原油やガソリンなどの揮発性石油類の貯蔵には、主に浮屋根式タンクが用いられている。この浮屋根式タンクは、鉛直上方側を開口した有底円筒形のタンク本体と、このタンク本体内に貯蔵されている貯蔵油の液面上に浮かべられる浮屋根とを有し、浮屋根が貯蔵油の液位とともに上下することによって、貯蔵油の液面が空気に直接触れることを防ぎ、貯蔵油の蒸発損失を少なくすると共に蒸気相をなくして安全性を保つようにしている。
一方、地震等による外部からの振動、特に長時間にわたって続く長周期地震動によって、タンク内の貯蔵油が大きく波立つスロッシングと呼ばれる(液面揺動とも呼ばれる)現象が生じ得ることが知られている。このスロッシングが発生すると、波状に流動する貯蔵油と共に浮屋根が大きく揺動して、浮屋根が損傷してしまったり、貯蔵油が浮屋根の上に露出してしまったり、貯蔵油がタンク本体の壁面を乗り越えて外部に漏れるなどの事態が起きる可能性があり、最悪の場合には大規模な火災が発生する虞がある。
上記スロッシングを抑制するための従来技術として、例えば特許文献1,2に開示されたものがある。
特許文献1に開示されたスロッシング抑制装置は、図11に示すように、タンク103内に向けて開かれた開口部104を有する内室102と、開口部104に設けられて内室102に向かう貯蔵液107の流れのみを許容する逆止弁105と、内室102の下部に設けられて内室102内に取り込まれた貯蔵液107をタンク103内に向けて排出する流出孔106とを有している。このスロッシング抑制装置によれば、スロッシングの発生時に、タンク103内の貯蔵液107が波状に流動することにより、貯蔵液107が開口部104より内室102内に流入し、内室102内の液位が上昇する。一方、内室102に流入した貯蔵液107は、開口部104から再び内室102外に流出しようとするが、開口部104に形成された逆止弁105が閉じるため、開口部104を経由して内室102外へ貯蔵液107が流出することが阻止される。このため、内室102内の貯蔵液7は、液位が高い状態で内室102内に保持されるが、同時に流出孔106より徐々にタンク103中に流出する。上記サイクルを繰り返すことにより、スロッシング時の貯蔵液107が有するエネルギを、流出孔106から流出する際の粘性摩擦により消失させ、スロッシングを早期に鎮静化するようにしている。
一方、特許文献2に開示された浮屋根式貯蔵タンクでは、図12に示すように、浮屋根115の下面に線条体119を垂下させ、一対の板状体112,113を傾動自在に連結して成る抵抗板110を、各板状体112,113が略水平に展開した状態から上方に閉じる方向へのみ傾動し得るように、線条体119に吊り下げている。尚、浮屋根115は、タンク本体111の内周面に対しシール装置116を介して収容されており、浮屋根115の上面外周には、周方向に分割されたフラップ状のウエザーシールド117がシール装置116の上方に位置するよう傾動自在に取り付けられている。また、符号114は、板状体112,113を略水平に展開した状態から下方へ傾動しないよう保持するスプリングである。この浮屋根式貯蔵タンクによれば、スロッシングの発生により浮屋根115が上方に向かって揺動する際に抵抗板110の各板状体112,113が略水平に展開して液体118から抵抗力を受けるので、浮屋根115の揺動を抑制し、スロッシングを早期に鎮静化するようにしている。
特開平7−137790号
特開平9−142575号
しかしながら、特許文献1,2に開示される従来のスロッシング抑制装置は、タンクの側壁または浮屋根に取り付けられるため、既に設置され運用されている既設タンクに適用するには、既存のタンクや浮屋根の形状や構造を変更する大規模な工事が必要になり、多大な費用がかかる。また、元来、既設の浮屋根は、特許文献2に開示されるようなスロッシング抑制装置を設置することを予定して製造されていないため当該抑制装置を設置するのに必要な強度を有していない場合が多く、浮屋根自体を交換せざるを得ない場合が多い。
このため、既設の浮屋根式タンクについて現実に考えられているスロッシング対策は、貯蔵油の液位を下げることや浮屋根を補強することである。しかし、貯蔵油の液位を下げると当然に貯蔵量が減るため設備効率が悪化してしまうし、浮屋根の補強は費用がかかる割にスロッシングに耐え得るための方策であって積極的にスロッシングを抑制する方策ではないため、最善策とは言えない。
また、タンクの新設、既設を問わず、タンクの側壁にスロッシング抑制装置を取り付ける場合、当該装置と浮屋根との接触を避けるために浮屋根の移動範囲が制限されて、貯蔵油の増減に浮屋根が追従できない虞があり、またスロッシング時に浮屋根と抑制装置とが衝突して浮屋根や抑制装置が損傷してしまう虞もある。
さらに揮発性石油類の貯蔵に用いる浮屋根式タンク以外の液体貯蔵タンクについても、貯蔵液のスロッシング対策が必要となる場合があり、さらに地震以外の振動に対してもスロッシング対策が必要となる場合がある。例えば、振動に敏感な化学薬液を貯留したタンクや、活魚等の水生生物を収容した水槽などは、運搬の際に生じる振動により化学薬液や飼育水がスロッシングを起こし、化学薬液の性状に変化をきたしたり水生生物に悪影響を与える可能性が考えられ、対策が望まれるが、従来のスロッシング抑制装置では、上述したように既存のタンクの形状や構造を変更する必要がある。
そこで本発明は、既設のタンクまたは浮屋根の形状や構造等を変更することなく、スロッシングを抑制することができる装置および方法を提供することを目的とする。また、本発明は、浮屋根の移動を妨げることのないスロッシング抑制装置および方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、タンク内に貯蔵された液体のスロッシングを抑制する装置において、液体中で該液体の流動により遊動する抵抗板と、抵抗板よりもタンクの底面側に位置して抵抗板を液体中で支持する支持体と、抵抗板と支持体とを接続し、抵抗板が支持体から一定距離を超えて離れることを制限するとともに、抵抗板が支持体に接近することを許容する接続手段とを有するようにしている。
したがって、貯蔵液中で支持体につながれて浮遊する抵抗板とスロッシングにより流動する液体との間で流体抵抗が生じ、スロッシングのエネルギが消費され、スロッシングを減衰させることができる。従って、スロッシング抑制装置を単にタンク内に投入するか或いは支持体をタンク底面に固定しておくだけで、スロッシングを効果的に抑制することが可能となる。しかも、抵抗板は貯蔵液中で浮遊しているとともに接続手段が抵抗板と支持体との接近を許容するので、タンクが浮屋根を有する場合でも、浮屋根の移動に追従して抵抗板が移動し、浮屋根の移動を妨げない。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロッシング抑制装置において、支持体は、液体中を沈んでタンクの底面に移動可能に設置されるともに、浮力により浮かぼうとする抵抗板を接続手段を介して繋ぎとめるようにしている。この構成の場合、支持体は抵抗板を貯蔵液中に浮遊させる錘として機能し、スロッシング抑制装置は、単にタンク内に投入するだけで設置可能となる。
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載のスロッシング抑制装置において、支持体の液面側に向く面を表面とし且つタンクの底面側に向く面を裏面として、支持体は、支持体裏面側にある液体が支持体表面方向へ移動する際に生じる抵抗力よりも、支持体表面側にある液体が支持体裏面方向へ移動する際に生じる抵抗力の方が大きくなる構造を備えるようにしている。
したがって、貯蔵液は支持体の裏面側から表面側に移動し易く、支持体の表面側から裏面側には移動し難くなる。支持体はスロッシング時の流速が低いタンク底面に設置されるため、支持体の周囲を流動する貯蔵液によって支持体が移動してしまうことは防止されるが、スロッシングのエネルギが大きく鉛直上方に向かう貯蔵液の流動により抵抗板を上昇させようとする力が強く作用する結果、抵抗板に引っ張られて支持体がタンク底面から離れてしまう場合が考えられる。この場合でも、貯蔵液は支持体の表面側から裏面側に移動し難いため、貯蔵液と支持体との間で大きな流体抵抗が生じ、支持体がタンク底面から大きく浮き上がることが防止されるとともに、支持体において生じる流体抵抗によってスロッシングの多くのエネルギが消費される。しかも、貯蔵液は支持体の裏面側から表面側には移動し易いため、上昇した支持体は自重により速やかに貯蔵液中を沈んでタンク底面に着底する。従って、スロッシングによる次の波が来るまでに、すなわち持ち上げられていた液面を下げようとする貯蔵液の流動が来るまでに、支持体が着底して抵抗板がスロッシング抑制に有効な位置に復帰しているようにできる。
また、請求項4記載の発明は、請求項2または3記載のスロッシング抑制装置において、支持体がタンクの底面の中心よりに移動することを制限する規制手段を備えている。スロッシング時における液体の流速はタンク側面の液面近傍で最も大きくなるため、支持体がタンクの底面の中心部に移動するとスロッシング抑制効果が低減してしまう虞があるが、このように構成することで、支持体がタンク底面中心部に移動してしまうことによるスロッシング抑制効果の低下を防止できる。
また、請求項5記載の発明は、請求項1記載のスロッシング抑制装置において、支持体は、タンクの底面に固定され、浮力により浮かぼうとする抵抗板を接続手段を介して繋ぎとめるようにしている。また、請求項6記載の発明は、請求項1記載のスロッシング抑制装置において、支持体は、タンクの底部であり、浮力により浮かぼうとする抵抗板を接続手段を介して繋ぎとめるようにしている。この場合でも、既設のタンクや浮屋根の形状および構造を特に変更することなく、簡単にスロッシング抑制装置を設置できる。
また、請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか1つに記載のスロッシング抑制装置において、抵抗板の液面側に向く面を表面とし且つタンクの底面側を向く面を裏面として、抵抗板は、抵抗板表面側にある液体が抵抗板裏面方向へ移動する際に生じる抵抗力よりも、抵抗板裏面側にある液体が抵抗板表面方向へ移動する際に生じる抵抗力の方が大きくなる構造を備えるようにしている。
したがって、貯蔵液は抵抗板の表面側から裏面側に移動し易く、抵抗板の裏面側から表面側には移動し難くなる。スロッシングによる液面降下時に、抵抗板の鉛直下方側に移動しようとする貯蔵液と、浮力により浮かぼうとする抵抗板との間で流体抵抗が生じるが、貯蔵液は抵抗板の表面側から裏面側に移動し易いため、抵抗板が流体抵抗により押し下げられて支持体に近づき過ぎることが防止され、さらに抵抗板の浮力によって速やかに抵抗板がスロッシング抑制に有効な位置に復帰する。一方、スロッシングによる液面上昇時には、抵抗板の鉛直上方側に移動しようとする貯蔵液と、支持体に繋がれているため同位置に居続けようとする抵抗板との間で流体抵抗が生じ、スロッシングのエネルギが消費される。この際、貯蔵液は抵抗板の裏面側から表面側には移動し難くいため、貯蔵液と抵抗板との間で生じる流体抵抗は大きなものとなり、スロッシングの多くのエネルギが消費される。
また、請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれか1つに記載のスロッシング抑制装置において、上記タンクは、鉛直上方側を開口したタンク本体と、タンク本体内に貯蔵されている液体の液面上に浮かべられる浮屋根とを有する浮屋根式タンクであるものとしている。この場合、地震に起因するスロッシング災害が懸念され有効な対策が渇望されている浮屋根式タンクのスロッシング対策に本発明を適用できる。
また、請求項9記載の発明は、請求項1から8のいずれか1つに記載のスロッシング抑制装置において、平常時における抵抗板の位置が、タンクの底面から液面までの高さの半分より鉛直上方で尚且つ液面よりも鉛直下方に設定されるようにしている。
スロッシング時における液体の流速はタンク側面の液面近傍で最も大きくなるため、比較的液面近くとなる位置に抵抗板を設置することで、流動する液体と抵抗板との間で生じる流体抵抗によりスロッシングを効果的に減衰することができる。一方で、抵抗板を液面に近づけ過ぎると、浮屋根と抵抗板が接触してしまう可能性があるし、スロッシング時に浮屋根が鉛直上方に持ち上がる際に抵抗板も浮屋根に引っ張られる可能性がある。したがって、タンクの底面から液面までの高さの半分より鉛直上方で尚且つ液面よりも鉛直下方に、抵抗板の位置を設定することで、浮屋根と抵抗板が接触してしまう不都合や抵抗板が浮屋根に引っ張られる不都合を回避しつつ、スロッシングを効果的に減衰することができる。
また、請求項10記載の発明は、請求項1から9のいずれか1つに記載のスロッシング抑制装置において、平常時における抵抗板の位置が、タンクの底面の中心よりもタンクの側壁よりに設定されるようにしている。タンクの側壁付近では、スロッシングによる波の振幅が大きくなることから、この位置に抵抗板を設定することで、効果的にスロッシングを抑制することができる。
また、請求項11記載の発明は、タンク内に貯蔵された液体のスロッシングを抑制する方法において、液体中で該液体の流動により遊動する抵抗板と、液体中を沈んでタンクの底面に移動可能に設置されるともに、浮力により浮かぼうとする抵抗板を液体中で支持する支持体と、抵抗板と支持体とを接続し、抵抗板が支持体から一定距離を超えて離れることを制限するとともに、抵抗板が支持体に接近することを許容する接続手段とを有する少なくとも1つのスロッシング抑制装置を、予めタンク内に投入しておき、スロッシング抑制装置と流動する液体との相対移動により生じる流体抵抗によってスロッシングを減衰するようにしている。
したがって、既設のタンクや浮屋根の形状および構造をまったく変更することなく、貯蔵液を抜く必要もなく単にタンクにスロッシング抑制装置を投入するだけで、スロッシングを効果的に抑制することができる。しかも、抵抗板は貯蔵液中で浮遊しているとともに接続手段が抵抗板と支持体との接近を許容するので、タンクが浮屋根を有する場合でも、浮屋根の移動に追従して抵抗板も移動し、浮屋根の移動を妨げない。
請求項1記載のスロッシング抑制装置によれば、タンクや浮屋根の形状および構造を変更することなく、スロッシング抑制装置を単にタンク内に投入するか或いは支持体をタンク底面に固定しておくだけで、スロッシングを効果的に抑制することが可能となる。従って、スロッシング対策として、既存のタンクや浮屋根の形状や構造を変更する大規模な工事が不要となり、大幅なコスト低減に寄与できる。しかも、抵抗板は貯蔵液中で浮遊しているとともに接続手段が抵抗板と支持体との接近を許容するので、タンクが浮屋根を有する場合でも、浮屋根の移動に追従して抵抗板も移動し、浮屋根の移動を妨げない。従って、貯蔵液の増減による浮屋根の移動を妨げることがなく、また、スロッシング時に浮屋根と抑制装置とが衝突して浮屋根や抑制装置が損傷してしまう事態も回避できる。
さらに、請求項2記載のスロッシング抑制装置によれば、支持体は、液体中を沈んでタンクの底面に移動可能に設置されるともに、浮力により浮かぼうとする抵抗板を接続手段を介して繋ぎとめるので、タンクから貯蔵液を抜く必要はなく、単にタンク内に投入するだけで設置可能となる。
さらに、請求項3記載のスロッシング抑制装置によれば、支持体は、支持体裏面側にある液体が支持体表面方向へ移動する際に生じる抵抗力よりも、支持体表面側にある液体が支持体裏面方向へ移動する際に生じる抵抗力の方が大きくなる構造を備えるので、支持体がタンク底面から離れて上昇する場合でも、貯蔵液と支持体との間で大きな流体抵抗が生じ、支持体がタンク底面から大きく浮き上がることが防止されるとともに、支持体において生じる流体抵抗によってスロッシングの多くのエネルギが消費される。しかも、貯蔵液は支持体の裏面側から表面側には移動し易いため、上昇した支持体は自重により速やかに貯蔵液中を沈んでタンク底面に着底する。従って、スロッシングによる次の波が来るまでに、すなわち持ち上げられていた液面を下げようとする貯蔵液の流動が来るまでに、支持体が着底して抵抗板がスロッシング抑制に有効な位置に復帰しているようにできる。
さらに、請求項4記載のスロッシング抑制装置によれば、支持体がタンクの底面の中心よりに移動することを制限する規制手段を備えるので、支持体がタンク底面中心部に移動してしまうことによるスロッシング抑制効果の低下を防止できる。
さらに、支持体がタンク底面に固定される請求項5,6記載のスロッシング抑制装置によっても、既設のタンクや浮屋根の形状および構造を特に変更することなく、簡単にスロッシング抑制装置を設置できる。
さらに、請求項7記載のスロッシング抑制装置によれば、抵抗板は、抵抗板表面側にある液体が抵抗板裏面方向へ移動する際に生じる抵抗力よりも、抵抗板裏面側にある液体が抵抗板表面方向へ移動する際に生じる抵抗力の方が大きくなる構造を備えるので、スロッシングによる液面降下時に、抵抗板が流体抵抗により押し下げられて支持体に近づき過ぎることが防止され、さらに抵抗板の浮力によって速やかに抵抗板がスロッシング抑制に有効な位置に復帰する。一方、スロッシングによる液面上昇時には、貯蔵液と抵抗板との間で大きな流体抵抗を生じ、スロッシングの多くのエネルギが消費される。
さらに、請求項8記載のスロッシング抑制装置によれば、地震に起因するスロッシング災害が懸念され有効な対策が渇望されている浮屋根式タンクのスロッシング対策に本発明を適用できる。
さらに、請求項9記載のスロッシング抑制装置によれば、平常時における抵抗板の位置が、タンクの底面から液面までの高さの半分より鉛直上方で尚且つ液面よりも鉛直下方に設定されるので、浮屋根と抵抗板が接触してしまう不都合や抵抗板が浮屋根に引っ張られる不都合を回避しつつ、スロッシングを効果的に減衰することができる。
さらに、請求項10記載のスロッシング抑制装置によれば、スロッシングによる波の振幅が大きくなるタンクの側壁よりに抵抗板が設定されるので、スロッシングを効果的に減衰することができる。
さらに、請求項11記載のスロッシング抑制方法によれば、既設のタンクや浮屋根の形状および構造をまったく変更することなく、貯蔵液を抜く必要もなく単にタンクにスロッシング抑制装置を投入するだけで、スロッシングを効果的に抑制することができる。従って、スロッシング対策として、既存のタンクや浮屋根の形状や構造を変更する大規模な工事が不要となり、大幅なコスト低減に寄与できる。しかも、抵抗板は貯蔵液中で浮遊しているとともに接続手段が抵抗板と支持体との接近を許容するので、タンクが浮屋根を有する場合でも、浮屋根の移動に追従して抵抗板も移動し、浮屋根の移動を妨げない。従って、貯蔵液の増減による浮屋根の移動を妨げることがなく、また、スロッシング時に浮屋根と抑制装置とが衝突して浮屋根や抑制装置が損傷してしまう事態も回避できる。
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1から図4に本発明のスロッシング抑制装置および方法の実施の一形態を示す。このスロッシング抑制装置1は、タンク5内に貯蔵された液体8中で該液体8の流動により遊動する抵抗板2と、抵抗板2よりもタンク5の底面S1側に位置して抵抗板2を液体8中で支持する支持体3と、抵抗板2と支持体3とを接続し、抵抗板2が支持体3から一定距離を超えて離れることを制限するとともに、抵抗板2が支持体3に接近することを許容する接続手段4とを有している。
本実施形態におけるタンク5は、鉛直上方側を開口したタンク本体6と、このタンク本体6内に貯蔵されている液体8の液面S2上に浮かべられる浮屋根7とを有する浮屋根式タンクとし、このタンク5に貯蔵される液体8は、原油やガソリンなどの揮発性石油類(以下、貯蔵油8とも表記する)であるものとしている。浮屋根式タンク5は、例えば既に設置され運用されている既存の物であり、タンク本体6は鉛直上方側が開放された有底円筒形を成し、浮屋根7はタンク本体6の円筒内径Wよりも直径の小さい円板形を成している。
また、本実施形態における支持体3は、液体8中を沈んでタンク5の底面S1に移動可能に設置されるともに、浮力により浮かぼうとする抵抗板2を接続手段4を介して繋ぎとめるものとしている。支持体3を構成する材料には、貯蔵油8中で沈む材質すなわち貯蔵油8の密度よりも大きい密度を有する材質であって、耐油性すなわち油による性能低下や形状変化が少ない性質を備える材質を有する物、例えば鉄などの金属や合金を用いることが好ましい。
また、本実施形態における抵抗板2は、貯蔵油8内で浮力を発生する物としている。抵抗板2を構成する材料には、貯蔵油8中で浮かぶ材質すなわち同体積の貯蔵油8よりも軽い材質であって且つ耐油性を備える材質を有する物、例えばプラスチックや木などを用いることが好ましい。但し、抵抗板2が必要な浮力を備えるために、例えば抵抗板2を中空構造としても良く、さらに図7に示すように浮袋や風船などの浮力付与手段9を抵抗板2に付加して、必要な浮力を得るようにしても良い。
また、本実施形態では、接続手段4として、例えばワイヤやロープなどの変形可能な線形部材を用いている。但し、伸縮自在のロッド(例えばテレスコープ形シリンダ構造を備えたもの)や可撓性の棒材や紐材(例えばゴム製ロッドやゴム製紐)あるいは鎖などを接続手段4として用いても良い。接続手段4を構成する材料には、貯蔵油8がスロッシングを起こした場合でも抵抗板2を支持体3に繋ぎとめておける強度を備える材質であって且つ耐油性を備える材質を有する物を用いることが好ましく、例えば鋼線材製ワイヤを接続手段4として用いることが好ましい。例えば本実施形態では、3本のワイヤ4を用いて抵抗板2と支持体3とを連結している。
さらに本実施形態の抵抗板2は、抵抗板表面2a側にある液体8が抵抗板裏面2b方向へ移動する際に生じる抵抗力よりも、抵抗板裏面2b側にある液体8が抵抗板表面2a方向へ移動する際に生じる抵抗力の方が大きくなる構造を備えている。換言すれば、抵抗板2は、抵抗板2と貯蔵油8とが鉛直上下方向に相対移動をする場合に、抵抗板表面2a側にある液体8は抵抗板裏面2b方向へ移動し易く、抵抗板裏面2b側にある液体8は抵抗板表面2a方向へ移動し難い構造を備えている。具体的には本実施形態では、図3に示すように、抵抗板2の表面2aから裏面2bへと貫通する複数の孔10を設けるとともに、表面2a側の孔10の直径D1が裏面2b側の孔10の直径D2よりも大きくなるように、孔10の内周面にテーパを設けている。即ち、抵抗板2に設けられた孔10は抵抗板2の表面2aから裏面2bに向かって先細となっている、換言すれば抵抗板2の裏面2bから表面2aに向かって末広となっている。従って、抵抗板2の表面では孔10の径が大きいため、貯蔵油8は抵抗板2の表面2aから裏面2bには通過し易く(図3の矢印X1で示す)、抵抗板2の裏面では孔10の径が小さいため、貯蔵油8は抵抗板2の裏面2bから表面2aには通過し難くなる(図3の矢印X2で示す)。
一方、本実施形態の支持体3は、支持体裏面3b側にある液体8が支持体表面3a方向へ移動する際に生じる抵抗力よりも、支持体表面3a側にある液体8が支持体裏面3b方向へ移動する際に生じる抵抗力の方が大きくなる構造を備えている。換言すれば、支持体3は、支持体3と貯蔵油8とが鉛直上下方向に相対移動をする場合に、支持体裏面3b側にある液体8は支持体表面3a方向へ移動し易く、支持体表面3a側にある液体8は支持体裏面3b方向へ移動し難い構造を備えている。具体的には本実施形態では、図4に示すように、支持体3の表面3aから裏面3bへと貫通する複数の開口11を設けるとともに、この開口11のそれぞれに、支持体裏面3bから支持体表面3aへ液体8が開口11を通過することを許容し、支持体表面3aから支持体裏面3bへ液体8が開口11を通過することを制限する逆止弁12を設けている。この逆止弁12は、支持体表面3a側の開口11を閉塞および開放できるように、ヒンジなどの連結手段を用いて当該開口11に取り付けられる。尚、開口11に対する逆止弁12の開放位置を制限する手段13として、例えばロープやばねなど用いて、逆止弁12における開放時に開口11から離れる部分と支持体表面3aとを接続するようにしても良い。従って、貯蔵油8が支持体3の裏面3b側から表面3a側に移動する際には逆止弁12が開くため、貯蔵油8は支持体3の裏面3b側から表面3a側に通過し易く(図4の矢印X3で示す)、貯蔵油8が支持体3の表面3a側から裏面3b側に移動する際には逆止弁12が閉じるため、貯蔵油8は支持体3の表面3a側から裏面3b側に通過し難くなる(図4の矢印X4で示す)。
また、本実施形態では、平常時における抵抗板2の位置(以下、基準位置Pとも呼ぶ。)を、タンク5の底面S1から液面S2までの高さHの半分より鉛直上方で尚且つ液面S2よりも鉛直下方に設定している。抵抗板2の基準位置Pを、タンク5の底面S1から液面S2までの高さHの半分より鉛直上方に設定するのは、スロッシング時における液体8の流速はタンク側面の液面S2近傍で最も大きくなるため、比較的液面S2近くとなる位置に抵抗板2を設置することで、スロッシングする液体8と抵抗板2との相対移動により生じる流体抵抗によりスロッシングを効果的に減衰することができるからである。また、抵抗板2の基準位置Pを、液面S2よりも鉛直下方に設定するのは、抵抗板2を液面S2に近づけ過ぎると、浮屋根7と抵抗板2が接触してしまう可能性があるし、スロッシング時に浮屋根7が鉛直上方に持ち上がる際に、抵抗板2も浮屋根7に引っ張られる可能性があるためである。但し、抵抗板2の厳密な基準位置Pは、タンク本体6の直径Wや深さ、または抑制対象となる波の周期などによって変わり得るので、タンク形状や抑制対象としている振動の種類などに応じて、適宜変更しても良い。
本実施形態における支持体3の形状は、例えばタンク本体6の円筒内径Wの2分の1よりも直径の小さい円板形としており、抵抗板2の形状は、支持体3とほぼ同じ直径を有する円板形としている。この場合、円筒形を成すタンク本体6に複数のスロッシング抑制装置1を効率良く設置できる。例えば本実施形態では2つのスロッシング抑制装置1をタンク本体6に投入している。但し、支持体3や抵抗板2の形状は本実施形態のような円板形に限定されず、タンク形状などに合わせて適宜変更してよい。各スロッシング抑制装置1はタンク本体6の底面S1の中心よりもタンク本体6の側壁6aよりに設置されている。タンク本体6の側壁6a付近では、スロッシングによる波の振幅が大きくなることから、この位置にスロッシング抑制装置1を設置することで、効果的にスロッシングを抑制することができる。尚、タンク本体6に設置するスロッシング抑制装置1の数は本実施形態の例に限定されず、単数もしくは目的とするスロッシング減衰量が得られる複数のスロッシング抑制装置1をタンク本体6に設置して良い。図1は平常時の浮屋根式タンク5およびスロッシング抑制装置1を示す。支持体3が錘として機能し、支持体3にワイヤ4を介して連結された抵抗板2が貯蔵油8中の基準位置Pにて浮遊(セミフローティング)している。
以上のように構成されたスロッシング抑制装置1によれば、次のように作動して貯蔵油8のスロッシングを抑制することができる。図2は、地震等により貯蔵油8がスロッシングを起こした状態を示す。スロッシング(液面揺動)により、貯蔵油8は、タンク本体6の一方の側壁6a付近では液面S2を下げ他方の側壁6a付近では液面S2を上げる動作を交互に繰り返す波状流動を起こす。これにより、浮屋根7は大きく交互に傾こうとする。
浮屋根7が鉛直下方に沈み込もうとする側のスロッシング抑制装置1Aでは、液面S2が下がることにより流動する貯蔵油8が鉛直下方側に移動しようとする。このため、抵抗板2の鉛直下方側に移動しようとする貯蔵油8と、浮力により浮かぼうとする抵抗板2との間で流体抵抗が生じ、スロッシングのエネルギが消費される。また、ワイヤ4が柔軟に変形して抵抗板2が支持体3に接近することを許容する。ここで、貯蔵油8は抵抗板2の表面2aから裏面2bに通過し易いため、抵抗板2が支持体3に近づき過ぎることが防止され、さらに抵抗板2の浮力によって速やかに抵抗板2が基準位置Pに復帰する。従って、スロッシングによる次の波が来るまでに、すなわち下がっていた液面S2を持ち上げようとする貯蔵油8の流動が来るまでに、抵抗板2が基準位置Pに復帰しているようにできる。
同時に、浮屋根7が鉛直上方に持ち上がる側のスロッシング抑制装置1Bでは、液面S2が上がることにより流動する貯蔵油8が鉛直上方に移動しようとする。これに対して、錘として機能する支持体3が抵抗板2の上昇を妨げるので、抵抗板2の鉛直上方側に移動しようとする貯蔵油8と、支持体3の重みにより基準位置Pに居続けようとする抵抗板2との間で流体抵抗が生じ、スロッシングのエネルギが消費される。さらに、貯蔵油8は抵抗板2の裏面2bから表面2aには通過し難くいため、貯蔵油8と抵抗板2との間で生じる流体抵抗は大きなものとなり、スロッシングの多くのエネルギが消費される。ここで、支持体3はスロッシング時の流速が低いタンク底面S1に設置されるため、支持体3の周囲を流動する貯蔵油8によって支持体3が移動してしまうことは防止されるが、スロッシングのエネルギが大きく鉛直上方に向かう貯蔵油8の流動により抵抗板2を上昇させようとする力が強く作用する結果、抵抗板2に引っ張られて支持体3がタンク底面S1から離れてしまう場合が考えられる。この場合でも、貯蔵油8は支持体3の表面3a側から裏面3b側に通過し難いため、貯蔵油8と支持体3との間で大きな流体抵抗が生じ、支持体3がタンク底面S1から大きく浮き上がることが防止されるとともに、支持体3において生じる流体抵抗によってもスロッシングの多くのエネルギが消費される。しかも、貯蔵油8は支持体3の裏面3b側から表面3a側には通過し易いため、上昇した支持体3は自重により速やかに貯蔵油8中を沈んでタンク底面S1に着底する。従って、スロッシングによる次の波が来るまでに、すなわち持ち上げられていた液面S2を下げようとする貯蔵油8の流動が来るまでに、支持体3が着底して抵抗板2が基準位置Pに復帰しているようにできる。
以上のように、スロッシング抑制装置1によって、液面S2を下げる貯蔵油8の流動に対する抵抗作用と液面S2を上げる貯蔵油8の流動に対する抵抗作用とが繰り返されることにより、スロッシングが速やかに減衰され沈静化される。特に、本実施形態のように、一対のスロッシング抑制装置1A,1Bが、液面降下に対する抵抗作用と液面上昇に対する抵抗作用とを交互に繰り返すことにより、スロッシングをより迅速に減衰させることができる。
本実施形態のスロッシング抑制装置1によれば、既設のタンク本体6や浮屋根7の形状および構造をまったく変更することなく、貯蔵油8を抜く必要もなく単にタンク本体6にスロッシング抑制装置1を投入するだけで、スロッシングを効果的に抑制することが可能である。従って、スロッシング対策として、既存のタンク本体6や浮屋根7の形状や構造を変更する大規模な工事が不要となり、大幅なコスト低減に寄与できる。しかも、抵抗板2は貯蔵油8中で浮遊しているとともにワイヤ4が容易に変形して抵抗板2と支持体3との接近を許容するので、浮屋根7の移動に追従して抵抗板2も移動し、浮屋根7の移動を妨げない。従って、貯蔵油8の増減による浮屋根7の移動を妨げることがなく、また、スロッシング時に浮屋根7と抑制装置1とが衝突して浮屋根7や抑制装置1が損傷してしまう事態も回避できる。尚、タンク本体6の直径や深さに対して貯蔵油8の液位が充分に低くなった場合には、スロッシングの影響も少なくなるため、タンク底面S1から液面S2までの高さHが予め定めた値以下となった場合には、スロッシング抑制装置1を取り外すようにしても良い。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば図5に示すように、アンカ等の固定手段14,15を用いて支持体3をタンク底面S1に固定しても良い。この場合、支持体3を構成する材料に貯蔵油8中で沈む材質を用いる必要は必ずしもない。さらに図6に示すようにアンカ等の固定手段14,15を用いてワイヤ等の接続手段4をタンク底面S1に直接固定しても良い。この場合は、タンク本体6の底部6bが支持体3として機能する。例えば貯蔵油8を抜いた状態として、タンク底面S1に穿孔を設け、この穿孔に周知のグリップアンカ14を打ち込み、このグリップアンカ14に支持体3または接続手段4をボルト15で固定する。この場合でも、既設のタンク本体6や浮屋根7の形状および構造を特に変更することなく、簡単にスロッシング抑制装置1を設置できる。但し、このようにタンク底面S1に支持体3または接続手段4を固定する場合、アンカ14やボルト15による固定部およびタンク本体6の底部6bは、抵抗板2の流体抵抗によって生じる引き抜き力に耐える強度を備える必要がある。
また、抵抗板2および支持体3における流体抵抗を制御する構造は、上述の実施形態の例に限定されるものではない。例えば、抵抗板2について孔10の代わりに開口11および逆止弁12を設けても良く、或いは支持体3について開口11および逆止弁12の代わりに孔10を設けても良い。但し、抵抗板2と支持体3とでは流体抵抗を大きくするべき面が逆であるため、抵抗板2に設ける逆止弁12の位置は支持体3におけるものと表裏逆とし、支持体3に設ける孔10の形状は抵抗板2におけるものと表裏逆とする。また、抵抗板2は、丸孔10を設けたものに限らず、グリッド状すなわち格子状としても良く、この場合も格子内の空間が抵抗板2の裏面2bから表面2aに向かって末広となるように形成することが好ましい。また、抵抗板2は、図8に示すように鉛直上方に向かって尖った傘形を成すようにしても良い。このような形状を採用することによっても、抵抗板表面2a側にある液体8が抵抗板裏面2b方向へ移動する際に生じる抵抗力よりも、抵抗板裏面2b側にある液体8が抵抗板表面2a方向へ移動する際に生じる抵抗力の方が大きくなる。尚、抵抗板2および支持体3が流体抵抗を制御する構造を備える事は好適例であって、必ずしもそのような構造を備えることには限定されない。例えば安価なスロッシング抑制装置1を提供するために、抵抗板2および支持体3を単なる板状のものや格子状のものとしても構わない。また、支持体3は単なる錘(重石)でも良い。
また、貯蔵油8の増減による液位の変動に応じてワイヤ等の接続手段4の長さを調節し、抵抗板2が常にスロッシング抑制に効果的な位置Pにあるようにしても良い。例えば、ワイヤ4の巻き取り・送り出し装置を支持体3に内蔵し、遠隔制御によって、液位の変動に応じてワイヤ4を巻き取って又は送り出して、ワイヤ4の長さを調節するようにしても良い。さらに、貯蔵油8の液位を測定するセンサをタンク5に設置して、センサの検出信号に基づいてワイヤ4の巻き取り・送り出し装置を制御して、液位が下がった場合には当該減少量に応じてワイヤ4を自動で巻き取り、液位が上がった場合には当該増加量に応じてワイヤ4を自動で送り出して、抵抗板2が常にスロッシング抑制に効果的な位置Pにあるようにしても良い。尚、タンク本体6の直径や深さに対して液位が充分に低くなった場合には、スロッシングの影響も少なくなるため、タンク底面S1から液面S2までの高さHが予め定めた値以下となった場合には、スロッシング抑制装置1を取り外すようにしても良い。
また、本発明は、軟弱地盤上にある浮屋根式タンク5の地震対策として特に最適であるが、必ずしもこの用途のみに限定されるものでなく、スロッシング対策が必要な液体貯蔵タンク全般に適用することが可能である。例えば、振動に敏感な化学薬液を貯留したタンクや、活魚等の水生生物を収容した水槽などは、運搬などの際に生じる振動により化学薬液や飼育水がスロッシングを起こし、化学薬液の性状に変化をきたしたり水生生物に悪影響を与える可能性が考えられる。このような液体貯蔵タンクについても、本発明のスロッシング抑制装置を用いることで、既設のタンクの形状および構造を変更することなく、スロッシングを効果的に抑制することが可能である。特に上述の実施形態で説明したスロッシング抑制装置1によれば、貯蔵液をタンクから抜く必要もなく単に既設タンクに投入するだけで、スロッシングを効果的に抑制することができる。
さらに、支持体3が液体8中を沈んでタンク底面S1に移動可能に設置される場合において、支持体3がタンク底面S1の中心よりに移動することを制限する規制手段16を更に設けても良い。この規制手段16を設けることで、支持体3がタンク底面S1の中心部に移動してしまうことによるスロッシング抑制効果の低下を防止できる。この規制手段16は、例えば図9に示すように、タンク本体6の内周面の底部6b近傍と支持体3とを繋ぐワイヤである。尚、タンク本体6の底面S1または内周面にワイヤ16の引っ掛け部を設けて、この引っ掛け部と支持体3とをワイヤ16により繋ぐようにしても良い。またはタンク本体6の内周面の底部6b近傍に重石を設置し、この重石と支持体3とをワイヤ16により繋ぐようにしても良い。このワイヤ16によって、支持体3がタンク底面S2の中心部に移動してしまうことを制限できる。但し、規制手段16の構成は図9の例には限定されず、例えば図10に示すように、規制手段16は、支持体3の着底位置を予め定めた位置に位置決めする手段であっても良い。この位置決め手段16は、例えば支持体3の直径よりも大きいリング状に形成され、リング内周面には、鉛直上方に向かって拡がるテーパ部16aが形成されている。位置決め手段16は、接着や溶接等の固定手段でタンク底面S1に固定されるか、あるいは貯蔵液8中で沈む材質すなわち貯蔵液8の密度よりも大きい密度を有する材質で構成されて貯蔵液8中を沈むことによってタンク底面S1上に載置される。この位置決め手段16によれば、支持体3がタンク底面S1から浮上し再びタンク底面S1に向かって沈む際にタンク底面S1の中心よりに多少ずれてしまっても、リング状の位置決め手段16の内周面に形成されたテーパ部16aにより、支持体3は予め設定された元の着底位置に導かれ位置決めされる。これにより、支持体3がタンク底面S2の中心部に移動してしまうことを防止できる。尚、位置決め手段16はスロッシング時の流速が低いタンク底面S1に設置されるため、位置決め手段16の周囲を流動する貯蔵液8によって位置決め手段16が移動してしまうことは防止される。