JP2005502439A - 滅菌または消毒処理の有効性を判定するためのキットおよび方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ジピコリン酸(DPA)を含む細菌またはその他の芽胞からのDPAの放出を測定することにより滅菌処理の有効性を評価するためのキットおよび方法に関する。芽胞を包む生物学的指標を滅菌中の物品と共に配置し、その芽胞から放出されたDPAの分析を滅菌処理の終了直後または処理中に実施することができる。従って、本キットおよび本方法は、滅菌処理の有効性の評価のための迅速かつ確実な方法を提供し、その結果、同じ処理を施された物品の滅菌性が保証される。
Description
【背景技術】
【0001】
本願は、2001年9月15日付提出の米国仮出願第60/322,248号および2001年12月28日付提出の米国仮出願第60/334,458号の米国特許法第119条に基づく利益を主張し、これを引用することにより本明細書に組み入れる。
【0002】
滅菌・消毒処理およびその処理の有効性の検証は、人々の健康と福祉を保護するために不可欠なものである。たとえば、滅菌・消毒処理は、医療分野、フードサービス分野、そして生物兵器に関連する軍事分野および民間の防衛分野においても最も重要なものである。滅菌処理は、通常、医療機器や医療設備、各種機器、食品、水、食品および/または医療器具用容器、研究所、病院施設、軍事・政府施設、および感染力を有すると思われる望ましくない病原体が人や動物と接触して感染を引き起こす可能性のあるその他の物理的空間または物品に対して施される。このような処理の重要さ故に、望ましくない病原体を確実に除去するため、各滅菌・消毒処理の有効性を検討することが必要である。
【0003】
滅菌は、通常、滅菌処理の終了時に、処理された物品または空間に生存能力のある微生物が全く存在しないことを意味すると理解される。これに対して、「消毒」は、ある空間または物品の病原体の数を健康な人に対する感染のリスクが最小限となる水準に減らすために用いられる処理を示す。消毒方法には、過酸化水素、エタノールまたは塩素系漂白剤の使用などがある。一般的な滅菌方法には、「ホット」と称される熱による方法や「コールド」と称される低温による方法がある。前者は、乾熱滅菌または湿熱(蒸気)滅菌などであり、後者は、エチレンオキシド、過酢酸、ホルムアルデヒドによる滅菌、過酸化水素プラズマなどを使用したガスプラズマ滅菌、ガンマ線照射または電子線照射などの照射法などである。
【0004】
滅菌処理は、従来、特に医療および科学機器の分野では、湿熱(最も一般的に用いられているのはオートクレーブ装置)を利用して行われてきた。最近では、特に用具や機器の精密化が進みプラスチックなどの多様な材料が使用されている医療業界においては、低温滅菌処理が好まれている。たとえば、ガスプラズマおよび/またはエチレンオキシドを用いた滅菌が日常的に用いられている。これらの滅菌処理を行うために、専用の滅菌装置が開発されている。たとえば、STERRAD(登録商標)システム(ジョンソン・エンド・ジョンソンの子会社のアドバンストステリライゼーションプロダクト(カリフォルニア州アービン))は、医療機器の滅菌のために過酸化水素蒸気低温ガスプラズマを使用している。
【0005】
滅菌された機器の使用の安全性を確保するため、滅菌または消毒に使用した方法の有効性を検討ないし評価することが必要である。滅菌処理の検討に通常用いられる手段は滅菌処理指標の使用である。滅菌処理指標は、滅菌対象の製品、物品および/または空間の近くに配置され、同じ滅菌処理が施される。
【0006】
滅菌処理指標には、一般的に、(i)物理的/化学的滅菌処理指標、および(ii)生物学的滅菌処理指標、の2種類がある。物理的/化学的滅菌処理指標は、滅菌処理の際の物理的滅菌条件(温度、圧力、および/または特定の化学物質との接触など)の妥当性を、直接的または間接的に測定するために用いられる。たとえば、物理的/化学的滅菌処理指標を、特定の高温に特定の時間曝すと深緑から明るい緑色に変化するような構造とすることができる。滅菌処理を実施している人は、深緑から明るい緑色への変化を観察することにより、少なくともこの処理の温度処理条件が満たされていることを確認することができ、この処理を行った物品に存在するすべての病原体が死滅したと推定することができる。しかしながら、物理的/化学的滅菌処理指標は、特定の物理的/化学的条件の有無を検証するものであり、従って病原体が生存しているか否かを間接的に反映するにすぎない。物理的/化学的滅菌処理指標は、その物品または空間にもともと存在する細菌または病原体が生残しているか死滅しているかを直接的に示すものではない。
【0007】
これに対して、生物学的滅菌処理指標によれば、滅菌処理を施された微生物が生存しているか否かをより直接的に評価することができる。生物学的滅菌処理指標、ないし生物学的指標(BI)は、通常、選択される滅菌形態に既知の耐性を有する既知数の微生物(「指標微生物」)からなり、担体中または担体上に担持され、保護容器に密閉されている。物理的/化学的処理指標と同様に、生物学的滅菌処理指標は、滅菌対象の製品および/または空間と同じ滅菌処理が施され、滅菌処理終了時に微生物が生存しているか否かが種々の手段により評価される。
【0008】
BIを用いる際、滅菌または消毒の水準は、通常、「log kill(ログの死滅)」- 滅菌/消毒処理による既知数の指標微生物の減少を表す大きさの単位 - によって表される。現在の米国食品医薬品局の規定(21C.F.R.第800条以下)では、6ログの削減(「6ログの死滅」または無菌性保証レベル(SAL)が10-6)は、裂傷した皮膚または損傷した組織と接触する医療機器に対して「滅菌」が達成されたことが充分保証されるとしている。処理が行われた機器や対象物の使用目的に応じて、異なるログ削減を適用してもよい。
【0009】
指標微生物の耐性または感受性は必ず滅菌保証の分析に影響を及ぼすので、指標微生物は、滅菌されていない機器または空間に存在すると思われる微生物、真菌、またはウイルスよりも、選択された滅菌方法に対してより高い耐性を有するように選択される。この滅菌に対する耐性は、通常、特定の滅菌条件下での任意の微生物のD値またはZ値によって表される。任意の微生物のD値またはZ値は、アメリカ薬局方(USP)の公開ガイドラインに従って決定される。
【0010】
D値が公知であり、一般的に用いられる指標微生物は、Bacillus stearothermophilus(蒸気/湿熱滅菌処理用)、Bacillus subtilis var. niger(エチレンオキシド、過酸化水素、または乾熱)、Bacillus pumilus(放射線)などである。その他に一般的に用いられるのは、Clostridium(Clostridium sporogenes)属、Candida albicans属、Aspergillus niger属、Micrococcus luteus属、Pseudomonas aeruginosa属、Staphylococcus aureus属、およびEscherichia coli属の細菌、ならびにBergyらによるBergy's Manual of Determinative Bacteriology第9版(Lippincott、William & Wilkins、1999、この内容を引用して本明細書に組み込む)においてグループ18に分類された生物である。指標微生物としては、通常、栄養細胞または内生胞子(芽胞)を用いることができる。
【0011】
標準的なタイプの生物学的滅菌処理指標は、既知数の細菌芽胞を含む装置である。指標は滅菌チャンバ(または滅菌もしくは消毒実施部位)に配され、滅菌または消毒される対象物または物品と共に滅菌処理される。滅菌処理の後、指標芽胞は無菌生育培地と接触させられ、芽胞の発芽および栄養細胞の増殖に有利な条件下で特定の期間インキュベートされる。たとえば特定の代謝物の有無や平板培養懸濁液の観察によって細菌細胞の成長が認められると、滅菌処理がすべての芽胞を殺滅するには不十分であり、従ってこの処理によって指標と一緒に置かれていた物品を適切に滅菌または消毒することができなかった可能性があることがわかる。生物学的指標の芽胞を収容する装置には広く種々のものが開発されているが、滅菌処理終了後に行う指標微生物の生存度を評価する一般的な方法にはバリエーションはほとんどない。すべての方法は、滅菌処理後に細菌の成長の有無を観察することが必要である。
【0012】
多くの生物学的指標は内蔵式であり、芽胞および/または栄養細菌細胞ならびに発芽/培養培地が、1つの容器内に、通常は別々に仕切られて、収容されている。滅菌後、芽胞は培地と混合され、その成長を検知できるように、その容器全体がインキュベートされる。その他の生物学的指標としては、担体中または担体上に配置された芽胞が知られている。滅菌処理に曝された後、芽胞の成長が検知できるように、担体は発芽/培養培地と接触させられる。
【0013】
物理的/化学的滅菌処理指標と同様に、従来のBIはいくつかの問題を有する。第1の問題は、従来の生物学的滅菌保証方法を用いても、指標に施された滅菌処理が指標中の適切な数の芽胞を殺滅するに充分であったかどうかを迅速に判定することができず、従って滅菌処理の有効性を迅速に評価することができないことである。生物学的指標の芽胞の生存度の評価には、指標微生物の成長の有無が評価できるような充分な時間が必要であるので、たとえば医療機器の所要時間を短時間にすることはできない。ほとんどの場合、生存度の評価に必要なインキュベーション時間はおよそ48時間である。指標微生物を成長させて生存度の評価を行っている間は、滅菌処理された物品を安全に使用することはできない。
【0014】
外来診療所などの規模の小さい施設は、微生物検査室を持たないことが多く、処理実施後にBIの微生物を他の施設に送って培養および生存度評価を行わなければならず、これによりさらに結果を得るのが遅くなり時間がかかることになる。多くの医療施設が有する資源は限られており、滅菌された装置は、できるだけ早く、好ましくは滅菌または消毒処理直後またはすぐに、使用できなければならない。従って、滅菌処理後に滅菌の確認または保証がなされるまでの時間の遅れは費用がかかる上に実用的でないことが多い。さらに、指標微生物の培養中および培養後、正確な結果を得るためには、無菌環境の維持と検査技術者側の一貫した無菌技術の実践が必要となる。従って、評価工程は人為ミスの影響を受けやすい。当技術においてはより迅速な滅菌処理の有効性の評価方法が必要である。
【0015】
このような生物学的滅菌処理指標の使用に伴う時間の遅延を解消するための取り組みがこれまでになされている。たとえば、滅菌処理の有効性を、指標微生物中に存在する1種または複数の熱に安定な酵素の活性(または不活性)と関連づけるシステムが開発されている。しかし、このようなシステムも、滅菌性の間接的な確認にすぎず、さらに、熱に安定な酵素を確実には不活性化しないと思われる、熱によらない「コールド」と称される滅菌方法に対して有用ではない。さらに、熱に安定な酵素の不活性評価に基づく滅菌保証試験の結果を得るためには、負の結果(酵素活性がないこと)を検出することが必要であるので、ミスの危険性が大きい。たとえば、酵素の不活性化には、分析作業上のミス(人為ミス、技術的失敗)、酵素の基質の不備、または滅菌処理以外の原因による酵素の不活性化など、多様な原因が考えられる。
【0016】
生物学的滅菌処理指標用として選択される指標微生物で最も一般的なものは、細菌の内生胞子である。芽胞が好まれるが、これは、芽胞は、すべての種において、熱滅菌、化学滅菌(湿式またはプラズマ)および放射線滅菌をはじめとする各種の滅菌方法に対して栄養細胞のものより高い耐性を示し、常にD値および/またはZ値が高いからである。
【0017】
ジピコリン酸(「DPA」;ピリジン-2,6-ジカルボン酸)は、Bacillus属の芽胞をはじめとする細菌芽胞の成分である。ジピコリン酸は以下の構造によって表される。
【0018】
【化1】
【0019】
本質的に、DPAは、実質的に不溶性のカルシウム塩(ジピコリン酸カルシウム)として芽胞中に存在し、芽胞の発芽時に放出される。この理論に拘束されることを望まないが、DPAは、細菌芽胞の皮層および被膜に芽胞総重量の約10〜15%の量において存在し、主としてジピコリン酸カルシウムの形で存在すると考えられている。
【0020】
DPAは、胞子を形成しない栄養型の細菌細胞中には存在しないので、細菌芽胞の検知および定量のための指標として当技術分野において提案されている(Hindle, et al., 1999, Analyst 124:1599-1604; 米国特許第5,876,960号)。芽胞からのDPAの放出は、芽胞の生存能力が熱により失われた後(Mallidis, et al., 1985, J. Appl. Bacteriol.59:479-486)および芽胞の発芽時(Scott, et al., 1978, J. Bacteriol. 135:133-137)に生じることが認識されている。しかしながら、芽胞からのDPAの放出を生じさせる他の過程または条件が当技術分野において解明されておらず、DPAの放出と芽胞の死滅との関係がまだ明らかにはされていない。
【発明の簡単なサマリー】
【0021】
本明細書において開示する発明は、滅菌処理の有効性を評価するための方法および/または滅菌処理された物品の滅菌性を保証するための方法を提供する。本方法は、ジピコリン酸を含む芽胞を包含する生物学的指標を滅菌処理に曝し、芽胞からのジピコリン酸の放出を測定する工程を含む。芽胞からのジピコリン酸の放出により滅菌処理の有効性が示される。本方法は、滅菌処理の後、芽胞の生存度を評価する工程をさらに含むことができる。
【0022】
芽胞からのジピコリン酸の放出の測定は、微分紫外分光分析などのクロマトグラフ分析または分光分析によって実施することができる。この測定は、イオン化ランタニドの存在下または非存在下において実施される。
【0023】
本発明は、また、滅菌処理の有効性を判定するためのキットをも提供する。キットは、ジピコリン酸を含む芽胞を包含する生物学的指標および対照試料を含む。
【0024】
以上のサマリーと以下の発明の好ましい実施態様の詳細な説明は、添付の図面と合わせ読むとさらによく理解されるはずである。本発明を説明するために現在のところ好ましい実施態様を図面に示すが、示されている配列や手段のまさしくそのものに本発明が限定されるものでないことは理解されるべきである。
【0025】
本発明は、芽胞の被膜および/または芽胞の皮層を破壊または損傷する、すべてのまたは実質的にすべてのタイプの滅菌方法を実施すると、内生胞子がジピコリン酸(DPA)を放出するという発見に基づくものである。特定の理論に拘束されることを望まないが、芽胞の死または不活性化は、芽胞の被膜からジピコリン酸が放出される少し前に生じると考えられている。従って、本明細書に記載しているように、芽胞の非生存または不活性状態を、滅菌処理された芽胞からのDPAの放出と関連づけることができることが発見されている。従って、生物学的指標中の芽胞からのDPAの放出を、同じ滅菌処理を同時に施された物品の滅菌性に関連づけることができる。
【0026】
本発明は、滅菌処理または消毒処理などの多様な滅菌方法の有効性を判定するための方法、滅菌処理された物品の滅菌性を保証するための方法、およびこれらの方法を実施する際に使用するキットを包含する。これらの方法は、滅菌処理の終了後ほとんど直ちに実施することができ、滅菌処理の有効性および/または処理された物品の滅菌性を感度良くかつ正確に示すことができる。これらの方法は、滅菌処理が生物学的指標の芽胞からのDPAの放出を測定するために選択された方法を妨げない限り、滅菌処理の終了時または滅菌処理と同時に(継続して)実施することができる。これにより、発芽によって芽胞の生存度を評価する、複雑で時間のかかる培養に基づく方法が不要となる。本明細書に記載する方法を用いると、物品の滅菌または消毒を行うことができ、そのような対象物の滅菌を迅速に、処理終了後数分または数時間以内に、確認することができる。
【0027】
本明細書において芽胞に対して使用する「生存能力を有する」という用語は、芽胞を入手した微生物に特有な培養条件に維持した場合に発芽し増殖することができる芽胞を表すものである。あるいは、生存能力を有する芽胞は、たとえば熱ショックなどの、芽胞の発芽と増殖を生じさせることが当技術分野において知られている外的条件を適用した場合に発芽し栄養細胞を形成することができるものである。培養条件としては、一般的には栄養を含有する環境において特定の温度範囲内で培養することであり、当技術分野において公知である。「熱ショック」の導入に適した条件も当業者に公知であり、たとえば、B. subtilisなどのBacillus属の芽胞を約70℃で約10分間処理したり、Clostridium beijerinckiiなどのClostridium属の芽胞を約100℃で約5分間維持したりすることである。
【0028】
「コールド滅菌処理」または「低温滅菌処理」は、周囲温度よりもかなり高い温度まで物品を加熱する必要のない、たとえば約60〜75℃以下の滅菌処理を意味している。コールド滅菌処理としては、マイクロ波、紫外線、エチレンオキシド、H2O2プラズマなどのガスプラズマ、エタノール、ホルムアルデヒド、たとえば酸化還元電位500mV以上の酸化性化合物、過酢酸、ヨウ素(BETADINE(登録商標) , Purdue Pharma, L.P., 米国、ニューヨーク州、アーズリーなど)、亜硝酸、強酸、強アルカリ、超酸化水、次亜塩素酸などの滅菌剤、または、STERILOX (登録商標)(Sterilox Technologies, 米国、ペンシルバニア州、ヤードレー; 次亜塩素酸含有超酸化水化合物)およびSTERRAD (登録商標)(ジョンソン・エンド・ジョンソン、米国、カリフォルニア州、アービン;過酸化水素低温ガスプラズマ)などの商標名で販売されている市販の薬剤などの、当技術分野において公知もしくは開発されているその他の微生物剤の適用が挙げられる。コールド滅菌法は熱による滅菌法と連続してまたは同時に実施することができることが理解される(例えば熱と紫外線を組み合わせた使用)。
【0029】
「熱による滅菌」または「ホット滅菌」方法は、滅菌対象の物品を高温および/または高圧(たとえば121℃)に曝することを含む滅菌処理を意味する。ホット滅菌法を実施するためにはオートクレーブが最も一般的に使用されているが、焼成を用いる方法も知られている。
【0030】
本明細書において使用する「ジピコリン酸」(DPA)は、比較的水溶性な形態のジピコリン酸塩(ピリジン-2,6-ジカルボン酸)を意味し、たとえば、ジピコリン酸塩の遊離塩基形態、プロトン化された酸形態、ならびに種々の塩およびキレート化された形態を含む。
【0031】
「生物学的指標」は、少なくとも1個の芽胞(「指標微生物」)を包含、支持または担持し、滅菌処理終了時に回収することのできる装置である。生物学的指標の物理的構造は、選択する芽胞の種類および使用する特定の滅菌処理に応じて必然的に変化する。本発明の方法において使用することのできる生物学的指標としては、容器、バイアル、アンプル、カプセル、カップ、ジョッキ、皿、膜、封筒、スティック、フィルム、またはシート、濾過媒体、および紙、厚紙、コットン、ファイバー、またはスポンジ(天然もしくは合成)などの吸収材などが挙げられる。生物学的指標の材料は加圧滅菌に耐えることができてもよい。
【0032】
生物学的指標は、少なくとも15分間15p.s.i.g蒸気に曝しても生物学的指標からの芽胞の回収性が実質的に損なわれない場合、「加圧滅菌に耐えることができる」。たとえば、表面に芽胞を吸着したプラスチックの支持体は、15分間15p.s.i.g蒸気に曝すと溶融し、表面を水に浸すことによっては表面から芽胞を洗い落とすことができない場合、加圧滅菌に耐えることができない。
【0033】
本明細書において使用する「微分分光法」は、一定範囲の波長に渡って試料の吸光度を測定する分光法を意味し、その測定結果は波長の変化率に対する試料の吸光度の変化率(d[吸光度]/d[波長])で表される。
【0034】
本明細書において使用する芽胞の生存度の「多角光散乱分析」は、国際公開番号WO 00/66763のPCT特許出願に記載されている方法または同等な方法を意味する。このPCT出願を引用することにより本明細書に組み入れる。
【0035】
本明細書において使用する「滅菌」または「滅菌された」は、細菌、細菌芽胞、かび、ウイルス、および、発芽、成長、増殖、または第2の生物体を汚染することができるあらゆる形態のその他の微生物が存在しないことを意味する。人間または他の動物が、または人間または他の動物中において、所定の目的に使用するのに物品または空間が安全であるとみなされるためには、微生物が完全に存在しないことが通常要求されるわけではないことが理解されよう。本発明の方法によって、使用目的に応じて、滅菌および/または消毒の種々の程度を判定することができる。たとえば、医療用機器の用途では、BI中の生存能力を有する微生物の数の6ログの削減(「6ログの死滅」すなわち1,000,000倍の減少)であれば、十分な水準の滅菌が行われたことを示していると通常考えられる。従って、たとえば、滅菌処理により、本明細書に記載した生物学的指標中の生存能力を有する芽胞数が106倍以上減少したとDPA放出の検出によって評価されれば、同じ処理を施された物品はいくつかの目的用に「滅菌された」と通常考えられる。しかしながら、特定の用途によっては生物学的指標中に生残する芽胞数を何倍か変更することが必要になることが理解されよう。そして、このような変更は、本明細書において使用する「滅菌された」および「滅菌」という用語の中に包含される。同様に、本明細書において使用する「滅菌処理」は、生存能力を有する微生物の数を所望の水準に削減する処理である。従って、本明細書において使用する「滅菌処理」は、米国食品医薬品局の規定に定められた「滅菌」から「消毒」を含む範囲の微生物の存在しない状態を包含する。従って、本明細書において使用する「滅菌処理」は、滅菌処理終了時に所望の数の微生物が削減されていれば、有効であると考えられる。
【0036】
装置が所定の分析を行う分析機器の性能を促進する大きさ、形態、形、構成、および/または構造を有する場合、その装置はその分析機器に「適合している」。たとえば、市販の分光光度計の多くは、入射光の一直線上に位置し、幅1cm、深さ1cm、高さが少なくとも1〜2cmのキュベットを収容する試料室を有している。このような分析機器に種々の装置が適合することができる場合は、装置が1cm四方の断面積を有し、長さが数cmで、入射光路に光学的に透明な窓を持つ部位を有する場合である。
【0037】
本発明は、滅菌処理の有効性を評価する方法および滅菌処理された物品の滅菌性を保証するために用いる方法を含む。滅菌処理実施後または実施中、生物学的指標の中または上に収容された芽胞を取り出し、ジピコリン酸が放出されたかどうかを判定する。この判定は、たとえば分光光度計を用いてイオン化ランタニドの存在下で行うことができる。ジピコリン酸が放出されたと判定されると、これは、生物学的指標中の少なくともいくつかの芽胞が不活性化されたことを示している。芽胞からのジピコリン酸の放出または放出率は、同じ滅菌処理を施されたか施されたと思われる物品に存在する病原体の不活性状態または非生存状態と関連づけることができる。
【0038】
本発明の方法を実施する際、なされる滅菌処理の水準に応じて、1個以上の生物学的指標に滅菌処理を施す。本発明の方法を実施するための滅菌処理としては、指標微生物の芽胞皮膜および/または皮層を粉砕、損傷、または不安定化してジピコリン酸の放出を生じさせるような滅菌または消毒を行うことができるものであれば、当技術分野において公知または今後開発されるいかなる滅菌処理を用いてもよい。
【0039】
選択される滅菌処理は、ホット滅菌処理およびコールド滅菌処理のいずれであってもよい。本発明の実施に適した方法としては、オートクレーブを用いて行う湿熱滅菌などの熱滅菌(乾熱または湿熱)、ガスプラズマによる滅菌、過酸化水素、過酢酸、ホルムアルデヒド、ヨウ素またはヨウ素系化合物(例えばBETADINE(登録商標))、グルタルアルデヒド、亜硝酸、超酸化水、次亜塩素酸、強酸、強アルカリ、エタノール、および酸化電位が500 mVを超えるその他の酸化剤を使用する滅菌が挙げられるが、これに限定されない。市販の化合物STERILOX(登録商標)(Sterilox Corporation、 米国、ペンシルバニア州、ヤードレー)および/またはSTERRAD(登録商標) (アドバンストステリライゼーションプロダクト、ジョンソン・エンド・ジョンソン、米国、カリフォルニア州、アービン)を用いた滅菌処理が好ましい。
【0040】
選択される滅菌処理は、その滅菌処理の実施に適した既知または今後開発される装置を用いて実施することができる。たとえば、ガスプラズマおよび過酸化水素を用いる滅菌処理は、アドバンストステリライゼーションプロダクト、ジョンソン・エンド・ジョンソン製のSTERRAD(登録商標)装置を用いて実施することができる。同様に、湿熱滅菌処理は、オートクレーブを用いて実施することができる。
【0041】
本明細書に記載する方法およびキットは、生物学的指標を含む。生物学的指標は、ジピコリン酸を含む芽胞を含む。芽胞を入手する微生物の種類または種は、選択された芽胞がその皮層または被膜にジピコリン酸を含有するかぎり、重要ではない。ジピコリン酸は、大多数の菌種の芽胞に生じることが知られており、たとえばPenicillium citreo viridaeなどのカビの種類のなかにも存在することが報告されている。
【0042】
本発明の生物学的指標に含むことのできる芽胞の種類としては、Bacillus属の細菌の芽胞、Clostridium属の細菌の芽胞、Bacillus subtilusの芽胞、Bacillus stearothermophilusの芽胞、およびCandida albicansの芽胞が挙げられるが、これに限定されない。芽胞を入手することのできるその他の微生物としては、Bacillus anthracis、Clostridium botulinum、Clostridium beijerinckii、Sporosarcine ureaeなどのSporosarcia属の細菌の芽胞、およびBergyらによるBergy's Manual of Determinative Bacteriology第9版(Lippincott、William & Wilkins、1994、この内容を引用して本明細書に組み込む)においてグループ18に分類されるものを含むその他のグラム陽性菌の芽胞が挙げられる。芽胞は、パウダー状、フリーズドライ、または空気乾燥などのあらゆる形態をとることができる。芽胞は、スポンジまたは繊維状のものに注入したり、液状懸濁液に含ませてもよい。ジピコリン酸の検出に加えて従来的な生存度分析を行う場合は、BIの芽胞は生育培地に懸濁させてもよい。
【0043】
生物学的指標に使用するために選択された芽胞は、選択された滅菌処理に耐性を示すことが分かっている芽胞であるのが好ましい。このため、特に「ホット」滅菌処理を採用する場合は、Bacillus subtilis(とりわけBacillus subtilis globigii )、Bacillus stearothermophilusおよびClostridium sporogenesの芽胞が好ましい。
【0044】
生物学的指標中または指標上に含まれる芽胞数は変えることができ、正確に規定する必要はない。芽胞数は、芽胞からのDPAの放出を選択されたDPA検出法を用いて検出するに十分な数とする。たとえば、選択された検出法が高感度であれば、BIは1個の芽胞からなることができる。生物学的指標は106以上の芽胞からなることが好ましいが、これに限定されない。
【0045】
芽胞を付着、収容、または結合させる生物学的指標は、芽胞の取り扱いができ芽胞からのDPAの放出を判定することがでるものであれば、いかなる構造であってもよい。さらに、生物学的指標は、滅菌剤に芽胞を曝露することができる物理的な構成を有するものとする。従って、その構成は、選択された滅菌処理に応じて、物理的におよび/または生物学的指標に使用される材料において、必然的に変動する。生物学的指標は、たとえばパウダー状の芽胞調製物を収容するネジ蓋付きのガラスバイアルなどの、比較的シンプルな構造であってもよい。生物学的指標の容器としての形状は、バイアル、アンプル、シートまたはフィルム、膜、カプセル、パケット、封筒、スポンジ、テキスタイル、ファイバー、脱脂綿、プレート、カップ、スティック、ビーカー、ボトルなどである。パウダー状または乾燥した芽胞調製物を収容したネジ蓋付きのバイアルの例では、ガス状の滅菌剤を使用する場合、バイアルと蓋は滅菌剤を通さないとすれば、滅菌処理中にその滅菌剤がバイアル内の芽胞に到達することができるようにその蓋を十分に緩めるものとする。
【0046】
同様に、生物学的指標が芽胞を含む容器を含み、その容器が滅菌処理に用いる滅菌剤を通さない材料で構成されている場合、生物学的指標を滅菌処理する前に、その容器を開けるかまたは滅菌剤が浸透するようにする。
【0047】
生物学的指標は、ジピコリン酸の検出を妨げるような物理的および/または化学的な劣化を生じることなく選択された滅菌処理に耐えることができる材料であれば、当技術分野において既知または今後開発されるいかなる材料から構成されてもよい。たとえば、生物学的指標は、実質的にすべての通常の滅菌方法による化学的または物理的攻撃に耐える材料(例えばホウケイ酸ガラスなどのガラス)から構成されることができる。あるいは、生物学的指標は、その使用を予定している滅菌剤に対してだけ耐えることができる材料から構成されてもよい。好適な材料としては、金属、セラミック、プラスチック、エラストマー、ゴム、紙、厚紙、木、布などが挙げられるが、これに限定されない。
【0048】
たとえば、コールド滅菌処理を採用する場合、非耐熱性または加圧滅菌に耐えることができない生物学的指標を使用することができる。あるいは、滅菌処理をオートクレーブを用いて行う場合、生物学的指標は、加圧滅菌に耐えることができるものでなければならないが、化学的攻撃に対する耐性を有する必要はない。
【0049】
また、生物学的指標は、DPAの検出を促進する当技術分野において既知または今後開発される化合物または材料を、指標中または指標上に有することができる。たとえば、ジピコリン酸の放出を励起/発光分光法を用いて検出する場合、生物学的指標は、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよび/またはルテチウムなどのランタニド塩を含むことができる。検出方法が、励起に紫外線、発光に可視光を用いる分光法である場合、テルビウム塩が好ましい。
【0050】
本発明のBIに滅菌処理を施し、生物学的指標中または指標上に含まれた芽胞からジピコリン酸が放出されたかどうかを判定する。この判定は、放出されたジピコリン酸カルシウムまたは放出された遊離ジピコリン酸が存在するか否かを検出することにより行うことができる。この判定は、試料中のジピコリン酸の有無を検出するために当技術分野において既知または今後開発されるいかなる方法を用いて行っても良い。好適な方法としては、たとえば、Warth(1983, Anal. Biochem. 130:502-505)、Hindle, et al. (1999, Analyst 124:1599-1604)、米国特許第5,876,960号、Porter, et al.(1967, Biochem. J. 102:19C)、Scott. et al.(1978, J. Bacteriol. 135, 133-137)、Tabor, et al.(1976, Appl. Environ. Microbiol. 31:25-28)、Watabe, et al.(日本細菌学雑誌43:927-930)、Louis (1967, Anal. Biochem 19:327-337)、Goodacre, et al.(2000, Anal. Chem 72:119-127)、 Beverly, et al.(1996, Rapid Commun. Mass Spectrom. 10:455-458)が開示するものなどであり、これらの内容を引用し、本明細書に組み込む。
【0051】
分光法を用いるジピコリン酸検出の方法、とりわけ一次導関数分析による励起/発光分光法を選択する場合、ランタニド光ルミネセンスを用いて検出工程中のジピコリン酸の定量を促進することができる。可視光線域における光ルミネセンスを促進するために好適なランタニドはテルビウムである。分光光度計は、本発明の生物学的指標中に直接配したプローブを用いて検出するように構成されたものをはじめとして、当技術分野において既知または今後開発されるいかなる種類または型式のものを用いてもよい。
【0052】
ジピコリン酸の検出方法には、芽胞から放出されたジピコリン酸と芽胞に付帯するジピコリン酸(通常、芽胞の残骸に付帯して、実質的に非水溶性であるジピコリン酸カルシウムの形態をとる)を判別できないものもある。このような方法を本発明の方法として採用する場合、芽胞の残骸を試料の懸濁液と分離してから、懸濁液中の遊離ジピコリン酸および/またはランタニド/ジピコリン酸複合体の有無の判定を行うのが望ましい。懸濁液から残骸を除去するために、濾過、限外濾過、抗体を介した凝集、および遠心分離などの種々の方法が知られており、これらの方法の中で、当技術分野において既知または今後開発されるいかなる方法を用いて本発明の方法を実施してもよい。
【0053】
懸濁液から芽胞を除去すると同時に、除去された溶液中のジピコリン酸の有無を、たとえばガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、高圧クロマトグラフィー、または当技術分野において既知または今後開発されるその他のクロマトグラフ法を用いて判定することができる。
【0054】
本明細書において開示する分光分析法を採用する場合、滅菌処理によってジピコリン酸が放出されたかどうかの判定のために懸濁液から芽胞または芽胞の残骸を除去する必要はない。
【0055】
さらに、本発明の方法の1実施態様においては、芽胞または芽胞の残骸を除去していない懸濁液に光を透過させ、そのスペクトルの紫外および可視両領域を分析する。この実施態様においては、透過紫外線を分析して懸濁液の分光分析を行うことができ、透過可視光線(ランタニドの存在下において)を用いて懸濁液の発光分析を行うことができる。紫外線および可視光線の分析は、同時にまたは連続してどのような順番で行ってもよい。
【0056】
滅菌処理によってジピコリン酸が芽胞から放出されたかどうかを判定するために好ましい方法は、微分紫外分光分析(DUVS)である。DUVSは、多様な波長における吸光度値を測定し、そのデータを波長に対する微分吸光度(すなわち、220、235、260、268、278および/または280ナノメートルの近似波長におけるd[吸光度]/d[波長])で表すものである。従って、DUVSを用いてこれらの1以上の波長におけるd[吸光度]/d[波長]を分析し、特定試料中および/または対照試料中のジピコリン酸を定量することができる。また、DUVSを用いてこれらの波長のいずれかまたはすべてにおける吸光度またはd[吸光度]/d[波長]の変化率を定量し、滅菌処理中または処理終了後のジピコリン酸放出の変化率を評価することもできる。
【0057】
本発明の方法は、必要であれば、単独で、または芽胞生存度評価のより一般的な方法と組み合わせて実施することもできる。より一般的な方法としては、芽胞が発芽し芽胞から微生物が増殖・成長しやすい培養条件下に芽胞を維持することが挙げられる。たとえば、顕微鏡で直接数える方法だけでなく平板培養法を用いてもよい。また、芽胞生存度は、たとえば公開番号WO 00/66763の国際特許出願に開示されているような芽胞懸濁液の多角光散乱分析(この開示内容を引用することにより本明細書に組み込む)または可視光分光光度分析を用いて判定することができる。このような一般的な生存度判定方法を用いて、DPAの分析により得られた結果が所望の滅菌水準と正確な相関関係にあることを確認または保証することができる。その他の方法としては、米国特許第3,770,351号、第5,795,730号、および第5,876,960号が開示するものがあり、これらの開示内容を引用することにより本明細書に組み込む。
【0058】
本発明の方法を実施する場合、生物学的指標を滅菌処理に曝しその後芽胞からのジピコリン酸の放出を判定するか、あるいは、滅菌処理とジピコリン酸の放出の判定を同時に行ってもよい。後者の場合、滅菌処理中に実質的に連続して試料を取り出してDPA放出の分析を行ってもよい。
【0059】
生物学的指標を滅菌処理に曝した後または滅菌処理中に、生物学的指標に収容されている芽胞または芽胞の一部を取り出し、たとえばDUVSをはじめとする上述の方法により芽胞または芽胞の一部からのジピコリン酸の放出を判定する。芽胞からのジピコリン酸の放出は、少なくともいくつかの芽胞が不活性化または生存不能となったことを示す。滅菌処理中の芽胞からのジピコリン酸の経時放出率または滅菌処理終了時の芽胞からのジピコリン酸の放出量は、同じ滅菌処理に同時に曝された他の物品に存在すると思われる微生物が生残または不活性化した可能性と互いに関連づけることができる。このように、生物学的指標の芽胞からジピコリン酸が放出されたかどうかを判定することにより、生物学的指標と共に滅菌処理された物品または対象物の滅菌性のみならず滅菌処理の有効性を示すことができる。
【0060】
本発明の方法を実施の際は、当業者であれば、生物学的指標の芽胞からのDPAの放出率または生物学的指標からのジピコリン酸の総放出量を評価するための基準を容易に作成または考案して、滅菌処理の有効性を判定し、これにより生物学的指標と共に滅菌処理された物品の滅菌性を判定することができる。たとえば、生物学的指標の芽胞から放出されたジピコリン酸量と生物学的指標の芽胞中に存在する既知のジピコリン酸の総含有量とを比較することにより、ジピコリン酸の放出を部分的放出として計算することができる。生物学的指標において106個の芽胞を利用し、当技術分野において知られている実証的手段によりその芽胞が10重量%のジピコリン酸を含有すると判断される場合、滅菌処理後または処理中に放出されたジピコリン酸の実証的に判断される量とその特定の芽胞中に存在することが知られているジピコリン酸の計算された量とを比較して、滅菌処理が成功したかどうかを判定することができる。
【0061】
芽胞からのジピコリン酸の放出は、芽胞から放出されたジピコリン酸量を検出すること、芽胞から放出されなかったジピコリン酸量を検出すること、またはその両方によって判定することができる。放出されなかったDPA量は、損傷しておらず生存能力を有すると思われる芽胞数とほぼ関連づけることができる。微量のジピコリン酸を判定したい場合は、上述したように、イオン化ランタニド金属原子(例えばテルビウムイオン、または原子番号57〜71のその他の元素のイオン)の存在下でジピコリン酸を評価することにより、本明細書に記載した分光光度法の感度を上げることができる。生物学的指標の芽胞から実質的にすべてのジピコリン酸が放出された場合、これは、実質的にすべての芽胞が不活性化したことを示す。しかし、芽胞中のすべてのジピコリン酸が放出されなくても芽胞を不活性化することができると考えられているので、生物学的指標の芽胞からすべてのジピコリン酸が放出されなくても、同じ滅菌処理に曝された物品の滅菌性および/または滅菌処理の有効性の相対的な保証を得ることができる。
【0062】
芽胞中に存在するジピコリン酸全量の放出を確認せずに滅菌処理された物品の病原体が死滅したという保証を得るために、当業者は比較用の一連の簡易な実証的基準を設定することができる。たとえば、ある芽胞調整物を等分し、それらを特定の滅菌処理に異なる水準たは条件において(たとえば種々の時間で、種々の滅菌剤濃度で、または種々の滅菌剤強度で)曝すことができる。その後、処理した芽胞を標準的な培養技術で培養して、処理に対して生残した可能性のある芽胞の発芽を促進し、栄養細胞を増殖させる。等分した各芽胞群から放出されたジピコリン酸の量を、本明細書に記載したいずれかの方法を用いて個別に求めることができる。これにより、等分した各芽胞群からのジピコリン酸の放出を、芽胞が処理に対して生残した可能性と関連づけることができる。
【0063】
上述した方法の代わりに、またはそれに加えて、芽胞調整物を等分し、それらを等分した他の微生物と共に処理し、芽胞からのジピコリン酸の放出をその微生物の生残度と関連づけることができる(すなわち、その微生物に適した培養方法を用いて評価することができる)。
【0064】
一旦そのようなデータを作成すると、その後に行うその特定の滅菌処理の生物学的指標の芽胞からのジピコリン酸の放出を、滅菌処理の有効性と関連づけることができ、その生物学的指標と共に滅菌処理された物品の滅菌性の指標とすることができる。
【0065】
当業者にとって容易に理解されるように、芽胞の不活性化とジピコリン酸の放出量または放出率との関係を示す基準の設定は、滅菌処理の有効性を評価したいと考える同一個人または事業体によって行われる必要はない。その代わりに、あるバッチの芽胞を使用する基準を第一者が作成し、そのテストに基づいて、その芽胞からのジピコリン酸の放出量または放出率とその芽胞の生存能力の喪失との関係の説明を、生物学的指標に含まれる同じバッチの芽胞を等分したものと共に、または生物学的指標の作成に関する説明書と共に、第二者に提供することができる。第二者は、必要であれば、その芽胞を生物学的指標に収容し、その指標を滅菌処理に曝し、その芽胞からのジピコリン酸の放出を評価し、その放出量または放出率を第一者により提供された基準と比較して、そのような指標を用いて滅菌処理の有効性を評価することができる。
【0066】
同様に、第一者はあるバッチの芽胞からのジピコリン酸の放出率および/または放出量と、異なる微生物(たとえば芽胞を入手したものとは異なる微生物)またはそのような微生物の混合したものの生存能力の喪失との関係を明らかにすることができる。第二者は、滅菌処理に曝された生物学的指標の同じバッチの芽胞からのジピコリン酸の放出率または放出量を求めることにより、その基準データを用いてその滅菌処理によるその異なる微生物の生存能力の喪失を評価することができる。
【0067】
本明細書に記載する方法は、連続して、定期的に、または1回の滅菌処理中の選択された時点において、ジピコリン酸の放出を測定することにより実施することができる。芽胞からのジピコリン酸の放出は、芽胞が滅菌処理により不活性化されつつある間は継続することが知られており、従って、少なくともその後短時間は放出が継続すると思われる。そのため、第1回の測定と次回の測定の間にジピコリン酸の放出が増加すれば、それは、芽胞の不活性化が継続中であり生存能力を有する芽胞が生物学的指標に残っていることを暗示する。従って、滅菌処理の有効性評価の他の方法では、生物学的指標の芽胞から放出されたジピコリン酸を一定時間に渡って評価し、滅菌の有効性を、ジピコリン酸の放出の経時変化率が特定の値まで減少するか、またはジピコリン酸の放出が実質的にもしくは完全に停止するような十分な滅菌処理として定義することができる。
【0068】
本発明は、また、上述の方法に有用なキットに関するものである。このキットは、少なくとも、本明細書に記載する生物学的指標(すなわちDPAを含有し、選択的にランタニド塩を含有する芽胞を含むもの)を含む。また、このキットは、対照試料(正または負の対照であってもよい)および/または文書もしくは図表を含む。
【0069】
対照試料は、生物学的指標の芽胞中のDPA量と相関した量のDPAを含む。対照試料中のDPA量は、たとえば、生物学的指標の芽胞中のDPAの総含有量(またはその既知の倍数もしくは分数)と同量であることができる。あるいは、対照試料中のDPA量は、ある水準の生存能力の喪失が生じたとき生物学的指標の芽胞から放出されたDPA量(またはその既知の倍数もしくは分数)と同量であることができる。従って、生物学的指標の芽胞から放出されたDPAの絶対量を求める必要はない。その代わり、生物学的指標の芽胞から放出されたDPA量を対照試料中のDPA量と比較して、相対的なDPA放出または相対的な生存能力の喪失の評価を定量的に(すなわち相対的に)評価することができる。対照試料中のDPAの形態は、DPA濃度を一貫して正確に求めることができるならば、多様であってもよい。対照試料は、たとえば、DPAを、芽胞中において、水もしくは緩衝溶液中において、または、選択された割合(たとえば実質的に100%)の芽胞が不活性化するように処理された芽胞の一部において、含むことができる。
【0070】
対照試料が不活性化された芽胞を含む場合、その芽胞は、その生物学的指標を用いて評価しようとしている同じ滅菌方法により不活性化されているのが好ましい。また、対照試料が芽胞を含む場合、芽胞は同じ微生物から入手したものであるのが好ましく、生物学的指標の芽胞と同じバッチの芽胞から入手したものであるのがより好ましい。
【0071】
文書または図表は、生物学的指標の芽胞からのDPAの放出と芽胞と同じ滅菌処理に曝された微生物の生存能力の喪失(すなわち、生物学的指標の芽胞の生存能力の喪失または1種以上の他の微生物の生存能力の喪失)との関係を表す。これらの文書または図表は、生物学的指標の芽胞と同じバッチの芽胞を用いて実施した分析に基づいて作成するのが好ましい。文書または図表の形式は多様であってもよく、紙または電子媒体をはじめとするいかなる媒体により表してもよい。文書または図表は、出版された文書、電磁的形態(記録されたオーディオもしくはビデオ製作物、コンピューターファイル、またはコンピュータもしくは集積回路などの電気装置における電磁インパルスの形態)、またはその他の有形表現媒体に含まれてもよい。キットは、正および/または負の対照を与える電子的形態もしくは電磁的形態の文書または図表を含むことができ、発明を実施する者は、その正および/または負の対照を生物学的指標の芽胞から放出されたDPA量と比較して、滅菌処理の有効性を評価することができる。
【0072】
キットは、生物学的指標から放出されたDPAを評価するための分析装置を含むことができる。適当な分析装置は、用いる分析方式によって決まるが、実質的にすべてのDPA分析法用の分析装置をキットに含むことができる。たとえば、DPAをDUVSにより評価する場合、分析装置は、多様な波長に渡って吸光度値を走査することのできる分光光度計(すなわち「走査」分光光度計)とする。生物学的指標および対照試料は、それぞれ、分析装置に適合することができる(たとえば、DUVS分析用の使い捨ての光学的に透明なキュベットにそれぞれ収容することができる)。光学的に透明なキュベットは、プラスチック、ガラス、石英キュベット、バイアル、およびガラススライドを含むことができる。
【0073】
ある実施形態においては、キットは、生物学的指標、対照試料、および生物学的指標の芽胞からのDPAの放出量を対照試料中のDPA量と比較する分析装置を含む。対照試料中のDPA量は、所望の芽胞生存能力の低減の達成時における生物学的指標の芽胞からのDPAの放出量と相関している。生物学的指標の芽胞からのDPAの放出量が対照試料中のDPA量(またはその量の倍数もしくは分数)を超える場合、分析装置は、視覚的、聴覚的または電子信号を発してこれが生じたことを示すことができる。その信号が電子信号であれば、たとえば、その信号により滅菌処理を終了させることができる。同様に、視覚的または聴覚的信号により、オペレーターに、所望の水準の滅菌が達成されたので滅菌処理を停止してもよいことを示すことができる。
【0074】
本発明を以下の非限定的な実施例により説明する。これらの実施例は説明のためのものにすぎず、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明は、本明細書の教示によって明らかになるすべての変形例をも包含するものである。
【実施例1】
【0075】
本発明の3個の生物学的指標(BI)の複製物を「C」「A2」および「A15」とした。各指標は、106個のBacillus subtilus の風乾芽胞を含む20ミリリットルのホウケイ酸ガラス製シンチレーションバイアルであった。これらのバイアルを、以下のように、オートクレーブ(15 p.s.i.g. 蒸気、121℃)により湿熱滅菌処理に曝した。
【0076】
【表1】
【0077】
各BIの芽胞からのDPAの放出は以下のように判定した。バイアルをオートクレーブから取り出し、室温程度に冷やし、10ミリリットルの脱イオン蒸留水を各バイアルに添加した。これらのバイアルを混合した後超音波処理を1分間行って、芽胞の残骸を懸濁させ、放出されたDPAを溶解させた。
【0078】
各懸濁液の吸光度を、標準石英キュベットを用いて走査分光光度法により評価した。走査分光光度法は、ヒューレット・パッカード社(米国、カリフォルニア、パロアルト)製のHewlett Packard 8453 UV-VIS透過分光光度計(USP-2000モデル)を用いて、約200〜400ナノメートルを含む波長において実施した。
【0079】
吸光度データを一次導関数分析(対波長)したものを図3に示す。図2(ジピコリン酸カルシウムの0.15ミリモル溶液の一次導関数スペクトル(d[吸光度]/d{波長};dA/dλ))と図3を比較すると、オートクレーブ処理したBI(A2およびA15)から得られた芽胞懸濁液の微分スペクトルは、DPAに特有のスペクトル変化を示し、A2と特にA15の芽胞が生存能力を有しないことを示す平行する生存度データ(以下に示す)と相関していることがわかる。微分スペクトルの変化が芽胞の不活性化の程度と密接な相関関係にある波長は、220、235、260、268および280ナノメートルなどである。276ナノメートルでの波長もこの相関関係を示している。
【0080】
標準芽胞生存度分析を滅菌処理後のBIの各芽胞群に対して実施したところ、以下の生存度データが得られた。
【0081】
【表2】
【0082】
従って、生物学的指標A15が含まれた滅菌処理は、6ログの死滅よりも多量な死滅が得られた。
【実施例2】
【0083】
本発明の4個の生物学的指標(BI)である「C」「EC」「E」および「P」を以下の滅菌処理に曝した。
【0084】
(i) BI「C」には滅菌処理を実施しなかった。
【0085】
(ii)BI「EC」は、モデル2047 90/10 OXYFUME(登録商標)滅菌装置(Vacudyne, Inc. 米国、イリノイ州、シカゴハイツ)において、エチレンオキシド(90%)とCFH(10%)の混合物を130分間適用することにより処理した。
【0086】
(iii)BI「E」は、モデル300 3M(登録商標)滅菌装置(3M、米国、ミネソタ州、セントポール)において、純粋エチレンオキシドを62分間適用することにより処理した。
【0087】
(iv)BI「P」は、過酸化水素プラズマ(45〜59.5% H2O2、残部水蒸気(STERRAD(登録商標)))を約13分間適用することにより処理した。
【0088】
DUVS分析によって得られた一次導関数スペクトルを図5に示す。
【0089】
各BIは108個のB. Subtilis の芽胞を含むガラスバイアルであった。標準方法(プレートカウント)によって生存度評価を行ったところ、各BIの生残芽胞は 約0.3 × 10-7(約6.67ログの死滅)であったことがわかった。
【実施例3】
【0090】
4個のBIを、NALGENE(登録商標)モデル195-2520シリンジフィルター膜(直径25ミリメートル、孔径0.2マイクロメートル、ナイロン膜)、またはNALGENE(登録商標)モデル190-2520シリンジフィルター膜(直径25ミリメートル、孔径0.2マイクロメートル、無菌条件下で24時間風乾された酢酸セルロース膜)の片面に約108個の芽胞を吸着させることにより作成した。NALGENEという商標名で販売されている膜は、米国、ニューヨーク州、ロチェスターのNalge Nunc, Intl.から入手できる。
【0091】
「C」「EC」「E」または「P」の各BIを異なる滅菌処理に曝した。
【0092】
(i) BI「C」は処理しなかった。
【0093】
(ii)BI「EC」は、エチレンオキシド(90%)とCFH(10%)の混合物を130分間適用することにより処理した。
【0094】
(iii)BI「E」は、純粋エチレンオキシドを62分間適用することにより処理した。
【0095】
(iv)BI「P」は、過酸化水素プラズマ(STERRAD(登録商標))に約13分10秒間(全サイクル70分)曝することにより処理した。
【0096】
選択された滅菌処理の終了時に各BIからの芽胞のDUVS分析によって得られた一次導関数吸光度カーブを図6に示す。これらの試料において、生残芽胞は異なる処理方法においてもほぼ同じあり、部分生残芽胞は0.33 × 10-7(すなわち当初の芽胞108個の約1倍)に等しかった。これにより、平板希釈培養法による3種の生存度評価プレートでの生残数はそれぞれ10-7であることが示された。
【実施例4】
【0097】
BIを、無菌条件下で24時間風乾されたDURAPORE(登録商標)PVDF膜(Millipore Corporation、米国、マサチューセッツ州、ベッドフォード、直径25ミリメートル、孔径0.1マイクロメートル、MILLEX(登録商標)-VV滅菌フィルターユニットに内蔵)の片面に約108個のB.subtilis芽胞を吸着させて作成し、それぞれ4種の処理のうちのいずれかに曝した。「C」のBIは滅菌処理しなかった。その他は以下のように処理した。
【0098】
(i)BI「EC」は、エチレンオキシド(90%)とCFH(10%)の混合物を95分間適用することにより処理した。
【0099】
(ii)BI「E」は、純粋エチレンオキシドを62分間適用することにより処理した。
【0100】
(iv)BI「P」は、過酸化水素プラズマ(STERRAD(登録商標))に約13分10秒曝することにより処理した。これらの試料において、生残芽胞は異なる処理方法においてもほぼ同じあり、部分生残芽胞は0.33 × 10-7と等しかった。DUVSによる各芽胞懸濁液の一次導関数スペクトルを図6に示す。
【実施例5】
【0101】
5個のBI(107個のBacillus subtilisから入手した風乾芽胞とテルビウム塩を収容する20mlガラスバイアル)をオートクレーブ滅菌処理にそれぞれ異なる時間(0分、4分、8分、16分)曝した。
【0102】
図7はオートクレーブ処理された各BIの芽胞からのDPAの放出の動態を示す。約15分のオートクレーブ処理が6ログの死滅となったことがわかる。
【0103】
図8において、上記のように処理された各BIの芽胞から得られた、イオン化テルビウムの存在下で分析された発光データを示す。ピーク発光強度は約545ナノメートルに現れ、小ピークは480、580、および600ナノメートルに生じている。
【0104】
以上の実施態様にその広い発明概念から逸脱することなく変更を加えうることは、当業者によって認識されるはずである。従って、本発明は開示された特定の実施態様に限定されるものでなく、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の精神および範囲に含まれる修正を包含することを意図していることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】ジピコリン酸の吸光スペクトルを示す。任意の強度における吸光度または光学密度は、ベール-ランベルト等式:吸光度(A)=εcl(εは吸光係数、cは化合物の濃度、lは光路長)を用いて計算することができる。
【図2】ジピコリン酸カルシウムの0.15ミリモル溶液の微分スペクトル(d[吸光度]/d{波長};dA/dλ)である。Warth(1983, Anal. Biochem. 130:502-505)に記載されているように、微分極大が261.0、265.1および276.8ナノメートルにおいて生じ、極小が264.2、272.1および280.3ナノメートルにおいて生じている。
【図3】液体シンチレーションバイアルに収容された3種の芽胞調製物の微分スペクトル(dA/dλ)である。懸濁液Cはオートクレーブで処理しなかった。懸濁液A2はオートクレーブで2分間処理した。懸濁液A15はオートクレーブで15分間処理した。
【図4】液体シンチレーションバイアルに収容された6種の芽胞調製物の微分スペクトル(dA/dλ)である。懸濁液Cは滅菌処理しなかった。懸濁液ECは、エチレンオキシドとクロロフルオロカーボンガス(CFH)の混合物に曝した。懸濁液Eは、エチレンオキシドのみに曝した。懸濁液Pは、過酸化水素プラズマに曝した。
【図5】ナイロンまたは酢酸セルロースフィルタに吸着した4種の芽胞懸濁液の微分スペクトル(dA/dλ)である。懸濁液Cは滅菌処理しなかった。懸濁液ECは、エチレンオキシドとCFHの混合物に曝した。懸濁液Eは、エチレンオキシドのみに曝した。懸濁液Pは、過酸化水素プラズマに曝した。
【図6】異なる滅菌処理に曝した4種の芽胞懸濁液の微分スペクトル(dA/dλ)である。4種は、未処理、100%エチレンオキシド、90%エチレンオキシド 10%CFH、および酸化水素プラズマである。
【図7】PVDFフィルタに吸着した4種の芽胞懸濁液の微分スペクトル(dA/dλ)である。懸濁液Cは滅菌処理しなかった。懸濁液ECは、エチレンオキシドとCFHの混合物(90%/10%)に曝した。懸濁液Eは、エチレンオキシドのみに曝した。懸濁液Pは、過酸化水素プラズマに曝した。
【図8】オートクレーブ処理中4つの時間間隔で取り出した、オートクレーブ処理を施した芽胞懸濁液から放出された遊離ジピコリン酸の、イオン化テルビウムの存在下における545ナノメートルでの強度を示す。
【図9】過酸化水素ガスプラズマ滅菌処理(STERRAD(登録商標))を施した芽胞懸濁液(B. subtilis)の、イオン化テルビウムの存在下で分析した、波長(nm)に対する強度のグラフである。
【0001】
本願は、2001年9月15日付提出の米国仮出願第60/322,248号および2001年12月28日付提出の米国仮出願第60/334,458号の米国特許法第119条に基づく利益を主張し、これを引用することにより本明細書に組み入れる。
【0002】
滅菌・消毒処理およびその処理の有効性の検証は、人々の健康と福祉を保護するために不可欠なものである。たとえば、滅菌・消毒処理は、医療分野、フードサービス分野、そして生物兵器に関連する軍事分野および民間の防衛分野においても最も重要なものである。滅菌処理は、通常、医療機器や医療設備、各種機器、食品、水、食品および/または医療器具用容器、研究所、病院施設、軍事・政府施設、および感染力を有すると思われる望ましくない病原体が人や動物と接触して感染を引き起こす可能性のあるその他の物理的空間または物品に対して施される。このような処理の重要さ故に、望ましくない病原体を確実に除去するため、各滅菌・消毒処理の有効性を検討することが必要である。
【0003】
滅菌は、通常、滅菌処理の終了時に、処理された物品または空間に生存能力のある微生物が全く存在しないことを意味すると理解される。これに対して、「消毒」は、ある空間または物品の病原体の数を健康な人に対する感染のリスクが最小限となる水準に減らすために用いられる処理を示す。消毒方法には、過酸化水素、エタノールまたは塩素系漂白剤の使用などがある。一般的な滅菌方法には、「ホット」と称される熱による方法や「コールド」と称される低温による方法がある。前者は、乾熱滅菌または湿熱(蒸気)滅菌などであり、後者は、エチレンオキシド、過酢酸、ホルムアルデヒドによる滅菌、過酸化水素プラズマなどを使用したガスプラズマ滅菌、ガンマ線照射または電子線照射などの照射法などである。
【0004】
滅菌処理は、従来、特に医療および科学機器の分野では、湿熱(最も一般的に用いられているのはオートクレーブ装置)を利用して行われてきた。最近では、特に用具や機器の精密化が進みプラスチックなどの多様な材料が使用されている医療業界においては、低温滅菌処理が好まれている。たとえば、ガスプラズマおよび/またはエチレンオキシドを用いた滅菌が日常的に用いられている。これらの滅菌処理を行うために、専用の滅菌装置が開発されている。たとえば、STERRAD(登録商標)システム(ジョンソン・エンド・ジョンソンの子会社のアドバンストステリライゼーションプロダクト(カリフォルニア州アービン))は、医療機器の滅菌のために過酸化水素蒸気低温ガスプラズマを使用している。
【0005】
滅菌された機器の使用の安全性を確保するため、滅菌または消毒に使用した方法の有効性を検討ないし評価することが必要である。滅菌処理の検討に通常用いられる手段は滅菌処理指標の使用である。滅菌処理指標は、滅菌対象の製品、物品および/または空間の近くに配置され、同じ滅菌処理が施される。
【0006】
滅菌処理指標には、一般的に、(i)物理的/化学的滅菌処理指標、および(ii)生物学的滅菌処理指標、の2種類がある。物理的/化学的滅菌処理指標は、滅菌処理の際の物理的滅菌条件(温度、圧力、および/または特定の化学物質との接触など)の妥当性を、直接的または間接的に測定するために用いられる。たとえば、物理的/化学的滅菌処理指標を、特定の高温に特定の時間曝すと深緑から明るい緑色に変化するような構造とすることができる。滅菌処理を実施している人は、深緑から明るい緑色への変化を観察することにより、少なくともこの処理の温度処理条件が満たされていることを確認することができ、この処理を行った物品に存在するすべての病原体が死滅したと推定することができる。しかしながら、物理的/化学的滅菌処理指標は、特定の物理的/化学的条件の有無を検証するものであり、従って病原体が生存しているか否かを間接的に反映するにすぎない。物理的/化学的滅菌処理指標は、その物品または空間にもともと存在する細菌または病原体が生残しているか死滅しているかを直接的に示すものではない。
【0007】
これに対して、生物学的滅菌処理指標によれば、滅菌処理を施された微生物が生存しているか否かをより直接的に評価することができる。生物学的滅菌処理指標、ないし生物学的指標(BI)は、通常、選択される滅菌形態に既知の耐性を有する既知数の微生物(「指標微生物」)からなり、担体中または担体上に担持され、保護容器に密閉されている。物理的/化学的処理指標と同様に、生物学的滅菌処理指標は、滅菌対象の製品および/または空間と同じ滅菌処理が施され、滅菌処理終了時に微生物が生存しているか否かが種々の手段により評価される。
【0008】
BIを用いる際、滅菌または消毒の水準は、通常、「log kill(ログの死滅)」- 滅菌/消毒処理による既知数の指標微生物の減少を表す大きさの単位 - によって表される。現在の米国食品医薬品局の規定(21C.F.R.第800条以下)では、6ログの削減(「6ログの死滅」または無菌性保証レベル(SAL)が10-6)は、裂傷した皮膚または損傷した組織と接触する医療機器に対して「滅菌」が達成されたことが充分保証されるとしている。処理が行われた機器や対象物の使用目的に応じて、異なるログ削減を適用してもよい。
【0009】
指標微生物の耐性または感受性は必ず滅菌保証の分析に影響を及ぼすので、指標微生物は、滅菌されていない機器または空間に存在すると思われる微生物、真菌、またはウイルスよりも、選択された滅菌方法に対してより高い耐性を有するように選択される。この滅菌に対する耐性は、通常、特定の滅菌条件下での任意の微生物のD値またはZ値によって表される。任意の微生物のD値またはZ値は、アメリカ薬局方(USP)の公開ガイドラインに従って決定される。
【0010】
D値が公知であり、一般的に用いられる指標微生物は、Bacillus stearothermophilus(蒸気/湿熱滅菌処理用)、Bacillus subtilis var. niger(エチレンオキシド、過酸化水素、または乾熱)、Bacillus pumilus(放射線)などである。その他に一般的に用いられるのは、Clostridium(Clostridium sporogenes)属、Candida albicans属、Aspergillus niger属、Micrococcus luteus属、Pseudomonas aeruginosa属、Staphylococcus aureus属、およびEscherichia coli属の細菌、ならびにBergyらによるBergy's Manual of Determinative Bacteriology第9版(Lippincott、William & Wilkins、1999、この内容を引用して本明細書に組み込む)においてグループ18に分類された生物である。指標微生物としては、通常、栄養細胞または内生胞子(芽胞)を用いることができる。
【0011】
標準的なタイプの生物学的滅菌処理指標は、既知数の細菌芽胞を含む装置である。指標は滅菌チャンバ(または滅菌もしくは消毒実施部位)に配され、滅菌または消毒される対象物または物品と共に滅菌処理される。滅菌処理の後、指標芽胞は無菌生育培地と接触させられ、芽胞の発芽および栄養細胞の増殖に有利な条件下で特定の期間インキュベートされる。たとえば特定の代謝物の有無や平板培養懸濁液の観察によって細菌細胞の成長が認められると、滅菌処理がすべての芽胞を殺滅するには不十分であり、従ってこの処理によって指標と一緒に置かれていた物品を適切に滅菌または消毒することができなかった可能性があることがわかる。生物学的指標の芽胞を収容する装置には広く種々のものが開発されているが、滅菌処理終了後に行う指標微生物の生存度を評価する一般的な方法にはバリエーションはほとんどない。すべての方法は、滅菌処理後に細菌の成長の有無を観察することが必要である。
【0012】
多くの生物学的指標は内蔵式であり、芽胞および/または栄養細菌細胞ならびに発芽/培養培地が、1つの容器内に、通常は別々に仕切られて、収容されている。滅菌後、芽胞は培地と混合され、その成長を検知できるように、その容器全体がインキュベートされる。その他の生物学的指標としては、担体中または担体上に配置された芽胞が知られている。滅菌処理に曝された後、芽胞の成長が検知できるように、担体は発芽/培養培地と接触させられる。
【0013】
物理的/化学的滅菌処理指標と同様に、従来のBIはいくつかの問題を有する。第1の問題は、従来の生物学的滅菌保証方法を用いても、指標に施された滅菌処理が指標中の適切な数の芽胞を殺滅するに充分であったかどうかを迅速に判定することができず、従って滅菌処理の有効性を迅速に評価することができないことである。生物学的指標の芽胞の生存度の評価には、指標微生物の成長の有無が評価できるような充分な時間が必要であるので、たとえば医療機器の所要時間を短時間にすることはできない。ほとんどの場合、生存度の評価に必要なインキュベーション時間はおよそ48時間である。指標微生物を成長させて生存度の評価を行っている間は、滅菌処理された物品を安全に使用することはできない。
【0014】
外来診療所などの規模の小さい施設は、微生物検査室を持たないことが多く、処理実施後にBIの微生物を他の施設に送って培養および生存度評価を行わなければならず、これによりさらに結果を得るのが遅くなり時間がかかることになる。多くの医療施設が有する資源は限られており、滅菌された装置は、できるだけ早く、好ましくは滅菌または消毒処理直後またはすぐに、使用できなければならない。従って、滅菌処理後に滅菌の確認または保証がなされるまでの時間の遅れは費用がかかる上に実用的でないことが多い。さらに、指標微生物の培養中および培養後、正確な結果を得るためには、無菌環境の維持と検査技術者側の一貫した無菌技術の実践が必要となる。従って、評価工程は人為ミスの影響を受けやすい。当技術においてはより迅速な滅菌処理の有効性の評価方法が必要である。
【0015】
このような生物学的滅菌処理指標の使用に伴う時間の遅延を解消するための取り組みがこれまでになされている。たとえば、滅菌処理の有効性を、指標微生物中に存在する1種または複数の熱に安定な酵素の活性(または不活性)と関連づけるシステムが開発されている。しかし、このようなシステムも、滅菌性の間接的な確認にすぎず、さらに、熱に安定な酵素を確実には不活性化しないと思われる、熱によらない「コールド」と称される滅菌方法に対して有用ではない。さらに、熱に安定な酵素の不活性評価に基づく滅菌保証試験の結果を得るためには、負の結果(酵素活性がないこと)を検出することが必要であるので、ミスの危険性が大きい。たとえば、酵素の不活性化には、分析作業上のミス(人為ミス、技術的失敗)、酵素の基質の不備、または滅菌処理以外の原因による酵素の不活性化など、多様な原因が考えられる。
【0016】
生物学的滅菌処理指標用として選択される指標微生物で最も一般的なものは、細菌の内生胞子である。芽胞が好まれるが、これは、芽胞は、すべての種において、熱滅菌、化学滅菌(湿式またはプラズマ)および放射線滅菌をはじめとする各種の滅菌方法に対して栄養細胞のものより高い耐性を示し、常にD値および/またはZ値が高いからである。
【0017】
ジピコリン酸(「DPA」;ピリジン-2,6-ジカルボン酸)は、Bacillus属の芽胞をはじめとする細菌芽胞の成分である。ジピコリン酸は以下の構造によって表される。
【0018】
【化1】
【0019】
本質的に、DPAは、実質的に不溶性のカルシウム塩(ジピコリン酸カルシウム)として芽胞中に存在し、芽胞の発芽時に放出される。この理論に拘束されることを望まないが、DPAは、細菌芽胞の皮層および被膜に芽胞総重量の約10〜15%の量において存在し、主としてジピコリン酸カルシウムの形で存在すると考えられている。
【0020】
DPAは、胞子を形成しない栄養型の細菌細胞中には存在しないので、細菌芽胞の検知および定量のための指標として当技術分野において提案されている(Hindle, et al., 1999, Analyst 124:1599-1604; 米国特許第5,876,960号)。芽胞からのDPAの放出は、芽胞の生存能力が熱により失われた後(Mallidis, et al., 1985, J. Appl. Bacteriol.59:479-486)および芽胞の発芽時(Scott, et al., 1978, J. Bacteriol. 135:133-137)に生じることが認識されている。しかしながら、芽胞からのDPAの放出を生じさせる他の過程または条件が当技術分野において解明されておらず、DPAの放出と芽胞の死滅との関係がまだ明らかにはされていない。
【発明の簡単なサマリー】
【0021】
本明細書において開示する発明は、滅菌処理の有効性を評価するための方法および/または滅菌処理された物品の滅菌性を保証するための方法を提供する。本方法は、ジピコリン酸を含む芽胞を包含する生物学的指標を滅菌処理に曝し、芽胞からのジピコリン酸の放出を測定する工程を含む。芽胞からのジピコリン酸の放出により滅菌処理の有効性が示される。本方法は、滅菌処理の後、芽胞の生存度を評価する工程をさらに含むことができる。
【0022】
芽胞からのジピコリン酸の放出の測定は、微分紫外分光分析などのクロマトグラフ分析または分光分析によって実施することができる。この測定は、イオン化ランタニドの存在下または非存在下において実施される。
【0023】
本発明は、また、滅菌処理の有効性を判定するためのキットをも提供する。キットは、ジピコリン酸を含む芽胞を包含する生物学的指標および対照試料を含む。
【0024】
以上のサマリーと以下の発明の好ましい実施態様の詳細な説明は、添付の図面と合わせ読むとさらによく理解されるはずである。本発明を説明するために現在のところ好ましい実施態様を図面に示すが、示されている配列や手段のまさしくそのものに本発明が限定されるものでないことは理解されるべきである。
【0025】
本発明は、芽胞の被膜および/または芽胞の皮層を破壊または損傷する、すべてのまたは実質的にすべてのタイプの滅菌方法を実施すると、内生胞子がジピコリン酸(DPA)を放出するという発見に基づくものである。特定の理論に拘束されることを望まないが、芽胞の死または不活性化は、芽胞の被膜からジピコリン酸が放出される少し前に生じると考えられている。従って、本明細書に記載しているように、芽胞の非生存または不活性状態を、滅菌処理された芽胞からのDPAの放出と関連づけることができることが発見されている。従って、生物学的指標中の芽胞からのDPAの放出を、同じ滅菌処理を同時に施された物品の滅菌性に関連づけることができる。
【0026】
本発明は、滅菌処理または消毒処理などの多様な滅菌方法の有効性を判定するための方法、滅菌処理された物品の滅菌性を保証するための方法、およびこれらの方法を実施する際に使用するキットを包含する。これらの方法は、滅菌処理の終了後ほとんど直ちに実施することができ、滅菌処理の有効性および/または処理された物品の滅菌性を感度良くかつ正確に示すことができる。これらの方法は、滅菌処理が生物学的指標の芽胞からのDPAの放出を測定するために選択された方法を妨げない限り、滅菌処理の終了時または滅菌処理と同時に(継続して)実施することができる。これにより、発芽によって芽胞の生存度を評価する、複雑で時間のかかる培養に基づく方法が不要となる。本明細書に記載する方法を用いると、物品の滅菌または消毒を行うことができ、そのような対象物の滅菌を迅速に、処理終了後数分または数時間以内に、確認することができる。
【0027】
本明細書において芽胞に対して使用する「生存能力を有する」という用語は、芽胞を入手した微生物に特有な培養条件に維持した場合に発芽し増殖することができる芽胞を表すものである。あるいは、生存能力を有する芽胞は、たとえば熱ショックなどの、芽胞の発芽と増殖を生じさせることが当技術分野において知られている外的条件を適用した場合に発芽し栄養細胞を形成することができるものである。培養条件としては、一般的には栄養を含有する環境において特定の温度範囲内で培養することであり、当技術分野において公知である。「熱ショック」の導入に適した条件も当業者に公知であり、たとえば、B. subtilisなどのBacillus属の芽胞を約70℃で約10分間処理したり、Clostridium beijerinckiiなどのClostridium属の芽胞を約100℃で約5分間維持したりすることである。
【0028】
「コールド滅菌処理」または「低温滅菌処理」は、周囲温度よりもかなり高い温度まで物品を加熱する必要のない、たとえば約60〜75℃以下の滅菌処理を意味している。コールド滅菌処理としては、マイクロ波、紫外線、エチレンオキシド、H2O2プラズマなどのガスプラズマ、エタノール、ホルムアルデヒド、たとえば酸化還元電位500mV以上の酸化性化合物、過酢酸、ヨウ素(BETADINE(登録商標) , Purdue Pharma, L.P., 米国、ニューヨーク州、アーズリーなど)、亜硝酸、強酸、強アルカリ、超酸化水、次亜塩素酸などの滅菌剤、または、STERILOX (登録商標)(Sterilox Technologies, 米国、ペンシルバニア州、ヤードレー; 次亜塩素酸含有超酸化水化合物)およびSTERRAD (登録商標)(ジョンソン・エンド・ジョンソン、米国、カリフォルニア州、アービン;過酸化水素低温ガスプラズマ)などの商標名で販売されている市販の薬剤などの、当技術分野において公知もしくは開発されているその他の微生物剤の適用が挙げられる。コールド滅菌法は熱による滅菌法と連続してまたは同時に実施することができることが理解される(例えば熱と紫外線を組み合わせた使用)。
【0029】
「熱による滅菌」または「ホット滅菌」方法は、滅菌対象の物品を高温および/または高圧(たとえば121℃)に曝することを含む滅菌処理を意味する。ホット滅菌法を実施するためにはオートクレーブが最も一般的に使用されているが、焼成を用いる方法も知られている。
【0030】
本明細書において使用する「ジピコリン酸」(DPA)は、比較的水溶性な形態のジピコリン酸塩(ピリジン-2,6-ジカルボン酸)を意味し、たとえば、ジピコリン酸塩の遊離塩基形態、プロトン化された酸形態、ならびに種々の塩およびキレート化された形態を含む。
【0031】
「生物学的指標」は、少なくとも1個の芽胞(「指標微生物」)を包含、支持または担持し、滅菌処理終了時に回収することのできる装置である。生物学的指標の物理的構造は、選択する芽胞の種類および使用する特定の滅菌処理に応じて必然的に変化する。本発明の方法において使用することのできる生物学的指標としては、容器、バイアル、アンプル、カプセル、カップ、ジョッキ、皿、膜、封筒、スティック、フィルム、またはシート、濾過媒体、および紙、厚紙、コットン、ファイバー、またはスポンジ(天然もしくは合成)などの吸収材などが挙げられる。生物学的指標の材料は加圧滅菌に耐えることができてもよい。
【0032】
生物学的指標は、少なくとも15分間15p.s.i.g蒸気に曝しても生物学的指標からの芽胞の回収性が実質的に損なわれない場合、「加圧滅菌に耐えることができる」。たとえば、表面に芽胞を吸着したプラスチックの支持体は、15分間15p.s.i.g蒸気に曝すと溶融し、表面を水に浸すことによっては表面から芽胞を洗い落とすことができない場合、加圧滅菌に耐えることができない。
【0033】
本明細書において使用する「微分分光法」は、一定範囲の波長に渡って試料の吸光度を測定する分光法を意味し、その測定結果は波長の変化率に対する試料の吸光度の変化率(d[吸光度]/d[波長])で表される。
【0034】
本明細書において使用する芽胞の生存度の「多角光散乱分析」は、国際公開番号WO 00/66763のPCT特許出願に記載されている方法または同等な方法を意味する。このPCT出願を引用することにより本明細書に組み入れる。
【0035】
本明細書において使用する「滅菌」または「滅菌された」は、細菌、細菌芽胞、かび、ウイルス、および、発芽、成長、増殖、または第2の生物体を汚染することができるあらゆる形態のその他の微生物が存在しないことを意味する。人間または他の動物が、または人間または他の動物中において、所定の目的に使用するのに物品または空間が安全であるとみなされるためには、微生物が完全に存在しないことが通常要求されるわけではないことが理解されよう。本発明の方法によって、使用目的に応じて、滅菌および/または消毒の種々の程度を判定することができる。たとえば、医療用機器の用途では、BI中の生存能力を有する微生物の数の6ログの削減(「6ログの死滅」すなわち1,000,000倍の減少)であれば、十分な水準の滅菌が行われたことを示していると通常考えられる。従って、たとえば、滅菌処理により、本明細書に記載した生物学的指標中の生存能力を有する芽胞数が106倍以上減少したとDPA放出の検出によって評価されれば、同じ処理を施された物品はいくつかの目的用に「滅菌された」と通常考えられる。しかしながら、特定の用途によっては生物学的指標中に生残する芽胞数を何倍か変更することが必要になることが理解されよう。そして、このような変更は、本明細書において使用する「滅菌された」および「滅菌」という用語の中に包含される。同様に、本明細書において使用する「滅菌処理」は、生存能力を有する微生物の数を所望の水準に削減する処理である。従って、本明細書において使用する「滅菌処理」は、米国食品医薬品局の規定に定められた「滅菌」から「消毒」を含む範囲の微生物の存在しない状態を包含する。従って、本明細書において使用する「滅菌処理」は、滅菌処理終了時に所望の数の微生物が削減されていれば、有効であると考えられる。
【0036】
装置が所定の分析を行う分析機器の性能を促進する大きさ、形態、形、構成、および/または構造を有する場合、その装置はその分析機器に「適合している」。たとえば、市販の分光光度計の多くは、入射光の一直線上に位置し、幅1cm、深さ1cm、高さが少なくとも1〜2cmのキュベットを収容する試料室を有している。このような分析機器に種々の装置が適合することができる場合は、装置が1cm四方の断面積を有し、長さが数cmで、入射光路に光学的に透明な窓を持つ部位を有する場合である。
【0037】
本発明は、滅菌処理の有効性を評価する方法および滅菌処理された物品の滅菌性を保証するために用いる方法を含む。滅菌処理実施後または実施中、生物学的指標の中または上に収容された芽胞を取り出し、ジピコリン酸が放出されたかどうかを判定する。この判定は、たとえば分光光度計を用いてイオン化ランタニドの存在下で行うことができる。ジピコリン酸が放出されたと判定されると、これは、生物学的指標中の少なくともいくつかの芽胞が不活性化されたことを示している。芽胞からのジピコリン酸の放出または放出率は、同じ滅菌処理を施されたか施されたと思われる物品に存在する病原体の不活性状態または非生存状態と関連づけることができる。
【0038】
本発明の方法を実施する際、なされる滅菌処理の水準に応じて、1個以上の生物学的指標に滅菌処理を施す。本発明の方法を実施するための滅菌処理としては、指標微生物の芽胞皮膜および/または皮層を粉砕、損傷、または不安定化してジピコリン酸の放出を生じさせるような滅菌または消毒を行うことができるものであれば、当技術分野において公知または今後開発されるいかなる滅菌処理を用いてもよい。
【0039】
選択される滅菌処理は、ホット滅菌処理およびコールド滅菌処理のいずれであってもよい。本発明の実施に適した方法としては、オートクレーブを用いて行う湿熱滅菌などの熱滅菌(乾熱または湿熱)、ガスプラズマによる滅菌、過酸化水素、過酢酸、ホルムアルデヒド、ヨウ素またはヨウ素系化合物(例えばBETADINE(登録商標))、グルタルアルデヒド、亜硝酸、超酸化水、次亜塩素酸、強酸、強アルカリ、エタノール、および酸化電位が500 mVを超えるその他の酸化剤を使用する滅菌が挙げられるが、これに限定されない。市販の化合物STERILOX(登録商標)(Sterilox Corporation、 米国、ペンシルバニア州、ヤードレー)および/またはSTERRAD(登録商標) (アドバンストステリライゼーションプロダクト、ジョンソン・エンド・ジョンソン、米国、カリフォルニア州、アービン)を用いた滅菌処理が好ましい。
【0040】
選択される滅菌処理は、その滅菌処理の実施に適した既知または今後開発される装置を用いて実施することができる。たとえば、ガスプラズマおよび過酸化水素を用いる滅菌処理は、アドバンストステリライゼーションプロダクト、ジョンソン・エンド・ジョンソン製のSTERRAD(登録商標)装置を用いて実施することができる。同様に、湿熱滅菌処理は、オートクレーブを用いて実施することができる。
【0041】
本明細書に記載する方法およびキットは、生物学的指標を含む。生物学的指標は、ジピコリン酸を含む芽胞を含む。芽胞を入手する微生物の種類または種は、選択された芽胞がその皮層または被膜にジピコリン酸を含有するかぎり、重要ではない。ジピコリン酸は、大多数の菌種の芽胞に生じることが知られており、たとえばPenicillium citreo viridaeなどのカビの種類のなかにも存在することが報告されている。
【0042】
本発明の生物学的指標に含むことのできる芽胞の種類としては、Bacillus属の細菌の芽胞、Clostridium属の細菌の芽胞、Bacillus subtilusの芽胞、Bacillus stearothermophilusの芽胞、およびCandida albicansの芽胞が挙げられるが、これに限定されない。芽胞を入手することのできるその他の微生物としては、Bacillus anthracis、Clostridium botulinum、Clostridium beijerinckii、Sporosarcine ureaeなどのSporosarcia属の細菌の芽胞、およびBergyらによるBergy's Manual of Determinative Bacteriology第9版(Lippincott、William & Wilkins、1994、この内容を引用して本明細書に組み込む)においてグループ18に分類されるものを含むその他のグラム陽性菌の芽胞が挙げられる。芽胞は、パウダー状、フリーズドライ、または空気乾燥などのあらゆる形態をとることができる。芽胞は、スポンジまたは繊維状のものに注入したり、液状懸濁液に含ませてもよい。ジピコリン酸の検出に加えて従来的な生存度分析を行う場合は、BIの芽胞は生育培地に懸濁させてもよい。
【0043】
生物学的指標に使用するために選択された芽胞は、選択された滅菌処理に耐性を示すことが分かっている芽胞であるのが好ましい。このため、特に「ホット」滅菌処理を採用する場合は、Bacillus subtilis(とりわけBacillus subtilis globigii )、Bacillus stearothermophilusおよびClostridium sporogenesの芽胞が好ましい。
【0044】
生物学的指標中または指標上に含まれる芽胞数は変えることができ、正確に規定する必要はない。芽胞数は、芽胞からのDPAの放出を選択されたDPA検出法を用いて検出するに十分な数とする。たとえば、選択された検出法が高感度であれば、BIは1個の芽胞からなることができる。生物学的指標は106以上の芽胞からなることが好ましいが、これに限定されない。
【0045】
芽胞を付着、収容、または結合させる生物学的指標は、芽胞の取り扱いができ芽胞からのDPAの放出を判定することがでるものであれば、いかなる構造であってもよい。さらに、生物学的指標は、滅菌剤に芽胞を曝露することができる物理的な構成を有するものとする。従って、その構成は、選択された滅菌処理に応じて、物理的におよび/または生物学的指標に使用される材料において、必然的に変動する。生物学的指標は、たとえばパウダー状の芽胞調製物を収容するネジ蓋付きのガラスバイアルなどの、比較的シンプルな構造であってもよい。生物学的指標の容器としての形状は、バイアル、アンプル、シートまたはフィルム、膜、カプセル、パケット、封筒、スポンジ、テキスタイル、ファイバー、脱脂綿、プレート、カップ、スティック、ビーカー、ボトルなどである。パウダー状または乾燥した芽胞調製物を収容したネジ蓋付きのバイアルの例では、ガス状の滅菌剤を使用する場合、バイアルと蓋は滅菌剤を通さないとすれば、滅菌処理中にその滅菌剤がバイアル内の芽胞に到達することができるようにその蓋を十分に緩めるものとする。
【0046】
同様に、生物学的指標が芽胞を含む容器を含み、その容器が滅菌処理に用いる滅菌剤を通さない材料で構成されている場合、生物学的指標を滅菌処理する前に、その容器を開けるかまたは滅菌剤が浸透するようにする。
【0047】
生物学的指標は、ジピコリン酸の検出を妨げるような物理的および/または化学的な劣化を生じることなく選択された滅菌処理に耐えることができる材料であれば、当技術分野において既知または今後開発されるいかなる材料から構成されてもよい。たとえば、生物学的指標は、実質的にすべての通常の滅菌方法による化学的または物理的攻撃に耐える材料(例えばホウケイ酸ガラスなどのガラス)から構成されることができる。あるいは、生物学的指標は、その使用を予定している滅菌剤に対してだけ耐えることができる材料から構成されてもよい。好適な材料としては、金属、セラミック、プラスチック、エラストマー、ゴム、紙、厚紙、木、布などが挙げられるが、これに限定されない。
【0048】
たとえば、コールド滅菌処理を採用する場合、非耐熱性または加圧滅菌に耐えることができない生物学的指標を使用することができる。あるいは、滅菌処理をオートクレーブを用いて行う場合、生物学的指標は、加圧滅菌に耐えることができるものでなければならないが、化学的攻撃に対する耐性を有する必要はない。
【0049】
また、生物学的指標は、DPAの検出を促進する当技術分野において既知または今後開発される化合物または材料を、指標中または指標上に有することができる。たとえば、ジピコリン酸の放出を励起/発光分光法を用いて検出する場合、生物学的指標は、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよび/またはルテチウムなどのランタニド塩を含むことができる。検出方法が、励起に紫外線、発光に可視光を用いる分光法である場合、テルビウム塩が好ましい。
【0050】
本発明のBIに滅菌処理を施し、生物学的指標中または指標上に含まれた芽胞からジピコリン酸が放出されたかどうかを判定する。この判定は、放出されたジピコリン酸カルシウムまたは放出された遊離ジピコリン酸が存在するか否かを検出することにより行うことができる。この判定は、試料中のジピコリン酸の有無を検出するために当技術分野において既知または今後開発されるいかなる方法を用いて行っても良い。好適な方法としては、たとえば、Warth(1983, Anal. Biochem. 130:502-505)、Hindle, et al. (1999, Analyst 124:1599-1604)、米国特許第5,876,960号、Porter, et al.(1967, Biochem. J. 102:19C)、Scott. et al.(1978, J. Bacteriol. 135, 133-137)、Tabor, et al.(1976, Appl. Environ. Microbiol. 31:25-28)、Watabe, et al.(日本細菌学雑誌43:927-930)、Louis (1967, Anal. Biochem 19:327-337)、Goodacre, et al.(2000, Anal. Chem 72:119-127)、 Beverly, et al.(1996, Rapid Commun. Mass Spectrom. 10:455-458)が開示するものなどであり、これらの内容を引用し、本明細書に組み込む。
【0051】
分光法を用いるジピコリン酸検出の方法、とりわけ一次導関数分析による励起/発光分光法を選択する場合、ランタニド光ルミネセンスを用いて検出工程中のジピコリン酸の定量を促進することができる。可視光線域における光ルミネセンスを促進するために好適なランタニドはテルビウムである。分光光度計は、本発明の生物学的指標中に直接配したプローブを用いて検出するように構成されたものをはじめとして、当技術分野において既知または今後開発されるいかなる種類または型式のものを用いてもよい。
【0052】
ジピコリン酸の検出方法には、芽胞から放出されたジピコリン酸と芽胞に付帯するジピコリン酸(通常、芽胞の残骸に付帯して、実質的に非水溶性であるジピコリン酸カルシウムの形態をとる)を判別できないものもある。このような方法を本発明の方法として採用する場合、芽胞の残骸を試料の懸濁液と分離してから、懸濁液中の遊離ジピコリン酸および/またはランタニド/ジピコリン酸複合体の有無の判定を行うのが望ましい。懸濁液から残骸を除去するために、濾過、限外濾過、抗体を介した凝集、および遠心分離などの種々の方法が知られており、これらの方法の中で、当技術分野において既知または今後開発されるいかなる方法を用いて本発明の方法を実施してもよい。
【0053】
懸濁液から芽胞を除去すると同時に、除去された溶液中のジピコリン酸の有無を、たとえばガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、高圧クロマトグラフィー、または当技術分野において既知または今後開発されるその他のクロマトグラフ法を用いて判定することができる。
【0054】
本明細書において開示する分光分析法を採用する場合、滅菌処理によってジピコリン酸が放出されたかどうかの判定のために懸濁液から芽胞または芽胞の残骸を除去する必要はない。
【0055】
さらに、本発明の方法の1実施態様においては、芽胞または芽胞の残骸を除去していない懸濁液に光を透過させ、そのスペクトルの紫外および可視両領域を分析する。この実施態様においては、透過紫外線を分析して懸濁液の分光分析を行うことができ、透過可視光線(ランタニドの存在下において)を用いて懸濁液の発光分析を行うことができる。紫外線および可視光線の分析は、同時にまたは連続してどのような順番で行ってもよい。
【0056】
滅菌処理によってジピコリン酸が芽胞から放出されたかどうかを判定するために好ましい方法は、微分紫外分光分析(DUVS)である。DUVSは、多様な波長における吸光度値を測定し、そのデータを波長に対する微分吸光度(すなわち、220、235、260、268、278および/または280ナノメートルの近似波長におけるd[吸光度]/d[波長])で表すものである。従って、DUVSを用いてこれらの1以上の波長におけるd[吸光度]/d[波長]を分析し、特定試料中および/または対照試料中のジピコリン酸を定量することができる。また、DUVSを用いてこれらの波長のいずれかまたはすべてにおける吸光度またはd[吸光度]/d[波長]の変化率を定量し、滅菌処理中または処理終了後のジピコリン酸放出の変化率を評価することもできる。
【0057】
本発明の方法は、必要であれば、単独で、または芽胞生存度評価のより一般的な方法と組み合わせて実施することもできる。より一般的な方法としては、芽胞が発芽し芽胞から微生物が増殖・成長しやすい培養条件下に芽胞を維持することが挙げられる。たとえば、顕微鏡で直接数える方法だけでなく平板培養法を用いてもよい。また、芽胞生存度は、たとえば公開番号WO 00/66763の国際特許出願に開示されているような芽胞懸濁液の多角光散乱分析(この開示内容を引用することにより本明細書に組み込む)または可視光分光光度分析を用いて判定することができる。このような一般的な生存度判定方法を用いて、DPAの分析により得られた結果が所望の滅菌水準と正確な相関関係にあることを確認または保証することができる。その他の方法としては、米国特許第3,770,351号、第5,795,730号、および第5,876,960号が開示するものがあり、これらの開示内容を引用することにより本明細書に組み込む。
【0058】
本発明の方法を実施する場合、生物学的指標を滅菌処理に曝しその後芽胞からのジピコリン酸の放出を判定するか、あるいは、滅菌処理とジピコリン酸の放出の判定を同時に行ってもよい。後者の場合、滅菌処理中に実質的に連続して試料を取り出してDPA放出の分析を行ってもよい。
【0059】
生物学的指標を滅菌処理に曝した後または滅菌処理中に、生物学的指標に収容されている芽胞または芽胞の一部を取り出し、たとえばDUVSをはじめとする上述の方法により芽胞または芽胞の一部からのジピコリン酸の放出を判定する。芽胞からのジピコリン酸の放出は、少なくともいくつかの芽胞が不活性化または生存不能となったことを示す。滅菌処理中の芽胞からのジピコリン酸の経時放出率または滅菌処理終了時の芽胞からのジピコリン酸の放出量は、同じ滅菌処理に同時に曝された他の物品に存在すると思われる微生物が生残または不活性化した可能性と互いに関連づけることができる。このように、生物学的指標の芽胞からジピコリン酸が放出されたかどうかを判定することにより、生物学的指標と共に滅菌処理された物品または対象物の滅菌性のみならず滅菌処理の有効性を示すことができる。
【0060】
本発明の方法を実施の際は、当業者であれば、生物学的指標の芽胞からのDPAの放出率または生物学的指標からのジピコリン酸の総放出量を評価するための基準を容易に作成または考案して、滅菌処理の有効性を判定し、これにより生物学的指標と共に滅菌処理された物品の滅菌性を判定することができる。たとえば、生物学的指標の芽胞から放出されたジピコリン酸量と生物学的指標の芽胞中に存在する既知のジピコリン酸の総含有量とを比較することにより、ジピコリン酸の放出を部分的放出として計算することができる。生物学的指標において106個の芽胞を利用し、当技術分野において知られている実証的手段によりその芽胞が10重量%のジピコリン酸を含有すると判断される場合、滅菌処理後または処理中に放出されたジピコリン酸の実証的に判断される量とその特定の芽胞中に存在することが知られているジピコリン酸の計算された量とを比較して、滅菌処理が成功したかどうかを判定することができる。
【0061】
芽胞からのジピコリン酸の放出は、芽胞から放出されたジピコリン酸量を検出すること、芽胞から放出されなかったジピコリン酸量を検出すること、またはその両方によって判定することができる。放出されなかったDPA量は、損傷しておらず生存能力を有すると思われる芽胞数とほぼ関連づけることができる。微量のジピコリン酸を判定したい場合は、上述したように、イオン化ランタニド金属原子(例えばテルビウムイオン、または原子番号57〜71のその他の元素のイオン)の存在下でジピコリン酸を評価することにより、本明細書に記載した分光光度法の感度を上げることができる。生物学的指標の芽胞から実質的にすべてのジピコリン酸が放出された場合、これは、実質的にすべての芽胞が不活性化したことを示す。しかし、芽胞中のすべてのジピコリン酸が放出されなくても芽胞を不活性化することができると考えられているので、生物学的指標の芽胞からすべてのジピコリン酸が放出されなくても、同じ滅菌処理に曝された物品の滅菌性および/または滅菌処理の有効性の相対的な保証を得ることができる。
【0062】
芽胞中に存在するジピコリン酸全量の放出を確認せずに滅菌処理された物品の病原体が死滅したという保証を得るために、当業者は比較用の一連の簡易な実証的基準を設定することができる。たとえば、ある芽胞調整物を等分し、それらを特定の滅菌処理に異なる水準たは条件において(たとえば種々の時間で、種々の滅菌剤濃度で、または種々の滅菌剤強度で)曝すことができる。その後、処理した芽胞を標準的な培養技術で培養して、処理に対して生残した可能性のある芽胞の発芽を促進し、栄養細胞を増殖させる。等分した各芽胞群から放出されたジピコリン酸の量を、本明細書に記載したいずれかの方法を用いて個別に求めることができる。これにより、等分した各芽胞群からのジピコリン酸の放出を、芽胞が処理に対して生残した可能性と関連づけることができる。
【0063】
上述した方法の代わりに、またはそれに加えて、芽胞調整物を等分し、それらを等分した他の微生物と共に処理し、芽胞からのジピコリン酸の放出をその微生物の生残度と関連づけることができる(すなわち、その微生物に適した培養方法を用いて評価することができる)。
【0064】
一旦そのようなデータを作成すると、その後に行うその特定の滅菌処理の生物学的指標の芽胞からのジピコリン酸の放出を、滅菌処理の有効性と関連づけることができ、その生物学的指標と共に滅菌処理された物品の滅菌性の指標とすることができる。
【0065】
当業者にとって容易に理解されるように、芽胞の不活性化とジピコリン酸の放出量または放出率との関係を示す基準の設定は、滅菌処理の有効性を評価したいと考える同一個人または事業体によって行われる必要はない。その代わりに、あるバッチの芽胞を使用する基準を第一者が作成し、そのテストに基づいて、その芽胞からのジピコリン酸の放出量または放出率とその芽胞の生存能力の喪失との関係の説明を、生物学的指標に含まれる同じバッチの芽胞を等分したものと共に、または生物学的指標の作成に関する説明書と共に、第二者に提供することができる。第二者は、必要であれば、その芽胞を生物学的指標に収容し、その指標を滅菌処理に曝し、その芽胞からのジピコリン酸の放出を評価し、その放出量または放出率を第一者により提供された基準と比較して、そのような指標を用いて滅菌処理の有効性を評価することができる。
【0066】
同様に、第一者はあるバッチの芽胞からのジピコリン酸の放出率および/または放出量と、異なる微生物(たとえば芽胞を入手したものとは異なる微生物)またはそのような微生物の混合したものの生存能力の喪失との関係を明らかにすることができる。第二者は、滅菌処理に曝された生物学的指標の同じバッチの芽胞からのジピコリン酸の放出率または放出量を求めることにより、その基準データを用いてその滅菌処理によるその異なる微生物の生存能力の喪失を評価することができる。
【0067】
本明細書に記載する方法は、連続して、定期的に、または1回の滅菌処理中の選択された時点において、ジピコリン酸の放出を測定することにより実施することができる。芽胞からのジピコリン酸の放出は、芽胞が滅菌処理により不活性化されつつある間は継続することが知られており、従って、少なくともその後短時間は放出が継続すると思われる。そのため、第1回の測定と次回の測定の間にジピコリン酸の放出が増加すれば、それは、芽胞の不活性化が継続中であり生存能力を有する芽胞が生物学的指標に残っていることを暗示する。従って、滅菌処理の有効性評価の他の方法では、生物学的指標の芽胞から放出されたジピコリン酸を一定時間に渡って評価し、滅菌の有効性を、ジピコリン酸の放出の経時変化率が特定の値まで減少するか、またはジピコリン酸の放出が実質的にもしくは完全に停止するような十分な滅菌処理として定義することができる。
【0068】
本発明は、また、上述の方法に有用なキットに関するものである。このキットは、少なくとも、本明細書に記載する生物学的指標(すなわちDPAを含有し、選択的にランタニド塩を含有する芽胞を含むもの)を含む。また、このキットは、対照試料(正または負の対照であってもよい)および/または文書もしくは図表を含む。
【0069】
対照試料は、生物学的指標の芽胞中のDPA量と相関した量のDPAを含む。対照試料中のDPA量は、たとえば、生物学的指標の芽胞中のDPAの総含有量(またはその既知の倍数もしくは分数)と同量であることができる。あるいは、対照試料中のDPA量は、ある水準の生存能力の喪失が生じたとき生物学的指標の芽胞から放出されたDPA量(またはその既知の倍数もしくは分数)と同量であることができる。従って、生物学的指標の芽胞から放出されたDPAの絶対量を求める必要はない。その代わり、生物学的指標の芽胞から放出されたDPA量を対照試料中のDPA量と比較して、相対的なDPA放出または相対的な生存能力の喪失の評価を定量的に(すなわち相対的に)評価することができる。対照試料中のDPAの形態は、DPA濃度を一貫して正確に求めることができるならば、多様であってもよい。対照試料は、たとえば、DPAを、芽胞中において、水もしくは緩衝溶液中において、または、選択された割合(たとえば実質的に100%)の芽胞が不活性化するように処理された芽胞の一部において、含むことができる。
【0070】
対照試料が不活性化された芽胞を含む場合、その芽胞は、その生物学的指標を用いて評価しようとしている同じ滅菌方法により不活性化されているのが好ましい。また、対照試料が芽胞を含む場合、芽胞は同じ微生物から入手したものであるのが好ましく、生物学的指標の芽胞と同じバッチの芽胞から入手したものであるのがより好ましい。
【0071】
文書または図表は、生物学的指標の芽胞からのDPAの放出と芽胞と同じ滅菌処理に曝された微生物の生存能力の喪失(すなわち、生物学的指標の芽胞の生存能力の喪失または1種以上の他の微生物の生存能力の喪失)との関係を表す。これらの文書または図表は、生物学的指標の芽胞と同じバッチの芽胞を用いて実施した分析に基づいて作成するのが好ましい。文書または図表の形式は多様であってもよく、紙または電子媒体をはじめとするいかなる媒体により表してもよい。文書または図表は、出版された文書、電磁的形態(記録されたオーディオもしくはビデオ製作物、コンピューターファイル、またはコンピュータもしくは集積回路などの電気装置における電磁インパルスの形態)、またはその他の有形表現媒体に含まれてもよい。キットは、正および/または負の対照を与える電子的形態もしくは電磁的形態の文書または図表を含むことができ、発明を実施する者は、その正および/または負の対照を生物学的指標の芽胞から放出されたDPA量と比較して、滅菌処理の有効性を評価することができる。
【0072】
キットは、生物学的指標から放出されたDPAを評価するための分析装置を含むことができる。適当な分析装置は、用いる分析方式によって決まるが、実質的にすべてのDPA分析法用の分析装置をキットに含むことができる。たとえば、DPAをDUVSにより評価する場合、分析装置は、多様な波長に渡って吸光度値を走査することのできる分光光度計(すなわち「走査」分光光度計)とする。生物学的指標および対照試料は、それぞれ、分析装置に適合することができる(たとえば、DUVS分析用の使い捨ての光学的に透明なキュベットにそれぞれ収容することができる)。光学的に透明なキュベットは、プラスチック、ガラス、石英キュベット、バイアル、およびガラススライドを含むことができる。
【0073】
ある実施形態においては、キットは、生物学的指標、対照試料、および生物学的指標の芽胞からのDPAの放出量を対照試料中のDPA量と比較する分析装置を含む。対照試料中のDPA量は、所望の芽胞生存能力の低減の達成時における生物学的指標の芽胞からのDPAの放出量と相関している。生物学的指標の芽胞からのDPAの放出量が対照試料中のDPA量(またはその量の倍数もしくは分数)を超える場合、分析装置は、視覚的、聴覚的または電子信号を発してこれが生じたことを示すことができる。その信号が電子信号であれば、たとえば、その信号により滅菌処理を終了させることができる。同様に、視覚的または聴覚的信号により、オペレーターに、所望の水準の滅菌が達成されたので滅菌処理を停止してもよいことを示すことができる。
【0074】
本発明を以下の非限定的な実施例により説明する。これらの実施例は説明のためのものにすぎず、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明は、本明細書の教示によって明らかになるすべての変形例をも包含するものである。
【実施例1】
【0075】
本発明の3個の生物学的指標(BI)の複製物を「C」「A2」および「A15」とした。各指標は、106個のBacillus subtilus の風乾芽胞を含む20ミリリットルのホウケイ酸ガラス製シンチレーションバイアルであった。これらのバイアルを、以下のように、オートクレーブ(15 p.s.i.g. 蒸気、121℃)により湿熱滅菌処理に曝した。
【0076】
【表1】
【0077】
各BIの芽胞からのDPAの放出は以下のように判定した。バイアルをオートクレーブから取り出し、室温程度に冷やし、10ミリリットルの脱イオン蒸留水を各バイアルに添加した。これらのバイアルを混合した後超音波処理を1分間行って、芽胞の残骸を懸濁させ、放出されたDPAを溶解させた。
【0078】
各懸濁液の吸光度を、標準石英キュベットを用いて走査分光光度法により評価した。走査分光光度法は、ヒューレット・パッカード社(米国、カリフォルニア、パロアルト)製のHewlett Packard 8453 UV-VIS透過分光光度計(USP-2000モデル)を用いて、約200〜400ナノメートルを含む波長において実施した。
【0079】
吸光度データを一次導関数分析(対波長)したものを図3に示す。図2(ジピコリン酸カルシウムの0.15ミリモル溶液の一次導関数スペクトル(d[吸光度]/d{波長};dA/dλ))と図3を比較すると、オートクレーブ処理したBI(A2およびA15)から得られた芽胞懸濁液の微分スペクトルは、DPAに特有のスペクトル変化を示し、A2と特にA15の芽胞が生存能力を有しないことを示す平行する生存度データ(以下に示す)と相関していることがわかる。微分スペクトルの変化が芽胞の不活性化の程度と密接な相関関係にある波長は、220、235、260、268および280ナノメートルなどである。276ナノメートルでの波長もこの相関関係を示している。
【0080】
標準芽胞生存度分析を滅菌処理後のBIの各芽胞群に対して実施したところ、以下の生存度データが得られた。
【0081】
【表2】
【0082】
従って、生物学的指標A15が含まれた滅菌処理は、6ログの死滅よりも多量な死滅が得られた。
【実施例2】
【0083】
本発明の4個の生物学的指標(BI)である「C」「EC」「E」および「P」を以下の滅菌処理に曝した。
【0084】
(i) BI「C」には滅菌処理を実施しなかった。
【0085】
(ii)BI「EC」は、モデル2047 90/10 OXYFUME(登録商標)滅菌装置(Vacudyne, Inc. 米国、イリノイ州、シカゴハイツ)において、エチレンオキシド(90%)とCFH(10%)の混合物を130分間適用することにより処理した。
【0086】
(iii)BI「E」は、モデル300 3M(登録商標)滅菌装置(3M、米国、ミネソタ州、セントポール)において、純粋エチレンオキシドを62分間適用することにより処理した。
【0087】
(iv)BI「P」は、過酸化水素プラズマ(45〜59.5% H2O2、残部水蒸気(STERRAD(登録商標)))を約13分間適用することにより処理した。
【0088】
DUVS分析によって得られた一次導関数スペクトルを図5に示す。
【0089】
各BIは108個のB. Subtilis の芽胞を含むガラスバイアルであった。標準方法(プレートカウント)によって生存度評価を行ったところ、各BIの生残芽胞は 約0.3 × 10-7(約6.67ログの死滅)であったことがわかった。
【実施例3】
【0090】
4個のBIを、NALGENE(登録商標)モデル195-2520シリンジフィルター膜(直径25ミリメートル、孔径0.2マイクロメートル、ナイロン膜)、またはNALGENE(登録商標)モデル190-2520シリンジフィルター膜(直径25ミリメートル、孔径0.2マイクロメートル、無菌条件下で24時間風乾された酢酸セルロース膜)の片面に約108個の芽胞を吸着させることにより作成した。NALGENEという商標名で販売されている膜は、米国、ニューヨーク州、ロチェスターのNalge Nunc, Intl.から入手できる。
【0091】
「C」「EC」「E」または「P」の各BIを異なる滅菌処理に曝した。
【0092】
(i) BI「C」は処理しなかった。
【0093】
(ii)BI「EC」は、エチレンオキシド(90%)とCFH(10%)の混合物を130分間適用することにより処理した。
【0094】
(iii)BI「E」は、純粋エチレンオキシドを62分間適用することにより処理した。
【0095】
(iv)BI「P」は、過酸化水素プラズマ(STERRAD(登録商標))に約13分10秒間(全サイクル70分)曝することにより処理した。
【0096】
選択された滅菌処理の終了時に各BIからの芽胞のDUVS分析によって得られた一次導関数吸光度カーブを図6に示す。これらの試料において、生残芽胞は異なる処理方法においてもほぼ同じあり、部分生残芽胞は0.33 × 10-7(すなわち当初の芽胞108個の約1倍)に等しかった。これにより、平板希釈培養法による3種の生存度評価プレートでの生残数はそれぞれ10-7であることが示された。
【実施例4】
【0097】
BIを、無菌条件下で24時間風乾されたDURAPORE(登録商標)PVDF膜(Millipore Corporation、米国、マサチューセッツ州、ベッドフォード、直径25ミリメートル、孔径0.1マイクロメートル、MILLEX(登録商標)-VV滅菌フィルターユニットに内蔵)の片面に約108個のB.subtilis芽胞を吸着させて作成し、それぞれ4種の処理のうちのいずれかに曝した。「C」のBIは滅菌処理しなかった。その他は以下のように処理した。
【0098】
(i)BI「EC」は、エチレンオキシド(90%)とCFH(10%)の混合物を95分間適用することにより処理した。
【0099】
(ii)BI「E」は、純粋エチレンオキシドを62分間適用することにより処理した。
【0100】
(iv)BI「P」は、過酸化水素プラズマ(STERRAD(登録商標))に約13分10秒曝することにより処理した。これらの試料において、生残芽胞は異なる処理方法においてもほぼ同じあり、部分生残芽胞は0.33 × 10-7と等しかった。DUVSによる各芽胞懸濁液の一次導関数スペクトルを図6に示す。
【実施例5】
【0101】
5個のBI(107個のBacillus subtilisから入手した風乾芽胞とテルビウム塩を収容する20mlガラスバイアル)をオートクレーブ滅菌処理にそれぞれ異なる時間(0分、4分、8分、16分)曝した。
【0102】
図7はオートクレーブ処理された各BIの芽胞からのDPAの放出の動態を示す。約15分のオートクレーブ処理が6ログの死滅となったことがわかる。
【0103】
図8において、上記のように処理された各BIの芽胞から得られた、イオン化テルビウムの存在下で分析された発光データを示す。ピーク発光強度は約545ナノメートルに現れ、小ピークは480、580、および600ナノメートルに生じている。
【0104】
以上の実施態様にその広い発明概念から逸脱することなく変更を加えうることは、当業者によって認識されるはずである。従って、本発明は開示された特定の実施態様に限定されるものでなく、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の精神および範囲に含まれる修正を包含することを意図していることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】ジピコリン酸の吸光スペクトルを示す。任意の強度における吸光度または光学密度は、ベール-ランベルト等式:吸光度(A)=εcl(εは吸光係数、cは化合物の濃度、lは光路長)を用いて計算することができる。
【図2】ジピコリン酸カルシウムの0.15ミリモル溶液の微分スペクトル(d[吸光度]/d{波長};dA/dλ)である。Warth(1983, Anal. Biochem. 130:502-505)に記載されているように、微分極大が261.0、265.1および276.8ナノメートルにおいて生じ、極小が264.2、272.1および280.3ナノメートルにおいて生じている。
【図3】液体シンチレーションバイアルに収容された3種の芽胞調製物の微分スペクトル(dA/dλ)である。懸濁液Cはオートクレーブで処理しなかった。懸濁液A2はオートクレーブで2分間処理した。懸濁液A15はオートクレーブで15分間処理した。
【図4】液体シンチレーションバイアルに収容された6種の芽胞調製物の微分スペクトル(dA/dλ)である。懸濁液Cは滅菌処理しなかった。懸濁液ECは、エチレンオキシドとクロロフルオロカーボンガス(CFH)の混合物に曝した。懸濁液Eは、エチレンオキシドのみに曝した。懸濁液Pは、過酸化水素プラズマに曝した。
【図5】ナイロンまたは酢酸セルロースフィルタに吸着した4種の芽胞懸濁液の微分スペクトル(dA/dλ)である。懸濁液Cは滅菌処理しなかった。懸濁液ECは、エチレンオキシドとCFHの混合物に曝した。懸濁液Eは、エチレンオキシドのみに曝した。懸濁液Pは、過酸化水素プラズマに曝した。
【図6】異なる滅菌処理に曝した4種の芽胞懸濁液の微分スペクトル(dA/dλ)である。4種は、未処理、100%エチレンオキシド、90%エチレンオキシド 10%CFH、および酸化水素プラズマである。
【図7】PVDFフィルタに吸着した4種の芽胞懸濁液の微分スペクトル(dA/dλ)である。懸濁液Cは滅菌処理しなかった。懸濁液ECは、エチレンオキシドとCFHの混合物(90%/10%)に曝した。懸濁液Eは、エチレンオキシドのみに曝した。懸濁液Pは、過酸化水素プラズマに曝した。
【図8】オートクレーブ処理中4つの時間間隔で取り出した、オートクレーブ処理を施した芽胞懸濁液から放出された遊離ジピコリン酸の、イオン化テルビウムの存在下における545ナノメートルでの強度を示す。
【図9】過酸化水素ガスプラズマ滅菌処理(STERRAD(登録商標))を施した芽胞懸濁液(B. subtilis)の、イオン化テルビウムの存在下で分析した、波長(nm)に対する強度のグラフである。
Claims (46)
- 滅菌処理の有効性を評価する方法であって、
(a)ジピコリン酸を含む芽胞を包含する生物学的指標を滅菌処理に曝し、
(b)芽胞からのジピコリン酸の放出を測定する、
工程を含み、
芽胞からのジピコリン酸の放出により滅菌処理の有効性が示される方法。 - さらに(c)芽胞の生存度を評価する工程を含む請求項1記載の方法。
- 生存度が、芽胞の懸濁液の可視光散乱を分析することにより評価される請求項2記載の方法。
- 生存度が、芽胞の懸濁液の多角光散乱を分析することにより評価される請求項2記載の方法。
- 生存度が、芽胞を入手した微生物の発芽および栄養型増殖に有利な条件下で芽胞を培養することにより評価される請求項2記載の方法。
- 工程(a)の滅菌処理が低温滅菌処理である請求項1記載の方法。
- 工程(a)の滅菌処理が熱滅菌処理、湿熱滅菌処理、およびガスプラズマ滅菌処理からなる群より選択される請求項1記載の方法。
- 工程(a)の滅菌処理が過酢酸滅菌処理、ホルムアルデヒド滅菌処理、ヨウ素滅菌処理、グルタルアルデヒド滅菌処理、亜硝酸滅菌処理、エチレンオキシド滅菌処理、および次亜塩素酸滅菌処理からなる群より選択される請求項1記載の方法。
- 芽胞がBacillus属の細菌の芽胞およびClostridium属の細菌の芽胞からなる群より選択される請求項1記載の方法。
- 芽胞がBacillus subtilisの芽胞、Clostridium sporogenesの芽胞、およびBacillus stearothermophilusの芽胞からなる群より選択される請求項1記載の方法。
- 芽胞がBacillus anthracisの芽胞およびSporosarcine属の細菌の芽胞から選択される請求項1記載の方法。
- 生物学的指標が芽胞を収容した容器である請求項1記載の方法。
- 容器がバイアル、カプセル、皿、アンプル、スポンジ、箱、封筒、手動操作可能なパケット、および手で破ることのできるパケットから選択される請求項12記載の方法。
- 生物学的指標が芽胞を吸着した部材であり、前記部材がフィルム、シート、膜、およびスティックからなる群より選択される請求項1記載の方法。
- 生物学的指標がさらにランタニド塩を含む請求項1記載の方法。
- ランタニド塩がテルビウム塩である請求項15記載の方法。
- 生物学的指標がさらに生育培地を含む請求項2記載の方法。
- 芽胞からのジピコリン酸の放出がクロマトグラフ分析により測定される請求項1記載の方法。
- クロマトグラフ分析がガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、および高圧クロマトグラフィーからなる群より選択される請求項18記載の方法。
- 芽胞からのジピコリン酸の放出が分光分析により測定される請求項1記載の方法。
- 分光分析が約545ナノメートルでの吸光度を評価することにより行われる請求項20記載の方法。
- 芽胞からのジピコリン酸の放出が微分紫外分光分析により測定される請求項1記載の方法。
- 微分紫外分光分析が220ナノメートル、235ナノメートル、260ナノメートル、268ナノメートル、276ナノメートル、および280ナノメートルからなる群より選択される近似波長での微分吸光度を評価することにより行われる請求項22記載の方法。
- 工程(b)が、
(i)芽胞を流体に接触させ、そして
(ii)流体中のジピコリン酸の有無を評価する、
工程を含む請求項1記載の方法。 - 工程(b)の(ii)の流体がランタニドイオンを含む請求項24記載の方法。
- ランタニドイオンがテルビウムイオンである請求項25記載の方法。
- 工程(a)と工程(b)が実質的に同時に行われる請求項1記載の方法。
- 芽胞からのジピコリン酸の放出が所定の値に達した時に工程(a)の滅菌処理を停止する請求項27記載の方法。
- 芽胞からのジピコリン酸の放出率が所定の値に達した時に工程(a)の滅菌処理を停止する請求項27記載の方法。
- ジピコリン酸の放出の測定を工程(b)における複数の時点で実施する請求項1記載の方法。
- 滅菌処理された物品の滅菌性を保証する方法であって、
a)ジピコリン酸を含む芽胞を包含する生物学的指標と物品を同時に滅菌処理に曝し、
b)芽胞からのジピコリン酸の放出を測定する、
工程を含み、
芽胞からのジピコリン酸の放出により前記物品が滅菌されたことが示される方法。 - 滅菌処理の有効性を判定するためのキットであって、
a)ジピコリン酸を含む芽胞を包含する生物学的指標
b)生物学的指標の芽胞中に存在するジピコリン酸の量と相関したジピコリン酸の量を含む対照試料
を含み、
(i)滅菌処理終了後に生物学的指標の芽胞から放出されたジピコリン酸の量、と(ii)対照試料中のジピコリン酸の量、との比較によって、滅菌処理の有効性が示されるキット。 - 生物学的指標がさらにランタニド塩を含む請求項32記載のキット。
- ランタニド塩がテルビウム塩である請求項33記載のキット。
- 芽胞がBacillus属の細菌の芽胞およびClostridium属の細菌の芽胞からなる群より選択される請求項32記載のキット。
- 芽胞がBacillus subtilisの芽胞、Clostridium sporogenesの芽胞、およびBacillus stearothermophilusの芽胞からなる群より選択される請求項32記載のキット。
- 生物学的指標が芽胞を収容した容器である請求項32記載のキット。
- 対照試料がジピコリン酸を含む芽胞を包含し、対照試料が芽胞中に存在するジピコリン酸を放出するように前処理されている請求項32に記載のキット。
- 生物学的指標の芽胞からのジピコリン酸の放出を測定するための分析装置をさらに含む請求項32に記載のキット。
- 分析装置が分光光度計である請求項39に記載のキット。
- 生物学的指標および対照試料がそれぞれ分析装置に適合する請求項39に記載のキット。
- 分析装置に適合する分析用容器をさらに含む請求項32に記載のキット。
- 分析用容器がプラスチックキュベット、ガラスキュベット、石英キュベット、バイアル、およびガラススライドからなる群より選択される請求項32に記載のキット。
- 滅菌処理の有効性を判定するためのキットであって、
a)ジピコリン酸を含む芽胞よりなる生物学的指標、および
b)生物学的指標の芽胞中に存在するジピコリン酸の量に相関したジピコリン酸の量を示す文書または図表、
を具備し、
滅菌処理に曝された芽胞からのジピコリン酸の選択された部分的放出により滅菌処理の有効性が示される方法。 - 文書または図表が電磁ファイルである請求項44に記載のキット。
- 滅菌処理の有効性を判定するためのキットであって、
a)ジピコリン酸を含む芽胞を包含する生物学的指標、および
b)生物学的指標の芽胞中のジピコリン酸の量に相関したジピコリン酸の量を示す文書または図表、
を具備し、
生物学的指標の芽胞からのジピコリン酸の放出量により滅菌処理の有効性が示される方法。
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