JP2005295805A - タバコ栽培用マルチフィルム - Google Patents

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正之 江上
Kunihiko Tsunoda
邦彦 角田
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治 竹ヶ原
Tadashi Sato
忠士 佐藤
Takafumi Miyamoto
孝文 宮本
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Abstract

【課題】地温上昇効果を維持できると共に、株元に適度な水分を確保できて不定根の発生、発育を促進でき、生育ステージ後半までも良好な生長を継続することのできるタバコ栽培用マルチフィルムを提供すること。
【解決手段】栽培植物3の初期植生部位に対応してフィルムの長さ方向に延在する着色された初期植生領域1の両側に、それぞれ透明領域2、2を有してなるタバコ栽培用マルチフィルム、好ましくは前記初期植生領域1は黒色であること、前記初期植生領域1の幅は、5〜50cmであることである。
【選択図】図2

Description

本発明はタバコ栽培用マルチフィルムに関し、詳しくは、地温上昇効果と不定根の生育効果に優れたタバコ栽培用マルチフィルムに関する。
日本のタバコ栽培は、現在約2.3万haであり、九州地区と北関東以北地区(含東北)の南北2地区で約90%を占めている。タバコの品種としては、大別して、黄色種、在来種、バーレー種があり、主産地としては、黄色種は主に九州、在来種は主に北関東、そして、バーレー種は主に東北というように、各々の品種特性から栽培地が選別されている。
タバコ栽培にはフィルムマルチ栽培が必須であり、マルチフィルムとしては、透明フィルム(含アルミ系反射タイプ)、黒色フィルム、黒色−透明−黒色の配色フィルム等が用いられている。このようなフィルムマルチ栽培は、地温上昇、土中水分保持、雑草抑制、アブラムシ等の害虫飛来防止等が主な狙いであり、各地の栽培環境(特性)や作型を考慮しながら、フィルムを選定使用している現状にある。
現在、比較的寒冷な東北地区の岩手県や青森県におけるタバコのマルチ栽培では、フィルムマルチによる地温上昇効果が第一の目的であり、このため地温上昇効果に優れた透明フィルムが主力となっている。
ところで、フィルムマルチによるタバコのマルチ栽培方法としては、従来から改良マルチ法と折衷マルチ法とが知られているが、現在では折衷マルチ法が主流となっている。折衷マルチ法はマルチ同時移植法とも呼ばれ、その方法の概略は以下の通りである。
(1)畦10を作成した後、マルチフィルム20を被覆する(図4(a))。
(2)マルチフィルム20を突き刺して畦10に定植穴を開けるための定植穴開け具40を用い、マルチフィルム20上から畦10に定植穴30を開ける(図4(b))。
(3)苗葉9〜11枚程度の苗50を、マルチフィルム20下に隠れるように、穴底にそっと置くようにして定植穴30に植え付ける(図4(c))。なお、大規模栽培では、機械により上記(2)、(3)を同時に行う。
(4)その後、マルチフィルム20下で苗が生長し、茎葉がマルチフィルム20を持ち上げるようになったら、突き破られた穴から茎葉をマルチフィルム20の外側に引き出す(図4(d))。
(5)畦端の通路等から土を取り、定植穴30のフィルム破れ目よりタバコの株元に土60を入れ、手で押さえるようにして土寄せする(図4(e))。
特開2002−171845号
しかしながら、地温上昇を第一目的として透明フィルムを用い、以上の折衷マルチ法によってタバコの栽培を行うと、生育後半の生長状況が劣るという問題が生じている。
本発明者は、この問題について鋭意検討した結果、その原因を以下のように推察している。すなわち、透明フィルムは太陽光を透過させて直接地表面を暖めるため、地面からの水分蒸発が活発になる。この水蒸気は太陽光を吸収しない冷たい透明フィルムの内面に結露し、畦の側部等の低い方に流れる。この結果、地表面は乾燥し、地表面の比熱が下がってますます昇温していくことにより、地温の上昇が過度となりやすい。しかも地表面は乾燥して水分不足となるため、タバコの不定根の発生、発育が不十分となり、生育後半での生長が衰えるようになるためと考えられる。
この不定根の発生、発育が不十分となる点について更に詳しく説明すると、タバコは播種後、生育条件が整えば、まず発根し、発芽して茎を伸ばす。その後、地上に茎葉が生育伸長していく。図5に示すように、マルチフィルム20被覆下の苗50の株元に、倒伏防止等のために土60を置いて定植穴30を穴埋めして土寄せすると、茎より不定根51が発生してくる。この不定根51は上位葉と導管で連絡しており、上位葉の生育には大変重要な存在である。このような不定根51は、タバコの初期生育を促進し、最大生長期の葉の充実不足や晩作を防止する効果が大きい。そして、この不定根51は生長が盛んであるが、浅根性で空気流通の良い土を好む性質があり、その生長を良くするためには、適当な地温と水分が重要である。従って、地温が高すぎ、しかも土壌が乾燥し過ぎて水分不足の時は、この大事な不定根51の発生、生長が不十分となり、特に生育後半の生長に問題が生じるものと考えられる。
このため、透明フィルムに代えて、着色された例えば黒色フィルムを使用することも考えられるが、マルチ栽培の第一の目的である地温上昇効果に劣る問題がある。すなわち、太陽光の大部分はフィルムに吸収されてフィルム温度を上げ、その熱の一部が地表面に伝わる。当然、透明より地表面温度は低く、水蒸気の発生も透明フィルムに比べて少ない。そして、その水蒸気は高温のフィルム内面には結露せず、より低温の地表面に戻る。このため地表面は湿潤となるものの、地温上昇が抑えられ、地温上昇効果が発揮されない。
そこで、本発明は、地温上昇効果を維持できると共に、株元に適度な水分を確保できて不定根の発生、発育を促進でき、生育ステージ後半までも良好な生長を継続することのできるタバコ栽培用マルチフィルムを提供することを課題とする。
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
本発明の課題は、以下の各発明により解決される。
(請求項1)
栽培植物の初期植生部位に対応してフィルムの長さ方向に延在する着色された初期植生領域の両側に、それぞれ透明領域を有してなることを特徴とするタバコ栽培用マルチフィルム。
(請求項2)
前記初期植生領域は黒色であることを特徴とする請求項1記載のタバコ栽培用マルチフィルム。
(請求項3)
前記初期植生領域の幅は、5〜50cmであることを特徴とする請求項1又は2記載のタバコ栽培用マルチフィルム。
本発明によれば、地温上昇効果を維持できると共に、株元に適度な水分を確保できて不定根の発生、発育を促進でき、生育ステージ後半までも良好な生育を行うことのできるタバコ栽培用マルチフィルムを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
本発明に係るタバコ栽培用マルチフィルムは、図1に示すように、フィルムの長さ方向に延在する着色された初期植生領域1の両側に、それぞれ透明領域2、2を有している。初期植生領域1は、フィルム幅方向のほぼ中央に位置しており、図2に示すように、畦4に被覆した際のタバコの苗3の初期植生部位に対応し、各透明領域2、2は、畦4の側部にそれぞれ対応している。
この初期植生領域1は、フィルムが着色されているため、フィルムが太陽光を吸収してフィルム自体は蓄熱されるが、初期植生領域1下の地表面を直接暖めることはなく、上述したように、水蒸気は高温のフィルム内面には結露せず、より低温の地表面に戻ることから地表面を湿潤状態とし、過度の地温上昇は抑制される。これにより、タバコの苗4の株元には、適度な地温と水分が確保され、土寄せ後の茎から発生する不定根31の生育、繁茂を促すことができる。
一方、初期植生領域1の両側は着色されていない透明領域2、2とされているため、太陽光はフィルムを透過して透明領域2、2下の地表面を直接暖めることができ、畦4の地温を上昇させる機能を果たす。その結果、タバコの上位葉の充実、開張を図ることができ、生育ステージ後半でも良好な生育を行うことができ、収量の安定確保を実現できるようになる。
着色された初期植生領域1の幅Aは、苗3を定植した穴を土で埋めて土寄せした後の不定根31の良好な生育を促す目的で、5〜50cmとすることが好ましい。5cmよりも狭くすると、苗3の株元に不定根31の生育に十分な水分を確保することが難しくなり、50cmよりも広くすると、畦4全体の地温上昇効果を発揮でき難くなる。より好ましくは、25〜35cmとすることである。
初期植生領域1は、このように太陽光を被覆下に透過させない機能を果たすように、太陽光を吸収する機能、すなわち、太陽光の遮断とフィルムへの蓄熱機能があればよく、着色されていればその色は任意であるが、コストと性能の観点から、樹脂原料中にカーボンブラックを練り込むことにより黒色とすることが好ましい。
本発明に係るタバコ栽培用マルチフィルムを構成する樹脂には、ポリオレフィン系樹脂や軟質材料が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセンポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。また、軟質材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー共重合体等が挙げられる。
フィルムの製造方法としては、初期植生領域1、透明領域2、2に対応する各樹脂原料を、インフレーション法やTダイ法を用いて3列同時押し出し成形によって形成することができる。
フィルムの厚みは、5〜50μm、好ましくは10〜30μmである。
また、本発明に係るタバコ栽培用マルチフィルムには、界面活性剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤等の各種添加剤を添加することもできる。
更に、本発明に係るタバコ栽培用マルチフィルムは、アブラムシ等の害虫飛来を防止する観点から、フィルムに紫外光線反射能を付与する目的で、図3に示すように、被覆時に表面となる側に、各透明領域2、2の太陽光の透過による地温上昇機能を阻害しない程度に、Al粉を練り込んだ反射層5を濃度的に薄く積層するようにしても良い。また、同様の観点から、少量のAl粉を各透明領域2、2の透明性を保持するレベルで添加することもできる。例えば、20μmのフィルム厚みの場合、Al粉を樹脂原料中に0.1%程度混入すれば良い。
以下、実施例により本発明の効果を例証する。
(フィルムの製造)
本発明フィルム1(透明−着色−透明フィルム)
ベース樹脂としてLLDPE(MI1.0、比重0.920)を用い、インフレーション法による3列同時押し出し法により、初期植生領域とその両側に透明領域の3列の本発明フィルム1を形成した。フィルム厚さは20μmであった。
初期植生領域の着色剤としては、ベース樹脂LDPE(MI7.0、比重0.92)にフィルムグレード用カーボンブラック粉末30重量%を混入した黒色マスターバッチを用いた。着色剤の添加量は8.5重量%とし、幅は30cmになるように形成した。
また透明領域は初期植生領域の両側にそれぞれ幅50cmに形成した。
なお、ベース樹脂には耐候安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤を所定量配合した。
比較フィルム1(フィルム全体が無着色の透明フィルム)
本発明フィルム1において、初期植生領域を形成せずに透明領域のみとした以外は、同様に厚さ20μmの比較フィルム1を形成した。
比較フィルム2(フィルム全体が黒色フィルム)
本発明フィルム1において、透明領域を形成せずに、ベース樹脂に、初期植生領域に用いた黒色マスターバッチを配合して、厚さ20μmの黒色の比較フィルム2を形成した。
(栽培実験)
みかど化工(株)の委託圃場(青森県六戸町)に、それぞれフィルム被覆畦幅80cm、長さ20mの3本の畦(試験区、対照区1、2)を形成した。
平成15年4月20日に、試験区の畦に本発明フィルム1、対照区1の畦に比較フィルム1、対照区2の畦に比較フィルム2をそれぞれ被覆した。
その後、図4(a)〜(c)に示すようにフィルムの上から穴開け機を用いて、深さ12cm、直径10cmの定植穴を開け、葉数10枚程度の播種後40日目のタバコの苗(バーレー種)を、平成15年5月1日に、それぞれの畦に52株ずつ定植して栽培した後、10日目に、図4(d)(e)に示すように、茎葉をフィルム外側に引き出した後、各株元の定植穴を土で埋めて土寄せした。
即ち、平成15年5月1日に定植し、同年8月20日の幹刈り日までの81日間マルチ栽培を行った。
(評価結果)
収穫葉の平均重量の相対値は、現状、対照フィルムとして比較フィルム1(透明フィルム)が100に対して、本発明フィルムは124、一方、比較フィルム(黒色フィルム)は75であり、本発明の方が収穫量の点で優れていることがわかる。また、比較フィルム2は、地温不足で全く収穫不良であった。
本発明に係る農業用マルチフィルムの断面斜視図 本発明に係る農業用マルチフィルムの使用状態を示す図 本発明に係る農業用マルチフィルムの他の態様を示す断面図 (a)〜(e)はタバコのマルチ栽培方法を説明する図 マルチ栽培におけるタバコの苗の様子を示す図
符号の説明
1:初期植生領域
2:透明領域
3:苗
31:不定根
4:畦
5:反射層

Claims (3)

  1. 栽培植物の初期植生部位に対応してフィルムの長さ方向に延在する着色された初期植生領域の両側に、それぞれ透明領域を有してなることを特徴とするタバコ栽培用マルチフィルム。
  2. 前記初期植生領域は黒色であることを特徴とする請求項1記載のタバコ栽培用マルチフィルム。
  3. 前記初期植生領域の幅は、5〜50cmであることを特徴とする請求項1又は2記載のタバコ栽培用マルチフィルム。
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