JP2005510240A - ヒトcDNA及びタンパク質及びその使用 - Google Patents

ヒトcDNA及びタンパク質及びその使用 Download PDF

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タナカ,ヒロアキ
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セローノ ジェネティクス インスティテュート ソシエテ アノニム
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Abstract

本発明は、新規なポリヌクレオチドおよびポリペプチドに関する。かかる新規な産物は、法医学分析における試薬として、発現ベクターの作製における染色体マーカー、組織/細胞/細胞器官特異的マーカーとして使用することが可能である。さらに、異常な新規発現および/または生物活性についてのスクリーニングおよび診断アッセイにおいて、かつ新規な関連疾患の治療に使用される化合物をスクリーニングするために、それらを使用することができる。

Description

関連出願
本出願は、「ヒトcDNA及びタンパク質及びその使用」というタイトルの、2001年11月28日出願の米国特許仮出願第60/334,147号;「ヒトcDNA及びタンパク質及びその使用」というタイトルの、2001年12月14日出願の米国特許仮出願第60/340,465号;「ヒトcDNA及びタンパク質及びその使用」というタイトルの、2002年4月18日出願の米国特許仮出願第60/373,947からの優先権を主張する。
本発明の分野
本発明は、新規なポリヌクレオチド及びポリペプチド、及びその断片、誘導体及び変異体に関する。本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含む組換えベクター、特に新規な遺伝子調節領域又は新規なポリペプチドをコードする配列を含む組換えベクター、及び本発明のポリヌクレオチドを含有する宿主細胞に関する。本発明はさらに、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体、及びかかる抗体及びその断片を作製する方法に関する。本発明は、試料中の本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの存在を検出する方法、異常な新規なポリペプチドの発現及び/又は生物活性を診断及びスクリーニングする方法、新規なポリペプチドの活性又は発現を調節するそれらの能力について化合物をスクリーニングする方法もまた提供する。
発明の背景
分泌タンパク質をコードするcDNA又はその断片は、治療薬の特に貴重な原料(source)である。したがって、分泌及びタンパク質及びそれらをコードする核酸を同定かつ特徴付けする必要がある。
それら自体が治療上有用であることの他に、分泌タンパク質は、それらの分泌を指示するアミノ末端に、シグナルペプチドと呼ばれる短いペプチドを含む。これらのシグナルペプチドは、分泌タンパク質をコードする遺伝子のコード配列の5’末端に位置するシグナル配列によってコードされる。これらのシグナルペプチドは、それらが作動可能に連結されるいずれかのタンパク質の細胞外分泌を指示すると考えられるため、シグナル配列を利用して、タンパク質をコードする遺伝子にシグナル配列を作動可能に連結することによって、分泌が望まれる任意のタンパク質の効率的な分泌を指示することができる。さらに、膜移行(membrane-translocating)配列と呼ばれるシグナルペプチドの断片を使用して、対象のペプチド又はタンパク質の細胞内輸送(インポート)を指示することもできる。これは、それが生成される細胞以外の細胞に特定の遺伝子産物を運搬することが望まれる、遺伝子治療方法において有益であることがわかっている。シグナルペプチドをコードするシグナル配列もまた、タンパク質精製技術の簡略化での用途が見出されている。かかる用途において、目的タンパク質の細胞外分泌は、目的のタンパク質がそれらから選択されなければならない、不要なタンパク質の数を低減することによって、精製を非常に容易にする。したがって、シグナルペプチドをコードする分泌タンパク質の遺伝子の 5’断片を同定し、かつ特徴付ける必要がある。
分泌タンパク質をコードする配列もまた、治療又は診断での用途を見出すことができる。特にかかる配列を使用して、分泌タンパク質のコード配列における変異の結果として、個体が疾患などの検出可能な表現型を発現する可能性があるかどうかを決定することが可能である。かかるコード配列における変異の結果として、個体が疾患又は他の好ましくない表現型を有するリスクがある場合には、遺伝子治療を用いて正常なコード配列を導入することによって、好ましくない表現型を正すことができる。あるいは、好ましくない表現型によって、コード配列によりコードされるタンパク質の過剰発現が生じる場合、そのタンパク質の発現を、アンチセンス又は三重らせんに基づく方策を用いて低減することが可能である。
コード配列によってコードされる分泌ヒトポリペプチドもまた、ポリペプチドをコードする配列における変異から生じる、疾患などの病状を有する個体にそれらを直接投与することによって、治療として使用することができる。かかる場合には、その病状は、個体にポリペプチドを投与することによって治癒又は改善することができる。
さらに、分泌ヒトポリペプチド又はその断片を使用して、生体試料の起源の組織型又は種類を決定するのに有用な抗体を作製することができる。この抗体を使用して、分泌ヒトポリペプチドの細胞局在又はヒトポリペプチドに融合しているポリペプチドの細胞局在を決定することもできる。さらに、イムノアフィニティー・クロマトグラフィーにこの抗体を用いて、ヒトポリペプチド又はヒトポリペプチドに融合している標的ポリペプチドを単離、精製、又は濃縮することもできる。
発明の概要
本発明は:(a)配列番号:1〜39の奇数番号の配列;(b)配列番号:1〜39の奇数番号のコード配列;(c)配列番号:2〜40の偶数番号のポリペプチドの1つをコードする配列;(d)新規なポリペプチドをコードするゲノム配列;(e)新規な遺伝子の5’転写調節領域;(f)新規な遺伝子の3’転写調節領域;(g)(d)〜(f)のいずれかの組み合わせのヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;(h)(a)〜(g)のポリヌクレオチドのいずれかの変異ポリヌクレオチド;(i)(a)〜(h)のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、一本鎖、二本鎖であるか、又は一部が一本鎖であり、一部が二本鎖である、ポリヌクレオチド;(j)(i)の一本鎖ポリヌクレオチドのいずれかに相補的なヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、からなる、又はから本質的になる、精製又は単離ポリヌクレオチドを提供する。本発明はさらに、上述の(a)〜(j)の核酸及びポリペプチドの断片を提供する。
本発明のさらなる実施形態は、例えば整数10と、配列表の指定の配列の最後のヌクレオチドを表す最後の整数との間の少なくともおよそいずれかの1つの整数の隣接ヌクレオチドの領域にわたり、上記の(a)〜(j)におけるヌクレオチド配列のいずれかと、少なくとも70%、さらに好ましくは75%同一の、またさらに好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のヌクレオチド配列を含む、からなる、又はから本質的になる、精製又は単離ポリヌクレオチド、あるいは厳密なハイブリダイゼーション条件下にて、上記の(a)〜(j)を含む本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。
本発明は、本発明の精製又は単離ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、及び本発明のポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体、ならびにかかるベクター及び宿主細胞の作製方法にも関する。本発明はさらに、新規なポリペプチドの作製におけるこれらの組換えベクター及び組換え宿主細胞の使用に関する。本発明はさらに、プロモーター、エンハンサー等を含む調節配列に作動可能に連結される本発明のポリヌクレオチドに関する。
本発明はさらに、(a)配列番号:2〜24の偶数番号の完全長ポリペプチド;(b)配列番号:2〜40の偶数番号のポリペプチドの、エピトープを有する断片;(c)配列番号:2〜40の偶数番号のポリペプチドのドメイン;(d)配列番号:2〜40の偶数番号のポリペプチドのシグナルペプチド;(e)配列番号:2〜40の偶数番号の成熟ポリペプチド;及び(f)(a)〜(e)のポリペプチドのいずれかの対立遺伝子変異体ポリペプチド;からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、からなる、又はから本質的になる、精製又は単離ポリペプチドを提供する。本発明はさらに、生物活性を有する、又は生物機能性ドメイン(1つ又は複数)を含むものなど、上記の(a)〜(f)のポリペプチドの断片を提供する。
本発明はさらに、例えば、整数6と配列表の指定のポリペプチド配列の最後アミノ酸を表す最後の整数との間の少なくともいずれか1つの整数のアミノ酸領域にわたり、(a)〜(f)に記載のポリペプチドと少なくとも70%の類似性、さらに好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の類似性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、その断片、ならびに(a)〜(i)に記載のポリペプチドと少なくとも70%同一の、さらに好ましくは、少なくとも75%同一の、またさらに好ましくは、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はその断片を含む。本発明はさらに、本発明のポリペプチドを作製する方法に関する。
本発明はさらに、遺伝子導入植物又は動物に関し、前記遺伝子導入植物又は動物は、本発明のポリヌクレオチドを導入したものであり、本発明のポリペプチドを発現する。
本発明はさらに、本発明の新規なポリペプチド及びその断片に特異的に結合する抗体、ならびにかかる抗体及びその断片を作製する方法に関する。
本発明は、生体試料における新規な遺伝子の発現及び/又は生物学的活性を検出するためのキット、その使用、及び検出する方法もまた提供する。かかる一方法は、新規なポリヌクレオチドを増幅かつ検出するためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、又は新規なゲノムDNA、cDNAもしくはmRNAを検出するためにサザンブロット及びノーザンブロット・ハイブリダイゼーションを用いて、生体試料における新規なポリヌクレオチドの発現をアッセイすることを含む。あるいは、試験試料における新規な遺伝子の発現を検出する方法は、本発明の新規なポリペプチド又は新規なポリペプチドの一部に結合する化合物を用いて行うことができる。
本発明はまた、その個体が新規な遺伝子発現をそれぞれ抑制又は増強する治療から恩恵を受ける可能性のある、高レベル又は低いレベルの新規な遺伝子産物を有する個体又は非ヒト動物を同定するための、新規なポリヌクレオチド及びポリペプチドの診断方法及び使用、ならびに新規なポリペプチドの発現もしくは生物活性に関連する、特定の疾患/障害を発生するリスクが高い又は現在有する個体又は非ヒト動物を同定する方法に関する。
本発明は、新規なポリペプチドの活性又は発現を調節する(増加又は抑制する)それらの能力について化合物を、例えば新規な遺伝子調節配列と相互作用する化合物及び新規なポリペプチドと直接もしくは間接的に相互作用する化合物などを、スクリーニングするためのキット、その使用、及びスクリーニングする方法にも関する。かかる化合物の使用もまた、本発明の範囲内である。
本発明はまた、活性剤、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド又は抗体、ならびに通常、生理学的に許容可能な担体を含む、薬学的又は生理学的に許容可能な組成物に関する。
本発明は、本発明の配列のcDNAコード及びポリペプチドコードを収めるコンピュータ・システム、及び配列を比較し、相同性を同定する、又は本発明の新規なポリペプチド又は新規なポリヌクレオチド配列を使用することを特徴とする、コンピューターに関連する方法にも関する。
他の態様において、本発明は、単離ポリヌクレオチド、上記(a)〜(f)のポリペプチドを含む本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
他の態様において、本発明は、宿主細胞を含む非ヒト遺伝子導入動物を提供する。
別の態様において、本発明は、新規なポリペプチドを作製する方法であって、a)本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞集団を提供し、b)前記宿主細胞内でポリペプチドが生成される助けとなる条件下にて、宿主細胞集団を培養することを含む方法を提供する。
一実施形態において、この方法はさらに、宿主細胞集団からポリペプチドを精製することを含む。
その他の態様では、本発明は、新規なポリペプチドを作製する方法であって、a)本明細書に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞集団を提供し、b)細胞内でポリペプチドが生成される助けとなる条件下にて、その細胞集団を培養し、c)集団細胞からポリペプチドを精製することを含む方法を提供する。
その他の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれかによってコードされる生物活性ポリペプチドを提供する。
一実施形態において、このポリペプチドは、抗原ポリペプチド又はその抗原断片に対して産生される抗体によって選択的に認識され、その抗原ポリペプチドは、配列番号:2〜40の偶数番号で示される配列のいずれか1つを含む。
その他の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチドのいずれかに特異的に結合する抗体、及び抗体を前記ポリペプチドに結合させる方法を提供する。
その他の態様において、本発明は、新規な遺伝子が哺乳動物内で発現されるかどうかを決定する方法であって、a)前記哺乳動物から生体試料を採取し;b)前記生体試料を、(i)厳密な条件下にて、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれかとハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は(ii)本明細書に記載のポリペプチドのいずれかに特異的に結合するポリペプチドのどちらかと接触させ;c)そのポリヌクレオチドと試料内のRNA種との間でのハイブリダイゼーションの有無、又は試料中のタンパク質へのそのポリペプチドの結合の有無を検出する工程を含み、そのハイブリダイゼーション又は結合の検出によって、新規な遺伝子が哺乳動物内で発現していることが示される方法を提供する。
一実施形態において、このポリヌクレオチドはプライマーであり、このハイブリダイゼーションは、プライマーの配列を含む増幅産物の存在を検出することによって検出される。その他の実施形態では、このポリペプチドは抗体である。
その他の態様において、本発明は、哺乳類動物が高レベル又は低レベルの新規な遺伝子発現を有するかどうかを決定する方法であって:a)哺乳類動物から生体試料を採取し;b)生体試料中の本明細書に記載のポリペプチドのいずれか又はそのポリペプチドをコードするRNA種の量を、対照試料で検出される、又は対照試料から予想されるレベルと比較し、対照試料で検出される、又は対照試料から予想されるレベルと比較して、生体試料中の増加した量のポリペプチド又はRNA種によって、その哺乳動物が高レベルの新規な遺伝子発現を有することが示され、かつ対照試料で検出される、又は対照試料から予想されるレベルと比較して、生体試料中の減少した量のポリペプチド又はRNA種によって、その哺乳動物が、低レベルの新規な遺伝子発現を有することが示される工程を含む方法を提供する。
その他の態様において、本発明は、新規なポリペプチドの候補修飾因子を同定する方法であって、a)本明細書に記載のポリペプチドのいずれかを試験化合物と接触させ;b)その化合物がポリペプチドに特異的に結合するかどうかを決定する工程を含み、その化合物がポリペプチドに特異的に結合することを検出することによって、その化合物が、特定の生物活性を抑制又は活性化する、新規なポリペプチドの候補修飾因子であることが示される工程を含む方法を提供する。
表の簡単な説明
表Iには、配列表の各配列識別番号(SEQ ID NO)に相当し、かつその配列が核酸配列(DNA)であるか、又はポリペプチド配列(PRT)であるかどうかを示す、出願人らの内部指定番号(クローンID_クローン名)を提供する。さらに、対応する核酸又はポリペプチド配列の名称に関する情報が提供される。
表IIには、オープンリーディングフレーム(ORF)、シグナルペプチド、成熟ペプチド、ポリアデニル化シグナル、及び本発明のポリヌクレオチドのポリAテールを含む配列表の相当する配列番号のヌクレオチドの位置を示す。
表IIIには、抗体産生に有用な、本発明のポリペプチドの免疫原性エピトープの位置を含む、配列表の相当する配列番号のアミノ酸の位置を示す。
表IVには、ドメイン、シグネチャー(signature)、モチープを含む配列表の相当する配列番号のアミノ酸の位置を示す。
配列の簡単な説明
配列は、添付の配列表に示す。
配列番号:1〜39の奇数番号は、示されるようにオープンリーディングフレームを有するcDNAのヌクレオチド配列である。しかるべき場合には、潜在的なポリアデニル化部位及びポリアデニル化シグナルもまた示される。
配列番号:2〜40の偶数番号は、配列番号1〜39の奇数番号のcDNAによってコードされるタンパク質のアミノ酸配列である。
配列表に関する規則に従って、ヌクレオチド配列を説明するために、以下のコードが配列表に使用されている。配列において「r」というコードは、ヌクレオチドがグアニン又はアデニンであることを示す。配列において「y」というコードは、ヌクレオチドがチミン又はシトシンであることを示す。配列において「m」というコードは、ヌクレオチドがアデニン又はシトシンであることを示す。配列において「k」というコードは、ヌクレオチドがグアニン又はチミンであることを示す。配列において「s」というコードは、ヌクレオチドがグアニン又はシトシンであることを示す。配列において「w」というコードは、ヌクレオチドがアデニン又はチミンであることを示す。さらに、核酸配列における「n」という記号のすべての例は、ヌクレオチドがアデニン、グアニン、シトシン又はチミンであり得ることを意味する。
場合により、配列表のポリペプチド配列は、「Xaa」という記号を含む。これらの「Xaa」記号は、(1)ヌクレオチド配列のあいまい性のために同定することができない残基又は(2)出願人らが存在しないだろうと考える決定配列における終止コドン(配列がさらに正確に決定されるならば)のいずれかを示す。場合によっては、未知のアミノ酸の可能性のあるいくらかの同一性が遺伝暗号によって示唆される。
分泌タンパク質の場合には、配列表を定める規則に従って、添付の配列表において、コードされるタンパク質(つまり、シグナルペプチドを含有するタンパク質及び成熟タンパク質又はその断片)は、負の番号を有するアミノ酸残基から、正の番号を付けられたアミノ酸残基までわたることを留意されたい。このように、シグナルペプチドの切断から生じる成熟タンパク質の最初のアミノ酸は、アミノ酸番号1と示され、シグナルペプチドの最初のアミノ酸は、適切な負の番号で示される。
この場合、配列番号:1〜40に対して本明細書に記載されるポリヌクレオチド又はポリペプチド配列は、配列表に示される相当する配列、配列表対照において示される配列と矛盾している。
配列表の配列番号:1〜40のポリヌクレオチド及びポリペプチド配列がそれら全体が参照により本明細書に組み込まれることを理解されたい。
本発明の詳細な説明及び好ましい実施形態
定義
さらに詳細に本発明を説明する前に、本明細書中で本発明を説明するために使用される用語の意味及び範囲を解説かつ定義するために、以下の定義を示す。
本明細書で使用される「新規な遺伝子」という用語は、新規なポリペプチドをコードするゲノム、mRNA及びcDNA配列、例えば、前記配列の5’及び3’非翻訳領域などを包含する。
「新規なポリペプチド生物活性」又は「新規な生物活性」という用語は、本発明の新規なポリペプチドの活性と必ずしも同一ではないが、同様な活性を示すポリペプチドに対するものである。所定のポリペプチドの新規なポリペプチド生物活性は、その多くが当業者に公知の、適切な生物学的アッセイをも用いて評価される。一方、「生物活性」という用語は、いずれかのポリペプチドが有する可能性のある、いずれかの活性を意味する。
「相当する(対応する))mRNA」という用語は、本発明のcDNAを作製するcDNA合成のための鋳型であった、又はあり得るmRNAを意味する。
「相当する(対応する)ゲノムDNA」という用語は、例えば本発明のcDNAに相当する、対象のmRNAをコードするゲノムDNAを意味し、そのゲノムDNAはmRNAの鎖の一方の配列を含み、ゲノムDNA(又はcDNA)の配列におけるチミジン残基はmRNA中のウラシル残基によって置換される。
本明細書でポリペプチド又はポリヌクレオチドに関して使用される場合、「異種」という用語は、それぞれ特定の新規なポリヌクレオチド又は本発明の新規なポリペプチド以外のいずれかのポリヌクレオチド又はポリペプチドを示すことが意図される。
例えば、生体試料、細胞集団等に関して、「提供する」とは、試料、細胞集団等がある方法又は手順においてなんらかの形で使用されることを示す。注目すべきことは、生体試料又は細胞集団を「提供する」には、試料又は細胞を本発明の目的のために、特に単離又は入手することは必要ではないが、その代わりに、例えば別の目的のために別の個体によって得られた生体試料の使用を指すことができる。
「増幅産物」とは、いずれかの増幅反応、PCR、RT−PCR、LCR等の産物を意味する。
タンパク質又は他の化合物の「修飾因子」とは、タンパク質への物理的結合、タンパク質の発現量又は質の改変、タンパク質の測定可能又は検出可能ないずれかの活性、性質又は挙動の変更を含む、タンパク質に対する機能効果を有する、又はいずれにしても、タンパク質又は化合物と相互作用する、いずれかの作用物質を意味する。
「試験化合物」とは、タンパク質又は他の化合物を調節するその能力について評価されるいずれかの分子であり得る。
本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに特異的に結合する抗体又は他の化合物は、そのポリペプチド又はポリヌクレオチドを「選択的に認識」するとも言われる。
分子に関して、「単離(された)」という用語は、その分子がその元の環境(例えば、それが天然に存在する場合には自然環境)から取り出されることを必要とする。例えば、生体動物に存在する天然ポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されないが、自然体系において共存する物質の一部又はすべてから区別される同じポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離される。かかるポリヌクレオチドはベクターの一部であることが可能であり、かつ/又はかかるポリヌクレオチド又はポリペプチドは組成物の一部であることが可能であり、さらにベクター又は組成物がその自然環境の一部ではないという点から単離することが可能である。具体的には、「単離(された)」の定義から:天然の染色体(染色体拡散など)、人工染色体ライブラリー、ゲノムライブラリー、及び核酸のインビトロ標本として、あるいはその宿主細胞が異質インビトロ標本であるか、又は単一コロニーの異質集団としてプレーティングされた、トランスフェクト/形質転換された宿主細胞標本(preparation)として存在するcDNAライブラリーは除外される。具体的には、指定のポリヌクレオチドがベクター分子中の核酸インサート数の5%未満を占める(0%、25%、50%、又は75%と指定されることもある)上記のライブラリーも除外される。さらに具体的には、全細胞のゲノムDNA又は全細胞のRNA標本(機械的に切断又は酵素で消化される前記全細胞標本を含む)は除外される。さらに具体的には、インビトロ標本としての、又は電気泳動(それのブロットトランスファーを含む)によって分離された異種混合物としての上記全細胞標本は除外され、その電気泳動において、本発明のポリヌクレオチドは、電気泳動媒体中の異種ポリヌクレオチドからさらに分離されていない(例えば、アガロースゲル又はナイロンブロットにおいて異種バンド集合から単一バンドを切り出すことによるさらなる分離)。
「精製(された)」」という用語は、完全な精製を必要とするわけではなく;むしろ、それらは相対的な定義として意図される。少なくとも1桁、好ましくは2桁又は3桁、さらに好ましくは4桁又は5桁のオーダーに、出発物質又は天然物質を精製することが特に企図される。「精製(された)」という用語はさらに、限定されないが、ポリペプチド又はポリヌクレオチド、炭水化物、脂質等を含む他の化合物から分離された本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを説明するために本明細書において使用される。「精製(された)」という用語は、ホモもしくはヘテロ−二量体、三量体等のオリゴマー型からの本発明の単一ポリペプチドの分離を示すのに使用する場合がある。「精製(された)」という用語はまた、共有結合で閉環した(つまり、環状)ポリヌクレオチドの、線状ポリヌクレオチドからの分離を説明するために使用される場合がある。実質的に純粋なポリペプチド又はポリヌクレオチドは通常、ポリペプチド又はポリヌクレオチド試料それぞれを約50%(重量/重量)、好ましくは60〜90%含み、さらに一般的には約95%、好ましくは約99%を超える純度であるが、50〜100%のいずれかの整数で示される。ポリペプチド及びポリヌクレオチドの純度、又は均一性は、サンプルのアガロースゲルもしくはポリアクリルアミドゲル電気泳動などの当技術分野で公知の数多くの手段によって、又はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて示される。代替の実施形態として、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドの精製は、異種ポリペプチド及びポリヌクレオチド(DNA、RNA、又は両方)に対する「最低」純度%として表される。好ましい実施形態として、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドは、異種ポリペプチド及びポリヌクレオチドに対してそれぞれ、少なくとも;純度10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、96%、98%、99%又は100%である。さらに好ましい実施形態として、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドは、異種ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに対して、又は担体に存在するもの以外のすべての化合物及び分子に対する重量/重量比として、任意の位〜小数点以下第3位の範囲の純度、90%〜100%を有する(例えば、少なくとも99.995%の純度のポリペプチド又はポリヌクレオチド)。純度%を表す小数点以下第3位までの各数字は、純度の個々の種類として主張することが可能である。
本明細書において同義で使用される「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」、及び「ポリヌクレオチド」には、RNA又はDNA(一本鎖又は二本鎖、コード、相補的又はアンチセンス)、又は単鎖又は二重鎖状の複数のヌクレオチドのRNA/DNAハイブリッド配列が含まれる(上記の種類それぞれが特に詳しく指定されているが)。「ヌクレオチド」という用語は、一本鎖又は二重鎖状の任意の長さのRNA、DNA、又はRNA/DNAハイブリッド配列を含む分子を説明するために、本明細書において形容詞として使用される。さらに正確には、「ヌクレオチド配列」という表現は、核酸物質(nucleic material)を包含し、したがって、特定のDNA又はRNA分子を生物化学的に特徴付ける配列情報(つまり、4つの塩基文字中で選択されるひと続きの文字)に限定されない。「ヌクレオチド」という用語は、プリン又はピリミジン、リボース又はデオキシリボースの糖部位、及びリン酸基、あるいはオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド中のヌクレオチドの場合にはリン酸ジエステル結合を含む、分子又は大きな核酸分子における個々のユニットを意味する、個々のヌクレオチド又は種々のヌクレオチドを示すために名詞としても使用される。「ヌクレオチド」という用語はまた、少なくとも1つの修飾、例えば(a)交互(alternative)結合基、(b)プリンの類似体、(c)ピリミジンの類似体、又は(d)例えば類似糖(例えば、WO95/04064参照)を含む「修飾ヌクレオチド」を包含するために本明細書において使用される。本発明の好ましい修飾には、限定されないが、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−Dマンノシルクエノシン(queosine)、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)yブトキソシン、擬似ウラシル、クエノシン(queosine)、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、及び2,6−ジアミノプリンが含まれる。本発明のポリヌクレオチド配列は、合成、組換え、エクスビボ作製、又はそれらの組み合わせを含む公知の方法によって、ならびに当技術分野で公知の精製方法を用いて作製することができる(修飾オリゴ及びヌクレオチドの作製に関する教示については、例えば、米国特許第5,378,825号;同第5,386,023号;同第5,489,677号;同第5,602,240号;及び同第5,610,289号、米国特許第5,264,562号及び同第5,264,564号、米国特許第5,223,618号、米国特許第5,508,270号、米国特許第4,469,863号、米国特許第5,610,289号又は同第5,625,050号、米国特許第5,256,775号又は米国特許第5,366,878号、国際公開番号WO94/17093及びWO94/02499,米国特許第5,476,925号、米国特許第5,023,243号、米国特許第5,130,302号及び同第5,177,198号を参照のこと)。
本明細書において使用される「上流」という用語は、特定の基準点からポリヌクレオチドの5’末端方向にある位置を意味する。
本明細書において使用される「相補的」又は「その補体」という用語は、相補領域全体を通して指定の他のポリヌクレオチドとワトソン−クリック型塩基対を形成することができる、ポリヌクレオチドの配列を意味する。本発明の趣旨では、第1ポリヌクレオチド中の各塩基がその相補的塩基と対を形成する場合、第1ポリヌクレオチドは第2ポリヌクレオチドに相補的であると考えられる。相補的塩基は一般に、AとT(又はAとU)、又はCとGである。本明細書において「補体」は、「相補的ポリヌクレオチド」、「相補的核酸」及び「相補的ヌクレオチド配列」からの同義語として使用される。これらの用語は、2つのポリヌクレオチドが実際に結合すると考えられる条件の特定のセットにではなく、単にそれらの配列に基づくポリヌクレオチドの対に適用される。別段の指定がない限り、すべての相補的ポリヌクレオチが、検討されるポリヌクレオチドの全長で完全に相補的である。
本明細書において同義で使用される「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、ポリマーの長さに無関係に、アミノ酸のポリマーを意味し;したがって、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質がポリペプチドの定義内に含まれる。この用語はまた、本発明のポリペプチドの化学的又は発現後の修飾を指定しない、又は除外するが、これらのポリペプチドの化学的又は発現後の修飾は特定の実施形態として包含又は除外される。したがって、例えばグリコシル基、アセチル基、リン酸基、脂質基等の共有結合を含むポリペプチドへの修飾は、「ポリペプチド」という用語によって特別に包含される。さらに、これらの修飾を有するポリペプチドは個々の種類として指定されて、本発明に包含又は本発明から除外される。上記の実施例で列挙されるような、天然又は他の化学修飾は、ポリペプチドにおけるどこかで、例えばペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及びアミノもしくはカルボキシル末端などで起こり得、所定のポリペプチドにおけるいくつかの部位にて同じ程度又は異なる程度で存在する。また、所定のポリペプチドは、多くの種類の修飾を含有する場合がある。ポリペプチドは、例えばユビキチン結合の結果として分枝鎖である場合があり、それらは、分枝を含む又は含まない環状であってもよい。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部位の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイレーション(selenoylation)、硫酸化、アルギニル化及びユビキチン結合など、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA仲介付加が挙げられる(例えば、Creighton, (1993), Posttranslational Covalent Modification of Proteins, W. H. Freeman and Company, New York B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York 1-12 ; Seifter ら (1990) Meth Enzymol 182: 626-646; Rattan ら (1992) Ann NY Acad Sci 663: 48-62を参照)。アミノ酸の1種又は複数種の類似体を含有するポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸、無関係の生体系に天然にのみ存在するアミノ酸、哺乳類系からの修飾アミノ酸等)、置換結合ならびに当技術分野で公知の他の修飾を有するポリペプチドも(天然と非天然のどちらも)定義内に含まれる。
本明細書で使用される「組換えポリヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチドコンストラクト」という用語は、人工的に設計され、かつそれらの最初の自然環境において隣接ヌクレオチド配列として見出されない少なくとも2つのヌクレオチド配列を含有する、直鎖又は環状の、精製又は単離ポリヌクレオチドを示すために本明細書において同義で用いられる。特に、ポリヌクレオチド又はcDNAが、それがその自然環境では隣接しない「主鎖」核酸に隣接することを意味する。さらに、濃縮されたcDNAとは、核酸主鎖分子の集団における核酸インサート数の5%以上に相当するだろう。本発明による主鎖分子には、核酸、例えば発現ベクター、自己複製する核酸、ウイルス、組込み(integrating)核酸、及び他のベクター又は対象の核酸インサートを保持又は操作するために使用される核酸が含まれる。濃縮されたcDNAは、組換え主鎖分子の集団における核酸インサート数の15%以上に相当することが好ましい。さらに好ましくは、濃縮されたcDNAは、組換え主鎖分子の集団における核酸インサート数の50%以上に相当する。大変好ましい実施形態では、濃縮されたcDNAは、組換え主鎖分子の集団における核酸インサート数の90%以上(例えば、小数第3位までの90〜100%の任意の数、例えば99.5%)に相当する。
本明細書において「組換えポリペプチド」という用語は、人工的に設計されたポリペプチド、及びそれらの元の自然環境において隣接するポリペプチド配列として見出されない少なくとも2つのポリペプチド配列を含むポリペプチドを指すか、又は組換えポリヌクレオチドから発現したポリペプチドを指すために使用される。
本明細書で使用される「作動可能に連結される(された)」という用語は、機能上の関係におけるポリヌクレオチド要素の連結を意味する。プロモーターなどの調節配列に「作動可能に連結される」配列とは、RNAポリメラーゼ開始及び対象の核酸の発現を調節するために、前記調節因子が核酸に対して正しい位置及び向きにあることを意味する。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結される。
「ドメイン」という用語は、特定の生物学的性質を有するアミノ酸断片を意味する。この用語は、公知のすべての構造及び線状の生物学的モチーフを包含する。かかるモチーフの例としては、限定されないが、ロイシンジッパー、ヘリックス・ターン・ヘリックスモチーフ、グリコシル化部位、ユビキチン結合部位、αヘリックス、及びβシート、タンパク質の分泌を指示するシグナルペプチド、翻訳後修飾の部位、酵素活性部位、基質結合部位、酵素切断部位が挙げられる。
これらの用語のそれぞれは明確な意味を有するが、「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」という用語は、本出願全体を通して互いに区別なく用いられる。「有する」という用語は「含む」と同じ意味を持ち、「からなる」という用語又は「から本質的になる」という用語で置き換えることが可能である。
明細書において別段の指定がない限り、本発明のヌクレオチド及びポリヌクレオチドのアミノ酸及びポリペプチドはそれぞれ隣接し、異種配列によって分断されない。
本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、悪性であろうと良性であろうと、過剰な細胞分裂から生じる異常細胞塊又は細胞集団、及びすべての前癌及び癌細胞及び組織を意味する。「腫瘍」はさらに、2種類以上の物理的に関連する新生細胞として定義される。「形質転換細胞」、「悪性細胞」又は「癌」は同義で用いられ、悪性転換を起こした細胞を意味し、芽球化現象を起こしたリンパ球も含まれる。形質転換細胞は、動物に注入した場合に腫瘍を引き起こす大きな能力を有し、通常、基層に接着する必要なく、増殖することができ、また接触阻害を欠いている。「癌」又は「腫瘍性疾患」は、任意の組織における任意のタイプの癌を包含し、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、及び白血病が含まれる。
細胞のプロセス、例えばアポトーシスに関して、「誘導」又は「誘発」という用語は、所定の細胞集団において、そのプロセスを受ける細胞数、又は細胞がそのプロセスを受ける速度を増加又は低下することを意味する。その増加又は低下は、正常の未処理又はネガティブコントロール細胞と比較して、少なくとも1.25、1.5、2、5、10、50、100、500又は1000倍の増加又は低下であることが好ましい。
疾患又は病状の治療に関して、「治療有効量」とは、疾患又は病状のいずれかの徴候、外観、又は特徴に、いずれかの検出可能な正の効果を有することが可能である化合物の量を意味する。
本明細書で使用される「死滅させる」又は「細胞傷害性を誘導する」という用語は、アポトーシス及び/又はネクローシスのいずれかによって細胞死を誘導することを意味し、それによって、本発明の実施形態は、アポトーシスのみ、ネクローシスのみ、及びアポトーシスとネクローシスの両方を含む。
本明細書で使用される「防ぐ」及び「抑制する」という用語は、疾患又は病状の物理的発現を防ぐために、疾患又は病状の臨床症状が現れる前に、化合物を投与することを意味する。「予防」という用語は、「治療」とは異なり、「防ぐ」及び「抑制する」を包含する。本明細書において、「防御」は、「予防」を含む。防御は、絶対的に有用である必要はない。
本明細書で使用される「治療(処置)する」という用語は、臨床症状が現れた後に化合物を投与することを意味する。本明細書で使用される「治療(処置)の必要がある」という用語は、個体又は動物が治療を必要とする、又は治療から恩恵を受けるだろうと介護人により下される判断を意味する。この判断は、介護人の知識の範囲にある様々な因子に基づいて下されるが、本発明による化合物による治療が可能な病状の結果として、個体又は動物が病気である、又は病気であるだろうという認識を含む。
本明細書で使用される「個体」又は「患者」という用語は、任意の動物、例えば哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、又は霊長類、最も好ましくはヒトを意味する。この用語は、雄又は雌又は両方を示すか、又は雄又は雌が考慮されない。
本明細書で使用される「非ヒト動物」という用語は、任意の非ヒト動物、例えば昆虫、鳥類、げっ歯類、さらに一般的には哺乳動物などを意味する。好ましい非ヒト動物には:霊長類;ブタ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ウシ、ウマ、ニワトリ、ウサギなどの家畜;げっ歯類、好ましくはラット又はマウスが含まれる。本明細書で使用される「動物」という用語は、動物界における任意の種、好ましくは脊椎動物、例えば鳥類及び魚類、さらに好ましくは哺乳動物を指すために使用される。「動物」及び「哺乳動物」の両方の用語は明確に、「非ヒト」という言葉が前に置かれていない限り、ヒト対象を含む。
本明細書で使用される「生理学的に許容される」、「薬学的に許容される」及び「薬学的な」という用語は、同義で使用される。
核酸又はポリペプチド間の同一性
「配列同一性のパーセンテージ」及び「相同性パーセンテージ」という用語は、ポリヌクレオチド及びポリペプチド間の比較を示すために本明細書において同義で使用されており、比較ウィンドウ上で最適にアラインメントされた2つの配列を比較することによって決定され、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の一部は、2つの配列の最適アラインメントに対して参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、付加又は欠失(つまり、ギャップ)を含む。そのパーセンテージは、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列で生じる位置の数を決定して、マッチ位置の数を得て、比較ウィンドウにおける位置の総数でマッチ位置数を割り、その結果を100倍することによって計算され、配列同一性のパーセンテージが得られる。同一性又は類似性は、当技術分野で公知の様々な配列比較アルゴリズム又はプログラムのいずれかを用いて評価される。かかるアルゴリズム及びプログラムには、決して限定されないが、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA、CLUSTALW、FASTDBが含まれる(Pearson and Lipman, (1988), PNAS 85 (8): 24442448; Altschul ら (1990), J. Mol. Biol. 215 (3): 403-410 ; Thompson ら (1994), Nucleic Acids Res. 22 (2): 4673-4680; Higgins ら (1996), Meth. Enzymol. 266: 383-402 ; Altschul ら (1993), Nature Genetics 3: 266-272; Brutlag ら (1990) Comp. App. Biosci. 6: 237-24)。
特に好ましい実施形態において、当技術分野でよく知られているベーシック・ローカル・アラインメント検索ツール(「BLAST」) を用いて、タンパク質及び核酸配列同一性が評価される(例えば、Karlin and Altschul, (1990), PNAS 87: 2267-2268; Altschul ら(1997), Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402を参照のこと)。特定の5つのBLASTプログラムを使用して、特に以下のタスクを実行する:
(1)BLASTP及びBLAST3により、アミノ酸問い合わせ配列をタンパク質配列データベースと比較する;
(2)BLASTNにより、ヌクレオチド問い合わせ配列をヌクレオチド配列データベースと比較する;
(3)BLASTXにより、問い合わせヌクレオチド配列(両方の鎖)の6つの枠の概念上の翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較する;
(4)BLASTNにより、問い合わせタンパク質配列を、6つすべての読み枠において翻訳されたヌクレオチド配列(両方の鎖)データベースと比較する;
(5)BLASTXにより、ヌクレオチド問い合わせ配列の6つの枠の翻訳を、ヌクレオチド配列データベースの6つの枠の翻訳と比較する。
BLASTプログラムは、問い合わせアミノ酸もしくは核酸配列と、タンパク質もしくは核酸配列データベースから得られることが好ましい試験配列との間の、本明細書において「高スコアのセグメント対」と呼ばれる類似セグメントを同定することによって相同配列を同定する。その多くが当技術分野で公知であるスコアリングマトリックスを用いることによって、高スコアのセグメント対を同定(つまり、アラインメント)することが好ましい。使用するスコアマトリックスは、BLOSUM62マトリックス(Gonnet ら (1992), Science 256: 1443-1445; Henikoff and Henikoff, (1993), Proteins 17: 49-61)であることが好ましい。好ましさは低いが、PAM又はPAM250マトリックスも使用することができる(例えば、Schwartz and Dayhoff, (1978), eds., Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure, Washington: National Biomedical Research Foundation参照)。BLASTプログラムは、同定された高スコアのすべてのセグメント対の統計的有意性を評価し、好ましくはユーザーによって指定された相同性%など、ユーザーによって指定された有意性の閾値を満たすそれらのセグメントを選択する。高スコアのセグメント対の統計的有意性は、カーリンの統計的有意性の式(例えば、Karlin and Altschul, 1990参照)を用いて評価することが好ましい。BLASTプログラムは、ユーザーによって提供されるデフォルトパラメーターを用いて、又は変更されたパラメーターを用いて使用することが可能である。
大域的配列アラインメントとも呼ばれる、ヌクレオチドもしくはアミノ酸配列(本発明の配列)と対象の配列との最高の全体的マッチを決定する他の好ましい方法は、Brutlag ら (1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピューター・プログラムを用いて決定することができる。配列アラインメントにおいて、問い合わせ配列及び対象配列はどちらもDNA又はアミノ酸配列である。RNA配列もまた、UをTに変換することによって比較することができる。前記大域的配列アラインメントの結果は、同一性%で示される。同一性%を計算するために、DNA配列のFASTDBアラインメントに使用される好ましいパラメーターは:マトリックス=ユニタリー、k−タプル=4、ミスマッチペナルティ=1、結合ペナルティ(Joining Penalty)=30、無作為化群長さ=0、カットオフ・スコア=1、ギャップペナルティ=5、ギャップサイズペナルティ=0.05、ウィンドウサイズ=500又は対象ヌクレオチド配列の長さのいずれか短いほう。内部の欠失のためではなく、5’もしくは3’欠失(ヌクレオチド配列に関して)又はNもしくはC末端欠失(アミノ酸配列に関して)のために、対象配列が問い合わせ配列よりも短い場合には、手作業でその結果に訂正を加えなければならない。というのは、FASTDBプログラムは、同一性%を計算する場合に対象配列の末端切断を計算に入れていないからである。手作業での訂正は、対象配列における切断のためにアラインされていない全問い合わせ配列のパーセントを決定することと、FASTDBプログラムにより計算された同一性パーセントからこのパーセントを減算することを含む。この訂正されたスコアは、本発明の目的のために使用される。本発明の目的のために、他の手作業での訂正は加えられない。
本発明のポリヌクレオチド
本明細書に記載の方法の多くは、一般的な分子生物学的技術の使用に依拠する。いくつかのかかる技術が、一般に"Molecular Cloning; A Laboratory Manual", 2d ed., Cole Spring Harbor Laboratory Press, Sambrookら eds. , 1989及び"Methods in Enzymology; Guide to Molecular Cloning Techniques", Academic Press, Berger and Kimmel eds., 1987で教示されている。
本発明は、新規なゲノム及びcDNA配列に関する。本発明は、新規な遺伝子、新規なゲノム及びcDNA配列を含むポリヌクレオチド、ならびにその断片及び変異体を包含する。これらのポリヌクレオチドは、精製、単離、又は組換えポリヌクレオチドであることが可能である。
新規な遺伝子の対立遺伝子変異体、オルソロガス、スプライシングバリアント及び/又は相同分子種もまた包含される。当技術分野で公知の手順を用い、配列番号:1〜39の奇数番号の配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列に相当する遺伝子及びcDNAの、完全長遺伝子及びcDNA、対立遺伝子変異体、スプライシングバリアント、完全長コード部分、オルソログオ及び/又は相同分子種が得られる。例えば、対立遺伝子変異体、オルソログ及び/又は相同分子種は、当業者に公知のいずれかの技術、例えば「類似配列を見つけるために」というタイトルのセクションに記述されている技術などを用いて、本明細書に記載される配列から適切なプローブ又はプライマーを作製し、対立遺伝子変異体及び/又は目的の相同体に対して適切な核酸ソースをスクリーニングすることによって単離及び同定することが可能である。
特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、少なくとも15、30、50、100、125、500又は1000個の隣接ヌクレオチドである。その他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、300kb、200kb、100kb、50kb、10kb、7.5kb、5kb、2.5kb、2kb、1.5kb又はlkb以下の長さである。さらなる実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、いずれかのイントロンのすべて又は一部を含まないが、本明細書に開示されるコード配列の一部を含む。別の実施形態では、コード配列を含むポリヌクレオチドは、ゲノムフランキング遺伝子(genomic flanking gene)(つまり、ゲノムにおける対象の遺伝子に対して5’又は3’)のコード配列を含有しない。他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、1000、500、250、100、75、50、25、20、15、10、5、4、3、2又は1個を超える天然ゲノムフランキング遺伝子のコード配列を含有しない。
本発明のcDNA配列
本発明のcDNAのそれぞれの構造パラメーターは、添付の配列表に示されている。それに応じて、本発明の各cDNAのコード配列(CDS)又はオープンリーディングフレーム(ORF)は、開始コドンの最初のヌクレオチドで始まり、終止コドンの最初のヌクレオチドのすぐ5’側のヌクレオチドで終わるヌクレオチド配列を意味する。同様に、本発明の各cDNAの5'非翻訳領域(又は5'UTR)は、1番目のヌクレオチドで始まり、開始コドンの最初のヌクレオチドのすぐ5’側のヌクレオチドで終わるヌクレオチド配列を意味する。本発明の各cDNAの3'非翻訳領域(又は3'UTR)は、終止コドンの最初のヌクレオチドで始まり、そのcDNAの最後のヌクレオチドで終わるヌクレオチド配列を意味する。
コード配列
本発明のその他の目的は、添付の配列表のポリヌクレオチド配列及びその変異体のポリヌクレオチド配列からなる群から選択される配列のコード配列を含む、単離、精製又は組換えポリヌクレオチドである。
コード配列の範囲は、シーケンシングのエラー、逆転写又は増幅のエラー、mRNAスプライシング、コードされるタンパク質の翻訳後修飾、コードされるタンパク質の酵素切断、又は他の生物学的因子の結果として、添付の配列表に示される配列と異なるであろうことは理解されよう。当業者であれば、配列表のポリヌクレオチド配列及びその対立遺伝子変異体のポリヌクレオチド配列におけるコード配列の範囲を容易に同定することができるだろう。したがって、配列表のポリヌクレオチド配列のうちの1つのコード配列を含有する核酸に関する、本明細書中のいずれかの請求の範囲は、添付の配列表に記載のコード配列から容易に特定できる変形形態又は記載のコード配列の等価物を除外するものではない。以下に定義されるように、等価物は、ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドにおける、アミノ酸変化をもたらさない又は保存的アミノ酸置換をもたらすヌクレオチドコード配列のいずれかの変更を含む。同様に、ポリペプチドの範囲は、上記の因子のいずれかの結果として、添付の配列表に示されるものと異なるだろう。添付の配列表のポリペプチド配列のアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する請求の範囲は、添付の配列表に記載の配列から容易に特定できる変形形態又は記載の配列の等価物を除外するものではない。
新規な遺伝子のコード配列を含有する上記のポリヌクレオチドは、このポリヌクレオチドを適切な発現シグナルの制御下に置いた場合に、目的の宿主細胞又は目的の宿主生物中で発現させることが可能である。発現シグナルは、本発明の新規な遺伝子における調節領域に含まれるシグナルであるか、又はそれと異なり、外因性核酸調節配列であるシグナルのいずれかである。かかるポリヌクレオチドは、適切な発現シグナル下に置かれた場合、その発現及び/又は増幅のためにベクター中に挿入することも可能である。
さらなる異種アミノ酸配列のコード配列に枠内で融合される、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがさらに本発明に包含される。さらなる非コード配列、限定されないが、例えば非コード5’及び3’配列、ベクター配列、精製、プロービング、プライミングに使用される配列と共に、本発明のポリペプチドをコードする核酸もまた、本発明に包含される。例えば、異種配列には、リボゾーム結合及びmRNAの安定性など、転写及びmRNAプロセッシングにおいて役割を果たす、転写、非翻訳配列が含まれる。代わりに、異種配列は、さらなる機能性、例えばヘキサヒスチジン又はHAタグを提供するさらなるコード配列を含む場合がある。
本発明の調節配列
上述のように、新規な遺伝子のゲノム配列は、これらの遺伝子のエクソンを含有する新規なポリペプチドコード領域に隣接する、非コード5’−フランキング領域において、おそらく、非コード3'-フランキング領域において、調節配列を含有する。
新規なポリヌクレオチドの5'及び3'調節領域から誘導されるポリヌクレオチドは、試験試料における新規な遺伝子のゲノムヌクレオチド配列又はその断片の少なくとも複製の存在を検出するのに有用である。
好ましい調節配列
新規なポリペプチドコード領域の5’末端及び3’末端に位置する調節因子を有するポリヌクレオチドは、対象の異種ポリヌクレオチドのプロセッシング、局在化、安定性、成熟及び転写及び翻訳活性を制御するのに有利に使用され、例えば、調節ポリヌクレオチドは、目的の宿主細胞又は目的の宿主生物においてコード配列を発現させるのに使用することができる組換え発現ベクターの一部である(UTRの再検討に関しては、Decker and Parker, (1995) Curr. Opin. Cell. Biol. 7 (3): 36892, Derrigo ら (2000) Int. J. Mol. Med. 5 (2): 111-23を参照のこと)。特に、3’UTRは、Makrides (1999) Protein Expr Purif 1999 Nov; 17 (2): 183-202、米国特許第5,925,564号;同第5,807,707号及び同第5,756,264号を含む当業者に公知のいずれかの方法を用いて、組換えベクターにおいて異種mRANの安定性を制御するために使用される。
本発明は、5’及び3’新規なポリヌクレオチド調節領域、それに相補な配列、調節活性断片及びその変異体からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む、精製又は単離核酸及び厳密なハイブリダイゼーション条件下でそれとハイブリダイズする核酸にも関する。本明細書に記載の新規な 5'又は3'調節配列、ならびに添付のポリヌクレオチド配列の5’−又は3’−UTRのいずれかと少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸もさらに包含される。5'及び3'調節領域の断片は、20から20,000のうちいずれか1つの整数個のヌクレオチドに相当する長さを有する。
本発明の目的では、核酸又はポリヌクレオチドは、前記調節ポリヌクレオチドが転写及び翻訳調節情報を含むヌクレオチド配列を含有する場合、組換えポリペプチド又は組換えポリヌクレオチドの発現に「調節領域」として「機能的」であり、かかる配列は、目的のポリペプチド又は目的のポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列に「作動可能に連結される」。
本発明は、目的のポリペプチドをコードする核酸分子又は対象の核酸分子も含み、前記核酸分子は、本明細書に記載の調節配列のいずれかに作動可能に連結される。その目的のポリペプチドは、原核生物ウイルス又は真核生物由来のタンパク質を包含する、様々な性質又は起源のポリペプチドであることが可能である。細胞内タンパク質などの真核生物タンパク質、例えば「ハウスキーピング」タンパク質、膜結合型タンパク質、例えばミトコンドリア膜結合タンパク質及び細胞表面受容体、及び分泌タンパク質、例えばサイトカインなどの内因性メディエーターも包含される。その目的のポリペプチドは、異種ポリペプチド又は新規なポリペプチドであることが可能である。
ポリヌクレオチド変異体
本発明はまた、本明細書に記載のポリヌクレオチドの変異体及びその断片に関する。本明細書で用語として用いられるポリヌクレオチドの「変異体(variant)」とは、参照ポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドである。一般に、参照と変異体のヌクレオチド配列が全体的に非常に類似しており、多くの領域においては、同一であるように、差異は限定されている。本発明は、対立遺伝子変異体と縮退変異体のどちらも包含する。
対立遺伝子変異体
ポリヌクレオチドの変異体は、天然に発生する対立遺伝子の変異体などの天然変異体であるか、又は天然に発生することが分かっていない変異体である。「対立遺伝子変異体」によって、生物体の染色体上の所定の遺伝子座を占有する遺伝子のいくつかの代わりの形のうちの1つが意図される(Lewin, (1989), PNAS 86: 9832-8935参照)。2倍体生物は、対立遺伝子型に関してホモ接合性又はヘテロ接合性である。ポリヌクレオチド、細胞又は生物に適用される技術を含む、当技術分野で公知の変異生成技術によって、非天然のポリヌクレオチド変異体を作製することができる。
縮重変異体
本発明の単離ポリヌクレオチド及びその断片の他に、本発明はさらに、遺伝暗号の縮重により本発明の新規なポリペプチドを引き続きコードする、上述の配列と実質的に異なる配列を含むポリヌクレオチドを含む。これらのポリヌクレオチド変異体は、本出願全体を通して「縮重変異体」と呼ばれる。つまり、本発明の新規なポリペプチドをコードする可能性のあるすべてのポリヌクレオチド配列が企図される。これは、遺伝暗号及び当技術分野で公知の種特異的コドン選択を含む。
変異ポリヌクレオチドに存在するヌクレオチドの変化はサイレントである場合があり、それは、ポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸は変化しないことを意味する。しかし、ヌクレオチドの変化によって、参照配列によりコードされるポリペプチド中のアミノ酸置換、付加、欠失、融合及び切断もまた生じる場合がある。置換、欠失又は付加には、1つ又は複数のヌクレオチドが関与する。変異体は、コードもしくは非コード領域又はその両方において変化する。コード領域における変化によって、保存的又は非保存的アミノ酸置換、欠失又は付加が引き起こされる。本発明のコンテクストにおいて、ポリヌクレオチド変異体が、新規なタンパク質と実質的に同じ生物学的性質又は活性を保持するポリペプチドをコードすることを特徴とする実施形態が、好ましい実施形態である。保存的置換を含有するものが、さらに好ましいポリヌクレオチド変異体である。
類似ポリヌクレオチド
本発明の他の実施形態は、本発明のポリヌクレオチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である、精製、単離又は組換えポリヌクレオチドを提供する。新規な生物活性を有するポリペプチドをコードする類似ポリヌクレオチドが好ましいが、特定の核酸分子が活性を有するポリペプチドをコードしない場合でさえ、当業者であれば、例えばハイブリダイゼーション用プローブ又はプライマーとしてその核酸分子をどのように使用するかを知っているであろうことから、コードされるタンパク質における新規な生物活性の存在は必須ではない。新規な活性を有するポリペプチドをコードしない本発明の核酸分子の使用には、特に、DNAライブラリーからの新規な遺伝子又はその対立遺伝子変異体の単離及び新規なmRNA又はDNAを含有すると考えられる生体試料中の新規なmRNA発現の、例えばノーザンブロット法又はPCR分析による検出が含まれる。
ハイブリダイズするポリヌクレオチド
その他の態様において、本発明は、厳密なハイブリダイゼーション条件下にて、本発明のいずれかのポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む単離又は精製核酸分子を提供する。かかるハイブリダイズするポリヌクレオチドは、10から10,000の少なくともいずれか1つの整数個のヌクレオチドの長さであることが可能である。
当然、ポリA+配列(例えば、配列表に示されるcDNAのいずれかの3’末端ポリA+域(tract))のみにハイブリダイズする、又はT(もしくはU)残基の5’相補的ストレッチとハイブリダイズするポリヌクレオチドは、「ポリヌクレオチド」の定義に含まれないだろう。というのは、かかるポリヌクレオチドが、ポリ(A)ストレッチ又はその補体(例えば、プライマーとしてオリゴdTを用いて産生される実質的にいずれかの二本鎖cDNAクローン)を含有するいずれかの核酸分子とハイブリダイズすると考えられるためである。
相補的ポリヌクレオチド
本発明はさらに、本発明のいずれかのポリヌクレオチドに完全に相補的なヌクレオチド配列を有する単離核酸分子を提供する。
ポリヌクレオチド断片
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドの一部又は断片に関する。本発明のポリヌクレオチド断片の使用には、プローブ、プライマー、分子量マーカー及び本発明のポリペプチド断片を発現するための使用が含まれる。断片は、a)配列表のポリヌクレオチド配列、b)ゲノム新規配列、c)本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチドの一部を含む。特に、本発明のポリヌクレオチドの少なくとも8、10、12、15、18、20、25、28、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400、500、800、1000、1500、又は2000個の連続するヌクレオチドを含む精製又は単離ポリヌクレオチドが、本発明に包含される。さらに、少なくともXヌクレオチドを含むポリヌクレオチドが提供され、その「X」は、整数8と、配列表又は本明細書の他で示される3’最高ヌクレオチド位置を表す整数との間のいずれかの整数として定義される。
好ましい本発明のポリヌクレオチドとして、それらの5'及び3'位置に関して指定されるポリヌクレオチド断片がさらに包含される。特定の配列番号に関して5’最高ヌクレオチドが1番目であり、かつ3’最高ヌクレオチドが最後のヌクレオチドである、添付の配列表で示される位置番号によって5'及び3'位置が表される場合、少なくとも8個の連続するヌクレオチド長さの本発明のポリヌクレオチド断片が本発明のポリヌクレオチド上を占めることが可能な、5'及び3'ヌクレオチド位置のあらゆる組み合わせ相当するすべてのポリヌクレオチド断片が特に考えられる。ポリヌクレオチド断片のこれらの種類は、代わりに、式「a〜b」によって示される;「a」はポリヌクレオチドの5’最高ヌクレオチド位置に等しく、「b」は3’最高ヌクレオチド位置に等しく;さらに、「a」は1から、本発明のポリヌクレオチド配列のヌクレオチドの数−8の間の整数に等しく、「b」は9から、本発明のポリヌクレオチド配列のヌクレオチドの数の間の整数に等しく;「a」は「b」よりも少なくとも8小さい整数である。これらの方法のいずれかで示されるポリヌクレオチド断片のすべてはすぐに認識することができ、したがって、不必要に明細書を長くするためだけにそれぞれに列挙しない。これらのポリヌクレオチド断片のいずれかは、本発明から具体的に除外される場合がある。上述のように、ヌクレオチドの5'及び3'位置によって、又はヌクレオチドのサイズによって、指定される任意の数の断片が除外される。好ましい、除外される断片は、反復配列との、例えばAlu、LI、THE及びMER反復配列、SSTR配列又はサテライト、マイクロサテライト及びテロメア反復配列とのかなりの相同性を有する断片を含む。
本発明の他の好ましい断片は、ポリペプチドのドメインをコードするポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである。かかる断片を使用し、類似ドメインを有するポリペプチドをコードする他のポリヌクレオチドがハイブリダイゼーション又はRT−PCR技術を用いて得られる。あるいは、これらの断片を使用し、特異的な生物学的性質を有するポリペプチドドメインを発現させることが可能である。
本発明の別の目的は、少なくとも(5から1,000の間のいずれかの整数個の長さの連続アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも)5、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、50、60、75、100、150又は200個の連続するアミノ酸の隣接スパンからなる、から本質的になる、を含む、ポリペプチドをコードする精製、単離又は組換えポリヌクレオチドである。本発明はさらに、このセクションに示されるポリヌクレオチド断片の任意の組み合わせを包含する。
オリゴヌクレオチドプライマー及びプローブ
本発明は、プライマー及びプローブとして使用される新規なポリヌクレオチドの断片もまた包含する。新規なゲノム及びcDNA配列から誘導されるポリヌクレオチドは、試験試料における新規なポリヌクレオチド又はその断片、補体、又は変異体の少なくとも複製の存在を検出するのに有用である。
構造上の定義
本発明のいずれかのポリヌクレオチドをプライマー又はプローブとして使用することができる。本発明の特に好ましいプローブ及びプライマーは、本発明のポリヌクレオチドの少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、又は1000ヌクレオチドの隣接スパンを含む、単離、精製、又は組換えポリヌクレオチドを含む。
増幅の目的のために、およそ同じTmを有するプライマー対が好ましい。プライマーは当技術分野で公知の方法を用いて設計することが可能である。本発明のコンテクストにおいて使用できる増幅技術には、限定されないが、欧州特許出願第320308号、WO9320227及び欧州特許出願第439 182号に記載のリガーゼ連鎖反応 (LCR)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、RT-PCR)及びGuatelliら (1990) PNAS 35: 273-286及びCompton (1991) Nature 350 (6313) 91-92に記載の核酸配列に基づく増幅法(NASBA)、欧州特許出願第4544610号に記載のQ−β増幅、Walkerら(1996), Clin. Chem. 42: 9-13及び欧州特許出願第684 315号に記載の鎖置換増幅、WO9322461に記載の標的仲介増幅(target mediated amplification)が含まれる。
本発明のプローブは、多くの目的に、例えば、ゲノムDNAとのサザンハイブリダイゼーション、PCR増幅産物の検出、新規な遺伝子又はmRNA中のミスマッチの検出及びin situハイブリダイゼーションに有用である。本発明のポリヌクレオチド、プライマー及びプローブのいずれも好都合なことに、ラテックス粒子、微粒子、磁気ビーズ、非磁気ビーズ(例えば、ポリスチレンビーズなど)、膜(例えば、ニトロセルロースストリップなど)、プラスチックチューブ、マイクロタイターウェルの壁、ガラスもしくはシリコンチップ、ヒツジ(又は他の適切な動物の)赤血球及び硬膜細胞(duracyte)などどの種類の固体担体にも固定化することができる。固相に核酸を固定化するための適切な方法としては、イオン性、疎水性、共有結合性相互作用等が挙げられる。本明細書で使用される固体担体とは、可溶性であるか、又はその後の反応によって可溶性にすることができる任意の材料を意味する。固体担体は、捕捉剤(capture agent)を引き付け、かつ固定化するその固有の能力に関して選択することが可能であり、あるいは、捕捉剤を引き付け、かつ固定化する能力を有するさらなるアクセプターを保持することができる。本発明のポリヌクレオチドは、固体担体上に個々に、又は1つの固体担体に対して少なくとも2、5、8、10、12、15、20又は25個の別個の本発明のポリヌクレオチドのグループで引き付けるか、又は固定化することができる。さらに、本発明のポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドを、1つ又は複数の本発明のポリヌクレオチドと同じ固体担体に引き付けることが可能である。
オリゴヌクレオチドアレイ
複数種の本発明のオリゴヌクレオチドプライマー又はプローブを含む基質を、新規な遺伝子における標的配列を検出又は増幅するのに使用することが可能であり、新規な遺伝子のコードもしくは非コード配列中の変異を検出するのに使用することが可能であり、異なる組織中で、プロセスの異なる段階(胚の発生、疾患の治療)にて、本明細書の他の箇所で記載されている患者対健常な個体において、新規な遺伝子発現を決定するのに使用することも可能である。
本明細書で使用される「アレイ」という用語は、遺伝子発現を特異的に検出するのに十分な長さの核酸の1次元、2次元又は多次元の配列を意味する。例えば、アレイは、本明細書に記載の新規なゲノムDNA、新規なcDNA、それに相補的な配列又はその断片のいずれかを含む。好ましくは、その断片は、少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50又は100ヌクレオチドの長さである。
本明細書で提供されるいずれのポリヌクレオチドも、固体担体上に重複領域において、又はランダムな位置にて付着させることが可能である。あるいは、本発明のポリヌクレオチドは、順序付きアレイにおいて付着させることが可能であり、そのアレイでは、各ポリヌクレオチドは、他のいずれかのポリヌクレオチドの付着部位と重複しない固体担体の別の領域に付着される。好ましくは、ポリヌクレオチドのかかる順序付きアレイは、その別個の位置が記録される「アドレス指定可能」であるように設計され、アッセイ手順の一部として評価することができる。アドレス指定可能なポリヌクレオチドアレイは通常、異なる既知の位置において基質表面に結合する、複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブを含む。各ポリヌクレオチド位置の正確な位置の知識によって、これらの「アドレス指定可能な」アレイはハイブリダイゼーションアッセイにおいて特に有用となる。当技術分野で公知のいずれかのアドレス指定可能なアレイ技術、例えばGenechips(登録商標)(例えば、米国特許第5,143,854号;国際公開番号:WO90/15070及びWO92/10092、Fodor ら(1991) Science 251: 767-777を参照)などを、本発明のポリヌクレオチドと共に使用することができる。固体担体上へのオリゴヌクレオチドアレイの固定化は、「非常に大きなスケールの固定化ポリマー合成」(VLSIPS(登録商標))として一般的に認められている技術を開発することによって可能となり、その技術では通常プローブが、高密度アレイにおいてチップの固体表面に固定化される(例えば、米国特許第5,143,854号及び同第5,412,087号、国際公開番号:WO90/15070、WO92/10092及びWO95/11995を参照のこと)。WO94/12305、WO94/11530、WO97/29212及びWO97/31256に開示の方法など、当技術分野で公知のさらなる作製法を用いることが可能である。
したがって、本発明は、少なくとも1つ、2つ又は5つの本発明のポリヌクレオチド、特に本明細書に記載のプローブ又はプライマーを含む核酸分子のアレイに関する。
本発明のポリヌクレオチドを作製する方法
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを作製する方法も含む。本発明のポリヌクレオチドは、当業者によく知られている技術、例えば、本明細書に記載の増幅又はハイブリダイゼーションに基づく方法を用いて、酵素的に又は化学的に合成することができる。
核酸を合成する様々な化学的方法が当業者に知られている。これらの方法の多くでは、固体担体上で合成が行われる。あるいは、米国特許第5,049号に記載されたように、ポリヌクレオチドを作製することができる。一部の実施形態において、上述のように作製したいくつかのポリヌクレオチドを共にライゲートして、目的の配列を有するより長いポリヌクレオチドが生成される。
本発明のポリペプチド
「新規なポリペプチド」という用語は、本発明のタンパク質及びポリペプチドのすべてを含めるために、本明細書において使用される。本発明は、(a)配列番号:2〜40の偶数番号の完全長ポリペプチド;(b)配列番号:2〜40の偶数番号の、エピトープを有する断片;(c)配列番号:2〜40の偶数番号のポリペプチドのドメイン;(d)配列番号:2〜40の偶数番号のポリペプチドのシグナルペプチド;(e)配列番号:2〜40の偶数番号の成熟ポリペプチド;及び(f)(a)〜(e)のポリペプチドのいずれかの対立遺伝子変異ポリペプチド;からなる組換え、単離又は精製新規なポリペプチドを含む、新規なポリペプチドを包含する。本発明の他の目的は、本発明のポリペプチドによってコードされるポリペプチドならびにかかるポリペプチドを含む融合ポリペプチドである。
ポリペプチド変異体
本発明はさらに、対立遺伝子によってコードされる新規なポリペプチド及びスプライス変異体、オルソログ及び/又は相同分子種を提供する。当技術分野で公知の手順を用いて、配列表のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体、スプライス変異体、オルソログ及び/又は相同分子種を、得ることができる。
本発明のポリペプチドは、本発明のポリペプチドと少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、またさらに好ましくは70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。本発明の問い合わせアミノ酸配列と、例えば少なくとも95%「同一の」アミノ酸配列を有するポリペプチドというのは、対象ポリペプチド配列が問い合わせアミノ酸配列のアミノ酸100個それぞれにつき5個までのアミノ酸の変化を含み得ることを除いては、対象ポリペプチドのアミノ酸配列が、問い合わせ配列と同一であることを意味する。言い換えれば、問い合わせアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、対象配列中のアミノ酸残基の5%(100個のうち5個)までが挿入、欠失(インデル)されるか、又は別のアミノ酸で置換される。
本発明のさらなるペプチドには、上述のポリペプチドと、少なくとも90%の類似性、好ましくは少なくとも95%の類似性、さらに好ましくは少なくとも96%、97%、98%又は99%の類似性を有するポリペプチドが含まれる。計算することを目的として、一致するアミノ酸が同一であるか、又は以下に定義される「同等な」変化を表すアミノ酸であり得ることを除いては、「類似性」は、「同一性」について上述されるのと全く同様に計算される。
参照配列のこれらの変化は、参照アミノ酸配列のアミノもしくはカルボキシ末端位置又はこれらの末端位置間のどこかで生じ、参照配列中の残基間に個々に、又は参照配列内の1つ又は複数の隣接基中に散在する。当業者であれば、生物活性を欠く変異ポリペプチドが依然として、例えばワクチンとして、抗体を作製するのに、エピトープマッピングにおいてエピトープ標識として、SDS-PAGEゲル又は分子ふるいゲル濾過カラム上の分子量マーカーとして有用であることを認識されるように、本明細書に記載の変異ポリペプチドは、それらが正常な生物活性を有するかどうかにかかわらず本発明に包含される。
本発明のポリペプチドの作製
本発明のポリペプチドは、当技術分野で公知のいずれかの適切な手法で作製することができる。かかるポリペプチドには、単離天然ポリペプチド、組換えにより作製されたポリペプチド、合成的に作製されたポリペプチオド、又はこれらの方法の組み合わせによって作製されたポリペプチドが含まれる。本発明のポリペプチドは、単離状態で提供されることが好ましく、一部又は好ましくはほとんど完全に精製することが可能である。
自然源からの単離
本発明の新規なタンパク質は、ヒト又は非ヒト動物の直接単離された細胞だろうと、又は培養細胞だろうと、自然源、例えば体液、組織及び細胞から単離することができる。天然タンパク質を抽出かつ精製する方法は当技術分野で公知であり、洗浄剤又はカオトロピック剤を使用して粒子を乱し、続いてポリペプチドの差次的抽出(differential extraction)及びイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーによる分離を行い、密度によって沈降させ、ゲル電気泳動を行うことを含む。例えば、タンパク質の様々な精製方法に関しては「Methods in Enzymology, Academic Press, 1993」を参照のこと。本発明のポリペプチドはまた、本発明のポリペプチドに対して作られる抗体を用いて、標準法により自然源から精製することができる。
組換え源からの単離
本発明の新規なポリペプチドは、当技術分野で公知の通常の発現方法を用いて組換えにより作製することが好ましい。目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、いずれかの簡便な宿主に適した発現ベクター中で、プロモーターに作動可能に連結される。真核生物及び原核生物の宿主系のどちらも、組換えポリペプチドの形成に使用される。次いで、そのポリペプチドを溶解細胞又は培地から単離し、その目的の用途に必要とされる程度まで精製される。いずれかの本発明のポリヌクレオチドを使用して、新規なポリペプチドを発現させることができる。
その結果、本発明のさらなる実施形態は、本発明のポリペプチドを作製する方法であり、前記方法は、新規なポリヌクレオチド(例えば、新規なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)を提供し、cDNAがプロモーターに作動可能に連結されるように、発現ベクター中にそのポリヌクレオチドを挿入し、宿主細胞中にその発現ベクターを導入し、それによって、前記宿主細胞が前記ポリペプチドを生成する工程を含む。この実施形態の一態様において、この方法はさらに、ポリペプチドを単離する工程を含む。いずれかの適切な発現ベクター及び発現系(例えば、3T3細胞などの細胞ベース系)を当技術分野でよく知られている方法に従って使用してもよい。
一実施形態において、新規なcDNAの全コード配列及びそのcDNAの3'UTRからポリAシグナルが発現ベクター中でプロモーターに作動可能に連結される。
別の実施形態において、分泌又はリーダー配列、プロ配列、複数のヒスチジン残基など、精製の助けとなる配列又は組換え体作製中に安定性を得るためのその他の配列をコードする、さらなるヌクレオチド配列が包含される。
あるいは、発現させる新規なポリペプチドは、遺伝子導入動物の産物、つまり、対象のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有する体細胞又は胚細胞によって特徴付けられる遺伝子導入雌ウシ、ヤギ、ブタ又はヒツジの乳の成分としての産物であることも可能である。
差次的抽出、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、抗体に基づく方法、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、HPLC、免疫クロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含むこれらの方法を用いて、発現した新規なポリペプチドを回収するために、いずれかの標準法が用いられる。
組換え体作製手順で用いられる宿主に応じて、本発明のポリペプチドはグリコシル化されてもよいし、グリコシル化されなくてもよく、宿主仲介プロセスの結果として場合によっては、最初の修飾メチオニン残基を含んでもよい。さらに、本発明のポリペプチドは、アミノ末端メチオニンを含有してもよいし、又は含有しなくてもよい。
化学合成からの単離
さらに、本発明のポリペプチド、特に短いタンパク質断片は、当技術分野で公知の技術(例えば、Creighton (1983), Proteins: Structures and Molecular Principles, W. H. Freeman & Co. 2nd Ed. , T. E. , New York; and Hunkapiller ら., (1984) Nature. 310 (5973): 105-11参照)を用いて化学的に合成することができる。例えば、本発明のポリペプチド配列の断片に相当するポリペプチドは、ペプチド合成装置を使用して合成することができる。あるいは、米国特許第5,049,656号に記載の方法を使用することができる。
さらに、所望の場合には、非古典的アミノ酸又は化学アミノ酸類自体を、ポリペプチド配列中に置換又は付加で導入することができる。非古典的アミノ酸には、限定されないが、一般的アミノ酸のD−異性体、2,4−ジアミノ酪酸、a−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸、g−Abu、e−Ahx、6−アミノヘキサン酸、Aib、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、b−アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナー・アミノ酸、例えば、b−メチルアミノ酸、Ca−メチルアミノ酸、Na−メチルアミノ酸及びアミノ酸類似体全般が含まれる。さらに、そのアミノ酸はD(右旋性)又はL(左旋性)であることが可能である。
修飾
本発明は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク分解性切断、抗体分子又は他の細胞リガンドへの結合により、翻訳中又は翻訳後に差次的に修飾されるポリペプチドを包含する。数多くの化学修飾のいずれも、公知の技術、限定されないが、例えば、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による特異的な化学的切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在下での代謝合成等によって行うことができる。
本発明により包含されるその他の翻訳後修飾には、例えば、N−結合型又はO−結合型糖鎖、N−末端又はC-末端の処理、アミノ酸主鎖への化学部位の結合、N−結合型又はO−結合型糖鎖の化学修飾及び原核生物宿主細胞の発現の結果としてのN−末端メチオニン残基の付加又は欠失が含まれる。タンパク質を検出及び単離することできるように、ポリペプチドを検出可能な標識、例えば、酵素標識、蛍光標識、同位体標識又は親和性標識で修飾してもよい。
さらなる利点、例えば、ポリペプチドの増大した溶解性、安定性及び循環時間、又は減少した免疫原性を提供する、本発明のポリペプチドの化学修飾された誘導体も本発明によって提供される(例えば、米国特許第4,179,337号参照)。誘導体化のための化学部位は、ポリエチレングリコール(好ましくは、1〜100kD)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマー(分枝鎖又は枝なし鎖)から選択することができる。ポリペプチドは、分子内のランダムな位置で、又は分子内の所定の位置で修飾され、1つ、2つ、3つ以上の結合化学部位を含む。その化学部位は、いずれかの方法、例えば遊離アミノ、カルボキシル又はスルフヒドリル基を介して結合される(例えば、欧州特許出願第401 384号又はMalik ら(1992), Exp. Hematol. 20: 1028-1035参照)。
多量体化
本発明のポリペプチドは、単量体又は多量体(つまり、二量体、三量体、四量体以上の)形であることが可能である。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドの単量体又は多量体、それらの製造及びそれらを含有する組成物に関する。
本発明によって包含される多量体は、ホモマー又はヘテロマーであることが可能である。本明細書で使用される「ホモマー」という用語は、同じアミノ酸配列を有するポリペプチドのみを含有する多量体を意味し、「ヘテロマー」という用語は、1つ又は複数の異種ポリペプチドを含有する多量体を意味する。
本発明の多量体は、疎水、親水、イオン及び/又は共有結合の結果であり、かつ/又は間接的に連結される。このように、一実施形態において、本発明の多量体、例えば、ホモ二量体又はホモ三量体などは、本発明のポリペプチドが溶液中で互いに接触すると形成される。別の実施形態では、本発明のヘテロ多量体、例えば、ヘテロ三量体又はヘテロ四量体などは、本発明のポリペプチドが溶液中で本発明のポリペプチドに対する抗体(本発明の融合タンパク質における異種ポリペプチド配列に対する抗体を含む)と接触すると形成される。
他の実施形態では、本発明の多量体は、ポリペプチド配列内に位置するシステイン残基間の架橋によって形成される。これらの結合のいずれにも、配列表に示される、あるいは融合タンパク質、例えば、Fc融合タンパク質、破骨細胞形成阻害因子(osteoprotegerin)融合タンパク質、ペプチドリンカー融合タンパク質、Flag(登録商標)融合タンパク質、又は本発明のロイシンジッパー融合タンパク質の異種ポリペプチド配列に示される、アミノ酸に含有される1つ又は複数のアミノ酸残基が関与する(例えば、米国特許第5,478,925号、WO98/49305、又は米国特許第5,073,627号、Landschulz ら(1988), Science. 240: 1759、WO 94/10308、Hoppe ら(1994), FEBS Letters. 344: 191 及び米国特許出願第08/446,922号参照)。多量体を生成する他の方法としては、当技術分野で公知の技術を用いて、又は本発明の多量体に含まれることが望まれるポリペプチド成分を含有するリポソームを生成することによって、システイン又はビオチンをポリペプチドのC末端又はN末端に付加する方法が挙げられる(例えば、多量体化の多数の方法については、米国特許第5,478,925号を参照のこと)。
本発明の多量体は、当技術分野で公知の化学的又は遺伝子工学技術を用いて生成することができる。
突然変異したポリペプチド
本発明の新規なポリペプチドの特性を改善又は変更するために、組換えDNA技術を用いて、単一又は複数のアミノ酸の置換、欠失、付加を含む新規な変異タンパク質又は突然変異タンパク質(ムテイン)を生成することができる。かかる修飾ポリペプチドは、例えば増大した/減少した生物活性又は増大した/減少した安定性を示し得る。さらに、少なくとも特定の精製及び貯蔵条件下にて、相当する天然ポリペプチドよりも、それらを高い収量で精製することが可能であり、かつ相当する天然ポリペプチドよりも、それらは優れた溶解性を示し得る。
N及びC末端の欠失
生物学的機能を実質上損失することなく、1つ又は複数のアミノ酸をN末端又はC末端から欠失させることが可能であることは、当技術分野で公知である(例えば、Ron ら (1993), Biol Chem. , 268 2984-2988; Dobeliら1988を参照のこと)。したがって、本発明は、アミノ及び/又はカルボキシ末端から欠失された1つ又は複数の残基を有するポリペプチドを提供する。
他の突然変異
本発明は、かなりの新規なポリペプチド活性を示す新規なポリペプチドの多数の変異を含む。かかる突然変異は、活性にほとんど影響を及ぼさないように、当技術分野で公知の規則に従って選択される欠失、挿入、転化、反復及び置換を含む。
変化させるアミノ酸配列の耐性を研究するための主な2つのアプローチがある(Bowie ら(1994), Science. 247: 1306-1310参照)。第1の方法は、突然変異が自然淘汰によって受け入れられるか又は拒絶される、進化のプロセスに依拠する。第2のアプローチでは、クローン化遺伝子の特定の位置でアミノ酸変化を導入するための遺伝子操作及び機能性を保持する配列を同定するための選択又はスクリーニングを用いる。この例としては、特定部位の突然変異又はアラニンスキャン突然変異誘発が挙げられる(例えば、Cunningham ら(1989), Science 244: 1081-1085参照)。これらの研究は、タンパク質がアミノ酸置換に対して驚くほど耐性であることを明らかにした。
通常、脂肪族アミノ酸、Ala、Val、Leu及びPhe間での互いの置き換え、ヒドロキシ残基Ser及びThrの交換、酸性残基Asp及びGluの交換、アミド残基AsnとGlnとの間での置換、塩基性残基Lys及びArgの交換、及び芳香族残基Phe、Tyr間での置き換えは、保存的置換として考えられる。このように、本発明のポリペプチドは例えば、アミノ酸残基のうちの1つ又は複数が保存又は非保存アミノ酸残基(好ましくは、保存アミノ酸残基)で置換されるポリペプチドである。かかる置換アミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされるものであってもよいし、又はそうでなくてもよく、かつ置換基を含むことができる。
示されるように、タンパク質の折り畳み又は活性に著しく影響を及ぼさない、保存的アミノ酸置換などの変化が軽微なものであることが好ましい。以下のアミノ酸の群が同等の変化を表す:(1)Ala、Pro、Gly、Glu、Asp、Gln、Asn、Ser、Thr;(2)Cys、Ser、Tyr、Thr;(3)Val、Ile、Leu、Mらa、Phe;(4)Lys、Arg、His;(5)Phe、Tyr、Trp、His。
さらに、本発明の新規なポリペプチドは、修飾アミノ酸を模倣する1つ又は複数のアミノ酸置換を含むことができる。この種類の置換の例としては、リン酸化アミノ酸(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)の負電荷に類似する負に帯電したアミノ酸で、リン酸化することができるアミノ酸(例えば、セリン、トレオニン又はチロシン)を置換することが挙げられる。疎水基(例えば、アルギニン)により修飾することができるアミノ酸を、トリプトファン又はフェニルアラニンなどのバルキーな疎水性側鎖を有するアミノ酸で置換することもまた包含される。したがって、本発明の特定の実施形態は、修飾することができるアミノ酸が通常位置する位置で、修飾アミノ酸を模倣する1つ又は複数のアミノ酸の置換を含む新規なポリペプチドを包含する。さらに、修飾することができるいずれかの新規なポリペプチドアミノ酸は、修飾−模倣アミノ酸での置換から除外されてもよい。
本発明による対象の修飾新規なペプチド分子の特定の実施形態には、限定されないが、タンパク分解に耐性があり、その−CONH−ペプチド結合が、(CH2NH)還元結合、(NHCO)レトロインベルソ(retro inverso)結合、(CH2−O)メチレン−オキシ結合、(CH2S)チオメチレン結合、(CH2CH2)カルバ結合、(CO−CH2)ケトメチレン結合、(CHOHCH2)ヒドロキシエチレン結合、(N−N)結合、E−アルケン結合又はCH=CH−結合によって修飾又は置換されるペプチドである、ペプチド分子が含まれる。
凝集が少ないなど、非常に望ましい改善された特性を有するタンパク質を生成することができる他の荷電アミノ酸又は天然アミノ酸での荷電アミノ酸の置換は、特別に関心のある対象である。凝集は活性を減少させるだけではなく、凝集塊が免疫原性であり得るために、製剤を製造する場合に問題となる(例えば、Pinckardら(1967), Clin. Exp. Immunol 2: 331-340; Robbinsら(1987), Diabetes. 36: 838845; 及び Clelandら(1993) Crit. Rev. Ther. Drug Carr. Syst. 10: 307-377参照)。
本発明のさらなる実施形態は、1〜50のうちの少なくともいずれか1つの整数個の保存的アミノ酸置換を含有するアミノ酸配列を有する、新規なポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。いずれかの保存的置換又は置換の組み合わせもまた除外され得る。
ポリペプチド断片
構造上の定義
本発明はさらに、本発明のポリペプチドの断片に関する。さらに具体的には、本発明は、6〜100の間の少なくともいずれか1つの整数個(又は、その長さが1000未満である場合、ポリペプチドアミノ酸残基−1の長さ)の連続アミノ酸残基を含む、精製、単離、及び組換えポリペプチドを具体化する。その断片は、本発明のポリペプチドの少なくとも6、好ましくは少なくとも8〜10、さらに好ましくは12、15、20、25、30、35、40、50、60、75、100、125、150、175,200、225、250、275、又は300個の連続アミノ酸であることが好ましい。
上記のポリペプチド断片の他に、ポリペプチドのさらに好ましい亜属は、少なくともX個のアミノ酸を含み、その「X」は、整数6と、以下の配列表のポリペプチド配列を含む本発明のポリペプチドのC末端アミノ酸を表す整数との間のいずれかの整数として定義される。さらに、N末端及びC末端位置の点からさらに指定される、上述のような少なくとも6アミノ酸長さのポリペプチド断片の種類が含まれる。しかし、上述のように少なくとも6アミノ酸長さのすべてのポリペプチド断片が個々の種類として本発明に包含され、N末端及びC末端位置によって個々に指定される。つまり、少なくとも6隣接アミノ酸残基長さの断片が、配列表の又は本発明の所定のいずれかのアミノ酸配列を占有することがあり得る、N末端及びC末端位置のどの組み合わせも、本発明に包含される。
配列表の偶数配列番号の配列のアミノ酸を含む好ましいポリペプチド断片及びそれをコードするポリヌクレオチドは、1位で始まり、かつ6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699、700、701、702、703、704、705、706、707、708、709、710、711、712、713、714、715、716、717、718、719、720、721、722、723、724、725、726、727、728、729、730、731、732、733、734、735、736、737、738、739、740、741、742、743、744、745、746、747、748、749、750、751、752、753、754、755、756、757、758、759、760、761、762、763、764、765、766、767、768、769、770、771、772、773、774、775、776、777、778、779、780、781、782、783、784、785及び786からなる群から選択されるいずれかの位置まで連続する、アミノ酸配列からなる群から選択され、いずれか1つの断片を含むアミノ酸配列の番号付けは、配列表のいずれか1つの偶数配列番号のポリペプチド配列と一致している。
配列表の偶数配列番号の配列のアミノ酸を含むさらに好ましいポリペプチド断片及びそれをコードするポリヌクレオチドは、そのタンパク質の末端アミノ酸(例えば、787位)で終わり、かつ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699、700、701、702、703、704、705、706、707、708、709、710、711、712、713、714、715、716、717、718、719、720、721、722、723、724、725、726、727、728、729、730、731、732、733、734、735、736、737、738、739、740、741、742、743、744、745、746、747、748、749、750、751、752、753、754、755、756、757、758、759、760、761、762、763、764、765、766、767、768、769、770、771、772、773、774、775、776、777、778、779、780、781及び782からなる群から選択されるいずれかの位置で始まる、アミノ酸からなる群から選択され、いずれか1つの断片を含むアミノ酸配列の番号付けは、配列表のいずれか1つの偶数配列番号のポリペプチド配列と一致する。
配列表の偶数配列番号のさらに好ましいポリペプチド断片及びそれをコードするポリヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699、700、701、702、703、704、705、706、707、708、709、710、711、712、713、714、715、716、717、718、719、720、721、722、723、724、725、726、727、728、729、730、731、732、733、734、735、736、737及び738からなる群から選択されるアミノ酸位置から始まる、いずれかの50又は100連続アミノ酸を含む断片からなる群から選択され、いずれか1つの断片を含むアミノ酸配列の番号付けは、配列表のいずれか1つの偶数配列番号のポリペプチド配列と一致する。
これらの特定の実施形態及び本明細書に記載の他のポリペプチド及びポリヌクレオチド断片の実施形態は、「少なくとも」、「等しい」、「以下」、「未満」、「少なくとも_だが_を超えない」又は「_から_まで」の指定のサイズ又は指定のN末端及び/又はC末端位置であるように修飾され得る。本発明のいずれかの実施形態を説明するのに使用されるすべての範囲は、別段の指定がない限り包含的であることに留意のこと。
あるいは、本発明の上記の種類のポリペプチド断片は、式「a〜b」によって示される;式中、「a」はポリヌクレオチドのN末端最高アミノ酸位置に等しく、「b」はポリヌクレオチドのC末端最高アミノ酸位置に等しく;さらに「a」は、1から、本発明のポリペプチド配列のアミノ酸番号−6の間の整数に等しく、かつ「b」は、7から、本発明のポリペプチド配列のアミノ酸番号の間の整数に等しく;「a」は、「b」よりも少なくとも6小さい整数である。
本発明の上記のポリペプチド断片は、上記の説明を用いてすぐに認識することができ、したがって、不必要に明細書を長くするためだけにそれぞれ列挙しない。これらのポリヌクレオチド断片のいずれかは、本発明から具体的に除外される場合がある。さらに、新規な生物活性を有するポリペプチドが本発明の好ましい実施形態ではあるが、不活性断片でさえ、例えば、イムノアッセイ、エピトープマッピング、エピトープタギングにおいて、ワクチン、分子量マーカーとして、ポリペプチドの特定部分に対する抗体を作製するのに有用であることから、上記の断片は新規な生物活性を有する必要はない。
機能的定義
ドメイン
本発明の好ましいポリヌクレオチド 断片は、本発明のポリペプチドのドメインを含む。かかるドメインは最終的に、限定されないが、ロイシンジッパー、ヘリックス−ターン−ヘリックスモチーフ、翻訳後修飾部位、例えばグリコシル化部位、ユビキチン結合部位、αヘリックス、βシート、コードされるタンパク質の分泌を指示するシグナルペプチドをコードするシグナル配列、転写調節に関係する配列、例えば、ホメオボックス、酸性ストレッチ、酵素活性部位、基質結合部位及び酵素切断部位を含む、線状又は構造モチーフ及びシグネチャーを含み得る。かかるドメインは、特定の生物活性、例えばDNAもしくはRNA結合、タンパク質分泌、転写調節、酵素活性、基質結合活性等を示す。
好ましい実施形態において、ドメインは、6〜1000の間のいずれかの整数個の、いくつかのアミノ酸を含む。ドメインは、本明細書に開示の方法を含む、当業者に公知のいずれかの方法を用いて合成することができる。特定の生物活性を有するドメインを構成するアミノ酸を決定する方法としては、試験すべき生物活性を決定する突然変異誘発研究及びアッセイ、ならびに、例えば、Prosite(Hofmann ら(1999) Nucl. Acids Res. 27: 215-219; Bucher and Bairoch (1994) Proceedings 2nd International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology. Altmanら Eds. , pp53-61, AAAIPress, Menlo Park)、Pfam(Sonnhammerら(1997) Proteins. 28 (3): 405-20; Henikoff ら(2000) Electrophoresis 21 (9): 1700-6; Batemanら (2000) Nucleic Acids Res. 28 (1) : 263-6)、Blocks、Print、Prodom、Sbase、Smart、Dali/FSSP、HSSP、CATH、SCOP、COGなどのデータベースで、ドメイン、モチーフ、又はシグネチャーを識別するバイオインフォマティクス的方法が挙げられる。利用可能なデータベースの説明については、Nucleic Acid Research (2000)の28巻,1号を参照のこと。
エピトープ及び抗体融合:
本発明の好ましい実施形態は、エピトープを有するポリペプチド及びエピトープを有するポリペプチド断片に関する。これらのエピトープは、「抗原エピトープ」又は「抗原エピトープ」と「免疫原性エピトープ」の両方である。「免疫原性エピトープ」は、ポリペプチドが免疫原である場合、インビボで抗体応答を誘導するタンパク質の一部として定義される。一方、抗体が結合するポリペプチドの領域は、「抗原決定基」又は「抗原エピトープ」として定義される。タンパク質の免疫原性エピトープの数は一般に、抗原エピトープの数よりも少ない(例えば、Geysen ら(1984), PNAS 81: 3998-4002参照)。特定のエピトープは免疫原性ではないが、それにもかかわらず、抗体を免疫原性及び抗原エピトープの両方にすることができることから、それは有用であることを特に留意のこと。本発明のエピトープは、線状(つまり、ポリペプチド鎖に沿って繰り返すアミノ酸の隣接配列で構成される)又は非線状(「高次構造的」とも呼ばれる、つまり、ポリペプチド鎖の折り畳みの結果として近接するようになるアミノ酸で構成される)であり得る。
エピトープは、エピトープに固有な空間的コンフォメーションにおいて3個と少ないアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは、少なくとも6個のかかるアミノ酸及びさらにしばしば、少なくとも8〜10個のかかるアミノ酸からなる。好ましい実施形態では、抗原エピトープは、3〜50の間のいずれかの整数個の、いくつかのアミノ酸を含む。エピトープとして機能する断片は、いずれかの従来の手段(例えば、Houghten (1985), PNAS 82: 5131-5135)、さらに米国特許第4,631,21号にも記載されている手段を参照)によって作製することが可能である。エピトープを構成するアミノ酸を決定する方法としては、X線結晶学、2次元核磁気共鳴、及びエピトープマッピング、例えば、Geysenら(1984);WO84/03564;及びWO84/03506に記載のペプスカン(Pepscan)法などが挙げられる。非線状エピトープは、タンパク質のフットプリンティング法(米国特許第5,691,448号)などの方法によって決定される。その他の例としては、Jameson and Wolf, (1988), Comp. Appl. Biosci. 4: 181-186のアルゴリズムが挙げられる。Jameson−Wolf抗原分析は例えば、PROTEANコンピュータ・プログラムを使用して、デフォルトパラメーター(Windows(登録商標) 4.0,DNASTAR社(ウィスコンシン州マディソン,サウスパークストリート1228))を用いて行われる。標準法を用いた抗原応答についての試験によって、インビボでエピトープもまた同定される。
少なくとも6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、50、60、75、100、125、150、175、200、225、250、275又は300アミノ酸残基の長さの、本発明のすべての断片は、線状抗原エピトープとして有用であることから本発明に含まれる。免疫原性として具体的に説明されていない本発明のポリペプチドは、それらがインビボで抗原性であることから、非抗原性とは見なされない。本発明のエピトープを有する断片は、本発明のポリペプチドの6〜50(つまり、6と50を含む6から50までの間のいずれかの整数)個のアミノ酸を含むことが好ましい。また、本発明のエピトープを有する任意の数の断片は除外される。
非線状エピトープは、少なくとも1つのアミノ酸それぞれの、1つを超える非隣接ポリペプチド配列を含む。かかるエピトープは、二次、三次、又は四次構造の特徴によって近接するようになる非隣接ポリペプチドから生じる。非線状エピトープを提供する好ましいポリペプチドは、負に折り畳まれたタンパク質の隣接表面によって形成され、したがって、本発明のポリペプチドの少なくとも10アミノ酸、さらに好ましくは12、15、20、25、30、35、40、50、60、75、100、125、150、175、200、225、250、275又は300アミノ酸の長さである。さらに、非線状エピトープは、負のコンフォメーションにおいてタンパク質上に正常に提示される抗原部位又は隣接表面を模倣する合成ペプチドによって形成される。
免疫原性エピトープは、動物系(ウサギ又はマウスなど)に、アルブミンなどの担体タンパク質と共に提示されるか、又はそれが十分長い場合(少なくとも約25個のアミノ酸)には、担体なしで提示される。しかし、8〜10個と少ないアミノ酸を含む免疫原性エピトープが、最低限でも、変性ポリペプチドにおける線状エピトープに結合することができる抗体を産生するのに十分であることが示されている(例えば、ウエスタンブロット法において)。
本発明のエピトープを有するポリペプチドを使用して、当技術分野でよく知られている方法、限定されないが、例えば、インビボでの免疫化、インビトロでの免疫化、ファージディスプレイ法(例えば、上記のSutcliffeら、上記のWilsonら及び上記のBittleら参照)などに従って、抗体が誘導される。インビボ免疫化を用いる場合、動物を遊離ペプチドで免疫することができる;しかしながら、抗ペプチドの抗体価は、スカシガイヘモシアニン(KLH)又は破傷風トキソイドなどの標準法を用いて、巨大分子担体にペプチドを結合することによって高められる。例えば、ペプチド又は担体タンパク質及びフロイントアジュバント約100μgを含有するエマルションを腹腔内及び/又は皮内注射することによって、ウサギ、ラット及びマウスなどの動物が、遊離もしくは担体結合ペプチドのいずれかで免疫される。例えば、ELISAアッセイによって固体表面に吸着された遊離ペプチドを用いて検出することができる、抗ペプチド抗体の有用な抗体価を得るために、例えば、約2週間間隔に数回のブースター注射が必要とされる場合がある。免疫動物由来の血清中の抗ペプチド抗体の抗体価は、当技術分野でよく知られている方法に従って、抗ペプチド抗体の選択によって、例えば、固体担体上のペプチドへの吸着及び選択された抗体の溶離によって高められる。
当業者であれば、免疫原性又は抗原エピトープを含む、上述される本発明のポリペプチドを、異種ポリペプチド配列に融合することができることは理解されよう。例えば、本発明のポリペプチドは、免疫グロブリンの定常ドメイン(IgA、IgE、IgG、IgM)、又はその一部(CH1、CH2、CH3、全ドメイン及びその一部の両方を含むそのいずれかの組み合わせ)と融合することが可能であり、その結果キメラポリペプチドが生じる。これらの融合タンパク質は精製を容易にし、かつインビボで半減期の増加を示す(例えば、欧州特許出願第394,827号及びTrauneckerら(1988), Nature. 331: 84-86、Fountoulakisら(1995) Biochem. 270: 3958-3964参照)。本発明のその他の融合タンパク質は、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エクソンシャッフリング、又はコドンシャッフリングの技術によって作製することが可能である(総称して「DNAシャッフリング」と呼ばれる;例えば、米国特許第:5,605,793号;同第5,811,238号;同第5,834,252号;同第5,837,458号;及びPattenら(1997), Curr Opinion Biotechnol.8: 724-733 ; Harayama (1998), Trends Biotechnol. 16 (2): 76-82; Hanssonら(1999), J. Mol.Biol. 287: 265-276; 及びLorenzoとBlasco (1998) Biotechniques. 24 (2): 308-313を参照のこと)。本発明はさらに、このセクションに示されるポリペプチド断片のいずれかの組み合わせも包含する。
抗体
定義
本発明はさらに、本発明のポリペプチドに特異的に結合する、さらに具体的には、本発明のポリペプチドのエピトープに特異的に結合する、抗体及びT細胞抗原受容体(TCR)に関する。本発明の抗体には、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む)、IgA(IgA1及びIgA2を含む)、IgD、IgE、又はIgM及びIgYが含まれる。「抗体」(Ab)という用語は、少なくとも1つの結合ドメインで構成されるポリペプチド又はポリペプチドの群を意味し、結合ドメインは抗体分子の可変ドメインの折り畳みから形成されて、抗原の抗原決定基の特徴に相補的な内部表面形状及び電荷分布を有する三次元結合空間が形成され、それによって抗原との免疫反応が可能となる。本明細書に使用される「抗体」という用語は、単鎖全抗体を含む全抗体及びその抗原結合断片を包含することを意味するものである。好ましい実施形態において、抗体は本発明のヒト抗原結合抗体断片であり、限定されないが、Fab、Fab'F(ab)2及びF(ab')2、Fd、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)及びVLもしくはVHドメインのいずれかを含む断片が含まれる。抗体は、鳥類及び哺乳動物を含むいずれかの動物起源に由来する抗体であることが可能である。その抗体は、ヒト、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ又はニワトリ由来のものであることが好ましい。
単鎖抗体を含む、抗原結合抗体断片は、単独で又は以下の:ヒンジ領域、CH1、CH2及びCH3ドメインの全体又は一部との組み合わせで、可変領域(1つ又は複数)を含み得る。可変領域(1つ又は複数)及びヒンジ領域、CH1、CH2及びCH3ドメインのいずれかの組み合わせも、本発明に包含される。本発明はさらに、本発明のポリペプチドに特異的に結合するキメラ、ヒト化及びヒトモノクローナル及びポリクローナル抗体を含む。本発明はさらに、本発明の抗体に対して抗イディオタイプの抗体を含む。
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、及び三重特異性であるか又はそれ以上の多重特異性を有することが可能である。多重特異性抗体は、本発明のポリペプチドの異なるエピトープに特異的であるか、又は本発明のポリペプチドならびに異種組成物、例えば、異種ポリペプチド又は固体担体材料のどちらにも特異的である。例えば、WO93/17715;WO92/08802;WO91/00360;WO92/05793;Tuttら (1991), J. Immunol. 147: 60-69;米国特許第5,573,920号、同第4,474,893号、同第5,601,819号、同第4,714,681号、同第4,925,648号;Kostelnyら(1992), J. Immunol. 148: 1547-1553を参照のこと。
本発明の抗体は、抗体によって認識される又は特異的に結合される、本発明のポリペプチドのエピトープ(1つ又は複数)又はエピトープを有する部分に関して説明されるか、又は指定される。その抗体は、本発明の核酸によりコードされる完全タンパク質又はその断片に特異的に結合し得る。また、本発明のいずれかのエピトープ又はポリペプチドに特異的に結合する抗体は、個々の種として除外され得る。
このように、本発明の他の実施形態は、本発明のポリペプチドのいずれかに特異的に結合することができる精製又は単離抗体である。この実施形態の一態様では、その抗体は、本発明のポリペプチドの、少なくとも6連続アミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10連続アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも12、15、20、25、30、40、50又は100連続アミノ酸を含む、線状エピトープ含有ポリペプチドに結合することができる。この実施形態の別の態様では、その抗体は、長さで、本発明のポリペプチドの10アミノ酸、さらに好ましくは12、15、20、25、30、35、40、50、60、75又は100アミノ酸を含む非線状エピトープ含有ポリペプチドに、さらに好ましくは本発明のポリペプチドの天然コンフォメーションの隣接表面に、結合することができる。
本発明の抗体はまた、それらの交叉反応性の面から説明又は指定される。本発明のポリペプチドの他のいずれかの類似体、オルソログ又はホモログに特異的に結合しない抗体が包含される。本発明のポリペプチドと95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満の同一性(当技術分野で公知かつ本明細書の記載の方法を用いて、例えば、FASTDB及び本明細書に示されるパラメーターを用いて計算された)を有するポリペプチドに結合しない抗体もまた、本発明に包含される。厳密なハイブリダイゼーション条件(本明細書に記載の)下にて本発明のポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに単に結合する抗体が、さらに本発明に包含される。本発明の抗体はまた、それらの結合親和性に関して説明又は指定される。好ましい結合親和性としては、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-1lM、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-l3M、10-13M、5×10-14M、10-l4M、5×10-15M及び10-15M未満の解離定数又はKdを有するものが挙げられる。
本発明は、突然変異の新規なタンパク質に又は突然変異の新規なタンパク質のエピトープを含む、その断片又は変異体に、特異的に結合することができる精製又は単離抗体にも関する。
抗体の作製
本発明の抗体は、当技術分野で公知の適切な方法によって作製することができる。例えば、本発明のポリペプチド又はその抗原断片は、「ポリクローナル抗体」を含有する血清の生成を誘導するために、動物に投与することができる。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により作製された抗体に限定されず、むしろ、真核生物の、原核生物のクローン又はファージクローンを含む単一クローンから誘導される抗体を意味し、それが作製される方法を意味するものではない。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え及びファージディスプレイ技術の使用を含む、当技術分野で公知の多種多様な技術を用いて作製することができる。
ハイブリドーマ技術には、当技術分野で公知の技術が含まれる(例えば、HarlowとLane, (1988) Antibodies A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory. pp. 53-242; Hammering (1981), Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, Elsevier, N. Y. 563-681; KohlerとMilstein, (1975) Nature 256: 495; Davisら Basic Methods in Molecular Biology, ed., Elsevier Press, NY (1986), Section 21-2参照)。
簡単に言えば、新規なタンパク質又はその一部の数マイクログラムを、数週間にわたってマウスに繰り返し接種する。次いで、そのマウスを殺し、脾臓の抗体産生細胞を単離する。ポリエチレングリコールを用いて、その脾臓細胞をマウス骨髄腫細胞と融合させ、抗体産生クローンを同定する(例えば、Engvall, (1980) Meth. Enzymol. 70: 419参照)。選択されたポジティブクローンを増殖させ、使用のために、それらのモノクローナル抗体産物を収集する。
さらに、例えば、ハイブリドーマにより産生された抗体から、パパイン(Fab断片の作製のため)又はペプシン(F(ab’)2断片の作製のため)などの酵素を用いて、タンパク分解切断により、Fab及びF(ab’)2断片を作製することができる。
新規なタンパク質又はその一部における異質エピトープに対する抗体を含有するポリクローナル抗血清は、未修飾であるか、又は免疫原性を高めるために修飾することができる新規なタンパク質又はその一部で適切な非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、又はウマ)を免疫することによって作製することができる(例えば、Vaitukaitis ら (1971) J. Clin. Endocrinol. Metab. 33 : 988-991 ; Ouchterlony ら(1973) Chap. 19 in: Handbook of Experimental Immunology D. Wier (ed) Blackwell参照)。このタンパク質又は断片は通常、適切なアジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、RIBI等)の存在下で非ヒト哺乳動物に導入される。免疫された動物由来の血清は、公知の手順に従って回収され、処理され、試験される。血清が、不要なエピトープに対するポリクローナル抗体を含有する場合、イムノアフィニティー・クロマトグラフィーによって、ポリクローナル抗体を精製することができる。抗原に対する抗血清の親和性が標準法を用いて決定される。
あるいは、当技術分野で公知の方法を用いて、組換えDNA技術の適用によって、又は合成化学によって、本発明の抗体を作製することができる。ファージディスプレイ法において、例えば、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保持するファージ粒子表面上に、機能性抗体ドメインを提示させ、抗原、通常固体表面又はビーズに結合又は捕捉された抗原で直接選択することによって、目的の結合特性を有するファージが、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から選択される(例えば、Brinkman ら(1995) J. Immunol Methods, 182: 41-50 ; Ames ら(1995), J. Immunol. Meth. , 184: 177-186.; Kettleborough ら(1994), Eur. L Immunol. , 24: 952958; Persic ら(1997), Gene, 1879-81; Burton ら(1994), Adv. Immunol., 57: 191-280;PCT/GB91/01134;WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;及び米国特許第5,698,426,同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047,5号、同第571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号及び同第5,733,743号参照)。ファージ選択後、ファージから抗体コード領域を単離し、それを用いて、ヒト抗体を含む全抗体、又は他のいずれかの目的の抗原結合断片を作製することが可能であり、いずれかの目的の宿主、例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌などにおいて発現させることができる(例えば、WO92/22324; Mullinaxら(1992), BioTechniques. 12 (6): 864-869; 及びSawaiら(1995), AJRI 34: 26-34; 及びBetterら(1988), Science. 240: 1041-1043参照)。
単鎖Fvs及び抗体の作製に関するさらなる教示は、米国特許第4,946,778号及び同第5,258,498号; Hustonら(1991), Meth. Enymol. 203: 46_88 ; Shuら(1993), PNAS 90: 7995-7999;及びSkerraら(1988)及びScience 240: 1038-1040に提供されている。ヒトにおける抗体のインビボでの使用及びインビトロ検出アッセイを含む、いくつかの用途については、キメラ、混合(shuffled)、ヒト化又はヒト抗体を使用することが好ましい(例えば、Morrison, (1985); Oiら(1986), BioTechniques 4: 214; Gilliesら(1989), J. Immunol Methods. 125: 191-202;米国特許第5,807,715号;EP 0 239 400;WO91/09967;米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号、欧州特許出願第592106号;同519596号;Padlan (1991), Molec. Immunol. 28 (4/5): 489-498; Studnickaら(1994), Protein Engineering. 7 (6): 805-814; Roguska ら(1994), PNAS 91: 969-973、米国特許第5,565,332号、米国特許第4,444,887号、同第4,716,111号、同第5,545,806号及び同第5,814,318号;WO98/46645;WO98/50433;WO98/24893;WO96/34096;WO96/33735;及びWO91/10741参照)。
いずれかの異種分子、例えば本発明のポリペプチド、その他のポリペプチド、検出アッセイに有用な標識、又は薬物又は毒素などのエフェクター分子に組換え融合された、又は化学結合(共有結合及び非共有結合のどちらも含む)された抗体が、さらに本発明に包含される(例えば、WO92/08495;WO91/14438;WO89/12624;米国特許第5,314,995号;及び欧州特許出願第396387号参照)。融合された抗体を使用して、特定の細胞表面受容体に特異的な抗体に本発明のポリペプチドを融合又は結合させることによって、インビトロ又はインビボで特定の細胞型に対して本発明のポリペプチドを標的にすることも可能であり、かつ当技術分野で公知の方法を用いて、インビトロイムノアッセイ及び精製法において使用することもできる(例えば、上記のHarborら ;WO93/21232;欧州特許出願第439095号; Naramura ら(1994), Immunol. Lett. 39: 91-99;米国特許第5,474,981号; Gillies ら(1992), PNAS 89: 14281432; Fell ら(1991), J. Immunol. 146: 2446-2452参照)。
本発明はさらに、可変領域以外の抗体ドメインに融合又は結合された本発明のポリペプチドを含む組成物を包含する。例えば、本発明のポリペプチドは、抗体Fc領域、又はその一部及び/又はヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、又はCH3ドメイン又はその一部に、ならびにIgA又はIgMの部分に融合又は結合させることができる。抗体部分に本発明のポリペプチドを融合又は結合させる方法は当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,336,603号、米国特許第5,622,929号、米国特許第5,359,046号、米国特許第5,349,053号、米国特許第5,447,851号、米国特許第5,112,946号;欧州特許出願第307434号、欧州特許出願第367166号;WO96/04388、WO91/06570; Ashkenazi ら(1991), PNAS 88: 10535-10539; Zhengら (1995), J. Immunol. 154: 5590-5600; and Vilら(1992), PNAS 89: 11337-11341を参照のこと。
野生型であろうと遺伝子導入動物であろうと、抗体結合が望まれるものと異なる種類の新規なポリペプチドを発現する非ヒト動物又は哺乳動物及び新規なポリペプチドを発現しない動物(つまり、本明細書に記載の新規なノックアウト動物)は、かかる動物が新規なタンパク質の露出領域のすべて又は大部分を外来抗原として認識し、したがって新規なエピトープのより広いアレイを有する抗体を産生するであろうことから、抗体の作製に特に有用である。さらに、わずか10〜30個のアミノ酸を有する小さなポリペプチドが、新規なタンパク質のいずれか1つへの特異的な結合を得るのに有用である。さらに、抗原配列に類似する新規な種を産生する、動物の体液性免疫系は、動物の天然新規な種と抗原配列との間の差異を選択的に認識し、抗原配列におけるこれらの固有の部位に対する抗体を産生するだろう。かかる技術は、新規なタンパク質のいずれか1つに特異的に結合する抗体を得るのに、特に有用であるだろう。
本発明の好ましい実施形態は、抗体又は抗体断片を新規なポリペプチドに特異的に結合させる方法である。この方法は、抗体結合条件下にて、新規なポリペプチド特異的抗体又はその断片を新規なポリペプチドと接触させる工程を含む。さらに、新規なポリペプチドのエピトープ、ドメイン又は断片に抗体又は抗体断片を特異的に結合させる方法が包含される。この方法を用いて、例えば、本明細書に記載されたように新規なポリペプチドの活性を検出、精製、又は修飾することができる。
本発明の抗体を使用して、当業者に公知の方法を用いて試験試料又は生体試料中のタンパク質のレベルをアッセイすることができる。タンパク質を検出するのに有用な、抗体に基づく方法には、酵素免疫測定法(ELISA)及びラジオイムノアッセイ(RIA)などのイムノアッセイが含まれる。適切な抗体アッセイの標識は、当技術分野で公知であり、グルコース、オキシターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ及びルカリホスファターゼなどの酵素標識;ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(121In)及びテクネチウム(99Tc)などのラジオアイソトープ;ルミノール、イソルミノール、セロマチック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステル、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及びエクオリンなどの発光標識;蛍光標識、例えばフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド及びフルオレスカミンが挙げられる。
ポリヌクレオチドの使用
試薬としてのポリヌクレオチドの使用
本発明のポリヌクレオチドは、単離手順、診断アッセイ及び法医学的手順において試薬として使用することができる。例えば、本発明の新規なポリヌクレオチドからの配列を検出可能に標識し、プローブとして用いて、それらとハイブリダイズすることができる他の配列を単離することが可能である。さらに、本発明の新規なポリヌクレオチドからの配列を使用して、単離、診断又は法医学的手順に用いられるPCRプライマーを設計することができる。
相当するゲノムDNA配列を見出すために
本発明の新規なcDNAを使用して、相当するゲノムDNA上の本発明のcDNAの近くに、好ましくは上流に位置する配列をクローニングすることも可能である。プロモーター配列、エンハンサー配列及び転写又は翻訳レベルに影響を及ぼす他の配列を含む、かかる配列は、遺伝子発現を調節することができる。
ゲノムDNA由来の上流配列をクローニングするためのcDNA又はその断片の使用
本発明のポリヌクレオチド由来の配列を使用して、染色体歩行技術を用いて(例えば、クロンテック社製のGenome Walker kitを用いて)、相当する遺伝子のプロモーターを単離することができる。上流のゲノム配列をクローニングし、シーケンスすると、公知の転写開始部位、転写因子結合部位、又はプロモーター配列を含有するデータベースと、本発明のポリヌクレオチドの上流の配列を比較することによって、上流配列内の予定プロモーター及び転写開始部位が同定される。
さらに、プロモーターレポーターベクターを用いて、例えばレポーター遺伝子(例えば、分泌、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ又は緑色蛍光タンパク質)を、新規な遺伝子の最初のエクソンの上流に位置する新規なプロモーター領域の調節活性ポリヌクレオチド断片又は変異体の制御下に置くことによって、上流配列におけるプロモーターが同定される。多数の適切なプロモーターレポーターベクターが当技術分野で公知である。本発明のポリヌクレオチドの上流に位置するプロモーター及び他の調節配列を用いて、所望の空間的、時間的、発生的、又は定量的手法において挿入遺伝子の発現を検出することができる発現ベクターを設計することができる。
類似配列を見出すために
本発明のポリヌクレオチドを使用して、このセクションに記述されるハイブリダイゼーション又は増幅に基づく技術を含む当業者によく知られているいずれかの方法を用いて、それに類似の核酸を単離及び/又は精製することができる。これらの方法を使用して、新規なcDNAがそれに由来するmRNA、新規なcDNAに相当するmRNA又は新規なcDNAもしくはその断片に相同的な核酸、例えば変異体、相同分子種又はオルソログをコードするゲノムDNAが得られる。
ハイブリダイゼーションに基づく方法
所定のプローブ配列とハイブリダイズする、cDNAライブラリーにおいてcDNAクローンを同定する技術が、Sambrook ら(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual. (2ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York)及びHamesとHiggins (1985) Nucleic Acid Hybridization : A Practical Approach (HamesとHiggins Ed., IRL Press, Oxford)に開示されている。同じ技術を用いて、ゲノムDNAを単離することができる。
新規なcDNA又はその断片からの少なくとも10連続ヌクレオチドを含むプローブは、ラジオアイソトープ又は蛍光分子などの検出可能な標識で標準法を用いて標識される。ライブラリー中のcDNA又はゲノムDNAは、ニトロセルロース又はナイロンフィルターに移され、変性される。非特異的部位をブロックした後、それにハイブリダイズすることができる配列を含有するcDNA又はゲノムDNAにプローブを結合させるのに十分な時間、そのフィルターを標識プローブと共にインキュベートする。
検出可能なプローブとハイブリダイズするcDNA又はゲノムDNAを同定するために用いられるハイブリダイゼーション条件の厳密性を変えることによって、以下に記載されたように、プローブと異なるレベルの同一性を有するcDNA又はゲノムDNAを同定かつ単離することができる。
厳密な条件
「厳密なハイブリダイゼーション条件」は、プローブとの高レベルの同一性を有する核酸のみが前記プローブとハイブリダイズすることができる条件として定義される。これらの条件は、以下のように計算することができる:長さ14〜70ヌクレオチドのプローブについては、融解温度(Tm)は、式:
Tm=81.5+16.6(log(Na+))+0.41(G+C分率)−
(600/N)
(式中、Nはプローブの長さである)
を用いて計算される。
ホルムアミドを含有する溶液中でハイブリダイゼーションが行われる場合には、融解温度は、式:
Tm=81.5+16.6(log(Na+))+0.41(G+C分率)−
(0.63%ホルムアミド)−(600/N)
(式中、Nはプローブの長さである)
を用いて計算される。
ハイブリダイゼーションは、6×SSC、5×デンハルト試薬(Denhardt's reagent)、0.5%SDS、変性断片化サケ精子DNA100μg、50%ホルムアミド中で行われる(例えば、Sambrook ら1986参照)。
ハイブリダイゼーションは標準法に従って行われる。長さ200ヌクレオチドを超えるプローブについては、ハイブリダイゼーションは、Tmより低い15〜25℃で行われる。オリゴヌクレオチドプローブなど短いプローブでは、ハイブリダイゼーションはTmより低い15〜25℃で行われる。好ましくは、6×SSC中でのハイブリダイゼーションに関しては、ハイブリダイゼーションは約68℃で行われる。好ましくは、50%ホルムアミド含有溶液中でのハイブリダイゼーションに関しては、ハイブリダイゼーションは約42℃で行われる。
ハイブリダイゼーションに続いて、室温にて2×SSC、0.1%SDS中でフィルターを15分間洗浄する。次いで、フィルターを室温にて0.1×SSC、0.5%SDS中で30分〜1時間洗浄する。その後、その溶液を0.1×SSC、0.5%SDS中にて、ハイブリダイゼーション温度で洗浄する。最終洗浄は、室温にて0.1×SSC中で行われる。
プローブとハイブリダイズした核酸は、オートラジオグラフィ又は他の従来の技術によって同定される。
低程度及び中程度の条件
ハイブリダイゼーション及びシグナル検出の厳密性の変更は主に、ホルムアミド濃度(ホルムアミドのパーセンテージを低くすると、厳密性が低くなる);塩濃度又は温度の操作によって達成される。上記の手順をこのように変更して、プローブ配列との同一性レベルが低い核酸を同定することができる。例えば、ハイブリダイゼーション温度は、約1Mのナトリウム濃度を有するハイブリダイゼーションバッファーにおいて68℃〜42℃の5分単位で下げられる。ハイブリダイゼーションに続いて、ハイブリダイゼーション温度にて2×SSC、0.5%SDSでフィルターを洗浄する。これらの条件は、「中程度」条件は50℃を超え、「低程度」条件は50℃未満であると見なされる。あるいは、ハイブリダイゼーションは、ホルムアミドを含有する6×SSCなどのバッファー中、温度42℃で行うことができる。この場合には、ハイブリダイゼーションバッファー中のホルムアミドの濃度を50%〜0%の5%単位で低減し、プローブとの同一性レベルが低いクローンを同定することができる。ハイブリダイゼーションに続いて、50℃にて、6×SSC、0.5%SDSでフィルターが洗浄される。これらの条件は、「中程度」条件はホルムアミドが25%を超え、「低程度」条件はホルムアミドが25%未満であると見なされる。プローブとハイブリダイズしたcDNA又はゲノムDNAは、オートラジオグラフィ又は他の従来の方法によって同定される。
上記の条件の変化は、ハイブリダイゼーション実験においてバックグラウンドを抑制するのに使用される、代わりのブロッキング試薬(例えば、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA等)の包含又は置き換えによって達成されることに留意のこと。
PCRに基づく方法
上述の方法の他に、以下に記載されたように、本発明の新規な cDNA又はその断片を用いて、相同的cDNAを得るために、他のプロトコールを利用することができる。
ポリA選択手順又は当業者に公知の他の技術を利用したmRNA作製手順を用いて、対象の組織、細胞、又は生物体由来のmRNAを得ることによって、cDNAが作製される。mRNAのポリAテールとハイブリダイズすることができる第1プライマー(例えば、オリゴ(T)プライマー)を、mRNAとハイブリダイズさせ、逆転写反応を行って、第1cDNA鎖を作製する(例えば、 Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc. 1997 and Sambrookら1989参照)。通常、かかるオリゴ(T)プライマーは、制限部位含有配列など、DNAのその後の操作を容易にする、ポリ(dT)ストレッチ上流のさらなる配列を含む。
次いで、第1cDNA鎖を、本発明のポリヌクレオチドの少なくとも10連続ヌクレオチドを含有する第2プライマーとハイブリダイズさせる。使用される第2プライマーは、翻訳開始部位の上流に位置する配列を含有する場合が多い。第2プライマーを伸長させて、第1cDNA鎖に相補的な第2cDNA鎖を作製する。あるいは、得るべきcDNAの両端からのプライマーを用いて、上述のようにRT-PCRが行われる。例えば、 Current Protocol in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. 1997 and Sambrook, ら., 1989参照のこと。
他のプロトコール
あるいは、相同的cDNAを得るために、他の手順を用いてもよい。ひとつのアプローチにおいて、cDNAをmRNAから作製し、標準法を用いて二本鎖ファージミド中にクローニングする。次いで、二本鎖ファージミド中のcDNAライブラリーを一本鎖にし、公知の新規なcDNA、ゲノムDNAもしくはそれらの断片の配列を含むビオチン化オリゴヌクレオチドを、その一本鎖ファージミドとハイブリダイズさせる。ビオチン化オリゴヌクレオチドとファージミドとのハイブリッドを単離し、相当するファージミドをビーズから放出し、ビオチン化オリゴヌクレオチドを設計するのに使用される新規なcDNA又は断片に特異的なプライマーを用いて、二本鎖DNAに転換する。あるいは、Gene Trapper kit(Gibco BRL社製)などのプロトコールを使用することができる。
染色体マーカーとして
当技術分野で公知のいずれかの方法又は技術、例えば放射線ハイブリッド(RH)マッピング(例えば、Benham ら(1989) Genomics 4: 509-517 and Cox ら(1990) Science 250: 245-250; and Schuler ら(1996) Science 274: 540-546参照)、PCRに基づくマッピング及び蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)マッピングなどを用いて、以下に記載されたように、新規なポリヌクレオチドをそれらの染色体位置にマッピングすることが可能である。
PCR技術を用いた、ヒト染色体へのcDNAのマッピング
新規なcDNA及びゲノムDNAは、PCRに基づく方法論を用いてヒト染色体に割り当てることができる。かかるアプローチにおいて、オリゴヌクレオチドプライマー対をcDNA配列から設計し、PCRを用いて、ヒト染色体の定義されたセットを含有する一連の体細胞雑種細胞系をスクリーニングする。新規なcDNA又はゲノムDNAに相当するヒト遺伝子を含有する染色体との体細胞雑種のみが増幅された断片を生成し、増幅断片を生じるすべての細胞雑種に存在するただ1つのヒト染色体が、その新規なcDNA又はゲノムDNAを含有する染色体である(例えば、Ledbetter ら(1990) Genomics 6: 475-481参照)。
蛍光in situハイブリダイゼーションを用いた染色体へのcDNAのマッピング
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)によって、新規なcDNA又はゲノムDNAを所定の染色体上の特定の位置にマッピングすることができる。蛍光in situハイブリダイゼーション技術に使用される染色体は、細胞培養、組織又は全血を含む様々な源から得ることができる(例えば、Cherif ら(1990) PNAS 87: 6639-6643参照)。
染色体マップを構築又は拡大するためのcDNAの使用
新規なcDNA又はゲノムDNAが特定の染色体に割り当てられたら、それらを利用して、それらが位置する染色体の高分解能マップを構築するか、又は試料中の染色体を同定することができる。
染色体マッピングは、上述のように、特定の染色体に所定の固有の配列を割り当てることを含む。固有の配列が所定の染色体にマッピングされたら、それは、同じ染色体上に位置する他の固有の配列に関連して順序付けられる(例えば、Nagaraja ら(1997) Genome Res. 1997 Mar; 7 (3): 210-22参照)。
遺伝病又は薬物応答と関連する遺伝子の同定
他の実施形態では、特定のいずれかの新規なcDNA又はゲノムDNAを試験用プローブとして使用し、その新規なcDNA又はゲノムDNAを特定の表現型特性と関連付けることができる。
一実施形態において、標準技術を用いて、新規なcDNA又はゲノムDNAをヒト染色体上の特定の位置にマッピングし、その位置をMendelian Inheritance in Manで検索する(ビクトル・マキュージック(V.McKusick)のMendelian Inheritance in Man(OMIM));Johns Hopkins University Welch Medical Libraryを通してオンラインで利用可能)。この検索から、新規なcDNA又はゲノムDNAを含有するヒト染色体の領域が、数種の既知の遺伝子及び遺伝子がまだ同定されていない数種の疾患又は表現型を含有する非常に遺伝子豊富な領域(gene rich region)であることが明らかとなる。したがって、この新規なcDNA又はゲノムDNAに相当する遺伝子は、これらの遺伝病それぞれの直接の候補となる。
次いで、例えば、新規なcDNA又はゲノムDNAからのPCRプライマーを用いて、又は疾患にかかっていない個体に対して、患者における新規なcDNA又はゲノムDNAの発現、サイズ又は配列の差異についてシークエンスすることによって、これらの疾患又は表現型を有する患者由来のゲノムDNA、mRNA又はcDNAがスクリーニングされる。検出された差異によって、疾患又は表現型における新規な遺伝子の役割が示される。
組換えベクターにおけるポリヌクレオチドの使用
本発明は、本発明の単離ポリヌクレオチドを含む組換えベクター及び上記のベクターなどの本発明のポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体、ならびにかかるベクター及び宿主細胞を作製し、かつ組換え技術によって新規なポリペプチドを作製するために、それらを使用する方法にも関する。
組換えベクター
「ベクター」という用語は、二本鎖又は一本鎖であり、かつ細胞宿主中で又は単細胞もしくは多細胞宿主生物中に導入されることが求められる対象の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、環状もしくは線状DNA又はRNA分子を指すために本明細書で使用される。
好ましい一実施形態において、本発明は、本発明の調節ポリヌクレオチド又はコード核酸、又はその両方を含む発現ベクターを提供する。発現ベクターを用いて、精製のための、ならびに遺伝子導入動物を作製するための、また遺伝子治療(インビボ及びエクスビボでの方法を含む)のための、新規なポリペプチドを発現させることができる。そのコードされるタンパク質は、宿主生物又は細胞において一過性に発現されるか、又は宿主生物又は細胞において安定的に発現される。コードされるタンパク質は、本明細書に記述する活性のいずれかを有する。そのコードされるタンパク質は、宿主生物に欠けているタンパク質であるか、一方、コードされるタンパク質は、宿主生物中のタンパク質の既存のレベルを高める場合がある。
本発明のベクターに見出される因子の一部は、以下のセクションでさらに詳細に記述される。
本発明の発現ベクターの一般的な特徴
本発明の通常の発現ベクターは、遺伝因子又は遺伝子発現において調節的役割を有する因子、例えば、プロモーター及びmRNAに転写され、最終的にポリペプチドに翻訳される構造又はコード配列であって、上述の調節因子に作動可能に連結される構造又はコード配列及び適切な転写開始及び終結配列、のアセンブリーを含む転写単位を含有する。その他の特徴としては、エンハンサー、宿主細胞による翻訳タンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列、複製の起点、宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカー、リボゾーム結合部位、ポリアデニル化シグナル、スプライスドナー及びアクセプター部位、転写終結配列及び5’−フランキング非転写配列が挙げられる。
調節因子
本発明に従って発現ベクターにおいて使用される適切なプロモーター領域は、異種遺伝子を発現させなければならない細胞宿主を考慮に入れて選択される。
適切なプロモーターは、それが発現を制御する核酸に対して異種であってもよいし、あるいは、発現させるコード配列を含有する天然ポリヌクレオチドに内因性であることが可能である。プロモーター領域は、例えば、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクター、さらに好ましくはpKK232-8及びpCM7ベクターを用いて、いずれかの目的の遺伝子から選択することができる。好ましい細菌プロモーターとしては、LacI、LacZ、T3又はT7バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーター、gpt、λPR、PL及びtrpプロモーター(EP 0036776)、ポリヘドリンプロモーター又はバキュロウイルス由来のP10タンパク質プロモーター(Kit Novagen)(Smithら(1983) Mol. Cell. Biol. 3: 2156-2165; O'Reillyら(1992), 「Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual」, W. H. Freeman and Co. , New York)、λPRプロモーター又はtrcプロモータも挙げられる。
真核生物プロモーターとしては、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウイルス由来のTR及びマウスメタロチオネイン−Lが挙げられる。簡便なベクター及びプロモーターの選択は、当業者のレベル内に十分ある。
選択マーカー
選択マーカーは、同定可能な変化を細胞に与え、その結果、発現コンストラクトを含有する細胞を容易に同定することができる。形質転換宿主細胞を選択するための選択マーカー遺伝子は、真核細胞培養に対してジヒドロ葉酸還元酵素又はオマイシン耐性、S.cerevisiaeに対してTRP1又は大腸菌においてテトラサイクリン、リファンピシン又はアンピシリン耐性、ミコバクテリアに対してレバンスクラーゼ(levan saccharase)であることが好ましく、この後者のマーカーは天然選択マーカーである。
好ましいベクター
本発明の組換えベクターは、限定されないが、YAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌人工染色体)、ファージ、ファージミド、コスミド、プラスミド及び線状DNAを含むいずれかの種類のベクターである。
細菌ベクター
限定されないが、代表的なものとして、細菌の用途に有用な発現ベクターは、選択マーカー及びpBR322(ATCC37017)の遺伝因子を含む市販のプラスミドから誘導される細菌複製起点を含み得る。かかる市販のベクターとしては、例えばpKK223-3(Pharmacia社(スウェーデン、ウプサラ))、pGEMI(Promega Biotec社(米国ウィスコンシン州マディソン))、pQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen社)、pbs、pD10、phagescript、psiX174、pbluescript SK、pbsks、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46A(Stratagene社);ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmacia社);pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTI、pSG(Stratagene社);pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia社);pQE-30(QIAexpress社)が挙げられる。
バクテリオファージベクター
PIバクテリオファージベクターは、範囲約80〜約100kbの大きなインサートを含有し得る。PIバクテリオファージベクターの作製は、当技術分野でよく知られている(例えば、Sternberg (1992) Trends Genet. 8: 1-16, Sternberg (1994) Mamm. Genome. 5: 397-404, Linton ら(1993) J. Clin. Invest. 92: 3029-3037, McCormick ら(1994) Genet. Anal. Tech. Appl. 11: 158-164参照)。
ウイルスベクター
いずれかのウイルスベクターを用いて、本明細書に記載の方法を実施することができる。特定の一実施形態において、そのベクターは、アデノウイルス、例えば、ヒトアデノウイルス2型又は5型に由来する(例えば , Feldman ら(1996) Medecine/Sciences, 12: 47-55, Ohno ら(1994) Science 265: 781-784、仏国特許出願番号FR−93.05954参照)。
アデノ随伴ウイルスのベクターもまた、本明細書に記載の方法に対して好ましい。
本発明のレトロウイルスのインビトロ又はインビボ遺伝子送達媒体の作製又は構築に特に好ましいレトロウイルスには、ミンク細胞増殖巣誘導ウイルス(Mink-Cell Focus Inducing Virus)、マウス肉腫ウイルス、細網内皮症ウイルス及びラウス肉腫ウイルスからなる群から選択されるレトロウイルスが含まれる。特に好ましいマウス白血病ウイルスとしては、4070A及び1504Aウイルス、Abelson(ATCC番号VR-999)、Friend(ATCC番号VR-245)、Gross(ATCC番号VR-590)、Rauscher(ATCC番号VR-998)及びモロニーマウス白血病ウイルス(ATCC番号VR-190;国際公開番号:WO94/24298)が挙げられる。特に好ましいラウス肉腫ウイルスとしては、ブライアン(Bryan)高力価ウイルス(ATCC番号VR-334、VR-657、VR-726、VR-659及びVR-728)が挙げられる。他の好ましいレトロウイルスベクターは、Rothら(1996) Nature Medicine, 2 (9): 985-991、WO93/25234、WO94/06920, Rouxら(1989), PNAS 86: 9079-9083, Julanら(1992), J. Gen. Virol. 73: 3251-3255及びNedaら(1991), J. Biol. Chem. 266: 14143-14146に記載されているベクターである。
BACベクター
大腸菌においてゲノムDNAの大きな断片(100〜300kb)を安定に維持するために、細菌人工染色体(BAC)クローニング系(Shizuyaら(1992), PNAS 89: 8794-8797)が開発された。好ましいBACベクターは、Kim U-J.ら(1996), Genomics 34: 213-218によって記載されているpBeIoBAC11ベクターを含む。BACベクター及びその作製は、当技術分野でよく知られており、いずれかの適切な
バキュロウイルス
他の特定の適切な宿主ベクター系は、Spodoptera frugiperda由来のSF9細胞系(ATCC番号CRL 1711)をトランスフェクトするために使用される、pVL1392/1393バキュロウイルス導入ベクター(Pharmingen社)である。バキュロウイルス発現系において本発明の新規なポリペプチドを発現するのに適切な他のベクターとしては、Chaiら(1993), Biotechnol. Appl. Biochem. 18: 259-273; Vlasakら(1983), Eur. J. Biochem. 135: 123-126及びLenhardら(1996) Gene. 169: 187-190に記載されているベクターが挙げられる。
組換えベクターの送達
本発明のポリヌクレオチド及びポリヌクレオチドコンストラクトの発現を生じさせるために、そのコンストラクトは細胞中に送達されなければならない。この送達は、細胞系を形質転換する実験手順の場合と同様にインビトロで、又は特定の疾患状態の治療の場合と同様にインビボ又はエクスビボで達成される。 発現コンストラクトが感染性ウイルス粒子中に封入されるあるメカニズムは、ウイルス感染である(米国特許第5,968,821号参照)。その発現コンストラクト、好ましくは本明細書に記述される組換えウイルスベクターは、次いで発現コンストラクトを含む感染性ウイルス粒子を産生する、パッケージング細胞に形質導入するために使用される。次いで、その粒子を使用して、真核細胞に形質導入する(Miller, A. D. (1990) Blood 76: 271;米国特許第6,228,844号参照)。
新規なポリヌクレオチドを含む複製欠損レトロウイルスがビリオン中にパッケージングされ、次いでそれを使用して、標準技術によってヘルパーウイルスを用いて標的細胞を感染させることができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F. M. ら(eds.) Greene Publishing Associates, (1989)参照)。多数のレトロウイルスのいずれかを使用することが可能であり、当技術分野でよく知られている(例えば、Eglitisら (1985) Science 230: 1395-1398; Danos and Mulligan (1988) PNAS 85: 6460-6464; Wilsonら(1988) PNAS 85: 3014-3018; Armentanoら(1990) PNAS 87: 6141-6145; Huberら(1991) PNAS 88: 8039-8043; Ferryら(1991) PNAS 88: 8377-8381; Chowdhuryら(1991) Science 254: 1802-1805; van Beusechemら(1992) PNAS 89: 7640-7644; Kayら(1992) Human Gene Therapy 3: 641-647; Daiら(1992) PNAS 89: 10892-10895; Hwuら(1993) J. Immunol. 150: 4104-4115参照)。
本発明において有用な他のウイルスの遺伝子送達系では、アデノウイルス由来ベクターが用いられる。アデノウイルスのゲノムは、それが対象の遺伝子産物をコードするように操作することができるが、正常な溶菌性ウイルス生活環において複製するその能力面に関して不活化される(例えば、Berknerら(1988) BioTechniques 6: 616; Rosenfeldら(1991) Science 252: 431-434; and Rosenfeldら(1992) Cell 68: 143-155参照)。いずれかの標準アデノウイルスベクターを本発明で使用することができる(例えば、Jonesら(1979) Cell 16: 683; Grahamら in Methods in Molecular Biology, E. J. Murray, Ed. (Humana, Clifton, N. J., 1991) vol. 7. pp. 109-127参照)。
ポリヌクレオチドの送達に有用なさらに他のウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。アデノ随伴ウイルスは、効率的な複製及び増殖的生活環のためのヘルパーウイルスとして、その他のウイルス、例えばアデノウイルス又はヘルペスウイルスを必要とする天然の欠損ウイルスである(Muzyczkaら Curr. Top. Micro. Immunol. (1992) 158: 97-129参照)。いずれかの標準AAVベクターを本発明で使用することができる(例えば、Flotte ら(1992) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 7: 349-356; Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 7: 349-356;Samulskiら(1989) J. Virol. 63: 3822-3828; and McLaughlin ら(1989) J. Virol. 62: 19631973, Tratschinら(1985) Mol. Cell. Biol. 5: 3251-3260, Hermonatら(1984) PNAS 81: 6466-6470; Tratschinら(1985) Mol. Cell. Biol. 4: 2072-2081; Wondisfordら(1988) Mol. Endocrinol. 2: 32-39; Tratschinら(1984) J. Virol. 51: 611-619; and Flotteら(1993) J.Biol. Chem. 268: 3781-3790参照)。
遺伝子治療における用途を有する他のウイルスベクター系は、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス及び数種のRNAウイルスに由来するものである。特に、ヘルペスウイルスベクターは、中枢神経系及び眼球組織の細胞における挿入遺伝子発現の存続に、固有の方策を提供し得る(Peposeら(1994) Invest Ophthalmol Vis Sci 35 : 2662-2666)。
細胞、例えば、哺乳動物細胞中にポリヌクレオチドを導入するための、インビボ、インビトロ又はエクスビボでの数種類の非ウイルス的方法もまた本発明によって企図され、その方法としては、限定されないが、リン酸カルシウム沈殿法が挙げられる(Graham ら (1973) Virol. 52: 456457; Chenら(1987) Mol. Cell. Biol. 7: 2745-2752); DEAE-dextran (Gopal (1985) Mol. Cell. Biol. , 5: 1188-1190); electroporation (Tur-Kaspa ら(1986) Mol. Cell. Biol. 6: 716-718; Potterら(1984) PNAS 81 (22): 7161-7165); direct microinjection (Harland ら(1985) J. Cell. Biol. 101: 1094-1095); DNA-loaded liposomes (Nicolau ら(1982) Biochim. Biophys. Acta. 721: 185190; Fraley ら(1979) PNAS 76: 3348-3352); and receptor-mediated transfection. (Wu and Wu (1987), J. Biol. Chem. 262: 4429-4432; and Wu and Wu (1988), Biochemistry 27: 887-892)。
インビボ又はインビトロで脊椎動物細胞の内部にタンパク質又はペプチドを送達する方法の特定の実施形態は、生理学的に許容される担体と、対象のポリペプチドを作動可能にコードする裸のポリヌクレオチドとを含む製剤(preparation)を、細胞を含有する組織の間質空間中に導入し、それによって、その裸のポリヌクレオチドが細胞の内部に取り込まれる工程を含む(例えば、WO90/11092、WO95/11307、Tasconら(1996), Nature Medicine 2 (8): 888-892及びHuygenら(1996) Nature Medicine 2 (8): 893-898参照)。本発明の裸のポリヌクレオチドは、微粒子銃(遺伝子銃)、例えばそれらが細胞膜を突き抜け、それらを殺すことなく細胞に入ることができる高速度に加速されるDNA被覆微粒子を用いて、細胞中に導入することもできる (Kleinら(1987) Nature 327: 70-73)。
本発明において使用されるリポソーム製剤としては、カチオン性(正に帯電した)、アニオン性(負に帯電した)及び中性製剤が挙げられる。しかし、カチオン性リポソームとポリアニオン性核酸との間に密な電荷の複合体が形成されるため、カチオン性リポソームが特に好ましい。カチオン性リポソームは、機能的な形で、プラスミドDNA(Felgnerら PNAS (1987) 84: 7413-7416); mRNA (Maloneら PNAS (1989) 86: 6077-6081);及び精製転写因子(DebsらJ. Biol. Chem. (1990) 265: 10189-10192)の細胞内送達を仲介することが示されている。非常に多くのカチオン性リポソームのうちのいずれかを使用することができる。N [1−2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリエチルアンモニウム(DOTMA) リポソームが特に有用であり、GIBCO BRL社(ニューヨーク州グランドアイランド)から商標名Lipofectinで市販されている。他の市販のリポソームとしては、transfectace (DDAB/DOPE)及びDOTAP/DOPE (Boehringer社)が挙げられる。
同様に、アニオン性及び中性リポソームは、AvantiPolar Lipids社(アラバマ州バーミンガム)などから容易に入手することができるし、あるいは、容易に入手できる物質を用いて用意に作製することができる。かかる物質としては、特にホスファチジル、コリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)が挙げられる。これらの物質を、適切な割合でDOTMA及びDOTAP出発物質と混合することもできる。リポソームの様々な組み合わせと同様に、これらの物質を用いてリポソームを製造する方法は、当技術分野でよく知られている。
そのリポソームは、多重小胞(MLV)、小さな単層小胞(SUV)又は大きな単層小胞 (LUV)を含むことが可能であり、SUVが好ましい。様々なリポソーム核酸複合体が、当技術分野でよく知られている方法を用いて作製される(Straubingerら Methods of Immunology (1983), 101: 512-527; 米国特許第5,965,421号)。一般に、DNAとリポソームとの比は、約10:1〜約1:10(約5:1〜約1:5又は約3:1〜約1:3が好ましい)であるだろう。さらに、受容体−受容体リガンド対のメンバーなどの標的化部位を小胞の脂質エンベロープ中に埋め込むことによって、リポソームを特定の細胞型に標的化することが可能である(例えば、米国特許第6177433号、米国特許第6110490号及び国際公開番号W09704748参照)。
目的の宿主生物に注入されるベクターの量は、注入部位に応じて異なる。指示用量としては、動物の体内、好ましくは哺乳動物の体内、例えばマウス体内にベクター0.1〜100μgが注入されるだろう。
分泌ベクター
ベクターに挿入される遺伝子によってコードされるタンパク質の分泌を指示することができる分泌ベクターを作製するために、本発明の新規なcDNA又はゲノムDNの一部を使用することもできる。目的のタンパク質をそれから精製又は濃縮しなければならないバックグラウンドのタンパク質の数を減らすことによって、かかる分泌ベクターは、それに挿入される遺伝子によりコードされるタンパク質の精製又は濃縮を容易にすることができる。例示的な分泌ベクターを以下に示す。
本発明の分泌ベクターは、宿主細胞、組織又は対象の生物体における遺伝子発現を指示することができるプロモーターと、コード配列及びプロモーターから転写されたmRNAがシグナルペプチドの翻訳を指示するように、作動可能にプロモーターに連結される本発明のポリヌクレオチドからのシグナル配列と、を含む。宿主細胞、組織又は生物体は、新規なcDNA又はゲノムDNAにおけるシグナル配列によってコードされるシグナルペプチドを認識する、いずれかの細胞、組織又は生物体であることが可能である。適切な宿主としては、哺乳動物細胞、組織又は生物体、鳥類の細胞、組織又は生物体、又は酵母が挙げられる。そのシグナル配列は、遺伝子治療のために設計されたベクター中に挿入することもできる。
分泌ベクターはDNA又はRNAであり、宿主の染色体に組み込み、宿主中の染色体外のレプリコンとして安定に保持することが可能であり、人工染色体であるか、又は宿主に一過的に存在することができる。その分泌ベクターは、各宿主細胞における多重コピーにおいて保持されることが好ましい。
細胞宿主
本発明のその他の目的は、本明細書に記載のポリヌクレオチドのうちの1つ、特に新規なポリペプチド−コードポリヌクレオチド調節配列又は新規なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドで形質転換されている、又はポリヌクレオチドをトランスフェクトされている宿主細胞を含む。上記のベクターのうちの1つなどの組換えベクターで形質転換された(原核細胞)、それをトランスフェクトされた(真核細胞)、又はそれを形質導入された宿主細胞もまた包含される。本発明の発現ベクターのレシピエントとして使用される好ましい宿主細胞としては、原核生物の宿主細胞、例えば、大腸菌株(I.E.DH5-α株)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)及びシュードモナス属、ストレプトマイセス属及びブドウ球菌属などの種からの株、ならびに真核生物の宿主細胞、例えば、ヒーラ細胞、Cv 1細胞、COS細胞、Sf-9細胞、C127細胞、3T3、CHO、ヒト腎細胞293及びBHK細胞が挙げられる。
本明細書に記載のベクターコンストラクトを含有する宿主細胞を包含することに加えて、本発明は、内因性遺伝物質(例えば、コード配列)を欠失又は置換するために、かつ/又は、本発明のポリヌクレオチドと作動可能に関連付けられ、かつ内因性ポリヌクレオチドを活性化、変化させ及び/又は増幅する遺伝物質を含ませるために操作された、脊椎動物起源、特に哺乳動物起源の一次、二次及び不死化宿主細胞も包含する(例えば、米国特許第5,641,670号;WO96/29411;WO94/12650; Koller, ら., (1989); 及び Zijlstra, ら. (1989);米国特許第6,054,288号;同第6,048,729号;同第6,048,724号;同第6,048,524号;同第5,994,127号;同第5,968,502号;同第5,965,125号;同第5,869,239号;同第5,817,789号;同第5,783,385号;同第5,733,761号;同第5,641,670号;同第5,580,734号;及びW096/29411、WO94/12650;及びKollerら(1994)参照)
哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞における新規な遺伝子の発現を不完全にすることが可能であり、あるいは、動物細胞のゲノム中の内因性の新規なポリペプチド−コード遺伝子を本発明による新規なポリペプチド−コードポリヌクレオチドで置換することによって改変することが可能である。これらの遺伝的改変は、先に記載の特定のポリヌクレオチドコンストラクトを用いた相同的組換えによって行われる。
マウス接合体などの哺乳類の接合体を細胞宿主として使用してもよい。例えば、マウス接合体に、対象の精製DNA分子を微量注入する。さらに、本発明のポリヌクレオチドのいずれか1つが、胚幹(ES)細胞系、好ましくはマウスES細胞系に導入される。ES細胞、及びそれらの単離及び維持方法は当技術分野でよく知られており、特に、Abbondanzoら(1993), Meth. Enzymol., Academic Press, New York, pp 803-823, Robertson, (1987), Embryo-derived stem cell lines; E.J. Robertson Ed. Teratocarcinomas and embrionic stem cell lines: a practical approach. IRL Press, Oxford, pp. 71及びPease and William, (1990), Exp. Cell. Res. 190: 209-211に記述されている。
遺伝子導入動物
「遺伝子導入動物」又は「宿主動物」という用語は、本発明による核酸のうちの1つを含むように遺伝学的かつ人工的に操作されたそれらのゲノムを有する動物を指すために、本明細書において使用される。影響を受ける細胞は、体細胞、胚細胞、又はその両方であることが可能である。好ましい動物は非ヒトの哺乳動物であり、ハツカネズミ属(例えば、マウス)、クマネズミ属(例えば、ラット)及びアナウサギ属(例えば、ウサギ)から選択される属に属する動物が含まれる。一実施形態において、本発明は、本発明の組換えベクター又はノックアウトベクターとの相同的組換えによって破壊された新規な遺伝子を含む、非ヒトの宿主哺乳動物を包含する。このように、本発明は、本発明による核酸、組換え発現ベクター又は組換え宿主細胞を含有する遺伝子導入動物にも関する。本発明のさらなる目的は、本明細書に記載の遺伝子導入動物から得られる組換え宿主細胞を含む。
かかる遺伝子導入動物は、所定の新規な遺伝子の発現の増加又は減少に関する多様な病理を研究するための優れた実験モデルである。遺伝子導入動物は、新規な遺伝子の調節ポリヌクレオチドの制御下で対象の目的ポリペプチドを発現させるのに使用することも可能であり、対象のこのタンパク質の合成で高い収量が得られ、又は遺伝子の組織特異的な発現が生じる。
一実施形態では、本発明の遺伝子導入動物は、胚細胞系又はES幹細胞系中に本発明の組換えポリヌクレオチドを挿入し(例えば、Thomasら(1987) Cell 51: 503-512; Mansour ら(1988) Nature 336: 348-352参照)、ポジティブ細胞を単離し、クローニングし、かつその次にメスの宿主に挿入し、臨月まで育てられる胚盤胞に注入することによって作製される。遺伝子導入動物及び特異的遺伝子導入マウスの作製に関するさらなる詳細については、米国特許第4,873,191号;同第5,464,764号;同第5,789,215号, Bradley (1987; In : E. J. Robertson (Ed.), Teratocarcinomas and embryonic stem cells: A practical approach. IRL Press, Oxford, pp. 113, Woodら(1993), PNAS, 90: 4582-4585, Nagyら(1993), PNAS 90: 8424-8428を参照のこと。
他の実施形態において、遺伝子導入動物は、受精卵母細胞にポリヌクレオチドを微量注入するすることによって作製される。着床前の段階に対して受精卵母細胞を培養する方法は、例えば、Gordonら((1984) Methods in Enzymology, 101, 414); Hoganら((1986) in Manipulating the mouse embryo, A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y (マウス胚について)) ; Hammerら((1985) Nature, 315,680 (ウサギ及びブタの胚について)) ; Gandolfiら((1987) J. Reprod. Fert. 81,23-28) ; Rexroadら((1988) J. Anim. Sci. 66,947-953) (ヒツジの胚について)) ;及びEyestoneら((1989) J. Reprod. Fert. 85,715-720) ; Camousら((1984) J. Reprod. Fert. 72, 779-785); 及びHeymanら ((1987) Theriogenology 27,5968 (ウシの胚について))に記述されている。次いで、標準法によって着床前胚を適切なメスに導入し、導入遺伝子が導入される際の発育段階に応じて、遺伝子導入又はキメラ動物を誕生させることが可能となる。
本発明の好ましい実施形態において、それらの乳中に組換え新規なポリペプチドを分泌する遺伝子導入哺乳動物が作製される。乳腺中での発現は、新規なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを乳腺特異的なプロモーター(例えば、カゼイン又はラクトグロブリン遺伝子からの)に、任意に他の調節因子に作動可能に連結することによって達成されることが好ましい。プロモーター及び他の調節配列、ベクター、及び他の関連する教示は、例えばClark (1998) J Mammary Gland Biol Neoplasia 3: 337-50 ; Jostら(1999) Nat. Biotechnol 17: 160-4; 米国特許第5,994,616号;同第6,140,552号;同第6,013,857号; Sohnら(1999) DNA Cell Biol. 18: 845-52; Kimら(1999) J. Biochem. (Japan) 126: 320-5; Soulierら(1999) Euro. J. Biochem. 260: 533-9; Zhangら(1997) Chin. J. Biotech. 13: 271-6; Rijnkelsら(1998) Transgen. Res. 7: 5-14; Korhonenら(1997) Euro. J. Biochem. 245: 482-9; Uusi Oukariら(1997) Transgen. Res. 6: 75-84; Hitchinら(1996) Prot. Expr. Purif. 7: 247-52; Platenburgら(1994) Transgen. Res. 3: 99-108; Heng-Cherlら(1993) Animal Biotech. 4: 89107;及び Christaら(2000) Euro. J. Biochem. 267: 1665-71によって記述されている。
その他の実施形態では、本発明のポリペプチドは、そのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをインビボで乳腺の体細胞中に、例えば、乳腺分泌上皮細胞中に導入することによって、乳中に生成することができる。例えば、プラスミドDNAは、例えば、DEAE−デキストランと結合して(例えば、Hensら(2000) Biochim. Biophys. Acta 1523: 161-171参照)、コンストラクトの受容体仲介エンドサイトーシスを導くことができるリガンドと結合して(例えば、Sobolevら(1998) 273: 7928-33参照)、又はレトロウイルスベクターなどのウイルスベクター、例えば、テナガザル白血病ウイルス中で(例えば、 Archer, ら. (1994) PNAS 91: 6840-684参照)、乳頭管を通して注入することができる。これらの実施形態のいずれかにおいて、ポリヌクレオチドは、上述のように乳腺特異的なプロモーターに作動可能に連結するか、あるいは、CMV又はMoMLV LTRなどの強く発現するいずれかのプロモーターに作動可能に連結することができる。 かかる実施形態で使用されるポリヌクレオチドは、完全長新規なタンパク質又は新規な断片をコードし得る。通常、コードされるポリペプチドは、タンパク質の乳中への分泌を確実にするためにシグナル配列を含む。
本発明のポリペプチドの使用
配列番号:2のタンパク質(内部指定クローン500695767.cFS_188−227−2−0−G1−F)
クローン500695767.cFS_188−227−2−0−G1−FのcDNA(配列番号:1)は、アミノ酸配列:MARTAGDTLDVFTMIDIFKYVIYGIAAAFFVYGILLMVEGFFTTGAIKDLYGDFKITTCGRCVSAWFIMLTYLFMLAWLGVTAFTSLPVYMYFNLWTICRNTTLVEGANLCLDLRQFGIVTIGEEKKICTVSENFLRMCESTELNMTFHLFIVALAGAGAAVIAMVHYLMVLSANWAYVKDACRMQKYEDIKSKEEQELHDIHSTRSKERLNAYTを含む、配列番号:2のnemeglyaをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:2のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン500695767.cFS_188−227−2−0−G1−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:1のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン500695767.cFS_188−227−2−0−G1−F中に含まれる核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:2、配列番号:1及びクローン500695767.cFS_188−227−2−0−G1−Fの組成物に対して向けられている。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、nemeglyaは、神経細胞膜糖タンパク質M6a(GenBankアクセッション番号P51674)のスプライスバリアントである。nemeglya cDNAの第1エクソンは、M6a cDNAの第1エクソンと異なる。したがって、nemeglyaは、そのアミノ末端にてM6aよりも63アミノ酸短い。カルボキシル末端側215個のアミノ酸は、2種類のタンパク質の間で同一である。nemeglyaは、1つのシグナルアンカー及び2つの膜貫通ドメインを示す。さらに、nemeglyaは、ミエリンプロテオリピドタンパク質ドメイン(PF01275)を示す。
nemeglya遺伝子は、神経細胞において特異的に発現される。nemeglyaは、神経細胞のシナプス前膜及びシナプス小胞膜に位置する。それは、神経の発達中に特に高レベルで発現される。nemeglyは、シナプス前膜とのシナプス前小胞の小胞ドッキング及び融合において主要な役割を果たす。さらに、nemeglyaは、神経の発達中のシナプスのマッチングに必須である。このように、nemeglyaは、神経細胞の末端において神経伝達物質機能及び神経突起伸長のどちらにも重要なタンパク質である。
本発明の実施形態は、配列番号:2のポリペプチド配列からなるnemeglyaポリペプチドを含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、神経突起伸長又は神経伝達を促進する生物活性を有するnemeglyaポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書において使用される、nemeglyaポリペプチドとは、配列番号:2のnemeglyaポリペプチド配列又は神経突起伸長又は神経伝達を促進する生物活性を有するnemeglyaポリペプチド断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、nemeglyaポリペプチドをコードする配列番号:1のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、神経突起伸長又は神経伝達を促進する生物活性を有するnemeglyaポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書でさらに使用される、nemeglyaポリヌクレオチドとは、配列番号:1のnemeglyaポリヌクレオチド配列又は配列番号:1のポリヌクレオチド断片のいずれかを意味する。本発明のさらなる実施形態は、配列番号:2のnemeglyaポリペプチド配列又はnemeglyaポリペプチド断片を認識する抗体に関する。好ましくは、その抗体は、nemeglyのアミノ末端内に位置する1つ又は複数のアミノ酸を認識し、前記の1つ又は複数のアミノ酸は、nemeglyaポリペプチドへの抗体の結合に必要とされる。また好ましくは、その抗体は、非直鎖状エピトープを認識する。最も好ましくは、その抗体は、nemeglyaには結合するが、M6aには結合しない。本明細書で使用される、抗nemeglya抗体とは、nemeglyaポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、かかる抗nemeglya抗体をnemeglyaポリペプチドに結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、nemeglyaポリペプチドを前記抗体又はその抗原結合断片と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書でさらに記述されるように、nemeglyaポリペプチドを検出するのに有用である。
本発明の実施形態は、生体試料においてnemeglyaポリペプチドを検出する方法であって、i)生体試料を抗nemeglya抗体と接触させ;ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む方法に関する。その抗体又は抗体断片は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗体又は抗体断片は一次的又は二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物又は酵素化合物)によって標識することができる。かかる方法は、以下にさらに記述するように、診断キットに適用することが可能である。
本発明の実施形態は、生体試料においてnemeglya mRNAもしくはポリペプチドのレベルを検出することによってnemeglyaの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試験試料を採取し;ii)nemeglyaの発現レベルを検出し;iii)前記試験試料におけるnemeglyaの発現レベルを対照試料(1つ又は複数)と比較する工程を含む。nemeglyaの発現を検出するためのかかる方法は、神経伝達障害と関連する神経疾患及び精神病、例えばアルツハイマー病、破傷風及びボツリヌス中毒の神経麻痺症候群、ハンチントン病、ランバート−イートン症候群、進行性小脳性運動失調症及び4q34遺伝子座(VCFS−4q34)での突然変異と関連する口蓋心顔面症候群様表現型などの診断に使用することが可能である。例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学などの公知の技術を用いて、nemeglyaの発現を検出してもよい。好ましくは、抗nemeglya抗体を用いて、nemeglyaの発現レベルを検出する。前記抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、前記抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物及び酵素化合物)によって標識することができる。また好ましくは、配列番号:1のポリヌクレオチド配列又はその一部、又は配列番号:1に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えばノーザンブロット法又はRTPCR技術によってnemeglyaの発現レベルを検出する。
本発明の実施形態は、DNAゲノタイピングにnemeglyaポリヌクレオチドを使用する方法に関する。かかる方法は:i)個体からヌクレオチド試験試料を採取し;ii)nemeglyaゲノム配列の存在を検出する工程を含む。nemeglyaゲノム配列の存在は、標準分子生物学技術(例えば、サザンブロット法)を用いて及びnemeglyaヌクレオチドもしくはその断片をプローブとして使用して検出することが好ましい。あるいは、その方法は、i)個体からヌクレオチド試験試料を採取し、ii)nemeglyaゲノム配列における突然変異の存在を検出する工程を含む。かかる突然変異としては、欠失、転座、逆位、及び点突然変異(punctual mutation)が挙げられる。これらの突然変異は、標準分子生物学技術(例えば、シークエンシング又はPCR)を用いて及びnemeglyaヌクレオチドもしくはその断片をプローブもしくはプライマーとして使用して検出することが好ましい。これらの方法におけるヌクレオチド試験試料は、DNAを含有することが好ましい。nemeglyaが位置するゲノム領域の2つ未満の機能性コピー、又は前記領域における突然変異のいずれかを同定することによって、前記個体が4q34位置での突然変異と関連するVCFSと関連がある遺伝的突然変異を有する尤度が示される。DNAゲノタイピングにnemeglyaポリヌクレオチドを使用するかかる方法は、VCFS−4q34を診断するのに有用である。前記nemeglyaポリヌクレオチドは、30個未満のヌクレオチドのオリゴヌクレオチドプライマーであることが好ましい。また好ましくは、配列番号:1のポリヌクレオチドが、かかる方法においてプローブとして使用されることが好ましい。個体のゲノタイピングは、例えば、シークエンシング、マイクロシークエンシング又はハイブリダイゼーションなどの当業者によく知られているいずれかの技術によって行うことができる。かかる方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,935,783号及び米国特許第6,303,294号に記載されたように達成することができる。前記nemeglyaポリヌクレオチドは、単独で、又は例えば米国特許第5,935,783号及び米国特許第6,303,294号に記載されたように、個体がVCFSと関連する遺伝的突然変異を有する尤度を示す他のポリヌクレオチド配列と組み合わせて、使用することができる。
この実施形態のその他の態様は、nemeglyaポリヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイに関する。好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブの前記アレイは、VCFSと関連する突然変異の効率的なスクリーニングを行えるように作製される。好ましくは、かかるマイクロアレイは、例えば米国特許第5,935,783号及び米国特許第6,303,294号に記載のような、VCFSと関連する異なる遺伝的突然変異を示すいくつかのオリゴヌクレオチドも含む。これらのマイクロアレイは、例えば、VCFSに罹患しやすい家族における疫学的研究を行うため、又はVCFSを診断するために用いることができる。
本発明の他の実施形態では、本発明は、nemeglyaポリペプチドの存在をインビトロで検出するための診断キットに関する。かかるキットは:i)抗nemeglya抗体;任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬;を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルを提供し得る。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗nemeglya抗体を含むキットは、VCFS−4q34又は神経伝達障害と関連する種々の疾患、例えば上記の疾患の診断に使用されることが好ましい。任意に、前記診断キットは、正常な個体の試料を備える。任意に、前記診断キットは、VCFS−4q34又は神経伝達障害と関連する疾患に罹患している個体の試料を備える。
さらに他の実施形態は、例えば、免疫電子顕微鏡法又は免疫組織化学染色法によってnemeglyaポリペプチドをインビボで検出するために、抗nemeglya抗体を使用する方法に関する。かかる方法は、そのどちらもそれらの開示内容全体が参照により組み込まれる、Rousselら(J Neurocytol. 27:695-703 (1998)) 及びShettyら(J Neurobiol. 38:391-413 (1999))に記載されている。nemeglyaポリペプチドのインビボでの検出は、例えば神経栄養性因子、脳の発達及び神経細胞移植(neuron graft)を研究する場合に、モデル動物における神経突起伸長を追跡するのに有用である。
他の実施形態は、i)nemeglyaポリペプチドを発現する細胞を培養し、ii)産生されたタンパク質を精製する工程を含む、nemeglyaポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗nemeglya抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。nemeglyaポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。nemeglyaポリペプチドの作製は、本発明でさらに記述される方法及び組成物において有用であり得る。
本発明の好ましい態様は、nemeglyaポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、nemeglyaの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、nemeglyaポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって:i)nemeglyaポリペプチドをコードする核酸配列を含み、かつ所定の生理学的条件下にて前記nemeglyaポリペプチドの発現を可能にする、組換え分子を作製し;ii)前記組換え分子を細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、組換え分子は、大腸菌細胞に又はヒト神経細胞に導入される。
あるいは、nemeglyaの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)nemeglyaの発現を指示することができるポリヌクレオチドを含む組換え分子を作製し、ii)前記組換え分子を細胞に導入する工程を含む方法によって作製することができる。nemeglyaの発現を指示することができるポリヌクレオチドは、nemeglya遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。さらに好ましくは、これらのポリヌクレオチドは、nemeglyaコード領域の500塩基対内に位置する。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5641670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。nemeglyaポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、nemeglyaポリペプチドを作製することができる。
他の好ましい実施形態は、nemeglya発現の修飾因子の試験物質及びかかる物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるnemeglya発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する工程を含む方法に関する。nemeglyaの発現は、当技術分野で一般的な又は本明細書に含まれる方法によって決定される。nemeglyaの発現を決定する方法としては、限定されないが、nemeglyaポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるnemeglya mRNの検出)又はnemeglyaポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるnemeglyaタンパク質の検出)が挙げられる。試験物質は、特定の細胞型においてnemeglyaの発現を修飾するが、他の細胞では修飾しないことが好ましい。最も好ましくは、試験物質は、神経細胞において特異的にnemeglyaの発現を修飾する。
本発明のさらなる実施形態は、nemeglya活性の修飾因子の試験物質及びかかる試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)nemeglya活性を決定し、iii)試験物質に暴露した後の細胞におけるnemeglya活性を、非暴露対照細胞における活性と比較する工程を含む方法に関する。nemeglya活性は、例えば、ラットの脳スライスにおけるシナプスでの神経伝達を研究することによってモニターすることができる。神経伝達物質シナプス前放出のレベルを研究するためのいくつかの方法が当技術分野で公知である。シナプス前放出によって生じるシナプス後脱分極を電気生理学的に測定するためのアッセイが、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,051,610号に記載されている。nemeglya活性は、神経細胞培養物中の神経突起伸長を研究することによってもモニターすることが可能である。神経突起伸長は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lagenaurら(J Neurobiol. 23:71-88 (1992))に記載されたように、定量化することができる。
nemeglyaの発現又は活性を低減する試験物質は、nemeglyaアンタゴニストとして定義される。nemeglyaの発現又は活性を増加する試験物質は、nemeglyaアゴニストとして定義される。nemeglyaの発現又は活性を調節する試験物質としては、限定されないが、化学化合物、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム及び抗nemeglya抗体が挙げられる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法によって製造かつ使用することができる。
本発明のその他の実施形態は、nemeglyaポリペプチド又はnemeglyaアゴニストを神経細胞に送達する工程を含む、神経突起伸長を促進する方法を提供する。本明細書で使用される、神経突起伸長という用語は、神経細胞からの樹状突起伸長及び軸索伸長を含む。好ましくは、nemeglyaアゴニストがかかる方法で使用される。また好ましくは、nemeglyaポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結される発現制御因子を含むポリヌクレオチドコンストラクトを細胞に導入することによって、nemeglyaポリペプチドが細胞に送達される。
好ましい実施形態において、神経突起伸長を促進する前記方法は、nemeglyaポリペプチド又はnemeglyaアゴニストを神経細胞のインビトロ組織培養に送達することによってインビトロで行われる。かかる方法の使用は、中枢神経系に移植される神経細胞の生存及び成長に有用である。神経細胞のCNSへの大脳内移植は、神経障害を有する患者を治療するために一般的に使用される方法である。かかる移植の方法は、当業者には公知であり、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Neural Grafting in the Mammalian CNS, Bjorklund and Stenevi, eds., (1985)及び米国特許第5,082,670号に記載されている。
他の好ましい実施形態では、神経突起伸長を促進する前記方法は、インビボで個体に適用される。好ましくは、nemeglyaアゴニスト及び生理学的に許容される担体を含む組成物が個体に投与される。また好ましくは、nemeglyaポリペプチドは、nemeglyaポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結される発現制御因子を含むポリヌクレオチドコンストラクトを前記神経細胞にインビトロで導入することによって及び前記神経細胞を移植することによって、神経細胞に送達される。nemeglyaポリペプチド又はnemeglyaアゴニストを用いて神経突起伸長を促進する前記方法は、脳損傷から続発する損傷を治療するのに、又はその重症度を低減するのに有用である。かかる脳損傷は、外傷又は感染症によって起こり得る。かかる感染症は、限定されないが、アスペルギルスCNS感染、髄膜炎、神経精神障害と関連する連鎖球菌感染症及びインフルエンザウイルス関連脳症を含む。nemeglyaポリペプチド又はnemeglyaアゴニストを用いた神経突起伸長を促進する前記方法は、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、小脳タイプのクロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病及び筋萎縮性側索硬化症などを治療するのに、又はその重症度を低減するのにも有用である。好ましくは、前記方法は、アルツハイマー病を治療する場合に前脳基底部コリン作動性神経細胞の神経突起伸長を促進するために適用される。また好ましくは、前記方法は、パーキンソン病を治療する場合に、中脳の黒質におけるドーパミン神経細胞の神経突起伸長を促進するために適用される。
本発明の好ましい実施形態は、細胞に対する小胞のドッキング及び融合能力を回復する方法であって、nemeglyaポリペプチド又はnemeglyaアゴニストを細胞に送達する工程を含む方法を提供する。好ましい細胞は神経細胞である。nemeglyaアゴニスト及び生理学的に許容される担体を含む組成物は、この方法において使用されることが好ましい。また好ましくは、nemeglyaポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結される発現制御因子を含むポリヌクレオチドコンストラクトを細胞に導入することによって、nemeglyaポリペプチドが細胞に導入される。前記方法は、神経細胞の培養物上において、インビトロで行うことができる。前記方法は、小胞ドッキングの障害及び神経伝達障害と関連する疾患に罹患している個体を治療するためにインビボで行うこともできる。かかる疾患は、種々の神経障害、精神障害及び麻痺障害を含む。例えば、この方法は、例えばハンチントン病を治療又は予防するためにエンドカンナビノイドの小胞輸送(vesicular transmission)を増加するのに、ランバート‐イートン症候群を治療又は予防するためにシナプトタグミンの小胞輸送を増加するために、又はGABAの小胞輸送を増加して、進行性小脳性運動失調症を治療又は予防するために適用することが可能である。この方法は、アルツハイマー病における凝集したβアミロイドの生成によって生じるシナプス伝達障害を克服するのに、又は破傷風及びボツリヌス中毒の神経麻痺症候群において神経毒によって起こる神経伝達物質放出の遮断を克服するのに適用することも可能である。
本発明のさらに他の好ましい実施形態は、Tsaiら(Am J Med Genet. 82(4):336-9 (1999))によって記述されている、4q34位置での欠失と関連する口蓋心顔面症候群様表現型(VCFS−4q34)を治療する方法を提供する。VCFS−4q34は、特に、学習障害を特徴とする。前記方法は、VCFS−4q34表現型を表す個体に、nemeglyaポリペプチド又はnemeglyaアゴニストを送達する工程を含む。好ましくは、nemeglyaアゴニスト及び生理学的に許容される担体を含む組成物がこの方法において使用される。また、好ましくは、nemeglyaポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結される発現制御因子を含むポリヌクレオチドコンストラクトを細胞に導入することによって、nemeglyaポリペプチドが細胞に導入される。
他の実施形態は、シナプス前膜にシナプス前小胞がドッキング及び/又は融合するのを防ぐことによって、神経伝達物質の放出を抑制するためにnemeglyaポリペプチドを使用する方法に関する。これらのnemeglyaポリペプチドは、興奮分泌非連関ペプチド(ESUP)と呼ぶこともできる。この遮断活性を有するnemeglyaの断片は、当技術分野で公知の方法を用いて、例えば、その開示内容全体が参照により組み込まれる米国特許第6,169,074号に記載されたように、洗剤で透過化処理された(detergent-permeabilized)クロム親和細胞からのカテコールアミンの放出に対するnemeglya試験断片の抑制効果をモニターすることによって同定することができる。最適な活性に関しては、本発明のESUPは、約20アミノ酸の最低長さと、約100アミノ酸の最大長さを有するが、それより長くても、又は短くてもよい。nemeglya ESUPは、標的部位に共有結合されることが好ましい。好ましい標的部位は、結合部位と機能上相互作用することができる特定の細胞型(例えば、神経細胞)上に存在する細胞表面結合部位に対するリガンドを含む。好ましい標的部位は、神経成長因子及びその機能性誘導体である。あるいは、上述のようにnemeglya ESUPをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することによって、nemeglya ESUPを細胞中で発現させることができる。nemeglya ESUPは、例えば、ジストニー、脳性麻痺及び筋ジストロフィーで起こる慢性筋痙攣を軽減するのに特に有用である。
その他の実施形態は、痛みを抑制又は治療するためにnemeglyaアンタゴニストを使用する方法に関する。かかる方法は、有効量のnemeglyaアンタゴニスト及び生理学的に許容される担体を含む組成物を、治療が必要な個体に投与する工程を含む。例えば、nemeglyaアンタゴニストは、神経毒の代わりに本発明のポリペプチドを使用することによって、米国特許第5,989,545号(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って使用することができる。さらに、本発明のnemeglyaアンタゴニストは、抗痙攣薬として使用することができる。抗痙攣薬は有効に、脳卒中のケースの梗塞サイズを低減し、癲癇又は神経毒に対する暴露から生じる発作などの有効な治療法である。これらの方法は、生理学的に許容される組成物中の有効量のnemeglyaアンタゴニストを、治療が必要な個体に投与する工程を含む。
生理学的に許容される担体は、当業者に公知のいずれかの方法によって製造することができる。生理学的に許容される担体としては、限定されないが、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA 1985)に記載の担体が挙げられる。nemeglyaアゴニスト及び生理学的に許容される担体を含む薬剤組成物は、例えば静脈内、表面、直腸、局所、吸入又は皮下、皮内、筋肉内、経口及び脳内投与用であることが可能である。その組成物は、液状(例えば、液剤、懸濁剤)、固形(例えば、丸剤、錠剤、坐剤)又は半固形(例えば、クリーム剤、ゲル剤)であることが可能である。投与されるべき投与量は、それぞれの必要性、望まれる効果及び選択される投与経路に応じて異なる。
さらに他の実施形態は、nemeglyaポリペプチドをコードする核酸配列又はnemeglyaポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子を用いて遺伝子導入動物(例えば、マウス)を作製する方法に関する。遺伝子導入動物を作製する方法は当業者にはよく知られている。例えば、遺伝子導入マウスは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,723,719号に従って、Ren−2dレニン遺伝子の代わりに本発明のポリヌクレオチドを使用することによって作製することができる。かかる遺伝子導入動物は、VCFS−4q34及び神経伝達障害に関連する疾患の動物モデルを得るのに、又は神経疾患及び慢性筋痙攣を治療する薬物についてスクリーニングするのに有用である。
配列番号:4のタンパク質(内部指定クローン1000772225_208−30−4−0−H4−F)
クローン1000772225_208−30−4−0−H4−FのcDNA(配列番号:3)は、アミノ酸配列:MALLLALSLLVLWTSPAPTLSGTNDAEDCCLSVTQKPIPGYIVRNFHYLLIKDGCRVPAVVを含む、配列番号:4のsica19をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:4のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン1000772225_208−30−4−0−H4−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:3のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン1000772225_208−30−4−0−H4−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:4、配列番号:3及びクローン1000772225_208−30−4−0−H4−Fの組成物に対して向けられている。以下に記載の方法で使用するのに好ましいsica19ポリペプチド断片としては、アミノ配列:GTNDAEDCCLSVTQKPIPGYIVRNFHYLLIKDGCRVPAVVを含むsica19ポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、sica19は、小誘導サイトカイン(small inducible cytokine)A19(MIP−3−β,Genbankアクセッション番号Q99731)の新規なスプライスバリアントである。sica19 cDNAの第1エクソンは、MIP−3−β cDNAの第1エクソンよりも長い。第2エクソンは、2つのタンパク質の間で同一である。Sica19 cDNAは、MIP−3−β cDNAの第3エクソンを欠き、sica19 cDNAの第3エクソンは、MIP−3−β cDNAの第4エクソンと同一である。このように、本発明のタンパク質、sica19前駆体は61アミノ酸の長さであるのに対して、MIP−3−β前駆体は98アミノ酸の長さである。Sica19はCCケモカインファミリーに属する。Sica19は、シグナルペプチド(MALLLALSLLVLWTSPAPTLS)を示す分泌タンパク質であり、その成熟sica19タンパク質は40アミノ酸の長さである。MIP−3−βを含むCCケモカインの大部分が2つの異なる受容体結合部位を有すると考えられるが(Clark-Lewis ら. J Leukoc Biol. 57:703-11 (1995))、sica19は、CCR7の結合部位を1つのみ示す。この固有の結合部位は、プロセッシングされたタンパク質のアミノ末端に位置する。
Sica19は、B細胞、T細胞及び活性化NK細胞に対して走化活性を及ぼし、粘膜表面、粘膜、二次リンパ系器官又は感染もしくは炎症部位などの標的へのそれらの輸送において基本的な役割を担う。Sica19は、胸腺、リンパ節、虫垂、扁桃腺ならびに成熟樹状細胞、単球、リンパ球及び好中球において発現する。それは、結腸、気管、脾臓、小腸、肺、腎臓及び胃においても低レベルで発現する。Sica19は、正常なリンパ組織及びそれぞれのBリンパ球及びTリンパ球細胞系において発現される、CCR7受容体(Genbankアクセッション番号P32248)に結合する。Sica19は、正常なリンパ球再循環及びホーミングにおいて主要な役割を果たす。Sica19は、炎症部位にリンパ球を引き寄せること、及びリンパ球応答を刺激すること両方によって、炎症応答及び免疫応答においても主要な役割を果たす。注目すべきことには、sica19は、単球及びT細胞によるインターロイキン−10(IL−10)の産生を高める。Sica19は、最適な免疫応答を引き起こすのに重要である、T細胞とNK細胞との間の相互作用も調節する(Robertson ら Cell Immunol 199:8-14 (2000))。
本発明の実施形態は、配列番号:4のポリペプチド配列からなるsica19ポリペプチドを含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、正常なリンパ球輸送を調節し、かつリンパ球の炎症応答及び免疫応答を調節する生物活性を有するsica19ポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される、sica19ポリペプチドとは、配列番号:4の、又は配列番号:4と少なくとも70%、80%、90%、95%以上同一のsica19ポリペプチド配列、あるいは正常なリンパ球輸送を調節し、かつリンパ球の炎症応答及び免疫応答を調節する生物活性を有するsica19ポリペプチド断片を意味する。
本発明の実施形態は、sica19ポリペプチドをコードする配列番号:3のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、sica19ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書においてさらに使用される、sica19ポリヌクレオチドとは、配列番号:3の、又は配列番号:3と少なくとも少なくとも70%、80%、90%、95%以上の同一性を有するsica19ポリヌクレオチド配列、sica19ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は配列番号:3のポリヌクレオチド断片のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:4のsica19ポリペプチド配列又はsica19ポリペプチド断片を認識する抗体に関する。その抗体は、sica19のカルボキシル末端内に位置する1つ又は複数のアミノ酸を認識することが好ましく、前記の1つ又は複数のアミノ酸は、sica19ポリペプチドへの抗体の結合に必要とされる。また好ましくは、その抗体は、非直鎖状エピトープを認識する。最も好ましくは、その抗体は、sica19には結合するが、MIP−3−βには結合しない。本明細書で使用される、抗sica19抗体とは、sica19ポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、抗sica19抗体をsica19ポリペプチドに結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、sica19ポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は、当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書でさらに記述されるように、sica19ポリペプチドを検出するのに有用である。
本発明の実施形態は、生体試料においてsica19ポリペプチドを検出する方法であって、i)生体試料を抗sica19抗体と接触させ;ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む方法に関する。その抗体又は抗体断片は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗体又は抗体断片は一次的又は二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。かかる方法は、以下にさらに記述するように、例えば移植拒絶反応の診断に適用することができる。
本発明の実施形態は、生体試料においてsica19の発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試験試料を採取し;ii)試料におけるsica19の発現レベルを検出し;iii)前記試験試料におけるsica19の発現レベルを、対照試料の発現レベルと比較する工程を含む。sica19の発現レベルの検出は、例えば、種々の異常な炎症応答及び免疫応答を診断するのに有用である。例えば、対照試料でのレベルと比較して、前記生体試料でのsica19の発現レベルが低い場合には、移植拒絶反応を示している。試料におけるsica19の発現レベルは、試料中のsica19 mRNA又はタンパク質のレベルを検出することなどによる、いずれかの方法を用いて評価することができる。例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学などの公知の技術を用いて、sica19の発現を検出してもよい。好ましくは、抗sica19抗体を用いて、sica19の発現レベルを検出する。前記抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、前記抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物及び酵素化合物)によって標識することができる。また好ましくは、配列番号:3のポリヌクレオチド配列又はその一部、又は配列番号:3に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えばノーザンブロット法又はRTPCR技術によってsica19の発現レベルを検出する。sica19の発現レベルを検出するのに好ましい方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Akalin ら(Transplantation 72:948-53 (2001))によって記述されている。
本発明のその他の実施形態は、sica19ポリペプチドの存在をインビトロで検出するための診断キットに関する。かかるキットは:i)抗sica19抗体;任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬;を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルを提供し得る。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗sica19抗体を含むキットは、移植拒絶反応又は種々の異常な炎症応答及び免疫応答の診断に使用されることが好ましい。任意に、前記診断キットは、正常な個体から予想されるレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、移植拒絶反応を有する、又は所定の異常な炎症応答もしくは免疫応答を有する個体から予想されるレベルを表す正の対照試料を備える。
他の実施形態は、i)sica19ポリペプチドを発現する細胞を培養し、ii)産生されたタンパク質を精製する工程を含む、sica19ポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗sica19抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。sica19ポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。sica19ポリペプチドの作製は、本発明でさらに記述される方法及び組成物において有用である。
本発明の好ましい態様は、sica19ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、sica19の発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、sica19ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって:i)sica19ポリペプチドをコードする核酸配列を含み、かつ所定の生理学的条件下にて前記sica19ポリペプチドの発現を可能にする、組換え分子を作製し;ii)前記組換え分子を細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、組換えベクターは、大腸菌細胞に又はヒト神経細胞に導入される。あるいは、sica19の発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)sica19の発現を指示することができるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法によって作製することができる。sica19の発現を指示することができるポリヌクレオチドは、sica19遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。さらに好ましくは、これらのポリヌクレオチドは、sica19コード領域の500塩基対内に位置する。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。sica19ポリペプチドを産生するそのような組換え宿主細胞を用いて、sica19ポリペプチドを作製することができる。
本発明の好ましい実施形態は、CCR7への前記sica19ポリペプチドの結合を可能にする条件下にて、sica19ポリペプチドをCCR7と接触させる工程を含む方法である。好ましい実施形態では、CCR7へのsica19ポリペプチドの結合を利用して、CCR7を発現する細胞を精製する。かかる一実施形態において、CCR7を発現する細胞を精製する方法は:i)CCR7発現細胞を含む生体試料を、標識化sica19ポリペプチドと接触させ;ii)前記生体試料を、選別装置、例えば蛍光活性化細胞選別装置(fluorescence-activated cell sorter)又は磁気活性化細胞選別装置に導入し、前記試料中のCCR7細胞が、それらの結合した標識化sica19ポリペプチドによって非発現細胞から選別される工程を含む。特に、樹状細胞を効率的に刺激し、かつ二次刺激により細胞障害性効果細胞に分化する、記憶T細胞のサブセットによって、CCR7が発現される。したがって、CCR7+記憶細胞の精製は、例えばサイトメガロウイルス、HIV、T細胞リンパ球向性ウイルスI型及びエプスタインバーウイルスによって起こる種々の感染の予防に使用することができる記憶T細胞のサブセットの精製に有用である。
この実施形態のその他の態様は、当技術分野で一般的な技術を用いて、CCR7を発現する細胞を検出かつ定量化するためにsica19ポリペプチドを使用する方法を包含する。この方法は、i)CCR7を発現する細胞を含有すると思われる生体試料得る工程;ii)sica19の結合に適した条件下にて、前記試料をsica19ポリペプチドと接触させる工程;iii)試料における細胞へのsica19の結合を検出する工程を含む。前記sica19ポリペプチドは、検出可能な化合物に共有結合されることが好ましい。あるいは、検出可能な抗sica19抗体を用いて、sica19を検出することができる。この方法は診断ツールとして用いることができる。例えば、CCR7は、正常な個体からのTリンパ球と、T細胞白血病もしくは喘息に罹患している個体からのTリンパ球との間で差次的に発現される。
その他の好ましい実施形態は、sica19の発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって;i)細胞を試験物質と接触させ;ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるsica19の発現を、非暴露対照細胞における発現と比較し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されたsica19の発現の差異によって、試験物質がsica19の発現を調節することが示される工程を含む方法に関する。sica19の発現は、当技術分野で一般的な、又は本明細書に包含される方法によって決定することができる。sica19の発現を決定する方法としては、限定されないが、sica19ポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるsica19 mRNAの検出)又はsica19ポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるsica19ポリペプチドの検出)が挙げられる。試験物質は、特定の細胞型においてsica19の発現を修飾するが、他の細胞型では修飾しないことが好ましい。試験物質は、樹状細胞、単球、リンパ球、好中球又は腫瘍細胞において特異的にsica19の発現を修飾することが最も好ましい。かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明のさらなる実施形態は、sica19の活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって;i)細胞を試験物質と接触させ;ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるsica19の活性を、非暴露対照細胞の活性と比較し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されたsica19の活性の差異によって、試験物質がsica19の活性を調節することが示される工程を含む方法に関する。Sica19の活性は、例えばその走化活性を研究することによってモニターすることができる。sica19の走化活性は、当業者によく知られている多種多様な技術によって研究することができる。これらの技術は、Braun ら(J Immunol. 164:4025-31 (2000))に記載のFACScan細胞分析装置を用いた走化性アッセイ及びScapiniら(Eur J Immunol. 31:1981-8 (2001))に記載の走化性チャンバーを用いた遊走アッセイを含む(その開示内容全体は参照によりどちらも本明細書に組み込まれる)。かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明のさらなる実施形態は、CCR7へのsica19の結合を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法に関する。例えば、CCR7へのsica19の結合の修飾因子の試験物質は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,153,441号に従って、CKβ−9リガンドの代わりにsica19を使用することによってスクリーニングすることができる。かかる方法を用いて同定された修飾因子もまた、本発明によって包含される。
sica19の発現、活性又はCCR7への結合を低減する試験物質は、sica19アンタゴニストとして定義される。sica19の発現、活性又はCCR7への結合を増加する試験物質は、sica19アゴニストとして定義される。sica19の発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、sica19のドミナントネガティブ型及び抗sica19抗体が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法によって製造かつ使用することができる。
本発明の好ましい実施形態は、リンパ球における免疫応答を高める方法であって、sica19ポリペプチド又はsica19アゴニストをリンパ球に投与し、リンパ球の免疫応答が高められる工程を含む方法を提供する。かかる方法は、例えばリンパ球のインビトロ培養にsica19ポリペプチド又はsica19アゴニストを送達することによってインビトロで行われる。インビトロでのリンパ球の刺激は、例えば、移植前に患者からのT細胞の反応性を測定する場合に、又は免疫抑制薬についてスクリーニングする場合に、有用である。リンパ球免疫応答を高めるためのかかる方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のsica19ポリペプチド又はsica19アゴニストとを個体に、又は個体に投与されるリンパ球の集団に送達することによってインビボ又はエクスビボで適用することが可能である。本明細書で使用される、有効量のsica19ポリペプチド又はsica19アゴニストとは、リンパ球の免疫応答を高めるのに十分な量のsica19ポリペプチド又はsica19アゴニストを意味する。例えば、かかる方法は、例えばアテローム斑の発生を抑制するためにアテローム病変にTリンパ球を引き付けるのに、癌を治療するために抗腫瘍反応を高めるのに、慢性骨髄性白血病を治療するために正常なヒト骨髄前駆細胞の増殖を抑制するのに、HIV及び他の病原体による感染症を治療するためにTリンパ球を引き付けかつ刺激するのに適用することが可能である。sica19ポリペプチド又はsica19アゴニストは、抗腫瘍反応を高めるために、慢性骨髄性白血病を治療するために、又はHIV及び他の病原体による感染症を治療するために、全身的に、例えば静脈内注入によって投与される。代替方法として、sica19ポリペプチド又はsica19アゴニストは、例えば腫瘍部位又はアテローム斑に局所的に投与することができる。前記sica19ポリペプチド又はsica19アゴニストは単独で投与してもよいし、あるいは他の分子と組み合わせて、抗腫瘍免疫を高めるためにインターロイキン−2及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子と組み合わせて、投与してもよい。
その他の実施形態は、リンパ球の免疫応答を抑制又は低減するためにsica19アンタゴニストを使用する方法に関する。かかる方法は、有効量のsica19アンタゴニスト及び生理学的に許容される担体を含む組成物を個体に投与する工程を含む。好ましくは、かかる方法は、アレルギー及び喘息を治療すること、及び進行中の免疫応答を防ぐことに向けられる。さらに、特には、かかる方法を用いて、移植拒絶反応、移植片対宿主疾患及び自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、肝炎、慢性関節リウマチ、グレーブス病)を予防すること、又はその重症度を低減すること及び移植片の移植(例えば、細胞、骨髄、組織、固体器官、骨の移植)に対する抵抗性(tolerance)を誘導することができる。
生理学的に許容される担体は、当業者に公知のいずれかの方法によって製造することができる。生理学的に許容される担体としては、限定されないが、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA 1985)に記載の担体が挙げられる。sica19アゴニスト及び生理学的に許容される担体を含む薬剤組成物は、例えば静脈内、表面、直腸、局所、吸入又は皮下、皮内、筋肉内、経口及び脳内投与用であることが可能である。その組成物は、液状(例えば、液剤、懸濁剤)、固形(例えば、丸剤、錠剤、坐剤)又は半固形(例えば、クリーム剤、ゲル剤)であることが可能である。投与されるべき投与量は、それぞれの必要性、望まれる効果及び選択される投与経路に応じて異なる。
さらに他の実施形態は、sica19ポリペプチドをコードする核酸配列又はsica19ポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子を用いて、遺伝子導入動物(例えば、マウス)を作製する方法に関する。遺伝子導入動物を作製する方法は当業者にはよく知られている。例えば、遺伝子導入マウスは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,434,340号に従って作製することができる。かかる遺伝子導入動物は、免疫応答障害と関連する疾患に罹患している患者の動物モデルを得るのに、又はsica19アゴニスト及びアンタゴニストについてスクリーニングするのに有用である。
配列番号:6のタンパク質(内部指定クローン500737075_cFS_205−46−1−0−D7−F)
クローン500737075_cFS_205−46−1−0−D7−FのcDNA(配列番号:5)は、アミノ酸配列:MRACISLVLAVLCGLAWAGKIESCASRCNEKFNRDAACQCDRRCLWHGNCCEDYEHLCTEDHKESEPLPQLEEETEEALASNLYSAPTSCQGRCYEAFDKHHQCHCNARCQEFGNCCKDFESLCSDHEVSHSSDAITKEEIQSISEKIYRADTNKAQKEDIVLNSQNCISPSETRNQVDRCPKPLFTYVNEKLFSKPTYAAFINLLNNYQRATGHGEHFSAQELAEQDAFLREIMKTAVMKELYSFLHHQNRYGSEQEFVDDLKNMWFGLYSRGNEEGDSSGFEHVFSGEVKKGKVTGFHNWIRFYLEEKEGLVDYYSHIYDGPWDSYPDVLAMQFNWDGYYKEVGSAFIGSIPEFEFALYSLCFIARPGKVCQLSLGGYPLAVRTYTWDKSTYGNGKKYIATAYIVSSTを含む、配列番号6のPlap11をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:6のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン500737075_cFS_205−46−1−0−D7−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:5のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン500737075_cFS_205−46−1−0−D7−F中に含まれる核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:6、配列番号:5及びクローン500737075_cFS_205−46−1−0−D7−Fの組成物に対して向けられている。以下に記載の方法で使用される好ましいPlap11ポリペプチド断片としては、アミノ配列:GKIESCASRCNEKFNRDAACQCDRRCLWHGNCCEDYEHLCTEDHKESEPLPQLEEETEEALASNLYSAPTSCQGRCYEAFDKHHQCHCNARCQEFGNCCKDFESLCSDHEVSHSSDAITKEEIQSISEKIYRADTNKAQKEDIVLNSQNCISPSETRNQVDRCPKPLFTYVNEKLFSKPTYAAFINLLNNYQRATGHGEHFSAQELAEQDAFLREIMKTAVMKELYSFLHHQNRYGSEQEFVDDLKNMWFGLYSRGNEEGDSSGFEHVFSGEVKKGKVTGFHNWIRFYLEEKEGLVDYYSHIYDGPWDSYPDVLAMQFNWDGYYKEVGSAFIGSIPEFEFALYSLCFIARPGKVCQLSLGGYPLAVRTYTWDKSTYGNGKKYIATAYIVSSTを含むPlap11ポリペプチドが挙げられる。以下に記載の方法で使用するのに好ましい他のPlap11ポリペプチド断片としては、アミノ配列:KIESCASRCNEKFNRDAACQCDRRCLWHGNCCEDYEHLCTEDHKESEPLPQLEEETEEALASNLYSAPTSCQGRCYEAFDKHHQCHCNARCQEFGNCCKDFESLCSDHEVを含むPlap11ポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、Plap11は、胎盤蛋白11(PP11,GenBankアクセッション番号P21128)の新規なスプライスバリアントである。Plap11のエクソン1は、PP11のエクソン1と同一である。エクソン2はPlap11に固有である。Plap11のエクソン3〜10は、PP11のエクソン2〜9と同一である。したがって、シグナルペプチド(MRACISLVLAVLCGLAWA)の切断後、Plap11は、そのアミノ末端でPP11よりも41個多いアミノ酸を示す。PP1はソマトメジンBドメインを1つのみ示すのに対して、Plap11は2つのソマトメジンBドメインを示し、最初のドメインは、Plap11に固有のものである(KIESCASRCNEKFNRDAACQCDRRCLWHGNCCEDYEHLCTEDHK)。2番目のドメイン(APTSCQGRCYEAFDKHHQCHCNARCQEFGNCCKDFESLCSDHEV)は、PP11及びPlap11の両方に共通である。ソマトメジンBドメインによって、セリンプロテアーゼ阻害剤への結合が可能となる(Seiffertら J Biol Chem. 266:2824-30 (1991))。
基質の分解に関与するプロテアーゼは、移植、胎盤形成及びトロホブラストの浸潤の際に主要な役割を果たす(Salamonsen, Rev Reprod 4:11-22 (1999))。さらに、凝固−線維素溶解系において多くの変化が妊娠中に起こる。トロホブラストは、正常な移植を促進し、かつ妊娠期間全体にわたり胎児及び胎盤への血流を調節することができる、線維素溶解性タンパク質を産生する。凝固−線維素溶解系は、プロテアーゼとプロテアーゼ阻害剤との間のバランスによって調節される。正常な妊娠は、本質的にプロテアーゼ活性化因子阻害剤の増加によって生じる低線維素溶解状態(hypofibrinolytic state)と関連がある(Gilabertら Hum Reprod 10 Suppl 2:121-31 (1995))。Plap11は、胎盤組織及び様々な悪性腫瘍において特異的に発現される分泌セリンプロテアーゼである。Plap11は、細胞外マトリックスの分解及び凝固−線維素溶解系の調節の両方に関与する。そのソマトメジンドメインに結合するセリンプロテアーゼ阻害剤によって、その活性がダウンレギュレートされる。
本発明の実施形態は、配列番号:6のPlap11ポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、セリンプロテアーゼ活性又はセリンプロテアーゼ阻害剤結合活性を有するPlap11ポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書でさらに使用される、「Plap11ポリペプチド」という用語は、配列番号:6のPlap11ポリペプチド配列、又はセリンプロテアーゼ活性もしくはセリンプロテアーゼ阻害剤結合活性を有するPlap11ポリペプチドのいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、Plap11ポリペプチドをコードする配列番号:5のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、セリンプロテアーゼ活性もしくはセリンプロテアーゼ阻害剤結合活性を有するPlap11ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、Plap11ポリペプチドを認識する抗体に関する。その抗体は、Plap11のアミノ末端側41個のアミノ酸内に位置する1つ又は複数のアミノ酸を認識することが好ましく、前記の1つ又は複数のアミノ酸は、Plap11ポリペプチドへの抗体の結合に必要とされる。最も好ましくは、その抗体は、Plap11には結合するが、PP11には結合しない。前記抗体によって認識される好ましいアミノ酸配列は、ASRCNEKFNRDAA、CQCDRRCLW及びGNCCEDYEエピトープを含む。本明細書で使用される、抗Plap11抗体とは、Plap11ポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、かかる抗Plap11抗体をPlap11ポリペプチドに結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、Plap11ポリペプチドを前記抗体又はその抗原結合断片と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は、当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書でさらに記述されるように、Plap11ポリペプチドを検出するのに有用である。
本発明の実施形態は、生体試料においてPlap11ポリペプチドを検出する方法であって、i)生体試料を抗Plap11抗体と接触させ;ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む方法に関する。その抗体又は抗体断片は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗体又は抗体断片は一次的又は二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。かかる方法は、以下にさらに記述するように、診断キットにおいて適用することができる。
本発明の他の実施形態は、生体試料におけるPlap11の発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試験試料を採取し、ii)Plap11の発現レベルを検出し、iii)前記試験試料におけるPlap11の発現レベルを、対照試料(1つ又は複数)の発現レベルと比較する工程を含む。Plap11は、腫瘍マーカーとして使用することが可能であり、Plap11の発現を検出する方法は、悪性腫瘍、癌腫、肉腫又は癌、例えば乳癌、精巣悪性腫瘍、卵巣腺癌、絨毛癌及び胃癌に罹患している患者を診断するのに、又はモニターするのに使用することができる。一実施形態において、Plap11の発現レベルは、試料におけるPlap11 mRNA又はポリペプチドのレベルを調べることによって決定される。例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学などのよく知られている技術を用いて、Plap11の発現を検出してもよい。好ましくは、抗Plap11抗体を用いて、Plap11の発現レベルを検出する。前記抗Plap11抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。前記抗Plap11抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物及び酵素化合物)によって標識することができる。最も好ましくは、Plap11ポリペプチドの検出は、酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は免疫ペルオキシダーゼ(PAP)染色法を用いて行われる。前記生体試験試料は、例えば血清、血漿、組織切片、滲出液、腹水、尿、脳脊髄液、精液、胸の吸引液及び卵巣からの液体などの試料を含む。あるいは、配列番号:5のポリヌクレオチド配列又はその一部、又は配列番号:5に相補的なポリヌクレオチド配列を用いて、例えば、ノーザンブロット法又はRTPCR技術によってPlap11の発現レベルが検出される。
本発明のその他の実施形態は、Plap11ポリペプチドの存在をインビトロで検出するための診断キットに関する。かかるキットは:i)抗Plap11抗体、任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬;を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルを提供し得る。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗Plap11抗体を含むキットは、悪性腫瘍、癌腫、肉腫又は上記のような癌の診断に使用されることが好ましい。任意に、前記診断キットは、疾患をもたない正常な個体から予想されるレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、所定の悪性腫瘍、肉腫又は癌を有する個体から予想されるレベルを表す正の対照試料を備える。任意に、前記キットは、例えば、米国特許第5,864,011号に記載のHprタンパクに特異的な抗体、又は米国特許第5,552,293号に記載のCA−242抗原と反応する抗体など、悪性腫瘍の診断に使用される他のマーカーを備える。その他の実施形態において、そのキットは、Plap11ポリヌクレオチド、例えば、Plap11特異的なプローブ又はプライマーを検出するための試薬を提供する。
その他の実施形態は、i)Plap11ポリペプチドを発現する細胞を培養し、ii)産生されたタンパク質を精製する工程を含む、Plap11ポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗Plap11抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。Plap11ポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。Plap11ポリペプチドの作製は、本発明でさらに記述される方法及び組成物において有用である。
その他の実施形態は、Plap11ポリペプチドを産生する組換え宿主細胞及びPlap11ポリペプチドを産生する組換え宿主細胞を作製するためにPlap11ポリヌクレオチドを使用する方法に関するものであり、その方法は、i)プロモーターに作動可能に連結される、Plap11ポリペプチドをコードする核酸配列を含み、かつ所定の生理学的条件下にて前記Plap11ポリペプチドの発現を可能にする、組換えベクターを作製し、ii)前記組換え分子を細胞に導入する工程を含む。好ましい実施形態において、その組換えベクターは、大腸菌細胞に、又はヒト細胞に導入される。Plap11ポリペプチドを産生する組換え宿主細胞は、i)Plap11の発現を指示することができるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法によって作製することができる。Plap11の発現を指示することができるポリヌクレオチドは、Plap11遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。さらに好ましくは、これらのポリヌクレオチドは、Plap11コード領域の500塩基対内に位置する。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。Plap11ポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、Plap11ポリペプチドを作製することができる。
その他の好ましい実施形態は、Plap11の発現の調節について試験物質をスクリーニングする方法であって;i)細胞を試験物質と接触させ;ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるPlap11の発現を、非暴露対照細胞における発現と比較し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されたPlap11の発現の差異によって、試験物質がPlap11の発現を調節することが示される工程を含む方法に関する。Plap11の発現は、当技術分野で一般的な、又は本明細書に包含される方法によって決定される。Plap11の発現を決定する方法としては、限定されないが、Plap11ポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるPlap11 mRNAの検出)又はPlap11ポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるPlap11タンパク質の検出)が挙げられる。試験物質は、特定の細胞型においてPlap11の発現を修飾するが、他の細胞型では修飾しないことが好ましい。
本発明のさらなる実施形態は、Plap11の活性の調節について試験物質をスクリーニングする方法であって;i)細胞を試験物質と接触させ、ii)Plap11の活性を決定し、iii)試験物質に暴露した後の細胞におけるPlap11の活性を、非暴露対照細胞における活性と比較し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されたPlap11の活性の差異によって、試験物質がPlap11の活性を調節することが示される工程を含む方法に関する。Plap11の活性は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Grundmannら(DNA Cell Biol. 9:243-50 (1990))に記載されたように、そのアミド溶解活性(amidolytic activity)を調べることによって、数多くの方法のいずれかで評価することができる。
Plap11の発現、活性を低減する試験物質は、Plap11アンタゴニストとして定義される。Plap11の発現、活性を増加する試験物質は、Plap11アゴニストとして定義される。Plap11の発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、Plap11のドミナントネガティブ型及び抗Plap11抗体が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法によって製造かつ使用することができる。
本発明の好ましい実施形態は、Plap11ポリペプチドをセリンプロテアーゼ阻害剤と、前記Plap11ポリペプチドの前記セリンプロテアーゼ阻害剤への結合を可能にする条件下にて接触させる工程を含む方法である。この方法で使用されるPlap11ポリペプチドは、両方のソマトメジンドメインを含むことが好ましい。さらに好ましくは、この方法で使用されるPlap11ポリペプチドは、セリンプロテアーゼ阻害剤結合活性を有し、セリンプロテアーゼ活性を有さない。
この実施形態の一態様は、セリンプロテアーゼ阻害剤を精製するためにPlap11ポリペプチドを使用する方法を包含する。セリンプロテアーゼ阻害剤を精製するためのかかる方法は、i)固体マトリックスにPlap11ポリペプチドを共有結合又は非共有結合で結合させ、ii)セリンプロテアーゼ阻害剤を含む液体試料を添加し、iii)その固体マトリックスを洗浄して、結合した混入物を除去し、iv)前記固体マトリックスから前記セリンプロテアーゼ阻害剤を溶出する工程を含む。プロテアーゼ阻害剤は、感染因子又は寄生因子により個体の体内に導入されるプロテアーゼを阻害することができるため、プロテアーゼ阻害剤は有用な製薬ツールである。Plap11ポリペプチドを用いたセリンプロテアーゼ阻害剤の精製は、例えば、培養物から特定のセリンプロテアーゼ阻害剤を精製するのに、又は新規なセリンプロテアーゼ阻害剤を単離するのに有用であり得る。
この実施形態のその他の態様は、対象の液体試料からセリンプロテアーゼ阻害剤を除去するために、Plap11ポリペプチドを使用する方法を包含する。液体試料からセリンプロテアーゼ阻害剤を除去するためのかかる方法は、セリンプロテアーゼ阻害剤を含有する又は含有する可能性のある対象の液体試料に、Plap11ポリペプチドを添加する工程を含む。そのプロテアーゼ阻害剤は、前記Plap11ポリペプチドと免疫沈降することによって除去することができる。あるいは、前記Plap11ポリペプチドを固体マトリックスに共有結合又は非共有結合で結合させ、Plap11ポリペプチドとの接触後に、対象の試料が除去される。かかる方法は、タンパク質含有試料にプロテアーゼを添加する前に、試料を処理するのに有用である。
この実施形態のさらなる態様は、当技術分野で一般的な技術を用いて、試料中のセリンプロテアーゼ阻害剤を検出かつ定量化するために、Plap11ポリペプチドを使用する方法を包含する。この方法は、i)セリンプロテアーゼ阻害剤を含有すると思われる生体試料を得、ii)Plap11の結合に適した条件下にて、前記試料をPlap11ポリペプチドと接触させ、iii)Plap11とセリンプロテアーゼ阻害剤との間で形成された複合体を検出する工程を含む。前記Plap11ポリペプチドは、検出可能な化合物に共有結合で結合されることが好ましい。代替方法として、検出可能な抗Plap11抗体を用いて、Plap11を検出することができる。この実施形態は例えば、試料、例えば血清におけるセリンプロテアーゼ阻害剤のレベルを検出するための診断ツールとして有用である。例えば、Fareedら(Clin Chem 29:1641-58 (1983))に記載されたように、セリンプロテアーゼ阻害剤の血流レベルは、血栓付着のリスクと相関し、腫瘍試料におけるプロテアーゼ阻害剤のレベルは、Maassら(Clin Biochem. 34:303-7 (2001)) 及びRaoら(Clin Cancer Res. 7:570-6 (2001))に記述されているように、腫瘍の悪性度と相関する。
あるいは、Plap11を阻害するかかる方法は、血液凝固を低減することに向けられる。血液凝固を低減するためのかかる方法は:生理学的に許容される組成物中のPlap11アンタゴニストを個体の血流に導入する工程を含む。血流への送達は、本明細書にさらに記述されるように、直接的(例えば、静脈又は動脈への注入)又は間接的(例えば、吸入又は経口送達)であることが可能である。好ましくは、血液凝固を低減するためのかかる方法は、血栓疾患及び/又は凝固亢進症候群(hypercoagulable syndromes)、例えばアテローム性動脈硬化症、急性虚血、脳卒中、心筋梗塞、冠動脈疾患及び移植に関連する血栓性合併症に罹患している患者を治療することに向けられる。さらに好ましくは、かかる方法は、例えば子癇前症、妊娠中毒症、胎盤剥離及び子宮内胎児死亡などの凝固異常と関連する妊娠障害を治療することに向けられる。
その他の実施形態は、プロテアーゼ活性を有するPlap11ポリペプチドを含む組成物に関する。前記組成物は、Plap11プロテアーゼ活性を可能にする条件下にて、前記組成物を生体試料に添加する工程を含む方法において使用することができる。好ましくは、前記組成物は、数種類の異なるプロテアーゼを含有する「プロテアーゼカクテル」であり、前記プロテアーゼカクテルは、広範囲のタンパク質を消化することができる。かかるプロテアーゼカクテルは、例えば、DNA標本中のタンパク質を除去するために、又はいずれかの酵素反応後に酵素を除去するために、試料中の望ましくないタンパク質を分解するのに実験アッセイにおいて有用である。
さらなる実施形態は、細胞、組織試料又は個体にPlap11アンタゴニストを送達する工程を含む、Plap11活性を減少させる方法に関する。かかる方法は、インビトロで(例えば、細胞のインビトロ培養)又はインビボで(例えば、個体へのPlap11アンタゴニストの投与)行われる。好ましい細胞は腫瘍性細胞である。
好ましい実施形態では、個体におけるPlap11の活性を減少させるかかる方法は、ECM分解を抑制することに向けられる。好ましくは、ECM分解を防ぐ、又は低減するかかる方法は、悪性細胞による分解からECMを保護し、したがって、悪性腫瘍の浸潤及び広がりをブロックすることに向けられる。最も好ましくは、Plap11アンタゴニスト及び生理学的に許容される担体を含む組成物は、例えば、腫瘍成長、内皮細胞増殖などの異常な又は望ましくない細胞増殖及び腫瘍成長に関連する血管形成を有する個体に投与される。本発明の組成物で治療することができる腫瘍には、限定されないが、乳癌、精巣悪性腫瘍、卵巣腺癌、絨毛癌及び胃癌が含まれる。
その他の好ましい実施形態において、Plap11アンタゴニストは、対象の組織に特異的な標的分子に融合される。標的化されたPlap11アンタゴニストは、腫瘍成長と関連するECM分解を防ぐために使用される薬剤組成物中に含まれることが好ましい。最も好ましくは、Plap11アンタゴニストは、当業者によく知られているいずれかの技術によって腫瘍細胞上に特異的に発現される受容体又は抗原を認識するリガンド又は抗体に結合される。多数の腫瘍関連抗原が、科学文献に記述されている。例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wikstrandら(Cancer Metastasis Rev 18: 451-64 (1999))により述べられている抗原及び技術を用いることができる。あるいは、Plap11アンタゴニストは、腫瘍の脈管構造を認識するリガンドに結合される。固形腫瘍の脈管構造にPlap11アンタゴニストを標的化するのに好ましい方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,004,554号に記述されている。
生理学的に許容される担体は、当業者に公知のいずれかの方法によって製造することができる。生理学的に許容される担体としては、限定されないが、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA 1985)に記載の担体が挙げられる。生理学的に許容される担体及びPlap11ポリペプチド、Plap11アゴニスト又はPlap11アンタゴニストを含む薬剤組成物は、例えば静脈内、表面、直腸、局所、吸入又は皮下、皮内、筋肉内、経口及び脳内投与用であることが可能である。その組成物は、液状(例えば、液剤、懸濁剤)、固形(例えば、丸剤、錠剤、坐剤)又は半固形(例えば、クリーム剤、ゲル剤)であることが可能である。投与されるべき投与量は、それぞれの必要性、望まれる効果及び選択される投与経路に応じて異なる。
さらに他の実施形態は、Plap11ポリペプチドをコードする核酸配列又はPlap11ポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子を用いて、遺伝子導入動物(例えば、マウス)を作製する方法に関する。遺伝子導入動物を作製する方法は当業者にはよく知られている。例えば、遺伝子導入マウスは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,736,866号、又は米国特許第5,614,396号に従って作製することができる。かかる遺伝子導入動物は、血栓付着のリスクを示す、又は悪性腫瘍の浸潤及び広がりの素因が与えられた、動物モデルを得るのに有用であり、Plap11の発現又は活性の修飾因子についてスクリーニングするのに有用である。
配列番号:8のタンパク質(内部指定クローン500720716_204−33−1−0−E6−F_1)
クローン500720716_204−33−1−0−E6−F_1のcDNA(配列番号:7)は、アミノ酸配列:MCPRAARAPATLLLALGAVLWPAAGASELTILHTNDVHSRLEQTSEDSSKCVNASRCMGGVARLFTKVQQIRRAEPNVLLLDAGDQYQGTIWFTVYKGAEVAHFMNALRYDAMALGNHEFYNGVEGLIEPLLKEAKFPILSANIKAKGPLASQISGLYLPYKVLPVGDEVVGIVGYTSKETPFLSNPGTNLVFEDEITALQPEVDKLKTLNVNKIIALGHSGFEMDKLIAQKVRGVDVVVGGHSNTFLYTGNCFKRIAWARMSRを含む、配列番号:8のNupreをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:8のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン500720716_204−33−1−0−E6−F_1中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:7のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン500720716_204−33−1−0−E6−F_1中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:8、配列番号:7及びクローン500720716_204−33−1−0−E6−F_1の組成物に対して向けられている。以下に記載の方法で使用するのに好ましい他のNupreポリペプチド断片としては、アミノ配列:SELTILHTNDVHSRLEQTSEDSSKCVNASRCMGGVARLFTKVQQIRRAEPNVLLLDAGDQYQGTIWFTVYKGAEVAHFMNALRYDAMALGNHEFYNGVEGLIEPLLKEAKFPILSANIKAKGPLASQISGLYLPYKVLPVGDEVVGIVGYTSKETPFLSNPGTNLVFEDEITALQPEVDKLKTLNVNKIIALGHSGFEMDKLIAQKVRGVDVVVGGHSNTFLYTGNCFKRIAWARMSRを含むNupreポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、Nupreは、5’−ヌクレオチダーゼ前駆体(5NTD,Genbankアクセッション番号P21589)の新規な分泌スプライスバリアントである。エクソン1及び2は、Nupre cDNAと5NTD cDNAとの間で同一である。Nupre cDNAの第3エクソンは、5NTD cDNAの第3エクソンよりも長い。したがって、両方の成熟タンパク質はそれらのアミノ末端側226個のアミノ酸上で同一であり、かつNupreのカルボキシ末端側12個のアミノ酸は、このスプライスバリアントに固有である。Nupreは264アミノ酸の長さであるのに対して、5NTDは574アミノ酸の長さである。Nupreはシグナルペプチド(MCPRAARAPATLLLALGAVLWPAAGAS)及び5’−ヌクレオチダーゼシグネチャー(シグネチャー)_1コンセンサス(LTILHTNDVHSRL)を示す。Nupreは、5’−ヌクレオチダーゼ触媒ドメインもまた示す。5NTDはGPIアンカー型細胞外酵素(GPI-anchored ectoenzyme)であり、Nupreは、細胞壁に結合していない分泌タンパク質である。
Nupreは、相当するリボヌクレオシドへの5’−リボヌクレオチドの脱リン酸化を触媒する、可溶性の細胞外5’−ヌクレオチダーゼである。注目にすべきことには、Nupreはアデノシンを産生し、それによってアデノシン受容体仲介シグナル伝達が促進される。アデノシン受容体は、心拍数及び収縮性、神経伝達、腎機能、平滑筋の血管拡張、血小板凝集、脂肪分解及びマスト細胞の活性化などの、多くの重要な生理学的応答を仲介する。特に、アデノシンは、脂肪細胞における脂肪分解の抑制を仲介し(Ramkumarら Jpn J Pharmacol 86:265-74 (2001))、神経伝達の阻害及び病理的症状における神経保護作用などのCNS内でのいくつかの機能を有する(例えば、その開示内容全体が本明細書に組み込まれる、Latiniら J Neurochem 79:463-84 (2001)参照)。5NTDと異なり、Nupreは、CD3/T細胞受容体複合体に対して共刺激分子として働かず、細胞接着に関与しない。その代わりに、5NTDはいくつかの異なる機能を有し、その一部は5’−ヌクレオチダーゼ活性を必要としないのに対して、Nupreは、細胞外アデノシンレベルの制御に特異的に関与する。Nupreは、上皮細胞、グリア細胞、脂肪細胞及びリンパ球などの種々の細胞型によって広く発現される。その発現は、リンパ球の分化と正に相関する。
本発明の実施形態は、配列番号:8の又は配列番号:8と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するNupreポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、5’−ヌクレオチダーゼ活性を有するNupreポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「Nupreポリペプチド」とは、配列番号:8の又は配列番号:8と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のNupreポリペプチド配列、又は5’−ヌクレオチダーゼ活性を有するNupreポリペプチド断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、Nupreポリペプチドをコードする配列番号:7のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、Nupreポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書でさらに使用される「Nupreポリヌクレオチド」とは、配列番号:7の又は配列番号:7と少なくとも70%、80%、90%、95%以上の同一性を有するポリヌクレオチド配列、Nupreポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は配列番号:7のポリヌクレオチド断片のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:8のNupreポリペプチド配列又はNupreポリペプチド断片を認識する抗体に関する。好ましくは、その抗体は、Nupreのカルボキシル末端側12個のアミノ酸のうちの1つ又は複数を認識し、前記の1つ又は複数のアミノ酸は、Nupreポリペプチドへの抗体の結合に必要とされる。最も好ましくは、その抗体はNupreに結合するが、5NTDには結合しない。本明細書で使用される「抗Nupre抗体」とは、Nupreポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明は、抗Nupre抗体をNupreポリペプチドに結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、Nupreポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は、当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書でさらに記述されるように、Nupreポリペプチドを検出するのに有用である。
本発明の実施形態は、生体試料においてNupreポリペプチドを検出する方法であって、i)生体試料を抗Nupre抗体と接触させ;ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む方法に関する。その抗Nupre抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗Nupre抗体は一次的又は二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。かかる方法は、以下にさらに記述するように、例えば、B細胞障害における異なる成熟段階でのリンパ球集団の同定及び免疫不全症の診断に適用することができる。
本発明の実施形態は、生体試料におけるNupreの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試験試料を採取し、ii)試料におけるNupreの発現レベルを検出し、iii)前記試験試料におけるNupreの発現レベルを、対照試料における発現レベルと比較する工程を含む。かかる一実施形態において、Nupreの発現レベルの検出は、免疫不全症の診断に使用される。好ましくは、前記生体試料は、循環リンパ球を含む。正常な個体におけるレベルを表す対照試料におけるレベルと比較して、前記生体試料におけるNupreの発現レベルが低い場合には、例えば、重症複合免疫不全症、ウイルス誘発免疫不全症、例えば、AIDS、低ガンマグロブリン血症、無ガンマグロブリン血症及び原発性体液性免疫不全症などの免疫不全疾患であることを示している。その他のかかる実施形態において、Nupreの発現レベルの検出は、例えば、B細胞リンパ性白血病及び慢性骨髄性白血病などの慢性B細胞障害における異なる成熟段階でリンパ球集団を同定することに向けられる。試料におけるNupreの発現レベルは、試料中のNupre mRNA又はNupreポリペプチドのレベルを検出することなどによって、いずれかの方法を用いて評価することができる。例えば、ウェスタンブロット法、免疫化学技術及び細胞化学的技術などのよく知られている技術を用いて、Nupreの発現を検出してもよい。好ましくは、抗Nupre抗体が、Nupreの発現レベルを検出するために使用される。また好ましくは、配列番号:7のポリヌクレオチド配列又はその一部、又は配列番号:7に相補的なポリヌクレオチド配列を用いて、例えばノーザンブロット法又はRTPCR技術によってNupreの発現レベルを検出する。
本発明の実施形態は、免疫不全症の素因を検出するために、Nupre遺伝子における突然変異を同定する方法に関する。かかる方法は、i)個体からヌクレオチド試験試料を採取し、ii)試料の1つ又は複数の細胞においてNupreポリペプチドをコードするゲノムDNAの存在を決定する工程を含む。Nupreゲノム配列の存在は、標準分子生物学技術(例えば、サザンブロット法)を用いて及びNupreヌクレオチドもしくはその断片をプローブとして使用して検出することが好ましい。あるいは、その方法は、i)個体からヌクレオチド試験試料を採取し;ii)前記試料中でNupreゲノム配列における突然変異の存在を検出する工程を含む。かかる突然変異としては、欠失、転座、逆位及び点突然変異(例えば、1つ又は複数の疾患形質を生じる、又はそれと関連することが知られている突然変異)が挙げられる。これらの突然変異は、標準分子生物学技術(例えば、シークエンシング又はPCR)を用いて、及びNupreヌクレオチドもしくはその断片をプローブもしくはプライマーとして利用して検出することが好ましい。好ましくは、これらの方法におけるヌクレオチド試験試料はDNAを含有する。Nupreが位置するゲノム領域の2つ未満の機能性コピー、又は前記領域における突然変異のいずれかを同定することによって、前記個体が免疫不全症と関連する遺伝的突然変異を有する尤度が示される。前記Nupreポリヌクレオチドは、30個未満のヌクレオチドのオリゴヌクレオチドプライマーであることが好ましい。また、好ましくは、配列番号:7のNupreポリヌクレオチドが、かかる方法においてプローブとして使用される。個体のゲノタイピングは、例えば、シークエンシング、マイクロシークエンシング又はハイブリダイゼーションなどの当業者によく知られているいずれかの技術によって行うことができる。前記Nupreポリヌクレオチドは、単独で、又は個体が免疫不全症と関連する遺伝的突然変異を有する尤度を示す他のポリヌクレオチド配列と組み合わせて、使用することができる。この実施形態のその他の態様は、Nupreポリヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイに関する。好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブの前記アレイは、免疫不全症と関連する異なる遺伝的突然変異を示すいくつかのオリゴヌクレオチドを含み、免疫不全症と関連する突然変異の効率的なスクリーニングを行うために使用される。これらのマイクロアレイは、例えば、免疫不全症に罹患しやすい家族における疫学的研究を行うため、又は個体における免疫不全症の素因の存在を診断するために、用いることができる。
本発明の他の実施形態は、Nupreポリペプチドの存在をインビトロで検出するための診断キットに関する。かかるキットは:i)抗Nupre抗体;任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルを提供し得る。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗Nupre抗体を含むキットは、上記のような免疫不全疾患の診断に使用されることが好ましい。任意に、前記診断キットは、正常な個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、特定の免疫不全疾患を有する個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。
その他の実施形態は、i)Nupreポリペプチドを発現する細胞を培養し、ii)産生されたタンパク質を精製する工程を含む、Nupreポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗Nupre抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。Nupreポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。Nupreポリペプチドの作製は、本発明でさらに記述される方法及び組成物において有用である。
本発明の好ましい態様は、プロモーターに作動可能に連結される、Nupreポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、Nupreポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって、i)プロモーターに作動可能に連結される、Nupreポリペプチドをコードする核酸配列を含み、かつ所定の条件下にて前記Nupreポリペプチドの発現を可能にする、組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、細胞は大腸菌細胞又はヒト細胞である。さらなる好ましい態様は、細胞に存在する場合には、Nupreの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。かかるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)Nupre遺伝子を含む細胞を提供し、ii)Nupre発現を変化させるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターが導入される前の前記細胞におけるNupreの発現と比較して、Nupreの発現が増加又は低減する方法によって作製される。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Nupre遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、又はNupre遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Nupreコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。Nupreポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、Nupreポリペプチドを作製することができる。
その他の好ましい実施形態は、Nupreの発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって;i)細胞を試験物質と接触させ;ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるNupreの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されたNupreの発現の差異によって、試験物質がNupreの発現を調節することが示される工程を含む方法に関する。Nupreの発現は、当技術分野で一般的な、又は本明細書に包含される方法によって決定することができる。Nupreの発現を決定する方法としては、限定されないが、Nupreポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるNupre mRNAの検出)又はNupreポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるNupreポリペプチドの検出)が挙げられる。一実施形態において、試験物質は、特定の細胞型(好ましくは、脂肪細胞、リンパ球、グリア細胞又は上皮細胞)ではNupreの発現を修飾するが、他の細胞型では修飾しない。例えば、細胞、組織、又は個体におけるNupreの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明のさらなる実施形態は、Nupreの活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるNupreの活性を、非暴露対照細胞における活性と比較する工程を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるNupreの活性の差異によって、試験物質がNupreの活性を調節することを示す。Nupreの活性は、例えばその5’ヌクレオチダーゼ活性を検出することによってモニターすることができる。Nupreの5’ヌクレオチダーゼ活性は、当業者によく知られている多種多様な技術を用いて評価することができる。例えば、これらの技術は、Wardら(J Chromatogr B Biomed Sci Appl 707:295-300 (1998))によって記述されているイオン交換カラムクロマトグラフィー法及び米国特許第5,801,006号に記載されているNADH及びNADPHを使用する方法を含む(そのどちらも、開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、細胞、組織、又は個体におけるNupreの活性を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
Nupreの発現又は活性を低減する試験物質は、Nupreアンタゴニストとして定義される。Nupreの発現又は活性を増加する試験物質は、Nupreアゴニストとして定義される。Nupreの発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、Nupreのドミナントネガティブ型及び抗Nupre抗体が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法によって製造かつ使用することができる。
好ましい実施形態は、触媒作用を生じさせる条件下にて、Nupreポリペプチドを、5’−リボヌクレオチドを含む生体試料と接触させる工程を含む、アデノシンを作製する方法に関する。好ましい5’−リボヌクレオチドは、アデノシン−5’−1リン酸(AMP)である。多種多様な条件によって、5’−リボヌクレオチドを相当するリボヌクレオシドに脱リン酸化することが可能となる。例えば、Navarro ら. (Mol Cell Biochem 187:121-31 (1998))に記載の条件を用いることができる。アデノシンの作製は、数多くの方法で、例えば、以下にさらに詳述する方法において有用である。
好ましい実施形態は、筋肉におけるイノシン一リン酸、イノシン及びヒポキサンチンへのアデノシン三リン酸の自己融解分解をモニターすることによって、食物(例えば、魚及び肉)の鮮度を決定するために、Nupreポリペプチドを使用する方法に関する。かかる方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,288,613号に記載されている。
その他の好ましい実施形態は、アデノシンレベルを増加し、アデノシン受容体仲介シグナル伝達を活性化するために、Nupreポリペプチドを使用する方法に関する。かかる方法は、NupreポリペプチドによるAMPの触媒脱リン酸化を生じさせる条件下にて、アデノシン受容体を発現する細胞を含む組織を、Nupreポリペプチド又はNupreアゴニストと接触させる工程を含む。代替方法として、アデノシン類似体に脱リン酸化されるAMP類似体をかかる方法で使用してもよい。例えば、N6−シクロヘキシルアデノシン、L−N6−フェニルイソプロピルアデノシン、D−N6−フェニルイソプロピルアデノシン及びN6−メチルアデノシン又は2−クロロアデノシンに脱リン酸化されるAMP類似体を使用することができる。
かかる一実施形態において、本発明は、アデノシンレベルを増加し、かつアデノシン受容体仲介シグナル伝達を活性化する方法であって:神経細胞を含む組織に、Nupreポリペプチド又はNupreアゴニストを投与する工程を含む方法を提供する。前記方法は、シナプス後性にイオン電流を誘導又は調節することによって、及びシナプス前性に伝達物質放出を低減することによって神経細胞を抑制することに向けられることが好ましい。かかる方法は、例えばインビトロ脳スライス標本又は培養神経細胞に、Nupreポリペプチド又はNupreアゴニストを送達することによって、インビトロで行われる。神経細胞を抑制するためのかかる方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のNupreポリペプチド又はNupreアゴニストとを個体に送達することによってインビボで行うこともできる。本明細書で使用される「有効量のNupreポリペプチド又はNupreアゴニスト」とは、神経細胞などの細胞においてアデノシン受容体仲介シグナル伝達を活性化するのに十分な量のNupreポリペプチド又はNupreアゴニストを意味する。神経細胞のアデノシン受容体仲介シグナル伝達の活性化は、数多くの用途、例えば癲癇、睡眠障害及び運動疾患(例えば、パーキンソン病及びハンチントン病)などの神経疾患及び精神疾患の治療に有用である。神経細胞のアデノシン受容体仲介シグナル伝達の活性化は、精神分裂病、鬱病、アルツハイマー病及び嗜癖などの精神障害の治療にも有用である。さらに、神経細胞のアデノシン受容体仲介シグナル伝達の活性化は、痛みの治療に有用である。Nupreポリペプチド又はNupreアゴニストは、全身的に、例えば静脈内注入によって、又は局所的に、例えば脳内注入によって投与される。
さらに他の好ましい実施形態は、アデノシンレベルを下げ、デノシン受容体仲介シグナル伝達を抑制するために、Nupreポリペプチドを使用する方法に関する。かかる方法は、アデノシン受容体を発現する細胞を含む組織を、Nupreアンタゴニストと接触させる工程であって、前記Nupreアンタゴニストが、NupreポリペプチドよるAMPの触媒脱リン酸化が生じるのを抑制する工程を含む。
一態様において、本発明は、脂肪細胞における脂肪分解を増加するために、アデノシンレベルを下げ、アデノシン受容体仲介シグナル伝達を抑制する方法を提供する。前記方法は、Nupreアンタゴニストを脂肪細胞又は脂肪組織に投与する工程を含む。かかる方法は、例えば、インビトロ白色脂肪細胞培養物にNupreアンタゴニストを送達することによって、インビトロで行うことができる。かかる方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のNupreアンタゴニストとを含む薬剤組成物を個体に投与することによってインビボで行うことが可能である。本明細書で使用される「有効量のNupreアンタゴニスト」とは、脂肪細胞などの細胞においてアデノシン受容体仲介シグナル伝達を抑制するのに十分な量のNupreアンタゴニストを意味する。脂肪細胞のアデノシン受容体仲介シグナル伝達の抑制は、肥満症の治療に使用することが好ましい。その他の態様では、冠血流量及び心伝導を調節するために、アデノシン受容体仲介シグナル伝達の抑制が用いられる。冠血流量及び心伝導を調節するための前記方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のNupreアンタゴニストとを個体に投与する工程を含む。好ましくは、前記方法は、例えば失神、心不全、虚血再灌流障害、又は心不全などの障害を治療又は予防するために、生理学的に許容される担体と、有効量のNupreアンタゴニストとを含む薬剤組成物を個体に投与することによってインビボで行われる。かかる薬剤組成物は、静脈内など、好ましくは全身的に、いずれかの方法で投与することができる。
生理学的に許容される担体は、当業者に公知のいずれかの方法によって製造することができる。生理学的に許容される担体としては、限定されないが、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA 1985)に記載の担体が挙げられる。Nupreアゴニスト又はアンタゴニストと、生理学的に許容される担体とを含む薬剤組成物は、例えば、静脈内、表面、直腸、局所、吸入又は皮下、皮内、筋肉内、経口及び脳内投与用であることが可能である。その組成物は、液状(例えば、液剤、懸濁剤)、固形(例えば、丸剤、錠剤、坐剤)又は半固形(例えば、クリーム剤、ゲル剤)であることが可能である。投与されるべき投与量は、それぞれの必要性、望まれる作用及び選択される投与経路に応じて異なる。
さらに他の実施形態は、Nupreポリペプチドをコードする核酸配列又はNupreポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子を用いて、遺伝子導入動物(例えば、マウス)を作製する方法に関する。遺伝子導入動物を作製する方法は当業者にはよく知られている。例えば、Nupre欠損マウスは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,207,876号に従って作製することができる。その代わりとして、Nupreを過剰発現する遺伝子導入マウスを作製することができる。かかる遺伝子導入動物は、低い又は高いアデノシンレベルと関連する機能不全の動物モデルを得るのに、かかる機能不全を治療するのに、かつこれらの機能不全の治療における薬剤活性について化合物をスクリーニングするのに有用である。
配列番号:10のタンパク質(内部指定クローン599222_181−13−3−0−F11−F)
クローン599222_181−13−3−0−F11−FのcDNA(配列番号:9)は、アミノ酸配列:MWLLVSVILISRISSVGGEVSAEKCGPPPPIDNGDITSFLLSVYAPGSSVEYQCQNLYQLEGNNQITCRNGQWSEPPKCLDPCVISQEIMEKYNIKLKWTNQQKLYSRTGDIVEFVCKSGYHPTKSHSFRAMCQNGKLVYPSCEEKを含む、配列番号:10の新規な補体H関連タンパク質前駆体(NFHR)をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:10のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン599222_181−13−3−0−F11−F中に含まれるヒトcDNAによってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:9のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン599222_181−13−3−0−F11−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:10、配列番号:9として示されるポリペプチド及びポリヌクレオチド及びクローン599222_181−13−3−0−F11−FのヒトcDNA及びコードタンパク質を含む組成物に対して向けられている。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:10のタンパク質、NFHRは、補体因子H関連タンパク質2前駆体(swissprotアクセッション番号P36980)の新規なスプライスバリアントである。NFHRは、2つのSushiドメイン:CGPPPPIDNGDITSFLLSVYAPGSSVEYQCQNLYQLEGNNQITCRNGQWSEPPKC;及びCVISQEIMEKYNIKLKWTNQQKLYSRTGDIVEFVCKSGYHPTKSHSFRAMCQNGKLVYPSCを示す。NFHRは1つの膜貫通ドメイン:GDITSFLLSVYAPGSSVEYQCも示す。これらのドメインに相当するこれらの断片のそれぞれは、本発明によって特に包含される。
NFHRは、主に肝臓で合成され、かつ補体反応において重要な調節の役割を担う、分泌血漿タンパク質である。特に、NFHRはC3bに結合し、因子Hが結合するのを防ぎ、それによって、因子BのC3bへの結合が促進され、その結果、補体反応が促進される。したがって、NFHRのレベルは、滲出性中耳炎などの補体により仲介される炎症反応において上昇する(例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Clin Immunol. 2001 Jul;100(1):118-26参照)。補体反応におけるその役割の他に、NFHRは、例えば、アポリポタンパク質A−1、リポ多糖結合タンパク質、リン脂質、フィブリノゲン及び他の成分を含むFALP粒子中で、血漿中のリポタンパク質及び他のタンパク質とも結合する(例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Parkら (2000) Blood 95(1):198-204参照)。他の活性の中でも、これらの粒子は、好中球のリポ多糖への接着反応を促進する。さらに、NFHRは、リポ多糖結合タンパク質の機能、ならびにフィブリノゲンの凝固機能の保持及び/又は調節において役割を果たす。さらに、NFHRのレベルは、膀胱癌などの様々な癌において高い。
本発明の実施形態は、配列番号:10の又は配列番号:10と少なくとも約70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を含むNFHRポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、限定されないが、アポリポタンパク質A1、リポ多糖結合タンパク質、リン脂質、フィブリノゲン、又はリン脂質への結合、補体系の促進及び癌細胞における高い発現を含む、本明細書に記載の生物活性のいずれかを有する、NFHRポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:9の又は配列番号:9と少なくとも約70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を含むポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。一実施形態において、本発明は、NFHRポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を提供する。
本発明のさらなる実施形態は、本明細書に記載の生物活性のいずれかを有するNFHRポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、NFHRポリペプチド配列又はNFHRポリペプチド断片を認識する抗体に関する。その抗体は、非直鎖状エピトープを認識することが好ましい。本明細書で使用される「抗NFHR抗体」とは、NFHRポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、NFHRポリペプチドに抗NFHR抗体を結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、NFHRポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は、当業者にはよく知られている。かかる抗NFHR抗体及びその抗体を用いてNFHRポリペプチドを結合させる方法は、本明細書に記載されたようにNFHRの精製、検出及び診断に使用することができる。
他の実施形態では、本発明は、生体試料中に存在するNFHRポリペプチドのレベルを検出かつ定量化するための方法及び組成物に関し、前記方法は、i)NFHRポリペプチドに特異的に結合する抗体又は抗体断片と生体試料とを接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗体又は抗体断片は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗体又は抗体断片は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。生検、in situアッセイを含む、本発明のタンパク質を検出する診断アッセイは、いずれかの生体試料、器官又は組織切片からの細胞、又は腫瘍もしくは正常組織からの細胞の吸引液、器官、組織、細胞、尿からの細胞抽出物、又は血清又は血液又は他のいずれかの体液又は抽出物で行われる。特異的なポリクローナル又はモノクローナル抗体のいずれかを用いたNFHRポリペプチドの検出及び定量化は当技術分野で公知である。かかる技術の例としては、酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。かかる方法は、NFHRポリペプチドが通常よりも高い又は低いレベルで存在する、いずれかの疾患又は病状の診断に使用することができる。例えば、滲出性中耳炎の患者からの中耳滲出液は、高レベルの補体因子関連タンパク質、例えばNFHRを含有する。さらに、膀胱癌の患者からの尿試料は、高レベルの補体因子関連タンパク質を含有する。したがって、本発明の方法は、これらの疾患もしくは症状の素因を診断又は検出するために、又は数多くの炎症性疾患もしくは腫瘍性疾患又は症状のいずれかにおいて、使用することができる。
一部の実施形態において、本発明は、また、NFHRポリペプチドの存在をインビトロで検出するための診断キットに関する。このキットは、NFHRポリペプチドに特異的に結合する、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体又はその断片;任意に、形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬を備える。その抗体又は抗体断片は検出可能に標識されることが好ましい。かかる標識には、蛍光化合物、発光化合物及び放射性化合物、ならびに酵素基質が含まれる。その任意の試薬は、検出可能なシグナルを提供し、抗体に結合するか、又はかかる抗体上の標識と反応することができる。NFHR抗体を用いて、滲出性中耳炎又は膀胱癌などの癌を診断することができる。さらに、NFHRのレベルを脂質代謝のマーカーとして用いることができ、したがって、限定されないが糖尿病及びアテローム性動脈硬化症などの多くの脂質代謝関連障害のいずれかを検出するために使用することができる。かかる障害を検出するために、適切な生体試料を試験して、産生されるNFHRのレベルを決定することができる。
本発明の特定の実施形態は、NFHRポリペプチドを作製する方法に関する。かかる一実施形態において、その方法は:i)NFHRポリペプチドをコードする組換え発現ベクターを、哺乳動物の宿主細胞にトランスフェクトし;ii)ポリペプチドの発現の助けとなる条件下にて、その細胞を培養し;iii)発現したポリペプチドを精製する工程を含む。タンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行われる。例えば、NFHR又はその一部に対して作られる抗体をクロマトグラフィー担体に結合させ、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。本発明の方法を用いて精製されたNFHRタンパク質は多数の用途、例えば、アポリポタンパク質A1、リポ多糖結合タンパク質、フィブリノゲン、リン脂質、因子B、又はC3bなど、NFHRと関連するタンパク質又は他の分子を精製又は検出するための用途を有する。
本発明は、また、NFHRポリペプチド又はその生物学的断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を提供する。その他の態様は、細胞中に存在する場合には、NFHRの発現レベルの変化を生じさせるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。かかる一実施形態において、ポリヌクレオチドは、NFHR遺伝子の5’調節領域に導入され、その結果、NFHR遺伝子の発現の内因性レベルが増加又は減少する。さらに好ましくは、そのポリヌクレオチドは、NFHRコード領域の50塩基対内に位置する。そのポリヌクレオチドはプロモーター配列を含み得る。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。
好ましい実施形態において、NFHRポリペプチドは、NFHR相互作用タンパク質又は分子、例えばアポリポタンパク質A1、リポ多糖結合タンパク質、フィブリノゲン、リン脂質、因子B、又はC3bを検出又は精製するために使用される。かかる一実施形態では、NFHRポリペプチドを、固体マトリックスに共有結合又は非共有結合で結合させ、その相互作用分子を含有する溶液と接触させ、それによって、相互作用分子が除去され、それを精製又は定量化することが可能となる。通常、この方法はさらに:i)固体マトリックスを洗浄し、混入物を取り除き;ii)さらに厳密な条件を用いて、対象の粒子を溶出する工程を含む。その他の実施形態では、その方法は:i)NFHR相互作用分子を含有すると思われる生体試料を得;ii)NFHRの結合に適した条件下にて、前記試料をNFHRポリペプチド又はその断片と接触させ;iii)NFHRを検出することによって、その相互作用分子の存在を検出する工程を含む。NFHRポリペプチド又はその断片は、蛍光標識などの検出可能な化合物に共有結合で結合されることが好ましい。あるいは、検出可能なNFHR特異的抗体又はその断片を用いて、NFHRを検出することができる。この実施形態は、例えば、アポリポタンパク質A1、リポ多糖結合タンパク質、フィブリノゲン、リン脂質などのNFHR相互作用分子の血漿レベルを検出するための診断ツールとして有用である。また、精製された相互作用分子は多くの目的に使用することが可能である。例えば、精製アポリポタンパク質A1は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Agelandらの米国特許第5,990,081号に記載の方法に従って、アテローム性動脈硬化症及び心血管疾患を治療するために使用することができる。また、精製フィブリノゲンは、血友病の治療において投与することができる(例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Di Paolaら(2001) Haemophilia Jan;7 Suppl 1:16-22参照)。さらに、精製リポ多糖結合タンパク質を使用して、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,306,824号に記載の方法に従って、菌体内毒素に暴露される前に特定の対象に投与した場合に、細菌及びそれらの内毒素による炎症の可能性を低減することができる。
本発明のその他の実施形態では、個体における補体反応又は凝固を促進するために、NFHRポリペプチドが使用される。この方法は、個体の血流に、有効量のNFHRポリペプチド又はその断片を導入する工程を含む。個体にNFHRポリペプチド又はその生物活性断片を送達するのに好ましい方法としては、生理学的に許容される溶液(例えば、pH緩衝生理食塩液、グリセロールなどの粘性成分を添加することにより改変されたpH緩衝生理食塩水)中の前記ポリペプチド又は断片を直接、静脈内注入することを含む。あるいは、NFHRポリヌクレオチドを導入して、血流中でNFHRポリペプチドを発現させることができる。この方法は、プロモーターに作動可能に連結される、NFHRポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの組換えベクターを患者の細胞に導入する工程を含み、NFHRポリペプチドは細胞内で発現される。かかる方法では、ウイルス(アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、HSV、レトロウイルス等)又は非ウイルスベクター(例えば、プラスミド、裸のDNA等)を含む、いずれかのベクターを使用することができる。例えば、リポソーム仲介トランスフェクション、ウイルス感染、微粒子銃(biolistic particles)等のいずれかの手段を用いて、ベクターを個体又は細胞に導入することができる。かかる方法は、例えば感染に対する防御を助けるために、例えば炎症反応の促進に有用である。
他の実施形態において、アポリポタンパク質A1、リポ多糖結合タンパク質、フィブリノゲン、リン脂質、因子B、又はC3bなどのNFHR相互作用分子の個体の血液中の循環レベルを決定するために、NFHRを使用する。その方法は、個体から血液試料を採取し、本発明のタンパク質を使用して、血液試料から相互作用分子を精製し(例えば、アフィニティーカラムクロマトグラフィーによって)、精製分子のレベルを測定する工程を含む。ELISA、ウェスタンブロット法、質量分析法又はラジオイムノアッセイ(RIA)などのいずれかの方法を用いて、精製分子のレベルを評価することができる。循環血液中の、例えば、アポリポタンパク質A1、リポ多糖結合タンパク質、及びリン脂質レベルの決定は、限定されないが、脂質代謝関連疾患、糖尿病、及びアテローム性動脈硬化症などの疾患を有する患者のモニタリングに対して特に興味深いと考えられる。
本発明のその他の実施形態は、当業者に知られているいずれかの方法によって、遺伝子導入モデル動物(キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)、ハツカネズミ(M. musculus))を確立するための、本発明のタンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチド配列を用いた組成物及び方法に関する。薬物又は変更遺伝子(活性化又は抑制遺伝子)で導入遺伝子の発現をインビボで調節することによって、脂質代謝関連疾患を模倣する動物モデルを作製することができる。このように、これらの動物モデルによって、上述の疾患の治療に用いられる潜在的な治療薬を同定することが可能となる。さらに、これらの遺伝子導入動物に由来する組換え細胞系は、同様のアプローチにエクスビボで使用することができる。
その他の実施形態において、本発明は、膀胱癌などの癌の存在又は素因を検出する方法を提供する。かかる方法は通常、i)癌を有する疑いのある、又は癌を発症するリスクがある患者から生体試料を採取し;ii)試料中のNFHRのレベルを検出する工程を含み、癌を持たない正常な個体(又は癌を発症するリスクが高くない個体)から予想されるレベルに対して、試料中のNFHRレベルが高い場合には、その患者が癌を有するか、又は癌を発症するリスクが高いことを示している。かかる方法を用いて、いずれかの種類の癌、例えば癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、及び白血病、さらに詳細には、乳癌、前立腺癌、結腸癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頚癌、胃腸癌、膵臓癌、膠芽腫、肝癌、膀胱癌、肝癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、子宮内膜癌腫、唾液腺癌、腎臓癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、皮膚癌、黒色腫、脳腫瘍、卵巣癌、神経芽細胞腫、骨髄腫、様々なタイプの頭頚部癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫及び末梢神経上皮腫などを検出することが可能である。好ましい実施形態では、その癌は膀胱癌である。
配列番号:12のタンパク質(内部指定クローン238757_116−105−3−0−D9−F)
クローン238757_116−105−3−0−D9−FのcDNA(配列番号:11)は、アミノ酸配列:MSDLRITEAFLYMDYLCFRALCCKGPPPARPEYDLVCIGLTGSGKTSLLSKLCSESPDNVVSTTGFSIKAVPFQNAILNVKELGGADNIRKYWSRYYQGSQGVIFVLDSASSEDDLEAARNELHSALQHPQLCTLPFLILANHQDKPAARSVQEKIQDを含む、配列番号:12のNARFタンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:12のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン238757_116−105−3−0−D9−F中に含まれるヒトcDNAによってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:11のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン238757_116−105−3−0−D9−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:12、配列番号:11及びクローン238757_116−105−3−0−D9−Fの組成物に対して向けられている。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:12のタンパク質、NARFは、新規なADP−リボシル化ファミリー関連タンパク質である。NARFはADP−リボシル化因子ファミリー(ARF)モチーフ:YLCFRALCCKGPPPARPEYDLVCIGLTGSGKTSLLSKLCSESPDNVVSTTGFSIKAVPFQNAILNVKELGGADNIRKYWSRYYQGSQGVIFVLDSASSEDDLEAARNELHSALQHPQLCTLPFLILANHQDKPAARSVQEKIQDを示す。
ARFタンパク質は、rasスーパーファミリーのメンバーであり、GTPに結合した場合には、活性かつ膜結合型(membrane associated)となる。ARFの生物学的役割は、シグナル伝達、特にゴルジ体を含む小胞輸送における、及びリン脂質−修飾酵素活性及び細胞骨格の調節における多くの段階の中心的な役割である。例えば、NARFは、非クラスリン被覆タンパク質の細胞内の輸送小胞との結合に必要とされ、かつエンドサイトーシスならびに核の小胞融合の初期段階で重要である。NARFはまた、上皮細胞において、かつ分泌において重要な役割を果たす。ARFタンパク質は、種々のタンパク質及びプロセス、例えば、ホスホリパーゼD及びコレラ毒素仲介ADP−リボシル化も活性化する。ホスホリパーゼDの活性化により、複数の細胞効果(multiple cellular effect)が導かれる。例えば、NARFによるその活性化の後、ホスホリパーゼDはホスファチジルコリンを加水分解する。この反応により生成されたホスファチジン酸は、コートマーの安定な結合部位の形成を促進し、被覆小胞が出芽する。
本発明の実施形態は、配列番号:12のNARFポリペプチド配列を含む組成物に関する。その他の実施形態では、そのポリペプチド配列は、配列番号:12と少なくとも70%、80%、90%、95%以上同一である。
本発明のさらなる実施形態は、本明細書に記載の生物活性のいずれかを有するNARFポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、NARFポリペプチドをコードする配列番号:11のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。その他の実施形態では、そのポリヌクレオチド配列は、配列番号:11と少なくとも70%、80%、90%、95%以上の同一性を有する。
他の実施形態において、本発明は、配列番号:12の配列を含むポリペプチド又はその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドを提供する。
本発明のさらなる実施形態は、本明細書に記載の生物活性のいずれかを有するNARFポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、NARFポリペプチド又はその断片に抗体を結合させる方法に関する。その抗体は非直鎖状エピトープを認識し、かつNARFのC末端に特異的に結合することが好ましい。かかるNARF特異的抗体は、例えば本明細書に記述されるように、NARFの精製、抑制、検出及び診断に使用することができる。
本発明の実施形態は、NARFポリペプチドを作製する方法に関する。NARFポリペプチドを作製する方法は:i)本発明のNARFポリペプチドをコードする組換え発現ベクターを、哺乳動物宿主細胞にトランスフェクトし;ii)前記ポリペプチドの発現の助けとなる条件下にて、その細胞を培養し;iii)発現したNARFポリペプチドを精製する工程を含む。タンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術にしたがって行われる。好ましくは、NARFに対して作られる抗体、例えば、NARFのC−末端に対して作られる抗体をクロマトグラフィー担体に結合させ、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成する。その精製されたタンパク質は、例えば、ホスホリパーゼDの活性化、抗NARF抗体の産生、NARF修飾因子のスクリーニング、又は細胞における膜輸送の調節などの多数の用途に使用することができる。
本発明の好ましい態様は、NARFポリペプチド又はその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。さらなる好ましい態様は、NARFの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。NARFの発現を指示することができるポリヌクレオチドは、NARF遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。さらに好ましくは、これらのポリヌクレオチドは、NARFコード領域の500塩基対内に位置する。これらのポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。前記宿主細胞によって産生されたNARFタンパク質は、本明細書に記述するように、例えば、検出及び精製法ならびに診断及びインビボ用途に用いることができる。
NARF mRNAは、神経再生ならびに神経細胞分化及び成熟に必須のいくつかのプロセスにおいて差次的に発現される(Suzuki, I.ら(2001) Brain Res. Mol. Brain Res. 31:124-34参照、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。その他の実施形態において、NARF mRNAのレベルは、神経障害、ADP−リボシル化欠乏性疾患、上皮性疾患及び/又は分泌障害を発症するリスクがあるか、又はそれらを有するかどうかを決定又は診断するために、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて検出される。mRNAを検出及び/又は定量化するためのアッセイは当技術分野でよく知られている(例えば、Maniatis, Fitsch and Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual (1982), 又は Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F.M.ら(Eds), Wiley & Sons, Inc.参照)。かかる一実施形態において、核酸プローブを標準法により標識し、ハイブリダイゼーション複合体の形成を可能にする条件下にて生体試料に添加する。インキュベーション期間後、その試料を洗浄し、ハイブリダイゼーションに関連する標識の量を定量化し、かつ/又は対照値と比較する。試料中の標識の量が対照値と検出可能な程度に異なる場合には、関連する病状、疾患又は障害、又はその素因が存在することを示している。かかるアッセイを用いて、動物研究において、臨床試験において、又は個々の患者の治療法のモニターにおいて特定の治療的処置療法の有効性を評価することもできる。病状の存在が証明され、治療プロトコールが開始されると、診断アッセイを定期的に繰り返して、患者における発現レベルが、正常な対象において観察される発現レベルに近似し始めるかどうかを決定することができる。連続的なアッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の範囲の期間にわたる治療の有効性を示すことができる。
NARFは、ゴルジ体、小胞体(ER)ならびにエンドソームと結合することから、NARFは分泌又は細胞内輸送のマーカーとして有用であり、したがって、輸送異常と関連する疾患の診断に使用することができる。かかるゴルジ体、ER又はエンドソームに関連する分泌障害としては、限定されないが、嚢胞性線維症、メンケス症候群、ニーマン・ピック病、及び小胞輸送異常と関連する他の症状、限定されないが、後天性免疫不全症候群(AIDS)などが挙げられる。さらに、NARFは、限定されないが、湿疹、皮膚炎、乾癬、ざ瘡、皮膚筋炎及び過敏性大腸症候群を含む上皮性疾患を診断するのに有用である。
本発明のその他の実施形態は、NARFポリペプチドを検出することによって、上皮性及び/又は分泌障害を診断する方法に関する。生検、in situアッセイを含む、NARFポリペプチドのレベルを検出かつ/又は定量化するための診断アッセイは、いずれかの生体試料、器官又は組織切片からの細胞、又は腫瘍もしくは正常組織からの細胞の吸引液、器官、組織、細胞、尿からの細胞抽出物、又は血清又は血液又は他のいずれかの体液又は抽出物で行われる。特異的なポリクローナル又はモノクローナル抗体のいずれかを用いたNARFポリペプチドの検出及び定量化は当技術分野で公知である。かかる技術の例としては、酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。
その他の実施形態において、実質上精製されたNARFポリペプチドと薬剤担体とを含む薬剤組成物を対象に投与して、限定されないが、例えば上述のような疾患及び病状を含む、NARFの変化した発現又は活性と関連する病状を治療又は予防することができる。
本発明の好ましい実施形態は、コレラ毒素に結合するNARFを使用する方法である。この方法は、NARFの結合を可能にする条件下にて、NARFポリペプチド又はその活性断片をコレラ毒素と接触させる工程を含み、結合によって前記コレラ毒素の活性が抑制される。この方法はインビトロ用途(例えば、コレラ毒素の検出)に適用することができる。
本発明の好ましい実施形態は、コレラ毒素を精製する方法である。この方法は、結合を可能にする条件下にて、NARFポリペプチド又はその生物活性断片をコレラ毒素と接触させ;混入物を取り除き;さらに厳密な条件を用いて、コレラ毒素を溶出する工程を含む。NARFペプチドを固体又は半固体マトリックスに固定化し、試料の洗浄を容易にし、混入物を除去することが好ましい。これらは、細胞培地及び体液などの一般的な生物体液から精製される。精製されたコレラ毒素は、ワクチンとして、又は炎症性腸疾患の治療において有用であり得る(例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開番号:W00134175A2参照)。
本発明の好ましい実施形態は、細胞を試験物質と接触させ、細胞におけるNARFの活性レベルを検出し、その細胞におけるNARFの活性レベルを非暴露対照細胞におけるレベルと比較する工程を含む、NARFポリペプチドの修飾因子についてスクリーニングする方法であって、非暴露細胞におけるレベルと比較して、暴露細胞におけるNARFの活性レベルの増加によって、試験物質がNARFポリペプチドのアゴニストであることが示され、かつ非暴露細胞におけるレベルと比較して、暴露細胞におけるNARFの活性レベルの減少によって、試験物質がNARFポリペプチドのアンタゴニストであることが示される、方法を提供する。
本発明の好ましい実施形態は、上記のような障害などの分泌又は上皮性障害と関連する疾患の治療において、NARFポリペプチドの修飾因子を使用する方法を提供する。これらの方法は、治療が必要な個体に、生理学的に許容される組成物中の治療有効量のNARF修飾因子を投与する工程を含む。
さらなる実施形態では、NARFポリペプチド又はその生物活性断片をコードする発現ベクターを対象に投与して、上記の疾患又は病状のいずれかを治療又は予防する。
一実施形態において、ADP−リボシル化欠乏性疾患、上皮性及び/又は分泌障害、例えば、上述の疾患のうちのいずれかなどを治療するために、対象にNARFを投与する方法に関する。NARFポリペプチドは単独で、又は他の作用物質と組み合わせて投与される。本発明のその他の実施形態は、ホスホリパーゼDをNARFで活性化する方法を提供する。かかる方法は、ホスホリパーゼDを活性化するのに適した条件下にて、ホスホリパーゼDをNARFポリペプチドと接触させる工程を含む。NARFによるホスホリパーゼDの活性化は、当技術分野でよく知られているいずれかの技術を用いて、又はその開示内容全体が参照により本明細書に包含される、米国特許第6,043,073号に記載されたように達成することができる。この方法は、例えば自己免疫又は炎症性疾患、例えば慢性関節リウマチ、乾癬、潰瘍性大腸炎、創傷治癒、又は炎症反応の提示を特徴とする他のいずれかの疾患又は病状の治療において、又は癌の治療において有用である。
一部の実施形態において、本発明は、NARFポリペプチド又はポリヌクレオチドの存在をインビトロで検出するための診断キットにも関する。一実施形態では、そのキットは:i)NARFポリペプチドに特異的に結合する、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体又はその断片;任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬;を備える。その抗体又は抗体断片は、検出可能に標識することが好ましい。
かかる標識としては、蛍光、発光及び放射性化合物ならびに酵素基質が挙げられる。あるいは、任意の試薬は検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応し得る。抗NARF抗体を含むキットは、上述の疾患又は病状のいずれかを診断するのに使用されることが好ましい。任意に、前記診断キットは、正常な個体から予想されるレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、上述の疾患又は病状のいずれかに罹患している個体から予想されるレベルを表す正の対照試料を備える。その他の実施形態では、キットは、標識化NARFポリヌクレオチドプローブなどの、試料中のNARFポリヌクレオチドを検出するための試薬を備え得る。
他の実施形態において、NARFに結合することができる中和抗体が、NARFに結合する試験化合物と特異的に競合する、競合薬物スクリーニングアッセイが用いられる。この手法では、1つ又は複数の抗原決定基をNARFと共有するいずれかのペプチドの存在を検出するために、その抗体を使用することができる。
本発明のその他の実施形態は、当業者に知られているいずれかの方法によって、遺伝子導入モデル動物(キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)、ハツカネズミ(M. musculus))を確立するための、本発明のタンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチド配列を用いた組成物及び方法に関する。薬物又は変更遺伝子(活性化又は抑制遺伝子)で導入遺伝子の発現をインビボで調節することによって、上述のような分泌及び/又は上皮性障害を模倣する動物モデルを作製することができる。このように、これらの動物モデルによって、疾患の治療に用いられる潜在的な治療薬を同定することが可能となる。さらに、これらの遺伝子導入動物に由来する組換え細胞系は、同様のアプローチにエクスビボで使用することができる。
配列番号:14のタンパク質(内部指定クローン106614_105−031−2−0−E2−F)
クローン106614_105−031−2−0−E2−FのcDNA(配列番号:13)は、アミノ酸配列:MKSIILFVLSLLLILEKQAAVMGQKGGSKGQLPSGSSQFPHGQKGQHYFGQKDQQHTKSKGSFSIQHTYHVDINDHDWTRKSQQYDLNALHKATKSKQHLGGSQQLLNYKQEGRDHDKSKGHFHMIVIHHKGGQAHHGTQNPSQDQGNSPSGKGLSSQCSNTEKRLWVHGLSKEQASASGAQKGRTQGGSQSSYVLQTEELVVNKQQRETKNSHQNKGHYQNVVDVREEHSSKLQTSLHPAHQDRLQHGPKDIFTTQDELLVYNKNQHQTKNLSQDQEHGRKAHKISYPSSRTEERQLHHGEKSVQKDVSKGSISIQTEEKIHGKSQNQVTIHSQDQEHGHKENKISYQSSSTEERHLNCGEKGIQKGVSKGSISIQTEEQIHGKSQIQTPNPNQDQWSGQNAKGKSGQSADSKQDLLSHEQKGRYKQESSESHNIVITEHEVAQDDHLTQQYNEDRNPISTを含む、配列番号:14のSgIIbをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:14のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン106614_105−031−2−0−E2−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。
さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:13のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン106614_105−031−2−0−E2−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:14、配列番号:13及びクローン106614_105−031−2−0−E2−Fの組成物に対して向けられている。以下に記載の方法で使用するのに好ましいSgIIbポリペプチド断片としては、アミノ配列:QKGGSKGQLPSGSSQFPHGQKGQHYFGQKDQQHTKSKGSFSIQHTYHVDINDHDWTRKSQQYDLNALHKATKSKQHLGGSQQLLNYKQEGRDHDKSKGHFHMIVIHHKGGQAHHGTQNPSQDQGNSPSGKGLSSQCSNTEKRLWVHGLSKEQASASGAQKGRTQGGSQSSYVLQTEELVVNKQQRETKNSHQNKGHYQNVVDVREEHSSKLQTSLHPAHQDRLQHGPKDIFTTQDELLVYNKNQHQTKNLSQDQEHGRKAHKISYPSSRTEERQLHHGEKSVQKDVSKGSISIQTEEKIHGKSQNQVTIHSQDQEHGHKENKISYQSSSTEERHLNCGEKGIQKGVSKGSISIQTEEQIHGKSQIQTPNPNQDQWSGQNAKGKSGQSADSKQDLLSHEQKGRYKQESSESHNIVITEHEVAQDDHLTQQYNEDRNPISTを含むSgIIbポリペプチドが挙げられる。アミノ配列:IQTPNPNQDQWSGQNAKGKSGQSADSKQDLLSHEQKGRYKQESSESHNIVITEHEVAQDDHLTQQYNEDRNPISTを含むSgIIbポリペプチド断片もまた好ましい。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、SgIIbは、semenogelinIIタンパク質(SgII,Genbankアクセッション番号M81651)の新規な分泌スプライス及び多型バリアントである。SgII遺伝子の第2エクソンは、SgIIb mRNAにおいて2つのエクソン及び1つのイントロンに分割される。さらに、配列番号:14の305位に示されるアミノ酸は、SgIIbではイソロイシンであり、SgIIではアスパラギンである。得られる完全長ポリペプチドは、それらのアミノ末端側387個のアミノ酸上で同一である。SgIIbのカルボキシル末端側75個のアミノ酸は、このスプライスバリアントに固有である。SgIIbはシグナルペプチド(MKSIILFVLSLLLILEKQAAVMG)を示し、成熟SgIIbポリペプチドは439アミノ酸の長さである。SgIIbは、semenogelinファミリーの新規なメンバーである。SgIIbは、精嚢に特異的に発現する分泌タンパク質である。SgIIbは、射精直後に形成される精子捕捉ゲル(sperm-entrapping gel)の成分である。SgIIbは、SgI及びSgIIなどの他のセメノゲリン(semenogelin)と、ジスルフィド架橋を介して非共有結合的に相互作用し、射精すると直ぐに凝塊が形成される。前立腺−分泌PSAセリンプロテアーゼによるSgIIbのタンパク質限定加水分解は、精子捕捉ゲルの進行的な溶解に関与し、運動性精子の放出を可能にする。さらに、SgIIbタンパク質分解により放出されるペプチドは、精子の受容体部位に結合し、受精能獲得及び卵子結合などの機能を高める。さらに、SgIIbは、様々な癌腫において異所的に発現される。
本発明の実施形態は、配列番号:14の、又は配列番号:14と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する、SgIIbポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、射精後に形成される精子捕捉ゲルにおいて構造上の役割を有し、精子の受精能獲得及び卵子結合において役割を有し、又はPSAによって切断されるSgIIbポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「SgIIbポリペプチド」とは、配列番号:14の、又は配列番号:14と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のSgIIbポリペプチド配列、又は射精後に形成される精子捕捉ゲルにおいて構造上の役割を有し、精子の受精能獲得及び卵子結合において役割を有し、又はPSAによって切断されるSgIIbポリペプチド断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、SgIIbポリペプチドをコードする配列番号:13のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、SgIIbポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書でさらに使用される「SgIIbポリヌクレオチド」とは、配列番号:13の、又は配列番号:13と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するSgIIbポリヌクレオチド配列、SgIIbポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は配列番号:13のポリヌクレオチド断片のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:14のSgIIbポリペプチド配列又はSgIIbポリペプチド断片を認識する抗体に関する。好ましくは、その抗体は、SgIIbのカルボキシル末端側75個のアミノ酸の1つ又は複数を認識し、前記の1つ又は複数のアミノ酸は、SgIIbポリペプチドへの抗体の結合に必要とされる。さらに好ましくは、その抗体は、QTEEQIHGKSQIQTPNPNQDQWSGQNAKGKSGQSADSエピトープ、SHEQKGRYKQESエピトープ又はDHLTQQYNEDRNPISエピトープを認識する。最も好ましくは、その抗体はSgIIbに結合するが、SgIIには結合しない。本明細書で使用される「抗SgIIb抗体」とは、SgIIbポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、SgIIbポリペプチドに抗SgIIb抗体を結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、SgIIbポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書にさらに記述されるようにSgIIbポリペプチドを検出するのに有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるSgIIbポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗SgIIb抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗SgIIb抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗SgIIb抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。SgIIbポリペプチドの検出は、例えば、法医学分野においてレイプの容疑を立証するのに有用である。SgIIbは、精管切除した男性及び無精子症の男性の精液にでさえ存在することから、性的暴行を立証するためには、精子特異的抗体よりも抗SgIIb抗体を使用するほうが特に信頼性が高い。法医学分野でSgIIbを使用するためのかかる方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,047,508号に記載されたように行うことができる。
本発明の実施形態は、生体試料におけるSgIIbの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)試料におけるSgIIbの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるSgIIbの発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。試料におけるSgIIbの発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば試料中のSgIIb mRNA又はSgIIbポリペプチドのレベルを検出することによって評価することができる。例えば、ウェスタンブロット法、免疫化学技術及び細胞化学技術などのよく知られている技術を用いて、SgIIbの発現を検出することができる。好ましくは、抗SgIIb抗体を使用して、SgIIbの発現レベルを検出する。また好ましくは、配列番号:13のポリヌクレオチド配列又はその一部又は配列番号:13に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えばノーザンブロット法又はRTPCR技術によってSgIIbの発現レベルを検出する。
かかる一実施形態において、SgIIbの発現レベルの検出は、不妊男性における精嚢及び輸精管の発育不全を診断することに向けられる。正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるSgIIbの発現レベルが低い場合には、精嚢及び輸精管の発育不全を示している。好ましい生体試料は精液から得られる。かかる方法は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Calderon ら(J Androl 15:603-7 (1994))に記載されたように行うことができる。
他のかかる実施形態では、SgIIbの発現レベルの検出は、例えば、小細胞肺癌、乳頭状腎細胞癌及び結腸癌などの癌の診断に使用される。正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるSgIIbの発現レベルが高い場合には、悪性の腫瘍負荷(tumor burden)を示している。好ましい生体試料は、生検組織から得られる。他の好ましい生体試料は、末梢血から得られる。この方法は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Rodriguesら(Clin Cancer Res. 7:854-60 (2001))に記載されたように行われる。
さらに他のかかる実施形態では、SgIIbの発現レベルの検出は、前立腺癌の診断に用いられる。前立腺癌の診断のための、SgIIbの発現レベルの検出は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,972,615号に記載されたように行われる。
本発明のその他の実施形態は、SgIIbポリペプチドの存在をインビトロで検出するための診断キットに関する。かかるキットは、i)抗SgIIb抗体;任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗SgIIb抗体を含むキットは、精嚢及び輸精管の発育不全の診断に、又は上記のような様々な癌の診断に使用することができる。任意に、前記診断キットは、正常な個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、特定の疾患を有する個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。
その他の実施形態は、i)SgIIbポリペプチドを発現する細胞を培養し、ii)産生されたタンパク質を精製する工程を含む、SgIIbポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗SgIIb抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。SgIIbポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。SgIIbポリペプチドの作製は、本発明でさらに記述される方法及び組成物において有用である。
本発明の好ましい態様は、SgIIbポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、SgIIbポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって、i)プロモーターに作動可能に連結される、SgIIbポリペプチドをコードする核酸配列を含み、かつ所定の生理学的条件下にて前記SgIIbポリペプチドの発現を可能にする、組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、細胞は大腸菌細胞又はヒト細胞である。さらなる好ましい態様は、細胞に存在する場合には、SgIIbの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。SgIIbの発現を修飾するポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)SgIIb遺伝子を含む細胞を提供し、ii)ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターが導入される前の前記細胞におけるSgIIbの発現と比較して、SgIIbの発現が増加又は低減する方法によって作製される。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SgIIb遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、SgIIb遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、SgIIbコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。SgIIbポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、SgIIbポリペプチドを作製することができる。
その他の好ましい実施形態は、SgIIbの発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるSgIIbの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する工程を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されたSgIIbの発現の差異によって、試験物質がSgIIbの発現を調節することを示す。SgIIbの発現は、当技術分野で一般的な、又は本明細書に包含される方法によって決定することができる。SgIIbの発現を決定する方法としては、限定されないが、SgIIbポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるSgIIb mRNAの検出)又はSgIIbポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるSgIIbポリペプチドの検出)が挙げられる。好ましくは、試験物質は、特定の細胞型(好ましくは、精巣上体の細胞)ではSgIIbの発現を修飾するが、他の細胞型では修飾しない。最も好ましくは、試験物質は、精巣上体細胞において特異的にSgIIbの発現を修飾する。例えば、細胞、組織又は個体におけるSgIIbの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明のさらなる実施形態は、SgIIbの活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって;i)細胞を試験物質と接触させ;ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるSgIIbの活性を、非暴露対照細胞における活性と比較し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されたSgIIbの活性の差異によって、試験物質がSgIIbの活性を調節することが示される工程を含む方法に関する。SgIIbの活性は例えば、ヒト精液のゲル化及び液化を調べることによってモニターすることができる。ヒト精液のゲル化及び液化は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Liljaら(J Clin Invest. 80:281-5 (1987))に記載されたように評価することができる。あるいは、SgIIbポリペプチドの活性は、精子の受精能獲得を調べることによってモニターすることができる。精子の受精能獲得は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Ericssonら(Proc Soc Exp Biol Med. 125:1115-8 (1967))に記載されたように測定することができる。例えば、細胞、組織又は個体におけるSgIIbの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
SgIIbの発現又は活性を低減する試験物質は、SgIIbアンタゴニストとして定義される。SgIIbの発現又は活性を増加する試験物質は、SgIIbアゴニストとして定義される。SgIIbの発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、SgIIbのドミナントネガティブ型及び抗SgIIb抗体が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法によって製造かつ使用することができる。
本発明のさらなる実施形態は、PSAによって認識かつタンパク分解切断されるSgIIbポリペプチドをスクリーニング方法に関する。好ましいかかるSgIIbポリペプチドは、20個未満のアミノ酸のオリゴポリペプチドである。前記方法は、i)SgIIbのPSA仲介切断部位を同定し、ii)前記PSA仲介切断部位を含むSgIIbオリゴポリペプチドを作製し、iii)遊離PSAによる前記SgIIbオリゴペプチドの認識を評価する工程を含む。前記方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,143,864号に記載されたように行うことができる。
本発明のさらなる実施形態は、PSAによって認識かつタンパク分解切断されるSgIIbポリペプチドを使用する方法に関する。
一態様において、PSAによって切断される前記SgIIbポリペプチドは、遊離PSA活性を測定するためのアッセイにおいて使用される。かかるアッセイは、i)標識を含有する、未切断ペプチドと切断後に残るペプチドの一部の両方でかかる標識の発現を測定できるように、前記SgIIbポリペプチドを標識し、ii)PSAによるSgIIbのタンパク分解性の分解を生じさせる条件下にて、PSAを含有すると思われる試験試料と、前記標識化SgIIbポリペプチドを反応させ、iii)切断されている前記SgIIbポリペプチドの量を測定する工程を含む。遊離PSA活性を測定するためのかかるアッセイは、米国特許第6,143,864号に記載されたように行うことができる。試験試料は、生理的体液及び組織から得ることができる。血清PSA活性の測定は、多くの用途に、例えば、前立腺の腺癌の治療をモニターするのに、遊離PSAの単離又は精製を追跡するのに、又は遊離PSAのタンパク質分解活性の阻害剤をスクリーニングするのに有用である。
その他の態様において、PSAによって切断される前記SgIIbポリペプチドは、細胞障害性プロドラッグの担体として使用される。かかる方法において、PSAによって切断されるSgIIbオリゴペプチドは、細胞障害作用物質に直接、又は化学的リンカーによって共有結合される。本明細書で使用される「SgIIbコンジュゲート」とは、PSAによって切断されるSgIIbオリゴペプチドに結合した細胞障害作用物質を意味する。好ましくは、細胞障害作用物質の細胞障害活性は、SgIIbコンジュゲートがインタクトである場合、大幅に低減されるか、又は存在しない。また好ましくは、SgIIbオリゴペプチドがPSAによりタンパク分解切断されると、細胞障害作用物質の細胞障害活性は、著しく増加するか、又は無修飾の細胞障害作用物質に戻る。
PSAは非常に限定された組織分布を有し、かつ前立腺上皮細胞において発現されることから、活性な細胞障害作用物質は、かかる方法において前立腺に特異的に放出される。かかる方法において使用することができる細胞障害作用物質は、限定されないが、ドキソルビシン、カルミノマイシン、ダウノルビシン、アミノプテリン、メトトレキセート、メトプテリン及びビンブラスチンを含む。かかるSgIIbコンジュゲートは、米国特許第6,143,864号に従って製造かつ使用することができる。特に、前記SgIIbコンジュゲートは、薬学的に許容される組成物中のSgIIbコンジュゲートを個体に投与する工程を含む方法であって、細胞障害作用物質が、PSAによるタンパク分解切断の位置で生理的環境に放出される方法において使用することができる。この方法は、前立腺癌の治療に向けられることが好ましい。
本発明は、受精能獲得及び卵子結合などの精子の機能を高める方法であって、SgIIbポリペプチド又はSgIIbアゴニストを精子に投与する工程を含む方法を提供する。例えば、人工授精前に、SgIIbポリペプチド又はSgIIbアゴニストを射出精液試料にインビトロで送達することによって、かかる方法をインビトロで行うことができる。精子の受精能獲得又は卵子結合を高めるためのかかる方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のSgIIbポリペプチド又はSgIIbアゴニストとを含む薬剤組成物を個体に送達することによってインビボで行うことも可能である。本明細書で使用される「有効量のSgIIbポリペプチド又はSgIIbアゴニスト」とは、精子の受精能獲得又は卵子結合を高めるのに十分な量のSgIIbポリペプチド又はSgIIbアゴニストを意味する。精子の受精能獲得又は卵子結合の強化は、男性不妊症に対する治療において有用であり得る。かかる薬剤組成物は、いずれかの方法で、好ましくは局所的に投与される。
本発明はさらに、SgIIbポリペプチド又はSgIIbアンタゴニストを使用する避妊方法を提供する。かかる方法は、SgIIbアンタゴニストを精子に投与する工程を含む。例えば、受精率向上薬についてスクリーニングする前に、射出精液試料にSgIIbアンタゴニストを送達することによって、前記方法をインビトロで行うことができる。前記方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のSgIIbアンタゴニストとを含む薬剤組成物を個体に送達することによってインビボで行うことが可能である。本明細書で使用される「有効量のSgIIbアンタゴニスト」は、精子の受精能獲得又は卵子結合を低減するか、又はPSAによりSgIIbポリペプチドのタンパク分解切断を阻害する、SgIIbアンタゴニストを意味する。その代わりとして、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,197,940号に記載されたように抗SgIIb抗体の産生によりその個体の受精率を低減するのに有効な量でSgIIbポリペプチドを個体に投与する工程を含む方法において、SgIIbポリペプチドを避妊免疫原として使用することができる。免疫原性SgIIbポリペプチドはかかる組成物中で使用されることが好ましい。免疫原性SgIIbポリペプチドの投与量は、投与経路、種類及びブースター投与の使用などの因子に応じて異なる。例えば、体重1kg当たりSgIIbポリペプチド約0.1〜100マイクログラムの用量が用いられる。本発明の組成物は、ヒト及び家畜の両方のワクチン製剤として製造することが可能である。避妊用ワクチンは、SgIIbポリペプチドを、薬学的に適切な担体と、例えば、百日咳菌(Bordatella pertussis)の免疫原性断片などの免疫系の非特異的シミュレータを含有するアジュバントと合わせることによって製造することができる。
生理学的に許容される担体は、当業者に公知のいずれかの方法によって製造することができる。生理学的に許容される担体としては、限定されないが、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA 1985)に記載の担体が挙げられる。SgIIbアゴニスト及び生理学的に許容される担体を含む薬剤組成物は、例えば、静脈内、表面、直腸、局所、吸入又は皮下、皮内、筋肉内、経口及び脳内投与用であることが可能である。その組成物は、液状(例えば、液剤、懸濁剤)、固形(例えば、丸剤、錠剤、坐剤)又は半固形(例えば、クリーム剤、ゲル剤)であることが可能である。投与されるべき投与量は、それぞれの必要性、望まれる効果、及び選択される投与経路に応じて異なる。
さらに他の実施形態は、SgIIbポリペプチドをコードする核酸配列又はSgIIbポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子を用いて、遺伝子導入動物(例えば、マウス)を作製する方法に関する。遺伝子導入動物を作製する方法は当業者にはよく知られている。例えば、SgIIbポリヌクレオチドの遺伝子導入マウスは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,100,444号に従って作製することができる。かかる遺伝子導入動物は例えば、精子の低い受精能獲得及び卵子結合と関連する機能不全の動物モデルを得るのに、これらの機能不全を治療するのに、かつこれらの機能不全の治療における薬剤活性について化合物をスクリーニングするのに有用である。
配列番号:16のタンパク質(内部指定クローン1000770389_208−24−4−0−G7−F)
クローン1000770389_208−24−4−0−G7−F)のcDNA(配列番号:15)は、アミノ酸配列:MKSSGLFPFLVLLALGTLAPWAVEGSGKSFKAGVCPPKKSAQCLRYKKPECQSDWQCPGKKRCCPDTCGIKCLDPVDTPNPTRRKPGKCPVTYGQCLMLNPPNFCEMDGQCVTを含む、配列番号:16のSepinをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:16のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン1000770389_208−24−4−0−G7−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:15のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン1000770389_208−24−4−0−G7−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:16、配列番号:15及びクローン1000770389_208−24−4−0−G7−Fの組成物に対して向けられている。以下に記述する方法において使用するのに好ましいSepinポリペプチド断片としては、アミノ配列:SGKSFKAGVCPPKKSAQCLRYKKPECQSDWQCPGKKRCCPDTCGIKCLDPVDTPNPTRRKPGKCPVTYGQCLMLNPPNFCEMDGQCVTを含むSepinポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、Sepinは、分泌白血球プロテイナーゼ阻害剤(SLPI,Genbankアクセッション番号P03973)の新規な変異体である。Sepinは113アミノ酸の長さであるのに対し、SLPIは32アミノ酸の長さである。アミノ末端側111個のアミノ酸は、SepinとSLPIの間で同一であり、カルボキシル末端側2個のアミノ酸は、Sepinに固有のものである。Sepinは、シグナルペプチド(MKSSGLFPFLVLLALGTLAPWAVEG)を示す分泌タンパク質である。Sepinは、WAP型の「4ジスルフィドコア(four disulfide core)」ドメインシグネチャー(QSDWQPGKKRCC)と共に1つの完全なWAPドメイン(KAGVPPKKSAQLRYKKPEQSDWQPGKKRCCPDTGIKLDP)を示す。このWAPドメインは、トリプシンの阻害に特異的に関与する。SLPIにおいてキモトリプシン、エラスターゼ及びカテプシンGの阻害に関与するWAPドメインは、Sepinに存在しない。このように、Sepinは、広域の阻害活性を示すSLPIと異なり、トリプシン特異的なプロテイナーゼ阻害剤である。Sepinは、気管支粘液、鼻汁、耳下腺分泌物、精漿及び頚管粘液などの様々なヒト粘膜分泌物に存在する。
本発明の実施形態は、配列番号:16の、配列番号:16と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する、Sepinポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、トリプシン阻害活性を有するSepinポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「Sepinポリペプチド」とは、配列番号:16の、又は配列番号:16と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のSepinポリペプチド配列、又はトリプシン阻害活性を有するSepinポリペプチド断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、Sepinポリペプチドをコードする配列番号:15のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、Sepinポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明で使用される「Sepinポリヌクレオチド」とは、配列番号:15の又は配列番号:15と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するSepinポリヌクレオチド配列、Sepinポリペプチドをコードするヌクレオチド配列又は配列番号:15のポリヌクレオチド断片のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:16のSepinポリペプチド配列又はSepinポリペプチド断片を認識する抗体に関する。好ましくは、その抗体は、Sepinのカルボキシル末端側2個のアミノ酸の1つ又は複数を認識し、前記の1つ又は複数のアミノ酸は、Sepinポリペプチドへの抗体の結合に必要とされる。最も好ましくは、その抗体はSepinに結合するが、SLPIには結合しない。本明細書で使用される「抗Sepin抗体」とは、Sepinポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、Sepinポリペプチドに抗Sepin抗体を結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、Sepinポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書にさらに記述されるようにSepinポリペプチドを検出するのに有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるSepinポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗Sepin抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗Sepin抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗Sepin抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。かかる方法は、以下にさらに記述される方法において適用することができる。
本発明の実施形態は、生体試料におけるSepinの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)試料におけるSepinの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるSepinの発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。かかる一実施形態では、Sepinの発現レベルの検出は、種々の慢性及び急性気道疾患、例えば、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、気腫又は喘息を診断するために用いられる。前記生体試料は、いずれかの生物体液又は組織から得られ、好ましくは、気管支肺胞洗浄液から得られる。正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるSepinの発現レベルが高い場合には、ARDSの存在又はARDSを発症するリスクが高いことを示している。試料におけるSepinの発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば、試料中のSepin mRNA又はSepinポリペプチドのレベルを検出することによって評価することができる。例えば、ウェスタンブロット法、免疫化学技術及び細胞化学技術などのよく知られている技術を用いて、Sepinの発現を検出することができる。好ましくは、抗Sepin抗体を使用して、Sepinの発現レベルを検出する。また好ましくは、配列番号:15のポリヌクレオチド配列又はその一部又は配列番号:15に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えば、ノーザンブロット法又はRTPCR技術によってSepinの発現レベルを検出する。気管支肺胞洗浄液におけるSepinの発現の検出は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sallenaveら(Eur Respir J. 13:1029-36 (1999))に記載されたように行うことができる。
本発明のその他の実施形態は、Sepinポリペプチドの存在をインビトロで検出するための診断キットに関する。かかるキットは:i)抗Sepin抗体;任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬;を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。好ましくは、抗Sepin抗体を備えるキットは、例えば、ARDSを有する疑いのある個体から採取された生体試料におけるSepinポリペプチドの存在を検出することによって、ARDSの診断に使用される。任意に、前記診断キットは、正常な個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、証明されたARDSを有する個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、ARDSを発症するリスクのある個体及びARDSを発症した個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。
その他の実施形態は、i)Sepinポリペプチドを発現する細胞を培養し、ii)産生されたタンパク質を精製する工程を含む、Sepinポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗Sepin抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成する。Sepinポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。Sepinポリペプチドの作製は、本発明でさらに記述される方法及び組成物において有用である。
本発明の好ましい態様は、プロモーターに作動可能に連結される、Sepinポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、Sepinポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって、i)プロモーターに作動可能に連結される、Sepinポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。
好ましい実施形態では、その細胞は大腸菌細胞、植物細胞又はヒト細胞である。最も好ましい態様において、その細胞は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Mikoschら(J Biotechnol. 52:97-106 (1996))に記載されたようにアスペルギルスニガー細胞である。他の好ましい実施形態では、その細胞は植物細胞である。その他の好ましい態様は、細胞に存在する場合には、Sepinの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。かかるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)Sepin遺伝子を含む細胞を提供し、ii)Sepin発現を変化させるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターの非存在下での前記細胞におけるSepinの発現レベルと比較して、Sepinの発現レベルが増加又は低減する方法によって作製される。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Sepin遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、Sepin遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Sepinコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。Sepinポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、Sepinポリペプチドを作製することができ、そのポリペプチドは、本明細書に記述される多くの目的に使用することが可能である。
その他の好ましい実施形態は、Sepinの発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるSepinの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるSepinの発現の差異によって、試験物質がSepinの発現を調節することが示される工程を含む方法に関する。Sepinの発現は、当技術分野で一般的な、又は本明細書に記載の方法によって決定することができる。Sepinの発現を決定する方法としては、限定されないが、Sepinポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるSepin mRNAの検出)又はSepinポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるSepinポリペプチドの検出)が挙げられる。一実施形態において、試験物質は、特定の細胞型(好ましくは、気管支上皮細胞)ではSepinの発現を修飾するが、他の細胞型では修飾しない。例えば、細胞、組織又は個体におけるSepinの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明のさらなる実施形態は、Sepinの活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ;ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるSepinの活性を、非暴露対照細胞における活性と比較し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるSepinの活性の差異によって、試験物質がSepinの活性を調節することが示される工程を含む方法に関する。例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Belorgeyら(Biochem J 313:555-60 (1996))に記載されたようにヒト膵臓トリプシン1又は2の阻害を測定することによって、Sepinの活性をモニターすることができる。例えば、細胞、組織又は個体におけるSepinの活性を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
Sepinの発現又は活性を低減する試験物質は、Sepinアンタゴニストとして定義される。Sepinの発現又は活性を増加する試験物質は、Sepinアゴニストとして定義される。Sepinの発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、Sepinのドミナントネガティブ型及び抗Sepin抗体が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法に従って製造かつ使用することができる。
好ましい実施形態は、結合を生じさせる条件下にて、トリプシンを含有する生体試料とSepinポリペプチドを接触させる工程を含む、トリプシンを阻害する方法に関する。
一態様において、トリプシンを阻害するためのかかる方法をインビトロで用いて、試料中の混入プロテアーゼを取り除くことができる。Sepinポリペプチドを含む組成物を、他のプロテアーゼ阻害剤との「カクテル」として生体試料に添加し、タンパク質試料の分解を防ぐことができる。かかるプロテアーゼ阻害剤カクテルは、望ましくないプロテアーゼの特異性を理解することなく、対象のタンパク質を分解すると思われる望ましくないプロテアーゼを阻害するために、実験室で広く用いられている。あるいは、当業者によく知られている技術を用いて、Sepinポリペプチドを単独で、又は他のプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて、クロマトグラフィー担体に結合させて、クロマトグラフィーカラムを形成することができる。望ましくないプロテアーゼを含有すると思われる試料をそのカラムに通して、前記試料から前記プロテアーゼを除去する。
その他の態様において、トリプシンを阻害するかかる方法をインビボで用いて、増加したトリプシン活性と又はトリプシン阻害剤欠乏と関連する疾患を治療すること、又は疾患の重症度を低減することができる。かかる疾患としては、限定されないが、急性膵炎、慢性膵炎、胆道閉鎖、新生児肝炎及びたばこの煙によって誘導される肺疾患が挙げられる。トリプシンを阻害するかかる方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のSepinポリペプチド又はSepinアゴニストとを個体に送達することによって行うことができる。本明細書で使用される「有効量のSepinポリペプチド又はSepinアゴニスト」とは、例えば、胆汁液、腸液及び気管支粘液などの体液におけるトリプシン活性を低減するのに十分な量のSepinポリペプチド又はSepinアゴニストを意味する。Sepinポリペプチド又はSepinアゴニストは好ましくは、全身的に、例えば、静脈内注入、経口摂取又は経口吸入によって投与される。
さらに他の態様において、トリプシンを阻害するためのかかる方法を用いて、感染症の期間に種々の細菌及びウイルスによって産生される外来性トリプシンを阻害することができる。トリプシンを阻害するかかる方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のSepinポリペプチド又はSepinアゴニストとを、感染症に罹患している個体に送達することによって行うことができる。例えば、HIV感染症、ロタウイルス感染及びサイトメガロウイルス感染は、かかる方法によって治療することができる。あるいは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,981,722号に記載されたように、種々の害虫の消化性トリプシン活性を低減するために、Sepinポリヌクレオチドを植物細胞に導入してもよい。
生理学的に許容される担体は、当業者に公知のいずれかの方法によって製造することができる。生理学的に許容される担体としては、限定されないが、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA 1985)に記載の担体が挙げられる。Sepinアゴニスト又はアンタゴニストと、生理学的に許容される担体とを含む薬剤組成物は、例えば、静脈内、表面、直腸、局所、吸入、皮下、皮内、筋肉内、経口及び脳内投与用であることが可能である。その組成物は、液状(例えば、液剤、懸濁剤)、固形(例えば、丸剤、錠剤、坐剤)又は半固形(例えば、クリーム剤、ゲル剤)であることが可能である。投与されるべき投与量は、それぞれの必要性、望まれる効果、及び選択される投与経路に応じて異なる。
さらに他の実施形態は、Sepinポリペプチドをコードする核酸配列又はSepinポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子を用いて、遺伝子導入動物(例えば、マウス)を作製する方法に関する。遺伝子導入動物を作製する方法は当業者にはよく知られている。例えば、Sepinを過剰発現するマウスは、ARDSのインビボモデルとして使用することができ、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,858,784号に従って作製することができる。
配列番号:18のタンパク質(内部指定クローン1000888456_159−16−3−0−E4−F)
クローン1000888456_159−16−3−0−E4−FのcDNA(配列番号:17)は、アミノ酸配列:MAAAAATKILLCLPLLLLLSGWSRAGRADPHSLCYDITVIPKFRPGPRWCAVQGQVDEKTFLHYDCGNKTVTPVSPLGKKLNVTTAWKAQNPVLREVVDILTEQLRDIQLENYTPKEPLTLQARMSCEQKAEGHSSGSWQFSFDGQIFLLFDSEKRMWTTVHPGARKMKEKWENDKVVAMSFHYFSMGDCIGWLEDFLMGMDSTLEPSAGGを含む、配列番号:18のULBP2Aをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:18のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン1000888456_159−16−3−0−E4−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。
さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:17のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン1000888456_159−16−3−0−E4−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:18、配列番号:17及びクローン1000888456_159−16−3−0−E4−Fのヒトポリヌクレオチド及びポリペプチド組成物に対して向けられている。以下に記述する方法において使用するのに好ましいULBP2Aポリペプチド断片としては、アミノ配列:RADPHSLCYDITVIPKFRPGPRWCAVQGQVDEKTFLHYDCGNKTVTPVSPLGKKLNVTTAWKAQNPVLREVVDILTEQLRDIQLENYTPKEPLTLQARMSCEQKAEGHSSGSWQFSFDGQIFLLFDSEKRMWTTVHPGARKMKEKWENDKVVAMSFHYFSMGDCIGWLEDFLMGMDSTLEPSAGGを含むULBP2Aポリペプチドが挙げられる。以下に記述する方法において使用するのにさらに好ましいULBP2Aポリペプチド断片としては、アミノ配列:MGDCIGWLEDFLMGMDSTLEPSAGGを含むULBP2Aポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
ULBP2Aは、UL16結合タンパク質2(ULBP2)の新規なスプライスバリアントである。ULBPタンパク質(ULBP1、ULBP2、及びULBP3)は、ヒトサイトメガロウイルス糖タンパク質、UL16に結合するそれらの能力に基づいて同定されたMHCクラスI−関連糖タンパク質の新規なファミリーである。ULBP2は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合によって原形質膜につなぎ留められる、細胞表面タンパク質である。ULBP2のGPI結合ドメインは、そのタンパク質の少なくとも20個のアミノ酸に相当する。ULBP2タンパク質は、多種多様な細胞系及び組織で発現される。ULBP2タンパク質の発現は通常、非常に低いが、発癌の活性化など、ウイルス感染及び他の細胞ストレスに応答して高度に誘発される。NKG2D/DAP10受容体タンパク質へのULBPの結合は、ナチュラルキラー(NK)細胞及び細胞障害性Tリンパ球(CTL)細胞の表面上にある。ULBP2結合は、NK及びCTL細胞を活性化し、サイトカイン産生及び細胞障害性を導く。このように、数種類の細胞は潜在的に、NK及びCTL細胞にULBP2仲介シグナルを送達し、ULBP仲介死滅の標的となり得る。
ULBP2と異なり、ULBP2Aは細胞膜と結合しない。ULBP2Aは、C末端側35個のアミノ酸を欠くようにスプライスされ、GPI結合ドメインを含む。したがって、ULBP2Aは、可溶性の分泌タンパク質であると推定される。
本発明の実施形態は、配列番号:18の又は配列番号:18と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する、ULBP2Aポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、NK及びCTL細胞の活性化においてある役割を有するULBP2Aポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「ULBP2Aポリペプチド」という用語は、配列番号:18の又は配列番号:18と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一の、ULBP2Aポリペプチド配列、又はNK及びCTL細胞の活性化においてある役割を有するULBP2Aポリペプチド断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、ULBP2Aポリペプチドをコードする配列番号:17のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、ULBP2Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「ULBP2Aポリヌクレオチド」という用語は、配列番号:17の又は配列番号:17と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する、ULBP2Aポリヌクレオチド配列、又はULBP2Aポリペプチドをコードするヌクレオチド配列又は配列番号:17のポリヌクレオチド断片のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:18のULBP2Aポリペプチド配列又はULBP2Aポリペプチド断片を認識する抗体に関する。本明細書で使用される「抗ULBP2A抗体」とは、ULBP2Aポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。本発明の実施形態は、ULBP2Aポリペプチドに抗ULBP2A抗体を結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、ULBP2Aポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書にさらに記述されるようにULBP2Aポリペプチドを検出するのに有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるULBP2Aポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗ULBP2A抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗ULBP2A抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗ULBP2A抗体は、一次的又は二次的に、いずれかの検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。ULBP2Aポリペプチドの検出は、例えば、医療腫瘍学分野において、例えば、腫瘍の拡散転移のマーカーとして有用である。医療腫瘍学分野においてULBP2Aを使用するかかる方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開番号:WO01/53837に記載されたように行うことができる。
本発明の実施形態は、生体試料におけるULBP2Aの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)試料におけるULBP2Aの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるULBP2Aの発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。試料におけるULBP2Aの発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば、試料中のULBP2A mRNA又はULBP2Aポリペプチドのレベルを検出することによって評価することができる。ウェスタンブロット法、免疫化学技術及び細胞化学技術などのよく知られている多くの技術のいずれかを用いて、ULBP2Aの発現を検出することができる。好ましくは、抗ULBP2A抗体を使用して、ULBP2Aの発現レベルを検出する。また好ましくは、配列番号:17のポリヌクレオチド配列又はその一部、又は配列番号:17に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えばノーザンブロット法又はRTPCR技術によってULBP2Aの発現レベルを検出する。
一実施形態において、ULBP2Aの発現レベルの検出は、例えば、白血病及びリンパ腫などの癌の診断に使用される。正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるULBP2Aの発現レベルが高い場合には、悪性の腫瘍負荷を示している。好ましい生体試料は、末梢血から得られる。この方法は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Rodriguesら(Clin Cancer Res. 7:854-60 (2001))に記載されたように行われる。
本発明のその他の実施形態は、ULBP2Aポリペプチドの存在をインビトロで検出するための診断キットに関する。かかるキットは:i)抗ULBP2A抗体;任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬;を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗ULBP2A抗体を備えるキットは、多くの用途に、例えば、上記のような種々の癌の診断に使用することができる。任意に、前記診断キットは、正常な個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、特定の疾患を有する個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。
その他の実施形態は、i)ULBP2Aポリペプチドを発現する細胞を培養し、ii)産生されたタンパク質を精製する工程を含む、ULBP2Aポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られている多くの技術のいずれかに従って行うことができる。好ましくは、抗ULBP2A抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。ULBP2Aポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。ULBP2Aポリペプチドの作製は、本発明でさらに記述される方法及び組成物において有用である。
本発明の好ましい態様は、ULBP2Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、ULBP2Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって:i)プロモーターに作動可能に連結される、ULBP2Aポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えベクターを作製し;ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、細胞は大腸菌細胞又はヒト細胞である。さらなる好ましい態様は、細胞に存在する場合には、ULBP2Aの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。ULBP2Aの発現を修飾することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)ULBP2A遺伝子を含む細胞を提供し;ii)前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターの非存在下での前記細胞におけるULBP2Aの発現レベルと比較して、ULBP2Aの発現が増加又は低減する方法によって作製される。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、ULBP2A遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、又はULBP2A遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、ULBP2Aコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。ULBP2Aポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、例えば、ULBP2Aポリペプチドを作製することができる。
その他の好ましい実施形態は、ULBP2Aの発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって;i)細胞を試験物質と接触させ;ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるULBP2Aの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるULBP2Aの発現の差異によって、試験物質がULBP2Aの発現を調節することが示される工程を含む方法に関する。ULBP2Aの発現は、限定されないが、ULBP2Aポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるULBP2A mRNAの検出)又はULBP2Aポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるULBP2Aポリペプチドの検出)を含む、当技術分野で一般的な方法によって決定することが可能である。例えば、細胞、組織又は個体におけるULBP2Aの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明のさらなる実施形態は、ULBP2Aの活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法に関する。一実施形態において、その方法は、i)ULBP2Aポリペプチドを試験物質と接触させ;ii)試験物質の存在下におけるポリペプチドの生物活性を、試験物質の非存在下でのULBP2Aポリペプチドの活性と比較する工程であって、試験物質の存在下又は非存在下において観察されたULBP2Aの活性の差異によって、試験物質がULBP2Aの活性を調節することが示される工程を含む。かかる方法は、細胞におけるULBP2Aの活性を調べることによって、又は精製ULBP2Aポリペプチドの活性を調べることによって行うことができる。ULBP2Aの活性は、例えば、NK又はCTL細胞の表面への、又は精製NKG2D/DAP10受容体タンパク質へのULBP2Aの結合を研究することによってモニターすることができる。ULBP2Aの結合は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、(Ziebellら Chem. Biol. 8:1081-92, 2001)に記載されたように評価することができる。例えば、細胞、組織、又は個体におけるULBP2Aの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
ULBP2Aの発現又は活性を低減する試験物質は、ULBP2Aアンタゴニストとして定義される。ULBP2Aの発現又は活性を増加する試験物質は、ULBP2Aアゴニストとして定義される。ULBP2Aの発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、ULBP2Aのドミナントネガティブ型及び抗ULBP2A抗体が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法に従って製造かつ使用することができる。
本発明のさらなる実施形態は、未処置のCTL細胞のクローン増殖をエクスビボで刺激するためにULBP2Aポリペプチド又はポリペプチド断片を使用する方法に関する。この方法は、i)骨髄ドナー又は患者のいずれかからリンパ球を単離し、ii)CD34+細胞をポジティブ選択し、iii)当業者によく知られている、ULBP2A刺激(LBP2A- stimulated)培養条件下にて、未処置のCTL細胞をエクスビボで増殖させる工程を含む。前記方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、van Stipdonkら Nat. Immunol., 2(5):423-9, 2001に記載されたように行うことができる。CTL細胞の増殖集団は、ウイルス感染及び癌の免疫予防及び免疫療法治療に有用である。
本発明は、生理学的に許容される担体と、有効量のULBP2Aポリペプチド又はULBP2Aアゴニストとを含む薬剤組成物を個体に送達することによって、インビボでウイルス感染を治療する方法を提供する。本明細書で使用される「有効量のULBP2Aポリペプチド又はULBP2Aアゴニスト」とは、ウイルス感染細胞の免疫系により仲介される根絶を高めるのに十分な量のULBP2Aポリペプチド又はULBP2Aアゴニストを意味する。かかる薬剤組成物は、いずれかの方法で、好ましくは局所的に投与される。
本発明はさらに、癌に罹患している個体を治療する方法であって:癌に罹患している患者に、生理学的に許容される担体と、有効量のULBP2Aとを含む薬剤組成物を送達する工程を含む方法を提供する。ULBP2Aは、腫瘍部位に局所的又は全身的に投与することができる。
生理学的に許容される担体は、当業者に公知のいずれかの方法によって製造することができる。生理学的に許容される担体としては、限定されないが、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA 1985)に記載の担体が挙げられる。ULBP2Aアゴニストと生理学的に許容される担体とを含む薬剤組成物は、例えば、静脈内、表面、直腸、局所、吸入、皮下、皮内、筋肉内、経口及び脳内投与用であることが可能である。その組成物は、液状(例えば、液剤、懸濁剤)、固形(例えば、丸剤、錠剤、坐剤)又は半固形(例えば、クリーム剤、ゲル剤)であることが可能である。投与されるべき投与量は、それぞれの必要性、望まれる効果、及び選択される投与経路に応じて異なる。
配列番号:20のタンパク質(内部指定クローン1000848040_201−41−1−0−C1−F)
クローン1000848040_201−41−1−0−C1−FのcDNA(配列番号:19)は、アミノ酸配列:MCTGKCARCVGLSLITLCLVCIVANALLLVPNGETSWTNTNHLSLQVWLMGGFIGGGLMVLCPGIAAVRAGGKGCCGAGCCGNRCRMLRSVFSSAFGVLGAIYCLSVSGAGLRNGPRCLMNGEWGYHFGDTAを含む、配列番号:20のTM4SF5Aをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:20のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン1000848040_201−41−1−0−C1−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:19のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン1000848040_201−41−1−0−C1−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:20、配列番号:19及びクローン1000848040_201−41−1−0−C1−Fのヒトポリヌクレオチド及びポリペプチド組成物に対して向けられている。以下に記述する方法において使用するのに好ましいTM4SF5Aポリペプチド断片としては、アミノ配列:GAGLRNGPRCLMNGEWGYHFGDTAを含むTM4SF5Aポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
TM4SF5Aは、膜4回貫通型スーパーファミリー5(TM4SF5)又はテトラスパニン5の新規なスプライスバリアントである。テトラスパニンスーパーファミリー及び関連するL6膜タンパク質スーパーファミリーは、高度に保存された4つの膜貫通ドメインを特徴とする細胞表面タンパク質を含む。これらのタンパク質によって共有される他の形態上の特徴としては、N及びC末端の短い細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン1と2との間の小さな細胞外ドメイン、リガンドの結合において機能する、膜貫通ドメイン3と4との間の大きな細胞外ドメインが挙げられる。TM4SF5の発現は、正常な組織において腸に限定されるが、TM4SF5の過剰発現は、腸、胃及び膵臓の癌と相関している。TM4SF5は、隣接する細胞上の膜タンパク質の結合に応答して、おそらくシグナル伝達経路の活性化により、細胞増殖の調節において役割を担う。
TM4SF5と異なり、TM4SF5Aは、3つの膜貫通ドメインのみを有する。TM4SF5Aは、リガンド結合細胞質ドメイン及び4番目の膜貫通ドメインを含む、C末端側66個のアミノ酸を欠くようにスプライスされる。したがって、TM4SF5Aは、TM4SF5のドミナントネガティブな阻害剤である。
本発明の実施形態は、配列番号:20の又は配列番号:20と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する、TM4SF5Aポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、細胞増殖の抑制において役割を有するTM4SF5Aポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「TM4SF5Aポリペプチド」とは、配列番号:20の配列番号:20と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のTM4SF5Aポリペプチド配列、又は細胞増殖の抑制において役割を有するTM4SF5Aポリペプチド断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、TM4SF5Aポリペプチドをコードする配列番号:19のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、TM4SF5Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書でさらに使用される「TM4SF5Aポリヌクレオチド」とは、配列番号:19の又は配列番号:19と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するTM4SF5Aポリヌクレオチド配列、TM4SF5Aポリペプチドをコードするヌクレオチド配列又は配列番号:19のポリヌクレオチド断片のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:20のTM4SF5Aポリペプチド配列又はTM4SF5Aポリペプチド断片を認識する抗体に関する。本明細書で使用される「抗TM4SF5A抗体」とは、TM4SF5Aポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。本発明の実施形態は、TM4SF5Aポリペプチドに抗TM4SF5A抗体を結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、TM4SF5Aポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書にさらに記述されるようにTM4SF5Aポリペプチドを検出するのに有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるTM4SF5Aポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗TM4SF5A抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗TM4SF5A抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗TM4SF5A抗体は、一次的又は二次的に、いずれかの検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物又は酵素化合物)によって標識することができる。TM4SF5Aポリペプチドの検出は、例えば、腫瘍細胞のマーカーとして医療腫瘍学分野において有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるTM4SF5Aの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)試料におけるTM4SF5Aの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるTM4SF5Aの発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。試料におけるTM4SF5Aの発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば、試料中のTM4SF5A mRNA又はTM4SF5Aポリペプチドのレベルを検出することによって評価することができる。ウェスタンブロット法、免疫化学技術及び細胞化学技術などのよく知られている多くの技術のいずれかを用いて、TM4SF5Aの発現を検出することができる。好ましくは、抗TM4SF5A抗体を使用して、TM4SF5Aの発現レベルを検出する。また好ましくは、配列番号:19のポリヌクレオチド配列又はその一部又は配列番号:19に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えば、ノーザンブロット法又はRTPCR技術によってTM4SF5Aの発現レベルを検出する。
一実施形態において、TM4SF5Aの発現レベルの検出は、例えば、胃癌、腸癌及び膵臓癌などの癌の診断に使用される。正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるTM4SF5Aの発現レベルが高い場合には、悪性の腫瘍負荷を示している。好ましい生体試料は、組織生検から得られる。この方法は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Rodriguesら(Clin Cancer Res. 7:854-60 (2001))に記載されたように行われる。
本発明のその他の実施形態は、TM4SF5Aポリペプチドの存在をインビトロで検出するための診断キットに関する。かかるキットは:i)抗TM4SF5A抗体;任意に、ii)形成された抗原-抗体複合体の検出を可能にする試薬;を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、前記抗体に結合するか又は前記抗体上の標識と反応する。抗TM4SF5A抗体を備えるキットは、多くの用途に、例えば、上記のような種々の癌の診断に使用することができる。任意に、前記診断キットは、正常な個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、特定の疾患を有する個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。
その他の実施形態は、i)TM4SF5Aポリペプチドを発現する細胞を培養し、ii)産生されたタンパク質を精製する工程を含む、TM4SF5Aポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られている多くの技術のいずれかに従って行うことができる。好ましくは、抗TM4SF5A抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成する。TM4SF5Aポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。TM4SF5Aポリペプチドの作製は、本出願においてさらに記述される方法及び組成物において有用であり得る。
本発明の好ましい態様は、TM4SF5Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、TM4SF5Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって、i)プロモーターに作動可能に連結される、TM4SF5Aポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、前記細胞は大腸菌細胞又はヒト細胞である。さらなる好ましい態様は、細胞に存在する場合には、TM4SF5Aの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。TM4SF5Aの発現を修飾することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)TM4SF5A遺伝子を含む細胞を提供し、ii)前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターの非存在下での前記細胞におけるTM4SF5Aの発現レベルと比較して、TM4SF5Aの発現が増加又は低減する方法によって作製される。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、TM4SF5A遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、又はTM4SF5A遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、TM4SF5Aコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。TM4SF5Aポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、例えばTM4SF5Aポリペプチドを作製することができる。
その他の好ましい実施形態は、TM4SF5Aの発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって;i)細胞を試験物質と接触させ;ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるTM4SF5Aの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるTM4SF5Aの発現の差異によって、試験物質がTM4SF5Aの発現を調節することが示される工程を含む方法に関する。TM4SF5Aの発現は、限定されないが、TM4SF5Aポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるTM4SF5A mRNAの検出)又はTM4SF5Aポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるTM4SF5Aポリペプチドの検出)を含む、当技術分野で一般的な方法によって決定することが可能である。例えば、細胞、組織又は個体におけるTM4SF5Aの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明のさらなる実施形態は、TM4SF5Aの活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法に関する。一実施形態において、その方法は、i)TM4SF5Aポリペプチドを試験物質と接触させ;ii)試験物質の存在下におけるポリペプチドの生物活性を、試験物質の非存在下でのTM4SF5Aポリペプチドの活性と比較する工程であって、試験物質の存在下又は非存在下において観察されたTM4SF5Aの活性の差異によって、試験物質がTM4SF5Aの活性を調節することが示される工程を含む。かかる方法は、細胞におけるTM4SF5Aの活性を調べることによって、又は精製TM4SF5Aポリペプチドの活性を調べることによって行うことができる。TM4SF5Aの活性は、例えば、培養細胞の増殖を抑制するその能力を研究することによってモニターすることができる。TM4SF5Aの結合は例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、(Ziebellら Chem. Biol. 8:1081-92, 2001)に記載されたように、評価することができる。例えば、細胞、組織又は個体におけるTM4SF5Aの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
TM4SF5Aの発現又は活性を低減する試験物質は、TM4SF5Aアンタゴニストとして定義される。TM4SF5Aの発現又は活性を増加する試験物質は、TM4SF5Aアゴニストとして定義される。TM4SF5Aの発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、TM4SF5Aのドミナントネガティブ型及び抗TM4SF5A抗体が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法に従って製造かつ使用することができる。
本発明は、生理学的に許容される担体と、有効量のTM4SF5Aポリペプチド又はTM4SF5Aアゴニストとを含む薬剤組成物を個体に送達することによって、細胞増殖と関連する疾患の治療方法を提供する。細胞増殖の疾患には、限定されないが、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫及び奇形癌などの様々な種類の癌が含まれる。本明細書で使用される「有効量のTM4SF5Aポリペプチド又はTM4SF5Aアゴニスト」とは、ウイルス感染細胞の、免疫系により仲介される根絶を高めるのに十分な量のTM4SF5Aポリペプチド又はTM4SF5Aアゴニストを意味する。かかる薬剤組成物は、いずれかの方法で、好ましくは局所的に投与される。
本発明は、生理学的に許容される担体と、有効量のTM4SF5Aポリペプチド又はTM4SF5Aアゴニストとを含む薬剤組成物を個体に送達することによって、特に、特定の疾患から生じるいずれかの種類の炎症を治療する方法を提供する。炎症と関連するかかる疾患としては、限定されないが、アジソン病、成人型呼吸窮迫症候群、喘息、アテローム性動脈硬化症、気管支炎、クローン病、糖尿病、痛風、グレーヴス病、敏性大腸症候群、エリテマトーデス、多発性硬化症、心筋もしくは心膜の炎症、慢性関節リウマチ、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、原虫及び蠕虫感染症、ならびに外傷などが挙げられる。本明細書で使用される「有効量のTM4SF5Aポリペプチド又はTM4SF5Aアゴニスト」とは、ウイルス感染細胞の、免疫系により仲介される根絶を高めるのに十分な量のTM4SF5Aポリペプチド又はTM4SF5Aアゴニストを意味する。かかる薬剤組成物は、いずれかの方法で、好ましくは局所的に投与される。
生理学的に許容される担体は、当業者に公知のいずれかの方法によって製造することができる。生理学的に許容される担体としては、限定されないが、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA 1985)に記載の担体が挙げられる。TM4SF5Aアゴニストと生理学的に許容される担体とを含む薬剤組成物は、例えば、静脈内、表面、直腸、局所、吸入、皮下、皮内、筋肉内、経口及び脳内投与用に製造することができる。その組成物は、液状(例えば、液剤、懸濁剤)、固形(例えば、丸剤、錠剤、坐剤)又は半固形(例えば、クリーム剤、ゲル剤)であることが可能である。投与されるべき投与量は、それぞれの必要性、望まれる効果、及び選択される投与経路に応じて異なる。
配列番号:22のタンパク質(内部指定クローン500762393)
クローン50076239のcDNA(配列番号:21)は、アミノ酸配列:MARRSRHRLLLLLLRYLVVALGYHKAYGFSAPKDQQVVTAVEYQEAILACKTPKKTVSSRLEWKKLGRSVSFVYYQQTLQGDFKNRAEMIDFNIRIKNVTRSDAGKYRCEVSAPSEQGQNLEEDTVTLEVLVAPAVPSCEVPSSALSGTVVELRCQDKEGNPAPEYTWFKDGIRLLENPRLGSQSTNSSYTMNTKTGTLQFNTVSKLDTGEYSCEARNSVGYRRCPGKRMQMISTを含む、配列番号:22のNoJAMをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:22のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン50076239のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:21のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン50076239中に含まれるヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:21、配列番号:22として示される配列を含むポリヌクレオチド及びポリペプチド組成物、ならびにクローン50076239のヒトcDNA及びコードポリペプチドに対して向けられている。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
NoJAMは、血管内皮接合部接着分子(Vascular Endothelial Junctional Molecule)(VEJAM)の新規なスプライスバリアントである。VEJAMは、膜貫通分子の免疫グロブリンスーパーファミリー及び細胞間接触に関与する接合部接着分子(JAM)の成長ファミリーのメンバーである。VEJAMは、高内皮細静脈の内皮細胞及びリンパ器官、特にパイエル板及びリンパ節のリンパ管において、及び心臓の血管構造において高度に発現される。細胞間JAM相互作用は、細胞接着を仲介する。さらに、JAM分子を発現する細胞は、JAMを発現する内皮を通って移行することができる。JAM相互作用は、ファミリーメンバー間で同型又は異型であることが可能であるが、通常、異型の結合のほうが強い。例えば、活性化末梢血リンパ球上のJAM−3へのVEJAMの結合によって、これらの細胞が、内皮の境界を横切ってリンパ器官中に、又はリンパ器官の中から外へ移行することが可能となる。
JAMタンパク質と異なり、NoJAMは完全に細胞外タンパク質である。NoJAMは、VEJAMの膜貫通ドメイン前で終わり、かつ4つの固有のアミノ酸で終結するようにスプライスされる。したがって、NoJAMは、JAMにより仲介される細胞間相互作用及び内皮境界を横切る細胞移行のドミナントネガティブな阻害剤として作用する。本発明の好ましいポリペプチド断片は、C末端側4個のアミノ酸を含む断片である。これらには、限定されないが:MQMIST、DTGEYSCEARNSVGYRRCPGKRMQMIST、及びTVVELRCQDKEGNPAPEYTWFKDGIRLLENPRLGSQSTNSSYTMNTKTGTLQFNTVSKLDTGEYSCEARNSVGYRRCPGKRMQMISTが含まれる。
本発明の実施形態は、配列番号:22の、又は配列番号:22と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する、NoJAMポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、JAMファミリータンパク質に結合する生物活性を有するNoJAMポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、NoJAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物に関する。一実施形態において、そのポリヌクレオチドは、配列番号:21として示される、又は配列番号:21と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する配列を含む。
本発明のさらなる実施形態は、JAMファミリータンパク質に結合する生物活性を有するNoJAMポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
好ましい実施形態は、発現に適した条件下にて、NoJAMポリペプチド又はその生物活性断片を発現することができる宿主細胞である。
本発明の好ましい実施形態は、NoJAMにNoJAM特異的抗体を結合させる方法であって、抗体の結合に適した条件下にて、NoJAMポリペプチド及びその断片をNoJAM特異的抗体と接触させる工程を含む方法である。NoJAM特異的抗体もまた提供され、さらに以下に記述される。かかる抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能であり、好ましくは選択的にNoJAMに結合するが、VEJAMには結合しない。
本発明の好ましい態様は、上皮及び内皮の管壁(lining)の細胞移行を防ぐためにNoJAMを使用する方法であって:NoJAMポリペプチド又はそのJAM結合断片を含む生理学的に許容される組成物と、細胞を接触させる工程を含む方法である。好ましくは、この方法は、個体、例えば、慢性関節リウマチ、クローン病、乾癬、子宮内膜症、炎症性腸疾患、多発性硬化症、喘息又は心臓、腎臓、リンパ節もしくはパイエル板の転移性浸潤などの疾患又は病状を有する個体のインビボでの治療に関する。好ましくは、この方法は、例えばJAMの発現部位を検出する上述の方法を用いて、個体がこれらの疾患又は病状のいずれかを有する、又は発症するリスクがあるかどうかを決定する工程も含む。
好ましい実施形態は、発現に適した条件下にて、NoJAMポリペプチド又はその生物活性断片を発現することができる宿主細胞組換え体である。本発明のこの態様は、例えば、当技術分野で一般的な、かつ本明細書に記載の方法を用いたNoJAMの精製を可能にするのに有用である。好ましい宿主細胞は、細菌、酵母及び哺乳動物細胞である。宿主細胞は、ヌクレオチド配列をコードするNoJAMの組換え体であることが好ましい。かかるヌクレオチド配列は通常、染色体外プラスミドDNAに含まれる。組換え配列を導入するための適切なベクターは本明細書に記載される。代わりとして、その宿主細胞は、細胞に存在する場合には内因性NoJAMの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの換え体である。例えば、NoJAM及びVEJAMは同じ遺伝子から発現されることから、NoJAMの発現を変化させるのに好ましいポリヌクレオチドは、NoJAMスプライス産物とVEJAMスプライス産物の比を高めるポリヌクレオチドである。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W096/29411に記載されている。TM4SF5Aポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、例えば、TM4SF5Aポリペプチドを作製することができる。NoJAMポリペプチドは、例えば、細胞の精製及び検出を含むインビトロアッセイ、ならびにインビボ用途に有用である。かかる用途は、本明細書に詳述される。
本発明のその他の実施形態は、NoJAMに特異的な抗体及び前記抗体を含む組成物に関する。好ましい抗体は、上記の好ましいNoJAM断片に特異的に結合する抗体である。さらなる好ましい態様は、NoJAMポリペプチド又はその断片にNoJAM特異的抗体を結合させる方法である。この方法は、抗体結合に適した条件下にて、NoJAMポリペプチド又はその断片を含むと思われる溶液と、NoJAM特異的抗体を接触させる工程を含む。かかる抗体及び方法は、本明細書の他で記述されるように、NoJAMの精製及び検出に有用である。
本発明の好ましい実施形態は、NoJAMポリペプチドを精製する方法である。この方法は:i)結合を生じさせる条件下にて、NoJAM特異的抗体をNoJAMに結合させ;ii)抗体に結合していない物質を除去する工程を含む。そのNoJAM特異的抗体を固体又は半固体マトリックスと直接的又は間接的に結合させ、タンパク質の精製を容易にすることが好ましい。さらに好ましくは、NoJAM特異的抗体からNoJAMを分離する追加の工程が、精製方法に含まれる。精製されたNoJAMは、例えば、インビトロでの細胞精製及び検出に、及び組織の局在化免疫細胞の浸潤をインビボで防ぐのに有用である。これらの用途は本発明で詳述される。
本発明のその他の実施形態は、NoJAMポリペプチドを検出する方法である。この方法は、i)NoJAMポリペプチドを含有すると思われる試料と、NoJAM特異的抗体を接触させ、ii)工程i)において形成された抗体−NoJAM複合体を検出する工程を含む。一実施形態において、前記試料は生体試料である。好ましくは、NoJAM特異的抗体に結合していない物質を除去する追加の工程が、この方法に含まれる。NoJAM特異的抗体は、蛍光化合物、発光化合物、又は放射性化合物などの検出可能な化合物で直接的又は間接的に標識されることがさらに好ましい。NoJAMの検出は、高い経上皮輸送を示す、JAMの発現部位を決定するのに有用である。移行の部位は、炎症又は感染症の場合には免疫細胞浸潤を含む。さらに、転移性細胞移動によって、血管細胞壁の移行に対する抵抗性が低くなる。したがって、NoJAMの検出は、慢性関節リウマチ、クローン病、乾癬、子宮内膜症、炎症性腸疾患、多発性硬化症、喘息、特に心臓、腎臓、リンパ節もしくはパイエル板における腫瘍浸潤部位の診断に有用である。
本発明の好ましい実施形態は、骨髄性細胞、単球、好中球、抗原提示細胞、血小板及びT細胞などのJAM発現細胞にNoJAMを結合させる方法である。この方法は、結合に適した条件下にて、NoJAMポリペプチド又はそのJAM結合断片をJAM発現細胞と接触させる工程を含む。任意に、NoJAMと複合体を形成していない細胞を分離する第2段階が、結合させる方法に含まれる。この任意の方法は、列挙される細胞型の精製に特に有用である。あるいは、複合体形成されたNoJAMから未結合のNoJAMを分離する第2段階が、結合させる方法に含まれる。この代替方法は特に、列挙される細胞型の検出に有用である。
上述のように、NoJAM特異的抗体を用いて、JAMの発現部位を間接的に検出することができる。その代わりとして、NoJAMポリペプチド又はそのJAM結合断片が、これらの部位を直接的に同定するのに有用である。この方法は、i)JAMの結合に適した条件下にて、検出可能に標識されたNoJAMポリペプチド又はそのJAM結合断片を、細胞又は組織と接触させ;ii)複合体形成されたNoJAMから未結合のNoJAMを分離し;iii)複合体形成されたNoJAMを検出する工程を含む。この方法は、免疫蛍光法などの当技術分野で一般的な技術によって行うことができる。好ましくは、NoJAMは、内皮細静脈、リンパ管、又は心臓の血管構造を含有する試料などの、組織試料において検出される。細胞境界が少なくとも一部インタクトであるように、組織試料が固定化されることがさらに好ましい。この方法は、限定されないが、慢性関節リウマチ、クローン病、乾癬、子宮内膜症、炎症性腸疾患、多発性硬化症、喘息及び腫瘍浸潤部位を含む疾患又は病状の診断に有用である。
NoJAMを使用して、その表面上にJAM分子を発現する細胞を精製することができる。好ましい実施形態は、i)JAMの結合に適した条件下にて、NoJAMポリペプチド又はそのJAM結合断片を、多数の細胞と接触させ;ii)未結合の細胞を除去する工程を含む方法である。NoJAMを固体又は半固体マトリックスと直接的又は間接的に結合させ、多くの細胞型を含む試料からのJAM発現細胞の精製を容易にすることが好ましい。この方法は、骨髄性細胞、単球、好中球、抗原提示細胞、血小板及びT細胞などの細胞の精製に有用である。この方法は、例えば、組織特異的なアッセイにおいて不適切な細胞型からの混入を完全に防ぐために、組織試料からこれらの細胞型を除去するのにも有用である。組織からの反応性免疫細胞の除去は、特に、移植組織にとって重要である。磁気粒子に結合されたNoJAMは、例えば、結合した細胞を除去するのに十分な磁場をかけることによって、次いで除去することができる、組織中のJAM発現細胞を結合させるために使用することができる。それより低い磁場を用いて、残りの組織の完全性を維持することができる。磁気精製システムは、Dynal社(ノルウェー,オスロ)及びMiltenyi Biotec社(ドイツ,ベルギッシュグラトバハ)などのいくつかの供給元から入手可能である。
循環細胞の表面に発現されるJAMタンパク質は、NoJAMの結合に容易に到達できる。したがって、NoJAMは特に、JAM発現血液及びリンパ系細胞上の相互作用部位をブロックするのに有用である。これらの部位のブロックによって、JAMを発現する上皮及び内皮境界を通る細胞移行の量が低減される。このように、NoJAMの発現又は活性の増加は、慢性関節リウマチ、クローン病、乾癬、子宮内膜症、炎症性腸疾患、多発性硬化症、喘息などの炎症性疾患の予防に有用である。NoJAMの活性は特に、JAMを発現する循環転移性細胞によって、組織浸潤を予防するのにも有用である。NoJAMは特に、心臓、腎臓、リンパ節、及びパイエル板の浸潤の予防に有用である。逆に言えば、NoJAMの阻害により、移行は増加する。これは特に、血管化の不十分な組織において、創傷治癒を促進するのに有用である。
このために、本発明の好ましい実施形態は、NoJAMポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現を増加する物質についてスクリーニングする方法である。この方法は、i)細胞を試験物質と接触させ;ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるNoJAMの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるNoJAMの発現の差異によって、試験物質がNoJAMポリペプチド又はポリヌクレオチドの発現を調節することが示される工程を含む。NoJAMの発現は、当技術分野で一般的な、又は本明細書に包含される方法によって決定される。NoJAMの発現を決定する方法としては、限定されないが、NoJAMポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCR)又は細胞所見ポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学)が挙げられる。試験物質は、NoJAM発現とVEJAM発現の比を高めることが好ましい。特定の細胞型ではNoJAMの発現を増加するが、他の細胞型では増加しない試験物質がさらに好ましい。最も好ましくは、試験物質は、以下の:上皮細胞、内皮細胞、血管内皮細胞、高内皮細静脈細胞、骨髄性細胞、単球、好中球、抗原提示細胞、血小板及び活性化T細胞のうちの1種又は複数種において特異的にNoJAMの発現を修飾する。本明細書に記載の方法を用いて、NoJAMポリペプチドの発現を低減する試験物質についてスクリーニングすることもできる。NoJAMの発現を低減する、好ましい試験物質は、NoJAM発現とVEJAM発現の比を低下させる物質である。
本発明のその他の態様は、NoJAMポリペプチドの活性を調節する試験物質についてのスクリーニングである。この方法は、i)NoJAMポリペプチド又はそのJAM結合断片を試験物質と接触させ、ii)NoJAMの活性を検出し、iii)試験物質の存在下でのNoJAMの活性を、非暴露対照での活性と比較する工程を含み、前記試験物質の存在下又は非存在下において観察されたNoJAMの活性の差異は、試験物質がNoJAMポリペプチドの活性を調節することを示す。NoJAMポリペプチド又は断片を発現する細胞を用いて、又は精製NoJAMポリペプチド又は断片を用いて行われる。NoJAMの活性は、本明細書に記載のNoJAM活性のいずれか、好ましくはJAM結合能力によって評価することができる。例えば、試験物質の存在下でのNoJAMを、様々な条件下にて固定化JAMファミリータンパク質に暴露し、その結合をNoJAMのみの対照と比較することが可能である。試験物質は、NoJAM−JAM結合がその試験物質の非存在下での条件よりもさらに厳密な条件下で存在する場合には、NoJAMの活性を増加すると言われる。あるいは、この方法を用いて、NoJAMポリペプチドの活性を低減する物質についてスクリーニングすることができる。試験物質は、NoJAM−JAM結合がその試験物質の非存在下での条件よりもさらに厳密な条件下で存在する場合には、NoJAMの活性を低減すると言われる。NoJAM阻害剤の一例は、JAMファミリーメンバーへのNoJAMの結合を妨げる抗体である。
JAMの発現又は活性の活性化剤を用いて、炎症及び転移性浸潤を予防又は治療することができるが、これらの病状はNoJAMポリペプチドで直接的に処置することもできる。NoJAMは、予期しない反応を生じる可能性が低い天然ポリペプチドであることから、有利である。したがって、本発明の好ましい態様は、外皮及び内皮の管壁の細胞移行を防ぐためにNoJAMを使用する方法である。この方法は、NoJAMポリペプチド又はそのJAM結合断片を含む薬剤組成物と細胞を接触させる工程を含む。好ましくは、この方法は、個体が上記の炎症性疾患又は転移性浸潤のうちの1つを有する、又はそのリスクがあるかどうかを決定する工程も含む。好ましくは、この方法は、慢性関節リウマチ、クローン病、乾癬、子宮内膜症、炎症性腸疾患、多発性硬化症、喘息又は心臓、腎臓、リンパ節もしくはパイエル板の転移性浸潤の予防又は治療に向けられる。この薬剤組成物は、いずれかの方法で、好ましくは経口的又は局所的に、個体における細胞移行の特定の部位に投与される。局在的な送達は、適切な血管又はリンパ管中に注入することによって、又は植え込まれたステントによって行われることが好ましい(例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,500,013号及び同第5,449,382号参照)。
NoJAMの発現又は活性の阻害剤を用いて、外皮及び内皮境界の移行を促進することができ、したがって、創傷治癒が促進される。本発明の好ましい実施形態は、i)個体が治療の必要がある創傷を有するかどうかを決定し;ii)治療の必要がある創傷に、生理学的に許容されるNoJAM阻害剤を含む薬剤組成物を導入する工程を含む方法である。創傷は、資格のある医療介護者により治療の必要があると判断され、通常、罹患者又は健康な個体のより大きな血管新生部位の同等な創傷よりも、その治癒が遅い場合には、治療の必要があると見なされる。NoJAM阻害剤は、創傷部位に局所的に送達されることが好ましい。送達は、好ましくは、本明細書に記述されるように、適切な血管又はリンパ管中に注入することによって、又は植え込まれたステントによって行われることが好ましい。他の実施形態では、その組成物は局所投与用に製造することが可能であり、前記創傷上に直接適用される。
配列番号:24のタンパク質(内部指定クローン1000848660_181−42−1−0−C11−F)
クローン1000848660_181−42−1−0−C11−FのcDNA(配列番号:23)は、アミノ酸配列:MKISVAAIPFFLLITIALGTKTESSSRGPYHPSECCFTYTTYKIPRQRIMDYYETNSQCSKPGIVを含む、配列番号:24の新規の小誘導性サイトカイン14型(NCCL14)をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:23のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン1000848660_181−42−1−0−C11−F中に含まれるヒトcDNAよってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:23のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン1000848660_181−42−1−0−C11−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。
本発明の好ましい実施形態は、配列番号:23、配列番号:24及び1000848660_181−42−1−0−C11−Fの組成物に対して向けられている。以下に記載の方法で使用される好ましいNCCL14ポリペプチド断片としては、アミノ配列:TKTESSSRGPYHPSECCFTYTTYKIPRQRIMDYYETNSQCSKPGIVを含むNCCL14ポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、NCCL14は、小誘導性サイトカイン14型(CCL14、Genbankアクセッション番号Q16627)の新規なスプライスバリアントである。NCCL14の第1エクソンは、CCL14の第1エクソンと同一である。第2エクソンは、2つのタンパク質の間で異なる。したがって、本発明のタンパク質、NCCL14は65アミノ酸の長さであるのに対して、CCL14前駆体は93アミノ酸の長さである。NCCL14は、CCケモカインファミリーに属する。NCCL14は、シグナルペプチド(MKISVAAIPFFLLITIALG)を示す分泌タンパク質であり、成熟NCCL14タンパク質は46アミノ酸の長さである。NCCL14は、プロセッシングされたタンパク質のアミノ末端に位置する、IL8ドメイン(SSRGPYHPSECCFTYTTYKIPRQRIMDYYETNSQCSKPGIV)を示す。
ケモカインは、例えば、単球、リンパ球及び好中球を含む、異なる白血球の動員、ナビゲーション及び活性化において主要な役割を果たす。それらは、骨髄造血を調節し、抗ウイルス効果を示し、血管新生活性を有する。それらは、7個の膜貫通ドメインのGタンパク質共役受容体の活性化によりそれらの生物活性を示す。かかる活性は、例えば、免疫強化又は免疫抑制、骨髄保護、幹細胞動員、急性及び慢性炎症の制御及び白血病の治療に有用である。
NCCL14は、脾臓、肝臓、骨格筋及び心筋、腸、及び骨髄を含む多くの組織において発現され、血漿中にも存在する。NCCL14は、ヒト単球にも作用し、CCR1及びCCR5受容体を介して作用する。さらに、NCCL14は、幹細胞及び骨髄前駆体の増殖を調節し、例えばNCCL14は、骨髄前駆細胞のコロニー形成を調節する。NCCL14は、炎症細胞の輸送に関与する。NCCL14は、二次リンパ組織のB細胞領域の発生に寄与する。また、NCCL14は、血漿中にそれらを動員することによって、循環白血球の基本レベルを担い、NCCL14は、血流中のCCR1+炎症細胞のホメオスタシスの因子である。
本発明の実施形態は、配列番号:24のNCCL14ポリペプチド配列を含む組成物に関する。その他の実施形態において、そのポリペプチドは、配列番号:24と少なくとも70%、80%、90%、95%以上同一である。
本発明のさらなる実施形態は、本明細書に記載の生物活性のいずれかを有するNCCL14ポリペプチド断片を含む組成物又はCCR1及び/又はCCR5に結合するNCCL14ポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明でさらに使用される、NCCL14ポリペプチドとは、配列番号:24の又は配列番号:24と少なくとも70%、80%、90%、95%以上の同一性を有するNCCL14ポリペプチド配列、又は生物活性を有する配列番号:24のポリヌクレオチド断片のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、NCCL14ポリペプチドをコードする配列番号:23のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。その他の実施形態において、そのポリヌクレオチド配列は、配列番号:23と少なくとも70%、80%、90%、95%以上の同一性を有する。
他の実施形態では、本発明は、配列番号:24の配列を含むポリペプチド又はその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドを提供する。
本発明のさらなる実施形態は、本明細書に記載の生物活性のいずれかを有するNCCL14ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:24のNCCL14ポリペプチド配列又はNCCL14ポリペプチド断片を認識する抗体に関する。好ましくは、その抗体は、NCCL14のカルボキシル末端内に位置する、1つ又は複数のアミノ酸を認識し、前記の1つ又は複数のアミノ酸は、NCCL14ポリペプチドへの抗体の結合に必要とされる。さらに好ましくは、その抗体は直鎖状エピトープを認識する。最も好ましくは、その抗体はNCCL14に結合するが、CCL14には結合しない。本明細書で使用される「抗NCCL14抗体」とは、NCCL14ポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。かかる方法は、例えば、本明細書にさらに記述されるように、NCCL14の精製、阻害、検出及び診断に使用することができる。
本発明のさらなる実施形態は、NCCL14ポリペプチド又はその断片を抗体に結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、NCCL14ポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。
本発明の実施形態は、生体試料におけるNCCL14ポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗NCCL14抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗体又は抗体断片は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗体又は抗体断片は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的ないずれかの検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。かかる方法は、例えば、以下にさらに記述するように、慢性腎不全の診断に適用することができる。
本発明の実施形態は、NCCL14ポリペプチドを作製する方法に関する。NCCL14ポリペプチドを作製する方法は、i)本発明のNCCL14ポリペプチドをコードする組換え発現ベクターを、哺乳動物宿主にトランスフェクトし、ii)前記ポリペプチドの発現の助けとなる条件下にて、その細胞を培養し、iii)発現したNCCL14ポリペプチドを精製する工程を含む。タンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術を用いて行うことができる。好ましくは、NCCL14に対して作られる抗体をクロマトグラフィー担体に結合させ、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成する。その精製されたタンパク質は、以下に記述するような多くの用途に使用することができる。
本発明の好ましい態様は、NCCL14ポリペプチド又はその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。さらなる好ましい態様は、細胞におけるその存在が、NCCL14の発現を変化させる、例えば、NCCL14の発現レベルを増加させる、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。NCCL14の発現を変化させることができるポリヌクレオチドは、宿主細胞のゲノムに挿入されること、例えば、NCCL14遺伝子の5’調節領域に挿入されることが好ましい。さらに好ましくは、これらのポリヌクレオチドは、NCCL14コード領域の500塩基対内に位置する。これらのポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。前記宿主細胞によって産生されたNCCL14タンパク質は、本明細書に記述するように、例えば、検出及び精製法ならびに診断及びインビボ用途に用いることができる。
本発明の実施形態は、生体試料におけるNCCL14の発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)NCCL14Aの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるNCCL14の発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。NCCL14の発現レベルの検出は、様々な異常炎症反応及び免疫応答の診断に有用である。例えば、正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるNCCL14の発現レベルが低い場合には、慢性腎不全を示している。試料におけるNCCL14の発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば、試料中のNCCL14 mRNA又はタンパク質のレベルを検出することによって評価することができる。例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学技術などのよく知られている技術を用いて、NCCL14の発現を検出することができる。好ましくは、抗NCCL14抗体を使用して、NCCL14の発現レベルを検出する。前記抗体は上述のように検出可能に標識される。また好ましくは、本発明のタンパク質のポリヌクレオチド配列又はその一部、又は配列番号:23のすべて又は一部に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えば、ノーザンブロット法又はRTPCR技術によってNCCL14の発現レベルを検出する。
本発明のその他の実施形態は、NCCL14ポリペプチドの存在をインビトロで検出するための診断キットに関する。かかるキットは、i)抗NCCL14抗体、任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗NCCL14抗体を備えるキットは、慢性腎不全又は様々な異常炎症反応及び免疫応答の診断に使用される。任意に、前記診断キットは、正常な個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、慢性腎不全又は特定の炎症反応もしくは免疫応答を有する個体からの予想されるレベルを表す正の対照試料を備える。
その他の好ましい実施形態は、NCCL14の発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるNCCL14の発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する工程を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるNCCL14の発現の差異によって、試験物質がNCCL14の発現を調節することを示す。NCCL14の発現は、当技術分野で一般的な、又は本明細書に包含される方法によって決定することができる。NCCL14の発現を決定する方法としては、限定されないが、NCCL14ポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるNCCL14 mRNAの検出)又はNCCL14ポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるNCCL14ポリペプチドの検出)が挙げられる。好ましくは、その試験物質は特定の細胞型ではNCCL14の発現を修飾するが、他の細胞型では修飾しない。
また、かかる方法を用いて同定される修飾因子は、本発明によって包含される。いずれかの細胞型、例えば、脾臓、肝臓、筋肉、腸、又は骨髄をかかるスクリーニングに使用することが可能である。本発明のさらなる実施形態は、NCCL14の活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるNCCL14の活性を、非暴露対照細胞の活性と比較する工程を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるNCCL14の活性の差異によって、試験物質がNCCL14の活性を調節することを示す。NCCL14の活性は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるPardigolら(Proc Natl Acad Sci U S A. 95(11):6308-13 (1998))に記載されたように、例えば、その走化活性を研究することによってモニターすることができる。あるいは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるSchulz-Knappeら(J Exp Med. 183(1):295-9 (1996))に記載されたように、幹細胞及び骨髄前駆体の増殖を調節するその能力を研究することによって、例えば、幹細胞因子の存在下にてCD34+骨髄細胞の増殖を高めるその能力を研究することによって、NCCL14の活性をモニターすることができる。かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
NCCL14の発現又は活性を低減する試験物質は、NCCL14アンタゴニストとして定義される。一方、NCCL14の発現又は活性を増加する試験物質は、NCCL14アゴニストとして定義される。NCCL14の発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、NCCL14のドミナントネガティブ型及び抗NCCL14抗体が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法によって製造かつ使用することができる。
本発明の好ましい実施形態は、CCR1及び/又はCCR5ポリペプチドをNCCL14ポリペプチドと結合させる方法であり、その方法は、CCR1及び/又はCCR5への前記NCCL14ポリペプチドの結合を可能にする条件下にて、NCCL14ポリペプチドをCCR1及び/又はCCR5と接触させる工程を含む。好ましい実施形態では、CCR1及び/又はCCR5へのNCCL14ポリペプチドの結合を利用して、CCR1及び/又はCCR5を発現する細胞を精製する。かかる一実施形態において、CCR1及び/又はCCR5を発現する細胞を精製する方法は、i)CCR1発現細胞及び/又はCCR5発現細胞を含む生体試料を、標識化NCCL14ポリペプチドと接触させ、ii)前記生体試料を、選別装置、例えば、蛍光活性化細胞選別装置又は磁気活性化細胞選別装置に導入する工程を含み、前記試料中のCCR1細胞及び/又はCCR5細胞は、それらの結合した標識化NCCL14ポリペプチドによって非発現細胞から選別される。この方法は、CCR5発現リンパ球集団の計数、形態学的同定又は分離に有用である。特に、CD4+リンパ球上のCCR5密度は、HIVウイルスによる細胞の感染能力と正に相関する。したがって、CCR5発現細胞、例えばCD4+リンパ球の精製は、例えば、抗HIV薬をスクリーニングする際に、高い感染性の細胞集団を得るのに有用かもしれない。この相関性から、NCCL14又はその誘導体など、CCR到達性をブロックする作用物質を使用して、細胞におけるHIV感染をブロックすることができることも示されている。
この実施形態のその他の態様は、当技術分野で一般的な技術を用いて、CCR1及び/又はCCR5を発現する細胞を検出かつ定量化するために、CCR1及び/又はCCR5に結合するNCCL14ポリペプチドを使用する方法を包含する。この方法は、i)CCR1及び/又はCCR5を発現する細胞を含有すると思われる生体試料を得、ii)NCCL14の結合に適した条件下にて、前記試料をNCCL14ポリペプチドと接触させ、iii)試料におけるNCCL14の細胞への結合を検出する工程を含む。前記CCL14ポリペプチドは、検出可能な化合物に共有結合で結合されることが好ましい。
あるいは検出可能な抗NCCL14を使用して、NCCL14を検出することができる。この方法は診断ツールとして用いることが可能である。例えば、CCR1ならびにCCR1によって仲介されるプロセス及び細胞応答は、移植された移植片の拒絶反応に関与し(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるGaoら, J Clin Invest. 105(1):35-44 (2000)参照)、T細胞によって発現されるCCR5は、特に哺乳動物、好ましくはヒトにおける、限定されないが、喘息及びアトピー性疾患(例えば、アトピー性皮膚炎及びアレルギー)、慢性関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、サルコイドーシ、又は特発性肺線維症及び他の線維性疾患、乾癬、多発性硬化症などの自己免疫疾患を含む疾患、移植臓器の拒絶反応及び炎症性腸疾患の治療及び/又は予防に関与する。さらに、CCR5は、細胞へのHIVの侵入のための補助受容体である。本発明は、生体試料中のCCR1及び/又はCCR5又はその一部の存在を検出するために使用されるキットであって、哺乳動物CCR1及び/又はCCR5又は前記受容体の一部に結合するNCCL14ポリペプチドと、前記NCCL14ポリペプチドとCCR1及び/又はCCR5又はその一部との間の複合体の存在を検出するのに適した1種又は複数種の補助試薬とを備えるキットにも関する(例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,329,510号参照)。その他の実施形態において、本発明は、患者における白血球の輸送を阻害する方法であって、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,329,510号に記載されたように、哺乳動物CCR1に結合する、有効量のCCR1及び/又はCCR5結合NCCL14ポリペプチドを患者に投与する工程を含む方法もまた包含する。
さらなる実施形態は、移植された移植片の拒絶反応を抑制する方法であって、有効量のCCR1及び/又はCCR5結合NCCL14ポリペプチドを移植レシピエントに投与する工程を含む方法を提供する。一実施形態において、その移植片は同種移植片である。特定の実施形態では、その同種移植片は心臓である。本明細書で使用される「移植片」という用語は、第1の哺乳動物又はドナーから得ることができ、第2の哺乳動物、好ましくはヒトに移植することができる、臓器及び/又は組織を意味する。例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第09/239,283号を参照のこと。
さらなる実施形態は、虚血/再潅流障害を抑制(低減又は予防)する方法であって、その必要のある対象に有効量のCCR1及び/又はCCR5結合NCCL14ポリペプチドを投与する工程を含む方法を提供する。虚血/再潅流障害とは、臓器又は組織への血流が制限又は停止され、その結果酸素不足(低酸素)となった場合に生じる、壊死細胞死を意味する。虚血条件下で臓器又は組織により維持される損傷は、血流が回復した(再潅流)後に識別できる。一部の実施形態において、虚血/再潅流障害は、外傷又は医療処置、例えば、手術の結果かもしれない。他の実施形態において、虚血/再潅流障害は、病理的症状、例えば、動脈硬化症、心筋の感染、脳卒中又は一過性脳虚血発作の結果かもしれない。特定の実施形態では、虚血/再潅流障害は、移植片の移植の結果である。他の特定の実施形態において、移植片は腎臓である。その他の実施形態では、その方法は、NCCL14及び1種又は複数種のその他の治療薬、例えば、血栓溶解薬、細胞接着阻害剤、抗凝固薬、抗血栓剤、及び一酸化窒素シンテターゼの活性化剤又は阻害剤の投与を含む。例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第09/239/283号を参照のこと。
その他の好ましい実施形態において、本発明は、炎症性脱髄疾患を治療する方法であって、その治療が必要な対象に、有効量のCCR1及び/又はCCR5結合NCCL14ポリペプチドを投与する工程を含む方法に関する。好ましくは、その炎症性脱髄疾患は、多発性硬化症である。かかる方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第09/240,253号に記載されている。好ましい実施形態において、本発明は、免疫不全ウイルスの複製及び/又は感染をインビトロ又はインビボで阻害する、ウイルス量を低減する、又は免疫不全ウイルスへのヒトの感染と関連する疾患又は障害を治療及び/又は予防する、NCCL14ポリペプチド又はNCCL14アゴニストを含む治療用組成物に関する。免疫不全ウイルスとしては、限定されないが、HIV、サル免疫不全ウイルス及びネコ免疫不全ウイルスが挙げられ、最も好ましくはHIVである。例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,214,540、及び国際特許出願公開番号:WO00/40964を参照のこと。
本発明のその他の実施形態は、当業者に知られているいずれかの方法によって、遺伝子導入モデル動物(キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)、ハツカネズミ(M. musculus))を確立するための、NCCL14ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を用いた組成物及び方法に関する。薬物又は変更遺伝子(活性化又は抑制遺伝子)で導入遺伝子の発現をインビボで調節することによって、免疫応答障害と関連する疾患を模倣する動物モデルを作製することができる。このように、これらの動物モデルによって、疾患の治療に用いられる潜在的な治療薬を同定することが可能となるだろう。さらに、これらの遺伝子導入動物に由来する組換え細胞系は、同様のアプローチにエクスビボで使用することができる。
配列番号:26のタンパク質(内部指定クローン500735264_205−41−2−0−A7−F)
クローン500735264_205−41−2−0−A7−FのcDNA(配列番号:25)は、アミノ酸配列:MAAGSRTSLLLAFALLCLPWLQEADSIPTSSNMEETQQKSNLELLHISLLLIESRLEPVRFLRSTFTNNLVYDTSDSDDYHLLKDLEEGIQMLMGRLEDGSHLTGQTLKQTYSKFDTNSHNHDALLKNYGLLHCFRKDMDKVETFLRMVQCRSVEGSCGFを含む、配列番号:26のCS−5bをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:26のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン500735264_205−41−2−0−A7−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:25のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン500735264_205−41−2−0−A7−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:26、配列番号:25、及び500735264_205−41−2−0−A7−Fのヒトポリヌクレオチド及びポリペプチド組成物に対して向けられている。以下に記載の方法で使用される好ましいCS−5bポリペプチド断片としては、アミノ配列:IPTSSNMEETQQKSNLELLHISLLLIESRLEPVRFLRSTFTNNLVYDTSDSDDYHLLKDLEEGIQMLMGRLEDGSHLTGQTLKQTYSKFDTNSHNHDALLKNYGLLHCFRKDMDKVETFLRMVQCRSVEGSCGFを含むCS−5bポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、CS−5bは、絨毛性ソマトマンモトロピン5(CS−5,SP−TREMBLアクセッション番号Q14406)の新規な分泌スプライスバリアントである。CS−5b mRNAは、その5’末端にさらなるエクソンを示す。CS−5b mRNAの第2エクソンは、CS−5 mRNAの第1エクソンに相当する。CS−5b mRNAにおいて、このエクソンは、その3’末端でCS−5 mRNAよりも短い。以下の3つのエクソンはどちらのmRNAにおいても同一である。得られるCS−5b完全長ポリペプチドは160アミノ酸の長さであるのに対して、CS−5完全長ポリペプチドは199アミノ酸の長さである。シグナルペプチドの切断後、CS−5は、CS−5bと比較して、そのアミノ末端で39個の補足(supplementary)アミノ酸を示す。そのタンパク質は、それらのカルボキシル末端側134個のアミノ酸で同一である。CS−5bは、ソマトトロピン_2コンセンサス(CFRKDMDKVETFLRMVQC)及びソマトトロピンホルモンファミリードメインを示す。
CS−5bは、胎盤のトロフォブラスト細胞によって合成され、血液中で分泌される。CS−5bは、妊婦の脳脊髄液にも存在する。CS−5bは、妊娠に対する適応において役割を果たし、妊娠及び泌乳に関連する様々な生物学的応答を引き起こす。特に、CS−5bは、脂肪の蓄積を刺激すること及び脂肪分解速度を高めることの両方によって、母親における脂肪細胞代謝を促進し、胎児に対する基質の有効性が高められる。CS−5bはインスリン感受性も低減する。さらに、CS−5bは乳の生産を増加し、授乳状態(fed state)の間の母性行動(maternal caretaking)及び巣作り行動を刺激する。さらに、CS−5bは、男性(雄)及び女性(雌)のどちらにも広く発現される、プロラクチン受容体(Genbankアクセッション番号P16471)の異なるアイソフォームに結合し、プロラクチン受容体仲介シグナル伝達を活性化する。
本発明の実施形態は、配列番号:26の、又は配列番号:26と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するCS−5bポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、脂肪の蓄積の向上、胎児に対する基質利用性の増加、母性行動の向上及びインスリン分泌の増加からなる群から選択される生物活性を有する、CS−5bポリペプチド又はポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「CS−5bポリペプチド」とは、配列番号:26のアミノ酸配列又は配列番号:26と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のアミノ酸配列又は脂肪の蓄積の向上、胎児に対する基質利用性の増加、母性行動の向上及びインスリン分泌の増加からなる群から選択される生物活性を有するそのポリペプチド断片を含む、からなる、又はから本質的になるポリペプチドを意味する。成熟CS−5ポリペプチドのアミノ末端側39個のアミノ酸の5個以上の隣接アミノ酸を含むCS−5bポリペプチドは、本発明から特に除外される。
本発明の実施形態は、CS−5bポリペプチドをコードする配列番号:25のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、CS−5bポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書でさらに使用される「CS−5bポリヌクレオチド」とは、配列番号:25のヌクレオチド配列、又は配列番号:25と少なくとも70%、80%、90%、95%以上の同一性を有するヌクレオチド配列、CS−5bポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、又はこれらの配列のいずれかと相補的な配列を含む、からなる、又はから本質的になるポリヌクレオチドを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:26のCS−5bポリペプチド配列又はCS−5bポリペプチド断片を認識する抗体に関する。好ましくは、その抗体は、CS−5bポリペプチのアミノ末端を認識する。また好ましくは、その抗体は非直鎖状エピトープを認識する。最も好ましくは、その抗体はCS−5bには結合するが、CS−5には結合しない。本明細書で使用される「抗CS−5b抗体」とは、CS−5bポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、CS−5bポリペプチドに抗CS−5b抗を結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、CS−5bポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書にさらに記述されるように、CS−5bポリペプチドの検出に有用である。
本発明の実施形態は、生体試料においてCS−5bポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗CS−5b抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗CS−5b抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗CS−5b抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的ないずれかの検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。かかる方法は、例えば、以下にさらに記述するように、妊娠の病理的症状の診断に適用することができる。
本発明の実施形態は、生体試料におけるCS−5bの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)試料におけるCS−5bAの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるCS−5bの発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。かかる一実施形態において、前記生体試料は、妊娠中の個体から得られ、その方法は、妊娠の病理的症状を診断するために使用される。正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるCS−5bの発現レベルが低い場合には、例えば、糖尿病、子癇前症及び過敏性血管疾患などの妊娠と関連する母体疾患を発症するリスクを示すか、又は例えば、子宮内発育遅延、胎児発育遅延及び胎児仮死などの胎児疾患を示している。好ましくは、妊娠の病理的症状を示す前記レベルは、4マイクログラム/ミリリットル未満である、母体血漿中のCS−5b濃度に相当する。試料におけるCS−5bの発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば、試料中のCS−5b mRNA又はCS−5bポリペプチドのレベルを検出することによって評価することができる。
例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学技術及び細胞化学技術などのよく知られている多くの技術のいずれかを用いて、CS−5bの発現を検出することができる。好ましくは、抗CS−5b抗体を使用して、CS−5bの発現レベルを検出する。また好ましくは、配列番号:25のポリヌクレオチド配列又はその一部、又は配列番号:25に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えばノーザンブロット法又はRTPCR技術によってCS−5bの発現レベルを検出する。
本発明のその他の実施形態は、CS−5bポリペプチドの存在をインビトロで定量化するための診断キットに関する。かかるキットは、i)抗CS−5b抗体、任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗CS−5b抗体を備えるキットは、上記のような妊娠の病理学的症状の診断に使用されることが好ましい。任意に、前記診断キットは、正常な妊娠からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、妊娠の特定の病理学的症状を有する個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。かかるキットは、妊娠中に疾患を発症するリスクのある女性の集団を定義するのに非常に有用であり、したがって、予防的治療の恩恵を受けることができる。
その他の実施形態は、i)CS−5bポリペプチドを発現する細胞を培養し、ii)産生されたタンパク質を精製する工程を含む、CS−5bポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られている多くの技術のいずれかに従って行うことができる。好ましくは、抗CS−5b抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。あるいは、CS−5bポリペプチドを異種免疫原性ペプチドに融合させてもよく、その融合タンパク質は、異種ペプチドに特異的な抗体を用いて精製される。CS−5bポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。CS−5bポリペプチドの作製は、本発明でさらに記述される方法及び組成物において有用であり得る。
本発明の好ましい態様は、プロモーターに作動可能に連結される、CS−5bポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、CS−5bポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって、i)プロモーターに作動可能に連結される、CS−5bポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、前記細胞は大腸菌細胞、C127マウス細胞又はヒト細胞である。その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,136,562号に記載されたように、グリコシル化及び非グリコシル化の両方の状態で活性CS−5bポリペプチドを作製する方法を行うことができる。その他の好ましい態様は、細胞に存在する場合には、CS−5bの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。CS−5bの発現を修飾することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)CS−5b遺伝子を含む細胞を提供し、ii)CS−5b発現を変化させるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターが導入される前の前記細胞におけるCS−5bの発現レベルと比較して、CS−5bの発現が増加又は低減する方法によって作製される。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、CS−5b遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、又はCS−5b遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、CS−5bコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。CS−5bポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、CS−5bポリペプチドを作製することができる。
その他の好ましい実施形態は、CS−5bの発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるCS−5bの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する工程を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるCS−5bの発現の差異によって、試験物質がCS−5bの発現を調節することを示す。CS−5bの発現は、当技術分野で一般的な、又は本明細書に包含される方法によって決定することができる。CS−5bの発現は、限定されないが、CS−5bポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるCS−5b mRNAの検出)又はCS−5bポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるCS−5bポリペプチドの検出)を含む、一般的な方法によって決定することが可能である。一実施形態において、その試験物質は特定の細胞型(好ましくは、脂肪細胞又は上皮細胞)ではCS−5bの発現を修飾するが、他の細胞型では修飾しない。例えば、細胞、組織、又は個体におけるCS−5bの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明のさらなる実施形態は、CS−5bの活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるCS−5bの活性を、非暴露対照細胞の活性と比較する項知恵を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるCS−5bの活性の差異によって、試験物質がCS−5bの活性を調節することを示す。
CS−5bの活性は、当技術分野で一般的な多くの技術のうちのいずれかによって決定することができる。例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,136,562号に記載されたように、例えば、3T3−L1脂肪細胞などの細胞においてインスリン刺激によるグルコース(例えば、[14C]−グルコース)の脂質への取り込みの阻害を測定することによって、CS−5bの活性をモニターすることができる。その代わりとして、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Vashdi-Elbergら(J Biol Chem. 271:5558-64 (1996))に記載されたように、例えば、結合実験及びインビトロバイオアッセイを用いて、プロラクチン受容体へのその結合を研究することによって、CS-5bの活性をモニターすることができる。例えば、細胞、組織又は個体におけるCS-5bの活性を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
CS−5bの発現又は活性を低減する試験物質は、CS−5bアンタゴニストとして定義される。CS−5bの発現又は活性を増加する試験物質は、CS−5bアゴニストとして定義される。CS−5bの発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、CS−5bのドミナントネガティブ型及び抗CS−5b抗体が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法によって製造かつ使用することができる。かかる候補修飾因子としては、限定されないが、1,25−ジヒドロキシビタミンD3、インターロイキン−6、インターロイキン−1、NF−IL転写因子、preβHDL及びapoA−I、ならびにこれらの修飾因子の誘導体、変異体及び断片が挙げられる。
本発明の実施形態は、プロラクチン受容体にCS−5bポリペプチドを結合させる方法であって:結合を生じさせる条件下にて、CS−5bポリペプチドを前記プロラクチン受容体と接触させる工程を含む方法に関する。この方法は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Vashdi-Elbergら(J Biol Chem. 271:5558-64 (1996))に記載されたようにインビトロで適用することが可能である。好ましい実施形態は、プララクチン受容体により仲介されるシグナル伝達を活性化するためにCS−5bポリペプチドを使用する方法に関する。かかる方法は、エクスビボ又はインビボで適用することができる。プララクチン受容体仲介シグナル伝達をエクスビボで活性化する方法は:CS−5bポリペプチドとプロラクチン受容体を発現する細胞を、前記プロラクチン受容体の前記CS−5bポリペプチドとの結合を生じさせる条件下にて、接触させる工程を含む。プララクチン受容体仲介シグナル伝達をインビボで活性化する方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のCS−5bポリペプチド又はCS−5bアゴニストとを個体に送達する工程を含む。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のCS−5bポリペプチド又はCS−5bアゴニスト」とは、プララクチン受容体仲介シグナル伝達を活性化するのに十分な量のCS−5bポリペプチド又はCS−5bアゴニストを意味する。かかる方法は、例えば、糖尿病、子癇前症又は過敏性血管疾患などの妊娠と関連する母体疾患を治療又は予防することに向けられることが好ましい。また好ましくは、前記方法は、例えば、子宮内発育遅延、胎児発育遅延及び胎児仮死などの胎児疾患を治療又はその疾患の重症度を低減することに向けられる。あるいは、かかる方法は、例えば、雌ウシ及びヒツジなどの哺乳動物の繁殖において、授乳状態の間の乳の産生、母性行動及び巣作り行動を刺激するために使用することができる。
その他の実施形態は、脂肪細胞における脂質代謝を促進する方法であって、脂肪細胞をCS−5bポリペプチドと接触させる工程を含む方法に関する。かかる方法は、脂肪細胞の培養物にインビトロで適用することができる。かかる方法は、生理学的に許容される担体と、CS−5bポリペプチド又はCS−5bアゴニストとを個体に投与することによって、インビボで適用することも可能である。この実施形態のコンテクストで使用される「CS−5bポリペプチド又はCS−5bアゴニスト」とは、脂肪細胞における脂質代謝を促進するのに十分な量のCS−5bポリペプチド又はCS−5bアゴニストを意味する。好ましくは、かかる方法は、肥満個体の脂肪分解率を高めることに向けられ、それによって肥満症の治療が提供される。この方法は、低カロリー食と組み合わせて適用されることが好ましい。
一実施形態において、本発明は、哺乳動物における乳の産生を低減するために、CS−5bを阻害する方法を提供する。前記方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のCS−5bアンタゴニストとを含む薬剤組成物を個体に送達する工程を含む。本明細書で使用される「有効量のCS−5bアンタゴニスト」とは、乳の産生を低減するのに十分な量のCS−5bアンタゴニストを意味する。かかる方法は、子供を離乳させる際に、例えば乳の産生を止めるのに有用かもしれない。
本発明のその他の実施形態は、プロラクチンアンタゴニストであるCS−5bポリペプチド断片を同定する方法に関する。かかる方法は、i)CS−5bポリペプチド断片を提供し、ii)細胞をプロラクチン及び前記CS−5bポリペプチド断片と接触させ、iii)前記CS−5bポリペプチド断片に暴露した後の細胞におけるプロラクチン受容体仲介シグナル伝達を、プロラクチンにのみ暴露された対照細胞と比較する工程を含み、暴露細胞と非暴露細胞との間で観察されるプロラクチン受容体仲介シグナル伝達の減少によって、前記CS−5bポリペプチド断片がプロラクチンアンタゴニストであることを示す。プロラクチン受容体仲介シグナル伝達は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lingら(Endocrinology 142:4880-90 (2001))に記載されたように、インスリン誘導レプチンの産生をインビトロで決定することによって評価することが可能である。通常、プロラクチンアンタゴニストとして作用するCS−5bポリペプチド断片は、機能性プロラクチン受容体結合ドメインを示すが、プロラクチン受容体仲介シグナル伝達に必要なアミノ酸又はドメインを欠く。
本明細書でさらに使用される「Pacs−5bポリペプチド」とは、プロラクチンアンタゴニストとして作用するCS−5bポリペプチド断片を意味する。プロラクチンアンタゴニストは、プロラクチンのプロフィールを変化させるか、又はリセットし、そのため、例えば、肥満症、高脂質血症、高血糖、高コレステロール血症、インスリン抵抗性及びII型糖尿病などの代謝異常を治療する方法において有用である。Pacs−5bポリペプチドは、例えば、その開示内容全体がどちらも参照により組み込まれる、米国特許第5,760,047号及び米国特許第4,659,715号に記載の方法においてブロモクリプチンの代わりに使用される。
生理学的に許容される担体は、当業者に公知のいずれかの方法によって製造することができる。生理学的に許容される担体としては、限定されないが、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA 1985)に記載の担体が挙げられる。CS−5bアゴニストと生理学的に許容される担体とを含む薬剤組成物は、例えば、静脈内、表面、直腸、局所、吸入、皮下、皮内、筋肉内、経口及び脳内投与用であることが可能である。その組成物は、液状(例えば、液剤、懸濁剤)、固形(例えば、丸剤、錠剤、坐剤)又は半固形(例えば、クリーム剤、ゲル剤)であることが可能である。投与されるべき投与量は、それぞれの必要性、望まれる効果、及び選択される投与経路に応じて異なる。
さらに他の実施形態は、CS−5bポリペプチドをコードする核酸配列又はCS−5bポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子を用いて遺伝子導入動物(例えば、マウス)を作製する方法に関する。遺伝子導入動物を作製する方法は当業者にはよく知られている。例えば、CS−5b欠損マウスは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,080,911号に従って作製することができる。一方、CS−5bを過剰発現する遺伝子導入マウスを作製することができる。かかる遺伝子導入動物は、低い又は高いラクトゲンレベルと関連する機能不全(例えば、胎児発育遅延)の動物モデルを得るのに、かつかかる疾患の治療における化学化合物の有用性を試験するのに、又はそれをスクリーニングするのに有用であり得る。
配列番号:28のタンパク質(内部指定クローン500710542_205−8−4−0−F1−F)
クローン500710542_205−8−4−0−F1−FのcDNA(配列番号:27)は、アミノ酸配列:MAQLCGLRRSRAFLALLGSLLLSGVLAADRERSIHENATGDLATSRNAADSSVPSAPRRQDSEDHSSDMFNYEEYCTANAVTGPCRASFPRWYFDVERNSCNNFIYGGCRGNKNSYRSEEACMLRCFRQQENPPLPLGSKVVVLAGLFVMVLILFLGASMVYLIRVARRNQERALRTVWSSGDDKEQLVKNTYVLを含む、配列番号:28のPlacikをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:28のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン500710542_205−8−4−0−F1−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:##のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン500710542_205−8−4−0−F1−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:28、配列番号:27及びクローン500710542_205−8−4−0−F1−Fのヒトポリヌクレオチド及びポリペプチド組成物に対して向けられている。
以下に記載の方法で使用される好ましいPlacikポリペプチド断片としては、アミノ配列:ADRERSIHENATGDLATSRNAADSSVPSAPRRQDSEDHSSDMFNYEEYCTANAVTGPCRASFPRWYFDVERNSCNNFIYGGCRGNKNSYRSEEACMLRCFRQQENPPLPLGSKVVVLAGLFVMVLILFLGASMVYLIRVARRNQERALRTVWSSGDDKEQLVKNTYVLを含むPlacikポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、Placikは、胎盤ビクニン(SPINT2,EMBLアクセッション番号AAC02781)の新規な、分泌スプライス及び多型バリアントである。第1エクソンはPlacik mRNA及びSPINT2 mRNAにおいて同一である。SPINT2 mRNAの第2エクソンは、Placik mRNAに存在しない。以下の3つのエクソンは、どちらのmRNAにおいても同一である。さらに、配列番号:28の−17位に示されるアミノ酸は、Placikにおいてアルギニンであり、SPINT2においてプロリンである。Placikは、膵臓トリプシン阻害剤ファミリーシグネチャーと共に、シグナルペプチド(MAQLCGLRRSRAFLALLGSLLLSGVLA)及びKunitz_BPTIドメイン(CTANAVTGPCRASFPRWYFDVERNSCNNFIYGGCRGNKNSYRSEEACMLRC)を示す。得られる成熟Placikポリペプチドは168アミノ酸の長さである。配列番号:28の1〜8位に示されるアミノ酸は、成熟SPINT2ポリペプチドのアミノ末端側8個のアミノ酸と同一であり、配列番号:28の9〜168位に示されるアミノ酸は、成熟SPINT2ポリペプチドのカルボキシル末端側160個のアミノ酸と同一である。Placikは、SPINT2と比較して、57アミノ酸のスパンを欠く。このように、2つのKunitz_BPTIドメインを示すSPINT2に対して、Placikは1つのKunitz_BPTIドメインのみを示す。
Placikは広域セリンプロテアーゼ阻害剤である。それは、プラスミン、カリクレイン及び第XII因子などの、血液凝固及び線維素溶解に関与するセリンプロテアーゼに対して阻害活性を及ぼす。カリクレイン及びプラスミンは、プロウロキナーゼ及びプラスミノゲンなどの線維素溶解性酵素前駆体をタンパク分解的に切断及び活性化するセリンプロテアーゼである。線維素溶解は、好中球の活性化、播種性血管内凝固症候群及び血管透過性の増加をもたらす。さらに、カリクレインは高分子量キニノーゲンを切断して、強力な血管拡張薬であるブラジキニンが形成される。このように、カリクレイン及びプラスミンは、線維素沈着及び溶解、血圧の調節、補体活性化及び炎症系の支持に関与する。さらに、いくつかの分子の相互作用が、線維素溶解系とマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)系との間で観察されており、どちらの系も、タンパク質分解活性を生じさせることと、及び癌細胞の浸潤を強めることにおいて協力し得る。SPINT2に対して、Placikは、肝細胞成長因子活性化剤を阻害しない。Placikは、限定されないが、胎盤、脳、腎臓、膵臓、前立腺、精巣、胸腺及び気管を含む、多種多様な組織において発現される。さらに、Placikは、膵癌細胞において過剰発現され、その発現はヒト神経膠腫の悪性度と反比例に相関する。
本発明の実施形態は、配列番号:28の又は配列番号:28と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するPlacikポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、血液凝固又は線維素溶解に関与するセリンプロテアーゼを阻害するPlacikポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「Placikポリペプチド」とは、配列番号:28の又は配列番号:28と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のPlacikポリペプチド配列又は配列番号:28の8位及び9位に示される隣接アミノ酸を含み、かつ血液凝固又は線維素溶解に関与するセリンプロテアーゼを阻害する生物活性を有するPlacikポリペプチド断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、Placikポリペプチドをコードする配列番号:27のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、Placikポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明でさらに使用される「Placikポリヌクレオチド」とは、配列番号:27の、又は配列番号:27と少なくとも70%、80%、90%、95%以上の同一性を有するPlacikポリヌクレオチド配列、Placikポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はこれらの配列のいずれかに相補的な配列のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、Placikポリペプチドを認識する抗体に関する。好ましくは、その抗体はPlacikには特異的に結合するが、SPINT2には特異的に結合しない。本明細書で使用される「抗Placik抗体」とは、Placikポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、抗Placik抗体をPlacikポリペプチドに結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、Placikポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書にさらに記述されるように、Placikポリペプチドの検出に有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるPlacikポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗Placik抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗Placik抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗Placik抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的ないずれかの検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。かかる方法は、例えば、以下にさらに記述するように、膵癌又は神経膠腫の診断に適用することができる。
本発明の実施形態は、生体試料におけるPlacikの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)試料におけるPlacikの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるPlacikの発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。かかる一実施形態において、前記生体試料は、膵臓癌に罹患している疑いのある個体から得られ、その方法は、膵臓癌を診断するために使用される。正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるPlacikの発現レベルが高い場合には、膵臓癌が存在することを示している。
その他のかかる実施形態において、前記生体試料は、神経膠腫、例えば未分化星状細胞腫又は膠芽腫に罹患している疑いのある個体から得られる。正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるPlacikの発現レベルが低い場合には、神経膠腫が存在することを示している。試料におけるPlacikの発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば試料中のPlacik mRNA又はPlacikポリペプチドのレベルを検出することによって評価することができる。例えば、ウェスタンブロット法、免疫化学技術及び細胞化学技術などのよく知られている多くの技術のいずれかを用いて、Placikの発現を検出することができる。好ましくは、抗Placik抗体を使用して、Placikの発現レベルを検出する。また好ましくは、配列番号:27のポリヌクレオチド配列又はその一部又は配列番号:27に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えば、ノーザンブロット法又はRTPCR技術によってPlacikの発現レベルを検出する。 本発明の他の実施形態は、Placikポリペプチドの存在をインビトロで定量化するための診断キットに関する。かかるキットは、i)抗Placik抗体、任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗Placik抗体を備えるキットは、膵臓癌の診断に、又は神経膠腫の検出又は神経膠腫の悪性度の決定に使用されることが好ましい。任意に、前記診断キットは、正常な個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、膵臓癌又は神経膠腫に罹患している個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。
その他の実施形態は、i)Placikポリペプチドを発現する細胞を培養し、ii)産生されたタンパク質を精製する工程を含む、Placikポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗Placik抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。あるいは、Placikポリペプチドを異種免疫原性ペプチドに融合させてもよく、その融合タンパク質は、異種ペプチドに特異的な抗体を用いて精製される。Placikポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。Placikポリペプチドの作製は、本明細書でさらに記述されるような方法及び組成物において有用であり得る。
本発明の好ましい態様は、プロモーターに作動可能に連結される、Placikポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、Placikポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって、i)プロモーターに作動可能に連結される、Placikポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、前記細胞は大腸菌細胞又はヒト細胞である。その他の好ましい態様は、細胞に存在する場合には、Placikの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。Placikの発現を修飾することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)Placik遺伝子を含む細胞を提供し、ii)Placik発現を変化させるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターが導入される前の前記細胞におけるPlacikの発現レベルと比較して、Placikの発現が増加又は低減する方法によって作製される。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Placik遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、又はPlacik遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Placikコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。Placikポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、Placikポリペプチドを作製することができる。Placikポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、Placikポリペプチドを作製することができる。
本発明の好ましい実施形態は、セリンプロテアーゼを結合及び/又は阻害するためにPlacikを使用する方法である。この方法は、Placikの結合を可能にする条件下にて、Placikポリペプチド又はその活性断片を接触させ、結合によって前記セリンプロテアーゼの活性が阻害される工程を含む。好ましいセリンプロテアーゼとしては、プラスミン、カリクレイン及び第XIa因子が挙げられる。この方法は、例えば、インビトロ用途(例えば、プロテアーゼの精製及びタンパク質分解の検出又は予防)に適用することができる。
本発明の好ましい実施形態は、セリンプロテアーゼを精製する方法である。この方法は、i)結合を可能にする条件下にて、セリンプロテアーゼを含有する溶液又は試料と、担体上に固定化されたPlacikポリペプチドを接触させ、ii)前記担体から混入物を取り除き、iii)結合したセリンプロテアーゼを前記担体から溶出する工程を含む。好ましくは、Placikペプチドを固体又は半固体マトリックス上に固定化し、混入物を除去するための試料の洗浄を容易にする。好ましいセリンプロテアーゼとしては、プラスミン、カリクレイン及び第XIa因子が挙げられる。これらは、通常の生物学的液体、例えば、細胞培養培地及び体液(例えば、血清、血液又はリンパ液)から精製される。精製されたプロテアーゼは、生物学的アッセイ及び培養皿からの付着細胞の除去及び部位特異的なペプチドの設計などの技術において有用である。
その他の好ましい実施形態は、Placikの発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるPlacikの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する工程を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるPlacikの発現の差異によって、試験物質がPlacikの発現を調節することを示す。Placikの発現は、限定されないが、Placikポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるPlacik mRNAの検出)又はPlacikポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるPlacikポリペプチドの検出)を含む、当技術分野で一般的な方法によって決定することが可能である。一実施形態において、その試験物質は特定の細胞型ではPlacikの発現を修飾するが、他の細胞型では修飾しない。例えば、細胞、組織又は個体におけるPlacikの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明のさらなる実施形態は、Placikの活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるPlacikの活性を、非暴露対照細胞の活性と比較する工程を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるPlacikの活性の差異によって、試験物質がPlacikの活性を調節することを示す。Placikの活性は、当技術分野で一般的な多くの技術のうちのいずれかによって決定することができる。その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Delariaら(J Biol Chem. 272:12209-14 (1997))に記載されたように、例えばトリプシン、血漿カリクレイン、組織カリクレイン又はプラスミンに対するその阻害活性をインビトロで測定することによって、Placikの活性をモニターすることができる。あるいは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hamasunaら(Int J Cancer 93:339-45 (2001))に記載されたように、例えば、膠芽腫細胞系の線維素溶解活性を測定することによって、又はU251及びYKG−1細胞のマトリゲルへの浸潤を測定することによって、Placik活性をモニターすることもできる。例えば、細胞、組織又は個体におけるPlacikの活性を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
Placikの発現又は活性を低減する試験物質は、Placikアンタゴニストとして定義される。Placikの発現又は活性を増加する試験物質は、Placikアゴニストとして定義される。Placikの発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、Placikのドミナントネガティブ型及び抗Placik抗体が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法によって製造かつ使用することができる。
本発明の実施形態は、試料中に混入しているプロテアーゼを阻害するためにPlacikポリペプチドを使用する方法に関する。かかる方法は、Placikの活性を可能にする条件下にて、プロテアーゼ阻害量のPlacikポリペプチドを溶液に添加する工程を含む。好ましくは、前記プロテアーゼは、カリクレイン、プラスミン又は第XIa因子である。好ましくは、Placikポリペプチドは、プロテアーゼのいずれかの特異性を必ずしも知ることなく、広範囲のプロテアーゼを阻害することができるプロテアーゼ阻害剤の「カクテル」中に含まれる。かかるプロテアーゼ阻害剤カクテルは、混入プロテアーゼによるいずれかのタンパク質試料の分解を防ぐために、実験アッセイで広く使用されている。
本発明のその他の実施形態は、細胞におけるカリクレイン又はプラスミンを阻害するためにPlacikポリペプチドを使用する方法に関する。かかる方法は、Placikの活性を可能にする条件下にて、カリクレイン阻害量又はプラスミン阻害量のPlacikポリペプチド又はPlacikアゴニストと細胞を接触させる工程を含む。かかる方法は、いずれかの細胞型、最も好ましくは好中球、内皮細胞又は腫瘍細胞において行うことができる。
かかる一実施形態において、細胞におけるカリクレイン又はプラスミンを阻害するためにPlacikポリペプチドを使用する前記方法は、個体において線維素溶解を低減することに向けられる。かかる方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のPlacikポリペプチド又はPlacikアゴニストとを個体に送達する工程を含む。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のPlacikポリペプチド又はPlacikアゴニスト」とは、カリクレイン及び/又はプラスミンのタンパク質分解活性を阻害するのに十分な量のPlacikポリペプチド又はPlacikアゴニストを意味する。好ましくは、かかる方法は、例えば、敗血症又は敗血症性ショック、炎症、急性呼吸窮迫症候群、播種性血管内凝固症候群、低血圧、心肺バイパス手術及び術後の出血などの、カリクレイン及びプラスミンの阻害が示される疾患を治療又は予防することに向けられる。Kunitz型プロテアーゼ阻害剤を送達する方法は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,407,915号及び米国特許第5,786,328号に記載されている。SPINT2及びビクニンと比較して、Placikポリペプチドは、HGF活性化剤を阻害せず、かつ線維素溶解系に関与する酵素に特異的であるという利点を提供する。
本発明のその他の実施形態は、哺乳動物において、又は組織培養物においてECM分解を防ぐ又は低減するために、Placikポリペプチド及びPlacikアゴニストを使用する方法に関する。かかる方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のPlacikポリペプチド又はPlacikアゴニストとを個体又は組織に送達する工程を含む。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のPlacikポリペプチド又はPlacikアゴニスト」とは、ECM分解を抑制又は低減するのに十分な量のPlacikポリペプチド又はPlacikアゴニストを意味する。好ましくは、ECM分解を防ぐ、又は低減するためのかかる方法は、悪性細胞による分解からEMCを保護し、したがって、悪性腫瘍の浸潤及び広がりをブロックすることに向けられる。最も好ましくは、Placikポリペプチドを含む組成物は、例えば、腫瘍成長、内皮細胞増殖及び腫瘍成長と関連する血管形成などの異常な又は望ましくない細胞増殖を有する個体に投与される。本発明の組成物で治療することができる腫瘍には、限定されないが、膵臓癌、神経膠腫、未分化星状細胞腫及び膠芽腫が含まれる。かかる一実施形態において、Placikポリペプチドを、治療される腫瘍に特異的な標的分子に融合してもよい。治療される腫瘍に特異的な前記標的分子には、限定されないが、腫瘍細胞上に特異的に発現される受容体又は抗原を認識する、リガンド及び抗体が含まれる。多くの腫瘍関連抗原が科学文献に記述されている。例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wikstrandら(Cancer Metastasis Rev 18:451-64 (1999))によって記述されている抗原及び技術を用いることができる。あるいは、腫瘍の脈管構造を認識するリガンドに、Placikポリペプチドを連結してもよい。固形腫瘍の脈管構にPlacikポリペプチドを標的化するための好ましい方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,004,554号に記述されている。
Placikポリペプチド又はPlacik修飾因子の有効な投薬量は、例えば、用量反応曲線を確立する日常試験によって、当業者により容易に決定することができる。通常の投与計画は、例えば、ビクニン、SPINT2及びアプロチニンなどの他の類似のタンパク質を使用することにより、上記の疾患の治療に類似しているだろう。生理学的に許容される担体と、Placikポリペプチド又はPlacik修飾因子とを含む組成物の投与頻度及び投与量は、治療される特定の疾患、その重症度、用いられるPlacikポリペプチド又はPlacik修飾因子の性質、個体の全体的な状態及び治療を施す医師の判断によるだろう。
本明細書において使用される「生理学的に許容される担体」という用語は、個体及び用いられるPlacikポリペプチド又はPlacikアゴニストと適合性であり、かつ動物及びさらに特にはヒトにおける使用に関して、連邦政府又は州政府の管理機関によって承認されているか、又は米国薬局方又は他の一般に認知されている薬局方において示されている組成物を意味する。前記生理学的に許容される担体としては、限定されないが、溶液及び懸濁液、例えば、生物学的バッファー(例えば、リン酸緩衝液、生理食塩及びダルベッコ培地)、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤及び崩壊剤が挙げられる。生理学的に許容される担体と、本発明のポリペプチド又は修飾因子とを含む組成物は、例えば、静脈内、非経口、表面、経口又は局所(例えば、エアロゾル及び経皮的)投与又はそのいずれかの組み合わせなどの適切な方法で投与される。好ましい投与経路は、静脈内及び経口投与を含む。
さらに他の実施形態は、Placikポリペプチドをコードする核酸配列又はPlacikポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子を用いて遺伝子導入動物(例えば、マウス)を作製する方法に関する。遺伝子導入動物を作製する方法は当業者にはよく知られている。例えば、遺伝子導入マウスは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,736,866、又は米国特許第5,614,396号に従って作製することができる。一方、Placikを過剰発現する遺伝子導入マウスを作製することができる。かかる遺伝子導入動物は、悪性腫瘍の浸潤及び広がりの素因が与えられた動物モデルを得るのに、急性呼吸窮迫症候群及び播種性血管内凝固症候群などの疾患の動物モデルを得るのに、又はかかる疾患の治療における化学化合物の有用性を試験するのに有用であり得る。
配列番号:30のタンパク質(内部指定クローン500728413_204−53−2−0−B2−F)
クローン500728413_204−53−2−0−B2−FのcDNA(配列番号:29)は、アミノ酸配列:MTVARPSVPAALPLLGELPRLLLLVLLCLPAVWGDCGLPPDVPNAQPALEGRTSFPEDTVITYKCEESFVKIPGEKDSVICLKGSQWSDIEEFCNQKSCPNPGEIRNGQIDVPGGILFGATISFSCNTGYKLFGSTSSFCLISGSSVQWSDPLPECREIYCPAPPQIDNGIIQGERDHYGYRQSVTYACNKGFTMIGEHSIYCTVNNDEGEWSGPPPECRGKSLTSKVPPTVQKPTTVNVPTTEVSPTSQKTTTKTTTPNAQATRSTPVSRTTKHFHETTPNKGSGTTSGTTRLLSGHTCFTLTGLLGTLVTMGLLTを含む、配列番号:30のCodeacをコードする。
したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:30のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン500728413_204−53−2−0−B2−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:##のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン500728413_204−53−2−0−B2−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:30、配列番号:29及びクローン500728413_204−53−2−0−B2−Fのヒトポリヌクレオチド及びポリペプチド組成物に対して向けられている。以下に記載の方法で使用される好ましいCodeacポリペプチド断片としては、アミノ酸配列:DCGLPPDVPNAQPALEGRTSFPEDTVITYKCEESFVKIPGEKDSVICLKGSQWSDIEEFCNQKSCPNPGEIRNGQIDVPGGILFGATISFSCNTGYKLFGSTSSFCLISGSSVQWSDPLPECREIYCPAPPQIDNGIIQGERDHYGYRQSVTYACNKGFTMIGEHSIYCTVNNDEGEWSGPPPECRGKSLTSKVPPTVQKPTTVNVPTTEVSPTSQKTTTKTTTPNAQATRSTPVSRTTKHFHETTPNKGSGTTSGTTRLLSGHTCFTLTGLLGTLVTMGLLTを含むCodeacポリペプチドが挙げられる。
以下に記載の方法で使用される最も好ましいCodeacポリペプチド断片としては、アミノ酸配列:DCGLPPDVPNAQPALEGRTSFPEDTVITYKCEESFVKIPGEKDSVICLKGSQWSDIEEFCNQKSCPNPGEIRNGQIDVPGGILFGATISFSCNTGYKLFGSTSSFCLISGSSVQWSDPLPECREIYCPAPPQIDNGIIQGERDHYGYRQSVTYACNKGFTMIGEHSIYCTVNNDEGEWSGPPPECRGKSLTSKVPPTVQKPTTVNVPTTEVSPTSQKTTTKTTTPNAQATRSTPVSRTTKHFHETTPNKGSGTTSGを含むCodeacポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、Codeacは、補体崩壊促進因子(CD55,EMBLアクセッション番号M31516)の新規な分泌スプライスバリアントである。第1エクソン及び第2エクソンは、Codeac mRNA及びCD55 mRNAにおいて同一である。CD55 mRNAの第3エクソンは、Codeac mRNAには存在しない。以下の5つのエクソンは、両方のmRNAにおいて同一である。Codeacは、シグナルペプチド(MTVARPSVPAALPLLGELPRLLLLVLLCLPAVWG)、成熟型で除去される、カルボキシル末端のプロペプチド(TTRLLSGHTCFTLTGLLGTLVTMGLLT)及び3つのsushiドメイン(CGLPPDVPNAQPALEGRTSFPEDTVITYKCEESFVKIPGEKDSVICLKGSQWSDIEEFCN、SCPNPGEIRNGQIDVPGGILFGATISFSCNTGYKLFGSTSSFCLISGSSVQWSDPLPECR及びCPAPPQIDNGIIQGERDHYGYRQSVTYACNKGFTMIGEHSIYCTVNNDEGEWSGPPPECRGKS)を示す。得られる成熟Codeacポリペプチドは、256アミノ酸の長さである。配列番号:30の1〜61位のアミノ酸は、成熟CD55ポリペプチドのアミノ末端側61個のアミノ酸と同一である。配列番号:30の62位のグルタミンは、Codeacに固有である。配列番号:30の63〜256位のアミノ酸は、EMBLアクセッション番号M31516で示されるCD55ポリペプチドの161〜354位のアミノ酸と同一である。Codeacは、CD55と比較して64アミノ酸のスパンを欠く。このように、4つのsushiドメインを示すCD55に対して、Codeacは、CD55の2番目のsushiドメインを欠き、3つのsushiドメインのみを示す。
Codeacは、補体活性化ファミリーの制御因子のメンバーであるGPIアンカー型タンパク質である。それは、広範な組織分布を有し、多くの異なる細胞型にて高レベルで発現される。特に、Codeacは、細胞外コンパートメントを被覆(lining)する上皮細胞上、ならびに血漿、体液及び細胞外マトリックスと接触している細胞上で発現する。Codeacの細胞のリガンドは、CD97であり、EGF−TM7ファミリーのメンバーである。CD97は、顆粒球及び単球上で構成的に発現され、活性化T細胞及びB細胞上で迅速にアップレギュレートされる。Codeac−CD97の相互作用は、接着において、ならびに正常な炎症反応及び免疫応答内のシグナル伝達において役割を担う。
さらに、Codeacは、様々なウイルス及び細菌病原体に対して受容体として機能する。したがって、Codeacは、感染状態における結合病原体の保有体(reservoir)の維持に、病原体上の膜侵襲複合体の集合の阻害に、及びウイルス溶解性細胞感染の仲介に貢献する。CD55に対して、Codeacは、補体系のC3b及びC4bコンバターゼに結合せず、それらの表面上の自己補体の活性化から宿主細胞を保護しない。
本発明の実施形態は、配列番号:30の、配列番号:30と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するCodeacポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、CD97及び/又はウイルス及び細菌病原体に結合するCodeacポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「Codeacポリペプチド」とは、配列番号:30の、配列番号:30と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のCodeacポリペプチド配列又は配列番号:30の61〜63位に示される隣接アミノ酸を含み、かつCD97及び/又はウイルス及び細菌病原体に結合するCodeacポリペプチド断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、Codeacポリペプチドをコードする配列番号:29のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、Codeacポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「Codeacポリヌクレオチド」とは、配列番号:29の又は配列番号:29と少なくとも70%、80%、90%、95%以上の同一性を有するCodeacポリヌクレオチド配列、Codeacポリペプチドをコードするヌクレオチド配列又はこれらの配列のいずれかに相補的な配列のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、Codeacポリペプチドを認識する抗体に関する。好ましくは、その抗体は、配列番号:30の61〜63位として示される隣接アミノ酸のうちの少なくとも2つを認識し、前記アミノ酸は、Codeacポリペプチドへの抗体の結合に必要とされる。また好ましくは、その抗体は、EEFCNQKSCPNPGEIRNGQIDエピトープを認識する。最も好ましくは、その抗体はCodeacに結合するが、CD55には結合しない。本明細書で使用される「抗Codeac抗体」とは、Codeacポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、Codeacポリペプチドに抗Codeac抗体を結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、Codeacポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書にさらに記述されるようにCodeacポリペプチドの検出に有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるCodeacポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗Codeac抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗Codeac抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗Codeac抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的ないずれかの検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。かかる方法は、例えば、以下にさらに記述するように、種々の疾患の診断に適用することができる。
本発明の実施形態は、生体試料におけるCodeacの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)試料におけるCodeacの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるCodeacの発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。Codeacの発現の検出は、例えば癌、発作性夜間血色素尿症、潰瘍性大腸炎及び関節症などの様々な疾患の診断に有用である。試料におけるCodeacの発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば、試料中のCodeac mRNA又はCodeacポリペプチドのレベルを検出することによって評価することができる。例えば、ウェスタンブロット法、免疫化学技術及び細胞化学技術などのよく知られている多くの技術のいずれかを用いて、Codeacの発現を検出することができる。
用いることができる最も好ましい公知の技術は、フローサイトメトリーアッセイ、免疫組織化学的技術及び抗Codeac抗体を用いた免疫ペルオキシダーゼ染色法である。最も好ましくは、抗Codeac抗体を使用して、Codeacの発現レベルを検出する。また好ましくは、配列番号:29のポリヌクレオチド配列又はその一部、又は配列番号:29に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えば、ノーザンブロット法又はRTPCR技術によってCodeacの発現レベルを検出する。
かかる一実施形態において、前記生体試料は、癌に罹患しやすい個体から得られ、その方法は、例えば、結腸直腸癌、頸癌、腎臓癌、乳癌、卵巣癌、扁平上皮癌、肝癌又は骨肉種などの癌の診断に使用される。例えば、潜血の非存在下で結腸直腸癌を検出するためのCodeacの発現の測定は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,695,945号に記載されたように行うことができる。かかる方法において、正常な個体におけるレベルを表す対照試料におけるレベルと比較して、前記生体試料におけるCodeacの発現レベルが高い場合には、癌が存在することを示している。
その他のかかる実施形態において、前記生体試料は、潰瘍性大腸炎に罹患している可能性のある個体から得られ、正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるCodeacの発現レベルが高い場合には、潰瘍性大腸炎であることを示している。この実施形態で使用される好ましい生体試料は、結腸粘膜又は結腸上皮細胞から得られる生体試料である。潰瘍性大腸炎の診断のためのCodeacの発現の検出は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Uesu ら(Lab Invest. 72:587-91 (1995))に記載されたように行うことができる。
さらに他のかかる実施形態において、前記生体試料は、発作性夜間血色素尿症(PNH)、Inab表現型、全身性硬化症又は、例えば、慢性関節リウマチなどの種々の関節症に罹患している可能性のある個体から得られる。かかる方法において、正常な個体におけるレベルを表す対照試料におけるレベルと比較して、前記生体試料におけるCodeacの発現レベルが低い場合には、これらの疾患のうちの1つが存在することを示している。全身性硬化症を診断するための好ましい生体試料は、皮膚のパンチ生検から得られる生体試料である。全身性硬化症を診断するためのCodeacの発現の検出は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Vennekerら(Lab Invest. 70:830-5 (1994))に記載されたように、行うことができる。PNHの診断のための好ましい生体試料は、赤血球及び/又は顆粒球を含有する血液試料から得られる。PNHを診断するためのCodeacの発現の検出は例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Oelschlaegelら(Clin Lab Haematol. 23:81-90 (2001))に記載されたように、行うことができる。慢性関節リウマチを診断するための好ましい生体試料は、好中球を含む血液試料から得られる生体試料である。慢性関節リウマチを診断するためのCodeacの発現の検出は例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Jonesら(Br J Rheumatol. 33:707-12 (1994))に記載されたように、行うことができる。
本発明のその他の実施形態は、Codeacポリペプチドの存在をインビトロで定量化するための診断キットに関する。かかるキットは、i)抗Codeac抗体、任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗Codeac抗体を備えるキットは、本明細書に記載の疾患のうちの1つを診断するために使用されることが好ましい。任意に、前記診断キットは、健康な、疾患を持たない個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、癌、潰瘍性大腸炎、PNH、Inab表現型、全身性硬化症及び関節疾患からなる群から選択される特定の疾患に罹患している個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。
さらに他の実施形態は、例えば、免疫電子顕微鏡法又は免疫組織化学染色法によって、Codeacポリペプチドをインビボで検出するために、抗Codeac抗体を使用する方法に関する。腫瘍イメージングに有用なかかる方法は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるLiら(Br J Cancer 84:80-6 (2001))に記載されている。
その他の実施形態は、i)Codeacポリペプチドを発現する細胞を、前記ポリペプチドの発現の助けとなる条件下にて培養し、ii)産生されたポリペプチドを精製する工程を含む、Codeacポリペプチドを作製する方法に関する。そのポリペプチドの精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗Codeac抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。あるいは、Codeacポリペプチドを異種免疫原性ペプチドに融合させてもよく、その融合タンパク質は、異種ペプチドに特異的な抗体を用いて精製される。Codeacポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。Codeacポリペプチドの作製は、本明細書でさらに記述されるような方法及び組成物において有用であり得る。
本発明の好ましい態様は、プロモーターに作動可能に連結される、Codeacポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、Codeacポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって、i)プロモーターに作動可能に連結される、Codeacポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、前記細胞は大腸菌細胞又はヒト細胞である。その他の好ましい態様は、細胞に存在する場合には、Codeacの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。Codeacの発現を修飾することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)Codeac遺伝子を含む細胞を提供し、ii)Codeacの発現を変化させるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターが導入される前の前記細胞におけるCodeacの発現レベルと比較して、Codeacの発現が増加又は低減する方法によって作製される。
好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Codeac遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、又はCodeac遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Codeacコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。Codeacポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、Codeacポリペプチドを作製することができる。
さらなる態様において、本発明は、Codeacポリペプチドと生理学的に許容される担体とを含む癌ワクチン、ならびに有効量の前記癌ワクチンを個体に投与する工程を含む、前記癌ワクチンを使用する方法であって、前記癌ワクチンが、前記Codeacポリペプチドに対して前記個体において免疫応答を誘導する方法を提供する。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量の癌ワクチン」とは、個体、例えば、癌患者においてCodeacポリペプチドに対する免疫応答を誘導するのに十分な量のワクチンを意味する。その免疫応答は、ヘルパーT細胞の応答、細胞障害性T細胞の応答、NK細胞の応答及び/又は免疫応答のうちの1つ又は複数であり得る。かかる方法は、高レベルのCodeacポリペプチドを発現する癌細胞に対してT細胞の応答を選択的に標的化する方法を提供する。かかる方法は、791Tgp72の代わりに本発明のポリペプチドを使用することによって、その開示内容全体が参照により組み込まれる、国際特許出願公開番号:WO99/43800に記載されたように行うことができる。かかる方法で使用される好ましいCodeacポリペプチドは、Codeacに対しては免疫応答を誘導するが、CD55に対しては誘導しないCodeacポリペプチドである。かかる免疫原性Codeacポリペプチドは、配列番号:30の61〜63位として示される隣接アミノ酸のうちの少なくとも2つを含む。好ましいかかる免疫原性Codeacポリペプチドは、EEFCNQKSCPNPGEIRNGQIDエピトープを含む。791Tgp72を含有する癌ワクチンと比較して、かかる免疫原性Codeacポリペプチドを含有する癌ワクチンは、CD55に対して抗体を誘導せず、したがって、補体により仲介される攻撃からの細胞の保護が低下しないという利点を提供する。
あるいは、抗Codeac抗体は、高レベルのCodeacポリペプチドを発現する腫瘍細胞に薬物を運ぶための標的化及び送達メカニズムとして使用することが可能である。かかる方法は、i)抗Codeac抗体を薬物にコンジュゲートさせ、ii)前記コンジュゲートと薬学的に許容される担体とを含む組成物を、癌に罹患している個体に投与する工程を含む。好ましくは、抗Codeac抗体は、i)比較的無毒性の化合物を実質的にさらに毒性の化合物に転化する酵素に、抗Codeac抗体を結合させ、ii)残りの酵素−抗体コンジュゲートを血液から一掃することを可能にする遅延の後に、前記無毒性化合物を患者に投与する工程を含む、酵素プロドラッグ抗体(antibody-directed enzyme-prodrug)治療法において使用される。かかる方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Meltonら( J. Natl. Cancer Inst. 88:153-65 (1996))に記載されたように行うことができる。
その他の好ましい実施形態は、Codeacの発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるCodeacの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する工程を含む方法に関し。暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるCodeacの発現の差異によって、試験物質がCodeacの発現を調節することを示す。Codeacの発現は、限定されないが、Codeacポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるCodeac mRNAの検出)又はCodeacポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるCodeacポリペプチドの検出)を含む、当技術分野で一般的な方法によって決定することが可能である。一実施形態において、その試験物質は特定の細胞型ではCodeacの発現を修飾するが、他の細胞型では修飾しない。好ましい細胞型は、例えば、上皮細胞、線維芽細胞及び腫瘍細胞を含む。例えば、細胞、組織又は個体におけるCodeacの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明のさらなる実施形態は、Codeacの活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるCodeacの活性を、非暴露対照細胞における活性と比較する工程を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるCodeacの活性の差異によって、試験物質がCodeacの活性を調節することを示す。Codeacの活性は、当技術分野で一般的な多くの技術のうちのいずれかによって決定することができる。その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Linら(J Biol Chem. 276:24160-9 (2001))に記載されたように、例えばCD97発現細胞へのCodeac発現細胞の接着を研究することによって、Codeacの活性をモニターすることができる。あるいは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Nowickiら(J Exp Med. 178:2115-21 (1992))に記載されたように、付着因子発現細胞へのCodeac発現細胞の接着を研究することによって、Codeac活性をモニターすることもできる。例えば、細胞、組織又は個体におけるCodeacの活性を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
Codeacの発現又は活性を低減する試験物質は、Codeacアンタゴニストとして定義される。Codeacの発現又は活性を増加する試験物質は、Codeacアゴニストとして定義される。Codeacの発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、炭水化物、脂質及びポリペプチド(例えば、天然リガンド、転写制御因子、Codeacのドミナントネガティブ型、免疫原性Codeacポリペプチド及び抗Codeac抗体)が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法によって製造かつ使用することができる。
本発明の好ましい実施形態は、CD97に結合するCodeacポリペプチドを使用する方法である。この方法は、Codeacの結合を可能にする条件下にて、CD97又はその断片とCodeacポリペプチドを接触させる工程を含む。この方法は、例えば、以下にさらに記述するようにインビトロの用途に適用することが可能である。
好ましい実施形態において、CD97へのCodeacポリペプチドの結合を利用して、CD97を発現する細胞を精製する。CD97を発現する細胞を精製するためのかかる方法は、i)検出可能なシグナルを提供するために使用することができる分子で、Codeacポリペプチドを標準法により標識し、ii)前記標識化Codeacポリペプチドを含有する、選別装置、例えば、蛍光活性化細胞選別装置又は磁気活性化細胞選別装置に、CD97を発現する細胞を含有する体液を通す工程を含む。CD97は、活性化リンパ球上にて高レベルで発現され、かかる方法は、例えば、ヒトリンパ球亜集団の精製に使用することが可能である。リンパ球亜集団の精製は、例えば、正常及び異常な免疫反応のメカニズム及び相互作用の理解、ウイルスに対するT細胞療法の実施又はT細胞刺激抗原の同定に極めて重要である。
本発明の実施形態は、Codeac−CD97相互作用を高めるためにCodeacポリペプチド又はCodeacアゴニストを使用し、それによって、望ましくない免疫応答を変化させる、又は低減する方法に関する。好ましい実施形態において、かかる方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のCodeacポリペプチド又はCodeacアゴニストとを個体に送達する工程を含む。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のCodeacポリペプチド又はCodeacアゴニスト」とは、免疫応答を低減するのに十分な量のCodeacポリペプチド又はCodeacアゴニストを意味する。好ましくは、免疫応答を低減するためのかかる方法は、アレルギー及び喘息を治療すること、及び望ましくない免疫応答を防ぐことに向けられる。特に、かかる方法を用いて、移植拒絶反応、移植片対宿主疾患及び自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、肝炎、グレーブス病)を予防又はその重症度を低減すること、及び移植片の移植(例えば、細胞、骨髄、組織、固体器官、骨)に対する抵抗性(tolerance)を誘導することができる。
本発明のその他の実施形態は、Codeac−CD97相互作用を阻害するためにCodeacアンタゴニストを使用し、その結果、免疫応答が高められる方法に関する。免疫応答を高めることに向けられる好ましい方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のCodeacアンタゴニストとを、免疫系に追加免疫することが望ましい疾患及び障害に罹患している個体に送達する工程を含む。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のCodeacアンタゴニスト」とは、免疫応答を高めるのに十分な量のCodeacアンタゴニストを意味する。特に、かかる方法は、癌を治療する場合に放射線療法又は化学療法と組み合わせて用いることが可能であり、腫瘍性疾患(例えば、多発性骨髄腫、結腸癌、肝癌)、ウイルス感染(例えば、HIV、HBV、HCV、肝炎、麻疹及びヘルペスウイルス感染)及び種々の免疫不全を治療するために用いることができる。これらの免疫不全は、遺伝的(例えば、重症複合免疫不全症)であるか、又は様々な細菌もしくは真菌感染(例えば、マイコバクテリア、リーシュマニア、マラリア、及びカンジダによる感染)により引き起こされる。
本発明の好ましい実施形態は、ウイルス及び細菌病原体に結合する、Codeacポリペプチドを使用する方法である。この方法は、Codeacポリペプチドをウイルス又は細菌病原体と、前記病原体への前記ポリペプチドの結合を可能にする条件下にて接触させる工程を含む。この方法で使用される好ましい病原体としては、限定されないが、病原性大腸菌、ヘリコバクター・ピロリ、コクサッキーウイルス及びエコーウイルスが挙げられる。あるいは、病原体の細胞表面タンパク質を病原体の代わりに使用することができる。好ましいかかる表面タンパク質は、付着因子である。病原体へのCodeacの結合を可能にする多種多様な条件が利用可能である。かかる条件は例えば、Schmidtkeら (Virology. 275(1):77-88 (2000))に記載されている。ウイルス及び細菌病原体を結合させるためのCodeacポリペプチドの使用は、例えば、以下にさらに記述するようにインビトロ用途に適用することができる。
この実施形態の好ましい態様は、病原体を単離又は精製するためにCodeacポリペプチドを使用する方法を包含する。この方法は、i)結合を可能にする条件下にて、病原体を含有する可能性のある溶液又は生体試料と、担体上に固定化されたCodeacポリペプチドを接触させ、ii)前記担体から混入物を除去し、iii)結合した病原体を前記担体から溶出する工程を含む。好ましくは、Codeacペプチドを固体又は半固体マトリックス上に固定化し、混入物を除去するための試料の洗浄を容易にする。好ましい病原体としては、大腸菌、ヘリコバクター・ピロリ、コクサッキーウイルス、ピコルナウイルス及びエコーウイルスが挙げられる。これらは、一般的な生物学的液体、例えば細胞培養培地、体の試料から得られる体液及び液体試料(例えば、血清、血液、リンパ液、尿、胃粘膜及び屎)から単離される。かかる方法は例えば、ある疾患が病原体により引き起こされるかどうかを決定するのに、又は慢性感染を引き起こす病原体を決定するのに有用である。
本発明のその他の好ましい実施形態は、Codeac−病原体相互作用を阻害するために、Codeacアンタゴニストを使用し、それによって、感染状態における結合病原体の保有体を低減する方法に関する。かかる方法は、慢性感染症に罹患している患者に、生理学的に許容される担体と、有効量のCodeacアンタゴニストとを送達する工程を含む。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のCodeacアンタゴニスト」とは、Codeacへの病原体の結合を低減するのに十分な量のCodeacアンタゴニストを意味する。かかる方法によって治療すること、又はその重症度を低減することが可能な慢性感染症には、限定されないが、ヘリコバクター・ピロリ又は大腸菌に関連する腸管感染症、ピコルナウイルス関連疾患、コクサッキーウイルス関連疾患(例えば、心疾患、膵臓感染症、急性弛緩性麻痺及び新生児の神経発達遅延など)及びエコーウイルス関連疾患(例えば、脳脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症、肝不全及び髄膜炎など)が含まれる。
Codeacポリペプチド又はCodeac修飾因子の有効な投薬量は、例えば、用量反応曲線を確立する日常試験によって、当業者により容易に決定することができる。生理学的に許容される担体と、Codeacポリペプチド又はCodeac修飾因子とを含む組成物の投与頻度及び投与量は、治療される特定の疾患、その重症度、用いられるCodeacポリペプチド又はCodeac修飾因子の性質、個体の全体的な状態及び治療を施す医師の判断によるだろう。
本明細書において使用される「生理学的に許容される担体」という用語は、個体及び用いられるCodeacポリペプチド又はCodeac修飾因子と適合性であり、かつ動物及びさらに特にはヒトにおける使用に関して、連邦政府又は州政府の管理機関によって承認されているか、又は米国薬局方又は他の一般に認知されている薬局方において示されている、組成物を意味する。前記の生理学的に許容される担体としては、限定されないが、溶液及び懸濁液、例えば生物学的バッファー(例えば、リン酸緩衝液、生理食塩及びダルベッコ培地)、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤及び崩壊剤が挙げられる。生理学的に許容される担体と、本発明のポリペプチド又は修飾因子とを含む組成物は、例えば、静脈内、非経口、表面、経口又は局所(例えば、エアロゾル及び経皮的)投与又はそのいずれかの組み合わせなどの適切な方法で投与される。好ましい投与経路は、静脈内及び経口投与を含む。
さらに他の実施形態は、Codeacポリペプチドをコードする核酸配列又はCodeacポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子を用いて遺伝子導入動物(例えば、マウス)を作製する方法に関する。遺伝子導入動物を作製する方法は当業者にはよく知られている。例えば、Codeacポリペプチドを過剰発現し、かつ胃及び小腸の上皮細胞のヘリコバクター・ピロリ感染のモデルとしての役割を果たし得る遺伝子導入マウスは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,625,124号に従って作製かつ使用することができる。かかる遺伝子導入動物は、様々な慢性感染症及び特定の免疫応答の素因が与えられた動物モデルを得るのに、又はかかる疾患の治療における化学化合物の有用性を試験するのに有用であり得る。
配列番号:32のタンパク質(内部指定クローン131715_105−090−4−0−D2−F)
クローン131715_105−090−4−0−D2−FのcDNA(配列番号:31)は、アミノ酸配列:MWVPVVFLTLSVTWIGAAPLILSRIVGGWECEKHSQPWQVLVASRGRAVCGGVLVHPQWVLTAAHCIRNKSVILLDRSRTGPGSAAARGCRWPPYGIRLQGGRAAGMWREを含む、配列番号:32のProspanをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:32のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン131715_105−090−4−0−D2−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。
さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:##のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン131715_105−090−4−0−D2−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:32、配列番号:31及びクローン131715_105−090−4−0−D2−Fのヒトポリヌクレオチド及びポリペプチド組成物に対して向けられている。
以下に記載の方法で使用される好ましいProspanポリペプチド断片としては、アミノ酸配列:PLILSRIVGGWECEKHSQPWQVLVASRGRAVCGGVLVHPQWVLTAAHCIRNKSVILLDRSRTGPGSAAARGCRWPPYGIRLQGGRAAGMWREを含むProspanポリペプチドが挙げられる。以下に記載の方法で使用される最も好ましいProspanポリペプチド断片としては、アミノ酸配列:IVGGWECEKHSQPWQVLVASRGRAVCGGVLVHPQWVLTAAHCIRNKSVILLDRSRTGPGSAAARGCRWPPYGIRLQGGRAAGMWREを含むProspanポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、Prospanは、前立腺特異的抗原(PSA,EMBLアクセッション番号NP_001639)の新規な分泌スプライスバリアントである。2つの第1エクソンは、Prospan mRNA及びPSA mRNAにおいて同一である。Prospan mRNAの第3エクソンは、PSA mRNAの第3エクソンよりも、その3’末端において短い。Prospan mRNAの第4エクソンは、PSA mRNAの第4エクソンよりも、その3’及び5’末端において長い。Prospanは、シグナルペプチド(MWVPVVFLTLSVTWIGAAPLILS)、成熟型で切断されるプロペプチド(PLILSR)及びヒスチジン活性部位コンセンサスにわたるトリプシンドメイン(IVGGWECEKHSQPWQVLVASRGRAVCGGVLVHPQWVLTAAHCIRNKSVIL)を示す。
Prospanは、カリクレインファミリーの新規なメンバーである。それは、通常の過形成性及び癌性前立腺上皮によって分泌される。Prospanはアンドロゲンによってアップレギュレートされ、Prospanの発現レベルは、前立腺腫瘍の悪性度と正に相関する。Prospanは、精液中に見出され、血液及び血清において低レベルで見出される。Prospanは、前立腺癌及び乳癌などの他の癌の早期の検出、ステージング、予後及びモニタリングに有用である。
本発明の実施形態は、配列番号:32の、又は配列番号:32と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するProspanポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:32のProspanポリペプチド配列のカルボキシル末端側34個のアミノ酸のうちの1つ又は複数を含有するProspanポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「Prospanポリペプチド」とは、配列番号:32の又は配列番号:32と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のProspanポリペプチド配列、又は配列番号:32のProspanポリペプチド配列のカルボキシル末端側34個のアミノ酸のうちの1つ又は複数を含有するその断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、Prospanポリペプチドをコードする配列番号:31のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、Prospanポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書でさらに使用される「Prospanポリヌクレオチド」とは、配列番号:31の、又は配列番号:31と少なくとも70%、80%、90%、95%以上の同一性を有するProspanポリヌクレオチド配列、Prospanポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:32のProspanポリペプチド配列又はProspanポリペプチド断片を認識する抗体に関する。好ましくは、配列番号:32のProspanポリペプチド配列のカルボキシル末端側34個のアミノ酸のうちの1つ又は複数は、前記Prospanポリペプチドへの前記抗体の結合に必要である。前記抗体により認識される好ましいエピトープは、DRSRTGPGのアミノ酸配列及びRGCRWPPYのアミノ酸配列を含む。最も好ましくは、その抗体はProspanには結合するが、PSAには結合しない。本明細書で使用される「抗Prospan抗体」とは、Prospanポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、抗Prospan抗体をProspanポリペプチドに結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、Prospanポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書にさらに記述されるように、Prospanポリペプチドの検出に有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるProspanポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗Prospan抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗Prospan抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗Prospan抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的ないずれかの検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物又は酵素化合物)によって標識することができる。Prospanポリペプチドの検出は、例えば、生体試料におけるProspanの発現の検出に、例えば、以下にさらに記述するように、診断の目的に有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるProspanの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)試料におけるProspanの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるProspanの発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。試料におけるProspanの発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば、試料中のProspan mRNA又はProspanポリペプチドのレベルを検出することによって評価することができる。例えば、ウェスタンブロット法、免疫化学技術及び細胞化学技術などのよく知られている技術を用いて、Prospanの発現を検出することができる。好ましくは、抗Prospan抗体を使用して、Prospanの発現レベルを検出する。
また、好ましくは、配列番号:31のポリヌクレオチド配列又はその一部、又は配列番号:31に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えばノーザンブロット法又はRTPCR技術によってProspanの発現レベルを検出する。好ましい生体試料としては、血液、血清、尿又は精液から得られる試料が挙げられる。
Prospanの発現レベルの検出は、癌、例えば、前立腺癌の検出に役立つ。かかる方法において、正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるProspanの発現レベルが高い場合には、前立腺癌であること、及び/又は前立腺癌の素因があることを示している。さらに、Prospanの発現は、癌の悪性度及び癌のステージと正に相関する。その代わりに、Prospanの発現レベルとPSAの発現レベルとの比、又はPSAの発現レベルとProspanの発現レベルの総量を決定することが可能であり、前立腺癌であること、前立腺癌の素因があること、前立腺癌の悪性度又はそのステージを示すことができる。様々な組織におけるProspan及びPSAの差次的発現を確立することも可能である。前立腺癌を検出するためのProspanの発現レベルの検出は例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,935,818号又は国際特許出願公開番号:WO/0049158に記載されたように行うことができる。
一方、Prospanの発現レベルの検出は、卵巣癌又は乳癌を検出する方法においても役立ち、その方法では、正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるProspanの発現レベルが高い場合には、癌であることを示している。その開示内容全体が参照により組み込まれる米国特許第6,235,486号に記載されている乳癌の診断、治療及び/又はその進行及び寛解のモニタリングの方法は例えば、hK2の代わりにProspanを用いて行うことができる。
この実施形態の一態様において、生体試料におけるProspanの発現レベルは、抗Prospan抗体を用いて決定される。かかる方法は、i)個体から生体試料を得、ii)結合を生じさせる条件下にて、検出可能な抗Prospan抗体と前記生体試料を接触させ、iii)形成された抗原−抗体複合体を検出し、iv)前記試料において検出された抗原−抗体複合体のレベルを、対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。かかる方法は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,614,372号及びLiedtkeら(Clin Chem 30:649-52 (1984))に記載の方法などのイムノアッセイを含む。
この実施形態のその他の態様では、生体試料におけるProspanの発現レベルは、Prospanポリヌクレオチドを用いて決定される。かかる一方法は、i)個体から生体試料を得、ii)核酸配列のハイブリダイゼーションを可能にする条件下にて、前記生体試料をProspanポリヌクレオチドプローブと接触させ、それによって前記Prospanポリヌクレオチドプローブと、前記試料に存在するいずれかの内因性Prospanポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーション複合体の形成を可能とし、iii)ハイブリダイゼーション複合体を検出し、iv)前記試料において検出されるハイブリダイゼーション複合体のレベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。その他のかかる方法は、i)個体から生体試料を得、ii)Prospanポリヌクレオチドを特異的に増幅するプライマーを得、iii)前記プライマーを用いて、対象の前記生体試料でネステッドポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、iv)増幅産物を検出し、v)前記試料において検出される増幅産物のレベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。
その他の本発明の実施形態は、Prospanポリペプチドの存在をインビトロで検出するための診断キットに関する。かかるキットは、i)抗Prospan抗体、任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗Prospan抗体を備えるキットは、前立腺癌又は乳癌の診断に向けられることが好ましい。任意に、前記診断キットは、疾患を持たない健康な個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、特定の疾患、例えば癌、特に前立腺癌に罹患している個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、例えば抗PSA抗体などの他の抗体を備える。
さらなる実施形態は、Prospanポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドプローブのアレイに関する。好ましくは、前記Prospanポリヌクレオチドは、固体担体上の既知の位置にそれぞれ存在するプローブのアレイの一部である。好ましくは、前記アレイは、前立腺癌の検出、ステージング、予後及びモニタリングのマーカーである、他のポリヌクレオチドを含む。これらのマイクロアレイは例えば、前立腺癌を診断するために、又は前立腺癌に罹患しやすい家族において疫学的研究を行うために使用することができる。前記アレイの一部であり得る他のマーカーとしては、限定されないが、アポリポタンパク質E対立遺伝子、PG1対立遺伝子、Bap28対立遺伝子、フィブロネクチン対立遺伝子、PurH対立遺伝子及びPCTA−1対立遺伝子が挙げられる。
その他の実施形態は、i)Prospanポリペプチドを発現する細胞を、前記ポリペプチドの発現の助けとなる条件下にて培養し、ii)産生されたポリペプチドを精製する工程を含む、Prospanポリペプチドを作製する方法に関する。そのポリペプチドの精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗Prospan抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。Prospanポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。精製Prospanポリペプチドの作製は、本明細書で記述されるように抗Prospan抗体の作製に有用である。
本発明の好ましい態様は、Prospanポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、Prospanポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって、i)プロモーターに作動可能に連結されるProspanポリペプチドをコードする核酸配列を含み、所定の生理学的条件下にて前記Prospanポリペプチドの発現を可能にする、組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、前記細胞は大腸菌細胞又はヒト細胞である。その他の好ましい態様は、細胞に存在する場合には、Prospanの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。Prospanの発現を修飾するポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)Prospan遺伝子を含む細胞を提供し、ii)ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターが導入される前の前記細胞におけるProspanの発現と比較して、Prospanの発現が増加又は低減する方法によって作製される。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Prospan遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、又はProspan遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Prospanコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。Prospanポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、Prospanポリペプチドを作製することができる。
配列番号:34のタンパク質(内部指定クローン109010_105−041−4−0−A5−F)
クローン109010_105−041−4−0−A5−FのcDNA(配列番号:33)は、アミノ酸配列:MWVPVVFLTLSVTWIGAAPLILSRIVGGWECEKHSQPWQVLVASRGRAVCGGVLVHPQWVLTAAHCIRNKSVILLGRHSLFHPEDTGQARを含む、配列番号:34のProspanylをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:34のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン109010_105−041−4−0−A5−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。
さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:##のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン109010_105−041−4−0−A5−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:34、配列番号:33及びクローン109010_105−041−4−0−A5−Fのヒトポリヌクレオチド及びポリペプチド組成物に対して向けられている。以下に記載の方法で使用される好ましいProspanylポリペプチド断片としては、アミノ配列:PLILSRIVGGWECEKHSQPWQVLVASRGRAVCGGVLVHPQWVLTAAHCIRNKSVILLGRHSLFHPEDTGQARを含むProspanylポリペプチドが挙げられる。
以下に記載の方法で使用される最も好ましいProspanylポリペプチド断片としては、アミノ酸配列:IVGGWECEKHSQPWQVLVASRGRAVCGGVLVHPQWVLTAAHCIRNKSVILLGRHSLFHPEDTGQARを含むProspanylポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、Prospanylは、前立腺特異的抗原(PSA,EMBLアクセッション番号NP_001639)の新規な分泌スプライスバリアントである。2つの第1エクソンは、Prospanyl mRNA及びPSA mRNAにおいて同一である。Prospanyl mRNAの第3及び第4エクソンは、PSA mRNAの第3エクソンのエクソン内スプライスから生じる。Prospanyl mRNAの第5及び第6エクソンは、PSA mRNAの第4及び第5エクソンに相当する。Prospanylは、シグナルペプチド(MWVPVVFLTLSVTWIGAAPLILS)、成熟型で切断されるプロペプチド(PLILSR)及びヒスチジン活性部位にわたるトリプシンドメイン(RIVGGWECEKHSQPWQVLVASRGRAVCGGVLVHPQWVLTAAHCIRNKSVILLGRHSLFHPEDTGQ)を示す。
Prospanylは、カリクレインファミリーの新規なメンバーである。それは、通常の過形成性及び癌性前立腺上皮によって分泌される。Prospanylはアンドロゲンによってアップレギュレートされ、Prospanylの発現レベルは、前立腺腫瘍の悪性度と正に相関する。Prospanylは、精液中に見出され、血液及び血清において低レベルで見出される。Prospanylは、前立腺癌及び乳癌などの他の癌の早期の検出、ステージング、予後及びモニタリングに有用である。
本発明の実施形態は、配列番号:34の又は配列番号:34と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するProspanylポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、プロテアーゼ活性又はプロテアーゼ阻害剤結合活性を有するProspanylポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「Prospanylポリペプチド」とは、配列番号:34の、又は配列番号:34と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のProspanylポリペプチド配列のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:34の66位及び67位に示されるアミノ酸のうちの1つ又は両方を含有するProspanylポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「Prospanylポリペプチド」とは、配列番号:34の又は配列番号:34と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のProspanylポリペプチド配列、又は配列番号:34の66位及び67位に示されるアミノ酸のうちの1つ又は両方を含有するその断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、Prospanylポリペプチドをコードする配列番号:33のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、Prospanylポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書でさらに使用される「Prospanylポリヌクレオチド」とは、配列番号:33の、又は配列番号:33と少なくとも70%、80%、90%、95%以上の同一性を有するProspanylポリヌクレオチド配列、Prospanylポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:34のProspanylポリペプチド配列又はProspanylポリペプチド断片を認識する抗体に関する。好ましくは、配列番号:34のProspanylポリペプチド配列のカルボキシル末端2個のアミノ酸のうちの1つ又は両方が、前記Prospanylポリペプチドへの前記抗体の結合に必要である。前記抗体によって認識される好ましいエピトープは、LFHPEDTGQAのアミノ酸配列を含む。最も好ましくは、その抗体はProspanylには結合するが、PSAには結合しない。本明細書で使用される「抗Prospanyl抗体」とは、Prospanylポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、抗Prospanyl抗体をProspanylポリペプチドに結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、Prospanylポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書にさらに記述されるように、Prospanylポリペプチドの検出に有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるProspanylポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗Prospanyl抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗Prospanyl抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗Prospanyl抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的ないずれかの検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。Prospanylポリペプチドの検出は例えば、生体試料におけるProspanylの発現の検出に、例えば以下にさらに記述するように、診断の目的に有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるProspanylの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)試料におけるProspanylの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるProspanylの発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。試料におけるProspanylの発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば、試料中のProspanyl mRNA又はProspanylポリペプチドのレベルを検出することによって評価することができる。例えば、ウェスタンブロット法、免疫化学技術及び細胞化学技術などのよく知られている技術を用いて、Prospanylの発現を検出することができる。好ましくは、抗Prospanyl抗体を使用して、Prospanylの発現レベルを検出する。また好ましくは、配列番号:33のポリヌクレオチド配列又はその一部又は配列番号:33に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えば、ノーザンブロット法又はRTPCR技術によってProspanylの発現レベルを検出する。好ましい生体試料としては、血液、血清、尿又は精液から得られる試料が挙げられる。
Prospanylの発現レベルの検出は、癌、例えば、前立腺癌の検出に役立つ。かかる方法において、疾患を持たない健康な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるProspanylの発現レベルが高い場合には、前立腺癌であること及び/又は前立腺癌の素因があることを示している。さらに、Prospanylの発現は、癌の悪性度及び癌のステージと正に相関する。その代わりに、Prospanylの発現レベルとPSAの発現レベルとの比、又はPSAの発現レベルとProspanylの発現レベルの総量を決定することが可能であり、前立腺癌であること、前立腺癌の素因があること、前立腺癌の悪性度又はそのステージを示すことができる。様々な組織におけるProspanyl及びPSAの差次的発現を確立することも可能である。前立腺癌を検出するためのProspanylの発現レベルの検出は例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,935,818号又は国際特許出願公開番号:WO/0049158に記載されたように行うことができる。
一方、Prospanylの発現レベルの検出は、卵巣癌又は乳癌を検出する方法においても役立ち、その方法では、疾患を持たない健康な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるProspanylの発現レベルが高い場合には、癌であることを示している。その開示内容全体が参照により組み込まれる米国特許第6,235,486号に記載されている乳癌の診断、治療及び/又はその進行及び寛解のモニタリングの方法は、例えば、hK2の代わりにProspanylを用いて行うことができる。
この実施形態の一態様において、生体試料におけるProspanylの発現レベルは、抗Prospanyl抗体を用いて決定される。かかる方法は、i)個体から生体試料を得、ii)核酸配列のハイブリダイゼーションを可能にする条件下にて、前記生体試料をProspanylポリヌクレオチドプローブと接触させ、それによって前記Prospanylポリヌクレオチドプローブと、前記試料に存在するいずれかの内因性Prospanポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーション複合体の形成が可能とし、iii)前記試料において検出される抗原−抗体複合体のレベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。かかる方法は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,614,372号及びLiedtkeら(Clin Chem 30:649-52 (1984))に記載の方法などのイムノアッセイを含む。
この実施形態のその他の態様では、生体試料におけるProspanylの発現レベルは、Prospanylポリヌクレオチドを用いて決定される。かかる一方法は、i)個体から生体試料を得、ii)当技術分野で一般的ないずれかの技術によって検出可能である、Prospanylポリヌクレオチド又はその補体を含むプローブを提供し、iii)核酸配列のハイブリダイゼーションを可能にする条件下にて、生体試料を前記プローブと接触させ、それによってハイブリダイゼーション複合体の形成を可能とし、iv)ハイブリダイゼーション複合体を検出し、v)前記試料において検出されるハイブリダイゼーション複合体のレベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。
その他のかかる方法は、i)個体から生体試料を得、ii)Prospanylポリヌクレオチドを特異的に増幅するプライマーを得、iii)前記プライマーを用いて、対象の前記生体試料でネステッドポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、iv)増幅産物を検出し、v)前記試料において検出される増幅産物のレベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。
本発明のその他の実施形態は、Prospanylポリペプチドの存在をインビトロで検出するための診断キットに関する。かかるキットは、i)抗Prospanyl抗体、任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗Prospanyl抗体を備えるキットは、前立腺癌又は乳癌の診断に向けられることが好ましい。任意に、前記診断キットは、疾患を持たない健康な個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、特定の疾患、例えば、癌、特に前立腺癌に罹患している個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、例えば、抗PSA抗体などの他の抗体を備える。
さらなる実施形態は、Prospanylポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドプローブのアレイに関する。好ましくは、前記Prospanylポリヌクレオチドは、固体担体上の既知の位置にそれぞれ存在するプローブのアレイの一部である。好ましくは、前記アレイは、前立腺癌の検出、ステージング、予後及びモニタリングのマーカーである、他のポリヌクレオチドを含む。これらのマイクロアレイは例えば、前立腺癌を診断するために、又は前立腺癌に罹患しやすい家族において疫学的研究を行うために使用することができる。前記アレイの一部であり得る他のマーカーとしては、限定されないが、アポリポタンパク質E対立遺伝子、PG1対立遺伝子、Bap28対立遺伝子、フィブロネクチン対立遺伝子、PurH対立遺伝子及びPCTA−1対立遺伝子が挙げられる。
その他の実施形態は、i)Prospanyポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞を、前記ポリペプチドの発現の助けとなる条件下にて培養し、ii)産生されたポリペプチドを精製する工程を含む、Prospanylポリペプチドを作製する方法に関する。そのポリペプチドの精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗Prospanyl抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。Prospanylポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。精製Prospanylポリペプチドの作製は、本明細書で記述されるように抗Prospanyl抗体の作製に有用である。
本発明の好ましい態様は、Prospanylポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、Prospanylポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって、i)プロモーターに作動可能に連結されるProspanylポリペプチドをコードする核酸配列を含み、所定の生理学的条件下にて前記Prospanylポリペプチドの発現を可能にする、組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、前記細胞は大腸菌細胞又はヒト細胞である。その他の好ましい態様は、細胞に存在する場合には、Prospanylの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。Prospanylの発現を修飾するポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)Prospanyl遺伝子を含む細胞を提供し、ii)ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターが導入される前の前記細胞におけるProspanylの発現と比較して、Prospanylの発現が増加又は低減する方法によって作製される。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Prospanyl遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、又はProspanyl遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Prospanylコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。Prospanylポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、Prospanylポリペプチドを作製することができる。
配列番号:36のタンパク質(内部指定クローン584047_181−11−4−0−G9−F)
クローン584047_181−11−4−0−G9−FのcDNA(配列番号:35)は、アミノ酸配列:MAKVFSFILVTTALIMGREISALEDCAQEQMRLRAQVRLLETRVKQQQVKIKQLLQENEVQFLDKGDENTVVDLGSKRQYADCSEIFNDGYKLSGFYKIKPLQSPAEFSVYCDMSDGGGWTVIQRRSDGSENFNRGWKDYENGFGNFVQKHGEYWLGNKNLHFLTTQEDYTLKIDLADFEKNSRYAQYKNFKVGDEKNFYELNIGEYSGTAGDSLAGNFHPEVQWWASHQRMKFSTWDRDHDNYEGNCAEEDQSGWWFNRCHSANLNGVYYSGPYTAKTDNGIVWYTWHGLVFSEICGYENを含む、配列番号:36のFirpをコードする。
したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:36のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン584047_181−11−4−0−G9−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:35のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン584047_181−11−4−0−G9−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。
本発明の好ましい実施形態は、配列番号:36、配列番号:35及びクローン584047_181−11−4−0−G9−Fのヒトポリヌクレオチド及びポリペプチド組成物に対して向けられている。以下に記載の方法で使用される好ましいFirpポリペプチド断片としては、アミノ配列:LEDCAQEQMRLRAQVRLLETRVKQQQVKIKQLLQENEVQFLDKGDENTVVDLGSKRQYADCSEIFNDGYKLSGFYKIKPLQSPAEFSVYCDMSDGGGWTVIQRRSDGSENFNRGWKDYENGFGNFVQKHGEYWLGNKNLHFLTTQEDYTLKIDLADFEKNSRYAQYKNFKVGDEKNFYELNIGEYSGTAGDSLAGNFHPEVQWWASHQRMKFSTWDRDHDNYEGNCAEEDQSGWWFNRCHSANLNGVYYSGPYTAKTDNGIVWYTWHGLVFSEICGYENを含むFirpポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、Firpは、フィブリノゲン関連タンパク質1(HFREP1,Genbankアクセッション番号NP_004458)の新規な分泌スプライスバリアントである。この新規なスプライスバリアントは、9個のエクソンを示す。Firpポリペプチドは、シグナルペプチド(MAKVFSFILVTTALIMGREISA)、及びジスルフィド結合に関与する4個の保存システイン(配列番号:36の61、90、226及び239位のシステイン残基)を有し、かつFIBRIN_AG_C_DOMAINシグネチャー(WWFNRCHSANLNG)を有するフィブリノゲンC末端球状ドメインを示す。得られる成熟Firpポリペプチドは、279アミノ酸の長さである。配列番号:36の1〜268位に示されるアミノ酸は、成熟HFREP1ポリペプチドのアミノ末端側268個のアミノ酸と同一であり、Firpのカルボキシル末端側11個のアミノ酸はこのスプライスバリアントに固有である。
Firpは、肝臓で特異的に発現され、肝実質細胞によって主に合成される。それは、肝臓細胞外マトリックス及び血清に存在する分泌タンパク質である。Firpは、有糸分裂活性を有し、かつ肝細胞の増殖を刺激する。Firpは、肝細胞前駆体の分化にも必要であり、肝臓の胚発育時及び成体における肝臓の再生のどちらにおいても、主要な役割を果たす。さらに、Firpの過剰発現は、肝癌が発生する一因となる。
本発明の実施形態は、配列番号:36の又は配列番号:36と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するFirpポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、肝細胞の増殖又は分化を刺激するFirpポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「Firpポリペプチド」とは、配列番号:36の、又は配列番号:36と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のFirpポリペプチド配列、又は配列番号:36の269〜279位に示されるアミノ酸のうちの少なくとも1つを含有するFirpポリペプチド断片、又は肝細胞の増殖又は分化を刺激するFirpポリペプチド断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、Firpポリペプチドをコードする配列番号:35のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、Firpポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書でさらに使用される「Firpポリヌクレオチド」とは、配列番号:35の又は配列番号:35と少なくとも70%、80%、90%、95%以上の同一性を有するFirpポリヌクレオチド配列、Firpポリペプチドをコードするヌクレオチド配列又はこれらの配列のいずれかに相補的な配列のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、Firpポリペプチドを認識する抗体に関する。好ましくは、その抗体は、Firpのカルボキシル末端側11個のアミノ酸内に位置する1つ又は複数のアミノ酸を認識し、前記の1つ又は複数のアミノ酸は、Firpポリペプチドへの抗体の結合に必要とされる。最も好ましくは、その抗体は、Firpには特異的に結合するが、HFREP1には特異的に結合しない。本明細書で使用される「抗Firp抗体」とは、Firpポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、抗Firp抗体をFirpポリペプチドに結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、Firpポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書にさらに記述されるように、Firpポリペプチドの検出に有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるFirpポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗Firp抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗Firp抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗Firp抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的ないずれかの検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、又は酵素化合物)によって標識することができる。かかる方法は、以下にさらに記述するように、例えば肝癌の診断に適用することが可能である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるFirpの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)試料におけるFirpの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるFirpの発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。かかる一実施形態において、前記生体試料は、肝癌に罹患している疑いのある個体から採取され、その方法を用いて、肝癌を診断する。正常な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるFirpの発現レベルが高い場合には、肝癌が存在することを示している。
本明細書で使用される「肝癌」には、悪性肝癌及び肝細胞癌が含まれる。好ましい生体試料は、血清から得られる。試料におけるFirpの発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば、試料におけるFirp mRNA又はFirpポリペプチドのレベルを検出することによって評価することができる。例えば、ウェスタンブロット法、免疫化学技術及び細胞化学技術などのよく知られている多くの技術のいずれかを用いて、Firpの発現を検出することができる。好ましくは、抗Firp抗体を使用して、Firpの発現レベルを検出する。Firpの発現レベルの検出は、コラゲナーゼ阻害剤に結合する抗体の代わりに抗Firp抗体を使用することによって、その開示内容全体が参照により組み込まれる、欧州特許第0,339,097号に記載されたように行うことができる。また好ましくは、配列番号:35のポリヌクレオチド配列又はその一部、又は配列番号:35に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えばノーザンブロット法又はRTPCR技術によってFirpの発現レベルを検出する。
本発明のその他の実施形態は、Firpポリペプチドの存在をインビトロで定量化するための診断キットに関する。かかるキットは、i)抗Firp抗体、任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルを提供し得る。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗Firp抗体を備えるキットは、肝癌の診断に使用されることが好ましい。任意に、前記診断キットは、健康な、例えば、癌に罹患していない個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、肝癌に罹患している個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。
その他の実施形態は、i)Firpポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞を、前記ポリペプチドの発現の助けとなる条件下にて培養し、ii)産生されたポリペプチドを精製する工程とを含む、Firpポリペプチドを作製する方法に関する。そのポリペプチドの精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗Firp抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。あるいは、Firpポリペプチドを異種免疫原性ペプチドに融合させてもよく、その融合タンパク質は、異種ペプチドに特異的な抗体を用いて精製される。Firpポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。Firpポリペプチドの作製は、本明細書でさらに記述されるような方法及び組成物において有用であり得る。
本発明の好ましい態様は、プロモーターに作動可能に連結される、Firpポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、Firpポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって、i)プロモーターに作動可能に連結される、Firpポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。
好ましい実施形態では、前記細胞は大腸菌細胞又はヒト細胞である。その他の好ましい態様は、細胞に存在する場合には、Firpの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。Firpの発現を修飾することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)Firp遺伝子を含む細胞を提供し、ii)Firpの発現を変化させるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターが導入される前の前記細胞におけるFirpの発現レベルと比較して、Firpの発現が増加又は低減する方法によって作製される。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Firp遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、又はFirp遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Firpコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。Firpポリペプチドを産生するかかる組換え宿主細胞を用いて、Firpポリペプチドを作製することができる。
好ましい実施形態は、Firpの発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるFirpの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する工程を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるFirpの発現の差異によって、試験物質がFirpの発現を調節することを示す。Firpの発現は、限定されないが、Firpポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるFirp mRNAの検出)又はFirpポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるFirpポリペプチドの検出)を含む、当技術分野で一般的な方法によって決定することが可能である。一実施形態において、その試験物質は特定の細胞型ではFirpの発現を修飾するが、他の細胞型では修飾しない。好ましくは、試験物質は、肝細胞において特異的にFirpの発現を修飾する。最も好ましくは、試験物質は、肝実質細胞において特異的にFirpの発現を修飾する。
本発明のさらなる実施形態は、Firpの活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるFirpの活性を、非暴露対照細胞における活性と比較する工程を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるFirpの活性の差異によって、試験物質がFirpの活性を調節することを示す。前記細胞は、Firpポリペプチドを発現しても又はしなくてもよい。前記細胞がFirpポリペプチドを発現しない場合には、前記細胞を、試験物質と接触させる、又はさせないことに加えて、所定の量のFirpポリペプチドと接触させる。かかる方法で使用される好ましい細胞としては、肝細胞が挙げられる。最も好ましい細胞は肝細胞である。Firpの活性は、例えば、肝細胞の増殖を測定することによってモニターすることができる。肝細胞の増殖の測定は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,248,725に記載のDNA合成の測定を含む、当技術分野で一般的な様々な技術によって行うことができる。
Firpの発現又は活性を低減する試験物質は、Firpアンタゴニストとして定義される。Firpの発現又は活性を増加する試験物質は、Firpアゴニストとして定義される。本明細書で使用される「Firp修飾因子」という用語は、Firpアゴニスト及びFirpアンタゴニストを意味する。Firpの発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、Firpのドミナントネガティブ型、及び抗Firp抗体が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法によって製造かつ使用することができる。例えば、細胞、組織、又は個体におけるFirpの活性又は発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明の実施形態は、肝細胞の増殖及び/又は分化を刺激するために、Firpポリペプチド又はFirpアゴニストを使用する方法に関する。本明細書で使用される「肝細胞」には、成熟肝細胞及び肝細胞前駆体が含まれる。前記肝細胞は、マウス、ラット、ウサギ、類人猿を含むいずれかの哺乳動物に由来する。かかる方法は、有効量のFirpポリペプチド又はFirpアゴニストと肝細胞を接触させる工程を含む。本明細書で使用される「有効量のFirpポリペプチド又はFirpアゴニスト」とは、肝細胞の増殖及び/又は分化を促進するのに十分な量のFirpポリペプチド又はFirpアゴニストを意味する。
かかる一実施形態において、前記方法は、肝細胞を培養、増殖及び/又は分化するためにインビトロで行われる。肝細胞は例えば、肝臓移植、人工肝臓に、毒物学及び薬理学研究に用いることができる。肝細胞及び肝細胞前駆体を培養するための多種多様な技術は当業者には公知であり、前記Firpポリペプチド又はFirpアゴニストがいずれかの公知の培地に添加される。Firpポリペプチド又はFirpアゴニストは、例えばその開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,576,207号に記載されているHam’s F10、Ham’s F12、及びRPMI 1640培地に添加される。前記Firpポリペプチド又はFirpアゴニストは、例えば範囲1〜1000マイクログラム/ミリリットル、さらに好ましくは範囲10〜100マイクログラム/ミリリットルの濃度で添加することができる。好ましい態様において、肝細胞を培養及び増殖するための前記方法は、肝前駆細胞を増殖することに向けられ、その方法は、(i)Firpポリペプチド及び/又はFirpアゴニストを含む血清不含培地、(ii)細胞外マトリックス、(iii)肝臓ストローマ細胞の存在下にて、肝前駆細胞の少なくとも1つの集団を含有する肝細胞を培養する工程であって、細胞培養物中に含まれる肝前駆細胞が増殖される工程を含む。この方法は例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,576,207号に記載されたように行うことができる。その他の好ましい態様において、肝細胞を培養及び増殖するための前記方法は、長期間生存する、肝細胞の培養を高めることに向けられる。この方法は例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,030,105号に記載されたように行うことができる。
肝細胞及び肝細胞前駆体の非治療用途としては、限定されないが、肝損傷及び肝修復に関与するメカニズムの研究、肝臓の炎症性疾患及び感染症の研究、病原的メカニズムの研究、肝細胞の形質転換のメカニズムの研究及び肝癌の病因の研究が挙げられる。前記肝細胞及び肝細胞前駆体の治療用途としては、限定されないが、肝不全、肝炎又は肝硬変に罹患している患者の肝臓移植、化学療法のためのアッセイ(例えば、肝癌に対して)、肝臓で増殖するウイルスに対するワクチンの製造、及び薬物の又は化学物質及び環境汚染物質の急性及び慢性肝毒性の判定が挙げられる。肝不全、肝炎又は肝硬変は、例えばアルコール症、感染症(例えば、エプスタインバーウイルス感染による肝壊死)、肝毒性汚染物質(例えば、ハロタン麻酔後の肝炎)又は先天性肝疾患(例えば、巨細胞肝炎、ウィルソン病、糖原病、尿素回路酵素欠損及びCreigler-Najir病)によって生じ得る。肝細胞及び肝細胞前駆細胞は、「人工肝臓」の一部として使用することも可能である。つまり、肝細胞及び肝細胞前駆体は容器又は装置内に入れられ、その中で肝細胞及び肝細胞前駆体は肝臓系統を形成し、かつ体外の肝臓として機能する。その容器又は装置は、個体の循環系に連結される。
その他のかかる実施形態において、肝細胞の増殖及び/又は分化を刺激するためにFirpポリペプチド又はFirpアゴニストを使用する前記方法はインビボで行われる。前記方法は、生理学的に許容される担体と、有効量のFirpポリペプチド又はFirpアゴニストとを個体に投与する工程を含む。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のFirpポリペプチド又はFirpアゴニスト」とは、肝細胞の増殖及び/又は分化を刺激するのに十分な量のFirpポリペプチド又はFirpアゴニストを意味する。前記Firpポリペプチド又はFirpアゴニストは、いずれかの有効な量で投与される。しかし、一般に、有効量のFirpポリペプチドは、1日につき体重1kg当たりFirp約10マイクログラム(F/kg/日)〜約100ミリグラム(F/kg/日)の範囲になるだろう。好ましくは、肝細胞の増殖及び/又は分化を刺激するためのかかる方法は、例えば、アルコール症、感染症、肝毒性汚染物質又は先天性肝疾患による肝不全、肝炎又は肝硬変を治療することに向けられる。また好ましくは、かかる方法は、肝損傷又は肝臓手術後の肝臓再生を促進することに向けられる。例えば、この方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,248,725号及び米国特許第5,814,605号に記載されたように、ケラチノサイト成長因子ポリペプチドの代わりにFirpポリペプチドを使用することによって行うことができる。
本発明のその他の実施形態は、肝細胞の増殖を低減するか又は止めるために、Firpアンタゴニストを使用する方法に関する。かかる方法は、生理学的に許容される担体及び有効量のFirpアンタゴニストを肝臓又は個体に送達する工程を含む。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のFirpアンタゴニスト」とは、肝細胞の増殖を低減するか、又は止めるのに十分な量のFirpアンタゴニストを意味する。好ましくは、Firpアンタゴニストを含む組成物は、例えば、肝細胞癌又は肝癌などの肝臓癌に罹患している個体に、前記癌を治療するため、又はその重症度を低減するために投与される。一実施形態において、前記Firpアンタゴニストは、抗Firp抗体である。その他の方法において、Firpアンタゴニストは、治療される腫瘍に特異的な標的分子に融合される。治療される腫瘍に特異的な前記標的分子としては、限定されないが、腫瘍細胞に特異的に発現される受容体又は抗原を認識するリガンド及び抗体が挙げられる。多数の腫瘍関連抗原が科学文献に記述されている。例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wikstrandら(Cancer Metastasis Rev 18:451-64 (1999))によって記述されている抗原及び技術を用いることができる。あるいは、腫瘍の脈管構造を認識するリガンドに、Firpアンタゴニストを連結してもよい。固形腫瘍の脈管構にFirpアンタゴニストを標的化するための好ましい方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,004,554号に記述されている。
Firpポリペプチド又はFirp修飾因子の有効な投薬量は、例えば、用量反応曲線を確立する日常試験によって、当業者により容易に決定することができる。Firpポリペプチド又はFirp修飾因子の有効な投薬量は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,248,725号に記載されたように肝細胞増殖をモニターすることによって決定することができる。あるいは、腫瘍肝細胞に対するFirpアンタゴニストの成長抑制効果は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,083,915号に記載されたようにSRC法(subrenal capsule assay)又は皮下腫瘍アッセイを利用することによってモニターすることができる。生理学的に許容される担体と、Firpポリペプチド又はFirp修飾因子とを含む組成物の投与頻度及び投与量は、治療される特定の疾患、その重症度、用いられるFirpポリペプチド又はFirp修飾因子の性質、個体の全体的な状態及び治療を施す医師の判断によるだろう。
本明細書において使用される「生理学的に許容される担体」という用語は、個体及び用いられるFirpポリペプチド又はFirpアゴニストと適合性であり、かつ動物及びさらに特にはヒトにおける使用に関して、連邦政府又は州政府の管理機関によって承認されているか、又は米国薬局方又は他の一般に認知されている薬局方において示されている、組成物を意味する。前記生理学的に許容される担体としては、限定されないが、溶液及び懸濁液、例えば、生物学的バッファー(例えば、リン酸緩衝液,生理食塩、及びダルベッコ培地)、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤及び崩壊剤が挙げられる。
生理学的に許容される担体と、本発明のポリペプチド又は修飾因子とを含む組成物は、いずれかの適切な方法で投与される。好ましい投与経路は、肝臓の灌流による標的化送達(例えば、非観血的灌流(asanguineous perfusion))及び経口投与のいずれをも含む。経口投与に適した組成物の例としては、丸剤、錠剤、カプセル剤及び液剤が挙げられる。その組成物が対象に経口投与される場合には、対象の胃において十分に長い時間、分解からそれを保護することができる物質で、ペプチドをコーティングすることが特に好ましい。あるいは、静脈内又は皮下投与などの非経口経路により対象に投与するために、液状などの適切な形状で組成物を製造することができる。他の投与経路としては、経皮(例えば、局所的)、経粘膜(例えば、鼻、頬又は肺)及び筋肉内投与が挙げられる。
さらに他の実施形態は、Firpポリペプチドをコードする核酸配列又はFirpポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子を用いて遺伝子導入動物(例えば、マウス)を作製する方法に関する。遺伝子導入動物を作製する方法は当業者にはよく知られている。例えば、遺伝子導入マウスは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,248,725号に記載されたように、インビボで肝細胞にレトロウイルスを形質導入する方法を用いて作製することができる。かかる遺伝子導入動物は、例えば、肝癌の浸潤及び広がりの素因が与えられた動物モデルを得るのに、肝不全、肝炎及び肝硬変などの疾患の動物モデルを得るのに、又はかかる疾患の治療における化学化合物の有用性を試験するのに有用であり得る。
配列番号:38のタンパク質(内部指定クローン140354_105−115−4−0−F5−F)
クローン140354_105−115−4−0−F5−F)のcDNA(配列番号:37)は、アミノ酸配列:MKFLVFAFILALMVSMIGADSSEEYGYGPYQPVPEQPLYPQPYQPQYQQYTFを含む、配列番号:38のSaproをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:38のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン140354_105−115−4−0−F5−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。
さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:37のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン140354_105−115−4−0−F5−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:38、配列番号:37、及びクローン140354_105−115−4−0−F5−Fのヒトポリヌクレオチド及びポリペプチド組成物に対して向けられている。以下に記載の方法で使用される好ましいSaproポリペプチド断片としては、アミノ配列:DSSEEYGYGPYQPVPEQPLYPQPYQPQYQQYTFを含むSaproポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、Saproは、スタテリン(Statherin)の新規なスプライスバリアントである(EMBLアクセッション番号AAC02781)。Sapro cDNAは、スタテリンcDNAの第4エクソンを欠く。したがって、Saproは、スタテリンと比較して10個のアミノ酸のスパンを欠く。配列番号:38の1〜5位に示されるアミノ酸は、成熟スタテリンポリペプチドのアミノ末端側5個のアミノ酸と同一であり、配列番号:38の6〜33位に示されるアミノ酸は、成熟スタテリンポリペプチドのカルボキシル末端側27個のアミノ酸と同一である。Saproは、シグナルペプチド(MKFLVFAFILALMVSMIGA)、及びヒドロキシアパタイト表面への結合を担う、負に帯電したペンタペプチド配列(DSSEE)を示す。
Saproは、獲得被膜(acquired enamel pellicle)の成分である、多機能性唾液タンパク質である。それは、ヒドロキシアパタイトに結合し、過飽和な唾液からのリン酸カルシウム塩の自然沈殿を抑制する。そうすることによって、歯表面の再石灰化を助け、結晶成長及び妨げとなるミネラル沈着の形成を防ぐ。Saproは、歯表面の潤滑剤としての役割も果たし、咀嚼及び歯ぎしりなどの様々な物理的力からそれを保護する。さらに、Saproのカルボキシル末端は、嫌気性細菌の成長を抑制する。加えて、Saproは、齲食細菌に結合し、よって口腔内において、結合した齲食細菌のレザバー(reservoir)を維持することによって、う蝕の形成を間接的に促進する。
本発明の実施形態は、配列番号:38の、又は配列番号:38と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有するSaproポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:38の5位及び6位に示される隣接アミノ酸を含有するSaproポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、ヒドロキシアパタイトに結合する、齲食細菌に結合する、リン酸カルシウム塩の沈殿を抑制する、細菌の成長を抑制する、又は歯表面の潤滑剤として作用する、Saproポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書で使用される「Saproポリペプチド」とは、配列番号:38の、又は配列番号:38と少なくとも0%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のSaproポリペプチド配列、又は配列番号:38の5位及び6位に示される隣接アミノ酸を含有するSaproポリペプチド断片、又はヒドロキシアパタイトに結合する、齲食細菌に結合する、リン酸カルシウム塩の沈殿を抑制する、細菌の成長を抑制する、又は歯表面の潤滑剤として作用する、Saproポリペプチド断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、Saproポリペプチドをコードする配列番号:37のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、Saproポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書でさらに使用される「Saproポリヌクレオチド」とは、配列番号:37の、又は配列番号:37と少なくとも70%、80%、90%、95%以上の同一性を有するSaproポリヌクレオチド配列、又はSaproポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はこれらの配列のいずれかに相補的な配列のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、Saproポリペプチドを認識する抗体に関する。好ましくは、かかる抗Sapro抗体は、配列番号:38の5位及び6位に示される隣接アミノ酸を認識し、これらの隣接アミノ酸は結合に必要である。好ましくは、その抗体は、Saproには特異的に結合するが、スタテリンには特異的に結合しない。抗Sapro抗体によって認識される好ましいエピトープとしては、限定されないが、DSSEEYGYGPYQPVPEのエピトープが挙げられる。本明細書で使用される「抗Sapro抗体」は、Saproポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、Saproポリペプチドに抗Sapro抗体を結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にてSaproポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む方法に関する。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書にさらに記述するようにSaproポリペプチドの検出に有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるSaproポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗Sapro抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗Sapro抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗Sapro抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的ないずれかの検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物又は酵素化合物)によって標識することができる。かかる方法は、以下にさらに記述するように、例えば、唾液及び涙腺機能不全(乾燥症状)の診断に適用することが可能である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるSaproの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)試料におけるSaproの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるSaproの発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。かかる方法は、例えば乾燥症状の診断に有用である。疾患を持たない健康な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるSaproの発現レベルが低い場合には、乾燥症状が存在することを示している。好ましい生体試料は、唾液分泌から得られる。かかる方法は、例えば、慢性関節リウマチに罹患している乾燥性及び非乾燥性の患者を区別するために、放射線ヨウ素治療を受けている患者における乾燥症状を検出するために、又はシェーグレン症候群又は原発性胆汁性肝硬変に罹患している患者における乾燥症状を検出するために使用することができる。
一方、生体試料におけるSaproの発現の検出は、様々な歯周病の診断に、かつ唾液分泌に対する特定の薬物(例えば、中枢神経系興奮薬)の効果の全体的評価に有用であり得る。試料におけるSaproの発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば、試料におけるSapro mRNA又はSaproポリペプチドのレベルを検出することによって評価することができる。例えば、ウェスタンブロット法、免疫化学技術及び細胞化学技術などのよく知られている多くの技術のいずれかを用いて、Saproの発現を検出することができる。好ましくは、抗Sapro抗体を使用して、Saproの発現レベルを検出する。また好ましくは、配列番号:37のポリヌクレオチド配列又はその一部、又は配列番号:37に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えばノーザンブロット法又はRTPCR技術によってSaproの発現レベルを検出する。生体試料におけるSaproの発現の検出は、例えば、その開示内容全体が参照により組み込まれる、Jensenら(Oral Dis. 3:254-61 (1997))又はNordgardenら(J Dent Res. 77:1817-22 (1998))に記載されたように行うことができる。
本発明のその他の実施形態は、Saproポリペプチドの存在をインビトロで定量化するための診断キットに関する。かかるキットは、i)抗Sapro抗体、任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗Sapro抗体を備えるキットは、乾燥症状の診断に使用されることが好ましい。任意に、前記診断キットは、疾患をもたない健康な個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、乾燥症状を有する個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。任意に、前記キットは、乾燥症状の診断に有用な他の抗体を備える。
その他の実施形態は、i)Saproポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞を、前記ポリペプチドの発現の助けとなる条件下にて培養し、ii)産生されたポリペプチドを精製する工程を含む、Saproポリペプチドを作製する方法に関する。そのポリペプチドの精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗Sapro抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。あるいは、Saproポリペプチドを異種免疫原性ペプチドに融合させてもよく、その融合タンパク質は、異種ペプチドに特異的な抗体を用いて精製される。Saproポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。Saproポリペプチドの作製は、本明細書でさらに記述されるような方法及び組成物において有用であり得る。
本発明の好ましい態様は、プロモーターに作動可能に連結される、Saproポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、Saproポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって、i)プロモーターに作動可能に連結される、Saproポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、前記細胞は大腸菌細胞又はヒト細胞である。かかる宿主細胞は、例えばSaproポリペプチドの作製に有用である。例えば、その開示内容全体が参照により組み込まれる、Gilbertら(Protein Expr Purif. 16:243-50 (1999))に記載されたように、酵母インテイン融合コンストラクトを用いて大腸菌から、Saproポリペプチドを作製することが可能である。
その他の好ましい態様は、細胞に存在する場合には、Saproの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。Saproの発現を修飾することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)Sapro遺伝子を含む細胞を提供し、ii)Saproの発現を変化させるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターが導入される前の前記細胞におけるSaproの発現レベルと比較して、Saproの発現が増加又は低減する方法によって作製される。
好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Sapro遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、又はSapro遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Saproコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。
一実施形態は、Saproポリペプチドを含む人工唾液に関する。例えば、正常な唾液の流れを有する個体ならびに口腔乾燥症又は唾液腺炎に罹患している個体において、微生物媒介口腔疾患、口渇症又は咬合不調和を抑制するために、人工唾液を使用することができる。人工唾液は、口腔液を採取かつ分析する装置及び方法の試験、較正及び標準化に使用することもできる。Saproポリペプチドが添加される、人工唾液組成物は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,879,281号及び米国特許第5,695,929号に記載されている。Saproポリペプチドは、約0.001%〜約20%のレベルで人工唾液中に存在し得る。
好ましい実施形態は、Saproの発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるSaproの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する工程を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるSaproの発現の差異によって、試験物質がSaproの発現を調節することが示される。Saproの発現は、限定されないが、Saproポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるSapro mRNAの検出)又はSaproポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるSaproポリペプチドの検出)を含む、当技術分野で一般的な方法によって決定することが可能である。一実施形態において、その試験物質は特定の細胞型ではSaproの発現を修飾するが、他の細胞型では修飾しない。好ましい組織は、耳下腺及び顎下腺を含む。例えば、細胞、組織又は個体におけるSaproの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明のさらなる実施形態は、Saproの活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって;i)Saproポリペプチドを試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後のSaproの活性を、非暴露Saproポリペプチドの活性と比較する工程を含む方法に関し、暴露ポリペプチドと非暴露ポリペプチドとの間で観察されるSaproの活性の差異によって、試験物質がSaproの活性を調節することが示される。あるいは、前記Saproポリペプチドは細胞中に存在し、暴露細胞と非暴露細胞との間で観察されるSaproの活性の差異によって、試験物質がSaproの活性を調節することが示される。Saproの活性は、当技術分野で一般的な多くの技術のいずれかによって決定することができる。例えば、ヒドロキシアパタイトへのその結合、齲食細菌へのその結合、その潤滑性、リン酸カルシウム沈殿又は細菌の成長を研究することによって、Saproの活性をモニターすることができる。ヒドロキシアパタイト表面でのSaproの吸着は、例えば、Johnssonら(Arch Oral Biol. 36:631-6 (1991))に記載されたようにモニターすることができる。齲食細菌へのSaproの結合能力は、例えば、Liら (Infect Immun. 69:7224-33 (2001))に記載されたようにモニターすることができる。リン酸カルシウム沈殿に対するSaproの効果は、例えば、Schwartzら(Calcif Tissue Int. 50:511-7 (1992))に記載されたようにモニターすることができる。細菌の成長に対するSaproの効果は、例えば、Kochanskaら(Acta Microbiol Pol. 49:243-51 (2000))に記載されたようにモニターすることができる。Saproの潤滑性は、例えば、Douglasら(Biochem Biophys Res Commun. 180:91-7 (1991))に記載されたようにモニターすることができる。この実施形態に記載のすべての論文の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
Saproの発現又は活性を低減する試験物質は、Saproアンタゴニストとして定義される。Saproの発現又は活性を増加する試験物質は、Saproアゴニストとして定義される。Saproアゴニスト及びSaproアンタゴニストはSapro修飾因子として定義される。Saproの発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、Saproのドミナントネガティブ型、及び抗Sapro抗体が含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法によって製造かつ使用することができる。
本発明の実施形態は、生理学的に許容される担体と、Saproアゴニスト又はSaproアンタゴニストとを含む経口組成物に関する。かかる組成物としては、口腔内で使用するのに適した、練り歯磨き、口内洗浄剤、液体歯磨剤、ロゼンジ、チューインガム又は他の賦形剤が挙げられる。かかる組成物には、飲み物、ケーキ、ウェハース及びスナック食品も含まれる。Saproポリペプチド、Saproアゴニスト又はSaproアンタゴニストは、約0.001%〜約20%のレベルで組成物中に存在することが好ましい。練り歯磨き及び口内洗浄剤が好ましい組成物である。Saproポリペプチド、Saproアゴニスト又はSaproアンタゴニストを含有する他に、かかる練り歯磨き及び口内洗浄剤は、他の化合物、例えば公知の歯科用シリカ研磨剤、可溶性フッ素イオン源、乳化剤、練り歯磨き結合剤、湿潤剤、歯垢防止剤、歯石防止剤又はそれらの混合物を含有してもよい。かかる経口組成物は、限定されないが、以下に記載の方法を含む、多種多様な方法において有用である。
本発明の好ましい実施形態は、Saproポリペプチドへの細菌の結合を阻害するために、Saproアンタゴニストを使用する方法に関する。かかる方法は、細菌/ペリクル結合部位をブロックすることによる、歯のプラークの形成を阻害するための使用が見出される。かかる一方法は、エナメル表面又は唾液でコートされたヒドロキシアパタイト表面を、抗Sapro抗体と接触させる工程を含む。かかる方法は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Johanssonら(Oral Microbiol Immunol 15:112-8 (2000))に記載されたようにインビトロで、又はこの実施形態でさらに記述されるようにインビボで行うことができる。Saproポリペプチドへの細菌の結合を阻害するためにSaproアンタゴニストを使用する他の方法は、有効量の生理学的に許容される担体及びSaproアンタゴニストを個体に投与する工程を含む。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のSaproアンタゴニスト」とは、Saproポリペプチドへの細菌の結合を阻害又は低減するのに十分な量のSaproアンタゴニストを意味する。好ましくは、前記Saproアンタゴニストは、Saproの活性を低減する。また好ましくは、前記の生理学的に許容される担体及び前記Saproアンタゴニストは、上述の経口組成物の一部であり、前記組成物は、う蝕が形成しやすい個体の口に適用される。一方、前記SaproアンタゴニストはSaproの発現を低減し、全身投与される。
本発明の好ましい実施形態は、細菌に結合するSaproを使用する方法である。この方法は、Saproの結合を可能にする条件下にて、細菌を含有する生体試料と、Saproポリペプチドを接触させる工程を含む。好ましい細菌は、口腔内に存在する細菌である。かかる細菌としては、限定されないが、放線菌属(例えば、A.ビスコーサス(viscosus)、A.ネスルンド(naeslundii))、ペプトストレプトコッカス属、フソバクテリウム属(例えば、F.ネクロゲネス(necrogenes)、F.ネクロフォールム(necrophorum))、プレボテラ属(例えば、P.オラーリス(oralis))、バクテロイデス属(例えば、B.forsythus、B.ウレオリティクム(ureolyticus))、カンジダ属(例えば、C.アルビカンス(albicans))及びポルフィロモナス属(例えば、P.ジンジバリス(gingivalis))が挙げられる。この方法は、例えば、以下にさらに記述されるようにインビトロ用途に適用することができる。
本発明の好ましい実施形態は、口腔内に存在する細菌を精製する方法である。この方法は、i)結合を可能にする条件下にて、担体上に固定化されたSaproポリペプチドを、細菌を含有する溶液又は試料と接触させ、ii)前記担体から混入物を取り除き、iii)結合した細菌を前記担体から溶出する工程を含む。好ましくは、Saproペプチドを固体又は半固体マトリックス上に固定化し、混入物を除去するための試料の洗浄を容易にする。かかる方法は、例えば、歯周炎及び歯肉炎などの歯周病の診断及び/又は管理のために、歯表面に定着する細菌を単離するのに非常に有用である。
本発明のさらに他の好ましい実施形態は、ヒドロキシアパタイト表面又はエナメル表面に結合するSaproポリペプチド又はSaproアゴニストを使用する方法であって、ヒドロキシアパタイト表面又はエナメル表面をSaproポリペプチド又はSaproアゴニストと接触させる工程を含む方法である。一態様において、その方法はインビボで行われ、有効量の生理学的担体と、Saproポリペプチド又はSaproアゴニストとを個体に投与する工程を含む。本明細書でさらに使用される「Sapro組成物」とは、Saproポリペプチド又はSaproアゴニストを含むいずれかの組成物を意味する。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のSaproポリペプチド又はSaproアゴニスト」とは、歯表面の再石灰化を助け、妨げとなるミネラル沈着の形成を防ぐ、又は潤滑剤として作用するのに十分な量のSaproアゴニストを意味する。かかる方法は、例えば、う蝕、露出歯根及び象牙質知覚過敏などの歯の弱さを予防及び/又は修復するために、脱灰された歯エナメル質を処置するために、又はヒドロキシアパタイトで覆われた人工歯根をコートするために使用することができる。
この方法で使用される好ましいSapro組成物は口内洗浄剤である。他の好ましいSapro組成物は、溶液、スプレー又はクリーム状であり、歯に適用される。Sapro組成物は、歯エナメル質を再石灰化するいずれかの方法において、単独で、又は他の活性化合物と組み合わせて適用することが可能である。Sapro組成物は、いずれかの抗齲食法で歯に適用することもできる。Sapro組成物は、歯エナメル質を石灰化するのに有効な、他のいずれかの化合物を含有してもよい。Sapro組成物が使用される方法及びSaproポリペプチド又はSaproアゴニストが添加される組成物は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,037,639号及び米国特許第4,080,440号に記載されている。
有効量のSaproポリペプチド又はSapro修飾因子の有効な投薬量は、例えば、用量反応曲線を確立する日常試験によって、当業者により容易に決定することができる。歯の齲蝕性分解を予防するSaproアンタゴニストの有効な投薬量は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,405,600号で利用されている実験手順を用いて決定することができる。歯の再石灰化のためのSaproポリペプチドの有効な投薬量は例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,214,321号に記載されているインビボ及びインビトロでの試験により評価することができる。本明細書で使用される「生理学的に許容される担体」という用語は、個体及び用いられるSaproポリペプチド又はSaproアゴニストと適合性である組成物を意味する。前記の生理学的に許容される担体としては、限定されないが、溶液及び懸濁液、例えば生物学的バッファー(例えば、リン酸緩衝液、生理食塩、及びダルベッコ培地)、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤及び崩壊剤が挙げられる。生理学的に許容される担体と、本発明のポリペプチド又は修飾因子と、を含む好ましい組成物は、練り歯磨き及び口内洗浄剤などの経口組成物であるが、他の適切な方法で、例えば、静脈内、非経口、表面、経口又は局所投与、又はそれらのいずれかの組み合わせで、Saproポリペプチド又はSaproを含む組成物を投与することができる。
さらに他の実施形態は、Saproポリペプチドをコードする核酸配列又はSaproポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子を用いて遺伝子導入動物(例えば、マウス)を作製する方法に関する。遺伝子導入動物を作製する方法は当業者にはよく知られている。例えば、哺乳類において分泌腺細胞を遺伝的に改変することによってタンパク質を送達する方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,004,944号に記載されている。改変されたSaproの発現を示す遺伝子導入動物は、例えば、う蝕が形成しやすい又は歯が弱くなりやすい動物モデルを得るのに、乾燥症状の動物モデルを得るのに又はかかる症状の治療における化学化合物の有用性を試験するのに有用であり得る。
配列番号:40のタンパク質(内部指定クローン485499_174−12−3−0−H7−F)
クローン485499_174−12−3−0−H7−FのcDNA(配列番号:39)は、アミノ酸配列:MLLILLSVALLALSSAQNLNEDVSQEESPSLIAGNPQGPSPQGGNKPQGPPPPPGKPQGPPPQGGNKPQGPPPPGKPQGPPPQGDKSRSPRSPPGKPQGPPPQGGKPQGPPPQGGNKPQGPPPPGKPQGPPAQGGSKSQSARSPPGKPQGPPQQEGNNPQGPPPPAGGNPQQPQAPPAGQPQGPPRPPQGGRPSRPHQLQPPQSSRIQを含む、配列番号:40のSapripをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:40のポリペプチドのすべての特性及び使用は、クローン485499_174−12−3−0−H7−F中のヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。
さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:39のポリヌクレオチドのすべての特性及び使用は、クローン485499_174−12−3−0−H7−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:40、配列番号:39、及びクローン485499_174−12−3−0−H7−Fのヒトポリヌクレオチド及びポリペプチド組成物に対して向けられている。以下に記載の方法で使用される好ましいSapripポリペプチド断片としては、アミノ配列:QNLNEDVSQEESPSLIAGNPQGPSPQGGNKPQGPPPPPGKPQGPPPQGGNKPQGPPPPGKPQGPPPQGDKSRSPRSPPGKPQGPPPQGGKPQGPPPQGGNKPQGPPPPGKPQGPPAQGGSKSQSARSPPGKPQGPPQQEGNNPQGPPPPAGGNPQQPQAPPAGQPQGPPRPPQGGRPSRPHQLQPPQSSRIQを含むSapripポリペプチドが挙げられる。以下に記載の方法で使用される、また好ましいSapripポリペプチド断片には、さらに詳述されるように転写後プロセッシングにより得られるSapripポリペプチド断片が含まれる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片及びその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、Sapripは、cP3唾液プロリンリッチタンパク質(PRP−1,EMBLアクセッション番号K03204)の新規な分泌スプライスバリアントである。エクソン1及び2は、Saprip mRNA及びcP3 mRNAにおいて同一である。Saprip mRNAの第3エクソンは、cP3 mRNAの第3エクソンより短い。Saprip mRNAの第4エクソンは、Sapripスプライスバリアントに固有である。Sapripは、シグナルペプチド(MLLILLSVALLALSSA)を示し、得られる成熟タンパク質は192アミノ酸の長さである。
多種多様なプロリンリッチタンパク質は、ヒトの唾液の主要なタンパク質成分を形成する。6つの座が唾液プロリンリッチタンパク質の合成を制御し、各座は、選択的スプライシング及び/又は選択的翻訳後プロセシングによって産生される異なるタンパク質をコードする。Sapripは、PRPB遺伝子によりコードされる新規なスプライスバリントであり、唾液プロリンリッチタンパク質の基本的ファミリーのメンバーである。基本的な唾液プロリンリッチタンパク質はすべて、17アミノ酸のアミノ末端保存領域、B1、B2及びB3反復及びカルボキシル末端領域を示す(Maedaら, J Biol Chem. 260:11123-30 (1985)に詳細に記述されている)。例えば、cP3において、「B1−B2−B3」ユニットは隣接して、4回生じる。Sapripは、以下の反復:B1−B2−B3−B3−B1を示す。2つのB3領域は、プロリンに非常に豊富な(42%)31アミノ酸のリンカー領域によって分けられる。さらに、Sapripは、17アミノ酸のアミノ末端保存領域及び41アミノ酸のカルボキシル末端領域(GNPQQPQAPPAGQPQGPPRPPQGGRPSRPHQLQPPQSSRIQ)を示す。このカルボキシル末端領域の後ろの12個のカルボキシル末端アミノ酸は、Sapripスプライスバリアントに固有である。
さらに成熟Sapripポリペプチドは時として、タンパク質分解プロセシングを受け得る。これらのプロセシングの1つは、R−S−[ASP]−R−S配列でのプロタンパク質転換酵素による切断からなる(例えば、Chanら Eur J Biochem 268:3423-31 (2001)参照)。Sapripは、1つのかかる配列を示し、タンパク質分解性切断は配列番号:40の75位で起こり得る。Sapripが切断される場合、プロセシングによって2つのポリペプチドが生じ、そのうちの1つは、新規な唾液プロリンリッチタンパク質(SPPGKPQGPPPQGGKPQGPPPQGGNKPQGPPPPGKPQGPPAQGGSKSQSARSPPGKPQGPPQQEGNNPQGPPPPAGGNPQQPQAPPAGQPQGPPRPPQGGRPSRPHQLQPPQSSRIQ)である。
PRPB遺伝子は、遺伝的に多型の遺伝子座であり、Sapripは、それが単離される個体に応じていくつかの小さな差異を示し得る。これらの差異としては、限定されないが、非極性残基の他の非極性残基での置換又は荷電残基の同様な荷電残基での置換など、保存アミノ酸の変更が挙げられる。これらの変更には、当業者によって認識される変更、例えば、タンパク質の三次構造が実質的に改変されない変更が含まれる。好ましい多型の差異としては、限定されないが、(i)配列番号:40の4位のアスパラギンのセリンによる置換、(ii)配列番号:40の116位のアラニンのプロリンによる置換、(iii)配列番号:40の123位のグルタミンのアルギニンによる置換、(iv)配列番号:40の127位のセリンのアラニンによる置換、(v)配列番号:40の126位のアルギニンの欠失が挙げられる。
Sapripは、獲得被膜の成分である、多機能性唾液タンパク質である。Sapripは、それと複合体を形成することによって食物タンニンに対する防御として働き、それによって、他の生物学的化合物とのそれらの相互作用及び腸管からの吸収が妨げられる。Sapripは、ヒドロキシアパタイトに結合し、歯表面の潤滑剤として働き、咀嚼及び歯ぎしりなどの様々な物理的力からそれを保護する。さらに、Sapripは齲食細菌に結合し、このため、口腔内における結合した齲食細菌のレザバーの維持によって、う蝕の形成が間接的に促進される。さらに、Sapripは抗ウイルス性を示す。
本発明の実施形態は、配列番号:40、又は配列番号:40と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のSapripポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、配列番号:40の89位及び90位に示される隣接アミノ酸を含む又は配列番号:40の181〜192位のアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む、Sapripポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、ヒドロキシアパタイトに結合する、齲食細菌に結合する、タンニンに結合する、ウイルスの感染性を低減する、又は歯表面の潤滑剤として働く、Sapripポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本明細書でさらに使用される「Sapripポリペプチド」とは、配列番号:40の又は配列番号:40と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のSapripポリペプチド配列又は配列番号:40の89位及び90位に示される隣接アミノ酸を含むSapripポリペプチド断片又は配列番号:40の181〜192位のアミノ酸のうちの少なくとも1つを含むSapripポリペプチド断片又はヒドロキシアパタイトに結合する、齲食細菌に結合する、タンニンに結合する、ウイルスの感染性を低減する、又は歯表面の潤滑剤として働くSapripポリペプチド断片のいずれかを意味する。
本発明の実施形態は、Sapripポリペプチドをコードする配列番号:39のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明のさらなる実施形態は、Sapripポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本明細書でさらに使用される「Sapripポリヌクレオチド」とは、配列番号:39の、又は配列番号:39のと少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のSapripポリヌクレオチド配列又はSapripポリペプチドをコードするヌクレオチド配列又はこれらの配列のいずれかに相補的な配列のいずれかを意味する。
本発明のさらなる実施形態は、Sapripポリペプチドを認識する抗体に関する。好ましくは、かかる抗Saprip抗体は、配列番号:40の181〜192位のアミノ酸のうちの1つ又は複数を認識し、前記の1つ又は複数のアミノ酸は、結合に必要である。好ましくは、その抗体はSapripには特異的に結合するが、PRP−1には特異的に結合しない。本明細書で使用される「抗Saprip抗体」とは、Sapripポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を意味する。
本発明の実施形態は、Sapripポリペプチドに抗Saprip抗体を結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、Sapripポリペプチドを前記抗体と接触させる工程を含む。かかる条件は当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書でさらに記述されるSapripポリペプチドの検出に有用である。
本発明の実施形態は、生体試料におけるSapripポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗Saprip抗体と接触させ、ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する工程を含む。その抗Saprip抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗Saprip抗体は、一次的又は二次的に、当技術分野で一般的ないずれかの検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物又は酵素化合物)によって標識することができる。あるいは、生体試料におけるSapripポリペプチドの検出は、例えば、Shintaniら(Hum Hered.40:89-98 (1990))に記載の方法を用いて、高速液体クロマトグラフィーによって行うことができる。Sapripポリペプチドの検出は、例えば、唾液腺及び涙腺の機能障害(乾燥症状)の診断に、又は以下に詳述されるSaprip多型性の検出に適用することが可能である。
本発明の実施形態は、DNAゲノタイピングのためにSapripポリヌクレオチドを使用する方法に関する。かかる方法は、i)個体からヌクレオチド試験試料を採取し、ii)Sapripゲノム配列の存在を検出する工程を含む。Sapripゲノム配列の存在は、標準分子生物学技術(例えば、サザンブロット法)を用いて、及びSapripヌクレオチドもしくはその断片をプローブとして利用して検出することが好ましい。あるいは、その方法は、i)個体からヌクレオチド試験試料を採取し、ii)Sapripゲノム配列における突然変異の存在を検出する工程を含む。かかる突然変異には、欠失、転座、逆位及び点突然変異が含まれる。本明細書で使用される「突然変異」という用語は、検出されたポリヌクレオチドと配列番号:39との間のいずれかの多型の差異を含む。これらの突然変異は、標準分子生物学技術(例えば、シークエンシング又はPCR)を用いて、及びSapripヌクレオチド又はその断片をプローブもしくはプライマーとして利用して検出することが好ましい。好ましくは、これらの方法におけるヌクレオチド試験試料はDNAを含有する。個体のゲノタイピングは、例えば、シークエンシング、マイクロシークエンシング又はハイブリダイゼーションなどの当業者によく知られているいずれかの技術によって行うことができる。かかる方法は、その開示内容全体が参照により組み込まれる、米国特許第5,935,783号及び米国特許第6,303,294号に記載されたように行うことができる。前記Sapripポリヌクレオチドは、単独で又は例えば他の唾液タンパク質をコードする他のポリヌクレオチド配列と組み合わせて使用することができる。本発明のさらなる態様は、Sapripポリヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイに関する。好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブの前記アレイは、唾液タンパク質の多型性を検出することに向けられる。
本発明のその他の実施形態は、Saprip mRNAの存在を検出するためにSapripポリヌクレオチドを使用する方法に関する。かかる方法は、i)個体からヌクレオチド試験試料を採取し、ii)Saprip mRNAの存在を検出する工程を含む。Saprip mRNAの存在は、標準分子生物学技術(例えば、ノーザンブロット法、RTPCR)を用いて、及びSapripヌクレオチドもしくはその断片をプローブとして利用して検出することが好ましい。あるいは、その方法は、i)個体からヌクレオチド試験試料を採取し、ii)Saprip mRNAにおける突然変異の存在を検出する工程を含む。
Sapripゲノム配列又はSaprip mRNAにおけるSapripポリペプチドの検出及び/又は突然変異の存在の検出は、法医学分野において又は集団遺伝学的研究を行うのに有用であり得る。
本発明の実施形態は、生体試料におけるSapripの発現を検出する方法に関し、前記方法は、i)個体から生体試料を採取し、ii)試料におけるSapripの発現レベルを検出し、iii)前記試料におけるSapripの発現レベルを対照試料におけるレベルと比較する工程を含む。かかる方法は、例えば、乾燥症状の診断に有用である。疾患をもたない健康な個体におけるレベルを表す対照試料における発現レベルと比較して、前記生体試料におけるSapripの発現レベルが低い場合には、乾燥症状が存在することを示している。好ましい生体試料は、唾液分泌から得られる。かかる方法は、例えば、慢性関節リウマチに罹患している乾燥性及び非乾燥性の患者を区別するために、放射線ヨウ素治療を受けている患者における乾燥症状を検出するために、又はシェーグレン症候群又は原発性胆汁性肝硬変に罹患している患者における乾燥症状を検出するために使用することができる。
一方、生体試料におけるSapripの発現の検出は、様々な歯周病の診断に、かつ唾液分泌に対する特定の薬物(例えば、中枢神経系興奮薬)の効果の全体的評価に有用であり得る。試料におけるSapripの発現レベルは、いずれかの方法を用いて、例えば、試料におけるSaprip mRNA又はSapripポリペプチドのレベルを検出することによって評価することができる。例えば、ウェスタンブロット法、免疫化学技術及び細胞化学技術などのよく知られている多くの技術のいずれかを用いて、Sapripの発現を検出することができる。好ましくは、抗Saprip抗体を使用して、Sapripの発現レベルを検出する。また好ましくは、配列番号:39のポリヌクレオチド配列又はその一部、又は配列番号:37に相補的なポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを使用して、例えばノーザンブロット法又はRTPCR技術によってSapripの発現レベルを検出する。生体試料におけるSapripの発現の検出は、例えば、その開示内容全体が参照により組み込まれる、Jensenら(Oral Dis. 3:254-61 (1997))又はNordgardenら(J Dent Res. 77:1817-22 (1998))に記載されたように行うことができる。
本発明のその他の実施形態は、Sapripポリペプチドの存在をインビトロで定量化するための診断キットに関する。かかるキットは、i)抗Saprip抗体、任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬を備える。前記抗体は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。あるいは、その任意の試薬は、検出可能なシグナルであってもよい。任意の試薬は、前記抗体に結合するか、又は前記抗体上の標識と反応する。抗Saprip抗体を備えるキットは、乾燥症状の診断に使用されることが好ましい。任意に、前記診断キットは、疾患を持たない健康な個体からのレベルを表す負の対照試料を備える。任意に、前記診断キットは、乾燥症状を有する個体からのレベルを表す正の対照試料を備える。任意に、前記キットは、乾燥症状の診断に有用な他の抗体を備える。
その他の実施形態は、i)Sapripポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞を、前記ポリペプチドの発現の助けとなる条件下にて培養し、ii)産生されたポリペプチドを精製する工程を含む、Sapripポリペプチドを作製する方法に関する。そのポリペプチドの精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗Saprip抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。あるいは、Sapripポリペプチドを異種免疫原性ペプチドに融合させてもよく、その融合タンパク質は、異種ペプチドに特異的な抗体を用いて精製される。Sapripポリペプチドを発現する細胞は、以下に記述するような組換え宿主細胞であることが好ましい。Sapripポリペプチドの作製は、本明細書でさらに記述されるような方法及び組成物において有用であり得る。
本発明の好ましい態様は、プロモーターに作動可能に連結される、Sapripポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。1つの実施形態は、Sapripポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体を作製する方法であって:i)プロモーターに作動可能に連結される、Sapripポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えベクターを作製し、ii)前記組換えベクターを細胞に導入する工程を含む方法に関する。好ましい実施形態では、前記細胞は大腸菌細胞又はヒト細胞である。かかる宿主細胞は、例えばSapripポリペプチドの作製に有用である。
その他の好ましい態様は、細胞に存在する場合には、Sapripの発現に変化をもたらす、ポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。Sapripの発現を修飾することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体は、i)Saprip遺伝子を含む細胞を提供し、ii)Sapripの発現を変化させるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、前記細胞に導入する工程を含む方法であって、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの存在によって、前記組換えベクターが導入される前の前記細胞におけるSapripの発現レベルと比較して、Sapripの発現が増加又は低減する方法によって作製される。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Saprip遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部に挿入されるか、又はSaprip遺伝子の5’調節領域のすべて又は一部と置き換わる。さらに好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、Sapripコード領域の500塩基対内に位置する。前記ポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,641,670号及び国際公開番号:W09629411に記載されている。
一実施形態は、Sapripポリペプチドを含む人工唾液に関する。例えば、正常な唾液の流れを有する個体ならびに口腔乾燥症又は唾液腺炎に罹患している個体において、微生物媒介口腔疾患、口渇症又は咬合不調和を抑制するために、人工唾液を使用することができる。人工唾液は、口腔液を採取かつ分析する装置及び方法の試験、較正及び標準化に使用することもできる。Sapripポリペプチドが添加される、人工唾液組成物は、例えばその開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,879,281号及び米国特許第5,695,929号に記載されている。Sapripポリペプチドは、約0.001%〜約70%のレベルで人工唾液中に存在し得る。
好ましい実施形態は、Sapripの発現を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるSapripの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する工程を含む方法に関し、暴露細胞と非暴露対照細胞との間で観察されるSapripの発現の差異によって、試験物質がSapripの発現を調節することを示す。Sapripの発現は、限定されないが、Sapripポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロット法又はRTPCRによるSaprip mRNAの検出)又はSapripポリペプチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロット法又は免疫化学によるSapripポリペプチドの検出)を含む、当技術分野で一般的な方法によって決定することが可能である。一実施形態において、その試験物質は特定の細胞型ではSapripの発現を修飾するが、他の細胞型では修飾しない。好ましい組織は、耳下腺及び顎下腺を含む。例えば、細胞、組織、又は個体におけるSapripの発現を変化させるために、修飾因子を使用する方法と同様に、かかる方法を用いて同定される修飾因子もまた、本発明によって包含される。
本発明のさらなる実施形態は、Sapripの活性を調節する能力について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)Sapripポリペプチドを試験物質と接触させ、ii)試験物質に暴露した後のSapripの活性を、非暴露Sapripポリペプチドの活性と比較する工程を含む方法に関し、暴露ポリペプチドと非暴露ポリペプチドとの間で観察されるSapripの活性の差異によって、試験物質がSapripの活性を調節することを示す。あるいは、前記Sapripポリペプチドは細胞中に存在し、暴露細胞と非暴露細胞との間で観察されるSapripの活性の差異によって、試験物質がSapripの活性を調節することが示される。Sapripの活性は、当技術分野で一般的な多くの技術のいずれかによって決定することができる。例えば、ヒドロキシアパタイトへのその結合、齲食細菌へのその結合、その潤滑性、タンニンへのその結合、又はウイルスの複製に対する抑制効果を研究することによって、Sapripの活性をモニターすることができる。ヒドロキシアパタイト表面でのSapripの吸着は、例えば、Morenoら(Calcif Tissue Int 36:48-59 (1984))に記載されたようにモニターすることができる。齲食細菌へのSapripの結合能力は、例えば、Gibbonsら(Infect Immun. 56:2990-3 (1988))に記載されたようにモニターすることができる。タンニンへのSapripの結合能力は、例えば、Luら(Arch Oral Biol 43:717-28 (1998))に記載されたようにモニターすることができる。Sapripの抗ウイルス性は、例えば、Orzechowskaら(Acta Virol 42:75-8 (1998))に記載されたようにモニターすることができる。Sapripの潤滑性は、例えば、Hattonら(Biochem J 230:817-20 (1985))に記載されたようにモニターすることができる。この実施形態に記載のすべての論文の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
Sapripの発現又は活性を低減する試験物質は、Sapripアンタゴニストとして定義される。Sapripの発現又は活性を増加する試験物質は、Sapripアゴニストとして定義される。Sapripアゴニスト及びSapripアンタゴニストはSaprip修飾因子として定義される。Sapripの発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、化学化合物(例えば、小分子阻害剤又は活性化剤)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、ポリペプチド、リボザイム、Sapripのドミナントネガティブ型、及び抗Saprip抗体が含まれる。さらに詳細には、Sapripの発現又は活性を調節する試験物質には、限定されないが、カルシウム、12−o−テトラデカノールホルボール(tetradecanoulphorbol)−13−アセテート、レチノイド、IL−1及びIL−3などのサイトカイン、及びポリフェノール化合物、例えばイソプロテレノール、プロパノロール及びアテノロールが含まれる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法によって製造かつ使用することができる。
本発明の実施形態は、生理学的に許容される担体と、Sapripポリペプチド、Sapripアゴニスト又はSapripアンタゴニストとを含む経口組成物に関する。かかる組成物としては、口腔内で使用するのに適した、練り歯磨き、口内洗浄剤、液体歯磨剤、ロゼンジ、チューインガム又は他の賦形剤が挙げられる。かかる適切な形状は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,083,955号に開示されている。かかる組成物には、飲み物及び食品も含まれる。Sapripポリペプチド、Sapripアゴニスト又はSapripアンタゴニストは、約0.001%〜約70%のレベルで組成物中に存在することが好ましい。タンニンを含む練り歯磨き、口内洗浄剤及び食品又は飲み物が好ましい組成物である。Sapripポリペプチド、Sapripアゴニスト又はSaproアンタゴニストを含有する他に、かかる練り歯磨き及び口内洗浄剤は、他の化合物、例えば、公知の歯科用研磨剤、可溶性フッ素イオン源、乳化剤、練り歯磨き結合剤、湿潤剤、歯垢防止剤、歯石防止剤、着香料又はそれらの混合物を含有してもよい。Sapripを含むかかる経口組成物は、限定されないが、以下に記載の方法などの多種多様な方法において有用である。
好ましい実施形態において、Sapripポリペプチド及び/又はSaprip修飾因子を含む組成物は、歯科用研磨剤を含有する練り歯磨きである。本発明の練り歯磨き組成物での使用が企図される、かかる研磨用の研磨材料は、象牙質を過度にすり減らさない材料であり得る。これらの例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、及び樹脂研磨材、例えば尿素とホルムアルデヒドとの粒状縮合生成物、及び、例えば、その開示内容全体が参照により組み込まれる、Cooleyらによる米国特許第3,070,510に開示されている他の物質が挙げられる。
研磨剤の混合物も使用することができる。歯科用シリカ研磨剤が本明細書での使用に好ましい。任意に、着香料及び/又は甘味剤を練り歯磨き組成物に添加することができる。適切な着香料としては、ウインターグリーン油、ハッカ油、スペアミント油、サッサフラス油、チョウジ油などが挙げられる。使用することができる甘味剤としては、アスパルテームアセスルファーム、サッカリン、ブドウ糖、果糖及びシクラミン酸ナトリウムなどが挙げられる。着香料及び甘味剤は一般に、約0.005重量%〜約2重量%のレベルで練り歯磨き中に使用される。
任意に、練り歯磨き組成物は、乳化剤を含有し得る。適切な乳化剤は、適度に安定であり、かつ広いpH範囲にわたって泡立つ乳化剤、例えば、非石鹸の陰イオン、非イオン、陽イオン、双極性イオン及び両性有機合成界面活性剤である。水もまた、本発明の練り歯磨き中に存在する。
任意に、望ましい粘稠度を提供する増粘剤を練り歯磨きに添加することができる。好ましい増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラゲナン、ヒドロキシエチルセルロース及びセルロースエーテルの水溶性塩、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム及びカルボキシルメチルヒドロキシエチルセルロースである。カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントゴムなどの天然ゴムを使用することもできる。コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム又は微細シリカを、質感をさらに改善するために増粘剤の一部として使用することができる。組成物全体に対して0.2〜5.0重量%の量で増粘剤を使用することができる。
任意に、それが固まらないようにするために、湿潤剤を練り歯磨きに添加することができる。適切な湿潤剤は、約15%〜約70%のレベルで、グリセリン、ソルビトール、及び他の食用多価アルコールを含む。
本発明のその他の好ましい態様は、洗口剤組成物である。洗口剤は一般に、約20:1〜約2:1の水/エチルアルコール溶液を含有する。その洗口剤はアルコールを含有しないことも可能である。好ましくは、着香剤、甘味料、及び湿潤剤などの他の成分、例えば、歯磨剤について上述の成分などを添加することができる。一般に、本発明の洗口剤は、エチルアルコール0重量%〜60重量%(好ましくは5重量%〜20重量%)、湿潤剤0重量%〜20重量%(好ましくは5重量%〜20重量%)、乳化剤0重量%〜2重量%(好ましくは、0.01重量%〜1.0重量%)、サッカリンなどの甘味剤又はステビオサイド(stevroside)などの天然甘味料0重量%〜0.5重量%(好ましくは、0.005重量%〜0.06重量%)、着香剤0重量%〜0.3重量%(好ましくは、0.03重量%〜0.3重量%)及び水を含む。
さらに他の好ましい態様において、Sapripポリペプチド及び/又はSaprip修飾因子を含む組成物は、食物タンニンを含む、いずれかの食品、飼料又は飲み物である。好ましいかかる食品、飼料及び飲み物としては、モロコシ、ソラマメなどのマメ、カッサバの葉、ササゲ、チャ、ピーナッツの皮、ワヒージョ(Guajillo)、Lotus pedunculatus又は様々な熱帯種、例えばProsopis africana及びLonchocarpus sericeusを含むものが挙げられる。前記飼料は、反芻動物に餌を与えることに向けられることが好ましい。
本発明の好ましい実施形態は、タンニンに結合するSapripポリペプチドを使用する方法である。この方法は、Sapripの結合を可能にする条件下にて、タンニン含有飼料とSapripポリペプチドを接触させる工程を含む。一態様において、前記方法はインビボで行われ、かつ生理学的に許容される担体と、有効量のSapripポリペプチド又はSapripアゴニストとを含む組成物と組み合わせて、タンニン含有試料を個体に投与する工程を含む。好ましいタンニン含有試料は、上記のような食物タンニンを含有する食品、飲み物及び飲料(boverage)である。その他の態様において、前記方法は、インビボで行われ、タンニンと、有効量のSapripポリペプチド又はSapripアゴニストとを含む組成物を個体に投与する工程を含む。好ましいかかる組成物は、上記のような食品、飲み物及び飲料である。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のSapripポリペプチド又はSapripアゴニスト」とは、前記タンニン含有試料又は組成物中に存在するタンニンの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%以上に結合するのに十分な量のSapripポリペプチド又はSapripアゴニストを意味する。かかる方法は例えば、食物タンニンの抗栄養作用を防ぐために使用することができる。
本発明のその他の好ましい実施形態は、ウイルスの感染性を抑制するために、Sapripポリペプチド又はSapripアゴニストを使用する方法であって、ウイルスをSapripポリペプチド又はSapripアゴニストと接触させる工程を含む方法である。かかる方法は、Guら(Oral Microbiol Immunol 10:54-9 (1995))に記載されたようにインビトロで行うことができる。好ましい態様では、かかる方法は、インビボで行われ、かつウイルス感染した個体に、有効量のSapripポリペプチド又はSapripアゴニストを含む組成物を投与する工程を含む。前記ウイルスとしては、限定されないが、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1、ヒヒヘルペスウイルスLMP2A)、免疫不全ウイルス(例えば、HIV−1)、白血病ウイルス(例えば、ウシ白血病ウイルスgp30、マウス白血病ウイルス)、エプスタインバーウイルス(例えば、エプスタインバーウイルスLMP2A)及びアフリカウマ病ウイルスVP7が挙げられる。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のSapripポリペプチド又はSapripアゴニストは、ウイルス感染力を低減するのに十分な量のSapripポリペプチド又はSapripアゴニストを意味する。
本発明のさらに他の実施形態は、細菌に結合するSapripを使用する方法である。この方法は、Sapripの結合を可能にする条件下にて、細菌含有生体試料とSapripポリペプチドを接触させる工程を含む。好ましい細菌は口腔内に存在する細菌である。かかる細菌としては、限定されないが、カンジダ属(例えば、C.アルビカンス(albicans))、放線菌属(例えば、A.ビスコーサス(viscosus))及びポルフィロモナス属(例えば、P.ジンジバリス(gingivalis))が挙げられる。この方法は、例えば、以下にさらに記述されるようにインビトロ及びインビボ用途に適用することができる。
本発明の好ましい実施形態は、口腔内に存在する細菌を精製する方法である。この方法は、i)結合を可能にする条件下にて、担体上に固定化されたSapripポリペプチドを、細菌を含有する溶液又は試料と接触させ、ii)前記担体から混入物を取り除き、iii)結合した細菌を前記担体から溶出する工程を含む。好ましくは、Sapripペプチドを固体又は半固体マトリックス上に固定化し、混入物を除去するための試料の洗浄を容易にする。かかる方法は、例えば、歯周炎及び歯肉炎などの歯周病の診断及び/又は管理のために、歯表面に定着する細菌を単離するのに非常に有用である。
本発明の好ましい実施形態は、Sapripポリペプチドへの細菌の結合を阻害するためにSapripアンタゴニストを使用する方法に関する。かかる方法は、細菌/ペリクル結合部位をブロックすることによる、歯のプラークの形成を阻害するための使用が見出される。かかる一方法は、エナメル表面又は唾液でコートされたヒドロキシアパタイト表面を、抗Saprip抗体と接触させる工程を含む。かかる方法はインビトロ又はインビボで行うことができる。その他のかかる方法は、有効量の生理学的に許容される担体及びSapripアンタゴニストを個体に投与する工程を含む。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のSapripアンタゴニスト」とは、Sapripポリペプチドへの細菌の結合を阻害又は低減するのに十分な量のSapripアンタゴニストを意味する。好ましくは、前記Sapripアンタゴニストは、Sapripの活性を低減する。また好ましくは、前記Sapripアンタゴニストは、Sapripのドミナントネガティブ型である。この実施形態のコンテクストで使用される、Sapripのドミナントネガティブ型とは、微生物付着を阻害するSapripの断片である。Sapripのかかるドミナントネガティブ型を得て、使用する方法は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,013,542号に記載されている。最も好ましくは、前記生理学的に許容される担体及び前記Sapripアンタゴニストは、上述の経口組成物の一部であり、前記組成物は、う蝕が形成しやすい個体の口腔に適用される。あるいは、前記SapripアンタゴニストはSapripの発現を低減し、全身投与される。
ヒドロキシアパタイト表面又はエナメル表面に結合するSapripポリペプチド又はSapripアゴニストを使用する方法であって、ヒドロキシアパタイト表面又はエナメル表面をSapripポリペプチド又はSapripアゴニストと接触させる工程を含む方法である。一態様において、その方法はインビボで行われ、有効量の生理学的担体と、Sapripポリペプチド又はSapripアゴニストとを個体に投与する工程を含む。この実施形態でさらに使用される「Saprip組成物」とは、生理学的に許容される担体と、Sapripポリペプチド又はSapripアゴニストとを含むいずれかの組成物を意味する。この実施形態のコンテクストで使用される「有効量のSapripポリペプチド又はSapripアゴニスト」とは、潤滑剤として作用するのに十分な量のSapripアゴニストを意味する。かかる方法は、例えば、歯の弱さを予防及び/又は修復するために、使用することができる。この方法で使用される好ましいSaprip組成物は口内洗浄剤である。他の好ましいSaprip組成物は、溶液、スプレー又はクリーム状であり、歯に適用される。Saprip組成物は例えば、いずれかの抗齲食法において、単独で、又は活性化合物と組み合わせて歯に適用することが可能である。Saprip組成物は、歯エナメル質を石灰化し、う蝕の形成を防ぎ、又は歯を強化するのに有効な、他のいずれかの化合物を含有してもよい。Saprip組成物が使用される方法及びSapripポリペプチド又はSapripアゴニストが添加される組成物は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,037,639号及び米国特許第4,080,440号に記載されている。
有効量のSapripポリペプチド又はSaprip修飾因子の有効な投薬量は、例えば、用量反応曲線を確立する日常試験によって、当業者により容易に決定することができる。歯の齲蝕性分解を予防するSapripアンタゴニストの有効な投薬量は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,405,600号で利用されている実験手順を用いて決定することができる。ウイルス感染性を低減するためのSapripアンタゴニストの有効な投薬量は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,239,099号で利用されている実験手順を用いて決定することができる。
食物タンニンの抗栄養作用を防ぐためのSapripアンタゴニストの有効な投薬量は、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,565,225号で利用されている実験手順を用いて決定することができる。
本明細書で使用される「生理学的に許容される担体」という用語は、個体及び用いられるSapripポリペプチド又はSapripアゴニストと適合性である組成物を意味する。前記生理学的に許容される担体としては、限定されないが、溶液及び懸濁液、例えば生物学的バッファー(例えば、リン酸緩衝液、生理食塩、及びダルベッコ培地)、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤及び崩壊剤が挙げられる。生理学的に許容される担体と、本発明のポリペプチド又は修飾因子と、を含む好ましい組成物は、練り歯磨き及び口内洗浄剤などの経口組成物であるが、他の適切な方法で、例えば、静脈内、非経口、表面、経口、又は局所投与、又はそれらのいずれかの組み合わせで、Sapripポリペプチド又はSapripを含む組成物を投与することができる。
さらに他の実施形態は、Sapripポリペプチドをコードする核酸配列又はSapripポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子を用いて遺伝子導入動物(例えば、マウス)を作製する方法に関する。遺伝子導入動物を作製する方法は当業者にはよく知られている。例えば、哺乳類において分泌腺細胞を遺伝的に改変することによってタンパク質を送達する方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,004,944号に記載されている。改変されたSapripの発現を示す遺伝子導入動物は、例えば、う蝕が形成しやすい、又は歯が弱くなりやすい動物モデルを得るのに、乾燥症状の動物モデルを得るのに、又はかかる症状の治療における化学化合物の有用性を試験するのに有用であり得る。
抗体の使用
本発明の抗体は、限定されないが、本発明のポリペプチドを精製、検出及び標的化するための当技術分野で公知の方法、例えば、インビトロ及びインビボ両方の診断及び治療方法を含む用途を有する。例えば、その抗体は、生体試料において、抗原保有物質、例えば本発明のポリペプチドなどのレベルを定性的かつ定量的に測定するイムノアッセイでの用途を有する(例えば、Harlowら 1988参照)。そのタンパク質を発現する細胞を死滅させる、又は体内のタンパク質のレベルを低減するための治療用組成物に、その抗体を使用することも可能である。
本発明はさらに、本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストとして働く抗体に関する。例えば、本発明は、本発明のポリペプチドとの受容体/リガンド相互作用を一部又は完全に乱す抗体を包含する。これらの抗体は、リガンド仲介受容体の活性化によって影響を受ける、すべて又はすべてではない生物活性に対するアゴニストとして作用し得る。その抗体は、本明細書に開示される特異的活性を含む生物活性に対するアゴニスト又はアンタゴニストとして特定される。上記の抗体アゴニストは、当技術分野で公知の方法を用いて作製することができる。例えば、WO96/40281;米国特許第5,811,097号;Dengら(1998) Blood. 92 (6): 1981-1988; Chenら(1998), Cancer Res. 58 (16): 3668-3678;Harropら(1998), J. Immunol. 161 (4): 1786-1794; Zhuら(1998), Cancer Res. 58 (15): 3209-3214;Yoonら (1998), J. Immunol. 160 (7): 3170-3179; Pratら(1998), J. Cell. Sci. 11 l (Pt2): 237-247; Pitardら(1997), J. Immunol. Methods. 205 (2): 177-190; Liautardら(1997), cytokine. 9 (4): 233-241; Carlsonら(1997), J. Biol. Chem. 272 (17): 11295-11301;Tarymanら(1995), Neuron. 14 (4): 755-762; Mullerら(1998), Structure. 6 (9): 1153-1167;Bartunekら(1996), cytokine. 8 (1) : 14-20を参照のこと。
上述のように、次に、本発明のポリペプチドの抗体は、当業者に公知の技術を用いて、本発明のポリペプチドを「模倣する」抗イディオタイプ抗体を作製するために使用することができる(例えば、Greenspan and Bona (1989), FASEB J. 7 (5): 437444 and Nissinoff, (1991), J. Immunol. 147 (8): 2429-2438参照)。例えば、本発明のポリペプチドに結合し、かつ本発明のポリペプチドのポリペプチド多量体化又は結合を競合的に阻害する抗体を使用して、ポリペプチドの多量体化又は結合ドメインを「模倣し」、結果として、ポリペプチド又はそのリガンドに結合し、かつ中和する抗イディオタイプを作製することができる。かかる中和抗イディオタイプ抗体を用いて、本発明のポリペプチドに結合させるか、又はそのリガンド/受容体に結合させ、それによって、その生物活性をブロックすることができる。
イムノアフィニティー・クロマトグラフィー
本明細書に記載の抗体を担体に結合させる。その抗体はモノクローナル抗体であることが好ましいが、ポリクローナル抗体を用いてもよい。担体は、イムノアフィニティー・クロマトグラフィーで通常使用される担体のいずれかであり、いずれかの標準試薬を用いて、担体に結合させることができる。抗体を担体に結合させた後、単離、精製又は濃縮することが望まれる、標的ポリペプチドを含有する試料と、その担体を接触させる。
その後、適切な洗浄液で担体を洗浄し、イムノアフィニティー・クロマトグラフィーで通常使用される高pH又は低pHの溶出液を使用して、特異的に結合した標的ポリペプチドを担体から溶出する。
新規な遺伝子産物の発現
新規なポリペプチドをコードするmRNAの発現レベル及びパターンの評価
新規なポリペプチドをコードするmRNAの空間的及び時間的発現パターン、ならびにそれらの発現レベルは、いずれかの適切な方法を用いて決定することができる。
一実施形態において、新規なポリペプチドをコードするmRNAの発現レベル及びパターンは、プローブとの溶液ハイブリダイゼーションによって分析される(例えば、WO97/05277参照)。簡単に言えば、対象のmRNAに相補的なRNAが標識され、捕捉可能な成分、例えばビオチンで誘導体化される。対象の細胞又は組織から単離されたmRNAと溶液中でハイブリダイゼーションした後、ハイブリダイズしていないプローブが消化によって除去され、残っているハイブリダイズしたRNAは、例えばマイクロタイタープレート上に捕捉され、定量化される。
他の実施形態では、網羅的遺伝子発現解析(SAGE)のために、新規なポリペプチドをコードするcDNA又はその断片を、ヌクレオチド配列でタグ付けすることも可能である(例えば、英国特許出願番号:2 305 241 A参照)。
新規な遺伝子発現の定量分析もまた、アレイを用いて行うことができる。例えば、遺伝子発現の定量分析は、Schenaら(1995) Science 270: 467-470及びSchenaら(1996), PNAS, 93 (20): 10614-10619, Pietuら(1996) Genome Research 6: 492-503)によって記述されているように、相補的DNAマイクロアレイにおいて新規なポリヌクレオチド又はその断片を用いて又は他のマイクロアレイ技術を用いて行うことが可能である。簡単に言うと、新規なポリペプチドをコードするcDNA又はその断片はスライド上にアレイされ、そのアレイは、対象の細胞又は組織のmRNAに由来するプローブとハイブリダイズされる。洗浄した後、特定用途用フィルターセットを備えたレーザー走査蛍光装置を用いて、そのアレイを走査する。2回の独立したハイブリダイゼーションの比の平均値を取ることによって、正確に差次的発現が測定される。
あるいは、新規な遺伝子の発現解析は、Lockhartら(1996) Nature Biotechnology 14: 1675-1680及びSosnowskiら(1997) PNAS 94: 1119-1123によって記述されているように高密度ヌクレオチドアレイによって行うことができる。新規なポリヌクレオチド又はその断片の配列に相当する、15〜50ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドをチップ上に直接合成するか、又は合成し、次いでそのチップにアドレス指定する。標識cDNAプローブは、適切なmRNA集団から合成され、次いで50〜100ヌクレオチドの平均サイズにランダムに断片化される。次いで、そのプローブはチップにハイブリダイズされる。洗浄後、標識を検出し、定量化する。異なるcDNA試料中の同じ標的オリゴヌクレオチドに対して、cDNAプローブから生じるシグナルの強度を比較分析することによって、新規なポリペプチドをコードするmRNAの差次的発現が示される。
新規な遺伝子発現データの使用
新規なポリペプチドをコードするmRNAの発現レベル及びパターンが決定されたら、この情報を用いて、検出、同定、スクリーニング及び診断の目的のために新規な遺伝子特異的マーカーを設計すること、ならびに新規な遺伝子発現パターンに類似の発現パターンを有するDNAコンストラクトを設計することが可能である。
新規なポリペプチドの発現及び/生物活性の検出
本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチド及びポリペプチド配列を用いて、生体試料における新規なポリペプチドの発現及び/生物活性を検出する方法に関する。かかる方法は、例えば、正常又は異常な新規なポリペプチドの発現及び/生物活性のスクリーンとして使用することができ、したがって診断的に使用することができる。
新規なポリペプチドの検出
本発明はさらに、細胞又は試料中の新規なポリペプチドを検出する方法に関する。特定の実施形態において、細胞又は試料におけるポリペプチドの存在は、ポリペプチドをコードするmRNAの存在を検出することによって間接的に検出される。例えば、新規なポリペプチドを検出する方法において、標識ポリヌクレオチドプローブを用いることが可能であり、mRNAの存在は、新規なポリペプチドをコードする遺伝子の発現を示す。
結果として、本発明は、試料中の本発明のポリヌクレオチドの存在を検出する方法を含み、その方法は、前記試料と、ポリヌクレオチドにハイブリダイズする1種又は複数種の核酸プローブとを接触させ、前記の1種又は複数種のプローブと、前記ポリヌクレオチドとの間に形成されたハイブリッド複合体を検出する工程を含む。特定の実施形態において、1種又は複数種のプローブが標識され、基質上に固定化される。
その他の実施形態では、ポリヌクレオチドは増幅反応を用いて検出され、その増幅反応では、試料を増幅反応試薬と接触させ、増幅反応を行って、前記の選択されたヌクレオチドの前記領域を含有する増幅産物を合成し、増幅産物が検出される。好ましい実施形態において、増幅されるポリヌクレオチドがRNA分子である場合、増幅されるDNA鋳型を提供するために、事前に第2cDNA鎖の逆転写及び合成が最初に行われる。
あるいは、試験試料における新規なポリペプチド発現を検出する方法は、本発明の新規なポリペプチド又はその一部に結合する、いずれかの産物を用いて達成することができる。かかる産物は、新規なポリペプチド又はその断片に特異的に結合することができる抗体、抗体の結合断片、ポリペプチド、例えば、新規なポリペプチドアゴニスト及びアンタゴニストなどである。抗体への特異的結合の検出から、試料中に新規なポリペプチドが存在することが示される(例えば、ELISA)。
結果として、本発明は、生体試料における新規なポリペプチドの存在を特異的に検出する方法にも向けられており、前記方法は、本発明のポリペプチド又はその断片に結合できる産物と、生体試料とを接触させ、産物をそのポリペプチドに結合させて、複合体を形成し、その複合体を検出する工程を含む。好ましい実施形態では、その産物は、抗体、例えば、基質上に固定化される抗体である。
本発明は、また、例えば、容器手段内に配置される、新規なポリペプチドに特異的に結合する化合物(例えば、結合タンパク質、抗体又はその結合断片(例えば、F(ab’)2断片))、又は新規なポリペプチドをコードするmRNA(例えば、相補的なプローブ又はプライマー)を備える、新規なポリペプチドをコードする遺伝子発現産物の検出で使用することができるキットに関する。そのキットはさらに、バッファー等の補助的試薬を含むことができる。
新規なポリペプチド生物活性の検出
本発明はさらに、新規なポリペプチド生物活性を特異的に検出し、かつ新規なポリペプチドの活性を調節することができる化合物を同定する方法を包含する。新規なポリペプチド生物活性の評価は、本明細書に記載の技術など、様々な技術を用いて、新規なポリペプチドと関連するいずれかの細胞特性の変化を検出することにより実施することが可能である。ポリペプチドの修飾因子を同定するために、対照を用いることが好ましい。例えば、対照試料としては、評価される化合物又は作用物質は欠くが、同一試薬すべてを含み、試験試料と同じ手法で試験される。
本発明は、また、例えば、容器手段内に配置される、新規なポリペプチドの基質、新規な結合化合物、新規なポリペプチドに対する抗体等を備える、新規なポリペプチド生物活性の検出に使用できるキットに関する。そのキットはさらに、バッファー等の補助的試薬を含むことができる。
新規なポリペプチドをコードする遺伝子発現の特定のコンテクストの同定
新規なポリペプチドをコードするmRNAの発現パターンから、新規なポリペプチドをコードする遺伝子が所定のコンテクストにおいて特異的に発現することが示される場合、次いで、この遺伝子に特異的なプローブ及びプライマー、ならびに新規なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに結合する抗体を、特定のコンテクストにマーカーとして使用することができる。特定のコンテクストの例としては、所定の組織/細胞又は組織/細胞型における特異的発現、胎芽発生又は疾患発症などのプロセスの所定の発生段階での発現、特定の化合物又は薬物に応答した発現、又は所定の細胞器官における特異的発現が挙げられる。かかるプライマー、プローブ及び抗体は、未知の起源の組織/細胞/細胞器官、例えば、法医学的試料、異物部位に転移した分化腫瘍組織を同定するのに、又は組織断面における異なる組織型を区別するのに商業的に有用である。
組織/細胞/細胞器官の同一性の決定は、当技術分野でよく知られている方法(例えば、ハイブリダイゼーション、PCRに基づく方法、イムノアッセイ、免疫化学、ELISA)を用いて、組織/細胞試料におけるmRNA(又は相当するcDNA又はタンパク質)の有無を検出する方法に基づく。したがって、本発明は、組織マーカーとしての本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び抗体の使用を包含する。
標識組織特異的抗体を用いた組織型又は細胞種の同定
特定の細胞の同定は、直接的(例えば、緑色蛍光タンパク質)もしくは間接的に検出可能なマーカーに結合される抗体プレパラートを用いた、組織特異的抗原の可視化によって達成される。選択された標識抗体種は、組織切片、細胞浮遊液又は組織試料からの可溶性タンパク質の抽出物中の、それらの特異的抗原結合パートナーに結合し、定性的又は半定性的解釈のためのパターンを提供する。
A.免疫組織化学技術
上述のように作製された、精製された抗力価抗体は、例えばFudenberg, (1980) Chap. 26 in: Basic 503 Clinical Immunology, 3rd Ed. Lange, Los Altos, California又はRoseら(1980) Chap. 12 in: Methods in Immunodiagnosis, 2d Ed. John Wiley 503 Sons, New Yorkによって記述されているように検出可能なマーカーに結合される。
抗体は、いずれかの適切な方法、例えば、蛍光標識、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、フェリチン(EMを使用する検出のため)又は放射標識を用いて標識することができる。一実施形態において、未知組織及び既知の対照のクリオスタット切片を作製し、各スライドは、抗体プレパラートの異なる希釈溶液でカバーされる。インキュベーションに続いて、余分な液体を除去し、マーカーを検出する。組織切片上の色及び蛍光の強度を測定し、かつ適切な標準を用いて、そのシグナルを較正することによって、上記手順によって見出された抗原を定量化することができる。
B.組織特異的可溶性タンパク質の同定
組織特異的タンパク質の可視化及びその手順からの未知組織の同定は、免疫組織化学について述べられた標識抗体試薬及び検出方法を用いて行われる。しかし、例えば、ウエスタンブロット法による検出のために、分子量に基づいて順序正しい配列で、組織から抽出されたタンパク質を分配する電気泳動技術に従って作製される。例えば、Davisら Basic Methods in Molecular Biology, ed. , Elsevier Press, NY (1986), Section 19-3参照のこと。
異常な新規なポリペプチド発現及び/又は生物活性のスクリーニング及び診断
さらに、新規なポリペプチド発現に特異的な抗体及び/又はプライマー又はプローブもまた、異常な新規なポリペプチド発現及び/又は生物活性を同定し、続いて、異常な新規なポリペプチド発現と関連する疾患をスクリーニング及び/又は診断するために使用することができる。例えば、特定の疾患は、新規なポリペプチドをコードするmRNAの発現の欠如、過剰発現又は過小発現から生じ得る。健康な個体から採取した試料におけるmRNAの発現パターン及び量を、特定の疾患を有する個体からの試料と比較することによって、この疾患の原因である遺伝子が同定される。
特定の疾患のスクリーニング
本発明は、また、高い又は低いレベルの新規なポリペプチドを有する個体を同定するための、新規なポリペプチドの方法及び使用に関し、その個体はおそらく、新規なポリペプチドをコードする遺伝子の発現を抑制又は高める治療から、それぞれ恩恵を受けるだろう。かかる方法及び使用の一例は、生体試料における新規なポリペプチドをコードする遺伝子産物(mRNA又はタンパク質)の存在を検出し;前記試料に存在する新規なポリペプチドをコードする遺伝子産物の量を、対照試料における量と比較し;その試料が、対照試料と比較して、低い又は高いレベルの新規な遺伝子発現を有するかどうかを決定する工程を含む。
新規なポリペプチドと関連するいずれかの疾患又は病状に冒されている、又は発症するリスクがある対象から採取された生体試料を、正常な集団(標準又は対照)に対して、低い又は高いレベルの新規な遺伝子の存在についてスクリーニングすることが可能であり、正常な集団に対して低い又は高いレベルの新規なポリペプチドは、その疾患又は病状の素因を示すか、あるいはその疾患もしくは病状、又はその疾患もしくは病状に関連するいずれかの症状の現在の指標となる。かかる個体は、治療の、例えば、新規なポリペプチド、新規なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は新規なポリペプチドの発現又は活性に影響を及ぼす他のいずれかの化合物を含有する薬剤組成物での処置の候補であると考えられる。一般的に、患者における高レベルの新規なポリペプチドの同定から、新規なポリペプチドの発現又は活性を抑制する試薬での治療から恩恵を受けるであろう個体が示され、患者における低レベルの新規なポリペプチドの同定からは、新規なポリペプチドの発現又は活性を誘発する作用物質から恩恵を受けるであろう個体が示されるだろう。
この方法で使用するのに適した生体試料としては、限定されないが、血液、唾液、乳、及び尿などのいずれかの生物体液、ならびに生検材料などの組織試料が挙げられる。例えば、組織生検から得られる細胞培養物又は細胞抽出物もまた使用することができる。好ましい実施形態では、生体試料は、新規な遺伝子産物と関連する、いずれかの疾患又は病状に伴う症状を呈する動物から採取される。この方法にしたがって、試料における変化した(例えば、増大又は減少した)レベルの新規な産物の存在から、対象がその疾患又は病状に罹患しやすいことが示される。
本明細書に記載の診断方法論は、ヒト哺乳動物及び非ヒト哺乳動物のどちらにも適用することができる。
新規な遺伝子突然変異の検出
本発明は、本発明のポリヌクレオチドにおける突然変異を検出するための方法及び新規なポリヌクレオチドの使用も包含する。突然変異がある疾患と関連することが証明された場合には、かかる突然変異の検出は、スクリーニング及び診断の目的に使用することができる。
一実施形態において、新規な遺伝子において、好ましくはそれらの調節領域において生じる突然変異を検出するために、オリゴヌクレオチドプローブマトリックスを有利に使用することが可能である。この特定の目的では、プローブは、既知の突然変異(1つ又は複数のヌクレオチドの欠失、挿入又は置換のいずれかによる)を保持する遺伝子とのそれらのハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を有するように、特異的に設計される。既知の突然変異とは、例えば Huangら(1996) Cancer Res 56 (5): 1137-1141又はSamsonら(1996) Nature, 382 (6593): 722-725によって使用される技術に従って同定された、新規な遺伝子上の突然変異を意味する。
新規な遺伝子における突然変異を検出するために使用される他の技術としては、高密度DNAアレイの使用が挙げられる。高密度DNAアレイの各オリゴヌクレオチドプローブのユニット要素を構成する各オリゴヌクレオチドプローブは、新規なゲノムDNA又はcDNAの特定の部分配列(subsequence)に一致するように設計される。このように、標的遺伝子配列の部分配列に相補的なオリゴヌクレオチドからなるアレイを用いて、標的配列の野生型遺伝子配列との同一性が決定され、その量が測定され、かつ標的配列と新規な遺伝子の参照野生型遺伝子配列との差異が検出される。かかる一実施形態において、4Lタイルアレイ(tiled array)が使用される(例えば、Cheeら(1996) Science. 274: 610-614参照)。
新規な遺伝子発現パターンを有するDNAコンストラクトの構築
新規なポリペプチドをコードするmRNAの空間的及び時間的発現パターン及び発現レベルの特徴付けもまた、以下に記述するように、望ましい空間的又は時間的手法において、所望のレベルの遺伝子産物を作製することができる発現ベクターを構築するのに有用である。
組換え細胞宿主及び遺伝子導入動物における時間的及び空間的新規な遺伝子発現を指示するDNAコンストラクト
細胞レベル及び多細胞生物レベルの両方で、新規なポリペプチドの合成欠損の生理学的及び表現型的結果を研究するために、本発明は、新規なポリペプチドをコードするゲノム配列又はcDNAの特異的対立遺伝子、例えば、配列内の1つ又は複数の塩基の置換、欠失又は付加を含む対立遺伝子などの条件発現を可能にするDNAコンストラクト及び組換えベクターもまた包含する。
一実施形態において、 Gossenら(1992) PNAS 89: 5547-5551 ; Gossenら(1995) Science 268: 17661769;及び Furth P. A.ら(1994) PNAS 91: 9302-9306によって述べられているように、新規な遺伝子発現を制御するために、大腸菌トランスポゾンTn10からのテトラサイクリン耐性オペロンに基づく、DNAコンストラクトが使用される。
その他の実施形態において、5’末端から3’末端に:新規なポリペプチドをコードするゲノム配列で見出される第1ヌクレオチド配列;正の選択マーカー(例えば、ネオ(neo))を含むヌクレオチド配列;及び新規なポリペプチドをコードするゲノム配列で見出され、かつ第1新規なヌクレオチド配列の下流に位置する第2ヌクレオチド配列;を含む、DNAコンストラクトが使用される。好ましい実施形態において、そのコンストラクトは、第1新規なヌクレオチド配列の下流又は第2新規なヌクレオチド配列から上流に位置する、負の選択マーカー(例えば、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシンβ、hprt、ジフテリア毒素A断片)も含む(例えば、Thomasら(1986), Cell. 44: 419-428; Te Rieleら(1990), Nature. 348: 649-651 ; Van der Lugtら(1991), Gene 105: 263-267; Reidら(1990) PNAS 87: 4299-4303; Nadaら(1993) Cell 73: 1125-1135; Yagi, T.ら(1990), PNAS 87: 9918-992; Thomasら(1986; 1987), Mansourら(1988)及びKollerら(1992) Annu. Rev. Immunol. 10: 705-730)参照)。
他の実施形態において、Cre−loxPシステムの使用を含むベクターが使用される(Hoessら(1986) 核酸 Res. 14: 2287-2300)。相同的組換え技術と組み合わせて使用されるCre−loxPシステムは、Gu H.ら(1993) Cell 73: 1155-1164及びGu H.ら(1994) Science 265: 103-106に記述されている。簡単に言えば、ゲノムの標的位置に挿入される対象のヌクレオチド配列は、同じ向きに少なくとも2つのloxP部位を有し、組換えゲノムから除去されるヌクレオチド配列のそれぞれの末端に位置する。除去現象には、組換え細胞宿主の核内にリコンビナーゼ(Cre)酵素が存在する必要があり、数多くの方法のいずれかで、例えば、この酵素を含有する培地において組換え細胞宿主をインキュベートすることによって、Cre酵素を直接、目的細胞中に注入することによって、細胞中に酵素をリポフェクションすることによって、又はそうでなければ、適切なプロモーターの制御下にて、Creコード配列を細胞にトランスフェクトすることによって提供される(例えば、Baubonisら(1993) Nucleic acids Res. 21 (9): 2025-9); Arakiら(1995) PNAS 92 (1) : 160-4; Guら(1993); Sauerら(1988) PNAS 85: 5166-5170; Guら(1994); Zouら(1994) Curr. Biol. 4: 1099-1103; AntonとGraham, (1995), J. Virol., 69: 4600-4606;及びKanegaeら(1995) Nucl. Acids Res. 23: 3816-3821参照)。
上述のDNAコンストラクトを用いて、本発明の目的のヌクレオチド配列、好ましくは新規なゲノム配列又は新規な cDNA配列、最も好ましくは新規なゲノム又はcDNA配列の改変されたコピーを標的ゲノムの所定の位置に導入することが可能であり、その結果として、標的遺伝子の改変されたコピーが作製されるか(ノックアウト相同的組換え)、又は相同的組換え現象を起こすのに十分に相同的な他のコピーにより標的遺伝子のコピーが置換される(ノックイン相同的組換え)。
新規なポリペプチドの発現及び/又は生物活性の修飾
内因性新規な発現及び/又は生物活性の修飾は、特に、本発明によって企図される。
新規な発現及び/又は生物活性を調節することができる化合物についてのスクリーニング
本発明は、新規な発現及び/又は生物活性を調節することができる化合物、及びこれらの化合物を使用する方法に関する。かかる化合物は、新規な遺伝子の調節配列と相互作用するか、又は新規なポリペプチドと直接的又は間接的に相互作用し得る。
新規な調節配列と相互作用する化合物
本発明は、また、例えば、当業者に公知のいずれかの技術を用いて決定される、ゲノムDNAの非転写領域におけるプロモーター又はエンハンサー配列など又は新規なmRNAの非翻訳領域に位置する調節配列など、新規な遺伝子の調節配列と相互作用することができる物質又は分子をスクリーニングする方法に関する。
本発明のポリヌクレオチドの非転写又は非翻訳領域内の配列は、転写開始部位、転写因子結合部位、プロモーター配列、エンハンサー配列、5’UTR及び3’UTR要素などの既知の調節配列を含有するデータベースと比較することによって同定することができる (Pesoleら(2000) Nucleic Acids Res, 28 (1) : 193-196; http ://igs- server. cnrs-mrs. fr/-gauthere/UTR/index. html)。あるいは、レポータープラスミドの従来の突然変異誘発又は欠失の解析によって、対象の調節配列を同定することができる。
潜在的な新規な調節配列の同定に続いて、これらの調節配列と相互作用するタンパク質が、以下に述べるように同定される。
ゲルシフトアッセイ(gel retardation assay)などの数多くの方法のいずれかを用いて、新規な遺伝子の調節配列と相互作用することができる分子を同定することができる (例えば、FriedとCrothers, (1981) Nucleic Acids Res. 9: 6505-6525; GarnerとRevzin, (1981) Nucleic Acids Res 9: 3047-3060;及びDentとLatchman (1993) The DNA mobility shift assay. In: Transcription Factors: A Practical Approach (Latchman DS, ed. ) pp: 1-26, Oxford: IRL Press参照)。新規な遺伝子のプロモーター配列と相互作用することができるタンパク質をコードする核酸もまた、1ハイブリッド系(one-hybrid system)(例えば、Clontech社のMatchmaker One−Hybrid System kit(カタログ参照番号K1603−1))を使用して同定することができる。
新規なポリペプチドと相互作用するリガンド
本発明の目的では、リガンドは、分子、例えばタンパク質、ペプチド、抗体、あるいは新規なタンパク質又はその断片又は変異体の1つに結合することができる、又は新規な又はその断片又は変異体をコードするポリヌクレオチドの発現を調節する、いずれかの合成化学化合物を意味する。
一実施形態において、このタンパク質と、試料の成分又は定義される分子との間で複合体が形成されるかどうかを決定するために、生体試料、又は新規なタンパク質の推定リガンドとして試験される定義された分子(例えば、コンビナトリアルケミストリーによって生成される分子)を、精製された新規なタンパク質と接触させる。かかる分子とタンパク質との相互作用は、いずれかの方法で、例えばHPLCに連結される微小透析を用いて、アフィニティーキャピラリー電気泳動等を用いて評価することができる(例えば、Wangら(1997), Chromatographia, 44: 205-208; Bushら(1997), J. Chromatogr. , 777: 311-328参照)。
本発明の方法において新規なポリペプチド又はポリヌクレオチドとの相互作用に関して、限定されないが、ペプチド、薬物、脂肪酸、リポタンパク質、もしくは小分子など、どの種類の化合物も試験することが可能であり、いずれかの源から得ることができる。例えば、試験される分子は、蛍光標識、放射標識、もしくは酵素標識などの検出可能な標識で標識され、特異的な結合を生じさせる条件下にて、固定化された新規なタンパク質又はその断片と接触して置かれる。非特異的に結合した分子を除去した後、結合分子を適切な手段を用いて検出する。
A.ランダムペプチドライブラリーから得られる候補リガンド
スクリーニング法の特定の実施形態において、推定リガンドは、例えば、長さ8〜20アミノ酸のペプチドを含むランダムペプチドファージライブラリーからのファージベクターに含まれるDNAインサートの発現産物である(ParmleyとSmith (1988) Gene 73: 305-318; Oldenburgら(1992) PNAS 89: 5393-5397; Valadonら(1996) J. Mol. Biol., 261: 11-22; Lucas (1994) In: Development and Clinical Uses of Haempophilus b Conjugate; Westerink (1995) PNAS 92: 4021-4025; Felici (1991) J : Mol. Biol., 222: 301-310)。 組換えファージにおけるリガンドライブラリーが構築されたら、固定化された新規なタンパク質とファージ集団を接触させ、洗浄した後、新規なタンパク質に特異的に結合するファージを、バッファー(酸性pH)によって溶出するか、又は新規なタンパク質に特異的抗体を使用して免疫沈降する。続いて、単離されたファージを細菌(例えば、大腸菌)の過剰感染によって増幅する。さらに特異的な組換えファージクローンを選択するために、その選択段階は、数回、好ましくは2〜4回繰り返し行われる。
B.競合的実験により得られる候補リガンド
あるいは、本発明のポリペプチドに結合するペプチド、薬物又は小分子は競合的実験において同定することができる。かかる一アッセイにおいて、新規なタンパク質又はその断片を、プラスチックプレートなどの表面に固定化する。増加量のペプチド、薬物又は小分子は、検出可能な既知の新規なタンパク質リガンドの存在下にて、固定化された新規なタンパク質又はその断片と接触して置かれる。例えば、新規なリガンドは、蛍光標識、放射標識又は酵素標識で検出可能に標識される。新規なタンパク質又はその断片に結合する試験分子の能力は、試験分子の存在下にて、結合した、検出可能に標識された既知のリガンドの量を測定することによって決定される。試験分子が存在する場合、新規なタンパク質又はその断片に結合した既知のリガンドの量の減少から、試験分子は新規なタンパク質、又はその断片に結合することができることが示された。
C.アフィニティークロマトグラフィーによって得られる候補リガンド
本発明のポリペプチドと相互作用するタンパク質又は他の分子は、新規なタンパク質又はその断片を含有するアフィニティーカラムを用いて見つけることもできる。適切なカラムマトリックス(例えば、アガロース、Affi Gel(登録商標)等)への化学結合を含む従来の技術を用いて、新規なタンパク質又はその断片をカラムに付着させることができる。この方法の一部の実施形態では、アフィニティーカラムはキメラタンパク質を含有し、新規なタンパク質又はその断片はグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)に融合される。上述のように細胞タンパク質の混合物又は発現したタンパク質のプールが、アフィニティーカラムに適用される。次いで、カラムに付けられた、新規なタンパク質又はその断片と相互作用するタンパク質又は他の分子を、Ramunsenら(1997), Electrophoresis, 18: 588-598に記載されたように、例えば、2次元ゲル電気泳動で単離し、解析する。あるいは、電気泳動に基づく方法によって、アフィニティーカラム上に保持されたタンパク質を精製し、シークエンスすることができる。同じ方法を用いて、抗体を単離すること、ファージディスプレイ産物をスクリーニングすること又はファージディスプレイヒト抗体をスクリーニングすることができる。
D.光学バイオセンサー法によって得られる候補リガンド
本発明のポリペプチドと相互作用するタンパク質は、光学バイオセンサーを使用することによってスクリーニングすることもできる (例えば、EdwardsとLeatherbarrow (1997) Anal. Bioch. 246: 1-6; Szabo ら(1995) Curr Opin Struct Biol 5, 699-705参照)。この技術によって、標識分子の必要なく、リアルタイムで分子間の相互作用を検出することが可能となる。この技術は、表面プラズモン共鳴(SRP)現象に基づく。一実施形態において、アッセイされる候補分子がそれを通って流動する、細胞の一方の側を含む表面(カルボキシメチルデキストランマトリックスなど)に、新規なポリペプチド又はその断片を結合させる。試験される試料を含有しない表面の側に対して光線が向けられ、前記表面によって反射される。候補リガンド分子の結合は、表面の屈折率の変化によって起こり、その変化は、SPRシグナルの変化として検出される。内因性又は組換え発現新規なタンパク質をそれらの表面に示す、真核生物細胞又は原核細胞又は脂質ベシクルを固定化することによって、この技術を実施することもできる。
E.2ハイブリッドスクリーニングアッセイによって得られる候補リガンド
酵母2ハイブリッド系は、インビボでタンパク質間相互作用を研究するために設計され(FieldsとSong, 1989;米国特許第5,667,973号及び同第5,283,173号)、酵母Gal4タンパク質のDNA結合ドメインへのベイト(bait)タンパク質の融合に依拠する。2ハイブリッドアッセイによるライブラリースクリーニングの一般的手順は、Harperら(1993), Cell 75 : 805-816; Choら(1998) PNAS 95 (7): 3752-3757; Fromont-Racineら(1997) Nature Genetics 16 (3): 277-282 に記載されたように実施することができる。通常の実施形態において、ベイトタンパク質は、本発明のポリペプチドを含み、「プレイ(prey)」は、ヒトcDNAインサートが、GAL4タンパク質の転写ドメインをコードするベクターにおいてヌクレオチド配列に融合するように構築されたヒトcDNAライブラリーを含む。他の実施形態において、新規なポリペプチド又はその断片又は変異体と、細胞タンパク質との相互作用は、Matchmaker Two Hybrid System 2(カタログ番号:K1604-1、Clontech社)を用いて評価される。
新規な生物活性を調節する化合物
新規な発現及び/又は生物活性を調節する化合物についてスクリーニングする他の方法は、宿主細胞において又はインビトロアッセイにおいて、特定の生物活性、例えば新規な生物活性に対する試験化合物の効果を測定することによる方法である。新規な生物活性は、いずれかの新規なポリペプチド又はポリヌクレオチドについて記載の活性、機能又は特性のいずれかを含み得る。一実施形態において、新規なポリペプチドをコードする核酸コンストラクトが、宿主細胞に導入され、その宿主細胞は、コードされる新規なポリペプチドの発現に適切な条件下で維持され、それによって、核酸が発現される。次いで、宿主細胞を試験作用物質と接触させ、作用物質の存在下での新規なポリペプチドに関連する特性の変化を検出することによって、その作用物質が新規な生物活性を変化させることが示される。特定の実施形態において、本発明は、新規な生物活性の活性化剤である作用物質を同定する方法に関し、その方法では、作用物質の存在下での新規なポリペプチドに関連する特性の増加を検出することによって、その作用物質が新規な生物活性を活性化することを示す。他の特定の実施形態において、本発明は、新規な生物活性の阻害剤である作用物質を同定する方法に関し、その方法では、作用物質の存在下での新規なポリペプチドに関連する特性の減少を検出することによって、その作用物質が新規な生物活性を抑制することが示される。その他の特定の実施形態では、新規な生物活性を活性化(高める)又は抑制する作用物質を同定するために、ハイスループットスクリーニングが用いられる(例えば、WO98/45438参照)。
新規な遺伝子の発現及び/又は活性を調節する化合物についてスクリーニングする方法
本発明は、また、新規なポリペプチド及びポリヌクレオチドの活性又は発現を調節する(例えば、増加又は抑制する)それらの能力について化合物をスクリーニングする方法に関する。さらに詳細には、本発明は、新規なポリペプチド及びポリヌクレオチドの発現又は活性を増加又は減少させる、それらの能力について化合物を試験する方法に関する。そのアッセイは、インビトロ又はインビボで行われる。
インビトロでの方法
インビトロでは、新規なポリペプチドを発現する、又は新規なポリペプチドを発現することができる細胞を、試験化合物の存在下及び非存在下にてインキュベートする。試験化合物の存在下での新規な発現レベル又は試験化合物の存在下での新規な生物活性レベルを決定することによって、新規な発現又は活性を抑制する、又は高める化合物を同定することができる。あるいは、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、LacZ、緑色蛍光タンパク質等)に作動可能に連結される新規な調節配列を含むコンストラクトを宿主細胞に導入し、レポーター遺伝子の発現に対する試験化合物の効果を検出することができる。結果として、本発明は、新規な遺伝子の発現を調節する分子をスクリーニングする方法を包含し、前記スクリーニング法は、それ自体のプロモーターの制御下に置かれる新規なポリペプチド又は新規な5’調節領域の制御下に置かれる検出可能なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をトランスフェクトされた原核細胞又は真核細胞を培養し;試験される分子とその培養細胞を接触させ;その分子の存在下にて、新規な又は検出可能なポリペプチドの発現を定量化する工程を含む。その方法は、新規なポリペプチド又は5’調節領域のいずれかの断片、変異体、もしくは誘導体を用いて実施することもできる。
新規なポリペプチドの発現の定量化は、mRNAのレベル(例えば、対象の新規なmRNAに特異的なプライマー及びプローブを用いたノーザンブロット、RT−PCR、好ましくは定量的RT−PCRによる)又はタンパク質のレベル(イムノアッセイ、例えば、ELISA又はRIAアッセイ、ウェスタンブロット又は免疫化学においてポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を用いた)で理解される。
さらなる実施形態では、新規な5’調節領域は、新規なポリヌクレオチド配列及び/又は新規な5'UTR配列に対して内因性又は外来性であるプロモーター配列の5'UTR領域を含む。
本発明はさらに、本明細書に記載の方法のいずれかを用いて、新規な遺伝子の発現を調節する分子を同定し、生理学的に許容される担体とその同定された分子を組み合わせることを含む薬剤組成物を製造する方法に関する。
新規な遺伝子の発現を調節する能力について候補物質をスクリーニングするためのキット。かかるキットは、検出可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結される、新規な5’調節領域又はその調節活性断片又は変異体、あるいは新規なタンパク質又はその断片又は変異体を含む組換えベクターを備えることが好ましい。
本発明の他の目的は、新規なポリペプチド、その断片又は変異体と相互作用する候補物質をスクリーニングする方法及びキットを含む。新規なタンパク質、その断片又は変異体に共有結合又は非共有結合で結合するそれらの能力によって、これらの物質又は分子は、インビトロ及びインビボのどちらでも有利に使用することができる。
インビトロにて、試料、好ましくは生体試料における新規なタンパク質の存在を同定するために、前記の相互作用する分子を検出手段として使用することができる。
一実施形態において、候補物質をスクリーニングする方法であって、新規なタンパク質を提供し、そのタンパク質を候補物質と接触させ、複合体がポリペプチド又は断片と候補物質との間に形成されるかどうかを決定することを含む方法を提供する。
本発明はさらに、本明細書に記載の方法のいずれかを用いて、新規なポリペプチド、その断片又は変異体と相互作用する物質を同定し、さらに、同定された物質を生理学的に許容される担体と混合することを含む、薬剤組成物を製造する方法に関する。
本発明はさらに、新規なポリペプチドと相互作用する候補物質をスクリーニングするためのキットに関し、前記キットは、新規なポリペプチドと、任意に、ポリペプチドと候補物質との間に形成される複合体を検出する手段とを備える。一実施形態において、検出手段は、前記新規なタンパク質又はその断片又は変異体に結合するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を含む。
インビボでの方法
新規な遺伝子の発現を抑制する又は高める化合物もまた、インビボスクリーニングを用いて同定することができる。通常のアッセイにおいて、試験化合物は、様々な投与量のレベルで動物に(例えば、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、経口的に又はその他の経路で)投与され、その化合物の新規な遺伝子発現に対する効果は、例えば、ノーザンブロット、イムノアッセイ、PCR等を用いて、対象の遺伝子を発現することが分かっている組織における、遺伝子によりコードされるmRNA又はタンパク質のレベルを比較することによって決定される。適切な試験動物としては、限定されないが、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)、霊長類及びウサギが挙げられる。その内因性マウスタンパク質が切断されている(ノックアウトされている)ヒト化マウスを使用することも可能であり、相同的ヒトタンパク質が、標準的な遺伝子導入法を用いて導入される。したがって、かかるマウスは、タンパク質のヒト型タンパク質のみを発現する。ヒト新規なポリペプチドのみを発現するヒト化マウスを用いて、新規なタンパク質又はmRNAのレベルを調節する潜在的な作用物質に対するインビボの応答を研究することができる。かかる遺伝子導入動物は、疾患の生化学的及び生理学的段階を分析するのに有用であり、かつ疾患処置のための治療法の開発に有用である(例えば、Loringら, 1996参照)。
さらに、化合物を投与した後、動物のいずれかの新規な遺伝子関連挙動又は特性の変化の検出を、その化合物が遺伝子の発現又は活性を調節するという指標として使用することもできる。
新規な発現及び/又は生物活性を調節する化合物の使用
インビボ(又はインビトロ)系で用いて、例えば、副腎、骨髄、脳、小脳、結腸、胎児の脳、胎児の腎臓、心臓、肥大前立腺、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、リンパ球、筋肉、卵巣、膵臓、脳下垂体、胎盤、前立腺、唾液腺、脊髄、脾臓、胃、腸、黒質、精巣、甲状腺、臍帯もしくは子宮など、対象の1種又は複数種の特定の組織における新規な発現又は活性を増加させる組織特異的な効果を及ぼす化合物を同定することが可能である。上述の方法などのスクリーニング方法もまた、薬理学的介入方法におけるそれらの潜在的な使用に対して作用物質を同定するのに有用である。したがって、新規な遺伝子の発現を高める又はその活性を刺激する作用物質を使用して、新規な遺伝子と関連するいずれかの表現型を誘導すること又は新規なポリペプチドの活性又は発現の欠損から生じる疾患を治療することができる。新規なポリペプチド発現を抑制する又はその活性を阻害する化合物を使用して、増加した、又は有害な新規なポリペプチド活性又は発現と関連する疾患又は病状を治療することができる。
新規な遺伝子又はポリペプチドと直接又は間接的に相互作用し、かつ新規なポリペプチド発現及び/又は機能を高める作用物質もまた包含される。一実施形態において、その作用物質は、新規なポリペプチドに、直接的(新規なポリペプチドに結合することによって)又は間接的に(例えば、新規な生物活性を有する、新規なポリペプチドの能力をブロックすることによって)干渉する阻害剤である。特定の実施形態において、新規なタンパク質の阻害剤は、新規なタンパク質又は新規なタンパク質の機能的部分に特異的な抗体である。あるいは、その阻害剤は、新規なポリペプチドに結合し、かつその活性をブロックする抗体以外の作用物質(例えば、有機小分子、タンパク質又はペプチド)であってもよい。例えば、その阻害剤は、新規なポリペプチドを構造的に模倣するが、その機能を欠く作用物質とすることができる(例えば、そのタンパク質のドミナントネガティブ型)。
一方、新規なポリペプチドが通常それに結合する又は相互作用する、分子に結合するか又は分子と相互作用し、その結果、新規なポリペプチドがそうするのをブロックし、通常示すであろう効果を示すのを防ぐ作用物質とすることができる。
他の実施形態では、作用物質は、直接的又は間接的の両方で、新規なポリペプチドの活性を増加させる(所定の量又はレベルの新規なポリペプチドの効果を高める)、それが有効である時間の長さを増大する(その分解を防ぐことによって又はそうでなければ、それが活性な時間を延ばすことによって)新規なポリペプチドのエンハンサー(活性化剤)である。例えば、新規なポリヌクレオチド及びポリペプチドを用いて、新規な生物活性を誘導する、新規なポリペプチドの能力を増加又は減少させる薬物を同定することが可能であり、その薬物は、新規な生物活性と関連する疾患又は病状を治療又は予防するのに有用である。
このように、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)における新規な生物活性を(一部又は完全に)抑制する方法であって、新規なポリペプチド又はポリヌクレオチドの有効量の阻害剤を哺乳動物に投与することを含む方法に関する。本発明は、哺乳動物における新規な生物活性を高める方法であって、新規なポリペプチド又はポリヌクレオチドの有効量のエンハンサーを哺乳動物に投与することを含む方法に関する。
新規な遺伝子発現の抑制
新規な遺伝子発現は、多数の方法のいずれかにおいて、例えば、アンチセンスツール又は相当する新規な遺伝子の発現を抑制する三重らせんツールを使用することなどによって、例えば、治療用途で抑制することができる。
アンチセンスアプローチ
アンチセンスアプローチにおいて、mRNAに相補的なDNA及び/又はRNA配列が、細胞内でmRNAとハイブリダイズされ、それによって、mRNAによりコードされるタンパク質の発現がブロックされる。本発明によるアンチセンスポリヌクレオチドを使用する好ましい方法は、Sczakielら(1995) Trends Microbiol. 3 (6): 213-217; Greenら(1986) Ann. Rev. Biochem. 55: 569-597; IzantとWeintraub, (1984) Cell 36 (4): 1007-15; Liuら(1994) PNAS 91: 4528-4262; Ecknerら(1991) EMBO J. 10: 3513-3522に記述されている手順である。
そのアンチセンスツールは、新規なmRNAに、さらに好ましくは5’末端(例えば、翻訳開始コドンATG)又は新規なmRNAのスプライシングドナーもしくはアクセプター部位に相補的である、ポリヌクレオチド(長さ15〜200bp)の中で選択されることが好ましい。他の実施形態では、目的の標的遺伝子の異なる部分に相補的な異なるアンチセンスポリヌクレオチドの組み合わせが使用される。そのアンチセンス分子は、いずれかの方法において、例えば、細胞における新規な遺伝子のコード領域の向きを逆にすることによって又はインビトロでオリゴヌクレオチドを合成し、細胞にそれを投与することによって作製することができる。
本明細書に記載のポリヌクレオチドのうちのいずれかの部分に相補的な、いずれかのアンチセンス配列を使用することができ、その配列は、主鎖、結合又は塩基への任意の数の修飾を含むことが可能であり、その多くは当技術分野で公知である。適切な修飾、アンチセンス分子の他の形態及びその作製は、特に、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. I. , ed. John Wiley & Sons, 1990; Englischら Angewandte Chemie, International Edition (1991), 30,613 ; Sanghviら eds. , (1993) Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton;米国特許第6,242,590号;W094/23026、WO96/31523;WO92/18522;欧州特許出願番第0572 287 A2号;WO92/19732; Letsingerら PNAS (1989) 86: 6553-6556; Manoharanら Bioorg. Med. Chem. Let. (1994) 4: 1053-1060; Manoharanら Ann. N. Y. Acad. Sci. (1992) 660: 306-309; Manoharanら Bioorg. Med. Chem. Let. (1993) 3: 2765-2770; Oberhauserら Nucl. Acids Res. (1992) 20: 533-538; Saison-Behmoarasら EMBO J. (1991) 10: 1111-1118; Kabanovら FEBS Lett. (1990) 259: 327-330; Svinarchukら Biochimie (1993) 75: 49-54; Manoharanら Tetrahedron Lett. (1995) 36,3651-3654 ; Sheaら Nucl. Acids Res. (1990) 18: 3777-3783; Manoharanら Nucleosides & Nucleotides (1995) 14: 969-973; Manoharanら Tetrahedron Lett. (1995) 36: 3651-3654; Mishraら Biochim. Biophys. Acta (1995) 1264: 229-237; Crookeら J. Pharmacol. Exp. Ther. (1996) 277: 923-937;米国特許第6,242,590号に教示されている。
標的の新規なポリヌクレオチド配列もしくはその断片に結合する、アンチセンス核酸及びその修飾型のハイスループットスクリーニングの方法がさらに包含される(例えば、米国特許第6,022,691号参照)。
遺伝子の発現を抑制するのに必要とされるアンチセンス核酸の適切なレベルは、インビトロでの発現解析を用いて決定することができる。通常、アンチセンス分子は、多くの様々な濃度、好ましくは1×10-10M〜1×10-4Mで細胞試料上に導入される。遺伝子発現を適切に制御できる最低濃度が同定されたら、最適化された用量は言い換えると、インビボ又はエクスビボでの使用に適した投与量ということになる。例えば、1×10-7の培養物中の抑制濃度は、およそ0.6mg/体重kgの投与量ということになる。
本発明に従って使用されるアンチセンス技術の代替方法は、それらの相補的ポリヌクレオチドテールにより標的配列に結合するであろう、かつその標的部位を加水分解することにより、相当するRNAを切断するであろうリボザイムを使用することを含む(例えば、Rossiら(1991) Pharmacol. Ther. 50: 245-254及びSczakielら(1995) 参照)。
三重らせんアプローチ
細胞内の三重らせん形成に基づく新規な遺伝子の発現を抑制するために、新規なゲノムDNAを使用することもできる(例えば、Griffinら(1989) Science 245: 967-971参照)。三重らせんアプローチを用いた遺伝子治療法を行うために、通常、新規なゲノムDNAの配列を最初にスキャンして、新規な遺伝子発現を抑制するための、三重らせんに基づく方法で使用できる10mer〜20merのホモピリミジン又はホモプリンストレッチが同定される。候補ホモピリミジン又はホモプリンストレッチの同定に続いて、候補配列を含有する様々な量のオリゴヌクレオチドを、新規な遺伝子を発現する組織培養細胞に導入することによって、新規な遺伝子発現の抑制におけるそれらの効率が評価される。オリゴヌクレオチドは、当業者に公知の様々な方法を用いて細胞に導入され、変化した細胞機能又は誘導された新規な遺伝子発現について、処理した細胞をモニターする。
次いで、組織培養細胞における遺伝子の発現を抑制するのに有効なオリゴヌクレオチドが、「アンチセンスアプローチ」というタイトルのセクションに記載されたように、技術を用いて、インビトロの結果に基づいて算出された投与量で導入される。
新規な遺伝子関連疾患の治療
本発明はさらに、新規な遺伝子活性及び/又は発現を増加させる又は低減することによって、新規な遺伝子と関連する疾患/障害を治療するための、新規なポリペプチド及びポリヌクレオチドの方法、使用及び新規なポリペプチド及びポリヌクレオチドの修飾因子の使用に関する。これらの方法論は、本明細書に記載されるようなスクリーニングプロトコールを用いて及び/又は当技術分野及び本明細書で述べられる遺伝子治療及びアンチセンスアプローチを用いることによって選択される化合物を使用して行うことができる。遺伝子治療を用いて、いずれかの組織、例えば、治療される疾患又は病状と関連する組織における、新規な遺伝子の標的発現を行うことができる。
新規なコード配列を適切な発現ベクター中にクローニングし、特定の細胞型(1種又は複数種)に標的化して、効率的な、高レベルの発現を達成することができる。新規なコード配列の標的細胞への導入は、例えば特定の粒子仲介DNA送達(Haynesら(1996) J Biotechnol. 44 (1-3) : 37-42 及びMaurerら(1999) Mol Membr Biol. 16 (1) : 129-40)、裸のDNAの直接注入(Levyら(1996) Gene Ther. 3 (3): 201-11;及びFelgner (1996) Hum Gene Ther. 7 (15): 1791-3)又はviral vector mediated transport (Smithら(1996) Antiviral Res. 32 (2): 99-115, Stoneら(2000) J Endocrinol. 164 (2): 103-18; WuとAtaai (2000), Curr Opin Biotechnol. 11 (2): 205-8)を用いて達成することができる。例えば、組織特異的なウイルスベクターを使用することによって、又は組織特異的なプロモーターを使用することによって、ウイルス仲介輸送のケースにおいて、組織特異的な効果を達成することができる。
例えば、いずれかの組織特異的プロモーター、例えば、アルブミンプロモーター(肝臓特異的プロモーター;Pinkertら 1987 Genes Dev. 1: 268-277)、リンパ系特異的プロモーター(Calameら 1988 Adv. Immunol. 43: 235-275)、T細胞受容体のプロモーター(Winotoら 1989 EMBO J. 8: 729-733)及び免疫グロブリン(Banerjiら 1983 Cell 33: 729-740; QueenとBaltimore 1983 Cell 33: 741-748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;Byrneら 1989 PNAS 86: 5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlunchら 1985 Science 230: 912-916)又は乳腺特異的プロモーター(乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号及び欧州特許出願公開第264,166号)を用いて、特異的発現を達成することができる。マウスホメオボックスプロモーター(Kesselら 1990 Science 249: 374-379)又はα−フェトプロテインプロモーター(Campesら 1989 Genes Dev. 3: 537-546)など、発生制御(developmentally-regulated)プロモーターも使用することができる。
組み合わせのアプローチを用いて、標的組織において新規なコード配列が活性化されるのを確実にすることもできる(ButtとKarathanasis (1995) Gene Expr. 4 (6) : 319-36 ; MillerとWhelan, (1997) Hum Gene Ther. 8 (7): 803-15)。新規なmRNAに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、タンパク質の発現を、例えば炎症部位にて、選択的に減少又は除去することができる(Wagnerら(1996), Nat Biotechnol. 14 (7): 840-4))。さらに詳細には、アンチセンスコンストラクト又はアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、例えば、転写の方向に対してアンチセンス方向に、新規な遺伝子配列もしくはその一部を含有する発現ベクターを標的細胞にトランスフェクトすることによって、又は標的細胞に直接、アンチセンスオリゴヌクレオチドを導入することによって、高発現細胞における新規な産生を抑制することができる。本明細書に述べられる治療学的方法論は、ヒト哺乳動物及び非ヒト哺乳動物のどちらにも適用可能である。
薬学的及び生理学的に許容される組成物
本発明は、活性物質として、本発明のポリペプチド、核酸又は抗体を含む、薬学的及び生理学的に許容される組成物にも関する。本発明は、活性物質として、上述のスクリーニングプロトコールを用いて選択される化合物を含む組成物にも関する。かかる組成物は、生理学的に許容される塩、エステルもしくはかかるエステルの塩など、薬学的及び生理学的に許容される担体と組み合わせて活性物質を含有する。裸のDNAの場合には、「担体」は金粒子とすることができる。組成物中の活性物質の量は、作用物質、患者及び求められる効果によって異なる。同様に、投与計画は、組成物及び治療される疾患/障害によって異なる。
したがって、本発明は、本明細書に記載のスクリーニング法のいずれかを用いて、活性物質、化合物、物質又は分子を選択し、さらに、同定された活性物質、化合物、物質又は分子を生理学的に許容される担体と混合する方法を含む、薬剤組成物を製造する方法に関する。
「生理学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の生理学的及び薬学的に許容される塩、つまり、親化合物の所望の生物活性を保持し、それに望ましくない毒性効果を与えない塩を意味する。生理学的に許容される塩基付加塩が、アルカリもしくはアルカリ土類金属又は有機アミンなどの金属又はアミンで形成される。カチオンとして使用される金属の例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。適切なアミンの例としては、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン及びプロカインが挙げられる(例えば、Bergeら Pharmaceutical Salts, J. of Pharma Sci. (1977) 66: 1-19参照)。前記酸性化合物の塩基付加塩は、従来の方法においてその遊離酸型を十分な量の望ましい塩基と接触させて、塩を製造することによって製造される。従来の方法においてその塩を酸と接触させ、その遊離酸を単離することによって、遊離酸型を再生することができる。遊離酸型は、極性溶媒における溶解性などの特定の物理的性質において、それらのそれぞれの塩とは幾分異なるが、他の点でその塩は、本発明の目的で、それらのそれぞれの遊離酸に相当する。
本明細書において使用される「薬学的付加塩」には、本発明の組成物の成分のうちの1つの酸型の生理学的に許容される塩が含まれる。これらには、アミンの有機もしくは無機酸塩が含まれる。好ましい酸性塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩及びリン酸塩である。ほかの適切な生理学的に許容される塩は当業者には公知であり、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸又はリン酸などの様々な無機及び有機酸;有機カルボン酸、スルホン酸、スルホ(sulfo)もしくはホスホ酸(phospho acid)又はN−置換スルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸又はイソニコチン酸;及びアミノ酸、自然界でのタンパク質の合成に関与する20α−アミノ酸、例えば、グルタミン酸又はアスパラギン酸、及びまたフェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、2−又は3−ホスホグリセリン酸、グルコース−6−ホスフェート、N−シクロヘキシルスルファミン酸(シクラミン酸塩の形成で)、又はアスコルビン酸などの他の酸性有機化合物との塩基性塩が挙げられる。
化合物の生理学的に許容される塩は、生理学的に許容されるカチオンで製造することも可能である。適切な生理学的に許容されるカチオンは当業者によく知られており、例えばアルカリ、アルカリ土類金属、アンモニウム及び第4級アンモニウムカチオンが挙げられる。炭酸塩又は炭酸水素塩もまた可能である。オリゴヌクレオチドに関して、生理学的に許容される塩の好ましい例としては、限定されないが、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウムなどのカチオン、スペルミン及びスペルミジンなどのポリアミン等と形成される塩;(b)無機酸、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等と形成される酸付加塩;(c)有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸。p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等と形成される塩;(d)塩素、臭素及びヨウ素などの元素アニオンから形成される塩;が挙げられる。
本発明において用いられる薬剤組成物は、限定されないが:非経口的、頭蓋内、眼窩内、嚢内、髄腔内、槽内、肺内、経口的、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄腔内、脳室内、経皮的、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸的、局所的、舌下、直腸、皮内、脈管内などの多数の経路によって投与することができる。活性成分の他に、これらの薬剤組成物は、薬学的に使用できる製剤に、活性化合物を処理するのを容易にする賦形剤及び補助剤を含む、適切な生理学的に許容される担体を含有し得る。調合及び投与の技術についてのさらなる詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co. Easton、Pa)の最新版に記述されている。
経口投与用の薬剤組成物は、経口投与に適した用法において当技術分野でよく知られている生理学的に許容される担体を用いて製造することができる。かかる担体によって、患者による摂取に対して、薬剤組成物を粉剤、錠剤、丸剤、糖衣丸、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤等として製造することが可能となる。適切な賦形剤は、糖などの炭水化物又はタンパク質充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールなど;トウモロコシ、コムギ、米、ジャガイモ又は他の植物からのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース;アラビアゴム及びトラガントゴムなどのゴム;ゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質である。所望の場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤又は可溶化剤を添加してもよい。
肺又は呼吸器による送達に適した剤形としては、乾燥粉末、噴霧に適した液体溶液又は懸濁液、及び定量吸入器(MDI)で使用するのに適した噴射剤形態などが挙げられる。一般的な実施形態において、乾燥粉末剤形は、肺の肺胞領域内に付着させるために、好ましい範囲内の特定の粒径、通常0.5μM〜50μMを有するだろう。好ましい粒径範囲内の呼吸用粉剤は、ジェットミル、噴霧乾燥、溶媒沈殿法等の様々な従来技術によって製造することができる。次いで、粉剤を分散するために、その器具を通る患者の吸入時の呼吸を利用する従来のドライパウダー吸入器(DPI)で、又はエアロゾル雲中に粉剤を分散するために、外部粉末源を利用するエアアシスト(air-assisted)器具で、乾燥粉剤を患者に投与することができる(例えば、米国特許第5,458,135号参照)。
噴霧器システムに使用される液体製剤には、5mM〜50mMの濃度で、酢酸、アスコルビン酸、及びクエン酸などのわずかに酸性のバッファー(pH4〜6)が用いられることが好ましい。これらのバッファーは、酸化防止剤としての役割を果たし得る。化学安定性を高める又は維持するための生理学的に許容される成分としては:酸化防止剤、キレート剤、プロテアーゼ阻害剤、等張性調節剤、不活性ガス等が挙げられる。かかる液体製剤を送達するのに適した噴霧器の好ましい種類は、米国特許第5,458,135号に記載されている。
MDIにおいて使用するために、薬剤組成物は、通常、乾燥粉末製剤について述べたように呼吸用粒子に加工され、次いで、適切なエアロゾル噴霧剤(CFC又はHFCなど)中にその粒子を浮遊させ、通常、それらの分散性を高めるために界面活性剤でコーティングされる。かかるエアロゾル噴霧剤製剤は、さらに、エタノールなどの低級アルコール(30重量%まで)及び化学安定性及び生理学的許容性を維持又は高めるための他の添加剤を含み得る(例えば、米国特許第6,080,721号)。
局所又は経鼻投与に対しては、透過される特定のバリアに適した浸透剤が製剤に使用される。かかる浸透剤は一般に、当技術分野で公知である。
非経口投与に適した医薬製剤は、水性溶液中で、好ましくはハンクス液、リンゲル液などの生理学的に適合性のバッファー又は緩衝生理食塩水中で配合される。注入用水性懸濁剤は、カルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストランなどの懸濁液の粘度を高める物質を含有し得る。さらに、活性化合物の懸濁剤は、適切な注入用油性懸濁剤として調製される。適切な親油性溶媒又は媒体としては、ゴマ油などの脂肪油又はオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。任意に、懸濁剤は、高濃縮溶液の調製を可能にするために、安定剤、又は化合物の溶解性を高める適切な薬剤を含有してもよい。
本発明の薬剤組成物は、当技術分野で公知の手法で、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸製造、湿式粉砕、乳化、カプセル化、閉じ込め(entrapping)又は凍結乾燥プロセスを用いることによって製造することができる。
一実施形態では、その製剤は、以下の:1〜50mMヒスチジン、0.1%〜2%スクロース、2〜7%マンニトールのいずれか又はすべてを、4.5〜5.5のpH範囲で含有し得る凍結乾燥粉剤であり、使用前にバッファーと合わせられる。
薬剤組成物を調製した後、それらを適切な容器に入れ、示される病状の治療のためにラベルが付けられる。新規なポリペプチドの投与のために、かかるラベルには、例えば、投与量、投与回数、及び投与方法が含まれるだろう。本発明において使用するのに適した薬剤組成物には、その活性成分が意図する目的を達成するのに有効な量で含有される組成物が含まれる。有効用量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。いずれかの化合物については、治療有効用量を、例えば、新生細胞の細胞培養アッセイにおいて、又は動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌ、もしくはブタにおいて、最初に推定することができる。その動物モデルを用いて、適切な濃度範囲及び投与経路を決定することもできる。次いで、かかる情報を利用して、ヒトにおいて有用な投与量及び投与経路を決定することができる。
治療有効用量とは、活性成分、例えば、新規なポリペプチド又はその断片、新規なポリペプチドに特異的な抗体、新規なポリペプチドのアゴニスト、アンタゴニスト又は阻害剤の、症状又は病状を改善する量を意味する。治療有効性及び毒性、例えば、50%有効量(ED50)(集団の50%において治療上有効な用量)及び50%致死量(LD50)(集団の50%に致死的な量)は、細胞培養又は実験動物において、製薬的標準手順によって決定することができる。治療効果と毒性効果との用量比が治療指数であり、それは、LD50/ED50比として示すことができる。大きな治療指数を示す薬剤組成物が好ましい。細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトに使用するための投薬量の範囲を決定するのに使用される。かかる組成物に含まれる投薬量は、ほとんど又は全く毒性を持たないED50を含む循環濃度の範囲内であることが好ましい。その投薬量は、この範囲内で、用いられる剤形、患者の感受性及び投与経路によって異なる。
正確な投薬量は、治療を必要とする対象に関連する因子に照らして、医師によって決定されるだろう。投薬量及び投与は、活性部分の十分なレベルが得られるように又は目的の効果を維持するように調節される。考慮に入れられる因子としては、疾患状態の重症度、対象の一般健康、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び回数、薬物併用(1種又は複数種)、反応感受性、及び治療に対する耐性/応答が挙げられる。適切な投薬量を評価する際に、考慮される他の因子としては、送達されることになっている化合物の化学的性質、その化合物に関連する生物学的応答(意図する、及び偶然の両方)及び予測される禁忌が挙げられる。さらに、送達形式、投与期間及び投与回数(例えば、n回投与/時、n回投与/日、n回投与/週、蓄積量/日、蓄積量/週)、血漿中濃度によって示される場合が多い、標的部位へ送達される生物学的に有効な用量、及び体からの化合物のクリアランスの比又は効率が考慮される。長時間作用型薬剤組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス比に応じて、例えば3〜4日毎、毎週又は2週間に1回投与される。
通常の投薬量は、投与経路に応じて異なる。特定の投薬量及び送達方法についての指導は、文献に記載されており、一般に当技術分野の医師に利用可能である。当業者は、タンパク質又はそれらの阻害剤と異なる剤形をヌクレオチドに対して用いるだろう。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、条件、位置等に特異的であるだろう。一般に、75kgの個体に関しては、通常の投薬量範囲は以下の通りである:小分子化合物では、有効用量は通常、0.3〜50mg/kgであり;組換えポリペプチドでは、有効用量は通常、0.25〜7.5mg/kgであり;体液性免疫応答を仲介するために使用される化合物(例えば、多価肺炎球菌ワクチン、Rho(D)免疫グロブリン、B型肝炎ワクチン、抗CD20抗原)では、有効量は通常、0.0015〜1.5mg/kgであり;ホルモン補助化合物(例えば、エストラジオール、ノルエチンドロン)では、有効用量は通常、用いられる送達システム(例えば、経皮的、経口的、局所的)に応じて、0.0005〜0.5mg/kgである。
経皮送達システム(例えば、エストラジオール経皮システム、スコポラミン経皮システム、経皮ニコチンパッチ)は、個体に対する経皮送達の効率、経皮システム接触の表面積(cm2)、経皮送達システムに組み込まれる化合物の量及び形状及び位置付けられる経皮システムの解剖学的位置に基づいて、ほんのわずかな送達量に関して較正しなければならない。この手法で投与される化合物の有効用量範囲は通常、0.005〜0.5mg/kgである。
新規な配列の使用:コンピューターに関連する実施形態
本発明の核酸コード及び本発明のポリペプチドコードを、コンピューターによって読み取りかつアクセスすることができるいずれかの媒体上に保存し、記録し、処理することができることは、当業者であれば理解されよう。本明細書で使用される「記録(する)」及び「保存(する)」という用語は、コンピューター媒体上に情報を保存するプロセスを意味する。当業者であれば容易に、本発明の核酸コードのうちの1つ又は複数又は本発明のポリペプチドコードのうちの1つ又は複数を含む、コンピューター可読媒体上の情報を記録する現在公知の方法のいずれかを採用することができる。本発明の他の態様は、本発明の少なくとも1、2、5、10、15、20、25、30、又は50の核酸コード又はポリペプチドコードがそれに記録されているコンピューター可読媒体である。
コンピューター可読媒体としては、磁気読み取り可能媒体、光学読み取り可能媒体、電子読み取り可能媒体及び磁気/光学媒体が挙げられる。例えば、コンピューター可読媒体は、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ランダムアクセスメモリー(RAM)、読み出し専用メモリー(ROM)である。
本発明の実施形態は、システム、特に本明細書に記載の配列情報を保存かつ処理するコンピューターシステムを包含する。本明細書で使用される「コンピューターシステム」という用語は、ハードウェア要素、ソフトウェア要素、及び本発明の核酸コードのヌクレオチド配列又は本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列を解析するために使用されるデータ保存要素を意味する。コンピューターシステムは、配列データを処理し、アクセスし、操作するためのプロセッサーを備えることが好ましい。そのプロセッサーは、Intel社製Pentium(登録商標) IIIなどの中央処理装置の公知の種類、又はSun社、Motorola社、Compaq社又はInternational Business Machines社製の同様のプロセッサーであり得る。そのコンピューターシステムは、プロセッサーと、データを保存するための1つ又は複数の内部データ保存要素と、データ保存要素上に保存されたデータを検索するための1つ又は複数のデータ検索デバイスと、を備える汎用システムであることが好ましい。当業者であれば、現在利用可能なコンピューターシステムのいずれかが適していることは容易に判断できる。
いくつかの実施形態において、コンピューターシステムは、コンピューター可読媒体上に保存された、上述の本発明の核酸コード又は本発明のポリペプチドコードを、コンピューター可読媒体上に保存された、又はデータベースに存在する参照ヌクレオチド又はポリペプチド配列と比較するための配列比較子(comparer)を備え得る。「配列比較子」とは、ヌクレオチド又はポリペプチド配列を、他のヌクレオチド又はポリペプチド配列及び/又は化合物、限定されないが、データ保存手段内に保存された、ペプチド、ペプチド擬態、及び化学薬品と比較するためにコンピューターシステムに実装される1つ又は複数のプログラムを意味する。例えば、配列比較子は、コンピューター可読媒体に保存された、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列又は本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列を、コンピューター可読媒体に保存された参照配列と比較し、相同性、生物学的機能に関与するモチーフ、又は構造モチーフを同定することができる。本明細書の他で確認される様々な配列比較子プログラムが特に、本発明のこの態様において使用するのに企図される。あるいは、ヌクレオチド又はアミノ酸配列は、その配列とデータベース中の配列との間の相同性を決定するために、配列のデータベースと比較される。配列のデータベースは、コンピューターシステム内に保存された民間データベースであってもよいし、又は例えばインターネットを通じて利用可能なGENBANK、PIR又はSWISSPROTなどの公共データベースであってもよい。
したがって、本発明の一態様は、プロセッサーと、本発明の核酸コード又は本発明のポリペプチドコードがそれに保存されているデータ保存デバイスと、本発明の核酸コード又は本発明のポリペプチドコードと比較される参照ヌクレオチド配列又はポリペプチド配列がそれに検索可能に保存されているデータ保存デバイスと、比較を行うための配列比較子と、を備えるコンピューターシステムである。
あるいは、そのコンピュータープログラムは、本発明の核酸が1つ又は複数の位置で参照核酸配列と異なるかどうかを決定するために、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列を、参照ヌクレオチド配列と比較するコンピュータープログラムであってもよい。任意に、かかるプログラムは、本発明の参照ポリヌクレオチド又は核酸コードのいずれかの配列に関して、挿入、欠失又は置換ヌクレオチドの長さ及び同一性を記録する。
一実施形態において、そのコンピュータープログラムは、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列に対して1つ又は複数の単一ヌクレオチド多型(SNP)を含有するかどうかを決定するプログラムである。これらの単一ヌクレオチド多型はそれぞれ、一塩基置換、挿入又は欠失を含み得る。その方法は、コンピュータープログラムを使用して、本発明の核酸コードの少なくとも2、5、10、15、20、25、30、又は50個及び参照ヌクレオチド配列を読み取り、その核酸コードと参照ヌクレオチド配列との間の差異をコンピュータープログラムで同定することによって行うことも可能である。
他の実施形態において、コンピューターをベースとするシステムはさらに、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列又は本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列内の特徴を同定するための識別子を備え得る。「識別子」とは、上述の本発明の核酸コードのヌクレオチド配列又は本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列内の特定の特徴を識別する1種又は複数種のプログラムを意味する。一実施形態において、識別子は、本発明のcDNAコードにおけるオープンリーディングフレームを識別するプログラムを含み得る。
その他の実施形態では、多くのコンピュータープログラムのいずれかを用いて、本発明のアミノ酸配列を解析し、タンパク質の構造的特徴、例えば、二次構造、三次構造及び四次構造などを同定すること、潜在的な結合パートナー等を同定することができる。次いで、分子モデリング解析の結果を、例えば合理的な薬物設計に用いて、本発明のポリペプチドコードの活性を調節する作用物質を同定することができる。
したがって、本発明の他の態様は、本発明の核酸コード又は本発明のポリペプチドコード内の特徴を同定する方法であって、その中の特徴を識別するコンピュータープログラムを使用することによって、核酸コード(1つ又は複数)又はポリペプチドコード(1つ又は複数)を読み取り、コンピュータープログラムでその核酸コード(1つ又は複数)又はポリペプチドコード(1つ又は複数)内の特徴を識別することを含む方法である。単一配列又は本発明の核酸コード又は本発明のポリペプチドコードの少なくとも2、5、10、15、20、25、30、又は50個を、コンピュータープログラムを使用することによって読み取り、その核酸コード又はポリペプチドコード内の特徴をコンピュータープログラムで識別することによって、その方法が行われる。
上記のプログラムを用いて検出されるモチーフとしては、ロイシンジッパー、ヘリックス・ターン・ヘリックスモチーフ、グリコシル化部位、ユビキチン結合部位、αヘリックス、βシート、シグナル配列、転写制御に関与する配列、例えばホメオボックス、酸性ストレッチ、酵素活性部位、基質結合部位及び酵素切断部位が挙げられる。
本発明は特定の好ましい実施形態に関して記述されているが、本明細書における開示内容を考慮して、当業者には明白であるだろう他の実施形態もまた、本発明の範囲内である。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に照らしてのみ定義されることが意図される。
本出願全体にわたり、様々な出版物、キットのマニュアル、特許及び公開特許出願が記載されている。本発明が関係する当技術分野の技術現状をさらに完全に説明するために、これらの出版物、特許、マニュアル及び公開特許明細書の開示内容全体が、参照により本発明の開示内容に組み込まれる。
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Claims (13)

  1. a)いずれか1つの偶数配列番号の2〜40の6〜776の少なくともいずれか1つの整数個のアミノ酸をコードする奇数配列番号1〜39ポリヌクレオチド、
    b)いずれか1つの偶数配列番号2〜40のシグナルペプチド配列をコードする奇数配列番号1〜39のポリヌクレオチド、
    c)いずれか1つの偶数配列番号2〜40の成熟ポリペプチド配列をコードする奇数配列番号1〜39のポリヌクレオチド、
    d)いずれか1つの偶数配列番号2〜40の完全長ポリペプチド配列をコードする奇数配列番号1〜39のポリヌクレオチド、
    e)いずれか1つの偶数配列番号2〜40の生物活性断片のポリペプチド配列をコードする奇数配列番号1〜39のポリヌクレオチド、
    f)いずれか1つの偶数配列番号2〜40の6〜776の少なくともいずれか1つの整数個のアミノ酸のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド、
    g)いずれか1つの偶数配列番号2〜40のシグナルペプチドのポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド、
    h)いずれか1つの偶数配列番号2〜40の成熟ポリペプチドのポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド、
    i)いずれか1つの偶数配列番号2〜40の完全長ポリペプチドのポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド、
    j)いずれか1つの偶数配列番号2〜40の生物学的ポリペプチドのポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド、
    k)発現ベクターをさらに含む、a)〜j)のいずれか1つのポリヌクレオチド、
    l)上記のa)〜k)のポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体、
    m)k)の宿主細胞を含む非ヒト遺伝子導入動物、
    n)生理学的に許容される担体をさらに含むa)〜j)のポリヌクレオチド
    からなる群から選択される核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
  2. a)いずれか1つの偶数配列番号2〜40の6〜776のいずれか1つの整数個のアミノ酸、
    b)いずれか1つの偶数配列番号2〜40のシグナルペプチド配列、
    c)いずれか1つの偶数配列番号2〜40の成熟ポリペプチド配列、
    d)いずれか1つの偶数配列番号2〜40の完全長ポリペプチド配列、
    e)生理学的に許容される担体をさらに含むa)〜d)のポリペプチド
    からなる群から選択される連続アミノ酸配列を含むポリペプチド。
  3. a)請求項1に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞の集団を提供し、
    b)前記宿主細胞中で請求項2に記載のポリペプチドを生成する助けとなる条件下にて、宿主細胞の前記集団を培養し、
    c)宿主細胞の前記集団から前記ポリペプチドを精製する工程を含むポリペプチドを作製する方法。
  4. a)プロモーターに作動可能に連結される請求項2に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞の集団を提供し、
    b)前記細胞中で前記ポリペプチドを生成する助けとなる条件下にて、前記細胞集団を培養し、
    c)前記細胞集団から前記ポリペプチドを精製する工程を含むポリペプチドを作製する方法。
  5. 請求項2に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
  6. 抗体が前記ポリペプチドに特異的に結合することができる条件下にて、前記抗体を前記ポリペプチドと接触させる工程を含む請求項5に記載の抗体に、請求項2に記載のポリペプチドを結合させる方法。
  7. a)前記哺乳動物から生体試料を採取し、
    b)前記生体試料を、
    i)厳密な条件下にて、請求項1に記載のポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチド、または
    ii)請求項2に記載のポリペプチドに特異的に結合するポリペプチド
    のいずれかと接触させ、
    c)前記試料中の前記ポリヌクレオチドとRNA種との間のハイブリダイゼーションの有無または前記試料中の前記ポリペプチドのタンパク質への結合の有無を検出する工程を含む、新規な遺伝子が哺乳動物中で発現されるかどうかを決定する方法であって、
    前記ハイブリダイゼーションまたは前記結合の検出によって、前記新規な遺伝子が前記動物中で発現されることを示す方法。
  8. 前記ポリヌクレオチドがプライマーであり、かつ前記ハイブリダイゼーションが、前記プライマーの配列を含む増幅産物の存在を検出することによって検出される請求項7に記載の方法。
  9. 前記ポリペプチドが抗体である請求項7に記載の方法。
  10. a)前記哺乳動物から生体試料を採取し、
    b)前記生体試料中の、請求項2に記載のポリペプチドの量または前記ポリペプチドをコードするRNA種の量を、対照試料で検出されたまたは対照試料から予想されるレベルと比較する工程を含む、哺乳動物が増加または減少したレベルの新規遺伝子発現を有するかどうかを決定する方法であって、
    前記対照試料で検出されたまたは前記対照試料から予想される前記レベルと比較して、前記生体試料中の前記ポリペプチドまたは前記RNA種の増加量から、前記哺乳動物が増加したレベルの前記新規遺伝子発現を有することを示し、かつ
    前記対照試料で検出されたまたは前記対照試料から予想される前記レベルと比較して、前記生体試料中の前記ポリペプチドまたは前記RNA種の減少量から、前記哺乳動物が減少したレベルの前記新規遺伝子発現を有することを示す方法。
  11. a)請求項2に記載のポリペプチドを試験化合物と接触させ、
    b)前記化合物が前記ポリペプチドに特異的に結合するかどうかを決定する工程を含む、新規ポリペプチドの候補修飾因子を同定する方法であって、
    前記化合物が前記ポリペプチドに特異的に結合することの検出によって、前記化合物が前記新規ポリペプチドの候補修飾因子であることを示す方法。
  12. 前記候補修飾因子の存在下にて、前記新規ポリペプチドの生物活性を試験する工程をさらに含む請求項11に記載の方法であって、前記化合物の非存在下での活性と比較して、前記化合物の存在下での前記新規ポリペプチドの生物活性の変化から、その化合物が前記新規ポリペプチドの修飾因子であることを示す方法。
  13. a)請求項11に記載の方法を用いて、新規ポリペプチドの修飾因子を同定し、
    b)前記修飾因子を生理学的に許容される担体と組み合わせる工程を含む薬剤組成物を製造する方法。
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