以下に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。各図面において同一の参照符号が指し示す構成は、同一の作用をなすものである。
(実施形態1)
図1は、実施形態1の光ヘッド装置の光学系の概略を示している。
光源としての半導体レーザ101から出た光は、平行平板ビームスプリッタ102で反射され、集光光学系の一部であるコリメータレンズ103で平行光になる。この光は、さらに集光光学系の一部である対物レンズ104で集光され、情報記憶媒体である光ディスク105の情報層108上に集光される。アクチュエータ107は、対物レンズ104と対物レンズ104を保持する保持手段106を、光ディスク105の面振れや偏芯に追従して移動する。
光ディスク105の情報層108で回折・反射された反射光108aは、再び対物レンズ104を通り平行光となる。この平行光となった反射光108aは、再びコリメータレンズ103で収束光となる。この収束光となった反射光108aが、平行平板ビームスプリッタ102を透過するとき非点収差が与えられる。非点収差が与えられた収束光は、光検出器150で受光される。対物レンズ104から出射される光の集光点F0が光ディスク105の情報層108に一致する時、非点収差が与えられた収束光の最小錯乱円の位置に光検出器150の検出面がくるように、光学系は配置されている。
情報記憶媒体としての光ディスク105のある溝の中心から隣の溝の中心までの間隔をGpとする。情報は、溝上または溝の間のどちらか、もしくは溝上と溝の間の両方に記録されている。本実施形態では、これら情報が記録されている連なりをトラックと呼ぶ。また、光ヘッド装置の、集光光学系としての対物レンズ104の開口数をNA、半導体レーザ101から出射される光の波長をλとする。
実施形態1では、
λ/(NA・Gp)<1 ・・・・・・(式4)
の条件を満たす場合について述べる。
図2は、実施形態1の光検出器150の検出領域201〜208と、情報再生信号生成手段450と、トラッキング誤差信号生成手段451としての回路の構成を示す。
光検出器150は、分割線301〜304により検出領域201〜208の8領域に分割される。式4の条件では、光ディスク105の溝で回折された+1次の回折光と−1次の回折光は、互いに重なる部分を持つ。図2では、その重なる部分である重複領域200を斜線で表示している。重複領域200のラジアル方向の幅の最大値Wは、
W=2×(1−λ/(NA×Gp)) ・・・・・・(式5)
となる。ただし、開口を半径1の円とする。
分割線301〜303は、光ディスク105の溝の接線と平行な直線である。分割線304は、光ディスク105の溝の接線と垂直な直線である。ここで、溝の接線の方向とは、光検出器上に光学的に投影された方向とする。
フォーカス誤差信号検出方式として非点収差法を用いる場合、光ディスク105の溝と45度の方向を軸に非点収差を与えると、光検出器上に投影される溝の方向は90度向きが回転する。従って、実際の分割線の方向が光ディスク105の溝の接線方向と垂直であっても、光検出器上に投影された溝の接線の方向と平行であれば、「溝の接線と平行な分割線」と表現する。以下同様な表現とする。
分割線302は、光学系の開口の光検出器150への投影の中心を通る。分割線301と分割線303は、重複領域200を挟むように配置される。分割線301と分割線302の距離dおよび分割線302と分割線303の距離dは、W/2とほぼ同じにする。この配置により、図2に示すように、光検出器150の検出領域202、203、206、207に、光ディスク105の溝による+1次の回折光と−1次の回折光の重複領域200が入る。検出領域201〜208から受光した光量に応じて得られる信号を、各々s1〜s8とする。
ここで、フォーカス誤差信号FEは、
FE=(s1+s2+s5+s6)−(s3+s4+s7+s8)・・・(式6)
を演算することにより求めることができる。なお、図2には、フォーカス誤差信号FEを求めるための演算回路は示されていない。
以下に、情報再生信号生成手段450の回路系について説明する。情報再生信号生成手段450は、加算器401〜加算器405とを含んでいる。情報再生信号生成手段450は、情報の再生信号であるRF信号を生成する。情報の再生信号であるRF信号は、全領域から得られる信号の和から得られる。図2に示すように、加算器401が「信号s1+信号s8」の和信号を出力し、加算器402が「信号s2+信号s7」の和信号を出力し、加算器403が「信号s3+信号s6」の和信号を出力し、加算器404が「信号s4+信号s5」の和信号を出力する。
加算器405は、加算器401〜加算器404の出力信号を受けて、それぞれの出力信号の和である和信号を出力する。加算器405から出力される出力信号である情報再生信号生(RF信号)は、
RF=s1+s2+s3+s4+s5+s6+s7+s8・・・・・・(式7)
で求めることができる。
以下に、トラッキング誤差信号生成手段451の回路系について説明する。トラッキング誤差信号生成手段451は、加算器401と、加算器404と、差動演算回路406とを含んでいる。差動演算回路406は、加算器401と加算器404の出力信号を受け、その差動信号を出力する。差動演算回路406から出力される出力信号は、
TE1=(s1+s8)−(s4+s5)・・・・・・(式8)
で求めることができる。差動演算回路406から出力される出力信号は、トラッキング誤差信号TE1となる。
光ディスク105の溝の接線と直交する方向(ラジアル方向)に光ディスク105の傾き(チルト)が発生すると、従来の光ヘッド装置では、トラッキング制御に以下に示すような不都合が生じる。
チルトが発生すると検出される反射光はチルトした方向にずれる。ディスクのチルトがθであると、反射光は2θずれる。例えば、開口数NAが0.6であり、チルトθが0.8度であり、開口を半径1の略円とすると、(sin2θ)/NA=0.047となり、検出される反射光はチルトした方向に0.047ずれる。
チルトが発生すると、対物レンズ104から出射される光の集光点F0が溝の中心に一致したときに得られるトラッキング誤差信号の値TE0と、溝を横断したときに得られるトラッキング誤差信号の最大値TEmaxと最小値TEminとの各々との差の絶対値|TEmax−TE0|と|TEmin−TE0|の両者の差が大きくなる。
図3は、トラッキング誤差信号とオフトラック量との関係を示している。オフトラック量とは、トラックの中心から集光点F0までの距離を意味する。
黒四角で示される信号が、無収差の時のトラッキング誤差信号である。無印実線で示される信号が、チルト発生時のトラッキング誤差信号である。無印実線で示されるトラッキング誤差信号では、TEmax=0.38、TEmin=−0.42に対し、TE0=−0.20となり、
|TEmax−TE0|=0.58、|TEmin−TE0|=0.22、
となり、大きな差が生じる。
この状態でトラッキング制御を行うと、対物レンズ104から出射される光の集光点F0がトラック中心とはずれた所に位置し、情報の正確な記録や、再生ができない。
この状態で、集光点F0がトラック中心に位置するようにトラッキング誤差信号にオフセット電圧を加える場合について述べる。
図3の白三角で示される信号がオフトラック量が0になるように補正した後のトラッキング誤差信号である。トラック中心とトラッキング誤差信号のゼロクロス点が一致するようにオフセット電圧を加えている。この時、トラッキング誤差信号の0レベルに対する上側振幅と下側振幅は非対称になる。
この非対称性が大きくなると、トラッキング制御の動作が不安定となり、情報の正確な記録や再生ができなくなる。このように、|TEmax−TE0|と|TEmin−TE0|との差が大きくなると、オフトラック量が大きくなる。オフトラック量を小さくするために、オフセット電圧を加えたとしても、トラッキング誤差信号の対称性のずれが大きくなる。この度合いは、オフトラック量を0に補正したときのトラッキング誤差信号の対称性のずれとして表現できる。
トラッキング誤差信号の対称性のずれについて、実施形態1と従来の光ヘッド装置とを比較した結果を以下に述べる。
対物レンズの開口数NA=0.6、光の波長λ=0.66μmとして、溝の間隔Gp=1.48μmの光ディスクを再生する際、開口を半径1の円とすると、+1次の回折光と−1次の回折光は、中央でW=0.51の幅の重複領域を持つ。
光ディスクの基材厚を0.6mmとして、ラジアル方向にチルトが0.4度発生したとすると、従来の光ヘッド装置では、トラック中心に対して約0.07μmのオフトラックを起こす。また、オフセット電圧を加えてオフトラック量を0に補正すると、TE対称性に31%のずれが生じる。
ここで、トラッキング誤差信号の対称性は、トラッキング誤差信号の上端の値をAとし、下端の値をBとして、(A+B)/(A−B)で定義する。
実施形態1の場合、トラッキング誤差信号TE1を+1次と−1次の回折光の重複領域の外側だけから取ることにより、0.4度のラジアルチルトが発生したときのトラック中心に対するオフトラック量は、約0.045μmに抑えられる。また、オフトラック量を0に補正するとトラッキング誤差信号の対称性のずれは19%となり、従来例の約2/3の大きさに抑えられる。
また、従来の光ヘッド装置では、対物レンズシフトが発生すると、検出器上で検出スポットが移動し、やはりオフトラック量を0に補正するとトラッキング誤差信号の対称性のずれが生じる。対物レンズシフト150μmでは、オフトラック量を0に補正するとトラッキング誤差信号の対称性のずれは16%になる。
一方、実施形態1では、対物レンズシフト150μmで、オフトラック量を0に補正するとトラッキング誤差信号の対称性のずれは3%に抑えられる。
上述したように、実施形態1では、光ディスク105のチルト等が存在しても、小さなオフトラック量を保ったまま、安定したトラッキング制御を実現することができる。このため、実施形態1は、情報の記録・再生を低い誤り率で実現できる。
以下に、上述した光ヘッド装置と同様の効果を与える別の例を図4を用いて説明する。
図4は、光検出器151の検出領域201、204、205、208、および209と、情報再生信号生成手段450とトラッキング誤差信号生成手段451としての回路の構成とを示している。上述した光ヘッド装置と異なる点は、光検出器150の代わりに光検出器151が用いられることである。光学的な配置は、図1に示す配置と同様である。
光検出器151は、分割線301、303、305、および306により5つの検出領域201、204、205、208、および209に分割される。分割線301と分割線303が、+1次の回折光と−1次の回折光の重複領域200を挟むように配置され、分割線301と分割線303とにより領域が定められた検出領域209に重複領域200の光が入る。
検出領域201、204、205、208、および209は、それらの受光した光量に応じて信号s1、s2、s3、s4およびs5をそれぞれ生成する。
情報再生信号生成手段450としての回路系について説明する。情報再生信号生成手段450は、加算器401、404、および405を含んでいる。情報の再生信号であるRF信号は、全領域201、204、205、208、および209から出力される信号s1、s2、s3、s4およびs5の和から得られる。図4に示したように、加算器401が「信号s1+信号s4」の和信号を出力し、加算器404が「信号s2+信号s3」の和信号を出力する。加算器405は、加算器401の出力信号と加算器404の出力信号と検出領域209から出力される信号s5を受け取り、受け取った信号の和信号を出力する。
加算器405が出力する出力信号であるRF信号は、
RF=s1+s2+s3+s4+s5・・・・・・(式9)
によって求めることができる。
以下に、トラッキング誤差信号生成手段451としての回路系について説明する。トラッキング誤差信号生成手段451は、加算器401および404と、差動演算回路406とを含んでいる。差動演算回路406は、加算器401と加算器404からの出力信号を受け取り、その出力信号の差である差動信号を出力する。差動演算回路406から出力される出力信号は、
TE1=(s1+s4)−(s2+s3)・・・・・・(式10)
によって求めることができる。
この例では、検出領域の数とヘッドアンプの数は、図2に示す例より少ない構成で図2の例と同様の効果を得ることができる。
以下に、図2に示す構成を有する光ヘッド装置と同様の効果を与える更に別の例を図5を用いて説明する。
図5は、光検出器152を示している。光検出器152は、分割線306〜309により8つの領域に分割される。溝の接線と垂直な分割線307と309は、溝からの+1次の回折光と溝からの−1次の回折光の重複領域200を挟むように配置される。この2つの分割線307と309の外側であり、円の中心を含まない検出領域210〜213が受光し、検出領域210〜213が受光した光量に応じて、信号s1〜s4をそれぞれ生成する。
トラッキング誤差信号TE1は、
TE1=(s1+s4)−(s2+s3) ・・・・・・(式11)
によって求めることができる。
この例の光ヘッド装置でも、+1次の回折光と−1次の回折光の重複領域200の大部分を除いて、回折光を受光することができ、図2および図4に示す構成を有する光ヘッド装置とほぼ同様に、トラッキング誤差信号の特性を改善することができる。図5に示す構成を有する光ヘッド装置は、少ないオフトラック量で、安定したトラッキング制御を行うことができるので、低い誤り率で情報の記録再生が可能になる。
以下に、図2に示す構成を有する光ヘッド装置と同様の効果を与える更に別の例を図6を用いて説明する。
図6は、光検出器153を示している。光検出器153は、分割線310〜313により8つの領域に分割される。溝の接線と平行な分割線310と312とは、光検出器153上への反射光108aの断面の端の方に位置する。分割線310と312の外側であり、円の中心を含まない領域214〜217が受光し、領域214〜217が受光した光量に応じて信号s1〜s4をそれぞれ生成する。
トラッキング誤差信号TE1は、上記式11と同様の演算により求められる。
この例では、+1次の回折光と−1次の回折光の重複領域200を大きくはずして、回折光を受光することができ、図2および図4に示す構成を有する光ヘッド装置とほぼ同様に、トラッキング誤差信号の特性を改善することができる。図6に示す構成を有する光ヘッド装置は、少ないオフトラック量で、安定したトラッキング制御を行うことができるので、低い誤り率で情報の記録再生が可能になる。
なお、本実施形態1では、分割線は直線の例を示したが、光ディスク105の溝による+1次の回折光と−1次の回折光の重複領域200は、曲線で囲まれた領域となるので、これに合わせた曲線で分割線を形成しても良い。
(実施形態2)
この実施形態2でも、実施形態1と同様、式4の条件を満たす場合について述べる。
この実施形態2では、光ディスク105の溝による+1次の回折光と−1次の回折光の重複領域から得られる信号からトラッキング誤差信号を補正する構成および方法について示す。
実施形態2の光ヘッド装置の光学系の概略図は、図1に示すものと同様である。このため、実施形態2の光ヘッド装置の光学系の構成および動作は、実施形態1の構成および動作と同様であるので、その構成および動作の説明を省略する。
図7は、実施形態2の光検出器150の検出領域201〜208とトラッキング誤差信号生成手段451としての回路の構成を示す。光検出器150は、分割線301〜304により検出領域201〜208の8領域に分割される。分割線の配置等は実施形態1と同様である。検出領域201〜208は受光し、検出領域201〜208は、受光した光量に応じて信号s1〜s8をそれぞれ生成する。フォーカス誤差信号FEおよび情報再生信号の生成方法は、実施形態1と同様であるので省略する。
トラッキング誤差信号生成手段451としての回路系の説明をする。トラッキング誤差信号生成手段451は、加算器401〜404、407および408と動演算回路406とを有している。
図7に示すように、加算器401が、「信号s1+信号s8」の和信号を出力し、加算器402が「信号s2+信号s7」の和信号を出力し、加算器403が「信号s3+信号s6」の和信号を出力し、加算器404が「信号s4+信号s5」の和信号を出力する。加算器407は、加算器401の出力と加算器403の出力信号とを受けて、それらの出力信号の和信号を出力する。加算器408は加算器402の出力信号と加算器404の出力信号とを受けて、それらの出力信号の和信号を出力する。差動演算回路406は、加算器407の出力信号と加算器408の出力信号とを受け、それらの出力信号の差動信号を出力する。
差動演算回路406の出力信号は、
TE1=(s1+s3+s6+s8)−(s2+s4+s5+s7)・・・(式12)
で与えられる。
実施形態2の、中央の+1次回折光と−1次回折光の重複領域200の光を受光する検出領域によって生成される信号を処理する方法は、通常のプッシュプル法とは異なる。実施形態2では、重複領域200の光を受光する検出領域によって生成される信号の一部の極性を反転し、極性を反転した信号と、検出領域によって生成される信号の残りの一部の信号とを加算することによりトラッキング誤差信号を補正する。
実施形態2によると、実施形態1と同様の条件で、ラジアル方向にチルトが0.4度発生したとき、オフトラック量を0に補正するとトラッキング誤差信号の対称性のずれは14%になる。これは、従来の光ヘッド装置の約1/2であり、特にラジアルチルトに対する抑制効果は大きい。
以上のように、実施形態2の光ヘッドでは、装置光ディスク105のチルト等が存在しても、小さなオフトラック量を保ったまま、安定したトラッキング制御を実現することができる。これにより情報の記録・再生を低い誤り率で実現できる。
以下に、図7に示す構成を有する光ヘッド装置と同様の効果を与える更に別の例を図8を用いて説明する。
図8は、光検出器153を示している。光検出器153は、分割線315〜320により、12個の検出領域218〜229に分割される。分割線315と分割線319は、光ディスクの溝の接線と平行で、溝からの+1次の回折光と−1次の回折光の重複領域を挟むように配置されている。分割線315と分割線319の距離は、上記式5のWと同程度とする。分割線316〜318は、分割線315と分割線319の間に等間隔に配置される。検出領域218〜229は、受光した光量に応じて信号s1〜s12をそれぞれ生成する。
トラッキング誤差信号生成手段451としての回路系について説明する。トラッキング誤差信号生成手段451は、加算器401〜404および409〜412と、差動演算回路406とを含んでいる。
加算器401は信号s1と信号s12の和信号を出力し、加算器402は信号s2と信号s11の和信号を出力し、加算器403は信号s3と信号s10の和信号を出力し、加算器404は信号s4と信号s9の和信号を出力し、加算器409は信号s5と信号s8の和信号を出力し、加算器410は信号s6と信号s7の和信号を出力する。加算器411は、加算器401、403、および409から出力される出力信号を受けて、それらの出力信号の和信号を出力する。また、加算器412は、加算器402、404、および410から出力される出力信号を受けて、それらの出力信号の和信号を出力する。差動演算回路406は、加算器411の出力信号と加算器412の出力信号を受けて、それらの出力信号の差である差動信号を出力する。差動演算回路406の出力信号は、
TE1=(s1+s3+s5+s8+s10+s12)
−(s2+s4+s6+s7+s9+s11)・・・・・・(式13)
により与えられる。
図8に示す構成を有する光ヘッド装置では、ラジアルチルト0.4度であったとしても、オフトラック量は0.042μmとなる。
なお、オフトラック量を0に補正する場合、図8に示す構成を有する光ヘッド装置では、トラッキング誤差信号の対称性のずれは18%になる。一方、従来の光ヘッド装置では、トラッキング誤差信号の対称性のずれは31%となり、図8に示す構成を有する光ヘッド装置は、オフトラック量を0にする補正を行った場合でも、従来の光ヘッド装置より優れたトラッキング誤差信号の対称性を有する。
また、対物レンズシフト150μmが存在する場合、オフトラック量を0に補正すると、図8に示す構成を有する光ヘッド装置では、トラッキング誤差信号の対称性のずれは8%になるが、従来の光ヘッド装置では、トラッキング誤差信号の対称性のずれは16%になる。図8に示す構成を有する光ヘッド装置は、従来の光ヘッド装置に比べて、トラッキング誤差信号の対称性の悪さを約半分に低減することができる。
上述したように、実施形態2の光ヘッド装置は、光ディスク105のチルト等が存在しても、小さなオフトラック量を保ったまま、安定したトラッキング制御を実現することができる。実施形態2の光ヘッド装置では、情報の記録・再生を低い誤り率で実現できる。
なお、この実施形態では、トラックによる+1次と−1次の回折光の重複領域を、光ディスク105の溝の接線と垂直な方向には4分割しているが、更に細かく分割しても良く、この実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、フォーカス方式として非点収差法を考慮して、溝の接線と垂直な分割線320を設けているが、この分割線がない場合には、加算器401〜404、409、および410は不要になる。このような場合にも、その効果は、ここに示した実施形態と同様に得られる。
(実施形態3)
この実施形態3でも実施形態1および2と同様に、上記式4の条件を満たす場合について述べる。
実施形態3では、溝による+1次の回折光と−1次の回折光の重複領域200から得られる信号から外乱に相当する補正信号を生成し、トラッキング誤差信号を補正する。
実施形態3の光ヘッド装置の光学系の概略図は、図1に示すものと同様である。このため、実施形態3の光ヘッド装置の光学系の構成および動作は、実施形態1の構成および動作と同様であるので、その構成および動作の説明を省略する。
図9は、実施形態3の光検出器150の検出領域201〜208と、トラッキング誤差信号生成手段451としての回路の構成とを示す。
光検出器150は、分割線301〜304により検出領域201〜208の8領域に分割される。分割線の配置等は、実施形態1と同様である。検出領域201〜208は、受光した光量に応じて信号s1〜s8をそれぞれ生成する。
フォーカス誤差信号FEおよび情報再生信号の生成方法は、実施形態1と同様であるので省略する。また、加算器401〜404に入力する入力信号と、それらの入力信号を加算器401〜404が演算する方法も、実施形態1と同様である。
実施形態3のトラッキング誤差信号生成手段451としての回路系の説明をする。トラッキング誤差信号生成手段451は、加算器401〜404と、可変利得増幅回路413および414と、差動演算回路406、415および416とを含んでいる。
可変利得増幅回路414は、加算器402からの出力信号を受けて、この信号をα1倍した信号を出力する。ここで、α1は所定の値である。また、可変利得増幅回路413は、加算器403からの出力信号を受けて、この信号をα2倍した信号を出力する。ここで、α2は所定の値である。
差動演算回路406は、加算器401の出力信号と加算器404の出力信号とを受け、加算器401の出力信号から加算器404の出力信号を引いた差動信号を出力する。
差動演算回路415は、可変利得増幅回路413の出力信号と可変利得増幅回路414の出力信号とを受け、それらの出力信号の差である差動信号を出力する。
差動演算回路416は、差動演算回路406の出力信号と差動演算回路415の出力信号とを受け、それらの出力信号の差である差動信号を出力する。
差動演算回路416の出力信号は、
TE1=(s1+s8)−(s4+s5)
−{α1・(s2+s7)−α2・(s3+s6)}・・・・・・(式14)
で与えられる。
ラジアルチルトの発生量や極性、対物レンズシフトの発生量・極性を考慮して、可変利得増幅回路414の利得α1と可変利得増幅回路413の利得α2が決定される。利得α1およびα2を変化させることにより、|TEmax−TE0|と|TEmin−TE0|との差を小さくすることができる。つまり、利得の調整により補正量を調整することができるため、実施形態3は実施形態2に比べ、上記差を小さくできるという改善効果は大きい。
このため、実施形態3では、光ディスク105のチルト等が存在しても、小さなオフトラック量を保ったまま、安定したトラッキング制御を実現することができ、情報の記録・再生を低い誤り率で実現できる。
なお、実施形態3では、トラックによる+1次と−1次の回折光の重複領域200を、光ディスク105の溝の接線と垂直な方向に2分割しているが、更に細かく分割しても良い。そのような場合であっても、そのような光ヘッド装置は、上述した実施形態3と同様の効果を得ることができる。
(実施形態4)
この実施形態4でも、実施形態1、2、および3と同様、式4の条件を満たす場合について述べる。
実施形態4では、溝による+1次の回折光と−1次の回折光の重複領域を含んだ領域の光学的な透過率を小さくし、トラッキング誤差信号の特性を改善する。
図10aは、実施形態4の光ヘッド装置の光学系の概略図を示している。図10aの光学系の構成は、対物レンズ109を除いて、図1の光学系の構成と同じである。このため、対物レンズ109以外の構成の詳しい説明は、省略する。
以下に、図10aの対物レンズ109について、図10bを用いて説明する。
図10bは、実施形態4の集光光学系の一部である対物レンズ109の正面図を示している。減光手段として、対物レンズ109の斜線部110にホログラムが設けられる。ホログラムにより回折された光は、不要光となり、信号の再生に寄与せず、回折されなかった0次光のみが有効に光ディスク105の情報層108上に集光される。
実施形態4の光検出器150の検出領域251〜254は、図43aに示すような配置であってもよい。検出領域251〜254が、図43aに示すような配置である場合、トラッキング誤差信号TE1、フォーカス誤差信号FE、および情報再生信号RFは、上述した式1、式2、および式3によって求められる。
トラッキング誤差信号の対称性のずれについて、実施形態4と従来の光ヘッド装置とを比較した結果を以下に述べる。
領域110の透過率T=55%、領域110の半径の対物レンズ109の半径に対する比を0.72として、実施形態1と同様な条件で、ラジアルチルト0.4度、オフトラック量を0に補正したとき、実施形態4では、トラッキング誤差信号の対称性のずれは17%に抑えられるが、従来の光ヘッド装置では、トラッキング誤差信号の対称性のずれは31%となる。実施形態4は、従来の光ヘッド装置に比べて、トラッキング誤差信号の対称性のずれを約1/2低減することができる。
実施形態4では、光ディスク105のチルト等が存在しても、小さなオフトラック量を保ったまま、安定したトラッキング制御を実現することができる。このことにより、実施形態4は、情報の記録・再生を低い誤り率で実現できる。
また、本実施形態では、対物レンズ109上に設けたホログラムの回折光で別のスポットを形成しても良い。この場合、0次の回折光を基材厚0.6mmのDVD用スポットとして利用し、1次の回折光を基材厚1.2mmのCD用スポットとして利用することができる。ホログラムの回折光で別のスポットを形成することによって、2焦点レンズの機能と両立させることができる。
なお、この実施形態では、減光手段としてホログラムを設けたが、対物レンズに適当な透過率を持つ反射膜をつけたり、吸収膜をつけても同様の効果を得ることができる。
また、図11に示したように、減光手段を対物レンズに直接付けるのではなく同様のホログラム素子や、膜をつけたフィルター111を保持手段106で、対物レンズと相対移動しないように保持してもよい。これらの場合も、この実施形態で示した効果と同等の効果を得ることができる。
図11に示す減光手段は、対物レンズ104の、情報記憶媒体より遠い方の面を覆っているが、情報記憶媒体より近い方の面を覆っていてもよい。同様に、図10aの減光手段は、対物レンズ109の、情報記憶媒体より近い方の面を覆っていてもよい。
なお、この実施形態では、集光光学系に一体化して減光手段を設けたが、分離して固定光学系側に設けてもよい。光源から情報記憶媒体に至る光路中に減光手段がある例を図12に示す。図12に示すように光源としての半導体レーザ101から出射された光は、減光手段としてのフィルター111を通り、中央付近の光量が減殺され、平行平板ビームスプリッタ102で反射される。この場合光ディスク105のトラックからの+1次の回折光と−1次の回折光の重複領域の0次光が減り、重複領域の影響を減らすことができる。
また、情報記憶媒体から光検出器に至る光学系に減光手段がある例を図13に示す。図13に示すように平行平板プリズム112の下側に減光領域113を設ける方法でもよい。このように配置しても、+1次の回折光と−1次の回折光の重複領域の影響を減らすことができ、ほぼ同様の効果が得られる。
なお、実施形態1から4では、フォーカス誤差信号を得る方法として非点収差法を用いたが、本発明の効果はこれに限定されるものではなく、フォーカス方式はフーコー法やスポットサイズ法など他の方法と組み合わせることができ、フォーカスの方式に限定されるものではない。
(実施形態5)
この実施形態5でも実施形態1から4と同様、式4の条件を満たす場合について述べる。
この実施形態5では、分割手段として、ホログラム素子もしくは段差プリズムを用いている。フォーカス誤差信号を得る方法は、スポットサイズ法を用いる。
図14は、実施形態5の光ヘッド装置の光学系の概略図を示している。
以下に、実施形態5の構成および動作を図14を用いて説明する。
光源としての半導体レーザ101から出た光は、コリメータレンズ103で平行光になり、ビームスプリッタ115で反射される。この光は集光光学系の一部である対物レンズ104で収束光となる。収束光は、情報記憶媒体としての光ディスク105の情報層108上に集光される。情報層108で反射した反射光108aは、再び対物レンズ104を通り、平行光となる。平行光となった反射光108aは、ビームスプリッタ115を透過し、検出レンズ116で収束光となる。収束光となった108aは、分割手段であるホログラム素子117で回折される。ホログラム素子117で回折された、−1次回折光108bと+1次回折光108cは光検出器154で、受光される。
図15は、ホログラム素子117の領域分割のパターンと、光検出器154の検出領域と光検出器154上での−1次回折光108bと+1次回折光108cの断面の形を示している。
ホログラム素子117は、複数の短冊状の領域に分けられる。各領域に付けられた記号は、図15の光検出器154上での−1次回折光108bと+1次回折光108cの断面に付けられた記号に対応する。大文字A〜Dで表される領域から生じる−1次の回折光108bは、小文字a〜dで表される領域から生じる−1次回折光108bより検出レンズ116から遠い側に集光される。
対物レンズ104から出射される光の集光点F0が、光ディスク105の情報層108上に一致するとき、光検出器154上の大文字A〜Dの記号が付けられた回折光の断面と小文字a〜dの記号が付けられた回折光の断面とが同じ大きさになるように、光学系およびホログラム素子117は設計されている。
検出領域230〜232は、受光した光量に応じて、信号f1〜f3を出力する。
フォーカス誤差信号FEは、
FE=f1+f3−f2・・・・・・(式15)
によって求められる。
光ディスク105の情報層108が対物レンズ104からの出射光の集光点F0より対物レンズ104から遠ざかったとき、大文字A〜Dの記号が付けられた−1次回折光108bの断面は小さくなり、小文字a〜dの記号が付けられた−1次回折光108bの断面は大きくなる。従って、f1とf3の信号は減少し、f2の信号は増加し、フォーカス誤差信号FEは減少する。
光ディスク105の情報層108が対物レンズ104からの出射光の集光点F0より対物レンズ104に近づいたとき、大文字A〜Dの記号が付けられた−1次回折光108bの断面は大きくなり、小文字a〜dの記号が付けられた−1次回折光108bの断面は小さくなる。従って、f1とf3の信号は増加し、f2の信号は減少し、フォーカス誤差信号FEは増加する。
これにより、集光点F0を情報層108上に保つ、フォーカス制御が実現される。
光検出器154の検出領域233〜236から受光した光量に応じて得られる信号をt1〜t4とする。トラッキング誤差信号生成手段としての演算回路(図示せず)は、トラッキング誤差信号TE1を生成する。
トラッキング誤差信号TE1は、
TE1=(t1+t4)−(t2+t3)・・・・・・(式16)
によって求められる。
これは、実質的に図15のホログラム素子117で斜線の無い領域と斜線のある領域との光量の差を与える。
位相差法のトラッキング誤差信号TE2は、(信号t1+信号t3)と(信号t2+信号t4)の位相を比較することにより得られる。
情報を再生するためのRF信号は、式17のRFf、または式18のRFt、あるいはRFfとRFtの両方の和で与えられる。
RFfは、
RFf=f1+f2+f3・・・・・・(式17)
によって求められる。
RFtは、
RFt=t1+t2+t3+t4・・・・・・(式18)
によって求められる。
この実施形態5の特徴は、開口の中央を通りトラックと平行な分割線の両側の数個の領域を対角方向に入れ換えていることにある。図15では、AとD、BとC,aとd,bとcの計8本が互いに入れ替わっている。これにより、実施形態2と同様の効果を得ることができる。ラジアル方向にチルトが0.4度発生したとき、実施形態5では、オフトラック量を0に補正するとトラッキング誤差信号の対称性のずれは14%になる。このトラッキング誤差信号の対称性のずれは、従来の光ヘッド装置のトラッキング誤差信号の対称性のずれの約1/2となる。実施形態5は、特にラジアルチルトを抑制する。
実施形態5では、光ディスク105のチルト等が存在しても、小さなオフトラック量を保ったまま、安定したトラッキング制御を実現することができる。このことにより、実施形態5は、情報の記録・再生を低い誤り率で実現できる。
また、別の領域パターンとして、図16に示すホログラム素子118のように中央の領域の一部のみを対角に入れ換えれば、実施形態2の図8に示した光検出器153を用いた例と同様の効果を得られる。この場合、ラジアルチルト0.4度である場合、オフトラック量は0.042μmとなる。オフトラック量を0に補正するとトラッキング誤差信号の対称性のずれは18%になる。ラジアルチルト0.4度である場合、オフトラック量を0に補正すると、従来の光ヘッド装置では、トラッキング誤差信号の対称性のずれは31%となる。つまり、図16に示すホログラム素子118を用いた実施形態5は、従来の光ヘッド装置に比べて、トラッキング誤差信号の対称性のずれを大幅に減少することができる。
また、図16に示すホログラム素子118を用いた実施形態5では、対物レンズシフト150μmが存在するとき、オフトラック量を0に補正すると、トラッキング誤差信号の対称性のずれは8%になる。一方、従来の光ヘッド装置では、対物レンズシフト150μmが存在するとき、オフトラック量を0に補正すると、トラッキング誤差信号の対称性のずれは16%となる。つまり、図16に示すホログラム素子118を用いた実施形態5は、従来の光ヘッド装置に比べて、トラッキング誤差信号の対称性のずれを約半分に低減することができる。
図16に示すホログラム素子118を用いた実施形態5では、光ディスク105のチルト等に対して、小さなオフトラック量を保ったまま、安定したトラッキング制御を実現することができる。これにより、図16に示すホログラム素子118を用いた実施形態5は、情報の記録・再生を低い誤り率で実現できる。
このように、この実施形態5では、分割手段としてホログラム素子を用いることにより、光検出器の検出領域を従来例から増やすことなく大きな効果を実現できる。このため、RF信号を得るためのヘッドアンプを増やさなくてもよく、回路的負担が少ない。
また、この実施形態5では、開口の中心を通って、トラックの接線とは垂直な分割線で領域を分割し、コリメータレンズ103に近い側で集光点をもつ球面波を作る小文字の記号a〜dで表される領域と、遠い側で集光点を持つ球面波を作る大文字の記号A〜Dで表される領域が、この分割線をはさんで互いに接するように配置する。また、通常は光の照射されない開口の外側にもこの2種類の領域を交互に配置する。
トラックと垂直方向に分割線を設けず、トラックと平行な方向に開口の端から端に達する細長い領域とした場合、ホログラム素子117と対物レンズ104の開口の中心がずれると、光検出器154の小文字の記号a〜dで表される領域に入る光量と大文字の記号A〜Dで表される領域に入る光量のバランスが崩れる。また、対物レンズ104から出射される光の集光点F0が光ディスク105の惰報層108上からずれ、デフォーカスを生じた場合、光ディスク105のトラックによる±1次の回折光と0次光が重なる部分には、トラックと平行な明暗の縞模様を生じる。縞模様とホログラム素子117の領域の分割の重なり方により、やはり小文字の記号a〜dで表される領域にはいる光量と大文字の記号A〜Dで表される領域にはいる光量のバランスが崩れる。
この実施形態5の方法によれば、このようなバランスのずれは原理的になくなる。
計算上では、トラックの接線と垂直に分割線を入れない従来例の場合、対物レンズの開口数NA=0.5、光の波長λ=0.795μm、対物レンズの直径=4mmとし、ホログラム素子の各領域の幅を0.2mmとし、対物レンズと偏光異方性ホログラム素子の中心を100μmずらしたとき、±2μmのデフォーカスでフォーカスゲインが3.4dB変化する。
この実施形態5の様な配置をした場合、計算上、同様の条件で、フォーカスゲインは1.2dBしか変化しない。この変動量は従来例の約1/3であり、大幅に減少している。これによりフォーカス制御の安定化が実現でき、外乱に強くなるため、情報再生時の誤り率は低下する。
また、トラックと垂直方向の分割を入れずに、開口の外側にも交互に2つの領域を設けると、計算上では、同様の条件でフォーカスゲインは1.8dBしか変化しない。この変動量は従来例の約1/2である。これによりフォーカス制御の安定化が実現でき、惜報再生時の誤り率は低下する。
また、分割手段としてのホログラム素子の領域のパターンは、光検出器の検出領域のパターンに比べて自由に設定することができ、目的に合わせた領域のパターンを簡単に実現することができる。
なお、本実施形態5の分割手段は単にホログラム素子としたが、偏光異方性ホログラム素子と1/4波長板を組み合わせて用いても良い。この場合本発明の効果を損なうことなく、光の利用効率を上げることができる。
なお、この実施形態5では、フォーカス制御に関する発明とトラッキング制御に関する発明を同時に実現する分割手段を示したが、フォーカス制御に関する発明と、トラッキング制御に関する発明は独立しており、どちらか一方のみを用いる構成にすれば、その発明に応じた効果をそれぞれ独立に得ることができる。
また、分割手段としては、ホログラム素子以外にも、段差プリズム等を用いる方法がある。図17にその場合の光学系の概略図を示す。図14のホログラム素子117の代わりに、段差プリズム119を用いる。段差プリズムで分離された光は、光検出器154で受光される。この場合も、ホログラム素子を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
(実施形態6)
以下に、情報記憶媒体としての光ディスクの溝に対して、オフトラックした位置に記録された情報を再生する構成および方法について述べる。
実施形態6の光ヘッド装置の光学系の概略図は、図1に示すものと同様である。このため、実施形態5の光ヘッド装置の光学系の構成および動作は、実施形態6の構成および動作と同様であるので、その構成および動作の説明を省略する。
図18は、実施形態6の光検出器150の検出領域と、情報再生信号生成手段450とトラッキング誤差信号生成手段451としての回路の構成とを示している。
光検出器150は、分割線301〜304により検出領域201〜208の8領域に分割される。分割線の配置等は、実施形態1と同様である。検出領域201〜208から受光した光量に応じて得られる信号を各々s1〜s8とする。
図18の情報再生信号生成手段450は、実施形態1と同様に、加算器401〜404、および405を含んでいる。さらに、図18の情報再生信号生成手段450は、加算器417および419と、差動演算回路418および420を含んでいる。また、トラッキング誤差信号生成手段451は、加算器401〜404、421、および422と差動演算回路423とを含んでいる。
以下に、オフトラックした位置に記録されたピット列を読み取る際の動作を図19a、19b、および19cを用いて説明する。
図19aは、光ディスク上に溝501およびピット502が配置されている光ディスクを示している。なお、溝501およびピット502は、図1の情報層108の上に記録されいてる。
溝が配置されたゾーン503およびゾーン506の溝中心を通るトラック507に対し、第1のアドレスゾーン504では、トラック508のピット列の中心が所定の距離だけオフトラックしている。また、第2のアドレスゾーン505では、トラック509のピット列の中心は、トラック508とは逆方向に所定の距離だけオフトラックしている。
対物レンズ104から出射される光の集光点F0が、ゾーン503またはゾーン506にある時、トラッキング制御が行われていると、集光点F0はトラック507上、例えば点510に存在する。光ディスク105の回転とともに光ヘッド装置との相対位置が移動し、集光点F0はトラック507の延長線上を地点511、地点512、地点513の順に移動する。集光点F0が第1のアドレスゾーン504および第2のアドレスゾーン505にある間は、トラッキング誤差信号がホールドされている。
フォーカス誤差信号FEは、実施形態1と同様に、FE=(s1+s2+s5+s6)−(s3+s4+s7+s8)を演算することによって求められる。
トラッキング誤差信号は、下記式19の演算によって求めることができる。図18のトラッキング誤差信号生成手段451では、加算器421は、加算器401から出力される信号t1と加算器402から出力される信号t2を受け取り、信号t1と信号t2の和である信号を出力する。加算器422は、加算器403から出力される信号t3と加算器404から出力される信号t4を受け取り、信号t3と信号t4の和である信号を出力する。差動演算回路423は、加算器421から出力される信号と加算器422から出力される信号を受け取り、それらの差動信号を出力する。つまり、差動演算回路423の出力信号TEは、
TE=(t1+t2)−(t3+t4) ・・・・・・(式19)
によって求められる。このトラッキング誤差信号TEによって、トラッキング制御が行われる。
図18の情報再生信号生成手段450は、図2の情報再生信号生成手段450と同様に情報再生信号RFを生成する。情報再生信号を生成する方法を以下に示す。情報再生信号生成手段450は、加算器401〜405を有している。
加算器401は、信号s1と信号s8を受け取り、信号s1と信号s8の和である信号t1を出力する。加算器402は信号s2と信号s7を受け取り、信号s2と信号s7の和である信号t2を出力する。加算器403は、信号s3と信号s6を受け取り、信号s3と信号s6の和である信号t3を出力する。加算器404は、信号s4と信号s5を受けて、信号s4と信号s5の和である信号t4を出力する。加算器405は、加算器401〜404から出願される出力信号t1〜t4を受け取り、それらの信号の和である信号を出力する。加算器405から出力される情報再生信号RFは、
RF=t1+t2+t3+t4・・・・・・(式20)
で与えられる。
また、加算器417は、加算器402、403、および404から出力される信号t2、t3、およびt4を受け取り、それらの信号の和である信号を出力する。差動演算回路418は、加算器401からの出力信号と加算器417からの出力信号を受け取り、それらの差動信号を出力する。差動演算回路418から出力される信号RFa1は、
RFa1=t1−(t2+t3+t4) ・・・・・・(式21)
で与えられる。
加算器419は、加算器401、402、および403から出力される信号t1、t2、およびt3を受け取り、それらの信号の和である信号を出力する。差動演算回路420は、加算器419からの出力信号と加算器404からの出力信号を受け取り、それらの差動信号を出力する。差動演算回路420から出力される信号RFa2は、
RFa2=(t1+t2+t3)−t4 ・・・・・・(式22)
で与えられる。
アドレス検出回路424は、差動演算回路423からのトラッキング誤差信号TEを受け取り、対物レンズ104から出射される光の集光点F0が、溝のあるゾーン503またはゾーン506にあるのか、第1のアドレスゾーン504、もしくは第2のアドレスゾーン505にあるのかを判定し、判定した結果である識別信号を出力する。
制御回路425は、アドレス検出回路424が出力する識別信号を受け取り、識別信号に基づいてスイッチ426とスイッチ427を制御する。
スイッチ426は、差動演算回路418から出力される信号と差動演算回路420から出力される信号を受け取り、それらのうちの一方を出力する。
スイッチ427は、加算器405から出力される信号とスイッチ426から出力される信号を受け取り、それらのうちの一方を出力する。スイッチ427から出力される信号は、情報記憶媒体に記録されている、情報もしくはアドレスを再生するために使用される。
制御回路425は、対物レンズ104から出力される光の集光点F0が、溝のあるゾーン503またはゾーン506にあるときには、スイッチ427からは、加算器405の出力信号RFが出力されるようにスイッチを制御する。また、集光点F0が第1のアドレスゾーン504にあるときには、スイッチ427からは、差動演算回路418の出力信号RFa1が出力されるようにスイッチを制御する。更に、集光点F0が第2のアドレスゾーン505にあるときには、スイッチ427からは差動演算回路420の出力信号RFa2が出力されるようにスイッチを制御する。
すなわち、第1のアドレスゾーン504の地点511上に集光点F0がある場合、図19bに示すように、分割線301をはさんだ2つの領域から出力されるそれぞれの差である差動信号から、トラック507上にピット列として記録された情報の再生を行う。
第2のアドレスゾーン505の地点512上に集光点F0がある場合、図19cに示すように、分割線303をはさんだ2つの領域から出力されるそれぞれの差である差動信号から、トラック507上にピット列として記録された情報の再生を行う。
以下に、対物レンズの開口数NA=0.6とし、光の波長λ=0.660μmとし、溝の間隔Gp=1.48μmとし、トラック507に対してトラック508とトラック509が各々0.37μmずつオフトラックしている光ディスクにおけるジッターについて、実施形態6の光ヘッド装置と従来の光ヘッド装置とを比較した結果を示す。
開口の中央の分割線で検出領域を分割し、分割された領域から出力されるそれぞれの差である差動信号から情報を再生する従来の光ヘッド装置では、計算上のジッターが6.4%となる。
一方、実施形態6では、開口を半径1の円として、分割線302からの距離をdとして、d=0.23の位置の分割線303または分割線301で検出領域を分割し、分割された領域から出力されるそれぞれの差である差動信号から情報を再生した場合、計算上のジッターは1.8%となる。実施形態6は、従来の光ヘッド装置に比べて、4%以上のジッターを改善することができる。
また、dが0.1以上であり、且つdが0.3以下であれば、実施形態6によるジッターは3%以下となり、実施形態6によるジッターは、従来の光ヘッド装置によるジッターの半分以下になる。
以上のように、本実施形態で示したような構成では、オフトラックした位置のピット列を少ないジッターで再生することができるため、外乱等に対するマージンが増加し、このような形式でアドレス等の情報を記録した光ディスクへの情報の記録再生の安定化が可能となる。
以下に、図18に示す光検出器とは異なる光検出器を有する光ヘッド装置を図20を用いて説明する。
図20は、光検出器151の検出領域201、204、205、208、および209と、情報再生信号生成手段450と、トラッキング誤差信号生成手段451とを示している。
図20の情報再生信号生成手段450は、加算器401、404、405、417、および419と、差動演算回路418および420とを含んでいる。また、図20のトラッキング誤差信号生成手段451は、加算器401および404と差動演算回路423とを含んでいる。
加算器405は、光検出器151の全ての検出領域201、204、205、208、および209が受け取る光量に相当する信号を生成する。また、差動演算回路418は、差動信号{信号t1−(信号t2+信号t3)}を生成する。また、差動演算回路420は、差動信号{(信号t1+信号t2)−信号t3}を生成する。ここで、信号t1は加算器401により生成され、信号t2は領域209によって出力される信号s5と同一の信号であり、信号t3は加算器404により生成される。
トラッキング誤差信号は、分割線301の左側にある2つの領域によって出力される信号を足し合わせた信号t1と、分割線303の右側にある2つの領域によって出力される信号を足し合わせた信号t3との差である差動信号となる。
上述した構成により、図20に示す光検出器を有する光ヘッド装置では、アドレス等の情報を記録した光ディスクへの情報の記録再生の安定化が可能となる。
以下に、図18に示す情報再生信号生成手段とは異なる情報再生信号生成手段を有する光ヘッド装置を図21a、21b、および21cを用いて説明する。
図21aは、光ディスク上に溝501およびピット502が配置されている光ディスクを示している。なお、溝501およびピット502は、図1の情報層108の上に記録されいてる。
図21bおよび21cは、光検出器350および情報再生信号生成手段450の概略を示している。
図21bは、第1のアドレスゾーン504に記録されている情報を再生するために必要な回路構成を示している。図21cは、第2のアドレスゾーン505に記録されている情報を再生するために必要な回路構成を示している。なお、情報再生信号生成手段450は、図21bに示される加算器430および差動演算回路431と、図21cに示される加算器432および差動演算回路433とを含んでいる。
差動演算回路431は下記式23に基づき再生信号RFa3を生成し、差動演算回路433は下記式24に基づき再生信号RFa4を生成する。
RFa3=t1−(t3+t4) ・・・・・・(式23)
RFa4=(t1+t2)−t4 ・・・・・・(式24)
第1のアドレスゾーン504に記録されている情報を再生する場合、再生信号RFa3が使用され、第2のアドレスゾーン505に記録されている情報を再生する場合、再生信号RFa4が使用される。情報再生信号生成手段450は、再生信号RFa3または再生信号RFa4を選択する選択部を有していても良い。
以下に、対物レンズの開口数がNA=0.6であり、光の波長がλ=0.660μmであり、溝の間隔がGp=1.48μmであり、トラック507に対してトラック508とトラック509が各々0.37μmずつオフトラックしている光ディスクのジッターについて、図21bおよび図21cの構成を有する光ヘッド装置と従来の光ヘッド装置とを比較した結果を示す。
上述したように、開口の中央の分割線で検出領域を分割し、分割された領域から出力されるそれぞれの差である差動信号から情報を再生する従来の光ヘッド装置では、計算上のジッターが6.4%となる。
一方、図21bおよび図21cの構成を有する光ヘッド装置は、開口を半径1の円として、分割線302からの距離をdとして、d=0.23の位置の分割線303または分割線301で検出領域を分割し、分割された領域から出力される信号を上述したように演算した差動信号RFa3またはRFa4から情報を再生した場合、計算上のジッターは1.4%となる。図21bおよび図21cの構成を有する光ヘッド装置は、従来の光ヘッド装置に比べて、5%以上のジッターを改善することができる。
以上のように、本実施形態で示したような構成でも、オフトラックした位置のピット列を少ないジッターで再生することができるため、外乱等に対するマージンが増加し、このような形式でアドレス等の情報を記録した光ディスクへの情報の記録再生の安定化が可能となる。
以下に、図18および図20に示す情報再生信号生成手段とは異なる情報再生信号生成手段を有する光ヘッド装置を図22aおよび22bを用いて説明する。
図22aは、光ディスク上に溝501およびピット502が配置されている光ディスクを示している。なお、溝501およびピット502は、図1の情報層の上に記録されいてる。
図22bは、光検出器351および情報再生信号生成手段450の概略を示している。
情報再生信号生成手段450は、差動演算回路434を備えている。差動演算回路434は、下記式25に基づき再生信号RFa0を生成する。
RFa0=t1−t4 ・・・・・・(式25)
再生信号RFa0は、第1および第2のアドレスゾーン504および505において、再生信号として使用され、情報の再生が行われる。
以下に、対物レンズの開口数がNA=0.6であり、光の波長がλ=0.660μmであり、溝の間隔がGp=1.48μmであり、トラック507に対してトラック508とトラック509は各々0.37μmずつオフトラックしている光ディスクのジッターについて、図22bの構成を有する光ヘッド装置と従来の光ヘッド装置とを比較した結果を示す。
上述したように、従来の光ヘッド装置では、計算上のジッターが6.4%となる。図22bの構成を有する光ヘッド装置によるジッターは、2.6%となる。図22bの構成を有する光ヘッド装置は、従来の光ヘッド装置に比べて、4%近いジッターを改善することができる。
以上のように、本実施形態で示したような構成でも、オフトラックした位置のピット列を少ないジッターで再生することができるため、外乱等に対するマージンが増加し、このような形式でアドレス等の情報を記録した光ディスクへの情報の記録再生の安定化が可能となる。
図22bの構成を有する光ヘッド装置では、再生している情報が第1のアドレスゾーン504に位置するのか、第2のアドレスゾーン505に位置するのかによって、情報再生信号生成手段450から出力される信号を選択する必要がない。このため、図22bの構成を有する光ヘッド装置は、比較的簡単な回路系で実現できる。
以下に、図18、図20および図22に示す情報再生信号生成手段とは異なる情報再生信号生成手段を有する光ヘッド装置を図23aおよび23bを用いて説明する。
図23aは、光ディスク上に溝501およびピット502が配置されている光ディスクを示している。なお、溝501およびピット502は、図1の情報層108の上に記録されいてる。
図23bは、光検出器352および情報再生信号生成手段450の概略を示している。
情報再生信号生成手段450は、差動演算回路437と、加算器435および436とを備えている。差動演算回路437は、下記式26に基づき再生信号RFa00を生成する。
RFa00=(t1+t3)−(t2+t4) ・・・・・・(式26)
RFa00は、第1および第2のアドレスゾーン504および505において再生信号として使用される。
上述したように、従来の光ヘッド装置では、計算上のジッターが6.4%となる。図23bの構成を有する光ヘッド装置によるジッターは、1.2%となる。図23bの構成を有する光ヘッド装置は、従来の光ヘッド装置に比べて、5%に近いジッターを改善することができる。
図23bの構成を有する光ヘッド装置では、再生している情報が第1のアドレスゾーン504に位置するのか、第2のアドレスゾーン505に位置するのかによって、情報再生信号生成手段450から出力される信号を選択する必要がない。このため、図23bの構成を有する光ヘッド装置は、比較的簡単な回路系で実現できる。
(実施形態7)
実施形態7では、実施形態6と同様に、情報記憶媒体としての光ディスクの溝に対して、オフトラックした位置に記録されたマークとスペースからなる、ピット列を再生する。
実施形態7の光ヘッド装置の光学系は、図14に示す実施形態5の光学系と下記の点を除いて同じである。実施形態7の光ヘッド装置の光学系では、図14のホログラム素子117の代わりにホログラム素子120が用いられ、光検出器154の代わりに光検出器155が用いられる。
ホログラム素子120の領域分割のパターンについて、図24を用いて説明する。図24は、ホログラム素子120の領域分割のパターンと、光検出器155の検出領域と光検出器155上で0次光108aと−1次回折光108bと+1次回折光108cの断面の形を示している。
ホログラム素子120は、複数の短冊状の領域に分けられる。各領域に付けられた記号は図24の光検出器154上での0次光108a、−1次回折光108bと+1次回折光108cの断面の記号に対応する。大文字A〜Dの記号の領域から生じる−1次の回折光108bは、小文字a〜dの記号の領域から生じる−1次回折光108bより検出レンズ116から遠い側に焦点を結ぶ。Xの記号の領域の光は回折されず、すべて0次光108aとなる。
−1次の回折光108bは検出領域230〜232で受光され、+1次回折光108cは、検出領域233〜236で受光される。また0次光は、検出領域237で受光される。フォーカス誤差信号は、検出領域230〜232から受光した光量に応じて得られる信号から生成される。
検出領域233〜236で受光した光量に応じて得られる信号を各々t1〜t4とする。また検出器237で受光した光量に応じて得られる信号をx0とする。光ディスク105の溝501に対するトラッキング誤差信号TEは、
TE=(t1+t4)−(t2+t3) ・・・・・・(式27)
から得られる。
ホログラム素子120のX領域を透過する0次光に対するX以外の領域で回折される+1次回折光108cの回折効率の比をβとする。
情報再生信号RFは、
RF=t1+t2+t3+t4+β・x0 ・・・・・・(式28)
から得られる。
図19aのような構造の光ディスク105を再生する際、第1のアドレスゾーン504のトラック507上に集光点F0があるときは、次式のRFa1を得るような、演算を行うことによりトラック508上にピット列として記録された情報を再生する。
RFa1=(s1+s4)−(s2+s3+β・x0) ・・・・・・(式29)
また、集光点F0が第2のアドレズゾーン505のトラック507上にあるときには、次式のRFa2を得るような演算を行うことにより、トラック509上のピット列として記録された情報を再生する。
RFa2=(s1+s4+β・x0)−(s2+s3) ・・・・・・(式30)
このような構成により、実施形態7では、実施形態6と同様の効果が得られる。実施形態7では、集光点F0に対してオフトラックした位置に記録されたピット列を再生する際の、ジッターが低減される。従って、実施形態7では、このような形式でアドレス等の情報を記録した光ディスクへの情報の記録再生の安定化が可能となる。
(実施形態8)
実施形態8では、ホログラム素子を用いてTE信号の特性の改善を行う例を示す。フォーカスはスポットサイズ法を取り、トラッキングはプッシュプル法を取る構成を示す。
図25は、実施形態8の光ヘッド装置の光学系の概略図を示している。以下、光学系の構成および動作を図25を用いて説明する。
光源としての半導体レーザ101から出射された直線偏光の光101aは、集光光学系の一部としてのコリメータレンズ103で平行光になる。この平行光となった光101aは分割手段としての偏光異方性ホログラム素子121に入る。半導体レーザ101から出射された光101aの偏光方向は、偏光異方性ホログラム素子121で、回折光を生じないような方向に配置される。偏光異方性ホログラム素子121を通った光101aは、1/4波長板122を通り円偏光となる。この光101aはさらに、集光光学系の一部としての対物レンズ104で集光され、情報記憶媒体としての光ディスク105の情報層108上に集光される。
保持手段106は、偏光異方性ホログラム素子121と1/4波長板122と対物レンズ104を一体に保持する。アクチュエータ107は、保持手段106を、光ディスク105の面振れや偏芯に追従して移動させる。
光ディスク105の情報層108で回折・反射された反射光108aは、再び対物レンズ104を通り平行光となる。この平行光となった反射光108aは、もう一度1/4波長板122を通り、光101aとは90度方向の異なる直線偏光となる。この方向の直線偏光は偏光異方性ホログラム素子121により回折され、−1次回折光108bと+1次回折光108cが生じる。−1次回折光108bと+1次回折光108cは再びコリメータレンズ103で収束光となる。この収束光となった−1次回折光108bは光検出器156で受光され、+1次回折光108cは光検出器157で受光される。
図26に分割手段としての偏光異方性ホログラム素子121の領域分割のパターンと、光検出器156と光検出器157の検出領域と光検出器上での−1次回折光108bと+1次回折光108cの断面を示している。偏光異方性ホログラム素子121は、複数の短冊状の領域に分けられる。
大文字の記号AおよびBで表される領域から生じる−1次回折光108bは、小文字aおよびbで表される領域から生じる−1次回折光108bよりコリメータレンズ103から遠い側に集光される。
対物レンズ104から出射される光の集光点F0が光ディスク105の情報層108上に一致するとき、光検出器156上の大文字AおよびBの記号が付けられた−1次回折光108bの断面と小文字aおよびbの記号が付けられた−1次回折光108bの断面とが同じ大きさになるように、光学系およびホログラム素子121は設計されている。
検出領域238〜243から受光した光量に応じて得られる信号を、各々信号f1〜f6とする。フォーカス誤差信号FEは、式31、または、式32に相当する演算により得られる。
FE=(f1+f3+f5)−(f2+f4+f6)・・・・・・(式31)
FE=f5−f2・・・・・・(式32)
光ディスク105の情報層108が対物レンズ104からの出射光の集光点F0より対物レンズ104から遠ざかったとき、大文字AおよびBの記号が付けられた−1次回折光108bの断面は小さくなり、小文字aおよびbの記号が付けられた−1次回折光108bの断面は大きくなる。従って、信号f1、f3、およびf5は減少し、信号f2、f4、およびf6は増加し、フォーカス誤差信号FEは減少する。
光ディスク105の情報層108が対物レンズ104からの出射光の集光点F0より対物レンズ104に近づいたとき、大文字AおよびBの記号が付けられた−1次回折光108bの断面は大きくなり、小文字aおよびbの記号が付けられた−1次回折光108bの断面は小さくなる。従って、信号f1、f3、およびf5は増加し、信号f2、f4、およびf6は減少し、フォーカス誤差信号FEは増加する。
これにより、実施形態8では、集光点F0を情報層108上に保つ、フォーカス制御を実現できる。
光検出器157の検出領域244、245は、受光した光量に応じて信号を信号t1およびt2を生成する。トラッキング誤差信号TE1は、プッシュプル法によって下記式33によって求めることができる。
TE1=t1−t2・・・・・・(式33)
トラッキング誤差信号TE1は、実質的には図26の偏光異方性ホログラム素子121の斜線のない領域と斜線のある領域の光量の差を意味する。
情報を再生するためのRF信号は、下記式34によって導かれるRFf、下記式35によって導かれるRFt、またはRFfとRFtの両方の和で与えられる。
RFf=f1+f2+f3+f4+f5+f6・・・・・・(式34)
RFt=t1+t2・・・・・・(式35)
以下に、トラッキング誤差信号の対称性のずれについて、実施形態8と従来の光ヘッド装置を比較した結果を示す。
光ディスクは、溝またはピット列からなるトラックを持ち、あるトラックの中心から隣のトラックの中心までの間隔をTpとする。また、対物レンズ104の開口数をNA、光の波長をλとする。
この実施形態8では、
λ/(NA・Tp)≧1・・・・・・(式36)
の条件を満たす場合について述べる。
この実施形態8の特徴は、開口を半径1の円として、開口の中央を通り光ディスク105のトラックと平行な分割線を挟んで接する幅約0.1ずつの範囲に含まれる領域と、開口の端に接する幅約0.1の範囲に含まれる領域を入れ換えて演算することにある。
ある偏光異方性ホログラム素子の分割線302の左側では、短冊状の領域Aと短冊状の領域aが交互に隣接し、ある偏光異方性ホログラム素子の分割線302の右側では、短冊状の領域Bと短冊状の領域bが交互に隣接している。図26では、中央付近領域で短冊状領域Aと短冊状領域bの計2つ領域が互いに入れ替わっている。また、開口の端の領域では、短冊状領域Aおよび短冊状領域aと短冊状領域Bおよび短冊状領域bとが互いに入れ替わっている。
本実施形態に示すような入れ替えを行わなかった場合、対物レンズの開口数NA=0.5、光の波長λ=0.795μmとし、ラジアル方向の光量分布は、中央に対して対物レンズ端で10%の強度であるとすると、光ディスクの基材厚1.2mm、トラック間隔Tp=1.6μmのピット列に対して、対物レンズシフト500μmで発生するトラッキング誤差信号の対称性のずれは、53%、ラジアルチルト1.0度で発生するトラッキング誤差信号の対称性のずれは、24%になる。
一方、この実施形態8の場合、開口中央と両端の領域の幅を、対物レンズの半径の0.1であるとすると、トラック間隔Tp=1.6μmのピット列に対して、対物レンズシフト500μmで発生するトラッキング誤差信号の対称性のずれは46%、ラジアルチルト1.0度で発生するトラッキング誤差信号の対称性のずれは12%になる。対物レンズシフト500μmで発生するトラッキング誤差信号の対称性のずれは、従来例に対し13%減、ラジアルチルト1.0度で発生するトラッキング誤差信号の対称性のずれは50%減となり、大幅に減少する。このためトラッキング制御の安定化が実現でき、外乱等に強くなり、情報再生時等の誤り率が低下する。
また、単純2分割では、情報再生信号の振幅が最大となるフォーカス位置と、トラッキング誤差信号の振幅が最大となるフォーカス位置の差が1.5〜1.0μmであったものが、この実施形態では、1.0〜0.5μmとなり減少する。このため、やはり安定したトラッキング制御を実現しつつ情報再生時の誤り率を低く保つことができる。
なお、この実施形態8では、分割手段として偏光異方性ホログラム素子を用いて説明したが、通常の偏光異方性のないホログラム素子を用いても同様の効果を得ることができる。
なお、この実施形態8では分割手段としての偏光異方性ホログラム素子は、対物レンズと一体化して駆動される構成としたが、分割手段は集光光学系から光検出器の光路中のどこに配置してもよい。この場合、光ディスクのトラックの偏芯等に追従して対物レンズが移動するにつれ、分割手段と対物レンズの開口の位置関係が移動するが、この実施形態8で示したホログラム素子のパターンを用いればこの移動によるトラッキング誤差信号の劣化を抑えることができる。
(実施形態9)
この実施形態9の光ヘッド装置の光学系の概略図は図25に示すものであり、構成、動作については、実施形態8と同様であるので、説明は省略する。但し、分割手段としての偏光異方性ホログラム素子121の代わりに、図27に示した偏光異方性ホログラム素子123を用いる。
この実施形態9では、トラッキング誤差信号の対称性のずれを補正する方法について示す。
偏光異方性ホログラム素子123は、図27に示すとおりとする。開口を半径1の円とし、開口の中央を通りトラックに平行な分割線を中心に幅約0.6の範囲の領域を交互に振り分け、斜線付きの領域に入る光量と斜線なしの領域に入る光量の差をトラッキング誤差信号とする。図27では開口の中央の4領域を振り分けている。
開口数NA=0.5、光の波長λ=0.795μm、対物レンズの直径=4mmとし、ラジアル方向の光量分布は、中央に対して対物レンズ端で10%の強度であると仮定する。振り分けを行わない従来の例では、トラック間隔Tp=1.6μmのピット列に対して、対物レンズシフト500μmで発生する、トラッキング誤差信号の対称性のずれは53%、ラジアルチルト1.0度で発生するトラッキング誤差信号の対称性のずれは24%になる。
一方、この実施形態9の別の一例では、開口中央部の交互に配置する領域を、0.2mm幅の領域6本からなる、1.2mmの幅にあたる領域とすると仮定する。対物レンズシフト500μmで、発生するトラッキング誤差信号の対称性のずれは45%、ラジアルチルト1.0度で発生するトラッキング誤差信号の対称性のずれは14%になる。対物レンズシフト500μmで発生するトラッキング誤差信号の対称性のずれ量は、従来例の約15%減、ラジアルチルト1.0度で発生するトラッキング誤差信号の対称性のずれ量は約42%減であり、大幅に減少する。
対物レンズシフトに関しては、実施形態8の例よりやや効果は大きい。このようにトラッキング制御の安定化が実現でき、外乱に強くなるため、情報再生時等の誤り率が低下する。
なお、この実施形態9では、分割手段として偏光異方性ホログラム素子を用いて説明したが、通常の偏光異方性のないホログラム素子を用いても同様の効果を得ることができる。
なお、ここに示した実施形態1から9の説明では、情報記憶媒体として光ディスクを想定したが、光カード等でも同様の効果を得られる。
また、ここに示した実施形態1から9の説明では、集光光学系として、コリメータレンズと対物レンズを用いた無限系の構成としたが、コリメータレンズを省き、対物レンズのみでコリメータレンズの役割を持たせた有限系の構成としても、本発明の効果を損なうものではない。
(実施形態10)
図28は、本発明の傾き検出装置の一例を示す構成図である。光源としての半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散ビーム70は、コリメータレンズ103で平行光に変換された後、ビーム分岐素子としての偏光ビームスプリッタ130に入射する。偏光ビームスプリッタ130に入射したビーム70は全て偏光ビームスプリッタ130を透過した後、1/4波長板122を透過して円偏光のビームに変換され、集光光学系としての対物レンズ104で情報記憶媒体105上に集光される。情報記憶媒体105で反射、回折されたビーム70は、再び対物レンズ104を透過した後、1/4波長板122を透過して光源101から出射したときとは90度異なる方向の直線偏光のビームに変換される。1/4波長板122を透過したビーム70は、偏光ビームスプリッタ130で全て反射された後、ビームスプリッタ132に入射する。ビームスプリッタ132に入射したビーム70は2つのビーム70A、70Bに分割され、ビーム70Bは光検出器159で受光される。一方、ビーム70Aは、検出レンズ133で収束ビームに変換される。検出レンズ133で変換された収束ビーム70Aは、平行平板134を透過した後、光検出器158で受光される。ビーム70Aが平行平板134を透過する際、フォーカス誤差信号を検出するための非点収差がビーム70Aに対して付与される。光検出器158で受光されたビーム70Aと、光検出器159で受光されたビーム70Bとは、それぞれその光量に応じた電気信号に変換される。光検出器158および159から出力される電気信号は、図29の信号処理部700に入力される。
図29は、信号処理部700の構成を示している。光検出器158は4つの受光部158A〜158Dを有し、光検出器159は2つの受光部159A〜159Bを有している。受光部158Aと受光部158Cから出力される信号は電流電圧変換部854で電流電圧変換され、受光部158Bと受光部158Dから出力される信号は電流電圧変換部853で電流電圧変換され、受光部159Aから出力される信号は電流電圧変換部852で電流電圧変換され、受光部159Bから出力される信号は電流電圧変換部851で電流電圧変換される。電流電圧変換部853、854から出力される信号は演算部874で差動演算がなされる。演算部874から出力される信号は端子811から出力され、出力された信号は、フォーカス誤差信号となる。
一方、電流電圧変換部851および852から出力される信号については、演算部871で差動演算が行われる。演算部871から出力される信号は端子812から出力され、出力された信号はトラッキング誤差信号となる。このフォーカス誤差信号の検出方式は非点収差法と呼ばれ、トラッキング誤差信号の検出方式はプッシュプル法と呼ばれる公知の技術なので、詳細な説明は略する。
フォーカス誤差信号およびトラッキング誤差信号は、それぞれ焦点制御用の駆動部とトラッキング制御用の駆動部としてのアクチュエータ107に加えられる。光源101から出射されたビーム70が、情報記憶媒体105上の所望の位置に焦点を結ぶように情報記憶媒体105と光学系の相対的な位置を制御する。
電流電圧変換部851および852から出力される信号は、さらに加算部891で加算もされる。加算部891から出力される信号はサンプルアンドホールド部821および822に入力される。サンプルアンドホールド部821および822では、トリガー信号生成部801で生成される信号Sa1およびSa2のタイミングで、サンプリングと保持とがなされる。サンプルアンドホールド部821および822から出力される信号は、演算部872で差動演算がなされた後、端子813から出力され、傾き検出信号となる。
図30は、情報記憶媒体105上のパターンとトリガー信号生成部801で生成されるタイミング信号が有するタイミングとの関係を示している。図30において、xは情報を記録するトラックと直交する方向を表し、yは情報を記録するトラックと平行な方向を表し、zはxおよびyにそれぞれ直交する方向を表している。
情報記憶媒体105上には、マークおよびスペースからなる第1のパターン領域と、案内溝からなる第2のパターン領域とを有しており、第1のパターン領域と第2のパターン領域はy方向に交互に配置されている。第2のパターン領域において、Gn−1、Gn、およびGn+1は、それぞれ案内溝を示している。
Gpは、隣接する案内溝の間隔である。データは、第2のパターン領域の案内溝上もしくは案内溝間に記録される。Tn−2、・・・Tn+2は情報を記録するトラックを示している。情報記憶媒体105に記録できる容量を増大するために、情報は、案内溝上だけではなく案内溝間にも記録することができる。隣り合うトラックの間隔をtpとすると、間隔Gpおよびtpは、Gp=2・tpの関係がある。ここでは、Gp=1.48μm、光源101から出射されるビーム70が有する波長λ=650nm、対物レンズ104の開口数NA=0.6とする。
第1のパターン領域には、案内溝の中心位置とはx方向に±Gp/4だけ異なる位置にマーク541および542が形成されている。トリガー信号生成部801で生成されるタイミング信号が有するタイミングSa1およびSa2は、それぞれ第1のパターン領域に形成されたマーク541および542の位置に対応している。トラッキング誤差信号は、対物レンズ104で集光されたビーム70が第2のパターン領域を照射するときに光検出器159から得られる信号を用いて生成される。端子812から出力される信号をトラッキング誤差信号としたとき、対物レンズ104で集光されるビーム70と情報記憶媒体105とのなす角度が傾くと、その傾き角に依存して、端子813から出力される信号が変化する。
図31aは、図30のトラックの一部を模式的に示した図である。図31aのAおよびBは、集光されるビームの軌跡を指している。集光されるビームが軌跡Aを通る場合、図29の加算部891の出力される信号の波形を図31bに示し、図29の演算部872の出力される信号の波形を図31cに示す。また、集光されるビームが軌跡Bを通る場合、図29の加算部891の出力される信号の波形を図31dに示し、図29の演算部872の出力される信号の波形を図31eに示す。
図31bでは、タイミングSa1とタイミングSa2での加算部891からの出力信号の値が等しいため、図31cに示したように、タイミングSa2後の演算部872の出力信号は0になる。一方、図31dでは、タイミングSa1とタイミングSa2での加算部891からの出力信号の値が異なるため、図31eに示したように、タイミングSa2後の演算部872の出力信号の値が0とは異なる。
図32は、対物レンズ104で集光されるビーム70と情報記憶媒体105とがなす角度の傾きと端子813から得られる傾き検出信号の関係を、Gpが1.48μmと0.83μmのときの場合について示している。図32において、傾き0は対物レンズ104で集光されるビーム70の光軸がz方向と平行なとき、すなわち対物レンズ104で集光されるビーム70の光軸が情報記憶媒体105と直交する状態に相当する。
Gpが1.48μmと0.83μmのいずれの場合も傾き角度が1度以下の範囲で傾き信号が検出可能であり、従来の傾き検出装置の5倍以上の感度を有する。これは、本発明の傾き検出装置が情報記憶媒体105におけるパターンおよび案内溝で回折されるビームの位相が変化することを原理としているためである。Gpが1.48μmのときの検出感度は、Gpが0.83μmのときの検出感度よりも、高くなっている。これは、本発明の原理が情報記憶媒体105におけるパターンおよび案内溝で回折されるビームの±1次回折光が重なることによって、検出感度が増大することに起因している。±1次回折光が重なる条件は、NA>λ/Gpの関係で表される。すなわち、光学系がNA>λ/Gpの関係を有しているとき、傾きの検出感度は高くなる。
本発明の傾き検出装置を用いることにより、従来の傾き検出装置よりも精度よく情報記憶媒体と集光光学系で集光されるビームとがなす角度の傾きを検出することができる。また、トラッキング誤差信号を検出する光検出器を用いて傾き検出を行うことができ、すなわち傾きを検出するために検知器として新規の部品を設ける必要がなく、安価で小型な傾き検出装置となる。
また、本実施形態では、端子812から出力される信号をトラッキング誤差信号と、端子813から出力される信号とを傾き検出信号としたが、端子813から出力される信号をトラッキング誤差信号と、端子812から出力される信号とを傾き検出信号とすることも可能である。特に、情報記憶媒体105と対物レンズ104で集光されるビーム70とが傾く場合でもこの傾きを補正する駆動部を設けない光ヘッド装置では、端子813から出力される信号をトラッキング誤差信号とすることにより、対物レンズ104で集光されるビーム70と情報記憶媒体105とが傾いた場合でも、案内溝の位置とトラックの位置のずれが小さく、複数の異なる光ヘッド装置および情報記憶媒体を用いる場合の互換性が高くなる。
傾き検出信号は、図28に示すように光学系を駆動する駆動部135の制御信号とし、情報記憶媒体105と対物レンズ104で集光されるビーム70とが所望の角度となるように制御すれば、そりの多い情報記憶媒体105からも安定に情報を読み出すことが可能な光ヘッド装置が実現できる。また、傾き検出信号に応じて、情報記憶媒体105に情報を記録する際のビームの強度を制御することにより、そりが多い情報記憶媒体であっても、良好に情報を記録することが可能となる。
なお、ここでは、フォーカス誤差信号およびトラッキング誤差信号を検出する光検出器158と傾き検出信号を得る光検出器159を別々に構成した実施形態を示したが、図44に示す光学系も全く問題なく用いることができる。
(実施形態11)
本発明の別の実施形態である傾き検出装置における信号処理部701の構成を図33に示す。信号処理部701は、例えば実施形態10の図29で示した信号処理部700の代わりに用いることにより傾き検出装置を構成することができる。信号処理部701が信号処理部700と異なる点は、サンプルアンドホールド部823と可変利得増幅部831と演算部873とを設けていることおよびトリガー信号生成部812から出力されるタイミング信号である。サンプルアンドホールド部823は、トリガー信号生成部812から出力されるSa3のタイミングを有するタイミング信号でサンプルアンドホールド動作を行う。Sa3のタイミングは、図30に示すように、情報記憶媒体105の第1のパターン領域におけるスペースに相当する位置である。サンプルアンドホールド部823でサンプリングされる信号は、例えば後述する図35に示すようなトラッキング制御のために対物レンズを駆動する光学系において、対物レンズが移動したときにトラッキング誤差信号に生ずるオフセットに比例する信号である。例えば、サンプルアンドホールド部から出力される信号は、可変利得増幅部831に入力され、入力された信号は所望のレベルに調整される。可変利得増幅部831から出力される信号は、演算部873で、演算部871から出力される信号と差動演算がなされる。演算部873から出力される信号は端子812から出力される。演算部873で可変利得増幅部831から出力される信号と演算部871から出力される信号を差動演算することにより、トラッキング制御によって、対物レンズが移動しても、トラッキング誤差信号に発生するオフセットは取り除かれるので、安定したトラッキング動作を行うことができ、正確に傾き信号を検出することが可能となる。
(実施形態12)
本発明の別の実施形態である傾き検出装置における情報記憶媒体の構成を図34に示し、信号処理部702の構成を図35に示す。本発明の実施形態に示す情報記憶媒体の構成が実施形態10で示した情報記憶媒体の構成と異なる点は、第1のパターン領域におけるマーク541、542をそれぞれ複数設けていることである。信号処理部702におけるサンプルアンドホールド部824〜827が加算部891から出力される信号をサンプリングするタイミングは、それぞれSa4〜Sa7であり、これはそれぞれマーク541、542およびマーク間の鏡面部に相当する。サンプリングのタイミングを有する信号は、トリガー信号生成部803で生成される。サンプルアンドホールド部824、825から出力される信号は演算部875で、サンプルアンドホールド部826、827から出力される信号は演算部876でそれぞれ差動演算される。演算部875、876から出力される信号は、演算部872で差動演算される。演算部872から出力される信号は、端子813から出力され、傾き検出信号となる。
本実施形態に示す情報記憶媒体を用いた傾き検出装置は、実施形態10に示す傾き検出装置よりも、高い感度で傾き信号を得ることができる。
(実施形態13)
図36は、本発明の光ヘッド装置の一例を示す構成図である。光源としての半導体レーザ101は、波長λが650nmのビーム70を発する。半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散ビーム70は、コリメータレンズ103で平行光に変換された後、ビーム分岐素子としてのビームスプリッタ136に入射する。ビームスプリッタ136は、入射するビームの偏光方向に光学特性が依存しないハーフミラーである。ビームスプリッタ136に入射したビーム70は、1/2の強度のビームがビームスプリッタ136を透過する。ビームスプリッタ136を透過したビーム70は、偏光フィルタ137に入射する。
図37は、偏光フィルタ137の構成を示している。偏光フィルタ137は2つの領域137A、137Bからなる。領域137Aは、x方向に偏光したビームは100%透過させるが、y方向に偏光したビームは全く透過させない特性を有する。領域137Bは、x方向に偏光したビームもy方向に偏光したビームも100%透過させる特性を有する。ここで、x方向は、情報記憶媒体105の半径方向であり、情報を記録するトラックと直交する方向である。y方向は、情報記憶媒体105の情報を記録するトラックと平行な方向であり、情報記憶媒体105の半径方向と直交する。z方向は、情報記憶媒体105の半径方向にもトラック方向にも直交する方向であり、ビーム70の光軸と平行な方向である。図37において、70Rは対物レンズ104の開口の写像である。70Sは領域137Bの大きさを表している。70Sは70Rよりも小さく、y方向に偏光したビームに対する対物レンズ104の実効的な開口数NAは小さくなる。ここでは、x方向に偏光したビームに対する対物レンズ104の実効的な開口数NAを0.6、y方向に偏光したビームに対する対物レンズ104の実効的な開口数NAを0.4としている。対物レンズ104の実効的な開口数が0.6であるビームが第1のビーム、対物レンズ104の実効的な開口数が0.4であるビームが第2のビームである。x方向およびy方向に偏光するビームは、半導体レーザ101にTEとTMの両モードで発振するレーザを用いてもよいし、TEもしくはTMの一方のモードでしか発振しないレーザの場合には、光源101の偏光方向をx方向もしくはy方向から少しずらして配置すれば実現できる。勿論、光源101から出射したビームを波長板に入射させ、円もしくは楕円偏光のビームとしてもよい。本実施形態では、半導体レーザ101の偏光方向をx方向から少しずらして配置している。
偏光フィルタ137を透過したビーム70は、集光光学系としての対物レンズ104に入射し、対物レンズ104に入射したビーム70は、情報記憶媒体105上に集光される。情報記憶媒体105で反射、回折されたビーム70は、再び対物レンズ104を透過した後、偏光フィルタ137を透過する。偏光フィルタ137を透過したビーム70はビームスプリッタ136に入射し、1/2の強度のビームがビームスプリッタ136で反射される。ビームスプリッタ136で反射されたビーム70は、偏光ビームスプリッタ130に入射する。偏光ビームスプリッタ130は、x方向に偏光したビームをほぼ100%透過させ、y方向に偏光したビームをほぼ100%反射させる特性を有している。偏光ビームスプリッタ130に入射したビーム70は、第1のビームは偏光ビームスプリッタ130を透過してビーム70Aとなり、第2のビームは偏光ビームスプリッタ130で反射してビーム70Bとなる。ビーム70Bは光検出器159で受光される。一方、ビーム70Aは、検出レンズ133で収束ビームに変換される。検出レンズ133で変換された収束ビーム70は、平行平板134を透過した後、光検出器158で受光される。ビーム70Aが平行平板134を透過する際、フォーカス誤差信号を検出可能にするための非点収差がビーム70Aに対して付与される。光検出器158で受光されたビーム70A、光検出器159で受光されたビーム70Bは、それぞれの光量に応じた電気信号に変換される。光検出器158、159から出力される電気信号は、信号処理部704に入力される。
図38は信号処理部704の構成を示している。光検出器158は4つの受光部158A〜158D、光検出器159は2つの受光部159A〜159Bからなる。受光部158Aと受光部158Cから出力される信号は電流電圧変換部854で、受光部158Bと受光部158Dから出力される信号は電流電圧変換部853で、受光部159Aから出力される信号は電流電圧変換部852で、受光部159Bから出力される信号は電流電圧変換部851で、それぞれ電流電圧変換される。電流電圧変換部853、854から出力される信号は演算部872で差動演算がなされる。演算部872から出力される信号は端子812から出力され、フォーカス誤差信号となる。一方、電流電圧変換部851、852から出力される信号は演算部871で差動演算がなされる。演算部871から出力される信号は端子811から出力され、トラッキング誤差信号となる。フォーカス誤差信号およびトラッキング誤差信号はそれぞれ焦点制御用の駆動部とトラッキング制御用の駆動部としてのアクチュエータ107に加えられ、光源101から出射されたビーム70が情報記憶媒体105上の所望の位置に焦点を結ぶように情報記憶媒体105と光学系の相対的な位置を制御する。
情報記憶媒体105に記録された情報は、電流電圧変換部853、854から出力される信号を加算することにより得られる。
情報記憶媒体105上には、トラッキング誤差信号を検出可能にする案内溝が形成されており、その周期Gpは1.48μmである。本発明の光ヘッド装置においては、情報記憶媒体105上に記録された情報を読み出す第1のビームに対する対物レンズ104の実効的な開口数NAを0.6、トラッキング誤差信号を検出する第2のビームに対する対物レンズ104の実効的な開口数NAを0.4とすることにより、対物レンズ104で集光されるビーム70と情報記憶媒体105とが正規の角度から傾いても、トラッキング誤差信号に位相シフトはほとんど発生しない。したがって、オフトラックもほとんど発生しない。本発明の光ヘッド装置を適用することにより、異なる光ヘッド装置や情報記憶媒体に対して互換性を高めることができる。対物レンズ104で集光されたビーム70と情報記憶媒体105が正規の角度から傾いたときにトラッキング誤差信号に位相シフトが生じる現象は、Gp>λ/NAの関係を有しているとき顕著となる。したがって、本発明の光ヘッド装置では、トラッキング誤差信号を検出する第2のビームに対する対物レンズ104の実効的な開口数NAに、Gp<λ/NAの関係を持たせることにより、良好なトラッキング誤差信号が得られるようにしている。
本発明の光ヘッド装置では、対物レンズ104の開口数NAが実効的に異なる2つのビームを、偏光の違いを利用することにより、如何なる条件でも全く同一の光軸を有するように生成している。したがって、本発明の光ヘッド装置では、2つのビームを情報記憶媒体105に照射するが、従来の光ヘッド装置と比較して光ヘッド装置を組み立てる際の調整は複雑にならない。
なお、本発明の光ヘッド装置は、フォーカス誤差信号の検出方法に何等制約を受けないので、例えば、第2のビームを用いてフォーカス誤差信号を検出してもよい。そのときには、非点収差等、フォーカス誤差信号を検出可能にする波面を第2のビームに付与すればよい。このとき、第2のビームは第1のビームよりも対物レンズ21の実効的な開口数NAが小さいため、波面収差も小さくなる。したがって、第2のビームを用いてフォーカス誤差信号を検出する場合、第1のビームを用いてフォーカス誤差信号を検出する場合よりも、対物レンズ43で集光されたビームが情報記憶媒体43上のトラックを横断するときにフォーカス誤差信号に混入するノイズが少なくなるので、より安定したフォーカス制御が実現できる。
また、本実施形態では、ビームスプリッタ136をハーフミラーとしたが、本発明の光ヘッド装置は、ビームスプリッタ136の反射率および透過率の特性に影響を受けないので、例えば、透過率を70〜90%、反射率を30〜10%としてもよい。ビームスプリッタ136がハーフミラーの場合、光検出器158および159から出力される信号が最大となるので、再生専用の光ヘッド装置に適する。一方、ビームスプリッタ136の透過率を70〜90%とした場合には、半導体レーザ101から情報記憶媒体105に向かう往路の光量が増加するので、記録再生用の光ヘッド装置に適する。
また、本実施形態では、トラッキング誤差信号を検出可能にするパターンとして情報記憶媒体105上に連続した案内溝を形成しているが、トラッキング誤差信号を検出可能にするパターンとして、離散的なマークもしくは案内溝を形成してもよい。離散的なマークもしくは案内溝を形成した情報記憶媒体の場合は、信号処理部704の演算部871の入力側にサンプルアンドホールド部を設ければよい。
(実施形態14)
本発明の別の実施形態である光ヘッド装置の構成を図39に示す。本実施形態では、フォーカスおよびトラッキング制御は、駆動部としてのアクチュエータで対物レンズ104を駆動することにより行う。107はフォーカス制御用およびトラッキング制御用のアクチュエータである。さらに、対物レンズ104と偏光フィルタ137は一体にしてアクチュエータ107で駆動している。情報記憶媒体105で反射、回折された後ビームスプリッタ136で反射されたビーム70は、検出レンズ133で集光される。検出レンズ133で収束性のビームに変換されたビーム70は、ホログラム素子138に入射する。ホログラム素子138からは0次回折光70Cと2つの1次回折光70D、70Eが生成され、各ビーム70C〜70Eは光検出器160で受光される。
図40は、ホログラム素子138に形成されたパターンを模式的に示している。ホログラム素子138には、軸はずれのフレネルゾーンプレートがパターンとして形成されている。対物レンズ104で集光されたビーム70が情報記憶媒体105上で焦点を結ぶとき、ホログラム素子138から生成される1次回折光70Dは光検出器160よりも手前側に、1次回折光70Eは光検出器160よりも奥側に焦点を持つ。また、ホログラム素子138は回折効率に偏光依存性を有しており、x方向に偏光したビームに対しては、0次回折光の回折効率は0%、±1次回折光の回折効率はそれぞれ40%、y方向に偏光したビームに対しては、0次回折光の回折効率は100%、±1次回折光の回折効率は0%となるように設計している。ホログラム素子138上のパターンは、ニオブ酸リチウムをプロトン交換することにより作製している。
図41は、光検出器160が有する受光部とビーム70C〜70Eの関係を示している。光検出器160は受光部160A〜160Hを有している。ビーム70Cは受光部160A〜160Bで、ビーム70Dは受光部160C〜160Eで、ビーム70Eは受光部160F〜160Hでそれぞれ受光される。本実施形態の光ヘッド装置において、信号処理部は実施形態13で示した信号処理部704をそのまま用いることができる。受光部160Aから出力される信号を電流電圧変換部852に、受光部160Bから出力される信号を電流電圧変換部851に、受光部160D、160F、160Hから出力される信号を電流電圧変換部854に、受光部160C、160E、160Gから出力される信号を電流電圧変換部853にそれぞれ入力すればよい。本実施形態に示すフォーカス誤差信号の検出方法は、スポットサイズディテクション法と呼ばれる方法で、この方法も非点収差法と同様によく知られている。
本発明の実施形態では、対物レンズ104と偏光フィルタ137を一体にしてアクチュエータで駆動することにより、対物レンズ104の中心と偏光フィルタ137の中心とを常に一致させることができる。このとき、第2のビームは収差の少ない状態で情報記憶媒体105上に集光され、対物レンズ104で集光されるビーム70と情報記憶媒体105に傾きが生じても、位相シフトやオフセットが少ないトラッキング誤差信号を得ることができる。
また、ホログラム素子138を用いることにより、フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号および情報記憶媒体105に記録された情報信号を1つの光検出器160から検出することができ、安価な光ヘッド装置となる。