイン(例えばポリペプチドが細胞内または膜内の結合パートナーと結合または相互作用する領域)に向けることもできる。
薬剤を投与して望む場所に到達させた後、テストするその薬剤が発現または生物学的活性を変化させるかどうかを明らかにするとよい。変化は、質的な変化でも量的な変化でもよく、例えばその量または質の増加、容易化、促進、上方調節、刺激、活性化、増幅、増大、誘導、低下、下方調節、減少、少数化、削減などが可能である。変化する量はどれだけでもよい。例えば、1%、5%、10%、50%、75%、1倍、2倍、5倍、10倍、100倍などが可能である。発現を変化させるとは、例えば、テストする薬剤が発現に影響を与えることを意味する。例えば、転写量に影響を与える、RNAのスプライシングに影響を与える、RNAからポリペプチドへの翻訳に影響を与える、RNAまたはポリペプチドの安定性に影響を与える、RNAのポリアデニル化またはそれ以外のプロセシングに影響を与える、転写後または翻訳後のプロセシングに影響を与えるなどを意味する。生物学的活性を変化させるとは、例えば、ポリペプチドの機能的活性を、薬剤が存在していない状態での正常な活性と比べて変化させることを意味する。この効果としては、増加、減少、阻止、抑制、促進などが挙げられる。
テストする薬剤は、任意の分子組成のものが可能である。例えば化合物、生体分子(例えばポリペプチド、脂質、核酸(例えばアンチセンス)、炭水化物、抗体、リボザイム、二本鎖RNA、アプタマー)などが可能である。例えば変化させるポリペプチドが細胞表面の分子である場合には、テストする薬剤は、そのポリペプチドを特異的に認識して例えばそのポリペプチドを内部化することにより、細胞表面でそのポリペプチドが下方調節されるような抗体にするとよい。このような効果は永続的ではないが、下方調節効果が続くには抗体が存在している必要がある可能性がある。抗体を利用し、ライセートまたはそれ以外の無細胞形態の中にあるポリペプチドの生物学的活性を変化させることもできる。
GPCRポリペプチドを分析するための細胞をベースとした別のテスト系が、Marcheseらによってまとめられている(1999年、Trends in Pharmacol. Sci.、第20巻、370-375ページ)。そのようなテスト系としては、いわゆる“リガンド・スクリーニング・アッセイ”が挙げられる。例えば酵母細胞では、フェロモン受容体を本発明によるGPCRで置き換えることができる。テスト物質が受容体に及ぼす効果は、ヒスチジンの合成が変化することによって、すなわち無ヒスチジン培地の中で増殖させることによって明らかにすることができる。さらに、本発明の核酸をトランスフェクトした細胞を用いることにより、テスト物質が、例えばアレスチン-GFP-融合タンパク質の検出可能なアレスチンの転位に関与しているかどうかを分析することができる。また、テスト物質が、GPCRを通じたアフリカツメガエルの黒色素胞の分散または凝集に関与しているかどうかも分析することができる。別のテスト系では、普遍的アダプターGタンパク質であるGアルファ6を使用する。このGアルファ6は、Ca.sup.2+を動員する機能がある。他のスクリーニング・テスト系は、Lemer他、前掲文献;WO 96/41169;アメリカ合衆国特許第5,482,835号;WO 99/06535;ヨーロッパ特許第0,939,902号;WO 99/66326;WO 98/34948;ヨーロッパ特許第0,863,214号;アメリカ合衆国特許第5,882,944号、第5,891,641号に記載されている。
治療法
本発明の選択的ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ならびにこれらに対する特異的結合パートナーは、治療に応用すること、特にこの明細書に記載した疾患や症状の治療に用いることができる。有用な方法としては、(例えばポリペプチドに対する特異的結合パートナーを利用した)免疫療法、(例えば選択的ポリペプチド、またはそのようなポリペプチドをコードしている裸のDNAを利用した)ワクチン接種、タンパク質またはポリペプチドの置換療法、遺伝子療法(例えば、生殖細胞系の修正、アンチセンス)などが挙げられる。
さまざまな免疫療法を利用することができる。例えば組織特異的抗原を特異的に認識する無標識の抗体を利用し、身体ががんその他の疾患組織を破壊または攻撃するのを促進すること、下方調節を起こさせること、相補体を通じた溶解を起こさせること、(例えば乳がんを治療するのにc-erbB-2抗体がどのように用いられるかと同じように)抗原を提示する標的細胞の増殖を抑制することなどができる。さらに、放射性核種やそれ以外のエネルギー放出体、毒素(例えばリシン、外毒素A(ETA)、ジフテリア)、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤、免疫調節剤、化学療法剤などを抗体に標識する、あるいは結合させることにより、その抗体の毒性効果を増大させることができる。例えばアメリカ合衆国特許第6,107,090号を参照のこと。
抗体またはそれ以外の特異的結合パートナーを第2の分子(例えば細胞傷害剤)と結合させ、その第2の分子を組織-抗原ポジティブ細胞に到達させることが可能である(DeVita, Jr., V.T.他編、『がん:腫瘍学の原理と実践』、第4版、1993年、J.B.リピンコット社、フィラデルフィアの中のVitetta, E.S.他による「免疫毒性療法」、2624-2636ページ)。細胞傷害剤の具体例としては、代謝拮抗剤、アルキル化剤、アントラシクリン、抗生剤、抗有糸分裂剤、放射性同位体、化学療法剤などが挙げられる。細胞傷害剤のさらに別の具体例としては、リシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、1-ジヒドロテストステロン、ジフテリア毒素、スードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、延長因子-2、グルココルチコイドなどが挙げられる。治療薬を抗体に結合させる方法はよく知られている。
ポリヌクレオチドとポリペプチドは、免疫療法に加え、例えば機能、発現(例えば治療薬としてのアンチセンス)、アセンブリーなどを阻害する化合物を用いた非免疫療法の用途における標的として使用することができる。遺伝子の発現が疾患に関与している場合には、その遺伝子を試験管内と生体内で沈黙させるのに(それだけでなく、他の目的、例えば細胞の増殖経路を変化させるために遺伝子の機能を明らかにするなどの目的にも)RNA干渉を利用することができる。例えばSharpとZamore、Science、第287巻、2431-2433ページ、2001年;Grishok他、Science、第287巻、2494ページ、2001年を参照のこと。
治療薬のデリバリーは、有効な任意の方法で実現することができる。例えば、リポソーム、ウイルス、プラスミド・ベクター、細菌デリバリー系、経口投与、全身投与などの方法がある。本発明の治療薬は、任意の形態で効果的な任意の経路で投与することができる。例えば、経口、非経口、腸、腹腔内、局所、経皮(例えば標準的な任意のパッチを用いる)、静脈内、眼、鼻、局部、非経口(例えばエーロゾル、吸入、皮下、筋肉内、口、舌下、直腸、膣、動脈内、鞘内)などに投与する。治療薬は、単独で、あるいは活性または不活性な任意の成分と組み合わせて投与することができる。
本発明は、治療薬そのものに加え、組織選択的遺伝子の発現が変化した疾患の治療法であって、例えば、その遺伝子の発現を調節するのに有効な治療薬および/またはその疾患を治療するのに有効な治療薬を必要としている対象に対してその治療薬を投与するステップを含む方法にも関する。“治療する”という用語は通常の意味で使用し、例えば、病状、疾患、異常と闘うこと、あるいは病状、疾患、異常を軽減、低減、緩和、改善することを目的として対象の管理またはケアを行なうことを意味する。“発現が変化した”という表現は、疾患が、遺伝子の突然変異または遺伝子(または対応する産物)の正常な機能に影響を与える何らかの変化と関係していることを意味する。したがって発現は、例えば転写、翻訳、スプライシング、mRNAまたはタンパク質産物の安定性、遺伝子産物の活性、異なる発現などを意味する。
疾患を“治療する”あらゆる薬剤を用いることができる。そのような薬剤として、組織選択的遺伝子の発現を調節する薬剤が可能である。発現は、すでに述べたように、例えば転写、翻訳、スプライシング、mRNAまたはタンパク質産物の安定性、遺伝子産物の活性、異なる発現などを意味する。例えば病状が遺伝子産物の完全に欠如した結果である場合には、対象に遺伝子産物を投与することは、疾患を治療し、遺伝子の発現を調節することであると言えよう。他の多くの状況が考えられる。例えば、遺伝子が異常に発現した場合や、治療薬が異常な発現を調節してその正常な発現パターンを回復させる場合である。
アンチセンス
アンチセンス・ポリヌクレオチド(例えばRNA)も本発明のポリヌクレオチドから調製することができる。アンチセンス・ポリヌクレオチドにはさまざまな用途がある。例えばインサイチュ・ハイブリダイゼーション、治療、位置を指定した突然変異(生体内、トライプレックスなど)を目的として、そのアンチセンス・ポリヌクレオチドがコードしているポリペプチドの発現を調節して例えばその発現を抑制することができる。アンチセンスの投与や設計に関するガイドとしては、例えばアメリカ合衆国特許第6,200,960号、第6,200,807号、第6,197,584号、第6,190,869号、第6,190,661号、第6,187,587号、第6,168,950号、第6,153,595号、第6,150,162号、第6,133,246号、第6,117,847号、第6,096,722号、第6,087,343号、第6,040,296号、第6,005,095号、第5,998,383号、第5,994,230号、第5,891,725号、第5,885,970号、第5,840,708号を参照されたい。アンチセンス・ポリヌクレオチドは、発現制御配列と機能的にリンクさせることができる。カチオン性リポソームを含む細胞培養物の中では全長が約35塩基対のものを用いて細胞への取り込みが容易になるようにすることができるが、生体内で使用するにはそれよりも短い(例えば25ヌクレオチドの)オリゴヌクレオチドを投与することが好ましい。
アンチセンス・ポリヌクレオチドは、例えば生体内または試験管内での安定性を増大させる、ヌクレアーゼに抵抗性を与える、取り込みを調節する、細胞の分布と区画化を調節するなどの目的で、ヌクレオチド相互の間に、自然にではなく発生した修飾されたヌクレオチドやリンク(例えば修飾されたリン酸-糖骨格;修飾されたホスホン酸メチル、ホスホロチオ酸、ホスホロジチオ酸結合;修飾された2'-O-メチルリボース糖単位)を含むことができる。すでに述べたものも含め、従来技術で知られている有効な任意のヌクレオチドまたは修飾を利用することができる。その具体例は、アメリカ合衆国特許第6,133,438号、第6,127,533号、第6,124,445号、第6,121,437号、第5,218,103号(例えばヌクレオチドチオホスホロアミダイト)、第4,973,679号;『オリゴヌクレオチドとアナログ、実際的方法』、Eckstein(編)、IRL出版、オックスフォード、1991年の中のSproat他、「2'-O-メチルオリゴリボヌクレオチド:合成と応用」、49-86ページ;Iribarren他、「アンチセンス・プローブとしての2'-O-アルキルオリゴリボヌクレオチド」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1990年、第87巻、7747-7751ページ;Cotton他、「試験管内におけるU7 snRNP依存mRNAのプロセシング事象の阻害剤としての2'-O-メチル、2'-O-エチルオリゴリボヌクレオチドとホスホロチオ酸オリゴデオキシリボヌクレオチド」、Nucl. Acids Res.、1991年、第19巻、2629-2635ページに開示されている。
アレイ
本発明は、組織選択的遺伝子またはその遺伝子によってコードされるポリペプチドがサンプル中でどのように発現するかを検出するため、ポリヌクレオチド・プローブと特異的結合パートナー(例えば抗体)が秩序正しく並んだアレイであって、固体支持体に付着した1つ以上のポリヌクレオチド・プローブまたは特異的結合パートナーを含んでおり、各プローブが、組織選択的遺伝子、またはあるポリペプチドに対して特異的な特異的結合パートナーになっているアレイにも関する。
“秩序化されたアレイ”という表現は、プローブが同定可能なパターンに、あるいは位置がわかるパターンに配置されていることを意味する。具体的には、アメリカ合衆国特許第6,156,501号、第6,077,673号、第6,054,270号、第5,723,320号、第5,700,637号、WO 99/19711、WO 00/023803に開示されているアレイが挙げられる。プローブは、有効な任意の方法で固体支持体に付着させる。例えばプローブは、そのプローブを基板上で重合させることによって、あるいはプローブを基板に付着させることによって固体支持体に結合させることができる。付着は、共有結合、静電的結合、非共有結合、疎水結合、親水結合、配位結合、吸着、吸収、極性結合などによることが可能である。繊維または中空フィラメントをアレイで使用する場合には、プローブを中空の穴に満たすこと、プローブを固体フィラメントに吸収させること、プローブを穴の表面に付着させることなどが可能である。プローブは、すでに説明したように、有効な任意のサイズ、任意の配列、任意の組成などにすることができる。
トランスジェニック動物
本発明は、組織選択的遺伝子とそのホモログを含むトランスジェニック動物にも関する。(トランスジェニック動物の作り方ならびに関連する組み換え技術は通常と同じであり、例えば『トランスジェニック動物の技術』、Pinkert他、第2版、アカデミック・プレス、2002年に記載されている。)そのような遺伝子としては、あとで詳しく説明するように、機能が破壊された遺伝子、突然変異した遺伝子、異所性発現した遺伝子、選択的に発現した遺伝子、誘導可能な遺伝子、調節可能な遺伝子などが挙げられる。トランスジェニック動物は、適切な任意の技術または方法(例えば相同的組み換え、突然変異誘発(例えばENU, Rathkolb他、Exp. Physiol.、第85巻(6)、635-644ページ、2000年)、テトラサイクリン調節遺伝子発現系(例えばアメリカ合衆国特許第6,242,667号))に従って作り出すことができる。この明細書で用いる“遺伝子”という用語には、1つの遺伝子のあらゆる部分、すなわち調節配列、プロモータ、エンハンサー、エキソン、イントロン、コード配列などが含まれる。構造体または導入遺伝子に存在する核酸は、自然に発生した野生型のもの、多型のもの、突然変異したものが可能である。動物がヒトでない動物である場合には、そのホモログを代わりに用いることができる。トランスジェニック動物は、この明細書に記載した組織(例えば膵臓、腎臓、免疫細胞)のどこかに構造上および/または機能上の欠陥を有する可能性と、この明細書に記載した関連する異常または疾患のいずれかに対する感受性を有する可能性がある。
この延長線上で、本発明のポリヌクレオチドを利用し、機能が破壊された1個以上の組織選択的遺伝子またはそのホモログ(例えばマウスを用いる場合にはマウスのホモログ)をゲノムに含むトランスジェニック動物(例えばヒトでない動物)を作り出すことができる。“機能破壊”または“機能が破壊された”という表現は、遺伝子が生物学的に活性な産物を発現しないことを意味する。その場合、その遺伝子によってコードされている少なくとも1つの活性が実質的に欠如している可能性がある。ポリペプチドの発現が実質的にない可能性、すなわちほとんど検出できない程度の量しかポリペプチドが産生されない可能性がある。ポリペプチドは産生させることもできるが、活性の欠けたもの、例えば遺伝子産物のアミノ末端部分だけが産生されたものになる。
トランスジェニック動物は、1個以上の細胞を含むことができる。操作された遺伝子が実質的にすべての細胞に含まれている場合には、“操作された遺伝子がゲノムに含まれた”トランスジェニック動物と呼ぶことができる。これは、この動物の内在性遺伝子座が変化し、実質的にすべての細胞がそのような変化を含んでいることを示している。
遺伝子の機能破壊は、有効な任意の方法で実現することができる。例えば、停止コドンをコード配列の任意の部分に導入し、得られるポリペプチドを(例えば触媒ドメイン、リガンド結合ドメインなどが欠けているため)生物学的に不活性にすること、プロモータまたはそれ以外の調節配列のスイッチを切ったり遺伝子の転写を減少させるような突然変異をそのプロモータまたは調節配列に導入すること、遺伝子を不活性化させる(例えば生物学的に活性なポリペプチドの産生を中断させる、あるいはプロモータまたはそれ以外の転写メカニズムを中断させる)外来性配列をその遺伝子に導入すること、遺伝子からの配列を欠失させることなどによる。機能が破壊された遺伝子を持つトランスジェニック動物の具体例はよく知られており、例えばアメリカ合衆国特許第6,239,326号、第6,225,525号、第6,207,878号、第6,194,633号、第6,187,992号、第6,180,849号、第6,177,610号、第6,100,445号、第6,087,555号、第6,080,910号、第6,069,297号、第6,060,642号、第6,028,244号、第6,013,858号、第5,981,830号、第5,866,760号、第5,859,314号、第5,850,004号、第5,817,912号、第5,789,654号、第5,777,195号、第5,569,824号に記載されている。機能破壊が含まれたトランスジェニック動物は、“ノックアウト”動物と呼ぶこともできる。というのも、その遺伝子の生物学的活性が“ノックアウト”されているからである。ノックアウトは、ホモでもヘテロでもよい。
機能が破壊された遺伝子やそれ以外の遺伝子突然変異に関し、相同的組み換え技術が特に興味深い。というのも、その技術によってゲノムの特定の部位を標的とすることができるからである。相同的組み換え法を利用すると、遺伝子を特異的に不活性化すること、特定の突然変異を導入すること、外来性配列を特定の部位に導入することができる。この方法は従来技術でよく知られており、例えば上記の特許に記載されている。Robertson、Biol. Reproduc.、第44巻(2)、238-245ページ、1991年も参照のこと。一般に、遺伝子工学は胚性幹(ES)細胞またはそれ以外の多能細胞系(例えば成人の幹細胞、EG細胞)において実施され、遺伝子を改変された細胞(または核)を用いて1つの生物全体を作り出す。核移植は、相同的組み換え技術と組み合わせて利用することができる。例えばポジティブ-ネガティブ選択法を利用してマウスES細胞において遺伝子座を破壊することができる(例えばMansour他、Nature、第336巻、348-352ページ、1988年)。この方法では、標的とする遺伝子の一部を含むターゲティング・ベクターを構成するとよい。選択マーカー(例えばネオマイシン抵抗性遺伝子)をターゲティング・ベクター内に存在しているエキソンに導入してそのエキソンを破壊することができる。このベクターを再びES細胞のゲノムと組み換えると、遺伝子の機能が破壊される。細胞内にベクターが存在していることは、ネオマイシン抵抗性の発現から判定することができる。アメリカ合衆国特許第6,239,326号を参照のこと。機能が破壊された遺伝子を少なくとも1つ有する細胞を用いてキメラ動物や生殖系列動物(例えば操作した遺伝子を含む体細胞および/または生殖細胞を有する動物)を作ることができる。ホモのノックアウト動物は、ヘテロなノックアウト動物を交配させることによって得ることができる。アメリカ合衆国特許第6,225,525号を参照のこと。
本発明は、標的組織内でコード配列を発現させるのに有効な発現制御配列と機能上関連した組み換えによる組織選択的核酸(とそのホモログ)がゲノムに含まれた非ヒト・トランスジェニック動物にも関する。このようなトランスジェニック動物は、“ノックイン”動物と呼ぶこともできる。というのも、外来性遺伝子が、ゲノムの中に安定に導入されているからである。“機能上関連した”とは、この明細書全体を通じて用いられる意味を持っており、別の核酸と機能的に関係のある位置にあることを意味する。上に説明したように、ある遺伝子が発現制御配列と機能上関連しているとは、その遺伝子(例えばコード配列)が発現制御配列(例えばプロモータ)と組み合わさってコード配列の転写と翻訳を容易にすることを意味する。上に説明したように、“ゲノム”という用語は、細胞のゲノムが改変されていることを意味する。この場合、組み換え遺伝子が動物のゲノムに安定な状態で統合されている。発現制御配列と機能上関連している核酸(例えばコード配列)は、構造体または導入遺伝子と呼ぶこともできる。
目的に応じ、あらゆる発現制御配列を用いることができる。例えば選択的に発現させたい場合には、その発現を制限する発現制御配列を選択するとよい。そのような発現制御配列としては、組織特異的プロモータまたは細胞特異的プロモータ、イントロン、エンハンサーなどが挙げられる。細胞特異的な発現または組織特異的な発現をさせるさまざまな方法に関しては、アメリカ合衆国特許第6,215,040号、第6,210,736号、第6,153,427号を参照のこと。そのような方法として内在性プロモータがある。すなわち、コード配列を自身のプロモータと機能上関連した状態にするとよい。誘導性プロモータや調節可能なプロモータも利用することができる。
本発明は、機能が破壊された遺伝子と、ゲノムに安定に統合された導入遺伝子とを含むトランスジェニック動物にも関する。このような動物は、これまでに説明した方法やこれから説明する方法のうちの任意のものを組み合わせて構成することができる。このような動物には、上記のあらゆる用途がある。例えば、正常な遺伝子をノックアウトしたり、正常な遺伝子を突然変異した遺伝子で置換したりするのに用いられる。導入遺伝子を内在性遺伝子座に統合し、機能破壊と“ノックイン”が同じステップで行なわれるようにすることができる。
トランスジェニック動物は、上記の方法に加え、公知の方法で作ることもできる。例えば、組み換え遺伝子を1細胞胚の前核に前核注入する方法、人工酵母の染色体を胚性幹細胞に組み込む方法、遺伝子ターゲティング法、胚性幹細胞法、クローニング法、核移植法などによる。アメリカ合衆国特許第4,736,866号、第4,873,191号、第4,873,316号、第5,082,779号、第5,304,489号、第5,174,986号、第5,175,384号、第5,175,385号、第5,221,778号;Gordon他、Proc. Natl. Acad. Sci.、第77巻、7380-7384ページ、1980年;Palmiter他、Cell、第41巻、343-345ページ、1985年;Palmiter他、Ann. Rev. Genet.、第20巻、465-499ページ、1986年;Askew他、Mol. Cell. Bio.、第13巻、4115-4124ページ、1993年;Games他、Nature、第373巻、523-527ページ、1995年;ValanciusとSmithies、Mol. Cell. Bio.、第11巻、1402-1408ページ、1991年;Stacey他、Mol. Cell. Bio.、第14巻、1009-1016ページ、1994年;Hasty他、Nature、第350巻、243-246ページ、1995年;Rubinstein他、Nucl. Acid Res.、第21巻、2613-2617ページ、1993年;Cibelli他、Science、第280巻、1256-1258ページ、1998年も参照のこと。組み換え酵素除去系に関するガイドとしては、例えばアメリカ合衆国特許第5,626,159号、第5,527,695号、第5,434,066号を参照のこと。Orban, P.C.他、「トランスジェニック・マウスにおける組織特異的、部位特異的なDNA組み換え」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第89巻、6861-6865ページ、1992年;O'Gorman, S.他、「哺乳動物における組み換え酵素を通じた遺伝子の活性化と部位特異的一体化」、Science、第251巻、1351-1355ページ、1991年;Sauer, B.他、「哺乳動物のゲノムに組み込まれたloxP含有DNA配列におけるCreで促進した組み換え」、Polynucleotides Research、第17巻(1)、147-161ページ、1989年;Gagneten, S.他、Nucl. Acids Res.、第25巻、3326-3331ページ、1997年;XiaoとWeaver、Nucl. Acids Res.、第25巻、2985-2991ページ、1997年;Agah, R.他、J. Clin. Invest.、第100巻、169-179ページ、1997年;Barlow, C.他、Nucl. Acids Res.、第25巻、2543-2545ページ、1997年;Araki, K.他、Nucl. Acids Res.、第25巻、868-872ページ、1997年;Mortensen, R.N.他、Mol. Cell. Biol.、第12巻、2391-2395ページ、1992年(G418エスカレーション法);Lakhlani, P.P.他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第94巻、9950-9955ページ、1997年(“ヒットエンドラン”);WestphalとLeder、Curr. Biol.、第7巻、530-533ページ、1997年(トランスポゾンによって生まれた“ノックアウト”と“ノックイン”);Templeton, N.S.他、Gene Ther.、第4巻、700-709ページ、1997年(効率的な遺伝子ターゲティング法であり、例えば選択マーカーなしに相同的組み換えイベントを高頻度で起こすことができる);PCT国際公開WO 93/22443(機能破壊)も参照のこと。
本発明のポリヌクレオチドは、ヒト以外のあらゆる動物に導入することができる。例えば、マウス(Hogan他、『マウス胚の操作;実験室マニュアル』、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、1986年)、ブタ(Hammer他、Nature、第315巻、343-345ページ、1985年)、ヒツジ(Hammer他、Nature、第315巻、343-345ページ、1985年)、家畜、ラット、霊長類に導入可能である。例えばChurch、Trends in Biotech.、第5巻、13-19ページ、1987年;Clark他、Trends in Biotech.、第5巻、20-24ページ、1987年;DePamphilis他、BioTechniques、第6巻、662-680ページ、1988年も参照のこと。トランスジェニック動物は、アメリカ合衆国特許第5,994,618号に記載されている方法で作り出し、この明細書に記載されているあらゆる用途に用いることができる。
データベース
本発明は、電子的形態になった本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドなどにも関するものであり、その中には、そのような配列またはその断片、eコマース関連手段などを含むコンピュータ可読媒体(例えばフラット・ファイルまたは階層式ファイルなどの適切な任意の形式で記憶された磁気媒体、光媒体など)が含まれる。その延長線上で、本発明は、コンピュータ可読媒体から核酸配列および/またはポリペプチド配列を回収する方法であって、例えば、細胞または遺伝子の発現プロファイル(例えばこの明細書に記載したように、その遺伝子が組織の中で異なった発現をしていることを特定するプロファイル)を選択するステップと、異なった発現をしているその核酸またはポリペプチドを回収するステップのうちの1つ以上を有効な任意の順番で含む方法に関する。
“遺伝子発現プロファイル”は、所定の遺伝子が発現する(すなわち転写および/または翻訳される)組織や細胞などのリストを意味する。“細胞発現プロファイル”は、特定のタイプの細胞で発現する遺伝子を意味する。プロファイルは、遺伝子が発現する組織のリストにすることが可能であるが、追加情報も含むことができる。追加情報としては、発現レベル(例えば対照遺伝子と比較した量、または対照遺伝子で規格化した量)や、時間的発現(例えば細胞周期または発生プログラムのどの時点で発現するか)、空間的発現に関する情報がある。“遺伝子または細胞の発現プロファイルを選択する”という表現は、どのタイプの遺伝子発現パターンまたは細胞発現パターンを回収しようとするのかをユーザーが決定することを意味する。ユーザーは、例えば、遺伝子が組織内で異なった発現をすること、あるいは遺伝子が血液中では発現しないが膵臓では発現していなくてはならないことを知っている必要がある可能性がある。任意の発現パターンを選択することができる。選択は、有効な任意の方法で行なうことができる。一般に、“選択”は、ユーザーが遺伝子発現プロファイルのデータベースを検索するのに用いる質問を作るプロセスを意味する。回収ステップは、選択ステップにおいて作った質問に対応する結果をデータベース内で検索する操作を含んでいる。適切な任意のアルゴリズムを利用して検索を行なうことができる。アルゴリズムとしたは、一致を探すアルゴリズムや、質問とデータの最適化を実行するアルゴリズムなどがある。データベースは、適切なコンピュータ可読形式にされて適切な記憶媒体に記憶されている情報である。結果が回収されると、適切な形式(例えばHTML形式)で表示することができる。
例えばユーザーは、膵臓または腎臓で異なった発現をする遺伝子を同定することに興味を持っている可能性がある。ユーザーは、そのような遺伝子が末梢血リンパ球で発現していない限りは、他の組織でわずかに発現するかどうかには関心を持つ必要がない。データベースから望む遺伝子発現プロファイルまたは細胞発現プロファイルを有する遺伝子セットを回収するため、ユーザーが質問を作る。質問をシステムに入力すると、検索アルゴリズムによってデータベースが検索され、結果が回収される。
広告、ライセンスなどの方法
本発明は、本発明による遺伝子、ポリヌクレオチド、特異的結合パートナー、抗体などに関する広告、ライセンス、販売、購入、斡旋などの方法にも関する。その方法は、例えば組織選択的なポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列、あるいはそれに対して特異的な抗体を、印刷された媒体またはコンピュータ可読媒体(例えばウエブまたはインターネット上)に表示するステップや、その遺伝子、ポリペプチド、抗体を購入したいという申し出を受けるステップを含むことができる。
その他
本発明によるポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、特異的結合パートナーなどは単離することができる。“単離された”という用語は、材料が、元の環境または自然界には見いだされないような形態(例えばより濃縮されている、より精製されている、要素から分離されているなど)になっていることを意味する。単離されたポリヌクレオチドとしては、例えば生きた動物に見いだされる染色体DNAから分離された配列(例えば完全な1つの遺伝子、転写産物、cDNA)を含むポリヌクレオチドが挙げられる。このポリヌクレオチドは、ベクターの一部であってもよいし、(特異的遺伝子ターゲティングによって、あるいは正常な位置以外の位置にランダムに統合することによって)染色体に挿入することもできる。さらに、自然環境で見いだされるのとは異なった形態で単離することもできる。本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドなどは、実質的に精製された状態にすることもできる。実質的に精製されたとは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが分離され、他のポリヌクレオチドまたはポリペプチドから本質的に遊離していること、すなわちポリヌクレオチドまたはポリペプチドが主要な活性構成要素であることを意味する。ポリヌクレオチドは、組み換え分子であってもよい。“組み換え”とは、ポリヌクレオチドが自然界では起こらない配置または形態になっていることを意味する。例えばプロモータ配列を含む組み換え分子には、自然に発生した遺伝子は含まれないが、自然の状態ではプロモータと関連のないコード配列(例えばレポータ遺伝子)と機能上関連したプロモータや、正常なコード配列の断片は含まれることになろう。
この明細書で使用されている“マーカー”という用語は、標的を検出または標識する手段を意味する。マーカーとしては、ポリヌクレオチド(通常は“プローブ”と呼ばれる)、ポリペプチド(例えば検出可能な標識に結合した抗体)、PNA、有効な任意の材料のいずれかが可能である。
上に示した各項の表題は、この出願に含まれるいろいろな情報がどこにあるかを示すためのガイドとして提示したものであり、そのような話題に関する情報をこの明細書のどこに見いだせるかについての唯一のものであることは意図していない。
ポリヌクレオチドの他の側面に関しては、分子生物学の標準的な教科書を参照されたい。例えば、Hames他、『ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション』、IL出版、1985年;Davis他、『分子生物学における基本的方法』、エルザヴィーア・サイエンシーズ出版社、ニューヨーク、1986年;Sambrook他、『分子クローニング』、CSH出版、1989年;Howe、『遺伝子のクローニングと操作』、ケンブリッジ大学出版、1995年;Ausbel他、『分子生物学における最新のプロトコル』、ジョン・ワイリー&サンズ社、1994-1998年を参照のこと。
これ以上詳しく説明しなくとも、当業者であれば、これまでの記述を頼りにして本発明を完全に実施できると考えられる。したがって好ましい実施態様は、単なる説明用であり、いかなる形であれこの明細書の残りの部分がそれに限定されることはない。これまでに引用したすべての出願、特許、出版物に開示されている内容と図面に開示されている内容はすべて、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする。出願の中には、2002年4月16日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第60/372,669号、2002年4月24日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第60/374,823号、2002年5月1日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第60/376,558号、2002年5月20日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第60/381,366号、2002年8月16日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第60/403,648号、2002年9月20日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第60/411,882号、2002年11月7日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第60/424,336号も含まれる。