JP2005320595A - 表面処理方法および基材 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルカリ性を示す液体に対する高い耐性を付与し得る表面処理方法、また、かかる表面処理方法により処理が施された基材を提供すること。
【解決手段】本発明の表面処理方法は、基材4の表面に存在する水酸基に対し、第1のカップリング剤と、第1のカップリング剤が有する官能基の重量平均分子量よりも大きさが小さい官能基を有する第2のカップリング剤とにより処理を施すカップリング剤処理を有する表面処理方法である。また、第1のカップリング剤による表面処理を施した後に、第2のカップリング剤による表面処理を施すのが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、表面処理方法および基材に関する。
近年、基材にカップリング剤による表面処理を施すことにより、撥液性、親液性および反応性等の特性を基材に付与することが行われている。
例えば、特許文献1には、基材(ガラス)に撥液性を有するカップリング剤による表面処理を施すことにより、基材に撥液性を付与するものが開示されている。
しがしながら、このような基材では、カップリング剤が有する官能基の分子量によっては、基材表面に未反応の水酸基が残存する場合があり、この場合、アルカリ溶液等を長時間接触させると、その表面の水酸基が残存する部分から変質・劣化が生じるという問題がある。
特開平4−132637号公報
本発明は、アルカリ性を示す液体に対する高い耐性を付与し得る表面処理方法、また、かかる表面処理方法により処理が施された基材を提供することを目的とする。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の表面処理方法は、表面に水酸基が存在する基材に対し、第1の官能基を有する第1のカップリング剤と、第1の官能基の重量平均分子量より小さい重量平均分子量の第2の官能基を有する第2のカップリング剤とにより表面処理を施すことを特徴とする。
これにより、カップリング剤の種類に応じた特性と、アルカリ性を示す液体に対する耐性との双方の特性を発揮する基材(処理済基材)とすることができる。
本発明の表面処理方法では、前記第1のカップリング剤による表面処理を施した後に、前記第2のカップリング剤による表面処理を施すことが好ましい。
これにより、カップリング剤の種類に応じた特性と、アルカリ性を示す液体に対する耐性との双方の特性をより顕著に発揮する基材(処理済基材)とすることができる。
本発明の表面処理方法では、前記第1のカップリング剤による表面処理後に、前記基材の表面に残存する水酸基に、前記第2のカップリング剤による表面処理により前記第2のカップリング剤を結合させることが好ましい。
本発明の表面処理方法では、前記第1の官能基の重量平均分子量をAとし、前記第2の官能基の重量平均分子量をBとしたとき、A/Bが1.5〜10なる関係を満足することが好ましい。
かかる関係を満足することにより、基材の表面に残存する水酸基を減少させて基材のアルカリ性を示す液体に対する耐性を向上させつつ、カップリング剤の種類に応じた特性を確実に基材に付与することができる。
本発明の表面処理方法では、前記第1の官能基の重量平均分子量は、1000以上であることが好ましい。
第1の官能基の重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、第1の官能基(第1のカップリング剤)の種類に応じた特性を確実に基材に付与することができる。
また、第1の官能基の基材表面での密度が適度なものとなり、第2のカップリング剤による表面処理において、第1の官能基と第2の官能基との間に立体障害が生じることをより確実に防止または低減させることができる。
本発明の表面処理方法では、前記第2の官能基の重量平均分子量は、600以下であることが好ましい。
第2の官能基の重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、第1および第2の官能基同士で、立体障害が生じることをより確実に防止または低減することができ、基材の表面に残存する水酸基をより効率良く減少させることができる。
そして、それぞれ隣り合う第1および第2の官能基同士が複雑(三次元的)に絡み合い、基材の表面を覆うようになる。その結果、カップリング剤の種類に応じた特性がさらに向上するとともに、基材の表面に残存する水酸基へのアルカリ性を示す液体の接触の機会を減少し得るという効果も得られる。
本発明の表面処理方法では、前記第1の官能基と前記第2の官能基とは、同一の特性を示すものであることが好ましい。
これにより、前記基材に付与されるカップリング剤の種類に応じた特性をより向上させることができる。
本発明の基材は、本発明の表面処理方法により処理が施されたことを特徴とする。
これにより、カップリング剤の種類に応じた特性と、アルカリ性を示す液体に対する耐性との双方の特性を発揮する基材(処理済基材)が得られる。
本発明者は、上記問題点に鑑み、検討を重ねた結果、カップリング剤による表面処理(1回目の表面処理)により基材表面に残存している水酸基を減少させるために、前記表面処理において用いたカップリング剤と同一のカップリング剤を用いて2回目の表面処理を行うことを試みた。
ところが、一般に、カップリング剤は、分子量が比較的大きい官能基を有するものの方が、カップリング剤の種類に応じた特性が向上する傾向を示すことから、かかるカップリング剤が選択して使用されることが多い。
そのため、2回目の表面処理により基材表面に残存している水酸基にカップリング剤を結合させる場合、1回目の表面処理で基材の表面に結合したカップリング剤の官能基により、基材の表面が覆われたような状態となることや、1回目の表面処理と2回目の表面処理とに用いられるカップリング剤が有する官能基同士の間に立体障害が生じたりすること等が一要因となり、2回目の表面処理で用いるカップリング剤が、前記基材の表面に到達し得ないという困難が生じることを見出した。その結果、この表面処理が施された基材に、カップリング剤の種類に応じた特性を付与し得るものの、アルカリ性を示す液体に対する耐性を十分に付与することができないという問題が生じた。
そこで、本発明者は、さらに鋭意検討を重ね、異なる重量平均分子量を有するカップリング剤を用いて基材に表面処理を施すことにより、基材の表面に存在する水酸基の量を減少させてアルカリ性を示す液体に対する耐性を向上させつつ、目的とするカップリング剤の種類に応じた特性を基材に十分に付与できることを見出した。
すなわち、本発明は、表面に水酸基が存在する基材に対し、第1の官能基を有する第1のカップリング剤と、第1の官能基の重量平均分子量より小さい重量平均分子量の第2の官能基を有する第2のカップリング剤とにより表面処理を施すことに特徴を有する。これにより、それぞれのカップリング剤が有する官能基同士の間の相互作用を低下させて、基材の表面に第1のカップリング剤を効率良く結合させるとともに、このものが有する第1の官能基の間を埋めるように第2のカップリング剤を結合させることができる。その結果、処理が施された基材(処理済基材)を、カップリング剤(第1の官能基)の種類に応じた特性と、アルカリ性を示す液体に対する耐性との双方の特性を発揮し得るものとすることができる。
かかる表面処理の方法としては、A:第1のカップリング剤による表面処理(第1の表面処理)の後に、第2のカップリング剤による表面処理(第2の表面処理)を施す方法、B:第2のカップリング剤による表面処理の後に、第1のカップリング剤による表面処理を施す方法、およびC:第1のカップリング剤による表面処理と第2のカップリング剤による表面処理とをほぼ同時に施す方法がある。
これらの中でも、特に、Aの方法を用いるのが好ましい。Aの方法では、第1の表面処理を先に行うため、目的とする特性に影響を及ぼす第1の官能基を有する第1のカップリング剤を十分に基材の表面に結合させることができる。
次いで行われる第2の表面処理に用いる第2のカップリング剤は、その第2の官能基が、第1のカップリング剤が有する第1の官能基より重量平均分量が小さいため、第1の官能基との間に生じる立体障害(相互作用)が防止または低減される。その結果、第1の表面処理により基材の表面に残存した水酸基に、第2のカップリング剤を十分に結合させることができる。
このようなことから、この表面処理が施される基材(処理済基材)を、カップリング剤の種類に応じた特性と、アルカリ性を示す液体に対する耐性との双方の特性をより顕著に発揮するものとすることができる。
以下では、前記Aの方法を代表に、本発明の表面処理方法およびかかる表面処理方法により処理が施された基材について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<表面処理方法>
まず、本発明の表面処理方法の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の表面処理方法を説明するための模式図(縦断面図)である。
なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本発明の表面処理方法は、[1]第1の表面処理工程と、[2]第2の表面処理工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
まず、基材4を用意する(図1(a)参照。)。
基材4は、その表面に水酸基が存在するものであれば、いかなるものであってもよいが、例えば、基材4自体の表面に水酸基が存在するもの、母材41の上面に膜42を形成することにより、その表面に水酸基が導入されたもの等が挙げられる。
本実施形態では、後者の場合を代表に説明する。
母材41は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、例えば、石英ガラス、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、各種低誘電率材料(いわゆる、low−K材)等の各種絶縁材料(誘電体)や、シリコン(例えば、アモルファスシリコン、多結晶シリコン等)、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム酸化物(IO)、酸化スズ(SnO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、Al、Al合金、Cr、Mo、Ta等の導電性材料で構成されたものを用いることができる。
次に、この母材41に膜42を形成する。
膜42の構成材料としては、例えば、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化チタン(TiO)のような各種酸化物材料が挙げられる。
この膜42を母材41の上面に形成する方法としては、例えば、熱酸化法、CVD法(化学気相成長法)等を用いることができる。
SiO膜をCVD法により形成する場合には、例えば、所定圧力のチャンバ内に、シリコン酸化物前駆体と酸素原子を含むガスとを導入し、母材41を加熱することにより、行うことができる。
シリコン酸化物前駆体としては、例えば、ジクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、テトラキス(ヒドロカルビルアミノ)シラン、トリス(ヒドロカルビルアミノ)シラン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸素原子を含むガスとしては、例えば、酸素(純酸素)、オゾン、過酸化水素、水蒸気、一酸化窒素、二酸化窒素、酸化二窒素等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
加熱の温度(加熱温度)は、300〜1000℃程度であるのが好ましく、500〜800℃程度であるのがより好ましい。
加熱の時間(加熱時間)は、加熱温度を前記範囲とする場合には、10〜90分程度であるのが好ましく、20〜60分程度であるのがより好ましい。
チャンバ内の圧力(真空度)は、0.05Torr〜大気圧(760Torr)程度であるのが好ましく、0.1〜500Torr程度であるのがより好ましい。
また、シリコン酸化物前駆体と酸素原子を含むガスとの混合比は、モル比で10:1〜1:100程度であるのが好ましく、1:2〜1:10程度であるのがより好ましい。
[1]第1の表面処理工程
次に、基材4の表面に存在する水酸基と第1の官能基を有する第1のカップリング剤とを反応させる。これにより、この水酸基と第1のカップリング剤とが結合を形成し、基材4の表面に第1のカップリング剤が結合する。
この基材4の表面に存在する水酸基と第1のカップリング剤とを反応させる方法としては、各種の方法を用いることができるが、例えば、I:第1のカップリング剤を含有する溶液に基材4を浸漬する方法(浸漬法)、II:基材4の表面に第1のカップリング剤を含有する溶液を塗布する方法(塗布法)、III:基材4の表面に第1のカップリング剤を含有する溶液を噴霧(シャワー)する方法(噴霧法)によって行うことができるが、これらの中でも、浸漬法を用いるのが好ましい。
浸漬法によれば、一度に大量の基材4を処理することができ、基材4の表面に均一に第1のカップリング剤を結合させることができる。
以下では、浸漬法によって基材4の表面に存在する水酸基と第1のカップリング剤とを反応させる場合について説明する。
まず、第1のカップリング剤を有機溶媒に溶解して処理溶液を調製する。
第1のカップリング剤としては、例えば、Ti、Li、Si、Na、K、Mg、Ca、St、Ba、Al、In、Ge、Bi、Fe、Cu、Y、Zr、Ta等を有する各種金属アルコキシドを用いることができるが、これらの中でも、一般的に、Si、Ti、Al、Zr等を有する金属アルコキシドが用いられるが、特に、Siを有するシラン系カップリング剤(金属アルコキシド)を用いるのが好ましい。シラン系カップリング剤は、安価であり入手が容易である。
ここで、シラン系カップリング剤は、一般式RfSiX(4−n)(但し、Xは、加水分解によりシラノール基を生成する加水分解基、Rfは各種の特性を有する官能基である。また、nは1〜3の整数である。)で表される。
この第1の官能基の重量平均分子量は、1000以上であるのが好ましく、1000〜5000程度であるのがより好ましい。第1の官能基の重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、第1の官能基(第1のカップリング剤)の種類に応じた特性を確実に基材4に付与することができる。
また、第1の官能基の基材表面での密度が適度なものとなり、後述する次工程[2]において、第1の官能基と第2の官能基との間に立体障害が生じることをより確実に防止または低減させることができる。
第1のカップリング剤を溶解する溶媒としては、各種のものが用いられるが、例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼンのような芳香族炭化水素系溶媒を用いることができる。
この処理溶液におけるカップリング剤の濃度は、0.01〜0.5wt%程度であるのが好ましく、0.1〜0.3wt%程度であるのがより好ましい。
次に、この処理溶液に、基材4を一定時間浸漬した後に、この基材4を引き上げる。
この基材4を、第1のカップリング剤の処理溶液中に浸漬すると、第1のカップリング剤の加水分解基が加水分解されてシラール基が生成される。そして、このシラール基と、基材4の表面の水酸基とが結合し、第1のカップリング剤が基材4の表面に結合する。(図1(b)参照。)。
前記処理溶液にこの基材4を浸漬する際の温度は、10〜200℃程度であるのが好ましく、20〜100℃程度であるのがより好ましい。
基材4の浸漬時間は、0.1〜180sec程度であるのが好ましく、10〜60sec程度であるのがより好ましい。
基材4の引き上げ速度は、0.5〜50mm/sec程度であるのが好ましく、10〜30mm/sec程度であるのがより好ましい。
基材4を前記処理溶液に浸漬する際の条件を、上述したような条件の範囲とすることにより、基材4の表面に第1のカップリング剤を確実に結合させることができる。
なお、基材4の表面に第1のカップリング剤を結合させた後に、この基材4に加熱処理(アニール処理)を行うようにしてもよい。これにより、前記溶媒が基材4上から確実に除去されて、第1のカップリング剤が有するシラール基と、基材4の表面の水酸基との結合をより強固なものとすることができる。
この熱処理は、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、100〜250℃程度×10〜150秒程度で行うのが好ましく、150〜220℃程度×50〜100秒程度で行うのがより好ましい。
[2]第2の表面処理工程
前記工程[1]を施すことにより、図1(b)に示すように、基材4の表面に結合した第1のカップリング剤が有する第1の官能基により、基材の表面が覆われたような状態となったり、第1の官能基同士の間に立体障害が生じたりすること等により、基材4の表面には、第1のカップリング剤と結合し得ない水酸基が残存している。
この水酸基が残存した部分は、アルカリに対する耐性が低いことから、かかる基材4が、アルカリ性を示す液体に長期間接触すると、この液体により水酸基が残存する部分から基材4の浸食が開始し劣化(分解)する。これにより、カップリング剤が基材4の表面離脱(剥離)して、カップリング剤の種類に応じた特性が損なわれる(消失する)こととなる。
そこで、水酸基が残存している基材4に対して、前記工程[1]と同様にして、第2のカップリング剤により表面処理(第2の表面処理)を施す。ここで、第2のカップリング剤とは、第1のカップリング剤が有する第1の官能基の重量平均分子量よりも小さい重量平均分子量の第2の官能基を備えるものである。これにより、第1の官能基と、第2の官能基との間に立体障害が生じることを確実に防止または低減させることができる。その結果、基材4に結合した第1のカップリング剤同士の間を通過して、第2のカップリング剤が基材4の表面に到達することとなる。これにより、基材4の表面に第2のカップリング剤が結合して、基材4の表面に残存する水酸基を減少させることができる(図1(c)参照。)。
第2の官能基の重量平均分子量は、次のように設定するのが好ましい。
すなわち、第1の官能基の重量平均分子量をAとし、第2の官能基の重量平均分子量をBとしたとき、A/Bが1.5〜10程度なる関係を満足するのが好ましく、A/Bが2〜5程度なる関係を満足するのがより好ましい。A/Bが、前記下限値未満の場合には、第1の官能基と第2の官能基との間に立体障害が生じる傾向が高まり、第2のカップリング剤による表面処理の条件等によっては、基材4の表面に残存する水酸基と結合できないおそれがある。一方、A/Bを、前記上限値を超えて大きくすると、後述する第1の官能基と第2の官能基が絡み合うことにより得られる効果が低下するおそれがあり、好ましくない。
具体的には、第2の官能基の重量平均分子量は、特に限定されないが、第1の官能基を前述したようなものを用いる場合には、600以下であるのが好ましく、150〜600程度であるのがより好ましい。第2の官能基の重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、第1および第2の官能基同士で、立体障害が生じることをより確実に防止または低減することができ、基材4の表面に残存する水酸基をより効率良く減少させることができる。
さらには、それぞれ隣り合う第1および第2の官能基同士が複雑(三次元的)に絡み合い、基材4の表面を覆うようになる。その結果、カップリング剤の種類に応じた特性がさらに向上するとともに、基材4の表面に残存する水酸基へのアルカリ性を示す液体の接触の機会を減少し得るという効果も得られる。
第2の官能基は、第1の官能基と同一の特性を示すものであるのが好ましい。これにより、基材4に付与されるカップリング剤が有する特性をさらに高めることができる。
基材4に付与させるカップリング剤の種類に応じた特性としては、例えば、撥液性や親液性等が挙げられる。
例えば、第1のカップリング剤および第2のカップリング剤に、それぞれ撥液性の官能基を有するものを選択することにより、基材4に撥液性を付与することができる。
このような官能基としては、例えば、パーフルオロアルキル基、フッ素を含有するアルキル基、アルキル基等が挙げられる。
また、第1のカップリング剤および第2のカップリング剤に、それぞれ親液性の官能基を有するものを選択することにより、基材4に親液性を付与することができる。
このような官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、スルフィド基等またはこれらを含有するもの(例えば、これらを末端に導入させたアルキル基)が挙げられる。
したがって、このような表面処理が施された処理済基材5は、カップリング剤の種類に応じた特性と、アルカリ性を示す液体に対する耐性との双方を有するものとなる。
そして、本発明の表面処理方法が施された処理済基材5を、各種部品に適宜適用することにより、この処理済基材5を備える部品(本発明の部品)にカップリング剤の種類に応じた特性と、アルカリ性を示す液体に対する耐性との双方の特性を付与することができる。
このような部品としては、特に限定されるものではないが、例えば、インクジェットプリンタヘッドに設けられたノズルプレート、チャンバの内壁、自動車、電車、飛行機等の乗り物のフロントガラス、浴室の鏡および床等が挙げられる。
以上、本発明の表面処理方法および基材について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、用いるカップリング剤は、前述したものに限定されるものでないことは言うまでもない。
また、本発明の表面処理方法は、前述したような工程に、必要に応じて、1または2以上の任意の目的の工程を追加することもできる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.膜の形成
(実施例1)
<1> まず、チャンバ内のステージに金属製の基板(母材)をセットし、CVD法により、以下のような条件で、金属製の基板上にSiO膜を形成した。
・シリコン酸化物前駆体 :ジクロロシラン
・酸素原子を含むガス :酸素
・加熱温度 :650℃
・加熱時間 :40分
・チャンバ内の圧力 :1×10−2Torr
・シリコン酸化物前駆体と酸素のモル混合比:1:2
<2> 次に、第1のカップリング剤として撥液性を有するシラン系カップリング剤(信越シリコーン社製、「KY−130」)を、0.1wt%となるようにFRシンナー(信越シリコーン社製)に溶解して、処理溶液を調製した。
その後、金属製の基板を、この処理溶液中に浸漬した後、一定の速度で引き上げることにより、このシラン系カップリング剤と金属製の基板の表面に存在する水酸基とを反応させた。
なお、この単分子膜形成時の処理条件は、以下に示す通りである。
・処理溶液の温度:25℃
・浸漬時間 :60秒間
・引き上げ速度 :60mm/sec
その後、この金属製の基板に、窒素含有雰囲気中、200℃×90secで、アニール処理を行った。
<3> 次に、第1のカップリング剤に代えて、第2のカップリング剤として撥液性を有するシラン系カップリング剤(信越シリコーン社製、「KBM−7803」)を用いた以外は、前記工程<2>と同様の工程を行った。
また、第1の官能基の重量平均分子量Aと、第2の官能基の重量平均分子量Bとの関係A/Bは、約2であった。
以上の工程により、表面処理を施して、撥液性を有する基板(処理済基材)を得た。
(実施例2)
前記工程<2>と<3>との順序を逆にした以外は、前記実施例1と同様にして、基板に表面処理を施して、撥液性を有する基板とした。
(実施例3)
前記工程<2>と<3>とを同時に施した以外は、前記実施例1と同様にして、基板に表面処理を施して、撥液性を有する基板とした。
(比較例1)
前記工程<3>を省略した以外は、前記実施例1と同様にして、基板に表面処理を施して、撥液性を有する基板とした。
(比較例2)
前記工程<3>を省略し、前記工程<2>を2回行った以外は、前記実施例1と同様にして、基板に表面処理を施して、撥液性を有する基板とした。
(比較例3)
前記工程<2>を省略した以外は、前記実施例1と同様にして、基板に表面処理を施して、撥液性を有する基板とした。
2.評価
各実施例および各比較例で表面処理を施した基板に対して、以下に示す浸漬試験を実施した。
浸漬試験では、基板をアルカリ溶液中に浸漬した後、この基板をアルカリ溶液から取り出し、このとき、膜状に付着していたアルカリ溶液が弾かれて、接触角90°以上の液滴が形成されるまでの時間を測定した。
なお、基板をアルカリ溶液中に浸漬した際の各条件は、以下に示す通りである。
・アルカリ溶液 :0.01NのNaOH水溶液(pH:12)
・アルカリ溶液の温度:45℃
・浸漬時間 :1秒間、20分間、3時間
そして、前述のようにして測定された時間を、それぞれ、浸漬時間毎に、以下の4段階の基準に従って評価した。
◎:20秒以内に液滴が形成された。
○:21〜60秒間に液滴が形成された。
△:61〜180秒間に液滴が形成された。
×:接触角90°以上の液滴が形成されない。
この浸漬試験の結果を、以下の表1に示す。
Figure 2005320595
表1に示すように、各実施例で表面処理が施された基板は、いずれも、各試験の終了時においても、高い撥液性が維持されていた。
これに対し、比較例1および比較例2の基板は、各試験の終了時において、ともに明らかな撥液性の低下を認めた。
これは、比較例1および比較例2においては、基板の表面に、シラン系カップリング剤との結合が形成されない水酸基が多く残存し、その結果、当該領域から撥液膜がアルカリ溶液に侵食されたことが原因であると推察される。
また、比較例1と比較例2とにおいて同様の結果が得られたことから、比較例2では、2回目の第1のカップリング剤による表面処理において、1回目の第1のカップリング剤による表面処理により基板の表面に結合した第1のカップリング剤(第1の官能基)と2回目の第1のカップリング剤(第1の官能基)との間に立体障害が生じたものと推察される。その結果、2回目の第1のカップリング剤が基板の表面に残存する水酸基と結合できず、アルカリ性を示す溶液に対する耐性が向上しなかったものと考えられる。
また、比較例3の基板は、基板の表面処理の際に、撥液性が十分に付与されていない結果が得られた。
これは、基板の表面におけるシラン系カップリング剤との結合が形成されない水酸基を減少させ得たものの、シラン系カップリング剤が有する官能基の分子量が小さいために撥液性(カップリング剤の種類に応じた特性)が十分には付与されなかったことが原因であると推察される。
また、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の基板(撥液性を示す基板)と、異なる重量平均分子量の官能基を有する2種の親液性を有するシラン系カップリング剤とを用いて、前記各実施例および各比較例と同様にして、基板の表面に親液性を示す膜(親液膜)を形成した。
そして、撥液膜の評価で示した浸漬試験と同様の条件で、各親液膜について、浸漬試験を行った。
その後、各親液膜について親液性の消失を確認したところ、前記各実施例および各比較例において撥液性が消失するのと同様の結果であった。
すなわち、各実施例に対応する親液膜は、いずれも、各試験の終了時においても、高い親液性が維持されていた。
本発明の表面処理方法を説明するための模式図(縦断面図)である。
符号の説明
4‥‥基材 41‥‥母材 42‥‥膜 5‥‥処理済基材

Claims (8)

  1. 表面に水酸基が存在する基材に対し、第1の官能基を有する第1のカップリング剤と、第1の官能基の重量平均分子量より小さい重量平均分子量の第2の官能基を有する第2のカップリング剤とにより表面処理を施すことを特徴とする表面処理方法。
  2. 前記第1のカップリング剤による表面処理を施した後に、前記第2のカップリング剤による表面処理を施す請求項1に記載の表面処理方法。
  3. 前記第1のカップリング剤による表面処理後に、前記基材の表面に残存する水酸基に、前記第2のカップリング剤による表面処理により前記第2のカップリング剤を結合させる請求項2に記載の表面処理方法。
  4. 前記第1の官能基の重量平均分子量をAとし、前記第2の官能基の重量平均分子量をBとしたとき、A/Bが1.5〜10なる関係を満足する請求項1ないし3のいずれかに記載の表面処理方法。
  5. 前記第1の官能基の重量平均分子量は、1000以上である請求項1ないし4のいずれかに記載の表面処理方法。
  6. 前記第2の官能基の重量平均分子量は、600以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の表面処理方法。
  7. 前記第1の官能基と前記第2の官能基とは、同一の特性を示すものである請求項1ないし6のいずれかに記載の表面処理方法。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載の表面処理方法により処理が施されたことを特徴とする基材。
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