1.概要
サイトカインであるインターロイキン(IL)−1遺伝子のいくつかのホモログが、以前に同定されたIL−1遺伝子群にマッピングされるが、その領域の公開配列決定は相対的に遅い。そこで我々は遺伝子群全体のコンティグを作成し注釈を行った。加えて、この遺伝子群中の新規ヒト多型遺伝子座(IL−1A、IL1B、およびIL−RN中のSNPを含む)および関連するIL−1ハプロタイプが、図1〜11に要約する通り位置決定され同定されている。本発明の特徴は、付属の、発明を実施するための最良な形態および実施例でさらに証明される。
2.定義
便宜上、本明細書、実施例、および付属の請求項中で用いられる一部の用語および語句の意味を下記に示す。
「対立遺伝子」の語は異なる多型領域にみられる異なる配列変異体をいう。たとえば、IL−1RN(VNTR)は少なくとも5つの異なる対立遺伝子を有する。配列変異体は一塩基または複数塩基の変化である可能性があり、制限なく挿入、欠失、または置換を含み、あるいは反復配列数変異でありうる。
たとえば、対立遺伝子パターンはIL−1RN(VNTR)対立遺伝子1については多型部位の1個の対立遺伝子から構成されることが可能であり、IL−1RN(VNTR)対立遺伝子1はIL−1RN遺伝子座のVNTRに少なくとも1コピーのIL−1RN対立遺伝子1を有する対立遺伝子パターンである。あるいは対立遺伝子パターンは1個の多型部位での同型接合または異型接合の状態のいずれかから構成されうる。たとえば、IL1−RN(VNTR)対立遺伝子2,2は、IL−1RNのVNTRマーカーに第二の対立遺伝子の二個のコピーが存在し、IL−RN(VNTR)対立遺伝子2の同型接合状態に相当する対立遺伝子パターンである。あるいは、対立遺伝子パターンは一より多い多型部位での対立遺伝子の特定から構成されうる。
ここで用いられる「抗体」の語はIL−1ポリペプチドと特異的に反応する抗体全体またはその結合断片を含む結合物質をいうことを意図する。抗体は従来の方法を用いて断片化することができ、断片は抗体全体について上述したのと同様の方法で有用性についてスクリーニングすることができる。たとえば、たとえば、F(ab)2断片は抗体をペプシンで処理することによって生じることができる。結果として得られるF(ab)2断片はジスルフィド架橋を還元しFab断片を生じるよう処理することができる。本発明の抗体はさらに、抗体の少なくとも一つのCDR領域によって与えられるIL−1Bポリペプチドへの親和性を有する二重特異性、一本鎖、キメラおよびヒト化分子を含むことが意図される。
「生物学的活性」または「生物活性」または「活性」または「生物学的機能」は、互換可能に用いられ、ここでの目的ではIL−1ポリペプチド(天然または変性した立体構造のいずれかで)、またはその任意の部分配列によって直接的または間接的に実行される作用体または抗原機能を意味する。生物学的活性はたとえばIL−1受容体といった標的ペプチドへの結合を含む。IL−1生物活性はIL−1ポリペプチドに直接影響を与えることによって調節が可能である。あるいは、IL−1生物活性はたとえばIL−1遺伝子の発現を調節することにより、IL−1ポリペプチドの濃度を調節することによって調節が可能である。
ここで用いられる「IL−1ポリペプチドの生物活性断片」の語は、断片が野生型IL−1ポリペプチドの活性を特異的に模倣または拮抗する完全長IL−1ポリペプチドの断片をいう。生物活性断片は好ましくはインターロイキン受容体と相互作用することのできる断片である。
「異常な活性」の語は、たとえばIL−1といったポリペプチドの活性に当てはめるように、野生型または天然ポリペプチドの活性と異なるかまたは健常者のポリペプチドの活性と異なる活性をいう。ポリペプチドの活性は天然の対応物の活性より強いために異常でありうる。あるいは、活性は天然の対応物の活性と比較して弱いかまたは存在しないために異常でありうる。異常な活性はまた活性における変化でありうる。たとえば異常なポリペプチドは別の標的ペプチドと相互作用しうる。IL−1遺伝子座ポリペプチドをコードするIL−1遺伝子座遺伝子の過剰発現または低発現が原因で細胞は異常なIL−1活性を有しうる。
「細胞」、「宿主細胞」または「組み換え宿主細胞」はここでは相互に交換可能に使用される語で特定の対象細胞だけでなくそのような細胞の子孫または見込まれる子孫もいう。突然変異または環境的影響が原因で、ある種の修飾が後続の世代に起こりうるため、そのような子孫は実際親細胞と同一ではない可能性があるが、ここで用いられる語の範囲になお含まれる。
「キメラ」、「モザイク」、「キメラ哺乳類」などは、そのゲノムを含む細胞の少なくとも一部にノックアウトまたはノックイン構造を持つ遺伝子導入哺乳類をいう。
「対照」または「対照試料」の語は使用した検出方法に適当な任意の試料をいう。対照試料は使用した対立遺伝子検出方法の産物または試験する物質を含みうる。さらに、対照は陽性対照または陰性対照でありうる。一例として、対立遺伝子検出方法がPCR増幅であって、続いてサイズ分画を行う場合、対照試料は適当なサイズのDNA断片を含みうる。同様に、対立遺伝子検出方法が変異タンパク質の検出を要する場合、対照試料は変異タンパク質の試料を含みうる。しかし、対照試料は試験する物質を含むことが好ましい。たとえば、対照はゲノムDNAまたはIL−1遺伝子群のクローンした一部の試料であることができる。しかし、試験する試料がゲノムDNAである場合、対照試料は好ましくはゲノムDNAの高度に精製された試料である。
「IL−1多型に関連する疾患および状態」の語句は、IL−1複合体内の一個以上の対立遺伝子の同定に基づいて対象者について示すことのできるさまざまな疾患または状態、それに対する感受性をいう。例は以下を含む:下記を含む炎症性または変性疾患:全身性炎症反応(SIRS);アルツハイマー病(および慢性神経炎、グリア活性化;小グリア増加;老人斑形成;および治療に対する反応:を含む関連する状態および症状);筋萎縮性側索硬化症(ALS)、関節炎(および急性関節炎、抗原誘導性関節炎、慢性リンパ球性甲状腺炎に伴う関節炎、コラーゲン誘導性関節炎、若年性慢性関節炎;若年性慢性関節リウマチ、変形性関節炎、予後診断および連鎖球菌誘導性関節炎:を含む関連する状態および症状)、喘息(および気管支喘息;慢性閉塞性気道疾患;慢性閉塞性肺疾患、若年性喘息および職業性喘息:を含む関連する状態および症状);心臓血管疾患(およびアテローム性動脈硬化;自己免疫性心筋炎、慢性心低酸素症、鬱血性心不全、冠動脈疾患、心筋症、そして大動脈平滑筋細胞活性化;心細胞アポトーシス;および心臓細胞機能の免疫調節:を含む心臓細胞機能異常:を含む関連する状態および症状;糖尿病および自己免疫性糖尿病、インシュリン依存性(1型)糖尿病、糖尿病性歯周炎、糖尿病性網膜症、および糖尿病性腎症を含む関連する状態および症状);消化管炎症(および腹腔疾患、関連する骨減少症、慢性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患および潰瘍性大腸炎を含む関連する状態および症状);胃潰瘍;肝炎、コレステロール胆石および肝線維症、HIV感染(および変性反応、神経変性反応、およびHIV関連ホジキン病を含む関連する状態および症状)、川崎病(および皮膚粘膜リンパ節症候群、頚部リンパ節症、冠状動脈病変、浮腫、発熱、白血球増加、軽度の貧血、皮膚の剥離、発疹、結膜の赤み、血小板増多症を含む関連する疾患および状態;多発性硬化症、腎症(および糖尿病性腎症、末期腎疾患、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、血液透析生存および腎虚血再灌流傷害を含む関連する疾患および状態)、神経変性疾患(および急性神経変性、加齢および神経変性疾患におけるIL−1誘導、視床下部神経細胞のIL−1誘導性可塑性および慢性ストレス反応亢進を含む関連する疾患および状態)、眼疾患(および糖尿病性網膜症、グレーブス眼症、およびブドウ膜炎を含む関連する疾患および状態、骨粗鬆症((および歯槽、大腿骨、橈骨、脊椎または手首の骨減少または骨折発生率、閉経後の骨減少、質量、骨折発生率または骨減少速度を含む関連する疾患および状態)、中耳炎(成人または小児)、膵炎または膵小葉炎、歯周病(および成人、早期発症および糖尿病性を含む関連する疾患および状態);慢性肺疾患、慢性副鼻腔炎,肺硝子膜症、低酸素症およびSIDSにおける肺疾患を含む肺疾患;再狭窄;慢性関節リウマチ、リウマチ性アショフ体、リウマチ性疾患およびリウマチ性心筋炎を含むリウマチ;慢性リンパ球性甲状腺炎を含む甲状腺炎;慢性前立腺炎、慢性前立腺関連疼痛症候群および尿路結石症を含む尿路感染。自己免疫疾患たとえば円形脱毛症、自己免疫性心筋炎、グレーブス病、グレーブス眼症、萎縮性硬化症、多発性硬化症、乾癬、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、甲状腺疾患(たとえば甲状腺腫およびリンパ腫性甲状腺腫(橋本甲状腺炎、リンパ節様甲状腺腫)、睡眠障害および慢性疲労症候群および肥満(非糖尿病性または糖尿病と関連する)といった免疫疾患。細菌、ウイルス(たとえばサイトメガロウイルス、脳炎、エプスタイン・バーウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス)または原虫(たとえば、熱帯熱マラリア原虫、トリパノソーマ)によって引き起こされる、感染症たとえばリーシュマニア症、ハンセン病、ライム病、ライム心炎、マラリア、脳マラリア、髄膜炎、マラリアに伴う尿細管間質性腎炎)に対する抵抗性。脳外傷(脳卒中および虚血、脳炎、脳症、てんかん、周産期脳傷害、長期の発熱性発作、SIDSおよびくも膜下出血を含む)、低出生体重(たとえば脳性麻痺)、肺傷害(急性出血性肺傷害、グッドパスチャー症候群、急性虚血再潅流)、心筋機能不全、職業的または環境的汚染物質によって引き起こされたもの(たとえば有毒油症候群珪肺症に対する感受性)、放射線外傷、および創傷治癒反応の効率性(たとえばやけどすなわち熱傷、慢性創傷、外科創傷および脊髄損傷)を含む外傷に対する反応。乳がんに伴う溶骨性転移、悪液質、結腸直腸がん、過剰増殖性疾患、ホジキン病、白血病、リンパ腫、代謝疾患および腫瘍、転移、骨髄腫、および各種のがん(乳房、前立腺、卵巣、大腸、肺、などを含む)、無食欲症および悪液質を含む、新生物に対する感受性。受胎能/妊孕力、妊娠の可能性、切迫早産の発生率、低体重児早産、脳性麻痺、敗血症、低チロキシン血症、酸素依存、頭蓋異常、を含む出生前および新生児期合併症、早発更年期を含むホルモン調節。移植に対する対象者の反応(拒絶または受容)、急性期反応(たとえば発熱性反応)、一般炎症性反応、急性呼吸窮迫反応、急性全身性炎症性反応、創傷治癒、癒着、免疫炎症性反応、神経内分泌反応、発熱の発症および抵抗性、急性期反応、ストレス反応、疾患感受性、反復動作ストレス、テニス肘、および疼痛管理および反応。
「遺伝子の破壊」および「標的破壊」の語句または何らかの同様の語句は、当該遺伝子の野生型コピーと比較して細胞中のその遺伝子の発現を妨げるための天然DNA配列の部位特異的割り込みをいう。割り込みは当該遺伝子の欠失、挿入または修飾、またはその任意の組み合わせによって生じうる。
ここで用いられる「ハプロタイプ」の語は、統計的に有意な水準で(Pcorr<0.05)グループとして一緒に遺伝する(連鎖不平衡にある)対立遺伝子の組をいうことを意図する。ここで用いられるような、「IL−1ハプロタイプ」の語はIL−1遺伝子座にあるハプロタイプをいう。IL−1炎症性または炎症促進性ハプロタイプとは、アゴニスト活性の上昇および/またはアンタゴニスト活性の低下の指標となるハプロタイプをいう。
ここで用いられる「IL−1遺伝子群」および「IL−1遺伝子座」の語は、第2染色体の2q13領域かまたはその付近のすべての核酸を含み、少なくともIL−1A、IL−1BおよびEL−1RN遺伝子そして結合する他の任意の配列を含む(非特許文献1)。ここで用いられる「IL−1A」、「IL−1B」、および「IL−1RN」の語は、それぞれIL−1α、IL−1β、およびIL−1受容体アンタゴニストをコードする遺伝子をいう。IL−1A、IL−1B、およびIL−1RNの遺伝子登録番号はそれぞれX03833、X04500、およびX64532である。
「IL−1機能性突然変異」とは、結果として表現型変化を生じる(すなわちIL−1遺伝子またはタンパク質の機能に影響する)IL−1遺伝子群内の突然変異をいう。例は下記を含む:IL−1A(+4845)対立遺伝子2、IL−1B(+3954)対立遺伝子2、IL−1B(+6912)対立遺伝子2およびIL−1RN(+2018)対立遺伝子2。
「IL−1X(Z)対立遺伝子Y」は、遺伝子XのIL−1遺伝子座多型部位で生じる、Yで表す特定の対立遺伝子型をいい、XはIL−1A、B、またはRNであってヌクレオチドZまたはその近傍に位置し、ヌクレオチドZは主要な転写開始位置と相対的に番号を付与され、その主要な転写開始位置は当該の特定IL−1遺伝子Xのヌクレオチド+1である。さらにここで用いられる通り、「IL−1X対立遺伝子(Z)」の語は、ヌクレオチドZまたはその近傍に位置する遺伝子X中のIL−1多型部位のすべての対立遺伝子をいう。たとえば、「IL−1RN(+2018)対立遺伝子」の語は、マーカー+2018に位置するIL−1RN遺伝子の選択的な種類をいう。「IL−1RN(+2018)対立遺伝子1」は、シトシン(C)をセンス鎖の+2018位に含む種類のIL−1RN遺伝子をいう。非特許文献Clay et al., Hum. Genet. 97;723−26, 1 996。「IL−1RN(+2018)対立遺伝子2」は、チミン(T)をプラス鎖の+2018位に含む種類のIL−1RN遺伝子をいう。対象者が二個の同一のIL−1RN対立遺伝子を有する場合、対象者は同型接合である、または同型接合状態を有するという。対象者が二個の異なるIL−1RN対立遺伝子を有する場合、対象者は異型接合である、または異型接合状態を有するという。「IL−1RN(+2018)対立遺伝子2,2」の語は、IL−1RN(+2018)対立遺伝子2の同型接合状態をいう。逆に、「IL−1RN(+2018)対立遺伝子1,1」の語は、IL−1RN(+2018)対立遺伝子1の同型接合状態をいう。「IL−1RN(+2018)対立遺伝子1,2」の語は、対立遺伝子1と2の異型接合状態をいう。
「IL−1表現型」の語は、IL−1遺伝子座の遺伝子同一性の結果として生じる任意の表現型をいうことを意図し、すなわち、炎症性疾患または状態への素因の増大または減少、および炎症性疾患または障害の「正常」(たとえば平均的または「野生型」)に関連する可能性を含む。
ここで用いられる「IL−1関連」は、ヒト第2染色体(2q12−14)上のヒトIL−1遺伝子座遺伝子に関連するすべての遺伝子を含むことを意図する。これらは第2染色体(2q13−14)に位置するヒトIL−1遺伝子群のIL−1遺伝子を含み、下記を含む:インターロイキン−1αをコードするIL−1A遺伝子、インターロイキン−1βをコードするIL−1B遺伝子、およびインターロイキン−1受容体アンタゴニストをコードするIL−1RN(またはIL−1ra)遺伝子。さらにこれらのIL−1関連遺伝子は、ヒト第2染色体(2q12)上に位置するタイプIおよびタイプIIヒトIL−1受容体遺伝子、およびマウス第1染色体の19.5cM位に位置するそれらのマウス相同体を含む。インターロイキン−1α、インターロイキン−1β、およびインターロイキン−1RNはすべてがIL−1タイプI受容体と結合するほど関連があるが、しかしインターロイキン−1αおよびインターロイキン−1βだけがIL−1タイプI受容体を活性化するアゴニストリガンドである一方、インターロイキン−1RNは天然に生じるアンタゴニストリガンドである。「IL−1」の語が遺伝子産物またはポリペプチドに関して用いられる場合、ヒト第2染色体(2q12−14)上のインターロイキン−1遺伝子座によってコードされるすべての遺伝子産物、および他の種に由来するそれらの対応する相同体、またはその機能性変異体をいうことを意図する。IL−1の語はしたがって、たとえばIL−1αおよびIL−1βのような炎症反応を促進する分泌されたポリペプチドと、たとえばIL−1受容体アンタゴニストおよびIL−1タイプII(おとり)受容体のような炎症反応に拮抗する分泌されたポリペプチドを含む。
「IL−1受容体」または「IL−1R」は、IL−1遺伝子座にコードされるリガンドに結合することのできる、および/またはそのリガンドからのシグナルを伝達することのできる、さまざまな細胞膜結合タンパク質受容体をいう。その語は、インターロイキン−1(IL−1)分子に結合することができ、また哺乳類原形質膜タンパク質としての天然の立体構造で、おそらくIL−1によって細胞へ提供されるシグナル伝達に役割を果たす、任意のタンパク質に適用される。ここで用いられるように、その語はIL−1結合またはシグナル伝達活性を有する天然タンパク質のアナログを含む。例は米国特許第4,968,607号明細書に記載されたヒトおよびマウスIL−1受容体を含む。「IL−1核酸」の語はIL−1タンパク質をコードする核酸をいう。
「IL−1ポリペプチド」および「IL−1タンパク質」は、図1、2、および3に示すIL−1ゲノムDNA配列によってコードされるアミノ酸配列、またはその断片、およびその相同体を含むポリペプチドを網羅することを意図し、アゴニストおよびアンタゴニストポリペプチドを含む。
「リスクの増大」は、特定の多型対立遺伝子を有する人における、その特定の多型対立遺伝子を有しない集団の成員における疾患または状態の発生率の頻度と比較して、疾患または状態の統計的により高い頻度の発生率をいう。
「リスクの減少」は、特定の多型対立遺伝子を有する人における、その特定の多型対立遺伝子を有しない集団の成員、または全体としてのその集団における疾患または状態の発生率の頻度と比較して、疾患または状態の統計的により低い頻度の発生率をいう。
ここで用いられる「相互作用する」の語は、たとえば自然状態におけるタンパク質−タンパク質、タンパク質−核酸、核酸−核酸およびタンパク質−小分子または核酸−小分子間の相互作用のような、分子間の検出可能な関係または関連(たとえば生化学的相互作用)を含むことを意図する。
DNAまたはRNAといった核酸についてここで用いられる「単離された」の語は、その巨大分子の天然の起源中に存在する他のDNA、またはRNAからそれぞれ分離された分子をいう。たとえば、対象IL−1ポリペプチドの一つをコードする単離された核酸は、好ましくは天然にゲノムDNA中でIL−1遺伝子に直接隣接する核酸配列の10キロベース(kb)しか含まず、より好ましくはそのような天然に存在する隣接する配列の5キロベースしか含まず、非常に好ましくはそのような天然に存在する隣接する配列の1.5キロベース未満を含む。ここで用いられる「単離された」の語はまた、細胞物質、ウイルス物質、または組み換えDNA法によって製造された場合は培地を、あるいは化学的に合成された場合は化学的前駆体または他の化学物質を、実質的に含まない、核酸またはペプチドをいう。さらに、「単離された核酸」は、断片としては天然に生じない、自然状態では見つからない核酸断片を含むことを意図する。「単離された」の語はまたここでは、他の細胞タンパク質から単離されたポリペプチドをいうのに用いられ、精製および組み換えポリペプチドの両方を網羅することを意図する。
「ノックイン」遺伝子導入動物は、修飾された遺伝子がゲノムに導入された動物をいい、その修飾された遺伝子は外因性または内因性起源でありうる。
「ノックアウト」遺伝子導入動物は、内因性遺伝子の発現の部分的または完全な抑制(たとえば、遺伝子の少なくとも一部の欠失、遺伝子の少なくとも一部の別の配列との置換、終止コドンの導入、決定的なアミノ酸をコードする塩基の突然変異、またはイントロンジャンクションの除去、などに基づく)が存在する動物をいう。
「ノックアウト構造」は、細胞の内因性DNA配列によってコードされるタンパク質の発現を減少させるかまたは抑制するために用いることのできる核酸配列をいう。簡単な例では、ノックアウト構造は、たとえば活性タンパク質を発現することができないように遺伝子の決定的な部分に欠失があるIL−1RN遺伝子のような遺伝子から成る。あるいは、タンパク質の早期終止を起こすようにいくつかの終止コドンを天然遺伝子に加えることができ、またはイントロンジャンクションを不活性化することができる。典型的なノックアウト構造では、遺伝子の一部が選択可能なマーカー(たとえばneo遺伝子)で置換されており、ゆえに当該遺伝子は下記のように表すことができる:IL−1RN5'/neo/IL−1RN3'、ここでIL−1RN5'およびIL−1RN3'はそれぞれ相対的にIL−1RN遺伝子の部分より上流および下流であるゲノム配列またはcDNA配列をいい、またneoはネオマイシン耐性遺伝子をいう。別のノックアウト構造では、別の選択可能なマーカーが隣接位置に追加されており、ゆえに当該遺伝子は下記のように表すことができる:IL−1RN/neo/IL−1RN/TK、ここでTKは先行する構造のIL−1RN5'またはIL−1RN3'配列のどちらかに追加することができさらに適当な培地中でそれに対して選択を行うことができる(すなわち、陰性選択可能なマーカーである)チミジンキナーゼ遺伝子である。この2マーカー構造は、典型的にはTK配列を保持する非相同組み換え現象からの、隣接TKマーカーを除去する相同組み換え現象の選択を可能にする。遺伝子欠失および/または置換は、エキソン、イントロン、特にイントロンジャンクション、および/またはたとえばプロモーターのような調節領域からでありうる。
「連鎖不平衡」は、任意の対照集団における各対立遺伝子の存在の別々の頻度から予想されるより高い頻度での、二個の対立遺伝子の同時遺伝をいう。独立に遺伝する二個の対立遺伝子の存在の予想頻度は、第一の対立遺伝子の頻度に第二の対立遺伝子の頻度を掛けたものである。予想頻度で同時に出現する対立遺伝子は、「連鎖平衡」にあると言われる。連鎖不平衡の原因はしばしば不明である。特定の対立遺伝子の組み合わせに対する選択、または遺伝的に不均一な集団の最近の混合に起因しうる。さらに、疾患遺伝子に非常に密に連鎖したマーカーの場合、疾患突然変異が近い過去に生じたためその特定の染色体領域において組み換え現象を通じて平衡が達成されるためには十分な時間が経過していない場合は、対立遺伝子(または一群の連鎖した対立遺伝子)と疾患遺伝子との関連が予想される。一より多い対立遺伝子から成る対立遺伝子パターンに言及する場合は、一つの対立遺伝子パターンを構成するすべての対立遺伝子が別の対立遺伝子パターンの対立遺伝子の少なくとも一つと連鎖不平衡にある場合、第一の対立遺伝子パターンは第二の対立遺伝子パターンと連鎖不平衡にある。連鎖不平衡の一例は、IL−1RN(+2018)およびIL−1RN(VNTR)多型部位の対立遺伝子間に生じる。IL−1RN(+2018)の二個の対立遺伝子は、IL−1RN(VNTR)の最も頻度の高い二個の対立遺伝子、対立遺伝子1および対立遺伝子2と100%連鎖不平衡にある。
「マーカー」の語は、個体間で異なることが知られているゲノム中の配列をいう。たとえば、IL−1RN遺伝子は反復配列数変異(VNTR)から成るマーカーを持つ。
「突然変異遺伝子」または「突然変異」または「機能突然変異」は、遺伝子の対立遺伝子型をいい、突然変異遺伝子を持たない対象と比較して突然変異遺伝子を持つ対象の表現型を変化させることができる。突然変異によって引き起こされた表現型変化は、ある種の物質によって訂正または補正することができる。対象が変化した表現型を持つためにこの突然変異について同型接合でなければならないなら、当該突然変異は劣性であるといわれる。対象の表現型を変化させるために突然変異遺伝子の一コピーで十分であるなら、当該突然変異は優性であるといわれる。対象が突然変異遺伝子の一コピーを持ちそして(その遺伝子について)同型接合の対象と異型接合の対象との中間の表現型を持つ場合、当該突然変異は共優性であるといわれる。
本発明の「非ヒト動物」は、たとえば齧歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、などといった哺乳類、Xenopus属の成員のような遺伝子導入両生類、および遺伝子導入鳥類(たとえばニワトリ、鳥、など)を含む。「キメラ動物」の語はここでは、組み換え遺伝子がみられる動物か、または組み換え遺伝子が動物のすべてではなく一部の細胞で発現している動物をいうのに用いられる。「組織特異的キメラ動物」の語は、一部の組織で組み換えIL−1遺伝子の一つが存在する、および/または発現しているかまたは破壊されているが他の組織ではそうでないことをいう。「非ヒト哺乳類」の語は、ヒトを除く哺乳綱の任意の成員をいう。
ここで用いられるような、「核酸」の語は、たとえばデオキシリボ核酸(DNA)、および、適当な場合には、リボ核酸(RNA)といった、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドをいう。その語はまた、同等物として、ヌクレオチドアナログから作られたRNAまたはDNAのアナログ(たとえばペプチド核酸)、および記載された実施形態に適用可能な通り、一本鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドを含むとも解されるべきである。
ここで用いられる「栄養補助食品」の語は、疾患または障害、特に炎症性疾患に関連する疾患または障害を治療するのに価値のある食品および補助食品のFDAの定義を含む。したがって、「栄養補助食品」は健康上の利益を達成するために用いることのできる栄養成分を含む。これらの成分は「食品」すなわち「機能性食品」中に、または補助食品中に存在しうる。1994年10月に、米国栄養補助食品健康教育法(「DSHEA」)が制定された。DSHEAは、補助食品が健康上の利益を提供しうると何百万もの消費者が信じていることを認めている。これを通過させた連邦議会の意図は、消費者の補助食品入手と、安全性の問題を示すかまたは虚偽か誤解を生じる表示がされた補助食品に反対して行動するFDAの権限との間の均衡を取ることであった。DSHEAは補助食品の安全性および表示のための新たな規制の枠組みを作り出す。FDAは、DSHEAを達成するような方法でDSHEAを実行することに取り組んでいる。したがって、ここで用いられる「栄養補助食品」は、摂取されまた食事を補完することが意図されそして「栄養成分」を含む、当該分野で既知である補助食品(たとえばビタミン、ミネラル、ハーブ、および他の補助食品)を含む。栄養成分は、ビタミン、ミネラル、ハーブまたは他の植物、アミノ酸、および酵素のような栄養物質を含みうる。栄養成分はまた、これらの成分の、代謝産物、構成成分、抽出物、濃縮物、またはその組み合わせであることもできる。
栄養補助食品は錠剤、カプセル、液体、棒状物を含む形で提供される。
「多型」の語は、一より多い種類の遺伝子またはその一部(たとえば、対立遺伝子変異体)が同時に存在することをいう。少なくとも二つの異なる型、すなわち二つの異なるヌクレオチド配列が存在する遺伝子の一部分を、「遺伝子の多型領域」という。遺伝子の多型領域の特定の遺伝子配列が対立遺伝子である。多型領域は一塩基であることができ、その同一性は別の対立遺伝子では異なる。多型領域はまたヌクレオチド数個の長さであることができる。
「疾患への傾向」の語、また「素因」あるいは疾患に対する「感受性」または任意の類似の語句は、ある対立遺伝子が、特定の疾患(たとえば血管疾患)と関連しているかまたは対象者がそれを発症する率について予測的であることが発見されたことを意味する。その対立遺伝子はしたがって健常者と比較して患者で過剰な頻度で現れる。したがって、これらの対立遺伝子は、発症前または罹病前の人においてさえも疾患を予測するのに用いることができる。
ここで用いられる「小分子」は、約5kD未満および非常に好ましくは約4kD未満の分子量を持つ組成物をいうことを意図する。小分子は核酸、ペプチド、ペプチドミメティック、糖、脂質または他の有機または無機分子でありうる。
ここで用いられるような、「特異的にハイブリダイズする」または「特異的に検出する」の語は、核酸分子が試料核酸の少なくとも連続した約6ヌクレオチドとハイブリダイズする能力をいう。
「転写調節配列」は、たとえば開始シグナル、エンハンサー、およびプロモーターといったDNA配列をいうために本明細書全体で用いられる一般的名称であり、それらが調節可能に結合したタンパク質コード配列の転写を誘導するかまたは制御する。
ここで用いられるような、「導入遺伝子」の語は、細胞に導入された核酸配列(たとえば、IL−1ポリペプチドの一つ、またはそれに対するアンチセンス転写物をコードする)を意味する。導入遺伝子は、導入される遺伝子導入動物または細胞に対して部分的にまたは完全に異種、すなわち外来であることができ、あるいは、導入される遺伝子導入動物または細胞の内因性遺伝子に対して同種であるが、挿入される細胞のゲノムを変化させるような方法で動物のゲノムに挿入されるように設計されている、または挿入されている(たとえば、天然遺伝子の位置とは異なる位置に挿入されているかまたはその挿入の結果ノックアウトが生じる)。導入遺伝子は、一個以上の 転写調節配列および、たとえばイントロンのような、選択した核酸の最適な発現に必要でありうる任意の他の核酸を含みうる。
「遺伝子導入動物」は、動物の一個以上の細胞が、たとえば当該分野でよく知られた遺伝子導入法によって、人為的介入により導入された異種核酸を含む、任意の動物、好ましくは非ヒト哺乳類、鳥類または両生類をいう。核酸は、意図的な遺伝子操作を目的として、たとえばマイクロインジェクションによってまたは組み換えウイルスの感染によって、直接的にまたは間接的に細胞の前駆体への導入によって細胞へ導入される。遺伝子操作の語は古典的な交配またはin vitro受精を含まないが、組み換えDNA分子の導入を対象とする。この分子は染色体内に統合されることができ、または染色体外で複製するDNAでありうる。ここに記載する典型的な遺伝子導入動物では、導入遺伝子は細胞に、たとえばアゴニストまたはアンタゴニスト型の、IL−1ポリペプチドの一つの組み換え形を発現させる。しかし、組み換え遺伝子がサイレントである遺伝子導入動物もまた検討されており、例としては、下記のFLPまたはCREリコンビナーゼ依存構造である。さらに、「遺伝子導入動物」はまた、一個以上の遺伝子の遺伝子破壊が組み換えおよびアンチセンス技術の両方を含む人間の介入によって引き起こされた組み換え動物を含む。その語はすべての子孫世代を含むことを意図する。したがって、創始者動物およびすべてのF1、F2、F3、など、その子孫が含まれる。
ここで用いられる「治療する」の語は、状態または疾患の少なくとも一つの症状を治すことならびに改善することを包含することを意図する。
「ベクター」の語は核酸分子をいい、それが結合している別の核酸を輸送することができる。好ましいベクターの一つの種類はエピソーム、すなわち、染色体外複製する能力がある核酸である。好ましいベクターは、自律複製および/または結合している核酸の発現の能力を有するものである。調節可能に結合した遺伝子の発現を指示する能力のあるベクターをここでは「発現ベクター」という。一般的に、組み換えDNA技術に有用な発現ベクターはしばしば、ベクター形では染色体に結合していない円形の二本鎖DNA環を一般的に指す「プラスミド」の形である。プラスミドはベクターの最も広く用いられている形であるため、本明細書では「プラスミド」と「ベクター」は相互に交換可能に用いられる。しかし、本発明は同等な機能を果たし本分野で今後明らかになるような他の種類の発現ベクターを含むことを意図する。
「野生型対立遺伝子」の語は、対象に二個のコピーで存在する場合、結果として野生型表現型が生じる、遺伝子の対立遺伝子をいう。遺伝子内のある種のヌクレオチド変化は、そのヌクレオチド変化を持つ遺伝子のコピー二個を有する対象の表現型に影響しない可能性があるため、特定の遺伝子のいくつかの異なる野生型対立遺伝子が存在しうる。
3.対立遺伝子の検出
ヒト多型遺伝子座の特定の対立遺伝子を検出するためには多くの方法が利用可能である。特定の多型対立遺伝子を検出するための好ましい方法は、部分的には、多型の分子的性質に依存する。たとえば、たとえば、多型遺伝子座のさまざまな種類の対立遺伝子型は、DNAの一塩基対で異なりうる。そのような一塩基多型(すなわちSNP)は遺伝子変異の主要な要因であり、すべての既知の多型のうちおよそ80%を占め、またヒトゲノム中のそれらの密度は平均して1,000塩基対当たり1個と推定されている。SNPは非常にしばしば、2個だけの異なる型で、2対立遺伝子に生じる(DNA中に存在する4種類の異なるヌクレオチド塩基に対応する、最大4つの異なる型のSNPが理論的に可能であるが)。にもかかわらず、SNPは、突然変異において他の多型より安定であり、疾患を引き起こす突然変異をマッピングするのにマーカーと未知の変異体の間の連鎖不平衡が用いられる関連性研究に適することとなっている。さらに、SNPは典型的には対立遺伝子を2個だけ持つために、鎖長測定でなく単純なプラス/マイナス分析によって遺伝子型解析することができ、より自動化に従いやすい。
個体における特定の一塩基多型対立遺伝子の存在を検出するためにはさまざまな方法が利用可能である。この分野における進歩は、正確で、容易で、そして安価な大規模SNP遺伝子型解析を提供している。ごく最近、たとえば、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)、マイクロプレートアレイ対角線ゲル電気泳動(MADGE)、パイロシークエンシング、オリゴヌクレオチド特異的連結反応、TaqManシステム、ならびにAffymetrixSNPチップのようなさまざまなDNA「チップ」技術を含む、いくつかの新しい方法が記載されている。これらの方法は、典型的にはPCRによる、標的遺伝子領域の増幅を必要とする。侵襲的切断によるシグナル小分子の生成に基づき、次いで質量分析または固定化パッドロックプローブおよびローリングサークル増幅法を行う、さらに他の新しく開発された方法が、最終的にはPCRの必要性を無くしうる。特定の一塩基多型を検出するための当該分野で既知の方法のいくつかを下記に要約する。本発明の方法はすべての利用可能な方法を含むものと解される。
一塩基多型の分析を円滑にするために、いくつかの方法が開発されている。一実施形態では、一塩基多型は、たとえば、Mundy, C. R. (米国特許第4,656,127号明細書)に開示される通り、特異化されたエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを用いることによって検出することができる。その方法によると、多型部位の直接3'である対立遺伝子配列に相補的なプライマーが、特定の動物またはヒトから得られた標的分子とハイブリダイズさせられる。標的分子上の多型部位が、存在する特定のエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体と相補的であるヌクレオチドを含む場合、その誘導体はハイブリダイズしたプライマーの末端に組み込まれる。そのような組み込みによってプライマーはエキソヌクレアーゼに耐性となり、それによって検出が可能になる。試料のエキソヌクレアーゼ耐性誘導体の正体が既知であるので、プライマーがエキソヌクレアーゼに耐性となったという知見は、標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドが、反応に用いられたヌクレオチド誘導体に存在するヌクレオチドと相補的であったことを示す。この方法は、大量の無関係な配列データの決定を必要としないという利点を有する。
本発明の別の一実施形態では、多型部位のヌクレオチドを同定するために溶液を基礎とする方法が用いられる。Cohen, D. et al. (仏国特許発明第2,650,840号明細書;国際公開第91/02087号パンフレット)。米国特許第4,656,127号明細書のMundy法でのように、多型部位の直接3'である対立遺伝子配列に相補的なプライマーが用いられる。本方法は標識ジデオキシヌクレオチドを用いてその部位のヌクレオチドを同定し、標識ジデオキシヌクレオチドは多型部位のヌクレオチドと相補的である場合プライマーの末端に組み込まれる。
遺伝子ビット分析すなわちGBA(商標)と呼ばれる別の方法がGoelet P. et al.によって記載されている(国際公開第92/15712号パンフレット)。Goelet, P. et al.の方法は標識ターミネーターと多型部位の3'である対立遺伝子配列に相補的なプライマーとの混合物を使用する。組み込まれた標識ターミネーターはこのように、評価される標的分子の多型部位内に存在するヌクレオチドによって決定されまたそれと相補的である。Cohen et al.(仏国特許発明第2,650,840号明細書;国際公開第91/02087号パンフレット)の方法と対照的に、Goelet, P. et al.の方法は好ましくは不均一相分析であり、そこではプライマーまたは標的分子は固相に固定化される。
近年、DNA中の多型部位を分析するためのいくつかのプライマー誘導型ヌクレオチド組み込み手順が記載されている(Komher, J. S. et al., Nucl. Acids. Res. 17;7779−7784 (1989);Sokolov, B. P., Nucl. Acids Res. 1 8;3671 (1990);Syvanen, A.−C., et al., Genomics 8;684−692 (1990);Kuppuswamy, M. N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 88;1 143−1 147 (1991);Prezant, T. R. et al., Hum. Mutat. 1;159−164 (1992);Ugozzoli, L. et al., GATA 9;107−1 12 (1992);Nyren, P. et al., Anal. Biochem. 208;171−175 (1993))。これらの方法は、それらすべてが多型部位の塩基を識別するのに標識デオキシヌクレオチドの組み込みに依存する点でGBAと異なる。そのような形式では、シグナルは組み込まれたデオキシヌクレオチドの数に比例するため、同一の一続きのヌクレオチド中に起こる多型は、結果としてその一続きの長さに比例するシグナルを生じうる(Syvanen, A. −C., et al., Amer. J. Hum. Genet. 52;46 59(1993))。
タンパク質翻訳の早期終了を生じる突然変異については、短縮タンパク質試験(PTT) が効率的な診断手法を提供する(Roest, et. al., (1993) Hum. Mol Genet. 2;1719−21;van derLuijt, et. al., (1994) Genomics 20;1−4)。PTTのためには、利用できる組織からRNAが最初に単離されて逆転写され、目的の部分がPCRによって増幅される。逆転写PCRの産物は次いで、RNAポリメラーゼプロモーターおよび真核細胞の翻訳を開始させるための配列を含むプライマーを使用するnested PCR増幅のテンプレートとして用いられる。目的領域の増幅後、プライマーに組み込んだ独特のモチーフによって、PCR産物の連続的なin vitro転写および翻訳が可能になる。翻訳産物のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動時に、短縮ポリペプチドの出現は、翻訳の早期終了を引き起こす突然変異の存在を示す。この方法の変法では、目的の標的領域が1個のエキソンに由来する場合、DNA(RNAでなく)がPCRテンプレートとして用いられる。
ここに記載の診断に用いる核酸検体を得るために、任意の細胞型または組織を利用することができる。好ましい一実施形態では、DNA試料は、既知の方法(たとえば静脈穿刺)で得られた血液または唾液のような体液から得られる。あるいは、核酸試験を乾燥試料(たとえば髪または皮膚)に対して実施することができる。RNAまたはタンパク質を用いる場合、使用することのできる細胞または組織はIL−1遺伝子を発現しなければならない。
診断的な手順はまたin situで直接、生検または切除から得られた患者組織の組織切片(固定および/または凍結)に対して実施することもでき、核酸精製が不要である。核酸試薬はそのようなin situ手順についてはプローブおよび/またはプライマーとして用いることができる(たとえば、Nuovo, G. J., 1992, PCR in situ hybridization;protocols and applications, Raven Press, N.Y.を参照)。
一つの核酸配列の検出に主に注目する方法に加えて、プロファイルもまたそのような検出計画で評価しうる。フィンガープリントプロファイルは、たとえば、ディファレンシャルディスプレイ手順、ノーザン分析および/またはRT−PCRを利用することによって作成することができる。
好ましい一検出方法は、IL−1炎症促進性ハプロタイプの少なくとも一つの対立遺伝子の領域と重なり合い、また約5、10、20、25、または30ヌクレオチドを突然変異または多型領域の周辺に有するプローブを用いる、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションである。本発明の好ましい一実施形態では、再狭窄に関与する他の対立遺伝子変異体と特異的にハイブリダイズする能力のあるいくつかのプローブが、たとえば「チップ」(最大約250,000オリゴヌクレオチドを保持することができる)のような固相担体に結合している。オリゴヌクレオチドは、リトグラフィーを含むさまざまな処理によって固相担体に結合することができる。オリゴヌクレオチドを含むこれらの「DNAプローブアレイ」とも称するチップを用いた突然変異検出分析はたとえば、Cronin et al. (1996) Human Mutation 7;244に記載されている。一実施形態では、一つのチップはある遺伝子の少なくとも一つの多型領域のすべての対立遺伝子変異体を含む。固相担体を次いで被験核酸と接触させ、特異的プローブとのハイブリダイゼーションが検出される。その結果、一個以上の遺伝子の多数の対立遺伝子変異体の同一性を、簡易なハイブリダイゼーション実験で同定することができる。
これらの方法はまた、分析前に核酸を増幅する段階を含むことができる。増幅方法は当業者に既知であり、クローニング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、特異的対立遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応(ASA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、nestedポリメラーゼ連鎖反応、self−sustained配列複製(Guatelli, J. C. et al, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87;1874−1878)、転写増幅系(Kwoh, D. Y. et al., 1 989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86;1173−1177)、およびQ−ベータレプリカーゼ(Lizardi, P. M. et al., 1988, Bio/Technology 6;1197)を含むがこれらに限定されない。
増幅産物は、サイズ分析、制限酵素消化に続くサイズ分析、反応産物中に特定の標識オリゴヌクレオチドプライマーを検出、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)ハイブリダイゼーション、対立遺伝子特異的5'エキソヌクレアーゼ検出、配列決定、ハイブリダイゼーション、などを含むさまざまな方法で分析することができる。
PCRに基づく検出方法は、複数のマーカーの同時の多重増幅を含みうる。たとえば、サイズが重ならない、同時に分析できるPCR産物を生成するようにPCRプライマーを選択することは当該分野でよく知られている。あるいは、区別して標識され、ゆえにそれぞれを区別して検出することのできるプライマーを有する別々のマーカーを増幅することが可能である。もちろん、ハイブリダイゼーションに基づく検出方法は、試料中の複数のPCR産物の区別を付けた検出を可能にする。複数のマーカーの多重分析を可能にする他の方法が当該分野で知られている。
単に解説のための一実施形態では、その方法は(i)細胞の検体を患者から得る、(ii)核酸(たとえば、ゲノム、mRNAまたは両方)を検体の細胞から単離する、(iii)核酸検体を、IL−1炎症促進性ハプロタイプの少なくとも一つの対立遺伝子と5'および3'へ特異的にハイブリッド形成する一個以上のプライマーと、対立遺伝子のハイブリダイゼーションおよび増幅が起こる条件下で接触させる、および(iv)増幅産物を検出する段階を含む。これらの検出計画は、核酸分子の検出に、そのような分子が非常に少数で存在する場合に特に有用である。
対象の分析の好ましい一実施形態では、IL−1炎症促進性ハプロタイプの対立遺伝子が、制限酵素切断パターンにおける変化によって同定される。たとえば、検体および対照DNAは単離され、増幅され(随意的に)、一個以上の制限エンドヌクレアーゼで消化され、そして断片長サイズがゲル電気泳動によって測定される。
さらに別の一実施形態では、当該分野で既知のさまざまな配列決定反応のうち任意のものを用いて直接に対立遺伝子を配列決定することができる。典型的な配列決定反応は、Maxim and Gilbert ((1977) Proc. Natl Acad Sci USA 74;560)またはSanger (Sanger et al (1977) Proc. Nat. Acad. Sci USA 74;5463)によって開発された方法に基づくものを含む。対象の分析(たとえばBiotechniques (1995)19;448を参照)を実施する場合、質量分析による配列決定(たとえば国際公開第94/16101号パンフレット;Cohen et al. (1996) Adv Chromatogr 36;127−162;およびGriffin et al. (1993) Appl Biochem Biotechnol 38;147−159を参照)を含む、さまざまな自動化配列決定手順のうち任意のものを利用しうることもまた考えられている。一部の実施形態について、配列決定反応において核酸塩基のうち1、2または3個だけの存在を確認する必要があることは当業者に明らかとなる。たとえば、ただ1つだけの核酸が検出されるA鎖などといったものを実施することができる。.
さらなる一実施形態では、切断試薬(たとえばヌクレアーゼ、ヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウム、およびピペリジン)からの保護を使用して、RNA/RNAまたはRNA/DNAまたはDNA/DNAヘテロ二本鎖中のミスマッチ塩基を検出することができる(Myers, et al. (1985) Science 230;1242)。一般的に、「ミスマッチ切断」の技術的方法は、野生型対立遺伝子を含む(標識)RNAまたはDNAを試料とハイブリダイズすることによって生成したヘテロ二本鎖を得ることから始まる。二本鎖二重分子は、対照と試料鎖との間の塩基対ミスマッチが原因で存在するような、二本鎖の一本鎖領域を切断する試薬で処理する。たとえば、ミスマッチ領域を酵素的に消化するために、RNA/DNA二本鎖はRNaseで処理することができ、またDNA/DNAハイブリッドはS1ヌクレアーゼで処理することができる。他の実施形態では、ミスマッチ領域を消化するために、DNA/DNAまたはRNA/DNA二本鎖はヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウム、およびピペリジンを用いて処理することができる。ミスマッチ領域の消化後、結果として生じた物質を次いでサイズによって変性ポリアクリルアミドゲルで分離し、突然変異の部位を決定する。たとえば、Cotton et al (1988) Proc. Natl Acad Sci USA 85;4397;およびSaleeba et al (1992) Methods Enzymol. 217;286−295を参照。好ましい一実施形態では、対照DNAまたはRNAは検出のために標識することができる。
さらに別の一実施形態では、ミスマッチ切断反応は、二本鎖DNA中のミスマッチ塩基対を認識する一個以上のタンパク質(いわゆる「DNAミスマッチ修復」酵素)を使用する。たとえば、E.coliのmutY酵素はG/AミスマッチでAを切断し、HeLa細胞由来のチミジンDNAグリコシラーゼはG/TミスマッチでTを切断する(Hsu et al. (1994) Carcinogenesis 15;1657−1662)。典型的な一実施形態によると、IL−1遺伝子座ハプロタイプの対立遺伝子に基づくプローブが、被験細胞由来のcDNAまたは他のDNA産物とハイブリダイズされる。その二本鎖はDNAミスマッチ修復酵素で処理され、切断産物はもしあれば電気泳動手順などから検出することができる。たとえば、米国特許第5,459,039号明細書を参照。
他の実施形態では、IL−1遺伝子座対立遺伝子を同定するのに電気泳動移動度における変化を用いる。たとえば、突然変異と野生型核酸との間の電気泳動移動度の差を検出するのに、一本鎖立体構造多型(SSCP)を用いることができる(Orita et al. (1989) Proc Natl. Acad. Sci USA 86;2766、Cotton (1993) Mutat Res 285;125−144;およびHayashi (1992) Genet Anal Tech Appl 9;73−79も参照)。試料および対照IL−1遺伝子座対立遺伝子の一本鎖DNA断片は変性され復元させられる。一本鎖核酸の二次構造は配列によって異なり、結果として生じる電気泳動移動度の変化は、一塩基変化さえも検出を可能にする。当該DNA断片は標識することができ、または標識プローブで検出することができる。分析の感度は、二次構造が配列における変化により感受性が高いRNA(DNAでなく)を用いることによって高めることができる。好ましい一実施形態では、対象の方法はヘテロ二本鎖分析を利用して、二本鎖ヘテロ二重分子を電気泳動移動度の変化に基づいて分離する(Keen et al. (1991) Trends Genet 7;5)。
さらに別の一実施形態では、変性剤のグラジエントを含むポリアクリルアミドゲル中での対立遺伝子の移動を、変性グラジエントゲル電気泳動法(DGGE)を用いて分析する(Myers et al. (1985) Nature 313;495)。DGGEを分析方法として用いる場合DNAは、完全には変性しないことを確実にするために、たとえばPCRによって約40bpの高融点GCリッチDNAのGCクランプを付加して修飾される。さらなる一実施形態では、対照と検体DNAとの間の移動度の差を識別するために、変性剤グラジエントの代わりに温度グラジエントが用いられる(Rosenbaum and Reissner (1987) Biophys Chem 265;12753)。
対立遺伝子を検出するための他の方法の例は、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長を含むがこれらに限定されない。たとえば、既知の突然変異またはヌクレオチドの差(たとえば、対立遺伝子変異体において)が中央に置かれるオリゴヌクレオチド プライマーを作製することができ、次いで、完全マッチが見つかった場合に限りハイブリダイゼーションを可能にする条件下で標的DNAとハイブリッド形成することができる(Saiki et al. (1986) Nature 324;163);Saiki et al (1989) Proc. Natl Acad. Sci USA 86;6230)。そのような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション技術は、オリゴヌクレオチドがPCR増幅標的DNAまたはいくつかの異なる突然変異または多型領域とハイブリッド形成する場合、オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ膜に結合していて標識標的DNAとハイブリッド形成したとき、反応ごとに一つの突然変異または多型領域を試験するのに用いることができる。
あるいは、選択的PCR増幅に依存する対立遺伝子特異的増幅技術を本発明に関連して用いることができる。特異的増幅のためのプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドは、目的の突然変異または多型領域を分子の中心(増幅が差別的ハイブリダイゼーションに依存するように)(Gibbs et al (1989) Nucleic Acids Res. 17;2437−2448)または、適当な条件下でミスマッチがポリメラーゼ伸長を妨げるかまたは低下させることのできる、一つのプライマーの3'最末端に有しうる(Prossner (1993) Tibtech 11;238。さらに、切断に基づく検出を行うためには、突然変異の領域に新しい制限部位を導入することが望ましい(Gasparini et al (1992) Mol. Cell Probes 6;1)。一部の実施形態では、増幅はまた、増幅のためのTaqリガーゼを用いて実施することもできることが予想される(Barany (1991) Proc. Natl. Acad. Sci USA 88;1 89)。そのような場合には、連結反応は5'配列の3'末端で完全なマッチが存在する場合に限って起こり、増幅の有無を探すことによって特定部位における既知の突然変異の存在を検出することが可能になる。
別の一実施形態では、対立遺伝子変異体の同定は、たとえば米国特許第4,998,617号明細書およびLandegren, U. et al. ((1988) Science 241;1077−1080)に記載されたように、オリゴヌクレオチド連結反応分析(OLA)を用いて実施される。OLA手順は、標的の一本鎖の隣接する配列とハイブリッド形成する能力を有するように設計された2種類のオリゴヌクレオチドを用いる。オリゴヌクレオチドのうち1種類はたとえばビオチニル化のように分離マーカーと結合しており、もう1種類は検出可能に標識されている。標的分子中に正確な相補的配列が見出される場合、オリゴヌクレオチドはそれらの末端が隣接するようにハイブリッド形成し、連結反応基質を生じる。連結反応は次いでアビジンまたは別のビオチンリガンドを用いて標識オリゴヌクレオチドが回収されるようにする。Nickerson, D. A. et al.は、PCRおよびOLAの特性を組み合わせた核酸検出分析法を記載している(Nickerson, D. A. et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87;8923−27)。この方法では、PCRを用いて標的DNAの指数的増幅が達成され、標的DNAは次いでOLAを用いて検出される。
このOLA法に基づくいくつかの方法が開発されており、IL−1遺伝子座ハプロタイプの対立遺伝子を検出するのに用いることができる。たとえば、米国特許第5,593,826号明細書は、ホスホロアミデート結合を有する結合物質を形成する、3'−アミノ基を持つオリゴヌクレオチドと5'−リン酸化オリゴヌクレオチドとを用いるOLAを開示する。Tobe et al. ((1996) Nucleic Acids Res 24;3728)に記載されたOLAの別の変法では、PCRと組み合わせたOLAによって1つのマイクロタイターウェル内で2個の対立遺伝子の型分析が可能になる。対立遺伝子特異的プライマーのそれぞれを独特のハプテンすなわちジゴキシゲニンおよびフルオレセインで標識することにより、それぞれのOLA反応は、別々の酵素レポーターであるアルカリホスファターゼまたはホースラディッシュペルオキシダーゼで標識したハプテン特異的抗体を用いることによって検出することができる。この系は、異なる2色の産生に結びつく高処理量形式を用いて、2個の対立遺伝子の検出を可能にする。
本発明の別の一実施形態は再狭窄を発症する素因を検出するキットに向けられている。このキットは、IL−1遺伝子座ハプロタイプの少なくとも一つの対立遺伝子の5'および3'にハイブリダイズする5'および3'オリゴヌクレオチドを含む、一個以上のオリゴヌクレオチドを含みうる。PCR増幅オリゴヌクレオチドは、以降の分析のために便利なサイズのPCR産物を産生するために、25から2500塩基対離れた間、好ましくは約100から約500塩基離れた間にハイブリダイズすべきである。
特に好ましいプライマーは図8〜1 1に記載のヌクレオチド 配列を含んだ本発明の方法によるIL−1多型対立遺伝子の増幅および検出に用いるための別のオリゴヌクレオチドの設計は、ヒトIL−1遺伝子座を含むヒト染色体2q13からの最新の配列情報、およびこの遺伝子座について利用できる最新のヒト多型情報の両方の利用可能性によって促進される。たとえば、IL−1Α、IL−1BおよびIL−1RNのDNA配列を図1(GenBank登録番号X03833)、2(GenBank登録番号X04500)および3(GenBank登録番号X64532)にそれぞれ示す。これらの遺伝子中のヒト多型の検出のための適当なプライマーは、この配列情報およびプライマー配列の設計および最適化のための当該分野で既知の標準的方法を用いて容易に設計することができる。そのようなプライマー配列の最適な設計は、たとえば、Primer2.1、Primer3またはGeneFisherといった市販のプライマー選択プログラムの使用によって達成することができる(Nicklin M. H. J., Weith A. DuffG. W.,「A Physical Map of the Region Encompassing the Human Interleukin− 1.alpha., Interleukin − 1.beta., and Interleukin 1 Receptor Antagonist Genes」Genomics 19;382 (1995);Nothwang H. G., et al.「Molecular Cloning of the Interleukin −1 gene Cluster;Construction of an Integrated YAC/PAC Contig and a partial transcriptional Map in the Region of Chromosome 2q13」Genomics 41;370(1997);Clark, et al. (1986) Nucl. Acids. Res., 14;7897−7914 [正誤表はNucleic Acids Res., 15;868 (1987) 、およびURL:http://www. gdb.orgのゲノムデータベース(GDB)プロジェクトも参照)。
キットでの使用のためには、オリゴヌクレオチドはたとえば合成オリゴヌクレオチド、制限断片、cDNA、合成ペプチド核酸(PNA)、などといったさまざまな天然および/または合成の組成の任意のものでありうる。分析キットおよび方法はまた、分析における同定を容易にするため、標識オリゴヌクレオチドを用いることができる。使用することのできる標識の例は、放射性標識、酵素、蛍光化合物、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン、磁性部分、金属結合部分、抗原または抗体部分、などを含む。
キットは、随意的に、DNAサンプリング手段を含むこともできる。DNAサンプリング手段は当業者によく知られており、たとえば濾紙、AmpliCard(商標)(University of Sheffield, Sheffield, England S10 2JF;Tarlow, J W, et al., J of Invest. Dermatol. 103;387−389 (1994)) など;Nucleon(商標)キット、細胞溶解緩衝液、プロテイナーゼ溶液などといったDNA精製試薬;10X反応緩衝液、熱安定ポリメラーゼ、dNTPs、などといったPCR試薬;およびHinfI制限酵素、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド、乾燥血液由来のnestedPCR用縮重オリゴヌクレオチドプライマーなどといった対立遺伝子検出法を含みうるがこれらに限定されない。
4.薬理ゲノム学
疾患または状態を発症する感受性と関連する特定の対立遺伝子の知識は、単独でまたはその特定の疾患または状態に寄与する他の遺伝子欠陥についての情報と併せて、「薬理ゲノム学」の目標である個体の遺伝子プロファイルに基づいた予防または治療のオーダーメイドを可能にする。したがって、対象者のIL−1プロファイルを血管疾患についての人口のプロファイルと比較することは、特定の患者または患者集団(すなわち、同一の遺伝子変化を有する患者の群)に対して安全で有効であることが予期される薬物または他の治療計画の選択または設計を可能にする。
さらに、遺伝子プロファイルに基づいて、最大の臨床上の利益を示すことが予期される集団を標的にする能力は、1)既発医薬の再位置づけ;2)患者の部分集団に特異的な安全性または有効性の限界の結果として臨床開発が中断された医薬候補の救済;および3)医薬候補のより速やかなより費用のかからない開発とより最適な医薬標示(たとえば、物質のさまざまな用量が原因突然変異に及ぼす影響を測定することは有効量を最適化するために有用であるため):を可能にすることができる。
ある人の特定の治療薬を用いた治療は、タンパク質(たとえばIL−1α、IL−1β、またはIL−IRa)、mRNAおよび/または転写レベルを測定することによって監視することができる。検出されたレベルに応じて、治療計画をその後維持したり調整したりすることができる(用量を増加または減少させる)。好ましい一実施形態では、対象をある薬剤で治療することの有効性は、(i)その薬剤の投与前に対象者から投与前検体を採取すること;(ii)投与前検体中のタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの濃度または量を検出すること;(iii)対象者から一個以上の投与後検体を採取すること;(iv)投与後検体中のタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの発現または活性のレベルを検出すること;(v)投与前検体中のタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの発現または活性のレベルを投与後検体中の対応するタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAとそれぞれ比較すること;および(vi)対象者への当該薬剤の投与をそれに応じて変化させること:の段階を含む。
治療薬の投与前後に対象者の細胞を採取し、IL−1遺伝子以外の遺伝子の発現のレベルを検出して、有害でありうる遺伝子の発現をその治療薬が上昇も低下もさせないことを確認することもできる。このことは、たとえば、転写プロファイリングの方法を用いて行うことができる。このように、治療薬にin vivoで曝露された細胞に由来するmRNAと、その治療薬に曝露されていない同じ型の細胞に由来するmRNAを逆転写して、多数の遺伝子に由来するDNAを含むチップとハイブリダイズさせ、それによってその治療薬で処理したかまたは処理されていない細胞における遺伝子の発現を比較することができる。
5.IL−1多型に関連する疾患および状態のための治療薬
IL−1多型またはハプロタイプに関連する疾患および状態の治療法とは、対象者におけるその特定の疾患または状態の症状を防ぐかまたは発症を延期するかまたは緩和する、任意の物質または治療計画をいう(医薬、栄養補助食品および外科的手段を含む)。治療薬は、ポリペプチド、ペプチドミメティック、核酸、または他の無機または有機分子であることができ、好ましくはビタミン、ミネラル、その他の栄養素を含む「小分子」である。好ましくは、治療薬はIL−1ポリペプチドの少なくとも1種類の活性、たとえば、受容体との相互作用を、天然に存在するポリペプチドの効果を模倣または増強(作用)または阻害(拮抗)することによって調節することができる。アゴニストは、野生型の生物活性の少なくとも一つ、たとえば受容体結合活性、を有する野生型タンパク質またはその誘導体でありうる。アゴニストはまた、遺伝子の発現をアップレギュレートするかまたはタンパク質の少なくとも1種類の生物活性を上昇させる化合物でありうる。アゴニストはまた、たとえば受容体といった他の分子とポリペプチドとの相互作用を増大させる化合物でありうる。アンタゴニストは、たとえば受容体、またはシグナル伝達あるいは翻訳後修飾を阻害する物質といった他の分子とタンパク質との相互作用を阻害または減少させる化合物(たとえば、IL−1変換酵素(ICE)阻害因子)でありうる。したがって、好ましいアンタゴニストは受容体への結合を阻害または減少させそれによって以降の受容体活性化を阻害する化合物である。アンタゴニストはまた、遺伝子の発現をダウンレギュレートするかまたは存在するタンパク質の量を減少させる化合物でありうる。アンタゴニストはポリペプチドの優性阻害型、たとえば、受容体のような標的ペプチドと相互作用することができるが、受容体の活性化を促進しない、ポリペプチドの一種でありうる。アンタゴニストはまた、ポリペプチドの優性阻害型をコードする核酸、アンチセンス核酸、またはRNAと特異的に相互作用することのできるリボザイムでありうる。さらに他のアンタゴニストはポリペプチドと結合しその作用を阻害する分子である。そのような分子は、たとえば、生物学的活性を持たない、受容体への結合を阻害する型の標的ペプチドといったペプチドを含む。このように、そうしたペプチドはタンパク質の活性部位に結合し、標的ペプチドと相互作用するのを阻害する。さらに他のアンタゴニストは、分子の抗原決定基と特異的に相互作用し、結合がそのポリペプチドの生物学的機能に干渉する抗体を含む。さらに他の好ましい一実施形態では、アンタゴニストはポリペプチドと標的受容体との間の相互作用を阻害することのできる分子のような小分子である。あるいは、その小分子は受容体結合部位以外の部位と相互作用することによってアンタゴニストとして機能することができる。
IL−1の調節因子(たとえばIL−1α、IL−1βまたはIL−1受容体アンタゴニスト)またはIL−1遺伝子と連鎖不平衡にある遺伝子にコードされるタンパク質は、タンパク質、ペプチド、ペプチドミメティック、小分子、核酸を含む任意の種類の化合物を含みうる。好ましいアゴニストは、核酸(たとえば、IL−1タンパク質かまたは、IL−1タンパク質にアップまたはダウンレギュレートされる遺伝子をコードする)、タンパク質(たとえばIL−1タンパク質またはそれによってアップまたはダウンレギュレートされるタンパク質)または小分子(たとえばIL−1タンパク質の発現または結合を調節する)を含む。好ましいアンタゴニストは、たとえばここに記載の分析法によって同定することができ、核酸(たとえば一本鎖(アンチセンス)または二本鎖(三重鎖)DNAまたはRNAおよびリボザイム)、タンパク質(たとえば抗体)および、IL−1転写および/またはタンパク質活性を抑制または阻害するように作用する小分子を含む。
6.有効量および処方および用途
そのような化合物の毒性および治療上の有効性は、培養細胞または実験動物において、たとえばLD50(集団の50%に致死的である量)およびEd50(集団の50%に治療的に有効である用量)を測定するための、標準的な薬学上の手順によって測定することができる。毒性効果と治療的効果との間の用量比が治療指数であり、それはLD50/ED50の比で表すことができる。大きな治療係数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物が使用されうる一方、未感染の細胞に対する損傷の可能性を最小化し、それによって副作用を低減するため、そのような化合物を患部組織の部位へターゲッティングする送達系の設計を念入りに行うべきである。
細胞培養分析および動物試験から得られたデータは、ヒトにおける使用のためのさまざまな投与量を処方するのに用いることができる。そのような化合物の投与量は、好ましくはED50を含み毒性をわずかしかまたは全く有しない循環濃度の範囲内にある。投与量はこの範囲内で、使用する剤形および利用する投与経路によって変化させることができる。本発明の方法に用いられる任意の化合物について、治療上の有効量は、最初は細胞培養分析から推定することができる。用量は、培養細胞で測定されたIC50(すなわち、症状の最大値の半分の阻害が達成される被験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、モデル動物において処方することができる。そのような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために用いることができる。血漿中濃度は、たとえば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
本発明に基づく用途のための組成物は、一個以上の生理学的に受容しうる担体または添加物を用いて、従来の方法で処方することができる。このように、化合物およびその生理学的に受容しうる塩と溶媒和物は、たとえば、注射、吸入または通気(口または鼻のいずれかを通して)または経口、舌下、非経口または直腸適用による投与のために処方することができる。
そのような治療法のために、本発明の化合物は、全身および局所および限局性投与を含むさまざまな投与量のために処方することができる。技術および処方は一般的にRemmington's Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co., Easton, Paに見出すことができる。全身投与には、筋肉内、静脈内、腹腔内、および皮下を含む注射が好ましい。注射のためには、本発明の化合物は、好ましくはたとえばハンク液またはリンガー液のような生理学的に適合する緩衝液中の溶液に処方することができる。さらに、化合物は固体の形に処方し使用直前に再溶解するかまたは懸濁することができる。凍結乾燥形態もまた含まれる。
経口投与用には、当該組成物はたとえば、結合剤(たとえば、ゼラチン化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(たとえば、乳糖、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(たとえば、ジャガイモデンプンまたはカルボキシメチルスターチナトリウム);または湿潤剤(たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム)といった医薬品として受容できる添加物を用いて従来の方法によって錠剤またはカプセルの形状を取ることができる。錠剤は当該分野でよく知られている方法によってコーティングすることができる。経口投与用の液体製剤は、たとえば、溶液、シロップまたは懸濁液の形を取ることができ、あるいは使用前に水または他の適当な賦形剤で構成するための乾燥製品として与えることができる。そのような液体製剤は、懸濁剤(たとえば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素添加食用脂);乳化剤(たとえば、レシチンまたはアラビアゴム);非水系賦形剤(たとえば、ationd oil、油状エステル、エチルアルコールまたは分画植物油);および保存料(たとえば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸塩またはソルビン酸)といった医薬品として受容できる添加物と共に従来の方法によって調製することができる。当該調製物はまた緩衝塩、香料、着色料、および甘味料を必要に応じて含むことができる。
経口投与用の調製物は活性化合物の徐放を与えるよう適当に処方することができる。舌下投与用には当該組成物は従来の方法で処方された錠剤またはトローチ剤の形を取ることができる。吸入による投与用には、本発明に記載の使用のための化合物は、適当な噴射剤、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当な気体を用いて、加圧包装またはネブライザーからエアロゾルスプレー製剤の形で便利に送達することができる。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量した量を送達するためにバルブを提供することによって決定することができる。吸入器または送気器で使用するためのたとえばゼラチンなどのカプセルまたはカートリッジは、当該化合物の粉末混合物およびたとえば乳糖やデンプンのような適当な粉末基剤を含めて処方することができる。
当該化合物は、たとえばボーラス注射または連続注入のような、注射による非経口投与用に処方することができる。注射用処方は単位投与量剤形で、たとえばアンプルでまたは多回投与容器で、保存料を添加して、提供することができる。当該組成物はたとえば懸濁液、溶液または、油性または水性賦形剤中のエマルションといった形を取ることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤といった添加物を含むことができる。あるいは、有効成分は、たとえば使用前に滅菌パイロジェンフリー水のような適当な賦形剤で構成するための粉末の形であることができる。
当該化合物はまた、たとえばココアバターまたは他のグリセリドのような従来の座剤基剤を含む、たとえば座剤または保留浣腸剤のような直腸用組成物として処方することもできる。
前述した処方に加えて、当該化合物はまたデポ剤として処方することができる。そのような長期に作用する処方は、埋め込み(たとえば皮下にまたは筋肉内に)または筋肉内注射によって投与することができる。このように、たとえば、当該化合物は適当な高分子または疎水性材料(たとえば受容しうる油中のエマルションとして)またはイオン交換樹脂と共に、または、やや溶けにくい塩のようなやや溶けにくい誘導体として、処方することができる。他の適当な送達系は、長期にわたる医薬の局所非侵襲送達の可能性を提供するマイクロスフィアを含む。この技術は、冠カテーテルを経由してたとえば心臓またはその他の器官の任意の選択部分へ、炎症または虚血を引き起こすことなく注入することのできる、前毛細管サイズのマイクロスフィアを利用する。投与された治療薬はこれらのマイクロスフィアから徐々に放出され、周囲の組織細胞(たとえば内皮細胞)によって取り込まれる。
全身投与もまた経粘膜的または経皮的手段によることができる。経粘膜投与または経皮投与用には、浸透すべきバリアに対して適当な浸透剤が処方に用いられる。そのような浸透剤は一般的に当該分野で既知であり、たとえば、経粘膜投与用には胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を含む。さらに、浸透を促進するために界面活性剤を使用することができる。経粘膜投与はスプレー式点鼻薬を通じてかまたは座剤を用いることができる。局所投与用には、本発明のオリゴマーは、一般的に当該分野で既知である通り、軟膏、膏剤、ゲル、またはクリームに処方される。外傷または炎症を治療して治癒を加速するために洗浄溶液を局所的に用いることができる。
当該組成物は、必要に応じて、活性成分の入った、一またはそれ以上の単位投与量剤形を含むことのできる包装またはディスペンサー器具で与えることができる。包装は、ブリスター包装のような、たとえば金属またはプラスチック箔を含むことができる。包装またはディスペンサー器具は、投与のための説明書を付けることができる。
7.治療薬を同定するための分析法
IL−1多型またはハプロタイプを伴う疾患または障害の発症を引き起こすかまたはそれに寄与する突然変異の同定に基づいて、本発明はさらに、治療薬を同定するために細胞系および無細胞系分析を取り上げる。一実施形態では、IL−1受容体、またはIL−1遺伝子と連鎖不平衡にある遺伝子によってコードされるタンパク質の受容体を、細胞膜の外表面上に発現している細胞を、被験化合物単独の存在下または被験化合物および別のタンパク質の存在下でインキュベートし、被験化合物と受容体の間、またはそのタンパク質(好ましくは標識タンパク質)と受容体との間の相互作用を、たとえばマイクロフィジオメーターを用いることによって検出する(McConnell et al. (1992) Science 257;1906)。受容体と、被験化合物またはタンパク質のどちらかとの間の相互作用は、マイクロフィジオメーターによって培地の酸性化の変化として検出される。この分析系はこのように、たとえばタンパク質−受容体相互作用に干渉することによって機能する分子アンタゴニスト、およびたとえば受容体を活性化することによって機能する分子アゴニストを同定する手段を提供する。
細胞系または無細胞系分析を用いて、IL−1遺伝子またはそれと連鎖不平衡にある遺伝子の発現を制御するか、mRNAの翻訳を調節するか、あるいはmRNAまたはタンパク質の安定性を調節する化合物を同定することができる。その結果、一実施形態では、IL−1、または他のタンパク質を産生することのできる細胞を被験化合物とインキュベートし、培地中に産生されたタンパク質の量を測定し、被験化合物と接触させていない細胞から産生された量と比較する。そのタンパク質に対する当該化合物の特異性は、さまざまな対照分析、たとえば、一個以上の対照遺伝子の発現を測定することによって確認できる。特に、この分析法はアンチセンス、リボザイムおよび三重鎖化合物の有効性を測定するために用いることができる。
無細胞系分析もまた、タンパク質と相互作用しそれによって当該タンパク質の活性を修飾する能力のある化合物を同定するのに用いることができる。そのような化合物は、たとえば、タンパク質の構造を修飾しそれによって当該タンパク質が受容体に結合する能力に影響を与えることができる。好ましい一実施形態では、そのような化合物を同定するための無細胞系分析は、本質的に、結合パートナーの存在下または非存在下でタンパク質および被験化合物または被験化合物のライブラリを含む反応混合物にある。被験化合物は、たとえば、生物学的に不活性な標的ペプチドのような結合パートナーの誘導体、または小分子であることができる。
したがって、本発明の典型的なスクリーニング分析の一つは、タンパク質またはその機能性断片を被験化合物または被験化合物のライブラリと接触させ複合体の形成を検出する段階を含む。検出のために、分子は特定のマーカーで標識することができ被験化合物または被験化合物のライブラリは別のマーカーで標識することができる。次いで被験化合物とタンパク質またはその断片との相互作用を、インキュベート段階と洗浄段階の後に、2種類の標識の濃度を測定することによって検出することができる。洗浄段階後の2種類の標識の存在は相互作用の指標となる。
分子間の相互作用もまた、光学現象である表面プラズモン共鳴(SFR)を検出するリアルタイムBIA(生物分子相互作用分析、Pharmacia Biosensor AB)を用いることによって識別することができる。検出は生体特異的インターフェイスにおける巨大分子の質量濃度の変化に依存し、反応体の標識を必要としない。一実施形態では、被験化合物のライブラリを、たとえばマイクロフローセルの一面を形成するセンサー表面上に固定化することができる。タンパク質またはその機能性断片を含む溶液を次いで連続的にセンサー表面上に流す。シグナル記録上に示される共鳴角の変化が、相互作用が起こったことを示す。この技術は、たとえばPharmaciaのBIAtechnology Handbookにさらに記載されている。
本発明のもう一つの典型的なスクリーニング分析は、(a)(i)IL−1または他のタンパク質、(ii)適当な受容体、および(iii)被験化合物:を含む反応混合物を作る;そして(b)タンパク質と受容体の相互作用を検出する段階を含む。被験化合物の存在下でのタンパク質と受容体の相互作用における統計的に有意な変化(増強または阻害)は、被験化合物の非存在下での相互作用と比較して、被験化合物についてアンタゴニスト(阻害因子)の可能性を示す。この分析の化合物は同時に接触させることができる。あるいは、タンパク質を適当な長さの時間被験化合物と最初に接触させ、次いで受容体を反応混合物に添加することができる。化合物の有効性は、さまざまな濃度の被験化合物を用いて得られたデータから用量反応曲線を作成することによって評価することができる。さらに、比較のためのベースラインを提供する対照分析も実施することができる。
タンパク質と受容体との間の複合体形成はさまざまな方法によって検出することができる。複合体の形成の調節は、たとえば、放射性標識、蛍光標識、または酵素標識されたタンパク質または受容体といった検出可能に標識されたタンパク質を用いて、イムノアッセイによって、またはクロマトグラフィー検出によって定量することができる。
典型的には、タンパク質または受容体のいずれかを固定化することが、それらのタンパク質の一方または両方の非複合型から複合体の分離を促進するため、および分析の自動化に対応させるためには望ましい。タンパク質と受容体の結合は、反応物を閉じ込めるのに適当な任意の容器内で達成することができる。例は、マイクロタイタープレート、試験管、および超遠心チューブを含む。一実施形態では、タンパク質がマトリクスに結合するのを可能にする領域を付加する融合タンパク質を与えることができる。たとえば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質はグルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, Mo.)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着させることができ、それを次いでたとえば35S−標識受容体のような受容体、および被験化合物と結合させ、複合体形成を招く条件下で、たとえば塩およびpHについて生理学的条件で、わずかにそれより厳しい条件が望ましいが、混合物をインキュベートする。インキュベート後、ビーズを洗浄して結合していない標識を除去し、固定化したマトリクスおよび放射性標識を直接測定する(たとえばビーズをシンチレーション液に入れる)かまたは続いて複合体を解離させ上清中について測定する。あるいは、複合体をマトリクスから解離させ、SDS−PAGEによって分離し、ビーズ画分中に見られるタンパク質または受容体の濃度を、付属の実施例に記載のような標準的電気泳動技術を用いてゲルから定量することができる。タンパク質をマトリクス上に固定化する他の方法もまた本分析に利用することができる。たとえば、ビオチンとストレプトアビジンの結合を利用してタンパク質または受容体のいずれかを固定化することができる。遺伝子導入動物を作製して、アゴニストおよびアンタゴニストを同定するかまたは、治療薬候補の安全性と有効性を確認することもできる。本発明の遺伝子導入動物は、適当な内因性プロモーターの調節下にあるかまたは異種プロモーターの調節下にある再狭窄原因突然変異を有する非ヒト動物を含むことができる。
遺伝子導入動物はまた、適当なプロモーターまたはその断片の調節下にある、レポーター遺伝子のような導入遺伝子を含む動物であることができる。これらの動物は、たとえば、遺伝子発現を調節することによってIL−1タンパク質の産生を調節するような薬物を同定するのに有用である。遺伝子導入非ヒト動物を得る方法は当該分野でよく知られている。好ましい実施形態では、再狭窄原因突然変異の発現は、たとえば目的のパターンにおいて発現を調節するシス作用配列を利用して、細胞、組織または発生段階の特定の部分集合に限られている。本発明では、タンパク質のそのようなモザイク発現は多くの種類の系譜分析に必須となる可能性があり、また加えてたとえば、他の面では正常な胚の中の組織の小さな区画において発生を大きく変化させうる発現レベルの影響を評価する手段を提供しうる。このような目的で、ある空間的パターンにおいて突然変異の発現を調節するために、組織特異的調節配列および条件的調節配列を用いることができる。さらに、発現の一時的パターンを、たとえば、条件的組み換え系または原核細胞転写調節配列によって提供することができる。遺伝子技術は、in vivoの部位特異的遺伝子操作を介して突然変異の発現が調節されうることを可能にし、当該分野の熟練者に既知である。
本発明の遺伝子導入動物はすべて、複数の細胞内に本発明の原因突然変異導入遺伝子を含み、その導入遺伝子は「宿主細胞」の表現型を変化させる。説明のための実施形態において、バクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼ系(Lakso et al. (1992) PNAS 89;6232−6236;Orban et al. (1992) PNAS 89;6861−6865)またはSaccharomyces cerevisiaeのFLPリコンビナーゼ系(O'Gorman et al. (1991) Science 251;1351−1355;国際公開第92/15694号明細書)のいずれかを用いてin vivo部位特異的遺伝子組み換え系を作製することができる。Creリコンビナーゼは、loxP配列の間に位置する介在する標的配列の部位特異的組み換えを触媒する。loxP配列はCreリコンビナーゼが結合する34塩基対ヌクレオチド反復配列であり、Creリコンビナーゼに媒介される遺伝子組み換えに必要である。loxP配列の向きは、Creリコンビナーゼが存在する場合に介在する標的配列が切り取られるか反転するかを決定する(Abremski et al.(1 984)J Biol. Chem.259;1 509−1 5 1 4);loxP配列が順方向反復の向きである場合は標的配列の切り取りを触媒し、loxP配列が逆方向反復の向きである場合は標的配列の反転を触媒する。
したがって、標的配列の遺伝子組み換えはCreリコンビナーゼの発現に依存する。当該リコンビナーゼの発現は、たとえば組織特異的、発生段階特異的、外部から添加された物質によって誘導可能または抑制可能な、調節的制御を受けるプロモーター配列によって調節することができる。この調節された制御は、リコンビナーゼ発現が当該プロモーター配列によって媒介される細胞においてのみ標的配列の遺伝子組み換えを結果として生じる。このように原因突然変異導入遺伝子の発現の活性化は、リコンビナーゼ発現の制御を介して調節することができる。
原因突然変異導入遺伝子の発現を調節するためのcre/loxPリコンビナーゼ系の使用は、Creリコンビナーゼと対象タンパク質の両方をコードする導入遺伝子を含む遺伝子導入動物の作製を必要とする。Creリコンビナーゼおよび再狭窄原因突然変異導入遺伝子の両方を含む動物は、「二重」遺伝子導入動物の作製を通じて提供することができる。そのような動物を提供する便利な方法は、それぞれ一つの導入遺伝子を含む2種類の遺伝子導入動物を交配することである。
同様の条件的導入遺伝子は、導入遺伝子の発現を促進するために原核細胞タンパク質が同時に発現することを必要とする原核細胞プロモーター配列を用いて提供することができる。典型的なプロモーターおよび対応する転写促進原核細胞タンパク質が米国特許第4,833,080号明細書で与えられている。
さらに、条件的導入遺伝子の発現は、たとえばリコンビナーゼまたは原核細胞タンパク質のような転写促進タンパク質をコードする遺伝子が、たとえば細胞型特異的な方法で組織へ送達され発現させられる、遺伝子療法的な方法によって誘導することができる。この方法によって、転写活性化因子の導入によって「スイッチが入る」まで、導入遺伝子は成体になるまでサイレントのままに留まることができる。
典型的な一実施形態では、本発明の「遺伝子導入非ヒト動物」は、非ヒト動物の生殖細胞系列に導入遺伝子を導入することによって作製される。さまざまな発生段階にある胚の標的細胞を、導入遺伝子を導入するのに用いることができる。胚の標的細胞の発生段階によってさまざまな方法が用いられる。本発明を実施するために用いられる任意の動物の特定の系統は、良好な全身の健康、良好な胚収率、胚の中で前核がよく見えること、および良好な繁殖適性について選択される。さらに、ハプロタイプは重要な要因である。たとえば、遺伝子導入マウスを作製する場合、C57BL/6またはFVB系といった系統がしばしば用いられる(Jackson Laboratory, Bar Harbor, Me.)。好ましい系統は、C57BL/6またはDBA/1のようにH−2b、H−2dまたはH−2qハプロタイプを持つものである。本発明を実施するために用いられる系統は、それ自体が遺伝子導入動物であることができ、および/またはノックアウト動物(すなわち、一個以上の遺伝子を部分的にまたは完全に抑制された動物から得られた)であることができる。
一実施形態では、導入遺伝子構造は一細胞期胚に導入される。接合子はマイクロインジェクションのための最適の標的である。マウスでは、雄性前核は直径約20マイクロメートルの大きさに達し、DNA溶液1〜2pLの再現性のある注入を可能にする。遺伝子導入の標的としての接合子の使用は、ほとんどの場合で注入されたDNAは最初の分裂の前に宿主遺伝子に組み込まれるという大きな長所を有する(Brinster et al. (1985) PNAS 82;4438−4442)。結果として、その遺伝子導入動物のすべての細胞が、組み込まれた導入遺伝子を持つことになる。生殖細胞の50%が導入遺伝子を持つようになるため、このことはまた一般に、創始者の子孫への導入遺伝子の効率的な伝達にも反映される。
通常、受精した胚は前核が現れるまで適当な培地中でインキュベートされる。この頃に、導入遺伝子を含むヌクレオチド配列が雌性または雄性前核に下記の通り導入される。マウスのような一部の種では、雄性前核が好ましい。外因性遺伝物質は、接合子の雄性DNA補集合に、それが卵核または接合子の雌性前核によって処理される前に加えるのが非常に好ましい。卵核または雌性前核は、おそらく雄性DNAのプロタミンをヒストンに交換することによって、雄性DNA補集合に影響を与える分子を放出し、それによって雌性および雄性DNA補集合が結合して2倍体接合子を形成するのを促進すると考えられている。このように、外因性遺伝物質は、DNAの雄性補集合またはDNAの任意の他の補集合へ、それが雌性前核に影響を受ける前に添加されるのが好ましい。たとえば、外因性遺伝物質は雄性前核の形成後できるだけ早く、初期雄性前核に添加され、その時は雄性および雌性前核がよく分離していて両方とも細胞膜の近くに位置する。あるいは、外因性遺伝物質は、精子の核に、それが脱凝縮するよう誘導された後に、添加することができる。外因性遺伝物質を含む精子はその後卵子に加えることができ、またはその脱凝縮した精子は導入遺伝子構造を加えられその後できるだけ早く卵子に加えることができる。
導入遺伝子ヌクレオチド配列の胚への導入は、たとえば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、またはリポフェクションといった、当該分野で既知の任意の方法によって達成することができる。導入遺伝子ヌクレオチド配列の胚への導入後、胚はさまざまな長さの時間in vitroでインキュベートでき、または代理母に再移植することができ、またはその両方である。満期までのin vitro培養も本発明の範囲内である。一つの一般的方法は、胚をin vitroで、種によって約1〜7日間インキュベートし、次いでそれらを代理母に再移植することである。
本発明の目的のためには、接合子は本質的に、完全な生物体に発生する能力を有する二倍体細胞の形成である。一般に、接合子は一個の配偶子または複数個の配偶子に由来する二個の半数体核の融合によって、自然にまたは人工的に形成された核を含む卵から成る。このように、配偶子核は自然に適合するもの、すなわち、分化して機能する生物体に発生する能力を有する、生存力のある接合子を生じるものでなければならない。一般に、正倍数性の接合子が好ましい。異数性の接合子が得られた場合は、染色体の数はどちらか一方の配偶子が由来する生物の正倍数に関して1より大きく異なるべきでない。
同様の生物学的検討事項に加えて、物理的検討事項もまた、接合子の核にまたは接合子核の一部を形成する遺伝物質に加えることのできる外因性遺伝物質の量(たとえば、容積)を支配する。遺伝物質が除去されない場合、加えることのできる外因性遺伝物質の量は、物理的に破壊を起こさせずに吸収される量によって制限される。一般に、挿入される外因性遺伝物質の容積は、約10ピコリットルを超えない。添加の物理的影響は、接合子の生存能力を物理的に破壊するほど大きくてはならない。結果として生じる接合子の遺伝物質は、外因性遺伝物質を含め、機能する生物への接合子の分化および発生を開始および維持する能力を生物学的に有しなければならないため、DNA配列の数および種類の生物学的限界は、その特定の接合子および外因性遺伝物質の機能に依存して変化し、また当該分野の熟練者には容易に明らかとなる。
接合子に加えられた導入遺伝子構造のコピー数は、加えられた外因性遺伝物質の総量に依存し、形質転換が起こることが可能な量となる。理論的には一コピーだけが必要である;しかし一般に、一つのコピーが機能することを保証するために、たとえば導入遺伝子構造の1,000〜20,000コピーといった多数のコピーが使用される。本発明に関しては、外因性DNA配列の表現型発現を促進するためには、挿入された外因性DNA配列のそれぞれの機能するコピーを一より多く有することの利点がしばしばある。
外因性遺伝物質の核遺伝物質への添加を可能にする任意の方法を、それが細胞、核膜または他の既存の細胞構造または遺伝子構造にとって破壊的でない限り利用することができる。外因性遺伝物質は、マイクロインジェクションによって優先的に核遺伝物質に挿入される。細胞および細胞構造のマイクロインジェクションは当該分野で既知であり使用されている。
再移植は標準的方法を用いて達成される。通常は、代理母は麻酔し、胚は卵管に挿入される。特定の代理母に移植する胚の数は種によって異なるが、通常はその種が自然に生じる産仔数に相当する。
代理母の遺伝子導入した子は、導入遺伝子の存在および/または発現について任意の適当な方法によってスクリーニングすることができる。スクリーニングはしばしば、導入遺伝子の少なくとも一部と相補的なプローブを用いてサザンブロットまたはノーザンブロット分析によって達成される。導入遺伝子によってコードされたタンパク質に対する抗体を用いたウェスタンブロット分析を、導入遺伝子産物の存在についてのスクリーニングに、代替または追加の方法として用いることができる。典型的には、DNAは尾部組織から調製され、導入遺伝子についてサザン分析またはPCRで分析される。あるいは、この分析には任意の組織または細胞型を用いることができるが、導入遺伝子を最高のレベルで発現すると信じられている組織または細胞が、導入遺伝子の存在および発現についてサザン分析またはPCRを用いて分析される。
導入遺伝子の存在について評価するための代替または追加の方法は、制限無しに、酵素および/または免疫学的分析といった適当な生化学分析、特定のマーカーまたは酵素活性についての組織学的染色、フローサイトメトリー分析、などを含む。血液中の導入遺伝子産物の存在を検出するため、およびさまざまな種類の血球細胞および他の血液成分の濃度に及ぼす導入遺伝子の影響を評価するために、血液の分析もまた有用でありうる。
遺伝子導入動物を適当なパートナーと交配することによって、または遺伝子導入動物から得られた卵および/または精子のin vitro受精によって、遺伝子導入動物の子孫を得ることができる。パートナーとの交配を実施する場合は、パートナーは遺伝子導入および/またはノックアウト動物であってもなくてもよい;遺伝子導入動物である場合は、同一かまたは異なる導入遺伝子、または両方を含みうる。あるいは、パートナーは親系統であることができる。in vitro受精が用いられる場合、受精胚は代理母に移植するかまたはin vitroで培養するか、または両方であることができる。いずれかの方法を用いて、子孫は導入遺伝子の存在について上記の方法または他の適当な方法を用いて評価することができる。
本発明に従って作製された遺伝子導入動物は外因性遺伝物質を含む。さらに、そのような実施形態では、配列は、たとえば好ましくは導入遺伝子産物の発現を特定の種類の細胞で可能にする、転写調節配列たとえばプロモーターと結合される。
レトロウイルス感染もまた、導入遺伝子を非ヒト動物に導入するために用いることができる。発生中の非ヒト胚はin vitroで胚盤胞期まで培養することができる。この間に、割球はレトロウイルス感染の標的となることができる(Jaenich, R. (1976) PNAS 73;1260−1264)。割球の効率的な感染は、透明体を取り除く酵素的処理によって得られる(Manipulating the Mouse Embryo, Hogan eds. (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, 1986)。導入遺伝子を導入するのに用いられるウイルスベクター系は典型的には、導入遺伝子を有する非増殖型レトロウイルスである(Jahner et al. (1985) PNAS 82;6927−6931;Van der Putten et al. (1985) PNAS 82;6148−6152)。割球をウイルス産生細胞の単層上で培養することによって、遺伝子導入は容易にかつ効率的に得られる(Van der Putten, 前出;Stewart et al. (1987) EMBO J 6;383−388)。あるいは、感染はより後期で実施することができる。ウイルスまたはウイルス産生細胞は、胞胚腔に注入することができる(Jahner et al. (1 982) Nature 298;623−628)。遺伝子導入非ヒト動物を形成する細胞の部分集団においてのみ組み込みが起こるため、創始者の大部分は導入遺伝子に関してモザイクとなる。さらに、創始者は、導入遺伝子のさまざまなレトロウイルス挿入を、一般的に子孫で分離するゲノム中のさまざまな位置に含みうる。加えて、妊娠中の胚の子宮内レトロウイルス感染によって生殖細胞系に導入遺伝子を導入することもまた可能である(Jahner et al. (1982)前出)。
導入遺伝子導入のための別の種類の標的細胞は胚性幹細胞(ES)である。ES細胞はin vitroで培養された移植前胚から得られ、胚と融合される(Evans et al. (1981) Nature 292;154−156;Bradley et al. (1984) Nature 309;255 258;Gossler et al. (1986) PNAS 83;9065−9069;およびRobertson et al. (1986) Nature 322;445−448)。導入遺伝子は、DNA遺伝子導入によってまたはレトロウイルス媒介形質導入によって効率的にES細胞に導入することができる。そのような形質転換ES細胞は、その後非ヒト動物由来の胚盤胞と一体化させることができる。ES細胞はその後、胚にコロニーを形成し、結果として生じるキメラ動物の生殖細胞系に寄与する。総説はJaenisch, R. (1988) Science 240;1468−1474を参照。
本発明は、いかなる方法でも制限的と理解されるべきでない以下の実施例によってさらに説明される。引用されたすべての参考文献の内容は(本明細書の全体にわたって引用された参照文献、発行済み特許、公開特許公報を含む)ここに明示的に参照によって開示に含まれる。本発明の実施は、別に指定されない限り、当該分野の技術の範囲である従来技術を使用する。そのような技術は文献に完全に説明されている。たとえば、Molecular Cloning A Laboratory Manual, (2nd ed., Sambrook, Fritsch and Maniatis, eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press;1 989);DNA Cloning, Volumes I and II (D. N. Glover ed., 1985);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed., 1984);米国特許第4,683,195号明細書;米国特許第4,683,202号明細書;およびNucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds., 1984)を参照。
下記の実施例は、本発明の好ましい実施形態をさらに裏付けるが単独で代表しない。
実施例1:IL−1遺伝子座マッピングと特徴づけ
IL−1折りたたみを有するタンパク質をコードする6つの新規遺伝子が同定されている。古典的ファミリーが炎症性シグナル伝達に関与している。クローン利用のおよび放射ハイブリッドマッピングは、6つ全部の新規遺伝子を、3つの元の遺伝子ファミリーメンバー(IL1A、IL1B、IL1RN)と同じクラスターの近傍またはその中に第2染色体上の〜400kb区間に位置づけている。我々は不完全な公開データベース配列を我々の配列と組み合わせ、新規遺伝子のすべてを包含する参照配列およびマップを作製しており、遺伝子構造の決定、エキソンの正確な局在化、および従来のSNPとマイクロサテライトマーカーとの間の距離の決定を可能にしている。動原体からテロメアへの遺伝子の順序はIL1A−IL1B−IL1F7−IL1F9−IL1F6−IL1F8−IL1F5−IL1F10−IL1RNであって、うちIL1A、IL1B、およびIL1F8だけが動原体に向かって転写される。遺伝子の順序は、遺伝子間の進化上の関係に関連する。エキソン境界の重要な特性は保存されている。当該遺伝子群内には他のIL−1ファミリーメンバーの証拠は無い。
近年、IL−1受容体関連タンパク質2(IL−1Rrp2,遺伝子IL1RL2)として知られる、IL−1R1と最も近縁の受容体が、IL−1F9に対する反応性を遺伝子導入細胞に与えること、およびその反応が、IL−1raに非常に近く類似しているIL−1F5によって非常に効果的に阻害されることが示された。IL−1F5との相互作用は親和性が高いように見える。1L−1F5と1L−1F9の両方は上皮に相対的に多く、またそれらはこの特定の区画における炎症の調節に役割を果たすことが示唆されている。それ以外の遺伝子の機能は不明であるが、低親和性相互作用がIL−1F7とIL−18R1の間(Pan et al., 2001)、およびIL−1F10とIL−1R1の間(Lin et al., 2001)に報告されている。IL−1ファミリーメンバーの生物学的役割は調査中であるが、mRNA発現はIL−1α、IL−1β、IL−1ra、およびIL−18で見られたよりも遥かに限られているように見える。したがって、新しいIL−1ファミリーメンバーの機能に関与する細胞型は、IL−1の場合より遥かに特化している可能性がある。
材料および方法
配列決定と配列組立
BACsは、パブリック・ドメイン中の部分配列にしたがって同定され(Lander et al., 200 1 )、IL1A、IL1B、IL1RN、およびIL1F5を含むとされ、それは以前に一つの遺伝子群にマッピングされていた(Nicklin et al., 1994;Notwang et al., 1996;Barton et al., 2000)。選択された6種類のBACsはRP11−1I24、RP11−477F18、RP11−554I7、RP11−368A17、RP11−434I13、RP11−67L14、RP11−725J3、RP11−339F22、RP11−97J14、およびRP11−65I12であった。公開データの大部分は未完であって、順序または方向の情報を含まなかった。個々のBACsの公開配列を互いに対して整列させることで、最低限の重なり情報を得た。その領域にわたって最低限に張られた足場を生成するために、7種類のBACが選択され(RP11−477F18、RP11−554I7、RP11−434I13、RP11−67L14、RP11−725J3、RP11−339F22、RP11−97J14)、カバー倍数3倍まで配列決定された。小さい挿入プラスミドクローン(~3500bp)が順方向と逆方向の両方に配列決定され、クローンを通じて対になった読みを与えた。PHREDおよびPHRAP(Ewing et al., 1998;Ewing and Green, 1998)を、7種類のBACsの塩基特定および組立に用いた。内部コンティグ観察ツールを用いて、結果として得られた組立を解析した。我々は、対になる読みが他のコンティグ末端と重なるコンティグ末端を合わせることによって、配列決定されたコンティグを並べた。この低いカバー倍数では、BACsは多数のコンティグに組み立てられたが、順序と方向は確立された。内部的に配列決定された7つのBACsと、外部的に完了した2つのBACs(RP11−1I24およびRP11−65I12)の公開データをGenbankから取り込んだ。さまざまなソフトウェアツールを用いて、内部、公開、および重なり配列を比較および整列し、すべての利用可能なデータにわたって順序および方向情報を与えた。コンティグをその後これらの整列から選択し、その領域にわたって可能な限り連続した配列を作成し、Sequencher(バージョン4.0.5)を用いて組み立てた。
配列整列とエキソン割り当て
プライマーおよびcDNA配列を、NCBIサーバー上で動作する2配列BLASTルーチン(Altschul et al., 1997)を用いてゲノム配列とマッチングした。エキソン整列は、HGMPサーバー(英国ケンブリッジ)上で動作するest2genomeルーチン(Mott, 1 997)を用いて行った。プログラムは共通エキソン境界を同定するように設定された。短いために同定できなかった5'エキソンは、共通スプライスドナージヌクレオチド(GT)で終止する最も近い対応する配列に手動で局在化した。非コード領域の3'末端をマッピングする試みは、mRNAサイズデータが大部分入手できないため、行わなかった。
結果
IL−1遺伝子群の配列
900キロベース領域は、内部および公開配列を組み合わせて、14個の順序づけられた連続した配列に組み立てられた。この配列のテロメア部分は、遺伝子PAX8を含む。続いて、コンティグの7つから構成される、計496kbのより短い領域がその領域から抽出された。公開データベースの最近のアップデートによって、我々は配列中の6つのギャップのうち5つを埋めることができた(図17参照)。我々は、本報告書に記載の通り、495475ヌクレオチドの注釈付き配列を公開データベース(登録番号***)に提出した。残りの1つのギャップ(図17の印付き「ギャップ」)はIL−1遺伝子群の動原体側である。その配列は完成品質のものではないが、完成配列の枠組みを提供し、またIL−1遺伝子群内のその遺伝子の構造を検討することができる。新しいマップは以前に公表されたマップと合致する(Nicklin et al., 1994;Nothwang et al., 1996)が、不完全な公開ゲノム組立プロジェクトとはかなり異なる(Lander et al., 2001)。
動原体に向かって最も近い同定された隣接する遺伝子はIL−1とは関係しない。それは形質膜リン酸輸送体SLC20A1(以前にテナガザル白血病ウイルス受容体、GLVR1、登録番号XM_002217ヒトホモログと同定された)であって、図1の原点の左の63kbと45kbの間にマッピングされる。その遺伝子群のテロメアに向かって、TIC(登録番号NM_012455)があり、それはAKF6選択性グアニンヌクレオチド交換因子である可能性が非常に高く(MN and Tomas Klenka, 原稿作成中)、テロメア側隣接配列にある。そのマップ位置は図17に示す。
遺伝子構造
我々はすべてのIL−1ファミリーcDNA配列をゲノム配列にマッピングしており(図17)、そこでは遺伝子の範囲が黒長方形で示されている。図17はIL−1遺伝子群のマップを示す。スケールバー(kb)がデータの上下にあり、整列を補助する。記載のデータのソースは上の3行で示される。「新規配列」はGenome Therapeuticsにて完全に決定された。「公開DB」はGenbankから取った配列を指す。「組み合わせ配列」はその2つのソースの組み合わせから組み立てられた。コンティグを表す棒の上に、以前に記載された多型マーカーの位置(Cox et al., 1996およびdi Giovine et al., 2000によって要約)が表示付き矢印で示されている。一つの空白のギャップもまた示されている。文中で定義されたCpGリッチ領域は「CpGr」と示されている。以前のマッピングで用いられた稀な切断制限酵素部位群の推定部位もまた「Xrec」、「Yrec?」、および「Zrec」と印が付けられている。図18のcDNA配列のコンティグ上へのマッピングの範囲は、灰色で印された非サイトカイン遺伝子TICを除き、コンティグ線の下の黒塗り長方形で示されている。CE1、CE2、およびCE3についてコード配列の位置は縦棒で示されている。遺伝子記号の前または後に転写の方向を示すV字形が付けられている。図17はさらにIL−1遺伝子群の詳細構造を示す。各遺伝子は動原体からテロメアへの順序で列挙されている。「遺伝子」はその遺伝子についての従来の遺伝子座名称。「方向」は、置かれた配列がセンス鎖である「順方向」かまたは、アンチセンスである「逆方向」である。「位置」は各エキソンに対応する置かれた配列上のヌクレオチド番号である。
cDNA配列が不完全であることが判っている場合、エキソンの推定延長は「<」および「>」の記号で印されている。「エキソン」は対応する転写物の一つのcDNAにおけるその存在に基づいて我々が各エキソンに割り当てる名称である;したがってIL1RNa4/b5/c6は、cDNAa(X52015)の4番目のエキソン、cDNAb(M55646)の5番目、およびcDNAcの6番目である。対応するmRNAsの同一性は合致している(**)。隣接する記入に対するアスタリスク(*)は、2つのエキソンが別のプロモーターの使用の結果としてスプライスドナー部位を共有することを示す。「エキソン境界」はイントロンに隣接するエキソンの内部の15ヌクレオチド配列である。どちらかの末端の省略(...)は、cDNA配列が短縮しているためエキソンが不完全である可能性があることを示す。「エキソン型」はそのエキソンのコード能力を示す;5'N、5'−非翻訳領域;5'SO、翻訳される可能性のある5'短オープンリーディングフレーム;Ps、ペプチド前配列(これが提案されていることを示す);cs、非保存コード配列;CE、保存エキソン;3'N、3'−非翻訳領域。省略は、エキソン割り当てがおそらく完全でないこと、および一部またはすべての非コード配列が抜けていることを示す。「コード」は各エキソンによってコードされるアミノ酸配列を示す。エキソンはそれが構成するcDNAの名称および登録番号(囲みの上に表示)によって特定される。各エキソンのコード容量を小文字で示す。斜体で示す残基は部分的に次のエキソン上にコードされる。上付き数字は記載のエキソンのコドン内に含まれる塩基の数を示す。その残基は次のエキソンから除外される。またがるコドン中のヌクレオチドは「エキソン境界」囲み中に斜体で示す。続くエキソンが選択的である場合、またがる残基は変化しうる。このことは括弧内に示す。下線の残基はエキソンの末端終止コドンからで、それらの コドンは「エキソン境界」囲み内で下線が引かれている。アスタリスクは翻訳終止を示す。ILAは最も動原体側の遺伝子であって、隣接する遺伝子であるIL1Bと同様に、動原体に向かって転写される。遺伝子群の最もテロメア側のメンバーであるIL1RNで終わる残りの遺伝子は、ILlF8を除いて、テロメアに向かって転写される。各遺伝子の最後3個のエキソンは、我々は共通エキソン(CE)1、2、および3と呼んでいるが、IL−1−相同領域(図18に示され別に定義される通り)をコードし、配列内の小さな領域に入る。CE1,CE2、およびCE3は図1において縦棒で示されるが、図17の分解能では、一部は識別できない。コード内容を少ししかまたは全く有しない別のエキソンが、大部分の遺伝子の長さを顕著に伸長している。最大の長さはIL1RNおよびIL1F8である。後者の場合、最初の非コードエキソンは遺伝子の残りの20kbテロメア側である。その遺伝子のマッピングの詳細は、各エキソンからのコードされたペプチド配列と共に与えられている。スプライス変異体が存在する場合は、この情報によって読者は異なる可能なタンパク質の形を組み立てることができる。これらの形のすべてが生物学的に意義がある可能性があるかどうかは現在のところ不明である(考察を参照)。
図18(1枚目〜7枚目)は、IL−1ファミリーの既知の10種類のメンバーの、3種類の共通エキソンのコード配列の整列を示す。各例で共通エキソンは転写物の最後の3つである;たとえばIL−1αの7個のエキソンのうちエキソン5、6、および7。整列は目視により、アミノ酸の同一性および類似の残基の組を探すことによって行った。ギャップはその後最小化した。整列を改良するために、IL−1βおよびIL−1raについての結晶学データをさらに組み込んで用いた。3つの共通エキソン部分の翻訳を順に示す。数字は各エキソンによってコードされる成熟産物の最初および最後のコドンを示す。遺伝子産物はその推定の系統発生にしたがって列挙されている。(!)はタンパク質分解部位でのプロセシングが成熟タンパク質を与えることを示すが、一部の前配列もまた最初の共通エキソン内にコードされている。区切られた残基は少なくとも3つの配列に共通である。簡略化のために、類似性は示されていない。IL−1βおよびIL−1raについて、コード配列の下の最初の行に、(「結晶学」と表示)β−シートの末端のおおよその位置が縦棒で示され、シートの範囲は灰色に斜線を付けられシートの番号を表示されている。次の行に(「接点」と表示)、数字は各残基の側鎖と相互作用するIL−1Rの領域を示す。数字付きの残基は、RasMolプログラム(Sayle and Milner−White)を用いて視覚化される通り、タイプIIL−1受容体の重い原子の4Å以内に存在する少なくとも1個の重い原子(C、N、O、S)を含む(PDBデータ)。IL−1F5の下の行で(NMRと表示)、(^)は、β−シート内に存在する高い可能性を示すと考えられている、強い(>0.7ppm)高磁場シフトをα−13C NMRシグナルに見せるIL−1F5の残基を示す。その区分の最終行(「共通」と表示)は、小文字で、その位置に10回中少なくとも7回存在する残基を示す。大文字の場合は、その残基は全例で存在する。省略は、特定配列のシート1がおそらく前のエキソンから開始することを示す。(*)は翻訳終止を示す。
CpGリッチ領域
CpGplotプログラム(Larsen et al, 1992)を用いて、60%C+G含量60%、CpGジヌクレオチドの予測頻度60%、長さ300ヌクレオチドの、CpG集中部の可能性のある5ヶ所を同定した。最初および2つの最後のCpGリッチ配列を除き、これらの領域は短く、おそらく「CpG集中部」を構成しない。したがって、IL−1遺伝子群にはCpG集中部は存在しない。我々は物理的マッピングに以前に用いられた制限部位の群(Nicklin et al., 1994)の位置を見つけることを試みている。CpGリッチ配列は図1でCpGrと表示されている。2つはさらにXrecおよびZrecと表示されている。これらの2つの領域は、以前に同定された特定の稀な切断制限部位を含み、それでおそらく、以前に割り当てられた通り、その遺伝子群の隣接配列に相当する。配列データは、ハイブリダイゼーションofゲノムDNAの制限消化物のサザンハイブリダイゼーションからの推定430kbと比較して、392kbの長さを与える。NaeIとEagI部位との近い対合は、以前にIL1Bをマッピングするのに用いられたが、Yrecと表示した部位の周辺に見られるが、より厳しくないパラメーターを用いてさえ、CpGplotプログラムによって選択されなかった。XrecとZrecだけが相当なCpG集中部を示す。データベース検索および公開ゲノム注釈の努力はまだ、これらの遺伝子座のどちらかと関連する遺伝子を明らかにしていない。一つの可能性は、Zrecが、試験したすべての組織で多量に発現されていた(Tomas Klenka and MN、未発表データ)非サイトカイン遺伝子であるTICの、未知の上流エキソンを示すということである。
IL−1遺伝子群内の多型マーカー
我々はこの領域内に以前に記載された多型を入れている(図17に矢印で表示、および図19に列挙)。このことによって、我々には以前に記載された不平衡データ(Cox et al., 1998)の再評価が可能になっている。我々の分析は、マップ距離と不平衡の衰えとの間に、わずかにより良い相関を与える(データ記載せず)。
他のIL−1様遺伝子についてのIL−1遺伝子群の走査。
我々は他のIL−1様配列がIL−1遺伝子群内に存在するかどうかを調べた。その相対的に小さいサイズのため、その遺伝子群のゲノム配列はBLASTアルゴリズム(Altschul et al., 1997)を用いた非常に低い厳しさの検索に従う。2配列BLAST比較用のNCBIサーバーを、ゲノム当たり5000ヒットを予測するように感度を(デフォルト値の10から)上げたこと以外はデフォルト設定で使用した。個々のエキソンの翻訳はIL−1遺伝子群ゲノム配列のTBLASTN分析に供した。このアルゴリズムは、ゲノム配列断片から得られた可能な6つの読み枠に対して、コード配列の検索を実施する。我々はエキソン構造が保存されていると仮定し、そのためマッチは、終止コドンで中断されていた場合は、後で無視された。
それが関係のより遠い配列の一つであるため、我々は最初にIL1AのCE3を用いて検索した。これはそれ自身のみとマッチした。IL1BのCE3は、IL1Aを除く、IL−1遺伝子群上のすべての既知のファミリーメンバーを返した。一つの中断されないヒットが見出されたが、それは同一の推定残基6個だけを共有し、CE3に典型的であるよりは長く、実際にはIL1B内で逆方向に存在した。対応する上流CE2候補の証拠が無かったため、その配列は無視された。我々は次いで、IL1F5のCE3を用いて検索し、それもまた、IL1Aを除く、すべてのCE3を返した。一つの長いCpGリッチエキソン候補はCE3の保存されたコア残基を欠いた。もう一つの外れ値として、我々はIL18のCE3を用いた(登録番号XM_041373)。これはIL−1遺伝子群からIL1F5を返し、新規配列を返さなかった。我々は次いでIL1AおよびIL1B由来のCE2(エキソン6)を試験した。前者はそれ自身のみを返し、後者はIL1F6、IL1F8、IL1F9、およびIL1F10を返し他の配列を返さなかった。IL1F5のCE2はIL1RN、IL1F6、IL1F9、およびIL1F10を返したが、新規の中断されないエキソンを返さなかった。IL18のCE2は何も返さなかった。最後にIL1F9のCE2を試験した。それはIL1F6、IL1F8、IL1RN、ILF10のCE2を返し他の配列を返さなかった。我々は、IL−1遺伝子群内には他のIL−1ファミリー遺伝子は、高度に異なる配列を有するかまたはより断片化したエキソン構造を有する点で他のファミリーメンバーすべてと異なるのでない限り、存在しないと結論する。
進化上の考慮
IL−1ファミリーの系統発生を調査するため、我々はTree−Puzzle3プログラム(Strimmer and von Haesler, 1996)を図2aに示すCE3の整列について実行した。IL−18はファミリーのグループ外メンバーとして設定された。結果は図3に示す放射状樹状図(Page,1996)として視覚化された。
実施例2:炎症性遺伝子および冠動脈心疾患のケースコホート研究
(「地域のアテローム性動脈硬化リスク」(ARIC)プロジェクトの下位研究)
ARICは、アテローム性動脈硬化の病因と自然の過程、臨床的アテローム硬化性疾患の病因、および心血管リスク因子、医療処置、および疾患における、人種、性別、場所と時による変動を調査するために設計された前向きコホート研究である。
ARICコホートは15,792名の、導入開始時に年齢45〜64歳の、米国の4地域からの確率標本から成る。ILGNは、2つの共同下位研究の目的に合わせるため必要に応じて、ARICプログラムの全参加者の遺伝子型分析を行うための承認を有する。我々の進行中の、起こった心血管発作の研究において、我々は現在、急性臨床徴候を経験している人とともに無作為に選択されたコホート対照群の、955名のARIC参加者からのDNA検体を有する。これらの検体は、長期観察の最初の11年間の、すべての起こった心血管症例を表す。全検体の遺伝子型決定が最近完了し、結果の一部が利用可能である。これらの結果は、臨床徴候のリスクとIL−1(+4845)対立遺伝子2との間に有意な関連を総コレステロール(TC)<200mg/dlの被験者について実証した。これらの知見の重要な面は下記を含む:
* +4845遺伝子型は臨床現象と有意に関連した(生存時間分析相対リスク〜4.0、p<0.01)
* 分析は全年齢を含んだ
* 多変量モデルにおいて、IL−1遺伝子型の知見は年齢、性別、喫煙、人種、糖尿病、高血圧、BMI、LDL、HDLと独立であった
* TC<200である含められた被験者の数は955名であった。
遺伝子座;ILIA(+4845)、総コレステロール<200mg/dl階層
急性冠動脈疾患発作までの時間
各表内に3つのモデルがある。第一は遺伝子型変数のみを有する大まかなモデルである。これは「調整」の列の「粗」で識別される。「調整」の列の「グループ1」のモデルは、年齢、性別および人種/施設について調整する。「グループ2」のモデルは、年齢、性別、人種/施設、現在喫煙者(該当/非該当)、糖尿病(該当/非該当)、高血圧(該当/非該当)、LDLコレステロール、およびHDLコレステロールについて調整する。
実施例3:サンフランシスコ骨粗鬆症骨折研究(SOF)
カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDr. Steven Cummingsの指導による骨粗鬆症骨折の多施設研究は、4ヶ所の異なる医療センターからの、ヨーロッパ/コーカサス系の女性の大きなコホートから構成される。これらの女性は1986年から、腰、手首、および脊椎骨折、ならびに腰椎および大腿骨頸部の骨塩密度の変化を含むさまざまな医学的および生活習慣上の知見について調べられている。導入時健診(1986/1987)では、すべての参加者(n=9,704)は、65歳以上で、歩行可能で、および施設に入所していなかった。血液検体を被験者約4,000名から採取してDNA分析用に−70℃にて保存した。
SOFコホートにおける死因の近年の分析は、IL−1A(4845)対立遺伝子2が心疾患からの早期死亡と有意に関連していたことを確認した。
実施例4:+4845IL−1SNPの機能分析
+4845SNPは非同義置換SNP(すなわち、IL−1aサイトカインのアミノ酸を変化させ、そのアミノ酸変化に繋がる、天然に存在する多型)である。変異体タンパク質は昆虫細胞でバキュロウイルスベクターを用いて発現され、構造および機能の差について分析される。昆虫細胞での、および哺乳類細胞でのタンパク質発現に用いられる変異体cDNAは配列分析によって、1個のアミノ酸変化に繋がる1個のSNPしか含まないことが確認されている。これはこのSNPに関係する2つのデータである。
ウェスタンブロット分析で(図12参照)、我々は、IL−1aサイトカインの2つの変異体はカルパイン消化で異なる処理を受けることを示すデータを提供する。カルパインは、完全長IL−1aサイトカイン(31kDa)を切断して成熟タンパク質(17kDa)を形成することが知られている酵素である。対立遺伝子−1(Ala)IL−1aサイトカインは1つの17kDa分子を生じる一方、対立遺伝子−2(Ser)IL−1aサイトカインは2本のバンドを与え、その1本は対立遺伝子−1について見られるバンドとサイズが同一であるが、加えて、それはまた分子量がわずかに大きいもう1本のバンドも生じる。この結果は、2種類の変異体には構造的な違いがあることを示す。我々はまた、AlaからSerへの突然変異はタンパク質の異なる翻訳後修飾、たとえば、リン酸化またはミリストイル化における違いに結びつくと仮定する。このアミノ酸変化は、翻訳後修飾のための認識シグナルの変化(付加または除去)に結びつきうる。
発現ベクター中でalaおよびser変異体cDNAsを安定して遺伝子導入された繊維芽細胞は、増殖速度が異なることが見出された。対立遺伝子−2変異体は対立遺伝子−1変異体よりも早い増殖速度を有し、対立遺伝子−2は炎症促進性プロファイルの予測となるという我々の主張を裏付ける(図13を参照)。したがって、対立遺伝子2変異体中の変化したアミノ酸は、対立遺伝子−1変異体よりも強力な炎症促進性サイトカインの証拠を示す。
実施例5:IL−1A、IL−1B、およびIL−IRNSNPの系統的機能分析
本実施例では、選択されたIL−1A、IL−1B、およびIL−1RN多型が、それ以外は「野生型」のIL−1配列の背景中で構成され、影響が繊維芽細胞株において測定される。
レポータープロモーター構造によるIL−1A、IL−1B、IL−1RN遺伝子プロモーターSNPの転写分析。各遺伝子のデータは別々の図にある(すなわちそれぞれ図14、15、および16)。図14、15、および16の図A(および図15D)は、SNP、および別々のルシフェラーゼ構造中に作製されたさまざまな対立遺伝子−2突然変異、およびその遺伝子導入分析で調査したSNPを付注した色々な長さのプロモーター−ルシフェラーゼ構造も示す。加えて、野生型(すべての遺伝子座で対立遺伝子−1)に関して遺伝子転写の活性変化を示す機能性SNPについてだけ、我々はルシフェラーゼ分析結果もまた提供する。B遺伝子については、我々はSNP#14(−511)およびSNP#2(−31)もまた対立遺伝子−2である骨格中での機能性SNPについてのデータもまた提供する。
これらの構造は、繊維芽細胞株(すなわちWI38−炎症反応.におけるIL−1の特定の役割をモデル化する、で試験されたことに注意する。したがって、IL−1媒介炎症性疾患および障害の別の機械的態様をモデル化する別の細胞株が特に試験されることになる。たとえば、ヒト細胞単球細胞株(たとえばU937)およびヒトケラチン生成細胞株(たとえばA143)およびヒト骨芽細胞株において(たとえば骨粗鬆症IL−1炎症性過程に対する影響を調査するために。
実施例6:IL−1遺伝子群SNPの付注
我々はさらにIL−1遺伝子群全体にわたって多型に付注している(図8〜11を参照)。ここで裏付けられるように、これらの多型は確立されたIL−1ハプロタイプ内に存在するため(図1〜7を参照)、それらは本出願において裏付けられる組成物および方法を提供する。
同等物および文献の引用
通常の実験しか用いずに、ここに記載の特定のポリペプチド、核酸、方法、分析および試薬の多数の同等物を、当該分野の熟練者は認識するかまたは確認することができる。そのような同等物は本発明の範囲内にあると考えられ、下記の請求項によって包含される。
本出願は学術文献、出版記事、および特許出願、および登録済み米国特許および外国特許の多数の引用を含む。これらの引用のすべての全内容はここに参照により開示に含まれる。