JP2005336026A - Lec法による化合物半導体単結晶の製造方法と製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
LEC法によって化合物半導体結晶を製造するに際し,安定した直径の単結晶を引き上げるようにする。
【解決手段】
液面が液体封止材bで覆われた原料融液aのから,化合物半導体単結晶cを引き上げて製造するLEC法において,原料融液aから引き上げられた化合物半導体単結晶cを囲むシールド17を配置し,結晶成長開始から成長終了までの間,このシールド17の下端を液体封止材bに浸漬させた状態に維持することにより,安定した直径の単結晶が得られる。シールド17は,昇降機構20,21によってるつぼ11に対して相対的に昇降させられるので,シールド17の比重を考慮する必要が無く,また,原料融液aに接触することによる汚染も発生しない。
【選択図】 図1

Description

本発明は,LEC法を用いた化合物半導体単結晶の製造方法と製造装置に関する。
シリコンや化合物半導体の単結晶を製造する方法として,るつぼの中に原料融液を貯留し,その原料融液表面に種結晶を接触させ,種結晶を原料融液に対して回転させながら引き上げることにより,単結晶を棒状に成長させる引上げ法(チョクラルスキー法)が知られている。この引上げ法を行う単結晶引上装置は,回転可能なるつぼと,単結晶を引き上げる引上げ軸を備えており,るつぼの外周を包囲するようにヒータが配置される。この構成により,るつぼ内に充填した原料融液をヒータによって加熱しながら,単結晶を引き上げる一連の工程が行われる。
かような引上げ法では,安定した直径の単結晶を引き上げることが,原料効率の上で大切になる。そこで,光学式や,重量微分式などの方法によって引上げ中の単結晶の直径を随時測定し,その測定値に基いて引上げ速度,ヒータ温度,るつぼ回転数などを制御することにより,直径の安定化をはかっている。
ところが,引上速度を制御する方法は,時定数は小さくできるが,引上速度が変化することによって,結晶の固化速度が変わりバルク特性に影響を与えてしまう。またるつぼ回転数を制御する方法も,原料融液中の対流及び温度分布が変化することにより固液界面形状が変化し,やはりバルク特性に影響を与えてしまう。一方,ヒータ温度を制御する方法は,バルク特性に与える影響は少ないが,原料融液全体の温度を変化させなければならないため時定数が非常に大きくなってしまう。また通常は,目標とするバルク特性や直径の範囲などに応じて引上げ速度等を組み合わせて制御しているが,それでも直径を安定させるのは難しい。特にLEC法では,原料融液表面が液体封止材で覆われており,直径制御はさらに難しい技術となっている。
そこで,原料融液に浮べたリング状の結晶形状制御部材の中央から単結晶を引き上げることにより直径を安定させるコラクル法が提案された。このコラクル法から派生した引上げ方法として,例えば特許第1339245号公報や特開昭58−15097号公報が開示されている。
特許第1339245号公報 特開昭58−15097号公報
しかしながら,コラクル法は液体封止材を使用しない引上げではある程度の成果が見られたが,原料融液に直接リングを浮かべる場合は,リングの比重,リングからの汚染なども考慮して材質を決定しなければならず,面倒である。また,液体封止材を用いるLEC法では,原料融液と液体封止材との界面にリングを浮遊させるため,リング材質の比重制限(封止材より大きく,融液より小さい)や,ハンドリング性の悪さ(融液固化後はリングが封止材と融液の間に取り残される)から,あまり大きな成果は得られなかった。
特にGaAs等の化合物半導体の単結晶成長では,結晶方位の関係から,一般に行われている(100)面でリング状の結晶形状制御部材が原料融液と単結晶との界面近傍に位置するコラクル法を適用すると双晶の発生確率が上がるのでほとんど採用されず,一部の(111)引上で採用されたのみであった。結局,現在ではLEC法においてコラクル法は主要な技術ではなくなった。
本発明の目的は,LEC法によって化合物半導体結晶を製造するに際し,双晶の発生を抑え安定した直径の単結晶を引き上げるようにすることにある。
即ち,本発明者らは,上記課題を解決するために鋭意研究した結果,原料融液から引き上げられた化合物半導体結晶を囲むシールドの下端を液体封止材に浸漬して成長させることで,直径制御性が向上することを見出し,本発明を完成するに至った。本発明によれば,液面が液体封止材で覆われた原料融液から,化合物半導体単結晶を引き上げて製造するLEC法による製造方法であって,前記原料融液から引き上げられた化合物半導体単結晶を囲むシールドを配置し,結晶成長開始から成長終了までの間,このシールドの下端を前記液体封止材に浸漬させた状態に維持することを特徴とする,化合物半導体単結晶の製造方法が提供される。
また本発明によれば,るつぼ内の原料融液の液面を液体封止材で覆いつつ,原料融液から化合物半導体単結晶を引き上げて製造するLEC法による製造装置であって,前記原料融液から引き上げられた化合物半導体単結晶を囲むシールドを,前記るつぼに対して相対的に昇降させる昇降機構を備え,結晶成長開始から成長終了までの間,前記シールドの下端が前記液体封止材に浸漬された状態に維持されることを特徴とする,化合物半導体単結晶の製造装置が提供される。
本発明によれば,LEC法によって化合物半導体結晶を製造するに際し,結晶成長開始から成長終了までの間,シールドの下端を液体封止材に浸漬させた状態に維持することにより,安定した直径の単結晶を引き上げることが可能となる。シールドは,昇降機構によってるつぼに対して相対的に昇降させられるので,シールドの比重を考慮する必要が無く,また,原料融液に接触することによる汚染も発生しないので,材質選択の幅が広がる。また本発明によれば,原料融液と単結晶との界面付近に結晶形状制御部材が位置しないために,コラクル法に比べてGaAs(100)面成長の場合の双晶発生確率を低くできる。更に本発明によれば,結晶成長終了後,昇降機構によってるつぼに対して相対的にシールドを上昇させることにより,シールドの下端を液体封止材の上方に容易に抜き出すことができるので,原料融液中にシールド下端が残ったまま固化することが無く,ハンドリングが容易である。
以下,本発明の好ましい実施の形態を,図面を参照にして説明する。図1は,本発明の実施の形態にかかる化合物半導体単結晶の製造装置1の概略を示している。
図1に示すように,製造装置1のケーシングとなる炉10の内部には,単結晶の原料融液aを貯留するるつぼ11が備えられている。原料融液aは,例えばGaAsなどの化合物半導体の融液である。るつぼ11内に貯留された原料融液aの液面は,液体封止材bによって覆われている。液体封止材bは,例えばBである。るつぼ11は上端が開口した有底の円筒形状をなす。このるつぼ11は,るつぼ11の外周壁及び底面の外側を包むサセプタ12によって保持されている。
るつぼ11内の原料融液aから単結晶cを引き上げる引上げ軸15が,炉10の天井からるつぼ11内部に向かって垂直に垂下されている。単結晶cは,例えばGaAs単結晶である。引上げ軸15は,るつぼ11の中心軸に一致して配置されている。引上げ軸15の下端には,単結晶cの種結晶(図示せず)が取り付けられている。引上げ軸15は,炉10の天井面を貫通し,引上げ軸15の上端には,炉10の外部に設けられた図示しない引上げ軸駆動機構が接続されている。そして,その図示しない引上げ軸駆動機構の稼動により,引上げ軸15下端に支持された種結晶を,るつぼ11の中心軸に沿って回転させながら昇降させるようになっている。
炉10の内部には,るつぼ11内の原料融液aを加熱するヒータ16が,るつぼ11の外周壁(サセプタ12の外周壁)を包囲するように配置されている。図示の例では,ヒータ16は,上中下の3段に分割された3つのリングヒータ部16a,16b,16cで構成されている。各リングヒータ部16a,16b,16cは,るつぼ11の中心軸を中心にして,るつぼ11(サセプタ12)を包囲するように配置され,かつ,各リングヒータ部16a,16b,16cは,いずれも炉10の内面に対して固定されている。
るつぼ11内に貯留されている原料融液aの上方には,後述するように引上げ軸15によって原料融液aから引き上げられる単結晶cの外周面を包囲するシールド17が備えられている。
図2は,シールド17の拡大斜視図である。シールド17は,後述するようにるつぼ11内の原料融液aから引き上げられる単結晶cの外側を囲むように形成された円筒部17aと,円筒部17a下端から下方に向って狭まるようにテーパー形状に形成されたテーパー部17bと,円筒部17aの上端から外側に向かって水平に突出するように取り付けられた一対の支持部17c,17cによって構成されている。これら円筒部17a,テーパー部17b,支持部17cはいずれもグラファイトからなり,シールド17全体が優れた熱遮断性能を有している。
テーパー部17bの下端は円形状に開口しており,円筒部17a及びテーパー部17bは,るつぼ11の中心軸を中心に配置されている。円筒部17a及びテーパー部17bは,るつぼ11の上面開口部からるつぼ11の内部に入出可能な大きさに形成され,かつ,引き上げ中の単結晶cの外周面を所定の隙間をあけて囲むことができる大きさに形成されている。後述するように原料融液aから単結晶cが引き上げられる際には,シールド17の下端(テーパー部17bの下端)が,原料融液aの液面を覆っている液体封止材bに浸漬された状態に維持されると共に,シールド17の円筒部17a及びテーパー部17bが単結晶cの外側を囲むように配置され,るつぼ11の周囲に配置されたヒータ16から単結晶cに輻射する輻射熱を遮るようになっている。
炉10の内壁面に沿って,ヒータ16の外周面とるつぼ11(サセプタ12)の底面を外側から包み込むように,断熱材18が配置されている。
炉10の下方には,炉10の内部でるつぼ11を回転及び昇降させるるつぼ昇降回転機構20と,炉10の内部でシールド17を昇降させるシールド昇降機構21が配置されている。これらるつぼ昇降回転機構20とシールド昇降機構21の稼動により,るつぼ11とシールド17は,それぞれ独立して昇降可能である。これにより,るつぼ11とヒータ16の相対高さ,ヒータ16とシールド17の相対高さ,るつぼ11とシールド17の相対高さが,それぞれ所望の距離に調整できるようになっている。
るつぼ11を載置させているサセプタ12は,回転及び昇降可能なるつぼ軸25の上端に支持されている。るつぼ軸25は,断熱材18及び炉10の底面を貫通し,その下端は,炉10の下方に配置されたるつぼ昇降回転機構20に接続されている。そして,るつぼ昇降回転機構20の回転駆動によって,るつぼ軸25上端に支持されたるつぼ11(サセプタ12)が炉10の内部において回転し,また,るつぼ昇降回転機構20の昇降駆動によって,るつぼ11(サセプタ12)が炉10の内部において所望の高さに上昇及び下降するようになっている。
シールド17は,左右両側に突設された支持部17c,17cを介して,2本のステンレス製の昇降ロッド26,27の上端に支持されている。これら2本の昇降ロッド26,27は断熱材18及び炉10の底面を貫通し,それらの下端が炉10の下方にいずれも突出している。炉10の下方において,一方の昇降ロッド26は,他方の昇降ロッド27に,接続部材28を介して固定されている。また,他方の昇降ロッド27の下端は,炉10の下方に配置されたシールド昇降機構21に接続されている。そして,シールド昇降機構21の昇降駆動により,炉10の内部において,シールド17が所望の高さに上昇及び下降するようになっている。
次に,以上に説明した製造装置1において,単結晶cを引き上げる方法を説明する。るつぼ11内には,予め原料融液aが貯留されており,原料融液aの液面全体は液体封止材bの層によって覆われた状態になっている。例えばGaAsの単結晶cを引き上げる場合であれば,るつぼ11内にその原料であるGaAs多結晶と液体封止材bを投入して昇温し,るつぼ11内で融解させても良いし,るつぼ11内にその原料であるGaとAsと液体封止材bを投入して昇温し,るつぼ11内でGaAsを合成させても良い。
そして,シールド昇降機構21の稼動によりシールド17を下降させるか,あるいは,るつぼ昇降回転機構20の駆動によってるつぼ11を上昇させることにより,図1に示したように,シールド17の下端(テーパー部17bの下端)が,原料融液aの液面を覆っている液体封止材bに浸漬された状態にする。この場合,シールド17の下端が,液体封止材bの液面よりは下方で,原料融液aの液面よりは上方に位置するようにさせる。こうしてシールド17の下端が液体封止材b中に存在し,原料融液aには接しない状態にする。なお,このようなシールド17下端の位置決めは,るつぼ11内に充填した原料融液aと液体封止材bの投入量から,シールド17下端が液体封止材b中となる高さを予め計算しておき,シールド昇降機構21もしくは昇降回転機構20の稼動を制御することによって行うことができる。あるいは,炉10の内部を覗く窓(図示せず)を設けておき,その窓を介してシールド17下端を見ながら,シールド昇降機構21もしくは昇降回転機構20の稼動を制御して,シールド17下端が液体封止材b中となるように位置決めしても良い。
次に,引上げ軸15をるつぼ11内の原料融液aに対して相対的に下降させることにより,引上げ軸15下端に取りつけた種結晶をるつぼ11内の原料融液a液面に接触させ,種結晶から単結晶cを成長させる。そして,引上げ軸15を原料融液aの液面から上昇させることにより,原料融液aの上方に単結晶cをゆっくりと引き上げていく。
また,このように単結晶cの成長を開始してから結晶成長を終了するまでの間,シールド昇降機構21もしくは昇降回転機構20の稼動を制御することにより,前述のように,シールド17の下端が液体封止材b中に位置し,原料融液aには接しない状態を維持する。なお,このように単結晶cの成長を開始してから結晶成長を終了するまでの間においても,シールド17下端の位置決めは,るつぼ11内に充填した原料融液a,液体封止材bの投入量,単結晶cの成長量から,シールド17下端が液体封止材b中となる高さを計算し,シールド昇降機構21もしくは昇降回転機構20の稼動を制御することによって行うことができる。あるいは,炉10の内部を覗く窓(図示せず)を設けておき,その窓を介してシールド17下端を見ながら,シールド昇降機構21もしくは昇降回転機構20の稼動を制御して,シールド17下端が液体封止材b中となるように位置決めしても良い。
そして結晶成長終了後,シールド昇降機構21の稼動によりシールド17を上昇させるか,あるいは,るつぼ昇降回転機構20の駆動によってるつぼ11を下降させることにより,シールド17をるつぼ11内から引き抜いて上昇させ,シールド17の下端を,液体封止材b中から引き上げる。そして降温後,炉10の内部から単結晶cを取り出す。
こうして,安定した直径の単結晶cを引き上げることが可能となり,コラクル法と同等の直径制御性が実現できる。その理由は明かではないが,シールド17の下端を液体封止材b中に浸漬させたことにより,シールド17の下端近傍で原料融液a中に形成される直径方向の温度勾配が急勾配となっているのではないかと推察される。なお,ヒータ16による加熱温度を制御して単結晶cの直径を制御する場合は,ヒータ16からの輻射によるシールド17の温度変化が,シールド17自体の熱伝導によってシールド17の下端に伝わるために,原料融液と単結晶界面近傍の温度制御の時定数が小さくなると推察される。
シールド17は,シールド昇降機構21によって支持されるので,シールド17の比重を考慮することなくその下端位置を所望の高さに維持することができる。また,シールド17の下端が原料融液aには接しない状態に維持しているので,シールド17による原料融液aの汚染を考慮する必要が無く,材質選択の幅が広がる。また結晶成長終了後,シールド17の下端を液体封止材bの上方に容易に抜き出すことができ,原料融液a中にシールド17下端が残ったまま固化することが無く,ハンドリングも容易である。
以上,本発明の好適な実施の形態の一例を示したが,本発明はここで説明した形態に限定されないことは勿論であり,適宜変更実施することが可能である。本実施の形態においては,るつぼ11とシールド17の両方を昇降可能な構成としたが,るつぼ11とシールド17のうち一方が昇降可能な構成であれば,シールド17の下端を液体封止材bに浸漬させた状態に維持することが可能である。例えば,るつぼ11を固定してシールド17を昇降可能な構成としても良い。また,シールド17を固定してるつぼ11を昇降可能な構成としても良い。
シールド17の形状は,本実施の形態で示したような形状に限定されず,ヒータ16から単結晶cへの輻射熱を遮ることができるものであれば,種々の形状に変形可能である。例えば,シールド17全体が円筒形状,あるいはシールド17全体が下方に向かうに従って直径が小さくなるテーパー形状であっても良い。また,シールド17の材質には,ヒータ16から単結晶cへの輻射熱を遮ることができるものであれば,種々のものを使用可能である。
シールド17を支持して昇降させる機構は,2本の昇降ロッド26,27を用いるものに限定されない。例えば,炉10の天井部から複数本のワイヤーを垂下させ,複数本のワイヤーによってシールド17を吊り下げて支持し,各ワイヤーを互いに同期させながら巻き上げることにより,シールド17下端を略水平に維持して上昇させることもできる。るつぼ11を支持して昇降させる機構も同様である。
本発明は,GaAsの他,種々の化合物半導体の単結晶成長に適用できる。また,るつぼ昇降回転機構20やシールド昇降機構21の稼動を司るコントローラを設け,予め定めたプログラムに従ってるつぼ昇降回転機構20やシールド昇降機構21の稼動を制御し,るつぼ11とシールド17の相対的な高さを調整するようにしても良い。その場合,るつぼ11の高さ,るつぼ11内の原料融液aの液面高さ,液体封止材bの液面高さ,シールド17の下端の高さなどを検知する検出機構を必要に応じて配置し,それら各検出機構による検出信号に基いて,前記コントローラによって,るつぼ昇降回転機構20やシールド昇降機構21の稼動を制御するようにすれば,自動運転もできるようになる。また結晶成長中,直径は光学式,重量微分式等いずれの方式で測定することもできる。また,直径を制御するための制御対象(引上速度,ヒータ温度,るつぼ回転数など)は問わない。
図1で説明した製造装置を用いて,GaAs単結晶を実際に成長させた。炉は観察用の窓を備え,ヒータはグラファイト製である。シールドはグラファイト製で高さを固定し,下端内径はφ160mmとした。内径φ200mmの回転昇降可能なpBN製のるつぼにGaとAsを投入して昇温し,合成後に結晶成長を行う直接合成方式とした。Gaの投入量は7000g,Asの投入量は7700g,液体封止材としてBを900g投入した。GaAs合成後,原料を融解したの液体封止材の厚みは18mmであった。結晶成長中,直径を重量微分式で測定し,ヒータ温度を制御することにより,目標の重量微分値を8.7g/minとした。シールド下端が液体封止材(B)中に浸漬する位置を予め計算しておき,その位置となるようにるつぼを昇降させた。また,炉に設けた観察用の窓から実際のディップ時のるつぼ位置を確認し,さらにシールド下端が液体封止材中に7mm浸漬するようにるつぼ位置を昇降させた。そして,種結晶を原料融液に接触させ,成長を開始させた。結晶成長中は,成長結晶重量から残りの原料融液量を計算し,シールド下端が液体封止材中に常に浸漬されるようにるつぼ位置を自動調整した。なお,結晶が液体封止材から受ける浮力も考慮した。成長終了後,るつぼ位置を下げてシールド下端を液体封止材中から引き上げ,降温した。
(比較例)
シールド下端を液体封止材の液面から7mm上方に離した状態に維持した以外は,実施例と同様にしてGaAs単結晶を成長させた。
(結果の比較)
直径の制御性を直胴部成長開始から1000分間の1分毎の重量微分値で比較すると,以下の様になった。
実施例 ave.=8.70g/min σ=0.27g/min min=8.00g/min max=9.66g/min
比較例 ave.=8.70g/min σ=0.43g/min min=7.63g/min max=9.95g/min
標準偏差は実施例の方が小さく,また最小値と最大値の差も小さいことから,実施例の方が直径制御性に優れていることが分かる。
また,不純物の取り込みについて,FT-IRによる結晶中C濃度評価を行った。実施例ではグラファイト製のシールドをB中にディップさせているため,Cの取り込みが予想されるためである。その結果,実施例:1.2〜2.2e15 cm−3,比較例:1.2〜2.4e15 cm−3となった。実施例と比較例のC濃度は同等であり,シールド材質由来のCが結晶中に過多に取り込まれることは無かった。実施例で製造した結晶をSIMS分析した結果,金属不純物はすべて検出限界以下であった。また,実施例,比較例ともに双晶の発生は無かった。
本発明は,化合物半導体単結晶の製造に利用できる。
本発明の実施の形態にかかる化合物半導体単結晶の製造装置の概略を示す説明図である。 シールドの拡大斜視図である。
符号の説明
a 原料融液
b 液体封止材
c 単結晶
1 製造装置
10 炉
11 るつぼ
15 引上げ軸
16 ヒータ
17 シールド
20 るつぼ昇降回転機構
21 シールド昇降機構

Claims (2)

  1. 液面が液体封止材で覆われた原料融液から,化合物半導体単結晶を引き上げて製造するLEC法による製造方法であって,
    前記原料融液から引き上げられた化合物半導体単結晶を囲むシールドを配置し,結晶成長開始から成長終了までの間,このシールドの下端を前記液体封止材に浸漬させた状態に維持することを特徴とする,化合物半導体単結晶の製造方法。
  2. るつぼ内の原料融液の液面を液体封止材で覆いつつ,原料融液から化合物半導体単結晶を引き上げて製造するLEC法による製造装置であって,
    前記原料融液から引き上げられた化合物半導体単結晶を囲むシールドを,前記るつぼに対して相対的に昇降させる昇降機構を備え,
    結晶成長開始から成長終了までの間,前記シールドの下端が前記液体封止材に浸漬された状態に維持されることを特徴とする,化合物半導体単結晶の製造装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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