次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る冷却装置1の構成について、図1〜図4を参照して具体的に説明する。
図1中、1は本実施形態に係る冷却装置を示し、Mはこの冷却装置1に接続したレーザ加工機等の被冷却物を示す。冷却装置1は、被冷却物Mに接続し、この被冷却物Mに対して冷却液Wを循環させることにより当該被冷却物Mを冷却することができる。冷却装置1は、冷却液Wを貯留する冷却液タンク2と、この冷却液タンク2に貯留する冷却液Wを被冷却物Mに供給する送液ポンプ3と、被冷却物Mから冷却液タンク2に戻される冷却液Wを熱交換により冷却するプレート形熱交換器等の冷却器4cを有する冷却部4と、この冷却器4cに接続した冷凍サイクル8と、冷却装置1の全体の制御を司る制御系9とを備えている。
この場合、冷却液タンク2は、冷却水等の冷却液Wを貯留するものであり、その他、図示を省略した給液口,ドレン口,液面計,ボールタップ等を備えている。また、冷却液タンク2と被冷却物M間には、図1に示すように、送水路に接続した液圧計21、液温センサ22、バイパスバルブ23、配管ジョイント24a,24b等を備えている。
一方、冷却部4は、冷却器4cとこの冷却器4cに接続した冷凍サイクル8を備える。これにより、冷却器4cでは、冷凍サイクル8の冷媒Kと冷却液Wとの熱交換が行われ、冷却液Wに対する冷却が行われる。冷凍サイクル8は、図1に示すように、主要機能部として、凝縮器25,冷媒ドライヤ26,電子膨張弁27,アキュムレータ28及びデジタル制御冷媒圧縮機7を備えており、冷却器4cの冷媒流入側に電子膨張弁27の冷媒流出側を接続し、冷却器4cの冷媒流出側にアキュムレータ28の冷媒流入側を接続する。これにより、矢印Fk方向に冷媒Kが循環する冷媒回路が構成される。なお、冷凍サイクル8の基本的な機能は公知の冷凍サイクルと同じである。
その他、図1に示す冷凍サイクル8において、31は低圧圧力スイッチ、32は低圧圧力ゲージ、33は吸入温度センサ、34は高圧圧力スイッチ、35は目詰まり警報用圧力スイッチ、36は高圧圧力ゲージ、37は凝縮器出口温度センサ、38はエバポレータ入口温度センサをそれぞれ示す。これらの各圧力スイッチ31…は、主に保護スイッチとして機能する。また、39は凝縮器25を空冷する凝縮器ファン、40はこの凝縮器ファン39に接続したインバータ、41は周囲温度センサをそれぞれ示す。
他方、デジタル制御冷媒圧縮機7は、図2〜図4に示すように、軌道スクロール12と固定スクロール13を有する冷媒圧縮部11を備えるとともに、固定スクロール13を軸方向Fcに変位させることによりロード状態(図2参照)又はアンロード状態(図3参照)に切換えるデジタル切換機構部6を備えている。なお、このような機能を備えるデジタル制御冷媒圧縮機7としては、特開平8−334094号公報で開示される「容量調整機構を備えたスクロール式機械」を利用できる。
次に、このようなデジタル切換機構部6を備えるデジタル制御冷媒圧縮機7の構成について、図2〜図4を参照して説明する。45は圧縮機本体を示す。この圧縮機本体45は、密閉されたケーシング46を備え、このケーシング46の下部には、回転軸5sを上方に突出させた圧縮機モータ5を内蔵する。また、圧縮機モータ5の上方には、冷媒圧縮部11とデジタル切換機構部6を配設する。この場合、圧縮機モータ5の上方空間は、隔壁48により上下の空間に仕切り、隔壁48の上側に吐出室Coを有するとともに、下側に吸入室Ciを有する。そして、ケーシング46の周面には、吐出室Coに臨む冷媒吐出口49を有するとともに、吸入室Ciに臨む冷媒吸入口50を有する。
さらに、吸入室Ciの内部には固定された支持盤51を配し、この支持盤51の上面に軌道スクロール12を載置するとともに、この軌道スクロール12の上に固定スクロール13を被せて冷媒圧縮部11を構成する。この場合、軌道スクロール12は、上面に螺旋翼12fを有し、かつ下面中央に被係合部52を有する。この被係合部52には、回転軸5sの上端偏心位置に有する係合部53が係合する。これにより、回転軸5sが回転すれば、軌道スクロール12は、軌道上を旋回する。他方、固定スクロール13は、支持盤51に起設した複数のガイドポスト54…により軸方向Fcへ変位自在に支持され、かつ軸方向Fcに対する直角方向への位置は固定される。また、固定スクロール13は、下面に螺旋翼13fを有し、かつ上面中央に突設部55を有する。この突設部55は、隔壁48の中心に有する挿通孔48sを通して吐出室Coに至らせる。突設部55の内部には、固定スクロール13の下方に存在する中心空間Pcと吐出室Coを連通させる通気路55rを有するとともに、突設部55の上端にはラム部56を一体形成し、このラム部56は、ケーシング46の上面に取付けたシリンダ部57に収容する。これにより、シリンダ部57とラム部56間には、シリンダ室57rが設けられる。なお、ラム部56には、シリンダ室57rと吐出室Coを連通させるブリード孔56sを有する。
一方、シリンダ室57rと冷媒吸入口50は、連通配管58により接続し、連通配管58の中途に、この連通配管58を開閉する電磁バルブ59を接続するとともに、この電磁バルブ59とシリンダ室57r間の連通配管58には、この連通配管58を開閉する予備バルブ60を接続する。この予備バルブ60は、例示のような電磁バルブであってもよいし、手動バルブであってもよい。なお、61はデジタル制御冷媒圧縮機7から吐出する冷媒Kの温度を検出する吐出温度センサである。そして、圧縮機本体45における冷媒吸入口50は、直列接続した逆止弁14を介してアキュムレータ28の冷媒流出側に接続するとともに、圧縮機本体45における冷媒吐出口49は、直列接続した逆止弁15を介して凝縮器25の冷媒流入側に接続する。
また、制御系9は、制御部65を備える。この制御部65は、主に、温度,圧力等のセンサ類から得る検出結果に基づいて、各部のアクチュエータ類をシーケンス制御する機能を有する。したがって、制御部65の入力ポートには、前述した液温センサ22,吸入温度センサ33,吐出温度センサ61,周囲温度センサ41,凝縮器出口温度センサ37及びエバポレータ入口温度センサ38等をそれぞれ接続するとともに、制御部65の出力ポートには、圧縮機本体45の圧縮機モータ5,電磁バルブ59,予備バルブ60,インバータ40及び電磁膨張弁27等をそれぞれ接続する。さらに、制御部65は、各種処理及び制御を実行することができるコンピュータ機能及び通信機能等を備えている。
次に、本実施形態に係る冷却装置1の動作(使用方法)について、図1〜図11を参照して説明する。
最初に、本実施形態に係る冷却装置1に使用するデジタル制御冷媒圧縮機7の動作(原理)について、図2〜図6を参照して説明する。このデジタル制御冷媒圧縮機7は、上述したように、軌道スクロール12と固定スクロール13を有する冷媒圧縮部11を備えるとともに、固定スクロール13を軸方向Fcに変位させることにより、圧縮機モータ5の動作時に冷媒圧縮を行うロード状態(図2)又は圧縮機モータ5の動作時に冷媒圧縮を解除するアンロード状態(図3)に切換えるデジタル切換機構部6を備えている。
このデジタル制御冷媒圧縮機7は、圧縮機モータ5を作動させることにより回転軸5sが回転し、この回転軸5sの上端偏心位置に有する係合部53は、回転軸5sを中心にして旋回運動する。この結果、係合部53に係合して追従する被係合部52、更には軌道スクロール12も、軌道上を旋回運動する。他方、固定スクロール13は、軸方向Fcに対して直角方向の位置が固定(規制)されているため、軌道スクロール12の螺旋翼12fと固定スクロール13の螺旋翼13fは、図4(a),(b)に示すような相対運動を行う。
一方、冷媒Kは、冷媒吸入口50から吸入室Ciに供給される。今、図2に示すように、電磁バルブ59のプランジャ59pが突出した状態、即ち、連通配管58が閉状態にある場合を想定する。なお、予備バルブ60は開状態に設定されている。この状態では、シリンダ室57rの内圧は、低圧側となる吸入室Ciの内圧よりも高くなるため、ラム部56を押し上げる不図示のスプリング等による付勢力に打ち勝ち、固定スクロール13の螺旋翼13fは、軌道スクロール12に圧接する。図2はこの状態を示している。
したがって、固定スクロール13の螺旋翼13fに対する軌道スクロール12の螺旋翼12fの相対位置が、図4(a)に示す状態にあれば、吸入室Ciに存在する冷媒Kは、点線矢印方向に沿って外側から螺旋翼12fと13f間に進入する。軌道スクロール12が軌道上を旋回運動し、螺旋翼13fに対する螺旋翼12fの相対位置が、図4(b)に示す状態になれば、螺旋翼12fと13f間に進入した冷媒Kは、螺旋翼12fと13f間に形成される三日月形の密閉空間Pm…に封入される。そして、軌道スクロール12が旋回運動するに従って、三日月形の密閉空間Pm…の容積は、次第に小さくなり、冷媒Kに対する圧縮が行われるとともに、冷媒Kが中心空間Pcに達すれば、冷媒Kの圧力は最大になる。この後、中心空間Pcにおける圧縮された冷媒Kは、通気路55rを通って吐出室Coに至り、さらに、冷媒吐出口49から吐出する。このときの冷媒Kの流通経路を、図2中に点線矢印で示す。よって、この状態がデジタル制御冷媒圧縮機7により冷媒圧縮を行うロード状態となり、100〔%〕出力となる。
他方、電磁バルブ59を制御し、図3に示すように、プランジャ59pを引込めることにより連通配管58を開状態に切換えた場合を想定する。この状態では、低圧側となる吸入室Ciとシリンダ室57rが連通配管58により連通し、シリンダ室57rの内圧と吸入室Ciの内圧が同圧になるため、不図示のスプリング等により、ラム部56は上昇変位する。この結果、固定スクロール13の螺旋翼13fは、図3に示すように、軌道スクロール12から離間し、軌道スクロール12と固定スクロール13間に隙間G…が発生する。これにより、冷媒Kに対する圧縮は行われなくなる。このときの冷媒Kの流通経路を、図3中、点線矢印で示す。よって、この状態がデジタル制御冷媒圧縮機7による冷媒圧縮が解除されたアンロード状態となり、0〔%〕出力となる。
図5は、電磁バルブ59に付与するバルブ制御信号Spを示している。なお、図5中、trはロード状態(100〔%〕出力状態)の制御区間を示すとともに、tnはアンロード状態(0〔%〕出力状態)の制御区間を示し、本実施形態に係る冷却装置1に用いるデジタル制御冷媒圧縮機7に対する制御は、ロード率Rr(=Tr/(Tr+Tn))を変化させることにより行われる。このように、本実施形態に係る冷却装置1に用いるデジタル制御冷媒圧縮機7に対する制御は、ロード状態「1」とアンロード状態「0」の時間軸を可変するデジタル制御となり、従来のインバータ制御、即ち、コンプレッサの回転周波数(大きさ)を可変するアナログ制御とは、制御形態が基本的に異なる。
次に、冷却装置1の全体動作(使用方法)について説明する。まず、冷却装置1は、図1に示すように、配管ジョイント24a,24bを介して被冷却物Mに接続し、また、冷却液タンク2には、冷却液(冷却水等)Wを収容する。これにより、送液ポンプ3を作動させれば、冷却液タンク2内の冷却液Wは、供給口2sから送液ポンプ3により送出されるとともに、配管ジョイント24bを介して被冷却物Mに供給され、被冷却物Mに対する冷却が行われる。一方、被冷却物Mの冷却(熱交換)により暖められた冷却液Wは、配管ジョイント24aを介して冷却器4cに供給される。冷却器4cでは、供給された冷却液Wと冷凍サイクル8における冷却された冷媒K間で熱交換が行われ、冷却液Wは冷媒Kにより冷却される。そして、冷却器4cにより冷却された冷却液Wは、冷却液タンク2の戻り口2rに戻され、冷却液タンク2に貯留される。なお、図1中、矢印Fwは冷却液Wの流通方向を示す。
一方、被冷却物Mに供給される冷却液Wの温度(液温Tw)は、液温センサ22により検出され、この検出信号は制御部65に付与される。制御部65では、検出信号に基づいてデジタル制御冷媒圧縮機7を制御、即ち、上述した電磁バルブ59を開閉するデジタル制御を行い、液温Twが目標温度になるようにフィードバック制御する。
よって、このような本実施形態に係る冷却装置1によれば、冷却液Wに対する温度制御には、デジタル制御冷媒圧縮機7をロード状態又はアンロード状態となるように時間軸を制御するデジタル制御を用いるため、制御範囲を飛躍的に拡大することができる。特に、従来のインバータ制御では限界であった最大冷却能力に対して30〔%〕以下の低負荷領域であっても制御が可能となり、しかも、インバータ回路が不要になることから、全体の動作効率が飛躍的に向上する。この結果、省エネルギ性及び制御性が高められ、従来のインバータ制御に対して、最大で略65〔%〕の改善を図ることができた。
ところで、本実施形態に係る冷却装置1では、デジタル制御冷媒圧縮機7をロード状態(100〔%〕出力状態)又はアンロード状態(0〔%〕出力状態)となるように時間軸上で選択的に切換えるデジタル制御を行うため、冷却器4cから流出する冷却液Wの温度は、図6に仮想線で示す温度変化特性Qsのように、大きな振幅となりかつ頻繁な周期(制御周波数)により変動してしまう。したがって、このような冷却装置1では、特開2003−329355号公報のように、被冷却物Mの手前に冷却器4cを接続する構成を採用した場合、冷却器4cにより冷却された冷却液Wがそのまま被冷却物Mに供給されることになり、冷却器4cの冷却特性(挙動)が冷却液Wの温度に直接影響を及ぼす。特に、デジタル制御の周波数が高い(周期が短い)場合には、応答性ゆえに液温も平均化されるが、省エネルギ性及び制御性等を考慮して周期が比較的長くなるように設定した場合には、冷却液Wに与える影響は大きくなる。しかし、本実施形態に係る冷却装置1では、デジタル制御冷媒圧縮機7を備える冷凍サイクル8を接続した冷却器4cに対して、冷却液Wを一旦冷却液タンク2に貯留する構成を組み合わせたため、冷却液Wの温度を確実に平均化できることになり、上述した効果、即ち、全体の動作効率が飛躍的に向上し、省エネルギ性及び制御性が高められるという基本的効果を確保しつつ、図6に実線で示す温度変化特性Psのように、冷却精度の高い、しかも液温Twの安定した冷却液Wを得ることができる。
加えて、軌道スクロール12と固定スクロール13を用いた冷媒圧縮部11を有するとともに、固定スクロール13又は軌道スクロール12を軸方向Fcに変位させてロード状態又はアンロード状態に切換えるデジタル切換機構部6を有するデジタル制御冷媒圧縮機7を用いたため、比較的簡易な構成(原理)により、目的の冷却装置1を容易かつ低コストに実現可能となる。
以上の説明は、本実施形態に係る冷却装置1の基本動作であるが、冷却装置1は、更に次のような独自の構成及び機能を備えるとともに、独自の制御が行われる。
まず、デジタル制御冷媒圧縮機7の上流側及び下流側に直列接続した逆止弁14,15により冷媒圧力の急激な変動を軽減させている。デジタル制御冷媒圧縮機7は、デジタル切換機構部6によりロード状態(100〔%〕出力状態)又はアンロード状態(0〔%〕出力状態)に切換えられ、これにより、冷却液Wに対する温度制御が行われる。この場合、ロード状態からアンロード状態或いはアンロード状態からロード状態に切換えた際には、冷媒圧力が急激に変動するとともに、この変動は頻繁に発生するため、冷媒回路における圧力ゲージ32,36等の使用部品の寿命短縮を招いたり、温度センサ61,37等の検出精度の低下を招くなどの不具合を生じる。そこで、この不具合を解消するため、デジタル制御冷媒圧縮機7の上流側及び下流側に、それぞれ逆止弁14,15を直列に接続し、冷媒圧力の急激な変動を軽減している。これにより、冷媒圧力及び冷媒温度の安定化が図られ、冷媒回路における使用部品の長寿命化、更には検出精度の向上及び安定化を実現できる。
一方、ロード率Rrを監視し、図7に示すように、ロード率Rrが設定値Xc(例示は28〔%〕)よりも低下したときは、二つの制御モードを選択できるようにした。冷却装置1は、デジタル制御冷媒圧縮機7を使用しているため、従来のインバータ制御とは異なり、28〔%〕以下の低負荷状態、更には無負荷状態であってもアンロード状態に切換えることにより温度制御が可能になる。この場合、低負荷領域であっても温度制御に対する高い精度及び制御性が得られる反面、圧縮機モータ5が作動状態となるため、電力消費が大きくなる。そこで、低負荷領域における省エネルギ性の確保よりも温度制御の精度及び制御性を重視する場合は、アンロード状態とロード状態の切換制御を継続して行う第一の制御モードを選択できるようにするとともに、低負荷領域における温度制御の精度及び制御性よりも省エネルギ性を重視する場合は、圧縮機モータ5をON/OFF制御する第二の制御モードを選択できるようにした。なお、図7における負荷〔%〕は、冷却器4cにおいて熱交換される熱量に対する冷却装置1の最大冷却能力の割合である。
また、凝縮器25の放熱効率が低下した場合、即ち、周囲温度Tr(凝縮器25周辺の外気温度)が高い場合であっても、デジタル制御冷媒圧縮機7のロード率Rrを下げることにより、冷却装置1の動作を継続させることができるようにした。インバータ制御を用いた従来のコンプレッサでは、運転中(冷却動作中)に周囲温度Trが上昇すれば、凝縮器25の放熱効率が低下し、凝縮圧力が高くなるとともに、コンプレッサの吐出冷媒温度Toが上昇する。この場合、従来のコンプレッサでは、オーバロードを防止するために、運転を停止させていたが、本実施形態に係る冷却装置1では、デジタル制御冷媒圧縮機7の使用により、無負荷状態であっても、アンロード状態に切換えることにより温度制御が可能になるため、周囲温度センサ41から検出される周囲温度Trと吐出温度センサ61から検出される吐出冷媒温度Toを監視し、周囲温度Trが高くなった場合には、ロード率Rrを低下させて、凝縮器25の放熱量を減少させる。これにより、凝縮器25の圧力とデジタル制御冷媒圧縮機7の吐出冷媒温度Toの上昇を抑制でき、周囲温度Trが高い環境下であっても運転を継続することができる。
図8に、この場合の制御特性の一例を示す。同図中、Trは周囲温度,TAは保護装置作動温度,Tsは閾値をそれぞれ示している。また、判断値として、周囲温度40〔℃〕,吐出冷媒温度120〔℃〕を設定し、どちらかの温度が当該判断値に達したならロード率Rrを低下させる制御を行う。今、図8において、周囲温度Trが判断値よりも低い32〔℃〕であれば、吐出冷媒温度Toが判断値に達しない限り、ロード率Rrは100〔%〕で運転が継続する。しかし、吐出冷媒温度Toが判断値(120〔℃〕)に達した場合は、ロード率Rrを徐々に低下させる制御を行うことにより吐出冷媒温度Toを低下させる。一方、周囲温度Trが徐々に上昇し、図8中、制御特性線が閾値Tsに交差する温度まで上昇すれば、その交差するロード率Rrになるように、ロード率Rrを低下させる制御を行う。例えば、図8において、周囲温度Trが45〔℃〕に達した場合には、ロード率Rrが70〔%〕となるようにロード率Rrを低下させる制御を行う。また、何らかの原因により周囲温度Trが急激に上昇し、50〔℃〕に達したにも拘わらず、ロード率Rrの低下が追いつかない場合、即ち、図8において、周囲温度Trが50〔℃〕ときは、本来、ロード率Rrが50〔%〕にならなければならないが、60〔%〕を越えているような場合は、制御特性線が保護装置作動温度TAを越えてしまうため、保護装置を作動させることにより運転を停止させるなどの制御を行う。よって、周囲温度Trが高くなった場合でも、ロード率Rrを低下させることにより、凝縮器25の放熱量を減少させることができるため、凝縮器25とデジタル制御冷媒圧縮機7の吐出冷媒温度Toの上昇を抑え、高い周囲温度Trであっても運転を停止させることなく継続させることができる。
他方、凝縮器25を空冷する凝縮器ファン39をインバータ制御することにより、凝縮器25から吐出する冷媒Kの温度(凝縮冷媒温度Tp)を一定に保ち、被冷却物Mの冷却温度に対する制御精度を確保できるようにした。デジタル制御冷媒圧縮機7を用いた場合、冷媒Kは流れたり停止したりするため、冷媒Kの温度変動が大きくなるが、凝縮器出口温度センサ37から検出される凝縮冷媒温度Tpが一定に保たれるように制御することにより、被冷却物Mの冷却温度を安定化させることができる。ところで、従来、凝縮器25に対する冷却は、周囲温度Trに対応した凝縮器ファンの基本回転周波数を3段階程度に設定し、凝縮冷媒温度Tpが基準値以上になったら1段階上の基本回転周波数に切換えるなどの制御を行っていたが、このような制御は、ロード率Rrの変化によりロード時の凝縮冷媒温度Tp(過冷却度)が変動した場合、それに伴って蒸発冷媒温度も変動するため、被冷却物Mの冷却温度に対する制御が不安定になりやすい。そこで、本実施形態に係る冷却装置1では、図9に示すように、周囲温度Trの範囲を、例えば、−10〔℃〕以上20〔℃〕までの第一温度領域,20〔℃〕以上30〔℃〕まで第二温度領域ように設定するとともに、各範囲毎に、凝縮冷媒温度Tpの基準値を設定し、凝縮冷媒温度Tpが基準値よりも高くなれば、凝縮器ファン39の回転周波数を高くする制御を行い、かつ基準値よりも低くなれば、凝縮器ファン39の回転周波数を低くする制御を行うことにより、常に、凝縮冷媒温度Tpを基準値付近に安定させている。図9において、30〔℃〕以上は第三温度領域となり、凝縮器ファン39の最大回転周波数(60〔Hz〕)に固定している。この場合、凝縮器ファン39の回転周波数は、1〜60〔Hz〕を複数のステップ(n段階)に分け、段階的に増減させてもよいし、凝縮冷媒温度Tpの基準値を中心にして連続的(無段階)に増減させてもよい。また、凝縮冷媒温度Tpの基準値を冷媒凝縮圧力(又は吐出圧力)に置換しても同様の制御を行うことができるとともに、同様の効果を得ることができる。なお、吐出圧力を監視する方法も可能ではあるが、圧力変動が大きくなるため、制御が不安定になりやすい。
さらに、電子膨張弁27を制御するに際し、予め、デジタル制御冷媒圧縮機7のロード率Rrと液温Twに基づく目標過熱度を求め、この目標過熱度を得るための電子膨張弁27の開度Nを設定するとともに、運転時に、液温Tw及びロード率Rrを検出し、この液温Tw及びロード率Rrに対応する開度Nとなるように電子膨張弁27を制御するようにした。この場合、開度Nは、電子膨張弁27の開度に対応した制御パルス数により設定する。なお、過熱度は、冷却器(蒸発器)4cに対する流入側冷媒温度と流出側冷媒温度の偏差である。冷却装置1の場合、被冷却物Mの冷却温度は、広範囲となるため、単一のパラメータのみで目標過熱度を設定しても適正な冷凍サイクル8を維持できなくなる。そこで、図10に示すように、液温Twとロード率Rrを用いて目標過熱度を設定し、同じロード率Rrであっても液温Twによって目標過熱度が変更されるようにした。これにより、いかなる被冷却物Mの冷却温度領域に対しても適正な冷凍サイクル8を確保することができる。そして、目標過熱度を求めたなら、この目標過熱度を得るための電子膨張弁27の開度Nを設定する。
また、電子膨張弁27に対する実際の制御においては、温度制御が的確に行われるように、液温Twとロード率Rrから、予め設定した開度Nが速やかに設定されるようにした。従来、電子膨張弁27の開度Nは、冷媒圧縮機を起動させた後、冷媒Kの温度などを検出しながら基本開度から適正開度Nへ徐々に調整する方法を採用していた。しかし、この方法は、負荷変動が大きい用途の場合、電子膨張弁27の開度Nの追従が遅れ、被冷却物Mの温度変化が大きくなってしまう。そこで、本実施形態に係る冷却装置1では、図11に示すように、例えば、ロード率Rrが80〔%〕、液温Twが20〔℃〕、電子膨張弁27の開度Nが200〔パルス〕で安定した運転中に、負荷が低下し、ロード率Rrが10〔%〕に急変した場合、電子膨張弁27の開度Nは、ロード率Rrが10〔%〕及び液温Twが20〔℃〕に対応して予め設定した70〔パルス〕の開度(適正開度)Nとなるように無条件に移行させるようにした。なお、より精度を高めるために、凝縮冷媒温度Tpや周囲温度Tr或いは水冷式の場合には、冷却水温度などをパラメータとして加えることにより、より効果的な制御を行うことができる。さらに、冷媒温度や冷媒圧力により開度を微調整するようにすれば、より適正な開度Nを設定できるとともに、大幅な負荷変動時であっても電子膨張弁27の開度Nを瞬時に適正開度に移行できる。
他方、予備バルブ60は、電磁バルブ59の故障対策として接続したものである。電磁バルブ59は、デジタル制御に用いるため、かなりの頻度でON/OFF動作を繰り返すことになり、耐久性が問われる部品でもあるが、この電磁バルブ59が故障した場合、冷媒圧縮機7は、実質的に動作不能になる。したがって、予備バルブ60は、この対策として設けたものである。今、電磁バルブ59が開状態で故障した場合、液温センサ22により検出される液温Twは上昇し、上限値を越えてしまうため、異常として検出される。よって、制御部65は、予備バルブ60を閉側に制御し、圧縮機モータ5のON/OFF制御に切換える。他方、電磁バルブ59が閉状態で故障した場合、液温センサ22により検出される液温Twは下降し、下限値を越えてしまうため、異常として検出される。よって、制御部65は、圧縮機モータ5のON/OFF制御に切換える。この場合、アラームランプを点灯させるなどにより故障を報知するが、いずれの場合も暫定的に運転を継続させることができる。
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、デジタル制御冷媒圧縮機7は、例示以外の他の形式の冷媒圧縮機にデジタル切換機構部6を備えたデジタル制御冷媒圧縮機であってもよい。また、デジタル制御冷媒圧縮機7の上流側及び下流側に、逆止弁14及び15をそれぞれ直列接続した場合を示したが、上流側又は下流側のいずれか一方に逆止弁14又は15を接続してもよい。なお、本発明における圧縮機モータ5は、電動機のみならず内燃機関(エンジン)等の各種動力により回転する機器類を全て含む概念である。