JP2005305358A - 高速回転を利用した組成傾斜装置、方法及びその方法で得られた凝縮系薄膜物質 - Google Patents

高速回転を利用した組成傾斜装置、方法及びその方法で得られた凝縮系薄膜物質 Download PDF

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Abstract

【課題】5万G程度の比較的低い加速度場での拡散処理が可能な小型で、低いコストの高速回転を利用した傾斜機能性薄膜作製装置、方法及びその方法で得られた凝縮系薄膜物質を提供する。
【解決手段】二元素以上からなる凝縮系薄膜物質の組成を傾斜化する組成傾斜方法であって、基板上に堆積させた二元素以上からなる凝縮系薄膜物質をセットする円板と、この円板を収容する超高真空チャンバーと、前記円板を超高真空回転させるための回転駆動手段とを備え、常温〜2000℃の温度の下で、5万G以上20万G未満の加速度場を前記円板に与えて、前記二元素以上からなる凝縮系薄膜物質の各原子または各分子に作用する遠心力に差を与え、原子・分子レベルの傾斜構造を生成させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、二元素以上からなる凝縮系薄膜物質(気体以外の液体状物質、固体状物質、それらが混合した状態の物質またはそれらの中間的な状態の物質を薄膜化したもの)を超高速回転による加速度場を利用して傾斜構造を発生させる高速回転による組成傾斜装置、方法及びその方法で得られた薄膜物質に関するものである。
従来の生化学用遠心分離機は、常温付近での液体の超遠心処理を目的としている。そのため、高温・長時間の超遠心処理を行うことはできない。一つの例外として、高速回転による超高重力場を利用して固体サンプルの組成を傾斜させる装置が存在する(下記特許文献1参照)が、それはバルク物質を対象としたものであり、薄膜物質を対象に高速回転を利用した組成傾斜の試みは、これまで行われていないのが現状である。
特開平9−290178号公報
本発明は、凝縮系薄膜物質中で原子や分子の沈降拡散を高濃度で実現するために、5万G(grav:加速度の単位,9.80665m/sec2 )以上20万G未満の高加速度場を60℃を超える高温下で発生できる超遠心機(超高加速度場発生装置)による新しい薄膜物質の組成傾斜装置、方法及びその方法で得られた凝縮系薄膜物質を提供するものである。
上記したように、これまでに遠心力を利用した凝縮系バルク物質の原子レベルでの拡散処理がわずかではあるが行われており、その場合は20万G〜100万Gという非常に大きな加速度場が必要であった。これに対し、薄膜物質を対象とした場合は、薄膜表面の原子のモビリティが高く、表面の原子移動が薄膜内部の原子移動の駆動力となるため、バルク物質の場合よりも小さい加速度場での拡散処理が可能になる。一般的に、回転軸のまわりの角速度をω、物体から回転軸に下ろした垂線の長さをrとすると、加速度場αは、α=rω2 で表される。試料収容位置の半径rによって必要な回転速度が相違するが、例えば半径rが150mmの場合、10万Gの発生には24000rpm以上の高速回転を実現することが必要となる。
もしも、任意の凝縮系薄膜物質に上記のような超高加速度場を、60℃以上の高温下で実現することができるならば、薄膜物質の外力による組成傾斜技術が飛躍的に進歩するばかりでなく、元素、同位体の濃縮・精製、傾斜機能材料の作製、非平衡物質の作製など、これまでにない薄膜物質処理方法が生まれる可能性があり、組成の傾斜を利用することで組成の異なる薄膜を同時に数多く作製するコンビナトリアルケミストリー的な応用も期待できる。また、真空中での成膜と高速回転による拡散処理を、真空状態を壊すことなく同一装置で行うことが可能な装置はこれまで存在しなかった。
本発明は、上記状況に鑑みて、5万G程度の比較的低い加速度場での拡散処理が可能な小型で安価な、高速回転を利用した組成傾斜装置、方法及びその方法で得られた凝縮系薄膜物質を提供することを目的とする。
〔1〕二元素以上からなる凝縮系薄膜物質の組成を傾斜化する組成傾斜方法において、堆積させた二元素以上からなる凝縮系薄膜物質を円板上にセットし、この円板を超高真空チャンバー内に配置し、前記円板を超高真空状態で回転可能にし、常温〜2000℃の温度の下で、5万G以上20万G未満の加速度場を前記円板に与えて、前記二元素以上からなる凝縮系薄膜物質の各原子または各分子に作用する遠心力に差を与え、原子・分子レベルの傾斜構造を生成することを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載の高速回転による組成傾斜方法において、前記円板に薄膜物質または薄膜の基板となる物質を任意の角度をつけて収容することにより、高速回転による組成傾斜処理で発生する組成傾斜の方向を、薄膜面内方向から膜厚方向までの任意の方向とすることを特徴とする。
〔3〕高速回転による組成傾斜方法において、超高真空チャンバーに設置した二元素以上からなる凝縮系物質のレーザーアブレーションにより、基板上に二成分系凝縮物質の薄膜を作製し、次いで、請求項1記載の高速回転による組成傾斜処理を行うことを特徴とする。
〔4〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の高速回転による組成傾斜方法において、前記二元素以上からなる凝縮系薄膜物質が、少なくともFe−Si、B−N、Si−C、Bi−Te、Sn−BiおよびSi−Geからなる群から選ばれた物質を主成分とするものであることを特徴とする。
〔5〕上記〔1〕、〔2〕、〔3〕又は〔4〕記載の高速回転による組成傾斜方法によって製造される傾斜濃度分布を有する二元素以上からなる凝縮系薄膜物質。
〔6〕上記〔5〕記載の凝縮系薄膜物質を、組成傾斜方向と垂直に交わる方向に短冊状に切断することにより得られる組成の異なる二元素以上からなる凝縮系薄膜物質。
〔7〕高速回転による組成傾斜装置において、二元素以上からなる凝縮系薄膜物質をセットするための、重量バランスを取った円板と、この円板を超高速回転し得る高周波モータと、この高周波モータの回転数を調節して、5万G以上20万G未満の加速度場を前記円板に与えるための制御手段と、前記円板を設置する超高真空チャンバーと、この超高真空チャンバー中で高真空状態を保持し、かつ前記円板を高速回転させることが可能な水冷式磁気シールユニットを備え、前記常温〜2000℃の温度の下で、前記5万G以上20万G未満の加速度場を前記円板に与えて、前記二元素以上からなる凝縮系薄膜物質の各原子または各分子に作用する遠心力に差を与え、この差により前記凝縮系薄膜物質に原子・分子レベルの傾斜構造を生成することを特徴とする。
〔8〕上記〔7〕記載の高速回転による組成傾斜装置において、さらに、前記超高真空チャンバー中に設置した二元素以上からなる凝縮系物質のレーザーアブレーション手段とを具備することを特徴とする。
〔9〕上記〔8〕記載の高速回転による組成傾斜装置において、前記レーザーアブレーション手段は、前記真空チャンバー中に二元素以上からなる凝縮系物質のレーザーアブレーション用ターゲットと、前記ターゲットを所定の位置に保持するターゲットホルダと、前記ターゲットホルダの位置調整を行う直線・回転導入機と、前記ターゲットホルダに保持された前記ターゲットに照射するレーザーを前記高真空チャンバーに入射するための石英窓を備え、前記ターゲットホルダに保持された前記ターゲットにレーザーを照射することで、レーザーアブレーションによる薄膜作製と高速回転による組成傾斜処理を同一装置で行うことを特徴とする。
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1)常温〜2000℃の温度の下で、5万G以上〜20万G未満の加速度場を回転円板に与えて、前記二元素以上からなる凝縮系薄膜物質の各原子または各分子に作用する遠心力に差を与え、原子・分子レベルの傾斜構造を発生させる。対象物質をモビリティの高い薄膜とすることにより、5万G程度の加速度場での拡散処理が可能となり、従来のバルク物質の場合の80万〜100万Gと比較すると実験が容易であり、装置を小型化、簡素化することができる。
(2)傾斜濃度分布を有する二元素以上からなる凝縮系薄膜物質を得ることができ、例えば、Fe−Si、B−N、Si−C、Bi−Te、Sn−BiおよびSi−Geからなる群から選ばれた物質を主成分とする濃縮系薄膜物質は、それぞれが半導体材料(熱電変換材料)などとして注目されているものであり、傾斜化による性能向上が期待できる。
(3)傾斜濃度分布を有する二元素以上からなる濃縮系薄膜物質を、組成傾斜方向と垂直に交わる方向に短冊状に切断することにより、組成の異なる二元素以上からなる濃縮系薄膜物質を簡単かつ大量に得ることができる。
また、このコンビナトリアルケミストリー的な方法により、異なる組成の薄膜を同時に作製することができ、新規薄膜材料の開発・評価のスピードアップが期待できる。
(4)高速回転による組成傾斜装置は、二元素以上からなる濃縮系薄膜物質を傾斜機能化する装置であり、前記二元素以上からなる濃縮系薄膜物質を収容するための、重量バランスを取った円板と、この円板を超高速回転し得る高周波モータと、前記高周波モータの回転数を調節して、5万G以上〜20万G未満の加速度場を前記回転円板に与えるための制御手段と、前記円板部分を高真空または特定の雰囲気ガス環境に保つための超高真空チャンバーと、前記超高真空チャンバー中で高真空状態を保持したまま前記円板を高速回転させることが可能な水冷式磁気シールユニットを備え、前記常温〜2000℃の温度の下で、前記5万G以上〜20万G未満の加速度場を円板に与えて、前記二元素以上からなる凝縮系薄膜物質の各原子または各分子に作用する遠心力に差を与え、この差により前記濃縮系薄膜物質を原子・分子レベルの傾斜構造を発生させる。
これにより、100℃以上の高温下で、最高26000rpm以上の高速回転を実現できる超遠心機(超高加速度場発生装置)を提供することができる。薄膜ではバルク物質とは異なり、表面の物質のモビリティが大きいため、傾斜構造を短時間で発生させることができ、同位体の分離などに適している。さらには、物質のモビリティの違いにより、バルク物質とは違う構造の物質ができる可能性もある。また、本装置は真空チャンバーを利用しているため、減圧下はもちろんのこと、様々なガス雰囲気での実験が行える。石英窓からは試料の傾斜状態のその場観察も可能である。他には、高重力場に置かれたサンプルにレーザーを照射する実験なども行うことができる。また、傾斜方向に対して垂直方向にサンプルを切断することで、異なる組成の薄膜を同時に作製することができ、新規薄膜材料の開発・評価のスピードアップが期待できる。
(5)二元素以上からなる凝縮系薄膜物質を作製する方法であり、前記組成傾斜装置の回転円板に、薄膜の基板となる物質を収容し、前記真空チャンバー中に設置した二元素以上からなる凝縮系物質のレーザーアブレーションにより、基板上に二成分系凝縮物質の薄膜を作製し、そのまま高速回転による拡散処理を行うことができる。
これにより、薄膜の作製と高速回転による拡散処理を、高真空または特定の雰囲気ガス環境を壊すことなく同一装置で行うことができる。
(6)二元素以上からなる凝縮系薄膜物質を作製する方法であり、前記組成傾斜装置の回転円板に、薄膜の基板となる物質を収容し、前記真空チャンバー中に設置した二元素以上からなる凝縮系物質のレーザーアブレーションにより、加速度場におかれた基板上に二元素以上からなる薄膜物質を作製することができる。
これにより、レーザーアブレーション法で薄膜を作製しながら、加速度場による拡散処理を同時に行うという、これまでにない新規の薄膜作製方法が可能となる。
(7)薄膜作製装置によれば、二元素以上からなる凝縮系薄膜物質を作製する装置であり、前記組成傾斜装置に、前記真空チャンバー中に二元素以上からなる凝縮系物質のレーザーアブレーション用ターゲットと、前記ターゲットを所定の位置に保持するターゲットホルダと、前記ターゲットホルダの位置調整を回転させるための回転導入機と、前記ターゲットホルダに保持されたターゲットに照射するレーザーを前記高真空チャンバーに入射するための石英窓を備え、前記ターゲットホルダに保持されたターゲットにレンズを用いて集光したレーザー光を照射し、レーザーアブレーションによる薄膜作製と高速回転による拡散処理を真空(または所定の雰囲気)を壊すことなく同一装置で行うこと、および高速回転によって加速度場におかれた基板上に二元素以上からなる薄膜物質を作製することができる。
(8)傾斜薄膜作製方法は、二元素以上からなる凝縮系薄膜物質を作製する方法であり、前記組成傾斜装置の回転円板に薄膜物質または薄膜の基板となる物質を任意の角度をつけて収容することで、高速回転による拡散処理で発生する組成傾斜の方向を、薄膜面内方向から膜厚方向までの任意の方向とすることができる。
これにより、薄膜面内方向の傾斜構造を持つ薄膜のみではなく、薄膜の膜厚方向の傾斜構造や、それ以外の任意の方向について傾斜構造を持つ二元素以上からなる凝縮系薄膜物質を得ることが可能となる。
二元素以上からなる凝縮系薄膜物質の組成を傾斜化する組成傾斜装置であって、基板上に堆積させた二元素以上からなる凝縮系薄膜物質をセットする円板と、この円板を収容する超高真空チャンバーと、前記円板を超高真空回転させるための回転駆動手段とを備え、常温〜2000℃の温度の下で、5万G以上20万G未満の加速度場を前記円板に与えて、前記二元素以上からなる凝縮系薄膜物質の各原子または各分子に作用する遠心力に差を与え、原子・分子レベルの傾斜構造を生成させる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す高速回転による組成傾斜装置の全体概略図、図2はその真空チャンバー部分を示す図であり、図2(a)はその上面図、図2(b)はその側面図、図2(c)はその下面図である。
この装置は、真空チャンバー1、その真空チャンバー1に接続されるターボ分子ポンプ2、真空チャンバー1内に配置されるアルミまたはチタン合金製円板(以下、単に円板という)3、高速回転を行う高周波モータ4、水冷式磁気シールユニット5、大気圧から高真空までの広範囲の圧力測定が可能な真空計であるフルレンジゲージ6、真空チャンバーとターボ分子ポンプ間に取り付けるバルブであり、雰囲気ガスの流量調節、真空チャンバー内の真空保持などに使用するゲートバルブ7、遮蔽板8、後述するターゲットホルダーを支持するとともにそのターゲットホルダーの位置を調整する機能を有する直線・回転導入機9、赤外線加熱装置10、予備ポート20を備えている。この予備ポート20は、他の測定器などを取り付けることが可能なポートであり、ここでは、レーザー導入部(後述)の対面と真空チャンバー1下面に設けるようにしている。また、付属装置として、試料温度測定用の非接触温度計11などを組み合わせることができる。このような構成とすることで、本装置は、60℃以上の高温(チタン合金製円板を使用した場合)で長時間の超遠心処理を行うことが可能となる。また、対象物質を原子の移動がより容易に起こる薄膜とすることで、装置の小型化、簡素化を実現している。
また、図2において、真空チャンバー1部分の上面には上面板13が設けられ、この上面板13には石英窓14、Zn−Se窓15が形成される。また、真空チャンバー1部分の下面には下面板16が設けられ、この下面板16にはターボ分子ポンプ2への接続口17、水冷式磁気シールユニット5の取り付け口18、フルレンジゲージ6の取り付け口19が形成される。
本装置は、真空チャンバー1中の円板3(φ300mm)の円周付近に薄膜試料(サンプル)12を収容し、その円板3と水冷式磁気シールユニット5を介して接続された高周波モータ4の高速回転により、円板3上に収容した薄膜試料12付近で5万G以上となる高重力場を発生させ、複数の構成物質を持つ薄膜試料12に、原子レベルの組成傾斜を生じさせるものである。
通常超遠心分離機では、高速回転により軸受け部でかなりの熱が発生するため、熱による焼き付きや装置の破損の防止を行うことが重要である。本装置は、真空装置であるため軸受け部に潤滑油を使用できないので、軸受け部には水冷式の磁気シールユニット5を採用し、熱の発生を抑えながら高真空状態での高速回転を可能とした。
高速回転する円板3上に収容された薄膜試料12を加熱するためには、非接触で加熱する方法が適当である。本装置では、赤外線加熱装置(石川産業株式会社製)10とレンズを組み合わせることで、真空チャンバー1上面の石英窓14を通して薄膜試料12の加熱を行うことができる。
薄膜試料12の温度測定は加熱方法と同様に非接触で行う。本装置では、非接触温度計(オプテックス株式会社製)11により真空チャンバー1の外からZn−Se窓(非接触温度計が使用する赤外波長域の透過性に優れている)15を通して薄膜試料12の温度測定が可能である。Zn−Se窓15は高速回転円板3上の薄膜試料12の位置に合わせて、2箇所としている。
また、高速回転円板3の回転数は、図示しないがデジタルタコメータ(株式会社小野測器製)により求め、高周波モータ4の回転軸部分(真空チャンバー1外)の回転数測定により確認する。
さらに、円板3は、高速回転するので、万一破損した場合は非常に危険である。そこで標準規格の真空チャンバー1内に金属製の遮蔽板8(厚さ20mm)を設置し、円板3が破損しても破片が飛び散らないようにしている。
高速回転円板3を図3に示す。加速度場の方向(円板中心から外周方向)に対して、薄膜試料12を収容する角度を変化させる実験を行うため、円板3表面と試料12表面とのなす角度(収容角度)が0°となるもの〔図3(a)〕および90°となるもの〔図3(b)〕を作製した。収容角度を0°とした場合は薄膜面内方向への組成傾斜構造が発生し、90°とした場合は薄膜の膜厚方向への組成傾斜構造が発生した。しかし、物質によって傾斜の発生傾向が異なることも考えられるので、この角度のみに限定するものではない。薄膜試料12の収容方法は、0°の場合は、図4に示すように、円板3には窪み3A〔図4(a)参照〕が形成されており、その窪み3Aに薄膜試料12が配置され、その薄膜試料12は窓を有する治具3Bが設けられ、その治具3Bはねじ3Cで固定される〔図4(b)参照〕。
一方、90°の場合は、図3(b)の試料収容位置の溝にはめ込む。円板3の材質は、アルミ合金(常温での実験用)とチタン合金(高温実験用)のものを作製した。これらの円板3で高速回転を達成するためには、重量バランスが非常に重要となる。バランスがうまくとれていない場合には、高速回転できないばかりか装置破損の危険性もある。そこで円板3の重量バランスをとるため、ターボ分子ポンプ2の羽のバランスをとるようにした。
傾斜薄膜を利用した組成評価用サンプル作製方法の概略図を図5に示す。
ここでは、本装置による拡散処理で傾斜組成となった薄膜31を傾斜方向と垂直に交わる方向に、切断手段を利用して短冊状に切断することにより、組成の異なる二元素以上からなる凝縮系薄膜物質32を簡単かつ大量に製造することができる。なお、切断手段としては、薄膜31の基板としてシリコンウェハーを用いる場合が多いことから、シリコンウェハー切断用のダイサーを使用するが、これに限定するものではない。
このコンビナトリアルケミストリー的な方法により、異なる組成の薄膜を同時に作製することができ、新規薄膜材料の開発・評価のスピードアップが期待できる。
本装置を用いた薄膜試料の組成傾斜実験について発明する。
比較的原子の移動が起こりやすいと思われる低融点金属Sn−Bi合金を試料として、収容角度0°で薄膜面内方向への組成傾斜実験を行った。出発試料となるSn−Bi薄膜は15mm×15mmのSi基板上に、スパッタ法により作製したものである。円板のバランスを取るために4枚の試料を円板上の所定の位置に収容し、以下の条件で拡散処理を行った。
出発試料:Sn−Bi合金
Sn:42wt% Bi:58wt% 融点:138℃
M(Sn)=118.7g/mol
M(Bi)=209.0g/mol
実験条件:
回転速度:24000〜25000rpm
最大加速度:0.96〜1.05×105
温度:95〜100℃
時間:50時間
図6に拡散処理後のSn−Bi薄膜表面の組成分析結果を示す。この図において、横軸は試料末端からの距離(mm)、縦軸は組成(wt%)である。
組成分析にはEDX(energy dispersed X−ray spectrometer)を用いた。
結果は、高G側(末端からの距離0mm側)になるほど原子量の大きいBiの割合が大きく、Snの割合が小さくなっていることから、原子レベルでの傾斜が発生していることがわかり、0mm付近では、ほぼ100%Bi相となっている。本実験は、バルク物質の場合は80万G以上の加速度場を必要としたSn−Bi合金の拡散を、薄膜物質を対象とすることで、5万G〜20万G未満程度の加速度場によって実現しており、薄膜物質表面のモビリティの高さを利用した、本発明の有効性を証明するものである。
本発明では、凝縮系薄膜中で外力による原子や分子の拡散を高濃度で実現するために、60〜2000℃の温度で5万G以上の加速度場を発生できる超高速回転装置を開発した。これまでに薄膜試料の組成傾斜処理にこのような超高加速度場を利用した例はなかったが、バルク物質と比較すると、より小さい加速度場で拡散効果が確認できたことは、薄膜表面の原子のモビリティが高いことを利用した本発明の有効性を証明するものである。本発明では、必要となる超高加速度場を発生させるために、直径300mmの回転円板において、最高約26000rpmの超高速回転を達成した。また、ここでは、Sn−Biを薄膜試料として用いたが、Fe−Si、B−N、Si−C、Bi−Te、Sn−BiおよびSi−Geからなる群から選ばれた物質からなる薄膜試料を用いてもよい。
図7は本発明の第2実施例を示す組成傾斜装置の模式図である。
図7において、21はターゲットホルダー、22はそのターゲットホルダー21に保持されたターゲット、23は真空チャンバー1の側面に配置された石英窓、24はターゲット22へ照射されるレーザー光、25はそのレーザー光を集光するレンズである。
ここでは、高速回転による薄膜物質の組成傾斜装置であるとともに、レーザーアブレーション法による薄膜作製装置としても使用できるように設計している。レーザーアブレーション法は薄膜の作製法として広く使用されており、材料となるターゲット物質の組成と、得られる薄膜物質の組成にほとんどズレがないという特徴がある。この装置を用いることで、以下のような実験が可能となる。
(1)高速回転による薄膜試料の組成傾斜
(2)レーザーアブレーションによる薄膜作製し、その薄膜試料を同一装置で組成傾斜処理
(3)加速度場中の薄膜試料上へのレーザーアブレーションによる薄膜作製
このように、高速回転による拡散処理と、レーザーアブレーション法による薄膜作製を組み合わせた実験を行う装置は過去に例を見ない。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の高速回転を利用した傾斜機能性薄膜作製装置、方法及びその方法で得られた凝縮系薄膜物質は、新しい機能性材料の創出の可能性があり、5万G程度の比較的低い加速度場での拡散処理が可能な組成傾斜装置として利用可能である。
本発明の実施例を示す高速回転による組成傾斜装置の全体概略図である。 本発明の装置の真空チャンバー部分を示す図である。 本発明の実施例を示す高速回転円板を示す図である。 本発明の実施例を示す円板の試料のセット部を示す図である。 本発明の傾斜薄膜を利用した組成評価用サンプル作製方法の概略図である。 本発明の拡散処理後のSn−Bi薄膜表面の組成分析結果を示す図である。 本発明の第2実施例を示す組成傾斜装置の模式図である。
符号の説明
1 真空チャンバー
2 ターボ分子ポンプ
3 アルミまたはチタン合金製円板
3A 円板の窪み
3B 治具
3C ねじ
4 高周波モータ
5 水冷式磁気シールユニット
6 フルレンジゲージ
7 ゲートバルブ
8 遮蔽板
9 直線・回転導入機
10 赤外線加熱装置
11 非接触温度計
12 薄膜試料
13 上面板
14 石英窓
15 Zn−Se窓
16 下面板
17 ターボ分子ポンプへの接続口
18 磁気シールユニットの取り付け口
19 フルレンジゲージの取り付け口
20 予備ポート
21 ターゲットホルダ
22 ターゲット
23 真空チャンバーの側面に配置された石英窓
24 ターゲットへ照射されるレーザー光
25 レンズ
31 薄膜
32 凝縮系薄膜物質

Claims (9)

  1. 二元素以上からなる凝縮系薄膜物質の組成を傾斜化する組成傾斜方法において、
    (a)堆積させた二元素以上からなる凝縮系薄膜物質を円板上にセットし、
    (b)該円板を超高真空チャンバー内に配置し、
    (c)前記円板を超高真空状態で回転可能にし、
    (d)常温〜2000℃の温度の下で、5万G以上20万G未満の加速度場を前記円板に与えて、前記二元素以上からなる凝縮系薄膜物質の各原子または各分子に作用する遠心力に差を与え、原子・分子レベルの傾斜構造を生成することを特徴とする高速回転による組成傾斜方法。
  2. 請求項1記載の高速回転による組成傾斜方法において、前記円板に薄膜物質または薄膜の基板となる物質を任意の角度をつけて収容することにより、高速回転による組成傾斜処理で発生する組成傾斜の方向を、薄膜面内方向から膜厚方向までの任意の方向とすることを特徴とする高速回転による組成傾斜方法。
  3. 超高真空チャンバーに設置した二元素以上からなる凝縮系物質のレーザーアブレーションにより、基板上に二成分系凝縮物質の薄膜を作製し、次いで、請求項1記載の高速回転による組成傾斜処理を行うことを特徴とする高速回転による組成傾斜方法。
  4. 請求項1、2又は3記載の高速回転による組成傾斜方法において、前記二元素以上からなる凝縮系薄膜物質が、少なくともFe−Si、B−N、Si−C、Bi−Te、Sn−BiおよびSi−Geからなる群から選ばれた物質を主成分とするものであることを特徴とする高速回転による組成傾斜方法。
  5. 請求項1、2、3又は4記載の高速回転による組成傾斜方法によって製造される傾斜濃度分布を有する二元素以上からなる凝縮系薄膜物質。
  6. 請求項5記載の凝縮系薄膜物質を、組成傾斜方向と垂直に交わる方向に短冊状に切断することにより得られる組成の異なる二元素以上からなる凝縮系薄膜物質。
  7. (a)二元素以上からなる凝縮系薄膜物質をセットするための、重量バランスを取った円板と、
    (b)該円板を超高速回転し得る高周波モータと、
    (c)該高周波モータの回転数を調節して、5万G以上20万G未満の加速度場を前記円板に与えるための制御手段と、
    (d)前記円板を設置する超高真空チャンバーと、
    (e)該超高真空チャンバー中で高真空状態を保持し、かつ前記円板を高速回転させることが可能な水冷式磁気シールユニットを備え、
    (f)前記常温〜2000℃の温度の下で、前記5万G以上20万G未満の加速度場を前記円板に与えて、前記二元素以上からなる凝縮系薄膜物質の各原子または各分子に作用する遠心力に差を与え、この差により前記凝縮系薄膜物質に原子・分子レベルの傾斜構造を生成することを特徴とする高速回転による組成傾斜装置。
  8. 請求項7記載の高速回転による組成傾斜装置において、さらに、前記超高真空チャンバー中に設置した二元素以上からなる凝縮系物質のレーザーアブレーション手段とを具備することを特徴とする高速回転による組成傾斜装置。
  9. 請求項8記載の高速回転による組成傾斜装置において、前記レーザーアブレーション手段は、前記真空チャンバー中に二元素以上からなる凝縮系物質のレーザーアブレーション用ターゲットと、前記ターゲットを所定の位置に保持するターゲットホルダと、前記ターゲットホルダの位置調整を行う直線・回転導入機と、前記ターゲットホルダに保持された前記ターゲットに照射するレーザーを前記高真空チャンバーに入射するための石英窓を備え、前記ターゲットホルダに保持された前記ターゲットにレーザーを照射することで、レーザーアブレーションによる薄膜作製と高速回転による組成傾斜処理を同一装置で行うことを特徴とする高速回転による組成傾斜装置。
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