JP2005305765A - プラスチックス複合材料およびその製造方法 - Google Patents

プラスチックス複合材料およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プラスチックス基材表面に緻密で密着力に優れた金属皮膜または金属を主成分とする皮膜を有するプラスチックス複合材料、および前記プラスチックス複合材料を製造する簡便、低コストかつ環境に優しい製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチックス材料からなる基材1と、前記基材の表面に金属粉末を高速噴射することにより形成された金属のまたは金属を主成分とする皮膜2とを備えている構成とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラスチックス基材の表面に金属皮膜または金属を主成分とする皮膜を有するプラスチックス複合材料およびその製造方法に関する。
従来、金属のコーティングプロセスとしては溶射法、物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)、めっき法などが用いられている。
溶射法は、コーティングする材料をプラズマ、アーク、フレームなどの熱源で溶かして、基材表面に吹きつけて皮膜を形成するプロセスである。電気・電子機器の電極形成、原動機の耐食・耐酸化・耐摩耗コーティング、鉄骨・橋梁などの耐食コーティングなどに幅広く使われている(下記特許文献1参照)。
物理蒸着法は、コーティングする材料を真空中で種々の方法で蒸発させ、基材表面に蒸着させて皮膜を形成するプロセスであり、真空蒸着法、スパッタ蒸着法、モレキュラービーム蒸着法などがある。光学機器の反射鏡面、工具、半導体実装基板、装飾品など、機能性コーティングとして幅広く使われている。
化学蒸着法は、高温における化合物の分解または化合のガス反応により、基材表面に皮膜成分を析出させ、あるいは基材との反応により皮膜を形成するプロセスである。アルミナイシング処理に代表される耐食コーティングや、熱CVD、プラズマCVD、レーザCVDによる太陽電池、工具、半導体実装基板などに幅広く使われている。
めっき法は、電解液中における電気化学的反応により、基材表面に皮膜を形成するプロセスである。古くからの技術であるが、機械部品の耐食、耐摩耗コーティングには幅広く使われている。
特開平10−280165号公報
従来、金属コーティングの対象となる基材の種類に応じて溶射法、物理蒸着法、化学蒸着法、めっき法などから、コーティングプロセスが選定されて使われている。しかしながら、あらゆる種類の基材へのコーティングが可能で、膜質、皮膜の密着性、成膜速度、プロセスの簡便性、環境低負荷などの要求特性を全て満足するプロセスは確立されていないのが現状である。そのため、高品位な皮膜が得られる新プロセスの開発と、生産性の向上に関する開発は継続的に続けられている。しかしながら、従来金属コーティングの対象となっている基材は金属あるいはセラミックスであり、プラスチックス基材への金属コーティングは成膜速度の遅い物理蒸着法と無電解メッキ法での実績がある程度で、比較的困難な技術である。
一方、最近では工業用材料としてのプラスチックスの適用が進み、その機能の多様性は金属を超えたとも言われている。しかしながら、金属やセラミックスと比較して、プラスチックスの最大の弱点は耐熱性であり、それを克服することが重要な課題として研究が進められてきている。現状でも耐熱性プラスチックスの耐熱温度は300℃程度であり、熱源を用いた溶射法や化学蒸着法などのコーティングプロセスの適用は困難な状況にある。
本発明は上記の問題に対処してなされたもので、プラスチックス基材表面に緻密で密着力に優れた金属皮膜または金属を主成分とする皮膜を有するプラスチックス複合材料、および前記プラスチックス複合材料を製造する簡便、低コストかつ環境に優しい製造方法を提供することを目的とする。
請求項1の発明は、プラスチックス材料からなる基材と、前記基材の表面に金属粉末を高速噴射することにより形成された金属のまたは金属を主成分とする皮膜とを備えている構成とする。
請求項2の発明は、前記金属粉末は鉄鋼より融点の低い金属の粉末である構成とする。
請求項3の発明は、前記金属粉末は鉄鋼より硬さの低い金属の粉末である構成とする。
請求項4の発明は、前記金属粉末は鉄鋼よりヤング率の低い金属の粉末である構成とする。
請求項5の発明は、前記基材は、ABS、AS、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ナイロン、ポリアミドイミド、PBT、ポリカーボネイト、ポリエチレン、PEEK、PEI、PET、フェノール樹脂、PI、PMMA、POM、ポリプロピレン、PPS、ポリスチレン、PTFE、ポリ塩化ビニル、PVDF、シリコーン樹脂、ユリア樹脂またはポリエステル樹脂の少なくとも1種類からなり、前記金属粉末は、シリコン、チタン、ニッケル、鉄、コバルト、パラジウム、アルミニウム、銅、銀、錫、亜鉛またはマグネシウムの少なくとも1種類からなる構成とする。
請求項6の発明は、前記基材は、ABS、AS、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ナイロン、ポリアミドイミド、PBT、ポリカーボネイト、ポリエチレン、PEEK、PEI、PET、フェノール樹脂、PI、PMMA、POM、ポリプロピレン、PPS、ポリスチレン、PTFE、ポリ塩化ビニル、PVDF、シリコーン樹脂、ユリア樹脂またはポリエステル樹脂の群から選ばれた少なくとも1種類からなるプラスチックス材料を主成分とし、この主成分材料と、前記群の中から選ばれた主成分材料以外のプラスチックス材料またはガラス繊維、炭素繊維、もしくは前記主成分以外のプラスチックス材料を繊維状にしたものから構成される複合プラスチックス材料であり、前記金属粉末は、シリコン、チタン、ニッケル、鉄、コバルト、パラジウム、アルミニウム、銅、銀、錫、亜鉛またはマグネシウムの少なくとも1種類からなる構成とする。
請求項7の発明は、前記金属粉末は、常温・常圧で、30m/s〜450m/sの速度で噴射される構成とする。
請求項8の発明は、前記金属粉末の粒径は、0.5μm〜200μmである構成とする。
請求項9の発明は、前記金属粉末は、空気、窒素、アルゴン、酸素、ヘリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類からなる搬送ガスを用いて噴射される構成とする。
請求項10の発明は、前記金属粉末は、300℃を超えない温度に加熱されて噴射される構成とする。
本発明によれば、プラスチックス基材表面に緻密で密着力に優れた金属皮膜または金属を主成分とする皮膜を有するプラスチックス複合材料、および前記プラスチックス複合材料を製造する簡便、低コストかつ環境に優しい製造方法を提供することができる。
前記の課題を解決するため、発明者らは革新的なコーティング技術であるショットコーティング(仮称)を開発した。従来から、固体粒子を材料表面に噴射して、粗面化させあるいは硬化させるショットピーニングという技術が良く知られている。発明者らは、200μm以下の軟質金属をプラスチックス基材表面に高速噴射すると、初期に基材表面にエロージョンが生じるものの、その後基材表面にサブミクロンから数百μmの厚さの皮膜が形成されることを見出した。
ショットコーティングは、大気中において常温・常圧で基材表面に金属粉末を高速噴射させることにより金属皮膜を形成するプロセスである。このプロセスによれば、緻密で密着力に優れた金属皮膜が得られると共に、このプロセスは極めて簡便で低コスト、かつ環境に優しいプロセスである。
本発明では、プラスチックス基材に、金属粉末を高速噴射することにより、金属皮膜または金属を主体とした皮膜を形成させる。金属粉末をプラスチックス基材表面に高速噴射すると、初期に基材表面にエロージョンが生じるものの、その後、基材表面に金属皮膜が形成される。この皮膜は、エロージョンにより基材表面が粗面化し、金属粉末が塑性変形するとともに一部溶融することによって密着し、密着強度の高い皮膜が得られる。また、コーティングする金属粉末はあらかじめ高温に加熱溶融されていないため、酸化が少なく、気孔率の低い緻密で高品位な皮膜が得られる。
金属粉末としては、鉄鋼材料より融点の低い金属粉末、または鉄鋼材料より硬さの低い金属粉末、または鉄鋼材料よりヤング率の低い金属粉末を用いるのがよい。上記の条件を満足する金属粉末を選定することによって、緻密で高品位な膜質で、密着力の高い皮膜が得られる。
プラスチックス基材としては、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、AS(アクリルニトリル・スチレン樹脂)、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ナイロン、ポリアミドイミド、ポリカーボネイト、ポリエチレン、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEI(ポリエーテルイミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、フェノール樹脂、PI(ポリイミド)、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)、POM(ポリオキシメチレン)、ポリプロピレン、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、ポリスチレン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリ塩化ビニル、PVDF(フッ化ビニリデン樹脂)、シリコーン樹脂、ユリア樹脂、ポリエステル樹脂等が用いられる。また金属粉末としては、シリコン、チタン、ニッケル、鉄、コバルト、パラジウム、アルミニウム、銅、銀、錫、亜鉛、マグネシウム等の粉末が用いられる。上記の組合せのプラスチックス基材と金属粉末を選定することによって、緻密で高品位な膜質で、密着力の高い皮膜が得られる。
フッ素樹脂系材料のETFE(4フッ化エチレン・エチレン共重合体)、PVDE(ポリフッ化ビニリデン樹脂)、PCTFE(ポリクロロトリルフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ化プラスチック)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体)、FEP(4フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)またはポリ塩化ビニルの少なくとも1種類からなるプラスチックス基材に、シリコン、チタン、ニッケル、鉄、コバルト、クロム、タングステン、モリブデンまたはバナジウムの少なくとも1種類からなる金属粉末を、高速噴射によりショットコーティングしたプラスチックス複合材料については、基材のエロージョン量が多く、安定した膜厚、高品位の膜質の皮膜が得られにくく、プラスチックス基材上に形成した皮膜との密着力も安定しない。
より緻密で高品位な膜質で、密着力の高い皮膜が得られるコーティング条件は、常温・常圧で30〜450m/sの速度で金属粉末を高速噴射すること、金属粉末の粒径は0.5〜200μmであること、空気、窒素、アルゴン、酸素、ヘリウム等からなる搬送ガスを用いて高速噴射すること、金属粉末を300℃を超えない温度に加熱して高速噴射すること等である。
噴射速度は、材料の組合せや形成する膜厚により選択される。30m/s未満の速度で噴射した場合、金属粉末がプラスチックス基材に衝突したときのエネルギーが小さく、皮膜が形成されない。また、450m/sを超える速度で噴射した場合、基材のエロージョン摩耗が大きくなり、安定した膜厚の皮膜が得られにくく、皮膜中の残留応力が高くなり、皮膜の剥離が起こりやすい。
金属粉末の粒径は、0.5〜200μmの範囲内であることが好ましい。0.5μm未満の粉末では、高速噴射されたときの衝突エネルギーが小さく、皮膜が形成されない領域が生じる。また、200μmを超える粒径の粉末を吹き付けると、基材のエロージョン摩耗が大きくなり、安定した膜厚の皮膜が得られにくく、皮膜の形成が困難となる傾向を示す。搬送ガスは、金属粉末の特性や、皮膜に要求される純度、材料組成を考慮して選択される。
本発明のプラスチックス複合材料の製造方法により形成された金属皮膜または金属を主成分とする皮膜は、たとえば気孔率が10%以下であり、プラスチックス基材との密着強度が10MPa以上であり、平均表面粗さが10μmRa以下である。本発明においては金属粉末は、常温・常圧で噴射されるため酸化が少なく、気孔や酸化物の含有量の少ない緻密で高品位な皮膜が得られる。
また本発明は、自動車、家庭電化製品、日用品、電気・電子部品、防護壁、照明器具、航空機内装材、医療器具、電線被覆、コンデンサ、モーター用品、センサー、化学プラント、玩具、照明器具、包装用フィルム等の機能性部品の導電層形成や防滋コーティング、シールコーティングに適用することができる。
以下、本発明の第1ないし第4の実施例を、比較例と比較しつつ具体的に説明する。
本発明の第1の実施例を図1,図2を参照して説明する。
図1に示すように、50×100mmのPETからなる基材1に、粒径0.5〜200μmのアルミニウム粉末を、室温大気中、200m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて、アルミニウムからなる皮膜2を約10μmの膜厚で形成した(実施例a)。同様に、実施例aと同じPET基材にアルミニウム皮膜を、大気中プラズマ溶射法あるいは蒸着法を用いてほぼ同等な膜厚を形成し、比較例a,bとした。
実施例a及び比較例a,bについて、得られた皮膜の膜質、基材と皮膜の密着性、成膜速度、プロセスの簡便性、コスト、耐環境性について評価した結果を図2にまとめて示す。ショットコーティング法は、大気中プラズマ溶射法、蒸着法に比べて、得られた皮膜の膜質、基材と皮膜の密着性、成膜速度、プロセスの簡便性、コスト、耐環境性の観点から、すぐれた特性を示すことがわかる。これに対して、大気中プラズマ溶射法は、成膜速度が速く、厚膜のものまで形成可能であるが、皮膜中の気孔率が高く、さらに含まれる酸化物の含有量も高い。また、コーティング効率が低く、コスト高となってしまう。蒸着法は、高品位な膜質の皮膜が得られるが、成膜速度が遅く、また真空チャンバ内でのバッジ処理となるため、簡便性・コストの面で劣る。
つぎに本発明の第2の実施例を図3を参照して説明する。
50×100mmのABS基材に粒径0.5〜200μmのアルミニウム粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて、アルミニウム皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例b)。同様に、50×100mmのABS基材に粒径0.5〜200μmの銅粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて、銅皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例c)。
同様に、50×100mmのPEEK基材に粒径0.5〜200μmのチタン粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて、チタン皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例d)。同様に、50×100mmのポリエチレン基材に粒径0.5〜200μmのシリコン粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて、シリコン皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例e)。
同様に、50×100mmのフェノール樹脂基材に粒径0.5〜200μmのニッケル粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて、ニッケル皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例f)。同様に、50×100mmのPMMA基材に粒径0.5〜200μmの銀粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて、銀皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(実施例g)。
同様に、50×100mmのポリ塩化ビニル基材に粒径0.5〜200μmのバナジウム粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて、バナジウム皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(比較例c)。同様に、50×100mmのPFA基材に粒径0.5〜200μmのタングステン粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて、タングステン皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(比較例d)。同様に、50×100mmのPTFE基材に粒径0.5〜200μmのモリブデン粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けるショットコーティング法を用いて、モリブデン皮膜を約50μmの膜厚でコーティングした(比較例e)。
以上のようにして得られたコーティング皮膜の気孔率を水銀圧入法を用いて測定した。次に、基材と皮膜の密着力を調べるため、コーティング皮膜に治具を取り付けて引張試験を行い、引張強度を測定した。表面粗さは、形成したコーティング皮膜の表面の平均表面粗さ(Ra)を測定した。金属酸化物の重量割合は、酸素量を燃焼法により求め、金属酸化物としての重量割合を算出したものである。
図3に、実施例b,c,d,e,f,g及び比較例c,d,eのコーティング皮膜の気孔率、基材と皮膜の密着強度、皮膜表面の表面粗さ、皮膜中に含まれる酸化物含有量を示す。鉄鋼より融点、あるいは硬さ、あるいはヤング率の低い金属粉末を高速噴射した実施例b,c,d,e,f,gにおいては、皮膜中の気孔率が低く、密着強度もバラツキなく安定して高い強度を示し、表面粗さも小さく、酸化物含有量も大幅に少ない皮膜が得られた。以上のように、上記材料の組合せでは、プラスチックス基材上に、高品位な膜質で、すぐれた密着強度のコーティング皮膜を形成することができる。
つぎに本発明の第3の実施例を図4(1),(2),(3)を参照して説明する。
前記の第1の実施例で説明した製造方法におけるショットコーティングによりコーティング皮膜を基材上に形成した。この時、複数の異なる条件で形成されたコーティング皮膜を持つ複数種類のプラスチックス複合材料を作製した。具体的には(1)コーティング皮膜材料の金属粉末粒径、(2)ショットコーティングプロセスにおける金属粉末の噴射速度、(3)ショットコーティングプロセスにおける金属粉末の温度についてそれぞれ複数の条件によってプラスチックス複合材料を作製した。そして、これらの複数種類のプラスチックス複合材料皮膜の膜厚及びバラツキの測定を行った。
以下に、具体的に設定した複数種類の皮膜形成条件と、その複数種類の皮膜形成条件によって形成されたコーティング皮膜の評価結果について説明する。
(1) コーティング皮膜材料の金属粉末粒径
図4(1)に示すように、コーティング皮膜材料の金属粉末粒径を変えて、前記第1の実施例と同じ条件でショットコーティングした場合の、膜厚を示したものである。ここで用いた金属粉末の粒径は、レーザ回折法により測定した50%粒径とした。50×100mmのPET基材に粒径0.1μmと10μmと150μmと300μmのアルミニウム粉末を、室温大気中、30〜450m/sの噴射速度で、一定時間吹き付け、アルミニウム皮膜をショットコーティングし、これを実施例hとした。
図から明らかなように、10μm及び150μmの粒径の金属粉末を高速噴射すると、バラツキの小さい膜厚の皮膜が容易に形成される。これに対して、200μmより大きな粒径の粉末を用いると、基材のエロージョン摩耗が大きくなり、0.5μm未満の粉末では、高速噴射されたときの衝突エネルギーが小さく、皮膜が形成されない領域が生じる。また、200μmを超える粒径の粉末を吹き付けると、基板材料のエロージョン摩耗が大きくなり、安定した膜厚の皮膜が得られにくい。
図4(1)においては、PET基材にアルミニウム粉末を高速噴射したときの結果を示したが、その他の組合せを用いた場合も同様な結果が見られた。
以上のように、プラスチック基材に金属粉末を高速で吹き付けるショットコーティングにおいて、金属粉末の粒径が0.5μm〜200μmの場合、高品位な膜質で、密着力の優れた皮膜を簡便に低コストで形成することができる。
(2) ショットコーティングプロセスにおける速度
50×100mmのPET基材に粒径0.5〜200μmのアルミニウム粉末を、室温大気中、10m/sと100m/sと300m/sと550m/sの噴射速度で、一定時間吹き付けるショットコーティングを用いて、アルミニウム皮膜をコーティングした(実施例i)。
図4(2)に示す結果から明らかなように、金属粉末の噴射速度が100m/s及び300m/sの両方とも、安定した膜質の皮膜が形成されるのに対し、450m/sを超える速度では安定した皮膜が形成されない。これは、450m/sを超える速度では、基材の表面がエロージョン摩耗を起こし、所定膜厚の皮膜が得られにくく、また、皮膜中の残留応力が高くなり、剥離が起こりやすくなるためであると考えられる。一方、30m/s以下の速度では、速度が遅すぎるため、粉末が基板材料に衝突したときのエネルギーが小さく、皮膜が形成されていない領域が生じ、その部分では膜厚が不均一となる。30〜450m/sの速度では、所定膜厚の皮膜が得られやすく、また、皮膜中の残留応力が低いため、密着性の高い皮膜が得られる。
(3) ショットコーティングにおける金属粉末の予熱温度
50×100mmのPET基材に、粒径0.5〜200μmのアルミニウム粉末を、予熱温度200℃、300℃、400℃で、大気中、30〜450m/sの噴射速度で一定時間吹き付けるショットコーティング法を用いて、アルミニウム皮膜をコーティングした(実施例j)。
図4(3)から明らかなように、金属粉末の予熱温度が高い方が、厚い皮膜が形成される。また、皮膜中の残留応力が低いため、密着性の高い皮膜が得られる。しかし、300℃以上に加熱しても、効果はほとんど同じであり、また、材料によっては酸化や熱変質が見られる場合がある。ショットコーティングにより皮膜を形成させる際、基材を予熱した状態で吹き付けると、さらに優れた皮膜が短時間で効率よく形成される。
本発明の第4の実施例を図5を参照して説明する。
本実施例においては、ショットコーティングの搬送ガスが異なる条件で複数種類のプラスチックス複合材料試験体を作製した。すなわち、50×100mmのPET基材に、粒径0.5〜200μmのアルミニウム粉末を、室温で、空気、窒素、アルゴン、酸素、ヘリウムで搬送し、30〜450m/sの噴射速度で吹き付けてショットコーティングした(実施例k)。図5から明らかなように、皮膜の厚さは搬送ガスの種類によって実質的に異ならなかった。また、搬送ガスを変えても、アルミニウム皮膜の気孔率、密着強度、表面粗さ、酸素含有量に顕著な差は認められなかった。
本発明の実施例のプラスチックス複合材料の断面図。 本発明の実施例および比較例のプラスチックス複合材料の製造方法の評価を示す表。 本発明の実施例および比較例のプラスチックス複合材料の特性を示す表。 本発明の実施例および比較例のプラスチックス複合材料の皮膜形成に対する粉末粒径、噴射速度および粉末予熱温度の影響を示す表。 本発明の実施例および比較例のプラスチックス複合材料の皮膜形成に対する搬送ガスの影響を示す表。
符号の説明
1…基材、2…皮膜。

Claims (10)

  1. プラスチックス材料からなる基材と、前記基材の表面に金属粉末を高速噴射することにより形成された金属のまたは金属を主成分とする皮膜とを備えていることを特徴とするプラスチックス複合材料。
  2. 前記金属粉末は鉄鋼より融点の低い金属の粉末であることを特徴とする請求項1記載のプラスチックス複合材料。
  3. 前記金属粉末は鉄鋼より硬さの低い金属の粉末であることを特徴とする請求項1記載のプラスチックス複合材料。
  4. 前記金属粉末は鉄鋼よりヤング率の低い金属の粉末であることを特徴とする請求項1記載のプラスチックス複合材料。
  5. 前記基材は、ABS、AS、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ナイロン、ポリアミドイミド、PBT、ポリカーボネイト、ポリエチレン、PEEK、PEI、PET、フェノール樹脂、PI、PMMA、POM、ポリプロピレン、PPS、ポリスチレン、PTFE、ポリ塩化ビニル、PVDF、シリコーン樹脂、ユリア樹脂またはポリエステル樹脂の少なくとも1種類からなり、前記金属粉末は、シリコン、チタン、ニッケル、鉄、コバルト、パラジウム、アルミニウム、銅、銀、錫、亜鉛またはマグネシウムの少なくとも1種類からなることを特徴とする請求項1記載のプラスチックス複合材料。
  6. 前記基材は、ABS、AS、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ナイロン、ポリアミドイミド、PBT、ポリカーボネイト、ポリエチレン、PEEK、PEI、PET、フェノール樹脂、PI、PMMA、POM、ポリプロピレン、PPS、ポリスチレン、PTFE、ポリ塩化ビニル、PVDF、シリコーン樹脂、ユリア樹脂またはポリエステル樹脂の群から選ばれた少なくとも1種類からなるプラスチックス材料を主成分とし、この主成分材料と、前記群の中から選ばれた主成分材料以外のプラスチックス材料またはガラス繊維、炭素繊維、もしくは前記主成分以外のプラスチックス材料を繊維状にしたものから構成される複合プラスチックス材料であり、前記金属粉末は、シリコン、チタン、ニッケル、鉄、コバルト、パラジウム、アルミニウム、銅、銀、錫、亜鉛またはマグネシウムの少なくとも1種類からなることを特徴とする請求項1記載のプラスチックス複合材料。
  7. 前記金属粉末は、常温・常圧で、30m/s〜450m/sの速度で噴射されることを特徴とする請求項1記載のプラスチックス複合材料の製造方法。
  8. 前記金属粉末の粒径は、0.5μm〜200μmであることを特徴とする請求項1記載のプラスチックス複合材料の製造方法。
  9. 前記金属粉末は、空気、窒素、アルゴン、酸素、ヘリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類からなる搬送ガスを用いて噴射されることを特徴とする請求項1記載のプラスチックス複合材料の製造方法。
  10. 前記金属粉末は、300℃を超えない温度に加熱されて噴射されることを特徴とする請求項1記載のプラスチックス複合材料の製造方法。

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