JP2005508199A - マイクロアレイを使用してアルコール依存症および関連疾病の検出および監視を行うための方法および装置 - Google Patents
マイクロアレイを使用してアルコール依存症および関連疾病の検出および監視を行うための方法および装置 Download PDFInfo
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Abstract
アルコール依存症および関連疾病状態の検出、診断および/または監視を行うための装置および方法を開示する。該装置は、基体と、基体に結合した1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸とを含む。基体を、アルコール依存症またはアルコール中毒あるいはアルコール関連疾病状態のヒトから採取した試料に接触させ、接触は、コンピュータによって収集、記録できる情報を提供するあらかじめ選択された条件で行われる。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、アルコール依存症および関連疾病状態の検出、監視および診断を行うための方法および装置に関し、より詳細には、マイクロアレイを使用して、対象、好ましくはヒト患者におけるアルコール依存症および関連疾病状態の進行を分析するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国政府は、DOD認可番号:517−9−8444に基づいて本発明の一定の権利を所有することができる。
【0003】
本発明の範囲を制限することなく、例として、核酸マイクロアレイを使用して、ヒトにおけるアルコール依存症およびその進行の検出、診断または監視を行う方法に関連してその背景を説明する。
【0004】
これまで、この分野では、アルコール依存症またはアルコール中毒および関連挙動の診断および/または検出は、実質的に、インタビュー、過去の記録の考察または臨床な印象に依存してきた(Allen,JP、Columbus M、and Fertig J.1995.アルコール依存症治療における評価:概要.NIAAA治療ハンドブックシリーズ4、アルコール問題の評価:臨床医および研究者のための手引き(Assessment in Alcoholism Treatment:An Overview.In:NIAAA Treatment Handbook Series 4、Assessing Alcohol Problems:A Guide for Clinicians and Researchers.)NIH Publication No.95−3745.pp.1−9)。一般に、病歴と臨床的兆候の項目を組み合わせて診断指標を形成する。加えて、これらの項目と、指標の一部を形成する飲酒歴、CAGEアンケートおよび早期指示アンケートとを比較することができる。
【0005】
この方法に伴う1つの問題は、指標を得るのが困難なことである。例えば、指標は、1つのアンケートから得られたデータに基づくことは希で、その代わり、信頼性を示すためにいくつかのアンケートを行うことを必要とする。この方法は、最低限2つの異なる時点で、一般には少なくとも1週間おいてアンケートを行わなければならないことを意味し、診断を得る即時性を制限する。また、アンケートは冗長で、それらを評価する中心的、またはコンピュータ化された手段をもたない可能性がある。これは、冗長であるばかりでなく、複数の尺度を含むアルコール使用記録や中毒重症度指標などの測度に対しては特に不便である。加えて、多くの尺度を管理するための手順は簡単であるが、中毒重症度指標、包括的飲酒者プロフィル、アルコール経時追跡手順、およびいくつかの診断尺度は、それらを正しく使用できるまで長期間の訓練を必要とする。それらの尺度のうち、性別または民族に基づく可変的な評価を提供するものはほとんどなく、それらの普遍的な適用可能性を制限する。
【0006】
アルコール依存症および飲酒を初期段階で検出するために、判別評価の診断値、および臨床検査の組合せがしばしば用いられる。しかし、判別評価は、低い感受性および特異性しか与えず、しばしばアルコールの摂取に限定される。例えば、ガンマ−グルタミルトランスファーゼ、アセトアルデヒド誘導ホモグロビンフラクションおよび平均血球体積は、それぞれ72%および73%の低い感受性および特異性を示し、検査は重度の飲酒者に対して最適に実施される(Sillanaukee P.1992.アルコール中毒の検出における判別評価の診断値(The diagnostic value of a discriminant score in the detection of alcohol abuse)Arch Pathol Lab Med 116:924−9)。他の検査の組合せを使用すると、より良好な結果を提供することができるが、すべての年齢、性別または民族群にわたって機能するものはない。これにより、単に1つの標識を用いても、あるいはそれらの組合せを用いたとしても、アルコール依存症や重度の飲酒のような前段階のアルコール中毒を最適に検出できないことが確認される。
【0007】
残念なことに、また一部に上記の制限により、アルコール依存症またはアルコール中毒およびその関連挙動を診断または検出するためのすぐに利用可能で、標準化された方法が存在しない。その結果、医師は、しばしばアルコール関連疾病を誤診または過小診断する。加えて、標準化された診断法が欠如するときは、医師は、患者のみから得られた情報に頼ることができないため、疾病の進行を迅速かつ日常的に監視することは、不可能でなくても、困難である。アルコール中毒者が、彼らの真のアルコール消費量を開示することは希で、しばしば彼らのアルコール使用と彼らの他の症状および問題とのいかなる関連性も否定し、最小限にとどめる。
【0008】
先述の説明によって証明されたように、アルコール依存症またはアルコール中毒の検出、診断および監視を行うための簡単で確実な方法が真に必要とされている。アルコール依存症または関連疾病の早期診断は、アルコール依存症またはその関連疾病からの想定される回復がより好ましい段階での建設的な介入治療をも可能にするであろう。さらに、アルコール依存症の病理学的影響を含めて、アルコール依存症および関連疾病状態の進行を正確かつ迅速に監視する能力は、医師が患者を効果的に早期に治療することを可能にするとともに、研究者が、アルコール依存症および関連疾病に対する様々な治療法の効果をより適切に評価することを可能にする。
【0009】
したがって、アルコール中毒および関連疾病の進行の検出および監視を行う確実で、再現性があり、経済的な方法が必要とされる。アルコール消費の正確かつ客観的な生理学的測定値を提供する体系的な方法および装置を開発することは、医師が意志決定過程において、またこれらの患者における罹患および死亡転帰を改善するために必要とされる手段である。該方法および装置は、治療目標への患者の遵守状況を監視するための偏りがなく、信用できるツールを医療従事者および研究者に提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、アルコール依存症またはアルコール中毒あるいは関連疾病をかかえるヒトに対する検出、診断または監視は、簡単で、迅速で、標準化された方法および装置の欠如によって制約されている。現行の方法、特にアンケートおよび判別評価は、著しいコストおよび時間を必要とし、性別、年齢および/または民族の偏りが示されると不確実であるとしばしば見なされる。加えて、アルコール中毒者は、真のアルコール消費量を開示することは希で、しばしば彼らの症状または問題を否定し、できるだけ小さいものとしようとするため、そのヒトの直接的な検査を含むすべての技術に固有の不確実性が加わる。加えて、アルコール消費に対する現行の測定値は、直接的な消費を測定するにすぎず、中毒またはその進行の度合について何も示さない。
【0011】
アルコール中毒の検出および測定の分野において、現行のシステムの大きな問題は、アルコール消費を扱ういくつかの技術があるが、それぞれが独立的にアルコール摂取に反応することである。加えて、各技術は特異的で、しばしば感受性、特異性および予想値を制限する。これらの従来的な技術は、アルコール以外に、年齢、性別および様々な物質ならびに非アルコール関連疾病にしばしば影響される。例えば、アルコール消費の早期検出評価、すなわち35以下の血液化学および血液学的検体の組合せに対する分析から導かれる直線的な判別関数は、40歳以上のヒトにおける重度飲酒を識別する場合にのみ最良の機能を果たす(Harasymiw JW、Bean P.2001.アルコール消費評価の早期検出を用いることによる重度飲酒者の識別(Identification of heavy drinkers by using the early detection of alcohol consumption score)Alcohol Clin Exp Res 25:228−35)。より重要なことには、アルコール消費を測定する現行の技術は、直接的な消費を測定するにすぎず、中毒またはその進行の度合について何も示さない。また、それらは、アルコール消費に対する全体的な時間軸を扱わない。生物学的標識に対する検査は、特定の検出時間枠を必要とする。例えば、1つの標識であるエチルグルクロニドは、高い感受性および特異性を有すると考えられるが、アルコールが身体から消失した後の80時間以内の短い期間にわたってしか検出できない(Wurst FM、Kempter C、Metzger J、Seidl S、Alt A.2000.エチルグルクロニド:臨床および法医学的かかわりを有する最近のアルコール消費の標識(Ethyl glucuronide:a marker of recent alcohol consumption with clinical and forensic implications)Alcohol 20:111−6)。
【0012】
現行のアルコール依存症の検出および管理は、一部には、主に主観的情報または直接的なアルコール摂取に頼るため、その幅広い用法を制限する原理に基づいている。本明細書に開示されるように、現行の検出および管理技術は、現行の技術そのものの使用に固有の同一の非効率性によって阻害されていることが認識される。本発明は、現行の技術におけるコスト効率性、精度および確実性が、アルコール依存症およびその関連疾病の検出に有効ではないという認識に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
より具体的には、本発明は、アルコール依存症および関連疾病の検出、診断および監視を行うための装置であって、基質を支えるための固体支持体と、固体支持体に結合した1つまたは複数のアルコール依存症固有核酸の集合体としての基質とを備えた装置でありうる。本発明に使用する基質は、ゲノムDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、それらの一本鎖もしくは二本鎖、または任意の化学的修飾体の如き異なる決定可能配列を有するペプチド核酸のヒト核酸標的要素である。代替的な実施形態において、ヒト核酸標的要素は、例えば、アルコール依存者またはアルコール中毒者が発現する、細胞信号伝達、免疫反応および/または細胞間相互作用に対する構造遺伝子、代謝遺伝子、転写遺伝子または他の遺伝子に特異性な配列を有するアルコール依存症特異的遺伝子でありうる。基質を支える固体支持体は、共有結合または非共有結合により分子を結合させることができる任意の微細加工した固表面である。分子が結合できる微細加工した固表面を使用する利点は、アミノ、カルボキシル、チオールまたはヒドロキシル分子基、すなわちヒト核酸を容易に結合させる分子基のその固表面への導入を促進することである。
【0014】
固体支持体によって支えられる基質は、アルコール依存症もしくはアルコール中毒またはアルコール関連疾病と考えられるヒトから採取した試料、例えば体液に接触することができる。代替的な実施形態において、試料は、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊水、腺液、脳脊髄液、細胞、または任意の他の体液、細胞または体組織調製物でありうる。試料を随意に細分して、プローブを作製することができる。同様に、光源またはコンデンサを備えた装置で検出できる標識を試料またはプローブに随意に標識付けすることができる。例えば、蛍光標識で標識付けしたプローブを光源、例えば傾向顕微鏡で観察することができる。装置の一部としてプログラム化されたコンピュータを使用して、試料からの情報、例えば各標的要素における検出可能な変化の位置および大きさを記録することができる。試料と対照の比率情報を記録することもできる。対照とは、アルコール依存症またはアルコール中毒でないヒトから試料を採取し、アルコール依存症の試料と同様に処理できることを意味する。試料および対照からの記録情報を例えばコンピュータデータベースに生情報および/または比率情報として記録し、プログラム化されたコンピュータから、生情報および/または比率情報として表示することができる。
【0015】
本発明は、アルコール依存症および関連疾病状態の進行を分析するための方法であって、アルコール依存症もしくはアルコール中毒またはアルコール関連疾病と考えられるヒトから得られた試料をマイクロアレイに接触させて、結合を可能にするステップと、結合に関する情報を収集するステップとを含む方法でありうる。本発明の方法は、試料と対照の間の検出可能な変化を識別するステップであって、検出可能な変化をプログラム化されたコンピュータで記録し、処理し、表示し、かつ記憶できるステップとをさらに含むことができる。本発明の方法を経時的に実施される一連の分析として用いることによって、個人の疾病の進行を観察することができる。この方法を用いて、アルコール依存者またはアルコール中毒者が発現する、細胞信号伝達、免疫反応および/または細胞間相互作用に対する構造遺伝子、代謝遺伝子、転写遺伝子または他の遺伝子に特異性な配列を担持するマイクロアレイにより、単一点または経時的にアルコール特有遺伝子の発現を分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の特徴および利点をより深く理解するために、添付の図面とともに、本発明の詳細な説明を次に参照する。
【0017】
本発明の様々な実施形態の構成および使用を以下に詳細に述べるが、本発明は、広範囲な具体的脈絡において具体化できる多くの応用可能な発明の概念を提供することを理解すべきである。本明細書に述べられる具体的な実施形態は、本発明を構成し、使用する具体的な様式を単に例示したもので、本発明の範囲を限定するものではない。説明を参照すれば、例示的な実施形態、ならびに本発明の他の実施形態の様々な改造および組合せを当業者なら理解するであろう。したがって、添付の請求項は、あらゆる当該改造または実施形態を包括することを意図している。
【0018】
本発明は、アルコール依存症および関連疾病状態の検出、診断および/または監視を行うための装置および方法を含む。該装置は、基体と、基体に結合した1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸とを使用し、コンピュータによって採取し、記録することができる情報を提供するあらかじめ選択された結合条件で、基体を、アルコール依存症またはアルコール中毒あるいはアルコール関連疾病状態のヒトから採取された試料に接触させる。該情報と、アルコール依存症、アルコール中毒またはアルコール関連疾病をもたないヒトから得られた試料からの対照情報とを比較することができ、そのヒトに関する遺伝子発現情報、ならびに診断および/または予後の医学的情報を生成する。該方法は、アルコール依存症またはアルコール中毒であると見なされるヒト、あるいはアルコール関連疾病を有すると見なされるヒトから得られた試料と基体とを接触させて、結合を可能にするステップと、結合に関する情報を収集するステップとを含む。該情報をコンピュータに記録し、対照情報と比較し、そのヒトに関する遺伝子発現情報ならびに診断および/または予後の医学的情報を生成する。
【0019】
以下は、本願に適用される用語である。アルコール依存症とは、アルコールの連続的、過剰または慢性的な使用であり、アルコール依存症、アルコール中毒、および任意のアルコール関連疾病を含む。基体とは、共有結合または非共有結合により分子を結合させることができる任意の微細加工した固表面である。これは、ラングミュア・ブロジェット膜、機能ガラス、ゲルマニウム、シリコン、PTFE、ポリスチレン、砒化ガリウム、金および銀を含むが、それらに限定されない。その表面に導入されるアミノ、カルボキシル、チオールまたはヒドロキシルなどの官能基を有することが可能な当該技術分野において知られている任意の他の物質も企図される。これは、平面を含み、球面も含む。
【0020】
本明細書に用いられるように、「1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸」などは、DNA、RNA、それらの一本鎖または二本鎖および化学的修飾体、あるいはタンパク質核酸である。改質物としては、追加的な電荷、極性、水素結合、静電相互作用および可動性を核酸基体、または核酸全体に導入する他の化学基を提供する改質物が挙げられるが、それらに限定されない。本明細書に用いられるように、「あらかじめ選択された結合条件」とは、1つまたは複数のアルコール特異的核酸、その生成物、または当該遺伝子の発現の変化の生理的結果の検出に対する信号体雑音比を最大にする条件である。以下に併用して記載される結合条件の例としては、発現マイクロアレイの技術分野の当業者なら知っているであろうDNAマイクロアレイの使用が挙げられる。
【0021】
「核酸標的要素」は、基体の異なる箇所に位置する少なくとも1つのペプチドを含む決定可能配列である。決定可能配列は、DNA、RNA、それらの一本鎖または二本鎖および任意の化学的修飾体を含むことができる。改質物としては、追加的な電荷、極性、水素結合、静電相互作用および可動性を個々の核酸基体、または核酸全体に導入する他の化学基を提供する改質物が挙げられるが、それらに限定されない。決定可能配列は、プロテアーゼ、受容体、チャネル、シプナスタンパク質、細胞間もしくは細胞と基体の相互作用、免疫もしくは炎症反応、細胞信号伝達、分子シャペロンもしくは他の担体タンパク質、分子合成、細胞周期調節、細胞成長、細胞増殖または細胞死をコードする遺伝子を含む構造遺伝子、代謝遺伝子、転写遺伝子または他の遺伝子の部分でありうる。
【0022】
「試料」は、ヒトから得られた巨大分子、例えば源からの組織または細胞から抽出された核酸の任意の混合物である。試料としては、全血液、全血液の部分、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊水、腺液および脳脊髄液が挙げられるが、それらに限定されない。先述のすべての試料から分離される単離核酸もこれに含まれる。「試料」は、排泄物、細胞、組織および生検試料の如き均質化された固体物質を含有する溶液または混合物をも含む。本明細書の試料は、診断、予後および定期的な監視を含む任意の時点で得られた1つまたは複数の試料を含む。
【0023】
アルコール依存症は、西洋諸国において大きな健康問題であるが、疾病に関連する遺伝子変化、あるいはこれらの変化が、アルコール依存症またはアルコール中毒の検出、診断または監視にどのように変換されるかに関する分子的情報はほとんどない。アルコールは身体のあらゆる器官に影響し、主たる標的は、アルコールが神経伝達に影響して中毒症状を生じさせる中枢神経系である。長期間のアルコール使用は、中毒、依存または耐性をもたらす可能性があり、耐性および禁断の現象には、薬物依存のメカニズムにかかわる仮説が形づくられる。長期間の薬物乱用は、細胞レベルで適応応答を開始させる可能性が高い。すなわち、薬物が除去されると、神経適応がアンマスキングされ、禁断症候群の症状に至る。実質的な証拠は、少なくとも一部に、遺伝子発現の変化がこの適応過程を仲介することを暗示している。
【0024】
持続的なアルコール接触は、神経伝達物質受容体、ホルモンおよびその受容体、信号伝達分子、分子シャペロン、転写因子およびサイトカインをコードする遺伝子を含む選択遺伝子の発現の変化をもたらす(Miles、1995)。動物モデルを使用し、または培養細胞をエタノールに接触させることによってアルコール依存症に関する多くの研究が実施されているが、ヒトの慢性アルコール依存症は、特定のミトコンドリアおよびGABAA受容体サブユニット遺伝子の発現に変化をもたらすことが最近報告された(Fan L、van der Brug M、Chen W−B、Dodd PR、Matsumoto I、Niwa S、Wilce PA.1999.ディファレンシャル・ディスプレイによって示されたヒトのアルコール脳におけるミトコンドリア遺伝子の発現の増加(Increased expression of a mitochondrial gene in human alcoholic brain revealed by differential display)。Alcohol Clin Exp Res 23:408−413;Lewohl JM、Crane DI、Dodd PR.1997.ヒトのアルコール脳におけるGABAA受容体のアルファ1、アルファ2およびアルファ3イソ型の発現(Expression of alpha 1,alpha 2 and alpha 3 isoforms of the GABAA receptor in human alcoholic brain)。Brain Res 751:102−12)。
【0025】
アルコールはアルコール応答遺伝子に直接影響するか、または多くのシステムを含む間接的なメカニズムを介して作用するかは知られていない。例えば、転写因子活性化または第2の伝達系の変化は、遺伝子発現系列を開始させることができる。アルコール応答転写因子の活性化または抑制は、対応する制御要素を有する遺伝子の発現に変化をもたらす(Miles、1995)。これらの可能性の各々は、遺伝子発現の特異的なパターンをもたらすことになる。当該パターンは、いくつかのmRNAの従来の測定によって検出するのが困難であるが、マイクロアレイ分析に十分に適する(Iyer他、1999)。マイクロアレイ分析は、遺伝子発現パターンのゲノム全体にわたる偏りのない調査を提供する。これは、アルコールの如き潜在的に多面的な作用を有する薬物を調査する上で特に重要になる可能性がある。また、マイクロアレイ分析を用いて、タンパク質、神経伝達物質、サイトカイン、またはアルコールおよびアルコール乱用によって生じる他の分子を調べることができる。
【0026】
アルコール依存症および関連疾病状態の検出、診断または監視を行うための装置
本発明は、アルコール特有遺伝子発現を分析することで、現在存在し、アルコール依存症またはその潜在的に病理的な経時的進行の迅速かつ特異的な分析を制約する制限を克服するための装置を提供する。
【0027】
マイクロアレイ装置を使用して、アルコール依存症またはアルコール中毒であると見なされるヒト、あるいはアルコール関連疾病をかかえるヒトに関する遺伝子発現情報、ならびに診断および/または予後の医学的情報を生成することができる。本発明は、患者の血液におけるアルコール依存症に関連する遺伝子の存否、またはその発現の改変を特定することが可能であることを実証するものである。本発明は、血液を検出用の核酸源として使用することにより、患者または潜在的な患者の検出を著しく簡素化し、広範囲な使用により適するものにする。分子生物学の技術分野の当業者が理解する条件で、1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸が基体の表面に結合する。
【0028】
アルコール特有核酸は、ゲノムDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、それらの一本鎖または二本鎖、ならびに追加的な電荷、極性、水素結合、静電相互作用、および可動性を個々の核酸基体、または核酸全体に導入する化学基を含むが、それらに限定されない任意のそれらの化学的修飾体であってもよい。また、アルコール依存症特異的核酸は、それぞれが異なる決定可能配列を有する1つまたは複数のペプチド核酸のヒト核酸標的要素を含む。各ペプチドは、1平方センチメートル当たり100から10000個の標的要素の密度で、基体の異なる箇所に位置する。基体に結合したアルコール依存症特異的核酸は、例えば、およそ5600の全長ヒト遺伝子を識別する標的要素を含む、Affymetrix社のHuGeneFLチップの如き市販のマイクロアレイに類似したものであってもよい。
【0029】
本発明の重要な知見は、ヒト核酸標的要素は、アルコール依存者もしくはアルコール中毒者、またはアルコール関連疾病をかかえるヒトが特異的に発現する、細胞信号伝達、免疫反応または細胞間相互作用に対する構造遺伝子、代謝遺伝子、転写遺伝子または他の遺伝子に特異性な配列を有するアルコール依存症特異的遺伝子の部分でありうることである。本明細書に用いられるように、「アルコール依存症特異的核酸」という用語は、核酸マイクロアレイによって検出可能な遺伝子発現の統計的に重要な変化を示す遺伝子を包括する。発現の変化は、統計的に重要な遺伝子発現の増加または減少、例えば増加または減少(アップレギュレートまたはダウンレギュレーション)、遺伝子発現の完全な欠如、またはこれまで観察されなかった遺伝子の発現の存在であってもよい。発現の変化は、核酸の変化、タンパク質の変化、またはタンパク質の発現の変化の効果、例えば酵素活性または酵素活性の効果の変化(例えば、リン酸エステル化、タンパク質への翻訳後修飾、炭水化物、脂質などへの変化)であってもよい。
【0030】
本発明を用いて検出される「アルコール依存症特異的核酸」の例としては、以下の遺伝子、すなわちM6神経糖タンパク質、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリン関連乏突起膠細胞塩基性タンパク質、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質、ミエリンタンパク質Po、乏突起膠細胞ミエリン糖タンパク質、PMP2、PMP22、MAL遺伝子、ApoD、ApoE、炭酸脱水酵素II、2’,3’−環状ヌクレオチド 3’−ホスホジエステラーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、トランスアルドラーゼ、UDP−ガラクトースセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ、MyT1、プラルファ(Puralpha)、Edg−2、神経膠線維酸性タンパク質、ケラチン6B、ベータIIIスペクトリン、プロテアーゼ、セリン、9(ニューロシン)、プロプロテインコンバターゼサブチリシン/ケキシン4型、カルパイン、大ポリペプチドL3、プロテアーゼ、セリン、11(IGF結合)、膜貫通プロテアーゼ、セリン2、エンドセリン受容体タイプB様(GPCR37)、アクアポリン1(チャネル形成細胞膜内在タンパク質)、内向き整流性カリウムチャネル、サブファミリーJ、メンバー10、グルタメート受容体、AMPA1、N−エチルマレイミド感受性因子、EGF−含有フィブリン類似細胞外マトリックスタンパク質1、CD44抗原、カドヘリン18、テトラスパンNET−6、インターフェロン、ガンマ誘導性タンパク質16、主要組織適合性複合体、クラスII、DRベータ1、小誘導性サイトカインサブファミリーC、メンバー1、エポキシドヒドロラーゼ1、ミクロソーム(生体異物)、プロリンデヒドロゲナーゼ(プロリンオキシダーゼ)、グルタチオンS−トランスフェラーゼM5、ユビキノール−シトクロムcレダクターゼコアタンパク質II、セリン/スレオニンキナーゼ、TU3Aタンパク質(優性ラパマイシン耐性1、DRR1としても知られる)、分泌収縮関連(secreted frizzled−related)タンパク質1、GTP結合タンパク質、ホスホリパーゼA2(14−3−3タンパク質)、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ、イソ型Ib、アルファサブユニット、Gタンパク質シグナリング制御因子4(RGS−4)、シヌクレイン、アルファ、リボフォリンII、130kD Golgi局在型リンタンパク質、自己免疫制御因子(自己免疫多腺性内分泌障害カンジダ症外胚葉性異栄養症)、SPY−ボックス9転写因子、スプライセオソーム関連タンパク質(U2snRNP)、レチノイドX受容体、ガンマ、核転写因子、Xボックス結合1、TATAボックス結合タンパク質関連因子、RNAポリメラーゼII、F、基本転写因子3、マクロファージ刺激1(肝細胞成長因子様)、LIM領域限定2(ロンボチン様1)、骨形態形成タンパク質7(骨形成タンパク質1)、レクイエム、アポトーシス反応Znフィンガー遺伝子、ジスコイジン領域受容体ファミリー、メンバー1、CDC様キナーゼ2、CDC様キナーゼ1、腫瘍タンパク質p53結合タンパク質、2、ヒト成長/分化因子1、RACH1(補体ラッド1−1細胞周期チェックポイント突然変異体)、RAN(メンバーRASオンコ遺伝子ファミリー)、nel様2、サルコリピン、KIAA0043遺伝子生産物、EST、システインおよび高グリシンタンパク質1、骨肉腫で増幅する保存遺伝子、KIAA0027遺伝子生産物、ホモ・サピエンス・クローン23916、KIAA0202遺伝子生産物、セレンタンパク質P、血漿、1、1,25−ジヒドロキシビタミンD−3によってアップレギュレートされた染色体16BACクローンCIT987SK−A−69G12、タイトジャンクションタンパク質2、HREV107様タンパク質、クローン23555mRNA配列、クローン25030mRNA配列、KIAA0237遺伝子生産物、KIAA0725遺伝子生産物、KIAA0293遺伝子生産物、神経芽細胞腫(神経組織)タンパク質、レチキュロン1、cAMP調節グアニンヌクレオチド交換因子IIにわずかに類似したEST、遺伝子pp2タンパク質にわずかに類似したEST、またはKIAA0195に極めて類似したEST、ユビキチンC、微小管関連タンパク質4、カルシウム依存性プロテアーゼ(小サブユニット、プロテアソームサブユニットz、ガンマ−アミノブチル酸(GABA)A受容体ベータ2サブユニット、グルタメート/アスパルテート輸送体II、リソソーム膜糖タンパク質−1(LAMP1)、心臓ギャップ結合タンパク質、オートタキシン−t(atx−t)、Igスーパーファミリー細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質(CTLA−4)、主要組織適合性複合体(MHC)のHLA−DRアルファ重鎖aクラスII抗原、ヒトアシル−CoAチオエステルヒドロラーゼ、シトクロムcオキシダーゼサブユニットVic、液胞H+ATPase Eサブユニット、ATPシンターゼ、リゾチームmRNA、プロスタグランジンD2シンターゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼの肝臓mRNA、SURF−1、カルモジュリン、カルシニュリンA2、GDI解離阻害剤RhoGDIガンマ、14.3.3タンパク質(タンパク質キナーゼ調節因子)、hPTPA、タンパク質キナーゼCゼータ、小GTP結合タンパク質、S10、タンパク質チロシンホスファターゼ、睾丸特異的cAMP依存タンパク質キナーゼ触媒サブユニット(Cベータ・イソ型)、ADPリボシル化因子3、90kD熱ショックタンパク質遺伝子、熱ショックタンパク質HSPA2遺伝子、ミトコンドリアマトリックスタンパク質P1(核コード)、ヒストンH2A.2、RNAポリメラーゼII伸長因子SIII p15サブユニット、酸性リボソームリンタンパク質P0、グリシル−tRNAシンセターゼ、リボソームタンパク質L27a、色素上皮由来因子、TRPM−2タンパク質、アンギオテンシノゲン、トランスフェリン、メラノーマ、遍在性突然変異タンパク質(MUM−1)、KIAA0080遺伝子生産物、KIAA0084遺伝子産物および/またはKIAA0174遺伝子産物、あるいはそれらの組合せの1つまたは複数の遺伝子の少なくとも一部が挙げられるが、それらに限定されない。
【0031】
分子生物学の技術分野の当業者が理解するように、基体に結合したアルコール依存症特異的核酸と試料は選択的結合条件で接触する。選択的結合条件は、最大の信号体雑音比を可能にする条件で、緩衝条件(pH、塩濃度、洗剤など)および温度などを変更することによって達成できる。例えば、基体に結合したアルコール特有核酸および試料を、試料のアルコール依存症特異的核酸への結合を促進させる試薬または化学物質に接触させ、次いで未結合試料の除去を促進させる追加的な試薬または化学物質で洗浄することによって、試料、アルコール依存症特異的核酸または基体の分子構造を変化させずに、結合試料のみを残すことができる。あるいは、1つまたは複数の試料を、基体に結合したアルコール依存症特異的核酸に接触させ、1つまたは複数の試料に標識付けすることができる。例えば、標識は、露光すると信号を発する蛍光または非蛍光分子でありうる。目的とする試料は、アルコール依存症もしくはアルコール中毒またはアルコール関連疾病と考えられるヒトとしてここに定義されるアルコール依存者から採取される試料である。そのようなヒトから採取された試料としては、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊水、腺液および脳脊髄液、または身体組織調製物の如き高分子の任意の混合物が挙げられることができるが、それらに限定されない。異なる起源または類似の起源をもつ1つまたは複数の試料をヒトから採取して、すぐにまたは後に使用することができる。
【0032】
基体に結合したアルコール依存症特異的核酸に試料を結合させることによって、信号強度の変化としてコンピュータにより収集できる様々な情報が提供される。本発明の1つの利点は、光学顕微鏡法、X線撮影法、化学発光法、蛍光顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、干渉分光法、表面プラズマ共鳴、質量分析法、原子間力顕微鏡法および走査トンネル顕微鏡法を含む、光源、コンデンサ、イオンまたはプラズマ・ビームで結合を検出できることである。
【0033】
次いで、コンピュータを使用して、情報を記録し、情報をデータベースに記憶し、かつ/または情報を表示することができる。加えて、収集した情報は、各ヒト核酸標的要素における信号強度の検出可能な変化の位置および/または大きさを示すことができる。検出可能な変化は、例えば、各標的要素における蛍光や信号強度の変化、または導電性もしくは屈折率の如き物理的パラメータの変化であってもよい。また、試料情報と対照から収集した情報との情報率を求めることができ、ここで対照とは、アルコール依存症またはアルコール中毒であると見なされないヒト、あるいはアルコール関連疾病をかかえていると見なされないヒトから採取されるものである。対照情報は、アルコール依存者から収集される情報と平行して収集される。とりわけ、市販のコンピュータを使用して、試料および対照情報を収集することができる。本発明の利点は、収集される情報が、患者に関する遺伝子発現情報、ならびに診断および/または予後の医学的情報を生成できることである。
【0034】
アルコール依存症および関連疾病状態の検出、診断または監視を行うための方法
本発明は、アルコール依存症またはアルコール中毒の検出、監視および/または診断を行うための方法に、商業的または非商業的に入手可能なマイクロアレイを使用できる。本発明は、アルコール特有遺伝子発現、またはその潜在的に病理的な経時的進行を分析するための方法であってもよい。
【0035】
図1のフローチャートに示されるように、ヒトに関する診断および予後の医学的情報を生成することができる方法にステップが含まれる。ステップ10において、アルコール依存症もしくはアルコール中毒またはアルコール関連疾病と考えられるヒトから抽出した試料からプローブを作製する。ステップ12において、基体と、アルコール依存症もしくはアルコール中毒またはアルコール関連疾病と考えられるヒトとしてここで定義されるアルコール依存者から採取された試料とを接触させる。アルコール依存者から採取される試料としては、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊水、腺液および脳脊髄液、細胞、もしくは他の任意の体液、細胞または身体組織調製物の如き高分子の任意の混合物が挙げられることができるが、それらに限定されない。異なる起源または類似の起源をもつ1つまたは複数の試料をそのようなヒトから採取して、すぐにまたは後に使用することができる。この方法の1つの利点は、分子生物学の技術分野の当業者が理解するように、露光すると信号を発する蛍光または非蛍光分子で1つまたは複数の試料を標識付けることができることである。あるいは、試料は、標識付けされずに、その検出のための蛍光または非蛍光光源以外の源、例えば導電性または屈折率の如き物理的パラメータを記録する源を必要とすることもできる。
【0036】
基体は、表面に導入されたアミノ、カルボキシル、チオールもしくはヒドロキシル官能基を含むラングミュア・ボジェット膜、ガラス、機能ガラス、ゲルマニウム、シリコン、PTFE、ポリスチレン、砒化ガリウム、金、銀、または任意の材料の如き、分子が共有結合または非共有結合によって結合できる任意の微細加工した固表面でありうる。この方法の他の利点は、基体の表面を平面または球面とすることができることである。例えば、基体は、商業的に製造されるマイクロアレイでありうる。あるいは、基体は、商業的に製造されるものでなくてもよい。基体には、1つまたは複数のヒト核酸標的要素を結合させることができる。ヒト核酸標的要素の基体への結合は、分子生物学の技術分野の当業者が理解する条件で生じる。
【0037】
ヒト核酸標的要素は、ゲノムDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、それらの一本鎖または二本鎖、ならびに追加的な電荷、極性、水素結合、静電相互作用および可動性を個々の核酸基体または核酸全体に導入する化学基を含むが、それらに限定されない任意の化学的修飾体であってもよい。また、ヒト核酸標的要素は、それぞれが異なる決定可能配列を有する1つまたは複数のペプチド核酸であってもよい。各ペプチドは、1平方センチメートル当たり100から10000個の標的要素の密度で、基体上の異なる箇所に位置する。本発明の重要な知見は、ヒト核酸標的要素は、プロテアーゼ、受容体、チャネル、シプナスタンパク質、細胞間もしくは細胞と基体の相互作用、免疫もしくは炎症反応、細胞信号伝達、分子シャペロンもしくは他の担体タンパク質、分子合成、細胞周期調節、細胞成長、細胞増殖または細胞死をコードする遺伝子を含む構造遺伝子、代謝遺伝子、転写遺伝子または他の遺伝子の部分でありうることである。
【0038】
ステップ12において、ゲノムDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、それらの一本鎖または二本鎖、ならびに追加的な電荷、極性、水素結合、静電相互作用および可動性を個々の核酸基体または核酸全体に導入する化学基を含むが、それらに限定されない任意の化学的修飾体のいずれかでありうるマイクロアレイ基体に試料を接触させる。ヒト核酸で構成される基体は、1平方センチメートルの表面積当たり100から10000個の標的要素の密度で少なくとも1つの核酸標的要素をさらに含む。この方法の1つの利点は、1つの基体を使用して、1つまたは複数の試料に接触させることができることである。あるいは、それぞれ同一または異なるヒト核酸標的要素から構成される1つまたは複数の基体を使用して、1つまたは複数の試料に接触させることができる。
【0039】
試料と基体を接触させた後に、ステップ14において試料を基体に接触させる。結合は、分子生物学の技術分野の当業者が理解する選択的結合条件で行われる。例えば、試料および基体を、試料の基体への結合を促進させる試薬または化学物質に接触させた後に、未結合試料の除去を促進させる追加的な試薬または化学物質で洗浄することによって、試料の分子構造および基体を変化させずに結合試料のみを残すことができる。
【0040】
ステップ16において、結合から、結合に関する情報をコンピュータによって収集できる。光学顕微鏡法、X線撮影法、化学発光法、蛍光顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、干渉分光法、表面プラズマ共鳴、質量分析法、原子間力顕微鏡法および走査トンネル顕微鏡法を含む光源、コンデンサ、イオンまたはプラズマ・ビームによって検出できる信号強度の変化として情報を収集することができる。コンピュータは、情報を記録し、情報をデータベースに記憶し、かつ/または情報を表示することができる。加えて、収集される情報は、各ヒト核酸標的要素における信号強度の検出可能な変化の位置および/または大きさを示すことができる。検出可能な変化は、例えば、各標的要素における蛍光や信号強度の変化、または導電性もしくは屈折率の如き物理的パラメータの変化であってもよい。また、試料情報と対照から収集した情報との情報率を求めることができ、ここで対照とは、アルコール依存症またはアルコール中毒であると見なされないヒト、あるいはアルコール関連疾病をかかえていると見なされないヒトから採取されるものである。対照情報は、アルコール依存者から収集される情報と平行して収集される。市販のコンピュータを使用して、試料および対照情報を収集することができる。ステップ18において、収集される情報は、患者に関する遺伝子発現情報、ならびに診断および/または予後の医学的情報を生成できる。
【0041】
アルコール依存症および関連疾病状態の検出、診断または監視の例
神経病理学の研究により、慢性的なアルコール中毒は脳、特に前頭葉の萎縮をもたらし、これは、脳の白質の体積の減少によるところが大きいということが示されている((Kril他、1997)に考察されている)。灰質の形態計測学的研究により、前頭葉皮質神経を含む脳の特定領域の神経が選択的に損傷を受けることが示されている(Kril JJ、Harper CG(1989)アルコール依存症の脳の4つの皮質領域からの神経単位のカウント(neuronal counts from four cortical regions of alcoholic brains.)Acta Neuropathol(Berl)79:200−4)。加えて、前頭葉皮質は、アルコールに誘発される損傷の影響を受けやすく、判断、意志決定および他の執行機能に重要性を有し(Rahman S、Sahakian BJ、Hodges JR、Rogers RD、Robbins TW(1999)軽度の前頭葉変異前頭側頭骨痴呆における特異的認識欠乏(Specific cognitive deficits in mild frontal variant frontotemporal dementia)Brain 122:1469−93;Godefroy O、Rousseaux M(1997)前頭葉前方または後方脳損傷患者の新奇の意志決定(Novel decision making in patients with prefrontal or posterior brain damage)Neurology 49:695−70)、この脳の領域をDNAマイクロアレイによる分析に使用する理由を説明する。
【0042】
cDNA(UniGEMV)およびオリゴヌクレオチド(HuGeneFL)アレイをともに使用する。多くの遺伝子が、これらのアレイ上に示され、また各アレイに特有の多くの遺伝子が存在する。したがって、両方の種類のアレイを使用することで、いくつかの遺伝子に対する相互検証、およびいずれか一方のアレイのみを使用する場合より多くの遺伝子の調査が可能になる
試料の選択
対照の症例とアルコール依存症の症例をアルコール摂取に基づいて分類する。国立保健医学研究会議(NHMRC)/世界保健機構の基準によれば、アルコール依存症は、一日の平均エタノール摂取量が80gを上回るものとして定義づけられ、患者の多くは、成人生活の大半(通常は30年を超える期間)にわたって一日当たり200グラム以上のエタノールを消費していた。すべての対照は、禁酒者、または一日当たりの平均エタノール消費量が20gを(通常は大きく)下回る社交的飲酒家である。可能な限り、症例を死亡年齢、死後遅延(post−mortem delay)、性別、死因、飲酒歴に対応させる。多種薬剤乱用の履歴を伴う症例は排除された。完全な倫理基準#97/36、および近親者からの通知同意書に基づいて、認定された病理学者が試料を採取することができる。
【0043】
2つの対照群と2つのアルコール依存症試料群を選択する。臨床的詳細を表1に示す。各群(試料プール)は、5名のアルコール依存者と5つの対応する対照症例とを含む。第1の症例群は、PCRディファレンシャル・ディスプレイ実験に用いられたものと同一である。この群のアルコール依存者は、3名の合併症のないアルコール依存者の不均一な集団を表し、1名のアルコール依存者は肝硬変で、1名のアルコール依存者は随伴性ウェルニッケ脳症である。症例群2に対する選択基準はより厳格である。男性のみが含まれ、肝硬変またはウェルニッケ・コルサコフ症候群の如き随伴性疾病を伴う症例はすべて症例群から排除される。加えて、それらの症例、すなわち検屍解剖の際に神経病理学的異常を示さなかった対照またはアルコール依存者のみを選択するように注意する。したがって、第2の症例群は「合併症のない」アルコール依存者の部分集合に限定される。
【0044】
【表1】
【0045】
試料からのプローブ調製
改変グアジニンイソチオシアナート抽出手順(Chomoczynski and Sacchi 1987)を用いて、全RNAを抽出した。全RNAを各症例から個別に抽出し、試料を一緒にプールして、アルコール依存症に関連しない個々の症例毎の差を小さく(低減)した。各々の対照およびアルコール依存者群を構成する5つの症例の各々は、30μgの全RNAをプールに寄与した。プールされた対照およびアルコール依存者全RNA試料は、UniGEMV(ゲノム・システムズ社)およびHuGeneFL(Affymetrix)アレイに対するハイブリダイゼーションに使用される。
【0046】
cDNAマイクロアレイを使用した遺伝子発現の分析
Qiagen(カリフォルニア州Valencia)のオリゴテクス・ポリA+RNA抽出キットを使用して100μgの全RNAからポリA+RNAを抽出した。二工程手順を用いて、製造者の取扱説明書に従ってプロトコルを実施した。200ngのポリA+RNAをプローブ生成およびマイクロアレイ・ハイブリダイゼーションのためにゲノム・システムズに送った。
【0047】
オリゴヌクレオチド・アレイを使用した遺伝子発現の分析
各試料に対して、25μgの全RNAを出発物質として使用して、スーパースクリプト・チョイス・キット(Gibco BRLライフ・テクノロジーズ、メリーランド州Rockville)を用いたcDNA合成を行った。次いで、バイオアレイRNA転写体標識キット(Enzo、ニューヨーク州Farmingdale)を使用してin vitroで転写を行った。Affymetrix(カリフォルニア州Santa Clara)規定に従ってプロトコルを実施する。ハイブリダイゼーションに先立って、40mMトリス酢酸(pH8.1)、100mM酢酸カリウムおよび30mM酢酸マグネシウムに94℃で35分間インキュベートすることによって、ビオチン標識cRNAを30から60塩基の平均サイズに無作為に細分化することができる。次いで、細分化したcRNAの一定分量(マスタ混合物200μl中10μg)をヒト・オリゴヌクレオチド・アレイ(HuGeneFL、Affymetrix)に対してハイブリダイズする。HuGeneFLチップは、およそ5600の全長ヒト遺伝子を識別するプローブを含有する。60rpmに設定されたロッティーセリ・オーブン(Affymetrix)において45℃で16時間ハイブリダイゼーション反応を行うことができる。次いで、ハイブリダイズ化アレイを洗浄し、Affymetrixプロトコルに記載されているようにストレプトアビジン・フィコエリスリン(分子プローブ)で着色する。最後に、専用の共焦点顕微鏡(ヒューレット・パッカード、カリフォルニア州Santa Clara)でアレイを走査する。
【0048】
情報分析
GEMToolsと呼ばれるプログラム(インサイト製薬)でcDNAマイクロアレイの分析を行うことができる。このプログラムは、HuGeneFLチップ上の5600の標的要素を既知の遺伝子に対する配列に翻訳する。次いで、バックグラウンドを上回る信号強度、ならびに試料および対照マイクロアレイの両方に対する結合に際して信号を生成するスポットの比率についての所定の既定基準を満たす遺伝子を選択することができる。試料帯対照における1.4倍の発現の増加または減少を示す遺伝子を選択することによって、遺伝子をさらにフィルタリングすることができる。
【0049】
GeneChip(登録商標)ソフトウェア3.1(Affymetrix)を使用して、オリゴ・マイクロアレイの絶対および比較分析を行うことができる。すべての遺伝子平均強度(合計強度/遺伝子数)を190の固定値に正規化することによって、すべてのオリゴ・マイクロアレイの全信号強度を均一な値に合わせてスケール調整することができる。これらの条件下では、オリゴ・マイクロアレイに対する倍率は0.82と4.04の間で変動しうる。Affymetrixアレイの分析に対するプロトコルについては、詳細に記載されており(Lockhart他、1996;Wodicka他、1997)、製造者が提供するマニュアルの該当部分と同様に、該当部分が参照により本明細書に組み込まれている。GeneChipプログラムの出力は、信号強度(「平均差」)、および試料と対照の比較(「倍率変化」)に関するデータを含む。行列ベースの決定アルゴリズムを用いて、所定のmRNAプローブの存否に対する信頼測度(「絶対コール」)、および倍率変化(「差異コール」)を生成することができる(Wodicka L、Dong H、Mittmann M、Ho MH、Lockhart DJ.1997.酵母におけるゲノム全体の発現の監視(Genome−wide expression monitoring in Saccharomyces cerevisiae)Nat Biotechnol 15:1359−67)。いずれの場合も、GeneChipプログラムにおける既定値を採用することができる。
【0050】
オリゴヌクレオチド・マイクロアレイに対しては、試料と対照の間で生成された比較ファイルからのデータをフィルタリングすることによって、発現が変化した遺伝子を選択することができる。オリゴ・マイクロアレイ上の少なくとも10の標的要素対で表される遺伝子の選択は、比較ファイルにおいて、少なくとも約1.4倍だけ対照と異なる発現レベルを有する遺伝子を含むことができる。結合のいずれか1つにおいて、GeneChipプログラムにおける「絶対コール」アルゴリズムによって識別される任意の「不在」遺伝子を候補遺伝子リストから削除する。
【0051】
遺伝子発現の変化、予後および診断用の医学的情報
アルコール依存者は、特に乱用および禁断症状の周期の発生頻度に関して、アルコール乱用の様式、性質および持続期間が著しく異なる。アルコール依存者および非アルコール依存者は、環境、栄養、投薬および遺伝子素因を含む多くの終局前因子において著しい多様性を示す。これらの因子の影響を低減するために、1つまたは複数の独立した対照群を利用することができる。加えて、1つまたは複数の対照群を分析のためにプールすることができる(表1)。試料のプーリングは、最近のマイクロアレイ研究に用いられており(Alizadeh他、2000)、個々の症例による差を減少または低減させる。また、類似性に基づく試料のプーリングは、人口の多様性によるそれらとの遺伝子発現の差を視覚的に示すことができる。同一のヒトからの試料をプールまたは同時にランして、人工物との小さな差を視覚的に示すことができる。
【0052】
アルコールによる脳損傷に特に影響されやすい脳の領域の適応応答の基礎を成す可能性のある遺伝子を識別するために、特定組織、例えば前頭皮質からの組織を使用して、対照とアルコール依存者の比較を行うことができる(Kril JJ、Harper CG.1989.アルコール脳の4つの皮質領域からの神経カウント(Neuronal counts from four cortical regions of alcoholic brains)Acta Neuropathol(Berl)79:200−4)。例えば、プールされた試料をcDNAおよびマイクロアレイに対してハイブリダイズし、示差発現比の観点でデータを表すことができる。症例群1プールを使用して実施されるハイブリダイゼーションは、GS−1(UniGEMV、ゲノム・システムズ)およびA−1(HuGeneFL、Affymetrix)と名付けられ、症例群2に対するハイブリダイゼーションはGS−2およびA−2と名付けられる(表1)。
【0053】
マイクロアレイは、これまで、細胞培養系および腫瘍試料にほぼ独占的に適用されてきた比較的新しい技術で、2から10倍の遺伝子発現の差は珍しくない。アルコール中毒の動物モデル、およびこれまで実施された人アルコール依存症の研究では、確認された遺伝子発現の変化は比較的小さい。すなわち40%の遺伝子発現の変化が一般的である。このため、対象となる遺伝子を識別するのに比較的低い閾値(1.4倍)を選択できる。一部に、アルコール依存症に想定される変化が小さいため、少なくとも2つの異なるマイクロアレイ基体を使用することができる。また、両方の症例群および両方の種類のマイクロアレイに同様の結果を伴う遺伝子に重点をおくことができる。
【0054】
2つの症例群における対照とアルコール依存者の間の遺伝子発現変化の再現性をcDNAマイクロアレイによって測定する。2つの症例群に対してプロットした差分発現比の自然対数は、0.48の相関係数(r)によって反映されるように一定の結果を示す。1.4倍の選択閾値における2つの症例群間の同一方向の変化を示す遺伝子の数を比較することによっても再現性を判断できる。例えば、cDNAアレイ上の両方の症例群において、100より多いの遺伝子が、少なくとも1.4倍の上向きまたは下向きの変化を示すとする。これが、ランダムな変動によるものであれば、100より多い遺伝子の期待値を用いて、2つの症例群の間の1.4倍の反対方向の変化を示すことができる。しかし、わずか7つの遺伝子が、1つの症例群において少なくとも1.4倍の増加を示し、第2の症例群において−1.4倍の減少を示す。同様に、データをランダム化し、次いで両方の症例群において少なくとも1.4倍の同一方向の変化を有する遺伝子に対する選択を行うと、ここに示される結果について見られるよりはるかに小さい遺伝子が選択される。したがって、両方の症例群において1.4倍の閾値レベルを上回る遺伝子を選択すると、極めて大きな変化を有する群が識別される。いくつかの「偽陽性」が存在する場合があるが、II型誤差が大きくなるのを避けるために、「緩和した」閾値を有するほうがよい場合がある。選択したリスト内の機能的に関連した遺伝子の部分集合を識別すると、結果の統計的力が著しく高められる。
【0055】
これらの研究による驚くべき発見は、たいていの遺伝子が、アルコール依存症および対照において同様の発現を示すことである。cDNAマイクロアレイでは、3825の遺伝子が「出現」としての基準を上回り、オリゴ・マイクロアレイ分析では、705の遺伝子が、4つの試料(2つの標準対象群および2つのアルコール依存者群)において、常に「出現」と呼ばれる状態にある。cDNAまたはオリゴヌクレオチド・マイクロアレイにより観察されるように、両方の症例群において、少なくとも64の遺伝子が1.4倍に増加し、99の遺伝子が1.4分の1に減少しているのを見いだすことができる。1.4倍という比は、マイクロアレイ上の2つの試料の40%の発現レベルの差を表す。
【0056】
発現が変化した遺伝子に対する初期の調査は、ミエリンタンパク質に対する多くのmRNAな符号化における驚くべき協調的減少を示している。両方の種類のマイクロアレイをミエリンまたは乏突起膠細胞に関連する遺伝子に対してスクリーニングすることができる。これらの遺伝子の半分以上(12/21)が、4つのハイブリダイゼーションのうちの少なくとも2つにおいて(1.4倍以上の)発現の現象を示す(表2)。
【0057】
【表2】
【0058】
ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、ミエリンおよびT細胞分化タンパク質(MAL)ならびにアポリポタンパク質D(ApoD)は、すべての4つの結合において低下を示す。しかし、ミエリン−乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)およびEdg−2、すなわちミエリン形成に関連するテトラスパンは、発現の変化を示さず、豊富ミエリンタンパク質を含む他の6つの遺伝子は1つの結合のみにおいて発現の低下を示すため、ミエリン遺伝子発現の変化は選択的でありうる。対照的に、ガラクトセレブロシダーゼ(GALC)、すなわちガラクトシルセラミドの分解にとって重要な主要酵素は、4つのハイブリダイゼーションのうちの2つにおいて発現が増加する。ミエリン遺伝子の部分集合のみ発現が低下しうるという観察結果は、可能な説明としての(対照においてより多くの白質を与える)組織解体の変化に異議を唱えるものである。
【0059】
表2における遺伝子の大多数は、ミエリン構造において役割を果たすが(Boison and Stoffel 1994);Montag他、1994)、生合成遺伝子も変化する(Schaeren−Wiemers他、1995)。興味深いことには、これは、ともに脂質輸送に関与するApoDおよびApoEに対する遺伝子を含む。これらの遺伝子は、アルツハイマー病の如き神経退行性疾病にもかかわる(Roses 1997;Terrisse他、1998)。ミエリン関連転写因子、MyT1およびプラルファ(Puralpha)は、アルコール依存症試料において一定的に変化せず、極めて多くのミエリン遺伝子の協調的ダウンレギュレーションにおける追加的な因子を暗示していることも驚くべきことである。
【0060】
神経膠線維酸性タンパク質(GFAP)は、アルコール中毒の動物モデルで広く研究されてきたアストロサイトの主な構造タンパク質である。GFAPは、急性エタノール治療の後にアップレギュレートされるが、慢性治療では低下し、エタノールによって転写調節されうる(Valles他、1997)。GFAPの欠乏は、脱髄をももたらす(Liedtke他、1996)。GFAP遺伝子に無発現変異を生じたマウスは、異常なミエリン形成、および白質欠如に関連する水頭症を示す。したがって、CNSにおける有髄化繊維および白質を維持するのにGFAP発現が必要とされる。
【0061】
アルコール依存者の前頭葉皮質におけるミエリン関連遺伝子の発現の低下は、慢性アルコール中毒は、直接または間接的にミエリン関連遺伝子に影響を与えて、ミエリンタンパク質の量を低下させることを示唆するものといえる。あるいは、ミエリン遺伝子発現の欠如は、乏突起膠細胞が特にエタノールの神経毒効果に影響されやすいことを示唆するものであるといえる。
【0062】
ミエリン遺伝子発現は、アルコール中毒の動物モデルでさほど詳細に研究されていないが、ミエリン生合成は、胎児アルコール症候群(FAS)の動物モデルで十分に実証されている。出生前にエタノールに接触されたラットは、ミエリン形成の遅延を示し(Jacobson S、Rich J、Tovsky NJ(1979)胎児アルコール症候群の結果としてのアルビノ・ラットの大脳皮質におけるミエリン形成および成層の遅延(Delayed myelination and lamination in the cerebral cortex of the albino rat as a result of the fetal alcohol syndrome.Currents in Alcoholism 5:123−133)、これは、GFAP、PLP、MAG、Malおよびミエリン塩基性タンパク質を含むミエリン関連遺伝子の発現の時間的パターンの異常の結果である可能性が高い(Naus and Bechberger 1991;Milner他、1987;Chiappelli他、1991)。出生後(出生後4から10日目)エタノールに接触すると、特定のミエリン塩基性タンパク質およびMAGイソ型の発現が低下する(Zoeller他、1994)。白質欠如およびミエリン生合成の変化は、胎児アルコール症候群を伴う児童において実証されている(Riley他、1995)。
【0063】
脱髄および白質欠如は、ヒトの神経画像(Pfefferbaum他、1993)および神経病理学(Kril他、1997)の研究において広く実証され、これらの症例に見られる脳の萎縮を説明するものと考えられる。白質欠如は、硬化性アルコール依存症、および随伴性WEおよびWKSを伴うアルコール依存症において最も深刻であるが、合併症のないアルコール依存症にも見いだすことができ(Kril他、1997)、それは、アルコールの直接的な神経毒効果に起因することを暗示している。慢性アルコール依存症は、脳の灰質構造体の1つ、すなわち脳梁を萎縮させる。脳梁の大きさおよび厚さは、同年齢および同性の対照に比べてアルコール依存症の男性では著しく縮小し(Oishi他、1999)、出生前にアルコールに接触した小児においても著しく縮小している(Riley他、1995)。
【0064】
神経イメージングの研究によって、白質欠如は、禁酒により可逆的であるため(Shear他、1994)、アキソンまたは乏突起膠細胞の不可逆的な欠如ではなく、ミエリン形成の可逆的な変化を表すことができることに留意することが重要である。非飲酒対照、または死亡時に積極的に飲酒していたことが知られる症例と比較した場合の禁酒したアルコール依存者の前頭葉皮質から抽出したRNAに対する将来的なマイクロアレイ分析により、ミエリン遺伝子発現の変化が可逆的であるかどうかを明らかにすることができる。加えて、アルコール中毒の動物モデルにおけるこれらの遺伝子の発現の分析を、これらの変化を逆転するのに必要な禁酒の期間を定めるのに役立てることができる。
【0065】
重要なことは、アルコール依存者は、中心性橋脱髄症およびマルキアファーヴァ−ビニャーミ病の発生率も高くなる(Miles and Diamond 1998)。これらの脱髄性疾病は、アルコール以外の毒性または代謝性因子に起因しうる。ミエリン遺伝子発現のダウンレギュレーションによって、アルコール依存者が中心性橋脱髄症およびマルキアファーヴァ−ビニャーミ病におけるミエリン障害に陥りやすくなる。
【0066】
cDNAアレイ(表3)またはオリゴヌクレオチド・アレイ(表4)による両方の症例群において、1.4倍の差分発現比の基準を用いて、非ミリエン遺伝子を官能基に構成することができる。
【0067】
【表3】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【表4】
【0072】
【0073】
アルコール依存者試料では、シナプス伝達に関与するいくつかの遺伝子の発現が変化している。特に、α−シヌクレインの発現が増加している(表3)。α−シヌクレインは、薬物依存に対して中心的なプロセスであるドーパミン神経伝達の活性依存調節因子で(Abeliovich他、2000)、αおよびβシヌクレインはともに神経変性にある役割を果たすことができる(Galvin他、1999)。同様に、AMPA1受容体サブユニット、RGS−4およびN−エチルマレイドミド感受性因子(表3)の発現が増加する一方、内向き整流性カリウムチャネル(表3)、ガンマアミノブチル酸A(GABAα)受容体β−2サブユニットおよびADPリボシル化因子−3(表4)遺伝子は、アルコール依存者において、発現の低下を示す。いくつかの内向き整流性カリウムチャネルは、アルコール作用の生体内標的である可能性が高く(Lewohl他、1999)、RGSタンパク質によって変調され、またGTPase活性化タンパク質として作用することによってタンパク質のGタンパク質信号ファミリーを調節して、ホルモンおよび神経伝達物質受容体媒介信号を変調する(Hepler 1999)。重要なことは、長時間のエタノール処理によって、GluR1グルタメート受容体サブユニットの発現を増加できることが動物における研究によって示されている(Ortiz他、1995)。アルコール依存症の動物モデルで研究された遺伝子の数は限られているが、GluR1およびGFAPに対するヒト・アルコール依存症との一致は、アルコール依存者における発現変化は、栄養または傷害の如き混乱因子ではなく、アルコール消費によるものであることを暗示している。
【0074】
細胞増殖を調節することが知られている遺伝子群は、アルコール依存者試料においてダウンレギュレーションされる。これは、レクイエム、p53結合タンパク質、ジスコイジン領域受容体ファミリー・メンバーおよび2つのCDC様キナーゼをコードする遺伝子を含んでいた。p53結合タンパク質は、野生型p53、抗アポトーシス遺伝子Bcl−2およびNFKBのp65(RelA)サブユニットと相互作用する(Yang JP、Hori M、Takahashi N、Kawabe T、Kato H、Okamoto T(1999)NF−カッパBサブユニットp65は、53BP2に結合し、53BP2によって誘発される細胞死を抑制する(NF−kappaB subunit p65 binds to 53BP2 and inhibits cell death induced by 53BP2).Oncogene 18:5177−86)。p53結合タンパク質は、p53媒介転写活性を高め、アポトーシスおよび細胞成長の調節に中心的な役割を果たすことができる。受容体チロシンキナーゼ・ファミリーのメンバーであるジスコイジン領域受容体1(Sakuma他、1996)は、p53によって調節されることが知られている。このチロシンキナーゼは、コラーゲンを結合することによって活性化され、細胞外マトリックスに対する細胞応答を媒介するものと考えられる(Vogel 1999)。他の2つの遺伝子、すなわち細胞成長の調節に機能を果たすことが知られているnel様2およびRANは、アルコール依存者においてアップレギュレートされる。レクイエムおよびp53結合タンパク質のダウンレギュレーションの如き、これらの応答のいくつかは、「抗アポトーシス」応答を示唆する。これは、エタノールに直接起因するものであるか、または親アポトーシス的に作用するエタノールに対する補足的応答である可能性がある。この点で、アルコールは、発達途上の動物および成体動物の両方において、親アポトーシス効果を有することが証明される(Ikonomidou他、2000;Wu and Cederbaum 2000)。
【0075】
アルコール依存者はしばしば比較的若齢で死亡するため、培検組織を使用する1つの問題は、年齢の対応付けである。症例群1では、アルコール依存者は対照より平均で10歳若く(有意差なし、t−検定)、症例群2では、対照より16歳若い(p=0.03、t−検定)。したがって、対照とアルコール依存者の間に見られる遺伝子発現の差に年齢が寄与しうるかどうかを考慮することが重要である。年齢における脳遺伝子発現の変化に対する第1のアレイ調査は、(1.4倍より大きい基準および6347遺伝子アレイを使用して)70個の遺伝子の発現が増加し、86個の遺伝子の発現が低下していることを証明している(Lee他、2000および捕捉資料)。生後5カ月と30カ月のマウスの新皮質の比較では、アルコール中毒と対照の間に見いだされたほとんどの遺伝子において変化が検出されない。例えば、この調査で顕著であるミエリン遺伝子の一連の変化は、年齢調査には現れていない。しかし、アポリポタンパク質D、アルファシヌクレイン、マクロファージコロニー刺激因子1、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質およびGFAPの発現は、両調査において変化し、変化の方向は、年齢差がアルコール依存者に見られる遺伝子発現に寄与しうるものである。アルコール依存症と年齢の遺伝子発現の変化の重複が限られていることは、被験者の年齢の差が観察された変化の多くに寄与するものでなかったことを示唆している。
【0076】
遺伝子発現変化、予後および診断の医学的情報
本発明は、患者の血液におけるアルコール依存症に関連する遺伝子の存否、または発現における変化を識別することが可能であることを実証するものである。本発明は、血液を検出用核酸の源として使用することによって、患者または潜在的な患者の検出を著しく簡素化し、広範囲な使用に適するものとする。1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸が、分子生物学の技術分野の当業者が理解する条件で基体の表面に結合する。
【0077】
図2は、PAX遺伝子およびアンビオン・システムを一日間使用して、アルコール依存症に関連する遺伝子に対する対象の血液中で検出可能な発現のレベルを評価した後の血液tRNAからの結果を示すグラフである。あるいは、他のプローブを使用して遺伝子発現を比較することもできる。脳組織から識別される遺伝子に対応する血液中で識別される支配的な遺伝子に基づいて、血液試料を採取し、該試料から抽出された核酸を本発明のアルコール特有アレイに対して検査することにより、アルコール依存症に関連する遺伝子の存否または発現における変化を検出することができる。適切な対照をアレイに含める。本発明を用いれば、単一の支配的な遺伝子を使用してもアルコール依存症に対する検査を行うことができるが、複数の遺伝子を使用して結果の精度を高めることができる。単一の遺伝子分析は、予備的なスクリーニング、例えば特定の資源を患者に集中させて彼らの治療を支援することができるように入院患者をあらかじめスクリーニングする法執行機関による使用に有益である。このように、危険性のない患者に資源を費やすことなく、サイクルの早い段階で患者を識別し、これらの患者は必要とする治療を受ける。
【0078】
図3は、1日目および3日目における異なる対象の遺伝子のレベルを比較したグラフである。図4および図5は、基準グラフ、および基準と、個々の血液試料から検出されたヒト血液試料の遺伝子発現とを比較したグラフである。図2から図5を得るために使用した基礎データは次の通りである。基礎データは、血液中で検出された同じ遺伝子のいくつかは、本明細書で既に概略説明した、ヒトの脳に対するこれまでの研究において識別されていることを実証しているため、アルコール依存者の脳の試料から識別された遺伝子は相関し、血液中で検出可能である。
【0079】
血液試料から検出する「アルコール依存症特異的核酸」の例は、以下の遺伝子、すなわちアポリポタンパク質(各種);アクアポリン(各種);CD44抗原(ホーミング機能およびインディアン血液型体系);ドーパミン受容体D2;ヒスタミン受容体H1;ホモ・サピエンス・ベータ−1アドレナリン受容体mRNA、3’UTR;ミエリン関連糖タンパク質;ミエリン塩基性タンパク質;ミエリン遺伝子発現因子2;ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質;ミエリンタンパク質・ゼロ様1;ミエリン転写因子1様;ミエリン関連乏突起膠細胞塩基性タンパク質;神経ペントラキシンI;神経ペントラキシンIi;神経ペントラキシン受容体;神経カリウムチャネル・アルファサブユニット;神経タンパク質;神経タンパク質17.3;神経Shc;神経Shcアダプター同族体;神経特異的転写因子DAT1;ニューロナチン;神経特異的タンパク質;神経ペントラキシン受容体;神経ペプチドY受容体Y1;ニューロテンシン受容体2;神経向性チロシンキナーゼ、受容体、2型;末梢ミエリンタンパク質2;末梢ミエリンタンパク質22;ホスホリパーゼA2受容体;プロテオリピドタンパク質2;ナトリウムチャネル、電圧ゲート型、VIII型、アルファポリペプチド;ナトリウムチャネル、電圧ゲート型、II型、ベータポリペプチド;シンタキシン(多様);多様な伝達物質に少なくとも部分を含む。
【0080】
本発明は、アルコール依存症および関連疾病状態の検出、監視および診断を行うための方法を提供できる。疾病の進行を監視しない不十分な測定値に加えて、アルコール依存症の発症および範囲を判断するための標準化された方法の欠如により、既存の検出、監視および診断方法に代わる方法を模索する必要性が生じていた。本発明は、広範囲であるが選択的なミエリン遺伝子発現の再プログラミングを示唆するものでもある。多数のミエリン遺伝子の協調的調節は、乏突起膠細胞の機能または生存に対するエタノールの毒性作用の可能性を示唆する。該毒性作用は、アルコール依存者が白質欠如および脱髄疾患にかかる可能性に対する分子的基礎を提供することができる。加えて、シヌクレインおよび細胞内周期遺伝子発現の如き新奇の神経遺伝子の予期せぬ変化は、アルコール依存症の特徴である濃厚増および機能の変化を理解し、おそらくは阻止または回復させるための新たな機会を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明のアルコール依存症またはアルコール中毒の検出および監視装置に含まれるステップのフローチャートである。
【図2】アルコール依存症関連遺伝子について、対象からの血液において検出可能な発現のレベルを評価するために、PAX遺伝子およびアンビオン対照を一日間使用した後の血液の全RNAからの結果を示すグラフである。
【図3】1日目および3日目における異なる対象からの遺伝子のレベルを比較するグラフである。
【図4】遺伝子アレイ上の発現の制御レベルを説明する基準グラフである。
【図5】基準と、個々の血液試料から検出されたヒト血液試料遺伝子発現とを比較するグラフである。
【0001】
本発明は、広くは、アルコール依存症および関連疾病状態の検出、監視および診断を行うための方法および装置に関し、より詳細には、マイクロアレイを使用して、対象、好ましくはヒト患者におけるアルコール依存症および関連疾病状態の進行を分析するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国政府は、DOD認可番号:517−9−8444に基づいて本発明の一定の権利を所有することができる。
【0003】
本発明の範囲を制限することなく、例として、核酸マイクロアレイを使用して、ヒトにおけるアルコール依存症およびその進行の検出、診断または監視を行う方法に関連してその背景を説明する。
【0004】
これまで、この分野では、アルコール依存症またはアルコール中毒および関連挙動の診断および/または検出は、実質的に、インタビュー、過去の記録の考察または臨床な印象に依存してきた(Allen,JP、Columbus M、and Fertig J.1995.アルコール依存症治療における評価:概要.NIAAA治療ハンドブックシリーズ4、アルコール問題の評価:臨床医および研究者のための手引き(Assessment in Alcoholism Treatment:An Overview.In:NIAAA Treatment Handbook Series 4、Assessing Alcohol Problems:A Guide for Clinicians and Researchers.)NIH Publication No.95−3745.pp.1−9)。一般に、病歴と臨床的兆候の項目を組み合わせて診断指標を形成する。加えて、これらの項目と、指標の一部を形成する飲酒歴、CAGEアンケートおよび早期指示アンケートとを比較することができる。
【0005】
この方法に伴う1つの問題は、指標を得るのが困難なことである。例えば、指標は、1つのアンケートから得られたデータに基づくことは希で、その代わり、信頼性を示すためにいくつかのアンケートを行うことを必要とする。この方法は、最低限2つの異なる時点で、一般には少なくとも1週間おいてアンケートを行わなければならないことを意味し、診断を得る即時性を制限する。また、アンケートは冗長で、それらを評価する中心的、またはコンピュータ化された手段をもたない可能性がある。これは、冗長であるばかりでなく、複数の尺度を含むアルコール使用記録や中毒重症度指標などの測度に対しては特に不便である。加えて、多くの尺度を管理するための手順は簡単であるが、中毒重症度指標、包括的飲酒者プロフィル、アルコール経時追跡手順、およびいくつかの診断尺度は、それらを正しく使用できるまで長期間の訓練を必要とする。それらの尺度のうち、性別または民族に基づく可変的な評価を提供するものはほとんどなく、それらの普遍的な適用可能性を制限する。
【0006】
アルコール依存症および飲酒を初期段階で検出するために、判別評価の診断値、および臨床検査の組合せがしばしば用いられる。しかし、判別評価は、低い感受性および特異性しか与えず、しばしばアルコールの摂取に限定される。例えば、ガンマ−グルタミルトランスファーゼ、アセトアルデヒド誘導ホモグロビンフラクションおよび平均血球体積は、それぞれ72%および73%の低い感受性および特異性を示し、検査は重度の飲酒者に対して最適に実施される(Sillanaukee P.1992.アルコール中毒の検出における判別評価の診断値(The diagnostic value of a discriminant score in the detection of alcohol abuse)Arch Pathol Lab Med 116:924−9)。他の検査の組合せを使用すると、より良好な結果を提供することができるが、すべての年齢、性別または民族群にわたって機能するものはない。これにより、単に1つの標識を用いても、あるいはそれらの組合せを用いたとしても、アルコール依存症や重度の飲酒のような前段階のアルコール中毒を最適に検出できないことが確認される。
【0007】
残念なことに、また一部に上記の制限により、アルコール依存症またはアルコール中毒およびその関連挙動を診断または検出するためのすぐに利用可能で、標準化された方法が存在しない。その結果、医師は、しばしばアルコール関連疾病を誤診または過小診断する。加えて、標準化された診断法が欠如するときは、医師は、患者のみから得られた情報に頼ることができないため、疾病の進行を迅速かつ日常的に監視することは、不可能でなくても、困難である。アルコール中毒者が、彼らの真のアルコール消費量を開示することは希で、しばしば彼らのアルコール使用と彼らの他の症状および問題とのいかなる関連性も否定し、最小限にとどめる。
【0008】
先述の説明によって証明されたように、アルコール依存症またはアルコール中毒の検出、診断および監視を行うための簡単で確実な方法が真に必要とされている。アルコール依存症または関連疾病の早期診断は、アルコール依存症またはその関連疾病からの想定される回復がより好ましい段階での建設的な介入治療をも可能にするであろう。さらに、アルコール依存症の病理学的影響を含めて、アルコール依存症および関連疾病状態の進行を正確かつ迅速に監視する能力は、医師が患者を効果的に早期に治療することを可能にするとともに、研究者が、アルコール依存症および関連疾病に対する様々な治療法の効果をより適切に評価することを可能にする。
【0009】
したがって、アルコール中毒および関連疾病の進行の検出および監視を行う確実で、再現性があり、経済的な方法が必要とされる。アルコール消費の正確かつ客観的な生理学的測定値を提供する体系的な方法および装置を開発することは、医師が意志決定過程において、またこれらの患者における罹患および死亡転帰を改善するために必要とされる手段である。該方法および装置は、治療目標への患者の遵守状況を監視するための偏りがなく、信用できるツールを医療従事者および研究者に提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、アルコール依存症またはアルコール中毒あるいは関連疾病をかかえるヒトに対する検出、診断または監視は、簡単で、迅速で、標準化された方法および装置の欠如によって制約されている。現行の方法、特にアンケートおよび判別評価は、著しいコストおよび時間を必要とし、性別、年齢および/または民族の偏りが示されると不確実であるとしばしば見なされる。加えて、アルコール中毒者は、真のアルコール消費量を開示することは希で、しばしば彼らの症状または問題を否定し、できるだけ小さいものとしようとするため、そのヒトの直接的な検査を含むすべての技術に固有の不確実性が加わる。加えて、アルコール消費に対する現行の測定値は、直接的な消費を測定するにすぎず、中毒またはその進行の度合について何も示さない。
【0011】
アルコール中毒の検出および測定の分野において、現行のシステムの大きな問題は、アルコール消費を扱ういくつかの技術があるが、それぞれが独立的にアルコール摂取に反応することである。加えて、各技術は特異的で、しばしば感受性、特異性および予想値を制限する。これらの従来的な技術は、アルコール以外に、年齢、性別および様々な物質ならびに非アルコール関連疾病にしばしば影響される。例えば、アルコール消費の早期検出評価、すなわち35以下の血液化学および血液学的検体の組合せに対する分析から導かれる直線的な判別関数は、40歳以上のヒトにおける重度飲酒を識別する場合にのみ最良の機能を果たす(Harasymiw JW、Bean P.2001.アルコール消費評価の早期検出を用いることによる重度飲酒者の識別(Identification of heavy drinkers by using the early detection of alcohol consumption score)Alcohol Clin Exp Res 25:228−35)。より重要なことには、アルコール消費を測定する現行の技術は、直接的な消費を測定するにすぎず、中毒またはその進行の度合について何も示さない。また、それらは、アルコール消費に対する全体的な時間軸を扱わない。生物学的標識に対する検査は、特定の検出時間枠を必要とする。例えば、1つの標識であるエチルグルクロニドは、高い感受性および特異性を有すると考えられるが、アルコールが身体から消失した後の80時間以内の短い期間にわたってしか検出できない(Wurst FM、Kempter C、Metzger J、Seidl S、Alt A.2000.エチルグルクロニド:臨床および法医学的かかわりを有する最近のアルコール消費の標識(Ethyl glucuronide:a marker of recent alcohol consumption with clinical and forensic implications)Alcohol 20:111−6)。
【0012】
現行のアルコール依存症の検出および管理は、一部には、主に主観的情報または直接的なアルコール摂取に頼るため、その幅広い用法を制限する原理に基づいている。本明細書に開示されるように、現行の検出および管理技術は、現行の技術そのものの使用に固有の同一の非効率性によって阻害されていることが認識される。本発明は、現行の技術におけるコスト効率性、精度および確実性が、アルコール依存症およびその関連疾病の検出に有効ではないという認識に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
より具体的には、本発明は、アルコール依存症および関連疾病の検出、診断および監視を行うための装置であって、基質を支えるための固体支持体と、固体支持体に結合した1つまたは複数のアルコール依存症固有核酸の集合体としての基質とを備えた装置でありうる。本発明に使用する基質は、ゲノムDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、それらの一本鎖もしくは二本鎖、または任意の化学的修飾体の如き異なる決定可能配列を有するペプチド核酸のヒト核酸標的要素である。代替的な実施形態において、ヒト核酸標的要素は、例えば、アルコール依存者またはアルコール中毒者が発現する、細胞信号伝達、免疫反応および/または細胞間相互作用に対する構造遺伝子、代謝遺伝子、転写遺伝子または他の遺伝子に特異性な配列を有するアルコール依存症特異的遺伝子でありうる。基質を支える固体支持体は、共有結合または非共有結合により分子を結合させることができる任意の微細加工した固表面である。分子が結合できる微細加工した固表面を使用する利点は、アミノ、カルボキシル、チオールまたはヒドロキシル分子基、すなわちヒト核酸を容易に結合させる分子基のその固表面への導入を促進することである。
【0014】
固体支持体によって支えられる基質は、アルコール依存症もしくはアルコール中毒またはアルコール関連疾病と考えられるヒトから採取した試料、例えば体液に接触することができる。代替的な実施形態において、試料は、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊水、腺液、脳脊髄液、細胞、または任意の他の体液、細胞または体組織調製物でありうる。試料を随意に細分して、プローブを作製することができる。同様に、光源またはコンデンサを備えた装置で検出できる標識を試料またはプローブに随意に標識付けすることができる。例えば、蛍光標識で標識付けしたプローブを光源、例えば傾向顕微鏡で観察することができる。装置の一部としてプログラム化されたコンピュータを使用して、試料からの情報、例えば各標的要素における検出可能な変化の位置および大きさを記録することができる。試料と対照の比率情報を記録することもできる。対照とは、アルコール依存症またはアルコール中毒でないヒトから試料を採取し、アルコール依存症の試料と同様に処理できることを意味する。試料および対照からの記録情報を例えばコンピュータデータベースに生情報および/または比率情報として記録し、プログラム化されたコンピュータから、生情報および/または比率情報として表示することができる。
【0015】
本発明は、アルコール依存症および関連疾病状態の進行を分析するための方法であって、アルコール依存症もしくはアルコール中毒またはアルコール関連疾病と考えられるヒトから得られた試料をマイクロアレイに接触させて、結合を可能にするステップと、結合に関する情報を収集するステップとを含む方法でありうる。本発明の方法は、試料と対照の間の検出可能な変化を識別するステップであって、検出可能な変化をプログラム化されたコンピュータで記録し、処理し、表示し、かつ記憶できるステップとをさらに含むことができる。本発明の方法を経時的に実施される一連の分析として用いることによって、個人の疾病の進行を観察することができる。この方法を用いて、アルコール依存者またはアルコール中毒者が発現する、細胞信号伝達、免疫反応および/または細胞間相互作用に対する構造遺伝子、代謝遺伝子、転写遺伝子または他の遺伝子に特異性な配列を担持するマイクロアレイにより、単一点または経時的にアルコール特有遺伝子の発現を分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の特徴および利点をより深く理解するために、添付の図面とともに、本発明の詳細な説明を次に参照する。
【0017】
本発明の様々な実施形態の構成および使用を以下に詳細に述べるが、本発明は、広範囲な具体的脈絡において具体化できる多くの応用可能な発明の概念を提供することを理解すべきである。本明細書に述べられる具体的な実施形態は、本発明を構成し、使用する具体的な様式を単に例示したもので、本発明の範囲を限定するものではない。説明を参照すれば、例示的な実施形態、ならびに本発明の他の実施形態の様々な改造および組合せを当業者なら理解するであろう。したがって、添付の請求項は、あらゆる当該改造または実施形態を包括することを意図している。
【0018】
本発明は、アルコール依存症および関連疾病状態の検出、診断および/または監視を行うための装置および方法を含む。該装置は、基体と、基体に結合した1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸とを使用し、コンピュータによって採取し、記録することができる情報を提供するあらかじめ選択された結合条件で、基体を、アルコール依存症またはアルコール中毒あるいはアルコール関連疾病状態のヒトから採取された試料に接触させる。該情報と、アルコール依存症、アルコール中毒またはアルコール関連疾病をもたないヒトから得られた試料からの対照情報とを比較することができ、そのヒトに関する遺伝子発現情報、ならびに診断および/または予後の医学的情報を生成する。該方法は、アルコール依存症またはアルコール中毒であると見なされるヒト、あるいはアルコール関連疾病を有すると見なされるヒトから得られた試料と基体とを接触させて、結合を可能にするステップと、結合に関する情報を収集するステップとを含む。該情報をコンピュータに記録し、対照情報と比較し、そのヒトに関する遺伝子発現情報ならびに診断および/または予後の医学的情報を生成する。
【0019】
以下は、本願に適用される用語である。アルコール依存症とは、アルコールの連続的、過剰または慢性的な使用であり、アルコール依存症、アルコール中毒、および任意のアルコール関連疾病を含む。基体とは、共有結合または非共有結合により分子を結合させることができる任意の微細加工した固表面である。これは、ラングミュア・ブロジェット膜、機能ガラス、ゲルマニウム、シリコン、PTFE、ポリスチレン、砒化ガリウム、金および銀を含むが、それらに限定されない。その表面に導入されるアミノ、カルボキシル、チオールまたはヒドロキシルなどの官能基を有することが可能な当該技術分野において知られている任意の他の物質も企図される。これは、平面を含み、球面も含む。
【0020】
本明細書に用いられるように、「1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸」などは、DNA、RNA、それらの一本鎖または二本鎖および化学的修飾体、あるいはタンパク質核酸である。改質物としては、追加的な電荷、極性、水素結合、静電相互作用および可動性を核酸基体、または核酸全体に導入する他の化学基を提供する改質物が挙げられるが、それらに限定されない。本明細書に用いられるように、「あらかじめ選択された結合条件」とは、1つまたは複数のアルコール特異的核酸、その生成物、または当該遺伝子の発現の変化の生理的結果の検出に対する信号体雑音比を最大にする条件である。以下に併用して記載される結合条件の例としては、発現マイクロアレイの技術分野の当業者なら知っているであろうDNAマイクロアレイの使用が挙げられる。
【0021】
「核酸標的要素」は、基体の異なる箇所に位置する少なくとも1つのペプチドを含む決定可能配列である。決定可能配列は、DNA、RNA、それらの一本鎖または二本鎖および任意の化学的修飾体を含むことができる。改質物としては、追加的な電荷、極性、水素結合、静電相互作用および可動性を個々の核酸基体、または核酸全体に導入する他の化学基を提供する改質物が挙げられるが、それらに限定されない。決定可能配列は、プロテアーゼ、受容体、チャネル、シプナスタンパク質、細胞間もしくは細胞と基体の相互作用、免疫もしくは炎症反応、細胞信号伝達、分子シャペロンもしくは他の担体タンパク質、分子合成、細胞周期調節、細胞成長、細胞増殖または細胞死をコードする遺伝子を含む構造遺伝子、代謝遺伝子、転写遺伝子または他の遺伝子の部分でありうる。
【0022】
「試料」は、ヒトから得られた巨大分子、例えば源からの組織または細胞から抽出された核酸の任意の混合物である。試料としては、全血液、全血液の部分、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊水、腺液および脳脊髄液が挙げられるが、それらに限定されない。先述のすべての試料から分離される単離核酸もこれに含まれる。「試料」は、排泄物、細胞、組織および生検試料の如き均質化された固体物質を含有する溶液または混合物をも含む。本明細書の試料は、診断、予後および定期的な監視を含む任意の時点で得られた1つまたは複数の試料を含む。
【0023】
アルコール依存症は、西洋諸国において大きな健康問題であるが、疾病に関連する遺伝子変化、あるいはこれらの変化が、アルコール依存症またはアルコール中毒の検出、診断または監視にどのように変換されるかに関する分子的情報はほとんどない。アルコールは身体のあらゆる器官に影響し、主たる標的は、アルコールが神経伝達に影響して中毒症状を生じさせる中枢神経系である。長期間のアルコール使用は、中毒、依存または耐性をもたらす可能性があり、耐性および禁断の現象には、薬物依存のメカニズムにかかわる仮説が形づくられる。長期間の薬物乱用は、細胞レベルで適応応答を開始させる可能性が高い。すなわち、薬物が除去されると、神経適応がアンマスキングされ、禁断症候群の症状に至る。実質的な証拠は、少なくとも一部に、遺伝子発現の変化がこの適応過程を仲介することを暗示している。
【0024】
持続的なアルコール接触は、神経伝達物質受容体、ホルモンおよびその受容体、信号伝達分子、分子シャペロン、転写因子およびサイトカインをコードする遺伝子を含む選択遺伝子の発現の変化をもたらす(Miles、1995)。動物モデルを使用し、または培養細胞をエタノールに接触させることによってアルコール依存症に関する多くの研究が実施されているが、ヒトの慢性アルコール依存症は、特定のミトコンドリアおよびGABAA受容体サブユニット遺伝子の発現に変化をもたらすことが最近報告された(Fan L、van der Brug M、Chen W−B、Dodd PR、Matsumoto I、Niwa S、Wilce PA.1999.ディファレンシャル・ディスプレイによって示されたヒトのアルコール脳におけるミトコンドリア遺伝子の発現の増加(Increased expression of a mitochondrial gene in human alcoholic brain revealed by differential display)。Alcohol Clin Exp Res 23:408−413;Lewohl JM、Crane DI、Dodd PR.1997.ヒトのアルコール脳におけるGABAA受容体のアルファ1、アルファ2およびアルファ3イソ型の発現(Expression of alpha 1,alpha 2 and alpha 3 isoforms of the GABAA receptor in human alcoholic brain)。Brain Res 751:102−12)。
【0025】
アルコールはアルコール応答遺伝子に直接影響するか、または多くのシステムを含む間接的なメカニズムを介して作用するかは知られていない。例えば、転写因子活性化または第2の伝達系の変化は、遺伝子発現系列を開始させることができる。アルコール応答転写因子の活性化または抑制は、対応する制御要素を有する遺伝子の発現に変化をもたらす(Miles、1995)。これらの可能性の各々は、遺伝子発現の特異的なパターンをもたらすことになる。当該パターンは、いくつかのmRNAの従来の測定によって検出するのが困難であるが、マイクロアレイ分析に十分に適する(Iyer他、1999)。マイクロアレイ分析は、遺伝子発現パターンのゲノム全体にわたる偏りのない調査を提供する。これは、アルコールの如き潜在的に多面的な作用を有する薬物を調査する上で特に重要になる可能性がある。また、マイクロアレイ分析を用いて、タンパク質、神経伝達物質、サイトカイン、またはアルコールおよびアルコール乱用によって生じる他の分子を調べることができる。
【0026】
アルコール依存症および関連疾病状態の検出、診断または監視を行うための装置
本発明は、アルコール特有遺伝子発現を分析することで、現在存在し、アルコール依存症またはその潜在的に病理的な経時的進行の迅速かつ特異的な分析を制約する制限を克服するための装置を提供する。
【0027】
マイクロアレイ装置を使用して、アルコール依存症またはアルコール中毒であると見なされるヒト、あるいはアルコール関連疾病をかかえるヒトに関する遺伝子発現情報、ならびに診断および/または予後の医学的情報を生成することができる。本発明は、患者の血液におけるアルコール依存症に関連する遺伝子の存否、またはその発現の改変を特定することが可能であることを実証するものである。本発明は、血液を検出用の核酸源として使用することにより、患者または潜在的な患者の検出を著しく簡素化し、広範囲な使用により適するものにする。分子生物学の技術分野の当業者が理解する条件で、1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸が基体の表面に結合する。
【0028】
アルコール特有核酸は、ゲノムDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、それらの一本鎖または二本鎖、ならびに追加的な電荷、極性、水素結合、静電相互作用、および可動性を個々の核酸基体、または核酸全体に導入する化学基を含むが、それらに限定されない任意のそれらの化学的修飾体であってもよい。また、アルコール依存症特異的核酸は、それぞれが異なる決定可能配列を有する1つまたは複数のペプチド核酸のヒト核酸標的要素を含む。各ペプチドは、1平方センチメートル当たり100から10000個の標的要素の密度で、基体の異なる箇所に位置する。基体に結合したアルコール依存症特異的核酸は、例えば、およそ5600の全長ヒト遺伝子を識別する標的要素を含む、Affymetrix社のHuGeneFLチップの如き市販のマイクロアレイに類似したものであってもよい。
【0029】
本発明の重要な知見は、ヒト核酸標的要素は、アルコール依存者もしくはアルコール中毒者、またはアルコール関連疾病をかかえるヒトが特異的に発現する、細胞信号伝達、免疫反応または細胞間相互作用に対する構造遺伝子、代謝遺伝子、転写遺伝子または他の遺伝子に特異性な配列を有するアルコール依存症特異的遺伝子の部分でありうることである。本明細書に用いられるように、「アルコール依存症特異的核酸」という用語は、核酸マイクロアレイによって検出可能な遺伝子発現の統計的に重要な変化を示す遺伝子を包括する。発現の変化は、統計的に重要な遺伝子発現の増加または減少、例えば増加または減少(アップレギュレートまたはダウンレギュレーション)、遺伝子発現の完全な欠如、またはこれまで観察されなかった遺伝子の発現の存在であってもよい。発現の変化は、核酸の変化、タンパク質の変化、またはタンパク質の発現の変化の効果、例えば酵素活性または酵素活性の効果の変化(例えば、リン酸エステル化、タンパク質への翻訳後修飾、炭水化物、脂質などへの変化)であってもよい。
【0030】
本発明を用いて検出される「アルコール依存症特異的核酸」の例としては、以下の遺伝子、すなわちM6神経糖タンパク質、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリン関連乏突起膠細胞塩基性タンパク質、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質、ミエリンタンパク質Po、乏突起膠細胞ミエリン糖タンパク質、PMP2、PMP22、MAL遺伝子、ApoD、ApoE、炭酸脱水酵素II、2’,3’−環状ヌクレオチド 3’−ホスホジエステラーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、トランスアルドラーゼ、UDP−ガラクトースセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ、MyT1、プラルファ(Puralpha)、Edg−2、神経膠線維酸性タンパク質、ケラチン6B、ベータIIIスペクトリン、プロテアーゼ、セリン、9(ニューロシン)、プロプロテインコンバターゼサブチリシン/ケキシン4型、カルパイン、大ポリペプチドL3、プロテアーゼ、セリン、11(IGF結合)、膜貫通プロテアーゼ、セリン2、エンドセリン受容体タイプB様(GPCR37)、アクアポリン1(チャネル形成細胞膜内在タンパク質)、内向き整流性カリウムチャネル、サブファミリーJ、メンバー10、グルタメート受容体、AMPA1、N−エチルマレイミド感受性因子、EGF−含有フィブリン類似細胞外マトリックスタンパク質1、CD44抗原、カドヘリン18、テトラスパンNET−6、インターフェロン、ガンマ誘導性タンパク質16、主要組織適合性複合体、クラスII、DRベータ1、小誘導性サイトカインサブファミリーC、メンバー1、エポキシドヒドロラーゼ1、ミクロソーム(生体異物)、プロリンデヒドロゲナーゼ(プロリンオキシダーゼ)、グルタチオンS−トランスフェラーゼM5、ユビキノール−シトクロムcレダクターゼコアタンパク質II、セリン/スレオニンキナーゼ、TU3Aタンパク質(優性ラパマイシン耐性1、DRR1としても知られる)、分泌収縮関連(secreted frizzled−related)タンパク質1、GTP結合タンパク質、ホスホリパーゼA2(14−3−3タンパク質)、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ、イソ型Ib、アルファサブユニット、Gタンパク質シグナリング制御因子4(RGS−4)、シヌクレイン、アルファ、リボフォリンII、130kD Golgi局在型リンタンパク質、自己免疫制御因子(自己免疫多腺性内分泌障害カンジダ症外胚葉性異栄養症)、SPY−ボックス9転写因子、スプライセオソーム関連タンパク質(U2snRNP)、レチノイドX受容体、ガンマ、核転写因子、Xボックス結合1、TATAボックス結合タンパク質関連因子、RNAポリメラーゼII、F、基本転写因子3、マクロファージ刺激1(肝細胞成長因子様)、LIM領域限定2(ロンボチン様1)、骨形態形成タンパク質7(骨形成タンパク質1)、レクイエム、アポトーシス反応Znフィンガー遺伝子、ジスコイジン領域受容体ファミリー、メンバー1、CDC様キナーゼ2、CDC様キナーゼ1、腫瘍タンパク質p53結合タンパク質、2、ヒト成長/分化因子1、RACH1(補体ラッド1−1細胞周期チェックポイント突然変異体)、RAN(メンバーRASオンコ遺伝子ファミリー)、nel様2、サルコリピン、KIAA0043遺伝子生産物、EST、システインおよび高グリシンタンパク質1、骨肉腫で増幅する保存遺伝子、KIAA0027遺伝子生産物、ホモ・サピエンス・クローン23916、KIAA0202遺伝子生産物、セレンタンパク質P、血漿、1、1,25−ジヒドロキシビタミンD−3によってアップレギュレートされた染色体16BACクローンCIT987SK−A−69G12、タイトジャンクションタンパク質2、HREV107様タンパク質、クローン23555mRNA配列、クローン25030mRNA配列、KIAA0237遺伝子生産物、KIAA0725遺伝子生産物、KIAA0293遺伝子生産物、神経芽細胞腫(神経組織)タンパク質、レチキュロン1、cAMP調節グアニンヌクレオチド交換因子IIにわずかに類似したEST、遺伝子pp2タンパク質にわずかに類似したEST、またはKIAA0195に極めて類似したEST、ユビキチンC、微小管関連タンパク質4、カルシウム依存性プロテアーゼ(小サブユニット、プロテアソームサブユニットz、ガンマ−アミノブチル酸(GABA)A受容体ベータ2サブユニット、グルタメート/アスパルテート輸送体II、リソソーム膜糖タンパク質−1(LAMP1)、心臓ギャップ結合タンパク質、オートタキシン−t(atx−t)、Igスーパーファミリー細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質(CTLA−4)、主要組織適合性複合体(MHC)のHLA−DRアルファ重鎖aクラスII抗原、ヒトアシル−CoAチオエステルヒドロラーゼ、シトクロムcオキシダーゼサブユニットVic、液胞H+ATPase Eサブユニット、ATPシンターゼ、リゾチームmRNA、プロスタグランジンD2シンターゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼの肝臓mRNA、SURF−1、カルモジュリン、カルシニュリンA2、GDI解離阻害剤RhoGDIガンマ、14.3.3タンパク質(タンパク質キナーゼ調節因子)、hPTPA、タンパク質キナーゼCゼータ、小GTP結合タンパク質、S10、タンパク質チロシンホスファターゼ、睾丸特異的cAMP依存タンパク質キナーゼ触媒サブユニット(Cベータ・イソ型)、ADPリボシル化因子3、90kD熱ショックタンパク質遺伝子、熱ショックタンパク質HSPA2遺伝子、ミトコンドリアマトリックスタンパク質P1(核コード)、ヒストンH2A.2、RNAポリメラーゼII伸長因子SIII p15サブユニット、酸性リボソームリンタンパク質P0、グリシル−tRNAシンセターゼ、リボソームタンパク質L27a、色素上皮由来因子、TRPM−2タンパク質、アンギオテンシノゲン、トランスフェリン、メラノーマ、遍在性突然変異タンパク質(MUM−1)、KIAA0080遺伝子生産物、KIAA0084遺伝子産物および/またはKIAA0174遺伝子産物、あるいはそれらの組合せの1つまたは複数の遺伝子の少なくとも一部が挙げられるが、それらに限定されない。
【0031】
分子生物学の技術分野の当業者が理解するように、基体に結合したアルコール依存症特異的核酸と試料は選択的結合条件で接触する。選択的結合条件は、最大の信号体雑音比を可能にする条件で、緩衝条件(pH、塩濃度、洗剤など)および温度などを変更することによって達成できる。例えば、基体に結合したアルコール特有核酸および試料を、試料のアルコール依存症特異的核酸への結合を促進させる試薬または化学物質に接触させ、次いで未結合試料の除去を促進させる追加的な試薬または化学物質で洗浄することによって、試料、アルコール依存症特異的核酸または基体の分子構造を変化させずに、結合試料のみを残すことができる。あるいは、1つまたは複数の試料を、基体に結合したアルコール依存症特異的核酸に接触させ、1つまたは複数の試料に標識付けすることができる。例えば、標識は、露光すると信号を発する蛍光または非蛍光分子でありうる。目的とする試料は、アルコール依存症もしくはアルコール中毒またはアルコール関連疾病と考えられるヒトとしてここに定義されるアルコール依存者から採取される試料である。そのようなヒトから採取された試料としては、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊水、腺液および脳脊髄液、または身体組織調製物の如き高分子の任意の混合物が挙げられることができるが、それらに限定されない。異なる起源または類似の起源をもつ1つまたは複数の試料をヒトから採取して、すぐにまたは後に使用することができる。
【0032】
基体に結合したアルコール依存症特異的核酸に試料を結合させることによって、信号強度の変化としてコンピュータにより収集できる様々な情報が提供される。本発明の1つの利点は、光学顕微鏡法、X線撮影法、化学発光法、蛍光顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、干渉分光法、表面プラズマ共鳴、質量分析法、原子間力顕微鏡法および走査トンネル顕微鏡法を含む、光源、コンデンサ、イオンまたはプラズマ・ビームで結合を検出できることである。
【0033】
次いで、コンピュータを使用して、情報を記録し、情報をデータベースに記憶し、かつ/または情報を表示することができる。加えて、収集した情報は、各ヒト核酸標的要素における信号強度の検出可能な変化の位置および/または大きさを示すことができる。検出可能な変化は、例えば、各標的要素における蛍光や信号強度の変化、または導電性もしくは屈折率の如き物理的パラメータの変化であってもよい。また、試料情報と対照から収集した情報との情報率を求めることができ、ここで対照とは、アルコール依存症またはアルコール中毒であると見なされないヒト、あるいはアルコール関連疾病をかかえていると見なされないヒトから採取されるものである。対照情報は、アルコール依存者から収集される情報と平行して収集される。とりわけ、市販のコンピュータを使用して、試料および対照情報を収集することができる。本発明の利点は、収集される情報が、患者に関する遺伝子発現情報、ならびに診断および/または予後の医学的情報を生成できることである。
【0034】
アルコール依存症および関連疾病状態の検出、診断または監視を行うための方法
本発明は、アルコール依存症またはアルコール中毒の検出、監視および/または診断を行うための方法に、商業的または非商業的に入手可能なマイクロアレイを使用できる。本発明は、アルコール特有遺伝子発現、またはその潜在的に病理的な経時的進行を分析するための方法であってもよい。
【0035】
図1のフローチャートに示されるように、ヒトに関する診断および予後の医学的情報を生成することができる方法にステップが含まれる。ステップ10において、アルコール依存症もしくはアルコール中毒またはアルコール関連疾病と考えられるヒトから抽出した試料からプローブを作製する。ステップ12において、基体と、アルコール依存症もしくはアルコール中毒またはアルコール関連疾病と考えられるヒトとしてここで定義されるアルコール依存者から採取された試料とを接触させる。アルコール依存者から採取される試料としては、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊水、腺液および脳脊髄液、細胞、もしくは他の任意の体液、細胞または身体組織調製物の如き高分子の任意の混合物が挙げられることができるが、それらに限定されない。異なる起源または類似の起源をもつ1つまたは複数の試料をそのようなヒトから採取して、すぐにまたは後に使用することができる。この方法の1つの利点は、分子生物学の技術分野の当業者が理解するように、露光すると信号を発する蛍光または非蛍光分子で1つまたは複数の試料を標識付けることができることである。あるいは、試料は、標識付けされずに、その検出のための蛍光または非蛍光光源以外の源、例えば導電性または屈折率の如き物理的パラメータを記録する源を必要とすることもできる。
【0036】
基体は、表面に導入されたアミノ、カルボキシル、チオールもしくはヒドロキシル官能基を含むラングミュア・ボジェット膜、ガラス、機能ガラス、ゲルマニウム、シリコン、PTFE、ポリスチレン、砒化ガリウム、金、銀、または任意の材料の如き、分子が共有結合または非共有結合によって結合できる任意の微細加工した固表面でありうる。この方法の他の利点は、基体の表面を平面または球面とすることができることである。例えば、基体は、商業的に製造されるマイクロアレイでありうる。あるいは、基体は、商業的に製造されるものでなくてもよい。基体には、1つまたは複数のヒト核酸標的要素を結合させることができる。ヒト核酸標的要素の基体への結合は、分子生物学の技術分野の当業者が理解する条件で生じる。
【0037】
ヒト核酸標的要素は、ゲノムDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、それらの一本鎖または二本鎖、ならびに追加的な電荷、極性、水素結合、静電相互作用および可動性を個々の核酸基体または核酸全体に導入する化学基を含むが、それらに限定されない任意の化学的修飾体であってもよい。また、ヒト核酸標的要素は、それぞれが異なる決定可能配列を有する1つまたは複数のペプチド核酸であってもよい。各ペプチドは、1平方センチメートル当たり100から10000個の標的要素の密度で、基体上の異なる箇所に位置する。本発明の重要な知見は、ヒト核酸標的要素は、プロテアーゼ、受容体、チャネル、シプナスタンパク質、細胞間もしくは細胞と基体の相互作用、免疫もしくは炎症反応、細胞信号伝達、分子シャペロンもしくは他の担体タンパク質、分子合成、細胞周期調節、細胞成長、細胞増殖または細胞死をコードする遺伝子を含む構造遺伝子、代謝遺伝子、転写遺伝子または他の遺伝子の部分でありうることである。
【0038】
ステップ12において、ゲノムDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、それらの一本鎖または二本鎖、ならびに追加的な電荷、極性、水素結合、静電相互作用および可動性を個々の核酸基体または核酸全体に導入する化学基を含むが、それらに限定されない任意の化学的修飾体のいずれかでありうるマイクロアレイ基体に試料を接触させる。ヒト核酸で構成される基体は、1平方センチメートルの表面積当たり100から10000個の標的要素の密度で少なくとも1つの核酸標的要素をさらに含む。この方法の1つの利点は、1つの基体を使用して、1つまたは複数の試料に接触させることができることである。あるいは、それぞれ同一または異なるヒト核酸標的要素から構成される1つまたは複数の基体を使用して、1つまたは複数の試料に接触させることができる。
【0039】
試料と基体を接触させた後に、ステップ14において試料を基体に接触させる。結合は、分子生物学の技術分野の当業者が理解する選択的結合条件で行われる。例えば、試料および基体を、試料の基体への結合を促進させる試薬または化学物質に接触させた後に、未結合試料の除去を促進させる追加的な試薬または化学物質で洗浄することによって、試料の分子構造および基体を変化させずに結合試料のみを残すことができる。
【0040】
ステップ16において、結合から、結合に関する情報をコンピュータによって収集できる。光学顕微鏡法、X線撮影法、化学発光法、蛍光顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、干渉分光法、表面プラズマ共鳴、質量分析法、原子間力顕微鏡法および走査トンネル顕微鏡法を含む光源、コンデンサ、イオンまたはプラズマ・ビームによって検出できる信号強度の変化として情報を収集することができる。コンピュータは、情報を記録し、情報をデータベースに記憶し、かつ/または情報を表示することができる。加えて、収集される情報は、各ヒト核酸標的要素における信号強度の検出可能な変化の位置および/または大きさを示すことができる。検出可能な変化は、例えば、各標的要素における蛍光や信号強度の変化、または導電性もしくは屈折率の如き物理的パラメータの変化であってもよい。また、試料情報と対照から収集した情報との情報率を求めることができ、ここで対照とは、アルコール依存症またはアルコール中毒であると見なされないヒト、あるいはアルコール関連疾病をかかえていると見なされないヒトから採取されるものである。対照情報は、アルコール依存者から収集される情報と平行して収集される。市販のコンピュータを使用して、試料および対照情報を収集することができる。ステップ18において、収集される情報は、患者に関する遺伝子発現情報、ならびに診断および/または予後の医学的情報を生成できる。
【0041】
アルコール依存症および関連疾病状態の検出、診断または監視の例
神経病理学の研究により、慢性的なアルコール中毒は脳、特に前頭葉の萎縮をもたらし、これは、脳の白質の体積の減少によるところが大きいということが示されている((Kril他、1997)に考察されている)。灰質の形態計測学的研究により、前頭葉皮質神経を含む脳の特定領域の神経が選択的に損傷を受けることが示されている(Kril JJ、Harper CG(1989)アルコール依存症の脳の4つの皮質領域からの神経単位のカウント(neuronal counts from four cortical regions of alcoholic brains.)Acta Neuropathol(Berl)79:200−4)。加えて、前頭葉皮質は、アルコールに誘発される損傷の影響を受けやすく、判断、意志決定および他の執行機能に重要性を有し(Rahman S、Sahakian BJ、Hodges JR、Rogers RD、Robbins TW(1999)軽度の前頭葉変異前頭側頭骨痴呆における特異的認識欠乏(Specific cognitive deficits in mild frontal variant frontotemporal dementia)Brain 122:1469−93;Godefroy O、Rousseaux M(1997)前頭葉前方または後方脳損傷患者の新奇の意志決定(Novel decision making in patients with prefrontal or posterior brain damage)Neurology 49:695−70)、この脳の領域をDNAマイクロアレイによる分析に使用する理由を説明する。
【0042】
cDNA(UniGEMV)およびオリゴヌクレオチド(HuGeneFL)アレイをともに使用する。多くの遺伝子が、これらのアレイ上に示され、また各アレイに特有の多くの遺伝子が存在する。したがって、両方の種類のアレイを使用することで、いくつかの遺伝子に対する相互検証、およびいずれか一方のアレイのみを使用する場合より多くの遺伝子の調査が可能になる
試料の選択
対照の症例とアルコール依存症の症例をアルコール摂取に基づいて分類する。国立保健医学研究会議(NHMRC)/世界保健機構の基準によれば、アルコール依存症は、一日の平均エタノール摂取量が80gを上回るものとして定義づけられ、患者の多くは、成人生活の大半(通常は30年を超える期間)にわたって一日当たり200グラム以上のエタノールを消費していた。すべての対照は、禁酒者、または一日当たりの平均エタノール消費量が20gを(通常は大きく)下回る社交的飲酒家である。可能な限り、症例を死亡年齢、死後遅延(post−mortem delay)、性別、死因、飲酒歴に対応させる。多種薬剤乱用の履歴を伴う症例は排除された。完全な倫理基準#97/36、および近親者からの通知同意書に基づいて、認定された病理学者が試料を採取することができる。
【0043】
2つの対照群と2つのアルコール依存症試料群を選択する。臨床的詳細を表1に示す。各群(試料プール)は、5名のアルコール依存者と5つの対応する対照症例とを含む。第1の症例群は、PCRディファレンシャル・ディスプレイ実験に用いられたものと同一である。この群のアルコール依存者は、3名の合併症のないアルコール依存者の不均一な集団を表し、1名のアルコール依存者は肝硬変で、1名のアルコール依存者は随伴性ウェルニッケ脳症である。症例群2に対する選択基準はより厳格である。男性のみが含まれ、肝硬変またはウェルニッケ・コルサコフ症候群の如き随伴性疾病を伴う症例はすべて症例群から排除される。加えて、それらの症例、すなわち検屍解剖の際に神経病理学的異常を示さなかった対照またはアルコール依存者のみを選択するように注意する。したがって、第2の症例群は「合併症のない」アルコール依存者の部分集合に限定される。
【0044】
【表1】
【0045】
試料からのプローブ調製
改変グアジニンイソチオシアナート抽出手順(Chomoczynski and Sacchi 1987)を用いて、全RNAを抽出した。全RNAを各症例から個別に抽出し、試料を一緒にプールして、アルコール依存症に関連しない個々の症例毎の差を小さく(低減)した。各々の対照およびアルコール依存者群を構成する5つの症例の各々は、30μgの全RNAをプールに寄与した。プールされた対照およびアルコール依存者全RNA試料は、UniGEMV(ゲノム・システムズ社)およびHuGeneFL(Affymetrix)アレイに対するハイブリダイゼーションに使用される。
【0046】
cDNAマイクロアレイを使用した遺伝子発現の分析
Qiagen(カリフォルニア州Valencia)のオリゴテクス・ポリA+RNA抽出キットを使用して100μgの全RNAからポリA+RNAを抽出した。二工程手順を用いて、製造者の取扱説明書に従ってプロトコルを実施した。200ngのポリA+RNAをプローブ生成およびマイクロアレイ・ハイブリダイゼーションのためにゲノム・システムズに送った。
【0047】
オリゴヌクレオチド・アレイを使用した遺伝子発現の分析
各試料に対して、25μgの全RNAを出発物質として使用して、スーパースクリプト・チョイス・キット(Gibco BRLライフ・テクノロジーズ、メリーランド州Rockville)を用いたcDNA合成を行った。次いで、バイオアレイRNA転写体標識キット(Enzo、ニューヨーク州Farmingdale)を使用してin vitroで転写を行った。Affymetrix(カリフォルニア州Santa Clara)規定に従ってプロトコルを実施する。ハイブリダイゼーションに先立って、40mMトリス酢酸(pH8.1)、100mM酢酸カリウムおよび30mM酢酸マグネシウムに94℃で35分間インキュベートすることによって、ビオチン標識cRNAを30から60塩基の平均サイズに無作為に細分化することができる。次いで、細分化したcRNAの一定分量(マスタ混合物200μl中10μg)をヒト・オリゴヌクレオチド・アレイ(HuGeneFL、Affymetrix)に対してハイブリダイズする。HuGeneFLチップは、およそ5600の全長ヒト遺伝子を識別するプローブを含有する。60rpmに設定されたロッティーセリ・オーブン(Affymetrix)において45℃で16時間ハイブリダイゼーション反応を行うことができる。次いで、ハイブリダイズ化アレイを洗浄し、Affymetrixプロトコルに記載されているようにストレプトアビジン・フィコエリスリン(分子プローブ)で着色する。最後に、専用の共焦点顕微鏡(ヒューレット・パッカード、カリフォルニア州Santa Clara)でアレイを走査する。
【0048】
情報分析
GEMToolsと呼ばれるプログラム(インサイト製薬)でcDNAマイクロアレイの分析を行うことができる。このプログラムは、HuGeneFLチップ上の5600の標的要素を既知の遺伝子に対する配列に翻訳する。次いで、バックグラウンドを上回る信号強度、ならびに試料および対照マイクロアレイの両方に対する結合に際して信号を生成するスポットの比率についての所定の既定基準を満たす遺伝子を選択することができる。試料帯対照における1.4倍の発現の増加または減少を示す遺伝子を選択することによって、遺伝子をさらにフィルタリングすることができる。
【0049】
GeneChip(登録商標)ソフトウェア3.1(Affymetrix)を使用して、オリゴ・マイクロアレイの絶対および比較分析を行うことができる。すべての遺伝子平均強度(合計強度/遺伝子数)を190の固定値に正規化することによって、すべてのオリゴ・マイクロアレイの全信号強度を均一な値に合わせてスケール調整することができる。これらの条件下では、オリゴ・マイクロアレイに対する倍率は0.82と4.04の間で変動しうる。Affymetrixアレイの分析に対するプロトコルについては、詳細に記載されており(Lockhart他、1996;Wodicka他、1997)、製造者が提供するマニュアルの該当部分と同様に、該当部分が参照により本明細書に組み込まれている。GeneChipプログラムの出力は、信号強度(「平均差」)、および試料と対照の比較(「倍率変化」)に関するデータを含む。行列ベースの決定アルゴリズムを用いて、所定のmRNAプローブの存否に対する信頼測度(「絶対コール」)、および倍率変化(「差異コール」)を生成することができる(Wodicka L、Dong H、Mittmann M、Ho MH、Lockhart DJ.1997.酵母におけるゲノム全体の発現の監視(Genome−wide expression monitoring in Saccharomyces cerevisiae)Nat Biotechnol 15:1359−67)。いずれの場合も、GeneChipプログラムにおける既定値を採用することができる。
【0050】
オリゴヌクレオチド・マイクロアレイに対しては、試料と対照の間で生成された比較ファイルからのデータをフィルタリングすることによって、発現が変化した遺伝子を選択することができる。オリゴ・マイクロアレイ上の少なくとも10の標的要素対で表される遺伝子の選択は、比較ファイルにおいて、少なくとも約1.4倍だけ対照と異なる発現レベルを有する遺伝子を含むことができる。結合のいずれか1つにおいて、GeneChipプログラムにおける「絶対コール」アルゴリズムによって識別される任意の「不在」遺伝子を候補遺伝子リストから削除する。
【0051】
遺伝子発現の変化、予後および診断用の医学的情報
アルコール依存者は、特に乱用および禁断症状の周期の発生頻度に関して、アルコール乱用の様式、性質および持続期間が著しく異なる。アルコール依存者および非アルコール依存者は、環境、栄養、投薬および遺伝子素因を含む多くの終局前因子において著しい多様性を示す。これらの因子の影響を低減するために、1つまたは複数の独立した対照群を利用することができる。加えて、1つまたは複数の対照群を分析のためにプールすることができる(表1)。試料のプーリングは、最近のマイクロアレイ研究に用いられており(Alizadeh他、2000)、個々の症例による差を減少または低減させる。また、類似性に基づく試料のプーリングは、人口の多様性によるそれらとの遺伝子発現の差を視覚的に示すことができる。同一のヒトからの試料をプールまたは同時にランして、人工物との小さな差を視覚的に示すことができる。
【0052】
アルコールによる脳損傷に特に影響されやすい脳の領域の適応応答の基礎を成す可能性のある遺伝子を識別するために、特定組織、例えば前頭皮質からの組織を使用して、対照とアルコール依存者の比較を行うことができる(Kril JJ、Harper CG.1989.アルコール脳の4つの皮質領域からの神経カウント(Neuronal counts from four cortical regions of alcoholic brains)Acta Neuropathol(Berl)79:200−4)。例えば、プールされた試料をcDNAおよびマイクロアレイに対してハイブリダイズし、示差発現比の観点でデータを表すことができる。症例群1プールを使用して実施されるハイブリダイゼーションは、GS−1(UniGEMV、ゲノム・システムズ)およびA−1(HuGeneFL、Affymetrix)と名付けられ、症例群2に対するハイブリダイゼーションはGS−2およびA−2と名付けられる(表1)。
【0053】
マイクロアレイは、これまで、細胞培養系および腫瘍試料にほぼ独占的に適用されてきた比較的新しい技術で、2から10倍の遺伝子発現の差は珍しくない。アルコール中毒の動物モデル、およびこれまで実施された人アルコール依存症の研究では、確認された遺伝子発現の変化は比較的小さい。すなわち40%の遺伝子発現の変化が一般的である。このため、対象となる遺伝子を識別するのに比較的低い閾値(1.4倍)を選択できる。一部に、アルコール依存症に想定される変化が小さいため、少なくとも2つの異なるマイクロアレイ基体を使用することができる。また、両方の症例群および両方の種類のマイクロアレイに同様の結果を伴う遺伝子に重点をおくことができる。
【0054】
2つの症例群における対照とアルコール依存者の間の遺伝子発現変化の再現性をcDNAマイクロアレイによって測定する。2つの症例群に対してプロットした差分発現比の自然対数は、0.48の相関係数(r)によって反映されるように一定の結果を示す。1.4倍の選択閾値における2つの症例群間の同一方向の変化を示す遺伝子の数を比較することによっても再現性を判断できる。例えば、cDNAアレイ上の両方の症例群において、100より多いの遺伝子が、少なくとも1.4倍の上向きまたは下向きの変化を示すとする。これが、ランダムな変動によるものであれば、100より多い遺伝子の期待値を用いて、2つの症例群の間の1.4倍の反対方向の変化を示すことができる。しかし、わずか7つの遺伝子が、1つの症例群において少なくとも1.4倍の増加を示し、第2の症例群において−1.4倍の減少を示す。同様に、データをランダム化し、次いで両方の症例群において少なくとも1.4倍の同一方向の変化を有する遺伝子に対する選択を行うと、ここに示される結果について見られるよりはるかに小さい遺伝子が選択される。したがって、両方の症例群において1.4倍の閾値レベルを上回る遺伝子を選択すると、極めて大きな変化を有する群が識別される。いくつかの「偽陽性」が存在する場合があるが、II型誤差が大きくなるのを避けるために、「緩和した」閾値を有するほうがよい場合がある。選択したリスト内の機能的に関連した遺伝子の部分集合を識別すると、結果の統計的力が著しく高められる。
【0055】
これらの研究による驚くべき発見は、たいていの遺伝子が、アルコール依存症および対照において同様の発現を示すことである。cDNAマイクロアレイでは、3825の遺伝子が「出現」としての基準を上回り、オリゴ・マイクロアレイ分析では、705の遺伝子が、4つの試料(2つの標準対象群および2つのアルコール依存者群)において、常に「出現」と呼ばれる状態にある。cDNAまたはオリゴヌクレオチド・マイクロアレイにより観察されるように、両方の症例群において、少なくとも64の遺伝子が1.4倍に増加し、99の遺伝子が1.4分の1に減少しているのを見いだすことができる。1.4倍という比は、マイクロアレイ上の2つの試料の40%の発現レベルの差を表す。
【0056】
発現が変化した遺伝子に対する初期の調査は、ミエリンタンパク質に対する多くのmRNAな符号化における驚くべき協調的減少を示している。両方の種類のマイクロアレイをミエリンまたは乏突起膠細胞に関連する遺伝子に対してスクリーニングすることができる。これらの遺伝子の半分以上(12/21)が、4つのハイブリダイゼーションのうちの少なくとも2つにおいて(1.4倍以上の)発現の現象を示す(表2)。
【0057】
【表2】
【0058】
ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、ミエリンおよびT細胞分化タンパク質(MAL)ならびにアポリポタンパク質D(ApoD)は、すべての4つの結合において低下を示す。しかし、ミエリン−乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)およびEdg−2、すなわちミエリン形成に関連するテトラスパンは、発現の変化を示さず、豊富ミエリンタンパク質を含む他の6つの遺伝子は1つの結合のみにおいて発現の低下を示すため、ミエリン遺伝子発現の変化は選択的でありうる。対照的に、ガラクトセレブロシダーゼ(GALC)、すなわちガラクトシルセラミドの分解にとって重要な主要酵素は、4つのハイブリダイゼーションのうちの2つにおいて発現が増加する。ミエリン遺伝子の部分集合のみ発現が低下しうるという観察結果は、可能な説明としての(対照においてより多くの白質を与える)組織解体の変化に異議を唱えるものである。
【0059】
表2における遺伝子の大多数は、ミエリン構造において役割を果たすが(Boison and Stoffel 1994);Montag他、1994)、生合成遺伝子も変化する(Schaeren−Wiemers他、1995)。興味深いことには、これは、ともに脂質輸送に関与するApoDおよびApoEに対する遺伝子を含む。これらの遺伝子は、アルツハイマー病の如き神経退行性疾病にもかかわる(Roses 1997;Terrisse他、1998)。ミエリン関連転写因子、MyT1およびプラルファ(Puralpha)は、アルコール依存症試料において一定的に変化せず、極めて多くのミエリン遺伝子の協調的ダウンレギュレーションにおける追加的な因子を暗示していることも驚くべきことである。
【0060】
神経膠線維酸性タンパク質(GFAP)は、アルコール中毒の動物モデルで広く研究されてきたアストロサイトの主な構造タンパク質である。GFAPは、急性エタノール治療の後にアップレギュレートされるが、慢性治療では低下し、エタノールによって転写調節されうる(Valles他、1997)。GFAPの欠乏は、脱髄をももたらす(Liedtke他、1996)。GFAP遺伝子に無発現変異を生じたマウスは、異常なミエリン形成、および白質欠如に関連する水頭症を示す。したがって、CNSにおける有髄化繊維および白質を維持するのにGFAP発現が必要とされる。
【0061】
アルコール依存者の前頭葉皮質におけるミエリン関連遺伝子の発現の低下は、慢性アルコール中毒は、直接または間接的にミエリン関連遺伝子に影響を与えて、ミエリンタンパク質の量を低下させることを示唆するものといえる。あるいは、ミエリン遺伝子発現の欠如は、乏突起膠細胞が特にエタノールの神経毒効果に影響されやすいことを示唆するものであるといえる。
【0062】
ミエリン遺伝子発現は、アルコール中毒の動物モデルでさほど詳細に研究されていないが、ミエリン生合成は、胎児アルコール症候群(FAS)の動物モデルで十分に実証されている。出生前にエタノールに接触されたラットは、ミエリン形成の遅延を示し(Jacobson S、Rich J、Tovsky NJ(1979)胎児アルコール症候群の結果としてのアルビノ・ラットの大脳皮質におけるミエリン形成および成層の遅延(Delayed myelination and lamination in the cerebral cortex of the albino rat as a result of the fetal alcohol syndrome.Currents in Alcoholism 5:123−133)、これは、GFAP、PLP、MAG、Malおよびミエリン塩基性タンパク質を含むミエリン関連遺伝子の発現の時間的パターンの異常の結果である可能性が高い(Naus and Bechberger 1991;Milner他、1987;Chiappelli他、1991)。出生後(出生後4から10日目)エタノールに接触すると、特定のミエリン塩基性タンパク質およびMAGイソ型の発現が低下する(Zoeller他、1994)。白質欠如およびミエリン生合成の変化は、胎児アルコール症候群を伴う児童において実証されている(Riley他、1995)。
【0063】
脱髄および白質欠如は、ヒトの神経画像(Pfefferbaum他、1993)および神経病理学(Kril他、1997)の研究において広く実証され、これらの症例に見られる脳の萎縮を説明するものと考えられる。白質欠如は、硬化性アルコール依存症、および随伴性WEおよびWKSを伴うアルコール依存症において最も深刻であるが、合併症のないアルコール依存症にも見いだすことができ(Kril他、1997)、それは、アルコールの直接的な神経毒効果に起因することを暗示している。慢性アルコール依存症は、脳の灰質構造体の1つ、すなわち脳梁を萎縮させる。脳梁の大きさおよび厚さは、同年齢および同性の対照に比べてアルコール依存症の男性では著しく縮小し(Oishi他、1999)、出生前にアルコールに接触した小児においても著しく縮小している(Riley他、1995)。
【0064】
神経イメージングの研究によって、白質欠如は、禁酒により可逆的であるため(Shear他、1994)、アキソンまたは乏突起膠細胞の不可逆的な欠如ではなく、ミエリン形成の可逆的な変化を表すことができることに留意することが重要である。非飲酒対照、または死亡時に積極的に飲酒していたことが知られる症例と比較した場合の禁酒したアルコール依存者の前頭葉皮質から抽出したRNAに対する将来的なマイクロアレイ分析により、ミエリン遺伝子発現の変化が可逆的であるかどうかを明らかにすることができる。加えて、アルコール中毒の動物モデルにおけるこれらの遺伝子の発現の分析を、これらの変化を逆転するのに必要な禁酒の期間を定めるのに役立てることができる。
【0065】
重要なことは、アルコール依存者は、中心性橋脱髄症およびマルキアファーヴァ−ビニャーミ病の発生率も高くなる(Miles and Diamond 1998)。これらの脱髄性疾病は、アルコール以外の毒性または代謝性因子に起因しうる。ミエリン遺伝子発現のダウンレギュレーションによって、アルコール依存者が中心性橋脱髄症およびマルキアファーヴァ−ビニャーミ病におけるミエリン障害に陥りやすくなる。
【0066】
cDNAアレイ(表3)またはオリゴヌクレオチド・アレイ(表4)による両方の症例群において、1.4倍の差分発現比の基準を用いて、非ミリエン遺伝子を官能基に構成することができる。
【0067】
【表3】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【表4】
【0072】
【0073】
アルコール依存者試料では、シナプス伝達に関与するいくつかの遺伝子の発現が変化している。特に、α−シヌクレインの発現が増加している(表3)。α−シヌクレインは、薬物依存に対して中心的なプロセスであるドーパミン神経伝達の活性依存調節因子で(Abeliovich他、2000)、αおよびβシヌクレインはともに神経変性にある役割を果たすことができる(Galvin他、1999)。同様に、AMPA1受容体サブユニット、RGS−4およびN−エチルマレイドミド感受性因子(表3)の発現が増加する一方、内向き整流性カリウムチャネル(表3)、ガンマアミノブチル酸A(GABAα)受容体β−2サブユニットおよびADPリボシル化因子−3(表4)遺伝子は、アルコール依存者において、発現の低下を示す。いくつかの内向き整流性カリウムチャネルは、アルコール作用の生体内標的である可能性が高く(Lewohl他、1999)、RGSタンパク質によって変調され、またGTPase活性化タンパク質として作用することによってタンパク質のGタンパク質信号ファミリーを調節して、ホルモンおよび神経伝達物質受容体媒介信号を変調する(Hepler 1999)。重要なことは、長時間のエタノール処理によって、GluR1グルタメート受容体サブユニットの発現を増加できることが動物における研究によって示されている(Ortiz他、1995)。アルコール依存症の動物モデルで研究された遺伝子の数は限られているが、GluR1およびGFAPに対するヒト・アルコール依存症との一致は、アルコール依存者における発現変化は、栄養または傷害の如き混乱因子ではなく、アルコール消費によるものであることを暗示している。
【0074】
細胞増殖を調節することが知られている遺伝子群は、アルコール依存者試料においてダウンレギュレーションされる。これは、レクイエム、p53結合タンパク質、ジスコイジン領域受容体ファミリー・メンバーおよび2つのCDC様キナーゼをコードする遺伝子を含んでいた。p53結合タンパク質は、野生型p53、抗アポトーシス遺伝子Bcl−2およびNFKBのp65(RelA)サブユニットと相互作用する(Yang JP、Hori M、Takahashi N、Kawabe T、Kato H、Okamoto T(1999)NF−カッパBサブユニットp65は、53BP2に結合し、53BP2によって誘発される細胞死を抑制する(NF−kappaB subunit p65 binds to 53BP2 and inhibits cell death induced by 53BP2).Oncogene 18:5177−86)。p53結合タンパク質は、p53媒介転写活性を高め、アポトーシスおよび細胞成長の調節に中心的な役割を果たすことができる。受容体チロシンキナーゼ・ファミリーのメンバーであるジスコイジン領域受容体1(Sakuma他、1996)は、p53によって調節されることが知られている。このチロシンキナーゼは、コラーゲンを結合することによって活性化され、細胞外マトリックスに対する細胞応答を媒介するものと考えられる(Vogel 1999)。他の2つの遺伝子、すなわち細胞成長の調節に機能を果たすことが知られているnel様2およびRANは、アルコール依存者においてアップレギュレートされる。レクイエムおよびp53結合タンパク質のダウンレギュレーションの如き、これらの応答のいくつかは、「抗アポトーシス」応答を示唆する。これは、エタノールに直接起因するものであるか、または親アポトーシス的に作用するエタノールに対する補足的応答である可能性がある。この点で、アルコールは、発達途上の動物および成体動物の両方において、親アポトーシス効果を有することが証明される(Ikonomidou他、2000;Wu and Cederbaum 2000)。
【0075】
アルコール依存者はしばしば比較的若齢で死亡するため、培検組織を使用する1つの問題は、年齢の対応付けである。症例群1では、アルコール依存者は対照より平均で10歳若く(有意差なし、t−検定)、症例群2では、対照より16歳若い(p=0.03、t−検定)。したがって、対照とアルコール依存者の間に見られる遺伝子発現の差に年齢が寄与しうるかどうかを考慮することが重要である。年齢における脳遺伝子発現の変化に対する第1のアレイ調査は、(1.4倍より大きい基準および6347遺伝子アレイを使用して)70個の遺伝子の発現が増加し、86個の遺伝子の発現が低下していることを証明している(Lee他、2000および捕捉資料)。生後5カ月と30カ月のマウスの新皮質の比較では、アルコール中毒と対照の間に見いだされたほとんどの遺伝子において変化が検出されない。例えば、この調査で顕著であるミエリン遺伝子の一連の変化は、年齢調査には現れていない。しかし、アポリポタンパク質D、アルファシヌクレイン、マクロファージコロニー刺激因子1、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質およびGFAPの発現は、両調査において変化し、変化の方向は、年齢差がアルコール依存者に見られる遺伝子発現に寄与しうるものである。アルコール依存症と年齢の遺伝子発現の変化の重複が限られていることは、被験者の年齢の差が観察された変化の多くに寄与するものでなかったことを示唆している。
【0076】
遺伝子発現変化、予後および診断の医学的情報
本発明は、患者の血液におけるアルコール依存症に関連する遺伝子の存否、または発現における変化を識別することが可能であることを実証するものである。本発明は、血液を検出用核酸の源として使用することによって、患者または潜在的な患者の検出を著しく簡素化し、広範囲な使用に適するものとする。1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸が、分子生物学の技術分野の当業者が理解する条件で基体の表面に結合する。
【0077】
図2は、PAX遺伝子およびアンビオン・システムを一日間使用して、アルコール依存症に関連する遺伝子に対する対象の血液中で検出可能な発現のレベルを評価した後の血液tRNAからの結果を示すグラフである。あるいは、他のプローブを使用して遺伝子発現を比較することもできる。脳組織から識別される遺伝子に対応する血液中で識別される支配的な遺伝子に基づいて、血液試料を採取し、該試料から抽出された核酸を本発明のアルコール特有アレイに対して検査することにより、アルコール依存症に関連する遺伝子の存否または発現における変化を検出することができる。適切な対照をアレイに含める。本発明を用いれば、単一の支配的な遺伝子を使用してもアルコール依存症に対する検査を行うことができるが、複数の遺伝子を使用して結果の精度を高めることができる。単一の遺伝子分析は、予備的なスクリーニング、例えば特定の資源を患者に集中させて彼らの治療を支援することができるように入院患者をあらかじめスクリーニングする法執行機関による使用に有益である。このように、危険性のない患者に資源を費やすことなく、サイクルの早い段階で患者を識別し、これらの患者は必要とする治療を受ける。
【0078】
図3は、1日目および3日目における異なる対象の遺伝子のレベルを比較したグラフである。図4および図5は、基準グラフ、および基準と、個々の血液試料から検出されたヒト血液試料の遺伝子発現とを比較したグラフである。図2から図5を得るために使用した基礎データは次の通りである。基礎データは、血液中で検出された同じ遺伝子のいくつかは、本明細書で既に概略説明した、ヒトの脳に対するこれまでの研究において識別されていることを実証しているため、アルコール依存者の脳の試料から識別された遺伝子は相関し、血液中で検出可能である。
【0079】
血液試料から検出する「アルコール依存症特異的核酸」の例は、以下の遺伝子、すなわちアポリポタンパク質(各種);アクアポリン(各種);CD44抗原(ホーミング機能およびインディアン血液型体系);ドーパミン受容体D2;ヒスタミン受容体H1;ホモ・サピエンス・ベータ−1アドレナリン受容体mRNA、3’UTR;ミエリン関連糖タンパク質;ミエリン塩基性タンパク質;ミエリン遺伝子発現因子2;ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質;ミエリンタンパク質・ゼロ様1;ミエリン転写因子1様;ミエリン関連乏突起膠細胞塩基性タンパク質;神経ペントラキシンI;神経ペントラキシンIi;神経ペントラキシン受容体;神経カリウムチャネル・アルファサブユニット;神経タンパク質;神経タンパク質17.3;神経Shc;神経Shcアダプター同族体;神経特異的転写因子DAT1;ニューロナチン;神経特異的タンパク質;神経ペントラキシン受容体;神経ペプチドY受容体Y1;ニューロテンシン受容体2;神経向性チロシンキナーゼ、受容体、2型;末梢ミエリンタンパク質2;末梢ミエリンタンパク質22;ホスホリパーゼA2受容体;プロテオリピドタンパク質2;ナトリウムチャネル、電圧ゲート型、VIII型、アルファポリペプチド;ナトリウムチャネル、電圧ゲート型、II型、ベータポリペプチド;シンタキシン(多様);多様な伝達物質に少なくとも部分を含む。
【0080】
本発明は、アルコール依存症および関連疾病状態の検出、監視および診断を行うための方法を提供できる。疾病の進行を監視しない不十分な測定値に加えて、アルコール依存症の発症および範囲を判断するための標準化された方法の欠如により、既存の検出、監視および診断方法に代わる方法を模索する必要性が生じていた。本発明は、広範囲であるが選択的なミエリン遺伝子発現の再プログラミングを示唆するものでもある。多数のミエリン遺伝子の協調的調節は、乏突起膠細胞の機能または生存に対するエタノールの毒性作用の可能性を示唆する。該毒性作用は、アルコール依存者が白質欠如および脱髄疾患にかかる可能性に対する分子的基礎を提供することができる。加えて、シヌクレインおよび細胞内周期遺伝子発現の如き新奇の神経遺伝子の予期せぬ変化は、アルコール依存症の特徴である濃厚増および機能の変化を理解し、おそらくは阻止または回復させるための新たな機会を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明のアルコール依存症またはアルコール中毒の検出および監視装置に含まれるステップのフローチャートである。
【図2】アルコール依存症関連遺伝子について、対象からの血液において検出可能な発現のレベルを評価するために、PAX遺伝子およびアンビオン対照を一日間使用した後の血液の全RNAからの結果を示すグラフである。
【図3】1日目および3日目における異なる対象からの遺伝子のレベルを比較するグラフである。
【図4】遺伝子アレイ上の発現の制御レベルを説明する基準グラフである。
【図5】基準と、個々の血液試料から検出されたヒト血液試料遺伝子発現とを比較するグラフである。
Claims (46)
- アルコール依存症に関連する遺伝子の存在を検出するための装置であって、
基体と、
基体に結合した1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸とを含む装置。 - 基体は、分子を共有結合または非共有結合により結合することができる微細加工した固表面を含む請求項1に記載の装置。
- 基体は、平面または球面に導入されたアミノ、カルボキシル、チオールまたはヒドロキシル官能基を含むラングミュア・ボジェット膜、ガラス、機能ガラス、ゲルマニウム、シリコン、PTFE、ポリスチレン、砒化ガリウム、金、銀、または任意の材料をさらに含む請求項2に記載の装置。
- 1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸は、異なる決定可能配列を有する1つまたは複数のペプチド核酸のヒト核酸標的要素を含む請求項1に記載の装置。
- ヒト核酸標的要素は、それぞれ1平方センチメートル当たり100から10000個の標的要素の密度で基体上の異なる位置で1つまたは複数のペプチドを含む請求項4に記載の装置。
- ヒト核酸標的要素は、ゲノムDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、それらの一本鎖二本鎖またはそれらの任意の化学的修飾体を含む請求項4に記載の装置。
- ヒト核酸標的要素は、M6神経糖タンパク質、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリン関連乏突起膠細胞塩基性タンパク質、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質、ミエリンタンパク質Po、乏突起膠細胞ミエリン糖タンパク質、PMP2、PMP22、MAL遺伝子、ApoD、ApoE、炭酸脱水酵素II、2’,3’−環状ヌクレオチド 3’−ホスホジエステラーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、トランスアルドラーゼ、UDP−ガラクトースセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ、MyT1、プラルファ(Puralpha)、Edg−2、神経膠線維酸性タンパク質、ケラチン6B、ベータIIIスペクトリン、プロテアーゼ、セリン、9(ニューロシン)、プロプロテインコンバターゼサブチリシン/ケキシン4型、カルパイン、大ポリペプチドL3、プロテアーゼ、セリン、11(IGF結合)、膜貫通プロテアーゼ、セリン2、エンドセリン受容体タイプB様(GPCR37)、アクアポリン1(チャネル形成膜内在タンパク質)、内向き整流性カリウムチャネル、サブファミリーJ、メンバー10、グルタメート受容体、AMPA1、N−エチルマレイミド感受性因子、EGF含有フィブリン様細胞外マトリックスタンパク質1、CD44抗原、カドヘリン18、テトラスパンNET−6、インターフェロン、ガンマ誘導性タンパク質16、主要組織適合性複合体、クラスII、DRベータ1、小誘導性サイトカインサブファミリーC、メンバー1、エポキシドヒドロラーゼ1、ミクロソーム(生体異物)、プロリンデヒドロゲナーゼ(プロリンオキシダーゼ)、グルタチオンS−トランスフェラーゼM5、ユビキノール−シトクロムcレダクターゼコアタンパク質II、セリン/スレオニンキナーゼ、TU3Aタンパク質(優性ラパマイシン耐性1、DRR1としても知られる)、分泌収縮関連(secreted frizzled−related)タンパク質1、GTP結合タンパク質、ホスホリパーゼA2(14−3−3タンパク質)、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ、イソ型Ib、アルファサブユニット、Gタンパク質シグナリング制御因子4(RGS−4)、シヌクレイン、アルファ、リボフォリンII、130kD Golgi局在型リンタンパク質、自己免疫制御因子(自己免疫多腺性内分泌障害カンジダ症外胚葉性異栄養症)、SPY−ボックス9転写因子、スプライセオソーム関連タンパク質(U2snRNP)、レチノイドX受容体、ガンマ、核転写因子、Xボックス結合1、TATAボックス結合タンパク質関連因子、RNAポリメラーゼII、F、基本転写因子3、マクロファージ刺激1(肝細胞成長因子様)、LIM領域限定2(ロンボチン様1)、骨形態形成タンパク質7(骨形成タンパク質1)、レクイエム、アポトーシス反応亜鉛フィンガー遺伝子、ジスコイジン領域受容体ファミリー、メンバー1、CDC様キナーゼ2、CDC様キナーゼ1、腫瘍タンパク質p53結合タンパク質、2、ヒト成長/分化因子1、RACH1(補体ラッド1−1細胞周期チェックポイント突然変異体)、RAN(メンバーRASオンコ遺伝子ファミリー)、nel様2、サルコリピン、KIAA0043遺伝子生産物、EST、高システインおよび高グリシンタンパク質1、骨肉腫で増幅する保存遺伝子、KIAA0027遺伝子生産物、ホモ・サピエンス・クローン23916、KIAA0202遺伝子生産物、セレンタンパク質P、血漿、1、1,25−ジヒドロキシビタミンD−3によってアップレギュレートされた染色体16BACクローンCIT987SK−A−69G12、タイトジャンクションタンパク質2、HREV107様タンパク質、クローン23555mRNA配列、クローン25030mRNA配列、KIAA0237遺伝子生産物、KIAA0725遺伝子生産物、KIAA0293遺伝子生産物、神経芽細胞腫(神経組織)タンパク質、レチキュロン1、cAMP調節グアニンヌクレオチド交換因子IIにわずかに類似したEST、遺伝子pp2タンパク質にわずかに類似したEST、またはKIAA0195に極めて類似したEST、ユビキチンC、微小管関連タンパク質4、カルシウム依存性プロテアーゼ(小サブユニット、プロテアソームサブユニットz、ガンマ−アミノブチル酸(GABA)A受容体ベータ2サブユニット、グルタメート/アスパルテート輸送体II、リソソーム膜糖タンパク質−1(LAMP1)、心臓ギャップ結合タンパク質、オートタキシン−t(atx−t)、Igスーパーファミリー細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質(CTLA−4)、主要組織適合性複合体(MHC)のHLA−DRアルファ重鎖aクラスII抗原、ヒトアシル−CoAチオエステルヒドロラーゼ、シトクロムcオキシダーゼサブユニットVic、液胞H+ATPase Eサブユニット、ATPシンターゼ、リゾチームmRNA、プロスタグランジンD2シンターゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼの肝臓mRNA、SURF−1、カルモジュリン、カルシニュリンA2、GDI解離阻害剤RhoGDIガンマ、14.3.3タンパク質(タンパク質キナーゼ調節因子)、hPTPA、タンパク質キナーゼCゼータ、小GTP結合タンパク質、S10、タンパク質チロシンホスファターゼ、睾丸特異的cAMP依存タンパク質キナーゼ触媒サブユニット(Cベータ・イソ型)、ADPリボシル化因子3、90kD熱ショックタンパク質遺伝子、熱ショックタンパク質HSPA2遺伝子、ミトコンドリアマトリックスタンパク質P1(核コード)、ヒストンH2A.2、RNAポリメラーゼII伸長因子SIII p15サブユニット、酸性リボソームリンタンパク質P0、グリシル−tRNAシンセターゼ、リボソームタンパク質L27a、色素上皮由来因子、TRPM−2タンパク質、アンギオテンシノゲン、トランスフェリン、メラノーマ遍在性突然変異タンパク質(MUM−1)、KIAA0080遺伝子生産物、KIAA0084遺伝子タンパク質またはKIAA0174生成物を含む、アルコール依存者またはアルコール中毒者が発現する、細胞信号伝達、免疫反応および/または細胞間相互作用に対する構造遺伝子、代謝遺伝子、転写遺伝子または他の遺伝子に特異的な配列を有するアルコール依存症特異的遺伝子の部分である請求項4に記載の装置。
- アルコール依存症特異的核酸が試料に接触する請求項1に記載の装置。
- 試料は、全体的または部分的に、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊水、腺液および脳脊髄液、細胞または任意の他の体液、細胞あるいは体組織調製物を含む高分子を含む請求項8に記載の装置。
- アルコール依存症もしくはアルコール中毒またはアルコール関連疾病と考えられるヒトから試料を採取する請求項8に記載の装置。
- 試料の部分が、1つまたは複数のヒト核酸標的要素に特異的に結合する請求項8に記載の装置。
- 光学顕微鏡法、X線撮影法、化学発光法、蛍光顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、干渉分光法、表面プラズマ共鳴、質量分析法、原子間力顕微鏡法および走査トンネル顕微鏡法を含む、光源、コンデンサ、イオンまたはプラズマ・ビームで結合を検出する請求項8に記載の装置。
- アルコール依存症特異的核酸と試料が、選択的結合条件下で接触する請求項8に記載の装置。
- 選択的結合条件は、信号強度の検出可能な変化として収集できる情報を提供する請求項13に記載の装置。
- 情報はコンピュータにより記録される請求項14に記載の装置。
- コンピュータは、情報を記録し、情報をデータベースに記憶し、かつ/または情報を表示する請求項15に記載の装置。
- 情報は、各ヒト核酸標的要素における検出可能な変化の位置および大きさを含む請求項14に記載の装置。
- 試料情報と対照情報の情報比を求める請求項15に記載の装置。
- 対照情報は、試料の条件と類似の条件で、アルコール依存症およびアルコール中毒でないヒト、および/またはアルコール関連疾病ではないヒトから採取された試料から得られる請求項15に記載の装置。
- 情報は、当ヒトに関する遺伝子発現情報、ならびに診断および/または予後の医学的情報を生成する請求項18に記載の装置。
- アルコール依存症特異的遺伝子を同定するための方法であって、
アルコール依存症、アルコール中毒またはアルコール関連疾病と考えられるヒトから採取された試料と、アルコール依存症に関連する1つまたは複数の遺伝子を含む基体とを接触させるステップと、
試料の発現のレベルと非アルコール依存症の対照試料の発現のレベルとを比較するステップであって、発現レベルの変化はアルコール依存症に相関するステップとを含む方法。 - 試料は、全体的または部分的に、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、髄膜液、羊水、腺液および脳脊髄液、細胞または任意の他の体液、細胞あるいは身体組織調製物を含む高分子を含む請求項21に記載の方法。
- 基体は、分子を共有結合または非共有結合により結合することができる微細加工した固表面を含む請求項21に記載の方法。
- 基体は、平面または球面に導入されたアミノ、カルボキシル、チオールまたはヒドロキシル官能基を含むラングミュア・ボジェット膜、ガラス、機能ガラス、ゲルマニウム、シリコン、PTFE、ポリスチレン、砒化ガリウム、金、銀、または任意の物質をさらに含む請求項21に記載の方法。
- ヒト核酸標的要素を基体に結合させる請求項21に記載の方法。
- ヒト核酸標的要素は、ゲノムDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、それらの一本鎖もしくは二本鎖、または任意の化学的修飾体を含む請求項25に記載の方法。
- ヒト核酸標的要素は、アルコール依存症関連遺伝子からの決定可能配列をさらに含む請求項25に記載の方法。
- 各ヒト核酸標的要素は、1平方センチメートル当たり100から10000個の標的要素の密度で基体上の異なる位置に少なくとも1つのペプチドを含む請求項25に記載の方法。
- ヒト核酸標的要素は、プロテアーゼ、受容体、チャネル、シプナスタンパク質、細胞間もしくは細胞と基体の相互作用、免疫もしくは炎症反応、細胞信号伝達、分子シャペロンもしくは他の担体タンパク質、分子合成、細胞周期調節、細胞成長、細胞増殖または細胞死をコードする遺伝子を含む構造遺伝子、代謝遺伝子、転写遺伝子または他の遺伝子の部分である請求項25に記載の方法。
- 基体はマイクロアレイである請求項21に記載の方法。
- 結合は、試料の部分の、1つまたは複数のヒト核酸標的要素への特異的な結合を含む請求項21に記載の方法。
- 結合は、選択的結合条件で行われる請求項21に記載の方法。
- 光学顕微鏡法、X線撮影法、化学発光法、蛍光顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、干渉分光法、表面プラズマ共鳴、質量分析法、原子間力顕微鏡法および走査トンネル顕微鏡法を含む、光源、コンデンサ、イオンまたはプラズマ・ビームで結合を検出する請求項21に記載の方法。
- 選択的結合は、信号強度の検出可能な変化として収集できる情報を提供する請求項21に記載の方法。
- 情報はコンピュータにより記録される請求項34に記載の方法。
- コンピュータは、情報を記録し、情報をデータベースに記憶し、かつ/または情報を表示する請求項35に記載の方法。
- 情報は、各ヒト核酸標的要素における検出可能な変化の位置および大きさを含む請求項34に記載の方法。
- 試料情報と対照情報の情報比を求める請求項34に記載の方法。
- 対照情報は、試料の条件と類似の条件で、アルコール依存症およびアルコール中毒でないヒト、および/またはアルコール関連疾病ではないヒトから採取された試料から得られる請求項38に記載の方法。
- 情報は、該ヒトに関する遺伝子発現情報、ならびに診断および/または予後の医学的情報を生成する請求項38に記載の方法。
- 血液試料からアルコール依存症に関連する遺伝子の存在を検出するための装置であって、1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸と1つまたは複数の対照核酸とを含む基体を含み、血液の試料から採取された核酸から1つまたは複数のアルコール依存症特異的核酸の発現を検出する装置。
- ヒト核酸標的要素は、ゲノムDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、それらの一本鎖もしくは二本鎖、または任意の化学的修飾体質を含む請求項41に記載の装置。
- 血液試料の核酸は、アポリポタンパク質;アクアポリン;CD44抗原;ドーパミン受容体D2;ヒスタミン受容体H1;ホモ・サピエンス・ベータ−1アドレナリン受容体mRNA、3’UTR;ミエリン関連糖タンパク質;ミエリン塩基性タンパク質;ミエリン遺伝子発現因子2;ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質;ミエリンタンパク質ゼロ様1;ミエリン転写因子1様;ミエリン関連乏突起神経膠芽細胞塩基性タンパク質;神経ペントラキシンI;神経ペントラキシンIi;神経ペントラキシン受容体;神経カリウムチャネル・アルファサブユニット;神経タンパク質;神経タンパク質17.3;神経Shc;神経Shcアダプター同族体;神経特異的転写因子DAT1;ニューロナチン;神経特異的タンパク質;神経ペントラキシン受容体;神経ペプチドY受容体Y1;ニューロテンシン受容体2;神経向性チロシンキナーゼ、受容体、2型;末梢ミエリンタンパク質2;末梢ミエリンタンパク質22;ホスホリパーゼA2受容体;プロテオリピドタンパク質2;ナトリウムチャネル、電圧ゲート型、VIII型、アルファポリペプチド;ナトリウムチャネル、電圧ゲート型、II型、ベータポリペプチド;シンタキシン、およびそれらの組合せよりなる群から選択されるアルコール依存症特異的遺伝子の部分を含む請求項41に記載の装置。
- 1つまたは複数のアルコール依存症特異的遺伝子に対してスクリーンニングを行うための方法であって、
血液試料から得られた核酸と、1つまたは複数のアルコール依存症に関連する遺伝子を含む基体とを接触させるステップと、
試料の発現のレベルと非アルコール依存症の対照試料の発現のレベルとを比較するステップであって、発現レベルの変化はアルコール依存症と相関するステップとを含む方法。 - ヒト核酸標的要素は、ゲノムDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、一本鎖または二本鎖、あるいはそれらの任意の化学的修飾体質を含む請求項44に記載の方法。
- 血液試料の核酸は、アポリポタンパク質;アクアポリン;CD44抗原;ドーパミン受容体D2;ヒスタミン受容体H1;ホモ・サピエンス・ベータ−1アドレナリン受容体mRNA、3’UTR;ミエリン関連糖タンパク質;ミエリン塩基性タンパク質;ミエリン遺伝子発現因子2;ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質;ミエリンタンパク質ゼロ様1;ミエリン転写因子1様;ミエリン関連乏突起神経膠芽細胞塩基性タンパク質;神経ペントラキシンI;神経ペントラキシンIi;神経ペントラキシン受容体;神経カリウムチャネル・アルファサブユニット;神経タンパク質;神経タンパク質17.3;神経Shc;神経Shcアダプター同族体;神経特異的転写因子DAT1;ニューロナチン;神経特異的タンパク質;神経ペントラキシン受容体;神経ペプチドY受容体Y1;ニューロテンシン受容体2;神経向性チロシンキナーゼ、受容体、2型;末梢ミエリンタンパク質2;末梢ミエリンタンパク質22;ホスホリパーゼA2受容体;プロテオリピドタンパク質2;ナトリウムチャネル、電圧ゲート型、VIII型、アルファポリペプチド;ナトリウムチャネル、電圧ゲート型、II型、ベータポリペプチド;シンタキシン、およびそれらの組合せよりなる群から選択されるアルコール依存症特異的遺伝子の部分を含む請求項44に記載の装置。
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