JP2005328714A - 神経発達障害に及ぼす効果を評価するための細胞および方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 アリルハイドロカーボン受容体遺伝子を有する受容体発現用核酸を導入して得られる神経芽細胞腫細胞であって、アリルハイドロカーボン受容体の基質を未添加の状態で突起の伸長がみられる神経芽細胞腫細胞を提供する。また、このような細胞を使用して、神経発達障害のマーカーを取得する方法、および被検物質が神経発達障害に及ぼす効果を判定する方法を提供する。
【選択図】図1
Description
Petersen SL et. al. J. Comp. Neurol. 2000, 427(3): 428-439 Pollenz RS. et. al. Mol. Pharmacol. 1999 56(6): 1127-1137 Wormke M. et al., Mol. Cell. Biol. (2003) 23(6): 1843-55 野原ら, JST & CREST 内分泌かく乱物質 第4回領域シンポジウム 講演要旨集 2003 71
(a)AhR遺伝子の調整
AhR遺伝子を調製する。AhR遺伝子は、その塩基配列が明らかとなっているので、たとえばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用して単離することができる。PCRの鋳型として使用できる核酸には、たとえば任意の細胞から抽出したRNAから合成したcDNA、または市販のcDNAなどを使用すればよい。また、AhR遺伝子は、いずれの種に由来する遺伝子であってもく、たとえばラット、ヒトもしくはマウスなどの哺乳類由来、またはゼブラフィッシュもしくはメダカなどの魚類由来、またはニワトリなどの鳥類由来のいずれであってもよい。好ましくは、哺乳類、特にヒト由来の遺伝子である。AhR遺伝子は、天然に存在する遺伝子のままであってもよい。また、AhRタンパク質の機能を変化させない限りにおいては、人為的に一部を改変した遺伝子であってもよい。たとえば、AhR遺伝子の1つまたは数個の塩基が、欠失、付加、または置換されたものが含まれる。また、たとえば翻訳開始コドンまえの塩基配列をコザック配列に変更ししたものなどが含まれる。
次いで、上記AhR遺伝子を発現用核酸に組み込む。発現用核酸とてしては、適切な微生物内で機能する複製起点および薬剤耐性遺伝子などを有するプラスミドがあげられる。発現用核酸には、少なくとも1種類以上の薬剤耐性遺伝子は組み込まれていることが好ましい。たとえば、微生物内での発現用核酸の維持に必要な薬剤耐性遺伝子および核酸が導入された細胞の選抜に必要な薬剤耐性遺伝子の2種類の薬剤耐性遺伝子をもつ発現用核酸などがあげられる。薬剤耐性遺伝子には、たとえばゼオシン耐性遺伝子およびハイグロマイシン耐性遺伝子などがあげられる。このようなプラスミドは、市販のものを使用することができる。
次いで、上記(b)で作製した受容体発現用核酸を神経芽細胞腫細胞に導入する。たとえば、まず細胞を培養容器に播き、10%牛胎児血清を含むMEMダルベッコ・ハムF12等比混合(DF1:1)培地などの培地中において、5%CO2条件下で37℃において数時間から1晩程度インキュベートする。このように培養した細胞に上記受容体発現用核酸を導入する。細胞への受容体発現用核酸の導入法としては、たとえばリポフェクタミン法、エレクトロポレーション法、DEAE-デキストラン法、リン酸カルシウム法などの当業者に既知のいずれの方法を使用して行うこともできる。たとえば、リポフェクタミン2000(インビトロジェン社製)を使用することもでき、市販のマニュアルに従って、導入する受容体発現用核酸の量、リポフェクタミン2000の量、および細胞数などをあらかじめ決定しておくことが好ましい。細胞に導入する受容体発現用核酸は、適当な制限酵素で消化して直鎖状にしてから導入してもよい。
次いで、上記(c)で得られた細胞から、以下の(1)〜(3)全ての条件をみたす細胞株を選抜する。選抜の順序は任意であり、どの選抜を先におこなってもよい。
まず、AhR活性型細胞と、AhR受容体発現用核酸を非導入の同種細胞の双方から、それぞれRNAを抽出する。次いで、RNAの発現量を比較できる任意の方法により、これらのRNAの両者間で発現量が異なる遺伝子を探索する。発現量に差を有するRNAの探索は、当業者に既知のいずれの手段を使用してもよく、たとえばサブトラクション法、ディファレンシャル・ディスプレイ法、およびDNAチップなどを使用することができる。
神経発達障害マーカー遺伝子の場合と同様に、、AhR受容体発現用核酸を非導入の同種細胞の双方をから、それぞれタンパク質を抽出する。次いで、タンパク質の発現量を比較できる任意の方法により、両者間で発現量が異なるタンパク質を探索する。タンパク質の発現量を比較する方法は、当業者に既知のいずれの手段を使用してもよく、たとえば二次元電気泳動法、プロテインチップなどを使用することができる。
まず、被検物質とAhR活性型細胞を接触させる。接触は、たとえば被検物質を添加した培地と添加しない培地において、AhR活性型細胞を培養することによって行うことができる。これらの培地で適当な期間培養を続けたのち、細胞の比較をおこなう。比較は、細胞の表現型、すなわち形状の変化を指標として行うことができる。また、AhR活性化のマーカーとなる遺伝子もしくはタンパク質の発現の変化を指標に行うこともできる。
ラット脳からRNeasyキット(キアゲン社製)を使用して全RNAを抽出した。抽出したRNAをオリゴ(dT)プライマーを使用して逆転写する。次いで、これを鋳型に、Pyrobest DNAポリメラーゼを使用して、変性:94℃ 1分、アニーリング:55℃ 1分、伸長:72℃ 4分を1サイクルとする25サイクルのPCR反応をおこない、ラットAhR遺伝子のコーディング領域を増幅した。プライマーには、フォワードプライマー:5’- CCCAAGCTTACCATGAGCAGCGGCGCCAACATCA、リバースプライマー:5’-CCGCTCGAGAGGAATCCGCTGGGTGTGATATCAGを使用した。フォワードプライマーの5’末端にHindIII認識配列を付加し、リバースプライマーの5’末端にXhoI認識配列を付加した。さらに、リバースプライマーは、AhRタンパク質がV5エピトープとヒスチジンタグが付加された融合タンパク質として発現するように設計した。
発現用核酸には、pcDNA4/V5-His B(インビトロジェン社製)を使用した。このpcDNA4/V5-His Bは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列とV5エピトープ配列との間にマルチクローニングサイト(MCS)が配置されている。MCS内の適当な制限酵素部に所望の遺伝子をコードする配列を組み込むことにより、CMVプロモーターの制御下で目的とするタンパク質を過剰発現させることができる。
アリルハイドロカーボン受容体発現用核酸pcDNA4-rAhRのNeuro2aへの導入には、リポフェクタミン2000(インビトロジェン社製)を使用した。Neuro2aを24ウェルプレートにおいて80%コンフルエント(2×105細胞)で継代し、DF1:1培地で一晩培養した。2μlのリポフェクタミン2000を50μlのOpti-MEM培地(ギブコ社製)と混合し、室温で15分間静置した後、0.8μgの実施例2で作製した受容体発現用核酸pcDNA4-rAhRを含むOpti-MEM培地50μlとよく混ぜ合わせた。pcDNA4-rAhRは、MunIで消化して直鎖状にした後に使用した。リポフェクタミン2000と受容体発現用核酸の混合液を室温で20分間静置して、24ウェルプレートにおいてあらかじめ培養しておいたNeuro2aに加えて穏やかに混合した。24時間培養した後、Neuro2aを新鮮なDF1:1培地で1/50希釈して6ウェルプレートに植え継ぎ、さらに培養を続けた。24時間後、ゼオシン(インビトロジェン社製)を300μg/mlの濃度で培地に添加し、pcDNA4-rAhRが導入された細胞の選抜を開始した。以降は、3〜4日ごとに300μg/mlでゼオシンを含む新鮮な培地に交換して培養を継続した。2週間後、クローニングリング(イワキ社製)を使用して、76種のゼオシン耐性細胞のコロニーを得た。これらの細胞を、受容体発現用核酸pcDNA4-rAhRを安定に保持する細胞株として選抜した。
実施例3で得た76種の細胞株を、DF1:1培地で3〜5日間培養をおこない、各細胞株において細胞の形状を観察した。観察は倒立顕微鏡下でおこない、突起伸長の頻度が高い細胞株を選抜した。このとき、親株である神経芽細胞腫由来Neuro2aを同じ条件下で培養し、同様の観察をおこなったが、突起を伸長する細胞はほとんど観察されなかった。
Claims (10)
- アリルハイドロカーボン受容体遺伝子を有する受容体発現用核酸を導入して得られる神経芽細胞腫細胞であって、アリルハイドロカーボン受容体の基質を未添加の状態で突起の伸長がみられる神経芽細胞腫細胞。
- 前記神経芽細胞腫細胞がマウス由来のNeuro2a細胞である、請求項1記載の細胞。
- 前記細胞が、受領番号FERM AP-20043の細胞またはこの細胞に由来する変異株である、請求項1に記載の細胞。
- 前記細胞が、受領番号FERM AP-20044の細胞またはこの細胞に由来する変異株である、請求項1に記載の細胞。
- 神経発達障害のマーカー遺伝子を取得する方法であって、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞とアリルハイドロカーボン受容体遺伝子を導入していない細胞との間で遺伝子の発現量を比較することにより、両細胞間で発現量が異なる遺伝子をアリルハイドロカーボン受容体を介した神経発達障害のマーカー遺伝子として取得することを特徴とする方法。 - 神経発達障害のマーカータンパク質を取得する方法であって、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞とアリルハイドロカーボン受容体遺伝子を導入していない細胞との間でタンパク質の発現量を比較することにより、両細胞間で発現量が異なるタンパク質をアリルハイドロカーボン受容体を介した神経発達障害のマーカータンパク質として取得することを特徴とする方法。 - 被検物質が、アリルハイドロカーボン受容体を介した神経発達障害に及ぼす効果を判定する方法であって、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞と前記被検物質を接触させることと、
前記細胞の形状の変化を測定することと、
を含む方法。 - 前記細胞の形状の変化が、該細胞が伸長する突起の頻度の減少である、請求項12記載の方法。
- 被検物質が、アリルハイドロカーボン受容体を介した神経発達障害に及ぼす効果を判定する方法であって、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞と前記被検物質を接触させることと、
前記細胞において、請求項5に記載のマーカー遺伝子または請求項6に記載のマーカータンパク質の発現量の変化を測定することと、
を含む方法。 - 前記マーカーが、アセチルコリンエステラーゼ遺伝子またはアセチルコリンエステラーゼタンパク質の発現量の変化である、請求項14記載の方法。
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