JP2005283412A - 炉心構造材の評価方法 - Google Patents
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Abstract
この炉心構造材の異常を破損前に破損前に検出し、原子炉信頼性を向上させた炉心構造材の評価方法を得る。
【解決手段】炉心構造材2から炉水中に溶出した成分から生成され、炉水中に存在する生成起源の異なる放射性生成物の放射線を測定し、測定した放射線の値から放射線生成物の比率の経時的変化を検出することによって、炉心構造材2からのジルコニウム(Zr)溶出量の変化を監視する
【選択図】図1
Description
原子炉における燃料棒において、酸化ウランペレットが封入された燃料被覆管は冷却材の圧力や流体力学的応力、炉水による腐食作用を受けたり、または異物による機械的な摩擦などを受けたりする。
一般に、燃料被覆管が破損し、健全性が損なわれる主な原因としては、化学的因子と機械的因子とがある。
一方、機械的因子としては、定検時に炉心に持ち込まれた異物が炉心制御棒のパターン変更に伴った冷却材流量変化等によって燃料集合体構造部分に移動し、この異物と燃料被覆管の機械的作用(フレッティング)によって燃料被覆管に破損を生じることが知られている。
これらの放射性元素の濃度及び同位体組成は燃料被覆管が健全な原子炉の通常運転時にはほぼ一定の値を示す。
燃料被覆管の破損有無の評価方法については前記非特許文献2、3以外にも多数の報告が公開されているが、これらに示されるものは、いずれも炉水中のヨウ素同位体もしくはオフガス中のKr、Xeの放射能強度比から推定する方法である。
すなわち、核種の壊変定数λ(0.693/半減期)が小さいほどその強度も小さくなる。
しかし、炉水中の放射性核種濃度測定は、プラントの運転状態、サンプリングおよび測定条件によって変動するため濃度測定値の再現精度は低い。
さらに、燃料被覆管表面に付着した燃料成分が多いプラントでは、核分裂により生成されるZrのバックグラウンド上昇によってNbの検出が困難になる。
図1は原子炉の燃料棒の一部を概略的に示す図で、図1(a)において、1は燃料棒のぺレット、2は前記ペレット1が封入された燃料被覆管で、このペレット1と燃料被覆管2とで原子炉燃料棒3を構成している。
前記燃料被覆管2はZrを主成分とする合金であるジルカロイによって形成され、その成分中にNb、Feが添加されている。
ZrやNbなども同時に核分裂により生成されるため、通常は測定対象とされていないものの、炉水中にヨウ素等の核分裂生成物と共に存在している。
一方、燃料被覆管2はZrを主成分とする合金でNbや鉄(Fe)が添加されているため、炉心でこれらの燃料被覆管材料成分(以下単に被覆管材と称する)が中性子によって放射化されると、その一部が同位体となって炉水中に溶出される。
これら3つの放射性核種の特徴を表1に示す。実際の炉水中の放射能測定では表1に示すようにZrまたはNbとこれら放射平衡にあるZr-Nbのγ線を測定する。
また、被覆管材の炉水への溶出が無い場合のZrの放射能強度については図4に示すように炉心での元素の滞在時間(日)によって変化する。
被覆管材だけの場合のZrの放射能強度は図6に示すように、図5のNbとほぼ同様に変化しほぼ一定値を示す。
核分裂成分だけの場合にはZr-95/Zr-97、及びNb-95/Nb-97の比率はほぼ0.1前後、核分裂による成分が1/2寄与している場合には、この比率は約0.4になる。
実際のプラントではこれらの値はそれぞれ固有の値を示し、ほぼ一定値となるが、被覆管2に破損などの異常が生じた場合にはこれらの値が被覆管材成分増加の方向に変動する。
また、被覆管材からの寄与が大きくなるにしたがってZr-95とZr-97の値がNb-98mに対し大きい値に変化する。
このように同一元素であっても同位体の生成起源は異なっている特徴がある。
しかしながら、核分裂起源によって生成したZrは炉水中に放出され一部は沸騰現象によって被覆管表面に付着し、また炉水に脱離して徐々に炉水浄化系で除去される。
一方、不揮発性であるヨウ素の親核種であるテルル(Te)の炉心中性子照射領域の滞在時間は約140時間である。
前記のようにZr-Nbの滞在時間も同様とすれば、核分裂起源のZr-Nbは炉心滞在時間の違いによって図3及び図4のように変化する。
一方、被覆管材の放射化起源の同位体組成は被覆管材自身が長期間炉心に滞在し中性子照射を受けているため、Zr成分の放射能は図5及び図6に示すようにほぼ平衡状態にあり、核分裂起源と被覆管材料の放射化起源のZr-Nb成分は炉水中で明らかに同位体組成の違いを有していることがわかる。
被覆管材の放射化起源によるNbの生成ではNb-95とNb-97だけの生成でNb-98mは生成されないのが特徴である。
図5及び6に示すように被覆管材の放射化起源によるZr-Nbの放射能強度は、被覆管材自体が炉心に長期間装荷されているため、これらの放射能強度はほぼ一定となる。
すなわち、核分裂により生成し炉水中に存在するNb-98m、Nb-97、Nb-95の放射能強度比率は1:50:5程度の比になり、これらの同位体比率は通常プラント毎に異なっている。
すなわち、通常運転時の炉水中でのZr、Nb同位体の組成は核分裂起源による成分と放射化起源による成分が一定値を示す。
このように、核分裂起源と放射化起源のZr-Nbは同位体組成比率が異なることに着目して、炉水中に存在するZrとNbを定常的に測定し、この同位体比率の変動から被覆管材のZrの状態を評価することにより、燃料被覆管に破損が生じる前に破損に至る兆候を把握することができる。
本実施の形態では、図3と図5に示す核分裂起源のNb-98mと、材料の放射化起源および核分裂起源のNb-97との比率を定常的に測定することによって、その変動から被覆管材の炉水中への溶出率変化を把握し、異常の兆候を被覆管破損が起こる前に検出するものである。
また、核分裂起源のみにより生成するNb-98mとの比率を評価しているために精度の高い評価が可能である。
本実施の形態では、図3と図5に示す核分裂起源のNb-98mと材料および核分裂起源のNb-95との比率を定常的に測定することによって、その変動から被覆管材の炉水中への溶出率変化を把握し被覆管破損が起こる前に異常を検出するものである。
しかしながら、Nb-95は半減期が長いためにZrからの壊変による影響が小さく試料採取から測定までの時間に生じるZrの壊変による影響が小さく、精度の高い評価が可能になる。
本実施の形態では、図4と図6に示す燃料被覆管2中の不純物ウランと被覆管材の放射化起源とする2成分から構成されるZr-95とZr-97との放射能強度比率の変動を測定することにより、被覆管材からのZr同位体の溶出量の変化を直接測定する。
また、Zr同位体の測定であることから炉内での化学的影響が無く直接Zrの状態を評価できる。
本実施の形態では、図3と図5に示す被覆管2中の不純物ウランと被覆管材による放射化起源とする2成分から構成されるNb-95とNb-97との放射能強度比の変動を測定することにより、被覆管材からのZrの放出量の変化を評価する。
Zr成分が溶出し、元素イオンまたは酸化物等の化合物として存在する場合には、燃料被覆管2からの溶出や被覆管材中の不純物ウランの核分裂起源により生成した成分である可能性が高い。
通常の炉水中にはステンレス鋼から溶出した鉄と共にCo-60、Co-58、Mn-54等の放射性核種が大量に存在している。
また、測定対象となるZrとNbは半減期がこれらの妨害核種に比べ短いために迅速な化学分離操作が必要になる。
ZrとNbは弗化水素酸の濃度が8M程度では100:1の割合で陰イオン交換樹脂に吸着するが、妨害となるFe、Mn、Co等のほとんどの元素は陰イオン交換樹脂に吸着されない。
本実施の形態では、被覆管材から溶出されたZr成分がどのような機構で供給されたかを判定する方法である。
一般的な原子炉炉水中に存在するZr成分はジルカロイの化学的な溶出によって放出された成分が主要と考えられる。
この削り取られた金属成分が炉水中に移行した場合には粒子状で存在する可能性が高い。
本実施の形態においては、同位体の比率と、炉水中でのZrの化学状態について、炉水クラッド成分を始めに塩酸または塩酸を含む硝酸に溶解し、濾過によりCo、Mn及び溶解性のZr成分を分離した後、粒子状の塩酸もしくは硝酸に不溶解のZr成分と溶解性のZr成分の両者を簡易に分離測定する。
このような異物の供給は炉心のパターン変更に伴って生じる流量の変化によることが多いので、制御棒パターンの再変更を行いZr成分の変化を測定する。
また、熱流動解析による流量変化評価を行い、流量変化が大きくなる個所を把握する。この方法によりパターン変更により供給された異物の場所を特定する。
本実施の形態においては、測定されるZr-Nb同位体比率のうち、粒子状の炉水に不溶解性成分として存在するZr成分、または溶解性のZr成分及び全Zr中の同位体比率の経時的変化を制御棒パターン変更後に集中的に監視することを特徴とする。
このため、制御棒変更後に重点的に測定することによって、その異常をすばやく検出することが可能になる。
この制御棒パターン変更後の集中的測定によって、迅速かつ高感度で炉水中のZr-Nb濃度変動の有無を把握することができる。
本実施の形態においては、燃料被覆管2に異常が認められ、その後、定検時の燃料検査によって異常が生じた燃料棒3を含む燃料集合体5が特定された場合に、この燃料集合体5を次の運転サイクル時に装荷する位置を炉心周辺部に優先的に配置する。
このため、異常が検出された燃料集合体5を次の運転サイクルで優先的に冷却材流量及び出力が炉心中央部に比べ低い炉心周辺部に配置する。
Claims (10)
- 炉心構造材から炉水中に溶出した成分から生成され、炉水中に存在する生成起源の異なる放射性生成物の放射線を測定し、測定した放射線の値から放射線生成物の比率の経時的変化を検出することによって、炉心構造材からのジルコニウム溶出量の変化を監視することを特徴とする炉心構造材の評価方法。
- 前記炉心構造材中の不純物ウランによる核分裂起源によって生成されるニオブ-98m同位体と、前記炉心構造材の放射化起源および前記炉心構造材中の不純物ウランによる核分裂起源によって生成されるニオブ-97同位体との比率の経時的変化を検出することによって、前記炉心構造材からのジルコニウム溶出量の変化を監視することを特徴とする請求項1記載の炉心構造材の評価方法。
- 前記炉心構造材の放射化起源および前記炉心構造材中の不純物ウランによる核分裂起源によって生成されるジルコニウム-95同位体とジルコニウム-97同位体との比率の経時的変化を検出することによって、前記炉心構造材からのジルコニウム溶出量の変化を監視することを特徴とする請求項1記載の炉心構造材の評価方法。
- 前記炉心構造材中の不純物ウランによる核分裂起源によって生成されるニオブ-98m同位体と、前記炉心構造材の放射化起源および前記炉心構造材中の不純物ウランによる核分裂起源によって生成されるニオブ-95同位体との比率の経時的変化を検出することによって、前記炉心構造材からのジルコニウム溶出量の変化を監視することを特徴とする請求項1記載の炉心構造材の評価方法。
- 前記炉心構造材の放射化起源および前記炉心構造材中の不純物ウランによる核分裂起源によって生成されるニオブ-95同位体とニオブ-97同位体との比率の経時的変化を検出することによって、前記炉心構造材からのジルコニウム溶出量の変化を監視することを特徴とする請求項1記載の炉心構造材の評価方法。
- 炉水クラッド成分を塩酸または塩酸を含む硝酸に溶解する工程と、この溶液を濾過し、コバルト、マンガン及び溶解性のジルコニウム-ニオブ成分を分離する工程と、粒子状の塩酸もしくは硝酸に不溶解のジルコニウム-ニオブ成分と溶解性のジルコニウム-ニオブ成分とを分離する工程とを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の炉心構造材の評価方法。
- 鉄、コバルトおよびマンガンとジルコニウム-ニオブ成分とを含む炉水クラッド成分を弗化水素酸に溶解する工程と、この溶液をフィルター状陰イオン交換樹脂に通すことによって弗化水素酸に不溶解のジルコニウム-ニオブ成分と弗化水素酸に溶解したジルコニウム-ニオブ成分とを同時にイオン交換フィルターに捕集する工程と、ジルコニウム-ニオブ成分と鉄、コバルトおよびマンガンとを分離する工程とを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の炉心構造材の評価方法。
- 前記炉心構造材が異物による機械的作用によって炉水中に放出された微粒子状で、炉水に不溶解のジルコニウム-ニオブ成分と、炉水環境の変動で溶解等の化学的作用によって炉水中に溶出されたジルコニウム-ニオブ成分とを分離し測定することによって、前記炉心構造材からのジルコニウム-ニオブ成分の放出形態の変化を監視することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の炉心構造材の評価方法。
- 制御棒パターン変更後に、ジルコニウム-ニオブ成分比率のうち、粒子状で炉水に不溶解性成分として存在するジルコニウム-ニオブ成分、または溶解性のジルコニウム-ニオブ成分、および全ジルコニウム-ニオブ成分中の同位体比率の経時的変化を測定することにより、この変化を生じさせた燃料集合体を判定し、プラント運転方法への対処方法を決定することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の炉心構造材の評価方法。
- 前記燃料被覆管に異常が認められた燃料棒を含む燃料集合体を、次の運転サイクル開始時に装荷する位置を炉心周辺部に優先的に配置することを特徴とする請求項9記載の炉心構造材の評価方法。
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