JP2005298417A - 抗菌剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 グラム陰性菌に対して充分な抗菌活性を有すると共に、抗生物質のような有機化合物抗菌剤に代わる有用な抗菌剤、特にピロリ菌に対し有効な抗菌活性を有する抗菌剤を提供する。
【解決手段】 少なくともタングステンを有し且つモリブデンを含まないヘテロポリ酸イオンと陽イオンとにより構成された金属酸化物クラスター化合物、例えば、K18(KSb92186)・nH2O、K5[SiVW1140]・nH2O、K7[BVIV1140]・7H2O及びK5[PVIV1140]・6H2Oを有効成分とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、抗菌剤に関し、特にヘリバクター・ピロリ菌などのグラム陰性菌に対して抗菌活性を有する抗菌剤に関する。
ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori、以下、単にピロリ菌という)は、わが国のみならず世界中に多くの患者数を占める胃癌の原因とされ、更に、粘膜関連リンパ組織リンパ腫などの悪性疾患にも関与する可能性が示されている。これらの疾患の治療及び再発防止のため、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌が重要な課題となっている。現在、このピロリ菌の駆除には、メトロニダゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシンなどの種々の抗生物質を用いた多剤併用療法が用いられている。
一方、ビスマス製剤、特に次硝酸ビスマスがピロリ菌の治療に用いられており、ビスマス製剤の抗菌力は抗生物質と比較するとやや劣るが、古典的三剤併用療法の際の重要な薬剤として位置付けられている(例えば、非特許文献1)。また、ニトロイミダゾール系薬剤及びプロトンポンプ阻害剤(PPI)も、ピロリ菌に対しても比較的良好な抗菌力を有している。
しかしながら、これらの除菌療法は常に成功するとは限らず、その上に、これらの有機物薬剤による抗生物質の使用は、耐性菌の出現といった問題を抱えている。
抗生物質に代わる抗菌剤としては、クエン酸鉄とアンモニア水を有効成分とするもの及び天然成分を含む抗菌剤など(例えば、特許文献1及び2)が挙げられるが、除菌効果が充分とはいえない。
一方、分子性無機金属酸化物であるポリ酸は、微生物等によって作られた抗生物質とは異なり、単純な構造体であるにも拘らず、高選択的な生理活性能を有していることで注目されている。ポリ酸の生理活性能を利用したものとしては、抗ウィルス剤や抗腫瘍剤、抗MRSA薬剤が開発されている(例えば、特許文献3〜5)。
しかしながら、MRSAはグラム陽性菌であるのに対してピロリ菌はグラム陰性菌であり、同様に効果があるとは限らない。
特開平11−21237号公報 特開2001−316280号公報 特公平6−29191号公報 特開2000−229864号公報 特開平8−73362号公報 Pharmacology 1995; Vol.50: p333-337
従って、本発明は、グラム陰性菌に対して充分な抗菌活性を有すると共に、抗生物質のような有機化合物抗菌剤に代わる有用な抗菌剤、特にピロリ菌に対し有効な抗菌活性を有する抗菌剤を提供することを目的とする。
本発明の抗菌剤は、少なくともタングステンを有し且つモリブデンを含まないヘテロポリ酸イオンとカチオンとを含む金属酸化物クラスター化合物を有効成分とし、グラム陰性菌に対して抗菌活性を有することを特徴とする。
また上記抗菌剤は、ヘリコバクターピロリ菌に対して抗菌活性を有することを特徴としている。
本発明によれば、少なくともタングステンを含み且つモリブデンを含まないという特殊なヘテロポリ酸イオンを有する金属酸化物クラスター化合物を主成分とするので、グラム陰性菌に対して抗生物質と同等の抗菌活性を有する一方で、微生物由来の抗生物質とは異なる新たな抗菌剤を提供することができる。従って、グラム陰性菌に対して充分な抗菌活性を有すると共に、抗生物質のような有機化合物抗菌剤に代わる有用な抗菌剤、特にピロリ菌に対する有効な抗菌剤を提供することができる。
本発明の抗菌剤は、少なくともタングステンを有し且つモリブデンを含まないヘテロポリ酸イオンと陽イオンとにより構成された金属酸化物クラスター化合物を有効成分とし、グラム陰性菌に対して抗菌活性を有するものである。
ポリ酸とは、遷移金属元素(W(VI)、V(V)など)によって構成される金属酸化物クラスター化合物をいい、金属原子などに酸素原子が、通常4又は6配位した四面体又は八面体を基本単位として、この基本単位が稜又は頂点を介して結合した構造を有するものである。本発明に係る金属酸化物クラスター化合物は、2種以上のヘテロ原子を含むヘテロポリ酸イオンと、陽イオンとで構成されている。
本発明の金属酸化物クラスター化合物のヘテロポリ酸イオンには、タングステンに加えて、ヘテロ金属原子としてアンチモン、バナジウム、リン、ホウ素、ケイ素、チタン、アルミニウム、亜鉛、コバルト、ヒ素、ビスマスなどを含むことができるが、モリブデンは抗菌活性が著しく劣るため含まれない。またビスマスは抗菌活性が劣るため、及びヒ素は動物細胞に対する活性が高すぎる場合があるため、それぞれ金属酸化物クラスター化合物に含まれないことが好ましい。
このうちアンチモン及びバナジウムが、高い抗菌活性を有するため好ましい。
特にアンチモンを含むヘテロポリ酸イオンとしては、[SbW9339-を含むもの及び[XSb92186-(式中Xは、K+、Na+又はNH4 +である)が活性が高いため好ましい。
また、いわゆるケギン構造を有するものも良好な抗菌活性を有するため好ましい。ここでケギン構造とは、[Xm+12409-(m)-の式で表されるヘテロポリ酸であり、Mに該当する原子に酸素原子が6配位した正八面体構造を有するMO6が、辺を共有して3個集まってM313という単位を作り、更に頂点を共有して4個集まって、中心にヘテロ原子が配位した立体配置をとった構造をいう(図1参照)。ここで本発明に係るヘテロポリ酸イオンでは、Mは[M12-nn]に相当し、タングステン以外の他の原子が該当する。またこのようなケギン構造では、正八面体構造の単位が1以上欠損する場合(これを欠損ケギン構造という)があり、これらも本発明におけるケギン構造に含まれる。
本発明においてケギン構造を有するヘテロポリ酸イオンとしては、一置換混合金属ケギン構造を採る骨格であって[XYW1140-(14-X-y)(式中X=Si4+、P5+、B3+、Al3+などのヘテロ原子、Y=V4+、V5+などのW以外の金属、x及びyは、X及びYのイオン電荷)で示されるものが該当する。この中でも、[SiVW1140]、[BVIV1140]及び[PVIV1140]が好ましい。
金属酸化物クラスター化合物を構成する陽イオンとしては、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンをはじめ、有機及び無機のアンモニウムイオン、水素化金属イオン、又は水素化アンモニウムイオンが挙げられ、カリウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、水素イオンなどが該当する。これらのいずれが選択されるかは、対となるヘテロポリ酸イオンの種類などに応じて適宜選択される。本発明においては、抗菌活性の観点からカリウムが特に好ましい。
抗菌活性の観点から本発明において特に好ましい金属酸化物クラスター化合物には、K18(KSb92186)・nH2O、K5[SiVW1140]・nH2O、K7[BVIV1140]・7H2O及びK5[PVIV1140]・6H2Oなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本金属酸化物クラスター化合物は、有効な含有量で抗菌剤に含まれる。抗菌剤での含有量は金属酸化物クラスター化合物の投与量の応じて適宜決定され、その投与量は、ヒトの場合、10g〜10mg/kg(体重)、好ましくは2g〜50mg/kg(体重)である。10mg/kgよりも少ないと抗菌剤としての効果が期待できず、10g/kgを超えると投与量に応じた効果が期待できないため、好ましくない。
本金属酸化物クラスター化合物は、当業者において周知の合成方法により合成することができる。例えば、J. Goord. Chem., 9, 234, (1979)、Inorg. Chem., 2, 685, (1973) 及びBull. Chem. Soc. Jpn., 65, 1453 (1992)などに記載されている方法を適用することができる。また金属酸化物クラスター化合物自体は既に公知であるので、当業者であれば個々の金属酸化物クラスター化合物を容易に合成することができる。
本発明の抗菌剤は、上記金属酸化物クラスター化合物に加えて、医薬的に許容可能な担体を含む。このような担体としては、通常抗菌剤に含有可能な成分、例えば、水、生理食塩水、緩衝溶液などを含むことができる。
また、本発明における金属酸化物クラスター化合物は、構造上、水に易溶性であるので、溶液化することが吸収性の観点から好ましいが、錠剤などの種々の剤形を取ることができる。この場合には、選択された剤形に応じが適当な担体が選択されるが、当業者であれば、剤形に応じた担体を容易に選択することができる。
本発明の抗菌剤は、ピロリ菌、サルモネラ菌、メタン生成細菌などのグラム陰性菌に対して抗菌活性を有するものであるが、ピロリ菌に対して特に抗菌活性を有するものである。なお、グラム陰性菌に対して抗菌活性を有しているが、ブドウ球菌などのグラム陽性菌に対しても同様に効果的に用いることもできる。
以下に本発明の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量基準である。
(A)合成例
以下に、金属酸化物クラスター化合物の合成の一例を説明する。
(1)K18[KSb92186]の合成
文献(J. Inorg. Nucl. Chem., 42, p1583-1586 (1980))に記載されている方法に従って合成した。簡単に説明すると、以下のとおりである。
沸騰させた1リットルの2Mアンモニア水に、81gのWO3を溶解させて、溶液Aとした。21.8gのSb23を6MのHCl液150mlに溶解させたものを、高温の溶液Aに徐々に加え、その後、アンモニア水によってpH7.5に調整した。すぐに生成する沈殿を、すばやく濾過して取り除き、その後、濾液の温度を徐々に下げることによって結晶として、(NH418[NH4Sb92186]を得た。
次いで、34gの(NH418[NH4Sb92186]を、0.05MのKCl水溶液200mlに溶解させ、これに、20gのKClを加えて攪拌し、沈殿物としてK18[KSb92186]を得た。
(2)K5[PVW1140]・6H2Oの合成
文献(Inorg. Chem., 12(3), p685 (1973))に記載されている方法に従って合成した。簡単に説明すると、以下のとおりである。
30gのNa3PW1240を、25mlの0.1M酢酸緩衝溶液(pH4.5)に溶解させた後、Na3PW1240と等モル(約1M)となるようにVOSO4を加えた。次いで、溶液を沸騰直前まで加熱してから、酢酸カリウムを、白い沈殿(パラタングステン酸のカリウム塩と思われる)が増加しなくなるまで添加した。この溶液をすばやく濾過した後に、濾液にさらに1gの酢酸カリウムを加え、一晩、冷蔵庫に静置する。得られた結晶を、沸騰した酢酸カリウム緩衝溶液(pH4.5)で再結晶させて、K5[PVW1140]・6H2Oを得た。
(3)K27[KAs440140]の合成
文献(Nouvea J. Chim., 2, p233-237, (1978))に記載されている方法に従って合成した。簡単に説明すると以下のとおりである。
沸騰させた300mlの水に、1モルのタングステン酸ナトリウム(330g)と0.1モルの亜ヒ酸ナトリウム(13g)を溶解させた。6MのHCl約250mlによってpH4に調整した。この溶液を加熱し、pH4で全体積が500mlになるまで蒸発させた。この溶液を5℃まで冷却することによって、Na27[NaAs440140]を得た。
次いで、60gのNa27[NaAs440140]を、300mlの水に溶解させ、これに、20gのKClを加えた。Na陽イオンを含まないカリウム塩とするために、生成した沈殿を再び水に溶解させた後、KClを加えて沈殿させることを2回繰り返した。最終的に生成した沈殿をpH5−6の水で再結晶して、K27[KAs440140]を得た。
(B)金属酸化物クラスター化合物を含む抗菌剤の毒性
本発明の金属酸化物クラスター化合物を生理食塩水に懸濁して、メスのBalb/cマウス(5週齢)に経口投与したところ、250mg/kg/日を9日間連続投与しても、マウスの体重減少は認められなかった。
(C)抗菌活性試験
本抗菌剤の抗菌活性を調べるために、臨床分離株ヘリコバクター・ピロリ007(Hp007)に対するMIC(最小生育阻止濃度)を測定した。MICは寒天平板法で測定した。
なお、各種ピロリ菌(臨床分離株)は、佐賀医科大学の田島裕先生より供与されたものを使用し、Helicoacter pylori II D3023 株は、東京大学医科学研究所感染・免疫体部門細菌感染分野 微生物菌株保存室から購入した。ピロリ菌は、ブルセラ・ブロス(Becton Dickinson社製)にウシ胎児血清(FBS、Termo Trece社製)を10%添加した培地5mlに植菌して、37℃で1日間恒温振盪機にて培養し、維持した。
ミューラー・ヒントン(Mueller-Hiton)ブロス(Difco)を超純水で溶解した後、1.5%の寒天を加えてオートクレーブで121℃15分間滅菌した。これに5%の馬脱繊維血液(コージンバイオ社製)を加えて20mlずつ滅菌シャーレ(岩城硝子株式会社製)に分注した。滅菌シャーレには、滅菌水(オートクレーブで121℃15分で加熱滅菌したもの)で所定濃度に段階希釈した抗菌剤及び各種抗生物質を1mlずつ添加した。薬剤が倍地中に拡散するように充分に混合し、固化したら表面を乾燥させて使用した。使用した抗生物質は和光純薬工業から購入したものを使用した。使用した薬剤を表1に示す。
1日振盪培養したHp007菌液の吸光度(625nm)を、分光光度計(ultraspec 1100、Amersham Bioschences社製)で測定し、およそ0.1となるように希釈した後、これを更に10倍希釈して、その菌液から10μlずつ接取した。このとき、1枚のシャーレに接取した菌体量が105cfu/スポットとなるように希釈倍、接取菌液量を調整した。これを37度で3日間(又は4日間)、飽和水蒸気下のCO2インキュベータ(モデル5100、和研薬株式会社製)にて培養した。寒天上にコロニーを作らない最も低い濃度をMICとした。結果を表1に示す。
Figure 2005298417
表1に示されるように、タングステンを含みモリブデンを含まない金属酸化物クラスター化合物の抗菌剤(実施例1〜15)は、タングステンを含まない抗菌剤(比較例4,6〜8、11〜12)及びモリブデンを含む抗菌剤(比較例4〜7)と比較していずれもMICの値が低かった。
また、ビスマスを含まない抗菌剤(実施例1〜12、14〜15)では特に低いMIC値であり、陽イオンとしてカリウムの抗菌剤のMIC値も比較的低かった(実施例5、7、9〜12、14〜15)。構造との関係では、低いMIC値を示した抗菌剤に含まれる金属酸化物クラスター化合物の多くは、ケギン構造を有していた。
(D)各種ピロリ菌における抗菌活性
ピロリ菌は、菌株によって薬剤に対する感受性が大きく変化することが知られている。そこで、種々の臨床分離株に対する各種抗菌剤の抗菌活性を、MIC50、MIC90及びMICレンジに基づいて比較した。MIC50とは、試験した全菌株の半分が示すMIC値であり、MIC90は、同様に試験した全菌株の9割の菌株が示すMIC値である。MICは(C)の項目で示したものと同様に行った。抗菌剤は、Hp007に対して特に抗菌活性が高かった(MIC値が低かった)8つを用いた。試験した化合物種及び結果を表2に示す。
また実施例5及び9の抗菌剤については、それぞれ各種のピロリ菌に対する抗菌活性の時間的な変化について調べた。各種金属酸化物クラスター化合物を含まないものをコントロールとして使用した。結果を図2〜4に示す。
Figure 2005298417
表2に示されるように、本実施例では、MIC値の偏差が抗生物質とほぼ同じか、それよりも狭く、種々のピロリ菌に対して同等の抗菌活性を有することが明らかであった。特に、実施例5、9及び15の抗菌剤ではいずれのMIC値が最も低く、実施例に係る抗菌剤の中でも強い抗菌活性を有することが示された。
なお、試験に用いた種々のピロリ菌には、多剤耐性菌株も含まれているが、これらの耐性菌と感受性菌との間で実施例に係る抗菌剤のMICには有意な差がなかった(データ示さず)。これにより、抗生物質とは異なる作用機序でピロリ菌に作用して、MIC値を減少させていることが示唆された。
また図1乃至3に示されるように、菌種によって抗菌活性に差があるものの、多くの場合でいずれも24時間以内に効果的な抗菌活性を示すことが明らかであった。特に、実施例5の抗菌剤では、より効果的な抗菌活性が高いことが示され、殺菌的な効果をもつ抗菌剤であることが示唆された。
(E)抗生物質との抗菌力の比較
抗生物質は比較的分子量の小さい化合物であるのに対して、金属酸化物クラスター化合物の分子量は、抗生物質の分子量の少なくとも4〜6倍大きい。このため、1分子がもつ抗菌力を比較するために、モル濃度換算したMIC値で比較した。実施例5、9及び15に係る抗菌剤及び比較例1〜3の抗生物質のモル濃度に換算したときのMIC50(μM)値を表3に示す。またピロリ菌に対して高い抗菌活性を有する次亜硝酸ビスマス(比較例13)及びプロトンポンプ阻害剤(PPI)であるオメプラゾール(比較例14)のMIC50(μM)も併せて表3に示した。
Figure 2005298417
表3から明らかなように、本実施例に係る抗菌剤では数μMで抗菌活性を示すことから、1分子あたりの抗菌力では、メトロニダゾールよりも高い抗菌活性を有していた。またピロリ菌に対して高い抗菌活性を有することが知られている他の薬剤(比較例13及び14)と比較しても、本実施例に係る抗菌剤の方が1分子あたりの抗菌活性が高いことが明らかであった。
(F)ヒト癌細胞に対する毒性試験
次に、本抗菌剤のヒトに対する影響を調べるために、ヒト細胞毒性試験を行った。
ヒト細胞毒性試験における精細胞数の測定法としては、非触法であるMTS[3−(4,5−ジメチルシアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内部塩]法を用いた。MTSテトラゾリウム化合物は、細胞によって生物学的に還元されて、組織培養液に可溶な発色性のホルマザン産物へと変換される。ホルマザン産物の量は、490nmの吸光度として即得治されて、その値は、培養液に含まれる生細胞数と直接的に比例する。
ヒト胃癌由来細胞株(MKN−1、MKN−45;理化学研究所ライフサイエンス筑波研究センター細胞開発銀行から購入)を、37℃及び5%CO2の条件下で3〜4日間培養した。培地は、約10%ウシ胎児血清含有のRPMI1640(Sigma Aldrich社製)(5mlの100×硫酸カナマイシン(インビトロゲン社製)添加)とした。
培養後、4×104個/mlとなるように培地で希釈して、96穴プレート(Nunc社製)の各ウェルに90μl(3.6×105個/ml)ずつ分注した。
24時間、更に培養し後、10倍の段階希釈した抗菌剤及び5−フルオロウラシル(5−FU;Sigma社製)を10μlずつ各ウェルに加えて、37℃及び5%CO2の条件下で72時間培養した。
72時間後に各ウェルの培地を除去し、RPMI1640培地100μlとMTS溶液(CellTiter96(登録商標)Aqueous One Solution;Promega社、PBS中にMTS試薬1.90mg/ml及びPES[フェナジンエトスルフェート]300μmol/lを含む)20μlを各ウェルに添加して、37℃及び5%CO2の条件下で2時間インキュベートした2時間後に、96穴プレートリーダ(IMMUNO-MINI NJ-2300;Nunc社製)により、波長490nmにおける吸光度(A490)を各ウェルに対して測定した。バックグランドとしてRPMI1640培地100μl及びMTS溶液20μlの混合液を用いた。得られた急高度から生細胞数を比色定量し、50%成育阻止濃度(IC50:50% Inhibition Concentration)を求めた。各薬剤に対して3検体解析を3回行い、その平均値を求めた。
IC50値は、発光物質の発光が50%抑制される濃度であり、ここでは各抗菌剤の非存在下の吸光度(A490)に対して吸光度がが半分になる薬剤の濃度(Xμg/ml)とし、薬剤の濃度(Xμg/ml)の吸光度(A490)を薬剤非存在下の吸光度(A490)を割った値に100をかけて、算出した。結果を表4に示す。なお、化合物濃度1000μg/mlで細胞生育阻止率がほぼ100%となってことから、IC50>100μg/mlであれば、毒性が低いものと評価した。
Figure 2005298417
表4に示されるように、ほとんどの本実施例の抗菌剤では、IC50が100以上であり、ヒト胃癌由来細胞株に対して毒性が低いことが明らかであった。従って、本実施例の抗菌剤は、ピロリ菌に対して高い選択性を有することが示唆された。また各抗菌剤に対する感受性は細胞株間で異なっているが、これは、細胞株の金属に対する代謝機能や細胞増殖速度などによるものと考えられる。
このように、本実施例の抗菌剤は、ピロリ菌に対して選択的に高い抗菌活性を有するものであることは明らかである。また金属酸化物クラスター化合物の構造上、抗生物質とは異なり水に易溶性であるため、取り扱いやすいと共に代謝も早いことが期待される。このため、本発明によれば、ピロリ菌を効果的に除去することに極めて有用で、抗生物質のような有機化合物抗菌剤に代わる有用な抗菌剤、特にピロリ菌に対し有効な抗菌活性を有する抗菌剤を提供できる。
金属酸化物クラスター化合物のケギン構造を示す図である。 図2(A)は、本実施例に係る抗菌剤のHp007株に対する抗菌活性の時間的な変化を示すグラフ、図2(B)は、同一菌種に対する本実施例に係る他の抗菌剤の抗菌活性の時間的な変化を示すグラフである。 図3(A)は、本実施例に係る抗菌剤のHp012株に対する抗菌活性の時間的な変化を示すグラフ、図3(B)は、同一菌種に対する本実施例に係る他の抗菌剤の抗菌活性の時間的な変化を示すグラフである。 図4(A)は、本実施例に係る抗菌剤のHelicobacter pylori IID3023株に対する抗菌活性の時間的な変化を示すグラフ、図4(B)は、同一菌種に対する本実施例に係る他の抗菌剤の抗菌活性の時間的な変化を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 少なくともタングステンを有し且つモリブデンを含まないヘテロポリ酸イオンと陽イオンとにより構成された金属酸化物クラスター化合物を有効成分とし、グラム陰性菌に対して抗菌活性を有する抗菌剤。
  2. ヘリコバクター・ピロリ菌に対して抗菌活性を有する請求項1記載の抗菌剤。
  3. バナジウム又はアンチモンをヘテロ金属原子として含むことを特徴とする請求項1又は2記載の抗菌剤。
  4. 前記へテロポリ酸イオンがケギン構造を有するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の抗菌剤。
  5. 前記ヘテロポリ酸イオンが、ビスマスを含まないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の抗菌剤。
  6. 前記陽イオンとして、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機及び無機のアンモニウムイオン、水素化金属イオン、水素化アンモニウムイオンを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の抗菌剤。
  7. 前記陽イオンとして、カリウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、水素イオンを含むことを特徴とする請求項6項記載の抗菌剤。
  8. 前記金属酸化物クラスター化合物が、K18(KSb92186)・nH2O、K5[SiVW1140]・nH2O、K7[BVIV1140]・7H2O及びK5[PVIV1140]・6H2Oから選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項1又は2記載の抗菌剤。
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