JP2005532310A - 細胞上における翻訳後グリコシル化の調節に有用なフッ化グルコサミン類似体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、リンパ球などの細胞の移動および炎症を阻害するための組成物および方法を提供する。また、本発明は、フッ化N−アセチルグルコサミン合成のための改良法を提供する。

Description

本発明は、フッ化N−アセチルグルコサミン類の生成法、および疾病治療におけるそれらの使用法に関する。さらに特定すると、本発明は、フッ化N−アセチルグルコサミン類の大量合成、さらに、フッ化N−アセチルグルコサミン類を用いて細胞移動および炎症を調節する方法、ならびに、疾患の治療を実施する方法に関し、そのような疾患としては、癌、炎症性疾患、血液疾患、灌流および再灌流障害、ならびに避妊などが挙げられる。
資金援助を受けた研究であることの表明
本発明は、少なくともその一部分については、米国保険社会福祉省(Department of Health and Human services)管轄下の国立衛生研究所から補助金番号CA84156およびHL60528として供与された資金を用いて行った。従って、米国政府は本発明について、部分的に権利を有する。
白血球と血管内皮細胞との間の初期接着性接触は、セレクチン類と称される細胞接着分子によって仲介される。細胞接着分子であるセレクチンファミリーは、内皮細胞上における白血球の拘束およびローリング相互作用を仲介する。セレクチン類が白血球上(L−セレクチン)または内皮上(P−およびE−セレクチン)で発現することにより、白血球の移動速度が緩められ、血流中の細胞がケモカイン/サイトカインシグナルに対して反応できるようになり、内皮膜にしっかりと結合し、組織部位に移行する。血管内のこのような基本的な緩徐メカニズムは、セレクチン類のCa++依存性結合活性によってコントロールされており、このとき、セレクチン類は、白血球上および/もしくは内皮細胞上で発現された細胞表面タンパク質上または脂質上に呈示された炭化水素決定因子によって構成されている各リガンドに対応している。全てのセレクチン類およびセレクチンリガンド類が協働することは、炎症部位において白血球を迅速かつ効率的に供給するために必須である。このような分子相互作用は、宿主の免疫および組織特異的ホーミングを定常状態に保つためにも必要であり、そのような組織特異的ホーミングの例としては、リンパ球の末梢リンパ節へのホーミング(L−セレクチンが関与)、ヒトメモリーT細胞の皮膚への通行(E−セレクチンが関与)、およびヒト前駆細胞(HPC)の骨髄(BM)への侵入(E−セレクチンが関与)などが挙げられる。後者の2例は、生理学的に関連のある過程を表しており、それらは、少なくとも部分的には、皮膚およびBM内の後毛細管上で本質的に発現される血管性E−セレクチンとそれらの白血球E−セレクチンリガンド類との間の細胞接着相互作用によって生じる。故に、白血球E−セレクチンリガンド類が細胞特異的に発現することは、皮膚または骨髄関連疾患の進行に伴う白血球の浸潤の程度を選択的に制御することを目的とする治療法の開発における重要な特徴である。
天然に存在する細胞表面炭化水素であるN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の類似体は、全てをアセチル化することによって合成されており、3位および4位の炭素に結合している水酸基がフッ素で等電置換されている2−アセトアミド−2−デオキシ−1,4,6−トリ−O−アセチル−3−デオキシ−3−フルオロ−D−グルコピラノース(3−F−GlcNAc)および2−アセトアミド−2−デオキシ−1,3,6−トリ−O−アセチル−4−デオキシ−4−フルオロ−D−グルコピラノース(4−F−GlcNAc)が挙げられる(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3):
Figure 2005532310
この構造変化により、ポリ−N−アセチルラクトサミン鎖の伸長を終了させること、または、オリゴ糖生合成における複合糖質代謝の酵素作用による過程を阻害することが想定されている(非特許文献1)。これらの化合物が、受動拡散によって細胞に侵入し、迅速に脱O−アセチル化してUDP−フッ化−N−アセチルグルコサミンを形成し、さらに、腫瘍細胞性糖タンパク質に組み込まれることについては確証が得られている(非特許文献1)。フッ素置換されたN−アセチルグルコサミンの類似体である3−F−GlcNAcおよび4−F−GlcNAcが、ヒトの大腸(結腸)および卵巣の癌細胞表面の炭化水素構造ならびに糖タンパク質機能に及ぼす影響を評価した研究においては、3−または4−F−GlcNAc処理することにより、ポリ−N−アセチルラクトサミン鎖の形成が選択的に終了され、腫瘍関連糖タンパク質の構造および機能を調節することが示されている(非特許文献4;非特許文献5)。さらに具体的に述べると、ヒト大腸HT-29癌細胞を4−F−GlcNAcで処理することにより、放射ラベルしたグルコサミン、フコースおよびガラクトースの細胞表面糖タンパク質への取込みが阻害され、腫瘍随伴抗原である癌胎児性抗原(CEA)、リソソーム関連膜タンパク質−Iおよび2(LAMPs)ならびにシアリルルイス抗原における糖タンパク質の量の低下および構造変化が生じた(非特許文献5)。同様に、ヒト卵巣A121腫瘍細胞を3−および/または4−F−GlcNAcで処理することにより、放射ラベルした糖前駆体類の取込みおよびLAMPsの炭化水素組成が顕著に低下した(非特許文献4)。CEAおよびLAMPsのグリコシル化を阻止することにより、同型および異型の接着分子としてのそれらの機能が阻害され、故に、イン・ビボ(in vivo)におけるヒトの大腸および卵巣腫瘍細胞の接着および転移能力が低下する(非特許文献5;非特許文献6)。
バーナッキ(Bernacki),R. J.ら、(1977) J. Supra. Stru., 7: 235-250 シャーマ(Sharma),M.およびW.コリトニク(Korytnyk)、(1980)Carbohyd. Res., 79: 39-51 シャーマ(Sharma),M.、(1990) Carbohyd. Res., 198: 205-222 ウォイナロウスカ(Woynarowska),B.ら、(1996)Glycoconjugate J., 13(4): 663-674 ウォイナロウスカ(Woynarowska),B.ら、(1994)J. Biol. Chem., 269(36): 22797-22803 ディミトロフ(Dimitroff),C.J.(1999)学位論文,SUNY(バッファロー・ロズウェル・パーク大学院(Baffalo Rosewell Park Graduate School))
本発明は、細胞移動、細胞増殖または細胞分化を阻止する方法に関し、それらを阻止するのに十分な量のフッ化N-アセチルグルコサミン(F-GlcNAc)(例えば、2−アセトアミド−2−デオキシ−1,3,6−トリ−O−アセチル−4−デオキシ−4−フルオロ−D−グルコピラノースまたは2−アセトアミド−2−デオキシ−1,4,6−トリ−O−アセチル−3−デオキシ−3−フルオロ−D−グルコピラノースなど)に細胞を接触させることによって実施する。
本発明はまた、フッ化N-アセチルグルコサミンに細胞を接触させることにより、糖タンパク質(例えば、細胞上のPSGL-1またはCD44など)上のHECA-452エピトープの量を減少させる方法に関する。フッ化N-アセチルグルコサミン存在下における細胞上の糖タンパク質量の差は、フッ化N-アセチルグルコサミン不在下における量と比較した場合、10%、5%または1%未満である。
別の側面から見ると、本発明は、患者にフッ化N-アセチルグルコサミンを投与することにより、組織(例えば、患者の皮膚組織など)内の炎症を阻止する方法に関する。そのような炎症とは、例えば、慢性的炎症(例えば、DTHなど)、急性炎症、皮膚炎症、乾癬、炎症性腸疾患、大腸炎またはクローン病などが挙げられる。フッ化N−アセチルグルコサミンは、炎症発症前に投与する。別の方法においては、炎症発症後にフッ化N−アセチルグルコサミンを投与する。投与は、腹膜内、皮下、鼻内、静脈内、経口、局所および経皮送達によって行う。
細胞は、リンパ系細胞(例えば、T細胞など)などの白血球、または造血細胞である。あるいは、細胞は、白血病性細胞またはリンパ腫(例えば、皮膚リンパ腫など)などのような癌性細胞である。さらに、化学療法剤(例えば、ダウノルビシン(DNR)、シタラビン(ara-C)、イダルビシン、チオグアニン、エトポシドおよびミトキサントロンなど)または抗炎症剤(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、セレコキシブ(celecoxib)、プレドニゾン、プレドニゾロンおよびデキサメタゾンなど)に細胞を接触させる。
本発明は、フッ化N-アセチルグルコサミンを調製するための改良法を提供し、その方法とは、ベンジル−2−アセトミド−3−O-ベンジル−4,6−ベンジリデン−2−デオキシD-グルコピラノシドからベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−3,6−ジ−O-ベンジル−D-グルコピラノシドを合成する中間工程を含み、改良点としては、(i)適切な条件下においてベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−4,6−ベンジリデン−2−デオキシ−D-グルコピラノシドを加水分解してベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−2−デオキシ−D-グルコピラノシドを生成し;(ii)ベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−2−デオキシ−D-グルコピラノシドをスズ化合物と反応させ、ベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−2−デオキシ−D-グルコピラノシドを含むスズ錯体を生成し;さらに、(iii)適切な条件下において、該スズ錯体をベンジル化剤と反応させることによってベンジル−2−アセトアミド−3,6-ベンジル−2−デオキシ−D-グルコピラノシドを生成する各工程が挙げられる。
特に記載していない限りは、本明細書において使用している全ての技術用語および化学用語は、当該分野において標準的な技量を有する者が通常理解している意味と同義である。本明細書に記載されている方法および材料と同様または同等な方法および材料を用いて本発明の実施または試験をすることができるが、好ましい方法および材料は以下に記載するとおりである。本明細書に引用している全ての出版物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、参照として全体的に本明細書に取り入れておく。訴訟の場合には、定義を含む本明細書が効力を発する。さらに、材料、方法および実施例は単なる例示であり、本発明を制限するためのものではない。
本発明のその他の特徴および利点は、上記の請求の範囲および以下の詳細な説明から自明である。
本発明は、部分的には、N-アセチルグルコサミンのフッ素化アナログがヒトCLAT細胞上におけるHECA-452エピトープの発現を変化させ、ずれ応力下においてセレクチンの結合を阻害するという発見に基づいている。フッ化N-アセチルグルコサミンは、T細胞上に発現している天然のCLAに直接取り込まれることから、ポリ−N-アセチルラクトサミンの伸長およびPSGL-1 O-グリカン類上のセレクチン結合決定因子を直接阻害することが示唆される。
リンパ球が皮膚に組織特異的に移動することは、皮膚移植片対宿主病(GVHD)、腫瘍新生物状態(例えば、皮膚リンパ腫、菌状息肉腫など)、および炎症性皮膚疾患(例えば、乾癬、アトピー性/アレルギー性皮膚炎など)の病理生物学において重要である。皮膚リンパ球関連抗原(CLA)は、シアリルルイスX様炭化水素エピトープであり、シアロムチン様分子であるP-セレクチンリガンド類−1(PSGL-1)上に呈示されるラットモノクローナル抗体HECA-452によって認識される。CLAは、P-セレクチンと相互に結合し、皮膚ホーミングT細胞上の初期E-セレクチンリガンドとして機能する。正常ヒトリンパ球および腫瘍白血球上におけるHECA-452反応性PSGL-1(すなわち、CLA)の発現は、これらの細胞が皮膚に侵入する能力と直接相関している(1〜10)。CLAは、一連の初期ヒト造血前駆細胞(35〜38)、ならびに樹状細胞、単球および好中球(12)上で発現するが、エフェクターリンパ球上、ならびに皮膚炎症性疾患、白血病およびリンパ腫を発症している患者の腫瘍細胞上では、CLAの発現が著しく促進制御されている(1,5〜10,14,47〜50)。CLA、特にHECA-452エピトープの発現を標的にすることにより、白血球が皮膚へ移動することを調節するための治療方法が提供されるが、これは、ヒトT細胞が皮膚組織に侵入した場合には、PSGL-1ポリペプチド自体ではなく、HECA-452の反応性が特異性を発揮するからである。
多面的に見ると、本発明は、細胞移動、細胞増殖または細胞分化を阻害する方法を提供し、これは、細胞移動、細胞増殖または細胞分化を阻害するのに十分な量のフッ化N-アセチルグルコサミン(F-GlcNAc)に細胞を接触させることによって行う。
さらに本発明は、フッ化N-アセチルグルコサミン(F-GlcNAc)に細胞を接触させることにより、細胞上の糖タンパク質上のHECA-452エピトープを減少させる方法に関する。好ましくは、細胞のF-GlcNAc処理は、細胞表面上における糖タンパク質の発現に影響を及ぼさない。さらに好ましくは、そのような処理は、糖タンパク質上のその他の炭化水素構造物の発現に影響を及ぼさない。例えば、F-GlcNAc存在下における細胞上の糖タンパク質量は、F-GlcNAc不在下と比較した場合、その差が10%未満、5%未満または1%未満である。
HECA-452エピトープの発現は、例えば、モノクローナル抗体HECA-452(ATCC番号:HB-11485)などのようなHECA-452エピトープを認識する抗体との反応性などによって測定する。別の方法としては、細胞がセレクチン類(すなわち、E-セレクチン、P-セレクチンまたはL-セレクチン)に結合する能力を評価することによって、HECA-452の発現を測定することができる。糖タンパク質は、HECA-452エピトープを発現することができる任意のタンパク質であり、そのようなタンパク質としては、PSGL-1またはCD44が挙げられる。
さらに本発明は、炎症を止めるためにフッ化N-アセチルグルコサミンを必要とする場合には、患者に投与することによって組織の炎症を抑制することができる方法を提供する。患者には、さらに、抗炎症剤を投与する。対象とする組織は、皮膚、気管支、または胃腸である。対象とする患者は、炎症性疾患を患っている、または、発症する危険性がある患者である。投与は、予防的に行う(すなわち、炎症の発症前に投与する)。または、治療として行う(すなわち、炎症発症後に投与する)。
炎症性疾患を患っている、または発症する危険性を有する患者は、特定の疾患に関連し、当該分野において既知である標準的な診断技術によって確認する。そのような診断技術としては例えば、直腸出血、腸の痛み、悪心、嘔吐、皮膚の皮癬斑様部位、皮膚の赤みまたはただれ、血液検査、アレルギーまたは家族歴などが挙げられる。炎症性疾患には、慢性炎症性疾患または急性炎症性疾患が含まれる。炎症性疾患としては、遅延型過敏症(DTH)、皮膚移植片対宿主病(GVHD)、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、大腸炎(例えば、潰瘍性大腸炎など)およびクローン病などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
F-GlcNAcに暴露する(すなわち、接触させる)細胞集団は、任意の数の集団を用いることができ(すなわち、1個またはそれ以上)、また、イン・ビトロ(in vitro)、イン・ビボ(in vivo)またはイクス・ビボ(ex vivo)で準備することができる。例えば、F-GlcNAcの有効局所濃度が0.01mM〜100mMになるように調整して細胞に接触させる。好ましくは、濃度範囲は、0.01mM〜25mMである。より好ましくは、濃度範囲は、0.01mM〜10mMである。最も好ましくは、濃度範囲は、0.05mM〜5mMである。
フッ化N-アセチルグルコサミン類の例としては、2−アセトアミド−2−デオキシ−1,3,6−トリ−O−アセチル−4−デオキシ−4−フルオロ−D-グルコピラノースおよび2−アセトアミド−2−デオキシ−1,4,6−トリ−O−アセチル−3−デオキシ−3−フルオロ−D-グルコピラノースが挙げられる。
細胞は、HECA-452エピトープを発現する任意の細胞である。例えば、細胞としては、白血球(例えば、骨髄性、リンパ性、網状など)または前立腺細胞が挙げられる。白血球には、リンパ球、単球、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、樹状細胞、顆粒球、形質細胞、造血性細胞(例えば、造血幹細胞など)、または、白血球になり得る任意の細胞などが挙げられる。リンパ球とは、B細胞、またはTh1細胞などのT細胞である。細胞は、正常、すなわち、非腫瘍性細胞である。あるいは、細胞は腫瘍性である。癌細胞は、癌を有する患者由来の細胞などのような一次腫瘍である。あるいは、癌細胞は、癌を有する患者の転移部位由来である。癌細胞は、任意の細胞型のものを用いることができ、例えば、上皮細胞型、生殖細胞型、扁平上皮細胞型、骨髄性細胞型またはリンパ性細胞型などが挙げられる。例えば、細胞としては、白血病細胞、または皮膚リンパ腫などのリンパ腫が挙げられる。
さらに、細胞を化学療法剤または抗炎症剤と接触させることができる。化学療法剤としては、例えば、パクリタクセル、タキソール、ロバスタチン、ミノシン、タモキシフェン、ジェムシタビン(gemcitabine)、5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキセート(MTX)、ドセタキセル(docetaxel)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール(nocodazole)、テニポシド、エトポシド、アドリアマイシン、エポシロン(epothilone)、ナベルビン(navelbine)、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン(amsacrine)、チオグアニン、シタラビン、エピルビシン、またはイダルビシンなどが挙げられる。抗炎症剤としては、例えば、アスピリン(バイエル(Bayer)社、Bufferin)、イブプロフェン(モートリン(Mortrin)社、Advil)、ナプロキセンナトリウム(Aleve)、ケトプロフェン(Orudis KT)、インドメタシン(Indocin)、エトドラク(etodolac)(Lodine)、ジクロフェナクナトリウム(Voltaren)、ロフェコキシブ(rofecoxib)(Vioxx)、セレコキシブ(Celebrex)、ナブメトン(nabumetone)(Relafen)などの非ステロイド系抗炎症剤、または、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド(budesonide)、フルチカゾン(fluticasone)、トリアムシノロンなどのステロイド系抗炎症剤が挙げられる。
細胞移動とは、細胞がある位置から別の位置へ動くことを意味する。移動は、イン・ビトロ(in vitro)、あるいはイン・ビボ(in vivo)で起こる。移動は、例えば、一定時間内に、組織培養内の予め定めた領域から移動していった細胞を計数することによって測定する。例えば、化学走性マイクロチャンンバーまたはBoydenチャンバーを使用する。
細胞増殖とは、細胞が分裂する、すなわち繁殖することを意味する。細胞増殖は、例えば、クローン産生性アッセイを用いて測定する。クローン産生性アッセイは、当業者において既知である。別の方法としては、細胞増殖は、DNA合成、すなわち、3Hチミジンまたはブロモデオキシウリジンを測定することによって判定する。
細胞分化とは、ひとつの型の細胞が別の細胞型に変化することを意味し、例えば、多能性細胞(例えば、幹細胞または前駆細胞など)が単能性細胞に変化する過程、または、正常細胞が腫瘍細胞に変化する過程などが挙げられる。ヒトにおける分化の例としては、血液の生成が挙げられ、この過程においては、骨髄中の多能性幹細胞が分裂、分化し、認識可能な多数の中間段階を経て、赤血球細胞、血小板、白血球を形成する。腫瘍細胞は分化の任意の段階で発生し、多数の異なる型の白血病を引き起こす。
細胞移動を調節することにより、次のような症状および疾患を予防および治療する方法が提供される:急性および慢性の炎症、敗血症、自己免疫性疾患、関節炎、血液性疾患、癌、灌流−再灌流傷害などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。さらに、避妊法をも提供する。好ましい実施態様においては、白血球と内皮細胞との相互作用に関連した疾患としては、急性および慢性の炎症、自己免疫性疾患、腫瘍転移、感染性疾患、ならびに白血球関連皮膚疾患(例えば、皮膚T細胞リンパ腫、アトピー性/アレルギー性皮膚炎、皮膚移植片対宿主病(GVHD)、乾癬および菌状息肉腫など)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
骨髄を含む造血性細胞に関する疾患を治療する方法として特に好ましい実施態様は、造血性細胞が悪性腫瘍の場合である。従って、本発明は、例えば、癌細胞の増殖および/または悪性腫瘍を治療する方法、灌流−再灌流傷害を治療する方法、ならびに、必要に応じて患者にフッ化N−アセチルグルコサミン類を投与することによって避妊する方法を提供する。
イン・ビボ(in vivo)で実施する場合には、予防の必要に応じてフッ化N-アセチルグルコサミンを患者に投与し、処置または治療は、適切な予防または治療効果を示す投与量を用いて行い、その範囲は約1mg/kg 〜500mg/kgである。好ましくは、投与範囲は約25mg/kg 〜250mg/kgである。最も好ましくは、投与量は50mg/kg未満である。基本的には、炭化水素依存性の細胞−細胞相互作用、特にHECA-452エピトープに疫学的に関連のある任意の疾患について、本発明の方法を用いて治療することができる。
被験対象としては、哺乳類が好ましい。哺乳類としては、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシを用いることができる。
フッ化N-アセチルグルコサミン類の調製法
フッ化N-アセチルグルコサミン類の調製法は、当該分野において既知である。本発明に従う薬剤学的化合物の活性成分についての好ましい実施態様、すなわち、全てアセチル化された3−フルオロまたは4−フルオロ−N−アセチル−D−グルコサミン(3−F−GlcNAcまたは4−F-GlcNAc)は、シャーマ(Sharma)ら、Carbohydrate Research(1990) Vol.198 pp.205-221およびトーマス(Thomas)ら、Carbohydrate Research (1990)vol.175 pp.153-157の記載に従って調製することができ、これらの文献の内容を参照として全て本明細書に取り入れておく。シャーマ(Sharma)らおよびトーマス(Thomas)らの方法に従えば、文献記載のスケールでは化合物を首尾よく調製することができる。しかしながら、発明者らは、大量合成を行った場合には、シアノボロヒドリドナトリウムを用いて処理することにより、ベンジル2−アセトアミド−3−O-ベンジル−4,6−O-ベンジリデン−2−デオキシD-グルコピラノシドの還元的解裂が生じ、ベンジル−2−アセトアミド−3,6−ジベンジル−2−デオキシD-グルコピラノシドが生成して所望する生成物が得られなかったことを発見した。故に、別の好ましい合成法を開発し、該方法に従い、酢酸などの酸を用いて4,6−O-ベンジリデンを加水分解し、ベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−2−デオキシD-グルコピラノシドを生成した。次に、トルエン中、上記加水分解生成物をビス(トリブチルスズ)オキシドと反応させることによってスズ錯体に転換し、さらに、臭化ベンジルと反応させることによって所望するベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−3、6−ジ−O-ベンジル−D-グルコピラノシドを生成した。
従って、好ましい方法においては、以下の方法を用いて化合物を調製し、これにより、活性成分を大量に調製するためのスケールアップが容易に実施できる。本方法においては、図1および2に示すように、HClなどの酸の存在下において、出発材料であるN-アセチル−D-グルコサミン(化合物1)をベンジルアルコールで処理することによってベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシD-グルコピラノシドに転換した。反応は、高温下で5〜7時間、好ましくは6時間行い、次に、室温で約18時間反応させた後、エーテルを添加してさらに72時間反応を続けた。エタノール/エーテルからベンジルグリコピラノシド生成物(化合物2)を回収し、乾燥させた。次に、亜鉛触媒存在下においてベンジルグリコピラノシド生成物(化合物2)をベンジルアルデヒドと反応させ、ベンジル−2−アセトアミド−4,6−O-ベンジリデン−2−デオキシD-グルコピラノシド(化合物3)を得た。この反応は、石油エーテル、エタノールおよび水を加え、通常、室温で約1〜3日間行い、氷上に数日間保存した。次に、エタノールおよびエーテルから沈殿物を回収した。ベンジリデン誘導体(化合物3)を臭化ベンジルと反応させることにより、ベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−4,6−ベンジリデン−2−デオキシD-グルコピラノシド(化合物4)を得た。この反応は、室温、酸化バリウムおよび水酸化バリウムの存在下で行い、その後、氷槽中で冷却し、pHを弱酸性に下げた。トリクロロメタンから生成物を回収し、乾燥させることにより、4,6−ベンジリデン(化合物4)を得た。次に、高温下、酢酸などを用い、2〜3時間かけて4,6−ベンジリデン化合物を加水分解し、メタノール/エーテルから結晶化し、乾燥させることにより、ベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−2−デオキシ−D-グルコピラノシド(化合物5)を得た。
次に、臭化ベンジルを用いて加水分解生成物のスズ錯体を処理することにより、ベンジル2−アセトアミド−2−デオキシ−3,6−ジ−O-ベンジル−D-グルコピラノシド(化合物6)に転換した。スズ錯体は、トルエン中、加水分解生成物をビス(トリブチルスズ)オキシドと約0.5〜1.5時間、好ましくは1時間反応させることにより生成し、その後、臭化t−ブチルアンモニウムおよび臭化ベンジルを加え、高温で1〜3日、好ましくは2日間反応させた。反応の停止は、冷却し、塩化メチレンで希釈することによって行い、飽和炭酸ナトリウム溶液、水を用いて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。4−O-メタンスルホニル誘導体(化合物7)は、ピリジン中、化合物6の溶液に塩化メシルを滴下し、氷上で約1日間撹拌することによって調製した。生成物は、氷水から沈殿物として回収でき、水および塩化メチレンで洗浄後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。次に、還流条件下、4−O-メタンスルホニル誘導体を安息香酸リチウムと約12〜24時間、好ましくは18時間反応させることにより、4−O-ベンゾイル−ガラクト誘導体(化合物8)に転換した。反応は氷水で冷却して停止し、塩化メチレンなどの有機溶媒を加えた。化合物8は有機層から得られ、洗浄後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。氷槽上、化合物8をメタノールおよび金属ナトリウムと反応させることによってベンゾイル基を加水分解し、化合物9を得た。4−ヒドロキシ−ガラクト生成物(化合物9)は、塩化メチレンと水との間で分配を行うことによって得られ、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。4−ヒドロキシ−ガラクト生成物(化合物9)の塩化メチレン溶液にN,N-ジエチルアミノスルファートリフルオリド(DAST)の冷塩化メチレン溶液を滴下し、次に、無水ピリジンを添加して撹拌することにより、4−フルオロ−グルコ化合物(化合物10)に転換することができた。化合物10は、塩化メチレンと水との間で分配を行うことによって得られ、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。
化合物10のベンジル保護基は、Pd/C触媒の存在下で水素化することによって除去することができ、このとき、10%のPd/木炭などを用い、一般的には、約50〜55psig(ゲージ圧で約0.34〜0.38MPa)で約1〜5日間反応させる。得られた2−アセトアミド−2,4−ジデオキシ−4−フルオロ−D-グルコピラノース(化合物11)をピリジン中、無水酢酸で1〜2日間処理してアセチル化することにより、全ての基がアセチル化された、所望する4−フルオロ−N-アセチルグルコサミンを得ることができた。
各反応段階における精製生成物は、一般的には、シリカゲルを用いた溶出などのクロマトグラフィーによって得た。上述の反応は4−フルオロ誘導体の合成について示しているが、標準的な知識を有する当業者であれば、常套手段を少し変形することによって3−フルオロ誘導体を容易に合成することができることがわかるはずである。
従って、本発明は、フッ化N-アセチルグルコサミンの調製に関する改良法を提供し、ここで、ベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−4,6−ベンジリデン−2−デオキシD-グルコピラノシドからベンジルアセトアミド−2−デオキシ−3,6−ジ−O-ベンジル−2−デオキシ−D-グルコピラノシドを調製する中間段階は、(i)適切な条件下において、ベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−4,6−ベンジリデン−2−デオキシD-グルコピラノシドを加水分解することにより、ベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−2−デオキシD-グルコピラノシドを得;(ii)ベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−2−デオキシD-グルコピラノシドをスズ化合物と反応させることにより、ベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−2−デオキシD-グルコピラノシドを含むスズ錯体を形成させ;さらに、(iii)適切な条件下において、該スズ錯体をベンジル化剤と反応させることにより、ベンジル−2−アセトアミド−3−O-ベンジル−3,6−ジ−O-ベンジル−2−デオキシD-グルコピラノシドを得る段階である。。
本方法の別の好ましい実施態様においては、スズ化合物は、ビス(トリブチルスズ)オキシドであり、ベンジル化剤は臭化ベンジルである。
従って、本発明は、構造式(I)で表される化合物を合成する方法をも提供する。
Figure 2005532310
該方法は、適切な条件下において、N-アセチル−D-グルコサミンをベンジル化剤と反応させることにより、構造式(II)で表される化合物を合成する段階を含む。
Figure 2005532310
適切な条件下において、化合物(II)をベンズアルデヒドと反応させることにより、構造式(III)で表される化合物を得た。
Figure 2005532310
適切な条件下において、化合物(III)をベンジル化剤と反応させることにより、構造式(IV)で表される化合物を得た。
Figure 2005532310
適切な条件下において、化合物(IV)を加水分解剤と反応させることにより、構造式(V)で表される化合物を得た。
Figure 2005532310
化合物(V)をスズ化合物と反応させることにより、化合物(V)を含むスズ錯体を得、さらに、適切な条件下において、該スズ錯体をベンジル化剤と反応させることにより、化合物(I)を得た。
フッ化グルコサミン類似体を含む薬剤学的組成物
本発明に従うフッ化グルコサミン類似体である3−および4−F−GlcNAc(本明細書においては、「治療剤」または「活性化合物」とも称する)、ならびに薬剤学的に許容されるそれらの誘導体類および塩類は、投与に適した薬剤学的組成物に組み入れることができる。一般的に、そのような組成物は、活性化合物および薬剤学的に許容されるキャリヤーを含む。本明細書において使用している「薬剤学的に許容されるキャリヤー」とは、任意および全ての溶媒、分散剤、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられ、薬剤学的投与に適したものである。適切なキャリヤーについては、当該分野における標準的な参考書である「レミントン 薬剤学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」の最新版に記載されており、参照として本明細書中に取り入れておく。そのようなキャリヤーまたは希釈剤の好ましい例としては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液および5%のヒト血清アルブミン。リポソーム、および不揮発油などの非水性ビヒクルも用いることができる。薬剤学的に活性な物質に対してそのような媒質および物質を使用することは、当該分野において既知である。従来から使用されている媒質または物質が活性化合物と非相溶性でない場合を除いて、組成物中にそれらを使用することは自明である。該組成物には、補助的に活性化合物を組み入れることもできる。
本明細書に開示している活性化合物は、リポソームとしても調製することができる。リポソームは当該分野において既知の方法に従って調製することができ、例えば、次のような文献に記載されている:エプステイン(Epstein)ら、Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 82: 3688(1985);ワン(Hwang)ら、Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 77: 4030(1980);米国特許第4,485,045号および第4,544,545号の各明細書。循環時間を延長させたリポソームについては、米国特許第5,013,556号明細書に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG-誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相エバポレーション法によって調製することができる。リポソームを一定の孔径のフィルターに通すことにより、所望する直径のリポソームを得ることができる。
本発明に従う薬剤学的組成物は、意図している投与経路に適した剤型にする。投与経路の例としては、非経口(例えば、静脈内など)、皮内、皮下、経口、気管(例えば、吸入など)、経皮(すなわち、局所)、経粘膜および膣内または直腸内投与などが挙げられる。非経口、皮内または皮下投与に使用する溶液または懸濁液は、次のような構成成分を含む:注射用水などの滅菌希釈剤、生理食塩水、不揮発油、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン類などの抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤;酢酸、クエン酸またはリン酸などの緩衝液;ならびに、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどのような等張性を調整する物質。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどを用いて酸性またはアルカリ性に調整することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨てシリンジ、または、ガラスもしくはプラスチック製の複数投与用バイアルに充填することができる。
注射用として適した薬剤学的組成物は、滅菌水性溶液(水可溶性)もしくは分散液、ならびに注射可能な滅菌溶液または分散液に即座に調製できる滅菌粉末を含む。静脈注射用には、適切なキャリヤーとしては、生理食塩水、制菌水、Cremphor EL(商標)(BASF社、ニュージャージー州パーシパニー)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。全ての場合において、組成物は滅菌しなければならず、また、容易に注射できる程度の溶液でなければならない。該組成物は、製造および保存の条件下において安定でなければならず、バクテリアおよび菌類などの微生物の混入に対して保護されねばならない。キャリヤーとしては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)など、ならびにそれらの適切な混合物を含む溶媒もしくは分散剤用いることができる。適切な流動性の維持は、例えば、レシチンなどのコーティング剤を使用する、分散剤の場合には所望する粒子径を維持する、および界面活性剤を使用するなどの方法によって行うことができる。微生物の活動阻止は、多様な抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)の使用によって達成できる。多くの場合、組成物中に糖類、ポリアルコール類などの等張剤を含むことが好ましく、そのような物質としては、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムなどが挙げられる。注射可能な組成物の吸収を遅延させるためには、組成物中に、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどのような吸収遅延物質を添加する。
滅菌注射可能溶液は、必要に応じて、上掲した成分を単独または組み合わせた適切な溶媒中に所望する量の活性化合物(例えば、3−F−GlcNAcまたは4−F-GlcNAcなど)を混合し、ろ過滅菌することによって調製することができる。一般的には、分散剤は、基本的な分散媒および上掲したその他の必要な成分を含む滅菌ビヒクル内に活性化合物を混入することによって調製する。注射可能な滅菌溶液を調製するための滅菌粉末の場合には、調製は減圧乾燥法およびフリーズドライ法を用い、このとき、活性成分および所望する任意の追加成分を含む溶液を事前に滅菌ろ過したものからそれらの粉末が得られる。
一般的に、経口組成物は、不活性な希釈剤または可食性キャリヤーを含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入する、または、タブレットに成型することができる。経口投与による治療を行う場合には、活性化合物を賦形剤と組み合わせ、タブレット、トローチまたはカプセルの形にして用いることができる。経口組成物は、マウスウォッシュとして使用するために液体キャリヤーを用いて調製することもでき、この場合は、液体キャリヤー中の化合物を口に含んでうがいをし、はき出すかまたは飲み込む。薬剤学的に許容される結合剤および/またはアジュバント材料を組成物の一部として使用することができる。タブレット、丸剤、カプセル、トローチなどは、次の任意の成分または同様の性質を有する任意の化合物を含むことができる:微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogelもしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesなどの滑沢剤(lubricant);コロイド状二酸化ケイ素などの滑り剤(glidant);ショ糖もしくたはサッカリンなどの甘味料;または、ペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香料などの香味料。
吸入によって投与する場合には、二酸化炭素のような気体などの適切な噴射剤を含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾルの形で組成物を送達する。
全身投与は、経粘膜法または経皮法によっても行うことができる。経粘膜または経皮投与用には、透過すべき障壁に適した浸透剤を製剤処方に用いる。そのような浸透剤は一般的に当該分野において既知であり、例えば、経粘膜投与用には、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体類などが挙げられる。経粘膜投与は、鼻内噴霧、または坐剤を使用することによっても実施可能である。経皮投与用には、一般的に当該分野において既知である軟膏、ゲル、またはクリームとして活性化合物を製剤化することができる。
化合物は、直腸送達用の坐剤(例えば、カカオ脂およびその他のグリセリド類などのような、従来から使用されている坐剤用基剤など)または停留浣腸の形で、ならびに、膣送達用の坐剤、ゲルもしくはスポンジの形で製剤化することもできる。例えば、膣投与用に化合物をデバイスに組み込むことができ、そのような例としては、米国特許第5,527,534号明細書に記載されているようなスポンジへの組込み、または、米国特許第5,529,782号明細書に記載されているような融解性ビヒクルへの組込みなどが挙げられる。
ひとつの実施態様においては、活性化合物が体外へ急速に排出されることを防ぐ働きをするキャリヤーを用いて製剤化することができ、そのような剤型の例としては、埋込みまたはマイクロカプセル封入デリバリーシステムを含む放出制御製剤などがある。そのようなキャリヤーとしては、エチレン酢酸ビニル(ethylene vinyl acetate)、ポリアンヒドリド類、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類、およびポリ酪酸などのような生分解性、生体適合性のポリマーを用いることができる。そのような製剤を調製する方法は、当業者においては自明である。材料は、アルザ・コーポレーション(Alza Corporation)およびノヴァ・ファーマシューティカルズ(Nova Pharmaceuticals)から購入することもできる。リポソーム性懸濁物(感染細胞を標的とし、ウイルス性抗原に対するモノクローナル抗体を含むリポソーム類を含む)も薬剤学的に許容されるキャリヤーとして使用することができる。これらの剤型は、例えば、米国特許第4,522,811号明細書に記載されているような当業者において既知の方法に従って調製することができる。
いくつかの実施態様においては、経口または非経口投与用組成物は、投与の簡易化および投与量の均一化を目的とした投与単位型に製剤化することができる。本明細書において使用している投与単位型とは、治療を受ける患者に対する単位投与として適した物理的に別異の単位をさし、各単位には、必要な薬剤学的キャリヤーと協働して所望する治療効果を発揮するように計算された活性化合物を既定量含む。本発明に従う投与単位型の定義は、活性化合物の特異な性質および期待される特定の治療効果、ならびに治療用の活性化合物などの調剤の技術に特有の制限によって規定され、直接的に影響を受ける。
所望するならば、徐放性製剤を作成することができる。徐放性製剤の例として適切なものは、活性化合物を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられるが、このとき、該マトリックスは、フィルムまたはマイクロカプセルなどの成型品の形である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル類、ヒドロゲル類(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール)など)、ポリラクチド類(米国特許第3,773,919号明細書)、L-グルタミン酸とγエチル−L-グルタミン酸塩のコポリマー類、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(酪酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なマイクロスフェア)などのような分解性酪酸−グリコール酸コポリマー類、ならびにポリ−D-(−)−3−ヒドロキシブチル酸などが挙げられる。エチレン−酢酸ビニルおよび酪酸−グリコール酸などのポリマーは、100日以上にわたって分子を放出することができるが、ある種のハイドロゲル類では、タンパク質の放出がより短期間である。
薬剤学的組成物は、使用説明書を添付した容器、パックまたはディスペンサーに入れることができる。
通常の技術を有する当業者であれば、本発明の方法を実施する際に投与すべき治療化合物の量を定めることに精通しているはずである。治療を受ける患者に関して考慮すべき因子としては、患者の性別、体重、疾患の型および重篤度などが挙げられ、疾患治療のための正確な投与量を決定することを目的として分析する。先に定義した疾患に苦しむ患者を治療するための好ましい実施態様においては、一般的に投与量は、約4mg/kg〜約50mg/kgである。
実施例1:ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド
激しく撹拌したベンジルアルコール(2.5L)(アルドリッチ( Aldrich)社)に無水HClガスの強力な蒸気を5分間注いだ(初期温度は約50℃)。この溶液に2−アセトアミド−D−グルコース(400g,1.808mol)(シグマ( Sigma )社)を加えた。この混合物を70±2℃で6時間撹拌し、次に、室温で18時間撹拌した。その後、ジエチルエーテル(5.5L)を8時間以上かけて分けて加えた。反応混合物は、室温で撹拌しながら72時間保存し、その間にさらにエーテルを加え、計8.0L を加えた。桃色の懸濁液を室温でさらに18時間撹拌した。精製物は、2個の目の粗いガラスフリットろ過ろうと上に分けて回収した。各回収物をエーテル−石油エーテル(1:1)で洗浄後、あわせて無水EtOH(3.0L)に懸濁した。この懸濁液を均質になるまで沸騰させ、溶媒をゆっくり留去した。結晶性の懸濁液を0℃で数日間保存した。次に、生成物を目の粗いガラスフリットろ過ろうと上に集め、溶媒を十分に除去し、イン・サイチュー( in situ )で冷無水EtOH(2×200ml)を用いて洗浄し、室温でP2O5を用いて一定重量になるまで減圧乾燥した。収量=326.32g(58.0%)。
実施例2:ベンジル−2−アセトアミド−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシD-グルコピラノシド
乾燥ベンズアルデヒド(550ml)に塩化亜鉛(167g,1.23mol)を加えてよく撹拌した混合物中にベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド(166.542g,0.5348mol)を加えた。この混合物を室温で20時間撹拌し、次に、40±3℃で4時間撹拌することによって残っていた少量の固体を溶解し、さらに室温で18時間撹拌した。石油エーテル(1000ml)、無水EtOH(250ml)およびH2O(400ml)を用い、十分に撹拌した溶液を希釈した。反応混合物は室温で2日間撹拌し、その後、0℃で11日間保存した。凝乳状の白色沈殿を目の粗いガラスフリットろ過ろうと上に集め、溶媒を十分に除去した後、無水EtOH(約500ml)に再懸濁することによって洗浄した。細かく割れた白色固体から十分に溶媒を除去し、ジエチルエーテル(約500ml)に再懸濁し、再度溶媒を十分に除去した後、室温でP2O5を用いて減圧乾燥した。収量=139.76g(乾燥時65.4%;水和物として62.6%)。
実施例3:ベンジル−2−アセトアミド−3−O−ベンジル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−D−グルコピラノシド
酸化バリウム(153.97g,1.004mol)、水酸化バリウム(無水物;320g,1.87mol)および臭化ベンジル(147ml,1.23mol)(アルドリッチ( Aldrich)社)を乾燥DMF(200ml)に加えてよく撹拌した溶液を0〜5℃に冷却し、ベンジル−2−アセトアミド−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−D-グルコピラノシド(179.74g,0.4500mol)を添加した。この懸濁液を室温で6日間撹拌した後、氷水槽で冷却し、その間に10%のギ酸水溶液を滴下してpHを5〜6に調整した(約1350mlを要した)。大量の白色固体生成物を目の粗いガラスフリットろうと上に集め、溶媒を十分に除去してH2O(4×500ml)で洗浄した。十分に溶媒を除去した白色固体は、室温でP2O5を用いて一定重量になるまで減圧乾燥した。粗収量=262.21g(100+%)。沸騰CHCl3(3000ml)中で粗生成物を砕き、不溶性材料はろ過によって除去した。ろ液から得られた白色固体沈殿物を再度CHCl3(3000ml)に懸濁した。初期の白色沈殿物をフィルター上に集め、少量のCHCl3で洗浄した後、室温でP2O5を用いて減圧乾燥することによって最終生成物を得た。上記のろ液を溶媒留去して乾燥残渣を生成させることにより、さらなる生成物を得た。総収量=174.13g(79.1%)。
実施例4:ベンジル−2−アセトアミド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノース
60%の酢酸水溶液(2100ml)(JT ベーカー(JT Baker)社)にベンジル−2−アセトアミド−3−O−ベンジル−4,6−O−ベンジリデン−2−デオキシ−α−D−グルコピラノース(101.92g,0.2082mol)を加えて撹拌した懸濁液を加温して溶液にし、さらに加熱して2.5時間還流させた。減圧留去することによって溶媒を除去し、固体残渣を得、これにH2O(3×150ml)を加えて共留去させた。固体残渣は減圧下、約3時間乾燥させた後、熱石油エーテル(約1000ml)中で砕いた。不溶性材料をフィルター上に集め、少量の石油エーテルで洗浄した。不溶性材料をメタノールに溶解し、再度溶媒留去して固体を得、これを18時間減圧乾燥した。次に、この固体を熱メタノール(200ml)に溶解し、エーテル(約250ml)を加えて結晶化させた。冷懸濁液に時々さらにエーテルを加え、さらに結晶化を促進した。最後に、濃厚な懸濁液をろ過して固体生成物を回収し、エーテルを用いて数回洗浄した。この生成物を室温でP2O5を用いて減圧乾燥した。収量35.03g(41.9%)。
実施例5:ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド
トルエン(2200ml)にベンジル−2−アセトアミド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド(43.24g,0.1077mol)を加えた懸濁液に水蒸気トラップを付けて1時間還流し、この間に約25mlの含水溶媒を除去した。懸濁液を冷却し、ビス(トリブチルスズ)オキシド(アルドリッチ(Aldrich)社)(46ml,0.090mol)を加えた。蒸気トラップを付けて反応液を再び灌流させ、定期的にトラップを空にした。24時間後には約250mlの含水トルエンが除去された。反応物の温度を約75℃まで下げ、テトラブチルアンモニウムブロミド(17.8g,0.0552mol)および臭化ベンジル(43ml,0.36ml)を加えた。反応液を80℃で24時間撹拌し、少量のサンプルを取り出してTLCで確認した。生成物ができてはいたが、多量の出発材料が残っていた。故に、テトラブチルアンモニウムブロミド(17.9g,0.0555mol)および臭化ベンジル(43ml,0.36ml)を再度加え、再び80℃で24時間撹拌した。再度サンプルを取り出してTLCで確認した。出発材料がいくらか残っていたので80℃で撹拌をさらに48時間行い、計96時間に達した時点でTLCによって出発材料は検出されなかった。反応溶液の温度を35℃まで下げ、CH2Cl2(1200ml)で希釈し、飽和NaHCO3(300ml)、次にH2O(3×300ml)で洗浄した。Na2SO4で乾燥した後、減圧蒸留によって溶媒を除去することにより、黄色油状の物質を得た。粗収量=192.82g。
TLCにおいては、先端まで移動していた臭化ベンジルの存在と共に、生成物の存在が示された。750g(約1800ml)のシリカゲルカラムにCH2Cl2を注いだ。油性の生成物を150gのシリカゲルに吸着させ、カラムに加えた。次に、カラムにCH2Cl2を流した。カラムから最初に溶出していた物質は臭化ベンジルであり、これは廃棄した。第2フラクションは、臭化ベンジルおよび高速流出不純物が混入した生成物を含んでいた。次に溶出してきた物質は実質的に純粋な生成物であり、溶媒を減圧蒸留した後、室温で減圧乾燥した。このフラクションを石油エーテル(200ml)中で十分に砕いた。得られた固体をフィルター上に集め、少量の石油エーテルで数回洗浄し、15時間減圧乾燥した。さらにCH2Cl2を用いてカラムから溶出させることによって得られた生成物を室温で減圧乾燥した。総粗収量=54.48g(100+%)。
実施例6:ベンジル−2−アセトアミド−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−4−O−メシル−α−D−グルコピラノシド
ピリジン(400ml)にベンジル−2−アセトアミド−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノース(37.4g,0.076mol)を加えて撹拌し、氷水槽中で冷却した溶液に塩化メシル(アルドリッチ(Aldrich)社)(25ml,0.32mol)を45分以上かけて滴下した。得られた暗色の混合物は、TLCで出発材料が確認されなくなるまで0℃で24時間撹拌した。反応混合物を氷水(1000ml)に注ぎ、得られた懸濁液を約3時間撹拌した。沈殿した固体をフィルター上に集め、少量のH2Oで数回洗浄した後、CH2Cl2(約500ml)中に加えた。この溶液をH2O(3×200ml)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。上述の水性ろ液を3日間撹拌することにより、再度固体が沈殿した。この固体をフィルター上に集め、CH2Cl2(約250ml)中に加え、この溶液をH2O(3×250ml)で洗浄した。無水Na2SO4で乾燥後、合わせた抽出液を減圧蒸留することにより、黒赤色の残渣が得られ、これを数時間減圧乾燥した。収量=41.83g(96.0%)
この物質を温CH2Cl2(150ml)に溶解し、ほぼ等量のエーテルを加えた。懸濁液を0℃で18時間放置して結晶を析出させた。結晶化した生成物をフィルター上に集め、少量のエーテルで数回洗浄した後、室温でP2O5を用いて18時間減圧乾燥した。次に、ろ液を減圧濃縮して残渣を得、これを短時間乾燥した。このものは、大部分が生成物であるが、ベースライン材料を含むことがわかった。従って、このものをシリカゲル(20g)に吸着させ、200gのシリカゲルカラム(600ml)に加えた。カラムはCH2Cl2で溶出させた。最初にカラムから溶出してきた物質は暗赤色油状であり、これは廃棄した。生成物は、淡黄色の不純物と共に次のフラクションに溶出してきた。総収量=34.17g(79.3%)。
実施例7:ベンジル−2−アセトアミド−4−O−ベンゾイル−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−ガラクトピラノシド
乾燥DMF(800ml)にベンジル−2−アセトアミド−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−4−O−メシル−α−D−グルコピラノース(44.07g,0.07736mol)およびリチウムベンゾエート(アルドリッチ(Aldrich)社)(235g,1.84mol)を加えて撹拌した溶液を加熱して48時間還流し、室温まで冷却した後に氷水(3200ml)に注いだ。この懸濁液を1時間撹拌し、CH2Cl2(500ml)を加えてできた2層混合物を室温で18時間撹拌した。水層を分離後、CH2Cl2(3×500ml)で抽出した。有機抽出物を合わせてH2O(3×500ml)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧蒸留して褐色油状の物質が得られ、これを短時間減圧乾燥した。粗生成物についてTLCを行ったところ、ベンゾイルに転換していないメシル出発材料はごくわずかであることがわかった。600gのシリカゲルカラムにCH2Cl2を注いだ(75×330mm,1460ml)。粗生成物に60gのシリカゲルおよびCH2Cl2を加えて粗油状物質を吸着させた。これをカラムに入れ、CH2Cl2で溶出させた。最初のスポットを含むフラクションを集めて溶媒を減圧蒸留することによって琥珀色油状の物質を得、これを乾燥した。収量=35.38g(76.8%)。
実施例8:ベンジル−2−アセトアミド−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−ガラクトピラノシド
モレキュラーシーブを用いて乾燥したCH3OH(500ml)にベンジル−2−アセトアミド−4−O−ベンゾイル−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−ガラクトピラノシド(16.35g,27.45mmol)を加えて撹拌した溶液に金属ナトリウム(6.7g)のCH3OH溶液(150ml)を加えた。この溶液を室温で18時間撹拌した後、加熱して6時間還流した。次に、反応溶液を0℃で保存した。溶媒を減圧蒸留して残渣を得、これをCH2Cl2(500ml)およびH2O(250ml)で分配した。有機層を分離し、H2O(3×250ml)で洗浄した後、無水Na2SO4で乾燥した。この時点で行ったTLCでは、少量の残留メシル誘導体が確認された。溶媒を減圧蒸留して淡黄色の粘性物質を得、これを減圧乾燥した。本生成物は、強力なメチルベンゾエート臭を発していた。500gのシリカゲルカラム(75×275mm)(1200ml)にCH2Cl2を注ぎ、生成物を50gのシリカゲルに吸着させた。カラムにCH2Cl2を流して先に溶出してくる不純物を除去した。生成物はCH3OH/CH2Cl2(1→3%)で溶出してきた。次にカラムを30%のCH3OH/CH2Cl2 で洗い流した。多様な生成物を含むフラクションをプールして減圧蒸留し、残渣を減圧乾燥した。主要生成物フラクションの総収量=10.02g(74.3%)。
実施例9:ベンジル−2−アセトアミド−3,6−ジ−O−ベンジル−2,4−ジデオキシ4−フルオロ−α−D−グルコピラノシド
CH2Cl2(75ml)にDAST(N,N-ジエチルアミノスルファートリフルオリド)(25g,155mmol)(アルドリッチ(Aldrich)社)を加えて撹拌した溶液を−20±3℃(ドライアイス−EtOH槽を使用)に維持し、この溶液に、ベンジル−2−アセトアミド−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−ガラクトピラノシド(8.86g,18.023mmol)をCH2Cl2(200ml)に溶解した溶液を1時間以上かけて滴下した。この溶液を−20±3℃で40分間撹拌した。次に無水ピリジン(9ml)を加えた。得られた溶液を室温で3時間撹拌した後、内部温度を再び−20℃に下げた。無水EtOH(35ml)を滴下し、続いてH2O(40ml)を加えた。この混合物を室温で18時間撹拌した後、CH2Cl2(300ml)およびH2O(300ml)で希釈した。有機層を分離し、H2O(3×200ml)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧蒸留して琥珀色油状の粗生成物を得、これを室温で18時間減圧乾燥した。150gのシリカゲルカラム(42×280mm)にCH2Cl2を注いだ。粗生成物を15gのシリカゲルに吸着させてカラムに加え、CH2Cl2で溶出させた。最初に溶出してきた不純物を含む溶出液を廃棄した。次に生成物が溶出した。全てのフラクションを集めて溶媒を減圧蒸留し、減圧乾燥した。収量=6.44g(72.4%)。
実施例10:2−アセトアミド−2,4−ジデオキシ−4−フルオロ−D−グルコピラノース
10%のPd/チャコール触媒(4.3g)を含む HOAc(150ml)にベンジル−2−アセトアミド−3,6−ジ−O−ベンジル−2,4−ジデオキシ−4−フルオロ−α−D−グルコピラノース(3.21g,6.51mmol)を溶解し、50〜55psig(ゲージ圧で約0.34〜0.38MPa)で水素化した。圧を55から50psig(ゲージ圧で約0.38から0.34MPa)に下げ、再び56psig(ゲージ圧で約0.39MPa)に加圧した。その後再び圧を約50psig(ゲージ圧で約0.34MPa)に下げた。少量のサンプルを取り出した。反応は若干進行していたが、TLCでは大量の出発材料が残っていることが示された。Celite層を通してろ過することによって触媒を除去し、H2OおよびEtOHで洗浄した。ろ液を減圧蒸留して容積を減らし、再びCelite層を通してろ過することによって清澄化した。このろ液を減圧蒸留して乾燥固体を得、これを18時間減圧乾燥した。収量=2.57g。10%のPd/チャコール触媒(2.65g)を含む氷酢酸(50ml)に2.01gの生成物を溶解し、反応を再開したが、このとき、Parr 振とう装置を使用し、50psig(ゲージ圧で約0.34MPa)で5日間水素化を行った。サンプルを取り出し、メンブランフィルターに通し、減圧蒸留することによって残渣を得た。このものについてTLCで確認したところ、生成物のすぐ上部に少量の未知物質のスポットがあったものの、反応は首尾よく進行していた。反応触媒の残りはCelite層を通してろ過することにより除去した。ろ液を減圧蒸留して残渣を得、これを18時間減圧乾燥した。収量=2.67g。この物質を温EtOH(約25ml)中で砕いた。エーテル(250〜300ml)を分けて加えた。黄褐色の固体が析出した。上清を傾瀉し、残渣を減圧乾燥した。収量=1.35g(54.6%)。
実施例11:2−アセトアミド−1,3,6−トリ−O−アセチル−2,4−ジデオキシ−4−フルオロ−D−グルコピラノース
ピリジン(50ml)および無水酢酸(25ml,27g,264mmol)の混合物中に2−アセトアミド−4−フルオロ−2,4−ジデオキシ−D−グルコピラノース(1.35g,6.048mmol)を溶解した溶液を室温で24時間撹拌したところ、TLCでは、出発材料は残っていなかったが、2個の近接したスポットが表れた。さらに15時間撹拌した。次に、溶媒を減圧蒸留し、残渣をトルエン(4×50ml)と共留去したのち、減圧乾燥した。この物質を5gのシリカゲルに吸着させ、CH2Cl2/アセトン(8:1)を注いだシリカゲルカラム(45g,20×360mm)上にのせた。カラムには、CH2Cl2/アセトン(8:1)を500ml流した後、CH2Cl2/CH3OH(7:3)を500ml流した。生成物および後スポットはすぐに溶出し、ほとんど分離しなかった。CH2CL2/CH3OH溶出物は後スポットを生じた。全ての溶媒を留去し、減圧乾燥した。
NMRデータは不明瞭であり、TLCは混合物であることを示していたため、油状および泡状フラクションを合わせ、CH2Cl2を注いだ25gのシリカゲルカラムを用いて再度クロマトグラフィーにかけた。カラムは次のように溶出させた(各フラクションは5ml)。
Figure 2005532310
生成物を含んでいると考えられるフラクションをプールし、減圧蒸留、乾燥した。収量=0.590g(回収率56.6%、収率27.9%)。
実施例12〜15は、本発明に従う好ましい実施態様についての薬理学的特徴を明らかにする。
実施例12
新規に合成した3−および4−F−GlcNAcを用いた実験を行う前に、3−および4−F−GlcNAcが一連のヒト腫瘍細胞系ならびに正常内皮細胞の増殖に与える影響(すなわち、IC50値)をまずはじめに測定し、本来の方法によって合成されたものが示した増殖阻害作用と比較した(9:バーナッキ(Bernacki), R.J.ら、(1977) J. Supra. Stru., 7: 235-250;10:シャーマ(Sharma), M.およびW.コリトニク(Korytnyk)、(1980) Carbohyd. Res., 79: 39-51;11:シャーマ(Sharma), M.ら、(1990) Carbohyd. Res., 198: 205-222)。発明者らは、新規に合成した化合物のIC50値が、本来の方法によって合成された3−および4−F−GlcNAcについて記載されているそれらの値と一致したことを見出した。
実施例13
本実施例においては、ヒトCLA+Tリンパ球上で天然に発現されるCLA/PSGL-1の発現および機能に対する4−F-GlcNAc処理の影響を示している。フローサイトメトリーを使用し、ラットモノクローナル抗体である抗ヒトCLA HECA-452およびマウスモノクローナル抗体である抗ヒトPSGL PL-1を用いて、4−F-GlcNAc処理したCLA+T細胞上におけるCLA/PSGL-1の発現を測定した。発現分析に先立ち、F-GlcNAcがCLA+T細胞培養の増殖を阻害する効果について調べ、0.5mM未満の濃度では、36時間処理しても増殖阻害が認められないことを確認した。さらに、CLAのデ・ノボ(de novo)合成に対する4−F-GlcNAc処理の影響を調べることを目的として、はじめに、CLA+T細胞をビブリオコレラ(Vibrio cholerae)ノイラミニダーゼで処理して全ての末端シアル酸残基を解裂した。これらの末端シアル酸残基は、HECA-452による認識に必須である。ビブリオコレラ(Vibrio cholerae)ノイラミニダーゼ(0.1U/ml、37℃で1時間)で細胞を処理し、4−F-GlcNAc(0.05、0.1または0.5mM)を加えて30時間培養した後、ラットIgM抗CLA HECA-452モノクローナル抗体またはマウスIgG抗PSGL-1(PL-2)を用いて染色した。バックグラウンドの自己蛍光および蛍光色素コンジュゲート二次抗体よりも強い蛍光を発する陽性細胞のみを分析した。この方法では、CLAの生合成に対して4−F-GlcNAcが及ぼす影響を直接評価することができ、4−F-GlcNAcの効果に対して誤った結論を導く可能性がある、」CLAの未知の交代速度が除外される。発明者らは、4−F-GlcNAc処理を行うことにより、CLA+T細胞上のHECA-452エピトープが顕著に、濃度依存的に減少し、一方、ペプチド特異的モノクローナル抗体PL-1を用いたPSGL-1の認識については、最高濃度を除いてはほとんど影響しなかった(表2を参照)ことを見出した。HECA-452エピトープはPSGL-1上に存在しているが、このデータから、0.05および0.1mMの4−F-GlcNAcは、PSGL-1分子のタンパク質合成または分子量に影響を与えることなく、HECA-452のグ
リコシル化レベルを低下させたことを示唆している。
Figure 2005532310
実施例14
ヒトT細胞上のCLAの機能に対して4−F-GlcNAcが与える影響を分析することを目的として、4−F-GlcNAc処理した(0.05、0.1または0.5mM、30時間)CLAT細胞培養物が平行フローチャンバー内に固定したE−およびP−セレクチンキメラと反応する能力を調べた。フローサイトメトリー分析(実施例13)に記載しているように、ノイラミニダーゼで細胞を前処理し、HECA-452活性ならびにCLAのE−およびP−セレクチンリガンド活性に必要な末端のシアル酸残基を除去した。この方法により、デ・ノボ(de novo)合成されたCLA分子について評価を行うことができた。P−およびE−セレクチンキメラ上におけるCLA+T細胞の拘束およびローリングは、濃度に依存して減少することが見出された(図3および4)。ノイラミニダーゼで処理し、次に0.1および0.5mMの4−F-GlcNAcで処理することにより、P−またはE−セレクチンを介したCLA+T細胞の拘束およびローリングは完全に消失した(図3および4を参照)。0.05mMという最も低濃度の4−F-GlcNAcで処理した場合においても、ビヒクル対象であるPBSの存在下でノイラミニダーゼ処理から回復させたCLA+T細胞細胞のローリング頻度と比較した場合、その差は統計的に有意(p<0.001)であった(図3および4を参照)。さらに、細胞ローリング相互作用のずれ抵抗性は顕著に低下し、ずれ応力範囲は明らかに狭まった。E−またはP−セレクチンキメラの機能を阻害するモノクローナル抗体を用いて前処理したE−またはP−セレクチンキメラ上、あるいは、0.5mMのEDTAの存在下におけるE−またはP−セレクチンキメラ上においては、細胞のローリングは起こらず、これらのことから、ローリング接着を支持しているキメラのセレクチン部位の関与が確認された。これらのデータは、4−F-GlcNAc処理したCLAT細胞上のCLA発現に関するフローサイトメトリー分析を裏付けるものであり、増殖を阻害しない濃度における4−F-GlcNAc処理により、CLAの発現、構造および機能を変化させることができ、さらに、拘束およびローリングを阻害することができるという確固たる事実を提供するものである。
同様な一連の実験をおこなうことにより、ヒト造血細胞系KG1a上におけるセレクチンリガンドの発現および機能に対して4−F-GlcNAcが及ぼす影響を分析した。KG1a細胞は、E−およびL−セレクチンリガンドとして機能する特異なHECA-452反応性CD44グリコフォームを発現し(ディミトロフ(Dimitroff), C.J.ら、(2001)J. Cell Biol., 53: 1277-1286;ディミトロフ(Dimitroff), C.J.ら、(2000) Proc. Natl. Acad. Sci. 97(25): 13841-46;サックステイン(Sackstein), R.およびディミトロフ(Dimitroff), C.J.、(2000) Blood, 96: 2765-74)、これはHCELLとしても知られている。この特別なグリコフォームは、白血球の正常CD34+HPC上の主要E−セレクチンリガンドおよび初期L−セレクチンリガンドを表すものであり、故に、BMホーミングおよびイン・ビボ(in vivo)におけるHPCの増殖関連活性にも関係している(同上)。最初に、4−F−GlcNAc処理したKG1a細胞上のHECA-452抗原およびCD44についてフローサイトメトリー分析を行った。増殖を阻害しない濃度でKG1a細胞を処理したが、このとき、0.1U/mlのビブリオコレラ(Vibrio cholerae)ノイラミニダーゼに0.05、0.1または0.5mMの4−F-GlcNAcを加え、37℃で36時間前処理を行った。細胞をビブリオコレラ(Vibrio cholerae)ノイラミニダーゼ(0.1U/ml、37℃で1時間)で処理し、非毒性濃度の4−F-GlcNAc(0.05、0.1または0.5mM)を加えて30時間再培養し、その後、ラットIgM抗CLA HECA-452モノクローナル抗体またはマウスIgG抗PSGL-1(PL-2)を加えて染色した。バックグラウンドの自己蛍光以上の蛍光を発し、さらに、蛍光色素コンジュゲート二次抗体によって染色されている陽性細胞のみを分析した。HECA-452の反応性はノイラミニダーゼ処理に敏感であり、HECA-452エピトープのデ・ノボ(de novo)再発現は、濃度依存的に阻害されることを見出した(表3)。しかしながら、0.5mMの4−F-GlcNAcで処理してもCD44の発現は低下しなかったことから(表3)、CD44上のHECA-452抗原のグリコシル化または合成が特異的に阻止されていることが示唆された。KG1aの細胞性グリコシル化は阻害されていると考えられたが、細胞表面の炭化水素の構造を変化させるような濃度においても、KG1aの細胞増殖およびタンパク質合成に対するグリコシル化要求性は保たれていた。
Figure 2005532310
実施例15
CD44(HCELL)のL−セレクチン結合活性作用に対して4−F-GlcNAcが及ぼす影響を調べることを目的として、ずれ応力に基づくStamper-Woodruff接着アッセイを利用し、4−F-GlcNAc処理したKG1a細胞がL−セレクチン依存性のリンパ球接着を支持する能力について実験を行った。本アッセイは、リンパ球上で天然に発現されるL−セレクチンとKG1a細胞上で発現されるHCELLとの間のずれ応力依存性結合相互作用を特に評価するために用いた(ディミトロフ(Dimitroff), C.J.ら、(2000) Proc. Natl. Acad. Sci. 97(25): 13841-46;サクステイン(Sackstein), R.およびディミトロフ(Dimitroff), C.J.、(2000) Blood, 96: 265-74)。0.05、0.1または0.5mMの4−F-GlcNAcでKG1a細胞を処理する前に、ビブリオコレラ(Vibrio cholerae)ノイラミニダーゼ(0.1U/ml、37℃で1時間)でKG1a細胞を前処理することにより、α2,3シアル酸が結合している末端の全ての残基を解裂させ、HCELL活性を全て排除した。グルタルアルデヒドに固定したKG1a細胞の単層は、はじめにビブリオコレラ(Vibrio cholerae)ノイラミニダーゼ(0.1U/ml、37℃で1時間)で処理し、次に、4−F-GlcNAc(0.05〜0.5mM)の存在下、37℃で30時間再培養した。α−マンノシダーゼIIの阻害剤であるスワインソニン、N-アセチルグルコサミンホスホトランスフェラーゼの阻害剤であるツニカマイシンも使用し、既知のグリコシル化阻害剤の相対力価と比較した。ヒト末梢血リンパ球(5×106個/ml RPMI1640 w/o 重炭酸ナトリウム/5%FBS)を4℃、80rpmで30分間かけてKG1a単層上に重層し、PBSで穏やかに洗浄した後、3%のグルタルアルデヒドを用いて細胞単層に結合しているリンパ球を固定した。KG1a細胞上のHCELL活性の再発現またはHECA-452反応性CD44の再発現は、4−F-GlcNAc処理の36時間後に判定した。結合リンパ球は、2枚のスライドガラス内の最低5視野について、倍率100倍で計数し、リンパ球の平均数(平均の標準偏差)
を計算した。
Figure 2005532310
PBSで回復させたものと比較すると、4−F-GlcNAc処理したKG1a細胞へのリンパ球結合性は、顕著に阻害されていた(p<0.001)(表4)。コンプレックス型N-グリコシル化に関する既知の代謝阻害剤であるスワインソニンと比較すると、4−F-GlcNAcはより強力なHCELL活性阻害剤であった。しかしながら、N-グリコシル化および細胞増殖の初期段階に対する強力な阻害剤であるツニカマイシンは、スワインソニンおよび4−F-GlcNAcよりもさらに強力なHCELL活性阻害剤であった。L−セレクチンに対する依存性は、機能阻害性の抗ヒトL−セレクチンモノクローナル抗体であるLAM1〜3(10μg/ml)、L−セレクチンの脱落を誘導するPMA(50ng/ml)を用いてリンパ球を前処理することによって、または0.5mMのEDTA存在下でアッセイを行うことによっても確認することができ、全ての場合において、リンパ球のKG1a細胞への結合性は完全に阻害されていた。
現在、スワインソニンは、充実性腫瘍に対する化学療法剤として臨床開発が行われているが(17、18)、白血球のセレクチンリガンド発現、ならびに白血球の生理的および病的ホーミングの制御に対する炭化水素阻害剤としての評価は確認されていない。4−F-GlcNAcがスワインソニンよりも強力なセレクチンリガンド阻害剤であることが示されたことから、血液関連の癌および白血球関連の皮膚炎の治療においては、4−F-GlcNAcおよび同様に3−F−GlcNAcの治療能力が大いに期待される。さらに、4−F-GlcNAcは、細胞増殖阻害剤としての作用が弱く、ならびに、標的細胞のグリコシルトランスフェラーゼレベルおよび/もしくは活性が、定常状態での皮膚の免疫監視機構に必要なベースラインレベルよりも遙かに高い(すなわち、正常なメモリーT細胞におけるCTCLフコシルトランスフェラーゼの発現と比較した場合に、該酵素の発現が顕著に高められている、トーマス S.クッパー(Thomas S. Kupper)(ハーバード大学医学部(Harvard Medical School))による)ことから、治療指数が広く、副作用の危険性が少ない、選択性の高い化合物であることが示された。
実施例16
特に記載していない限りは、本明細書に記載している実施例は、以下の方法を用いて行った。
抗体、酵素、代謝阻害剤および放射化合物
ラットIgM抗ヒトCLA HECA-452モノクローナル抗体およびFITC−ラットIgM HECA-452は、BDファーミジェン(BD PharMigen)社(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した。PerPC−マウスIgG1、PerPC−マウスIgG抗ヒトCD4(クローンSK3)およびPerPC−マウスIgG抗ヒトCD8(クローンSK1)は、BDバイオサイエンシーズ(カリフォルニア州サンノゼ)社から購入した。ヤギ抗マウスIgG、アルカリホスファターゼ(AP)−ヤギ抗ラットIgMおよびAP−ヤギ抗マウスIgGは、サザン・バイオテクノロジー・アソシエーツ(Southern Biothechnology Associates)社(アラバマ州バーミンガム)から購入した。マウスIgG抗ヒトCD3およびマウスIgG抗ヒトPSGL-1モノクローナル抗体(PL-1およびPL-2)は、ベックマン・コールター(Beckman Coulter)社(カリフォルニア州ブレア)から購入した。マウスIgG抗ヒトPSGL-1モノクローナル抗体(クローン2G3、4F9および4D8)は、ワイエス/ジェネティクス研究所(Wyeth/Genetics Institute)(マサチューセッツ州ケンブリッジ)から提供された。ビブリオコレラ(Vibrio cholerae)ノイラミニダーゼは、ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)社(インディアナ州インディアナポリス)から購入した。ヒトIgG、ブロメライン、ツニカマイシン、スワインソニン、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)およびベンジル−O−N−アセチルガラクトサミド(BAG)はシグマ・ケミカル( Sigma Chemical )社)(ミズーリ州セントルイス)から購入した。Easy Tag(商標)[35S]−タンパク質ラベリングミックスは、NEN ライフサイエンス・プロダクツ(NEN Life Science Products)社(マサチューセッツ州ボストン)から購入した。ピラノース環の4位の炭素がフッ素置換されており(図5A)、かつ、ポリ−N-アセチルラクトサミンの伸長を阻害すると考えられる(31〜34)(図5BおよびC)2−アセトアミド−1,3,6−トリ−O−アセチル−4−デオキシ−4
−フルオロ−D-グルコピラノース(4−F-GlcNAc)、ならびに、トリチウム化された4−F-Glc[3H]NAc(16μCi/μmol)は、ロスウェル・パーク癌研究所(Rosewell Park Cancer Institute)のケミカル・リソース研究室(Chemical Resource Laboratory)(ニューヨーク州バッファロー)において合成したものを購入した。 ヒト皮下リンパ球関連抗原(CLA)を発現し、グリコシル化変化剤またはプロテアーゼを用いて処理したT細胞の作出
ヒトCLA+Tリンパ球は、文献の記載(3)に従って調製した。Histopaque-1077(シグマ・ダイアグノスティックス( Sigma Diagnostics )社、ミズーリ州セントルイス)を用いて病原体を含まない条件下でクエン酸処理した全血を濃度勾配遠心分離することにより、ヒト抹消血単核細胞(PBMC)を単離した。PMBCは、X-VIVO15血清不含培地(バイオ・ウィッタカー(Bio Whittaker)社、メリーランド州ウォーカースヴィル)に懸濁し、抗ヒトCD3でコートした24ウェルプレートに加え(2×106個/ウェル)、37℃で48時間活性化させた。これとは別に、CLA発現の負の対照として、PBMCをRPMI1640/10%FBS(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)社、ニューヨーク州グランドアイランド)に懸濁し、抗CD3でコートしたプラスチック上で活性化することにより、低レベルでCLAを発現するT細胞(CLAlowT細胞)を調製した。抗ヒトCD3でコートした24ウェルプレートを調製するにあたっては、はじめに、ヤギ抗マウスIgG(5μg/ウェル、500μlの0.1M NaCO3中、pH9.6)を添加し、37℃で2時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、各ウェルにマウス抗CD3(0.1μg/ウェル、500μlのPBS/2%FBS中)を加え、37℃で2時間インキュベートし、使用までプレートを4℃に保存した。抗CD3をコートしたプレート上で細胞を活性化した後、T細胞を回収し、5ng/mlの組換えヒトIL-2を含むX-VIVO15血清不含培地中に懸濁し、抗体をコートしていない24ウェルプレートに2×106個/ウェルとなるように細胞を再播種し、37℃で48時間インキュベートした。48時間の間隔をあけてこの段階をさらに3回繰り返し、機能的接着アッセイまたは細胞溶解物の調製に使用する前に、フローサイトメトリーを用いてCLA、CD4およびCD8の発現について細胞を試験し、CLAの発現が上昇していること(CLA+T細胞では99%に対してCLAlowT細胞または用時単離した末梢血リンパ球(PBL)では18%)、ならびにCD4およびCD8亜集団の頻度(CD4では45%が陽性、CD8では62%が陽性)を確認した。
複合糖質変化剤で処理したT細胞上におけるCLAの発現を分析することを目的として、はじめに、ノイラミニダーゼ(0.1U/ml、37℃で1時間)でCLA+T細胞を処理することにより、機能性CLAを除去し、細胞表面から全てのHECA-452反応性エピトープを解裂させた(35〜38)。発明者らは、これらの化合物が直接的にCLAの発現および機能に影響を与えるのか否かを調査したかったので、ノイラミニダーゼで前処理した後に、グリコシル化変化剤を加えてインキュベートすることにより、細胞表面において再発現したデ・ノボ(de novo)合成CLA/HECA-452エピトープについて調べることができた。ノイラミニダーゼで処理した後、ヒト組換えIL-2の存在下において、ツニカマイシン(0.02mM)(N−グリコシル化の最初の段階であるGlcNAcホスホトランスフェラーゼの阻害剤)、スワインソニン(0.23mM)(α−マンノシダーゼIIおよびコンプレックス型N−グリコシル化の阻害剤)、4−F-GlcNAc(0.05mM)(ポリ−N−アセチルラクトサミン生合成の阻害剤と考えられる)、BAG(O−グリカン生合成の阻害剤)(<2mM)、またはGlcNAc(5mM)(負の対照、天然に存在する4−F-GlcNAcの代謝対)を加えて細胞を30時間インキュベートした。ツニカマイシンとスワインソニンの濃度は、ヒト造血細胞培養物に対するそれらのN−グリカン阻害作用に基づいて定めたものであり、ここで、ヒト造血細胞は、これらの実験用に調製された活性化T細胞と同等の増殖率を有していた(35〜38)。BAGの濃度は、既に報告されているように(39)、増殖を阻害しない濃度においてO−グリコシル化阻害作用が最大になるように選択した。4−F-GlcNAcが細胞増殖またはタンパク質合成に影響を与えることなく、複合糖質を変化させる作用を調べるにあたり、適切な濃度の決定を目的として、4−F-GlcNAcを添加し、37℃で細胞が2回倍加する時間(約36時間)にわたってインキュベートすることにより、細胞増殖阻害の予備実験を行った(細胞の生存能力は、トリパンブルー染色によって評価した)。4−F-GlcNAcのIC10値は>0.2mMであることがわかり、従って、0.2mM以下の4−F-GlcNAcで処理した細胞から得られたデータは、細胞増殖またはタンパク質合成の阻害の影響を受けていない(33、34)。
グリコシル化阻害剤による処理の影響と比較することにより、細胞表面糖タンパク質によってもたらされるセレクチンリガンド活性のレベルを評価することを目的として、細胞をブロメライン(0.1%、37℃、1時間)で処理した。ブロメラインは、ヒト造血細胞膜糖タンパク質(すなわち、PSGL-1およびHCELL)上で発現される全てのP−およびL−セレクチンリガンド活性を含む膜タンパク質を除去することが知られているプロテアーゼである(35〜38)。故に、ブロメライン処理後に残存しているE−セレクチンリガンド活性は、非PSGL-1糖脂質構成成分が関与している活性を示すと考えられる(40〜44)。次に、フローサイトメトリーを用い、ブロメライン処理した細胞について、HECA-452およびPSGL-1の発現を分析した。さらに、ブロメライン処理によって細胞表面上のHECA-452およびPSGL-1の発現が完全に消失したことを確認することを目的として、発明者らの研究室で既に発表済みの記載(35〜37)に従って膜タンパク質を調製し、ウェスタンブロットを用いてHECA-452抗原およびPSGL-1ポリペプチドの分析を行った。
フローサイトメトリー分析
フローサイトメトリー分析は、直接および間接免疫蛍光染色法を用い、ヒト白血球上で行った。これらの実験に使用した細胞は全て、冷PBS/2%FBSで2回洗浄し、107個/mlとなるようにPBS/1%FBS中に懸濁した。一次抗体である抗CLA(HECA-452)、抗CD4、抗CD8、抗CD43(L60)および抗PSGL-1(PL-2)は、適切なアイソタイプ適合対照抗体と共に細胞に添加し、氷上で30分間インキュベートした。PBS/2%FBSを用いて2回洗浄した後、蛍光色素コンジュゲート二次抗体(2μl)を加えたPBS/1%FBS中に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。細胞をPBS/2%FBSで2回洗浄した後、PBSに再懸濁し、488nmに調整したアルゴンレーザーを取り付けたFACScan装置(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)社)上でフローサイトメトリーを行った。
細胞溶解物の調製および免疫沈降
細胞溶解物の調製にあたっては、放射ラベルした細胞を含む細胞を氷冷PBS中で3回洗浄し、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl(pH7.4)、1mMのEDTA、0.02%のNaAzide、20μg/mlのPMSF、Complete(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテルタブレット(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)社)および2%のNP-40(250μl/108個)を含む緩衝液中で細胞を溶解した。氷上で2時間インキュベートした後、4℃、10,000gで30分間遠心分離を行うことにより、不溶性の細胞組織を沈殿させ、さらに、可溶性のタンパク質溶解物を集め、Bradfordタンパク質アッセイ(シグマ・ケミカル( Sigma Chemical )社)を用いて定量した。免疫沈降実験に使用する溶解調製物中における最終濃度が1%となるようにSDSを添加した。
PSGL-1の免疫沈降を行うことを目的として、ローター上で、組換えProtein G-agarose(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)社)中、4℃で18時間かけて事前に清澄化した非放射ラベル細胞溶解物または放射ラベル細胞溶解物(1%のSDSを含む)に、抗PSGL-1モノクローナル抗体であるPL-2、 2G3、4F9および4D8(2μgずつ)を加えた。マウスIgGアイソタイプ対照を同様の抗体:溶解物比で用いて免疫沈降を行い、負の対照とした。溶解緩衝液/2%のNP-40/1%のSDS/1%のBSAを加えて事前にインキュベートしておいたProtein G-agaroseに抗体−溶解物混合物を加え、一定速度で回転させながら、4℃で4時間以上インキュベートした。免疫沈降物は、溶解緩衝液/2%のNP-40/1%のSDS/1%のBSAで5回洗浄し、BSA不含の溶解緩衝液/2%のNP-40/1%のSDSで3回洗浄した後、分析用にサンプル還元緩衝液中で煮沸した。
SDS-PAGE/ウェスタンブロット、レクチンブロットおよびオートラジオグラフィー
SDS-PAGEおよびウェスタンブロットを行うため、細胞溶解物、膜タンパク質または免疫沈降物は、還元サンプル緩衝液で希釈し、煮沸して、7〜9%のSDS-PAGEゲル上で分離した。分離したタンパク質をSequi-Blot(商標)PVDF膜(バイオ−ラド(Bio-Rad)社、カリフォルニア州ハーキュレス)に移し、FBSを用いて室温で1時間かけてブロックした。ラットIgM抗ヒトCLA HECA-452(1μg/ml)、マウスIgG抗ヒトPSGL-1モノクローナル抗体であるPL-2(1μg/ml)、2G3、4F9および4D8(各1μg/ml)、またはマウスIgG抗ヒトCD43 L60(1μg/ml)をブロットに加え、室温で1時間インキュベートした。ラットIgMまたはマウスIgGを用いたアイソタイプ対照イムノブロットを平行して行い、非特異反応タンパク質量を測定した。PBS/0.1%Tween−20でブロットを3回(10分間/回)洗浄した後、対応する二次抗体であるAP−コンジュゲートヤギ抗ラットIgM(1:400)またはヤギ抗マウスIgG(1:8000)を加えてインキュベートした。次に、AP基質であるWestern Blue(登録商標)(プロメガ(Promega)社、ウィスコンシン州マディスン)を加えてブロットを発色させた。
レクチンブロットを行うため、メタノール透過性PVDF膜に細胞溶解物をスポットし(25μg/スポット)、FBS中、室温で1時間かけてブロックした。ブロットは、AP−Canavalia ensiformisアグルチニン(ConA)(2.0μg/ml(PBS);特異性:α−マンノース)、AP−Triticum vulgaris(麦芽)アグルチニン(WGA)(0.5μg/ml(PBS);特異性:末端GlcNAcまたはGlcNAcβ1、4GlcNAc)またはAP−Lycopersicon esculentum(トマトレクチン)アグルチニン(LEA)(1.0μg/ml(PBS);特異性:(Galβ1,4GlcNAc)n)を加え、室温で1時間かけてプローブした(レクチン類は全てEY ラブズ(EY Labs)社(カリフォルニア州サンマテオ)から購入した)。ブロットは、PBS/0.1%Tween−20で3回洗浄し、さらにPBSで1回洗浄した後(各10分間)、Western Blueで発色させた。
オートラジオグラフィーを行うため、完全X-VIVO15培地中でEasy Tag[35S]−タンパク質ラベリングミックス(100μCi/ml)を用いて30時間かけて、または、完全X-VIVO15増殖培地中で4−F-Glc[3H]NAc(0.1mM(16μCi/mol))を用いて36時間かけて代謝的に放射ラベルした細胞から溶解物を調製した。放射ラベルした溶解物または免疫沈降物は、還元SDS-PAGEゲル上で分離させ、ゲルを乾燥し、Kodak Biomax MRフィルム(ニューヨーク州ロチェスター)に感光させた。SDS-PAGEによって分離した抗PSGL-1およびアイソタイプ対照免疫沈降物についてのデンシトメーターによるスキャンは、NIH ImageJソフトウェアを用いて行い、マイクロソフト(登録商標)エクセルを使用して、8ビットのグレースケール値をレーンの長さ(高分子量領域から染色先端まで)に対してプロットした。
放射ラベルしたヒトCLA + T細胞巨大分子のTCA沈殿
ヒトCLA+T細胞(5×106個/ml、完全X-VIVO15培地中)は、4−F-Glc[3H]NAc(0.025〜1.0mM;16μCi/μmol)の存在下において12〜36時間増殖させた。細胞を回収し、氷冷PBSで2回洗浄し、10%のTCA(250μl/5×106個)を加えて、氷上、30分間インキュベートした。減圧下、細胞沈殿物をWhatman GF/Cマイクロファイバーガラスペーパー(フィッシャー・サイエンティフィク(Fisher Scientific)社)に通し、氷冷した5%TCAで5回洗浄し、さらに、氷冷ddH2Oで3回洗浄した。フィルターペーパーをシンチレーション液中に入れ、Beckman LS6000ICシンチレーションカウンター(ベックマン・コールター(Beckman Coulter)社、カリフォルニア州フラートン)を用いて計測した。既知量のトリチウム化4−F-Glc[3H]NAcの計数効率を測定した後、pcmsをnmolに補正し(16μCi/μmolの4−F-Glc[3H]NAc)、フッ化糖アナログの含量を細胞単位で表した。
平行プレートフローチャンバー分析
組換えヒトE−およびP−セレクチン−Igキメラ(ハーバード大学医学部(Harvard Medical School)のロバート・フールブリッジ(Robert Fuhlbrigge)博士から供与)ならびにヒトL−セレクチン−Ig(ワイエス/ジェネティクス研究所(Wyeth/Genetics Institute)(マサチューセッツ州ケンブリッジ)のレイ・キャンプハウゼン(Ray Camphausen)博士から供与)上におけるヒトT細胞の拘束およびローリングは、生理的ずれ応力条件下において、平行プレートフローチャンバー中で分析した(3)。E−およびP−セレクチン−Igキメラスポットを調製するため、37℃で2時間かけてTen-twenty-nine(商標)ペトリ皿にプロテインA(300μg/15μl、0.1MのNaHCO3中)を吸着させた。次に、ヒト血清アルブミン(2μg/ml、PBS中)を加え、37℃で2時間インキュベートして非特異結合部位をブロックした。予め吸着させておいたプロテインAのスポット上に、E−セレクチン−Ig(50ng/50μl、PBS中)またはP−セレクチン−Ig(50ng/50μl、PBS中)上の溶液を直接ピペットで加え、4℃で18時間放置した。L−セレクチン−Igスポットを調製するため、4℃で18時間かけ、プラスチック(プロテインAでコートしていない)に、L−セレクチン−Ig(300ng/15μl、PBS中)またはアイソタイプ対照であるヒトIgG(300ng/15μl)を直接吸着させ、100%のFBSを加えて4℃で2時間かけてブロックした。
CLA+T細胞または用時単離したPBLは、ノイラミニダーゼ+代謝グリコシル化阻害剤で処理するか、または上述に従ってプロテアーゼ(ブロメライン)で処理し、HBSSで2回洗浄し、HBSS/10mMのHEPES/2mMのCaCl2(H/H/Ca++)中に2×106個/mlとなるように懸濁し、チャンバー内のセレクチンキメラ上に注入した。プロテアーゼ処理を行い、タンパク質骨格上におけるCLAの発現に帰因するものではない、残存するE−セレクチン活性を制御した。細胞拘束は、0.6ダイン/cm2で1分間行い、ずれ応力は、15秒毎に段階的に強め、最終的なずれ応力レベルである60ダイン/cm2まで強めた。視野中でローリングしている細胞数(倍率100倍)は、最低3回の実験を行って各ずれ応力レベルにおいて3回計数した。全ての実験はリアルタイムで観察し、また、オフライン分析を行うためにビデオ録画した。負の対照実験を平行して実施し、このとき、細胞の結合は、5mMのEDTAを含むH/H接着アッセイ培地中で行い、また、ヒトIgGアイソタイプ対照に対する細胞結合をアッセイした。
実施例17:4−F-GlcNAcおよびBAGは、PSGL-1上のHECA-452エピトープの発現を阻止する
HECA-452発現のデ・ノボ(de novo)合成に対してグリコシル化阻害剤が及ぼす影響を調べることを目的として、T細胞培養物をビブリオコレラ(Vibrio cholerae)ノイラミニダーゼで処理し、HECA-452認識および細胞性のセレクチンリガンド活性に重要な末端のシアル酸残基を解裂させた(37、38)。この方法により、CLAの生合成に対するグリコシル化阻害剤の影響を直接評価することができ、さらに、細胞表面に既に生成されているCLAの関与が排除された。次に、グリコシル化阻害剤、希釈剤対照(PBS)または分子対照(GlcNAc)の存在下で細胞を30時間再培養し、CLAの発現および機能の分析を行うために回収した。ウェスタンブロット分析から、ノイラミニダーゼで処理後、ツニカマイシン、BAGおよび4−F-GlcNAcで処理することにより、デ・ノボ(de novo)合成されたPSGL-1上のHECA-452エピトープは顕著に減少していたことがわかり、ダイマー(220kDa)型およびモノマー(140kDa)型として分離した(図6A)(3、36、37)。PBS、スワインソニンまたはGlcNAc(薬物対照)中で増殖させた細胞におけるHECA-452の発現は回復しなかった。予備実験から得られたデータでは、1.0mM未満の濃度のBAGを用いた処理および0.015mM未満の濃度のツニカマイシンを用いた処理は、HECA-452の発現にほとんど影響を与えないことが示された(データは示していない)。モル濃度を基準にすると、HECA-452の発現低下については、ツニカマイシンは4−F-GlcNAcの2.5倍強力であったが、4−F-GlcNAcはBAGよりも強力であった。特記すべきことは、ツニカマイシン処理した細胞においては、PSGL-1の発現は除去されていたが、4−F-GlcNAcはPSGL-1の発現そのものには影響を与えず(図6B)、このことは、4−F-GlcNAcが、タンパク質合成の生理的経路および細胞増殖を妨げることなくグリコシル化を選択的に阻害する能力を示すものである。PSGL-1上のHECA-452発現に対する抗炭化水素効果の期間を評価することを目的として、4−F-GlcNAcを加えて細胞を30時間処理し、さらに、4−F-GlcNAc不含培地中で72時間再培養した。HECA-452イムノブロットにより、PSGL-1上のHECA-452の発現は、最初の48時間は抑制されていたが、その後再発現したことがわかった。このことから、4−F-GlcNAcの親油性によって細胞に4−F-GlcNAcを接触させている間に最大限の取込みが起こり、さらに、一旦ヌクレオチド糖に転換すると(そのような糖は細胞から搬出されない)、48時間以内はセレクチンリガンドの合成が代謝的に阻害されることが示唆された。
O−グリカン阻害作用をさらに分析し、また、PSGL-1上のコア2O−グリカン類によって呈示されるHECA-452エピトープの減少に関する特異性の評価に役立てることを目的として、BAG処理した細胞由来の溶解物をモノクローナル抗体L60と共にブロットした。ここで、L60は、CD43のO−グリカン上に発現されたシアル化エピトープを認識する。BAG処理することにより、L60の反応性は完全に阻害された(図6C)。興味のあることに、ツニカマイシンもL60の認識力を低下させたが(図6C)、このことは、ツニカマイシンが細胞性タンパク質合成に対する全般的な阻害作用を有すること示唆している。さらに、4−F-GlcNAcはL60の反応性に全く影響を与えなかったことから、4−F-GlcNAcは、O−グリコシル化自体には影響を与えないことが示された。4−F-GlcNAcは、PSGL-1上のコア2O−グリコシル化によって呈示されたポリN−アセチルラクトサミン骨格上に存在するHECA-452エピトープを減少させるため(図2A)、4−F-GlcNAc処理した細胞の溶解物由来のCD43に対するL60の反応性は変化しないことから、L60エピトープは、ポリN−アセチルラクトサミン骨格上には存在しないことが示唆された(45、46)。
PSGL-1が抗PSGL-1モノクローナル抗体とブロッティングする能力に対し、ツニカマイシンが影響を及ぼす可能性について検討することを目的として(このことにより、ウェスタンブロットにおいて、PSGL-1ポリペプチドが検出されない(図6B)ことに対する説明ができる)、[35S]−タンパク質ラベリングミックスを用いて代謝的に放射ラベルし、同時に、グリコシル化阻害剤処理を行った細胞由来のPSGL-1の免疫沈降物について、オートラジオグラフィーを行った。ツニカマイシン存在下で増殖させた細胞上では、PSGL-1の発現は完全に消失しており、このことから、HECA-452エピトープの消失は、PSGL-1の生合成が阻害されているためであることが示唆された(図7)。BAG処理した細胞由来のPSGL-1への[35S]−タンパク質ラベリングミックスの取込みも若干減少していたが、スワインソニンまたは4−F-GlcNAc存在下で増殖させた細胞から単離した放射活性PSGL-1のレベルは、PBS(希釈剤対照)またはGlcNAc(薬物対照)の存在下で増殖させた細胞由来のPSGL-1のそれと比較して、変化がなかった(図7)。
実施例18:ヒトCLA+T細胞上のセレクチンリガンド活性の抑制
生理的ずれ応力条件下において平行プレートフローチャンバーを使用し、ウェスタンブロットおよびオートラジオグラフィー実験用に調製した細胞と同様の方法に従い、処理したヒトCLA+T細胞のE−、P−およびL−セレクチンリガンド活性を分析した。ノイラミニダーゼで処理後、PBSまたはGlcNAc(薬物対照)の存在下で30時間増殖させたヒトCLA+T細胞では、セレクチンリガンド活性は80%以上回復し、活性は、接着アッセイ培地に5mMのEDTAを添加することによって阻害可能であった(図8)。負の対照であるCLALOWT細胞(RPMI-1640/10%のFBS中で増殖)または用時単離したPBLにおけるE−セレクチンおよびL−セレクチンリガンド活性は、CLA+T細胞活性よりもかなり低かった(CLA+T細胞活性の25%)が、P−セレクチンリガンド活性はCLA+T細胞と差がなかった(データは示していない)。2.0ダイン/cm2では、ツニカマイシン、4−F-GlcNAcおよびBAGで処理した細胞のE−、P−およびL−セレクチンキメラ上において、ローリング接着の顕著な低下が観察された(p<0.01;Studentのt−検定)。しかしながら、ツニカマイシン処理した細胞においてPSGL-1発現が阻害されたこと(図6Bおよび7を参照)は、セレクチン結合性の顕著な低下を説明するものである。スワインソニンは、セレクチン上における細胞のローリングに影響を与えないことから、特にPSGL-1上のコンプレックス型N−グリカン類は、セレクチンリガンド活性に関与していないことが示唆された。これらの知見を考え合わせると、4−F-GlcNAcおよびBAGを用いてセレクチンリガンド活性を機能的に変更することが、PSGL-1上におけるHECA-452発現に対する阻害作用に直接的に関連しており、かつ、セレクチン結合決定因子がコア2O−グリカン類によって呈示されていることを示している。
重要な点は、フローサイトメトリーによって測定されたように、プロテアーゼであるブロメラインで細胞を処理することにより、PSGL-1の発現は完全に除去され(図9のパネルAおよびB)、また、P−およびL−セレクチンリガンド活性が完全に除去された(図8)ことから、PSGL-1は、CLA+T細胞上の一次糖タンパク質P−/L−セレクチンリガンドであることが確認された。しかしながら、ブロメライン処理によってPSGL-1は完全に除去された(図9のパネルAおよびB)にもかかわらず、E−セレクチンリガンド活性は観察された(対照の25%未満)(図8)。CLA+T細胞に残存しているE−セレクチンリガンド活性は、CLALOWT細胞または用時調製したPBLにおけるベースラインE−セレクチンリガンド活性と同等であり(CLA+T細胞活性の25%未満)、糖脂質E−セレクチンリガンド活性を反映していると考えられる。特記すべきことは、ブロメライン処理後のCLALOWT細胞またはPBL上におけるPSGL-1およびHECA-452の発現についてフローサイトメトリー分析を行ったところ、HECA-452エピトープの発現は比較的変わらなかったが、PSGL-1のレベルは完全に消失していた(図9のパネルA)。このことから、糖脂質構造は、リンパ球の皮膚ホーミングおよびCLA/PSGL-1の発現と相関していない機能性E−セレクチン結合の非主要部分のみに寄与しているにもかかわらず、糖脂質上でのHECA-452の発現力は強いことが示唆された。ツニカマイシンとBAGは、プロテアーゼ単独処理の場合におけるE−セレクチンリガンド活性の低下よりもさらに活性を下げはしないと予測していたが(これらの阻害剤は糖タンパク質特異的)、4−F-GlcNAcはプロテアーゼ処理の場合におけるE−セレクチンリガンド活性の低下よりもさらに活性を下げはしなかったという知見も、タンパク質によって呈示されたポリN−アセチルラクトサミンへの4−F-GlcNAcの取込みに関する選択性を表すものである。プロテアーゼ抵抗性のHECA-452エピトープおよびE−セレクチンリガンド活性が存在することから、4−F-GlcNAcの減少による活性低下とは無関係に、ネオラクトスフィンゴ糖脂質などの糖脂質上に存在するN−アセチルラクトサミン構造は4−F-GlcNAc処理の影響を受けないことが示唆された。
実施例19:ポリN−アセチルラクトサミン合成の代謝調節物およびCLAへの直接取込みによるセレクチン結合決定因子としての4−F-GlcNAcの機能
ヒト腫瘍細胞がレクチン類に結合することに対して、4−F-GlcNAcが及ぼす阻害効果を評価したこれまでの研究から、4−F-GlcNAcは、ポリN−アセチルラクトサミンの合成、ならびに生成した末端N−アセチルノイラミン酸もしくはガラクトースが結合した構造を阻害することが示唆された(33、34)。4−F-GlcNAcがグリコシル化を阻害する濃度においては、タンパク質合成および細胞増殖は影響を受けないとしても、抗炭化水素作用のメカニズムに関する直接的な証拠はない。4−F-GlcNAcが複合糖質に直接取り込まれるのか否か、ならびに、末端グリカンの修飾もしくはヒトCLA+T細胞上でのHECA-452の発現において観察された減少の理由を確認するための一助として、トリチウム化4−F-GlcNAc(4−F-Glc[3H]NAc)を用いてCLA+T細胞を代謝的に放射ラベルし、TCA沈殿させた巨大分子に取り込まれた4−F-Glc[3H]NAcの量を細胞1個あたりを単位として定量した。濃度依存的に、4−F-Glc[3H]NAcはTCA沈殿させた巨大分子に取り込まれた(図10)。さらに、1.0mMの4−F-Glc[3H]NAcを加えて36時間インキュベートした後の細胞増殖および代謝活性の阻害は特筆すべきものであり、その結果、細胞頻度は顕著に低下し(時間0における細胞数の25%未満)、また、TCA沈殿させた巨大分子内の放射活性レベルも低下した(図10)。
4−F-GlcNAc処理によって生じたCLAの変形は、PSGL-1への直接取込みに起因するものであることを示すことを目的として、4−F-Glc[3H]NAcでラベルしたCLA+T細胞溶解物から免疫沈降させたPSGL-1の放射線検出を行った。暴露28日後においては、4−F-Glc[3H]NAcの弱い特異活性によって強いシグナルが妨げられたが、オートラジオグラフィーおよびスキャンデンシトメトリーでは、PSGL-1のダイマー型(220kDa)およびモノマー型(140kDa)を検出することができ、一方、アイソタイプ対照の免疫沈降物は、放射ラベルしたPSGL-1を全く含んでいないことが明らかになった(図11、パネルAおよびBのレーン2)。これらのデータから、4−F-GlcNAc処理を行うことによって生じる、PSGL-1上におけるポリN−アセチルラクトサミンの伸長終了およびシアロフコシル化(すなわちHECA-452エピトープ)の終了は、4−F-GlcNAcβ1−3Gal−R(受容体)の4位の炭素へのUDP−ガラクトース(供与体)の結合が阻害されるためであることを示している。
4−F-GlcNAc処理したCLA+T細胞上におけるグリカンの変形状態を分析および確認することを目的として、ConA(特異性:α−マンノース)、WGA(特異性:末端GlcNAcまたはGlcNAcβ1、4GlcNAc)およびLEA(特異性:{Galβ1、4GlcNAc}n)を用いてレクチンブロット実験を行った。これらの実験から、スワインソニンおよびツニカマイシンがグリコシル化に及ぼすことが予測されていた阻害効果が確認された。PBSまたはGlcNAc(負の対照)中で増殖させた細胞と比較すると、ツニカマイシン処理した細胞から調製した溶解物では、ConA、WGAおよびLEA染色が消失していることがわかった(図12)。スワインソニン処理した細胞由来の溶解物においては、ConA染色が増強されていたが、4−F-GlcNAcまたはBAG処理は、PBSまたはGlcNAc処理と比較した場合、ConA染色に影響を与えなかった(図12)。さらに、4−F-GlcNAc処理した細胞由来の溶解物のLEA染色は著しく弱まっており、一方、WGA染色は、PBS、スワインソニン、BAGまたはGlcNAc処理したものと比較すると強められていた(図12)。興味のあることに、BAG処理はLEA染色が消失に影響を与えないことから、N−グリカン上の残存ポリN−アセチルラクトサミンユニットは、LEA染色の検出に十分な量が存在していること、ならびに、4−F-GlcNAcは、O−グリカンおよびN−グリカン上のポリN−アセチルラクトサミンを阻害していたことが示唆された。これらのデータから、スワインソニン処理によるグリコシル化について予測された変化が確認され、そのとき、α−マンノシダーゼが阻害され、従って、ConA染色(すなわち、α−マンノース残基のレベル)は増加していた。さらに重要なことは、4−F-GlcNAc処理によるポリN−アセチルラクトサミン構造(LEAで染色される)の減少は、4−F-GlcNAcグリカンの変形に関する従来の知見(34)を確証するものであり、さらに、WGA染色が強められたことは、CLAへの4−F-Glc[3H]NAcの取込データと併せて、4−F-GlcNAcがポリ−N−アセチルラクトサミン伸長のターミネーターとして作用することを強く示唆している。4−F-GlcNAcの4位の炭素にフッ素が存在することがUDP−Galへのグリコシル結合を阻害するかもしれないが、WGAによる末端4−F-GlcNAc残基の認識は影響を受けなかった。
実施例20:イン・ビトロ(in vitro)におけるマウスTH1細胞のE−およびP−セレクチン結合に対する4−F-GlcNAcによる阻害
本実施例は、イン・ビトロ(in vitro)由来のマウスTh1細胞のE−およびP−セレクチン結合特性に対して4−F-GlcNAc処理が及ぼす影響を示すものである。CD4+脾細胞は、抗マウスCD4 L3T4磁気ビーズ技術(ミルテニー・バイオテク(Miltenyi Biotec)社)をメーカーのプロトコールに従って使用することにより、C57BL-6マウスから単離した。抗マウスCD3および抗マウスCD28(1μg/ウェル)を入れた24ウェルプレートにCD4+脾細胞(フローサイトメトリーによって測定した純度は99%)を2×106個/ml/ウェルとなるように播種し、マウスIL-12(10ng/ml)および抗マウスIL-4モノクローナル抗体11B11(10μg/ml)の存在下または不在下において48時間培養した。マウスIL-12および抗マウスIL-4の存在下でマウスTヘルパー細胞を培養することにより、セレクチンリガンド合成(すなわち、PSGL-1の修飾(67、68))に必要なFucTVII(69、70)およびコア2酵素(43〜45、71、72)が促進制御されてセレクチン結合性Th1細胞が産生され、また、セレクチン非結合性のTh2細胞の産生が阻止された(67〜72)。Th1細胞は、α1,3フコシルトランスフェラーゼであるFucTVIIが欠損しているマウスからも産生し、負の対照として用いた(33、38、40)。細胞を回収し、モノクローナル抗体でコートしておらず、マウスIL-2(20ng/ml)を加えたプラスチックプレート上に、2×106個/mlとなるように再播種し、マウスIL-12(10ng/ml)および抗マウスIL-4モノクローナル抗体11B11(10μg/ml)の存在下または不在下において48時間培養した。この段階をさらに2回繰り返した後、機能としてのセレクチン結合を分析するために、8日後に細胞を回収した。この細胞は、ヒトCLA+T細胞培養物と同様の増殖率(倍加時間は約18時間)を示す。ノイラミニダーゼを加えて最初に細胞を処理(0.1U/ml、37度で時間)して細胞表面の全ての末端シアル酸残基ならびにE−およびP−セレクチンリガンドを除去した後、6.5日目に培養物にグリコシル化阻害剤を添加して30時間培養した。セレクチンリガンドは、その活性を末端シアル酸(α2,3N−アセチルノイラミン酸)に依存していることから、本方法により、0.05mMの4−F-GlcNAc、N−グリカンの阻害剤である0.23mMのスワインソニンおよび0.02mMのツニカマイシン、ならびに1mMのGlcNAc(負の対照)の存在下においてデ・ノボ(de novo)合成されたセレクチンリガンドを分析することができた。ノイラミニダーゼ単独処理では、E−およびP−セレクチンリガンド活性は、非Th1細胞(Th0)またはFucTVII-/-Th1細胞によって発現されたベースラインレベルまで低下した(図13AおよびB)。Th1細胞培養物のE−およびP−セレクチンリガンド活性の回復は、4−F-GlcNAcまたはツニカマイシンの存在下では完全に阻害されたが、PBS、GlcNAcまたはスワインソニン存在下では影響を受けなかった(図13AおよびB)。PSGL-1および活性化CD43上のO−グリカン依存性エピトープについてフローサイトメトリー分析を行ったところ(これは、コア2O−グリカン合成およびPSGL-1のセレクチン結合機能に直接的に相関している(45、71、72))、ツニカマイシンはPSGL-1およびCD43上のO−グリカンエピトープの発現を低下させることが明らかになり、このことから、ツニカマイシンは、PSGL-1(すなわち、セレクチンリガンド骨格)およびCD43ポリペプチドの再発現に影響を及ぼすことが示唆された。一方、4−F-GlcNAc処理では、PSGL-1の発現はそれほど低下しなかったが、モノクローナル抗体である抗マウスO−グリコシル化CD43クローン1B11のFACS分析によって測定したところ、活性化CD43上のO−グリカングリコシル化の発現は顕著に低下していた(データは示していない)。以上をまとめると、Th1細胞がE−およびP−セレクチンに結合するためには、コアO−グリコシル化ならびにFucTVIIおよびPSGL-1の発現が必要であることが示され、さらに、4−F-GlcNAcは、コア2O−グリコシル化(すなわち、ポリN−アセチルラクトサミン鎖の伸長)を阻害し、続いてE−およびP−セレクチン結合に必須である末端のシアル化LewisX構造の合成を阻害することが示された。またさらに、Th1細胞のグリコシル化に対する4−F-GlcNAcの阻害活性は、増殖を阻害せず、タンパク質合成を阻害しない濃度において認められた。
実施例21:イン・ビボ(in vivo)炎症に対する4−F-GlcNAc阻害
本実施例においては、イン・ビボ(in vivo)における4−F-GlcNAcの抗炎症作用について示す。フッ化ヘキソサミン類似体、ならびに特に3−もしくは4−F-GlcNAcの抗腫瘍作用および抗転移作用について評価をしたこれまでの研究により、容量限界毒性は約250mg/kg×6日であり、これらの糖類似体の腹膜内投与は有効な送達様式であることが示唆された。従って、これらの研究においては、フッ化ヘキソサミンアナログの抗炎症作用を毒性および有効性の両方について評価するために、最大投与量である250mg/kg、ならびに100および50mg/kgを使用していた。遅延型過敏症(DTH)を誘導することを目的として、アセトンとオリーブオイル(ビヒクル)の4:1溶液に0.5%の2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)(すなわち、ハプテン)を含む25μlの溶液を0および1日目にC57BL6マウスの腹腔内に投与した。負の対照マウスには、ビヒクルのみを投与した。0〜6日目には、薬物ビヒクル(0.9%の生理食塩水)、50mg/kgの4−F-GlcNAc、100mg/kgの4−F-GlcNAc、250mg/kgの4−F-GlcNAcまたは250mg/kgのGlcNAc(糖に関する負の対照)をマウスに投与した。6日目にマウスの右耳の両側に10μlの0.25%DNFBをチャレンジし、また、炎症に関する負の対照として、左耳の両側に10μlのビヒクルをチャレンジすることにより、ハプテンで誘導した炎症を促進した。24時間後の7日目に耳の腫脹を測定し、6日目に記録していたベースライン測定値を差し引いた。ハプテンで感作し、チャレンジしたマウスにおいては、予測していたように、100および250mg/kgの4−F-GlcNAcによって炎症応答が完全に阻害されたが、250mg/kgを投与されたマウスにおいては、体重減少(約5%)および総白血球数の減少(薬物対照の60%)によって示されるようないくらかの毒性が観察された(図10パネルA)。5分の1量(50mg/kgの4−F-GlcNAc)においても、炎症応答に関して統計的に有意な減縮が起こり(p<0.0002、Studentの対t−検定)、マウスの体重またはWBC数は影響を受けなかったが、負の薬物対照(GlcNAc)処理では抗炎症効果は認められず、さらに、予測されたように、FucTVII-/-マウスにおいては、炎症応答は弱く、4−F-GlcNAc処理することによってさらに減弱した(図10のパネルA)。
ハプテンで感作し、さらに、生理食塩水ビヒクル対象で処理してハプテンでチャレンジしたマウスの右耳を組織学的に分析することにより、リンパ球の浸潤の存在が示され、リンパ球の浸潤量は、耳の腫脹の測定値と相関していたことが示された(図14のパネルB)。これらのデータから:1)4−F-GlcNAcの治療限界は250mg/kg/d×6であり、2)腹膜内投与は4−F-GlcNAcに有効な送達法であり、3)4−F-GlcNAcの投与量として100および50mg/kg/d×6は十分に許容され、Th1細胞が炎症を起こしている細胞に移動することを妨げることにより、抗原依存性の炎症応答を抑制するが、この過程には、PSGL-1上のセレクチン結合性グリコシル化、ならびに皮膚の血管内皮細胞上のE−およびP−セレクチンが介在している、ことが示された。
実施例22:ランゲルハンス細胞が流出リンパ節へ移動することに対して4−F-GlcNAcが及ぼす影響
チャールス・リバー・ラボラトリーズ(Charles River Laboratories(マサチューセッツ州ウィルミントン))から購入した6〜8週齢のC57BL6マウスをハーバード大学医学研究所(Harvard Institutes of Medicine)の動物飼育施設内で病原菌不存条件下において飼育し、本実験に使用した。ランゲルハンス細胞(LC)の流出リンパ節(draining lympho nodes)への移動および樹状細胞(DC)の抗原呈示について分析することを目的として、マウスの右耳に25μlの0.5%FITC(アセトン−ジブチルフタレートビヒクル(1:1v/v)に溶解した接触感作剤)を塗布し、一方、左の耳は25μlのビヒクルのみを塗布した。30時間後、右耳または左耳から流出した局所性耳/頸リンパ節をそれぞれ単離し、単細胞懸濁液を調製した。DCを濃縮するため、懸濁液について、Optiprep(商標)(アキュレート・ケミカルズ(Accurate Chemicals)社、ニューヨーク州ウェストバリー)不連続密度勾配遠心法を行った。4匹のマウスから採取した同側のリンパ節を含む細胞調製物を合わせ、PE−ラベルしたハムスターIgG1、λ抗マウスCD11c、インテグリンαx−鎖およびマウス樹状細胞マーカー(クローンHL3;ファーミンジェン(PharMingen)社、カリフォルニア州サンディエゴ)を加えて氷上で30分間インキュベートし、PBS/2%FBSで3回洗浄してPBSに懸濁し、FACScan(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)社)カリフォルニア州サンノゼ)を用いてフローサイトメトリー分析を行った。アイソトープ対照であるPE−ハムスターIgG1,λ;(ファーミンジェン(PharMingen)社)を用いた細胞染色も行い、PE−抗CD11c結合特異性の対照として用いた。さらに、FITCによって呈示されたDCをPE−抗CD11c で二重染色分析するめ、FITCとPEの強度補正設定を、PE−ラベルラットIgG 2b、κ抗マウスCD4(クローンL3T4;ファーミンジェン(PharMingen)社)、またはFITC−ラベルラットIgG1、κ抗マウスCD8b.2(Ly-3.2)(クローン53−5.8;ファーミンジェン(PharMingen)社)陽性細胞
染色に合わせて調整した。PE−抗CD11cで染色した陽性細胞を制御し、FITC発現について分析した。
LCの流出リンパ節への移動、およびFITCによるDCの呈示に対する4−F-GlcNAcの影響を調べることを目的として、マウスの腹膜内に1日1回3日間にわたり50、100または250mg/kgの4−F-GlcNAc(0.9%生理食塩水で調製した溶液)を投与し、その後、0.5%のFITCを用いて感作した。これらの操作は2重の群/投与量で行い、1群4匹のマウスを用いて少なくとも2回の実験を行った。
接触過敏症実験の結果から、4−F-GlcNAcで処理する(50〜250mg/kg/日×6)ことにより、抗原依存性炎症性応答における誘発/輸出相(elicitation/efferent phase)およびリンパ球浸潤を阻止することができた。しかしながら、4−F-GlcNAc処理は、表皮由来の表皮抗原呈示LCが流出リンパ節へ移動することを阻害することにより、このような炎症性応答の輸入相(afferent phase)に影響を及ぼした。ここで、流出リンパ節は、リンパ節内において、接触感作剤のプロセシングおよび呈示、ならびに抗原特異的T細胞の活性化を阻止する。この過程における4−F-GlcNAcの作用を調査することを目的として、4−F-GlcNAcを3日間腹膜内に投与した後、表皮LCが対応する流出リンパ節へ移動し、さらに接触感作剤(0.5%のFITC)を呈示する能力を分析した。30時間インキュベートした後、流出リンパ節から単離したCD11c陽性のLCについて、フローサイトメトリーによってFITC の発現を分析した。生理食塩水で前処理したマウスと4−F-GlcNAcを50、100または250mg/kg/日で3日間投与して前処理したマウスとを比較するために、同様の割合のCD11c陽性LCをFITCでラベルした(図15)。さらに、4−F-GlcNAc処理とFITCを示すDCの頻度については濃度依存的な関連性はなかった(図15)。しかしながら、4日間の実験期間中に250mg/kg/日の4−F-GlcNAcを投与されたマウス(すなわち、累積投与量は750mg/kg)では、累積投与量が0、150または300mg/kgのマウスと比較して体重増加が少なかったことから、3日間の前投与期間は、4−F-GlcNAcが抗移動作用を誘発することができるようになるのに十分な期間であることが示唆された。これらのデータから、4−F-GlcNAcは、遅延型接触過敏症の誘発相を阻止する投与量においては、免疫学的応答における流入現象または感作相には影響を与えないことが示された。
参考文献
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本発明を詳細な説明と併せて記載したが、上述した説明は、特許請求の範囲により定義された本発明の範囲を説明するものであって、制限するものではない。他の態様、利点および変更例も特許請求の範囲に含まれる。
本発明に従う3−および4−F−GlcNAcの合成法として好ましい実施態様を示した図。 本発明に従う3−および4−F−GlcNAcの合成法として好ましい実施態様を示した図。 CLATリンパ球のP-セレクチンリガンド活性に対して4−F−GlcNAcが及ぼす影響を示した図。 CLATリンパ球のE-セレクチンリガンド活性に対して4−F−GlcNAcが及ぼす影響を示した図。 5Aは、 2−アセトアミド−1,3,6−トリ−O−アセチル−4−フルオロ−D−グルコピラノース(4−F−GlcNAc)の構造式。ピラノース環上のアノメリック炭素を1番として番号付けし、β(上向き)またはα(下向き)にアクセプター糖部と糖結合を形成している。5Bは、ポリN-アセチルラクトサミン鎖内において4−F−GlcNAcの取込みが予測される部位。大きな黒い矢印は、遮断または鎖の終了の可能性がある部位をさす。略号:フコース(Fuc)、ガラクトース(Gal)、N-アセチルノイラミン酸(NANA)およびまたはN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)。5Cは、炭化水素セレクチン結合決定因子内において4−F−GlcNAcの取込が予測される部位。大きな黒い矢印は、遮断または鎖の終了の可能性がある部位をさす。略号:フコース(Fuc)、ガラクトース(Gal)、N-アセチルノイラミン酸(NANA)およびまたはN-アセチルグルコサミン(GlcNAc) 6Aは、ヒトCLAT細胞をノイラミニダーゼで処理後、希釈対照(PBS)、ツニカマイシン(0.02mM)、スワインソニン(0.23mM)、4−F−GlcNAc(0.05mM)、BAG(2.0mM)またはGlcNAc(5.0mM、負の対照)の存在下で30時間増殖させた培養物におけるCLAの発現状態を示すウェスタンブロットの写真。6Bは、ヒトCLAT細胞をノイラミニダーゼで処理後、希釈対照(PBS)、ツニカマイシン(0.02mM)、スワインソニン(0.23mM)、4−F−GlcNAc(0.05mM)、BAG(2.0mM)またはGlcNAc(5.0mM、負の対照)の存在下で30時間増殖させた培養物におけるPSGL-1の発現状態を示すウェスタンブロットの写真。6Cは、ヒトCLAT細胞をノイラミニダーゼで処理後、希釈対照(PBS)、ツニカマイシン(0.02mM)、スワインソニン(0.23mM)、4−F−GlcNAc(0.05mM)、BAG(2.0mM)またはGlcNAc(5.0mM、負の対照)の存在下で30時間増殖させた培養物におけるCD43の発現状態を示すウェスタンブロットの写真。 グリコシル化阻害剤で処理したCLAT細胞を代謝的に放射ラベルしたものから単離されたPSGL-1を示すオートラジオグラフの写真。 8Aは、E-セレクチン上におけるヒトCLAT細胞のローリングに対してグリコシル化阻害剤が及ぼす影響を示す棒グラフ。8Bは、P-セレクチン上におけるヒトCLAT細胞のローリングに対してグリコシル化阻害剤が及ぼす影響を示す棒グラフ。8Cは、L-セレクチン上におけるヒトCLAT細胞のローリングに対してグリコシル化阻害剤が及ぼす影響を示す棒グラフ。 9Aは、ブロメライン処理後のHECA-452エピトープおよびPSGL-1の発現を示す表。9Bは、ブロメライン処理したヒトCLAT細胞培養物から作成したウェスタンブロットの写真。9Cは、ブロメライン処理したヒトCLAT細胞培養物から作成したウェスタンブロットの写真。 ヒトCLAT細胞から単離し、TCAで沈降させた巨大分子への4−F-Glc[3H]NAcの取込みを示す棒グラフ。 11Aは、4−F-Glc[3H]NAcを用いて代謝的に放射ラベルしたヒトCLAT細胞から免疫沈降したPSGL-1のオートラジオグラフの写真。11Bは、11Aのレーン1および2について行った比較デンシトメータースキャンを示す図。NIHImageJ ソフトウェアを使用することにより、放射ラベルした溶解物から免疫沈降したPSGL-1の220kDa型および140kDa型の存在が確認された。 グリコシル化阻害剤を用いて処理したヒトCLAT細胞から単離した複合糖質のレクチンブロット分析を示す写真。 13Aは、マウスTh1細胞上のE-セレクチン結合について行ったフローチャンバー分析の結果を示す棒グラフ。13Bは、マウスTh1細胞上のP-セレクチン結合について行ったフローチャンバー分析の結果を示す棒グラフ。 14Aは、イン・ビボ(in vivo)における4−F-GlcNAcの抗炎症効果を示す棒グラフ。14Bは、4−F-GlcNAc処理したマウスにおける皮膚遅延型接触過敏症を示す組織分析の写真。 15Aは、対照マウスの基質過敏性の耳から得たPE-抗CD11c陽性細胞に関する緑色蛍光のヒストグラム(FL-1-H)。15Bは、FITC過敏性の耳から得たPE-抗CD11c陽性細胞に関する緑色蛍光のヒストグラム(FL-1-H)。15Cは、50mg /kgの4−F-GlcNAcで前処理したマウスのFITC過敏性の耳から得たPE-抗CD11c陽性細胞に関する緑色蛍光のヒストグラム(FL-1-H)。15Dは、100mg /kgの4−F-GlcNAcで前処理したマウスのFITC過敏性の耳から得たPE-抗CD11c陽性細胞に関する緑色蛍光のヒストグラム(FL-1-H)。15Eは、250mg /kgの4−F-GlcNAcで前処理したマウスのFITC過敏性の耳から得たPE-抗CD11c陽性細胞に関する緑色蛍光のヒストグラム(FL-1-H)。

Claims (45)

  1. 白血球の移動を阻害する方法であって、白血球をフッ化N−アセチルグルコサミンと接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記N−アセチルグルコサミンが、2−アセトアミド−2−デオキシ−1,3,6−トリ−O−アセチル−4−デオキシ−4−フルオロ−D−グルコピラノースまたは2−アセトアミド−2−デオキシ−1,4,6−トリ−O−アセチル−3−デオキシ−3−フルオロ−D−グルコピラノースであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記白血球がリンパ性細胞であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 前記リンパ性細胞がT細胞であることを特徴とする請求項3記載の方法。
  5. 前記T細胞がTh1細胞であることを特徴とする請求項4記載の方法。
  6. 前記白血球が白血病性細胞であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  7. 前記白血球がリンパ腫であることを特徴とする請求項6記載の方法。
  8. 前記リンパ腫が皮膚リンパ腫であることを特徴とする請求項7記載の方法。
  9. 前記N−アセチルグルコサミンが0.05mM〜0.5mMの濃度で存在することを特徴とする請求項1記載の方法。
  10. 細胞増殖を阻害する方法であって、細胞をフッ化N−アセチルグルコサミンと接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
  11. 前記細胞が造血性細胞であることを特徴とする請求項10記載の方法。
  12. 前記造血性細胞が造血前駆細胞であることを特徴とする請求項11記載の方法。
  13. 前記細胞が白血球であることを特徴とする請求項10記載の方法。
  14. 前記白血球が白血病性細胞であることを特徴とする請求項10記載の方法。
  15. 前記細胞をさらに化学療法剤と接触させることを特徴とする請求項10記載の方法。
  16. 前記化学療法剤が、ダウノルビシン(DNR)、シタラビン(ara-C)、イダルビシン、チオグアニン、エトポシドおよびミトキサントロンを含む群から選択されることを特徴とする請求項15記載の方法。
  17. 細胞分化を調節する方法であって、細胞をフッ化N−アセチルグルコサミンと接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
  18. 前記細胞が造血性細胞であることを特徴とする請求項17記載の方法。
  19. 前記造血性細胞が造血前駆細胞であることを特徴とする請求項18記載の方法。
  20. 造血性細胞の移動を阻害する方法であって、造血性細胞をフッ化N−アセチルグルコサミンと接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
  21. 前記造血性細胞が造血前駆細胞であることを特徴とする請求項20記載の方法。
  22. 細胞上の糖タンパク質上に存在するHECA-452エピトープの量を減少させる方法であって、細胞をフッ化N−アセチルグルコサミンと接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
  23. 前記糖タンパク質がPSGL-1またはCD44であることを特徴とする請求項22記載の方法。
  24. フッ化N−アセチルグルコサミン存在下における細胞上の前記糖タンパク質の量は、フッ化N−アセチルグルコサミン不在下と比較した場合に、その差が10%未満であることを特徴とする請求項22記載の方法。
  25. フッ化N−アセチルグルコサミン存在下における細胞上の前記糖タンパク質の量は、フッ化N−アセチルグルコサミン不在下と比較した場合に、その差が5%未満であることを特徴とする請求項22記載の方法。
  26. フッ化N−アセチルグルコサミン存在下における細胞上の前記糖タンパク質の量は、フッ化N−アセチルグルコサミン不在と比較した場合に、その差が1%未満であることを特徴とする請求項22記載の方法。
  27. 前記細胞が、白血球、腫瘍細胞または造血前駆細胞であることを特徴とする請求項22記載の方法。
  28. 患者の組織の炎症を阻害する方法であって、フッ化N−アセチルグルコサミンを含む組成物を患者に投与する工程を特徴とする方法。
  29. 前記組織が皮膚組織であることを特徴とする請求項28記載の方法。
  30. 前記炎症が慢性的炎症であることを特徴とする請求項28記載の方法。
  31. 前記慢性的炎症がDTHであることを特徴とする請求項30記載の方法。
  32. 前記炎症が急性炎症であることを特徴とする請求項28記載の方法。
  33. 前記炎症が皮膚の炎症であることを特徴とする請求項28記載の方法。
  34. 前記炎症が乾癬であることを特徴とする請求項28記載の方法。
  35. 前記患者が、炎症性腸疾患、大腸炎またはクローン病を患っている、または発症のリスクを有することを特徴とする請求項28記載の方法。
  36. 前記患者にさらに、抗炎症性化合物を投与することを特徴とする請求項28記載の方法。
  37. 前記抗炎症性化合物が、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム(Aleve)、セレコキシブ、プレドニゾン、プレドニゾロンおよびデキサメタゾンを含む群から選択されることを特徴とする請求項36記載の方法。
  38. 前記投与を炎症の発症前に行うことを特徴とする請求項28記載の方法。
  39. 前記投与を炎症の発症中に行うことを特徴とする請求項28記載の方法。
  40. 前記投与が、腹膜内、皮下、鼻内、静脈内、経口、局所および経皮送達を含む群から選択される経路によって行われることを特徴とする請求項28記載の方法。
  41. 前記フッ化N−アセチルグルコサミンの投与量が50mg/kg未満であることを特徴とする請求項28記載の投与法。
  42. フッ化N−アセチルグルコサミンを合成する方法であって、ベンジル−2−アセトアミド−3−O−ベンジル−4,6−ベンジリデン−2−デオキシ−D−グルコピラノシドからベンジルアセトアミド−2−デオキシ−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−D−グルコピラノシドを合成する中間工程を含み、改良点として、(i)適切な条件下において、ベンジル−2−アセトアミド−3−O−ベンジル−4,6−ベンジリデン−2−デオキシ−D−グルコピラノシドを加水分解してベンジル−2−アセトアミド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−D−グルコピラノシドを合成し;(ii)ベンジル−2−アセトアミド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−D−グルコピラノシドをスズ化合物と反応させ、ベンジル−2−アセトアミド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−D−グルコピラノシドを含むスズ錯体を形成し;さらに、(iii)適切な条件下において、該スズ錯体をベンジル化剤と反応させてベンジル−2−アセトアミド−3−O−ベンジル−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−D−グルコピラノシドを合成する各工程を含むことを特徴とする方法。
  43. スズ化合物がビス(トリブチルスズ)オキシドであることを特徴とする請求項42記載の方法。
  44. ベンジル化剤が臭化ベンジルであることを特徴とする請求項42記載の方法。
  45. 下記の化1で表される構造式を有する化合物を調製する方法であって、
    Figure 2005532310
    このとき、適切な条件下において、N−アセチル−D−グルコサミンをベンジル化剤と反応させることによって下記の化2で表される構造式を有する化合物を合成し、
    Figure 2005532310
    適切な条件下において、化2をベンズアルデヒドと反応させることによって下記の化3で表される構造式を有する化合物を合成し、
    Figure 2005532310
    適切な条件下において、化3をベンジル化剤と反応させることによって下記の化4で表される構造式を有する化合物を合成し、
    Figure 2005532310
    適切な条件下において、化4を加水分解剤と反応させて下記の化5で表される構造式を有する化合物を合成し、
    Figure 2005532310
    化5をスズ化合物と反応させることによって化5を含むスズ錯体を生成し、さらに、適切な条件下において、該スズ錯体をベンジル化剤と反応させることによって化1を合成する、
    各工程を含むことを特徴とする方法。
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