JP2005281832A - マグネトロンスパッタリング装置および該マグネトロンスパッタリング装置に用いるカソード - Google Patents
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Abstract
【課題】プラズマ処理およびマグネトロンスパッタリングの両処理を効率的に小型化かつ低コストなものとすることを可能とする。
【解決手段】平板状ターゲットをカソード本体の上部に設置し、カソード本体内部で、ターゲットの裏面側に配置される磁石とカソード本体のターゲット表面以外を覆うアースシールドを有するマグネトロン方式スパッタリングカソードと、カソードに基板が対向して配置されるスパッタリング装置において、カソード内部に設置される磁石が、磁石が固定されている支持部に接続されている位置調整棒によって、ターゲットとの間の距離が真空を破ることなく変更可能であって、スパッタリング成膜する場合は、磁石をターゲットに近づけスパッタリンを行い、一方、同カソードを用いてスパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理を行う場合は、磁石とターゲット間の距離を拡大してプラズマ処理を行う。
【選択図】図1
【解決手段】平板状ターゲットをカソード本体の上部に設置し、カソード本体内部で、ターゲットの裏面側に配置される磁石とカソード本体のターゲット表面以外を覆うアースシールドを有するマグネトロン方式スパッタリングカソードと、カソードに基板が対向して配置されるスパッタリング装置において、カソード内部に設置される磁石が、磁石が固定されている支持部に接続されている位置調整棒によって、ターゲットとの間の距離が真空を破ることなく変更可能であって、スパッタリング成膜する場合は、磁石をターゲットに近づけスパッタリンを行い、一方、同カソードを用いてスパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理を行う場合は、磁石とターゲット間の距離を拡大してプラズマ処理を行う。
【選択図】図1
Description
真空中で基板のプラズマ処理およびマグネトロン方式スパッタリング法を用いた薄膜形成が行えるマグネトロンスパッタリング装置および該マグネトロンスパッタリング装置に用いるカソードに関する。
従来、ガラス、Alやフィルム等の基板に薄膜を形成するために、基板の表面をプラズマ処理およびスパッタリング法による薄膜形成を実施する場合、プラズマ処理とスパッタリング法による薄膜形成を別個の装置で行うか、あるいは、同一装置内に、別々にプラズマ電極およびスパッタリングカソードを設置することが行われている。例えば、インライン方式の製造装置がある。このため、処理工程が複雑となり、また真空装置が大きくなって設備費用も膨れる問題があった。
インライン方式の製造装置は、基板をキャリアに装填、取り外しを行うロードロック室、基板のクリーニング及び加熱処理等を行う前処理室、成膜すべき薄膜の積層数に合わせた成膜室から構成され、各室はゲートバルブを介して連結されている。また、各室にはキャリアが移動するレール等の搬送路が敷設され、基板はキャリアに保持され各室に順に送り込まれる。まず、ロードロック室にてキャリアに基板が装填され、前処理室に送られる。前処理室では、基板に付着した水分等の汚染物質を除去するために、または成膜への基板の表面状態の影響を除去するために基板の加熱処理が行われる。また、スパッタエッチングにより基板クリーニングが行われる場合もある。続いて、キャリアは積層数に合わせた成膜室に順に送られ、基板上に所定の膜厚の薄膜が順次形成される。その後、キャリアはロードロック室に戻り、処理後の基板が取り外され、新たに未処理の基板が装填される。このようにして、複数のキャリアがロードロック室、前処理室、成膜室を巡回するように順送りされ、薄膜の連続生産が行われている。
また、特開2003−141719号公報には、清浄な界面を有する多層膜をぞれぞれの膜質に最適な基板温度で形成することができ、また、堆積した膜表面に所定の表面処理を連続的に施すことができるスパッタリング装置及び薄膜形成方法が提案されている。このスパッタリング装置においては、ターゲット及び基板の表面処理機構のそれぞれ少なくとも1つを中心軸の周りに取り付け、1又は複数の基板を保持する基板ホルダを前記ターゲット及び前記表面処理機構に対向して配置し、前記中心軸又は前記基板ホルダを回転する構成としている。このような構成にすることで、同一の処理室内で、基板の表面処理と薄膜形成とを連続して又は同時に行うことが可能となるため、清浄な表面上に、さらには所望の膜特性に適した表面状態で膜形成を行うことができ、清浄な界面を有する高品質な機能薄膜を種々形成することができる。
また、特開2003−178436号公報には、真空チャンバ内で搬送軸と巻取軸との間に配置され、表面に沿ってフィルム基板の走行する少なくとも1つのメインローラを有し、各メインローラの周囲表面に対向して複数のカソード組立体を設け、各メインローラを冷媒により冷却して、フィルム基板上に異なる材質の膜を順次低温成膜するように構成されたフィルム基板巻取り式スパッタリング装置が提案されている。
特開2003−141719号公報
特公平7−68617号公報
登録実用3029402号公報
特開2003−178436号公報
しかし、上記のインライン装置ではロードロック室、前処理室、成膜室を必要とし、特許文献1のスパッタリング装置では、ターゲット及び基板の表面処理機構のそれぞれ少なくとも1つを配置する必要がある。また、特許文献4のフィルム基板巻取り式スパッタリング装置でも、フィルム基板の表面処理を行うためには、複数のカソード組立体の一部を表面処理機構に置き換え配置する必要がある。したがって、装置の小型化かつ低コストな装置とすることは達成されておらず課題として残っていた。
本発明は、プラズマ処理およびマグネトロン方式のスパッタリングが行えるマグネトロンスパッタリング装置において、スパッタリング用のカソード構造で、プラズマ電極構造を合わせもった構造とすることによって、プラズマ処理およびスパッタリング法による薄膜形成を実施することを可能とし、効率的に両処理を実施するばかりか、その真空装置を小型かつ低コストなものとすることを可能とするものである。
発明者らは、マグネトロン方式のスパッタリング法による真空成膜用のカソードにおいて、一方法として、カソード内部に設置される磁石が、カソード前面に設置されるスパッタリング成膜用ターゲットとの間の距離を、変更可能であるカソードの構造であって、カソード内部に設置される磁石が、磁石が固定されている支持部に接続されている位置調整棒によって、該ターゲットとの間の距離を、変更し、スパッタリング成膜する場合は、磁石をターゲットに近づけスパッタリンを行い、一方、同カソードを用いてスパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理を行う場合は、該磁石とターゲット間の距離を拡大してプラズマ処理を行うことができることを見出した。
また、もう1つの方法として、カソード内部に設置される磁石が電流を流して磁場の強さを変更可能な電磁石であり、スパッタリング成膜する場合は、電磁石に電流を流し磁場を発生させて磁場がターゲット表面に形成された状態でスパッタリンを行い、一方、同カソードを用いてスパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理を行う場合は、該電磁石への電流供給を止めてプラズマ処理を行うことができることを見出した。
これらのスパッタリング用のカソード構造で、プラズマ電極構造を合わせもった構造とすることが可能となり、プラズマ処理およびスパッタリング法による薄膜形成を実施することを可能とし、効率的に両処理を実施するばかりか、その真空装置を小型かつ低コストなものとすることを可能とすることを見出し、本発明にいたったものである。
すなわち、本発明の第1の発明は、平板状ターゲットをカソード本体の上部に設置し、カソード本体内部で、該ターゲットの裏面側に配置される磁石とカソード本体の該ターゲット表面以外を覆うアースシールドを有するマグネトロン方式スパッタリングカソードと、該カソードに基板が対向して配置されるスパッタリング装置において、カソード内部に設置される磁石が、磁石が固定されている支持部に接続されている位置調整棒によって、該ターゲットとの間の距離が真空を破ることなく変更可能であって、スパッタリング成膜する場合は、磁石をターゲットに近づけスパッタリンを行い、一方、同カソードを用いてスパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理を行う場合は、該磁石とターゲット間の距離を拡大してプラズマ処理を行うことができることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置である。
本発明の第2の発明は、前記磁石が、永久磁石であることを特徴とする第1の発明記載のマグネトロンスパッタリング装置である。
本発明の第3の発明は、平板状ターゲットをカソード本体の上部に設置し、カソード本体内部で、該ターゲットの裏面側に配置される磁石とカソード本体の該ターゲット表面以外を覆うアースシールドを有するマグネトロン方式スパッタリングカソードと、該カソードに基板が対向して配置されるスパッタリング装置において、カソード内部に設置される磁石が、電流を流して磁場の強さを変更可能な電磁石であり、スパッタリング成膜する場合は、電磁石に電流を流し磁場を発生させて磁場がターゲット表面に形成された状態でスパッタリンを行い、一方、同カソードを用いてスパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理を行う場合は、該電磁石への電流供給を止めてプラズマ処理を行うことができることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置である。
本発明の第4の発明は、直流方式、バイポーラ方式、交流方式、高周波方式の放電を用いたプラズマ処理を行うことを特徴とする第1、3の発明記載のマグネトロンスパッタリング装置である。
本発明の第5の発明は、マグネトロンスパッタリング装置に用いるカソードにおいて、 プラズマ電極として用いることができるターゲットと、該ターゲットのスパッタリング成膜すべき基板に対して裏面側に配置された永久磁石と、該永久磁石をターゲットに対して接近および離間させる移動部材と、を有することを特徴とするカソードである。
本発明の第6の発明は、マグネトロンスパッタリング装置に用いるカソードにおいて、 プラズマ電極として用いることができるターゲットと、該ターゲットのスパッタリング成膜すべき基板に対して裏面側に配置された電磁石と、該電磁石に供給する電力を制御する電源と、を有することを特徴とするカソードである。
本発明の第7の発明は、真空容器と、該真空容器内に配置された、処理すべきフィルム状基板を搬送する搬送機構と、搬送されるフィルム状基板の搬送路に沿って前記真空装置に気密状態で配置された複数のカソードとを有するマグネトロンスパッタリング装置において、前記カソードの各々は、プラズマ電極として用いることができるターゲットと、該ターゲットのスパッタリング成膜すべきフィルム状基板に対して裏面側に配置された永久磁石と、該永久磁石をターゲットに対して接近および離間させる移動部材と、を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置である。
本発明の第8の発明は、真空容器と、該真空容器内に配置された、処理すべきフィルム状基板を搬送する搬送機構と、搬送されるフィルム状基板の搬送路に沿って前記真空装置に気密状態で配置された複数のカソードとを有するマグネトロンスパッタリング装置において、前記カソードの各々は、プラズマ電極として用いることができるターゲットと、該ターゲットのスパッタリング成膜すべきフィルム状基板に対して裏面側に配置された電磁石と、該電磁石に供給する電力を制御する電源と、を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置である。
本発明の第9の発明は、真空容器内に処理すべきフィルム状基板を配置し、該フィルム状基板を前記真空容器内で搬送し、前記フィルム状基板の搬送路に沿って配置された複数のカソードの各々に設けられたプラズマ電極として用いることができるターゲットをプラズマ電極またはターゲットとして用いて搬送中のフィルム状基板に対してプラズマ処理またはスパッタリング成膜を行い、さらにプラズマ処理またはスパッタリング成膜を続行する場合には、前記ターゲットをプラズマ電極またはターゲットとして再び用いて搬送中のフィルム状基板に対してプラズマ処理またはスパッタリング成膜を行う、ことを特徴とするマグネトロンスパッタリング方法である。
本発明の、プラズマ電極を兼ねたスパッタリング用カソードを用いた、プラズマ処理とマグネトロン方式のスパッタリング法による薄膜形成を行えるマグネトロンスパッタリング装置を使用すれば、別個のプラズマ電極およびスパッタリングリング用カソードを用いて両処理を行う場合に比べて、効率的に両処理を実施するばかりか、その真空装置を小型かつ低コストなものにすることができる。
本発明のマグネトロンスパッタリング装置は、平板状ターゲットをカソード本体の上部に設置し、カソード本体内部で、該ターゲットの裏面側に配置される磁石とカソード本体の該ターゲット表面以外を覆うアースシールドを有するマグネトロン方式スパッタリングカソードと、該カソードに基板が対向して配置されるスパッタリング装置であって、カソード内部に設置される磁石が、磁石が固定されている支持部に接続されている位置調整棒によって、該ターゲットとの間の距離が変更可能であって、スパッタリング成膜する場合は、磁石をターゲットに近づけスパッタリンを行い、一方、同カソードを用いてスパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理を行う場合は、該磁石とターゲット間の距離を拡大してプラズマ処理を行うことができる。
また、もう1つの実施の形態として、平板状ターゲットをカソード本体の上部に設置し、カソード本体内部で、該ターゲットの裏面側に配置される磁石とカソード本体の該ターゲット表面以外を覆うアースシールドを有するマグネトロン方式スパッタリングカソードと、該カソードに基板が対向して配置されるスパッタリング装置であって、カソード内部に設置される磁石が電流を流して磁場の強さを変更可能な電磁石であり、スパッタリング成膜する場合は、電磁石に電流を流し磁場を発生させて磁場がターゲット表面に形成された状態でスパッタリンを行い、一方、同カソードを用いてスパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理を行う場合は、該電磁石への電流供給を止めてプラズマ処理を行うことができる。
可動式磁石を用いる場合、プラズマ電極を兼ねたスパッタリング用カソードでは、スパッタリングを実施する場合は、磁石を、磁石をターゲットに近づけ、基板に対向するターゲット表面に磁場が形成される状態に配置しマグネトロンスパッタリングを行う。また、同カソードを用いてプラズマ処理を実施する場合は、磁石をターゲットから離すことによって磁場がターゲット表面に形成されない状態として、ターゲット表面がスパッタリングされることを防止して、プラズマ処理することが可能となる。
電磁石を用いる場合、スパッタリング成膜する場合は、電磁石に電流を流し磁場を発生させて磁場がターゲット表面に形成された状態でスパッタリンを行い、一方、同カソードを用いてスパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理を行う場合は、該電磁石への電流供給を止めてプラズマ処理を行うことができる。
同カソード構造を有するマグネトロンスパッタリング装置を用いた真空表面処理の工程において、スパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理やスパッタリング成膜の工程を行う場合、それぞれ使用するガス種、放電用電源の種類、ターゲット材質を選定すればよい。また、スパッタリング条件あるいはプラズマ処理条件などは、基板材料やターゲット材料、必要な表面状態、必要な特性等を考慮して所定の条件を選択し、目的の処理に合わせた所定の工程において、真空を破らずに断続的に処理を行うことができる。
本発明のカソード構造およびそれを用いた薄膜形成法を、図を用いて説明する。
図1−1は、本発明のプラズマ電極を兼ねたスパッタリング用カソードの断面構造を示す1つの実施例の図である。スパッタリング時に用いるターゲット1がカソード本体上に装着されている。カソード本体は、該ターゲット1表面以外を覆うアースシールド2によって、放電の広がりが遮断される。カソード内部に設置される磁石3は、磁石が固定されている支持部に接続されている位置調整棒4によって、該ターゲットとの間の距離が真空を破ることなく変更可能である。
図1−1は、本発明のプラズマ電極を兼ねたスパッタリング用カソードの断面構造を示す1つの実施例の図である。スパッタリング時に用いるターゲット1がカソード本体上に装着されている。カソード本体は、該ターゲット1表面以外を覆うアースシールド2によって、放電の広がりが遮断される。カソード内部に設置される磁石3は、磁石が固定されている支持部に接続されている位置調整棒4によって、該ターゲットとの間の距離が真空を破ることなく変更可能である。
スパッタリング成膜を実施する場合は、磁石3を、ターゲット表面に現れる磁界の強さを選択して位置調整棒4を用いて調整する。ターゲット表面に現れる磁界の強さを最大にするにはターゲットの裏面に最も近い位置に配置させる。図1において、位置調整棒4は、真空シールド5を用いて真空シール及び絶縁が保たれている。一方、図5においては、磁石3は大気側に配置されているため、位置調整棒4に特別な機構は必要としない。この状態で、真空槽内に所定のスパッタリング用ガスを供給し、圧力を一定化させた上で、ターゲットに電力を印加してスパッタリング成膜を所定の時間実施する。
前記磁石3には、永久磁石を用いることが好ましい。永久磁石としては、フェライト磁石、アル二コ磁石、SmCo、NdFeB、SmFeN磁石等の希土類磁石から、スパッタリング時にターゲット表面に発生させるのに良好な磁界の大きさに合わせて、選定すれば良い。
さらに、スパッタリング成膜の前処理あるいは後処理のプラズマ処理を実施する場合は、位置調整棒4を用いて磁石3をターゲット裏面から遠い位置に移動し、磁場がターゲット表面に形成されないようにする。この状態において、真空槽内に所定のプラズマ処理用ガスを供給し、圧力を一定化させた上で、ターゲットに電力を印加してプラズマ処理を所定の時間実施する。
図1−2は、本発明のプラズマ電極を兼ねたスパッタリング用カソードの断面構造の他の実施形態を示す実施例の図である。スパッタリング時に用いるターゲット1がカソード本体上の冷却層の上部に装着され、その冷却層によってカソードを真空に保持している。カソード本体は、該ターゲット1表面以外を覆うアースシールド2によって、放電の広がりが遮断される。カソード裏面側に設置される磁石3は、大気側にあり、磁石が固定されている支持部に接続されている位置調整棒4によって、該ターゲットとの間の距離を変更可能である。スパッタリング成膜を実施する場合は、上記と同様な方法で行うことができる。
また、図2−1は本発明のプラズマ電極を兼ねたスパッタリング用カソードの断面構造を示す他の実施例の図である。スパッタリング時に用いるターゲット1がカソード本体上に装着されている。カソード本体は、該ターゲット1表面以外を覆うアースシールド2によって、放電の広がりが遮断される。カソード内部に設置される磁石は、電流を流して磁場の強さを変更可能な電磁石11であり、配線12によって供給電流を変更可能であり、発生する磁界の強さを変更できる。
スパッタリング成膜を実施する場合は、電磁石に電流を流し磁場を発生させて磁場がターゲット表面に形成された状態で、真空槽内に所定のスパッタリング用ガスを供給し、圧力を一定化させた上で、ターゲットに電力を印加してスパッタリング成膜を所定の時間実施する。一方、同カソードを用いてスパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理を行う場合は、該電磁石への電流供給を止めてカソードに電力を供給し、プラズマ処理を行うことができる。
図2−2は、本発明のプラズマ電極を兼ねたスパッタリング用カソードの断面構造の他の実施形態を示す実施例の図である。スパッタリング時に用いるターゲット1がカソード本体上の冷却層の上部に装着され、その冷却層によってカソードを真空に保持している。カソード本体は、該ターゲット1表面以外を覆うアースシールド2によって、放電の広がりが遮断される。カソード裏面側に設置される電磁石11は、大気側にあり、供給電流を変更可能であり、発生する磁界の強さを変更できる。スパッタリング成膜を実施する場合は、上記と同様な方法で行うことができる。
本発明のスパッタリング装置のカソードを用いたスパッタリング成膜形成時は、直流(DC)、バイポーラ、高周波(RF)、交流(MF)などの電源を用い、各種の放電形態を形成し、金属、酸化物、窒化物、ホウ素化物、炭化物、有機物など各種ターゲットの特性や処理目的などにあわせて行うことが可能であり、金属、酸化物、窒化物、ホウ素化物、炭化物、有機物などの薄膜を形成することができる。
本発明のカソードを用いたプラズマ処理でも、電極として用いるターゲット特性にあわせて直流、バイポーラ、高周波、交流方式の電源を用いることができる。
本発明のプラズマ電極を兼ねたスパッタリング用カソードは、巻取式スパッタリングリング装置、バッチ式スパッタリング装置、インライン方式スパッタリング装置などのスパッタリング装置に装着することができる。
例えば、図3に示すような巻取式スパッタリング装置に、本発明のターゲット表面に現れる磁界の強さを磁石の位置を変更して調整できるプラズマ電極を兼ねたスパッタリングリング用カソードを装着し、真空を破らずに行う連続したプラズマ処理および薄膜形成法を説明する。
同装置を用いてスパッタリング成膜の目的とするターゲットをカソードに装着し、長尺のフィルムを搬送しながら、まずはターゲット裏面側に配置されている磁石を、ターゲットから離した状態とし、所定のプラズマ処理用のガスを真空槽内に供給し、ターゲットに電力を供給してフィルム上にプラズマ処理を実施する。次に、磁石をターゲット裏面近傍に近づけ、所定のスパッタリング成膜用のガスを真空槽内に供給し、ターゲットに所望の電力を供給して、プラズマ処理を行った基板面上にスパッタリング法による薄膜形成を実施することができる。
また、スパッタリング成膜後に、その皮膜表面をプラズマ処理することや、薄膜形成とプラズマ処理を交互に実施することもできる。また、プラズマ処理を兼ねたスパッタリング用カソードを多数台配置することによって、複雑な構造の積層膜の形成や形成した薄膜のプラズマ処理との組合せが可能となる。
図1は長方形のターゲットを設置した本発明のカソード構造を示すが、必ずしも長方形である必要はなく、円形の形状のものでも良い。
また、図4は、同様の巻取式スパッタ装置に、本発明の他の実施例である、カソード内部に設置される磁石が電磁石であるプラズマ電極を兼ねたスパッタリング用カソードを装着した場合を示すものである。同装置を用いてスパッタ成膜の目的とするターゲットをカソードに装着し、長尺のフィルムを搬送しながら、まずは、所定のプラズマ処理用のガスを真空槽内に供給し、上記電磁石への電流供給を止めてカソードに電力を供給し、フィルム上にプラズマ処理を実施した後、電磁石に電流を流し磁場を発生させて磁場がターゲット表面に形成された状態で、真空槽内に所定のスパッタリング用ガスを供給し、圧力を一定化させた上で、ターゲットに電力を印加して、プラズマ処理を行ったフィルム面上にスパッタリング成膜を所定の時間実施する。また、スパッタリング成膜後に、その皮膜をプラズマ処理することや、薄膜形成とプラズマ処理を交互に実施することもできる。また、プラズマ処理を兼ねたスパッタ用カソードを多数台装備することによって、複雑な構造の積層膜やプラズマ処理との組合せが可能となる。
以下に実施例を示し、具体的に本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されることはない。
(実施例1)
図3に示した巻取式スパッタリング装置に、本発明のプラズマ処理が可能なスパッタリング用カソードを3台装着し、1台のカソードにはCr、残り2台にはCuのターゲットを装着し、Crを装着したターゲットの磁石をターゲット表面から最も離した位置に設置した。
(実施例1)
図3に示した巻取式スパッタリング装置に、本発明のプラズマ処理が可能なスパッタリング用カソードを3台装着し、1台のカソードにはCr、残り2台にはCuのターゲットを装着し、Crを装着したターゲットの磁石をターゲット表面から最も離した位置に設置した。
スパッタリング装置を真空排気後、O2ガスを導入し、装置内を6.7Pa(50mmTorr)に保持し、さらに装置内の巻取巻出ロールに装着した25μm厚さのポリイミドフィルムを毎分10mの速さで搬送しながら、Crのターゲットを装着したカソードに接続したプラズマ処理用の高周波電源より3kwの電力を供給しプラズマ処理を開始し、まずはポリイミドフィルムの表面を改質した。
その後、カソード内の磁石をCrターゲット裏面に最も近づけた状態とし、Arガスを真空槽内に供給し、フィルムを反転し毎分5mの速度で搬送しながら、CrおよびCuのスパッタリングを連続して実施し、CrとCuの積層膜を形成した。これによって、20nmのCr薄膜と200nmのCu薄膜を1500mの長さのフィルム上に形成することができた。
(実施例2)
図4に示した巻取式スパッタ装置に、本発明のプラズマ処理が可能なスパッタ用カソードを3台装着し、1台のカソードにはCr、残り2台にはCuのターゲットを装着し、カソード内の電磁石は作動させない状態とする。スパッタリング装置の真空槽を真空排気後、O2ガスを導入し、装置内を10mmTorrに保持し、さらに装置内の巻取巻出ロールに装着した25μm厚さのポリイミドフィルムを毎分10mの速さで搬送しながら、Crのターゲットを装着したカソードに接続したプラズマ処理用の高周波電源より3kwの電力を供給しプラズマ処理を開始し、まずはポリイミドフィルムの表面を改質した。
(実施例2)
図4に示した巻取式スパッタ装置に、本発明のプラズマ処理が可能なスパッタ用カソードを3台装着し、1台のカソードにはCr、残り2台にはCuのターゲットを装着し、カソード内の電磁石は作動させない状態とする。スパッタリング装置の真空槽を真空排気後、O2ガスを導入し、装置内を10mmTorrに保持し、さらに装置内の巻取巻出ロールに装着した25μm厚さのポリイミドフィルムを毎分10mの速さで搬送しながら、Crのターゲットを装着したカソードに接続したプラズマ処理用の高周波電源より3kwの電力を供給しプラズマ処理を開始し、まずはポリイミドフィルムの表面を改質した。
その後、カソード内の電磁石に電力を供給しCrターゲット裏面に磁場を発生させた状態とし、Arガスを真空槽内に供給し、フィルムを反転し毎分5mの速度で搬送しながら、CrおよびCuのスパッタを連続して実施し、CrとCuの積層膜を形成した。これによって、20nmのCr薄膜と200nmのCu薄膜を1500mの長さのフィルム上に形成することができた。
(比較例)
本発明のプラズマ処理を兼ねることができるスパッタリング用カソードを用いることなく、プラズマ処理電極と、プラズマ処理電極とは別個のスパッタリング用カソードを用いて、同様の真空容器を用いてプラズマ処理および成膜を実施すると、約2倍の処理時間を必要とした。さらに巻取式スパッタリング装置は本発明の装置よりも高額となる。
(比較例)
本発明のプラズマ処理を兼ねることができるスパッタリング用カソードを用いることなく、プラズマ処理電極と、プラズマ処理電極とは別個のスパッタリング用カソードを用いて、同様の真空容器を用いてプラズマ処理および成膜を実施すると、約2倍の処理時間を必要とした。さらに巻取式スパッタリング装置は本発明の装置よりも高額となる。
図1−2は、本発明のプラズマ処理を兼ねることが可能なスパッタリング用カソードの断面構造を示すものであり、永久磁石が大気側に配置された場合である。
図2−1は、本発明のプラズマ処理を兼ねることが可能なスパッタリング用カソードの断面構造を示すものであり、電磁石が真空側に配置された場合である。
図2−2は、本発明のプラズマ処理を兼ねることが可能なスパッタリング用カソードの断面構造を示すものであり、電磁石が大気側に配置された場合である。
図3は、本発明のプラズマ処理を兼ねることが可能なスパッタリング用カソードを装着した巻取式スパッタリングリング装置の構造を示す。
図4は、本発明のプラズマ処理を兼ねることが可能なスパッタリング用カソードを装着した巻取式スパッタリング装置の構造を示す。
1 ターゲット
2 アースシールド
3 磁石
4 位置調整棒
5 真空シールド
6 真空容器
7 カソード
8 冷却キャン
9 送出巻取ロール
10 搬送ロール
11 電磁石
12 配線
13 水冷管
2 アースシールド
3 磁石
4 位置調整棒
5 真空シールド
6 真空容器
7 カソード
8 冷却キャン
9 送出巻取ロール
10 搬送ロール
11 電磁石
12 配線
13 水冷管
Claims (9)
- 平板状ターゲットをカソード本体の上部に設置し、カソード本体内部で、該ターゲットの裏面側に配置される磁石とカソード本体の該ターゲット表面以外を覆うアースシールドを有するマグネトロン方式スパッタリングカソードと、該カソードに基板が対向して配置されるスパッタリング装置において、カソード内部に設置される磁石が、磁石が固定されている支持部に接続されている位置調整棒によって、該ターゲットとの間の距離が変更可能であって、スパッタリング成膜する場合は、磁石をターゲットに近づけスパッタリンを行い、一方、同カソードを用いてスパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理を行う場合は、該磁石とターゲット間の距離を拡大してプラズマ処理を行うことができることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。
- 前記磁石が、永久磁石であることを特徴とする請求項1記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- 平板状ターゲットをカソード本体の上部に設置し、カソード本体内部で、該ターゲットの裏面側に配置される磁石とカソード本体の該ターゲット表面以外を覆うアースシールドを有するマグネトロン方式スパッタリングカソードと、該カソードに基板が対向して配置されるスパッタリング装置において、カソード内部に設置される磁石が、電流を流して磁場の強さを変更可能な電磁石であり、スパッタリング成膜する場合は、電磁石に電流を流し磁場を発生させて磁場がターゲット表面に形成された状態でスパッタリンを行い、一方、同カソードを用いてスパッタリング成膜前の基板の前処理あるいは形成された皮膜の後処理のプラズマ処理を行う場合は、該電磁石への電流供給を止めてプラズマ処理を行うことができることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。
- 直流方式、バイポーラ方式、交流方式、高周波方式の放電を用いたプラズマ処理あるいはスパッタリング成膜を行うことを特徴とする請求項1、3記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- マグネトロンスパッタリング装置に用いるカソードにおいて、
プラズマ電極として用いることができるターゲットと、
該ターゲットのスパッタリング成膜すべき基板に対して裏面側に配置された永久磁石と、
該永久磁石をターゲットに対して接近および離間させる移動部材と、
を有することを特徴とするカソード。 - マグネトロンスパッタリング装置に用いるカソードにおいて、
プラズマ電極として用いることができるターゲットと、
該ターゲットのスパッタリング成膜すべき基板に対して裏面側に配置された電磁石と、
該電磁石に供給する電力を制御する電源と、
を有することを特徴とするカソード。 - 真空容器と、該真空容器内に配置された、処理すべきフィルム状基板を搬送する搬送機構と、搬送されるフィルム状基板の搬送路に沿って前記真空装置に気密状態で配置された複数のカソードとを有するマグネトロンスパッタリング装置において、前記カソードの各々は、
プラズマ電極として用いることができるターゲットと、
該ターゲットのスパッタリング成膜すべきフィルム状基板に対して裏面側に配置された永久磁石と、
該永久磁石をターゲットに対して接近および離間させる移動部材と、
を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。 - 真空容器と、該真空容器内に配置された、処理すべきフィルム状基板を搬送する搬送機構と、搬送されるフィルム状基板の搬送路に沿って前記真空装置に気密状態で配置された複数のカソードとを有するマグネトロンスパッタリング装置において、前記カソードの各々は、
プラズマ電極として用いることができるターゲットと、
該ターゲットのスパッタリング成膜すべきフィルム状基板に対して裏面側に配置された電磁石と、
該電磁石に供給する電力を制御する電源と、
を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。 - 真空容器内に処理すべきフィルム状基板を配置し、
該フィルム状基板を前記真空容器内で搬送し、
前記フィルム状基板の搬送路に沿って配置された複数のカソードの各々に設けられたプラズマ電極として用いることができるターゲットをプラズマ電極またはターゲットとして用いて搬送中のフィルム状基板に対してプラズマ処理またはスパッタリング成膜を行い、
さらにプラズマ処理またはスパッタリング成膜を続行する場合には、前記ターゲットをプラズマ電極またはターゲットとして再び用いて搬送中のフィルム状基板に対してプラズマ処理またはスパッタリング成膜を行う、ことを特徴とするマグネトロンスパッタリング方法。
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- 2004-03-31 JP JP2004101790A patent/JP2005281832A/ja active Pending
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