JP2005281267A - タンパク質巻き戻し成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 タンパク質のリフォールディング、すなわち機能賦活に対して、効果的な機能賦活デバイス並びにその使用方法を提供する。
【解決手段】 大腸菌等で生産した高次構造未形成による不活性タンパク質、あるいはある種の原因で立体構造が変化し、失活したタンパク質を、接触により、該タンパク質固有の本来の機能・活性を賦活する、ゼオライトベータからなるリフォールディング成形体、並びにそれを用いた不活性タンパク質の機能賦活方法及び該方法を利用した活性タンパク質の製造方法。
【効果】 従来の方法と比べて、汎用性、普遍性が高く、かつ容易簡単で手軽であり、安価で、機能賦活デバイスの繰り返し使用も可能であるタンパク質の新しい機能賦活デバイス並びにそれを用いる機能賦活方法を提供できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、不活性タンパク質の機能賦活剤に関するものであり、更に詳しくは、高次構造が未形成なために不活性なタンパク質、あるいはある種の原因で立体構造が変化し、失活したタンパク質をリフォールディングさせ、該タンパク質固有の本来機能を賦活・再生させる能力を有するチップ等のある種のデバイス、及びそれらを利用した不活性タンパク質の活性化、すなわち活性タンパク質の製造・生産に関するものである。本発明は、例えば、生化学品、医薬品製造の技術分野において、大腸菌等の遺伝子発現系を利用して生産した高次構造未形成タンパク質を、リフォールディングさせ、該タンパク質の本来の機能・活性を賦活させることが可能な新しいデバイス、並びにそれを用いる新しい機能賦活方法を提供するものとして有用である。従来、大腸菌等の発現系で得られるタンパク質は、一般には、立体構造が無秩序であり、該タンパク質の持つ本来の機能・物性を持たず、活性を示さないという問題があったが、本発明のデバイスは、上記タンパク質に代表される不活性タンパク質の機能・活性を賦活させ、所定の機能・活性を有するタンパク質へと再生させる革新的タンパク質製造・生産技術を提供するばかりか、その工程を従来技術に比べ大幅に簡略化するものである。
生体内で実際的に作用し、働くのは遺伝子ではなく、それらから作られるタンパク質である。したがって、タンパク質の機能・構造の解明・解析は、例えば、病気の治療や創薬に直結し、極めて重要である。このため、種々のタンパク質を様々な方法で合成・生産し、それらの構造を調べ、生体内における作用機構と役割を解明することが活発に行われている。そして、今や、タンパク質の機能は、それらを構成するアミノ酸の配列・鎖長のみならず、それらの取る秩序だった立体構造(高次構造)によって決まることは周知のこととなっている。
タンパク質の合成は、一般には、大腸菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の発現系を用いて行われる。昆虫細胞や哺乳動物細胞による合成では、得られるタンパク質は、高次構造が制御され、秩序だった立体構造を取り、可溶性である場合が多い。しかし、これらの方法は、分離精製の操作が非常に煩雑であり、目的のタンパク質を得るまでに時間がかかり、コスト高となるばかりか、得られるタンパク質の量も極めて少ないという欠点がある。これに対して、大腸菌によるタンパク質合成は、操作が簡単で、目的タンパク質を得るのにさして時間を要せず、コストもさほどかからない。このため、現在は、目的タンパク質の合成を担う遺伝子コードを組み込ませた大腸菌を用いる方法が、タンパク質合成の主流となっており、生産プロセスも確立されつつある。
ところが、ヒトなど高等生物のタンパク質を大腸菌発現系で合成した場合、アミノ酸の結合順序や数、すなわちアミノ酸鎖長に関しては、設計どおりのタンパク質が得られるものの、その立体構造には秩序が無く、高次構造が制御されていないタンパク質、すなわちアミノ酸鎖が縺れ絡まった、いわゆるインクルージョンボディと呼ばれる不溶性タンパク質が得られる。当然のことながら、この不溶性タンパク質のインクルージョンボディは、欲する機能・性能を持たず、活性を示さない。このため、大腸菌による生産プロセスでは、インクルージョンボディを解きほぐし、高次構造を整え、秩序だった立体構造を持つ可溶性タンパク質に変換する操作、すなわちインクルージョンボディのリフォールディング(巻き戻し)が必要である。
この種のリフォールディングは、大腸菌による生産タンパク質のみならず、熱履歴等の、ある種の原因で失活したタンパク質の再生にも応用でき、極めて重要な技術である。したがって、従来から、このリフォールディングは盛んに研究され、種々の方法が提案されているが、それらのほとんどはリフォールディング率が低いうえに、ある限定されたタンパク質(特に、分子量の低い特定タンパク質)に対して偶発的に好ましい結果が得られたに過ぎないことが多く、現在、このリフォールディングは、種々のタンパク質に適用可能な一般性、普遍性のある、しかもリフォールディング率の高い効率的で経済的な方法とはなっていない。
最も古くから良く用いられているリフォールディング操作は、透析や希釈である。前者は、タンパク質を界面活性剤や変性剤を含む水溶液に溶かし、これを界面活性剤や変性剤を含まない緩衝液で透析することで、界面活性剤や変性剤の濃度を下げて、タンパク質をリフォールディングするもの(典型例:Hampton Research社製 FoldIt キット)である。一方、後者は、タンパク質を界面活性剤や変性剤を含む水溶液に溶かした後に、これを単に希釈して行くことで界面活性剤や変性剤の濃度を下げ、リフォールディングさせる(典型例:Hampton Research社製 FoldIt キット)ものである。これらが一般であるが、その他にも、界面活性剤のSodium N-lauroyl sarcosinate溶液にグルタチオンS−トランスフェラーゼ融合タンパク質を溶かし、それを1〜2%のTriton X-100で希釈し巻き戻す(非特許文献1参照)方法など、希釈剤を用いてリフォールディングさせる方法もある。
透析と希釈の両方に対し、Hampton Research社から使い捨てキットが市販されており、これらの操作法では、Ligand binding domains from glutamate and kainate receptors 、Lysozyme、 Carbonic anhydrase B などの極限られたタンパク質でリフォールディングが起こることが認められている(非特許文献2参照)に過ぎず、試行錯誤法の域にとどまっていると言っても過言ではない。したがって、たまたま上手くいった方法の場合でも、他のタンパク質に適用するとほとんどうまくいかないのが通例である。
リフォールディングに吸着分離カラムを用いることも試されている。尿素・塩酸グアニジンで変性させたタンパク質、チオレドキシンをゲル濾過にかけると、ゲル濾過中にその巻き戻りが起こる(非特許文献3参照)。しかし、この方法では、リフォールディングは必ずしも十分ではなく、他のタンパク質では満足できる結果が得られないのが通常である。構造が壊れたタンパク質の巻き戻しを促進するタンパク質の一種である分子シャペロンGroEL を固定したカラムに、8M の尿素で可溶化したタンパク質を吸着させ、塩化カリウムと尿素をそれぞれ2M 含む溶液で溶離すると、溶離タンパク質の巻き戻りが起こる(非特許文献4参照)。しかし、これらは、Cyclophilin A など極めて限られたタンパク質で認められているに過ぎない。特に、分子シャペロンを用いる場合は、それがある種の鋳型であるために、その鋳型の形に適合しないものではまったく役に立たないというのが実情である。
また、リフォ−ルディング促進に関与すると考えられるタンパク質3種、GroEL 、DsbA(大腸菌のdisulfide oxidereductase)及びPPI (human proline cis-trans isomerase )を同時に固定した樹脂に、塩酸グアニジンで変性したタンパク質Scorpion toxin Cn5を混ぜると、このタンパク質の巻き戻りが樹脂上で起こる(非特許文献5参照)ことも報告されている。しかしながら、これについては、Scorpion toxin Cn5などの特定タンパク質にしか適用できない欠点に加え、タンパク質3種を固定した樹脂の調製が煩雑でコスト高となるという問題もある。
カラム上の固定物質として巻き戻しタンパク質の代わりに金属キレートを用いる場合もある。ニッケルキレートを固定した樹脂に、塩酸グアニジンと尿素を含む水溶液で溶解変性したHis6- タグ融合タンパク質を吸着させ、変性剤を含まない緩衝溶液で洗うと、該融合タンパク質の巻き戻りが起こる(非特許文献6参照)。本法の適用がこのタンパク質に限られることと、樹脂の調製が煩雑でコスト高となることは同じである。
人工シャペロンとして、β−シクロデキストリンやシクロアミロースを用い、このシャペロン溶液に界面活性剤で変性したタンパク質を混ぜると、界面活性剤の人工シャペロンによる取り込み除去が生じ、この過程でタンパク質が巻き戻るとの報告(非特許文献7〜9参照)もある。しかし、この方法は、carbonic anhydrase Bなどで成功しているに過ぎない。しかも、繰り返し行える方法ではなく、高コストである。
一方、本発明者らは、これまで、ZSMゼオライトやゼオライトベータ(例えば、非特許文献10、11、特許文献1、2参照)などのゼオライトへのバイオポリマーの吸着現象(非特許文献12参照)について、研究を続けてきた。
今までに、種々のリフォールディングの方法やリフォールディング機能を有する物質・材料が報告されているが、これらの方法・物質材料には、普遍性が無く操作が煩雑で高コストなど、上述のような種々の問題があるのが実情である。そのため、当技術分野においては、第一には、鎖長の長短を問わず種々の高次構造未形成及び変性・失活タンパク質に適用可能な、一般性、普遍性の高い、しかも繰り返し使用可能で、低コスト・高効率のリフォールディング物質・材料並びに方法を開発することが急務の課題となっていた。
更に、第二には、従来のリフォールディングの操作・工程においては、遠心分離器及びクロマトグラフィーを用いることが必須であり、これらの度重なる使用が操作・工程を複雑かつ煩雑で、極めて手間がかかり、高コストにしているという大きな問題もあった。
特開平6−127937号公報 特開平8−319112号公報 Anal. Biochem. Vol. 210 (1993) 179-187 Protein Sci. Vol. 8 (1999):1475-1483 Biochemistry, Vol. 26 (1987) 3135-3141 Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 94 (1997) 3576-3578 Nat. Biotechnol. Vol. 17 (1999) 187-191 Life Science News (Japan Ed.) Vol. 3 (2001) 6-7 J. Am. Chem. Soc. Vol. 117 (1995) 2373-2374 J. Biol. Chem. Vol. 271 (1996) 3478-3487 FEBS Lett. Vol. 486 (2000) 131-135 Zeolites, Vol. 11 (1991) 842-845 Adv. Mater., Vol. 8 (1996) 517-520 Chem. Eur. J., Vol. 7(2001) 1555-1560
このような状況下にあって、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上述の課題を解決することが可能な新しいリフォールディング技術を開発することを目標として鋭意研究開発を進めると共に、DNA、RNA、タンパク質等バイオポリマーのゼオライト等金属酸化物上への吸着状況を詳細に調べ(前記非特許文献12参照)、タンパク質の分離精製材料並びに方法を鋭意研究している過程で、BEA構造のゼオライト、すなわちゼオライトベータが変性タンパク質の巻き戻し機能を有することを見出した。そして、これをもとに前述の二大課題を解決するゼオライトベータからなるリフォールディング成形体を開発するに至った。本リフォールディング成形体は、大腸菌等の発現系で生産した高次構造未形成タンパク質、あるいは熱履歴等の、ある種の原因で失活したタンパク質等、分子量10万を越える大型のタンパク質を含む種々の立体構造無秩序タンパク質等の巻き戻しにも、簡単な操作で、適用できることを認め、本発明、すなわち一般性、普遍性の高い、しかも簡単・簡略な操作によるタンパク質のリフォールディング技術を完成した。本発明は、BEA構造のゼオライトを含む成形体で構成されたリフォールディング成形体を提供することを目的とするものである。また、本発明は、不活性なタンパク質をリフォールディングさせ、該タンパク質固有の本来機能を賦活・再生させる能力を有するリフォールディング成形体を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)高次構造が無秩序なため不活性であるタンパク質の高次構造を整え活性にする、いわゆる巻き戻し機能を有するBEA構造のゼオライト(通称、ゼオライトベータ)を含む成形体で構成されることを特徴とするリフォールディング成形体。
(2)成形体が、ゼオライトベータ、又はゼオライトベータとそれを支持する基材からなることを特徴とする、前記(1)に記載のリフォールディング成形体。
(3)タンパク質と接触することにより、巻き戻し機能を発揮する前記(1)に記載のリフォールディング成形体。
(4)タンパク質変性剤、界面活性剤及び/又はリフォールディングバッファーの存在下で、タンパク質の巻き戻しが行われる、前記(1)に記載のリフォールディング成形体。(5)高次構造が無秩序なため不活性であるタンパク質が、大腸菌の発現系で生産されたタンパク質であることを特徴とする、前記(1)に記載のリフォールディング成形体。
(6)高次構造が無秩序なため不活性であるタンパク質が、熱履歴の原因で失活したタンパク質であることを特徴とする、前記(1)に記載のリフォールディング成形体。
(7)ゼオライトベータが、アンモニウムイオン及び/又は有機アンモニウムイオンを含むことを特徴とする、前記(1)に記載のリフォールディング成形体。
(8)有機アンモニウムが、モノ、ジ、トリ及び/又はテトラアルキルアンモニウム(アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル)イオンであることを特徴とする、前記(7)に記載のリフォールディング成形体。
(9)ゼオライトベータの骨格構造が、酸素とそれ以外の1種又は2種以上の元素からなることを特徴とする、前記(1)に記載のリフォールディング成形体。
(10)ゼオライトベータの骨格構造が、ケイ素及び酸素、又はケイ素、アルミニウム及び酸素からなることを特徴とする、前記(9)に記載のリフォールディング成形体。
(11)溶液中に分散したタンパク質と接触することによって、タンパク質巻き戻し機能を発揮する、前記(1)から(10)のいずれかに記載のリフォールディング成形体。
(12)溶液中の前記タンパク質を、該リフォールディング成形体と混合、又は該成形体上に流す、又は滴下することにより、該タンパク質を該成形体に吸着させ、しかる後、脱着させる操作で該タンパク質の巻き戻しを起こさせる機能を有する、前記(1)から(11)のいずれかに記載のリフォールディング成形体。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明のリフォールディング成形体は、BEA構造のゼオライト、いわゆるゼオライトベータ単味、又はゼオライトベータとそれを支持する基材(支持体)とから構成される。前者は、支持体無しで、後者は、支持体付きである。一般的に言って、ゼオライトという物質は、自己焼結性が乏しいため、単味単独では成形しにくいことが多いので、該成形体の作製、すなわち形態・形状の設計・制御に関しては、前者に比べ後者が、予め形が整えられた支持体上にゼオライトベータを固定・被覆するいうことなどが可能なため、一般に、自由度が高く、有利であることが多い。
しかしながら、該成形体の支持体の有無から始まり、形態・形状の設計・制御法、すなわち作製方法は、該成形体の利用方法や使用形態によって変わるものであり、適宜選定されるものである。したがって、該成形体の作製には、公知の方法が全て利用可能であり、適宜選定され、あるいは組み合わされて使用されることになるので、特に限定されるものでも無く、また、特に詳しい説明や言及を必要とするものではないが、該成形体の作製法、すなわち形態・形状の設計・制御法として、強いて二、三例を挙げれば、次のようなものがある。支持体無し、支持体付きの、いずれの該成形体の作製にも、ゼオライト成形体の従来の典型的作製法、すなわちゼオライトのその場合成法、ドライゲルコンバージョン法、固相変換法など(Stud. Surf. Sci. Catal. Vol. 125 (1999) 1-12、表面、Vol. 37 (1999) 537-557参照)が利用可能であり、更に、支持体付き該成形体の作製では、有機ポリマー中への混入法(Zeolites, Vol. 16 (1996) 70 参照)、アルミナ等の無機粉体によるゼオライトベータの接着・成形、水に不溶の接着剤によるゼオライトベータの支持体上への固定化などが利用可能であるが、これらに限られるものではない。
該成形体の形態・形状につては、チップ状、膜状、ペレット状、ビーズ状など、該成形体の利用方法・使用形態に応じて、適宜選定される。特に、支持体付き該成形体では、ゼオライトベータの固定・被覆を種々の形状、例えば、板、球、円筒、チューブ、カラム、溝、U字路などの支持体上に、前記方法等で行うことができるので、該成形体の形状を如何様にも所望の形にすることができるという利点がある。この場合の支持体については、ガラス、石英、アルミナ、シリカ、コージェライトやムライトなどの種々のセラミックス、濾紙などのセルロース、テフロン(登録商標)、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(ペット)など種々の有機ポリマーを挙げることができるが、基本的には、支持体が水に不溶であり、タンパク質に悪影響を及ぼさないものであれば、いずれも良く、ここに挙げたものに限られるものではない。
本発明のリフォールディング成形体の対象となるタンパク質は、高次構造が整っていない不活性なタンパク質全てであるが、特に、大腸菌等の発現系で得られる立体構造が無秩序なタンパク質、いわゆるインクルージョンボディ、あるいは熱履歴等の、ある種の原因で失活したタンパク質である。本発明のリフォールディング成形体は、該タンパク質の該リフォールディング成形体への吸着・脱離過程で、該タンパク質の立体構造をリフォールディングし、該タンパク質本来の機能の賦活・付与を行うが、該リフォールディング成形体の本能力は、必ずしもそれに限定されるものではなく、通常、次のような操作で発揮される。換言すれば、次のような操作で不活性タンパク質の機能賦活が行われる。先ず、該タンパク質を、変性剤や界面活性剤などを含む溶液に分散溶解し、この後、該溶液と本発明のリフォールディング成形体との混合や、該溶液の本リフォールディング成形体上への注入・流入あるいは滴下により、該タンパク質を本リフォールディング成形体に吸着させ、次いで、本リフォールディング成形体から該タンパク質を脱着させる手順で行われ、これらの工程においては、遠心分離器などの分離器を特に必要とはしない。
該リフォールディング成形体に吸着前の、タンパク質の分散溶媒としては、一般には、それが大腸菌等の発現系で生産されること、タンパク質は、通常、水溶液中で使われることが多く、失活した場合でも水溶液中にあることが多いことから、好ましくは、水が用いられる。しかし、必ずしもこれに限定されるものではなく、該タンパク質と反応を起こさないもの、及び該タンパク質の立体構造を不本意な形に変えるものでなければ、基本的には問題はなく、このような場合は、それらの溶媒単独あるいは水と混合して用いることが可能である。この種の溶媒の典型例として、一価及び多価のアルコールやポリエーテル類をあげることができるが、これらに限定されるものではない。
該タンパク質の吸脱着は、一般には、インクルージョンボディなど縺れ絡んだタンパク質鎖長を解きほぐし易くし、また、巻き戻り易くするために、変性剤や界面活性剤、pH調整剤、リフォールディング因子等の存在下、及び/又は、タンパク質鎖長中に不本意に生成したS−S結合を切断するために、ある種の還元剤の存在下で行われる。この種の変性剤や界面活性剤、pH調整剤、リフォールディング因子の典型例として、例えば、塩酸グアニジン、トリスアミノメタン塩酸塩、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid (HEPES)、ポリ燐酸、スクロース、グルコース、グリセロール、イノシトール、デキストランT−500(Dextran T-500 )やフィコール(Ficol1400 )などを挙げることができるが、これらにとどまるものではなく、同様な作用を持つものはいずれも使用可能である。
不本意に生成したS-S 結合を切断し、本来の構造に戻す還元剤としては、安価で入手し易いことから、通常は2−メルカプトエタノールが用いられるが、これに限定されるものではなく、同様な作用を有するものは全て使用可能である。当然のことながら、タンパク質鎖長が解きほぐれやすい場合や、不本意にS−S結合が生成しない場合は、変性剤や界面活性剤、及び/又は防止剤を必ずしも使う必要がないので、これらの存在は常に必須とは限らず、状況に応じ適宜選択して用いられる。また、それらを用いる場合も、それらの量は状況に応じ適宜決められることになる。
また、該タンパク質の脱着には、一般には置換吸着が用いられるが、基本的には該タンパク質の脱着後の機能賦活を阻まない操作であれば、いかなる操作も適用可能であり、特に限定されるものではない。したがって、pH変化、温度変化なども用いることができる上に、これらと置換吸着を併用することもできる。更には、置換吸着の際、該タンパク質の脱着を促す物質として、従来からカラムクロマトグラフィーの溶離では、ハロゲン化アルカリやドデシル硫酸ナトリウムなどの塩が、頻繁に用いられており、これらの併用で顕著な効果が得られる場合も多い。したがって、置換吸着で該タンパク質の脱着を行う際には、これらのカラムクロマトグラフィーの溶離に用いられるものなど種々のものの塩と界面活性剤やリフォールディング因子とを併用することも可能であり、この種の併用塩としては、ここに挙げたものに限定されるものではなく、該タンパク質の脱着後の機能賦活を阻まないものであれば、いずれも使用可能である。
更に言えば、該タンパク質の本発明リフォールディング成形体への吸着、あるいはそれからの脱着を促すために、上記操作と併用して種々の付加的操作を行うこともできる。このような操作の典型例には、例えば、超音波やマイクロ波の照射や、磁場や電場の印加がある。以上述べてきた手順・操作により、該リフォールディング成形体の持つタンパク質巻き戻し能が高度に発揮されることになり、大腸菌等の発現系を用いて生産した高次構造未形成タンパク質並びにある種の原因で失活したタンパク質にリフォールディングが起き、それらのタンパク質が本来持つはずの機能が速やかに賦活される。
以上述べてきた不活性タンパク質の活性賦活機能・変性タンパク質の巻き戻し能を有する本発明のリフォールディング成形体を構成するBEA構造のゼオライト(通称、ゼオライトベータ、Zeolite Beta)は、ベータゼオライトとも呼ばれ、典型例として、例えば、通常の市販ゼオライトベータ、文献(Zeolites, Vol. 11 (1991) 202. 参照)に従い自前で合成・調製したゼオライトベータ、それらを焼成して得られるゼオライトベータ、該ゼオライトの有する空間中にアンモニウムや種々の脂肪族及び/又は芳香族アンモニウムがあるゼオライトベータ、該ゼオライトを形成する骨格ケイ素の一部が他の金属に変わった骨格置換ゼオライトベータ、前記アンモニウム含有骨格置換ゼオライトベータなどが挙げられるが、ゼオライトベータの骨格構造を持つものであれば、基本的には全て該機能・能力を有しており、該リフォールディング成形体を構成するゼオライトベータは、ここに挙げたものに必ずしも限定されるものではない。
ところで、本発明のリフォールディング成形体を構成するゼオライトベータの該機能・能力は、不活性並びに変性タンパク質の該ゼオライトへの接触、すなわち吸着・脱離で発揮され、この際には、ゼオライトベータ表面と対象タンパク質との間の親和性が重要となる上に、また、該タンパク質の吸着・脱離は、その分散溶媒、分散溶媒中の変性剤や界面活性剤並びにリフォールディング因子、更には、分散溶媒のpHなどで影響される場合も多いので、対象とするタンパク質及びそれを含む溶液の成分状況等に応じて、本発明のリフォールディング成形体のリフォールディング能は、それを構成する前述の種々のゼオライトベータによって、しばしば異なる。しかしながら、総じて、アンモニウム類を含むゼオライトベータより構成されるリフォールディング成形体は、それを含まないものより高いリフォールディング能を示すので、該リフォールディング成形体としては、アンモニウム類を含むゼオライトベータ及びアンモニウム類を含む骨格置換ゼオライトベータで構成されるものが好ましいことが、しばしばである。
該リフォールディング成形体の、ゼオライトベータに含有されるべきアンモニウム類としては、該ゼオライトの有する空間中に留まり易いアンモニウム類、例えば、アンモニウムイオン、アルキル基がメチル、エチル、プロピル及びブチルなどのモノ、ジ、トリ及びテトラアルキルアンモニウムイオン、更には、5員環、6員環及7員環の脂肪族アミン及び芳香族アミンのアンモニウムイオン、より詳しくは、ピペリジュムイオン、アルキルピペリジュムイオン、ピリジニウムイオン、アルキルピリジウムイオン、アニリンイオン、N−アルキルアニリンイオンなどを挙げることができ、基本的には、ゼオライトベータの有する細孔中に入ることが可能なアンモニウム類であれば、いずれでもよく、ここに例示したアンモニウム類に限定されるものではない。
該リフォールディング成形体のゼオライトベータの骨格を形成する元素は、一般にはケイ素と酸素、あるいはケイ素と酸素とアルミニウムであるが、ケイ素やアルミニウムの一部が他の元素に置換したゼオライトベータ及びその細孔中に前記アンモニウム類を含む置換ゼオライトベータも、不活性タンパク質の活性賦活機能を有する。ゼオライトベータの骨格ケイ素あるいはアルミニウムと置換可能なものの典型としては、例えば、ホウ素、燐、ガリウム、錫、チタン、鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、クロム、バナジウムなどを挙げることができるが、これらに留まるものではなく、基本的にゼオライトベータの構造を破壊しないものであればいずれでも良い。また、その置換量に関しても、ゼオライトベータの構造を破壊しない量であれば、置換量はいかなる量でもかまわず、該置換ゼオライトベータは、不活性、あるいは変性タンパク質のリフォールディング機能を発揮するリフォールディング成形体となり得る。
本発明のリフォールディング成形体を構成するゼオライトベータは、いずれも熱安定性、化学安定性に優れており、しかも安価であるうえ、繰り返し使用が可能であるので、本発明並びにそれを用いる不活性並びに変性タンパク質の機能賦活方法は、例えば、生化学品製造、医薬品製造にとって極めて有用であり、その経済効果は計り知れないものがある。
本発明は、不活性タンパク質の機能を賦活する能力を有する材料であるリフォールディング成形体に係わるものであり、本発明によって、1)タンパク質の種類を問わず広範な不活性タンパク質に対して、それらの本来の機能を賦活させる万能的物質・材料、すなわちBEA構造のゼオライト(ゼオライトベータ)からなるリフォールディング成形体を選定することができる、2)本発明のリフォールディング成形体に、前記タンパク質、例えば、大腸菌等の発現系で産生された高次構造が未形成なために不活性なタンパク質、あるいはある種の原因で立体構造が変化して失活したタンパク質を接触させることにより、それらのタンパク質の本来の機能・活性をリフォールディングにより賦活させることができる、3)本発明のリフォールディング成形体は、インクルージョンボディのタンパク質にも効力を有し、インクルージョンボディの効率的なリフォールディング方法において有用である、4)本発明のリフォールディング成形体に接触させ、不活性タンパク質の機能を賦活する方法は、タンパク質を構成するアミノ酸の鎖長・配列を問わず種々の変性タンパク質に適用可能な、一般性、普遍性のある、しかもリフォールディング率の高い効率的方法である、5)本発明のリフォールディング成形体を構成するゼオライトベータは、低コストであり、しかも、繰り返し使用可能である、6)本発明のリフォールディング成形体を構成する支持体も種々のものが利用できるので、入手しやすく安価である、7)本発明のリフォールディング成形体の作製方法も、また、簡単で安価である、8)本発明のリフォールディング成形体及びそれを用いる不活性タンパク質の機能賦活方法は、分子量10万を越える大型のタンパク質を含む種々の立体構造無秩序タンパク質のリフォールディングに適用できる、9)例えば、大腸菌の発現系によるタンパク質合成プロセスと本発明のリフォールディング成形体による不活性タンパク質の機能賦活とを組み合わせることにより、高次構造が制御されて、該タンパク質固有の本来機能が備わったタンパク質を生産する新規の活性タンパク質製造プロセスを提案・確立することができる、という格別の効果が奏される。
次に、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例等によって何ら制約を受けるものではない。
実施例及び比較例
以下、本実施例では、大腸菌発現系生産タンパク質及び変性タンパク質の機能賦活を説明するが、本発明は、実施例に限定・制限されるものではない。
1)試料等の調製
(a)リフォールディング成形体
非晶質シリカ・アルミナの成形体及び無機・セラミックス系支持体表面に塗布した非晶質シリカ・アルミナ被膜をドライコンバーション法及び固相変換法でゼオライトベータとする方法、濾紙や無機・セラミックス系支持体表面にその場合成法でゼオライトベータを堆積固定化する方法、支持体表面に接着剤でゼオライトベータを固定化する方法、接着テープなど接着面を利用してのゼオライトベータの固定化法などで、リフォールディング成形体を作製した。接着剤及び接着面を利用する後二者においては、予め自前で合成しておいたゼオライトベータ、又は市販品、及びそれらをイオン交換等修飾処理した各種ゼオライトベータを用いて、成形体の作製を行った。
(b)変性タンパク質溶液
活性賦活対象タンパク質として、表1のタンパク質及び表1備考欄に示した内容のRPA70(黄色ショウジョウバエ由来)、P53(ヒト由来)等を使用した。
(c)リフォールディングバッファー
一般には、リフォールディングバッファーとして、50mM HEPES pH7.5 / 0.5M NaCl / 20mM 2−メルカプトエタノール / 0.5(w/v)% ポリエチレングリコール 20000(リフォールディング因子) / 1(v/v)% Tween20(界面活性剤)の組成の液を用いた。表1に、用いたリフォールディングバッファーの詳細を示す。
2)活性測定操作
活性測定には、用いたタンパク質の働きに応じた方法を採用した。具体的には、以下に述べる4種の測定、すなわちゲルシフトアッセイ、ポリメラーゼアッセイ、リゾチーム活性測定及びトポイソメラーゼI 活性測定で行った。
(a)ゲルシフトアッセイ
1pmol の放射性同位体で標識したオリゴヌクレオチドDNA とリフォールディングしたタンパク質を、組成25mM HEPES pH7.4・50mM KCl・20% glycerol・0.1% NP-40・1mM DTT ・1mg/ml bovine serum albumin の溶液中で、氷上30分インキュベートし、4.5%のポリアクリルアミノゲルで0.5 ×TBE のバッファーを使い、4 ℃で電気泳動した。
タンパク質にDNA 結合性がある(すなわち活性がある)場合、DNA にタンパク質が結合し、これにより、電気泳動が遅くなりバンドがシフトするので、これにより、活性(すなわちリフォールディング率)を判定した。
(b)ポリメラーゼアッセイ
鋳型DNA として、poly(dA)oligo(dT)12-18あるいはDNase I-activate calf thymus DNAを使用し、反応液には組成(終濃度)50nmM TrisHCl pH7.5 ・1mM DTT ・15% glycerol・5mM MgCl2 ・0.5 μM dTTP (cold) (チミジル酸三リン酸)・[3H]-dTTP (5mCi/ml: 100-500cpm/pmol)のものを用いた。先ず、この反応液の濃度が2倍のもの10μl にタンパク質(酵素)サンプル溶液を加え、懸濁した後、37℃で1時間インキュベートした後、氷上に置き反応を停止させた。
その後、正方形に切ったDE81紙に反応液を滴下し、乾燥させた後、ビーカーの中に移して、未反応dTTPを溶解除去するために洗浄した。洗浄は、先ず5%リン酸水素二ナトリウム水溶液で3回行い、次いで蒸留水で3回、更に、エタノールで2回行い、その後、乾燥した。このようにして得た乾燥DE81紙をシンチレーターが入ったバイアルに入れ、シンチレーションカウンターで放射活性(cpm )を測定した。酵素サンプルの活性が強いほど、それで合成されるDNA に放射性同位体で標識したdTTPがより多く取り込まれ放射性が高くなるので、これによりタンパク質の活性を判定した。
(c)リゾチームの活性測定
基質に細菌M. lysodeikticusを選び、これを50mMリン酸バッファーで懸濁し、0.16mg/ml 濃度の基質溶液を調製した。この基質溶液480 μl に20μl のタンパク質(酵素リゾチーム)溶液を加え、室温で30分間インキュベートした。その後、波長450nm の吸光度を測定した。リゾチームは、細菌の細胞壁を分解する能力があるので、その能力、すなわち活性が高いほど吸光度は減少する。リゾチーム活性1 unitは1分間当たりに450nm の吸光度が0.001 減少することと定義した。
(d)トポイソメラーゼI 活性測定
0.5 μg のsupercoiled pBR322 とトポイソメラーゼ(Topoisomerase )I タンパク質を反応バッファー(10mM TrisHCl, pH7.5, 150mM NaCl, 5mM β-mercaptoethanol, 0.5mM EDTA)に懸濁し、37℃で30分インキュベーションした後、0.1%SDS を添加し反応を停止した。次に、これに0.5 μg/ml proeinase Kを添加し、37℃で30分インキュベーションし、液中のタンパク質トポイソメラーゼI を分解した。この後、この液を1%(w/v) アガロースで電気泳動し、0.5 μg/mlのエチジウムブロマイドでDNA染色し、UVトランスイルミネーターで上方にシフトしたDNAのバンドを確認することによってトポイソメラーゼI 活性測定を行った。
(リフォールディング操作例1)
市販の接着テープ(セロテープ)の接着面にゼオライトベータ粉末を敷き詰め固定化した膜に、前記の変性タンパク質(RPA70)溶液(濃度は0.5 〜1.0mg/ml)を0.5ml を滴下し、膜表面を溶液に浸した。該タンパク質のリフォールディング成形体上への吸着を確実にするために、しばらく放置した後、タンパク質変性剤を完全に除去するために、溶液を切り、膜表面を蒸留水で4回洗った。
その後、リフォールディング成形体上に、1ml のリフォールディングバッファー(50mM HEPES pH7.5、0.5MNaCl、20mM 2−メルカプトエタノール、リフォールディング因子及び非イオン系界面活性剤から構成)を滴下し、リフォールディング成形体上に吸着した該タンパク質を脱着・溶離させた。リフォールディング成形体を引き上げて、残った溶液を新しいエッペンドルフチューブに移し、上述のゲルシフトアッセイで活性測定を行ったところ、活性を示し、RPA70がリフォールディングしたことが確かめられた。
(リフォールディング操作例2)
市販の両面接着テープを用いて、両面ゼオライトベータ成形膜を作製し、用いた以外は、前記操作例1と全く同様な手順・操作で変性RPA70タンパク質のリフォールディングを行った。ゲルシフトアッセイで活性が認められ、リフォールディングが起こったことが確かめられた。
(リフォールディング操作例3)
市販の多孔質α−アルミナチューブ(円筒形、長さ5cm、口径5mm)の表面を、その場合成法でゼオライトベータ被覆した成形体を用いた以外は、前記操作例1と全く同様な手順・操作で変性RPA70タンパク質のリフォールディングを行った。ゲルシフトアッセイで活性が認められ、リフォールディングが起こったことが確かめられた。
(リフォールディング操作比較例1)
リフォールディング操作例1〜3で用いたRPA70変性タンパク質のリフォールディングを、微粉体のゼオライトベータを用いて行った。以下に、その操作を示した。本発明のリフォールディング成形体使用に比べ、遠心分離操作を3回も行い、その都度上澄み液除去、洗浄を繰り返す必要があり、ゼオライトベータ微粉体による操作は極めて煩雑であった。
1.5ml のエッペンドルフチューブに100mg のゼオライトベータ微粉体を入れ、0.5ml の6M塩酸グアニジン・20mMトリスアミノメタン三塩酸塩(TrisHCl )pH7.5 ・0.5M Nacl ・20mM 2−メルカプトエタノールを加えて懸濁した。これに、6M塩酸グアニジン・20mM 2−メルカプトエタノールを加え、氷上で1時間放置し、変性したRPA70タンパク質溶液(濃度は0.5 〜1.0mg/ml)を0.5ml 加えた。この混合液を、該タンパク質のゼオライトベータ微粉体上への吸着を確実にするために、低温室に置かれたROTARY CUTURE RCC-100 (IWAKI GLASS 社製)で、1時間攪拌した。
その後、10000 ×g で5秒間遠心して、ゼオライトベータ微粉体を沈殿させ、上澄みを除去した。次に、この沈殿したゼオライトベータ微粉体からタンパク質変性剤を完全に除去するために、これを1ml の20mM TrisHCl pH7.5・20mM 2−メルカプトエタノール(又は水)で4回洗った後、10000 ×g で5秒間遠心し、更に、生じた上澄みを捨てた。残ったゼオライトベータ微粉体に、1ml のリフォルディングバッファー(50mM HEPES pH7.5、0.5M NaCl 、20mM2−メルカプトエタノール、リフォ−ルディング因子及び非イオン系界面活性剤から構成)を加え、懸濁した。
ゼオライトベータ微粉体上に吸着した該タンパク質を脱着・溶離させるために、この懸濁液を再び低温下のROTARY CUTURE RCC-100 (IWAKI GLASS 社製)で攪拌した。その後、10000 ×g で5秒間遠心して、ゼオライトベータ微粉体を沈殿させ、該タンパク質を含む上澄みを新しいエッペンドルフチューブに移し、ゲルシフトアッセイによる活性測定に用いた。活性が認められ、RPA70のリフォールディングが確認された。
上記実施例に示されるように、リフォールディング成形体の使用により、DNA結合活性等のタンパク質本来の活性が、極めて簡単な操作で迅速に得られることが分かった。本発明のリフォールディング成形体は、種々の高次構造未形成並びに変性・失活タンパク質に適用できる、一般性、普遍性の高いリフォールディング成形体として有用であり、その適用は、実施例に示されたタンパク質に限定されるものではなく、任意のタンパク質に適用し得るものである。
以上詳述したように、本発明は、不活性タンパク質の機能賦活剤並びに機能賦活方法に係るものであり、本発明によって、大腸菌等の発現系で産生された高次構造が未形成なために不活性なタンパク質、あるいはある種の原因で立体構造が変化して失活したタンパク質の本来の機能・活性をリフォールディングにより賦活させることができる。この方法は、インクルージョンボディを効率よく、手軽にリフォールディングする方法として有用である。種々のタンパク質に適用可能な、一般性、普遍性のある、しかもリフォールディング率の高い効率的なリフォールディング成形体と、その使用方法を提供できる。本発明で用いるリフォールディング成形体を構成するゼオライトベータは、低コストであり、しかも、繰り返し使用が可能である。このリフォールディング成形体は、分子量10万を越える大型のタンパク質を含む種々の立体構造無秩序タンパク質のリフオールディングに効力を有する。したがって、更なる展開、例えば、大腸菌の発現系によるタンパク質合成プロセスと、本発明のリフォールディング成形体並びにその使用法とを組み合わせることにより、高次構造の制御された該タンパク質固有の本来機能が備わったタンパク質を生産する新規の活性タンパク質製造プロセス・システムを構築することができる。

Claims (12)

  1. 高次構造が無秩序なため不活性であるタンパク質の高次構造を整え活性にする、いわゆる巻き戻し機能を有するBEA構造のゼオライト(通称、ゼオライトベータ)を含む成形体で構成されることを特徴とするリフォールディング成形体。
  2. 成形体が、ゼオライトベータ、又はゼオライトベータとそれを支持する基材からなることを特徴とする、請求項1に記載のリフォールディング成形体。
  3. タンパク質と接触することにより、巻き戻し機能を発揮する請求項1に記載のリフォールディング成形体。
  4. タンパク質変性剤、界面活性剤及び/又はリフォールディングバッファーの存在下で、タンパク質の巻き戻しが行われる、請求項1に記載のリフォールディング成形体。
  5. 高次構造が無秩序なため不活性であるタンパク質が、大腸菌の発現系で生産されたタンパク質であることを特徴とする、請求項1に記載のリフォールディング成形体。
  6. 高次構造が無秩序なため不活性であるタンパク質が、熱履歴の原因で失活したタンパク質であることを特徴とする、請求項1に記載のリフォールディング成形体。
  7. ゼオライトベータが、アンモニウムイオン及び/又は有機アンモニウムイオンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のリフォールディング成形体。
  8. 有機アンモニウムが、モノ、ジ、トリ及び/又はテトラアルキルアンモニウム(アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル)イオンであることを特徴とする、請求項7に記載のリフォールディング成形体。
  9. ゼオライトベータの骨格構造が、酸素とそれ以外の1種又は2種以上の元素からなることを特徴とする、請求項1に記載のリフォールディング成形体。
  10. ゼオライトベータの骨格構造が、ケイ素及び酸素、又はケイ素、アルミニウム及び酸素からなることを特徴とする、請求項9に記載のリフォールディング成形体。
  11. 溶液中に分散したタンパク質と接触することによって、タンパク質巻き戻し機能を発揮する、請求項1から10のいずれかに記載のリフォールディング成形体。
  12. 溶液中の前記タンパク質を、該リフォールディング成形体と混合、又は該成形体上に流す、又は滴下することにより、該タンパク質を該成形体に吸着させ、しかる後、脱着させる操作で該タンパク質の巻き戻しを起こさせる機能を有する、請求項1から11のいずれかに記載のリフォールディング成形体。

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