JP2005278550A - 2本鎖組織プラスミノーゲンアクチベーターの製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】より高活性をしめす2本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターの製造方法を提供する。
【解決手段】1本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター蛋白質とヒトカリクレイン8とを接触させることを特徴とする、2本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターの製造法。
【選択図】なし

Description

本発明は、2本鎖組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)の製造方法、並びに該方法により製造される高活性型2本鎖t−PAからなる医薬に関する。
血液凝固反応は、フィブリンの凝塊を生ずるプロセスとして、種々の血液因子が複雑に絡んだ相互作用によって行われる一連の反応である。この血液凝固反応と対応するように、フィブリンの凝固塊(フィブリン血栓)の分解、すなわち線溶反応は、種々の酵素並びに蛋白質によって高度に制御されている。その中心的な役割を担うのが、酵素前駆体プラスミノーゲンから変換されるプラスミンである。
酵素前駆体プラスミノーゲンは、1本鎖糖タンパク質で、主に肝臓で合成後に血中に分泌されて10−20mg/dlの血中濃度で存在している。酵素前駆体プラスミノーゲンは、必要な場所で限定分解作用を受けて、プラスミンへと変換される。
この酵素前駆体プラスミノーゲンのプラスミンへの変換を司る蛋白質が、プラスミノーゲンアクチベーターと呼ばれる蛋白質群であり、そのひとつに組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)がある。
ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、t−PAなどのプラスミノーゲンアクチベーターは、血栓溶解剤として用いられているが、中でもt−PAは、その高いフィブリン特異性と強力な血栓溶解能によって、心筋梗塞や脳梗塞などの血栓疾患に対する、血管を閉塞したフィブリン塊を溶かす治療(線溶療法)に多く利用されている。
t−PAは、複数の生理活性部分の明確な領域(ドメイン)を有するという分子構造を採っている。すなわち、N端末の最初の領域はフィブロネクチンと相同性のある領域、成長因子と相同性のある領域、つづいて2つのクリングル領域があり、最後に、他のセリンプロテアーゼと類似性の見られる活性部位をもつ。
かかる構造的特長を有するt−PAは、通常、1本鎖の糖タンパク質(分子量65,000〜72,000)として血管内皮細胞で主に合成されて血中に分泌され、プラスミノーゲンとともにフィブリン血栓に付着して、効率良くプラスミンを生成させる。そして、フィブリンの存在下に、t−PAは分子の中央領域内の一ヵ所の部位(Arg275−Ile276の部位)で開裂され、ジスルフィド結合で連結された2本鎖となって活性化される。2本鎖構造のうち、重鎖(分子量40,000および37,000の2つの型)はt−PA分子のN端末側に由来し、これに対して軽鎖(分子量33,000)はC末端側に由来する。
t−PAは、線溶系において、次の4種の異なった特性を有する:(1)プラスミノーゲンを開裂して、フィブリンを分解するプラスミンを生産するプロテアーゼ機能、(2)プラスミノーゲン分解活性におけるプラスミノーゲンアクチベーターのフィブリン依存性、(3)t−PAのフィブリン表面への結合性、(4)プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤の阻害に対する感受性、である。
これらの要因の各々が、フィブリン血栓存在下でのt−PAによるプラスミノーゲンからプラスミンへの変換、フィブリン血栓を溶解するまでの速さや特異性などに影響している。従って、t−PAが、これらの特性を発揮できる最も高活性な分子形態をとることが、医薬用途への応用では特に求められる。
t−PAの分子形態については、野生型のt−PAは十分に成熟型のセリンプロテアーゼとしては産生されていないことが知られている。すなわち、t−PAは天然には分子量約65,000〜72,000の1本鎖のポリペプチド(1本鎖t−PA)として血管内皮細胞から産生され、この1本鎖t−PAが、Arg275−Ile276の部位で特異的に切断されて2本鎖t−PAへとなり、高活性型へと変換される。フィブリン存在下では、2本鎖は1本鎖の5〜10倍も、プラスミノーゲンからのプラスミンへの変換に関し、高活性であることが報告されている(非特許文献1)。したがって、この1本鎖から2本鎖への変換操作も、またt−PAの高活性化のための重要な検討事項である。
2本鎖ヒトt−PAの調製については、ヒトメラノーマ細胞の培養液からクロマトグラフィー法により精製するという方法が報告されている(非特許文献2)。
また、ヒトメラノーマ細胞が産生した1本鎖t−PAが、インビトロにおいて、トリプシン、血液凝固因子Xa、プラスミン、および膵臓カリクレインによって2本鎖t−PAに変換されるという報告がある(非特許文献3)。しかしながら、この変換操作に関しては、ものの、まだ見るべき技術は確立していない。現実にヒトt−PA製剤として利用されているものは、1本鎖ヒトt−PAである。
また、本発明者らのグループでは、排卵前の卵巣濾胞液中のα2マクログロブリン/プロテアーゼ複合体が、非会合状態で1本鎖t−PAから2本鎖t−PAに変換するらしいことを観察している(非特許文献4)。
しかしながら、これらの技術においては、2本鎖ヒトt−PAの効率的な調製方法は未だ確立されてはおらず、また、卵巣濾胞液中の非会合状態でのプロテアーゼ分子の実体は明らかにされておらず、このプロテアーゼの産業上の利用についても何ら示唆されてはいない。
ウォレンら(Wallen et al.)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ。バイオケミストリー(Eur.J.Biochem.)、第132巻、pp.681−686、1983年。 K..タチアスとE.L..マジソン(K.Tchias & E.L.Madison)著、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)誌、第271巻、第46号、pp.28749−28752、1996年。 A.イチノセ(A.Ichinose)他著、フェブスレター(FEBS Letter)誌、第175巻、pp.412−418、1984年。 J.オーニシ(J.Ohnishi)他著、モレキュラー・レプロダクション・アンド・デベロップメント(Molecular Reproduction and Development)誌、第67巻、pp.178−185、2004年。
上述のとおり、t−PAを2本鎖ヒトt−PAとして高活性化することは、t−PAの医薬としての有用性をさらに高めることになるため、その技術開発が待ち望まれている。
本発明者らは、1本鎖ヒトt−PAが2本鎖t−PAへと変換される生化学的制御機構について研究を行った結果、カリクレイン8と称される蛋白質がその変換を触媒していること、ならびにこの反応がインビトロでも再現され得ることを確認し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、2本鎖ヒトt−PAからなる医薬の製造におけるヒトカリクレイン8の使用に関し、詳しくは、1本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター蛋白質からの2本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターの製造におけるヒトカリクレイン8の使用に関する。
(カリクレイン8)
カリクレインは、キニンの活性化に関与するエンドプロテアーゼの一種であり、キニノゲンを蛋白分解によりブラジキニンまたはカリジンに変換する酵素群として見出された蛋白質の総称である。
現在までに15種の遺伝子(ヒトカリクレイン1〜ヒトカリクレイン15)が同定され、一部は癌のバイオマーカーとしての意義も報告されている。また、これまでの研究により、ヒトカリクレイン8(別名ovasin/neuropsin)は、中枢神経系や皮膚、卵巣等で発現されており、神経疾患や卵巣癌に関係していることが示唆されている(G.M.Yousef & E.P.Diamandis著、Endocrine Reviews誌、第22巻、第2号、pp.184−204、2001年)。しかしながら、ヒトカリクレイン8を含め、カリクレインが、1本鎖t−PAから2本鎖t−PAへの変換に関与することについては、いまだ報告はなされていない。
ヒトカリクレイン8自体は公知の蛋白質であり、それをコードする遺伝子も既に単離され、その具体的な塩基配列がDDBJ No.AB009849として登録されている。
本発明により利用可能なヒトカリクレイン8は、典型的には、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるヒトカリクレイン8である。このヒトカリクレイン8のアミノ酸配列は、DDBJ No.AB009849に登録されているDNA(配列番号2)の核酸配列にコードされているものである。しかしながら、1本鎖ヒトt−PAのArg275−Ile276の部位を特異的に切断する機能を有している限り、本発明において使用可能なヒトカリクレイン8は、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるヒトカリクレイン8には限られない。
例えば、配列番号1に示されたアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸残基が欠失、付加、置換等された変異体であっても、1本鎖ヒトt−PAのArg275−Ile276の部位を特異的に切断して、プラスミノーゲンをプラスミンに変換する機能を有する2本鎖ヒトt−PAを生成させる機能を有している限り、それら変異体は、本発明において使用可能なヒトカリクレイン8に該当する。
かかる変異の例としては、実質的に蛋白質全体の3次元構造(立体構造とも言う)に影響を与えない保存性の高いアミノ酸残基相互の変換を挙げることができる。例えば、グリシン(Gly)とプロリン(Pro)、Glyとアラニン(Ala)またはバリン(Val)、ロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)、グルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)とアスパラギン(Asn)、システイン(Cys)とスレオニン(Thr)、Thrとセリン(Ser)またはAla、リジン(Lys)とアルギニン(Arg)、等が挙げられる。また、上述の意味の保存性を損なう場合でも、なおその蛋白質の本質的な機能を失わない変異も許容される。
(t−PA)
本発明によりヒトカリクレイン8と接触させる1本鎖ヒトt−PAは、典型的には、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる1本鎖ヒトt−PAである。この1本鎖ヒトt−PAのアミノ酸配列は、DDBJ No.NM_000930に登録されているDNA(配列番号4)の核酸配列にコードされているものである。しかしながら、ヒトカリクレイン8と接触させることで切断を受けるArg275−Ile276に相当する部位が保持され、かつ2本鎖の形態となった場合にプラスミノーゲンをプラスミンに変換する機能を有している限り、本発明において使用可能な1本鎖ヒトt−PAは、配列番号3に示されたアミノ酸配列からなる1本鎖ヒトt−PAには限られない。
例えば、糖鎖結合部位の減少とC末端でのアミノ酸の欠失ならびに開裂部位でのアミノ酸の置換等を有する変異体(特許第257536号参照)、野生型t−PAの466から470位に連なるアミノ酸を欠失させたり、あるいは野生型tPAの296−299位(両端を含む)内のアミノ酸残基が置換されている変異体(特許第3081238号参照)、成長因子ドメインを欠失させて血中クリアランスを延長させた変異体(J.Michael他著、The Journal of Biological Chemistry、第263巻、第4号、pp.1599−1642、1988年参照)、より高機能化を目指したウロキナーゼとt−PAのハイブリッド体(S.G.Lees他著、The Journal of Biological Chemistry誌、第263巻、第6号、pp.2917−2924、1988年参照)などの形態であっても、当該変異を有する1本鎖ヒトt−PAの形態から、対応する2本鎖ヒトt−PAを調製することができる。
また、かかる公知の変異体以外であっても、先に述べたヒトカリクレイン8と同様に、配列番号3に示されたアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失、付加、置換等された変異体であっても、Arg275−Ile276に相当する部位が保持されており、かつ2本鎖の形態としてプラスミノーゲンをプラスミンに変換する機能を有している限り、本発明において使用可能な1本鎖ヒトt−PAに該当する。
(2本鎖ヒトt−PAの製造法)
本発明によれば、上記の1本鎖ヒトt−PAとヒトカリクレイン8とを、適当な条件下で接触させることで、2本鎖ヒトt−PAを製造することができる。
適当な条件としては、溶媒中、例えばpHが調節された緩衝液中での接触を挙げることができる。この場合、ヒトカリクレイン8と1本鎖ヒトt−PAは、ともに緩衝液に溶解させて接触させてもよく、またいずれか一方、例えばヒトカリクレイン8を適当な固相に結合させておき、遊離のあるいは別の固相に結合させた1本鎖ヒトt−PAと接触させてもよい。また、pHは、ヒトカリクレイン8が1本鎖ヒトt−PAを特異的に切断する機能を保持し得る範囲、例えばpH3〜10、好ましくは5〜8の概ね中性に維持することが好適である。
また、温度を適当に調節することも好ましい。温度は、ヒトカリクレイン8が1本鎖ヒトt−PAを特異的に切断する活性を維持し得る範囲であればよく、例えば、10〜40℃、好ましくは25〜37℃とすることが好適である。好適な温度は、ヒトカリクレイン8を遊離状態で使用する場合、固相に結合させて使用する場合、後述する培養細胞を用いる場合などに応じて変化し得る。
ヒトカリクレイン8と1本鎖ヒトt−PAとの比率は、バッチ式で両者を接触させる場合には、重量比で、t−PA:ヒトカリクレイン8=50:1から5:1、好ましくは10:1で接触させることができる。ヒトカリクレイン8を結合させた固相を用いてカラム式で接触させる場合には、1のヒトカリクレイン8に対して、5〜10倍の1本鎖ヒトt−PAを接触させればよい。
接触後に生じた2本鎖ヒトt−PAは、適当なクロマトグラフィーその他の方法により、ヒトカリクレイン8から分離して精製してもよく、あるいはヒトカリクレイン8との共存状態のまま、医薬等として使用することもできる。かかる分離精製操作あるいは医薬としての調製作業については、蛋白質の分離精製あるいは医薬の剤型化について広く用いられている一般的な手法から、適宜好適な方法を選択して用いることができる。
(組換え宿主細胞を用いた共発現による製造法)
本発明では、1本鎖ヒトt−PAをコードする遺伝子ならびにヒトカリクレイン8をコードする遺伝子を共に発現することのできる適当な組換え宿主細胞を、両遺伝子が発現し得る条件下で培養することにより、該宿主細胞内あるいは細胞外へと両遺伝子産物を産生させて、2本鎖ヒトt−PAを調製することもできる。
1本鎖ヒトt−PAをコードする遺伝子ならびにヒトカリクレイン8をコードする遺伝子は何れも公知であり、例えばDDBJ No.AB009849(配列番号2、ヒトカリクレイン8)あるいはDDBJ No.NM_000930(配列番号4、1本鎖ヒトt−PA)それ自体を、本発明において使用することもできる。また、かかる公知の核酸配列に基いて、使用する宿主において好適に選ばれるコドンへの変更のため、または適当な制限酵素切断部位を生じさせるため、mRNAなどに生じ得る不適切な2次構造の解消のため、その他の理由による核酸配列の改変は、もちろん許容される。さらには、ヒトカリクレイン8または1本鎖ヒトt−PAのアミノ酸配列が変化するような核酸配列の変異または改変であっても、変異した核酸配列あるいは改変された核酸配列が、本願発明で使用可能なヒトカリクレイン8あるいは1本鎖ヒトt−PAをコードする場合には、かかる変異核酸配列からなる遺伝子も、本発明において使用することができる。
上記のDNA変異の程度は、配列番号2または配列番号4に記載のDNA配列に、例えばDIG DNA Labeling kit(ベーリンガー・マンハイム社製Cat No.1175033)でプローブをラベルした場合に、32℃のDIG Easy Hyb溶液(ベーリンガー・マンハイム社製Cat No.1603558)中でハイブリダイズさせ、50℃の0.5×SSC溶液(0.1%[w/v]SDSを含む)中でメンブレンを洗浄する条件(1×SSCは0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウムである)でのサザンハイブリダイゼーションでハイブリダイズする程度であればよい。
両遺伝子を発現させるための宿主細胞としては、組換え体ヒトカリクレイン8、組換え体1本鎖ヒトt−PAあるいは組換え体2本鎖ヒトt−PAなどを産生することのできる細胞としてこれまでに報告されている種々の宿主細胞を使用することができる。また、該宿主細胞への両遺伝子の導入と発現は、上述の宿主細胞を基に組換え宿主細胞を構築する際に使用された発現ベクター、該ベクターを用いた形質転換方法、該ベクターに含まれているプロモーター遺伝子、ターミネーター遺伝子などによる発現制御方法などを、適宜使用することができる。また、上記以外にも、組換え蛋白質の発現、生成を目的として種々開発されている一般的な、宿主ベクター系もまた、利用可能である。
共発現により産生される2本鎖ヒトt−PAは、宿主細胞内あるいは細胞外の培地から、回収してもよく、あるいは当該培地をそのまま使用してもよい。
本発明は、1本鎖t−PAから簡便に、かつ効率よく2本鎖t−PAに変換する技術を提供することにより、経済的に高活性型の製品を製造することを可能とする。また、医薬品としては、2本鎖t−PAは従来の1本鎖t−PAに比べてタンパク質分子あたりの活性が高いため、投与量を減らして抗原性の低下や副作用を軽減することが可能となる。
ヒトカリクレイン8ならびに1本鎖ヒトt−PAは、ヒト組織あるいは培養細胞培養上清からの精製分離などにより、天然組織から抽出して使用することもでき、またはかかる蛋白質をコードする遺伝子を用いた組み換え手法により調製される組換え体も、使用することができる。さらには、胎児胚に当該遺伝子を適当なベクター系に注入して得られた、いわゆるトランスジェニック動物を作製し、乳などの体液成分から精製分離することによって得ることもできる。あるいは、試薬又は医薬として市販されている1本鎖ヒトt−PAを用いてもよい。
工業的に均一の品質で2本鎖ヒトt−PAを大量に製造することを考慮すれば、ヒトカリクレイン8ならびに1本鎖ヒトt−PAとしては、遺伝子組み換え技術によって生産される組換え体の使用が好ましい。かかる組換え体の調製に際しては、格別の操作は必要ではなく、組換え体蛋白質を調製する一般的な方法に準じて調製することができる。
宿主細胞としては、哺乳動物の細胞または微生物を用いることができる。好ましい微生物はバクテリア、特に大腸菌や枯草菌、および真核動物の微生物、とくに酵母菌および糸状菌類、例えば、アスペルギルス属を包含する。昆虫細胞では、カイコ、夜盗蛾など、哺乳動物細胞であれば、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、マウスC127細胞、ヒトKB細胞など、さらに、トランスジェニック動物を宿主とする場合は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシなどを用いることができる。
組換えベクターを宿主細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーション法、プロトプラスト法、アルカリ金属法、リン酸カルシウム沈澱法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、ウイルス粒子を用いる方法等の公知方法があるが、いずれの方法を用いても構わない。
当該蛋白質を遺伝子工学的に生産するには、上述の形質転換体を培養して培養混合物を回収し、当該蛋白質を精製すればよく、形質転換体の培養は、各種の成書を参考にして一般的な方法で行うことができる。
また、トランスジェニック非ヒト哺乳動物により、ヒトカリクレイン8あるいは1本鎖ヒトt−PAを調製する場合には、トランスジェニック動物の製造において通常使用されるような常法(例、最新動物細胞実験マニュアル、エル・アイ・シー発行、第7章、第361〜第408頁、1990年)に従って該動物を調製し、乳、血清あるいは組織より目的とする蛋白質を回収すればよい。
適当な宿主細胞により産生されるヒトカリクレイン8並びに1本鎖ヒトt−PAは、原料となる細胞培養上清、虫体抽出液、菌抽出液、生体抽出液などから、蛋白質の精製に通常使用されている方法の中から適切な方法を適宜選択して行うことができる。すなわち、塩析法、限外濾過法、等電点沈澱法、ゲル濾過法、電気泳動法、種々のクロマトグラフィーにより精製分離することができる。
クロマトグラフィーは、分子ふるいクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、吸着クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィ、当該因子に親和性を有するアフィニティクロマトグラフィあるいはこれらを適宜組み合わせて使用すればよく、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)やリン酸カルシウムを吸着素材とするカラム、ヘパリンや色素や疎水基をリガンドとするカラム、金属キレートカラム、イオン交換カラム、ゲル瀘過カラムなどを挙げることができる。
また、ヒトカリクレイン8あるいは1本鎖ヒトt−PAを、他の蛋白質やタグ(例、グルタチオンSトランスフェラーゼ、プロテインA、ヘキサヒスチジンタグ、FLAGタグその他)との融合蛋白質として発現させることも可能である。発現させた融合型は、適当なプロテアーゼ(例、トロンビンその他)を用いて切り出すことが可能であり、蛋白質の調製をより有利に行うことが可能となる。本発明の蛋白質の精製は当業者に一般的な手法を適宜組み合わせて行えばよく、特に融合蛋白質の形態で発現させたときは、その形態に特徴的な精製法を採用することが好ましい。
t−PAの例としては、宿主細胞をCOS−1細胞、ベクターをpSVT7、プロモーターをSVT7とした例(K.Tachias,and E.L.Madison,J.Biol.Chem.270:18319−18322,1995)、宿主細胞を大腸菌(E.coli)、ベクターをpBR322由来のpAP−stII−tPA、プロモーターをphoAとした例(J.I.Qiu et al.Spplied and Environmental Microbiology,64:4891−4896,1998)、宿主細胞を大腸菌(E.coli)、ベクターをpComb3HSS、プロモーターをlacプロモーターとした例(J.Manosroi et al.Biotechnology in Drug Research,52:60−66,2002)など、その他多数を挙げることができる。
また、ヒトカリクレイン8の調製例としては、昆虫細胞を用いた例が報告されている(T.Kishi et al.Clin.Chem.49:87−96,2003)。
(固相への固定化)
ヒトカリクレイン8あるいは1本鎖ヒトt−PA、特にカリクレイン8を固定化して本発明に用いる場合には、対象物を適当な固相担体、例えばアガロースゲル、セルロースゲル、ポリビニルゲル、シリカゲル、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの固相に結合させ、このレジンに1本鎖t−PA溶液を接触させることができる。かかるヒトカリクレイン8の固相への結合方法については、かかる実験手法を紹介する数多くの成書を参考に、適宜使用することができる。
本発明では、かかるヒトカリクレイン8または1本鎖ヒトt−PAを結合させた固相とを、容器の中で混合するバッチ式やカラムに通液させるカラム式などを用いることができる。
(2本鎖ヒトt−PAの製造法)
ヒトカリクレイン8と1本鎖ヒトt−PAとの接触は、溶媒中、好ましくはリン酸緩衝液あるいはトリス緩衝液等の緩衝液中で行うことができる。1本鎖ヒトt−PAとヒトカリクレイン8を接触させる場合には、両者を、重量比で、1本鎖ヒトt−PA:ヒトカリクレイン8=50:1から5:1、好ましくは10:1前後で接触させることで、効率的に1本鎖ヒトt−PAを2本鎖ヒトt−PAへと変換させることができる。
また、緩衝液のpHは、ヒトカリクレイン8が1本鎖ヒトt−PAのArg275−Ile276を切断することのできる範囲にすればよく、概ね3〜10、好ましくは中性付近、特に好ましくはpH5〜8であればよい。本発明で使用することのできる緩衝液としては、前述のリン酸緩衝液、トリス緩衝液の他、HEPES緩衝液、クエン酸等の有機酸緩衝液、その他の汎用されている緩衝液を使用することができる。
また、ヒトカリクレイン8と1本鎖ヒトt−PAとの接触時の温度は、ヒトカリクレイン8が失活しない温度であればよく、概ね10〜40°C、特に25〜37°Cを保つことが好ましい。
接触時間は、使用するヒトカリクレイン8あるいは1本鎖ヒトt−PAの量、温度等の反応条件により、適宜調節すればよいが、例えば、バッチ式で接触させる場合には、概ね1〜24時間、好ましくは4〜8時間で完了させることができる。
(組換え宿主細胞を用いた共発現による2本鎖ヒトt−PAの製造法)
1本鎖ヒトt−PAをコードする遺伝子ならびにヒトカリクレイン8をコードする遺伝子を共に発現することのできる宿主細胞としては、組換え体ヒトカリクレイン8、組換え体1本鎖ヒトt−PAあるいは組換え体2本鎖ヒトt−PAなどを産生することのできる細胞として、これまでに報告されている種々の宿主細胞を使用することができる。
例えば、好ましい微生物はバクテリア、特に大腸菌や枯草菌、および真核動物の微生物、とくに酵母菌および糸状菌類、例えば、アスペルギルス属を包含する。昆虫細胞では、カイコ、夜盗蛾など、哺乳動物細胞であれば、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、マウスC127細胞、ヒトKB細胞などを挙げることができる。
発現ベクターとしては、プラスミドベクター、バクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウィルス、ワクシニアウィルスなど、プロモーター遺伝子としてはT7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λPLプロモーター、PHO5プロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、SV40由来プロモーター、レトロウィルスプロモーターなどを、それぞれ適宜組み合わせて利用することができる。
また、上記以外にも、組換え蛋白質の発現、生成を目的として種々開発されている一般的な宿主ベクター系もまた、利用可能である。
組換えベクターを宿主細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーション法、プロトプラスト法、アルカリ金属法、リン酸カルシウム沈澱法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、ウイルス粒子を用いる方法等の公知方法がある。
(2本鎖ヒトt−PAを含む医薬)
ヒトカリクレイン8によって生成される2本鎖t−PAは、そのままで、ヒトカリクレイン8と共に、あるいは安定化剤などを加えた形で、医薬または医薬組成物として提供される。必要により、夾雑物を除去して2本鎖ヒトt−PAを医薬品用にまで純化し、そのまま、もしくは公知の薬理学的に許容される酸、糖、担体、賦形剤などと混合し、溶液、凍結溶液、凍結乾燥物の医薬組成物として、非経口的に投与することができる。
非経口剤としては、注射剤、経皮吸収剤、テープ剤、軟膏剤、クリ−ム剤、湿布剤、塗布剤、貼付剤、外用液剤、点眼剤、点耳剤、点鼻剤として等を調製して用いることもできる。注射剤では、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、ラクトース、グルコースなどを賦形剤として加え、凍結乾燥物として調製され得る。さらにこれを粉体化して用いることもできる。ゲル化剤としては、自体公知の方法、例えば、2本鎖t−PAをグリセリン、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などの増粘剤や多糖に溶解した状態で調製され得る。安定化剤としてヒト血清アルブミン、アミノ酸などを添加することができ、また分散剤あるいは吸収促進剤として、2本鎖ヒトt−PAの生理活性を損なわない範囲で、アルコール、糖アルコール、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などを添加することができる。また、微量金属や有機酸塩も必要に応じて加えることができる。
本発明の2本鎖t−PAの投与は、全身投与あるいは局所投与で行われ,有効投与量および投与回数は,投与剤形、投与ルート、患者の年齢、体重、治療対象疾患、症状もしくは重篤度によっても異なり、薬効量を一回または数回に分けて投与することができる。
同様に、1本鎖ヒトt−PAとヒトカリクレイン8を含む医薬組成物も調製できる。注射剤として投与する際に、1本鎖ヒトt−PAとヒトカリクレイン8が混合され、体内において2本鎖ヒトt−PAに変換されるのを目的とした製剤である。これも上記の通り、製剤学的に公知の方法により、医薬組成物とすることができる。
以下、非限定的な実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
ヒトカリクレイン8による1本鎖t−PAの2本鎖t−PAへの変換
(1)RT−PCRによるヒトカリクレイン8のcDNAの単離
市販のヒト卵巣の全RNA(Stratagene社製)から、逆転写反応を用いてcDNAを得た。逆転写反応は、Invitrogen社製のSuperscript First−Strand Synthesis System for RT−PCRを用い、プロトコールに従って行った。合成したcDNAを鋳型として、以下のように、ヒトカリクレイン8のcDNAをPCRにより単離した。
公共のデータベースに登録されているヒトカリクレイン8(DDBJ No.AB009849)のヌクレオチド配列を基に、センスプライマーとして、制限酵素KpnIサイトおよびエンテロペプチダーゼ切断サイト(Asp−Asp−Asp−Asp−Lys)を含むオリゴヌクレオオチド5’−CGGGGTACCGACGACGACGACAAGGTGCTGGGGGGTCAT−3’を、アンチセンスプライマーとして、制限酵素EcoRIサイトを含むオリゴヌクレオオチド5’−CCGGAATTCTCAGCCCTTGCTGCC−3’を合成した。
上記のヒト卵巣cDNAとプライマーを用い、KOD−Plus−DNA Polymerase(東洋紡社製)によりPCRを行った。PCR反応液の組成は以下の通りである。
Figure 2005278550
上記反応液をよく混合後、PCR反応を行った。PCRは、最初に94°Cで3分間熱した後、94°Cで30秒間の熱変性、60°Cで30秒間のアニーリング、68°Cで60秒間の伸長反応の条件を1サイクルとして、35サイクル行った。反応終了後、このPCR産物を1.5%アガロースゲル電気泳動に供試した。PCR産物は、電気泳動後のゲルを、エチジウムブロマイドを加えた緩衝液に15分間浸した後に、UV照射により検出した。増幅された産物は、約720ヌクレオチドのからなるDNAであった。
上記の増幅されたPCR産物を、ジーンクリーンキット(Q−BIO gene社)を用いて、アガロースゲルから切り出し精製を行った。次いで、このPCR産物を、T−Vectorに連結し、この組換えプラスミドを大腸(JM109)に形質転換した。単一コロニーをTerrific Broth培地中で培養し、プラスミドを精製して、ABI PRISM Big−Dye Terminator Cycle Sequence Kit Version 2(Applied Biosystems社)を用い、蛍光自動DNAシークエンサー(Applied Biosystems社、373型)により解析した。その結果、単離されたPCR産物が、ヒトカリクレイン8の翻訳領域のうち、成熟活性型酵素と予想される228アミノ酸残基(バリン−33からグリシン−260)をコードするcDNAを含むことが確認された。
(2)組換え体ヒトカリクレイン8の作製
実施例1でクローン化したcDNAを用いて、大腸菌発現系により、ヒトカリクレイン8の組換え体を以下のように合成した。
上記のcDNAを鋳型として、実施例1に記載したセンスプライマーとアンチセンスプライマーを用いてPCRを行った。増幅されたDNAを、初めに制限酵素KnpIで、続いてEcoRIで消化し、5’側に制限酵素KnpIサイトを、3’側にはEcoRIサイトを創出した。これを予めKnpI及びEcoRIでカットしたpET30プラスミドに連結した。インサートが入った発現ベクターを選別し、導入されたインサートの配列確認を行い、正しい配列が導入されたベクターを以下の実験に用いた。
上記のpET30プラスミドを大腸菌E.coli BL21株(Novagen社製)に形質転換し、大腸菌をカナマイシン(30μg/ml)及びクロラムフェニコール(34μg/ml)を含む培地で37°Cで培養した。A600が0.5に達したところで培地にイソプロピルチオβガラクトシド(Isopropyl thio−β−D−galactoside)を0.5mM濃度で加え、さらに3時間培養した後、細胞を遠心により回収した。
上記の細胞を凍結融解処理し、その後、0.5%トリトンX−100で2回洗浄した。得られた試料を、6M尿素と0.5M NaClを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)で、室温で12時間インキュベートすることにより可溶化した。
上記の可溶化された試料を、予め6M尿素と0.5M NaClを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8で平衡化されたNi2+−キレートカラム(Novagen社製)に直接アプライした。カラムを、20mMイミダゾールを含む50mMトリス塩酸緩衝液pH7.8 100mlで洗浄した後、カラムに結合したタンパク質を6M尿素、0.5M NaCl及び50mMヒスチジンを含む50mMトリス塩酸緩衝液pH7.8緩衝液により溶出した。溶出画分は、50mMトリス塩酸緩衝液pH8.0緩衝液2000mlに対して透析した。
上記のカラム溶出画分には、N末端からヒスチジンタグ、S−プロテイン、エンテロペプチダーゼ切断サイト、ヒトカリクレイン8(成熟活性型)の順に配列する融合タンパク質が含まれていた。この融合タンパク質を、Sepharose 4B(Amasham−Pharmacia社製)に固定化したウシエンテロペプチダーゼで消化した後、固定化プロテアーゼを遠心により除去して、成熟活性型のヒトカリクレイン8酵素標品を得た。
融合タンパク質及び成熟活性型ヒトカリクレイン8をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により検出した。その結果、Ni2+−キレートカラムから溶出された画分が融合タンパク質(35kDa)を高純度で含むこと、さらに、このようにして得られた融合タンパク質を固定化エンテロペプチダーゼで処理によって、成熟活性型カリクレイン8(30kDa)が産生されることが判明した(図1)。
(3)ヒトカリクレイン8の酵素活性の測定
4−メチルクマリル−7−アミド(MCA)を含む合成基質(ペプチド研究所)に対するヒトカリクレイン8の活性は、Barrettの方法(Biochem.J.187:909−912,1980)に基づき、以下のように行った。すなわち、50mMトリス塩酸緩衝液pH8.0、酵素試料及び0.1mM MCA基質を含む500μl(終量)の反応液で、37°Cでインキュベートした後、0.1Mモノクロロ酢酸、30mM酢酸ナトリウム及び29mM酢酸を含む溶液(pH4.3)2.5mlを加えて反応を停止した。酵素により合成基質から切断・遊離された7−アミノ−4−メチルクマリンは、励起波長370nmと蛍光波長460nmを用いて測定した。
(2)で調製した成熟活性型ヒトカリクレイン8の活性を、Pro−Phe−Arg−MCAを用いて測定した。ヒトカリクレイン8は、酵素量依存的にかつ反応時間依存的に、このMCA合成基質を切断した(図2及び図3)。
ヒトカリクレイン8の各種MCA合成基質に対する活性を測定した。Pro−Phe−Arg−MCAが最も迅速に分解された(表1)。Z−Val−Val−Arg−MCA及びBoc−Val−Pro−Arg−MCAも本酵素のよい基質となった。概して、N末端に保護基をもちP1サイトがアルギニン残基であるMCA基質が、ヒトカリクレイン8の有効な基質となりうるが、P2及びP3サイトのアミノ酸残基の重要性が示唆された。
アミノペプチダーゼ様酵素の基質(Arg−MCA)、キモトリプシン様酵素の基質(Suc−Leu−Leu−Val−Tyr−MCA、Suc−Ala−Ala−Pro−Phe−MCA)、エラスターゼ様酵素の基質(Suc−Ala−Ala−Ala−MCA)及び酸性アミノ酸のC末端側切断酵素の基質(Ac−Ile−Glu−Thr−Asp−MCA)に対する活性は、本酵素では検出されなかった。
Figure 2005278550
Pro−Phe−Arg MCAに対する活性100%として、他の基質に対する活性を相対値として表した。NDは活性が検出されなかったことを示す。
(4)ヒトカリクレイン8の酵素活性に対する阻害剤の効果
実施例2で調製した成熟活性型ヒトカリクレイン8の酵素活性に及ぼす各種プロテアーゼ阻害剤の影響を調査した。本酵素の酵素活性の測定は合成基質Pro−Phe−Arg−MCAを用いて行い、反応溶液中に阻害剤を添加して活性を測定した。ヒトカリクレイン8の酵素活性は、アンチパイン、アプロチニン、ロイペプチン、大豆トリプシンインヒビター(SBTI)及びベンズアミジンで強く阻害され、本酵素がセリンプロテアーゼであることが示された(表2)。一方、システインプロテアーゼ阻害剤(E−64)、金属プロテアーゼ阻害剤(o−フェナントロリン)及びアスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤(ペプスタチン)では全く阻害されなかった。
Figure 2005278550
(5)ヒトカリクレイン8による1本鎖t−PAの2本鎖t−PAへの変換
ヒトカリクレイン8による組換え体ヒト1本鎖t−PA(Biopool社製)の2本鎖t−PAへの変換反応とその確認を行った。
1μgのヒト・リコンビナント1本鎖t−PAを含む100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)緩衝液に、(2)で得られた組換え体ヒトカリクレイン8.1μgと0.02μgをそれぞれ添加し、終量20μl(終量)の反応液を調製した。37°Cで6時間反応液をインキュベートした後、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動用サンプルバッファー(5×溶液)4μlを加えて加熱し、この全量を還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(12% gel)で分画し、ゲルをクマーシーブリリアントブルーにより染色した。
その結果、ヒトカリクレイン8による1本鎖t−PA(65kDa)の2本鎖t−PA(31kDaと34kDa)への変換が明らかになった(図4)。2本鎖t−PAへの変換の割合は、基質:酵素の比が10:1の方が50:1よりも高率であった。
(6)1本鎖t−PAから2本鎖t−PAへの変換に伴うt−PA活性の上昇
(5)で産生された2本鎖t−PAが酵素活性を有するか否かを、以下のように、合成基質Pyr−Gly−Arg−MCAを用いて検討した。
100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)100μl(終量)中で、組換え体ヒトカリクレイン8 0.05μgを1本鎖t−PA 0.5μgと37°Cで6時間インキュベートした。その後、ヒトカリクレイン8の活性を完全に抑えるために、0.1mg/mlの濃度でアプロチニンを添加した。
アプロチニンを加えたこの反応溶液20μlを用いて、実施例3に記した方法に従い活性を測定した。活性測定にはPyr−Gly−Arg−MCAを基質として用い、37°Cで1時間インキュベートした。アプロチニン存在下で、かつヒトカリクレイン8に対して全く活性を示さない合成基質Pyr−Gly−Arg−MCAを用いることによって、t−PAに由来する酵素活性のみを検出した。その結果、ヒトカリクレイン8処理により生じた2本鎖t−PAが、Pyr−Gly−Arg−MCAに対する強い活性を示すことが判明した(図5)。2本鎖t−PAがアプロチニンによる阻害を受けないことはすでに知られており、本実験の結果は、それに矛盾しなかった。従って、本発明によって、ヒトカリクレイン8が1本鎖t−PAを高活性型の2本鎖t−PAへと変換できることが明らかにされた。
図1は、大腸菌発現系において合成されたリコンビナント融合タンパク質と、融合タンパク質の固定化エンテロペプチダーゼ処理により得られた成熟活性型ヒト・カリクレイン8のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動パターンである。 図2は、ヒト・カリクレイン8の合成基質Pro−Phe−Arg−MCAに対する活性を示す。分解活性は酵素量依存的に上昇することを示す。 図3は、ヒト・カリクレイン8の合成基質Pro−Phe−Arg−MCAに対する活性を示す。分解活性は酵素反応時間依存的に上昇することを示す。 図4は、ヒト・カリクレイン8によって、1本鎖t−PA(65kDa)が2本鎖t−PA(31kDaと34kDa)に変換されることを示したSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動パターンである。 図5は、ヒト・カリクレイン8により1本鎖t−PAから産生された2本鎖t−PAが、Pyr−Gly−Arg−MCAに対する強い活性をもつことを示す。

Claims (12)

  1. 2本鎖ヒトt−PAからなる医薬の製造におけるヒトカリクレイン8の使用。
  2. 1本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター蛋白質からの2本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターの製造におけるヒトカリクレイン8の使用。
  3. 1本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター蛋白質とヒトカリクレイン8とを接触させることを特徴とする、2本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターの製造法。
  4. 1本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター蛋白質と固相に結合したカリクレイン8とを接触させることを特徴とする、2本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターの製造法。
  5. ヒトカリクレイン8が、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、あるいは配列番号1に示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、付加、置換されたアミノ酸配列からなり、かつ1本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター蛋白質を2本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターへ変換する活性を有する蛋白質である、請求項1〜4に記載の方法。
  6. ヒトカリクレインが、請求項5に規定される蛋白質をコードする遺伝子を組み換えて得られる組換え体であることを特徴とする、請求項1〜5に記載の製造法。
  7. 1本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター蛋白質が、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、あるいは配列番号3に示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、付加、置換されたアミノ酸配列からなり、かつプラスミノーゲンをプラスミンへ変換する活性を有する蛋白質である、請求項1〜6に記載の方法。
  8. 1本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター蛋白質が、請求項7に規定される蛋白質をコードする遺伝子を組み換えて得られる組換え体であることを特徴とする、請求項1から請求項7に記載の製造法。
  9. 請求項7に規定されるヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター蛋白質をコードする遺伝子と請求項5に規定されるヒトカリクレイン8をコードする遺伝子とを共発現する組換え宿主細胞を培養することで、ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターとヒトカリクレイン8とを接触させることを特徴とする、請求項3に記載の2本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターの製造法。
  10. 請求項1〜9に記載の製造法で得られる2本鎖ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターからなる医薬。
  11. 1本鎖のヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター蛋白質とヒト・カリクレイン8を含むことを特徴とする医薬組成物。
  12. 1本鎖のヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター蛋白質とヒト・カリクレイン8が遺伝子組み換え型であることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
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