JP2005290530A - 金属硼化物分散焼結体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 所定の耐食性を確保し、すぐれた耐摩耗性と高い曲げ強度を具え、プラスチックの混練成形機の構成部材として好適な材料を提供する。
【解決手段】 Cr:20〜30%(重量%、以下同じ)、Mo:10〜25%、B:0.1〜2.0%、Si:0.1〜2.0%、C:1%以下、残部実質的にCoからなるCo基合金の粉末100重量部と、金属硼化物の硬質粒子3乃至100重量部とを混合した粉末を焼結したもので、Co基合金基地中に金属硼化物の硬質粒子が均一に分散した組織を有する金属硼化物分散焼結体である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、プラスチック成形混練機のシリンダーのライニング層や、スクリューのフライトトップ等の材料として有用な耐食性、耐摩耗性及び強度にすぐれる焼結体に関する。
プラスチック成形混練機においては、シリンダ、スクリュー、ノズル等の構成部材は、腐食環境に耐え得る耐食性を具えたものであらねばならない。また、シリンダとスクリューの金属部材どうしの接触による摩耗や、樹脂に添加される強化材(シリカ、ガラス繊維等)による摩耗が生じるため、耐摩耗性にすぐれていなければならない。
耐食性と耐摩耗性にすぐれるCo基合金として、Cr:21〜29%(重量%、以下同じ)、Mo:15〜24%、B:0.5〜2%、Si:0.1%以上で0.5%未満、C:1%以下、残部実質的にCoからなるものがある(特許文献1参照)。
また、耐食性と耐摩耗性にすぐれる材料として、Coを30重量%以上含有するCo合金粉末と金属炭化物の硬質粒子を機械的合金化し、得られた粉末を焼結するものがある(特許文献2参照)。
特開平6−145856号公報 特開平9−20947号公報
近年、プラスチック樹脂の高付加価値化に対する要求が高まっており、それに伴なって、プラスチック成形混練機の使用条件の苛酷化が進んでいる。
このため、シリンダ、スクリュー、ノズル等の構成部材は、より厳しい摩耗環境に耐え得る耐摩耗性と、大きな負荷応力に耐え得る高強度(特に曲げ強度)が要求されている。
特許文献1は、Co合金の基地中に分散した数μm程度の比較的微細なMo硼化物及びCr炭化物によって耐摩耗性を具備させるものである。しかし、硼化物と炭化物の分散量が少ないため、苛酷な摩耗環境下での耐摩耗性は十分とはいえなかった。
特許文献2は、機械的合金化過程でCo合金基地中に金属炭化物を含む金属間化合物を分散させることによって耐摩耗性を具備させるものである。この焼結体の場合、耐摩耗性をさらに高めるために、金属炭化物の量を増やすと、曲げ強度の低下が大きくなる不都合があった。
本発明の目的は、所定の耐食性を具備すると共に、耐摩耗性と曲げ強度にすぐれ、プラスチック成形混練機のシリンダ、スクリュー、ノズル等の構成部材として好適な材料を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は、Cr:20〜30%(重量%、以下同じ)、Mo:10〜25%、B:0.1〜2.0%、Si:0.1〜2.0%、C:1%以下、残部実質的にCoからなるCo基合金の粉末100重量部に対し、金属硼化物の硬質粒子3乃至100重量部とを混合した粉末の焼結体であって、Co基合金基地中に金属硼化物の硬質粒子が均一に分散していることを特徴とする金属硼化物分散焼結体を提供するものである。
金属硼化物は、TiB2及び/又はMoBである。
金属硼化物の硬質粒子は、平均粒径3μmよりも小さい微細粒子と、平均粒径3μm以上の粗大粒子とから構成することが好ましい。なお、微細粒子の平均粒径の下限は、0.1μm以上であることが好ましく、粗大粒子の平均粒径の上限は、300μm以下であることが好ましい。
本発明の金属硼化物分散焼結体は、所定の耐食性と耐摩耗性を具えるCo合金基地中に、所定量の金属硼化物が均一に分散した効果として、材料の潤滑性が高められ、すぐれた耐摩耗性と高い曲げ強度を具備することができる。
従って、本発明の焼結体を用いた構成部材の品質が安定し、製品寿命の向上を達成することができる。
Co基合金基地中に金属硼化物分散が分散した本発明の焼結体の実施形態について詳細に説明する。
Co基合金の成分組成は、Cr:20〜30%(重量%、以下同じ)、Mo:10〜25%、B:0.1〜2.0%、Si:0.1〜2.0%、C:1%以下、残部実質的にCoからなる。
各成分の作用は次の通りである。
Crは、耐食性を向上させると共に、炭化物生成による高硬度化によって耐摩耗性、特に金属部材どうしの接触に対する耐摩耗性の向上に寄与するので、20〜30%含有させる。
Moは、硬度及び耐食性を向上に寄与するので、10〜25%含有させる。
Bは、Moと結合して自己潤滑性にすぐれるMoBを形成するので、0.1〜2.0%含有させる。
Siは、溶湯の流動性を高め、合金粉末の焼結性を改善させるので0.1〜2.0%含有させる。
Cは、Crと炭化物を形成して、硬度及び耐摩耗性の向上に寄与するので、1%以下含有させる。
Coは、上記諸元素と共に、耐食性及び耐摩耗性を具備させるための基本元素である。
金属硼化物は、硬度が高く、自己潤滑性にすぐれており、その例として、TiB2とMoBを挙げることができる。
TiB2はその高硬度(ビッカース硬度で約25GPa)によって耐摩耗性の向上に寄与し、MoBはすぐれた自己潤滑性によって耐摩耗性の向上に寄与するので、両方の金属硼化物を混在させることが好ましい。
なお、金属硼化物は、Co基合金との混在量が増えても、材料の曲げ強度の低下を少なくできる特徴を有する。
Co基合金粉末と金属硼化物の配合比率は、Co基合金粉末100重量部に対して、金属硼化物の硬質粒子3乃至100重量部とする。
金属硼化物の硬質粒子の配合量を3乃至100重量部とするのは、硬質粒子の割合が3重量部よりも少ないと、金属硼化物の分散効果が不足し、耐摩耗性向上効果が不十分であるし、100重量部を超えると、耐摩耗性向上効果は飽和するだけでなく、曲げ強度の低下が大きくなるからである。
なお、配合比率は、Co基合金粉末100重量部に対して、金属硼化物の硬質粒子5〜80重量部が好ましく、曲げ強度を重視する場合は、15〜40重量部がより好ましく、耐摩耗性を重視する場合は、40〜80重量部がより好ましい。
Co合金粉末と硬質粒子の混合は、ボールミル等の混合機を用いて行なうことができるが、アトライター等の高エネルギーボールミルの中で行なうことがより好ましく、これにより、Co基合金と金属硼化物が機械的合金化した粉末を得ることができる。機械的合金化した粉末を焼結すると、金属硼化物が均一に分散し易くなる利点がある。
従って、本明細書における「混合粉末」とは、Co基合金粉末と金属硼化物硬質粒子が単に混ざり合った粉末だけではなく、Co基合金と金属硼化物とが機械的合金化した粉末をも意味する。
Co基合金粉末の平均粒径は1〜100μm、金属硼化物粒子の平均粒径は0.1〜20μmが好ましい。このような粒度分布の場合、焼結工程において、金属硼化物粒子がCo基合金の基地中に均一に分散し易いためである。
なお、金属部材どうしの接触による摩耗を低減するには、粗大粒子が有効であり、SiO2によるアブレーシブ摩耗を低減するには、微細粒子が有効である。
それゆえ、両方の摩耗環境に対応するため、金属硼化物粒子は、平均粒径が0.1μm以上で3μmよりも小さい微細粒子と、平均粒径が3μm以上で300μm以下の粗大粒子とから構成することが好ましい。
焼結は、Co基合金粉末と金属硼化物粒子の混合粉末をカプセルに充填し、脱気密封して熱間等方圧加圧(HIP)による焼結方法、又は粉末を適宜の加圧成形処理(冷間等方圧加圧成形等)に付して成形体を得て、これをホットプレスする方法、或はその成形体をカプセルに密封してHIP焼結する方法等、公知の適当な方法を用いることができる。これらの方法によって、Co基合金粉末と金属硼化物粒子の混合粉末は緻密な焼結体となる。
次に、実施例を挙げて説明する。
Co基合金粉末と、金属硼化物粒子(TiB2及び/又はMoB)又はWC粒子を表1に示す割合で配合し、それらをアトライター(三井化工機製;MA−1D)の中で強力に撹拌しながら混合し、Co基合金と金属硼化物又はWCが機械的合金化した粉末を混合粉末として調製した。アトライターには、3/8インチのSUJ−2鋼球を17.5kg装填してあり、撹拌時の回転速度は290rpm、撹拌時間は24時間である。
表1中、Co基合金、TiB2、MoB及びWCの括弧内の数値は、使用した粉末の平均粒径を表している。
また、使用したCo基合金粉末の組成は、重量%にて、Cr:26%、Mo:15%、B:0.7%、Si:0.4%、C:0.5%、残部実質的にCoである。
機械的合金化された前記粉末を鋼製の缶に充填し、脱気密封した後、HIP焼結を行なった。HIP焼結は、Arガス雰囲気中にて、温度1100℃×圧力1110MPa×2時間の条件で行ない、直径30mm×長さ50mmの供試用焼結体を得た。
供試焼結体の各々について、硬さ試験、耐摩耗性試験及び曲げ試験を行なった。それらの試験結果を表1に合わせて示している。
硬さ試験は、供試焼結体の盤面の5箇所をロックウエルCスケールで測定し、5箇所の平均値を示している。
耐摩耗性試験は、理研−大越式摩耗試験機による比摩耗量(mm3/kgf・mm)と、アブレーシブ摩耗試験による摩耗量(mm3)を測定した。
理研−大越式摩耗試験は、回転円板の円周部に平面試験片を押し付け、試験片表面に生じた摩耗痕の深さ、幅等から摩耗抵抗性を評価するものである。この試験は、プラスチック成形機における金属部材どうしの接触に対する耐摩耗性を評価するのに有効である。
試験は、円板材にSUJ−2(HRC60)を使用し、摩擦距離400m、摩擦速度3.38m/s、最終荷重60.8Nの条件で行なった。
アブレーシブ摩耗試験は、回転円板の円周部に平面試験片を押し付け、それらの間に珪砂を入れて、摩耗抵抗性を評価するものである。プラスチック成形機における半溶融状態の成形用樹脂原料に混在するガラス繊維等によるアブレーシブ摩耗に対する抵抗性を評価するのに有効である。
試験は、円板(直径250mm×厚さ15mm)の表面がゴム、回転速度120rpm、総回転数3000回、摩擦距離2355m、珪砂落下量300g/分の条件で行なった。
曲げ試験は、JISB1601に準拠した三点曲げ試験で行ない、室温での曲げ強度を測定した。試験片サイズは3×4×40mm、スパン距離30mmである。
Figure 2005290530
表1中、No.1〜No.7は金属硼化物を含む本発明の実施例であり、No.1はMoB単独の例、No.2〜No.4はTiB2単独の例、No.5〜No.7はTiB2とMoBの両方を含む例である。なお、No.4、No.5及びNo.7は、粗大粒子と微細粒子を混合使用した例である。
また、No.8はMoBの配合量が少ない比較例、No.9〜No.11は、硬質粒子として、WC粒子を使用した比較例である。
なお、No.5の供試焼結体について、合金基地中におけるTiB2とMoBの分散形態を図1に模式的に示しており、図中、大きな粒子がTiB2、小さな粒子がMoBである。
耐摩耗性の評価基準は、理研−大越式摩耗試験機による比摩耗量を2.5mm3/kgf・mm以下、アブレーシブ摩耗試験による摩耗量を20mm3以下とした。また、曲げ強度の評価基準は、1000MPa以上とした。
表1の試験結果を参照すると、全体的傾向として、硬質粒子の含有量が増えるにつれて、耐摩耗性が向上し、曲げ強度が低下することを示しているが、本発明の実施例であるNo.1〜No.7は、前記評価基準をクリアしている。
これに対し、比較例では、No.8は金属硼化物のMoBの量が少なく、耐摩耗性が不足する。No.9についても、金属炭化物の量が少ないため、No.8と同様、耐摩耗性が不足する。No.10とNo.11は、金属炭化物の量が多く、耐摩耗性は良好であるが、曲げ強度が不十分である。
本発明の金属硼化物分散焼結体は、すぐれた耐食性を具えると共に、プラスチックの混練成形機の構成部材の材料として要求される耐摩耗性及び曲げ強度を具えているから、本発明の焼結体をこれらの部材に適用することにより、腐食、摩耗が軽減されると共に、耐用寿命の向上、メンテナンスの軽減等の効果が得られる。
なお、本発明の金属硼化物分散焼結体は、上記の用途に限定されず、耐食性、耐摩耗性及び高強度が要求される各種の装置、機器の構成部材の材料としても有用である。
No.5の供試焼結体の合金基地中のTiB2とMoBの分散形態を模式的に示す図である。

Claims (3)

  1. Cr:20〜30%(重量%、以下同じ)、Mo:10〜25%、B:0.1〜2.0%、Si:0.1〜2.0%、C:1%以下、残部実質的にCoからなるCo基合金の粉末100重量部に対し、金属硼化物の硬質粒子3乃至100重量部を混合した粉末の焼結体であって、Co基合金基地中に金属硼化物の硬質粒子が均一に分散した組織を有することを特徴とする金属硼化物分散焼結体。
  2. 金属硼化物は、TiB2及び/又はMoBである請求項1に記載の金属硼化物分散焼結体。
  3. 金属硼化物の硬質粒子は、平均粒径3μmよりも小さい微細粒子と、平均粒径3μm以上の粗大粒子とから構成される請求項1又は請求項2に記載の金属硼化物分散焼結体。
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