JP2005340583A - 光発電体の受光面構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】 光発電素子に入射した光を長く、光発電素子内に止める閉じ込め効果が得られて光発電体の発電効率を改善することができるばかりか、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要が無く、光発電体の受光面構造の製作を容易にする。
【解決手段】 太陽電池セルとしての光発電素子1の受光面に、光透過性の複数の層構成の表層部を設けたものであって、表層部の各層及び光発電素子1の材質の順で、屈折率を段階的に大きくするようにしてあり、表層部は、受光面に、接着層6と、表層としてのプリズムシート4を、この順序に重ねて構成してある。
【選択図】 図1
【解決手段】 太陽電池セルとしての光発電素子1の受光面に、光透過性の複数の層構成の表層部を設けたものであって、表層部の各層及び光発電素子1の材質の順で、屈折率を段階的に大きくするようにしてあり、表層部は、受光面に、接着層6と、表層としてのプリズムシート4を、この順序に重ねて構成してある。
【選択図】 図1
Description
本発明は太陽電池等の光発電体の受光面構造に関するものである。
現在、太陽電池は、発電効率を上げるために、さまざまな取り組みがなされており、そのひとつとして、太陽電池内に取り込んだ光を出来るだけ長く、太陽電池セル(結晶)内にとどめる工夫がなされている。
その代表的な例としては、図29に示すように、単結晶または多結晶シリコン太陽電池の受光面構造がある。この図29において、テクスチャー構造は、n型半導体41とp型半導体42とで構成される太陽電池セル40の受光面にミクロな断面三角形状のマイクロプリズム43を形成したものであり、太陽電池セル40の受光面に入射した光が透過、反射を繰り返えすことで、平坦な受光面より多くの光が取り込めると同時に、取り込んだ光を太陽電池セル40内に出来るだけ長い時間閉じ込めるようにするものである。
テクスチャー構造の形成は、面方位によるエッチング速度の違いを利用する。反射防止膜44は、太陽電池セル40と空気の中間の屈折率を有し、太陽電池セル40の受光面の反射率を下げる作用があり、酸化チタンや窒化シリコンなどを化学気相成長法等で形成されるものである。
また、従来の太陽電池としては、薄膜太陽電池素子と集光反射素子とからなるものがある。この薄膜太陽電池素子は、支持体を兼ねた基板上に、反射層の一例としての光反射効果を有する電極金属層と、n型不純物ドープ非晶質半導体層であるn層と、非晶質真性半導体層であるi層と、p型不純物ドープ非晶質半導体層であるp層と、電流を取り出すための串型集電電極と、透明導電層とをこの順に積層して構成してあり、上記したn層とi層とp層は、光電変換層を構成している。
一方、集光反射素子は、蛍光特性を有する透明基板上に、透過孔群の一例としての円形状ピンホール群を有する反射層と、円形状ピンホール群に入射光を集光する半球状集光レンズ群とを順次形成して構成してある。
そして、上記の構成の薄膜太陽電池に太陽光等の光が照射されると、入射光は集光反射素子の半球状集光レンズ群により、反射層上に形成された円形状ピンホール群へと集光され、蛍光特性を有する透明基板を通過した後、薄膜太陽電池素子へと入射する。この薄膜太陽電池素子に入射した光は、透明導電層、非晶質半導体層を透過し、反射層としての電極金属層により反射されて、再度、非晶質半導体層を通過する。これにより、非晶質半導体層からなる光電変換層における光利用効率が高められている。また、透明誘電層、集電電極、及び非晶質半導体層の表面で反射された光も、集光反射素子の反射層により反射されて、再度、非晶質半導体層を通過する。このように、円形状ピンホール群から入射した光が、反射層と薄膜太陽電池素子との間で多重反射することにより、さらに高い光吸収効率が実現される(特許文献1参照)。
特開2003−78156号公報
しかし、上記した前者の従来例にあっては、太陽電池の生産量の50%を占める多結晶シリコン型太陽電池においては、表面(受光面)に様々な面方位を有するために、均一なテクスチャー構造が作り難い。また、単結晶シリコン型太陽電池においても、複雑なエッチングによりテクスチャー構造を形成するために、その分工程が複雑になり、コストアップにつながる。また、反射防止膜44とテクスチャー構造の形成は、別々の工程で行われるために、さらに工数が増加しコストアップを招くという問題点があった。
また、上記した後者の従来例にあっては、入射光は、集光反射素子の半球状集光レンズ群によって、反射層の円形状ピンホール群に集光され、円形状ピンホール群から入射した光は、蛍光特性を有する透明基板を通って、光電変換に利用できる波長域の光に変換される。この光は、薄膜太陽電池素子の反射層と集光反射素子の反射層との間で多重反射される。従って、光電変換層に照射される光量が増大して、発電効率が高くなるというものであり、光発電素子、表層部の各層の順で屈折率を段階的に小さくして、散乱、反射によって光発電素子内から、表層部の各層(例えば、プリズムシートと接着層)に入射する光のうちの多くの光を再び光発電素子内に戻すというものではないことから、その分発電効率が落ちることになる。
本発明は、かかる従来の問題を改善するためになされたものであって、その目的とするところは、太陽光の入射面積を広げると同時に、光発電素子に入射した光を長く、光発電素子内に止める閉じ込め効果が得られ、太陽電池の発電効率を改善することができるばかりか、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要が無く製作が容易な光発電体の受光面構造を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明の光発電体の受光面構造は、光発電素子の受光面に、光透過性の表層部を設けた光発電体の受光面構造であって、表層部は複数の層構成であり、これらの各層及び光発電素子の材質のそれぞれの屈折率を異ならせたことを特徴とするものである。
かかる構成により、例えば、表層部の各層及び光発電素子の材質の順で、屈折率を段階的に大きくし、すなわち、光発電素子の材質、表層部の各層の順で、屈折率を段階的に小くすることにより、散乱、反射によって光発電素子内から、表層部の各層に入射する光のうち、外部に逃げる光は、所定の角度で入射する光のみとなり、多くの光は再び光発電素子内に戻ることになる。このように、太陽光の入射面積を広げると同時に、光発電素子に入射した光を長く、光発電素子内に止める閉じ込め効果が得られ、光発電体の発電効率を改善することができる。
特に、光発電素子とは別構成の表層部に均一なテクスチャー構造を形成すればよいために、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなり、コストを低減すると共に、光発電体の受光面構造を容易に製作することができる。
ここで、光発電素子とは、例えば太陽電池セル(単結晶シリコン光発電素子、多結晶シリコン光発電素子又はアモルファスシリコン光発電素子)が該当し、表層部の表層とは、例えば、プリズムシートと接着層とが該当する。
また、本発明の光発電体の受光面構造は、上記した本発明の光発電体の受光面構造において、各層、光発電素子の材質の順で、屈折率を段階的に大きくするようにしたことを特徴とするものである。
かかる構成により、表層部の各層及び光発電素子の材質の順で、屈折率が段階的に大きくしてあり、すなわち、光発電素子の材質、表層部の各層の順で、屈折率が段階的に小さくしてあるために、散乱、反射によって光発電素子内から、表層部の各層に入射する光のうち、外部に逃げる光は、所定の角度で入射する光のみとなり、多くの光は再び光発電素子内に戻ることになる。このように、太陽光の入射面積を広げると同時に、光発電素子に入射した光を長く、光発電素子内に止める閉じ込め効果が得られ、光発電体の発電効率を改善することができる。
特に、光発電素子とは別構成の表層部に均一なテクスチャー構造を形成すればよいために、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなり、コストを低減すると共に、光発電体の受光面構造を容易に製作することができる。
また、本発明の光発電体の受光面構造は、上記した本発明の光発電体の受光面構造において、光発電素子は、単結晶シリコン光発電素子又は多結晶シリコン光発電素子のいずれかであることを特徴とするものである。
かかる構成により、単結晶シリコン光発電素子、多結晶シリコン光発電素子又はアモルファスシリコンのいずれにも、光発電素子に入射した光を長く、光発電素子内に止める閉じ込め効果が得られ、光発電体の発電効率を改善することができるし、特に、光発電素子とは別構成の表層部に均一なテクスチャー構造を形成すればよいために、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなり、コストを低減すると共に、光発電体の受光面構造を容易に製作することができる。
また、本発明の光発電体の受光面構造は、上記した本発明の光発電体の受光面構造において、表層部は、受光面に、接着層と表層を、この順序に重ねて構成してあることを特徴とするものである。
かかる構成により、散乱、反射によって光発電素子内から接着層、表層部の表層に入射する光のうち、外部に逃げる光は、所定の角度で入射する光のみとなり、多くの光は再び光発電素子内に戻ることになる。このように、光発電素子に入射した光を長く、光発電素子内に止める閉じ込め効果が得られ、光発電体の発電効率を改善することができる。
特に、光発電素子とは別構成の表層部に均一なテクスチャー構造を形成すればよいために、テクスチャー構造を形成した表層を接着層で光発電素子の受光面に接着すればよく、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなり、コストを低減すると共に、光発電体の受光面構造を容易に製作することができる。
ここで、表層部の表層とは、例えば、プリズムシートが該当する。
また、本発明の光発電体の受光面構造は、上記した本発明の光発電体の受光面構造において、表層が、空気と接着層の中間の屈折率を有する透明材料で、テクスチャー構造を形成した薄膜であることを特徴とするものである。
かかる構成により、テクスチャー構造を形成した薄膜を接着層で光発電素子の受光面に接着すればよく、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなり、コストを低減すると共に、光発電体の受光面構造を容易に製作することができる。
また、本発明の光発電体の受光面構造は、上記した本発明の光発電体の受光面構造において、薄膜が、表面に反復的な切子面構造を有するプリズムシートで構成してあることを特徴とするものである。
かかる構成により、表面に反復的な切子面構造(テクスチャー構造)を有する薄膜を接着層で光発電素子の受光面に接着すればよく、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなる。
また、本発明の光発電体の受光面構造は、上記した本発明の光発電体の受光面構造において、切子面構造は多数のマイクロプリズムで構成してあり、それぞれのマイクロプリズムは頂角が等しく、且つ等辺の切子面を有しており、マイクロプリズムは、それぞれのプリズム軸を平行させて隣接していることを特徴とするものである。
かかる構成により、光発電素子からの反射、散乱して垂直に入射する光は、プリズムシートと空気の境界における臨界角を45°以上にすることで境界面で反射され、光発電素子の内部に戻っていく。また、臨界角以上の角度で接着層に入射する光は、光発電素子と接着層の境界面で反射され光発電素子の内部に戻っていく。
また、臨界角以下で入射した光は、光発電素子と接着層の境界で屈折し、プリズムシートと接着層の境界に臨界角以上で入射することで反射し、光発電素子の内部に戻っていく。更に小さい角度で入射した光は、境界面で屈折し、プリズムシートと空気の境界面に到達し、更に屈折して再びプリズムシートに入射し、光発電素子の内部に戻っていく。
以上のことより、散乱、反射によって光発電素子内から、プリズムシートと接着層に入射する光のうち、外部に逃げる光は、所定の角度で入射する光のみとなり、多くの光は再び光発電素子内に戻ることになる。
このように、光発電素子に入射した光を長く、光発電素子内に止める閉じ込め効果が得られ、光発電体の発電効率を改善することができる。特に、多数のマイクロプリズム(テクスチャー構造)を表面に形成したプリズムシートを接着層で光発電素子の受光面に接着すればよく、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなり、コストを低減すると共に、光発電体の受光面構造を容易に製作することができる。
また、本発明の光発電体の受光面構造は、上記した本発明の光発電体の受光面構造において、薄膜が、表面に多角形状のプリズムを多数有するプリズムシートで構成してあることを特徴とするものである。
かかる構成により、微小な多角形状のプリズム、例えば四角錐を並べた構成のプリズムシートを用いても光の閉じ込め効果が得られ、光発電体の発電効率を改善することができる。特に、微小な多角形状のプリズム(テクスチャー構造)を表面に形成したプリズムシートを接着層で光発電素子の受光面に接着すればよく、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなり、コストを低減すると共に、光発電体の受光面構造を容易に製作することができる。
また、本発明の光発電体の受光面構造は、上記した本発明の光発電体の受光面構造において、プリズムは角錐形状であることを特徴とするものである。
かかる構成により、角錐形状のプリズムが、例えば四角錐である場合には、他のすべの四角錐と同じ頂角と等辺の切子面を有するし、更に、太陽光の入射面積がより大きくなり、より多くの光を光発電素子内に取り込めることになり、光発電体の発電効率を改善することができる。
本発明の光発電体の受光面構造によれば、表層部の各層及び光発電素子の材質の順で、屈折率が段階的に大きくしてあり、すなわち、光発電素子の材質、表層部の各層、空気の順で、屈折率が段階的に小さくしてあるために、散乱、反射によって光発電素子内から、表層部の各層に入射する光のうち、外部に逃げる光は、所定の角度で入射する光のみとなり、多くの光は再び光発電素子内に戻ることになる。このように、太陽光の入射面積を広げると同時に、光発電素子に入射した光を長く、光発電素子内に止める閉じ込め効果が得られ、光発電体の発電効率を改善することができる。
特に、光発電素子とは別構成の表層部に均一なテクスチャー構造を形成すればよいために、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなる。すなわち、テクスチャー構造を形成した表層部の表層を接着層で光発電素子の受光面に接着すればよく、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなり、コストを低減すると共に、光発電体の受光面構造を容易に製作することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
本発明の実施例を図1乃至28図に示す。図1は本発明の光発電体の受光面構造の一部省略した斜視図、図2は同光発電体の受光面構造においてマイクロプリズムにおける入射光の範囲の説明図、図3はプリズムシートにおける入射光の範囲(L1〜L2)の説明図、図4はプリズムシートにおける入射光の範囲(L2〜L3)の説明図、図5はプリズムシートによる光の閉じ込め効果の説明図である。
本発明の光発電体(太陽電池)の受光面構造は、太陽電池セルとしての光発電素子1の受光面に、光透過性の複数の層構成の表層部を設けたものであって、表層部の各層及び光発電素子1の材質の順で、屈折率を段階的に大きくするようにしてあり、表層部は、受光面に、接着層6と、表層としてのプリズムシート4を、この順序に重ねて構成してある。
光発電素子1は、例えば、単結晶シリコン光発電素子、多結晶シリコン光発電素子又はアモルファスシリコン光発電素子等があり、光発電素子1としての単結晶シリコン光発電素子はn型半導体2及びp型半導体3を接合した構成である。このpn接合近傍に光が入ると、光が吸収されたn型半導体2及びp型半導体3のそれぞれの領域では電子−正孔対が発生する。p型領域で発生した電子は四方に拡散し、一部はpn接合の空乏層に入り、電界に引かれてn型領域に入る。n型領域で発生した正孔も、同様にしてp型領域に入る。このように電子と正孔が逆向きに空乏層を通過することは、n型領域からp型領域へ向う電流が内部で流れることであり、入射光量に比例する電流が発生する。大きな起電力を得るには、光がpn接合近傍で吸収されるほど無駄がないので、光の吸収が大きいほど高い効率の光−電流変換が行われる。
プリズムシート4は、空気と後述する接着層6の中間の屈折率を有する透明の薄膜で構成してあり、そのシート表面に、均一なテクスチャー構造としての反復的な切子面構造を有し、裏面は平坦である光透過フイルムであって、このプリズムシート4は湾曲や曲折が可能である。
反復的な切子面構造は多数のマイクロプリズム7で構成してあり、それぞれのマイクロプリズム7は頂角を有していて、各マイクロプリズム7の頂角は等しくしてある。また、各マイクロプリズム7は等辺の切子面イ、ロを有し、各プリズム軸は他の全てのプリズム軸と平行になるように、それぞれ隣接している。
プリズムシート4は取付位置に自由度があるし、製作が容易である。なお、プリズムシート4の厚さは、50ミクロン〜100ミクロン程度であり、各マイクロプリズム7の高さは50ミクロン程度であって、プリズムシート4は、全体で100〜150ミクロン程度である。
そして、このプリズムシート4は、透明な接着材で光発電素子1のn型半導体3の表面に貼り付けてあり、接着材は接着層6を形成している。この接着層6の屈折率n3は、プリズムシート4の屈折率n2とn型半導体3の屈折率n4の中間である。
上記したプリズムシート4へ太陽光が入射する場合、マイクロプリズム7は左右対称なので図2に示すように、プリズムシート4に垂直に入射する光L1から、切子面イに平行な光L2を経てプリズムシート4に水平な光L3の範囲を考えればよい。なお、空気8、プリズムシート4、接着層6、n型半導体2の屈折率はそれぞれn1、n2、n3、n4(n1<n2<n3<n4)である。
光L1〜光L2の角度での入射状態を、図3を用いて説明する。図3において、垂直に入射する光a1は、a2の光経路で屈折して光発電素子1の内部に入射し、更に接着層6とn型半導体3の境界面でa3、a4の光経路のように屈折し、光発電素子1内部へ垂直に近い角度で入射することになる。
入射光b1は、切子面イではb2の光経路のように反射され、隣りのマイクロプリズム7の切子面ロからb3の光経路で光発電素子1の内部に入射する。また、切子面ロに入射した光c1は、c2の光経路のように屈折し光発電素子1の内部に入射する。
光L2〜光L3の角度での入射状態を図4を用いて説明する。この場合は、マイクロプリズム7の切子面ロのみに入射し、この切子面ロに入射した光d1は、屈折し、d2、d3の光経路で光発電素子1の内部に入射する。
次に、プリズムシート4による光の閉じ込め効果を図5を用いて説明する。
光発電素子1からの反射、散乱した光のうちe1に示すように垂直に入射する光は、プリズムシート4と空気8の境界における臨界角を45°以上にすることで境界面で反射され、e2、e3の光経路で光発電素子1の内部に戻っていく。
臨界角以上の角度で接着層6に入射する光f1は、n型半導体2と接着層6の境界面で反射されf2の光経路で光発電素子1の内部に戻っていく。
臨界角以下で入射した光g1は、n型半導体2と接着層6の境界で屈折し、g2の光経路で、プリズムシート4と接着層6の境界に臨界角以上で入射することで反射し、g3の光経路で光発電素子1の内部に戻っていく。
g1より更に小さい角度で入射した光は、境界面で屈折し、h1、h2、h3の光経路でプリズムシート4と空気8の境界面に到達し、更に屈折してh4の光経路で再びプリズムシート4に入射し、h5の光経路で光発電素子1の内部に戻っていく。
以上のことより、散乱、反射によって光発電素子1内から、プリズムシート4と接着層6に入射する光のうち、外部に逃げる光は、図5の光経路e1とh1の間の角度で入射する光のみとなり、多くの光は再び光発電素子1内に戻ることになる。
次に、より詳しく、太陽電池の発電効率向上の原理を説明する。
図6に示すように、アクリル系樹脂を用いた屈折率1.5のプリズムシート4で、頂角が90°で頂角を挟む切子面イ、ロが等しいものを、紫外線硬化樹脂を用いた屈折率1.6の接着層6で、屈折率3.5のn型半導体2を有する光発電素子1の表面(受光面)に接着したモデルで説明する。
(1)光がプリズムシート4に対して垂直から45°の間の角度で入射した場合
この場合の透過と反射を図7に示す。マイクロプリズム7の切子面イに入射した光i1の大部分は透過屈折しi2となる。また反射光i3は隣接する切子面ロで大部分が透過屈折し透過光i4となる。この透過光i4は、次に述べる切子面ロへの45°から水平の間の角度からの入射光と同じ経路で光発電素子1へ到達する。
この場合の透過と反射を図7に示す。マイクロプリズム7の切子面イに入射した光i1の大部分は透過屈折しi2となる。また反射光i3は隣接する切子面ロで大部分が透過屈折し透過光i4となる。この透過光i4は、次に述べる切子面ロへの45°から水平の間の角度からの入射光と同じ経路で光発電素子1へ到達する。
切子面ロへの入射光j1は、ほとんどが透過屈折しj2となる。i2とj2は接着層6、n型半導体2と垂直方向へ屈折し光発電素子1の内部へ入射する。
スネルの法則を使って光発電素子1への入射角を計算すると、光発電素子1の面を0°と180°として図示すると図8のようになる。プリズムシート4へ垂直に入射した光のうち切子面イを透過したものは97.2°、切子面ロを透過したものは82.8°、プリズムシート4へ45°で入射した光はそれぞれ91.3°、72.4°で入射する。
(2)光がプリズムシート4に対して45°から水平の間の角度で入射する場合
図9に、プリズムシート4に対して45°から水平の間の角度で入射した場合の透過と反射を示す。この角度からの入射はすべて切子面ロからの入射になり、光k1のように、その透過光k2が直接接着層6に達する場合と、光m1のように、その透過光m2が切子面イで反射される場合がある。
図9に、プリズムシート4に対して45°から水平の間の角度で入射した場合の透過と反射を示す。この角度からの入射はすべて切子面ロからの入射になり、光k1のように、その透過光k2が直接接着層6に達する場合と、光m1のように、その透過光m2が切子面イで反射される場合がある。
切子面イへの入射角が最も小さくなるのは、切子面ロへ水平に入射した光であり、このときの切子面イへの入射角は61.9°で、臨界角は41.8°なので、全て全反射される。
スネルの法則を使って光発電素子1への入射角を計算する。光発電素子1の面を0°と180°として図示すると図10にようになる。45°での入射は、72.4°、水平での入射は65.8°、また、水平入射で切子面イで反射したものは、82.8°での入射となる。
(3)光がプリズムシート4に対して0°から180°のすべての角度で入射する場合
プリズムシート4は左右対称であるから、前述の(1)と(2)の結果を合わせて、更に90°対象としたものを合わせればよいから図11のようになる。
プリズムシート4は左右対称であるから、前述の(1)と(2)の結果を合わせて、更に90°対象としたものを合わせればよいから図11のようになる。
(4)プリズムシート4が無い場合
図12のように光発電素子1上に屈折率の異なる複数の層20、30が在っても、空気8とn型半導体2の屈折率n1、n4で光発電素子1への入射角が決まり、スネルの法則を使って光発電素子1への入射角を計算すると図13のようになる。
図12のように光発電素子1上に屈折率の異なる複数の層20、30が在っても、空気8とn型半導体2の屈折率n1、n4で光発電素子1への入射角が決まり、スネルの法則を使って光発電素子1への入射角を計算すると図13のようになる。
次に、プリズムシート4による光の閉じ込め効果を説明する。
図6のモデルで、プリズムシート4の内面で反射、屈折され、再び光発電素子1内部へ戻っていく光の角度を考える。
プリズムシートと空気との境界における反射、屈折
プリズムシート4と空気8との境界面での臨界角は41.8°であるから、図14に示した切子面イに引いた垂線ハに対して41.8°以下の角度で入射した光o1はo2の光経路で空気8中に逃げていく。
プリズムシート4と空気8との境界面での臨界角は41.8°であるから、図14に示した切子面イに引いた垂線ハに対して41.8°以下の角度で入射した光o1はo2の光経路で空気8中に逃げていく。
また、図15に示すように、切子面イに41.8°以上の角度で入射する光p1は全反射して切子面ロに到達する。切子面ロの臨界角も41.8°だからこれ以上の入射角の光p2は再び切子面ロで全反射し光発電素子1の内部へ戻っていく。切子面ロでの入射角が41.8°となる切子面イでの入射角は48.2°であるから、P点の入射角41.8〜48.2°の光は閉じ込められる。
図16に示すq1、q2の光経路で切子面ロに到達し、屈折し平行に進む光q3は空気8中へ出て隣のマイクロプリズム7で再び取り込まれる。このときの切子面ロへの入射角は28.1°となり、これ以上で入射する光は再び取り込まれる。この光のP点での入射角度は、48.2°〜61.9°となる。これ以上の角度で入射した光はr1、r2、r3の光経路で空気8中へ逃げる。切子面イでの反射位置によっては取り込まれる光もあるが一部なので無視する。
図17のs1の光経路でP点に入射し、平行に屈折する光s2の入射角は28.1°なので、28.1〜41.8°の角度で入射した光は再び取り込まれる。41.8°〜45°で入射した光t1はt2の光経路のように全反射し再び取り込まれる。
以上のことより、プリズムシート4の切子面イで反射、屈折され光発電素子1内部に戻っていく入射光の入射角を図18に示す。切子面ロに関しては切子面イと対称であるから図19のようになる。図18と図19をまとめると図20のようになる。
図20において、73.1°〜86.8°の光は切子面イでのみ閉じ込められ、切子面ロに達した光は空気8中へ逃げることになる。93.2°〜106.9°に関しても同様である。よって,これらの角度の光は半分が閉じ込められ、半分が空気8中へ逃げることとなる。しかし、0°〜16.9°の光は全て切子面ロに入射するので、100%閉じ込められることになる。163.1°〜180° も同様である。以上のことより、光発電素子1の内部から空気8中へ逃げる光と、閉じ込められる光の角度は図21のようになる。
また、プリズムシート4が無い場合は、n型半導体2と空気8の屈折率で臨界角が決まり、閉じ込め効果は図22のようになる。
一例としてプリズムシート4に対して60°で入射した場合の光の閉じ込め効果を説明する。以上を踏まえて、図23のように光がプリズムシート4に対して60°で入射した場合を考察する。
仰角60°で光u1がプリズムシート4の切子面イの中点に入射したとする。切子面イにおける入射角は75°となり、透過光u2は40.1°となる。この透過光u2の光発電素子1への入射角は、2.1°となり、この反射光u3は、図21で87.9°と同じであるために、切子面イに戻ってくると閉じ込め効果が得られる。反射光u3が頂点に戻ってくるときの反射位置の深さは、プリズムシート4の切子面の長さを1とすると2.42となる。
切子面イの中点に入射した光のうち、2.42より浅い位置で、全反射した光は閉じ込められることになる。また、中点より切子面ロ寄りで入射する光ほど、さらに深い位置で反射しても切子面イに戻るために、閉じ込められることになる。
よって、反射の起こりやすい屈折率の違いが大きな、接着層6とn型半導体2との境界面をできるだけ浅い位置に持ってくることで、反射光の閉じ込め効果が大きくなる。
以上のことより、入射光の仰角(ただし45°以上)が小さくなるにつれ、閉じ込め効果が得られる切子面イからの入射光の割合が増加することになる。
プリズムシート4が無い場合は、図13、図22に示されるように、入射光と出て行く光は、同じ経路であるため、反射光は全て空気8中に逃げることになる。
次に、散乱光の閉じ込め効果について説明する。一般的に散乱光は、光の入射軸方向が最も大きく、それ以外の方向は入射軸との余弦の割合で減少する。実際的な太陽電池の使用状況を考えると、水平から30°程度の傾きで設置されるために、垂直から45°程度での太陽光の入射が多くなる。この場合、図8に示すように、光発電素子1への入射角は72.4°〜82.8°、91.3°〜97.2°となる。プリズムシート4が無い場合は、図24に示すように、78.3〜90°となる。図21のようにプリズムシート4が有ると、散乱光のうち82.8°〜97.2°の角度は閉じ込め効果があるために、上記して入射光に対する散乱光のうち、強度の大きい散乱光が閉じ込められやすい。プリズムシート4が無い場合は、73.4°〜106.6°の間は空気中に逃げていく為、強度の大きい光が逃げやすくなる。
その他の効果としては、透明材料の反射率は一般的に入射角度が大きくなるほど大きくなる傾向があり、光vが斜めから入射する場合、図25の(1)のようにプリズムシート4が無い場合に比べ、図25の(2)のようにプリズムシート4が有ると入射角を小さくでき、反射を抑え入射光を増加できる。また、図26に示すように、光x1が垂直に近い角度で入射する場合は、反射光x2は隣のマイクロプリズム7の切子面ロで透過吸収できる。
実験による効果の検証結果を図27に示す。実験は、2つの光発電素子としての太陽電池セルを準備し、No1とNo2とする。No1とNo2の太陽電池セルを平板に固定し、同時に太陽光を入射し発電量の差を測定する。
次に、No2の太陽電池セルに上記したプリズムシート4を貼って同じ測定をし、No1の太陽電池セルとNo2の太陽電池セルの発電量の差を測定する。プリズムシート4を貼る以前の差と貼ったときの差の変化量が、プリズムシート4の効果となる。「基準」はプリズムシート4を貼る前のNo1の太陽電池セルとNo2の太陽電池セルの発電量の関係を示し、その他はNo2の太陽電池セルにプリズムシート4を貼った時のNo1の太陽電池セルとNo2の太陽電池セルとの関係を示す。A〜Hは測定日、測定時刻を変えて測定したものである。
以上のように、本発明の実施例にあっては、散乱、反射によって光発電素子1内から、接着層6、プリズムシート4に入射する光のうち、外部に逃げる光は、所定の角度で入射する光のみとなり、多くの光は再び光発電素子1内に戻ることになる。このように、光発電素子1に入射した光を長く、光発電素子1内に止める閉じ込め効果が得られ、光発電体の発電効率を改善することができる。
特に、光発電素子1とは別構成の表層部に均一なテクスチャー構造を形成すればよいために、テクスチャー構造を形成したプリズムシート4を、接着層6を構成する接着剤で光発電素子1の受光面に接着すればよく、光発電素子1の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなり、コストを低減すると共に、光発電体の受光面構造を容易に製作することができる。
また、本発明の実施例によれば、切子面構造は多数のマイクロプリズム7で構成してあり、それぞれのマイクロプリズム7は頂角が等しく、且つ等辺の切子面イ、ロを有しており、マイクロプリズム9は、それぞれのプリズム軸を平行させて隣接しているものであり、散乱、反射によって光発電素子1内から、プリズムシート7と接着層6に入射する光のうち、外部に逃げる光は、所定の角度で入射する光のみとなり、多くの光は再び光発電素子1内に戻ることになる。
このように、光発電素子1に入射した光を長く、光発電素子1内に止める閉じ込め効果が得られ、光発電体の発電効率を改善することができる。特に、多数のマイクロプリズム(テクスチャー構造)7を表面に形成したプリズムシート4を光発電素子1の受光面に接着すればよく、光発電素子1の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなり、コストを低減すると共に、光発電体の受光面構造を容易に製作することができる。
なお、薄膜を、表面に微小な多角形状のプリズムを多数有するプリズムシートで構成してもよい。微小な多角形状のプリズム、例えば、微小な多数の四角錐を並べた構成のプリズムシートを用いても光の閉じ込め効果が得られ、光発電体の発電効率を改善することができる。この場合も、微小な多角形状のプリズム(テクスチャー構造)を表面に形成したプリズムシートを光発電素子の受光面に接着すればよく、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなり、コストを低減すると共に、光発電体の受光面構造を容易に製作することができる。
すなわち、図28に示すように、微小な四角錐10を並べた構成の湾曲、曲折可能な光透過シート9を用いてもプリズムシート4と同様の原理で光の閉じ込め効果が得られる。四角錐10は他のすべの四角錐10と同じ頂角と等辺の切子面イ、ロ、ニ、ホを有する。更に、図28の構成においては、太陽光の入射面積がプリズムシート4より大きくなり、より多くの光を光発電素子1内に取り込めることになり、光発電体の発電効率を改善することができる。
なお、光発電素子1の受光面上にテクスチャー構造及び反射防止膜があっても、屈折率が受光面から光発電素子1の内部に向かって、増加するような材料を用いれば、上記した本発明の実施例と同じ効果が得られる。
本発明の光発電体の受光面構造は、表層部の各層及び光発電素子の材質の順で、屈折率が段階的に大きくしてあり、すなわち、光発電素子の材質、表層部の各層、空気の順で、屈折率が段階的に小さくしてあるために、散乱、反射によって光発電素子内から、表層部の各層に入射する光のうち、外部に逃げる光は、所定の角度で入射する光のみとなり、多くの光は再び光発電素子内に戻ることになる。このように、太陽光の入射面積を広げると同時に、光発電素子に入射した光を長く、光発電素子内に止める閉じ込め効果が得られ、光発電体の発電効率を改善することができる。特に、光発電素子とは別構成の表層部に均一なテクスチャー構造を形成すればよいために、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなる。すなわち、テクスチャー構造を形成した表層部の表層を接着層で光発電素子の受光面に接着すればよく、光発電素子の受光面に均一なテクスチャー構造を形成する必要がなくなり、コストを低減すると共に、光発電体の受光面構造を容易に製作することができるという効果を有しており、太陽電池等の光発電体の受光面構造として有用である。
1 光発電素子(太陽電池セル)
2 n型半導体
3 p型半導体
4 プリズムシート(表層)(表層部)
6 接着層(表層部)
7 マイクロプリズム
8 空気
10 四角錐
イ、ロ 切子面
2 n型半導体
3 p型半導体
4 プリズムシート(表層)(表層部)
6 接着層(表層部)
7 マイクロプリズム
8 空気
10 四角錐
イ、ロ 切子面
Claims (9)
- 光発電素子の受光面に、光透過性の表層部を設けた光発電体の受光面構造であって、
前記表層部は複数の層構成であり、これらの各層及び前記光発電素子の材質のそれぞれの屈折率を異ならせたことを特徴とする光発電体の受光面構造。 - 前記表層部の各層、前記光発電素子の材質の順で、段階的に屈折率を大きくするようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光発電体の受光面構造。
- 前記光発電素子は、単結晶シリコン光発電素子、多結晶シリコン光発電素子又はアモルファスシリコンのいずれかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光発電体の受光面構造。
- 前記表層部は、前記受光面に、接着層と表層とを、この順序に重ねて構成してあることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の光発電体の受光面構造。
- 前記表層が、空気と前記接着層の中間の屈折率を有する透明材料であって、テクスチャー構造を有する薄膜であることを特徴とする請求項4に記載の光発電体の受光面構造。
- 前記薄膜が、表面に反復的な切子面構造を有するプリズムシートで構成してあることを特徴とする請求項5に記載の光発電体の受光面構造。
- 前記切子面構造は多数のマイクロプリズムで構成してあり、それぞれのマイクロプリズムは頂角が等しく、且つ等辺の切子面を有しており、前記マイクロプリズムは、それぞれのプリズム軸を平行させて隣接していることを特徴とする請求項6に記載の光発電体の受光面構造。
- 前記薄膜が、表面に多角形状のマイクロプリズムを多数有するプリズムシートで構成してあることを特徴とする請求項5に記載の光発電体の受光面構造。
- 前記マイクロプリズムが角錐形状であることを特徴とする請求項8に記載の光発電体の受光面構造。
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-
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- 2004-05-28 JP JP2004158953A patent/JP2005340583A/ja active Pending
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