JP2005518546A - 閉じ込められている物体の位置を探知する方法および装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は閉じ込められている物体の位置を測定する方法に関する。ここでは少なくとも1つの容量式センサ装置を用いて検出信号を形成し、これが調査すべき媒質中に入り込むようにする。検出信号、特にインピーダンスを評価することにより、媒質中に閉じ込められている物体の情報を得ることができる。
本発明では、媒質中に閉じ込められている物体の深さの情報を得るために検出信号を評価するアルゴリズムを使用する。このアルゴリズムは検出信号を発生させた容量式センサ装置のドリフト効果の補償を計算する。
さらに本発明は上述の方法を実行する測定装置に関する。

Description

従来の技術
本発明は請求項1の上位概念記載の、媒質に閉じ込められている物体の位置を探知する方法および請求項18の上位概念記載の、閉じ込められている物体の位置を探知する装置に関する。
この種の方法およびこの方法を実施する測定装置は容量式センサ装置を利用している。この容量式センサ装置は検出信号を例えば電磁場のかたちで形成し、この検出信号が、調査すべき媒質中に入るように、すなわち少なくともこの媒質に充分に入り込むようにする。媒質中に閉じ込められている物体はこの検出信号に作用するので、検出信号を評価すると、媒質中に閉じ込められている物体の情報を得ることができる。
この形式の測定装置、例えばスタッドセンサは、媒質中に閉じ込められている物体が形成した容量式センサ装置の電気容量の変化によってこれを検出する。媒質中に閉じ込められている物体は媒質の誘電特性を変化させるので、媒質の近傍に測定コンデンサが近づくと、この物体に起因して容量またはインピーダンスが変化する。こうした容量変化は例えば容量式センサ装置の測定コンデンサの変位電流(Verschiebestrom)によって測定することができる。
米国特許第6249113号明細書からコンパクトなハンドヘルド形スタッドセンサが公知である。このスタッドセンサは、閉じ込められている物体の位置を探知するために、壁に沿って測定装置を動かしたときのセンサ回路内の容量変化を検出する。閉じ込められている物体が媒質中において探知された位置を正確に表示するために、当該の明細書の測定装置は、測定装置のケーシング表面に矢印状に配置されたLEDアレイを有している。測定装置が物体を検出すると、信号強度に依存して、測定装置のケーシング上の矢印状のLEDアレイのうち1つのLED対がアクティブになる。閉じ込められている物体に近づくにつれて、つまり物体から生じる検出信号が強くなるにつれて、アクティブなLEDがLEDアレイの矢印に向かってさらに延びてゆく。測定装置が最終的に閉じ込められている物体の直接上方まで来るとLEDアレイの矢印の頂部が発光する。このように当該の明細書の測定装置は基本的には媒質中、例えば壁内に閉じ込められている物体の位置を求めることができる。ただしこの装置およびこの装置を基礎とした単純な方法のみでは物体の閉じ込められている深さを測定することはできない。
国際公開第94/04932号公報には、表面後方に存在する対象物の位置を探知する持ち運び可能な位置測定装置が開示されている。この装置は物体によって誘導される付加的な容量を検出するセンサと、検出信号を評価する評価ユニットと、測定結果を表示するディスプレイとを備えている。当該の公報の測定装置はさらにセンサ装置を高感度モードまたは低感度モードで駆動することのできる駆動装置も有している。
また上掲の公報には表面後方に存在する対象物の位置を求める方法も開示されている。そのために相応の測定装置が調査すべき壁に沿って動かされる。当該の公報のセンサは材料密度の上昇または低下をセンシングする手段を有している。これにより装置およびユーザにはセンサが誤って(例えば封入物の直接上方で)較正されていることなどが知らされる。基礎となるこの方法によればさらに、調査すべき媒質があまりに厚すぎたり薄すぎたりするために、閉じ込められた物体を検出できない場合にユーザがそれを知ることができる。
上掲の公報の測定装置のディジタルメモリによれば、測定装置がオンとなっているあいだ較正データを記憶しておくことができる。
米国特許第6198271号明細書からは、測定装置に組み込まれた3つの容量センサを壁に沿って動かしたときの容量変化を検出して、壁内に閉じ込められている物体の位置を探知するスタッドセンサが公知である。評価回路により3つの容量性素子の充電に必要な相対時間が監視されるため、センサを調査すべき壁に沿って動かしている間に3つのセンサ素子の相対容量の変化を測定することができる。ここでこの変化は、閉じ込められている物体によって発生した、調査すべき材料の誘電率変化に起因するものである。ここでは比較回路により、個々のセンサ素子について測定された相対容量の各変化分を用いられて、閉じ込められている物体の位置が求められる。
上掲の明細書の測定装置は、複数の表示素子から成る表示器を有しており、ここでこれらの表示素子は、探知した物体の直接上方に位置する素子のみが信号を表示するようにこの測定装置の評価ユニットに接続されている。これにより、探知する物体の上方にこの測定装置をセンタリングして、この物体を間接的に位置決めすることができるのである。
本発明の利点
媒質に閉じ込められた物体の位置を探知する本発明の方法は、容量式センサ装置によって形成される検出信号を利用する。この検出信号は、調査すべき媒質に入り込み、この媒質に存在する物体によって変化する。殊に閉じ込められた物体が存在することに起因する、測定すべき媒質の誘電特性の変化が、本発明の方法によって検出される。検出信号を評価することによって、すなわち、閉じ込められた物体に起因する容量変化を決定することによって、容量式センサ装置を用いて閉じ込められた物体の正確な位置についての情報を引き出すことができるのである。
本発明では上記の検出信号を評価するためアルゴリズムを使用し、このアルゴリズムにより、上記の検出信号を形成する容量式センサ装置のドリフト作用を補償する。
測定信号の評価精度を制限する技術的な問題は、誘電性の封入物(隠された物体)によって媒介される、測定センサの容量の変化ないしは対応するインピーダンスの変化が極めて小さいことである。したがってこの測定センサの容量変化を求めるために極めて高精度の精密測定が不可欠である。容量式センサ装置のアナログ電子回路は、ドリフト時、すなわち周囲パラメタの変化時、例えば温度変化時に、場合によっては大きく異なる測定信号を供給してしまう。別のドリフト作用は、測定装置における湿度の変化、部材の経年変化によって発生し、また例えば測定装置の給電電圧の変化によっても発生するのである。
本発明の方法は有利にもこれらのドリフト作用の補償を利用しており、上記のドリフト作用に起因する測定信号の変化は、ドリフトの実際の原因には依存せずに、相応する較正測定によって補償される。
この較正測定により、本発明の方法では補正関数が求められ、この関数により、発生したドリフト作用を測定信号から計算によって取り除くことができる。
したがって本発明の方法では、ドリフト作用を計算によって補償するため、所定の較正量についての少なくとも1つの基準測定と、実際の位置探知測定の前にユーザによって行われる同じ較正量の較正測定とを比較する。
ドリフト補正に使用される基準信号は、所定のインピーダンスで測定するによって得られる。有利にはこの測定は、装置内部の較正装置によって実行される。このために有利にはこの測定装置に切換手段が設けられており、この切換手段により、検出信号を例えば短時間、短絡させて、所定のインピーダンスを形成することができるのである。
この所定のインピーダンスは、複数の較正条件、すなわち温度、空気圧、大気湿度その他に対する標準値の下で有利にはすでにメーカ側で求めて、本発明の測定装置の相応する記憶媒質に格納することができる。実際の条件下で同じ較正量を測定し、すなわちこの測定装置の使用現場において同じ較正量を測定し、較正信号と、記憶された基準信号とを比較することにより、補正関数を求めることができる。この補正関数によって、上記のドリフト作用をその原因に依存せずに測定信号から計算によって取り除くことができるのである。
標準条件の下で記憶される基準信号も、チェックのために都度新たに測定すべき較正信号も共に所定のインピーダンスで、例えば、上記の容量性センサ装置の短絡回路において測定される。測定装置のフロントエンドにおけるて検出線路の「開放端部」を使用して、所定のインピーダンスを形成することも可能である。容易に想到できるように有利にも空気測定(Luftmesssung)も可能であり、これによって基準信号が求められると共に、較正信号も導出される。
殊に有利には較正信号も基準信号も共に較正用石材(Kalibrierstein)を用いて形成することであり、ここでこの較正石材は、所定の装置において種々異なる所定の材料を有する。基準信号は、この較正用石材を用いてなおメーカ側で測定装置毎に記録することが可能である。このような較正用石材が、出荷された測定装置に添付されている場合、ユーザは、いつでも相応する較正信号を現場で形成することができる。
本発明の方法では有利には、選択した較正量の、記憶した少なくとも1つの基準信号と、閉じ込められた物体の位置を探知する測定の前に測定される同じ較正量の較正信号と比較し、この比較から、評価すべき測定信号に対する補正関数を求める。
殊に本発明の方法は、線形の補正関数、すなわち2つの補正パラメタを利用して、測定装置におけるドリフトが測定量に及ぼす影響を補償するのである。閉じ込められた対象物についての情報、例えば深さ情報を得るために使用される測定量として有利には容量式センサ装置の変位電流と相関する測定量を利用する。本発明の方法が有利に前提とするのは、この利用する測定量が容量式センサ装置の変位電流に線形に依存することである。測定量として、例えば、容量式センサ装置の回路装置における電圧を評価する。種々異なる基準材料における、時間に依存したこの測定量M(t)を介して、元々の検出信号ないしは容量式センサ装置の変位電流に重畳される障害信号を求め、方法の流れの過程でこれを測定信号から計算によって取り除く。
本発明の1実施形態では、上記の容量式センサ装置の変位電流に線形に依存する測定量をアルゴリズムによって評価する。
閉じ込められた対象物の位置探知に利用される電圧測定は、有利には測定信号の大きさに対しても、また位相に対しても共に行われて評価される。
有利にはこの測定量M(t)は、検出信号を生成する容量式センサ装置の横方向のシフトの関数として測定されて評価される。これによって位置に相関する信号評価が可能である。このことが意味するのは、隠れた物体、例えば電気線路の影響が、またはプラスティックチューブの影響も、測定センサの箇所だけで観察されるのではなく、複数の箇所にわたって追跡されることである。これにより有利にも、基礎となる方法の測定精度をさらに向上させることができる。
測定信号の位相の位置に対して、物体の深さと、センサ装置の横方向のシフトとの特徴的な依存関係が得られる。これによって、測定したデータと、基準測定において決定されていたセンサの既知の特性とを調整することにより、高い精度および障害感度を実現することができる。
基礎となる方法の測定精度を高めるため、測定量を1つ以上の測定周波数の関数として測定し評価する。このためにスペクトルの広い信号パルスが、上記の容量式センサ装置に入力結合され、種々異なる周波数における測定信号M(t)が時間にも繰り返してサンプリング回路によって評価される。したがって本発明の方法によって有利にも位相測定の一義性の問題をなくすること、ならびに冗長な測定データによって高い測定精度を達成することができる。
本発明の方法は、例えば、壁、床および/または天井に閉じ込められた物体の位置を探知する本発明の測定装置に適用される。
媒質に閉じ込められている物体を探知する、例えばハンドヘルド形の探知装置である本発明の測定装置は、センサ装置と、このセンサ装置に対する検出信号を形成する手段と、さらにこの検出信号から測定値を求める制御および評価ユニットと、求めた測定値に対する出力装置とを有しており、これによって請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法を実行する。
本発明のこのような装置は、有利には装置内部の較正装置を有する。ここでこの較正装置により、標準化された所定の条件下での基準信号、例えば気温、気圧および大気湿度に対する基準信号も、現場で都度測定すべき較正信号も共に記録することができる。このため、本発明の測定装置は、切換手段を有しており、この切換手段により、相応する測定信号を較正装置に供給することができる。所定の基準信号ないしは較正信号を形成するため、例えば検出信号に対する短絡線路によって実現可能な所定のインピーダンスを利用する。
本発明の測定装置は、上記の較正装置を一時的にアクティブにする切換手段を有する。
本発明の測定装置は有利には材料データ、例えば、求めた較正量基準値を記憶する手段を有する。これによって、例えば、基準材料の誘電率ないしは誘電特性の定数を本発明の測定装置の記憶素子に格納し、測定信号の評価の過程で、相応するアルゴリズムによって読み出すことができる。
有利には本発明の方法は手段を有しており、ここでこれらの手段は、較正量の基準値を、すでにこの装置の作製時に直ちにこの装置に記録および記憶することができる。これにより、標準化された測定条件下で標準化された測定物体で得られた所定の基準値が、各装置に、すなわち測定装置に供給され、ひいては評価を行う方法に供給される。
さらに本発明の測定装置は有利には表示装置を有しており、この表示装置により、本発明の方法によって位置探知された対象物を、情報密度は高いが直感的なグラフィック表示で、位置がわかるようにユーザに示すことができる。例えば、本発明の方法により、実際の測定中にもリアルタイムで、閉じ込められた物体の位置も、深さも共に表示することができる。
これによって本発明の測定装置ないしは基礎にある本発明の方法により、ユーザは、媒質に閉じ込められた物体を空間の3つの次元すべてにおいて正確に位置決めすることができる。さらに本発明の方法により、閉じ込められた物体の大きさについての情報を得ることができる。
図面
本発明の実施例を図示し、以下に詳細に説明する。図、その説明、ならびに本発明の方法およびこれを利用した測定装置に係る特許請求の範囲には種々の特徴が相互に関連して含まれている。当該の技術分野の技術者はこれらの特徴を個々に捉えることも、別の有利な組み合わせにまとめることもできる。
図1には本発明の方法の基礎となる測定状況の概略図が示されている。図2には本発明の方法にしたがったインピーダンス測定部のブロック図が示されている。図3には評価された測定信号M(ω)の温度依存性がシンボリックに示されている。図4には基準値を記録する方法のステップを表すフローチャートが示されている。図5には本発明の方法のステップを表すフローチャートが示されている。
実施例の説明
図1には本発明の方法が適用されるないしは本発明の測定装置が利用される典型的な測定状況が概略的に示されている。容量式センサ装置14を用いて媒質10に閉じ込められている物体12を検出する。閉じ込められている物体12はこれを包囲する媒質10の表面16から距離dのところに位置している。例えば容量式センサ装置14を含む測定装置18が物体12を包囲している媒質10の表面16に載置される。容量式センサ装置14は主として測定コンデンサ20から成り、これは2つのコンデンサ電極22,24を備える。測定原理をわかりやすく図示するために当該のコンデンサ電極22,24は図1では上下に並べて表してある。実際の容量式センサ装置では測定コンデンサの各電極は相互にほぼ平行に配置されている。測定コンデンサ20の電場の所望の配向作用は相応の電極またはジオメトリ手段によって得られる。
電圧26を印加することにより電場28が測定装置18の測定コンデンサ20の各電極22,24のあいだに生じる。測定コンデンサの2つの電極に特に交流電圧が印加される場合、各コンデンサ電極のあいだには電場28を表す力線30に沿っていわゆる変位電流が流れる。変位電流Iは固定電圧Uのもとではインピーダンスが小さくなるにつれて、つまり測定コンデンサ20の複素インピーダンスZが小さくなるにつれて大きくなる。変位電流Iは例えば電流計21により直接に、または変位電流に相関する測定量M、例えば電圧信号を介して測定することができる。
測定コンデンサ20のインピーダンスZは主としてコンデンサ電極22,24のあいだに存在する物質によって定まる。この種の測定コンデンサ20が、閉じ込められている物体12の近傍に来ると、電場28が通る領域の物質の組成が変化する。特に閉じ込められている物体12により誘電率εが変化し、このためにインピーダンスZが物体12を含まない媒質10に比べて変化する。
閉じ込められている物体12に起因する誘電率の変化およびこれに付随する測定コンデンサのインピーダンスZの変化は測定コンデンサの容量Cの変化に相応する。
測定コンデンサ20の容量Cの増大、またはここから得られるコンデンサ電極間の変位電流Iの増大は、図1では、力線図で電場28を表す際に力線密度を増すことによって示されている。
周囲の媒質10の相応する誘電率よりも大きな誘電率εを有する物質が、容量式センサ装置14によって形成される電場28の領域内に含まれている場合には力線は密になり、周囲の媒質よりも小さい誘電率を有する物質が電場の領域内に含まれている場合には、閉じ込められている物体の領域において力線が疎らになる。
閉じ込められている物体に基づく容量変化または容量式センサ装置における変位電流の変化は種々の電子回路によって測定し評価することができる。
例えば測定コンデンサおよびこれに直列または並列に接続された少なくとも1つのコイルによって形成される共振回路の固有振動数を用いることができる。短い電気パルスによる励振の後、この種の共振回路はその共振振動数で減衰振動する。こうした共振振動数を時間的に測定することにより、関与している容量および変位電流を推定することができる。
前述の手段に代えて、周波数固定の定交流電圧を印加して、測定コンデンサを通る変位電流を直接に測定することもできる。
本発明の方法では、容量式センサ装置14の変位電流Iを直接には測定せず、検出信号を評価するために周波数依存性の測定量Mを測定する。この測定量Mは容量式センサ装置の変位電流Iにほぼ線形に依存する量である。測定量Mとして本発明の方法では特に変位電流に相関する電圧を測定する。つまり使用される測定量Mについて
M = M(ω) = α(ω)+β(ω)*I(ω)
が成り立つ。
複合的な測定量M(ω)は測定コンデンサの変位電流I(ω)の線形近似として評価される。ここでα(ω)はコンデンサ電極の内部クロストークを記述しており、β(ω)は容量式センサ装置の評価回路および適合化回路網内の電気線路の周波数特性および位相ひずみを考慮している。
α(ω)およびβ(ω)は独立に測定可能な周波数依存性の定数である。これらの定数は例えば所定のインピーダンスで基準測定を行うことによりきわめて正確に求めることができるため、測定量Mの測定することよって、変位電流も求められる。
図2には本発明の方法の範囲で利用可能な評価回路の実施例が示されている。クロックベース32によって制御されるパルス発生器34は短時間かつスペクトルの広い電圧パルスを形成し、この電圧パルスは、波カプラ36を介して容量式センサ装置14に供給可能である。測定コンデンサ20の容量ひいてはセンサのインピーダンスZは、コンデンサ電極の電場が入り込む誘電性の媒質に依存する。
容量式センサ装置が物体12の近傍に近づくとコンデンサの場の誘電率の変化に基づいて電場の場のひずみが発生する。これによりインピーダンスZが変化し、このインピーダンスZは、変位電流ないしは導出される測定量M(ω)を介して測定可能である。容量式センサ装置のインピーダンスは、時間依存性の電圧信号U(t)として再び方向性カプラ36を介して出力結合され、増幅され、サンプリングユニット40へ供給される。そこで測定信号の大きさおよび位相が求められるが、このことは後でより詳しく説明する。
容量式センサ装置14が波動インピーダンスに合わせて調整されて線路に接続されているポイントでは、パルス発生器から波カプラを介して入力結合された電圧が多かれ少なかれ影響を受けて反射される。このポイントで反射した信号の振幅および位相は容量式センサ装置14のインピーダンスZと線路の波動インピーダンスとの差を反映しており、容量式センサ装置14のインピーダンスの大きさおよび位相を推定し、ひいては容量式センサ装置14を通って流れる電流の大きさおよび位相を推定することができる。
したがってセンサコンデンサを流れる電流の大きさおよび位相を求めることは、容量式センサ装置14の接続ポイントで反射した電圧Uの大きさおよび位相を求めることに帰せられる。
接続ポイントで反射した信号は波カプラを介して戻る。波カプラ36でのクロストークにより送信分岐に誘導される信号は、検出分岐の方向へ直接に戻ってきた信号成分に比べれば無視できるほど小さい。検出回路の入力側にかかる電圧Vは、波カプラ36での僅かな損失と伝搬時間差とを除けば、容量式センサ装置14の接続ポイントで反射した電圧Uを反映している。
波カプラ36の後方で生じた(通常は小さい)電圧は、検出分岐において有利にはまず高周波数増幅器38で増幅される。続いてこの電圧は所定の時点Tでサンプリングされる。電圧を測定する時点はここではサンプリングパルスにより設定される。パルス発生器で形成された電圧の位相に対する、反射した電圧の位相を求められるようにするためには、送信信号の発生器とサンプリングパルスの発生器とが固定の位相で結合されていることが重要である。このことはクロックベースの使用により保証される。
周波数fでサンプリング回路へ印加される電圧成分
V(f) = v(f)*exp(iφ(f))
は式
W(T) = Re(exp(i*2π*f*T)*V(f))
にしたがってサンプリング回路の後方で測定される電圧W(T)に関係している。サンプリング時点Tのオフセットから周波数fでの電圧Vの大きさおよび位相を推定することができる。
電圧Wは有利にはまず低周波数増幅器で処理され、続いてアナログディジタル変換器で検出される。こうして種々の時点Tで電圧Wを測定することにより、反射した電圧成分の振幅の他に位相を求めることができ、ひいては容量式センサ装置内を流れる電流の大きさおよび位相を推定される。
測定信号はアナログディジタル変換器44を出た後、ディジタルシグナルプロセッサ46へ供給される。
DSPエレメント46はさらなる信号処理と、励振パルスおよびサンプリングパルスを形成するクロックベースの制御とを担当している。DSPエレメント46により、評価された測定値、特に壁内に閉じ込められている物体の深さと測定装置に対するその横方向の位置とがリアルタイムで、つまり測定過程中に、ディスプレイ48に表示することができる。このように本発明の方法は装置が壁に沿って動かされているあいだにすでに、物体が壁内のどこに、どのくらいの深さで閉じ込められているかをユーザにディスプレイ表示することができる。
横方向位置を得るには、調査すべき媒質の上方で容量式センサ装置14を2つの逆方向50,52へ動かしてみればよい。相応の距離センサが容量式センサ装置14のその時点での位置をディジタルシグナルプロセッサへ供給するので、物体の深さと横方向位置とを相関させて表示することができる。
本発明の方法について、較正のために測定コンデンサ20に代えて所定の基準インピーダンス54を測定することもできる。このためにこの電気回路にスイッチング手段を設けて検出信号の形成および評価を行う。これは図2の実施例ではシンボリックなスイッチ56として表されている。このスイッチング手段により励振パルスを測定コンデンサ20へではなく基準インピーダンス54へ切り換えて供給することができる。この所定の基準インピーダンス54は例えば信号線路の短絡により形成可能である。機器内部の所定の基準インピーダンス54を実現する別の手段としては例えば信号線路の“開放端部”が挙げられる。このように本発明の方法および本発明の測定装置は内部に較正装置を有しており、この較正装置によって、この基本としての方法は、例えば温度ドリフトを計算によって補償することができるのである。
所定の基準インピーダンス54で較正測定することにより、電気回路網によって影響を受ける定数α(ω),β(ω)を求め、また変位電流I(ω)に対して、測定量M(ω)に生じたドリフトをこのような基準測定にしたがって補償することができる。ここで上記の定数は容量式センサ装置の変位電流Iと測定量M(ω)との関係を定めるものである。
重大なドリフト作用は特に、関与しているコンポーネントの温度変化および経年変化プロセスによって生じる。すなわち例えば付加的な時間遅延δTが励振パルスと応答パルスとのあいだに発生して、これにより低周波数信号が歪むことがある。フーリエ変換された測定信号M(ω)でのこの種の付加的な時間遅延は乗算的なファクタしか発生させないので、サンプリング時点のドリフトは比較的簡単にデータセットから計算で取り除くことができる。
またパルス出力および励振パルスに固有のスペクトル形状も温度ドリフトの影響を受ける。ただし高周波数増幅器の周波数特性のドリフトも前述と同様に基準測定により補償することができる。
装置の変化を補償するため、すなわち例えば温度に起因するドリフトを補償するため、この測定信号に対して線形の補正関数を利用する。図3は温度が測定量M(ω)に与える影響を概略的に示している。この測定量M(ω)は、温度依存の変化の影響を大きく受けているとする。曲線56は、20℃の温度における周波数依存の測定信号M(ω)を示しており、また同様に図示された測定曲線58は、−10℃の温度において測定された信号M(ω)を表している。測定信号の評価の基礎となるこの方法は、相異なる温度における2つの測定曲線の線形な依存性を仮定している。
この温度作用を補償するため、2つの補正ファクタγ(ω)ならびにγ(ω)が、較正条件(例えば20℃)の下で測定した測定量M(ω)と、例えば現場での測定における測定量M(ω)との関係について設定される。すなわち、例えば、
−10°(ω) =γ(ω)*(M20°(ω))+γ(ω)
が成り立つのである。
例えば、本発明の方法に対し、複数の較正条件について、すなわち所定の温度および例えば空気測定(Luftmessung)、較正用石材または短絡されたセンサによって実現可能な基準インピーダンスにおいて測定量M(ω) を測定する。
現場における実際の動作条件下で較正測定が同じ所定のインピーダンスで行なわれる場合、すなわち、ここでも空気測定、較正用石材における測定、ないしは短絡されるセンサによる測定によって行なわれる場合、ドリフト作用に起因して変化した測定値M(ω)から補正定数γ(ω) およびγ(ω)を推定することができる。このようにして求めた補正量は記憶ユニットに格納されるため、これらの補正量は後の信号評価時に呼び出すことができる。
閉じ込められている物体の位置を実際に測定する前に、所定のインピーダンスで較正測定を行う場合、この較正測定によって実際に得られる補正量γ(ω) およびγ(ω)を利用して、実際の測定過程における測定量M(ω)を補正することができる。
これにより、本発明では、処理すべき測定量に影響してこれを劣化させる作用を、測定された測定信号から計算によって取り除くことができる。一般的にドリフト作用と称される容量式センサ装置の測定量への影響には、例えば、温度変化、湿度の変化、素子の経年変化によって発生する変化があり、また測定装置の給電電圧の変化による変化もある。したがって例えば、ハンドへルド形でありバッテリ駆動の測定装置の形態をとる本発明の測定装置の実施例は、バッテリ電圧の降下をさらに所定の時間にわたって補償することができ、この際にこのような電圧変化が測定結果の品質に大きく影響してしまわないようにすることが可能である。
上記のドリフト作用の他に、個々の構成部分の個体のばらつき(Exemplarstreuung)も個々の測定装置の測定特性を変化させる。これらは上記の補正関数を介して補償することができる。したがって本発明の方法によって上記のドリフト作用または個体のばらつきの補償を行うことができ、ここでこれは、装置に記憶された基準信号と、測定時点に記録される較正信号とを比較することよって行われる。この比較測定により、この測定信号に対する線形の補正量を求めることができ、この補正量により、本発明の方法では、現場で目下測定される測定値を基準条件に基づいて計算することができる。
殊に有利であるのは、装置を作製した直後に、例えばまだメーカにあるうちに所定の較正条件の下で基準測定を行うことである。この場合、この測定と、後の現場での実際の位置探知測定とを調整することができる。
所定の測定信号M(ω)を得るこのような基準測定を「マスタ測定装置」によって行い、この「マスタ装置」に対して求めた基準値を特性マップの形で別の測定装置に作製直後に記録する。この場合、例えば、個々の装置の測定コンデンサにおける電場の方向特性についての個体のばらつきを補償することも可能である。
電気的な測定場に対して、コンデンサ電極ないしは相応の方向性電極が機械的ないしはジオメトリ的に異なることに起因して方向特性が異なることは、閉じ込められている物体に対する検出箇所が異なることを意味し、さまざまな装置によって得られた測定データの比較が困難になる。
図4はブロック図を用いて基準値の測定の流れを示しており、ここでこれらの基準値は、例えば、本発明の装置の作製直後にまだメーカ側にあるうちにすでに測定され、この測定装置の記憶素子に格納することができる。ステップ90では本発明の測定装置の記憶素子にユーザガイドが書き込まれる。ここでこれは、アニメーション化された映像シーケンスとしてこの測定装置のディスプレイに再生可能であり、またユーザにはこの測定装置を較正するために現場で行うべき方法ステップがわかりやすくなる。
方法ステップ92では基準測定が行われ、この装置に格納される。これらの基準測定は、装置個別のシステムパラメタを決定するのに使用される。このために所定のインピーダンスで測定した測定信号が評価され、個々の測定装置毎に1次の補正関数が作成される。この補正関数により、個体のばらつき、例えば容量式センサ装置の機械的な実施における個体のばらつきを、現場において後に測定される信号から計算によって取り除くことができる。
方法ステップ94では測定装置がさまざまな所定の下地材料に較正される。例えば空気、コンクリート、金属ならびにYtongコンクリートブロックおよび別の加工建設材料におけるこれらの基準測定の測定値がこの装置に格納される。これらの所定の材料の周知の誘電率に基づいて、検出回路網に依存する定数α(ω)ならびにβ(ω)を決定することができ、ここでこれらの定数は、容量式センサ装置の誘電的な変位電流と、評価に使用される測定信号M(ω)との間の関係を形成する。すなわちこのような基準測定により、位相の歪みならびに信号線路の周波数特性に起因してないしは測定コンデンサの電極間の内部的なクロストークによって設定される信号の歪みを決定することができる。これによって、これらの既知の係数α(ω)ないしはβ(ω)を用いて後に現場で測定信号M(ω)を決定する際に、基礎となる誘電的な変位電流を極めて精確に推定することができる。
方法ステップ94ではまたこの方法の基礎にある、閉じ込め側の媒質のモデルに対して補間パラメタが得られる。本発明の方法は、閉じ込め側の媒質に対して数値モデルを利用しており、ここでこの数値モデルは、所定の基準材料の複数の材料パラメタを利用する。現場で測定される包囲側の媒質の信号と、測定装置に格納されているモデルのパラメタとの比較最適化によって、測定した包囲側の媒質の誘電特性を極めて正確に決定することができる。重要であるのは、現場で測定される包囲側の媒質の値に対する、このモデルの基礎にある基準パラメタの補間が利用されることである。
方法ステップ96では容量式センサ装置のジオメトリファクタが決定される。このために既知の媒質に閉じ込められている、空間的に極めて限定された基準体において基準信号が測定される。容量式センサ装置の電極の機械的またはジオメトリ的な偏差に起因して、測定コンデンサの方向特性が異なることがあるため、閉じ込められた物体の精確な位置の決定が不確かになり得る。したがって方法ステップ96では、個々の測定装置の方向特性の偏差を考慮する補正パラメタを各測定装置毎に求めてこの測定装置に格納する。これによって評価を行うアルゴリズムが、これらのパラメタを呼び出して考慮できるようにする。
本発明の方法ないしは本発明の装置に対する基準値をメーカ側で設定する図4の方法ステップ98では、実行した基準測定から物体検出に対する閾値を求める。この閾値を用いて処理アルゴリズムは、物体が検出されたか否かを判定する。これらの閾値は、個々の装置の測定精度に依存し、また相応する個体のばらつきにも依存する。
図4の方法ステップ100は、前に求めた調整を本発明の測定装置の記憶素子に格納することを示している。格納したこれらの基準値と、実際の測定の前に現場で行われる較正測定とによって、測定信号に与える障害作用を大いに排除することができるため、極めて正確確な測定センサを実現することができる。殊に強調すべきであるのは、例えばプラスティックチューブもこの測定センサによって識別できることである。本発明の測定装置ないしは基礎にある本発明の方法の性能を高めるのに大きな影響があるのは、多数の基準値を記録することであり、これらの基準値によって、後の信号評価における障害作用を計算によって取り除くことができる。
本発明の方法の中心点は、評価すべき測定信号M(ω)を2つの成分に分割することである。この測定信号M(ω)は、包囲側の媒質に起因する下地成分UG(ω)と、閉じ込められている物体から生じる封入物成分E(ω)とに分けられる。封入物信号も下地信号も共に信号量M(ω)の測定により、位相も振幅も共に既知である。ここで注意すべきであるのは、誘電性の作用によって媒介される封入物信号E(ω)は極めて小さいことである。閉じ込められている物体に基づいて決定される容量変化は、例えばプラスチックチューブではふつうサブピコファラドの範囲である誘電性の作用下にある。この小さな変化は、容量式センサに例えば1ボルト、100KHzの測定周波数の交流電圧を加えた際に得られ、したがって変位電流の差分は1マイクロアンペアよりも小さい。
このような理由から本発明の方法では、ギガヘルツ範囲の測定周波数を利用して、閉じ込められている物体に起因する極めて小さな容量変化に対してもなお測定信号が十分に大きく変化するようにする。ここで下地信号は、物体がない場合に生じる信号を表す。これは例えば、封入物のすぐ横で測定することができる。本発明で利用されるのは、電気的な測定場の表面近傍の領域によって形成される変位電流の成分が下地信号の優勢を占めることである。以下では下地信号UG(ω)が既知であることを前提とする。この下地信号UG(ω)は、測定コンデンサの電場の電気力線vに沿う複数の変位電流Iv(ω)からなる。個々の電気力線vは、例えば図1からわかるようにさまざまな長さを有する。したがって平均の電気力線長Lを定めることができ、この平均の電気力線長Lによって変位電流の位相が示される。すべての位相は以下、この平均の位相に対して示される。容量式センサ装置の測定電極近くで誘電的な作用を及ぼすと、上記の変位電流の電流分布が変化する。実践的には、閉じ込められた物体によるこの変化は小さいと仮定することができる。すなわち、
E(ω) ≪ UG(ω)
が成り立つ。
したがって近似的に仮定してよいのは、誘電的な封入物の影響は、長さLvを有する個々の電気力線vに沿った変位電流Ivの増大または減少になることである。すなわち、
Iv(ω)(封入物あり) = ξ*Iv(ω)(下地)*exp(i*2π/λ(ω)*Lv−L)
が成り立つ。
ここでξは実数の増幅ないしは減衰ファクタを表す。封入物の誘電率εが周囲の媒質のεよりも大きい場合、ξ>1が成り立つ。測定コンデンサの容量は増大して変位電流が大きくなる。その他の場合、ξ<1が成り立つ。封入物が十分に小さい場合、所定の長さLvの電気力線だけが関係し、近似的に
E(ω) = (Iv(ω)(封入物あり)−Iv(下地))
= (1−ξ)*exp(i*2π/λ(ω)*(Lv−L))*Iv(ω)(下地)
が成り立つ。
封入物が既知である場合、すなわち金属製の封入物ないしは空所の場合、(1−ξ)の符号は既知である。
この場合、
2π/λ(ω)*(Lv−L) = −Φ(ω)+Ψ(ω)
が成り立つ。
すなわち信号E(ω)の位相と下地信号UG(ω)の位相との比較から、関係式
λ(ω)/2π*(−Φ(ω)+Ψ(ω))+L = Lv
によって、関係する電気力線の長さLvを逆に推定することができる。関係する電気力線の長さは、ジオメトリファクタG(ω,L)を介して物体の深さに関係している。
実践的にはこの装置により、大部分において封入物が存在していない位置区間[x,y]にわたって平均化が行われる。これによってMW_M(ω)の空間的な平均値により、下地成分に対して使用可能な開始点が得られる。すなわち、測定量M(Xj,ω)がn個の位置Xjにおいて検出された場合、下地成分を決定するため、すべてのjに対してM(Xj,ω)について加算し、1/Nで規格化する。
この基礎となる平均化方法の考えられ得る拡張として有利であるのは、信号変化の大きな領域、すなわち平均値からの偏差が大きい値を平均値形成から除外するか、または平均値の形成を、位置についての測定データの中央値の形成によって置き換えることである。
さらに、相異なる箇所についての平均化の代わりに、記憶装置に格納されテーブル化された下地信号MUG(ω)を使用することができる。下地がコンクリートであることがわかっている場合、記憶装置に格納された測定値MUGBETOn(ω)を下地信号として使用することができる。ここでこの測定値MUGBETOn(ω)は、均一なコンクリートブロックに対して得られる測定値である。抜き出すべき記憶された下地信号の選択は、例えば推定した下地信号と、テーブル化された種々異なる下地とを比較することによって自動的に、またはユーザによって操作されるスイッチによって行われる。
下地に対して数値モデルが利用され、これは既知の材料の少なくとも4つの材料パラメタ、例えば、誘電率を利用する。このモデルが基礎としているのは、誘電的な境界層における電磁信号の反射特性である。測定した閉じ込め媒質の材料を求めるため、閉じ込め媒質のモデルにおけるパラメタの重み付けを変更する。ここでこの重み付けの変更は、測定した下地信号における比較最適化により、測定した下地信号に最も近いモデル信号が再構成されるまで行われる。これにより、モデル媒質のパラメタの補間によって、測定した閉じ込め媒質の誘電率を推定することができる。閉じ込め媒質の誘電率がわかれば、閉じ込められている物体から発生する測定信号の位相情報から、この閉じ込め媒質における閉じ込められた物体の深さを推定することができる。
本発明では上記の方法において、閉じ込められている物体を検出するための閾値が可変であるようにする。感度調整によって、例えば、殊に周期的構造を有する関係のない物体を測定信号から計算によって取り除くことができ、これによって後に測定結果を視覚的に表示する際にこれがもはや表示されないようにする。また本発明の方法によって可能になるのは、測定信号の位相シフトの範囲を固有に選択することによって、測定範囲を所望の深さ範囲に制限することができる。これによって、固有に制限された深さ範囲を選択することができる。本発明の測定装置に設けられたディスプレイの視覚的再生において表示される測定深さは、さまざまな値の間(例えば6ないしは10cm)で切換可能である。
図5は、本発明の個々の方法ステップを説明するブロック図の概略を示している。
ステップ60において装置をスイッチオンした後、この測定装置に対するシステムチェックが行われる。システムチェック62により、例えばバッテリ状態(バッテリ電圧)、バッテリの内部抵抗ならびに目下の温度がチェックされる。引き続いてステップ64では所定のインピーダンスで基準測定を行う。このためには例えば、装置内部の基準電圧を利用するか、または空気測定を行うことも可能である。この基準測定は、EMV障害を決定するためにも行われ、ここでこれは例えば隣接した送信装置によって行われる。このようなEMV障害は、本発明の方法により、後に測定信号から計算によって取り除かれる。
本発明の方法のステップ65では壁コンタクトチェックを行い、ここでは本発明の測定装置の相応する距離センサのチェックにより、この測定装置が取扱指示通りに、調査すべき壁に載置されたことが保証される。択一的にはこの壁コンタクトを容量式センサ装置の測定信号を評価することによってチェックすることも可能である。この測定装置により、周囲の媒質として空気が求められる場合、この装置は壁に載置されているはずがないのである。
引き続いて実際の測定過程が実行され、方法ステップ68において容量式センサ装置の生データが測定され、ディジタル信号プロセッサに転送される。測定信号の評価のスタートである方法ステップ70では、外部の障害発生源による障害信号を上記の生データから計算によって取り除く。続いて方法ステップ72では、個体のばらつきに起因する測定信号の第1の補正を行う。このためにはメーカ側で基準測定によって求めた装置個別のシステムパラメタ、すなわち相応する補正係数を考慮し、この測定信号を上記のように線形に変換する。方法ステップ74では、例えば温度または経年変化作用などの装置内部のドリフト作用の補正が行われる。測定信号M(ω)に対する相応の補正関数を求めるため、方法ステップ74では、メーカで所定のインピーダンスで行われこの装置に記憶された基準測定値と、方法ステップ64による目下の基準測定の結果との間で比較が行われる。このように処理された測定信号M*(ω)に対し、方法ステップ76において、閉じ込め媒質の信号成分と、閉じ込められている物体に起因する信号成分とを上記のように分離する。この装置に記憶された基準材料に対する特性量と、閉じ込められた媒質の組成に対する相応の数学モデルとを介して、基準値を用いた補間によって、測定された壁材料が決定される。殊に、測定された壁材料ないしは閉じ込め媒質には、測定信号をさらに評価するために必要な誘電率が対応付けられる。
閉じ込め媒質から出発してないしは閉じ込められた物体から出発して検出信号を信号成分に分離した後、閉じ込められている物体の正確な位置を決定するため、ステップ78において、容量式センサ装置に対するジオメトリファクタを考慮する。このジオメトリファクタにより、例えば、容量式センサ装置の方向特性における、製造に起因するジオメトリ上の偏差が考慮される。これらの装置個別の違いは、線形の補正関数によって考慮することができ、また実際の測定信号から計算によって取り除くことができる。メーカ側で調整した物体検出に対する閾値を考慮して、方法ステップ80では信号処理によって、物体が探知されたか否かの判定がなされる。この判定がイエスの場合、引き続いて物体のサイズ、測定装置に対するその相対位置ならびに閉じ込められている物体の物体深さが、測定量M*(ω)の位相および大きさを上記のように評価することによって決定される。殊に壁に閉じ込められている物体の深さは、測定量M*(ω)の位相ならびに方法ステップ76で求めた包囲材料の誘電率から決定される。
方法ステップ82では、得られた測定結果がグラフィックに測定装置のディスプレイに表示される。これに加えて、この測定装置の目下の位置に対する、探知した物体の位置と、物体サイズと、物体の深さとがシンボリックな表示でこの測定装置の表示装置に再現して、ユーザが、調査した壁の断面図を得られるようにする。
殊にこの測定装置のディスプレイに、許容される開孔深さを例えば同様にグラフィックに表示することができる。ここでこの開孔深さは、開孔過程時に、探知した物体に当たることのなく可能な深さである。測定装置のディスプレイへの測定結果の表示はリアルタイムに行われるため、測定装置がまだ壁の一部を移動している間に、探知した物体が、短い遅延時間だけで本発明の測定装置のスクリーンに表示される。
本発明の方法ならびに相応する本発明の装置は、上記の説明および図面に示した実施例には制限されない。
図4および5の参照符号一覧
Figure 2005518546
本発明の方法の基礎となる測定状況の概略図である。 本発明の方法にしたがったインピーダンス測定部のブロック図である。 評価された測定信号M(ω)の温度依存性を示すグラフである。 基準値を記録する方法のステップを表すフローチャートである。 本発明の方法のステップを表すフローチャートである。

Claims (24)

  1. 少なくとも1つの容量式センサ装置を用いて、調査すべき媒質に入り込む検出信号を形成して、該検出信号の評価により、例えばインピーダンス測定により、当該媒質に閉じ込められている物体についての情報を得る、媒質に閉じ込められている物体を探知する方法において、
    前記の媒質に閉じ込められている物体についての深さ情報を得るため、前記検出信号を評価するアルゴリズムを使用し、ここで該アルゴリズムにより、前記の検出信号を形成する容量式センサ装置のドリフト作用の補償を計算することを特徴とする、
    媒質に閉じ込められている物体を探知する方法。
  2. 前記の検出信号を形成する容量式センサ装置のドリフト作用を補償するため、所定の較正量の基準信号の少なくとも1つの基準測定値と、閉じ込められている物体を探知するための測定の前に記録される、同じ較正量の較正信号との間で比較を行う、
    請求項1に記載の方法。
  3. 少なくとも1つの基準信号を、所定のインピーダンスの基準測定によって得る、
    請求項2に記載の方法。
  4. 少なくとも1つの基準信号を、例えば容量式センサ装置における前記検出信号の短絡によって得る、
    請求項3に記載の方法。
  5. 少なくとも1つの基準信号を空気測定によって得る、
    請求項2または3に記載の方法。
  6. 少なくとも1つの較正信号を所定のインピーダンスの測定によって得る、
    請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
  7. 少なくとも1つの較正信号を、例えば容量式センサ装置における検出信号の短絡によって得る、
    請求項6に記載の方法。
  8. 少なくとも1つの較正信号を空気測定によって得る、
    請求項2から6までのいずれか1項に記載の方法。
  9. 少なくとも1つの基準信号および/または少なくとも1つの較正信号を、所定の較正用石材の測定によって得る、
    請求項2,3または6のいずれか1項の記載の方法。
  10. 前記の較正量の記憶された少なくとも1つの基準信号と、閉じ込められた物体を探知するための測定の前に測定される較正信号との比較から、前記検出信号から得られる測定信号に対する補正関数を求める、
    請求項2から9までのいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記の検出信号から得られる測定信号に対する補正関数として、線形の関数を利用する、
    請求項10に記載の方法。
  12. 前記の容量式センサ装置の変位電流と相関する測定量を測定して決定し、これによって検出信号から深さ情報を得る、
    請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記の容量式センサ装置の変位電流に線形に依存する測定量をアルゴリズムによって評価する、
    請求項12に記載の方法。
  14. 前記測定量は電圧である、
    請求項13に記載の方法。
  15. 前記測定量の大きさおよび位相を測定して、該測定量をアルゴリズムによって評価する、
    請求項13または14に記載の方法。
  16. 前記検出信号を生成する容量式センサ装置の横方向のシフトの関数として前記測定量を測定して評価する、
    請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記測定量を1つ以上の測定周波数の関数として測定して評価する、
    請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
  18. 媒質に閉じ込められている物体を探知する、例えばハンドヘルド形の探知装置である測定装置において、
    該測定装置は、センサ装置と、該センサ装置に対する検出信号を形成する手段と、さらに該検出信号から測定値を求める制御および評価ユニットと、求めた測定値に対する出力装置とを有しており、これによって請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法を実行することを特徴とする、
    媒質に閉じ込められた物体を探知する測定装置。
  19. 前記測定装置は少なくとも1つの内部の較正装置を有する、
    請求項18に記載の測定装置。
  20. 前記の少なくとも1つの較正装置は短絡スイッチを有する、
    請求項19に際の測定装置。
  21. 前記測定装置は、前記較正装置を一時的にアクティブにする切換手段を有する、
    請求項20に記載の測定装置。
  22. 前記測定装置は、材料データ、例えば、1較正量の求めた基準値を記憶する手段を有する、
    請求項18から21までのいずれか1項に記載の測定装置。
  23. 前記測定装置は、前記較正量の基準値を測定装置、例えばすでに当該装置の作製時に記録して保存できるようにする手段を有する、
    請求項18から22までのいずれか1項に記載の測定装置。
  24. 前記測定装置は、計算した測定結果、例えば媒質にける物体の位置および深さを位置的にわかるように当該測定装置の表示装置に表示する手段を有する、
    請求項18から23までのいずれか1項の記載の測定装置。
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