JP2005505252A - 低酸素症誘導因子及び脈管形成を誘導するため及び筋肉機能を改善するためのそれらの使用 - Google Patents
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Abstract
この発明は、HIF−3αの核酸配列を提供する。HIF−3α核酸、蛋白質、断片、抗体及び細胞を使用して、HIF−3αを特性決定し、HIF−3αの細胞レベルを変調し、脈管形成を誘導し、筋肉の機能を改善し、そして哺乳類において冠動脈疾患及び心臓疾患を治療するための方法も提供される。
Description
【発明の開示】
【0001】
関連出願
この出願は、2001年5月23日に出願された米国仮出願60/292,630及び2002年2月8日に出願された60/354,529の優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
a)発明の分野
本発明は、低酸素症誘導可能性因子−3αである「HIF−3α」と呼ばれるヒト蛋白質に関し、より特定すれば、HIF−3αを特性決定するため及び細胞レベルを変調させるための、HIF−3αの核酸、蛋白質、断片、抗体、プローブ及び細胞の使用に関する。
【0003】
本発明は、VEGF発現を誘導し、脈管形成を誘導し、そして筋肉の機能を改善するため、より特定すれば、哺乳類において冠動脈疾患及び心臓疾患を治療するための、低酸素症誘導可能因子ファミリーからの蛋白質をコードする核酸配列の使用にも関する。
b)先行技術の簡単な説明
慢性虚血性心臓疾患は、主要な部分の世界的な健康上の問題である。アメリカンハートアソシエーションによれば、61 800 000人のアメリカ人が心臓血管の疾患の少なくとも一つの種類を有する。特に、冠動脈心臓疾患(CHD)は、7 500 000人のアメリカ人患者に心筋梗塞(MI)を引き起こし、そして4 800 000人のアメリカ人患者に鬱血性心不全(CHF)を引き起こす。合衆国内のみでのほとんど450 000人の死はCHDに由来したらしい。
【0004】
現在のCHDの治療は、投薬、経皮経管冠動脈血管形成術及び冠動脈バイパス手術を含む。これらの手法は、心筋内の血流を増加させ、即ち虚血を減らして患者の状態を改善させるのには、全く好結果である。しかしながら、CHDの進行性の性質のため、これらの手法の有益な効果は永遠ではなく、そして新たな障害が起こり得る。有効な心臓血管の干渉(interventions)を通して長生きする患者は、治療のオプションを使い果たした。また、拡散性のアテローム動脈硬化症及び/又は小さい内径の動脈のため、重要な患者集団はいまだこれらの治療に対して難治性である。
【0005】
重度の慢性虚血症は、心筋の不可逆性の瘢痕(scarring)であるMIを引き起こし得る。この瘢痕は、心臓の収縮性及び弾力性を低下させ、そして結果としてポンプ機能を低下させ、のちにCHFを導き得る。CHF患者に利用可能な治療は、腎機能及び末梢脈管構造を標的とすることにより、上記兆候を軽減させるが、どれも、瘢痕を治療しないか又は心臓のポンプ機能を増加させない。瘢痕を治療して心臓機能を改善するための極めて有望なアプローチは、細胞性心筋形成術(CCM)と呼ばれる。それは、瘢痕内への細胞の注射において、心臓組織により繊維性瘢痕を置換すること及び弾力性を増加させることからなる(米国特許第5,130,141号;第5,602,301号;第6,099,832号及び第6,110,459号を参照)。
【0006】
CHF患者の別の新たな独立した治療は、治療性脈管形成である。脈管形成は、以前存在した脈管構造からの血管の発芽と増殖として定義される。正味の結果は、高い毛細血管密度及び良好な血液潅流である。例えば、米国特許第5,792,453号は、脈管形成性蛋白質をコードするトランス遺伝子をアデノウイルスベクターに引き渡すことにより冠動脈の側枝の脈管分化を促進させる方法を開示する。脈管形成の刺激は虚血性の「心筋の機能を改善し得るが、改善された潅流からの利益を得る生存細胞がないため、瘢痕組織に対して効果を持たない。
【0007】
多くの成長因子が脈管形成を誘導するのに現在使用されており、血管内皮成長因子(VEGF)及び繊維芽細胞成長因子(FGF)を含むが、これらの因子の何れもが脈管形成の各々の工程を刺激する特性を有さない(基底膜破壊、内皮細胞の増殖、移動及び分化、続く内皮周囲(periendothelial)細胞の補充)。細胞の低酸素症は強い脈管形成を天然にて誘導できることが知られているため、低酸素症の制御因子の使用は一度に一つ又は複数の脈管形成因子の合成を刺激することができ、それにより、個々の因子を用いるよりも、より組織化されて且つ強い脈管形成をもたらす。
【0008】
低酸素症誘導可能因子(HIFs)は低酸素の緊張状態に対して多くの適応性応答を制御するヘテロダイマー転写因子である。それらは、基礎的なヘリックス−ループ−ヘリックスPAS(bHLH−PAS)スーパーファミリーに属するアルファ−サブユニット及びベータ−サブユニットからなる。このファミリーのメンバーは、HIF−1α(MOP1としても知られる;Wang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995)92:5510−5514;及び米国特許第5,882,314号;第6,020,462号;第6,124,131号を参照)、HIF−2α(内皮PAS1(EPAS1),MOP2,HIF−関連因子(HRF)及びHLF(HIF−様因子)としても知られる;Tian et al.,Genes & Dev.(1996)11:72−82;及び米国特許第5,695,963号を参照)を含む。
【0009】
HIFファミリーの別のメンバーが最近発見され、HIF−3αと呼ばれる。HIF−3αのクローニングが、マウスにおいて(Gu et al.,Gene Expression(1998)7:205−213;及び国際PCT出願WO 99/28264)及びラットにおいて(Kietzmann et al.,Biochem J.(2001),354:(Pt3):531−537)記載された。ヒトHIF−3αの一部のcDNA配列が1999年に公表され(GenBankTM受け入れ番号AF079154)、そして本発明の一つとは異なるヒトHIF−3αアイソフォームの完全長の配列が2001年に、Haraら(Biochem.Biophys.Res.Comm.(2001),10月5日;287:808−813)により公表された。
【0010】
HIFsは正常な条件下では高度に不安定であるが、低酸素の緊張状態に対する応答において安定である。この安定化は、標的遺伝子のcis DNA要素への結合を可能にさせ、そして低酸素条件下で細胞の生存を助ける低酸素症誘導化遺伝子の転写を刺激する。これらの標的遺伝子は、嫌気性代謝(グルコース輸送体及び解糖酵素)、血管拡張(誘導可能な酸化窒素シンターゼ(iNOS)及びヘムオキシダーゼ−1(HO−1))、増加した呼吸(チロシンヒドロキシラーゼ)、赤血球造血(エリスロポエチン)及び脈管形成(VEGF)のようなプロセスに包含される。HIF−1α及びHIF−2αによる遺伝子活性化は、リポーター遺伝子が同時トランスフェクトしたHIF因子により活性化される同時トランスフェクションアッセイにより証明された(Tian et al.,Genes & Dev.(1996)11:72−82;Jiang et al.,J.Biol.Cem.(1995)272:19253−19260)。VEGF活性化におけるHIF−2αの役割は腎臓細胞カルシノーマにおいても証明された(Xia et al.,Cancer(2001),91:1429−1436)。動物のモデルにおいては、ハイブリッドHIF−1α/VP16のDNA構築物の遺伝子の移入の後に、強い脈管形成が報告された(Vincent et al.,Circulation(2000)102:2255−2261)。しかしながら、本発明の前には、HIF−2α又はHIF−3αが筋肉細胞内で脈管形成関連遺伝子を誘導できることも、これらの細胞中で脈管形成を誘導できることも、いまだかつて示されるか又は示唆されていない。HIF−1α、HIF−2α又はHIF−3αの虚血性筋肉組織内での発現がこの組織の増加した代謝活性をもたらして機能を改善させることも知られていなかった。
【0011】
HIFsがVEGF誘導及び/又は脈化形成を誘導するための理想的な因子を代表するとしたら、HIFファミリーの新規なメンバーを同定する必要が即ちある。ヒトHIF−3α蛋白質及びそれをコードする核酸に関して、より特別な要求がある。
【0012】
また、脈管形成を誘導して筋肉の機能を改善するための方法、組成物及び細胞により提供されることが大いに望まれる。
本発明は、以下の明細書を読んだ際に当業者には明らかなとおり、これらの要求及びまたその他の要求を満たす。
【0013】
発明の概要
本発明者らは、ヒト低酸素症誘導可能因子(HIFs)の新規なメンバー、HIF−3αを発見した。本発明者らは、HIF−3αの細胞レベルを変調するため、哺乳類細胞においてVEGF発を誘導するため、及び哺乳類組織において脈管形成を誘導するための、ヒトHIF−3α蛋白質、断片、核酸、及び抗体の用途も発見した。
【0014】
一般的に、本発明は、ヒトHIF−3αポリペプチド、をコードするか、又は、に相当する、単離されたか又は精製された核酸分子、例えばゲノミック、cDNA、アンチセンス、DNA、RNA、又は合成核酸分子を特徴とする。
【0015】
第1の側面に従うと、上記発明は、単離されたか又は精製された核酸分子、ポリヌクレオチド、ヒトHIF−3α蛋白質及びその断片を特徴とする。好ましい核酸分子はcDNAからなる。
【0016】
第1の態様において、単離されたか又は精製された核酸分子は、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するヒト蛋白質をコードする。
特定の態様に従うと、上記発明の核酸は、
a)配列番号:1又は3にて提供される配列;
b)配列番号:1又は3に提供される配列の相補体;
c)配列番号:1又は3にて提供される配列の少なくとも20の連続する残基からなる配列;
d)中度又は強度のストリジェント条件下で配列番号:1又は3にて提供される配列にハイブリダイズする配列;
e)配列番号:1又は3にて提供される配列に少なくとも75%同一性を有する配列;及び
f)配列番号:1又は3にて提供される配列の縮重バリアント
からなる群から選択される配列を含む。
【0017】
より好ましくは、上記発明の核酸分子は、
a)配列番号:1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は97%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列;及び
b)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は97%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列
からなる群から選択される配列を含む。
【0018】
さらにより好ましくは、上記核酸は、配列番号:1と実質同じか又は100%同一性を有する配列又は配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸と実質同じか又は100%同一性を有する配列を含む。もっとも好ましい核酸分子は、配列番号:1の核酸1423−1545の一部又は全てを含む分子、及び/又は配列番号:2のアミノ酸475から515のポリペプチドをコードする核酸の一部又は全てを含む分子である。
【0019】
別の特定の態様によれば、単離されたか又は精製された核酸分子は、ヒトHIF−3αポリペプチド又はその縮重バリアント、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てを含むヒトHIF−3αポリペプチド又はその縮重バリアントをコードする配列を含む。好ましくは、さらにより特定の側面においては、上記発明は、配列番号:1を有するポリヌクレオチド又はその縮重バリアントを含み、そしてヒトHIF−3αポリペプチドをコードする、単離されたか又は精製されたヒト核酸分子を特徴とする。好ましくは、上記核酸はcDNAであり、そしてそれは配列番号:2のアミノ酸配列又はその断片をコードする。
【0020】
関連する側面において、上記発明は、低度、より好ましくは中度の、そしてより好ましくは強度のストリジェント条件下で、本明細書において前に定義された核酸の何れかにハイブリダイズする単離されたか又は精製された核酸分子を特徴とする。より好ましくは、そのような核酸分子は、中度又は強度のストリジェント条件下で、配列番号:1の核酸1423から1545の一部又は全てにハイブリダイズするか又はその相補配列の一部又は全てにハイブリダイズする。
【0021】
上記発明は、上記の核酸の何れかによりコードされる実質上純粋なヒトポリペプチド及び蛋白質も特徴とする。一つの態様において、上記蛋白質は、ヒトHIF−3αの生物活性を有する。好ましい生物活性はVEGF発現の誘導を含み、それにより脈管形成を促進させる。
【0022】
別の態様において、上記発明は、
a)配列番号:2に少なくとも80%同一性を有する配列;
b)配列番号:2に少なくとも85%同一性を有する配列;
c)配列番号:2にて提供される配列;
d)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列に少なくとも80%同一性を有する配列;
e)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列に少なくとも85%同一性を有する配列;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたか又は精製されたポリペプチドを意図する。
【0023】
より好ましくは、上記ポリペプチドは、
a)配列番号:2と実質上同じ配列;及び
b)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列と実質上同じ配列
からなる群から選択される配列を含む。
【0024】
よりさらに特定の側面において、上記発明は、実質上純粋なヒトHIF−3αポリペプチドを特徴とし、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全て又はそれらの断片を含む。よりさらに好ましくは、上記ポリペプチドは、配列番号:2に100%同一なアミノ酸配列を含む。
【0025】
本発明は、上記蛋白質又はポリペプチドの何れかに由来する蛋白質断片も特徴とする。同様に、上記発明は、さらに、配列番号:1(HIF−3α)の少なくとも24の連続する核酸配列を含むヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド断片を含む。
【0026】
本発明は、さらに、同じものを含むアンチセンス核酸及び薬学上受容可能な組成物を特徴とする。好ましくは、上記アンチセンスは、ヒトHIF−3αの細胞発現レベルを低下させるように、ゲノミック配列又はmRNAに対してストリジェント条件下でハイブリダイズする。第1の態様によれば、上記ヒトHIF−3αポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸75から515を含む。より好ましくは、上記ヒトHIF−3αは、配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされる。特定の態様によれば、上記アンチセンスは、配列番号:1の一部又は全て、又はそれらの相補配列の一部又は全てに、ストリジェント条件下でハイブリダイズする。より好ましくは、上記アンチセンスは、配列番号:1の核酸1423から1545の一部又は全て、又はそれらの相補配列の一部又は全てに、ストリジェント条件下でハイブリダイズする。
【0027】
本発明は、さらに、(1)(i)ヒトHIF−3αをコードする核酸分子;(ii)ヒトHIF−3αポリペプチド;(iii)ヒトHIF−3αの細胞発現レベルを低下させるアンチセンス核酸;及び(iv)HIF−3αポリペプチドに特異的に結合する単離されたか又は純粋な抗体からなる群から選択される少なくとも一つの要素;及び(2)薬学上受容可能な担体又は希釈剤を含む薬学組成物に関する。
【0028】
別の側面によれば、上記発明は、配列番号:1又は配列番号:1の相補配列の少なくとも15、20、25、30、40、50、74、100の連続するヌクレオチドの配列を含むヌクレオチドプローブを特徴とする。好ましくは、上記プローブは、配列番号:1の核酸1423から1545の一部又は全て、配列番号:1の核酸2116から2223の一部又は全て、配列番号:1の核酸475から515の一部又は全て、又はそれらの相補配列を含む。上記発明は、配列番号:1由来の少なくとも20、25、30、40、50、75又は100ヌクレオチドの長さのプローブに、低度のストリジェント条件下、好ましくは中度のストリジェント条件下、そしてより好ましくは高度なストリジェント条件下で、ハイブリダイズする実質上純粋な核酸も包含する。
【0029】
別の側面によれば、上記発明は、精製された抗体も特徴とする。好ましい態様において、上記抗体は、精製された哺乳類のHIF−3αポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。好ましくは、上記抗体は、配列番号:2と実質同じHIF−3αポリペプチドに特異的に結合する。より好ましくは、上記抗体は、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てを含むHIF−3αポリペプチドに特異的に結合し、さらにより好ましくは、上記抗体は、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てに特異的に結合する。
【0030】
別の側面において、本発明は、さらに、哺乳類細胞においてVEGF発現を誘導する方法も特徴とする。当該方法は、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を細胞中で導入して発現させることを含む。好ましい態様において、上記細胞は生きている哺乳類の心臓に位置する心臓細胞からなり、そして上記ポリペプチドの発現は上記哺乳類の心臓組織内で脈管形成を誘導する。別の態様において、上記細胞は生きている哺乳類の筋肉組織内に位置する筋肉細胞からなり、そしてポリペプチドの発現は哺乳類の筋肉組織内で脈管形成を誘導する。別の態様において、上記哺乳類細胞は骨格筋細胞であり、それにより、HIF−3αを発現する骨格筋細胞を提供し、そしてさらに、上記方法はさらに多数のHIF−3α発現骨格筋細胞を影響を及ぼさない哺乳類レシピエントの心臓組織内に移植する工程を含む。
【0031】
さらに、本発明は、多数の細胞を有する哺乳類組織内で脈管形成を誘導する方法を特徴とし、当該方法は、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を少なくともいくつかのこれらの細胞内で導入して発現させることを含む。
【0032】
本発明は、哺乳類で腫瘍細胞の生存を変調させるか又は腫瘍細胞を排除する方法も特徴とし、当該方法は、HIF−3αポリペプチドの細胞発現レベルを低下させる工程を含む。好ましい態様によれば、哺乳類はヒトからなり、そしてヒトHIF−3αが腫瘍細胞に導入される。
【0033】
本発明は、さらに、生物学上のサンプル内のヒトHIF−3αポリペプチド又はヒトHIF−3α核酸の量を測定する方法を特徴とし、当該サンプルを、前で定義した抗体又はプローブと接触させる工程を含む。
【0034】
さらなる側面によれば、上記発明は、ヒト被験者内の腫瘍の悪性度を評価する方法を特徴とし、被験者由来の腫瘍細胞内のヒトHIF−3αポリペプチド又はヒトHIF−3α核酸の量を測定する工程を含み、量が腫瘍の悪性度の指標になる。
【0035】
別の関連する側面において、上記発明は、さらに、サンプル中のHIF−3αポリペプチドの量を測定するためのキットを特徴とし、当該キットは、前に定義した抗体又はプローブ、及び当該キットを使用するための指示書、反応バッファー、及び酵素からなる群から選択される少なくとも一つの要素を含む。
【0036】
発明の核酸は、ベクター又は細胞(例えば、哺乳類、酵母、線虫又は細菌細胞)中に取り込んでよい。上記核酸は、トランスジェニック動物又はそれらの胚の中に取り込んでもよい。よって、本発明は、発明の核酸の何れかを含むクローニングベクター又は発現ベクター及び宿主(例えば、形質転換されたか又はトランスフェクトされた細胞、トランスジェニック動物)を特徴とし、そしてより特定すれば、HIF−3α蛋白質、ポリペプチド又は断片、及びヒトHIF−3α蛋白質をコードするもの、ポリペプチド又は断片のベクター含有細胞中での発現を指示することができるものを特徴とする。
【0037】
関連する側面において、上記発明はヒトHIF−3αを生産する方法を特徴とし、
−この細胞の中での発現のために位置を定められたヒトHIF−3αをコードする核酸配列により形質転換された細胞を用意し;
−上記核酸を発現するのに適した条件下で上記形質転換された細胞を培養し;そして
−hHIF−3αポリペプチドを生産させること
を含む。
【0038】
本発明のもっとも大きな利点の一つは、それが、HIF−3αを特性決定するために使用できる核酸分子、蛋白質、ポリペプチド、抗体、プローブ及び細胞を提供し、その細胞レベルを変調させ、そして脈管形成を促進させることである。
【0039】
本発明の他の目的及び利点は、その好ましい態様の非限定記載及び請求の範囲を読んで明らかになる。
発明の詳細な説明
A)定義
明細書を通して、用語「キロベース」は「kb」と略され、用語「デオキシリボ核酸」は「DNA」と略され、用語「リボ核酸」は「RNA」と略され、用語「相補DNA」は「cDNA」と略され、用語「ポリメラーゼ鎖反応」は「PCR」と略され、そして「逆転写」は「RT」と略される。ヌクレオチド配列は、別に示さない限り、5’から3’の向きに書く。
【0040】
明細書と特許請求の範囲のより明快且つより一致した理解を提供するため、そのような用語に対しての本明細書中で提供される範囲を含めて、以下の定義が提供される:
アンチセンス:本明細書では、核酸に関して、遺伝子のコーディング鎖に相補な、長さに関係なく、核酸配列を意味する。
【0041】
発現:遺伝子によりコードされた情報が細胞中に存在して機能する構造に変換されるプロセスを意味する。cDNAsの場合、cDNA断片及びゲノミック断片、転写された核酸は、その機能を実施するために、実質上ペプチド又は蛋白質に翻訳される。「発現のための配置(positioned for expression)」は、DNA分子が配列の転写及び翻訳を指令するDNA配列(即ち、例えば、HIF−3αポリペプチド、組換え蛋白質又はRT分子の生産を促進させる)に隣接して配置されることを意味する。
【0042】
断片:分子、例えば蛋白質、ポリペプチド又は核酸のセクションを意味し、アミノ酸配列又は核酸配列の何れかの部分を言及することを意味する。
宿主:ベクター又はウイルスゲノムにはめ込まれた外来の核酸の発現を可能にさせ、そしてそのようなベクター又はウイルスゲノムによりコードされたウイルス粒子の生産を可能にさせる細胞成分を提供することができる、細胞、組織、器官又は生物体。この用語は、これらの機能を達成するために修飾された宿主も含むことを意図する。細菌、真菌、動物(細胞、組織又は生物体)及び植物(細胞、組織又は生物体)が宿主の例である。
【0043】
単離された又は精製された又は実質上純粋:その天然状態を「ヒトの手により」変更することを意味し、即ち、もしも自然状態で起こるなら、その元の環境から変化させるか又は取り出すか又はその両方である。例えば、生きている生物体に天然で存在するポリヌクレオチド又は蛋白質/ペプチドは「単離されない」であり、クローニング、増幅及び/又は化学合成により得られた、その天然状態下の共存する物質から分離された同じポリヌクレオチドは、本明細書にて用いられる場合、「単離された」である。さらに、形質転換、遺伝子操作又は他の組換え方法により導入されたポリヌクレオチド又は蛋白質/ペプチドは、上記生物体内に存在したままであっても「単離された」である。
【0044】
核酸:遺伝子全部をコードするヌクレオチド配列を含む、1又はそれ以上のヌクレオチドを有するあらゆるDNA、RNA配列又は分子。当該用語は、特に細胞、組織又は生物体において天然に生じるか又は非天然に生じる全ての核酸を包含することを意図する。これは、DNA及びその断片、RNA及びその断片、cDNA及びその断片、発現されたタグ、ランダム化された人工配列を含む人工配列を含む。
【0045】
オープンリーディングフレーム(「ORF」):蛋白質に翻訳されるcDNA。典型的には、オープンリーディングフレームは開始ATGコドンから始まり、そして停止コドン(TAA,TAG又はTGA)で終わる。
【0046】
ポリペプチド:翻訳後修飾、例えばグリコシル化又はリン酸化に拘わらず、2つより多いアミノ酸のあらゆる鎖を意味する。
パーセント同一性及びパーセント類似性:本明細書においては、比較において又は核酸及び/又はアミノ酸配列間で使用される。配列同一性は典型的には、本明細書にて定義される欠点パラメーターと共に配列分析ソフトウエアを用いて測定される(例えば、ジェネティックコンピューターグループの配列分析ソフトウエアパッケージ、ウイスコンシンバイオテクノロジーセンター大学、1710大学アヴェニュー、マジソン、Owl 53705)。このソフトウエアプログラムは、様々な置換、欠失及び他の修飾に対して相同性の程度を評価することにより類似の配列を適合させる。保存的置換は、典型的には、以下のグループ内の置換を含む:グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン。
【0047】
HIF−3α核酸:低酸素症誘導可能様式にて、標的遺伝子、例えばVEGFを活性化する生物活性を有する哺乳類ポリペプチドをコードし、且つ配列番号:2に示されるアミノ酸配列に少なくとも75%、77%、80%、85%、90%、95%、97%又は100%同一性又は類似性を有するあらゆる核酸(上記参照)を意味する。さらにより好ましくは、哺乳類HIF−3αポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸475から515に少なくとも75%、77%、80%、85%、90%、95%、97%又は100%同一性又は類似性を有するアミノ酸を含む。ヒトHIF−3αの核酸に言及する場合、配列番号:2をコードする核酸に、より特別に関係する。HIF−3α蛋白質又はHIF−3αポリペプチド:上記のとおりHIF−3α核酸によりコードされる蛋白質、ポリペプチド、又はその断片を意味する。
【0048】
特異的に結合する:蛋白質又はポリペプチドを認識して結合するが、天然において蛋白質を含むサンプル、例えば生物学上のサンプル中の他の蛋白質は実質上認識及び結合しない抗体を意味する。
【0049】
実質上同じ:蛋白質の性質に著しく影響しない配列のバリエーションを有する核酸又はアミノ酸配列を意味する。特に核酸配列に関して、用語「実質上同じ」は、コーディング領域及び発現を制御する保存された配列を意味することを意図し、そして主として同じアミノ酸をコードする縮重コドン又はコードされたポリペプチド内で保存された置換アミノ酸をコードする別のコドンを意味する。アミノ酸配列に関して、用語「実質上同じ」は、一般に、タンパク質の構造又は機能の決定に関与しないポリペプチドの領域内の保存された置換及び/又はバリエーションを意味する。
【0050】
実質上純粋なポリペプチド:天然においてそれを伴う成分から分離されたポリペプチドを意味する。典型的には、上記ポリペプチドは、重量で少なくとも60%、天然で結合している他の蛋白質及び天然の有機分子を含まない場合に、実質上純粋である。好ましくは、上記ポリペプチドは、重量で、少なくとも75%、80%又は85%、より好ましくは少なくとも90%、95%又は97%、そしてもっとも好ましくは少なくとも99%純粋なHIF−3αポリペプチドである。実質上純粋なHIF−3αポリペプチドは、例えば、天然源からの抽出(肺細胞、腎臓細胞、心臓細胞又はHIF−3αを発現する他の細胞を含むが限定ではない)、HIF−3αポリペプチドをコードする組換え核酸の発現によるか、又は当該蛋白質を化学合成することにより、得てよい。精製度は、あらゆる適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はHPLC分析により測定することができる。蛋白質は、その天然状態においてそれを伴う混在物からそれが分離された場合に、天然で結合する成分を実質上含まない。即ち、化学合成されたか又はそれが天然で起源とする細胞とは異なる細胞システム内で生産された蛋白質は、その天然結合成分を実質上含まない。従って、実質上純粋なポリペプチドは、真核生物由来であるが大腸菌(E.coli)又は他の原核生物内で製造されたポリペプチドを含む。「実質上純粋なDNA」は、本発明のDNAが由来する生物体の天然のゲノム上において遺伝子の周辺の遺伝子を含まないDNAである。よって、当該用語は、例えば、ベクター;自律複製プラスミド又はウイルス;又は原核生物又は真核生物のゲノミックDNA中に取り込まれたか;又は別の分子として(例えばcDNA又はゲノミック又はPCR又は制限酵素消化により生じるcDNA断片)他の分子とは独立して存在する。それは、追加のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含む。
【0051】
形質転換された又はトランスフェクトされた又は形質導入された又はトランスジェニックな細胞:組換えDNA技術により、HIF−3αをコードするDNA分子が導入された細胞(又はその祖先)を意味する。「形質転換」は、外来分子を細胞内に導入するあらゆる方法を意味する。リポフェクチン、リン酸カルシウム沈殿、レトロウイルス送達、エレクトロポレーション及び弾道(ballistic)形質転換が、まさに少数の使用してよい技術である。
【0052】
トランスジェニック動物:技術を用いて(by artifice)細胞に挿入され、その細胞から発生した動物のゲノムの一部になるDNA配列を含む細胞を有する、あらゆる動物。本明細書では、トランスジェニック動物は通常は哺乳類(例えば、齧歯類、例えばラット又はマウス)であって、DNA(トランスジーン)は技術を用いて核のゲノムに挿入される。
【0053】
ベクター:一つの生物体から別及び生物体へRNA又はDNAを移入させるのに使用することができる自己複製RNA又はDNA分子。ベクターは、特に遺伝子構築物を操作するのに有用であって、別のベクターがクローニング手法の間にレシピエント内で蛋白質を発現するのに特に適した特性を有してよく、そして別の選択可能なマーカーを含んでよい。細菌のプラスミドは、共通に使用されるベクターである。修飾されたウイルス、例えば、アデノウイルス及びレトロウイルスがベクターの他の例である。
B)発明の一般的な全体像
発明は、一般に、低酸素症誘導可能因子(HIFs)HIF−3αの新規な蛋白質のメンバーに関する。本発明者らは、HIF−3αの細胞レベルを変調し、哺乳類細胞内でVEGF発現を誘導し、そして哺乳類組織内で脈管形成を誘導するための、ヒトHIF−3α蛋白質、断片、核酸、及び抗体の用途も発見した。発明のこの側面は、HIF−3αの細胞レベルを変調し、ヒトを含む哺乳類における冠動脈及び心臓の疾患の治療のための、ヒトHIF−3α蛋白質、断片、核酸及び抗体の使用にも関する。
【0054】
発明は、脈管形成を誘導するため及び筋肉の機能を改善するための、方法及び細胞、特定すれば、多数の脈管形成関連遺伝子を発現する遺伝学上修飾された筋肉細胞にも関する。発明のこの追加の側面は、低酸素症誘導可能因子ファミリー(HIF−1α、HIF−2α、及びHIF−3α)からの転写因子をコードするヌクレオチド配列の使用に基づき、そしてヒトを含む哺乳類における冠動脈及び心臓の疾患の治療における多数の利点を提供する。
i)HIF−3αのクローニングと分子の特性決定
発明の例示のセクションにおいて以後に記載されるように、発明者らは、低酸素症誘導可能因子ファミリーからのヒトHIF−3α(hHIF−3α)と呼ばれる新規なヒト蛋白質メンバーをコードするヒトcDNAを発見し、クローン化し、そして配列決定した。
【0055】
HIF−3αのcDNAの配列及び予測されるアミノ酸配列は、「配列表」のセクションに記載される。配列番号:1がヒトHIF−3αのcDNAに相当し、そして配列番号:2が上記ヒト蛋白質の予測されたアミノ酸配列に相当する。配列番号:3はHIF−3αのオープンリーディングフレームである。
【0056】
HIF−3α遺伝子は705アミノ酸(A.A.)の長さの蛋白質をコードする。インシリコ分析は、ヒトHIF−3α蛋白質が以下の特徴を有することを示す:それは約76kDaの分子量、約5.95の等電点;約55.6の不安定性指数(即ち、不安定);約80.6の脂肪族指数;及び約0.388の疎水性親水性指標(hydropacicity)の全平均(GRAVY)を有する。それはさらに多くの有力なリン酸化部位(45 Ser,12 Thr及び3 Tyr)を含み、多くの有力なリン酸化部位も含む。予測された蛋白質ドメインは、アミノ酸14−62によりコードされる、ヘリックスループヘリックス(HLH)ヘテロダイマー化ドメインを含む。このドメインは、HLH転写因子ファミリーの特徴である。次に、2 PAS(A.A.84−143及び235−289)及び1 PAC(A.A.295−337)ドメインが同定されて、これらのドメインは全てPASファミリーと共通である(HLH因子に対するサブファミリー)。
ii)HIF−3αの他の遺伝子及び蛋白質との相同性
hHIF−3αのクローニングを実施したが、マウスHIF−3α配列により開始した。
【0057】
blast検索を行うことにより、本発明のhHIF−3α、mHIF−3α及び他の存在する配列の間で配列同一性を同定した(以下の表1を参照)。さらにマウスに対して見いだされ(GenBankTM受け入れ番号AF060194)、HIF−3αをラットにおいても配列決定した(GenBankTM受け入れ番号NM_022528)。
【0058】
さらに、本発明者らは、それらのHIF−3α配列が、Haraらにより公表された(Biochem.Biophys.Res.Comm.(2001),Oct 5;287:808−813)別の最近クローン化されたHIF−3α配列と、高いレベルで同一性を共有したことも見いだした。この配列は、本発明が利益を要求する出願の出願日の後に公表された。HaraらのhHIF−3α配列は本発明のhHIF−3αとは異なるHIF−3αの別のアイソフォームらしいが、それはそれが配列番号:2のアミノ酸475から515をコードする配列番号:1の核酸1423から1545を損じているからである。均等なマウス及びラットの配列も、配列番号:2のアミノ酸475から515に相同なアミノ酸、即ちHaraらのhHIF−3α配列を欠く。示さないが、配列番号:1の核酸7から345も、1999年に公表されたヒトHIF−3αの部分的なcDNA配列のヌクレオチド7から345と100%同一であり(GenBankTM受け入れ番号AF079154)、この配列は115のアミノ酸残基をコードし(GenBankTM受け入れ番号AAC99397)、そして最後の113のアミノ酸は配列番号:2のアミノ酸3から115と100%同一性を共有する。
【0059】
【表1】
【0060】
よって、本発明は、
a)配列番号:1又は3にて提供される配列;
b)配列番号:1又は3にて提供される配列の相補体;
c)配列番号:1又は3にて提供される配列の少なくとも20の連続する残基からなる配列;
d)中度か又は強度のストリジェント条件下で配列番号:1又は3にて提供される配列にハイブリダイズする配列;
e)配列番号:1又は3の配列に少なくとも75%同一性を有する配列;及び
f)配列番号:1又は3にて提供される配列の縮重バリアント
からなる群から選択される配列を含む単離されたか又は精製された核酸分子(例えばcDNA)に関する。
【0061】
より好ましくは、発明の核酸分子は、
a)配列番号:1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は97%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列;及び
b)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は97%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列
からなる群から選択される配列を含む。
【0062】
より好ましくは、上記核酸分子は、配列番号:1と実質同じか又は100%同一性を有する配列又は配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸と実質同じか又は100%同一性を有する配列を含む。もっとも好ましい核酸分子は、配列番号:1の核酸1423−1545の一部又は全てを含む分子、及び/又は配列番号:2のアミノ酸475から515のポリペプチドをコードする核酸の一部又は全てを含む分子である。
【0063】
本発明は、ヒトHIF−3αポリペプチド又はその縮重バリアント(配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てを含むヒトHIF−3αポリペプチド又はその縮重バリアント)をコードする配列を含む単離されたか又は精製された核酸分子及び配列番号:1の核酸1423−1545の一部又は全てを含む核酸分子にも関する。
【0064】
本発明は、前で言及された発明のHIF−3α核酸分子の何れかの一部又は全てあるいはそれらの相補体の一部又は全てと、中度、好ましくは強度のストリジェント条件下でハイブリダイズする単離されたか又は精製された核酸分子にも関する。より好ましくは、「ハイブリダイズする」核酸は、中度、より好ましくは強度のストリジェント条件下で、配列番号:1の核酸1423から1545の一部又は全てにハイブリダイズするか又はその相補配列の一部又は全てにハイブリダイズする。「ハイブリダイズする」核酸は、これ以後に記載されるように、プローブとして又はアンチセンス分子として使用することができる。
【0065】
関連する側面において、本発明は、
a)前で言及された発明のHIF−3α核酸分子の何れかの一部又は全てによりコードされる配列;
b)配列番号:2に少なくとも80%同一性を有する配列;
c)配列番号:2に少なくとも85%同一性を有する配列;
d)配列番号:2にて提供される配列;
e)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列に少なくとも80%同一性を有する配列;及び
f)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列に少なくとも85%同一性を有する配列;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたか又は精製されたポリペプチドに関する。
【0066】
より好ましくは、上記ポリペプチドは、配列番号:2と実質上同じか又は100%同一性を有するアミノ酸配列又は配列番号:3のオープンリーディングフレームと実質上同じか又は100%同一性を有する配列を含む。さらにより好ましくは、上記ポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全て又はその縮重バリアントを含むか、又は配列番号:113のの核酸1423−1545によりコードされるアミノ酸の一部又は全てを含む。もっとも好ましいポリペプチドは、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性、例えば、脈管形成の促進のためのVEGF発現誘導可能性を有するものである。
iii)ベクター、細胞及びトランスジェニック動物
発明は、機能性HIF−3α転写因子を発現する宿主、例えば遺伝学上修飾された細胞にも向けられる。好ましくは、上記細胞は、骨格筋細胞又は心臓細胞である。好ましくは、また、上記細胞は上記転写因子を含むcDNAを含む。
【0067】
HIF−3α発現細胞は、一時的にトランスフェクトされた細胞系(例えば、HEK293細胞、Hep3B細胞系等)又はあらゆる適当な単離された初代細胞(primary cell)であってよく、限定ではないが、哺乳類の骨格筋細胞、心臓細胞、骨髄細胞、繊維芽細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、内皮始原細胞及び胚性幹細胞を含む。
【0068】
そのような細胞系の構築のための方法のように、哺乳類の細胞の安定なトランスフェクションのために適した多数のベクターが公的に利用可能である(例えば、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アルファウイルス、レンチウイルス)。本発明は、HIF−3α配列を含むあらゆる種類のベクターを包含する。
【0069】
発明の細胞は、脈管形成を誘導するため、虚血を救済するため、哺乳類の筋肉組織の代謝活性を増加させるため、及び/又はCHF又は末梢血管疾患において筋肉機能を増加させるため、局所的又は周囲の移植された組織内において、適合性の(compatible)レシピエントに移植された場合に、特に有用かもしれない。もちろん、本発明の遺伝学上修飾された細胞は、人工器官の形成のため又は組織の構築のために使用することもできる。HIF−3α発現細胞は、HIF−3α及びその誘導体を生産するために使用してもよい(以後を参照)。
【0070】
本発明による哺乳類のHIF−3α又はその断片は、1)一つ又は複数の細胞系において様々なレベルにてHIF−3α遺伝子又はHIF−3α変異体を発現するトランスジェニック動物、2)内因性HIF−3α遺伝子の発現が一つ又は服すの細胞系において妨害されるか又は制御されるノックアウト動物を生成するために使用してもよい。
【0071】
HIF−3α遺伝子の特性決定は、相同組換えにより開発されるHIF−3αノックアウト動物モデルのために必要な情報を提供する。好ましくは、上記モデルは哺乳類動物であり、より好ましくはマウスである。同様に、HIF−3αの過剰生産の動物モデルは、標準のトランスジェニック技術に従い、一つ又は複数のHIF−3α配列をゲノム中に組込むことにより生成してよい。
iv)HIF−3α及びその機能性誘導体の合成
ヒトHIF−3α遺伝子配列の知見は、一連の応用に対してドアを開く。例えば、クローン化されたHIF−3α遺伝子配列の特徴は様々な細胞種に上記配列を導入するか又はインビトロ細胞外システムを使用することにより、分析してよい。HIF−3αの機能を、次に、異なる生理条件下で試験してよい。HIF−3αの配列は、遺伝子の発現及び遺伝子産物を理解するための研究において操作してよい。あるいは、生化学上の特性決定、大規模生産、抗体生産及び患者の治療のためにHIF−3αの精製を可能にさせる遺伝子産物を過剰発現する細胞系を生産してよい。
【0072】
蛋白質の生産のために、HIF−3αプラスミド又は他のベクターに導入されて、次に生きた細胞に導入される、真核及び原核の発現システムを生成してよい。正確な方向で発現プラスミドに挿入された全オープンリーディングフレームを含むHIF−3αのcDNA配列の構築物を蛋白質の発現に使用してよい。あるいは、野生型又は変異体HIF−3αの配列を含む配列の一部を挿入してよい。原核及び真核の発現システムは、当該蛋白質の様々な重要な機能ドメインが融合蛋白質として回収され、次に結合の研究、構造の研究及び機能の研究のため及び適当なアプローチの生成のためにも使用されるのを可能にする。
【0073】
真核の発現システムは、発現された蛋白質への適切な翻訳後修飾を許容する。これは、生物活性のための正確な発現及び翻訳後修飾の測定を含む、HIF−3α及び遺伝子産物の研究を可能にさせ、HIF−3α遺伝子の5’領域に位置する制御要素及び蛋白質の発現の組織制御におけるそれらの役割を同定する。それは、HIF−3αを発現する細胞を当該蛋白質に対して生じさせた抗体の機能アッセイシステムとして使用するため、薬剤の有効性を試験するため又はシグナル形質導入のシステムの成分として試験するため、正常な完全な蛋白質、蛋白質の特定の部分、又は天然に生じる多型性及び人工的に生じさせた変異蛋白質の機能を研究するために、単離又は精製のための大量の正常蛋白質又は変異蛋白質の生産も可能にさせる。HIF−3αのDNA配列は、制限酵素消化、DNAポリメラーゼフィルイン、エキソヌクレアーゼ消化、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ伸長、合成DNA配列又はクローン化DNA配列の連結及びPCRと共に特定のオリゴヌクレオチドを使用した部位特異的変異導入により、変更してよい。
【0074】
従って、発明は、ヒトHIF−3αポリペプチドを生産する方法にも関する。上記方法は、(i)細胞内での発現のために配置されたヒトHIF−3αポリペプチドをコードする核酸配列により形質転換された細胞を用意し;(ii)上記核酸を発現するのに適した条件下にて形質転換された細胞を培養し;(iii)ヒトHIF−3αポリペプチドを生産し;そして任意に(iv)生産されたヒトHIF−3αポリペプチドを回収する工程を含む。
【0075】
組換え蛋白質が発現されたなら、それは、例えば親和性クロマトグラフィーにより単離される。一つの例において、本明細書に記載された方法により生産してよい抗−HIF−3α抗体をカラムに結合させて、HIF−3α蛋白質を単離するのに使用してよい。親和性クロマトグラフィー前のHIF−3α含有細胞の溶解及び分画は、標準の方法により実施してよい。単離されたならば、組換え蛋白質は必要ならさらに精製することができる。
【0076】
組換え蛋白質及び外来配列を原核細胞及び真核細胞において発現させるための方法及び技術は、当業界において公知であり、さらに詳細には説明しない。必要であれば、Joseph Sambrook,David W.Russell.Joe Sambrok Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2001 Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照できる。分子生物学の当業者は、広く様々な発現系を使用して組換え蛋白質を生産してよいことを理解する。使用される厳密な宿主細胞は発明にとって重大ではない。HIF−3α蛋白質は、原核生物(例えば、大腸菌)又は真核生物(例えば、サッカロミセスセレビシエ、昆虫細胞、例えばSf21細胞、又は哺乳類細胞、例えばCOS−1,NIH3T3又はヒーラ細胞)において生産してよい。これらの細胞は、例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション、ロックビルMDから公的に利用可能である。形質導入の方法及び発現媒体の選択は、選択された宿主系に依存することになる。
【0077】
発明のポリペプチド、特に短いHIF−3αは、化学合成により生産してもよい。ポリペプチドの発現及び精製のこれらの一般的技術は、本明細書に記載されるとおり、有用なHIF−3αを生産して単離するのに使用することもできる。
【0078】
当業者は、哺乳類のHIF−3α又はその断片(本明細書に記載されるとおり)が治療用組成物中の活性成分として作用するかもしれないことを認識する。この組成物は、誘導されたHIF−3α又は断片に依存して、細胞の増殖、生存及び脈管形成を制御して、それにより細胞増殖、蓄積又は置換における障害により引き起こされるあらゆる症状を治療するために使用してよい。即ち、本明細書に記載される発明の別の側面は、薬学上受容可能な担体中に発明の化合物を含むことが理解される。
v)脈管形成を促進するHIF−3αの発現のアップ制御
ヒトHIF−3α遺伝子配列の知見は、患者の治療のための前途有望なアプローチを提供する。出願の例示のセクションにおいて以後詳細に示されるとおり、HIF−3αのアップ制御は、哺乳類の細胞においてVEGF発現を増加させ、それにより哺乳類、好ましくは動物モデル及びヒトの虚血性及び非虚血性組織において脈管形成を促進するために使用することができる。
【0079】
よって、発明は、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を細胞に導入して発現させることにより、哺乳類細胞においてVEGF発現を誘導させる方法にも関する。もちろん、他の核酸配列、例えばその発現がVEGF発現を誘導することも知られている核酸を、HIF−3αと共に細胞に導入して発現してよい。
【0080】
発明の別の関連する側面は、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を多数の細胞の少なくともいくつかに導入して発現させることにより、多数の細胞を有する哺乳類の組織内で脈管形成を誘導する方法に関する。
【0081】
好ましくは、これらの方法は、インビトロ、インビボ、又はエクスビボにおいて細胞にHIF−3αのcDNAをトランスフェクトすることにより達成され、ヒトHIF−3αポリペプチドは配列番号:2と実質上同じアミノ酸配列を含む。
【0082】
「発明の背景」のセクションにおいて言及されたとおり、脈管形成の刺激は冠動脈心臓疾患の治療に有益かもしれない。よって、発明のヒトHIF−3α配列は、そのような目的のために有利に使用され得る。一つの態様において、上記細胞は生きた生物体の心臓内に位置する心臓細胞からなり、そしてHIF−3α核酸配列は、哺乳類の心臓組織内でHIF−3αポリペプチドの発現が脈管形成を誘導するように、多数のこれらの心臓細胞の中で誘導される。HIF−3α核酸配列の導入は、前で定義されたベクターを用いるか又は当業界公知のあらゆる適当な技術により実施してよい。
【0083】
別の態様において、上記細胞は単離された筋肉細胞からなり(好ましくは、骨格筋細胞)、そしてこの細胞は遺伝学上修飾されることにより、HIF−3αポリペプチドを発現する。遺伝学上修飾されたHIF−3αを発現する細胞は、次に、適合性の哺乳類レシピエントの組織(例えば、心臓組織)に移植される。より好ましくは、移植は自己由来であり(細胞がレシピエントの筋肉組織、例えば脚から単離される)、そして上記細胞は局所的にか又は移植組織周囲において脈管形成を誘導するのに十分な量にてレシピエントに移植される(例えば、心臓の瘢痕内の注射)。
【0084】
また別の態様において、上記細胞は生きた哺乳類の筋肉組織内に位置する筋肉細胞からなり、そしてHIF−3αポリペプチドの発現が上記哺乳類の筋肉組織の脈管形成を誘導する(自己(autologous)移植又は異種(heterologous)移植)。この方法は、末梢動脈疾患(例えば、ヒトの大腿部又は上流の動脈の障害による脚の虚血)を治療するのに特に有用である。
【0085】
上記ヌクレオチド配列は、よく知られた方法を用いて細胞又は組織に導入してよい。事実、上記配列は、与えられた組織の細胞に直接導入するか、組織に注射されるか、又は前で遺伝学上修飾された適合性の細胞の移植により導入してよい(以下を参照)。ヌクレオチド配列を真核細胞、例えば哺乳類筋肉細胞に導入するか又はそのような細胞を遺伝学上修飾するための方法は、当業界公知である。例えば、これは、アデノウイルスベクター、プラスミドDNA移入(裸のDNA又はリポソームと複合させる)又はエレクトロポレーションにより達成してよい。必要であれば、当業者は、心筋の遺伝子治療法の再検討のためには、Isner J.,(Nature(2002),415:234−239)を、そして遺伝子移入媒介性脈管形成治療の方法を提供する米国特許出願US20010041679A1又は米国特許第5,792,453号を見てよい。好ましくは、転写因子の発現レベルは、局所的又は周囲の組織において脈管形成を誘導するのに十分、脈管形成関連遺伝子が発現されるようなレベルである。その発現及び選択性を良好に制御するためには、転写因子を誘導してよい。
【0086】
好ましい態様において、多数の遺伝学上修飾された骨格筋細胞を適合性のレシピエントに移植する。好ましくは、上記移植は自己移植である。より好ましくは、上記細胞は、局所又は周囲の移植された組織中で脈管形成を誘導するのに十分な量にて移植される。さらにより好ましくは、上記移植は、レシピエントの心臓機能を改善する。移植方法は、当業者に知られている。筋肉組織の移植の詳細に関しては、米国特許第5,602,301号及び第6,099,832号を参照してよい。
vi)HIF−3αの発現のダウン制御
前で記載されたとおり、HIF−3α発現はVEGF発現を誘導し、それ自体が脈管形成を誘導する。腫瘍細胞の生存は脈管形成に依存するから、我々は、幾つかの腫瘍においては、HIF−3α発現が癌細胞の増殖に必須であると提唱する。従って、HIF−3αのダウン制御はこれらの因子を妨害するか及び/又は治療するのに使用することができる。
【0087】
よって、発明は、ヒトHIF−3αポリペプチドの細胞発現レベルを低下させることにより、ヒトにおいて腫瘍細胞のに生存を変調させるか又は腫瘍細胞を排除する方法に関する。好ましい態様において、これは、腫瘍細胞にアンチセンスを送達することにより達成される。これは、静脈内注射、腫瘍内注射又は他の局所薬剤送達により、現在利用可能な方法を用いて達成できる(例えば、Crooke et al.,(2000),Oncogene 19,6651−6659;Stein et al.,(2001),J Clin.Invest 108,641−644;及びTamm et al.,(2001),Lancet 358,489−497)。
【0088】
上記の方法の関連する側面によれば、発明は、アンチセンス核酸及びそのようなアンチセンスを含む薬学組成物に関し、上記アンチセンスは、発現のHIF−3α細胞レベルを、そしてより特定すれば配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされ、及び/又は配列番号:2のアミノ酸475から515を含むヒトHIF−3αポリペプチドの発現レベルを低下させることができる。好ましくは、上記アンチセンス核酸はhHIF−3α蛋白質をコードするか又はそれに由来するポリペプチドの何れかをコードする核酸配列に相補である。より好ましくは、上記アンチセンスは、高いストリジェント条件下でゲノミック配列又はmRNAにハイブリダイズし、さらにより好ましくは高いストリジェント条件下で配列番号:1の一部又は全て又はその相補配列の一部又は全てにハイブリダイズする。もっとも好ましいアンチセンス分子は、高いストリジェント条件下で、配列番号:1の核酸1423から1545の一部又は全て、配列番号:1の核酸2116から2223の一部又は全て、又はそれらの相補配列の一部又は全てとハイブリダイズする分子である。
【0089】
高いストリジェント条件の非限定例は:
a)5X SSPE(1X SSPE=0.18M NaCl,10mM NaH2SO4);5X デンハルト溶液;0.05%(w/vz)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);及び(et)100μg/mlのサケ精子DNAの溶液中で68℃においてプリハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション;
b)室温において10分間2X SSPE及び0.1%SDSにより2回洗浄;
c)60℃において15分間、1X SSPE及び0.1%SDSにより1回洗浄;
d)60℃において15分間、0.1X SSPE及び0.1%SDSにより1回洗浄
を含む。
vii)HIF−3α抗体
発明は、HIF−3α蛋白質に特異的に結合する精製された抗体を特徴とする。発明の抗体は、上記のHIF−3α蛋白質又はポリペプチドを用いて様々な方法により製造してよい。例えば、HIF−3αポリペプチド、又はその抗原性断片を動物に投与することにより、ポリクローナル抗体の生産を誘導してよい。あるいは、本明細書にて使用される抗体はモノクローナル抗体であってよく、ハイブリドーマ技術を用いて製造される(例えば、Hammerling et al.,In Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas,Elsevier,NY,1981を参照)。発明は、ヒトHIF−3α蛋白質に特異的に結合する抗体を特徴とする。特に、発明は、「中和」抗体を特徴とする。「中和」抗体は、HIF−3αポリペプチドの生物活性の何れか、特にHIF−3αがVEGF発現を誘導する能力を干渉する抗体を意味する。中和抗体は、HIF−3αポリペプチドがVEGF発現を阻害する能力を、好ましくは50%、より好ましくは70%、そしてもっとも好ましくは90%誘導してよい。本明細書にて記載されるものを含む、VEGF発現のあらゆる標準アッセイを使用することにより、潜在的に中和する抗体を評価してよい。一度生産されたら、モノクローナル及びポリクローナル抗体は、ウエスタンブロット、免疫沈殿分析又はあらゆる他の適切な方法により特異的なHIF−3αの認識に関して試験することが好ましい。
【0090】
完全なモノクローナル及びポリクローナル抗−HIF−3α抗体に加えて、発明は、様々な遺伝子操作された抗体、ヒト化された抗体、及び抗体断片を特徴とし、F(ab’),Fab’,Fab,Fv及びsFv断片を含む。抗体は当業界で知られた方法によりヒト化することができる。完全なヒト抗体、例えばトランスジェニック動物中で生産されたものも、本発明の特徴である。
【0091】
HIF−3α(又はHIF−3αの断片)を特異的に認識する抗体、例えば、本明細書にて記載される抗体は、発明にとって有用と考えられる。そのような抗体は、HIF−3αポリペプチドの検出、定量及び精製のためのあらゆる標準の免疫検出方法において使用してよい。好ましくは、当該抗体は、HIF−3αに特異的に結合する。当該抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであってよく、そして診断又は治療の目的のために修飾されてよい。より好ましくは、上記抗体は、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てを含むHIF−3αポリペプチドに特異的に結合する。もっとも好ましい抗体は、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てに特異的に結合する。
【0092】
発明の抗体は、例えば、HIF−3αの発現レベルを監視するために免疫アッセイにおいて使用されることにより、哺乳類により生産されたHIF−3α又はHIF−3α断片の細胞下の(subcellular)位置を決定するか、又は生物サンプル中のHIF−3α又はその断片の量を測定してよい。本明細書にて記載されたHIF−3αを阻害する抗体は、低下したHIF−3αの機能が有利であるはずの条件、例えば癌細胞の増殖の阻害に関して特に有用であるかもしれない(以後を参照)。さらに、上記抗体は、診断用及び/又は治療用用途のための化合物、例えばイメージングのための放射性ヌクレオチド及び特定の組織の位置へ化合物を標的化するためのリポソームにカップリングさせてよい。当該抗体は、容易な検出のために、標識してよい(例えば、免疫蛍光)。
viii)HIF−3αポリペプチドの投与、HIF−3α合成又は機能の変調因子
不十分なHIF−3α遺伝子の発現を回避するか又は克服するため、治療をデザインしてよい。これは、例えば、HIF−3αのcDNAのトランスフェクションにより達成することができた。
【0093】
大量の純粋なHIF−3αを得るためには、培養された細胞の系が好ましいはずである。影響された組織への当該蛋白質の送達は、次に、適切なパッケージング系又は投与系を用いて達成することができる。あるいは、小分子のアナログを、HIF−3αアゴニストとして作用させ、そしてこの様式において、所望の生理学上の効果を生じさせるために使用して投与できたことが想像できる。そのような分子を発見する方法は、本明細書に提供される。
【0094】
HIF−3α蛋白質又はポリペプチド、ポリペプチド、抗体又は変調因子(例えば、アンチセンス)は、薬学上受容可能な希釈剤、担体又は賦形剤の中で、ユニット投薬形態にて投与してよい。慣用の薬学上の経験を使用することにより、HIF−3α蛋白質、ポリペプチド又は変調因子を患者に投与するための適切な製剤又は組成物を提供してよい。投与は、患者が症状を表す前に始めてよい。如何なる適切な投与経路も用いてよく、例えば、投与は、皮下、筋肉内、頭蓋内(intracranial)、眼窩内(introrbital)、眼内(ophthalmic)、心室内(intraventricular)、内包内(intracapsular)、脊髄内(intraspinal)、くも膜下槽内(intracisternal)、腹膜内、鼻腔内、噴霧(aerosol)、坐薬によるか、又は経口投与であってよい。治療用製剤は流体溶液又は懸濁液の形態であってよい;例えば、経口投与のためには、製剤をタブレット又はカプセルの形態にしてよい;そして鼻腔内投与のためには、粉末、鼻内ドロップ又は噴霧の形態である。
【0095】
製剤を作成するための当業界でよく知られている方法は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に見いだされる。非経口投与のための製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水又は塩水、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、植物起源のオイル、又は水素化されたナフタレン類を含んでよい。生物適合性、生物分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコライドコポリマー、又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーを使用することにより、上記化合物の放出を制御してよい。他の有力な有用な非経口送達システムは、エチレン−ビニルアセテートコポリマー粒子、浸透ポンプ、移植可能な注入システム、及びリポソームを含む。吸入のための製剤は、賦形剤、例えば、ラクトースを含んでよく、あるいは例えばポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココレート及びデオキシコレートを含む水溶液であってよく、あるいは鼻内ドロップの形態の投与のための油性溶液又はゲルとしてであってよい。
【0096】
所望であれば、HIF−3α蛋白質、ポリペプチド又は変調性化合物による治療は、上記疾患のためのより慣用的な治療、例えば外科手術、ステロイド治療又は化学治療と組み合わせてよい。
【0097】
好ましい態様によれば、HIF−3αアンチセンスを、前で定義したオリゴヌクレオチドの少なくとも一つと薬学上受容可能な担体を含む薬学組成物に取り込む。本発明の組成物中に存在するアンチセンスの量は、治療上有効な量である。アンチセンスの治療上有効な量は、組成物が投与される宿主内において過剰に負の作用を引き起こすことなしに、その生物学上の機能を上記アンチセンスが果たすのに必要な量である。使用されるオリゴヌクレオチド及び投与される組成物の正確な量は、オリゴの生物活性、治療される症状の種類、投与の様式、並びに組成物中の他の成分のような因子に従い変更される。典型的には、上記組成物は約1%から約90%のアンチセンスからなり、そして約20μgから約20mgのアンチセンスが投与される。アンチセンス及びアンチセンスを含む薬学組成物を製造及び投与するためには、当業界で知られた方法を用いてよい。例えば、Crooke et al.(Oncogene,2000,19:6651−6659)及びTam et al.(Lancet 200,1358:489−497)を癌化学治療のアンチセンス技術の総説として参照されたい。
ix)HIF−3αの細胞内又は細胞外レベルの評価
言及されるとおり、上で記載された抗体及びプローブは、HIF−3αの蛋白質発現を監視し、及び/又は生物サンプル中のHIF−3α又はその断片の量を測定し、及び/又はヒト被験者において腫瘍の悪性度を評価するために使用してよい。
【0098】
さらに、インサイチュハイブリダイゼーションを使用することにより、HIF−3α遺伝子の発現を検出してよい。当業界では知られているとおり、インサイチュハイブリダイゼーションは特別に標識された核酸プローブの、個々の細胞又は組織中の細胞RNAへのハイブリダイゼーションに依存する。よって、HIF−3α遺伝子の唯一の部分に対応するオリゴヌクレオチド又はクローン化されたヌクレオチド(RNA又はDNA)断片は、HIF−3αの細胞レベルを評価するか又は特別のmRNA種を検出するのに使用してよい。そのような評価は、よく知られた方法を用いてインビトロにおいて使用してもよい(ノーザン分析、定量性PCR等)。
【0099】
生物サンプル中のHIF−3α又はその断片の量の測定は、細胞増殖性疾患又はそのような疾患の増加する可能性を、特にヒト被験者において、HIF−3α核酸プローブ又はHIF−3α抗体を持いて診断するのに特に有用かもしれない。本発明者らは、特定の種類の癌の悪性度とHIF−3α又はその断片の量の間に相関があること、及び高いレベルのHIF−3αが腫瘍細胞が脈管形成活性及び悪性を有する指標であることも、推測する。高い悪性の癌は短い倍加時間を細胞が示す癌である(例えば、造血細胞癌、肺癌、前立腺癌、子宮癌、乳癌、メラノーマ、膵臓癌、腸癌、肉腫、前立腺癌及び血液癌)。
【0100】
発明の方法は、サンプル又はその中の細胞の中のHIF−3αの量を評価するために、インビトロ又はインビボにおいて、癌を有する疑いのある個体からの生物サンプル(例えば、血液サンプル又は組織生検)を、発明によるHIF−3α抗体又はプローブと接触させることにより実施してよい。測定された量は、増殖性腫瘍細胞を有する被験者の見込みの指標であるが、何故ならば、これらの細胞が高いレベルのHIF−3αの発現を有すると予測されるからである。
【0101】
関連する側面において、発明は、i)組織又は細胞のサンプルを用意し;ii)当該サンプルを抗−HIF−3αポリクローナル又はモノクローナル抗体とインキュベートし;そしてiii)HIF−3αの分配を評価することを含む、組織中のHIF−3αの発現を検出する方法を特徴とする。
【0102】
サンプル中のHIF−3αの量を測定するアッセイキットも有用であり、本発明の範囲内にある。そのようなキットは、発明によるHIF−3α抗体又はプローブ及びキットを使用するための指示書、アッセイ管、酵素、試薬又は反応バッファー、酵素からなる群から選択される要素少なくとも一つを含むのが好ましい。
x)HIF−3α蛋白質の発現を変調する分子の同定
HIF−3αのcDNAは、HIF−3α発現を増加させるか又は低下させる分子の同定を促進させるために使用してよい。一つのアプローチにおいて、候補分子を濃度を変えながら、HIF−3αのmRNAを発現する細胞の培養培地に加える。HIF−3α発現を次に、例えば、HIF−3αのcDNA又はcDNA又はRNA断片をハイブリダイゼーションプローブとして用いるノーザンブロット分析により、測定する(又は別の遺伝子、例えばその発現がHIF−3αにより制御されるVEGFの発現)。候補分子存在下でのHIF−3αの発現のレベルを、候補分子不在下でのHIF−3α発現レベルと比較するが、他の因子(例えば、細胞の種類及び培養条件)は同じにする。
【0103】
HIF−3αのレベルを変調させる化合物は、精製してよいか、又は実質上精製してよく、あるいは、細胞から得られる抽出物又は上清のような化合物の混合物の一つの成分であってよい(Ausubel et al.,同じ箇所)。化合物の混合物のアッセイにおいては、単一の化合物又は最少数の有効な化合物がHIF−3α発現を変調させると証明されるまで、HIF−3α発現を、化合物プールの段々に小さくなるサブセット(例えば、HPLC又はFPLCのような標準技術により生産された)に対して試験する。
【0104】
HIF−3αの生物活性(例えば、VEGF発現、脈管形成の誘導)を変調するそれらの能力に関して化合物をスクリーンしてもよい。このアプローチにおいては、候補化合物の存在下でのHIF−3α又はHIF−3αを発現する細胞の生物活性(例えば、肺又は腎臓の細胞)を、均等な条件下で、その不在下での生物活性と比較する。再び、上記スクリーンは一つ又は複数の有用な変調化合物が段階様式にて単離される候補化合物のプールを用いて始めてよい。HIF−3α又は細胞の生物活性は、あらゆる適切な標準アッセイを用いて測定してよい。
【0105】
HIF−3αの活性に対する候補分子の作用は、代りに、翻訳のレベルにおいて、上記の一般的なアプローチを標準の蛋白質検出技術、例えばウエスタンブロッティング又はHIF−3α特異的抗体(例えば、本明細書で記載されたHIF−3α抗体)を用いた免疫沈殿と共に用いることにより測定してよい。
【0106】
HIF−3αの生物活性を変調させる化合物を検出するための別の方法は、与えられたHIF−3αポリペプチドと物理的に相互作用する化合物に関してスクリーンすることである。試験される化合物の性質に依存して、結合性相互作用は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、フィルター結合アッセイ、FRETアッセイ、シンチレーション近接アッセイ、顕微鏡視覚化、細胞の免疫染色、インサイチュハイブリダイゼーション、PCR等のような方法を用いて測定してよい。
【0107】
HIF−3α発現又はHIF−3α活性の増加を促進させる分子は上記発明に特に有用と考えられる;そのような分子は、例えばHIF−3αの細胞レベルを増加させて、それによりHIF−3αポリペプチドの脈管形成を促進及び/又は誘導する能力を探索するための治療剤として使用してよい。
【0108】
HIF−3α活性を低下させる分子(例えば、HIF−3α遺伝子発現又はポリペプチド活性を低下させることにより)は、脈管形成及び/又は細胞増殖を低下させるか及び/又はブロックするために使用してよい。これは、癌の治療において有利なはずである。
【0109】
HIF−3α遺伝子発現又はポリペプチド活性を有効に変調させることが上記方法によりわかった分子は、さらに動物モデルにおいて試験してよい。それらがインビボの設定においてうまく機能し続けるなら、それらを脈管形成を促進するか又は阻害するための治療剤として用いてよい。
xi)HIF−2α及びHIF−3αによる脈管形成関連遺伝子の発現の誘導
関連する側面によれば、本発明は、脈管形成を誘導して筋肉の機能を改善するため、より特定すれば哺乳類において冠動脈及び心臓の疾患を治療するための方法及び細胞に関する。発明は、多数の脈管形成関連遺伝子を発現する遺伝子操作された筋肉細胞も提供する。
【0110】
発明のこの側面は、低酸素症誘導可能因子(HIF−1α、HIF−2α及びHIF−3α)からの転写因子をコードするヌクレオチド配列の使用に基づく。例示のセクションにおいて示されるとおり、本発明者らは、VEGFに加えて、脈管形成に関係する他の分子、例えばIL−8,IL−6,PIGF,LIF受容体、PAI−2及びMMMP7の筋肉細胞における発現をHIF−2αが刺激したことを証明した。発明者らは、ラットのCHFのモデルにおいて、HIF−2αが哺乳類において治療性脈管形成のために使用できたことを示した。また、発明者らは、HIF−2α遺伝子により骨格筋細胞(SkMC)を遺伝子操作し、そしてこれらの細胞がインビボにおいて優秀な脈管形成特性を示したことを示した。さらに、CHFラットのHIF−2α遺伝子移入による治療は脈管形成、高い代謝活性及び改善された心機能をもたらした。
【0111】
HIF−1α、HIF−2α及びHIF−3αは同じファミリーに属し、そして密接に関連するから、類似の結果がHIFメンバーの何れを用いても得られると予測された。よって、本セクションに提供された本発明の追加の側面は、HIF−2αのみならずHIF−1α及びHIF−3α(全てのアイソフォーム)の使用を包含する。HIF−1α(GenBankTM受け入れ番号U22431)は、Wang et al.,(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995)92:5510−5514)により、そして米国特許第5,882,314号、第6,020,462号及び第6,124,131号において記載される。HIF−2α(GenBankTM受け入れ番号U81984)は、Tian et al.,(Genes & Dev.(1996)11:72−82)により、そして米国特許第5,692,963号において記載される。HIF−3αの一つのアイソフォームは本明細書に記載され、そして別のアイソフォーム(GenBankTM受け入れ番号AB054067)は、Hara et al.(Biochem.Biophys.Res.Comm.(2001),Oct 5;287:808−813)に記載される。
【0112】
よって、発明のこの側面は、哺乳類の筋肉細胞において少なくとも一つ、好ましくは多数の脈管形成関連遺伝子の発現を誘導する方法に向けられ、当該方法は、機能性HIF−2α転写因子又は機能性HIF−3α転写因子をコードする核酸配列を細胞内に導入して発現させる工程を含む。
【0113】
別の関連する側面によれば、発明は、筋肉細胞の代謝活性、例えば、グルコース消費)を増加させる方法に向けられ、低酸素症誘導可能因子(HIF)ファミリーの機能性転写因子をコードする核酸配列を細胞内に導入して発現させる工程を含む。好ましくは、上記機能性因子はHIF−2α又はHIF−3αである。
【0114】
別の関連する側面において、発明は、哺乳類の心臓組織機能を改善する方法に向けられ、機能性HIF−2α転写因子又は機能性HIF−3α転写因子をコードする核酸配列を発現する多数の遺伝子修飾された細胞内を、上記哺乳類の心臓組織に提供する工程を含む。
【0115】
別の関連する側面によれば、発明は、哺乳類の筋肉組織において脈管形成を誘導する方法に向けられ、機能性HIF−2α転写因子又は機能性HIF−3α転写因子をコードする核酸配列を発現する多数の遺伝子修飾された細胞を、上記筋肉組織に提供する工程を含む。
【0116】
発明によれば、低酸素症誘導可能因子ファミリーの転写因子をコードするヌクレオチド配列を筋肉細胞に導入して発現させ、好ましくは、限定ではないがアデノウイルス感染、及びプラスミド、コスミッド又は人工の染色体のトランスフェクション又はエレクトロポレーションを含むあらゆる適切な方法を用いることにより、筋肉細胞、好ましくは骨格筋細胞又は心臓細胞内に導入されて発現される。より好ましくは、上記転写因子をコードする核酸配列は、cDNAである。
【0117】
さらなる側面において、発明は、機能性HIF−2α転写因子又は機能性HIF−3α転写因子をコードする核酸配列を発現する遺伝子修飾された筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞、心臓細胞)に向けられる。好ましくは、上記細胞は骨格筋細胞又は心臓細胞である。また、好ましくは、上記細胞は、転写因子をコードするcDNAを含む。前に記載されたとおり、そのような細胞は、脈管形成を誘導するため、虚血を軽減するため、哺乳類の筋肉組織の代謝活性を増加させるため、及び/又はCHF又は末梢欠陥疾患における筋肉機能を増加させるために、局所又は周囲の移植された組織において、適合性のレシピエントにおいて移植された場合に、特に有用かもしれない。もちろん、本発明の遺伝子修飾された細胞は、人工臓器の形成のため又は組織の構築のために使用することもできる。
【0118】
細胞の移植(自己移植又は適合性ドナーから)は、局所の脈管形成を周辺組織に誘導するため、及び/又は筋肉細胞の代謝活性を改善するため、及び又は冠動脈心臓疾患又は末梢欠陥疾患において虚血を軽減するため、及び/又は哺乳類の心臓機能を改善するためには好ましいが、上記機能性転写因子をコードする核酸配列は当業界で知られているあらゆる適切な方法を用いて哺乳類の組織へ直接導入してよい(いくつかの例に関しては前記を参照)。脈管形成関連遺伝子を以後において例示のために示すとおり、本発明は、脈管形成を誘導し、虚血を軽減し、そしてCHD及びPVDにおいて細胞代謝活性を増加させるために有用である。
【0119】
実施例
以下の実施例は、本発明の広い範囲の応用可能性の例示であり、その範囲を限定することを意図しない。発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本発明においては、修飾及び変化がなされ得る。本明細書に記載される類似又は均等なあらゆる方法及び物質が本発明の試験のための実施において使用され得るが、好ましい方法及び物質は記載される。
実施例1:脈管形成を誘導して筋肉の機能を改善するためのHIF−1α、HIF−2α及びHIF−3αの使用
プラスミドの構築
HIF−1α−VP16/pcDNA3を、S.L.McKnight(Tian et al.,Genes & Dev.(1996)11:72−82)から得た。HIF−1α−VP16/pcDNA3を生成するため、VP16断片(pVP16(ClonTech)からのNheI及び平滑末端化EcoRIを、オリゴTTA AGA TAT CGA TGA CAC GTG(配列番号:4)及びTCA GCA CGT GTC ATC GAT ATC(配列番号:5)からなるNheI−AflIIリンカーの存在下でAflII及びXbaI平滑末端化されて切断されたHIF−1α/pcDNA3に挿入することにより、HIF−1α配列の3’部分をVP16により置き換え、HIF−1αのDNA結合ドメイン及びヘテロダイマー化ドメイン(HLH及びPAS)(遺伝子の5’によりコードされた)をVP16転写活性化ドメインとフレームを合わせた。
【0120】
HIF−2α−VP16/pcDNA3を、S.L.McKnight(Tian et al.,Genes & Dev.(1996)11:72−82)から得た。HIF−2α−VP16/pcDNA3を生成するため、オリゴヌクレオチドT7及びGCT AGC TAG GAA GTT ACT CCT CTC(配列番号:6)を用いて、HIF−2α/pcDNA3を鋳型としてPCRによりHIF−2αの5’領域を増幅し、HIF−2αのDNA結合ドメイン及びヘテロダイマー化ドメイン(HLH及びPAS)の末端にNheIを創製した。この断片をNheIとKpnIにより切断して、NheIとKpnI切断したHIF−1−VP16/pcDNA3内のHIF−1α配列に代えて挿入した。配列決定により、増幅された配列の完全状態が確認された。
【0121】
HIF−3αをRT−PCRによりマウスHIF−3α配列からの相同性推定によりクローン化した。MarathonTM RT−PCRキット(CloneTech)を用いて、HIF−3α配列の2断片を、成人の心臓のRNA(CloneTech)から、5’末端に関して、オリゴCCA TGG ACA GGT CGA CCA CGG AGC TGC GCA AGG(配列番号:7)(NcoI部位にATGイニシエーターを含む)及びCGC AGG CAG GTG GCT TGT AGG CCC T(配列番号:8)を用い、そして3’末端に関して、オリゴCAG CTG GAG CTC ATT GGA CAC AGC ATC(配列番号:9)及びCCC CAT CCT GTG CGT TGG CTG CCG(配列番号:10)を用いて増幅した。両断片を配列決定して、唯一のNdeI部位と合わせ、そして構築されたcDNAを、HIF−1αのKozak配列を使用して、HIF−1α/pcDNA3のNcoIイニシエーターに挿入することにより、翻訳を開始した。HIF−3α−VP16/pcDNA3を生成するため、HIF−3αのDNA結合ドメイン及びヘテロダイマー化ドメイン(HLH及びPAS)を含むPCR断片を、HIF−3α/pcDNA3を鋳型として使用して、オリゴT7及びGGA GTC AGC TTA AGC TGA ATG GGT CTG C(配列番号:11)により増幅した。増幅された産物をBamHIとAflII(3’オリゴから来た)により切断して、BamHIとAflIIにより切断されたHIF−1α−VP16/pcDNA3内のHIF−1α配列の代りに挿入した。
トランスフェクション
初期継代293細胞(ATCC # CRL−157)をプレート(100mm)あたり1.7x106細胞にてプレートして、一晩培養した。10μgの不稔性(sterile)プラスミドDNAを、製造者の指示書に従い、リポフェクチンを用いてトランスフェクトした。5時間のトランスフェクション後に、正常酸素(normoxia)(37℃にて普通の空気中の5% CO2)又は低酸素(5% CO2,2% O2,37℃にて)の何れかにて24時間インキュベートした。100mm皿の中の約70%コンフルエントなHep3B細胞(ATCC #HB−80645)に、4μgの不稔性プラスミドDNA及び6μlのFugeneTM(Roche)を、製造者の指示書に従い、トランスフェクトした。
アデノウイルス生成
HIF構築物を用いて、Ad.EasyTM技術により、製造者の方法論を用いてアデノウイルスベクターを生成した(Q−Biogene)。
感染
初期継代ヒトSkMC(Cambrex #CC−2561)を100mmの皿にプレートして、約70%コンフルエントに到達するまで、生育させた。細胞をPBSにより洗浄して、10%胎児ウシ血清(FCS)及び500のMOIのアデノウイルスを含む4mlのDMEMで覆った。このMOIは、ほんの約10%の細胞の感染しか許容しない。細胞を一定の緩やかな撹拌により37℃において6時間インキュベートした。10%のFCSを含む6mlのDMEMを加えて、細胞を一晩37℃においてインキュベートした。細胞を、次に、正常酸素(37℃にて普通の空気中の5% CO2)又は低酸素(5% CO2,2% O2,37℃にて)の何れかにて24時間インキュベートした。
RNAses防御アッセイ(RPA)
全RNAを形質導入された細胞からグアニジンチオシアネート−フェノール抽出により、記載されたとおりに(Staffa,A.,et al.,J.Biol.Chem.(1997)272:33394−401)(図3A又は3C)又はRneasy Mini KitTM(Qiagen)により製造者により記載されたとおりに、単離した。サンプルあたり15μgの全RNAをRPAによりRPA IIIキット(Ambion)を用いて分析した。プローブは、図3Aに関してはhAmgio1鋳型セット(Pharmingens)から、そしてその他に関してはホームメードのVEGF及びアクチン鋳型から、調製した。VEGF鋳型は、phVEGF165.SR(J.F.Isnerから)(Tsurumi,Y.,et al.,Circulation.(1996)94:3281−3290)上で、オリゴCCG GAA TTC TCT ACC TCC ACC ATG CC(配列番号:12)及びCCG GAA TTC CTC AGT GGG CAC ACA CTC C(配列番号:13)による増幅、増幅産物のEcoRIによる消化(両鎖)及びEcoRI消化されたpBluescript内への挿入により調製した。配列の完全性は配列決定により確認した。結果のプラスミドをHindIIIにより消化して、T7のRNAポリメラーゼにより転写することにより、アンチセンスRNAプローブを生成した。アクチンプローブ鋳型は、W.E.Bradley(Houle,B.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1993)90:985−989)から得た。
定量
オートラジオグラムをアルファイメージャー2000TM(Alpha Innotech Corporation)上でスキャンした。各バンドの強度を測定して、相対的な発現を、図3Aに関してはVEGF強度/Flt4強度として、そしてその他に関してはVEGF強度/アクチン強度として計算した。相対VEGF値は正常酸素中の対照サンプルに帰する。生成された蛋白質VEGFは、定量されたmRNAの量に比例した。結果を平均±標準偏差として表す。
遺伝子チップハイブリダイゼーション
全RNAを、Ad.NullTM(Q−Biogene)又はAd.HIF−2αの何れかに感染したヒトSkMC(Clontics)から記載されたとおりに単離した(Staffa,A.,et al.,J.Biol.Chem.(1997)272:33394−401)。プローブを、製造者の指示書に従い、ExpressHybTM溶液(Clontech)によりAtlas Human1.2ArrayTM(Clontech)にハイブリダイズさせた。アレイをホスホロイメージャースクリーンに暴露して、Atlas2.01TMソフトウエア(Clontech)により分析した。
インビボ脈管形成
初期継代ヒトSkMC(未感染か又は示されたアデノウイルスベクターに感染した)を、マトリゲル(50000細胞/0.5ml)に取り込み、そしてスキッドマウス(グループあたり10匹)に皮下注射した。マトリゲルのみ又はbFGF(400ng/ml)を対照として用いた。移植の7日後に、マトリゲルのプラグを切り出して、組織学の評価のために加工した。各測定値は、積分した密度として表現された顕微鏡視野内の細胞の応答性の程度に相当する(切片中のグレーの値の総計、バックグラウンドを差し引き、各プラグにおいて6つの測定値)。
【0122】
永久的な左前方下方冠動脈(permanent left anterior descending coronary artery ligation)の結紮により創製された梗塞されたラット(MyoinfarctTMラット、チャールズリバーラボラトリーズ)の代謝活性を、結紮の5日後に、18FDG(〜750μCi/100g)の注射及び小動物PET−ScanTM(Sherbrooke University)を用いた動的捕捉(dynamic acquisition)により測定した。結紮の10日後に、小規模の開胸を実施することにより、左心室の梗塞エリア内にAd.HIF2α/VP16又は塩溶液(N=2)を注入した。18FDG PET−ScanTMを注入から14、28、42及び56日後に実施した。代謝活性は、左心室の側壁のエリア内に見いだされる18FDGの量として計算され、梗塞が局在する場所においては、別の冠動脈により洗浄された隔壁内の影響されていないエリアに見いだされたFGDの量により標準化した。最後のPET−ScanTM後に、動物を犠牲にして、血管を、完全に梗塞されたエリア内又は健康な組織と梗塞された組織の間の限界のフィールド内で定量した。
結果
HIF−1α、HIF−2α及びHIF−3αによるインビトロVEGF誘導
図2A,2B,3A,3B及び3Cは、HIF構築物によりトランスフェクトされた細胞内での脈管形成関連遺伝子の発現を示す。
【0123】
HIF因子の天然(野生型)形態又は活性化されたバージョンをpcDNA3(Invitrogen Corp.)なる発現ベクターに導入した。活性化された構築物は、蛋白質のN’部分に位置する低酸素症不安定性ドメインの欠損及びヘルペスウイルス由来のVP16ドメインである、転写の強い活性化因子の導入からなる(Vincent et al.,Circulation(2000)102:2255−2261)。結果生じたハイブリッドは、もはや低酸素症により制御されず、そして常に転写活性化活性を示す。
【0124】
これらのプラスミドを、一時的に、ヒト胚腎臓293細胞(HEK293)又はヒト肝臓細胞Hep3Bにトランスフェクトさせた。細胞を24時間、正常酸素(通常条件)又は低酸素(2%酸素)の何れかでインビトロして、全RNAを単離した。同様に、ヒト骨格筋細胞(hSkMC)を、HIF構築物のいくつかを発現するアデノウイルスベクターにより形質導入した。HIF構築物トランスフェクション後の内因性VEGF遺伝子活性化をRNAse防御アッセイ(RPA,Ambion)により分析した。
【0125】
VEGF誘導は正常酸素においてHIF−1αトランスフェクションにより生産されなかった(対照と同様)(図2A,2B,3A及び3B)。この結果は予測されたが、HIF−1αが正常酸素においては素早く分解するからである。HIF−1α/VP16ハイブリッドは正常酸素及び低酸素の両方においてVEGFを刺激したが、当該蛋白質は酸素の均衡によりもはや制御されないからである。おもしろいことに、HIF−3αはHEK293及びHep3細胞においてVEGFを刺激するのに極めて有効であった(図2A及び2B)。レベルは正常酸素及び低酸素の両方においてHIF−1αにより得られたレベルよりも優れていたが、HIF−1α/VP16はさらに高い転写活性化活性を有した。HIF−3αのVP16ドメインによる活性化は、VEGF誘導のレベルを顕著に修飾しなかった。
【0126】
HIF−2αによるVEGF刺激も極めて重要であった。図3A,3B及び3Cは、上記蛋白質の野生型バージョンが、正常酸素及び低酸素の両方のおいて、研究された3つの細胞種においてHIF−1α/VP16に匹敵する範囲でVEGFを刺激したことを示す(図3A中のHEK293、図3B中のHep3B及び図3C中のhSKMC)。VP16融合は生産されたVEGFのレベルにおいて重要な利点を提供しなかった。
インビトロにおけるHIF−2αによる脈管形成遺伝子の活性化
VEGFは重要な脈管形成遺伝子である。しかしながら、いくつかの因子により制御されるいくつかの工程を含む複雑なプロセスである。脈管形成変調因子としてHIF因子の能力を評価するため、遺伝子発現を、Ad.HIF2α又はAd.NullTMの何れかに感染したヒトSkMC内で、遺伝子チップ技術を用いて比較した。何れかの細胞集団由来のcDNAプローブを、ほぼ1200の遺伝子の発現を評価するAtlas Human1.2ArrayTM(Clontech)上でハイブリダイズさせた。別個に制御された遺伝子のうち、VEGFは、もっとも顕著な増加を示す一つであった。VEGFは、内皮細胞の増殖、移動及び分化のどれをも刺激する。おもしろいことに、他の脈管形成遺伝子が活性化された(表2)。VEGFのように、インターロイキン−8(IL−8)、及び白血病阻害因子受容体(LIF−R)の活性化は、内皮細胞の増殖を刺激することが知られている。しかしかがら、IL−8も、脈管形成の第1工程である、基底膜の破壊に必須の金属プロテイナーゼの放出を活性化することにより作用する。LIFもSkMCの生存性を増強することが知られており、細胞治療に有用なはずである(図4)。インターロイキン−6(IL−6)の役割は、より間接的である;それは内皮細胞の増殖に効果をもたないが、それらの移動と分化は刺激する。それはVEGF生産の増強因子でもある。胎盤成長因子(PIGF)は、脈管形成を刺激するためにVEGFと共に作用することが示された。マトリックス金属プロテイナーゼ7(MMP7)は脈管形成プロセスを開始することができる有力なプロテイナーゼであるが、胎盤のプラスミノーゲン活性化因子阻害剤2(PAI−2)は発生期の血管を安定化することができる(図4)。遺伝子チップの制限のためにこのアッセイにおいて検出できなかった他の多くの有力な脈管形成因子が存在するが、HIF因子により誘導されるかもしれない。
【0127】
【表2】
【0128】
インビボにおけるHIF−2α刺激性脈管形成
HIF構築物の脈管形成能力を、インビボにおいて、マウス内でHIF構築物をトランスフェクトされたSkMCの皮下移植により評価した。移植から7日後に、修飾された細胞沈殿物は、未修飾のSkMCよりも顕著に高い血管密度を示した(図5B)。この結果は、VP16活性化がHIF−2αの場合には必要ないことを確証する。修飾されたSkMCは、インビボにおいて、細胞外マトリックスにより支持されて新しい血管に囲まれた筋管に分化した(図5A)。脈管形成は筋管周囲で重要であり、そしてうまく組織化されているらしかった。
【0129】
HIF−2αも、ラットにおいてMIのモデルにおいて直接送達された。ベクターAd.HIF−2α/VP16の心筋への直接の注射の5日前及び続く2カ月の間のいくつかの時間点において、代謝活性を評価した。図6A及び6Bに示すとおり、位置放射断層撮影スキャン(PET−ScanTM)による定量により、対照と比較して改善された代謝活性が治療されたラットの梗塞されたエリアにおいて測定された。血管の密度が組織学により定量されたとき、梗塞エリア並びに梗塞周辺ゾーンにおいて、アデノウイルス処理ラットにおいて血管の数の増加が記された(図6B)。
3)考察
インビトロトランスフェクション実験は、野生型HIF−3αとHIF−2αはVEGFを誘導することに関してHIF−1αよりも優れていることを示した。遺伝子治療において使用したところ、HIF−3αは、即ち、脈管形成を誘導するのに極めて有用なはずである。
【0130】
図2A,2B,3A,3B及び3Cに示すとおり、HIF−VP16融合コーディング構築物のトランスフェクションはVEGFの顕著な刺激をもたらした。しかしながら、ヒトの遺伝子治療においては、これらの構築物は免疫原性の問題を提起する。ウイルス起源のVP16配列の存在は、免疫系により認識されて、移入された遺伝子に対して免疫応答を引き起こす。野生型のヒト遺伝子、例えばHIF−3αを使用した構築物は免疫原性が低いために利点を有し、即ち、長期間の発現を提供する。比較すると、HIF−1αは正常酸素において貧困な脈管形成能力しか有さず、完全に活性になるためにはVP16修飾を必要とする(図2、3及びVincent et al.,Circulation(2000)102:2255−2261)。図2A,2B,3A,3B及び3Cも、HIF−2αとHIF−3αが標的とされた細胞の遺伝子の転写を修飾するために、遺伝子移入プロトコルにおいて有効に使用できたことを強く示唆する。特に、VEGF発現が増加し、脈管形成をもたらす。即ち、血管及び血液潅流を増加させる虚血性疾患においてHIF−2α又はHIF−3αの配列を使用することを提案する。
【0131】
HIF−2αにより活性化された遺伝子の分析は、いくつかの脈管形成遺伝子の誘導を明らかにした(表1)。これらの遺伝子は脈管形成の様々な局面において役割を担い(図4)、そして結果の脈管形成は、即ち、強くてうまく組織化されていると予測される。これは脈管形成を誘導することにおいてVEGFを単独で使用するのに比べての主要な利点であるが、脈管形成の鍵となる工程の全てが刺激されることになるからである。HIF−3αもいくつかの脈関係性遺伝子を制御しておそらくはHIF−2αと同じである。
【0132】
インビボの実験は、HIF−2α遺伝子の移入が、皮下移植物(図5B)及びMI心臓モデル(図6B)の両方において、顕著な脈管形成をもたらしたことを証明した。これらの結果は、VP16融合が血管の形成をもたらすのに必要ないことを証明した。この特徴は、脈管形成因子としてのHIF−2α配列に対する重要な利点を授与する。遺伝子移入治療における天然配列の使用は、ウイルス起源のVP16による構築物よりもはるかに低い免疫原性応答を引き起こすことになる。HIF−3αもHIF−1αより優れており、HIF−2αと類似のVEGFインビトロ誘導を示したから、それはインビボにおいても有効であると予測される。
【0133】
脈管形成は、図6Aに示すとおり、梗塞されたエリアにおいて代謝活性の増加(増加したグルコース消費)をもたらしたことから、組織の機能の改善を示す。これは、高い血液供給であり、心臓のポンプ機能を改善できる高い筋肉活性に翻訳された。
【0134】
要約すると、直接又は移植された細胞の何れかにより送達されたHIF因子は、心筋の再生及び心臓機能の改善に多大な能力を提供する。
本明細書内に報告された結果は、HIF−2α及びHIF−3α学遺伝子治療において使用できるという効果に対する原理の証明をなす。
【0135】
発明のいくつかの態様を記載してきたが、本発明はさらなる修飾が可能であり、そしてこの出願は発明のあらゆる変更、使用又は適合をカバーすることを意図しており;一般的に発明の原理に従い、そして本会時からのそのような逸脱を含み発明が属する分野の知見又は習慣的な実行となり、そして前記の本質的な特徴に適合してよく、発明の範囲内及び特許請求の範囲の限定に入る。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1はヒトHIF−3α遺伝子の構成を示す図解である。
【図2A】図2Aは、HIF−3α構築物によりトランスフェクトされたHEK293細胞内でのVEGFの発現を示す棒グラフである。
【図2B】図2Bは、HIF−3α構築物によりトランスフェクトされたHep3B細胞内でのVEGFの発現を示す棒グラフである。
【図3A】図3Aは、HIF−2α構築物によりトランスフェクトされたHEK293細胞内でのVEGFの発現を示す棒グラフである。
【図3B】図3Bは、HIF−2α構築物によりトランスフェクトされたHep3B細胞内でのVEGFの発現を示す棒グラフである。
【図3C】図3Cは、HIF−2α構築物によりトランスフェクトされたヒト骨格筋細胞内でのVEGFの発現を示す棒グラフである。
【図4】図4は、脈管形成の起こり得るプロセス及び幾つかの脈管形成関連遺伝子のその中で起こり得る役割を示す図解である。
【図5A】図5Aは、マウスに皮下移植されたHIF−2α修飾hSkMCの写真であって、筋管の違い及び筋肉繊維周囲と筋肉繊維間の組織化された血管構造の違いを示す(矢印は脈管を示す)。
【図5B】図5Bは、HIF構築物修飾hSkMCの脈管形成を示す棒グラフである。
【図6A】図6Aは、Ad.HIF−2αで処理された虚血性ラットの心筋内の代謝活性を示す棒グラフである。
【図6B】図6Bは、ラットにおいて心筋HIF−2α遺伝子移入により治療された、梗塞されたエリア内の測定された血管の密度を示す棒グラフである。
【0001】
関連出願
この出願は、2001年5月23日に出願された米国仮出願60/292,630及び2002年2月8日に出願された60/354,529の優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
a)発明の分野
本発明は、低酸素症誘導可能性因子−3αである「HIF−3α」と呼ばれるヒト蛋白質に関し、より特定すれば、HIF−3αを特性決定するため及び細胞レベルを変調させるための、HIF−3αの核酸、蛋白質、断片、抗体、プローブ及び細胞の使用に関する。
【0003】
本発明は、VEGF発現を誘導し、脈管形成を誘導し、そして筋肉の機能を改善するため、より特定すれば、哺乳類において冠動脈疾患及び心臓疾患を治療するための、低酸素症誘導可能因子ファミリーからの蛋白質をコードする核酸配列の使用にも関する。
b)先行技術の簡単な説明
慢性虚血性心臓疾患は、主要な部分の世界的な健康上の問題である。アメリカンハートアソシエーションによれば、61 800 000人のアメリカ人が心臓血管の疾患の少なくとも一つの種類を有する。特に、冠動脈心臓疾患(CHD)は、7 500 000人のアメリカ人患者に心筋梗塞(MI)を引き起こし、そして4 800 000人のアメリカ人患者に鬱血性心不全(CHF)を引き起こす。合衆国内のみでのほとんど450 000人の死はCHDに由来したらしい。
【0004】
現在のCHDの治療は、投薬、経皮経管冠動脈血管形成術及び冠動脈バイパス手術を含む。これらの手法は、心筋内の血流を増加させ、即ち虚血を減らして患者の状態を改善させるのには、全く好結果である。しかしながら、CHDの進行性の性質のため、これらの手法の有益な効果は永遠ではなく、そして新たな障害が起こり得る。有効な心臓血管の干渉(interventions)を通して長生きする患者は、治療のオプションを使い果たした。また、拡散性のアテローム動脈硬化症及び/又は小さい内径の動脈のため、重要な患者集団はいまだこれらの治療に対して難治性である。
【0005】
重度の慢性虚血症は、心筋の不可逆性の瘢痕(scarring)であるMIを引き起こし得る。この瘢痕は、心臓の収縮性及び弾力性を低下させ、そして結果としてポンプ機能を低下させ、のちにCHFを導き得る。CHF患者に利用可能な治療は、腎機能及び末梢脈管構造を標的とすることにより、上記兆候を軽減させるが、どれも、瘢痕を治療しないか又は心臓のポンプ機能を増加させない。瘢痕を治療して心臓機能を改善するための極めて有望なアプローチは、細胞性心筋形成術(CCM)と呼ばれる。それは、瘢痕内への細胞の注射において、心臓組織により繊維性瘢痕を置換すること及び弾力性を増加させることからなる(米国特許第5,130,141号;第5,602,301号;第6,099,832号及び第6,110,459号を参照)。
【0006】
CHF患者の別の新たな独立した治療は、治療性脈管形成である。脈管形成は、以前存在した脈管構造からの血管の発芽と増殖として定義される。正味の結果は、高い毛細血管密度及び良好な血液潅流である。例えば、米国特許第5,792,453号は、脈管形成性蛋白質をコードするトランス遺伝子をアデノウイルスベクターに引き渡すことにより冠動脈の側枝の脈管分化を促進させる方法を開示する。脈管形成の刺激は虚血性の「心筋の機能を改善し得るが、改善された潅流からの利益を得る生存細胞がないため、瘢痕組織に対して効果を持たない。
【0007】
多くの成長因子が脈管形成を誘導するのに現在使用されており、血管内皮成長因子(VEGF)及び繊維芽細胞成長因子(FGF)を含むが、これらの因子の何れもが脈管形成の各々の工程を刺激する特性を有さない(基底膜破壊、内皮細胞の増殖、移動及び分化、続く内皮周囲(periendothelial)細胞の補充)。細胞の低酸素症は強い脈管形成を天然にて誘導できることが知られているため、低酸素症の制御因子の使用は一度に一つ又は複数の脈管形成因子の合成を刺激することができ、それにより、個々の因子を用いるよりも、より組織化されて且つ強い脈管形成をもたらす。
【0008】
低酸素症誘導可能因子(HIFs)は低酸素の緊張状態に対して多くの適応性応答を制御するヘテロダイマー転写因子である。それらは、基礎的なヘリックス−ループ−ヘリックスPAS(bHLH−PAS)スーパーファミリーに属するアルファ−サブユニット及びベータ−サブユニットからなる。このファミリーのメンバーは、HIF−1α(MOP1としても知られる;Wang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995)92:5510−5514;及び米国特許第5,882,314号;第6,020,462号;第6,124,131号を参照)、HIF−2α(内皮PAS1(EPAS1),MOP2,HIF−関連因子(HRF)及びHLF(HIF−様因子)としても知られる;Tian et al.,Genes & Dev.(1996)11:72−82;及び米国特許第5,695,963号を参照)を含む。
【0009】
HIFファミリーの別のメンバーが最近発見され、HIF−3αと呼ばれる。HIF−3αのクローニングが、マウスにおいて(Gu et al.,Gene Expression(1998)7:205−213;及び国際PCT出願WO 99/28264)及びラットにおいて(Kietzmann et al.,Biochem J.(2001),354:(Pt3):531−537)記載された。ヒトHIF−3αの一部のcDNA配列が1999年に公表され(GenBankTM受け入れ番号AF079154)、そして本発明の一つとは異なるヒトHIF−3αアイソフォームの完全長の配列が2001年に、Haraら(Biochem.Biophys.Res.Comm.(2001),10月5日;287:808−813)により公表された。
【0010】
HIFsは正常な条件下では高度に不安定であるが、低酸素の緊張状態に対する応答において安定である。この安定化は、標的遺伝子のcis DNA要素への結合を可能にさせ、そして低酸素条件下で細胞の生存を助ける低酸素症誘導化遺伝子の転写を刺激する。これらの標的遺伝子は、嫌気性代謝(グルコース輸送体及び解糖酵素)、血管拡張(誘導可能な酸化窒素シンターゼ(iNOS)及びヘムオキシダーゼ−1(HO−1))、増加した呼吸(チロシンヒドロキシラーゼ)、赤血球造血(エリスロポエチン)及び脈管形成(VEGF)のようなプロセスに包含される。HIF−1α及びHIF−2αによる遺伝子活性化は、リポーター遺伝子が同時トランスフェクトしたHIF因子により活性化される同時トランスフェクションアッセイにより証明された(Tian et al.,Genes & Dev.(1996)11:72−82;Jiang et al.,J.Biol.Cem.(1995)272:19253−19260)。VEGF活性化におけるHIF−2αの役割は腎臓細胞カルシノーマにおいても証明された(Xia et al.,Cancer(2001),91:1429−1436)。動物のモデルにおいては、ハイブリッドHIF−1α/VP16のDNA構築物の遺伝子の移入の後に、強い脈管形成が報告された(Vincent et al.,Circulation(2000)102:2255−2261)。しかしながら、本発明の前には、HIF−2α又はHIF−3αが筋肉細胞内で脈管形成関連遺伝子を誘導できることも、これらの細胞中で脈管形成を誘導できることも、いまだかつて示されるか又は示唆されていない。HIF−1α、HIF−2α又はHIF−3αの虚血性筋肉組織内での発現がこの組織の増加した代謝活性をもたらして機能を改善させることも知られていなかった。
【0011】
HIFsがVEGF誘導及び/又は脈化形成を誘導するための理想的な因子を代表するとしたら、HIFファミリーの新規なメンバーを同定する必要が即ちある。ヒトHIF−3α蛋白質及びそれをコードする核酸に関して、より特別な要求がある。
【0012】
また、脈管形成を誘導して筋肉の機能を改善するための方法、組成物及び細胞により提供されることが大いに望まれる。
本発明は、以下の明細書を読んだ際に当業者には明らかなとおり、これらの要求及びまたその他の要求を満たす。
【0013】
発明の概要
本発明者らは、ヒト低酸素症誘導可能因子(HIFs)の新規なメンバー、HIF−3αを発見した。本発明者らは、HIF−3αの細胞レベルを変調するため、哺乳類細胞においてVEGF発を誘導するため、及び哺乳類組織において脈管形成を誘導するための、ヒトHIF−3α蛋白質、断片、核酸、及び抗体の用途も発見した。
【0014】
一般的に、本発明は、ヒトHIF−3αポリペプチド、をコードするか、又は、に相当する、単離されたか又は精製された核酸分子、例えばゲノミック、cDNA、アンチセンス、DNA、RNA、又は合成核酸分子を特徴とする。
【0015】
第1の側面に従うと、上記発明は、単離されたか又は精製された核酸分子、ポリヌクレオチド、ヒトHIF−3α蛋白質及びその断片を特徴とする。好ましい核酸分子はcDNAからなる。
【0016】
第1の態様において、単離されたか又は精製された核酸分子は、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するヒト蛋白質をコードする。
特定の態様に従うと、上記発明の核酸は、
a)配列番号:1又は3にて提供される配列;
b)配列番号:1又は3に提供される配列の相補体;
c)配列番号:1又は3にて提供される配列の少なくとも20の連続する残基からなる配列;
d)中度又は強度のストリジェント条件下で配列番号:1又は3にて提供される配列にハイブリダイズする配列;
e)配列番号:1又は3にて提供される配列に少なくとも75%同一性を有する配列;及び
f)配列番号:1又は3にて提供される配列の縮重バリアント
からなる群から選択される配列を含む。
【0017】
より好ましくは、上記発明の核酸分子は、
a)配列番号:1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は97%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列;及び
b)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は97%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列
からなる群から選択される配列を含む。
【0018】
さらにより好ましくは、上記核酸は、配列番号:1と実質同じか又は100%同一性を有する配列又は配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸と実質同じか又は100%同一性を有する配列を含む。もっとも好ましい核酸分子は、配列番号:1の核酸1423−1545の一部又は全てを含む分子、及び/又は配列番号:2のアミノ酸475から515のポリペプチドをコードする核酸の一部又は全てを含む分子である。
【0019】
別の特定の態様によれば、単離されたか又は精製された核酸分子は、ヒトHIF−3αポリペプチド又はその縮重バリアント、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てを含むヒトHIF−3αポリペプチド又はその縮重バリアントをコードする配列を含む。好ましくは、さらにより特定の側面においては、上記発明は、配列番号:1を有するポリヌクレオチド又はその縮重バリアントを含み、そしてヒトHIF−3αポリペプチドをコードする、単離されたか又は精製されたヒト核酸分子を特徴とする。好ましくは、上記核酸はcDNAであり、そしてそれは配列番号:2のアミノ酸配列又はその断片をコードする。
【0020】
関連する側面において、上記発明は、低度、より好ましくは中度の、そしてより好ましくは強度のストリジェント条件下で、本明細書において前に定義された核酸の何れかにハイブリダイズする単離されたか又は精製された核酸分子を特徴とする。より好ましくは、そのような核酸分子は、中度又は強度のストリジェント条件下で、配列番号:1の核酸1423から1545の一部又は全てにハイブリダイズするか又はその相補配列の一部又は全てにハイブリダイズする。
【0021】
上記発明は、上記の核酸の何れかによりコードされる実質上純粋なヒトポリペプチド及び蛋白質も特徴とする。一つの態様において、上記蛋白質は、ヒトHIF−3αの生物活性を有する。好ましい生物活性はVEGF発現の誘導を含み、それにより脈管形成を促進させる。
【0022】
別の態様において、上記発明は、
a)配列番号:2に少なくとも80%同一性を有する配列;
b)配列番号:2に少なくとも85%同一性を有する配列;
c)配列番号:2にて提供される配列;
d)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列に少なくとも80%同一性を有する配列;
e)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列に少なくとも85%同一性を有する配列;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたか又は精製されたポリペプチドを意図する。
【0023】
より好ましくは、上記ポリペプチドは、
a)配列番号:2と実質上同じ配列;及び
b)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列と実質上同じ配列
からなる群から選択される配列を含む。
【0024】
よりさらに特定の側面において、上記発明は、実質上純粋なヒトHIF−3αポリペプチドを特徴とし、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全て又はそれらの断片を含む。よりさらに好ましくは、上記ポリペプチドは、配列番号:2に100%同一なアミノ酸配列を含む。
【0025】
本発明は、上記蛋白質又はポリペプチドの何れかに由来する蛋白質断片も特徴とする。同様に、上記発明は、さらに、配列番号:1(HIF−3α)の少なくとも24の連続する核酸配列を含むヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド断片を含む。
【0026】
本発明は、さらに、同じものを含むアンチセンス核酸及び薬学上受容可能な組成物を特徴とする。好ましくは、上記アンチセンスは、ヒトHIF−3αの細胞発現レベルを低下させるように、ゲノミック配列又はmRNAに対してストリジェント条件下でハイブリダイズする。第1の態様によれば、上記ヒトHIF−3αポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸75から515を含む。より好ましくは、上記ヒトHIF−3αは、配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされる。特定の態様によれば、上記アンチセンスは、配列番号:1の一部又は全て、又はそれらの相補配列の一部又は全てに、ストリジェント条件下でハイブリダイズする。より好ましくは、上記アンチセンスは、配列番号:1の核酸1423から1545の一部又は全て、又はそれらの相補配列の一部又は全てに、ストリジェント条件下でハイブリダイズする。
【0027】
本発明は、さらに、(1)(i)ヒトHIF−3αをコードする核酸分子;(ii)ヒトHIF−3αポリペプチド;(iii)ヒトHIF−3αの細胞発現レベルを低下させるアンチセンス核酸;及び(iv)HIF−3αポリペプチドに特異的に結合する単離されたか又は純粋な抗体からなる群から選択される少なくとも一つの要素;及び(2)薬学上受容可能な担体又は希釈剤を含む薬学組成物に関する。
【0028】
別の側面によれば、上記発明は、配列番号:1又は配列番号:1の相補配列の少なくとも15、20、25、30、40、50、74、100の連続するヌクレオチドの配列を含むヌクレオチドプローブを特徴とする。好ましくは、上記プローブは、配列番号:1の核酸1423から1545の一部又は全て、配列番号:1の核酸2116から2223の一部又は全て、配列番号:1の核酸475から515の一部又は全て、又はそれらの相補配列を含む。上記発明は、配列番号:1由来の少なくとも20、25、30、40、50、75又は100ヌクレオチドの長さのプローブに、低度のストリジェント条件下、好ましくは中度のストリジェント条件下、そしてより好ましくは高度なストリジェント条件下で、ハイブリダイズする実質上純粋な核酸も包含する。
【0029】
別の側面によれば、上記発明は、精製された抗体も特徴とする。好ましい態様において、上記抗体は、精製された哺乳類のHIF−3αポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。好ましくは、上記抗体は、配列番号:2と実質同じHIF−3αポリペプチドに特異的に結合する。より好ましくは、上記抗体は、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てを含むHIF−3αポリペプチドに特異的に結合し、さらにより好ましくは、上記抗体は、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てに特異的に結合する。
【0030】
別の側面において、本発明は、さらに、哺乳類細胞においてVEGF発現を誘導する方法も特徴とする。当該方法は、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を細胞中で導入して発現させることを含む。好ましい態様において、上記細胞は生きている哺乳類の心臓に位置する心臓細胞からなり、そして上記ポリペプチドの発現は上記哺乳類の心臓組織内で脈管形成を誘導する。別の態様において、上記細胞は生きている哺乳類の筋肉組織内に位置する筋肉細胞からなり、そしてポリペプチドの発現は哺乳類の筋肉組織内で脈管形成を誘導する。別の態様において、上記哺乳類細胞は骨格筋細胞であり、それにより、HIF−3αを発現する骨格筋細胞を提供し、そしてさらに、上記方法はさらに多数のHIF−3α発現骨格筋細胞を影響を及ぼさない哺乳類レシピエントの心臓組織内に移植する工程を含む。
【0031】
さらに、本発明は、多数の細胞を有する哺乳類組織内で脈管形成を誘導する方法を特徴とし、当該方法は、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を少なくともいくつかのこれらの細胞内で導入して発現させることを含む。
【0032】
本発明は、哺乳類で腫瘍細胞の生存を変調させるか又は腫瘍細胞を排除する方法も特徴とし、当該方法は、HIF−3αポリペプチドの細胞発現レベルを低下させる工程を含む。好ましい態様によれば、哺乳類はヒトからなり、そしてヒトHIF−3αが腫瘍細胞に導入される。
【0033】
本発明は、さらに、生物学上のサンプル内のヒトHIF−3αポリペプチド又はヒトHIF−3α核酸の量を測定する方法を特徴とし、当該サンプルを、前で定義した抗体又はプローブと接触させる工程を含む。
【0034】
さらなる側面によれば、上記発明は、ヒト被験者内の腫瘍の悪性度を評価する方法を特徴とし、被験者由来の腫瘍細胞内のヒトHIF−3αポリペプチド又はヒトHIF−3α核酸の量を測定する工程を含み、量が腫瘍の悪性度の指標になる。
【0035】
別の関連する側面において、上記発明は、さらに、サンプル中のHIF−3αポリペプチドの量を測定するためのキットを特徴とし、当該キットは、前に定義した抗体又はプローブ、及び当該キットを使用するための指示書、反応バッファー、及び酵素からなる群から選択される少なくとも一つの要素を含む。
【0036】
発明の核酸は、ベクター又は細胞(例えば、哺乳類、酵母、線虫又は細菌細胞)中に取り込んでよい。上記核酸は、トランスジェニック動物又はそれらの胚の中に取り込んでもよい。よって、本発明は、発明の核酸の何れかを含むクローニングベクター又は発現ベクター及び宿主(例えば、形質転換されたか又はトランスフェクトされた細胞、トランスジェニック動物)を特徴とし、そしてより特定すれば、HIF−3α蛋白質、ポリペプチド又は断片、及びヒトHIF−3α蛋白質をコードするもの、ポリペプチド又は断片のベクター含有細胞中での発現を指示することができるものを特徴とする。
【0037】
関連する側面において、上記発明はヒトHIF−3αを生産する方法を特徴とし、
−この細胞の中での発現のために位置を定められたヒトHIF−3αをコードする核酸配列により形質転換された細胞を用意し;
−上記核酸を発現するのに適した条件下で上記形質転換された細胞を培養し;そして
−hHIF−3αポリペプチドを生産させること
を含む。
【0038】
本発明のもっとも大きな利点の一つは、それが、HIF−3αを特性決定するために使用できる核酸分子、蛋白質、ポリペプチド、抗体、プローブ及び細胞を提供し、その細胞レベルを変調させ、そして脈管形成を促進させることである。
【0039】
本発明の他の目的及び利点は、その好ましい態様の非限定記載及び請求の範囲を読んで明らかになる。
発明の詳細な説明
A)定義
明細書を通して、用語「キロベース」は「kb」と略され、用語「デオキシリボ核酸」は「DNA」と略され、用語「リボ核酸」は「RNA」と略され、用語「相補DNA」は「cDNA」と略され、用語「ポリメラーゼ鎖反応」は「PCR」と略され、そして「逆転写」は「RT」と略される。ヌクレオチド配列は、別に示さない限り、5’から3’の向きに書く。
【0040】
明細書と特許請求の範囲のより明快且つより一致した理解を提供するため、そのような用語に対しての本明細書中で提供される範囲を含めて、以下の定義が提供される:
アンチセンス:本明細書では、核酸に関して、遺伝子のコーディング鎖に相補な、長さに関係なく、核酸配列を意味する。
【0041】
発現:遺伝子によりコードされた情報が細胞中に存在して機能する構造に変換されるプロセスを意味する。cDNAsの場合、cDNA断片及びゲノミック断片、転写された核酸は、その機能を実施するために、実質上ペプチド又は蛋白質に翻訳される。「発現のための配置(positioned for expression)」は、DNA分子が配列の転写及び翻訳を指令するDNA配列(即ち、例えば、HIF−3αポリペプチド、組換え蛋白質又はRT分子の生産を促進させる)に隣接して配置されることを意味する。
【0042】
断片:分子、例えば蛋白質、ポリペプチド又は核酸のセクションを意味し、アミノ酸配列又は核酸配列の何れかの部分を言及することを意味する。
宿主:ベクター又はウイルスゲノムにはめ込まれた外来の核酸の発現を可能にさせ、そしてそのようなベクター又はウイルスゲノムによりコードされたウイルス粒子の生産を可能にさせる細胞成分を提供することができる、細胞、組織、器官又は生物体。この用語は、これらの機能を達成するために修飾された宿主も含むことを意図する。細菌、真菌、動物(細胞、組織又は生物体)及び植物(細胞、組織又は生物体)が宿主の例である。
【0043】
単離された又は精製された又は実質上純粋:その天然状態を「ヒトの手により」変更することを意味し、即ち、もしも自然状態で起こるなら、その元の環境から変化させるか又は取り出すか又はその両方である。例えば、生きている生物体に天然で存在するポリヌクレオチド又は蛋白質/ペプチドは「単離されない」であり、クローニング、増幅及び/又は化学合成により得られた、その天然状態下の共存する物質から分離された同じポリヌクレオチドは、本明細書にて用いられる場合、「単離された」である。さらに、形質転換、遺伝子操作又は他の組換え方法により導入されたポリヌクレオチド又は蛋白質/ペプチドは、上記生物体内に存在したままであっても「単離された」である。
【0044】
核酸:遺伝子全部をコードするヌクレオチド配列を含む、1又はそれ以上のヌクレオチドを有するあらゆるDNA、RNA配列又は分子。当該用語は、特に細胞、組織又は生物体において天然に生じるか又は非天然に生じる全ての核酸を包含することを意図する。これは、DNA及びその断片、RNA及びその断片、cDNA及びその断片、発現されたタグ、ランダム化された人工配列を含む人工配列を含む。
【0045】
オープンリーディングフレーム(「ORF」):蛋白質に翻訳されるcDNA。典型的には、オープンリーディングフレームは開始ATGコドンから始まり、そして停止コドン(TAA,TAG又はTGA)で終わる。
【0046】
ポリペプチド:翻訳後修飾、例えばグリコシル化又はリン酸化に拘わらず、2つより多いアミノ酸のあらゆる鎖を意味する。
パーセント同一性及びパーセント類似性:本明細書においては、比較において又は核酸及び/又はアミノ酸配列間で使用される。配列同一性は典型的には、本明細書にて定義される欠点パラメーターと共に配列分析ソフトウエアを用いて測定される(例えば、ジェネティックコンピューターグループの配列分析ソフトウエアパッケージ、ウイスコンシンバイオテクノロジーセンター大学、1710大学アヴェニュー、マジソン、Owl 53705)。このソフトウエアプログラムは、様々な置換、欠失及び他の修飾に対して相同性の程度を評価することにより類似の配列を適合させる。保存的置換は、典型的には、以下のグループ内の置換を含む:グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン。
【0047】
HIF−3α核酸:低酸素症誘導可能様式にて、標的遺伝子、例えばVEGFを活性化する生物活性を有する哺乳類ポリペプチドをコードし、且つ配列番号:2に示されるアミノ酸配列に少なくとも75%、77%、80%、85%、90%、95%、97%又は100%同一性又は類似性を有するあらゆる核酸(上記参照)を意味する。さらにより好ましくは、哺乳類HIF−3αポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸475から515に少なくとも75%、77%、80%、85%、90%、95%、97%又は100%同一性又は類似性を有するアミノ酸を含む。ヒトHIF−3αの核酸に言及する場合、配列番号:2をコードする核酸に、より特別に関係する。HIF−3α蛋白質又はHIF−3αポリペプチド:上記のとおりHIF−3α核酸によりコードされる蛋白質、ポリペプチド、又はその断片を意味する。
【0048】
特異的に結合する:蛋白質又はポリペプチドを認識して結合するが、天然において蛋白質を含むサンプル、例えば生物学上のサンプル中の他の蛋白質は実質上認識及び結合しない抗体を意味する。
【0049】
実質上同じ:蛋白質の性質に著しく影響しない配列のバリエーションを有する核酸又はアミノ酸配列を意味する。特に核酸配列に関して、用語「実質上同じ」は、コーディング領域及び発現を制御する保存された配列を意味することを意図し、そして主として同じアミノ酸をコードする縮重コドン又はコードされたポリペプチド内で保存された置換アミノ酸をコードする別のコドンを意味する。アミノ酸配列に関して、用語「実質上同じ」は、一般に、タンパク質の構造又は機能の決定に関与しないポリペプチドの領域内の保存された置換及び/又はバリエーションを意味する。
【0050】
実質上純粋なポリペプチド:天然においてそれを伴う成分から分離されたポリペプチドを意味する。典型的には、上記ポリペプチドは、重量で少なくとも60%、天然で結合している他の蛋白質及び天然の有機分子を含まない場合に、実質上純粋である。好ましくは、上記ポリペプチドは、重量で、少なくとも75%、80%又は85%、より好ましくは少なくとも90%、95%又は97%、そしてもっとも好ましくは少なくとも99%純粋なHIF−3αポリペプチドである。実質上純粋なHIF−3αポリペプチドは、例えば、天然源からの抽出(肺細胞、腎臓細胞、心臓細胞又はHIF−3αを発現する他の細胞を含むが限定ではない)、HIF−3αポリペプチドをコードする組換え核酸の発現によるか、又は当該蛋白質を化学合成することにより、得てよい。精製度は、あらゆる適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はHPLC分析により測定することができる。蛋白質は、その天然状態においてそれを伴う混在物からそれが分離された場合に、天然で結合する成分を実質上含まない。即ち、化学合成されたか又はそれが天然で起源とする細胞とは異なる細胞システム内で生産された蛋白質は、その天然結合成分を実質上含まない。従って、実質上純粋なポリペプチドは、真核生物由来であるが大腸菌(E.coli)又は他の原核生物内で製造されたポリペプチドを含む。「実質上純粋なDNA」は、本発明のDNAが由来する生物体の天然のゲノム上において遺伝子の周辺の遺伝子を含まないDNAである。よって、当該用語は、例えば、ベクター;自律複製プラスミド又はウイルス;又は原核生物又は真核生物のゲノミックDNA中に取り込まれたか;又は別の分子として(例えばcDNA又はゲノミック又はPCR又は制限酵素消化により生じるcDNA断片)他の分子とは独立して存在する。それは、追加のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含む。
【0051】
形質転換された又はトランスフェクトされた又は形質導入された又はトランスジェニックな細胞:組換えDNA技術により、HIF−3αをコードするDNA分子が導入された細胞(又はその祖先)を意味する。「形質転換」は、外来分子を細胞内に導入するあらゆる方法を意味する。リポフェクチン、リン酸カルシウム沈殿、レトロウイルス送達、エレクトロポレーション及び弾道(ballistic)形質転換が、まさに少数の使用してよい技術である。
【0052】
トランスジェニック動物:技術を用いて(by artifice)細胞に挿入され、その細胞から発生した動物のゲノムの一部になるDNA配列を含む細胞を有する、あらゆる動物。本明細書では、トランスジェニック動物は通常は哺乳類(例えば、齧歯類、例えばラット又はマウス)であって、DNA(トランスジーン)は技術を用いて核のゲノムに挿入される。
【0053】
ベクター:一つの生物体から別及び生物体へRNA又はDNAを移入させるのに使用することができる自己複製RNA又はDNA分子。ベクターは、特に遺伝子構築物を操作するのに有用であって、別のベクターがクローニング手法の間にレシピエント内で蛋白質を発現するのに特に適した特性を有してよく、そして別の選択可能なマーカーを含んでよい。細菌のプラスミドは、共通に使用されるベクターである。修飾されたウイルス、例えば、アデノウイルス及びレトロウイルスがベクターの他の例である。
B)発明の一般的な全体像
発明は、一般に、低酸素症誘導可能因子(HIFs)HIF−3αの新規な蛋白質のメンバーに関する。本発明者らは、HIF−3αの細胞レベルを変調し、哺乳類細胞内でVEGF発現を誘導し、そして哺乳類組織内で脈管形成を誘導するための、ヒトHIF−3α蛋白質、断片、核酸、及び抗体の用途も発見した。発明のこの側面は、HIF−3αの細胞レベルを変調し、ヒトを含む哺乳類における冠動脈及び心臓の疾患の治療のための、ヒトHIF−3α蛋白質、断片、核酸及び抗体の使用にも関する。
【0054】
発明は、脈管形成を誘導するため及び筋肉の機能を改善するための、方法及び細胞、特定すれば、多数の脈管形成関連遺伝子を発現する遺伝学上修飾された筋肉細胞にも関する。発明のこの追加の側面は、低酸素症誘導可能因子ファミリー(HIF−1α、HIF−2α、及びHIF−3α)からの転写因子をコードするヌクレオチド配列の使用に基づき、そしてヒトを含む哺乳類における冠動脈及び心臓の疾患の治療における多数の利点を提供する。
i)HIF−3αのクローニングと分子の特性決定
発明の例示のセクションにおいて以後に記載されるように、発明者らは、低酸素症誘導可能因子ファミリーからのヒトHIF−3α(hHIF−3α)と呼ばれる新規なヒト蛋白質メンバーをコードするヒトcDNAを発見し、クローン化し、そして配列決定した。
【0055】
HIF−3αのcDNAの配列及び予測されるアミノ酸配列は、「配列表」のセクションに記載される。配列番号:1がヒトHIF−3αのcDNAに相当し、そして配列番号:2が上記ヒト蛋白質の予測されたアミノ酸配列に相当する。配列番号:3はHIF−3αのオープンリーディングフレームである。
【0056】
HIF−3α遺伝子は705アミノ酸(A.A.)の長さの蛋白質をコードする。インシリコ分析は、ヒトHIF−3α蛋白質が以下の特徴を有することを示す:それは約76kDaの分子量、約5.95の等電点;約55.6の不安定性指数(即ち、不安定);約80.6の脂肪族指数;及び約0.388の疎水性親水性指標(hydropacicity)の全平均(GRAVY)を有する。それはさらに多くの有力なリン酸化部位(45 Ser,12 Thr及び3 Tyr)を含み、多くの有力なリン酸化部位も含む。予測された蛋白質ドメインは、アミノ酸14−62によりコードされる、ヘリックスループヘリックス(HLH)ヘテロダイマー化ドメインを含む。このドメインは、HLH転写因子ファミリーの特徴である。次に、2 PAS(A.A.84−143及び235−289)及び1 PAC(A.A.295−337)ドメインが同定されて、これらのドメインは全てPASファミリーと共通である(HLH因子に対するサブファミリー)。
ii)HIF−3αの他の遺伝子及び蛋白質との相同性
hHIF−3αのクローニングを実施したが、マウスHIF−3α配列により開始した。
【0057】
blast検索を行うことにより、本発明のhHIF−3α、mHIF−3α及び他の存在する配列の間で配列同一性を同定した(以下の表1を参照)。さらにマウスに対して見いだされ(GenBankTM受け入れ番号AF060194)、HIF−3αをラットにおいても配列決定した(GenBankTM受け入れ番号NM_022528)。
【0058】
さらに、本発明者らは、それらのHIF−3α配列が、Haraらにより公表された(Biochem.Biophys.Res.Comm.(2001),Oct 5;287:808−813)別の最近クローン化されたHIF−3α配列と、高いレベルで同一性を共有したことも見いだした。この配列は、本発明が利益を要求する出願の出願日の後に公表された。HaraらのhHIF−3α配列は本発明のhHIF−3αとは異なるHIF−3αの別のアイソフォームらしいが、それはそれが配列番号:2のアミノ酸475から515をコードする配列番号:1の核酸1423から1545を損じているからである。均等なマウス及びラットの配列も、配列番号:2のアミノ酸475から515に相同なアミノ酸、即ちHaraらのhHIF−3α配列を欠く。示さないが、配列番号:1の核酸7から345も、1999年に公表されたヒトHIF−3αの部分的なcDNA配列のヌクレオチド7から345と100%同一であり(GenBankTM受け入れ番号AF079154)、この配列は115のアミノ酸残基をコードし(GenBankTM受け入れ番号AAC99397)、そして最後の113のアミノ酸は配列番号:2のアミノ酸3から115と100%同一性を共有する。
【0059】
【表1】
【0060】
よって、本発明は、
a)配列番号:1又は3にて提供される配列;
b)配列番号:1又は3にて提供される配列の相補体;
c)配列番号:1又は3にて提供される配列の少なくとも20の連続する残基からなる配列;
d)中度か又は強度のストリジェント条件下で配列番号:1又は3にて提供される配列にハイブリダイズする配列;
e)配列番号:1又は3の配列に少なくとも75%同一性を有する配列;及び
f)配列番号:1又は3にて提供される配列の縮重バリアント
からなる群から選択される配列を含む単離されたか又は精製された核酸分子(例えばcDNA)に関する。
【0061】
より好ましくは、発明の核酸分子は、
a)配列番号:1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は97%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列;及び
b)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は97%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列
からなる群から選択される配列を含む。
【0062】
より好ましくは、上記核酸分子は、配列番号:1と実質同じか又は100%同一性を有する配列又は配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸と実質同じか又は100%同一性を有する配列を含む。もっとも好ましい核酸分子は、配列番号:1の核酸1423−1545の一部又は全てを含む分子、及び/又は配列番号:2のアミノ酸475から515のポリペプチドをコードする核酸の一部又は全てを含む分子である。
【0063】
本発明は、ヒトHIF−3αポリペプチド又はその縮重バリアント(配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てを含むヒトHIF−3αポリペプチド又はその縮重バリアント)をコードする配列を含む単離されたか又は精製された核酸分子及び配列番号:1の核酸1423−1545の一部又は全てを含む核酸分子にも関する。
【0064】
本発明は、前で言及された発明のHIF−3α核酸分子の何れかの一部又は全てあるいはそれらの相補体の一部又は全てと、中度、好ましくは強度のストリジェント条件下でハイブリダイズする単離されたか又は精製された核酸分子にも関する。より好ましくは、「ハイブリダイズする」核酸は、中度、より好ましくは強度のストリジェント条件下で、配列番号:1の核酸1423から1545の一部又は全てにハイブリダイズするか又はその相補配列の一部又は全てにハイブリダイズする。「ハイブリダイズする」核酸は、これ以後に記載されるように、プローブとして又はアンチセンス分子として使用することができる。
【0065】
関連する側面において、本発明は、
a)前で言及された発明のHIF−3α核酸分子の何れかの一部又は全てによりコードされる配列;
b)配列番号:2に少なくとも80%同一性を有する配列;
c)配列番号:2に少なくとも85%同一性を有する配列;
d)配列番号:2にて提供される配列;
e)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列に少なくとも80%同一性を有する配列;及び
f)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列に少なくとも85%同一性を有する配列;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたか又は精製されたポリペプチドに関する。
【0066】
より好ましくは、上記ポリペプチドは、配列番号:2と実質上同じか又は100%同一性を有するアミノ酸配列又は配列番号:3のオープンリーディングフレームと実質上同じか又は100%同一性を有する配列を含む。さらにより好ましくは、上記ポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全て又はその縮重バリアントを含むか、又は配列番号:113のの核酸1423−1545によりコードされるアミノ酸の一部又は全てを含む。もっとも好ましいポリペプチドは、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性、例えば、脈管形成の促進のためのVEGF発現誘導可能性を有するものである。
iii)ベクター、細胞及びトランスジェニック動物
発明は、機能性HIF−3α転写因子を発現する宿主、例えば遺伝学上修飾された細胞にも向けられる。好ましくは、上記細胞は、骨格筋細胞又は心臓細胞である。好ましくは、また、上記細胞は上記転写因子を含むcDNAを含む。
【0067】
HIF−3α発現細胞は、一時的にトランスフェクトされた細胞系(例えば、HEK293細胞、Hep3B細胞系等)又はあらゆる適当な単離された初代細胞(primary cell)であってよく、限定ではないが、哺乳類の骨格筋細胞、心臓細胞、骨髄細胞、繊維芽細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、内皮始原細胞及び胚性幹細胞を含む。
【0068】
そのような細胞系の構築のための方法のように、哺乳類の細胞の安定なトランスフェクションのために適した多数のベクターが公的に利用可能である(例えば、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アルファウイルス、レンチウイルス)。本発明は、HIF−3α配列を含むあらゆる種類のベクターを包含する。
【0069】
発明の細胞は、脈管形成を誘導するため、虚血を救済するため、哺乳類の筋肉組織の代謝活性を増加させるため、及び/又はCHF又は末梢血管疾患において筋肉機能を増加させるため、局所的又は周囲の移植された組織内において、適合性の(compatible)レシピエントに移植された場合に、特に有用かもしれない。もちろん、本発明の遺伝学上修飾された細胞は、人工器官の形成のため又は組織の構築のために使用することもできる。HIF−3α発現細胞は、HIF−3α及びその誘導体を生産するために使用してもよい(以後を参照)。
【0070】
本発明による哺乳類のHIF−3α又はその断片は、1)一つ又は複数の細胞系において様々なレベルにてHIF−3α遺伝子又はHIF−3α変異体を発現するトランスジェニック動物、2)内因性HIF−3α遺伝子の発現が一つ又は服すの細胞系において妨害されるか又は制御されるノックアウト動物を生成するために使用してもよい。
【0071】
HIF−3α遺伝子の特性決定は、相同組換えにより開発されるHIF−3αノックアウト動物モデルのために必要な情報を提供する。好ましくは、上記モデルは哺乳類動物であり、より好ましくはマウスである。同様に、HIF−3αの過剰生産の動物モデルは、標準のトランスジェニック技術に従い、一つ又は複数のHIF−3α配列をゲノム中に組込むことにより生成してよい。
iv)HIF−3α及びその機能性誘導体の合成
ヒトHIF−3α遺伝子配列の知見は、一連の応用に対してドアを開く。例えば、クローン化されたHIF−3α遺伝子配列の特徴は様々な細胞種に上記配列を導入するか又はインビトロ細胞外システムを使用することにより、分析してよい。HIF−3αの機能を、次に、異なる生理条件下で試験してよい。HIF−3αの配列は、遺伝子の発現及び遺伝子産物を理解するための研究において操作してよい。あるいは、生化学上の特性決定、大規模生産、抗体生産及び患者の治療のためにHIF−3αの精製を可能にさせる遺伝子産物を過剰発現する細胞系を生産してよい。
【0072】
蛋白質の生産のために、HIF−3αプラスミド又は他のベクターに導入されて、次に生きた細胞に導入される、真核及び原核の発現システムを生成してよい。正確な方向で発現プラスミドに挿入された全オープンリーディングフレームを含むHIF−3αのcDNA配列の構築物を蛋白質の発現に使用してよい。あるいは、野生型又は変異体HIF−3αの配列を含む配列の一部を挿入してよい。原核及び真核の発現システムは、当該蛋白質の様々な重要な機能ドメインが融合蛋白質として回収され、次に結合の研究、構造の研究及び機能の研究のため及び適当なアプローチの生成のためにも使用されるのを可能にする。
【0073】
真核の発現システムは、発現された蛋白質への適切な翻訳後修飾を許容する。これは、生物活性のための正確な発現及び翻訳後修飾の測定を含む、HIF−3α及び遺伝子産物の研究を可能にさせ、HIF−3α遺伝子の5’領域に位置する制御要素及び蛋白質の発現の組織制御におけるそれらの役割を同定する。それは、HIF−3αを発現する細胞を当該蛋白質に対して生じさせた抗体の機能アッセイシステムとして使用するため、薬剤の有効性を試験するため又はシグナル形質導入のシステムの成分として試験するため、正常な完全な蛋白質、蛋白質の特定の部分、又は天然に生じる多型性及び人工的に生じさせた変異蛋白質の機能を研究するために、単離又は精製のための大量の正常蛋白質又は変異蛋白質の生産も可能にさせる。HIF−3αのDNA配列は、制限酵素消化、DNAポリメラーゼフィルイン、エキソヌクレアーゼ消化、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ伸長、合成DNA配列又はクローン化DNA配列の連結及びPCRと共に特定のオリゴヌクレオチドを使用した部位特異的変異導入により、変更してよい。
【0074】
従って、発明は、ヒトHIF−3αポリペプチドを生産する方法にも関する。上記方法は、(i)細胞内での発現のために配置されたヒトHIF−3αポリペプチドをコードする核酸配列により形質転換された細胞を用意し;(ii)上記核酸を発現するのに適した条件下にて形質転換された細胞を培養し;(iii)ヒトHIF−3αポリペプチドを生産し;そして任意に(iv)生産されたヒトHIF−3αポリペプチドを回収する工程を含む。
【0075】
組換え蛋白質が発現されたなら、それは、例えば親和性クロマトグラフィーにより単離される。一つの例において、本明細書に記載された方法により生産してよい抗−HIF−3α抗体をカラムに結合させて、HIF−3α蛋白質を単離するのに使用してよい。親和性クロマトグラフィー前のHIF−3α含有細胞の溶解及び分画は、標準の方法により実施してよい。単離されたならば、組換え蛋白質は必要ならさらに精製することができる。
【0076】
組換え蛋白質及び外来配列を原核細胞及び真核細胞において発現させるための方法及び技術は、当業界において公知であり、さらに詳細には説明しない。必要であれば、Joseph Sambrook,David W.Russell.Joe Sambrok Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2001 Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照できる。分子生物学の当業者は、広く様々な発現系を使用して組換え蛋白質を生産してよいことを理解する。使用される厳密な宿主細胞は発明にとって重大ではない。HIF−3α蛋白質は、原核生物(例えば、大腸菌)又は真核生物(例えば、サッカロミセスセレビシエ、昆虫細胞、例えばSf21細胞、又は哺乳類細胞、例えばCOS−1,NIH3T3又はヒーラ細胞)において生産してよい。これらの細胞は、例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション、ロックビルMDから公的に利用可能である。形質導入の方法及び発現媒体の選択は、選択された宿主系に依存することになる。
【0077】
発明のポリペプチド、特に短いHIF−3αは、化学合成により生産してもよい。ポリペプチドの発現及び精製のこれらの一般的技術は、本明細書に記載されるとおり、有用なHIF−3αを生産して単離するのに使用することもできる。
【0078】
当業者は、哺乳類のHIF−3α又はその断片(本明細書に記載されるとおり)が治療用組成物中の活性成分として作用するかもしれないことを認識する。この組成物は、誘導されたHIF−3α又は断片に依存して、細胞の増殖、生存及び脈管形成を制御して、それにより細胞増殖、蓄積又は置換における障害により引き起こされるあらゆる症状を治療するために使用してよい。即ち、本明細書に記載される発明の別の側面は、薬学上受容可能な担体中に発明の化合物を含むことが理解される。
v)脈管形成を促進するHIF−3αの発現のアップ制御
ヒトHIF−3α遺伝子配列の知見は、患者の治療のための前途有望なアプローチを提供する。出願の例示のセクションにおいて以後詳細に示されるとおり、HIF−3αのアップ制御は、哺乳類の細胞においてVEGF発現を増加させ、それにより哺乳類、好ましくは動物モデル及びヒトの虚血性及び非虚血性組織において脈管形成を促進するために使用することができる。
【0079】
よって、発明は、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を細胞に導入して発現させることにより、哺乳類細胞においてVEGF発現を誘導させる方法にも関する。もちろん、他の核酸配列、例えばその発現がVEGF発現を誘導することも知られている核酸を、HIF−3αと共に細胞に導入して発現してよい。
【0080】
発明の別の関連する側面は、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を多数の細胞の少なくともいくつかに導入して発現させることにより、多数の細胞を有する哺乳類の組織内で脈管形成を誘導する方法に関する。
【0081】
好ましくは、これらの方法は、インビトロ、インビボ、又はエクスビボにおいて細胞にHIF−3αのcDNAをトランスフェクトすることにより達成され、ヒトHIF−3αポリペプチドは配列番号:2と実質上同じアミノ酸配列を含む。
【0082】
「発明の背景」のセクションにおいて言及されたとおり、脈管形成の刺激は冠動脈心臓疾患の治療に有益かもしれない。よって、発明のヒトHIF−3α配列は、そのような目的のために有利に使用され得る。一つの態様において、上記細胞は生きた生物体の心臓内に位置する心臓細胞からなり、そしてHIF−3α核酸配列は、哺乳類の心臓組織内でHIF−3αポリペプチドの発現が脈管形成を誘導するように、多数のこれらの心臓細胞の中で誘導される。HIF−3α核酸配列の導入は、前で定義されたベクターを用いるか又は当業界公知のあらゆる適当な技術により実施してよい。
【0083】
別の態様において、上記細胞は単離された筋肉細胞からなり(好ましくは、骨格筋細胞)、そしてこの細胞は遺伝学上修飾されることにより、HIF−3αポリペプチドを発現する。遺伝学上修飾されたHIF−3αを発現する細胞は、次に、適合性の哺乳類レシピエントの組織(例えば、心臓組織)に移植される。より好ましくは、移植は自己由来であり(細胞がレシピエントの筋肉組織、例えば脚から単離される)、そして上記細胞は局所的にか又は移植組織周囲において脈管形成を誘導するのに十分な量にてレシピエントに移植される(例えば、心臓の瘢痕内の注射)。
【0084】
また別の態様において、上記細胞は生きた哺乳類の筋肉組織内に位置する筋肉細胞からなり、そしてHIF−3αポリペプチドの発現が上記哺乳類の筋肉組織の脈管形成を誘導する(自己(autologous)移植又は異種(heterologous)移植)。この方法は、末梢動脈疾患(例えば、ヒトの大腿部又は上流の動脈の障害による脚の虚血)を治療するのに特に有用である。
【0085】
上記ヌクレオチド配列は、よく知られた方法を用いて細胞又は組織に導入してよい。事実、上記配列は、与えられた組織の細胞に直接導入するか、組織に注射されるか、又は前で遺伝学上修飾された適合性の細胞の移植により導入してよい(以下を参照)。ヌクレオチド配列を真核細胞、例えば哺乳類筋肉細胞に導入するか又はそのような細胞を遺伝学上修飾するための方法は、当業界公知である。例えば、これは、アデノウイルスベクター、プラスミドDNA移入(裸のDNA又はリポソームと複合させる)又はエレクトロポレーションにより達成してよい。必要であれば、当業者は、心筋の遺伝子治療法の再検討のためには、Isner J.,(Nature(2002),415:234−239)を、そして遺伝子移入媒介性脈管形成治療の方法を提供する米国特許出願US20010041679A1又は米国特許第5,792,453号を見てよい。好ましくは、転写因子の発現レベルは、局所的又は周囲の組織において脈管形成を誘導するのに十分、脈管形成関連遺伝子が発現されるようなレベルである。その発現及び選択性を良好に制御するためには、転写因子を誘導してよい。
【0086】
好ましい態様において、多数の遺伝学上修飾された骨格筋細胞を適合性のレシピエントに移植する。好ましくは、上記移植は自己移植である。より好ましくは、上記細胞は、局所又は周囲の移植された組織中で脈管形成を誘導するのに十分な量にて移植される。さらにより好ましくは、上記移植は、レシピエントの心臓機能を改善する。移植方法は、当業者に知られている。筋肉組織の移植の詳細に関しては、米国特許第5,602,301号及び第6,099,832号を参照してよい。
vi)HIF−3αの発現のダウン制御
前で記載されたとおり、HIF−3α発現はVEGF発現を誘導し、それ自体が脈管形成を誘導する。腫瘍細胞の生存は脈管形成に依存するから、我々は、幾つかの腫瘍においては、HIF−3α発現が癌細胞の増殖に必須であると提唱する。従って、HIF−3αのダウン制御はこれらの因子を妨害するか及び/又は治療するのに使用することができる。
【0087】
よって、発明は、ヒトHIF−3αポリペプチドの細胞発現レベルを低下させることにより、ヒトにおいて腫瘍細胞のに生存を変調させるか又は腫瘍細胞を排除する方法に関する。好ましい態様において、これは、腫瘍細胞にアンチセンスを送達することにより達成される。これは、静脈内注射、腫瘍内注射又は他の局所薬剤送達により、現在利用可能な方法を用いて達成できる(例えば、Crooke et al.,(2000),Oncogene 19,6651−6659;Stein et al.,(2001),J Clin.Invest 108,641−644;及びTamm et al.,(2001),Lancet 358,489−497)。
【0088】
上記の方法の関連する側面によれば、発明は、アンチセンス核酸及びそのようなアンチセンスを含む薬学組成物に関し、上記アンチセンスは、発現のHIF−3α細胞レベルを、そしてより特定すれば配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされ、及び/又は配列番号:2のアミノ酸475から515を含むヒトHIF−3αポリペプチドの発現レベルを低下させることができる。好ましくは、上記アンチセンス核酸はhHIF−3α蛋白質をコードするか又はそれに由来するポリペプチドの何れかをコードする核酸配列に相補である。より好ましくは、上記アンチセンスは、高いストリジェント条件下でゲノミック配列又はmRNAにハイブリダイズし、さらにより好ましくは高いストリジェント条件下で配列番号:1の一部又は全て又はその相補配列の一部又は全てにハイブリダイズする。もっとも好ましいアンチセンス分子は、高いストリジェント条件下で、配列番号:1の核酸1423から1545の一部又は全て、配列番号:1の核酸2116から2223の一部又は全て、又はそれらの相補配列の一部又は全てとハイブリダイズする分子である。
【0089】
高いストリジェント条件の非限定例は:
a)5X SSPE(1X SSPE=0.18M NaCl,10mM NaH2SO4);5X デンハルト溶液;0.05%(w/vz)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);及び(et)100μg/mlのサケ精子DNAの溶液中で68℃においてプリハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション;
b)室温において10分間2X SSPE及び0.1%SDSにより2回洗浄;
c)60℃において15分間、1X SSPE及び0.1%SDSにより1回洗浄;
d)60℃において15分間、0.1X SSPE及び0.1%SDSにより1回洗浄
を含む。
vii)HIF−3α抗体
発明は、HIF−3α蛋白質に特異的に結合する精製された抗体を特徴とする。発明の抗体は、上記のHIF−3α蛋白質又はポリペプチドを用いて様々な方法により製造してよい。例えば、HIF−3αポリペプチド、又はその抗原性断片を動物に投与することにより、ポリクローナル抗体の生産を誘導してよい。あるいは、本明細書にて使用される抗体はモノクローナル抗体であってよく、ハイブリドーマ技術を用いて製造される(例えば、Hammerling et al.,In Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas,Elsevier,NY,1981を参照)。発明は、ヒトHIF−3α蛋白質に特異的に結合する抗体を特徴とする。特に、発明は、「中和」抗体を特徴とする。「中和」抗体は、HIF−3αポリペプチドの生物活性の何れか、特にHIF−3αがVEGF発現を誘導する能力を干渉する抗体を意味する。中和抗体は、HIF−3αポリペプチドがVEGF発現を阻害する能力を、好ましくは50%、より好ましくは70%、そしてもっとも好ましくは90%誘導してよい。本明細書にて記載されるものを含む、VEGF発現のあらゆる標準アッセイを使用することにより、潜在的に中和する抗体を評価してよい。一度生産されたら、モノクローナル及びポリクローナル抗体は、ウエスタンブロット、免疫沈殿分析又はあらゆる他の適切な方法により特異的なHIF−3αの認識に関して試験することが好ましい。
【0090】
完全なモノクローナル及びポリクローナル抗−HIF−3α抗体に加えて、発明は、様々な遺伝子操作された抗体、ヒト化された抗体、及び抗体断片を特徴とし、F(ab’),Fab’,Fab,Fv及びsFv断片を含む。抗体は当業界で知られた方法によりヒト化することができる。完全なヒト抗体、例えばトランスジェニック動物中で生産されたものも、本発明の特徴である。
【0091】
HIF−3α(又はHIF−3αの断片)を特異的に認識する抗体、例えば、本明細書にて記載される抗体は、発明にとって有用と考えられる。そのような抗体は、HIF−3αポリペプチドの検出、定量及び精製のためのあらゆる標準の免疫検出方法において使用してよい。好ましくは、当該抗体は、HIF−3αに特異的に結合する。当該抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであってよく、そして診断又は治療の目的のために修飾されてよい。より好ましくは、上記抗体は、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てを含むHIF−3αポリペプチドに特異的に結合する。もっとも好ましい抗体は、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てに特異的に結合する。
【0092】
発明の抗体は、例えば、HIF−3αの発現レベルを監視するために免疫アッセイにおいて使用されることにより、哺乳類により生産されたHIF−3α又はHIF−3α断片の細胞下の(subcellular)位置を決定するか、又は生物サンプル中のHIF−3α又はその断片の量を測定してよい。本明細書にて記載されたHIF−3αを阻害する抗体は、低下したHIF−3αの機能が有利であるはずの条件、例えば癌細胞の増殖の阻害に関して特に有用であるかもしれない(以後を参照)。さらに、上記抗体は、診断用及び/又は治療用用途のための化合物、例えばイメージングのための放射性ヌクレオチド及び特定の組織の位置へ化合物を標的化するためのリポソームにカップリングさせてよい。当該抗体は、容易な検出のために、標識してよい(例えば、免疫蛍光)。
viii)HIF−3αポリペプチドの投与、HIF−3α合成又は機能の変調因子
不十分なHIF−3α遺伝子の発現を回避するか又は克服するため、治療をデザインしてよい。これは、例えば、HIF−3αのcDNAのトランスフェクションにより達成することができた。
【0093】
大量の純粋なHIF−3αを得るためには、培養された細胞の系が好ましいはずである。影響された組織への当該蛋白質の送達は、次に、適切なパッケージング系又は投与系を用いて達成することができる。あるいは、小分子のアナログを、HIF−3αアゴニストとして作用させ、そしてこの様式において、所望の生理学上の効果を生じさせるために使用して投与できたことが想像できる。そのような分子を発見する方法は、本明細書に提供される。
【0094】
HIF−3α蛋白質又はポリペプチド、ポリペプチド、抗体又は変調因子(例えば、アンチセンス)は、薬学上受容可能な希釈剤、担体又は賦形剤の中で、ユニット投薬形態にて投与してよい。慣用の薬学上の経験を使用することにより、HIF−3α蛋白質、ポリペプチド又は変調因子を患者に投与するための適切な製剤又は組成物を提供してよい。投与は、患者が症状を表す前に始めてよい。如何なる適切な投与経路も用いてよく、例えば、投与は、皮下、筋肉内、頭蓋内(intracranial)、眼窩内(introrbital)、眼内(ophthalmic)、心室内(intraventricular)、内包内(intracapsular)、脊髄内(intraspinal)、くも膜下槽内(intracisternal)、腹膜内、鼻腔内、噴霧(aerosol)、坐薬によるか、又は経口投与であってよい。治療用製剤は流体溶液又は懸濁液の形態であってよい;例えば、経口投与のためには、製剤をタブレット又はカプセルの形態にしてよい;そして鼻腔内投与のためには、粉末、鼻内ドロップ又は噴霧の形態である。
【0095】
製剤を作成するための当業界でよく知られている方法は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に見いだされる。非経口投与のための製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水又は塩水、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、植物起源のオイル、又は水素化されたナフタレン類を含んでよい。生物適合性、生物分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコライドコポリマー、又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーを使用することにより、上記化合物の放出を制御してよい。他の有力な有用な非経口送達システムは、エチレン−ビニルアセテートコポリマー粒子、浸透ポンプ、移植可能な注入システム、及びリポソームを含む。吸入のための製剤は、賦形剤、例えば、ラクトースを含んでよく、あるいは例えばポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココレート及びデオキシコレートを含む水溶液であってよく、あるいは鼻内ドロップの形態の投与のための油性溶液又はゲルとしてであってよい。
【0096】
所望であれば、HIF−3α蛋白質、ポリペプチド又は変調性化合物による治療は、上記疾患のためのより慣用的な治療、例えば外科手術、ステロイド治療又は化学治療と組み合わせてよい。
【0097】
好ましい態様によれば、HIF−3αアンチセンスを、前で定義したオリゴヌクレオチドの少なくとも一つと薬学上受容可能な担体を含む薬学組成物に取り込む。本発明の組成物中に存在するアンチセンスの量は、治療上有効な量である。アンチセンスの治療上有効な量は、組成物が投与される宿主内において過剰に負の作用を引き起こすことなしに、その生物学上の機能を上記アンチセンスが果たすのに必要な量である。使用されるオリゴヌクレオチド及び投与される組成物の正確な量は、オリゴの生物活性、治療される症状の種類、投与の様式、並びに組成物中の他の成分のような因子に従い変更される。典型的には、上記組成物は約1%から約90%のアンチセンスからなり、そして約20μgから約20mgのアンチセンスが投与される。アンチセンス及びアンチセンスを含む薬学組成物を製造及び投与するためには、当業界で知られた方法を用いてよい。例えば、Crooke et al.(Oncogene,2000,19:6651−6659)及びTam et al.(Lancet 200,1358:489−497)を癌化学治療のアンチセンス技術の総説として参照されたい。
ix)HIF−3αの細胞内又は細胞外レベルの評価
言及されるとおり、上で記載された抗体及びプローブは、HIF−3αの蛋白質発現を監視し、及び/又は生物サンプル中のHIF−3α又はその断片の量を測定し、及び/又はヒト被験者において腫瘍の悪性度を評価するために使用してよい。
【0098】
さらに、インサイチュハイブリダイゼーションを使用することにより、HIF−3α遺伝子の発現を検出してよい。当業界では知られているとおり、インサイチュハイブリダイゼーションは特別に標識された核酸プローブの、個々の細胞又は組織中の細胞RNAへのハイブリダイゼーションに依存する。よって、HIF−3α遺伝子の唯一の部分に対応するオリゴヌクレオチド又はクローン化されたヌクレオチド(RNA又はDNA)断片は、HIF−3αの細胞レベルを評価するか又は特別のmRNA種を検出するのに使用してよい。そのような評価は、よく知られた方法を用いてインビトロにおいて使用してもよい(ノーザン分析、定量性PCR等)。
【0099】
生物サンプル中のHIF−3α又はその断片の量の測定は、細胞増殖性疾患又はそのような疾患の増加する可能性を、特にヒト被験者において、HIF−3α核酸プローブ又はHIF−3α抗体を持いて診断するのに特に有用かもしれない。本発明者らは、特定の種類の癌の悪性度とHIF−3α又はその断片の量の間に相関があること、及び高いレベルのHIF−3αが腫瘍細胞が脈管形成活性及び悪性を有する指標であることも、推測する。高い悪性の癌は短い倍加時間を細胞が示す癌である(例えば、造血細胞癌、肺癌、前立腺癌、子宮癌、乳癌、メラノーマ、膵臓癌、腸癌、肉腫、前立腺癌及び血液癌)。
【0100】
発明の方法は、サンプル又はその中の細胞の中のHIF−3αの量を評価するために、インビトロ又はインビボにおいて、癌を有する疑いのある個体からの生物サンプル(例えば、血液サンプル又は組織生検)を、発明によるHIF−3α抗体又はプローブと接触させることにより実施してよい。測定された量は、増殖性腫瘍細胞を有する被験者の見込みの指標であるが、何故ならば、これらの細胞が高いレベルのHIF−3αの発現を有すると予測されるからである。
【0101】
関連する側面において、発明は、i)組織又は細胞のサンプルを用意し;ii)当該サンプルを抗−HIF−3αポリクローナル又はモノクローナル抗体とインキュベートし;そしてiii)HIF−3αの分配を評価することを含む、組織中のHIF−3αの発現を検出する方法を特徴とする。
【0102】
サンプル中のHIF−3αの量を測定するアッセイキットも有用であり、本発明の範囲内にある。そのようなキットは、発明によるHIF−3α抗体又はプローブ及びキットを使用するための指示書、アッセイ管、酵素、試薬又は反応バッファー、酵素からなる群から選択される要素少なくとも一つを含むのが好ましい。
x)HIF−3α蛋白質の発現を変調する分子の同定
HIF−3αのcDNAは、HIF−3α発現を増加させるか又は低下させる分子の同定を促進させるために使用してよい。一つのアプローチにおいて、候補分子を濃度を変えながら、HIF−3αのmRNAを発現する細胞の培養培地に加える。HIF−3α発現を次に、例えば、HIF−3αのcDNA又はcDNA又はRNA断片をハイブリダイゼーションプローブとして用いるノーザンブロット分析により、測定する(又は別の遺伝子、例えばその発現がHIF−3αにより制御されるVEGFの発現)。候補分子存在下でのHIF−3αの発現のレベルを、候補分子不在下でのHIF−3α発現レベルと比較するが、他の因子(例えば、細胞の種類及び培養条件)は同じにする。
【0103】
HIF−3αのレベルを変調させる化合物は、精製してよいか、又は実質上精製してよく、あるいは、細胞から得られる抽出物又は上清のような化合物の混合物の一つの成分であってよい(Ausubel et al.,同じ箇所)。化合物の混合物のアッセイにおいては、単一の化合物又は最少数の有効な化合物がHIF−3α発現を変調させると証明されるまで、HIF−3α発現を、化合物プールの段々に小さくなるサブセット(例えば、HPLC又はFPLCのような標準技術により生産された)に対して試験する。
【0104】
HIF−3αの生物活性(例えば、VEGF発現、脈管形成の誘導)を変調するそれらの能力に関して化合物をスクリーンしてもよい。このアプローチにおいては、候補化合物の存在下でのHIF−3α又はHIF−3αを発現する細胞の生物活性(例えば、肺又は腎臓の細胞)を、均等な条件下で、その不在下での生物活性と比較する。再び、上記スクリーンは一つ又は複数の有用な変調化合物が段階様式にて単離される候補化合物のプールを用いて始めてよい。HIF−3α又は細胞の生物活性は、あらゆる適切な標準アッセイを用いて測定してよい。
【0105】
HIF−3αの活性に対する候補分子の作用は、代りに、翻訳のレベルにおいて、上記の一般的なアプローチを標準の蛋白質検出技術、例えばウエスタンブロッティング又はHIF−3α特異的抗体(例えば、本明細書で記載されたHIF−3α抗体)を用いた免疫沈殿と共に用いることにより測定してよい。
【0106】
HIF−3αの生物活性を変調させる化合物を検出するための別の方法は、与えられたHIF−3αポリペプチドと物理的に相互作用する化合物に関してスクリーンすることである。試験される化合物の性質に依存して、結合性相互作用は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、フィルター結合アッセイ、FRETアッセイ、シンチレーション近接アッセイ、顕微鏡視覚化、細胞の免疫染色、インサイチュハイブリダイゼーション、PCR等のような方法を用いて測定してよい。
【0107】
HIF−3α発現又はHIF−3α活性の増加を促進させる分子は上記発明に特に有用と考えられる;そのような分子は、例えばHIF−3αの細胞レベルを増加させて、それによりHIF−3αポリペプチドの脈管形成を促進及び/又は誘導する能力を探索するための治療剤として使用してよい。
【0108】
HIF−3α活性を低下させる分子(例えば、HIF−3α遺伝子発現又はポリペプチド活性を低下させることにより)は、脈管形成及び/又は細胞増殖を低下させるか及び/又はブロックするために使用してよい。これは、癌の治療において有利なはずである。
【0109】
HIF−3α遺伝子発現又はポリペプチド活性を有効に変調させることが上記方法によりわかった分子は、さらに動物モデルにおいて試験してよい。それらがインビボの設定においてうまく機能し続けるなら、それらを脈管形成を促進するか又は阻害するための治療剤として用いてよい。
xi)HIF−2α及びHIF−3αによる脈管形成関連遺伝子の発現の誘導
関連する側面によれば、本発明は、脈管形成を誘導して筋肉の機能を改善するため、より特定すれば哺乳類において冠動脈及び心臓の疾患を治療するための方法及び細胞に関する。発明は、多数の脈管形成関連遺伝子を発現する遺伝子操作された筋肉細胞も提供する。
【0110】
発明のこの側面は、低酸素症誘導可能因子(HIF−1α、HIF−2α及びHIF−3α)からの転写因子をコードするヌクレオチド配列の使用に基づく。例示のセクションにおいて示されるとおり、本発明者らは、VEGFに加えて、脈管形成に関係する他の分子、例えばIL−8,IL−6,PIGF,LIF受容体、PAI−2及びMMMP7の筋肉細胞における発現をHIF−2αが刺激したことを証明した。発明者らは、ラットのCHFのモデルにおいて、HIF−2αが哺乳類において治療性脈管形成のために使用できたことを示した。また、発明者らは、HIF−2α遺伝子により骨格筋細胞(SkMC)を遺伝子操作し、そしてこれらの細胞がインビボにおいて優秀な脈管形成特性を示したことを示した。さらに、CHFラットのHIF−2α遺伝子移入による治療は脈管形成、高い代謝活性及び改善された心機能をもたらした。
【0111】
HIF−1α、HIF−2α及びHIF−3αは同じファミリーに属し、そして密接に関連するから、類似の結果がHIFメンバーの何れを用いても得られると予測された。よって、本セクションに提供された本発明の追加の側面は、HIF−2αのみならずHIF−1α及びHIF−3α(全てのアイソフォーム)の使用を包含する。HIF−1α(GenBankTM受け入れ番号U22431)は、Wang et al.,(Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995)92:5510−5514)により、そして米国特許第5,882,314号、第6,020,462号及び第6,124,131号において記載される。HIF−2α(GenBankTM受け入れ番号U81984)は、Tian et al.,(Genes & Dev.(1996)11:72−82)により、そして米国特許第5,692,963号において記載される。HIF−3αの一つのアイソフォームは本明細書に記載され、そして別のアイソフォーム(GenBankTM受け入れ番号AB054067)は、Hara et al.(Biochem.Biophys.Res.Comm.(2001),Oct 5;287:808−813)に記載される。
【0112】
よって、発明のこの側面は、哺乳類の筋肉細胞において少なくとも一つ、好ましくは多数の脈管形成関連遺伝子の発現を誘導する方法に向けられ、当該方法は、機能性HIF−2α転写因子又は機能性HIF−3α転写因子をコードする核酸配列を細胞内に導入して発現させる工程を含む。
【0113】
別の関連する側面によれば、発明は、筋肉細胞の代謝活性、例えば、グルコース消費)を増加させる方法に向けられ、低酸素症誘導可能因子(HIF)ファミリーの機能性転写因子をコードする核酸配列を細胞内に導入して発現させる工程を含む。好ましくは、上記機能性因子はHIF−2α又はHIF−3αである。
【0114】
別の関連する側面において、発明は、哺乳類の心臓組織機能を改善する方法に向けられ、機能性HIF−2α転写因子又は機能性HIF−3α転写因子をコードする核酸配列を発現する多数の遺伝子修飾された細胞内を、上記哺乳類の心臓組織に提供する工程を含む。
【0115】
別の関連する側面によれば、発明は、哺乳類の筋肉組織において脈管形成を誘導する方法に向けられ、機能性HIF−2α転写因子又は機能性HIF−3α転写因子をコードする核酸配列を発現する多数の遺伝子修飾された細胞を、上記筋肉組織に提供する工程を含む。
【0116】
発明によれば、低酸素症誘導可能因子ファミリーの転写因子をコードするヌクレオチド配列を筋肉細胞に導入して発現させ、好ましくは、限定ではないがアデノウイルス感染、及びプラスミド、コスミッド又は人工の染色体のトランスフェクション又はエレクトロポレーションを含むあらゆる適切な方法を用いることにより、筋肉細胞、好ましくは骨格筋細胞又は心臓細胞内に導入されて発現される。より好ましくは、上記転写因子をコードする核酸配列は、cDNAである。
【0117】
さらなる側面において、発明は、機能性HIF−2α転写因子又は機能性HIF−3α転写因子をコードする核酸配列を発現する遺伝子修飾された筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞、心臓細胞)に向けられる。好ましくは、上記細胞は骨格筋細胞又は心臓細胞である。また、好ましくは、上記細胞は、転写因子をコードするcDNAを含む。前に記載されたとおり、そのような細胞は、脈管形成を誘導するため、虚血を軽減するため、哺乳類の筋肉組織の代謝活性を増加させるため、及び/又はCHF又は末梢欠陥疾患における筋肉機能を増加させるために、局所又は周囲の移植された組織において、適合性のレシピエントにおいて移植された場合に、特に有用かもしれない。もちろん、本発明の遺伝子修飾された細胞は、人工臓器の形成のため又は組織の構築のために使用することもできる。
【0118】
細胞の移植(自己移植又は適合性ドナーから)は、局所の脈管形成を周辺組織に誘導するため、及び/又は筋肉細胞の代謝活性を改善するため、及び又は冠動脈心臓疾患又は末梢欠陥疾患において虚血を軽減するため、及び/又は哺乳類の心臓機能を改善するためには好ましいが、上記機能性転写因子をコードする核酸配列は当業界で知られているあらゆる適切な方法を用いて哺乳類の組織へ直接導入してよい(いくつかの例に関しては前記を参照)。脈管形成関連遺伝子を以後において例示のために示すとおり、本発明は、脈管形成を誘導し、虚血を軽減し、そしてCHD及びPVDにおいて細胞代謝活性を増加させるために有用である。
【0119】
実施例
以下の実施例は、本発明の広い範囲の応用可能性の例示であり、その範囲を限定することを意図しない。発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本発明においては、修飾及び変化がなされ得る。本明細書に記載される類似又は均等なあらゆる方法及び物質が本発明の試験のための実施において使用され得るが、好ましい方法及び物質は記載される。
実施例1:脈管形成を誘導して筋肉の機能を改善するためのHIF−1α、HIF−2α及びHIF−3αの使用
プラスミドの構築
HIF−1α−VP16/pcDNA3を、S.L.McKnight(Tian et al.,Genes & Dev.(1996)11:72−82)から得た。HIF−1α−VP16/pcDNA3を生成するため、VP16断片(pVP16(ClonTech)からのNheI及び平滑末端化EcoRIを、オリゴTTA AGA TAT CGA TGA CAC GTG(配列番号:4)及びTCA GCA CGT GTC ATC GAT ATC(配列番号:5)からなるNheI−AflIIリンカーの存在下でAflII及びXbaI平滑末端化されて切断されたHIF−1α/pcDNA3に挿入することにより、HIF−1α配列の3’部分をVP16により置き換え、HIF−1αのDNA結合ドメイン及びヘテロダイマー化ドメイン(HLH及びPAS)(遺伝子の5’によりコードされた)をVP16転写活性化ドメインとフレームを合わせた。
【0120】
HIF−2α−VP16/pcDNA3を、S.L.McKnight(Tian et al.,Genes & Dev.(1996)11:72−82)から得た。HIF−2α−VP16/pcDNA3を生成するため、オリゴヌクレオチドT7及びGCT AGC TAG GAA GTT ACT CCT CTC(配列番号:6)を用いて、HIF−2α/pcDNA3を鋳型としてPCRによりHIF−2αの5’領域を増幅し、HIF−2αのDNA結合ドメイン及びヘテロダイマー化ドメイン(HLH及びPAS)の末端にNheIを創製した。この断片をNheIとKpnIにより切断して、NheIとKpnI切断したHIF−1−VP16/pcDNA3内のHIF−1α配列に代えて挿入した。配列決定により、増幅された配列の完全状態が確認された。
【0121】
HIF−3αをRT−PCRによりマウスHIF−3α配列からの相同性推定によりクローン化した。MarathonTM RT−PCRキット(CloneTech)を用いて、HIF−3α配列の2断片を、成人の心臓のRNA(CloneTech)から、5’末端に関して、オリゴCCA TGG ACA GGT CGA CCA CGG AGC TGC GCA AGG(配列番号:7)(NcoI部位にATGイニシエーターを含む)及びCGC AGG CAG GTG GCT TGT AGG CCC T(配列番号:8)を用い、そして3’末端に関して、オリゴCAG CTG GAG CTC ATT GGA CAC AGC ATC(配列番号:9)及びCCC CAT CCT GTG CGT TGG CTG CCG(配列番号:10)を用いて増幅した。両断片を配列決定して、唯一のNdeI部位と合わせ、そして構築されたcDNAを、HIF−1αのKozak配列を使用して、HIF−1α/pcDNA3のNcoIイニシエーターに挿入することにより、翻訳を開始した。HIF−3α−VP16/pcDNA3を生成するため、HIF−3αのDNA結合ドメイン及びヘテロダイマー化ドメイン(HLH及びPAS)を含むPCR断片を、HIF−3α/pcDNA3を鋳型として使用して、オリゴT7及びGGA GTC AGC TTA AGC TGA ATG GGT CTG C(配列番号:11)により増幅した。増幅された産物をBamHIとAflII(3’オリゴから来た)により切断して、BamHIとAflIIにより切断されたHIF−1α−VP16/pcDNA3内のHIF−1α配列の代りに挿入した。
トランスフェクション
初期継代293細胞(ATCC # CRL−157)をプレート(100mm)あたり1.7x106細胞にてプレートして、一晩培養した。10μgの不稔性(sterile)プラスミドDNAを、製造者の指示書に従い、リポフェクチンを用いてトランスフェクトした。5時間のトランスフェクション後に、正常酸素(normoxia)(37℃にて普通の空気中の5% CO2)又は低酸素(5% CO2,2% O2,37℃にて)の何れかにて24時間インキュベートした。100mm皿の中の約70%コンフルエントなHep3B細胞(ATCC #HB−80645)に、4μgの不稔性プラスミドDNA及び6μlのFugeneTM(Roche)を、製造者の指示書に従い、トランスフェクトした。
アデノウイルス生成
HIF構築物を用いて、Ad.EasyTM技術により、製造者の方法論を用いてアデノウイルスベクターを生成した(Q−Biogene)。
感染
初期継代ヒトSkMC(Cambrex #CC−2561)を100mmの皿にプレートして、約70%コンフルエントに到達するまで、生育させた。細胞をPBSにより洗浄して、10%胎児ウシ血清(FCS)及び500のMOIのアデノウイルスを含む4mlのDMEMで覆った。このMOIは、ほんの約10%の細胞の感染しか許容しない。細胞を一定の緩やかな撹拌により37℃において6時間インキュベートした。10%のFCSを含む6mlのDMEMを加えて、細胞を一晩37℃においてインキュベートした。細胞を、次に、正常酸素(37℃にて普通の空気中の5% CO2)又は低酸素(5% CO2,2% O2,37℃にて)の何れかにて24時間インキュベートした。
RNAses防御アッセイ(RPA)
全RNAを形質導入された細胞からグアニジンチオシアネート−フェノール抽出により、記載されたとおりに(Staffa,A.,et al.,J.Biol.Chem.(1997)272:33394−401)(図3A又は3C)又はRneasy Mini KitTM(Qiagen)により製造者により記載されたとおりに、単離した。サンプルあたり15μgの全RNAをRPAによりRPA IIIキット(Ambion)を用いて分析した。プローブは、図3Aに関してはhAmgio1鋳型セット(Pharmingens)から、そしてその他に関してはホームメードのVEGF及びアクチン鋳型から、調製した。VEGF鋳型は、phVEGF165.SR(J.F.Isnerから)(Tsurumi,Y.,et al.,Circulation.(1996)94:3281−3290)上で、オリゴCCG GAA TTC TCT ACC TCC ACC ATG CC(配列番号:12)及びCCG GAA TTC CTC AGT GGG CAC ACA CTC C(配列番号:13)による増幅、増幅産物のEcoRIによる消化(両鎖)及びEcoRI消化されたpBluescript内への挿入により調製した。配列の完全性は配列決定により確認した。結果のプラスミドをHindIIIにより消化して、T7のRNAポリメラーゼにより転写することにより、アンチセンスRNAプローブを生成した。アクチンプローブ鋳型は、W.E.Bradley(Houle,B.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1993)90:985−989)から得た。
定量
オートラジオグラムをアルファイメージャー2000TM(Alpha Innotech Corporation)上でスキャンした。各バンドの強度を測定して、相対的な発現を、図3Aに関してはVEGF強度/Flt4強度として、そしてその他に関してはVEGF強度/アクチン強度として計算した。相対VEGF値は正常酸素中の対照サンプルに帰する。生成された蛋白質VEGFは、定量されたmRNAの量に比例した。結果を平均±標準偏差として表す。
遺伝子チップハイブリダイゼーション
全RNAを、Ad.NullTM(Q−Biogene)又はAd.HIF−2αの何れかに感染したヒトSkMC(Clontics)から記載されたとおりに単離した(Staffa,A.,et al.,J.Biol.Chem.(1997)272:33394−401)。プローブを、製造者の指示書に従い、ExpressHybTM溶液(Clontech)によりAtlas Human1.2ArrayTM(Clontech)にハイブリダイズさせた。アレイをホスホロイメージャースクリーンに暴露して、Atlas2.01TMソフトウエア(Clontech)により分析した。
インビボ脈管形成
初期継代ヒトSkMC(未感染か又は示されたアデノウイルスベクターに感染した)を、マトリゲル(50000細胞/0.5ml)に取り込み、そしてスキッドマウス(グループあたり10匹)に皮下注射した。マトリゲルのみ又はbFGF(400ng/ml)を対照として用いた。移植の7日後に、マトリゲルのプラグを切り出して、組織学の評価のために加工した。各測定値は、積分した密度として表現された顕微鏡視野内の細胞の応答性の程度に相当する(切片中のグレーの値の総計、バックグラウンドを差し引き、各プラグにおいて6つの測定値)。
【0122】
永久的な左前方下方冠動脈(permanent left anterior descending coronary artery ligation)の結紮により創製された梗塞されたラット(MyoinfarctTMラット、チャールズリバーラボラトリーズ)の代謝活性を、結紮の5日後に、18FDG(〜750μCi/100g)の注射及び小動物PET−ScanTM(Sherbrooke University)を用いた動的捕捉(dynamic acquisition)により測定した。結紮の10日後に、小規模の開胸を実施することにより、左心室の梗塞エリア内にAd.HIF2α/VP16又は塩溶液(N=2)を注入した。18FDG PET−ScanTMを注入から14、28、42及び56日後に実施した。代謝活性は、左心室の側壁のエリア内に見いだされる18FDGの量として計算され、梗塞が局在する場所においては、別の冠動脈により洗浄された隔壁内の影響されていないエリアに見いだされたFGDの量により標準化した。最後のPET−ScanTM後に、動物を犠牲にして、血管を、完全に梗塞されたエリア内又は健康な組織と梗塞された組織の間の限界のフィールド内で定量した。
結果
HIF−1α、HIF−2α及びHIF−3αによるインビトロVEGF誘導
図2A,2B,3A,3B及び3Cは、HIF構築物によりトランスフェクトされた細胞内での脈管形成関連遺伝子の発現を示す。
【0123】
HIF因子の天然(野生型)形態又は活性化されたバージョンをpcDNA3(Invitrogen Corp.)なる発現ベクターに導入した。活性化された構築物は、蛋白質のN’部分に位置する低酸素症不安定性ドメインの欠損及びヘルペスウイルス由来のVP16ドメインである、転写の強い活性化因子の導入からなる(Vincent et al.,Circulation(2000)102:2255−2261)。結果生じたハイブリッドは、もはや低酸素症により制御されず、そして常に転写活性化活性を示す。
【0124】
これらのプラスミドを、一時的に、ヒト胚腎臓293細胞(HEK293)又はヒト肝臓細胞Hep3Bにトランスフェクトさせた。細胞を24時間、正常酸素(通常条件)又は低酸素(2%酸素)の何れかでインビトロして、全RNAを単離した。同様に、ヒト骨格筋細胞(hSkMC)を、HIF構築物のいくつかを発現するアデノウイルスベクターにより形質導入した。HIF構築物トランスフェクション後の内因性VEGF遺伝子活性化をRNAse防御アッセイ(RPA,Ambion)により分析した。
【0125】
VEGF誘導は正常酸素においてHIF−1αトランスフェクションにより生産されなかった(対照と同様)(図2A,2B,3A及び3B)。この結果は予測されたが、HIF−1αが正常酸素においては素早く分解するからである。HIF−1α/VP16ハイブリッドは正常酸素及び低酸素の両方においてVEGFを刺激したが、当該蛋白質は酸素の均衡によりもはや制御されないからである。おもしろいことに、HIF−3αはHEK293及びHep3細胞においてVEGFを刺激するのに極めて有効であった(図2A及び2B)。レベルは正常酸素及び低酸素の両方においてHIF−1αにより得られたレベルよりも優れていたが、HIF−1α/VP16はさらに高い転写活性化活性を有した。HIF−3αのVP16ドメインによる活性化は、VEGF誘導のレベルを顕著に修飾しなかった。
【0126】
HIF−2αによるVEGF刺激も極めて重要であった。図3A,3B及び3Cは、上記蛋白質の野生型バージョンが、正常酸素及び低酸素の両方のおいて、研究された3つの細胞種においてHIF−1α/VP16に匹敵する範囲でVEGFを刺激したことを示す(図3A中のHEK293、図3B中のHep3B及び図3C中のhSKMC)。VP16融合は生産されたVEGFのレベルにおいて重要な利点を提供しなかった。
インビトロにおけるHIF−2αによる脈管形成遺伝子の活性化
VEGFは重要な脈管形成遺伝子である。しかしながら、いくつかの因子により制御されるいくつかの工程を含む複雑なプロセスである。脈管形成変調因子としてHIF因子の能力を評価するため、遺伝子発現を、Ad.HIF2α又はAd.NullTMの何れかに感染したヒトSkMC内で、遺伝子チップ技術を用いて比較した。何れかの細胞集団由来のcDNAプローブを、ほぼ1200の遺伝子の発現を評価するAtlas Human1.2ArrayTM(Clontech)上でハイブリダイズさせた。別個に制御された遺伝子のうち、VEGFは、もっとも顕著な増加を示す一つであった。VEGFは、内皮細胞の増殖、移動及び分化のどれをも刺激する。おもしろいことに、他の脈管形成遺伝子が活性化された(表2)。VEGFのように、インターロイキン−8(IL−8)、及び白血病阻害因子受容体(LIF−R)の活性化は、内皮細胞の増殖を刺激することが知られている。しかしかがら、IL−8も、脈管形成の第1工程である、基底膜の破壊に必須の金属プロテイナーゼの放出を活性化することにより作用する。LIFもSkMCの生存性を増強することが知られており、細胞治療に有用なはずである(図4)。インターロイキン−6(IL−6)の役割は、より間接的である;それは内皮細胞の増殖に効果をもたないが、それらの移動と分化は刺激する。それはVEGF生産の増強因子でもある。胎盤成長因子(PIGF)は、脈管形成を刺激するためにVEGFと共に作用することが示された。マトリックス金属プロテイナーゼ7(MMP7)は脈管形成プロセスを開始することができる有力なプロテイナーゼであるが、胎盤のプラスミノーゲン活性化因子阻害剤2(PAI−2)は発生期の血管を安定化することができる(図4)。遺伝子チップの制限のためにこのアッセイにおいて検出できなかった他の多くの有力な脈管形成因子が存在するが、HIF因子により誘導されるかもしれない。
【0127】
【表2】
【0128】
インビボにおけるHIF−2α刺激性脈管形成
HIF構築物の脈管形成能力を、インビボにおいて、マウス内でHIF構築物をトランスフェクトされたSkMCの皮下移植により評価した。移植から7日後に、修飾された細胞沈殿物は、未修飾のSkMCよりも顕著に高い血管密度を示した(図5B)。この結果は、VP16活性化がHIF−2αの場合には必要ないことを確証する。修飾されたSkMCは、インビボにおいて、細胞外マトリックスにより支持されて新しい血管に囲まれた筋管に分化した(図5A)。脈管形成は筋管周囲で重要であり、そしてうまく組織化されているらしかった。
【0129】
HIF−2αも、ラットにおいてMIのモデルにおいて直接送達された。ベクターAd.HIF−2α/VP16の心筋への直接の注射の5日前及び続く2カ月の間のいくつかの時間点において、代謝活性を評価した。図6A及び6Bに示すとおり、位置放射断層撮影スキャン(PET−ScanTM)による定量により、対照と比較して改善された代謝活性が治療されたラットの梗塞されたエリアにおいて測定された。血管の密度が組織学により定量されたとき、梗塞エリア並びに梗塞周辺ゾーンにおいて、アデノウイルス処理ラットにおいて血管の数の増加が記された(図6B)。
3)考察
インビトロトランスフェクション実験は、野生型HIF−3αとHIF−2αはVEGFを誘導することに関してHIF−1αよりも優れていることを示した。遺伝子治療において使用したところ、HIF−3αは、即ち、脈管形成を誘導するのに極めて有用なはずである。
【0130】
図2A,2B,3A,3B及び3Cに示すとおり、HIF−VP16融合コーディング構築物のトランスフェクションはVEGFの顕著な刺激をもたらした。しかしながら、ヒトの遺伝子治療においては、これらの構築物は免疫原性の問題を提起する。ウイルス起源のVP16配列の存在は、免疫系により認識されて、移入された遺伝子に対して免疫応答を引き起こす。野生型のヒト遺伝子、例えばHIF−3αを使用した構築物は免疫原性が低いために利点を有し、即ち、長期間の発現を提供する。比較すると、HIF−1αは正常酸素において貧困な脈管形成能力しか有さず、完全に活性になるためにはVP16修飾を必要とする(図2、3及びVincent et al.,Circulation(2000)102:2255−2261)。図2A,2B,3A,3B及び3Cも、HIF−2αとHIF−3αが標的とされた細胞の遺伝子の転写を修飾するために、遺伝子移入プロトコルにおいて有効に使用できたことを強く示唆する。特に、VEGF発現が増加し、脈管形成をもたらす。即ち、血管及び血液潅流を増加させる虚血性疾患においてHIF−2α又はHIF−3αの配列を使用することを提案する。
【0131】
HIF−2αにより活性化された遺伝子の分析は、いくつかの脈管形成遺伝子の誘導を明らかにした(表1)。これらの遺伝子は脈管形成の様々な局面において役割を担い(図4)、そして結果の脈管形成は、即ち、強くてうまく組織化されていると予測される。これは脈管形成を誘導することにおいてVEGFを単独で使用するのに比べての主要な利点であるが、脈管形成の鍵となる工程の全てが刺激されることになるからである。HIF−3αもいくつかの脈関係性遺伝子を制御しておそらくはHIF−2αと同じである。
【0132】
インビボの実験は、HIF−2α遺伝子の移入が、皮下移植物(図5B)及びMI心臓モデル(図6B)の両方において、顕著な脈管形成をもたらしたことを証明した。これらの結果は、VP16融合が血管の形成をもたらすのに必要ないことを証明した。この特徴は、脈管形成因子としてのHIF−2α配列に対する重要な利点を授与する。遺伝子移入治療における天然配列の使用は、ウイルス起源のVP16による構築物よりもはるかに低い免疫原性応答を引き起こすことになる。HIF−3αもHIF−1αより優れており、HIF−2αと類似のVEGFインビトロ誘導を示したから、それはインビボにおいても有効であると予測される。
【0133】
脈管形成は、図6Aに示すとおり、梗塞されたエリアにおいて代謝活性の増加(増加したグルコース消費)をもたらしたことから、組織の機能の改善を示す。これは、高い血液供給であり、心臓のポンプ機能を改善できる高い筋肉活性に翻訳された。
【0134】
要約すると、直接又は移植された細胞の何れかにより送達されたHIF因子は、心筋の再生及び心臓機能の改善に多大な能力を提供する。
本明細書内に報告された結果は、HIF−2α及びHIF−3α学遺伝子治療において使用できるという効果に対する原理の証明をなす。
【0135】
発明のいくつかの態様を記載してきたが、本発明はさらなる修飾が可能であり、そしてこの出願は発明のあらゆる変更、使用又は適合をカバーすることを意図しており;一般的に発明の原理に従い、そして本会時からのそのような逸脱を含み発明が属する分野の知見又は習慣的な実行となり、そして前記の本質的な特徴に適合してよく、発明の範囲内及び特許請求の範囲の限定に入る。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1はヒトHIF−3α遺伝子の構成を示す図解である。
【図2A】図2Aは、HIF−3α構築物によりトランスフェクトされたHEK293細胞内でのVEGFの発現を示す棒グラフである。
【図2B】図2Bは、HIF−3α構築物によりトランスフェクトされたHep3B細胞内でのVEGFの発現を示す棒グラフである。
【図3A】図3Aは、HIF−2α構築物によりトランスフェクトされたHEK293細胞内でのVEGFの発現を示す棒グラフである。
【図3B】図3Bは、HIF−2α構築物によりトランスフェクトされたHep3B細胞内でのVEGFの発現を示す棒グラフである。
【図3C】図3Cは、HIF−2α構築物によりトランスフェクトされたヒト骨格筋細胞内でのVEGFの発現を示す棒グラフである。
【図4】図4は、脈管形成の起こり得るプロセス及び幾つかの脈管形成関連遺伝子のその中で起こり得る役割を示す図解である。
【図5A】図5Aは、マウスに皮下移植されたHIF−2α修飾hSkMCの写真であって、筋管の違い及び筋肉繊維周囲と筋肉繊維間の組織化された血管構造の違いを示す(矢印は脈管を示す)。
【図5B】図5Bは、HIF構築物修飾hSkMCの脈管形成を示す棒グラフである。
【図6A】図6Aは、Ad.HIF−2αで処理された虚血性ラットの心筋内の代謝活性を示す棒グラフである。
【図6B】図6Bは、ラットにおいて心筋HIF−2α遺伝子移入により治療された、梗塞されたエリア内の測定された血管の密度を示す棒グラフである。
Claims (64)
- a)配列番号:1又は3にて提供される配列;
b)配列番号:1又は3に提供される配列の相補体;
c)配列番号:1又は3にて提供される配列の少なくとも20の連続する残基からなる配列;
d)中度又は強度のストリジェント条件下で配列番号:1又は3にて提供される配列にハイブリダイズする配列;
e)配列番号:1又は3にて提供される配列に少なくとも75%同一性を有する配列;及び
f)配列番号:1又は3にて提供される配列の縮重バリアント
からなる群から選択される配列を含む、単離されたか又は精製された核酸分子。 - a)配列番号:1と少なくとも75%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列;及び
b)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸と少なくとも75%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列
からなる群から選択される配列を含む、請求項1記載の核酸。 - a)配列番号:1と実質上同じ配列;及び
b)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸と実質上同じ配列
からなる群から選択される配列を含む、請求項1又は2記載の核酸。 - a)配列番号:1と100%同一性を有する配列;及び
b)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸と100%同一性を有する配列
からなる群から選択される配列を含む、請求項1乃至3の何れか1項記載の核酸。 - a)配列番号:1の核酸1423−1545の一部又は全て;
b)配列番号:2のアミノ酸475から515のポリペプチドをコードする核酸の一部又は全て
を含む、請求項1乃至4の何れか1項記載の核酸。 - ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するポリペプチドをコードする、請求項1乃至5の何れか1項記載の核酸。
- 配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てを含むヒトHIF−3αポリペプチド又はその縮重バリアントをコードする配列を含む、単離されたか又は精製された核酸分子。
- 配列番号:1の核酸1423−1545の一部又は全てを含む、請求項7記載の核酸分子。
- 配列番号:1を含む、請求項7又は8記載の核酸分子。
- 核酸分子がからなる、請求項1乃至9の何れか1項記載の核酸分子。
- 請求項7乃至10の何れか1項記載の核酸分子の一部又は全て又はそれらの相補配列の一部又は全てとストリジェント条件下でハイブリダイズする、単離されたか又は精製された核酸分子。
- 配列番号:1の核酸1423−1545の核酸の一部又は全て又はそれらの相補配列の一部又は全てとストリジェント条件下でハイブリダイズする、請求項11記載の核酸分子。
- a)配列番号:2に少なくとも80%同一性を有する配列;
b)配列番号:2に少なくとも85%同一性を有する配列;
c)配列番号:2にて提供される配列;
d)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列に少なくとも80%同一性を有する配列;
e)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列に少なくとも85%同一性を有する配列;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたか又は精製された蛋白質。 - a)配列番号:2と実質上同じ配列;及び
b)配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列と実質上同じ配列
からなる群から選択される配列を含む、請求項13記載の蛋白質。 - 配列番号:2に100%同一なアミノ酸配列を含む、請求項13又は14記載の蛋白質。
- ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有する、請求項13乃至15の何れか1項記載の蛋白質。
- 生物活性がVEGF発現を誘導することを含む、請求項17記載の蛋白質。
- VEGF発現の誘導が脈管形成を促進させる、請求項17記載の蛋白質。
- 配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全て又はその縮重バリアントを含む、単離されたか又は精製されたヒト蛋白質。
- ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有する、請求項19記載の蛋白質。
- 生物活性がVEGF発現を誘導することを含む、請求項20記載の蛋白質。
- ヒトHIF−3αポリペプチドの発現レベルを低下させる、アンチセンス核酸。
- ヒトHIF−3αポリペプチドが配列番号:2のアミノ酸475から515を含む、請求項22記載のアンチセンス核酸。
- ヒトHIF−3αポリペプチドが配列番号:3を有するオープンリーディングフレームによりコードされる、請求項22又は23記載のアンチセンス核酸。
- 配列番号:1の一部又は全て又はそれらの相補配列の一部又は全てとストリジェント条件下でハイブリダイズする、請求項22乃至24の何れか1項記載のアンチセンス核酸。
- 配列番号:1の核酸1423−1545の核酸の一部又は全て又はそれらの相補配列の一部又は全てとストリジェント条件下でハイブリダイズする、請求項22乃至25の何れか1項記載のアンチセンス核酸。
- 配列番号:1の核酸2116−2223の核酸の一部又は全て又はそれらの相補配列の一部又は全てとストリジェント条件下でハイブリダイズする、請求項22乃至25の何れか1項記載の核酸。
- ストリジェント条件下でゲノミック配列又はmRNAにハイブリダイズする、請求項22乃至27の何れか1項記載のアンチセンス核酸。
- 配列番号:2と実質上同じHIF−3αポリペプチドに特異的に結合する、単離されたか又は精製された抗体。
- 配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てを含むHIF−3αポリペプチドに特異的に結合する、請求項29記載の抗体。
- 配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てに特異的に結合する、請求項29又は30記載の抗体。
- モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体からなる、請求項29乃至31の何れか1項記載の抗体。
- 1)i)ヒトHIF−3αをコードする核酸分子;
ii)ヒトHIF−3αポリペプチド;
iii)ヒトHIF−3αの細胞発現レベルを低下させるアンチセンス核酸;及び
iv)HIF−3αポリペプチドに特異的に結合する単離されたか又は純粋な抗体
からなる群から選択される少なくとも一つの要素;及び
2)薬学上受容可能な担体又は希釈剤を含む
薬学組成物。 - ヒトHIF−3αポリペプチドが配列番号:2と実質上同じアミノ酸配列を有する、請求項33記載の組成物。
- ヒトHIF−3αポリペプチドが配列番号:2のアミノ酸475から515
を含む、請求項33又は34記載の組成物。 - 請求項1乃至12の何れか1項記載の核酸を含むクローニング又は発現用ベクター。
- ベクター含有細胞において上記核酸によりコードされるポリペプチドの発現を指示することができる、請求項36記載のベクター。
- プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アルファウイルス、及びレンチウイルスからなる群から選択される、請求項36又は37記載のベクター。
- 請求項1乃至12の何れか1項記載の核酸を含む形質転換されたか又はトランスフェクトされた細胞。
- HEK293細胞、Hep3B細胞系,哺乳類の骨格筋細胞、心臓細胞、骨髄細胞、繊維芽細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、内皮始原細胞及び胚性幹細胞からなる群から選択される、請求項39記載の細胞。
- 請求項39又は40記載の細胞から生成されて、上記核酸がその中で発現される、トランスジェニック動物。
- 配列番号:1の少なくとも15の連続するヌクレオチドの配列又はそれに相補な配列を含む、ヌクレオチドプローブ。
- 配列番号:1の核酸1423から1545の一部又は全て、配列番号:1の核酸2116から2223の一部又は全て、配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てをコードする核酸の一部又は全て、配列又はそれらに相補な配列を含む、請求項42記載のヌクレオチドプローブ。
- ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を細胞内に導入して発現する工程を含む、哺乳類細胞内でVEGF発現を誘導するための方法。
- ヒトHIF−3αポリペプチドが配列番号:2と実質上同じアミノ酸配列を含む、請求項44項記載の方法。
- ヒトHIF−3αポリペプチドが配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てを含む、請求項44又は45記載の方法。
- 核酸配列が配列番号:1の核酸1423−1545の一部又は全てを含む、請求項44乃至46の何れか1項記載の方法。
- 細胞が生きた哺乳類の心臓内に位置する心臓細胞からなり、そしてポリペプチドの発現が哺乳類の心臓組織内で脈管形成を誘導する、請求項44乃至47の何れか項記載の方法。
- 細胞が生きた哺乳類の筋肉組織内に位置する筋肉細胞からなり、そしてポリペプチドの発現が哺乳類の筋肉組織内で脈管形成を誘導する、請求項44乃至47の何れか項記載の方法。
- 適合可能な哺乳類レシピエントの組織に上記細胞を移植する工程をさらに含む、請求項44乃至47の何れか1項記載の方法。
- 局所又は周囲の移植された組織に脈管形成を誘導するのに十分な量、細胞を移植する、請求項50記載の方法。
- 移植された組織が虚血性又は非虚血性組織からなる、請求項51記載の方法。
- 哺乳類細胞が骨格筋細胞であり、それによりHIF−3α発現性骨格筋細胞を提供し、そしてさらに、適合可能な哺乳類レシピエントの心臓組織に複数の上記HIF−3α発現性骨格筋細胞を移植する工程を含む、請求項44乃至47の何れか1項記載の方法。
- 移植工程が自己移植からなり、そして哺乳類レシピエントがヒトである、請求項50乃至53の何れか1項記載の方法。
- 多数の細胞を有する哺乳類の組織内で脈管形成を誘導する方法であって、ヒトHIF−3αポリペプチドの生物活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を上記細胞の少なくともいくつかに導入して発現させる工程を含む、方法。
- ヒトHIF−3αポリペプチドが配列番号:2と実質上同じアミノ酸配列を含む、請求項55項記載の方法。
- ヒトHIF−3αポリペプチドが配列番号:2のアミノ酸475から515の一部又は全てを含む、請求項55又は56記載の方法。
- 核酸配列が配列番号:1の核酸1423−1545の一部又は全てを含む、請求項55乃至57の何れか1項記載の方法。
- ヒトHIF−3αポリペプチドの細胞発現レベルを低下させる工程を含む、哺乳類において腫瘍細胞の生存を変調させるか又は腫瘍細胞を排除する方法。
- ヒトHIF−3αアンチセンスを腫瘍細胞へ送達することを含む、請求項59記載の方法。
- 生物サンプル内のヒトHIF−3αポリペプチド又はヒトHIF−3α核酸の量を測定する方法であって、請求項29乃至32の何れか1項記載の抗体を、請求項42又は43記載のプローブに接触させる工程を含む、方法。
- ヒト被験者において腫瘍の悪性度を評価する方法であって、被験者由来の腫瘍細胞内のヒトHIF−3αポリペプチド又はヒトHIF−3α核酸の量を測定する工程を含み、量が腫瘍の悪性度の指標になる、方法。
- 生物サンプル内のヒトHIF−3αポリペプチド又はヒトHIF−3α核酸の量を測定するためのキットであって、請求項29乃至32の何れか1項記載の抗体、又は請求項42又は43記載のプローブ、及び当該キットを使用するための指示書、反応バッファー、及び酵素からなる群から選択される少なくとも一つの要素を含む、キット。
- ヒトHIF−3αポリペプチドを生産する方法であって、
−この細胞の中での発現のために位置を定められたヒトHIF−3αをコードする核酸配列により形質転換された細胞を用意し;
−上記核酸を発現するのに適した条件下で上記形質転換された細胞を培養し;そして
−hHIF−3αポリペプチドを生産させること
を含む、方法。
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