JP2005532547A - 生細胞の研究方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、1又は複数の生細胞からラマン信号を誘発する方法で、波長785±60nmのレーザーを細胞に照射することを含む方法に関する。

Description

本発明は、1又は複数の生細胞を研究する方法に関する。特に、本発明は、生細胞の変化を検出するための新たな分光法に関する。
ラマン分光法は、生物学サンプルを研究するのに万能な技術で、分子構造、相互作用、及び細胞間効果に関する情報を提供するものであることが立証されている。[A. Mahadevan-Jansen, R. Richards-Kortum, Journal of Biomedical Optics 1(1996), 31-70; G. J. Thomas Jr. , Annu. Rev. Biomol. Struct. 28 (1999), 1-27; P. R. Carey, The Journal of Biological Chemistry 274 (1999), 26625-26628; D. Pappas, B. W. Smith, J. D. Winefordner, Talanta 51 (2000), 131-144; D. Naumann, FT-Infrared and FT-Raman Spectroscopy in Biomedical Research, in: Infrared and Raman Spectroscopy of Biological Materials, H. U. Gremlich and B. Yan eds. , Marcel Dekker Inc., New York, 2001, pp. 323-377; E. A. Carter, H. G. M. Edwards, Biological Applications of Raman Spectroscopy, in: Infrared and Raman Spectrpscopy of Biological Materials, H. U. Gremlich and B. Yan eds., Marcel Dekker Inc., New York, 2001, pp. 421-476; L. -P. Choo-Smith, H. M. Edwards, H. P. Endtz, J. M. Kros, F. Heule, H. Barr, J. S. Robinson Jr. , H. A. Bruining, G. J. Puppels, Biopolymers (Biospectroscopy) 67 (2002), 1-9].
赤外分光法は、細胞死及び細胞周期の分析に既に用いられているが、[N. Jamin, P. Dumas, J. Moncuit, W. -H. Fridman, J. -L. Teillaud, G. L. Carr, G.P. Williams, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 95 (1998), 4837-4840; S.Boydston-White, T. Gopen, S. Houser, J. Bargonetti, M. Diem, Biospectroscopy 5 (1999), 219-227; H. Y. N.Holman, M. C. Martin, E. A. Blakely, K.Bjornstad, W. R.Mckinney, Biopolymers (Biospectroscopy) 57 (2000), 329-335; H. Y. N. Holman, R. Goth- Goldstein, M. C. Martin, M. L. Russel, W. R. Mckinney, Environ. Sci. Technol. 34 (2000), 2513-2517; P. Lash, M. Boese, A. Pacifico, M. Diem, Vibrational Spectroscopy 848 (2002), 1-11]、これらの研究は、赤外領域の水の強い吸収により、インサイチュー(in situ)で行うことはできない。
赤外分光法と比較して、ラマン分光法は、非観血的技術である利点があり、低い水のラマン散乱断面積という環境のため、生物学的サンプルの研究を行うことが可能である。共焦点ラマン顕微分光計は、高い空間分析能(1μl)により、細胞内の様々な位置(例、核心、細胞質)での生細胞のインサイチュースペクトルの測定を可能にしている。[G. J. Puppels, F. F. de Mul, C. Otto, J. Greve, M. Robert-Nicoud, D. J. Arndt-Jovin, T. M. Jovin, Nature 347 (1990), 301-303; G. J. Puppels, H. S. P. Garritsen, G. M. J. Segers-Nolten, F. F. de Mul, J. Greve, Biophys. J. 60 (1991), 1046-1056; G. J. Puppels, J. Greve, Whole cell studies and tissue characterisation by Raman Spectroscopy, in: Advances in Spectroscopy v25, R. J. H. Clark and R. E. Hester eds., John Wiley & Sons Ltd. , Chichester, 1996, pp. 1-47; N. J. Sijtsema, S. D. Wouters, C. J. de Grauw, C. Otto, J. Greve, Appl. Spectrosc. 52 (1998), 348-355; S. Y. Arzhantsev, A. Y. Chikishev, N.I. Koroteev, J. Greve, C. Otto, N. M. Sijtsema, J. Raman Spectrosc. 30 (1999), 205-208]
一方、個別の細胞におけるラマン散乱効率の低さは、測定を困難にしている。ラマン信号は、UVレーザーを用いることによって強化されうる[A. V. Feofanov, A.I. Grichine, L. A. Shitova, T. A. Karmakova, R. I. Yakubovskaya, M. Egret-Chalier, P. Vigny, Biophysical Journal 78 (2000), 499-512]が、UV中の核酸及びタンパク質の強い吸収は、細胞の表現型を変化させる変性を誘導する[M. S. Feld, J. R. Kramer, Am. Heart J. 122 (1991), 1803- 1805; R. E. Rasmussen, M. Hammer-Wilson, M. W.Berns, Photochem. Photobiol. 49 (1989), 413-418]。
本発明は、先行技術に関連する問題点を1つ以上解決する、ラマン分光法を用いた、生細胞をモニターする改善された方法を提供するものである。特に、本発明は、細胞への損傷を低減するが、高い信号対雑音比(signal-to-noise ratio)を示す、ラマン分光法を用いた細胞をモニターする方法を提供することにある。
第一の態様では、本発明は、1又は複数の生細胞からラマン信号を誘発する方法を提供する。かかる方法は、波長785±60nmのレーザーを細胞に照射することを含む。
本発明の第二の態様は、ラマン信号を誘発するために、波長785±60nmのレーザーの使用に関する。
上記の通り、本発明は、波長785±60nmのレーザーを使用し、ラマン信号を誘発するために、生細胞を照射することに関する。この特別な波長は、細胞を死なすことなく、約600〜1800cm−1の振動範囲で、生細胞から強いラマンスペクトルを励磁することができる。
可視領域で、核酸及びタンパク質の吸収が低いことが予測されていても、低いレーザー出力が細胞を損傷することがあり得ることは、当該技術において既知である。出願人による研究により、488nm及び514nmで、短時間(例、2〜20分)の、低い出力レベル(数ミリワット、例、5mW)でMLE12細胞に照射すると、劇的な形態的変化をもたらすことが示され、トリパンブルー試験により細胞死が確認された。細胞死は、DNA及び/又はタンパク質分子のエネルギー性光子の吸収によって起きる光触媒のプロセスによるものである。さらに、この低い出力レベルでは、ラマンスペクトルにおける信号対雑音比は低い。
同様の結果が、Puppels et alにより、ヒトリンパ球で報告されている[G. J. Puppels, J. H. F. Olminkhof, G. M. J. Segers-Nolten, C. Otto, F. F. de Mul, J. Greve, Experimental Cell Research 195 (1991), 361-367; J. Greve, G. J. Puppels, Raman microspectroscopy of single whole cells, in: Advances in Spectroscopy v20, R. J. H. Clark and R. E. Hester eds. , John Wiley & Sons, Chichester, 1993, pp. 231-169]。同じ488nm及び514nmの波長で、5分間の5mWで照射した場合、スペクトル分解を誘因し、生細胞の数は半減する。本発明者らは、細胞の損傷は、レーザーにより惹起された光化学的反応によって起きることを示唆している[J. Greve et al, ibid]。
したがって、現在までは、光子が誘導する細胞死により、細胞代謝のインサイチュー分析用にラマン分光法を日常的に使用することができず、細胞の有糸分裂、細胞分裂、細胞分化、アポトーシス(プログラムされた細胞死)及び細胞のネクローシス等リアルタイムの重要な生物学上のプロセスを経ることが不可能であった。
出願人による研究により、生細胞に、波長785±60nmのレーザーを照射することは、細胞の分解を低減させながら、同時に高い信号対雑音比を有するラマンスペクトルを導くことを立証している。好ましくは、細胞を死なすことなく、さらに長い時間(例、最長40分、又はそれ以上)このレーザー光の特別な波長の範囲に生細胞を曝すことができる。この特性により、決められた時間内にスペクトルを連続して測定することができ、細胞内の変化を検出することを可能にする。特に、本発明の方法は、細胞の表現型における変化と、設計された組織構成内の細胞の成長に関連するスペクトルの変化とを一定の時間又は日数モニターするために、培養中の個別の細胞をサンプリングすることを可能にする。
この波長では、細胞の分解と蛍光性は非常に低く、シグナル強度はかなり高い。785nmでは、ラマン散乱は、可視領域より若干弱いが、高い処理量(〜30%)であり、高感度のCCD検出器を有する最近のラマン分光計の発達により、非常に短い時間で、合理的な信号対雑音比で、個別の細胞のスペクトルを検出することを可能にする。
先行技術において、波長785±60nmのレーザーで、生細胞のラマン信号を誘発することについて、教示も示唆もされていないことは注目すべきである。
好ましい態様では、本出願においてクレームされている方法で用いられるレーザーの波長は、785±50nm、好ましくは785±40nm、より好ましくは785±30nm、特に好ましくは785±20nmである。
特に好ましい態様では、波長785±10nmのレーザーを細胞に照射する。
さらに好ましい態様では、波長785±5nmのレーザーを細胞に照射する。
驚くべきことに、そして先行技術の教示に反して、生細胞におけるラマンスペクトルを誘発するために、波長785±60nmのレーザーを用いることには、下記に概要を示す予期しなかった数多くの利点があった。
好ましい態様では、細胞は、少なくとも約20ジュールの全エネルギーに曝される。
特に好ましい態様では、細胞は、少なくとも約50ジュールの全エネルギーに曝される。
さらに好ましい態様では、細胞は少なくとも約100ジュールの全エルギー、より好ましくは少なくとも約150ジュール、最も好ましくは少なくとも約200ジュールに曝される。
より好ましくは、細胞は少なくとも250ジュールの全エネルギー、さらに好ましくは少なくとも275ジュールに曝される。
先行技術において、生細胞におけるラマンスペクトルを誘発するために785±60nmの波長を有するレーザーを用いることは、細胞が顕著なスペクトル分解の兆候を示すことなくエネルギーの予期せぬ利点を導く点について、教示も示唆もされていないことは注目すべきである。
波長457.5〜660nmで細胞に照射した実験に基づく推定は、785nmで、細胞の生存度を維持するためのレーザーの最大エネルギーは、約10ジュールでなければならないと示唆している。しかし、785nmで、細胞の生存度を維持するための最大エネルギーは、実際には276ジュールであることが見い出された。すなわち予期されていた値の25倍だった。この結果を図8に示す。
本発明の1つの好ましい態様では、115±50mWの強度で細胞に照射する。
特に好ましい態様では、波長785±20nmのレーザーを、115±50mWの強度で細胞に照射する。好ましくは、細胞に、波長785±20nmを、115±50mWの強度で照射することは、細胞を死なさずに、優れた信号雑音比を有するラマンスペクトルを生じさせる。
特に好ましい態様では、波長785±20nmのレーザーを、115±50mWの強度で細胞に最長40分間照射する。
別の好ましい態様では、115±50mWのレーザー出力で細胞を最長90分間照射する。
さらに別の好ましい態様では、120±60mWの強度で細胞を照射する。
特に好ましい態様では、波長785±60nmのレーザーを、120±60mWの強度で細胞に照射する。
さらに好ましい態様では、波長785±60nmのレーザーを、120±60mWの強度で細胞に最長40分間照射する。
特に好ましい態様では、120±60mWのレーザー出力で細胞を最長90分間照射する。
本発明の好ましい1つの態様では、細胞の細胞質内でレーザーの焦点を合わせる。つまり、785±60nmのレーザー光は、細胞を死なすことなく、各種細胞内タンパク質のラマンスペクトル特性を引き出すことができるように、細胞質内で焦点を合わせることができる。
別の好ましい態様では、細胞の核内でレーザーの焦点を合わせる。したがって、785±60nmのレーザー光は、インサイチューで生細胞の核内の一点で焦点を合わせることができ、細胞の遺伝子物質を損傷することなく、各ヌクレオチド(A、T、G、C)の特定のピークやDNAバックボーン、立体配座の折り畳み特有のスペクトルピークを含む核タンパク質及び核内のDNAのラマンスペクトル特性を励起する。
さらに好ましい態様では、細胞外マトリックス内でレーザーの焦点を合わせる。つまり、細胞の外で785±60nmのレーザーの焦点を合わせることは、ヒドロキシアパタイト等の無機質相を含む細胞外マトリックスのラマンスペクトルを誘発する。
1つの好ましい態様では、生細胞のクラスターからラマン信号を誘発するためにレーザーを用いることができ(例、
)、細胞死を誘くことなく、個別の細胞に同様のスペクトルを作成することができる。これにより、組織構造の細胞の成長をモニターするためや、細胞外マトリックスの存在下で生細胞の群における毒性若しくは薬学的な薬剤の効果をモニターするため等に、複数の細胞を同時に研究することが可能となる。
本発明の方法は、1又は複数の生細胞における変化をモニターするために用いることができる。好ましくは、細胞をバイオ不活性物質上で培養する。
さらに好ましくは、バイオ不活性物質はポリ−Lリシンでコーティングした溶融シリカ(fused silica)である。
さらに好ましくは、バイオ不活性物質は、フッ化マグネシウム(MgF)又は溶融シリカ(SiO)である。
1つの好ましい態様では、バイオ不活性な足場(bioinert scaffold) 上で細胞を培養する。
別の好ましい態様では、コーティングされていない生物活性ガラス、又はゾルゲルのゲルガラス(gel glass)で細胞を培養する。コーティングされていない生物活性ガラスの一例として、45S5バイオグラスが挙げられる。コーティングされていないゲルガラスの一例として、メソポーラスシリカ(mesoporoussilica)(SiO)ゲルガラスが挙げられる。このようなコーティングされていないゲルガラスの別の例としては、70mol% SiO、30 mol % CaOが挙げられる。
本発明の別の好ましい態様は、1又は複数の生細胞における変化を検出する方法で、以下のステップを含む方法に関する:
1)上記の本発明の方法にしたがって、ラマン信号を誘発するステップ、及び
2)一定時間内のラマン信号の変化を測定するステップ。
1つの特に好ましい態様では、かかる方法は細胞の表現型における変化を検出するために用いる。
別の特に好ましい態様では、かかる方法は、細胞分化(有糸分裂)を含む細胞の成長をモニターするために用いる。
別の好ましい態様では、かかる方法は薬学的物質又は細胞毒性物質により誘導された生細胞における変化を検出するために用いる。
別の好ましい態様では、かかる方法は、細胞周期における変化を検出するために用いる。
別の好ましい態様では、かかる方法は、タンパク質レベルにおける変化を検出するために用いる。
別の特に好ましい態様では、かかる方法はDNA又はRNAレベルにおける変化を検出するために用いる。
1つの別の好ましい態様では、かかる方法は細胞外マトリックスにおける変化を検出するために用いる。
細胞レベルで生物学の現象をモニターする完全に非侵略的なリアルタイム技術が欠失していることを鑑みると、本発明は細胞生物学及び組織工学(tissue engineering)の分野における大きな進歩となるであろう。この技術に関する出願は数多く、細胞内の内因性メカニズムの研究から、外部要因と細胞の相互作用までと幅広い。
一例として、現在は細胞増殖、細胞分化及び細胞死の研究は、細胞を死なすことなく行うことが可能である。異なる化学的要因に対する病理細胞及び癌細胞の応答も、例えば光線力学的治療及び化学療法で検査することができる。インサイチューバイオ光学のスペクトル分析中の迂回する光子(circumventing photon)が誘導する細胞死は、前ガン病変[Mahadevan-Jansen et al, ibid; T.C. Bakker, G. J. Puppels, Y.M. Kraan, J. Greve, L.L. Van Der Maas, C. G. Fidgor, Int. J. Cancer (Pred. Oncol) 74(1997), 20-25; S. R. Hawi, W.B. Campbell, A. Kajdacsy-Balla, R. Murphy, F. Adar, K. Nithipatikom, Cancer. Letters 110 (1996), 35-40]又は組織病態[E. B. Hanlon, R. Manoharaw, T. W. Koo, K.E. Shafer, J. T. Motz, M. Fitzmaurice, J.R. Kramer, I.Itzkan, R.R. Dasari, M.S. Feld, Phys. Med. Biol. 45 (2000), R1-R59; R. Wolthuis, T.C. Bakker Schut, P.J. Caspers, H.P.J. Bushman, T.J. Romer, H.A. Bruining, G. J. Puppels, Raman Spectroscopic Methods for In Vitro and In Vivo Tissue Characterisation, in: Fluorescent and Luminescent Probes for Biological Activity, W. T. Mason ed., Academic Press, London, 1999, pp. 433-455; L.P-Choo-Smith et al, ibid]の非侵食性のインビボでのモニタリングの可能性があるので、非常に重要である。
さらなる出願は、組織工学の分野に関するものであり、異なる生物活性3D足場への細胞吸着や遊離イオンとの細胞間相互作用が研究されている。この点に関して、インビトロで生細胞の性質をモニターすることは、組織工学及び、患者への移植前、移植後の再生コンストラクト(tissue engineered constructs)の非侵食的な機能分析に対するバイオリアクターのフィードバック制御を得るための手段として重要である。
各種化学物質との細胞相互作用のインサイチューモニタリングも重要である。特に、生細胞のインサイチュー光学モニタリングによって、毒性化合物用や薬物検査用のバイオ検出システムにおいて、細胞を研究することが可能となる。例えば、タンパク質合成における変化のインサイチュー分析では、動物実験を行う前に、候補薬物の様々な投与量で、DNA又はRNAを研究することが可能となる。毒性物質のバイオ光学検出システムに関して、長い照射時間に対する細胞耐性は、毒性物質の同定及び定量化を行うために、リアルタイムソフトウェア分析と組み合わせて生細胞の連続的なサンプリングを行うことを可能にする。
本発明は、さらに実施例を参照して、以下の図面を参照して記載されている。
図1は、培養された肺細胞のクラスターのラマンスペクトルを示す。スペクトル配置:下部:DNA(A、G、T、C:アデニン、グアニン、チミン、シトシン)、BK;バックボーン、RP:リボースーリン酸)。上部:タンパク質(Phe:フェニルアミン、Tyr:チロシン)。 図2は、個別細胞のラマンスペクトルを示す。a)核、b)細胞質。 図3は、MLE12細胞に115mWでの785nmレーザー(a)照射前及び(b)40分照射後の写真。写真(b)の細胞は、トリパンブルーでの処理後、ブルーに染色しなかった。 図4は、MLE12細胞に488nmでレーザー照射した結果を示す。5mWのレーザー出力で照射a)開始時、b)10分後。 図5は、MLE12細胞に514nmでレーザー照射した結果を示す。5mWのレーザー出力で照射a)開始時、b)20分後。 図6は、MLE12細胞の(a)生細胞(b)死細胞の、ラマンスペクトルを示す。(c)算出したスペクトル差(b)−(a)。生細胞と死細胞とのスペクトルの最大の差は、1530〜1700cm−1の範囲にあり、死細胞は1578cm−1及び1607cm−1とで、強いピークを示す。別の差は、1095cm−1におけるDNAピークで生じる。 図7は、45S5バイオガラスの個別肺細胞のラマンスペクトルを示す。960cm−1でのピークは、ヒドロキシアパタイト(HA)に対応する。 図8は、488nm、514nm及び785nmで照射したMLD12細胞の100%細胞生存度を維持するための最大レーザーエネルギーを、457.9nm、488nm、514nm、632nm及び660nmで照射したリンパ球に要する最大レーザーエネルギーと比較して示す[Puppels et al, Exp. Cell Res. 1991]。黒い実線は、785nmで100%細胞生存度を維持するための最大レーザーエネルギーの予測値(波長457.5〜660nmで照射したリンパ球及びMLE12細胞のデータからの推測による)が約10ジュールであることを示している。しかし、785nmで100%細胞生存度を維持するための、実際の最大レーザーエネルギーは276ジュールであることが見い出された。 図9は、(a)上層のA549円形細胞、(b)連続層の包囲細胞のラマンスペクトル、(c)算出したスペクトル差を示す。(矢印は最も顕著な変動の位置を示す。) 図10は、A549細胞の(a)生細胞、(b)死細胞のラマンスペクトルを示す(矢印は、最も顕著な相違が生じる位置を示している。) 図11は、A549細胞の死細胞におけるDNAの減少と、ラマンスペクトルのタンパク質のピークを示す。 図12は、(a)未分化ネズミ幹細胞のラマンスペクトル、分化の(b)16日後、(c)20日後のラマンスペクトルを示す。 図13は、分化中mES細胞のタンパク質量の上昇を示す。 図14は、分化中mES細胞のRNA含量の減少を示す。 図15は、(a)A549生細胞のラマンスペクトル、トリトンX100処理(b)24時間後、(c)48時間後、及び(d)72時間後のラマンスペクトルを示す。 図16は、トリトンX100処理後の(a)DNA、及び(b)タンパク質のラマンピークの減少を示す。(■測定値、●図10の死細胞に対応する値)。 図17は、45S5バイオグラスで培養したヒト初期骨芽細胞のラマンスペクトルを示す。(a)BCG無(b)BCG有。
サンプル調製
継代6〜15までのMLE12細胞を用いた。これらの細胞は、不死化マウス肺上皮細胞であり[K.A. Wikenheiser, D.K. Vorbroker, W.R. Rice, J. C. Clark, C. J. Bachurski, H. K. Oie, J.A. Whitsett, Proc Natl Acad Sci U S A. 90 (1993), 11029-11033]、少なくとも継代30まで、分化された表現型を維持している。細胞は、一定の密度(2.10細胞/cm)で、45S5バイオグラスディスク、及びポリ−Lリシン(30−70KDa,30μg/ml)でコーティングした溶融シリカ物質に播種し、HITES培養培地で、37℃、5%COで24時間インキュベートした。[K. A. Wikenheiser et al, ibid]
分析の前に、サンプルをリンスし、標準PBS溶液に浸した。死細胞のラマンスペクトルの測定用に、細胞を同じ条件で調製し、死細胞の比率を高めるために4日間培養培地を変えずにインキュベーターに放置した。細胞生存度の検査には、ラマン測定の終了後、標準トリパンブルー染色法を用いた[D. C. Allison, P. Ridolpo, J. Histochem. Cytochem. 28(1980), 700-703]。この検査は、死細胞の色素取込みにより決定した膜の完全性の変化に依存している。
ラマンスペクトルの測定
スペクトルは、励起用に785nmダイオードレーザーを装備した、Renishaw 2000ラマンマイクロ分光計で測定した。倍率63×、開口数0.9の水浸型Leica対物レンズを用いて、細胞の浸水を最小限にするために、フリー作動距離を2mmとした。測定用に、レーザー出力は115mWとし、信号を120秒間インテグレートした。回収後、基質及び培地の影響によるスペクトルの修正を行い、ベースラインの修正には5次方式を使用した。細胞の可視レーザーによる結果を研究するために、785nmのレーザーを、波長488nm及び514nmで、Argonイオンレーザーに変えた。これらの波長で、使用した出力は5mWだった。
結果
ポリLリシンでコーティングした溶融シリカで培養したMLE12細胞の(約5細胞)クラスター用の典型的なラマンスペクトルを、図1に示す。表1は、図1に示すスペクトルピーク割当て(spectral peak assignment)を要約している。ピーク割当ては、文献の基づいている[A. Mahadevan-Janse et al, ibid, D. naumann et al, ibid, E. A. Carter et al, ibid, Puppels et al, Ciophys. J. 1991, ibid; S.A. Overman, L.L. Aubrey, K.E. Reilly, O. Osman, S.J. Hayes, P. Serwer, G.J. Thomas Jr., Biospectroscopy 4 (1998), S47-S56]。MLE12生細胞のラマンスペクトルは、核酸及びタンパク質の振動バンドによって左右され、膜脂質の関与はごく僅かである。中央が1659cm−1に位置するアミドIバンドと、937cm−1におけるC−C骨格振動の位置は、MLE12細胞のタンパク質の支配的な配座(predominant conformation)が、αヘリカルであることを示唆している。[6]1094cm−1及び833cm−1におけるDNAバンドは、DNAがB型であることを示唆している[Puppels et al, Biophys J, 1991, ibid]。
顕微ラマン分光計の高い空間解像度によって、同じ細胞の異なる位置からスペクトルを集めることが可能となる。単一の生肺細胞における核と細胞質との間のスペクトル差を、図2に示す。細胞質に対応するスペクトルの方がかなり弱く、予測通りDNAと関連するピークが欠如している。このことは、核は、図1に示す細胞クラスターのスペクトルに最も寄与していることを示唆している。異なる細胞(n=10)と核内の異なる位置(n=3)で測定したスペクトルとでは、些細な差しか生じなかった。これらの差は、1487cm−1、1422cm−1、1375cm−1、789cm−1での核塩基、アデニン、グアニン、チミン及びシトシンの量に相応する。1150cm−1と1510cm−1との間のインテグレートされたラマン信号の標準偏差は、約5%である。しかし、1449cm−1及び1095cm−1でのピークに対応する領域の割合として計算された、DNAに対するタンパク質の割合は、核内の焦点位置に応じて、1.9〜2.7の範囲内の変動を示した。これらの値は、顆粒球にラマン分光計を使用した報告された値と非常に似通っている。
785nmレーザーでのMLE12細胞での結果を理解するために、測定と同じレーザー波長(785nm)及び出力(115mW)を用いた40分間のレーザー照射の間に、80秒の短い測定を3回行った。図3は、典型的なMLE12細胞の、40分の照射前(図3a)と照射後(図3b)の顕微鏡写真を示す。図3bの細胞は、形が微妙に変化し、スペクトルは変化しなかった。トリパンブルー染色を認めなかったので細胞の生存が証明された。同じ実験を5mWレーザー出力で488nm及び514nmのレーザーで行ったところ、細胞の形態は5分という短い時間で著しく変化した。トリパンブルー検査により、細胞は青く染色されたので、細胞が死んでいることを示唆した。細胞の可視レーザー照射前後の顕微鏡写真を図4(488nm、5mWで10分間)及び図5(514nm、5mWで20分間)に示す。
ラマン分光計が、生細胞と死細胞とを区別する性能を証明するために、培養培地を変えずに、インキュベーターに4日間隔離して放置されていた細胞のスペクトルを測定した。トリパンブルー検査が、死細胞の割合の高さを示した。測定した細胞の死を確認し、測定したスペクトルへの干渉を避けるために、ラマン測定が終了する毎にトリパンブルー検査を行った。死細胞の典型的なスペクトルは、図6aに示した。比較しやすいように、生細胞のスペクトルを一緒に示した(図6b)。細胞死は、スペクトル差の図(図6c)に示すように、タンパク質とDNA両方のスペクトルの特徴に多くの変化をもたらす。主な違いは、1530〜1700cm−1及び1070〜1150cm−1のスペクトルの範囲間で生じる。死細胞のスペクトルのハイピークは、1578及び1607cm−1であり、新たなピークは1114cm−1である。
組織工学を適用するには、細胞は吸着、増殖することができ、分化した表現型を長い期間維持することが可能でなくてはならない。ポリ−L−リシンでコーティングした溶融シリカは、生体不活性なので、コーティングされていないソルゲル由来生物活性ガラス及びゲルガラスからなる生物活性な足場の方が対象物に向いている[W. Cao, L.L. Hench, Ceramics International 22 (1995), 493-507; L.L. Hench, J. K. West, Life Chemistry Reports 13 (1996), 187-241; L.L. Hench, Biomaterials 19 (1998), 1419-1423; J.R. Jones, L.L. Hench, Materials Science and Technology 17 (2001), 891-900]。45S5バイオガラス(重量で45%SiO、24.5% NAO、24.5%Cao、及び6%P)は、細胞基質の相互作用(例、制御されたイオン遊離)により生じる遺伝子の活性化に関連する細胞の吸着及び増殖に重要な役割を果たしていることは、文献[I. D. Xynos, M. V. Hukkanen, J. J. Batten, L. D. Buttery, L. L. Hench, J. M. Polak, Calcif. Tissue Int. 67(2000), 321-329; I. D. Xynos, A. J. Edgar, L. D. Buttery, L. L. Hench, J. M. Polak, Biochemical and Byophysical Research Communications 276 (2000) 461-465]に記されている。しかし、45S5バイオガラスのラマンスペクトルは、P−O振動によるより強い信号を有する溶融シリカの単純性がないので、その測定及びデータ処理がより複雑なものになっている。45S5バイオガラスディスクで成長した細胞中の単一のMLE12肺細胞のラマンスペクトルを、図7に示す。960cm−1付近の45S5バイオガラス信号の減算が、生物活性表面で形成されたヒドロキシアパタイト(HA)のP−O群の対称伸縮(symmetric stretching)に対応する強いバンドによるエラーを導くことにより、細胞のラマンスペクトルを得るのが困難である[I. Rehman, L.L. Hench, W. Bonfield, Bioceramics 6 (1993), 123-128]。しかし、この歪みは、本発明の目的を妨げるものではない。なぜなら、タンパク質の2次的構造の決定を少し困難なものとする937cm−1でのタンパク質の骨格C−C振動を包含せず、DNAバンドの干渉が起きないからである。
図7に示すスペクトルは、特に、DNA塩基による1487cm−1、1422cm−1、1375cm−1及び1252cm−1バンドにおいて、図1及び2のスペクトルと異なる部分がある。この僅かな変動は、ポリ−L−リシンでコーティングした溶融シリカを基質として用いて、各種細胞を測定した場合にも見られた。しかし、DNAのマーカーとしてのバンドのスペクトル位置及びタンパク質の2次的構造は図1、2及び7において同じであり、45s5バイオガラス基質がDNAや細胞内のタンパク質の構造を妨害しないことを示唆している。
高出力の785nmレーザー(サンプルでは
)の使用が、生細胞に1時間連続して曝した後にも、細胞死を誘導しないという、予測に反した結果に続き、各細胞の測定したラマンスペクトルの有意性を調査する研究が行われた。先ず、ラマンスペクトルと、細胞周期を通しての進行、細胞死及び分化等の基本的な生物学上プロセスにおける生細胞の生化学的及び生物物理学的な変化とを関連づけた。次に、細胞を、化学薬品、各種基質、毒素又は薬品に曝したときの細胞の行動変化をモニターした。これらの実験の結果を以下に記載する。
(i)細胞周期
DNA振動(DNA鎖及び窒素性塩基の両方)に対応するピークが、生細胞のラマンスペクトルに存在するため、これらのピークのマグニチュードは、細胞周期において細胞が進行するにしたがって変化しなければならない。異なる細胞周期相の細胞間の相違を観察するために、細胞を高密度で播種し、上部に円形細胞がある連続した細胞層を形成した。連続した細胞層の各細胞は、他の細胞に囲まれ、栄養分へのアクセスが少ないため、G1/G0相であるようだ。反対に、上層の円形細胞は、分割するための充分な空間が回りにあるため、細胞有糸分裂(S/G2相)を含む周期中のどの段階であってもよい。
円形細胞と連続層の細胞とのラマンスペクトル差を、図9に示す。円形細胞は、788cm−1(100%増加)、1095cm−1、及び1578cm−1での高いピークによって示されるように高い量の核酸を示す。これらの差は、下層の細胞がG1/G0相にあり、S/G2相の細胞有糸分裂を行う直前の上層の円形細胞と比較して核酸の量が少ないという仮説を確認するものであった。
(ii)細胞死
細胞死は、各種要因によって起こり得る。また細胞内の多くの生化学的、生物物理的変化を誘因する。特に、細胞死は、タンパク質の変性及び構造変化及びDNAの細分化に関連している。培養には、常に死細胞が数パーセント含まれているので、新鮮な培養培地における細胞死を調査した。弱い細胞吸着を示す細胞が、可視状態で少数同定され、そのラマンスペクトルを測定した。ラマンスペクトルの測定後、細胞死を確認するためにトリパンブルーの生存度テストを行った。図10は、A549細胞の生細胞及び死細胞のラマンスペクトルを示す。
これらの細胞のラマンスペクトルは、よく吸着した安定した細胞と比較して、スペクトル差は大きかった。死細胞のスペクトルは、786cm−1及び1095cm−1で核酸に対応するピーク強度が著しく減少し、1005cm−1でフェニルアラニンに対応するピークが著しく減少した。
A549細胞の生細胞と死細胞(細胞死のマーカーとしてのさらなる研究に用いることができる)とのスペクトル差を定量するために、最も激しい変化が観察されたスペクトル領域でピークフィッティングを行った:770〜803cm−1、995〜1020cm−1、1020〜1150cm−1、1190〜1385cm−1。この分析の結果は、A549生細胞の値に対する比率で、図11に示す。
細胞死に最も敏感な分子振動は、80%減少する788cm−1におけるDNAのO−P−O伸縮であると思われる。この著しい減少は、リン酸ジエステル結合の切断が、DNA鎖の断片化を誘因することを示唆している。核酸に対応するピークの減少の他に、A549死細胞のラマンスペクトルは、タンパク質の振動における変化を示す。図11は、フェニルアラニンに対応する1005cm−1ピークからの45%の大幅な減少があることを示している。タンパク質構造における変化も観察された。任意のコイルに対応する1231cm−1におけるタンパク質のピークからの66%の減少は、タンパク質鎖が細胞死の間αヘリックス及びβシートとさらに会合することを示唆している。このことは、1660cm−1アミドIの幅が、38cm−1から28cm−1に減少したことによっても確認される。死細胞中のタンパク質構造における同様の変化が、シンクロトンFTIR顕微鏡を用いた細胞死に関する文献で報告されている。
(iii)細胞分化
マウス胎性幹細胞(mES)株は、初期胚に由来する多能性細胞であり、インビトロで繁殖し、分化に誘導することができる。mES細胞は、胚様体の形成を介して、分化に誘導される。ラマンスペクトルを、分化の16及び20日後に測定した(図12)。分化段階中DNAの量が安定していると仮定して、スペクトルを788cm−1でDNAピークに標準化した。
図13は、未分化ES細胞と、胚様体を介して分化した細胞の16日及び20日後の、タンパク質に対応するピークのマグニチュードを示す。最も著しい変化は938cm−1で起こり、分化の16日後に343%の増加(P=0.0024)及び20日後に212%の増加(P=0.0006)を観察した。C−Hピークの著しい増加も観察された。培養液内で、16日後に184%(P=0.0001)、20日後に128%(P=0.0005)。アミノ酸に対応するピークのマグニチュードも著しく高かった。チロシンでは、16日後に169%(P=0.0007)、20日後に128%(P=0.0005);フェニルアラニンでは16日後に100%(P=0.0008)及び20日後に57%(P=0.0047)。
分化細胞におけるタンパク質の著しい増加は、細胞の分化において通常観察される特定のタンパク質の生産の増加に対応する。分化細胞のラマンスペクトルで観察された変化は、培養液が、異なる細胞形態学で観察されたように、異なる表現型の細胞の混合物であるとことによるものかもしれない。
一本鎖DNAの濃度は、生細胞のラマンスペクトルの813cm−1におけるピークと比例している。分化中のmES細胞内のRNA量の変化を、図14に示す。RNAピークの強度は、培養液内で16日後に、分化細胞で50%減少する(P=0.0044)。16日後のRNA濃度の増加は、分化20日後の細胞に対応するラマンスペクトルのRNAピークの増加により示唆されている。
mES細胞で観察されたRNAの高い濃度は、RNAが翻訳されていないことを示唆している。これは、観察されたタンパク質の量の低さと一致している。分化細胞におけるRNAの減少は、図13で観察されるタンパク質量の増加と関連しうる。細胞は、分化中に新しい特異タンパク質を産生するために、ES細胞で観察されるRNAのプールを用いているようである。この結果は、翻訳されていないmRNA(抑圧されたmRNA)が初期胚形成で観察されたという文献の報告と一致している。
(iv)A549細胞における毒性洗浄剤トリトンX100の影響
A549細胞を100μMトリトンX100に24、48、72時間曝した後のラマンスペクトルを図15に示す。
図15と図10を比較すると、トリトンX100での処理後、対応するラマンスペクトルは、死細胞のスペクトルと同様の変化を辿る。図16は、DNAの減少とタンパク質のラマンピークの減少と、処理時間との関係を示す。
(v)骨小結節(bone nodule)の形成及びミネラル化
初期ヒト骨芽細胞を、新たな骨の形成を誘導するために、45S5バイオガラス基質で培養した。新しい骨の形成は、785nmのレーザーを有するラマン顕微鏡を用いて高感度で検出することができ、ハイドロキシアパタイトのラマンピーク962cm−1を検出した(骨のミネラル段階)。しかし、培養液で10日後、ラマンスペクトルでは骨小結節の形成の証拠は観察されなかった(図17)。内因性細胞構成成分に対応するピークのみが測定された。
しかし、骨細胞の培養培地に、ベータグリセロリン酸(BGP)を添加したときに、ハイドロキシアパタイトに対応する強いピークを、ラマンスペクトルで検出した(図17)。
要約すると、本発明は、共焦点ラマン顕微鏡が、不活性シリカ及び生物活性ゾルゲルのガラス(45S5バイオガラス)で培養した個別生細胞のインサイチュー特徴付けに適切であることを立証している。本研究者らは、波長785nmで、115mW又は120mWの高いレーザー出力を40分間又はそれ以上使用して、細胞スペクトル及び形態学を変更することなく、又細胞死を誘導することなく、細胞の生物学的な状態を連続してモニタリングすることを可能にしていることを示した。MLE12細胞生細胞と死細胞との実質的な違いを立証した。現在クレームされている方法は、細胞周期の変化、細胞分化及び細胞死と関連する変化のモニタリングに適切である。
本発明に記載の方法は、当業者によっては明らかである各種変更や修正は、本発明の範囲と精神から逸脱することなく行うことができる。本発明は、好ましい態様を参照して記載されているが、本発明を実施するために、化学又は関連分野の熟練者が行う記載された態様の各種修正を行う場合には、下記のクレームの範囲内でなければならない。

Claims (29)

  1. 1又は複数の生細胞から、ラマン信号を誘発する方法で、波長785±60nmのレーザーで細胞を照射することを含む方法。
  2. 波長785±20nmのレーザーで細胞を照射することを含む、請求項1記載の方法。
  3. 細胞を、少なくとも約20ジュールの全エネルギーに曝すことを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
  4. 細胞を、少なくとも約100ジュールの全エネルギーに曝すことを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載の方法。
  5. 細胞を、少なくとも約200ジュールの全エネルギーに曝すことを特徴とする、請求項1〜4いずれか記載の方法。
  6. 細胞を、少なくとも約275ジュールの全エネルギーに曝すことを特徴とする、請求項1〜5いずれか記載の方法。
  7. 細胞に、115±50mWの強度で照射することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか記載の方法。
  8. 細胞に、120±60mWの強度で照射することを特徴とする、請求項1〜6いずれか記載の方法。
  9. 細胞に、最長40分間照射することを特徴とする、請求項1〜8いずれか記載の方法。
  10. 細胞の細胞質内でレーザーの焦点を合わせることを特徴とする、請求項1〜9いずれか記載の方法。
  11. 細胞の核内でレーザーの焦点を合わせることを特徴とする、請求項1〜9いずれか記載の方法。
  12. 細胞外マトリックス内でレーザーの焦点を合わせることを特徴とする、請求項1〜9いずれか記載の方法。
  13. 細胞を、バイオ不活性物質上で培養することを特徴とする、請求項1〜9いずれか記載の方法。
  14. バイオ不活性物質が、ポリ−L―リシンでコーティングした溶融シリカであることを特徴とする、請求項13記載の方法。
  15. 細胞を、生物活性足場上で培養することを特徴とする、請求項1〜14いずれか記載の方法。
  16. 細胞を、コーティングされていない生体不活性ガラス又はゾルゲルのゲルガラスで培養することを特徴とする、請求項1〜12いずれか記載の方法。
  17. 1又は複数の生細胞における変化を検出する方法で、
    (i)請求項1〜16いずれかに従ってラマン信号を誘発するステップ;及び
    (ii)一定の時間、ラマン信号の変化を測定するステップ、
    を含む方法。
  18. 細胞表現型の変化を検出するための請求項17記載の方法。
  19. 細胞の成長をモニターするための、請求項17記載の方法。
  20. 薬学的物質又は細胞毒性物質により誘導された生細胞の変化を検出するための、請求項17記載の方法。
  21. タンパク質レベルの変化を検出するための、請求項17〜20いずれか記載の方法。
  22. DNA又はRNAレベルの変化を検出するための、請求項17〜20いずれか記載の方法。
  23. 細胞外マトリックス内の変化を検出するための、請求項17〜20いずれか記載の方法。
  24. 生細胞の細胞周期を検出するための、請求項1〜23いずれか記載の方法。
  25. 生細胞の細胞周期の変化を検出するための、請求項1〜24いずれか記載の方法。
  26. アポトーシスによる細胞死の開始を検出するための、請求項1〜25いずれか記載の方法。
  27. ネクローシスによる細胞死の開始を検出するための、請求項1〜26いずれか記載の方法。
  28. 1又は複数の生細胞におけるラマン信号を誘発するための、波長785±60nmのレーザーの使用。
  29. レーザーが、波長785±20nmであることを特徴とする、請求項28記載の使用。
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