JP2005295819A - 植物の発芽を抑制する方法、及び発芽が抑制された形質転換植物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、植物のペルオキシソームの機能に着目して、植物の発芽のみが抑制され、発芽後は正常に生育することができる植物の発芽抑制方法、及び発芽のみが抑制された新規な植物を提供する。
【解決手段】 本発明は、タンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させた植物、その作出方法に関する。また、本発明は、植物のタンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させて、ショ糖の存在しない培地での植物の発芽を抑制する方法に関する。
【選択図】 なし
【解決手段】 本発明は、タンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させた植物、その作出方法に関する。また、本発明は、植物のタンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させて、ショ糖の存在しない培地での植物の発芽を抑制する方法に関する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、タンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子、即ちPEX7遺伝子を欠損させることによる植物の発芽を抑制する方法に関する。また、本発明は、PEX7遺伝子の発現が抑制された形質転換植物に関し、本発明の形質転換植物は、脂肪酸分解能を失っているために発芽時にショ糖を要求するが、その余の機能に異常はなく、発芽後は正常に生長することができる。
真核細胞では、さまざまな代謝機能が生体膜によって区画化されたオルガネラ(細胞内小器官)に存在する。個体が成長するうえで、各種のオルガネラが固有の機能を果たしつつ、協調的に働くことが必要不可欠である。これらのオルガネラは決して静的な状態のまま細胞内に存在しているのではなく、細胞の成長・分化に伴い生成、変換、消失するなどきわめて動的な状態にある。そして、多種多様に分化した真核細胞からなる高等動植物では、個々に分化した細胞内に存在するオルガネラが動的に変化し、それぞれ特殊化した機能をもちあわせている。逆にみれば、これはオルガネラの機能分化こそが真核細胞の多様化を可能にしているといえる。この事実は、動植物が示すさまざまな生理現象を解明していくうえで、オルガネラレベルでの解析が重要であることを示している。
ペルオキシソームは、真核細胞に普遍的に存在する直径0.5〜1.0μmほどのオルガネラである。1950年代にマウスの肝臓組織で発見されて以来、機能をもたないオルガネラと考えられてきた。しかしながら、高等植物のペルオキシソームが脂質代謝に関与するという証明がなされ、さらにその後の研究によってこの機能が生物界全般のペルオキシソームに普遍化されることにより、一躍注目されるオルガネラとなりつつある。
高等植物細胞のペルオキシソームは、それぞれの機能により少なくとも次に示す(1)〜(3)の3種類に細分される(非特許文献1参照)。
(1)黄化子葉などに観察されるグリオキシソーム。
(2)光合成器官に存在する緑葉ペルオキシソーム。
(3)根などの器官にみられる特殊化していないペルオキシソーム。
これらの分化したペルオキシソームは高等植物のさまざまな器官において、それぞれの代謝系に必要な特異的な酵素群を内包している。
グリオキシソームは主に脂肪性種子の発芽段階における胚乳や子葉のような貯蔵器官細胞に存在している(非特許文献2参照)。このグリオキシソームは脂肪酸β酸化とグリオキシル酸回路の酵素群を有しており、貯蔵脂肪からショ糖への変換過程において中心的な役割を担っている。対照的に、緑葉ペルオキシソームは光合成器官の細胞に広く分布している。この緑葉ペルオキシソームにはいくつかのグリコール酸経路の諸酵素が含まれており、緑葉ペルオキシソーム、葉緑体、ミトコンドリア間における酵素反応によって光呼吸系を成立させている(非特許文献3参照)。一方、特殊化していないペルオキシソームに関する報告はあまり多くはなく、今のところ際だった生理的機能は不明である。
高等植物細胞のペルオキシソームは、それぞれの機能により少なくとも次に示す(1)〜(3)の3種類に細分される(非特許文献1参照)。
(1)黄化子葉などに観察されるグリオキシソーム。
(2)光合成器官に存在する緑葉ペルオキシソーム。
(3)根などの器官にみられる特殊化していないペルオキシソーム。
これらの分化したペルオキシソームは高等植物のさまざまな器官において、それぞれの代謝系に必要な特異的な酵素群を内包している。
グリオキシソームは主に脂肪性種子の発芽段階における胚乳や子葉のような貯蔵器官細胞に存在している(非特許文献2参照)。このグリオキシソームは脂肪酸β酸化とグリオキシル酸回路の酵素群を有しており、貯蔵脂肪からショ糖への変換過程において中心的な役割を担っている。対照的に、緑葉ペルオキシソームは光合成器官の細胞に広く分布している。この緑葉ペルオキシソームにはいくつかのグリコール酸経路の諸酵素が含まれており、緑葉ペルオキシソーム、葉緑体、ミトコンドリア間における酵素反応によって光呼吸系を成立させている(非特許文献3参照)。一方、特殊化していないペルオキシソームに関する報告はあまり多くはなく、今のところ際だった生理的機能は不明である。
興味深いことに、グリオキシソーム、緑葉ペルオキシソーム、特殊化していないペルオキシソームは、個体の成長などの環境変化に応じてその機能を他のペルオキシソームに転換させることが知られている(非特許文献2参照)。この現象は植物ペルオキシソーム固有のものであり、酵母や哺乳類などのペルオキシソームではみられない。黄化子葉のグリオキシソームは、光照射により子葉が緑化していく過程で、直接緑葉ペルオキシソームへと変化する。この過程においてイソクエン酸リアーゼやリンゴ酸合成酵素のような脂質代謝酵素は特異的に分解される。そして、グリコール酸酸化酵素やヒドロキシピルビン酸還元酵素などの光呼吸酵素が新規に合成され、それらがペルオキシソームに輸送されることにより、グリオキシソームから緑葉ペルオキシソームへの機能転換が完了する。さらに、興味深いことに、この植物ペルオキシソームの機能転換は可逆的であり、老化段階にある子葉細胞では緑葉ペルオキシソームからグリオキシソームへの逆の機能転換が観察されている。このような植物ペルオキシソームの可逆的な分化は、これを支えるペルオキシソームへのタンパク質輸送系がたいへん柔軟に機能していることを想像させる。
このように植物のペルオキシソームは、その成長過程において可逆的に機能転換することが知られているオルガネラであるが、このような機能転換に関与している物質やペルオキシソームの機能に関与しているタンパク質については十分解明されていない。
ペルオキシソームの機能の転換の過程や、それぞれの機能を発現している場合の当該機能に関与しているタンパク質類を解明するために、ペルオキシソームの機能の欠損した変異体が製造されてきた。
ペルオキシソームの機能の転換の過程や、それぞれの機能を発現している場合の当該機能に関与しているタンパク質類を解明するために、ペルオキシソームの機能の欠損した変異体が製造されてきた。
例えば、本発明者らは植物細胞におけるペルオキシソーム機能制御に関連した遺伝子を同定するため、脂肪性種子植物のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を用いてペルオキシソーム機能を欠損した突然変異体の製造を行っている。例えば、グリオキシソームの形態が大きく変化した変異体を製造してきた(特許文献1参照)。
また、このような突然変異体としてグリオキシソームの脂肪酸β酸化系を欠損したシロイヌナズナ突然変異体(ped1〜3)を開発してきた(非特許文献4参照)。この変異体pedは、2,4−ジクロロフエノキシ酪酸(2,4-dichlorophenoxy-butyric acid;2,4−DB)に対して耐性を示す。野生型では、2,4−DBの酪酸鎖は脂肪酸β酸化系に基質として認識され、切断され、その結果として、除草剤である2,4−ジクロロフエノキシ酢酸(2,4-dichlorophenoxyacetic acid;2,4−D)に代謝され、死滅する。しかしながら、この変異体では脂肪酸β酸化系が欠損しているためこの変換が行われず、結果として変異個体は生き残る。
本発明者らは、この選抜方法により、独立した3つの突然変異体ped1〜3の単離に成功した。これらの変異体を、それぞれped1〜3(peroxisome defective;ped)と命名した。ped1は、脂肪酸β酸化酵素の1種であるチオラーゼ(thiolase)を欠損するものであったが、ped2は脂肪酸β酸化系の欠損だけでなく、光呼吸活性の低下も招いていた(非特許文献5参照)。このために、発芽時にショ糖を要求するだけでなく、発芽後も酸素の存在する大気中では成長が抑制される結果となっていた。
また、このような突然変異体としてグリオキシソームの脂肪酸β酸化系を欠損したシロイヌナズナ突然変異体(ped1〜3)を開発してきた(非特許文献4参照)。この変異体pedは、2,4−ジクロロフエノキシ酪酸(2,4-dichlorophenoxy-butyric acid;2,4−DB)に対して耐性を示す。野生型では、2,4−DBの酪酸鎖は脂肪酸β酸化系に基質として認識され、切断され、その結果として、除草剤である2,4−ジクロロフエノキシ酢酸(2,4-dichlorophenoxyacetic acid;2,4−D)に代謝され、死滅する。しかしながら、この変異体では脂肪酸β酸化系が欠損しているためこの変換が行われず、結果として変異個体は生き残る。
本発明者らは、この選抜方法により、独立した3つの突然変異体ped1〜3の単離に成功した。これらの変異体を、それぞれped1〜3(peroxisome defective;ped)と命名した。ped1は、脂肪酸β酸化酵素の1種であるチオラーゼ(thiolase)を欠損するものであったが、ped2は脂肪酸β酸化系の欠損だけでなく、光呼吸活性の低下も招いていた(非特許文献5参照)。このために、発芽時にショ糖を要求するだけでなく、発芽後も酸素の存在する大気中では成長が抑制される結果となっていた。
さらに、本発明者らは、ペルオキシソームの形態の変異を解明するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)がペルオキシソームに蓄積されるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の変異体を開発してきた。即ち、緑色蛍光タンパク質(GFP)のC末端側にペルオキシソームへの移行シグナル配列(PTS1)を有する、DLKALELPVSKLからなるアミノ酸配列を付加したタンパク質が発現するように遺伝子を改変した変異体を製造してきた(非特許文献6及び7参照)。
この変異体は、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するが、当該タンパク質にはC末端にペルオキシソーム移行シグナル配列が付加されているために、発現したGFPはペルオキシソームに蓄積され、その結果ペルオキシソームの形態を緑色の蛍光により確認することができるものである。同時に、付加したペルオキシソーム移行シグナル配列がペルオキシソームへのタンパク質の移行をおこなうものであることが確認された。
この変異体は、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するが、当該タンパク質にはC末端にペルオキシソーム移行シグナル配列が付加されているために、発現したGFPはペルオキシソームに蓄積され、その結果ペルオキシソームの形態を緑色の蛍光により確認することができるものである。同時に、付加したペルオキシソーム移行シグナル配列がペルオキシソームへのタンパク質の移行をおこなうものであることが確認された。
一方、生物のペルオキシソームにおけるタンパク質輸送因子として、これまでにPex1p〜Pex25pが報告されてきており、シロイヌナズナにおいてはPex1p〜Pex7p、Pex10p〜Pex14p、Pex16p、Pex17p、及びPex19pの15種類が同定されてきている。ヒトにおいては、これらのタンパク質をコードする遺伝子(PEXs)の欠損は、先天性の異常を引き起こすことが知られている。一方、シロイヌナズナでは、PEX2、PEX10、又はPEX16の欠損は致命的であるが、PEX5及びPEX14ポイントミューテーションによっては致命的なことにはならないことが知られている。そして、このうち、Pex5p、Pex7p、及びPex14pについてはそれらの相互の結合関係が明らかにされてきた(非特許文献8参照)が、これらのタンパク質輸送因子の詳細な機能については未だ解明されていない。
このように、植物のペルオキシソームは、非常に複雑な機能転換の過程や、脂質の分解やタンパク質の蓄積や光合成にも関与などの種々の重要な機能を果たしているオルガネラであり、ペルオキシソームの機能を解明することは脂質の分解などの単一の機能の応用だけでなく、植物の生育の制御のためにも必要なことであり、ペルオキシソームの機能の解析のための各種の変異体の製造が求められている。
このように、植物のペルオキシソームは、非常に複雑な機能転換の過程や、脂質の分解やタンパク質の蓄積や光合成にも関与などの種々の重要な機能を果たしているオルガネラであり、ペルオキシソームの機能を解明することは脂質の分解などの単一の機能の応用だけでなく、植物の生育の制御のためにも必要なことであり、ペルオキシソームの機能の解析のための各種の変異体の製造が求められている。
ところで、近年になって、特定の遺伝子の発現を抑制する手法のひとつとしてRNAi(RNA interference)法が開発されてきた。RNAiは、もともと2本鎖RNAの導入により、それと相同なRNAの発現が強力に抑制されるという生命現象として1998年に発見されたものであり、この現象を利用して2本鎖RNA(dsRNA)の導入により標的とする特定の遺伝子の発現を抑制する方法である。
本発明者らは、植物細胞におけるペルオキシソームの機能転換に関与している物質やペルオキシソームの機能に関与しているタンパク質を解明することを目的として、ペルオキシソームの機能に関連する新規な変異体を提供するものである。
また、本発明は、植物のペルオキシソームの機能に着目して、植物の発芽のみが抑制され、発芽後は正常に生育することができる植物の発芽抑制方法、及び発芽のみが抑制された新規な植物を提供することを目的としている。
また、本発明は、植物のペルオキシソームの機能に着目して、植物の発芽のみが抑制され、発芽後は正常に生育することができる植物の発芽抑制方法、及び発芽のみが抑制された新規な植物を提供することを目的としている。
本発明者らは、ペルオキシソームの機能転換に関与している物質やペルオキシソームの機能に関与しているタンパク質を解明するために、ペルオキシソームにおけるタンパク質輸送因子である各種のPexの機能を検討してきた。その中でPex5p及びPex7pに着目して、それらの機能を解明するためにこれらのタンパク質をコードしている遺伝子であるPEX5及びPEX7の欠損株を製造した。また、Pex5pのC末端の71アミノ酸を欠損させた、Pex5pの1番目のメチオニン(Met)から657番目のチロシン(Tyr)までのアミノ酸配列(1M−657Y)を過剰発現させるためのPEX5Δ7を構築することにより、これらのタンパク質の機能を種々の観点から検討してきた。その結果、驚くべきことに、Pex7pは植物の光呼吸の機能に影響を与えることなく、植物の発芽時の生育における脂肪酸の代謝のみに影響を与える因子であることを見出した。したがって、Pex7pをコードする遺伝子であるPEX7のみを欠損させることにより、通常の培地では発芽することができないが、ショ糖を含有する培地では発芽することができ、その後は正常に生育することができる植物、形質転換植物を創製することに成功した。
即ち、本発明は、タンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させた植物に関する。
また、本発明は、植物のタンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させて、ショ糖の存在しない培地での植物の発芽を抑制する方法に関する。
さらに、本発明は、植物のタンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させて、発芽時の生育にショ糖を必要とするが、生育に必要な他の機能は備えている植物を作出する方法に関する。
また、本発明は、植物のタンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させて、ショ糖の存在しない培地での植物の発芽を抑制する方法に関する。
さらに、本発明は、植物のタンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させて、発芽時の生育にショ糖を必要とするが、生育に必要な他の機能は備えている植物を作出する方法に関する。
本発明は、植物のペルオキシソームにおけるタンパク質輸送因子Pex7pの機能を欠損させることを特徴とする形質転換植物を提供するものである。本発明におけるPex7pの機能を欠損させる手法としては、当該タンパク質をコードする遺伝子を欠損させる方法が挙げられる。
本発明における遺伝子を欠損させる手法としては、当該遺伝子の発現を阻害できる方法であれば特に制限はなく、ジーンターゲッティング法などにより、ゲノム中の当該遺伝子の転写又は正常な発現を阻害することによってもよいし、また、アンチセンスやRNAi法によりその発現を阻害するだけでもよい。
RNAi法としては、2本鎖RNA(dsRNA)を導入してもよいが、ヘアピンループ型の2本鎖RNAが細胞内で生成されるように、当該RNAへの転写が可能なDNAを細胞内又はゲノム中へ導入してもよい。
当該ヘアピンループ型のRNAとしては、標的となるPEX7のRNAの塩基配列の全部または一部の塩基配列部分が2本鎖になるように設計され、それぞれの末端がスペーサー配列、例えばバー遺伝子などの塩基配列で結合されているものが挙げられる。このような塩基配列を有するDNAを、てきとうなプロモーターに結合してゲノム中に挿入することにより、当該遺伝子がRNAに転写され、当該スペーサー部分の両端には互いに相補的な配列が結合されていることから、転写後には、スペーサー配列部分で折れ曲がり、2本鎖のRNA部分を有するヘアピンループ型のRNAが生成されることになる。
当該ヘアピンループ型のRNAにおける2本鎖部分の塩基配列は、PEX7の発現を抑制することができる十分な長さを有しているならば、PEX7の全長である必要はなく、部分長でよい。スペーサー配列も特に制限はなく、ヘアピンループにおけるループを形成するに十分な長さがあればよい。
当該RNAを転写させるプロモーターとしては、常に転写活性を有するものであってもよいし、特定の条件下のみで転写活性を有するものであってもよい。
本発明における遺伝子を欠損させる手法としては、当該遺伝子の発現を阻害できる方法であれば特に制限はなく、ジーンターゲッティング法などにより、ゲノム中の当該遺伝子の転写又は正常な発現を阻害することによってもよいし、また、アンチセンスやRNAi法によりその発現を阻害するだけでもよい。
RNAi法としては、2本鎖RNA(dsRNA)を導入してもよいが、ヘアピンループ型の2本鎖RNAが細胞内で生成されるように、当該RNAへの転写が可能なDNAを細胞内又はゲノム中へ導入してもよい。
当該ヘアピンループ型のRNAとしては、標的となるPEX7のRNAの塩基配列の全部または一部の塩基配列部分が2本鎖になるように設計され、それぞれの末端がスペーサー配列、例えばバー遺伝子などの塩基配列で結合されているものが挙げられる。このような塩基配列を有するDNAを、てきとうなプロモーターに結合してゲノム中に挿入することにより、当該遺伝子がRNAに転写され、当該スペーサー部分の両端には互いに相補的な配列が結合されていることから、転写後には、スペーサー配列部分で折れ曲がり、2本鎖のRNA部分を有するヘアピンループ型のRNAが生成されることになる。
当該ヘアピンループ型のRNAにおける2本鎖部分の塩基配列は、PEX7の発現を抑制することができる十分な長さを有しているならば、PEX7の全長である必要はなく、部分長でよい。スペーサー配列も特に制限はなく、ヘアピンループにおけるループを形成するに十分な長さがあればよい。
当該RNAを転写させるプロモーターとしては、常に転写活性を有するものであってもよいし、特定の条件下のみで転写活性を有するものであってもよい。
本発明における植物としては、ペルオキシソームを含有する植物であって、Pex7pが機能しているものであれば特に制限はないが、穀物植物などの食糧用植物、花などの観賞用植物などの高等植物が実用性の観点から好ましい。
本発明の形質転換植物は、Pex7pの機能の欠損により発芽時にショ糖を必要することを特徴とするものであり、ショ糖を含有する培地で発芽させた後は、生育に必要な他の機能は備えていることから通常の培地で正常に生育させることができる。したがって、穂の形質転換植物は、苗として製造することができるが、当該植物から得られる種子は、ショ糖を含有する培地でないと発芽することはできず、当該種子は通常の培地、例えば耕作地では発芽させることができないので、種子を採取しても次世代の生育ができないという特異的な性質を有するものである。
したがって、本発明の植物の消費者は常に苗の供給を受けなければ、仮に当該植物の種子を採取したとしても本発明の植物を発芽・生育させることはできないことになる。
本発明の形質転換植物は、Pex7pの機能の欠損により発芽時にショ糖を必要することを特徴とするものであり、ショ糖を含有する培地で発芽させた後は、生育に必要な他の機能は備えていることから通常の培地で正常に生育させることができる。したがって、穂の形質転換植物は、苗として製造することができるが、当該植物から得られる種子は、ショ糖を含有する培地でないと発芽することはできず、当該種子は通常の培地、例えば耕作地では発芽させることができないので、種子を採取しても次世代の生育ができないという特異的な性質を有するものである。
したがって、本発明の植物の消費者は常に苗の供給を受けなければ、仮に当該植物の種子を採取したとしても本発明の植物を発芽・生育させることはできないことになる。
また、本発明は、植物のタンパク質輸送因子Pex7pの有する新たな機能を見出したものである。植物のタンパク質輸送因子Pex7pは、輸送シグナル配列としてPTS2を含有するタンパク質のみを介在していることを見出した。したがって、Pex7pの欠損はPTS2−依存性タンパク質のみの機能を低下させることになる。そして、これらのPTS2−依存性タンパク質は、脂肪酸β酸化に関与する酵素が包含されているが、光呼吸に関与する酵素は深く関与しておらず、その結果として、Pex7pをコードする遺伝子を欠損させることにより、ショ糖の存在しない培地での植物の発芽を抑制することができる方法を見出したものである。
以下に、本発明による知見を確認するための詳細な説明を行うが、本発明はこれらの具体的な事項に限定されるものではなく、本発明の技術的な内容を具体的に説明するための事項に過ぎない。
PEX5及びPEX7の遺伝子転写産物の発現を阻害するために、2本鎖のRNAi(RNA interference)(dsRNAi)を用いた。シロイヌナズナにdsRNAiを導入するために、pex5i及びpex7iと命名した2種類の人工遺伝子を構築した。これらの人工遺伝子は、標的遺伝子に特異的な配列の2本鎖のRNAを形成するようにレビンらの方法(Levin, J.Z., et al., (2000) Plant Molecular Biology, 44, 759-775.)に準じて作成した。構築された人工遺伝子pex5i及びpex7iの概要を図1に示す。図1は、PEX5Δ7の構築の概要も示している。
これらの遺伝子は対応するタンパク質の一部分のアミノ酸配列をコードするセンス鎖とアンチセンス鎖からなる同じ配列を含んでおり、これらの配列はバー遺伝子(bar gene)により相互に結合して2本鎖を形成する。pex5iは、シロイヌナズナのPex5pの28番目のロイシン(Leu)から207番目のグルタミン(Gln)までのアミノ酸配列(28L−207Q)をコードするDNAフラグメントのセンス鎖とアンチセンス鎖の方向(図1中の四角枠の矢印はその方向を示している。)で、550−bpのバー遺伝子(図1中では中央の四角枠で示されている。)に結合されている。同様に、pex7iは、シロイヌナズナのPex7pの50番目のグリシン(Gly)から239番目のバリン(Val)までのアミノ酸配列(50G−239V)をコードするDNAフラグメントが使用されている(図1中では斜線入りの四角枠で示されている。)。
これらの遺伝子は、それぞれカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター(図1中では、35SPと記入された大きな矢印枠で示されている。)の下流にインサートされている。これらの遺伝子の末端には、ノパリンシンターゼ(nopaline synthase)(図1中では、nosTと記入された四角枠で示されている。)が結合されている。
PEX5及びPEX7の遺伝子転写産物の発現を阻害するために、2本鎖のRNAi(RNA interference)(dsRNAi)を用いた。シロイヌナズナにdsRNAiを導入するために、pex5i及びpex7iと命名した2種類の人工遺伝子を構築した。これらの人工遺伝子は、標的遺伝子に特異的な配列の2本鎖のRNAを形成するようにレビンらの方法(Levin, J.Z., et al., (2000) Plant Molecular Biology, 44, 759-775.)に準じて作成した。構築された人工遺伝子pex5i及びpex7iの概要を図1に示す。図1は、PEX5Δ7の構築の概要も示している。
これらの遺伝子は対応するタンパク質の一部分のアミノ酸配列をコードするセンス鎖とアンチセンス鎖からなる同じ配列を含んでおり、これらの配列はバー遺伝子(bar gene)により相互に結合して2本鎖を形成する。pex5iは、シロイヌナズナのPex5pの28番目のロイシン(Leu)から207番目のグルタミン(Gln)までのアミノ酸配列(28L−207Q)をコードするDNAフラグメントのセンス鎖とアンチセンス鎖の方向(図1中の四角枠の矢印はその方向を示している。)で、550−bpのバー遺伝子(図1中では中央の四角枠で示されている。)に結合されている。同様に、pex7iは、シロイヌナズナのPex7pの50番目のグリシン(Gly)から239番目のバリン(Val)までのアミノ酸配列(50G−239V)をコードするDNAフラグメントが使用されている(図1中では斜線入りの四角枠で示されている。)。
これらの遺伝子は、それぞれカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター(図1中では、35SPと記入された大きな矢印枠で示されている。)の下流にインサートされている。これらの遺伝子の末端には、ノパリンシンターゼ(nopaline synthase)(図1中では、nosTと記入された四角枠で示されている。)が結合されている。
また、Pex5pのC末端の71アミノ酸を欠損させた、Pex5pの1番目のメチオニン(Met)から657番目のチロシン(Tyr)までのアミノ酸配列(1M−657Y)を過剰発現させるためのPEX5Δ7を構築した。この概要を図1の下段に示す。図1中のPEX5Δ7の欄の35SPと記入された大きな矢印枠はカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターを示し、黒抜きの四角枠は1M−657Yをコードする遺伝子部分を示し、35STと記入された四角枠は35Sターミネーターを示す。
これらの人工遺伝子を、植物を選択するときのマーカーとなるハイグロマイシン(hygromycin)耐性遺伝子を含有しているTiベクターにインサートした。そして、アグロバクテリウムによる形質転換法により、カナマイシン耐性形質転換植物である2種類の、即ちAtGFP−PTS1及びAtPTS2−GFPのゲノム中に組み込んだ。GFP−PTS1は、そのC末端にヒドロキシピルビン酸還元酵素のC末端側の10アミノ酸残基を含有するGFP−融合タンパク質を発現するものであり、またPTS2−GFPはそのN末端にクエン酸生成酵素のN末端側の49アミノ酸残基を含有するGFP−融合タンパク質を発現する(Mano, S., et al., (2002) Plant Cell Physiol, 43, 331-341)。なお、Atはシロイヌナズナであることを示している。このために、これらの形質転換体の親の代はペルオキシソームによる緑色の蛍光を有している。
これらの人工遺伝子を、植物を選択するときのマーカーとなるハイグロマイシン(hygromycin)耐性遺伝子を含有しているTiベクターにインサートした。そして、アグロバクテリウムによる形質転換法により、カナマイシン耐性形質転換植物である2種類の、即ちAtGFP−PTS1及びAtPTS2−GFPのゲノム中に組み込んだ。GFP−PTS1は、そのC末端にヒドロキシピルビン酸還元酵素のC末端側の10アミノ酸残基を含有するGFP−融合タンパク質を発現するものであり、またPTS2−GFPはそのN末端にクエン酸生成酵素のN末端側の49アミノ酸残基を含有するGFP−融合タンパク質を発現する(Mano, S., et al., (2002) Plant Cell Physiol, 43, 331-341)。なお、Atはシロイヌナズナであることを示している。このために、これらの形質転換体の親の代はペルオキシソームによる緑色の蛍光を有している。
最初の形質転換体をT0植物とする。カナマイシン及びハイグロマイシンの両方の耐性を示す子孫のT1は、それぞれpex5i/GFP−PTS1、pex5i/PTS2−GFP、pex7i/GFP−PTS1、pex7i/PTS2−GFP、PEX5Δ7/GFP−PTS1、及びPEX5Δ7/PTS2−GFPとして表記する。これらを各種の分析に使用した。子孫のT1は外来遺伝子のヘテロ接合体であるから、以下に記述する全ての表現型は優性であった。
子孫のT1における外来遺伝子の作用効果を免疫ブロット分析で試験した。形質転換植物及びその親の植物の葉からサンプルを抽出し、全タンパク質の量が10μgになるようにしてSDS−PAGEを行った。免疫ブロットは各々のタンパク質の抗体を用いて行った。結果を図2に図面に代わる写真で示す。図2のコントロール(cont)は親の植物(AtGFP−PTS1及びAtPTS2−GFP)の場合を示し、pex5i、pex7i及びPEX5Δ7は、それぞれ、前記で構築した人工遺伝子で形質転換した植物の場合を示し、それぞれの1及び2は親の植物、即ち1は親の植物がAtGFP−PTS1である場合を、2は親の植物がAtPTS2−GFPである場合を示している。図2中の矢印はそれぞれのタンパク質を示し、黒三角印はPEX5Δ7を示す。
この結果、pex5i/GFP−PTS1、及びpex5i/PTS2−GFPは、いずれもAtPex5pの量が極度に減少しているが、AtPex7pの量の変化はほとんど観察されなかった。これに対してpex7i/GFP−PTS1、及びpex7i/PTS2−GFPは、いずれもAtPex7pの量が極度に減少しているが、AtPex5pの量の変化はほとんど観察されなかった。一方、PEX5Δ7/GFP−PTS1、及びPEX5Δ7/PTS2−GFPは、PEX5Δ7をコードするポリペプチドの分子量に相応する箇所にバンドが現れており、AtPex7pの量の変化はほとんど観察されなかった。
このように、本発明で使用したRNAi法により、遺伝子特異的に標的遺伝子のPex5pやPex7pの発現を阻害することができることが確認された。
この結果、pex5i/GFP−PTS1、及びpex5i/PTS2−GFPは、いずれもAtPex5pの量が極度に減少しているが、AtPex7pの量の変化はほとんど観察されなかった。これに対してpex7i/GFP−PTS1、及びpex7i/PTS2−GFPは、いずれもAtPex7pの量が極度に減少しているが、AtPex5pの量の変化はほとんど観察されなかった。一方、PEX5Δ7/GFP−PTS1、及びPEX5Δ7/PTS2−GFPは、PEX5Δ7をコードするポリペプチドの分子量に相応する箇所にバンドが現れており、AtPex7pの量の変化はほとんど観察されなかった。
このように、本発明で使用したRNAi法により、遺伝子特異的に標的遺伝子のPex5pやPex7pの発現を阻害することができることが確認された。
形質転換植物であるpex5i/GFP−PTS1及びpex5i/PTS2−GFPにおけるGFP−PTS1及びPTS2−GFPの非細胞膜(subcellular)への局在化を共焦点レーザースキャニング顕微鏡を用いて分析した。結果を図3に図面に代わる写真で示す。図3の左側の欄の写真は葉の表皮細胞からのものであり、右側の欄の写真は根からのものである。図3のPTS1と示されている上段はpex5i/GFP−PTS1からのものであり、PTS2と示されている中段はpex5i/PTS2−GFPからのもであり、contと示されている下段の左側は野生型にGFP−PTS1を発現させるようにした親の形質転換体の葉の表皮細胞からのものであり、その右側は野生型にPTS2−GFPを発現させるようにした親の形質転換体の根の細胞からのものである。黒三角印はペルオキシソームで検出された蛍光を示し、矢印は細胞質ゾルにおいて検出された蛍光を示す。これらの写真の拡大率は同じであり、図3右下に示すバーは20μmを示す。
この結果、pex5i/GFP−PTS1の葉及び根の細胞は、周辺部のみに緑色の蛍光が観察され(図3の上段参照)、中央の液胞の周囲の細胞質ゾルでも同時に起こっている。同様な蛍光イメージは、ハイグロマイシン/カナマイシン耐性を示す20のT1世代の中からpex5i/GFP−PTS1として独立して単離された19の形質転換体においても観察された。細胞質ゾルの蛍光は、42のT1世代の中からpex5i/PTS2−GFPとして独立して単離された35の形質転換体においても観察された(図3の中段参照)。細胞質ゾルに蛍光を示すT1世代はPex5pの量が減少している(図2参照)。これらのデータは、Pex5pが細胞内から消失すれば、PTS1−及びPTS2−含有タンパク質の両者の細胞内輸送の能力が阻害されることを示している。
この結果、pex5i/GFP−PTS1の葉及び根の細胞は、周辺部のみに緑色の蛍光が観察され(図3の上段参照)、中央の液胞の周囲の細胞質ゾルでも同時に起こっている。同様な蛍光イメージは、ハイグロマイシン/カナマイシン耐性を示す20のT1世代の中からpex5i/GFP−PTS1として独立して単離された19の形質転換体においても観察された。細胞質ゾルの蛍光は、42のT1世代の中からpex5i/PTS2−GFPとして独立して単離された35の形質転換体においても観察された(図3の中段参照)。細胞質ゾルに蛍光を示すT1世代はPex5pの量が減少している(図2参照)。これらのデータは、Pex5pが細胞内から消失すれば、PTS1−及びPTS2−含有タンパク質の両者の細胞内輸送の能力が阻害されることを示している。
同様に、形質転換植物であるpex7i/GFP−PTS1及びpex7i/PTS2−GFPの葉及び根の細胞におけるGFP−PTS1及びPTS2−GFPの非細胞膜(subcellular)への局在化を共焦点レーザースキャニング顕微鏡を用いて分析した。結果を図4に図面に代わる写真で示す。図4の左側の欄の写真は葉の表皮細胞からのものであり、右側の欄の写真は根からのものである。図4のPTS1と示されている上段はpex7i/GFP−PTS1からのものであり、PTS2と示されている下段はpex7i/PTS2−GFPからのもである。黒三角印はペルオキシソームで検出された蛍光を示し、矢印は細胞質ゾルにおいて検出された蛍光を示す。これらの写真の拡大率は同じであり、図4右下に示すバーは20μmを示す。
この結果、pex7i/GFP−PTS1として独立して単離された55全ての形質転換体は、Pex7pの量が減少している(図2参照)にもかかわらず、これらの親の植物と同様にペルオキシソームに対応する箇所に蛍光を観察することができた(図4の上段参照)。一方、34のT1世代の中からpex7i/PTS2−GFPとして独立して単離された32の形質転換体の細胞は、細胞質ゾルのみに緑色の蛍光を観察することができた(図3の下段参照)。細胞質ゾルに蛍光を示すT1世代はPex7pの量が減少している(図2参照)。これらのデータは、Pex7pが細胞内から消失すれば、PTS2−含有タンパク質のみの細胞内輸送の能力が阻害されることを示している。
このような蛍光タンパク質によるイメージングにより、PTS1−依存性タンパク質はPex5pによってのみ介在されるが、PTS2−依存性タンパク質はPex5p及びPex7pの両者によって介在されることが明らかになった。
この結果、pex7i/GFP−PTS1として独立して単離された55全ての形質転換体は、Pex7pの量が減少している(図2参照)にもかかわらず、これらの親の植物と同様にペルオキシソームに対応する箇所に蛍光を観察することができた(図4の上段参照)。一方、34のT1世代の中からpex7i/PTS2−GFPとして独立して単離された32の形質転換体の細胞は、細胞質ゾルのみに緑色の蛍光を観察することができた(図3の下段参照)。細胞質ゾルに蛍光を示すT1世代はPex7pの量が減少している(図2参照)。これらのデータは、Pex7pが細胞内から消失すれば、PTS2−含有タンパク質のみの細胞内輸送の能力が阻害されることを示している。
このような蛍光タンパク質によるイメージングにより、PTS1−依存性タンパク質はPex5pによってのみ介在されるが、PTS2−依存性タンパク質はPex5p及びPex7pの両者によって介在されることが明らかになった。
シロイヌナズナのPex5pは、カルボキシ末端におけるTPR(tetratricopeptide repeat)モチーフを有している(Brickner, D.G., et al., (1998) Plant Physiol., 118, 330)。TPRモチーフはPTS−1に作用するのに必要なモチーフであり(Brocard, C., et al., (1994) Biochemical and Biophysical Research Communications, 204, 1016-1022.)、7個の双頭の共通アミノ酸配列からなっている。PEX5Δ7遺伝子の産物であるPEX5Δ7pは、このTPRモチーフの最後の繰り返し部分を欠損している。
このPex5Δ7pの、PTS−1タンパク質、Pex7p、及びPex14pとの結合活性をニトらが報告した方法(Nito, K., et al., (2002) Plant Cell Physiol, 43, 355-366.)に準じた酵母ツーハイブリッド分析法により分析した。各々のタンパク質をGal4−AD又はGal4−BDと融合させ、酵母の試験株PJ69−4A(James, P., et al., (1996) Genetics, 144, 1425-1436.)で発現させた。タンパク質間相互作用をHIS3及びβ−ガラクトシダーゼをレポーター遺伝子としたGal4依存性の転写活性により測定した。この結果を図5に図面に代わる写真で示す。形質転換体をヒスチジンを含まない培地(−His)で培養して、β−ガラクトシダーゼ活性を定量した。図5中のBDはGal4−BDとの融合を示し、ADはGal4−ADと融合を示し、−Hisはヒスチジンを含まない培地での培養結果を示し、β−gal activityはβ−ガラクトシダーゼ活性(U/mgタンパク質)を示す。
この結果、HIS3及びβ−ガラクトシダーゼからなるレポーター遺伝子の顕著な転写活性が見られなかったことから、Pex5Δ7pはPTS−1を含有するタンパク質と結合できないことが判明した。しかしながら、Pex5Δ7pとPex7pとの結合活性は、Pex5pとPex7pとの結合活性と同じであった。一方、Pex14pは弱いながらもPex5pよりもPex5Δ7pとの結合活性が示された。
このPex5Δ7pの、PTS−1タンパク質、Pex7p、及びPex14pとの結合活性をニトらが報告した方法(Nito, K., et al., (2002) Plant Cell Physiol, 43, 355-366.)に準じた酵母ツーハイブリッド分析法により分析した。各々のタンパク質をGal4−AD又はGal4−BDと融合させ、酵母の試験株PJ69−4A(James, P., et al., (1996) Genetics, 144, 1425-1436.)で発現させた。タンパク質間相互作用をHIS3及びβ−ガラクトシダーゼをレポーター遺伝子としたGal4依存性の転写活性により測定した。この結果を図5に図面に代わる写真で示す。形質転換体をヒスチジンを含まない培地(−His)で培養して、β−ガラクトシダーゼ活性を定量した。図5中のBDはGal4−BDとの融合を示し、ADはGal4−ADと融合を示し、−Hisはヒスチジンを含まない培地での培養結果を示し、β−gal activityはβ−ガラクトシダーゼ活性(U/mgタンパク質)を示す。
この結果、HIS3及びβ−ガラクトシダーゼからなるレポーター遺伝子の顕著な転写活性が見られなかったことから、Pex5Δ7pはPTS−1を含有するタンパク質と結合できないことが判明した。しかしながら、Pex5Δ7pとPex7pとの結合活性は、Pex5pとPex7pとの結合活性と同じであった。一方、Pex14pは弱いながらもPex5pよりもPex5Δ7pとの結合活性が示された。
また、形質転換植物であるPEX5Δ7/GFP−PTS1及びPEX5Δ7/PTS2−GFPの葉及び根の細胞におけるGFP−PTS1及びPTS2−GFPの非細胞膜(subcellular)への局在化を共焦点レーザースキャニング顕微鏡を用いて分析した。結果を図6に図面に代わる写真で示す。図6の左側の欄の写真は葉の表皮細胞からのものであり、右側の欄の写真は根からのものである。図6のPTS1と示されている上段はPEX5Δ7/GFP−PTS1からのものであり、PTS2と示されている下段はPEX5Δ7/PTS2−GFPからのもである。黒三角印はペルオキシソームで検出された蛍光を示し、矢印は細胞質ゾルにおいて検出された蛍光を示す。これらの写真の拡大率は同じであり、図6右下に示すバーは20μmを示す。
この結果、PEX5Δ7/GFP−PTS1及びPEX5Δ7/PTS2−GFPの両者の葉及び根の細胞は細胞質ゾルのみに緑色の蛍光を有していた(図6の上段参照)。同様な蛍光イメージは、10のT1世代の中からPEX5Δ7/GFP−PTS1として独立して単離された5の形質転換体においても観察され、8T1世代の中からPEX5Δ7/PTS2−GFPとして独立して単離された6の形質転換体においても観察された。これらのデータは、PEX5Δ7の遺伝子産物が細胞内で過剰発現すれば、PTS1−及びPTS2−含有タンパク質の両者の細胞内輸送の能力が減少することを示している。
この結果、PEX5Δ7/GFP−PTS1及びPEX5Δ7/PTS2−GFPの両者の葉及び根の細胞は細胞質ゾルのみに緑色の蛍光を有していた(図6の上段参照)。同様な蛍光イメージは、10のT1世代の中からPEX5Δ7/GFP−PTS1として独立して単離された5の形質転換体においても観察され、8T1世代の中からPEX5Δ7/PTS2−GFPとして独立して単離された6の形質転換体においても観察された。これらのデータは、PEX5Δ7の遺伝子産物が細胞内で過剰発現すれば、PTS1−及びPTS2−含有タンパク質の両者の細胞内輸送の能力が減少することを示している。
また、本発明者らは、グリオキシソームの脂肪酸β酸化機能を欠失した植物は2,4−ジクロロフェノキシ酪酸(2,4−DB)に対して耐性となり、発芽の生育にショ糖を必要とすることを報告してきた(Hayashi, M., et al., (1998) Plant Cell, 10, 183-195)。グリオキシソームの機能を解析するために、細胞質ゾルに蛍光を発するT1植物の子孫であるT2植物を用いて、2,4−DBを含有する培地での生育試験を行った。pex5i/GFP−PTS1及びpex5i/PTS2−GFP、pex7i/GFP−PTS1及びpex7i/PTS2−GFP、並びに、GFP−PTS1及びPTS2−GFPのT2世代の種子を2,4−DBを0.2μg/ml含有する培地(2,4−DB)、ショ糖を含有しない培地(−sucrose)、及び通常の培地(GM)でそれぞれ10日間生育させた。発芽後は、培地から寒天プレートに移植した。
結果を図7に図面に代わる写真で示す。図7中のpex5i、pex7iはそれぞれの変異体を示し、contは、コントロールとしての親株からのGFP植物の場合を示し、それぞれの1及び2はPTS1についとPTS2についてを示す。図7の上段は2,4−DBを0.2μg/ml含有する培地(2,4−DB)の場合を示し、中段はショ糖を含有しない培地(−sucrose)の場合を示し、下段は通常の培地(GM)の場合をそれぞれ示す。
この結果、2,4−DBに耐性を示すT2の実生は、その71%が発芽後に伸長した根を有していた。一方、これらの変異体の親株からのものは(図7中のcont)、その親株と同様に強い生育阻害を示し、実生は休眠状態であった(図7の上段参照)。加えて、T2の実生のほとんどは、発芽後の生育にショ糖を必要とし、ショ糖の欠如した条件下では正常に生育することができなかった(図7の中段参照)。発芽時に2,4−DB耐性を示し、かつショ糖を必要とする全てのものは、細胞質ゾルに緑色の蛍光を示し、ハイグロマイシン及びカナマイシンの両者に耐性があった。
結果を図7に図面に代わる写真で示す。図7中のpex5i、pex7iはそれぞれの変異体を示し、contは、コントロールとしての親株からのGFP植物の場合を示し、それぞれの1及び2はPTS1についとPTS2についてを示す。図7の上段は2,4−DBを0.2μg/ml含有する培地(2,4−DB)の場合を示し、中段はショ糖を含有しない培地(−sucrose)の場合を示し、下段は通常の培地(GM)の場合をそれぞれ示す。
この結果、2,4−DBに耐性を示すT2の実生は、その71%が発芽後に伸長した根を有していた。一方、これらの変異体の親株からのものは(図7中のcont)、その親株と同様に強い生育阻害を示し、実生は休眠状態であった(図7の上段参照)。加えて、T2の実生のほとんどは、発芽後の生育にショ糖を必要とし、ショ糖の欠如した条件下では正常に生育することができなかった(図7の中段参照)。発芽時に2,4−DB耐性を示し、かつショ糖を必要とする全てのものは、細胞質ゾルに緑色の蛍光を示し、ハイグロマイシン及びカナマイシンの両者に耐性があった。
次に、pex5i及びpex7iによる形質転換体における光呼吸活性について検討した。
まず、光を照射しながら、野生型(cont)、pex5i/GFP−PTS1(pex5i)及びpex7i/PTS2−GFP(pex7i)を、通常の大気下(36PaCO2)、又は1000PaCO2を含有する大気下で、8週間生育させた。その結果を図8に図面に代わる写真で示す。図8の左側から、通常大気下での野生型(air cont)、pex5i/GFP−PTS1のCO2存在下(CO2 pex5i)、同通常の大気下(air pex5i)、pex7i/PTS2−GFPのCO2存在下(CO2 pex7i)、同通常の大気下(air pex7i)をそれぞれ示している。
この結果、通常の大気下でpex5i/GFP−PTS1(図8の中央)及びpex5i/PTS2−GFP(図では示されていない。)を生育させた場合には、野生型(図8の左端)に比べて葉が黄緑色となり、矮小形の形態となった。このフェノタイプは、この植物をCO2の条件で生育させた場合には回復した(図8のCO2 pex5i参照)。おなじようなフェノタイプは、PEX14遺伝子が欠損し、光呼吸能が減少したped2でも観察されている(非特許文献5参照)。これに対して、pex7i/GFP−PTS1(図8の右端)及びpex5i/PTS2−GFP(図では示されていない。)は、通常の大気下であっても正常に生育することができた。これらのことから、光呼吸能においては、Pex5pのみが影響しており、Pex7pは影響を与えないことがわかった。
まず、光を照射しながら、野生型(cont)、pex5i/GFP−PTS1(pex5i)及びpex7i/PTS2−GFP(pex7i)を、通常の大気下(36PaCO2)、又は1000PaCO2を含有する大気下で、8週間生育させた。その結果を図8に図面に代わる写真で示す。図8の左側から、通常大気下での野生型(air cont)、pex5i/GFP−PTS1のCO2存在下(CO2 pex5i)、同通常の大気下(air pex5i)、pex7i/PTS2−GFPのCO2存在下(CO2 pex7i)、同通常の大気下(air pex7i)をそれぞれ示している。
この結果、通常の大気下でpex5i/GFP−PTS1(図8の中央)及びpex5i/PTS2−GFP(図では示されていない。)を生育させた場合には、野生型(図8の左端)に比べて葉が黄緑色となり、矮小形の形態となった。このフェノタイプは、この植物をCO2の条件で生育させた場合には回復した(図8のCO2 pex5i参照)。おなじようなフェノタイプは、PEX14遺伝子が欠損し、光呼吸能が減少したped2でも観察されている(非特許文献5参照)。これに対して、pex7i/GFP−PTS1(図8の右端)及びpex5i/PTS2−GFP(図では示されていない。)は、通常の大気下であっても正常に生育することができた。これらのことから、光呼吸能においては、Pex5pのみが影響しており、Pex7pは影響を与えないことがわかった。
次に、これらの植物の光化学系II(Fv/Fm)における最大量子収量を測定した。この最大量子収量は、最大蛍光(Fm)に対する暗所に適応したクロロフィルの蛍光の変化量(Fv)の比(Fv/Fm)として評価することができる(Franklin, L.A., et al., (1992) Planta, 187, 399-408.;Krause, G.H., (1988) Physiologia Plantarum, 74, 566-574.)。そこで、細胞質ゾルにおいて緑色の蛍光を有するpex5i/GFP−PTS1及びpex7i/PTS2−GFPと、野生型の暗所に適応した葉のFv/Fmを比較した。光化学系IIで安定電子受容体として働いているQAとQBキノンが過剰に還元を受け光合成電子伝達反応が停止する原因であると考えられている強光阻害という現象を減少させるために、まず、弱い光(50μEm−2・sec−1)を照射しながら、1000PaのCO2を含有する大気下で3週間、これらの植物を生育させた。この条件下では全ての植物は正常に生育した。そして、この条件下でのFv/Fmの値は約0.8であると推定された。その後、これらの植物を通常の大気下(36PaCO2)で、強い光(450μEm−2・sec−1)を照射した。このような条件下では、リブロース−1,5−二燐酸(RuBP)とCO2から2分子のグリセリン酸−3−燐酸(PGA)を生成する反応と,RuBPとO2からPGAとグリコール酸燐酸を生成する反応とを触媒する酵素であるリブロース−1,5−二燐酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCO)は、光合成における炭酸固定において必要とされるカルボキシラーゼ活性に加えてオキシゲナーゼとして作用する。オキシゲナーゼの反応による副産物であるホスホグリコレートは光呼吸の酵素により代謝され、最終的にはカルビン−ベンソンサイクル(Calvin-Benson cycle)に戻される。それ故に、野生型の植物におけるFv/Fmの値は、強い光の照射を受けた後も変化することはない。
GFP−PTS1、pex5i/GFP−PTS1、PTS2−GFP、pex7i/PTS2−GFP、及びped2変異体を、弱い光(50μEm−2・sec−1)を照射しながら、1000PaのCO2を含有する大気下で4週間生育させた。これらの植物に、通常の大気下(36PaCO2)で、4時間強い光(450μEm−2・sec−1)を照射した。0時間照射及び4時間照射のそれぞれの植物の葉における光化学系II(Fv/Fm)の最大量子収量を、これらの植物を30分間暗所に放置した後に測定した。この結果を図9にグラフで示す。図9の左側(0h)は、0時間照射の場合を示し、右側(4h)は4時間照射の場合を示し、それぞれの場合の左側から、野生型としての親株のGFP−PTS1、変異株のpex5i/GFP−PTS1、野生型としての親株のPTS2−GFP、変異株のpex7i/PTS2−GFP、及び変異株のped2をそれぞれ示す。図9の縦軸は、Fv/Fmの値を示す。それぞれのFv/Fmの値は、各植物について6枚の葉からの測定値の平均を示す。棒グラフ中のバーは標準偏差を示す。
この結果、野生型では予想どおり強い光を照射したときもFv/Fmの値はほとんど変化が見られなかったし、pex7i/PTS2−GFPについてもFv/Fmの値の顕著な減少は観察されなかった(図9参照)。これに対して、pex5i/GFP−PTS1のFv/Fmの値については、顕著な減少が観察された。このような減少は、PEX14オルソログが欠損しているped2についても同様に観察された(図9参照)。
観察されたFv/Fmの値の減少は、光反応とカルビン−ベンソンサイクルの不均衡と対応していることから、pex5i/GFP−PTS1は、光呼吸の不全により低CO2/強力な光の条件下ではカルビン−ベンソンサイクルの活性を十分に維持することができないことを示している。
観察されたFv/Fmの値の減少は、光反応とカルビン−ベンソンサイクルの不均衡と対応していることから、pex5i/GFP−PTS1は、光呼吸の不全により低CO2/強力な光の条件下ではカルビン−ベンソンサイクルの活性を十分に維持することができないことを示している。
これらの結果は、pex5i及びpex7iの両変異体は、いずれもグリオキシソームの機能は欠如していることを示している。表現型の分離は、T2の個体群における遺伝子操作による遺伝子型がヘテロであったためと考えられる。しかし、ハイグロマイシン/カナマイシン耐性は全ての子孫が受け継いだにもかかわらず、T2の多くは細胞質ゾルにおける蛍光を失い、そして成長と共にペルオキシソームにおける蛍光を回復し、T3世代の極少数のみが細胞質ゾルにおける蛍光を示しただけであった。
高等植物においては、細胞質アコニターゼ(cytosolic aconitase)を除くグリオキシレートサイクル、及び脂肪酸ベータ酸化の関連する全ての酵素は、グリオキシソームに局在化している。これらの酵素の中の、短鎖アシルCoAオキシダーゼ、中長鎖アシルCoAオキシダーゼ、多機能酵素(multifunctional enzyme)、リンゴ酸合成酵素、及びイソクエン酸リアーゼはPTS1を含有するタンパク質であり、中鎖アシルCoAオキシダーゼ、長鎖アシルCoAオキシダーゼ、3−ケトアシルCoAチオラーゼ、リンゴ酸脱水素酵素、及びクエン酸合成酵素はPTS2を含有するタンパク質である。したがって、Pex5pの欠損は、これらの全ての酵素のグリオキシソームへの輸送が阻害されることになる。この結果、グリオキシソームの機能が低下し、2,4−DBに対する耐性が獲得されることになる。そして、発芽に際してはショ糖を必要としてくる。加えて、Pex5pの欠損は、葉におけるペルオキシソームの機能をも低下させる(図8及び9参照)。光合成器官における葉のペルオキシソームは光呼吸に関連する酵素を含有しており、これらの酵素はPTS1を含有するタンパク質であり、ペルオキシソームへの輸送にはPex5pが介在しているからである。
これに対して、Pex7pの欠損は、グリオキシソームの機能を低下させるが、葉のペルオキシソームの機能には大きな影響を与えないことがわかった(図7〜9参照)。即ち、葉のペルオキシソームの機能はPex5pが介在するPTS1−を含有するタンパク質によって主として機能しており、これがPex7pの欠損によっても光呼吸の活性に影響を与えない原因であると考えられる。ただひとつの例外は、リンゴ酸脱水素酵素であり、この酵素はPTS2を含有しており、この酵素はヒドロキシピルビン酸還元酵素によって触媒される反応に必要なNADHを供給している。Pex7pの欠損は、ペルオキシソームにおけるこの酵素の機能も低下させると考えられるが、本発明者らの観察では(図7〜9参照)では、NADHの低下は観察されていない。これは、NADHの供給がリンゴ酸脱水素酵のみによりなされるのではなく、他の供給経路が存在していると考えられる。
これらに結果から、Pex7pのみの欠損は、グリオキシソームの機能を低下させるが、植物のその他の機能の低下を招かないということになる。即ち、より端的には、Pex7pのみの欠損は、発芽時にショ糖を必要とすること以外の植物の機能の低下を招かないということになる。このことは、本発明により初めて明らかにしたものである。
これらに結果から、Pex7pのみの欠損は、グリオキシソームの機能を低下させるが、植物のその他の機能の低下を招かないということになる。即ち、より端的には、Pex7pのみの欠損は、発芽時にショ糖を必要とすること以外の植物の機能の低下を招かないということになる。このことは、本発明により初めて明らかにしたものである。
本発明は、植物におけるペルオキシソームのタンパク質輸送因子Pex7pの有する新たな機能を明らかにするものであり、当該機能を応用した新規かつ有用な形質転換植物を提供するものである。本発明の形質転換植物は、発芽後は通常の培地で正常に生育することができるが、発芽時のみにショ糖を要求するという特異的な性質を有するものである。このような性質は、通常の消費者においては種子から発芽させることが困難であり、常に苗の供給を必要とされるものであり、植物が生育して仮に種子が採取されても、消費者は苗の供給を必要とし、種子産業における新たな植物の供給手法を提供するものである。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の野生型はコロンビア(Columbia)の生態種を用いた。
GFP−PTS1及びPTS2−GFPを発現する形質転換体の構築、並びにped2変異体の特性については非特許文献5及び7を参照されたい。
すべての種子は表面を0.02%のトリトンX−100を含む2%NaClOで殺菌し、抗生物質の存在下又は非存在下で生育培地(2.3mg/mLムラシゲ及びスコグ塩(Murashige and Skoog salts)(和光純薬、大阪、日本)、1%ショ糖、100μg/mLミオイノシトール、1μ/mLチアミン塩酸塩、0.5μg/mLピリドキシム、0.5μg/mLニコチン酸、0.5mg/mLメス−KOH(Mes-KOH)、pH5.7、及び0.8%寒天)で生育した。ただし、実験の内容によって、前記生育培地にさらに0.2μg/mLの2,4−ジクロロフェノキシ酪酸を添加したり、ショ糖を取り除いた生育培地とした。発芽後は、パーライトとバーミュキュライトの1:1の混合物を用いて生育させた。生育の条件は、22℃で、通常の大気下又は1000PaのCO2を含有する大気下で、16時間光を照射し(100μEm−2s−1)、8時間暗くするというサイクルであった。
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の野生型はコロンビア(Columbia)の生態種を用いた。
GFP−PTS1及びPTS2−GFPを発現する形質転換体の構築、並びにped2変異体の特性については非特許文献5及び7を参照されたい。
すべての種子は表面を0.02%のトリトンX−100を含む2%NaClOで殺菌し、抗生物質の存在下又は非存在下で生育培地(2.3mg/mLムラシゲ及びスコグ塩(Murashige and Skoog salts)(和光純薬、大阪、日本)、1%ショ糖、100μg/mLミオイノシトール、1μ/mLチアミン塩酸塩、0.5μg/mLピリドキシム、0.5μg/mLニコチン酸、0.5mg/mLメス−KOH(Mes-KOH)、pH5.7、及び0.8%寒天)で生育した。ただし、実験の内容によって、前記生育培地にさらに0.2μg/mLの2,4−ジクロロフェノキシ酪酸を添加したり、ショ糖を取り除いた生育培地とした。発芽後は、パーライトとバーミュキュライトの1:1の混合物を用いて生育させた。生育の条件は、22℃で、通常の大気下又は1000PaのCO2を含有する大気下で、16時間光を照射し(100μEm−2s−1)、8時間暗くするというサイクルであった。
pex5i及びpex7iの構築
センス側の配列を、両端にSpeI及びSacIサイトが導入できるようにPCRで増幅した、一方、アンチセンス側は両端がBamHI及びXhoIサイトになるように増幅した。センス側及びアンチセンス側のDNAフラグメントをそれぞれ、pBluescriptKS−(ストラタジーン、La Jolla,CA,USA)のSpeI−SacIサイトBamHI−XhoIサイトに挿入した。バー遺伝子(bar gene)を含有するプラスミドpARK22におけるバー遺伝子(bar gene)をコードしているBamHI−BglIIフラグメントを、前記のプラスミドのBamHIサイトにリンカーとして挿入した。
これらのプラスミドから人工的な部分(artificial genes)を切り取り、pBI121−Hm−リンカーのXhoI−SacIサイトに挿入した。このpBI121−Hm−リンカーは、GUS遺伝子をXbaI、XhoI、SmaI、SpeI、KpnI及びSacIサイトを含有するリンカー配列で置換したpBI121のTiベクターから構築されたものである。これは、植物を選択するときのマーカーとなるハイグロマイシン(hygromycin)耐性遺伝子を含有している。
これらの概要を図1に模式的に示す。
センス側の配列を、両端にSpeI及びSacIサイトが導入できるようにPCRで増幅した、一方、アンチセンス側は両端がBamHI及びXhoIサイトになるように増幅した。センス側及びアンチセンス側のDNAフラグメントをそれぞれ、pBluescriptKS−(ストラタジーン、La Jolla,CA,USA)のSpeI−SacIサイトBamHI−XhoIサイトに挿入した。バー遺伝子(bar gene)を含有するプラスミドpARK22におけるバー遺伝子(bar gene)をコードしているBamHI−BglIIフラグメントを、前記のプラスミドのBamHIサイトにリンカーとして挿入した。
これらのプラスミドから人工的な部分(artificial genes)を切り取り、pBI121−Hm−リンカーのXhoI−SacIサイトに挿入した。このpBI121−Hm−リンカーは、GUS遺伝子をXbaI、XhoI、SmaI、SpeI、KpnI及びSacIサイトを含有するリンカー配列で置換したpBI121のTiベクターから構築されたものである。これは、植物を選択するときのマーカーとなるハイグロマイシン(hygromycin)耐性遺伝子を含有している。
これらの概要を図1に模式的に示す。
PEX5Δ7の構築
Pex5pの1番目のメチオニンから657番目のチロシン(1M−657Y)をコードするDNAフラグメントをPCRで増幅した。このPCR産物をpDONR221(インビトロジェン、Carlsbad,CA,USA)に挿入し、これをメーカー(インビトロジェン、Carlsbad,CA,USA)のプロトコルに従って、BP及びLRクロナーゼを用いてpGWB2のTiベクターに転換した。
これらの概要を図1に模式的に示す。
Pex5pの1番目のメチオニンから657番目のチロシン(1M−657Y)をコードするDNAフラグメントをPCRで増幅した。このPCR産物をpDONR221(インビトロジェン、Carlsbad,CA,USA)に挿入し、これをメーカー(インビトロジェン、Carlsbad,CA,USA)のプロトコルに従って、BP及びLRクロナーゼを用いてpGWB2のTiベクターに転換した。
これらの概要を図1に模式的に示す。
アグロバクテリアによる形質転換
実施例1で製造したpex5i又はpex7iをそれぞれ含有するベクターをそれぞれ、カナマイシン耐性を有し、GFP−PTS1及びPTS2−GFPを発現している形質転換イロイヌナズナに、アグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(C58C1Rif株R)を用いて、ベクトールドら(Bechtold, N., et al., (1993) C. R. Acad. Sci., 316, 1194-1199)に記載の真空浸透法により導入した。これらのベクターが導入された形質転換体を、50μg/mLのカナマイシン及び25μg/mLのハイグロマイシンを含有するムラシゲ/スコグ(Murashige/Skoog)プレートで選別した。
実施例1で製造したpex5i又はpex7iをそれぞれ含有するベクターをそれぞれ、カナマイシン耐性を有し、GFP−PTS1及びPTS2−GFPを発現している形質転換イロイヌナズナに、アグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(C58C1Rif株R)を用いて、ベクトールドら(Bechtold, N., et al., (1993) C. R. Acad. Sci., 316, 1194-1199)に記載の真空浸透法により導入した。これらのベクターが導入された形質転換体を、50μg/mLのカナマイシン及び25μg/mLのハイグロマイシンを含有するムラシゲ/スコグ(Murashige/Skoog)プレートで選別した。
免疫ブロッティング
試料の調製及びPex5p又はPex7pに対する抗体を用いた免疫ブロット分析法は、ニトらの方法(Nito, K., et al., (2002) Plant Cell Physiol, 43, 355-366)に準じて行った。
粗抽出物は、細胞質に緑色の蛍光を有するT1植物の3週齢の葉から調製した。免疫ブロッティングには10μgのタンパク質を用いた。
結果を図2に示す。
試料の調製及びPex5p又はPex7pに対する抗体を用いた免疫ブロット分析法は、ニトらの方法(Nito, K., et al., (2002) Plant Cell Physiol, 43, 355-366)に準じて行った。
粗抽出物は、細胞質に緑色の蛍光を有するT1植物の3週齢の葉から調製した。免疫ブロッティングには10μgのタンパク質を用いた。
結果を図2に示す。
GFP−PTS1及びPTS2−GFPによる蛍光の分析
根の細胞を分析するために、生育培地で生育しているT1植物の10日齢の根から標本を作製した。また、葉の細胞を分析するために、T1植物の3週齢の葉から標本を作製した。これらの標本の蛍光イメージ像を、アルゴンレーザー及びFITCフィルターセットを有するLSM510レーザースキャニング共焦点顕微鏡(励起波長;465−505nm、発光波長;505−550nm)(カールツワイス、ドイツ)を用いて測定した。
結果を図3、図4、図6にそれぞれ示す。
根の細胞を分析するために、生育培地で生育しているT1植物の10日齢の根から標本を作製した。また、葉の細胞を分析するために、T1植物の3週齢の葉から標本を作製した。これらの標本の蛍光イメージ像を、アルゴンレーザー及びFITCフィルターセットを有するLSM510レーザースキャニング共焦点顕微鏡(励起波長;465−505nm、発光波長;505−550nm)(カールツワイス、ドイツ)を用いて測定した。
結果を図3、図4、図6にそれぞれ示す。
酵母のツーハイブリッドシステムによる分析
PEX5Δ7の酵母によるツーハイブリッドシステムによる分析を、既に報告された方法に準じて行った。プラスミドpDONR中のPEX5Δ7をコードしているDNAフラグメントを、酵母のツーハイブリッドベクターpGAD−GWに転換した。このベクターは、pGAD−C1(James, P., et al., (1996) Genetics, 144, 1425-1436)のマルチクローニングサイトをゲイトウエイコンバージョンカセット(インビトロジェン、La Jolla,CA,USA)で置換して構築した。他のベクターの構築は、ニトらの方法(Nito, K., et al., (2002) Plant Cell Physiol, 43, 355-366)に準じて行った。
形質転換体をヒスチジンを含有しない50mMの3−アミノトリアゾールを含有する合成培地で生育し、β−ガラクトシダーゼの活性を定量した。
結果を図5に示す。
PEX5Δ7の酵母によるツーハイブリッドシステムによる分析を、既に報告された方法に準じて行った。プラスミドpDONR中のPEX5Δ7をコードしているDNAフラグメントを、酵母のツーハイブリッドベクターpGAD−GWに転換した。このベクターは、pGAD−C1(James, P., et al., (1996) Genetics, 144, 1425-1436)のマルチクローニングサイトをゲイトウエイコンバージョンカセット(インビトロジェン、La Jolla,CA,USA)で置換して構築した。他のベクターの構築は、ニトらの方法(Nito, K., et al., (2002) Plant Cell Physiol, 43, 355-366)に準じて行った。
形質転換体をヒスチジンを含有しない50mMの3−アミノトリアゾールを含有する合成培地で生育し、β−ガラクトシダーゼの活性を定量した。
結果を図5に示す。
光化学系II(Fv/Fm)における最大量子収量の測定
光阻害の効果を減少させるために、植物を4週間1000PaのCO2を含む大気中で、光を少なくした条件(50μEm−2s−1)で生育させた。これらの植物に、通常の大気下(36PaCO2)で、強力な光(450μEm−2s−1)を、それぞれ0、30、60、120分間、照射した。光の照射後、植物を30分間暗所に置いた。最大蛍光(Fm)と変化した蛍光(Fv)の比(Fv/Fm)を、暗所に適応した葉の上側の表面からのクロロフィルの蛍光発色を、パルス増幅調節型蛍光計(pulse amplitude modulation fluorometer)(Mini-PAM;H.Walz, Effeltrich, Germany)を用いて測定した結果から計算した。
結果を図9にグラフ化して示す。
光阻害の効果を減少させるために、植物を4週間1000PaのCO2を含む大気中で、光を少なくした条件(50μEm−2s−1)で生育させた。これらの植物に、通常の大気下(36PaCO2)で、強力な光(450μEm−2s−1)を、それぞれ0、30、60、120分間、照射した。光の照射後、植物を30分間暗所に置いた。最大蛍光(Fm)と変化した蛍光(Fv)の比(Fv/Fm)を、暗所に適応した葉の上側の表面からのクロロフィルの蛍光発色を、パルス増幅調節型蛍光計(pulse amplitude modulation fluorometer)(Mini-PAM;H.Walz, Effeltrich, Germany)を用いて測定した結果から計算した。
結果を図9にグラフ化して示す。
本発明は、植物のPEX7遺伝子の発現を抑制することからなる植物の発芽のみを抑制する方法、及び植物のPEX7遺伝子の発現が抑制され発芽のみが抑制された形質転換植物を提供するものであり、本発明の形質転換植物は、植物の通常の栽培条件下では発芽することができず、発芽にショ糖を必要とすることから、消費者は栽培に当たっては発芽後の苗を入手しなければならず、本発明の形質転換体は農業分野、特に種子産業、において新たな植物の供給形態を提供するものであり、産業上有用なものである。
配列番号1: シロイヌナズナのPEX7の塩基配列
配列番号2: シロイヌナズナのPex7pのアミノ酸配列
配列番号3: pex5iを導入した遺伝子の塩基配列
配列番号4: pex7iを導入した遺伝子の塩基配列
配列番号2: シロイヌナズナのPex7pのアミノ酸配列
配列番号3: pex5iを導入した遺伝子の塩基配列
配列番号4: pex7iを導入した遺伝子の塩基配列
Claims (10)
- タンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させた植物。
- 遺伝子の欠損が、遺伝子の発現の阻害である請求項1に記載の植物。
- 遺伝子の欠損が、RNAi法によるものである請求項2に記載の植物。
- 植物が、高等植物である請求項1〜3のいずれかに記載の植物。
- 植物が、植物の種子である請求項1〜4のいずれかに記載の植物。
- 植物のタンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させて、発芽時の生育にショ糖を必要とするが、生育に必要な他の機能は備えている植物を作出する方法。
- タンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させる方法が、RNAi法によるものである請求項6に記載の方法。
- PNAi法が、ヘアピンループ型の2本鎖RNAを産生するDNAの導入によるものである請求項7に記載の方法。
- 植物のタンパク質輸送因子Pex7pをコードする遺伝子を欠損させて、ショ糖の存在しない培地での植物の発芽を抑制する方法。
- 遺伝子の欠損が、遺伝子の発現の阻害である請求項9に記載の方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2004112911A JP2005295819A (ja) | 2004-04-07 | 2004-04-07 | 植物の発芽を抑制する方法、及び発芽が抑制された形質転換植物 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2004112911A JP2005295819A (ja) | 2004-04-07 | 2004-04-07 | 植物の発芽を抑制する方法、及び発芽が抑制された形質転換植物 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2005295819A true JP2005295819A (ja) | 2005-10-27 |
Family
ID=35328117
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2004112911A Pending JP2005295819A (ja) | 2004-04-07 | 2004-04-07 | 植物の発芽を抑制する方法、及び発芽が抑制された形質転換植物 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2005295819A (ja) |
Citations (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| EP1033405A2 (en) * | 1999-02-25 | 2000-09-06 | Ceres Incorporated | Sequence-determined DNA fragments and corresponding polypeptides encoded thereby |
-
2004
- 2004-04-07 JP JP2004112911A patent/JP2005295819A/ja active Pending
Patent Citations (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| EP1033405A2 (en) * | 1999-02-25 | 2000-09-06 | Ceres Incorporated | Sequence-determined DNA fragments and corresponding polypeptides encoded thereby |
Non-Patent Citations (7)
| Title |
|---|
| JPN6009058856, Plant Cell Physiol., 2003, Vol.44, No.12, pp.1275−1289 * |
| JPN6009058872, Plant Physiol., 1999, Vol.120, pp.339−340 * |
| JPN6009058874, J. Plant Res., 2000, Vol.113, pp.103−109 * |
| JPN6009058877, RNAi実験プロトコール, 2003, pp.68−88, 株式会社 羊土社 * |
| JPN6009058878, 日本農芸化学会2004年度(平成16年度)大会講演要旨集, 20040305, p.296, 3C02p18 * |
| JPN6009058880, Plant Cell Physiol., 2002, Vol.43, No.4, pp.355−366 * |
| JPN7009004952, 第26回日本分子生物学会年会 プログラム・講演要旨集, 2003, p.597, 1PA−353 * |
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