JP2005274496A - 成分分析方法およびその方法を用いた成分分析装置 - Google Patents
成分分析方法およびその方法を用いた成分分析装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 試料の成分分析におけるデータ解析の精度を上げることにより、正確な成分数や成分量を得ること。
【解決手段】 成分分析方法は、単一の成分または複数の成分から構成される試料に光を照射し、試料からの検出光の検出データに基づいて複素屈折率<n>を算出し、複素屈折率<n>の虚部kから吸収係数α、吸光度Aを算出し、吸光度Aを観測スペクトルxまたは[X]としてデータ解析を行うものである。観測スペクトルxまたは[X]の数Nが測定されたデータ数であり、データ数Nと試料中の成分数Mの大小を比較して、それぞれの場合に適した演算をする。
【選択図】 図2
【解決手段】 成分分析方法は、単一の成分または複数の成分から構成される試料に光を照射し、試料からの検出光の検出データに基づいて複素屈折率<n>を算出し、複素屈折率<n>の虚部kから吸収係数α、吸光度Aを算出し、吸光度Aを観測スペクトルxまたは[X]としてデータ解析を行うものである。観測スペクトルxまたは[X]の数Nが測定されたデータ数であり、データ数Nと試料中の成分数Mの大小を比較して、それぞれの場合に適した演算をする。
【選択図】 図2
Description
本発明は、複数の成分を有する混合物試料の成分数や成分量を得る成分分析方法に関する。
赤外領域では、物質は、その固有の分子構造を反映した吸収スペクトルを有する。従来、複数の成分を有する混合物試料に赤外光を照射し、混合物試料からの透過光を観測し、照射光強度と透過光強度の比を対数変換して吸収スペクトルを求め、これを観測スペクトルとして所定の演算を行い、混合物の成分数や成分量を得る技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
S.Kawata etal;"Conpornent analysis of spatial and spectral patterns in multi-spectral images. I. Basis" J.Opt.Soc.Am vol4,No.11(1987)p.2101-2106
上記非特許文献1の技術では、照射光強度と透過光強度の比である透過率を対数変換して吸収スペクトルを求めているが、この場合、試料表面での反射による光の損失が考慮されていない。特に、試料が固体試料で、光の吸収が弱い場合は、反射による光の損失の影響が相対的に強く現れ、データ解析の精度が低いという問題がある。
(1)請求項1の成分分析方法は、単一の成分または複数の成分から構成される試料に光を照射し、試料を透過した透過光または試料から反射した反射光を検出し、透過光または反射光の検出データに基づいて複素屈折率を算出し、複素屈折率から試料の成分量と線形関係を有する因子に関する観測スペクトルを算出し、観測スペクトルを用いて所定の演算を施すことにより試料の成分数および/または成分量を得ることを特徴とする。
(2)請求項1の成分分析方法において、観測スペクトルは、複素屈折率の虚部から得られる吸収係数と試料の厚さとの積である吸光度であることが好ましい。また、請求項1または2の成分分析方法において、試料への照射光としてテラヘルツ光を用い、複素屈折率をテラヘルツ時間領域分光法により取得した振幅と位相に関する情報から算出するようにしてもよい。
(3)請求項1〜3のいずれかに記載の成分分析方法において、観測スペクトルのスペクトル数と試料の成分数が等しく、試料の成分スペクトルが既知である場合は、所定の演算として試料の成分スペクトルの逆行列を用いることにより試料の成分量を得ることができる。観測スペクトルのスペクトル数が試料の成分数よりも多く、試料の成分スペクトルが既知である場合は、所定の演算として最小二乗法を用いることにより試料の成分量を得ることができる。試料の成分スペクトルが未知である場合は、所定の演算として観測スペクトルの自己相関行列の階数から試料の成分数を得ることができる。試料の成分スペクトルが未知である場合は、所定の演算として固有ベクトル展開と非負拘束条件による解法を用いることにより試料の成分スペクトルと試料の成分量を得ることができる。
(4)請求項8の成分分析装置は、単一の成分または複数の成分から構成される試料に光を照射する光源と、試料を透過した透過光または試料から反射した反射光を検出する検出手段と、透過光または反射光の検出データに基づいて複素屈折率を算出し、複素屈折率から試料の成分量と線形関係を有する因子に関する観測スペクトルを算出し、観測スペクトルを用いて所定の演算を施すことにより試料の成分数および/または成分量を得る演算手段とを備え、請求項1〜7のいずれかに記載の成分分析方法により成分分析することを特徴とする。
(4)請求項8の成分分析装置は、単一の成分または複数の成分から構成される試料に光を照射する光源と、試料を透過した透過光または試料から反射した反射光を検出する検出手段と、透過光または反射光の検出データに基づいて複素屈折率を算出し、複素屈折率から試料の成分量と線形関係を有する因子に関する観測スペクトルを算出し、観測スペクトルを用いて所定の演算を施すことにより試料の成分数および/または成分量を得る演算手段とを備え、請求項1〜7のいずれかに記載の成分分析方法により成分分析することを特徴とする。
本発明によれば、試料の複素屈折率を算出し、その複素屈折率から試料の成分量と線形関係を有する因子に関する観測スペクトルを算出し、観測スペクトルを用いてデータ解析を行うので、正確な成分数や成分量を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態による成分分析方法について、図1,2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態による成分分析方法に用いられるテラヘルツ光測定装置を模式的に示す全体構成図である。図2は、本発明の実施の形態による成分分析方法の手順を示すフローチャートである。
図1を参照すると、テラヘルツ光測定装置100は、レーザ光源11と、ビームスプリッタ12と、テラヘルツパルス光を放射するテラヘルツ光源17と、試料Sからの透過光を検出するテラヘルツ光検出器22とを備える。また、テラヘルツ光測定装置100は、ロックイン増幅器31と、A/D変換器32と、制御・演算処理部33と、画像処理部34と、表示部35とを備える。テラヘルツ光測定装置100は、周波数がテラヘルツ領域の光を試料Sに照射し、試料Sを透過した透過光を検出し、その検出情報を解析することにより、試料Sに含まれる成分数や成分量(成分濃度)を求める装置として用いられる。本実施の形態で分析対象となる試料Sは、複数の成分を含有する混合物とする。
レーザ光源11から放射されたパルス光L1は、ビームスプリッタ12で2つのパルス光L2,L3に分割される。レーザ光源11としては、例えば、フェムト秒パルスレーザが用いられる。パルス光L1は、中心波長が近赤外領域のうちの780〜800nm程度、繰り返し周期が数kHzから100MHzのオーダー、パルス幅が10〜150fs程度の直線偏光のパルス光である。
ビームスプリッタ12で分割された一方のパルス光L2は、チョッパ13で変調され、反射鏡14,15,16を順次経由してテラヘルツ光源17に入射する。パルス光L2は、ポンプ光(励起光)としてテラヘルツ光源17を照射し、テラヘルツ光源17が不図示のバイアス電源により電圧を印加されているときに、テラヘルツ光源17からテラヘルツパルス光T1を発生させる。テラヘルツパルス光T1は、0.01×1012〜100×1012ヘルツ(0.01THz〜100THz)の周波数領域に含まれる光である。
テラヘルツパルス光T1は、曲面鏡18,19を順次経由した後に試料Sに到達し、試料Sを透過する。この透過光は、テラヘルツパルス光T2であり、試料Sの物性情報を含む光である。テラヘルツパルス光T2は、曲面鏡20,21を順次経由してテラヘルツ光検出器22に到達する。試料Sは、試料ステージ23に保持され、試料ステージ23によってテラヘルツパルス光T1,T2の光軸と直交する平面上で移動できるようになっている。試料ステージ23は、制御・演算処理部33からの制御信号によって制御される。
ビームスプリッタ2で分割された他方のパルス光L3は、反射鏡24で光路を曲げられ、2枚の反射鏡からなる可動鏡25で反射し、反射鏡27を経てテラヘルツ光検出器22に到達する。なお、可動鏡25は、3枚の反射鏡から構成してもよい。テラヘルツパルス光T2がテラヘルツ光検出器22に入射しているときに、パルス光L3がテラヘルツ光検出器22に入射すると、テラヘルツパルス光T2の電場強度に応じた光電流が発生し、この光電流は、テラヘルツ光検出器22によって検出される。
ここで、パルス光L3のテラヘルツ光検出器22への入射タイミングについて説明する。可動鏡25が駆動機構26によって図中矢印yのように移動することにより、可動鏡25の移動量に応じてパルス光L3の光路長を変化させることができ、パルス光L3がテラヘルツ光検出器22へ到達する時間が遅延する。駆動機構26は、制御・演算処理部33からの制御信号によって制御される。このように、遅延時間τを変更しながら各時刻におけるテラヘルツパルス光T2の電場強度に応じた光電流を測定することにより、最終的に、テラヘルツパルス光T2の電場強度の時系列波形E(τ)が得られる。
テラヘルツ光検出器22によって検出された光電流は、電圧信号に変換され、増幅器31に入力される。そして、ロックイン増幅器31の出力信号は、A/D変換器32によりA/D変換され、この信号がPC等の制御・演算処理部33に入力され、テラヘルツパルス光T2の電場強度の時系列波形E(τ)の基となるデータが制御・演算処理部33内の記憶部33aに記憶される。制御・演算処理部33は、この基礎データを所定の理論式に基づいて演算することにより、試料Sの複素屈折率を算出する。基礎データ、複素屈折率、演算により算出された値などは、表示部35に表示させることができる。また、試料ステージ23を移動させて、試料Sの二次元領域からテラヘルツパルス光T2の電場強度の時系列波形E(τ)データを得た場合は、画像処理部34で処理された複素屈折率分布などを二次元画像として表示部35に表示させることができる。
以下、図2のフローチャートを参照しながら、本実施の形態による成分分析方法を説明する。成分分析に関する一連の演算は、制御・演算処理部33にて行われる。
ステップS1では、電場強度の時系列波形E(τ)データからフーリエ変換により、参照用時系列波形E(τ)の振幅|Eref(ω)|と位相θref(ω)、計測された時系列波形E(τ)の振幅|Eref(ω)|と位相θref(ω)を算出する。参照用時系列波形E(τ)は、試料を外して測定された時系列波形であり、測定環境や装置による誤差をキャンセルするための基準として用いられる。
ステップS1では、電場強度の時系列波形E(τ)データからフーリエ変換により、参照用時系列波形E(τ)の振幅|Eref(ω)|と位相θref(ω)、計測された時系列波形E(τ)の振幅|Eref(ω)|と位相θref(ω)を算出する。参照用時系列波形E(τ)は、試料を外して測定された時系列波形であり、測定環境や装置による誤差をキャンセルするための基準として用いられる。
ステップS2では、試料Sに照射されたテラヘルツパルス光T1が多重反射する場合の複素振幅透過率Tm(ω)を式1のように記述し、試料Sの複素屈折率<n>=n−ikを算出する。式1には振幅と位相の情報が含まれている。
ここで、ωはテラヘルツパルス光T1の角周波数、dは試料Sの厚さ、cは真空中の光速、mはテラヘルツパルス光T1の試料内部での多重反射回数である。また、t0は、t0=2/(<n>+1)で表わされ、テラヘルツパルス光T1が媒質から試料Sへ入射するときの複素振幅透過率、t1は、t1=2<n>/(<n>+1)で表わされ、テラヘルツパルス光T1が試料Sから媒質へ射出するときの複素振幅透過率、r0は、r0=(1−<n>)/(<n>+1)で表わされ、テラヘルツパルス光T1が媒質から試料Sへ入射するときの複素振幅反射率である。角周波数ω、試料厚さd、真空中の光速c、多重反射回数mは、既知である。複素振幅透過率t0、t1、複素振幅反射率r0は、複素屈折率<n>に依存しているので未知であるが、未知数としては、複素屈折率<n>の実部nと虚部kの2つであり、式1の複素振幅透過率Tm(ω)には、実部と虚部の2つの方程式があるので、複素屈折率<n>の実部nと虚部kを求めることができる。
ステップS3では、ステップS2で求めた複素屈折率<n>の虚部kを式2に代入し、試料Sの吸収係数αを算出する。吸収係数αは、虚部kに比例することが知られており、式2のように書ける。
α=4πk/λ (2)
ここで、λは真空中での光の波長であり、既知である。
α=4πk/λ (2)
ここで、λは真空中での光の波長であり、既知である。
ステップS4では、ステップS3で求めた吸収係数αを式3に代入して吸光度Aを算出する。
A=α×d (3)
式3で求められた吸光度Aは、試料S表面での反射による光の損失を考慮した値であり、入射光と透過光の強度比である透過率を対数変換して求めた吸光度よりも試料Sの性質を正しく反映している。上記の手順で吸光度Aを算出することによって、試料表面での反射による光の損失が試料による光の吸収に比べて無視できない場合でも、測定上の工夫なしに、データ解析上だけで正確な吸光度Aを得ることができる。なお、測定上の工夫とは、例えば、希薄溶液と溶媒に同一強度の光を照射して透過光の強度の差分を測定することにより、表面反射や溶媒の吸収をキャンセルすることをいう。
A=α×d (3)
式3で求められた吸光度Aは、試料S表面での反射による光の損失を考慮した値であり、入射光と透過光の強度比である透過率を対数変換して求めた吸光度よりも試料Sの性質を正しく反映している。上記の手順で吸光度Aを算出することによって、試料表面での反射による光の損失が試料による光の吸収に比べて無視できない場合でも、測定上の工夫なしに、データ解析上だけで正確な吸光度Aを得ることができる。なお、測定上の工夫とは、例えば、希薄溶液と溶媒に同一強度の光を照射して透過光の強度の差分を測定することにより、表面反射や溶媒の吸収をキャンセルすることをいう。
ステップS5では、ステップS4で求めた吸光度Aを観測スペクトルxまたは[X]と定義する。観測スペクトルxは、試料Sを構成する個々の成分に由来する分光波形として測定される。また、観測スペクトル[X]は、観測スペクトルxのセットであり、例えば、試料Sの時間的変化を各時刻で測定したり、試料Sの各地点を測定した場合には、観測スペクトル[X]で表記する。
今、測定された分光波形x(ω1),x(ω2),x(ω3),・・・,x(ωN)を縦に並べた列ベクトルを観測スペクトルxと表す。ωjは、式1の角周波数である。また、試料Sを構成するM個の成分個々の分光波形(成分スペクトルと呼ぶ)を縦に並べた列ベクトルをs1,s2,s3,・・・,sM、個々の成分の分量(成分量)c1,c2,c3,・・・,cMを縦に並べた列ベクトルをcとする。この場合、観測スペクトルxは、M個の成分のスペクトル波形の線形結合で表現でき、式4で記述できることが知られている。
x=c1s1+c2s2+c3s3+・・・+cMsM=[S]c (4)
但し、[S]は、成分スペクトルの列ベクトルs1,s2,s3,・・・,sMを横に並べたN×M行列である。
x=c1s1+c2s2+c3s3+・・・+cMsM=[S]c (4)
但し、[S]は、成分スペクトルの列ベクトルs1,s2,s3,・・・,sMを横に並べたN×M行列である。
式4は、線形関係を満たしており、式3で求めた吸光度Aも線形関係を満たしているので、以下に述べるデータ解析が可能となる。
ステップS6では、観測スペクトルxの数Nと試料Sの構成成分の数Mとの大小比較と、成分スペクトルが既知か未知かで場合別けする。N=Mで、成分スペクトルが既知の場合は、ステップS7の処理が行われ、N>Mで、成分スペクトルが既知の場合は、ステップS8の処理が行われ、成分スペクトルが未知の場合は、ステップS9〜12の処理が行われる。
ステップS6では、観測スペクトルxの数Nと試料Sの構成成分の数Mとの大小比較と、成分スペクトルが既知か未知かで場合別けする。N=Mで、成分スペクトルが既知の場合は、ステップS7の処理が行われ、N>Mで、成分スペクトルが既知の場合は、ステップS8の処理が行われ、成分スペクトルが未知の場合は、ステップS9〜12の処理が行われる。
ステップS7では、N=Mで、成分スペクトル[S]が既知である場合に、観測スペクトルxから試料Sの成分量を求める。観測スペクトルxは、試料Sのすべての構成成分のスペクトルを含み、各スペクトルは一次独立であるとする。N=Mであるから、成分スペクトル[S]はM×M行列(正方行列)となり、逆行列[S]−1が存在するため、式5により各成分量c1,c2,c3,・・・,cMを算出できる。
c=[S]−1x (5)
c=[S]−1x (5)
ステップS8では、N>Mで、成分スペクトル[S]が既知の場合に、試料Sの各成分量c1,c2,c3,・・・,cMを算出する。試料S中に特定の成分が存在しており、その特定の成分のスペクトルデータが予め得られている場合、成分数Mは既知である。もし、観測スペクトルxに誤差が含まれないならば、観測スペクトルxと完全に一致する成分量cのデータが存在するであろうが、このようなことは現実にはあり得ない。そこで、未知数の個数よりも方程式の数が多い場合には、最小二乗法により、最も確からしい解を求める。この最小二乗解の算出は、式4のx=[S]cの両辺に、pseudoinverse[S]+を左から掛けることに帰着するので、式6により成分量cを算出できる。
c=[S]+x (6)
pseudoinverse[S]+は、例えば式7から求められる。
[S]+=([S]t[S])−1[S]t (7)
c=[S]+x (6)
pseudoinverse[S]+は、例えば式7から求められる。
[S]+=([S]t[S])−1[S]t (7)
ステップS9〜12では、成分スペクトル[S]が未知の場合、試料Sの成分数Mと各成分量c1,c2,c3,・・・,cMを算出する。この場合、試料Sの構成成分のスペクトルデータ(成分スペクトル)は予め知られていない。このままでは、1つの地点での観測スペクトルx、すなわち、複素屈折率<n>の虚部kから算出した吸光度Aだけでは成分数Mも成分量cも求めることはできない。そこで、上述した観測スペクトルxをL個集合させたセットである[X]を用いる。L個の地点での観測スペクトル[X]は、例えば、総画素数Lの分光画像に相当し、観測スペクトルxを表わす列ベクトルを横に並べたN×L行列である。また、観測スペクトル[X]に対応する成分量を、成分量cを表わす列ベクトルを横に並べたM×L行列である[C]で表わす。
ステップS9では、式4に対応する線形関係を表わす式は、式8のように記述される。
[X]=[S][C] (8)
成分スペクトル[S]が未知であっても、観測スペクトル[X]だけから成分数Mを求めるには、階数(rank)という概念を用いる。行列[X]の階数は、観測スペクトル[X]の一次独立な列ベクトルの数であり、これが成分数Mである。階数の算出には、自己相関行列[R]を求め、その0でない固有値の数を求める固有値解析を利用する。自己相関行列[R]は、式9のように記述される。
[R]=[X][X]t (9)
自己相関行列[R]は、正方行列となるので固有値が存在する。自己相関行列[R]を相似変換により上三角行列にすると、対角要素に固有値が並ぶので、その0でない固有値の数を数えて成分数Mとする。ここで、観測スペクトル[X]がノイズを含む場合は、ノイズの分散よりも小さい固有値は0とみなす。
[X]=[S][C] (8)
成分スペクトル[S]が未知であっても、観測スペクトル[X]だけから成分数Mを求めるには、階数(rank)という概念を用いる。行列[X]の階数は、観測スペクトル[X]の一次独立な列ベクトルの数であり、これが成分数Mである。階数の算出には、自己相関行列[R]を求め、その0でない固有値の数を求める固有値解析を利用する。自己相関行列[R]は、式9のように記述される。
[R]=[X][X]t (9)
自己相関行列[R]は、正方行列となるので固有値が存在する。自己相関行列[R]を相似変換により上三角行列にすると、対角要素に固有値が並ぶので、その0でない固有値の数を数えて成分数Mとする。ここで、観測スペクトル[X]がノイズを含む場合は、ノイズの分散よりも小さい固有値は0とみなす。
ステップS10では、固有ベクトル展開を行う。観測スペクトル[X]は、式10のように分解できる。
[X]=[U][Σ][V] (10)
ここで、固有値0の要素を除くと、[U]、[Σ]、[V]は、それぞれN×M行列、M×M行列、M×L行列になる。[Σ]は、自己相関行列[R]の固有値の平方根(特異値)を対角要素とする対角行列である。このとき、観測スペクトル[X]に対応する成分量[C]は、[V]の一次変換で記述でき、式11が成立する。
[C]=[T][V] (11)
[T]は、M×M正則行列であり、ここでは未知である。式10を[T]を用いて変形すると、式12となる。
[X]=[U][Σ][T]−1[T][V] (12)
式10と12から成分スペクトル[S]は、式13と書ける。
[S]=[U][Σ][T]−1 (13)
式11と13において、[U]、[Σ]、[V]は、式10により既知であるので、未知数は、M×M個の要素をもつ正則行列[T]だけとなる。すなわち、正則行列[T]を求めれば、式11から成分量[C]を算出でき、式13から成分スペクトル[S]を算出できる。
[X]=[U][Σ][V] (10)
ここで、固有値0の要素を除くと、[U]、[Σ]、[V]は、それぞれN×M行列、M×M行列、M×L行列になる。[Σ]は、自己相関行列[R]の固有値の平方根(特異値)を対角要素とする対角行列である。このとき、観測スペクトル[X]に対応する成分量[C]は、[V]の一次変換で記述でき、式11が成立する。
[C]=[T][V] (11)
[T]は、M×M正則行列であり、ここでは未知である。式10を[T]を用いて変形すると、式12となる。
[X]=[U][Σ][T]−1[T][V] (12)
式10と12から成分スペクトル[S]は、式13と書ける。
[S]=[U][Σ][T]−1 (13)
式11と13において、[U]、[Σ]、[V]は、式10により既知であるので、未知数は、M×M個の要素をもつ正則行列[T]だけとなる。すなわち、正則行列[T]を求めれば、式11から成分量[C]を算出でき、式13から成分スペクトル[S]を算出できる。
ステップS11では、正則行列[T]を求めるために、物理的先験情報を利用する。すなわち、線形関係以外に予め分かっている情報を利用して解を求めるのである。成分スペクトル[S]の各要素は、各成分の吸収スペクトルを表わしているので、負になり得ない。成分量[C]の各要素は、各成分の量であり、負になり得ない。すなわち、非負拘束条件を示す式14,15が成立する。式14,15において、[S]、[C]の総ての要素は、非負である。
[S]≧0 (14)
[C]≧0 (15)
そこで、[S]と[C]の合計M×(L+N)個の要素が総て非負となるような正則行列[T]の範囲を求めればよい。すなわち、正則行列[T]の要素数M×M個に対して、M×(L+N)個の拘束条件が付くことになり、試料Sの測定地点の総数L(分光画像の総画素数に相当)が成分数Mに比べて十分に多ければ、正則行列[T]の範囲を強力に制限することが可能である。
[S]≧0 (14)
[C]≧0 (15)
そこで、[S]と[C]の合計M×(L+N)個の要素が総て非負となるような正則行列[T]の範囲を求めればよい。すなわち、正則行列[T]の要素数M×M個に対して、M×(L+N)個の拘束条件が付くことになり、試料Sの測定地点の総数L(分光画像の総画素数に相当)が成分数Mに比べて十分に多ければ、正則行列[T]の範囲を強力に制限することが可能である。
ステップS12では、非常に限定された範囲として得られた正則行列[T]を式11に代入して成分量[C]を算出する。ステップS11では、正則行列[T]の概略の存在範囲が分かっただけである。そこで、観測スペクトル[X]中に存在する特徴的な吸収などを手掛かりとして正則行列[T]について限定された範囲としての解を求める。成分スペクトル[S]に特徴的な吸収が存在することが明らかになった場合には、吸収の位置をライブラリに登録されているスペクトルと比較することにより、成分が何であるかを判定することができ、同時に成分量[C]の存在範囲を限定できる。
さらに、ステップS12で、正則行列[T]を一意的に決定することもできる。例えば、最小エントロピー規範を用いて、成分スペクトル[S]の各要素の吸収スペクトルのピークができる限り局在化するようにして、正則行列[T]の解を求め、成分量[C]と成分スペクトル[S]の最適解を決定する。このようにして、正則行列[T]が一意的に決定されるので、成分量[C]、成分スペクトル[S]を求めることができる。
以上説明したように、本実施の形態による成分分析方法によれば、複素屈折率<n>の虚部kを基に試料Sの吸光度Aを求め、これを観測スペクトルxまたは[X]として、成分分析を行うので、試料表面での反射による光の損失があっても、その影響を受けることなく試料Sの成分数Mや成分量cまたは[C]を正確に算出することができる。
本実施の形態では、複素屈折率<n>の虚部kから試料Sの吸収係数αを求めるが、複素屈折率<n>の実部nから式4の線形関係を満足する係数を算出し、この係数を用いて試料Sの成分数Mや成分量cまたは[C]を算出するための演算を行ってもよい。この係数は吸収係数αに限らない。この場合、真空中の複素屈折率<n>の虚部kが0であるのに対し、実部nは1であることから明らかなように、実部nと成分量とは比例関係を有しない。そこで、(n−1)が成分量に比例する、すなわち、式4,8の線形関係を満たすと考えて、演算を行えばよい。
また、本実施の形態では、試料Sの透過測定により、複素屈折率<n>を求め、試料Sの吸収係数αを求めるが、反射測定でも、振幅と位相の項を有する複素振幅反射率から複素屈折率<n>を求めることができ、吸収係数α、吸光度Aを求めることができる。このようにして求めた吸光度Aも式4,8の線形関係を満たすので、これを観測スペクトルxまたは[X]として試料Sの成分数Mや成分量cまたは[C]を算出するための演算を行うことができる。
さらに、本実施の形態では、試料Sへの照射光としてテラヘルツ光を用いたが、検出光から複素屈折率<n>を求めることができれば、テラヘルツ領域の光のみに限られない。なお、分析対象となる試料Sは、複数の成分を含有する混合物としているが、単一成分の試料の分析にも本発明が適用できるのはもちろんである。本発明は、その特徴を損なわない限り、以上説明した実施の形態に何ら限定されない。
11:レーザ光源
12:ビームスプリッタ
17:テラヘルツ光源
22:テラヘルツ光検出器
33:制御・演算処理部
100:テラヘルツ光測定装置
S:試料
T1,T2:テラヘルツパルス光
12:ビームスプリッタ
17:テラヘルツ光源
22:テラヘルツ光検出器
33:制御・演算処理部
100:テラヘルツ光測定装置
S:試料
T1,T2:テラヘルツパルス光
Claims (8)
- 単一の成分または複数の成分から構成される試料に光を照射し、
前記試料を透過した透過光または前記試料から反射した反射光を検出し、
前記透過光または反射光の検出データに基づいて複素屈折率を算出し、
前記複素屈折率から前記試料の成分量と線形関係を有する因子に関する観測スペクトルを算出し、
前記観測スペクトルを用いて所定の演算を施すことにより前記試料の成分数および/または成分量を得ることを特徴とする成分分析方法。 - 請求項1に記載の成分分析方法において、
前記観測スペクトルは、前記複素屈折率の虚部から得られる吸収係数と前記試料の厚さとの積である吸光度であることを特徴とする成分分析方法。 - 請求項1または2に記載の成分分析方法において、
前記試料への照射光は、テラヘルツ光であり、
前記複素屈折率は、テラヘルツ時間領域分光法により取得した振幅と位相に関する情報から算出されることを特徴とする成分分析方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の成分分析方法において、
前記観測スペクトルのスペクトル数と前記試料の成分数が等しく、前記試料の成分スペクトルが既知である場合、前記所定の演算として前記試料の成分スペクトルの逆行列を用いることにより前記試料の成分量を得ることを特徴とする成分分析方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の成分分析方法において、
前記観測スペクトルのスペクトル数が前記試料の成分数よりも多く、前記試料の成分スペクトルが既知である場合、前記所定の演算として最小二乗法を用いることにより前記試料の成分量を得ることを特徴とする成分分析方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の成分分析方法において、
前記試料の成分スペクトルが未知である場合、前記所定の演算として前記観測スペクトルの自己相関行列の階数から前記試料の成分数を得ることを特徴とする成分分析方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の成分分析方法において、
前記試料の成分スペクトルが未知である場合、前記所定の演算として固有ベクトル展開と非負拘束条件による解法を用いることにより、前記試料の成分スペクトルと前記試料の成分量を得ることを特徴とする成分分析方法。 - 単一の成分または複数の成分から構成される試料に光を照射する光源と、
前記試料を透過した透過光または前記試料から反射した反射光を検出する検出手段と、
前記透過光または反射光の検出データに基づいて複素屈折率を算出し、前記複素屈折率から前記試料の成分量と線形関係を有する因子に関する観測スペクトルを算出し、前記観測スペクトルを用いて所定の演算を施すことにより前記試料の成分数および/または成分量を得る演算手段とを備え、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の成分分析方法により成分分析する成分分析装置。
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JP2004091224A JP2005274496A (ja) | 2004-03-26 | 2004-03-26 | 成分分析方法およびその方法を用いた成分分析装置 |
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- 2004-03-26 JP JP2004091224A patent/JP2005274496A/ja active Pending
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