JP2005507706A - 心不全治療装置 - Google Patents
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- A61F2/2481—Devices outside the heart wall, e.g. bags, strips or bands
Abstract
患者の心臓の少なくとも一部分の周りに配置されて、その弾性変形範囲にわたって心臓上に軽度の圧縮力を負荷するように構成された、心不全を治療するための方法および装置。この装置は、変形の第2の範囲に変移することができる。いくつかの実施例において、この装置は、刺激の負荷あるいは閾値レベルを越えた環境条件の変化により変形の第2の範囲に変移する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、心不全を治療する装置に関し、より詳しくは、患者の心臓の少なくとも一部分の周りにぴったりと合うように構成される心臓ハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
鬱血性心不全(「CHF」)は、組織の代謝需要、特に酸素需要を満たすために充分な流量の血液を心臓が供給できなくなることによって特徴づけられる。CHFの一つの特徴は、患者の心臓の少なくとも一部分の再構築にある。この再構築には心臓壁の寸法、形状および厚みの物理的変化が含まれている。例えば、損傷した左心室は、心筋の一部に局所的に薄くなって伸びた部分を有することがある。心筋が薄くなった部分にはたいてい機能的な障害があるため、他の部分がそれを補おうとする。その結果、心筋の他の部分は、心筋に障害領域があるにも関わらず心室の拍出量が維持されるように肥大し得る。そのような肥大は、左心室がいくらか球面状の形状を呈するようにする。
【0003】
心臓の再構築は、多くの場合に心臓壁を高められた壁張力あるいは応力にさらし、それが心臓の機能的な性能をさらに損なわせることになる。多くの場合、心臓壁は、そのように増加した応力によって生じる障害を補うためにさらに肥大化する。このような悪循環が生じると、肥大がさらに肥大してより重い機能的な障害に至る。
【0004】
歴史的に、鬱血性心不全は様々な薬物によって管理されてきた。心送血量を改良するための装置もまた用いられてきた。例えば、左心室のアシストポンプは心臓が血液をポンプ送りすることを助ける。マルチチャンバペーシングもまた、心室の拍動を最適に同期させて心送血量を改善するために用いられてきた。様々な骨格筋、例えば広背筋が心室のポンプ動作を助けるために用いられてきた。研究者および心臓外科医はまた、心臓の周りに配設される人工的な「帯」を試みてきた。そのような構想のうちの一つは、心臓に巻きつける人工的な「ソックス」あるいは「ジャケット」である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した装置のいくつかが明るい展望を掴んだが、再構築した心臓がさらに再構築することを防止し、および/または病んでいる心臓の反対側への再構築を助けるために、この分野においてはCHFを治療するための装置の必要性が未だに存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様においては、臓器を再形成するための装置が提供される。この装置の再形成部材は弾性材料から成り、かつこの弾性材料は実質的に臓器の表面と同じ環境条件下にあるように臓器の少なくとも一部分の周りに配置されるべく構成される。この弾性材料は、a)環境条件が閾値レベルを越えると変化し、b)閾値レベルを越えた状態から変化のないレベルに戻ると少なくとも部分的に変化した状態に止まる、という弾性的な特性を有する。
【0007】
他の実施例において、臓器に力を作用させる臓器再形成装置は、弛緩している形状から変形した形状へと臓器により付勢されるように臓器に接触して配置されて、臓器に曲げ力を作用させるように構成された曲げ部材を備える。この曲げ部材は、第1の弾性たわみ範囲および第2の弾性たわみ範囲を有するとともに、ある時点においては一つのたわみ範囲においてのみ作動し得る。さらにこの曲げ部材は、入力に応答して第1および第2の弾性たわみ範囲間で変移する。
【0008】
本発明の他の態様においては、形状記憶材料から成るハーネスを提供する段階と、形状記憶材料が全般的にマルテンサイト相にある間に臓器の周りにハーネスを配置する段階とを備える方法が提供される。さらにこの方法は、形状記憶材料を全般的にオーステナイト相に変態させてハーネスが臓器の表面を抱え込むようにするために、形状記憶材料の温度を上昇させる段階をさらに備える。
【0009】
さらに他の態様によると、最初の形状から所望の形状へと臓器を再形成する方法が提供される。再形成ハーネスは臓器の少なくとも一部分の周りに配置される。この配置は、ハーネスの弾性たわみ範囲内における変形に応答する再形成力がハーネスから臓器に負荷されるように、ハーネスを弾性的に変形させる段階を含んでいる。再形成力は、初期形状から、この初期形状と所望する形状との間の中間形状へと臓器を付勢する。臓器が中間形状を呈すると、中間形状から所望する形状に向かって臓器を付勢するために変更されたたわみ範囲内で再形成力が作用するように、ハーネスの弾性たわみ範囲が変更される。
【0010】
本発明のさらに他の態様によると、本発明は臓器上に力を作用させる臓器形成装置を提供する。臓器が曲げ部材を弛緩しているときの形状から拡大して変形した形状へと付勢するように曲げ部材は臓器の少なくとも一部の周りに配置されるべく構成され、かつ曲げ部材は臓器の圧迫を生じさせる曲げ力を臓器上に作用させる。曲げ部材は、作動温度範囲においてその材料温度が上昇すると剛性が増加するように構成された材料から成る。
【0011】
さらに他の態様によると、材料は形状記憶材料から成る。
【0012】
本発明の他の態様によると、本発明の方法は、弛緩しているときの形状を有した形状記憶材料から成るハーネスを提供する段階、およびこのハーネスを臓器の周りに配置する段階を備える。この配置する段階は、臓器の少なくとも一部分の周りにハーネスがぴったりと合ってハーネスが変形に抗して臓器上に圧力を負荷するように、ハーネスを弛緩している形状から拡大させて変形させる段階を含む。形状記憶材料は、臓器の温度にあるときには全般的にオーステナイト相にある。
【0013】
本発明のさらなる特徴および効果は、添付の図面および請求の範囲と共に考慮すると、以下の好適な実施例の詳細な説明から当業者にとって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本願出願人の係属中の出願である「鬱血性心不全を治療するための拡大可能な心臓ハーネス」(シリアルNo.09/634043,2000年8月8日出願)において議論したように、病んでいる心臓の壁応力を軽減することによってそのような心臓の再構築を妨げあるいは反対側に再構築できるようにすることが期待されている。なお、この参照によって上記出願の全体を本明細書に開示したものとする。本出願は、特定の実施例、製造方法、使用方法、およびそのような心臓壁の応力を減少させる装置の利点について議論する。追加の実施例および態様はまた、本願出願人の係属中の出願「心不全を治療する装置」(シリアルNo.10/242,016,2002年9月10日出願)において議論されているが、この参照によってその全体を本明細書に組み込んだものとする。
【0015】
図1は、心臓ハーネス32の形態の心臓壁応力低減装置を適用した哺乳類の心臓30を示している。この心臓ハーネス32は、心臓30に外接するとともに、壁応力を軽減するための軽度の圧縮力を集団で心臓上に負荷する一連のヒンジあるいはばね要素34を備えている。
【0016】
本明細書において用いる「心臓ハーネス」という用語は、心臓周期の少なくとも一部分の間に心臓上に圧縮力を負荷するべく患者の心臓上にぴったりと合わされる装置を指す、広い意味の用語である。心臓上にぴったりと合うことが意図された、従来技術において「ガードル」、「ソックス」、「ジャケット」等と呼ばれている他の装置もまた、この「心臓ハーネス」の意味に含まれる。
【0017】
図1に示した心臓ハーネス32は、充填の間に心臓30が膨張するにつれて変形するように構成されたヒンジあるいはばねヒンジと呼ばれる一連のばね要素34を有した、少なくとも一つの波形の糸状体36を備えている。各ヒンジ34が実質的に一方向の弾性をもたらすので、それは一方向に作用し、その方向に対して垂直な方向にはあまり弾性を作用させない。例えば、図2Aは一実施例のヒンジ部材34が弛緩した状態を示している。このヒンジ部材34は、中央部分40および一組のアーム42を有している。アームが引っ張られると、図2Bに示したように曲げモーメント44が中央部分40上に負荷される。この曲げモーメント44はヒンジ部材34を弛緩した状態に戻るように付勢する。典型的な糸状体がそのような一連のヒンジを有しており、かつヒンジ34が糸状体36の方向に弾性的に広がりかつ縮むように適合されていることに注目されたい。
【0018】
図1に示した実施例においては、ばね要素34の糸状体36が、ばね要素を形成するために変形させられた押出加工ワイヤから製造されている。図1が互いに隣接して織り交ぜられた糸状体36を示しているが、追加の実施例においては、隣接する糸状体36が互いにかぶさったり接触したりしないことが理解されるべきである。
【0019】
図3および図4は、他の好ましい実施例の心臓ハーネス50を、その製造の間における2つの時点において示している。例示した実施例において、ハーネス50は、最初に比較的薄い平坦なシート材料から形成される。ハーネスを形成するために任意の方法を用いることができる。例えば、一つの実施例においてはハーネスが材料から光化学的にエッチングされ、他の実施例においてはハーネスが薄いシート材料からレーザ切断される。図3および図4に示した実施例は、超弾性材料であって形状記憶特性を呈するニチノールの薄いシートからエッチングしたものである。平坦なシート材料は型、金型等の上に掛けられ、概ね心臓の少なくとも一部分の形を取るように成形される。
【0020】
図1および図4を参照すると、例示の実施例の心臓ハーネス32、50は、患者の心臓の底部領域に係合してその上にぴったりと合うように寸法決めされ構成された底部52と、患者の心臓の頂点部分に係合してその上にぴったりと合うように寸法決めされ構成された頂部56と、ベース部と頂部との間の中間部分58とを備えている。
【0021】
図3および図4に示した実施例においては、ハーネス50は波形ワイヤの糸状体あるいは列36を備えている。上述したように、この波形は所望の方向において弾性的に屈曲可能なヒンジ/ばね要素34を有している。いくつかの糸状体36は相互接続要素60によって相互に接続されている。相互接続要素60は糸状体36の互いの位置の保持を助けている。好ましくは、相互接続要素60は隣接するいくつかの糸状体36が相対的に動けるようにする。
【0022】
上述したように波形のばね要素34は、心臓30の膨張に抗する力を作用させる。ばね要素が作用させる力は集合して心臓を圧縮し、心臓が膨張するときの心臓の壁応力を軽減する。したがって、ハーネスは心臓の作業負荷の減少を助け、心臓が患者の身体を介してより効果的に血液をポンプ送りできるようにして、心臓が自分自身で治癒する機会を与える。壁応力を減少させるべく心臓を穏やかに圧縮する力を生成するために、いくつかの配置および構成のばね部材を用いることができることは理解されるべきである。例えば、ばね部材を心臓あるいはハーネスの周りの一部分にのみ配設することができる。
【0023】
理解できるように、ヒンジ/ばねの様々な設計および配置を心臓ハーネスの実施例に用いることができる。図5Aおよび図5Bは、テスト装置66上に配設した心臓ハーネス64の他の実施例の要部62を示している。この部分62は、弛緩した状態(図5A)および変形し拡がった状態(図5B)で示されている。この実施例において、心臓ハーネス64は、ある角度をなす相互接続要素68によって互いに接続された、波形のばね要素34の複数の列36を備えている。好ましくは、相互接続要素68はまた、ばねとして作用するように撓むことができる。これらの図面から分かるように、テスト装置66による外向きの力がハーネス64を変形させると、ばね要素34の波形の列36および相互接続要素68の両方が変形する。このように、ばねの波形の列36は、相互接続要素68を介して接続されている場合であっても相対的に動くことができる。しかしながら、相互接続要素68は列36の間で応力を分配する。
【0024】
図5Aおよび図5Bに示した実施例はまた、全体的に変形する有利な特徴を呈している。次に図6Aを参照すると典型的波形のばねの応力/歪曲線69が示されている。この図から判るように変形(歪)が増加するにつれて対応する応力も増加する。しかしながら、図5Aおよび図5Bの実施例は、図6Bに示した応力/歪特性により類似した特性を呈する。図示したように、変形を開始させるために初期応力荷重70を負荷した後においては、ハーネスの更なる変形は全般的に平坦なあるいは傾斜の小さい応力プラトー72上で達成される。この応力負荷は、ハーネスが心臓上に作用させる力あるいは圧力に対応している。作動の際には、患者の心臓の周りにぴったりと合わせるときのようなハーネスの初期の変形が完了すると、ハーネスは応力/歪曲線の応力プラトー部分上に見い出される最大応力値の弾性変形範囲において作動する。このことは、装置の安全性を向上させるのに有効である。その変形作動範囲において応力プラトー72がある応力レベルを決して上回らないようにハーネスが設計されているからである。したがって、この構造を有するハーネスは、予め定められている「安全な」圧力レベルより高い圧力を決して心臓上に作用させないように設計される。例えば、一つの実施例においては、装置の作動範囲を上回る変形に伴うプラトー応力が、装置が作用させる圧縮力のうち心臓の締めつけを生じさせ得る予め定められた上限を決して上回らない圧縮力に対応するように、ハーネスが構成される。
【0025】
次に図7を参照すると、他の実施例の心臓ハーネス74が示されているが、ハーネスの右側部分Rは心臓の右側のためにカスタマイズされ、かつ左側部分Lは心臓の左側のためにカスタマイズされている。心臓の筋肉線維は、概ね一方向に収縮し膨張することが知られている。心臓の右側の筋肉線維は第1の方向にある略らせん方向の配向に従い、心臓の左側の筋肉線維は第2方向にある略らせん方向の配向に従う。図7に示した実施例においては、波形の列36は相互接続要素76, 78によって接続されているが、相互接続要素76、78は心臓の左側および右側において筋肉線維の方向的な伸縮とよりよく協働するように特別に配置されている。より具体的には、相互接続要素は筋肉線維の伸縮方向に対してだいたい斜めとなるように、より好ましくは伸縮方向に対して実質的に垂直であるように配置される。これにより、図示した実施例においては、ハーネス74の左側Lの相互接続要素76が、ハーネス74の右側Rの相互接続要素78とは異なる方向に延びている。このように、一方向に収縮する筋肉繊維は、ばね要素34の波形の列36および相互接続要素76、78の両方のばね特性を活用することができる。
【0026】
次いで図8〜図10を参照すると、心臓ハーネス82の追加の実施例の要部80が示されている。より具体的には、図8〜図10は、ばね要素34の要部の糸状体36を示している。この実施例においては、ばね要素34が「鍵穴」構造に構成されている。図8および図9に示すように、ばね要素の幅wはその厚みtよりも大きい。これにより、ばね要素34の厚みtに幅wを除した縦横比の値は1よりも大きい。図9に示したように、糸状体36が弛緩した状態においては、ばね要素34は全般的に平面内にある。図10を参照すると、糸状体36が長手方向に伸びるときにはばね要素34が面外変形を呈する。ばね要素の要部は心臓の心外膜に向かって内側に突出する。図示した実施例においては、隣接するばね要素34の連続した頂部84a〜84dおよび谷部86a〜86cが全般的に反対方向に突出している。
【0027】
他の実施例においては、心臓ハーネスの一つの、いくつかの、あるいは全ての糸状体が、伸びている間に面外変形を生じるように構成された縦横比を有することができる。そのような実施例においては、内側に突出している部分は心臓壁に向けられ、ハーネスと心臓との間の摩擦を増加させる。このように、面外変形は心臓に対するハーネスの固定を助ける。好ましい実施例において、ハーネスの底部にある若しくは底部に隣接しているばね要素の少なくとも一つの糸状体は、この糸状体が長手方向に変形したときにばね要素が面外変形を呈するように構成される。このように、固定力はハーネスの底部あるいはその近傍に集中している。さらに他の実施例においては、糸状体の1つあるいはいくつかのばね要素がそのような面外変形を呈するように構成される。
【0028】
図8〜図10に示した実施例において、縦横比は約1.8〜2.0である。しかしながら、心臓に対するハーネスの固定を助けるために望ましい程度の面外変形を得るべく、他の範囲の縦横比を選択できることも理解されるべきである。図8〜図10に示した実施例は、概して長方形の断面形状を有している。卵形のような他の断面形状を有するばね要素が面外変形を呈し得ることもまた理解されるべきである。
【0029】
心拍周期の間における心臓壁の応力は、患者の血管系にポンプ送りされる血液で左心室が満たされる弛緩期DFの終わり若しくはその近傍において最も大きい。反対に、心臓壁の応力は、心室が満たされる前の弛緩期DSの初めにおいて最も低い。以下により詳細に説明する実施例において、心臓ハーネスは、負荷する力が弛緩期DSの初めにおいて最小となり、かつ弛緩期DFの終わり若しくはその近傍において最大となるように、種々の材料の特性を活用して構成することができる。
【0030】
次に図11を参照すると、ステンレス鋼のような典型的な構造材料の応力/歪曲線90が示されている。図示の曲線は、その材料の弾性変形範囲において負荷された特定の応力σに関連する歪εを示している。明らかなように、特定の応力σの負荷が材料を変形させると、その材料の特定のパーセンテージ歪εが生じる。応力σが解放されると材料はその弛緩状態92に戻る。
【0031】
図11に示したように、上述した実施例の一つ若しくは複数と同様の構造を有する心臓ハーネスを構成するためにこの材料を用いるときに、この材料の応力/歪特性は有効である。上述したように、そのようなハーネスは鼓動している心臓上に配置されるように特別に構成される。確かに、心臓の寸法は弛緩期の始まりDSと弛緩期の終わりDFとの間で変化する。図示した実施例においては、弛緩期の始まりおよび終わりDS,DFにおける心臓(およびハーネス)の寸法に関連するハーネス材料の応力および歪条件を識別するために、DSおよびDFの表示が応力/歪曲線90に付加されている。ハーネスは、鼓動している心臓と共に膨張しかつ収縮するので、DSおよびDFを含むたわみ範囲において作動することが予想される。
【0032】
図11に示したように、歪εのレベルは、弛緩期の初めDSよりも弛緩期の終わりDFの方が高い。予想されるように、応力のレベルもまた弛緩期の初めDSよりも弛緩期の終わりDFの方が高い。このように、ステンレス鋼製ハーネスは、弛緩期DSの始めよりも弛緩期DFの終りにおいてより大きな圧縮力を作用させる。このように、最も大きな壁応力が心臓ハーネスの最も大きな圧縮力によって軽減されるとともに、より小さな壁応力が著しく小さい圧縮力によって軽減される。
【0033】
図11に示した実施例をステンレス鋼ハーネスとの関連において記述したが、他の金属、ポリマー材料、および複合材のような様々な材料においても、同様の応力/歪線図を予想できることは理解されるべきである。このように、病んでいる心臓のために上述した利点を獲得するべく、多種多様な材料を用いることができる。
【0034】
次に図12を参照すると、他の応力/歪カーブ94は、ステンレス鋼がその弾性限度を越えて変形したときの挙動を示している。塑性変形が生じた後、この材料はその最初の寸法には戻らないが、リコイルする。新しい弾性範囲100は、最大変形点102と最大位置ずれ点104との間に定まる。この材料は、新しく定まった弾性範囲100において、図11を参照しつつ上述したものと実質的に同様にふるまう。図12に表されている新しく定められた弾性範囲100はまた、多くの場合に「ヒステリシス」と呼ばれる現象を表している。ここで、材料は、内部摩擦のような要因によって、荷重を除くとき(103)には荷重を負荷するとき(108)とは僅かに異なるカーブにしたがう。この種の挙動は様々な材料において一般的であり、いくつかの材料においては他の材料よりも顕著である。
【0035】
図12のカーブ94は、患者の病んでいる心臓よりも小さい寸法および/または形状に製造されたステンレス鋼製の心臓ハーネスに関連付けられる挙動および応力を記述することができる。ハーネスは、患者の心臓上に取り付けられるので、ハーネスの最大変形点102が弛緩期DFの終わりにおける心臓の寸法および形状に実質的にマッチするように、心臓の周りへのぴったりと合った装着のために塑性的に変形する。このようにして、ステンレス鋼製の心臓ハーネスは、心臓に嵌着させるための特注寸法に合わせることができる。
【0036】
図11において用いたように、DSおよびDFの表示は、ハーネスが鼓動している心臓と共に膨張しかつ収縮するときに、弛緩期の始まりおよび終わりDS,DFにおける心臓のサイズに関連する応力および歪みを識別する。また、図11において議論したように、ハーネスは終了後弛緩期の始めDSよりも弛緩期の終わりDFにおいて大きな圧縮力を作用させる。このように、最も大きな心臓壁応力の軽減は弛緩期の終わりにおいてもたらされる。作動の間、ハーネスは弛緩期の始まりおよび終わりDS,DFに関連する寸法の間で膨張しかつ収縮する。このように、ハーネス材料はDSとDFの間の新しい弾性範囲100の一部分のみを横切る。この部分は、拡張期の弾性範囲110として図12に表されている。図示のように、ヒステリシス現象によって、DSにおける歪に関連する応力レベル111は、変形したハーネス材料の新しい弾性範囲100の荷重負荷/除荷カーブ106,108上のポイント107,109間にある。
【0037】
研究が示すところでは、心臓壁応力の除去は病んでいる心臓、特に肥大した心臓に著しい利益をもたらす。壁応力が軽減されるので、心筋はより良好に休息することができる。また、心臓のポンプ負荷も著しく減少する。肥大した心臓の壁応力を減少させることは、心臓の肥大の停止を助けるばかりでなく肥大を逆進させ、あるいは心臓の再形成を助ける。このように、心臓ハーネスは、再形成部材あるいは再形成ハーネスとして機能し、病んでいる心臓を再形成しあるいはその反対側への再構築を助ける。
【0038】
心臓が反対側に再構築すると、心臓の寸法は減少しようとし、したがって弛緩期の始めおよび終わりにおける心臓の寸法が変化する。例えば、図12には、その寸法が最初はDSおよびDFで表されていた肥大した心臓が反対側に再構築して小さくなる実施例が示されている。より小さく、反対側に再構築した心臓の弛緩期の始めおよび終わりにおける寸法が、それぞれDS’およびDF’で表されている。
【0039】
図12に示したように、反対側に再構築した心臓に対しても、ハーネス材料は弛緩期の終わりDF’において最も大きな応力を呈し、したがってハーネスの圧縮力は弛緩期の終わりDF’において最も大きい。しかしながら、反対側に再構築した心臓の弛緩期の始まりおよび終わりDS’,DF’の両方においてハーネスから負荷される圧縮力の大きさは、反対側に再構築する前の心臓に負荷される圧縮力の大きさより比較的小さい(DS,DFを参照)。実際に、図示した実施例では、反対側に再構築した心臓の弛緩期の始めDS’においてハーネスは実質的に力を作用させない。
【0040】
心臓壁の応力を軽減するために圧縮力を継続して負荷することにより、心臓が反対側に再構築し続けてさらに小さくなることが期待される。このように、さらに反対側に再構築した心臓の弛緩期の始めおよび終わりにおける寸法は、図12においてDS”およびDF”として表されているが、前回の測定よりもさらに小さい。図示した実施例においては、弛緩期DF”の終わりにおいて圧縮力が心臓上に作用しているが、弛緩期の始めにDS”においては実質的に力が作用していない。実際に、心臓は、弛緩期の初めにおいてはハーネスの膨張範囲内においてはもはや動かず、壁応力を軽減するために著しい圧縮力が心臓上に作用するように材料の弾性位置ずれ範囲116内において作動する。しかしながら、同時に、弛緩期の始めDSにおいて実質的により少ない圧縮力が心臓壁上に作用するように、ハーネスを寸法決めし配置することができる。
【0041】
上述した実施例においては、心臓の反対側への再構築を容易にするための心臓ハーネスを示してきた。しかしながら、心臓が反対側に再構築するに連れて、ハーネスが作用させる圧縮力の大きさが図12に示したようにだんだん小さくなる。したがって、上述した実施例は心臓が反対側に再構築する範囲を制限し得る。
【0042】
他の実施例においては、ニチノールとして知られているニッケルチタン合金のファミリーのうちの一つのような、形状記憶/超弾性材料から心臓ハーネスを製造することができる。そのようなハーネスは、反対側への再構築の結果として心臓がより小さくなったときに、容易に調節することができて繰り返し患者の心臓の周りに締め付けることができるように構成することができる。このようにして、ハーネスが作用させる軽度の圧縮力の利点を心臓の広い範囲の寸法において獲得することができるとともに、心臓の反対側への再構築の程度がハーネスの弾性範囲によって制限されることがない。
【0043】
ニチノールは、心臓ハーネスの用途に特に適した構造的および機械的な特性を有した材料である。これらの特性を理解するために、かつニチノールから製造された実施例をよりよく記載するために、ニチノール合金の挙動の基本的な理解が有益である。
【0044】
ニチノールは、応力が負荷されると可逆的に結晶構造を変化させて実質的な塑性変形なしに大きく弾性変形することができる、変態的な超弾性を呈する。この種の超弾性は、材料の一つの結晶構造が他の結晶構造に変態するときに現れる。ニチノールにおいては、第1の結晶構造あるいは相がオーステナイト相として知られ、かつ第2の結晶構造がマルテンサイト相として知られている。
【0045】
上述したように、ニチノール材料のファミリーは様々なニッケルチタン合金を含んでいる。この合金は全般的に同様の挙動を呈するが、その特性は特定の合金同士で幾分異なっている。ニチノール合金において共通する一つの特徴は、比較的より高い温度においてニチノールがオーステナイト相に止まり、かつ比較的低い温度においてニチノールがマルテンサイト相に止まることである。より詳しくは、オーステナイト変態終了温度AFより高い温度において、歪みのないニチノールはオーステナイト相にあることが期待される。マルテンサイト相はそのような温度では安定せず、材料の温度がオーステナイト変態終了温度を上回ると自動的にオーステナイト相に変態する。実際には、マルテンサイト相は加熱されるとオーステナイト相に変態する。マルテンサイト相からオーステナイト相への変態は、オーステナイト変態開始温度ASにおいて始まる。オーステナイト変態終了温度AFにおいては、相変態は実質的に完了し、平衡状態にあるニチノールは実質的にオーステナイト相に完結している。この材料の一つの状態において、ニチノール材料は全般的にマルテンサイト相にある。他の状態において、ニチノール材料は全般的にオーステナイトである。さらに他の状態において、ニチノール材料は部分的にオーステナイトであり部分的にマルテンサイトである。
【0046】
しかしながら、材料に応力を誘起させることにより、終了温度AFより高い温度において、オーステナイト相のニチノールをマルテンサイト相のニチノールに変態させることができる。図13は、オーステナイト変態終了温度AFより高い温度におけるニチノールの典型的な荷重負荷および除荷カーブ120,122を示している。上述したように、安定し平衡状態にあるニチノールは、そのような温度においてオーステナイト相にある。応力が負荷されると、オーステナイト相のニチノールは、その弾性変形範囲を示している略線形な経路124に沿って弾性的に変形する。臨界降伏応力において、オーステナイト相はマルテンサイト相への変態を開始する。この相変態の間、負荷された応力はほぼ同じであるが材料の変形は一定的に増加する。このように、ニチノールは、全てのオーステナイト相がマルテンサイト相に変態するまで荷重プラトー130を形成する。ニチノールのこの状態は、応力誘起マルテンサイトとして知られている。オーステナイト相からマルテンサイト相への変態が完了すると、カーブは、マルテンサイト相の弾性変形範囲に相当する略線形に増加する経路132を成す。このカーブは最大弾性変形点134において終端する。
【0047】
上述したように、マルテンサイトはオーステナイト変態終了温度AFより高い温度において不安定である。応力誘起マルテンサイトが除荷されると、材料は除荷カーブ122に沿って自動的にそのオーステナイト相に戻る。引き続いて図13を参照すると、材料を除荷するときには、マルテンサイト相が弾性的に除荷されるにつれて最初は線形の経路136にしたがう。注目すべきことは、ヒステリシスが生じることによって荷重負荷カーブおよび除荷カーブ120,122が実質的に重ならないということである。第2の臨界応力点138において、マルテンサイト相はオーステナイト相への変態を開始する。荷重を負荷するときと同様に、マルテンサイト相からオーステナイト相への変態は略平坦な除荷プラトー140に沿って続く。マルテンサイト相が完全にオーステナイト相に変態すると、オーステナイト相の材料は除荷カーブの略線形な他の部分142に沿って弾性的に除荷される。
【0048】
図14は、アニールした後にマルテンサイト変態終了温度MFより低い温度に冷却したニチノール材料の応力/歪曲線150を表している。オーステナイト相は、そのような温度では安定していない。オーステナイト相のニチノールは、ある温度範囲を通過して冷却されるとマルテンサイト相に変態する。オーステナイト相からマルテンサイト相への変態は、マルテンサイト変態開始温度MSにおいて始まり、マルテンサイト変態終了温度MFで実質的に完了する。ニチノールのこの相は、熱的に誘起されたマルテンサイト相として公知であり、かつ応力が負荷されたときにはオーステナイト相のニチノールとはいくぶん異なる挙動を呈する。ニチノールを冷却すると、熱的に誘起されたマルテンサイト相ニチノールの特徴である独特な「双晶(twinned)」構造をとる。
【0049】
続けて図14を参照すると、熱的に誘起されたマルテンサイトに応力を負荷するにつれて、マルテンサイト相は最初に略線形の曲線152に沿って弾性的に変形する。臨界応力値154において、マルテンサイト結晶の「双晶(twinned)」構造は真っ直ぐになり始める(「双晶組織の解消(detwinning)」)。双晶組織の解消(detwinning)の間、マルテンサイトニチノールは略平坦な荷重負荷プラトー156を呈する。ひとたび結晶構造において双晶組織の解消(detwinning)が起こると、マルテンサイトニチノールは実質的に線形な別の弾性変形範囲158を呈する。マルテンサイトは、除荷されると弾性的にリコイルする。しかしながら、双晶組織が解消された(detwinned)構造は保持され、マルテンサイトは自動的には双晶構造(twinned arrangement)には戻らない。したがって、図示したように、弾性的な位置ずれが荷重負荷カーブ150に沿って熱的に誘起されたニチノールの最初の寸法および形に戻ることはない。その代わり、弾性的な位置ずれは新たな弾性範囲160を定める。
【0050】
マルテンサイトは、除荷されると、繰り返し弾性的に荷重を負荷しかつ除荷することができるが、図14に示したように新しい弾性変形範囲160に止まる。部分的に双晶組織が解消された(detwinned)熱誘起マルテンサイトでさえ、完全に双晶変形した構造には自動的に戻ることはい。例えば、熱誘起マルテンサイトが図14の荷重負荷カーブ上に図示した変形寸法Xに変形すると、マルテンサイトは部分的にその双晶組織が解消される(detwinned)。次いで材料を除荷すると、マルテンサイトは弾性的にリコイルするが、再び双晶変形(retwin)することはない。実際に、ニチノールは、繰り返して弾性的に荷重を負荷し162かつ除荷する164ことができる新しい弾性範囲X’を有する。
【0051】
上述したように、マルテンサイトはオーステナイト変態終了温度AFより高い温度において不安定であり、かつオーステナイト変態開始温度ASより上の温度にさらされると自動的にオーステナイトに変化し始める。熱誘起マルテンサイトがオーステナイト変態終了温度AFより高い温度に加熱されると、マルテンサイトはオーステナイトへと自然に変態する。しかしながら、材料が応力下にあり、あるいは歪みが与えられると、応力誘起マルテンサイトのように作用して図13に表したように略平坦な除荷プラトー122にならう。例えば、図13および図14の両方を同時に参照すると、図14の地点Xに変形させた熱誘起マルテンサイトをオーステナイト変態終了温度AFより高い温度に加熱すると、マルテンサイト材料はオーステナイトおよび応力誘起マルテンサイトへと変態し、図13に示した除荷カーブ122に沿って変形寸法Xから変形寸法Yへと収縮し始める。材料が寸法Xから寸法Yまで縮小したときに、材料をマルテンサイト変態終了温度MFより低い温度に冷却すると、ニチノールは熱誘起マルテンサイト相および図14に示した挙動に戻り、図14に示した弾性限度として変形寸法Yを保持する。ニチノールはまた、繰り返して弾性的に荷重を負荷し166かつ除荷する168ことができる新しい弾性変形範囲Y' を有する。
【0052】
オーステナイト変態終了温度AFより高い温度においてニチノールの収縮を制御する一つの方法は、ニチノールが特定の寸法を越えて収縮することを防止する障害を導入することである。例えば、ある障害は、ニチノール装置が図13における寸法Yを越えて収縮することを防止する。したがって、図13の除荷カーブ122にならって小さくなるように図14中に寸法Xで表されている熱誘起マルテンサイトをオーステナイト変態終了温度AFより高い温度に加熱すると、この材料は障害によって寸法Yにおいて収縮が止まる。次いで、ニチノール材料は、図14の寸法Yにあるが再び熱誘起マルテンサイト相となるように、マルテンサイト変態終了温度MFより低い温度に冷却することができる。このようにして、熱誘起マルテンサイトの弾性変形範囲は、X’のような第1の範囲からY’のような第2の範囲へと制御可能に変移することができる。
【0053】
上述した変態終了温度AS、AF、MS、MFは、使用する特定のニチノール合金に部分的に関係し、かつこの合金がさらされる熱処理に部分的に関係している。このように、公知の熱処理法を用いることにより、ニチノール合金は、特定のニチノール製心臓ハーネスの実施例において所望されるオーステナイト変態開始温度ASおよび終了温度AFと、マルテンサイト変態開始温度MSおよび終了温度MFとを持つようにカスタマイズすることができる。
【0054】
さらに、この特許明細書の全体にわたって、出願人は、変態温度AS、AF、MS、MFの「機能的な」使用を採用している。そのような機能的な使用は、材料の分子的な分析ではなく心臓ハーネスの実施例において観察されたニチノール材料の挙動に基づいている。例えば、この特許明細書において、機能的なオーステナイト変態終了温度AFは、実質的に完全なオーステナイトニチノールの特性および挙動をその材料が呈し始める温度である。機能的なオーステナイト変態終了温度AFは、ニチノールの100%が分子的レベルにおいてオーステナイト相にあることを必ずしも必要としない。
【0055】
好ましい実施例において、ニチノール材料から製造された心臓ハーネスは、通常の人間の体温より高いオーステナイト変態終了温度AFを有する。そのようなニチノール材料は、ニチノールの特定の合金を用いることにより、および/またはニチノールを公知の方法で適切に熱処理することにより提供することができる。この実施例のニチノールハーネスは、人体の内部にあるときに、好ましくは熱誘起されたマルテンサイト状態にある。
【0056】
熱誘起されたマルテンサイト製のニチノールハーネスは、弛緩しているときに、このハーネスがその上に配置される病んでいる心臓よりも実質的に小さいように寸法決めされる。さらに、弛緩しているときの寸法は、好ましくは、目標としている患者の心臓の寸法より小さいか若しくはほぼ同じである。
【0057】
次に図15を参照すると、この図は図14の熱誘起マルテンサイトの荷重負荷カーブ150の実質的な再現を含んでいるが、ハーネスは、患者の心臓上に取り付けるときに熱誘起マルテンサイトの予想される変形カーブに沿って変形する。ハーネスは、ハーネスをその上に配置する病んでいる心臓より大きいサイズに伸ばされる。例えば、ハーネスの最大変形点Aは、心臓が弛緩期DFの終わりにおいてハーネスを最大限に変形させる点を幾分超えている。
【0058】
図15からわかるように、最初に取り付けたときに、心臓ハーネスは弾性範囲A’によって表される弾性範囲を有している。上述したように、ハーネスは、弛緩期の始めDSと終わりDFとの間の弛緩期弾性範囲170内で作動する。弛緩期の終わりDFにおいてハーネスから負荷される応力172に関連する圧縮力は、弛緩期の始めDSにおいてハーネスから負荷される応力174に関連する圧縮力よりも実質的に大きい。
【0059】
上述したように、軽度の圧縮力の負荷が病んでいる心臓の反対側への再構築を助けるので、心臓の寸法が減少し、それに伴って弛緩期の始めおよび終わりにおける心臓の寸法も減少する。図12に関連して上述したように、図15における表示DS’およびDF’は、反対側に再構築した心臓の弛緩期の始めおよび終わりを表している。図示のように、心臓が反対側に再構築したときには、弾性範囲A’において弛緩期の始めDS’および終わりDF’にハーネスが負荷する圧縮力は、反対側に再構築する前に負荷する圧縮力よりも少ない。したがって、ハーネスによって与えられる利点が減少し、さらなる反対側への再構築が遅くなりあるいは停止する。
【0060】
図示の実施例においては、ニチノールハーネスは、弾性変形範囲A’から新しい弾性変形範囲B’に移動するように調整することができる。ハーネスを調整するためには、ニチノール材料のオーステナイト変態終了温度AFより高い温度にハーネスの温度を上昇させる。ニチノール製再形成ハーネスの温度を上昇させるために熱エネルギを付加する多くの方法がある。例えば、電気や暖かい流体等の負荷によって所望の温度に上昇させることができる。
【0061】
引き続いて図15を参照すると、1つの好ましい実施例において、第1の弾性範囲A’から第2の弾性範囲B’へとハーネスを調整するために、ハーネスを暖かい食塩水あるいは水溶液に浸漬させる。暖かい流体は、オーステナイト変態終了温度AFよりは高いが、身体が短期間その温度にさらされたときに身体を傷つける温度よりは低い温度で供給される。この温浴は、オーステナイト変態終了温度AFより高い温度にニチノール製ハーネスを加熱する。マルテンサイト材料はもはや安定的ではなく、かつハーネスはオーステナイト組織へと自動的に変態し始め、図13の除荷カーブ122に示した挙動を呈する。ハーネスの寸法は縮小するが、最終的には心臓によるさらなる収縮が防止され、ハーネスが弛緩期の終わりDF’において反対側に再構築した心臓の寸法を越えて縮小することを防止する障害として作用する。
【0062】
暖かい流体はすぐに分散し、好ましくはマルテンサイト変態終了温度MFより低い身体の温度へと冷える。したがって、ニチノール製ハーネスは熱誘起マルテンサイト組織に戻り、再び図15のカーブ150に沿った挙動を呈する。しかしながら、ハーネスは心臓の周りにぴったりと合うように縮小する。ハーネスは、点Bで示される最大寸法および範囲B’と同様な弾性変形範囲を有する。このように、弛緩期の終わりDF’においてハーネスが負荷する圧縮力は、ハーネスを最初に患者に取り付けたときの圧縮力のレベルか若しくはそれより高い。圧縮力のこのレベルは有益であり、さらなる心臓の反対側への再構築を開始させる。
【0063】
時間が経過して心臓がさらに反対側に再構築すると、心臓はさらに小さくなる。最終的には、ハーネスが弾性範囲A’において作動していたときに生じたように、さらに反対側に再形成した心臓の弛緩期の始めおよび終わり(DS”およびDF”で表示される)における寸法は、弾性範囲B’において作動しているハーネスがもはや反対側への心臓の再構築をもはや助けないようなものとなる。そのようなときには、ハーネスはオーステナイト変態終了温度AFより高い温度に暖められ、ハーネスが心臓の現在の寸法に収縮し、次いでマルテンサイト変態終了温度MFより低い温度に冷えるように、上述した手順が繰り返される。ハーネスは再び心臓のまわりにぴったりと合い、かつ弾性範囲は範囲B’から新しい範囲C’に変移する。
【0064】
理解できるように、調整プロセスは、所望に応じて、あるいは患者および臨床医が結果に満足する状態に心臓が反対側に再構築するまで、何度も反復することができる。このプロセスはまた、目標とする心臓寸法へと心臓が反対側に再構築するように制御することができる。心臓がその目標寸法に到達したときに弛緩期の初めにおいて実質的に圧縮を作用させないように、ハーネスを構成しかつ操作することができる。
【0065】
図15に示したように、ハーネスが弾性範囲間で変移するとき、例えばハーネスが弾性範囲A’から弾性範囲B’に変移するときには、弾性範囲A’およびB'内で利用可能な応力の範囲は概ね等しいままとなる。しかしながら、ハーネスの歪範囲あるいはたわみ範囲は変移する。このように、新しい弾性範囲においてもハーネスは心臓に対して同じあるいは類似した再形成力をもたらすことができるが、ハーネスの寸法は変化する。したがって、大きさが次第により小さくなる心臓に対し、実質的に同様の再形成力を負荷することができる。
【0066】
この原理は、特にハーネスの安全性を向上させる際に有益である。ハーネスの寸法を変えることができるにもかかわらず、ハーネスの作動範囲における再形成力の最大値が実質的に同じだからである。このように、ハーネスは、この装置を使用する間に再形成力の最大値が予め定められた値を上回らないように好ましく寸法決めされかつ構成される。例えば、一つの実施例において、心臓ハーネスは、心臓上に負荷する圧縮力が決して約20mmHgを上回らないように、治療する病んでいる心臓に対して寸法決めされかつ構成される。他の実施例においては、圧縮力の限界を約15〜17mmHgとすることができる。
【0067】
上述したハーネスの実施例は、その取り付けおよび調整が比較的容易である。心臓の周りにニチノール製ハーネスを取り付けるために、最小限に侵襲性の方法を用いることができる。加えて、臨床医は、この装置を心臓の周りに取り付けるときに不均一にハーネスを変形させあるいは不正確にハーネスを寸法決めすることに関し、過度に心配する必要がない。これは、この装置が心臓よりいくぶん大きい場合でも、この装置が心臓の寸法および形状を包含する弾性範囲内で作動するからである。その上、このハーネスは、心臓の周りにぴったりと合うようにいつでも上述したように容易に調整することができる。
【0068】
他の実施例において、取り付けの間に、臨床医はハーネスが心臓より大きくなるようにハーネスを引き伸ばす。このことは、臨床医が、最小限に侵襲的に、かつ心臓よりも大きくハーネスを変形させることを防止する必要性がほとんど無い状態でハーネスを取り付けられるようにする。ハーネスを心臓の周りに、おそらくは緩く巻き付けた後、臨床医は、ハーネスのオーステナイト変態終了温度AFより高い温度の暖かい流体に心臓およびハーネスを浸漬させる。上述したように、ハーネスは実質的に心臓の寸法および形にならうように収縮する。この流体が身体の温度に冷えるにつれて、ハーネスは再び熱誘起マルテンサイト構造へと冷えて期待する弾性範囲で作動する。このように、臨床医は心臓にハーネスを取り付けるときにほとんど正確性を必要としないが、ハーネスは取り付けられると心臓にマッチして抱え込むように形付けられる。
【0069】
ハーネスの実施例を取り付けて使用する方法のさらなる追加の実施例においては、患者の心臓上にハーネスを取り付けた後、患者の心膜は臨床医によってしっかりと閉じられる。心膜がしっかりと閉じられると、心膜と心臓との間の空間内に単純に暖かい流体を注入することにより、心臓を暖かい食塩水あるいは水溶液に浸漬することができる。暖かい流体がこの空間内に保持されるので、オーステナイト変態終了温度AFより高い温度へと実質的に一様にハーネスを加熱することができる。臨床医は、暖かい流体が冷えて自然に心膜から分散するようにし、あるいは流体を供給するために用いたものと同じ手段を用いることにより心膜から暖かい流体を吸引することができる。心膜が臨床医によって実質的に閉じられない場合でも、必要に応じてハーネスを加熱するために心臓およびハーネスを温湯に浸漬させることができる。
【0070】
上述したように、それ自身が患者の心臓の周りにぴったりと調整されるようにハーネスを暖めるプロセスは、反対側への再構築に適応しかつそれを促進するために繰り返し実施することができる。好ましくは、調整の反復は、まさに議論したように閉じられた心膜と心臓との間に暖かい流体を注入することによって実施される。この施術は、周知の心膜穿刺術手技と同様の外科的手技によって、便利にかつ安全に実施することができる。
【0071】
次に図16を参照すると、ハーネスを暖めるための手技が模式的に示されている。臨床医は、心膜184を含む患者の組織を貫通する針状の先端部分182を有した装置180を使用する。先端部分182の開放している遠位端186は、心膜184と心臓30の外壁との間に配置される。暖かい流体の供給源、例えば注射器190は管192を介して針182に連通しており、暖かい流体194は心膜184と心臓30との間の空間内にこの供給源190から供給される。ハーネスの寸法を調整するために流体194がハーネス32を暖めた後、流体の少なくともいくらかを引き出すために臨床医は注射器190を引く。あるいは、身体によって自然に処理されるように流体を所定位置に残したままとすることもできる。実質的にハーネス全体への適用を確実なものとするために、この行為を一度実行することもできるし、暖かい流体を心臓の周りのいくつかの位置に導入することもできる。
【0072】
次に図17を参照すると、ハーネスを暖めて調整するための他の実施例の方法および装置200が示されている。図示の実施例においては、少なくとも2つのリード線202がハーネス32に接続されている。内部コントローラ204が患者の体に配置されてリード線202への電流の流れを制御する。内部コントローラ204を起動させて電流を流すために体外の無線制御装置206を用いることもできる。一つの実施例においては、リード線202間に異なる電圧を印加すると、ハーネス32を流れる電流が生じて、調整のためにハーネスを付勢するのに十分な所望の温度へとハーネスを暖める。電圧は、心臓自身の電気的システムによるポンピングの間の電気的な刺激を著しく遮らないように、好ましく選択される。
【0073】
図示の実施例においては、2つのリード線202がハーネス32上に配設されており、一方がハーネスのベース部52の近傍にあり他方が頂点56の近傍にある。追加の実施例においては、いくつかのリード線が設けられ、かつ内部コントローラが任意の一時点において特定の組のリード線だけが起動されるように制御システムに従って選択的にリード線を起動させる。このように、内部コントローラは、心臓上のハーネスがどのように調整されるかを制御する。例えば、一つの実施例においては、心臓のベース部近傍のリード線が頂点近傍にあるリード線よりも先に作動する。このようにして、ハーネス32の寸法がベース部52から頂点56に向かって調整される。このことは、心臓上におけるハーネス位置の維持を助ける。それは、ハーネスがベース部の周りよりも頂点の周りにおいてよりきつく製造されたときに、ハーネスがベース部の方に引っ張られる傾向が増加して心臓30上へのハーネス32の嵌着が損なわれ得るからである。
【0074】
上述した実施例においては、ニチノール製心臓ハーネスの挙動が、熱エネルギーの負荷に応答して図13および図15のカーブの間で移動できるものとして示されてきた。議論した実施例は、図13のカーブに沿った挙動を得るためにニチノールの温度をオーステナイト変態終了温度AFより高い温度に上げ、次いで図15のカーブに沿った挙動を得るためにニチノールの温度をマルテンサイト変態終了温度MFより低い温度に低下させることを記載している。追加の実施例においては、熱誘起マルテンサイト製の心臓ハーネスは、終了温度AFより高く温度を上げる必要なしに、ハーネスの温度をオーステナイト変態開始温度より上昇させることによって調整される。このように、少なくともいくつらかのマルテンサイトニチノールがオーステナイトに変態し、ハーネスが調整され始める。
【0075】
さらなる追加の実施例においては、すなわち患者の通常の体温である約37℃未満のオーステナイト変態開始温度を有するニチノール製の心臓ハーネスが提供される。このように、ハーネスは、患者の身体内における通常の作動の間において部分的にオーステナイト相であり、オーステナイト相および熱誘起マルテンサイト相の両方の特性を呈する。
【0076】
次に図18を参照すると、一連のカーブ210、212、214はニチノール製ハーネスの実施例のテストデータを表している。各カーブは、ハーネスの変形に対応してハーネスが負荷する圧力を表している。3つのカーブ210、212、214は、それぞれ特定の温度T1、T2、T3におけるハーネスの変形挙動を表している。図示のように、各カーブ210、212、214は略同様の形を有しており、かつ変形の比較的広い範囲にわたって負荷される圧力の増加が比較的低くなっている。これらのカーブの形状は、ハーネスの設計およびニチノール材料特性に由来している。
【0077】
図18においては、最も高い温度T1におけるカーブ210が最大の圧力を作用させる。上述したように、ASより高い温度の上昇がオーステナイト相にあるニチノールの比率の増加を促す。オーステナイト相のニチノールは、マルテンサイト相のニチノールよりも変形に対する抵抗力が高い傾向にある。このように、ハーネスにおけるオーステナイト相の比率が温度の上昇と共に増加するので、ハーネスによって負荷される圧力は温度の上昇に伴って増加する。したがって、さらに他の実施例においては、ニチノール製の心臓ハーネスは、患者の体温におけるマルテンサイト相に対するオーステナイト相の比率が所望する治療上の範囲内においてハーネスが心臓に圧力を負荷するようなものであるように構成されたオーステナイト変態開始および終了温度AS,AFを有する。
【0078】
治療上の範囲内で負荷される圧力は、本願明細書においては、心臓のような臓器に負荷するときに、この臓器における利点に結びつくような充分な圧力であると定められる。一つの実施例において、心臓ハーネスのための治療上の範囲は約5〜20mmHgである。より好ましくは、治療上の圧力は約7〜15mmHgである。
【0079】
ニチノール製心臓ハーネスの他の実施例においては、ハーネスが、約30〜33℃である室温より低いオーステナイト変態開始温度ASを有するように処理される。このように、オーステナイト相の硬化特性は、ハーネスの取り付けの間にハーネスおよび心臓が相対的に低い室温にさらされる場合においても、ハーネスによる心臓の抱え込みを助ける。むろん、取り付けが完了してハーネスが患者の体温に暖まると、オーステナイト相の比率が上昇し、かつハーネスが負荷する圧力もそれに応じて上昇する。さらに他の実施例においては、室温より低いオーステナイト変態開始温度ASを有するハーネスは、ハーネスが作動の間には実質的に完全にオーステナイト相であるように、体温より低いオーステナイト変態終了温度AFを有する。あるいは、ハーネスが部分的に少なくともマルテンサイト相であるように、オーステナイト変態終了温度AFが体温より高いままである。
【0080】
引き続いて図18を参照すると、図12乃至図15に関連して上述したように、表示DSおよびDFは、弛緩期の始めおよび終わりにおいてハーネスが負荷する相対的な圧力を示すために用いられてきた。上述したように、心臓が反対側に再構築するにつれて、心臓の寸法はDS’およびDF’によって示されるように全般的に減少する。さらなる反対側への再構築は、DS”およびDF”で表されている。心臓が反対側に再構築するにつれ、弛緩期の終わりDF、DF’、DF”においてハーネスが負荷する圧力が減少するにもかかわらず、負荷される圧力は所望の治療上範囲内に止まっている。このように、心臓ハーネスは、心臓の寸法が変化するにつれて連続的に調整され、かつ患者の心臓が甚だしく反対側に再構築するときでも患者の心臓に対して治療的に負荷される圧力を提供し続けるように構成される。
【0081】
次に図19を参照すると、室温より低いオーステナイト変態終了温度AFを有しているニチノール製心臓ハーネスの実施例における、圧力とパーセンテージ歪との関係を表すカーブ216が示されている。この実施例においては、ハーネスが変形する間に少なくともいくらかの応力誘起マルテンサイトが形成され得るけれども、このハーネスは取り付けの前および間において実質的に完全にオーステナイト相にある。上述したように、表示DS、DF、DS’およびDF’は、心臓が反対側に再構築するときの、弛緩期の始めおよび終わりにおいてハーネスが負荷する相対的な圧力を示している。図示の実施例においては、心臓ハーネスは、心臓の寸法が変化するにつれて連続的に調整され、かつ患者の心臓が甚だしく反対側に再構築するときでも患者の心臓に対して治療的な圧力を負荷する。
【0082】
上述した実施例において、心臓ハーネスは、患者の心臓上に取り付けられるとともにその上に治療上の圧力を負荷するために、弛緩した伸ばされていない寸法および形状から伸ばされた形状へと変形させられる。そのような実施例においては、ハーネスは、その弛緩している状態の寸法および形状から甚だしく変形することができる。一つの実施例においては、ハーネスが伸ばされていないときの寸法は、治療する肥大した心臓の寸法の約25〜70%である。より好ましくは、ハーネスが弛緩しているときの寸法は、治療する肥大した心臓の寸法の約30〜50%である。
【0083】
上述した原理は、任意の他の実施例に適用することができる。そのような実施例は、上述した実施例の変更を含むことができるし、あるいは全く異なる製品を構成することができる。より詳しくは、上述した実施例の心臓ハーネスの態様は、臓器を再形成するための他のタイプの装置に適用することができる。このように、様々な再形成ハーネスあるいは再形成装置は、他の用途および臓器のために上述した心臓ハーネスの実施例の態様を利用することができる。
【0084】
患者の心臓が鬱血性心不全の間に肥大するにつれて、特定の弁、例えば僧帽弁の環状部は心臓と共に成長する傾向にある。最終的に、弁環状部は、この弁を完全に閉じるためには小葉が十分大きくない程度にまでその寸法が増加し得る。弁の機能不全の原因となる他の要因は、心臓が肥大するにつれて、心臓の幾何学的な形状がいくらか変化することである。心臓の部分、例えば乳頭筋は、心臓の腱索を介して乳頭筋が取り付けられている小葉から外側に動かされる。これらの乳頭筋は、弁葉状部が互いに十分に接近することを防止するように、それらの限界まで引き伸ばされることがあり得る。このように、小葉は完全に閉じることができないと、弁が漏れて、そのような弁漏れは単純に患者の心臓疾患をさらに悪化させる。
【0085】
他の実施例においては、弁の機能不全の予防あるいは減少を助けるために、波形のばね/ヒンジの一つ若しくは複数の列を含んでいるハーネスあるいは鍔が心臓の特定の部分に圧縮力を作用させるように構成することができる。例えば、一つ若しくは複数の波形ヒンジを含んでいる鍔タイプの装置は、AV溝として知られている心臓の領域の周りに嵌合するように特別に構成することができる。AV溝は、全般的に心臓の僧帽弁および三尖弁に隣接している。AV溝の鍔は、弁の環状部寸法を減少に役立ちおよび/または弁の環状部が所望の寸法を越えて肥大することを予防する圧縮力を作用させるために、本願において議論した原理に従って配置し構成することができる。
【0086】
他の実施例においては、乳頭筋の領域において心臓の周りに配置されるように特に寸法決めされかつ構成された複数の波形のばね/ヒンジを有した、乳頭筋バンドを提供することができる。周知のように、乳頭筋は全般的にAV溝と心臓の頂部との間にある。このように、乳頭筋バンドは、乳頭筋のレベルにおいて心臓の直径を減少させる圧縮力を作用させることができる。このことは、弁葉状部の閉鎖を妨げないように、乳頭筋の伸びがより少なくなることを助ける。
【0087】
上述したように、心臓ハーネスは患者の心臓上に軽度の圧縮力を負荷する。AV溝鍔および乳頭筋バンドの実施例は、典型的な心臓ハーネスよりも強力な圧縮力を作用させることが予想される。また、AV溝鍔および乳頭筋バンドを、互いに別個にあるいは互いに同時に、かつ心臓ハーネスとは別個にあるいは心臓ハーネスと同時に用いることができることも予想される。例えば、心臓ハーネスを取り付ける前あるいは取り付けた後に、乳頭筋バンドを心臓上に配置することができる。
【0088】
さらに他の実施例においては、心臓ハーネスの部分に異なる剛性を与えることができるとともに、心臓の特定の部分に特別に向けた力を負荷するためにAV溝鍔および乳頭状のバンドを心臓ハーネスに組み込むことができる。
【0089】
AV溝鍔および乳頭筋バンドの実施例は、ニチノールあるいは他の形状記憶材料から製造することができる。このように、これらの装置は、あまりにぴったりと合わせることを心配せずに心臓上に配置することができる。熱の付加は、それらの装置を収縮させて心臓の各部分の周りにぴったりと合うようにする。加えて、これらの装置は、そのような装置によって期待される有益な効果が長く続くように、最初に取り付けた後で調整することができる。
【0090】
さらに他の実施例において、ニチノールのような材料から製造された再形成ハーネスは、身体内部の様々な臓器の形状を変化させあるいはその機能に影響を及ぼすために用いることができるとともに、それらの臓器上に再形成力を負荷するために適切に調整することができる。
【0091】
比較的肥満した患者が、胃ステープリングとして知られている手技を受けることはまれではない。この手技においては、それに応じて患者の食欲および食事摂取量が減少するように胃の寸法を減少させる。本発明の態様を含む他の実施例においては、患者の胃の少なくとも一部分の周りに実質的にぴったりと合うように構成された胃ハーネスあるいは胃バンドを提供することができる。このハーネスは、実質的に胃の寸法を制限するために胃に圧縮力を負荷する。この装置は、胃の周りに比較的ゆるく取り付けるとともに、次いで胃の周りでぴったりと縮小するように短く加熱することができる。すると、この装置は、胃の寸法を減少させるとともに患者の食欲を減少させる役に立つ力を胃に作用させる。むろん、この装置は、繰り返して熱を与えることによって後から何度でも締め付けることができる。
【0092】
この装置の他の有利な実施例は、身体の様々な領域、例えば脳、心室、あるいは大動脈内の動脈瘤を治療するために用いられる。そのような動脈瘤は、多くの場合に凝固血液等を含んでおり、完全にかつ急激に動脈瘤を再形成しあるいはその最初の形状に戻すことは必ずしも有利ではない。それとは対照的に、動脈瘤をゆっくりとその最初のかつ意図する形状へと付勢することが好ましい。ハーネスタイプのバンドは、動脈瘤の周りに取り付けることができるとともに、その上に軽度の圧縮力を作用させつつ動脈瘤にぴったりと合うるように構成しかつ調整することができる。時間が経過するにつれて、動脈瘤はゆっくりと再形成される。必要に応じ、圧縮バンドを上述したように調整することができる。このように、柔軟なニチノールバンドは、制御可能にかつ安全に動脈瘤を治療することができる。
【0093】
さらに他の実施例においては、ニチノール製のハーネスが網膜の手術において有効である。網膜の手術においては、手術が完了したときに患者の眼球の周りに強膜バンドあるいは強膜バックルを付加することが一般的である。一つの実施例においては、好ましくは環状の強膜のバンドが、通常の体温より低いオーステナイト変態終了温度AFを有したニチノールから製造される。したがって、このバンドは、患者の眼球の周りへの容易な配置のために拡げることができるとともに、自動的に収縮して自分自身を眼球上にぴったりと保持する。他の実施例においては、この強膜バンドは、人間の体温より高いオーステナイト変態終了温度AFを有したニチノールから製造される。したがって、臨床医は、患者の眼にそれをぴったりと合わせるためにバンドを変形させることができるとともに、バンドが眼の寸法に収縮するように熱を付加することができる。このバンドは、熱誘起マルテンサイト状態に冷えると、眼に軽度の圧縮力を作用させるが、依然として比較的柔軟である。
【0094】
さらに他の実施例においては、ニチノール製の再形成ハーネスは、手術直後の腫大の縮小を助ける圧迫包帯のような他の用途に用いることができる。
【0095】
上述した実施例は特にニチノールを考慮して議論してきたが、心臓ハーネスのために様々な他の材料を用いることができるとともに、本願明細書において議論した態様の一部あるいは全てを用い得ることは理解されるべきである。例えば、ニチノールではない超弾性および/または形状記憶材料も、上述したニチノールの態様の少なくともいくつかと、同じでないとしても同様な特性および挙動を呈することができる。例えば、他の材料は、相変態的な超弾性を呈する。いくつかの適切な心臓ハーネス材料には、オリゴ(e−カプロラクトン)、ジメタクリレート、エルジロイ(Elgiloy:商標)、チタンおよびタンタルのような金属およびポリマーが含まれる。
【0096】
上述の実施例の装置は、複数のヒンジあるいはばね要素を含むものとして記述してきた。しかしながら、ハーネスが収縮できるようにする様々な形状および構成が受け入れ可能であることは理解されるべきである。例えば、他の実施例においては、ハーネスタイプの装置を拡大可能な、編み込まれたフィラメントから製造することができる。そのような実施例は様々な材料から製造することができるが、ニチノールのような形状記憶/超弾性材料を用いる場合には、これらの装置は上述した原理および特性を活用することができる。
【0097】
好ましい実施態様および実施例に関して本発明を開示したが、本発明が特に開示した実施例を越えて他の実施例および/または本発明の使用、明らかな変更、およびそれの均等物へと広がることは当業者がよく理解するところである。さらに、本発明の数多くの変形例を詳細に図示しし記載したが、本発明の範囲内にある他の変更は、この開示に基づいて当業者には直ちに明らかとなる。また、実施例の特定の特徴および態様の様々な組合せあるいはサブコンビネーションを作ることができるとともに依然として本発明の範囲内にあることが予期される。したがって、開示された発明の異なるモードを形づくるために、開示された実施例の様々な特徴および態様を互いを組み合わせあるいは置き換ることができることは理解されるべきである。このように、本明細書に開示された本発明の範囲が上述した特別に開示された実施例によって限定されるべきではないが、以下の請求の範囲を公正に読むことのみによって決定されるべきであることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】心臓ハーネスがその上に配置された心臓を模式的に示す図。
【図2】弛緩した状態および張力下にあるばねヒンジを示す図。
【図3】平坦なシート材料から切断された心臓ハーネスの一実施例を示す図。
【図4】図3の心臓ハーネスを心臓の周りにぴったりと合う形状とした状態を示す図。
【図5A】テスト装置上に配置された一実施例の心臓ハーネスの要部を弛緩した状態で示す図。
【図5B】図5Aに示した部分を伸ばした状態で示す図。
【図6A】典型的な波形ばねの応力/歪カーブを示す図。
【図6B】図5Aおよび図5Bに示した一実施例の心臓ハーネスの応力/歪カーブを示す図。
【図7】他の実施例の心臓ハーネスの要部を示す図。
【図8】他の実施例の心臓ハーネスの要部を示す図。
【図9】図8中の破断線9−9に沿った断面図。
【図10】図9に示した部分を引張り状態で示す図。
【図11】ステンレス鋼材料の応力/歪カーブを略示する図。
【図12】ある材料の性質を略示している応力/歪カーブおよびこの材料から形成された心臓ハーネスのたわみを模式的に示す図。
【図12A】図12の応力/歪カーブおよび他の実施例の心臓ハーネスのたわみを模式的に示す図。
【図13】オーステナイト変態終了温度より高い温度におけるニチノールの例示的な荷重負荷/除荷カーブを示す図。
【図14】熱的に誘起されたニチノールの応力/歪カーブを示す図。
【図15】熱的に誘起されたニチノールの応力/歪カーブおよびそして、ニチノールの特性を活用した一実施例の心臓ハーネスの性質を示す図。
【図16】心膜と心臓壁との間に暖かい流体を注入する方法および装置を示す図。
【図17】心臓上に配置された心臓ハーネスを電気的に暖めて調整する方法および装置を示す図。
【図18】一実施例の心臓ハーネスのテストデータを表す一連のカーブを示す図。
【図19】他の実施例の心臓ハーネスのテストデータを表しているカーブを示す図。
【0001】
本発明は、心不全を治療する装置に関し、より詳しくは、患者の心臓の少なくとも一部分の周りにぴったりと合うように構成される心臓ハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
鬱血性心不全(「CHF」)は、組織の代謝需要、特に酸素需要を満たすために充分な流量の血液を心臓が供給できなくなることによって特徴づけられる。CHFの一つの特徴は、患者の心臓の少なくとも一部分の再構築にある。この再構築には心臓壁の寸法、形状および厚みの物理的変化が含まれている。例えば、損傷した左心室は、心筋の一部に局所的に薄くなって伸びた部分を有することがある。心筋が薄くなった部分にはたいてい機能的な障害があるため、他の部分がそれを補おうとする。その結果、心筋の他の部分は、心筋に障害領域があるにも関わらず心室の拍出量が維持されるように肥大し得る。そのような肥大は、左心室がいくらか球面状の形状を呈するようにする。
【0003】
心臓の再構築は、多くの場合に心臓壁を高められた壁張力あるいは応力にさらし、それが心臓の機能的な性能をさらに損なわせることになる。多くの場合、心臓壁は、そのように増加した応力によって生じる障害を補うためにさらに肥大化する。このような悪循環が生じると、肥大がさらに肥大してより重い機能的な障害に至る。
【0004】
歴史的に、鬱血性心不全は様々な薬物によって管理されてきた。心送血量を改良するための装置もまた用いられてきた。例えば、左心室のアシストポンプは心臓が血液をポンプ送りすることを助ける。マルチチャンバペーシングもまた、心室の拍動を最適に同期させて心送血量を改善するために用いられてきた。様々な骨格筋、例えば広背筋が心室のポンプ動作を助けるために用いられてきた。研究者および心臓外科医はまた、心臓の周りに配設される人工的な「帯」を試みてきた。そのような構想のうちの一つは、心臓に巻きつける人工的な「ソックス」あるいは「ジャケット」である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した装置のいくつかが明るい展望を掴んだが、再構築した心臓がさらに再構築することを防止し、および/または病んでいる心臓の反対側への再構築を助けるために、この分野においてはCHFを治療するための装置の必要性が未だに存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様においては、臓器を再形成するための装置が提供される。この装置の再形成部材は弾性材料から成り、かつこの弾性材料は実質的に臓器の表面と同じ環境条件下にあるように臓器の少なくとも一部分の周りに配置されるべく構成される。この弾性材料は、a)環境条件が閾値レベルを越えると変化し、b)閾値レベルを越えた状態から変化のないレベルに戻ると少なくとも部分的に変化した状態に止まる、という弾性的な特性を有する。
【0007】
他の実施例において、臓器に力を作用させる臓器再形成装置は、弛緩している形状から変形した形状へと臓器により付勢されるように臓器に接触して配置されて、臓器に曲げ力を作用させるように構成された曲げ部材を備える。この曲げ部材は、第1の弾性たわみ範囲および第2の弾性たわみ範囲を有するとともに、ある時点においては一つのたわみ範囲においてのみ作動し得る。さらにこの曲げ部材は、入力に応答して第1および第2の弾性たわみ範囲間で変移する。
【0008】
本発明の他の態様においては、形状記憶材料から成るハーネスを提供する段階と、形状記憶材料が全般的にマルテンサイト相にある間に臓器の周りにハーネスを配置する段階とを備える方法が提供される。さらにこの方法は、形状記憶材料を全般的にオーステナイト相に変態させてハーネスが臓器の表面を抱え込むようにするために、形状記憶材料の温度を上昇させる段階をさらに備える。
【0009】
さらに他の態様によると、最初の形状から所望の形状へと臓器を再形成する方法が提供される。再形成ハーネスは臓器の少なくとも一部分の周りに配置される。この配置は、ハーネスの弾性たわみ範囲内における変形に応答する再形成力がハーネスから臓器に負荷されるように、ハーネスを弾性的に変形させる段階を含んでいる。再形成力は、初期形状から、この初期形状と所望する形状との間の中間形状へと臓器を付勢する。臓器が中間形状を呈すると、中間形状から所望する形状に向かって臓器を付勢するために変更されたたわみ範囲内で再形成力が作用するように、ハーネスの弾性たわみ範囲が変更される。
【0010】
本発明のさらに他の態様によると、本発明は臓器上に力を作用させる臓器形成装置を提供する。臓器が曲げ部材を弛緩しているときの形状から拡大して変形した形状へと付勢するように曲げ部材は臓器の少なくとも一部の周りに配置されるべく構成され、かつ曲げ部材は臓器の圧迫を生じさせる曲げ力を臓器上に作用させる。曲げ部材は、作動温度範囲においてその材料温度が上昇すると剛性が増加するように構成された材料から成る。
【0011】
さらに他の態様によると、材料は形状記憶材料から成る。
【0012】
本発明の他の態様によると、本発明の方法は、弛緩しているときの形状を有した形状記憶材料から成るハーネスを提供する段階、およびこのハーネスを臓器の周りに配置する段階を備える。この配置する段階は、臓器の少なくとも一部分の周りにハーネスがぴったりと合ってハーネスが変形に抗して臓器上に圧力を負荷するように、ハーネスを弛緩している形状から拡大させて変形させる段階を含む。形状記憶材料は、臓器の温度にあるときには全般的にオーステナイト相にある。
【0013】
本発明のさらなる特徴および効果は、添付の図面および請求の範囲と共に考慮すると、以下の好適な実施例の詳細な説明から当業者にとって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本願出願人の係属中の出願である「鬱血性心不全を治療するための拡大可能な心臓ハーネス」(シリアルNo.09/634043,2000年8月8日出願)において議論したように、病んでいる心臓の壁応力を軽減することによってそのような心臓の再構築を妨げあるいは反対側に再構築できるようにすることが期待されている。なお、この参照によって上記出願の全体を本明細書に開示したものとする。本出願は、特定の実施例、製造方法、使用方法、およびそのような心臓壁の応力を減少させる装置の利点について議論する。追加の実施例および態様はまた、本願出願人の係属中の出願「心不全を治療する装置」(シリアルNo.10/242,016,2002年9月10日出願)において議論されているが、この参照によってその全体を本明細書に組み込んだものとする。
【0015】
図1は、心臓ハーネス32の形態の心臓壁応力低減装置を適用した哺乳類の心臓30を示している。この心臓ハーネス32は、心臓30に外接するとともに、壁応力を軽減するための軽度の圧縮力を集団で心臓上に負荷する一連のヒンジあるいはばね要素34を備えている。
【0016】
本明細書において用いる「心臓ハーネス」という用語は、心臓周期の少なくとも一部分の間に心臓上に圧縮力を負荷するべく患者の心臓上にぴったりと合わされる装置を指す、広い意味の用語である。心臓上にぴったりと合うことが意図された、従来技術において「ガードル」、「ソックス」、「ジャケット」等と呼ばれている他の装置もまた、この「心臓ハーネス」の意味に含まれる。
【0017】
図1に示した心臓ハーネス32は、充填の間に心臓30が膨張するにつれて変形するように構成されたヒンジあるいはばねヒンジと呼ばれる一連のばね要素34を有した、少なくとも一つの波形の糸状体36を備えている。各ヒンジ34が実質的に一方向の弾性をもたらすので、それは一方向に作用し、その方向に対して垂直な方向にはあまり弾性を作用させない。例えば、図2Aは一実施例のヒンジ部材34が弛緩した状態を示している。このヒンジ部材34は、中央部分40および一組のアーム42を有している。アームが引っ張られると、図2Bに示したように曲げモーメント44が中央部分40上に負荷される。この曲げモーメント44はヒンジ部材34を弛緩した状態に戻るように付勢する。典型的な糸状体がそのような一連のヒンジを有しており、かつヒンジ34が糸状体36の方向に弾性的に広がりかつ縮むように適合されていることに注目されたい。
【0018】
図1に示した実施例においては、ばね要素34の糸状体36が、ばね要素を形成するために変形させられた押出加工ワイヤから製造されている。図1が互いに隣接して織り交ぜられた糸状体36を示しているが、追加の実施例においては、隣接する糸状体36が互いにかぶさったり接触したりしないことが理解されるべきである。
【0019】
図3および図4は、他の好ましい実施例の心臓ハーネス50を、その製造の間における2つの時点において示している。例示した実施例において、ハーネス50は、最初に比較的薄い平坦なシート材料から形成される。ハーネスを形成するために任意の方法を用いることができる。例えば、一つの実施例においてはハーネスが材料から光化学的にエッチングされ、他の実施例においてはハーネスが薄いシート材料からレーザ切断される。図3および図4に示した実施例は、超弾性材料であって形状記憶特性を呈するニチノールの薄いシートからエッチングしたものである。平坦なシート材料は型、金型等の上に掛けられ、概ね心臓の少なくとも一部分の形を取るように成形される。
【0020】
図1および図4を参照すると、例示の実施例の心臓ハーネス32、50は、患者の心臓の底部領域に係合してその上にぴったりと合うように寸法決めされ構成された底部52と、患者の心臓の頂点部分に係合してその上にぴったりと合うように寸法決めされ構成された頂部56と、ベース部と頂部との間の中間部分58とを備えている。
【0021】
図3および図4に示した実施例においては、ハーネス50は波形ワイヤの糸状体あるいは列36を備えている。上述したように、この波形は所望の方向において弾性的に屈曲可能なヒンジ/ばね要素34を有している。いくつかの糸状体36は相互接続要素60によって相互に接続されている。相互接続要素60は糸状体36の互いの位置の保持を助けている。好ましくは、相互接続要素60は隣接するいくつかの糸状体36が相対的に動けるようにする。
【0022】
上述したように波形のばね要素34は、心臓30の膨張に抗する力を作用させる。ばね要素が作用させる力は集合して心臓を圧縮し、心臓が膨張するときの心臓の壁応力を軽減する。したがって、ハーネスは心臓の作業負荷の減少を助け、心臓が患者の身体を介してより効果的に血液をポンプ送りできるようにして、心臓が自分自身で治癒する機会を与える。壁応力を減少させるべく心臓を穏やかに圧縮する力を生成するために、いくつかの配置および構成のばね部材を用いることができることは理解されるべきである。例えば、ばね部材を心臓あるいはハーネスの周りの一部分にのみ配設することができる。
【0023】
理解できるように、ヒンジ/ばねの様々な設計および配置を心臓ハーネスの実施例に用いることができる。図5Aおよび図5Bは、テスト装置66上に配設した心臓ハーネス64の他の実施例の要部62を示している。この部分62は、弛緩した状態(図5A)および変形し拡がった状態(図5B)で示されている。この実施例において、心臓ハーネス64は、ある角度をなす相互接続要素68によって互いに接続された、波形のばね要素34の複数の列36を備えている。好ましくは、相互接続要素68はまた、ばねとして作用するように撓むことができる。これらの図面から分かるように、テスト装置66による外向きの力がハーネス64を変形させると、ばね要素34の波形の列36および相互接続要素68の両方が変形する。このように、ばねの波形の列36は、相互接続要素68を介して接続されている場合であっても相対的に動くことができる。しかしながら、相互接続要素68は列36の間で応力を分配する。
【0024】
図5Aおよび図5Bに示した実施例はまた、全体的に変形する有利な特徴を呈している。次に図6Aを参照すると典型的波形のばねの応力/歪曲線69が示されている。この図から判るように変形(歪)が増加するにつれて対応する応力も増加する。しかしながら、図5Aおよび図5Bの実施例は、図6Bに示した応力/歪特性により類似した特性を呈する。図示したように、変形を開始させるために初期応力荷重70を負荷した後においては、ハーネスの更なる変形は全般的に平坦なあるいは傾斜の小さい応力プラトー72上で達成される。この応力負荷は、ハーネスが心臓上に作用させる力あるいは圧力に対応している。作動の際には、患者の心臓の周りにぴったりと合わせるときのようなハーネスの初期の変形が完了すると、ハーネスは応力/歪曲線の応力プラトー部分上に見い出される最大応力値の弾性変形範囲において作動する。このことは、装置の安全性を向上させるのに有効である。その変形作動範囲において応力プラトー72がある応力レベルを決して上回らないようにハーネスが設計されているからである。したがって、この構造を有するハーネスは、予め定められている「安全な」圧力レベルより高い圧力を決して心臓上に作用させないように設計される。例えば、一つの実施例においては、装置の作動範囲を上回る変形に伴うプラトー応力が、装置が作用させる圧縮力のうち心臓の締めつけを生じさせ得る予め定められた上限を決して上回らない圧縮力に対応するように、ハーネスが構成される。
【0025】
次に図7を参照すると、他の実施例の心臓ハーネス74が示されているが、ハーネスの右側部分Rは心臓の右側のためにカスタマイズされ、かつ左側部分Lは心臓の左側のためにカスタマイズされている。心臓の筋肉線維は、概ね一方向に収縮し膨張することが知られている。心臓の右側の筋肉線維は第1の方向にある略らせん方向の配向に従い、心臓の左側の筋肉線維は第2方向にある略らせん方向の配向に従う。図7に示した実施例においては、波形の列36は相互接続要素76, 78によって接続されているが、相互接続要素76、78は心臓の左側および右側において筋肉線維の方向的な伸縮とよりよく協働するように特別に配置されている。より具体的には、相互接続要素は筋肉線維の伸縮方向に対してだいたい斜めとなるように、より好ましくは伸縮方向に対して実質的に垂直であるように配置される。これにより、図示した実施例においては、ハーネス74の左側Lの相互接続要素76が、ハーネス74の右側Rの相互接続要素78とは異なる方向に延びている。このように、一方向に収縮する筋肉繊維は、ばね要素34の波形の列36および相互接続要素76、78の両方のばね特性を活用することができる。
【0026】
次いで図8〜図10を参照すると、心臓ハーネス82の追加の実施例の要部80が示されている。より具体的には、図8〜図10は、ばね要素34の要部の糸状体36を示している。この実施例においては、ばね要素34が「鍵穴」構造に構成されている。図8および図9に示すように、ばね要素の幅wはその厚みtよりも大きい。これにより、ばね要素34の厚みtに幅wを除した縦横比の値は1よりも大きい。図9に示したように、糸状体36が弛緩した状態においては、ばね要素34は全般的に平面内にある。図10を参照すると、糸状体36が長手方向に伸びるときにはばね要素34が面外変形を呈する。ばね要素の要部は心臓の心外膜に向かって内側に突出する。図示した実施例においては、隣接するばね要素34の連続した頂部84a〜84dおよび谷部86a〜86cが全般的に反対方向に突出している。
【0027】
他の実施例においては、心臓ハーネスの一つの、いくつかの、あるいは全ての糸状体が、伸びている間に面外変形を生じるように構成された縦横比を有することができる。そのような実施例においては、内側に突出している部分は心臓壁に向けられ、ハーネスと心臓との間の摩擦を増加させる。このように、面外変形は心臓に対するハーネスの固定を助ける。好ましい実施例において、ハーネスの底部にある若しくは底部に隣接しているばね要素の少なくとも一つの糸状体は、この糸状体が長手方向に変形したときにばね要素が面外変形を呈するように構成される。このように、固定力はハーネスの底部あるいはその近傍に集中している。さらに他の実施例においては、糸状体の1つあるいはいくつかのばね要素がそのような面外変形を呈するように構成される。
【0028】
図8〜図10に示した実施例において、縦横比は約1.8〜2.0である。しかしながら、心臓に対するハーネスの固定を助けるために望ましい程度の面外変形を得るべく、他の範囲の縦横比を選択できることも理解されるべきである。図8〜図10に示した実施例は、概して長方形の断面形状を有している。卵形のような他の断面形状を有するばね要素が面外変形を呈し得ることもまた理解されるべきである。
【0029】
心拍周期の間における心臓壁の応力は、患者の血管系にポンプ送りされる血液で左心室が満たされる弛緩期DFの終わり若しくはその近傍において最も大きい。反対に、心臓壁の応力は、心室が満たされる前の弛緩期DSの初めにおいて最も低い。以下により詳細に説明する実施例において、心臓ハーネスは、負荷する力が弛緩期DSの初めにおいて最小となり、かつ弛緩期DFの終わり若しくはその近傍において最大となるように、種々の材料の特性を活用して構成することができる。
【0030】
次に図11を参照すると、ステンレス鋼のような典型的な構造材料の応力/歪曲線90が示されている。図示の曲線は、その材料の弾性変形範囲において負荷された特定の応力σに関連する歪εを示している。明らかなように、特定の応力σの負荷が材料を変形させると、その材料の特定のパーセンテージ歪εが生じる。応力σが解放されると材料はその弛緩状態92に戻る。
【0031】
図11に示したように、上述した実施例の一つ若しくは複数と同様の構造を有する心臓ハーネスを構成するためにこの材料を用いるときに、この材料の応力/歪特性は有効である。上述したように、そのようなハーネスは鼓動している心臓上に配置されるように特別に構成される。確かに、心臓の寸法は弛緩期の始まりDSと弛緩期の終わりDFとの間で変化する。図示した実施例においては、弛緩期の始まりおよび終わりDS,DFにおける心臓(およびハーネス)の寸法に関連するハーネス材料の応力および歪条件を識別するために、DSおよびDFの表示が応力/歪曲線90に付加されている。ハーネスは、鼓動している心臓と共に膨張しかつ収縮するので、DSおよびDFを含むたわみ範囲において作動することが予想される。
【0032】
図11に示したように、歪εのレベルは、弛緩期の初めDSよりも弛緩期の終わりDFの方が高い。予想されるように、応力のレベルもまた弛緩期の初めDSよりも弛緩期の終わりDFの方が高い。このように、ステンレス鋼製ハーネスは、弛緩期DSの始めよりも弛緩期DFの終りにおいてより大きな圧縮力を作用させる。このように、最も大きな壁応力が心臓ハーネスの最も大きな圧縮力によって軽減されるとともに、より小さな壁応力が著しく小さい圧縮力によって軽減される。
【0033】
図11に示した実施例をステンレス鋼ハーネスとの関連において記述したが、他の金属、ポリマー材料、および複合材のような様々な材料においても、同様の応力/歪線図を予想できることは理解されるべきである。このように、病んでいる心臓のために上述した利点を獲得するべく、多種多様な材料を用いることができる。
【0034】
次に図12を参照すると、他の応力/歪カーブ94は、ステンレス鋼がその弾性限度を越えて変形したときの挙動を示している。塑性変形が生じた後、この材料はその最初の寸法には戻らないが、リコイルする。新しい弾性範囲100は、最大変形点102と最大位置ずれ点104との間に定まる。この材料は、新しく定まった弾性範囲100において、図11を参照しつつ上述したものと実質的に同様にふるまう。図12に表されている新しく定められた弾性範囲100はまた、多くの場合に「ヒステリシス」と呼ばれる現象を表している。ここで、材料は、内部摩擦のような要因によって、荷重を除くとき(103)には荷重を負荷するとき(108)とは僅かに異なるカーブにしたがう。この種の挙動は様々な材料において一般的であり、いくつかの材料においては他の材料よりも顕著である。
【0035】
図12のカーブ94は、患者の病んでいる心臓よりも小さい寸法および/または形状に製造されたステンレス鋼製の心臓ハーネスに関連付けられる挙動および応力を記述することができる。ハーネスは、患者の心臓上に取り付けられるので、ハーネスの最大変形点102が弛緩期DFの終わりにおける心臓の寸法および形状に実質的にマッチするように、心臓の周りへのぴったりと合った装着のために塑性的に変形する。このようにして、ステンレス鋼製の心臓ハーネスは、心臓に嵌着させるための特注寸法に合わせることができる。
【0036】
図11において用いたように、DSおよびDFの表示は、ハーネスが鼓動している心臓と共に膨張しかつ収縮するときに、弛緩期の始まりおよび終わりDS,DFにおける心臓のサイズに関連する応力および歪みを識別する。また、図11において議論したように、ハーネスは終了後弛緩期の始めDSよりも弛緩期の終わりDFにおいて大きな圧縮力を作用させる。このように、最も大きな心臓壁応力の軽減は弛緩期の終わりにおいてもたらされる。作動の間、ハーネスは弛緩期の始まりおよび終わりDS,DFに関連する寸法の間で膨張しかつ収縮する。このように、ハーネス材料はDSとDFの間の新しい弾性範囲100の一部分のみを横切る。この部分は、拡張期の弾性範囲110として図12に表されている。図示のように、ヒステリシス現象によって、DSにおける歪に関連する応力レベル111は、変形したハーネス材料の新しい弾性範囲100の荷重負荷/除荷カーブ106,108上のポイント107,109間にある。
【0037】
研究が示すところでは、心臓壁応力の除去は病んでいる心臓、特に肥大した心臓に著しい利益をもたらす。壁応力が軽減されるので、心筋はより良好に休息することができる。また、心臓のポンプ負荷も著しく減少する。肥大した心臓の壁応力を減少させることは、心臓の肥大の停止を助けるばかりでなく肥大を逆進させ、あるいは心臓の再形成を助ける。このように、心臓ハーネスは、再形成部材あるいは再形成ハーネスとして機能し、病んでいる心臓を再形成しあるいはその反対側への再構築を助ける。
【0038】
心臓が反対側に再構築すると、心臓の寸法は減少しようとし、したがって弛緩期の始めおよび終わりにおける心臓の寸法が変化する。例えば、図12には、その寸法が最初はDSおよびDFで表されていた肥大した心臓が反対側に再構築して小さくなる実施例が示されている。より小さく、反対側に再構築した心臓の弛緩期の始めおよび終わりにおける寸法が、それぞれDS’およびDF’で表されている。
【0039】
図12に示したように、反対側に再構築した心臓に対しても、ハーネス材料は弛緩期の終わりDF’において最も大きな応力を呈し、したがってハーネスの圧縮力は弛緩期の終わりDF’において最も大きい。しかしながら、反対側に再構築した心臓の弛緩期の始まりおよび終わりDS’,DF’の両方においてハーネスから負荷される圧縮力の大きさは、反対側に再構築する前の心臓に負荷される圧縮力の大きさより比較的小さい(DS,DFを参照)。実際に、図示した実施例では、反対側に再構築した心臓の弛緩期の始めDS’においてハーネスは実質的に力を作用させない。
【0040】
心臓壁の応力を軽減するために圧縮力を継続して負荷することにより、心臓が反対側に再構築し続けてさらに小さくなることが期待される。このように、さらに反対側に再構築した心臓の弛緩期の始めおよび終わりにおける寸法は、図12においてDS”およびDF”として表されているが、前回の測定よりもさらに小さい。図示した実施例においては、弛緩期DF”の終わりにおいて圧縮力が心臓上に作用しているが、弛緩期の始めにDS”においては実質的に力が作用していない。実際に、心臓は、弛緩期の初めにおいてはハーネスの膨張範囲内においてはもはや動かず、壁応力を軽減するために著しい圧縮力が心臓上に作用するように材料の弾性位置ずれ範囲116内において作動する。しかしながら、同時に、弛緩期の始めDSにおいて実質的により少ない圧縮力が心臓壁上に作用するように、ハーネスを寸法決めし配置することができる。
【0041】
上述した実施例においては、心臓の反対側への再構築を容易にするための心臓ハーネスを示してきた。しかしながら、心臓が反対側に再構築するに連れて、ハーネスが作用させる圧縮力の大きさが図12に示したようにだんだん小さくなる。したがって、上述した実施例は心臓が反対側に再構築する範囲を制限し得る。
【0042】
他の実施例においては、ニチノールとして知られているニッケルチタン合金のファミリーのうちの一つのような、形状記憶/超弾性材料から心臓ハーネスを製造することができる。そのようなハーネスは、反対側への再構築の結果として心臓がより小さくなったときに、容易に調節することができて繰り返し患者の心臓の周りに締め付けることができるように構成することができる。このようにして、ハーネスが作用させる軽度の圧縮力の利点を心臓の広い範囲の寸法において獲得することができるとともに、心臓の反対側への再構築の程度がハーネスの弾性範囲によって制限されることがない。
【0043】
ニチノールは、心臓ハーネスの用途に特に適した構造的および機械的な特性を有した材料である。これらの特性を理解するために、かつニチノールから製造された実施例をよりよく記載するために、ニチノール合金の挙動の基本的な理解が有益である。
【0044】
ニチノールは、応力が負荷されると可逆的に結晶構造を変化させて実質的な塑性変形なしに大きく弾性変形することができる、変態的な超弾性を呈する。この種の超弾性は、材料の一つの結晶構造が他の結晶構造に変態するときに現れる。ニチノールにおいては、第1の結晶構造あるいは相がオーステナイト相として知られ、かつ第2の結晶構造がマルテンサイト相として知られている。
【0045】
上述したように、ニチノール材料のファミリーは様々なニッケルチタン合金を含んでいる。この合金は全般的に同様の挙動を呈するが、その特性は特定の合金同士で幾分異なっている。ニチノール合金において共通する一つの特徴は、比較的より高い温度においてニチノールがオーステナイト相に止まり、かつ比較的低い温度においてニチノールがマルテンサイト相に止まることである。より詳しくは、オーステナイト変態終了温度AFより高い温度において、歪みのないニチノールはオーステナイト相にあることが期待される。マルテンサイト相はそのような温度では安定せず、材料の温度がオーステナイト変態終了温度を上回ると自動的にオーステナイト相に変態する。実際には、マルテンサイト相は加熱されるとオーステナイト相に変態する。マルテンサイト相からオーステナイト相への変態は、オーステナイト変態開始温度ASにおいて始まる。オーステナイト変態終了温度AFにおいては、相変態は実質的に完了し、平衡状態にあるニチノールは実質的にオーステナイト相に完結している。この材料の一つの状態において、ニチノール材料は全般的にマルテンサイト相にある。他の状態において、ニチノール材料は全般的にオーステナイトである。さらに他の状態において、ニチノール材料は部分的にオーステナイトであり部分的にマルテンサイトである。
【0046】
しかしながら、材料に応力を誘起させることにより、終了温度AFより高い温度において、オーステナイト相のニチノールをマルテンサイト相のニチノールに変態させることができる。図13は、オーステナイト変態終了温度AFより高い温度におけるニチノールの典型的な荷重負荷および除荷カーブ120,122を示している。上述したように、安定し平衡状態にあるニチノールは、そのような温度においてオーステナイト相にある。応力が負荷されると、オーステナイト相のニチノールは、その弾性変形範囲を示している略線形な経路124に沿って弾性的に変形する。臨界降伏応力において、オーステナイト相はマルテンサイト相への変態を開始する。この相変態の間、負荷された応力はほぼ同じであるが材料の変形は一定的に増加する。このように、ニチノールは、全てのオーステナイト相がマルテンサイト相に変態するまで荷重プラトー130を形成する。ニチノールのこの状態は、応力誘起マルテンサイトとして知られている。オーステナイト相からマルテンサイト相への変態が完了すると、カーブは、マルテンサイト相の弾性変形範囲に相当する略線形に増加する経路132を成す。このカーブは最大弾性変形点134において終端する。
【0047】
上述したように、マルテンサイトはオーステナイト変態終了温度AFより高い温度において不安定である。応力誘起マルテンサイトが除荷されると、材料は除荷カーブ122に沿って自動的にそのオーステナイト相に戻る。引き続いて図13を参照すると、材料を除荷するときには、マルテンサイト相が弾性的に除荷されるにつれて最初は線形の経路136にしたがう。注目すべきことは、ヒステリシスが生じることによって荷重負荷カーブおよび除荷カーブ120,122が実質的に重ならないということである。第2の臨界応力点138において、マルテンサイト相はオーステナイト相への変態を開始する。荷重を負荷するときと同様に、マルテンサイト相からオーステナイト相への変態は略平坦な除荷プラトー140に沿って続く。マルテンサイト相が完全にオーステナイト相に変態すると、オーステナイト相の材料は除荷カーブの略線形な他の部分142に沿って弾性的に除荷される。
【0048】
図14は、アニールした後にマルテンサイト変態終了温度MFより低い温度に冷却したニチノール材料の応力/歪曲線150を表している。オーステナイト相は、そのような温度では安定していない。オーステナイト相のニチノールは、ある温度範囲を通過して冷却されるとマルテンサイト相に変態する。オーステナイト相からマルテンサイト相への変態は、マルテンサイト変態開始温度MSにおいて始まり、マルテンサイト変態終了温度MFで実質的に完了する。ニチノールのこの相は、熱的に誘起されたマルテンサイト相として公知であり、かつ応力が負荷されたときにはオーステナイト相のニチノールとはいくぶん異なる挙動を呈する。ニチノールを冷却すると、熱的に誘起されたマルテンサイト相ニチノールの特徴である独特な「双晶(twinned)」構造をとる。
【0049】
続けて図14を参照すると、熱的に誘起されたマルテンサイトに応力を負荷するにつれて、マルテンサイト相は最初に略線形の曲線152に沿って弾性的に変形する。臨界応力値154において、マルテンサイト結晶の「双晶(twinned)」構造は真っ直ぐになり始める(「双晶組織の解消(detwinning)」)。双晶組織の解消(detwinning)の間、マルテンサイトニチノールは略平坦な荷重負荷プラトー156を呈する。ひとたび結晶構造において双晶組織の解消(detwinning)が起こると、マルテンサイトニチノールは実質的に線形な別の弾性変形範囲158を呈する。マルテンサイトは、除荷されると弾性的にリコイルする。しかしながら、双晶組織が解消された(detwinned)構造は保持され、マルテンサイトは自動的には双晶構造(twinned arrangement)には戻らない。したがって、図示したように、弾性的な位置ずれが荷重負荷カーブ150に沿って熱的に誘起されたニチノールの最初の寸法および形に戻ることはない。その代わり、弾性的な位置ずれは新たな弾性範囲160を定める。
【0050】
マルテンサイトは、除荷されると、繰り返し弾性的に荷重を負荷しかつ除荷することができるが、図14に示したように新しい弾性変形範囲160に止まる。部分的に双晶組織が解消された(detwinned)熱誘起マルテンサイトでさえ、完全に双晶変形した構造には自動的に戻ることはい。例えば、熱誘起マルテンサイトが図14の荷重負荷カーブ上に図示した変形寸法Xに変形すると、マルテンサイトは部分的にその双晶組織が解消される(detwinned)。次いで材料を除荷すると、マルテンサイトは弾性的にリコイルするが、再び双晶変形(retwin)することはない。実際に、ニチノールは、繰り返して弾性的に荷重を負荷し162かつ除荷する164ことができる新しい弾性範囲X’を有する。
【0051】
上述したように、マルテンサイトはオーステナイト変態終了温度AFより高い温度において不安定であり、かつオーステナイト変態開始温度ASより上の温度にさらされると自動的にオーステナイトに変化し始める。熱誘起マルテンサイトがオーステナイト変態終了温度AFより高い温度に加熱されると、マルテンサイトはオーステナイトへと自然に変態する。しかしながら、材料が応力下にあり、あるいは歪みが与えられると、応力誘起マルテンサイトのように作用して図13に表したように略平坦な除荷プラトー122にならう。例えば、図13および図14の両方を同時に参照すると、図14の地点Xに変形させた熱誘起マルテンサイトをオーステナイト変態終了温度AFより高い温度に加熱すると、マルテンサイト材料はオーステナイトおよび応力誘起マルテンサイトへと変態し、図13に示した除荷カーブ122に沿って変形寸法Xから変形寸法Yへと収縮し始める。材料が寸法Xから寸法Yまで縮小したときに、材料をマルテンサイト変態終了温度MFより低い温度に冷却すると、ニチノールは熱誘起マルテンサイト相および図14に示した挙動に戻り、図14に示した弾性限度として変形寸法Yを保持する。ニチノールはまた、繰り返して弾性的に荷重を負荷し166かつ除荷する168ことができる新しい弾性変形範囲Y' を有する。
【0052】
オーステナイト変態終了温度AFより高い温度においてニチノールの収縮を制御する一つの方法は、ニチノールが特定の寸法を越えて収縮することを防止する障害を導入することである。例えば、ある障害は、ニチノール装置が図13における寸法Yを越えて収縮することを防止する。したがって、図13の除荷カーブ122にならって小さくなるように図14中に寸法Xで表されている熱誘起マルテンサイトをオーステナイト変態終了温度AFより高い温度に加熱すると、この材料は障害によって寸法Yにおいて収縮が止まる。次いで、ニチノール材料は、図14の寸法Yにあるが再び熱誘起マルテンサイト相となるように、マルテンサイト変態終了温度MFより低い温度に冷却することができる。このようにして、熱誘起マルテンサイトの弾性変形範囲は、X’のような第1の範囲からY’のような第2の範囲へと制御可能に変移することができる。
【0053】
上述した変態終了温度AS、AF、MS、MFは、使用する特定のニチノール合金に部分的に関係し、かつこの合金がさらされる熱処理に部分的に関係している。このように、公知の熱処理法を用いることにより、ニチノール合金は、特定のニチノール製心臓ハーネスの実施例において所望されるオーステナイト変態開始温度ASおよび終了温度AFと、マルテンサイト変態開始温度MSおよび終了温度MFとを持つようにカスタマイズすることができる。
【0054】
さらに、この特許明細書の全体にわたって、出願人は、変態温度AS、AF、MS、MFの「機能的な」使用を採用している。そのような機能的な使用は、材料の分子的な分析ではなく心臓ハーネスの実施例において観察されたニチノール材料の挙動に基づいている。例えば、この特許明細書において、機能的なオーステナイト変態終了温度AFは、実質的に完全なオーステナイトニチノールの特性および挙動をその材料が呈し始める温度である。機能的なオーステナイト変態終了温度AFは、ニチノールの100%が分子的レベルにおいてオーステナイト相にあることを必ずしも必要としない。
【0055】
好ましい実施例において、ニチノール材料から製造された心臓ハーネスは、通常の人間の体温より高いオーステナイト変態終了温度AFを有する。そのようなニチノール材料は、ニチノールの特定の合金を用いることにより、および/またはニチノールを公知の方法で適切に熱処理することにより提供することができる。この実施例のニチノールハーネスは、人体の内部にあるときに、好ましくは熱誘起されたマルテンサイト状態にある。
【0056】
熱誘起されたマルテンサイト製のニチノールハーネスは、弛緩しているときに、このハーネスがその上に配置される病んでいる心臓よりも実質的に小さいように寸法決めされる。さらに、弛緩しているときの寸法は、好ましくは、目標としている患者の心臓の寸法より小さいか若しくはほぼ同じである。
【0057】
次に図15を参照すると、この図は図14の熱誘起マルテンサイトの荷重負荷カーブ150の実質的な再現を含んでいるが、ハーネスは、患者の心臓上に取り付けるときに熱誘起マルテンサイトの予想される変形カーブに沿って変形する。ハーネスは、ハーネスをその上に配置する病んでいる心臓より大きいサイズに伸ばされる。例えば、ハーネスの最大変形点Aは、心臓が弛緩期DFの終わりにおいてハーネスを最大限に変形させる点を幾分超えている。
【0058】
図15からわかるように、最初に取り付けたときに、心臓ハーネスは弾性範囲A’によって表される弾性範囲を有している。上述したように、ハーネスは、弛緩期の始めDSと終わりDFとの間の弛緩期弾性範囲170内で作動する。弛緩期の終わりDFにおいてハーネスから負荷される応力172に関連する圧縮力は、弛緩期の始めDSにおいてハーネスから負荷される応力174に関連する圧縮力よりも実質的に大きい。
【0059】
上述したように、軽度の圧縮力の負荷が病んでいる心臓の反対側への再構築を助けるので、心臓の寸法が減少し、それに伴って弛緩期の始めおよび終わりにおける心臓の寸法も減少する。図12に関連して上述したように、図15における表示DS’およびDF’は、反対側に再構築した心臓の弛緩期の始めおよび終わりを表している。図示のように、心臓が反対側に再構築したときには、弾性範囲A’において弛緩期の始めDS’および終わりDF’にハーネスが負荷する圧縮力は、反対側に再構築する前に負荷する圧縮力よりも少ない。したがって、ハーネスによって与えられる利点が減少し、さらなる反対側への再構築が遅くなりあるいは停止する。
【0060】
図示の実施例においては、ニチノールハーネスは、弾性変形範囲A’から新しい弾性変形範囲B’に移動するように調整することができる。ハーネスを調整するためには、ニチノール材料のオーステナイト変態終了温度AFより高い温度にハーネスの温度を上昇させる。ニチノール製再形成ハーネスの温度を上昇させるために熱エネルギを付加する多くの方法がある。例えば、電気や暖かい流体等の負荷によって所望の温度に上昇させることができる。
【0061】
引き続いて図15を参照すると、1つの好ましい実施例において、第1の弾性範囲A’から第2の弾性範囲B’へとハーネスを調整するために、ハーネスを暖かい食塩水あるいは水溶液に浸漬させる。暖かい流体は、オーステナイト変態終了温度AFよりは高いが、身体が短期間その温度にさらされたときに身体を傷つける温度よりは低い温度で供給される。この温浴は、オーステナイト変態終了温度AFより高い温度にニチノール製ハーネスを加熱する。マルテンサイト材料はもはや安定的ではなく、かつハーネスはオーステナイト組織へと自動的に変態し始め、図13の除荷カーブ122に示した挙動を呈する。ハーネスの寸法は縮小するが、最終的には心臓によるさらなる収縮が防止され、ハーネスが弛緩期の終わりDF’において反対側に再構築した心臓の寸法を越えて縮小することを防止する障害として作用する。
【0062】
暖かい流体はすぐに分散し、好ましくはマルテンサイト変態終了温度MFより低い身体の温度へと冷える。したがって、ニチノール製ハーネスは熱誘起マルテンサイト組織に戻り、再び図15のカーブ150に沿った挙動を呈する。しかしながら、ハーネスは心臓の周りにぴったりと合うように縮小する。ハーネスは、点Bで示される最大寸法および範囲B’と同様な弾性変形範囲を有する。このように、弛緩期の終わりDF’においてハーネスが負荷する圧縮力は、ハーネスを最初に患者に取り付けたときの圧縮力のレベルか若しくはそれより高い。圧縮力のこのレベルは有益であり、さらなる心臓の反対側への再構築を開始させる。
【0063】
時間が経過して心臓がさらに反対側に再構築すると、心臓はさらに小さくなる。最終的には、ハーネスが弾性範囲A’において作動していたときに生じたように、さらに反対側に再形成した心臓の弛緩期の始めおよび終わり(DS”およびDF”で表示される)における寸法は、弾性範囲B’において作動しているハーネスがもはや反対側への心臓の再構築をもはや助けないようなものとなる。そのようなときには、ハーネスはオーステナイト変態終了温度AFより高い温度に暖められ、ハーネスが心臓の現在の寸法に収縮し、次いでマルテンサイト変態終了温度MFより低い温度に冷えるように、上述した手順が繰り返される。ハーネスは再び心臓のまわりにぴったりと合い、かつ弾性範囲は範囲B’から新しい範囲C’に変移する。
【0064】
理解できるように、調整プロセスは、所望に応じて、あるいは患者および臨床医が結果に満足する状態に心臓が反対側に再構築するまで、何度も反復することができる。このプロセスはまた、目標とする心臓寸法へと心臓が反対側に再構築するように制御することができる。心臓がその目標寸法に到達したときに弛緩期の初めにおいて実質的に圧縮を作用させないように、ハーネスを構成しかつ操作することができる。
【0065】
図15に示したように、ハーネスが弾性範囲間で変移するとき、例えばハーネスが弾性範囲A’から弾性範囲B’に変移するときには、弾性範囲A’およびB'内で利用可能な応力の範囲は概ね等しいままとなる。しかしながら、ハーネスの歪範囲あるいはたわみ範囲は変移する。このように、新しい弾性範囲においてもハーネスは心臓に対して同じあるいは類似した再形成力をもたらすことができるが、ハーネスの寸法は変化する。したがって、大きさが次第により小さくなる心臓に対し、実質的に同様の再形成力を負荷することができる。
【0066】
この原理は、特にハーネスの安全性を向上させる際に有益である。ハーネスの寸法を変えることができるにもかかわらず、ハーネスの作動範囲における再形成力の最大値が実質的に同じだからである。このように、ハーネスは、この装置を使用する間に再形成力の最大値が予め定められた値を上回らないように好ましく寸法決めされかつ構成される。例えば、一つの実施例において、心臓ハーネスは、心臓上に負荷する圧縮力が決して約20mmHgを上回らないように、治療する病んでいる心臓に対して寸法決めされかつ構成される。他の実施例においては、圧縮力の限界を約15〜17mmHgとすることができる。
【0067】
上述したハーネスの実施例は、その取り付けおよび調整が比較的容易である。心臓の周りにニチノール製ハーネスを取り付けるために、最小限に侵襲性の方法を用いることができる。加えて、臨床医は、この装置を心臓の周りに取り付けるときに不均一にハーネスを変形させあるいは不正確にハーネスを寸法決めすることに関し、過度に心配する必要がない。これは、この装置が心臓よりいくぶん大きい場合でも、この装置が心臓の寸法および形状を包含する弾性範囲内で作動するからである。その上、このハーネスは、心臓の周りにぴったりと合うようにいつでも上述したように容易に調整することができる。
【0068】
他の実施例において、取り付けの間に、臨床医はハーネスが心臓より大きくなるようにハーネスを引き伸ばす。このことは、臨床医が、最小限に侵襲的に、かつ心臓よりも大きくハーネスを変形させることを防止する必要性がほとんど無い状態でハーネスを取り付けられるようにする。ハーネスを心臓の周りに、おそらくは緩く巻き付けた後、臨床医は、ハーネスのオーステナイト変態終了温度AFより高い温度の暖かい流体に心臓およびハーネスを浸漬させる。上述したように、ハーネスは実質的に心臓の寸法および形にならうように収縮する。この流体が身体の温度に冷えるにつれて、ハーネスは再び熱誘起マルテンサイト構造へと冷えて期待する弾性範囲で作動する。このように、臨床医は心臓にハーネスを取り付けるときにほとんど正確性を必要としないが、ハーネスは取り付けられると心臓にマッチして抱え込むように形付けられる。
【0069】
ハーネスの実施例を取り付けて使用する方法のさらなる追加の実施例においては、患者の心臓上にハーネスを取り付けた後、患者の心膜は臨床医によってしっかりと閉じられる。心膜がしっかりと閉じられると、心膜と心臓との間の空間内に単純に暖かい流体を注入することにより、心臓を暖かい食塩水あるいは水溶液に浸漬することができる。暖かい流体がこの空間内に保持されるので、オーステナイト変態終了温度AFより高い温度へと実質的に一様にハーネスを加熱することができる。臨床医は、暖かい流体が冷えて自然に心膜から分散するようにし、あるいは流体を供給するために用いたものと同じ手段を用いることにより心膜から暖かい流体を吸引することができる。心膜が臨床医によって実質的に閉じられない場合でも、必要に応じてハーネスを加熱するために心臓およびハーネスを温湯に浸漬させることができる。
【0070】
上述したように、それ自身が患者の心臓の周りにぴったりと調整されるようにハーネスを暖めるプロセスは、反対側への再構築に適応しかつそれを促進するために繰り返し実施することができる。好ましくは、調整の反復は、まさに議論したように閉じられた心膜と心臓との間に暖かい流体を注入することによって実施される。この施術は、周知の心膜穿刺術手技と同様の外科的手技によって、便利にかつ安全に実施することができる。
【0071】
次に図16を参照すると、ハーネスを暖めるための手技が模式的に示されている。臨床医は、心膜184を含む患者の組織を貫通する針状の先端部分182を有した装置180を使用する。先端部分182の開放している遠位端186は、心膜184と心臓30の外壁との間に配置される。暖かい流体の供給源、例えば注射器190は管192を介して針182に連通しており、暖かい流体194は心膜184と心臓30との間の空間内にこの供給源190から供給される。ハーネスの寸法を調整するために流体194がハーネス32を暖めた後、流体の少なくともいくらかを引き出すために臨床医は注射器190を引く。あるいは、身体によって自然に処理されるように流体を所定位置に残したままとすることもできる。実質的にハーネス全体への適用を確実なものとするために、この行為を一度実行することもできるし、暖かい流体を心臓の周りのいくつかの位置に導入することもできる。
【0072】
次に図17を参照すると、ハーネスを暖めて調整するための他の実施例の方法および装置200が示されている。図示の実施例においては、少なくとも2つのリード線202がハーネス32に接続されている。内部コントローラ204が患者の体に配置されてリード線202への電流の流れを制御する。内部コントローラ204を起動させて電流を流すために体外の無線制御装置206を用いることもできる。一つの実施例においては、リード線202間に異なる電圧を印加すると、ハーネス32を流れる電流が生じて、調整のためにハーネスを付勢するのに十分な所望の温度へとハーネスを暖める。電圧は、心臓自身の電気的システムによるポンピングの間の電気的な刺激を著しく遮らないように、好ましく選択される。
【0073】
図示の実施例においては、2つのリード線202がハーネス32上に配設されており、一方がハーネスのベース部52の近傍にあり他方が頂点56の近傍にある。追加の実施例においては、いくつかのリード線が設けられ、かつ内部コントローラが任意の一時点において特定の組のリード線だけが起動されるように制御システムに従って選択的にリード線を起動させる。このように、内部コントローラは、心臓上のハーネスがどのように調整されるかを制御する。例えば、一つの実施例においては、心臓のベース部近傍のリード線が頂点近傍にあるリード線よりも先に作動する。このようにして、ハーネス32の寸法がベース部52から頂点56に向かって調整される。このことは、心臓上におけるハーネス位置の維持を助ける。それは、ハーネスがベース部の周りよりも頂点の周りにおいてよりきつく製造されたときに、ハーネスがベース部の方に引っ張られる傾向が増加して心臓30上へのハーネス32の嵌着が損なわれ得るからである。
【0074】
上述した実施例においては、ニチノール製心臓ハーネスの挙動が、熱エネルギーの負荷に応答して図13および図15のカーブの間で移動できるものとして示されてきた。議論した実施例は、図13のカーブに沿った挙動を得るためにニチノールの温度をオーステナイト変態終了温度AFより高い温度に上げ、次いで図15のカーブに沿った挙動を得るためにニチノールの温度をマルテンサイト変態終了温度MFより低い温度に低下させることを記載している。追加の実施例においては、熱誘起マルテンサイト製の心臓ハーネスは、終了温度AFより高く温度を上げる必要なしに、ハーネスの温度をオーステナイト変態開始温度より上昇させることによって調整される。このように、少なくともいくつらかのマルテンサイトニチノールがオーステナイトに変態し、ハーネスが調整され始める。
【0075】
さらなる追加の実施例においては、すなわち患者の通常の体温である約37℃未満のオーステナイト変態開始温度を有するニチノール製の心臓ハーネスが提供される。このように、ハーネスは、患者の身体内における通常の作動の間において部分的にオーステナイト相であり、オーステナイト相および熱誘起マルテンサイト相の両方の特性を呈する。
【0076】
次に図18を参照すると、一連のカーブ210、212、214はニチノール製ハーネスの実施例のテストデータを表している。各カーブは、ハーネスの変形に対応してハーネスが負荷する圧力を表している。3つのカーブ210、212、214は、それぞれ特定の温度T1、T2、T3におけるハーネスの変形挙動を表している。図示のように、各カーブ210、212、214は略同様の形を有しており、かつ変形の比較的広い範囲にわたって負荷される圧力の増加が比較的低くなっている。これらのカーブの形状は、ハーネスの設計およびニチノール材料特性に由来している。
【0077】
図18においては、最も高い温度T1におけるカーブ210が最大の圧力を作用させる。上述したように、ASより高い温度の上昇がオーステナイト相にあるニチノールの比率の増加を促す。オーステナイト相のニチノールは、マルテンサイト相のニチノールよりも変形に対する抵抗力が高い傾向にある。このように、ハーネスにおけるオーステナイト相の比率が温度の上昇と共に増加するので、ハーネスによって負荷される圧力は温度の上昇に伴って増加する。したがって、さらに他の実施例においては、ニチノール製の心臓ハーネスは、患者の体温におけるマルテンサイト相に対するオーステナイト相の比率が所望する治療上の範囲内においてハーネスが心臓に圧力を負荷するようなものであるように構成されたオーステナイト変態開始および終了温度AS,AFを有する。
【0078】
治療上の範囲内で負荷される圧力は、本願明細書においては、心臓のような臓器に負荷するときに、この臓器における利点に結びつくような充分な圧力であると定められる。一つの実施例において、心臓ハーネスのための治療上の範囲は約5〜20mmHgである。より好ましくは、治療上の圧力は約7〜15mmHgである。
【0079】
ニチノール製心臓ハーネスの他の実施例においては、ハーネスが、約30〜33℃である室温より低いオーステナイト変態開始温度ASを有するように処理される。このように、オーステナイト相の硬化特性は、ハーネスの取り付けの間にハーネスおよび心臓が相対的に低い室温にさらされる場合においても、ハーネスによる心臓の抱え込みを助ける。むろん、取り付けが完了してハーネスが患者の体温に暖まると、オーステナイト相の比率が上昇し、かつハーネスが負荷する圧力もそれに応じて上昇する。さらに他の実施例においては、室温より低いオーステナイト変態開始温度ASを有するハーネスは、ハーネスが作動の間には実質的に完全にオーステナイト相であるように、体温より低いオーステナイト変態終了温度AFを有する。あるいは、ハーネスが部分的に少なくともマルテンサイト相であるように、オーステナイト変態終了温度AFが体温より高いままである。
【0080】
引き続いて図18を参照すると、図12乃至図15に関連して上述したように、表示DSおよびDFは、弛緩期の始めおよび終わりにおいてハーネスが負荷する相対的な圧力を示すために用いられてきた。上述したように、心臓が反対側に再構築するにつれて、心臓の寸法はDS’およびDF’によって示されるように全般的に減少する。さらなる反対側への再構築は、DS”およびDF”で表されている。心臓が反対側に再構築するにつれ、弛緩期の終わりDF、DF’、DF”においてハーネスが負荷する圧力が減少するにもかかわらず、負荷される圧力は所望の治療上範囲内に止まっている。このように、心臓ハーネスは、心臓の寸法が変化するにつれて連続的に調整され、かつ患者の心臓が甚だしく反対側に再構築するときでも患者の心臓に対して治療的に負荷される圧力を提供し続けるように構成される。
【0081】
次に図19を参照すると、室温より低いオーステナイト変態終了温度AFを有しているニチノール製心臓ハーネスの実施例における、圧力とパーセンテージ歪との関係を表すカーブ216が示されている。この実施例においては、ハーネスが変形する間に少なくともいくらかの応力誘起マルテンサイトが形成され得るけれども、このハーネスは取り付けの前および間において実質的に完全にオーステナイト相にある。上述したように、表示DS、DF、DS’およびDF’は、心臓が反対側に再構築するときの、弛緩期の始めおよび終わりにおいてハーネスが負荷する相対的な圧力を示している。図示の実施例においては、心臓ハーネスは、心臓の寸法が変化するにつれて連続的に調整され、かつ患者の心臓が甚だしく反対側に再構築するときでも患者の心臓に対して治療的な圧力を負荷する。
【0082】
上述した実施例において、心臓ハーネスは、患者の心臓上に取り付けられるとともにその上に治療上の圧力を負荷するために、弛緩した伸ばされていない寸法および形状から伸ばされた形状へと変形させられる。そのような実施例においては、ハーネスは、その弛緩している状態の寸法および形状から甚だしく変形することができる。一つの実施例においては、ハーネスが伸ばされていないときの寸法は、治療する肥大した心臓の寸法の約25〜70%である。より好ましくは、ハーネスが弛緩しているときの寸法は、治療する肥大した心臓の寸法の約30〜50%である。
【0083】
上述した原理は、任意の他の実施例に適用することができる。そのような実施例は、上述した実施例の変更を含むことができるし、あるいは全く異なる製品を構成することができる。より詳しくは、上述した実施例の心臓ハーネスの態様は、臓器を再形成するための他のタイプの装置に適用することができる。このように、様々な再形成ハーネスあるいは再形成装置は、他の用途および臓器のために上述した心臓ハーネスの実施例の態様を利用することができる。
【0084】
患者の心臓が鬱血性心不全の間に肥大するにつれて、特定の弁、例えば僧帽弁の環状部は心臓と共に成長する傾向にある。最終的に、弁環状部は、この弁を完全に閉じるためには小葉が十分大きくない程度にまでその寸法が増加し得る。弁の機能不全の原因となる他の要因は、心臓が肥大するにつれて、心臓の幾何学的な形状がいくらか変化することである。心臓の部分、例えば乳頭筋は、心臓の腱索を介して乳頭筋が取り付けられている小葉から外側に動かされる。これらの乳頭筋は、弁葉状部が互いに十分に接近することを防止するように、それらの限界まで引き伸ばされることがあり得る。このように、小葉は完全に閉じることができないと、弁が漏れて、そのような弁漏れは単純に患者の心臓疾患をさらに悪化させる。
【0085】
他の実施例においては、弁の機能不全の予防あるいは減少を助けるために、波形のばね/ヒンジの一つ若しくは複数の列を含んでいるハーネスあるいは鍔が心臓の特定の部分に圧縮力を作用させるように構成することができる。例えば、一つ若しくは複数の波形ヒンジを含んでいる鍔タイプの装置は、AV溝として知られている心臓の領域の周りに嵌合するように特別に構成することができる。AV溝は、全般的に心臓の僧帽弁および三尖弁に隣接している。AV溝の鍔は、弁の環状部寸法を減少に役立ちおよび/または弁の環状部が所望の寸法を越えて肥大することを予防する圧縮力を作用させるために、本願において議論した原理に従って配置し構成することができる。
【0086】
他の実施例においては、乳頭筋の領域において心臓の周りに配置されるように特に寸法決めされかつ構成された複数の波形のばね/ヒンジを有した、乳頭筋バンドを提供することができる。周知のように、乳頭筋は全般的にAV溝と心臓の頂部との間にある。このように、乳頭筋バンドは、乳頭筋のレベルにおいて心臓の直径を減少させる圧縮力を作用させることができる。このことは、弁葉状部の閉鎖を妨げないように、乳頭筋の伸びがより少なくなることを助ける。
【0087】
上述したように、心臓ハーネスは患者の心臓上に軽度の圧縮力を負荷する。AV溝鍔および乳頭筋バンドの実施例は、典型的な心臓ハーネスよりも強力な圧縮力を作用させることが予想される。また、AV溝鍔および乳頭筋バンドを、互いに別個にあるいは互いに同時に、かつ心臓ハーネスとは別個にあるいは心臓ハーネスと同時に用いることができることも予想される。例えば、心臓ハーネスを取り付ける前あるいは取り付けた後に、乳頭筋バンドを心臓上に配置することができる。
【0088】
さらに他の実施例においては、心臓ハーネスの部分に異なる剛性を与えることができるとともに、心臓の特定の部分に特別に向けた力を負荷するためにAV溝鍔および乳頭状のバンドを心臓ハーネスに組み込むことができる。
【0089】
AV溝鍔および乳頭筋バンドの実施例は、ニチノールあるいは他の形状記憶材料から製造することができる。このように、これらの装置は、あまりにぴったりと合わせることを心配せずに心臓上に配置することができる。熱の付加は、それらの装置を収縮させて心臓の各部分の周りにぴったりと合うようにする。加えて、これらの装置は、そのような装置によって期待される有益な効果が長く続くように、最初に取り付けた後で調整することができる。
【0090】
さらに他の実施例において、ニチノールのような材料から製造された再形成ハーネスは、身体内部の様々な臓器の形状を変化させあるいはその機能に影響を及ぼすために用いることができるとともに、それらの臓器上に再形成力を負荷するために適切に調整することができる。
【0091】
比較的肥満した患者が、胃ステープリングとして知られている手技を受けることはまれではない。この手技においては、それに応じて患者の食欲および食事摂取量が減少するように胃の寸法を減少させる。本発明の態様を含む他の実施例においては、患者の胃の少なくとも一部分の周りに実質的にぴったりと合うように構成された胃ハーネスあるいは胃バンドを提供することができる。このハーネスは、実質的に胃の寸法を制限するために胃に圧縮力を負荷する。この装置は、胃の周りに比較的ゆるく取り付けるとともに、次いで胃の周りでぴったりと縮小するように短く加熱することができる。すると、この装置は、胃の寸法を減少させるとともに患者の食欲を減少させる役に立つ力を胃に作用させる。むろん、この装置は、繰り返して熱を与えることによって後から何度でも締め付けることができる。
【0092】
この装置の他の有利な実施例は、身体の様々な領域、例えば脳、心室、あるいは大動脈内の動脈瘤を治療するために用いられる。そのような動脈瘤は、多くの場合に凝固血液等を含んでおり、完全にかつ急激に動脈瘤を再形成しあるいはその最初の形状に戻すことは必ずしも有利ではない。それとは対照的に、動脈瘤をゆっくりとその最初のかつ意図する形状へと付勢することが好ましい。ハーネスタイプのバンドは、動脈瘤の周りに取り付けることができるとともに、その上に軽度の圧縮力を作用させつつ動脈瘤にぴったりと合うるように構成しかつ調整することができる。時間が経過するにつれて、動脈瘤はゆっくりと再形成される。必要に応じ、圧縮バンドを上述したように調整することができる。このように、柔軟なニチノールバンドは、制御可能にかつ安全に動脈瘤を治療することができる。
【0093】
さらに他の実施例においては、ニチノール製のハーネスが網膜の手術において有効である。網膜の手術においては、手術が完了したときに患者の眼球の周りに強膜バンドあるいは強膜バックルを付加することが一般的である。一つの実施例においては、好ましくは環状の強膜のバンドが、通常の体温より低いオーステナイト変態終了温度AFを有したニチノールから製造される。したがって、このバンドは、患者の眼球の周りへの容易な配置のために拡げることができるとともに、自動的に収縮して自分自身を眼球上にぴったりと保持する。他の実施例においては、この強膜バンドは、人間の体温より高いオーステナイト変態終了温度AFを有したニチノールから製造される。したがって、臨床医は、患者の眼にそれをぴったりと合わせるためにバンドを変形させることができるとともに、バンドが眼の寸法に収縮するように熱を付加することができる。このバンドは、熱誘起マルテンサイト状態に冷えると、眼に軽度の圧縮力を作用させるが、依然として比較的柔軟である。
【0094】
さらに他の実施例においては、ニチノール製の再形成ハーネスは、手術直後の腫大の縮小を助ける圧迫包帯のような他の用途に用いることができる。
【0095】
上述した実施例は特にニチノールを考慮して議論してきたが、心臓ハーネスのために様々な他の材料を用いることができるとともに、本願明細書において議論した態様の一部あるいは全てを用い得ることは理解されるべきである。例えば、ニチノールではない超弾性および/または形状記憶材料も、上述したニチノールの態様の少なくともいくつかと、同じでないとしても同様な特性および挙動を呈することができる。例えば、他の材料は、相変態的な超弾性を呈する。いくつかの適切な心臓ハーネス材料には、オリゴ(e−カプロラクトン)、ジメタクリレート、エルジロイ(Elgiloy:商標)、チタンおよびタンタルのような金属およびポリマーが含まれる。
【0096】
上述の実施例の装置は、複数のヒンジあるいはばね要素を含むものとして記述してきた。しかしながら、ハーネスが収縮できるようにする様々な形状および構成が受け入れ可能であることは理解されるべきである。例えば、他の実施例においては、ハーネスタイプの装置を拡大可能な、編み込まれたフィラメントから製造することができる。そのような実施例は様々な材料から製造することができるが、ニチノールのような形状記憶/超弾性材料を用いる場合には、これらの装置は上述した原理および特性を活用することができる。
【0097】
好ましい実施態様および実施例に関して本発明を開示したが、本発明が特に開示した実施例を越えて他の実施例および/または本発明の使用、明らかな変更、およびそれの均等物へと広がることは当業者がよく理解するところである。さらに、本発明の数多くの変形例を詳細に図示しし記載したが、本発明の範囲内にある他の変更は、この開示に基づいて当業者には直ちに明らかとなる。また、実施例の特定の特徴および態様の様々な組合せあるいはサブコンビネーションを作ることができるとともに依然として本発明の範囲内にあることが予期される。したがって、開示された発明の異なるモードを形づくるために、開示された実施例の様々な特徴および態様を互いを組み合わせあるいは置き換ることができることは理解されるべきである。このように、本明細書に開示された本発明の範囲が上述した特別に開示された実施例によって限定されるべきではないが、以下の請求の範囲を公正に読むことのみによって決定されるべきであることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】心臓ハーネスがその上に配置された心臓を模式的に示す図。
【図2】弛緩した状態および張力下にあるばねヒンジを示す図。
【図3】平坦なシート材料から切断された心臓ハーネスの一実施例を示す図。
【図4】図3の心臓ハーネスを心臓の周りにぴったりと合う形状とした状態を示す図。
【図5A】テスト装置上に配置された一実施例の心臓ハーネスの要部を弛緩した状態で示す図。
【図5B】図5Aに示した部分を伸ばした状態で示す図。
【図6A】典型的な波形ばねの応力/歪カーブを示す図。
【図6B】図5Aおよび図5Bに示した一実施例の心臓ハーネスの応力/歪カーブを示す図。
【図7】他の実施例の心臓ハーネスの要部を示す図。
【図8】他の実施例の心臓ハーネスの要部を示す図。
【図9】図8中の破断線9−9に沿った断面図。
【図10】図9に示した部分を引張り状態で示す図。
【図11】ステンレス鋼材料の応力/歪カーブを略示する図。
【図12】ある材料の性質を略示している応力/歪カーブおよびこの材料から形成された心臓ハーネスのたわみを模式的に示す図。
【図12A】図12の応力/歪カーブおよび他の実施例の心臓ハーネスのたわみを模式的に示す図。
【図13】オーステナイト変態終了温度より高い温度におけるニチノールの例示的な荷重負荷/除荷カーブを示す図。
【図14】熱的に誘起されたニチノールの応力/歪カーブを示す図。
【図15】熱的に誘起されたニチノールの応力/歪カーブおよびそして、ニチノールの特性を活用した一実施例の心臓ハーネスの性質を示す図。
【図16】心膜と心臓壁との間に暖かい流体を注入する方法および装置を示す図。
【図17】心臓上に配置された心臓ハーネスを電気的に暖めて調整する方法および装置を示す図。
【図18】一実施例の心臓ハーネスのテストデータを表す一連のカーブを示す図。
【図19】他の実施例の心臓ハーネスのテストデータを表しているカーブを示す図。
Claims (21)
- 臓器を再形成するための装置であって、
弾性材料から成るとともに、前記弾性材料が前記臓器の表面と実質的に同一の環境条件下にあるように前記臓器の少なくとも一部分の周りに配置されるべく構成された再形成部材を備え、
前記弾性材料は、
a)前記環境条件が閾値レベルを越えて変化すると変化し、かつ
b)前記環境条件が前記閾値レベル越えたレベルから変化しないレベルに戻ると少なく
とも部分的に変化した状態に止まる、
弾性的な特性を有していることを特徴とする装置。 - 前記弾性的な特性が弾性変形範囲であることを特徴とする請求項1に記載の臓器を再形成するための装置。
- 前記弾性材料は、第1の状態および第2の状態を有していることを特徴とする請求項1に記載の臓器を再形成するための装置。
- 前記弾性材料は、前記環境条件が前記閾値レベルを越えて変化する前には前記第1の状態にあることを特徴とする請求項3に記載の臓器を再形成するための装置。
- 前記弾性材料は、前記環境条件が前記閾値レベルを越えて変化したときには前記第2の状態にあることを特徴とする請求項4に記載の臓器を再形成するための装置。
- 前記弾性材料は、前記環境条が変化のないレベルに戻ったときには前記第1の状態にあることを特徴とする請求項5に記載の臓器を再形成するための装置。
- 前記第1の状態がマルテンサイト相の状態であり、かつ前記第2の状態がオーステナイト相の態であることを特徴とする請求項6に記載の臓器を再形成するための装置。
- 前記弾性材料が形状記憶材料から成ることを特徴とする請求項7に記載の臓器を再形成するための装置。
- 前記弾性材料がニチノールから成ることを特徴とする請求項8に記載の臓器を再形成するための装置。
- 前記再形成部材がハーネスを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の臓器を再形成するための装置。
- 前記ハーネスは、前記臓器の周りで実質的に円周方向に延びるように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の臓器を再形成するための装置。
- 臓器に力を作用させる臓器再形成装置であって、
前記臓器により弛緩している形状から変形した形状へと付勢されるように前記臓器に接触して配置されるべく構成された、前記臓器に曲げ力を作用させる曲げ部材を備え、
前記曲げ部材は、第1の弾性たわみ範囲および第2の弾性たわみ範囲を有していて、ある時点においては一つのたわみ範囲で作動することができ、
かつ前記曲げ部材は、入力に応答して前記第1および第2の弾性たわみ範囲間で変移することを特徴とする装置。 - 前記曲げ部材は、熱エネルギーの入力に応答して前記第1および第2の弾性たわみ範囲間で変移することを特徴とする請求項12に記載の臓器を再形成するための装置。
- 前記曲げ部材が形状記憶材料から成ることを特徴とする請求項12に記載の臓器を再形成するための装置。
- 前記曲げ部材の状記憶材料が相変態的な弾性を呈することを特徴とする請求項14に記載の臓器を再形成するための装置。
- 患者の身体の内部において臓器に力を作用させる臓器形成装置であって、
前記臓器により弛緩した形状から拡げられて変形した形状へと付勢されるように前記臓器の少なくとも一部分の周りに配置されるべく構成されて、前記臓器の圧迫に役立つ曲げ力を前記臓器上に作用させる曲げ部材を備え、
前記曲げ部材が、動作温度範囲内においてその温度が上昇するとその剛性が増加するように構成された材料から成ることを特徴とする装置。 - 前記材料が、約37℃未満のオーステナイト変態開始温度を有するように構成されたニチノール合金から成ることを特徴とする請求項16に記載の臓器を形成するための装置。
- 前記材料が、約30℃未満のオーステナイト変態開始温度を有したニチノールから成ることを特徴とする請求項16に記載の臓器を形成するための装置。
- 前記ニチノールが、約37℃より高いオーステナイト変態終了温度を有していることを特徴とする請求項0に記載の臓器を形成するための装置。
- 前記ニチノールが、約37℃未満のオーステナイト変態終了温度を有していることを特徴とする請求項0に記載の臓器を形成するための装置。
- 前記ニチノールが、約30℃未満のオーステナイト変態終了温度を有していることを特徴とする請求項0に記載の臓器を形成するための装置。
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